○沓脱タケ子君 それね、そこでちょっと聞いてもらわぬとあかぬのやな。最後に要望をまとめてお願いいたしますから、
実情をちょっとしっかり握っていただきたいわけです。そこで、それでは
公害患者というのはどういう事態に置かれているかという点をやはり知っていただかないと、この問題の熱意あるいは
環境庁の姿勢というのは変わってこないんじゃないかというふうに思いますので、私は幾つかの実例を申し上げたいと思うのですが、きょうは将来を担う子供たち、特に
公害の
被害にさらされている子供たちの実態というのは一体どういう状態になっているのかという点に特に焦点を当てて
実情を知っていただきたいと思うわけです。
その一つは、たとえばこれはことしの三月の十二日に大正区でやはり
公害認定患者の子供を持つ母親が親子心中をしている、自殺をしている。昨年二回入院をして、ことしは救急車で数回入院を繰り返した。三月ですからね、三カ月足らずの間に数回入院を繰り返しておって、子供の苦しみを見るに見かねて親子心中をしたというふうな事件が起こっている。それからもっとこういう事件として扱われない事態というのが一体どのようになっているかということなんです。これを私は大阪の西淀川と此花区の患者の子供を持つ母親に七人の方々にお会いしてみた。まあ、こもごも訴えられるのには実は私も驚いた。その一、二の例を申し上げますと、八木さんという一級の患者さんなんです。高校一年生の男の子なんですが、この人はいまでも一級の患者ですから、かなり重症でセザンドールなどの吸引剤をもう常備薬のように使っている。この子供はいつごろから発作を起こしたかといいますと、
公害病になったかといいますと、小学校時代に起こって、小学校、中学校を経過してきてやっと高校一年の段階なんですね。で、小学校、中学校時代はどういう状況であったかというと、発作が毎日夜明けになったら起こる、そういう状況なものですから、体の成長も非常に悪くて、いま高校一年生ですけれども、身長が何と百五十センチです。高校一年生男子の標準体重で見ますと、これは文部省なんですがね、文部省の学校保健課の調べですが、百六十六・一センチ、ですから平約身長より十五センチ余り小さいですね。こういう状態になっている。ですから子供がどういう状況かといいますと、このごろでは毎日のように発作は従来のように起こらない。だけれども季節の変わり目になるとやはり発作は起こる。ですから、ずっと小学校、中学校発作ばかり起こっているから、体力はないし、学校は休みがちだから基礎学力がついていけない。そういうことで体力にひけ目を感じる、学力にひけ目を感じるということで、性格が全部内向的になって、外へ出て遊びたがらなくなる。交遊
関係をいやがる。で、仲のいい友人が公立高校等に入れるのに自分はできないから入れない。そういうことで劣等感を感じるというふうなことになって、非常に内向的になって困っている。それから高校の人たちというのは、大体中学校、高校の入学の人たちというのは大体同じような訴えです。
で、現在小学生というのはどんなんかといいますと、いま小学校三年のこれは久保原さんという方ですが、小学校三年の女の子なんです。この人は体重が二十一キロしかない。で、小学校三年の女の子の体重というのは標準体重幾らかと思って調べてみたら標準体重は二十五キロですね。小学校三年生ですからね、二十五キロですね。で、しかもこの人は病状は現在三級だそうです。ところが食欲はないし、根気がないし、勉強がしたいんだけれどもいけない、だからまあよく休むのでだんだんついていけなくなる。で、体力がないものだからもう年がら年じゅうかぜを引いた状態が続いている、こういう状態だと。小学生の女の子たちというのは大体同じような状態なんですね。
時間の
関係もありますから、あんまりたくさん申し上げられませんけれども、大体こういうことで共通しておりますのはどういうことか、その七人の人たちに全部聞いてみて、患者さんは大体一級から二級、三級、いろんな方がいる。ところが共通しているのは、体力がない、体が小さい、根気がない、で、基礎学力は非常におくれている。性格はもうそろって内向的になってしまって、交遊をいやがる。それで、これは特徴だと思いますけれども、においに大変敏感だというのが共通だということをお母さんたちは言ってました。で、そういう状況だから、家庭では大変
努力をして、何とかして子供の性格の内向性になってしまっているのを回復させようと思って、お母さんが朝六時からたたき起こして、自分もランニングシャツを着てランニングをしているというわけです。あるいはお父さんが少年野球チームをつくって日曜日ごとに
指導をするというふうなことをして、子供を何とかしてみんなと一緒に体力も増進をさせ、何とかして回復をさせたいという
努力をしているという状況だということを言っておった。で、そこで一番悩みになっておるのは、大体高等学校入学の段階になってほぼ発作が激減をしてきて、少し体力が回復しかけてきて、いよいよ高校入試の段階ということになりますと、体力がない、学力は落ちてしまっているということで、私立のうんと入りやすいと言われているペースの高校にさえ入れない、こういう人たちがこの中に二人おります。
で、まあこういう状況で親の悩みというのは一体何かといいますと、まあわずかの手当どころの騒ぎではない。手当を上げてもらいたいということをいろいろいままでは一緒に運動もしてきたということを言ってました。しかし、この子供たちの将来が一体どうなるだろうか、まさにこの子供にとっては取り返しのつかない
被害を受けてしまっておると、この子の一生は一体どうなるだろうかと思うと、この後遺症ですね、子供たちの
公害によって起こった子供の一生における後遺症は一体どうなるだろうか、これが一番頭の痛い問題だということをそろってそのお母さんたちは言っております。で、その中でも私は大変大事だなと思ったのは、ところが、この人たちが西淀川ではこれは
環境庁のいわゆる認定
事業にならなかったのでお金はもらってないそうですけれども、自主的に医師会だとか地域の医療機関だとか学校の先生なんかの御
協力でサマーキャンプに一週間行ったんだそうです、八十何人か。そのときに、行くときには子供たちはみんなあんまり喜ばなかった、何となくおっくうがって行った。ところが、帰ってきたら全然変わっていたと言うんですね、親が。非常に明るくなっていたし、食欲が出てきたという子供たちが何人かいてる。そして来年もまた連れていってほしいという意見というのが非常に多い。こういう点から考えて本当にこの保健福祉
事業に効果的なそういったサマーキャンプあるいはレクリエーション——レクリエーションでもないんでしょうな、温水プールとか、本当に体力増進をし健康回復をさせ、子供に自信を持たせ得るような保健福祉
事業を本当にせっかく組んだ
予算を十分使って実施できるという体制と構えですね、これをどうしてもやってもらわなきゃならぬということを痛切に感じた。
で、その中でいろいろ親御さんたちの意見を聞いてみまして思ったんですけれども、一つは、そういう間欠的に一年に何回かのそういう行事をやるというふうなこと、それからプールなど、温水プールも含めていつでも訓練ができるというふうなこと、それから年に一回とか二回とかいうふうに限らずに、やはりできるだけ回数をふやしてほしいというふうなこと、自主的にやりたいということでうまく体制のできたような体制も認めてほしいということを非常に強く訴えてましたね。
それからひどい子供たちですね、毎日のように発作が起こって学校へ行けない。あるいは私いま読まなかったですけれども、時間がないと思って、言わなかったですけれども、たとえば一カ月に必ずチアノーゼを起こすような発作を起こす子供がいるというんですね、一カ月に一遍か二遍。そうしたら必ず四、五日入院しなきゃいかぬ。それはそんなこと繰り返してたら勉強できないです。体力も増進しないですよね。大きくならない。だからそういう重症な患者については、これはグリーンスクールとかいうて、すでに言われておるような
環境のいいところで、これは宿泊施設等もついた、勉強もできる
環境のいい療養所というふうなものを、これはどうしてもこの保健福祉
事業でやらなければならないということを痛切に感じさせられたわけです。そのためには、これは本来、
公害の
被害者なんですから、地方自治体が負担が多くてできないというふうな体制って、これは法律がそうなっているんだけれども、不備であれば、その不備な点を改めてでもこれは何としても改善をさせるべきであろうと思うんですけれども、その点についてこれは御見解を伺いたいと思う。