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1976-05-18 第77回国会 参議院 外務委員会 第6号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十一年五月十八日(火曜日)    午前十時十四分開会     —————————————    委員異動  五月十七日     辞任         補欠選任      稲嶺 一郎君     源田  実君      野坂 参三君     星野  力君  五月十八日     辞任         補欠選任      星野  力君     野坂 参三君      田渕 哲也君     中村 利次君     —————————————   出席者は左のとおり。     委員長         高橋雄之助君     理 事                 亀井 久興君                 秦野  章君                 増原 恵吉君                 戸叶  武君     委 員                 伊藤 五郎君                 糸山英太郎君                 大鷹 淑子君                 木内 四郎君                 源田  実君                 亘  四郎君                 田中寿美子君                 竹田 四郎君                 田  英夫君                 羽生 三七君                 黒柳  明君                 塩出 啓典君                 立木  洋君                 星野  力君                 中村 利次君    国務大臣        外 務 大 臣  宮澤 喜一君        国 務 大 臣        (防衛庁長官)  坂田 道太君    政府委員        防衛庁防衛局長  丸山  昂君        防衛施設庁施設        部長       銅崎 富司君        科学審議官    半澤 治雄君        外務省アジア局        長        中江 要介君        外務省アメリカ        局長       山崎 敏夫君        外務省欧亜局長  橘  正忠君        外務省経済局次        長        賀陽 治憲君        外務省経済協力        局長       菊地 清明君        外務省条約局長  中島敏次郎君        外務省条約局外        務参事官     伊達 宗起君        外務省国際連合        局長       大川 美雄君        水産庁次長    佐々木輝夫君        通商産業省通商        政策局次長    吉川 佐吉君        資源エネルギー        庁長官官房審議        官        井上  力君        資源エネルギー        庁石油部長    左近友三郎君    事務局側        常任委員会専門        員        服部比左治君    説明員        警察庁警備局外        事課長      大高 時男君        通商産業省機械        情報産業局電子        機器電機課長   鈴木  健君     —————————————   本日の会議に付した案件 ○北太平洋のおつとせいの保存に関する暫定条約  を改正する千九百七十六年の議定書締結につ  いて承認を求めるの件(内閣提出) ○日本国ハンガリー人民共和国との間の通商航  海条約締結について承認を求めるの件(内閣  提出衆議院送付) ○経済協力開発機構金融支援基金を設立する協定  の締結について承認を求めるの件(内閣提出、  衆議院送付) ○米州開発銀行を設立する協定締結について承  認を求めるの件(内閣提出衆議院送付) ○国際情勢等に関する調査  (日韓間の大陸棚に関する件)  (核兵器拡散条約核保有国の軍縮問題に関  する件)  (米軍鶴見基地石油パイプ老朽化に関する  件)  (開発途上国に対する経済協力に関する件)  (梁一東(韓国民主統一党党首)書簡に関する  件)  (ソ連ノボスチ通信社記者スパイ容疑逮捕事  件に関する件)  (米海軍「NIS」の調査活動に関する件)  (金大中事件に関する件) ○核兵器の不拡散に関する条約締結について承  認を求めるの件(第七十五回国会内閣提出、第  七十七回国会衆議院送付) ○在外公館の名称及び位置並びに在外公館に勤務  する外務公務員の給与に関する法律の一部を改  正する法律案内閣提出衆議院送付)     —————————————
  2. 高橋雄之助

    委員長高橋雄之助君) ただいまから外務委員会を開会いたします。  まず、委員異動について御報告いたします。  昨十七日、稲嶺一郎君及び野坂参三君が委員辞任され、その補欠として源田実君及び星野力君が選任されました。     —————————————
  3. 高橋雄之助

    委員長高橋雄之助君) 次に、北太平洋のおつとせいの保存に関する暫定条約を改正する千九百七十六年の議定書締結について承認を求めるの件(本院先議)を議題といたします。  これより質疑に入ります。質疑のある方は順次御発言を願います。
  4. 戸叶武

    ○戸叶武君 この条約は一九五七年十月に発効し、有効期間が本年十月十三日に到来するということでありますが、一九七五年三月及び十二月に条約の改正を検討するための当事国会議が開催され、そこでこの議定書が一九七六年五月七日にワシントンで四カ国で署名されたということでありますが、この議定書を見るのに、いままでの条約有効期間六カ年となっていたのが四カ年というふうに延長がつぼめられておるのでありますが、この六カ年が四カ年になったというのには、やはりオットセイ保存に関するところの各国間におけるいろいろな論議がなされた結果だと思いますが、この説明には、オットセイ資源の最大の持続的生産性達成のための処置がこれによって一層明らかにされることが期待されるということですが、この抽象的な文字だけではよくその間の事情がわかりませんので、この内容をもう少し詳しく説明願いたいと思います。
  5. 賀陽治憲

    政府委員賀陽治憲君) ただいまの御質問でございますが、昨年十二月の条約改定交渉におきましては、米国が環境保護的な新条約を提案してきたわけでございます。これはオットセイ美的リフレーション価値と申しますか、オットセイは見て楽しむものであるというきわめて環境保護的な考え方でございまして、そういった考え方から最適資源保存頭数、これは一言にして申しますとオットセイを一頭も殺さないという考え方でございます。  これに対しまして、やはりかかる考え方は現状ではやや行き過ぎではないかということで他の締約国慎重論を維持したわけでございまして、当初アメリカはそういうような考え方を明らかにしておりましたために、現行条約のままでいくのであれば一年の延長程度にしてほしいということを申しておったわけでございます。しかし、他の締約国意思が固いこともございまして、三年ならばよろしいということを言ってまいったわけでございます。  これに対しまして、他の締約国側といたしましては、アメリカ環境保護的な考え方を若干取り入れまして、調査の対象に環境条件の変化がオットセイ漁獲資源にどういう影響を及ぼすかということを入れましたり、あるいはオットセイに苦痛を与えないで捕獲、捕殺するという方法を使用することを確保するようにするという規定を入れましたりいたしまして、いろいろな交渉をしたわけでございます。  そういった見地から、アメリカは三年をさらに四年まで延長して結構であるということを言い出したわけでございますが、従来の六年までの延長ということは合意をいたさなかった、こういう経緯があるわけでございます。
  6. 戸叶武

    ○戸叶武君 オットセイの生息するところはアラスカ、カムチャッカ、ベーリング等の島に繁殖しており、冬は南下して日本三陸方面アメリカのカリフォルニアに回遊することがありますが、このオットセイ捕獲について、いままでの御説によるといろんな御説があったようですけれども、資源保護という点に重点はしぼられていると思います。しかし、このオットセイの需要の面において、日本においてはこの捕獲に非常な制約が加わっておりますけれども、オットセイの皮を欲しいという要望をいままでアメリカ側にも出しておって、アメリカ側から捕獲したオットセイの皮を分けてもらうことになっておりますが、それはどういうふうに現在なっておりますか。
  7. 佐々木輝夫

    政府委員佐々木輝夫君) 毎年アメリカあるいはソ連で猟殺いたしますオットセイ頭数というのは、その年の大体生まれた子供の数を予想しまして、それからそれが三歳ぐらいになってから繁殖島に帰って参りますので、そのときまでのいろんな自然の歩どまりを一応考慮に入れた上で、科学委員会で毎年話し合って捕獲頭数を決めております。したがいまして、年によりまして非常に捕獲頭数に変動がございますので一概には申せませんが、最近の状況で申しますと、昨年、五十年度ではアメリカで大体二万九千百四十三頭、三万頭足らずを捕獲いたしまして、その一五%に当たります四千三百枚を日本に供与をされております。  それからソ連側ではロべン島及びコマンダー捕獲しておりますが、これが大体四千二百頭で、日本側が配分を受けました数は六百三十四頭分でございます。
  8. 戸叶武

    ○戸叶武君 このオットセイが一番生息しているところは海豹島、現在のロベン島かと思いますが、そこではどのくらいの量を捕獲しておるんでしょうか。
  9. 佐々木輝夫

    政府委員佐々木輝夫君) 現在では、むしろアメリカの領土になっていますプリビロフ島の方の資源の方がはるかに大きくなっております。ロベソ島の資源も回復はいたしておりますけれども、現在の大体推定されます資源量で申しますと、プリビロフ島で約百八十万頭ぐらい、ロベン島で、いまの海豹島でございますが、ここで大体二十七万頭ぐらい、コマンドルスキーで大体十七万頭ぐらいの資源量に達しているということでございます。それぞれの繁殖地におきます資源状況に応じまして毎年捕獲頭数科学小委員会論議の上で決めておるわけでございます。
  10. 戸叶武

    ○戸叶武君 いままで四カ国間で話しをしてきておるのでありますが、この協定によって、議定書によって、いろいろな立場立場主張がなされても、やはりオットセイ捕獲に関するいろいろな協定が他の魚族資源にもどういうふうに影響を及ぼすか、そのことが一つの心配になりますが、この協定によって直ちに他の漁業捕獲の方に影響するという部分はないでしょうか。
  11. 佐々木輝夫

    政府委員佐々木輝夫君) かねて、オットセイによるいろんな他の魚種食害の問題というのが日本側がかなり積極的に提起しまして問題になっております。それと同時に、最近の時点では特に一−三歳ぐらいの若いオットセイ子供えさをほかの漁業がとるためにオットセイ資源に悪い影響があるという、逆の問題提起ソ連等から出ております。前段の方につきましては、いままでいろんな調査をやっておりますが、当初予想したほどサケマス等への影響が少ないということがわかってきております。同時に、先生お尋ね後段の問題につきまして、ソ連側の方はそういうことを理由にして繁殖地の周辺三十海里ぐらいのいろんな底びき漁業等を禁止すべきだというようなことを最近の時点で言い出しておりますけれども、オットセイ資源は一応ソ連領あるいはアメリカ領、両方ともかなり順調にいままで回復いたしておりますし、私どもとしてはそういうことは日本側としては十分な科学的な論拠がない、またその必要も認められないということで反駁をいたしておる段階でございます。
  12. 戸叶武

    ○戸叶武君 漸次回復したということですが、増殖の問題で日本漁業の方においてはソ連あるいはアメリカとも協力をしていくような方向へ進んでおりますが、このオットセイ増殖の問題に関しては、アメリカあるいはソ連と何らかのそういう具体的な協力というようなものは行っておらないでしょうか。
  13. 佐々木輝夫

    政府委員佐々木輝夫君) 現在の資源管理方法は、繁殖地管理しておりますソ連及びアメリカ研究者中心になりまして、毎年毎年生まれてまいります子供の数あるいはそれの死亡率、あるいはハーレムを形成しています中に参加するオットセイの雄の頭数の動向、こういったことを見ながら、適当な捕獲頭数を決めて管理をしておるわけでございますが、最近の状況としてあるMSY水準を達した後で自然の環境の要因で資源量水準低下をしてきた、これは必ずしも人間の漁獲影響とは考えられないというふうな新しい問題がこの数年間の間に出てまいっております。そういったことが、たとえば雌の妊娠率低下であるとか、オットセイ子供死亡率の増加といったことに、どうも原因はわからないけれども、何か過去と違った状況が出ているようだということで、この点が一つ関係四カ国の間の科学者の課題になっております。日本側も、繁殖地管理そのものには参加いたしておりませんけれども、いまのような研究上の問題につきまして夏場の間研究者繁殖地の方へ派遣をいたしまして、向こうの方でのいろんな調査実施状況をいろいろ見ますとともに、その研究面での協力はいたしております。
  14. 戸叶武

    ○戸叶武君 オットセイの問題でも研究員を派遣してそういう面で協力の体制をとっているということでありますが、特に魚族その他の問題に対して、日本も今後やはりアメリカなりソ連に対しても積極的に働きかくべきは、制約を受け入れるという消極的な面だけじゃなくて、魚族の保護なり、あるいは繁殖という面で積極的に日本アメリカなりソ連協力を求めて、そういう面から積極的な海洋資源の打開を試みるという糸口をあらゆる機会においてつくってもらいたいということを希望いたしまして、この点は外務大臣一言御答弁を願って、私の質問は結びたいと思います。
  15. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) ただいま戸叶委員の言われましたような趣旨で関係当局も今日まで努力をしてまいっておると存じますが、今後ともそのような心構えでやってまいります。
  16. 塩出啓典

    塩出啓典君 この一九五七年の条約以来、科学的調査を行うことが条約の中にあるわけでありますが、わが国としてはどのような科学的調査をどういう目的で行ってきたのか。
  17. 佐々木輝夫

    政府委員佐々木輝夫君) 調査内容は、大きく分けまして陸上の繁殖地におきます調査と、えさを食べて成長する時期の海洋生活期における調査と二つございます。繁殖地におきます調査は、これは日本はいろいろ調査の設計その他について科学小委員会等意見を言い、それから先ほど御答弁申し上げましたように、ある時期には日本側からの研究員を派遣しておりますが、主体ソ連アメリカ繁殖地管理しています国の研究者中心になって調査を実施しております。調査の中身は年齢別、性別に一体どの程度頭数が生息しておるか、特にその年に生まれるオットセイ子供の数がどのぐらいであるか、それがどのぐらい要するに成長し生き残っていくかという調査中心でございます。それから、その付近の繁殖島におりますときの食性を調べるために、一定オットセイを解剖いたしまして胃の内容物等も調べております。  日本がやっておりますのは、後段海上調査中心でございますが、日本側としては、海上における猟獲を陸上猟獲と並行してやることに十分科学的に許容される理由があるということを目的といたしまして、まず第一に、主な繁殖地三つございます。ロベン島、コマンダープリビロフ、この三つでございますが、それぞれから回遊してまいりますオットセイが、どの海域に、いつごろの時期、どの程度泳いでくるかという、いわゆる資源系統群別のすみ分けの状況をまず調査をいたしております。それから、その中で雄雌が、特に雄の場合には、ハーレムに参加しない雄の猟獲というのは、一定の限度の中でMSYに達する以前でも猟獲していいというコンセンサスがございますので、雄が一体どのぐらいの時期にすみ分けているかということも調査眼目でございます。  それからもう一つは、オットセイが何を食べているか、オットセイだけの資源保存ということでなくて、オットセイをある程度合理的に間引くことがほかの漁業へもむしろプラスの影響があるんではないかという観点から、オットセイがある時期に、たとえばサケマスその他の魚をどの程度食べているかという食害調査海上調査一つ眼目になっております。  それから最近の時点では、逆に今度オットセイ資源保存なり、特に子供オットセイの成長にほかの漁業漁獲影響があるかないかということがアメリカソ連側の方から問題として提起されておりますので、この点につきましても、海上調査及び先ほどの繁殖地における調査を通じていろいろ各国協力して調査をやっておるわけでございます。
  18. 塩出啓典

    塩出啓典君 調査水産庁がやっているわけですか。
  19. 佐々木輝夫

    政府委員佐々木輝夫君) 日本側海上調査水産庁がやっております。担当は、遠洋水産研究所の中にオットセイの特別の研究室を設けて、それに分担さしております。
  20. 塩出啓典

    塩出啓典君 いま海上猟獲を調査のため日本はやっているようになっているわけですけれども、一九五七年以来今日まで、もう二十年近くたっているわけですけれども、そういう調査の結果、わが国主張としては、海上猟獲というものはもっと認めていいんじゃないかという主張を正当化するための調査のように私は聞いておるわけなんですが、そういう意味で、今日までの調査の結果のわが国の結論としては、このオットセイの猟獲についてはどういう考え方に至っておるわけなんですか。
  21. 佐々木輝夫

    政府委員佐々木輝夫君) 調査をやってまいりますと、次の段階でまたわからないことが出てまいりますので、断定的なことは申しかねますけれども、いままでやりました知見の蓄積の上で考えますと、当初考えました、三陸の沖を中心にして海上オットセイを従来の漁法でありましたいわゆる猟銃、散弾銃等でとるということに関しましては、なかなかどうも客観的にその合理性を説得するのはむずかしいという感じになっております。と申しますのは、先ほど申し上げました三つ系統群が、三陸の沖合いの海域ではほとんどの時期に全部混在しております。したがいまして、プリビロフ系もの等はもうすでに大体MSY水準に達したということを各国科学者が認めておるわけですけれども、その系群だけを分けてとるということが海上では非常にむずかしゅうございます。それからまた、雄と雌も、いままでずっと調べました結果では、大体日本の近海ではいつも混在をしている。雄と雌をやはり鉄砲で撃った後で判別するんではもう間に合わないわけですから、選択してとるということは、どうもこれも海上ではむずかしいという判断になっております。それから日本海側の方は大体ロベン島系のものが主体でございますので余り来遊量多くはございませんが、ロベン系資源が完全にMSY水準を回復すれば、先ほどの雄雌の混合割合というのを一応考えながら、仮にそのとった頭数が全部雌であったとしても資源に悪影響がない、そういう数量の範囲内では理論的には海上での猟獲が許容される時点が近い将来来るんじゃないかということを期待しております。  それともう一つ問題点は、オットセイ海上での猟獲の結果、まあ一部たとえば鉄砲で撃った後で海に沈んでしまうロスがあるじゃないかということが問題になっております。それから、毛皮に傷をつけるので非常に資源価値を損なうというような論点もございます。こういった点を解決するのと、先ほどのとり分けの問題を解決するために、漁法そのものを改善する必要があるという観点に立ちまして、この数年来の話でございますが、海上で特殊な流し網を設計いたしまして、オットセイの群を網で巻いて生け捕りをすると、その中で雄と雌とを選別して、雌の一部分とそれから雄の、特に三歳から五歳ぐらいまでの若い除去してもいい雄を選別してとるということを研究いたしておりまして、昨年の成績では大体九十六頭ぐらいのオットセイ一つの群れを巻いて、そのうちの大体五十頭近くを生け捕りするということで、一応技術的には成功を見ております。そういった技術、それからオットセイ利用方法につきましても、外国では全く毛皮だけを利用しておるわけですけれども、それを特殊な薬品をそこから抽出するとか、肉そのもの利用するということで、必ずしも毛皮だけの価値でどっちが合理的かということを判断すべきではないという観点から、利用面につきましてもいろいろ研究をしておりまして、まあ加ペプタイドというような特殊な、毛細血管の拡張効果を持つような薬品オットセイにあるというようなことも水産庁研究所研究の結果わかっておりますが、こういったことを組み合わせまして、海上猟獲での合理性というのを今後各国主張していきたいということで研究を続けてまいるつもりでございます。
  22. 塩出啓典

    塩出啓典君 今回のこの改定に当たる会議においては、わが国はどういう主張をしたのか、また、その主張はどう反映されたのか。簡単でいいです。
  23. 賀陽治憲

    政府委員賀陽治憲君) 昨年十二月の改定交渉会議では、アメリカ環境保存的な強い考え方を打ち出してまいりましたので、わが国といたしましては、現在の段階ではややこれは行き過ぎではないかということでございまして、ソ連、カナダも同意見でございましたので、結果的には先ほどちょっと申し上げましたけれども、若干の環境保護的なポイントを取り入れた形で現行条約の修正を行って、そして、六年の延長が従来の例でございましたが、アメリカの意向も勘案して四年間の延長ということに相なったわけでございます。したがって、オットセイはまあ人類にとって有用な資源といたしまして、十分な科学的調査を行ってその資源の適切な漁獲方法及び管理方法を見出そうとする現行条約の性格に根本的な変更はないわけでございまして、これはわが国基本的立場に合致するものと判断されるわけでございます。
  24. 塩出啓典

    塩出啓典君 いままで六年ごとに延長しておったのが四年延長になったのは、いまお話がありましたようにアメリカは一年ということですね。今回また、いわゆる「一年が経過する時のいずれか早い時まで引き続き効力を有する」、すなわち、廃棄規定が設けられたと、これはどうなんですか。加盟してる四カ国のうち一カ国が、もう私は脱退しますと、こういうように通告をした場合には一年以内で終了するということは、もうこのオットセイ条約がなくなることになるわけですね。四カ国とも全部オットセイ条約が消滅しちゃう、そういう規定じゃないかと思うんですが、そう判断していいわけですか、今度入ったのは。
  25. 賀陽治憲

    政府委員賀陽治憲君) 終了規定が、今回、一カ国が意思を表明いたしました場合には条約終了するということになったわけでございまして、その意味では、御指摘のとおり、いかなる当事国もこの条約終了させることができるということでございますが、この規定の挿入の背景は、海洋法会議審議のいかんによりましては、現在の海洋法秩序の大幅な変更もあるいはあり得るかもしれないというような事態も一応想定しておかなければなりませんので、その点を考慮に入れて設けられたものでございまして、そういう背景でこの規定が入っておるわけでございます。まあ終了が非常に容易になったという印象を与えるわけでございますが、現在の条約に関する限りは、先ほど申し上げました事情で、四カ国ともこれを尊重して有効期間はこれを堅持していくということが合意されておりますので、その点は、われわれとしても単純に条約終了が容易になったという点だけを着目する必要はないというふうに考えておるわけでございます。
  26. 塩出啓典

    塩出啓典君 この廃棄規定が入ったのは、どこの国の主張で入ったんですか。わが国もやはりそれを主張したわけですか。
  27. 賀陽治憲

    政府委員賀陽治憲君) 経過をいまちょっと調べましたところが、この一年終了規定につきましては、アメリカとカナダの主張があったようでございます。
  28. 塩出啓典

    塩出啓典君 日本はそれに賛成したんですか。
  29. 賀陽治憲

    政府委員賀陽治憲君) わが国といたしましては、この終了規定の提唱国ではございませんけれども、最終的にこれに合意したわけでございます。
  30. 塩出啓典

    塩出啓典君 どうも海洋法会議とこのオットセイ条約というのは、どういう点で関係があるんですか、あるいは、海洋法会議の結論がどういう場合になった場合は、この条約を廃棄しなければならない事態が起こるのか。
  31. 賀陽治憲

    政府委員賀陽治憲君) 海洋法との関連は、実はこの条約が、先ほど水産庁次長からもお話がございましたように、調査主体とするものであるということでございまして、基本的には大きな抵触ということは想定することはむずかしいわけでございますが、たとえば公海の部分におきましては海上猟殺が行われないように、いわゆる臨検、さらにはその延長線上において拿捕等の権利が認められておるわけでございます。もし二百海里の漁業水域が、将来伝えられますように大勢がもしこれを受諾するという方向になりました場合、現在の段階では領海の外でそういう事態になっておるわけでございますが、その領海をいわば漁業水域と読みかえるという形が恐らく出てまいると思います。これは日本の立場は、もちろん現在の段階では二百マイル漁業水域についてはこれを留保しておるわけでございますが、将来、大勢のおもむくところいかんによりましては、領海外の臨検の権利というような言葉が、あるいは二百海里外の臨検の権利というふうに読みかえるというような事態もないわけではない、そういった事態が予想されるわけでございますが、先ほど申しましたように、調査主体とする点を着目いたしますと、非常に大きな影響が直ちに及ぶということではないと考えておるわけでございます。
  32. 塩出啓典

    塩出啓典君 そういうことであれば、私は何も廃棄するんじゃなしに、条約を再検討するというか、そういう条項を設ければいいわけで、どうもこれ見ると、アメリカやカナダがオットセイ条約というものを余り好んでないんじゃないか、六年を四年にすると言うし、しかも、いつでも廃棄できるようなことにするということは、まあアメリカとしてはやっぱりオットセイ条約というものには余り賛意を表してないんじゃないか、こういう感じするんです。そういう点はないんですか。
  33. 賀陽治憲

    政府委員賀陽治憲君) 御指摘のとおり、米国は現行条約のそのままの延長というものに対しましては必ずしも積極的でなかったということは御指摘のとおりでございますが、ただいま申されました点でございますが、今回の条約の改正点の一つとして、「いずれかの当事国が要請したときは、すべての当事国の代表は、その要請があつた後九十日の期間内の相互に都合の良い時に、この条約の改正が望ましいかどうかについて検討するため会合するものとする。」という規定が実は新たに設けられておるわけでございまして、終了規定の前の段階にこの規定が考えられておりまして、御指摘のように、海洋法その他との関連においてある程度の事態が予見されますような場合には、この条項で条約の改正が望ましいかどうかということを協議することができるようになっておるということは、一つの改正点であろうかと考えております。
  34. 塩出啓典

    塩出啓典君 まあ、そういう条項があるならば、なおさら、海洋法会議云々ということのためにこの一年で終了する規定が入ったということは、アメリカの真意は、そういうことを言ったにしても、また別なところにあるんじゃないかと、そういう点でわれわれも非常に、簡単な条約ではありますけれども、その奥にあるものがわからない、そういう感じであります。そういう点で、これは外務大臣にも要望いたしますけれども、われわれがここで審議をするに当たっては、そういういろいろな点の納得のいくような、やっぱりアメリカがどういうわけでその一年のいわゆる廃棄条項を入れたのか、そういうようなものも正確につかむことがやっぱり必要じゃないかと思うのですけれども、そういう意味で、ちょっとそういう点においては外務省当局の説明ではわれわれ納得しない点がございますので、したがって、これはきょう採決するわけですけれども、後日そういう点についてはよくひとつ調べていただいて、納得のいく、どういう背景があるのか、いわばアメリカの反対の立場は、どういう理由でそういう立場をとるのか、そのあたりをひとつわれわれによく教えていただきたい、このことを外務大臣に要望いたしまして、質問を終わります。
  35. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) ただいまの点、御説明政府委員からいたしましたように、別段他意はなかったように思いますが、塩出委員の言われますように、今後のことにつきましてもよく注意をいたしますし、なおもう少し詳細わかりましたら、また御報告を申し上げます。
  36. 立木洋

    ○立木洋君 この暫定条約が発効されてからいままでの期間、日本側としてはどういう調査をされてきたのかというお話もいま聞きましたし、それからその調査を行った結果、現時点における一定の結論といいますか、調査した結果ですね、どういう状態に達しているという内容も聞いたわけですが、一応ここに書かれてあります第二条の調査項目が二項目あって、それに関連する研究事項としては九項目挙げられているわけですけれども、特に日本側調査としてはどういうふうな問題点が残っているのか、残っている問題点をちょっと。
  37. 佐々木輝夫

    政府委員佐々木輝夫君) 先ほどちょっと御説明申し上げましたが、海上調査の中で日本側でいま一番力点を置いていますのは、要するにオットセイを生け捕りをして、そこで選別してとれるような状況をつくりたい、それにはどういう漁法、それからオットセイの簡単な要するに選別の仕方、そういうことにかなり重点を置いていま考えております。それから海上調査そのものといいますか、オットセイのすみ分けの状況につきましては、日本海側、オホーツク側の方の状況はまだ十分わかっておりません。こういう点について、想定としては、ロベン系のものが大体主体になっていると思われるのですが、時期別に雄雌別にどういうふうな来遊をしているかということを、特にいまオホーツク海を中心調査を続行している段階でございます。
  38. 立木洋

    ○立木洋君 先ほどいろいろ猟銃で海上捕獲する場合の難点が四つか五つほど挙げられて、網による捕獲方法というのは一応技術的に成功を見ておるというふうな結論ですが、その残されている問題点、まあ今後暫定条約の期間が四年間延長される。いまから言えばあと三年間ということになるわけですか、そういう今後の期間で一応調査の結果が十分な結論が得られて、ここで述べられております、いわゆる「おつとせい獣群の最大の持続的生産性を達成するために望ましい協定について決定するため、」に「二十二年度に会合することに同意する。」というふうに述べられておりますが、今後の期間でそういうことが十分な結論が得られるような見通しがあるのかどうなのか、その点は。
  39. 佐々木輝夫

    政府委員佐々木輝夫君) 率直に申し上げまして、実はこの条約有効期間が先ほど外務省から御説明ありましたような事情で、必ずしも現状で科学的調査に必要な期間ということを基礎に決められたわけでございませんので、私どもとしては、その中でやれるだけの最善の努力をするつもりでございますが、海上でのいろんなすみ分け状況調査、それから海上で猟獲は一応できる、試験猟獲としては十分できるところまで来たんですけれども、商業ベースでそれをやりますためにはまだ非常に効率が悪うございます。したがって、たとえば音響でオットセイを誘致するとか、あるいは集めるとか、あるいはえさでそういうものを何か集める方法がないかとか、まだ商業的猟獲につなげるためには相当の海上での試験が必要でございますが、こういったことが完全に四年の中で達成し得る見通しがいまからついているというところまで申し上げるのは、残念ながらまだ早いかと思いますが、私どもとしては最善の努力をするつもりでございます。
  40. 立木洋

    ○立木洋君 いま言われましたように、調査の結論があと四年間で出るという形で延長されたというわけではないというお話ですが、いままで十九年間ですか、調査してきて、今後延長されて全体で二十二年間。それでもなかなか調査の結論として、相互に話し合っても一定の結論が出るかどうかというようなことは見通しとしては立てられないという状況であります。それは先ほど問題になりましたけれども、やはりその根底には意見の相違があると。この意見の相違の調整がなかなか困難であるという形で、暫定条約としての状態が依然として続いておるということではないだろうかというふうに判断するわけですが、その点はいかがなんでしょう。
  41. 佐々木輝夫

    政府委員佐々木輝夫君) 純調査研究面からお答え申し上げたいと思いますが、やはり陸上の繁殖等を管理しています国の立場から言いますと、陸上で一番適切に不要の雄を間引いてとると。MSY水準に達すれば雌についても生殖行為に参加しないものだけを選択的にとるという形が一番資源管理上有効である。したがって、そこら辺のところがあいまいな海上猟獲については禁止をしたいというのが、われわれ科学者委員会で話しています段階でも感じますソ連アメリカの一貫した態度でございます。しかし、日本としては当然公海の資源という立場で、海上の猟獲ということも一定の限度で陸上猟獲と並行して許容されるべきである、されるまた技術的な根拠があるという観点に立って、やや日本海上猟獲に非常にウエートをかけて主張をしている。したがって、海上調査につきましても、アメリカソ連等調査はやっておりますけれども、近年は余りそれほど熱心ではございません。日本側調査主体にして、日本側が集めたデータでソ連側科学者といろいろ論議をしているというのが現状でございまして、出ました結果の中で、そのものは客観的な事実でございますが、季節的にどういう変化があるかとか、あるいはまだこういうわからない問題があるではないかというようなことを、批判する立場からいろいろ科学者の中で問題提起することは比較的容易でございまして、やはり調査が進展するに応じて問題が残ってふえてまいってくるというのが現状でございます。
  42. 立木洋

    ○立木洋君 この問題とちょっと関連するわけですが、大臣にお尋ねしたいのですが、海洋法会議で、ほぼ経済水域二百海里ということも大体大勢になってきているように報道されておりますし、新聞報道ですが、それによりますと、日本の政府としても経済水域二百海里はもう認めざるを得ないんではないかというような意味の報道も見た記憶があるんですけれども、こういう経済水域二百海里に対して、そういうふうな大勢になった場合の日本としての対応等々についてはどのようにお考えになっておられるのか。経済水域は二百海里になるという状態に対応して、日本政府としてはどのようにお考えになっているか。
  43. 佐々木輝夫

    政府委員佐々木輝夫君) 水産庁側から先にいま考えています技術的な問題を中心に御説明したいと思います。  二百海里の経済水域というのは、確かに先生おっしゃるとおり大勢になっていると思うのですが、まだ海洋法会議で御案内のように論議の最中でございます。つまり、二百海里の経済水域を設定するということは大勢でございますけれども、その中でどういうルールをつくるかということについては、それぞれ漁業先進国あるいは開発途上国、いろいろな立場の違いで意見の一致を見るにはまだ相当時間がかかるだろうというのが大方の観測かと承知しております。  しかし、いずれにしましてもわれわれ水産行政に携わっている者の立場としましては、将来外国での操業が現状よりも楽になる、やりやすくなるということはあり得ないわけでございまして、それに備えていまからいろいろな対策を考える必要があるということで、まず第一に、海外の漁場につきましては、特に漁業の未開発な開発途上国に対しましては、相手国の立場も尊重して、いろいろな経済協力あるいは漁業の技術協力等を進めることによりまして、日本漁業の実績の確保についても理解と協力を得たいということで、かなり具体的にいろいろな面での協力をすでに始めながら、入漁の確保を図っております。  それから北太平洋アメリカソ連、カナダ等の先進国との間の漁獲量のウエートというものは非常に高いわけでございますが、これにつきましては、すでにいろいろな漁業条約、これは資源保存中心にした条約でございますが、条約のいわば土台ができておりますので、その上に立って、できるだけ日本の実績を資源保存ということと両立する範囲内で確保してまいる。そのことが海洋法会議の動向あるいはアメリカの二百海里の経済水域設定後のいろいろな漁業交渉にも一番有力なてこになるんではないだろうか。つまり、アメリカ側の方の法案の内容を見ましても、無条件で実績を全部排除するということではなくて、資源保存の範囲内で、アメリカがとらない資源について漁業の実績国の実績等を勘案しながら入漁させるという考え方を打ち出しておるわけでございまして、そういうものに対応して日本側の合理的な実績を積極的に認めさせるということで、いろいろな機会をつかまえて交渉を進めてまいりたいというふうに考えております。
  44. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) ただいま漁業、主として遠洋、こちらから見まして遠洋漁業ですが、についてのわが国の在来の実績確保について政府委員からお話があったわけでございます。これが一番大きな問題になろうと思いますが、多少別の観点から申しますと、わが国の経済水域二百海里が他国の経済水域二百海里と競合する場合というのがございます。これは漁業についてもございましょうし、いろいろな問題についてございますので、そういう問題の処理というのがやはり一つの問題になってこようと思います。ただいま衆議院で御審議いただいております日韓の大陸だな条約、これは大陸だなとの関連で問題が提起されておるわけでございますけれども、海洋法会議では、経済水域の問題と並んで大陸だなの問題が議論されておりまして、しかも、両者の関係は必ずしも明確でないまま単一草案に盛り込まれておりますから、両方を総合して考えなければならないという問題が、わが国の水域と他の国の水域との関連で出て来ようかと思います。
  45. 立木洋

    ○立木洋君 先ほどお話がありましたいわゆる水産資源の問題やそれから漁獲内容等について、いろいろ経済水域二百海里になった場合の関係当局との問題をどう処理していくか、具体的な検討を進めながら努力をなされておるというお話ですが、特に問題になるのは、やはり北太平洋漁獲の問題が非常に大きな量になっているわけですけれども、ここでの問題については、特別に先ほど言われた具体的に検討し、努力を進めておるという内容から言えば、どういうふうな検討がなされているのでしょうか。
  46. 佐々木輝夫

    政府委員佐々木輝夫君) 北太平洋の中で、大きく分けまして東側は主としてアメリカとの関係、西側はソ連との関係になるわけですが、アメリカとも関係します東側の方につきましては、主体になりますのはスケトウダラでございます。スケトウダラにつきましては、実は海洋法会議の動向とは別に、資源上の問題点からやはりある程度漁獲の規制、漁獲量の制限というのをしなきゃいけないというような状況が数年前から日本科学者意見としても出てまいっておりまして、私どもとしては、日本の国内の自主的な判断で、現在は大体百万トンぐらいを漁獲量の限界というふうに考えて、国内でいろんな規制措置をとっておるわけでございますが、ここに至りますまでに大体百五十万トンから百十万トン、百万トンというふうに漁獲規制をかなり強めてまいっております。そういったことを前提にして、これはアメリカ側の方はほとんどスケトウダラについては現在の段階では利用しておりません。日本側の方の資源保存措置を十分説明しながら、現在の実績の中で漁獲を続けることが資源の全体の有効利用という観点から見て合理的であるということを主張してまいりたいということで、内部的にもそれだけの準備をしておるつもりでございます。  それから西側の方のソ連との関係でも、やはり同様スケトウの問題もございますが、こちらの海域では御案内のサケマスその他の多種多様の漁業がございます。スケトウについては、やはり西側の方でもいろんな規制措置を現在の時点で国内的に強めておりますのと同時に、サケマス等につきましては、ソ連との間で昨年来共同でサケマス増殖事業をやろうということを前提に、専門家の中で具体的な施設の設置場所、施設の内容等についての検討を去年の暮れから二国間で話し合いを始めております。こういったものを推進することによりまして、資源をただ消極的に規制しその中でとり合うということだけでなくて、積極的に増大をさせて、もとを大きくして両国とも利益を受けようではないかという観点からの対策も今後一層力を入れて進めたいというふうに考えております。
  47. 立木洋

    ○立木洋君 最後に、大臣に要望申し上げておきたいわけですが、大体経済水域二百海里というのはほぼ大勢として、いつの時期かはまだ明確ではございませんけれども、大体決まるだろうと思うんです。その場合に、やはり北太平洋における水産資源の問題やそれから漁業の問題等々というのは、われわれ日本の国民にとって重要な問題でありますし、そういう問題は具体的にやはり十分な準備をされて、われわれ国民の利益に合致したような、いわゆる二国間での話し合いあるいは協定等々が実現できるような方向にぜひ努力をしていただきたいということを強く要望しておきたいと思うんですが。
  48. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) まことにごもっともなお話で、私どももそれを心がけておりますが、なお十分に準備をいたします。
  49. 高橋雄之助

    委員長高橋雄之助君) 他に発言もないようですから、質疑は終局したものと認めます。  これより討論に入ります。御意見のある方は賛否を明らかにしてお述べ願います。——別に発言もないようですから、これより直ちに採決に入ります。  北太平洋のおつとせいの保存に関する暫定条約を改正する千九百七十六年の議定書締結について承認を求めるの件を問題に供します。  本件に賛成の方の挙手を願います。   〔賛成者挙手〕
  50. 高橋雄之助

    委員長高橋雄之助君) 全会一致と認めます。よって、本件は全会一致をもって承認すべきものと決定いたしました。  なお、審査報告書の作成については、これを委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  51. 高橋雄之助

    委員長高橋雄之助君) 異議ないと認め、さよう決定いたします。     —————————————
  52. 高橋雄之助

    委員長高橋雄之助君) 次に、日本国ハンガリー人民共和国との間の通商航海条約締結について承認を求めるの件  経済協力開発機構金融支援基金を設立する協定締結について承認を求めるの件  及び、米州開発銀行を設立する協定締結について承認を求めるの件(いずれも衆議院送付)  以上三件を便宜一括して議題といたします。  政府より順次趣旨説明を聴取いたします。宮澤外務大臣
  53. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) ただいま議題となりました日本国ハンガリー人民共和国との間の通商航海条約締結について承認を求めるの件につきまして提案理由を御説明いたします。  昭和四十一年二月、ハンガリー側より、わが国との間に通商航海条約締結を希望する旨の提案が行われ、政府は、昭和四十四年十一月に東京において交渉を行いましたが、当時ハンガリーはガットの加盟国でなかったため、条約案文中のガット、国際通貨基金との関係に関する規定の取り扱い等をめぐり合意に達することができませんでした。しかるに、昭和四十八年九月にハンガリーのガット加盟が実現いたしましたので、その後ハンガリー側より交渉を再開したい旨申し入れがあり、政府は、昭和四十九年十二月に東京において再度交渉を行いました結果、条約案文につき最終的合意を見るに至り、昭和五十年十月二十日に東京において、わが方私と先方ビーロー外国貿易大臣との間で、本件条約の署名調印が行われた次第であります。  この条約は、本文十二カ条及び議定書から成っております。この条約は、出入国、旅行、居住、滞在、租税、事業活動、関税、輸出入制限等に関する事項についての最恵国待遇、身体財産の保護、出訴権、商船の出入港、積み取り権に関する最恵国待遇及び内国民待遇、海難救助に関する内国民待遇を相互に保障しているほか、拘禁の場合の領事官への通報及び領事官との面会通信、仲裁判断の執行、科学技術に関する知識の交換等について定めております。この条約締結により、わが国とハンガリーとの間の通商及び海運関係は一層安定した基礎の上に促進されるものと期待されます。  よって、ここに、この条約締結について御承認を求める次第であります。  次に、経済協力開発機構金融支援基金を設立する協定締結について承認を求めるの件につきまして提案理由を御説明いたします。  昨年一月にワシントンで開催されました十カ国蔵相会議は、世界経済に重要な比重を占める先准諸国が国際収支上の重大な困難に直面し、輸入制限その他の一方的措置等をとるようになれば、ひいては、開発途上諸国の経済を含む世界経済全体を危殆に陥れるおそれがあるとの認識に基づきまして、このような事態が生ずることを回避するための各種構想について討議を行いましたが、この結果、OECD加盟国の間に相互扶助的な金融支援制度を一定期間設立することを合意いたしました。この協定は、この十カ国蔵相会議の合意に基づきOECDの特別作業部会で具体的な内容について検討を行った結果案文が確定し昨年四月に署名されたものでありまして、世界経済に不測の事態が起こることを回避し、また、その順調な回復及び安定的発展のためのOECD加盟国間の協力関係を促進するものとしてきわめて重要な意義を有するものと考えられます。  わが国といたしましても、以上の趣旨に照らし、このような先進諸国の相互扶助的な制度に参加することは国際協力観点からも望ましいのみならず、世界経済の動向に大きく依存するわが国経済の安定及び発展を確保する見地からも有意義であると考えられます。  よって、ここに、この条約締結について御承認を求める次第であります。  最後に、米州開発銀行を設立する協定締結について承認を求めるの件につきまして提案理由を御説明いたします。  米州開発銀行は、中南米地域の経済開発の促進を目的として一九五九年に設立されました。以後、同銀行は、地域的協力機関としての実績を着実に重ねてきましたところ、中南米諸国の同銀行に対する資金需要の増大に伴い、同銀行の資金調達能力の拡大が強く要請されるところとなりました。このため、同銀行は、一九七二年三月に協定を改正し、当初米州機構の構成国のみに限定していた加盟資格をカナダ並びに国際通貨基金の加盟国である域外国及びスイスに開放し、域外国と加盟交渉を行ってきました。一九七五年二月に域外加盟予定国十二カ国の政府と銀行事務局との間に域外国加盟に係るすべての問題につき合意を見るに至りまして、この合意に基づき、協定改正案及び域外国の銀行への加盟を規律する一般規則案が作成されました。  同銀行は、中南米地域の開発途上にある加盟国の経済的及び社会的開発のために融資活動を行っており、地域開発金融機関としては最大の資金規模及び豊富な実績を有しております。同銀行を設立する協定は、銀行の設立、その目的、財源、業務、組織及び運営、特権及び免除等について規定しております。また、域外国の銀行への加盟を規律する一般規則は一域外国の加盟手続、域外国の当初の出資額及び拠出額並びにこれらの払い込みの方法等を規定しております。  わが国は、開発途上国に対する経済協力の重要性にかんがみ、従来より二国間の経済協力を通じて、また、国際復興開発銀行等の世銀グループ、アジア開発銀行及びアフリカ開発基金等の国際機関を通じて開発途上国の経済的及び社会的開発に貢献するよう努力してまいっております。わが国がこの協定締結し、中南米地域の開発に重要な役割りを果たしている米州開発銀行に加盟することは、同地域に対する多数国間援助を推進するとの見地から意義があり、また、わが国と中南米諸国との友好関係の促進にも資するものと考えられます。なお、米州開発銀行に対するわが国の当初の出資額及び拠出額は、合計一億三千七百四十五万七百五十合衆国ドルを予定しております。  よって、ここに、この条約締結について御承認を求める次第であります。  以上三件につき、何とぞ御審議の上、速やかに御承認あらんことを希望いたします。
  54. 高橋雄之助

    委員長高橋雄之助君) 続いて補足説明を聴取いたします。伊達条約局参事官。
  55. 伊達宗起

    政府委員(伊達宗起君) 最初に、ハンガリーとの通商航海条約についてでございますが、内容につきましてはただいま外務大臣より御説明のあったとおりでございますけれども、両国の貿易関係について簡単に御説明申し上げます。  一九七四年におきます両国間の貿易総額は約五千三百万ドルに上っております。一九六八年に比べますと約十倍に達する数字でございます。昨年、一九七五年は前年に比べまして輸出は約三〇%伸びたものの、輸入がわが国経済の不況の影響を受けまして大幅に減少をしたために、全体として総額で約二〇%減少し、貿易額として約四千三百六十万ドルでございました。  わが国の主な輸出品は、繊維品、化学品、鉄鋼、一般機械、電気機械でございまして、主な輸入品は、ブロイラー、医薬品、繊維製品、ハチみつ等でございます。  この条約締結によりまして、両国間の貿易、経済関係がさらに着実な発展を遂げていくものと期待される次第でございます。  次に、経済協力開発機構金融支援基金を設立する協定でございますが、この基金が貸し付けを行います場合の基本的条件は、加盟国が深刻な国際収支困難に直面しておること、かつ、他の金融手段を尽くした上で、なお必要な場合にのみこの基金から資金を借り入れることができることになっております。また、当該借り入れを希望する加盟国は、適切な内外経済政策を採用すること、また、貿易制限等の一方的措置をとることを回避しなければならないということになっております。  基金がこのような借り入れ国に対して貸し付けを行います場合は、加盟国、これは借り入れ加盟国ではございませんが、他の加盟国は、基金に直接に資金を貸し付ける方法という方法一つございます。もう一つ方法といたしましては、基金が貸付金を市場で調達いたしますのに際しまして、その返済を担保するため必要が生じた場合に基金に資金を貸し付ける旨の貸付予約というものを行う方法と、このいずれかの方法によりまして基金の資金調達に協力することになっております。  各加盟国の基金への資金提供額につきましては、借り入れ国に対する貸し付けが行われるごとに各加盟国の割り当て額を基準といたしまして算定することになっておりまして、基金に対し前もって資金を拠出する制度ではございません。  この協定に署名いたしましたOECD加盟二十四カ国の割り当て額の総額は二百億SDRでございますが、このうちわが国の割り当て額は二十三億四千万SDRで、割り当て額総額の一一・七%であります。これはアメリカ合衆国、ドイツ連邦共和国に次いで全加盟国中第三位となっておりまして、この協定が別段の合意なしに発効するためには割り当て額総額の九〇%を占める署名国の批准、受諾等が必要でございますので、一一・七%の割り当て額シェアを有するわが国の受諾がございませんと基金の発足がきわめて困難となるというような事情にあるわけでございます。  最後に、米州開発銀行を設立する協定でございますが、この米州開銀から欧州先進諸国等、わが国も含めまして、域外国に対しまして加盟の呼びかけがあったのに応じまして、わが国もこれら欧州先進諸国とともに域外国として共同で加盟交渉を行ってまいりまして、昭和五十年二月に銀行との間での域外国加盟に関するすべての問題につき合意を見るに至ったわけでございます。  域外国は、加盟に際しまして銀行の資本及び特別業務基金に対して割り当てられた額の出資及び拠出を行わなければならないこととなっておりますが、域外国加盟そのものが銀行によって承認されますためには、特別業務基金への拠出割り当て額が六千万合衆国ドル以上でございます大口拠出国であるわが国、ドイツ連邦共和国、連合王国、イタリア及びスペインの五カ国のうちの四カ国以上を含む八カ国以上の域外国が本年じゅうに割り当てられた額の出資及び拠出に同意しなければならないこととなっております。これまでに大口拠出国でございますドイツ連邦共和国及び連合王国は所要の国内手続を了しておりますが、イタリアにつきましては、当面手続完了はかなりむずかしい状況にある模様でございます。したがいまして、わが国が早急に国内手続を完了いたしますことが関係諸国から強く要請されている次第でございます。  以上でございます。
  56. 高橋雄之助

    委員長高橋雄之助君) 以上をもって説明は終わりました。  質疑は後日に譲ります。     —————————————
  57. 高橋雄之助

    委員長高橋雄之助君) 次に、国際情勢等に関する調査を議題といたします。  これより質疑を行います。質疑のある方は順次御発言を願います。
  58. 秦野章

    ○秦野章君 海洋法会議で大陸だなの論議がいろいろ、先ほどもお話がございましたが、あったようですけれども、この海洋法会議における大陸だな論議の展開のいまの段階、ちょっとその点を最初に、政府委員で結構ですから、説明していただきたい。
  59. 伊達宗起

    政府委員(伊達宗起君) お答え申し上げます。  大陸だなにつきましては、大陸だなの範囲が特に問題となっているわけでございまして、今回のニューヨーク会期におきましても、基本的には従来から表明されている考え方に沿っていろいろな主張がされたわけでございます。  これらの主張を大別いたしますと、いわゆる距離基準論、すなわち、沿岸国の管轄権の及ぶ大陸だなの範囲を、深さとか海底地形というものに関係なく、最大限二百海里までの海底であるという考え方と、それから自然の延長論と申しまして、大陸だなの自然の延長の外縁にまで沿岸国の管轄権が及ぶのだという説に、まあ大別いたしまして主張が行われているわけでございます。二百海里以遠まで自然の延長が続いている場合に、その境界を明確にどこまで大陸だなとして主張し得るかというような点もあわせて問題となっております。  わが国は、大陸だなの範囲は二百海里までという距離基準の主張を行ったわけでございますが、今次ニューヨーク会期におきます論議の過程を通じまして、大陸だなの範囲を二百海里に限定することなく、これを越えて大陸だなが存在する場合にも、その外縁まで沿岸国が管轄権を有するという主張がますます勢力を増してまいりまして、新しい海洋法条約にこの考え方が取り入れられる公算が大きくなったというふうに見られる状況でございます。
  60. 秦野章

    ○秦野章君 この大陸だなの議論というのは、とにかく昔はなくて、われわれも昔は知らなかったのだけれども、大陸だなの議論というのは、言うならば国境というもの、海底の国境問題みたいな感じがするわけですね。これはしかし、大陸国にとっては非常に得な議論だし、それからもちろん大陸だなをどう考えるかという考え方の決め方によるのだけれども、大体大陸国は得だし、海のない国が一番何のメリットもないという、そういう非常にアンバランスの中でこの問題が論議されているけれども、しかし、資源問題というものが非常に登場してきたものだから、この大陸だなのいわゆる海底国境とも言うべきこの問題というものは、かなりこれから大きなやっぱり国家間の問題になることは明らかだと思うのですけれども、どのような立場をとるか、説をとるかはともかくとして、たとえば東シナ海の大陸だな問題というものを考えたときに、将来大陸側、朝鮮半島、中国、そういうものの間に問題が起きる可能性というものはありませんか。
  61. 伊達宗起

    政府委員(伊達宗起君) 東シナ海の大陸だなにつきまして、朝鮮半島、中国との間に問題が起こる可能性があるかないかというお尋ねでございますが、大陸だなに関しましては、ただいまも御説明申し上げましたように、いろいろの考え方がございます。これは、さらに大陸だなの境界画定ということについても海洋法会議で議論されているわけでございまして、まだ結論を見るに至っておりません。恐らくこの夏に開かれます会議でも、さらに検討が続けられる問題であるというふうに承知いたしております。したがいまして、明確に二国間に横たわる大陸だなをどのように処分をするか、ないしは区画を決めるかということにつきましては、ただいま国際法的に申しまして非常にはっきりとした原則というものはないわけでございまして、その意味におきましては、当事国の間にいろいろな主張が行われるであろうということは申し上げられるだろうと思います。  ただ、私どもが見ておりますところでは、この東シナ海におきまして、地形的に見まして中国大陸と朝鮮半島との間は全く均一な大陸だなであるというふうに考えられますので、そのような状況のもとにおきましては、解決というのは比較的簡単な問題なのではないか。と申しますゆえんは、やはりほかの事情という複雑な事情がございませんので、大体等距離中間線というものによって処理され得るのではないかと、このように考えている次第でございます。
  62. 秦野章

    ○秦野章君 大陸に続くところでは、いまのお話のようなことであるかもしれないと思うんだけれども、たとえば日本のような立場をとるとかなり問題が出てくる。海洋法会議で将来基準を設定するとか、そういう方向にいくんでしょうが、そもそもこういう問題について国際的に覊絆力がかなりあるような基準を設定する見込みというか、可能性があるんでしょうか、外務大臣、どうでしょうか。
  63. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) おそらく、ただいま、この間の会期が終わりまして単一草案が改定をされました。そのいわゆる非公式改定草案をもとに、八月からさらにニューヨークで会議が行われるわけでございますが、従来までの会議の帰趨を見ておりますと、いろいろな場合における、ただいま秦野委員の言われました競合をきれいに処理するような規定がこの海洋法条約そのものに盛り込まれるということは、私は実はかなり困難なのではないかという予想を持っております。のみならず、そのような大陸だなといわゆる経済水域二百海里とがどのような関係に立つかということにつきましては、厳密に申しますと、とことんまで申しますと、いまの草案そのものが必ずしも明確でないというぐらい、この問題はむずかしい問題で、条約上最終的な規定を具体的に設けることは恐らく不可能ではないかという予測を私どもはいたしております。その場合には、最終的には関係国の間で具体的な協議によって解決をするということにならざるを得ないと思いますが、その場合に、たとえば中間線といったようなものが、いわゆる足して二で割ると申しますか、歩み寄ると申せばそういったようなことが常識的には考えられるわけでございます。  なお、今度の海洋法会議の帰結いかんによりましては、紛争処理のための国際機関を設けるか、あるいはそのような国際機関に紛争を委託するかといったようなことが最終的に条約規定される可能性がございますので、二国間の協議が整いません場合に、そのような処理機関に問題をまかして裁定を得るというようなことも可能であろうかと思います。しかし、それらはいずれにいたしましても、条約そのものが具体的に競合の場合の処理を定めるということからはほど遠うございまして、やはり何らかの形の協議あるいは調停といったようなことに最終的にはまかせざるを得ないのではないかと考えております。
  64. 秦野章

    ○秦野章君 国際紛争がある場合には、国際司法裁判所というのも一つの手で、イギリスとノルウェーの関係では国際司法裁判所が入って一つ意見を出したわけですけれども、しかし、国際間の紛争で国際司法裁判所が裁くという、そういう範囲は非常に実際のところ狭いし、そういうことになってくると、二国間の話し合いといったようなことが実際は確かに領域としては広いだろう。しかし、話し合いをする場合の力強さというか、根拠というか、そういうものをできるだけ培っていくといったような配慮が必要だというふうに思うわけですけれども、そういう蓄積をしていく過程の中で、日韓大陸だな条約というものをどう評価したらいいかというのが実は私なんか非常に悩みというか、考えているところなんです。ついでに、このイギリスとノルウェーの大陸だな問題について国際司法裁判所が裁いたあの裁き方、あの教訓みたいなもの、あの精神みたいなものが日韓大陸だな協定にはないんじゃないかという意見があるのですけれども、これに対する、どうですか、見解は。
  65. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) ちょうど大陸だな条約にお触れになりましたので、その部分についてお答えを申し上げたいと思いますが、この日韓大陸だな条約をつくります場合のわが国の基本的な考えは、韓国もわが国も同じ大陸だなの上に乗っておる。したがって、中間線をとろうという、基本的にそういう思想でございました。このことは、しかし、一般的にだれが考えても十分に通用する考え方かどうかということになりますと、わが国がちょうど五島列島の西あたりから鹿児島湾の入り口にかけましてでございますが、非常に深い海溝を西側に持っておりますために、大陸から来るいわゆる大陸だなというものは、そこで、そこまで自然の延長があるという見方の方が、あるいは利害関係のない国際的な場では賛同者が多いかもしれないと考えられる節もないわけではございません。しかし、わが国としては日本列島全体を含めて大きな意味での大陸だなというものに韓国も日本も乗っておるという主張を基本にいたしまして、中間線というものを設定すべきだという考えであの交渉をいたし、また、現に北部地域においてはそのようにして中間線をかいたわけでございます。南部についてはいろいろなことで妥結をいたしませんでしたから、その議論をいわばたな上げをしまして、わが国の、あるいは両国の主権というものに触れることなく、当面共同開発という具体的な解決策をあの条約に盛り込んだ。したがいまして、お気づきのように、北部の大陸だな設定につきましては協定は無期限、いわば永久の協定になっておりますけれども、南部の共同開発区域につきましては、大陸だなの問題等々全部いわばたな上げをしてございますために、これは一種のオペレーションのための協定であるということで五十年間という期限を付しておるわけでございます。このことによってもおわかりいただけますように、わが国の特殊な地勢から申しまして、ことに海洋法会議の後、隣国と大陸だなの議論をいたしてまいりますと、わが国は地形的に有利な条件にあるとは必ずしも申しにくい。ことに自然の延長論というようなことになりますと、第三者的に見ますと日本は海溝に囲まれているではないかというような議論が、最小限申しまして俚耳に入りやすいというふうに申し上げればよろしいかと思いますが、そういうことでございますので、私ども海洋法会議が妥結に近づけば近づくほど、その帰趨を見ておりますと、日韓大陸だなに関する条約はできるだけ早く御承認を得て批准をいたしたいと考えておるわけでございます。
  66. 秦野章

    ○秦野章君 わが国のいわゆる距離基準論の立場というものはあくまで貫くということは非常に大事だと思いますね。しかし、その距離基準論、その立場、そういう日本の行き方というものを、いまはお話しのその共同開発区域においては決して弱めたり捨てたりしたものではないという、そういう御意見ですか。
  67. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) いわゆる中間線という考え方は私どもとしては考え方の基本に持っておる。そういう上に立ちまして全体の問題を処理すべきだという考え方があの二つの協定に一貫しておると思います。
  68. 秦野章

    ○秦野章君 中間線のことはわかるんだけれども、その前提としての大陸だなの範囲を決める議論として距離基準、距離を基準にするんだという、そういう立場ですね、これはまあたな上げして共同開発にしたというかっこうですけれども、この立場というものを弱めたとか捨てたとかということではないかどうかという点だけ明確に。
  69. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) 秦野委員のお尋ねは、自然の延長論というものと距離基準論と、日本がどちらをとっておるかというお尋ねでございますから、わが国は距離基準論を一貫してとっておるということでございます。
  70. 秦野章

    ○秦野章君 その立場をとっていること自体が、この共同開発の問題で南の方を協定したということが、ゆるめてはいないと、たな上げしたんだということで、ゆるめてはいないということですか。
  71. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) さようでございます。先ほど申し上げましたように、わが国主張と韓国側の主張が、南の区域につきましては大陸だなの境界設定について折り合いませんでしたので、わが国としてはその主張をゆるめる、あるいは撤回するというわけにはまいらないということで、そのような主権を残しましたままで、共同の開発区域はいわゆるオペレーショナルな取り決めとして五十年間だけ認めたということでございます。
  72. 秦野章

    ○秦野章君 将来、つまりたな上げになっているということですが、将来、今度はその海底の領有権のような問題で争いが出てくる危険性はないですか。まあ五十年あるから大丈夫だといえば五十年はいいかもわからぬが、海底の領有権問題で問題が残されているわけですな。
  73. 伊達宗起

    政府委員(伊達宗起君) 秦野先生がおっしゃいますように、問題が残されているということでございます。つまりこの南部の共同開発に関します日韓間の協定といいますものは、その問題を、法律論を離れまして、たな上げにいたしまして、そして実際的な解決といたしましてこの共同開発区域を設けたということでございますので、当該共同開発区域が日韓いずれに帰属するかという問題は未解決と申しますか、たな上げになっているということでございます。  将来そのような帰属の問題に関しましてどういう問題が起こり得るかというお尋ねでございますけれども、協定期間中は、実際問題として解決が困難であったがゆえにこの協定をつくって共同開発ということにしたわけでございますから、理論的には領有帰属の問題というものが、他の何らかの手段により明確になり解決されるということは考えられるかもしれませんけれども、実際問題といたしましてこの協定有効期間中にいずれかに帰属するものだという、領有権の問題が解決されることは恐らく不可能ではないかと、このように考えているわけでございます。
  74. 秦野章

    ○秦野章君 いま一つ観点は、いわゆる大陸だな、海底の問題に権利を主張すれば、いわゆる海中、つまり経済水域というものを避けて通るわけにはいかない。これは日韓大陸だなだけの問題ではないけれども、いわゆる経済水域ですね、大陸だなとは別の、海底じゃなくて海中、この調整については、結局さっきも大臣の話があったけれども、話し合いということしかないような感じもするのだけれども、そういう経済水域と海底領有権との調整みたいな問題について何か具体的な、これはまあ海洋法会議でも今後当然課題になると思うんですけれども、それらの辺についてはどうでしょう。必ずこれはぶつかってくる問題だと思うんですね。
  75. 伊達宗起

    政府委員(伊達宗起君) 先生御指摘のように、二百海里の経済水域というもの、すなわち、二百海里までは上部水域及び下部の海底をも含めてそれは沿岸国の資源管轄権に服せしめるという考え方が基本でございますか、それと、それから大陸だなというものがどのように調整されるべきであるか、これは実は先生もよく御承知のように、海洋法会議で大変問題となるところであろうと思うわけでございます。現在までのところ、実は海洋法会議におきましては経済水域という項目において経済水域が論じられ、大陸だなという項目において大陸だなが論じられるという、二つがそれぞれ別個に取り扱われて議論されてきている状況でございまして、その間の調整をどういうふうな形でまとめていくか、それにつきましては実はまだ詳細な議論もなされておらず、今度でき上がりました非公式草案というものの中でも、その結びつきといいますか、連係と申しますか、関係と申しますか、それがどういう形であるかということは大変不明確な形で残っている問題でございます。
  76. 秦野章

    ○秦野章君 通産省にちょっとお聞きしておきたいのだけれども、東シナ海の石油資源というものについてはいろいろ説もあるようだけれども、可能性というか、どういう評価をしておられるか、南からずっと北の方にかけての、いわば東シナ海一帯の埋蔵資源ですね。大体通産省は現在どの程度見ているんだという、そこをちょっと説明してくれませんか。
  77. 左近友三郎

    政府委員左近友三郎君) 東シナ海の大陸だなの資源の賦存状況、ことに石油の賦存状況につきましては、一九六八年ごろにECAFEが調査をいたしております。東シナ海大陸だなの石油資源の賦存について結論的に言いますと、非常に石油の存在の可能性が大きい、こういうふうな結論なんでございますが、その根拠は、その地域の地質状況にあるわけでございまして、新第三紀層という時期に属します堆積物が非常に厚いということでございます。これはやはり、世界の石油の産出国は新第三紀層の堆積物が非常に厚い地域から産出しておるというふうなことがございますので、それがこの地域にも非常に大きいということでございます。ただ、その地質状況の中で具体的にどの程度あるかどうかということは、もう少し詳細な地震探鉱その他をやり、さらに井戸を掘ってみる、いわゆる試掘をしてみないとわからないわけでございますけれども、このECAFEの調査によりますと、地質構造としては非常に有望であるという結論が出ておるということでございます。  その後、東シナ海の一部の地域で民間企業がさらに地震探鉱をしておりますが、それによってみますと、やはり堆積盆地の厚さが最大六千メートルあるといわれております。中東地域もやはり平均六千メートルぐらいあるというふうなことでございますので、その堆積物の厚さというものから見ますと非常に有望であるということでございますし、その地層状況もやはりECAFEの調査どおりであるというふうな裏づけがございます。  ただ、その後の問題といたしましては、ことに共同開発の対象になっている区域は係争地、日韓両方の係争のある土地でございますので、双方そういう調査をやらないということになっておりますので、それ以上の調査は現在進んでおりません。  これが現状でございますが、地質構造から言えば石油の賦存が相当期待される地域であるということは事実だと思います。
  78. 秦野章

    ○秦野章君 日韓大陸だなの締結、それからいま衆議院でいろいろ論議があるようですけれども、もしこれを日本が批准しなければ韓国は単独開発をやるというような新聞記事も出ているのですけれども、そういうことに対する何といいますかな、わが方の外交手段というか、あるいは法律関係といいますか、法律関係並びに外交手段、それからまた、批准を日本が仮にしなかったということになったら一体どういうことになるのか、日本の国益とかそれらのところをちょっと説明してもらいたい。
  79. 中江要介

    政府委員(中江要介君) 御質問の第一点の、この批准が遅れると韓国が単独開発するのじゃないかということが言われていることに対して、まず外交的にどういうことができるかという点でございますが、これは御承知のようにもう署名されましてからずいぶん年月もたっておりますし、韓国の方で国会の承認を得てわがほうの承認、批准書の交換を待つばかりになってからでもすでに一年以上経過しているということでございます。したがいまして、日本側の努力はずいぶんしているということを説明いたしましても、これだけの月日がたってまいりますと、どこまでそれでは待てばいいのかという点について、だんだんと韓国側の憂慮の念が深くなってきている。これは否定できないことだと思います。にもかかわらず、日本政府といたしましては、この早期の承認が得られぬことについてのいろいろの事情については韓国側に誠意を持って説明することによって、やがて遠からずこの協定が発効するのであるから、円満に、両国間の紛争の種をまくことなくこの地域の石油を開発してアジア地域のエネルギー政策に役立てたい、こういう大局的な立場からいままでは説明を重ねてきている、今後ともそれ以上にはこれといって韓国側の憂慮を深くしていることを解消するための有効な方法というものは、特に外交的には残されていないのではないか、こういうふうに思います。  それにもかかわらず、先生の第二番目の御質問のように、韓国側が日本側説明では十分に納得することができなくて、他方、韓国といたしましても、日本と同様あるいはそれ以上に石油資源を必要としている段階にある国でございますので、韓国のそもそもの立場からすれば、自分の国の大陸だなである、それを開発することに何のちゅうちょが必要かというような声が強くなりますと、あるいはそれに踏み切るかもしれない。  万が一そういうことになったときにどうなるかという点でございますが、一般論といたしましては、そういう紛争を回避するために日韓間で協定ができたのであるから、しかも、それには署名がされている以上は、これは一方の批准が遅れているからということだけで、その署名された協定の精神に反するようなことをするべきでないということが国際法的には言われてはおります。しかし、先ほど申し上げましたように、日本の批准の遅れ方が韓国にとって理解の限度を超えるというようなことになりますと、韓国としても、そもそもが自分の大陸だなであるということで開発に着手しないとも限らない。そのときには日本としては、これは日本のよって立つ外交政策の基本の立場からいたしまして、実力でどうするということはいたさないわけでございますので、あとは韓国側と話し合いによってその紛争、一種の紛争になるわけですから、これを解決しようとする。そういたしますと、韓国側の言い分といたしましては、そういう紛争を解決するために協定をせっかく締結したのに、その批准がおくれているのは日本側の責任ではないかというふうに恐らく反論することも予想されるわけです。まあそういうこともありまして、日本側の韓国説得の力というものは、いままでよりもそう強くはないということは覚悟しなければならないかと思います。  他方、もう一つ私どもとして注意しなければいけない、留意しなければいけないと思います点は、この協定によりますと、あの共同開発区域の開発に当たっては、漁業上の利益に十分な注意を払う、公害を発生しないために万全の措置をとるということが規定されておりまして、日韓両国の共同開発のための事業契約の中で、そういったことを協定上の義務として手当てをする義務があるわけです。ところが、韓国が万が一、一方的に開発いたしますと、協定で補償しようと思いました西日本日本漁業利益に対する配慮が十分であるかどうか、あるいはまた、公害を発生しない方法で韓国が開発するかどうかという点について、国際法上の根拠に基づく韓国との話し合いあるいは注意喚起、そういったことができなくなる。そういう意味日本にとっては好ましくない状況が発生するということがおそれられる、こういうことでございます。
  80. 秦野章

    ○秦野章君 端的に言うなら、やっぱり日本は署名しちゃっているから、たとえば国際司法裁判所へいっても負けちゃうということなのか、そいつもあるかもわからぬということなのか。それからいま一つは、漁業補償でえらい損してしまう、つまり、これ批准しないと損ばかりで得は何もないということですか。国際司法裁判所あたりへいったら見通しはどうですか。
  81. 中江要介

    政府委員(中江要介君) 本件協定締結前に、すでに国際司法裁判所に持っていこうという話が日韓間であったわけでございまして、この大陸だなの法律上の見解の相違そのものがすでに国際司法裁判所になじむものであったわけですけれども、そのときですら、その行方については非常に疑問があった。で、この協定締結いたしますと、いま先生のおっしゃいましたように、日本側がこれを提訴をいたしましても、その立場はいかように弱まるかという点は容易に御理解いただけるかと思います。
  82. 秦野章

    ○秦野章君 日韓大陸だな条約の評価の問題でいろいろ論議があることも、衆議院でもいろいろ論議もあることも知っているんだけれども、二国間条約日韓の問題をどう見るか、政治的な評価、これも全く反対の見方もあるし、それが政治的評価だけではなくて、政治経済的な評価というものを考えて、積極論も消極論もあるわけですが、そういう日韓大陸だな条約の二国間の問題もさることながら、最初に申し上げましたけれども、実は資源のない日本で、東シナ海というものは、考えてみるとわれわれの子々孫々にわたってやっぱり資源としてどうしても頭に置いておかなければならぬ問題です。特に南の方の尖閣列島の島を拠点にした将来の大陸だな問題というものは、むしろいまの日韓大陸だな問題よりも大きな課題として登場してくるであろう。むろん中国といさかいをするのじゃなくて、やっぱり脂汗をかいた話し合いの中で日本が国益を守っていくという基本姿勢は当然として、しかし大変これは、とにかく宿命的に資源のない日本ですから、これは東シナ海の問題ですから乱開発はいけませんし、海洋汚染もいけない。そういう配慮をしながらも非常に大きな問題だというふうに私は思っているんですよ。これはそういう意見も多分あるだろうと思うんですけれども、そういう目先の問題というよりも、かなり将来にわたっての問題だということになれば、いままで衆議院の論議を聞いておってもそういう意見出ないんだけれども、日韓大陸だな問題で、一政権の問題でもない。朴政権、三木政権、そんな問題じゃない。もっと日本民族の、日本国家の長い将来、どうしたって資源がないんだから、そして一億を支えなければいかぬのだから、私はそういう意味において東シナ海の将来の問題を展開する上でワンステップになるという条約の決め方の内容ですね、条約内容にそういう力強い一つの将来への布石というか、蓄積があるのかどうか、あるようにとれるんだけれども、そういう意味日韓大陸だな条約に書いてあるそのものの問題よりも、その背後というか、それに連なる未来への問題が何か大きいような感じがするんだけれども、そういう説明はないんだけれども、これは外務大臣どうでしょうな。
  83. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) 基本的には秦野委員の言われましたことが問題のもとにあることは、確かに従来余りそこまで掘り下げて申し上げておりませんけれども、そのとおりでございます。わが国が国内に非常に資源が乏しいということ。しかし、技術の発展によって海洋あるいは海中に資源を求め得るということ。しかし、わが国の憲法あるいはわが国の国の政策からしまして、そのようなことは摩擦を起こさずに平穏裏に行わなければならない。これは韓国に対しましても中国に対しましても同様でございますから、そういうパターンをどのように設定すればよろしいかということがこのたびの大陸だな条約の基本を流れる思想であるというふうに私ども思っております。
  84. 秦野章

    ○秦野章君 再確認ですけれども、今度の大陸だな条約それ自体の評価はいろいろあるけれども、一つの評価、つまり権益の区域の画定の方向というものの一つのパターンですね、いまおっしゃった。このパターンというものを将来貫くということにおいてこそ意味があるんであって、これ自体もさることながら。そういう理解でいいですね。
  85. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) そのとおりでございます。
  86. 秦野章

    ○秦野章君 それでは問題を変えて、軍縮の問題等に関連するんだけれども、また、核防にも関連するんですけれども、核拡散防止条約というものが仮に国会でもそれが採決できて批准になっていくという段階になった場合に、これは仮定の議論なんだけれども、結局この核防条約を煮詰めるというか、論議していくために、あえて私は仮定の議論をするんですけれども、この間、私は代表質問をやったんだけれども、安全保障の問題で必ずしも満足するような答弁がなかなか得られなかったという感じはしているんです。  その中の一つで、軍縮に対する日本の姿勢というものは非常に大事だということはわかるんだけれども、米ソの、いまの、あえて軍拡とは言わぬけれども、なかなか軍縮がうまくいかないというこの現状に対する評価ですね。政府としては、責任者としてはなかなか言いにくいと思うんですけれども、これは子供がわあわあ騒いでも親は知らぬぷりして平気で、結構がんこなおやじさんなら平気でやってしまうみたいな感じがして、なかなか軍縮というものの訴えが効き目が弱いような感じはするんですよ。これはまた、核のメカニズムというものは、あるいはそういうものを持っているんではないかという感じもまあします。  そこで核の体制というものは、むしろ拡大をしてきた、特に二大国については大変核兵器というものが進んで拡大してきた。進んだことによって逆にやや神話化されていくという傾向がある。とても使えないという、神話化されていくということ、そこまでいかないとまた軍縮というものが主体的に出てこない。何か歴史の流れでやっぱり核軍縮みたいなものが、外の呼びかけもさることながら、内輪の矛盾みたいなものから出てくるという感じ、神話化までいって初めてそこから先、なるほどこれは使えないんだからむだだという、そういう軍縮論議が内輪から出てくる、金もかかるというようなことで。何かそういうような、歴史の洞察というのは非常にむずかしいけれども、そのくらい、むなしいとは言わぬが、そういう感じもするんですが、どうでしょうね。これからまた、仮に批准になれば軍縮の問題というものは当然日本はいままでと違った、より発言の場を得ることになるんですが、外務大臣、感じはどうでしょう、軍縮というもの。
  87. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) いまのお尋ねは、非常に私は問題のポイントに触れておるというふうに考えておりますのは、実は私自身もそういうことをかなり長いことあれこれ考えてまいりました。  それで、いま核保有国が少なくとも五つあるわけでございますが、その中で米ソが際立って特殊な地位にあるという一つ意味は、圧倒的に大きな核兵器を持っておるという意味ですが、別の意味は、米ソだけが核兵器を使うか使わないかという現実の局面に面した経験があって、先ほど神話化ということを言われましたが、まさしくそういう体験をしたただ二つの国であるという意味で、真剣に核というものを知っておる国だということは申し上げられるのではないかと思います。  それはもう、御記憶のように、一九六二年の十月のキューバ事件のときでございますが、アメリカはケネディ大統領でありましたし、ソ連はフルシチョフ書記長であったわけであります。いろいろな残されました記録あるいは当時わが国に通報されましたこと等々から判断をいたしまして、このときには核兵器を使わざるを得ないかというところまで両国とも追い込まれたことは明らかであります。結局、それは最後の瞬間において、表面的にはフルシチョフということになっております、事実もそうであったでございましょうけれども、もう少し親切に考えれば両方の指導者の冷静な判断ということになりましょうか、その間には、両方の間で、舞台裏でかなりのお互いの意思の試し合いというようなものがあったことも記録によってはっきりしてまいっておりますが、その結果、結局核兵器というものは使えない、使わない方がいいという判断になったわけで、余り冗長になると申しわけないと思いますけれども、私自身、そのときにアメリカのケネディ大統領が考えましたことは、自分たちは恐らくこれによって死ぬであろうけれども、そのことよりは、何代か後でアザラシのような人間が生まれてくるということについて、自分はアメリカの大統領としてどのような責任を歴史に向かって持つべきかということまで考えざるを得なかったということを、私自身、実はケネディの弟、ロバート・ケネディから直後に聞いたわけでございますので、恐らくフルシチョフ自身も同じように追い込まれた思いであったろうと思います。  結局しかし、この危険は、まあがけっ縁まで行って回避されたわけでございますが、その直後に米ソ間にホットラインが引かれるようになりました。このことは明らかにがけっ縁まで行きましたときに、両方の間の最後の対話というものがいかに必要であるか、あるいはそれによってがけっ縁に行くことを防ぐことができるという意味での、まあこのキューバ事件から生まれた貴重な経験であったろうと思うのであります。そのことを契機にしまして、核兵器というものについての恐ろしさを本当にいわば最後の竿頭に立って体験した両国の間で、いわゆるデタントというものが進んでくる契機になったわけであります。  したがいまして、そのような経験をしない国が核兵器を持っておるということは、ある意味で危険、より危険な状態であるということは申し上げられることであると思いますので、そこまで突き詰めて体験をいたした者のみがわかっておる核兵器の危険さ、神秘性という言葉がございましたが、まさに私はそのとおりであろうと思います。
  88. 秦野章

    ○秦野章君 まあいろんな経験の上から、しかし、特にホットラインというものがやっぱり神話化への第一歩みたいな感じがするんですけれども、そうなってくると、問題はやっぱりむしろ危険な国ですね。まあ政治家というのは各国ともそんなにりっぱな人ばかり出ませんから、危いのも出てくるわけですから、そういう意味において私は核防条約は非常に大事だと思うのでございますけれども、仮に批准になったときにどういう手続になるのですか、これは。いろいろ声明を出したりなんかやるんでしょうけれども、それはどういう……手続をちょっと。寄託国とかね。
  89. 伊達宗起

    政府委員(伊達宗起君) 国会の御承認が得られた後とる批准のための手続は、まず第一に、閣議におきまして批准の決定をいたします。それから批准書を作成いたしまして、陛下による批准書の認証を得まして、それから批准書を寄託するということになりまして、条約が発効いたします日にはこれとあわせて公布手続も進めるわけでございます。批准書寄託の場所につきましては、わが国は米英ソ三カ国において条約に署名を行っておりますので、批准書の寄託もこれら三カ国政府に対しまして同時に行うということになると思います。
  90. 秦野章

    ○秦野章君 その批准書の寄託国、いまお話しのようにまあ米英ソということですが、要するにこの批准に当たってですね、政府が、特に日本の場合は、まあ西独も批准したし、批准のときはいろいろ政府声明もあるんだけども、やっぱりいろいろ考えて訴えというものが必要になってくると思うのですが、これは非常に苦心の要るところだと思うのだけれども、やっぱり日本日本の特殊な地位といいますか、そういうものを踏まえて、できるだけ、なかなか届かぬかもしらぬが、やっぱり届くような行動が必要だと思うのです。まあ米ソに対する言い方、あるいは締約国に対する日本の訴え、あるいは締約加盟しない国への言い分というものをそれぞれ本当は違うんだろうと思うのです。まあそこらの点、私はここで別に政府声明の内容を、まだ考えてもおられぬでしょうからとやかく言いませんけれども、やっぱり批准に当たっての一つ日本の訴えというものは、よその国とは違うんだということでひとつ大いに練り上げていただきたいということを、まあ何と言いますかな、これ、注文をしておきたいと思うのです。  それから最後に、この軍縮の問題というのはやっぱり努力をしていかなきゃならぬ問題なんだけれども、ジュネーブの軍縮委員会、まあ外務省の出先もずいぶん一生懸命いろいろ知恵を出しておやりになっておられるようだけれども、この軍縮委員会と外務省本省の軍縮委員会に臨むスタッフの態勢といいますかね、こういう条約を批准したときには、多少むなしいような点もないではないけれども、何といってもやっぱり責任もあるし、立場も違ってくるんですから、この批准の機会に、私は、この軍縮の問題について、システムとしてもある程度刷新していくというのか、強化していくといいますか、そういう発想が政治姿勢として非常に大事じゃなかろうか。そこから知恵を出して、知恵でいくほかないんですから、日本は。私はそういう意味において、りっぱな大使もいま行っておられますけれども、本当はあそこいらに、もっとすごい、米ソもちょっと耳を傾けるような人材が行ってやると幾らか違うんだが、そういう人は日本にいないかもしらぬが、いずれにしても、そういう軍縮に対する気構えと心意気というものをやっぱり示すことが世界平和のために大変いいんじゃないか。これは間違いないと思うんですけれども、これは具体的には大変問題だと思うんだけれども、ぜひひとつ外務大臣、その心意気を示していただくことにおいて一つの大きな意義がある。  それで、核防条約というものは、私は代表質問でも、時間がなかったからあれですけれども、安全保障の立場から非常に言いました。そして確かに核なんかぶち込まれないような、攻撃されないような日本の姿勢というものも安全保障政策の一つですから、いろいろそういうことを考えながらやらにゃならぬと思いますけれども、やっぱりこれは独立国としては、通常装備なんかちゃんとするということは、言うならば、戦争の構えじゃなく、侵略してくるから構えると言うよりも、独立国の私はやっぱり心意気だと思うんですよ。そういうことがあって初めて、三百万の国だって武装しているんですから。心意気というものは、単に兵器とか武器とかという問題じゃなくて、人間の、国民、民族のやっぱり独立国の気概というものに通ずるんで、国家単位に平和を願うんですから、国家単位に世界史に貢献していこうというそのこと自体はもう変わりがないわけでございますから、そういう意味においては、そういうことをやっぱりちゃんとしていくと同時に、そういう次元と別に、この核防条約自体もまた一つの多角的な安全保障の一つの選択なんだという理解が必要じゃないのか。核防条約は別に安全保障と対置していく問題じゃなくて、安全保障政策というものはまことに多角的に見ていかなければならぬ、核防条約もまたその一つなんだというそういう説明が、余りそうはちょっと時期的に言いにくいのかもしらぬけれども、私そういうふうに考えるんですが、それは外務大臣どうお考えですか。アンチ安全保障じゃないということですね。核防条約はアンチ安全保障じゃない、選択の一つだと、そういうふうにぴたっと言えるんじゃないかと思うんですが。
  91. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) 核防条約の御審議に当たりまして、衆議院におきましても、また、本院においてもさようでございますが、一部から、この条約わが国が加盟をするということによって、別に世界の核軍縮あるいは通常兵器を含めました平和というものが増進されるわけではないというお尋ねがしばしばございまして、私はそれに対して、その都度、この条約は核軍縮といういわば非常に大きなシステムの中の一つの役割りを担う条約だと考えておりますと、これがすべてではありません、これがオールマイティーというふうには私ども考えていないので、その他のいろいろな要素、手だてと並行して、全体の核軍縮というシステムというものの一部だと私どもは考えていますということをお答えしてまいったのであります。このことは、先ほど秦野委員の前段に言われましたことと関係をしておりまして、外務省の軍縮についての努力というものの中で、やはり今後軍縮全体を大きなシステムとしてとらえて、今後どの時点で何をしていくべきか、これは世界的な規模においてでありますが、そういう研究、そういう政策の具現化というものをやはり少し系統的にしなければならないのではないかというふうに私も考えています。そういうシステムの中における一つの役割りを担うのがこの核拡散防止条約であるというふうに考えておるわけでございます。  それで、このこととわが国の安全保障との関係でございますが、少し長くなりましてもよろしゅうございましょうか——。  政府がこの条約に署名をいたしましたときに三つの点の声明をいたしました。一つは、非核保有国の安全、一つは核軍縮の進展、もう一つは平知利用についてでありますが、最後の点は直接関係がないので一応省略をさせていただくとしまして、これらについて、この御承認をいただこうとお願いをしている時点でどう考えるかということでありますが、まず、この条約わが国が加盟することによって、一応わが国がみずからを規制する、いわば仮に失うという言葉を使わしていただきますが、失うところは何であるかということを考えますと、それは、いわゆる核をわが国がつくらない、あるいは持たないということを今後二十年の近くにわたって国際的に誓約をするという点でございます。わが国は非核三原則を持っておりますし、政府はこの原則を将来にわたって変更しないということは何度も申し上げておりますけれども、厳しく申せば、この条約はそのことを国際的に少なくとも二つの原則について約束をするわけでありますから、そういう意味では、わが国に新たな規制を課するということは、これは私は否定はできないと思います。  ただ、これによって実体的にそれではわが国は何を失うであろうかということになりますが、それがいわゆるフリーハンド論という議論との関連になるわけでございます。現実にわが国核兵器をつくり得る能力を持っておりますことは、私は疑いがないと思います。国民の意思というようなことを別にいたしまして、能力的には、技術的にも財政的にもそれは可能であろうというふうに考えます。がしかし、そのようにしてつくりました核兵器を、果たしていかような形で実験をするか、また実際の場合、それがわが国のような密集した、しかも狭隘な地形を持つ国において有効に使い得るであろうかということになりますと、これは議論の分かれるところと思いますが、私はきわめてその可能性は少ない、むしろわが国民自身に危害を及ぼす度合いの方をよけいに心配しなければならないのではないかというふうに考えます。考えられる一つの可能性としては、将来原水力潜水艦にそのような核兵器を搭載をして、これを抑止力にして利用できるかという問題は、可能性としては私は考えられなくはないと思いますけれども、それは恐らく国民的な合意が得られるとしましても、もう非常な財政負担と、もろもろの非常な実は随伴する問題を伴うであろうと思われます。その可能性はきわめて少ない。いわんや、そのことがよろしいかどうかということになりますと、国民的な支持が仮にあるといたしましても、きわめて私は疑わしい問題ではなかろうかと思います。  それからもう一つの問題は、これは実は余り私は強調をすることはどうかとも思いつつ、先ほど秦野委員が言われました管理能力という点でございます。そのようにして持ちました核兵器を、実際に使わずに抑止力として徹底的に上手に利用し得るためには、かなり高度の管理能力を必要とすると思われますが、そのような管理能力は、場合によって絶対的な独裁制から生まれ得る、あるいは非常に進んだ民主主義、そのどちらからか生まれ得ると思いますけれども、前者の場合は、わが国がとうてい選択し得るところではありませんと思います。わが国の民主主義がそれならばそのような管理能力を持つところまで発達し得るかと言えば、私はその点はし得ると思いますけれども、ただその場合には、恐らくいろんな意味での機密の保持といったようなものが、いろいろな問題がある中で一つ取り上げてみましても、これはどうしても必要なことになってまいろうと思います。そのようなことが果たしてわが国民主主義の全体の将来から見てよろしいことであるかどうかということになりますと、これはまた先進国の幾つかの例を見ておりましてもかなり問題があるのではないかというふうに思います。むしろアメリカの例などを見ておりますと、この数年来、今日までアメリカの社会で起こっておりますいろいろな問題というのが、ある意味核兵器に伴う一種の機密の保持ということ、それが社会的にいろんな意味で乱用され、あるいは場合によって悪用されたということから生じておるように思われますので、わが国民主主義、将来の本当の国益から言ってそのようなところへわが国を持っていくことがいいであろうか、悪いであろうか。私自身はきわめてそれは疑わしいことだというふうに考えております。しかし、観念的にはこの条約を結ぶことによってその二つの点でわれわれは国際的な約束をするということになりますから、そのことを狭い意味での防衛的な見地からはマイナスだとお考えになる議論があろうと思いますが、私は広い意味の国益及びその実効、可能性などから考えますと、失うところは、まあ極端に申せばないという、いわゆるフリーハンド論というものについて私はきわめて懐疑的であり、否定的でございます。  もちろんそのことの裏には、現在のような国際情勢においては、なおわが国が何びとかの核の抑止力のもとにいなければならないということが現実でありますので、日米安保条約というものをわれわれとしては維持するということが当然に随伴をいたしおります。もちろん、自衛隊の専守防衛能力の整備ということはもちろんでありますけれども、さらに、それを越えて核に対処する道というものをわれわれとして考えなければならない。この点は昨年来一部の世論もありまして、申すまでもないことながら米国側との確認をいたしておりますわけでありまして、米国側として、将来わが国が攻撃を受けた場合に、それが通常兵器によるものであれ核兵器によるものであれ、条約上の義務を誠実に果たすということをもってこのことは一応完結をしておるというふうに考えます。  さらにしかし、議論が進みますと、そのような国の最終的な運命を決するような安全の問題を他国に依存をするということが、日本国民の精神あるいは将来にどのような影響を持つかという議論がございますけれども、このこと自身は安保条約そのものに伴う議論であって、このたびの核不拡散条約そのものから直接に出る議論ではないのではないかというふうに私は考えております。したがいまして、わが国の安全にとってこの条約がマイナスにはならないということは、私はまず申し上げられると思います。  次に、それならばいかにプラスになるかということを申し上げなければなりませんが、一つは、やはりこのような条約に加盟することによって、わが国が今後展開しなければならない、先ほどもお話のありましたシステマチックな軍縮、核軍縮に始まって通常兵器の軍縮に至りますそのようなことについてのわが国の発言あるいは寄与というものが非常な説得力を持つようになるであろう。わが国がこれに署名をしながら加盟をしなかったという状態に比べますと、そのことはなおさらに、その説得力の強弱というものは差異を生じてくるのではないかという点が一点であります。  次に、アジアにおきましては、日本核兵器を持たないということを言っているけれども、それは果たしていつまで真実なのであろうかということを疑っている国が残念ながらまだ相当ございます。そういう国々に対して、われわれは非核三原則という、いわば政府あるいは国会が一方的に表示した意思を超えて、国際的な約束をするということによって、その点についてもそれらの国々の疑惑をかなりの程度解消することができるのではないだろうか。このことは、アジアにおける今後の平和構造に私はかなり大きな影響を及ぼすと思います。つまり、アジアの諸国が日本に対して持っておるそのような疑惑を、この際、国際的な約束の場を通じて解消しておくということが、アジアにおいて今後われわれがそれらの国々とつき合っていく場合に大きな安心感を与える、あるいは信頼感を与えることになるのではないかというふうに考えます。  第三の利点として考えられますのは、これは先ほどやはり秦野委員の仰せられたことに関連をいたしますけれども、米ソが核軍縮を考えていく場合に、今後可能性のある国が核保有国の道へ進まないということは、そういう保障があるということは、米ソが核軍縮を考える上である意味で問題を非常に考えやすくする、処理しやすくするという要素があると思います。このことは、余り何といいますか、いわゆる勇ましい話にはならないわけでございますけれども、今後核保有国がどこにどれだけふえるかわからないという状況の場合と、これ以上拡散しないであろうという状況の場合とでは、米ソが自発的に核軍縮に進むときの判断の難易というものに私はかなり影響をしておるというふうに考えております。そのことは、昨年のジュネーブの再検討会議においても、はからずも米ソが両方とも、この条約によって将来の展望というものがある程度はっきりしてきて両者の軍縮交渉がやりやすくなったということを言っておりますのは、私はかなりの真実があるのではないだろうかというふうに考えるわけでございます。  あと利点と考えられますものはいろいろございますけれども、総合いたしまして、わが国が、このような経験を持つ国として核軍縮を世界の先頭に立って唱道し、進めていきます上で非常な信憑力と説得力をわが国が与えるということは疑いないというふうに考えます。全体といたしまして、この条約に加盟をすることによって、わが国は失うものはなく、得るものが多い。それによって世界の軍縮への道に向かってわが国が先頭に立って進んでいくことができるという判断を政府としてはいたしておるわけでございます。
  92. 秦野章

    ○秦野章君 軍縮体制はどうですか。軍縮委員会なり外務省なりの。
  93. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) 現在外務省、いわゆる軍縮室に実人員で十一人ほどの職員が働いておりますほかに、ジュネーブに代表部を持っております。先ほどちょっと申し上げましたように、わが国はこの条約に加盟いたしましたら、やはり軍縮というものを少しシステマチックに考えて理論武装もし、また、どの時点で何をしていくかということを基本的に考える体制というものをつくらなければならないと思います。また、軍縮代表部もそういう意味で強化をしてまいりたいと思っておりまして、さしずめは、これから目先私どもいたしたいと思いますのは、いわゆる核実験の全面禁止ということ、ことに地下実験につきまして検証等の方法わが国がかなり寄与できますので、まず、百五十キロトンから始めるのはやむを得ないとしましても、その敷居をさらに下げていくということで、全面的な核実験の禁止ということを当面の目標にいたしたいと思います。  それから、関係のあることでありますが、平和目的の核爆発というものは、理論はともかく、実際にはいろいろな弊害を伴いやすいのが世界の現状でございますので、これについては厳しく規制をすべきではないか。この二つのことについて、これは短期の目標でありますけれども、さしずめ努力をいたしたいと思いますが、長期的には、それらの問題を含めて軍縮というものを世界的にもっとシステマチックにどのように進めていくかということについて、わが国独自の考え方をいわば開発をして、そしてそれを唱道してまいりたいというふうに考えております。
  94. 高橋雄之助

    委員長高橋雄之助君) これにて休憩いたします。    午後零時三十一分休憩      —————・—————    午後一時三十一分開会
  95. 高橋雄之助

    委員長高橋雄之助君) ただいまから外務委員会を再開いたします。  国際情勢等に関する調査について、午前に引き続き質疑を行います。
  96. 竹田四郎

    ○竹田四郎君 先に米軍の鶴見の貯油施設の問題を、なるべく短い時間でお伺いをし、後に国際経済問題についてお伺いをしていきたいと思っております。  施設庁の方、お見えになっていると思いますが、米軍の鶴見貯油施設の第一工場、第二工場を結んでいる道路の油送管がいけてあると思うんですが、その道路の油送管の状況というのは現在どんなふうな状況になっておりますか。
  97. 銅崎富司

    政府委員銅崎富司君) パイプの現況は、六本パイプが入っておるわけでございまして、片側に四本、片側に二本でございます。四本の方は民有のパイプでございまして、二本の方が国有のパイプということでございます。その長さは約九百メートルということでございます。
  98. 竹田四郎

    ○竹田四郎君 使用状況はどうなっていますか。二本と四本の埋設時期とか、今日の状況とか、その上を通過する車両の状況とか、そういうようなものはどんなふうになっていますか。
  99. 銅崎富司

    政府委員銅崎富司君) パイプの使用状況でございますが、先ほど申し上げました民有の四本のパイプは現在使用しておりませんで、これは米側の方で安全措置を図る上から水を入れてございます。二本の国有の方は現在使用いたしております。  それから、パイプの建設年月日でございますが、私どもの手持ちの資料で申し上げますと、民有のパイプ、これはカルテックスオイル鶴見貯油所のものでございまして、建設の年月日は昭和十二年というふうに承知いたしております。国有のパイプでございますが、これは建設年月日が昭和三十一年というふうに聞いております。  それから、この状況でございますが、これはつい最近横浜市の方でここを試掘をいたしまして調査した結果の資料を持っておりますので、それで申し上げますと、浅いところで二十三センチから三十三センチ、これは民有のパイプの方でございます。国有のパイプの方は九十二センチの深さのところに埋設されているということでございます。  それから、車両状況につきまして、そこにどれくらいの車両が通ってどういう状況かということは、私ども承知しておりませんけれども、市の方の判断では交通上危ないという判断をされております。
  100. 竹田四郎

    ○竹田四郎君 そのいま生きている、現実に油を送っている二本のパイプ、これは圧はどのぐらいの圧で送っているわけですか。
  101. 銅崎富司

    政府委員銅崎富司君) そこのところ承知いたしておりません。
  102. 竹田四郎

    ○竹田四郎君 まあ現地を承知しておられると思いますけれども、その周辺には石油の貯油庫がたくさんあるわけで、また、東京瓦斯の工場もそのすぐ隣接した地域にあるし、そこの周りをパイプが通っているわけなんですけれども、とにかく片っ方は使ってはいない、デッドラインになっているということですからそれはいいとしましても、現在生きている二つのパイプのラインは、これは昭和三十何年ということですから、まあ恐らくパイプライン事業法の適用以前だろうと思うんですけれども、そういう意味でパイプの規格ですか、そういうもの、あるいはパイプの外装内装、こうしたものは恐らく規定に従っていないんじゃないかと思うんですけれども、事業法ができておりませんでしたから、その当時のままということでありますが、そのパイプの材質なんかの規格というのはわかってますか。
  103. 銅崎富司

    政府委員銅崎富司君) 承知いたしております限りでは、十二インチ二本、鋼管でできておるというふうに聞いております。
  104. 竹田四郎

    ○竹田四郎君 施設庁としてこれぐらいのこともわからないというのは、私大変残念だと思うんですよ。やはりかなりの圧力、まあ水道ぐらいの圧力ではこれは送っていると思いますし、それから一番このパイプのうち基本的な溶接部門というものもレントゲン検査をやってあったとは私は思わないわけです。そういう意味では、周辺にそういう危ない関係がありますから、しかもかなりの交通量、重いトラックの交通量、タンクローリーなんかの交通量がありますからね。しかも、被覆土は、おっしゃられたように、パイプライン事業法では少なくとも一メートル二十から一メートル五十というのに、一メートル以下という事態なんで、私は大変そのままにしておくというのは危険だと思うんです。むしろ私は新しいパイプライン事業法の規定によって全体的に埋めかえていく、そうして安全を図っていかないと、大変恐らくジェット燃料関係のものが一番多く送られているんではないかと想像されてるわけですから、その辺は、私はむしろ長さにしても九百メートル程度のものでありますし、それにまあ幸いなことにあすこには鉄道の側線が入っております。しかも、これが電車でなくてディーゼルでやっておりますから、ある意味では電気的な腐食を受ける割合というのは私はむしろ少ないじゃないか、そういう意味で国鉄のわきに移しかえていく、こういうようなことを私はむしろやるべきだと思うのですが、いかがでしょうか。
  105. 銅崎富司

    政府委員銅崎富司君) このパイプの安全装置をどういうふうに図っていくかということで、横浜市の方からも安善橋のかけかえに関連しまして協議をいたしたいということで、最初四月二十日ということでございましたが、四月の二十四日に第一回の打ち合わせ会議をやっております。それで今後も随時協議していこうということにしておりますので、そういう協議を通じまして、どうしたら安全が図られるか、ただいま先生の御示唆も含めまして、今後慎重に検討していきたいというふうに考えております。
  106. 竹田四郎

    ○竹田四郎君 米軍の内部にはこういう危険な油脂関係の取り扱い、あるいは検査点検、こういうような規定というものはあるのですか、どうですか。
  107. 銅崎富司

    政府委員銅崎富司君) ございます。
  108. 竹田四郎

    ○竹田四郎君 それは防衛施設庁の方では承知をしているわけですか。
  109. 銅崎富司

    政府委員銅崎富司君) 承知いたしております。ただ、非常に専門的なことになりますので、私ども資料を実は消防庁の方にも送りまして、この規定がどうなっているかというのを検討しているところでございます。
  110. 竹田四郎

    ○竹田四郎君 私は、あの辺は非常に石油それから一般のガス、こういういわゆるきわめて危険のおそれのある地域であるし、この前の水島の三菱石油の事故、こういうことから、あの辺は御承知のように埋め立てでありますから、タンクの不等沈下というような問題もあるわけでして、相互の防災協定なども結んで、お互いにそうした危険を未然に防止をする、災害の起きた場合には相互の援助協定をやっていく、こういうことを望んでいるんですけれども、防衛施設庁の方も実際そこの管理が具体的にどういうふうになされているのか一いま油を送っている圧までわからないわけですね、おたくの方は。しかも、そのパイプが一体どんな腐食をしているのか腐食をしていないのか、そういう安全度も全然わからないわけですね。恐らくタンクの不等沈下の問題も施設庁は承知していないということであれば、私は米軍を、そうした不等沈下の問題とか、あるいはパイプラインの安全性の問題とかそうしたものについて、もっと積極的に地域的にも私は協力させるようにしなくちゃいかぬと思うのですがね。現実にあそこで不等沈下でタンクから油が漏れたというようなことになれば、これは東京湾の汚染ということだけではなくて、火災でも起きた場合には、あの東京湾の沿岸の石油関係の工場というのはほとんどやられてしまう危険性も私はあると思うのですが、その辺は施設庁として地域の防災というものとの関連で、米軍だけが私は特別に安全だとは言い切れないと思うのです。その辺についての何らかの米軍との関係というのはお考えになっているんですか、どうですか。
  111. 銅崎富司

    政府委員銅崎富司君) 鶴見の貯油施設につきましては、横浜市の方から、先生いまおっしゃられましたようなことで、立ち入って検査をしたいという要望がありまして、私ども米軍の方といろいろ折衝をしてきたわけでございますけれども、一応、御承知のように地位協定上は米軍が安全管理その他軍の責任でやるというたてまえになっておるわけです。その間、何か安全を図るということはこれ米軍も当然日本側の趣旨には賛成だと思うわけでございます。まあ米側は、たくさんの人が立ち入って検査をする、器具等持ち込んで検査をするという点で、やはりそういうことは米軍の責任でやる。したがって、ほしい資料は差し上げましょう、それから立ち入って調査といいますか、そういうことには協力しましょうということなんですけれども、いまのところ、横浜市との間で、それでは意味がないということで、話はいまストップしているわけでございますが、私どもとしては安全を確実に図っていく、安全措置を十分にとるという点では全く意見の相違がないというふうに考えますので、そういう点を含めまして今後ともどうやったら実際のその目的が達成できるか、その点改めて米側とも話し、横浜市の方とも相談していきたいと、こういうふうに考えております。
  112. 竹田四郎

    ○竹田四郎君 外務大臣にお尋ねしますが、そういう形で、その周辺というのは東京瓦斯もあるし、あるいはエッソなりモービルなりの石油タンクがある。しかも、その送油管の上にはわずかに九十センチ程度の覆いしかない上をタンクローリーが一日に何百台という形で通る、こういう事態でありますから横浜市は非常に心配をしているわけで、しかも米軍の方は、なるほど消防局の来ることは歓迎する、来ることは歓迎するけれども一々検査をさせない、こういうことでは非常に不安というのが私はあると思うんで、いま一つは、パイプラインを移設したらどうかという提案を私はしたんですけれども、それは米軍の施設の外のことなんですけれども、内部のたとえばタンクの不等沈下の問題なり、内部のパイプの問題なり、こういうことがありますから、そういうものについては米軍にもっと地域の防災組織なり、あるいは防災機関なり、こういうものに積極的に協力するような、そういうことを米軍に申し出てもらいたいと思うんですけれども、ただ、歓迎はするんだけれども見せないんじゃこれはどうにもしようがないと思いますから、ひとつそういう意味で努力をしてもらいたいと思うんですが、どうですか、
  113. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) この問題は私はごもっともなお話だと思います。もしも災害が起こりましたら、これはもう日米の差なく、みんなが迷惑をするのでありますし、伺ってみますと、かなりその施設というのは老朽化している、つくられた年代から考えてもそうであるというわけでございますから、お話しになっていらっしゃることは私はごもっともなことだと思いますし、米側も、そういうことは一切お断りしますと言っておるわけでもないらしい、まあそれが法令上の立入検査であるとか、あるいは何人行かなければ目的を達しない、いやそんなに来てもらっちゃ困るとか、一回りするんならいいとか何とかいうことがどうやらあるらしく伺うのですが、基本的には、お互いにこれ事があれば大変だということはわかっておるわけでございますし、来ていただくことも拒否はしないということですので、少し話をほぐさなきゃならないと思っております。施設庁でもいろいろ御努力になっておられて、決して門は閉ざされたという形にはなっておらないようでございますから、その点は横浜市の方にも、必要の目的を達するということがともかく大事なことなんでございますから、お互いにお互いの必要の目的を達するというようなことで、余りかみしもを着ないようなふうにしてもらうということであろうと思いますので、私どももいろんな場におきまして少し上の方からなり何なり話をして、そして余りぎくしゃくしないように、お話が実現するようにしたいと思いまして、実はそういう努力をするようにとも、私も事務当局に申しておるわけでございます。
  114. 竹田四郎

    ○竹田四郎君 あと少し国際経済の問題についてお伺いをしたいと思っておりますが、何せ時間が短かいものですから、一つ一つ確認をしていくということは現実問題余りできないと思いますから、ある意味では私の考え方を述べて、そして大臣の方からひとつ伺うというふうに進めていきたいと思います。  一つは、いま日本だけでなくて、国際的にも私は経済の転換期に際会をしているというふうに思うわけでありますし、いままでの日米関係の貿易構造というものから見ますと、短期的に見れば対米輸出が最近ではかなり伸びていると思いますけれども、長期的に見ますると、大体対米貿易、対米輸出のシェアというものは私はだんだん落ちてきている、むしろ東南アジアあるいは中近東、この辺の輸出のシェアというものが大変大きくなっている。このことは、恐らく外務省も通産省もお認めになることだろうと思いますし、また、今後もそういう方向というものはかなり続けられるんではないだろうかというふうにも私は思うわけであります。一方、この間の委員会の質問にもありましたように、OPECやUNCTAD、こうしたものを中心とする一次産品諸国の力というのは、彼らのスローガンが団結ということを何より強く主張をしているということになりますし、また、今日の一次産品の価格というものが、一ドル石油という形でいままで評価されてきたにもかかわらず、それへの反発としてこの前の石油の価格の引き上げというようなものが行われてきておりますし、これはすずの問題においても、あるいはボーキサイトの問題においても、あるいはいま問題になっておる原子力の原料であるウランの問題においても、あるいは食糧問題等々においても、一次産品国の力というものはかなり大きくなってくるだろう、こういうふうに私は評価しておりますし、これも大体ある意味でコンセンサスが得られていることだと思います。  もう一つは、日本がいままでいろいろな、これは日本だけではありませんで、多国籍企業等々も発展途上国にいろんな形で企業をつくる、あるいはそこへ技術の援助もする、あるいは商品の輸出もしていく、こういう形の中で、発展途上国の技術的なキャッチアップと言いますか、こうしたことも私はずっと行われてきている。たとえばテレビ一つとってみましても、かつて日本が白黒テレビをつくるということについてはかなりの時間はかかった。しかし、いまや香港なり韓国なり台湾なり、そういう地域で白黒テレビなどはもう彼ら自体でつくり得るし、ラジオなんかも場合によれば向こうの方が安い、こういう形で日本の技術が非常に速やかにキャッチアップをされていく。今後の産業技術というものを考えてみますと、果たしていままでの高度成長の中で行われたような急速な技術革新が行われて、それが経済成長にはね返っていくというようなそういうみごとな技術というようなものも、私はそう早急にここで産業界を支配していくというようなことも、一部にはありますけれども、全体的に見ますれば、そう大きな期待は持つことはできないだろう、こういう状態であります。そういう点では、いままで生産性において鉄鋼なり自動車にいたしましても、国際的な競争力というようなものは日本に確かにあったと思うんです。しかし、これからだんだん、繊維などが一つの非常にいい例だと思いますけれども、後進国の安い労働力、こういうようなものでどんどん追い上げられてきているわけです。日本人が着ている洋服にしてもあるいはシャッツにしても下着にしても、恐らく日本で最後まで縫製されるというようなものは今日なくなっているんじゃないだろうか。われわれの着ている下着にも、ちょっと見ればメード・イン・コリアというのが入っているというような時代だと思うんです。  そういう中で、これからの日本経済協力というものをいままでのような形でやっていくと、後進国のキャッチアップに遭いまして、私は韓国の生糸の例が非常にいい例だと、実はこの間も大臣にちょっと申し上げたわけでありますけれども、その国で使うのじゃなくて、むしろ日本に輸出をして外貨を獲得をするという手段に変わってくる、これは大変、先進国に対する累積債務を持っている諸国というのは私はそういうことをどんどんやってくるだろう。こういう懸念を私は持っているわけなんです。そうすれば再び日本とそうした発展途上国との貿易戦争的なあつれき、フリクション、こうしたものが今後私はますますふえてくるのではないか、こういう心配をしている一人であるわけなんですけれども、この辺の将来展望にかけての認識といいますか、こうしたものは経済に詳しい宮澤さんのことでありますから十分御承知のことだろうと思いますけれども、その辺の展望というようなものは一体どんなふうにお考えになっているのか。  私は、やはりいま多国籍企業が問題になっているし、日本の輸出がいま非常に伸びている、私は輸出の伸びているというのは必ずしも喜ばしい事情ではない。むしろ今後へのフリクションというものを内在させている。確かにアメリカのITCあたりでのダンピング調査なども行われて、これは表面に出なくて、途中で何かうまくフォルクスワーゲンの方がやってくれたということで、日本がちょっとその責めを免れたという感じを私なんか持っておりますが、そういう意味では大変フリクションを起こして、驚くべき日本という言葉が高度成長の中にありましたけれども、いまやむしろ恐るべき日本という言葉が流行しているわけでありまして、私はこのままでいくと、そのうちに病める日本になってしまうんじゃないだろうか、こんな心配をするわけでありますけれども、病める日本にしてはならないと思うわけでありますけれども、ひとつ大臣のその辺の御所見を承っておきたいと思うんです。
  115. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) これはもうよく御承知のように、このことに明確に答え得る人は本当にいないのではないかというぐらいむずかしい問題で、私どもも定かにその見きわめを立てておるわけではございません。  問題は、二ついま御指摘の中にありまして、一つは、わが国の国際社会における競争力の問題でございますが、もう一つは、わが国の持っている産業が発展途上国の発展によりまして脅威される、問題は私は二つあるかと思います。  わが国の産業の国際的競争力について考えますならば、とにかくこれだけ輸出が重化学工業化しまして、恐らく八〇%ぐらいの重化学工業化率になっておると思いますが、さらにこれは、最近ごらんになりますように、プラントといったようなものにまで日本がかなりの競争力を持とうと、持ちつつある過程にございますから、それは日本と同じような水準にある先進国との間の競争はございましょうけれども、わが国がそれでひどくおくれをとるというようなことはないと考えてよろしいのではないだろうか。もとより、先ほど仰せになりましたように、多国籍企業の中にわが国ではちょっとただいまのところ手の届かないほど力の強いものがございます。たとえばコダックであるとかあるいはIBMであるとかいうものはよくその例として言われますけれども、一般的にしかし、私はわが国のそういう高度に発達した技術、あるいは産業構造からくる輸出力は、恐らく国際的におくれをとることはない。その間にフリクションはそれはいろいろございましょうから、場合によりまして、一時的ないわゆる市場撹乱的な輸出の仕方というのは調整していかなければならない場合はあると思いますけれども、わが国の競争力ということについては私はまあこれはやっていけるんではないか。しかも、余り波風を立てないようにやるという配慮は必要ですけれども、やっていけるんではないかという考えを持っております。  他方で、しかし、今度はわが国の持っております産業、これは一次産業、二次産業両方でございますけれども、が発展途上国のキャッチアップによって脅かされるという問題は、先ほど御指摘になりましたように絹の問題もございますが、さらに二次産業の軽工業、電子工業等々の中には相当見えるわけでございます。これはまあ、ある意味ではわが国がこの十数年持っておりますところの基本的な考え方、すなわち、労働集約的なものは発展途上国に譲っていかなければならないという、そういうある意味わが国の意識的な努力と申しますか、そういう考え方の結果でもあると思いまして、このことは私は基本的にはやはり労働集約的なものは譲っていくというのは本当であろうと思います。ただ、その間にどうしても日本の産業全体が同じテンポで進んでまいりませんから、いわゆるつかまってしまうものがあるということで、これは一次産業にも、そろそろ二次産業にも一部にあるということになっておると思います。でございますから、中小企業なんかについて、従来のような単なる補強策でなく、転換といったようなことを、企業転換みたいなことを通産省としても非常に奨励をしているというのもそういう意味ではなかろうかと考えています。  とにかくしかし、こういう国に特恵を、非常に制限的ではありますけれども特恵を与えるというような政策がコンセンサスとしてわが国にも成り立っておるわけでございますから、全体のそういう動きそのものは、発展途上国の立場なんかを考えますとわれわれとしては受け入れていくと、われわれがむしろそれに対応して高度化するということでいきつつあるんだと考えておりまして、あっちこっちに摩擦は出ておりますけれども、大勢としてはある程度時間をかけますとやっていけるんではないか。繊維産業なんかは確かに一つの典型的な例になるわけでありますけれども、しかし、考えようによりましては、相当労働賃金のわが国より高い国においてもなお繊維産業というものは存在をしている、アメリカにもある、フランスにもある、イギリスにもあるわけでございますから、それはやはり付加価値の高い物の方へと行くことによって生き残っていると思いますので、そういう行き方はわが国のそういう産業にもあるだろう。まあしかし、これは意見を言えとおっしゃいますから申し上げたので、月並みのことを申し上げておるにすぎません。大勢としては、私は時間の経過とともに処理できる種類の問題ではないかというふうにただいまとしては思っております。
  116. 竹田四郎

    ○竹田四郎君 わりあい短期間の間では、五年あるいは十年程度の問題ならば、私大臣のおっしゃる点で何とかやっていけるという気もするんですけれども、しかし、十年以上過ぎますと、恐らく技術開発のタイムラグというのが私は一つあるんではないか。日本のいまそういう意味での技術というのは、模倣すべき技術というのはおおむねもう模倣してしまった、むしろこれから日本自体が新しい技術を開発をしていかなくちゃならぬという、そういう時期へもうすでに入ってきた。しかし、発展途上国の場合には、どちらかというとまだ模倣的な技術ということになりますと、私はどうしてもそこにタイムラグというものが出てくる。そうすると、どうしたって自由市場というものを一応考える限りは、安ければそれが日本へ入ってくる、こういうことに私はなって、そこでフリクションというのは当然起きてくるんじゃないか。  そこで、今後の経済協力のあり方なんですが、私はそういうタイムラグによるフリクションというものをなるべく少なくしていく。このことがやっぱり今後の日本の、特に国際貿易で生きていかなくちゃならぬという日本ではその辺が私は非常に重要な問題になってきているんじゃないか。せっかく教えてやったんだけれども、今度はこっちの産業がそれによって打撃を受けるというようなことであれば、これは心の上では非常にいいと思う。しかし、経済的にはなかなかこれはむずかしい問題になってくるわけです。  時間がありませんから、私の考えている結論を申し上げますから、ひとつ御批判をいただきたいと思うわけですが、その一つの点は、これは田委員が前に海外経済協力に対しては民主主義という旗印を立てろと、民主主義の国でなければ海外経済協力はしちゃいけないというような法案を出されたことが昨年でしたかあったと思いますけれども、私はただ経済的に考えまして、やっぱり日本の経済が高度成長をなし遂げ得た一つの社会的基盤というものは、一つは、全部とは申しませんけれども、一つはやはり日本の農地改革などが国内市場を大きく拡大をしていったという点を忘れてはならないと思いますし、そういう意味では、今後の発展途上国というものはそれらの社会の民主化、そしてそれらの国の国内市場が豊かになっていく、購買力が国内市場に移っていく、こういうような形での経済協力なり経済援助というようなものがされていかないと、ただ物が売れさえすればいいという形でやっていくということになりますと、さっきのようなキャッチアップとフリクションの問題というものが私は生まれるんではないだろうか。そういう意味では、第二の点として、経済の転換期のいまの時期に、やっぱりまたUNCTADなどで南北の関係というものがわりあい大きく世論に訴えられているこうした時期に、日本独自のそうしたものが打ち立てられていかないといけないと思いますし、そういうものが打ち立てられて、それが日本のナショナルコンセンサスになるか、あるいは商社あるいは輸出関係の企業、こうしたものもいままでの、何でもかんでもいまのような稼働率が低くなっているんだから、稼働率を上げるためにも輸出すればいいんだというようなことをやっていけば、相手国の産業基盤というもの、あるいは購買力を大きくしていくという改革、こうしたものをむしろ破壊してしまう、こういう心配もあるわけですし、最近の多国籍企業のやり方なんかを見まして、恐らく日本の商社あたりでもああいうようなことをしているおそれは十分あるわけであります。そういうことを考えてみますと、やはりいまの時期にはっきりした対外経済協力、あるいは対外の貿易に対する基本的な方針というものを打ち立てる時期じゃないのか。それが一つの基本方針というか、あるいは日本の企業なりそういうものの哲学というものでありますか、そういうものをやはり確立をさせ、ナショナルコンセンサスを得られる努力をするという時期に私はあるような気がするわけですけれども、そういう意味でもしっかりした基本方針というものを私は立てるべきじゃないか。この二つの点についてお答えをいただきまして、あと田委員の方に譲りたいと思いますが、非常に短かい時間ですべてのことを言おうとしたわけでありますから、若干意を尽くせない点があるわけでありますが、そういうことを考えていかないと、これからの国際社会における日本の経済というものの指導力といいますか、そういうものは発揮できないんじゃないだろうか、こんなふうに思っておるんですが、御批判をいただきたいと思います。
  117. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) いま竹田委員のお話を承っておりまして、わが国の戦後の経済成長の一つの大きな要因に農地改革を言われたのは、大変失礼ですが、やはり大変な卓見であるというふうに私も考えます。  過去二十年近い経済成長を振り返ってみますと、やはりわが国の当時の農村人口、大体三千万というものが購買力を持つか持たないかということが、結果として非常に日本の経済成長に関連をした、日本の輸出競争力にも非常に関連をしておったと思います。このことは、もうテレビとか自動車とかいうものが、まず日本の国内で大きな購買層を見つけて、それによって生産基盤を拡大していってコストを下げていったということから見ても明らかでございますから、このことは、戦後の農地改革と、それからあえて申せば、いろいろ問題はありましたけれども、米価、政府の米価決定というものが、そのときどきでいろいろな批判を受けてまいりましたけれども、しかし、これによって農村が経済成長におくれずに国民の購買力を高めていったということによってわが国の産業基盤が大きくなり、国際競争力を持つに至ったということは、私はこれは否定できない事実ではないかというふうに考えるわけでございます。  そういう見地から申しましても、また、その他の見地からもそうでありますけれども、われわれの、ことに東南アジアの近隣の国々、これから近代化していく一番の基本的なやり方は、やはり農業を充実さしていくということ、そしてその上に中小企業を築いていくという、これがやはり本筋であるというふうに、これは世界のどの地域でも同じことが言えるとは申せないかもしれませんけれども、東南アジアの国々においては大部分それが妥当するのではないかというふうに考えます。それによってそれらの国々の国内の購買力がふえて、そうしてその上で産業が興るということがやはり本当のやり方ではないだろうか。  そういたしますと、竹田委員の言われますように、わが国経済協力の主たる志向すべき方向は、やはりまずその国の農業基盤を拡充強化をしていくということになければならないわけで、これは農業自身の技術指導でありますとか、あるいは水利でありますとか灌漑でありますとか、そういうこともござましょうし、また、農業関連で肥料工場ぐらいのところはこれは考えられるかと思いますけれども、やはりそういうところを中心にしていく。あるいは、それとの関連でインフラストラクチュア、ダムであるとか水利であるとか道路であるとかいうようなこと、そういうところに経済協力の重点が置かれなきゃならないということは、まさに私は仰せられるとおりだと思います。  そこで、ひとつ現実に私どもが過去二十年その関連で悩んでおります問題は、そういうことはわかっておっても、受け入れ国の政治の指導者たちが必ずしも同じような考えをしないというところにかなり深刻な問題があるわけであります。つまり、指導者たちにとっては農業に金を投入するということは実は見ばえは余りしない、たくさん金が要るかわりに見ばえはしない。むしろそれであったら大きなホテルをつくるとか、あるいは何かスポーツの殿堂でもつくりますと、これはいかにも指導者の指導者らしい何と申しますか、プレステージというんでしょうか、国民に対して目に見えてきれいな大きなものを見せるという、どうもそういうところに指導者の関心がいきやすい。また、時としてはこれはごく例外的にと申し上げるべきでしょうが、そのようなプロジェクトの方がある意味で指導者のふところを豊かにするというような、申しにくいようなことですけれども、そういったようなこともなかったわけではないように存じます。その問題がやはり一つ、いま言われましたこととの関連で私どもが現実にときどきぶち当たります困難でございます。  まあ考えてみますと、しかし、やはり国が興こる興こらないというのは、そういう指導者たちが本当に自分の国のニーズというものをどれだけ考えるかということにこれしょせんはかかるわけでありますから、指導者自身が、あるいは国民自身が賢くなって、そういうじみちな努力がやはり大事だというふうに考えていってもらう、それをわれわれも助けていくということでなければならないんだというふうに考えておりまして、基本的にいま言われましたことは私はまさにそのとおりに思いますし、わが国経済協力の方向も基本的にやはりそういうふうに考えていかなければならない。全く私は御高見と私の考え方とまさに同じように考えております。
  118. 田英夫

    ○田英夫君 私、二、三具体的な問題で政府の御見解を伺っておきたいと思うんです。  まず最初に、先週の委員会のありました日ですから十三日だと思いますが、その夜に、韓国の民主統一党の党首である梁一東氏が、御存じのとおり金大中事件のときにあの同じホテルに同時にいた人でありますが、この人がタイ国へ行く途中、トランジットで羽田に立ち寄った折に、短時間ですが会う機会がありました。そのときに梁一東氏が、最近アメリカのフォード大統領に対して韓国にあるアメリカ核兵器を撤去をしてほしいというアピールを出したと、そしてその写しを、協力要請を添えて三木総理に送った、こういうことを御本人が述べていたのでありますが、それが政府の手元にすでに届いているのかどうか、届いているとすればどんな内容であるのかお知らせいただきたいと思います。
  119. 中江要介

    政府委員(中江要介君) ただいま田委員の御指摘のような、フォード大統領あてのアピールの写しというものではなくて、私どもが承知しておりますところでは、先週、梁一東党首から直接三木総理にあてたパーソナルレターがまいりまして、それにはいま御指摘のような趣旨が触れられておるのみならず、それのバックグラウンドといたしまして、過去において梁一東党首がなされた記者会見のレジュメがついておると、こういうふうに承知しております。
  120. 田英夫

    ○田英夫君 その三木総理あての書簡の内容及び記者会見の内容、記者会見の内容というのは実はフォード大統領にあててのことを話しているはずでありますが、残念ながら韓国の報道管制のために韓国内でも報道されていないし、また、日本の特派員も打電してきておられないようでありますけれども、したがって、その内容がおわかりならお知らせいただきたい。
  121. 中江要介

    政府委員(中江要介君) まず、書簡の内容でございますけれども、概略私どもが承知しておりますところでは二点ございまして、一つは、朝鮮半島に核兵器が配備されている限り、朝鮮半島の軍事的統一に核兵器が使用される可能性がある。それはまさに朝鮮人民全体の死を意味するものであるので、去年の九月三日及び本年の一月十六日の記者会見で明らかにしたように、核兵器は朝鮮半島から撤去されるべきである。これが第一点であります。第二点は、朝鮮半島の統一は米ソ中日の四大国の保障によってなし遂げられなければならない。これらの四カ国はそれぞれ朝鮮半島に利害関係を有しており、南北朝鮮自身では統一問題を解決し得ない。何よりもまず、これら四カ国が朝鮮半島からの核兵器の撤去について協力して、そうして朝鮮半島の平和的統一を保障すべきである。こういう趣旨が盛られておるわけでございまして、そのいま申し上げました昨年の九月三日及び本年一月十六日の記者会見、これ大変大部なものでありまして、その中の該当部分を非常に簡単にまとめますと、第一点は、朝鮮半島を非核地帯にすることを国際機構に対して提起する。第二点は、朝鮮半島問題に直接的な利害を持つ米ソ中日、この四大国の協調を求める。第三番目は、統一の問題は四大国の保障のもとに南北間の対話を通じて達成されなければならず、対話は政府主導型ではなく民間主導型で行うべきである。一口で言いますと、そういう趣旨のことが相当長文の記者会見メモの中に含まれていると、こういうふうに承知しております。
  122. 田英夫

    ○田英夫君 私が本人から聞きましたところもまさにそのとおりなのでありますが、先日の核防条約審議の折にも羽生先生、私も触れましたが、社会党が主張しているアジア非核武装地帯あるいは条約締結という、そういう方向に対して、韓国の内部からも、事前に私どもと打ち合わせをしたわけではなくて、期せずして同じような特に朝鮮半島を非核地帯にするという要求、要望が出されてきているわけであります。それについて、日本は核は持たないわけですが、朝鮮を取り巻く米ソ中という核保有国協力を求める。私の聞きましたところでは、アメリカのフォード大統領のほかに中国、そしてソ連の指導者にも梁一東氏は書簡を送ったそうでありますが、この問題について外務大臣の、まあ御見解といいますか、感想を伺いたいと思います。
  123. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) 韓国全体のコンセンサスにそのような考え方が成長していきますと、私は非常に歓迎すべきことであると存じます。すなわち、韓国が現在戦術核兵器を受け入れておるのではないが、その必要があって受け入れておるのではないかと思いますけれども、そのようなものはもう要らない、なくても不安を感じない、そういうような状況になって、したがって非核地帯にしようではないかということでありますと、先だって来この委員会でもしばしば御指摘があり、私どもとしても将来の政治構想としてはやはり条件整備をしていかなければならないと考えておりますその問題に韓国も同調してくるということでございますから、そういうコンセンサスが、韓国官民を通じてでき上がってくるということであれば、これは歓迎すべきことであると思うのであります。また、梁一東氏のお立場が必ずしも韓国政府の立場ではないというのが現状でございましょうけれども、しかし、政府も国民もそのように考えるようになるような条件が整備されるということであれば、私はそのこと自身はきわめて好ましいことであると思います。  次に、朝鮮半島の平和の確保あるいは統一問題の対話の中で、米ソ中日ということでございますけれども、米ソ中が現在そういうことにすぐ応じる態勢であるかどうかは、これは人の国のことでございますからしばらくおくとして、わが国はこのような役割りを米ソ中と同じような性格においては果たし得ないであろうと思うのでございます。わが国は、何か貢献をしたいと、関係者から一応のそういう御希望があればしたいと思いますものの、わが国の持っております憲法あるいは国民のコンセンサスから言いまして、わが国の果たし得る役割りの性格というものは、他の三国とはかなり違うものにならざるを得ないであろう、こういうことは付け加えておく必要があるとは存じますけれども、全体としてこのような考え方は、構想としては、先日来この委員会で御議論になっております将来への構想と同じ方向にあるものというふうに考えております。
  124. 田英夫

    ○田英夫君 そこで、この問題はこの程度にしますが、いまの梁一東氏が日本に立ち寄りましたのは、朴政権のもとでは実は許されていないといいますか、梁一東氏は野党第二党の党首でありますけれども、にもかかわらず、梁氏はアメリカ及び日本に行くことを朴政権によって禁じられている、こういう状態にあるそうであります。日本に当てはめれば、野党第二党は、よその党の例を引いて申し訳ありませんが、つまり竹入委員長アメリカに行くことを三木さんによって禁じられているということに当てはまるわけでありますから、私ども日本から考えますと想像のつかないことでありますが、これは現にそうだということであります。ですから、トランジットで立ち寄ったときに私と接触するという形になったわけでありますが、そのことを考えますと、これも最近の報道で、アメリカのワシントン・ポストに、例の元国務省の韓国部長であったレイナード氏が記者の質問に答えて話しているということで、アメリカ政府の中で、韓国のこうした民主主義を破壊する人権抑圧、こういう朴政権のやり方に対して、キッシンジャー国務長官自身がこれには触れないでおくという原則を支持している。以前の駐韓大使であったハビブ国務次官補は国務省に戻った当初、この韓国朴政権のやり方に対して、アメリカ政府は公然と批判を行うべきだという提案をしたのに対してキッシンジャーがそれを退けたというようなことが、内情が語られているのでありますけれども、これはよそ事ではなくて、私どもが非常に心配しているのは、最も近い国であるわれわれの日本の政府が、このアメリカの二つの態度、つまり、キッシンジャーの態度とハビブ国務次官補の態度、その背後にはもっともっと大ぜいの人がいて、たとえばフレーザー下院議員などは非常に強烈に朴政権を批判していることは御存じのとおりであります。  こういう中で、日本政府としては大変おっしゃりにくいことでしょうけれども、このアメリカの基本方針を支持され、つまり基本方針というのは、キッシンジャー国務長官の方針を支持されるかどうか、この点を伺いたいと思います。
  125. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) いま田委員の御紹介になりましたところの報道の真偽については、私ども確認する方法はございませんので何とも申し上げられませんけれども、アメリカの政府内にも、あるいは議会内にも、韓国の現在の政治スタイルについていろいろな意見のありますことは私どももよく知っております。が、アメリカ政府としてはいろいろなことの総合的な考慮から、事を性急に、あるいは場合によりまして何かの圧力のもとに解決しようということは現実的でないというふうに考えておるのではないかというふうに私は受けとっておるわけでございます。そのような姿勢というのは、多かれ少なかれわが国におきましても似ておると思いますが、ただ、これは事のよしあしを別にいたしまして、アメリカと韓国との関係とわが国と韓国との関係はやはり一つ非常に違っているところがある。  と申しますのは、わが国が地理的に近いということもその一つでありますけれども、もっともっと大きく申しますと、過去における両国の関係というものが非常に異なっておる。つまりわが国の場合には、かつて日韓合併というようなことをいたしまして、それは非常に不幸な歴史でありました。昭和二十年までの間、われわれは韓国人に対して決して心底親切に感謝されるようにつき合った関係であったとは恐らく韓国側は考えていないであろうと思う。そのことはいろいろ悔やまれることですけれども、現実に過去の、しかも比較的近い過去の歴史でございますがゆえに、アメリカ人が韓国人に対して自分の思っていることを率直に言い、それが比較的率直に受け取られるような関係と、わが国と韓国との関係が違う。それはいいとか悪いとかいうことでありませんで、現実にそのような最近の過去を持っておるわれわれ両国でございますから、米国の政府なり国民なりが非常に率直に言えるような立場には、われわれ立場にないと申せば語弊がありますけれども、同じような態度をわれわれがとれば、全くわれわれの予期しない、われわれの希望しないような逆の結果になりかねないという関係に両国がございますことを、これは残念なことでありますけれども、考えておかなければなりません。したがいまして、私どもが申し上げることが、アメリカすらあのように歯切れがいいことを言うではないかという御批判をよく受けるわけでございますけれども、現実にそのような関係がきわめて近い過去に両国にあったということは否定のしようのない事実であるということもつけ加えさしていただきたいと思います。
  126. 田英夫

    ○田英夫君 韓国の問題で、さらにKCIAの問題その他伺いたいこともありますが、別の機会に譲ります。  一つ、いま日本の政治問題として大きな問題になっているロッキードの事件に関連をいたしまして、アメリカの例の多国籍企業小委員会、チャーチ委員会の場で、ロッキード問題よりも以前に、昨年の段階で、ガルフの韓国に対する、朴政権に対する癒着の問題が取り上げられているのであります。それによりますと、ガルフのドーシー会長が、いわゆるロッキード事件の場合のコーチャンその他の証人と同じようにガルフ問題について証言をしているわけですが、それによりますと、朴政権になって以来、主として一番最初一九六六年に百万ドル、七〇年に三百万ドル、しかもそれは朴政権の与党である民主共和党の側からの要求によって献金が行われた、こういうふうに証言をしているわけであります。残念ながらこの問題も韓国内における報道管制のために、韓国の国内では全く報道されていないために、韓国の議会でも、あるいは韓国の世論の中でも問題になっていないのでありますけれども、これはよそごとではないのでありまして、以前からこの委員会でも問題にしていたように、実はガルフ自身が、第一、いま先ほどほかの委員からお尋ねがあった日韓大陸だな協定の韓国側の鉱区を買い取っている会社の一つであるということ、そして日本の企業と韓国との間ではロッキードと日本の政界との間に等しいようなことが行われているのではないかという、こういう疑惑が以前から語られている、こういう中でのガルフの問題であります。したがって、私どもは無関心でいるわけにいきませんが、日本政府として、外務省として、このアメリカにおける証言についてどの程度資料その他を入手しておられるのか。多国籍企業小委員会の証言その他はすでに入手しておられるのかどうか、それからお伺いいたします。
  127. 中江要介

    政府委員(中江要介君) いま田委員御指摘のガルフに関する部分の証言の抜粋でございますが、これは私どもで入手し得た限りのものは手元にございますけれども、たしか資料として、御要望のある向きには資料としてお渡ししているというのが現状のように承知しております。
  128. 田英夫

    ○田英夫君 これはよその国とよその国の問題というふうに考えられるわけですけれども、実は私の申し上げたいのはよそごとでないということで、私どももこの問題については調査を進めているわけでありますけれども、つまり直接の関連は、さっき申し上げたように日韓大陸だな協定というものがすでに国会の場に出てきているわけでありますから、これに関連をして、アメリカの企業であるガルフが、実は日韓の間で約束をしてその利益を分配しようといっている形になっている日韓大陸だな協定の中で、実はその韓国側の取り分というのはとのガルフにあたるようなアメリカの企業に行ってしまうんだ、こういう仕組みになっているというところに問題があるし、その代償として韓国政府とアメリカの企業の間で政治献金のやりとり、逆に韓国の側は利権の提供、こういうことが行われている、それに日本政府がかみ込んだ協定を結んでいるというところにわれわれとしては承服できないところがあるんですね。こういうふうに私どもは考えますが、大陸だな協定に関連をしてはどういうふうにお考えですか。
  129. 中江要介

    政府委員(中江要介君) ただいま田委員の御指摘のガルフの関連する部分は、今度の大陸だな協定の共同開発区域に限って言えば、西北部の非常に小さい部分でございまして、一番共同開発区域の中で有望だと言われている部分についてはガルフ社自身は関係していないというのが現在までの私どもの調査の結果でございます。  それはそれとして、一般論といたしまして、韓国政府がどこの会社と契約をして、その韓国と日本とが共同開発する部分についての韓国側の開発権者に指定するかというのは、これは全く韓国側の問題ではございますけれども、いままでの調査の結果によりますと、今度共同開発区域に繰り込まれます部分について日韓双方が予定しております開発権者、つまり会社につきましては、いま田委員の御指摘のようなむずかしい問題はないということで、具体的に協定が発効いたしましてから事業体同士の事業契約締結段階協定に基づく政府のスクリーンといいますか、承認行為というものはございますわけでありまして、その段階で十分にそのような疑惑を招かないように対処していくということで諸般の準備をしているというのが現状でございます。
  130. 田英夫

    ○田英夫君 この問題も、日韓大陸だな協定は現在衆議院にとどまっているわけでありますから、私どもは反対をしておりますけれども、参議院に来るような段階があればまた触れるということにしたいと思いますが、一言だけ申し上げておきたいのは、韓国側の利益分配分は、ガルフを含めて、いま中江さん、ガルフは小さいところだと言われたが、ガルフも二つの鉱区にわたって権利を持っているし、その他韓国側のすべての鉱区が実はアメリカのそうした石油資本によって買い取られているということは無視できないといいますか、注目しておかなければならないことだと思います。  そこで最後にお聞きしたいのは、ソ連のノーボスチ通信のマチェーヒンという記者が現在日本の警察当局によって逮捕をされているという問題でありますが、報道によりますと、このマチェーヒンという人は以前にタイ国駐在の三等書記官であった、外交官であったということも言われているわけでありますが、まず警察に伺いたいのは、この逮捕の理由、容疑、これはどういうものなのか、現在どういう状況になっているのか、お知らせいただきたいと思います。
  131. 大高時男

    説明員(大高時男君) ただいま田先生の方からお話がございました事件でございますけれども、五月の十四日、警視庁におきましてはノーボスチ通信社の東京支局の特派員でございますアレクサンドル・エゴロビッチ・マチェーヒンという人物を刑特法の第六条違反、これは合衆国軍隊の機密を犯す罪の未遂でございますけれども、これで逮捕をいたしまして、現在なお身柄を勾留して捜査中という状況でございます。  現在までに捜査いたしました点、なお捜査中でございますので概要にとどめますけれども、申し上げますと、マチェーヒンは、昨年の五月、横浜の港祭りを見物中のアメリカの空母ミッドウェー号乗組員のAという一等兵曹に対しまして、あなたの撮った写真がほしいというような調子で接近いたしまして、それ以後、両者は家族ぐるみの交際を続けてきた。この間、マチェーヒンの方からいろいろとプレゼントをいたしましたり、あるいは家族ぐるみの交際を深め、食事代等も万事マチェーヒンの方が払ったというような状況で、心理的な負担を与えた状況がうかがえます。最近になりまして、このA一等兵曹に対しまして、アメリカ海軍の軍事機密を持ってきてくれれば一件につき千ドル払うということで、ミッドウェー号に搭載されておる電子装置、レーダー装置あるいは暗号システムといったようなものの入手を、文書でございますが、入手を要求した。しかし、それを入手する前に、目的達成前に逮捕されたということでございます。  警察におきましては、五月十二日の夜、池袋において二人の挙動不審な外国人を職務質問いたしました。その際に、一人はすぐに身分証明書を提示して、これは米軍のものでございましたが、身元が判明したわけでございますけれども、もう一人については、パスポートの提示を拒否いたしまして逃げようとしたということで、出管令の二十三条の違反ということで現行犯逮捕をしたわけでございます。調べました結果、この人物がマチェーヒンであるということがわかりまして、さらに、任意同行に応じたA一等兵曹の取り調べから、先ほど申し上げましたような交際であるとか、あるいはまた、マチェーヒンの方から米海軍の軍事機密事項を要求されたというようなことが判明してまいりましたので、改めて十四日の日に刑特法違反として逮捕をやったと、こういう状況でございます。
  132. 田英夫

    ○田英夫君 そうすると、いまのお答えでは、たまたま職務質問をしたのが逮捕のきっかけだと、こういうふうに考えていいわけですか。
  133. 大高時男

    説明員(大高時男君) はい、当日、挙動不審な外国人について職務質問をやったと、それで提示を求めたということから発端が出ております。
  134. 田英夫

    ○田英夫君 最後に、この問題は日ソ間の外交の問題に発展をする、あるいはしつつあると思いますが、外務省としてソ連側とどういう接触なりをしておられるのか、お答えいただきたい。
  135. 橘正忠

    政府委員(橘正忠君) 外務省では、ただいま警察の方から御説明がございましたような事実関係についての連絡を受けまして、在京ソ連大使館に対して、まず当初の段階において、日ソ領事条約の三十二条に従いましてその事実関係をまず通報いたしております。その後も、捜査当局から得ました事実関係でソ連側に通報すべきことについては通報を行っております。また、在京ソ連大使館の代表者とマチェーヒンとの面会についても、ソ連側の要請を検討いたしました結果、同じく日ソ領事条約の三十二条に従って遅滞なくこれを許可するという措置をとってまいりました。  ただいまのところ、本件は捜査当局の取り調べの段階にございますので、その結果によって今後の措置というものはとらざるを得ない。その取り調べの結果が先行する段階になっております。その間、ソ連側においては、本件について事実無根であるとか、あるいは即時釈放という要求も来ておりますが、当方の捜査当局から得ております事実関係については説明、通報を行って、ただいまわが方の国内法規に従って措置がとられておるということでソ連側説明をしておる状況でございます。
  136. 田英夫

    ○田英夫君 終わります。
  137. 黒柳明

    ○黒柳明君 本論に入る前に外務大臣質問したいんですが、終盤国会におきましていろんな法案をめぐる問題、あるいは与野党の対決等いろいろ問題ありますけれども、なかんずく与党内の三木内閣に対する批判、昨日はもう言うまでもなく閣僚までも何か物議をかもし出すような発言をしております。さらに各派閥、なかんずくきのう大平派で、副総裁の言動については支持する、三木内閣に対して反旗を翻す、集まった人が十八人とか、こう報道されておりますが、まあ大平派といいましてもすべてじゃないと思います。しかし、そこで穏やかじゃないのは、その会合におきまして、ロッキード問題はむしろ三木総理としては内閣延命のために使っている、こういうこともいろいろ合意の項目としてあったと、こういうことです。当然自民党、派閥として拘束されなきゃならないという、ある意味においてのそういう中にいる大臣でありますし、失礼ですけれども、一自民党の議員でもあるわけでありまして、ましてきのうの会合では大平派の幹部会、政務委員会、本来ならば政府の要職になければ当然そこにお入りになって、あるいはそういう不穏当な連中をなだめる役にもお回りになる責任もあるのか、要するにこの事件に対してもよかれあしかれ与野党とも一生縣命やろうと、この姿勢は変わりないわけです。その中で、いま申しましたように、大臣が所属する、当然党、派閥に拘束される可能性があるそういう派閥で、ロッキード問題が内閣の延命に使われている、いわゆる逆に言うとけしからぬと、こういうことでしょう。こういう発言があった、こういう合意が何らかの形でされた、こういうことについてどうですか、外務大臣。この問題の外交ルートの一番の総責任者ですし、あるいは総理の意図を受けて全面的に解明に向けて外交折衝の立て役者になっておるわけですから、まずきのうの、他の派閥あるいは他の閣僚はいざ知らず、大平派の、こういう外務大臣がいる、外交面の一番の責任者がいる派閥においてそういうものが発言され合意され、あるいはマスコミの社会の一つ論議をかもし出していると、これについてどうお考えになりますか。
  138. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) ただいまの黒柳委員のお話しになりましたような会合が昨日ございました由でありまして、私もその模様を聞いております。それによりますと、ただいまいわれるロッキード事件云々という発言が確かに一、二からあったそうでございますけれども、それは会合の多数あるいは合意というようなことにはならずに、そのような発言は発言として、発言者があったというだけの意味であって、大勢としてそういう判断をした、あるいはそういう合意をしたというようなことではなかった由でございます。
  139. 黒柳明

    ○黒柳明君 一部反三木、これはまあいざ知らず、そういうロッキード問題についての発言というのは全く一、二のものであって、派としての発言ではないと、当然そういう派閥としての発言があるならば、これはやっぱりどうですか、うまくないんですか。逆に言いますと、一、二ならばこれはもういたし方がない、もし派閥としてそういうことについて意思の合意ないしはその同調なりの申し合わせすることは、反対に言って、うまくないというお考えですか。
  140. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) 私の判断では、その一、二の発言というのは当を得たものではありませんし、判断としても正鵠を得ている判断ではないというふうに考えております。
  141. 黒柳明

    ○黒柳明君 そうすると、聞くまでもないと思いますけれども、この問題に対する三木内閣、この取り組み方、姿勢については万全の手ぬかりはないと、こういう判断に立っておるわけですね。
  142. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) そのように考えております。
  143. 黒柳明

    ○黒柳明君 この問題、まあ米ソのスパイ合戦とでも申しますか、まだ解明されない点が幾多ありますけれども、どうですか。幾らスパイ天国日本とはいえ、片っ方の、これはまあ相当警察の方も傍証を固めて逮捕されたんだと思いますよ。外務大臣も昨日の衆議院の内閣委員会では相当の強気の姿勢であったわけであります。それはまあ私たちの関知するところではありませんけれども、片っ方の米国の方、これスパイ行為と断定されたわけではありませんけれども、きょうの閣議の後では何か外務大臣発言されたみたいですか、国内法に抵触しないみたいだと、こういうことでしょうか。どうです。
  144. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) チャーチ情報委員会の発表されましたものを、まだ全文を私ども入手しておりませんで、とりあえず、ワシントンの大使館から日本に関する部分についての部分を送付するようにということで、その部分は私ども通読をいたしました。その部分に関します限り、岩国において郵便の開封であるとかあるいは電話の盗聴であるとか、いわゆる法に触れる行為が行われたというようではないように判断をせられます。もっとも、この報告書は西ドイツにおけるもの等々、わが国におけるもの以外の部分が相当あるようでございますから、全体がどのような調子で書かれておるかということを、念のために全部通読いたしませんといけませんと思いますが、わが国に関します限り、そのようなことはあるというふうには書いてございませんようで、なお詳細でございましたら政府委員から御紹介申し上げますけれども、そのような判断を今朝記者会見で申しました。
  145. 黒柳明

    ○黒柳明君 外務大臣が判断することは結構ですけれども、片っ方は長い調査期間かかって逮捕に踏み切ったと思うんです、ソ連側の方は。アメリカの方は提供して話題になってからまだ一日たつかたたないわけですから、ですから、いま外務大臣がその資料を見てからと、こういう注釈をつけているわけですね。注釈つけているならば、もうちょっとやっぱり慎重な発言をこの際する必要があるんじゃないですか。それじゃないとやっぱり誤解を受ける可能性あるんじゃないですか。ソ連当局だってそれに対して強い抗議をしているわけなんです。そういうわけですね。アメリカの方は、まだ現物のチャーチ委員会の報告書も読まないうちに、何となく抵触しないんじゃなかろうか、触れないんじゃなかろうか。いや、だけれどもそれはもう一回検討してからと、これはあくまでもこういう時期ですから、やっぱりきちっとしたものを見て、これはこういうことでありますからしかじかですと、こういう発言をしないと、いまのときにおいて、そうじゃなくても米ソはデタントの問題で若干歯車が、ギアがかみ合っていないような感じしますよ。ましていまソ連側から強い抗議を受けているわけでしょう。それに対して、将来どういう外交問題に発展するかわかりませんですね、対抗処置を受けるかわかりませんね。しかもいろんな、これから聞きますけれども、外務大臣が認知されていないようなものも実際には現場においてはあるみたいなんです。そういうことも御存じないと思いますよ。ですから現実にやっぱりリポートぐらいは見て、しかる後発言すべき、いまはそのときではなかろうかと、こう思いますけれども、どうですか。
  146. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) チャーチ委員会の日本に関する部分につきましては、私、全部読みまして、その上で私から発言いたしましたと申しますよりは、記者会見で質問がございましたから、この委員会の報告に関する限り、日本の部分についてはそのようなことはないと、こういうことを申したわけで、もちろんこの委員会以外の部分におきまして、黒柳委員の言われるように、事実そういうことがあるないということは、これは私その場で触れたわけではございませんで、委員会の報告書に関する限りを申したわけでございます。他方で、ソ連の新聞記者の問題は、これは昨日委員会で御質問がありまして、私は、これは捜査当局でいま捜査をしておる段階なので、事実関係がどうであるか、それが法に触れるものであるか触れないものであるかということについては私どもの判断すべきところではございませんので、したがいまして捜査当局の捜査の結果を待っておりますと、こういうふうにお答えをいたしております。
  147. 黒柳明

    ○黒柳明君 NISというのは米軍基地のどこにありますか、どことどことどこに。NISがある基地名ですね。
  148. 山崎敏夫

    政府委員(山崎敏夫君) 私たちも米軍の中にNIS、海軍調査部とでも訳しますか、という組織があるということは存じております。どこにあるかということでございますが、チャーチ委員会の報告によりますと、沖繩と岩国と横須賀にあるということでございますが、われわれとしては、どこの基地にどれがあるかということまでは詳しくは把握いたしておりません。
  149. 黒柳明

    ○黒柳明君 外務省としては、どこの基地にどういう部隊、人数どのぐらいなんということは御存じであるんじゃないんですか。機能、内容まではともかく、少なくとも部隊名とその人数ぐらいは。
  150. 山崎敏夫

    政府委員(山崎敏夫君) われわれといたしましては、主要な作戦部隊とか基地部隊というものは把握いたしております。しかしながら、これはそれぞれのそういう作戦部隊や基地部隊に付属しておる機関のようでございまして、そういうものについてまで一々、どこに所属しておるか、何人ぐらいいるかということは把握いたしておりません。
  151. 黒柳明

    ○黒柳明君 施設部長帰っちゃったですな。どうなんですか、常識的な部隊名、人数ぐらいは知ることは当然なんじゃないですか。秘密組織であるとか、あるいは探らなければわかんない、国会においてはそんなのあったのかと、こういうものなら別ですよ。常識程度のものは、当然外交ルートを通じての外務省あるいは防衛庁、まあ施設庁でしょうけれども、それは知るべきということは当然なんじゃないでしょうか。
  152. 丸山昂

    政府委員(丸山昂君) 私どもの施設庁の立場といたしましては、米軍に対する施設あるいは区域の提供に必要な限度において情報の提供を求めるという立場でございますので、結局全体としてその施設・区域に何人入るか、それから主だった部隊は何であるか、こういう程度の情報しか施設庁としては得てないというのが実態でございます。
  153. 黒柳明

    ○黒柳明君 そうすると、施設部長の発言と違いますな、防衛局長とは。施設部長が帰っちゃってうまくないね。施設部長ははっきり、そういうものについて知らないのはおかしいと、外務省も。——ちょっと施設部長呼んでくれよ、どこに行っちゃった。いま施設部長と話したら、そういう常識的なものは知らないわけないんだと、こう.いうことですよ。発見が全く違うね。防衛局長がそう答えるというから、結構だということで帰したんだ。施設部長ひとつ呼んでもらわなければ、委員長。施設部長と話し合って、常識的なことは当然外務省知っていると、だから、私ちょっとお客さん来るんで局長答えるからと、結構だ、忙しいのはだれでも同じだと。
  154. 丸山昂

    政府委員(丸山昂君) 私も施設部長からそういうふうにお答え申し上げたということでいま申し上げてございますので、施設庁のたてまえといたしまして、施設・区域の提供のために必要な限度においての情報提供ということで施設庁の業務は足りるということでございますので、詳しい中身については存じてないということでございます。
  155. 黒柳明

    ○黒柳明君 まあ施設部長来るでしょう。そうすると、このNISの組織というのはどこにあるかわからないですか、外務省は。
  156. 山崎敏夫

    政府委員(山崎敏夫君) 先ほども申し上げましたように、私たちもこのNIS、ネイバル・インベスティゲイティブ・サービスというものが存在しておるということは承知しております。しかし、これがどの部隊にどういうふうに配属されておるかというふうな詳しいことは存じておらない次第でございます。
  157. 黒柳明

    ○黒柳明君 なぜ常識程度なら知ってなきやおかしいと施設部長が言って、それを私言ったか——。そんなことはもうそこらにみんな出ているわけですよ。岩国、横須賀、沖繩、佐世保、厚木、これ、みんな海軍ですな。海軍に電話帳だってみんな出ていますよ。それから、海軍の横須賀の第七艦隊の基地の一番重要なポストにありますよ、名前が。ネイバル・インベスティゲイティブ・セクションと。全く常識ですよ、これは。知ってるんじゃないですか。防衛庁、在日米海軍とは、情報の関係、情報交換でしょうな、どこと接触していますか。
  158. 丸山昂

    政府委員(丸山昂君) 私どもの海上幕僚監部の調査部が情報交換を行っております相手方は、在日の米海軍の情報部でございます。これはN2と普通称しております。これは横須賀にございます。
  159. 黒柳明

    ○黒柳明君 横須賀にある。それでいまのNIS、これも横須賀にあるですね。いまおっしゃったN2、これと一緒じゃないですか、NISと。
  160. 丸山昂

    政府委員(丸山昂君) NISについては私どもよく存じておりませんけれども、この機能からいたしまして、いわゆる組織防衛が主任務ではないかと思います。そういう意味で、私どもが情報交換を行っておりますN2とは基本的に任務が違うというふうに考えておりますので、別物ではないかと思います。
  161. 黒柳明

    ○黒柳明君 外務大臣、知ってるんですよ、みんな。何も、知っていることは知っているであれしてね——。在日米海軍、当然第七艦隊の司令部は横須賀にあるんです。その横須賀にある電話番号、建物ナンバー、それから横須賀にあるUSネイバル・インベスティゲイティブ・サービス、全く建物も電話番号も同じじゃないですか。N2に接触していることはイコールNISに接触していることと全く同じじゃないですか。だれが接触していますかこれ、現場で。調査二課、二課長ですか。
  162. 丸山昂

    政府委員(丸山昂君) 接触は、当方は海幕からの連絡官が常駐をいたしておりまして、これが渉外連絡に当たっております。
  163. 黒柳明

    ○黒柳明君 どこに常駐していますか。
  164. 丸山昂

    政府委員(丸山昂君) いま申し上げました横須賀の海軍司令部のN2でございます。
  165. 黒柳明

    ○黒柳明君 ビルディングのナンバーは。
  166. 丸山昂

    政府委員(丸山昂君) ちょっとその細かいところまで私ども存じておりません。
  167. 黒柳明

    ○黒柳明君 電話番号は。
  168. 丸山昂

    政府委員(丸山昂君) その電話番号も存じておりません。
  169. 黒柳明

    ○黒柳明君 教えてあげましょう。横須賀にあるネイバル・フォース・ジャパン、これはN1からN2に分かれておりまして、N2が情報ですね、N1が人事、N3が企画プラン、N4が立法、N5が通信。そのN2の建物、ビルディングC1、それの部屋がBの三九のA、電話番号が二三四の五四七九。それと、こちらに来ますとね、いまのインベスティゲイティブ・サービス・オフィス、これは全く、スイッチボードしか出ていないんです。これ電話帳から言っているだけですよ。電話帳からしてもということがさっき言った常識的ということですよ。いいですか。私たちが調査したと、こうなら別ですよ。  さらに私続けますけれども、常識的というのはこういうこともその一つですよ。どこにだってあるんだそんなものは。その常識的な、海軍の、第七艦隊の司令部の一番トップに出ているんですよ、ここは、ここに。電話帳ですら。さらに、インベスティゲイティブ・サービス・オフィスというのは全く細かいものは出てないです。代表ナンバーしか出てないんです。あとはだれがコマンダーであり、だれがどういう係かというのは、ほかのところはみんな出ています、これは御存じでしょう。何にも出てない。電話番号同じなんです、二三四−五四七九、こっちも二三四−五四七九。オフィスもBの三九七、こっちもBの三九七。だからこの常駐しているというところは間違いなくNISなんですよ、N2に接触しているということ、どうですか。
  170. 丸山昂

    政府委員(丸山昂君) 先ほど申し上げましたように、私どもの情報交換の趣旨から申しまして、情報の相手はN2以外の必要はございませんので、いま申し上げましたように、組織防衛を担当しているのではないかと思います。これは中身がよく私実は存じておりませんので、もしそういうことであれば、当方との連絡情報の必要性はないというふうに思います。
  171. 黒柳明

    ○黒柳明君 それは思うんであって、どこのオフィスにいて、だれと接触して、どの電話番号でいろんな話、接触しているか知らないんじゃないですか、局長は。だけれども、現実に現場に行けばN2イコールNISですよ、いま言ったように、見なさい、これ、何だと思う、こんなのそこらにいっぱいありますよ。だから、私さっきから常識的、常識的とこう言っているだけであって、別に中に入って調べてどうこうという、こちらがとりたてて事をやらなくたって、常識的に電話番号も建物も同じであるならば、知らないんじゃないんですか。あるいは知っていて、ここでどうもうまくなくなったからそういう答弁はできない、どっちかじゃないんですか。外務省だってそうですよ、こういうことを私常識的と言っているんです。この部隊の第七艦隊の見出しのコマンダーのすぐ下に出ているんですよ、そういうことが。第七艦隊だけしか知らないということじゃないんじゃないんですか、そうでしょう。第七艦隊のほかは内容何にも知りませんと、こんなことじゃないんじゃないですか。そういうことを私は常識的と言うんです。その常識的なことすら知らないという、もし知らないというなら全く怠慢、知っていて言わなかったら、いまの時期だからこれは口ふさいだ方がいい、こういう外務省の態度。防衛庁にすれば、あるいはいま言ったように、現場においては全くN1とN2とNISとは同じオフィス、同じ電話、はっきり物語っているんですよ。すぐ調べなさい、調べなさいじゃない、知らないことが局長としてうまくない、そうでしょう、こういうものを、どうですか。
  172. 丸山昂

    政府委員(丸山昂君) 確かにおっしゃいますように、いまのN2とNISが同じビルディングで何じ電話番号を使っておるという事実については、私どもちょっとよく存じておりませんので、その事実はよく調査をいたしてみたいと思います。
  173. 黒柳明

    ○黒柳明君 そうなれば、ここに何名のオフィスに人がいるんですか。だれと接触しているんですか、わかんないでしょう。わからないんだから結局N2だけですとは言えないんです、そうでしょう、常駐しているんですから、そこに。これがN2でこれがNISでなんという組織になっていませんよ、これには。全く同じですから、そうでしょう。そうなれば当然そこの接触、それを私は今度の問題について何か防衛庁と一緒になってはかったとか、事前に知っていたとかなんとかそういうことまで言っているんじゃないんです。当然そういう接触なんというのはあり得る客観情勢にあるということを私は言っているんですよ。それだけはすぐやっぱりそういう問題について現場へ行って調べてください。調べるといったって、そうでしたとは言わないでしょうけれども、この事実について後でこれごらんなさいよ、いいですか。そういうことが、万が一接触、当然話し合いをして何ということはないと思いますけれども、疑わしきはこの際やめるべきだ、どうですか。
  174. 丸山昂

    政府委員(丸山昂君) 実は、私どもの海幕の調査部につきまして、この件について再三私どもの方の立場でいろいろ調べましたわけでございますが、その結果は、N2との連絡はやっておりますが、NISは仕事上関係がないので、接触はしておりませんという回答を私どもは得ておるわけでございますが、ただいま先生御指摘のように、同じビルで同じ電話番号を使っているということであれば、これは常識上当然接触の機会があることは私ども考え得ることだと思います。したがいまして、よく調査をいたしまして、ただいま先生御指摘のように、本来、先ほども私申し上げましたように、仕事上連絡の必要性はないわけでございます、NISがもし先ほど申し上げたような機能であるならば。したがいまして、そのための措置はとりたいというふうに思います。
  175. 黒柳明

    ○黒柳明君 やっぱり常識的に必要があるところじゃないわけですよ。だけれども、CIAの方法にしたって、ロッキードしかり、全く向こうから資料が出てきて、こちらはああそうでございますかというのでは、余りにも法治国家として、独立国家として外務大臣みっともないと思うのです。いま言ったように、こういう電話帳一つでも、第七艦隊のコマンダーのすぐ下にそういう組織が出ているのです。これを知らない。いつごろからありますか、NISという組織は。チャーチ委員会は七三年と言っていましたね。
  176. 山崎敏夫

    政府委員(山崎敏夫君) その点についてわれわれは詳しくは知らないわけでございます。先ほどから申し上げますように……。海軍のファンクションの一つとしてそういうふうなサービスが付属しておるということでございますから、われわれとしてはいつからあるかということまではせんさくしたことはございません。
  177. 黒柳明

    ○黒柳明君 今回の問題が起こって、調べると言ったって、何もきのうからきょうについてこれについて調べていない。発言が先行しちゃって何も調べていないんです、どうですか、外務大臣
  178. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) チャーチ委員会の発表いたしました書類、記録をいま全部取り寄せておりますけれども、そのうちで日本に関係あるという分につきましては、とりあえず電報で取りましたので、それは私ども通読をいたしております。
  179. 黒柳明

    ○黒柳明君 そうじゃなくて、そのほか海軍の付属組織だというならば、どこにあるのか、いつごろからあるのか、そういうことなんか問い合わしていないのですか、まだ。
  180. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) 私ども、原則としまして日本に駐留しております米軍、あるいは日本に所在しておりますところの各国の大使館、あるいは政府機関等々がどのような組織になっておるかというようなことは、原則として私どもの方で進んで知ろうといたしておりません。それはもちろん、わが国の法令に違反するというふうなことの行為がございますれば放置できないわけでございますけれども、そうでありません限り、適法にそれらが機能しております限り、私どもとしてはそれについて進んで知ろうということはいたしておりません。
  181. 黒柳明

    ○黒柳明君 いままでじゃなくて、きのう、適法であるかどうか疑問な問題が投げかけられたわけでしょう。それについて、その後です。
  182. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) この問題に関しては、適法であるかどうかという疑問が投げられたとは私ども思っておりませんで、実は昨日も委員会でそういうお尋ねがございましたのですが、一部新にそのような報道があったからであると思いますが、それはやはり報道の誤りであったようでございます。今回チャーチ委員会の記録によりましてもそのような疑問は投げかけられておらないようでございます。
  183. 黒柳明

    ○黒柳明君 そうすると、この問題について議事録からは問題がなさそうだ、さらにいろんな問題についてという発言あったですね。それはどういうことなんですか。もう外務大臣がおっしゃったことはそういう違法行為はないという断定なんですか。先ほども、何か今後についてもまだ余地を残した発言をしておりますね、どうなんです。
  184. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) 私が申し上げましたのは、この議事録の記録の日本に関します部分に関する限り違法なことがないというふうにむしろ書いてございます。ただ、ここに西ドイツにおいては、と書いてございますから、記録全体がどのような調子で書かれておるかということは、念のため見ておいた方がいいということは申し上げましたけれども、わが国に関する限り違法な行為がむしろないということが記録には書いてございます。
  185. 黒柳明

    ○黒柳明君 議事録はわかりました。議事録から離れまして、果たしてそういう違法行為があったかなかったかということについては、全くそれも論外である、こういうことですか。違法行為はないと断定せざるを得ない、議事録がそうだから、こういうことになるんですか。
  186. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) その点は先ほど黒柳委員が、議事録は仮にどうであっても、調べるといろいろとあるんだぞ、あるように思うぞとおっしゃいましたから、それは私ども何ともそこまで存じませんけれどもと申し上げたので、私どもはそういう違法な行為がある、あるいは非常にあるおそれがあるということでございますと、これは看過するわけにはまいりませんが、そうでない限りは、各国のそういう出先が主権に基づいてどのような組織をとっておるかというようなことについては、進んで調べる必要はないという立場をとっております。
  187. 黒柳明

    ○黒柳明君 そうすると、もう少なくともきのうのきょうですから、まだけさの新聞報道しか出ていないわけです。私もそんな幾多の人に聞いたわけじゃないです。そういうマスコミの情報あるいは私たちが聞いていること、いわゆる地元にある活動家に対しての調査が行われている、ある現実にそういうものも基地内のしかるべくオフィスにあるとか、あるいはそこでの話が筒抜けになっているとか、こういうものについては、全くそんなばかなことはなかろう、これはもう違法じゃないんだ、こういうことですか。  さらに、時間がありませんから、地位協定の十七条のB項、いわゆる基地外での警察権力、これは国内捜査当局とやっぱり合意し、話し合いしたければならない。ところが、やっぱり基地外の警察権力が及ぶ場合には当然日本の当局との話し合い、だけども、それに至るまでアメリカ側だって独自なやっぱり基地外で調査活動、情報収集ということはあり得るんじゃないですか、どうですか、外務大臣
  188. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) 黒柳委員が、この報告を御通読でいらっしゃいますか、あるいはそうでありませんかが明確でございませんので、ごくごく限られた時間で簡単に申し上げますと、この報告に申しておりますことは、この海軍のNISという組織はアメリカの軍人、海軍軍人のようでございますが、ベトナム戦争の当時にいろいろ反戦運動をしておる、それに対して、それが軍紀を緩めるということがあっては困るということから、その反戦運動をいろんな意味で観察をし、あるいはその中へ職員を入らせまして、そのような集会そのものをいろんな形で観察をしておる、書類を持ってくるとか、参会者の名前を調べるとかいうようなことをしておったようでありまして、そのような集会でございますから、主体アメリカの軍人でございますけれども、日本の人たちも時として入っておったことも、集会に一緒におったことも事実のようでございます。しかしながら、それらの情報収集等の方法において、いわゆる法を犯したような方法がとられておる形跡がない、こういうふうにこの報告には述べられておるわけでありまして、したがいまして、あの情報収集ということは、私はいろんな意味で当然やっておる、これはまた、やって別段差し支えのあることではありませんで、それが違法な形で人権を、法益を害する、個人の法益を害するというような形になれば、これはわが国として看過するわけにはいかない。そうでない限りは別段問題がないというふうに私ども考えておるわけでございます。
  189. 星野力

    星野力君 二、三の問題についてお聞きします。  金大中氏は三月一日の民主救国宣言によって逮捕投獄され、現に他の十七人の人士とともに裁判に付されております。この事件は、アメリカを含めて国際的に大きな反響を呼び、朴政権に対する非難が高まっております。金大中氏は健康を損なっており、投獄生活が長く続けば生命も危ぶまれるということも言われております。昭和四十八年に起きました金大中事件は、日本政府がその自由と生命に責任を負わなければならない状態にあった人物が不法に、しかも外国の公権力によって監禁され、国外に強制的に連れ出された事件であります。原状回復までは金大中氏の自由と生命に日本政府は責任を負わなければならぬ立場にあると思うんでありますが、その点いかがでしょうか。
  190. 中江要介

    政府委員(中江要介君) 昭和四十八年のいわゆる金大中事件というものにつきましては、これは当時から星野委員もよく御承知のとおりと思いますが、公権力の介入があったのではないかという疑惑は相当強うございましたわけで、政府といたしましても、もし公権力の介入ということが証拠づけられますならば、これは国際法に基づきましていろいろとるべき措置があるということで成り行きを見守ったわけですが、現在までのところ、公権力の介入があったという確たる証拠がないままに国際刑事事件としての終結がないわけでございまして、そういう状況のままで日韓関係全般の二国間外交が大きく阻害される、あるいは円滑を欠くということが果たしてこの地域の利益に沿うものかどうかという観点から、例の外交的に決着をつけるという措置がとられまして、金大中事件そのものは国際刑事事件として引き続き捜査を継続するけれども、ということであったわけです。そのときに、いま星野委員の言われました金大中氏の身柄の問題につきましては、これは韓国側が何度も一般韓国人と同じ自由を供与する、つまり、より優遇もしなければ、より冷たく扱うということもしないということで、日本政府としてはその件に関してはそれ以後もずっと関心を表明し、金大中氏についていろいろな措置がとられるごとに、この日本政府の関心は韓国側に表明し続けてきている、こういうことでございます。
  191. 星野力

    星野力君 そうしますと、今度の民主救国宣言が起きましてから金大中氏の自由とか生命、そういうことを含めまして韓国側に日本政府として意思表示をなされましたか、どういう意思表示をなされておられますか。
  192. 中江要介

    政府委員(中江要介君) その点は、ただいま申し上げましたように、民主救国宣言の事件そのものは、これは韓国で起きました韓国人の韓国の法令に基づく一つの司法上の措置でございますので、そのものの是非、当否を論ずるあるいは批判するということは許されないことでございますが、金大中氏の身柄につきましては、外交的決着のときにこういう了解になっている、そのことについては日本政府は関心を引き続き持っていくということは大使を通じましても先方にはっきりと申しておる、こういうことでございます。
  193. 星野力

    星野力君 先ほどアメリカ政府が韓国の問題について不干渉の態度というお話もありましたが、そのアメリカ政府でさえ、民主救国宣言による著名諸人士の逮捕に対しては遺憾の意を表明したと思います。ましてアメリカ政府以上に、この金大中氏について言えば深い関係にある、責任のある日本政府として、当然民主救国宣言、それによる逮捕、これに対して遺憾の意を表明しなければならぬ立場にあると思いますが、それはなさらなかった。  先へ進みましょう。日本政府が政治的決着などと申しまして朴政権以外の何びともこれは納得できないような態度をとっておられるときに、アメリカではこの事件に新しい照明が当てられてきております。最近、アメリカのジャーナリズムが次次に金大中問題について新しく告発をしているだけでなく、アメリカ議会が重大な証言の場となっておることは御承知のとおりだと思います。証言者は、あの金大中事件当時の国務省朝鮮部長であったところのドナルド・レイナード氏、そのレイナード氏が下院国際関係委員会国際機関小委員会、いわゆるフレーザー委員会におきまして三月十七日と二十五日に宣誓証言を行いましたが、証言の中で、金大中氏は日本のホテルからKCIAによって誘拐されたと、こうはっきり述べておられます。この点についてはどうお考えになりますか、どういうふうに調査をなさいましたか。
  194. 中江要介

    政府委員(中江要介君) レイナード氏の証言の中に、ただいま星野委員の言われますような証言がありましたので、先ほど私が冒頭に申し上げましたように、当初から日本政府として深い関心を持っておりました公権力の行使という観点から、何かそれを裏づける新しい証拠なり事実というものに基づいての証言であるならば参考になるではないかということで、まず米国政府に照会いたしましたところ、米国政府の見解は、これはレイナード氏が個人の資格で証言されたことであるし、そもそも金大中事件というのは日本で韓国人について起きた事件で、米国の直接関与している事件でないということでコメントをすることはできないと、すべきでないという立場であったわけでございます。そこで、それならレイナード氏自身に確かめようということで、在米大使館員をしてレイナード氏に直接確かめさせましたところ、レイナード氏の回答というのは、自分は証言で申し述べたこと以上のものは何もないということでありましたので、結局、この証言の裏づけになるような新たな証拠なり事実というものについては何ら出てこなかったというのが現状でございます。
  195. 星野力

    星野力君 レイナード氏が個人の資格で述べられたと言われますけれども、事件当時の韓国部長、しかもこの事件は日本と韓国との間だけでなしに、アメリカにおるところのKCIA、それも関与をしたという事情などについても詳しい状況を述べておられる宣誓証言であります。そういう関係からも、レイナード氏の証言というものは大きな権威を負うた証言であると思うんであります。しかも、その証言によって韓国の公権力があの事件を引き起こしたということが言われておる。まさにそう考えざるを得ないような証言であるということになりますと、いままでのようなアメリカ国務省に聞き合わしたらこれはノーコメント、それから、当のレイナード氏に聞いたが証言以外のことはノーコメントということでは、要するに公権力が介入したという確たる証拠はまだ入手できないにしても、その事実を認めざるを得ないようなそういう条件というものはそろったと、こう考えていいんじゃないでしょうか。それで済まされるつもりかどうかということです。
  196. 中江要介

    政府委員(中江要介君) これはアメリカにおける証言がいかように出ようが出ようまいが、当初から日本で起きた事件といたしまして日本であれだけ捜査当局が全力をあげて捜査した結果、韓国の公権力の介在があったという証拠がついに出なかったわけでございますので、私どもといたしましては、日本の捜査当局が犯行の行われた日本国内における捜査の継続の中から新しい事実が出てくれば、これは本件のいわゆる外交的決着についても、もう一度本件を持ち出すことあるべしということを、当時大平外務大臣も先方に言っておられることでございますので、その結果を待つということ以上のことはできかねると、こういうふうに思っております。
  197. 星野力

    星野力君 これは日本政府として、それが公権力による事件である、日本の主権に対する侵害であるということを認めないと、こういう立場に立たれたということしか意味しておらないんじゃないでしょうか。それならば、金東雲一等書記官、これははっきりあの事件に介入した証拠も残したわけでありますが、これは金東雲が個人としてやったことで韓国の外交官としてやったことではないと、こういう結論に立っておられるわけですか。
  198. 中江要介

    政府委員(中江要介君) その点につきましても累次説明があったと思いますが、金東雲元一等書記官の指紋が検出された、したがって、この指紋に基づいて金東雲元一等書記官の本件への介入の事実あるいはその程度、度合いというものを調べてもらいたいということで、韓国側の捜査に対する有力な資料として韓国にこれを伝達して、その捜査の結果を待ったわけでございますが、結局、出てまいりましたものは金東雲元一等書記官の本件への介入の事実というものが韓国における捜査の結果として出てこなかったということであったわけでございます。したがいまして、現在そろっている証拠資料からは、これ以上のことは、当初から言われました疑惑とか類推とか推察とか、その域を出ない、刑事事件としての決め手というものはないということでございます。
  199. 星野力

    星野力君 三月二十五日にもレイナード氏を証人として秘密の聴問会が開かれたそうでありますが、そこでレイナード氏が、朴大統領が大韓航空の超重勲社長と国際興業の小佐野賢治氏を通して、当時の田中首相に三億円を贈って金大中事件のもみ消し工作をやって成功したと、こういう驚くべき内容が述べられていると伝えられております。御存じだろうと思います。まあ、一部のジャーナリズムが取り上げたのだからということで見過ごすには重大な報道だと思いますが、これについてはどのような調査をなさいましたか。
  200. 中江要介

    政府委員(中江要介君) 外務省事務当局といたしましては、ただいま御指摘のような事実につきましては、一部の報道機関紙に掲載されているということ以上のことは存じておりません。
  201. 星野力

    星野力君 事実としますると、これはロッキード事件以上の重大問題なんです。それをいまの御答弁のように一部の新聞、雑誌に出たのを見たというだけで済ましておられるということはどういうことでしょうか。外務大臣、こういう問題、秘密聴聞会の証言記録、これは問題が問題ですから、強い外交交渉で要求すべきじゃないかと、この問題をはっきりしなければ日本の政治、日本の外交にとってこれは重大な問題だと思う。いかがですか、大臣。
  202. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) いま星野委員のお話しは、四月九日付赤旗と四月八日付週刊現代ということのような報道をどう思うかということでございますが、私どもとしてはこのことについて別段の調査をいたしておりません。  それで、秘密議事録でございますか、いろいろな状況から、どうもこういうことがあるいは事実ではないかというような、それ相当の考えられるような事情がございますれば、これは秘密の公聴会というものがあったとして、その内容を私ども知る必要があるという、そういう場合があるかもしれませんけれども、ただいまのところそのように私ども感じておりません。
  203. 星野力

    星野力君 このままほうっておくということですね。大臣、秘密聴聞会にしましても、御承知のように一定の時期が来ればその内容をまた公表もされる問題です。これだけの重大な問題、ロッキード事件だって同じなんです。初め政府はこれに対して一向に、ほおかぶりの態度をとってきた。そして今日あわてふためいておる。この問題についてはもう少し真剣な態度をとっていただきたいと思うんです。  最近も五人の大学教授と一人の牧師さんの名前でこの問題についての請願が出ております。金大中氏拉致事件の真相を究明を求める請願、当委員会にこれは回ってきておるのではないかと思いますが、国民もこの問題は注目をしておるんです。許されない問題だと、もし事実としたならば。もう少し、びとつ真剣にこの問題に取り組んでいただきたいと思うんですが、いかがですか。
  204. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) この日韓市民大演説会で鄭という人がそういうことを言ったという程度のこと、あるいはアメリカのコラムニスト何がしがそういうことを述べたというようなことの程度でございますと、私どもこれを正式に取り上げて調べなければならないと感じるには至りません。
  205. 星野力

    星野力君 これは外務大臣の責任にかかわる問題だと思いますが、いまここで繰り返しても時間もございませんから、さらに先で問題にいたしましょう。  ところで、あのレイナード氏の証言の中では、東京で直接指揮した駐日公使金在権が、現在本名の金基完でカリフォルニアに居住しておるということも述べております。この金在権公使については、事件当時、私自身が、彼が在日KCIAの元締めであり、金基完の名前でかつてKCIAの第七局長をやっておった人物であるということで、彼についての調査、彼の国外退去を要求すべきということを述べたんでありますが、先ほどもこの金大中事件、政治的には決着したと、こう言われるが、これは日本国内で発生した国際的な刑事事件としてはまだ残っておると、こういう御発言、御見解ですか。国際的な刑事事件としてでも金東雲あるいは現にアメリカにおるところの金基完、駐日当時は金在権、この人物を調べるわけにはいきませんですか。
  206. 中江要介

    政府委員(中江要介君) 先ほど言及されました金東雲、指紋の検出されました金東雲元一等書記官も現在韓国の管轄下におる人物でございますし、金在権公使につきましては、当時そういう問題の御指摘があったことは私も記憶いたしますけれども、一般論といたしまして、日本にありますKCIAというものの存在についてついに突きとめ得なかった。つまり韓国側では日本にあります韓国の大使館、総領事館といった在外公館の館員はすべて一つの在外の公務員という枠の中に入っておりまして、それ以外にKCIAというものの存在はないということでありました。したがいまして、金在権公使につきましても、またその他のKCIA介入の容疑につきましても、事実が判明しないままであったと、こういうことでございます。
  207. 星野力

    星野力君 あなた方が、なおあの事件が韓国公権力によってやられた疑いがあるという立場に立って、日本の国家的な尊厳のためにもこれを解明しなければならぬということを本当に考えておられるなら、刑事事件としてでもよろしいですよ。当時韓国の代表として日本に駐在した金在権、これはアメリカとの間の司法取り決めか何かによって調べることできるだろうと思います。当然熱意があるならこれは調べるべきであると思いますが、その点についての御見解はいかがですか。
  208. 中江要介

    政府委員(中江要介君) 権力をもって金在権元公使を調べるということになりますと、司法共助の問題でございますが、その場合には、日本において同人について十分な、つまり犯罪容疑者の引き渡しなり、あるいは証言録取その他の司法共助なりという取り決めの対象に含まれるだけの十分な証拠がないとできないことだろうと思いますが、その点は、いままで私どもが捜査当局から通報されておりますところでは十分な根拠がないというふうに思います。
  209. 星野力

    星野力君 この問題は一応そこで打ち切りまして、先ほど来問題になりましたNIS、アメリカの海軍調査部、この問題について私もお聞きしたいです。  問題になっておるNISが日本においてとっておる行動というのは、あのアメリカ国会、上院の情報活動調査特別委員会の公表によりますと、主として在日米人グループを対象とした活動のようでありますが、日本の主権のもとにある米軍基地外の区域での一種の警察的な活動であるとも思われるわけであります。それから日本人やアメリカ人以外の外国人の活動家の行動についても情報を集めている。集会やデモに対してカメラや録音で情報収集をやる。まあ占領下ではよくやられたことでありますが、そういうことがいまもやられておる。それから犯罪的手段も使われておるようであります。  なお、これはいま申しました上院のチャーチ委員会だけでなしに、昨年九月の上院の司法委員会国内治安活動調査委員会、ここでもNISの日本での活動を取り上げ、聴聞会が行われてその議事録があるそうでありますが、それらによると、日本人あるいはアメリカ人以外の外国人、そういう活動家の行動についての調査、そういうことも行われておるようでありますが、そういう点についてどうお考えになっておられますか、いま新しく日本人やそういう者の活動調査についても含めてですね。
  210. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) 問題は、さっき星野委員のちょっと言われました犯罪的手法も用いられているとも云々というところに私は尽きるであろうと思います。つまり、わが国ではそのような集会を行うことも自由でございますから、その集会に参加をして、それを録音するとか写真を撮るとか資料を持って帰るとかいうことも自由であります。主体アメリカ兵の集会であったようですけれども、むろんこれは日本人も恐らく何人かはその集会に加わっておることだって当然あったであろうと思いますので、ベトナム反戦というようなことになりますと。そういたしますと、その分についてもそういう情報を収集するということは、別段わが国の法令に触れることではない。問題は、その間に犯罪的手法が用いられますと、これは政府として黙って見ておるわけにいかない。
  211. 星野力

    星野力君 私、その犯罪的な手法ということだけを問題にしておるんじゃないんです。それなら、いまそれは除いてもいいんですが、日本人の活動家の身上調査、そういうことまでやられますと、政府が認めておられるらしいNISの正常な情報活動、調査活動、そういうものの限界を超えるのではないかという問題であります。その点はどうですか。
  212. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) およそしかし、情報収集ということはわが国の憲法で許されておるわけでございますから、身上を調査をするというようなことも、これもまた身上調査する営業すらあるわけでありますから、それ自身が別段私は何も問題になるとは思いません。
  213. 星野力

    星野力君 それはいいです。何も日本人の結婚のための身上調査とか何とかということじゃないんですね。反戦活動家とか平和運動家とか、こういうものをねらい打ちに調査やっておる。これは私、明らかに政治的な活動だと思いますが、どうですか。
  214. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) たとえば、これは仮にでございますので、ベ平連ならベ平連という日本の組織がございました。それがどういう人々によって行われて組織されており、その人々はおのおのどういう人々かということを調査をする、それが合法的な方法で行われる限り、私はこれは日本の憲法が十分に認めているところだと思います。
  215. 星野力

    星野力君 地位協定の第十六条に、「日本国において、日本国の法令を尊重し、及びこの協定の精神に反する活動、特に政治的活動を慎むことは、合衆国軍隊の構成員及び軍属並びにそれらの家族の義務である。」と、こういうあれがありますが、この地位協定の条文からするとどういうことになりますか。
  216. 山崎敏夫

    政府委員(山崎敏夫君) 仰せのとおり、地位協定におきましては、合衆国軍隊の構成員及び軍属並びにそれらの家族は政治活動を慎しむということになっております。しかしながら、いま大臣からも答弁されましたように、合法的な手段によって情報を収集するということは、当然認められるものと考えます。米軍の立場からすれば、米兵の規律に関連する問題としてやっておる限りにおいては、米軍としても当然そういう問題として関心を持っておるわけでございますから、そういう立場から合法的な手段で情報を集めたということは当然なことでございまして、それは政治活動とは見るべきではないと存じます。
  217. 星野力

    星野力君 もう一点、NISの収集情報というのは、海軍省に送られるだけでなしに、アメリカの同じく政府機関ではありますがFBIとかCIAにその都度流される仕組みになっておった、こういうことになっておりますが、そうしますと、アメリカの政府機関の目的のためにやられるものであるんですが、そういう活動が、具体的に言いますと、たとえば日本の活動家、ベ平連もやったでしょう、原水協もやったようでありますが、こういうところの団体なり個人なりを、単に文書によるとか何とかということじゃなしに、自身あるいはそのエージェントを使って調べ上げる、あるいは聞き込みもやらせる、こういうようなやり方は合法的なんですか、一定の政治目的を持ってですね。
  218. 山崎敏夫

    政府委員(山崎敏夫君) 先ほど申しましたように、在日米軍がその米軍を構成する軍人の規律を維持するという観点から、基地外において合法的な手段において情報を集めるということは当然許されるべきだというふうに考える次第でございます。
  219. 星野力

    星野力君 米軍が、その隊員の間の規律を守るというだけじゃなしに、先ほども申しましたように、アメリカの情報機関、政府の情報機関、FBIやCIAにその都度情報を流しておるということになりますと、問題はもっと広がってきます。そういうのが合法かどうか。  また、いまいろいろ言われますけれど、一体この地位協定十六条に反するというような政治的活動はどういうものを指しておられるのか、その点だけお聞きしたいと思います。
  220. 山崎敏夫

    政府委員(山崎敏夫君) その海軍の機関が集めた情報を米政府機関の内部においてどういうふうに取り扱うかという問題は、米政府の組織の内部の問題でございまして、われわれとしてはとやかく言う問題ではないと存じます。  それから、どういうものが一体政治的活動なのかというお尋ねでございますけれども、これは米軍人が日本人を主体とする政治的な集会などに出て政治的な演説をするというふうなことは、まあ一つの典型的な例であろうかと存じます。
  221. 星野力

    星野力君 時間がなくなりましたからやめます。
  222. 高橋雄之助

    委員長高橋雄之助君) 本件の質疑は、本日はこの程度といたします。     —————————————
  223. 高橋雄之助

    委員長高橋雄之助君) 核兵器の不拡散に関する条約締結について承認を求めるの件(衆議院送付)を議題といたしますす。  前回に引き続き質疑を行います。質疑のある方は、順次御発言を願います。
  224. 竹田四郎

    ○竹田四郎君 主として平和利用の関係についてお尋ねをしたいと思いますが、その前に、二、三核兵器の防止という問題についての政府の努力という問題について伺っていきたいと思うわけです。  だれが見ても、この条約というのは主権がある程度制限を受け、また、保有国と非保有国との不平等性というものはきわめて明らかなわけでありますけれども、これについても私どもの党内でもいろいろ議論があったわけでありますが、最終的には、現実的な核兵器の防止という立場から賛成をしようということに決まったわけであります。  私どもがこの核防条約に賛成しようという原点というのは、やはり私ども日本が原爆の被爆国民だという原点があるわけでありまして、そういう意味から、政府の方もそうだろうと思いますし、国民としてもこれを認めていくということは、核兵器の絶滅、廃絶、これを目指さなければこの条約への加盟という問題は私は余り意味がないことであるし、ただ入るだけであるということなれば、ただはかない望みを抱いているということにしか私はならない、こういうように思うわけでありますが、政府がこの条約に調印してからもう六年ほどたってきているわけでありまして、この条約の期限から見ますればもう四分の一というのはすでに過ぎているというふうに言わなくちゃならないわけであります。調印してから今日まで大変長い時間かかっているわけでありますけれども、この間に被爆国民の政府として一体この条約との関連で核兵器の廃絶に向けて具体的にどういう努力をしてきたのか、この点ひとつ大臣にお伺いしたいと思います。
  225. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) 確かに竹田委員の言われますとおり、私どもは最終的に核兵器の廃絶というものに到達しなければならないと考えておりますが、さしずめ、われわれとしてそこへ行く道でございますが、まず、新しい兵器の開発をやめてもらいたいというふうに考えておりまして、そのためには核実験というものをやめてもらうことが大事である。これをやめますと新しい兵器の開発ということは非常にむずかしくなりますので、核実験をまずやめるということをずっと提唱いたしておりまして、今日の段階では、残りました地下核実験について、多少まだ敷居は高くありますけれども、査察検証を含めた核実験の一定規模の停止、禁止というものは米ソ間で合意されようと、まさにされんとするところまで来たわけであります。しかしこれは、まださらにこの敷居をもっと下げてもらいまして、百五十キロトンというようなことでなく、名実ともにもつともっと小さくしてもらわなければならないわけでございますけれども、まずこの核実験禁止の分野で私どもかなりの貢献をしてまいったと思います。  また、それと関連いたしますが、平和目的の核爆発なるものも諸般の情勢からやはり厳しく制限をすべきではないかというふうに提唱をしておるわけであります。  その他、米ソを中心といたしました核軍縮につきましては、この六条にも定めてございますが、わが国は批准はしておりません、加盟国ではありまんけれども、これに少なくとも署名をしたのでありますから、再検討会議あるいは国連軍縮委員会等におきまして、いわゆる核軍縮について、主として米ソを中心でありますけれども、それが進むようにという、できるだけの圧力をかけてまいったつもりであります。  結果は、私どもの思うようには急速にかつ十分に進んでおりませんけれども、まずまず米ソ間にはともかく核軍縮の話をしていかなければならないという雰囲気は生まれておりますから、不十分ではありますけれども、方向としてはいい方向を向いておるというふうに考えております。
  226. 竹田四郎

    ○竹田四郎君 大臣、少し自画自賛のような気が私はするわけでありますけれども、むしろ民間の核実験反対とか、あるいは核兵器の廃止とか、こういう運動は、原爆記念日もその一つ中心でありますけれども、そういう形で民間では大変精力的にやられてきたわけでありますが、どうも政府の努力というのは国民の目には私は余り実際よく映っていない、こんな感じがするわけでありますが、しかし、いずれにしてもそういう方向に政府が足を向け出した、あるいは向けて歩き始めたということにはなるだろうというふうに思うわけでありますし、また、この加盟ということが、これはこの前もおっしゃっておられたけれども、スタートだと、これからますます核廃絶への方向を歩いていくんだ、こういうお話しで、そういう方向は私どももそのとおりであるし、その歩武をもっと高らかに鳴らしていかなくちゃならぬ、こう思うわけであります。しかし、自民党内部ですらこの核防条約についてのコンセンサスというものは必ずしも得られているというふうには実は言えないわけでありまして、若干これについての疑問を持っているわけでありまして、国民全体としても、私はそういう意味ではある程度、一体どれだけの実効があるのか、こういうことについてはやはりかなりの疑問というものを現在も持っているんじゃないだろうかというふうに思います。それだけに、やはり核防条約に加盟をするということを通じて、一体政府はどういう具体的なプランを持って核廃絶への努力をしていくんだということが、国民全体にわかるようにされなければいけないんじゃないか。先ほども秦野委員が、一体批准した後どうするんだというようなことは、恐らくそういうことを意識しながら秦野委員も御質問なさったんではないだろうかというふうに私は思うわけであります。ただ、批准書を寄託しただけでそれで終わりでは、これは全く能のない話だと私は思うわけでありますが、具体的にこれからの核廃絶への政府のプランと言いますか、そういうものはある程度お考えになっているわけですか。
  227. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) 米ソは、ことにあれだけの大きな核兵器を持って自分たちの運命、あるいは自分たちの同盟国の運命をおのおの担っておるわけでございますから、その核兵器を廃絶するというふうなことは、あしたやあさってにできるはずのことではないと思います。しかし、どう考えても最終的にはそこへ行かなければ本当の核平和というものは訪れないとわれわれは考えておりますから、先ほども申しましたように、まず新しい核兵器の開発をやめてもらう。それは核実験中止が一番そのために有効な手段であると思います。  次に、既存の核兵器を、一挙に廃絶というわけに恐らくまいりますまいから、縮減をしていってもらうということであると思います。それはSALT交渉になるわけでございますが、それが拡大均衡であるとか高値安定であるとかいう御批判はいろいろあるわけでございます。しかし、ともかく両方で話し合って制限をしていこうという意図は両方とも持っているということですから、まあ気の長い話と言えばそのとおりでございましょうけれども、しかし方向としては、そういう意図そのものはある程度評価することができる。  それで、既存の核兵器をそのようにしてだんだん縮小していきまして、最終的に廃絶というふうに持っていきたいというふうにわれわれは考えておるわけでございますが、これがしかし、米ソともに核軍縮ということについて全く自己の利益を感じないということでございますと、なかなか、われわれが圧力をかけたところで、それが実現するとは思えませんが、米ソともども、実は自分たちの持っているものが非常なオーバーキルになっているということは、これは明らかに知っておるわけでありますし、それがまた、とめどもなく大きくなっていけば非常な財政負担になるということも大きな問題になっておりますから、米ソともども幾らか自己的な、利己的な動機もあるわけで、それがありますがゆえに、時間をかけますと、いまのようなわれわれの提唱というものはそちらの方向へ向かって進んでいくであろう。ただ、この問題は非常に長い時間がかかるということは覚悟しなければなりませんから、忍耐強くやっていかなければならないと思っておるわけです。
  228. 竹田四郎

    ○竹田四郎君 言葉の上ではよく言われるわけなんです、言葉の上ではわかるんですがね。私はやはり、政府の行動というものがそれに対して執拗かつたび重ねて行われるということが必要だと思うんです。この前の、前回の委員会でも羽生先生や田委員の方からも、核攻撃やあるいは核威嚇は日本に対しては、核兵器を持っていない国だからやらないという再確認をとれ、そういう行動を起こさないか、こういう要求がありましたけれども、大臣は何か検討してみるという形でこの間は私は逃げたような気がします。また、きょうもアジアにおける非核武装地帯をつくれとかいうような要求も出されておるわけですが、あるいは核不使用宣言をしろとか、あるいは非核三原則を法律化しろとか、こういう提案が幾つか前回から出ているわけです。その他、学者の方からもそういう問題が、内外の学者からもいろいろな形で出されているわけです。そういうものをどうも政府が素直に受けていない。それはもちろんこれがそのまますぐ実行に移されるとは、正直言って提案者自体も私はすぐにでもできるとは思っておらないで提案されていると思う。それに対しては何回か、執拗に繰り返されることによってその高い敷居を私は低くしていく可能性というのがあると思うんですが、せっかく議会や国民がそういう提案をしても再検討をするというようなことでは、どうも政府の核廃絶への力がこもってないんではないかという疑問を、まあ私初めてここへ出てきたわけなんですけれども、いままでもそういう議論というのは何回か内閣委員会なり外務委員会でもされてたと思うんですが、どうもそういう力強さを一向に感じない。ただこの条約に入ればそれで終わりなんだとすら、これは誤解かもしれませんが、そういうような感じを受けざるを得ないというのがまあ私の実感なんです。おそらく国民もそういう感じを持っている人はかなりいるだろうと思います。そういうような執拗かつ連続的に、やはりいまはむずかしい問題でも主張し続ける、常に主張し続ける、そういう態度が私は政府にほしいと思いますが、どうでしょうか。
  229. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) それは私はごもっともな仰せだと思います。日本は、自分で核武装しないことは決めておるわけでございますから、世界から核というものがなくなってしまうということをわれわれが望まないはずはないのであって、自分がやる気がございませんから、そのことは竹田委員におかれても、あるいはどなたにおかれても、政府もまた同じように同一にこいねがっていると思いますので、したがいまして、いろいろなそのような構想について、私どもはそのこと自身に消極的であるはずはないのであります。ただ、申し上げたいことは、いまもう竹田委員が言われましたように、そのことが現実性を帯びるためにはやはり環境整備というものが必要と思いますと、政治目標としてやはり常にそういう構想は目指しながら具体的な環境整備をしていくことが必要だと考えます、と申し上げておるわけですが、それはつまり、ただそういう宣言をしたから、あるいはただ約束をしたからということ、そのことが無意味だとは私どもは申しませんが、やはりそれが有効であるための環境整備をすることも必要だと思います、ということを実は申し上げておるわけでして、せんだって来、各委員のお話しのそのような構想については、総理大臣自身も、また私も、構想としてはやはり常に考えていくべきであって、あしたできないからといって構想そのものを非現実的だときめつけるような態度は政府はとりません、こう申し上げておるわけでございます。
  230. 竹田四郎

    ○竹田四郎君 そうしますと、これからは野党から提案があって、趣旨としてはなるほど賛成だと、いまもいろんなことで言われているんですが、そういうものについては政府として行動を起こしていきますかどうですか。
  231. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) そのために、そういう目標に向かって環境整備のための行動を起こしたいと思います。
  232. 竹田四郎

    ○竹田四郎君 防衛局長にちょっとお伺いしたいのですが、二国間での核抑止戦略というようなものは、これは比較的、先ほどもお話がありましたように、米ソの間にホットラインができるとか、かなりそういう連絡等々を用いて核抑止への反省も、そういう方向への反省も生まれてくると思うのですがね。果たして核保有国というのがいまの状況で、インドが核爆発をやったというのが、これは兵器が目的ではない、平和的な利用のためにとは言っているものの、現実に平和利用の問題と兵器の問題というのは必ずしも全然体系が違うという問題じゃないわけですね。どっちにも移れる相互互換性というのは十分にあるわけですね。そうしますと、私はいまの世界の核利用という立場が一方考えられてみますと、核保有国というのはどうもだんだんふえていくんじゃないか。しかも、全世界がこの条約に調印し批准しているわけではない。現実にインドは調印もしていなければ加盟もしていない。そういうような国々というのはふえていくんじゃないだろうか。二国間での組み合わせというのはこれ一つしか、米ソの二国間という組み合わせしかありませんから、ここはホットラインである程度予防もできるという措置もやっているし、二国間で核兵器の制限というようなことについても話し合っているし、SALTの話も出るわけです。これが多国間になると、私はその組み合わせというのは数学でいう一つの組み合わせと同じようになると思うのです。二国間の場合には非常に単純な組み合わせですが、これが五カ国、六カ国、十カ国ということになりますと、私は組み合わせというものは非常に複雑になってくる。そこには核抑止という戦略が働かなくなってくるんじゃないか、コンピューターでも備えなくちゃどうにもならぬというような組み合わせに私はだんだん転化していくんじゃないか。ですから、米ソ二国間の核抑止ということについては効果がある。しかし、核保有国が多国化すれば、これは私は核戦略というものは非常にむずかしい戦略になってくるんじゃないだろうかと、そういう意味では、非常に核兵器を使わないということと核保有というものとの矛盾というものがふえてくるんじゃないだろうか、その危険性はますます高まるんじゃないかと、こういうふうに思うのですが、戦略論から見てどうですか。
  233. 丸山昂

    政府委員(丸山昂君) いま先生御指摘のような事態というものが、萌芽的なものは出ておりますけれども、さしあたってそういう事態が出てないということでございますが、将来の問題としては十分これは考えていかなければならない問題だと思います。現在、たとえばイギリスが固有の核を御承知のように持っておりますけれども、これはNATOの一員であるということで、イギリスの核の評価はやはりアメリカの核と合して対ソバランスの中の一つに勘定をされているというふうに私どもは理解をいたしておりますし、それからフランスは御存じのようにNATOのアウトサイダーでございますけれども、みずから核兵器を開発するときにNATOと合して対ソ侵略に備えるという意思表示をしておりますので、やはりこれは対ソ指向というふうな計算の中に入っているというふうに考えております。  そこで、ソ連の側にとってみますれば、それぞれの核兵器について、特にICBMについてはそれぞれのターゲッティングが決まっているわけでございます。これがアメリカの核のみならず、そういうところに対する対ソ指向ということも計算に恐らく入れておるのであろうというふうに私どもは推測をいたします。  それから、もう一つの事例といたしましては中国の核でございますが、アメリカは国防報告書の中では、昨年に至るまではICBMの開発がかたり進んで、すでに展開できる限度にまで来ているというような評価をしておりましたけれども、本年度のラムズフェルド報告によりますと、ICBMについてはまだまだ先の話である、MRBM程度のものについてはすでに完成し、若干配備をしてあるという評価で、少なくともアメリカにとって当面潜在的脅威ではないという評価をいたしております。しかし、これは長期に見た場合にICBMが開発されれば米中関係が現在のように、比較的友好的な方向に動いておりますが、将来ともその方向に進むといたしましても、潜在的な核の脅威という意味ではアメリカはやはり計算に入れざるを得ないのではないかというふうに思うわけでございます。  こういうふうに多角的なこの核の関係というものができ上がってまいりました場合に、それでは抑止力というものが現在のような形のまま有効に働くのかどうかという問題になってくると思うわけでございますが、御案内のように、抑止力それ自体は、もし核の攻撃をすればそれに対して報復をする。そして相手方に耐えがたい、受忍しがたい打撃を与えるという力を持ち、かつ、その力をいざといったときには行使するという意図を明確に表示することによって、相手方に、あえて侵略を行う場合にはそのリスクを冒さなければならないということを十分認識させて、結果的に侵略の意図というものを断念せしめるという効果を通常言っておるわけでございます。  そういう意味では、核兵器というものが本来非常に余りにも大きな威力を持っておるがゆえに、そういう効果が通常兵器でない特別の効果を生み出しておるということであって、核兵器本来の性能というものは、性格というものは、いま申し上げました非常に多角化した関係というものが将来生まれてくると思いますけれども、依然としてやはりこの核兵器本来の性格というものは残るのではなかろうか。これは非常にむずかしい多角関係になりますけれども、複雑化いたしますが、それによって核兵器本来の抑止力というものが減殺されるということは恐らくないのではないか。その抑止力の複雑な図式というものができ上がってくると思いますけれども、この抑止力そのものについての効力は変わることはない。むしろ核兵器そのものについては精度の向上あるいはスローウエートが大きくなるという現在の一般的な傾向がございます。これを抑える、少なくともスローウエートについては抑えるというような動きがございますが、ランチャーの数をある一定限度に抑えるということはございますけれども、精度そのものの向上というものは技術的にこれからだんだん進歩してまいるということになるかと思います。そういたしますと、やはり基本的な抑止力というものの減退ということは、複雑化ということに伴って抑止力そのものが弱まるという方向に進むと考えるべきではない。やはり抑止力そのものは依然として残るというふうに判断すべきではないかというふうに思います。
  234. 竹田四郎

    ○竹田四郎君 何か防衛局長の話を聞いておりますと、米ソ相互はなるほど核抑止力が働くという感じはするわけです。しかし、核は大きな核ばかりじゃない。ますます恐らく核兵器というのは小型化されていくだろうというふうに思いますし、この前も田委員が示したような巡航ミサイルというようなものもできてくるだろう。巡航ミサイル自体が、これが核兵器であるのか核兵器でないのかということになると、これもかなり議論があるという話もあるわけですね。そういうふうにいたしますと、大国間ではなるほど核抑止力が働くかもしれませんけれども、小国同士の組み合わせというものも私は出てくるんではないか。そのときには核を利用した脅威、あるいは核を利用した従属、屈服というような、自由な意思に基づかない脅迫によるところの関係というものはやっぱり小国同士で私は生まれてくるんじゃないか。その辺が、世界全体の核の問題として考えておかないと、日本アメリカの核のかさの下にいるからいいんだということではならないし、やはり世界的にいまソ連離れをしておるしアメリカ離れをしているという情勢の中で、私はそれだけの考え方では、どうも防衛局長の話は、軍事専門家としてはそうなのかもしれないと思いますけれども、どうも私どもは小国同士の問題ということになると納得できないんですが、その辺はどういうふうに理解したらいいんですか。
  235. 丸山昂

    政府委員(丸山昂君) 御存じのように、現状は米ソの核バランスというのが基礎になっておりまして、その用語としてデタントという言葉を使うか使わぬかは別にいたしまして、少なくとも米ソの間では全面核戦争というものは極力回避をしよう。また、全面核戦争につながるおそれのある通常戦争も回避をしよう。つまり米ソの直接の対決は何とかして回避しようという基本的な米ソ同士の間の関係についてはそういうことが言えるのではないかというふうに思います。これが米ソ間の直接の問題とまた直接関連を持っておる、たとえばヨーロッパのNATOとワルシャワの関係、こういったところにもやはりいま申し上げた、デタントという言葉が適当であるかどうかは別にいたしまして、そういう関係がやはり影響を及ぼしておるというふうに私ども考えておるわけでございます。しかしながら、そうだからといって、グローバルに見た場合に、国際紛争は全くなくなるのかということになると、いま申し上げた、米ソの直接対決につながらない形で行われる紛争というものは、これは頻繁に起こり得る可能性はあるというふうに考えられると思います。現に、そういう形でいろいろ地域的な紛争というものは潜居しておるわけでございますが、これは直接米ソの対決に発展するおそれのないものとして存在をしておるというふうに私どもは考えておるわけでございます。  そこで、将来の問題になるわけでございますが、先生のおっしゃる小型の、小型のと言ってはあれでございますが、小国で核兵器を保有する国が出てくる、それは米ソのような圧倒的に大きな核戦力というものを持たない国である、そういう国と、核を保有するか、あるいは核を保有しないか、他の小国との間の問題というのが、いまの米ソの核戦略とは別に、別の系統として問題が発生する可能性が出てくるんではないかと、こういう御質問ではないかと思うわけでございますが、この辺については、私ども現在はっきり予測をするということは困難だと思いますが、先ほど申し上げましたように、核の関係が多角的になると、できるだけ核保有国というのが、それだからこそこの条約の趣旨があると思うわけでございますが、これがふえるということはまことに好ましくないわけでございますが、これが多角化するということになることによって大変関係が複雑になりますが、同時に、米ソの二大核保有国の関係というものが、いまの複雑な絡みの中で当然いまの原理が支配していくということも一方には考え得るのではないかと、この点については、私、はっきり確信があるわけでございませんので、そういうところに全く影響がないと、ない場合が想定されないかというと、なかなかむずかしいと思いますが、まあ事の成り行き上、やはり米ソの基本的な関係というものがそういう新たな核保有国に対しても当然及んでいくのではなかろうかというふうに判断をいたしますので、小さい国における個別の紛争というものが、いまの核の使用という問題、あるいは核の威嚇という問題に絡んで発生するかと申しますと、まずその可能性は少ないんではないかというふうに考えるわけでございます。
  236. 竹田四郎

    ○竹田四郎君 大変長時間にわたる御説明をいただいてありがたいんですが、それはいまの米ソという二つの大国、こういうものを前提とすればなるほどおっしゃるとおりだと思うんです。しかし、現実にアメリカなりソ連なりが今後永劫に世界の二つの支配的な大国として存在するかどうかといえば、もうすでにドル問題でアメリカが世界の必ずしも大国を今後維持し得るということについての疑問というのはわいてきているわけですね。ソ連にしたって私は同じだと思います。ですから今後二十年、あるいはこの条約によればさらにそれを続けるということを考えてみますと、どうも米ソの二大国の核抑止力に依存した条約のような気が私はするわけですよ。それが崩れたときにはこの条約も一緒に崩れ去ってしまうんではないだろうか、こういう疑問というのは、あなたの御説明を聞いても十分理解がいかないし、あるいはあなたのお話ですと、何か小国も米ソ二大国の核系列の中に入ってしまうというふうな感じですが、私は必ずしも米ソの核技術だけがいろんなひもをつけて小国にのみ行くというふうには考えられないと思うんですよ。そうしますと、実際問題としては、核の保有国が多くなってくるというときに、やっぱり核戦争の危険性というものは私はかなり出てくるんじゃないか。だから、この条約に入ったからいいんだということだけには私はならぬではないかという感じがしますけれども、どうも私はそういう戦術論、戦略論についてはもうまるっきり素人でございますから、まあそれ以上は論じないわけでありますが、その辺は私は考えていただかなければ、違った形での核の競争というものが起きてくるんではないだろうかということを指摘しておきたいと思います。  問題を移しますが、昨年の六月からロンドンで七カ国の会議が開かれたようにザ・タイムスは報道しているわけでありますけれども、これは日本は参加しているんですか、どうなんですか。
  237. 大川美雄

    政府委員(大川美雄君) 報道されましたロンドンにおきます一連の話し合いには、どういう国が参加したかということは、実は参加した国々の申し合わせで国名は出さないことになっておりますけれども、日本がそれの一員であったということは私ども認めます。
  238. 竹田四郎

    ○竹田四郎君 これは条約への調印国あるいは加盟国以外の者が、日本は当時入っていたんですから、加盟国でないのが入っているわけですが、ほかにも加盟国でない国が入っておりましたか、どうですか。
  239. 大川美雄

    政府委員(大川美雄君) ほかにもそういう国は入っておりました。
  240. 竹田四郎

    ○竹田四郎君 そしてその協議内容はどういうことでございましたか。
  241. 大川美雄

    政府委員(大川美雄君) この一連の話し合いの目的と申しますか、主眼は、核物質あるいは平和利用関係の資材、施設を輸出いたします国々が、その輸出を通じまして、言いかえれば平和利用という名のもとに輸出が進みまして、それがいつの間にか核の拡散につながることにならないようにお互いの輸出政策と申しますか、を通知し合って、核の拡散につながらないような方向に持っていこう。したがって、もう少し具体的に申しますと、たとえば輸出いたしました物質あるいは施設、機材が平和利用以外の利用に供されないことを輸入国側から約束させるというようなことでありますとか、あるいは必ず国際原子力機関の査察を受けるような保障を取りつけることでありますとか、さらには近ごろ、よくテロリストによる国際テロ行為がございますけれども、核関係の物質の輸送中あるいはその貯蔵ないしは使用中にそれが盗難に遭ったりすることのないように、お互いに十分手を打つようなことを考えようではないかと、そういったような一連のきわめて技術的な問題について打ち合わせをしたわけでございます。  その結果、それぞれの国がいままで実施しており、または今後実施する輸出上の政策をお互いにほかの国々に通報し合うというような形で、この一連の話し合いが一応ことしの初めに一段落したような次第でございます。
  242. 竹田四郎

    ○竹田四郎君 なぜこんな会議を開かなくちゃならなくなったんですか。
  243. 大川美雄

    政府委員(大川美雄君) これは御承知のとおり、一九七三年のいわゆる石油危機で、従来以上に原子力による発電といったような問題が大きく注目を浴びるようになって、非核兵器国の間でも今後長期的に徐々に原子力の発電の方向に進んでいくという傾向が出てきたということが背景にあると言えるかと思いますけれども、それから核拡散防止条約というのは、申し上げるまでもなく核を持っている国がふえないように、現在の数にとどめておくようにということを趣旨としておりますけれども、これは核を拡散しないための一番重要な柱ではありますけれども、これは核防条約でもって核の拡散が完全に防ぎ切れるという性質のものではございませんでして、重要な手段ではありますけれども、今後いろいろな角度からさらに核拡散防止の体制を補完と申しますか、補強すると申しますか、するような国際的な努力が続けて行われなければならないという客観情勢にございますし、それがまた、昨年の五月にジュネーブで開かれました核防条約の再検討会議におきましても、最終宣言におきまして確認されたわけでございます。ですから、そういった一連の核拡散防止体制強化の話し合いの一つの例といたしまして、こういった輸出国間の話し合いが開かれた、こういうふうに御説明申し上げたいと思います。
  244. 竹田四郎

    ○竹田四郎君 タイムス紙が報ずるところによりますと、どうも最近は原子力発電を中心とする機器、機械、そうしたものの競争が非常に激しくなってきた。たとえば、インドの核爆発なども、言うならばアメリカやあるいはカナダからの脅威によって結局核爆発までいってしまった、こういうことが一つあるわけでありまして、せっかく核防会議で決めた規定が守れなくなってきた、これのひとつつくろいをやろうじゃないかということが一点だというふうに報じております。  それからもう一つは、そういう事態であるから核防条約に加盟していない国もこうしたことについては強制的に適用できるようにしていこうじゃないか、こういうふうにタイムス紙は報じているわけでありますが、こうして考えてみますと、核防条約の平和利用規定なり、縮小削減の問題だとか、あるいは保障規定だというようなものがもうすでにほころびているんじゃないだろうか、こういうふうにしか思えないわけですね。西ドイツとブラジルの間に平和利用協定ですか、これできたのはいつですか。
  245. 大川美雄

    政府委員(大川美雄君) 昨年の六月でございます。
  246. 竹田四郎

    ○竹田四郎君 そして、それは西ドイツはどういうふうな供与をするということになっているんですか。
  247. 大川美雄

    政府委員(大川美雄君) 昨年の六月に西独とブラジルとの間で締結されました原子力の平和利用に関する協定では、ドイツからブラジルに対しまして原子炉等の施設の輸出を含む原子力協力規定されております。これによりまして、ドイツは原子炉等をブラジルに輸出することになるわけでありますけれども、それが核兵器その他の核爆発装置の製造に使用されることにならないように、ドイツとしましてはブラジル側からその意味の明確な保障を取りつけておりますし、それからその関連で国際原子力機関の保障措置がドイツから輸出されましたものにつきまして適用されることになっておりますから、少なくともドイツからブラジルに対して原子炉が供給される場合にも直ちには核拡散につながらないというふうに了解いたしております。
  248. 竹田四郎

    ○竹田四郎君 ブラジルは核防条約に加盟しているのですか、していないのですか、あるいは調印しているのですか、調印していないのですか。
  249. 大川美雄

    政府委員(大川美雄君) ブラジルはこの条約には署名もしておりませんし、もちろん批准しておりません。
  250. 竹田四郎

    ○竹田四郎君 アメリカがエジプトあるいはイスラエル、こういうところに原発の機器を出すという話がありましたけれども、これはどうなりましたか。
  251. 大川美雄

    政府委員(大川美雄君) これは、一昨年にアメリカの大統領がエジプトとイスラエルを訪問いたしましたときにそういう原則的な話が出たようでございますが、その後、昨年でございますか、エジプトの大統領が今度はアメリカに参りまして、サダト大統領とフォード大統領との間で原則的な、話し合いの基本的な原則についてもう少し話を進めてまいったようでございますけれども、その後、具体的に原子力平和利用に関する協力協定締結されるところまではまだいっておらないように了解しております。イスラエルにつきましても、その後特に目立った進展はないように承知しております。
  252. 竹田四郎

    ○竹田四郎君 ブラジルとアメリカとの関係はどうなんですか、平和利用の形では。
  253. 大川美雄

    政府委員(大川美雄君) ブラジルとアメリカにつきましては、いま手元に資料持ってまいっておりませんので、調べまして改めて御説明申し上げたいと思います。
  254. 竹田四郎

    ○竹田四郎君 これはやっぱりタイムスの報道の一部でありますけれども、実は西ドイツからは八基ですか、アメリカからは最初二基だけで、その後の売り込みに実はアメリカは失敗をしたと、こういうことが言われているわけですね。そうすると、さっきの七カ国のロンドンにおける秘密会議というのと、この西独、ブラジルの関係というのは、インドの爆発とともに、やはりNPTの一つのほころび、防ぎ切れたかどうか知りませんけれど、そのほころびの対策というふうに見てもいいし、そういう意味では現実的にNPTの効果というものがすでに失われつつあると、こういうふうにしか見れないわけなんですが。  それから、最近の新聞報道によりますと、アメリカのGEですか、これが南アフリカ共和国に原子力発電炉を二基、それから濃縮ウラン、こういうものの輸出許可をアメリカの原子力規制委員会に申請しているという報道があるわけでありますが、まあこれは政府が確認したかどうか、それは  一応どちらでもいいわけでありますけれども、しかし、この南アフリカ共和国自体が、これはかなり何というか、黒人をいじめるといいますか、アパルトヘイトなんかの政策をとっているということはこれは有名であるわけでありまして、そうして南アフリカ共和国が、自分の方は核武装をするんだと、こういうことを言っているわけですね。これは明らかにブラックアフリカ諸国に対する私は脅威の発言であるしその裏づけである、こういうことであるわけなんですが、そういう点で、どうもアメリカにいたしましても西ドイツにしても、核防条約に入ってないところにいろいろ供与をしている。しかも、それらの国々がいずれもうちの方は核武装をするんだぞと宣言をしているようなところにこういうようなものを出していく、こういう感じがしてならないわけなんですね、どうなんですか、そういう点は。日本あたりは、そういう点ではアメリカあたりに、西ドイツにもそうですが、そういう意味ではもっと文句を言うべきじゃないですか。結局平和利用を名前だけとって実際は核の脅威を自分の近くの国々に与えていく、そういうことになっていくんじゃないですか。プルトニウムさえできれば、あと核爆発にやっていくということは、恐らく技術的にそうむずかしいことではないというふうに一般に言われているわけですね。その辺こそ日本あたりが強くアメリカに要求すべきじゃないですか。まだこれは許可出していませんから、いまのところはまだ言えないでしょうけれども、しかし、そういうものをアメリカの企業が出してくるということ自体に私は問題があろうと思うんです。
  255. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) いま竹田委員のおっしゃっていらっしゃる問題は、実はかなり確かに深刻な問題になっておると思うんでございます。概して申しますと、アメリカの保障措置協定なり、保障のとり方がきつい方でございましょうと思います。このごろはカナダもきつくなってまいりました。カナダとインドの関係というのは、たしかこれは核防条約前に起こったことでございまして、したがって、そういう意味では条約違反ではなかったのですが、ああいうことが発見されましたもので、カナダが一遍供給停止をしまして、やり直すというようなことをしているわけで、そこでまさに、さっきからおっしゃっていることがこの問題の中核なんでございまして、西ドイツなら西ドイツが、これはやはり一種の売り込み競争という面を持っておりますものですから、遠い将来のことまで、企業がそこまで考えるというようなことにつきましては、政府のコントロールがどれだけ強いかということになりますので、西ドイツが、どっちみち西ドイツが売っちまうだろうとか、あるいは他のよその国が売るだろうとかいうことになりますと、みんなが甘くなってしまうということで、それでああやってロンドンでその辺のことをお互いに注意をしようではないかと言い合っておるわけでございます。さっきからお話のありましたアメリカとイスラエル、アメリカとエジプトの問題も、やはりアメリカがかなりきつい規制の要求をしているということが一つあるようでございます。やはりこれは歩調を合わせてきつくきつく輸出側が自制をしてまいりませんと、結局競争で事はどこからほころびてしまうという危険をはらんでいる問題でございますので、それで関係国が非公式にああいういろいろ協議をしたり話をしたりしておるわけでございます。
  256. 竹田四郎

    ○竹田四郎君 原子力産業の性格は、ほかの物をつくるのに非常に融通性がないと言いますか、恐らくそういう企業であろうと思うんですよ。だから、アメリカの原子力産業自体も恐らく赤字を抱えているというような事態だろうと思うんです。日本でも、何か最近、ソ連から原子力のプラントをというようなうわさがあるわけですが、これはあるんですかないんですか。
  257. 鈴木健

    説明員(鈴木健君) お答え申し上げます。  ただいまお話のございました、ソ連で原子力発電プラントにつきまして日本に引き合いが来ておるというような話を新聞報道等で聞いております。
  258. 竹田四郎

    ○竹田四郎君 それに対しては、政府としてはどういう態度ですか。
  259. 鈴木健

    説明員(鈴木健君) 現在、まだ正式な連絡は受けていないわけでございますが、また、商談自体も流動的な状態にあるというふうに聞いておりますので正式な態度はとっておりませんが、正式な申請があった時点で慎重に検討したいと考えております。
  260. 竹田四郎

    ○竹田四郎君 日本の原子力産業の企業としての状況はどうですか。
  261. 鈴木健

    説明員(鈴木健君) 原子力機器産業につきましては、昭和三十年代の初めごろに五グループが結成されまして、それ以来、原子力機器の開発、技術の向上等に努めてまいってきておりますが、御承知のように、わが国におきましてはまだ需要が十分にございませんので、かなりの赤字を抱えた状態で、鋭意研究開発、あるいは機器の供給等の努力をいたしておるような状況でございます。
  262. 竹田四郎

    ○竹田四郎君 そうした原子力機器産業等は、恐らく政府に対して相当な助成をも要求をしているようでありますし、長期計画をつくれという要請もあるようですけれども、なぜ日本の原子力産業というものは、そういう五グループだか三グループだか、大変分かれてしまって、しかも仕事がない、こういうふうになっているのか、私は非常に疑問なんです。しかも、日本の原子力技術からいけば、恐らく核燃料などは日本自体でまだ当分つくれないわけでしょう。これはアメリカですか、へ持っていってつくってもらっているわけでしょう。再処理についても、いま何か再処理工場を政府から大変たくさん金をもらってやっているようでありますけれども、これだっていま日本でどうにもならない。ドラムかんに積んで、どこにしまってあるのか知りませんけれども、しまってあるという状態でしょう。そういう状態の中で、私は、日本の原子力産業というものは、あっちからこっちから引き合いがあれば喜んでこれをつくるというようなことに恐らくなるだろうと思う。そうなれば、やはり核の水平的な拡散というものは、恐らくどんどん行って、あっちこっちで注文をとる。三菱がとる、住友がとる、日立がとる、こういうことに私はならざるを得ないと思う。そこにおいては、先ほどロンドンの会議で示されているように、余りやかましいことを言えば仕事がとれない、こういう形になってくるだろうと私は思うんですが、そういう意味では、どうも、宮澤さんは大変声を大にしてりっぱなことをおっしゃっているんだけれども、下の企業はいつでも売り込もう売り込もう、こういうふうな態勢に私はいまの日本の原子力産業はあると思うのですね。これでは核防条約に入って大きな発言をしようといったって発言できないのじゃないか。もう少し政府自体が原子力産業というものを考えなければいけないと思うのですけれども、いまの通産省の態度というのは、とにかく二十カ年計画をつくって、ひとつ原料も大々的に世界で八カ所確保しよう、原子力発電もうんと大きくしよう、こういうことだと思うんです。しかも、それが少しも日本自体の自主開発によってないわけですよ。全部外国に御厄介になっている。こういうことで本当に日本の原子力の平和利用が世界に脅威を与えないでできるか、私はできないと思うんです。国内の原子力発電所だって毎年のように事故があるでしょう。事故の件数からいけば、私の見た統計によれば年々ふえているわけです。そういう中で何で二十カ年計画などをいまごろつくってやっていくのかということになると、私は本当に原子力基本法を何でわれわれがつくったのか、こうした矛盾をものすごく感ずるわけですよ。そうして原子力研究所でこれも秘密だ、あれも秘密だということでしょう。査察だって、もう田さんがこの間おっしゃったように、もっと大っぴらに査察したらどうだろうといったら、大臣が、いやいろいろ企業秘密もあるしということで、またこれも公開していかない。そうすると、自主、民主、公開という原子力法の三原則との関連というのは一体どうなっているんですか。もうさっぱり原子力基本法の精神というのは投げ捨ててしまっている、こう思うんですが、どうですか、これは通産省えらい方いませんか。
  263. 半澤治雄

    政府委員(半澤治雄君) お答えいたします。  ただいま先生御指摘のように、原子力基本法による原則は無視されておるんではないかという御指摘でございますけれども、私どもはこれから申し上げますような理由で、原子力基本法のいわゆる三原則に忠実に原子力行政を進めてまいっておるつもりでございます。
  264. 竹田四郎

    ○竹田四郎君 忠実じゃないじゃないですか、少しも。
  265. 半澤治雄

    政府委員(半澤治雄君) まず第一に、日本の原子力利用は平和目的に限るということが基本法に明示されておりまして、これは日本で行われております原子力開発利用のあらゆる局面において平和利用に限定していることを、関連法によりまして私どもは十分に厳重にチェックしておるわけでございます。  それから、自主、民主という言葉がございますが、確かに自主的な技術開発の面で必ずしも十分でない点は御指摘のとおりです。導入された技術に依存するところが非常に多うございますけれども、しかしながら、わが国におきましてもナショナルプロジェクトとしまして、濃縮ウランの設備、あるいはこれからの原子炉といわれております転換炉、あるいは増殖炉、さらに将来のこれは夢のエネルギーといわれておりますが、核融合といった面につきまして、かなり思い切った力を注いで自主開発に努めておるわけでございます。なお、軽水炉につきましても、日本型軽水炉をつくり上げるべく改良標準型という面で相当力を尽くしてございます。  それから、民主と申しますのは、御案内のように、原子力委員会でわれわれとしては民主的に運営しているというふうに考えておるわけでございます。  御指摘のように、公開の問題もございますけれども、その成果を公開するということで、私どもは国内で行われました研究開発の成果につきましては、これは公開しているつもりでございます。よくいわれますが、導入されました原子炉につきまして、安全審査等の場合に、企業機密に名をかりて公開しないではないかという御指摘が非常にございます。しかしながら、先端技術でございますから、公開というのはいかなる場合いかなる内容についてもすべて公開をしなければならないというふうには解しておりませんで、公開の主たるねらいが、一つは平和利用を確保すること。もう一つは、わが国原子力開発の健全なる発達に資すること、これが公開の主たるねらいでございますので、公開することによって研究開発利用が非常に阻害される場合、あるいはやはりこれが企業機密ということでよく御指摘を受けるわけでございますけれども、憲法上の財産権の保護に値するような場合、これはやはりそこまで公開しなければならないということではないのではないかというふうに考えております。  以上申し上げましたような観点から、私どもは基本法三原則に忠実に従って進めているというふうに考えているわけでございます。
  266. 竹田四郎

    ○竹田四郎君 あなたはそう言うけれども、実際はあれでしょう、これあなたここで言わないと思うけれども、たとえば東海の原子力研究所で、実際事故を内部で告発をした者というのはいままで優遇されていないでしょう、全部処罰を受けて配転されたり何かされている、こういう報告が出ておりますよ、組合の方から。そういう意味では、まさに私は公開していないので、なるべく隠す、事故を隠す、こういうことなんですが、それならば、いま日本の原子力発電所の稼働率はどのくらいになっていますか。
  267. 井上力

    政府委員(井上力君) 原子力発電所の稼働率でございますが、昭和四十八年度六七・三%、四十九年度五五・七%、五十年度四八・四%というふうになっております。一昨年及び昨年につきましては、一部の原子力発電所がトラブルのためにとまる、あるいは臨時点検のために停止してとまるということで、かなり稼働率が計画より下がっております。これは安全優先という立場に立ちまして、ささいな故障でも慎重を期して炉を停止いたしまして、所要の点検や改善を図るというのが実情でございまして、結果として稼働率がかなり低くなっております。しかしながら、昨年末までにこれらの故障、トラブルに対する措置がほぼ終了いたしまして、今年一月以降の稼働率はかなり向上しております。昨年の四月から十二月までの稼働率は、時間稼働率で三七%、これは何時間動いたかという率でございますが、それから設備に対します利用率は約三二%でございますが、ことしの一月から三月までにかけましてはかなり向上いたしまして、時間稼働率で約六九%、設備利用率で約五五%、それから四月におきましては時間稼働率が七一%、設備利用率が六一・六%というふうにかなり向上しております。今後こういうような経験を踏まえまして、機器の改良あるいは標準化というようなことを通じて、信頼性の一層の向上を図るということで、稼働率の確保、向上を図る方針でございます。
  268. 竹田四郎

    ○竹田四郎君 もともと原子力発電やるときの稼働率というのは八〇%で計算しているでしょう。それをいまの話でいくと四〇%だ六〇%だ、下手すると三〇%台だ、これは原子力発電所自体に、あなたはささいなことでも安全を考えて機械をとめると言うのだけれども、全然故障がなければとめる必要はないわけですよ。そうすると、その稼働率だけから見ていっても、原子力発電所には結構いろいろ事故がある。まあアメリカのアイダホのような事故はなかったでしょうけれども、いずれにしてもパイプのひび割れなんていう問題はこれは常に新聞に書かれてますね。だから原子力発電所自体が、まだまだ日本の原子力発電所は安全でございます、原子力発電は安うございますというには現実問題はほど遠いです。そのように言わざるを得ないわけです。それに日本にはウランの原料はない。今度の二十カ年計画では、世界に八カ所ウラン鉱山を自主開発するという案をいま検討中ですね。  そういうことで最近アメリカの民主党の大統領候補カーター氏が演説で言っているわけですが、私は、この人が大統領になったならば、やっぱり原子力、核の問題では、このとおりやってくれるならかなりの成果を上げる、こういうふうに思っているわけですが、このカーター氏の原子力問題での基本方針というのは、原子力への依存は需要を満たす最低限にとどめよ、それ以上のものをやったらいけない、そして日本では原子力、原子力というふうに大騒ぎをしているわけですが、エネルギー源は石油から石炭と太陽熱に移行させるべきである、このように言っているわけです。国際的に核兵器拡散を抑える、そのための一つの提案として核燃料の濃縮、再処理施設の売買についてはモラトリアムをしろ、こういう提案を最近しているわけですよ。私は、これは聞くべき一つの提案だというふうに思うわけですし、また、日本の原子力平和利用の問題が、原子力は安い安い、これ以外には次のエネルギーはないなどというような通産省の方針、そうした方針に基づいて、この核燃料サイクル通産省二十カ年行動計画などを私は一生懸命つくっておられるのじゃないか。これはできたのですか。この点は後で答えてください。まあ恐らく最後の段階には行っていっていないだろうと思いますが、一生懸命金かけてつくっているし、膨大な金をこれにぶち込んでいるし。  それで、カーター氏の発言、これについて宮澤大臣、どう考えられているのですか。あるいはカーター氏が今後アメリカの大統領になるかもしれません、これは大統領候補であるわけですからね。そうすると、かなり日本の原子力産業というようなものも私は大変影響を受けるし、その辺の問題も十分検討していかなければいけない、日本の原子力産業そのものをやはり単なる民間の金もうけだけに任しておく、こういうことになれば、結局は核防条約は入っていても、水平的な核拡散を西ドイツやあるいはアメリカがやっているように非加盟国へどんどんやっていく、こういうことになったら、何で一体核防条約に入ったのか、まさに国民は迷うだけだ、こういうことになると思うのですが、私の質問時間も大体来たようでございますから、ひとつ最終的にお答えをいただきたいと思います。  その前に、通産省の方に、二十カ年行動計画というのはどんなふうになっているのか、ひとつ話してもらいたい。
  269. 井上力

    政府委員(井上力君) 御指摘の二十カ年行動計画と申しますのは、原子力の開発、これはエネルギーの開発すべてそうでございますが、非常にいろいろな施設をつくります場合、あるいは研究開発をやります場合に時間がかかるわけでございまして、われわれが現在原子力開発、特に核燃料サイクルの確立という問題についてどういう政策をとるべきかという検討のまず第一段階といたしまして、今後二十カ年間の核燃料に関しますいろいろな量の需要を想定いたしまして、それについてどういう対策が必要であろうかということを検討いたしておるわけでございます。御指摘の点は、まだ中間的な作業のまとめでございまして、今後、この検討に基づきましてどういう政策が必要であろうかという検討を鋭意行うということになっております。
  270. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) 先ほどのカーター氏のことでございますけれども、言ってみますと、アメリカの場合には御承知のように石炭はほとんど無限に持っておりますし、天然ガスもございますし、さらに石油そのものにいたしましても、今後アラスカの開発等々を考えますと、いざとなれば自分でやっていける力をいろんな意味で持っておるわけでございます。でございますから、片方で原子力発電所について、まあ危険の問題もありますし環境の問題もあって、どちらかといえば、これはやはりほかの方法でやれればその方がいいという雰囲気がございますから、かたがた、そう言っては幾らか失礼ですけれども、選挙のときには多少物を極端に言うという習慣はやはりどこにもございましょうと思いますので、しかし、いざとなればアメリカはなしでもやっていけるというだけのものを持っております。フランスなどは全然その逆をいっておりますわけで、今後の発電は全部原子力にするというふうにジスカールデスタン大統領は決めて、そういうふうに向かっていくという国もございます。わが国の場合に、エネルギー調査会等がいろいろ検討されて、さしずめ四千九百万キロワットまで、昭和六十年の目標を立てたわけでございますが、事実問題として、日本の場合にはほかに何に頼れるかということにどうしてもならざるを得ない。ですから、ほかにいろいろ選択の道が、それは将来核融合でありますとか、あるいは太陽熱でありますとかいうことがはっきりめどがつきましたら、またそれは二十一世紀のところの課題になるでありましょうけれども、そこまでの間のどうしてもエネルギーの供給が及ばないということが、やはりいわば半ば至上命題としてあるんではないんだろうか。そうすれば、その安全性をどれだけ確保していくかということにわれわれは最大限の努力をするということに考えておるというふうに私は理解をしておるのでございますけれども、これは本来ならば通産大臣か科学技術庁長官がお答えになるべきところでございますけれども、政府としてはそういう意味で、四千九百万キロワットというものを目標にして進んでおるということでございます。
  271. 竹田四郎

    ○竹田四郎君 最後に一言。  もう御答弁は要りませんけれども、しかし、核防条約にわれわれが加盟するというときに、日本の体制を見ているときわめてルーズきわまりない。非常に近い国だと日本が言われておるのですけれども、言葉の上ではなるほど結構ですが、一つめくって燃料の問題あるいは原子力機器の問題、こういうものを見てみますと、やはり結局核拡散協力するんじゃないだろうか、こういう心配すら現状はあるわけですから、この辺は、入った以上もっと厳しくやってもらわなくちゃいかんし、原子力基本法に基づく態度というものも貫いてもらわねば私は困ると思うのです。原子力発電をふやしさえすればいいんだというような形で進めていくということになりますと、私はただ核兵器の問題だけでなくて核の公害、こういうものもやっぱり日本の中に分散していく可能性があると思いますから、十分それは気をつけてやってもらわなければ困るということを強く要望して終わります。
  272. 源田実

    源田実君 いままで何度もこれについては予算委員会その他でも、いろいろ党内でも論議したわけです。しかし、どうしても政府の考えがわからないのであります。ずいぶん説明も受けましたがどうしてもすっきりしない。それで私の頭が悪くてすっきりしないなら日本のために幸いです。しかしながら、この条約を何とかしてとにもかくにも通さなきゃならぬ。すっきりしないけれども、若干はやましいところはあるけれども、まあとにかくいま通さなきゃならぬと。そのためには、自分では若干得心がいかないと思っても、こういうぐあいにのらりくらりとやってこられた、こういうような感じがするんですよ。ことに、外務省もそうだけれども、防衛庁がこれを推進するというのが、どう考えても私にはわからぬところがある。したがいまして、これいまからどんどん入りますが、しかし、お聞きしたいことは、政府としちゃ残らず、総理はすっきりしておるかどうか、これわからぬですが、ところがみなその総理の言われるように全閣僚がずっとついていっておる。全部が一致してこの条約にそのまま乗っていくのがすっきりするのかどうか、そういうぐあいに本当に考えておられるかどうか、さしあたりそれをお伺いしておきたいと思うんです。どうでしょう、外務大臣防衛庁長官、お二人に。
  273. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) この点は、今朝秦野委員に申し上げましたときに源田委員も御在席だったと思いますが、確かに私どもこの条約に加盟することによる潜在的なマイナス面、それからこれから生じますプラス面、かなり詰めて考えたつもりでございます。まあこの点は、また源田委員のいろいろ御議論を誘発する点かもわかりませんが、政府としては、いわゆる核に関する原則というものを持っておりますし、それについて言えば、これは国民的なかなり広いコンセンサスに立っておるものだというふうに考えますので、それを前提に考えますと、この条約に加盟することによってわれわれが失うところは潜在的にも顕在的にもまずない。全くないと申せば言い過ぎかもしれませんが、まずまずこれから生ずるわが国の国益の方がはるかに大きいというふうに私は考えておるわけです。恐らく今後二十年近い間わが国を国際的にコミットするということ、これは二十年という年月は、過去を振り返りましてもまことに想像のしにくい長い年月でございますから、それがちゃんと見通せるかということについては、これは見通せますと申し上げればまことに尊大なことになると言わざるを得ませんが、いまいろいろ考え得る限りにおいて、私はやはりこれに加盟することの国益の方がはるかに大きいという、そういうまあいわば自分の確信を持っておるわけでございます。
  274. 坂田道太

    国務大臣(坂田道太君) 私といたしましては、日本の防衛につきまして、この核防条約を批准するということでございますが、影響が全然ないかと言えばこれまたそうではないと思います。しかしながら、大きな困った事態にはならないというふうに私どもは考えておるわけであります。
  275. 源田実

    源田実君 われわれ部分核停条約のときなんかはほとんどみな疑問点はなかった、もっとあれを積極的に進めたがよかろうと、重要なことでこれは納得しておったわけです。しかしながら、今度の問題はどうもそういかない。したがって、いま政府側の御答弁を聞いてみますと、政府側も満点ではないと、こう比較、こうやって、てんびんにかけてみると、ちょっと利益の方が、ちょっとかどうかしらぬけれども、多いように思うから、まあそうやるというわけですね。そこで次に、まあ本当は、この条約は逐条審議がこの委員会で必要だろうと思うのですよ。これほど大きな問題を参議院に来て数日で片をつけるということ自体に問題がある。あるいは下手すると日本を永久に縛るかもしれない。これはまあ委員長にひとつお願いをしておきたい。とにかくまああと会期幾らしかないが、それまでにやっちまおうなんていうのはあんまり重大な問題、もう近年にない、長い間にない重大な条約、この点はひとつ委員会としても、私はこの正式のメンバーじゃありません、きょう差しかえで来ておるのだけれども、ひとつ考えていただきたい。それで、まず逐条審議が必要なんですが逐条審議なんかやっておるひまないですからね。条約の中の若干疑問な点だけ、いままで聞いたが、もう一遍確認しておきたいのです。  この第一条、条約の第一条、これについては、皆さんのところへ届いておると思うのですよ。生き残るための研究会から来たこの一条の解釈は。これはいつか私も質問したことがありますけれども、この一条の終わりにある「又は核兵器その他の核爆発装置の管理の取得につきいかなる非核兵器国に対しても何ら援助、奨励又は勧誘を行わないことを約束する。」といえば、非核兵器国に対してやらない。核兵器国にはやってよろしい、こういうことになるのですね。これは前、外務省もそういうぐあいに言われた。そうすると、アメリカから中華人民共和国にノーハウを知らしてよろしい。ソビエトから、あるいはインドをどういうぐあいに解釈するかわかりませんが、インドにやってよろしい。あるいはイギリスやフランスがそういう国にどんどん、こういうぐあいにやればりっぱな核兵器ができますよと言うことをこれは許しておるんです。これはやっぱりあの当時と考え方違いませんか。
  276. 伊達宗起

    政府委員(伊達宗起君) お答えいたします。  第一条は、核兵器国の義務を規定しているものでございますが、ただいま先生がお読み上げになりました「いかなる非核兵器国に対しても」ということの定義と申しますか、意味につきましては、先生がおっしゃったとおりでございまして、この「核兵器国」につきましては第九条の三項に定義がございます。これは、「この条約の適用上、「核兵器国」とは、千九百六十七年一月一日前に核兵器その他の核爆発装置を製造しかつ爆発させた国をいう。」ということでございまして、この定義に当てはまる国といたしまして現在この条約に加盟していない国、それはフランスと中国があるわけでございます。インドにつきましてはこの定義に、インドの核爆発は七四年五月でございますので、ここに言う核兵器国ではなく、むしろ非核兵器国と、この条約上の非核兵器国という部類に属するものでございます。
  277. 源田実

    源田実君 そうすると、これは御答弁要りませんが、こういうぐあいに解釈できるでしょう。核兵器というりっぱなものをいろいろ——りっぱかどうか、これは人を殺したからりっぱじゃないですね、実際はね。しかしながら、まあとにかく強力なる武器を持って、要するに金持ちである。金持ちにはどんどん金もうけの知恵を教えてやってよろしい。貧乏人には一切知らしちゃいけないぞ、こういう性質のものなんですね。第一条にそういうことを書いてある。そうでしょう。  それから次には、やっぱりこの一条ですが、核兵器国は管理権を譲渡しない限りいかなる国、いかなる地方に核兵器拡散させてもよろしいという解釈が出るんですが、それはどうでしょうか。
  278. 伊達宗起

    政府委員(伊達宗起君) この第一条で核兵器国が義務として負っておりますのは管理の権利を移譲しないということでございますので、いわゆるつくる、持つということについてそういうことをさせないということを言っているわけでございまして、持ち込ませずということに関します、核管理を移譲することなく核兵器国が自己の欲するところと申しますか、相手のあることでございますから自己の欲するところというわけではございませんけれども、例を申しますれば、ヨーロッパのあるところにたとえばアメリカ核兵器を持ち込むということについては、それ自体禁止しているものではございません。この条約目的は、もともとは管理権を移譲しない、作らせず持たせないということを目的としているものでございます。
  279. 源田実

    源田実君 そうするとこういうことが考えられるでしょう。ちょっとたちが悪い考え方かもしれないけれども、もしこの条約に違反しないでそうして核兵器を持った強力な国があと幾つもできる。どういうことをやるか。これは実際やるかどうか知りませんよ。しかしできる。連邦をつくるんです。たとえばフランスとイタリーが連邦をつくる、実際は別々だが名前だけ連邦にする。フランス・イタリー国ということにして。そうするとこの場合は、イタリーはイタリーで自分で核兵器をつくる、フランスはフランスでつくる、しかしながら、実は一つの国なんだよと、法律的に。そういう方式で連邦的なものをつくっていったら、ずうっと核兵器国は広がっていくということにならないですか、この条約の裏をいけば。ソビエトが今度は外蒙、あれを自分が選んで核兵器国にしようとしたならば、援助はする、そしてあれを連邦にしてしまう、一緒にして、自分の領土に入れて。実際は別である。しかし、それはそれでソビエトの一部なんだから核兵器は持って製造もできる、実際は別の国である、こういうことも可能なんじゃないでしょうか。これはどうでしょうか。そうするとどんどんふえていくんですよ、これは。
  280. 中島敏次郎

    政府委員中島敏次郎君) 大変特異なケースと申しますか、先生もおっしゃっておられるように実際上はなかなかないだろうと、しかし理論的にはどうだと、こういうお話だと承りますが、いまの場合に一つ核保有国が他の国をいわば合邦して、または連邦的な形態で一つの国家単位になるということでございますから、その限りで物理的にはもともとの核保有国がもう少しふくれ上がるということでございまして、みずからが、核保有国たる国が要するに大きくなるという意味ではまさにそのようなこと自身は可能であるはずでございます。ただ、それは、そうなることがこの条約との関係でどうこうという問題ではないんだろうと、もともとこの条約があろうとなかろうと、あるAたる国があって、それが核保有国であって、それがBの国と連邦を結べば、そこにAB連邦という核保有国がそのままでき上がるということでございまして、それをこの条約でどうこうするという問題とはちょっと別じゃないかという感じがいたします。
  281. 源田実

    源田実君 まあこの問題はそれ以上申し上げません。しかしながら、この第一条には欠陥がある。核兵器はもうあちらこちらへ持ち込んではいけないということになっておれば、これはそれ以上拡散しないだろう。しかしながら、持ち込みはよろしい、国をふやさないというんだからね、そこに私はちょっと穴があると思います。  それから、この条約の中で、次は、第三条の第一の終わりの「すべての平和的な原子力活動に係るすべての原料物質及び特殊核分裂性物質につき、適用される。」。だから、これは将来石油でもう船が動かなくなっていくから、商船も原子力で動かなきゃいけない。それから、海上自衛隊の自衛艦あるいは潜水艦なんかも、まあ潜水艦やなんかどっちにしてもそうしないとぐあいが悪いです。あれは石炭をたくわけにいかないですよ、潜水艦というのはね。石炭もない、石油もない、だからあとやるのは何にもないから、原子力やらない場合には、日本の商船と自衛艦なんかは帆船、帆前船で行かなければいかぬことにまあなると思う。そうもいかないから原子力になると思うんですが、その場合にこれは、「すべての平和的な原子力活動に係る」から、商船は査察を受ける、自衛艦の方ははっきり最後に物質がどういうぐあいになったということは査察を受けるだろうが、現場で査察を受ける必要はない、こういうことになるんでしょう。そう理解していいですか。
  282. 伊達宗起

    政府委員(伊達宗起君) 先生がいまお挙げになりお読み上げになりました、非核兵器国の領域内もしくはその管轄のもとでまたは場所のいかんを問わずその管理のもとで行われるすべての平和的な原子力活動に係ります原料物質ないしは特殊核分裂性物質について保障措置が適用されなければならないということになっておりまして、この場合、「平和的な原子力活動」と申しますのは、ただいま商船と軍艦の場合を先生は挙げて御説明になりましたが、商船の場合に適用されるわけでございまして、軍艦には適用はされないというふうに考えております。
  283. 源田実

    源田実君 次には、条約の脱退条項ですね、ここをちょっとお聞きしたいんですが、私にはよくわからないんですよ、ここは。脱退できる。「通知する。」ものとする。「その通知には、自国の至高の利益を危うくしていると認める異常な事態についても記載しなければならない。」——それを記載して許可を受けるのか受けないのか。記載さえすればいいのか。異常な事態でないけれども先を考えて、もういまのうちに脱退しておかないと間に合わないぞと、この間予算委員会で言ったように、間に合わないですよ。だから先にやっておかねばいかぬというときには、これじゃ脱退できるのかできないのか。異常な事態ではないけれども異常の事態になりそうだからいまのうちに脱退しておくということはできるのかできないのか、そこはどうでしょう。許可を受けなきゃならぬのかどうか。
  284. 伊達宗起

    政府委員(伊達宗起君) 異常な事態になりそうであるから脱退しなければならなくなっているような状況と申しますのは、もうすでにこの条約上では異常な状態であるというふうに考えられるわけでございます。
  285. 源田実

    源田実君 それではここに条約の、まだあるんだけれども、これはちょっともっと重要な問題がありますから——許可という問題は起こらないわけですか。
  286. 伊達宗起

    政府委員(伊達宗起君) 御質問の点につきまして一つ漏らしたことがございますので——許可をもらわなければいけないのかということでございますが、第十条の一項には通告さえすれば済むわけでございまして、許可云々の問題は生じないわけでございます。
  287. 源田実

    源田実君 それではいよいよ一番本論というところへ入りたいと思うわけです。というのは、私が一番心配しておるのは日本の安全保障なんです。これはこの間も予算委員会で言いましたように、この条約のどこを捜しても、非核兵器国、日本だけじゃない、非核兵器国の安全保障を確実に守ってくれる何ものもない。日本では安保条約があるからといっても、これは条約にはないですね。条約にはなくても、そういうふうに解釈すれば、しようとして政府はしておられるのですが、そこで問題はどういうことかというと、米ソの核戦略というものが一体どうなっておるのか、これをどういうぐあいにお考えになるか。  まず、具体的にアメリカは核戦争というものにどういう考え方を持っておるのか。たとえば全面核戦争が起きれば人類の破滅、文明の破滅になるんだから、抑止力によって全面核戦争を防ぐ、そうしてこれがまず成功するであろうし、人もそれと同じように考えておる。アメリカが対象にしておるのはソビエトですね、ソビエトもそれと同じように考えておる。どちらもそう考えておるから、全面核戦争は起きないんだと、こういうような判断をアメリカの中の主流派というかな、がそういう考え方を持っておると思うんです。それに日本の政府は全面的に賛成か、部分的に賛成か、そこら辺のところを一つお聞きしたいです。
  288. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) おそらくアメリカの主流が考えておると私が思いますことは、ソ連はいわゆる平和的な意図を持っておるから核兵器は使うまいと考えておるのではなくて、そうではなくして、もし完全なファースト・ストライク・ケーパビリティーをソ連が持って、それでアメリカを沈黙させることができるならば、いわゆるセカンド・ストライクを受けないという状態になるならば、ソ連はファースト・ストライクを打つかもしれないという想定にアメリカの主流は立っておると思います。したがって、アメリカとしては、そのような状態にアメリカを置くことはソ連の核攻撃を受けるゆえんでありますから、絶対にセカンド・ストライク・ケーパビリティーをアメリカ側は保持しておくと、そういう基本の考え方に立っておる。その恐怖のゆえにソ連はファースト・ストライクを打たないであろう、そういうふうにマクナマラ以来考えておると私は思っております。
  289. 源田実

    源田実君 全面核戦争に対して、これをやれば人類の破滅につながると、こういうぐあいにアメリカは考えておるように思います、私は。日本の政府はどうですか。全面核戦争が起きたならば、いかなる手段を構じてももう人類の破滅を免れることはできない。これは一般的な考え方だと思うんです。この点はどうでしょう。
  290. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) 一般に米ソの間の核戦争が起こりましたときに、おのおのの死者は一億人程度とお互いに想定しておるのではないかと思います。その場合に、それが世界の、そのこと自身がすぐに世界人類の死滅、全滅につながるかどうかということは、いろいろ気象的な、あるいは遺伝的なことを考えますと申し上げられませんが、少なくとも米ソで一億人ずつの死者が出た場合には、世界の正常な運営というものはきわめて困難になると考えるべきではないかと思います。
  291. 源田実

    源田実君 その前提が、日本がいま、たとえば私がこの前からたびたび言うように、核戦争がいまのようなことで大体抑止力で起きないだろうということを前提として、いわゆる非核三原則の中の三番目の核持ち込みを許さないというのは、核戦争が起こらないということを前提とすればあれも可能になるだろうと思うのです。しかし、もしこういう場合にどうでしょう、これについて外務省と防衛庁両方の判断をお聞きしたい。  ソビエトで持っておる核兵器は、実はヘビーICBM、五メガトン以上ぐらい、これが大体六百十三ランチャーあるんですね。アメリカは五十四なんですよ。ことにSS9から今度はSS18に至っては、十八ないし二十五メガトンというものすごい弾頭を持っておる。こういう大きな弾頭を持つのは、抑止力の考え方ではないと思うのです。抑止力ならば、一メガトン一発でこれを晴天の日、五十キロ、五万メートルで落とすと、東京の真ん中に落とせば全東京が一発でまいる、灰じんに帰するのです。もし十メガトンですね、十メガトンというとタイタンあたりが十メガトンまでいくかどうか、そういうところですが、これを五十キロで落とせばどういうことになるかというと、関東平野全部が一発でまいるのです。そうすると、抑止力としては東京ぐらいのところを世界最大の市を一発でやるぐらいものが上等、抑止力になる。抑止力には何かというと、国民とか人命を対象にしてこれをホステージにする。一番抑止力になると思うのですよ。それをソビエトの方はそういう能率のいいものでなくて、こんな大きなものをなぜ持たなければならないのか、それはどういうぐあいにお考えですか。
  292. 丸山昂

    政府委員(丸山昂君) 大変むずかしい御質問でございますが、結局もともとソ連は、ミサイルの開発におきましては推進力が液体燃料ではございますけれども、大きな推進力を開発できたということでございまして、御案内のように、人工衛星を打ち上げましたものも大きなスローウェートをあげております。そこでこういうミサイルを使ってICBMを開発しておりますので、かなり大きなスローウエートをSS9あるいはSS9を開発、インプルーブいたしましたSS19、こういうものの一般の系列は非常に大きなものを持っておるわけでございます。  一方、アメリカのタイタンはかなり大きなものでございますが、これに比べるとやはり小規模である。ましてや、ミニットマンになりますと相当小規模になっておりますが、ただ、アメリカが十分これに対抗し得ると言われておりますのは、精度が非常によろしいということで、つまりソ連のICBMの場合には、現在の段階では個々の弾頭の威力は相当大きいけれども、それによって精度の不確かさをある程度補うということによって拮抗しておるというふうに私どもは判断しておるわけでございます。要するに、大きなものを運べる能力を持っているということがもともとあったということ、それから精度においてはアメリカに比べて劣るということで、その精度の不確かを弾頭の威力によってカバーしておるというふうに判断をいたしております。
  293. 源田実

    源田実君 これはソビエトが大きなものを、人工衛星なんか早くやったっていっても、アメリカはもっと大きなサタンなんかやっておるんですよ。アメリカに大きなものをつくる能力がなかったわけじゃなくて、アメリカ考え方が違っておったんです、ソビエトと戦略思想が。ソビエトはなぜ大きいものを、ソビエトというのは大きいものが大体好きなんですよ、国も大きいからね、人間も大きいし。非常に膨大なものをよくやるんだけれども、これはただ自分が大きいものを好きだという好みでやっているんじゃない。何か理屈があるはずである。小さいものもやっているんですよ。SS11なんてのはミニットマンよりちょっと大きいぐらいだ。これも千発ぐらい持っておる。大きいものを最初につくったから大きいものをというふうになったんだということは私はどうも説明にならないと思うのですよ。それで次につくるのがSS18がやっぱり二十五メガトン級のやつを持っておる。いまこれがランチャーが十できておるですね。そうして、これが今度MIRV化された場合に五発ないし八発、これがやっぱり三メガトンか、それが精度が上がってきておる。相当なものになってくるわけです。多ければ八発である。そういうものがいまソビエトじゃSS9にかわりつつある。なぜもっと小さな、都市攻撃には効率のいい、それが抑止力になるんです、なぜこれをやらないんです。これはどういう御判断ですか。
  294. 丸山昂

    政府委員(丸山昂君) 核戦略について一つアメリカの主だった考え方、これは御案内のように国防報告書その他が出ておりますが、かつてアメリカの海軍長官をやりましてSALT交渉アメリカの代表団に入っておりますポール・ニッツという人が、米ソ間の戦略構想について論文を書いておるわけでございます。  その中で、核の抑止力に対する五つの考え方ということを彼が述べておりますが、これは発生的にずっと並べておりますので、当初の考え方からだんだんに思想の変化といいますか、こういったものがこの中でわかるような感じがいたしますが、五つのタイプということで、まず最初は、最小限度の抑止力ということ、こういうタイプを挙げております。これは対兵力能力ではなくして、都市をねらった戦略ということでございまして、少数の主要都市だけを攻撃する能力を持てばそれで十分であるという考え方で出発をいたしておるわけでございます。対ソの関係では、同様にして都市攻撃に対する抑止能力というものはここで出てくるわけでございますけれども、ソ連の対兵力攻撃を抑止するという力はここからは持てないということでございます。つまり、アメリカの都市に対するソ連の核攻撃に対する抑止力、これはアメリカがいまのような形の最小限の抑止力というものをもし持つならば、いま申し上げましたようにアメリカの都市に対するソ連の核攻撃に対する抑止力というものはそれによって十分果たし得るけれども、対兵力攻撃に対する抑止力というものは持てないであろうということでございます。これはアメリカが、かつてアメリカだけが核兵器を持っておりました時代においてはこういう考え方でよかったわけでございますが、その後、ソ連核兵器を持つに至って、次第にこういった考え方から次の段階へ発展していくということを述べております。  第二番目が、一般には有名になっております、大規模な都市あるいは工業施設に対する報復能力でございます。マッシブ・アーバン・インダストリアル・リタリエーションと言っておりますが、これがいわゆる第二撃力を持たねばならないということを言われておる。特にマクナマラ以後におきましてこの考え方がアシュアド・ディストラクション・ケーパビリティー、確証破壊能力というふうに訳しておりますけれども、こういう考え方が……
  295. 源田実

    源田実君 そこらは大体わかっているから……。  それじゃ、時間がなくなるんで、ひとつ私が言いますから、これに同意するかどうか。  なぜああいう大きいものを持っておるのかというと、ハードターゲットをやるんだと、ソフトターゲットなら必要ないですよ。数が多い方がいい、むしろ。ハードターゲットをねらうからあんな大きいものを必要とするんだ。都市じゃない。要するにアメリカの空軍が持っているICBMのサイロをやる。それにはあれだけの大きなものでなきゃ、あんなに山の中に入ったり、あるいは、司令部は山の中ですね、それから普通のランチャーでもものすごい防御である。これをやるのは、精度も上げなきゃならぬが、同時に非常に大きな爆発力を要する。こういうところをねらっておるんじゃないんですか。
  296. 丸山昂

    政府委員(丸山昂君) 人の引用でまことに申しわけございませんが、ソ連がなぜこうした大きなスローウエートのものを整備をするかという理由としては、固体燃料、技術、それから精度、それからMIRV化、こういった点において大変に技術的におくれておるということ、さらには、巨大さを尊ぶ伝統的嗜好などがその原因であるということをこの著者は言っております。いま先生がおっしゃるように、後、現在の核戦略に対する考え方の変遷がずっとございまして、結局いまの段階はどうであるかというと、対兵力攻撃ということが相互のねらいだと、まさにおっしゃるようにハードターゲットに対するねらいということが現在の戦略核の使命になっておる、ミッションになっておるというふうに申し上げてよろしいかと思います。
  297. 源田実

    源田実君 それじゃ次に、一九六九年から七〇年ごろに、あのころにソビエトでシビル・ディフェンス・マニュアル、これはもうたくさん出ておるそうですね。これはひとつ資料が外務省か防衛庁かどっちかにあれば、ロシア語じゃわかりませんから、日本語に翻訳したやつを資料としていただきたいと思うんです。それをずっと調べてみる。私はそれを調べたんじゃないですよ。私は当然皆さんお読みになっておる、ことしの一月のフォーリン・アフェアーズにさっきのニッツが書いている、その中にそのことが書いてあるんです。それを見ますと驚くべきことがある。大体シビル・ディフェンスの予算がソビエトは年間十億ドル、そうしてアメリカは八千万ドルなんですよ、これに書いてあるのを見ると八千万ドルです。そうして核攻撃に対してどうやって守っていくかということが今度はシビル・ディフェンス・マニュアルに書いてあるそうです。そのシビル・ディフェンス・マニュアルを見ると、これをこのとおり、国民が忠実に政府の言うとおりにやれば、たとえ全面的な核攻撃を受けてもソビエトのアーバンポピュレーション、都市においてカジュアルティを五ないし八%にとどめることができる。それからトータルポピュレーシヨン、全国民においては三ないし四%にとどめることができるということが書いてあるそうですね。これは重大なものを私はこの間読んでびっくりした。それをこのニッツは、あるいはソビエトが考え方が甘いんじゃないかとも言っておるけれども、しかしながら、すでに二十年間もこれだけの努力を続けておる。ということは、何がしか見込みがなければそんなにやるわけがないだろうと、これは私もそう考えるんです。そうすると、いままで核戦争においては勝者というものがないんだ、どっちもまいるんだというんだが、ソビエトはそういう考え方じゃない。まあこれは民族性もあるでしょう、たくましいからね。とにかくどんな場合でもわれわれは生き残っていく。そのためには異常な努力を払っていくんだという努力をこういうぐあいに続けておるんじゃないかということが言えるんですよ。ということは、どういうことになるかと言えば、これこそ釈迦に説法だけれども、ソビエトが第一撃をかける。そうするとアメリカの主立ったICBMのサイロがほとんどやられちまう。ことに、ABMなんかいまディアクトベート、アクトベートしておるでしょう。ぽっとやられたらそれきりなんです、何にも防御できないんです。ソビエトなら六十四発だけれども、モスクワの周りはまだ動いておるんです。アメリカの方はディアクトベートして、飛行機に対してもナイキなんか全部これもう何かモスボールみたいになっておるですね。そういうことから言うと、ソビエトはこの防御に対して非常な力を入れておる。アメリカは入れてないでしょう。そうすると、第一撃をもしやった場合、これは私はやるとは言わないんですよ。これは後から問題になってくるんです。やった場合に、アメリカが今度は潜水艦によってこうやってきても、その程度のものならこのシビル・ディフェンスで上等、防いで、ほんの最小限の犠牲でおさまるというような考え方ではないだろうかと考えるんですよ。こうなると、いままでのこれは私の判断です。しかし、もしそういうぐあいになるとすると、いままでの概念すっかり変わってくるんですよ。それじゃすぐソビエトが核戦争にもってくるか、そうはやらないだろうと私は思う。やっぱりこれを重要な決め手として持っておるんであって、何もそんな核戦争なんかやりたかないだろうと思う。しかし、そのほかの戦争の全部のスペクトラム、この中の一番最低のやつをまずやって、だんだんもしそれがいかぬときは上がっていく、最後にはこういう手があるんだぞ。それじゃお前の方は死ぬがこっちは生き残るんだというようなことがその場合出てくると思うのですよ。こういう問題が、もし私がいまこのデータだけから判断していくと、結論はそういうぐあいになってくる。こういうことになると、いまのアメリカ自体も少しは考えておるかもしれないが、これはニッツがそう言っているのですからね。アメリカ人ですよ、海軍長官までやって、軍縮委員までやった人でしょう。これはなかなかえらいことを言っているんです。彼が一月のフォーリン・アフェアーズに書いておるでしょう。そうすると、在来のこの核戦争に対する概念が変わってくるんですよ。その場合に、なおかつ在来の概念そのままでいくということは非常な危険があると私は考える。こういう点をひとつ、これは防衛庁ではどういうぐあいにお考えになって、外務省ではまたこの問題にはいろいろ変ってこなきゃならぬと思うんだ、判断が。そういうところをどういうぐあいにお考えになっておるか。いま私が申し上げた、ソビエトはただ勝手に、頭が悪くて金だけ使って損しているんだというようにお考えなのか。それともやっぱり相当な驚くべきことをやっておるというようにお考えなのか。そこらのところの判断をお聞きしたいと思う。
  298. 丸山昂

    政府委員(丸山昂君) 先ほど私、御説明の中途になりましたけれども、結局米ソとも現在第五の段階を目指しておる。第五の段階と申しますのは、核戦争についてお互いに全面的な核交換を行って、なおそこで勝利を得られるという、ニュークリア・ウオー・ウイニング・ケーパビリティーと言っておりますが、なおそれを生き残って勝つという考え方を持っておるんだと、こういうことでございます。それがつまり核の抑止力になり、核戦争を回避するということにつながってくるというまあ考え方でございます。  そこで、まあ毎たびこれ引用して恐縮でございますが、ポール・ニッツが警告を発しておりますのは、ソ連の場合には、何といってもスローウエートが大きい。これはSALTIにおきまして発射台数、ランチャーの基数と、それから全体の、したがってスローウエートを大きくソ連に譲歩したということがまあ問題であるというような言い方をしておりますけれども、これに対するアメリカの当面なすべきことということで対策を挙げておりますのが、一つは、アメリカのICBMの精度をもっと高めるということ。第二番目には、生き残るための措置として、ICBMその他のサイロについてこれを多角的な、ことばとしては多角的発射体系と言っております。まあできるだけ多くつくる。そのサイロには、場合によっては全く空のサイロもあるわけでございます。そういう中にSALTで合意された数のものをランダムに置いておくという考え方でございます。ごれによってソ連とすればスローウエート全体が減殺をされるという考え方を持っております。そういう点から考えますと、いわゆる米ソ双方での核均衡に対する考え方は、思想的にはいろいろ変遷がございますが、両者の中で質的にあるいは量的に絶えず相手方への優勢において均衡を保とうという、こういう基本的な考え方は変わっていないというふうに思うわけでございます。ただ、全体がシーリングをつくりましたことによって、それ以上の基数、ランチャーの基数ということは押さえられるわけでございますから、その中でいま申し上げました技術的ないろいろな考慮によって相手方に対する絶えず優勢を保持するという、こういう努力は怠らないものというふうに考えられるわけでございます。
  299. 源田実

    源田実君 いまちょっと防衛局長の返答は違っておるのじゃないですか。同じニーツが言っておるんですがね。ソビエトがねらっておるのとアメリカがねらっておるのは、何というか、均衡という意味は違っておるんですよ。あの先生は、とにかくとうとう業を煮やしてあれからやめちまったですね。ところが、あれが言うのは、アメリカが求めておるのはエッセンシャル・イクイバレンスだと、ソビエトが求めておるのはイコール・セキュリティーだと言うのです。これ違うのですよね。アメリカは、実質的にICBMなり何なりそういうものの総合的な力が、ソビエトとアメリカとが総合的な戦力が大体均衡を保つ。ソビエトはそんなものはねらってない。そうじゃなくて戦略体制全体、ヨーロッパもアジアも何もかも全地球を含めて全体的なセキュリティーが均衡でなきゃいけない。だから、ソビエトがねらっておるのは、なぜ欧州においてアメリカが戦術核兵器を持っておるのだ、どうしてあそこに基地を置くのだ、ポラリス潜水艦の基地があちこちにあるじゃないか、自分の方はないじゃないか、そういうものを全部含めて均衡にやろうじゃないか。ソビエトはイコール・セキュリティーを求める、アメリカはエッセンシャル・イクイバレンスと書いてある、これを求めておる。そうすると、アメリカがねらっておるのとソビエトがねらっておるのはこれが食い違っておる。それだから、実際問題としてはSALTIにおいてはソビエトの方が優勢である。しかし、ソビエトの考え方としては、イコール・セキュリティーの点から言えばこのくらいこっちの方が持たなければだめなんだというような考え方でありまして、決して本当の意味の均衡ではないと、どっちを均衡をとるのが正しいか別問題ですよ、とにかく取り組み方が違っておる、こういうぐあいに私は考えるのですがね。それがいまたくさん問題になっておるでしょう、あの例のSALTの七〇何年か、二年にやったやつを、これ破ったの破らないの、アメリカソ連、どっちが破った破らないとずいぶん問題になった。それは大体根本的な思想が違っているのです、この軍縮に取り組む。これは当分直らないと思うのですよ、いまのところ。私が申し上げたいのはどういうことかと言えば、盛んに軍縮協定やっておるけれども、この間も申し上げたように、国策において、世界政策において完全な妥協を見なければ、数字だけで、兵力だけで幾ら妥協を無理やりに求めてもすぐくずれちまう、これは歴史が証明するところである、こういうぐあいに私は考えるのです。  それで、SALTが成功するかしないかという問題について、私は一時的には成功するかもしれぬ、しかし、長い目で見るとまず成功しないだろう、それが破れたときは非常に危険な時期がくる、こういうぐあいに考えます。これひとつどうでしょうか。これは外務大臣防衛庁長官どちらでもいいですよ。
  300. 坂田道太

    国務大臣(坂田道太君) いまの源田先生からのいろいろの専門的な御見解を聞いておりまして、また、私どもの防衛庁といたしまして、防衛局長からるるお答えを申したわけでございますが、確かにこの核の均衡を保つ上において、アメリカとあるいはソ連との考え方の中には違った面もあろうと思います。思想的にも違う。ところが、その思想や信条やそういうことを離れて、核という普遍的な、核破壊をやってはならないという、全面戦争になったならばどうなるかという、そういう恐怖から実はこの核の均衡というものが生まれてきたわけなんで、そのまた核競争をお互いいろいろのやり方でやってきながら、そしてなおかつ何とか上限を幾らかでもセーブをしようという動きが出てきた、これはやはり非常に理性的あるいは合理主義の一面を持った米ソの間に成立することだと思います。したがいまして、アメリカソ連の核の力、あるいはいろいろのいまお述べになりました多面的なやり方を承知しておると思いますし、またソ連の方も、アメリカソ連に対する対応の仕方ということも非常に理性的に、合理的に判断をしておると思うんです。そういう理性的な合理的な判断によってのみ支えられておるというのが核の均衡だというふうに私は思うわけでございまして、その意味から申しまして、米ソ両国が立場は違うあるいはやり方は違う、思想は違っても、何とかして核競争をやりながら、一面においてもしお互いで話し合うことができる部面については交渉を続けて、そしてSALTIあるいはSALTIIというふうに実は発展をしてきたということでございまして、私はこのお互いの努力というものは一応評価すべきものであるというふうに思うわけでございます。
  301. 源田実

    源田実君 これは実は重大な問題があると思うんですよ。大体われわれ戦に負けた。負けてアメリカに占領された。それで、それからだんだん自衛隊を編成するにしてもアメリカの援助で、やってみると何でもかんでも向こうが進んでおる。そうすると、こっちは戦略核兵器なんかもちろん持っていない。知らないものなんです。そうすると、すべて向こうはいい物を持って、正しい考え方で、情報もうんと向こうの方がすぐれておる。それでアメリカの方が間違いないんだ。それとソビエトはソビエトでやっておる。これもまたはるかにこっちよりえらいことをやっておる。日本なんか何にも知らないんだ。それで向こうの言うとおりにしてりゃ間違いなかろうというような考え方が若干あるんじゃないかと思うんですよ。それはえらそうなことを言うようで非常に恐縮ですが、これは許していただきたい。というのは、私が四十四年にアメリカに行ってあちこち講演して、例の、またあのときも問題が起きたことがあるんですね。そういうときの中に、スミソニアンインスティチュートで質問があった。その質問はどういう質問であったかというと、ベトナム戦争をおまえどう思うかと私に言いましたから、大体ああいう勝たないことを目標にした戦をやること自体が間違っておる。孫子を見て、それ兵久しくして国利する者はいまだこれあらざるなりと、世界一の兵術者がちゃんと二千五百年前に書いている。おまえさんらのやっていることは間違っている。勝たないことを目して長い戦をやる、そんなべらぼうな、勝つわけはない、負けますよ。しかしわれわれは、実はその負けると私がいうアメリカに負けた日本だからえらそうなことは言えぬけれども、私はそう思う。やっぱり負けたでしょう。あんなに物を考えているから間違いないと思っても、やっぱりそういうところで抜けるところがあると思う。もっと小さいことでも、たとえば戦闘機に積む機銃、マシンガンですな。これも私が行ったときの、エバリュエーションに行ったときに各戦闘機に乗った。そしてアメリカの空軍及び海軍のあらゆるパイロットに当たって、今後マシンガンが要るか要らないか。要ると言った人は一人もいないですよ、あの中に。全部ミサイルで上等。私はどうもこれはいかぬ。やっぱり鉄砲がいい、幾ら発達してもやっぱりここへ刀が一丁要るんだ、日本刀みたいな。最後はこれやらなきやならぬときがある。だからやっぱり機関銃が要るというので、全部はつかなかったんですが、予算の都合で、大蔵省がやってくれなかったから。それでしかし、約半分近くのものをつけた。いまは全部ついています。ベトナム戦争でアメリカは持っていなかったです。持っていなかったが、やり出したところがやっぱり要るというんで、ファントムでも何でも全部機関銃つけたでしょう。それでアメリカなんかの兵術的な問題についても、一遍疑いを持ってみられる必要がある。向こうが言ったからもう間違いないんだ。ここには総理おられませんけれども、総理が、フォードがやってくれたんだから、言うたんだから間違いないんだ、絶対守ってくれると、フォードが落選したらどうなるんでしょう。落選しないという保障もないでしょう。フォードがやると言ったって、向こうの議会が承認しなかったらだめでしょう。宣戦の権限もない、大統領には。  それで、私はアメリカに反感を持っているわけじゃないですよ、非常に世話にもなっている、好意もいま持っている。しかしながら、まるまる信用するわけにはいかない。私は、重要な問題なんですよ、いまのこのわれわれが扱っている問題は。日本の将来に長い、どのくらいにわたって支配するかわからない問題を、わずか一週間やそこら参議院のこの審議で急速に、とにかく何とかこの国会に上げてしまおうというようなやり方は軽率である。いま一年や二年もっと研究してみて間違いがないというならば、私は批准しますよ、それは。しかし、こんなに疑問がたくさんある。まだまだあるんですよ、いまから言いますけれども、時間が余りないけれども。それを何でこんなに急いでやらなければいけないのか。いまやらなきやすぐ核燃料入ってこなくなるのか、そうじゃないでしょう。向こうは売りたくて困っている。これ自分ら売らなければ困るんですよ、実は。余り訓示ばかり言っても、ちょっとどうかと思いますから、要するに、もう一つここで申し上げておきたいことは、ソビエトも多分核を初めから使うことはやらないと思う。しかし、核戦争でも勝ち残り得るという確信を持ったときには、その他の外交攻勢、ゲリラ戦、通常戦争、何にもこんなものにびくびくしないで推進しますよ。そうすると、なぜさっきから言うかというと、国策が調整されていないときに、国策に食い違いがある場合に、そんなものぐんぐん押してこられてもすべがなくなる、自由世界は。これを私は恐れておる。日本のいまのこの核防なんか、もうそういうものをこの中に一環として入ってくるわけですね。そういうことを考えますと、ここで急いで何でもかんでも批准、欠席してもいいから余り反対せぬでくれというようなことはどうかと思うんですよ。ここの人じゃないですよ、ほかのところから言った。  それから次に、ほんの時間わずかですから、残ったのはまた次に機会もらって何とかやろうと思うんですよ。余り早くこれを承認しないでいただきたい。これは実はNATO正面では戦術核の使用はこれはほとんど常識、インポシブル、使用しないことは、これが常識になっているんじゃないですか。これは防衛庁では御存じでしょう。NATOの何とかいうジェネラルがNATOとしての報告を出していますね。その中に、せっかくNATOの計画であるところの戦術核によってこれほど兵力差があって、まともにやったらどうにもならぬのをバランスを持っておるのは、アメリカが持っておるこの核兵器である。その核兵器は使えなくなるのだ、こういう攻撃を受けると。というのがこれは三月十五日のザ・タイムスに載っているわけです。これが常識的になって、戦術核なんかあそこらじゃ使うというのがほとんど常識のように考えられる。これは新聞が書いたのじゃないですよ。NATOの司令官が書いたその報告なんです。それはどういうぐあいにお考えですか。
  302. 丸山昂

    政府委員(丸山昂君) 一般的には、御案内のようにNATOの現在の通常兵力のバランスはNATO側が下回っておる。ワルシャワ条約機構の方が上回っておるという評価がございます。そこで、この通常兵力のアンバランスはNATOに展開しておるアメリカの戦術核によってバランスが保たれておるというふうに言われておるわけでございますし、また、現にそういった趣旨のアメリカ政府の公式の発言もあるわけでございます。  そこで、先般NATOの責任ある人の責任ある立場の発言ということで、一部NATO関係国の、これはイギリスのザ・タイムスでございますが、これにリークされたということで、NATOに対するいろいろなワルシャワ条約機構側からの侵略のシナリオを描いてみると、短時日の間にエルベ河を落とされ、ライン河を越される、そして戦術核兵器は使用するいとまも与えられないというのが出ておるわけでございますが、私どもこの辺につきましては、そのシナリオがどういう前提で組まれたものであるのかという点についても詳しく承知をいたしておりませんし、少なくとも核兵器については、これが使用されないということになりますと、抑止力というものに対する影響は大きいわけでございまして、その辺については現にアメリカが約七千に近い戦術核を展開をしておるということでございますので、この戦術核兵器が使用できないということは、よもや公式にはそういう発言が出てくるはずはないというふうに考えておるわけでございます。したがいまして、いま先生御指摘のその新聞記事につきましては、先ほど申し上げましたように、かなりいろいろ詳細に前提その他について検討いたしてみませんと、私どもとしてはにわかにその意見に同調するというわけにはまいらぬというふうに考えておるわけでございます。
  303. 源田実

    源田実君 実は、核というもの、これも間違えないでいただきたい。私が言うと、すぐ、よく好戦的な人間だというようなぐあいに理解される場合がある。私はそうではない。とにかく戦争をやらせないようにすることが重大なんだ。そのためには核を抑止力として使うことは非常に現在においてはやむを得ないし、また、必要なことであろうと思うのですよ。だから、ヨーロッパが一応ああやって均衡が保たれておるのは、あれほど兵力が足りない、戦車なんか三分の一もあるかないかでしょう。それがとにかく一応均衡が保てておるというのは、あの戦術核を使うぞということをあらかじめ知らしておるからなんです。だから均衡を保っておるんですよ。アメリカは、それじゃあそこだけは使うがよそは使わないのかどうか。日本の場合は、三木総理はとにかくどんなことがあっても持ち込ませないと言っておる、そのとおりいくなら日本を侵略する人は非常に気が楽ですよ。アメリカが核があるかないかを明らかにしないというのは、抑止力を考えておるから明らかにしないのであって、それでどうも三木総理に対して、どんなことがあっても日本を守ってやるんだとフォード大統領が言ったというんですが、どうやって守るのか、私にはちょっとわからない。これはどういうことかというと、御存じでしょうな、これは防衛庁だから。大体、橋頭塗にようやく上がったばかりの上陸部隊、これに対して飛行機で攻撃する場合、通常兵器でやるのと核兵器でやるのと効果はどのくらい違うか、これは防衛庁御存じでしょう、どうでしょう。そのほかのもついでに伺うが、海上船艇、それから行進中の陸上部隊、こういうのに対してどのくらいの差があるのか、核兵器を使うのと使わないのとで。
  304. 丸山昂

    政府委員(丸山昂君) まことに申しわけございませんが、いまの先生の御指摘の想定のもとでの核兵器と通常兵器の相違につきまして、まだ私どもは検討いたしましたことを聞いておりませんので、はっきりと申し上げられない次第でございます。
  305. 源田実

    源田実君 これは実は防衛庁独自で研究してもらいたいと思う。防衛庁がこういうものを全部研究したあげくで、非核三原則そのまま全部守って、しかも持ち込ませないと言っても大丈夫守り得るんだという確信があるなら私は賛成していいと思う、盲判でも。防衛庁でこれも研究しないでおいて、それで持ち込ませない、いやよろしゅうございますと、どうも私は合点できないのです。一番の日本の防衛の責任者である。これはスウェーデンで研究したのがあって、それをいま私は言ったんです。それを研究したのがこれはだいぶ前ですよ、鹿島研究所から出ています。それに、こういう場合にはこう、もちろん若干の仮定はあります。その中にこれはあるわけです。したがって、これはしかし、これを全面的に信用はできないでしょう。しかし、やっぱりオペレーションリサーチというのはいまあるんだから、これによって、こういう場合、全然持ち込ませない場合にどういう手によって日本は守り得るのか。フォードはああ言うけれども実際はどうなのか。もしたとえば、この本にあるような成果ならこういうことになると思うんですよ。普通の大統領なら、手を縛られて、向こうは使うが自分は使えない、それで日本を守れ。それはごめんこうむると。縛りはずしてくれ、それならやりましょう。普通の大統領はそうやると思う。しかし、大統領も条約上やむを得ぬからやれと部隊に言う。命令を出したとする。部隊の司令官は聞きませんよ、これは。意見具申で、もうその間に敵は上がっちまう。何遍も往復する。みすみす負けて、みすみす屠殺状態になるものを、軍隊の指揮官はそんな命令出せないですよ。アメリカには特攻隊というのはない。合理主義なんですよ。そうすると、それでも指揮官が無理に命令出して、それじゃその部下がやるか。将校からずっと兵員に至るまで果たしてやるのかどうか。ここらのところを十分に検討されて、われわれがいまこうやって、私はよくわからぬから質問するんですから、そういう場合に、いや、それは心配要りません、こうこうこういう方法によってできる。しかし、そこは余り軍事機密だからここでは言えませんと言うんなら、ちょっとここの人全部出てもらって、それで国会議員だけで秘密会議ででもこれはひとつある程度確証を、われわれが安心できるようにしていただきたい。それをただ、いま予算委員会で一遍、今度一遍、あとどなたかがまたやってもらうだろうと思うけれども、そういうのでここ一週間くらいの間にばらばらっとやってこれに批准しろ、ちょっと無理じゃないかと。参議院はこのまま会期でも延長になればどうにもこうにもならなくなるような情けない状態なんですよ、実際は。しかし、それで済むものではない。そこらのところをもっと私は、これは自民党ももっと真剣に考えて、これ一年や二年遅れたって私は日本がひっくり返ることはないと思う。これならば大丈夫だという得心があれば私は非核三原則をまるまるのんでも賛成します、大丈夫だという確信がつければ。いまのところとってもいかないですよ。得心のいく説明も何ものもない。それでこれに賛成しろったってちょっと話が通らぬと思うんです。  それからこの問題どうでしょう、これ今度質問するパリ協定やった場合に、アメリカは、大統領もキッシンジャーも、何度も南ベトナム、カンボジアは守る、大丈夫守る、安心しておれ。これは条約はないですよ、守るという安保条約はなかった。ないけれども、必ず守るから心配するなと何度も言っておった。実際守ったのか。大統領は守ろうとしたけれども、連邦議会が言うことを聞かなかったでしょう。やるんならやりなさい、予算をつけないと言う。予算なしにはこれは何にもできない。安保条約で大統領やれ、兵力を使うなら使え。しかし、予算はつけないよと。核兵器も使わせない。向こうは使うかもしれないが、こっちは使わせない。そして自分らの肉親とか何とかもう惨殺されるかもしれない、そういうのを行ってやれということを、果たして連邦議会の議員が承知するかどうか、ここらのところはアメリカの政府及び連邦議会に対して、こちらもそれこそ議員団派遣して、それでもやってくれるのかどうかというようなことを確かめてするべきですよ。フォードが言いました、これじゃ済まぬです。それはどうでしょうかな、いまのところは。
  306. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) 先ほどから幾つかの点について御指摘になりましたので、あわせてお答えを申し上げたいと思いますが、先ほどのお話しの米ソの関係でございますけれども、私は、冒頭に申し上げましたように、アメリカソ連に対する考え方というのは、恐らくはソ連の善意というものは全面的に信頼できるという考えに立っておるのではないというふうに申し上げたわけでございますから、源田委員の言われるように、究極的にソ連が完全に、いわゆるウイニング・ケーパビリティーを持ちましたときには、そういう意図に出ることがあり得るかもしれぬ、ないと思うがあり得るという御指摘は、私はあるいはそうであろうかと思います。ただそのときに、軍事的にはそうであっても、ソ連としてそのようなことをする利益は政治的に何であろうかということは、やはり問題ではないかと思います。私は、恐らくはソ連にそういう政治的な動機があるとすれば、世界革命と言ったような、そういうソ連の持っているイデオロギーではないかと想像いたしますけれども、そのことは、アメリカソ連と体制をとことんまで争うということを現実にはしておりません。むしろ体制の共存ということをアメリカの政策として認めておるというふうに私は考えますので、そうなりますと、ソ連がそこまでの運命をかけて体制を争わなければならないかどうか、アメリカが体制を争うということになりますと、そのような政治的な動機が生まれるのではないかと思いますけれども、現実にはそうでございませんので、政治的な、源田委員の言われるようなカタストロフィーのソ連側の動機、誘因が何であろうかということをひとつ私自身は考えるわけでございます。  それから、第二の問題でございますけれども、いわゆる戦術核というものを使えないでわが国をいかにしてアメリカが防衛できるかという問題は、私はいろいろな議論の要素を含んで曲ると思いますけれども、これも御承知のように、この条約自身との実は関連ではないわけでありまして、先ほど源甲委員御自身が言われましたように、この条約自身は、管理権を持ったままの核兵器の持ち込みを禁じているわけではないのでございますから、わが国はそのような方針を持っておりませんけれども、条約が批准されたがゆえにそのようなことがあるないという問題ではないということは、これはもうつとに御承知のとおりでございますけれども、申し上げられることだと思います。
  307. 坂田道太

    国務大臣(坂田道太君) 先ほど、NATOとワルシャワ体制との関係におきまして、ワルシャワ体制におきましてはむしろ通常の戦力も非常に高いと、しかし、西側の方のNATOでは戦術核が支えになってやっと均衡が保っていると、そのとおりだと思うんでございますが、しかし、それが結局なかなか、戦術核といえども使うことが全面核戦争を引き起こすということでございますので、私はやはり欧州に戦端が開かれました場合に、すぐ核を使用するということにはならないというふうに思いますし、したがって、今度はなかなか核が使えないとなると、むしろ通常兵力というものが物を言うという一つの傾向がまた生まれてきておる。したがって、NATO諸国においても、通常兵力を高めておくという努力が最近また際立ってきたということが言えるかと思います。  そうしますと、いま源田委員の御指摘のとおりに、NATO体制においてはかなり緻密に戦術核及び戦略核、それに通常兵力というものが計算されておって、そしてなかなか使えない状況になっておる。しかしながら、もし何かあった場合は戦術核はやはり使うんであるという前提に立っておるわけでございますが、そういうことを、ヨーロッパには使うけれども日本には使わないんじゃないだろうかという御疑問でございましたけれども、やはり本年度のラムズフェルドの報告を見ましても、昨年度のシュレジンジャー報告を見ましても、アメリカの世界戦略と言いますか、核戦略と申しますか、それはNATOとそれから日本というものが世界の一つのかなめであると、こういうふうに位置づけておりますので、やはり私はこの点につきましては欧州以外と同等もしくはそれ以下ではないというふうに認識せざるを得ないというふうに思います。  それから、それじゃフォードがああいうふうに確言しておるから大丈夫だと、それはもうそのとおりだと私は思います。しかし、それだけではわからぬ、もう少し客観的な話をしてみてくれというお尋ねだと思うんです。  この点については、先般の秦野議員の御質問に対して私はお答えしたわけでございますけれども、やはりいま申しますように、米国の軍事戦略ないしは国際政治というのは、欧州、アジアその他の同盟国との信頼関係によって成り立っておるという以上、仮にわが国への核攻撃が行われました場合に、もし万が一にもこれに報復を行わないでこれを見過したということになるならば、私は米国の国益上やはり重大な領域を失うおそれがあるばかりでなく、世界に対する米国の核のかさへの信頼というものが失われて、他の同盟国との、つまりNATO諸国についても同様だと思いますが、従来の信頼関係が崩壊するというふうに思います。したがいまして、その後の米国自身の安全保障というものにも重大な私は影響をもたらすと考えます。したがいまして一やはり平素から同盟国に対して核のかさという保障を与えております以上は、単にわが国のためばかりでなく、同時に米国自身のためにも核報復攻撃を実行する決意をやはり持たざるを得ないというふうに思います。それがやはりアメリカの国益に通ずる。また、現実に米国は核戦力につきましても、弾頭威力、精度、指揮統制、目標変換能力というようなコンビネーションによります柔軟性のある核反撃能力を整備しまして、同盟国に対する信頼性を高める努力をいたしておるわけでございまして、本来、同盟国に対します米国の核抑止力とはこのような厳しい責任というものが付随しておるものだというふうに私は考えます。したがいまして、核攻撃能力を有する国が万一わが国に対する核攻撃を考える場合には、いま申しましたようなことを当然計算に入れなければならないのであるから、米国の核報復の攻撃が絶対にないとの確信は持ち得ないことになり、ここに米国の核抑止力が成り立つ理屈があるというふうに私は考えるわけでございます。  それから、先生先ほどベトナムの話をされたんですけれども、ちょっと私のあるいは聞き違いかと思いますからお教え願いたいのですけれども、実はフォーリン・アフェアーズのたしか六八年だったか六九年だったか、その点はちょっと記憶は違いますけれども、キッシンジャーがベトナム戦に対する反省しているんです。それについて彼は、われわれは心理戦に負けたと、これにはいろいろ見方があると思いますけれども、その一つが、先ほど先生がおっしゃったことなんですけれども、ベトナムの方は、ハノイの方は負けないうちは勝利を握っておる、われわれのディフェンスフォロソフィーは勝たないうちは負けておると、つまり負けないうちは勝利を握っておるという彼らの哲学がわれわれは理解できなかったんだと、これは非常に意味があることであって、むしろさっき孫子の兵法をおっしゃいましたけれども、あの兵術理論というのは恐らく二千年あるいはその後やはり北越にいっていると思うんです。これは朝鮮半島に伝わってきております。日本にも伝わっておると思うんですよ。だから、そういうことをむしろアメリカがわからなかったという方が非常に自然だと思うんですけれども、さっきのお話し、ちょっと、もしお教えいただけばと思っております。
  308. 源田実

    源田実君 時間がきましたのでもう言えないですが、これは後に残しまして、ただこれほど重大な問題で、実際総理が来ておられぬからやめるが、総理は私がいまのような質問をしたらもう明快に立板に水のようにぽんぽん答えられなけりゃうそだと思うんですよ。こういう重大な問題。ただ、総理がもしここへ来ておったとしても、すぐこれは、おいどうだ、君がやれなんというようなことになると思うんです。そんなことでこの重大な問題を処理されちゃたまったものじゃない。これはもっと真剣に取り組んで、われわれ何遍も何遍も演習とかいろんなことをやってみて、それでなるほどこういう——これは多数決で決めるものじゃないですよ。多数決でやったらどこへいくかわからぬ。しかし、責任当局はこうあるべきであるというのでやらなきゃならぬと思うんですよ。この一週間ぐらいの間に賛成してしまえというのははなはだ合点できない。  これで、私は一応保留しておきます。今度また機会を何とかしていただいて、それからまだまだあるんですから、資料をたくさん持っておる。もう時間も過ぎましたから、委員長、一応これでやめます。     —————————————
  309. 高橋雄之助

    委員長高橋雄之助君) この際、委員異動について御報告いたします。  本日、星野力君及び田渕哲也君が委員辞任され、その補欠として野坂参三君及び中村利次君が選任されました。     —————————————
  310. 塩出啓典

    塩出啓典君 それでは、きょうは特に第三条の問題を中心にお尋ねしたいと思いますが、ちょうど科学技術庁長官がおかぜを引かれて御出席されないのは非常に残念でございますが、そういう点では、肝心な点につきましてはまた長官が御出席のときにお尋ねしたいと思っております。  まず最初にお尋ねしたいことは、核防条約によるいわゆる査察、これは原子力の平和利用が軍事転用されないように監視をしていくと、これが査察の大きな目的でございますが、果たして現在の査察ということで軍事転用が十分防げるのかどうか、どういう点に問題点があると政府は考えているのか、その点をまずお伺いしたいと思います。
  311. 半澤治雄

    政府委員(半澤治雄君) 現在IAEA、国際原子力機関でございますが、IAEAが行っております保障措置、御指摘の査察、これは私どもは軍事目的転用を防ぐという面では有効に機能しておるというふうに考えておるわけでございます。問題点が何かと言われますると、できるだけ機械化等の手段、特に技術面での合理化を図っていくということはなお今後鋭意進めなければならない点であろうかと思いますが、機能としては有効に働いておるのではないかというふうに考えております。
  312. 塩出啓典

    塩出啓典君 外務省にお尋ねしますが、米国の会計監査局が、これはことしの一月の終わりですか、IAEAの能力には非常に疑問があると、これは核兵器への転用防止の点においてはいろいろな点に心配があると、こういうような報告書を上院政府活動委員会に提出をしたわけでございますが、この内容がどういうものであるか、もしわかれば簡単に御説明願いたいと思います。
  313. 大川美雄

    政府委員(大川美雄君) ただいま御引用になりましたアメリカの報告書というのは、ここに手元にございます。これは一九七六年一月末、ことしの一月末にアメリカの下院国際関係委員会から公表されたものでございまして、「核物質の保障措置に関する国際原子力機関の役割」という表題の報告でございます。作成は合衆国会計検査局のようでございますが、この報告書は、いかにも国際原子力機関が核物質の防護措置を実施する権限を有していないといったような点を指摘しております。これは国際機関としての原子力機関のこうむっておるいわば当然の一時の制約でございますが、これは保障措置の有効性とは直接の関係はないと思います。この報告書の中で、実は日本を含みます若干の非核兵器国において国際原子力機関の保障措置が適用されていない施設があるのだということをその十三ページに指摘しておりますけれども、これは実は間違いでございまして、私どもの方でこれに気がつきまして、先方に注意を喚起したことがございます。
  314. 塩出啓典

    塩出啓典君 結構です、そこまでで。  そこで、たとえば先ほども問題になっておりましたけれども、この第三条の第二項には、いわゆる原子力、たとえば原子炉を非核兵器国に輸出する場合にはIAEAの査察を受けなければいけないと、軍事転用しないという保障がない国には原子炉を輸出してはならない、この場合の非核兵器国というのは、この条約の趣旨から言えば、非加盟の国々に対する輸出まで拘束するのかどうか、これはするかしないかだけでいいです。
  315. 伊達宗起

    政府委員(伊達宗起君) お答え申し上げます。  「いかなる非核兵器国」ということでございまして、加盟国であるか加盟国でないかということは問題にしておりません。したがいまして、非加盟である非核兵器国も含んでいるものでございます。   〔委員長退席、理事増原恵吉君着席〕
  316. 塩出啓典

    塩出啓典君 そうしますと、たとえば先ほどお話がありましたブラジルは加盟国はしていないわけですね。そういう国に西ドイツが原子炉を輸出する。そういう場合は当然、ブラジルは核防条約の制限は受けないわけですね。しかし、出す方の西ドイツは制限を受けるわけですから、したがって、ブラジルというものがこの核防条約に準じてIAEAとの間に保障措置協定を結ばない限りは西ドイツは原子炉をブラジルに輸出することはできない、こういう認識がもう全体に知れ渡っているのか、そう認識していいわけなんですか。
  317. 大川美雄

    政府委員(大川美雄君) そのとおりでございます。
  318. 塩出啓典

    塩出啓典君 そうしますと、一九七四年の九月三日に米、英、ソ、カナダ、オーストラリア、デンマーク、フィンランド及びノルウェーの八カ国のIAEAの代表が、IAEAの事務局長に書簡を送って、そうして非加盟のいわゆる非核国に原子炉を輸出する場合はIAEAの保障措置、それと同等かあるいはそれ以上の保障措置をしなければならないようにしてもらいたいという書簡を送っているわけなんですけれども、いま言われたように、この条約の本文を見る限りはそこまではっきりしているかどうか、われわれわからないわけですけれども、そういうような書簡を送るということは、そういう心配があるからそういう書簡を送っておるのじゃないか。何かそれを裏づけるような補足的な説明書のようなものがあるのかどうか。これはわが国だけがそう勝手に思っているんではいけないと思うんですが、その点はどうなんですか。いまの伊達参事官あるいは局長説明をわれわれ疑うわけではないんですけれども、それは何か、当然いろいろこの核防条約ができる過程において審議された記録の中にそういう資料があれば、それを後から提出をしてもらいたいと思うんです。
  319. 大川美雄

    政府委員(大川美雄君) ただいまおっしゃいました資料はございますので、後からお出し申し上げたいと思います。
  320. 塩出啓典

    塩出啓典君 それから私は、先ほどこのIAEAの保障措置というものは十分であると、こういう政府の答弁に対して、まあアメリカの会計監査局あたり、そういう能力を疑問視しているわけですね。私も率直に申しまして、IAEAのそういう査察で果たして防げるかどうか、これは非常に疑問な点があります。というのは、たとえばインドが核爆発、これはまあ平和利用という名目のもとに核爆発をやったわけですけど、インドの、やはりこれはカナダとの間に原子力協定を結んで、IAEAの査察を受けてたわけですね。しかし、やはりそういうものは発見できなかった。要は、IAEAが幾ら査察をしても、その国においてこっそり山奥でつくれば、そんなことは探査できないわけですからね。あるいはまた、その国のテログループが政府機関と別個のところで核爆弾をつくると、そういうものはやはり査察することはできないわけでしょう。そういう意味で、あるいは核物質の輸送とかあるいは盗難予防において万全であるかどうか、こういうような問題についてはIAEAは査察をしないわけですから、そういう点から、まあ私の言いたいのは、IAEAの査察は非常に万全だと、そういう政府の姿勢では非常に心配だと、そういうようなことを思うんですけどね、外務大臣どうなんですか、その点は。
  321. 大川美雄

    政府委員(大川美雄君) まず、いまおっしゃいましたインドの核爆発につきましてでございますけれども、あの核爆発にインドが使いました燃料は実はIAEA、原子力機関の査察の対象にはなっていなかったのでございます。それからその保障措置が完全であるかどうかと。先ほど科学技術庁から御説明申し上げましたように、私どもとしては現在のIAEAの保障措置が完全に実施されれば核物質が核爆発等に転用されることにならないというふうに考えておりますけれども、ただ、科学技術の進展で、今後どんどん現在のIAEAの保障措置をさらに完全にしていくような方法があれば、もちろん関係各国で国際協力を通じてその方法を探究していくということに当然なると思います。
  322. 塩出啓典

    塩出啓典君 この米国の会計監査局の報告では、たとえば核物質をテロリストから保護することは加盟国の任務だと。こういう体制が非常によくできてるかできてないかというようなことは、IAEAはそういうことは監査しないわけですね。そういう意味で、私はやはりこのIAEAの査察だけで事足りるんではなしに、たとえばテロに対する防護の問題とか、あるいはその国自体がIAEAの報告と異なったにせの報告をして意図的につくろうとすればこれは実際はつくれるわけですから、まあ日本は狭いかもしれませんけれども、大きな広い国にはこちらの方でやっておけば全くわからないわけですから、そういう意味で、核防条約の意図というのは平和利用の軍事転用を防ぐところに目的があるわけですから、わが国としてもこのIAEAの査察を万能とせずに、いろいろな点からやはりそれ以外の手を打つようにもっと努力をしてもらいたい。何か政府の姿勢は、もうともかく心配ないんだと、こういうことでは非常にむしろわれわれが心配なわけでございまして、そういう意味わが国としても米会計監査局のまねをしろというんではございませんけれども、そういうIAEAの能力あるいはその限界についても十分検討をし、わが国としての意見をまとめるべきではないか、その点はどうですか。
  323. 大川美雄

    政府委員(大川美雄君) いま盗難防護の問題をおっしゃいましたんですが、いかにも現在の国際原子力機関は盗難防護措置をみずから実施する権限は有しておりません。ただ、この問題が最近とみに重要な問題になってきておりますし、昨年の核防条約の再検討会議でも、今後その国際的な協力を通じてこの問題に対処すべきだというようなことがはっきり出ておりますし、その一連の状況を受けてIAEAでは、昨年の秋でございますが、一応各国でそれぞれ国内的に実施、適用する盗難防護措置の、いわば参考となるための盗難防護措置を勧告いたしております。それを受けまして、それぞれの国でそれぞれの国内事情に応じて措置を実施しているんでございますが、さらに、国際原子力機関を舞台にいたしまして国際的なそういった盗難防護のための協定をやがてはつくっていくことをめどに、関係国間ですでに専門家レベルで協議が始まっております。
  324. 塩出啓典

    塩出啓典君 ひとつこういう査察の問題につきましても、外務大臣に要望したいわけですけれども、わが国としても特に細かい点にも気を配って、やはり私はアメリカの会計監査局が警告する以上のことをわが国が全世界に警告をしていく、提案をしていく、そういう姿勢が非常に望ましいんじゃないかと、これは意見として要望しておきたいと思います。  それから、日本のいわゆる原子力産業が平和利用の関係において大体どの程度現在輸出をしているのか、これは通産省の方から御説明願いたいと思うんですが。
  325. 鈴木健

    説明員(鈴木健君) わが国の原子炉等の輸出は非常にまだ少ない段階でございます。主として部品が中心でございまして、その規模も年間十億円ないし二十億円程度でございます。
  326. 塩出啓典

    塩出啓典君 これはあれでございますか、国別にはどうなんですか、たとえば核防条約に加盟をしておる国、あるいは加盟をしていない国にも行っているのかどうか。
  327. 鈴木健

    説明員(鈴木健君) 国別に見ますとアメリカ中心でございまして、たとえば五十年をとってみますと約十二億円の輸出のうち九億円がアメリカでございます。その他の主要国といたしましてはオランダの約二億円でございます。インド等NPT非加盟国につきましても部分的には原子炉の一部部品が輸出されておる次第でございます。
  328. 塩出啓典

    塩出啓典君 そうしますと、今後わが国が核防条約に批准をして加盟をした場合には、当然その制約を受けていかなければならないわけでありますが、現在はまだ部品でございますが、部品にしてもその部品がなければ運転ができないのに、その部品があったために運転して、その結果プルトニウムができてそれが軍事転用されていくと、こういう危険性ももちろんあるんじゃないかと思うんですね。そういう意味で、わが国のこういう原子力平和利用に関する機器の輸出については現在どういう方針であるのか、現在のところはそれは何ら方針がないのかどうか、その点はどうですか。
  329. 鈴木健

    説明員(鈴木健君) 原子炉等につきましては技術先端産業でございまして、政府といたしましてもその重要性の認識に基づきまして育成を図っているところでございます。そのような観点に立ちますと、輸出が行われるということは好ましいことではないかというふうに考えております。しかし、わが国における原子力の研究開発利用は、原子力基本法にも平和利用に限定されておりますので、輸出に関しましても同様の基本方針で臨むことにいたしております。  いま先生の御質問にございました今後の方針でございますが、NPTの未批准国に対する原子力機器の輸出等につきましても、平和利用目的に限定するというような基本原則に従いまして、案件ごとにケース・バイ・ケースで検討していきたいというふうに考えておる次第でございます。
  330. 塩出啓典

    塩出啓典君 もちろんわが国は平和利用に決まっているわけですけれども、平和利用と軍事利用というのはもう表裏でございますので、そういう意味から、今後非常に慎重にしていかなければならない問題ではないか。米国の商務省は、昨年でございますか、あるいはもっと前かもしれませんが、二十四品目については輸出規制をしておると。この二十四品目というのは必ずしも軍事面だけでなく、平和利用の品物についてそういう規制をしておるわけでありますが、当然わが国としても今後の原子力平和利用の部品とかあるいは機器の輸出については、一つの確固たる原則あるいは方針というものを定める必要があるのではないかと、こういう点はどうでしょうか。これは外務大臣に御答弁願いたいと思うんですが。
  331. 大川美雄

    政府委員(大川美雄君) その点につきましては、実は先ほどのほかの委員の御質問に対しまして私がお答えした、例の輸出国の話し合いがございましたけれども、その見解といたしまして、日本が現在すでに実施している輸出政策というものをほかの国々に通知をしたんでございますが、その主たる内容を申し上げますと、原子力資材あるいは原子力物質を輸出いたします際には、その受領国において必ず国際原子力機関の保障措置の適用を受けなければならないという条件をつけております。それから、わが国から輸出いたしました物質がいかなる核爆発にも利用されてはならないというはっきりした約束を輸入国側からとりつけることにいたしております。さらに、核物質の盗難防護につきまして万全の措置を行うことを条件にいたしておりますし、いま一つわが国からA国ならA国に出しましたものを勝手にA国からB国に再輸出することは困るというようなことも申しております。こういったような一連の基準と申しますか、方針と申しますか、方策というのを現実にわが国としてはこういったものの輸出に際しまして実施しておりますし、今後ともこれを継続していく予定でございます。
  332. 塩出啓典

    塩出啓典君 そうしますと、先ほど通産省のお話といまの大川局長のお話とは、ちょっと私の聞いている範囲では違うような感じがするわけですが、通産省に改めてお尋ねしますが、いま国連局長が言われましたように、通産省としては原子力資材、物資の輸出については具体的にそういうことをちゃんとやっているのかどうか。その点はどうなんですか。
  333. 鈴木健

    説明員(鈴木健君) 現在の原子力輸出に関する方針につきましては、先ほど申し上げましたような状況でございますが、NPTの未批准国に対します原子力機器の輸出につきましては、当該機器の輸入国がIAEAの保障措置を受け入れているかどうかというようなことなど、平和目的に用いることが確認できるかどうかというようなことを検討するというような方針で臨んでおります。
  334. 塩出啓典

    塩出啓典君 わかりました。  じゃもう時間がございませんので、先ほどのいわゆる日本の原子力輸出についての方針ですね、それがどういう形で出されておるのか。恐らく省令とか通達とか、そういうものがあるんじゃないかと思うんですけれども、それもひとつあわせて資料として提出をしていただきたい。これは外務省よりむしろ通産省になりますかね。通産省の通達かなんかありますか、そういうものは。
  335. 鈴木健

    説明員(鈴木健君) 輸出の方針というものにつきましては、現在明確に定められたものはございませんけれども、原子炉等原子力機器の輸出につきましては、輸出貿易管理令によりまして通商産業大臣の承認を要することになっております。輸出貿易管理令の別表第一に、「核燃料物質及び核原料物質」、また「原子炉及びその附属装置並びに原子炉用に設計した発電又は推進のための装置」につきましては、通商産業大臣の承認を要するということが決められておるわけでございます。
  336. 塩出啓典

    塩出啓典君 したがって、そういう場合には当然通産大臣として、やはりこういうものはいいとか、こういうものはよくないとか、それはただ許可を受けるだけである。しかし、その部品の中にはそれに入らないやつもあると思うんですね。そういうものはどうするのか。それと、いま言った通産大臣がこれを認可する場合の一つの基準がやはりあるんじゃないかと思うんですけれども、なければそれをつくる必要があるんじゃないかということをぼくは言いたかったわけですけれども、それはできているというようなお話ですから、もしあればそれを出していただきたい、こういうことです。
  337. 鈴木健

    説明員(鈴木健君) 具体的な基準につきましては、成文化されたものがあるわけではございませんで、基本的な考え方といたしまして、先ほど申し上げましたように、平和利用目的に限定いたしまして案件ごとに検討しておるわけでございます。
  338. 塩出啓典

    塩出啓典君 じゃ、たとえばいま外務省が言ったのは、いま言ったようにちゃんとIAEAの保障措置を受けないところには出さないとか、そういうことを、わが国の方針を七カ国会議で話をしたというわけでしょう。こっちの方は全然そういうものはないと、ただ平和利用ということだけだということで、そのあたりが、七カ国会議で報告したのは、今後こう持っていきたいということを報告したのか、そのあたりが非常にいまの通産、外務の御答弁でははっきりいたしませんので、これは次の機会に譲りますので、先ほど申した資料を外務、通産両省から提出をしていただきたい。そのことをお願いいたします。
  339. 立木洋

    ○立木洋君 先日、核軍縮の問題と核脅迫、先制使用などの問題についてお尋ねしましたけれども、きょうは、非核三原則との関係でいままで何回か議論をしてきたわけですが、改めてこの問題についてお尋ねしておきたいと思います。  非核三原則の中で、特に通過を含む核の持ち込みの問題で、核の持ち込みはさせないという、それが何によって保障されるのかという点について、まず最初にお尋ねしておきたいと思います。改めて確認する意味で。
  340. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) 何によって保障されるのかと言われる意味を、ちょっと恐れ入りますが、わかりにくいので。
  341. 立木洋

    ○立木洋君 つまり、核持ち込みをさせないということですね。つまり通過を含めて核持ち込みをさせないと、これが何によって守られるのかというふうに言いかえてもいいかと思うんですが。
  342. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) ちょっと、まだ十分に御質問意味を理解していないかもしれませんが、わが国がそのような方針をたびたび政府も声明し、国会も議決をしておられますし、また、そのような方針に基づいて米国との間に事前協議制度を設けておる、こういう仕組みでありますことは御存じのとおりでございますから、あるいはもう少し先のお尋ねかと思いますが。
  343. 立木洋

    ○立木洋君 いや、そのことを一度確認しておきたかったのです。  それで、大臣御承知のように、この事前協議に核の通過がかかるということが、昭和四十三年の領海条約審議の経過を経て、その過程で通過の問題が改めて議論された。その中で、いわゆる核の通過は無害航行とは認めないと、核積載艦ですね、無害航行とは認めないということが問題になって、その時点でいわゆる事前協議にかかるというふうに主張され始めたというふうに理解してよろしいでしょうか。
  344. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) これは、従来から核搭載艦といったようなものについては非常にはっきりしておったわけでございますけれども、そうでない、一見核搭載艦であるかないかということが明瞭でない場合にどうすべきかということは、実は国会の質疑応答等を通じても不明確であったことは認めなければならないと思いますので、四十三年の機会にその点を明確にしたというふうに申し上げるべきかと思います。   〔理事増原恵吉君退席、委員長着席〕
  345. 立木洋

    ○立木洋君 それでお尋ねしますが、その領海条約と日米安保条約とはいわゆるどちらが優先的な条約というふうに判断されますか。
  346. 中島敏次郎

    政府委員中島敏次郎君) 大臣がいまお答えになられましたこと、それからまた、従来政府側から御答弁申し上げておりますことは、領海条約において無害通航の権利が確保されておるわけでございますが、その無害通航たるか否かの認定といたしまして、核常時搭載艦は無害通航とは認めないということになっております。したがいまして、無害通航の権利がそのような軍艦には保障、確保せられておらないということになるわけで、ということであれば、沿岸国の許可なり同意なりが必要になるということになりまして、アメリカの場合には日米安保条約がありまして、その同意に係らしめられておる事項というものが事前協議の対象という形で確保せられておるということでございます。
  347. 立木洋

    ○立木洋君 それはさっき大臣に答えていただいたからわかっているんですよ。どちらの条約が優先的に考えられるかということです。いまの内容とは別にして結構ですよ。
  348. 中島敏次郎

    政府委員中島敏次郎君) どちらの条約が優先するかとおっしゃられるんですが、ただいま私が御説明申し上げましたことは、いずれかの優先関係というものが出てこないという考えで御説明申し上げておるわけでございます。
  349. 立木洋

    ○立木洋君 矛盾が生じた場合にはどういうことになりますか。
  350. 中島敏次郎

    政府委員中島敏次郎君) 矛盾と申します事態を御説明いただけますと、もう少し何かお答えできるかと思いますが。
  351. 立木洋

    ○立木洋君 一般的に言って矛盾が生じた場合に、一般国際法といわゆるそれぞれの当事国が自由意思で結んだ条約との関係において矛盾が生じた場合には、一般的にはどういうふうになるのか。私は特定の場合を例に置いているんではなくて、一般的に言ってどういうことになるかということです。
  352. 中島敏次郎

    政府委員中島敏次郎君) 日米安保条約は一般国際法に合致するものとして締結されているわけでございます。
  353. 立木洋

    ○立木洋君 私が言っているのは、ここにそういう考え方が述べられていますけれども、日本において大体考えられておるのは、国際法が特定の国家間の合意に基づく条約として結ばれた場合と、一般国際法という関係において、特定の国家間の合意による条約によって一般国際法の適用は除外すると、つまり特別法は一般法を破るという原則がきわめて広範に妥当性が認められているという学者の見解があるわけですけれども、一般国際法といわゆる当事国同士が自由意思に基づいて結んだ条約との関係において矛盾が生じた場合にはそういう関係がなり得るという説明がありますけれども、こういう見解には賛成されるんですか反対されるんですか。
  354. 中島敏次郎

    政府委員中島敏次郎君) 大変たびたび伺うようで恐縮なんでございますが、一般的な問題として御質問いただきますと実は私必ずしもよくわからない。むしろ一般国際法に矛盾した形で特定の条約締結されるということ、そういう事態そのものをなかなか想定しにくいのでございますけれども。
  355. 立木洋

    ○立木洋君 次の質問を念頭に置いておられるからあなたは答弁しにくいんですよ。そういうことを抜きにして、学問的に言って私はどうかということを聞いているんですよ。ここにある学者が述べているんですよ。つまり、「国家が自らの自由意思締結した条約は、たとえ一般国際法と内容が違う場合においても、少なくとも条約当事国間においては、一般に有効なものとして認められているということである。その意味において、国際法においては、特定国家間の合意による条約によって、一般国際法の適用を排除する、「特別法は一般法を破る」という原則がきわめて広汎に妥当性を認められている、ということができる。」、しかし、このことは必ずしもこの原則は絶対的なものではないという注がついていますけれども、こういう見解が学説として妥当だというふうにお考えになっているかどうかという一般的なことを聞いているんですよ。
  356. 中島敏次郎

    政府委員中島敏次郎君) いま先生のお挙げになられました学説がどなたの学説であるか私よくわかりませんけれども、ともあれ、私当面感じますことは、一般法と特別法の関係というのは一般の国内私法における基本的な考え方であると思います。そのような考え方が当然に国際法の分野においても妥当するというふうには考えることはできないんじゃなかろうか、国際法の考え方というものがそういう私法上の原理がそのまま妥当して適用されるのだというふうに考えるべきではなかろうというふうに考えております。
  357. 立木洋

    ○立木洋君 この問題だけで論議していったらこれは時間たってしまいますから、こういう見解には条約局長は賛成されないということですね。そのことだけもう一遍念を押しておいて……。
  358. 中島敏次郎

    政府委員中島敏次郎君) その抽象的な御議論そのもので賛成かどうかという点であれば、私は当面の感じとしていま申し上げましたようなリザーベーションを感ぜざるを得ないということでございます。
  359. 立木洋

    ○立木洋君 それは次の質問を念頭に置かれておるからそういう見解が出てきたんだろうと思うんですよ。それはもうちゃんと打ち合わしてこられておるだろうと思って、大体そういう結論になるだろうと思います。  それじゃ、若干角度を変えて質問しますが、もしか仮に、アメリカ日本に対して核の通過、核積載艦が通過をするというふうな事実が、事前協議にかけることなしに行ったという事実が判明した場合、これは安保条約の違反になるんですか、ならないんですか。
  360. 中島敏次郎

    政府委員中島敏次郎君) いまの御質問アメリカ側が核の持ち込みを行う場合に事前協議を経ずして持ち込んだということであるとすれば、それは当然に安保条約の違反になるということでございます。
  361. 立木洋

    ○立木洋君 安保条約のどの条項に違反になりますか。
  362. 中島敏次郎

    政府委員中島敏次郎君) 先生よく御存じのとおり、安保条約第六条に基づく交換公文によって事前協議の制度ができております。その条項に違反いたします。
  363. 立木洋

    ○立木洋君 交換公文の中に通過という明確な文字がありますか。
  364. 中島敏次郎

    政府委員中島敏次郎君) 交換公文は、アメリカ合衆国軍隊の「装備における重要な変更」という立て方をしております。「装備における重要な変更」とは、たびたび御説明がありますように、核弾頭または中長距離ミサイルの持ち込み、またそれらの建設をいうということになっております。
  365. 立木洋

    ○立木洋君 核の通過というのは一言も入ってないでしょう、口頭了解事項の中には。
  366. 山崎敏夫

    政府委員(山崎敏夫君) 通過という言葉は入っておりません。
  367. 立木洋

    ○立木洋君 問題は、いわゆる核積載艦が日本に事前協議をかけずに通過するという事態が起こった場合、これはいま条約局長言われたように日米安保条約違反の問題なんですよ。これは、ただ単に違反するという問題ではなくて、重大な問題になるんですよ。いいですか。アメリカ日本に対して約束を明確に守らなかった。ところが、条約上違反になるかならないかという重大な問題が、条約条文の中にも一言もない。六条を受けてやった藤山・マッカーサーの口頭了解事項にも一言もない。いわゆる核の装備云々という問題なんです。この解釈がどう解釈されるかということがいままで国会で論議されてきた。そういう重大な問題が明確に書かれていなくても、それが事実上事前協議が行われずに核通過した場合には条約違反になると明確にいま条約局長言ったんですからね。条約違反になるようなことが明文化されないで、解釈上どうなるかわからないようなあいまいな形にしておいて、それで核が持ち込めない、持ち込んだ場合には条約違反です、そんなようなことがなぜ言えるんですか。当事国間が結んだ重要な安保条約ですよ。こんなあいまいな形にしておいて、それは条約違反になりますなんてのうのうとそこで答弁されて、それで納得できると思うんですか。
  368. 山崎敏夫

    政府委員(山崎敏夫君) たびたびで恐縮でございますが、もう一回御説明さしていただきますと、安保条約の第六条の実施に関する交換公文には事前協議の対象の一つとして、「同軍隊の装備における重要な変更」ということが挙げられておる。その「装備における重要な変更」とは、先ほど条約局長も申しましたように、「核弾頭及び中・長距離ミサイルの持込み並びにそれらの基地の建設」を言うということが藤山・マッカーサー口頭了解で明らかにされております。  そこで、ポイントはその安保条約第六条の実施に関する交換公文にあります「同軍隊」でございまして、この「同軍隊」とは何かということは、これは文脈上はっきりしておるわけであります。すなわち、日本に配置されておるかどうかということにかかわりなく、安保条約の適用を受けるすべての合衆国軍隊を言うんだということになっておりまして、これはすなわち具体的に申しますと、日本に配置された軍隊あるいはわが国の施設・区域を一時的に使用している軍隊及び領海、領空を通過する等わが国の領域内にある軍隊ということになるわけでございます。これは文脈上明らかでございます。したがって、その意味で明確になっておると存じます。
  369. 立木洋

    ○立木洋君 そのように解釈されて、そのように何回も繰り返し私たち答弁を聞いてきたんですね。そういうふうに大臣も言われてきたし。しかし、われわれが考えた場合、これほど重要な問題、それが交換公文の中にも明確にされていない。そして、特に問題になったのは、これが事前協議にかかるということが明確にされたのは四十三年の領海条約審議以降なんです。そして藤山・マッカーサーの口頭了解事項、つまり安保条約改定される時期に協議されてきた内容について、その時期からこの口頭了解事項というのは一貫しておりますし、その後この問題についてつけ加えることは何もありませんし、その後この問題で依然として妥当であったということが確認されましたという答弁もいままで繰り返しあったわけですね。  だから、四十三年の領海条約以前については、宮澤外務大臣も前回衆議院の、昨年の六月でしたか、答弁されております。六月の十八日、アメリカの核の通過を事前協議の対象としてアメリカが了解していたのかどうかという質問をうちの松本善明議員がしたときに、あなたは、あるいはそうであったかもしれませんし、そうでないかもしれない、それは実際はわかりませんと、こう言われたわけです。つまり、四十三年以前は事前協議の対象に核の通過が入っていたのか入っていなかったのか、アメリカがどういうふうに認識していたのか、それは実際にはわかりませんという答弁をされたわけです。そして領海条約以降になってその問題が、先ほどの答弁にありましたように、明確にされましたと、それまではあいまいな点がありましたけれども明確されましたと。そうすると、安保条約の事前協議の内容自体が、藤山・マックのいわゆる安保条約改定以後四十三年領海条約審議の経過を経て、安保条約の事前協議の内容自体もやはり変更をしたというふうに主張することはどうしてもまかりならぬという御趣旨でございますか。
  370. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) これはもう何度もお尋ねもあり御議論をしておりますけれども、そういうことにはならないと私は思いますのは、少なくともこの時点以降は非常にはっきりしておりましょうと、それより前の時点にはどうかというお尋ねで、それはまあ確かにそこまで詰めて考えていなかった点があるかもしれませんと申し上げた。そうすると松本議員は、それならその、わかっていたかもしれない、わかっていなかったかもしれないということかとおっしゃいますから、論理的にはそれはそう申し上げるよりほかはございませんでしょうと、しかし、少なくともこの時点以降は非常にはっきりしておりますと、もともとこの第六条には「日本国における合衆国軍隊」と書いてあるのであって、領海に入っておる合衆国軍隊は日本国における軍隊であることは、これはこれ以外の理屈は私はあり得ないと思いますがというようなお答えをしておるのでございます。
  371. 立木洋

    ○立木洋君 いや、あるいはそうであったかもしれませんし、そうでないかもしれません、それは実際はわかりませんというのは、大臣御自身の言葉であります。これは、善明さんがそういうふうに聞いて、大臣が、理論的にはそうなるかもしれないという答弁ではありません。大臣御自身がそういうふうに述べられている。
  372. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) そのとおりです。
  373. 立木洋

    ○立木洋君 それで、次に発展さしていくともう時間が足りませんから最後に一点だけに限ってお聞きしておきますけれども、いわゆる実際に核が通過しておるのかどうかという問題について言うならば、これは日本が査察する権限はないわけですよ。アメリカの軍艦の中へ行って調べることもこれはできない。だが、実際には、いわゆる核は絶対に通過しておりませんという断定ができるのには、事実に基づいて初めてそういう断定ができるだろうと思うんですよ。もちろんわれわれも、核が持ち込まれてきておる疑いがあると言っても、核が絶対に入っているじゃないかと言ったら、われわれは核がここに入っているじゃないかと持ってこないとこれは事実にならないから、そういう議論をやっておったんではあれですから、一応明確にしておきたいのは、つまり日本自身として核が通過している、アメリカの核積載艦が通過しておるのかどうかということを調べる事実がこれは明確にないわけですから、調べることができない。ただ、いままで繰り返し言われているのは、アメリカを信頼しアメリカが事前協議をかけるということになっておりますからそれを信頼する以外にはございませんということだと思うんですね。そういうことですね。そういうことでいいんですか。
  374. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) それから先はどういうお話になるんでございましょうか。
  375. 立木洋

    ○立木洋君 どうも宮澤さんは疑い深くなってきて、私が質問すると……。つまり、事実を確かめることができないから、本来正確な科学的な立場で言うならば、いわゆるアメリカを信頼する云々は別にして、事実としては通過しているかもしれないし通過していないかもしれない。事実を確かめることができないという立場を、科学的な第三者の立場で言うならばそういうふうな表現になるだろうと思うんですが、それはどうですか。
  376. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) そこが私の悪いとこでございまして、松本議員にもそういう論理的なお答えをしたもんでございますから、いつまでも速記録へ残って何度もお話しになるのでございますから、いまのような御質問には、日本政府としては通過していないものと信じますと、こうお答えいたします。
  377. 立木洋

    ○立木洋君 前の答弁から教訓を学ばれたわけですね。(笑声)しかし、これはだれが考えてみても、大臣がそういうふうにお答えされたけれども、実際にアメリカの首脳陣が言っていることがすべて事実であるというふうには私は信じないんですよ。ウォーターゲート事件にしたって何にしたって、いままでアメリカの首脳陣うそついていることがたくさんありますよ。そして、いろいろなアメリカ側との文書を見ても、日本の政策に背馳しませんとは書いてある。その前に、アメリカの立場を害することなくということが必ず書いてあるんですよ。どちらにも通用できるように書いてあるんですよ。これは、ですから、事実が明らかにならない限り核は通過しているかもしれないし通過していないかもしれないというのが、いわゆるイデオロギーを抜いた場合に第三者が考える私は最も妥当な考え方だろうと思うんですよ。いわゆる共産党だとか何とかという立場を抜きにしても、あるいは政府・与党という立場を抜きにしても、現実に調べることがないわけですから、そうして一切うそを言ったととがないというんではないんですから、うそを言っていることは何回もあるんですから、時間がないから例を挙げませんけれども。  そうすると結論的には、通過しているかもしれないし通過していないかもしれないというのが私は結論だと思うんです。これに対して答弁をいただきますと、またいろいろ言われますから、もうその点については答弁は要りませんけれども、ですから私はこの問題に関して言うならば、核防条約日本が加入するという点で言いますと、これは国連の安保理で決議の内容もありますし、いわゆる日本アメリカの核のかさにより組み込まれる。先ほど来、いわゆる核の勢力圏における対立等々の話も論議に出ましたけれども、そして日本核兵器を全面禁止していくという展望を掲げ——高く掲げておられるかどうかは私は疑問を持っておりますから言いませんけれども、しかし、一応そういうふうに言われている。しかしアメリカの核のかさにより入って、核大国間のいわゆるブロックに、対立する状態に永久に日本が縛られていくというふうな考え方については、私たちとしてはどうしても納得できない。だから危険な状態のもとでは、核の通過も論理的には可能性が残されているわけです。ですからそういう可能性も私はあり得るだろうというふうに考えております。時間がありませんのでこの点についての御答弁は要りません、私のことを一方的に述べておきます。そして次の機会にこの問題をさらに発展させて……。一言言われますと、一言また返さないといけませんから、時間がないので、これできょうはやめさせていただきます。次に譲ります。
  378. 中村利次

    中村利次君 非核三原則を持ち、核兵器の非保有国であって、なおかつ、原子力の平和利用については積極的な開発を進めていかなければならないわが国の立場が、この条約の批准によって国際的に正しく認識されるというメリットがあるとすれば、私はやっぱりこの条約そのものも正しく評価されなければならないと思いますし、わが党もまたこれに賛成の立場をとっているわけです。  しかし、この条約にやっぱり多くの問題点があることもこれは間違いないと思いますし、あるいは不平等性についての指摘があることもこれはゆえないことではないと思うんです。まあそういう意味では、これはもうすでに衆参両院の議論でも指摘をされておりますように、この条約の批准は、批准することによって核防の成果が成るんだということではなくて、批准をして批准国として核防の成果について日本がどういう役割りを果たしていくのか、いろいろな意味での核防条約の批准はスタートであると言われるゆえんがそこにあると思うんです。  そういう意味からして、批准国になりますと、まず査察の問題が起きてくると思うのですが、これは予備折衝でユーラトム並みということになって、これは私はやっぱりそれなりに評価すべきだと思うのです。ただ、各国の原子力の開発はどんどん進んでいくわけである。その場合の査察の問題ですが、技術的な面から言っても、あるいは量的な面から言っても、やっぱりこれは大変な問題が国際原子力機関としてあるはずなんですね。そういう意味から言えば、国際原子力機関による査察の結果、これはどういうぐあいになっているんですか、どういうぐあいに発表されているんでしょう、まず最初に。
  379. 半澤治雄

    政府委員(半澤治雄君) 国際原子力機関の行います査察の結果につきましては、現在の、私どもは二国間協定に基づいてやっているのでございますけれども、この二国間協定に基づくものであっても、それからこの条約のもとにおきましても、査察を受けた当該相手国にのみ通報されるわけでございまして、いわゆる公表という形はとっておりません。
  380. 中村利次

    中村利次君 これはやっぱりいろいろな問題をはらんでおると思います。相手国だけに通知をして公表はしてない、そうなりますと、条約の中に守秘義務というのはうたわれているんですか。
  381. 半澤治雄

    政府委員(半澤治雄君) IAEAの職員の守秘義務はうたわれてございます。
  382. 中村利次

    中村利次君 そうすると、わが国の立場から言っても、これは自主開発を積極的に進めていかなければならぬ。その場合、商業機密等の問題も当然起きてくるわけでありますけれども、それは全く心配がないということですか。
  383. 半澤治雄

    政府委員(半澤治雄君) 先生御案内かと思いますが、この条約に加入いたしませんでも、日本の原子力施設にはすべて査察が現在かけられております。それはアメリカ、イギリス等二国間協定に基づいて国際原子力機関の査察を受けることになってございますから、現在すでに査察を受けておるわけでございますが、現在受けております査察は限定がございません。いついかなる場所にもいかなる資料にも近づけるというマニュアルでございまして、したがって、そういう意味では、仕組みとしての商業機密を守るという点では弱い点があるわけでございます。ところが、この条約下における保障措置協定では、その保障措置協定の中に秘密が漏れないようにするための幾つかの仕組みを協定の部分として組み入れてございます。少し例示的に申し上げますと、たとえば非常に機微な情報を有するような設計情報、設計情報を審査するわけでございますが、設計情報は、日本わが国の家屋内で行う、ほかへ持ち出し禁止ができるとか、あるいはそういう秘密のあるような場所はブラックボックスと称しておりまして、出口と入口だけを出せばよろしい、中の仕組みは出さなくてよろしいというブラックボックス方式というものを認めておりますし、それから国際原子力機関の査察員の立ち入る個所を現行と違いまして限定することができます。立ち入り個所を特定いたします。それから国際原子力機関が査察を行います場合には、わが国の職員が必ず立ち会う、と申しますよりも、新しいこの協定のもとにおける保障措置制度では、わが国の査察が主体になりまして、その一部に国際原子力機関の職員を立ち会わせるといった、幾つかの秘密を守るための仕組みが協定の中に組み込まれまして、それにさらに守秘義務がかかるというような形になっておるわけでございます。
  384. 中村利次

    中村利次君 この問題で聞きたいことはたくさんある、時間は短い。それで、憂いはないということに受け取っておきます。  それから、先ほど申し上げましたように、技術の開発はどんどん進んでいく、量的にも各国の開発がどんどん進んでいけば、査察の面でやっぱり粗漏の点が出てきはしないかという憂いがありますね。これはどうですか、いまの国際原子力機関の査察の面で、今日及び今日以降、問題はないとお考えかどうか、十分だとお考えかどうか。
  385. 半澤治雄

    政府委員(半澤治雄君) 現在の国際原子力機関の保障措置というのは、私は有効に機能していると思いますけれども、この分野における技術の発展も相当著しいものがございまして、したがいまして、事務総長の諮問機関として常設の技術委員会なども、これは日本の提案でございましたけれども、設けられておりまして、技術的な側面における諸問題の解決、発展ということは当然に必要であろうというふうに考えております。
  386. 中村利次

    中村利次君 これはどうも私は何か姿勢がきわめて消極的なような気がするんですよ。これは必ず問題になると思うんですよ。その場合、批准後、批准国として日本がどういう役割りを果たすのか、やっぱり問題がある場合には問題を解消していかなきゃならないわけですから、国際原子力機関の機能の強化あるいはその改組等々を含めて、わが国が果たして正しく対応できるような、そういうIAEAの機能を持てるような、持つための役割りを果たす意思があるのかどうか、漫然と批准をして漫然と批准国として過ごす、役割りも大して果たさない、姿勢も消極的であるというのは、どうも納得できないんですがね。
  387. 半澤治雄

    政府委員(半澤治雄君) 先生も御案内のように、わが国は国際原子力機関の中でも三番目の出資国でございまして、私ども考える以上に、国際原子力機関で行います各種の審議会とか、ディスカッションとか、そういう面での協力は実はかなり行っておるわけでございます。この保障措置技術に関しましても、先ほど申し上げました常設の諮問委員会に非常に有能な方の出席をお願いしてございますし、それからいろいろな研修コースなどにもわが国の職員が派遣される、原子力機関の中の、中の職員としてもこれもまだ足りないんでございますけれども、派遣されて勤めておるというようなことで、私どもは国際原子力機関の中で、まだまだ十分とは申し上げられないかもしれませんが、相当な活動をしておると、これはまあ自画自賛になるかもしれませんけれども、考えているわけでございます。
  388. 中村利次

    中村利次君 わが国の役割りといったって、そういうミクロの立場じゃなくて、もっとマクロ的に、国際原子力機関の機能が果たして正しくこの査察問題についても、今日あるいは今日以降、機能が正しく発揮できるのかどうか、これについては相当問題があるんではないかということを指摘しているわけなんです。しかし、これはどうもこんなことを言っておると、もう短い時間がおしまいになっちゃうわけですから、次へ進みますけれども、私はこれを問題点として指摘をしておきたいと思うんです。  ついでに、科技庁に質問をしますけれども、これはやっぱりいろいろいままでも問題になってまいりましたね、計量管理等についても計量ミスが生ずる、あるいは説明のつかない物質が生ずる、こういう場合、これはどういうことになっていますか、いまのこの国際原子力機関……。
  389. 半澤治雄

    政府委員(半澤治雄君) やや形式的な議論で恐縮でございますが、計量は義務づけてございますから、所定の期間内にその測定をしまして、それを記録として備えつけ、かつ報告を出すことになってございますし、その報告の信憑性を確認する意味で立ち入り検査を行うということになってございます。これは現状でございますが、御指摘のように行方不明量という概念がございまして、これは当該事業の許可を行います際に、工程別に一応数字を明らかにしてございます。それを超えました場合には、行方不明量として遅滞なぐ報告すべき旨の義務を課してございます。最近再処理怖設のテスト中にそういうケースがございまして、直ちに調査を行いまして、当該行方不明量の発生いたしました原因等についての解析を行ったというような事例がございます。
  390. 中村利次

    中村利次君 なかなかどうもこれは突っ込んだ質問ができないのだ、これは、かみ合わないんですね。  それから核ジャック防止については、これはやっぱりわが国だけじゃなく、国際的にもいろいろ問題になっておる。伝えられるところによりますと、国際原子力機関で核ジャック防止のためのガイドラインを考えておるということが言われておりますけれども、それどうなっておるのか、あるいは、これはわが国の原子力委員会の中に核物質防護専門部会をつくろうとしていらっしゃいますね、これはやっぱりこういうIAEAとの関連をお考えになっておるのかどうか。これも時間がないんですがね、もうきわめて簡単にひとつお答え願いたい。
  391. 半澤治雄

    政府委員(半澤治雄君) 核物質の盗難防護につきましては、現在の法律の体系の中でもかなりきちっとやっているつもりなんです。しかし、いま御指摘のように国際的にも非常に関心が高まりまして、昨年の九月に国際原子力機関はガイドラインの勧告をいたしてございます。それからこれも御指摘のように、だんだん取り扱う核物質の量もふえてまいっておりますから、問題はより重要化しつつあるというように考えておるわけでございまして、これも御指摘のように、国際原子力機関のガイドライン等を踏まえまして、国内、関係する官庁が非常に多うございます、この核物質防護問題につきましては。そこで原子力委員会に核物質防護のための専門部会を先月つくりまして、国際的なガイドラインとわが国の法制との適用関係のチェックであるとか、基本的な方針の策定であるとかいった問題を、原子力委員会の機構としても取り上げて進めるという形にしたわけでございます。
  392. 中村利次

    中村利次君 どうも、これはまことに、全部中途半端になっちゃうんですがね、どうしてもやっぱり最後に聞いておきたいことがありますから……。  この核防条約の中でも、不幸にして中国やフランスはここに参加をしないという実態、それから軍縮委員会でもこれは事実上フランスは参加しないといいますか、出てこないということのようですね。この軍縮委員会も、やっぱり重要な課題になると米ソのいわゆる超二大国の間の話し合いに移されて、非常に極端な言い方をすると、事実上軍縮委員会が有名無実というような運営のようですけれども、そういう意味では、やっぱりこのままでは世界の軍縮の促進、核防問題を含めてですよ、何かやっぱり超大国間にゆだねられて、そういうものがあるために入っていかない国もある、構成国でありながら出席しない国もある、あるいはそういう問題の関連で中国やフランスなんかは核防条約に入ってこないと、こういうことになりますと、やっぱりこの軍縮問題にしろ、核防問題にしろ、まさにこれは骨抜きということになりまして、これは今日以降の課題であり、努力目標でしょうけれども、何とかひとつこれはわが国の役割りというか、芸はございませんか、外務大臣
  393. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) 中国もフランスも、この条約に加盟しないことについていろいろの説明をしておりますけれども、確かにその気持ちの中に、これは米ソ、二大巨大国による核の一種の独占と申しますか、覇権であるという思想があるであろうことは、中村委員の御指摘のとおりであると思います。翻って現実の問題といたしまして、いま確かにこの米ソの核の能力に比べますと、他の三国のものははるかに劣るように考えられますし、また、ただいまのところそのギャップを埋めるような努力も、中国のことは実ははっきりわかりませんが、英仏においてはあるようには思えない。中国自身は、自分のところは全く防衛的なものであるということを言っておりまして一最近の資料によると、どうもそういう変化が見えるようなことも観察されるわけでございます。それでございますから、ともかく米ソの間で核軍縮を、これも先日来何度も御説明申し上げておりますように、決して天井は思うほど低くないわけですけれども、天井を設けて制限をしていってもらおうというのが第一着手であるということは、私は現実のステップとしては認めていただいていいことではないか。それについては、私ども軍縮委員会や国連の機会においていろいろな意味でできる限りの圧力をかけておいて、これはまた力はないということじゃなくて、やはり、米ソとも自分の友好国というものは大事にしなければならないという立場がございますから、いろいろな意味での圧力になっておると思います。  残されました中国とフランスでございますが、先年の再検討会議でも、中国もフランスも加盟をすることをわれわれが望むということを言っているわけでございまして、しかし、おのおの主権国家としてただいままでのところ加入をしていないというのが現状でありますけれども、われわれとしては、やはり呼びかけてこれに入ってもらうというのが本節の考え方である、今後ともそういう活動は続けていきたいと思っておるわけです。
  394. 中村利次

    中村利次君 もうおしまいになりましたから、質問はしませんけれども、最後に一つ要望をしておきたいと思います。  いま大臣の御答弁がございました。私もやっぱりこれは積極的な努力をしていただかなければならないと思うんです。現実は厳しいといたしましても、やっぱり中国やフランスなんかの入らない核防条約というものは、まさに国際的に言えば問題であることは間違いないし、それから軍縮問題にいたしましても、非核国が全く無力感が強過ぎるようなあり方では、国際平和の上でもあるいは軍縮問題を問題にする上でも確かに問題がある。非常に厳しい現実は現実として、そういう中でも核防条約の批准国として、あるいは平和国家、平和憲法を持っておるわが国としての役割りというものを私はもう一回考え直していただいて、肝に銘じて努力をしていただくように強く要望をして、私の質問を終わります。
  395. 高橋雄之助

    委員長高橋雄之助君) 本件の質疑は、本日はこの程度といたします。     —————————————
  396. 高橋雄之助

    委員長高橋雄之助君) 次に、在外公館の名称及び位置並びに在外公館に勤務する外務公務員の給与に関する法律の一部を改正する法律案衆議院送付)を議題といたします。  政府から趣旨説明を聴取いたします。宮澤外務大臣
  397. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) ただいま議題となりました在外公館の名称及び位置並びに在外公館に勤務する外務公務員の給与に関する法律の一部を改正する法律案について提案理由及び内容の概要を御説明申し上げます。  この法律案におきましては、まず、スリナム、カーボ・ヴェルデ、サントメ・プリンシペ及びモザンビークの諸国にそれぞれ兼轄の大使館を設置するほか、在ウジュン・パンダン及びホラムシャハルの各日本国総領事館を実館として設置することとしております。  次に、これら新設の在外公館につきまして、これらの公館に勤務する在外職員の在勤手当の額を定め、あわせて既設の公館につきましても物価上昇、為替相場の変動等を勘案し、在勤基本手当の基準額及び研修員手当の額を改定いたしますとともに、戦争、内乱等の特別事態が発生した地に所在する特定の在外公館に勤務する在外職員に支給する在勤基本手当の額を定めることといたしております。  なお、本法律案は昭和五十一年四月一日に施行されることを想定しておりましたが、これが実現されませんでしたので、所要の調整を行うため、衆議院においてその附則の一部が修正されましたので、申し添えます。  以上が、この法律案の提案理由及びその内容の概要であります。  何とぞ、慎重御審議の上、速やかに御賛同あらんことをお願いいたします。
  398. 高橋雄之助

    委員長高橋雄之助君) 本案の質疑は後日に譲ります。  本日はこれにて散会いたします。    午後八時十五分散会      —————・—————