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神谷信之助君 チャーチ
委員会でフィンドレー証人はこういうように言ってます。「われわれは領収証の必要を主張していました。円払いの領収証を主張した。」と。ところが、「実際のところどうして円のかわりに持参人払い小切手が使われたのか私はよく知りません。」と、「私の記憶では、小切手は手渡された。持参人払い小切手は手渡され、その後紛失したのです。」と、こういうようにチャーチ
委員会でレビンソン氏の質問に答えてフィンドレー氏は答えています。同時に、チャーチ
委員会でコーチャン氏は、すでに御承知のように、児玉から
小佐野氏を紹介してもらって非常に懇意になったが大変役に立ったということ、そうして、児玉氏に渡した七百万ドルの一部を児玉氏が
小佐野氏に払ったかというのに対して、「そんなことが私はあったと思います。
小佐野氏は児玉氏と一緒にこの仕事をやってくれたのですから。」こういうように
証言をしています。このチャーチ
委員会におけるコーチャン
証言や、あるいはフィンドレー
証言の信憑性というのは、いままでもたびたび非常に高いということがこの
委員会でも言われてまいりました。そこで、先ほど
福田太郎氏の供述、クラッター氏の通訳をして、この小切手は
小佐野に渡してくれという供述があった、こういう報道がありますが、この報道についても、これは
捜査当局としては言うわけにいきませんからお答えになっていないが、私は非常に信憑性が強いと思う。
問題は、この二カ月の間に小切手が寝ているという問題、これは一体どういうことなのかという問題であります。一つのなぞは、児玉と
ロッキード社との契約は、トライスターの導入についての契約が
ロッキード社と
全日空との間で結ばれたときに成功報酬として支払うということになっている。ところが、最初の六機の契約ができたのは四十八年の一月十二日であります。だから、成立前にバロウ副社長が十一月の二日に日本にやってくる、翌十一月三日は、御承知のように、コーチャン氏がアメリカに帰っているわけです。そうしてその間にバロウ氏からクラッター氏に渡り、そうしてこの小切手が児玉の手に渡り、しかも、それは
小佐野氏に渡してくれという、そういう通訳をしたということを
福田氏も供述をしている、語っているわけであります。
ところで、第二に、先ほど言いましたように、フィンドレー氏は、この小切手をなぜ使ったのかという疑問を提起をしています。こういう賄賂商法をやる場合、小切手は非常に危険であることは、もうこれは明らかであります。すでに
昭和二十二年の石炭国家管理法汚職で、
田中角榮が百万円の小切手、これを使ったということで、それが
証拠になって起訴をされたという、そういう事実、これは
田中角榮自身も経験をした事実であります。しかし、小切手が使われた、それは緊急に金が必要であったということではないか。現金を、円を調えるだけの余裕がなかって、そうしてバロウ副社長がスイスに飛び、ロンドン経由で日本にあわててやってくる、こういう
状態が起こっているというように
考えられます。
しかも第三に、この盗難に遭った、紛失をしたということ、これもフィンドレー氏がチャーチ
委員会で
証言をしています。盗難届があったのは一月の三日です。それに対して
ロッキード社の方が支払い停止要請をしたのは一月六日、停止、中止になったのが一月の十一日であります。このスイスの銀行の日本の責任者のゼイ・ブッチ代表は、この前後にわたって小切手は換金をされていないということを述べています。したがって、この小切手は本当に盗難に遭ったのかもわからないし、どうかわからぬが、いずれにしても使われていないということは大体明らかであります。こういう
状況である。
問題は、それじゃなぜその時期に金を必要としたのか、日本の側において、というところを追及してみますと、それは御承知のように、
田中内閣が成立をして四十七年の十一月十三日には国会の解散が行われた。十二月十日には総
選挙が行われています。
田中がこの総
選挙を進めるために資金を必要としたことは想像にかたくない、こういう
状況が背景で
考えられます。しかも、
ロッキード社との
関係で見れば、十月の九日の国防会議の
議員懇談会でPXLの白紙還元をして、そうしてP3Cの売り込みを可能にする決定を
田中はやりました。十月三十日には
全日空はトライスターの採用を決定をしています。また、十一月一日には
ロッキードと
丸紅の契約が成立をしている。そういう
ロッキードのトライスター及びP3Cの売り込みについて一定の成果を上げて、コーチャンは十一月三日にアメリカに帰ったわけであります。そのコーチャンに急いで総
選挙前の資金を要請をする、そこで円を急に集めるわけにいきませんので、間に合わないので、小切手が使われる、そしてこの小切手を担保にして親しい金主やあるいは金融機関を通じて金融を受けて、そしてその金が
小佐野から
田中に渡った、こういうことが推定をされるというように思います。
したがって、この盗難
事件というのは、
ロッキード社と児玉と
小佐野、この三者が合作をした作為ではないか。もし盗難に本当に遭ったとする、あるいは紛失をしたとするならば、これは児玉のミスでありますから、為替の差損である六千万円は、これは児玉の責任で負担をしなきゃならぬだろう。ところが、実際にはどうかというと、この六千万円も
ロッキード社が負担をしている。こういう事実が明らかであります。したがって、まさに
ロッキード社と児玉、
小佐野の合作による小切手紛失
事件、この後これの穴埋めが翌年の四十八年の五月十一日及び五月三十一日、合計四億四千万円
ロッキード社から送金をされているこの金で穴埋めをされ、その後六千万円も
ロッキード社が補てんをする、こういう
状況にあると思います。すなわち、言いかえれば
ロッキード社から賄賂が児玉−
小佐野−
田中と渡って、日本の
政治の動向を
決める総
選挙が戦われる、こういう事実を明らかにすることができるのではないかと思います。したがって、
捜査当局の
児玉ルートの解明というものの重要なかぎというのは、この盗難紛失小切手をめぐるなぞを徹底的に解明をする、言いかえれば、
児玉ルートというのは児玉−
小佐野ルートである、こう
考えざるを得ないと思う。
そこで、国会、当
委員会も、われわれは急いで
小佐野の喚問をやって、こういった経過についても彼の宣誓のもとにおける
証言でその事実を明らかにする、このことが何よりも必要だと思うし、同時に、
捜査当局も
小佐野に対して強制
捜査を急ぐべきである。そうしなければ、児玉−
小佐野ルートの十七億の解明というのはいつまでたっても解決をされないではないか、こういうように
考えるんですが、この点について
法務大臣あるいは
捜査当局の
見解を聞きたいと思います。