○
国務大臣(
福田赳夫君) 大変常
日ごろお世話に相なりましてありがとうございます。今国会におきましても御
指導のほどを
お願い申し上げます。
いま私ども考えまして
最大の
政治問題——社会、
経済、
政治を通じましての
最大問題は、これは
物価鎮静、これを踏まえまして、これを損なわないでいかにして
不況から脱出するか、この点にあると思うんです。それでことしは非常に重大な年であります。つまり、あの
石油ショックがありましてから
わが国の
経済は大変な
打撃を受けました。そこでその
打撃から抜け出す、これに大体
調整期間三年を要する。普通でありまするとこれはまあ一年、一年半の
不況、それで次は三年前後の好況、また一年、一年半の
不況、その
景気を循環してまいりましたが、今度はそうはいかぬ、三年の
調整期間を要すると、こういうふうに考えたわけなんです。その三年目にことしは当たる。一年目は四十九
年度でございますが、これはまあ何と言っても
火の手、燃え上がるような
インフレを打ち消さなけりゃいかぬ。この作業は私は順調にいったと思うんです。そこで本五十
年度、第二年目に入った。この五十
年度の
課題は
インフレの
火の手は消えましたけれども、なおくすぶりがある。このくすぶりの根を絶たなきゃならぬという問題と、それから同時に、
火の手は消えたんだから、
経済活動、これを再び活発にしなきゃならぬと、この両面の
課題を抱えておったと、こういうふうに思います。
そこで、
物価の
推移はどうであったかということを顧みてみますと、さらに一層
鎮静化の
傾向を進めたと思います。暮れ、十二月のごときは、
消費者物価で
全国値が一
年間七・六%の
上昇というような
鎮静の
勢いを示したわけです。それから
卸売物価は一%、ほとんど横ばいというような
年間の動きであったわけであります。ところが不幸にして一月、二月
——干ばつ月、そこで
野菜類の
上昇が非常に顕著でございました。そこで今日になりますると、二月の水準で申し上げますと、東京区部だけしかまだわかっておりませんけれども、一〇・七%の
上昇という
消費者物価、これを
全国値に換算いたしますと、大体九・五ぐらいになろうかと思うんですが、そこまでまた再び
上昇ということになってまいっておるわけであります。
政府におきましては、
政策目標といたしまして、
年度末が一けた、九・九%以内ということを言っておったんでありまするけれども、そういう
推移を見てみますると、三月
段階はこれは
かなりの
努力をしないと、この一けたという
政策目標、これが
実現はできないんですが、私どもいま
最大の
努力をいたしております。何とかしてこれを
実現をしなきゃならぬし、また
実現はできそうだ、こういうふうには考えておりますが、いま農林省を
中心に、
野菜価格大作戦なんというような
状態で
最善を尽くして
国民の
期待にこたえたい。
他方、
経済活動は一体どういう
状態であったろうかと言いますると、これはちょうど去年のいまごろ、
皆さんに五十
年度はどういうふうな
経済かということにつきまして見解を申し上げたんです。当初は四・六%
実質成長というふうに申し上げましたが、意外に
設備投資が不振であるということと、
輸出が
海外経済総落ち込みという
影響を受けましてふるわない、その二つの
要素から、予想したような四・三%
成長は
実現できない。御
承知のとおり、昨年秋の
補正予算段階で、また本
年度の
予算編成をするという
段階でその
目標を改定いたしました。二・六%
実質成長、こういうふうにいたしましたが、どうやらこの
目標は達成できそうな
傾向であります。ことに、暮れから一月、二月と
経済諸指標が
かなり改善をされてきておりますが、この分でいきますと、五十
年度の
実質二・六%
成長はおおむね達成できる、こういうふうに考えております。
さて、五十一
年度は、そういう
物価、
景気の
情勢を受けまして、どういう
推移を示すかと申しますと、
物価につきましては、これは
公共料金の問題があります。この
公共料金の問題が、五十
年度では一けた
目標の
消費者物価の中で、二・七%ぐらいの
引き上げ要素になるわけですが、これを二%
強程度のものに抑えていきたい、こういうふうに考えておるのであります。そういう
公共料金政策を
中心といたしまして、その他
各般の
努力をいたしまして、五十一
年度における
年間上昇率を大体八%
程度にしたい。本当はもっとずっと下げていきたいのでございまするけれども、
公共料金問題というような問題が当面ありますので、そういうことにならざるを得ない、かように考えております。
他方、
景気活動の方はどうかといいますと、大変これは明るいように思うんです。つまり、五十
年度の
景気がはかばかしく動かなかったということは、何といっても
世界経済の
影響でありましたが、五十一
年度を展望してみますると、
先進諸国ほとんど総沈みの
状態であった
世界経済が、今度は逆に総
浮揚という
状態に移ろうといたしておるのであります。そういう
情勢から見ますると、
わが国は
輸出に
かなりの
期待ができる、こういうふうに見ておるのであります。
予算案と同時に
決定いたしました
政府経済見通しにおきましては、
実質七%という数値を
輸出に見ておるわけでございまするけれども、七%
増加というこの数字は、私は確実に
実現できるであろう、こういうふうに見ております。
それから、それでも少し足りませんと考えまして、財政にまた
景気浮揚の任務を持たせるということで、四十九
年度、五十
年度におきましては、
公共投資を相当極端に抑えたのでございますけれども、五十一
年度におきましては
かなりこれを増額をする、そして、
公共投資だけについて申し上げますと、
実質五十
年度に比べまして八%
程度の
増加になるようにいたしておるのであります。
その他
個人消費の動向はどうかという問題がありまするが、これは
沈滞沈滞と
皆さんに言われますがね、そう
沈滞という
状態ではないと思います。
実質におきまして五十
年度二・六%
成長だと、こういう中におきまして
個人消費は五%、
実質五%の
伸びを示しておる。この
勢いは私は五十一
年度においても続くと、こういうふうに見るのであります。ただ
設備投資、これだけは
高度成長下において
設備の拡大が非常に旺盛に行われたわけであります。そこへもっていって
需要の方が急速に縮減をしたと、こういうような
状態が続きました結果、まだ
設備能力には
かなりの余裕がある、そういう
状態でありますので、
設備投資につきましては
実質値で言いますと二%強、その
程度しか
期待できないんじゃないか、そういうふうに考えます。それらを総合いたしますと、まあ大体五%ないし六%ということを考えておるんですが、その
程度のものは私は
実現をできると、こういうふうに存じます。
まあ何といたしましても、最初申し上げましたようにことしは
調整期間の終わりの年にいたしたいと、こういうふうに考えておりますので、
インフレもあるいはこの
不況もことしは大体これを片づける年にいたしたいという
考え方でこの
政策運営に当たってまいりたいという考えでございます。
そこで、当面の問題は、まあそういう
状態でございますが、しかし今日われわれはもっと基本的な問題にいま当面をしていると思うんです。つまり
世界のこの
情勢というものが、
資源無限時代から
資源有限時代へと大きな
転換を示している。またわれわれの
生活環境におきましても、まあ
経済の
成長よりも
環境を配慮しなければならないというような意識の変化もあります。あるいは
わが国の
国土、この狭い
国土でありますので、今日までのような速い
速度で一体そういう
産業施設、これを受け入れる
土地条件というものが果たしてあるかというような問題もあります。いろいろ考えますと、まあ長期的にわたって
わが国のこの
経済政策の
姿勢を
転換しなけりゃならぬ年であると、そういうふうに考えておるのであります。そういう
考え方から、
政府におきましては五十一
年度を初
年度とする五十年代前期五カ年
計画を策定しつつあるのであります。その
概案をすでに暮れには発表しておりますけれども、さらにこれを煮詰めまして、まあ春ごろにはこれを新
長期計画として
決定をいたしたいというふうに考えておりますが、この新
長期計画を貫く
考え方というものは
経済の
成長速度が鈍ってくる、鈍ってきますけれども、いままでは
成長中心の
経済、そういう
姿勢でありましたが、これを
生活中心の適正な
成長という方向へ誘導したい、こういうふうに考えておる次第でございます。当面の問題あるいは長期的、中期的に考えましても、非常に大事な年になっておりますので、まあそういうむずかしい問題であるだけにわれわれも
最善の
努力をいたしたいと思います。何とぞひとつ、御教授、御
鞭撻のほどを心から
お願いを申し上げます。
ありがとうございました。