○赤桐操君 私は、
日本社会党を代表し、
昭和五十一年度の地方財政計画及び
地方交付税法等の一部を改正する
法律案に対し、地方財政の危機を克服し、地方自治発展の基盤の確立を求めるわが党の
立場から、
政府の所信をただしたいと思います。
地方自治は現在財政状況が極度に悪化し、
政府による行政介入と相まって、自治の本旨そのものが危機に直面いたしております。戦後の民主的自治制度が発足して三十年、地方自治はいま最大の危機を迎えたと申しても過言ではありません。地方自治の健全な発展を
実現するためには、自主財源の充実を中心とした財政基盤の
強化を図ることが必須の要件であります。すなわち、財源
対策には量の問題とともにその質が問われていると思うのであります。
昭和五十一年度の
政府の地方財政施策は、昨年度同様、この点を強く指摘しなければなりません。
昭和五十年度は、地方税収の減及び地方交付税減を合わせて二兆一千六百三十七億円の収入不足に対し、
政府のとった措置は地方交付税会計における巨額の借り入れと地方債の増額、すなわち借金によるものでありました。また
政府は、
昭和五十一年度においても二兆六千二百億円に上る一般財源の不足をまたしても借入金と地債によって穴埋めようといたしております。
もともと政府による地方財源の不足見積額は
現実の不足額よりはるかに少なく見積もられております。しかし、そうした過小見積額に対してさえ
政府は地方交付税率の引き上げ等による一般財源の充実をもってこたえようとせず、その大
部分を交付税源の先食いと自治体の借金によって処理しようとしているのであります。今後の
日本経済の動向を考えるとき、現在
政府がとっている借金依存政策をなお将来自治体に押しつけていくならば、地方自治の崩壊は明らかであります。地方財政はいままさに暗い、そして長いトンネルの中に停滞いたしておるのであります。
わが党は
昭和五十年度の地方財政の財源不足に対し、地方交付税率を現行の三二%から三五%に引き上げること、国税三税の八%に相当する額を第二交付税として配付すること、すなわち地方交付税率を四三%とすること等の措置を提案いたし、また、地方税制については、大衆負担の軽減を図る一方、大企業等に対する課税の適正化による税源の
強化を求めてまいりました。いまこそこの主張を積極的に受け入れるよう
政府の善処を求めるものであります。
以下、具体的に
質問いたします。
まず、最初に伺いたいことは地方税制の改革についてであります。
昭和五十一年度の地方財政計画の歳入面を見ますると、地方税においては住民税法人税割り、法人事業税において約六千七百億円の自然減収等があるにもかかわらず、財政計画では個人住民税均等割りの三倍引き上げ、住宅用土地の
評価がえによる固定資産税の増などを含む増税政策によって前年度当初並みの税収が
確保できるようにいたしております。地方財政の基盤を確立するために税源
確保に努めることは必要でありますが、問題は租税の負担をたれに求めるかにあると思うのであります。負担能力の大きい大企業等に対し適正なる税負担を求めず、また、産業用電気税の非課税措置の廃止等特別措置の整理を徹底して行わずに、大衆に安易にその負担の増加を求めることは許されないところであります。
昭和五十一年度の個人住民税所得割りの標準的給与所得者の課税最低限は百三十万九千円でありますが、これは所得税における課税最低限の七〇%程度の低い水準であります。物価の上昇率は一けたとは言え、依然預金金利を超える高水準にあり、また、最近の資金動向は実質賃金の低下の傾向をうかがわせております。私はこの際、所得税などとともに低所得者に対する住民税の減税こそ急務であると思いますが、
政府としては全くその意思がないのかどうか、まず
総理大臣及び
関係大臣の所信を伺いたいと思います。
第二は、地方交付税率の引き上げについてであります。地方交付税法の規定によれば、地方財政に引き続き財源不足等の事態が生じた場合は、地方交付税率の変更を行うものとしております。そして自治大臣は、当院予算委員会を初め、再三にわたり、五十二年度においては地方交付税率の引き上げを含む財源措置を検討することを明らかにしておりますが、上げ幅何%を用意されるか、
総理大臣、大蔵大臣、自治大臣の明確なる御
答弁をお願いいたします。
第三は、基準財政需要額を大幅に削り、その経費の財源の地方債への振りかえについて伺います。地方交付税法は、その立法の
目的及び運営の基本として、地方交付税制度は、自主的に行政を執行する権能を損なわずに財源の均衡化を図る制度であること。基準財政需要額というのは、自治体が標準行政を行うために必要な経費を合理的かつ妥当な水準で算入すべきものであることなどを規定しております。
しかるに、本改正案は一兆二千五百億円に上る巨額の経費について基準財政需要額を削り、一般財源で措置すべきところを特定財源である地方債に振りかえております。これは地方行政の自主性を侵し、交付税法の根幹を否定する不当な措置であると思います。自治大臣の
見解を求めます。
第四は、地方債の元利償還費に対する国の財政措置について伺います。基準財政需要額を大幅に削って地方債に振りかえる措置の不当性はただいま指摘したとおりでありますが、ざらに、これら地方債の元利償還費に対する国の財政援助はきわめて不十分であることを指摘せざるを得ません。私は、本来ならかかる地方債の元利償還費は全額国の
責任において措置すべきであると思います。
政府は、一兆二千五百億円の振りかえ地方債のうち二千億円分についてのみその元利償還費を国で措置するにとどめておりますが、この国の援助措置の枠はざらに拡大されるべきであると思いますが、大蔵大臣、自治大臣の所見を求めます。
第五は、地方債の許可制度の廃止に関する問題について伺います。たとえば、高等学校を建設する経費は地方交付税の基準財政需要額に算入されて交付される場合は一般財源でありまするから、その財源を自治体の自主的判断で他の経費の財源に充てることもできます。しかし、地方債によって措置される限り、その財源の
確保は国による許可を要し、また、その使途は厳しい国の監督の
もとに、高等学校を福建設すること以外の経費に充当することは許されません。したがって、私は、すでに国による自治体統制の手段と化している地方債の許可制度はこの際廃止すべきであると考えます。自治大臣、大蔵大臣の所見を承りたいと思います。
第六は、単独事業費の
確保等、自由財源の問題について伺います。
昭和五十年度及び同五十一年度において、地方交付税会計は二兆四千三百四十億円に及ぶ大量の資金を他会計から借り入れることとなり、そのため交付税会計は
昭和五十三年度から八年間にわたり毎年巨額の資金の返済を行わなくてはなりません。本年度の振りかえ地方債のうち一兆五百億円については国の補てん措置がなされないので、昨年度の地方税減収補てん債の分と合わせて、交付税総額の相当
部分が将来の地方債の元利償還費に振り向けられ、実質的に交付税総額が減額されたと同じ結果になります。したがって、過年度分の借入金の処理等に多額の資金が必要となり、結果的には単独事業等、自主行政に要する経費を圧迫せざるを得ません。自治体財政の独自性が失われることは明らかであります。自治体が自由財源を
確保し、単独事業等の実施が十分できるよう将来にわたって配慮さるべきであると思いますが、自治大臣の所見を求めます。
最後に、自治行政に対する
政府の不当介入についてお伺いいたします。
政府はみずからの失政をたな上げして、地方財政悪化の原因があたかも自治体財政の放漫、特に人件費にあるかのように宣伝してまいりました。しかし、地方公務員の給与は本来地方自治体において独自に決定さるべきものであって、国が介入する筋合いのものではありません。そしてまた、今日の地方財政の悪化の原因が挙げて人件費にあるのでは断じてありません。国、地方を通ずる税、財源配分の適正化を初め、地方財政の構造それ自体に抜本的な改革を加えなければ地方財政の好転は望めないのであります。私は、
政府は明らかにこの
努力を怠っていると判断いたしますが、いかがでありますか。
また、
政府は、自治体の財政健全化計画に協力するという名目で地方債の許可権を悪用し、人件費その他への介入と相まって、自治行政に不当に介入しております。中央
政府がその行政権力によって自治行政に干渉することは、まさに地方自治の本旨に
もとる行為と言わなくてはなりません。この地方自治に対する
政府の基本
姿勢につき、
総理大臣の明確な
見解を求めて私の
質問を終わります。(
拍手)
〔
国務大臣三木武夫君
登壇、
拍手〕