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国務大臣(
福田一君) お答えをいたします。
安孫子さんは
地方の知事としても豊富な経験を持っておいでになり、したがって、
地方財政というものに対しても、非常に深刻な現在の
状態をよく御
理解をしていただいて御
質問をいただいておると私は存じておるのでございます。
御
指摘のように、今日
地方財政というものがいままでの
仕組みでいいかどうかという問題は、どうしても今後
検討の課題にならざるを得ないと思うのでありますけれども、私は、しかしその前に、これはまことに失礼な申し分でお聞き逃しをしていただいて結構かと思うのでありますけれども、やはり国の
経済の
運営、
行政の
運営というものは、その国の力というもの、また世界の
経済の
事情というようなものをよく
理解をした上で、またそれを
国民によく
理解をしてもらうという
努力がまず第一に私は非常に必要になるんじゃないかと思っておるのであります。
で、
安孫子さんでありますからちょっとお許しを願うのでありますけれども、実は最近私はポール・ボネの「不思議の
国ニッポン」という
最新刊の書を読んでみましてこの人は
フランス人でございますけれども、十七年間
日本におって、そうして
日本の
事情を非常に端的に
批判をいたしております。私はその
内容を全部賛成はいたしておりません。しかし、私は非常に
示唆に富んだ
批判の仕方をしておるというところに非常な感銘を覚えておる。まあイザヤ・ベンダサンとか、
ユダヤ人が
日本を見る場合、
フランス人が
日本を見る場合というような、物の見方というものをもう少し
日本人われわれがよく
理解をしなきゃいかぬじゃないかということを常々
考えさせられておるものでございますが、御案内のように、いまは
日本の
経済自体が、
福田副
総理並びに
大平大蔵大臣が非常に
苦労をされまして、そうして国の
予算をつくる場合におきましても、非常な
努力をされ、いろんな
苦労をされておるわけでございます。このことは私が申し上げないでもおわかりを願っておると思うのでありますが、国の
財政というもの
自体が非常ないま困難な
時代にあるのでございます。
しかし、そうは言っても、
法律によりまして、
交付税法というものでは、二年間以上
赤字が続いた場合にはこれは見直しをしなければならないということがちゃんと
法律で決まっておることは、もうあなたも先刻御
承知のことでございまして、そういうことを
考えてみますと、ことしの
予算の編成は、まあ三年——二年以上は
赤字になりますが、三年目ではございませんので、しかも国の方が非常に苦しい立場で、
財政特例法というようなものをつくって
赤字公債を出さにゃならぬというようなことになっておる。私はいま
地方財政の問題だけではなくて、実を言いますと、この
赤字財政特例法というものがどうなるであろうかということも、
地方交付税の問題と決して私は因縁のない問題じゃない、
関係のない問題ではないと思っておるのでございます。
私がこんなことを申し上げるのは失礼でございますけれども、とにかく
財政特例法というものが通らない場合におきましては、
地方としても一体将来これだけの起債ができるのだろうか。しかもいますでに六兆円以上の縁故債を抱えておるわけでございます。これはもうあなたも御
承知のとおりなんです。縁故債というのは担保適格債になっておりませんからして、その銀行が引き受けた分については、金融はその分は固定してしまっておる。こういうようなことになっておるのでありますから、それにまた相当な縁故債を引き受けざるを得ないようなやり方、こういうような
地方財政の立て方というものが、果たしていまの
日本の
財政経済を
運営する意味で正しいのかどうかということについても、ずいぶん反省もいたしておったのでございますけれども、まあ親元であると言っては失礼でありますけれども、国と
地方が一緒になってりっぱな
日本の
政治を実現をするという、そして
国民の
福祉を増進し
生活を安定さしていくという立場から
考えてみますというと、国がそれほど困っておる段階でございますので、やはりひとつ今回はこの起債を認めてもらうということより以外には方法がないのじゃないか、またこれが最善の方法ではないか、こう
考えて今度のような
財政計画を立てておるわけでございまして、とは言っても
法律は
法律でございますから、またことしの九月、十月になって見ても、来年も
赤字が続く、こういうことになりますと、これは私はこの問題を真剣に
検討せざるを得ない。いやしくも
法律というものがある以上は、
法律を守るということはわれわれの義務でなければなりません。これは
国民以上に
政府というものがこれをおろそかにしてはいけないことはもう当然のことでありますから、これは真剣に
考えるつもりでありますけれども、そういうように、非常にいま国も困っておるということでございまして、私は、これはもう
地方交付税の問題と、そうして何といいますか、
財政特例法の問題は、やはりある意味で切っても切れない
関係にあると私は
考えておるようなわけでございます。
こういうような意味においても、いま自治省がいわゆる今回のようなこの
地方財政計画を立てたということについての認識を皆様に持っていただいて、そうして低成長
時代に入ったときの、入りつつあるこの
時代における国の
財政計画というものを、真剣に総合的に
検討していただきたいということを私は心から願っておるものでございます。
よく言われるのでありますけれども、おまえは
自治大臣だから
交付税法さえ通してもらえばいいじゃないかというようなことをよく言われる方があるんですけれども、
交付税法だけ通してもらっただけで、
地方のいわゆる自治というものがそれで安心して
地方の自治体が
運営できるかどうか、私は非常に疑問を感じておるのでございます。これは、あるいは甘えたものである、また失礼なことを言うなというおしかりを受けるかもしれませんが、私は心からこれをこいねがっておるということをこの機会に表明をさせていただきたいと思うのであります。