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参考人(
関本和幸君) ただいま御紹介いただきました
関本和幸でございます。日ごろ
税理士といたしまして
納税者の
方々に身辺に接触をしておりまして、
税務代理、
税務書類の作成、あるいは
税務相談等を行っておる者でございまして、そのように
実務の面から、本日は若干の私見を交えまして
参考になることを申し上げたいと考えております。
最近の
社会経済情勢を大観いたしますと、相次いで実施されました総
需要抑制政策により、
物価の狂乱的な
高騰現象はようやく鎮静を見たような
感じがいたします。その反面におきまして
個人所得の伸び悩みがあったというふうに見ております。また、
企業経営の悪化は
国民生活並びに
経済界に対しまして深刻な
影響を及ぼすこととなりまして、その結果、
企業の倒産の続出、雇用不安の
拡大等から、特に
中小企業におきましては、まだまだ
景気の沈滞と
不況は長期化する傾向が見受けられるようでございます。また、このような
経済社会の
情勢は当然のことながら国及び
地方公共団体の
租税改入に反映いたしまして、
相当額の
税収の落ち込みがあるのではないかというふうに考えております。したがいまして、
国家及び
地方財政を
相当圧迫しているというふうに考えられるわけでございます。
政府は、この慢性化している
不況を打開して
景気の好転を図るため、
財政あるいは
金融の両面からも抜本的な対策を強化されておりますが、
税制の面におきましても
租税の
公平原則をゆがめないことを第一義といたしまして、
物価の
上昇を防止しつつ
不況に対処する適切な
改正が行われることが目下の急務であるというふうに考えております。
そこで、当面の
税制改正に当たりまして、私、
三つの点について申し上げたいと思います。第一は、
不況の
影響が著しい
個人並びに
中小企業に対する
不況打開のための
税制措置、二番目といたしまして
不公平税制に対する
見直しの
措置、三番目といたしまして
税収に
影響の少ない
現行税制の
簡素合理化措置、この
三つについて
お話を申し上げたいと思いますが、時間の
関係もあると思いますので、一の方から申し上げます。なお、一の
部分につきましては
相当細かなことを
お話しするようになりまして大変恐縮でございますが、時間の許す限り
お話を申し上げたいと思います。
まず、一の
不況の
影響が著しい
個人並びに
中小企業に対する
不況打開のための
税制措置といたしまして、
個人のためには、一としまして、
現行の
税制は
所得控除と
税額控除というふうに二段構えになっておりますが、この
控除方式はややもすると
高額所得者優遇となるおそれがありますので、
控除につきましては
税額控除方式に統一していただきたいというふうに考えるわけでございます。そこで、もし
税額控除にすることが不可能な場合につきましては、まず
配偶者控除、
扶養控除の対象となる者の
所得限度を引き上げていただきたい。
二番目といたしまして、
控除の中に
老年者控除という
言葉がございます。それから
老人扶養親族という
言葉がございますが、
税法の中に
老人と
老年とどのように区別するのか、ちょっとこの辺が
実務家としまして非常に疑問に思うわけでございまして、
老年者控除の場合は、これは御本人ですが、六十五歳という
年齢制限がございます。
老人扶養親族ということになりますと、七十歳以上ということになりまして、どうも
老年と
老人がどのように違うのか、この辺が明確でございません。私どもといたしましては、この
適用年齢を満六十五歳にするか七十歳にするかは別といたしまして、統一していただきたいというふうに考えております。また、このほか、
給与所得におきまして
老年者年金特別控除という
控除がございますが、この範囲も拡大していただきたいというふうに考えております。
それから次に、
住宅取得控除でございますが、これを廃止しまして、
住宅を取得したための
減価償却所得控除、こういうものに直していただいたらいいのではないかというふうに考えております。
次に、非営業の保証による
債務弁済、あるいは災害による不慮の事故等、
現行税制では救済されない不測の損失に対する雑損
控除を認めていただきたいということでございます。雑損
控除はございますが、
現行の
税法では、災害、盗難、横領と、このように雑損
控除の対象となる災害が決められておりますが、非営業の保証、つまり、たとえば親戚の者に保証してやったと。ところがその親戚の者が払えないために本人にその債務が来たと、このような場合、
相当な額がやはり所得において
負担されるわけでございますから、非営業の保証による
債務弁済等につきましても雑損
控除の対象にしていただきたいということを考えておるわけでございます。
それから次に、居住用財産の譲渡並びに相続それから贈与の
関係でございますが、
現行では居住用財産の譲渡所得に対する特別
控除、これは三千万円でございますが、この三千万円の
控除の除外としまして、親族等についてはだめだというふうな
規定がございますが、この親族等の等を取っていただきたいと思います。と申しますと、親族の定義は、配偶者、六親等の血族、三親等の姻族ということになっておりますが、この等があるために、会社から月給をもらっている従業員もだめだというふうなことで、
相当親族等の等が広範囲にわたっておりますので、この際、ぜひこのように限定するならば親族に限定していただきたいというふうに考えておるわけでございます。
それから居住用の財産の相続については、特別
控除または非
課税限度の範囲をぜひ拡大していただきたいと思います。簡単に言いますと、親から土地や建物をもらってそこに自分が住んでいる場合、ほかに財産がないといたしますと、その土地が
相当評価が高いようなところにつきましては、せっかく相続しても、その相続した自分が住んでいるところを処分しなければ
税金が納められないというような現状がございますので、ぜひこの点につきましては格段の御配慮をいただきたいというふうに考えております。
それから次に、夫婦間の居住用不動産の贈与の特例でございますが、夫婦が一緒になりまして二十年間という限定がついておりますが、この二十年がいいかどうか、私どもはもう少し短縮して仮に十五年
程度にしていただいた方がいいのではないかというふうに考えております。さらに、この場合の非
課税でございますが、一千万円の額をさらにふやしていただきたい。少なくとも一千五百万円
程度は、この居住用財産の贈与の特例を引き上げていただきたいというふうに考えております。
ただいまのは
個人に対する
措置でございますが、次に中小会社に対する
措置についてお願いを申し上げたいと思います。
まず、一番目が
同族会社についてでございますが、これにつきましては、
法人会その他各種団体からも陳情等があるかと思いますが、まず留保
課税は廃止していただいて、さらに
同族会社の行為
計算否認という
規定がございますが、これらは廃止していただきたいというふうに考えております。
それから税率についてでございますが、軽
減税率適用の所得の範囲を拡大していただくとともに、配当軽
減税率の適用範囲も同様に拡大していただきたいというふうに考えております。
それから引当金等についてでございますが、貸倒引当金というのがございます。この繰り入れ限度の割り増しの特例につきましては、三月三十一日延長が認められておりますが、問題になりますのは、割り増し率を引き上げていただきたいということでございます。現在、中小会社につきましては、卸小売業につきましては貸倒引当金の率は千分の二十でございました。一億円以下の会社、つまり中小会社につきましては、千分の二十にさらに二割増し、百分の百二十という率を適用するわけでございまして、実質的には千分の二十二になるわけでございます。しかしながら、この中小会社と同様な形で営業しております
個人営業について見ますと、
個人の場合は、この貸し倒れ率は千分の五十五でございまして、ただ組織が会社であるかあるいは
個人であるかという違いで、片方は千分の五十五、片方は千分の二十二ということでは、余りにも不公平ではないかというふうに考えております。これは本法を直さないとすれば
措置法で手当てをしていただくわけでございますが、百分の百二十という割り増し率は
個人に合わすならば百分の二百七十五という率を適用していただかなくては
個人と会社は一致しないというふうに考えております。
それから次に、退職給与引当金というものがございますが、これにつきましてはむずかしいいろいろな
計算がございますが、累積限度額の制限を廃止していただいて、要支給額と言いまして期末に従業員が全員やめた場合幾らの退職金を出さなければいけないかというそういう
計算がございますが、それに一本にしていただいた方がすっきりするのではないかというふうに考えております。
それからこの
計算でございますが、使用人兼務役員というのがございます。具体的に言いますと、取締役営業部長とか取締役経理部長という職責の方がありますが、そのように役員と使用人を兼ねている方については、退職給与引当金は
計算の中に入れないことになっておりますが、これにつきましては使用人兼務役員の場合は、その使用人
部分についてはこの
計算をしてもいいのではないかというふうに考えております。
それから次に、中小
法人の役員賞与でございます。なかなかこの
規定もむずかしいものがございまして、中小
法人の役員の賞与についてはその実態から見て兼務役員
程度までは全額経費として損金算入を認めていただいていいのではないかというふうに考えております。具体的に申し上げますと、例が適当でないかもしれませんが、八百屋さん、魚屋さんという、そのような業種の方でも有限会社にしている例が間々あるわけでございまして、御主人が社長で奥さんが専務というふうな
方たち、まあ前掛け社長にエプロン専務だというふうなことをよく言っておりますが、その奥さんの場合、役員であってまたその会社の株主であります。そのために
同族会社でありまして、その奥さんに対して賞与を出した場合でも、これは兼務役員であるから、
同族会社であるから、その奥さんに対する賞与は経費としないという
規定でございます。しかしながら、実際的にそのような内情を見ますと、その奥さんという方は他の従業員以上に朝から晩まで人の二倍ぐらい働いておられます。当然よけいに賞与もいただかなければいけないわけですが、もらった賞与は経費にならないということでは余りにも不合理ではないかというふうな考えがいたすわけでございます。
それから最後に、
地方税についてでございますが、いろいろと申し上げたい点もございますが、
一つだけ申し上げますと、
法人事業税の申告に対しまして欠損金の繰り戻しによる還付請求を認めていただきたい。これは
相当な
税制の
改正になると思います。御案内のように、最近の
不況下にありまして
国税に対しましては繰り戻しの請求という件数並びに税額は非常に大きなものになっていると思います。このような
制度、つまり前年度が黒字で今年が赤字という場合、その赤字の所得に見合う
税金を戻してもらうという
制度が
国税にはございますが、
地方税にはそういう
制度がございません。実質的にこの
制度がありますと、この
国税を還付していただきまして、それを資金繰りに充てている例が非常に多うございまして、このような
制度の
趣旨から見ますと、
地方税も当然にこの
制度を採用していただくのが至当ではないかというふうに考えております。
まだ申し上げたい点がございますが、大きな項目の二番目の
不公平税制に対する
見直しでございます。時間がないようでございますので項目だけ申し上げます。ほとんど
措置法に関するものでございまして、今年の
措置法についてはもうすでに御
審議が終わっておりますので、さらに来年以降について御
検討いただきたいというふうに考えております。
一番目は、これはしばしば問題になります社会保険診療報酬に対する
課税についてでございますが、私どもは全面的に廃止をしていただきたいというふうに考えております。
次に、交際費
課税についてでございますが、これについてはこの強化
措置が相対的に中小
法人に過重とならないように交際費
課税は適正に行っていただきたいというふうに考えております。
それから次に、利子・配当所得に対する問題でございますが、これにつきましては、やはり本来の総合
課税方式に移行すべきであろうというふうに考えております。
それから次に、有価証券の譲渡所得についてでございますが、新聞紙上によりますと、衆議院においても何か論議されているようでございますが、
現行の非
課税措置、つまり売買回数五十回以上でかつ売買数量二十万株以上という制限がございますが、これらについてはもっと強化していただいた方がいいのではないかというふうに考えております。
次に、農地に対する固定
資産税でございますが、これもいろいろと問題点があるかと思いますが、
負担公平の見地から評価がえを
検討していただきたいというふうに考えております。
以上、大きく申し上げますと、
不況の
影響が著しい
個人並びに
中小企業に対する
税制措置、それから
不公平税制に対する
見直しと二点だけを申し上げまして、
先生方の
審議の御
参考にさしていただきたいと思います。ありがとうございました。