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国務大臣(
宮澤喜一君) ただいま
委員長の仰せでもございますので、最近の
国際情勢につきまして簡単に御
説明を申し上げます。
まず、
アジア情勢についてでございますが、インドシナ
地域におきましては、戦後の復興と新しい秩序の形成に向かって努力が進められております。南北ベトナムの統一も近く行われるというふうに見られておりまして、インドシナにおけるハノイの指導的地位が次第に高まってきておるものと見られます。
他方、ASEANの諸国は、おのおの国内に各種の不安定要因を抱えていることもございまして、当面最大の脅威は、外部からの侵略よりはむしろ国内の不安定にあるという認識が
共通しておるように存ぜられます。したがって、
各国とも国内の政治的、
経済的、社会的な基盤の
強化――いわゆるレジリエンスと言われておりますものでございますが、その点に最大の重点を置きまして、また同時に、
相互間の連帯と
協力の
強化に一層の努力を払いつつ、先ほど申し上げましたインドシナ諸国との
関係改善の努力をも続けているという状況でございます。
先般、二月二十三日及び二十四日の両日、インドネシアのバリ島で初めてASEANの首脳
会議が開かれました。この
会議が開かれたということは、このようなASEAN諸国の姿勢のあらわれであると存じます。また、
会議におきまして、従来の
経済、社会面での域内
協力に加えまして、政治面での
協力という問題も前面に出てまいっております。しかしながら、安全保障に関する
協力につきましては、ASEANとしてではなく、二国間のベースで行うということをわざわざ言っておりまして、この点はASEANが軍事同盟視されないようにという配慮と見られます。なお、ASEANの門戸を現在の五カ国ばかりでなく、他の東南
アジア諸国にも開放するという立場をとっておりまして、これは恐らくはインドシナ諸国との協調
関係に配意をしているのではないかと思われまして、注目をされる点でございます。
次に、日中
関係でございますが、一九七二年九月に日中共同声明が出されまして以来、共同声明に記されております実務
協定、貿易、航空、海運、漁業でございますが、各
協定のすべてが
締結されるに至りまして、
関係は着実に進展をしております。
なお、
日中平和友好条約締結の
交渉につきましては、昨年も御報告いたしましたとおり、昨年の九月にニューヨークで中国の喬冠華外交部長と長時間にわたって話し合いをいたしました。その結果、この問題についての
両国の
相互理解は深まったものと考えております。日中
両国ともこの
条約の早期妥結の熱意においては一致しておりますので、今後とも日中永遠の平和
友好関係の基盤とするにふさわしい
条約が、
両国国民に真に納得のいく姿で早期に
締結されますよう、
政府としても格段の努力を払ってまいる所存でございます。
なお、現在、中国国内で行われております批判闘争につきましては、真相等について十分な情報を持ち合わせておりませんし、事態はまだ流動的であると考えられます。ただ、現在のところ、喬冠華外交部長が依然として外交の衝に当たっておるというふうに考えられまして、さしずめ日中
関係に大きな影響が起こるのではないかという徴候は、ただいまのところはあらわれておりません。
次に、日ソの
関係でございますが、日ソ間の最大の懸案であります領土問題に関しまして、去る一月、グロムイコ外相が来日しました際、わが方より北方四島の一括返還を強く主張いたしましたが、遺憾ながらこの問題についてのソ連側の態度は依然としてかたくございまして、双方はこの問題につき
交渉を継続することに合意をした次第でございます。
他方、モスクワにおきましてソ連邦共産党大会が開催をせられ、その機会にブレジネフ書記長は、あたかも北方領土に対する
わが国の主張が第三国の教唆に基づく不法な要求であるかのごとき、事実に反する発言を行いましたので、三月一日、外務省橘欧亜
局長から、ちょうど駐日ソ連大使は
会議出席のため不在でございますので、ツェホーニャ臨時代理大使を招致いたしましてソ連側の注意を喚起いたしますとともに、この問題についての
わが国の基本的立場を改めて明確にいたした次第でございます。
次に、
経済問題につきまして、国際
経済協力会議の
関係を御報告いたしたいと思います。
昨年十二月の本件の閣僚
会議の決定に基づきまして設置されました四つの
委員会、すなわちエネルギー、一次産品、開発、金融の四
委員会は、パリにおきまして去る二月十一日より二十日まで第一回の会合を開催いたしました。
御
承知のように、この
会議は一九七三年秋の石油危機に端を発しましたエネルギー問題解決のための産油国と
消費国との間の対話というものの動きが、昨年の四月及び十月の二回にわたります準備会合を経まして次第に形を整えまして、そして先進工業国、いわゆる
消費国、それから産油国並びに非産油の発展途上国、三者の構成のもとに、その
内容も南北問題全般についての討議へ拡大した形で実現をいたしたものであります。
今回の会合におきましては、今後の作業計画の大枠について合意が成立をいたしますとともに、エネルギー
委員会を除きまして他の三つの
委員会では実質的な討議が行われました。発展途上国は、エネルギー
委員会におきましては、いわば受け身の立場にあることもございまして、特に
審議を急ぐような動きは見せませんでしたが、他の
委員会、一次産品
委員会あるいは開発
委員会等におきましては、実質問題の
審議を促進したいという動きを示したことが顕著でございます。結局、全体としては、予備的な討議を行うということに終始いたしました。それによりまして第二回の会合、これは三月の下旬開催でございますが、それにつなぐというかっこうになったわけでございます。
なお、この二月の各
委員会の会合では、先進国、発展途上国双方とも対決を避けて対話を促進しようという姿勢を維持いたしましたために、討議は比較的
友好的な雰囲気のもとに推移をいたしました。第二回の会合におきまして、各
委員会とも実質討議を本格化するものと予想いたしております。
わが国といたしましては、この
国際協力会議におきまして
友好的な対話を行うことによって世界のエネルギー情勢が少しでも
安定化の方向に進むことを希望をいたしております。本
会議が実りある成果を生むように今後とも努めてまいりたいと存じております。
なお最後に、いわゆるロッキード問題でございますが、昨年から米国の上院銀行
委員会及び上院外交
委員会多国籍
企業小
委員会で
調査が進められてまいりましたが、去る二月四日及び六日に多国籍
企業小
委員会の公聴会が開かれまして、その際、
日本に関する幾つかの
資料が公表され、また、
わが国におけるロッキード社の販売活動について種々の証言があったわけでございます。
政府といたしましては、
わが国の政治の名誉のためにも本件の真相を究明すべきであるとの考え方に立ちまして、すでに数次にわたりまして米国
政府に対し、米側が保有している
関係資料をすべて提供するよう要請をしてまいっております。米側もこれにこたえまして、すでに上院多国籍
企業小
委員会の保有する
資料を提供してまいっております。なお、
政府は引き続き米側より可能な限りの
資料の入手方に鋭意努力中でありまして、
日本時間の二月二十五日には、東郷大使よりインガソル国務副長官に対しまして――これはキッシンジャー国務長官か不在でございますので、インガソル国務副長官に対しまして、
関係者の氏名があればそれを含めてすべての
関係資料を明らかにすることが、
日本の政治ひいては長期にわたる日米
関係のためにもよいという趣旨の三木総理大臣発フォード大統領あての親書並びに二十三日に採択されました本院並びに衆議院の決議文を手交いたしました。これに対しまして、米
政府は目下わが方の要請に対していかなる形でこたえるかにつきまして鋭意
検討を進めておるように存ぜられます。したがいまして、三木首相の書簡に対してフォード大統領の返書がいずれ到着するものと考えております。
以上でございます。
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