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1976-08-17 第77回国会 参議院 ロッキード問題に関する調査特別委員会 閉会後第23号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十一年八月十七日(火曜日)    午後一時四十一分開会     ―――――――――――――    委員異動  八月十二日     辞任         補欠選任      小谷  守君     青木 薪次君      野々山一三君     野田  哲君      矢田部 理君     久保  亘君  八月十三日     辞任         補欠選任      矢原 秀男君     峯山 昭範君  八月十四日     辞任         補欠選任      小巻 敏雄君     内藤  功君  八月十六日     辞任         補欠選任      下村  泰君     市川 房枝君     ―――――――――――――   出席者は左のとおり。     委員長         剱木 亨弘君     理 事                 岡本  悟君                 林田悠紀夫君                 瀬谷 英行君                 黒柳  明君                 橋本  敦君                 田渕 哲也君     委員                 大島 友治君                 岡田  広君                久次米健太郎君                 青木 薪次君                 上田  哲君                 久保  亘君                 寺田 熊雄君                 野田  哲君                 峯山 昭範君                 内藤  功君                 市川 房枝君    国務大臣        法 務 大 臣  稻葉  修君        文 部 大 臣  永井 道雄君        国 務 大 臣        (内閣官房長        官)       井出一太郎君        国 務 大 臣        (防衛庁長官)  坂田 道太君    事務局側        常任委員会専門        員        池部 幸雄君    説明員        防衛庁防衛局長  伊藤 圭一君        防衛庁装備局長  江口 裕通君        法務省刑事局長  安原 美穂君        大蔵政務次官   細川 護熙君        大蔵省主計局次        長        松下 康雄君        国税庁次長    山橋敬一郎君        文部省初等中等        教育局長     諸沢 正道君        運輸省航空局長  高橋 寿夫君        運輸省航空局次        長         松本 操君     ―――――――――――――   本日の会議に付した案件 ○ロッキード問題に関する調査  (ロッキード問題に関する件) ○証人出頭要求に関する件     ―――――――――――――
  2. 剱木亨弘

    委員長剱木亨弘君) ただいまからロッキード問題に関する調査特別委員会を開会いたします。  まず、委員異動について御報告いたします。  去る十四日、小巻敏雄君が委員辞任され、その補欠として内藤功君が、昨十六日、下村泰君が委員辞任され、その補欠として市川房枝君がそれぞれ選任されました。     ―――――――――――――
  3. 剱木亨弘

    委員長剱木亨弘君) この際、証人出頭要求に関する件についてお諮りいたします。  ロッキード問題に関する件について、小佐野賢治君を証人として来る八月二十六日午前十時に出頭を求め、その証言を聴取いたしたいと存じますが、御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  4. 剱木亨弘

    委員長剱木亨弘君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。     ―――――――――――――
  5. 剱木亨弘

    委員長剱木亨弘君) ロッキード問題に関する調査を議題といたします。  稻葉法務大臣から発言を求められておりますので、この際、これを許します。稻葉法務大臣
  6. 稻葉修

    国務大臣稻葉修君) 検察当局は、ロッキード事件のうち丸紅関係については、去る六月二十二日以来、同社参与大久保利春、同伊藤宏及び同社取締役檜山廣議員証言法あるいは外為法違反によりそれぞれ逮捕し、丸紅関係におけるロッキード社からの資金の流入状況、その使途及び趣旨等について鋭意捜査を続行したところ、前内閣総理大臣田中角榮及び元内閣総理大臣秘書官榎本敏夫について、いわゆるピーナツ及びピーシズ領収証に見合う合計五億円の外為法違反容疑が濃厚となり、七月二十七日両名を逮捕し、身柄を拘束の上、取り調べを続けた。  その結果、前記檜山については去る八月二日、大久保及び伊藤については八月九日、いずれもジョン・ウィリアム・クラッターと共謀の上、ロッキード社のためにする支払いとして、居住者である榎本田中に対し合計五億円を支払った事実により東京地裁公判請求し、前記榎本については八月九日、右五億円を受領した事実により同地裁公判請求をしました。  検察当局は、このように合計五億円に及ぶ外為法違反事実について捜査処理を行う傍ら、この趣旨等についても鋭意捜査を行ったところ、前記檜山大久保及び伊藤については贈賄田中については受託収賄の事実が明らかになったため、昨八月十六日、前記四名を東京地裁に対し公判請求しました。  被告人檜山、同大久保、同伊藤及び同田中に対する公訴事実の要旨は次のとおりであります。  被告人檜山廣ロッキード社等販売代理店として同社製造のL一〇一一型航空機全日空に販売するなど内外物資の輸出入・販売事業を営む丸紅代表取締役社長、同大久保利春同社取締役兼機械第一本部長、同伊藤宏同社取締役社長室長の任にあった者、被告人田中角榮昭和四十七年七月七日から同四十九年十二月九日までの間内閣の首長たる内閣総理大臣として、内閣を代表して行政各部を指揮監督するなどの職務に従事し、航空運送事業事業計画変更等の業務に関する許可、認可及び右事業の発達、改善、調整など運輸省所管事項全般に関する職務を統轄する運輸大臣を指揮監督する職務権限を有していた者であるが、一つ被告人檜山、同大久保、同伊藤は、いずれも右在任中、ロッキード社社長カール・A・コーチャンと共謀の上、昭和四十七年八月二十三日ころ被告人田中方において、同被告人に対し、丸紅及びロッキード社利益のため、右職務権限に基づき、前記L一〇一一型航空機全日空購入せしむるよう尽力されたい旨請託し、これが実現した場合は右請託報酬として現金五億円を供与することを約束した上、同年十月三十日、全日空がL一〇一一型航空機購入することに決定したところから、右約束に基づき昭和四十八年八月十日から同四十九年三月一日までの間、前後四回にわたり、前記被告人田中方において、同被告人に対し、榎本敏夫を介し、現金合計五億円を供与し、もって被告人田中前記職務に関し贈賄し、第二に、被告人田中は、前記一に記載の日時、場所において被告人檜山らから、同記載請託を受け、その報酬として現金五億円の供与を受けることを約束した上、右約束に基づき、前記榎本敏夫を介して、同記載現金五億円を収受し、もって自己の前記職務に関して収賄し、本邦に住所を有する居住者であるが、同じく居住者である前記榎本敏夫共謀の上、法定の除外事由がないのに、昭和四十八年八月十日から同四十九年三月一日までの間、前後四回にわたり、東京都内において、被告人伊藤らから非居住者であるロッキード社のためにする支払いとして現金合計五億円を受領し、もって非居住者のためにする居住者に対する支払い受領をした者であります。  以上御報告申し上げます。
  7. 剱木亨弘

    委員長剱木亨弘君) これより質疑を行います。
  8. 寺田熊雄

    寺田熊雄君 いま法務大臣から御報告がございましたように、田中角榮総理収賄外為法違反起訴するところまで持っていかれたということは、これはわが国検察陣がまだ健在であったということの一つの証左でもありますし、法務大臣が、昭和二十九年に犬養法務大臣がやったような指揮権の発動をしなくて、自由に、濶達に検察当局をして縦横に腕をふるわしめたということ、これはそれなりに私は評価してもいいと思うのです。  ただ、この事件処理に関連して、いま公訴事実をお伺いしますと、主としてこの汚職の問題では、トライスター導入に関連しての収賄になっておりますね。まあだれしもPXLの問題でやっぱりロッキード社がその本命であるP3Cの生産に当たっておりますし、これはわが国防衛当局も、もし輸入するとするとこれはP3Cが本命だということは、この委員会でも述べておられるわけですね。ロッキード社自体としましても、主として軍用機生産に当たってきた会社ですし、トライスター導入に関連して五億円の贈賄をしたということですと、当然P3Cの問題に関連して何らかの請託をするんではないかということはたれしも予想するところですが、田中の場合には、このP3Cの問題については、この場合全然容疑がなかったんでしょうか、その点まずお伺いしたい。
  9. 稻葉修

    国務大臣稻葉修君) 安原刑事局長をして答弁させます。
  10. 安原美穂

    説明員安原美穂君) 昨日公判請求いたしました田中総理受託収賄犯罪事実に関しましての請託趣旨は、ただいま大臣から御報告申し上げましたように、ロッキード社及び丸紅利益のために総理大臣職務権限に基づいていわゆるトライスターL一〇一一型航空機全日空購入せしめるよう尽力されたいという請託であったということで、P3Cには関係のないことでございます。  なお、それ以上のことは申し上げかねます。
  11. 寺田熊雄

    寺田熊雄君 それでは、今後も引き続きP3Cの問題についても捜査を続けるというのか、これはまあ児玉ルートの解明ともある程度関連してくると思いますね。P3Cに関しては、児玉が四十八年夏にロッキード社との間にP3Cの導入に関する特別な報酬契約を結んでおりますから、児玉の暗躍の可能性というのは非常に濃いものと考えられますからして、その点、もし将来の児玉の取り調べその他の関連では、やはり田中に対する強制捜査があり得ると考えるのか、考えていいのか、あるいは田中に対してはもうロッキード社に関する容疑事実というのは今回の起訴で完全に終わりを告げたのか、その点やはり国民が知りたいと思うところだと思いますから、法務大臣、答え得る限度でお答え願いたいと思いますが。
  12. 稻葉修

    国務大臣稻葉修君) 田中総理について云々という御質問でございますが、ロッキード事件の全貌を解明し尽くすまでは徹底的な捜査を継続いたします。これは衆参両院の院議でもあり、国民の世論でもあり、また検察庁としても当然の職務であり、法務大臣としても法秩序の維持ということはその重要な主たる任務でございますから、これで山を越したなどと言うてはおれませんのです。徹底究明をする。その間において御指摘のようなことがあればそういうことになるかもしれませんし、それは将来の捜査にまたなければならぬと考えております。
  13. 寺田熊雄

    寺田熊雄君 非常に意味深長な御答弁でありますけれども、田中に対してもまたさらに将来強制捜査があり得ると――これは保釈した場合のことですが、そういうふうに理解しておきましょう。  それから、これはもう大体公判請求した後でありますし、特別にこの問題に関して捜査支障になるということもないと考えられますので、田中がこの外為法違反の事実は認めたんだと思いますけれども、本件の五億円の受領田中総理としての職務権限に関連するものであること、それからこの金の性質賄賂であることの認識ですね、その点はいずれも自白しておるんでしょうか。その点ちょっとお伺いしたいんですが。
  14. 安原美穂

    説明員安原美穂君) 寺田委員は御専門でございますから十分にお知りおきいただいておると思いまするが、刑事訴訟法公判開廷前には訴訟書類は公にしてはならないという規定がございます。被告人供述調書はまさに訴訟に関する書類でございますので、その中で何を言っているかを申し上げることは原則として刑事訴訟法四十七条に反しますので、公判段階までは申し上げるわけにはまいりません。
  15. 寺田熊雄

    寺田熊雄君 ただ、四十七条には、しばしば論議せられておりますが、ただし書きがありますからね。まあ国会の調査権との兼ね合いで、どっちにウエートを置くかという問題だと思いますよ。それで、いままで捜査段階の場合は捜査支障があるというにしきの御旗がありましたから、いまの刑事局長のような御答弁でもわれわれは一応引き下がったわけですが、いまはもう公判請求がなされた段階ですから、そして別段このことを明らかにすることによって公正な裁判の遂行に支障がありとはちょっと考えられない。全国民が知りたいというそこのところを十分考えられて、これはやはり御答弁あってしかるべきと思いますよ。いかがでしょう、法務大臣
  16. 安原美穂

    説明員安原美穂君) 私も、四十七条にただし書きがあって、公益上必要があるときにはこの限りでないことは承知いたしておりますが、少なくとも公判開廷前に被告人供述調書内容を公にすることは裁判官に予断を抱かしめる等、起訴状一本主義にも反しますので、公益上の必要はわからぬでもありませんけれども、なおこの際は公にすることを控えた方がいいという判断に立ってお願いを申し上げておる次第でございます。
  17. 寺田熊雄

    寺田熊雄君 ただ、田中保釈請求に対して不相当意見検察当局が付せられたようですね。これは間違いありませんか。現在もうこの決定がおりたんでしょうか、ちょっとその点お伺いしたいのですが。
  18. 安原美穂

    説明員安原美穂君) 検察当局としては、保釈に関する、保釈を許さない場合としての証拠隠滅のおそれありということで、不相当意見を付しました。なお、裁判所が決定したかどうかはまだ聞いておりません。
  19. 寺田熊雄

    寺田熊雄君 これはもう法務大臣もこの問題の御専門ですからおわかりでしょうけれども、これはもう不相当意見は、本件のような犯罪では罪証隠滅のおそれがあるということ以外考えられないわけですね。田中が、もしもいま申し上げた職務権限あるいは賄賂たることの認識について自白をしておれば、罪証隠滅のおそれは一応ないと、これは法律家としては判断できますね。そのことは法務大臣お認めになりますか。
  20. 稻葉修

    国務大臣稻葉修君) まあそんなことでしょう。
  21. 寺田熊雄

    寺田熊雄君 それでは、やはり大体いまの法務大臣の御答弁で、田中職務権限並びに賄賂たることの認識はなかったと、否認の供述をしておるというふうにこれは理解することができると思います。  そこで、私はいろいろな問題をお尋ねしたいんですが、まず、職務権限の問題では、これは私は、このトライスター導入田中総理としての職務権限の範囲内にあったということは疑いがないと思います。それは新聞紙でも報道せられておることではありますけれども、四十五年の十一月二十日に「航空企業運営体制について」という閣議了解事項がなされておりますね。その中で、大型ジェット機導入をするということが決定されております。こういう閣議了解事項を踏まえて、さらに昭和四十七年の九月一日及び二日にわたりました田中ニクソン会談、これについて昭和四十七年九月一日にハワイで共同発表がなされております。その共同発表とともに、「鶴見インガソール会談についての発表」というのが同じように四十七年九月一日になされておるのですが、その「鶴見インガソール会談についての発表」の中の第二項に、「ニクソン大統領は、田中総理との会談の機会に、鶴見外務審議官インガソール大使との間の一連の会談において討議された、十億ドルを越える米国製品及び役務の購入を含む次のような作業の結果を歓迎した。」と、その次のような作業の結果という中の(b)項に、「日本民間航空会社は、米国から約三億二千万ドル相当大型機を含む民間航空機購入計画中である。これらの発注は、四十七及び四十八会計年度になされることとなろう。日本政府は、購入契約が締結され次第、これら航空機購入を容易ならしめる意向である。」と、こういう条項があるわけであります。つまり四十五年の閣議了解事項を踏まえて、さらにまた四十七年の九月一日ニクソン田中会談のその中で、はっきりとニクソン田中がこの三億二千万ドル相当大型機を含む民間航空機購入計画中であるということをうたっているわけですね。  こういうことにかんがみますと、この民間大型機購入という問題が閣議にかけられ、そして日米両国の間の協議の中に盛られるということがはっきりしておるわけですからして、これは、もうこの問題は当時の現実政治の世界で総理職務権限の中に入っていたということはもう疑う余地のないほど明瞭だと私は思いますが、法務大臣の御見解はいかがでしょうか。
  22. 稻葉修

    国務大臣稻葉修君) 先ほど特に発言を求めまして公訴事実の要旨に申し上げたとおりであります。
  23. 寺田熊雄

    寺田熊雄君 ですから、検察当局がそういう確信を持って起訴せられたということは、これは全体として理解できるけれども、ただ、検事正のきのう新聞発表を見ますと、現実閣議了解事項となったというような御説明ではなくして、それになじむ問題だと判断したというふうな発表になっておりますね。ですから特に念を押したわけです。ですから、これはやはり、どうなんでしょう、法務大臣としては、こういう鶴見インガソル会談の結果の発表などにかんがみて疑うことがないような明白な事実だという確信をお持ちかどうか、その点いかがですか。
  24. 安原美穂

    説明員安原美穂君) 寺田委員からいろいろ御指摘がございまして、御意見として拝聴いたしましたが、いずれにいたしましても、檜山らの請託内容あるいはその請託をした時期の、あるいはそのころにおけるいま御指摘のような背景事情等、詳細に捜査をいたしまして、総理大臣職務権限に関する賄賂の収受であるということを確信を持って認定した次第でございます。
  25. 寺田熊雄

    寺田熊雄君 その次の問題は、やはり賄賂であることの認識田中が持っておったかどうかという問題であります。この問題は、しばしば汚職事件公判で争われる中心の課題になっておりますので、今回も恐らく問題になると思います。  それで、これからお尋ねする前に、まず、田中角榮氏が受け取った五億円の金の使途、これは一応究明したんでしょうね。それがはっきりしたのかどうか、その点これは非常にわれわれ関心を持っているんですが、いかがでしょう。
  26. 安原美穂

    説明員安原美穂君) たびたび申し上げておりますように、外為法違反あるいは今回の収賄起訴をするに当たりましては、受領した金の趣旨を究明するということが必要でございますので、その趣旨を明らかにすると、性質を明らかにするということに必要な限度におきましては金の使途捜査したものと思いますが、その内容について詳細を申し上げるわけにはまいりません。ただ昨日、新聞会見でも検察当局が申しておりますように、この金の使途について現在のところ犯罪容疑を抱くには至らなかったということでございます。
  27. 寺田熊雄

    寺田熊雄君 犯罪容疑を抱く程度にまでは至らなかったということなんですが、これはわれわれの判断とちょっと食い違うのは、これが田中角榮氏のポケットに入った場合は、それが直接ストレートに、たとえば自民党の金庫の中へ入っちゃったとかというような場合を除きましては、あるいはそれが純粋の何か政治献金として特別な預金として隔離されておったと、特別な会計を構成していたというような特段の事情がある場合を除いては、これはやはり田中のその年次の所得に入るべき問題だと思うのですね。そうしますと、当然所得税法違反を生じなければならないとわれわれは考えておるし、まだ時効にも至らないようにも思うんですが、その点は全然追及しなかったと聞いてよろしいのかどうか、これはいかがでしょう。
  28. 安原美穂

    説明員安原美穂君) いまの御指摘の、それが田中総理所得になるかどうかということ、したがってさらに脱税犯を構成するかどうか、要するに所得になるかどうかという問題はまさに国税当局そのものの問題でございまして、所得を仮装隠蔽して逋脱犯という犯罪を構成するときにわれわれ捜査当局の問題になるわけでございますから、その点については今後国税当局とも十分協議をいたしたいというのが捜査当局方針でございます。  なお、ついでのことで恐縮でございますが、公判請求をいたしました賄賂罪につきまして有罪が確定いたしますと、寺田委員御案内のとおり、賄賂額相当のものは没収または追徴対象になりますので、その点、所得の認定の問題に微妙な問題があるやに聞いておりまするが、その辺のところは国税当局からもお尋ねをいただきたいと思います。
  29. 寺田熊雄

    寺田熊雄君 その問題は後で更正の問題を生ずるだけの問題だと私どもは理解をしておりますが、国税当局がこの際おられましたら、この問題について査察調査を行うつもりがあるのか、現に行いつつあるのか、所得漏れ調査も同様に行っておるのかどうか、そういう点についてまた告発をなす決意があるかどうかというような問題についてお答えいただきたいと思いますが。
  30. 山橋敬一郎

    説明員山橋敬一郎君) お答えいたします。  田中総理収賄につきましては昨日起訴されたことでもございます。国税当局といたしましてはまだ事実関係をつまびらかにするに至っていないわけでございますけれども、今後税務処理上必要な実態を調べた上で所要の処理を行う、こういう所存でございます。  なお、個々の事案につきまして脱税事件として査察調査を行って告発対象とするかどうかにつきましては、申し上げることは差し控えたいと思っておりますけれども、いずれにせよ実態を明らかにした上、誠意を持って税務上適正な処理を行いたいというふうに考えているわけでございます。  なお、先ほど刑事局長からもお答えございましたように、まあ一般に脱税事件として告発をするかどうかにつきましては、個別に検察当局協議を行うこととしております。本件につきましてもその必要があれば検察当局十分協議をいたしたいというふうに考えておるわけでございます。
  31. 寺田熊雄

    寺田熊雄君 大体のところがわかりましたけれどもね。ただ刑事局長が言われた、没収の問題になった場合にそれが所得の中に入れて考えていいのかどうかという問題、この疑問を提示されたんですが、ただ、この公判が終結を見るにはまあわれわれの考えでは恐らく十年近い――確定までには十年近い年月がかかるんじゃないかとさえ考えるんですが、そうしますと、そういう最終の段階に考えられる没収というようなことをおそれてですね、所得の見直しをしないとかあるいは査察調査をしないとかいうのでは困るので、これは純粋に後で更正すれば足りるんだという方針で臨んでもらいたいと思うんですが、その点、国税当局いかがです。
  32. 山橋敬一郎

    説明員山橋敬一郎君) お答えいたします。  いま、先生御指摘のとおり、賄賂につきましては刑法の規定によりまして、必ず没収または追徴されることになっております。没収または追徴が行われますれば、経済的成果がなくなりまして、課税額を是正しなければならないということ、また検察当局国税当局とは同じ政府の一員でございますので、起訴された者につき課税をするのは避けるべきであろうということから、課税を見合わせるという考え方も確かにございます。しかしながら、そういう考え方も含めまして、現在課税の態様、課税処理という問題について事実関係を明らかにした上で、適正な処理を行いたいというふうに考えているわけでございます。
  33. 寺田熊雄

    寺田熊雄君 これは国税通則法の七十条、七十一条、所得税法の百五十二条、こういう規定はそういう場合に備えての規定であって、少しも没収を――ずっと遠い将来おける没収などという問題を考慮に入れる必要は私は全くないと思いますね。だから、国税当局がそういう点で余りにも引っ込み思案にならないように、重ねて要望しておきますから。  それから、いまの賄賂であることの認識の問題ですが、このことを考えてみますと、非常に私ども検察当局の活動というものはむしろこれからが本番だというような感じがします。どうせ田中角榮氏の弁護側はこの共犯である檜山伊藤大久保の検察官調書、検面調書をこれは不同意――証拠とすることに同意しないということはこれは容易に予想できますね。ただ、アメリカのコーチャンなどの証人調書というものはこれは明らかに証拠能力を持っておりますから、これはかなりの突っかい棒になるとは思いますけれども、しかしそれではまだ十分でないんで、檜山から請託を受けた、そして若狭にこれを働きかけたというのであれば、檜山の検面調書それから若狭の検面調書、榎本の検面調書、伊藤大久保の検面調書の信用性、ことに特信性ですね、これを度外視しては田中の有罪というものは成り立たないと思いますが、これはいかがでしょう。
  34. 安原美穂

    説明員安原美穂君) 御専門の立場からいろいろ御示唆を承りましたが、いずれにいたしましても検察当局としては公判段階におけるあらゆる事態に対処して、十分に有罪判決としての立証をできる確信を持って、対策を練って公訴提起をした次第でございます。
  35. 寺田熊雄

    寺田熊雄君 私も検察官の努力を評価するにやぶさかではないんですけれどもね。ただ、いままでの汚職事件の裁判史というものをずっとひもといてみますと、無罪になる確率というのが非常に高いですね。これは昭和十一年の帝人事件などがその典型的なものです。これは法務大臣もよく御存じでしょうけれども、あれなどは空中楼閣とまで言われてしまって、検察ファッショという非難まで検察陣営が受けたような気の毒な状態になりましたね。それから内田鉄道大臣収賄事件、これも無罪になった。この戦後の昭電疑獄でも芦田さんあるいは西尾さん、頭株は皆無罪になっている。それから造船疑獄またしかりですね。しかも、われわれが不審にたえないのは、贈賄側はいずれも賄賂であるという認識を持って金銭の提供をしておって、贈賄側は有罪になっているんですね。それで受領した側が賄賂であることの認識を欠いたということで無罪になっている。そういう片ちんばな片面的共犯ということでしょうか、片ちんばな裁判というものが非常にいままで多いわけです。それだけに今回のことでも心配しておりますし、昨日の夕刊には中曽根さんが、裁判で田中さんのシロが明らかになることを希望するというような談話を語っておられます。また新潟の越山会でも、これから裁判でこの問題争うんだというようなことをその指導者が言っておる。そういうことを考えますと、田中角榮氏がかなり有力な弁護陣を構成して、全力を挙げてこの事件の否定のための努力をするということが予想されますね。これからがむしろ検察官の本務だと思うんだけれども、法務大臣としてはこれは検察官を信頼して有罪の判決を得る確信がおありなんでしょうか。どうです。
  36. 稻葉修

    国務大臣稻葉修君) 従来でも収賄側の有罪に第一審ではありますけれどもなっている事件はあります。今回のことにつきましては、わが検察陣営の健在を信頼しておりますから、心配ないという確信を持っております。
  37. 寺田熊雄

    寺田熊雄君 私がなぜそういう心配をするかと申しますと、過去の疑獄の裁判史はもちろんですけれども、最近大庭哲夫氏が文勢春秋の八月号に「事実に二つなし」という論文を書かれまして、その中に検察官から調べられたときの状況を語っておるわけです。その中にこういう一文がありますがね。「ふと検事の調書みるとね、これが間違ってばかりいるんです。だから言ってやった。「あんたも疲れてるんだろう、あんたメモ読んで筋書きだけ整理しとって下さい。明日、それを聞きましょう」「こっちも、その方が有難いんだ」って。ホッとした顔してるんだ、検事が。」と、ですから、恐らく検察官も何十日という精魂を込めての捜査をなさっておられてやはり疲労こんぱいしておられるのが事実であろうと思う。そういうことになりますと、やはり検面調書の中の記載というようなものが合理性を欠くようなものが出てきて、それがやはり特信性の否定につながるんではないかというようなことを恐れざるを得ないわけですね。今後の捜査もあるので、こういう点はよほど私は英気を養って検察官が十分そういう点を備えていっていただきたいと思います。法務大臣、そういう点よく心していただきたいと思いますが、どうでしょう。
  38. 稻葉修

    国務大臣稻葉修君) 私はよく心して刑事局長を通じ始終注意を言うております。疲労こんぱいの余りおかしな間違いを起こさぬようにということは、くれぐれも注意してございます。
  39. 寺田熊雄

    寺田熊雄君 次に、このピーナツとピーシズの受領証によって象徴された五億円以前のユニットの問題なんですが、これは四十七年に大久保受領しておるということになっておりますね。これもやはり現在捜査対象として捜査が続けられておることは間違いないんでしょうね。そのいま現在の進行状況はどの程度いっておりますか。
  40. 安原美穂

    説明員安原美穂君) 御指摘のユニット領収書にからまる一億二千万円相当の金銭の使途、その性質というものにつきましては鋭意究明中でございまして、恐らくは近いうちに結論が得られるものと考えております。
  41. 寺田熊雄

    寺田熊雄君 近いうちに結論が得られると言うのですが、大体今月中と伺ってよろしいか、それから強制捜査があり得ると理解してよろしいか。
  42. 安原美穂

    説明員安原美穂君) 捜査のことであり、また先の問題でございますので、いつまでということをこの立場、この場で申し上げることは差し控えたいと思いますし、強制捜査があり得るかどうかということも理論的にはあり得ると思いまするけれども、このことも将来の問題でございますので、この場で私の口から申し上げることは御猶予願いたいと、かように思います。
  43. 寺田熊雄

    寺田熊雄君 いろいろいままで新聞紙上でこの汚れた金を受け取った人についての憶測がなされておりますけれども、しかしこの金を受領する職務権限を考えますと、これは当時の運輸大臣並びに運輸政務次官としか考えられませんわね。それ以外の考えは出てこないでしょう。総理大臣運輸大臣か、運輸政務次官かと、その三人がまさにこの問題に関する職務上の権限を持っておるんですからね。だから、これが収賄罪を構成するということになりますと、田中さんを除いては、残るところは運輸大臣と運輸政務次官にしぼられざるを得ませんわね。法務大臣いかがでしょう。
  44. 安原美穂

    説明員安原美穂君) いまは贈収賄罪の成否を前提にしてお尋ねでございますが、いずれにいたしましても贈収賄罪ということになれば、御指摘のように職務に関するものでなければ犯罪にならないわけでございますし、捜査当局としてはもとより御案内のとおり刑罰請求権のないところに捜査権の発動は許されるべきでございませんので、あくまでも職務に関するものかどうかということの究明というのが収賄罪成否の捜査のポイントでございます。
  45. 寺田熊雄

    寺田熊雄君 大体その言外の意というものが私どもはくみ取ることができると思いますけれども、またもとに戻りまして、田中角榮氏の今回の起訴というものは閣議了解事項から発足してますから、総理職務権限内にあるということはよくわかるんですよ。ただ本来の職務担当者というものは運輸大臣なんですね。だから、それが全く運輸大臣を飛び越してなされたものか、あるいは運輸大臣を通してなされたものか、その点が非常に興味のあるところなんですが、その点いかがでしょう。
  46. 安原美穂

    説明員安原美穂君) 御興味をお持ちのことはよくわかるのでございまするけれども、いずれにいたしましても、総理大臣行政各部を指揮監督する権限を有する内閣の首長であり、かつ運輸大臣をしたがって指揮監督する権限を有しておられるということに関連いたしますところの請託を受けて賄賂を収受したというのが起訴の骨子でございまして、いま御指摘のような事柄、請託を受けてどのような動きをしたかということは、これからの公判廷におきまして、具体的に冒頭陳述等を通じて申し上げる事柄でございますので、いまの段階ではこれ以上を申し上げることを御猶予願いたいと思います。
  47. 寺田熊雄

    寺田熊雄君 それから先ほど所得税法違反の問題についてお尋ねしましたけれども、これは一度衆議院のロッキード問題委員会でも問題になりましたけれども、これは刑事局長が進んでお答えになっているようでしたけどね、旧公選法の二百条の問題が生じないかどうかという問題ですが、これはやはり捜査対象になったんでしょうか。
  48. 安原美穂

    説明員安原美穂君) 金の授受につきましては、およそ考え得るあらゆる観点から捜査をしたと思うわけでございますが、現在捜査当局からの報告によりますると、公職選挙法違反というものは外国人から選挙に関して寄付を受けてはならないというのがいわゆる実体規定でございますが、選挙に関する寄付に相当する収賄であるという認定はできなかったということでございます。
  49. 寺田熊雄

    寺田熊雄君 法務大臣、検事正がきのう記者会見で大体捜査の山が見えたようで、この八月中にはまあそのほかの捜査も大体見通しがつくような記者会見の発表があったようですが、一体児玉ルートの解明は大体今後どの程度かかったらできるというふうに見通しを持っておられるのか、児玉ルート以外の汚職事件の解明というものにはあとどのぐらいの見通しを持ったらいいのか、これはわれわれのやはり政治日程にも大分影響してまいりますわね。ことに臨時国会の問題にも響いてくるので、大体の、いま全体を把握しておられる地位にあるあなたの見通しを語っていただきたいと思います。
  50. 稻葉修

    国務大臣稻葉修君) 先ほど申し上げましたとおり、丸紅ルートにつきましては一つの大きな山は越したと、全日空ルートの事実関係につきましては捜査が非常に進んでおる、解明もそう遠くはないように思います。児玉ルートにつきましては捜査が難航いたしておりますが、捜査当局としてはあらゆる方法を講じて解明に努力を続けていく所存でございまして、これがいつごろになるかということにつきましては、私は見当がつきませんな。
  51. 瀬谷英行

    ○瀬谷英行君 関連してちょっとお伺いしますが、田中総理保釈になったということをちょっと聞きました。その保釈の報告、どういう状況なのか、この機会に御報告願いたいと思います。
  52. 安原美穂

    説明員安原美穂君) ただいま本省から連絡がございまして、午後一時半ごろ田中総理に対する保釈が決定されたということでございまして、保釈金は二億円ということでございます。同時に檜山四千万円、大久保三千万円で保釈が決定されたということでございます。
  53. 瀬谷英行

    ○瀬谷英行君 田中総理保釈の問題でありますけれども、先ほど寺田委員からも質問がございましたけれども、起訴状によると、内容トライスターに限定されておる。PXLについては何か頭の上を素通りした感じなんです。金額にすると五億円なんですね。このロッキード疑獄でもって動いた金が五億や十億ではないというふうにわれわれには考えられる。ところが、一番の主役である田中総理がもらった金が五億である。そうすると、五億の金銭の授受だけでもってロッキード問題が山を越したんだろうかということになると、ちょっと割り切れないものがあるわけです。一体これで終わってしまったんだろうか、PXL等については何らの疑義はなかったんだろうか、こういう疑惑も残るわけです。特に参議院のロッキード委員会はPXLの問題について衆議院とは多少分けてやってきた経緯があります。そうすると、今後の問題としてPXLについては検察側としても完全に疑惑は晴れたのだというふうに理解をしているのか、まだこれはほんの一端にすぎないのであって、今後尾を引くということになれば、PXL問題についても関係がなかったとは言えないんだと、ロッキード社あるいは丸紅利益ということになりますと、当然ひっかかりが出てくるのじゃないかという気がしないわけでもないんですがね。その辺のところは一体どのように理解をしてよろしいのか、その点をお伺いしたいと思います。
  54. 稻葉修

    国務大臣稻葉修君) 昨日の四人の公判請求によってロッキード問題の山を越したなどとは思っておりません。全貌についての山を越したとは言い得ないわけであります。これから全日空ルート、児玉ルートと、山は二つも残っているわけであります。
  55. 瀬谷英行

    ○瀬谷英行君 いま法務大臣全日空ルート、児玉ルートというふうに言われましたけれども、これはPXLとは関係があるのかないのか、その点は言えるのか言えないのか、その点もあわせてお伺いしたいと思います。
  56. 安原美穂

    説明員安原美穂君) 昨日の田中総理受託収賄トライスター購入に関しての働きかけの請託を受けて、その謝礼の名前のもとにということで五億円の受領がなされたということでございます。したがって、PXL、P3Cとは関係がないということは検察当局一つ判断でございますが、先ほど来法務大臣も申し上げておりますように、全日空はこれはPXLとはもとより関係がございませんけれども、なお児玉ルートの十七億等究明をしなければならない金の使途が残っておるわけでございますし、なお捜査当局の本来の捜査の目的は、ロッキード社がそういう二十数億の金を使って、日本国内において自社の製品の売り込みについて働きかけた、その間に不正があるかどうかということの究明でございますので、その全貌が終わらない限り捜査は終わったことにはなりませんし、またその自社売り込みの製品の中に御指摘のPXL、P3Cもあるわけでございますので、現段階において田中総理との関係ということではなくて、全貌の究明という意味においてPXLの問題というものもなお究明を要する問題であるというふうに考えておる次第でございます。
  57. 寺田熊雄

    寺田熊雄君 この際、法務大臣に特に要請いたしたいんですが、日本に送られました米側の資料ですね、これはなるほど共助協定によって内容は明らかにすることは許されないと思うんですよ。だけれども、そういう資料の標目だけはこの委員会に御提出願っていいんじゃないでしょうか。私どもは大体その標目を拝見して、またいろいろ調査など可能になりますからね。それをぜひ標目だけでも提出していただきたいと思いますが、いかがでしょう。
  58. 稻葉修

    国務大臣稻葉修君) 関係者間でよく検討いたします。
  59. 安原美穂

    説明員安原美穂君) 寺田委員せっかくの御希望でございますが、実務取り決めというものを守っていくということが、将来日米両国間の協力関係を維持する上にぜひ必要でございます。そういう意味におきまして、この取り決めの第三項に、交換された資料については、「刑事上、民事上及び行政上の裁判又は審理に関する手続においてのみ使用する」ことができ、そしてそれらの秘密は保持されなければならないというふうに決められておりまして、その実務取り決めの過程において日米両国間では、いま御指摘の資料の標目もその守られなければならない秘密の中に入るということになっておりますので、遺憾ながらこれはその資料の標目が何であったかということは、したがいまして公判の手続の過程において明らかにされていくほかはないというのが少なくとも取り決めの内容でございますので、遺憾ながら公判手続の進行の過程において公にされる場合があることでもってひとつ御理解いただきたいと、かようにお願いを申す次第でございまして、大臣の申されましたのを訂正して恐縮でございますが、検討の余地はなきものでございます。
  60. 寺田熊雄

    寺田熊雄君 いや、それは局長、大臣の方が私は正しいと思うんですよ。いまの取り決めは、私はあくまでも内容を公表してはいけないという趣旨で、標目はこれはもう当然明らかにしていいと思いますのは、たとえば今度コーチャンが証人として調べられましたね、アメリカの連邦地方裁判所で。これは調べられたということ、コーチャンの証人調書という標目はわれわれにわかっているわけですよ。それから法務大臣御自身も、かつて閣議で、アメリカから来た資料の中にはFBI関係の資料も含まれているということを、たしかあれは福田国家公安委員長の質問に対して答えておられるわね。だから、私は標目は明らかにしたって毫も差し支えないと思いますよ、内容が問題なんで。これは法務大臣刑事局長も――刑事局長少し官僚的秘密主義に堕しているように思うから、もう一遍考え直してもらいたい。
  61. 安原美穂

    説明員安原美穂君) コーチャン証言は、これはアメリカから提供を受けた資料というあの取り決めの対象ではなくて、あれはいわゆる日米両国の法制に基づく司法共助からくるものでございまするから、これは例の取り決めの対象外でございます。取り決めの中には、こういう証人尋問の実現をするために日米両国は最善の努力をするものとするという努力目標は規定してございますが、得られた調書は米国側から提供を受けた資料の中には入らないわけでございますから、これは標目は問題ないと思いますが、いま、標目はいいが内容が問題だという寺田委員の御理解でございますが、実はその標目を明示することが内容を推知させるということから、万全を期する意味において、日米両国では、その標目を開示することも公にすることになるという解釈なんでございます。そこで、私は決して官僚的秘密主義ではなくて、こういう両国間の取り決めを厳守することが、今後ともなお必要とするであろう資料の交換を促進することになりますので、この際は遺憾ながら御希望には応じかねるということを申し上げて御理解を賜りたいとお願い申し上げておる次第でございます。
  62. 寺田熊雄

    寺田熊雄君 最後に一言だけ法務大臣にお尋ねしたいんですが、中曽根さんに対する疑惑が衆議院、参議院を問わずいま非常に強まっております。中曽根さんはいかなる意味においても、現在、ロッキード問題に関連して被疑者としての捜査対象にはなっておらないんでしょうかね。この点を一言だけはっきりお答えいただきたいと思いますが。
  63. 安原美穂

    説明員安原美穂君) 現在のところ捜査当局から捜査対象になっているという報告は聞いておりません。
  64. 寺田熊雄

    寺田熊雄君 では法務大臣に対する質問はこれで終わりまして、文部大臣にお尋ねしますが、文部大臣、このロッキード汚職事件の頂上に内閣総理大臣というわが国最高の権力者がいたということが今回判明したわけです。で、これはわが国政治が非常に腐敗していること、そういう見方もできると思いますが、同時に、日本国民には政治家の持つ倫理観あるいは政治道徳が非常に低いということを意味するようにも思われます。それからこの犯罪というものが、田中さんという特定の個人が非常に悪者であったから起きたんだというような見方もできないわけではありませんが、しかし構造汚職のやはり一つのあらわれとして起きたと見ることもできます。それから資本主義経済、無軌道な自由競争の経済から必然に生ずる犯罪だというふうな見方もできます。その見方はいろいろあるんですけれども、わが国の最高の教育行政の頂上にいらっしゃる文部大臣としてはどんな所感を持っておられるんでしょうか。ことにこの件が児童に与えた心理的な影響、こういうものについてはどういうふうにお考えなのか、この際明らかにしていただきたいと思います。
  65. 永井道雄

    国務大臣(永井道雄君) このたびの事件の問題が、このわが国の児童、生徒にわが国政治あるいは行政というもののあり方について深い疑いというものを持たせるおそれがある、そういうものであると私は考えておりますので、教育行政の責任にある立場といたしまして非常に心配をいたしております。しかし他方におきまして国民の間に世論というものがあり、その世論というものを背景に国会におきましてもかような御審議が行われている、また警察、検察というようなものも法に照らして厳正な措置をとるべく努力をしている、そういうわが国政治、司法、そうしたものの活動、それもまた私は重要なものと認識をいたしているわけでございます。それを児童、生徒にどのように教育するかという問題はなかなかむずかしいことでございますが、これは事件それ自体がなかなか複雑であるということが一つございますけれども、他方において児童、生徒の発達段階というものもあります。したがって、その発達段階に応じて善悪の判断というものをつけ、そして正しい認識をいたしながらわが国の発展、正しい発展というものを考えさせなければいけないわけでありまして、これはこの事件に限らず、本来教育はさようなものであるべきものと思いますが、こうした事件が起こったときであるだけに、一層、そういう教育の原則というものに基づいて私は善悪の判断、そして正しい社会の建設ということのために教育が役立つように配慮をいたさなければならないと、かように考えております。
  66. 寺田熊雄

    寺田熊雄君 大体総論としては大臣のおっしゃることよくわかりますけれども、私はこういう問題は、やはり生きた教材として、少なくも中学三年や高校という高学年の生徒に対してはこれは活用すべきではないかと思うんです。それで教育基本法に「教育の目的」として、一つ国民に、生徒に真理と正義を愛するように求めるというところがありますね。それから学校教育法にも、社会に対する健全な判断力を持たせるようにという項目がありますね。そういう教育、学校教育の目的にかんがみますと、こういう素材こそそういう教育の生きた教材としては最も適しているように思うんです。ところが、現実にいま教科書でこういう問題が扱われておるだろうかどうかということを調べてみますと、ほとんど扱われていないようですね。で、現場の先生方に聞いてみますと、高校でも、教科書に従来の汚職事件が扱われたものは一つもないということを言います。それから、生徒のこの問題に対する関心はきわめて高いけれども、先生でも半数しかこの問題を実際には取り扱っていないと言います。それから中学の場合では、特定の県ではこういうものをむしろ扱ってはいけないんだと、学習指導要領を逸脱してはいけないというような指導がなされていると言います。そこで学習指導要領を丹念に見てみましても、特別にそういう教育を排斥するような条項は見当たりませんね。そこで現実に教科書のうちの二、三に当たってみますと、現在、高校の教科書で汚職事件を扱ったものがわずかに二つあるようです。これは歴史の教科書が十三、いま検定を受けたものがあるようですが、それから政治・経済の教科書が十四あるようですけれども、この中にわずかに二つだけがきわめてもうほんの一、二行の記載をしておるようです。これは第一学習社の「政治・経済」の教科書ですが、「政党と政治資金」という中に、「わが国の政党は、一般に党員数が少なく、全国的な組織も整備されているとはいえない。そこで、政党が政治活動のために必要とする諸経費、とくに選挙の際に要する多額の運動資金は、党費の以外の政治献金に依存していることも多い。このような政党と外部との結びつきが、汚職事件を引き起こすことにもなる。」と。そして注のところで汚職事件として、「昭和電工疑獄事件、造船疑獄事件、「黒い霧」問題などがある。」という記載があります。それから、同じく学校図書の「政治・経済」の中に、一九五四年に「造船疑獄で指揮権発動」と、ただそれだけ書いた記載があり、それから歴史の教科書の中で自由書店の「新日本史」というのがありますが、この中に、これは「一九四七年四月」の項で、「深刻な生活難がさけばれるなかで新憲法にもとづく最初の総選挙がおこなわれ、日本社会党が議席数の三分の一には達しなかったが第一党となった。五月には同党委員長片山哲が、日本民主党・国民協同党との連立で片山内閣を組織し、中道政治をすすめようとした。しかし、社会主義的政策をとらないことに不満をもつ労働者の運動と社会党内左派の攻撃とによって、同内閣は一九四八年二月総辞職した。ついで日本民主党総裁芦田均が、同じ三党連立内閣を組織したが、日本の経済自立を要求するようになったアメリカの圧力にゆきなやんでいるうちに、疑獄事件をおこして、十月にたおれた。」ただこれだけなんですね。これはやはりもっと生きた教材としてこういうものを取り扱うことの方が社会に対する、ことに政治に対する生徒の理解、健全な判断力を養うことになると思うんですよ。  ところが、現実に学校の先生方に尋ねてみますと、そういうことを書くととてもそれは検定に通らないんだというふうに初めから思い込んでおるようです。それから学習指導要領にも反するのだというような、何か初めから断定しているような向きもあります。ですから、これは大臣としてそういうことはないんだと、むしろ積極的にこういうものは教材として活用していく方がいいんだというような考えを持って指導された方がいいと思いますが、いかがでしょう。
  67. 永井道雄

    国務大臣(永井道雄君) ただいま例をお引きになって御指摘になりましたように、教科書というものの中に疑獄事件を取り扱って、そうしてこれを教材とするということは当然でございますからこうした例があるわけでございます。その長さが短いという御指摘もございました。これはやはりその一つの教科書が構成される上で著者も考え、こういう姿に私はなっているものと理解をいたしておりますが、なおこうした問題を、当然教科書を使いながら教えるわけでございますから、先生方も教えていかれる過程においていろいろ工夫をしておられることと思います。  今後こうした教科書の構成あるいは教材というものをどのようにこの種の問題について行っていくかということは、この教科書の例がありますように、まず第一に取り上げるべき問題は当然取り上げるということが一つ。しかし、さらに第二に、どういうふうな姿で考えていくべきかということは、教科書の著者もいろいろ考えられましょうし、またこれを検定する立場においても十分検討して、ただ、眼目は、先ほど御指摘にありましたようにやはり児童、生徒の間に善悪の判断、そして社会の建設というものが適確に行われるということを念頭に置いて私は一層充実を図るべきものと考えております。
  68. 寺田熊雄

    寺田熊雄君 それでは委員長、後は官房長官に対する質問でありますから……。
  69. 剱木亨弘

    委員長剱木亨弘君) ちょっとしばらく速記をとめてください。    〔速記中止〕
  70. 剱木亨弘

    委員長剱木亨弘君) 速記を始めてください。
  71. 寺田熊雄

    寺田熊雄君 官房長官、おいでになって早々で恐縮ですが、御存じのように、いま政局はロッキード事件が中心になって非常な混迷をきわめておるように思います。将来の見通しが非常につきにくいんですが、ことに自民党の内紛といいますか、総理を引きおろそうとする勢力があることは疑うことができませんし、総理もあなたもいまその応対に大変御苦心だろうと思いますけれども、ここで、きのうの自民党の顧問会議で三木首相が引き続き政権を担当する決意を表明されたようですが、現実に三木さんは、将来やはり引き続いて政権を担当していく御決意がおありなんでしょうか。そしてまた、これから総選挙を控えておりますが、解散もみずからの手で行うという決意がおありなんでしょうか。これは一番三木さんに直近しておられるあなたですから、ことにきのうも三木さんによく聞いて答弁してほしいということを参事官にお話ししておきましたけれども、この点、はっきりと御回答をいただきたいと思いますが。
  72. 井出一太郎

    国務大臣井出一太郎君) ロッキード事件によりまして、政界といわず日本の各界がこれによって非常な混乱を来しておりますことは御指摘のとおりでございまして、まことに遺憾な次第であります。このことは、いま政権を担っております与党たる自民党にも、前総理の逮捕ないしは起訴、こういうような大変なショッキングな事柄でございますから、それによってやはり一つのパニックの状態が生れることはこれは御了察いただけると思うのでございます。  そういう中で、三木総理としましては、いま自分が一つの運命のようなものだと、こういう事態を引き受けるのは何としてもそういう回り合わせだと、こういうふうな気持ちでおりまして、これを無責任に回避をするわけにはまいらない、こういう強い決意を持っておるわけであります。したがいまして、党内の問題は、これは三木総理、総裁自身の責任においてこれを取りまとめると、この努力を払っておるような次第でございまして、これはまあひとつお任せをいただきたいと思うのであります。したがいまして、この当面の危機をやはり自分の責任において突破しなければならぬという一つの使命感を持っておることは事実でございます。  最後にお触れになりました解散云々の問題は、これはまあ私がまだここで御答弁を申し上げるというのは差し控えさせていただきたいと思います。
  73. 寺田熊雄

    寺田熊雄君 きのうも、特に官房長官はそういうふうに言ってお逃げになるんじゃないだろうかと、官房長官は逃げるよというような意見が非常に強かったわけですよね。だから、これは三木総理に専属する権限であることはよくわかりますよ。だけれども、それを補佐する最高の補佐役というのは官署長官なんで、官房長官がそれを補佐していく上で三木さんの考え方というものがわからないわけはないでしょう。だから特にそれを、答弁を逃げないようによく官房長官に伝えてほしいということもきのうよく内閣参事官にも伝えておいたわけですよ。政権を引き続いて担当する決意はあるけれども、解散をみずからの手でやるかどうかはわからないというようなばかなことないんじゃないでしょうか、もう一ぺんお考え願いたいと思いますよ。逃げることだけがあれじゃないでしょう。はっきりお答えください。
  74. 井出一太郎

    国務大臣井出一太郎君) これ、まあ寺田先生御承知のように、政治というものは生き物であると言われます。また、なかなか一寸先の展望というものは困難であると、こういうふうにも言われております。したがいまして、いまおっしゃる御質問自体が少し私に答えを求めるのは御無理ではないかと、こういう感もいたすのでございます。その問題については私、決して逃げるわけではございませんよ。私からそれを引き出そうとなされましても、これは私のお答えをすべき問題ではないと、かように存じます。
  75. 寺田熊雄

    寺田熊雄君 あなたが三木さんに一番直近の最高の補佐役として、あなたの感触はどうです、それじゃ。感触全然ないということはないでしょう、あなたほどの怜悧な、そして練達な、老練な政治家でいらっしゃる。それが三木さんに最高の相談役としてついていらっしゃって、三木さんがどういう決意を持っているかの感触も得られないということはないと思いますよ、あなたの感触をそれじゃおっしゃってください。
  76. 井出一太郎

    国務大臣井出一太郎君) 私もそばにおるわけでございますが、いまおっしゃる問題について二人の間でまだ話題になったということはございません。さような次第でございまして、私もそばについておって、一国の首相誤りあらしめてはならないと、こういう気持ちでしょっちゅう接しておるわけでございます。
  77. 寺田熊雄

    寺田熊雄君 これは、その点をはっきりしないために全部の国会議員を初めとしてたくさんの国民が日程が立たないわけですよ。大変迷惑をこうむっているわけですね。それが将来近い時期にそれはあることなんですよね、あることなんだけれども、それはわかっていて、われわれの日程が立たないということは非常に困るわけですよね、そうでしょう。じゃお尋ねしますけれども、三木さんは近いうちに政権を投げ出すというような気持ちは全くないんでしょう、それははっきりしているんでしょう、どうです。
  78. 井出一太郎

    国務大臣井出一太郎君) 先ほど来お答えを申し上げておりますように、この深刻な重大な事態を受けとめまして、その責任を中途半端で放てきをすると、こういうことは決してしないと、これが総理の心底であろうと、こういうふうに察しておる次第でございます。
  79. 寺田熊雄

    寺田熊雄君 大体わかりました。もしも投げ出すようなもんじゃないというならば、これはどうしても壁にぶち当たってにっちもさっちもいかないから、まあ悪い表現だけれども野たれ死にするというようなことは万々ないと思うんですよ。そういたしますと、どうしても日程としては――十一月十日の昭和天皇在位五十周年の記念式典というのがありますね、それを越して解散になりますと、これは公選法の規定からいってどうしても総選挙の日が十二月五日にならざるを得ないんですよ。そうすると、それは任期の終了する日である十二月九日の四日前で、もうこれは任期満了による選挙と少しも変わらなくなるわけです。だから、それはあり得ないわけですよ、法律的にいって。任期満了による選挙と全く同じ日取りの解散ということはちょっと考えられない。そうするとどうしても解散は、十一月十日前に総選挙が終了するというそういう見通しのもとに解散をなさざるを得ないわけです。そうでしょう、官房長官。そうなりましょう、法律的にいってどうです。
  80. 井出一太郎

    国務大臣井出一太郎君) いまおっしゃるような具体的な日程というものを暦の上で見当をつけたということはないわけでございますが、いま寺田さんおっしゃるような考え方はあるようには聞いておりますけれども、まだ政府のサイドでそういうものは、これは政情というものは非常に流動的でございますから、そうなかなかいまから決めてかかると、こういうわけにはまいるまいかと思います。
  81. 野田哲

    野田哲君 官房長官、この前内閣委員会で、いまの問題に関連して質問を行ったわけですね。それで十一月十日の日程を決めるに当たっては、式典の担当大臣である植木総務長官とそれから三木総理と、長官も加わられたんですか――じゃ、総理と総務長官と相談をされた。そこで私は内閣委員会で質問をしたときに、式典のやり方としては、植木総務長官の説明としては、国民こぞってお祝いをするんであるから、国民の代表である衆議院議員が不在のときというようなことは考えていないと、そうして祝典の順序としては、国会を代表して衆参両院議長が祝辞を述べると、こういう要領がすでに決まっております。そして十一月十日というのは変更することはないんだと、こういう説明を植木総務長官はしております。そこで官房長官に私、いま寺田議員と同じような趣旨の質問をしたわけですね。日程的にずっと十一月十日は衆議院議員も衆議院議長も存在をしていると、こういうことになるとその前か後に解散、総選挙が終わるということになるわけです。十一月十日終わって解散ということになりますと、これはいま寺田議員も言われたように、日程的にどう考えてもあり得ないことだ、これは前じゃないのかと、こういうふうに聞きましたところ、官房長官は、とにかくまあそこまではいま答えられないと、しかし静かな環境の中でお祝いをしたいんだと、こういうふうに言われましたね。静かな環境ということは、これはまあいまの状態が自民党で続き、政情がこういう状態であるということは、静かとはどう考えても言えない。静かにということはつまり総選挙が終わっていると、こうとしか思えないんですが、その点はいかがですか。
  82. 井出一太郎

    国務大臣井出一太郎君) 先週でございましたか、野田さんからおっしゃるような御質問を承りました。そのとき私、お答えしましたのは、そういった政治日程とは離れて一番ふさわしい日取りがいつであるか、こういうことで決められたものだと考えます、というふうに申し上げたつもりでございますが、そのとき、たまたま野田さんから、私の前に福田副総理と問答をした際に、いまのようなその静かなというお話が出たと、こういうことでございまして、私もそういう静かな条件、環境のもとに国民的な祭典が行われることが大変望ましい次第であると、こういう感触で申し上げたように記憶をいたしております。
  83. 野田哲

    野田哲君 ですから、当然十一月十日の日程を総務長官と総理協議をして決定されて、この日はもう動かさない、十一月十日というのは特に天皇にとっては即位の礼が行われた由緒ある日でもあるので、十一月十日というのは動かさないと、こういうことで決められたということでありますから、だとするならば、当面の最大の政治課題というのは、これはロッキードの解明とあとは政治日程をどう決めるか、これが最大の課題になっているわけですから、総理として政治日程を全く考慮の外に置いて十一月十日ということを決めたということは、これはもう常識的に考えてあり得ないのだ、十日を決めるに当たっては、もうそれに至る政治日程を決めていると、これはもうどう考えても思わざるを得ないんですよ、そうじゃないでしょうか。
  84. 井出一太郎

    国務大臣井出一太郎君) 十一月十日と言いますと、まあこれから三月程度あるわけでございまして、その間、流動的なあるいは不確定な要素というものも相当あるんじゃないかと思うんです。ロッキード事件の真相究明の問題、また政府側から申さしていただくならば、前国会積み残しの財政関係の法案、こういうものもどうしてもお願いをしなければならぬというふうにも思いますので、そういった日程等を織り込んで考えましたときに、きちんとおよそ解散、選挙はどこへめどを置くというわけにはただいまの段階においてはまいりかねておるというのが実情でございます。
  85. 寺田熊雄

    寺田熊雄君 次にお尋ねしたいのは、臨時国会の開会の問題ですが、これは御承知のような財特法の問題がありますから、私ども大蔵委員会で、大平大蔵大臣や、それから大蔵省の担当者にいろいろ聞いてみますと、九月中に赤字公債の消化ができませんと――もう建設国債は五、六百億円を残すだけなわけですね。ことに九月は金融の閑散なときなので、ここでいつも大量の国債を消化するのだそうですが、それがなし得ないとゆゆしい事態になるというのが大平大蔵大臣答弁でした。それから理財局長もそうですし、主計局次長もやはり予算の執行それ自体に大変な懸念を生ずるということでした。そういう認識においては、三木総理も官房長官も変わりはないんでしょうね、どうでしょう。
  86. 井出一太郎

    国務大臣井出一太郎君) ただいまおっしゃるように考えております。
  87. 寺田熊雄

    寺田熊雄君 そういたしますと、これはどうしても八月中に臨時国会を開きませんと、あなた方の欲せられるような結果にならぬわけですね。したがってあなた方としても、八月中に臨時国会を開きたいという、そういうお気持ちを持っていらっしゃることはわかりますけれども、いま、あなた、官房長官が御判断になりまして、開き得る情勢にあるんでしょうか、少くも開き得るという自信はお持ちなんでしょうか、その点いかがですか。
  88. 井出一太郎

    国務大臣井出一太郎君) 先般来申し上げてまいりましたように、片やロッキード問題、その進行ぶりと申しますか、これも一つの要件でありますとともに、一方財政的な緊急な要請というものを、これまた放置するわけにはまいらない、そのまあ兼ね合いといいますか、接点をどこに求めるかということで苦慮しておるさなかでございますが、いまおっしゃいましたように、およそのめどを八月中にぜひとも開きたいと、かように存じて、まあそれにもし障害があるとすれば、それをできるだけ切り開いていくと、こういう努力もこれからも払うつもりでございますが、それには野党の皆様の御協力も得なければなりませんし、いろいろの困難な条件を一つ一つ克服して、そうしてまあいまのようなめどで国会をお願いいたしたい、かように考えております。
  89. 寺田熊雄

    寺田熊雄君 官房長官のそういうお気持ちはわかるんですけれども、私がお尋ねしていますのは、いま官房長官の判断として、八月中に開き得る状態にあるとお考えなのかどうか、またそういう開き得るという自信をお持ちかどうかということなんですが。
  90. 井出一太郎

    国務大臣井出一太郎君) まあ困難はありましょうとも、どうしてもそういうことに持っていきませんと、いまわれわれに課せられておる使命を果たせない、特にいま財政事情等は寺田さん御理解のとおりでございますし、また一方ロッキード問題もせっかく検察当局が努力をしておる最中でございますから、その辺からもめどがついてくるであろうということを期待しつついまのような気持ちを抱いておるような次第でございます。
  91. 寺田熊雄

    寺田熊雄君 じゃ、終わります。
  92. 黒柳明

    ○黒柳明君 法務大臣、時間が、各党のあれがありますので。  一時半田中釈放、二億という保釈金と、こういうことですけれども、昨日のうちは地検の方が不相当であるというようなことでけさに、午前中に持ち越されたと、こういうことです。これはもう当然捜査当局判断ですから私たち門外漢が云々することはないんですけれども、捜査については、当然逃げもしない、隠れもしないと、証拠隠滅もなかろうと、こういうことですが、当然何回も、官房長官もいまおっしゃったように、これはロッキードだけじゃなくて大きな政変絡みのロッキード、あるいは政変の中のロッキードと言ってもいいぐらい、これからやっぱり政変劇に舞台は移ろうとしている最中ですね、まあ一つの派閥の総帥であること間違いありません。さらに、きのうあたり、起訴されても崇拝者が圧倒的にいることも事実です。まあ法的にこれはいかんともいたし方ないわけでありますが、決して私は証拠隠滅可能性がゼロであるとか、あるいは直接事件に関しては手足出さなくても、別の角度からいわゆる疑惑が持たれていますよね。法務大臣だっていろいろ疑惑持たれているわけですから、発言一つ一つに対して。そういうことを考えると、非常にやっぱりこの事件に対する検察当局のよくやったという姿勢、だけれど、この次はどうなるのかなという不安、こういう庶民の非常に単純な国民感情を逆なでするような結果ではなかろうかと、私はこういう声を聞いているんですけれども、法務大臣、いま報告あったと同時に、まあこの場でそういう一時半釈放ということも聞いたわけなんですけれども、ひとつ、田中保釈の話を聞いてどうお感じになりましたか。
  93. 稻葉修

    国務大臣稻葉修君) 裁判所の決定でありますから、従わざるを得ません。
  94. 黒柳明

    ○黒柳明君 その仕方がないという裏、表、いろいろまぜて、いま言いましたように、田中自体が――これは裁判所の決定です。それから、捜査当局の法律に基づいた正当なことでしょう。だから、私たち云々すべきじゃないと、こういう前提です。  ただ問題は、間もなく臨時国会、あるいはその前後において三木内閣がどうなるのかと、あるいは福田さんも大平さんも非常に活躍されている、そういう面では。ということでしょう。あることないことがみんな疑惑にとられる可能性もある、国会周辺をめぐって。そういうさなかにおいて、必ずしも捜査当局判断というもの全部国会においたってわからないわけです、何が捜査されているか。判断というのはわからない。そうすると、大きなやっぱり国民の感情としては、保釈されたと、まあものすごい金額だと、だけど、それで直接捜査に対してのあるいは陰謀とか逃亡とか、証拠隠滅はないにしても、今度は別の角度で、表裏一体であるいまの政変劇に非常にやっぱりまだまだそれこそ力なんか衰えてないと、こういう判断を少なくともするのが正当じゃないですか。妥当じゃないですか。であればこそ、昨日の起訴、そして保釈の申請に対して、地検は昨晩一晩考えてと、こういうことも不相当であると、こういう意見も出したわけですからね。これ率直な、裁判所の決定だから仕方がない、それはそれとして私、法律について云々する必要はないと思います。だけれど、全体的な国民感情として非常に今後やっぱりまた一つの何か不安の種がここにまかれたんではなかろうか。何かまた陰においてこう行われるんではなかろうかという危惧が現に強いんです。そういう論拠も強い。それについて率直にどうお感じになりますかと、こういうことですね。裁判所の判定は仕方ない、同じです、私も。それについて云々していません。そういう当事者であるということを踏まえてどう御感想をお持ちですかと、こういうことですよ。
  95. 稻葉修

    国務大臣稻葉修君) 政変劇、政変劇と言われて、それに離党している田中総理は影響力をお持ちになるのか、お持ちにならないのかと。あなた、いろいろ自分のお見通しとか、あなた政界の雄だからそういうこといろいろ見当つけられて質問されても、私、ロッキード問題の担当者として、ロッキード問題の真相解明がそういうことによって左右されるものではないと。どういう行動に出られるか見当もつきませんわ、私。  それから、自民党内政変劇と言われるけれども、それも私などは言及すべきことではないと存じます。
  96. 黒柳明

    ○黒柳明君 刑事局長、PXLの問題、決して終わったわけじゃないと、田中保釈になったわけですけれども。それからさっきの社会党さんへの答弁ですけれども、児玉ルートでPXLはこれからやっていくと、田中は別にしてと、これはどういうことですか。さっきの御答弁
  97. 安原美穂

    説明員安原美穂君) ロッキード事件の究明ということは、たびたび申し上げておりますように、ロッキード社が二十三億の金を日本国内に流して売り込みをやったという疑いのもとに出発しているわけでございまするから、なお、公訴提起が終わったものは五億二千万円にすぎないわけでございますので、そういう意味でロッキード事件の究明というものは終わったとは言えない。そこで、ロッキード社の売り込みということに関するならば、トライスターのほかにP3C、したがってPXLもあるわけだから、そういう意味においてPXLの関係のことがすべて究明を終わったというわけにはいかないということを申し上げたわけでございます。  なお、田中総理とは別にしてということは、そのことが田中総理関係があるということは私は断言するわけではございませんということを申し上げたわけであります。
  98. 黒柳明

    ○黒柳明君 児玉ルートでやると、田中を別にしてということは、田中保釈になったから、もう田中のことはPXLについての供述は終わったんだと、田中についてのPXLの供述終わった、PXLはまだ疑惑が終わったわけじゃないけど、これから解明をするけれども、これは児玉ルートなんだと、田中は全然別なんだ、関係ないんだと、こういう趣旨なんですか。
  99. 安原美穂

    説明員安原美穂君) 昨日の公判請求というものは、トライスターの売り込みに関する田中総理収賄起訴したのであると、それはP3Cとは何ら関係がないという捜査当局判断であるということを申し上げたわけであります。それだからといって、PXLの関係の疑惑はすべてなくなったのかというお尋ねでございまするから、PXLというものはロッキード社の製品でございまして、その売り込みに関しての不正行為の存否を究明中だから、すべてPXLの関係が終わったわけではないということを申し上げたわけであります。
  100. 黒柳明

    ○黒柳明君 質問がちょっとわからないんだ。いいですか。そこまではいいんですよ。そこまでは三回繰り返さなくたってさっきの答弁でわかった。その中において、PXLの解明は児玉ルートでやっていく、児玉ルートで、田中を別にしてと、こういうことなんです。だから、別にしてということは、田中のPXLについての供述はもう終わっちゃったんだと、だから、別ということは済んだんだと、こういう意味なんですかと、児玉ルート一本だけでPXLの解明をやっていくんですかと、こういう質問ですけどね。
  101. 安原美穂

    説明員安原美穂君) 児玉ルートと、それから丸紅ルートと、それから全日空ルート以外にないということも断言するわけにはいかないわけでありましょう、理屈といたしましては。ただ、田中総理を別としてということは、PXLの関係田中総理に疑惑があるということを前提として申し上げるわけにはいかないということを申し上げておるわけであります。
  102. 黒柳明

    ○黒柳明君 疑惑があるという前提は、いままでもそれは言われてきたです。別に疑惑があるとわれわれは一応政策変更で言いましたが、金銭の授受についてはわからない。捜査当局の解明を待つよりほかない。そうすると、疑惑がないということを前提に言えないけれども、田中別というのは――また同じ質問なんですよ。田中を全然PXLについて関係がないと、供述を得る必要はないと、捜査は終わったんだということじゃないんですねと。これはまた同じ質問なんですけれどもね。
  103. 安原美穂

    説明員安原美穂君) 容疑があるとは申しませんけれども、終わったとも言えません。
  104. 黒柳明

    ○黒柳明君 当然そうなると、法務大臣ね、いまどうですか、いまのことについて。法務大臣、いまのことについてどうですか。
  105. 稻葉修

    国務大臣稻葉修君) これから解明に当たる全貌、残っている二つの山を捜査していく段階において出てくるとも出てこないとも、何とも言えませんね。そんな見当を私がここでつけて話しするわけにいかぬじゃないですか。
  106. 黒柳明

    ○黒柳明君 どういう、どういう質問。
  107. 稻葉修

    国務大臣稻葉修君) PXLとね……
  108. 黒柳明

    ○黒柳明君 いやいや、そんなことをいま刑事局長は言ったんじゃないんですよ。いまの刑事局長のは、そんなことを言ったんじゃないですよ。
  109. 稻葉修

    国務大臣稻葉修君) どんなことを言ったの、君。(笑声)
  110. 黒柳明

    ○黒柳明君 どんなことって、だから話していたから……。結構結構、法務大臣。たまには私、人がよくても、ちょっぴりこう、人が悪くなる。いいです、座りなさい、法務大臣。一生懸命しゃべっているから、もう結構です。結構です。お座りください。
  111. 稻葉修

    国務大臣稻葉修君) わかりました。
  112. 黒柳明

    ○黒柳明君 結構ですよ、お座りください。こっちは一生懸命質問しているのに、何かこう、私もちょっとさびしくなった、いま。  法務大臣――何か質問するの忘れちゃった、変な方に行っちゃったから。ああ、わかりました。ここまでで終わったんです。済みません。私そんな頭がいい方じゃないんですよ。あっち向いたりこっち向いたり、私はもうそんな頭がよくないんで、ひとつ頼みますよ。一緒に協力してくださいよ。  まあ起訴をあれしたわけですけれども、ここからは公判の維持ですね、問題は。公判の維持についていろいろこう、私なりに疑問があるんですけれども、要するに、総理大臣職務権限、まあこれが一番中心であることは、これはもう私なんかもわかるんです。それからきょうのマスコミのいろいろの論調も私勉強させていただきました、短い間。やっぱり許認可権がある運輸大臣を指揮統轄するというところで職務権限があると、こういうことですね。果たしてこれが、全日空の機種の選定というところにこの総理大臣職務権限が及ぶということを本当に確信できるのか。公判維持というのは、これがやっぱり非常に大きな山だと思うんですけれども、法務大臣どうですか。
  113. 稻葉修

    国務大臣稻葉修君) 去る八月十二日、検事総長が法務大臣室に参りました。そしてその間の事情についての説明を聴取しました。その後、十六日で勾留期間が満期になるからというので、検察首脳部はその点について非常に時間をかけて、その翌日夕方まで会議が続いたと、そういう慎重な態度で、いま黒柳さんから質問された点などについて鋭意検討した結果、自信ありとして起訴に踏み切ったわけでありますから、私は検察当局のその検討の結果について信頼を置いておりますから、私も大丈夫であるという確信を持っておる次第であります。
  114. 黒柳明

    ○黒柳明君 あの会議には刑事課長が御出席になって、当然法務大臣もその報告は聞いていると思う。そうすると、機種選定については、これはまあ運輸省が直接には関係ないわけであって、路線の決定や何かについての許認可権ですね。だけど、これが閣議決定ではないけれども、やっぱりそれに触れるか触れないかと、こういうこと。そうなると、こういうケースというのは非常にやっぱり多いですね、内閣全体、国務大臣全体を総括する。そうすると、各省庁で今後――まあこんな事件が二度とあっちゃいけないですよ。だけど、評論家によると、一年はいいけど二年目はもうだめだと、こういう失礼なことを自民党にきのう言っている人もいました。自民党に対して言っていたんですよ、その人は。だけど、その可能性はゼロじゃないわけですね。今後総理大臣職務権限というのはそれこそ広範多岐に及ぶということで、これから総理・総裁になる方はやっぱりこういうことについて目を光らせ、厳しくしなければならない。これはいい傾向だと思います。まあ、このことについて法務大臣も絶対公判維持は間違いないと、こういう確信、これは捜査当局も、そうじゃなかったら何のための二回にわたる首脳会議かわかりません。これはそうだと思います。  それからさらに贈賄側、先ほど社会党さんのあれで、調査や何かの問題がありましたけれども、これはコーチャンですね、なかんずく、クラッター、エリオット、この次ですから。その起訴、逮捕がなくして実際に公判の維持というものは可能ですか、そこも自信を持っていますか。
  115. 安原美穂

    説明員安原美穂君) 十分に有罪を得る確信を持って公訴提起をした次第でございます。
  116. 黒柳明

    ○黒柳明君 済みません。ちょっと聞き漏らしました。一番初め、済みませんね。
  117. 安原美穂

    説明員安原美穂君) 十分に、いろいろな障害もございますが、有罪の判決を得る確信を持って公訴提起に踏み切ったものでございます。
  118. 黒柳明

    ○黒柳明君 当然、法務大臣も刑事課長を通して、間違いない、いま言った御意見と同じでしょうか。
  119. 稻葉修

    国務大臣稻葉修君) ぴたりと符節を合するがごとく、刑事局長の言うとおりに私も思っております。
  120. 黒柳明

    ○黒柳明君 先ほども大きな山を越えたという、きのうのあの検事正の発言があったんですが、私たちも聞いていまして、どうしてもあれは田中起訴について大きな山という取り方よりも、事件全体のというふうに受け取ったんです。これは警察当局の考え方をいまここで聞くわけにまいりませんもので、法務大臣はそうじゃないと、あくまでも田中についての大きな山なんだと。ただこの点ね、一番最後に、きのう検事正が、臨時国会もあることでありというようなことで、今月中にめどをつけたい――非常にやっぱり政治的な面も気にしている。配慮している。こういうことはいいのか悪いかわかりませんよ、国会のことだってそれはつんぼさじきでいるわけじゃありませんからね。生身の体でしょうから。そういうこともありますので、やっぱり、ここでじかには聞けませんけれども、山を越したと、こうなりますと、私たちがある意味で言っている、田中だけの要するにトカゲのしっぽ切り、あるいはこう、首だけ切って後は隠すんじゃないかという単純な疑惑というものがぬぐい去れないわけです。だから大きな山を越えたというのは田中の大きな山であって、ロッキード事件の大きな山じゃ決してないと、こういうことをもう一回法務大臣確認していただかないと、きのうの検事正の発言がどうも気にかかる、こう思うのですが、いかがですか。
  121. 稻葉修

    国務大臣稻葉修君) きのうの新聞発表検察当局一つの大きな山を越えたという意味は、丸紅ルートに関しては、ユニットがちょっと残っているようですが、まあ一つの大きな山を越したと。これがロッキード事件全体について大きな山を越したという意味にとられるとすれば、それは検察当局の真意ではないと私は思いますよ。やっぱり捜査には、まだ残っている全日空ルートとか、それから児玉ルートというの、これは犯罪のあれを、あるいはそういう政治的影響だとか、そういうことを金高であれするわけではありませんけれども、とにかく向こうから入ってきたものの多くは児玉ルートですから、それが解明されてないのに大きな山を越しちゃったなんていう、そんなことはもう断じて言えるものではありません。まだ二山も三山もあると、こういうふうに存じます。
  122. 安原美穂

    説明員安原美穂君) いま黒柳委員指摘の、臨時国会もこれありということを検事正が言ったというように一部新聞に載っておりますけれども、その点、検察というものは政治日程を超然として行うべきものであって、そういうことを顧慮してはならないという観点もございますので、不審に思いまして検察当局に聞きましたら、さようなことは申しておらないということでございますので、ひとつよく御理解いただきたいと思います。
  123. 黒柳明

    ○黒柳明君 わかりました。臨時国会と捜査の兼ね合いは、法務大臣も一、二感触と言っていろいろ発言したことがあるんですけれども、今月中にめどをつけたい、こんなことも法務大臣感触としておっしゃった。あるいはいつの時点か、児玉ルートは九月になるかわからない、これも感触としておっしゃった。だけど、いまになると、それが感触じゃなくて、非常に符合しているような――符合しているようなじゃない、符合しているわけです。これは捜査当局の総責任者ですから、これはあうんの呼吸で、報告を受けなくても、これは以心伝心でみんな知っていたんだと、こう私は敬服しているわけですけれども、いまの時点においてどうですか、法務大臣なりの臨時国会の開会と捜査のめどについては、どんなふうにお考えですか。――法務大臣なりで結構ですよ。
  124. 稻葉修

    国務大臣稻葉修君) ちょっと待ってください。――失礼しました。丸紅ルート、全日空ルートにつきましては、八月いっぱい時日を与えていただければ全貌のめどがつきますと、児玉ルートについては遺憾ながら、ああいう状態でありますものですから、本人が病気であって口が割れないということもありまして、九月にずれ込むのではなかろうかと、こういうことを申しておるようです。私もそんなふうに思いますね。  そこで、国会開会中と捜査の問題は、前にも、逮捕許諾請求とかいう問題があるので、なるべく重ならぬ方がいいという、その方が捜査としてはやりやすいでしょうということを思いますと、法務大臣としての考えをたびたび申し上げました。ここへ来ますと、まあ重要な国民生活に関係ある重要政治日程もあることですから、三法の通過とか、そういうことがあるわけですから、国務大臣としてそういう点も配慮して、そういう法案を抱えておる関係大臣などにはずいぶんお待たせして気の毒だなと、こういう考えも国務大臣として持つわけですわな。ですから、官房長官が八月中に開会の運びにしたいとおっしゃることについては私も異存はありませんなと、捜査を妨げるなんてことを申し上げるわけにはいきませんなと、もうここまで来ますれば結構じゃないですかと、官房長官のさきの御発言に同調するという立場でございますな。
  125. 黒柳明

    ○黒柳明君 官房長官、済みませんね。四時から会見らしいですね。臨時国会のことですけれどもね、要するに、まあ私たち、自民党の内部の、失礼ですけど、がたがた、あるいは野党との折衝もまだ未知数、十八日衆議院、二十四日ですね、参議院の議運が。月内といっても、二十四日、それで直ちにやったって、三日か、いままで三日前に通告したのが一番短いわけで、二十五日にやったって二十八日、延びたら二十九日と、非常にもう一日二日を争うわけですね、今月内となると。そうすると、何かこれは与野党に対する牽制球なのか、なかんずく自党のがたがたに対する牽制球なのかなというような感触も受けるんですけれども、これは今月内に臨時国会を開くと、これはいろんな重要法案がありますね、積み残しの。これは至上命仏と考えているんですか、至上命令。これはこれからまだいろいろありますんでと、まあこれはどうでもいいやと、こういう意味での……。きのうも三木総理発言しましたね、長老会議において、顧問会議において。こういうことなのか。もう何が何でも万難を排して今月内にやらなければと、なかんずく重要積み残し法案に対しての通過、国民生活に対して影響が及ぶ、もう至上命令なんだと、こういうかたい決意なのか、その点いかがですか。
  126. 井出一太郎

    国務大臣井出一太郎君) 私はしばしば八月中を目途にと申し上げてまいりましたが、これは財政関係法案等の成立が非常におくれるということによって経済に対する影響というふうなものを考慮いたしますと、どうしても九月上旬には仕上げなければならぬのではないかと、こういう要請から考えましたときに、やはりどうしても――至上命令という言葉も非常に強いお言葉ではありますが、まあそれに近いぐらいの気持ちで臨時国会を考えておるのでございまして、決して牽制球とか、そういった策略ではございません。
  127. 黒柳明

    ○黒柳明君 そうすると、もう二十四日の参議院の議運、あと残されるのは二十五、二十六、二十七、二十八、二十九、三十、三十一、この間にもう決める、こういう腹は強いわけですね。
  128. 井出一太郎

    国務大臣井出一太郎君) まだ幾日というところまで煮詰まってはおりませんけれども、そういう方向で衆参の議運にもお願いをいたす所存でございます。
  129. 黒柳明

    ○黒柳明君 じゃ官房長官、会見の方へ行ってください。  それで、法務大臣、先ほどの公判維持の点、ちょっと時間がなくなりましてね、いまの官房長官の後を受けて、ちょっとまた聞きたいんですけれどもね。いま至上命令と、こういう強いことはどうかと思うけどそれに近いと。そうすると間もなくですな、臨時国会の開会。その前に当然これ、捜査のめどをつけると。先ほど全日空丸紅ルートは今月中と言ったのも、これ検察当局方針ですね。法務大臣のお言葉じゃないわけですね。全日空丸紅今月中と言ったのは、これは検察当局の……。
  130. 安原美穂

    説明員安原美穂君) 昨日の記者会見におきます検事正の談話の内容によりますると、八月中に全日空丸紅関係についてはそのめどをつけたいと考えていたが、なお九月にずれ込むおそれもあるということを申した趣旨のように先ほど報告を受けました。
  131. 黒柳明

    ○黒柳明君 いまちょっと法務大臣発言違っていたですね、全日空丸紅は今月中と。そういうことですね、いま刑事局長おっしゃった……。
  132. 稻葉修

    国務大臣稻葉修君) 刑事局長の方が正確でございます。
  133. 黒柳明

    ○黒柳明君 そうすると、臨時国会が今月中という政府の意図、意思、これはかたいです、相当。そうすると、ずれ込むという、きのうの捜査当局の責任者の話。そうすると、やっぱり臨時国会の前に何らかの捜査一つのめど、区切り、これを  つけなければならないという気持ちがあるんじゃないですか、当然。どうです。
  134. 稻葉修

    国務大臣稻葉修君) 法務大臣といたしましては、強い希望を持っております。
  135. 黒柳明

    ○黒柳明君 その強い希望というのは、どういうめどが考えられますか。
  136. 稻葉修

    国務大臣稻葉修君) そこはなかなか微妙ですね。きわどい、少し。で、月内に召集しなければ、この審議日程等も考えて、これ重大な影響ありますからね、あの三法は。そして、私がそういうことを申しますのは、これはすでにあなたも御存じのとおり、閣議でこれは公表されていることですから、木村運輸大臣が切々このことを訴えられて、私は本当にもっともだと思った。それで、ロッキード問題究明の担当大臣としても一日も早くロッキード問題の解明に努力しなけりゃいかぬなという切々たる私も気持ちを持ったわけです。それで、いまようやく一つの山を越し、二つの山をそう遠くない時期に越えるであろうと、ぜひそういうふうにやってもらいたいという強い希望を持って、月内臨時国会召集の可能になりますことを強く希望しておるんです。そういう気持ちです。
  137. 黒柳明

    ○黒柳明君 総選挙でロッキードの政治的決着をつけたいという意見もあるようですけれども、法務大臣、この考えはどうですか。
  138. 稻葉修

    国務大臣稻葉修君) そういう考えを私直接聞いておりませんから、よくわかりません。総理のそういう御発言の意味、内容を聞いておりませんものですから、私にわかりませんな。どういうつもりかわかりません。ロッキード問題の決着をつけるのは、この刑事責任につきましてはやっぱり検察庁がつけるんであって、総選挙でつけるんじゃないでしょう。これはつけた後の総決算を総選挙でやるんでしょう、と思いますが。
  139. 黒柳明

    ○黒柳明君 これは総理大臣がおっしゃっている意味で、総理大臣に来週あたり出てきてもらうようになっていますけど、そこでも聞きますけれども、いまおっしゃったことが私は常識だと思うんですよ。やっぱり捜査当局が決着をつけて、それがうやむやのまま、それでどちらに軍配が上がるのか、与党か野党か、どの党だと、こんな決着のつき方、私はおかしいと、こう思うんです。ですから法務大臣内容はわからないと、こうおっしゃいますけど、三木総理がたびたび言っていることなんです。ですからおかしいということは、ちょっとこれは――まあどうぞ、いいからしゃべってください。
  140. 稻葉修

    国務大臣稻葉修君) 私の言ったような意味でおっしゃっているものと信じます、総理も。
  141. 黒柳明

    ○黒柳明君 私の言っているような意味ではないんですよ。やっぱり捜査がこうぐだぐだになって、臨時国会もやらなければならない、さらに灰色高官名もと、こういうことになりますからね。それは結局、政治決着を総選挙のどちらが勝つか負けるか、議席の増減と、ここで国民の支持があればてなことじゃないんですか。これは当然ですよ、総選挙で政治決着ということは。これに対しておかしいじゃないかと、こういうことですね。まあいいですわ、これ。  運輸省、けさ一部のマスコミでこういう報道があって、私もこれ調べていたんですけれども、ARTS-J、これ、ターミナル管制情報処理システムですね、レーダーのシステム。私も時間がありませんから、いろんなおっしゃりたいこと、また後で。三菱電機がこれ開発していたわけですけれども、三菱電機が試作機を羽田に取りつけた時期、何年何月か、それからユニバック社が輸入をして、その輸入品を羽田に取りつけた時期、その額、この三つ、まず言ってくれますか。次長でも結構ですよ。三つ。時期二つと金額。
  142. 松本操

    説明員(松本操君) お答えいたします。  羽田に三菱が開発いたしました、私どもARTS-Mと呼んでおるものが据えつけられましたのは四十七年の六月でございます。これ、四十六、七の予算でつくりまして、四十七年の六月でございます。それからユニバックのコンピューターというふうにおっしゃいましたが、現在私どもがARTS-Jと呼んでおるものそのもの、このそのものが羽田に一応据えつけられましたのが五十年の三月二十五日でございます。それから価格につきましては、これは計算の仕方がいろいろございますので、非常にわかりにくうございますけれども、据えつけ費がごたごたいたしますので、それを全部除きまして、単体だけで勘定いたしますと、三菱電機の試作品みたいなもの、これは単体だけで一億九千三百五十万円でございます。これはもう単体だけで、コンピューターは抜きでございます。それからARTS-Jとしてコンプリートの形になりましたものにつきましては、据えつけ費を除き、付属機器を加えまして、東京、大阪二ヵ所分で二十二億九千万でございますから、一カ所当たり約十一億何がしと、こういうことになっております。
  143. 黒柳明

    ○黒柳明君 これ一つ一つ質疑していますと、また大蔵省にも質問するんで、私のいまから言うこと、間違いがあるかどうか言ってくださいね。  四十六年十月、三菱電機はこの航空官制システムについての開発を始めて、四十七年の六月、試作機をつくって羽田に一応取りつけた、それで四十七年七月、ユニバック社のコンピューター導入、さらに八月、運輸省の行政指導があってユニバック社に決定と、まあこういうこと。さらに、いまおっしゃったように、四十九年三月はユニバックに発注して、五十年三月羽田設置と。  問題なのは、四十七年の七月と八月です。言うまでもありません。四十七年田中内閣成立。四十七年八月三十一日、九月一日、ニクソン田中会談、そしてここでいろんな疑惑が起こった。いわゆる三菱電機が四十六年十月から国産開発を進めてきた。それから翌年に試作機も羽田に設置した。ところがその六月の一カ月後、七月、八月ですね、いまのこのがたがたしているいわゆるハワイ会談ないしこのトライスター導入、その時期にこのユニバックの導入が決定し、運輸省からの行政指導があった。そして五十年の三月に羽田、大阪に設置した、その額が二十二億。まあこの中のドルのあれが十四億ですか、外貨が。こういうことです。これ、国内の開発をしていて急に輸入決定と。しかも、この中には高度の政治的な輸入に対しての判断が持たれたと。これは私三菱電機にも聞きました。これは広報室の佐々木という人です。室長です。私たち時期的には若干疑問が残っているかもわからなかった、納入時期、だけれども国内開発をやれということならばやれないことはありませんでした――これ第一ですよ。いいですか。時期的には納入時期、四十九年という時期には納められるかどうか若干問題は残っていました、だけれども国内開発をやれというならば、四十六年からやってきて四十七年には試作機を取りつけたんですから、国内開発でユニバックと同じものをつくれということならばつくれないことありませんでしたと、だけど私たちも急に政治判断が下ったんではなかろうかと、こう見ざるを得ませんと、こういうことをおっしゃっているんです。  さらに、これは私言うまでもありません。田中ニクソン会談においての緊急輸入、その中にもこのレーダーの問題が入っていますね。ターミナル情報処理システム機器設置と、いまおっしゃった二十二億九千万、このうちドル減らしで十四億、これがいっているわけですけどね。私はこの問題はもっと調べなきゃならないと思うんです。あるマスコミがけさこの一端を流したんで、私はここの場で究明をするわけですけれども、非常に時期的には全くぴったりです。しかも、ニクソン田中会談において、ターミナル情報処理システム機器設置と、これに対して申し入れもしている。これは全日空の問題じゃありませんからね。金額もドルにして十四億、ドル減らし十四億、こういうもの。しかも、当事者の三菱電機も、責任者も、開発しろというならばできましたと、まあ、ユニバックの方は既存のもう設置したものがありますから、それとすぐ間に合わせろといったって、それはもう不可能なことです、だけどそのために四十六年から開発していたので、やっぱり私たちも何らか政治判断が下ったんではなかろうかと見ざるを得ませんと、こういう見解を述べているんです。どうですか、もうここらあたり、局長でいいんじゃないですか。
  144. 高橋寿夫

    説明員(高橋寿夫君) お答え申し上げます。  御承知のように、ARTS-Jというのは大変すぐれた機器でございますが、私ども三菱電機に対しまして試験研究補助金を出しまして、日本でもそういうものができないかということを研究してもらったことは事実でございます。そして四十七年六月に試作機を据えつけたわけでありますけれども、遺憾ながらこれは、開発されたものは当時はまだ試作機の段階で、実用にはほど遠い存在であったわけであります。一方、四十六年の夏に雫石の事故が起こりまして、こういったレーダーシステムの完備が非常に大事だということになったものですから、四十六年の十二月に報告が出ているわけですけれども、アメリカの航空局に依頼いたしまして、アメリカは日本よりも管制システムが進んでおりますので、日本の航空管制制度を調べてもらった。ところが、その報告書におきまして、アメリカにARTSⅢというのがすでに実用機としてございまして、これが非常によろしいと、これを使うことを強く勧めるということを四十六年十二月に推薦をして帰ったわけでございます。  そこで、私たちといたしまして、翌年すぐ、一月、二月にかけまして調査団を出しまして、アメリカ、欧州各国に出しまして調べました。それらの結果を総合いたしますと、アメリカの調査団が推薦したARTSⅢというものは、そのまま日本に持ってきて使おうとすると問題があると、それから一方、三菱電機の開発いたしましたものは試作段階であって、まだ実用にはほど遠い。そこで、これは二菱電機は試作といえども、その設計、システム、ノーハウ、こういった点については相当勉強していますので、三菱の頭脳にアメリカの機械を与えるということで、一つのまとまったものを三菱にやらせるというのが一番いいんではないかという結論に達したわけでございます。そこで、たまたま四十七年の夏に緊急輸入の話がございまして、航空機の話が出ましたが、並行いたしまして、ちょうどこういったものをアメリカから輸入して、そして三菱に全体のシステムをつくらせるということを考えていたわけでございますので、緊急輸入の中に、そのアメリカから買うコンピューターあるいはレーダーに表示する装置ですね、この辺を中に入れてもらったと、そして輸入した上で三菱が自分のところの技術で組み立てまして、三菱独自の技術をそれへ入れまして完成品にすると。ちょうどでき上がった機械の値段からいいますと三分の二ぐらい輸入品の部分でありまして、三分の一は三菱のそれまで研究補助金で開発してきた技術がそのまま生かされたということでございますので、三菱の技術者の方のお話は、私たちとしてはやはり多少一面的な話ではないかという気がしているわけでございます。
  145. 黒柳明

    ○黒柳明君 きょうは時間に制約がありますので、委員長、三菱の話は一面的だというので、三菱電機のこの問題に対しての担当重役を証人に喚問してもらいたい。それでその証言を私聴取したいと、こう思います。いまの時期にこういう大きな問題が提起されてきたわけですから、この問題も含めてやっぱり捜査当局が果たして解明しているのかどうか、これもまた若干聞きますけれども、ひとつ理事会でお諮りいただけますか。
  146. 剱木亨弘

    委員長剱木亨弘君) 承知しました。
  147. 黒柳明

    ○黒柳明君 運輸省当局ですね、ひとつ後日細かい点はまた煮詰めたいと思います。大蔵省も呼んだし、法務大臣もまだ質問が残ってますので。大蔵省、理財局長ですか、先ほどからたびたび財特の問題が話に出ましたけれども、財特を早く早くと、これはもう関係がない法務大臣もそういうことをおっしゃっているわけですけれども、いつごろをめどにこれを国会通過させなければ事務当局として財政的に困難なのか、いかがですか。いま私が聞いたところによると、建設国債が九月度で六百数十億ですか、出せるのは。そうすると、先ほども社会党の先生がおっしゃったように、やっぱりシンジケートも九月の財政問題でこれはもう限度だと、六千億とか一兆とか、こう言われているらしゅうございますけれども、ともかく臨時国会、ロッキード、この表裏一体の中で、なかんずく財特法、この財政特例法というのは非常にやっぱり大きな問題だと思うんですが、事務当局としては財政上これをいつ国会を通過させないとうまくないと、こういうふうなお考えでしょうか。
  148. 松下康雄

    説明員(松下康雄君) 予算のたてまえという見地から、まずお答えを申し上げますと、歳入予算のうちの三兆七千五百億円を占める財源の裏打ちとなる重要法案でございますので、私どもといたしましては、これは予算と一体不可分のものとしまして一日も早くこの成立を期待をいたしておる次第でございます。  なお、公債の発行の点との関連でお答え申し上げますが、御指摘のように、ただいま発行いたしております財政法第四条に基づきます公債は八月まででほとんど発行を終わりまして、九月以後に残ります部分は六百三十億円余りでございます。したがいまして、九月分につきましては、この特例公債法案が成立をいたしませんと、発行すべき長期の国債がないという事態になるわけでございますけれども、また一方におきまして、九月は金融緩慢の時期でもございますし、従来の国債発行の例からいたしまするというと、九月の時期に相当大量の公債の消化を期待をしながら運営をしてまいった次第でございます。さような事情でございますので、九月にはぜひとも公債の発行を継続いたしたい。九月に公債の発行を継続いたしますためには、普通の事務手続から申しますというと、八月中にシンジケート団との相談をいたしまして、九月の発行を円滑に進めるという必要がございますけれども、何分特殊異例の時期でございますので、そこは事務当局といたしましてもいろいろ努力をして、九月に入りましてからでもなお所要の発行量の確保には努めてまいりたいと、こう思っておりますけれども、九月に仮に入ることになりましても、でき得る限り早い時期にこれが成立を見ることを衷心期待をいたしておる次第でございます。
  149. 黒柳明

    ○黒柳明君 できるだけ早い時期と、こういうことなんですが、臨時国会も今月中というと、もう日にちも指折り数え、捜査のめどもということになるわけで、大平大蔵大臣が十二時にかぜ引いて出てこられないという、何かおかしなかぜなもんで、政務次官御足労願ったんですけれども、いまのできるだけ早い時期と、これはもういつごろと具体的に――この八月は無理でしょう、九月のいつごろと、こういう早い時期のめどをつけていますかね。
  150. 細川護煕

    説明員(細川護煕君) いま次長からお答えしましたように、四月からの建設国債の残りの分の関係、あるいは九月の資金需給の関係、いろいろありますが、シ団との契約は、大体前月の末に契約をして、翌月の二十日ごろに発行ということになるわけです。金をもらって発行ということです。で、その間にもちろんこの募集の業務なんかもやるわけですが、そういう契約の手続をおくらせても、ぎりぎりのところ九月の上旬、つまり九月の十日ごろがぎりぎりのところだろうというふうに考えております。
  151. 黒柳明

    ○黒柳明君 九月の十日財特法通過となりますと、これは非常にやっぱり捜査のめどを早くつけてもらって、いわゆる捜査終了宣言できるのかできないのか。児玉ルートは残してでも臨時国会突入、臨時国会に入ってもすぐ財特を審議できるのか。全く日本の二十四兆の予算が、本当に三兆五五千億が宙ぶらりんになるかならないか。これは国鉄のこともあるし、いろんな面に関連しますけれども、ここで法務大臣、これは直接には御関係ないので、官房長官がまだいらっしゃらないので、法務大臣、PXLの点にもう一回戻るんですけれども、四十七年十月九日の国防会議、例の了解事項ですね、輸入も含めて、白紙還元と。これが四十八年七月二十七日の児玉のいわゆるP3Cのロッキード社との契約、五十機で二十五億、一機五千万、これの道を開いた。これが金銭の授受がどうあったとか、疑惑がなくなったとか、あるんだとか、そんな問題はまだこれからの問題です。だけれども、少なくともあそこにおいて国防会議が了承したと、了解事項に対してサインをしたと、そして輸入も含めて、ということが一年後の四十八年の七月二十七日のロッキードと児玉との契約に何らかのやっぱり道を開いた、これは私は常識的に言わざるを得ない。あそこではっきり断を下せば輸入なんかあり得ないんだとか――まあどういう断かわかりませんよ。その間においてトライスターの問題が起こっているんですから、現に。そのことを田中総理は知っているんですから、その田中総理トライスターの問題で起訴され、一方、PXLについても田中総理が輸入も含めてという断を下したんですから、これは間違いない。それが金銭の授受とか疑惑とかいうものはこれから捜査当局にまつにしても、あの児玉とロッキードの契約の道の一つを開いた、こういうことには当然ならざるを得ないかと思うんですけれども、どうですか。
  152. 稻葉修

    国務大臣稻葉修君) 児玉関係捜査の進展に従って解明さるべき問題であると存じます。
  153. 黒柳明

    ○黒柳明君 まあ、児玉捜査の進展に従って解明ですけれども、これが先週のあれでは一考も三考も四考もしているけれどもむずかしいと、いま現在むずかしいと、こういうことでしょう。だから私、一番冒頭に言いましたように、PXLの田中は別かと、こういうようなことがちょっと刑事局長発言になったので、それはおかしいぞと、こういうことでありまして、児玉ルートの解明とともに当然いまのことが解明されなければならない。となると、児玉ルートの解明がこれはもう至上命令であると、こういうことであると思います。  官房長官、済みません。私の時間もう三分過ぎましたけど、いま財特のことで大蔵省当局と盛んにやってました。九月十日やっぱり国会通過、そうじゃないと日本の経済は大変ですと、こういうことなんです。これは、いままでは、九月は初旬とか、なるたけ早い時期とか、こういうことで、さもありなんと、こう思っていたんですけど、九月十日ごろと、こういうことになりますと、これはもう先ほどの至上命令で臨時国会――いや、そういうことじゃなくて、それに近いと、こうおっしゃっていましたけど、これはもう至上命令じゃないですか。何をおいても今月中に臨時国会開く、開いたとしても、いま言いましたように、二十四日参議院の議運の理事会、それに対して与野党が意見一致しなくたって直ちに臨時国会いっ開くといったところで、二日、三日前。そうすると、二十五日にやったって、二十七、二十八日でしょう。十日しか残っていませんよ、日曜が入りますからね。十日間で財特法を通せるか。これは、灰色高官をどうするんだ、さらに全日空のルートはどうなっているのか、それだけだって、なかなか強行採決でなければこれは通過しない。これは常識じゃないですか。これはもう、私よりも長く国会生活されて、重要な立場にある官房長官ですから。それでも十日に通さなきゃならないという、事務当局のこれは至上命令、事務当局のこれは至上命令です。そうなると、それを受けた内閣の方としても、もう何が何でも今月じゅう開く、開いたはいいけれども、野党の言い分は聞くけれども、ともかく十日までは強行採決しても通さざるを得ないと、こういう判断に立たざるを得ない。――強行採決っていまから言うのは、この点だけはちょっと早いかと思いますよ、強行採決でということは。まだこれからの与野党の話し合いがあります。野党だってどういう理解を示すかわかりません。だけれども、そのほかの日程、スケジュールというものはもう決まったと同じということで、もうここらあたりで発言していただかないとうまくないんじゃないですか。今月めど、めど、こういうことでいままではよかった。だけど、九月十日の財特法の通過となれば――十一月十日、三月ありますと、これで何となくごまかされた。だけど、九月十日となれば、もう何が何でもということになって、しかも一週間か十日の間で絶対の通過ということに対して努力せざるを得ないんですと。それでなかったら、大蔵大臣はもう辞任じゃないですか。辞任になれば、三木内閣はもう崩壊じゃないですか。そんなことは趣旨じゃないんじゃないですか。ひとつ官房長官、もうこの時期に来て、何か、めどだとか努力だとかいうことじゃなくて、スケジュールというものを、確かにそういう九月十日財特通過ということになれば、そうならざるを得ないと、こういうふうなひとつ御発言をしなきゃならない時期じゃないかと思います。いかがです。
  154. 井出一太郎

    国務大臣井出一太郎君) これが非常に緊急の課題であるということはおっしゃるとおりでございまして、それゆえにわれわれも焦慮を重ねておるわけでございます。財特法の通過を期しまして、いまおっしゃるような強行とかなんとかということでなくて、そのあたりは十分な御理解を野党の皆さんにも持っていただきまして、そしてこの難問題に取り組んでまいりたいと、こう存じております。
  155. 橋本敦

    ○橋本敦君 最初に官房長官にお伺いをしたいと思います。  言うまでもありませんが、田中角榮総理総理大臣在職中に、日本政治の最高権力の地位にあるその立場を乱用して、外国から五億円という巨額の賄賂を受け取ったという、まあ言ってみればわが国政治史上ぬぐいがたい汚点を残すような事実で昨日起訴をされた。きわめて日本政治にとって重大な問題であります。こういうときに、総理大臣がこのロッキード問題を徹底的に審議を進めている当委員会に議員の要求があれば出席をして、その責任なり所信を明らかにするのは当然の責務だと私は思うのですが、私の要求にかかわらず三木総理大臣がきょうお越しにならないことは、私としてはまことに遺憾である。これでは、三木内閣が口では真相解明、政治生命をかけてやると、こう言うけれども、本当にそのとおりやるかどうか国民から疑いの目をもって見られてもいたし方ないとまで言われかねない問題であります。私は、三木内閣はこの問題についてそれなりの責任があると思いますが、官房長官いかがお考えですか。
  156. 井出一太郎

    国務大臣井出一太郎君) きょうは、御要求ではございましたが、総理がよんどころない所用のためにお伺いできないと、この点をまず私はおわびを申し上げます。  そこで、昨日田中総理起訴になったと、この事実を前にいたしまして、実はまあ大変沈痛な思いでおるのでございまして、この点はまことに残念千万であります。まさに日本政治史上にかってなかった事柄でございまして、これはまあしかし、これから裁判を通してその間に実体が解明されるということでございますが、われわれが当面しなければならぬことは、この地に落ちた政治の信頼をどうやって回復をするか、ことに政府与党ともに厳しく反省をし、えりを正さなければならぬ事態でございます。いましからば具体的にどうするかというところまでは申し上げませんけれども、その気持ちで、自民党の近代化といいましょうか、国民の期待に沿い得るような体質の改善ということに努めてまいらなければならぬと、このように思っておる次第であります。
  157. 橋本敦

    ○橋本敦君 昭和四十八年十月三十日に、閣議は「官庁綱紀の粛正について」という閣議決定を行っています。この中では、「最近の一部の公務員の収賄容疑事件のごとく、職務に関し不正の疑いのある行為が続発し、これがため国民に不信の念を抱かせるような事態を招いたことは、誠に遺憾に堪えない。」として、「この際、政府としては重大な決意をもつてその根絶を期するものとする。」、こういう閣議決定が行われている。この田中内閣時代の閣議決定は、いまも当然三木内閣としてこれを踏襲し、尊重しているものと考えますが、いかがですか。
  158. 井出一太郎

    国務大臣井出一太郎君) いまおっしゃいますような閣議決定がなされたことはそのとおりでありまして、たしか建設省関係汚職に端を発しまして、公務員に対して強くこれを戒めるという決定でございました。もとより、これは今日私どもも踏襲をして、これを実施しなければならないと心得ておる次第でございます。
  159. 橋本敦

    ○橋本敦君 この四十八年十月三十日といえば、田中角榮に対する起訴状を見ても明らかなように、四十八年八月十日にピーナツ領収証の金額、そしてまた四十八年十月十二日にはピーシズ、この金を受け取っているという事態のもとで行われている閣議決定であります。言うならば、田中角榮総理大臣は、自分が巨額の収賄をしながら、建設省関係の下級官僚の皆さんに贈収賄事件が続発しているということ、そのことをとらえて、みずから発議をして閣議で贈収賄事件の根絶を期すというような、このような閣議決定を行っている。私は、この一事を見ても、国民が恐らく怒りに燃えるであろうと思いますが、一体政治はこのようなことであっていいのか。自分が賄賂を受け取っておいて、賄賂を受け取るようなことを根絶するという閣議決定を堂々とやる、このような政治家のあり方について、官房長官、いまこれを踏襲されていると言われるが、この田中角榮総理のこのやり方についてどう思われますか。
  160. 井出一太郎

    国務大臣井出一太郎君) まあ、ロッキード事件の真相解明は、裁判を通じてなされるべきものでございますが、まあ、いずれにもせよ、現段階において大変遺憾なことであると、かように申し上げる次第であります。
  161. 橋本敦

    ○橋本敦君 遺憾どころか、政治家としてあるまじき行為である、総理としてあるまじき行為である、こう言わねばならぬのじゃありませんか。もう一遍聞きます。遺憾で済みますか。
  162. 井出一太郎

    国務大臣井出一太郎君) 私があえて論評をいたしませんけれども、私どもといたしましては沈痛な思いでいまのこの事件というものを迎え、これを将来再び発生してはならぬという大きな教訓としてとらえておるような次第でございます。
  163. 橋本敦

    ○橋本敦君 この閣議決定はいまも三木内閣は踏襲して生きている。こういう中で一体この田中角榮に対する起訴という事態をどう見るか。これは重要な三木内閣政治姿勢にかかわる問題です。  私は官房長官に一つ言いたいのですが、田中角榮は、かつて金脈問題が問題になったときにどう言ったでしょう。政治的地位利用は一切ありませんと、もしそんなことをやっていたら総理どころか私は代議士の地位を去りますと、こう言いました。いまも私は耳に残っていますよ。そしていま政治的地位を乱用して、かつてない汚職事件の張本人として、いま起訴をされておる。検察庁は有罪の確信を持って対処しておる。こういう点を考えますと、三木内閣汚職根絶というこの閣議決定をいまも尊重するならば、三木内閣の責任において田中角榮に議員を辞任するよう勧告するのは、この閣議決定を厳に尊重している三木内閣であり得ることであるし、やってよろしいことだ、やるべきことだと、私はこう思いますが、官房長官のお考えいかがですか。それぐらいやらなければ、この閣議決定を本当に三木内閣が尊重していることにはならぬのではありませんか。
  164. 井出一太郎

    国務大臣井出一太郎君) ただいまわれわれがこの事件によって大きな衝撃を受けておるということは、もう申し上げるまでもございません。したがいまして、いまおっしゃるような措置が、あるいはまあどういう形で出てまいるか、これらは今後の真相の究明とも相まちまして、いまここでお答えを申し上げるのは差し控えさせていただきたいと思います。
  165. 橋本敦

    ○橋本敦君 そういう姿勢ではだめですよ。汚職を根絶するという閣議決定をいまも尊重する。それをつくった当の田中角榮総理時代にこれを発議をしている。田中角榮政治家としてのこのようなやり方はとうてい許されない。三木内閣がこの閣議決定を尊重するなら、前総理がみずからやったことについて三木内閣がこれを厳しく追及するという姿勢に立たなければ、どうして真相解明をやると言えますか。  私は、この前、官房長官に、小佐野賢治氏の電電公社経営委員を解任せよと要求しました。重大な関心を持っている、こうおっしゃいました。これもこの田中起訴を機会にして解任という処置をとるべきです。小佐野氏は、コーチャン証言によっても、トライスター問題、この問題で贈収賄田中角榮が問われたこの事件について、児玉譽士夫ともコーチャンと何遍も売り込みの相談をしたと証言をされておるし、児玉を通じて金をもらったというような推定もコーチャンはやっている。このような疑惑の人を、まだ田中起訴という、トライスター関係収賄、これに関連して、なお解任しないで置いておかれますか。もう一度この点に御答弁を願います。
  166. 井出一太郎

    国務大臣井出一太郎君) 前回橋本さんから、小佐野氏に対してただいまと同様の趣旨の御発言を承りました。まさにあなたが関心を持たれておると同様に、私もこれには関心を払っておるという意味で申し上げたわけでございます。したがって、小佐野氏に対しまして、いまおっしゃるような解任という要件が満たされてはまだおらない、これが的確に司直の手によっての究明というふうなことに相なりました段階においては、そういうことをも十分に考慮しなければならぬのではなかろうかと、かように存じております。
  167. 橋本敦

    ○橋本敦君 官房長官に最後に伺いますが、いま言った司直の手による究明を小佐野氏が受けることあらばということが具体的に起こるならばやるということを私は一応お伺いして見守ってまいります。私どもは、それよりも一刻も早く解任すべきだと、こう思っておるんですが、最後に伺いますが、これまで三木内閣は、この大きなロッキード疑獄事件を徹底的に真相解明をやり、国民の前に明らかにして、その上で総選挙で国民政治に対する審判を求めるのが理想であると三木総理は言明をされた。そういう方針で来られた。ところがいま、この田中角榮起訴という事態の中で、もう全面的なロッキードの幕引きがいろいろな政争劇を含みながら行われていくのではないかという不安を国民は感じ始めている向きがある。いま三木内閣は、このような事態の中で徹底的な真相解明をやって、国民の前に真実を明らかにした七で総選挙をやるという方針に変わりはないかどうか。昨日三木総理が言明されたという、ロッキード問題の決着は総選挙でつけるという意味は、それとは違う意味で、真相解明をやらないまま総選挙をやって、総選挙の結果によって決着をつけてしまうという意味なのか、どちらであるかを官房長官明確にしていただきたい。これであなたに対する質問を終わります。
  168. 井出一太郎

    国務大臣井出一太郎君) 田中総理起訴によってロッキード問題が終了をしたというふうな考え方は断じてとっておりません。この間の消息は、稻葉法務大臣からも先ほど来申し述べられておるとおりでございます。   〔委員長退席、理事岡本悟君着席〕 そして、これはいずれ総選挙という時期に遭遇しなければならぬのでありますが、その場合、真相の究明ということの実態国民の皆様の前に示す、これによって決着をつけるというのが三木総理考え方でございます。
  169. 橋本敦

    ○橋本敦君 官房長官に対する質問は終わります。  続いて、法務大臣並びに法務省に伺いますが、きょう起訴された田中角榮が二億円の保釈金を積んで保釈決定をもらって釈放されると、こういうことであります。もうすでに釈放されましたか。
  170. 安原美穂

    説明員安原美穂君) ただいま四時半に釈放されたという報告を受けました。
  171. 橋本敦

    ○橋本敦君 賄賂をもらうのも五億円という巨額なら、また保釈も二億円という巨額、まさにどこまでいったら金権政治の尾が断ち切れるかと思うばかりでありますが、私はここで法務当局に伺いたい。証拠隠滅のおそれがあるということで保釈は不相当だという意見を検察官はつけられたようですが、裁判所が裁判所の判断証拠隠滅のおそれはないと判断されたのでしょう、保釈決定をなされた。だがしかし、証拠隠滅のおそれがあるという検察庁がとられた判断、これはそれなりに私は妥当だと思っておるんですが、この裁判所の決定に対して、なお証拠隠滅のおそれがあるという検察庁の確信に基づいて異議の申し立て、つまり抗告を提起をする、こういう手続が法的に可能である。この抗告手続はとられましたか、とられませんか。
  172. 安原美穂

    説明員安原美穂君) 種々検討の結果、準抗告の手続はしないということに決定したと聞いております。
  173. 橋本敦

    ○橋本敦君 そこで、法務大臣に伺います。種々検討の結果というけれども、本当に証拠隠滅確信があるというなら、検察官は――私も弁護士ですから幾多の経験がありますが、準抗告は本当にたくさんとられていますよ。また、とるべき筋合いの事件だと、私はこれを思うんですよ。証拠隠滅のおそれがあるということは、これは具体的に言うならば――今日の委員会審議の段階でもいろいろとそのことは予測をされたんです。たとえば、法務大臣、あなたは、つかまえる方も日米協力なら、逃げる方も日米協力だとおっしゃったことがあるでしょう。   〔理事岡本悟君退席、委員長着席〕 安原刑事局長、あなたは私の質問に対して、橋本委員にいまここで答えることが直ちにアメリカ側に伝わるという事情もありますのでその点御了解願いたいとおっしゃって、答弁を回避されたこともあった。私はそれが田中角榮がやっているとは言いませんよ。言いませんが、この大きな一連の疑獄事件の中で、証拠隠滅という問題はいまなおこれは田中角榮及びその影響力によって行われ得る可能性は厳然としてあると見なければならない。しかも、贈収賄事件というのは密室で行われる事件ですから、贈賄側、収賄側、その関係者を隔離をして捜査をするというのが捜査の常道であり、公判維持という問題を考えても、それらの通謀を防ぐという意味から、不相当という意見をつけられたことも妥当性がある。ところが、そういうような状況が検察庁として証拠隠滅のおそれありと考えていた中でありながら、何と今度の場合に、準抗告の申し立てさえしなかったという問題は、検察の姿勢に対して大きな不信感を国民が抱くのではないか。私も抱いている。法務大臣はどうお考えですか。
  174. 稻葉修

    国務大臣稻葉修君) 法務大臣は、検察の姿勢に対して不安を抱いておりません。その理由は、もう十分に自信があるということではなかろうかと、検察当局を信用しておるからであります。
  175. 橋本敦

    ○橋本敦君 公判維持、有罪の確信があるということは聞きました。だがしかし、にもかかわらずですよ、これで捜査は終わったんじゃなくして、きだ二山三山あるんだとあなたはおっしゃった。だからこそ継続捜査の必要がある、田中総理とは言いませんが、ロッキード疑獄全体にあるから、証拠隠滅ということを重視をして、保釈相当という意見を付せられた。いいですか。そういう状況の中で、田中角榮の今度起訴した事件だけについて公判維持の自信があるからということで、本当にロッキード疑獄全部を解明するということに向けた検察庁のかたい確信と信念があるかどうかが疑われるという意味なんですよ。この事件が起こったときに、何といっても問題になったのは、なぜ検察庁は初動捜査をもっと早くやらないかという問題でした。私がアメリカにいるときでも、いろいろ日本から新聞が来ましたが、児玉宅の捜索にしろ、丸紅の捜索にしろ、なぜもっと早くやらないか、予告捜査に近い形の捜査ではないか、これで本当に証拠隠滅をなくしてやれるか、いろいろ意見がありました。現に丸紅関係者は証拠隠滅をやっている。それで逮捕までしているじゃありませんか。そういっていままでの状況を見てみますと、あなたが幾らそうおっしゃっても、この田中角榮釈放――田中角榮だけではありません、秘書官の榎本も、そしてまた丸紅関係者も、贈収賄の主要なメンバーが全部釈放されるということになれば、新たな問題を検察が捜査しようとした場合に、それに対して、それを予期して、想定をして、推測をして口裏を合わせる、あるいは通謀する、こういった証拠隠滅がないと絶対に確信を持って言い切れますか。いかがですか、法務大臣
  176. 稻葉修

    国務大臣稻葉修君) いろいろ逃げる方も努力するでしょう、その努力を上回って検察当局は努力をして真相の究明をやりますから、結果をお待ちくださいと、こういうことです。
  177. 橋本敦

    ○橋本敦君 しかしどう考えてみても、この田中保釈問題について、検察庁が抗告、つまり準抗告の申し立てをして、あくまで証拠隠滅のおそれありとして法律上あり得る手続をとって争わなかったという問題は、私は今後の捜査において重大な問題点を残す、その心配をしますよ、幾ら法務大臣がおっしゃっても。  ところで、今度の起訴に関連をして、問題の五億円の金の行方が一体どうなったかということを国民は全部注目をしていた。われわれも注目をしていた。しかし、この五億円の行方について、起訴状自体では明らかにされていない。これは起訴状自体の性格から言ってそうでしょう。だがしかし、この五億円の行方は、これはこの事件の情状に関する重要な事実ではないか。そうだとするならば、これは検察官は当然公判段階で、冒頭陳述、最終論告等で明らかにせねばならない事実に属するのではないか、私は当然そう思いますが、刑事局長いかがですか。
  178. 安原美穂

    説明員安原美穂君) 理論的にはおっしゃるとおりであります。
  179. 橋本敦

    ○橋本敦君 そうなれば、公判の冒頭、冒頭陳述で検察官が五億円の行方を明らかにし得る、公にするということが手続的に可能だ、またするでしょう。ということは、つまり五億円の行方は、いまここでは捜査内容は言えないけれども、この五億円の金の流れ、行方については、捜査は、検察庁としてはつかんで、行方は完全に把握していると、こう伺ってよろしいですね。内容は聞きません。
  180. 安原美穂

    説明員安原美穂君) 五億円の趣旨等を究明する上において、その使途につきましても、その必要な限度捜査したと思いまするが、内容については申し上げるわけにはまいりません。
  181. 橋本敦

    ○橋本敦君 先ほど同僚議員の質問に対して安原刑事局長は、この使途に関して犯罪容疑があるという、そういう心証、状況を得なかったので、余罪ということにはならないという話をされました。だがしかし、この金の行方がどこへどう流れたかということについて考えるならば、理論的には幾らも問題が出てくる。たとえば田中角榮が自分の政治団体に政治資金として入れているということになれば、政治資金規正法の届け出との関係が問題になるでしょう。あるいはこの金を、多く巷間に言われているように、これを参議院選挙、四十九年の参議院選挙に使ったということになれば、これは外国から受け取った金を選挙に結果として使ったということで、選挙に関し外国から、あるいは外国人から資金を受け取ったという旧公選法二百条の二項に該当という関係もまた問題にしなければならないということもあるでしょう。それからさらにまた、議論されているように、脱税という問題が起こってくるということもあるでしょう。こういった関係について、今後二山三山ある捜査の中で、この五億円の流れに関して新たな犯罪容疑事実をつかんだとするならば、当然それは、必要があり、証拠隠滅のおそれがあるとするならば、逮捕状を請求して田中再逮捕ということになるはずだと私は思いますが、そこらあたりはどうお考えですか。
  182. 安原美穂

    説明員安原美穂君) 先ほども申しましたように、その使途の究明の過程において、現段階では犯罪とするに足る容疑は抱いていないということを昨日捜査当局は記者会見で申しておりまするから、それを信用すべきでございますが、なおそれは現段階のことでございますから、将来のことはわかりませんので、いまもし御指摘所得税の違反とか、あるいは選挙に関する寄付の受領とか、いろんな問題が理論的にはあり得るわけでございまするから、理論的にあり得ることを前提にしまするならば、それについて逮捕、勾留の必要があれば逮捕、勾留ということもあり得るということが一般論としては言えるはずでございます。
  183. 橋本敦

    ○橋本敦君 この五億円の趣旨について、トライスター売り込みに尽力されたいという丸紅からの要求を受けて、報酬として五億円もらうという約束をして受け取ったということが起訴状記載公訴事実から明らかなんですが、この五億円を約束した時期が、起訴状記載では「四十七年八月二十三日ころ」と、こうなっている。ニクソン・ハワイ会談の前であります。そしてそのニクソン田中ハワイ会談の後を受けて、十月九日例のPXL問題に対する白紙還元決定があり、十月十四日田中檜山会談がある、そして十一月一日に丸紅とロッキードの間にP3Cについての一機十五万ドル報酬という輸入に関する契約が結ばれている。この問題で当委員会で私の質問に対して装備局長は、十一月一日に丸紅がロッキードとこのような契約を結ぶことができた背景には、十月九日の白紙還元決定という事態があって、輸入を含めて検討するという方向が打ち出されたから、このような契約が可能になったのではないかという問いに対して、そういう事情も考えられると防衛庁装備局長答弁せざるを得なかった。そういうような状況を考えてみても、またこれの支払いが四十八年の八月十日以後、言ってみれば四十七年十月九日の白紙還元以後、いよいよP3C売り込みが激化していったといわれる四十八年ごろであるということから考えても、贈賄側のコーチャン、あるいは丸紅からすれば、それはトライスターに対する報酬だけではなくて、PXLの方もよろしく頼みますという、そういう趣旨をも含んでいたものと解し得る余地が常識的には十分あると私は思う。そういう点について捜査は十分に遂げたのかどうか、その点はいかがでしょうか。
  184. 安原美穂

    説明員安原美穂君) まあ、御意見は御意見でございまするけれども、要するに、起訴状記載のとおり、トライスターの売り込みに関して請託を受けたということが十分な捜査の結果の結論でございます。
  185. 橋本敦

    ○橋本敦君 今度のロッキード疑獄事件に関連をして、しばしば児玉あるいは小佐野賢治氏の問題が当委員会でも問題になりました。私は児玉あるいは小佐野氏がPXLの輸入に関連をして田中角榮あるいはそれに近い中枢政治家に働きかけなかったととても推定できない事情がある。というのは、コーチャンが私に会ったときに、PXL問題の売り込みについて、P3Cをどう売り込むか、もちろん児玉と何回も相談したと私に語りました。今度のコーチャン証言の中でこの問題がどのように明らかにされたかは私どもが注目をしているところですが、重要な情報がある。  その一つは、ロサンゼルスにおける嘱託尋問の関係者の報道として、コーチャンが四十八年になって小佐野氏とP3Cの売り込みで四回会談をしたということで報道が日本に送られてきている。これは小佐野氏が予算委員会でコーチャンとは会った事実を認めておるし、コーチャンとは二、三回会ったと、こう言ってますが、二、三回という数字はそのとおり信用できないとしても、コーチャン、小佐野が会った事実はこれは明らかである。それがトライスター売り込みであったか、PXL、P3C売り込みであったか、この問題は捜査の上で徹底的に究明しなければならない。このロサンゼルスの嘱託尋問に関する報道によれば、P3Cの問題でコーチャンが小佐野に会ったと、このように報道されているのですが、これは私は多くの状況から見て十分あり得ることだと思う。たとえば、コーチャンは四十八年から四十九年にかけて、これは入管の方からの資料に基づいて来日日程を調べてみましても、一月に来日してます。七月、八月は二回、十月に来てます。四十九年になって、一月にも、二月にも、三月にも、三月九日にも、六月にも来てます。四十八年七月、八月といえば、刑事局長御存じのとおり、防衛庁が正式な照会をしてP3C輸入リリース可能というアメリカの海軍の回答があった。そしてまた児玉がロッキードと、五十機P3Cを買うならば二十五億円報酬を支払うという契約を結んだ重要な時期であります。  そして、この時期にコーチャンが来日しているということに加えて、小佐野氏と田中氏がこの時期に異常なほど頻繁に会談している事実を私どもはつかんでいる。四十八年四月十六日、小佐野氏は私邸を訪ねています。田中事務所へは四十八年八月二十二日、十一月二日、十二月二十五日と田中氏を小佐野氏は訪ねています。四十九年に入りますと、田中事務所に二月十二日夕刻訪ねている。そうして三月十六日は、朝小佐野氏は田中の私邸を訪れる。六月十日、七月二十七日、八月十五日、八月十六日、このように異常なほど小佐野氏は田中邸や田中事務所を訪れている。  こういう中で、コーチャン、それから小佐野、そして田中、こういったメンバーでP3C関係についての何らかの話し合いが行われたと推定し得る根拠は私は十分あると思いますが、この辺について、これから捜査を徹底的に、まだであるならば遂げてもらわねばなりませんが、いままでの捜査の状況で、このあたり徹底的に追及したのかどうか、今後やるのかどうか、この点を明らかにしていただきたい。
  186. 安原美穂

    説明員安原美穂君) しばしば御指摘を受けている関係の事柄でございますが、捜査内容については申し上げるわけにはまいらないことでございまして、それは過去においてやった捜査内容のみならず、今後の計画を含めての意味でございます。いずれにいたしましても、公になっておりますコーチャン証言にも、小佐野氏との関係証言されておるというようなことを含めまして、ロッキード社の活動の正、不正ということの存否を確定する上においては関心を持っておるところでございます。
  187. 橋本敦

    ○橋本敦君 法務大臣、いま刑事局長が言われた、関心を持って、コーチャン、小佐野、そうしてまた田中会談、こういった問題で、四十七年のトライスター問題がほぼ解決した後、四十八年、九年、P3C、この売り込みの問題についてなお徹底的に、児玉ルートを含め、小佐野ルートを含め、捜査をすべきだと私は思いますが、法務大臣のお考えはいかがですか。
  188. 稻葉修

    国務大臣稻葉修君) ロッキード事件については全貌を徹底的にやらにゃいかんと、こう思っておりますから……。
  189. 橋本敦

    ○橋本敦君 今度の起訴トライスターだけですが、いま法務大臣がおっしゃった徹底的にPXL問題も含めて捜査をしていく中で、田中角榮に対するP3Cに関する新たな贈収賄の疑惑が生ずるならば、当然新たに、いま保釈されてしまいましたが、準抗告もしなかったけれども、証拠隠滅のおそれがある場合、当然再び逮捕し、徹底的に調べるという、そういう決意も含めて、徹底的にやるという意味と伺ってよろしいですね。
  190. 稻葉修

    国務大臣稻葉修君) 徹底的にやります。
  191. 橋本敦

    ○橋本敦君 安原刑事局長に最後に伺いますが、今度の起訴は、法律的な構えからいきますと、外為法違反収賄罪とは、これは併合罪で起訴したのではなくて、二つの行為が一つの行為として二つの犯罪容疑構成要件事実に競合するとして、いわゆる観念競合ということで起訴されているように思いますが、いずれですか。
  192. 安原美穂

    説明員安原美穂君) 結論から申し上げますと、検察当局といたしましては、併合罪のつもりでございます。その客観的な証憑としては、事実を分けて、一と二というように分けておることは、これは併合罪のつもりなのでございます。いろいろ理屈があるのでございますが、実はこの点につきましては判例もございませんし、学説上も定説もございませんので、最終的には司法裁判所の判断に任せたいという考えでございますが、この記載は併合罪のつもりでございます。
  193. 橋本敦

    ○橋本敦君 わかりました。そういたしますと、この起訴状起訴事実に関する限り、田中角榮に対する刑は、あれですね、観念競合の場合は懲役五年が最高限度ですが、検察庁が起訴した併合罪ということであるならば、重い罪の関係で計算をして懲役七年六月、これが最高の刑、重くなる、罰金は十五億円、そうして追徴金五億円、これが併合罪として追及される刑の限度ということは間違いないですね。
  194. 安原美穂

    説明員安原美穂君) 御指摘のとおりでございます。
  195. 橋本敦

    ○橋本敦君 初中局長お見えですか。法務省関係はこれで終わりまして、初中局長に伺いたいと思います。  きょう初中局長に来ていただきましたのは、この田中起訴に関連をして、私は教育の面からどうしても伺っておきたいのです。といいますのは、田中角榮総理は、四十九年三月一日、この日に、道徳教育強化のための法案の上程を文相に指示していた。時の文部大臣は奥野さんです。この三月一日といえば、驚くなかれ、道徳教育強化を指示しながら、みずからは三月一日、起訴状にありますように、四回目のピーシズ一億二千五百万円の賄賂をみずから受け取っておる日なんです。総理がみずから賄賂を受け取りながら、文部大臣に道徳教育強化の法案をつくるよう指示したというのは、これまた総理として、とてもじゃないが、あるまじき行為であり、教育の場を汚すものだと私は思う。この点について、教育を預かる初中局長、いまどうお考えでしょう。
  196. 諸沢正道

    説明員(諸沢正道君) ただいま御指摘のような事実につきましては、私ども日本の初中教育の行政を担当する者として、実に残念なことだというふうに考えております。
  197. 橋本敦

    ○橋本敦君 さらに新潟、長岡やあるいは柏崎では、田中角榮が書いた大きな額が小学校に掲げられている。この学校の数は一つや二つじゃありません。柏崎では、小中学校三十九校のうち十三校も田中角榮の額が上がっている。長岡市では七つの小学校に田中角榮の額が上がっています。小中学校という義務教育の場に、かつて例を見ない巨額の賄賂の黒い金を外国から受け取った、総理時代に権限を乱用して受け取ったその人の額が上がっている。教育の場にこれはふさわしいだろうか。子供たちがそれを見て、この田中角榮という人はどういう人ですかと先生に聞いたら、先生はどう答えるでしょう。いま賄賂を受け取って起訴されている人ですと言えるでしょうか。教育の場に私はふさわしくないと思う。これは撤去をするかどうか、現に現地でも議論されていると言いますが、当然撤去されるべきだし、撤去するのが教育の場を守ることだと私は思う。  さらに、これだけではありません。岡山県の倉敷の小学校に行きますと、「豊かな心元気なからだ」という総理大臣田中角榮の額が上がっている。なるほど五億円もふところに入れれば豊かな心になるかもしれませんよ。しかし、これは漫画にはなっても、教育の場では私はこの碑文も撤去すべきだ。「豊かな心」とはどうですかと聞かれたときに、先生はどう答えるでしょう。現場の教師の、この問題に対する子供の心を思っての取り組みの苦労を思いますと、こういうものは即時撤土すべきだと私は考えています。初中局長のお考えはいかがですか。
  198. 諸沢正道

    説明員(諸沢正道君) 御指摘のように、学校に前総理の書かれた額を掲げるということは、まあ言ってみれば、校長が学校の教育環境を整えるための仕事の一環としてやったわけでありますから、それだけの教育的効果を期待してやったわけであります。しかし、御指摘のような事態になりますと、変わってまいるわけであります。ただ、私は、その額なり書かれたものなりを学校へ置くという経緯につきましては、やはりこれを今度撤去するということになれば、子供に対して何らの説明もなしにするということではいけないだろう。それからまた、その学校、特に地方の学校でありますれば、これはやはり学校というものが地域社会から飛び出した学校ではないので、やはり地域社会と密着しておるわけでございますから、その経緯では、やはりPTAその他地域の人々とのいろいろな話し合いもあったであろうということを考えますと、校長先生がそれを撤去するにつきましても、それぞれの学校で校長先生なりに非常に意を払い、苦心をして対策を考えておられると思いますので、その辺は学校の校長を中心とする教育関係の方々の良識ある判断に期待して、適切な措置がとられるようにというふうに考えておるわけでございます。
  199. 橋本敦

    ○橋本敦君 あなたが学校の教育現場に直接の介入的発言をしたくないという節度を持ってお考えになることは私は理解します。理解しますが、もちろん最終的には、教育現場で教師集団の皆さんなり、あるいは地域その他の皆さんの教育に対する良識が決めるでしょう。それはそう信頼していいでしょう。だがしかし、初中局長として、かかる事態になったときに掲げ続けておることは好ましいか、それとも、よく議論をして、適切な処置とあなたがおっしゃったその処置の内容としては、これを撤去することが望ましいとあなたはお考えなのか、その点を明確にしてほしい。これが私の質問です。
  200. 諸沢正道

    説明員(諸沢正道君) 法律のことはよくわかりませんけれども、法律的な議論をすると、逮捕され、取り調べを受けて起訴される、それから裁判に持ち込まれる、そして裁判で最終的に有罪か無罪か決まるんだという法律論はあると思います。ただ、その教育的な配慮というものは法律論だけではいかないということでございますから、したがいまして、どの時期で撤去するかというようなことは、やはり先ほど申しましたように、それぞれの学校で十分いろんな事情を検討しながら考えていただくということがよろしいのじゃなかろうかというふうに私は考えるわけでございます。
  201. 橋本敦

    ○橋本敦君 時期、方法は別として、撤去することが望ましいと考えているというように承ってよろしいですね。――はい、わかりました。  時間がありませんので、最後に国税庁に伺いますが、きょう私は大平大蔵大臣にお越しを願いたかったのですが、御病気の由でやむを得ません。  田中金脈以来、私どもは田中氏の資産形成、あるいは小佐野氏の資産形成について厳しくこれを追及をして、いわゆる国税犯則取締法に基づく脱税という問題で立件をすべきだと、かねて主張してきました。だがしかし、その結果は、国税庁は田中角榮自身から事情聴取をなすこともなしに手直し修正申告で終わられた。しかも、この今度事件になった五億円を受け取ったという事実も見逃してしまわれたという結果に今日なってきた。私は前回、アメリカ側の資料は、これは小佐野氏あるいは田中角榮の脱税問題を追及していく上で参考になる資料があるはずだ、そういう資料を国税犯則取締法に基づく脱税事犯として立件する場合は、これは資料として使い得るというのが日米司法取り決めの内容だから、検察庁と十分連絡をとって、この点の捜査の追及を手がけるべきだという要求をしました。検討するということでありましたが、こういう問題について、私の言ったこういう方針について、いまどうとらえておられますか。
  202. 山橋敬一郎

    説明員山橋敬一郎君) お答えいたします。  田中総理が受け取りました五億円につきましては、先生御承知のとおり、いわゆる金脈問題の調査段階ではわれわれもこれを把握できなかったわけでございます。また、この五億円問題に関しまして昨日田中総理起訴されたことでもございますし、国税当局といたしましては、その間の事情は現在まだ事実関係をつまびらかにはしておりませんけれども、今後税務処理の上で必要な実態を十分ひとつ明らかにした上で必要な処置をとってまいりたいと、こういうふうに考えているわけでございます。
  203. 橋本敦

    ○橋本敦君 いまおっしゃった、検討した上で必要な対応と処置をとるということの中に明らかにしてもらいたいのは、今度は田中角榮自身から直接に事情を聴取し、資料の提供をさせる、直接会って直接の調査を行うということなしには、私はこの前の田中金脈のときの厳しい批判をまた受けるだけのことだと思う。いまあなたがおっしゃった今後の対応ということの中には、田中本人から税務当局として独自に直接事情を聞くということは方針として当然あらねばならぬと私は思いますが、この点はどうお考えですか。
  204. 山橋敬一郎

    説明員山橋敬一郎君) お答えいたします。  今後五億円に関連する実態を明らかにしていく七におきましては、それぞれその調査に当たって最も適切な方法をわれわれとしては考えてまいりたいというふうに考えておるわけでございます。
  205. 橋本敦

    ○橋本敦君 直接答えてください。適切な方法として、田中自身に会わずにやれる、おさまるわけはないでしょう。今度は直接会ってやると、その腹を決めているかどうかということを聞いているんです。まだ決まってないんですか。
  206. 山橋敬一郎

    説明員山橋敬一郎君) 調査に当たりまして、実態の解明に当たりましてはいろいろ調査の方法が考えられるわけでございますけれども、その調査の過程におきまして必要な調査方法を、あらゆる手を駆使をいたしましてこの調査をやってまいりたい。したがいまして、もし必要があれば本人から事情聴取するということも考えられる手段の一つだと思います。
  207. 橋本敦

    ○橋本敦君 まだまだ私は納得できない面がありますが、時間が参りました。いずれまた大平大蔵大臣を中心に伺います。  質問を終わります。
  208. 田渕哲也

    ○田渕哲也君 まず、法務大臣にお伺いをしますけれども、田中総理が外為法並びに受託収賄罪で起訴されました。その起訴された内容を見ますと、特にこの受託収賄についてはトライスターの売り込みについて請託を受けた、こういう理由で、しかもそれは総理大臣としての職務権限である、このようにあるわけでありますけれども、トライスターの売り込みの請託を受けたことが総理大臣職務権限であるという法的根拠を、まずお伺いをしたいと思います。
  209. 安原美穂

    説明員安原美穂君) この職務権限の問題につきましての具体的な説明は、これはまさに公判廷で行うべき事柄でございますので、余り詳細に立ち入ることは裁判官に予断を抱かす等の問題がありまして、避けるべきだと考えておりまするが、要するに、起訴状をごらんいただきましてもおわかりのとおり、トライスター導入、機種の選定について指導するということは運輸大臣職務権限の中に入る、その運輸大臣に対して指揮監督する総理大臣というものは、したがってトライスターの機種の選定ということに対しては職務権限があるという骨子でございます。
  210. 田渕哲也

    ○田渕哲也君 ただいまの説明の根拠は、憲法第七十二条にある「内閣総理大臣は、」云々とありまして、最後に「行政各部を指揮監督する。」、この条文が根拠だと思うのであります。そうしますと、このトライスターというのは民間航空会社の機種選定である。これについても運輸行政を通じて指揮監督の権限があるとするならば、いわゆる対潜哨戒機、PXLの問題につきましては、その機種選定については当然総理大臣職務権限となろうかと思います。この点はいかがですか。
  211. 安原美穂

    説明員安原美穂君) おっしゃるとおりでございます。
  212. 田渕哲也

    ○田渕哲也君 P3Cの問題が総理大臣職務権限であることは間違いがない。しかし、今回の起訴にはP3Cが含まれてないというのは、受け取った五億円の金というもの、賄賂というものがこれは全額明らかにトライスターの成功報酬である、全額そのように規定して疑念はない、このように解釈当然されると思うんですが、この点はいかがですか。
  213. 安原美穂

    説明員安原美穂君) 請託トライスター購入についての指導、勧奨を請託したということの報酬でございまするから、いわゆる成功報酬ということになろうと思います。  なお、先ほどP3Cのことが総理大臣職務権限というようにおっしゃいましたが、P3Cじゃなくて、私が申し上げたのは一般論でございますから、PXLに関する選定に関してはということになります。
  214. 田渕哲也

    ○田渕哲也君 次に、全日空ルートの解明というものが近々のうちに行われる、このように報道されておるわけですけれども、この全日空ルートの賄賂というのは、いわゆる航空族議員というものがうわさに上っておるわけです。私は、この全日空ルートの解明がおくれておる理由に、いわゆる国会議員としての職務権限というものの解釈、これがきわめて微妙であるということも一つの原因だと思うのです。  そこで、一般論としてお伺いしたいのでありますけれども、国会議員の職務権限と贈収賄罪の成立という観点から見た場合に、国会議員の活動のうち、どの範囲までが収賄罪にいう職務行為ないし職務密接関連行為に入るのか、この点についてお伺いをしたいと思います。
  215. 安原美穂

    説明員安原美穂君) 国会議員の職務権限は、むしろ田渕委員の方がよく御存じと思いまするけれども、立法府でありまする衆議院または参議院の構成員といたしまして、法律案、予算案等、国政に関する議案の審議、表決等に参加し、また国政に関する調査に関与するということが職務権限でございまするから、この職務権限に関する事柄で違法な報酬を受ければ賄賂罪になるわけでございます。
  216. 田渕哲也

    ○田渕哲也君 もう少し具体的に聞きたいと思いますけれども、私は大体次のようなことは国会議員の職務権限で、次のようなことをやることによって金品を収受した場合には収賄罪になる、このように判断していいと思うのでありますけれども、まず第一点は、国会議員が金品をもらって、収受して、法案に賛成したり、あるいは反対したりすること。第二は、やはり金品を収受して、国会で問題として質問をやったり、あるいは予定しておった質問を取りやめたりする。第三点は、いま述べたような、法案の賛否とか質問をやったりやめたりするということを、自分ではなしに、同僚の議員に勧める、あるいは説得する。第四点は、党の政策決定に当然国会議員は参画する場合があるわけですけれども、その場合に、党の政策決定の中で金品を収受して自分の影響力を行使する。第五点は、直接国会議員の権限ではありませんけれども、行政府に対して働きかける。とのようなことはいずれも職務権限として収賄罪の対象になる、このように解釈していいでしょうか。
  217. 安原美穂

    説明員安原美穂君) 一般論としてのお尋ねでございますので、お答えをいたすわけでございまするが、まず、金品を受け取って法案に賛成したり反対する行為、これはもう当然職務に関する行為ということになろうと思います。それから、金品を受け取って国会で質問したり取りやめたりする行為、これも議案の審査という職務に関する行為として当然職務に関するという解釈が成り立つものと思います。それから、そのようなことで同僚議員に勧誘したり説得をしたりする行為、これはそれ自体としては職務権限の行使とは言えないと思いまするけれども、いわゆる刑法の職務に関する解釈では、職務に関するというのを、職務行為そのものである場合のみなら、すその職務に密接関連する行為も職務に関するということになるんだという解釈になりますると、場合によりましては同僚議員を説得するというようなことが職務に密接に関連する行為と解される場合もあろうかと思われるのでございます。それから四番目は、党の政策決定に金品を受け取って関与する、この党の政策決定に関与すること自体は、議員の、公務員としての職務というよりは、いわゆる党員としての行為と認められますので、直ちには贈収賄罪というものは問題にならないというふうに考えられるわけであります。それから五番目は、金品を受け取り行政官庁に働きかけた場合、これも行政官庁に単に働きかけるということだけでは、あっせん収賄というような問題が起こるかもしれませんが、そのこと自体は職務に関する事柄とは思えないのでありまするが、ただ、いわゆる国政調査権を行使することを背景にいたしまして、そして行政官庁に働きかける行為について金品を受け取るというようなことになりますと、国政調査権を行使するという職務に密接に関連する行為として贈収賄罪の対象になり得る場合もあろうというのが一般論でございます。
  218. 田渕哲也

    ○田渕哲也君 全日空ルートの調査においては、いわゆるこの職務権限との関係全日空から金を受け取っておる人はかなり多いけれども、その中で実際強制捜査対象になる人はわずかである、このような報道もされておるわけですけれども、私はただいまの国会議員の職務権限という点から見まして、特に今回のロッキード事件の性格から考えて、やはり厳格に解釈すべきものと思いますけれども、この点はいかがですか。
  219. 安原美穂

    説明員安原美穂君) 今回だから急に厳格に解釈するわけにもまいりませんで、法律は忠実にその趣旨にのっとって厳正公平に解釈すべきでございます。
  220. 田渕哲也

    ○田渕哲也君 次に、捜査終結の時点ということについて質問をしたいと思いますけれども、前に稻葉法務大臣は、捜査終結の時点というのは捜査本部の解散する時期だ、解散、乾杯の時期だ、こういう発言をされております。私はロッキード社からの日本に入った金が二十三億、その行き先が全部明らかになって、それぞれのその処置というものが違法か合法か、その性格が解明された、そういう時点が捜査終結の時点ではなかろうか、また、そういう二十三億の金の行き先というものと性格が全部明らかにならなければロッキード事件の解明が済んだと言えないと思います。この点はいかがですか。
  221. 稻葉修

    国務大臣稻葉修君) そのように思います。
  222. 田渕哲也

    ○田渕哲也君 現在児玉ルートの解明は非常に難航しておると聞いておりますけれども、そうすると、この二十三億の金の行き先の全部が解明されない限りは捜査本部は解散することはない、このように解釈していいわけですね。
  223. 稻葉修

    国務大臣稻葉修君) そうも言えないんじゃないでしょうかね。ここまでわかりました、ここまではもういつまでたっても、続けてみてもわからぬかと思います、てなことになってしまうかもしれませんね。そういうこともあるから、全部もう行き先がきちんきちんとなるんでなけりゃ解散できないというふうに私は思いませんけれども、これ正確には刑事局長に。また間違うといけませんからね。
  224. 安原美穂

    説明員安原美穂君) 大臣の御指摘のように、いま東京地検ではロッキード事件特捜本部というものをつくっておりまするから、本部というものの解散の時期というようなことはいつになるかよく私はわかりませんけれども、いずれにいたしましても、検察当局としては御指摘のように二十三億の行方をすべて明らかにしたいとして努力をしておるわけでございます。
  225. 田渕哲也

    ○田渕哲也君 私は、これが一部うやむやのままで残るということはやはり国民に疑惑を残すことになりますので、先ほどから大臣は徹底的究明ということを強調しておられるわけでありますから、ぜひこれは全部明らかになるように努力をしていただきたいと思います。
  226. 稻葉修

    国務大臣稻葉修君) 検察当局には最善の努力をしてもらいます。
  227. 田渕哲也

    ○田渕哲也君 次に防衛庁長官にお伺いをしたいと思います。特にPXLの問題につきましてこの委員会では取り上げて質問を続けてきたわけでありますけれども、われわれが幾多の疑問、疑惑というものを出してきたわけですけれども、防衛庁側の答弁というのは常にそれを否定されてきたような答弁であったと思います。完全にわれわれの疑念が晴れてきてはおりません。矛盾がまだいっぱい残っておりますけれども、何とかそういう疑惑を否定しようと方向で答弁されてきた。しかし結果としては田中総理が逮捕され、そしてトライスター受託収賄起訴された、こういう事実になっておるわけであります。特にこのPXLの問題をめぐっての疑惑というのは、一つはこのT2、FST2改の輸入切りかえ問題、あるいはPXLの白紙還元の問題、さらに四十七年度のPXLの研究予算の執行停止の問題、こういう問題があるわけでありますけれども、私は田中総理がこのトライスターの問題でやはりロッキードから頼まれて自分の職務権限を行使しておった、こういう事実が明らかになった以上は、このPXLの問題でも何にもしなかったとは考えられないわけです。ただ現在その起訴をするに至るだけの確証がないというだけであります。したがって、私はこういう疑惑がさらに大きくなった、このように見ていいと思うのでありますけれども、そういう観点からもう一度この防衛庁関係の事実関係調査し直されるべきではなかろうか、このように思いますけれども、長官の御意見をお伺いしたいと思います。
  228. 坂田道太

    国務大臣(坂田道太君) 私はPXLの問題につきましては、やはり国民の疑惑を一掃したいというふうに考えております。したがいまして、現時点におきましても、いろいろとわれわれの調査できる範囲内におきましてあらゆる努力を払って調査をいたしまして、そして疑念を払いたいというふうにいまも実は考えておるわけでございます。しかしながら今日までの私どもの調査の結果といたしましては、どうしてもそういう手がかりを得ることが実はできませんわけでございまして、今後私どもなおかつ一層努力をいたしまして解明には努力いたしますが、やはり検察当局等の捜査結果新たな事態が起こりましたならば、それにつきましてさらに検討してまいりたいというふうに考えておる次第であります。
  229. 田渕哲也

    ○田渕哲也君 次に、防衛庁長官は先般八月三日の参議院のロッキード特別委員会におきまして、木島則夫議員の質問に答えて、PXLの選定については国民の疑惑を招かないようにする、そのための具体的な手段として木島議員が、国産か輸入か、あるいはその折衷案、つまり分離輸入か、この三つの案についてそれぞれ性能並びにコスト、ライフ・サイクル・コスト、そういうものをある程度国民に明らかにして、そして最善の道を選ぶという方法が必要ではないか、こういう提案をしたところが、長官も、自分もそのように考えておると、こういう答弁をされました。したがって、具体的に現在ポスト四次防大綱の検討中と言われますけれども、もうそろそろこのPXLの選定についてのやり方というものについて方針を出されるべきではないかと思うんです。したがって、このPXLの選定の方法、スケジュールについてお考えがあれば聞かしていただきたいと思います。
  230. 坂田道太

    国務大臣(坂田道太君) この前木島議員にお答えをいたしましたとおりに、あのようなやり方が一つあるんじゃないかと、きわめて私は貴重な御意見だと思いますし、私どもも同じような考えであるわけで、そのことについてはいま鋭意検討を重ねておるわけでございまして、いつの時期にというところまでは実は至っておらないわけでございます。と申しますのは、いま基盤的防衛力という構想のもとでどの程度の勢力を目標として設定するかなどを検討いたしますとともに、その機種につきましては、いま仰せのとおりに、国内開発でいくのか、外国機の導入あるいはまた折衷案と各種の案がございます。その検討を進めておりますが、まだ成案は得ておりません。今後国防会議におきます昭和五十二年度以降にかかわる防衛計画の大綱の審議状況等をにらみながら、いわゆるポスト四次防の一環として昭和五十二年度予算編成時までに結論を得て国防会議に諮り、決定をいたしたいというふうに考えております。なお、決定に際しましては、その経緯をでき得る限り国民の前に明らかにいたしますと同時に、いま申されましたようなことをこの段階でやはり明らかにいたしまして、疑惑を持たれるようなことがないようにいたしたいというふうに考えております。
  231. 田渕哲也

    ○田渕哲也君 先日の新聞報道によりますと、防衛庁の装備局の筒井航空機課長は先月の十一日から十七日までアメリカの国防総省のスタッフとFX、さらにP3Cの導入問題についても会談したという報道があります。これは事実ですか。
  232. 江口裕通

    説明員(江口裕通君) 先月の七月の中旬に装備局航空機課長以下三名でFXの調達に関しまする政府間取り決め等の下打ち合わせのために約十日間米国へ派遣いたしました。しかしながら、これはあくまでFX導入に関する討議ということでございまして、P3Cの導入とか、いわゆる紙上報ぜられるようなことは打ち合わせをいたしておりません。
  233. 田渕哲也

    ○田渕哲也君 新聞報道が私は全くでたらめを書いておるとは思えないわけですけれども、その際、分離輸入の可能性についてアメリカ側の意向を打診したと、こういう事実はないわけですか。
  234. 江口裕通

    説明員(江口裕通君) 分離輸入とおっしゃいましたのは、いわゆるEDPS等の分離輸入の、導入の問題であろうかと思いますが、先ほども申し上げましたように、航空機課長に出しました任務というものはあくまでFXでございまして、Pの問題について話をしてこいということは一切申しておりません。また現にこの分離輸入等の問題につきましては、非公式ではありますが、私どもの方の前次官その他折に触れて向こうの意見をサウンドしておることもございますので、あえて航空機課長にこういうことをさせる必要は私どもはないというふうに考えております。また現にそういうことはございません。
  235. 田渕哲也

    ○田渕哲也君 そうすると、今回はともかくとして、いままではやはり分離輸入の可能性についてはアメリカ側に打診をしておるわけですね。それに対するアメリカ側の正式の回答があったのか、この点はいかがですか。
  236. 伊藤圭一

    説明員伊藤圭一君) いままでの段階におきまして、正式にというのが書類をもってしたかということになりますと、実はそれはやっておりませんで、たとえば防衛局長のレベルあるいは事務次官のレベル等で米側のそれぞれのところに打診したことがございます。これに対しましてはっきりした回答というものはまだ来ておりません。したがいまして、今後正式にアメリカの意思を確かめる方法をとる必要があるというふうに考えておるわけでございます。
  237. 田渕哲也

    ○田渕哲也君 さらに先月の十一日から十七日までのアメリカの国防総省との打ち合わせにおいて、筒井課長はいわゆる商社を介さないFMS方式について話し合ったという報道もあるわけですけれども、これについてはどうですか。
  238. 江口裕通

    説明員(江口裕通君) FMSと申しますのは、従来からもございますが、特にここで先ほどのように政府間取り決め等に関連してのいろんな下打ち合わせと申し上げましたのは、今般御存じのようにアメリカの法律が変わってまいりまして、ある一定の案件につきましては、具体的に申しますと、二千五百万ドル以上の主要装備品等につきましては、これは政府間取引、NATOを除きまして、世界に対しまして政府間取引をしろということ等がうたわれることになりました。そういうことに関連いたしまして、たとえば主要装備品とはどんなものであるかとか、あるいは具体的にどういう手続になるであろうかとか、あるいはアメリカの現在考えておりますそういった関連のレギュレーション等はどういうことになろうかというようなことについての先方の考え方等を聞いてくるというようなことはいたしております。そういう意味の一環としてFMS等についても当然話はしてきておるわけでございます。
  239. 田渕哲也

    ○田渕哲也君 P3Cの問題については、まだこれからの検討でありますけれども、P3Cをもし輸入する場合、それからFXの問題、これらをアメリカから輸入する場合にはFMS方式をとるということについて、防衛庁側の考え方をお伺いしたいと思います。
  240. 江口裕通

    説明員(江口裕通君) 具体的に、たとえばFXということに例をとって申しますと、これはやはり何らかの形で導入を仰がなければならないと考えるわけでございます。従来のわが国のこういったものの扱い方でございますが、主としてライセンス生産というようなことをやっておりまして、いわゆる完全輸入、完成機輸入というようなケースは非常にまれでございます。将来を考える場合におきましても、やはりこれをライセンス国産といたしますか、あるいは輸入といたしますか、あるいはFMSといたしますかというような問題につきましては、経費、技術、補給整備面、そういったものをいろいろと考えて検討していかなければならないと思います。そういう意味におきまして、目下どういうやり方をとるかということは検討中でございますけれども、ごく一般に感触として申し上げられますことは、FMS方式をとりますことによるメリットというものは、やはり中間のいわゆる商社とか、こういった問題の介在というものは当然防げるわけでございます。しかしながら、反面におきまして、手続的に非常に煩瑣になりますし、あるいはデリバリーとか補給等の面におきましてはかなり先方の都合を考慮しなければならないというような問題もございます。一方、ライセンス生産等の問題につきましては、やはりただいまの裏返しになりますけれども、補給面、調達面ということである程度こちらのベースで進んでまいりますし、さらには技術波及効果というような問題がございます。そういうようなことを考えまして目下検討中でございますが、まあ最小限度申し上げられますことは、先ほども申しましたように、先方の法制が変わってまいりまして、いわゆるプロジェクトといたしまして二千五百万ドル以上というようなものにつきましての主要装備品の輸出については政府取引ということが明示されておりますので、ある一定機数は少なくともこういったものによらざるを得ないと、こういうふうになろうかというふうに考えております。しかし、全般的な主要な部分をどうするかということにつきましては目下検討中でございます。
  241. 田渕哲也

    ○田渕哲也君 最後に、法務大臣並びに法務省にお伺いをしますけれども、アメリカの証券取引委員会並びにアメリカ上院の外交委員会のチャーチ委員会の資料の中に、ロッキード社田中角榮前首相に働きかけるルートとして三つのルートが記載されておるという報道が新聞でなされております。その一つは、ロッキード社から丸紅田中秘書の榎本、さらに田中総理。第二のルートが、ロッキード社から故福田太郎氏-児玉譽士夫-中曽根代議士、さらに田中総理。第三のルートが、ロッキード社-故福田太郎-児玉-小佐野-二階堂代議士-田中、こういう報道があるわけですけれども、このような事実は捜査当局は確認しておるのかどうか、お伺いをします。
  242. 安原美穂

    説明員安原美穂君) いま御指摘のような新聞報道がなされたことは私も承知しておりまするが、その真偽のほどにつきましては私は承知しておりません。
  243. 田渕哲也

    ○田渕哲也君 ということは、捜査当局はこれは確認していないということですね。調べてもいないということですか。
  244. 安原美穂

    説明員安原美穂君) 私が承知していないということでございます。
  245. 田渕哲也

    ○田渕哲也君 アメリカの証券取引委員会は、ロッキード社の特別調査委員会の報告を受けて、その資料を大体秋ごろに公開するということを言ってきたわけです。大体十月ごろという話でありましたけれども、いままでこの国会における委員会の質問で、この点については法務大臣はそれまでには日本捜査は終了する、こういう発言もしておられます。しかし現在は、児玉ルートの解明についてはかなり時間がかかりそうだという見通しもあるわけですけれども、SECの公表のタイミングからして果たしてわが国捜査のめどはそれまでにつくと考えるのかどうか、この際大臣の見通しをお伺いしたいと思います。
  246. 稻葉修

    国務大臣稻葉修君) ちょっと刑事局長に……。
  247. 安原美穂

    説明員安原美穂君) ロッキード社に特別に設けられました調査委員会がSECに対して報告をするのが十月ごろではないかというのは、かつての報道として私も聞いておるわけでございまして、いま田渕委員のおっしゃる資料の公開というのはその報告の内容を公開することであろう、こう理解いたしますと、その報告の内容が公開されるというようなことが十月であるとすれば、捜査上はそういうものが公開されてしまえば、理論的には証拠隠滅等の問題もあり得るので、それまでにめどをつけて捜査を終了することが望ましいということは、かつて私自身も衆議院のロッキード委員会で答えたことはございまして、いまその点には変わりはないと思います。ただ、聞くところによりますと、何か延期するのだというようなうわさもございますので、その真偽は明らかではございませんが、いずれにいたしましても、アメリカ側から捜査内容に重複することがオープンにされるというようなことでは捜査はできませんので、できるだけそれまでには終わるのが望ましいとは考えておる次第でございます。
  248. 田渕哲也

    ○田渕哲也君 うわさによりますと、アメリカの大統領選挙、それから日本の総選挙、それから西ドイツの選挙、こういうものが終わるまでに公表するといろいろと支障があるから、それが終了するまで延ばそうというような動きもあるようでありますけれども、日本のこの捜査の進展状況その他と絡んで、この点について日本側とアメリカ側と連絡をとっておるということはありますか。
  249. 安原美穂

    説明員安原美穂君) 私どもは、あくまでも先ほど申しましたように、真相の究明ということから、公表ということの時期が余り早いと支障になるというようなことは考えたことはございまするけれども、いま巷間伝えられるような政治的な配慮から延ばすとか早めるとかいうようなことは一切考えておらない。そういう意味におきましては、そういうことを横目ににらみながら、捜査当局としては独自の捜査を鋭意迅速に進めていくという方針でございます。
  250. 田渕哲也

    ○田渕哲也君 最後に、政治的な配慮でそういうことをどうこうするというのは問題だと思いますけれども、日本捜査の進展状況の実情に応じてアメリカ側に公表を延期してくれとか、そういう依頼をしたことがあるか、また、これからすることがあるか、お伺いをしたいと思います。
  251. 安原美穂

    説明員安原美穂君) 捜査の進展状況から、向こうに公表を待ってくれというようなことがあり得るかどうか、現にないわけでありまするが、実務取り決めでは、そういうことについて事前に協議するというような了解になっております。こちらで捜査中に、向こうに提供した資料が公にされるというようなことでは困ることもあります。理論的にはあり得るわけでありますが、現実にはそういうものもなく、双方、特に捜査関係ではこちらの方が実質的な捜査を進めておるわけでありますから、向こうからはそういう依頼はございませんし、こちらから向こうに依頼しておることもございません。
  252. 田渕哲也

    ○田渕哲也君 終わります。
  253. 市川房枝

    市川房枝君 最初に井出官房長官に、三木総理あるいはまた三木内閣のロッキード問題に対する政治姿勢について二点ほど伺いたいと思います。  田中総理の逮捕、起訴は、国民はかねてから予想しておりましたことですが、ここに至るまでの検察当局の努力と、約束を守って指揮権を発動せずにこれを実現した三木総理と稻葉法相に対して国民は敬意を表しております。しかし、これだけでは困るんで、前からおっしゃっておりまするように、徹底的に解明すると、民間の大物もあるいは残っている高官も逮捕し、大掃除をしてほしいと、こういうのが国民一般の希望でございますが、三木総理はこの問題についてどうお考えになっていますか。前にも伺いましたけれども、官房長官からちょっと伺いたいと思います。
  254. 井出一太郎

    国務大臣井出一太郎君) ロッキード事件の真相を徹底的に解明をしたいと、これは三木総理がかねがね申し上げてまいったとおりでございます。田中総理の逮捕、起訴と、こういう一つの山がございましたが、決してこれによって峠を越えるというふうなものでなく、さらに一貫した方針はこれからも堅持してまいるということでございます。
  255. 市川房枝

    市川房枝君 最近、また福田、大平氏を中心とした三木おろしと申しますか、始まっているように見えます。田中元自民党総理が逮捕、起訴された現段階では、自民党及び自民党の幹部あるいは派閥の長の方々は深くこの事態を反省して、金権政治改革の方途、具体案を国民に示してくださるべきだのに、前と同様の政権の争奪戦が行われているように国民に映っておりますことを、まことに遺憾に存じます。  三木総理は、十六日の自民党の顧問会議で、金権政治を打破し清潔な政治の確立ということ、以下五項目を提示されましたが、三木総理は引き続いて政権を担当し、そして、この改革を実現される自信をお持ちになっているかどうか。河野洋平氏なんかの自民党離党の理由は、現在の自民党内では改革は不可能だと、こうあったように思いますが、私も同感で、自民党の解体または分裂がなされなければこの改革はできないんじゃないかという考えを持っておりますが、官房長官はどういうふうにお考えになっていますか。
  256. 井出一太郎

    国務大臣井出一太郎君) 自民党内の現状が市川先生のお目に決して愉快でなく映っておるようでございますが、これはまあ私どもの党内の問題でございますから、これをひとつ統一した歩みに置き直さなければならないという努力をただいましておるわけであります。  きのうの顧問会における三木発言を、特に五項目を評価いただきましてありがたい次第でございますが、これを単なる言葉だけに終わらしめずに、これを貫くという強い決意で三木総裁自身もおることをこの際申し上げるわけであります。  自民党分割論については、いささか私の首肯しがたいところでございます。
  257. 市川房枝

    市川房枝君 次は、稻葉法務大臣に対して四点ほど伺いたいと思います。  稻葉法務大臣は、さっきも申しましたように、お約束どおり指揮権発動をせずに、田中総理の逮捕、起訴が行われたことにつきましては、一般の国民は好感を持っております。しかし、田中派の有力な某幹部は指揮権を発動して田中氏を逮捕すべきではないということを公言しておいでになることが新聞で大きく報道され、国民のひんしゅくを買っておるわけであります。法相は、このことについてどういう御感想を持たれましたか、ちょっと伺いたい。
  258. 稻葉修

    国務大臣稻葉修君) その発言は、私直接聞いたわけではありませんから、まあ仮に、そういう発言が仮にあったと仮定して申し上げますと、もってのほかで、問題外だと思います。
  259. 市川房枝

    市川房枝君 いまの法相の御意見は当然だと思います。  次に、田中総理は、きょう二億円で保釈になったようであります。田中さんは、自民党からも、派閥の七日会からも離党しておられますけれども、いま申したような田中派の幹部の方々がおいでになるわけでありますし、いままでの田中さんの行動から見ますと、またすぐ復活の計画をお進めになるんではないかと、そういうふうに思われます。しかし、国民の立場から申しますと、田中氏は今度の選挙でも立候補しないように、いや政界から引退してほしいと、これが国民の声だと思いますが、法務大臣の御感想はいかがですか。
  260. 稻葉修

    国務大臣稻葉修君) それはむずかしい御質問ですから、そして微妙な関係にいま私の法務大臣としての立場が置かれているわけですから、どうでしょう、答弁を御勘弁願えませんか。
  261. 市川房枝

    市川房枝君 いや、それはむずかしいことを伺いまして大変失礼しました。しかし、まあそういう国民の希望であることをひとつお含みおきをいただきたいと思います。  次に、田中総理受託収賄罪できのう起訴されたわけでありますが、御本人は拘置所の中の取り調べの際に、政治献金だったんだと、こういうふうに言っておいでになるように新聞がちょっと伝えております。外国人及び外国の法人からの政治献金は、選挙に関するものは違反でありまするけれども、いわゆる政治献金は、この当時、四十八年、四十九年ころは別に禁止をされておりません。ですから、政治献金だということになれば田中さんは無罪になるわけでございます。政治献金は、御承知のとおりに、アメリカでは禁止されておりますが、日本では法律で公然と許されております。造船汚職の際、佐藤元総理賄賂で逮捕されようとしたのを、それこそこの指揮権発動よって免れ、政治献金にすりかえられてしまったと、そういう厳然たる事実があります。したがって、企業からの政治献金が、いまのように、まあ多少制限したとはいうものの、非常に金額が多い。そしてその政治献金によって自民党は、企業からの政治献金によって自民党の選挙あるいは政治活動は運営されている。これは自治省の報告の上ですけれども、裏金はもちろんあるでしょうけれども、そういう事実がある。こういう点から言いますというと、私は、どうしても企業からの政治献金というのを禁止をしなけりゃいけない、そして個人からの寄付だけに制限するということでなければ、日本の金献政治というものは改革ができない、それこそ田中金脈だの、あるいは今度のロッキード事件類似の事件は後を次いで出てくると、こういうふうに考えるのでありますが、この政治献金というものを企業からのを禁止するという問題について、法務大臣はどういうふうにお考えになっておりますか、伺いたい。
  262. 稻葉修

    国務大臣稻葉修君) まず、前段のことでございますが、被告人田中角榮が、捜査時、捜査の時、調べられるときですね、検事の取り調べに対し、政治献金であるという趣旨供述をしているというふうなことが新聞に出ておって、それを前提としてのお尋ねですが、捜査当時被告人がいかなる供述をしたか、それは捜査内容に属しますね。また、今後の公判立証に関係することでありますので、この点についての答弁は申し上げかねます。  それはともかくとして、政治資金の規制の強化につきましては、本年一月一日から施行された政治資金規正法の運用の実際を見て考慮されるべき事柄であると存じます。いまお尋ねになっていることは、企業からの政治献金一切を直ちに禁止して個人献金に限るべきだということでございますが、この点はなお慎重に検討を要する問題であると考えますし、法務大臣よりは、こういう点は総理大臣がまあ答弁されるべきことであるというふうに思いますね。
  263. 市川房枝

    市川房枝君 まあ、政治資金の問題は自治大臣が担当でございますので、あした少し伺いたいと思っておりますが、ただ、賄賂政治献金というのは非常に区別がむずかしい、すりかえられる、そういう例がしばしばあったということで、ちょっと法務大臣の御意見を伺ったわけでございますが……。
  264. 稻葉修

    国務大臣稻葉修君) そういう意味で法務大臣の所見を求められることはごもっともでございます。  今回のあれにもありますとおりに、それはもう捜査当局は有能ですから、これは政治献金、これは賄賂、厳然と区別する能力を持っていますからね。そういう点については、常に政治献金を全面禁止しないと賄賂罪もだんだんだんだん政治献金に切りかえられて、うやむやになるという御心配のようですが、私はそういう心配を持ちません。検察当局は十分に見分けて、きちっきちっと現にやっておりますからね。実績に徴して御信頼願いたいと思います。
  265. 市川房枝

    市川房枝君 検察当局で、はっきりとそれを区別をしてお調べならいいけれども、いままで、前の事例から言うと、田中さん御自身も前には石炭汚職のときにやっぱり逮捕されて、そうして結局後援会の政治献金だということで無罪になっちゃっているんですよね。だから、私は日本の検察は非常に有能でおいでになるということを再認識しているんですが、しかし、それにしてもずいぶん私はお困りになっているんじゃないかと思います。ですから、その点を心配をして伺ったわけでございます。
  266. 安原美穂

    説明員安原美穂君) 御指摘のように、賄賂としたものが政治献金であるということで過去に無罪になった例もございますので、先輩の苦しい経験を考えまして、現在後輩としては、そういうような点で、罪とされるべきものが免れるというようなことがあってはならないということは心しております。ただ、市川先生御心配でございまするけれども、政治献金だから賄賂にならないとは言えないんで、賄賂である政治献金もあるわけでございますが、賄賂でない政治献金があることも事実としてはあり得るわけで、その辺の区別については心して捜査をしていかなきゃならない。なお、賄賂であるのになお政治献金ということで逃れさしてはならないということは、十分銘記しているつもりでございます。
  267. 市川房枝

    市川房枝君 最後に、法務大臣、もう一つ伺いたいと思うんですが、先ほどから天皇の在位五十年の記念祝典のことが問題になっておりますが、国として祝典がありますと、いつもそのときに恩赦が行われる。そしてその恩赦の対象としては、いつも選挙違反が大赦になって全部無罪になっちゃう。いや、政治資金規正法も対象になったことがございます。こういう状態ですね、これが私はやっぱり金権選挙にした一つの理由でもあると思うわけなんですが、この恩赦の対象として選挙違反を含まないようにしていただきたい。これはまあ総理大臣といいますか、内閣の権限なんですけれども、法務大臣が担当の大臣でおいでになりますね。ですから、それまで三木内閣が続くのか、あるいは法務大臣がそのころまでにおいでになりますか、それは問題は別として、恩赦の問題、選挙違反を恩赦する問題についての法務大臣のお考えを伺わせていただきたい。
  268. 稻葉修

    国務大臣稻葉修君) 天皇在位五十年を記念しての恩赦があることを前提として御質問になり、恩赦があった場合も選挙違反は除外せいという御質問ですが、恩赦は考えておりませんから、法務省は。考えておりませんから。
  269. 市川房枝

    市川房枝君 天皇五十年のときには法務省は恩赦を考えていないと、こういう御意見ですから、それがそのまま実行されれば安心なんですが、ことに今度選挙がありますから、ただ選挙の時期によって。いつもはどうせ恩赦があればパアになる、だから選挙違反は構わぬと、やりほうだいというか、そういう気分があったわけなんですね。ですから、その点をちょっと心配をして申し上げたわけでございます。ありがとうございました。
  270. 剱木亨弘

    委員長剱木亨弘君) 以上をもちまして本日の質疑は終了いたしました。  明日は午後一時三十分開会いたします。  本日はこれにて散会いたします。    午後六時一分散会