運営者 Bitlet 姉妹サービス
使い方 FAQ このサイトについて | login

1976-08-04 第77回国会 参議院 ロッキード問題に関する調査特別委員会 閉会後第20号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十一年八月四日(水曜日)    午前十時三分開会     —————————————    委員異動  八月四日     辞任         補欠選任      峯山 昭範君     塩出 啓典君     —————————————   出席者は左のとおり。     委員長         剱木 亨弘君     理 事                 岡本  悟君                 林田悠紀夫君                 黒柳  明君                 橋本  敦君                 木島 則夫君     委 員                 岡田  広君                久次米健太郎君                 戸塚 進也君                 秦野  章君                 宮崎 正雄君                 上田  哲君                 久保  亘君                 対馬 孝且君                 野田  哲君                 矢田部 理君                 塩出 啓典君                 神谷信之助君                 喜屋武眞榮君    国務大臣        国 務 大 臣  福田 赳夫君        法 務 大 臣  稻葉  修君        外 務 大 臣  宮澤 喜一君        大 蔵 大 臣  大平 正芳君        通商産業大臣   河本 敏夫君        国 務 大 臣        (内閣官房長        官)       井出一太郎君        国 務 大 臣        (防衛庁長官)  坂田 道太君    最高裁判所長官代理者        最高裁判所事務        総局刑事局長   岡垣  勲君    事務局側        常任委員会専門        員        池部 幸雄君    説明員        内閣法制局長官  真田 秀夫君        国防会議事務局        長        内海  倫君        警察庁刑事局長  土金 賢三君        警察庁刑事局保        安部長      吉田 六郎君        防衛庁防衛局長  伊藤 圭一君        防衛庁装備局長  江口 裕通君        法務省刑事局刑        事課長      吉田 淳一君        大蔵省主計局次        長        高橋  元君        大蔵省国際金融        局長       藤岡眞佐夫君        国税庁次長    山橋敬一郎君        通商産業省機械        情報産業局長   熊谷 善二君        運輸省航空局次        長        松本  操君        自治省行政局選        挙部長      佐藤 順一君        自治省行政局選        挙部政治資金課        長        前田 正恒君     —————————————   本日の会議に付した案件 ○ロッキード問題に関する調査  (ロッキード問題に関する件)     —————————————
  2. 剱木亨弘

    委員長剱木亨弘君) ただいまからロッキード問題に関する調査特別委員会を開会いたします。  委員異動について御報告いたします。  本日、峯山昭範君が委員を辞任され、その補欠として塩出啓典君が選任されました。     —————————————
  3. 剱木亨弘

    委員長剱木亨弘君) ロッキード問題に関する調査を議題とし、質疑を行います。  質疑のある方は順次御発言願います。
  4. 久保亘

    久保亘君 最初に、福田総理にお尋ねいたしますが、ロッキード事件解明がいま進みつつある中で、副総理が主張されております出直し改革論というのは具体的にどういう意味を持っているのか、少しお話しいただきたいと思います。
  5. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) 私は、ロッキード事件につきましては、これは徹底的に解明すると、まあ徹底解明論でございますが、ただそれだけでは足りない、つまり、こういう事件を起こす背景なり根っこがある。その背景根っこを剔抉するというか、そういうことをしないと第二、第三のまたロッキード事件が起こりかねない。ロッキード事件というものは、これは事件として解明しなければならぬが、それだけで事件解決ということにすべきじゃない。この機会に政治の姿勢を正す。この正すということがそう簡単なものじゃない。もう小手先で片づくものじゃない。自由民主党とすれば、これはもう出直しだと、こういうことを言っているわけです。
  6. 久保亘

    久保亘君 私は、あなたが、これは逮捕されました田中首相一人の責任ではなくて、自民党の戦後三十年間の政治を根本から考え直すべき問題だというような主張をされておりますことについて、そのことはよくわかるんでありますが、出直し自民党そのもの改革について言われていることについて、私がここでいま福田総理意見に対して私の見解を述べようと思いませんけれども、自民党内閣を組織しているという立場において、この問題の政治責任はただ単に自民党が解党するほどの決意をして出直すんだということで済む問題ではないのではないか。そういう意味で、出直し的な改革ということば、今度の事件を引き起こした自民党政治責任というのを明確にするという意味考えられているのかどうか。その政治責任論的な立場でお考えをお聞かせいただきたいと思います。
  7. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) まあ、とにかく戦後三十年間、自民党政権の衝にあったわけでありますから、党としてもこれはまあ非常に責任があると、こういうふうに考えておるわけです。そういう観点からも自由民主党出直し的な大改革をすべきであると、そういうふうに考えております。
  8. 久保亘

    久保亘君 群馬県の知事選挙の際に、自民党候補者法定チラシの中には、今度は上州連合政権をつくろうというような意味のことを書いて配られているようでありますが、そのあなたの出直し改革論というものの中には、今度の事件解明を終わったらここで自民党として内閣首班をかえる、こういうような意味で具体的には言われておるんでしょうか。
  9. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) 内閣首班をどうのこうのというところまでは言及しておらぬわけであります。
  10. 久保亘

    久保亘君 いや、その上州連合というのはどういう意味か知りませんが、連合というんですから、多分中曽根さんと福田さんが上州連合首謀者になるのか知りませんけれども、その福田内閣をつくろうということについては、知事選挙の際に、自民党群馬県連会長記者会見の中で、もうそのことについては合意に達しているんだというような話をされて県民に訴えておられます。  で、その出直し改革論というのが、三木内閣はこの事件究明を終わったら退陣して、あとは福田内閣なり新しい内閣をつくれば、それで自民党のその政治責任が一応今度の問題については決着がつくんだというようなものではない、むしろ、この問題が戦後三十年間の自民党政権担当から発生をした事件であるという立場で、その責任を明確にされるならば、憲政常道としては自民党がこの問題の解明が終わり次第政権の座を引くということが、私は、その責任を明確にし、出直し的な改革の道を開くことになるのではないか、こういう考えを持つんですが、副総理はどうお考えになりますか。
  11. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) まあ、政権国会の多数の議決によって決まるわけでありまして、そういうふうな決め方をするほかはない、こういうふうに思います。ただ、私が考えておるのは、今日のこの自民党の当面する問題、これは一だれだれというような角度で考うべき問題ではないんであって、これはまあ国の安定、繁栄、そういうものまで波及する性格の問題であると、そういう高い見地から政局の処理は考えるべきであると、こういうことを申し上げているわけです。
  12. 久保亘

    久保亘君 そうすると、この問題が三木内閣とか三木首相というような問題で矮小化して決着がつけられると、こういう種類のものではなくて、もっと憲政常道立場もありましょうし、国家的なあなたが言われる見地というものを踏まえて、そして、この政治責任というものは国民の納得のいく形で処理されなければならない、こう考えております。私はそう思っております。それで、自民党の内部で、この問題が党内責任論で処理される問題ではない。この点については御同意いただけますか。
  13. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) これは自民党として非常に重大な問題だと、そこで自民党として、これは本当に反省改革すべきは改革する、その改革小手先ではこれはいかぬ、これはもう出直しだと、それくらいの決意を持っての改革でなきゃならぬと、こういうふうに考えておるわけです。
  14. 久保亘

    久保亘君 やっぱり私は、いまあなたが何を考え、何を目指して政治行動を起こしておられるのか、言葉の上だけからはなかなか判断しかねるのです。出直し的改革というと、大変りっぱな言葉です。大平さんはみそぎ論と言われる。しかし、実体が一つもないような気がするんです。じゃ具体的にどうすることが出直し的改革なのか、政治責任をどういうふうにとることが出直し的改革に通じていくのか、それらのことについて、やはりもっと具体的に、国民はあなた方自民党指導者人たちの腹の中を確かめなければならないと思っているんです。いまではそういう抽象的な表現から出ることはできませんか。
  15. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) まあ、出直しというのは、自民党はここで一度解党する、そして新党として再出発するくらいの大改革を必要とすると、こういうことを言っておるんです。具体的にどうするかというようなことは、これは党内でもいろいろ意見がありましょう。それはその意見によって決めらるべきものであるが、しかし、その精神はあくまでも解党、新党というくらいな大改革でなければならぬと、こういうことを申し上げておるわけです。
  16. 久保亘

    久保亘君 この問題は、あなたの時間もあるようですから、また改めて御意見を伺うことにいたしますが、私は、いま言われた出直し的改革ということが、本当の意味国民期待にぴったりこたえるような自民党としての責任ある出処進退であるように期待をいたしておきます。  それから、もう一つお伺いしたいのは、最近ロッキード事件に関連をするいろいろな報道の中で、金権政治一つのあらわれとして、自民党国会対策に当たって、野党との間に金銭の授受があって、政策や法案等決定自民党野党側に働きかけをしたかのようなことが伝えられております。あなたは自民党役員立場もずいぶん豊富に経験をされておるんでありますが、私は、そのようなことがもしあったとするならば、これはロッキード事件にまさるとも劣らない国民に対する政治的犯罪であると考えております。そのようなことが実際にあったのかどうか。あなたの御経験自民党の指導的な立場にあられたその体験を通して、明確なお考えを、御意見を述べていただきたいと思うんです。
  17. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) 国会対策上の見地から与野党の間で金が動くというようなことがあれば、これはゆゆしい問題だと思う。しかし、私はそういうことはないと思いますが、少なくとも私が幹事長をしておるとき、二回やりましたがね、その間においては、もう絶対にそういう事実はなかったということを確言いたします。
  18. 久保亘

    久保亘君 私もあり得べからざることだと考えております。もしそのような点について疑念があるとするならば、私は与野党を挙げて徹底的にその問題は究明をして、その真相を明らかにして、その政治的道義的責任ロッキード事件と同じように問われなければならぬ問題だと考えております。いま少なくとも福田幹事長時代にそのような事実は全くないと言われておりますので、もしあなたの時代以外にそういうようなことがあり得たのかどうか、その辺についてあなたの立場から、もしここで意見を述べることができればお聞かせいただきたいと思うんです。そのときにも閣内にあっていろいろと重要なポストにおられたと思いますので、それらの問題についてあなたは知り得る立場におられたのではないかと思いますから、自分の幹事長時代だけに限定せず、こういう問題について、あり得ることなのか、またそういうことがあったと思われるのか、そういう点についてもひとつお聞かせいただきたい。
  19. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) これはあってはならぬことであるし、あり得べからざることであると、そういうふうにお答えするほかございません。
  20. 久保亘

    久保亘君 最後に副総理にお尋ねいたしますことは、戦後三十年の自民党政権の中に生じた金権的な体質に対して、いま重大な反省が求められているということをあなたが主張されていることに私は同感であります。それでひとつ、こういう考えについて党内の主要な指導者として、また閣内総理立場として、どうお考えでしょう。私は、総裁選挙にせよ、今日の派閥的弊害と言われているものにせよ、金が動くということについては、政治家政治家に金を渡すということが問題だと思うのであります。それで、政治家政治家に金を渡すことについて一切法律をもって禁止するということが、問題を解決をしていく一つの手がかりになるのではないかと思うんです。企業献金を全面的に禁止するということと、それから政治家政治家へ、あるいは特定政治家が主宰する団体政治家個人へ、あるいは政治家の主宰する団体へ金を渡していくということについて、これを全面的に法律をもって禁止するということについて、あなたはどういうお考えをお持ちでしょう。
  21. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) ただいまの御提案はなかなか技術的にむずかしい点があるんじゃないか、そんな感じがしますが、要は私は政治家モラルの問題だと思うんです。幾ら法律をつくる、規則をつくりましても、モラルが正しからざればこれは何の用もなさぬ。私は、一人一人の政治家が、これは本当に政治は道徳であるというくらいな立場に立って政治に携わらなきゃならぬというその反省、これが必要である、これなくして幾ら制度をつくりましても、これは制度がゆがめられるという弊害が出てくるばかりであって、ねらうところの粛正というものは行われないと、こういうふうな感じでございます。
  22. 久保亘

    久保亘君 モラルの問題としても結構です。私は制度モラルは一対のものでなければ生きてこないと思いますから、モラルとして、それでは政治家が、特定政治家から、どういう意味か知りませんが、定期的に何百万というお金を受け取る、そうしてその金を受け取ることによって親分子分という関係を生ずることによって、それが政治を動かす一つの力になっていく、このようなことは政治家モラルとして私は問題だと思います。だから、そのようなことが政治家モラルとしてでも、制度としてでも、全面的になくなっていくということが望ましいことだとお考えになりませんか。
  23. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) 要は節度の問題じゃないかと思うんです。さあ政治家が法によって一銭たりといえども他の議員に協力し援助することはできないと、こういうようなことにして、果たしてそれが守られるか、つまり私は、度を超えた金の使用、こういうことにつきましては、これはモラルの上からもまた慎まなきゃならぬ問題であるというふうに考えますが、まあ法的にどうのこうのということは、なかなかむずかしいんじゃないでしょうか。
  24. 久保亘

    久保亘君 えらい念を入れてお聞きするようですけれども、私は、政治家が必要な政治活動の費用というのは、公費並びにその政党がそれを負担していくべきものだと考えております。で、特定政治家が個人的に政治家に対して、これ君の活動費だと言って新聞紙に包んで渡すと、こういうようなことが、私は今日の政治的な弊害を招いてきた一つの大きな原因だと考えております。だから、そういうものは政治家モラルとしても、また制度の上でも禁止されていくことが望ましいというふうには、出直し的改革論者としてあなたはお考えになりませんですかね。
  25. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) まあ、技術的にはいろいろな改革考えが立つと思いまするけれども、私は、大事なことはモラルの問題である、道義の問題であると、この改革なしにいかなる制度をつくりましても、それはねらうところが実現をされないと、そういうふうな見解でございます。
  26. 久保亘

    久保亘君 それでは次に法務大臣にお尋ねいたしますが、田中角榮逮捕について、法務大臣検察側から前日許可を求められて、これを許可したと、こういうふうなことを言われておりますが、それは間違いありませんか。
  27. 稻葉修

    国務大臣稻葉修君) 前もって許可を仰いできましたから、許可しました。前日とか、そういう時期をいつだとかということは申し上げないことにしております。
  28. 久保亘

    久保亘君 国会議員の閉会中の逮捕については法務大臣許可が必要になっているとすれば、それは法律のどのような根拠に基づくものですか。
  29. 吉田淳一

    説明員吉田淳一君) 具体的にどういう種の事件について処分請訓を行うかということは、法律上の根拠に基づくのではなくて、運用の問題であります。
  30. 久保亘

    久保亘君 その捜査に対して全部検察側の判断に任すということで法務大臣は言われてきたんですが、法律根拠に基づかず、田中角榮を特殊な扱いとして事前法務大臣逮捕許可請求をされたということは、ある意味では法務大臣にこの田中角榮逮捕に関して指揮を仰いだということになりませんか。
  31. 稻葉修

    国務大臣稻葉修君) ロッキード事件発生以来逮捕者がたくさん出ておりますことは御承知のとおりですが、それらの逮捕請求を、裁判所逮捕状請求をする前に許可を仰いできた、そういう従来の慣例も踏んでいるんじゃないかと思うんですが、それに基づいてずっとやってきた。田中角榮氏の場合特に許可を求めてきたわけではありません。
  32. 久保亘

    久保亘君 では、いままで逮捕されました者については、このロッキード事件に関しては全部事前法務大臣許可検察側は仰いだと、こういうことですか。
  33. 稻葉修

    国務大臣稻葉修君) 事後報告のものも二、三ございました。丸紅の運転手さんでしたかね、そういうような人については事後であったように記憶しております。大部分は事前許可を求めてきました。
  34. 久保亘

    久保亘君 それは検察側は、逮捕状請求して、裁判所側令状を取る前ですか、後ですか、法務大臣許可を仰いでいるのは。いや、あちらの方が詳しいでしょう。
  35. 吉田淳一

    説明員吉田淳一君) いろいろ場合によって違います。
  36. 久保亘

    久保亘君 ただ、このロッキード事件に関する逮捕者については、原則として大臣指揮を仰いで決定をしているということは間違いありませんね。
  37. 吉田淳一

    説明員吉田淳一君) 大臣の御了解を得てやっていることであります。
  38. 久保亘

    久保亘君 田中角榮の場合には、令状請求の前ですか後ですか。
  39. 稻葉修

    国務大臣稻葉修君) 前であったと記憶しております。
  40. 久保亘

    久保亘君 そうすると、法務大臣としては、事件捜査の状況をかなり事前にいろいろ報告を受けて知っておられる、こういうことになりますね。
  41. 稻葉修

    国務大臣稻葉修君) それは、なりません。
  42. 久保亘

    久保亘君 どうしてですか。田中角榮逮捕令状裁判所側から検察当局が受け取る前に、あなたの方の執行についての許可を求めてきているわけでしょう。そうすると、その段階では、あなたはもう御承知になっているわけですね。そうすると、逮捕令状裁判所側から出されたのは前日の午後二時過ぎと報道されておりますが、それよりも前ということになりますね。
  43. 稻葉修

    国務大臣稻葉修君) それよりも前でありますね。前です。
  44. 久保亘

    久保亘君 前ですね。そういうことになれば、法務大臣事前捜査上のいろいろなことを知りながら、現在派閥選挙応援などを兼ねて全国をせっせと回って、そうしていろいろと問題になる発言を次々におやりになるようでありますが、この問題について、きのう三木首相は、あなたが選挙応援演説などであちこち行って演説することはどうもよくない、それでやめてもらいたい、こういうことであなたに注意をするということを発言されておりますが、そういう注意を受けられておりますか。
  45. 稻葉修

    国務大臣稻葉修君) 全然受けておりません。
  46. 久保亘

    久保亘君 全くあなたは受けておられないとすると、三木首相があなたに注意すると言われたことは、実際には法務大臣が恐ろしくて言えないということですね。
  47. 稻葉修

    国務大臣稻葉修君) 真相はどういうことだか知りませんけれども、私は全然受けてないですがね。ただ、余り問題になる発言をされちゃ困るという批判を新聞記者にお話しになったんじゃないでしょうかな。
  48. 久保亘

    久保亘君 あなたの派閥の領袖である中曽根幹事長からは、あなたは注意を受けられておりますか。
  49. 稻葉修

    国務大臣稻葉修君) 前にここでも問題になりました愛媛県に行ったときは、明くる日新聞にああいうふうに出ているものですからね、役員会でそれが問題になったから幹事長から注意をしておけと、こう言われたから電話注意を申し上げますと、こういうことがありました。それはありましたよ。
  50. 久保亘

    久保亘君 幹事長から直接じゃないのですね。
  51. 稻葉修

    国務大臣稻葉修君) 幹事長直接。
  52. 久保亘

    久保亘君 ではない……
  53. 稻葉修

    国務大臣稻葉修君) 直接。
  54. 久保亘

    久保亘君 直接。
  55. 稻葉修

    国務大臣稻葉修君) 直接。それに対して私は、注意をされるいわれはないと答えております。
  56. 久保亘

    久保亘君 いや、あなたのその立場はよくわかりました。そうすると、三木首相中曽根幹事長は、今回のあなたの発言に対してそういう注意をする、あるいはしたと、こういうふうなことを発言されておりまして、それが報道されております。それで、そのことが全然なかったと、また注意されてもそんなもの聞く耳持たぬとあなたが言われるのであれば、総裁幹事長としての党内あるいは閣内統制はもう全くないと、こういうことになりますな。
  57. 稻葉修

    国務大臣稻葉修君) それとこれとは違うじゃないですか。愛媛県のときに幹事長からそういうあれがあったから、そしたら、そういう注意を受けるいわれはないよと、あんなこと言っとらぬのだから、新聞記事を問題に役員会がするというのは少し新聞に乗せられて不見識じゃないですかねと、よく、代議士さんのこれこれのところでやったんだから聞いてごらんなさいと、いや私は聞いていますと、本当にそうだそうですねと、けれども、注意しておけと言うから電話したのですと、こういうことでしたな、そのときは。きのうは現地電話が来た。現地電話が来ました。私は出ませんでしたけれども、秘書が出たら、くれぐれも御発言には御注意をお願いしますと、こういうことでしたから、くれぐれも注意して発言をしてきました。
  58. 久保亘

    久保亘君 余り茶化して物事を言うものじゃないですよ。
  59. 稻葉修

    国務大臣稻葉修君) 冗談……。ちょっと、ちょっと待ってください。
  60. 久保亘

    久保亘君 少し、まじめに聞いているんだから、まじめにやりなさい。
  61. 稻葉修

    国務大臣稻葉修君) まじめにやってるんですよ。おれはそのとおり——そのとおり言ってるんですよ。ちょっともう少し弁解を聞いてください。もう少し弁解をお聞きください。  それで、そういう電話でしたから、本当に言動に注意をして、非常に注意した発言をしております。ですから、統制に服しているとかいうことにはなっていると思いますね、私。決して幹事長であろうが総裁であろうが、統制に服しないなんという党員があってなるものですか。その点はわきまえて、ごく注意をして、薄氷を踏むがごとくやってまいりました。
  62. 久保亘

    久保亘君 それじゃ、先ほどあなたは全然そんなものなかったと言われたじゃないですか。全然なかったと言われたのに、いま電話があって薄氷を踏むような思いで慎重にやってきたと言われたけれども、これ、どういうことですか。
  63. 稻葉修

    国務大臣稻葉修君) 総理からきのう注意されたという何か新聞記事が出ているから、それば全然なかったと、事実そのとおりなんです。幹事長の問題はその次出てきた問題じゃないですか。これ、幹事長についてはありましたと、こう言っている。総理からは全然ありませんでした。あなた質問しながらごっちゃにしちゃう。困るんです。
  64. 久保亘

    久保亘君 いや、文句があるなら後で議事録を調べてもらえばわかるんです。私は最初総理のことを聞いて、幹事長をして言わしめたということを聞いて、それもあなたはなかったと。幹事長からは愛媛でやった後あったと言われたんです。そして、今度はきのう電話が来たと、また言われた。言を左右されているじゃないですか。だから、私はもっとまじめに答えにゃいかぬと言っているんです。  大体きのうこの委員会を欠席して、そして地元の選挙演説に行っておられたのは、このことについてあなたはどういうふうにお考えになっておりますか。
  65. 稻葉修

    国務大臣稻葉修君) まことに申しわけがございません。
  66. 久保亘

    久保亘君 特に現地から聞きましたところでは、あなたが行かれるところには、稻葉法相ロッキード事件真相を語るというポスターが張ってあるそうです。いまあなた、捜査の進行中だから証人の喚問も遠慮してくれと言われているんですよ、あなた方から。そういうときに、捜査の最高責任者である法務大臣が勝手に自分の選挙区に出かけて、稻葉法相ロッキード事件真相を語るというようなことで人気集めをやられるなんということはもってのほかだと思うんですよね。
  67. 稻葉修

    国務大臣稻葉修君) そのポスターのそういう部分は今度消します。
  68. 久保亘

    久保亘君 いろいろとあなたが各地で発言をされることについて問題が起きているんです。私はしかし、あなたが言っておられることに、なかなか大胆な発言で、それで大変われわれとしても法務大臣よくやるなという面もありますよ。全部否定しているんじゃありませんよ。しかし、もしあなたが法務大臣立場というのを選挙運動に使ったり、それから自分勝手な推測で、国会の審議には協力できぬが、おれが国民に向かってしゃべるのは自由勝手であるというようなふうにやられるとするならば、これは国会立場からあなたを問題にしなければならぬ、こういうふうに思って私はお尋ねしたわけです。  それからもう一つ、あなたが述べられた政治日程について、政府首脳の考えと大筋で違いはない、こういうふうにきのう言われたと聞きますが、これは事実でしょうか。
  69. 稻葉修

    国務大臣稻葉修君) 人の応援に行ったり、自分の選挙区へ行ったりして——秋には選挙があるんですからね。ですから、大体このぐらいの時期に投票になりそうですなということを一国会議員として発言して悪いというのも私は解せないんですね。その程度のことは言わしてもらってもいいんじゃないか。そんなことまで封ぜられては言論の自由ということをどう考えているんだろうかと思って、私ちょっと解せないんです、その点は。一陣笠代議士として、皆私は心配だから、選挙が。このぐらいのところじゃないでしょうかと、したがってこのぐらいのところですから、その速度でひとつよろしく願いますべえと、こう言うのは、だれでも衆議院議員として言うても差し支えないことじゃないでしょうかな。それを法務大臣の権限を逸脱した発言である、それは政府それから党首脳というかな、あるいは議長とか、そういう人が日にちを決めるんで、法務大臣がそんなことを決めてはけしからぬというような論調が行われる。私決めているんじゃないんですからね。そうなりそうでないかということを、政治家の常識として、もうすぐ、任期は十二月九日に来ているんですから、いまごろそのぐらいな見当つかなければよほどおかしいんじゃないですかな、それだけの話でございます。
  70. 久保亘

    久保亘君 いや、私はいまあなたが言ったことがいい悪いと言っているんじゃなくて、あなたが言われた政治日程は政府首脳の考え方と大筋については違いはないと言われたことは事実ですかと聞いているわけです。
  71. 稻葉修

    国務大臣稻葉修君) 違いはないんじゃなかろうかと思います。違いは断じてないというふうには言うてないんです。違いないんじゃないでしょうかねということです。
  72. 久保亘

    久保亘君 時間の都合がありますから、それじゃその次の質問に入りますが、アメリカの嘱託尋問調書はすでに検察当局は入手されたんでしょうか。それとも、大体いつになったら検察当局は正式の文書を入手されますか。
  73. 吉田淳一

    説明員吉田淳一君) まだ入手しておりません。近いうちに入手できる見込みであります。
  74. 久保亘

    久保亘君 法務大臣は四日か五日ごろとお話しになったようですが、四日か五日ということになりますと、きょうかあすかと、こういうことですか。近いうちというのはそういう意味で解してよろしゅうございますか。
  75. 吉田淳一

    説明員吉田淳一君) 非常に言葉を省略いたしましたが、これは東京地方裁判所の裁判官から司法共助の一環として求めている手続でございます。で、その結果、米国の裁判所において証人尋問が行われて、その証人尋問調書が作成された、その証人尋問調書は、裁判所から外交ルートを通じまして裁判所へ経由して戻って来て初めて検察官に交付されるものでございます。そういうことで手続上若干の日時を要するのでございます。しかし、日にちを何日というふうに申すわけにはいきませんけれども、ごく近いうちにそういうルートを通じて裁判所から正式に刑事訴訟法の規定に基づいて検察官に交付されるものと考えております。
  76. 久保亘

    久保亘君 その嘱託尋問調書の中には田中角榮以外の現職の政治家の名前が数多く見られるということで、すでに新聞等にもその一端が、推測記事でありましょうが、報道されております。そのこととも関連をしながら、私は中曽根康弘氏の問題について少しお尋ねしたいと思うんです。  河本通産大臣がお見えでありますから、最初にお尋ねしたいのは、四十六年の四月二十六日、当時防衛庁長官でありました中曽根氏が四次防の原案を中曽根私案の形で発表をされたときには、PXLなど武器の国産化の傾向を非常に強めた原案として出されております。そのことは通産省としても同様な考え方に立っておられたのではないかと考えるのでありますが、当時通産省はこの中曽根防衛庁長官が示しました四次防原案の武器の国産化傾向を強める方向についてどういう考え方を持っておられたのか、その点を最初にお聞かせいただきたい。
  77. 河本敏夫

    国務大臣(河本敏夫君) 正確を期さなければなりませんので、記録によりまして局長から答弁をさせます。
  78. 熊谷善二

    説明員(熊谷善二君) お答えいたします。  通産省の防衛機種に対します選定に対する考え方でございますが、これは一義的にはユーザーである防衛庁の問題ではございますが、御指摘の防衛産業を所管しておる立場から言いますと、一般論としましては、国内開発の可能なものにつきましてはできるだけ国産をするという考え方で今日まで一貫してまいっておるわけでございます。ただいま御指摘の四十六年の四月は、当時恐らく防衛庁長官という立場での御発言であったかと思いますが、通産大臣をおやりになりました四十七年の七月以降、中曽根大臣、当時の大臣の就任されております期間中も一貫してこの考え方には変わりはございません。
  79. 久保亘

    久保亘君 防衛庁長官時代にみずから国産化の方向を出された中曽根氏が、その後通産大臣に四十七年田中内閣の発足と同時に就任をされるわけでありまして、いま局長の答弁によれば、中曽根氏は防衛庁長官時代考え方を通産大臣になられても踏襲をされておった。通産省はもちろん初めからそのような考え方で進んできたということなんでありますが、そういたしますと、中曽根氏はPXL国産化白紙還元の動きに対しては、防衛庁長官であった時代の自分の考え方からしても、また通産大臣という立場に立ってみましても、この問題に対しては少なくとも通産省を代表して国防会議においても意見があるべき筋のものである、こう考えるのでありますが、当時中曽根氏が通産大臣として国産化白紙還元の田中首相の提案に賛成された、発言なく賛成されたということについて、通産省としてもそれをやむを得ないと考えていたのかどうかですね、それはあなたおわかりになりませんか。
  80. 熊谷善二

    説明員(熊谷善二君) 四十七年の白紙還元の国防会議議員懇談会の了承事項の件につきましては、それまで通産省は、防衛庁の方におきましてもかなり数年前から、PXLの国産化ということじゃございませんが、研究開発その他進めておられますので、そういうこともございまして、通産省としては格別PXL問題についての意見を公式に表明したことはございません。この議員懇談会——四十七年十月の議員懇談会の後におきましては専門家会議が開かれますので、これに対する立場の配慮もございまして特段の意見を申し上げておりませんで、専門家会議におきまして初めて通産省の公式の見解を四十九年の九月と、それから十二月に意見表明はいたしております。いま御指摘の点の四十七年十月の時点におきます当時の中曽根大臣がどのような発言をされたのか、されなかったのかということにつきましては、私どもとしては記録もございませんし、聞いておりませんが、通産省の考えといたしましては、一貫しまして、とりわけ国産化の方向でということで今日まいっておるわけでございます。
  81. 久保亘

    久保亘君 T2、FST2改の輸入論を大蔵省が防衛庁に示しますときに、通産省としては当時の状況から、この国産、輸入の是非論とか、そういうものは一応別にしまして、ただ経過論として考えてみますと、通産省としては、T2やFST2改の輸入ということが現実的には不可能な状態にある、日本の航空機産業界の状態あるいは経団連の防衛生産小委員会の意向などを見てみましても、その上にさらに、この国防会議が開かれる時期にはすでにT2は四機完成しておりまして、二機が試作機で二機は量産先行機として完成いたしております。航空自衛隊はこれをテスト飛行に使っておるときなんです。そういうときにこの大蔵省の主張する国産化をやめて輸入論に切りかえるというようなことなどが現実にあり得るはずがない。岡本委員もいつかここで言われたことがありますが、予算編成上の技術としてよくある手で、これをおとりにして、ねらいはPXLであったのではないか、こういう意味の御発言があったことがありますが、経験者としてお話しになっておるのであろうと思って私も傾聴いたしておりました。その当時、通産省がこのT2やFST2改の輸入論に対して一言ないはずはないのに、その当時においては中曽根通産大臣以下この問題に対して全く沈黙を守って、そして事は田中首相の思惑どおりに進んでいった。こういうような経過がありまして、どうしてもこの点について不可解ななぞとして今日残されているのであります。  で、通産省がこの航空機の輸入、国産というようなものについて、防衛庁の装備を含めて、航空機の輸入、国産問題について全く意見を述べなかったということについては、当時何らかの理由が存在したのか、あるいはその点については中曽根通産大臣に全くその問題は一任され、通産大臣の意思によってそれらの問題に対する通産省の意思表示をされていったのか、その点についてひとつお答えいただきたいと思います。
  82. 熊谷善二

    説明員(熊谷善二君) お答えいたします。  私どもは、先ほども申しましたように、まあ機種選定の問題は一義的には防衛庁の問題でございますのですが、航空機産業を所管しておりますので、とりわけ国産化を望ましいというふうに考えているわけでございますが、先ほども申しましたように、当時研究開発が防衛庁の方でいろいろ進めておられたこともございまして、防衛庁自身の内部のいろいろな検討状況あるいは大蔵省との折衝状況と細部の点につきまして私どもは承知し得る立場にはなかったわけでございまして、国産化の方向で進められているというふうに私どもは考えていたわけでございまして、格段の意見を申し述べるという必要性はなかったというふうに考えておるわけでございます。
  83. 久保亘

    久保亘君 事務当局のお考えはよくわかりました。そうすると、結局国防会議の前後をめぐる時期においては、当時の中曽根通産大臣がその大臣の判断においてこの問題に対応された。通産省としては国産の方向を当然のことと考えておったけれども、白紙還元して輸入の方向に向かうということについて中曽根通産大臣大臣の意思によって判断されていったんだと、こういうことになりますね。
  84. 熊谷善二

    説明員(熊谷善二君) お答えいたします。  当時の、四十七年十月の白紙還元の事態は、私どもも、これで輸入に決まったというわけではございませんで、白紙還元のもとでいろいろさらに細部を検討した上で決めていくと、こういう性質のものであると考えておるわけでございます。私ども事務的に大臣に格別の御発言を早期にお願いするということは記録には何も残っておりません。格別なお願いをいたしておりません。また大臣がどういう御発言をされたかということにつきましても記録的には確認はいたしておりません。
  85. 久保亘

    久保亘君 わかりました。結局、このT2、FST2改の問題、それからPXLの問題が非常になぞに包まれながら動いていきました四十七年十月の初頭の時期、それから専門家会議が動いていきます時期において中曽根通産大臣は通産省の事務当局に通産省としての意見を求めるというようなことではなくて、大臣の個人的な——個人的と言いますか、大臣としての判断に基づいて当時この問題に対処されてきたのだと、こういうことがいまの答弁で理解できますので、わかりました。  それでは、その次に捜査当局、検察当局にお尋ねいたしますが、中曽根氏と児玉譽士夫の関係については、電源開発九頭竜川ダム事件などに関係しても、当時の補償を求めた側の緒方氏の著述によれば、中曽根氏と児玉譽士夫の関係というのはただならぬ関係であったように私どもはその著作の中からうかがい知るのであります。そういうような関係とか、それから児玉の秘書太刀川が中曽根氏の秘書としてこの職務についておったというような関係から、児玉ルート——今日解明が一番おくれておると言われております児玉ルートの解明に当たっては、児玉と中曽根氏の関係というのは当然にその関係を深く究明しなければこの問題の事実解明が困難であると、私はこういうふうに思いますが、捜査当局としてはそれらの問題については当然にこの究明をされておると思いますが、その点についてお聞かせいただきたいと思います。
  86. 吉田淳一

    説明員吉田淳一君) 御指摘の児玉譽士夫関係の資金関係につきましては、御承知のように、東京地検としましては、鋭意その真相解明を図るべく努力しているところでございます。で、一部についてはすでに所得税や外為で起訴していることは御承知のとおりでございますが、刑事局長もこの前国会で申し上げましたとおり、児玉につきましては、本人の病状等の状況から、率直に言って、捜査上困難を伴う諸事情が伴って必ずしも順調に進捗しているとは言いがたいのでありますが、なお、これらの悪条件をも克服しながらその資金の入りと出について目下さらに究明を続けておるのでございます。  で、御指摘の事柄についても検察庁は調べているのかということでございますけれども、ただいま申しましたように、検察当局捜査についてその資金の入りと出の関係を極力解明すべく最善の努力をしていることは申し上げられますけれども、そしてその過程において、いかなる者といえどもその過程において不法行為が発覚するならばそれについて厳正な処理をすると、そういう立場でやっているということだけは申し上げますが、どういう角度で、どういうところに焦点を置いて、いまどこまで明るみに出ているかというようなことをここで申し上げるわけにはいかないのでございます。その点はひとつ御了解いただきたいと思います。
  87. 久保亘

    久保亘君 私は捜査の内容にわたってお聞きしょうと考えているのではありません。当然児玉ルートの解明ということになって、その児玉ルートの解明をやっていく上に、過去において児玉と非常に深い関係を持っていた政治家というのは、その関係については、その事件と直接かかわっているかどうかは別にして、その問題を究明していくためには過去における児玉と深いかかわりのあった政治家については調査が必要なんじゃありませんか。そういうことが全然行われていないとするならば、そういうことは必要ないんだというふうにお答えいただけばいいんです。
  88. 吉田淳一

    説明員吉田淳一君) 必要があるか必要がないかということについては私は意見を申し上げているわけではございません。検察当局がどう考えているかについて意見を申し上げたわけではございません。問題は、そういうような事情を本件捜査の過程で考慮する必要があるかどうか、それは、先ほど言いましたように、資金の入りと出の関係の過程でどういう形で使われて、それでその過程に不法行為があるかどうか、それを調べる上にそういうようなものが参考になるんであれば調べるでありましょうし、そうでなければ本件捜査の過程で必ず調べなきゃならないということではないと思います。いずれにいたしましても、その点は捜査の内容に関連することでありますので、私の口からは申し上げられないということを言っているのでございます。
  89. 久保亘

    久保亘君 児玉と中曽根氏の関係というのは、ただ単に太刀川秘書の問題とか、あるいは池田、佐藤の総裁選挙のときの資金にかかわる問題だとも言われているこの電源開発に伴う事件の際に「児玉譽士夫と中曽根氏が児玉の家の座敷で特定の個人と面接をするというようなことがあった」と書かれているわけでありますから、そういう問題については当然この児玉ルートを洗っていく場合には、深くかかわっておった政治家の問題は、どういう事情であったかはこれは調査をされるのが当然のことであると考えております。いまのお話で大体私も推測がつきます。  それだけではなくて、河本通産大臣にも関係のありますジャパンライン社の株買い占め事件の際にも児玉譽土夫は稻葉法務大臣をして河本氏にこの問題で相談をしようとされたことがあるといわれておるんであります。それが、いわゆる児玉譽士夫が政治家との関係は川島正次郎さんの逝去をもって終わったと言っていることとは、また違った意味で、その後においてそういう関係があらわれているわけでありまして、その際、稻葉法務大臣がこの児玉譽士夫と話をされるというのは、稻葉さん個人があの児玉譽士夫と昔からかかわりがあったということなんでしょうか。それとも、やっぱりあなたの所属されております中曽根派、それからその前身であります河野一郎派、この系列の中であなたは児玉との関係が生じたと——関係と言いますと言葉が悪いですが、知り合いの関係になったと、こういうことではなかろうかと思うんですが、その点はどうですか。
  90. 稻葉修

    国務大臣稻葉修君) 児玉譽士夫と、ああこれが児玉譽士夫か、ああこれが稻葉代議士かというような知り合いですね。それは河野一郎さんの春秋会のときからでありますね。そういう関係です。
  91. 久保亘

    久保亘君 そういうことからいたしますと、やはり児玉譽士夫と中曽根氏の関係というのは春秋会以来かかわっておって、そして、その関係の継続としてジャパンライン社の株買い占め事件の際には、あなたにその児玉譽士夫が頼んだ、こういう関係ですから、中曽根康弘氏がすでに佐藤三選のときをもって児玉との関係は断絶した、こういうことは当たらないと私は考えるわけであります。そこにも児玉譽士夫と中曽根氏の関係があります。  また、もう一つ、今度太刀川が起訴される事実となりました殖産住宅事件に関連しても、かつて東郷前社長と中曽根氏の関係が大変大きく問題にされたことがあります。それこそ株式上場に当たって不当な利益を得た、または得ようとしたのではないか、そのことに、同級生である東郷民安と中曽根氏がいろいろと談合をやったのではないかというようなことがこの国会においても問題になったことがあります。いままた中曽根氏の秘書でもあり児玉譽士夫の秘書でもあった太刀川が殖産住宅の前社長東郷脅迫によって起訴されているということを考えれば、ここでも児玉譽士夫と中曽根氏の関係は断ちがたく存在をすると考えられるのであります。  その上に、これはうわさの段階でありましたけれども、非常に真実味を帯びて当時伝えられた問題として、四十七年七月の総裁選挙において中曽根派はなぜ田中派にその支持を決定したかといういきさつについて、児玉が介在をしたということがいろいろと取りざたされてまいりました。私はその事実をいまここで知る由もありませんが、そのことは当時かなり大々的に取りざたされてきた問題でありまして、七億円の金銭の移動についても報道されたことがあります。そういうような報道が出てくるぐらい、中曽根氏と児玉譽士夫の関係というのは非常に私はかかわりが長くて深いものだと考えている。  したがって、今度の児玉ルートの解明に当たっては、事件そのものにどういうふうにかかわるかは別として、児玉自身のいろいろな問題を知る上にも、政界との関係を知る上にも中曽根氏が欠くべからざる重要な人物であると考えております。そういう意味で、捜査当局が先ほどそれを調べているかどうかということについては大変含みのある答弁をされましたけれども、否定的な御答弁でもありませんので、私はこの点について当然究明が行われているものと考えております。もし、したがって、私がいま申し上げましたようなことについて大変御不審があれば、中曽根康弘氏自身がこの委員会に出席をして、しかるべき立場でこれらの問題について私どもの質問にお答えになることが大変望ましいのではないかと私は考えておりますが、この問題につきましては、いずれまた党として私どもの方からも提起をいたしたいと考えております。  それから最後に、中曽根氏の問題につきまして、政治資金規正法違反の容疑について捜査も行われたのでありますが、この問題はその後どういうふうな進捗状況なのか、それらの経過について御答弁をいただきたいと思います。
  92. 吉田淳一

    説明員吉田淳一君) ただいま正確に最近のことについて確認しておりませんけれども、その点については警視庁においてまず事情を聞いてその取り扱いを決めるというふうに聞いておりまして、それについて検察庁の方に事件が送致されてはまだいないのではないかと思っておりますが、まだちょっと、いま確認しておりません。
  93. 久保亘

    久保亘君 中曽根事務所が捜査を受けましたのは四月のことです。もうすでに四ヵ月になろうとしているのですが、この問題が大変あいまいに処理されているというのは私どもとしては非常に不可解なことでありますが、検察当局として、これ、まだ警視庁の段階にとどまっておって、全然あなた方の方としてはこの問題については報告も何も受けておられないのですか。
  94. 吉田淳一

    説明員吉田淳一君) 手抜かりしているということでは決してございません。私ただいま正確に把握しておりませんので、間違っていると困りますので留保をつけさしていただきたいのでございますが、警視庁においてその事件を立件して検察庁に送致されれば、もとより厳正に適正な処理をするものと思います。
  95. 久保亘

    久保亘君 私の質問の終了まで後四十五分近くありますので、できましたらひとつ警察庁に御出席いただいて、いまの問題についてこの質問の終わりに少し御説明いただきたいと思います。お願いしておきます。  それでは次に、防衛庁長官にお尋ねいたしますが、私は先般来、輸入商社のメーカーとの契約書等の提出依頼に対する回答状況についてお尋ねをしてまいりましたが、五月十一日、六月十一日の報告をいただいておりますが、その後この回答状況がどのように変化をしているのか、ひとつ御報告いただきたいと思います。
  96. 江口裕通

    説明員(江口裕通君) 事務的な事項にまたがりますので装備局長の方からお答えいたします。  現在、五十一年七月の二十四日現在の数字で申し上げますと、一応代理店契約書を出してまいりました会社は二十九社でございます。調査対象が七十社でございます。そのうち、さらに内訳といたしまして、代理店契約が存在しないと言っておりましたのは二十一社ございます。それから、提出できないと言ってまいりましたのが十九社、それから猶予を申しておりますのが一社、それから先ほど申しました契約書を提出してまいりました社、及びいわゆる中身につきまして、正式の提出ということではないけれども、中身の報告をしたのを含めまして二十九社、こういう数字になっております。
  97. 久保亘

    久保亘君 大変おたくの報告はずさんじゃないでしょうか。五月十一日には代理店契約書が存在しないと答えてきたのが二十一社、六月十一日には今度は同じ七十社のうち存在しないというのが今度二十三社になるんです。そしてきょうはまた二十一社になる。存在しないという会社がふえたり減ったりする理由というのは非常に問題があると私は考えております。この輸入代理店の契約書等の提出がいまなおかなりの商社によって拒否されている。このことは大変問題だと思うのでありますが、特に私は、契約協定が確認できないで防衛庁と商社との間で購入契約を結ぶ際に正当な価格構成が可能なんであろうか、前にもこのことを申し上げました。そのことは絶対に不可能なのではないか、こう考えております。なぜかと言いますと、ロッキード社がアメリカに自分の子会社の輸出代理店をつくり、日本にその支社をつくり、そして丸紅を通し防衛庁に入っていく、その一番最後のコースだけしか防衛庁は知らないんであります。丸紅との関係しかロッキードについて言うならばわからない。その前の関係でどういうふうに手数料が加えられていくかということについて全くわからない状態で、一体防衛庁は国民の税金を預かるという立場で価格構成が正当にやってこれたとお考えになっているんでしょうか。
  98. 江口裕通

    説明員(江口裕通君) 確かに先生のいま御指摘になりましたような問題点が存することは否定できないと思います。ただしかし、問題は最後に私どもの方で入手いたしますところの価格の問題に尽きてくると思うわけでございます。つまり、値段の問題でございます。品物の値段の問題でございます。これにつきましては、われわれの方といたしましては、現実にそれを取得いたします、あるいは契約をいたします場合に、類似品の価格でございますとか、あるいは市場の実勢でございますとか、そういうことのチェックは十分いたしておるつもりでございます。それからまた、要すれば現地調査員を派遣いたしまして大物につきましてはチェックするというような措置も過去において例がないわけではございません。そういう意味で最終的な担保はしておるつもりでございますが、ただ問題は、いま御指摘の点は、代理店のそういったエージェントフィーと申しますか、そういったものが価格に何らかの意味で入っておるんではないかという御指摘であろうと思います。したがって、その可能性については確かに否定し得る根拠はないわけでございます。また、そういうこともあり得るわけでございますが、問題は、その価格が一体ストレートに、じかに品代の中に上乗せされておるのか、あるいは一般管理費とか、販売費とか市場開拓費とかいうような全社的なものとして処理されておる、つまり非常に薄く薄められておるのか、その辺が実はつかみ切れぬわけでございます。したがいまして、結論といたしましては、防衛庁として調達いたします場合は個々の商品の価格を厳重にチェックするということで最終の担保はしておると、かように考えておる次第でございます。
  99. 久保亘

    久保亘君 提出してきた代理店契約の中に、日商岩井、伊藤忠は提出されてきておりますかどうか。
  100. 江口裕通

    説明員(江口裕通君) 日商岩井、伊藤忠は入っておりません。提出されておりません。
  101. 久保亘

    久保亘君 今度FXについて防衛庁がF15の方向で検討されておるように報道されておりますが、F15をたとえばFMS方式で、対外有償武器援助方式で買われるにしても、もしロッキード社と丸紅の間にあったような契約が日商岩井とマクダネルダグラスとの間に存在をすれば、あなた方は直接買われたつもりでも、手数料が購入機数に応じて日商岩井の方に入っていく、こういう仕掛けになりかねないんです。P3Cの場合には、もし丸紅の契約が引き続いておりますと、当然に、防衛庁がこれをもし輸入したとすれば、FMS方式でやったとしても丸紅は一機ごとに手数料をもらえるようになっております。それからこれがもし伊藤忠アビエーションに引き継がれておるとすれば、P3Cについては同じようなことが伊藤忠に今度は発生をしてくる。それからF15については日商岩井に発生してくる可能性があるわけでありまして、どうしても輸入代理店のメーカーとの契約というものは全部防衛庁は提出させて公開させなければ、これらの商社の不当な手数料を受け取ることを規制できない、こう思います。そして、これは全部価格の中に入ってこなければ、ロッキード社やマクダネルダグラス社などがわざわざ意味もなく日本の商社に手を通さないのにお金を払うというばかなことはないんでありまして、それは必ず防衛庁の支払う価格の中に入れられる、私はそう思っておりますから、この輸入代理店の契約内容を明らかにしない商社は防衛庁の装備品調達から一切除外する、そのことを明確にすべきではないかと考えるんでありますが、長官のお考えをお聞きしたいと思います。
  102. 江口裕通

    説明員(江口裕通君) 長官のお答えになります前に、やや技術的な点を申し上げたいと思います。  ただいま御指摘のFMS契約の場合に代理店手数料はどうなるかという問題でございますが、これにつきましては、防衛庁といたしましては米国政府に対しまして、自今こういったものの手数料の加算は認めないということを申し入れいたしております。したがいまして、恐らくそういうことは今後は原則としてはあり得ないというふうに考えております。原則としてと申しましたのは、事実上そういったことで、たとえば防衛庁あるいは政府がそういった商社に手伝いをしてもらうということが事態としてはあり得ないわけではございませんので、そういうことは例外といたしまして、原則としてそういうことは認めないようにしたいというふうに申し入れておりますので、そういう事態は恐らくないと思います。その点だけちょっと技術的な点で申し上げておきます。
  103. 坂田道太

    国務大臣(坂田道太君) 先生のおっしゃいますこともよく理解ができるわけでございますが、この点に留意をいたしまして十分慎重に考えて対処をいたしたいと考えております。
  104. 久保亘

    久保亘君 私は、商社やメーカーなどから、防衛庁は税金で支払うために、大変甘く見られてきているんじゃないかと思う点があるんです。輸入契約についてもそうですし、またライセンス生産の場合にも、たとえばP2V7をライセンス生産をやりましたときに、一機ごとに技術指導料として一千二百万を要求されておったはずです。それがその価格の中に入っておるんですよ。ところが、P2V7を日本の技術開発によって改良いたしましてP2Jに変わる、P2V7からP2Jに変わる過程においては、別にアメリカから技術指導を受けたわけじゃないんです。そうでしょう。ところが、P2Jは性能が非常に上がったからということで一機ごとの技術指導料千二百万が千八百万に引き上げられて、六百万ずつよけい取られていったはずです。P2V7をつくっているときよりもP2Jに変わってからの方がロッキード社側から六百万よけい技術指導料を請求されて、それを支払い、その価格を上乗せして防衛庁は引き取ったはずです。そういうようなやり方を商社やメーカーの側から勝手にやられている。このことは大変問題なんじゃないでしょうか。だからこそ、商社、メーカーとの関係などを明確にして、防衛庁は少なくとも国民の税金がむだ遣いされた、こういうことにならないように、これらの問題に対しては厳正な措置をとらなければ、お願いいたしますということで契約書等の提出依頼を求めて、商社側から一方的に——しかも、いま聞きますと、日商岩井も伊藤忠も拒否したままだ、こういう状態で、一体防衛庁は商社に対して対等な地位で購入契約が結べるのであろうか、大変私は疑問に思います。だから、そういう点で、いま長官がお答えになりましたことを、具体的に厳正な措置をとられるようお願いをいたしておきます。  時間がなくなりましたので、最後に運輸省と大蔵省に関係をしてお尋ねをいたしますが、今度の全日空の問題に関係をいたしまして、いろいろと地方空港の整備をめぐる問題が取りざたされております。  それで、私はある特定の空港についてお尋ねするのでありますが、地元の要請が非常に強かったということもありますが、運輸省が昭和四十五年の段階で地元と契約を結びまして、727に見合う飛行場の計画をやったのでありますが、その二カ月後、全日空の働きかけもありまして、地元がエアバスに間に合うようエプロンやターミナルの設計変更を運輸省に要求するようになりまして、運輸省は当時、地方空港に対してエアバスを飛ばす計画を持っておりませんから、その当時としては727で結構だからその設計変更を認めない、こういう立場をとっておったのであります。ところが、その二カ月間の間に、大蔵省主計局が地方自治体や全日空と一緒になりまして、航空局に対してその設計変更の説得に当たるようになりました。そしてやがて、運輸省と地方自治体の間に話がついておりました727を想定をした空港の設計が、二カ月後に、まだ本格的な工事にかからないうちにエアバスの設計に変更になるのであります。私がお尋ねしたいのは、大蔵省がどうして当時航空局に対してそういう説得を行われる立場に立たれたのか、この点について大蔵省にお聞きしたい。運輸省の方では、四十五年段階においては、地方空港は727で進められておったものを、全日空の要請を受けてエアバスに見合う飛行場に設計変更されていく、その間の経緯について航空局にひとつ御説明をいただきたいと思います。
  105. 江口裕通

    説明員(江口裕通君) ごく簡単に事実だけ申し上げます。  先ほどP2V7のロイアルティーの支払いの問題がございましたが、これはP2JがなぜP2V7の後を受けて、またさらに金を払ったかという問題でございますけれども、P2Jは一応P2V7の機体をそのまま踏襲しております。したがって、その機体の関係でライセンスフィーが出るということでございます。P2Jというのは確かに大部分は国産開発機でございますけれども、機体はそのままを使っておりますので、その分についてはライセンスフィーがかかっておる、こういうことで……
  106. 久保亘

    久保亘君 いや、その金額がなぜ上がったかということ。
  107. 江口裕通

    説明員(江口裕通君) 上がりましたのは、約十年の時間が経過しておりまして、要するに物価等の値上がりがございます。そういうことを換算いたしますと、料率としては一応妥当な線——妥当と申しますか、従来の線と大体相応しておるというふうに考えておる次第でございます。  以上簡単に。
  108. 松本操

    説明員(松本操君) 運輸省の方から先にお答え申し上げます。  先生御質問の中にいろいろな要素がまじっておりますので、分けて御説明申し上げたいと存じますが、まず第一に、鹿児島の新空港の建設の経緯、その時点における運輸省の空港建設に対する基本的な考え方がどのようであったかというところを冒頭御説明を申し上げたいと存じますが、御案内のように、昭和四十二年から昭和四十六年度へかけての第一次空港整備五カ年計画、こういうものが当時考えられておりました。これは結局十分目的を達することなく、四十六年の最終年度を迎えないままに、四十六年度から第二次空整に切りかわっていったわけですが、その第一次空整の中に、四十四年の三月に閣議決定をいたしましたのがございます。  そのもととなりました考え方について御説明を申し上げますと、幹線空港については、たとえば千歳、大阪、名古屋、東京、こういうふうなところについては将来の大型機、大型ジェット機、こういうものが入るということを考えなければいけないだろう。それから主要地方空港という分類を当時はいたしております。この主要地方空港と申しますものは、当時の時点におきましては、YS11とか、あるいは中型のターボプロップ機、これはバイカウントでございますが、こんなものが依然として飛んでいたんだけれども、将来のことを考え、さらに航空輸送需要の大きな空港について考えれば、エアバスの導入が必要となるものと考えられている。したがって、これら機材の大型化に対応するため、滑走路を二千メーター級に延長する等の措置を講ずることが必要であろう、こういうふうなことが基本的な考え方になっております。そこで先ほど先生仰せられました727でございますが、これは、その時点におきましては実は大型というふうに理解されておった機材でございます。何となりますと、当時の国内のジェット機は727−100であったわけですが、ここで考えておりましたのは−200でございます。そこで、したがって、大型化という第一歩としてこれが考えられておったことが事実でございます。  それから次に、いま御指摘のございました鹿児島の空港についてどういう経緯があったかと申し上げますならば、この空港は鴨池というところに旧空港があったわけでございますけれども、鹿児島県がこの空港を移設、新設したい、こういうことでございまして、先ほどのお話にも出ておりましたように、運輸省と鹿児島県との間に買い取り契約を結ぶという非常に特殊な形で空港の整備が行われたわけでございます。この空港につきましての、空港としての告示というものが出ましたのが、四十四年の五月に航空法四十条の告示というものがなされております。これによって、この空港というものが第二種空港となり得るという資格要件を備えたわけでございます。ちょうどそのころ、九州におきましては類似の空港整備というものが盛んに行われておりまして、熊本においても同様の空港整備が行われておりました。鹿児島は二千五百メートルの滑走路で727−200、それから熊本におきましては滑走路二千メートルでやはり727−200、こういうふうな考え方であったようでございます。
  109. 久保亘

    久保亘君 いや、時間がないから……
  110. 松本操

    説明員(松本操君) そこで、あと簡単に結論が出てまいるわけでございますが、熊本におきまして、まず四十四年の暮れに、将来大型機が入りました場合に、現在の位置にターミナルビルをつくっておきますと、非常に大型機はしっぽが高うございますので——当時ボーイング747のしっぽの高さを想定しております。このしっぽが高いものですから、転移表面に引っかかって飛行機が入れられなくなる。ターミナルビルの移設などということは将来できることではございませんので、この際、長い先のことを考えてターミナルビルを後ろへ下げたらどうだ、こういうことで下げました。しかし、舗装厚その他は727のままに残されておったわけでございます。  同様の行為が、年を越えまして四十五年の五月になりまして鹿児島県知事の方から出てまいりました。省内において関係各課検討の結果、熊本の例もこれあり、将来のことを考えれば、やはりターミナルビルを下げて、大型機が入った場合に転移表面を支障することがないように措置しておくのが適当ではないか、こういう判断のもとに設計の変更をしたというのが私どもの承知しておる事実でございます。
  111. 高橋元

    説明員(高橋元君) 鹿児島空港の整備に関します事柄につきましては、いま運輸省から御答弁があったとおりでございます。四十四年に告示がありましたから、四十七年にたしか供用開始になっておるわけでございますが、その間、計画の過程で、地元からの強い御要請で、いま航空局からお答えのありましたようなターミナルビルの移設、したがってエプロンの拡張ということを計画変更によって行った事実はございますが、お示しのように大蔵省がそういうトライスター導入を前提として駐機場を広くしろというようなことを要請したということはございません。
  112. 久保亘

    久保亘君 ここに、当時その空港建設の過程で鹿児島県知事が県議会において本会議で答弁された議事録があります。私の質問に答えられたものであります。その答弁によりますと、時間がありませんので前の方を略しますが、三月に運輸省と最終的な飛行場の建設の詳細な契約を締結しました、その当時においては、航空局は終始727で十分であるという立場でありました、しかし実際には、現実に飛んでおります航空会社の方から——全日空のことです、自分たちの方で想定をすれば、昭和五十年にはこうなる、三、四年後にはこのような飛行機を使わなければならなくなるであろうという申し出がありました、そこで、自分たちとしては、日本の主要な航空会社の意向も詳細に聴取して、その結果727ではどうも将来に悔いを残しそうであるということから、四月に入って——一カ月後です、御承知のように、航空局を説得し、大蔵省の了解も得て、727を747も就航できるような設計に変更をしたいということで始めた、最初は航空局は非常に難色が強かったけれども、むしろ大蔵省の方から私どもに強い賛成の意思表示があり、航空局とも大蔵省も折衝をいたしてくれました、それで747がつくという前提で、ターミナルビル、エプロン付近の、まあいわば相当思い切った変更をいたしたのでございます——こういう答弁で、その後に続くのであります。そのふくれた分だけは駐車場がなくなるので、その分は済まぬが県費でつくってくれと大蔵省が言われた、そのために鹿児島県は五億数千万の県費の持ち出しをやって、駐車場はいまも県営になっているのであります、そのかわり大蔵省が道路その他でめんどうを見るからと言ってくれた——こういう答弁になっております。  だから、それを見ますと、全日空が積極的に働きかけて、当時トライスター、エアバス導入の方向をすでに持っておりました全日空が積極的な働きかけを行いながら大蔵省も動かして、航空局が、当時の航空局の方針としてはだめだというのを説得して計画変更させた、こういうことになっているのであります。したがって、私は、全日空がわが国の航空政策を大変先行的に誘導していったのではないか——結果の是非を言っているのではありません。その過程の問題としてそういうようなことがあったのではないか、いまにして思えば、当時から全日空がいろいろと自分の会社の運営方針、計画に基づいて大蔵省や運輸省に対して積極的な影響を与えておったのではないか、こういうことが考えられるということを申し上げているのであります。  きょうは時間がありませんから、この問題については最後に結論的にお尋ねいたしておきますが、いま全日空ルートの問題の解明が進んでおりますが、全日空ルートの解明の中では、地方空港の整備や路線問題に関する調査がこの中には含まれているのかどうかという点だけ、イエス、ノーでお答えいただきたいと思います。
  113. 吉田淳一

    説明員吉田淳一君) 全日空関係につきましては、その資金の出の関係につきまして、いま検察当局がいろいろ捜査をしております。関係者も多数呼んでいろいろ調べをしておるところであります。  で、御指摘の点が、そういう点も捜査の対象にしているのかどうかということでございますが、全日空関係について必要な捜査は、すべて検察当局としてはこれを尽くして犯罪の成否等について解明をするという覚悟で臨んでおります。
  114. 久保亘

    久保亘君 時間がありませんので、最後に、御出席いただきましたから、大平大蔵大臣にお尋ねいたしておきます。  大平大蔵大臣からお答えいただきたいのは、あなたは田中首相に対して再三引退をお勧めになったという報道が一部あります。特に、私が見ました九州のブロック紙の中には、大平大蔵大臣が二月の段階で田中首相に対して引退するよう勧められたということがかなり大きく報道をされております。先月の二十四日であります。だから、それは事実であるのかどうか、事実とすれば、あなたが田中角榮氏に対して引退を勧められたその根拠や目的は何であったのか、お話しいただきたいと思います。
  115. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) 政治家の進退というのは政治家自身が決断すべきことでございまして、人からとやかく言われてやるものではないことは私も承知しているつもりでございます。したがって、さような僭越なことはいたした覚えはございません。
  116. 久保亘

    久保亘君 それでは、大平大蔵大臣自民党の中で一つの勢力を率いる領袖でありますから、そういう立場も十分お含みになった上、田中逮捕にまで及んだ自民党政治責任をどういうふうにお考えになっておりますか。それから事件解明が終われば、その責任を具体的にどのような形でつけるべきものだとお考えでしょうか、その点についてひとつお答えいただきたいと思います。
  117. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) 私は国会に対しまして大蔵大臣として責任を負っておるものでございますので、ロッキード問題につきまして政府を代表してお答えする立場にないこと、また自由民主党を代表する立場にもないことは、久保さんも重々御承知のことと思います。したがって、いまのお尋ねは、政治家大平としての感想を聞きたいということだろうと思うんでございまして、そういうこととしてお聞き取りをいただきたいと思います。  ロッキード事件というのはまだ山を越したものではないそうです。まだ全貌が明らかになっていないそうでございますので、この全貌がいずれ明らかになりまして、それを踏まえた上で正しい判断を加えなければならぬものではないかという感想を私は持っております。それから政党といたしましても、また政治家個人といたしましても、これにかかわりを仮に万一持ってきた場合どのように対応すべきかということにつきましては、明らかになった事実を踏まえた上で誠実に対処していかなければならないのではないかという感じを私は持っております。
  118. 久保亘

    久保亘君 政党としても、政治家としても、事実が明らかになった上で、それを見きわめて対処したいということでありますが、現に、大変失礼な言い方でありますが、大平さんにとってはかつて盟友でありました田中角榮氏が、前の総裁総理という立場で現在犯罪の容疑で逮捕されているわけです。だから、そういう意味では、政党としてはこれは非常に重大な責任を問われる段階に立ち至ったというふうにはお考えにならないのでしょうか。
  119. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) 田中さんが容疑を受けて逮捕されて取り調べを受けておられることは遺憾ながら事実でございまするし、御自身が党を離れられましたことも事実でございます。この問題はいずれ、これから真相が司直の手で解明されることと存じます。しかし、今日までの過程自体、田中さんがかつて属しておりました政党といたしましても、御指摘を待つまでもなく、いたく事態を憂えておりまするし、私も友人といたしましていたく心を痛めておることは御指摘を待つまでもなく事実でございます。
  120. 久保亘

    久保亘君 大蔵大臣に最後に一点お尋ねしておきますが、かつて田中金脈の解明に当たって税務調査の問題で私どもが再三お尋ねをいたしましたときに、守秘義務ということでこれらの公表を一切控えられてまいりました。しかし、私が予算委員会でお尋ねしました際に、政治家と民間人の間に差があるのではないかということで森脇将光氏の例を取り上げました。彼は刑事事件になったのであるから公表したのである、こういう答弁が当時なされております。そういたしますと、今回のロッキード事件において、刑事事件にかかわり、または起訴猶予になっても、この事件において関係者であった人たちの税務調査の結果というのは守秘義務をもってその公表が妨げられてはならない、こういうふうに思うんでありますが、その点について、この守秘義務の問題をどういうふうに御理解でありますか、ぜひお聞かせいただきたいと思います。
  121. 山橋敬一郎

    説明員山橋敬一郎君) お答え申し上げます。  税務当局といたしましては、多数の納税者を対象に国家財政を支えるための租税の徴収確保に努めているところでございます。また、税務は個人の秘密に深く立ち入ることから、秘密を漏らした場合の罰則も強化されているということはもうすでに先生御存じのとおりでございます。このような事情がございますので、従来からも税務当局の守秘義務につきましては御理解をお願いしているところでございます。今回のロッキード事件につきましても、刑事事件として追及されているところではございますけれども、原則といたしましては、この考え方は同様にわれわれ考えておるわけでございます。しかも、まだ公判に至りませんし、公判におきまして事実が明らかにされている段階でもございませんので、税務の方から内容を明らかにするということは差し控えたいというふうに考えております。  また、先生御指摘の森脇将光の問題でございますが、この関係につきまして、国会等におきまして、調査内容の概略につきまして御質問の内容等も慎重に判断した上で、可能な範囲内でお答えをした事実はございますけれども、これらはいずれも刑事事件に関連をいたしまして公判廷においてその事実が明らかにされております。そういう観点から、その明らかにされた事実というものにつきましては、すでに守秘義務は解除をされておるというふうにわれわれ考えておるわけでございまして、そういう考え方のもとにおいて御質問にお答えをしたものであるというふうに考えております。
  122. 久保亘

    久保亘君 公判廷で明らかにされた問題だということのようでありますが、実際に起訴された者は、それならばその段階においてわれわれはあなた方に公表を求めて政治責任を追及することが可能かと思います。しかし、起訴猶予等によって処分が見送られた者については、あなた方が守秘義務を盾にとられる限り、三木総理大臣が徹底的に究明をしてその真相に基づいて政治的道義的責任を明らかにすると言われたことは、不可能になってくるわけであります。私は、それらの点についてはきょう御回答がいただけないと思いますけれども、大蔵大臣、守秘義務の適用について、この問題について、内閣ロッキード事件解明に当たって示されております大方針に沿って、この問題については大蔵大臣の権限に属するんでありますから、適切な措置をとられるよう要請をいたしておきます。  警察庁の答弁を求めて終わります。
  123. 土金賢三

    説明員土金賢三君) 中曽根派の政治団体政治資金規正法違反容疑の捜査についてお答え申し上げますが、この四団体が自治省に提出した収支報告書、昭和四十七年の下期から四十九年下期にわたる収支報告書の内容に虚偽の記載がある疑いが濃厚になりましたので、警視庁といたしましても、自治省からその関係書類の提出を求めまして、その捜査を現在実施中でございます。その虚偽の内容につきまして具体的に捜査を進めるとともに、現在はさらに関係者からも事情を聴取いたしておる状況でございまして、その内容が明らかになり次第検察庁に送致することになると存じます。
  124. 久保亘

    久保亘君 終わります。
  125. 剱木亨弘

    委員長剱木亨弘君) 午後零時五十分再開することとし、休憩いたします。    午前十一時四十八分休憩      —————・—————    午後零時五十五分開会
  126. 剱木亨弘

    委員長剱木亨弘君) ただいまからロッキード問題に関する調査特別委員会を再開いたします。  ロッキード問題に関する調査を議題とし、休憩前に引き続き質疑を行います。  質疑のある方は順次御発言願います。
  127. 秦野章

    ○秦野章君 きょう、後で司法権、検察の運用という問題を質問をしたいと思いますので、言うならばその前提として、いま枕として国政調査権と司法との関係というかね、その点で最初に法制局長官に二つの点を確認をして、それからいろいろお尋ねをしてまいりたい。  まず一点は、この委員会のこうした私のような質問の形で司法行政——裁判所法第十二条に司法行政についての権限が規定をされております、この司法行政についてただすことは国政調査権の及ぶ範囲だと、これは判決の問題じゃないし、そういうふうに私は解するんですけれども、この点の確認が一つと、それからいま一つは、検察のやり方といいますか、業務につきましても、事件の内容というものに対する立ち至った問題じゃなくて、捜査段階の検察のやり方などを質問、論評すること、これまた立法府の行政監督の立場から当然行われるべきで、検察の独立性を侵すというようなことではないと、こう私は解釈するんですが、この二点の確認を法制局長官にしておきたいと思います。
  128. 真田秀夫

    説明員(真田秀夫君) 国会委員会で委員の方が政府にいろいろ御質問なさるのは、結局は国政調査権に由来するものであろうと思いますが、そこで、国政調査権とただいまお尋ねの司法行政あるいは検察との関係はどうかという点でございますが、司法行政はこれは裁判所が本来持っている司法権、固有の司法権そのものではないわけでございますね。で、司法権そのものについては、つまり裁判作用そのものについては、これは国政調査権の範囲でないというのが大体の考え方だろうと思います。で、司法行政は裁判の行使そのものではもちろんございませんが、しかし、これと密接に非常に関係しておりまして、これは裁判所が独立して行うというのがたてまえでございます。このことは憲法で、裁判所の内部規律及び司法事務処理に関する事項はルール事項であると憲法自身が書いておることからもうかがえると思うんですが、そういうことで裁判所が独立して行うものであると、司法行政事務は。この点で、普通の行政が内閣に属して、行政が内閣に属して国会のコントロールのもとにあるというのとはその性格が違っているわけでございまして、つまり内閣が行う普通の行政につきましては国会がこれをコントロールする、監督するということになっておりますが、裁判所が行う司法行政につきましては、国会はこれを監督するような立場調査するというわけにはいかないんだろうと思います。しかし、裁判所の司法事務につきましても、法律の対象になることもありますし、もちろん予算の関連もございますので、法律案を御審査になるとか、予算の審査をなさるとか、決算でも同じだろうと思いますけれども、そういう国会の御権能の行使に資するという観点から司法行政事務について調査されるということは、もちろんあり得ることだろうと思います。  それから、検察になりますと、また司法行政事務と少し異なりまして、これは行政権の作用でございますので、一般論として申しますれば、これは当然国政調査の対象になるべき性格のものであるというふうに考えております。ただ、検察権は、御承知のとおり、司法権と非常に密接な関係にございますので、検察権の行使の独立性がかなり強く認められております。したがいまして、検察権の独立を害し、ひいては司法権の行使についていろいろ干渉がましいことになるというようなことになっちゃ困りますので、その点は御調査に際しまして慎重に御配慮願いたいと思います。  また、一般論として検察権の行使が国政調査の対象になると申しましても、ただ事柄によりましては、捜査の秘密ということで、具体的な御質問に対しては政府の方あるいは法務省なり検察の方でお答えできかねるというものもあろうかと思いますが、その点は御了解願いたいと思います。
  129. 秦野章

    ○秦野章君 長官、もう結構です。  田中首相逮捕というものが外為法の違反の令状逮捕されたということでございますが、これに関連して、外為法の問題について少し大蔵省にお尋ねをしたい。外国為替管理の実情ですね。  外為法の制定はいまから約三十年前、昭和二十四年にできたわけであります。当時は、戦後の荒廃の中で、ドル不足、ドル割り当て制といったような厳しい環境の中で、日本経済の安定、国民生活の向上をどうやって図っていくかという、そういう観点から、厳しい為替管理というものをやっていかなきゃならぬという背景があったわけでございます。また、実質的にも、外為法違反をやったら、その影響は具体的に国民経済に悪影響を及ぼしたという、そういう実態もあったと思います。ところが、その後約三十年たって、今日の情勢を考えてみたときに、その後外貨予算制度も廃止になったし、これは昭和三十九年ですけれども、四十七年の外貨集中制度の廃止とか、言うならば、為替管理の大幅な自由化の方向が進められてきたのは、これはまたひとり日本だけじゃなく、世界の趨勢であったわけです。外貨準備も百六十億ドルといったような現状で、日本も西独や米国と肩を並べるような最高水準にも達しておるわけであります。  そこで、戦後三十年の経過の中で、とにかく外国為替管理というものの背景が一変をしたと、そして一変をしたことの反映として、規制のやり方なり考え方なり、そういうものが変わってきていることは事実だと思いますね。その点をまず大蔵省当局からお聞きをしたいと思います。
  130. 藤岡眞佐夫

    説明員藤岡眞佐夫君) 外国為替管理法は昭和二十四年に制定されたのでございますが、その当時、それから相当後の期間に至るまで、当時日本の国際収支は大変弱く、外貨準備も十分ございませんでした。したがいまして、為替管理の一つの大きなねらいは、乏しい外貨をどうして有効に利用するかということであったわけでございます。  その後日本の国際収支が強くなりまして、ことにいまから五年前のいわゆるニクソン・ショックのころから大幅黒字を出すようになりました。それまでは赤字時代背景といたしまして、入ってくる方は優良会社、歓迎すると、出る方は節約をしながら有効に外貨を使うということで為替管理を運用してまいったわけでございますが、大幅黒字の時代を迎えまして、入る方はどちらかといえば抑制ぎみに、出る方はどちらかといえば促進ぎみに運営したわけでございます。さらに、最近の石油危機に直面いたしまして、日本の国際収支が再び苦しくなりましたときに多少また手直しをして、出る方、入る方ともにバランスのとれた姿になっているのが現状でございます。  このように、内外経済の情勢の推移に照らしまして、為替管理の運用もかなりの変遷を遂げてきたことは御指摘のとおりでございまして、為替管理法の第一条にいろいろの目的をうたってございますが、赤字時代に外貨の有効利用ということに重点を置いておりましたのが、いまやその重点がむしろどっちかといえば国際収支の均衡とか通貨価値の安定というふうに向けられているということも言えるんじゃなかろうかと存じます。
  131. 秦野章

    ○秦野章君 その次の問題は、為替の自由化というそういう風潮の中で、とにかく為替管理のやり方が変ってきた。そして自由化という方向が大勢である。だから今度の事件のきっかけになった外国為替管理法違反の事例を見ても、仮にドルをアメリカから持ってきたという点について、申請があれば——収賄とかなんとかという問題はまた別の問題として、外国為替管理だけの問題で考えた場合に、そこに何らかの説明がついて許可申請をすれば、いまの為替管理のやり方では、為替銀行の窓口管理でもって、そう徹底的な実質審査もなく許可されてしまうという、そういう実情があるというふうに思うのですが、どうですか。
  132. 藤岡眞佐夫

    説明員藤岡眞佐夫君) 先ほど申し上げましたように、日本の国際収支が強くなるに従いまして、為替管理の運用の仕方も変わってまいったわけでございますが、同時に、それは世界的な流れもございまして、自由化とうらはらになって進んできたわけでございます。したがいまして、いま日本経済が非常に国際経済と密接な関係を持っておりますので、普通の送金等につきましては、為替銀行の窓口へ申請書が出ればそのまま自由に送ったり受けたりすることができるというふうなたてまえになっております。
  133. 秦野章

    ○秦野章君 警察庁にちょっと聞きたいのだけれども、外為法違反の最近の取り締まりの概況ですね、概況というものをちょっと知らしてもらいたい。
  134. 吉田六郎

    説明員吉田六郎君) 昨年警察が検挙送致いたしました外為法違反は五百二十四件、二百四十人でございます。そのうち身柄拘束したのは九十件、三十四人、身柄不拘束は四百四十四件、二百六名ということになっております。
  135. 秦野章

    ○秦野章君 いまの説明の中で、ちょっと大ざっぱ過ぎるので、その中の主な、比較的重要というか、額が高いとか、そういう重要な主な事件の中での概況、余り細かいこと要りませんけれども、正直言って、やみドル商売みたいなものもありますし、いわばプロみたいなものもあるし、それからまた額の問題では大きい小さいもあると思う。そういう点について、検挙のやり方ですね、逮捕するかしないかとかいったような点について、主なものを簡単に説明してもらえませんか。
  136. 吉田六郎

    説明員吉田六郎君) 昨年警察で処理いたしました大きなものは四、五件ございますが、そのうち二件御報告さしていただきます。  一つは、在日外国人ブローカーが台湾の現地人と結託いたしまして、日本国内に多数の預金口座を開設し、この口座を通じるなどの方法によって、国内業者の台湾向け、いわゆる低価格、低価申告輸出でございますが、低価申告輸出に伴う差額金、それから海外進出のための資金あるいは宝石の密輸入代金、白金地金の密輸出代金等、総額約二十億円を不正に決済していた事件を神奈川県警が昨年取り扱っておりますが、この事件では二十法人、四十四人を検挙しており、そのうち身柄拘束は十人となっております。  また、兵庫県警が検挙し、新聞などにも大きく報道された事件でございますが、これは台湾へオートバイ等を輸出するに際し低価申告を行い、その差額金など約二億円を不正に決済した外為法違反事件でありまして、これは十一法人、百八人を不拘束で取り調べ、そのうち法人六人を送致いたしております。
  137. 秦野章

    ○秦野章君 これは法務省に対する質問になるわけでございますが、田中総理逮捕ということがとにかく国民にとってもわれわれにとっても大変なショックであったし、正直言って、そういうことにやっぱりなったのかなという感じと、同時に、やはり逮捕の理由が外国為替管理法だということで、直感として、どうだろうかなと、こう思った国民もかなりあるだろうと。そこで、いま為替管理の問題をいろいろその前提として聞いたわけでございますけれども、そもそも行政立法という、この行政立法に付随する刑罰というものは、刑罰の背景になる行政的な事情、その行政立法の目的、必要性といったようなものが時勢の変化によって変わるということが一つの特徴だと思うんですね。刑法犯のように、どろぼうとか人殺しをやれば、これはまあいつやっても、どこでやっても、大方人類の共通の敵になるけれども、行政立法、形式犯の場合は、その立法の目的なり背景なりというものが罰則の運用に必ず反映しなきゃならぬ。これが形式犯、行政犯取り締まりをする場合の一つの物の考え方だと思うんでございますが、一番いい例が米の取り締まり。五キロ、十キロの米を持っていても、いま逮捕されて処罰受けるというようなことは余り聞いたことがない。しかし、戦後の昭和二十年代になりゃ、これはまた二升、三升の米を持っていても取り締まりを受けたということは、これと同列に比較するわけにはいきませんけれども、そういう、米が豊かになりゃ取り締まることは意味がないという——モチ米の買いだめでもやるというようなのは別として、そういう行政立法刑罰の背景の変化ということは、形罰を運用する立場にある者が一番考えなきゃならぬ一つのポイントだと、こう私は思うわけでございます。これはまあ当然のことだと思うんです。刑法犯にしても、たとえば公然わいせつ罪なんかは、とにかくここ十年、二十年でずいぶん変わったと思うんですよね。そういうようなこともございますので、いろいろいままで為替管理の実態を伺ってきたわけです。  ロッキード事件がチャーチ委員会から出発いたしまして、これはいわゆる汚職事件というのが当初からのやはり柱であったと思うんですよ、これ、常識的に。日本だけじゃなくて、ヨーロッパの方でも、フランスもイタリーもドイツもオランダも、これみんなロッキード事件に沸いたけれども、外為法違反でどうのこうのというのは、ヨーロッパじゃないわけです。これは為替か自由化になっているから。ところが、日本はまだ自由化には行ってない。為替管理の必要性はまだあると。その違いはあるんだけれども、ロッキード事件というのはとにかく汚職というものが、多国籍企業が外国の政府高官に金をばらまいたというのが正直言って本命の性格だというふうに思われるわけです。そういうような点を考えてみたときに、外国為替管理法事件で前総理逮捕したと。恐らくこれは収賄で材料がなかったから外国為替管理法で逮捕したんではないかと、こう思うんですが、この点は当局いかがですか。
  138. 稻葉修

    国務大臣稻葉修君) 秦野さんのような質問は出ると思ってましたよ、私も。ただ私、検察に対しても、それから衆参両院の各委員会においても、指揮権発動はしないんだという立場を貫いてまいりましたからね。何か外国為替管理法の容疑かということを聞いてみた、そうだと、ううんと、こう言ったけれども、まあ指揮権発動はしないと言ってるんだから、そういうことならやむを得ぬと、こういうことなんで、その点の法的な先生の、外国為替管理法、形式犯、行政犯と、それから刑法犯とのそういう関連性というか、絡み合いというか、専門的なことについては吉田事課長に答弁いたさせます。
  139. 吉田淳一

    説明員吉田淳一君) 外為法の性格なり目的なり、機能するところが、その時代の変遷によって、わが国においても変遷を遂げてきたということは、私どもも承知しておるつもりでございます。しかしながら、わが国の世界的に置かれている立場、貿易に頼るという立場に依存度が強いわが国では、為替管理等を含む外為法の規制が現在なお有効に機能しなければ国際的な立場をわが国でとることができないということで、現行法も十分有効に機能しているものと考えておるわけでございます。もちろん、その中身については若干の変遷がございますけれども、基本的にはそういう認識を持っておるわけでございます。現に外為法につきまして、先ほど警察庁からも昨年の処理状況を示されましたけれども、検察庁でこの外為法違反で求公判している事例も、昭和四十年ごろから申しますと五十二名から三十七名、二十五名と、場合によっちゃ一番少ないのは四十六年、四十七年で、五名ずつということがございますが、昨年では六十三名に求公判が上っておるという状況でございます。  で、この外為法につきまして、私どもが詳しく篤と申し上げる必要はないと思うんでございますけれども、今回のロッキード事件捜査に当たりまして、この外為法違反の容疑が捜査の過程で発覚したわけでございます。で、この外為法違反自身の容疑というものについて、それが単に行政犯であり、形式犯であるという理由だけでこの違反について放置するということは、私どもとしてはできないと考えております。で、この外為法違反につきまして、田中総理逮捕に至るまでの過程におきまして、多くの外為法違反について逮捕勾留を行い、かつそれについて起訴、求公判を行っているという者は、丸紅の檜山を含めて相当数に上っていることはもう御承知のとおりでございます。で、今回、検察当局がこれらの関係者を鋭意取り調べた結果、その日本円五億円という巨額の金が、昭和四十八年八月から四十九年二月の比較的短期間の間に四回にわたって田中総理に受領されているという容疑が発覚いたしたわけでございまして、これにつきましては、それはそれなりにきわめて重大な法秩序の違反であると私どもとしては考えざるを得ないわけであります。したがいまして、この外為法違反につきまして、まさしく身柄を拘束して取り調べる必要があるという判断に達して本件に、現在の捜査に至っているわけでございます。別に贈収賄をどうこうするためにということではございません。外為法違反というその法秩序違反の可罰性というのは、私どもとしては、この貿易外取引における日本円が全く管理外の立場で流れてくるということについては、やはりそれなりの外為法として十分保護されなければならない法益がある、可罰性があるというふうに考えておるわけでございます。委員御指摘は、汚職が本質ではないかとおっしゃいますけれども、果たしてそういうふうに簡単に言い切れるのかどうか、ロッキードの事件はまさしく全体としてそういうふうに言われておるのでございますけれど、必ずしもそれだけで定義づけるのはいかがかと思います。全体としてその資金がどういうふうに使われ、どういうふうに不法な行為が行われたかというところに、まさしく本件の本質があると思います。
  140. 秦野章

    ○秦野章君 誤解を招くといけないから申し上げておきますけれども、外為法違反を放置などということを言っているんじゃないんだ、外為法違反があればこれは立件送致することは当然なことだと思うんだ。問題は収賄、これは収賄が本命みたいなことを考えるのはどうかなみたいな話だけれども、汚職事件というものは贈収賄が本命なんですよ、だれがどう言ったって。チャーチ委員会のスタートからしてそうなんだし、それから恐らくロサンゼルスにおける証人喚問の免責の問題だって、やっぱり汚職というものがあってはならぬし、それということなら相当あらゆる努力をしてでもやっていこうとしたわけでしょう、正直言って。これ収賄の、たとえば五億円の収賄ということと外為の五億円というものは、あなたどう評価しますか。私はそんなつまんない意見を言っているんじゃないんだよ。五億という金は相当な金ですよ。相当な金だし、それから外為のいろんな刑罰立法も、可罰的違法性があることは間違いないが、可罰的違法性がやっぱり幾らか下がってきている、薄くなってきている。外為自由化と、それからその取り締まりの必要といったような観点からすりゃ。そういうことを私は聞いているんだ。  一番わかりいいように言うと、外為の違反の五億円、五億円の外為違反と五億円の収賄とではどういう一体違いがあるのか、違いがはるかにあると思うんですよ、これは。それから政治資金規正法の五億という違反と収賄の五億、同じ五億でも、これはえらい違いがあるでしょう。それから脱税ということもあり得るんですよ。脱税の五億ということと収賄の五億、これまた非常に違いがあるんですよね。そういうふうに、形式犯というものの評価ですね、罰する値打ちというものを考えたときに、こういう形式犯と収賄との比較ですね。金額が同じであった場合にも月とスッポンの違いがあるんだ。そしてロッキード事件というものは、やっぱり恐らく検察庁のねらいも収賄ということを、汚職ということを中心にお考えになったんだと思うんですよ、これは、どう言っても。ところが、やっぱり収賄の材料がどうも十分じゃないから、外為が違反が出てきたから外為で逮捕したんだと。ところが、外為の五億は重大な犯罪だとおっしゃるけれども、外為の五億、外為違反で五億とか、さっき警察庁の報告があったけれども、任意捜査でやった外為の違反でも、千万や二千万の金じゃないですよ。そもそも外為違反なんてものは額が高いんで、収賄の金額とかどろぼうの金額なんかだったら、三億円事件だったら窃盗の大事件でしょう。そういうふうに比較しちゃいけないんですよ。これは私は犯罪を見る場合の、これは法務大臣にはよくわかってもらえると思うんだ。実質を見にゃいけない。形式が三年以下だと、こう書いてあるのです、外為法違反は。形式が、外為法違反の形式が三年以下だと書いてある。収賄罪も三年以下だと、法定刑は同じになっている。だから同じように重大かというと、全くそれば違う。  ところが、得てして、私の経験からもそうだけれども、第一線の捜査をやる人というものは、やっぱり経済情勢とか、いろんな世界の情勢とかというものを見るということについてはうっかりする。行政犯の取り締まりに当たって同じようにやりかねないこともあったわけです。今度があったと私はあえて言いませんけれども、私はそこに多少の疑義を持つからお尋ねをしているわけであります。そういうことを聞いているんでね。やっぱり世間で見るところも、これは別件逮捕じゃないかと、こういう意見もあるわけですよ。私は、外為違反というものがありゃ、それはやっていい。やらなきゃいけない。それはしかし任意でできるんなら任意で起訴もできるだろう。やっぱり前総理大臣を外為違反で逮捕したということについては、違法ではない。違法ではないけれども、果たしてこれ、歴史的批判にたえ得るであろうかという感じがするので、この点大臣いかがでしょう。
  141. 稻葉修

    国務大臣稻葉修君) この段階で、検察庁のやったことは妥当でないのではないかという御質問に対し、私が答弁をすることはいかがでしょうかな。気がかりになっておるわけですから。
  142. 秦野章

    ○秦野章君 この逮捕の必要性というのは、普通はやっぱり逃げるおそれがあるとか、証拠隠滅のおそれがあるとか、こういうことが法律的な要件だと思うんですね。それで、これは一般論で結構ですが、外為法違反よりは収賄罪の方が逮捕の必要性というものは高いでしょう。なぜならば、やはりこの職務関係の趣旨だとか、そういうものに関係していろいろ関係する人も多いだろう、私は一般的にはそういうふうに思うんですが、これはいかがでしょうね。
  143. 吉田淳一

    説明員吉田淳一君) 一般的に言えばとおっしゃいますので、お答えはむずかしくなるのでございますが、私どもといたしましては、やっぱり個個の事案のケースによって判断をしなければいけないんじゃないかと。余り一般論でお答えいたしますと、それが個々のケースにもすぐ適用されるように考えられますので、私どもとしてはその点は慎重にしておるのでございますが、もちろん外為法違反につきましても、罪証隠滅等のおそれ、要するに身柄を拘束して取り調べる必要があるという事由はいままでもずいぶんあったわけでございますし、本件では、まさしくその点が一つの大きな理由として逮捕状請求をし、関係者について裁判所逮捕状の発付を得て刑事訴訟法に基づいて捜査を行っている。私どもとしましては、まあ一般論としてお答えしにくいのでございます。
  144. 秦野章

    ○秦野章君 この外為違反で逮捕されたときに、これは起訴の自信はありましたか。
  145. 吉田淳一

    説明員吉田淳一君) 起訴の自信があったかどうかという点でございますが、本件についてどうするかという、またその具体的な事件の処理に関連いたしますので、私の立場としては申しにくいのでございますが、ただそれまで、まさしく本件の支払い側として関与している檜山については、捜査の結果、証拠上はっきりしたと、それで起訴する必要がある、起訴価値があるということで起訴を行っているということでございますので、御推察いただきたいと思います。
  146. 秦野章

    ○秦野章君 いままで逮捕者何名。それから罪名。贈収賄の罪名はまだ一人もありませんね。その点だけ確認しておきたい。
  147. 吉田淳一

    説明員吉田淳一君) 贈収賄の逮捕勾留者はございません。逮捕者は実人員で十六人でございます。
  148. 秦野章

    ○秦野章君 捜査は恐らく本年二月の段階から始まっていたと思うのですけれども、逮捕者が十六人で贈収賄の逮捕は一人もない。しかし、実際には贈収賄の捜査はやってるんだろう。これは衆議院の法相の御答弁を伺っても、あたりまえみたいなお話でございました。そうすると、いわゆる普通の別件逮捕とはちょっと性質が違うと私も思います。たとえば、どろぼうをつかまえて強盗の罪を割り出すというのとは違って、行為そのものに、言うならば外為法違反と収賄罪というようなものが重なり合っているようなところがある。構成要件も重なっているようなところがあるから、普通の別件ではないですけれども、しかし、外為で逮捕した者を実際は贈収賄の捜査をしていることは間違いないんだから、そういうことの意味においてはやはり別件的だと、こう言わなきゃならない。そこで、今日まで贈収賄の起訴がなくて、相当時間もたって外為だけで拘束していますね。しかし、実際には贈収賄の捜査をしているということに、不当捜査になる危険というものを警戒されていますか。
  149. 吉田淳一

    説明員吉田淳一君) 御指摘の点は、別に別件逮捕、違法な別件逮捕に本件のケースが当たるというような御前提ではないようでございますので、そういう点についての余り法理論的な問題は言及しないことにいたしますけれども、私どもとしては社会から非難を受けるような不当な捜査方法を用いてはならないし、また、現在行っている捜査はそのような捜査方法ではないと確信を持っております。先ほど来申しましたように、外為法なり偽証罪というものはそれ自体重大な可罰性がある。しかも、その内容が相当な金額であり、その方法においてもほかのケースに比べて決して軽いようなものではない、むしろ情状も決して軽くないというふうに判断をして、そのことについてそれは別件では全くないのでありまして、まさしく本件として捜査を行っておるのであります。それで、本件の捜査の過程においてさらにほかの犯罪について容疑があるならば、その事実を調べるということは一般論としては十分可能でありますし、現行刑事訴訟法は、その程度、限界を超えない限り許容しているものと考えております。その許容している範囲内を超えているものではないと確信しております。
  150. 秦野章

    ○秦野章君 いまの答弁に関連するんだけれども、一つは偽証も外為も重大なんだと。重大といえばこれみんな重大になっちゃうんだけれども、ここで重大か重大でないかを比較する、別件論で比較すべきポイントは、いわゆる収賄罪との関係なんですよ。相対論なんですよ。収賄罪と本件逮捕との罪名とがどっちが重大かという比較をしなけりゃいけないのであって、私は、ある意味において偽証も外為も重要でしょう、それは認めますよ。しかし、ここで重要か重要でないかというのは、本件、本命との比較を言ってるんだから、そういう意味において、軽い罪で引っ張って、重い罪の方の証拠がないからやったんだという意味においては別件的であることは間違いないと思う。そして、逮捕した罪名を取り調べるということのねらいよりも贈収賄こそ本命だといって、現にやっていることも間違いなかろう。そういうことであるならば、それを余りそういうことで突っ走れば、これは判例の上から言っても、言うならば別件の、本命の方の力に重点が行って、取り調べ上そっちの方へばかり行けば、少なくとも不当な捜査になるという判例もあるわけだから、あなたのいまの立場で不当の心配は全然ないとおっしゃっておられるけれども、私はその点はこれ以上伺ってもしようがありませんから、大変警戒すべき、慎重にやるべき問題があるというふうに私は思うのであります。  それからいま一つ、なぜそういうことを言うかといいますと、やや関連する問題なんだけれども、田中さんの逮捕の状況を新聞等で見たわけです。朝七時何分かに迎えに行って、それから一時間かあるいは一時間二十分ぐらいで逮捕状を執行しているんです。この逮捕の仕方というものも、やはりできるだけ犯罪捜査は任意捜査が原則ですから、朝から晩までやはりいろいろ事情を聞いてみる、むだかもしれぬが聞いてみる、そうしてどうしてもこれは逮捕の必要があるんだということで、晩になって逮捕したんだということの方が、まだ方法としては納得がいくし、またこれは通常検察庁も警察もやっている方法なんですよ。だけれども、いきなりやはり逮捕状を突きつけて拘置所へ連れて行ってしまったという姿を見たときに、私は、しゃにむに身柄が欲しいという、そういう気持ちが先行したような感じがするんですよ。外為法違反の立件とか検挙が悪いと言っているんじゃないんですよ。私は検察の運用のやり方というものについて言っているんで、そこは誤解のないように願いたいのだけれども、どうもその逮捕状の執行の状況等についてもそういう感じがするわけです。やみくもに身柄が欲しいという気持ちを持たしちゃこれはいけないんですよ。やむを得なかったんだということが、権力、検察運用の根本の思想ですよ。どんな悪人でも、縛るということはやむを得ず縛ったんだという、そこのところが私は一番大事だというふうに思います。  これは法務大臣なんか大変人柄がもともとあったかいんだから、私は指揮権発動はできない、これはあたりまえでけっこうです。しかし、やはり管理されるという立場に立って、どうなんだ、一遍外国為替管理法で逮捕しなければいかぬというふうな報告を聞かれたときに、収賄罪の逮捕というんじゃないんだなと、そっちでできないのか、検討してみないかということは、私は指揮権発動にはならぬと思う。それからまた、総理閣内にどういうふうに報告があってどういうふうに処理されたかはまた後で伺いますけれども、政府部内でそういう意見が出てもちっともおかしくない。そんなに腰を抜かしてびっくりしちゃいけないんですよ。堂々とやるべきものはやる、やらざるべきものはやらない。そこにしかし、心のこもった運用をするということが一番大事なことで、国民はいま検察に、大変よくやったという評価がある。これは私もそうだと思いますよ。御苦労のことはよくわかる。しかし同時に、その心がにじみ出てないと、やはりよくやったということが続かなくなっちゃうんですよ。そういうものなんです。  これは私も経験があるんだけれども、人が人を縛るということは果たしてできるだろうかということを考えながら権力を運用する、そういう謙虚なものなんだということが根本になきゃ、しかも確かにいま丸紅の社長とか全日空の社長とかを逮捕して、法の前に平等だというような意見だけれども、事件というものはことごとく一つ一つ別なんだから、そういう簡単な意味で平等論を言っちゃいけない。外国為替管理法で逮捕者も出た。逮捕しないで処理した者もある。平等か不平等かというのは、もっと形式的よりも実質的にじっと実態を見て平等ということでなければいけないんだから、それは平等でなければいけませんけれども、そこらのところに私はもっと実態的な真実の上に立っての判断を本当に願うわけであります。まあ、前総理だからということで格別な法律上の差別をつけるということは間違いだ。しかし、そういうことじゃなくて、やはり法にも情けもあるわけですから、法を曲げないで、その枠の中でやっぱり法の運用というものを、私は特に形式犯なんかの場合には、大変必要なことだと思う。  それらの点について、いささか老婆心を含め、自動車の運転手が自殺したなんというような話を聞くと、実に痛ましい思いですよね。大きな事件のときには、そういう犠牲者が出る。しかし、それはしようがないんだというふうに簡単に見ない。やっぱりその取り調べをしたときに、ああいう人たちの中には、とても実直な人間もいるわけですから、やっぱり真相究明で取り調べは当然だが、取り調べのやり方などにもよる。相手は非常に違った受けとめ方もするから、捜査の目的を達成しながら、同時に相手の立場というものを考えてやるということが必要だ。あの運転手が自殺した後の新聞記事の検察官の言葉も私は足らぬと思う。気の毒だったという一つ言葉が出れば、これまた違ってくるんですよ。捜査の目的を完遂しなきゃならぬ、しかし、本当に完遂するためには、そういう態度を貫くということが私は非常に大事だと思う。前総理逮捕ということで、私は格別に田中個人をどうのこうのという問題じゃない。やっぱり権力というものが実行されていくということについての姿勢といいますかね、公正な立場での意見のつもり。法務大臣いかがでしょうね、この点。
  151. 稻葉修

    国務大臣稻葉修君) 逮捕状を執行したときの状況、検察のやり方、これを私の口から非難するわけにはまいりませんけれども、豊富な体験をお持ちになる秦野さんの切々たる御意見には、まことに貴重であり、感銘にたえない点もございます。  以上お答え申し上げます。
  152. 秦野章

    ○秦野章君 官房長官がお見えになりましたので、ちょっと伺います。  ロッキード事件の今日までの事態と、それからまた今後の進展を考えましたときに、私はきのうは官房長官の答弁を伺っていたわけですけれども、そういうことを前提にしながらお尋ねするんですけれども、これはともかく未曾有の不覚をとったということだと思います。この不覚をどういうふうにわれわれは受けとめたらいいんだろうかというのが、正直言って私どもの気持ちであります。恐らく、これは政府とすべての役職にあるものは、特に今日まで党を領導してきた人たちというものは、挙げてその責任を分かつべきものである。一人だけが悪いんだという考えだけではおかしい。また、お金の面について言えば、確かに羽目を外したようなところがあったのかもしれぬ。しかし、田中さんが私財だけをふやしたのでもないだろう、田中派閥だけを維持したためだけでもないだろう、いろいろなことを正直言って考えるわけですよ。いろいろなところに金も流れているらしい。そんなことを考えてみると、この責任を一緒に分かつのだと、われわれも。そうして、特に党幹部がその責めを分かって、一緒に国民にわびるという、そういう姿勢をあらわすということが、この際は一切の改革の、百の改革案の大前提でなくちゃならぬ。それが、そういう道義的な実践が先立たなくて、総裁選挙をどうするのこうするのと言ったって始まらぬと、私はそういうような気持ちを持つので、けさ新聞を見るというと、われわれの党の一部が三木内閣退陣なんて言っているけれども、それも私はおかしいと思う。三木内閣退陣もいいかもしらぬが、幹部のみんなの責任だという姿勢がまず先決だ。きのうの答弁を伺っても、責任は痛感しておられて、三木内閣がこれにこたえるにはやっぱり改革をしていくという方向などとおっしゃるけれども、やっぱり大前提として、国民にわびるという姿勢がなければわれわれは再生しない、われわれが再生するのは、われわれの党の幹部が改革案をつくったり何かしてやるということよりも、国民が再生してくれるかどうかという問題だと思うのです。  そういう意味においては、いまはまさに総退陣というものが一切の前提になるというふうに私は考えるわけであります。後のことを余り考えることはない、何とかなるものですよ。私はそういうふうに考えて、恐らく私ども同僚なんかと話をすると、そういう人が多いんですよ。そういう声はなかなか上の方には通じないけれども、この点について官房長官に最初にまず伺っておきたいと思う。
  153. 井出一太郎

    国務大臣井出一太郎君) ただいま秦野さん切切として言われますことは、私も肝に銘ずる次第でございます。今度の事態というものは、事ここに至ったいろいろな原因はあるでありましょうけれども、思いを深く、その真相那辺にありやと、こういうところにいたして、そこから出発をすべきだと、こういう点は全く同感でございます。したがいまして、ここ一週間ぐらい私みずからも大きな衝撃を受けておるのでありますが、そこからどう立ち上がればいいのかということに実は心を砕いておる次第でございまして、その方法論、なかなかまだ明確にも相なっておりませんけれども、気持ちは秦野さんのおっしゃるのと非常に通ずる次第でございます。
  154. 秦野章

    ○秦野章君 三木内閣の参謀長でおられる官房長官ですから、私のような気持ちを持っている人が下の方にはいっぱいいるのだということだけを総理に伝えていただきたい。これは、自民党はやっぱりかなり体質が硬直化しておりますから、上の方だけの意見だけじゃいけないと思うんですよ。ひとつ気持ちはわかるということの問題、気持ちの具現ですね、そうしてその道義的実践を国民が見てくれる、国民が政党をよくするか悪くするかの国民側の問題に、われわれの姿勢を正さなければならぬと、そういう意味でございます。  それから、あと具体的な問題で一つ田中さんの逮捕の問題で法務大臣から政府に報告をされたと思うんですね、総理大臣に。いつ総理大臣が聞いたとか、聞かないとかなんということは、私もここで論議しても大して意味がないと思う。問題は、前総理逮捕するという段階に至ったときに、私はやっぱり内外に対する影響を考えても、かなり大きな問題だと思うのです。だから閣議の付議事項というものは、これは申し合わせでもちゃんとできておりますが、この中にも、各省の重要と思われるようなことは閣議了解を得るとか、あるいはまた閣議に報告するとかといった意味のことがあるわけですね。だから、私はこれは何か、こわいものにさわるみたいなことじゃなくて、やっぱりそれだけの価値があるのじゃなかろうか。閣議でちゃんと、そこで多少意見が出てもいいじゃないですか。そういうことが政府の、内閣に行政が属するという憲法のもとにおける内閣責任だと、こう思うんでございますが、その点については、私は、いささか取り扱いについて、何か司法権だ、検察権だということで、よけて通っちまっているような感じがするのですが、この点いかがでしょう。
  155. 井出一太郎

    国務大臣井出一太郎君) これはすでに法務大臣からもお答えがあったことと思いますが、当日はロッキード問題の閣僚協議会をいたしておりましたし、したがって、その場においての法務大臣報告があり、また閣議においても同様の報告法務大臣からなされたわけであります。そこで論議というふうなものはいかがとお尋ねがあるわけでしょうが、非常に重大な事態であったものですから、閣僚の諸公も粛然として多く言葉を用いなかったというのが情景でございます。
  156. 秦野章

    ○秦野章君 官房長官、お言葉を返して恐縮ですがね、粛然は結構なんですよ。粛然は結構だけれども、たとえば自民党の総務会ではかなりいろんな意見が出ているというふうに新聞には出ている、おかしな意見も中にはありますけれどもね。やっぱり政府というものは責任の主体でございますから、私はそこでもっと早く、ときには逮捕状を取った直後でもいい、執行の前でもいいじゃないか、指揮権を発動するんじゃないんだけれども、当然内閣責任としてそこにかけて話をして了解ということになることの方がベターであると、こう思うわけです。その点いかがですか。
  157. 井出一太郎

    国務大臣井出一太郎君) 私は二十七日のその時点における状況を申し上げたわけでございます。秦野さんの御意見はいま承ったような次第でございまして、これにどうこう論評をというふうなことはひとつ差し控えさせていただきたいと思います。
  158. 秦野章

    ○秦野章君 時間も来てしまい、少ししかありませんので、あと——官房長官結構でございます。  今度の事件に関連して、アメリカのロサンゼルスの地裁に対する嘱託尋問を委嘱して、そして証人の証言と、それから証言から出てきたいろんな情報については日本の刑罰はつまり科さないと、免責するということを東京地検がおやりになったわけですね。それに最高裁も乗っかっていったという感じなんですけれども、最初にこのロッキードが、この汚職をばらまいた本家本元のロッキードの方は免責だ免責だ、何も罪はないんだと。罪はないということにして、こっちの材料をかせぐんだと、言うならば。アメリカの方が免責だ免責だ、こっちは逆だという、このアンバランスが国民の方から見るとちとおかしいなと、こう思うところがあるんですが、これ、法務大臣どうですかね。しょうがないですか。
  159. 稻葉修

    国務大臣稻葉修君) まあこれは、この事件の非常な役割りを演じた三人が向こうにおって、そうしてそれが証言してくれて、その証言の材料が検察庁の手に入るということはこの事件解明一つの重要な要素になり得るというふうに判断しているわけですよ。それですから、あの三人の人たちが日本の刑罰法令に触れることを理由に証言を拒絶しても、これに対抗して米国におけるイミュニティーと同様の効果を上げ得るものとして、わが国の刑事訴訟法に基づいて検察官の起訴猶予権限を行使して証言を得る、この措置はロッキード事件真相解明のために必要とされるコーチャンらの証言を確保するためにとられた特段の措置ではあります。そうして、同証人らの来日の可能性もないし、非常に乏しいし、また日米間の犯罪人引き渡し条約は外為法違反や賄賂罪を引き渡し犯罪としていないことなどを勘案しますと、もともとわが国の検察が同人らに対し刑事訴追を行い得る可能性が事実上乏しいので、刑事訴追の免除をすることによって失われる利益は少なく、一方、この免除により同証人らから真相を聴取することによって得られる利益ははるかに大きいと考えて、本件の場合、検察当局の手持ち資料や予想される証言事項に照らし、見込まれる犯罪事実、その軽重等を勘案してあらかじめ起訴猶予を決定することは可能であって、刑事訴訟法上適法であり、かつ妥当であるというふうに判断して行われましたわけです。
  160. 秦野章

    ○秦野章君 一点は、刑事訴訟法の起訴、不起訴の処分というものは、そもそも犯罪を捜査してやってみたが、これは起訴するのか起訴しないのかということで処分をするものであって、捜査しないうちに処分をしてしまうということは、一体犯罪そのものが特定していないじゃないか、何罪を不起訴処分にしているのかということになることでもあるし、この刑事訴訟法の起訴便宜主義の立法の精神からはるかに離れ、いささか法を逸脱したものであるということを、私はきょう論争しませんけれども、学説もそういうのがあるけれども、私はどうしてもそう思うわけですよ。それで、特にこの犯罪が特定されないということに対する処分、これは実は憲法で言う罪刑法定主義、あるいはまた令状でもって逮捕されるので令状がなければ逮捕できないという、その令状には犯罪を明記しなければいかぬと憲法に書いてあるわけですな。つまり、犯罪の特定というものは近代法治主義、刑事司法の根本なんですよ。ところが何罪が出てくるか大体見当はつくけれども特定はしないというようなことでこの刑事処分というものが行われたということは、どうしても私は理解できないし、またそこへもっていって、最高裁が宣明書という、検事総長の要請があったとしても、宣明書という形でそれを追認するような型になったのだけれども、さあこれ、裁判所法第十二条の司法行政の立場でおやりになったというけれども、司法行政というのはそもそも内輪のことを決めるので、外の被告人やなんかに影響するようなことをやるのじゃないのですよね、本来は。で、これは本来じゃなくて、ちょっと無理したのだというような感じがするのだけれども、これ、時間がなくなっちゃったからもうあんまり言えませんけれどもね。最初にひとつ、最高裁の刑事局長に、司法行政の範囲は何か。それから私は司法権の独立というものは非常に大事だと思う、特に日本の場合。決して日本はそんなに安定社会だとも思いませんのでね、司法権だけが頼みの綱みたいなところもあるのですよ。特に最高裁判所は日本のど真ん中に座っておって、下から上がってきた裁判をぱちっぱちっとやっておったらいいのですよ。アメリカまで出ていって検事総長のお手伝いをすることは、言うならば当事者訴訟主義の原告の側に加担したことになるのじゃないか。それは裁判官の独立と裁判所の本当の当事者訴訟主義あるいは予断排除の原則、そういう大きな立場から見て、私は間違いだということはここでは申し上げないけれども、ちょっと批判がある。これ、お聞きしなくても答弁の見当はつくんだけれども、こういうことをまた将来おやりになるようなことがあるのかどうか。まあこれ、異例中の異例なんで、その点の所見と司法行政と、時間がないから一遍に伺いますが、いま一つは、裁判官会議をおやりになったけれども、普通の判決の裁判官会議というのは、意見を付して、そして反対意見があれば公表することになっていますが、この裁判官会議は秘密で全員ですか、あるいは欠員があったのか、あるいは反対意見があったのかどうか、まあそこらの点もちょっとお尋ねしたいと思います。
  161. 岡垣勲

    最高裁判所長官代理者(岡垣勲君) それでは、まとめてお答えいたします。  最初に、司法行政の範囲、内容ということでございますけれども、司法行政というのは、私どもとしましては、裁判権の行使、それから司法制度、裁判制度というものの運営、それが円滑適正に行われるようにする行政作用あるいは裁判所の職員を、これは裁判官も含めてでございますけれども、監督するという、そういう行政作用であるというふうに考えておるわけでございます。  今回の最高裁判所が宣明書を出したということ、その前提としては、先ほど委員からおっしゃいました検察官の起訴猶予するという前もっての約束がある、それをどうしたか、こういうお話でありますけれども、検察官があらかじめ起訴猶予するというふうな約束をしたということのよしあしということについては、先ほど法務大臣から御答弁があったような立場もあり、またあるいは委員がおっしゃったような立場もあり、これはいろいろのお立場があろうと存じます。われわれ最高裁判所といたしましては、そのどちらがどうかということを前提にして今回の措置をとったものではございません。最高裁判所としましては、これは下級裁判所である東京地方裁判所が外国に対して証人尋問の嘱託をした、その証人尋問も行われたと、一部でありますけれども。その調書は一定の条件が入っておって、返ってこない、そうすると、まあ俗な言葉で申し上げますと、宙ぶらりんのような形になっております。そうすると、裁判官がこれは証人尋問すべきであるということを認定して嘱託した証人尋問調書が得られないという——それが円滑に得られるという方法があるならば、それは裁判所として、もしそれが現行法の範囲内でできることであるのならばそれは当然最高裁判所としてすべき司法行政の範囲に入るであろうというふうに考えて今回の措置がとられたということになるわけであります。  先ほど、こういう問題についてわざわざアメリカまで出かけて行ってというお話がございました。これは、前から何度か私どもも機会があれば御説明しておりますけれども、確かにファーガソン裁定というものは、一読いたしますと、日本国内においてコーチャンらの証人が起訴されることがないということを保証するようなルールだとか、あるいはオーダーを出せということを言ってきておるわけでございますけれども、これを文言どおり見ますときわめて困難である、それはもうあえてここで御説明するまでもないと存じます。しかしながら、たとえばルールという言葉の内容でございますけれども、これは法律の基本原則というふうなごく広い大きな意味から、それからまあ、いわゆる規則、それから規程あるいは内規あるいは通達というふうなものまで含む大変幅の広い概念でありまして、われわれが普通この場合考える刑事訴訟規則というふうなものとぴたりと合うものではないわけであります。  それから、その証人が日本国において起訴されないということの保証と、こういうこと、その文言を読みますとすと思い当たるのは、たとえばアメリカ法上のイミュニティーの制度ということになるわけでございますけれども、そのイミュニティーの制度というものも、これもまあアメリカにおいてもかなりの判例上あるいは法令上も変遷を経ておりまして、たとえばもう起訴は絶対にしてはいかぬという起訴禁止とでも申しましょうか、まあいわゆるトランザクショナル・イミュニティーというようなことが言われておりますけれども、そういう起訴禁止というふうなものとしてとらえるか、あるいは証拠禁止と申しますか、それによって出た証拠はその人には不利に使わないというユース・イミュニティーというようなことが言われております。そういうふうなものなのか、あるいはそういう証拠禁止という考え方からすると、今度はそれは、その挙証責任をどういうふうに持っていくかというようないろんなまあ問題がありまして、このファーガソン裁定そのものは明らかに起訴されないことということで、起訴禁止ということを求めているようでありますけれども、必ずしもそこも明らかではない。そういたしますと、まあ私どもといたしましては、このアメリカのファーガソン裁定によって、言うなれば日本国の最高裁判所に投げかけられた問題についてノーと答えるにしろイエスと答えるにしろ、かけられた問いの意味を明らかにしないで答えるというわけにはいかないと、これはやはりはっきりとしてからがよかろうということで、それで向こうに調査に行ったと、かたがた日本国の法制も十分説明すればまたもっとはっきりするかもしれないということで、その説明もしたと、こういうわけでございます。  それから宣明書の裁判官会議のことでございますけれども、これは裁判官会議の中で、何が、どういうことの議論があったかということはもとよりわれわれここで申し上げるわけにはまいりませんけれども、これは宣明書にあるとおりに全員一致でございます。しかし、これは新聞などでも御承知のとおりに、当日二名欠席の方がございましたから、ですから十三名御出席で、十三名はもちろんこれで結構だということでございますが、あとの二名の方はこれは裁判官会議に接着する直前に私どもの方から大体こういうことに案はなっておりますということで御説明を申し上げまして、それで結構であると、賛成であるということをお二人から伺っておりまして、それを裁判官会議報告いたしました。したがいまして、裁判官会議としては、他の欠席の方もそういう御意見であるということを十分考慮された上でああいう宣明書になったものでございます。  以上でございます。
  162. 剱木亨弘

    委員長剱木亨弘君) 秦野君の御質疑に対し稻葉法務大臣から発言を求められております。これを許します。
  163. 稻葉修

    国務大臣稻葉修君) 免責の問題で最後に秦野さんがどうも少しおかしいということを、こう、よく言われて、そのままでしたものですから、えらい法務当局が不当なことをやったようになってしまうと困りますからね、ちょっと申し上げたいんですがね。私はやっぱりこの事件の真実発見のためには、ああいう措置をとるべきであったと、しかも前述したとおり、法のそれは許容する範囲であると確信しております。しかも、米国では免責の法制、慣行があることも御承知のとおり。その米国で行われる証人尋問であることは十分考慮すべき事柄であろうと私は思います。要するに、本措置は真実発見のため許された妥当な措置と信じております。
  164. 秦野章

    ○秦野章君 そう言われると私もまた意見を言わなきゃならなくなっちゃう、時間なくなっちゃうんだけれどもね。  どうしても政府の言うことは間違いないんだというふうに考えずに、こういう批判もあるということで受けとめてほしいと思いますよ。それはね、さっきたとえば罪刑法定主義とか令状主義とか言いました、やっぱり一つの罪というものがはっきりしたもので私はつかまったと、それから司法権の方もはっきりした、この罪でつかまえたと。つまり罪の内容がぴしゃっと特定していなければ、防御権の上からいっても司法的抑制の上からいっても、これは憲法、刑事訴訟全体を貫く一つの大原則なんですよ。その原則に照らしてどうかなあと私はあくまでも思うわけですよ。だから見解の相違でやむを得ぬのでございますけれども、そういう意見で私は言っているわけでございます。  それから、まあどうしてもこの事件をやるためには仕方がなかったんだという気持ちはわかりますけれども、正直言って、実際問題からいけば、二人の検事が証人尋問に立ち会っているんですよね。その文書がこっちへ持ち込めようが持ち込めまいが、これはロッキード捜査検事でしょう。それが全部聞くんだから、これは捜査官としちゃ相当の司法共助は成功していると私は思うんですよ。まあ、これはよけいなことですけれども、何も私は事件をつぶすような意味で言っているんじゃなくて、要するに、民主主義では意外と手段とか手続とかいうものが大事なんですよ。ある人が、だれかがどこかで、新聞で見たけれども、日本という国は名もなき一庶民が総理大臣にもなれるし、総理大臣になった者もつかまっちまうと、これはいい世の中だと、こういう見方もありますよ。しかし、問題は、そういうことの結果を生む手続とか手順とか、そのプロセスにあると思うんですね。だから、権力者が厳しいおきてに従うことも当然だけれども、その権力者を取り締まる権力、現に行使する側が厳しいおきてに従って安易な法の運用に流れてはならぬということもまた当然のことで、むしろここに私の問題の提起の主眼があるわけなんであります。したがって、そういう意味では、本当の法治国家あるいは統治機構というものを完全に運用し、後世に悪い例にならぬようにというのが私の言いたいところなんです、正直言って。だから、いま起訴便宜主義については妥当だとか正当だとかいうことはあるけれども、それならちょくちょくこういうことをおやりになれますかと、私はできないと思いますよ、これはかけしてもいいや。できませんよ、こんなことは。だから手段、方法、やれば何でもやるんだみたいな感じがちょっとするというところに私は一つ注意を喚起したいという感じがいたします。  まあ、いずれにせよ大変重大なときですから、どうか大臣も、やっぱり法の運用というものはきわめて厳粛であり、かつまた大変なことなんですよね。法務大臣のお人柄も私もよくわかっておって、本来非常にごりっぱな温かいお人なんだけれども、しかし、新聞なんかの発言を見ますと、何だかこの法の運用が厳粛なものであるということに反するようなお言葉もちょくちょく出るものだから、これはやっぱり私は仲間のために、これはいろいろ言い分あるけれども、そういうふうな率直な受けとめ方をしている者も私だけじゃないんだ、これは。お人柄ということはわかるし、本来はそんな人じゃないとわかっているんだけれども、やっぱり言葉の端々で、この権力の運用ということを、特にいま大事件をやっている場合、どんな犯罪人が出るか知らぬけれども、非常に厳粛を要するような感じがいたすわけでございます。  時間もちょうど来てしまいましたので、最後にそこらの点について御意見を伺って終わりたいと思います。
  165. 稻葉修

    国務大臣稻葉修君) 何か権力をかさに着るような気持ちなんかは毛頭ありません、私。それから、安易に考えて免責の措置をとったこともありません。これは非常に検討しました、慎重に。実にやむを得ぬと、これは真実発見のためにはやむを得ぬと。しかも、それは法律上許されることであるという法解釈もるる聞いた上で慎重に対処したつもりでございます。新聞等の記事でちょくちょく軽率というか、何か権力者の立場が露骨に出ているようなお言葉でしたが、そればそんなことはないですね。新聞の記事に載っかって私の性格を批判されても非常に私は心外です。そして、こんなやり方を、クアラルンプールの問題でも、それから今度の免責でも、こんなことがちょくちょくあってたまるものじゃない。それはあなたと私とかけするわけにいかない。元警視総監と法務大臣がかけなんかして、そんなことはできません。(笑声)そんなことはできませんけれども、ちょくちょくあってはかなわぬと、こういうふうに思います。
  166. 秦野章

    ○秦野章君 それじゃ終わります。
  167. 塩出啓典

    塩出啓典君 最初にちょっと委員長にお願いしたいわけでありますが、衆議院で行われました第一回の証人喚問の際に、わが党の坂井議員が小佐野賢治氏に対し政治献金のリストを提出する意思はないか、こういうことに対し、小佐野氏は検討しましょう、このように答弁をしておるわけであります。うわさによりますと、この小佐野氏が献金した百十数名のリストが衆議院の田中委員長のもとに提出されていると聞いておるわけでありますが、できましたならば委員長の方から確認をしていただきたい。もし提出されているとすれば、当然これは本委員会にも提出をしてもらいたい、このようにお願いいたします。私の質問時間は一時間でございますので、できましたらその終わりごろまでにお願いしたいと思います。
  168. 剱木亨弘

    委員長剱木亨弘君) 承知しました。いまのお申し出、一時間以内に調査いたします。
  169. 塩出啓典

    塩出啓典君 最初に稻葉法務大臣にお尋ねしておきたいと思うんでありますが、きょう午前中の同僚委員の質問に対しまして、稻葉法務大臣は、昨日のようにロッキード委員会を欠席をして選挙演説に行くようなことは慎むと、また担当法務大臣立場を利用しての選挙運動は慎むと、こういうようなお話でございますので、それ以上のことは余り申したくはありませんけれども、ただ先ほどからいろいろ論議がありましたように、法務大臣という立場は非常に大事な、そしてしかも厳正であるべき立場であります。私もたまたまきのう九時のNHKのニュースを聞いておったのでありますが、法務大臣が向こうで演説をしているのが、一部載っておりました。これは政治家として何を話されるのも自由ですけれども、その中でも話がありました、いまもちょっと話があったわけでありますが、言葉は覚えておりませんけれども、結局おれの言っていることは正しいんだと、それを騒ぐマスコミが悪いんだと、こういうようなニュアンスの発言にとれたわけであります。私たちは、やはり政治家というのは、何はともあれ結果に責任を持っていかなければならない、そういう点から見て、われわれはこの事件に全責任を持っております、闘っておられるその法務大臣立場考えて、少々迂遠かもしれませんけれども、そういう点の言動は十分慎んでやってもらいたい、このことを要望したいと思います。
  170. 稻葉修

    国務大臣稻葉修君) すべて言論を大事にする、それを慎重にやることは一般論として当然でございまして、しかも、われわれ以上に非常な組織を持ち、膨大な、何といいますかな、物的設備を持つそういう言論の機関は、新聞、テレビ、ラジオ、これはもう慎まぬでもいいと、それにやられるこっちは慎んで黙っていろと、これではやり切れないんです、私は。
  171. 塩出啓典

    塩出啓典君 これは御意見として承っておきます。まあわれわれは、それはそういうことも一理はあると思いますけど、しかし、そういう現実を踏まえて、なおかつ、より前進をしていくと。ただおれば正しいんだと、マスコミは悪いんだと、こういうことを言ってしまえば、これはやっぱり世の中の前進はないとぼくは思うんですけれどもね。昨日の自民党の会合等のことが記事に載っておりました。中には、今回の田中総理逮捕について指揮権を発動してこれはやられるべきだと、こういうような批判も一部には新聞に載っておったわけでありますが、もちろんそういうものが全体の意見とは、われわれは思いませんけれども、ひとつ法務大臣として厳正に、そうして党内からどういう意見があろうとも、やはり衆参両院における国会の決議の線に沿って、ひとつ厳正中立に対処してもらいたい、このことを最初に要望しておきます。
  172. 稻葉修

    国務大臣稻葉修君) いままでもそういう態度で来ましたし、そういう御注意を受けて拳拳服膺して、そのとおりやります。
  173. 塩出啓典

    塩出啓典君 それで福田総理が、あれは二月二十八日の予算委員会で、ロッキード事件の起きた背景には金で政治を支配するという風潮があると、まあ言葉は多小違うわけですけれども、そうしてやはりロッキード事件一つの因は、やはり四十七年の総裁選挙にあると、こういうような意味のことを発言をしております。このときは法務大臣も御出席しておりますので、それで聞かれたと思うわけでありますが、私たちも、今回のロッキード事件をめぐる資金の流れ、まあこれはいまわかっておるのは三つのルートでありますが、その大半が四十七年自民党総裁選あるいは衆議院選、あるいは四十九年のいわゆる参議院選挙、そういう時期に非常に集中しておりまして、国民から見て、そういうロッキード社からの金が政治に使われたんではないか、こういうことは国民としても当然そういう認識を持つわけでありますが、こういうロッキード事件の原因がやはり総裁選にもあると、こういう点についてはどう考えますか。
  174. 稻葉修

    国務大臣稻葉修君) 強く反省しております。
  175. 塩出啓典

    塩出啓典君 まあ、そこで四十七年の総裁選のときには非常にいまだかつてない札束が乱れ飛んだと、そういうようなことが巷間うわさされておるわけでありまして、私たちもかなりそれは実感じゃないか、もう何百億という金が流れた、あるいは田中角榮総理も、あの金権、金脈問題、総理やめてから後も、あのときに自分は年が若いから、もっと年上の人がなればいいと思ったんだけれども、それだけの金ができるのはお前しかいないと、そう言われてやったんだと、こういうようなことも言っているように聞いているわけなんですがね。そういうことで、これは法務大臣稻葉さんと言うんではなしに、やはり政治家の、自民党に所属する稻葉さん、まあ言うなれば総裁選の投票権を持つ稻葉さんとして、かなり自民党総裁選には金が乱れ飛んだと、そういうことは認めますか。
  176. 稻葉修

    国務大臣稻葉修君) 私、直接この目で札束を見たわけじゃありませんけれども、しかし、そういううわさもありそうなような印象を受けていますな。そうしてまあ、あのときの田中総裁を選んだ方の側ですからね、私どもは、私も。ですから、それがこういうことになって、いま法務大臣として、このことは非常に困っちゃっている状態ですね。非常に責任をやっぱり感じておりますね。責任感じておる、そういう心境です。
  177. 塩出啓典

    塩出啓典君 まあ私たちも、こういうような事件が起こるということは、やはり一田中角榮氏だけが悪いというものではない、こういうまあ現在の政治機構、そういうものは、大きな目で見れば自民党だけではない、われわれにもやはり政治家の一人として、その責任はあると思いますし、われわれ決してだれが悪い、彼が悪いという、そういう個人攻撃をすることが一番いいということを考えているわけではないわけでありますが、実はこの自民党総裁選挙の問題につきまして、これは北海道炭礦汽船会長の萩原吉太郎氏が特別寄稿として、署名入りの論文を離誌にたまたま発表しておるわけでありますが、そういう中で、こう書いているわけですね。「7月29日の朝日新聞の朝刊で中曽根の名がでて、そのことに反論をのべているが、あの発言はまことにおかしい。」、これは新聞を見ますと、中曽根幹事長は、「ポスト佐藤をめぐって萩原氏から「福田氏を支持してほしい」と働きかけがあったのは確かだが具体的には何もなかった。」云々ということが書いてあるわけです。それについて「まず、中曽根は児玉と関係ないといっているが、それはまったくのウソであるということだ。児玉と中曽根は古い仲だ。太刀川恒夫にしても中曽根の秘書だった。本当にうちとけた間柄といった方がいいだろう。児玉は中曽根を買っていた。いわば先物買いで「やがて中曽根の天下がくる」とまでいっていたくらいだ。」  それから、その次に、「あのとき中曽根は、田中から7億のカネを渡されたという話があった。中川が、そのことをある週刊誌に語っているのだが、7億かどうかは別にして、カネが渡されたといわれている。」、そういうことがちょっとあって、後に「ここで、当時の経過を明らかにしておこう。中曽根と彼の師匠に当る野田武夫が目黒の自宅にやってきたのは47年5月の下旬であった。そのとき中曽根は、「各派とも立っているからおれも立つ」といっている。「そうしないと〃草刈場〃になってしまう。また、知らん顔してると金でやられてしまう、だから金を貸してくれ。」つまり、立候補するといいながら結束を固め、金でつなぎとめ、ぎりぎりのところで高く売るという戦術である。わたしは、結局は、中曽根派は福田にくると思って、その場で現金1000万円を渡した。その前にも中曽根は、派内を分析して三、四年以上の大半は福田、一、二年生の大半が田中」云々と、こういうことが書いてあるわけです。もちろん、これは萩原吉太郎氏が名前を言って書いた文章ですから、その人としては信念を持って書いていることで、これは多少違うかもしれませんけれどもね。  そこで、私がお尋ねしたいのは、こういう総裁選のときに萩原氏が中曽根に一千万円を渡したと、この問題については捜査当局も調査をしているように書いてあるわけでありますが、こういう点は調査をしておりますか。
  178. 吉田淳一

    説明員吉田淳一君) その件について、東京地方検察庁から捜査をしているという報告は受けておりません。
  179. 塩出啓典

    塩出啓典君 これは、本人は地検の特捜部にそういう捜査を受けて、そういうことも全部伝えたと、そのように言っておるわけでありますが、そこで、これはたくさんの中のほんの一例ですけれども、たとえば総裁選のときに萩原氏が一千万円中曽根氏に渡したと、で、これは中曽根氏の政治資金規正報告書には載ってないわけなんですけれども、こういう場合、これは政治資金規正法あるいは税法上はこれはどういう取り扱いになるのか。これは自治省と大蔵省にちょっとお答えいただきたいと思うんです、一般論で結構なんですけれども。
  180. 佐藤順一

    説明員(佐藤順一君) お答えいたします。  一般論としてお答えいたしますと、政治家個人政治資金の寄付を受けた場合、政治資金規正法上収支報告の必要があるかというお尋ねといたしますと、収支報告の必要はございません。と申しますのは、政治資金規正法は、わが国の民主政治を動かしていく重大な役割りを果たすのは政党その他の政治団体であるという考え方に立ちまして、政党その他の政治団体の収支について報告を義務づけまして、これを公表することにより国民の前に公開をいたしまして、国民の判断と批判の前にさらしまして政治活動の公明化を図っていきたい、こういう考え方に立っておりますので、政党その他の政治団体政治資金についてのみ収支報告を義務づけ、政治家個人については義務づけをいたしておらないわけでございます。
  181. 塩出啓典

    塩出啓典君 そうすると、政治資金規正法というのは政治団体ですから、これは政治家個人が受け取った場合には政治資金規正法の上では何ら問題にならない。そうしますと、いわゆる税法の上から、大蔵省はどうなります、これは。
  182. 山橋敬一郎

    説明員山橋敬一郎君) お答え申し上げます。  政治家個人が法人、個人等からいわゆる政治献金として受け取った金は一般に所得税法上の雑所得ということになるわけでございます。政治献金として受け取った収入金額から政治活動のために必要な経費を差し引きまして、残額がございますれば、その残額を雑所得の金額として申告をするということが義務づけられているわけでございまして、ただ結果として残額がなければ課税の対象にならない、こういうことになるということでございます。
  183. 塩出啓典

    塩出啓典君 これは、私の聞いている範囲では、四十二年にそのように改正になったと、四十二年の場合は、法人からの個人に対する政治献金は一時所得、個人からの政治献金は贈与所得と、そうなると、どちらも、一時所得の場合にしてもあるいは贈与にしても、贈与の場合は贈与税がかかるし、そのようになっておったのが、四十二年に雑所得になったと、雑所得にするようにしたと、このように聞いておるわけでありますが、この点は間違いございませんか。
  184. 山橋敬一郎

    説明員山橋敬一郎君) お答え申し上げます。  先ほどお答え申し上げました考え方は、従来からそのように扱っておりまして、四十二年に特に変わったということではございません。
  185. 塩出啓典

    塩出啓典君 そうしますと、これは受け取った政治献金と政治活動、これだけの政治献金を受け取った、これだけ政治活動に使ったと、残りが年間を通して、あれば申告する、なければ申告しなくていいと、そういうことですね。これはそういうことで申告した人はいるわけですか、いままで。
  186. 山橋敬一郎

    説明員山橋敬一郎君) お答え申し上げます。  申告した人はございます。
  187. 塩出啓典

    塩出啓典君 それから、これはちょっと法務省にお尋ねしたいわけでありますが、丸紅からいわゆる全日空に来た一億六千万円ですね。このお金はきのうの報道では大体一億円ぐらいが丸紅の裏金に残って、あとの六千万円ぐらいが大体政治家とか、いろんな高官に流れておる、そういう流れについて捜査当局も大体つかんだと、このように聞いておるわけでありますが、これは政治家だけなのか、政治家以外に、いわゆる政府のいわゆる役人の方もいらっしゃるのかどうか、その点はどうでしょうか。
  188. 吉田淳一

    説明員吉田淳一君) 丸紅関係では、大久保なり伊藤らを逮捕して取り調べているわけでありますが、その……
  189. 塩出啓典

    塩出啓典君 いま丸紅と言いましたか。
  190. 吉田淳一

    説明員吉田淳一君) はい。
  191. 塩出啓典

    塩出啓典君 全日空です。失礼しました。
  192. 吉田淳一

    説明員吉田淳一君) 全日空関係では、御承知のように、合計六名の逮捕をしておるわけでございます。それで、その内訳といたしましては、約五千万円に上る外為法違反の事実と、それから一億一千万円でしたかに上る外為法の違反の事実についてそれぞれ公訴を提起し、さらに社長若狭につきまして、藤原について起訴をしたその同様の事実についてさらに逮捕して取り調べをしているという現状であります。  で、その全日空の金がどういうふうにどこにどう使われているかと、その中に議員なりあるいは役人なりがいるのかどうかというお話でございますけれども、これは現在捜査をして、資金の流れについて違法行為があるならばそれを解明すると、そしてそれを処理するという立場でやっている検察当局のまさしく捜査の内容にわたりますので、そういうものがあるのかどうかということをここでお答えすることはいたしかねるので、御勘弁いただきたいと思うんでございますが……。
  193. 塩出啓典

    塩出啓典君 これ恐らくそういう答弁でしょうけれども、これは新聞等ではどこから流れるのか知りませんけれども、大体そう言われておるわけであります。  そこで、これは自治省にお尋ねしたいわけでありますが、全日空から政治団体への寄付の状況ですね。これを届け出によりまして調べた範囲では、大体四十四年上期に靖国友の会に一万円、四十六年上期に南九州振興会に五十万、四十七年下期に岳陽会に三十万、国民協会に三百万、信政クラブに三十万、楢橋会に二十万、それから新政治研究会に三十万、それから四十八年はなし、四十九年上期に東京労働経済研究所に百万、四十九年下期に政経新風会に十一万、それから双葉会に五十万と。これは四十四年上期から五十年の上期までの間で、合計計算しますと六百二十二万の政治団体への寄付がなされておるわけでありますが、この点は間違いないかどうか、ちょっと確認しておきたいと思います。
  194. 佐藤順一

    説明員(佐藤順一君) お答えいたします。  自治省に提出されました政治団体からの収支報告によりますと、仰せのとおりでございます。
  195. 塩出啓典

    塩出啓典君 そうしますと、きょうは自治大臣を私要求しておったんですけれども、自治大臣、きょう来ないんですか。——自治省聞いてなかったですか。自治大臣とそれから大蔵大臣と、それから法務大臣と、そうでしょう。——それじゃ自治大臣おりませんけれども、かわりに聞いておいてくださいよ。来たらちゃんと言ったことを伝えて答弁してもらわなくちゃ困るよ。  今回逮捕されました田中角榮総理に関する政治団体、これは御存じのように越山会、あるいは政治経済調査会、財政調査会、経済社会研究会、あるいは新政経振興会、関西財政経済研究会、こういう六つの政治団体から四十七年下期より五十年の上期までの間に十三億九千六百万、約十四億の金が田中派の各議員の人に渡されておる。ところが、私いろいろ調べてみますと、その大半が、田中角榮氏の方は出していると。しかし、それを受け取った方の政治団体が受け取ったというそういう届け出がなされてないわけですね。これはいま言ったように政治団体として受け取った場合は、これは当然政治資金規正法によって届け出しないとこれは政治資金規正法違反になる。ところが個人として受け取った場合は、これは政治資金規正法の違反にはならない。これは言うなれば全部雑所得として——だからもらった金、それと実際政治活動に使った金と、差し引いて結局残れば届け出るけれども、そういうものは結局はっきりわからないわけですから、そういうところでやはりうやむやになっていく。今回、全日空から五千万か六千万か知りませんけれども、そういうものが政治家に渡されても、この中で、あの金はたしかロッキード社から来たのは四十九年ですから、四十九年上期以降見ても、わずか百六十一万の金しか受け取った人は届けていないわけですね。そういう点を考えると、結局個人に対する政治献金というものがどこをどう流れたのかさっぱりわからない。こういう点で、私は民主政治の根幹というものは、第一にやはり金の流れを明確にしていかなければならない、こういう点に大きな目的があるんではないかと、このように考えるわけですけれども、そういう点でこれは自治省あるいは大蔵省としては、そういう問題についてはどう取り組んでいるのか、こういう点についてはどう考えているのか、これをお伺いいたします。
  196. 佐藤順一

    説明員(佐藤順一君) 政治家個人が受ける寄付についてまで収支報告を義務づけるかということにつきましては、先ほど申し述べました政治資金規正法の制定以来の考え方、経緯等からいたしまして、きわめて慎重な考え方で対処しなくてはならないというふうに考えている次第でございます。ただ、つけ加えて申し上げますが、去る第七十五回国会において改正されました政治資金規正法新法におきましては、個人が受ける寄付につきましても、量的な面でもそれから質的な面でも両面から規制が加えられたという点はすでに御承知のとおりでございます。ちょっとつけ加えさしていただきました。
  197. 塩出啓典

    塩出啓典君 いまの御答弁からしますと、結局、現在の改正した政治資金規正法をさらに改正する気持ちはないと、こう判断していいわけですね。自治省としては、政治団体に対する政治献金についてはそういう規制があるわけだけれども、個人に対してのそういう献金については自治省は何ら考えていないと、そういうことですね。  じゃ、大蔵省はどうなんですか。
  198. 山橋敬一郎

    説明員山橋敬一郎君) お答えいたします。  先ほどもお話し申し上げましたように、政治資金として受け取りました収入金額から政治活動のために必要な経費を差し引いた結果、残額があればそれは雑所得の申告をするというたてまえになっているわけでございますけれども、この雑所得の取り扱いにつきましては、政治家でない一般の国民につきましても、雑所得に係る収入があっても経費の方が多く、結果として雑所得がない場合と全く同じでございまして、このような場合に政治家についてのみ収入の総額あるいは収支の明細と、こういうふうなものを申告する義務を課するということになりますと、税法におきまして一般の国民と比べまして政治家を差別的に扱う形になり、特殊の申告義務を課すると、こういうことになるわけでございます。税制におきまして納税者の社会的な地位に起因をいたしまして差別的な義務を実はこれに持ち込むということは、とうていこれは税法上は非常に困難な問題でございます。政治家個人につきまして政治資金の収支の全貌を明らかにすべきであるということでございますれば、これはむしろ税法の領域以外の実は問題ではなかろうかというふうに考えております。
  199. 塩出啓典

    塩出啓典君 この問題は先般の衆議院のロッキード委員会におきまして、わが党の坂井議員の質問に対して三木総理としても、それには「どのように措置するかということは検討を命じておる次第でございまして、その結論が出ますれば政府の考え方を申し述べたい」と、政府は、三木さんはロッキード委員会で、こういう問題は非常に国民の目から見て、非常に税の公平という原則から見て結局不合理であると、これを検討するということを言っているんですよ。それなら、大蔵省も自治省も全然いまの話じゃ検討する気持ちもないということになると、一体これはどこが検討しているのか。法務大臣、法務省は検討していますか、こういう問題は。
  200. 吉田淳一

    説明員吉田淳一君) 法務省といたしましては、この政治資金の関係、あるいは税制面、あるいは課税、脱税の問題、そういう刑事事件の角度から刑事局としては関係があるわけでありますが、特に政治資金規正法につきましては、新法で本年から質的、量的な面において画期的な改正が加えられておりますので、これらの違反につきましては適正な処理を図る必要があるということで、部内で意思の徹底を図っておるところであります。私どもとしましては、そういう法律の運用の中に違法な行為があれば、それは適正に措置しなければならないということで臨んでおるのでございまして、法改正の要否そのものにつきましては、主管当局で御検討するのに私どもの立場から今後とも協力したいというふうに考えております。
  201. 佐藤順一

    説明員(佐藤順一君) つけ加えてお答えさしていただきます。  先ほどの問題につきましては、三木総理の方から検討を命じられております。したがいまして検討はいたしておりますが、いままでの趣旨にかんがみて、まだ私どもの方では結論を得るに至っておらない、慎重に検討しておるということを申し上げたわけでございます。
  202. 塩出啓典

    塩出啓典君 どうも最初の答弁ではそれを忘れるようなこっちゃ困るよ。  それでですね、私が結局申し上げたいことは、なかなかうまく言えないわけでありますけれども、今日まで戦後数多くのいろいろなそういう疑獄事件があったわけであります。たとえば武州鉄道に関する汚職では閣僚クラス二名を含む十九名、あるいはタクシー汚職ですか、この場合は十一名、日通事件の場合四十六名、あるいは保全経済会事件では九十六名、造船疑獄では百名以上、全購連汚職では八十名、ともかくこういうように五百名に上る人たちが、金はもらった、しかし結局は、そのうちわずか二十名そこそこが起訴をされて、九五%以上の人たちが起訴もされない。そうなると国民の目から見て、結局事件はうやむやに終わったんではないか、こういうことが言われておるわけですね。  今回のこの事件にいたしましても、現在いろいろ起訴されておりますけれども、これはもう収賄事件ではない、全部外為法違反とか、こういうことになっておるわけでありまして、こういうところにやはり国民立場から見て、果たして今回のこの事件国民の前にそういう実体というものがはっきりしてくるのかどうか、そういう点に非常に疑問を持っておるわけであります。しかし、検察当局捜査方針あるいは起訴の容疑に対する問題というものは決してこれはいままでと——いままでは罪になるのも逃がしてやったけれども、これからきちっとやるという——前もやっぱりそういうふうにやってきたと思うんですけれども、それでなおかつこういうようにうやむやにされてきておる。こういうところがやはり国民から納得がいかないわけでありまして、こういう点について法務大臣としてはどう考えるのか、これを伺っておきたいと思います。
  203. 稻葉修

    国務大臣稻葉修君) 私は、いまこの事件捜査が進行中でありますからね、そういう段階でうやむやになるのでないかという御質問を受けましても、うやむやになるのではないかという御心配ですが、従来の例にかんがみて御心配でしょうなということは言えませんね。そんなことでは断じていけないと、徹底的に全貌を明らかにしなければならぬ、そういうふうに一生懸命にやっているという捜査当局の努力、それから気持ちをひしひしと感じておりますから、捜査当局を信頼しておる次第です。
  204. 塩出啓典

    塩出啓典君 もちろん、その気持ちはわかるわけですけれどもね。しかし、いままでも結局問題になってきたのは、政治献金か賄賂かという、こういう点でやはり非常に立証がむずかしいわけですよ。そうすると、われわれはそれは政治献金なら政治献金でもいいんですけれども、結局不起訴になるとそういう問題は公表されない。それではやはり国民の目から見てまた同じようなことになるわけなんですから、そういう意味でこれはやはり、大蔵大臣もいまお見えになったわけですけれども、現在の税法において、個人に対する政治献金というものは、雑所得としてそういうものはもう申告しなくていいんだと。結局そういうのが、一般の国民から見て、総裁選のときに一千万の金をもらっても、あるいは何百万の金をもらっても、結局そういうものは税務署の目の届かないところで——それはもう政治家を信用しろと言えばいいですけれども、いまはそういうように世の中の人は政治家というのを一番信用できない人間の標本に思っておるわけですからね。そういう点で、やはりわれわれは国民の不信を解くために、この捜査は——問題は捜査として、今後の問題として、そういう個人に対する政治献金についてもうやむやのないように、これは三木総理も検討すると言ったのですから、大平大蔵大臣としてもこれは検討してもらいたい。これはどうですか。
  205. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) 政治献金は、個人が受けた政治献金は、税法上の取り扱いは、いま仰せになりましたように、雑所得という形で処理いたしております。これは政治献金の取り扱いとして税法上大変不当かというと、そうではないのでありまして、税法の体系から申しまして、この種の収入を処理する場合には雑所得として処理するのが一番適当であろうと思いまするし、雑所得の場合には、これから経費を差っ引いて余りがあれば申告するということは、政治献金ばかりでなくすべての雑所得が同じそういう取り扱いになっているわけなんでございます。したがって、政治献金なるがゆえにそのようなフェーバーを与えているわけでは決してないことは塩出さんも御承知のとおりでございます。でございまするから、税法上の取り扱いとしてそれが不当であるとは私は思いません。ただ、政治献金の取り扱いが税法も、全体の体系を含めまして、立法政策上どう考えたらいいかということになりますと、これはまたいろいろな議論があろうかと思いまするし、私どももいろいろ検討はいたしておるわけでございますが、いま一応検討の方向といたしましては、これを税法で処理するということは必ずしも適当ではないのではないか。政治資金規正法というような法領域があるわけでございまして、そういったところで規制していくということが適当なのではないかと考えるわけでございまして、税法にその政治資金の規制というような特別な任務を付加すべきであるかどうかということにつきましては、歳入立法である税法にはそこまで期待するというようなことは若干無理があるんじゃなかろうかと、立法政策の問題として私どもはそう考えております。
  206. 塩出啓典

    塩出啓典君 これはまあひとつ、時間もありませんので、要は、私の言いたいのは、もらうのはどんどんもらえばいいじゃないかと。だからもらうのも堂々と申告をし、使うのも堂々と申告すると。そしてあとはやはり国民の皆さんの批判を仰げばいいわけであって、どこからもらったのかさっぱりわからないというようなのは困るわけであります。そういうことのないように、これは三木さんは衆議院で検討すると言たんですから、だからひとつきょうは稻葉法務大臣、それから大蔵大臣も来ているわけですから、ひとつ三木内閣の閣僚として、このような事件を契機として国民の不信をひとつ解くように努力をしてもらいたい。これは自治省の関係もあるでしょうけれどもね。三木内閣としてそれを私要求しておきたいと思うんですよ。それは大蔵大臣もいいですね、いま言った方向で努力してくれということはいいですね。私の言ったことわかりましたか。法務大臣
  207. 稻葉修

    国務大臣稻葉修君) おっしゃられること、大体賛成、わかりますがね。検討すべきことでしょう。ただ私はどんどんもらってどんどん使う方ではないです。そういうことはしたくない。
  208. 塩出啓典

    塩出啓典君 それから、これはいままで問題になりましたけれども、やはり今回の事件で、午前中の答弁でも、不起訴の場合は守秘義務のためにこれは金の流れも明らかにしないと、こういうような大蔵省からの答弁があったわけでありますが、しかし、これはやはりいずれにしても、法務大臣としても、ロッキード社から流れてきたそういう黒い金の流れについては、ともかく起訴、不起訴を問わず国民の前に明らかにすると、これだけは最低線の要求としてこれはひとつ異論はないと思うんですけれども、その点ははっきりしていますか。
  209. 稻葉修

    国務大臣稻葉修君) 刑事訴訟法の立法の趣旨を踏まえて最善の努力をいたします。
  210. 塩出啓典

    塩出啓典君 刑事訴訟法の趣旨とは別に、やっぱりこれは議院証言法に基づいて、もしこのロッキード委員会が検事総長なり、あるいは国税庁長官をやはり呼んで、そしてその税務調査の内容、そういうものを要求した場合には、これはたとえば検事総長に要求した場合は、法務大臣としても当然これはそういう金の流れについては許可しますね。
  211. 稻葉修

    国務大臣稻葉修君) 具体的な事件ができてきたときに刑事訴訟の立法の趣旨に反しない限りにおいては最善の御協力を申し上げます。
  212. 塩出啓典

    塩出啓典君 これはあれですよ、刑事訴訟法とはまた別に、これはやはり御存じのように、国家の重大な利益に悪影響を及ぼす以外は、これは委員会の証人要求があった場合はそれにこたえなければならないわけですから、そういう点では、刑事訴訟法とはまたもう一つこれはロッキード委員会の委員会として証人要求した場合は強いわけですから、その場合はこれに従ってやはり判断しなきゃいけないでしょう。刑事訴訟法四十七条とは別じゃないかと思う。その点はどうなんですか。
  213. 稻葉修

    国務大臣稻葉修君) 利益の比較考量でございますから、具体的な事件が起きてこの事項についてはどうだというときに、判断をして最善の御協力を申し上げると、こう申しているんです。
  214. 塩出啓典

    塩出啓典君 それから大蔵大臣にちょっとお伺いしておきたいと思うんでありますが、いわゆる無記名定期預金ですね、こういうものが戦後一時シャウプ勧告によってこれは禁止になっておったわけでありますが、これが昭和二十七年に復活をしているわけですね。で、今回のこういうような、いろいろロッキード事件を通しまして、また公平という点から見て、私はこういう無記名定期預金とか、あるいはまた架空名義預金ですね、こういうものはやはり禁止するように、こういうものが金融機関が不当な利益を隠すのに利用されると、こういうことになったんではこれは非常によくないんじゃないかと思うわけでありますが、そういう点で大蔵大臣としてはこれをもう廃止する考えはあるかどうか、その点どうですか。
  215. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) 戦後無記名預金というのがある時期では定期預金の半分以上も占めた時期があったわけでございますが、その後だんだんと減ってまいりまして、ただいまでは一%強にまで減ってまいったわけでございます。これがだんだんふえてまいるというようなことになりますと、一つの金融秩序といたしまして確かに問題なのでございますけれども、私どもの期待いたしておる方向に漸次漸減してまいったことは塩出さんも御承知のとおりでございます。しかし、これは根絶した方がいいじゃないかという御意見のようでございますが、これを根絶した場合にどういう影響が生ずるであろうかというような点をいろいろ考えてみるわけでございますが、あなたがたまたま言われました架空名義というようなものにこれが移行するというようなことになりますと、なお金融秩序は紊乱する恐れがないと言えないわけでございまするし、また現に金融債などは無記名の証書でそういう形の金融資産が流通いたしておるわけでございます。無記名預金ばかりじゃございませんで、そういう形の金融資産もあるわけでございまして、そういうものとのバランスも考えなければならぬわけでございまして、大蔵省として一概にいまこれを禁止するという決心がなかなかつきかねておるわけでございます。しかし、ただいま金融制度全体の問題が銀行法の改正等との関連で御検討を調査会でいただいておる段階でもございまするし、こういった問題についてはなお十分検討をしなきゃならぬ問題だとは思いますけれども、いまの段階でどうするということをただされますならば、直ちにいま禁止するということをお答え申し上げるわけにはまいらぬと思います。なお金融政策全体の問題といたしまして今後の検討を待っていただきたいというふうに申し上げたいと思います。
  216. 塩出啓典

    塩出啓典君 じゃこの問題は今後の問題にしておきたいと思います。  最後に、もう時間もありませんので、最後の質問をいたしたいと思いますが、いままで大久保氏を初めとして偽証罪で逮捕されたわけでありますが、小佐野賢治氏の場合も、この国会における証人喚問における発言が偽証であるかどうか、こういう問題については捜査当局としても当然捜査をしておる、そうして、もし偽証に当たる事実があればこの予算委員会の告発がなくてもその前に逮捕をするということはあり得ると、このように考えていいわけですか。
  217. 吉田淳一

    説明員吉田淳一君) 小佐野氏の二月十六日の衆議院予算委員会における証言について偽証の疑いがあるのではないかという御質問はしばしば受けているわけでございますが、この点につきましては、確かに一部御指摘のような、何と言うんですか、食い違いと言うんですか、そういうようなふうに客観的に見える部分もないわけではないわけであります。しかし、それが直ちに偽証になるかどうかということにつきましては、なおその点については十分慎重に判断をする必要があると考えるべき事柄であると思います。この点については、まず国会御自身がその点についていろいろ御検討なさっていると聞いておりますし、検察当局といたしましては、やはりはっきりした犯罪の容疑があればそれについて捜査権を発動すべき事柄は当然でございますけれども、問題は、そういうような容疑が十分にあるかどうかという点につきましては、そういう現在までの捜査の過程でそういうものがあるということの報告はまだ受けておりません。
  218. 塩出啓典

    塩出啓典君 小佐野氏はこの予算委員会の証言では、児玉氏との関係も単なる茶飲み友達である、こういうような証言をしておるわけでありますが、しかし、児玉氏はこの四十八年三月に国民相互銀行の株十万八千株を取得、その八カ月後に国際興業社主小佐野賢治氏に増資分も含めそっくり譲渡した、こういうようなことが言われておるわけでありますが、こういうような点も偽証の疑いがあるんではないか、このように思うわけであります。そういう点も十分調査をしているのかどうか、この点を伺っておきます。
  219. 吉田淳一

    説明員吉田淳一君) 小佐野氏の件につきましては先ほど申し上げたとおりでございまして、御指摘の点については十分貴重な御意見として拝聴して検察当局にも伝えることにいたします。
  220. 剱木亨弘

    委員長剱木亨弘君) 先ほどの塩出委員のお申出の件につきまして調査いたしましたが、衆議院予算委員会には小佐野賢治氏からは資料の提出はないとのことでございます。なお、非公式のものは私として調査するわけにいきませんので、御承知願います。
  221. 神谷信之助

    神谷信之助君 まず法務大臣にお尋ねします。  ロッキード事件は、七月の二十七日に田中角榮逮捕する、こういうことによって刑事的究明という点では中枢の一角にメスを入れたということになりました。国民はこのことについて当然の措置としてこれを支持していることは、大臣もよく御承知のところだと思うんです。ところが、昨日の自民党役員会で重大な発言が出ております。田中派の木村武雄国民運動本部長、この人が、一国の首相を務めた人物、こういう人については指揮権発動といったような方策もとってもよかった、いかにも指揮権発動で田中逮捕を抑えるべきだ、まさに血迷った発言をしております。国民が、疑惑の的の一つである田中角榮捜査の手が伸びるかどうか非常に大きな疑問を持っていた中で、捜査当局が田中逮捕に踏み切った。これを抑え込もうというような発言が出ている。まさにこれは国民の声を無視をした発言であって、この人が自民党国民運動本部長とはどうも考えられないというように思うんですが、法務大臣は、さきにわが党の橋本議員の質問に対して、指揮権の発動はやらない、また実質的にもそうとられるようなことはしないと、明確に答弁をされています。現在、田中派の派閥の大将の角榮が逮捕されたということで、こういう血迷った発言も出てきたり、あるいは今後またいろんな派閥からもさまざまな形の圧力が加えられるということもあり得るわけですが、法務大臣は、さきの答弁のとおり厳正に真相究明のために捜査当局を激励をする、そして指揮権発動、これは形式的にもまた実質的にもそうとられるような措置も含めて断じてやらないという、その態度を引き続いて堅持をされるかどうか、この点をまず明確にお答えいただきたい。
  222. 稻葉修

    国務大臣稻葉修君) お答えするまでもありませんな、それは。従来のとおりです。
  223. 神谷信之助

    神谷信之助君 田中逮捕はまだ事件の全貌究明が峠を越したわけでもありませんし、またその大筋の全体が明らかになったわけでもありません。この当委員会での調査の過程を経ても多くのまだ疑惑が投げかけられています。したがって、今後もいわゆる大物と言われる人たち逮捕の必要があるかもしれません。あるいは法務大臣の同じ派閥の領袖に対しても疑惑が投げかけられておりますから、場合によってはそういうこともあり得るかもしれません。しかし、法務大臣は、どのような派閥であろうと、そういう派閥にとらわれずに捜査当局の徹底的な究明を妨害をしない、そういう立場をとるのは当然なことだと思うんです。この点も言わずもがなのことかと思いますが、確認をしておきたいと思います。
  224. 稻葉修

    国務大臣稻葉修君) たびたび御質問を受け、たびたび答えているとおり、いずれの派閥を問わず、いずれの政党を問わず、不偏不党、派利派略にとらわれないという従来の態度に将来変わりはあろうはずがありません。
  225. 神谷信之助

    神谷信之助君 いま、昨日の自民党役員会の状況を見ましても、自民党の中にも三木総理引きおろし論といいますか、総辞職、交代論、こういったものが出てきていますし、また一部の野党の中にも三木内閣の総辞職論も出てきています。しかし、わが党はいかなる派閥の思惑にも、またいかなる党利党略にもよらないで、国民の前にロッキード汚職の全貌を明らかにするということを基準にして、政治上の責任も、また刑事上の責任はもちろんのこと、徹底的に究明をする必要があると考えているわけです。したがって、実際にこれに責任のある政府高官に対していかなる例外も設けるべきではない。政治上、道義上の責任を明確にして国民の前に真相を明らかにする必要があると考えています。  したがって、一部に言われているような三木内閣総辞職論にわが党は賛成をいたしません。しかし、これは三木内閣に対して寛容であるからではありません。ロッキード隠しに反対をして真相の全貌を解明を求める立場から、五党首の会談の合意に基づいて真相究明責任三木内閣から解除しない。すなわち、あらゆる形のロッキード隠しを糾弾をして打ち破っていくという立場に立っているからであります。  また政治的道義的責任、これを明らかにするということはロッキード社あるいは丸紅、児玉、小佐野、さらには田中、これらからいかなる名目にしろ金品を受け取ったり、あるいは供応を受けたり、あるいはそれに基づいていろんな動きをした、こういった人たち責任を明らかにすることであると考えているわけです。  そこで法務大臣、昨日テレビで、私も見ましたが、新潟であなたは三木内閣の屋台骨が揺れようとどうなろうとも、疑惑のある点については徹底的に究明をしなければならぬという演説をなさっています。私どもも三木内閣の総辞職には、総辞職論にいま直ちに賛成をする、そういう立場にはありませんが、徹底的に究明をする、そのことによって屋台骨が揺らごうがどうしようが、真相解明国民の前にわれわれは約束をしているわけですから、そのために全力を尽くすのが当然だと考えますが、法務大臣はこの点は確認をしていただけますか。
  226. 稻葉修

    国務大臣稻葉修君) それはいついかなる場所と、ときを問わず、私の一貫した法務大臣としての法秩序維持の職務上当然な態度でございますからね。それはこの事件ということに関連してやはり政治が金で動かされるという、そういうところがいけないんですから、前にも申し上げましたとおり、法をして支配せしめよ、正義をして支配せしめよ、金をして支配せしむるなかれ、たとえ三木内閣は滅ぶとも、こういうことでございます。
  227. 神谷信之助

    神谷信之助君 次に捜査当局にお尋ねしますが、田中の私設秘書の笠原政則さんが二日の朝死体となって発見をされました。これについて検察庁も警察当局も、ともに二日、自殺だというように断定をされたと聞いておりますが、その断定の理由はどういう点にありますか。
  228. 吉田淳一

    説明員吉田淳一君) この笠原氏の死体が発見されたときの状況、それから死体を検案したときの結果、血液中に多量の一酸化炭素が発見されて、一酸化炭素中毒死であるということが諸般の状況から明らかであろうと。で、その他、この現場の状況及びその前後の状況等から判断いたしまして、司法解剖に付する必要のあるものではないと。先ほど御指摘のように、自殺であるということが明らかであると判断したと聞いております。
  229. 神谷信之助

    神谷信之助君 そうしますと、自殺という判断をされたわけですから、もちろんもう遺体は御遺族の方に渡っていると思いますが、あの自動車はいまはどうなっていますか。
  230. 吉田淳一

    説明員吉田淳一君) その自動車の点については私いま聞いておりません。御遺族に死体は渡っておるわけでございますが、検察当局としては先ほど申し上げたように、自殺であることが明らかだとは思いましたが、なお一応この重大事件との関連もあり、御遺族の同意が得られればということで、御遺族の同意を得るべく努めたようでございますが、結局御遺族の同意が得られずに、司法解剖には付さなかったというふうに聞いております。
  231. 神谷信之助

    神谷信之助君 まあ、解剖に付さなかった理由はそれなりにわかりますが、いまの話ですと、ちょっと自殺という断定をすればもう捜査の対象にならぬわけですが、いまの答弁では何かロッキード、この事件との関係もありという意味でいうと、まだその点では断定したわけではないという意味も含まれているんですか。
  232. 吉田淳一

    説明員吉田淳一君) 決してそういう意味ではございません。念には念を入れてということで、検察庁が一応御遺族に、検察庁自身がやったか警察を通じてやりましたか、そこまでは詳しく聞いておりませんが、御遺族の同意を得るべく努めましたが、御遺族の同意は得られなかったというふうに聞いております。
  233. 神谷信之助

    神谷信之助君 そうすると、もう捜査の対象にならないわけですから、笠原さんの乗っていた自動車は当然所有者に返還されているであろうということになるわけですか。この点は事実つかんでおられませんから、どうかわからぬにしても、本来ならそういうことになるわけですか。
  234. 吉田淳一

    説明員吉田淳一君) 自動車につきましては、もともと押収したりしている手続はとってないと思います。したがいまして、当然その使用者あるいは所有者に返還される——返還というんですか、まあ返還というのもおかしいわけですが……に戻るのではないかと思います。
  235. 神谷信之助

    神谷信之助君 このロッキード事件に絡んでいろんな方々が病死あるいは疲労による死亡、そういうことで亡くなっておられます。これらの方々が全部疑惑がある、なぞがあるというわけではありませんが、一、二挙げてみますと、元丸紅の輸送機械部の副部長の松井直さんが七三年の三月三十日に突然に退職をして、その一年後には変死といいますか、心臓発作で死亡するという事件が起こっています。あるいはロバート・N・ウォーターズ、ロッキード社の元財務担当副社長が、これはロサンゼルスの自宅でライフル銃で自殺をするという事件が起こっています。それからラデン・チュチュ・スダルディ、ウエナス・インターナショナル・ジャパンの前社長、この人はシグ・片山から七四年にトライスター売り込み工作資金を受け取ったことが明らかになっている人物ですが、この人も七六年の二月の十七日に東京都内のゴルフ場で急性心不全のために死亡しています。まあそのほか過労で亡くなった、あるいは急性心不全で亡くなった、あるいは入水自殺をされたという、こういう方々が、新聞記者あるいは国税庁の脱税調査に当たった査察官、あるいは警察庁の担当官、こういった方々に起こっておるんですね。そうして今度また笠原さんが亡くなるという、そういう不幸な事件が起こっています。で、過去のいろんな疑獄事件を見ますと、非常にこういう自殺者というものが多く出ているわけです。したがって、捜査当局の方もそういう点にかんがみて参考人として事情聴取をする、そういう場合には、帰りにも家まで送って、気をつけてもらうように家族の人にも言う、あるいは朝出迎えに行くとかいうような措置までやっておられるという状況も聞いているのですが、この今度の笠原さんの場合は、一日の日に取り調べをやった後、そのままもう自宅に帰ってもらうという、そういう状況になってしまっているわけですか、この点はいかがですか。
  236. 吉田淳一

    説明員吉田淳一君) 笠原氏につきましては七月三十一日の午後、それから八月一日の午前から午後にかけて、いずれも数時間にわたって参考人としての取り調べを東京地検において行っていることの報告を受けております。で、その際に笠原氏の調査に対する協力というのは——について特に取り調べの当時に不審な点があったり、異常な点があったというようなことは全く取り調べ検事には思い当たらなかったようでございまして、どういうふうに帰ったのか、そこまで私聞いておりませんが、御指摘のように本人が東京地検を退出したというその後の事柄であるというふうに承知しております。
  237. 神谷信之助

    神谷信之助君 報道によりますと、東京地検を出て後、田中邸に立ち寄る、あるいは田中事務所に立ち寄るという報道もありますが、そこに立ち寄って、そして後死体になって発見されるという状況になっています。それから自殺という断定がまあ先ほどの報告によってされたわけですが、状況なりあるいは検案の結果、あるいは血液検査、あるいは現場の状況、そういった状況から自殺という断定をされたと言いますが、しかし遺書もありませんし、あるいはビニールの管についての指紋もないとか、あるいはドアの問題とか、まあ多くの疑惑が片一方では投げかけられています。で、この運転手という立場の人というのは、これは伊藤の専属運転手だった松岡はすでに逮捕されていますが、今度は田中の私設秘書として運転の仕事もやっておった笠原さんを自殺にしろ死なしてしまったと、これは捜査の上でも重大なミスではないかと思うのですね。検察側の方も、もう一回は取り調べをしたかったという、そういう談話も発表されています。そうして報道によれば自分が運転をしたところを自分で現場検証もして捜査にも協力をするという、そういう態度をとっておったというようにも言われています。家庭には子供さんが三人おられると。ですから、そう考えていきますと、自殺をしなきゃならぬという状況は見当たらぬという、そういう疑惑もたくさん残るわけです。こういった点について、これをこのまま自殺という断定が非常に早くなされて、そして現場の状況やあるいは重要な証拠物である自動車がこれはもう所有者に返される、こういうようになってしまいますと、もし自殺でないとすれば、これは重要な証拠隠滅の疑い、証拠隠滅をしてしまったということにもなりかねません。しかもこの事件はCIAがからみの事件であることは御承知のとおりです。CIAは上院の調査による報告書によりますと、握手をしただけでも相手に毒物を注入をして、そして一定の時間後に心臓病で死んでしまう、そういう自然死の形態をとった殺人の手口も駆使をしたという、そういうことが報告書に明らかになっているわけです。ですから、この点では非常に何といいますか、慎重に検討をして十分な納得のいく判断というのをあらゆる面からすべきではなかったのかという点が非常に疑惑として残っているわけであります。  同時に、もう一つの問題は、自殺であれ他殺であれ、事件解明のために協力をしてもらう、そういう参考人が自殺しなければならないような状況に追い込むということは避けなきゃならぬし、そういうことを防止をする任務が、責任がわれわれにもあると思うんですが、こういった点について捜査当局はどういうようにお考えですか。
  238. 吉田淳一

    説明員吉田淳一君) 本件につきましては、先ほど申しましたように、その死体の現場の状況等から見て自殺であることが明らかであると判断したわけでございます。この点につきましては所轄の小川警察署におきましてもそのような判断をし、もとより検察庁といたしましても種々その点について検討した結果、そのことが、自殺であるということが明らかであり、御指摘のような他殺の疑いがあるというようなことになれば、これはもう大変なことでございまして、それはもう検察庁、警察当局として放置できない事柄でありますが、その角度から検討しても自殺であることが明らかである——御承知のように御本人は後部座席において後部排気管からビニール管を引き込んでこれを口にくわえて死亡していたというような状況を通行人が発見したことからこのことがわかったようでございますけれども、それらの事情から見て自殺であるということが明らかだと判断したわけでございます。  で、第二の点につきましては確かに御指摘のとおりでございまして、この種の痛ましい事故が起きるというのは大変なことでございます。検察庁といたしましても万々が一でもそういうことがないようにできるだけの配慮をしなければいけない。そのためには、先ほど御指摘のように、場合によっては家へ送り返すとか、その他いろいろ温かい配慮もしなきゃいけないというふうに思います。本件では、先ほどのように、全くそういう点のおそれというんですか、不審というんですか、そういうことが主任検事にも全く感ぜられなかったので、前日も調べておりますが、そういうような措置はとらなかったのではないかと思いますが、御指摘のように、こういう痛ましい事故が起きてからでは遅いのでございますが、もちろん検察庁としてできることは配慮をしなければいけないと、そういう精神なり、気持ちで捜査に従事しなきゃいけないと、そういうふうに考えております。
  239. 神谷信之助

    神谷信之助君 私は何も他殺であるという断定をしているわけではありません。しかし、自殺と断定をするにしても、いまの答弁の中にもありますが、取り調べ官は二日間やって、そしてまさかそういう状況が起こるとは思っていなかったし、だから送り届けるということもしなかった。ところが実際には死体となって発見をされるという状況になっているわけですね。この点でもやっぱり矛盾がありますし、先ほど申し上げましたように、遺書の問題にしろ、指紋の問題にしろ、あるいはキーの問題にしろ、あるいはその地域の、埼玉県の地図が広げてあったという状況の問題にしろ、いろいろ考えれば素人は素人なりにいろんな疑問を持つわけですね。ですから、この点はわれわれは素人ですから、どうのこうの申し上げませんが、十分にひとつさらに慎重な上にも慎重に検討をして遺憾なきようにすべきだというように思います。同時に、いま話がありましたように、今後これは田中角榮逮捕されただけでも自民党の中はがたがたしてくるわけですし、この事件真相がさらに明らかになるにつれて日本のみならずアメリカにも、あるいはまた韓国にも大きな影響を与えるような、そういう大事件でありますから、今後ともこういうような痛ましい死亡ということが起こり得る可能性なきにしもあらずでありますから、取り調べの方法及び送迎の仕方、こういった点については十分に配慮をすべきだということを申し上げておきます。  次に、もう一つ捜査当局に聞きたいと思いますが、田中を外為法違反で逮捕して、檜山を起訴されました。五億円の金がロッキード社から丸紅を経て田中の手に渡った、この日時も特定をされています。この五億円がトライスターの採用の決定あるいはPXLをめぐっての贈収賄になるかならないか、この疑惑に基づいて、疑いに基づいて当然捜査当局は鋭意捜査を行っておられると思いますが、この点は間違いございませんか。
  240. 吉田淳一

    説明員吉田淳一君) 御指摘のとおり、檜山につきましては八月二日外為法違反、五億円の外為法違反の支払い側の公訴事実として証拠十分と判断して公訴を提起しております。その受領者は御指摘の居住者である田中角榮総理でございます。この田中総理につきましては、現在その受領の容疑事実ということで鋭意捜査中なわけでございますが、その捜査の過程におきまして、この五億円の趣旨、性格等は当然その捜査の過程において問題になると思います。それで、その趣旨、性格が明らかになり次第、もし他の容疑のことがあればもちろんその点も厳正に判断をするということになると思いますが、現在は外為法違反の五億円の事実についての容疑について鋭意捜査中という以上のことはお答えできません。
  241. 神谷信之助

    神谷信之助君 そこで、防衛庁長官にお尋ねしますが、七月の二十七日に田中逮捕されましたが、そのときに坂田長官は「閣議後の記者会見で、田中逮捕に関連して次期対潜しょう戒機については、これまでの調べでも疑惑は感じられなかったし、いまもそう思う。」と、いういうように語っておられます。「これまでの調べでも疑惑は感じられなかった」、こうおっしゃっていますが、これはどういう意味ですか。
  242. 坂田道太

    国務大臣(坂田道太君) PXLにつきましては疑惑が感じられないと私が申し上げましたのは、次期対潜機問題の経緯について、当の防衛庁のこれまでの調査結果から防衛庁については疑惑がないと判断し、そのように申し上げたものでございます。
  243. 神谷信之助

    神谷信之助君 いまのお答えですと、防衛庁については疑惑はないと言うんですか。防衛庁については疑惑がなければ、ほかにどこに疑惑があるということですか。
  244. 坂田道太

    国務大臣(坂田道太君) それ以上のことはわからないわけでございまして、いまのところは疑惑がないというふうに考えておるわけでございます。
  245. 神谷信之助

    神谷信之助君 私は田中逮捕によって一層疑惑は深まってきておると、こういうように思います。当委員会でも四十七年の十月九日の国防会議並びに閣議において文民制強化に関する件の決定までは新機種決定は国防会議にかける事項ではなかったということがもうすでに明らかになっています。したがって、田中議長の職務権限というのはもう非常にはっきりしているわけです。そしてこの十月九日の白紙還元の経緯をめぐって田中の果たした役割り、これも明らかであります。田中のツルの一声で十月九日のあの白紙還元の決定、輸入に向かって進み出すその第一歩が始まる、そのことは十月十一日の輸入にウエートを置いてという田中演説、外人記者クラブでの田中演説でも明らかになっています。そうしてその背景には田中・檜山会談あるいは十一月一日の丸紅の契約、十一月十五日のMDAOの説明会、こうして十月九日を起点にして国産化がストップし、P3Cの売り込みがゴーになる、こういう状況になります。しかも単にこれは防衛庁には疑惑はないと言って一生懸命おっしゃっていますが、これは後で言いますが、私は幾つかの疑惑を後で提起をしていきたいと思います。しかも防衛庁のみならず、あなたの新聞記者発言では防衛庁に疑惑は感じられないということは一言も言っていない。これは新聞記事の誤りだということに理解をしていいわけですか。
  246. 坂田道太

    国務大臣(坂田道太君) 私の真意はただいま申し上げました意味でございます。
  247. 神谷信之助

    神谷信之助君 御承知のように児玉はロッキード社と契約を結んでいます。十月の九日にいま申し上げたような重大な決定がなされました。児玉もこの決定をつくり出す上で何らの工作、働きかけをしていないという保証はないと思います。  そこで防衛庁にお伺いしますが、十月の五日に児玉が有力政治家にP3Cの輸入についての働きかけ工作を行ったという重大な報道がなされています。これはアメリカで確度の高い情報として報道をされておりますが、この問題について長官は、防衛庁は調査をされておりますか。
  248. 坂田道太

    国務大臣(坂田道太君) 赤旗の五十一年の七月の七日の報道のことだと思いますが、その後防衛庁といたしましてPXL問題の経緯について調査をいたしておりますし、またそのようなことにつきましてもいろいろ調査をしましたけれども、ただいまのところそういう事実は承知しておりません。
  249. 神谷信之助

    神谷信之助君 この報道によれば、児玉に流れたロッキード社からの工作資金が四十七年の十月六日からふえ出す。そうして全日空がトライスター導入を決定した後の十一月に入ってもさらにウナギ登りにふえている。「同年十月五日、児玉がA氏と会い、防衛庁が国産化方針を立てていたPXLを、ロッキードのP3Cを導入するため、白紙還元するよう依頼したことがわかりました。」という報道であります。で、わが党もこの点について調査をいたしました。この働きかけを受けた有力政治家というのは国防会議に出席をしている経済関係の閣僚であるという情報を得ております。で、経済関係の閣僚といいますと、当時の植木大蔵大臣中曽根通産大臣、有田経企庁長官、まあこういうことになろうかと思うのです。ところで七月の二十九日、朝日新聞の記事は、日本に渡っているアメリカ側の資料に中曽根、橋本登美三郎、二階堂、佐藤孝行氏ですね、これらの名前があるということを報道しました。当日の衆議院のロッキード委員会でわが党の庄司議員がこれについて質問をしましたが、それに対して安原局長は有力な情報として関心を持っているという答弁をしています。すなわち、これら四名の方々に対してこの記事が指摘をする疑惑が捜査当局としても重要な、有力な情報としてこれの真相解明を進めているということを明言をしたわけであります。  ところで、さらにアメリカ側の情報によりますと、嘱託尋問の関係者から得た情報として、日本側から嘱託尋問の項目を御承知のように向こうに届けています。その中に次のような項目があるということが報道されています。それは四十七年の十月から十一月にかけて七回、ロッキード社から児玉に対して約四億四千万円支払われたということ、これは事実かどうかという点。第二にこの時期、四十七年の十月に児玉が中曽根の家を訪問をした、これと関係があるかと、こういうことが嘱託尋問の項目の中にあるという報道があります。こういう項目が嘱託尋問の中にあるかどうかということをお尋ねをしても、これは検察当局もお答えになることはできないだろうと思いますが、しかし、先ほど言いました十月五日、児玉が有力な政治家に工作をした、有力な政治家というのは経済関係の閣僚である、それは植木、中曽根、有田の三氏である。そうして検察当局の方は四十七年の十月に児玉が中曽根宅を訪問をしたということ、この事実はこの嘱託尋問項目が正しく、正確であるならば、そのことはつかんでおられるということになります。きわめてこの点では重大な疑惑があると言わなければなりません。検察当局は当然こういった中曽根氏の行動についても重大な関心を持っておられると思いますが、この点はいかがでございますか。
  250. 吉田淳一

    説明員吉田淳一君) 検察当局が何を現在捜査しているか、捜査の焦点は何であるかというようなことを——お尋ねの点はそうであるかどうかは私は承知しておりませんけれども、一般的にお答えできないことはもう再三申し上げているとおりでございます。そこで朝日の記事にも確かに御指摘のような記載があったのでございますが、問題は検察庁自身が米国から過般の実務取り決めに基づいて資料の提供を受けて、その資料を一番知っているのは検察当局自身でございます。で、検察当局はその資料を見まして、それで必要なことは捜査を遂げているということだと思います。そういう、果たして新聞で報道されているような人の名前が載っているかどうか、それは私は全く承知しておりませんけれども、しかし資料が何であるか、中身が何であるかを知っているのは検察庁自身でございまして、検察庁自身がそういうことについて必要ならば十分捜査を遂げているというふうに思います。  で、証人尋問の嘱託書の尋問事項の中にそういう御指摘があるかどうか、全く私どもも承知しておりませんし、それは捜査の内容そのものでありますので、申し上げるわけにはいかないわけでありますけれども、いずれにいたしましても、検察当局としては提供を受けた秘密の米資料等に基づいて、それについて必要な捜査は十分遂げていると。ただし、もちろんいろいろな捜査には困難を伴いますから、最善を尽くしていると申し上げるのが妥当だと思います。
  251. 神谷信之助

    神谷信之助君 そこで防衛庁長官、先ほど四十七年の十月九日の国防会議議員懇談会ですが、これには中曽根さんもオブザーバーとして出席をされていることはもうすでに明らかであります。で、オブザーバーであっても発言をすることができるということになっていると聞いているし、ただ正規の議員でなければサインができないという、こういうことになりますね。だから、自由にこの問題では討論ができるし、発言ができるわけですが、その十月九日の当日、中曽根さんはどういう態度をおとりになったか、この点についてお伺いします。
  252. 坂田道太

    国務大臣(坂田道太君) これは国防会議事務局長からお答えしていただきたいと思うんですけれども……。
  253. 神谷信之助

    神谷信之助君 しかし、防衛庁で——国防会議が来てなければ何ですが、防衛庁の方は十・九の次期対潜哨戒機の経過については調査をされたんでしょう。調査をされた限りは防衛庁も御存じでしょう。
  254. 伊藤圭一

    説明員(伊藤圭一君) 防衛庁で調査した限りでは、中曽根当時の大臣が出席しておられたことはわかっておりますが、その国防会議での発言その他についてはわかっておりません。
  255. 神谷信之助

    神谷信之助君 異論を唱えられなかったということは明らかであります。私も調査をしています。まあこの点、午前中にも質問がありました。それをとらえて昼のテレビで中曽根さんが弁明をなさっている。それによりますと、他の省庁の問題についてはくちばしを入れない主義だから私は発言をしなかったと、また防衛庁と大蔵省との折衝が進められてあったということは知らなかったという弁明をなさっている。私はこれは弁明にならないと思うのです。他省庁の問題についてくちばしを入れないとおっしゃるけれども、四十七年に中曽根さんが通産大臣になられた直後に中曽根・エバリー会談がありました。その直後に、八月八日運輸省に対して、運輸大臣に対して、経済閣僚会議でエアバスの購入を検討してほしいということで運輸省にくちばしを入れています。あるいは防衛、大蔵の折衝の状況は知らなかったと言っても、両角次官は幹事会に出席をして防衛、大蔵の論争は熟知をしている。大臣が知らないという、そういうおかしな話はない。だから、この弁明は弁明として成り立たないというふうに思います。御承知のように中曽根さんは防衛庁の長官当時、武器国産化論者でありました。ところが、おかしなことには、十月の九日に国防会議で了解事項が決まって、白紙化が決まった、それ以後も異論を唱えない、こういう状況になってきている。で、私どもも防衛庁のいろいろな方々に当時の状況を聞きました。庁内にはこの変節に対して、中曽根さんの変節について大分不満があったようで、沈黙は金を地でいったといううわさもあったぐらいだという人もおります。この点について坂田防衛庁長官はどうお考えですか。
  256. 坂田道太

    国務大臣(坂田道太君) それは感想をちょっと私としては申し上げにくいことでございます。ただ、まあ十月九日、そしてその前日の八日の時点でわが防衛庁としましてはPXLについては防衛庁の主張をあきらめてくれと、こう大蔵から言われた。でございますから、しかし支援戦闘機の問題は何としてでもこれは認めてもらわなきゃならないと全部が考えまして、そしてその翌日国防会議懇談会に臨んだわけでございますが、前の日にはあきらめなければならなかった問題が少し息を吹き返したといいますか、また勝負ができるんだと、一縷の望みが出てきたということで、しかも支援戦闘機の方は国産で認められた、PXLについてはまた次の予算編成のときにも大蔵と勝負ができるんだと、こういう全体のことでございますから、私どもの調べた限りでは、会議それ自体としてはわりあい素直に皆さん方が受けとめられたわけで、輸入を含めてこの国産化の是非を考えてほしいという裁定でございますから、ごく自然じゃないだろうかというふうに思うんです。
  257. 神谷信之助

    神谷信之助君 大変おかしい話だと思います。  いままでの当委員会でこの十月九日の問題について議論をしましたときには、内海国防会議事務局長はこの了解事項の提案についてそれぞれいろいろと議論がされて、そして決まったんですという説明を何回かなされている。ところがいまの話ですと、すんなりとそれが決まったとおっしゃる。しかも中曽根さんは有名な国産化論者である。通産大臣だけではなしに、防衛庁長官もなさっておった。その点では庁内ではだれ一人知らない者はない。その人が自分の所管事項ではない、自分の知っていることで、沈黙は金だということで、黙して語らずというところに重大な私は疑惑があると思います。  そこで法務大臣にお伺いします。法務大臣法務大臣、あなたの出番です。参議院の五月十三日の法務委員会で法務大臣は、児玉を見たのは十回ぐらいで、会って話したのは記憶では三回ぐらいだというふうにおっしゃっていますね。それじゃお尋ねしますが、児玉を見たのは十回ぐらいとおっしゃる。その十回のうち、その同じ会合ですか、席上に中曽根さんは何回ぐらいおられましたか。
  258. 稻葉修

    国務大臣稻葉修君) わかりません。
  259. 神谷信之助

    神谷信之助君 何回かは恐らく中曽根さんもおられたことがあろうかと思うんです。この点は具体的に記憶はないにしても何回かはあるでしょう。いかがですか。
  260. 稻葉修

    国務大臣稻葉修君) わかりませんな。
  261. 神谷信之助

    神谷信之助君 それじゃ、同日その同じ法務委員会で、わが党の橋本委員の質問に対して、中曽根事務所におった太刀川ですね、いま児玉の筆頭秘書で逮捕されている人物、これが中央大学への入学のあっせんを頼むと中曽根さんの紹介を持って法務大臣のところに来られた、稻葉さんのところに来られた、こういうことを答弁をされています。この点から言いましても児玉と中曽根とは深い関係があったということは言えると思いますが、この点はお認めになりますか。
  262. 稻葉修

    国務大臣稻葉修君) それもわかりませんな。わからない。
  263. 神谷信之助

    神谷信之助君 きわめて常識的なこともわからぬとおっしゃるのは解せぬです。というのは、中曽根さんの事務所で太刀川は預かってもらって、四年間、そしてその後児玉のところに仕立ててもらって返してもらう、こういう関係でしょう。だから、児玉と中曽根さんとはそういう深い関係であった。だから、中曽根さんが太刀川に中大への入学あっせんをあなたにお願いになる。それは児玉から預かっている人物なんだから、だからあなたに、あなたが中大の元教授をなさっておった関係から、そういうことで依頼されたのだろうと思いますが、だから、そういう点では児玉と中曽根とは、秘書を教育をしてもらったり、あるいはそれの大学の入学についても中曽根さんにめんどう見てもらう、そういう児玉と中曽根の関係というのが当然あったわけでしょう。
  264. 稻葉修

    国務大臣稻葉修君) 中曽根さんのところから太刀川という少年が私のところに直接来たか、中曽根さんの秘書でこういうのが中央大学を受験するから紹介してくれというのであったか、よくは定かに覚えておりませんがね。それから、その太刀川という中央大学へ入学した男が中曽根事務所にいたことは私知らない、後で聞いた話ですね。その当時は認識なしなんです。
  265. 神谷信之助

    神谷信之助君 認識なしとおっしゃいますが、しかし児玉と中曽根が深いつながりがあったということは、たとえば六六年に河野一郎さんが亡くなったときに、児玉は、河野の跡を継ぐのは中曽根だと称賛をしている。これは児玉自身の著書にも書いています。それから六九年に自民党の中では最も期待できる人物、それは中曽根だと、これも書いている。だから、非常に秘書を預かり、教育をするという関係、あるいは児玉と中曽根は、中曽根さんを児玉が称賛をする、そういう近い、親密な関係であったということは児玉自身の著書を見ても明らかであります。これはいま二カ所ほど引用しましたが、そのことを児玉自身が自分みずから著書でも明らかにしております。  そういう児玉がロッキード社からお金をもらって売り込みの仕事をやるという契約を結んでいる。そうして十月九日という重要な決定がなされる、そういう時期に、中曽根さんに児玉が工作をしないというようなことはあり得ない。そう考える方がおかしいと言わざるを得ないと思うのです。したがって、先ほど申し上げましたが、児玉が十月の五日に有力な政治家に工作をした、こういう、これは非常に確度の高い情報であります。しかもその政治家というのは経済関係の閣僚である。中曽根さんも当時通産大臣である。そして検察庁のアメリカに送っている嘱託尋問の項目の中には、四十七年の十月に児玉が中曽根宅を訪問をしているというこの事実もすでにつかんでおられるようである。  これらを考えますと、中曽根氏に対する疑惑、これもまた非常に大きいと言わざるを得ません。私は今後ともこの問題はさらに追及をしていくつもりでありますが、この疑惑を明らかにするということが必要であるというように考えております。  そこでもう時間がありませんから急ぎますが、四十七年の秋、ロッキード社の対日工作ですね、これはハイライトになってきています。すでに明らかなように、コーチャンは十一週間この期間に滞日をする。そしてその間に九月三十日にはトライスターが決定をする。十月九日には白紙還元をし、そしてP3Cの売り込みが決まる。十一月一日には丸紅とロッキード社の契約が成立をする。そして十一月三日に意気揚々とコーチャンはアメリカに帰る。このとき児玉も重要な役割りを果たしていたことは疑いないわけであります。  そこで児玉の政治団体、これ交風倶楽部といいますが、これを調べてみますと、これは昭和四十年の十一月一日に結成をして銀座の塚本総業ビルの中に事務所を置いています。代表世話人は亜細亜大学総長の太田耕造氏。この太田氏と安部源基氏、安岡正篤氏、これらが三長老と言われている。およそ二十人の同人がいるわけなんですが、その中の一人には例の福島県の汚職によって逮捕されております東亜相互企業社長の町井久之あるいは総会屋の藤吉男、あるいは同じくこれは亡くなりましたが永光伝、まあこういった方々が顔を並べている。この交風倶楽部は児玉の政治活動の参謀本部で、そして実戦部隊は青思会加盟の三十団体であると言われているわけですが、四十九年の九月の十三日に児玉が脳血栓で倒れるまで大体月一回定例会を開いていた。そういう政治団体であります。  そこで自治省にお尋ねいたしますが、この交風倶楽部に小佐野賢治氏が関係をする日本電建と国際興業が四十三年から五十年にかけて政治献金を行っていますが、これについて報告していただきたいと思います。
  266. 前田正恒

    説明員(前田正恒君) お答えいたします。  四十三年から五十年の上期にかけまして国際興業から交風倶楽部に対しまして政治献金されました総額は四百八十万円、それから日本電建から交風倶楽部への政治献金の額は二千六百四十万円が出されております。このように収支報告書には記載されておるところでございます。
  267. 神谷信之助

    神谷信之助君 まあ時間がありませんから、年別なやつをちょっと申し上げますから、そちらでひとつ確認をしていただきたいと思います。  日本電建と国際興業を一緒にして言います。四十三年が二百三十万、四十四年は三百四十万、四十五年は三百五十万、四十六年は四百万、四十七年は八百二十万、四十八年は四百三十万、四十九年は三百六十万、五十年は百八十万、大体これで正しいですか。
  268. 前田正恒

    説明員(前田正恒君) ただいまおっしゃったとおりの額でございます。
  269. 神谷信之助

    神谷信之助君 これで御承知のように、四十七年が八百三十万と異常に多いわけであります。すなわちロッキード社のトライスター及びP3Cの工作が激化をした四十七年の秋、この時期、小佐野賢治から交風倶楽部にも金が、政治献金が送られています。そして政治資金報告によりますと、四十七年から四十八年、四十九年にかけて交風倶楽部は連日のように会合をし、飲食を行っている、そういう状況が、毎日のようになされる状況があります。調べただけでも、これだけの分量があるわけです。時間の関係から私が言いますから、間違いないか確認をしていただきたいと思います。  四十七年の九月から十一月にかけて会食という項で、目的が会食という部分で九月十三日三万一千五百十六円、千代新。十月十四日六万五千八百九十円、吉兆。十一月十六日五万八千二百四十円、吉兆。十一月十六日九万一千八百三十五円、千茂登。以上ですが、間違いありませんか。
  270. 前田正恒

    説明員(前田正恒君) おっしゃったとおりの内容が収支報告書に記載されております。
  271. 神谷信之助

    神谷信之助君 もう時間ですから、あと最後になりますが。  この吉兆というところは、これは田中角榮の当時秘書官をしておった木内昭胤氏の証言によりますと、よく田中角榮も利用したところだということであります。千代新については先般橋本委員が質問をいたしました。田中、コーチャン、小佐野、児玉らがここで会談をした疑惑を明らかにいたしました。吉兆もしかりであります。十月十四日吉兆を使っておりますが、この日は早朝御承知のように田中−檜山会談が行われた日であります。夜丸紅や、そして児玉、田中らの鳩首会談が行われたという情報も得ております。あるいは十一月十六日はこの吉兆とともに千茂登を利用しています。そしてここではちょうど十月三十日にトライスターが決定をする、十一月一日に丸紅とロッキード社の契約が成立をする、こういう状況の中で児玉を含めて政府高官を含めた会合が行われた疑いが十分にあります。  当時ロッキード社の日本への送金を見ますと、四十七年の十月から急にふえて十月だけで四億、十一月には六億の金が送金をされています。そしてこの一部が児玉に届けられ、そしてさらに児玉から田中らその他の政治家に四十七年の十二月に行われた総選挙の準備として渡っていったと、こういう情報もわれわれは得ております。このように児玉の果たした役割りというのはこの時期きわめて重要な動きを示していると思います。捜査当局はコーチャンについてその足取り、接触した人物、それら一切を含めて重大な関心を持って調査をしているという答弁を前回橋本委員の質問に対して行っておりますが、この児玉についても当然これらの動き、捜査当局は十分な関心を持って捜査をしていると思いますが、この点はいかがですか。
  272. 吉田淳一

    説明員吉田淳一君) 御指摘のとおり、昭和四十七年における児玉がロッキード社から受領したと認められる金額は総額十一億八千万円を超えておるわけであります。その点について所得税法違反ですでに起訴をしておるわけでございますが、児玉のこのマーケティングコンサルタント契約に基づいてどういうような行動をとって、またその金銭はどういうふうに使われているかということは、まさしく捜査の焦点でございますので、お尋ねの点のような事実については私は捜査当局から聞いてはおりませんけれども、児玉の全行動について詳細な調べをしているものと思います。ただ先ほど申しましたように、児玉の病状等から言って種々困難な事情があるようで、必ずしも所期のとおりの順調な進展は見せていないと思いますけれども、その中でいろいろな困難を克服しながら、児玉のこのコンサルタント契約に基づく諸行動と金銭の使途について鋭意最善を尽くして捜査をしておるわけでございます。
  273. 神谷信之助

    神谷信之助君 これで終わります。
  274. 木島則夫

    ○木島則夫君 まず官房長官にお伺いをいたします。  すでに臨時国会の日程につきましても、自民党幹事長が具体的な話し合いに入りたい旨を決められて、あしたからですか、五日から野党折衡に入る、入りたい、こういう構想のようでございますけれど、臨時国会を八月中に開くか、あるいは開かないか、これもかかってやはり捜査の進展と大きな関係があるわけでございますけれど、官房長官がいま把握をされていらっしゃる捜査の進展状況と申しますか、そういうものはどんなふうに受け取られておりますか。
  275. 井出一太郎

    国務大臣井出一太郎君) お答えいたします。  私の方は捜査の進展状況というものを直接に確かめるよすがはないのでありまして、ここにいらっしゃる法務大臣などと、まあ感触という程度でしょうか、そういうふうなことをときあっては伺うこともございますが、まあここに幸い法務大臣いらっしゃいますから、むしろそちらへお確かめを願った方が的確だと思います。
  276. 木島則夫

    ○木島則夫君 私があえて官房長官にお尋ねをいたしましたのは、やっぱり野党と臨時国会の開会についての折衝に入りたいという自民党幹事長の御希望もございますので、その辺は当然前提となる捜査の日程というものをきちっと考えての上でのことでなければならないという、こういうことでお伺いをいたしました。法務大臣、いかがでしょうか。捜査の進展というか、見通しについてあるいは重複をするかもしれませんけれど、ひとつ教えていただきたい。
  277. 稻葉修

    国務大臣稻葉修君) 本日ただいまこの席でこういう捜査の日程の見通しを私が持っておりますという材料はございません。もう少しかかりますと思います。
  278. 木島則夫

    ○木島則夫君 もう少しかかるという意味を勝手な推測で言わしていただくと、もう一週間か十日で山を越すという法務大臣のお答えにそれが該当することになるんじゃないかと思います。  どうでしょうか、官房長官ね、それにいたしましてもなかなか厳しい日程になるんじゃないかと思いますけれど、その辺はいかがですか。
  279. 井出一太郎

    国務大臣井出一太郎君) 木島さん、厳しいとおっしゃる意味は、この臨時国会において懸案でございます積み残し法案を処理すると、これはまあ歳入法案でございますから、やはり時間的な制約も一方においてはあると、そういうこととも含めて日程的に厳しいというふうな御意見であるとすれば、おっしゃるようになかなかその辺をいま苦慮しておるところでございます。
  280. 木島則夫

    ○木島則夫君 私のお尋ねの仕方がちょっと抽象的で恐縮でございました。私が厳しいと申し上げたのは、当然臨時国会の性格とも関連、内容とも関連するものでありますけれど、ロッキードの処理ですね、それも当然中に入ってくる。しかし、現在のところまだその問題の道義的あるいは政治責任者の定義、基準、そうして公表の仕方、あるいはどこまでその範囲を広げるか、範囲をどこにするかというような共通の理解もまだ私はできていないと思うんですね。そういうことなどもやはりひとつ考えますと、大変臨時国会というものは厳しい日程になるんではないだろうかと、具体的に質問をすればこういうことです。
  281. 井出一太郎

    国務大臣井出一太郎君) いまおっしゃったこの政治的あるいは道義的という問題、これは捜査途上にあります現状においては、まず刑事的なある程度の全貌とでも申しましょうか、それが解明されてしかる後と、こういうことに相なるであると思います。したがいまして、これは政府ももとよりでありますが、当委員会を初め、国会側の従来の御審議の経緯もございますから、そういうふうなお立場をも勘案して、いまおっしゃるようなことを明確にいたしまするとすれば、確かになかなかこの臨時国会厳しいものだと、こういう点は同感でございます。
  282. 木島則夫

    ○木島則夫君 いま、じゃ八月のいつ開かれるかというふうなことを伺うのは無理であるとも当然思います。で、いま私が申し上げた道義政治的な責任者の追及を徹底的に国会でやるとなれば、私は相当の日程も食うだろうし、それにも相当のエネルギーをかけなければやっぱりできないと思いますね。それと同時に、やはり不況を脱出するためといういわゆる財特法の処理もしなければならない。重ねて積み残し法案もあるというようなことになりますと、私はやっぱり非常に厳しいだろうと思いますね。非常に厳しい。どうですか、もう一回伺いますけれど、八月の下旬にはお開きになれる可能性ございますか。
  283. 井出一太郎

    国務大臣井出一太郎君) ただいまのところ、あすあたりですか、衆議院の議運理事会などがおありと聞いておりますので、その辺で各党の感触もお確かめをいただくということでございまして、まあそういうふうに流動的なものがいろいろとあるには違いございませんが、まあこの月のうちに何とか臨時国会をお願いする段取りにこぎつけたいと、こういうただいま一つの希望を抱いておるわけであります。
  284. 木島則夫

    ○木島則夫君 まあこの問題に余り時間をかけても何でございます。しきりにいま自民党の中、党内でも言われているし、また世間一般でも言われている人心一新ですね。人心一新。実は私どもの党でもともかくロッキード問題に早く終止符を打って、そうして財政処理問題にも決着をつけて、それを処理した上で人心一新、政局の転換を図らなければならない、イコールそれは解散であるというふうな点で強く申し入れをしてございますけれど、人心一新という、しきりに言われている人心一新というこの言葉を官房長官、どんなふうに受け取られておりますか。
  285. 井出一太郎

    国務大臣井出一太郎君) 実はきょうお昼少し前でございました。民社党の池田国対委員長見えまして、いま木島さんおっしゃるような意味の人心一新ということを承りました。まあいま世上に伝えられるという御指摘の人心一新は、これはロッキードの解明ということがまずその先決問題として横たわっておるのでございまして、私もその人心を一新するということのためにやはりいままだ十分解明されていない部分、こういうものが明らかになってその上に初めて人心一新ということが言い得るのではないかと。ですから、いま言われておる人心一新というのは、私は私なりに言わしていただけばどうも明確でないという感じがいたします。
  286. 木島則夫

    ○木島則夫君 官房長官、結構でございます。時間の関係であと法務大臣に御質問いたします。  この当委員会、私もしばらく席を置いてこの流れをずっと見ておりますんですけれど、法務大臣のお立場というのはやっぱり一口に言って非常に大変だと思いますね。口をかたく閉ざせば閉ざすで何とか言わないか、はっきりしないかというふうな発言も出ますし、世論もそうですし、またずばりずばりおっしゃいますと、いつあなた総理になったんだろうかなんという言葉も出るぐらいですね。国会でなかなか言いにくいこともおありだろうし、それがたとえば地元においでになって、あるいは仲間内の講演会などに行くとわりあいに気楽な気持ちでざっくばらんにおっしゃる。また相手もやっぱりいま法務大臣時の人でありますから、あなたがおいでになるということでもう大きな期待を抱くわけですね。何か新しいものが出るんだろうというふうな期待の中にやっぱりあなたをお迎えになるんだろうと思います。私もマスコミにいて、つたない経験ですけれど、確かに何というか、部分だけを抽出して拡大してみたり、また全体のトーンのオクターブを上げて扱ったりということは私に限って言っても実はそういうことがあるわけでございます。ましてや、いまロッキード問題に集中をし、法務大臣のそれこそ稻葉さんの一挙手一投足に全国の注意が殺到をしているこの時期でありますから、非常に大変だと思いますし、そういう中で厳正なまた公平な捜査というものを進めていく、指揮をなさる、非常に大変だろうと私も思うんですね。で、ここ一連の稻葉さんの発言について、法務大臣発言について、いまその時点その時点でとやかく言ってみたところで、私はやっぱりある距離を置いて、やっぱりある時間を置いてみて初めてそれが真実であったかどうか、あのときはあれでよかったのかどうかというような判断に立たなければならないという意味で、私はいまここでとやかく一つ一つ言葉だけをいわゆる取り上げてどうのこうの言う気はさらさらございません。私は非常に法律についても素人でございます。ですから、私がこんなことを申し上げているのは、何を素人がというお気持ちになるかもしれませんけれど、ひとつきょうは率直に、いわゆる大臣としても、一人の政治家としてもおっしゃりたいことたくさんあると思いますわね。だから、遠慮なくいま率直に思っている感想というか、そういうものをお聞かせくださいませんか。で、この委員会そのものが本当に機械的な質疑のやりとりでというようなもので私はないと思う。やっぱり法律というものを運営する者も人間であるし、捜査に携わっている人たちも人間であるしということを考えますと、やっぱりお互いに理解を深めるという意味でも、何というか率直な今日の時点での、いまの時点でのあなたの率直な感想というか、そういうものを聞かしていただければ大変ありがたいんでありますけれど、いかがでしょうか。私がこういうことを申し上げると、この場じゃそんな感情論とか、そんなよけいなものは、付随的なものは一切要らないというふうにお断りいただければそれはそれでいいけれど、私が求めている真意はいま言ったような中にもあると思いますので、ひとつお聞かせをいただきたい。
  287. 稻葉修

    国務大臣稻葉修君) いろいろ感想はあるわけですね。まあ法務大臣がこんな忙しくなる世の中というものは悪い世の中だ、困ったものだなと。しかし、これその地位にあって職務があるんだから、まじめにね、人間のやることだから間違いが多いんだろうから間違わないようにやらなきゃいかぬなという気持ちがありますね。それからよく人心一新なんて言うけれども、人はどういうことを人心一新と言うのか知らぬけれども、こういう事件が起きて人心一新と言えば、政党人もそうだが、国民全体がね、金だけが幸福の最大なるものというような風潮はさらりとこの際世の中から取り去ると。そうしてもっととうといものがあるんだという風潮を世の中にも、またわれわれ政党人も持たなきゃいかぬと、こういうことを私なりにそれが人心一新じゃないのかと、こういうふうに思ったり、またこれいろいろなことを、こういう時期ですし、法務大臣ですから、何とかかんとか言われますわな。これ一々、何といいますか、敏感に応待しちゃいかぬと、無心でなきゃいかぬと、これは。虚心、無心に、淡々として、平常心これ道という態度で行かにゃいかぬとか、そんなことをいま考えております。
  288. 木島則夫

    ○木島則夫君 何かわかるような気がいたします。その平常心、無心と、虚心ということで、以下私が御提案を申し上げることにひとつお答えをいただきたいんでありますけれど、臨時国会の日程も先ほどから議論に上っているようなわけでありまして、この議論が具体的に始まってまいりました。臨時国会での重要課題の一つは、さっきも私ちょっと触れたんでありますけれど、ロッキード事件政治的道義的責任究明ですね、これにあると思います。いま必要なことは、この道義政治責任の定義と公表の仕方についての共通の理解をいかにしてつくっていくかという、このことが私非常に大事だろうと思いますね。ですから、こういう立場見地に立ちまして、以下具体的な御提案をしたい。そしてこれに対する法務大臣、法務省の見解というものもちょうだいをしたいと思うのであります。お断りをしておきますけれど、こういうことについては国会で最終的に基準をつくるのが当然でございますけれど、国会でのこの議論についての共通の基盤をつくるための一助としましても、私の提案に対する法務省の見解、参考意見なども聞かせていただきたいと、こういうことであります。国会だけが先行しちゃって、やっぱりそれと後で突き合わせてみたら法務省の考え方とが全然違っていたということがあったら、これは大変なことになると思うわけであります。  そこでまず第一は、公表の基準について。これも数度取り上げられたことがございますけれど、きょうは具体的に私提案をしてみたいと思う。私はこの基準についてはロッキード社並びにこれと関連する企業ですね、または個人から金品を受け取ったけれど、以下の理由で起訴を免れた者がこれに相当すると考える。以下の理由というのは、まず第一に時効の成立した者と考えますけれど、この理解については法務省はどうお考えでございますか。一つ一つで恐縮でございますけれど、まず時効の成立した者と考えますけれど、この理解についてはいかがでしょうか。
  289. 稻葉修

    国務大臣稻葉修君) 法務省で相談したことないものですからね。私個人の見解でよろしゅうございますか。
  290. 木島則夫

    ○木島則夫君 結構でございます。
  291. 稻葉修

    国務大臣稻葉修君) 私はそれは入ると思いますね。
  292. 木島則夫

    ○木島則夫君 個条的に御質問いたしますので、恐縮でございます。  第二は、情状によりまして、つまり金品の額というか、高が小さいというような理由で起訴猶予処分となった者と考えますけれど、こういうものはいかがでございましょうか。
  293. 稻葉修

    国務大臣稻葉修君) それはちょっと専門的なものになりまして、いままでの造船疑獄とかいろいろな事件がありましたな。それで額が少ないから不起訴になった例があるのかどうか、そんなようなことにも関係すると思いますね、従来の。ですから、これは私個人の意見で入りますとか、入りませんとか申し上げられませんな。刑事課長に聞いてください、これは。
  294. 吉田淳一

    説明員吉田淳一君) どうも私のような事務担当者の方からお話ししますと、話がかたくなる答えになってしまうんでございますが、やはり一般的にどういう、たとえば起訴猶予とか時効の場合とかということが公表することが適当だと言えるのかというのは、やはりそういう不起訴の理由というそれだけで分類をして考えますのは、どうかなという感じがするわけでございます。やはりその中身なり、事件の内容なり、ケースなり、そういうものがやはり一つあるのではないかと思います。したがいまして、私どもの、この問題については高度な政治判断の問題ですから、一事務当局としてはとても最終的に判断する事柄ではないと思いますけれども、その事務当局としての考え方といたしましては、やはり検察庁が不起訴の処分をする場合にどういう態度をとるかと、またどういう態度をとるべきかということにやはり重点が置かれると思います。検察庁の処分というのはやはり刑事責任を追及するということの存否というところにあるものでございますから、それ以上検察当局がこれは実はこうであるというようなことをやるというのは、実際に従来伝統的にはほとんど例がないわけでございます。もちろんそういう例が全くないとは申しませんけれども。したがいまして、起訴猶予の場合に一律にこうしてもいいんじゃないか、あるいは時効完成の場合には一律にこうしていいんじゃないかということは、私どもとしてはまだ判断しかねているというのが実情なんでございますが。
  295. 木島則夫

    ○木島則夫君 なかなかむずかしいですね。まあ法務大臣ね、以下まだ三つ、四つございますんで、ひとつ個人的な見解でもいいですから聞かしていただきたい。  第三は、当然検察当局が公判維持のための証拠不十分として不起訴にした者、これはもう当然でしょうね。
  296. 稻葉修

    国務大臣稻葉修君) これはどうだ、これはどうだ、これはどうだというお聞きになり方について、私が個人としてでもいいから言えと、こう言われましても、個人として言ってもだめなんです、近ごろね。あなたは私の一挙手一投足が非常に波紋を起こすと最初に言われたのですから、そう波紋をいま起こしたくないんです、私。ですから、一々これと、これと、これという順にやられてもちょっと早いんじゃないですか、時期が、きょうは。どうでしょう、きょうは。
  297. 木島則夫

    ○木島則夫君 六月二十三日に直接灰色高官とは何かという言明はなさっていらっしゃいませんけれど、それに通ずる御発言もしていらっしゃるものですからね。私はきょうの時点で伺っていいんだろうと思ったわけでございます。私の聞き方の中に矛盾点があるかもしれませんけれど、以下それじゃ二つ、三つまとめて申し上げます。  その次は、請託の事実を立証することのできなかった者ですね、請託の事実を立証することができなかった者。その第五は、実際には影響力を持つけれど、職務権限がないために訴追を免れた者。具体的に言っていいかどうか、たとえば航空議員族というようなものがこういうところに当てはまるかもしれませんね。それから第六は、金品の受け取りが賄賂性を帯びてはいるけれど、それが議員本人ではなくて、その政治団体であるとか、あるいは後援会などの名目で受け取ったために訴追を免れた者と、こういう点について伺いたいんですけれど、さっきの最初個人としておっしゃると言ったのだから、ひとつ個人としておっしゃってくださいよ。何か途中で係官が背中をおたたきになってから発言がかたくなったようでありますから。
  298. 稻葉修

    国務大臣稻葉修君) いや、六月二十三日に私申しましたのは、決していわゆる灰色高官の分類をしたわけではなく、そういうものとは無関係に捜査の対象にはしたけれども、不起訴になる場合はこう、こう、こう、こうと言ってたしか五つくらい挙げましたんですよ。それは灰色高官の定義を言ったり、その灰色高官の公表のするしないとかいうこととは無関係な発言なんでございまして、それは御理解願いたいと思います。  それから、後ろから肩たたかれたら急に黙るようになったんではなくて、だんだん、だんだんあなたの初めの方からいってだんだん深入りする、ますます深間に浜千鳥みたいになるような気がするものですからね。それでちょっと警戒心を起こした、私ね。
  299. 木島則夫

    ○木島則夫君 いや、私はやっぱり臨時国会の課題が非常に大事なものですからね、課題の大事な一つでございますんでね。ここでは多少非公式的なものであってもいいから、共通の広場みたいなものを伺っておいて私どものまた提案の参考にもしたいという意味で申し上げているわけで、深みにはめるなんていうようなことはさらさらございませんけれどね。いま私が申し上げた第四から第六について具体的なお答えがございましたらひとつおっしゃっていただきたい。
  300. 稻葉修

    国務大臣稻葉修君) 時期尚早と考えます。
  301. 木島則夫

    ○木島則夫君 じゃ、それ以上はしつこいですから伺いません。  次に、この政治的道義的責任を追及する場合のロッキード事件というものが一体どこまでの範囲になるのかというようなことでございますね、これもやっぱり一つの問題点だろうと私は思います。私どもはこういうふうに考えるんです。ロッキード社の直接関係する問題だけではなくて、たとえば航空会社があっちこっちに路線を拡張するとか、路線拡張の許認可問題まで含めましてどういうふうにこれを考えたらいいのか。この辺だったら別に問題はないと思いますけれども、いかがですか。
  302. 稻葉修

    国務大臣稻葉修君) ちょっとそれは法律的にきちんと答えないと、法務省の答弁としては私いけないと思いますな。それは相当に影響ありますよ、私の答弁いかんによってはね。ですから、法務省、法務大臣が答弁するについてはやっぱりそういう点になりますと、通俗的な表現ではいけない、やっぱり法律的にきちんとしておかなければいかぬと思いますから、刑事課長に。
  303. 吉田淳一

    説明員吉田淳一君) どうもどういうふうにお答えしていいかわからないのが本当の気持ちでございますが、ロッキード事件捜査というものが二月から始まりまして、その捜査の過程でいろいろなことが捜査上判明したと、その判明したときにその判明した事実がいろいろな形をとっているということは一般論として考えられるわけでございます。で、その一つの例として、ロッキードの航空機の売り込みそのものではなくて、それ以外の事実関係が捜査の過程で仮に判明したとします。それがロッキード事件に入るのかどうかという御指摘でございますが、まあそれは解釈のしようと申しますか、考え方いかんで決まることじゃないかと思いますので、いま大臣が正確に法律的に言いなさいということでございましたが、十分まだ検討しておりませんので、それ以上のお答えはできないわけでございます。
  304. 木島則夫

    ○木島則夫君 私どもの考え方、ひとつこれは提案という形で申し上げておきますと、やっぱりロッキード社の直接関係する問題だけではなく、いま私が申し上げましたような航空企業の路線の許認可問題なども当然この中に含まれるのだろうと私は思います。いろいろ捜査を進めていらっしゃれば、いろんな形でいろんなものが出てくるといういまお話があったと思いますね。あったから、それをどこで線を引くか、追及していったらばある事実が出てきたというようなことは、当然起こり得ることだし、また素人の私でもわかるわけであります。そのときに余りその範囲を狭くし過ぎたら、これはやっぱり国民の疑惑にこたえ得ないということにもなるわけでございます。またこういったことに関連をして出てくる問題、たとえば第一次あるいは第二次のFX選定問題、今回の事件に絡んで明るみに出たものがあるとすれば、私はこういったものも当然に含まれるのだろうという意味で申し上げたわけでございます。  法務大臣といってももうあれですか、刑事課長さんのお答え以上に出ませんか。
  305. 稻葉修

    国務大臣稻葉修君) いかなる難事件といえども、無限に小さいことの、細大漏らさず全部いつまでもやっているわけにいきませんな。ですから、山を越したら今度はまとめにかかるという段階でいまおっしゃったようなことについてどこで線を引くかという表現、つまりどうまとめるかと、事件全体を、検察として。そういう問題だろうと思うんですが、まだ寄せの段階には入ってない、碁で言えばまだ寄せの段階じゃないと。
  306. 木島則夫

    ○木島則夫君 それじゃ次に参ります。  公表の仕方が問題になると思いますね。法務大臣はこの点につきまして、六月二十三日の衆議院のロッキード特別委員会で二つの方法をお示しになった。一つは検事総長の報告を受けて法務大臣がこれを行う。もう一つは、法相の報告を受けて首相が行うという二通りだったと思いますけれど、このお考えには変わりはございませんか。
  307. 稻葉修

    国務大臣稻葉修君) 大体そういう考えに変わりありません。大体そうです。
  308. 木島則夫

    ○木島則夫君 大体というふうにいまおっしゃいましたけれど、必ずしもそれにこだわらないで、その中に包括し得る余裕、余地があるというふうに私は解したいのでありますけれど、それに関連して公表の仕方は私どもの考え方といたしましては、議院証言法第一条に基づきまして、必要な証人の証言並びに書類の提出によって明らかにすることがいいんじゃないだろうかと、こういうふうに考えているわけでございます。別に法務大臣のお立場をかれこれ疑ったり、かれこれ疑義を差しはさむわけではございませんけれど、私どもの提案の方が政治の介入する余地がなくて、この事件の徹底的解明を求めている国民立場の要求により近づくのではないかという意味でいま申し上げたわけでございますけれど、この辺についてはいかがですか。いいですか、大体二十三日の二通りの方法だとおっしゃいました。ちょっとその辺私の提案も交えてお答えをいただきたい。
  309. 吉田淳一

    説明員吉田淳一君) その証人なり書類の提出で、議院証言法に基づいて行った方がいいのではないかという御指摘だと思うのですけれども、仮にそれが現職の捜査を担当した、あるいは指揮をした検察官を国会へ喚問して証人として調べる、あるいは書類の提出を検察庁にじかに求めるというようなことを意味しているといたしますと、やはり法務省としてはできる限りそういう方向は避けていただきたいというのが私、刑事課長にすぎませんが、局長の意向でもあると思います。それはやっぱり検察の公正なり、検察の独立性というものについて、ロッキード事件だけでなくて、今後のいろんな捜査もしなければならない立場におるわけでございますし、ぜひ国会に御配慮をいただきたいと考えておるわけでございます。
  310. 木島則夫

    ○木島則夫君 ここであわせてお伺いしたいのでありますけれど、自民党の法務部会長は、俗に言われる灰色高官について見解を明らかにされておる。しかしその内容は突き詰めたところ、被疑者調書をとられた者というふうに、私どもから言わせますと、きわめてその範囲が狭まっているわけでございます。これではロッキードを徹底的に解明をし、刑事的責任の追及だけではなく、いわゆる道義政治責任を徹底的に究明をするということからすれば、私は大変不十分であると思うのでございますが、この法務部会長の見解につきまして、法務大臣は相談におあずかりになったかどうかということ、今後法務省と法務部会とがこの件について話し合われる予定があるかどうか、この辺ちょっと伺っておきたい。
  311. 稻葉修

    国務大臣稻葉修君) 自民党法務部会長永野さんのそういうあれはまだ聞いておりません。それから相談にもあずかっておりません。それから今後相談するか打ち合わせるか、これはまず政治的道義的責任の場は国会が主役ですから、野党ともよくお打ち合わせになるでしょう、党の方でも。その上で法務省の見解はどうだということを、意見を求められればその段階で私どもはこう考えるとか、そういう段取りになるんじゃないでしょうか。まず自民党法務部会と法務省が打ち合わせてという前にきっといまこういうあれがありますからね、機関が。ロッキード問題に関する調査特別委員会、衆参両院ともに。それから衆参両院ともに法務委員会がありますしね。そうしてそういうところで灰色高官の定義であるとか、それの範囲であるとか、公表の方法であるとか、そういう御相談の順序の方が先じゃないでしょうか。主役の方が先じゃないでしょうか。
  312. 木島則夫

    ○木島則夫君 それにいたしましても、被疑者調書をとられた者に限るというのは、私はちょっとやっぱり範囲が狭まり過ぎているというふうに思うのでございますけれど、これについての御見解をいただきたいのであります。
  313. 稻葉修

    国務大臣稻葉修君) だれだれがこう言っている。それについて狭いか広いかという判断を私に求められますと、あなたの意見のとおり狭いと思いますと言えば、永野さんに悪いじゃないですか。それから、いやそれで十分でございますと言えば、あなたに悪いじゃないですか。そういうことをいまここで決めさせなくてもいいじゃないですか、どうでしょう。もう少し御猶予ください。
  314. 木島則夫

    ○木島則夫君 なかなかいまの段階で非常に微妙だと思います。よくお立場もわかります。しかし私どもの先ほどから申し上げている意向も十分に御参考にしていただきたいということでございます。  最後に、六日で田中総理の勾留期限が切れますね。その後のことについてはお考えでしょうか。
  315. 吉田淳一

    説明員吉田淳一君) その点については検察当局で慎重にいま判断をし、検討しているところだと思います。まだ最終的な報告は受けておりません。現在の段階ではこれ以上お答えできないのですが。
  316. 木島則夫

    ○木島則夫君 以上で終わります。
  317. 喜屋武眞榮

    喜屋武眞榮君 法務大臣にお尋ねします。  今日、日本じゅうを騒がしておりますロッキード問題を一日も早く解明していくのか、それとも疑惑を残したままずるずると引き延ばしていくのか、そういった点をいま考えてみた場合に、私は法務大臣の役割りというものが、お立場というものがその重大なかぎであると、こう信ずるのであります。したがって、稻葉法務大臣がどういう姿勢を持って、どういう決意をしておられるかということについて、初めにお伺いしたいと思います。
  318. 稻葉修

    国務大臣稻葉修君) たびたび申し上げますが、こういう重大な国際的にも国内的にも関心の高い事件にぶつかりまして、きわめて責任の重いことは重々痛感しておりますが、あんまり肩に力が入ったり、そういうことではいかぬなと。冷静沈着にやらにゃいかぬなと。そうでないと真実を見間違うおそれがあると。人間ですからね。間違いを起こすことがありますから、そういうことになりますと……そういうことがあってはいかぬなと。そして何物にも恐れず、何物にも驚かず、政治的道義的責任国会調査権にゆだねて、私の方は刑事的責任の万全を期すと。それに対しては一個の政治家として、政治介入みたいなことは断じてしないと。これが私のこの事件に対処する心構えでございます。
  319. 喜屋武眞榮

    喜屋武眞榮君 このロッキード事件はよく構造汚職であると言われております。   〔委員長退席、理事岡本悟君着席〕  ところで、網呑舟の魚を漏らすという言葉がございます。なぜ構造汚職として今日までのこの積み重ねが今日こういう結果になったかと、こう考えてみた場合に、非常に平たい表現でありますが、悪いことをすればだれでも罰せられる、人間の上下はない、法のもとに平等である。ところが、過去の日本の状態を振り返ってみますと、大物が悪いことをしてもそれは取り逃がす、あるいは網から漏れる。小物が——まあ大物小物という表現は妥当でないかもしれません。とにかく地位も名誉もない、そういった庶民大衆が間違って悪いことをすれば徹底的に法のもとに縛り上げられると、こういったところからこの構造汚職も今日このように火を噴いてきたのではないか。  そこで第一点。まず法務大臣に、先ほども話が出ましたが、指揮権の発動権を持っておられると。このことが過去の流れの中から私は構造汚職として積み上げてきた大きな理由の一つではないか、こう思います。  次には、この法の番人であり、あるいは悪いことをすればそれぞれ法に照らして職務権限を遂行して徹底的に取り調べていくという、そういうそれぞれの立場の方が職務怠慢と言いましょうか、あるいは好ましからざる企業と癒着したり、あるいは暴力団と癒着したり、あるいはその他の官僚と癒着したり、こういうところがいわゆる権力のある者、上には非常に弱く、そして権力のない庶民大衆には強い、強く当たる。こういった差別の態度がこのようなことになったのではないかと思う。   〔理事岡本悟君退席、委員長着席〕  次には、法は法としてありながら、それを運営していく過程の中で秘密主義を貫いてきたと、いわゆる非民主的な手段方法、それをさらに隠し立てをして、一般国民解明していかない、知らしていかない。だから秘密から生まれるものは決していい結果がないと私は思います。あくまでも民主的なルールに従って、その過程を通じていくならば私はそのような構造汚職なんて生まれるはずはない、こう思っておりますが、法務大臣はいかがお考えですか。
  320. 稻葉修

    国務大臣稻葉修君) まず権力を持っている者は社会的な身分の大きいのには弱く、社会的身分のないやつには強く、そんなことはいけない。それはよろしくありませんと、私は思います。最もよくないと私は思いますね。厳正公平でなきゃいかぬということをしばしば申し上げているのはそういう点でございます。  それから、なるべく秘密がないといって、みんなこの世の中もう全然秘密がないと、こういう世の中は非常にいいですな。そうありたいが、悪いやつがおるものですからね。この捜査の期間が、捜査が終わるまで大っぴらであっては皆逃がしちゃうんです、これは。真相究明できないんです、これは。証拠を隠滅されたり。ですから秘密主義、秘密主義と言われるけれども、捜査の秘密主義というのは大事なものでございますよ。そういう点について多少私とお考えが違うかもしれませんけれども、そう思います。捜査当局を預かる者としては、ある一定の期間は秘密にさしてもらわなけりゃどうしようもない。その間は、国民の知る権利というものも大事ですけれども、その間は国民の知る権利は制限される。制限されて真相究明されてその後国民は知る。ある一定の期間制限されることが後で真相の多くを、全貌をよく知り得る大事な条件になると、こういうふうに私は思います。
  321. 喜屋武眞榮

    喜屋武眞榮君 私は最初に、このロッキード事件を本当にすっきりとして解明するそのかぎを握っておられるのは法務大臣であると、こう期待し、信頼しておるがゆえに、あえてそう申し上げました。いまのまた御決意をお聞きしまして大変力強く思います。どうか法のもとに平等、悪いことをすればどういう地位や名誉の高い人であろうが、ぴしぴしと法に照らして裁いていく。現実は必ずしもそうでないという、こういった憂いがあるから、私はあえてそれを確認いたしたわけでございます。その姿勢、その決意でひとつ貫いてもらうことを重ねて私要望申し上げておきます。
  322. 稻葉修

    国務大臣稻葉修君) しかと承知をいたしました。
  323. 喜屋武眞榮

    喜屋武眞榮君 それじゃ具体的な問題に入ります。  三菱重工のT2、T2改は国産ということで昭和四十七年の十月九日に決定されて、こう認められたわけですね。ところがPXLは川崎重工と二度にわたる調査委託研究の契約を結びながら、いつの間にか白紙還元とされておる。こういう結果からしても、ロッキード社と政府との間の疑惑があるのではないか、のみならず三菱重工と政府との間にも何らかの癒着があったのではないかと見る人もおります。捜査当局はその辺まで調べておられるのかどうか、まずそのことをお尋ねしたい。
  324. 吉田淳一

    説明員吉田淳一君) 検察当局が、現在この委員会でもいろいろ御調査なされている白紙還元の問題について関心を持っておることは、もう何回かの委員会でお話し申し上げているとおりであります。ただ、それがどういう形で取り扱われているかということは、捜査に関連することでありますので、申し上げられないんでございますが、いま御指摘のありました企業の関係者からもいろいろ事情を聞いて取り調べをしているということの報告は受けております。
  325. 喜屋武眞榮

    喜屋武眞榮君 あえて申し上げますのは、三菱重工はこれまでは余り従来は政治献金をしていない会社だと聞いております。ところが四十七年の下期に国民協会を通じて四千七百八十万円を自由民主党政治献金がなされておるということを聞いております。このことからもそこに、ちょうど時間的にも何かそこにあったのではないかということが考えられるわけでありますが、そういったことから私はこの三菱重工の問題を取り上げたわけであるので、ぜひこれをひとつ十分調査して取り調べてほしい。よろしいですか。
  326. 吉田淳一

    説明員吉田淳一君) 検察当局といたしましては、刑事責任の存否、犯罪ということを明らかにするために、犯罪の容疑がある場合にはそれを徹底的に調べる、そういう角度で、またそれ以上のことは検察庁としてはできないわけでございますが、そういう角度でこの問題に取っ組んでおるわけであります。
  327. 喜屋武眞榮

    喜屋武眞榮君 それじゃ時間もありませんので、次に外務大臣にお尋ねします。  きょう外務大臣においで願いましたのは、私は先ほど秘密裏にやることで、もちろん外交問題には限度があるということは十分承知しております。ところが余りにもその秘密主義で行くことは結果的には国民が犠牲で、具体的な例で言いますが、特に沖繩県民の犠牲となってあらわれておることが余りにも多い。このことを、例のあの西山記者事件と関連しまして、私はお尋ねしたいんですが、西山事件国民の知る権利と守秘義務との関連、私はこの場できょうそれをもう論ずる時間がありませんので、私の意図は、この内容は沖繩協定と非常に深い関係があるということなんですね。すなわち、沖繩県民の請求権を日本政府が放棄している、勝手に放棄しているという問題もあるわけですが、その内容は、日本政府が四百万ドルアメリカに提供して、そうしてアメリカが沖繩の施設を買い取って与えたと、こういうことが後でわかって、これが大きな問題になったわけでありますが、そういった重大な問題を含んでおる沖繩協定の内容であったわけなんです。だから、そのときにその密約の内容を明らかにしておけば、私は今日このようなロッキード汚職なんていうことも未然に防げたのではないかということさえも思うわけでありますが、ここで外務大臣にお聞きしますが、沖繩問題を中心として、それが国会の問題、政府の問題になる場合に外務大臣がよくおっしゃることは、国益、国益のためにはということをおっしゃるのでありますが、そこでお聞きしたい。国益ということは一体どういうことなんでしょうか。
  328. 宮澤喜一

    国務大臣(宮澤喜一君) 沖繩県の方々に他の県の人々以上の大きな御負担をかけておるということは私どもよく承知をし、またそれに報いるところがなければならないと存じておりますが、その問題との関連で私が国益と申し上げますときに、私の考えております内容は、特定の個人あるいは団体あるいは政党であるとか、一内閣であるとか、そういうものを超える国民全体、国全体の利益という意味で申し上げておるつもりでございます。
  329. 喜屋武眞榮

    喜屋武眞榮君 その国益論をお聞きするたびごとに怒りを覚えてなりませんのは、この安保とか地位協定とかね、それをもとにして国益論を論じられる。そうしてその国益ということを、私は国民の利益になることが国益に通じなければいかぬ、国益があって国民の犠牲があってはいけないわけです。ところが、いままでの国益論争では、国益のためには県民は犠牲を忍ばなければいけないという、こういう形で沖繩県民はいまだに復帰前も復帰後も、さらに厳しくその犠牲を強いられておることに対して、私はあえて国益とはどういうことですかという反問をしておるわけでありますがね。こういうことに対しても、私は国の犠牲になるところに国益を論ずる資格がない、また国益とは言えない、こう私は思うのでありますが、沖繩県民の生命、財産、人権ことごとくが国益という名のもとに犠牲を強いられておる、もろもろの犯罪にしましてもですね。このことを外務大臣はどう考えておられるか、もう一遍その決意をお聞きしたい。
  330. 宮澤喜一

    国務大臣(宮澤喜一君) 私どもはわが国の安全というものを確保いたします上で、日米安保体制というものは必要なものであるという考えに立っております。そして安保条約の結果、米軍に対して施設、地域の使用を認める、また地位協定というものを結ぶということをいたしておりますことは御存じのとおりであります。で、その結果といたしまして、私が先ほど申し上げましたように、その他の県に比べまして沖繩県民に非常に大きな負担がかかっておるということはかねがね存じておりまして、そのことは何とかして他の県のわれわれができるだけの償いをしなければならないというふうに政府としては考えてまいりました。また沖繩における基地等々の使用についてもできるだけ整理統合をするという方向でやってまいりましたことも御存じのとおりでございます。したがいまして、わが国の安全を確保するという、そういう国益が他面で犠牲あるいは苦難を伴っておるということは事実であろうと思います。その場合にそれが国益であるかどうかということは、そのためにそれから得るところの全体の利益と、それに伴うところの不利益というものをやはり比較いたしました上で判定をいたすべきものであろうというふうに考えておりまして、沖繩県民にいろいろな御苦労、苦難を甘受していただいていることはよく承知をしております。したがって、わが国の安全を図るという国益が犠牲なしに達成されている、図られているというふうには考えておりません。その犠牲に対しては最大限のことをしてわれわれはこたえることをしなければならないというふうに考えておるわけであります。
  331. 喜屋武眞榮

    喜屋武眞榮君 時間がありませんので、多くを申し上げませんが、どうか安保とか地位協定を前提にして仕方がないから、これは提供基地になっておる、こういう論理で沖繩問題を論じられたら、それじゃ沖繩県民の犠牲と差別はいつまでがまんせよと言うのか。そうしてその差別と犠牲は憲法のどこに位置づけられておるのであるか、そういうことも開き直りたくなるわけでありますので、ひとついまのような状態でいきますと、限りなく犠牲が続く。そうするといろいろな形で問題が噴き出るということをここに十分考えていただきたい。そうしてそれに対処をしていただきたいということを私は要望を申し上げまして、最後に国防会議のあり方について、これもまた構造汚職に、一連の構造汚職につながっておるのがこの国防会議のあり方にもあるわけであります。国防会議議員懇あるいは幹事会あるいは専門家会議といろいろあるわけでありますが、その構成あるいは運営の民主化、これについて民主的な運営がされませんというと、それが権力の意のままにそれが利用される。言葉をかえれば政府の御用機関にすぎない。形骸化しておる。こういうところに隠れみのがあったのではないかということも察せられるわけであります。そこでPXL導入によって白紙還元に至るまでの経過の疑惑もこの答申を見れば、読み返すほど何かあいまいな疑惑がそこからにじみ出てくるこの答申書であります。そこに権力者の圧力がかかって、それを単なる隠れみのとして利用したのではないかと、こういうことも考えられるわけであります。だから、その国防会議の一体目的は何であるか。その理由が明らかにされないままにそれが営まれていた。そこでこの国防会議その他の会議の議事録を明記してほしい。このことがお約束できますかどうか。
  332. 内海倫

    説明員(内海倫君) お答え申し上げます。  国防会議の運営に関しまして、ただいまの先生の御高説は私も十分拝聴いたしまして、議長あるいは各議員大臣にも御報告申し上げまして、今後さらに一層国防会議が有意義に運営されますように、先生の御意見をお伝え申し上げ、私どももまた事務当局者として努力をいたしたいと思います。私自身がいまお答えできる範囲は何分事務当局の者でございますので、ここまでで私の答弁は申し上げたいと思う。後はよく議長あるいは議員大臣方に御報告を申し上げたいと思います。
  333. 喜屋武眞榮

    喜屋武眞榮君 最後に申し上げて終わりたいと思います。  いろいろ申し上げたいこともまだございますが、まとめて申し上げたいことは、この国会運営、議会運営に当たって、非民主的な秘密主義が今日のようなロッキード事件として火を噴いた。そしてこれは氷山の一角としてあらわれたのだ。この際徹底的に解消し、国民の前に納得のいくよう明らかにしてもらいたい。もしそれができないとするならば、この古株を残すということはいつかまた芽を吹くことは必然である。徹底的にこの機会に新芽を吹かさぬように、古株はもう要らない。こういうことを強く私は要求いたしまして、要望いたしまして質問を終わりたいと思います。
  334. 剱木亨弘

    委員長剱木亨弘君) 他に御発言もなければ、本日の調査はこの程度にとどめます。  本日はこれにて散会いたします。    午後五時二十六分散会