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参考人(
内野光男君)
内野でございます。私は行政的な面から申し述べさせていただきたいと思います。
順序といたしまして都の
実態、
東京都でございますので都の
実態、それから都が行っております
施策、
条例等の
施策、それから
問題点、それに伴う実際上の
問題点につきまして申し述べさせていただきたいと存じます。
まず、
振動公害の都の
実態でございますが、都の
実態と申しますと、まず
苦情がどの
程度出ているかというのが問題になるわけでございますが、
振動につきましては五十年度九百四十三件が出てございます。その内訳を申しますと、
工場関係で五百三件、
建設工事関係で二百六十三件、
自動車の
交通関係で五十二件、その他で百二十五件ということでございます。で、この全体の九百四十三件を
東京都におけるところの全体の
苦情件数、
大気汚染、
水質汚濁から考えますと、大体一割弱、全体で申しますと一万二千件
程度でございますので、大体一割弱ということが言えるわけでございます。
次に、都の行ってきた
施策等につきまして申し述べたいと思います。
振動規制につきましては、まあ典型七
公害に掲げられておりましたが、法律上についてもまだ未整備の
状況にあったわけでございますが、
東京のような大都市におきましては非常に深刻な問題となっておりまして、
苦情等につきましても相当出てまいったということからいたしまして、
工場につきましては
昭和三十八年
指導基準を設定いたしまして
行政指導に当たってまいりました。
昭和四十七年度にこの
基準を
条例に取り入れまして、
条例によるところの
規制に踏み切ることといたしたわけでございます。で、
建設工事につきましては、昨年の四月から
指導要綱を設けまして、
指導基準によって
行政指導を行ってまいったわけでございます。
この概要につきまして簡単に申し上げたいと思います。まず、
工場につきましては、
東京都
公害防止条例の中で四十七年の四月一日から実施してございます。
基準は、
工場につきましては、第一種
区域、第二種
区域という
地域を二つに分けまして、第一
区域につきましては、一種住専、二種住専、
住居地域、無指定
地域、
住居を中心にした
地域を第一種
区域、第二種
区域につきましては、近隣商業、商業、準工業、工業と、まあ
住居以外の
地域をもって第二種
区域といたしたわけでございます。
振動の大きさの
基準でございますが、都の
条例によりますと、鉛直方向では昼間が第一種
区域につきましては六十五デシベル、
夜間が六十デシベル、第二種
区域につきましては昼間が七十デシベル、
夜間が六十五デシベルというような鉛直方向の
規制基準を設けております。これにさらに加えまして水平方向の
基準を設けてございます。水平方向につきましては、第一種
区域につきましては昼間が七十五デシベル、
夜間が七十デシベル、第二種
区域につきましては昼間が八十デシベル、
夜間が七十五デシベルと、それぞれ鉛直方向の
基準に対しまして十デシベル高い水準をもって水平方向の
基準といたしておるわけでございます。この
基準につきまして、測定
単位につきましてはデシベルという方向でございますが、大きさの方向につきまして、鉛直と水平という二つの方向をとったことについて法案とちょっと違っているところがあるかと思います。
区域につきましては、二
区域でございますので、提案されている法案とかなり類似性がある。それから昼間と
夜間の時間でございますが、昼間は午前八時から午後七時、それから
夜間につきましては午後七時から午前八時というようなことにしてございます。第二種
区域につきましての昼間と
夜間の時間でございますが、昼間が午前八時から午後八時まで、
夜間が午後八時から午前八時までというふうなことでしております。
対象の
工場につきましては、
工場全体につきまして一つの
単位として考えておるわけでございます。法案でいきますと、特定の
機械を設置する
工場ということになってございますが、一応
条例によるところの
工場につきましては、定格出力が二・二キロ以上の原動機を有する
工場と、そういった
工場全体についての
単位をもって考えておるわけでございます。この
基準につきましては、
昭和四十七年四月一日から施行してございますが、既設の
工場につきましては四十八年の四月一日、一年の
猶予期間を設けまして適用いたしております。それから鍛造
工場につきましては、三年の
猶予期間を置きまして、昨年の四月一日から適用いたしているわけであります。その他、届け出制度につきましては
工場については認可制度をとっておりますし、指定
地域、要するに
区域等につきましては都内全域ということで指定しております。測定地点等につきましては提案されている法案と同じような敷地境界線ということで実施しております。
建設工事につきましては、昨年の四月に
指導要綱という形で
行政指導の一つの
基準というものをつくりまして指導してきたわけでございますが、このつくった理由と申しますのは、
昭和四十四年八十一件ぐらいの
建設工事に対する
苦情があったわけでございますが、四十八年、四十九年に至りまして三百件から五百件ぐらいの
苦情がふえてきたというような事情を
考慮いたしまして、一応
行政指導というようなよりどころをつくっていこうという
考え方に基づきまして、
指導基準をつくったわけでございます。この
基準につきましては、将来
条例化する方向を考えていたわけでございます。この内容に入りますと、
指導基準の
基準値につきましては、くい打ち機、くい抜き機等を使用する
作業、削岩機を使用する
作業、それからブルドーザー、パワーシャベル等を使用する
作業につきましては、境界線におけるところの鉛直方向で七十五デシベル、それから空気圧縮機を使用する
作業、
振動ローラー等及び転圧機を使用する
作業につきまして、あるいはコンクリートプラント等を設けて行う
作業につきましては六十五デシベル、鉄筋コンクリート等
建設物の破壊解体または鉄球を使用する破壊
作業につきましては七十五デシペル——七十五デシベルにつきましては法案にあるような数字ということでございます。
作業時間、
指導基準によります
作業時間、あるいは一日における
作業時間、同一場所におけるところの
作業時間、休日、日曜日の
作業等につきましては
騒音規制法によるところの
規制基準と同一にしてございます。特に
指導要綱によった大きな理由といたしまして、
建設工事に当たりまして七十五デシベルというのは実際上むずかしいという場合があるわけでございます。具体的に申しますと、コマンド等、あるいはくい打ち等の最後のくい打ち
作業等につきましては
技術的にも非常にむずかしい点がございます。そういった点を
考慮いしたまして、相当の
防止対策を講じても
基準が適用しないというような、行政上の指導をしてもできなかったという場合には、住民との話し合いにおいて
作業時間の変更等によって措置するというようなことを考えております。それからそのほかに
行政指導としていたしました大きな理由として、
建設工事等につきましては、
基準そのものよりは住民との対話ということが非常に大事じゃないかということからいたしまして、指導事項ということを設けまして、住民への
説明を十分やる。それから二番目に、
工場現場担当者を選任してもらう。要するに住民との話し合いに応ずるための、対話に応ずるための担当者ということを選任していただく。それから長期
作業については事前に十分に連絡してもらう。それからできるだけ、最大限、低
振動工法及び低
振動機械の採用をやっていただくということが一つの指導事項として決められているわけでございます。
次に、
振動規制に当たっての
問題点、こういった
東京都におきますところの
工場によるところの
条例による
振動規制、それから
建設工事の
指導要綱等につきましての
問題点を幾つか申し述べたいと思います。
まず、
工場振動でございますが、一番問題になりますのは鍛造
工場についての問題が非常に
対策がとりにくい、
防止対策が非常に困難であるということが実際面からも言えるわけでございます。先ほど申しましたように、
工場につきましては鍛造
工場につきまして三年間の
猶予期間を見たわけでございますが、なかなか
基準までに達するには非常にむずかしいということからして、一つには
対策として京浜六区への
工場の集団化ということも考えていたわけでございますが、一つの地方団体の
区域内におけるところのこういった集団化につきましても相当問題も出ているということでございます。この辺が鍛造
工場についての
対策としての問題でございますが、こういった
対策につきまして国においても広域行政の中で取り上げていただけるということが必要ではないかというようなことを
感じております。それから第二番目に、
中小企業の
工場に対する資金の調達、
振動防止設備の設置資金が
中小企業におきましてはなかなか調達できないというところに
対策の困難性があるわけでございます。
工場に限らず、
建設工事につきましてもそういうことが言えるわけでございます。都におきましても貸し付け制度等によりまして措置してはおりますが、国におかれましても積極的に強化されることをお願いしたいと思います。
それから
建設振動関係でございますが、
振動の大きさが七十五デシベル。
東京都の
指導基準につきましても同じでございますが、七十五デシベルというのは人の静穏な
生活という面から見ますとかなりむずかしい、完全なマスターできるような
基準ではないとは思います。しかしながら、これに対する無
振動工法
技術、こういったものの
開発が十分でないということから、一応都といたしましても要綱の中で七十五を採用したわけでございますが、この要綱によって
指導基準を行った一つの理由と申しますのは、
行政指導によって低
振動工法あるいは低
振動の
機械の
開発に積極的に取り組んでいただきたいということが一つの理由になっているわけでございます。したがいまして
技術開発について、低
振動工法の
技術開発について国の方でも積極的にひとつ取り組んでいただきたい。もちろん
東京都としても積極的に取り組まなくてはいけない問題でございます。それから二番目でございますが、低
振動工法を採用いたしますと相当経費がかさむわけでございます。
建設工事につきましては公共事業が非常に多いと、公共事業が大体百近くが公共事業になっているということからいたしまして、法律の適用に当たって低
振動工法の採用ということになりますと単価当たりの経費が非常に高くなるということからいたしまして、国等からの標準
建設費等の点につきまして十分な
配慮をしていただかなければできないということが言えようかと思います。第三番目でございますが、
指導基準によりますと、
東京都におけるところの
指導基準では、くい打ち機その他のもののほかに、法案にございますくい打ち機、くい抜き機等の使用をする
作業等のほかに、それ以上にブルドーザーとかそういったものについての
指導基準を設けておるわけでございますが、
対象範囲につきまして一応法律のほかにもこういったブルドーザー等に対する
苦情が相当あるわけでございますので、それらに対する
配慮もできるような措置に、地方団体においてそういった措置が十分とり得るような措置にしていただきたいと思います。それから四番目でございますが、
夜間の
作業、
道路等におけるところの
夜間の
作業が余儀なくされるという場合が多いわけでございますが、公共事業等において
夜間作業ということに限定される場合が非常に多いわけでございますが、これは
睡眠妨害というようなことから非常に
苦情が多いことでございます。特に深夜にわたる
作業につきましては問題が多うございます。そういった
意味からいたしまして、
夜間作業に対する
作業時間等の問題、変更等につきましてきめ細かな
行政指導に当たられるような措置にしていただければと思います。それから
規制基準の中に、一日四時間までの限度を設けまして、七十五デシベルを超えてもいいような
指導基準がございますが、これに対する都の
指導要綱の形といたしましては、どうしても、
幾ら努力してもこれ以上下がらないというような場合について適用したと、場合について
作業時間の変更等を考えていたというようなことからいたしまして、ただ四時間ならいいというようなことじゃなくて、
行政指導の面でどうしてもできないかどうか、最大限の努力をしてもできないかどうかというようなある
程度の行政的な条件をつけていただければというようなことでございます。
それから
道路振動に入りますと、現在までの
東京都で測定したデータによりますと、
道路の
振動は大体四十から六十二デシベル
程度でございます。都心よりは下回っておるわけでございますが、まあこういった事情にかかわらず五十年度中においては五十二件ばかりの
苦情が出ております。
規制基準設定の
基本的な
考え方としては、昼間においては静穏な
生活、夜においては
睡眠妨害ということが考えられるわけでございますが、この
基準そのものよりは、この
基準を担保するための実効ある一つの行政措置ということが大事ではないかと考えております。具体的に申しますと、
振動レベルが要請
基準を超えた場合に地方団体の長が
道路管理者に対して、
道路交通振動防止のための舗装、維持または修繕の措置をとるべきことを要請することになっています。しかし、その実施に当たっては
道路管理者の判断にゆだねられているという事情からいたしまして、
道路管理者に対しては、要請があったときは必ず実施していただくという規定を設けるとともに、それに要する財政的な措置が必要であると思います。
それからもう一点は、
振動の原因が
道路交通にある場合には、公安
委員会に対して
道路交通法上の措置がとられるべきことを要請することになっております。しかしながら、この実施は公安
委員会の判断にゆだねられているということからいたしまして、現在実施されている
騒音防止に係る
道路交通法上の措置が十分効果を上げていないというのが実情ではないかと思います。したがいまして、
道路交通法令を改正されまして要請があったときには必ずできるというような措置ができるような形にしておくことが大事でないか。
以上でございます。