○吉武恵市君 私は、自由民主党を代表して、今回の
政府の
施政方針演説について、
総理並びに
関係閣僚に対し若干の
質問を行うものでございます。
〔議長退席、副議長着席〕
第一の
質問は、
三木総理の
政治姿勢と今国会に臨まれる御
決意に対してお伺いをいたします。
三木総理は、一昨年の暮れ、
三木内閣発足の当初より
政治の基調を
対話と協調に置かれ、今回の
施政方針演説でもその基調を力説され、またその
努力を払われてこられました。このことはまことに望ましきことであり、また今後もそうあってほしいと思うのでございます。しかし、昨年の通常国会及び臨時国会を顧みますると、通常国会は百九十日かかりました。そして選挙三法案を成立さしたのみに終わって、
予算は成立いたしましたが、その重要なる歳入の裏づけとなる酒、たばこ二法案を初め郵便料金の
値上げ法案はついに不成立に終わったのであります。したがって、引き続き九月臨時国会を開き、
不況対策とともにこれらの法案を提出されたのでありますが、延長に延長を重ねて百六日の長きにわたり、ようやく
財政特例法とともにこれが通過を見たのであります。それがために
不況対策
予算が成立いたしましても遅延をいたしまして、いまなお
景気の回復を見ず、まことに遺憾に存ずるところであります。
対話と協調も結構でございますが、おのずから限界がございます。今国会は
不況対策という重要なる課題を抱えておる国会でありますがゆえに、
総理はいかなる態度でもってこれに対処するおつもりでございますか、その御
決意を承りたいのでございます。
国会は国権の最高の機関であります。国会が
国民の負託にこたえ、適正かつ円滑に
運営されることが
民主主義確立のための不可欠の要件であることは申すまでもございません。国会がよく
国民の要望にこたえ、その機能を十分に発揮し、主権在民の最高機関としての任務を果たすことがいまこそ最も期待されておるときであると思います。そのためには、議会
政治のルールを
確立することが第一であります。さらに従来の慣行を見直して党派の利害を超え、
国民のための議会
政治に一日も早く近づけることが必要であると思うのであります。国会は与
野党の単なる駆け引きの場ではなく、真の
国民の声に耳を傾けて
論議を尽くし、最後には多数決原理によってその結論を出すということが最も必要であると思うのでありますが、(
拍手)
総理の御所見を伺いたいのであります。
一部に、
予算が成立すれば直ちに解散が行われるのではないかという意見がございますが、
予算が成立いたしましても、五十一
年度予算は七兆三千億という膨大な公債発行によって
編成されており、それを可能ならしめる
財政特例法が成立いたしませんと、
予算の執行は行われないのであります。そればかりではなく、この
予算には必要な財源として一部の増税と
公共料金等受益者
負担の点も含まれておるのであります。これが成立しませんと、
景気の回復や必要なる施策の推進はおくれざるを得ないのであります。したがって、一日といえども空白を許さない今日の
情勢にあるのでありまするが、
総理はいかにお考えでございましょうか。御
見解を承りたいのであります。
第三に、
不況対策と今後の
経済見通しに対し
経済企画庁長官にお尋ねをいたします。
昭和五十一年は
わが国経済にとってきわめて重大な年とされております。石油ショック後の
インフレ抑制については所期の成果を見るに至りました。しかしその反面、深刻な
不況が押し寄せ、
倒産も昨年十二月には一カ月で千四百件、一年を通じても一万二千件に上ったと言われております。その
倒産の大部分は
中小企業であります。また、そのため失業者の数も百万を突破しかねない状態であります。このような
経済情勢に対処するため、昨年の臨時国会において
景気浮揚対策として住宅その他の
公共事業に追加補正が行われたのでございますが、まだその
効果は十分に浸透せず、
国民は一抹の不安を抱いておるのであります。五十一
年度予算において
政府はこの点を憂慮され、思い切った
不況対策に心をいたし、住宅その他
公共事業にさらに重点を置いた
予算を
編成されました。これによっていつごろになれば
景気が回復するのでありますか、その
見通しについてお伺いをいたしたいのであります。
政府はこれまで四次にわたって
景気回復にてこ入れをされてこられました。特に、昨年秋
実施されました第四次
不況対策の
効果は一−三月には出てくるものと期待されたのでありまするけれども、
企業の操業度は依然として悪く、したがって、
不況対策の
効果もおくれがちであると見られるのでありますが、そのお
見通しはいかがでございましょうか。
企業の一部では、この事態に対処して公定歩合をさらに引き下げ、金融面からも
景気浮揚対策を検討すべきであるとの意見が出ておるのでありますが、これに対する御
見解を承りたいのであります。
次に、
公共料金に関してその基本的な考え方をお伺いいたします。
公共料金は
政府が介入し得る価格であるところから、物価抑制の
立場より一切これを凍結すべしという意見がございます。しかしながら、
公共料金は受益者
負担の
原則によるべきでありまして、これを一般財源、すなわち税金をもって賄うことは、
費用負担の公平、
財政資金の効率的配分等の見地から適当ではございません。したがって、安易にこれを引き延ばすことは、それだけ
財政の硬直を来すものであります。また、いずれ、かえって大幅な
値上げを余儀なくされることになるのであります。したがって、物価抑制の
立場を堅持しながらも、真にやむを得ない
公共料金の
値上げについては、その上げ幅、時期等に十分な配慮を加えて、計画を立てて実行することが望ましいものと考えるのでありますが、
政府のお考えを承りたいのであります。
しかしながら、物価がようやく鎮静の方向に定着しつつある今日、
公共料金の
引き上げによって再び物価が高騰することを懸念する向きもあることも事実であります。そのためにはあらかじめ広く
国民によく説明してその理解を得ることが何より大切であると思うのであります。来
年度予算に
国鉄運賃の改定、また、電報電話料金の
引き上げを考えられておりますが、そのやをむ得ざる事情と、その物価に及ぼす影響がどんなものであるかを十分に説明をして、その実現を図られんことを望むものでございます。
なお、この際注意を要しますることは、低所得者階層に対する配慮と経営体の体質改善の
努力が必要であるということであります。このことについても
政府の御所見を伺いたいのであります。
次に、五十一
年度予算と
不況対策について大蔵大臣にお伺いをいたします。
新
年度予算は、当面の
不況の克服と雇用の安定を図ることを最も重視し、
公共事業及び輸出等の促進に重点を置いた
景気回復型とされたことは、現下の難局打開に即応したきわめて適切な処置であると思うのであります。この場合、いかなる
公共事業に重点を置き、またいかなる輸出振興を図ろうとしておられるのか、またいかなる雇用安定の方途を講じようとされたか、その概要をお伺いしたいのであります。
また、これまでの四次にわたる
不況対策と昨年秋成立した補正
予算に続く新
年度積極
予算で
政府の
景気回復の意欲はうかがえるのでございますが、これまでとかく
予算成立後の施行がおくれがちで、後手に回りたことを考えますると、新
年度予算が成立する以前にも、あらかじめ
予算施行のための準備を進め、
需要効果を早期につくり出すことを図らなければならないと考えるのでありますが、どのような配慮をされようとしておられますか。
五十一
年度財政は、深刻な長期
不況により前
年度当初
予算に比べて大幅に税収の落ち込みが予想されておるのであります。この場合、歳出の
規模を税収不足に合わして削減するといたしますると、
経済の
不況はさらに輪をかけて深刻になるのであります。さればといって、税収の不足を補うために
不況のさなかに一般的な増税を行うといたしますれば、とれまた
企業活動や
国民生活を圧迫するばかりでなく、それでなくても萎縮しておる
国民経済の全体の
規模をさらに小さくするだけで、
不況対策に逆行することになります。したがって、このギャップにつき、当面、特例公債を含む公債発行により対処することは必要やむを得ないものであると思われるのであります。一部には、
赤字公債の発行を避け、
財政支出削減と
企業増税を行うべきだという意見を聞くのでありますが、
景気の回復と雇用の安定が最も急務とされておる現在、このような考え方は、
不況の深刻なる現実を無視した議論と言わなければならないのであります。(
拍手)むしろ心配されることは、このような多額の公債の発行に当たって果たして市中消化ができるであろうかということであります。そのお
見通しについて御
見解を承りたいのであります。
次に、社会保障についてでございますが、社会保障
関係費も前
年度比二二・四%増となり、
一般会計に占めるシェアでは前
年度の一八・五%から一九・八%に
引き上げられ、
景気対策とともに福祉の前進が図られたのであります。
老人医療については今後そのあり方を再検討すべしとの論もあるのでありますが、この問題は
医療保障の面のみならず、
老人福祉対策全般にわたっての総合的な観点から十分検討すべきものでありますが、当面
老人医療の無料化を堅持されましたことはまことに適切なる処置であったと思うのであります。
また、
厚生年金標準月額九万円に、
国民年金標準月額百万五千円に
引き上げました。社会的弱者に対する施策として
老人福祉
年金を初め母子、準母子、障害者
年金、
生活保護等の
給付水準を
引き上げるなど、実情に即したきめ細かなる配慮がなされておることは、
財政窮乏の中にかかわらず、
福祉政策をいかに重視されたかを示すものでありまして、高く評価するものでございます。反面、各種保険の保険料及び
自己負担の増額が求められているのでありますが、一部には、この
年金保険料の料率が若干
引き上げられたことをとらえて、
福祉政策の
後退と言う者がおりますが、今後の
福祉対策は高福祉、高
負担の
原則に立たざるを得ないと思うのであります。欧米
各国の例を引くまでもございません。
そこで、お伺いいたしたいことは、今日厳しい
財政難の中で福祉
向上を進め、福祉の
後退が許されないとすれば、今後
わが国においてどのようなお考えのもとに対処されていかれるつもりか、
政府のお考えをお示し願いたいのであります。
特に、
三木総理は昨年ライフサイクルの構想を明らかにされてその検討を進められておるようでございますが、その基本のお考えをお示しいただければ幸せと存じます。
次に、農業
政策の基本についてお伺いをいたします。
インフレによるいわゆる
狂乱物価のときに著しい混乱を見ずに済んだのは
食糧があったからであります。もしあの際に、いささかでも
食糧に不足があったとしたら、恐らく大混乱が起こったであろうと思うのであります。しかし、
世界的
食糧の
危機は叫ばれております。
日本といえども、将来その心配がないとは保証できません。昨年は幸いにして豊作に恵まれ、予約限度超過米が生じたのでありますが、
政府はその余剰米買い上げを勇断をもって処理されたので、農業者はようやく安心をいたしました。今後も、多少の余剰米があってもこれを備蓄に回して、農業者の
食糧増産の意欲を阻害するような処置は絶対に避けなければならないと思うのであります。(
拍手)
次に、
国民食糧の安定確保を図るためには、何よりも
わが国農業の体質を強化して、国内自給力の
向上を図ることが基本であります。
それには第一に、農業生産力の前提である農業用地の開発、圃場整備等、農業生産
基盤の整備を推進することが必要であります。
第二に、農産物の生産対策を総合的に進め、すなわち、
わが国の農業の基本的
食糧である米については、その
需要に応じた生産を確保するとともに、一方、学校給食の
拡大等、米の消費
拡大を進め、他方、水田の裏作奨励等を行い、麦、大豆その他飼料作物の積極的生産の
拡大を図ることが重要であると思うのであります。
第三には、意欲ある農業者が十分にその能力を発揮し、生きがいをもって生産活動に従事できるようにするため、いわゆる担い手対策を考えることが不可欠の要件であります。自給力の
向上も、これを担う人を育成確保することなしでは絵にかいたもちとなってしまうのであります。
次に、昨年における米価の決定に当たりまして食管の逆さやの不
拡大を
目標とし、
食糧管理費の増高を抑制し、これを農業
基盤整備の推進等、
食糧の増産に向け得るようにされたことは、まことによき決断であり、今後ともこのような
方針で積極的な生産の展開を図られんことを望むものであります。米の生産者の
努力に報いるため、本年も生産者米価の決定に当たっては、生産費及び所得補償方式を堅持すべきであると思うのでありますが、いかがでございますか。
今日農業者はようやく都市勤労者の所得と均衡がとれるようになったと言われておりますが、それは農外所得に負うところが多かったからであります。昨年来の
不況のために農業者の出かせぎ等ができなくなり、農外所得が減退を余儀なくされておると思われるのでありますが、これに対してどのようにお考えでありますか、お伺いしたいのであります。
次に、水産物の問題であります。水産物は
わが国の動物性たん白の過半を供給する重要な地位を占めております。しかし、
わが国の漁業の
現状を見ますると、燃料油等の資材価格の高騰を初め、
国際的な漁場制約の強まり等によって多くの難問を抱えておるのであります。新
年度予算においても相当な考慮を払われているようでありますが、漁業経営の再建整備と沿岸漁場の計画的整備を図って水産
資源の確保を図る必要があると考えられるのでありますが、
政府の御所見を伺いたいと思います。
次に、
地方財政の
危機対策についてお尋ねをいたします。
地方財政は赤字再建団体への転落傾向などにも見られるとおり、国に劣らず極度な
財政難にあえいでおります。五十一
年度の
地方財源の不足は三兆六千億と言われておりますが、
政府はこれに対していかなる対策を講じようとされましたか。そして、その原因として挙げられることは、当面の
不況による国税三税を初めとする交付税と
地方税収入の落ち込み等によるものであると思われるのでありますが、その背後には、国と
地方の行
財政、税源の再配分といった基本的な問題と、同時にまた、これまでの高度
成長時代の税収の大幅自然増収になれて、
地方自治体の
財政運営が放漫に流れがちであったという
地方財政自体の体質の問題があることも否めない事実であります。したがって、このことに対処するに当たっては、これまでの
財政的に恵まれていた
時代に培われた
財政放漫の体質改善を図らなければ
危機は乗り越えられないと思うのであります。
地方行
財政の改革については、すでに
財政制度審議会を初め
地方制度調査会等から幾多の提言並びに要請がなされておるのであります。国及び
地方におかれても、相携えて長期的な視野に立つ
地方財政の体質改善を速やかに打ち出す必要があると考えるのでありますが、
政府の御所見を承りたいのでございます。
次に、外交上の重要問題について二、三お伺いをいたします。
日米の
友好関係は
日本外交の
基礎であります。昨年は天皇、皇后両陛下が初めて御訪米になり、親善と
友好の実を上げられましたことはまことに感激にたえぬところであります。(
拍手)日米安保体制は、単に
わが国の防衛のみならず、
世界、特に
アジアにおける平和
維持の
基礎であります。絶対にこれを堅持しなければならないと思うのでありますが、
総理の御
決意を承りたいのであります。
次に、北方領土問題についてお尋ねをいたします。
アジアの安定のためには日米、日中と並んで日ソ間の
友好関係が必要であることは申すまでもございません。このたびソ連外相の来日を見、第四回の日ソ定期会談が行われたのでありますが、報ずるところによりますると、北方領土問題はソ連の厚い壁にさえぎられ何らの進展を見られなかったということでありますが、全
国民とともにはなはだ遺憾にたえぬところであります。国後、択捉、歯舞、色丹の北方領土は
わが国固有の領土であります。(
拍手)吉田元
総理はサンフランシスコの講和
会議においてこの点を強く力説されたのであります。小笠原、沖繩の諸島が
日本に返還された今日、北方領土のみが依然としてソ連の手にあることは許されざるところであります。(
拍手)今後さらに全
国民の力を結集し、強くソ連に迫り、一日も早く
日本に返還されんことを望むものであります。(
拍手)一部に、歯舞、色丹の返還を実現をしてソ連との平和条約を締結したらとの意見を聞くのでありますが、かくのごとき安易な処置をとり、悔いを千載に残すことがあってはならないのでありまして、四島一括返還は絶対に譲ることなく、あくまでその貫徹を図っていただくことを強く望むものであります。
次に、
日中平和友好条約についてお尋ねをいたします。
それについても、終始
日本に好意を持ち、日中平和
友好関係に
努力を払われました中国の周恩来
首相が
日中平和友好条約の締結を見ないうちに御逝去されたことはまことに遺憾であり、心から御冥福を祈るものであります。
日中平和友好条約の交渉は、覇権問題について日中
両国の間に
見解が分かれ、そのままになっておりますが、その後どのように相互理解がなされておるのでありましょうか。覇権の条項は、
さきに田中前
総理と周恩来
首相との間に調印された
日中共同声明の中に明記されておるところの問題であります。交渉以来相当の時間も経過しておるのでありますので、
両国の親善
友好関係を
確立するためにも、速やかに交渉の促進を図り条約の締結に決着をつけるべきときと思うのでありますが、
総理の御
決意を承りたいのであります。
最後に、スト権ストについてお尋ねをいたします。
三木総理は、昨年末のスト権ストに対して
政府声明を出し、三公社五現業に対するスト権に次のような
見解を明らかにされました。
すなわち、第一に、法を守ることがスト権
問題解決の必須の前提である。第二に、専門委員懇談会の意見書の趣旨はこれを尊重し、その
内容の具体化を検討する。第三に、三公社五現業の経営のあり方、また料金法定制度の
改正を含む当事者能力の強化の方途を検討する。第四に、現行の公労法初め
関係法規を全般的に検討し、必要なる
改正を行う。
以上をできるだけ早急に結論をまとめ、行政上の改革また法案の国会提案を行うと明らかにされたのであります。
政府はいかなる手順に従ってこれを進められようとしておりますか、
総理の御所見を伺いたいのであります。
もちろん、
憲法第二十八条には、すべての労働者は団結権と団体交渉権を保障されるとあります。すなわち、すべての労働者は労働組合を結成する権利と団体交渉をする権利を持っております。これは
昭和二十年占領
政策の第一に、GHQの指令により労働組合法が制定され獲得したところであります。それが何ゆえに公務員及び現在の三公社五現業はスト権が奪われたかということであります。それは言うまでもなく、二十二年二月一日、いわゆる二・一ゼネスト、またその翌年の三月闘争におけるゼネストがあらゆる
国家の機能を麻痺させ、
国民の
生活に重大なる支障を与えようとしたからであります。スト権は労働基本権の一つではありますが、したがって尊重せらるべきものではありまするけれども、必ずしもスト権があらゆるものに優先する権利ではありません。すなわち、その業務の停止が
国民生活や公共の福祉に重大なる影響を及ぼす場合は、スト権はおのずから制約を受けざるを得ないのであります。
元来、スト権は団体交渉の一つであって、労働者の労働条件の確保につき他にこれにかわる代償があれば、その国々の事情により国内法によって規定しておるところであります。公務員においては人事院勧告というものがありまして、民間の給与水準を考慮し適当なる勧告を行っております。
政府はまたその勧告を完全
実施しておるのであります。三公社五現業においても公労法において公共
企業体等労働委員会を設け、労働者側を代表する委員と使用者側を代表する委員と公益委員の二者構成によって当事者間の団体交渉の結果、公労委に調停が持ち込まれると双方の意見を聴取し、調停で
解決しない場合にはさらに仲裁裁定に持ち込まれて、その裁定については
政府側も労働者側も拘束を受けることになっております。これによって平和
解決が行われ得るにもかかわらず、
国鉄等においては調停中にストを行い、あるいは順法闘争と称して
国民に多大なる迷惑をかけておるのが今日までの実情であります。
スト権禁止は
憲法違反と言う人がおりますが、
憲法第十二条には、この
憲法が
国民に保障する権利は、
国民の不断の
努力によって、これを保持しなければならないし、これを濫用してはならないのであって、常に公共の福祉のためにこれを利用する責任を負うと規定しております。また、特に公務員については、
憲法第十五条で「すべて公務員は、全體の奉仕者であって、一部の奉仕者ではない。」と規定しております。したがって、スト権はそれ自体尊重されるべきところではありますが、スト権にかわる公務員についての人事院制度、三公社五現業の職員については公共
企業体等労働委員会の調停及び仲裁制度を初めとする適切なる代償措置があって、その目的とする労働条件の
維持改善が確保されておるのでありまするから、公共の利益の見地から争議行為を禁止または制限されることは許されるべきものであります。最高裁判所の判決も、
憲法第二十八条の保障する権利であっても、何ら制約を許さないという絶対的なものではなく、
国民生活全体の利益の保障という見地からの制約は当然含まれておると言っております。以上の諸点は専門懇の報告書に詳細指摘されておるところでありまするから、
政府はこれを尊重し、慎重に善処されんことを望むものであります。
政府はこの声明に従い、いかなる手順をもって進められようとしておられますか、そのお考えを承りたいのであります。
なお、
総理は昨日の
成田委員長の
質問に対し、悪法もまた法であるから、これを遵守すべきであって、法律を守らないでいて処分はするななどと言っては、それでは法治
国家としての法秩序は保てないと申されました。そのとおりであります。しかし、
総理は悪法とお考えになっておるのでありましょうか。
日本の公務員法による人事院勧告の制度及び公労法における公労委の調停及び仲裁制度はスト権にかわる最も合理的な、平和的な労使
関係法であると信ずるのでありますが、
総理の御
見解を承りたいのであります。
以上をもちまして私の代表
質問を終わります。(
拍手)
〔
国務大臣三木武夫君登壇、
拍手〕