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1976-06-16 第77回国会 参議院 決算委員会 閉会後第3号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十一年六月十六日(水曜日)    午前十時八分開会     —————————————    委員異動  六月十日     辞任         補欠選任      青島 幸男君     下村  泰君  六月十四日     辞任         補欠選任      下村  泰君     市川 房枝君  六月十五日     辞任         補欠選任      田渕 哲也君     木島 則夫君     —————————————   出席者は左のとおり。     委員長         鈴木  力君     理 事                 遠藤  要君                 世耕 政隆君                 大塚  喬君                 峯山 昭範君                 塚田 大願君     委 員                 青井 政美君                 石本  茂君                 岩男 頴一君                 岩上 妙子君                 永野 嚴雄君                茜ケ久保重光君                 案納  勝君                 久保  亘君                 小谷  守君                 志苫  裕君                 矢原 秀男君                 加藤  進君                 木島 則夫君                 市川 房枝君    国務大臣        労 働 大 臣  長谷川 峻君    事務局側        常任委員会専門        員        道正  友君    説明員        法務省人権擁護        局調査課長    宮本 喜光君        厚生省社会局施        設課長      水田  努君        労働大臣官房長  桑原 敬一君        労働大臣官房国        際労働課長    森  英良君        労働大臣官房審        議官       細野  正君        労働省労政局長  青木勇之助君        労働省労働基準        局長       藤繩 正勝君        労働省労働基準        局庶務課長    高橋 伸治君        労働省婦人少年        局長       森山 真弓君        労働省職業安定        局長       遠藤 政夫君        労働省職業安定        局業務指導課長  望月 三郎君        建設省計画局建        設振興課長    中川 澄人君        自治省行政局公        務員部公務員第        一課長      鹿児島重治君        自治省財政局財        政課長      石原 信雄君        自治省財政局公        営企業第一課長  辻  誠二君        自治省財政局公        営企業第二課長  吉本  準君        会計検査院事務        総局第三局長   小沼 敬八君     —————————————   本日の会議に付した案件 ○昭和四十八年度一般会計歳入歳出決算昭和四  十八年度特別会計歳入歳出決算昭和四十八年  度国税収納金整理資金受払計算書昭和四十八  年度政府関係機関決算書(第七十五回国会内閣  提出) ○昭和四十八年度国有財産増減及び現在額総計算  書(第七十五回国会内閣提出) ○昭和四十八年度国有財産無償貸付状況計算書  (第七十五回国会内閣提出)     —————————————
  2. 鈴木力

    委員長鈴木力君) ただいまから決算委員会を開会いたします。  まず、委員異動について御報告いたします。  去る六月十日、青島幸男君が委員辞任され、その補欠として下村泰君が、また、六月十四日、下村泰君が委員辞任され、その補欠として市川房枝君が、昨十五日、田渕哲也君が委員辞任され、その補欠として木島則夫君がそれぞれ選任されました。     —————————————
  3. 鈴木力

    委員長鈴木力君) 次に、昭和四十八年度決算外二件を議題といたします。  本日は、労働省決算について審査を行います。  この際、お諮りいたします。  議事の都合により、これらの決算概要説明及び決算検査概要説明は、いずれもこれを省略して、本日の会議録の末尾に掲載いたしたいと存じますが、御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  4. 鈴木力

    委員長鈴木力君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。     —————————————
  5. 鈴木力

    委員長鈴木力君) それでは、これより質疑に入ります。  質疑のある方は順次御発言を願います。
  6. 志苫裕

    志苫裕君 二、三お尋ねをいたします。  最初に社会福祉施設労働条件の問題についてお伺いをいたします。労働省では五十年の七月に「社会福祉施設に対する監督指導結果の概要」というものを発表いたしましていろいろと努力をいただいておるのでありますが、これによりますと政府福祉国家論をうたい上げていることとはうらはらに、公共施設においてさえもずいぶんと法律違反状況さえもあるという状況が明らかになったわけでありまして、わが国の福祉政策はこの法律以下の劣悪な条件のもとで働く労働者によって支えられているか、さもなければハンディキャップを背負った人々切り捨て政策で成り立っておるかどちらかということになるわけでありまして、大変残念であります。そこでこの労働省がまとめたものによりますと、後ろの方に公立の場合七〇%以上、私立で八二・七%の違反率を示しておるんですが、ただ違反の中には手続ミスというような手続違反のようなものもずいぶん含まれておるという表現もあるようです。そこで労働省にお伺いしますが、手続ミスのようなものは抜きにしまして、実質違反ということになりますと、どういうケースのものが最も多いでしょうか。
  7. 藤繩正勝

    説明員藤繩正勝君) お答え申し上げます。  労働基準法違反の中に、いまおっしゃいましたように実質的な違反手続的な、形式的な違反というふうにわれわれもときによって分けるのでございますが、しかし形式的な違反だからといって必ずしもそれは大した重要性がないというふうには私どもは実は見ていないのでありまして、たとえば三六協定手続欠缺のごときは手続違反と言えば手続違反でございますけれども、これは時間外労働というものを原則として禁止して例外的にそういう手続によって認めるという制度の趣旨から言えば大変重要なものではないかというふうに思うわけでございます。それとこれが手続であり、これが実質だというその限界は灰色の分野があるわけでございまして必ずしもはっきりいたしません。  そこで一番最近の昭和五十年に行いました監督結果について申し上げますと、やはり労働時間関係違反率男子が二〇・四、女子が三〇・八という数字が出ております。休憩が一五・三でございます。それから休日が男子が三・九、女子が六・八の違反率でございます。割り増し賃金が一五・四の違反率健康診断が二六・〇、就業規則が二一・一、こういうような違反率になっておりまして、総合的に見ますると、全体としては七四・五%というような違反率に相なるわけでございます。私どもこの中でやはりこういった施設につきましては労働時間、なかんずく時間外の違反と、それからやはり健康診断というようなことが非常に重要なものではないかというふうに考えております。
  8. 志苫裕

    志苫裕君 これは五十年のまとめですが、これによりますと、四十九年の上期の監督結果のようですが、この種のものはあれですか、その後、たとえば半年置きとか、あるいは常時やっておるものを半年置きにまとめるとかというふうに定期的にこのようなものを発表をなさっておるんですか。
  9. 藤繩正勝

    説明員藤繩正勝君) 労働基準法に基づきます監督の結果につきましては、監督年報によって明らかにするということになっております。ただ特に、いま問題になっております社会福祉施設関係は、私どもやっぱり重点の対象と考えておりまして、毎年相当な数を監督をいたしておるわけでありまして、最近で申し上げましても、昭和四十七年六百二十八の事業場、それから昭和四十八年千八百四十四、昭和四十九年千七百、昭和五十年が千六百五十二というふうに相当な数を監督をいたしまして、その結果はその都度数字的にまとめております。ただいま申し上げたのは最近の数字だけでございます。数字はございます。
  10. 志苫裕

    志苫裕君 まあいずれにしても調べてみたら七割以上も、特に公的な機関においてさえも七割以上も違反ケースがあると、まあちょっと手続忘れておったというようなものも違反違反ですけれども、いまの御答弁ですと、さまざまな分野にわたって違反事実がある。これどうですか、労働省の目で見ますと——後ほど厚生省がいろいろ努力をしてくれておることについては触れますけれども労働省の目で見て、監督機関なり、あるいは職場の長なりですね、そういうものが気をつければ直るという性格のものですか、もう少し抜本的な措置を講じないと、たとえば財政面であるとか要員面であるとか、そういう面で抜本的な措置を講じないとこれは決まりがつかないというふうに性格が分けられると思うんですけれども、概してどんな感じです。
  11. 藤繩正勝

    説明員藤繩正勝君) 率直に申しまして、こういうところの施設にはやはり両面があると思います。ただ基本的には、何といいましてもいままで人員が非常に不足でございまして、幾ら改善しようとして努力をしても絶対的に足りないということがかねがね問題になっておりまして、国会でもたびたびこれは取り上げられたわけでございます。そこで私どもも、厚生省に何遍もお願いをいたしまして、まあその結果財政当局も動かしましてある程度の定員の増加を見たわけでございますが、今後そういうことの結果があらわれると思いますけれども、しかしもう二面、すなわちこの社会福祉施設もそれでございますが、病院診療所等、広くこういった施設におきましては、片方で奉仕の精神というものがございます。それからまた、場合によってはその施設関係者意識が、近代的な労働立法とは少し縁の遠いような意識にとどまっているというような場合もときどき見られました。そういうような側面もこれはなきにしもあらずでございます。そこで私ども厚生省との関係では課長レベル会議を持ちまして努力を重ねてまいりましたし、それから特に五十年の二月に通牒を発しまして、こういった社会福祉施設労働条件改善につきまして、都道府県レベル改善協議会というものをつくってほしいということをお願いをいたしました。労働基準局とか県の社会福祉関係所管課長とか、私どもの出先の婦人少年室長とか、あるいは社会福祉協議会責任者とか、そういう人々を網羅いたしまして、労働条件改善目標というのを立てて自主的な改善努力をしてほしい、こういうことをお願いしまして、現在ではすべての府県にこれが設けられております。そういう側面も、これはじみち努力をやはり怠らずに続けなければいけないというふうに私ども思っております。
  12. 志苫裕

    志苫裕君 ただいまのお話のありました、その都道府県レベルでの改善協議会の点に触れられましたが、これはいまのお話ですと、各都道府県に全部できているということですが、この通達によりますと、五十一年の四月末までに一定の報告を求めているようですが、これまとまりましたか。
  13. 藤繩正勝

    説明員藤繩正勝君) これはいま出てまいりまして、実は報告を取りまとめ中でございまして、まだちょっと全体の結果を見るまでには至っておらないんでございますけれども、それぞれの協議会において改善目標ということで実現を図るということでやっておりますことは、自主点検の励行、それから関係行政機関による調査指導、それれから研修、そういう活動を積極的に行っていただいているように伺っております。
  14. 志苫裕

    志苫裕君 これはあれですか、私ども非常に参考にしたいわけですが、皆さんの方ではあれでしょう、改善目標とその改善状況について、別紙二により五十一年四月末までに報告してくれということになっていますが、いまのお話ですと自主点検とか関係監督機関指導とか調査とかいうようなもののようですが、これは皆さんのところに来るのは各施設別に、各県別ですから当然抽象的なものじゃなくてどこの施設には何が重点というようなことになって指導されるんでしょうから、そういうものは全部細かくお求めになりますか。
  15. 藤繩正勝

    説明員藤繩正勝君) 各県でそれぞれ独自の工夫をこらしてやっていただいていると思いますけれども、私どもこの通達にも挙げてございますように、ねらいとしては、まず労働時間、特に保母とか寮母の法定を超える時間外労働の場合、それから調理員週休制の確立とか、それから特に時間、休日、休憩、休暇の記録の整備、こういうことをまず一般労働条件としては特に意を用いると。それからもう一つ健康管理が大事でございますが、これは法定健康診断を完全に実施する。それから特に、重症心身障害施設においては最近腰痛の発生が問題になっております。この予防のための対策を十分とるように。それからやはり介護業務に伴う腰痛予防のための衛生教育計画的実施と、こういうようなことを例示いたしましてお願いしておりますから、県によりましては非常に重症心身障害者施設が特に多いとか、いろいろバラエティーがあると思います。それぞれの実情に即してきめ細かくやっていただいているものというふうに思っておりまして、四月末で報告が来ておりますので、できるだけ早くこれを取りまとめて分析をしたいというふうに思っております。
  16. 志苫裕

    志苫裕君 ところで皆さんがそういう形でいろいろと指摘もされるし努力もするということから、細かくは述べませんが、厚生省でも五十年、五十一年の二ヵ年にわたりまして、一万五千名のこういう施設関係増員を含む幾つかの措置を講じたようであります。これは努力を大いに多とするわけでありますが、ただ、まあ五十年、五十一年に要員増等措置を講じたと言っても、それの効果があらわれるのはこれからということにはなりますけれども、まあ厚生省には別途また決算個々施設について細かく聞く予定ですが、大まかに言って労働省感触ではどうです。厚生省努力をして、とにかく一万五千人の要員増を行ったと。そのほか民間に対する幾つかの施策もあるようですが、こういう一連改善労働省指摘しておる少なくとも違法性の問題、こういうものは大方決まりがつくと、こういう見込みをされますか。その辺はどうですか。
  17. 長谷川峻

    国務大臣長谷川峻君) まあ地方を歩いてみて、これはもう先生もそうでしょうけど、みんなこういう陳情なり、そういう実態をごらんになるだろうと思うんです。ことにこういう社会福祉国家というものを目指すときですから、なおさら大事なことでありまして、いままで局長からも答弁させましたけれども労働省と私の方の課長がしょっちゅう会合いたしまして、地方で起こった問題を厚生省の方に話をし、そして厚生省の方で是正の方策を立ててもらう。でありますから、ただいまの増員の問題なども厚生省に私の方もお手伝いして、大蔵省等にも折衝してあげるという形から、ただいまの増員が認められたわけでありまして、個々人員配置によりまして、少なくとも直接原因となっている労働基準法関係の諸問題については、この増員によって一応是正されるのではなかろうかと期待をしているわけでありまして、なおしかし、いまから先も緩めないで個々の問題をフォローしてまいりたい、こう思っております。
  18. 志苫裕

    志苫裕君 これらの一連措置適法性確保が大体できるだろうという見通しのようですから、これはもう少し今後の検討を待たなければならぬのですが、私も幾らかこのような施設にはかかわりのある者ですが、しかし特に夜間労働保育所休憩ですね、これはやっぱりまだずいぶん残るのじゃないかという私の感触ですけれども、いかがでしょう。
  19. 藤繩正勝

    説明員藤繩正勝君) 定員の数をそろえましても、実際にこういう施設に働きに来てくださる方々、それからまた、それらの人の訓練度といいますか、能率といいますか、そういうものも相当に影響すると思います。特に夜間介護というようなことになれば、これはある程度研修も受けた相当な健康な方でないとできないというようなこともありますから、増員が認められたから一挙にというわけには、なかなかきれいさっぱりとはいかぬと思います。しかし、これはやはりその努力をしていかなければならぬというふうに思いますので、私ども厚生省との連絡を従来にも増して強めたいと思いますし、改善協議会も緩めずにやはりその点をフォローして、所期の成果が上がるように一層努力をしたいというふうに思います。
  20. 志苫裕

    志苫裕君 厚生省にお伺いしますが、いまの労働省のあらましの見込みだと、まあ厚生省努力もあって、大体適法性確保はできるのではないかと、こういう見解ですが、厚生省の方の感じは、見解はどうです。
  21. 水田努

    説明員水田努君) 社会福祉施設は、御承知のとおり三十年代の後半から急速に整備をいたしたわけでございますが、社会福祉の原形を見ますと、宗教的背景を持った人、あるいはきわめて同志的結束という形でやってきたという自主性が一面においてあることと、もう一つは、物の生産と違いまして、スイッチを切って帰るというわけにはいかぬ、いわゆる入っている方との人格交流を前提としてやっているところに一つのむずかしさがあるわけでございますが、今日、社会福祉施設に働く職員は三十万を超す多きに達しておりますので、厚生省としましては社会福祉施設近代化政策をとるということで、職員待遇改善、それから労働省から指摘されました労基法違反、この中には労働省監督によって改善さるべきものと、それから厚生省財政措置が不十分なために起因して起きている問題と二つあるわけでございます。  たとえば三六協定であるとか、あるいは健康診断実施、こういう面につきましては労働省監督の強化に待つべきものであると思いますが、私ども夜勤体制なり先生の御指摘保育所休憩時間の確保等は、私ども措置以上の、配置基準の不十分な点から起因していると、こういうことで、これらの解消策として一万五千名の労基法対策計画を立てまして、われわれは二年計画で職を賭してこれを実現したわけでございまして、私どもはこれによって労基法実質違反をなくす基盤の整備ができたものと、このように考えております。
  22. 志苫裕

    志苫裕君 それじゃ、努力を多としますが、ただ私は、厚生省決算でいずれやりますが、厚生省がそういう努力にもかかわらず、また厚生省真意がどのようにあるにもかかわらず、いまお話がありましたように、その福祉職場の持つところの、待遇改善も含めて中身を充実をさせるとは言いながらも、この一万五千人の要員確保というのはそこまではいかぬのであって、適法性確保というところが、言うならぎりぎりじゃないか。これは適法性確保というのはいまごろ言うのがおかしいのであって、これはむしろ、確保されておって、それにできるだけ中身を詰めていくための施策が次々にとられていくということが、むしろそのときに厚生省は胸を張れるのであって、一万五千人とったのでおかげさまで労働省から怒られぬで済みますなんというようなことを言うている限りでは、これはやっぱり少しまだ弱いという気がいたします。  これはまた中身のことですから別の決算でやりますが、どうでしょうね、これ労働省にお伺いしますが、いろいろ厚生省も考えているようだし、皆さんの方も指摘をしているようですが、私は大方の福祉施設夜間労働というのは、その実態から見て、宿直あるいは断続もしくは変則交代勤務というのではなくて、たてまえとしてはやっぱり三直三交代制をとるということをたてまえにしておいて、それでむしろその例外として、宿直なり断続なり変則勤務があるという扱いにする方がむしろ実態に合うし、そのことを原則にして要員配置や必要な手だてを講ずるふうにむしろ向きを変えてもらう方がよろしいのじゃないかというふうに思いますが、いかがですか。
  23. 藤繩正勝

    説明員藤繩正勝君) 一口に社会福祉施設と言いましても、非常に多様な実態だろうと思います。病院のごときああいう診療施設になれば、宿日直というようなことでなくて、やはりそれぞれの要員を抱えてちゃんと交代制でやるわけでございますので、福祉施設勤務実態仕事中身というものがどういうふうにこれから発展するかということとも関連をすると思います。一概には言えないと思いますが、方向としては、できるだけ近代的な作業の内容、それにふさわしい労務管理というものが行われるということが望ましいであろうということは、これはもう言うまでもないと思います。十分実態を研究してみたいと思います。
  24. 志苫裕

    志苫裕君 この点は厚生省の方でも一部そういう主張も入れて、夜間業務の処理に当たって幾つかの施設、類型に分けた施設については三直三交代制をとっておるようですが、日直変則交代制あるいは宿直制をとっておる場所について、これが必ずしもその勤務体制がいいというのではなくて、たとえば予算やその他要員等の制約から、むしろ変則的にとっているという趣の方が私は実態としては多いのじゃないかと思うのですよ。でありますので、特に日ごろ努力をしてもらっているところですが、私がいま指摘した部分について少し重点的にひとつ当たってみてくれませんか、これは。宿直と言っても実は宿直業務じゃない、仕事の延長みたいなものもずいぶんありますしね。この点はひとつこの際指摘しておきますし、それから厚生省も、そういう点についてもう一歩踏み込んだ努力を要望をしておきたいわけであります。  ところで自治省おりますか。——五十一年一月二十二日付の財政課長の五十一年度予算編成の内簡について、いわゆる保育所に関するくだりがありますが、これちょっと真意を聞かしてください。
  25. 石原信雄

    説明員石原信雄君) この内簡におきましては、毎年度予算編成に当たりまして、国の予算におきまして措置されたいろいろな事項についての考え方等を各自治体に御連絡申し上げるという考え方のもとに出しているものでございますが、その保育所くだりにつきましては、五十一年度予算におきまして、保育所措置費内容として職員数基準改善が図られておる。この点について自治体の中にもいまだ基準に達しないものもある、またすでに達したものもある。いろいろ実態に差がございますが、すでに基準を充足している団体につきましては、今回の改善措置超過負担解消としての意義を持つものであるという点を連絡いたしたものでございます。
  26. 志苫裕

    志苫裕君 まあ地方財政一般にかかわる問題ですから、余り長いやりとりはしませんが、先ほど私ちょっと厚生省の方にも申し上げたのですが、いままでの福祉——保育所なら保育所でもいいですが、福祉関係実態でいきますと、実は適法性さえも確保されない。こういう状態が随所にあって、いろいろ皆さん努力をしてもらって、何とかこれなら法律違反にはなるまいというところまでこぎつけた程度なのであって、これで福祉施策万々だというレベルだとは認めがたいわけで。そういう状況でありますから、自治体等においては何とか適法性確保できたから、この上にもう少し内容も詰めたいとか、内容も高めていきたいとかという努力をしているところもあるし、現に行っているところもあるわけです。そういうところへ自治省の方が、財政上の配慮だけで、もうこれで万々なのだから、言うなればよけいなことをしちゃならぬぞという、こういう趣旨通達を出されますと、適法性確保して何とかもう少し内容を高めたいという、そういう住民の発想、首長の努力というふうなものも何か一遍に抑え込んでしまうような影響力を持つと思うのですよ。こういう点についてはやっぱり弾力的な配慮があってよろしいのじゃないでしょうか。
  27. 石原信雄

    説明員石原信雄君) 確かに現在の保育所の保母の配置基準でも、まだ現場の保母さん方からすれば十分でないという声があるということも私ども自治体の方々から聞いております。ただ先生も御承知のように地方財政全体としてかなりの超過負担を余儀なくされている。その中でも保育所関係につきましては、そのどこまでを超過負担と認定するか、いろいろこれは立場立場で解釈の差があるのではありますが、いずれにいたしましても各自治体の支出実績と、それから国庫負担の基礎から計算した措置費の基準額との間には相当大きな乖離がありまして、その乖離が今日地方財政の大きな圧迫要因になっているわけであります。そこで五十一年度に講じられました改善措置につきまして、そのすべてが現状に対して上乗せすべきものであるということではなしに、やはりすでにかなりの程度に充足している団体につきましては、いま非常に財政負担で苦しんでおる際でもありますので、その一部が超過負担解消として財政負担の軽減に充ててもいいんではないか。そのように私ども理解をいたしまして、そのように理解できるという旨を連絡したわけでございます。
  28. 志苫裕

    志苫裕君 まあ、この論争も尽きませんが、いずれにしても、いま労働省厚生省自治省にもそれぞれお伺いしましたが、私はそう性急なことは言いません。一遍に改善できなければ徐々にでも努力しなければならぬわけでありますから、いずれにしても、きょうのところでは、いままで皆さん努力をした結果でまあ何とか適法性確保できて違反状況もなくなるだろうという見通しのようでありますから、少し推移を見た上でこれはまたひとつここで取り上げたい、このように思います。だから、ひとつこの次に、いやまだ実はなんという返事にならぬように、ひとつしっかりやってほしいと思うのであります。  その次に、地方公務員の労働関係について若干お伺いします。全国に約九百五十の自治体病院があります。うち約一割が地方営企業法の全面適用、残りの九割は一部適用、財務規定等だけの適用になっておるわけであります。そんなことはどうでもいいんでありますが、この全面適用になるか一部適用になるかということは、その当否はひとまずここでは議論の対象ではありませんが、そうなりますと、そこに働く労働者によってはこれはとんでもない違いが出てくるということになるわけです。すなわち全面適用になるか一部適用になるかによって労働関係に重大な相違が生ずることになってしまう。全面適用になれば労働関係は地公労法、一部適用でありますと地方公務員法。地公労法と地方公務員法は、これは言うまでもなく交渉権、特に協約権でずいぶん重みの違いが出ておるということになります。  ところで同じ自治体で、しかも同じ自治体病院で、看護婦なら看護婦という同じ職種で、公営企業法が全面適用になるか一部適用になるかによって、労働条件労働者の権利にとってはずいぶん差が生ずる。別の言い方をしますと、長の頭一つで、これはちっと経営がめんどうだから全面適用にしておこうとか、一部適用にしておこうという長の恣意でそのまま労働者の権利問題が法適用を異にしてずいぶん違ってしまうということになるのは、これは大変な矛盾だし、法理の上から言ってもどうも合理的でないという気がしてならなかったわけでありますが、たとえて言えば、私新潟ですが、新潟の県立病院の看護婦さんは交渉権もちろんだし協約権もある。ところが大分の県立病院の看護婦さんは、これは交渉権もろくなものじゃないし協約権なんかない。そのときに何かのはずみで大分の知事が考え違いして全面適用にすると、これまた全部協約権も交渉権も戻る。長の恣意によって労働者の権利が左右されるという法のつくりというのは、ぼくやっぱり合理性がないと、こう思うんですが、いかがでしょう。
  29. 辻誠二

    説明員(辻誠二君) 自治省の方から地方営企業法に関連いたしましてお答え申し上げたいと思います。  いま委員が言われましたように、公営企業法におきましてはその適用関係が各団体によって若干まちまちの点がございます。しかしながら地方営企業法は、典型的な法定事業におきましては、地方営企業法の組織、財務、職員の身分取り扱いというようなものにつきまして、地方自治法なり地方財政法、地方公務員法の特例を設けておるものでございます。しかしながら地方団体は、御承知のように三千以上の団体がございまして、いわゆる公営企業的な事業というのもその法定の事業以外に各種の事業があるわけでございます。そういうような事業につきまして、各自治体が独自の判断で長なり議会が慎重に審議することによりまして、地方営企業法の財務なり、それから職員の身分取り扱いも含みます組織を含めた全部につきまして適用するということを自治体の判断に任せている部分があるわけでございます。その結果としまして、先ほど御指摘がありましたように、病院事業につきましては、財務規定は強制的に全部適用になるわけでございますけれども、それ以外の職員の身分取り扱いを含みます組織その他の規定につきましては各自治体の慎重な判断、手続的に言いますと条例で定めるということになっておりますので、どちらが提案するか、長が提案するか、議会で提案されるかは別にいたしまして、その企業の実態を十分に慎重に検討されまして公営企業法の全部を適用されるというような道は開かれているわけでございます。その結果、一部の病院につきましては地公労法の適用がある。大部分の病院事業につきましては公務員法の適用があるという結果になっているわけでございまして、これは一般論として地方団体の自主的な判断にある部分に任かせております結果からくる当然の結果でございまして、われわれとしてはそれ以上のことは申し上げることはできないと思います。
  30. 志苫裕

    志苫裕君 いや、自治省の返事は法律がそうなっておるのでということですから、私はその法律そのものをいまここでは少し議論をしようというわけであります。これは自治体病院があってそれを全部適用にしようか一部適用にしようかというふうな場合には、そうなることによって労働者の団交権や協約権がどうなるかというようなことを考えて、それをいわば一部適用にしようか全部適用にしようかとは普通は考えないわけですよ。むしろまさに経営的な面でどちらかを決めるという判断。ですから自治体の長が病院経営をどうしようかということで、事業の形式で自動的に労働者の権利がどっちかに決まってしまうということが私は合理性がないということを申し上げているのですが、この法の制度、バランスとかそういうものがぼくはおかしいと、こう言っておるわけですが、これはむしろ私は労働省あたりで考えるべき問題だと思います。いかがですか。
  31. 青木勇之助

    説明員青木勇之助君) お答え申し上げます。  先ほど先生から御指摘がありましたように、地方公共団体の経営いたしまする病院事業につきましては、地方営企業法の第二条の第二項の規定によりまして、いわゆる財務規定等は適用されるのでありますが、その他の特に第四章、身分取り扱いに関する規定につきましては、条例によって適用するかどうかを自由に決めることができる、こういうふうに相なっております。先生の御存じのように、いわゆる法定七事業につきましては地公労法を当然に適用するというたてまえになっておりますが、その趣旨は、これらの事業はいずれも経済行為あるいは企業的行為を主体とする事業である、そういう観点からこれらの法定の七事業につきましては、その職員労働条件については基本的にはやはり団体交渉によって決することが適当であると、こういう考え方に基づいて法定七事業につきましては地公労法を当然に適用する、こういうたてまえに相なっておるわけであります。ただ、その病院事業の経営のあり方につきましては、いま自治省の方からもお答えがありましたように、その地方の実情に応じてどうもさまざまである。こういうようなことから地公労法を適用するかどうか、すなわち全部適用にするかどうか、地方営企業を。この点につきましては地方住民の意思を体しまして、その経営につきまして最終的な責任を負いまする地方公共団体の議会の意思にかかわらしめる、こういう法のたてまえになっておるわけでございまして、現時点におきましては実定法上そういうたてまえになっておる、こういうことでございます。
  32. 志苫裕

    志苫裕君 そうなっておるから、私の言うことをよく聞いてくださいよ、そうなっておることは承知なんだ。私もこればっかりいじくってずいぶん長いこときたんですから、そんなことは承知の助なんですよ。そこでもう少し単純に考えましょうや。自治体病院があって、その病院を公営企業——それは条例で決めるんですよ、公営企業法の全部適用にしようか一部適用にしようかということで、長が全部の適用にしようと、病院については、ということになると自動的に労働関係が変わってくる。同じ病院ですよ。これはさまざまな判断をして、財務規定は財務規定だけのことにしておこうということになると、これはまたそれに沿った労働関係になってしまう。同じ自治体病院なのだから、せめて労働関係というふうなのは平らな取り扱いになるような法制度にする方が合理性があるんじゃないですかと、ということを私は指摘しているわけなのです。皆さんそこにやっぱり矛盾があると思いませんか。この点はいかがですか。
  33. 青木勇之助

    説明員青木勇之助君) 病院につきましては、国営の病院もございますし、先生御存じのとおりでございます。国営の病院につきましては国家公務員法の適用ということに相なっております。それから地方公共団体の経営する病院につきましては、いま申し上げましたように、地方営企業法が全面適用になっておるもの、すなわち第四章の規定の適用のあるものについては地公労法と、そうでないものについては地方公務員法と、確かに法の画一性ということから申し上げますと、病院経営というものが民間、公営全部を通じて一体に律するべきではないかという御議論もあるかと思いますが、先ほど申し上げましたように、地方営企業として行われております病院実態につきましては、地方によって実態がさまざまであるということから地方議会の最終的な意思にかからしめておる、こういうことになっておるわけです。
  34. 志苫裕

    志苫裕君 それは地方議会の云々というのは公営企業にするかしないかの方がかかっているんですよ。地方議会の意思で労働関係をこうしようということを別に条例で云々じゃないんですよ。地方営企業にするかしないかが地方議会の長なり議会の判断で決められる、そっちが決まるとあとの方が自動的に決まってしまうという仕掛けにこれはなっているわけですよ。地公労法の適用を議会で、地公労法にするか地方公務員法にするかというようなことを議会で決めるというのじゃないんですよ、たてまえは。そこで私、いま労政局長お答えのように、一遍に同じ病院でも民間と官公庁差がないじゃないかというところまですぐいきませんわ、もう言いたいところだけれども、きょうはまあその議論はちょっと抜きにしますよ。抜きにしますが、少なくとも公務員という、地方公務員なら地方公務員と、大まかに言えばですね、その範囲の中での私は違いのことをいま議論をしているわけです。  これは皆さん労働行政を扱う者ならこれはやっぱり矛盾だなあと、法理論としてもおかしいなというふうにむしろ感ずるのがぼくは正常だと思うけれども、大臣どうです、この点は。あなた聞いていてそんなものかなと思うでしょう。これはひとつ検討されませんか。労働関係だから皆さんの方が提起をして、それに見合うように自治省関係のところでもいろいろと協議を始めるというのがむしろ取り上げ方としては筋道が立つと思うのですよ。
  35. 青木勇之助

    説明員青木勇之助君) お答え申し上げますが、地公労法の第三条におきましても、「この法律で「地方営企業」とは、左に掲げる事業を行う地方公共団体が経営する企業」云々と、こういう規定がありまして、一号から七号までは地方営企業法に掲げておりまする企業と同じものを掲げておりまして、第八号で「前各号の事業の外、地方営企業法第二条第三項の規定に基く条例又は規約の定めるところにより同法第四章の規定が適用される企業」、これについては地公労法を適用いたしますと、地公労法でもやはり条例に一応かからしめておるわけでございます。先ほど申し上げましたように、この法定七事業につきましては、経済行為あるいは企業的行為を行う典型的なものであると、したがって、その労使関係は地公労法の適用が妥当であると、こういう判断でもって法が制定されておるわけであります。確かに先生指摘のように、法の画一性という観点から言いますと全く問題がないというふうに申し上げておるわけではございませんが、やはり企業の、病院実態、そういうものに応じて地方公共団体の議会すなわち条例で最終的にこれを決めるという筋になっておるわけでございます。
  36. 志苫裕

    志苫裕君 ですからね、いまあなたはたまたま地公労法の三条の一項八号はこの法定七事業のほかに病院について言えば条例で全部適用するということを決めたときに適用になるというのですね。私の言うことに従えば、この八号のところに、「地方営企業法第二条第三項の規定に基く条例」云々でしょう、だから第二条第三項とせっかく書いたんですから、第二条第二項も書けばいいわけですよ。そうするとこれは平らになっちゃうのです。二項もここに仲間にすれば私の言うことは全部つじつまが合うようになる。  さもなければ地方公務員法五十五条の二項のところを直して、あそこの協約権は含まないなんという条項をもいでしまえばこれまた平らになるわけです。地公法五十五条の二項をいじるか、あるいは地方営企業労働関係法の第三条の一項八号に手をつければ、いま私が指摘している最低限の矛盾や不合理というようなものは私は是正される、こういうふうに思うものですから、法律のたてまえはそうなっているということはよくわかっている、そのたてまえはやっぱりきわめて合理性がないような気がずる。自治体が経営している病院は同じですよ、地公法全面適用といい、一部適用といい、実態はそう変わらぬですよ。それは少し銭が余った場合に自治体関係ない、めんどうの見方がどうこうというあたりに違いがある程度で同じですよ。その程度のことで労働者の権利に差がつけられるというのはぼくはやっぱり合理性がない、こう思うので、これはひとつ真剣に検討してくださいよ、大臣。
  37. 長谷川峻

    国務大臣長谷川峻君) 先生お話を承ると一つのお考えのようでもありますが、それぞれやっぱり沿革もあることでしょう。また所管が自治省の問題でもありますので、そちらの方にひとつ話を移すように私の方からも申し上げましょう。
  38. 志苫裕

    志苫裕君 その点は要望いたしておきまして、その次は自治省にお伺いしますが、地方公務員の、ごく平易な言葉ですが単純な労務に従事する職員、これの範囲というのは法定されていますか。
  39. 鹿児島重治

    説明員鹿児島重治君) 地方公務員法の五十七条に基づきます単純労務職員の範囲につきましては、御承知のように、かつては地方公務員法の附則の二十一項に基づきます政令によってこれが定められておったわけでございます。昭和二十七年の地方営企業労働関係法の改正の際にこの附則が削除されまして、その政令が失効するということに相なっておるわけでございますが、その範囲そのものの解釈につきましては、現在でもその政令に基づきまして解釈をするという形で指導いたしております。
  40. 志苫裕

    志苫裕君 解釈をして指導していることはわかっています。これは地方公務員法にいわゆる単純な労務に従事する職員というのは地方公務員であって、それには地公法に特例があって、地公労法へいきましてこの法律の適用をするというふうに書いてあるわけです。ですから単純な労務に雇用される職員は、先ほど私ちょっと議論しました交渉権とか協約権の問題になりますと一般職の地方公務員とは差があるということが問題になるわけですから聞いているわけですが、私は範囲は解釈でいろいろ扱いになられるということは確かですが、法からいくとやっぱり法定しなければならぬのです。「法律で別に定める。」でしょう、法律で決めなければいかぬですよ。ところが皆さんは従前の例に準じて運用をやっておるというのが実態じゃありませんか。  ですから一例を出しますけれども、ある自治体でAという職種が一般職の公務員であって、ある自治体で同じAという職種が単純な労務になっておるという、こういう実態もあるわけです。あるいはごく簡単に、しようがないから学歴で線を引きまして、高校卒は単純労務と、こうね。極端に言えば、高校卒程度の資格免許を取る者は皆単純労務という扱いだってあるわけ。これはなぜそうなるかというと、単純労務の範囲を法定してないからですよ。これはどうですか。
  41. 鹿児島重治

    説明員鹿児島重治君) 先ほど申し上げましたように、かつての政令によって解釈をいたしておるわけでございますが、かつての政令につきましては、御案内のように、かなり単純明快にその職種範囲というものを規定いたしております。ただ当該政令におきまして、十一号に「前各号に掲げる者を除く外、これらの者に類する者」ということで、その辺が実際の適用に当たりましていろいろ問題を来すのではなかろうかと、かように考えます。いまお話がございましたように、学歴等によりまして区別するというようなことは私は適切ではないと考えております。
  42. 志苫裕

    志苫裕君 これは皆さんの方ではあれですかそれは解釈も一結構ですが、五十七条で言えば「別に法律で定める。」、こうなってますな。ですから別に法律を定める意図は持っているんですか。
  43. 鹿児島重治

    説明員鹿児島重治君) 地方公務員法の五十七条に基づきます別な法律の定め、これは身分取り扱いにつきましての別な法律の定めでございまして、私どもは現在この別の法律といたしましては、地方営企業労働関係法附則四項というものを別の法律の定めというぐあいに理解いたしております。
  44. 志苫裕

    志苫裕君 いまおたくの話に出ました地公労法の附則の四にどう書いてありますか。ここにも「その労働関係その他身分取扱に関し特別の法律が制定されるまでの間は、」地公法では法律で別に定める。地公労法へいきまして、その法律ができるまでの間はこれだと、こう言っているわけですよ。しかし、それはあくまでも身分取り扱いなのであって、範囲はどこにもないじゃないですか。たとえば電話交換手というものがまあ単純労務だとしますか。これの労働条件は地公労法だとは書いてありますよ。電話交換手が単純労務であるかどうかはどこにも書いてないわけです。その実態は、実際は昔の取り扱いなどに準拠しましてだれが決めているのかというと、実態は長が決めているわけですよ。そこで労働大臣、だからまだ問題になりますよね。長がおまえは単純労務者だ、おまえは一般職だと、同じ県庁へ入ってきました者に、市役所に入ってきました者に長が言いますと、途端に労働関係が変わるんですよ。これも合理性がないじゃないかと言うんですよ。タイピストがいた。あるいは最近コンピューターなんというのがあります。コンピューターというのは考えれば単純かもしらぬ。で、おまえは単純な労務に従事する職員だと言いますと、地公法の中から外れて地公労法へいって、準用されて地公労法になるわけです。これも私はどうも合理性がない。さっきと大体似たような話ですけれども、これもぼくは検討の対象になるんじゃないでしょうかな。いかがですか。
  45. 青木勇之助

    説明員青木勇之助君) お答え申し上げます。  先生指摘のように、地方公務員法五十七条の単純労務職員の範囲を法令で規定した規定は現在ございません。ただ先ほど自治省からも話がありましたように行政解釈といたしましては現在は失効いたしておりますが、先ほどの政令第二十五号でございますか、これに大体準ずるんだと、こういう扱いになっております。で、地公労法の附則第四項におきましては身分取り扱いに関して別に法律が制定されるまでは地公労法を適用するんだということで、少なくとも労使関係の問題につきましては単純労務者、範囲は先生指摘のように法令ではっきりしておりませんが、労使関係、身分上の取り扱いにつきましては地公労法を適用する、こういうことで統一をされております。  ただ先生指摘のように、単純労務者の職務内容あるいは職種、非常に多々ございます。しかも日進月歩のこういう最近の技術革新等の時代におきましてはかなり違った職種等もふえてきておることは事実でございます。そういう点につきましては常々フォローして単純労務者の権利擁護というものには努めなくちゃならないと思いますが、いずれにいたしましても、この点につきましては法としては一応単純労務者については労使関係上の取り扱いは地公労法ということで明らかになっておるんじゃないかと、こういうふうに考えております。
  46. 志苫裕

    志苫裕君 ですから範囲が別に書きものにないものですから、たとえばある自治体である職種なりある職場が組合をつくりまして、それで人事委員会の方へ、地公法だと思って人事委員会の方に登録しまして、そのつもりで長年いたわけですよ。最近自治体あたりも強腰になりまして処分なんかしますんで、処分したわけですね、今度はそれを。処分したらおおそれながらと人事委員会に訴えた、登録してあるんですから。いろいろ見ているうちに、どうもこれはおれのところのお客じゃねえようだと。おれのところのお客じゃねえよったって地労委の方には別に登録してないしね。中労委の方へいってもどこのものだか扱えないと、こういう問題が起きる。いっそのこと裁判でもやろうかということになると訴願前置主義というのがあって、どこか窓口一遍通ってこなきゃ受け付けない。行く場所がないというふうな、こういう現実の問題が起きているわけです。  これらもいま言う範囲が特定をしてないというようなあたり、まあその他いろんなミスもあるんでしょうが、そういう問題から出ているわけですよ。大臣、私が指摘をしたいのは、先ほどの問題と今度の問題あわせて申し上げますけれども、公営企業の適用にするかしないか、あるいは単純な労務者にするかしないかというのは突き詰めて言えば長の方が持っているわけですよ。その人の言うなら考えよう次第で労働関係ががらりと変わってしまう。労働関係が変わってしまうという仕掛けですね。ここのところにやっぱり問題があるので、これをめんどうなく直すとすれば、その労働関係をどういう業種も職種も職場も平らにすればこれは一遍に決まりがつくわけですね。こういう問題にも結局また帰一しますので、これは自治省の方には、やっぱり慣例慣例も結構ですけれども、あんまり、長い間慣例つくっているうちに次から次へと新しい職種、今日、昔なかったような職種がじゃんじゃんできてくるわけですよ。新しい職種が出ますと、さてこれをどっちに入れようかというようなことを考えるだけでもずいぶん大変なことです。それで、ある自治体はこっち側に入れる、ある自治体はこっち側に入れるというので、同じ職種でも扱いが違うという現状も出てくるわけです。こういう状況があることをひとつ十分にのみ込んで、先ほどの大臣の御答弁で結構でありますが、あの線でこの問題も含めてひとつ十分な検討をしていただきたい。これを要望します。  三番目に、労働災害保険の診療報酬のことについてごく簡単にお伺いします。労災保険による診療は指定医療機関と個別の契約によってやられるわけですけれども、しかし実際は、そんなら診療報酬はまちまちでいいかということになると、あるときには五円で、あるときは百円だというわけにいかぬでしょうからね。大体統一的な扱いをされてきておるようです。そこで課税病院は単価は十二円、診療報酬単価ですね。それから非課税病院は十一円五十銭。同じことでかかる病院によって支払いの値段が違うということになっておるわけであります。それで課税病院というのは一般的に言えば私的な病院、それから非課税病院というのは公的な病院というふうに一般的に見られているようであります。ちょっと順序に聞きますが、との課税、非課税の区分というのはこれどういう意味ですか。
  47. 藤繩正勝

    説明員藤繩正勝君) 労働災害によるけがとか疾病は、普通の疾病に比べまして、やはり手がかかるという問題がございまして、健康保険の単価に若干上乗せをする。しかも、いま先生が御指摘のように余りまちまちでもぐあいが悪いということから、昭和三十六年からほぼ全国的に統一してこれをやろう、こういうことになっているわけでございます。そこで御案内のように労災保険ではみずから労働福祉事業団というものをつくりまして、労災病院を全国で三十四つくっております。これで全部が労働災害の診療がカバーできれば一番いいんですけれども、とうていそれではカバーできませんので、そこで一般の国公立の病院、さらには民間の診療所、病院等にお願いをするということでございます。ただ労災保険の立場から言えば、できるだけ診療費は安く引き受けていただければ助かるわけでございますけれども、しかしながら、またこういう実情であればできるだけ手厚い労災診療を確保するという意味において、やはり地方労働基準局長が指定医療機関と相対で単価を決めていきます場合に一応の基準がございますが、たてまえとしては相対で決めるというような場合に、やはりそれらの要望というようなものも頭に入れて最終的な線を引かざるを得ないわけです。  そこで問題は国公立、公益法人等によります病院、これは税法上では課税されていない。ところが民間の場合には一定限度でございますけれども課税されるという問題がございます。これはどうしてそういう差を設けるかということは税法上の原則によるものと思いますけれども、しかし労災保険といたしまして労災病院あるいは国公立の病院だけでカバーできないとすれば民間医療機関の協力を得なければならない、その場合にたとえばわかりやすく申し上げますと、国家の経済行為で、たとえば物品を購入する場合に、無税の物品もございましょうし、製作過程で税金のかかるものもあると、結果は同じような物品であっても安い物だけでカバーできなければ、課税の物はやっぱり税金が含まれた価格を了承しながらやはり契約をしていくということもやむを得ないことだろうと思っています。そんないきさつがありまして、若干やっぱり課税医療機関に対しては少し見るということで御協力を煩わすということで従来やってまいりまして、五十銭差がついておるわけでございますが、しかしこの問題は衆参両院の社会労働委員会でも多少問題がありはしないかという御指摘がございました。それからまた、五十銭でいいのかどうかという問題もあろうかと思いますので、私ども今後ともなお検討さしていただきたいというふうにお答えをしてきているわけでございます。勉強してみたいというふうに思います。
  48. 志苫裕

    志苫裕君 まあ私はごく素人流に考えまして、けがしちゃって駆け込んだ場所が公立の病院だったら一点十一円五十銭で支払いができる。駆け込んだ場所が民間の病院だったら十二円、国立の病院へ駆け込んだら十円ということらしいけれども、これはやっぱり筋としてはおかしいですよ。いまあなたのお話だと民間の病院は税金を払っているんだからじゃまあしようがない、税金分払ってやろうかということになりますと、これはまた別の問題が飛び出します。物を買う場合にも税金のかかっているものは高いから、医療に税金がかかっているとして、その税金のかかった分は民間の病院に払うというのは理屈であって、医師会の方が、おれは税金よけい取られているんだから高う払えという主張はわからぬわけじゃないんです。わからぬわけじゃないけれども、しかし、それならまた別のことを考えればいいんであって、もしそれだけどうしてもやらねばならぬというのであれば。私はやっぱりこのシステムはずいぶんおかしいという気がいたしますよ。  お伺いします。たとえば自治体病院だけでこの差が八億だというんですよ。民間病院並みにもらっておれば自治体病院は八億収入があったということですよ。銭がなくてピーピーしておる自治省あたりが黙って見ておるという法はないと思うんですけれども自治省はどうですか。この点について何かいままでがんばったことがありますか。
  49. 吉本準

    説明員(吉本準君) 労災保険の診療報酬の問題について、民間と公的な機関とで格差のあるということは御指摘のとおりでございます。私たちとしましても、自治体病院だけをとりましても経営も苦しい事態でございますので、こういう問題につきましては国立の関係省あるいは労働省の方ともよく相談をいたしまして今後検討を進めていきたいというふうに考えております。
  50. 志苫裕

    志苫裕君 そういうのんびりしたこと言わぬでね、労働省がいろいろ考えておるというんだから、それ以上に考えて、やいやい言わなきゃだめですよ、これは。自治省というのはとんでもないときにけちけちするかと思うと、とんでもないときにおおようになっておるので困ったものだと私は思うのですがね。これはひとつ一がんばりしなさいよ。まあ、幸いにして労災保険は黒字で健全な運営もされているようだし、また原資は事業主負担金ということでもあるようですしね。医師会や何かいろんなかかわりもあるんでしょうが、ここのところは大臣、やっぱりあなたからお答えをいただきたいところですが、これはやっぱり是正をするということでいかがですか。
  51. 藤繩正勝

    説明員藤繩正勝君) 大臣からお答えする前に、先生十分御承知だと思いますが、もし誤解があるといけませんので……。  先ほど労働者が国公立の病院に駆け込んだときはどう、民間の場合はどうというような例がございましたけれども、御承知のように、いまお話がありましたように、これは全額事業主負担で賄いまして、給付は政府が行いますから、どこに飛び込もうと労働者が受ける医療給付に差があるはずはないわけであります。その点はひとつ誤解がないようにお願いをいたしたいと思いますのと、自治体病院が八億これで割りを食っているんだという御指摘ですけれども、まあ恐らく医師会側といいますか、民間から言わせれば、それは税金がないからやっぱり肩の荷がそれだけ軽いだろうという、こういう水かけ論がやっぱりあるだろうと思います。ですからその辺は私どもも、いずれにしましても労災としてはできるだけ幅広く各種の医療機関の協力を得て、できるだけ完璧な労災診療をしたいという気持ちから、やはり御協力をいただくにはそれぞれの御納得も得なきゃならぬということで、一応こういうことでやっておるわけでありますけれども、たびたび御指摘もございますから、十分今後研究さしていただきたいというふうに思うわけでございます。
  52. 志苫裕

    志苫裕君 大臣、どうですか。
  53. 長谷川峻

    国務大臣長谷川峻君) 私、労働省へ参りまして非常に気のついたことは、労災病院が三十幾つかありますけれども、最近は非常に労働者の災害、病気、そういうものが昔からあったでしょうけれども、非常に多くなった。そういう場合に一般のお医者さんの協力を求める。ですから最近は普通の開業医でも産業医学というものに非常に注目しておる。そういうことからしますと、私はやっぱり医師側の、一般のお医者さん方の非常な援助というもの、協力と、そういうところで協力体制あるいはまた知恵をかりるところにいままで重点を置いてきましたので、いまお話しのあったようなことも含めながら、将来ともにそうした医師会の方々の協力、またその間に、局長からも話ありましたように、労災関係では労働者の場合にはこれはもう事業主負担でやっておるということも含みながら、ひとつ考えてみたいと、こう思っております。
  54. 志苫裕

    志苫裕君 ぜひそれは、ひとつ早急に是正をされるように。私は先ほど局長から話のありました点はよく承知の上なんで、正確に言えば病院は医療患者に駆け込まれたら一方の方は十一円五十銭もらえるし、一方の方は十二円もらえるということになりますわな。そういうことですが、いずれにしても医師会とのいろんなお話があることはわかります。医師会について言いたいこといっぱいありますが、ここで言うたって何にもならぬ話でありますから、いずれにしても、ひとつその点はぜひ早急に是正されるように要望いたします。  最後になりましたが、これは私の出身の県のことで恐縮でありますが、同時に一般的な問題でもあるということで御了解いただきますが、身障者の雇用促進法の改正法の審議に当たっても衆議院の地行や、特に社会労働委員会で議論がありました問題ですから御存じと思うんですが、新潟県の糸魚川市にいま起きておる目の不自由な身体障害者の雇用の問題です。重複はできるだけ避けるようにして物を言いますが、いずれにしても身体障害者の雇用というものについて法律まで改正をして内容を充実さしていこうということで努力されています。そして県や国はそれぞれ民間にもせっせと指導されておる。大変結構なことであります。一方、その公の立場にある糸魚川市というところで自分の職員が目が不自由になったと。目が不自由になったら、おまえは心身の故障で正常な公務能率は遂行できないだろうからやめていけと、こういう問題が出た。一方は雇用するために一生懸命やろうと言っておる。もう一方ではいまいるそのものをやめてしまえ、これじゃ右手と左手がずいぶんあべこべな問題じゃないかというので、この機会にこの種のケースは恐らくあちこちにも出るだろうからひとつ丁寧な議論をしてりっぱな取り扱いも決めたいという意味で私は提起しているわけでありますが、この件については同様の趣旨の問題提起を衆議院でも行いまして、労働省の方でも、それから自治省の方でもいろんな意見を持ちながら、とにかく実情をよく調べてみましょうと。で、指導助言ができればしてみたいということにはなっておるんですが、その後いかがですか、両省ちょっとその問題についての見解を聞きたいところです。
  55. 鹿児島重治

    説明員鹿児島重治君) ただいま先生の御指摘の問題につきましては、私どもも衆議院の方で御質問がございました後に事情を若干詳しく調査をいたしたわけでございます。その結果、すでに御承知と思いますけれども昭和四十七年の初めに発病いたしまして、以来断続的に病気休暇をとり、今日まで至っておるわけでございますが、病気休暇も一応消化いたしまして、それからさらに本年の四月二十一日にいわゆる休職、無給の休職に入ったわけでございます。この前にすでに一年間有給休職という期間がございましたが、本年四月二十一日に無給休職ということになったわけでございます。これらの扱いにつきましては先生御承知のとおり国家公務員法、地方公務員法いずれも均衡のとれた扱いをいたしておるわけでございまして、それらの扱いに従いまして市当局は措置をしてまいったわけでございます。  なお本人の病状につきましては、私どもが調べました限りにおきましては、まだいわゆる確定した病状ではないようでございまして、そういう状況の中で本人もいろいろと復職についての努力をしている。市当局もその状況を見守っているというような状況報告を受けておるわけでございます。
  56. 志苫裕

    志苫裕君 労働省
  57. 望月三郎

    説明員(望月三郎君) ただいま自治省の方からお答えしたとおりでございまして、私ども本人が完全にまだ治っているというようには聞いておりませんので、もうしばらくその事態の推移を見守っていきたいと、こう思っております。
  58. 志苫裕

    志苫裕君 いま自治省のお答えですと、経過は私触れませんが、問題はいまの御本人の病状がまだ治ったとか、まるきり治らないとかですね、そういう確定的な状況でない。本人もせっかく復帰の努力をしておるということのようですが、それは言うてみればそうかもしれません。何しろベーチェット病という難病ですからね。こうやればぴたっと治るというふうなことがわかっていないまさに難病、業病でありますから、しかし御本人もあらゆる手を打って、いまはとにかくほぼ正常な状態で生活ができているという状況にあるわけです。問題は復帰したいと言っても、いままで目が見えていたものが目が見えなくなったんですから、もとと同じ仕事には復帰できないですね。復帰できない。何らの受け入れ条件もなしに、私丈夫になりましたと言って出勤をされても、目が見えないんですから、もと税金の仕事していたんですがね、そこには働けないわけです。そこでそういう方が、目が見えないけれども、目が見えない人でもできる仕事があれば一生懸命やれるわけですよ。そういう仕事を積極的に開拓をしよう、そういう点について互助の精神を発揮しようというふうなことで雇用促進法があり、さらにそれを強化をして労働省もがんばっておられるわけですよね。問題はそこにあるわけですよ。  これは直接雇用は市当局でありまして、自治省とか労働省に責任があるということを私言うんじゃありませんが、少なくともそういう問題を国の大きい政策としておやりになっておるのですから、一自治体に起きた問題を、これを一つのまさにケースにしまして、総がかりでひとつ研究もしてみるし努力もしてみるし手当ても講じてみる。まずここのところの姿勢をはっきりさせませんと、ただ地方公務員法の分限条項があって、心身の故障にたえない者はやめていくより仕方がないんだ、それもちゃんと時間があって、最初に半年休んで、一年有給になって、一年はさらに残りは無給になって、あといつやめさせるかというのは長の裁量次第というレールに乗せてしまわないで、いま言った問題をどこかできっかけをつかむような対処をすべきじゃないかということを私はまず指摘をするんですが、いかがですか。
  59. 長谷川峻

    国務大臣長谷川峻君) 身障の問題について非常に国会が御熱心になってもらってありがたいんですが、私は身障者の場合はやっぱり環境を整備してやって、それからできるような仕事を身につけてもらう。それにはまず自立するという精神。この糸魚川の話が出ましたが、去る私七日、八日北海道に参りまして、そのときには、御承知のように北海道の道庁が爆破されたことがありまして、私は爆破された晩にすぐ知事に電話をかけ、翌日現地の局長をしてどういうふうな状況であるか見舞いかたがたやらしたものですが、せんだって行ったときは、そのときけがした職員はどういうふうな職場に復帰したか、それをずっと知事さんに聞いてみたんです。そうしますと、足がなくなっても前の職場に戻った人もあるし、それからけがによっては、もう耳が聞こえなくなったそういう方々を、本人たちがやる意思をはっきりした者をどういう職場に配置するかということで苦労しておるという話がありました。糸魚川の問題の場合でも、私は全盲になられたというお話でもあり、この前話を聞きましたから、どういう職場に、本当にやる気がある、またそれを受け入れる気があるというふうな両方の気持ちをぜひひとつはっきりさしていただいて、自治省と連絡をとりつつ、こうしたケースの場合に連帯性というものと自立精神というものとのかみ合わせの一つのモデルケースになるんじゃないかと思って注目しているわけであります。
  60. 志苫裕

    志苫裕君 大臣の前向きの答弁を了承いたしますが、ただ本人の自立の精神、これは旺盛なものであっても、なかなか受け入れてくれなければそれもむだになるわけでありまして、問題は地公法の分限条項で言う、これはあれですか、自治省の解釈をちょっと聞いておきますが、これを非常に冷たく適用されますと、せっかくのいまの労働大臣の前向きの話もだめになってしまうわけであります。期限切れで、はいさようならというふうに首切られてしまうことになるわけでが、これどうですか、分限条項の地公法二十八条の一項二号、「心身の故障のため、職務の遂行に支障があり、又はこれに堪えない」者は、言うなら解雇すると、こういうふうに続くわけでありますが、この「心身の故障のため、職務の遂行に支障があり、又はこれに堪えない」者という解釈を自治省はどのように解釈されていますか。いまの身障者の積極的な雇用というものの絡みにおいてですよ。
  61. 鹿児島重治

    説明員鹿児島重治君) いまお話のございました二十八条の一項第二号でございますが、これは個々具体的なケースについてそれぞれ解釈すべき問題だろうと思いますが、具体的にはそれぞれの職につきまして、心身の故障によってそれぞれの職についての職務にたえ得ない場合というぐあいに解釈すべきだと思っております。したがって、この一項の規定におきましても、単に免職ではございませんで、降任または免職をすることができるということで、降任による配置がえも予想しておるところでございます。
  62. 志苫裕

    志苫裕君 その降任にもちょっとひっかかるけれども、まあそのことは別にしまして、たとえば健康な体の人が片手がなくなった、それは健康な者に比べれば、片手がない分だけ与える仕事によってはこれは差が出ます。しかし片手のない人に向く仕事を工夫をすることによって、その人が持っておる全能力を、片手がない方が持っておる全能力を発揮できれば、これはそれなりの能率も発揮しているわけだし、心身の故障とは言えない。そういう意味で、平らに健康な者と障害のある者とを比べての心身の故障ということではないだろうというふうに私も思いますし、いまの御答弁もそのように解します。  とすればするほどに、これは衆議院でも植弘公務員部長が答えておりますが、身障者といえども十分な公務能率を発揮できる職場があるはずなのだから、そういう面への配置転換ができるものであれば大いに努力をすべきだという趣旨の答弁もされております。でありますので、この機会に労働省自治省、直接には指導自治省でしょうが、努力をしてもらって、御本人は、ずいぶんこうなりますとせっせと勉強しまして、全国的に自治体にどういう職場があるだろうかとか、おれがもしやれるとすればこういう仕事だがなあとか、そういうようなものを積極的な提案をしておるようです。しかし、まあそれがいまにわかに市当局の受け入れるところとなっていない。目が見えなくても機械によってはタイプは打てるわけですし、目が見えなくても耳が聞こえるわけでありますから、電話の交換ぐらいはできるはずですしね。あるいはまた目が見えなくても市民相談ができる分野だってあるはずですし、いろいろとあるわけでありますので、そういう点について通り一遍じゃなくて、まさに法の精神を踏まえて、せっかく皆さんの方もひとつ積極的に対処してもらいたい。この点を最後に要望いたしますが、自治省よろしゅうございますか。
  63. 鹿児島重治

    説明員鹿児島重治君) 具体的なケースにつきましては、最終的には任命権者の判断するところだろうと思いますが、ただいま先生の御指摘になりましたとおり、地方公共団体も身障者雇用促進法によりまして、御案内のように一定の雇用計画を樹立するということでございますので、そういう形で地方公共団体にも具体的な措置をとっていただくよう私どもとしてはお願いしてまいりたい、かように考えております。
  64. 案納勝

    案納勝君 私は四十八年度決算に対する質疑として、二点にわたって大臣に質問したいと思います。ただし本日の委員会の運営について委員長に協力する意味で、きわめて時間もわずかでありますから、いま質問をしようとするのは、一つはILO百五号の問題、もう一つ労働災害の問題です。これいずれも三十分、一時間では実は片がつくといいますか、一定の方向が出ない問題です。したがって私は、本日はきわめて重要な点について大臣の見解を承って、問題についての解明は後日に譲りたいと思います。  まず第一に、大臣ですから多く言う必要はないと思います。ILO第百五号の問題について、すでに相当長期にわたっていますが、前段は抜きます、ずばりとお聞きしますが、わが国はなぜ今日まで批准をされないのか、批准措置をとる意思が大臣におありなのか、まずその点はっきりお答えいただきたいと思います。
  65. 長谷川峻

    国務大臣長谷川峻君) ILOについてわが国、ことに百五号条約を批准すべきかどうかというお話でありますけれども、私はILOという国際機関、これには先日高橋展子さんという、ILOに幹部をお送りしておりますし、アメリカが脱退通告などをしておるようですが、私のほうは守っていく、こういう姿勢をとっております。いままでも皆さん方の御協力を得て批准するものが世界レベルにようやく達している、その中に百五号がありますが、これも御研究いただいておりますけれども、百五号条約につきましては、禁止されているところの強制労働の具体的範囲についての解釈上の疑義が多々ありますので、これを明らかにするのを待つということと、さらに国内法との抵触が大分ありますので、この抵触の有無、それからその所要の検討を行う必要がある、こういうふうな考えでございます。
  66. 案納勝

    案納勝君 お尋ねしますが、今日までILOでは六二年の専門委員会、六八年の専門委員会、これらについて幾つかの結論が出されてきております。  そこで、それは後ほど触れるとして、この百五号、強制労働禁止に関する条約について現在何ヵ国が批准をされているのか、特にわが国の場合は先進七ヵ国会議等で、少なくとも経済的にも政治的にも先進諸国として位置づけられている。国際的な政治経済、多面にわたってきわめて重要な役割りを果たしていると理解をします。その中でイギリス、フランス、西ドイツ、イタリア、オランダ、 カナダ、 スイス、 アメリカ、オーストラリア、ニュージーランドなど、いま申し上げた各国はどのようになっているか、あわせてお聞きしたいと思います。
  67. 長谷川峻

    国務大臣長谷川峻君) 現在までこの条約を批准した国は九十一ヵ国、そしてその中には先生ただいま挙げられた、英国、西ドイツ、フランスがあります、民主主義国としては。ソ連あるいはアメリカもあるというふうに聞いております。
  68. 案納勝

    案納勝君 もう一回お尋ねしますが、イギリス、フランス、西ドイツ、イタリア、カナダ、オランダ、スイス、オーストラリア、ニュージーランド、これは批准をしていますね。
  69. 森英良

    説明員(森英良君) いずれも批准いたしております。
  70. 案納勝

    案納勝君 俗に西欧諸国と言われる中ではアメリカ、きわめて重要な七ヵ国会議などで指導的役割りを果たしているというアメリカは批准されていますか。アメリカだけですね、批准されていないのは。
  71. 森英良

    説明員(森英良君) 未批准国は約四十ヵ国ござ  いますけれども、目ぼしいところでは、特に西側  におきましてはアメリカあたりだと思います。
  72. 案納勝

    案納勝君 たとえばソビエトや東欧圏の場合には、発生の経過からして批准については幾つかの問題を抱えていることはよく承知をしています。しかし今日のように九十四ヵ国、しかも先進諸国がこの条約に批准をしているということは、この条約がすでに国際的一般化された基点となっているということを裏づけると思うんです。私はここでもう一回大臣にお尋ねをしますが、一九六六年の六月、ILOの第五十回総会では、六八年の国際人権年に向かって決議が行われました。そしてその決議とあわせて六七年の一月には、当時の事務局長のモース氏が各国の政府に対して、なかんずくILOの条約の中における人権関係の基本条約について速やかな批准を要請をしています。しかもその中には完全な実施を訴えて、あらゆる努力を強化をするようにと訴えております。この中で指摘をされている七つの条約があります。  一つは強制労働に対する二十九号というやつ、これは一九三〇年、それからいま言う強制労働禁止に関する一九五七年の百五号条約、結社の自由、団結権擁護の条約、これはすでに批准されています八十七号条約。団結権、団体交渉権に関する条約、これは九十八号条約。さらに結社の件、これは農業関係を中心に。これは十一号条約。雇用、職業等に対する差別待遇の条約、百十一号条約。同一賃金条約、これ百号条約。この七つの条約が基本的人権に関する条約として各国にあらゆる努力をするよう要請をしております。六七年であります。  ところが日本政府は、六七年に六八年の専門委員会議に向けてこの百五号条約に関する現状報告提出をしています。その中身は実はいま大臣が冒頭説明をされた中身一つも変わらないんであります。それでILOの場合は六二年と六八年に専門委員会を開いて、六二年の場合にはまだ全体的なものとして規範として確立されないから、各国の関係ある法律を羅列をした程度にとどまっています、報告書は。しかし六八年には、日本政府報告書を出した報告書等を受けながら、具体的な項目についての一定の結論、ケースを出している。なかんずく日本の問題について三項三点にわたって指摘をしています。そして今日七六年、少なくとも七、八年経過をしています。そういう中でいまだに六七年のILOに対する報告の態度と日本政府の態度、要するに大臣、変わらないということは私は納得できないのです。言われるところの憲法上には差別はない、あるいはそういうことは憲法上には保障されている、こういうことを言われ、国内法の問題について若干の検討の問題があるとしても、政府が言うようにわが国の憲法については強制労働は禁止をしているんだ、こういうものに抵触をするものはないということを第一項に挙げられていますけれども、そういう事実があるならば、そういうことを指摘をされているならば、速やかに批准の措置をとるのが今日日本が国際的の立場からして私は重要なことではないか、こう思うんです。  ましてや私は、八十七号条約の際に、あの批准ですら約七年かかりました、国内法制に。大臣御存じのように、私もジュネーブに何回か行きました。そして私たちが反省をしているのは、ああいう国際会議の舞台で、国内における労使のさまざまな問題がああいう舞台の爼上に上ってお互いに争われていくということについて、一部大変厳しい批判をし合い、反省をし合ったことがあるんです。今日においても私はこれなしとはしません。しかも八十五号ですら七年かかった。そういうやり方をすればますます日本の国際的地位を低下させるだけじゃありませんか。ILOというのが生まれきた変革から含めて、いまわが国としては最もこれについて力を入れ、そして国際的な日本の置かれている立場の中でこの基本的条約については積極的にILOについて協力をしていく、そういう中で初めて日本の政治経済というものが各国に評価をされてくるんじゃないでしょうか。私はここで時間がありませんから、大臣にそういう意味での見解をまずお承りしたいのであります。  そしてその次には、この七、八年の間に情勢は変化をしています。たとえばケース百十五項、これは六八年の。百二十八項、百二十六項、いずれも政治的制裁。政治スト、ストライキへの制裁、各項目で日本の問題触れられています。そういうものを受けて日本政府がどのように理解をし、いま検討しているのか、具体的な検討している内容について、私は文書で提出をいただきたい。その点はいかがですか。前段の見解といま後段の問題についてひとつ大臣の見解を承りたいと思います。
  73. 長谷川峻

    国務大臣長谷川峻君) 先ほどもお答えしましたが、私はやっぱり日本がILOというものを遅まきながらとにかくずっと遵守しつつ常任理事国になって今日に来て、そういう中から日本の地位というものが上がっているということをよく認めているものです。そうしたことですから、条約批准する数もいいですけれども、やっぱりそれを実行することが大事だというふうに私感じておりますから、ときには遅いというおしかりがあるかもしれませんが、条約を批准した暁にはこれを完全に遵守できるというところに、国際外交に対して日本の明治以来の姿勢だ、こういうふうに感じておりますので、御注意の点は十二分に拝承しながら、内容の充実なり解釈なりにいまからも勉強してまいりたい。  後段の問題につきましては、事務当局からお答えさせます。
  74. 青木勇之助

    説明員青木勇之助君) お答え申し上げます。  百五号条約は非常に重大であるということは先生の御指摘のとおりでございます。なお解釈上につきましては、かなりまだ問題がございます。いま先生、一九六八年の総合的調査以降どういう検討をしたか、どういう点に問題があるんだ、こういう点を明らかにしろということでございますが、これは主として労働省にかかわります問題よりも、政府関係各省とかかわります問題がかなり多うございますので、関係各省とも相談の上措置いたしたい、こういうふうにひとついたしたいと思いますので、御了承願いたいと思います。
  75. 案納勝

    案納勝君 それは主管はやっぱり労働省でしょう。なら労働省取りまとめて提出をしてください。これは大臣ね、私は大臣の答弁では納得できないんですよ。また結局六十八号の二の舞をわが国は踏むことになることを恐れるのです、正直言って。だから私はこれに対する早急な政府の態度をいまこそ必要だと思います。その点ではきょうの質問は、この問題はこの程度にとどめます。ここにも六八年のケースについての資料もありますが、改めてこれは大臣の見解あるいは政府の態度をただしたいと思います。  そこで私は、次いで労働災害問題について少しくお尋ねをいたします。五十年度労働省労働白書によりますと、労働災害による事故は減少して、死亡者数も四十五年には六千四十八人だったのが、四十九年には四千三百三十人と減少し、大幅に少なくなってきている、こういうふうに報告をされています。しかし四十九年の労働災害による被災者は約百二十五万である。交通事故被災者、これの二倍に当たっています。交通事故や火災などに比べますと、なかんずく交通事故なぞは交通戦争と言われて、きわめてその被災者、被害者というのは多いんであります。その二倍に労働災害は、事実上少なくなったと言われながら現出している。  そしてしかも、私は労働災害による死傷者数の規模別に見ますと、三十人から九十九人に当たる中小企業に至っては全体の七七%を占めるということ、こういう状態というのは手放しでほめられるものではない。いや、もっと厳しくこれについての政府の、いや労働省の取り組みというのがなされなくちゃならぬと思います。なかんずく減少してきた原因の一つとして、四十九年には生産活動の停滞が著しかった、こういうふうに指摘をされています。要するに生産活動が停滞をして、不況によって操業率の低下が結果的に減少した、こういうことを一つの減少した原因に挙げられているだけに、災害率というのは依然として減ってはいない、こういうことが裏づけとして言われると思います。  私は労働災害問題というのは人命にかかわる問題であります。きわめて重大な問題だけに、いままで以上に国の細かい指導というのが私は必要じゃないだろうか、きめの細かい。私はここに資料としていただいております労働災害防止計画、安全衛生法第六条に基づいて四十八年から五十二年までの計画がすでに示されています。私はこれを読む限り、全く実はペーパーだけじゃないのかと、こういう印象を免れないのです。もっと具体的な施策というのが、目に見えて具体的に災害事故というのが減少してくるという、そういう措置が人の面からも金の面からも伴って出されてくるのが私は本当であろう。ところがこの中に述べられているのは、かくしなくてはならないという訓示規定みたいなのばっかり。こういう点についてきわめて不満を持つんです。  そこで私は、いま労働省としてこの労働災害について今日の動向をどのように理解をした上で対処しようとしているのか、まずお伺いをいたしたいと思う。
  76. 藤繩正勝

    説明員藤繩正勝君) 労働災害がゆるがせにできない重要な問題であるということは御指摘のとおりだと思います。ただ数字について見る限りにおきましては、最近の不況ということもございましょうが、ここ数年非常に数字改善をされてきておるわけでございまして、たとえば死亡者数にいたしましても、四十九年、いまお挙げになりましたように四千三百三十でございますが、五十年の推計はさらにそれを下回って三千七百二十五というふうになっておりまして、十年ぐらい前に六千人台がなかなか切れなかった往年の状態を見ますと非常にまあ改善されたというふうに見ております。しかしながら労災保険の新規受給者に見る限りにおいては、五十年も百十五万という数字でかなりの規模を示しておるわけでございます。  そこで私どもとしましては、先生御承知の労働安全衛生法というものを昭和四十七年に制定していただきました。それからまあ画期的に行政を進めておるわけでございますが、いま労働災害防止計画が非常に抽象的ではないかという御指摘もございました。これはやはり五ヵ年計画でございますから、どうしても抽象的なものになりますけれども、具体的には毎年毎年私ども労働基準行政の運営方針という中で相当詳細なものを打ち出しておりますし、また各災害防止団体におきましてもそれぞれ自主的な方針を打ち出しております。また関係業界の労使におかれましても、それぞれ検討をいただいておるわけでございまして、今後とも私どもはその努力はさらに強化していかなければならぬと思っております。景気が一応底をつきまして、景気浮揚対策として公共投資を拡大するというようなことから、建設業あたりの活況がまた予想されます。そういうことにつきましても、実はきのう、きょうと全国労働基準局会議をやっておりますが、その点で特に災害の再発ということに十分注意するようにということを特段の指示をいたしたような次第でございまして、十分その辺は対応していきたいと思っております。  それと災害の中身でございますが、確かに数字に見る限りにおいては改善を見ておりますけれども、一方におきまして産業の進展から災害が非常に大型化してきておる、あるいは重篤化してきておるという問題もございます。それからもう一つの特徴といたしましては職業性疾病、従来労働災害といいますと、どうしてもアクシデントによるけがということが頭にあったわけでございます。それも重要な問題でございますが、最近は職業性疾病の問題がやはり非常に重要な災害の問題として登場をいたしておりまして、昨年の六価クロム、塩化ビニールの問題等々にも見られますように、また最近ではじん肺とか、その他各般の労働災害が新しく職業性疾病問題の形で出ております。そういう変化に対応いたしまして、私どもとしては、たとえば産業医学総合研究所というものをこの七月一日から発足をいたしますし、あるいは産業医科大学の設置その他諸般の政策を進めて総合的にこれらに対応していきたいというふうに考えているわけでございます。
  77. 案納勝

    案納勝君 そこで再度お尋ねをいたしますが、あるいは御意見を伺いたいんですが、いま私の手元に労働省から提出していただいた資料「定期監督実施状況」というのがあります。たとえば四十九年の一月から十二月分を見ますと、十八万九百三十六事業所で定期監督を行ったところ、十二万八百五十三件が基準法及び労働安全衛生法違反の事業所として指摘をされている。違反率は六六・八%、こういうふうに述べている。もちろんいま監督官等の要員上の事情等で全事業所というのでなくして一定の抜き打ち的定期検査ということになっていますが、この辺も判断の一つの材料に入っていますけれども、この統計から見まして、このように六六・八%の違反率があり、なかんずく六六・八%の違反率の中に労働安全衛生法違反は八七・八%になっているわけなんです。要するに大部分がこの労働安全に関する問題であります。  私はこれは四十九年だけでなく、ここにいま四十五年以降の資料がありますが、若干の年間によってでこぼこはあっても、総体的にこの傾向は違っていません。ということは、労働安全問題がきわめて重要な、しかも労働省にとっても労働安全問題というのは基本的問題である、根幹の問題だということを言われて久しくなりますが、依然として労働災害が減少しないのです。質もまた変化をしてきている。ということを考えた場合に、私は今日までの経済の不況あるいは好況ということにかかわりなく、企業というのが利潤第一主義的なやっぱり企業論理の上に立っている限り安全対策というのは手抜かりをしてくる、この傾向を私は否定できないと思います。しかし逆に安全を手抜かりすれば、そのことによって大事故が起これば、逆に企業にとっては大きなマイナスになることはわかりながら、実は手抜かりをしているというのが、これは今日もなお続いています。  そういう意味では、企業の責任というものもきわめて重大であることはもう言うまでもありません。すべて私は企業の責任だと思う。まして事故が発生をしたというときには、現場の担当者が業務上無過失致死罪ということなどで送検をされるというのが多いのであります。経営者や企業の責任者というのは、ほとんど実はそういった責任から免れるという例が多いんであります。私はここで一点お聞きしたいのは、今日までこの労働安全問題をめぐって企業主が送検をされた件数はどのぐらいあるのか、この辺が一つ。私の調べでは労働基準法、あるいは労働安全衛生法等を見た場合に、労働安全に関する罰則は幾つかありますけれども、その中心は大体五万円以下の罰金になっているわけであります。そういう刑罰であり、しかも今日まで送検に及ぶようなものは全くほとんどない、ほとんどないと言っていい。大部分が是正勧告で終わっているんであります。  私はそういった点について、いまも質問しましたが、お答えいただきたいんですが、私はこれ大臣にお聞きしたいんです。それだけに企業責任性というものをもっと高めていかなくちゃならぬ。そして企業が責任持って労働者の生活と安全を守っていく、そして生産性を上げていく、こういうことに本当に真剣に取り組んでいくという、企業の利潤より第一に安全問題を取り上げていくという、そういう指導というのが私は労働省はなされなくちゃいかぬ、との法律案そのものも私はそうあるべきだと思います。そこで私は罰則規定、これは必ずしもいいことじゃありません。今日のようにこういう刑罰じゃなくして、もっと企業主の罰則というものを高めて従来よりも重罰にして、それによって企業主の自責とそして責任を果たしていく、こういうふうに私はこの法律そのもの、あるいは指導そのものがあるべきだと思いますが、今日のこの法律内容、法文の内容をそのような方向で改正をして警鐘乱打をしていく、企業の責任性というものを明確にしていくということについて大臣の御見解を承りたい、そういう気はございませんか。
  78. 藤繩正勝

    説明員藤繩正勝君) 大臣からお答えする前に、労働基準行政に非常にお詳しい案納先生がいろいろ問題点を御指摘になりましたので、若干申し上げたいと思います。  まず第一に違反率でございます。これは確かに違反率が高いよりは低い方がいいわけでございますけれども、しかし、あらゆる事業場における労働基準法の遵法状態というものを客観的に把握することは困難でありまして、やむを得ずこの業務的な統計をとっておりますが、私ども労働基準監督をする場合には、まず問題の多い事業場を選びます。それから労働災害に傾斜して、御説のように非常に重要な案件でございますから、労働災害防止に傾斜して監督をやっております。したがいまして、どうしても違反率は高く出る、それはある意味では監督官のモラルを示すものだという言い方もできるわけでございまして、私どもは両面からこの数字は見てみなければいけないというふうに常日ごろ思っております。しかしながら、たとえば安全監督について言えば、昭和四十七年に四五%でありました安全基準違反率が五十年には三七・一%というぐあいに下がってきておるという事実もあるわけでございます。  それからもう一つ送検という手段で、あるいは罰則ということで十分企業にプレッシャーをかけなければだめではないか、こういう御指摘でございますが、私どもも強い監督をするということによって是正をさせていくという考え方は全く同感でございますけれども、しかし、ねらいはやはり労働基準法違反を直してもらうというところに重点がございます。そこでこれは国際的なILOの労働監督の方針などにもなぞらってわれわれはやっておりますけれども、やはり違反指摘いたしまして、まず直させる。あるいは危険有害な施設については使用停止処分をする。そうしてなおどうしてもそれが直らない場合に司法処分にする、こういうことでやっておるわけでございます。司法処分は四十九年の例を言いますと、全送致件数が千三百九十五件でございますが、そのうち安全衛生関係が千百十六件でございまして、安全衛生に重点を置いて司法処分の運営をやっているようなわけでございます。なお今後ともその辺は十分努力をしていきたいと思います。  それから安全衛生の確保という点は、何といいましても行政努力には限界がございまして、やはり自主的な管理ということが必要でございます。その中ではもちろん事業主の責任ということが最大でございます。と同時にやはり労使で現場においてこれを処理するということが大切でございまして、実は御承知のように安全衛生委員会では、法律で昔から半数は労働組合の推薦する者が参加しなければならないということでお願いをしておるわけでございますが、この辺の活用につきましても、今後十分関係者に私どもはさらに訴えていく余地が多々あるというふうに思っているわけでございます。いずれにしましても、いろいろの御指摘がございました、十分肝に銘じてがんばってまいりたいと思います。
  79. 長谷川峻

    国務大臣長谷川峻君) 労働省施策はたくさんありますけれども、何といっても勤労者の命を守ること、体を守ること、これが最重点一つでございますので、私はいま局長が答えたような形でやっておりますが、その中にやっぱり身を挺して、新幹線の工事などが始まると、大型プロジェクトでなかなか危険であるという話などを聞きますと、私自身が入って、そういうときに社会的反響を呼び起こす。あるいは博多新幹線が安全の問題でなかなか理解を得られないというときには、安全衛生部長と私と局長が入って行って、運転台に乗って、そうしてそういう場合に是正なりすると、こういう、せんだっても幌内炭鉱で二十数名の爆発事故がありましたから、そこに入って行って、そういうところを将来の問題にいささか話を聞いてくる。  私はやはり一番大事なことが安全衛生だと思っております。高尾山の下にみころも堂という慰霊塔があり、毎年産業戦士の慰霊祭がありますが、こういうところにまで行ってやはり雰園気を盛り上げていくということ、それから起訴、司法処分の問題もありますが、最近のようなこういう社会連帯が唱えられて、社会的企業の責任が言われているときに、私の方の勧告を無視して事故を起こしたものは片っ端から司法処分にかける、こういう姿勢でやっております。いずれにいたしましても命を守るために懸命にやりつつ、そうして企業も伸びてもらうというところに重点を置きながら、及ばずながら労働省は懸命にやっておりますので、御督励のほどをお願い申し上げます。
  80. 案納勝

    案納勝君 私は大臣、夕張炭鉱の爆発のときに、ちょうど中央基準審議委員だったんです。安全衛生規則等の改正問題とか——しかし、そのときといまと余り変わらないのです、残念ながら。まことに残念なんです。たとえば労使の協力というのは、私はこれは人の命にかかわるだけに大事なんです。それにも増して企業の責任というものは重大である。その中で、たとえば安全指導委員の問題等についても、いま全国的に労働省が指定をされて協力をされております。しかしその活用ですら私は十分でないと思うのです。その権限についても、あるいは経費についても。せっかく安全衛生指導員が配置をされたにかかわらず、活用が十分でない。私はこのことはいまここで触れようとは思いません。もっとこれ活用について、労働側からもそういう指導員が出て、そうして中小企業その他について指導ができる、もっと的確な指摘ができるというやり方をしないといま全く名前だけの指導員、こういうことでは私はどうにもならぬと思います。言われていることとやっていることは大分違うじゃないかと指摘されても私はやむを得ないという点もあると思います。これはきょう触れません。いずれにしても御検討いただいて、もっと指導員体制というもの、あるいは企業の責任というものをもっとやっぱり、余り感心したことではありませんが、罰則を強化するなり何なりして、企業に警鐘乱打をしていくというそういう姿勢こそ私は望ましいと思いますが、十分御検討いただきたいと思います。  そこで時間もありませんから急いで次に入ります。いま基準局長から言われたように死亡災害等については減少をしています。しかしこれで直ちに労働者の命や健康が守られているかというと必ずしもそうじゃありませんし、新しい変化をしてきている今日、職業病がいままでの規範、規律あるいは一定の枠内では律し切れない状態に来ているのではないかと思います。特に有害な化学物質の多量使用あるいは新物質の開発あるいは新技術による機械化等による頸肩腕症候群等の発生あるいは腰痛症等、きわめて多岐にわたっているのが先ほど御指摘をされたとおりです。私はここに資料があるのですが、大臣、四十年を一〇〇にしますと業務上疾病発生件数は四十九年は一六七になる。件数がたとえば四十年は一万九千百八件でこれを一〇〇にしますと四十九年は三万二千四十七件、これは業務上です。したがって私は、そういうことについて全く災害は減少しているがというだけでは解決しない問題を含んでいる、こういうふうに考えます。  そこで、これは基準局長と大臣に御意見を承りたいのですが、そういう中で労働基準法施行規則三十五条の規定で「負傷に起因する疾病」以下三十六号というのがありまして疾病を掲げていますね。この認定についてはこの三十六号と合わせて「前各号の外中央労働基準審議会の議を経て労働大臣の指定する疾病」「その他業務に起因することの明らかな疾病」というふうに、必ずしも三十六号にこだわりませんよという指導が今日も行われているのですが、しかしもうすでに基準局長御存じだと思いますが、過般新日鉄のコークス炉工場に従事する労働者で肺がんで死亡する、現場、遺族から告発をされた後追いということでこれについての因果関係労働省は認めると、こういうことがありましたね。あるいは仙台のソニー、最近問題になってますね。磁気テープ製造工程中における災害、要するに職業病の発生によって最近になって、昨年からですか、昨年肝臓障害を起こして死亡したケースについて労働省が後追いになってこれを認定をしている。  こういうことが、最近六価クロムの問題でも同じですが、続発をしている。私は続発とあえて言う。このような状態ですから、従来の認定基準範囲ということについて、私はもう一回再検討、見直す必要があるのじゃないのか。これは幅広く、たとえば現場の段階の現実に働いている人たちの態様を見たり調査をしたり、あるいは専門家等を中心にして対策を立てて業務上及び業務外の職業病について、その認定の基準についてもう一回根本的に洗い直す必要があると、こういうふうに私は考えますけれども、そういうお考えがあるかどうか、この辺についてお伺いをいたしたいと思います。
  81. 藤繩正勝

    説明員藤繩正勝君) 私どもいま考えておりますことと大変適切なタイミングでいま御質問をいただいたわけでございますが、実は職業病の範囲につきましては、労働基準法施行規則三十五条に規定がございます。しかし、これは基準法ができましたころに制定をしたまま推移しておりまして、衆参両院で私も着任しましてから過去の速記録を三、四年読んでみましたが、たくさん改定をしなきゃならぬではないかという質問が出ておるわけでございます。私はこれはもう猶予ができないというふうに思いまして、先般専門家を七人お願いをいたしまして、この四月から三十五条改定のためのそれだけの作業をやるための専門家会議を発足させました。どうしてもこれはやり遂げたいというふうにしていまやっております。ただ問題は頸肩腕症候群のお話も出ましたけれども、やはり業務との因果関係を画一的に一つ基準として定めるということの困難性というのは、まだたくさん腰痛その他、特に神経症状を伴います疾病についてはあるわけでございますから、一〇〇%完璧なものができるかどうかは別といたしましても、現行三十五条についてはぜひ改正をしたいというふうに思っているわけでございます。  それからその作業とは別に、具体的な業務上外の認定のためには、これまた先生御承知のように、労働省ではかねてから各種の専門家会議を重ねまして、現在約十九の認定基準を持っております。これにつきましても時代の進展に伴いまして鋭意その都度改定をいたしておりますし、また新基準の設定等も行っております。その中で特に最近では疫学調査の手法を活用するということをやっておりまして、たとえば昨年来の六価クロムの場合にも疫学的な結果によりまして、思い切ってたとえば六価クロムの製錬現場に四年以上勤務した者が肺がんになった場合には、もうそのことだけで業務上の肺がんということで認定をしていくというような、そういう取り上げ方を実は最近いたしておるわけでございます。今後ともその点を努力をしていきたいと思いまして、先ほどもお答えしましたこの七月一日に発足いたします産業医学総合研究所におきましても、疫学業務というものを新たにつくりまして、特にその点を力点を置いていきたいというふうに考えておるところでございます。  しかし実情は、全体の見直しも一つございますし、それからそういう各種の専門家会議を毎日のように実は運営をしておりまして、もう補償課はそのために追われておるような実情にございます。ちょっと御披露いたしましても、いまの全体の三十五条の検討委員会、クロム障害、塩化ビニール、有機溶剤中毒、電離放射線、水銀中毒、腰痛、振動障害、肺がんというようなものが現在動いておりまして、職員も大変でございますし、各専門家の方々も大変な御無理を願っておりますが、なおがんばってまいりたいと思います。
  82. 案納勝

    案納勝君 全体を見直してみてということで御努力いただいている、ぜひ早急にそういった結論を出していただきたい。特にたとえば基発の第五十九号、キーパンチャーの認定基準この間出しましたね、御承知のように昨年の二月の五日、あの中でも鑑別テストとしてやりますね、アドソン試験あるいはライト試験、そのほかに四項目の神経・血管圧迫テスト、こういうものがありますけれども、必ずしもこのテストで診断の決め手にならぬという批判があること御存じだと思うんですね。私は大変むずかしいと思う、確かに。しかし、やっぱり労働の態様とそれからいま言われるさまざまな問題を、やはり十分に踏まえた上でこれらの指導というのが出されますように、なお洗い直しができるようにぜひひとつお願いをしたい。  そこで、もう一点主要な点についてお尋ねをしますが、今日業務上外の認定の要件についていま洗い直しをと、こういう話をしましたが、現在業務上外の認定に当たっては業務の遂行性、業務の起因性、こういうのが要件になっていますね。そうしてその挙証責任は請求人にあるのがこの法律のたてまえになっていますね。私は労働災害補償保険という性格、労災保険の性格から言って、これは無過失保険であって、民事裁判における損害賠償とは性質が異なっていることは言うまでもありません。権力もない、金もない、専門知識も乏しい労働者が、あるいは家族が、金も権力もある企業の被害事項についてみずから立証していく挙証責任というのは私は酷だと思う。これは最初からそういうことはできないことは明らかなんです。とりわけ大企業の場合には企業の秘密等があります。これを第一義にしておりまして、ノーハウなどは絶対に明らかにしません。そこで労災保険だけが因果関係の挙証を請求人に求めるというんじゃなくして、私はもっとこの点を改善されるべきじゃないか。公害四大裁判等においては疑わしきは補償すると、こういうたてまえをとっています。挙証責任を企業側に求めています。ところが、この労災保険の場合の認定については疑わしきは補償せずと、こうなっている。私は本来あるべき姿からして、挙証責任をこの請求人に求めるんじゃなくして企業側に求めて、疑わしいのは補償していくという、そういうあり方に変えるべきだと思いますが、大臣いかがでございますか。
  83. 藤繩正勝

    説明員藤繩正勝君) 労災の場合に挙証責任が労働者側にあるというのが一般に言われておりますけれども、必ずしもそれは正確ではないと思います。これは政府が行います事業でございまして、結局、業務上外の最終の判断は労働基準監督署長が行います。いわば責任は政府にあるというのが正しいと思うんでございます。ただ、その材料を事業主からもいただきますし、それからみずから業務上災害を受けたと主張なさる労働者からもいただくと、こういうことだろうと思います。いま事業主に証明さしたらどうかという御提案もありましたが、実は先生御案内のように、戦前の労働災害扶助責任保険法でございますか、これは建設業中心でございますけれども、事業主申請主義でございました。しかし戦後はやはり労働者の権利ということから労働者申請主義に変わったわけでございまして、私はそのことは正しいというふうに思います。そういう意味で、やっぱり役所が、現在も鑑別診断とかいろんな努力をいたしておりますが、役所がやっぱりもっと責任を持って適正な診断ができるような努力をしていくことによって労働者の負担を軽くするというのが一番必要だろうと思っております。  それから疑わしきは云々というお話がございましたが、これはよく出る御議論なんですけれども、問題は疑わしいとは何ぞやということになるわけでございまして、労災保険でございますから、やはり業務上との因果関係というものを無視するわけにはいかない、業務上と因果関係がある限りにおいて事業主の無過失賠償責任を追及していくという、こういうことでございますから、それは無視できない。ただその関係を証明するについて、先ほどもお答えしましたように疫学調査のような手法を今後大いに活用すべきだと、言ってみれば疫学調査というのは一種の、いま先生がおっしゃったようなことに近づいているわけでございます。肺がんの例を申し上げましたが、肺がんはたばこによって起こるということが非常にこのごろ言われております。ですから六価クロムの製錬事業場にいた労働者で、四年以上いた者で肺がんで亡くなった方の中には六価クロムではなくて他の要因で肺がんになられた方もあるかもしれない、医学的に言えばそれは可能性は十分にある。にもかかわらず、今度の認定基準ではもう文句なしにそれは業務上の肺がんであるというふうに認定していこうというのが今度の態度でございますから、やはり疫学的な手法というものをできるだけ取り入れることによって、いま先生が御提案になったような線に近づいていくということが望ましい、また公正であるというふうに思っているわけでございます。
  84. 案納勝

    案納勝君 いまの点については私もまだ意見のあるところなんです。たとえば最近の事例の中で、先ほど申し上げました八幡製鉄の問題あるいはソニーの問題等の取り扱い等について、労働省の取り上げ方等について意見があるところなんです。  そこで、時間がありませんからそれはまた後に譲るとしまして、取り急ぎ先に進めさしていただきますが、私は大臣、五十年十一月、「労働災害家族の生活実態に関する調査」、労働省婦人少年局で出されましたこの資料を見さしていただました。きわめて深刻な事態なんです。そこで被災者の場合、そのことがすぐ家庭生活、家庭の中に持ち込まれているという実情が余すところなくこの中に明らかにされています。給付が十分でなく労働災害によって家庭生活も打撃を受ける、破壊をされる、こういったものがこの中でも指摘を多くされています。  たとえば五十年の十月の被災世帯の収入は約十八万五千円で、勤労者世帯の全国平均収入が十九万一千円、これをきわめて下回っています。しかも、その中で公的年金が八万七千円で家計の収入の約五割、そのほかは妻や家族の働いた収入で、あるいは親戚からの仕送り、あるいは賠償金などを使って暮らしを立てている。その中でも、収入が十万円未満の家庭では年金だけの収入しかないというのが六〇%を占めているんです。収入の低い層ほど年金の依存率の割合が高い。こういう面から見て、労災年金を含めて公的年金の額が家族の最低生活を維持するだけ私は必要じゃないだろうか。この中で労災保険の平均年金額はたった五万四千円、こういうふうに出されています。私はこれはこれで十分だとは労働大臣は思っておられないと思います。通常国会でも年金問題について御苦労をいただいています。したがって平均四人家族でこれで果たして生活ができるだろうかと、こう考えざるを得ないし、私はきわめて困難な状態にあると思います。そこで再度この年金の額の引き上げ、こういうものについて労働大臣はお考えにならないのか。たとえば今回労災保険法が改正されました。五十二年から実施をされていきますが、私はこの引き上げによってもこの実態は解消されない。せっかく労働省の婦人少年局がこれほどの内容調査をされたら、この内容に伴って労働省はどうするかというのが実は答えとして出されてないと私はこれ何にもならないと思います。この辺について、大臣どのようにお考えなのか、お聞かせいただきたいと思います。
  85. 長谷川峻

    国務大臣長谷川峻君) まあ労働省の中からそういう資料などが出るというところに私は労働省のいい姿勢があると。そういうところに、お互いが勉強し、また皆さん方からそれを指摘していただいてさらにまた推進すると。今度の労災、せんだっての国会で改正を御可決いただきましたが、あの場合でもスライド制を実施するとかいろんなことで、私はまずまずのところへ行っているんじゃなかろうかと。しかし、それでも満足しておりません。私の方の審議会でも、やっぱりその時代時代に合わしてなおさら検討をしていこうという形をとっておりますことも御理解いただきたいと、こう思っております。
  86. 案納勝

    案納勝君 私は指摘をしたのは、いま年金額が総体少ないというだけでなくして、大臣も、この中にあるように、たとえば被災者家族の場合に、高校進学率、大学進学率がこの中の資料で明らかですが、いま高校進学率などは九〇%以上の進学率を一般的に示しています。ところが被災者の場合には四五%が高校進学をあきらめざるを得ない。まして大学進学はほとんどあきらめるという実態ですね。何らかの幾つかの措置があります。あるけれども、これはそれで解決をしない。もっと時間があればまたそれなりの指摘もできるのですが、私はそういった点について、金がないわけじゃないんでしょう、そういう中で、私は大臣が言われるように、今回改正をされたと言っても、年金のスライド制は賃金水準に応じてスライドする、一〇%以上、今度改正されましたね、二〇%以上が一〇%になります。私はそれだけでは、たとえばことしの春闘で賃上げは、物価は一ヵ月だけ一けたになりましたよ、確かに。しかしまだどんどん上がっています、二けたに。そして賃金は御案内のように全国平均で一〇%切っています。ガイドラインかどうかは別にしまして、負けた勝ったは別にして。そういう場合に、ことしの場合年金改定は行われない。しかも常に後追いです。私はこういった点について、他のどんな福祉政策よりももっと労働災害の問題についての対策というのは、もっと高いものであってしかるべきじゃないか、もっと充実したものであってしかるべきじゃないか、こういうふうに考えます。大臣いかがでしょうか。
  87. 長谷川峻

    国務大臣長谷川峻君) そのためにも災害をまず防止することに重点を置きまして、その次には、いまスライド制の話も出ましたけれども、ボーナスも今度給与の中に計算するというふうなことなどもやっておりまして、これは先生御理解のILOの水準以上に私は現在の労災というものはいっているんじゃなかろうかと思いつつも、今後ともやっぱりほかの社会保険制度や諸外国の動向、さらにはまた経済社会等の状況をよく勘案いたしまして労災保険制度が十分にその機能を果たすようにしっかりと推進してまいりたいと、こう思っております。
  88. 案納勝

    案納勝君 大臣、社労のこの労災保険法の改正の際の論議の中でも、大臣はILOの基準以上に上回っていると盛んに言われている。私は大臣どうかと思うんですよ。世界百四十何ヵ国の、しかも最低の基準の中でILOの一定の労働規範が出されます。しかし、わが国は少なくとも先ほどから言うように先進七ヵ国と言われる、きわめて経済的にも社会的にも、あるいは政治的にも世界の先進国の仲間に入っているんだと、すべての問題を、その国際情勢抜きにしてわが国の政治もできないという、そういうきわめて評価をされているわが国の場合、私はILOの基準で、それしているからそれでいいんだという、そこまで大臣は言ってないが、私は先ほど言うように、やはり労働災害に対しては気持ちを新たにして普通の、言われるところの福祉政策以上の措置をとっていってしかるべきじゃないのか、その姿勢が私はいま求められているんじゃないか、こういうふうに実は指摘をしておきたいんです。  そこで最後ですが、私は金があるんじゃないかと、こういうふうに、労働保険特別会計の場合に。だからもっと年金上げなさいと、こうさっきから言っているわけです。この四十八年の決算報告等を見まして、四十八年度の収納済み歳入額が四千七十一億円、支出済み歳出額は二千百四十九億円で、収支の差し引き額は千九百二十一億円、四十九年度の場合を見ましても収納済みが五千五百三十四億で、支出が二千八百十七億、差し引き額が二千七百十七億と、両年度の収支の残、積み残し、差し引き残はほとんど毎年変わっていません。不用額というのがたくさんあるわけですね、毎年。だから、それだけのその取り扱い、要するに余裕金等については法律上の積み立てをしていくというような規定があります。私はこういったものについて考えた場合に、これらの収支の、しかも毎年同じように五〇%に近い不用金がある、支出残があるという、こういう財源について、私はもっと本来的にこの年金の増額や福祉政策を高めるという意味で金を使ってしかるべきじゃないかと、こういうふうに考えますが、大臣いかがですか。
  89. 藤繩正勝

    説明員藤繩正勝君) 保険財政のことでございますので、お答えを申し上げますが、不用額に巨額な金が立っているではないかという御指摘ですが、これはいささか、不用額ということではございませんで、実は労災保険はけがとか病気になった労働者の治療、あるいはその間の休業、あるいは障害が残れば障害補償、亡くなられれば遺族補償というようなことで給付をしていくわけでございますから、災害が起こりましてその年度ですべての人が治って給付が要らなくなってしまうというものではないわけでございます。かなり長期にわたって措置がなされなきゃならぬ、そのためのある程度の経費というものをやはり支払い備金という形で用意をしなければならないわけでございまして、現在、私どもといたしましては、決算年度末までに発生した災害につきまして、当該年度の翌年度以降に給付さるべき保険金額総額を推計いたしまして、一定年限の支払い備金というものを用意をいたしていくというやり方をとっております。  したがいまして昭和四十八年に確かに歳出残額千九百二十一億でございますが、支払い備金充当として繰り越しておりますものが千八百十七億であります。四十九年には同じく二千七百十七億の歳出残額に対して支払い備金充当として繰り越しておるものが二千三百三十一億であります。そういうぐあいな制度になっておりますということを御理解をいただきたいと思います。しかしながら、最近災害の減少に伴いまして労災保険財政がやや好転をしてまいっておりますが、今度の法律改正で私ども労働福祉事業というものを設けさしていただきまして、補償もさることながら、補償中心という基本路線はもとより変わらないわけでございますが、先ほど来御議論のありましたような労働災害の防止、特に職業性疾病の予防あるいは治療、リハビリテーションというような周辺の施策に十分投資をしていくというようなことをやっていきたいという改正もいたした次第でございます。そういうことで今後とも努力をいたしたいと思います。
  90. 案納勝

    案納勝君 最後です。私はどうも、たとえばこの四十八年決算の中で不用額二千百二十一億一千八百九十八万八千六百二十五円、こういうように出されていますね。これは毎年そう出てきています。おまけに五年間ばかり、五年間ほとんど予備費が使用されないままに推移しています。言われるところの不時の大災害が起こった場合——これはわかるんです。しかし、そういう場合には私は補正予算なり何なりの、予算の補正。片っ方では積み立てをやっているわけですから、毎年。それらの積み立てを使用するなどという措置がとれるのじゃないですか。こういうのが毎年、私はこの特別会計の場合は収支をことさら合わせる必要はないんじゃないですか、予算の場合。そういう面を考えた場合に、私はもっとこの保険特別会計の場合の会計については、年金を引き上げるなり何らかの措置がこの中で取り得るというふうに理解をしますが、最後の点ですが、これは私もまだ合点いかない点がありますから、これは後ほどとしても、そういう理解をしていますが、間違いなら間違いと、あなたの方の御見解を承って終わります。
  91. 藤繩正勝

    説明員藤繩正勝君) 労働保険の中には、御承知のように雇用保険と労災保険がございますが、雇用保険では積立金制度というものがございまして、数千億の積立金を持っておることは言うまでもないのですが、私どもの方のこの支払い備金は不時の災害の勃発に対処するための積立金ではございませんで、先ほど申し上げましたように、災害に対する補償は単年度で終わりませんものですから、それに対する経費というものをあらかじめ備金として用意をする、こういう性格のものでございます。積立金は労災にはごくわずかしかございません。備金を差し引いてもなお若干の余裕があるときに、いまたしか三百億に満たないと思いますが、その程度の積立金は持っておりますけれども、大どころは支払い備金という形でやってまいっておるわけでございます。しかし先ほど申し上げましたように、なおこの保険財政のあり方につきましては、私どももいかにすれば災害補償に最も効率的に対処できるかという観点から寄り寄り勉強をしたいと思います。
  92. 鈴木力

    委員長鈴木力君) それでは、午後一時二十五分より再開することとし、暫時休憩いたします。    午後零時四十分休憩      —————・—————    午後一時二十七分開会
  93. 鈴木力

    委員長鈴木力君) ただいまから決算委員会を再開いたします。  午前に引き続き、昭和四十八年度決算外二件を議題とし、労働省決算について審査を行います。  質疑のある方は順次御発言を願います。
  94. 遠藤要

    遠藤要君 大臣にお伺いいたしておきたいと思います。不況による倒産については大臣も、先ほどのお話にございましたとおり、大臣自身がはだに感じていろいろ施策を講じられ、心配されていると、こういうふうな点は承知をいたしておるのでございますけれども、御承知のとおり消費者物価のまあ一けたというような点での政府の公約を果たしたと、しかしながら、その後の不況は非常に大変なもので、毎月千件に達するという倒産、そういうふうな点で失業者も非常に逐次増大しているというような点は大臣御承知のとおりだろうと思います。そういうふうな点で、政府も五十年から第一次、第二次ということで不況対策、五十一年度予算において公共事業の拡大と輸出対策に大変配慮されたということは承知をいたしておるわけでございますけれども、しかしながら大臣、そのように政府が配慮されたというものの、実質的に御承知のとおり財特法がまだ継続審議であると、そして国鉄運賃なり電電問題等も御承知のような状態だということであっては、せっかく五十年来不況対策のためのいろいろの施策は講じておるけれども、それが水泡に帰すという懸念もなきにしもあらずではないかと。そういうふうな点で労働大臣であり国務大臣である長谷川労働大臣は、閣議等において一体この財特法なり、国鉄運賃問題等ついてにどういうふうな姿勢を示しているか。御承知のとおり、国鉄においては昨日のボーナスもあのとおりでございます。そういうふうな点もございますので、労働行政に大きな支障を来たすということはあえて私より申し上げなくとも大臣自身がはだ身に感じられておると思いますが、そういうふうな点に対して、閣議等において大臣の御活躍ぶりなどをお聞かせ願いたいと思います。
  95. 長谷川峻

    国務大臣長谷川峻君) 世界全体が物価の高いのと不景気と雇用不安と、これの三つを抱えいてるわけで、それを日本はどう処理していくかということは大変な問題、それについての皆さんからの御審議をいただいているわけでありますが、幸いと申しますか、物価が一けた台、なだらかな春闘と言われるようなもの、さらにはまた、最近は残業時間が非常に伸びていること、輸出が三、四、五というふうに伸びていること、こんなことでようやく景気に対しては上向いて、このままずっと進めば非常に私は、有効求人倍率もいま〇・六八でございます。新規求人倍率は一以上でございます。そんなことからしますと、本当にうまくやって日本に失業のない、そしてまた、安定した世の中をつくるのがお互いの責任、その中にただいま遠藤委員のおっしゃったような問題があります。  現に私、閣議においても三公社五現業のうち、けさの新聞を見ますというと、日本じゅうの役人は、あるいは商社がみんなボーナスで酔っぱらっております。そのときわずかに国鉄従業員四十三万、これは違法ストをやる諸君もあります、しかしまじめにやる諸君もあります。しかしボーナスは生計費の中に入っていると私は思っております。そういうことからしますと、運輸大臣でもありませんけれども、労使の問題と将来の国鉄再建のためにどうしてもこれは解決してもらわなきゃならぬということで、いささか主張もし、きのうも衆議院の運輸委員会に出てやっているわけであります。ほかにまた財特法であり、あるいは電電の問題であり、これはいずれも継続審査になっている問題でございますから、こういう時代でございますので、それぞれの御主張もあるでしょうけれども、御主張の中に、やっぱり連帯性の中に日本の景気を上向いていく、そしてやっていくような姿が必要じゃなかろうかと考えているわけであります。
  96. 遠藤要

    遠藤要君 大臣、けさの新聞を拝見させていただきますると、稻葉法務大臣は、八月末に臨時国会を召集すべきだ、というようなことが載っておりますけれども、一部ではどうしても七月末には臨時国会を召集しなければならぬというような話が、先般運輸大臣なり、労働大臣なり、郵政大臣から閣議において発言があったというように報道されておりますが、閣議全体としてのムードとしては、財特なり、国鉄運賃問題なりに対してどういうふうなお考え、そしてこの不況に対してどういうふうな影響を与えるか、この継続されている事案に対しての成立を辞さないということは、予算執行に当たって、また行政面においてどういうふうな点において影響あるかということの関心度などが各人において共通されておらないんではないか、こう思われますが、大臣の見た目、聞いた口をひとつお聞かせ願いたいと思います。
  97. 長谷川峻

    国務大臣長谷川峻君) いろいろ御批判があるかもしれませんけれども、与党の皆さん、これは自由民主党内閣でございます。でありますから、そういう中に私たちは政策を立案して、それを国会にお諮りし、国民のよかれかしと思う政策を一ずっと実行している中に、いまのような問題がペンディングになって継続審査でございます。私はやっぱり臨時国会というものは、これは幾ら自由民主党政党であっても内閣が腹を決めて党の方に御相談して、そしていつのタイミングがいいかという問題の御相談をしていただき、またそれを通過さしてもらう御努力お願いするということだと私は思っております。そういう意味からしますと、一日も早い方がいいのは決まっております。国鉄の場合でもわれわれが仄聞するところによりますと、四ヵ月もこんなことが続いた場合には一体将来どうなるだろうか、新幹線の予算も全部工事費に回さなければいかぬとか、今度は仮にどんな手配をしてボーナスを払っても冬のボーナスは一体いまのままで果たしていいのかというふうなことも懸念され、先にやはり懸念する中に手配をする必要があるのではなかろうか。その時期の問題については早期ということでございますけれども、まだ内部では話は決まっていない、それに向かっていま調整している段階じゃなかろうか、こう思っております。
  98. 遠藤要

    遠藤要君 不況問題については以上の点で終わりたいと思いますが、何分、ひとつ労働省として、いま毎月千件に達する倒産という点から大臣自体が直接いろいろ御心配をされているという話も聞いておりますのですが、通産省、大蔵省のみに行かせずして、ひとつ労働省が率先して援助の手を伸べていただく、それが失業対策だというような点で御努力を願っておきたいということを要望申し上げておきたいと思います。  続いて、身障者の問題等については先ほど案納委員なりその他の方から御発言がございましたので省略させていただきたいと思いますが、その中において中高年層の失業防止についてお尋ねをしておきたいと思うのですが、失業者の大半は中高年層であります。そういうふうな点で、大手の企業なり、企業収益の低下を理由にしてまず首を切るということになりますると、どうしても高年齢層をねらう、そういうふうな点がございますが、定年制等もいろいろ企業において設けられておる、労働省所管の法律では中高年齢者の雇用の促進に関する特別措置法などがあって、雇用率の達成の努力に努められているということはよく承知をいたしておるのでございますが、この給付金制度を設けられているが、この運用についてどれくらいの効果があるかということについてお尋ねをしておきたいと思います。
  99. 遠藤政夫

    説明員遠藤政夫君) 先ほどから御指摘ございますように、二年来の不況の中で失業者が増大してまいっております。その中でやはりいままでと違ってまいっておりますのは、その失業者の中で中高年齢層、特に五十五歳以上の高年齢層の滞留が際立ってきておる、こういうことでございまして、いま大臣からお答えございましたように、本年に入りまして生産も増加し、輸出もふえる、労働面でもいい傾向が次第に出てまいっておりますけれども、その中でやはり景気が回復いたしましてもなおかつこういった高年齢層の就職の確保ということが非常にむずかしくなってまいっております。  私どもは、五年前に中高年特別措置法ができました際に、中高年齢者の就職がこれからだんだんむずかしくなる、こういうことで中高年齢者四十五歳以上の求職者につきまして職種別に雇用率を定める、あるいは各種の職業転換給付金制度でございますとか、あるいは職場適応訓練制度、こういった各種の奨励措置を講じまして中高年齢者の職場確保、雇用の確保努力をいたしてまいったわけでございますが、これから、ただいま第三次の雇用対策基本計画を策定いたしておりまして、近く閣議決定の運びになっておりますが、その中でこれからの五ヵ年間の見通しについて見ますと、いままでヨーロッパの先進各国が四十年かかって労働力人口の高齢化が進んできておりますが、それが日本ではその四分の一、十年間にヨーロッパの高齢化の城に達していく、こういうことでございまして、これからの五年間の労働対策、雇用施策を考えます場合に、こういった高年齢者の対策が非常に大きな問題になってまいるわけでございます。  そこで先般の国会で御審議をお願いいたしましたこの中高年特別措置法の改正によりまして、高年齢者の雇用率という制度を新たに定めまして、これによっていままで一般的に行われております五十五歳定年をさしあたり六十歳まで定年を延長しょう、こういう制度を設けたわけでございます。それに伴って、予算措置といたしましても、この五十五歳の定年を六十歳まで延ばしますにつきましては、定年延長奨励金という制度が昨年からございましたが、これを大企業にまで拡充いたすことによりまして、この雇用率の制度と奨励制度と相まってこの六十歳までの定年延長、それから六十歳を超えました者につきましては再採用、勤務延長と、こういった措置によりまして、少なくとも法律的に定められております、いわゆる労働対策の対象になります六十五歳未満の人たちにつきましては、積極的にこれからこういった職域の確保、雇用の安定に努めてまいりたい、こういうふうに努力をいたしておるわけでございます。
  100. 遠藤要

    遠藤要君 それでは労働省自体としては大変御心配をされておるようですが、私は大臣ね、一番ひとつ労働省として威令の行われる国の公務員なり地方公務員に対して、やはり自治体等に対して、いまほとんどの自治体が定年制を設けておったり、それに準ずるような方法で希望退職を募ったりしておるようですが、そういうような点に対して、大臣、何かお考えがございませんか、お聞かせ願いたいと思います。
  101. 長谷川峻

    国務大臣長谷川峻君) これは遠藤さん、きょうもたしか福岡市の例が出ておりますが、地方公務員には定年制ないですよ、定年制が。そういうところにいろいろ問題があるようでございまして、私の方はいまから先六十歳まで年金とつながるような形で六十歳まで定年延長をしたい。そのためには大企業にまで援護措置を講じつつ、一方は組合の諸君とよく会いますから、諸君もいずれ高年齢層になるんだと、だから組合としてもそういうことを考えないかというふうな話までしているわけであります。
  102. 遠藤要

    遠藤要君 まあ地方公務員には定年制はないんですが、大臣の出身地である宮城県等でも定年制はないんですけれども、希望退職をというような形で実質的には定年制があるに準じたような方向で勧奨していると、そういうふうな点があるので、私は地方自治体にもっとやはり理解を深めていくと。やっぱり高年層の失業対策といいましょうか、就職のあっせんというよりも、やはり失業させないということが、そうすれば就職のあっせんということは考えることないわけでございますので、やはり国と最も密接なつながりのある面について、もっと何らかの御努力が願えないかということについてお尋ねしておきたいと思います。
  103. 遠藤政夫

    説明員遠藤政夫君) いま大臣からお答えございましたように、国家公務員、地方公務員については定年制はまだしかれておりません。したがいまして六十歳をはるかに超える、あるいは七十歳にといったような人たちがたくさん勤務しておられますが、いま一般的に、いわゆる五十八歳あるいは五十九歳等で退職勧奨という形で、いま御指摘のように、事実上の定年的な勧奨が行われているんじゃないかという御指摘でございますが、これは主として管理職について行われているわけでございます。一般職につきましてはさほど強い勧奨が行われておらないように私ども承知いたしております。私どもも実は国の私どもの方の職員につきましても、十数年前から五十八歳で管理職につきまして退職勧奨をするという措置をとっておりますが、一般職員につきましてはそういう措置をとっておりません。  で、今回の定年延長につきましても、定年を六十歳まで延ばしますにつきましては、まあ賃金原資がかさむとか、あるいは人事管理上のポストの問題がございますとか、こういった点がこの定年延長のネックになっておりますので、私ども指導方針といたしましては、定年延長をする場合には、五十五歳以上については賃金を横ばいないしは引き下げるというような措置をとると、それからポストにつきましては、部課長とか校長とかそういったポストをはずして、嘱託とか、いわゆるラインからスタッフに切りかえる、こういったことによりまして定年延長を進めていきたいと、かように考えておりまして、国家公務員、地方公務員につきましてもやはり同じような問題がございまして、この賃金の問題なりあるいは特に管理職につきましては管理職からはずすと、特に管理職についておられる方については一定の年齢で退職勧奨という問題もこれは当然起こってくるかと、かように考えておる次第でございます。
  104. 遠藤要

    遠藤要君 局長さんのお話だと、管理職にはあれで、一般にはそういうようなことはないというお話ですが、私の知ってる自治体ではむしろ管理職には六十歳以上の方もおいでになるようだが、一般職員は案外六十歳以上というのはそう私は見当たらぬじゃないかと、私の知っている自治体では。そういうような点があるのですが、その問題だけお話しをしていると後があれなんですから、以上の点でとめたいと思います。  それから大臣、大臣が常に御心配されている出かせぎ対策についてですが、私はこの出かせぎの問題と、建設関係の労賃の問題と、それから先ほども話に出た災害、労災問題でございますが、私は最近の新聞を見ておると、建設工事においての災害によって人命を絶つ、そういうふうな災害がときたま新聞にあらわれた。ところがその住所、出身地を見ていると、不思議なことに全部が東北の人間が工事の災害で亡くなっている。そういうふうな点を考えると、一体なぜそういうふうな危険区域だけに東北の人間が押し込まれているのかというような点に私は大きな疑問を感じておるんですが、大臣この点について御承知かどうか、お尋ねしておきたいと思います。
  105. 長谷川峻

    国務大臣長谷川峻君) 出かせぎの問題は北海道、東北あるいは南九州が非常に多いと言われて、事実そのとおりでございます。それだけに地方に出かせぎしないで済むようないろんな法律的な手当てなどをしながら働く場所をつくるということも必要でございますが、最近の不況から非常に出かせぎも少なくなったと言われましたけれども、ようやくそれも曙光を見出しているようなかっこうでございます。その中において、遠藤委員が御指摘のように、最近起こってる災害、去年の十月でしたか、たしか栃木県で潜函工事で七、八名の者を亡くしました。(「ことしの二月」と呼ぶ者あり)それから先日は山形県の農業土木で七、八名の者がというふうに、二、三年前は荒川の堤防工事で青森県の出かせぎ。国会で取り上げられる労働災害の主なるものがほとんど東北であるということは、私東北出身の者としても残念でありますし、本当にこうした人々の出かせぎの経路なりをきりっとするような法律的な手当てと同時に、今度、そういう意味に直接当てはまるかどうか知りませんけれども、たしか一助になろうかと思いますが、建設労働者の雇用改善という法律皆さん方に御審議いただいて、これによっていささかの手当てをしていこうというふうな形で、これは日本じゅう全体の出かせぎの問題でもありますが、特にたくさん出している東北地方などは、訓練が足りないと申しますか、あるいは経路がはっきりしないと申しますか、あるいは使う諸君の管理が悪いと、こういうふうなことなどがあって多発していることを非常に私どもは残念に思いながら、それぞれ労働基準局等々をして手配をさせているところであります。
  106. 遠藤要

    遠藤要君 先ほどもこれに対する企業の責任ということでお話があったようでございますが、この問題についての当時、現場の責任者は、いままでこのような事故がなかったと、何とも遺族に対して申しわけないというような二、三行の新聞記事で終わっておるわけです。しかしこれは現場の責任者の談だけであって、企業の責任者は一体どういうふうな姿勢であったかということはわれわれに承知ができておらないわけでございますが、こういうふうな点で、この遺族等に対する収集等については労働省で一体その真相を把握されておるかどうかをお尋ねしておきたいと思います。
  107. 藤繩正勝

    説明員藤繩正勝君) 建設業の災害につきましては、いま先生が言われましたような形が一般でございまして、私ども頭を痛めておりますが、災害防止につきましては、したがって末端の下請業者に任すことなく、重層下請の場合の元請責任というのを私どもやかましく言っておりまして、労働安全衛生法でもそういった具体的な条文に基づきまして全体が責任を負うという体制をとっております。  それから災害補償につきましては、これは労災保険で補償がなされるわけでございますけれども、その水準以上に手厚い補償が求められるのが最近の事例でございますが、この場合におきましても、単に下請任せでなくて、元請の事業者が責任を持ってカバーするようにということを私どもも行政指導をしておりまして、いまここで御議論になりましたこの間のたとえば栃木県の大瀬橋の事件なども、その元請の建設業者の副社長を呼びましてその辺の行政指導も直接私ども行っているところでございます。今後ともそういう姿勢でやってまいりたいと思います。
  108. 遠藤要

    遠藤要君 これに対して刑事的な責任と、業務上過失致死と申しますか、そういうふうな責任と、企業者として制裁というと言葉が果たして適当かどうかわかりませんけれども、それに対する責任といいましょうか、制裁といいましょうか、そういうふうな点は労働省としてはどういうふうなお考えを持っておられますか。
  109. 藤繩正勝

    説明員藤繩正勝君) 刑事的な責任ということになりますと、やはり直接の因果関係ということが追及されますので大変むずかしい法律問題があるわけでございますが、しかし出先の人だけが責任を負うということではいけませんので、労働安全衛生法でも基準法とは違って事業者責任というものを強調いたしておるわけでございます。それと同時に、社会的な責任といいますか、建設省にもお願いいたしまして、労働災害を起こしたような事業主につきましては通報制度をもって各地建なり都道府県に連絡をいたしまして、指名その他の上で考えていただくというような連絡措置もとっておるわけで、そういうことで災害防止を徹底してまいりたいと考えております。
  110. 遠藤要

    遠藤要君 私はそういうふうな大きな災害を起こした企業に対して、やはり社会的な何らかの処置を講ずべきではないか。その企業に対していままでと変わりのない国自体が公共事業の指名をして工事を進めたり何かするということに対して国民として大きな疑問を持っている。そういうような点をひとつ労働省としても各省とお話し合いを願っておきたいということをこれは要望いたしておきたいと思います。  それからいま一つは、そのような危険な仕事に出かせぎ者が東北、北海道から出向かなければならぬということは何が原因かというと、先ほど労働大臣がお話しのとおり、東北、北海道は仕事もない。それからいま一つの原因は、私はやはり労賃の問題に全国不均衡があると思います。労働大臣なり労働省自体が御承知のとおり、土工は四十九年八月の調べですが、全国平均が四千五百四十四円ですが、青森が三千七百四十七円、岩手が三千四百七十六円、宮城が三千七百七十七円、秋田が三千四百九十八円、山形が三千三百八十三円、福島が三千四百四円であります。そういうふうな状態で、全国平均より大変な格差がある。そういうふうな点でございますけれども、その格差が何が原因でこのような格差になっているかということについてお尋ねしておきたいと思います。
  111. 藤繩正勝

    説明員藤繩正勝君) ただいまは土工なり大工なりの賃金についての御指摘でございましたが、一般に私ども毎勤——毎月勤労統計調査で見ましても、調査産業の計で最高の都道府県を一〇〇とした場合に青森が六六・四、こういうような数字になっておりまして、やはり同じような傾向が出ておるわけでございます。ただ、この賃金の地域格差は最近非常に徐々にではございますけれども、経済社会の発展に従って往年に比べれば若干縮少しつつあるということでございまして、やはりこれは基本的には後進地域の経済水準を高める、労働市場を合理化するということ以外に方法は私ないんだろうと思うんでございます。最低賃金という制度が法律的な制度としてはございますけれども、そしてまた論者によっては全国全産業一律最低賃金がこういった賃金格差を是正するに役立つという議論もございますけれども、しかし経済の実勢を離れて法律なり制度なりで強行しょうとしてもなかなかそれはむずかしい問題であろう、やはり基本的にはそういう経済格差をなくすという努力政府全体でしていくことによって、徐々に改善をするというのが一番オーソドックスな行き方ではなかろうかというふうに思うわけであります。
  112. 遠藤要

    遠藤要君 まあ経済格差といいますけれども、これは鶏が先か卵が先かというような問題で、生活が苦しければどうしても生活を切り詰めなければならぬということになるのではないかと私は思うわけでございます。その点についても改めてお尋ねをしておきたいと思いますが、さらに私は、なぜ東北がこのように全国平均より下回っているかということになりますると、大臣も御承知のとおり東北は仕事が少ない。公共事業が少ない。そういうふうな点も大きな原因でございますけれども、これまたどっちが先かという悪循環にもなるかもしれぬけれども、全国平均関東地域がやはり労賃が高いということになると、東北の働く者はほとんど関東に流れる。そうなりますると地元に残って、いるのは、たとえば一〇〇の指数のある人間だとすると七〇なり六五の指数の者きり残らないからその程度きり賃金が払えない。健康な元気のいい者は危険な命を張っての働きに出る。あとは外に出られない者だけが残る。そういうふうな点で企業者も建設業者もそれに相応した賃金きり払えないということもあるのではないかと思いますが、この点について労働省と建設省にお尋ねしておきたいと思います。
  113. 藤繩正勝

    説明員藤繩正勝君) いまおっしゃいましたように、結局外に出れないような、まあ言ってみればやや質の劣った労働力というものにはどうしても低い賃金が払われるということになる、こういう御議論、そのとおりだと思います。したがいまして、それを無理にそういう労働力に対して評価以上の賃金を払えということもこれはやはり合理的ではないということになるんだろうと思うんです。むしろいまおっしゃいましたように、関東なら関東に集まってしまう労働力を東北等に移すためには、そちらに思い切った投資をするとか経済発展の政策を展開するとか、やっぱりそういう形をとりませんというと、賃金の側面だけでこれを是正しようとしても私は無理があるんじゃなかろうかというふうに思うわけでございます。
  114. 中川澄人

    説明員(中川澄人君) 私ども建設省といたしましては、過密過疎対策ということで公共投資の全国的な均分化ということに努力をいたしておりますけれども、実は私ども公共工事の発注の際の賃金単価、これはいわゆる三省協定ということで四十五年以来調査をしてきておりますけれども、最近の傾向は東京の賃金は大体全国的に言いますと上位から三分の一程度に位置づけされておる。つまりそれだけ全国的な格差が縮まってきておるということでございます。で、実は今年度から従来の賃金調査を若干改善いたしまして、半年に一回調査を行ってその結果を半年後に反映する、したがって実態賃金にできるだけ正確にかつ早く対応するということにいたしておりますので、さらにこの点の改善に役立つのではないかと、こう考えておる次第でございます。
  115. 遠藤要

    遠藤要君 私はね、力のない者にはやはりそれ相応のということもわかるんですが、それではなかなか出かせぎ防止ということが歯どめにはならぬではないかと、こういうふうな点を申し上げておきたいと思うのであります。  そういうふうな点があることが一つと、それからこのデータによって、建設会社がこの仕事は人夫が百人だということになると、この計算で積算される、単価が。そうなりますから、どうしても多く金を払うわけにはいかないということになるわけです。この出かせぎに来ている力のある一〇〇の指数の者が百人の工事に、実際的には東北に行けば一一〇なり一二〇の仕事が、まあ人が必要だということになるわけでございますので、それだけ人夫賃を、労賃を安くしないと採算がとれないという点も私は考えなければならぬと、こういうふうな点を考えると、東北の出かせぎ防止とそれから所得の格差是正という点から考えても、それからいま一つは、やはり東北と、関東なりよその地域といろいろの面においての、何と言ったらいいか、人口の是正ということを考えて、出かせぎ防止を考え、そういうふうな点を考えると、いま少し労働省と建設省というのがもっとやっぱり話し合って、そしてこのような悲惨な事故が起きないような方法を講じてほしいと思いますが、大臣いかがでしょうか。
  116. 長谷川峻

    国務大臣長谷川峻君) ことしの不況に当たりまして、私の方からも早期発注の場合に特に建設大臣に合議いたしましたことは、地方のやはり公共事業を建設省がしっかり早く出してもらいたい。このことが一つ。もう一つは、おっしゃるように大型プロジェクトがいま東北地方でもたくさんあるわけです。新幹線であれ、縦貫自動車道路であれ、これは行ってみてもわかるとおり全部大企業です。そして働く諸君もどこからが大企業の者が行って働いているわけです。一方恐らくあなたも陳情をいただいていると思うんですが、地方の者は出かせぎに来れない。だからその大企業の中に自分たちを働かしてくれと、こういう陳情があるわけです。こんなことも労働省から建設省の方にお願いもし、私自身も電話をかけたり何かいたしました実例がありますが、そうしますと、この大企業の者がそういう若い諸君の出かせぎ者、来れない者何人かを採用してもらってありがとうと言い、女が何名働いていると、こういうやはり融通無碍なところを少しやらないと、これは私は大変なことになりゃせぬかと。だから気のついたことは労働省から建設省にもお願いをするし、一方私の方でも建設労働者の雇用改善というものは建設省の仕事でありますけれども、積算基礎に入れていただいて、その金で今度住宅の問題だ、社会福祉の問題だ等々をせんだっての国会で御可決いただいた、こういうふうにして建設省と労働省はやっぱり二人三脚的なことでやっていかなきゃならぬのじゃないかということを考えておりますので、気のついた問題はいずれもこれは役所同士のことでありますが、よく合議をしながら推進してまいりたいと、こう思っております。
  117. 遠藤要

    遠藤要君 ぜひその点ではお願い申し上げたいと思いますが、最後に大臣、当初に申し上げたとおり、私はこの不況、失業、この対策は何としても公共事業をもっと大きく促進せしめなければならぬと、こう思うのであります。そういうふうな点で政府自体がいろいろ予算面で配慮されたというもののその実施が問題になっております。東北新幹線も、大臣が何度も言われておるその新幹線も、工事は今年はどうなるかというようなことで足踏みされていると、そういうふうな状態でございますので、国務大臣としてひとつ閣議なり政府の姿勢、先ほど大臣がおっしゃった、ぜひ財特なり国鉄運賃また電電問題、そういうようなものの促進をひとつ政府自体が本腰を入れて野党の方々にも御協力を求めるような姿勢をとっていただくことが、東北としてもまた日本全般の失業対策にも大きな影響があるということで御努力を願いたいということを要望いたして私の質問を終わらせていただきます。
  118. 峯山昭範

    ○峯山昭範君 私はきょうは特に労働省所管の公益法人の問題について質問したいと思います。労働省所管の公益法人は、現在社団法人、財団法人等合わせましてどの程度あるのか、その実態を初めにお伺いしたい。
  119. 桑原敬一

    説明員(桑原敬一君) 労働省所管の公益法人の数は現在財団法人が七十、社団法人が六十五、計百三十五でございます。
  120. 峯山昭範

    ○峯山昭範君 民法三十四条に基づく公益法人といいますのは相当な数に及んでいるわけでございますが、その中でも労働省では全部で百三十五の法人があるということですが、これらの法人に対する監督指導あるいは設立の目的、こういうようなものが十分果たされているかどうかという問題は非常に私は重要な問題であると思いますが、まずこの点についてどうですか。
  121. 桑原敬一

    説明員(桑原敬一君) 労働省所管の公益法人につきましては、関係規則に基づきまして私ども指導監督をいたしておるようなわけでございます。当然に事業計画提出させあるいは事業報告をさせ、収支予算あるいは収支決算を求めております。そういうことによってその公益法人が事業活動が初めのそういった公益的な活動になっておるかどうかということを十分審査をいたしているつもりでございます。そういったことで今後とも進めてまいりたいと、こういうふうに思っております。
  122. 峯山昭範

    ○峯山昭範君 それでは次に、十分にやっていらっしゃるということでございますが、昭和四十六年に、これは六月から八月にかけまして行政管理庁が公益法人のいわゆる「指導監督に関する行政監察」というのを行いました。その勧告が、これは各省庁になされたわけでございますが、昭和四十六年の十二月二十一日に勧告が行われました。その勧告によりますと、特にまあきょうこれから私が質問するであろう問題に関係がありそうなところを申し上げますと、「公益法人の会計経理に関する事務処理の基準を設け適切な指導を行なうことについて」ということで、これは関係各省庁に勧告が行われております。それで、その中で特に「主務官庁は、公益法人の財務運営の適正を期するため公益法人の会計、経理に関する事務処理基準を示し、これにより適切な指導実施する必要があるが、このような指導は十分に行なわれていない。」というのがまず第一点。  それから第二点、もう一点申し上げますが、「事業活動が法人設立の目的に必ずしも添っていない法人などに対する措置について」ということで、その中で「1事業活動が設立目的に必ずしも添っていないなど法人のあり方について再検討する必要があるもの」、二番目に「定款または寄附行為にかかげている公益的事業の積極化を図るとともに、法人の事業運営の適切化について検討する必要があるものなどが認められた。したがって、関係府省はその実態を確認の上、解散指導、事業活動の適正化などそれぞれ必要な措置を講じ、公益的事業を積極的に実施し、また事業運営の適正化を図るよう指導する必要がある。」という、これは全部で九点にわたりまして勧告が行われておりますが、きょう私がこれから質問することに特に関係があると思われるのはこの二点であります。この二点に対して、この勧告後労働省は具体的にどういうような措置をとられたのか、何か具体的にとった措置がありましたら一遍御答弁願いたい。
  123. 桑原敬一

    説明員(桑原敬一君) 昭和四十六年十二月に行政管理庁から御指摘のような監察結果に基づく勧告をいただいたわけでございます。早速労働省といたしましては、御指摘の面で不十分な面がございましたので、労働大臣の所管に属する公益法人の設立及び監督に関する規則を全面的に見直しをいたしまして改善措置を講じたようなわけでございます。それに基づきまして、その後は改善されましたその条項によって指導監督を進めてきたつもりでございます。
  124. 峯山昭範

    ○峯山昭範君 具体的にいまおっしゃいましたが、それは規則の改正といまおっしゃいましたが、その規則はあれでございますか、私の手元に昭和四十五年五月末のものしかございませんが、労働大臣の所管に属する公益法人の設立及び監督に関する規則、これでございますか。これは労働省としましては、昭和四十一年の四月の十八日付でございますが、この規則の改正でございますか。
  125. 桑原敬一

    説明員(桑原敬一君) 何回か改正を経てきておりますけれども、先ほど申し上げましたように、一番新しいのは昭和四十七年の六月に改正を、いまの申し上げました勧告に基づきまして改正をいたしたわけでございます。
  126. 峯山昭範

    ○峯山昭範君 いや、その六月に改正した法律はこれは私がいま申し上げましたこの規則でございますか。これ、労働省から出た分でございますが、これを改正したんですか。
  127. 桑原敬一

    説明員(桑原敬一君) ただいま御指摘の四十五年のものを改正をいたしたわけでございます。
  128. 峯山昭範

    ○峯山昭範君 いや、私いま指摘しましたのは四十一年の四月十八日労働省令第十三号、昭和四十一年四月十八日、これでございますか。
  129. 桑原敬一

    説明員(桑原敬一君) 昭和四十一年四月十八日労働省令第十三号の改正でございます。
  130. 峯山昭範

    ○峯山昭範君 それからもう一点確認をしておきますが、労働事務次官の通達で、昭和四十一年四月二十八日労働省発総第二三号というのがございますが、これは現在でもこのとおりでございますか。
  131. 桑原敬一

    説明員(桑原敬一君) 現在もこのとおりでございます。
  132. 峯山昭範

    ○峯山昭範君 もう一点確認しますが、この中に「公益法人設立許可基準」というのが最後の方に出てまいりますが、これも現在このとおり生きているわけでございますね。
  133. 桑原敬一

    説明員(桑原敬一君) 一番最初の次官通達は四十一年の四月二十八日でございますが、その後、先ほど申し上げました勧告に基づきまして四十七年七月二十六日に新しい次官通達を出しております。
  134. 峯山昭範

    ○峯山昭範君 内容としましては、その新しいものが私手元にないんですけれども、この当時の基準から考えまして、これより基準が緩められるということはないわけですね。これはどうです。
  135. 桑原敬一

    説明員(桑原敬一君) 先ほど申し上げましたように、行監の勧告に基づきまして改善をしたつもりでございます。
  136. 峯山昭範

    ○峯山昭範君 それでは、私はきょうは残念ながら新しい基準が私の手元にありませんでしたものですから、古い方の基準に基づいて質問いたしますが、少なくともこれは勧告前の基準でございます。したがって、この勧告前の基準から考えてみましても、私がこれから質問することについては多少問題があると、こういうふうに考えております。  そこで、まず具体的に問題に入りましよう。財団法人勤労者福祉協会というのがございます。この財団法人勤労者福祉協会について、特にこの寄付行為といういわゆる定款のようなものが出ておりますが、この法人はまず、いつ許可になったものでございますか。
  137. 藤繩正勝

    説明員藤繩正勝君) 勤労者福祉協会は、昭和四十七年一月二十六日に設立許可になっております。
  138. 峯山昭範

    ○峯山昭範君 特にこの中の寄付行為の問題ですが、この中で渋谷区道玄坂に事務所を置くというような記載がございますが、これは現在でもここにございますんですか。
  139. 藤繩正勝

    説明員藤繩正勝君) 先生御承知のように、この勤労者福祉協会は昨年九月二十七日に手形が不渡りとなりまして、銀行取引を停止したというよなことから、現在は長野にございます車山山荘という一部の運営を除きまして事業活動を中止して、もっぱら債務整理に主力を注いでいる状態でございます。そういった状態にございますので、事務所も登記上は、いまおっしゃいました渋谷区道玄坂二丁目一〇番地一二号となっておりますけれども、事実上の事務所は、いま債務処理特別委員会というものをつくって債務処理に当たっておりますが、その委員一長であります堂野弁護士という方の法律事務所、つまり中央区銀座四の八の一〇というところに置かれている形になっております。
  140. 峯山昭範

    ○峯山昭範君 ということは、現在はこの規則の中へうたわれておるところには事務所はないと、で、弁護士の事務所で預かっていると、こういうことですね。そこで、なぜそういうことになったのか、これはやっぱり非常にいろんな問題が出てまいります。そこで、今後こういうふうな公益法人を認可する上で非常に重要な問題が含まれております。したがって、この問題を認可するに当たってのいろんな問題というのがございます。そこで、きょうはこれらの問題をできるだけ詳細に解明をしておきたいと思います。  そこで、この規則を読みますと、まず第三条に「本会は、勤労者およびその家族に体育、文化、娯楽の場を提供するため、その施設を建設し、低廉な料金で利用に供することにより、それら利用者の身心の練成と福祉の増進に寄与することを目的とする。」と、非常に目的としましてはいいことを書いてあるわけです。これは実際問題、具体的にこの会は特に「体育、文化、娯楽」、こういうふうに書いてございますが、具体的な活動はどういうことをされたんですか。
  141. 藤繩正勝

    説明員藤繩正勝君) いまお読みになりましたのは、この財団法人勤労者福祉協会の寄付行為の第三条であろうかと思いますが、それに沿ってどういうことをしたかということでございます。で、この目的に沿いまして、先ほどちょっと申し上げました車山山荘というのが長野県にございますが、これを四十八年の七月に建設をいたしまして、スキーとかスケートとかハイキングというようなものの根拠地として、勤労者及びその家族に低廉な料金で現在も利用されております。会員は一泊二食つき三千円と聞いております。このほかに、週休二日制の普及に伴う余暇利用を中心テーマとして、企業を対象にゼミナールを実施したというような実績が現在までの実績でございます。
  142. 峯山昭範

    ○峯山昭範君 そうしますと、いまお話では、この車山山荘の問題と、それからもう一ヵ所ゼミナールという話がございました。しかし、この寄付行為の中の第四条の事業の中には第一から全部で第四項目まで具体的ですね。それで、具体的に指摘を、こういうことをやりたいということであるわけでございますが、これらの一つ一つこれは実際お伺いしてもいいんですけれども、実際問題としましては、いま御答弁ございました簡単なゼミナールとそれから車山山荘の運営と、この二つだけなんですね。これ以外に何かございますか。
  143. 藤繩正勝

    説明員藤繩正勝君) 結論といたしましては、その二つでございます。ただ本協会は、設立の当初、横浜市に十六万五千平米ばかりの土地で、工費九億五千万円というような計画で、国民ヘルスランドという建設計画を立てて着手したんでございますけれども、結居土地買収が不調に終わったと、資金調達が十分でなかったというようなことから中止になっておるわけでございます。したがいまして、結論としてはそのような事業にとどまっておるという状況でございます。
  144. 峯山昭範

    ○峯山昭範君 いまおっしゃった、国民ベースランドですか。
  145. 藤繩正勝

    説明員藤繩正勝君) ヘルスランド。
  146. 峯山昭範

    ○峯山昭範君 ヘルスランド……。
  147. 藤繩正勝

    説明員藤繩正勝君) はい。
  148. 峯山昭範

    ○峯山昭範君 その国民ヘルスランドというのは、これは認可する当初からもう労働省の方に提出をされていたわけでございますか。
  149. 藤繩正勝

    説明員藤繩正勝君) 当時の申請の中には、そういう計画が入っておったようでございます。
  150. 峯山昭範

    ○峯山昭範君 そうしますと、それではこの寄付行為の中の第四条の第一から第四までのこれは非常にそれぞれ読みますと大変ですから読みませんが、それぞれたとえば勤労者の体力のテストをやるとか、そのほか各種親睦会とか運動会を開催するとかいろいろ書いてございますが、こういうふうなこれを達成するために、いまおっしゃった十六万五千平米という土地にヘルスランドというような大まかな計画、これを建設するということが初めから提出されておったということでございますね。  そうしますと、そこで私は、この寄付行為の第五条に出てまいります、この寄付行為の中の特に財産ですね、「財産目録に記載された財産」、これはどういうものがあったんでございますか。
  151. 藤繩正勝

    説明員藤繩正勝君) 設立許可申請時に添付されました財産目録には、基本財産として預金五百万円が記載されておりました。本協会の事業規模から見ますると、むしろ少ない金額でございますけれども、その際設立許可条件として、国民ヘルスランドの土地建物取得後は直ちにこれを基本財産に組み入れることを付しておりまして、これが果たされれば協会の事業運営に十分な財産であると判断をしたわけでございます。本協会の運営費の大半が利用会員の入会金あるいは寄付金等に依存しておりますけれども、役員構成の面から見て信頼ができるというふうに当時判断されたものと思います。
  152. 峯山昭範

    ○峯山昭範君 それでは、もう一点お伺いしておきます。いまの第五条の第三項、「資産から生ずる収入。」というのがございます。これは、資産へら生ずる収入というのはどの程度と見ておられたわけですか。
  153. 藤繩正勝

    説明員藤繩正勝君) 当初の基本財産としては、先ほど申し上げましたような五百万円でございますから、それの運用利子といっても知れたものでございます。ただ、このヘルスランドあるいは車山山荘というのが後ほどできたわけですが、そういうものが回転をしてまいりますれば、それによって運用収入がかなり出てくるものというふうに考えられたわけでございます。
  154. 峯山昭範

    ○峯山昭範君 それでは、もう一点お伺いしておきます。第六条のこの基本資産と運用資産とこの両方があると、こういうふうに書いてございますが、これは具体的にどういうふうに判断をしておられたのですか。要するに第六条の「資産の種別」の中で、本会の資産を分けて基本資産と運用資産の二つがあると、こういうふうにございますが、基本資産が幾らで、運用資産がどの程度と見ておられたのか、この点ちょっと一遍お伺いしておきます。
  155. 藤繩正勝

    説明員藤繩正勝君) 本協会、一般に財団法人におきましては、その法人格の基礎が財産の管理者や財産の主体と関係なく財産の結合体自体にあるために、その重要性にかんがみまして、財産を基本財産と運用財産に区分しておきまして、そしてその基本財産については管理処分を厳重にしているというのが普通のやり方でございます。  そこで、この協会におきます基本財産は、先ほど申し上げましたように五百万円、これは設立当初、東竜太郎氏から寄付されたものでございまして、これが基本財産でございます。運用財産は、これも先ほど申し上げましたように、協会の事業運営に直接持ち得る基本財産以外のもの一切でございますが、具体的には車山山荘あるいはその借室保証金とか、電話加入権等々が現在としてはあるわけでありまして、当初の計画の中では国民ヘルスランドというようなものがございましたから、そういうものが動いていけばそれの収入が運用財産になる、こういうふうに考えられておったわけでございます。
  156. 峯山昭範

    ○峯山昭範君 問題点は後でやることにします。これは非常に私はこういうぐあいにすうすうと聞いておりますけれどもね、認可の場合に非常にずさんな認可をやっているんですね。いますいすいと答弁していらっしゃいますけれども皆さんが答弁していることは、先ほどの自分のところでつくった労働省の所管の公益法人のいわゆる設立基準というようなものからしますと、全部外れているわけですね。これは具体的に後でやることにしましょう。  もう少し明らかにしておきます。いま役員の話がございましたが、これは主だった役員、いま理事長が東竜太郎さんという話がございました。あと専務理事以下、理事はどういう方がいらっしゃいますか。
  157. 藤繩正勝

    説明員藤繩正勝君) 現在、本協会の役員として登記されております者は、理事長東竜太郎さんでございます。そのほか理事といたしまして新原安郎という方がいらっしゃいます。これは専務理事をやってこられた方でございますが、本協会の中心的な役割りを果たしてこられましたけれども、こういう事件を起こしたということもございまして、五十年の十月一日に専務理事を解任されまして、平理事としてとどまっておるというものでございます。そのほかに理事野津謙という人、これは厚生省の体育官をやられた人でございます。それから東俊郎さんという、これは文部省の体育局長をやられました順天堂医科大学の教授でございます。それから森岡謹一郎さんという理事がいらっしゃいます。これは中国財務局長をおやりになった方でありまして、現在は信用金庫の理事長をしていらっしゃいます。それから花村仁八郎さん、この方は経団連の事務総長でございます。それから大庭哲夫さん、前の全日空の社長、それから白井十四雄さん、日刊工業新聞の前の社長でいらっしゃいます。それから影山衛司さん、現在商工中金の理事長をしていらっしゃいます方であります。それから大島稔一さん、現在横浜市の市会議員をしていらっしゃいます。それから監事に笠井儀郎という方がいらっしゃいます。神奈川県の選挙管理委員をしていらっしゃいます。こういう方々が役員でいらっしゃいます。
  158. 峯山昭範

    ○峯山昭範君 何となくどこかで聞いたような名前の人が非常に多いわけですけれども、これだけの方が集まってこの協会を設立した。そしてこれから私は述べてまいりますが、いろいろな問題を現実に起こしているわけです。  そこで、まず監事からはあれですか、民法五十九条の「監事の職務」というのがあるわけですが、これに基づいて労働省に対しても具体的に報告がございましたですか。
  159. 藤繩正勝

    説明員藤繩正勝君) 監事につきましては民法でそれぞれ職務が規定されております。それで、許可以降、監事が選任されまして、毎年度の財産状況、理事の業務執行の状況を監査しまして、例年適法である旨の報告が行われているところでございます。
  160. 峯山昭範

    ○峯山昭範君 例年というのは、いつからいつまで。
  161. 藤繩正勝

    説明員藤繩正勝君) この法人が許可されましてから、毎会計年度報告がなされております。
  162. 峯山昭範

    ○峯山昭範君 それでは次に、先ほど出てまいりました車山山荘の経営状態、これはどういう状態だったですか。
  163. 高橋伸治

    説明員(高橋伸治君) 車山山荘の経営でございますが、車山山荘は四十八年にオープンいたしまして、その年におきましてはPRの不足等のために約一千万円の赤字を出しております。そのために四十九年度におきましては、その経営を委託方式でやるということで試みましたところ、約百三十万円程度の収益が入ってきております。五十年度状況につきましては、法人が先ほど局長から御説明しましたような状況で事業活動を停止し、さらに関係者が警察に逮捕されるとかいうようないろいろな事情がございますために五十年度報告がまだ来ておりませんので、五十年度状況につきましては把握いたしておりません。
  164. 峯山昭範

    ○峯山昭範君 ですから、車山山荘だけについて見ても、結局赤字なんですね、通算では。そうなんでしょう。
  165. 高橋伸治

    説明員(高橋伸治君) ただいま申し上げましたように、最初の年は赤字で、その翌年若干の黒字が出ておりますけれども、通算いたしますと赤字でございます。
  166. 峯山昭範

    ○峯山昭範君 そこで、その次にもう一つ明らかにしてまいりたいと思います。まず、その次に出てまいります国民ゴルフ場計画、これは今回の問題の中心になっていることでございますが、五十年度の事業計画として国民ゴルフ場計画を出した。そしてこの問題がこじれて現在問題になっているわけでございますが、具体的にはどういうふうな計画で、そしてどういうふうな資金計画になっておったのか、この点一遍、労働省どういうふうにつかんでいらっしゃるか。
  167. 藤繩正勝

    説明員藤繩正勝君) 国民ゴルフ場計画は南伊、豆、南伊那、中伊豆、利根川の四ヵ所に、総工費六十八億円で五十年度から五十二年度にかけて建設竣工する予定のものでございまして、その資金計画は初年度一口百二十万円で千ないし千五百口の法人会員の募集を行うと、こういうことでございまして、運営についてはメンバー制をとることとしておったものでございます。本計画は五十年度事業計画として労働省提出されましたので検討しました結果、そもそもメンバー制をとるゴルフ場というのは公益性の点で問題があるという点、それから従来の寄付金の募集状況、会員の入会状況から見て、仮に会員募集をしても計画どおり集まる見込みがない、会員制をとらないとすれば資金集めはとうてい不可能である、こういう結論を得まして、五十年の四月十六日に新原専務理事に対しまして国民ゴルフ場計画の中止を勧告し、五十年度事業計画の再検討を指示いたしました。この結果、同年六月二十二日に昭和五十年度の事業計画の一部を変更しまして、ゴルフ場建設計画についてはこれを見合わせる旨新原専務理事から報告を受けたわけでございます。労働省としては、同年七月二十一日に再度新原専務理事の来庁を求めまして、五十年度はもとより五十一年度以降においてもゴルフ場建設計画を中止するよう勧告をいたしました。同専務理事もこれを了承してお帰りになった、こういう経過でございます。
  168. 峯山昭範

    ○峯山昭範君 にもかかわらず、実際にはこの計画は進んでおったのかどうか知りませんが、ゴルフ場建設という名目で実際上は業者の皆さんへ話が進んで、そして今回のこの詐欺事件となったわけですけれども、これはこういうふうな事件の概要について、労働省は当然監督官庁ですから具体的につかんでいらっしゃると思いますけれども、現在どういうふうになっているかですね、これはどうです。
  169. 藤繩正勝

    説明員藤繩正勝君) ただいま申し上げましたように、再三中止を指示したにもかかわらず、新原専務理事は五月の二十七日に柿崎工業という業者と南伊豆国民ゴルフ場の造成等の工事契約をしました。また、その後綜合芝生という会社とスプリンクラー取りつけの工事契約をいたしました。その際両社から寄付金、借入金といたしまして、それぞれ千百万円、千二百十万円の金銭を受領したということでございます。このため両社から五十年十月二十七日に、警視庁に対しまして専務理事ほか職員二名が詐欺罪ということで告訴されまして、ことしの五月十九日、前記三名が同容疑で逮捕されました。なお、職員二名はその後釈放されましたが、専務理事は六月九日に起訴されておるというふうに聞いております。
  170. 峯山昭範

    ○峯山昭範君 さらに、この問題については私は非常にいろんな問題があります。これからその問題を詰めてまいりたいと思うんですけれども、もう一点ただしてから、その問題を全部詰めてまいりたいと思うんですけれども、現在それじゃこの勤労者福祉協会というのは、その資産状態、負債の状態、それからその経営の内容、それから現存、先ほど弁護士さんの手元にという話でございましたが、現在総合してどういうふうになっているのか、これからの見通し、それからその会を解散させる権限というのは大臣にあるわけですが、そういうことも含めて現在どうなっているのか、一遍お伺いしておきたい。
  171. 藤繩正勝

    説明員藤繩正勝君) 現在そういう状態なものですから、最初に申し上げましたように、車山山荘の運営が細々と行われている以外は業務は停止しておりますが、結局債務の整理というものを弁護士さんが進めておりまして、現段階で四億五千万円の負債というふうに私ども聞いております。そんなことで、とうてい公益法人としては適切な存在を認めるわけにいかないと私どもも考えますけれども、しかし、解散その他の手段とは別個にここまで事態が進展してまいりますと、非常に関係の方々が多うございまして、そういった零細な債権者の保護ということも考えなければならないことでございます。  そこで、私どもも大変頭を痛めておりまして、先般も東理事長以下先ほど申し上げましたような現在の理事あるいは元の理事、そういう方々に労働省に集まっていただきまして、いろいろ御相談も持ちかけたところでありますし、当日また欠席された二、三の有力な方にも私その後お目にかかりながら、何とか打開の方途はないものかということで、いま苦心をいたしておるというのが実情でございます。
  172. 峯山昭範

    ○峯山昭範君 さて、問題はこれで全部出たわけですけれども、大臣ですね、私はこういうふうないま頭を痛めているとかいろんなことを言うていますけれども、こういうふうな問題を起こした根幹は一体何か。これはやっぱりいわゆる許認可行政のずさんなところにあるわけですけれども、これはもうもともと、先ほども一番初めに私ありましたように、行政管理庁がいわゆる公益法人の問題について勧告をしているわけですね。  その前に私は、この労働省の資料でいたしますと、公益法人の設立の許可基準というものが労働省で少なくとも昭和四十一年にできているわけです。これから厳しくしているというわけでございますから、当然この基準より厳しい基準になっていると私は思うんです。にもかかわらず、いわゆるこの法人が設立する時点でその基本財産となるものは結局五百万円だけですね。この設立基準によりますと、少なくとも私が労働省の資料を読みますと、「実質的に社団又は財団の実体が存在し、目的とする事業を実施する能力を十分有するものであること」と、したがって、その具体的な問題として、ただ単に形式的な人の集団または財産が存在するだけではなく、次のような場合を必要とするということで二つに分かれて書いてあります。  まず第一点は、「社団にあっては」——社団法人の方はきょうは除きます、財団ですから。「財団にあっては、特別の場合を除き、その財産から生ずる果実だけでその法人の目的とする事業を実施でき得る程度の財産を有するものであること」。こういう点からいきますと、先ほどもお話がございましたその計画の当初から、国民ヘルスランドというような計画、これはもう一回局長にお伺いしますが、初めの計画で出ておったヘルスランドをつくろうというこの十六万五千平米というのは、この協会の財産でないわけでしょう。どうです。
  173. 藤繩正勝

    説明員藤繩正勝君) 協会の財産ではございません。
  174. 峯山昭範

    ○峯山昭範君 ですから、協会の財産では全くないものを十六万五千平米というような大変な面積を出して、そこに国民ヘルスランドをつくるという、つくるからには大変なお金が要るわけです。また、そのほか車山山荘の問題一つにしたって、これが負債として残っておるわけですよ、結局これは全部。その運営資金の問題だって赤字になっているわけですから。ですから、初めは理事長が出された五百万円だけというのですよ。しかもこういうふうなものを認可すること自体に問題がある。こういうふうな問題を労働省はもうちょっと厳しく査定をして、厳しく認可を取り締まって、やっぱりきちっと運営できるようにしてから認可しておればこういう問題起きてないんです。また、ただ単に表面的な、きょうは具体的に詰めてずっとまいりましたけれども、理事長ですら、私の手元にございます資料によると、この問題が起きましてから、理事長にはなっているが運営面は理事に任せており、こういう事態となって驚いておると、あなた方のところに来てやっぱり実はこういうようなことを言ったでしょう。現実そうだったろうと私は思うんです。ですから、そういう点からいきますと、こういうふうな問題は、こういうところへ名前だけ連ねて、名前を連ねているから、非常にりっぱな人が確かに名前を連ねている、だからこれは認可せざるを得ないというんじゃ、今後やっぱり公益法人の認可という面から考えてみましても私はいかぬと思うんですよ。やはり労働省はきちっと決めたこの許可基準に基づいて、これはきちっと認可すべきであると思う。  当然私は、この問題についてはいろいろな問題もございますけれども、そのほか、たとえば大臣ね、先ほど事業報告、いわゆる事業報告をちゃんと大臣に見せなきゃいかぬことになっている。出してあるんですよね。私の手元にも入っている。これは非常にずさんな事業報告です、とにかくこれは。これ見ただけで問題を起こすんじゃないかということはすぐわかる。一番初めの年なんか全部一年間の事業報告が三行です。三行です。こんな事業報告を出していたんじゃ、これは何か問題を起こすんじゃないかということは、もう労働省自身が監督の立場にあるわけですからね、ぱっと気がついて、そして強力な申し入れと、もう言うこと聞かなければ解散させると、そこまでいかないと、これは法人として、ゴルフ場の問題では、具体的に一口百二十万円前後で三十五の人たちがお金を払い込んだという事例も現実に出ているわけでしょう。そうしますと、こういうふうな問題の、認可はしなかったとはいえ、その問題を起こした根源は、それはやっぱり労働省にあるということになってくる。  そういうような意味からも、こういうふうな、もう私はこれ以上あれこれは申し上げませんが、いずれにしても、現実に許可基準が、少なくとも行政管理庁が指摘する前ですね——行政管理庁は昭和四十六年の暮れに指摘しているわけですよ。その指摘した後に、いまのこの法人は昭和四十七年の初めに認可しているわけですよ、これ。これも問題だ。しかも、それも問題だし、さらに行政管理庁が指摘して、その後法律を改正しようという段階でこういうことをまた認可しているということ自体もこれまた問題だ。  ですから、私はこういう公益法人を認可する場合のいわゆる役所の姿勢というものを的確に改めていかないと、こういう問題は一向に改まらない。具体的に私はきょうは一つの法人を挙げましたけれども、これは全部で、行政管理庁の指摘にもありますように、ただ単にほんの少しの法人じゃないわけですね。政府が管轄する分だけでも四千二百の法人がある。都道府県の法人まで合わせますと、都道府県が一万四千あるというんですから、全部で一万八千近くの公益法人というものがあるわけです。ですから、そういうような意味では、ぜひともこれを機会に許認可の問題をばっちり洗い直してもらいたいと思うし、また問題のある法人については厳たる態度で処分をするなり解散を命じるなりきちっとすると、それが今後のためにも私はなると思うのですが、大臣、最後にどうでしょう。
  175. 長谷川峻

    国務大臣長谷川峻君) 労働省が勤労者の生活の向上と福祉、これを旗印にしてやっている中に、そしてまた非常に注目されているこういうときに、監督指導下にあるところの公益法人の認可、そしてその運営についていまのように御指摘いただいたことは非常に私も遺憾と思っております。特に労働省であればあるだけに一層の責任を痛感して、私もそうした幹部の方々に直接お目にかかって、反省とあるいは再建、しかもいまは零細な人たちからの債務があるようでございますから、これについての弁済のために真剣にやってもらうように、役所の方でも何遍となく前役員と現役員を呼んで監督指導し、推進しておるようでございますが、いまから先もこの問題を処理することにまず重点を置きつつ、いまお話しのありましたようなほかの法人等々についてもこういう過ちを起こさないように、起こすことが労働行政全体の汚名にもなる、こういう感じでいまから先推進してまいりたいと、こう思っております。
  176. 塚田大願

    ○塚田大願君 きょうは労働省にお伺いするわけでありますけれども、御承知のように今日日本の経済というものは大変高度成長いたしました。また、企業も大変驚異的な成長をいたしました。そしていま不況だと言われておりますけれども、しかし、やはり不況だと言いながら大企業は決して損をしているわけではない、依然として相当な利潤を上げていることは一般に知られているところであります。そういうふうに見ますと、この経済の高度成長、大企業の成長というものが、その裏に実は労働者に対する非常な低賃金政策、あるいは労働強化、合理化、こういうものが押しつけられて、そしてそのような企業の繁栄というものがかち取られたということは一般の識者の指摘しているところでございますけれども、まあ言いかえれば、要するにこの企業の高度成長の陰には無数の労働組合に対する分裂であるとか弾圧、あるいは労働者に対する差別、人権無視、あるいは暴力、こういったことが、つまり基準違反労働組合法違反、そういった事犯が非常にたくさんあるということだと思うわけであります。  私ども共産党の本部にいま人権防衛対策本部という機関を設置しておりますが、ここにはいま毎日もう大変な訴えが来ております。驚くほどの数であります。もちろんその中には、第一には賃金差別の問題、あるいは仕事の差別の問題、あるいは旅行やスポーツやレクリエーションまで差別されるというふうな問題、さらには暴力問題、第一組合員であることを理由にしていろいろな暴力やいやがらせを受けるとか、こういった問題が大変たくさん寄せられております。私はこれは新しい日本のファシズムのあらわれであると見ておりますが、いま大臣もおっしゃいましたように、労働省労働者の生活、福祉、これをいわば行政目標として仕事をしていらっしゃる省庁でございますけれども、こういったいまの現状、企業のこういうやり方、労働者に対する攻撃、こういうものに対して、不法なものに対しては厳しく私は対処すべきだと考えておるわけでありますが、そこでまず労働大臣にこのいまのこういう現状、職場における現状をどういうふうに認識しておられるか。いま職場では、先ほども申しましたけれども、とにかく職場に憲法がないと言われるような事態があるわけでありますが、職場に憲法がない、こういう事態に対して大臣がどのように現状を認識しておられるのか、そしてまた労働者の権利を守るという立場からどのような基本的な姿勢をお持ちなのか、その点についてまず大臣の御見解をお聞きしたいと思うわけであります。
  177. 長谷川峻

    国務大臣長谷川峻君) 私は、高度経済成長の後で、いまの日本で労働者が何か私たちが学生時代に読んだような非常に搾取、暗いものを、何もかにもがでたらめだというようなふうには私は思わないのです。それは高度経済成長にいろいろ御批判もあったでしょうけれども、やっぱりそれを一つのバネとして完全雇用という線が生まれもし、何といったってこれだけ組合が強くなり、それから労組法があり労基法があって、とにもかくにも昔あったような監獄部屋みたいなそんなことは私はなかろう。しかし、間々あるとすれば、そういうふうな不安があるとすれば、いま持っている私たちの法律によってこれは厳重に勧告もし、処分もしていく、こういうふうな姿勢で取り組んでまいりたい、こう思っておるものです。
  178. 塚田大願

    ○塚田大願君 いまの大臣のお話聞いていますとね、私も戦前から労働運動やっております。なるほどいろいろ法律が整いました。しかしながら、職場の現状を見ると、じゃ戦前からどれだけ労働者条件がよくなってきたか、その実質面を見ますと大変私は疑問に思っているわけです。そういう具体的な問題についていろいろこれからお聞きするんですが、その辺が私はやはり労働省としては大変いま深刻に事態を受けとめていただく必要があると思うのです。  そこで、私はきょう時間の関係もございますから二、三の具体的な事例でお伺いするわけでありますが、一つは、第一に、御承知のように労働基準法百四条がございます。この百四条は、労働基準法違反があった場合には、労働者がこれを申告する権利を認めております。そして、これに対して使用者は報復してはいけないということが厳しく戒められておる法律でございますが、ところが、この法律に厳しく戒められているこの報復が実は絵にかいたような形であらわれている事件がございます。そしてまたこのことは、ひいては労働基準法監督機関の存在すら問題に問われるほどの事件だと思うわけでございます。  具体的に申し上げますと、東京の足立区にあります吉野石膏という会社の東京工場の問題であります。ここでは先般以来労働者休憩がとれないということで監督署に申告いたしました。そしたら、この申告した本人を含めて二十人の労働者に対して会社側は門を閉ざして工場に入れない、こういう事態が起きまして、いまだにこれが続いているわけであります。事件が、この工場に入れないというのは五月二十一日でありましたか、それ以来今日まで続いているわけでございますが、これは基準局も労働省もこの内容は十分御存じだと思うんですが、これは労働基準法違反内容をどういうふうにつかんでいらっしゃるか、それをまず基準局にお聞きしたいと思うのです。
  179. 藤繩正勝

    説明員藤繩正勝君) いまおっしゃいました吉石膏株野式会社東京工場におきまして、労働者の一部の者が六月十五日現在、就労を拒否されているということは報告を受けております。これは先ほどおっしゃいましたように、労働者から休憩時間の違反の是正というような申し入れがあったからだと思いますけれども労働基準監督署から休憩時間をとるようにという勧告をいたしまして、そしてその時間を是正するためには新しい勤務体制をつくることが必要なわけでございます。で、労働組合が二つあるようでございますが、それぞれの組合に提案を、新しい勤務体制の提案をしたところが、一つの組合とは合意に達しないというので、会社側はその方の組合に属している労働者の就労を拒否しておるものと承っております。したがいまして、これは直ちには労働基準法百四条違反と即断することはできないと思うのでございます。ただ、足立の監督署長といたしましても、申告したことを理由にして組合員の就労拒否ということに、その申告した労働者の不利益取り扱いということになればこれは法違反が生ずるということを警告をしているという状態でございます。したがいまして、まあ労使紛争の一形態であるのか、それとも申告した労働者そのものがそれを理由として不利益な取り扱いを受けているのかという点が問題でございまして、基準法に触れる部分がありますれば、私どもとしては厳正な措置を講じなければならない、こういうふうに考えているわけでございます。   〔委員長退席、理事大塚喬君着席〕
  180. 塚田大願

    ○塚田大願君 この百四条の問題は後でもいたしますけれども、とにかく基準局に申告をしたと、そうしたら、おまえたちはけしからぬということで、この二十人の方々の差別をしているわけであります。仕事をさせないというんでありますから、これは大変なことであります。が、とにかく労働者休憩時間がまともに与えられてないと、だから休憩時間を与えてくれという、このあたりまえな、基準法に求められております、基準法の三十四条のこの休憩の条項に明記されておるこの権利を要求したら、こういう事態になった。まことに驚くべき事態であります。つまり、休憩時間は与えなかったと、で、働かせておったと、これはかなり長い期間にわたってこういう事態があったわけであります。ですから、労働者はたまらなくて訴えたと、こういうことでありますが、とにかく休憩時間は与えなかった、しかし働かせておった。  これはやはりもう一つの問題としては、賃金の不払いということにもなると思うんですが、この問題につきましては、すでに名古屋地裁におきまして、かつて昭和五十年十二月五日でございますが、判決がございまして、休憩時間に作業を課し、実質休憩がとれない状態にしたことについては、休憩時間を与えるべき債務の不履行があったとして、その時間に相当する賃金額と同額の慰謝料の支払いを命じた、こういう事例でありますけれども、この場合にも明らかに百四条違反というだけではなくて、やはり長年ただ働きをさしておったということになりますから、私は労働者が申告をすれば、当然基準局としては調査をし、支払い命令を出すべきだと思いますが、どうでしょう。
  181. 藤繩正勝

    説明員藤繩正勝君) 私どもも実は詳細は必ずしも十分承知いたしておらないわけでございますけれども、言うまでもなく労働基準法三十四条では、「労働時間が六時間を超える場合においては少くとも四十五分、八時間を超える場合においては少くとも一時間の休憩時間を労働時間の途中に与えなければならない。」という規定がございますから、この規定はもとより履行されなければならないわけであります。ただ、その規定の仕方が就業規則、協約等によっていろいろございますから、それの解釈をめぐって紛議等が起こる場合がございますけれども、しかし、そういったものを実際に検討した上で所定の休憩時間が確定しておりまして、その休憩時間になお労働が行われておるということであれば、これはもう通常の場合は、賃金というのは所定の労働時間に対するものでございますから、それ以外の労働に対しては通常の賃金、あるいは八時間を超えます場合には割り増し賃金というものを支払わねばならないわけでございます。その辺は申告がございますれば、監督署としては実情を調べまして、違反があればこれは是正を勧告するというのは当然でございます。
  182. 塚田大願

    ○塚田大願君 この経過につきましては足立労働基準監督署がよくつかんでおるはずであります。というのは、この足立監督署長の名前で、五月十二日に一斉休憩除外許可の取り消しがされておるわけであります。そういう通知書が出ておるわけであります。これはやはりいま言ったようなこういう問題がありまして、監督署からこういう処置が行われたわけでありますが、ところが会社は、その日の夜勤者から、総評全国一般労働組合員の就労を拒否しているわけですね。そして以後工場に入れないという事態が続いているわけで、まあ組合員は毎日就労を要求して出勤しているんですけれども、門から入れないという状態が続いているわけであります。ですから、これはやはり完全な申告に対する報復だと言わざるを得ないわけでありまして、きわめて事は重大だと思うのです。こういうことが続くとすれば、許されるとすれば、労働基準法も行政監督機関も全く不要でありまして、そもそも法の根本にかかわるような問題だと私は考えるのです。  これは労働省としては、これは私、こういう事態が延々として続いておるという事態はもう断固としてやはり処置しなければならない問題だと思うのですね。で、さらにこの足立監督署長が六月三日に警告書を出しておるのですね。これは監督署が警告するということは、そうめったにないことだと思うのですけれども、警告書を出したと。「一斉休憩除外の許可申請書の内容を試行的に実施するにあたり、申告した事を理由に総評全国一般労働組合員を排除して操業、試運転を行なった場合は労働基準法第百四条第二項の違反となりますので、ここに警告いたします」。警告までしておるのです、それほどもう事態は明確なんですね。しかもおまけがついているのですよ。この警告文を監督署が会社に持って行った。夜になった。夜にこういうものを持ってくるとは無礼だと言って、翌日突っ返してきたというのですね、この会社は。で、監督署は驚いて、配達証明付でさらに翌日郵送をした。これほど監督署の行政監督やあるいはこの警告に対して、会社側というのは全くこれを無視してやっているわけですよ。私は、言うなれば監督署は全くなめられていると、基準局、労働省がなめられていると、全く基準法を無視していると、こう言っても私はいいんじゃないか。だから私は、法の根本にかかわる問題であると、こう言っているんですが、そういう事態がいまだに続いているということはどういうことなんでしょうかね。これだけのことがあって警告文まで出した、しかし事態にちっとも改まっていない。これはまさに悪質な百四条違反だと私は考えるのですね。  こういうことを絶対に繰り返さないように私は労働省指導してもらいたいと思うのですが、聞くところによると、きょうは全国の監督基準局長会議があって、大臣が出られたかどうか知りませんけれども、あいさつもあるのだという話も聞いておりましたが、こういう事態を基準局が黙って見過ごすような、こういうようなまぬるい形では、私は当然なめられると思うし、もちろんなめる方は悪いですよ。法律があっていろいろ指導監督を受けているにもかかわらずこれを無視して横柄な態度に出る、無法な態度に出る、こういうことは許されるべきことではないと思いますが、同時に、労働省の側から言えば、そういうふうになめられているということはやはり深刻に受けとめる必要がある。これでは労働者の生活だ、福祉だと言ったって、これはもうお経の文句みたいなことになりまして、現実に労働者は非常に大変な不利を受けておると、こういう事態でございますから、ひとつこの点は、事態は大体大臣お聞きのとおりだと思うのですが、そういう点についてはやはり法に基づいて毅然とした措置をとっていただきたい、こう思うのですが、どうでしょう。
  183. 藤繩正勝

    説明員藤繩正勝君) 労働者労働基準法違反があるということを監督署に申告をいたしました場合に、その申告したことを理由として使用者が不利益処分をすれば百四条違反であります。これについては私どもは容赦なく取り締まりをしなければならぬものだと思っておりますが、ただ問題は、先ほどもちょっと申し上げましたように、最近よくある事案でございますけれども、労使紛争と個別の労働関係とが混同をされてしまうということでありまして、個々労働関係を規制するのが労働基準法であり、集団的な労働関係を処理していくのが労働運動であり労働組合法であることは言うまでもございませんけれども、その関係をどう処理するかということが、労働基準監督官としては大変頭の痛いところでございます。ILOの労働基準監督の手引きにも労使紛争の調停者となってはならないという厳格な規定がございます。したがいまして労働基準監督官としては、法違反があればこれを果敢に処断をする、しかし労使紛争の中に介入してはならない。この両方の規律の中にあるわけでございまして、最初に申し上げましたように、二つの労働組合があり、その中で一方の労働組合と使用者が争っておる、申告をした労働者だけではなくて、やはり一つ労働組合と使用者との問題となっておるような場合には、やはり監督署としては労使関係に介入するということのないように、しかも基準違反は絶対にこれを許さない、こういう態度で処理をしなければならないということでございます。いまおっしゃいましたように、全国会議をきょうもやっておりますから、もう少し詳細に私自身もこの事情を聞き取りまして、法違反はこれは許さないという態度で処理をいたしたいと思います。
  184. 塚田大願

    ○塚田大願君 いま局長は組合法と基準法の違いということをおっしゃって、労使紛争とその個々基準違反の事犯とは区別しなければならないということを盛んに説明をされるのですが、私は労使紛争の問題なんかはいま一つも言ってない。なるほど組合が二つある。それはいろいろあるでしょう。あるけれども、いま起きているのは休憩時間、三十四条違反をしているという事実に対して労働者が百四条によって申告をした。そうしたらその報復措置というので、その場からいわばシャットアウトみたいなことをやっている。それで不利益が与えられる。こういう事件でありますから、これはもう明らかに基準違反という非常に明確な問題だと思うのです。そういう立場でひとつ問題を積極的に処理すべきではないか。こういうことを言っているわけなんですから、私の方はちっとも混同していません。基準局の方が盛んにそういう口実を立てて何か会社サイドのことを盛んにPRされるのですけれども、そんなことであってはいかぬ。そういう姿勢だから、やはり今日無数の基準違反や無法や、そういう横車を押すような企業の姿勢というものが改まっていかないのじゃないか。私はそういうふうに考えるのですが、問題は非常に明確だと私は思いますので、ひとつこの辺で労働大臣の見解を聞きたいと思うのです。
  185. 長谷川峻

    国務大臣長谷川峻君) だんだん伺っている間に私も模様がわかってまいりましたが、またうちの方の局長の答弁の中にも、問題の所在もわかるような気がいたします。私の方からしますというと、労働基準法違反に対しては徹底的に究明していく。先ほど塚田さんおっしゃったように、そこの監督署長が警告書を手渡したり、あるいは内容証明でぶつけるというところを見ましても、会社側べったりでないということはおわかりいただけると思いますので、なお十分に内容調査してみたいと、こう思っております。
  186. 塚田大願

    ○塚田大願君 足立監督署長も一生懸命にやっていることは、私もいろいろ経過全部聞いておりますからわかりますが、しかしそれにしても、余りに姿勢が弱い。なめられているような形がある。依然としてその事態が続いているわけですからね。労働者を門から入れない、おまえたちはけしからぬ。それは第一組合、第二組合の問題を会社側はいろいろ口実に使うかもしれませんけれども、それは口実であって、要するにそういうことをやる第一組合の連中はけしからぬと、こういうことなんですよ、単純に言えば。非常にわかりいいことです、決してむずかしいことではないのです。  そこで、さらにお聞きしたいのは、こういう状態の中で労働者に経済的な打撃が加えられているという、この経済的報復の問題でありますが、先ほど申しました五月二十一日から申告した本人を含む組合員二十名ですね、総評系の二十名の組合員は就労を拒否されている。賃金も初めの一週間は八割、二週間目からは七割、以後は六割しか払わないと言っておるのですね。で、賃金支払い日は毎月二十日です。今月も近く来るわけでありますけれども、こういう八割だの、七割だ、六割だと、こんなばかな話は私はないと思うのですね。なるほど基準法二十六条には「百分の六十以上」払えと、こうなっています。つまり使用者の都合で仕事ができなくなった場合には「百分の六十以上」ということになっておりますが、しかしその前に、民法の五百三十六条の二項では全額払えと、こういう場合には。こういうたてまえになっておるのですね、民法から言えば。ですからこの基準法二十六条の六割以上ということは、この民法の規定をいわば担保する、つまり強制力を持たせるためにあるのであって、六〇%でよいなんという問題ではないのです、全然。私は当然一〇〇%払うべきだ、民法のこの精神に基づいて、こう思うのですけれども、そういう点をひとつうやむやにさせないように基準局も指導してもらいたいと思うのですが、その辺はどうでしょう、経済問題。
  187. 藤繩正勝

    説明員藤繩正勝君) 先ほども労使関係の問題と個別的な問題はやっぱり監督官としては区別をして臨まなければならないと申し上げましたのは、さっきの問題も、休憩時間が与えられていないということは事実で、これを是正勧告をいたしているわけでございます。ただ、それを直していく過程でどういう新しい勤務体制を組むかということは、これは労働組合があります場合には、当然団体交渉を通じて話し合いで決めらるべきものである。それがはっきりしないために紛争が続いているという場合にはやはり労使紛争の様相を帯びてくる。その辺がむずかしいということを申し上げたのであります。  ただいまの問題も、一〇〇%払うべきことは民法で明らかであります。ただ基準法は、強制的手段を用いてこれを履行させるために、六〇%というものが基準法二十六条に書いてあるわけであります。したがいまして、労働基準監督機関として強く行政を指導するという点は、やはり基準法の履行確保ということでありまして、基準法を超える問題については労使で十分話し合って解決をお願いをしたいというふうに思います。
  188. 塚田大願

    ○塚田大願君 いまの問題でも、基準法は六割以上となっておるわけでありまして、決して六割でいいとなんて書いてないのですから、そして民法は一〇〇%と、こう言っているのですから、もうちょっとその辺はやはり、そういう不利を受けた労働者の立場で私は労働省は考えるべきだ、企業サイドで考えるべきではない。一体何のために労働省ができたのかという原点に返って、私は労働省はもっとがんばらなきゃいかぬのじゃないかと思うのです。  時間もありませんので、この問題ばかりやっておれませんから続けますが、足立監督署は六月三日に「一斉休憩除外の許可について」という通知を出しております。ただし、これは条件がついてまして、期限を六月二十八日までとする。その間、まあ試行的にこういう許可をすると、こういうことになって通知が出ておりますけれども、現状はとにかくちっとも改まっていないんですから、こういう甘い処置をしていたんじゃ事態がちっとも解決しないんじゃないかと私は心配するんです。ですから、まあ二十八日と言えばすぐですけれども、この間はとにかくとして、それ以後ですね、私は絶対にこういういいかげんなことでこの許可をしないようにする必要があると、とにかく何よりも締め出しをしておるということ、報復措置をしているということ、これを改めさせることが私は先決問題だと、そういうことが改まらないのに基準局はどんどんこの企業の言いなりに許可を与えるようなことがあっては事態を正しく解決するゆえんではないと思うわけであります。そういう意味で、この再許可の場合には、私は監督署は慎重な態度をとってもらいたいと、そしてその場合には、やはり労働組合の意見も十分にお聞きになる必要がある。会社側の意見だけでなくて労働組合の意見も十分お聞きになって態度を決める必要があると思いますが、その点を最後にお聞きしたいと思うんです。
  189. 藤繩正勝

    説明員藤繩正勝君) 先ほど大臣も申し上げましたように、先生自身いまお述べになりましたような経緯からしましても、監督署が企業の言うことを聞いて引きずり回されているというようなことはあり得ないことではなかろうかと思います。たびたび申し上げますように、個別的な労働関係における基準違反は絶対にこれを許さない、そういうことによって労働者保護を貫くというのが監督機関の態度であります。しかしながら労働組合が労使関係の交渉事項としてやるべきことについて労働基準監督機関を利用しようということは、これは許すことができないし、また使用者側においても労働基準監督官を利用しようとすることは許されないことでありまして、その危険があるからこそILOの労働基準監督官の手引きにおきましても、労使紛争に介入することにならないように厳正な態度の保持が必要だということを言っておるわけでありますから、私どもとしては労働組合の意見は意見といたしまして、監督署としては独自の判断に基づきまして労働者の保護に遺憾なき措置をとってまいりたいというふうに思います。
  190. 塚田大願

    ○塚田大願君 当然、監督署が公正厳正な立場をとらなきゃならぬ、これはもう当然のことであります。ところが事態が、いままでもちろんこの問題だけじゃありませんけれども、多くの例を見ますと、必ずしも公正中立が守られているというふうには見られないようなケースが非常に多い。したがって今度の場合でも、なぜこのようにじんぜんこうやって時を過ごしているのか。こういう事態がちっとも改善されないというこの事態を、現実をまずやっぱり直視して、その上に立ってひとつ厳正中立な判断をしていただくと、これが私は必要だと思うんです。そういう意味で私は申し上げているわけで、その点大臣もよく御理解をいただけたと思います。  次に、いまロッキード問題でいろいろ揺れておりますけれども、日本航空の問題です。日本航空の労使関係というものは非常に問題が多いところでありまして、労働省も十分知っていらっしゃると思うんですけれども、一言で言うと、ここは労働組合を分裂させる、そして労働条件に差別をつける、こういう事態が続いておりました。したがって、それに対して組合はその撤廃を求めるというんで労働委員会に提訴を連続する。もうまるで年中行事のように提訴が行われているわけでありますが、ここの組合は最初三組合で出発して、多いときで七つ、現在は四組合になっておりますが、やはりそれとの関係で発生しているのが賃金差別なのであります。この日本航空は政府出資が約半数に近い会社でありますので、こういう労働組合の分裂とか差別ということは決して好ましいことでないと思うんですが、労働省はこういう差別事犯の提訴が非常に多いということを知っていらっしゃると思うんですが、知っているかどうか、そしてまた、そういうことが好ましいことなのかどうかということについて、まずお聞きしておきたいと思います。   〔理事大塚喬君退席、委員長着席〕
  191. 細野正

    説明員(細野正君) 日航の労組関係におきまして、昭和四十二年以降賃金の差別問題等で不当労働行為の申し立てが九回行われている、都労委に係属中であるというふうに承知いたしております。なお、いま申しましたように、各案件いずれも独立の第三者機関でございます都労委において扱われている問題でございますので、政府としての見解は差し控えさしていただきたい、こういうふうに思うわけであります。
  192. 塚田大願

    ○塚田大願君 ここの中の事態はとにかく相当なものです。従業員が二万人もいる企業でありますからいろいろ大変な面もあると思うんですけれども、会社が二、三年前に行いましたアンケートがあるんですが、これは全従案員に対して行われたアンケートでありますが、昇進昇格は公平かというアンケートに対しまして、きわめて公平というのが一%です。おおむね公平というのは一五%、合わせて一六%が公平だというふうに見ております。ところが、それに反対して、きわめて不公平というのが二二%、やや不公平だと見るのが二五%、合わせて四七%が不公平だと見ておる。もう大変な違いですね。これは会社側のやったアンケートですからある程度正確に出ていると思うんですが、とにかく不公平だというのがもう半分に近い。公平だなんという人はほんの少ない、こういうことです。  それから早く昇進昇格するのにはどうしたらいいかというアンケートに対しては、一生懸命に仕事をするというのが九%、人間関係をよくするというのが一二%です。上司とうまくやるというのが何と三八%ですね。どうでしょう、こういうごますりといいますか、俗に余りいい言葉じゃありませんが、これをやった方がいいんだというのが三八%もあるんですね。まじめに働いたらよろしいというのは九%しかない。  こういうアンケートの中身を見ますと、やはり日航の労務政策というものが非常に情実、それから組合の分裂政策そういうものに主眼が置かれているということが大体うかがわれるんです。こういう実態の中で、実は日航の労働組合約三百人です、これも第一組合でありまして、先ほどから出たようないろいろ組合の分裂政策によってこう分断されていっているわけです。この第一組合、日航労組がいま都労委に提訴をしておる、先ほどおっしゃったようにいま提訴中でありますけれども、その中身はやっぱり驚くべきものですね、これはもう当然のことだと思うんですが、こんな差別があるんです。いま提訴をされておるのは二百四十人の方でありますけれども、差別賃金が約七億あるというんです。これは一人一人の賃金の是正要求が出ておるんですが、二百四十人で七億、この是正の提訴がいま行われておるわけであります。これを一人一人の方を見ますと、これは大変なことでありまして、前の組合委員長の境さんという方は、同期の人と比較してみて、いまの賃金が月額にして約十五万円程度差がついているというんですね、大変なことです。境さんは三十二年に、学歴は大学卒ですが、とにかくそれだけの差がついておる。  その他の方々の差別待遇の状況を見ますと、たとえばいまの日航労組で働いていらっしゃる方々はこういうふうになっておるんですね、これは職階級賃金でありますけれども、日航労組の方は、みんな三十三年、三十四年大学卒の方々でありますけれども、みんな四職級ないしは三職級という非常に低いところにある。ところがこの日航労組以外の組合の方々はみんな五職級あるいは管理職、日航労組の方々は同じ大学卒業して、同じ年に入って管理職はもちろんのこと五職級も一人もいないと、みんなそれ以下の四職級、三職級と、ところがそれ以外の組合の方々は全部が管理職と五職級と、こういう、だれが見ても明確な差別が行われておるんですね。したがって、こういう問題というのは、これは日常賃金が大変な開きがございますから、生活にとっても大変なことでありますから、当然団結をして提訴をする、こういうことになると思うんです。そうすれば、いつまでたってもこの労使紛争というものは解決しないと、こういうことで悪循環が行われるわけでありますけれども、こういう点、労働省はこういう日航の実態についてつかんでいらっしゃるかどうか、提訴中だから判断は言えないと、これはよろしい。しかしながら実態を、労働者の置かれておる実態を本当につかんでいらっしゃるのかどうかということをお聞きしたいんですが、その点どうですか。
  193. 細野正

    説明員(細野正君) 先ほど申しましたように、都労委の審査の過程であらわれる事実等につきましては、私どもも聴取する機会がございますけれども、一般的に当然私どもの方に事情が入りてくるという、そういうたてまえにはなっておりません。
  194. 塚田大願

    ○塚田大願君 じゃあ実態は一応知ってらっしゃるということでございますが、実はこの提訴の問題は昨年の七月、都労委から和解のあっせんがあるんです。現在、和解の話し合いに入っておるわけでありまして、私は和解で解決するとすれば大変結構なことだと私も考えます。  そこでやはり、その場合、労使の和解で解決するためには、やはり大切なことは双方が誠実に努力することだと思うんですね。そういう立場が明らかでなければ、話が出てもこれは本当の和解ということにはならないと思うんで、特にその点は使用者側である会社の責任というものは私は大きいと思うんです、その場合に。やっぱり会社側は使用者という権利を握っておるわけですから、したがって会社側が本当に誠実な態度でやるかどうかというのが事態解決のかぎではないかと考えますので、私は労働省としても、会社に対して事態解決するに誠実に努力するように要請さるべきではないかというふうに考えますが、その辺はどうでしょうか。
  195. 細野正

    説明員(細野正君) 先ほど申し上げましたように、現在都労委でお取り扱いの問題でございまして、先生指摘のように和解のお話もあるやに私どもも聞いておるわけでございますが、まあ独立の機関が扱っておられるものに横からよく事情の知らないものが口出しするということには大変問題がございますので、私どもとしましては、先ほど申しましたように都労委がせっかく御努力中でございますので、その御努力によって円満に解決されることを期待しているという状況でございます。
  196. 塚田大願

    ○塚田大願君 それはもちろん都労委がやっていらっしゃるんですから、都労委が中心でそういう話をまとめていただくんだと思いますが、やはり日航という会社の性格から言いまして、政府も莫大な出資をしている、また飛行機の運航というものは大変国民の生命にとっても重大なことでありまして、ここで年がら年じゅうこうして紛争が起きていて、毎年労使がどろ沼の中で組み合っているというふうな事態というものは決して私はいい姿だとは思いません。したがって、やはり労働省としても、こういう大きな問題に対しては適切にアドバイスをするということが必要ではないかと、そういう意味で、何もその中身についてこうしろ、ああしろと言うことは必要ないし、そういうことをやっちゃいかぬでしょう。しかしお互いに誠実にやるべきではないかということを示唆されることは、私はむだなことではないと、やはり今日の労働問題を一歩解決する上においても、私は大きな寄与をするんではないかと思うんですが、その辺もう一回お聞きしたいと思うんです。
  197. 細野正

    説明員(細野正君) 先生指摘のように、その和解によって労使関係が円満に解決することが一番望ましいわけでございますが、その際、都労委におかれても恐らくそういう、先生おっしゃったような和解が成立するためのいろんな条件整備の問題等についても御判断があるかと思うわけであります。したがいまして、都労委御自身も御必要があればそういう条件整備のためのいろんな御努力を陰に陽にやっておられるんじゃないかというふうに考えるわけでございまして、そういう意味で、事情をよく知らない私どもが、急に、唐突にいろいろなことを口出しするという点については、やはり差し控えるべきじゃないかというふうに考えているわけでございます。
  198. 塚田大願

    ○塚田大願君 いや、私が言っているのは口出しをしろと、こういうことではないんです、口出ししてはいかぬと。しかし日航のようなとにかく非常に重要な企業の紛争に対して、政府としても、労働省としても、やはりお互いに誠実な態度で臨むべきだという、そういう姿勢についての示唆をおやりになることは、決して口出しすることではない、やっぱり労働省としての私は仕事一つではないかと思うんです。というのは、労働省は御承知のように労働者の生活、福祉、雇用の安定という大きなたてまえを持っていらっしゃる。そういう中にあってこういった事態がいつまでも続いているということは決して望ましいことではないはずであります、労働省としても。ですから労働省としてもそういう点で積極的な姿勢、まあやり方はそればいろいろ御研究願って、大臣の御判断も必要だと思うのですけれども、そういう点でやはり積極的に取っ組んでいくと、労働省が。労働大臣がまず率先して労働争議一つ一つおれが解決してやるというぐらいの姿勢が私は必要じゃないかと思うのですがね。どうでしょう、大臣。
  199. 長谷川峻

    国務大臣長谷川峻君) 先生おっしゃるように、日本航空というのは日本のナショナルキャリアでございます。そういうところ、しかも国際的にはいま競争が激しいときに日航の労働組合が非常にもめているということは、これは世間体も悪うございますし、安全にこれは響くようなことであるというふうな話になりますと大変でございますから、せっかく和解が誠意をもって進んでおると、そういうふうな円満な労使の自立というものを労働省も注目していると、期待していると、こういうところで御理解をいただきたいと、こう思います。
  200. 塚田大願

    ○塚田大願君 まあいろいろこういう問題について突っ込んでもっとお話したらいいと思うのですけれども、時間の関係もありますが、非常に問題がたくさんありましてね。  次の問題をお聞きしたいと思うんですが、これはきょうは人権擁護局長見えておりますか、法務省は——見えてますね。この問題です。調布市にミツミ電機という会社がございまして、この会社で去る三月二十四日、新入社員教育というのが行われた際に、新入社員八十四名に対して、昔の帝国軍隊でよく行われましたような対向びんたというのがあったと、この問題であります。  私どもこれは、まあ一般の新聞にもずいぶん報道されましたが、これはまことに異常な事件だと思うんですね。軍国主義の亡霊が復活したかと思われるような事態でありまして、先ほども申し上げましたが、私、戦前から労働運動をやっておりますけれども、戦前でもこういうべらぼうなことは私は知りません。ところが今日、こういう新人社員の教育の中でこういう人権無視が堂々と行われておるということに対しまして、人権擁護局がこの事態をどのように処理しようとしていらっしゃるのか、その点をお聞きしたいと思います。
  201. 宮本喜光

    説明員(宮本喜光君) 御指摘のミツミ電機株式会社におけるこの往復びんた事件というのは去る四月十五日付の新聞紙で報道されたところでございます。会社が調布市で所轄が東京法務局になりますので、東京法務局ではこの新聞記事をもとにして現在人権侵犯事件として調査中でございます。
  202. 塚田大願

    ○塚田大願君 調査してどういうことがわかりましたか。
  203. 宮本喜光

    説明員(宮本喜光君) 現在、まだ完全には調査が済んでおりませんので、途中までの結果で御報告いたしますけれども、ミツミ電機では従来から新入社員、これ男女それぞれ大ぜいいるようですけれども、この新入社員に対して講義方式による研修を行ってきていたようでございます。しかし昭和五十一年度からはその講義方式による研修の前に、男子の新入社員だけを集めて、講師である職制等とともに合宿してグループディスカッションをするという形の合宿研修をしようということになって、去る三月二十一日から同月二十四日まで静岡県田方郡函南町にあります日本生産性本部研修会館で合宿が行われたということ、それから問題になったびんた事件というのは研修の最終日であります三月二十四日の午前七時二十分ごろ、研修が始まる前の早朝の体操とマラソン、二キロのマラソンのようですけれども、このマラソンをしてみんなが研修会館の前に帰ってきたところで発生したというふうに認められます。  本件については、このびんた事件そのものがあったことは事実でございますけれども、それがどのような理由から行われたのか、だれの指示によるものなのか、新入社員はどのような考えでこのようなことをお互いにし合ったのか、またその場には講師として参加した職制が、会社側の職員がいるわけでございますけれども、そういう者はどういうふうにこれ目撃し、認識していたのか等詳細な事情をなお引き続いて調査することにしております。
  204. 塚田大願

    ○塚田大願君 そうすると関係者からは一人も事情をまだ聴取してないんですか。
  205. 宮本喜光

    説明員(宮本喜光君) 会社の研修の最高責任者となっている人事部長から事情を聴取しております。その後引き続いてそれに参加した職制などから聞くべく東京法務局でミツミ電機と交渉してその詳細な打ち合わせをしているというところでございます。
  206. 塚田大願

    ○塚田大願君 もう二ヵ月半も前の事件でありますから、もっとスピードをかけてこういう事態は調査される必要があると思うんです。そのための人権擁護局というものでありますから、こういう人権侵犯事犯というものはやはり厳しく取り締まるべきだと私は考えるわけです。  ところが先ほど小田人事部長に事情を聞いたとおっしゃるんですが、この小田人事部長は当時その現場におられたはずであります。そこで労働組合がこの問題に会社に対して抗議いたしましたところが、この小田人事部長はこういうふうに言っていらっしゃるんだな。いや、あれはなで合った程度なんだと。なで合ったと言うんですね。程度だから重大なこととは思わない、指揮者の責任を追及する考えもない、気分が盛り上がったときに起こった偶然的な事件だ、こういうふうに開き直った態度でおられるようです。で、会社側のこの発想ですね、この認識、やはり私は問題だと思うんですね。こういうことだからやはりああいうことを平気で、現場にいても会社の幹部がにやにやして見ているということです。ですから、やはりそういう状況の中で生まれたことで、いわば起こるべくして起こった事件だと私は言ってもいいと思うんですが、それにしても人権擁護局が余り敏速に行動されておらないように私は思って、大変遺憾に思うんです。  そこで一つお聞きしたいのは、一般に人権侵犯事件が起きた場合に、人権擁護局としてはどういう処置をなさることになっておるんですか。
  207. 宮本喜光

    説明員(宮本喜光君) 通常事例からしますと、一番多いのが被害者的な立場にある方からの申告が多いわけでございますけれども、そのほかに本件のように新聞その他の一般情報から取り上げるということもございます。そのようなことで取り上げて調査するわけでございますけれども、これは御承知のようにわれわれ人権擁護機関には強制力がございませんので、警察や検察庁における捜査のような形はとれません。あくまでも相手方の協力を得て、相手方が任意に出てきていただいて説明を受けるということから事実関係を解明していく。その上で最終的な目的としましては、人権思想の啓発、基本的人権の尊重ということを理解して、今後こういうことのないようにしてもらうということで対処するわけでありますけれども、その処理の具体的な区分と申しますか、それは大臣訓令で人権侵犯事件調査処理規程という規程がございます。これの中に定められておるわけでございますけれども、刑事事件に相当して刑事罰を課すべきだというふうに判断されるものについては告発、それからそれまでもなく、人権侵犯の啓発啓蒙で足りるという場合には、その中でも重い順から申しますと、勧告あるいは通告、説示というような処置をすることにしております。
  208. 塚田大願

    ○塚田大願君 この人権侵犯事件調査処理規程というのがございます。おっしゃられるように、「(告発、勧告、通告、説示、援助、排除措置、処置猶予)」と、いろいろな段階があるわけでありますけれども、いずれにしてもこのミツミの事件というのは、私は非常にやはり今日の新憲法のもとにおいて託さるべきことではないと、何か笑い事で、昔の軍隊の対抗びんたのように甘い気持ちで見過ごされるようなことではないと思うんです。やはり今日、人権の尊重が大変重視されているときにこういったことが復活をしてくると、それを黙って見過ごしていると。調査も余り敏速でないというようなことであってはならないと思うんで、私は人権擁護局はやはり早急に会社並びに当時のリーダーに対しては厳重な処置をすべきだと考えるんですが、先ほどのお話ですと、まだ調査が十分済んでないから処置については考えてないというふうにおっしゃるかもしれませんけれども、私はそんなふうにのんびり構えていいことではないと思うんですが、どんなふうな処置をおとりになろうとしているのか、それをお聞きしたいんです。
  209. 宮本喜光

    説明員(宮本喜光君) 確かにびんたを張り合うというようなことは通常考えられないような事柄でございますので、それだからこそわれわれとしては人権侵犯があるということで調査をしておるわけでございます。ただ、いかんせんその相手方の協力を得るということで事情聴取を進めておるものですから、多少時間がかかるのはやむを得なかろうと思います。しかし原局としては一生懸命やっておるところでございますので、なるべく調査を早く済ませるということで努力いたしたいと思っております。  最終的な処理でございますけれども、いま先生おっしゃられてしまったので答えようがないわけですけれども、やはり調査が終わってみないと最終的な結論は出せませんけれども、しかし事案が事案でございますので、先生のおっしゃるような御趣旨を踏まえて厳正に対処していきたいというふうに思っております。
  210. 塚田大願

    ○塚田大願君 私はこの問題は調査してからと言っても、事態は、事実はもうはっきりしているんです。会社の中でも人事部長などの応答ははっきりされておるんでして、あえて擁護局の方で、これから事新しく調べないとわからないというような性質のものではないのでありまして、大体やはり一定の判断を持って私は臨んでしかるべきだと思うんです、そういう段階ではないかと。もちろんいろいろ努力はしていらっしゃると私は思います。がしかし、余りに少し時間がたっているという意味から言って、これはぜひ早急に調査をしていただいて結論を出していただくということを私も希望いたしますが、その際、私はやはり少なくともこういう事態は一罰百戒の意味から見ましても勧告以上の措置があってしかるべきだと私は考えているんですが、これはぜひひとつ参考にしていただいてやっていただきたいと、こう思います。  そこで、私の時間ももうなくなりそうなんで、また実はたくさん問題を抱えておるんですけれども、これはきょうはちょっとやれませんが、ただ紹介だけしておきたいと思うのです。たとえばこういう労働者に対するいろいろな差別、人権侵害、こういったものがたくさんあるんですが、その中でもやはりもう一つ特徴は、労働基準法三条思想信条を理由にした差別をしてはいけないという、この問題がもう一つあるわけであります。これも実にたくさんある事犯でありまして、私が聞きたいと思って一応用意しました中には、たとえば三菱製紙の京都工場の場合であります。ここではいわゆる組合の活動家を退職させるという方向で、いわばまあ言うならば現代版のレッドパージでありますけれども、こういう方向で賃金差別をしたり、あるいは運動会などのレクリエーションに参加させないと。つまり村八分です、職場八分です。こういうことが行われている例がございます。こういうことは、やはり基準法で厳しく戒めておることでありますけれども、この三菱製紙京都工場などの場合には非常に悪質なことをやっておると、ここではたとえば役員の選挙の場合などでは、お互いに票を見せ合わせるというふうなことを会社が職制を通じて指示をしておると、これなんかは労働組合法第七条の不当労働行為に当たることでありますけれども、こういったことがやはり平然として行われておるんですね、大企業では。  あるいはさらには、これは東京でありますが、日立製作所の武蔵工場、ここなんかでもやはり活動家を差別するために特定な隔離室というふうなガラス部屋を用意しまして、そこに全部閉じ込めてしまう。閉じ込めるったって監禁しているわけではありませんけれども、そういういわば赤部屋とかなんかというふうな、俗称ですよ、そういう特定の部屋の中にみんなそこへ集めてしまうと、いわゆる隔離してしまうと、こういういわば人権無視がやはり堂々とその大企業の中ではまかり通っておると、こういう事例があるんで、この問題についてもお聞きしたいと思いましたけれども、きょうは時間がもうなくなりましたから、これは別の機会に譲ります。  いずれにしましても、最初に私、大臣に申しましたように、こういったことが今日新憲法下のもとに堂々と行われている。したがって職場に憲法がないということは、労働者の実感としてやはりあるということは、私は非常に事態が重大だと思っているわけであります。口では憲法擁護ということは、もちろん公務員の場合には義務としてありますし、もちろん政府としてもそういうことは当然約束されていることですけれども、一たび職場に入りますと、工場に入りますと、こういったことがごろごろしていると。やはりここに私は政府としては目をつけていただきたい。事例としては、きょう挙げたのは幾つかの数えるほどの例でありますけれども、しかし、これは一つや二つの例ではなくて何百、何千とあるということですね。で、日本の今日のこの高度成長を支えてきた労働者がこういう条件の中で働いている。しかも今日、不況ということになると、もっともっとこういったことが起きる可能性だってあるわけでありまして、それに対してやはり労働者サイドで労働省が明確に対処していただくということは非常に今日大きな意義を持つんじゃないかということでございまして、その点、最後にひとつ大臣の御所見を伺って、私の質問を終わりたいと思います。
  211. 長谷川峻

    国務大臣長谷川峻君) 労働者にべったりという意味じゃなくとも、日本の今日というのは勤労者が汗をして自分の職場を守って、一生懸命生活を守りもし、子供を育てもし、そういう姿の中に私は今日の日本があろうと思います。おっしゃるように、大ぜいの中にいろんな傷やら、あるいはいろんな問題があることも大体わかります。しかし、そういった具体的な問題などについては、私たちの持っている労働基準法という法律、あるいは組合法、そういうものを適用しながら、やはり守って、そして自分の職場で懸命に働く中に心の平和と日本の平和がある、こういう姿に持っていくように、みんなで努力しようじゃありませんか。そういうことに努めたいと思っております。
  212. 木島則夫

    木島則夫君 まず労働大臣にお伺いいたします。労働行政の中に占める基準監督行政を大臣はどういうふうに位置づけていらっしゃるか、どうこれを認識されていらっしゃるか、まずこの点からお聞きしたんです。
  213. 長谷川峻

    国務大臣長谷川峻君) 基準行政は労働行政、職安行政とともに労働行政のうちの重要な一つと認識しております。基準行政は、個別労使関係において資本に対して相対的に弱い立場にある労働者労働条件に関しまして、罰則を担保として最低労働条件を定めて保護を図る役割りを果たしております。労働基準法労働安全衛生法等の労働保護法の履行確保を図るため、労働基準監督機関制度を設けまして、適用事業に対する監督指導実施していることは御承知のとおりでありまして、労働者労働条件は、職業病等の労働災害、賃金不払い、解雇等、問題が少なくないので、それだけに労働者基準行政に対する信頼も大きいと思っております。この期待を裏切らないために、職員一丸となって労働基準行政の使命を認識して、なお一層努力を続けたい。きのう、きょうも先ほどからお話が出ましたが、全国の労働基準局会議を招集しまして、このたび国会で御可決いただきました未払い賃金、あるいは労災等の法律内容等を指示したりしているところであります。
  214. 木島則夫

    木島則夫君 非常に重要なものであるという認識、位置づけはよくわかったんでございますが、労働省が発行しております五十一年版の「労働問題のしおり」の中で触れております「労働条件の向上」の項目中にございます「監督指導状況」を見ますと、この四十九年中に監督官が現場に赴いて監督実施した件数は延約二十二万件ということになっております。さらに「監督実施状況の推移」という表によりますと、大臣もきっとおわかりだろうと思いますけれども、三十五年が実施率一二%、その後四十年になりますとちょっと落ちまして一〇・九、四十五年の実施率が一〇・八%、四十六年が一〇・一%、四十七年が九・三%、四十八が八・七%、四十九年は七・五%というふうに三十五年から四十九年まで、まあ十五年の間に実施率は何と半分近くに減っているわけですね。七・五%にも下がってしまっている。これは冒頭大臣がおっしゃいましたように、基準監督行政が非常に重要であって、その使命に燃えて一生懸命努力をしているというお言葉に私はもとる数字ではないかと思うんですけれども、この実態をどういうふうにごらんになりますか。そしてどこに原因がおありになると思いますか。
  215. 長谷川峻

    国務大臣長谷川峻君) その第一は、適用事業場数がどんどんどんどんふえること。大体、私の方でいま把握しているのは二百九十万事業場でございます。監督官の数はいま約三千でございます。したがって監督官が事業場に対する臨検監督実施するには膨大な数字であります。そういうことで重点的にやらざるを得ない。先ほどおっしゃった一罰百戒と申しますか、そういうふうな形でやっていくという姿勢であるところに、そうしてまた人員をいま増すことがなかなかむずかしい。大学あたりですと、大学が一つ生まれればちゃんと大学教授が何名というふうなかっこうになりますが、こちらの方の人員はなかなかそういうところからしますと獲得ができないという悩みを持っているところであります。
  216. 木島則夫

    木島則夫君 いま大臣がおっしゃった一罰百戒ももちろん結構なんですね。みせしめにする、これを手本とするということに皆さんがならってくださればいいんだけれど、違反率というものを、じゃ三十五年から四十九年の間で推移して見てみますと、一罰百戒の効果というものは私はこの違反率の中にはあらわれていないと見たい。としますと、やっぱり社会経済状況に合わせて政治がこれに対応していかなければいけないという意味では、現在監督官の数が三千というお話でございました。やっぱり私は、事業場がふえればこれに対応した監督官の数をおふやしになる。もちろん定員法、いわゆる定数の中の枠ということに限定されるむずかしい面はおありになると思いますよ。おありになると思うけれど、私は一罰百戒の効果がこれを見るとどうも上がっていないと思う。その辺どういうふうにこれから対処なさいますか。やっぱりふやさなけりゃまずいと思うんですが、いかがですか。
  217. 藤繩正勝

    説明員藤繩正勝君) 先ほどもお答えをしたことでございますけれども違反率というものの見方でございますが、確かに、監督対象事業場が百ございまして、その中で何らかの労働基準法違反を犯したものが七十あるとすれば、違反率は七〇。それは六〇よりは悪い、こういうことに相なりますけれども、しかし厳密に言いますと、むしろ全事業場、二百九十万事業場の中で労働基準法がどういうぐあいに守られているかということをもし推しはかることができれば、それが最も正確な違反率になるわけであります。そうしませんというと、私ども人員にも限りがございますし、それから労働基準法遵守の状況、対応というものも区々でございますので、監督官としては、できるだけ問題のある事業場を選びますし、それからできるだけ違反をさらに探し出す努力をいたします。そういう意味では、違反率が高いということは適切な対象事業場の選定、それから監督手法の向上、それから監督モラルが高いということを示すという意味も一面にはあるわけでございます。しかしながら、もちろん違反率が低ければ、絶対的に低ければ一番結構なんでございますけれども、そういう性格を持った数字だということを前提の上で御理解をいただきたいと思います。したがいまして、私どもとしては、全体の遵法水準がやはりよくなるということをねらいにしていかなければならない、かように思っておるわけでございます。  それから、私ども本当に監督官は手薄でございまして、何とか各方面にお願いをしてふやしてまいりたいというふうに思っておるんでございますけれども、いま大臣からもお答えしましたように、全般的な定員の削減といいますか ふやすことが非常にむずかしいという中でいろいろ苦労をいたしておりますけれども、たとえば監督の機動力を強化するとか、あるいは監督手法をさらに能率化するとか、いろいろな工夫を加えながらさらに効率的な監督実施してまいりたいというふうに思うわけでございます。
  218. 木島則夫

    木島則夫君 たとえ監督官がふえたといたしましても、やっぱり定員というものがございますから、定員の枠の中で事務官や技官が減らされれば、これはだめだと思いますね。監督官が現場に赴いてそういう違反事件を、事犯を摘発をする、そうしてその事務処理をする人が減ったのでは、私は基準監督行政というものが円滑に動いていかない、これも大きな重要なポイントだと思いますね。ましてや冒頭大臣がお触れになりましたように、きょうは全国の労働基準監督局長がお集まりになった席で、大臣からいろいろお話をなすった中に、賃金の支払の確保等に関する法律というものがこれから実地をされるということをお触れになったと思いますね。そうしますと、これはたしか七月の一日の施行ですね。そうしますと労働基準監督署長がかかわりを持つことになるわけですね。で、人の数の問題だけではなくて、これ内容、質の問題もここで絡んでくるわけでしょう。本来の基準監督行政にしてから、私は数字にこだわるわけではありませんけれど、四十九年の監督実施率というものが七・五%というのでは、ますます基準監督行政が希薄なものになっていくんじゃないだろうか。また、これはいいことですよ、こういう法律ができるということは大変いいこと、いいことなんだけれど、基準監督署長がこちらにいわゆるかかわり合いを持たなきゃいけない、それは人員的なものでなくて内容的なものにも把握をしていかなきゃいけないということで、私非常にむずかしくなると思うんですけれど、きょうのその会議ではこの点どういうふうにお触れになりました。ただ一生懸命やってくださいだけじゃ、私はこれは具体的な措置にはならないと思いますけれども、いかがでしょうか。
  219. 長谷川峻

    国務大臣長谷川峻君) これはさきの国会で衆議院、参議院全員一致でこの賃金の立てかえ払いの法案は御通過さしていただいたわけです。その際に十月一日から施行のつもりでございましたけれども、こういう事態であるから七月一日からやれということで、非常にむずかしいと思いましたけれども、やっぱり労働省の諸君大いに張り切っておりまして、研修法律整備等々一生懸命やって、七月一日から間に合わせよう、そこで局長諸君が集まったわけでありますが、従来ともにどこかの会社が破産しますというと、ほかの債権もたくさんあるだろうけれども労働省はまず生活の原資である賃金を何とかして取り戻して勤労者に分けてやると、こういう仕事をしておりましたから、それを今度は法律的にしかも立てかえ払いするということで、業務的には余りふえることもないんじゃないか。そのうちに景気がよくて未払いするようなことをやらなきゃ一番いいんですが、しかしそういう意味では事業量については余りいままでやっていることとそう大差がないのじゃないかということと、もう一つやっぱりこういうときでありますから、使命感に燃えて懸命にやりますと、それにこたえると同時に、おっしゃるように御支援いただきますように、将来ともには労働基準監督関係人員増員等々は懸命に私も努めたいと、こう思っております。
  220. 木島則夫

    木島則夫君 人員増員というものが近い将来、私は実現をされるとしましても、いま言ったように従来の守備範囲を超えたような問題にもかかわりを持たなくなってきたと、こういうことでしょう。いま局長がおっしゃったように、その間というか、その経過的な措置としまして、基準監督行政の機動化とか手法の効率化とたしかおっしゃったと思いますね。これ具体的にどういうことですか。それは言葉ではわりあいにやさしく響くんだけれど、実際にどういうことをやるわけですか。たとえば機動化とか、いままでだって私は機動的におやりになっていると思いますよ。手法、どんなふうに具体的に、一例で結構ですよ、何かございましたら教えてください。
  221. 藤繩正勝

    説明員藤繩正勝君) 機動力を増強するという意味は、簡単に言いますと車をできるだけ監督官につけるということでございまして、これは往年から言えば非常に機動力がふえてまいりました。それからたとえば監督復命書の様式を簡便化して、相手方に渡す指示書と復命書とを一枚で、コピーでそのまま出るようにするとか、あるいはいろんな統計の処理を電子計算機にゆだねるとか、いろんなことを工夫してやってまいっております。いま御心配の賃金支払い確保法案の施行、私どもは頭痛いんですけれども、これは倒産の現状の把握は監督署でやりますけれども、支払いの支給事務は労働福祉事業団で行わせることにいたしておりまして、ここで若干の増員が得られておりますし、それから実務といいますか、支給事務そのものは金融機関にやらせますので、この点は監督署には負担がかからないというふうに見ております。  ただ先ほども大臣から申し上げましたように、何といっても基本的に人員の増加を図らなければなりませんですけれども、これまた大変きつい枠があるわけでございます。したがいまして、先ほど来ここでも御議論がございましたが、いま監督署は実は監督も大変でございますけれども、たとえば先ほど出ましたような非常に個別の申告事犯の処理というものに大量のエネルギーを割かれておる、あるいはまた職業病闘争と称する認定のための集団闘争に相当な精力を割かれるとか、いろいろそういったわが国行政官庁の何といいますか、置かれている宿命と言ってしまえばそれまででございますけれども、いろんなそんな行政の回りにあります仕事に相当忙殺されているのが現状でございますから、そういったあり方につきましても、私どもも勇気を持って申し上げることは申し上げながら、本来の行政に最大のエネルギーが投下できるような、そういう改善も試みてみたいというふうに思うわけでございます。
  222. 木島則夫

    木島則夫君 まあ私は数にこだわるわけではありませんけれど、やはり抜本的には増員をしなきゃとてもじゃないけれども手に負えないと思いますね、本当に。そのことはやっぱり大前提としてこれは大蔵省そのほかへの強いプッシュがなければいけないことですけれど、私はその点強く強調をしたい。で、先ほどから問題になって取り上げられております福祉施設事業場における違反はこれはもちろんのこと、余り問題にされない、目立たない部署での違反の摘発というようなことになりますと、とても現状では手が届かないということになるんだろうと思いますね。  私は、本当に私の目に触れる範囲のものですから非常に小さい狭い範囲のものですけれど、へえ、こんなところにこんな労働条件実態があるのかなというような部署がまだまだあるわけですね。一つ金融機関などに実態をとりますと、ちょうどいま公務員にボーナスが出た、そのボーナスの時期になりますと、皆さん公務員でいらっしゃるから、うるさいほど恐らく金融機関からいろいろ預金の勧誘がおありになるだろうと思う。受けていらっしゃるんだろうと思う。各種金融機関というのは血眼になっていま預金獲得の奔走をしている。特にその過当競争のもとでの中小の金融機関というのは、まさに生き死にの問題としてこれはもうすさまじいものがあるようですね、本当に。まずある中小に属する金融機関の外交係のお話を要約をして私が申し上げて、その実態にかえたいと思います。  その人は東京の近県から都内に通勤をしているんです。家を朝七時前に出るそうです。八時過ぎにはもう銀行に入ってくる。朝八時半からもう仕事を開始したり、それから外交ですから外出の仕事が多い。夜どうしても八時か九時。一日十三時間あるいは十四時間なんというものはもうあたりまえになってしまっているということですね。で、それだけやっても時間外というものは取れない。というのは銀行の仕事というのは非常に特殊な仕事であり、ことに渉外とか外交の仕事というのは外に出て必ずしも全部が全部仕事的な面だけではなくて、お客さんとお茶を飲んだり仕事をしたり、ときには引っ越しの手伝いまでさせられる、軽い用事だったらばちょいと電話をかけられて、やってよ、そうすればあんたのところへ預金は入れますよというようなことで、そういうものもどうしてもやらざるを得ない、これが実態だと思いますね、私は。だから実際に厳密に、ここからここまでが仕事でここからここまでは仕事ではないというような、そういうけじめみたいなものをつけにくい。で、さっき言った外交とか渉外の人は外に出る機会が多い。もちろん預金の勧誘とか、銀行に来られない利用者のための入出金の処理、あるいは新規の客の獲得、既存の客の維持継続ですね。ところが仕事内容が特殊なために、いま言ったように時間外が取りにくい。  たとえば一日かかっても一件の勧誘もできないようなことがあるわけです。しかし明らかに一日かけて会社のためにこの人は仕事をしている。で、その人の話ですと、全部が全部とは言っておりませんでした、非常に多くの金融機関でタイムレコーダーというのがついてないそうですね。これはなおさら時間外が取りにくいということだそうであります。で、その金融機関の仕組みをここで細かく言う必要はないと思いますけれども、たとえばある金融機関の場合には、年度当初に預金獲得を含めた目標額が各支店に示されるわけですね。そうすると、この目標をこなすために割り当てが行員に課される。その目標も非常に細かく細分化されておりまして、定期預金とか普通預金、あるいは通知預金、公共料金振りかえの口数、口座までその目標の中に細かく分類をされていて、その一つ一つの項目、その人の銀行では約二十項目あると言ってました。こういう二十項目のいわゆる目標を一〇〇%達成しないとだめなんだそうですね。達成しないとどういうことになってくるかというと、支店長にその罰がかかってきて、支店長の給料の中から罰金として何か差し引かれる、それが一万から十万。そういうふうな状況になると、君たちがしっかりやってもらわないとこの銀行は成り立っていかぬのですぞと、現在は過当競争ですからと言われると、なかなか労働組合はあっても、いわゆる時間外労働も取りにくいというような状況は、私がいまお話ししたほかに非常に多くあるそうですね。そういう状況がいまそのままに放置をされている。  そして銀行というのは、まあ非常に因襲的な、悪い意味で因襲的伝統があったり、さっき言った非常に特殊な事情があるものだから、なかなか思うように強いことも言えないというような雰囲気があるらしい。そして朝八時に来て夜八時か九時。九時に帰るときはもう郊外に行くバスはないからタクシー。このごろタクシーは高い。それも必要経費としては認められないということで、非常に自分への健康、いわゆる肉体的な、あるいは金銭的な負担もかかってくる。しかし時間外労働はない。それじゃ思い切って歩合になっているかというと、もちろん歩合にもなっていない、というような状況の中で仕事をさせられていて、明らかに違反というような隠れた状況がここにあるということを、私はまあ愚痴をこぼされながらのつまりアピールをよく受けるんです。  だから銀行とか金融機関というと、華麗で華やかなスポットライトが当たっているとばかり思ってもらっては困る。それは一部の銀行であって、中小規模の金融機関に至ってはこれは大変な騒ぎなんですよ、本当によくも体がもってるというような状況ですね。実は、きのうもあの雷の中、自転車でかさも差さずに走ってないと一日の仕事が終えないというのはこういう状況なんですね。そういう状況でやらないと目標達成ができないということなんですね。まあいままでこういう金融機関に対する実態調査というのか、おやりになったことがあるかどうか。もしなければ、ほんのいま私が一端を述べた、こういう金融機関に対する実態調査というようなものをおやりになるつもりがありますか、どうでしょうか。
  223. 藤繩正勝

    説明員藤繩正勝君) 最近、地方の銀行、あるいは相互銀行というようなところの労働条件につきまして、かなり数多くの申告事案が出てまいっております。それを中心として組合の方からもいろいろ私どもに話が来ておりまして、いまおっしゃいましたようなことがやはり一部に相当あるというふうに私ども考えております。私どもが耳に直接しました範囲内だけでも、中小金融機関労働強化の例としましては、たとえば地域サービスと称して早朝とか休日に行員を神社境内の清掃、あるいは道路の掃除などの作業に従事させている例だとか、病気欠勤中、あるいは年次有給休暇で休んでいる行員を業務繁忙という理由で自宅から呼び出しをかけた例とか、昼休みが多忙のためになかなかとれないで昼食時間が大幅にずれる例だとか、そういうようなことを私どもも聞いております。  で、金融機関につきましてはかねがね問題がございまして、特に月末、年末、年度末に女子行員を中心に非常に長い労働時間あるいは深夜労働というようなものが懸念されますので、去年の暮れには特に業界に対して私どもの方から警告を発したというような経緯もございます。また申告等に際しましては個別の監督指導あるいは集団的な監督指導を行っておりますが、まあいまおっしゃいましたような御提案でございますから、私どももせっかく勉強をさしていただきたいというふうに思っております。ただ労働時間全体につきましては、いま労働基準審議会の中に時間部会を設けていろいろ検討を願っておりますが、かねてからこういったホワイトカラーの時間のあり方、それからたとえば新聞記者とか、あるいはセールスマンというような人たちの労働時間のあり方というのはなかなか難問でございまして、いろいろな問題がございますけれども、ひとつこの機会に勉強をしてみたいというふうに思います。
  224. 木島則夫

    木島則夫君 勉強というのは、私はもう一歩前進をして実態調査をしていただけるというふうに受け取らしていただきます。  もう時間がございませんから、私最後に要求を申し上げることは、こういうただ調査をしても、その監督実施というものが必要だと思いますね。それはいずれも何もいま私が一例を挙げたほんの氷山の一角をかいま見た金融機関だけの問題じゃないと思うのです。基準行政が円滑に行われるために、やはりその人員増を含めた根本的な手当てというものが必要だろうと思いますね。冒頭に大臣がおっしゃいましたような労働行政の中での基準行政の重要性を強調するのならば、私はぜひ大蔵省なりに強硬にプッシュをしていただきたい。それが労働者の命と健康を守って快適な環境作業を形成することにつながるわけでありますから、もうそうですね、予算編成準備ですわね、そろそろ。だから、そういう時期ですから、こういう私のような声を、バックにというと大げさになりますけれども、私は大いにやっていただきたい。どうですか、予算編成のもうそろそろ準備にかかる時期ですけれども、そういった意味でひとつ強力に労働省労働サイドから働きかけをなさいますようにお願いをしたい。なるべく具体的に最後に大臣のお答えをいただいて私の結びにしたい、最後のお訴えにしたいと思います。
  225. 長谷川峻

    国務大臣長谷川峻君) 具体的な例から銀行の話も出ましたけれども一つ一つ労働基準法違反については局長が申し上げたようにやりますけれども、私は経営者の方々にお目にかかるときに、私もあなたと同じように、具体的な問題を広げて相手に話すわけです。銀行協会の会長などに、昔は繊維関係で女工哀史という言葉があったけれども、このごろはどうも銀行の女の子がそういうふうなかっこうらしいですよと、非常に派手に見えますけれども、どうもそういう話を聞きますよと、ですからあなたの方でもお直しくださいという、一般論として申し上げていることで、それをさらにいまから具体的にやっていきたい、こう思います。  もう一つは、やっぱり日本は先ほど申し上げたように事業所もどんどんどんどんできる、こういう工業国家でございますから、そういうやはり観点からも、労働行政というものは、私の田に水を引くわけじゃありませんけれども、やはり大事なことであるから、内閣全体が取り組む姿勢でやってもらいたい、通産だけが産業を考えるところじゃない、人間が考えるところという発想の転換の中に推進しながら、いまおっしゃったような問題について、せんだって国会が終わったとたんに、労働省では来年度予算についての皆さん方の委員会での御質問を整理しながら、そういうものをどう肉づけしていくかということで実はせっかくいま検討を始めておるところであります。そういうときにはまたしっかり大蔵省なりその他に皆さん方の御加勢もお願い申し上げたい、こう思っております。
  226. 市川房枝

    市川房枝君 労働省は婦人労働問題はもちろんのこと、婦人問題も担当しておいでになりますので、そうした問題について労働大臣並びにに婦人少年局に三、四の御質問を申し上げたいと思います。労働基準局長も伺いたいと思ったんですけれども、差し支えがあるようで、私が約束をしておかなかったので会合がおありになるということで、差し支えありませんでしたら、ちょっとの間お残りいただけたらありがたいと思います。  最初に伺いたいのは、内閣にありまする婦人問題企画推進本部について伺いたいと思います。この本部は昨年の九月二十三日の閣議で決定されましたんで、労働大臣はもちろんそれに参加しておいでになると思いますが、まあ本部長は総理で、副本部長が総務長官で、あと関係の省庁の事務次官が本部員になっておいでになります。実はその後で三木総理にお目にかかりましたときに、何ですか男の方ばっかりじゃないですか、男の方々で婦人の問題わかりますかと私が言いましたら、ああそうでしたなと、こういうわけなんです。恐らくこれは事務次官とかいう、そういう役目でお決めになったからそうだったかもしれませんけれども、まさか労働大臣は、私はそれこそ婦人問題に御関係があるから、そのことはどうですか、やっぱり男ばっかりだとお思いになりましたか、そうしてそれでいいとお思いになりましたかどうか、それをまず第一に伺いたい。
  227. 長谷川峻

    国務大臣長谷川峻君) 市川先生予算委員会で男ばっかりの婦人会議と言われたときに、そこに並みいる者がみんなびっくりし、またある意味では共鳴、同感したことでございます。その際も申し上げましたけれども、ああいう男の会合といっても実際の事務局はこういう方々が行って、ベテランが集まっているんだから、その頭数の問題だけじゃなく、実質の方でお考え願いたいということでございましたが、その後その事務次官の中に御婦人を入れるというところまでまだ発展はしておりませんが、非常な印象的な質問でありますからずっと残っております。
  228. 市川房枝

    市川房枝君 あれは別に法律で決まっているわけじゃないんですから、私はあの場合、労働大臣はそれこそ婦人少年局長労働省においでになるんだから、それは事務次官よりも一段下かもしれないけれども、やっぱり参加させろということを御主張くださってもよかったんじゃないかと思うんですが、まあひとつこれは何とか婦人の方を一人加えるようにお骨折りを願いたいと思うんです。  ところで、この本部というのは、いつまであるのか期限がございませんね。それからまあこれは設置法にももちろん載ってもいないわけですから、一体これいつまで続けられるのかということを実は心配をしているんです。御承知のとおりに、国際婦人年は去年で済んだんですけれども、昨年の国連総会で今後十年間を婦人の年ということで国連で決めて、そして五年後にやっぱりメキシコみたいな大会があり、十年先にはもちろんあるわけですけれども、だからそういう国際的な、国連の行事があるのに、それに対応するものとしてつくられた本部というのが、もしもう用が済んだというんで、なくなるというんじゃちょっと困ると思いますけれども労働大臣はどうお考えになりますか。
  229. 長谷川峻

    国務大臣長谷川峻君) まあ設置法で何年というふうなことは仮になくとも、行動計画がつくられて、いまからずっとやらなきゃなりませんから、やはりそういう意味ではなくすようなこともありませんし、そしてまたこれだけ婦人の地位の向上、平等ということが本当に一つの盛り上がりとなってきたときでもありますし、また一回そういう声が出ると、一つ一つが多少実績になっていくんじゃないでしょうか。それを消さないためにもずっと続けてまいりたいと、こう思っております。
  230. 市川房枝

    市川房枝君 実はきょう朝十時から参議院の会館で、衆議院、参議院の婦人議員が超党派で婦人懇談会というものをつくっておりますが、そこで実はその問題を心配をしまして会合をしました。私初めだけちょっと出て、あとこっちへ参ったのですが、そこで報告を聞きますというと、出席された各党派の婦人議員がみんな心配して、本部はもちろんのことですけれども、その本部の事務的な機構として婦人問題担当室というのができておりますね。その室長は労働省の婦人課長がおいでになったわけですが、その担当室も何だか消えちゃうというような話があって、それで実はきょう三時半から総務長官のところへ婦人議員の代表が申し入れにおいでになったらしくて、さっきそこにおいでになりました自民党の方々もきっとおいでになったのじゃなかったかと思うのですが、あしたは十時四十五分に総理にお目にかかって、そのお願いをしようと思うのですが、私は労働大臣は、いまお言葉を伺って、これはありがたいと思ったのですが、ひとつ内閣でぜひこれを続けて、少なくとも十年間続けてもらわないと私は政府が困ると思うんですよ。ということでひとつ特にお考えをいただきたい、それをお願いしておきます。  それから国際婦人年に関連してできましたいまの本部といいますか、あるいは婦人会議といいますか、その方で四月に中間報告がありました。本部の方としては行動計画概論ですか、概説ですか、というものが四月の三十日に発表になりましたけれども、その発表になったものは各省別になっていないんですね。みんな一緒になっちゃって、その中で労働省としてのやってくださることば一体何なのかなと思ってみてもちょっとよくわからないといいますか、これは概論ですから、九月にまた改めて多少訂正されたものができますから、そのときにまた拝見すればいいと思うのですが、しかし労働省としてといいましょうか、婦人少年局として、五十一年度に国際婦人年と関連しての行政上においての新しい何かなさること、予算を伴ってのもの、何があるか、ちょっと伺わせていただきたいと思います。これは婦人少年局長から。
  231. 森山真弓

    説明員(森山真弓君) 労働省といたしましても、国内行動計画の概案が四月の三十日に発表されました段階で、労働省の受け持ちする部分を十分検討しているわけでございますが、昨年の世界行動計画と同時ぐらいに、ILOでも婦人労働者のための機会及び待遇の均等を促進するための行動計画というのがつくられておりまして、それはかなり、特に職場の問題については具体的にいろいろと進言しているわけでございます。ですから、この四月三十日にできました概案が成案となるのが秋と聞いておりますので、それまでに私どもの方としましては、そのILOの行動計画も参考にいたしまして、そうして私どもの政策の方向というものをある程度見きわめました上で、日本の国内行動計画全体の中に職場の問題も入れてもらいたいということで、現在、数年前からやっております男女平等問題の研究会、あるいは婦人少年問題審議会等におきまして具体的に検討していただいているところでございます。  それからもう一つ、これとは少し違うのでございますけれども、国内行動計画の概案ができました殿階で、中央ばかりではなくて、地方の一人一人の御婦人に少しでも広くこの趣旨を知っていただきたいということで、婦人少年局は幸い地方に婦人少年室という機関を持っておりますので、そこに婦人の地位向上会議という会議を持たすようにいたしまして、予算的にもお認めいただきましたので、この五月から六月にかけて一回と、秋に成案ができましたとき一回という計画にいたしておりますが、婦人の地位向上会議という会議を婦人少年室が主催してやるという予定にいたしております。これは関係行政機関に御連絡し、また婦人団体、労使の団体、その他関係の有識者の方々に広くお集まりいただきまして、概案の趣旨を御説明し、それぞれの地域で、それぞれのグループでどういうことをしていただけるか、どういうことをしたらいいかということを考えていただくと、そういうきっかけをつくる会でございます。これがさしあたって私ども地方において進めていきたいと考えている仕事でございます。
  232. 市川房枝

    市川房枝君 ILOの総会での働く婦人のための宣言あるいは行動計画は国内で当然労働省が担当なさるんだと思うんですが、それがどこまで進んでいるのか伺おうと実は思っておりましたけれども、いま伺いましたからこの問題は省きます。  次に労働基準法について伺いたいんですが、働く婦人の男女平等の問題は基準法の第三条に規定されておりますが、第三条は賃金だけの平等であって、それで第四条が均等待遇の規定になっておるんですが、これには女が人づてないので、結局均等待遇というのは「国籍、信条又は社会的身分を理由として」ということで、普通憲法その他のいろんな法律の男女平等のところへは、ここへもっていって性別とちゃんと入るんですけれども、これには入ってないと。そこで働いている人たちの定年制の問題、婦人だけ非常に若くてやめなきゃならぬという、これは企業によって違いますけれどもあって、それに対して働いている女の人たちの中からそれに対して承服できないというので裁判に訴えるという例がこのごろちょいちょい出ております。そして裁判では大体憲法第十四条の「法の下の平等」で婦人の方が勝っている場合がほとんど大部分だと思うんですけれども、この問題は基準法で三条でも四条にでもいいけれども、性別によって差別しないといいますか、均等待遇といいますか、ということになると四条へ入れる方がいいのかもしれませんけれども、これは組合あるいは婦人団体なんかでこの点では多少意見の違いもありますけれども、この点を労働省として、基準局長としてといいますか、あるいは婦人少年局長でも結構ですが、どうお考えになっておりますか伺いたいんです。
  233. 森山真弓

    説明員(森山真弓君) 労働基準法におきます男女平等の規定はいま先生がおっしゃったとおりでございまして、三条の方に「使用者は、労働者の国籍、信条又は社会的身分を理由として、賃金、労働時間その他の労働条件について、差別的取扱をしてはならない。」という均等待遇がございますし、第四条の方で男女同一労働同一賃金のことを規定しております。そこのところが賃金だけ男女差をつけてはいけないということを言っているのが不足だという御趣旨だと思いますけれども、それ以外の分につきまして法律上きちっと規定しようといたしますと、同じ労働基準法の中で女子について特別のいわゆる保護を規定している部分がございまして、それをどのように扱うかという問題が法律上非常にむずかしい問題であるというふうに聞いております。で、最初昭和二十二年に労働基準法ができましたときにこのような形になりましたのはそういう理由であるというふうに聞いているわけでございます。
  234. 市川房枝

    市川房枝君 それは二十二年の当時の解釈だったでしょうけれども、もうそれから三十年近くもたっているんですけれども、まだ解釈は変わらないんでしょうか。保護の問題というのがひっかかっているというんですけれども、保護の問題の解釈もかなり私は変わってきているんだし、どうですか、基準局長さん。
  235. 藤繩正勝

    説明員藤繩正勝君) 三条とか四条というのは、先生御承知のように労働基準法の中でも特に労働憲章的な、つまり基本的な考え方を明らかにする条文でございますから非常に重要でございますが、そこで賃金については四条で規定がございます。そこで先生の御主張のように、たとえばもうほかの労働条件についてもそういうふうにしていったらどうかということでございますが、たとえば時間について、しからば時間について女子であることを理由として差別待遇をしてはならない、こう規定した場合にどういうふうになるか。いまたとえば残業の規定がございます。男子について言えば三六協定を結ぶことによって自主的に幾らでも残業ができる。しかし女子はその場合でも一日について二時間、一週について六時間というアッパーリミットがあるわけでございます。そういうものをそれじゃ取っ払ってすべて男子と同じように扱っていくのかというと、やはりそこに非常に問題がある。  そこで先ほど婦人少年局長からもお答えしましたように、その辺が非常にむずかしい問題だということと、いま先生がおっしゃいましたように、三十年前と違うじゃないかと。確かに産業、社会の状況も違いますし、人々考え方も違います。なるたけ同じようにすべきだという考えもございますが、先般来労働基準法研究会の中でもいろいろ勉強をしていただきました結果、一応出ております考え方としましては、母性保護的な面はやはり残すべきだ、そうでないところはなるたけ平等にしていくべきだ、こういう大筋の考え方一つ出ております。もっともな考え方だと思いますが、問題は母性保護というところの限界でございまして、労働時間を女子について規制していることはやっぱり広い意味では母性保護であるのか、そうでないのか、その辺の考え方をやはりすっきりしていかないとこの問題は解決しないというふうに私どもは考えております。
  236. 市川房枝

    市川房枝君 その問題がアメリカで長い間議論になり、いまも議論になっているわけなんですけれども、男の労働時間も私は短くしたらいいと思うのです、女の方だけでなくてですね。そうすれば全体の労働条件よくなるというか、これは家庭からいっても、やっぱり正常なる家庭生活というものは時間が普通の五時なら五時ごろで終わって、そして家族みんな一緒に御飯が食べられるというような状態が望ましいのであって、だからこれは企業の問題だのいろんな問題がありまして簡単には言えないかもしれませんけれども、私は少なくともそういう方向を向いていくべきであって、だから女が男と同じに、深夜業といいますか、あるいは時間を長く居残りができないなんていうことの議論は、私はやっぱり修正してもらいたいと思うのです。そうしてその母性の保護というのはいまお話しのように、どこからどこまでを保護というかということは、これ問題であって、これもそれこそジュネーブのあの会議でも私は問題になったと思うのですけれども、母性保護というのはそれによって差別をつけられるべきではないのだと。これは働く婦人自身の問題ではなく、社会国家のむしろ問題なのであって、だからそれはできるだけ狭くするといいますか、ということで、私は時間もそうだし、それから労働基準法の規則の中ですか、女は重い物を持っちゃいかぬとか危険業務は何とかといっていっぱい出ているじゃありませんか。  それちょっと伺いたいのだけれども、それなんかもやはり二十二年ですから三十年前危険業務としたのが、今日ではもうそんなのはないというか、たとえば工場の中で重い物何トン以上は女は持っちゃいかぬなんていって、そんないまごろ工場の中で男だってそんなもの担いでいきますか。労働組合といいますか、の方々の意見で、いままでの婦人に対しての保護のいわゆる既得権といいますか、それはそういうふうに工場の施設もすっかり変わってきているのだから、私はそういう状況と照らしてそして考え直してほしいと。いま労働基準委員会ですか、何かそこでのお話を伺ったんですが、基準委員会に対して、これは婦人の中でも一切譲らないのだという態度がありますけれども、これは私は反対なんです、時代が変わってきている、いまのように。だからもう一遍検討し直したらいいと、そして必要のない保護のものは削っちゃったらいいのだと、そしてどうしても削れない重要な問題だけを私は保護としていく。そういう立場でいまの三条、四条をもう一遍見直していただくといいますか、日本としては保護と平等の問題は新しい問題といいますか、わりあいに最近になってむしろ問題とされてきたので、外国では、アメリカではもう三十年も昔から問題にはなってきておりますけれども、ただ基準法の改正の提案が私は使用者側といいますか、企業の側からの提案は賛成できない。やっぱり働く婦人の人たちの立場からの提案であってほしいのであって、だから十分私は働いている人たちの意見を聞くというか、あるいはそういう人たちの労働状態の現状を正しく把握して、その上で考えていただきたいと思っているのですけれども労働基準法のいま委員会ではそれはいつごろ法になりますか。その基準法改正をなさる意図、労働省としてはいつごろですか。いまの委員会で案がいつまでにできて、それをいつまでに法にするというような御計画を伺いたい。
  237. 藤繩正勝

    説明員藤繩正勝君) 先ほど申し上げましたように、安全衛生の側面、たとえば高所作業の禁止でございますとか、あるいは重量物の運搬だとかそういうようないろんな問題については、もうそろそろ取っ払ったらどうかという意見はかなり出ておりまして、私どももそれをいま作業として始めたいと思っておりますが、労働基準法研究会が六年ばかり前にできまして以来、すでに安全衛生法がまずできました。それから今度の賃金支払い確保法案もその一つの結果でございます。そういうぐあいに逐次必要なものは改正をしてまいっておりますが、今度のこの婦人労働の問題も小委員会の作業はかなり進んでおりますので、二、三年のうちにはやろうと思えば改正ができるというところまでいくと思いますけれども、それはいま先生おっしゃいましたように、使用者側の提案では反対だと、こういう御意見もありました。各界のいろんな意見が錯綜いたしますし、それからまた婦人の側におきましても、既得権の観念は予想外に強いといいますか、なかなかこの辺もむずかしい問題があろうかと思いますので、各界の御理解を得てこれは進めなきゃならぬと思います。しかし法律の改正にいきませんでも、むしろ規則の整理がかなり必要かつ可能だと思いますので、その辺を取っかかりとしてこの作業を進めたいというふうに思います。
  238. 市川房枝

    市川房枝君 いま規則の改正というお話がありまして、これは私にこの国会で、これは十何年前の話ですけれども婦人の、テレビのプロデューサーが時間延長をしてほしいということで、これは労働委員会でそれ問題になりましたけれども、あれは法律じゃありませんから、規則ですが、しかしその問題について陳情者の意見も聞いて委員会で大分議論があったんですが、初めは婦人記者もそれに賛成して延ばしてほしいと言ってたんですが、途中から婦人記者は既得権を放棄するのはいやだというわけで引っ込めちゃいまして、それじゃ本人たちがそうおっしゃるならしようがないということで、テレビの方だけ延期になりましたね。だから私は、その時代とまたいま考え方は変わってきているんですよ、婦人記者の人たちも。やっぱり夜できないといいますか、ということによって婦人のやっぱり就職の機会が狭められているんですよ。そういうことがこのごろ大分問題になってきておりますから、この問題はそういう人たちからのお申し入れがというか、運動がなければといいますか、しかしそれにかかわらず私は労働省の方でやっぱり考えてほしいと思います。それを注文しておきます。  それから就業における男女平等問題研究会というのは、これを婦人少年局で始まっているんですね。これは何を目的としてどの程度までその研究会は進んでますか、お伺いします。
  239. 森山真弓

    説明員(森山真弓君) 就業における男女平等問題研究会議というのが婦人少年局の研究会議といたしまして設けられたのが昭和四十九年の十二月でございます。四十九年度の半ばごろに発足しているわけでございますが、そこでは勤労婦人の増加とかその役割りの変化というようなことにかんがみまして、職場における男女平等というものを深くこの際研究してみる必要があるのではないかと、内外の関心も非常に高まっていることであるし、十分検討したいという趣旨でございまして、この問題に対処する客観的な専門的な立場から調査研究をしていただくということで、学識経験者の方々を九人お願いいたしまして、四十九年の十二月に発足して以来つい先日も開きましたが、十回に及んでおります。  最初のうちは現状の資料の分析といいますか、御説明をして質疑応答などをしておりましたわけでございますけれども、第四回目ぐらいから各国の男女平等をめぐる動きについて特に資料を集めましたり、また六回目あたりには公務員の採用試験における受験資格の問題について人事院、国税庁等からヒヤリングをする、あるいはその後、民間の企業も幾つか選びまして、実地調査をするというようなことを経まして、最近の二回は最初第九回目、五月三十一日にやはりました第九回目では労働側の代表から意見を伺う、十回目には使用者代表から意見を伺うというようなことで、次第に結論に近づきつつあるということは申し上げられると思います。
  240. 市川房枝

    市川房枝君 どういう結論なの、結論というのは。私はこれはアメリカでいまやっている雇用平等委員会というような、やっぱり政府側のといいますか、そういう委員会のようなものでなければ、結局は実効を上げることできないと思うんですけれども、それについてはどうなんですか。いまのあなた方の方の結論と、それとあわせて答えてください。
  241. 森山真弓

    説明員(森山真弓君) これは最初に申し上げましたように、研究をしていただく会議でございまして、結論と申し上げましたけれども、その研究の報告という形になると思います。その研究の御報告中身は、これから先生方にやっていただくわけでございますが、その御報告を受けまして、先ほどお話し申し上げました婦人少年問題審議会あるいはILOの国内行動計画等を参考になさいますときに、この研究会議報告もあわせて参考にしていただきまして、実際の施策に結びつけます結論といいますか、そういうものは婦人少年問題審議会の方にお願いしたいというふうに考えているわけでございますが、その平等委員会に類するものについてどうかという御質問かとも思いますが、そこまではちょっといまのところこの研究会議で直ちに結びつけるというふうには考えておりません。
  242. 市川房枝

    市川房枝君 最後の質問になりましたが、二月五日に内閣の事務次官会議で申し合わせといいましょうか、行政への婦人の参画を促進するためにというんで、一つは各省にあります審議会、調査会へ婦人を登用するということと、それから二番目には女子の公務員の採用、登用ということが申し合わせになって、それぞれの官庁でそれに沿ってやっていてくださると思うんですけども労働省はどうですか、四ヵ月たちましたけども幾らかふえましたかどうか、その間のことを簡単に。
  243. 桑原敬一

    説明員(桑原敬一君) 御指摘のあの次官会議の申し合わせでございますけども、早速労働省といたしましては、本省の中で局長会議でその趣旨を十分理解し合ったことが一つ。それから第二点は私、官房長名で出先の都道府県基準局にその周知方を徹底をいたしております。  まず審議会でございますけども労働省は前々からたとえば安定法にございますように、女性を審議会の委員にしろというような規定も持っておりますように、積極的に審議会に婦人の御参加をいただいております。いま審議会十四ございますが、婦人の方の委員が参加されている審議会は六つございます。それから各それぞれの審議会に十五名の方が御参加いただいておりますが、こういった趣旨につきましては積極的に取り組んでまいりたいと思っております。  なお労働省の審議会は、御承知のように三者構成になっておりまして、推薦母体がございましてなかなかそういう面でこの方をどうぞというわけにいかない面もございますので、その辺は御理解いただきたいと思いますが、積極的に御婦人の審議会参加には努力してまいりたいと思っております。  それから婦人の公務員登用でございますけれども、上級職につきましても積極的に婦人を採用いたしております。それから監督官試験につきましても女性の監督官の採用を毎年やっております。その他各省に比べれば一段と努力をしておるつもりでございますが、次官会議の申し合わせに従いまして、さらに努力をいたしたいとこういうふうに思っております。
  244. 市川房枝

    市川房枝君 それに関連してですけども、婦人少年局に地方に婦人少年室ってありますね。それも毎年減っていくんでしょう、人数は。あれは五%ですか三%減ということで何だけども、これは農林省にも同じことを言えるんですけども、こういう決定をしながら婦人の訓練されたといいますか、そういう人たちがだんだんやめさせるというか、少なくしていくということは私は矛盾だと思うんですが、あの減はこれはそれぞれの省でどこをどうするかということをお決めになるわけなんであって、まあそれぞれそんな暇なところないかもしれないけれど、私はこの問題をいま申し上げた次官会議のあれとあわせて少し考え直していただきたいと思う。もう時間が来ましたからこれで終わりますけども、将来また伺う機会があると思いますから、ひとつそうしていただきたいと思います。ありがとうございました。
  245. 鈴木力

    委員長鈴木力君) 他に御発言もないようですから、労働省決算につきましてはこの程度といたします。  本日はこれにて散会いたします。    午後五時散会      —————・—————