○山内一郎君 私は、自由民主党を代表して、ただいま
議題となっております
昭和五十一
年度一般会計予算外二案につきまして、賛成の
討論を行います。
申すまでもなく、現在
わが国財政の最大の課題は
景気の着実な
回復と
雇用の安定を実現することであります。
石油危機を転機として
世界経済の構造変化が起こり、資源の有限性の自覚と資源保有国の資源ナショナリズムの高まりによって全世界がいわゆる
減速経済に移行するに至ったのであります。当然のことながら、資源小国である
わが国経済にとっても例外ではなく、
経済の
高度成長を支えた内外の
条件はいまやほとんど失われたのであります。そして、その後に待ち受けた
インフレと
不況の共存というかつて味わったことのない深刻な傷跡を残したのであります。すなわち、
経済のゼロ成長、
企業収益の悪化、
雇用不安が続き、国も自治体も極度の
財政難に見舞われ、
経済全体が深刻な
不況にあえいでいるのが
現状であります。最近ようやく
物価も安定し、
経済活動も昨年来の
財政を主軸とした
景気対策によって
回復の兆しを見せてまいりました。しかし、
経済活動の
水準はなお低く、足取りは必ずしも力強いものとは言えない
状況であります。このような
推移の中で
財政とともに
景気浮揚の牽引力である貿易が盛んになってきたことは、
景気の先行きに一段の明るさを取り戻すことでありましょう。
経済運営の当面の課題は、
経済の
回復を一層確実なものとすることによって
企業活動を健全なものとし、
雇用の安定の実現を図ることでありますが、同時に、今後の
日本経済の
均衡のとれた発展を確保するため、内外の厳しい制約
条件のもとで、中、長期に見て
経済の減速に耐えられる
財政の
体質改善に着手することであり、五十一
年度はそこへの橋渡しの年とすることであります。
五十一
年度予算は、以上の課題を担い、
財政が
景気回復の主導的な役割りを果たすことを最優先課題として、財源の重点的配分と一般的な経費を極力圧縮するという厳しい
経済情勢のもとで編成されたものであります。この点まことに適切な
配慮を加えられたものとして高く評価するものであります。
以下、五つの主な項目について述べてみたいと思います。
第一点は、
予算の
規模と性格についてであります。五十一
年度予算の
規模は二十四兆二千九百六十億円、
財政投融資は十兆六千百九十億円であり、前
年度当初
予算に比べ、ともに一四・一%の伸びとなっております。歳入に当たっては、
経済活動の
停滞により
税収不足が生じたので、既定経費の見直しを行うとともに、
国債をもって財源の確保を図り、歳出に当たっては、厳しい
財政事情の中において、
需要喚起
効果の高いとされる
公共事業の
伸び率を対前
年度比二一・二%増とし、
景気浮揚を最重点に置いております。
さらに、社会保障
関係費についても、
公共事業の
伸び率を上回り社会保障の充実が図られ、
地方財政についても手厚い
対策が講ぜられております。また、
財政投融資計画につきましても、その資金配分は
国民生活に最も
関係深い部門に重点を置いたことは妥当な
措置であります。
第二点は、
国債の発行についてであります。長期にわたる
景気の
停滞を反映して
税収の大幅な落ち込みにより
財政危機を招き、一方、
不況克服という政治課題を抱え、五十一
年度は一般会計の
国債依存度を二九・九%、発行総額七兆二千七百五十億円とし、このうち、
財政法四条一項
ただし書きの
建設公債三兆五千二百五十億円のほか、三兆七千五百億円の
特例公債の発行を予定するものとなっております。
財政の正常なバランスの
回復と当面の
景気回復の促進という二つの矛盾した
経済運営の中での選択は議論の分かれるところでありますが、今日の
経済情勢のもとではこのような
措置は必要やむを得なかったものと
考えられます。
政府は、
特例公債の発行に先立ち、今
国会に特例法案を
提出し、償還期限までに全額償還、借りかえは行わず、発行は五十二年の出納整理
期間までとし、
税収の動向によりできるだけ発行の限度を少なくする余地を考慮していることは
財政に対する節度を示しております。
国債の発行は、
インフレとの
関係からも市中消化の原則を守るべきことはもちろんのことでありますが、
国債管理政策面においても、流通市場において魅力ある
国債の位置づけについて一層の検討を願うものであります。
政府におかれては、今後できるだけ速やかに
特例公債依存の
財政から切り抜け、
財政運営の健全性を確保されんことを切に望むものであります。
第三点は、
景気対策についてであります。
政府は、
物価の安定を踏まえ、
不況の脱出と
雇用の安定を図るため
需要創出
効果や
雇用吸収
効果の大きい部門に財源を重点的に配分されたことはまことに当を得た
配慮と思うのであります。すなわち、四十九
年度、五十
年度は
伸び率ゼロであった
公共事業関係費を、五十一
年度は
予算規模の
伸び率を百%も上回る二一・二%増とし、との中でも
住宅は二三・三%、
生活環境整備費は、三一・二%と大幅な伸びを示しております。特にわが党が強く推進したのは
住宅建設の促進であります。五十一
年度は総戸数八百六十万戸の第三期
住宅建設五カ年
計画の発足を認め、うち公的資金
住宅については三百五十万戸の初
年度分
予算と財投融資を確保するとともに、戸数も前
年度当初
計画より
増加するなど手厚い
対策をとっているのであります。なお、
住宅のほか、五十一
年度を初
年度とする下水道、公園、港湾等七事業の五カ年
計画を樹立し、長期的視野に立って社会資本の充実が図られることになっております。
一方、
雇用の安定についてでありますが、
生産の落ち込みと収益の悪化により
雇用不安も懸念されておりましたが、
政府もこれまで
雇用調整給付金
制度の活用等を
中心に失業の防止と安定に努めるとともに、今回さらに中高年齢者
雇用率
制度及び納付金
制度の創設による身体障害者の
雇用の促進、あるいは
企業倒産等による賃金不払いに対する救済
制度を設けたことは、
雇用の安定と
福祉の向上を図る上で大きな福音と言えるのであります。しかし、
雇用安定の決め手は何と言っても
景気の
回復、
不況からの脱出であります。したがいまして、
公共事業対策を
中心として
予算と
財政投融資を重点的、集中的に配分されたことは、おくれている
住宅建設、
社会資本整備等を著しく促進するとともに、
需要創出と
雇用吸収に直接結びつき、また
景気の
基本条件である貿易を振興させ、さらに
不況下の経営に苦しむ
中小企業の安定に大きく寄与するものと確信するものであります。
第四点は、社会保障についてであります。
国民生活安定のため社会保障の充実は重要でありますが、特に
不況が深刻なときこそ、恵まれない階層に対し
福祉の充実が重要であることは申すまでもないことであります。五十一
年度予算においては、厳しい財源の中から社会保障
関係費には特に
配慮が加えられ、前
年度当初
予算に対し二二・四%増の四兆八千百十六億円を計上いたしております。この
伸び率は
一般会計予算総額の
伸び率一四・一%を上回るばかりでなく、金額においても
公共事業費をはるかに上回っております。また、
社会保障費の占めるウエートは一九・八%と
上昇を見せているのであります。このことは五十一
年度予算が前
年度予算以上に
福祉予算の性格の強いことを意味するもので、わが党、
政府が常に
国民福祉を最優先とする一貫した
姿勢を示すものであります。
主な
内容は、厚生年金、
国民年金等各種年金について給付の
引き上げ等
改善を行うことを初め、生活扶助基準の一二・五%の
引き上げ、心身障害者等に対するきめ細かい
配慮を行うほか、社会
福祉施設の職員の処遇
改善等各般の施策を積極的に推進しているのであります。しかし、今後本格化する老齢化時代と低成長への
転換期を迎えるに当たってこれをいかに充実していくかはきわめて重要な問題でありますが、今後は
国民の適正な負担を考慮しつつ効率的な
福祉施策を図るべきであります。
第五点は、
地方財政についてであります。国の
財政とともに、当面の緊急課題である
地方財政の危機についても、これを乗り切るため、五十
年度補正予算に引き続き五十一
年度も
政府は
財政事情の許す最大限の
措置を講ずることといたしております。すなわち、
地方の固有財源である道路目的財源を主として平
年度約三千億円の新規税源を付与するとともに、国庫補助負担事業の単価、基準等を
地方の実情に即するよう
改善し、
地方超過負担の
解消を図ったほか、国税三税の落ち込みにより
地方交付税交付金の伸び悩みの補てん
措置を講じ、
地方交付税特別会計に
政府資金一兆三千百四十一億円を貸し付け、また一兆四千二百億円の
地方債を
政府資金で引き受け、さらに一兆二千五百億円の
地方債に対し国が元利の一部を補給することとしたのであります。このような国の施策によって五十一
年度の
地方財政は十分乗り切れることとなっていたのでありますが、
予算成立の遅延並びに
地方交付税等改正案の成立がおくれているので、一日約七千万円の一時借り入れによる利子負担を生じ、
地方自治体の資金繰りの悪化と行政の
停滞が起こり、政治の
空白にあえいでいるのであります。しかし、当面の最大課題である
不況を乗り越えるためには、
地方自治体においても国と同一の基調に立ち、安易な
財政運営は絶対に許されなくなったとの強い認識のもとに、自治体みずからが厳しい
姿勢で自主的な努力を傾け、
現状打開に取り組まれんことを切に望むものであります。
最後に、
政府に要望いたしたいのでありますが、今日一番大きな課題は
不況からの脱出でありますが、第五次
不況対策とも言われる本
年度予算の成立が大幅におくれたことは、
景気が
回復基調にあるだけに、その及ぼす
影響が懸念されるところであり、それがまた直ちに
雇用の安定につながるものだけに、まことに遺憾とするところであります。
政府は
予算の執行に当たっては遺漏なきを期されんことを要望して、
昭和五十一
年度一般会計外二案に対する私の賛成
討論を終わります。(
拍手)
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