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1976-02-09 第77回国会 衆議院 予算委員会公聴会 第2号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十一年二月九日(月曜日)     午前十時一分開議  出席委員    委員長代理 理事 小山 長規君    理事 井原 岸高君 理事 塩谷 一夫君    理事 正示啓次郎君 理事 山村新治郎君    理事 小林  進君 理事 楢崎弥之助君    理事 松本 善明君 理事 山田 太郎君       伊東 正義君    上村千一郎君       小澤 太郎君    大野 市郎君       奥野 誠亮君    倉成  正君       櫻内 義雄君    瀬戸山三男君       田中 龍夫君    野田 卯一君       藤井 勝志君    細田 吉藏君       安宅 常彦君    阿部 昭吾君       阿部 助哉君    石野 久男君       岡田 春夫君    田中 武夫君       多賀谷真稔君    堀  昌雄君       安井 吉典君    湯山  勇君       庄司 幸助君    田代 文久君       林  百郎君    増本 一彦君       有島 重武君    鈴切 康雄君       河村  勝君    小平  忠君  出席公述人         株式会社三菱総         合研究所取締役         社長      中島 正樹君         神奈川県知事  長洲 一二君         全国農業会議所         専務理事    池田  斉君         全国銀行協会連         合会会長    板倉 譲治君         島田療育園児童         指導員     山本 治史君         法政大学名誉教         授       渡辺 佐平君  出席政府委員         総理府総務副長         官       森  喜朗君         行政管理政務次         官       近藤 鉄雄君         防衛政務次官  加藤 陽三君         経済企画政務次         官       林  義郎君         環境政務次官  越智 伊平君         国土政務次官  野中 英二君         法務政務次官  中山 利生君         外務政務次官  塩崎  潤君         大蔵政務次官  唐沢俊二郎君         大蔵省主計局次         長       田中  敬君         大蔵省主計局次         長       松下 康雄君         文部政務次官  笹岡  喬君         通商産業政務次         官       綿貫 民輔君         運輸政務次官  佐藤 守良君         郵政政務次官  羽田  孜君         労働政務次官  石井  一君         建設政務次官  村田敬次郎君         自治政務次官  奧田 敬和君  委員外出席者         予算委員会調査         室長      三樹 秀夫君     ————————————— 委員の異動 二月九日  辞任         補欠選任   増本 一彦君     庄司 幸助君   正木 良明君     有島 重武君   矢野 絢也君     鈴切 康雄君 同日  辞任         補欠選任   有島 重武君     正木 良明君   鈴切 康雄君     矢野 絢也君     ————————————— 本日の公聴会意見を聞いた案件  昭和五十一年度一般会計予算  昭和五十一年度特別会計予算  昭和五十一年度政府関係機関予算      ————◇—————
  2. 小山長規

    小山(長)委員長代理 これより会議を開きます。  委員長の指名により私が委員長の職務を行います。  昭和五十一年度一般会計予算昭和五十一年度特別会計予算及び昭和五十一年度政府関係機関予算、以上三件について公聴会を行います。  御出席公述人各位にごあいさつを申し上げます。  本日は、御多用中のところ御出席をいただきまして、まことにありがとうございます。この際、各位の有益な御意見を拝聴いたしまして、今後の予算審議の上におきまして貴重な参考といたしたいと存じます。  何とぞ昭和五十一年度予算に対しまして、それぞれの立場から忌憚のない御意見をお述べいただくようお願いを申し上げる次第でございます。  次に、御意見を承る順序といたしましては、中島正樹公述人長洲一二公述人池田斉公述人、以上の順序で、お一人約二十分程度ずつ一通り御意見をお述べいただきまして、その後委員から質問を願うことにいたします。  それでは、中島公述人にお願いいたします。     〔小山(長)委員長代理退席井原委員長代理着席
  3. 中島正樹

    中島公述人 ただいま御紹介にあずかりました中島でございます。  ただいまお話がございましたように、果たして私の意見がどれだけ皆さんの御参考になるか自信がございませんが、しかし、平素考えております問題につきましていささか自分意見を述べさせていただきまして、何らかの御参考に資することができれば幸いと存じます。  五十一年度予算財政全体としましての規模が非常に大きくなったということ、特に国債が二九・九%という発行予定になったわけでありますけれども、日本財政史上を通じましても、戦時及び準戦時時代を除きましてはこの高さに達したことは初めてだと記憶いたします。それだけに問題がきわめて重大でもあり深刻でもある。また、非常に影響も大きいと思うのでありますが、個々の問題に入るに先立ちまして、特に本年度予算の基本的な考え方としまして、これは非常に頭のいい人がお考えになったのかもしれませんけれども、たまたま二十四兆二千九百六十億円というのはフヨーニクローするということだそうでありますので、そういう意味では恐らく皆様方も非常に苦労されたと同時に、国民もまた同じくこの点に対しては非常に関心が高いのであります。  まず最初に、われわれが不況になった根本的な原因について、これはいろいろと議論もあるところではありますが、何と申しましても——もちろんいろいろな各種先行的事情はあったのでありますけれども、石油ショックという一つの大きな異変が起こりました。一種の世界経済における地殻変動というのがOPEC諸国を通じて行われたとわれわれは考えるべきだと思うのでありますが、また、さらにもう少しわかりやすく言うならば、非常な台風が吹き荒れたのではないかというように思うのであります。しかも日本の場合、この台風の来ることが予知されなかっただけに非常に激しい影響がありまして、あわてる者もあり、驚いた人もあり、あるいはいろいろと自信を失ったというような多くの問題が出てきたわけであります。  特にわが国が非常に影響が大きかったということはよく言われておりますことでもありますので、くだくだ申し上げるわけでもありませんけれども、石油代金だけでも一ヵ年間に約百五十億ドルよけい払う、すなわち四兆五千億の金をよけい払ったわけでありますから、二ヵ年間で九兆円の金を日本は払わざるを得なかったわけであります。  また同時に、一次エネルギー対外依存度は、米国は一五%、西独が五〇%という数字でありますのに対して、日本は約九〇%ということでありますので、それだけ日本影響が大きかったのでありますが、私はそれを逆にいつも申しておるのであります。すなわち日本は戦後二十数年間非常に安い油の供給を受けておったわけであります。いわば非常に安いエネルギーを受けてその恩恵を二十数年間受けたために、日本産業というものが大きく発展できたとも言えるわけであります。それだけに、まあいわば非常に温かい風を受けておったわけでありますので、今度はいきなり逆風となり、また激しい、冷たい風が入ってきただけに問題が大きくなったのでありますから——しかし、その問題をわれわれは外国に援助を求めることができないわけであります。日本はどうしても自分の力で解決しなくちゃいけないという立場にあります。同時に、単に日本だけの不況を克服するだけでなく、近隣諸国世界的に言うならばあるいは第三世界あるいは第四世界に対する日本国際的責任ということがあると思いますので、こういう意味におきまして、この景気回復するという不況克服の問題、景気浮揚と申しますか、その問題は、日本的な、国民的な問題として考えなくちゃいけないと思うのであります。  特に国内的に申しますれば、何と申しましても雇用の改善ということでありまして、また個々産業について言いますれば、企業の赤字を克服し、同時にまた政府がそれによりまして税収正常化を図らなくちゃいけないわけでありますが、こういう大きな問題を抱えているために、私としましては、この程度財政膨張はやむを得ないのではないかというふうに思うのであります。  若干この景気回復の問題につきまして感じていることを申し述べさせていただきたいと思います。  まず最初に、四つの問題が景気回復にはあると言われております。四つの方策と言われておりまして、その四つは簡単に申しまして、個人消費回復、第二番目には民間設備投資回復、それから公共投資積極的配慮、それから第四番目には輸出期待という四つの問題を抱えておって、それぞれに問題を解決しなくちゃいけないのであります。  ところで、第一番の個人消費回復の問題でありますけれども、今日、企業経営状態が楽ではないために、高率の賃上げも望み薄でもありますし、また現実には表向きの賃金が上がっても残業等が圧迫されているとか、あるいは個人の私生活で言うならば、多くのローンを抱えていてその割賦販売のために追われているために非常に期待薄ということのために、いわば個人貯蓄性向が、ただでさえ長年の習慣で貯蓄性向の高い国民が、貯蓄に向かっておるわけであります。もとよりこの貯蓄が高いということは、ある意味において、一ころの消費美徳なりから節約美徳なりという転換の早さにつきましては、日本民族環境に対する非常な順応性を持っている民族であるというふうに考えてよろしいのではないかと私は思うのであります。しかし、貯蓄性向がこのような状態でありますが、その大きな原因としましてよく言われる問題としましては、何と申しましても雇用不安という問題、あるいは教育費が非常に高いとか、将来の見通しが困難だとかいう問題でありますので、いますぐ個人消費回復を求めることは非常にむずかしいのではないかと思います。  最近一部の皆様方、あるいは多くの傾向かもしれませんが、所得減税論が言われておりますけれども、この点に対する問題も、私は二つのむずかしい問題があるのじゃないかと思っております。それは、アメリカの場合は非常に成功しましたが、アメリカの場合は約二百八十億ドルと記憶しておりますが、あのときは支払いは全部小切手でしたようであります。アメリカは、小切手で支払いますと、その小切手はどこへ行っても金として支払えるわけでありますが、日本の場合は、小切手で払ってもどこのデパートでも受け取ってもくれません。果たしてそれを現金で払うということが技術的に可能かどうかという非常にむずかしい問題があるということも、一つ議論の種になると思います。  それから、この所得減税というものは本年一ヵ年のいわば台風一過後の緊急避難として考えるべきではないかとすれば、これが長期化することは許されないわけでありますが、まあ国民の戦後の風潮としまして、既得権益は守るというような一つ風潮がありますので、一年限りでこれをとめることができるかということに対しては非常に不安であります。そういう点におきまして、まだほかに対策がないというならば別だと思いますけれども、現在の状態でそれをいきなりするのは、私個人といたしましてはいささか慎重にすべき問題ではないかというように思います。  次の問題としまして、民間設備投資の問題でございますけれども、各企業における稼働率が非常に低下した状態で、積極的な投資の意欲が起こっていないのは現実でありますけれども、しかし、それに対して比較的少ない資金をもって回復する方法としましては、一つは、将来の問題であるかもしれませんが、投資減税ということも考えられると思いますし、またさらに、比較的議論されておりませんが、利子補給制度ということも考えていいのではないかと思います。日本の船舶及び海運の復興には開銀融資における利子補給制度が非常に効果を奏しまして、日本世界の造船の半分を占める生産高になったのも利子補給制度がきわめて効果的であったという点につきまして、もう一遍お考え直しをしていただける余地があるのではないかと思うのであります。またもう一つ、やはり日本——これは時間で、後ほどあれさしていただきます。  次に、公共投資の問題でございますが、これは何次かの公共投資が行われたのにかかわらず、その効果が非常に薄いということがよく言われておりますが、それにつきましては若干の水漏れというのですか、言葉は適切ではないかもしれませんが、効果が薄くなっている問題があるのじゃないかと思います。果たしてあれだけの資金がどういうふうに現実に物の裏づけとして出ていったかということについてのフォローが足りないのではないかと思います。また、聞くところによりますれば、新しい公共投資をする場合に、用地買収費というのが補償費を含めて非常に高くなって、これは四十五年度数字が二一・六%に対して五十年度は二七%に上がっているというようなことも聞いております。これらの数字は権威ある数字ではございませんけれども、そういう数字から見ましてもかなり問題がある、それが公共投資による景気浮揚がおくれている一つ原因だと思います。  もう一つは、これは本日は長洲公述人もお見えになっているので、きっとお話があるのだろうと思いますけれども、地方単独事業が非常に伸びがおくれているために、政府公共投資予算現実にはそれにかなりへこまされているのではないかというような問題点もあります。しかし、いずれにいたしましても、日本世界的に見て近代国家としてはインフラストラクチュアがおくれておるわけでありますから、幸か不幸か、いまのところ日本は、公共投資は将来に対しまして必ず大きなプラスになる投資ができるという可能性は、もちろん住宅問題一つを見ましても言えると思うのであります。  最後に、輸出の問題でありますが、何と申しましても、いまアメリカ景気が漸次回復してきておるということは日本にとっても幸いだと思うのでありますけれども、だんだんと輸出品目の内容が変わりつつあります。近来は大きくプラント輸出というような形で輸出がだんだんと伸びていく傾向でありますが、これらに対する援助の問題につきましては、最近新聞でもちらほら見かけたのでありますけれども、輸銀法を改正されまして、輸銀外債を募集できるということになることは非常にいいことだと思うのであります。  以上が現実の問題でありますが、私といたしましては、本年度緊急避難としての財政膨張あるいは国債発行はある程度やむを得ないと思うのでありますし、この程度はやむを得ぬ必要なものと思うのでありますけれども、しかし今後の見通しとしては、私は非常に不安を感じるのであります。この特例公債もどういうふうに御審議になるか存じ上げませんけれども、いずれにしましても、いまの予定としましても、先般の大蔵省の発表された数字によっても、三年ないし五年は特例公債発行を続けるということになるし、五十五年度におきましては五十兆前後の発行高になるということであります。と同時に、その数字のうちにも税収見通しをかなり高く見ていらっしゃるようにわれわれは思うのでありますから、そういう点におきまして、問題は何と申しましても、やはり収入と同時に支出の面におけるよく言われます硬直性の是正につきましては、もう一遍強く考え直しをしなくちゃいけないのではないかと思うのであります。特に、単年度財政の欠陥としまして、当然増ということに対する圧縮がきわめて困難になっているというような問題もあるのではないかと思います。  昔からチープガバメントがいいんだという考え方は、ケインズ以来いささか考え方が変わってきてはおるわけでありますけれども、しかし、ときどき最近は雑誌なんかにも載っております仁徳天皇の故事につきまして、あの伝説は単なる国民の希望を伝えたものだと思いますけれども、ただ、「民のかまどはにぎわいにけり」ということの前提として、宮殿は一切しなかったというその節約をしたというところに、非常に意義を認めるべきだと思うのであります。そういう意味におきまして、やはり節するところは徹底して節していただきたいわけであります。その点につきましては、何と申しましてもまだわれわれとしましては、一般民間人から見るところによりますれば、政府あるいはその関連あるいは地方自治団体を通じまして非常にむだが多いのではないか、少なくとも効率性が、欠けておるところがあるのではないかというふうに思うわけであります。そういう意味におきまして、この公共投資の、さっきも申しましたフォローアップをすると同時に、あるいは公社、公団あるいは特殊法人等効率につきまして、その経済的な効果につきましても、もう少し分析するとか反省するとか、そういうことに対する積み重ねの努力をしていただきたいと思うのであります。これらにつきまして、何となく漠然と百十幾つかのそういう機関が存在していることに対してわれわれの関心がやや薄れているのではないかというので、もう少しその効率化能率化ということについて、相互間にも競争させ、また民間とも比較をするというような方式によってさらに改善を望みたいのであります。  道州制の問題などに移るとまた話が脱線いたしますので、時間の関係でやめさせていただきますけれども、次に、国債消化の問題が非常にこれから先大きい問題になってくると思うのであります。しかも、これらは本年度だけでも七兆ということでありますから、これをいかに消化するかということは一般金融影響するということも大きいのでありますが、それらについては、できるだけ早くそういう審議が行われ、また早く消化に対する国民的な各種金融機関等の協力を求めて、同時に民間に対する消化の問題も考えていただきたいと思いますが、実はこの際、外債発行ということをもう少し考えていただいたらどうかと思うのであります。  最近、一次産品備蓄会社をおつくりになるとかいうことも新聞の記事でちらほら見ましたのですが、こういうものは国内の資金でするよりも、これこそはたとえば輸銀が保証して、そうして一次産品備蓄会社資金は回り回って結局近隣諸国の一次産品発展途上国に対する大きなリターンにもなるという意味におきまして、こういうものもお考え願ってよろしいのではないかと思います。  きょうは、文教問題についてお話ししたいと思ったのでありますが、たまたま長洲先生もいらっしゃるようでありますので、私はやめたいのでありますが、しかし、私らが見るところでは、本年度私学振興にも千二百億の予算を立てられ、また一般にいいまして、福祉政策につきましては一般財政の一四・一%に対して二二%という比較的高い数字予算で出しております。これは、まだそれでも足りないというような議論もあるようでありますけれども、今年度アメリカ予算によりますと、福祉は全くやめてしまいまして、エネルギー問題と国防の充実を重点としてしまったということもありますので、もちろん日本のような福祉がおくれているという国におきまして、アメリカと同じに論ずるわけにはいきませんけれども、福祉政策もわれわれとしましては、やはりもう少し重点的な、ことに、たとえば身障者とか、そういう本当に困った方々に対する福祉医療に対してはもう少し徹底した福祉考えていただきたいと同時に、総花的な福祉対策については、このような財政状態においてはもう少し慎重であってほしいと思うのであります。  文教の問題にもう一回戻りまして、私としましては、今日のむやみに大学をつくるということについて、非常に疑いを持っている者であります。先般も医学部のある有名な教授に聞きますと、こんなに日本には医科大学をたくさんつくると、そのうちにお医者さんが余ってきて大変な問題になるということをおっしゃいます。一方、われわれでは、無医村の問題があるからどうするかというような問題の方を考えておるものですから、もっともっと医者が足りない。そして、医者があんなに高い金を取るのだから、入学費はたくさん払うので、きっともうかる商売かなと言って、みんな国民はよく座談はしておるわけでありますけれども、しかし、実態はとにかくといたしましても、そういうような大学が何となく非常に膨張してしまったということにつきまして、一概に——私はもう少し大学についてはいわば再編成をするというようなことをしないといけないのではないかと思います。定員の二十二倍もいるというような大学もあるというように聞いておりますから、そういう点におきまして、もう少し、もちろん私学振興のために尽くすということと同時に、そういうことに対する特別の御配慮も願いたいと思うのであります。  なお、教育ママというような問題がありまして、そのために非常に大きな問題がありますが、これはこういう機会に、非常にいい機会なので私は述べさせていただきたいのでありますけれども、官庁採用につきまして、これはいずれ人事院のいろいろな関係があろうと思いますけれども、前々から、少なくとも私学を半分以上は採るべきだということを私は主張しておるわけであります。余りにも国立大学が優先されているということは日本教育の上に非常にマイナスであり、できることならば、私学が八割の人数を占めておるという意味では、私学を、官庁採用方針につきましてもう少しそういうことをすることが、日本の政治の上にも行政の上にもプラスになるのではないかと思いますので、そういう問題もお考え願ったらありがたいと思うのであります。  もう時間も大分過ぎましたので、最後に私としてお願いしたいと思う問題があります。それは二つのことでお願いしたいのでありますが、何と申しましても、日本がこのような非常に恵まれた環境からいきなり冷たい風の中へ突き放されたということについての国民の危機の認識というものが本当に正しくされておるか、ということについて疑問を持っておるわけであります。何と申しましても、現在は世界的に産業構造も新しく転換しつつあります。同時に、日本としましても資源——ローマクラブの例をまつまでもなく、非常に限局された社会でありますもんですから、そういう世界に対応する新しい産業転換ということを言われておりますが、これは容易なことではありません。しかし、その道に対するもう少しさらに積極的な方向づけがあってほしいと思うのであります。と同時に、片方、やはり人間革命ということで、人間の尊重ということが盛んに言われてきているわけでありますので、しかしそこは、人間を尊重するということは実は甘やかすということではないのであります。日本の場合においては非常に甘やかすというようになっておりますが、私も余り憲法のことはよく存じませんけれども、たしか憲法二十七条で、国民勤労の義務ありと言っているわけでありますから、勤労の義務まで憲法で決めておいて、働かない人間もただ同じで年取ったからそれでいいというのではないので、働ける人間まで働かなくて、足りなくて、それで十二分に自己の生き方ができなかったことを、ただ同じように援助するということばかりは言えないのであって、もう少し国民として働くこともやはり日本としては——特に日本としては最大の資源である人間を尊重するという意味において、そういう問題をお考え願いたいと思うのであります。  もう一つは、やはり新しい時世に対応し、ことに新しい産業体制、すなわち資源をできるだけ消費しない。日本は、資源を少なくてやるためには新しい技術開発が必要だと思います。アメリカですらエネルギーインデペンデンスのプロジェクトのために、政府ですでに百億ドルの予算を立てて始めております。日本はそれ以上に実はエネルギー自己資源が少ないわけで、アメリカはわずか、先ほど申しましたように一〇%だとするならば、われわれとしましてはもっとそういうものに対する開発についての努力については考えなくちゃいけないと私は思うわけであります。  最後にお願いしたいことは、われわれとしまして、国民として見ておりまして、議会におきましてはもう少し共通の場があってほしいと思うのでありまして、たとえば二つの問題ができると思うのであります。それは一つは人口問題だと思います。人口問題につきましては、恐らくこれは超党的な議論がおできになるのではないかと思うので、そういう問題につきましては一緒になって議論していただくということがぜひほしいのであります。またもう一つ、それに近い問題としては、日本としてやはり重大な水資源の問題。こういうような問題については党派を忘れて、ひとつ大いに建設的な御議論をしていただくことができれば、日本民族は将来非常に救われるのではないかというふうに思うわけでございます。  大変いろいろ勝手なことを申し上げましたが、お許しくださいませ。どうもありがとうございました。
  4. 井原岸高

    井原委員長代理 どうもありがとうございました。  次に、長洲公述人にお願いをいたします。
  5. 長洲一二

    長洲公述人 神奈川県知事長洲でございます。  私からは、地方財政の状況につきまして、現場の一責任者としてお話をさせていただきます。  今日の地方財政は、私の感じでは、五十年度、五十一年度と二年間、大変長くて暗くて冷たいトンネルの中を手探りで歩いている。しかもこのままではトンネルを抜け出る展望がない、こんな実情でございます。  現在の日本経済の不況は、もう御承知のように、短期的、循環的な要因だけでなく、時代の転換に伴います長期的、構造的な要因によるものでございますが、こうした不況を背景に、深刻化しつつあります地方財政の危機もまた短期、循環的な要因と、長期、構造的な要因とをあわせ持っております。さらに、危機は単に財政だけの問題ではございませんで、地方自治と住民福祉そのものも危機にさらされております。したがいまして、これに対しましては、この暗いトンネルをどう耐え忍ぶかという当面の緊急対策が不可欠であると同時に、トンネルを出た先の展望をどう切り開くかという制度改革によります長期的な対策をも含め、さらに財政の収支対策だけでなくて、行財政制度のあり方全体を含めて考えていかなければならないと感じております。  そこで、今年度地方財政でございますが、これは御承知のように、全国的に大幅な税収の落ち込みが見られまして、地財計画からだけ見ましても、収入減と追加需要等を合わせて二兆五千億円以上という異常な財源不足に陥りました。神奈川県も長らく富裕団体でございましたが、ついに交付団体に移行いたしましたし、五十年度には当初予算税収入を二千九百億円ほど見込んでおりましたが、現在ではその約二割、六百二十億円ほどが減収になる見込みでございます。この六百億を超える巨額の財源不足に対処するために、私は昨年の四月末知事に就任いたしましたが、その直後、全国に先駆けまして、県に財政緊急対策本部を設置いたしました。そして、財政再建団体転落回避という、まことにある意味では情けない看板でございますけれども、それを至上命令としまして、まず県の内部でも既定の事務、事業を徹底的に洗い直しまして節減を図りました。また、百三十種類に上る使用料、手数料等の引き上げも行いました。法人県民税の超過課税も実行させていただきましたし、さらに最近は、職員定数の大幅削減まで断行するといったように、内部努力を一生懸命やっているつもりでございます。  こうした措置と、他方、国からの交付税と減収補てん債の見込み等を合わせまして、どうやら最悪の事態は回避できる見通しとなっておりますけれども、にもかかわらず、なお今年度百億円近い赤字で年を越さなければならない予想でございます。言ってみれば、これまで成層圏を順調に飛んでおりましたジェット機が、突如激しい乱気流に突っ込みまして、燃料も枯渇して急降下を始め、いまや地上すれすれの超低空飛行を余儀なくされております。ちょっとした障害物に触れましても機体はたちまち不時着する、そんな状態だと言えると思います。  こうした状況の中で、数日前、実は五十一年度予算案の編成を終えましたが、まさに、新任のせいもあるかもしれませんが、悪戦苦闘の連続でございました。折しも大寒の季節で、暖房の切れた庁内で連日深夜ないし未明に及んだ編成作業は、まことに地方財政が陥っております大寒の季節を象徴しているように感ぜられました。  ところで、国の地財計画では、五十一年度地方税の見込みを五十年当初計画並みと見ておりますけれども、神奈川県ではそれよりはるかに少なく、四十九年度決算をやや上回る程度しか見込めないのが実情であります。税収面で見る限り、二年前の水準に引き戻された感がございます。  一方、歳出について申しますと、とにかく引き続く人口増によりまして引き起こされる過密問題に対処するため、財政需要は山積しております。まず、学校の先生や警察官につきましては、今回も既定の定数を徹底的に見直しましたが、なお二千人近い義務的な増員を余儀なくされます。人件費の増加が避けられません。しばしば自治体の人件費が問題にされます。事実、人件費が地方財政硬直化の一因になっていることは確かでございますが、しかし、神奈川県の場合、人件費の八割は教員と警察官でありまして、知事部局その他の一般の職員は二割にすぎません。それも病院関係等は増員しておりますが、一般職員は大幅な削減を試みているといったような形でございます。にもかかわらず、人員だけでも、教員、警察官を中心に二千人近い義務増が行われます。そのほか、言うまでもなく、公債費、措置費などの義務的経費の増加がありますし、さらに高等学校の建設、一校四十億かかる高校をこの十年ほどの間に百校つくらなければならない。あるいは医療援護、私学助成、流域下水道の整備、水資源対策といったように、県民福祉のために巨額の、しかも緊急で不可欠の財政需要が山積しております。  また、来年度予算では、公共事業につきましては、私どもも、国の景気回復策に対応しまして、県内の景気対策、雇用対策の観点から生活関連の公共事業を重点に、可能な限り計上いたしました。しかし、その他地域特有の地方負担事業につきましては極度の財源難でございます。  こうして全体として見まして、五十一年度地方財政見通しは、五十年度よりはるかにはるかに厳しい状況にございまして、地方財政はまさにトンネルの中の最も暗く、最も冷たい部分に閉じ込められているというのが実感であります。そして、言うまでもなく、これはひとり神奈川のみの状況ではございません。五十一年度地方交付税及び減収補てん債など、国による相当な臨時財政措置がない限り、全国の地方自治体で予算の組みようもないという状態が現出していると思われます。五十年度には赤字団体が続出すると思われますが、五十一年度はさらにその激増が、残念ながら予想されるわけでございます。  国は、地財計画の総枠の確保につきましては、五十年度は臨時措置を講じてくださいましたし、五十一年度もその考えと承っております。この御努力は私たちも多とし、評価いたします。感謝もいたします。しかし、それも大部分は借金でありますし、しかも、地財計画の枠だけでは、地方財政需要の実際をカバーできないわけであります。御承知のように、四十九年度地方団体の決算と地方財政計画との間には二兆数千億の差がございました。むろん、この差の中には、あるいは高度成長下の自然増収による安易な財政運営があったかもしれません。こうした点で地方としても姿勢を正していかなければならない点があることを認めるのに私はやぶさかではございません。しかし、福祉の現場は何といっても地方自治体でございまして、現場としてはいやおうなしに負担せざるを得ないものがあります。この点、今後の地財計画の策定に当たりましては、国政の段階で地方の実情を十分御考慮くだされることを強く希望したいと存じます。  現在の国と地方を通ずる行財政システムは、全体としていまや時代の転換という観点からしますと、この時代の要請、課題に適応し切れなくなっているように思います。戦後未曾有の財政危機の中で知事に就任しました私は、そのことを骨身にしみる思いで体験しております。  五十年度、五十一年度年度にわたる巨額の財源不足に対しまして、地方団体は巨額の借金財政で当面の緊急事態を切り抜けようとしております。これは当面やむを得ないと私は考えておりますが、しかし同時にこれは応急の緊急措置にすぎません。しかも後年度に巨大な負担を残す財政運営であります。神奈川の場合、今後数年間の財政見通しを展望してみますと、現在の与件と行財政のシステムがそのまま続く限り、今後年々五、六百億円の財源不足ということになりまして、暗いトンネルが際限なく続く、こういう見通しであります。全国の都道府県も市町村も同様であろうかと存じます。この点は、最近新聞報道等で国の中期財政展望を拝見しましたが、似たような感じを持ちました。  したがいまして、やはり地方財政制度の抜本的な見直しをやらなければならないと私は感じます。これなしには、地方財政再建の展望は開けません。将来の展望が開けさえすれば、現在のどんな苦労にも耐えられると思います。しかし、展望がなければ耐乏にも限度がございます。そうした意味で、いまこそ地方財政再建のための制度改革、システム転換への行動のときだと思います。地方財政克服の展望を切り開く制度改革に即刻着手して、五十二年度以降は新しい制度、システムが始動するように、ぜひ国政レベルで行動を開始してくださいますようお願い申し上げます。  システム転換の方向につきましては、これまで多年にわたり各方面で論議が尽くされておりまして、全国知事会を初め各種の調査会等から具体的な提言もほぼ全部出そろっております。あとは行動でございます。つまるところ、基本的には国と地方との権限や財源の再配分等々にかかわりますが、ごく数点だけ以下申し上げてみたいと思います。     〔井原委員長代理退席小山(長)委員長代理着席〕  一つは租税制度でございますが、この点は交付税率とも関連いたしますが、たとえば税源配分の一例として個人の納める所得税をとってみますと、この配分は国が八〇、地方が二〇の割合になっております。しかも国の所得税の伸びに対しまして、府県民税、市町村民税の伸びはこの十年ほどどんどんおくれております。住民に密着した生活関連行政を行う行政主体は、何といっても自治体のように思いますし、こういう観点からも所得税は自治体へもっと厚く再配分していただけないものかと考えます。  また、今回の財政危機の要因の一つに府県税の不安定性が挙げられますが、その端的な一例が法人事業税でございます。現行の制度では企業利益に課税されますので、なるほど成長期には税収は伸びますが、一たび不況で利益が下がりますと税収は激減いたします。経済成長率の数倍という割合で、神奈川県の場合なども税収の乱高下が生じております。また欠損が出ますと、御承知のようにどんなに公共資本を利用して企業活動を行っておりましても、わずかに法人県民税の均等割り六百円ないし千円、今度数千円に改正されると伺っておりますが、その程度しか負担しないという不合理さも出ております。神奈川県で申しますと、法人事業税は実に今年度は四十九年度の七二%、約三割減という状況でありますし、また欠損法人が昨年は三万一千六百十九社、県下全法人の実に四五%ございます。資本金一億円以上の大法人でも、千円の均等割りしか納めていないという会社が数百社というふうに計算されております。したがいまして、私は、法人事業税につきましては、応益性と税収の安定性を確保するために、課税標準に事業活動をより的確に反映させる外形標準の導入を御検討くださるよう、ぜひお願い申し上げたいと存じます。  次に交付税制度でございますが、現行の交付税率は、四十一年以来据え置かれたままであります。その後増大した財政需要は、交付税総額の伸び——高度成長によりまして租税収入がふえる、これによって交付税額が伸びる、その中で何とか吸収されてまいりましたが、今後の低成長経済を展望しますと、このまま据え置くことは、地方に配分されました事務との関係において矛盾を生ぜざるを得ないと言わざるを得ません。実際、四十一年以来十年間に自治体に課せられました事務は相当数に上り、増大しております。  実は五十一年度の国の地方財政対策を見ましても、国税三税に相当する分三兆八千億余りに、地方の財源不足見込み額中交付税で措置した補てん措置一兆四千億ほど加えますと、五十一年度地方交付税の総額は五兆一千八百億円となっておりまして、これは実は国税三税の予算額の四三%に相当いたします。この点は、五十年度も同様の数字が出てまいります。つまりこの点は、臨時の不況下における措置であるとはいいましても、現行システムの上でもすでに四〇%を超える配分が地財計画上も必要になっている現実を示していると私は考えます。  次に地方債について一言申し上げますが、来年度地方債計画の総額は四兆八千億円で、地方債はますます増大する傾向にあるわけですが、その中で政府資金の枠は逆に狭まってきております。地方団体としましては、第一に、この政府資金の比率を高めていただきたいと思います。また第二に、総額の増加と同時に縁故債に頼らざるを得ませんが、その消化方法につきましてもぜひ国の適切な措置をお願いいたしたいと思います。その一つとしまして、懸案の地方債の共同発行機関の設置について御検討中と聞いておりますが、ぜひ早急な実現をお願いしたいと思いますし、また縁故地方債につきましては日銀の適格担保の対象にするなど、ぜひ消化方法について措置をお願いしたいと思います。  また、当分の間ということで三十年も続いてきました発行に当たっての一件審査による許可制をやめて、総枠配分方式にしていただきたい。また縁故地方債につきましては、公債費比率の限度を設けるなど、一定の歯どめ措置が必要なことは私どもも認めますが、一定枠までの弾力的運用ができるようにしていただきたいと存じます。  次に国庫負担、補助制度に関連して、御承知の地方の超過負担がございます。これにつきましては国でもかなり解消措置を講じられておりまして、その御努力は認めます。しかしながら、超過負担の額が縮小されてまいりましたが、それでも地方六団体の四十九年度の実態調査ではなお六千億円以上に上ると言われておりますし、本県の場合でも六十三億円余りの超過負担を強いられている実情であります。ほんの一例でございますが、国土利用計画法の関連で国基準で措置されてくる人員は十二名でありますが、神奈川県では実人員二十六人を必要としております。  こうして、国がつくる法律や補助制度の多くが、私どもその趣旨に賛成でありましても、このように国からの措置が不十分なまま一方的に地方に委譲されてまいりますと、大変地方は困ってしまうわけでありまして、こうした点、ぜひ国会でも問題の解決をお願いしたいと思います。  以上いろいろ申し述べましたが、ポイントは、五十一年度はもう一度五十年度並みの緊急の措置が必要だということと、それにプラス、五十一年度こそ制度改革をぜひスタートさせる年であってほしいということであります。  いまのトンネル状態を抜け出す努力に地方も全力を挙げます。ただしかし、耐乏というだけではなくて、抜け出た後の展望がなければもちません。地方団体はいま再建団体への転落回避を至上命令としておりますが、言ってみれば視界ゼロの超低空飛行といった状況でありまして、上昇気流と明るい視界を必死で探し求めております。もちろん、財政危機の現状は地方だけではなく国も同様だと思います。苦しいのは自分たちだけとは私は考えませんし、私たち地方も徹底的に姿勢を正すつもりであります。新任の知事の私でも職員や県民に対しましてやりにくいこと、言いにくいことも避けないでやってきたつもりでありますし、今後もその覚悟でおります。しかし、福祉社会づくりの現場は何といっても地方だと思いますし、それがいま財政的に崩壊しようとしております。この現場の苦悩をぜひ国政の場で議論していただきたいと存じます。  行財政改革の方向につきましては、さきに述べましたとおり、具体案が出そろっております。ぜひあとは国政レベルでの英断をお願いしたいと思います。もし必要があれば、国会の皆様、政府機関の皆様並びに知事会を初め地方六団体が徹底的に話し合う場がつくられるべきだと感じております。  国の景気浮揚策にいたしましても、地方が財源難で乗れませんと結局は不発に終わるわけであります。さらに一つ考え方としまして、道路や河川だけが、それも私どもはやるつもりですが、公共事業ではございません。学校建設や老朽校舎の建てかえとか保健所の整備、といったような福祉につながる建設事業も公共事業と同じ扱いをすれば、景気対策と同時に福祉充実につながるというふうに考えます。ぜひこの点、発想の転換を私どももすべきではないかと思います。  福祉社会への転換と申しましても、既存のシステムのままではどうもむずかしいと思います。国、都道府県、市町村、そして企業、住民、そのそれぞれの役割り分担を根本的に見直して真の福祉社会をつくり上げていくために、ともに力を合わせて新しい時代の課題に対応できる行財政システムを創造すべきまさにいまはその好機ではなかろうかと考えます。私どもも苦難に耐えますので、どうぞ国の皆さんはこの事情を御賢察お願いしたいと存じます。  以上で私の公述を終わります。(拍手)
  6. 小山長規

    小山(長)委員長代理 どうもありがとうございました。  次に、池田公述人にお願いいたします。
  7. 池田斉

    池田公述人 ただいま御紹介にあずかりました全国農業会議所専務理事をしておる池田でございます。  昭和五十一年度の国の予算につきまして、この予算委員会で意見を述べる機会を与えられましたことに対しましてまず感謝を申し上げます。  私は、主として農林関係予算について申し述べたいと存じます。  昭和五十一年度の農林予算の編成に際しましては、私たちは、最近におきます国際的な食糧需給の動向を背景といたしまして、国内生産の増強による自給力の向上を図りながら、わが国民の必要とする食糧の安定的供給の確保を図ることが最大の課題であるというふうに考えまして、その編成過程につきまして深い関心を持って見守ってきたところであります。  このような観点から、まず五十一年度の農林予算案の特徴を見てまいりますと、第一に、国の総予算に対しまして一〇%の事実のシェアが従来どおり一応確保されたということと同時に、近年農林予算を大きく圧迫してまいりました食糧管理費、これをこれ以上伸ばすということを防ぐことによりまして実質的な農政費が充実されまして、国の総予算の伸びをかなり上回って確保されたことが挙げられると思います。このことは、わが国経済の安定成長への移行に伴う厳しい財政事情のもとにあることを考えますとき、私は一応の評価をしている次第であります。とりわけ立ちおくれの見られております農林漁業の整備を図るべき公共事業費が大幅に確保されたことは注目に値するところであります。このことはまた、雇用機会が減少している農山漁村における景気回復にある程度の役割りを持つものとして期待されるところであります。今後ともこの方向を推し進め、食糧自給力向上の前提である農林漁業の基盤整備を、国の各種公共事業における最重点の課題として位置づけ、これが特段の推進を図っていただきたいというふうに考えるわけでございます。  第二の特徴は、生産基盤の整備と並んで水田の総合利用対策の実施による生産増強対策の積極的推進や中核的担い手の育成、農産物の輸入の安定化と備蓄の強化、漁業経営の安定化等を内容とする総合食糧政策の展開を図るための第一年度予算としての性格を持つものとして編成されたものでありまして、その一応の前進を評価するものであります。  その内容といたしましては、これらに関する継続予算が従来よりもかなり充実されてはおりますが、さらに各種の新規施策に対する予算化が認められまして事業の実施の芽が出ることになりましたこと等、今後の施策の推進に期待を持つものであります。  以上、昭和五十一年度の農林予算案についての概括的な評価を申し上げたわけでありますが、次に、この予算案に関連いたしまして、今後の農政の重要な課題としてその解決を図る必要を痛感しておる農林漁業政策の基本的な問題について、若干の感想と希望を申し述べたいと思います。  その第一は、食糧生産基盤の整備についての問題であります。  土地改良並びに農用地開発等の農業基盤整備費は前年に比しまして二一・六%の増、また沿岸漁場整備開発並びに漁港整備等の水産関係基盤整備費は二六・四%の増と大幅な増を見せましたことは、今後の農山漁村経済にかなり好ましい影響を与えるものと期待をするものであります。  このことに関連して、食糧生産増強の基礎をなす農用地の確保と開発造成について一言申し述べたいと存じます。  さきに政府におきまして決定を見ました「農産物の需要と生産の長期見通し」、これにおきまして昭和六十年の農地面積を五百八十五万ヘクタールと見込んでおります。率直に申し上げまして、私たちは、これでは必ずしも十分ではないと思うのであります。しかし、現実問題としまして、昭和六十年までにこの五百八十五万ヘクタールを必ず確保するということそれ自体がなかなか容易でないというふうに考え、当面は最小限その目標の達成を念願するものであります。長期見通しにおきましては、昭和四十八年から六十年までの間に七十万ヘクタールが壊廃され、八十六万ヘクタールの農地を造成して初めて五百八十五万ヘクタールが確保されるということになっております。しかし、過去十年間の実績を見ますと、一年平均の壊廃は約八万ヘクタール、同じく一年平均の造成面積はおおむね五万ヘクタール程度でございます。これから見ましても、今後農地を拡大するためには、まず農地の転用、壊廃をできるだけ厳しく抑制するとともに、今後十年間に八十六万ヘクタール以上の農地を造成するためには、政府においてよほど本腰を入れた取り組みが必要であると思うのであります。といいますのは、現在時点において、土地改良長期計画による約七十万ヘクタールの農地造成の進捗度はかなりおくれております。昭和五十一年度予算におきましては、このおくれを取り戻すための予算がある程度計上されておりますが、その額はほぼ八百六十億円程度でございます。土地改良長期計画による平均一年分の必要額、これは四十八年ベースで千三百八十億ということになるわけでございまして、したがって、五十一年の八百六十億はこれをはるかに大きく下回っており、決して十分ではございません。農地の開発造成にはこのように莫大な経費が必要でございますが、今後継続的な画期的な予算の確保が絶対に必要な条件となります。さらに、今日の土地の権利関係の調整のむずかしさ並びに高地価の実情等を考えますとき、適地の確保につきましては、権利調整対策を含めた抜本的な対策の確立が望まれるのであります。  第二は、国民食糧の重要なたん白源の一つである水産資源の確保のための沿岸漁場の整備について申し上げたいと思います。  今日、海洋法をめぐる国際的事情を背景といたしまして、従来のたん白資源としての一千万トンに及ぶ漁獲量の確保に対する不安が高まりつつあるのでございます。全漁獲量の四分の三を占める遠洋及び沖合い漁業の中で、特に遠洋漁業による四百万トンの漁獲につきましては、今後きわめて厳しい状況に置かれるものと見られますので、将来のわが国の水産資源につきましては、長期的展望に立って、来年度以降において沿岸漁場の画期的整備を図ることによりまして、遠洋において失われるものを沿岸でどうやって計画的に確保するか、この政策を本格的に推進することがきわめて重要であると存じます。  第三は、農林漁業の後継者の育成確保の重要性についてでございます。  今日、新規学卒者で農業につく者の数は激減を見まして、昨年三月卒業者ではすでに一万人を割ろうとしているわけでございます。さきに国土庁が発表いたしました新全総の点検作業におきましては、この点を非常に憂慮しておるわけでございます。現在の趨勢が仮に今後も続くとした場合には、昭和七十五年、すなわち西暦二〇〇〇年には基幹的農業従事者は九十万人にまで激減し、しかも六十歳以上の者がその六割を占めるというような老齢化になるということを一つの試算として出しておるわけでございまして、国土庁におきましても、農業後継者の確保対策の重要性と、将来の中核的農家となる者に対する農業教育の必要性を強調しているところであります。漁業関係の後継者の動向につきましてもまさに同様でございまして、将来のわが国農林漁業を展望いたしますと、まさに鳥はだの立つような思いがいたすのでございます。国家百年の計に立って、後継者の育成確保に対する抜本的な対策が確立されることが望まれます。まず、学校教育におきましては、今日全国で三十六校見られますところの自営者養成農業高校を初め、農業高校における自営者養成学科を——全体の農業高校を、整備統合を含めましてこの自営者養成高校の画期的な充実強化が図られることを私は望むわけでございます。農業高校そのものは今日非常にたくさんございます。単独の農業高校が約三百、一般高校で農業科を併設しているものを入れますと約七百になるわけでございます。これだけの数がありながら、わずか一万人しか農業に定着をしない、こういう問題に対しまして抜本的なメスを入れていただきたいと思うわけでございます。次に、農林予算におきましては、県や国におきますところの農業研修教育事業並びに民間がやっております農業者の研修教育機関、これらの研修事業といたしまして、五十一年度におきまして農林予算の中におきましてはわずか十一億円の予算が計上されておるわけでございます。これでも若干の伸びは示しておりますが、きわめて不十分でございまして、今後抜本的な対応策を切望するものでございます。  なお、農業後継者対策といたしましては、農業者年金基金法の改正が今国会に提出をされまして、新たに後継者に対する特別保険料の設定、いわゆる三割割引という問題でございます。さらに、経営移譲の要件として使用収益権を認めることが予定されております。これらは私どもは高く評価しており、この実現が今国会にできることを要望するものでございます。  以上のように、後継者確保のためのいろいろな政策を、学校教育と農政対策の両面におきまして連携を図りながら、長期的視点に立って、計画的に確保することを強く希望するものでございます。  第四は、農産物の安定輸入と備蓄制度の確立についてでございます。  政府では、今後ともどうしても輸入に依存せざるを得ない農産物につきましては、食糧安定供給の一環として、昨年その安定輸入と備蓄の強化を図る観点から、新しい制度を五十一年度より制定し、必要な予算を確保するための検討が行われており、私たちはその制度の確立と安定輸入並びに計画的な備蓄の実現を期待したところでありますが、結局はこれが物にならず、備蓄経費の国庫助成を増すということで公益法人による備蓄体制を確立するということになったわけでございますが、それはそれなりに一応の前進とは思いますけれども、今後さらに検討を深めまして、対策の充実と制度的発展を図られるよう希望するものであります。  第五は、米の消費拡大についてであります。  食糧の安定確保につきましては、御案内のように、高い生産力を持つわが国農業の米の生産力、これを最大に活用することが重要であると考えます。米に対する国民の理解は徐々に高まりつつありますが、今日わが国の米の生産力と国民消費動向との間にはなお相当の差が見られるわけでございます。このことが農政のいろいろな問題の根源に介在しているわけでございますが、これをいかにしてマッチさせるかということが一つの大きなこれからの問題であると思います。政府は、米飯の学校給食につきまして、これを割引をいたしまして、米飯給食を公式に、実験段階を過ぎて取り入れるということになりましたことは、それなりの一応の評価をするわけでございますけれども、基本的にはやはり国民の需要を喚起して、わが国でできる米を主食としてどれだけ消費拡大をするかということに相なると思うわけでございます。今日、農業団体におきましても、また食糧庁におきましても、これをいろいろとさらに前進を図ろうという努力が払われていることは御案内のとおりでございますけれども、この米の消費拡大問題は、単に農業団体、農林省、食糧庁だけの問題ではなくて、政府全体において、言うなれば一つ国民運動としてこれを取り上げるというような総合的な措置を私は強く切望するものでございます。  最後に、食糧の国内自給度の向上の政策を柱とした総合的食糧政策を内閣全体の最重要施策としてしっかり位置づけ、そして国民の食糧に対する安全保障体制の確立を図ることがきわめて重要であるということを訴えたいのでございます。  昨年は、御案内のように国民食糧会議の開催等を含めまして、食糧問題の重要性についての世論形成が前進したことを私は喜んでおります。今後とも国内自給度の向上を柱とする食糧政策を国政の基本として位置づけるとともに、この食糧政策に対する国民の理解を深める対策を継続的に図ることが必要であると考えます。  五十一年度の農林予算案におきまして、麦、大豆、飼料作物を初め水田総合利用対策の対象作物等の生産増強対策につきましては、それぞれ前進が見られましたし、また水産につきましても、沿岸漁業の振興対策、中小漁業の経営対策、魚価の安定対策等の強化が図られましたが、農産物、水産物を含めまして、人間の生命の基本になる食糧につきましては、国力を挙げて精いっぱい今後自給力を上げていくという方向での政策姿勢の確立とへ国民的合意を恒久のものとするということが必要であるかと思うわけでございます。  なお、基本食糧について国内自給度を高める結果として、農産物、水産物のコストが若干高まるということも想定されるわけでございますが、食糧の安全保障の観点から国民の十分な理解が得られるよう必要な対策が講ぜられることを望んで、公述を終わりたいと思います。  御清聴どうもありがとうございました。(拍手)
  8. 小山長規

    小山(長)委員長代理 どうもありがとうございました。     —————————————
  9. 小山長規

    小山(長)委員長代理 これより各公述人に対する質疑に入ります。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。  なお、午後の公聴会予定もありますので、質疑はお一人答弁を含めて十分程度に御協力をお願いいたします。  最初に、倉成正君。
  10. 倉成正

    ○倉成委員 それぞれ三公述人から非常に貴重な御意見をいただきましたが、減速経済下における日本の将来を考えるときに、国土の狭い、資源の乏しいわが国で、大きな財産は人間の問題であろうと思います。そこで、人間の問題に焦点をしぼって、教育について長洲公述人、雇用について中島公述人、農業の担い手について池田公述人から、それぞれごくポイントだけをひとつお答えをいただけば幸いだと思います。  実は、長洲知事が非常に地方財政の苦しい中で御苦労なさっておるわけでありますけれども、先ほど公述の中に、今後十年間に高校を百校神奈川県でつくらなければならないというお話がございました。今日の非常に苦しい国や地方財政の中で、教育の面におきましても財政効率的な使用ということを真剣に考えるべき時期に立ち至っておると思うのでございます。長洲知事は、さきに高校教育問題を考える県民討論会というものを催されまして、私もその詳しい議事録をいただいておるわけでございますが、こういう問題を、この討論会を踏まえて一体これからの教育行政の量的な拡大と同時に質的問題をどう考えるか、特に高校教育についてこれからどうしていったらよろしいか、百校の高校建設をこの苦しい地方財政の中でどう対処していこうとされるのかということを、端的にひとつお答えをいただきたいと思います。  それから、中島公述人には、御案内のとおりわが国の石油ショック後の企業の収益がなかなかうまく立ち直らないということの原因は、価格の問題もありますけれども、やはり企業の体質、すなわち過剰雇用を抱えておる、また金利負担が高いということでございますが、特にこれから先の過剰雇用をどういうふうに考えていったらよいのか。企業として仮に切り捨てていく、そうするとこれを国が抱えなければならないという問題が出てくるわけでありまして、いま五十一年度予算で二千五百億の失業対策費を組んでおります。私は、失業者が出るならそういうものをむしろ働かしてそういう金を使うのが適当ではないかという考え方を持っておりますが、この点について御意見を賜れば幸いだと思います。  それから、池田公述人には、先ほど農業後継者のお話がございましたけれども、一体農民にやる気を起こさすにはどうしたらよいかということ、抜本的な改革というお話を農業教育についてされましたけれども、具体的に、たとえばどういう所のどういう例があるからこういうことをやったらよい、という例をお示しいただきたいと思います。同時に、やはりこれだけ農業が変化しておるのに、農業団体が余り大きな変化をしていない。一体どうこれから農業団体はこの農業の変化に対応していくかということについて、これも端的にお答えをいただければ幸いだと思います。  以上三点につきまして、それぞれの公述人から御意見を賜りたいと思います。
  11. 長洲一二

    長洲公述人 神奈川県では、中学を卒業いたします子供の数が十年後にはいやおうなしに倍になります。したがいまして、公立高校で申しますと、現在、明治以降百年余りの間に九十数校つくっておりますけれども、どうしてもあと百校を最近十年ちょっとの間に建てなければ中学浪人が出るというのが、いやおうない状況でございます。言ってみれば、高度成長時代にどんどん若い人が全国から集まりまして、それが言うまでもなく結婚をし、そして子供をおつくりになり、その高度成長のツケをこれから低成長時代に払うというような形に事実上なっているわけでございます。しかし、この問題は、私は知事としましては何としてでも子供たちに中学浪人が出るといったようなことのないよう、万難を排してこの百校計画は実施しなければならないと決意しております。  ただ、神奈川県のような所で高校の用地を探すことがまず非常に困難でございますし、大変金がかかります。大体一校、最近のでも平均して三十七、八億円かかります。これを百校と申しますと事実上四、五千億円かかりますし、さらにその運営費が年々膨大な数十億という額に上ってまいります。したがいまして、財政問題としましては、私どもは知事会の中でも人口急増都府県のところではやはり高校建設についての国庫補助制度をお願いしたいというので多年運動してまいりまして、最近ようやく、その金額はわずかでございますが、芽が出ましたことを私は大変ありがたいと思っております。先ほども申しましたように、高校建設は言ってみれば景気対策にもなり、福祉対策にもなり、一石二鳥でございますので、ぜひこのことは一層進めていただきたいと存じます。  以上が建設問題でございますが、これだけでも困難でございますが、いろいろ県民と討論会その他を通じて論じておりますと、学校の数が欲しいという量の面と同時に、教育の中身について皆で考えようという機運はもう非常に高まってきております。ある県民からは、これから百校必要だけれども、これから百校また同じ予備校みたいのをつくっていいのかといったような鋭い疑問も出ておりますし、なぜそんなに高校へ行くのだろうといったような疑問も出ております。これはなかなか高校だけの問題ではございませんで、学歴社会といったような社会全体の問題にもなりますが、何としてでも教育の中身について徹底的に洗い直さなければ、単なる建設の問題だけでこの教育の問題は片づかないというふうに私どもは理解しております。  実際私たちも、まず親の皆さんにも、高校をつくるのも何も知事がつくるのではなくて県民の皆さんがつくるのだということ、そのためにはいろいろな困難もがまんしなければならない面が出てくる、そういう選択の問題をお考え願いたいということ、そしてまた、高校をつくりましても、そこへ行く子供たちがもし世上言われますように無感動、無関心、無目標、三無主義であったり、あるいは点数ばかり気にしたり、あるいは少し元気のいいのは暴走族というのでは、これはもう泣くにも泣けない状況だ、ぜひこの教育の中身についてみんなで考えようというふうに私どもも訴えておりますし、県民の中にもそういう機運はにわかに高まってきていると思います。  実際、九〇%を超える子供たちが高校へ通う時代の高校教育というのは一体何なのか。これは六・三義務教育、そして三と上へ積んだ発足当時とは全く現実が違ってまいりました。こういう時代で、恐らく私は高校進学率が五〇%を超えた段階、七〇%を超えた段階で徹底的な議論をしておくべきだったと思いますが、こうした大衆教育時代の高校のあり方についてかなり突っ込んだ議論をいたしませんと、入れ物だけの問題ではないような感じがいたします。  以上、大変漠然としておりますが、私の考えておりますことを申し上げた次第です。
  12. 中島正樹

    中島公述人 ただいまのお尋ねに対しまして、若干私の感じておることを申し上げたいと思います。  現在、日本企業が過剰雇用をしておるということは、かなり——正確な統計はないのでありますけれども、表向きの失業者が百万人から百二十万というのに対して、企業は、二百万人は少なくともある、人によっては三百万あるというような議論もしております。しかし、この問題は私は非常に日本の終身雇用制に大きくつながっておる問題だと思っております。  この終身雇用制がいいか悪いかについてもいろいろと議論があり、また外国におきましても、一ころは日本の終身雇用制は非常に悪いということを言っておりましたが、最近はまた日本の終身雇用制が非常にいいと言うような学者も非常にふえてきておるわけであります。そういう意味では、日本の終身雇用制というのはある意味においては日本産業が非常に発展した大きな要素だと私は思っておりますし、特に日本企業における組合活動がきわめて企業中心、という言葉は不適当かもしれませんけれども、企業とともに同調していくというような空気ができたのも、大きな終身雇用制との関係があると思うのであります。ただ、ここに、いまの問題と関連しまして、こういうふうに考えなければいけないのではないかと思います。というのは、終身雇用制によりまして職業の転換ということが非常にできなくなったというふうに思うわけです。できないということはないのでありますけれども、外国ではほとんどいつでも職業の転換が自由にできるわけでありますが、日本では非常に企業に根をおろしてしまうと、そこには新しい職業に転換するという意欲もなければ、またそういう心構えもできなくなってきているということが一つ問題点だと私は思うのであります。どちらがいいかというよりも、むしろ一番問題は、こういう新しい産業転換が行われてきたとき、これはどういうふうに考えるか。特に日本におきましてだんだん構造的に衰退していくという傾向になっております繊維産業のごときものと、あれから直ちに、またいま非常に不況でも景気回復すれば直ちに伸びていけるという産業の場合とでは、おのずから性質が違うのではないかと思います。繊維産業については御関係の方もあるいは非常に御議論があるかもしれませんけれども、やはり私は、二十世紀の初めにイギリスの経済学者でポッターという女史がおりましたけれども、今世紀中にイギリスの繊維産業日本にとられ、その次の世紀には日本の繊維産業はインドにとられるだろうということを予言したのでございますけれども、しかし、そういう一つの長期的なことと見ていましても、私もこの新しい転換の要請を迫られる産業については、単に一つ企業だけでなく、国家の産業政策としても考えなくてはいけない問題があるのではないかと思います。  それからもう一つ日本に大きな問題はホワイトカラーとブルーカラーとの差別というようなものがあると思うのでありますが、これは私は非常に問題だと思います。もう世の中がだんだんと変わってまいりまして、昔のようにブルーカラーとホワイトカラーがあるというような考え方は間違っております。現実に、私はこの次に生まれ変わったら植木屋になりたいというのが私のいつもの主張でございまして、それがそういう意味では必ずしも大学へ行かなくてもりっぱに植木屋になれるのではないかと私自身では思っておるのでありますが、そういう意味で、職業というものに対する価値観が、何かホワイトカラーであるということが非常に価値あるような考え方をすることはまず脱皮しなければ、新しい日本産業社会というのはできないと思います。というのは、産業構造が変わってまいりまして、新しい第三次産業というものが発展していくわけでありますから、それに対する考え方が必要だと思います。  ついでにもう一つ、中高年齢層をどうするかという問題がいま新しい問題として、日本の定年制度との関連が深いわけでありますけれども、中高年齢層の雇用につきまして、そういう人たちの人生の経験というものはやはり相当意義があるのではないかと思うのであります。私自身がもしも定年で、小学校から迎えられて、おまえ小学校の先生で何かなってくれと言われたら、実は母校であったら喜んで行きたいという気持ちでおります。やはりそういうような、すでに現実には小学校の先生も不足するというような状態でもありまして、そういう人たちの経験をもう一遍、われわれもそのときは再教育を受けまして、先生というものをどうするかということを習いつつそういうことをさしてもいいと思うのでありますが、そういうような柔軟性のある職場というものと、それから職業の考え方をまず転換するということも一つ対策になるのではないかと思います。  どうも失礼いたしました。
  13. 池田斉

    池田公述人 端的にどうだという御質問でございますが、端的に言えば、農業が魅力を持ち、こういう産業として若い者がどんどん農業をやっていく、こういう政策が全部でき上がればおのずから農業もやる人が多くなる、こういうことかと思うのですが、ただ今日の段階におきましては、そんなことを言っておってもなかなか間尺に合わない。先ほど申しましたような将来憂慮すべき事態である。したがって、いかにしてこの年間三万なり四万の新規就業者を計画的に確保していくかということがなければ一定の農業者の確保ができないし、またその年齢構成が、やはり老齢化を防ぐことができない。  この辺の問題になりますと、私は、一つはどうしてもやはり教育からやり直すということが基本ではないか。今日御案内のように、先ほど申しましたが、農業高校は非常にたくさんありますが、全体として高校を出て、しかも自営者養成という看板のところを出た者が、五十年度の三月では一三%しか農業に就業していない。先ほど、本格的自営者養成高校が三十六校あると申しましたが、これも五割を割りまして、現在四割程度の就農率である。こういう問題は、やはり一つは義務教育の段階から農業を差別視するような、そういう教育のカリキュラムなり——差別はしておるとは思いませんが、何か話に聞きますと、進学指導は、一番できの悪いのが農業高校へ行ったらいい、先生がこういう指導をするということもいまだに払拭されていない。こういう文部省教育を本格的にどうするかということ。  それからもう一つは、それを受けて農林省が、いかにその連中が定着をし、がんばって意欲を出してやるかという、その支えを農政の場でどうするか、こういう問題があると思うのです。これはやはり農林行政は、全体としてはそれなりの意義を持っておりますが、何となく物をつくって金を渡すというハードの政策が中心で、言うなれば人間の気持ちを盛り上げるというような、そういうソフトの政策というものが意外に少ないのではないか。ここをどう政策の体系の中で取り戻すかということが一つの問題ではないか。  われわれは先般農業団体の首脳でいろいろ話し合いを党の方とした場合にも申し上げたのは、北海道で農村青年会議というのをつくって、一市町村当たり五十万を道が単独で補助をしている。そして、その青年者がいろいろ自主的に考える問題を、余り文句を言わないでできるだけ支えてやる。こういう何か、精神作興ではありませんが、自主的な動きを本当に温かい目で支えるというような政策等もいまや並行していかないと、ただ金を出すからどうだということだけではもはや解決がしないのではないかと思うのです。  それからもう一つは、これはやはりいろいろ議論がある点ですが、五百万の農家の中で、専業農家はもう七十万ぐらいしかいないというのが現実です。あとの四百万以上は、これは兼業農家である。兼業農家が数多くあることはやむを得ませんが、プロの農家をどうつくり上げるかということ、言うなれば一種の選別政策になりますが、これは何となく農業団体も反省しなければなりませんが、政府の施策におきましても平均農政的なものが常に軸をなしていて、プロの農家をどうつくるかという、そういう支えに一段と力を入れるということがいまや必要ではないか。そして、兼業農家はたくさんおってもいいのですが、そういう中核農家をどうつくるかということは、政策の課題にはなっておりますけれども、必ずしもそれが十分な方向には動いていない。  本年度予算におきましても、五十億の金が最後につきまして、私どもはこれが何かソフトな政策に使われることを期待しておったわけですが、構造改善事業の別枠という形でやはり常にハードの予算としての実現が行われている。こういう問題をぼつぼつ総合的に考え直す時期に来て、農業団体もそういう反省を含めながら、一緒に、いかにして将来の農業の担い手を確保するかということではないかというふうに考えております。
  14. 倉成正

    ○倉成委員 ありがとうございます。
  15. 小山長規

    小山(長)委員長代理 安井吉典君。
  16. 安井吉典

    ○安井委員 私たちは時間が足りないので手分けをして、私はもっぱら長洲公述人にお願いをしたいと思います。  赤字転落の県政を引き受けられて、しかも五十年度、五十一年度と、恐ろしい財政危機に見舞われての悪戦苦闘ぶりを先ほど伺いました。  そこで、たくさん伺いたいことがありますけれども、まず第一に、福祉の問題についての長洲さんの見解が、何か自治体は財政が苦しいときは福祉はまず切り捨ててもいいのだというふうな、逆に悪宣伝に使われているような向きもあります。社会保障というのは本来ナショナルミニマムでなければいけませんが、それが十分国において行われていないという現状であり、しかも自治体はまさに福祉の現場であるわけでありますから、そういう意味合いを明確にとらえての御発言だと思うのですが、本当の気持ちはこうなんだということをこの機会にやはりおっしゃっておいていただいた方がいいのではないかと思います。  それから次に、いまの財政危機に対する対応を、短期の緊急対策とそれから長期の構造的な政策転換とに分けて論述された点については私ども全く同感ですが、その点について、一つは短期対策で公共事業で景気の浮揚をするのだという発想に対して私たちは疑問があるわけです。景気浮揚のいろいろなファクターの一つになり得ることは間違いないかもしれませんけれども、余りそこにウェートを置くということに問題があるような気がいたします。しかも、国の公共事業費がふえたと言っても、二十何%ふえたと言われておりますが、これは去年の当初予算との比較においてであって、補正予算と比較すると六%ちょっとしかふえていないのですね。しかも、それも地方の負担が三分の一あって初めてできるわけですし、それから地方への補助金や、それから地方単独事業や、そのトータルが公共投資であるわけなんですが、肝心の地方財政への措置が十分じゃなくて、特に単独事業が弱いような気がします。都道府県段階の単独事業はほとんど財政的な裏づけがないのです。そういうような意味で、もう少し御注文があればおっしゃっていただきたいと思います。  それからもう一つ、長期的な対策は、おっしゃるとおり、この危機をどうやって転換するかということの中で本当の理想的な地方財政地方行政を確立する好機だという受けとめ方が正しいと私は思うのですが、そういうことで私たちもいろいろ作業しています。ことしじゅうに何らかの方策を打ち立てなければならぬと思うのですが、その中で、地方税と国税との配分、それから地方交付税との関係、このバランスをどういうふうにとるべきか。私たちは、国と地方行政財政も五分五分に分けちゃえと言っているわけですが、この点について御意見がございましたら、この機会にちょっとお聞かせいただきたいと思います。
  17. 長洲一二

    長洲公述人 申し上げさせていただきます。  第一点の福祉についてでございますが、私が、福祉について、昨年の七月でございましたが発言いたしまして、新聞報道等にも取り上げられたわけでございますが、私の申し上げます趣旨は、高度成長時代の既存のシステムをそのままにしておいて幾ら福祉福祉と言っても、それは高度成長によるおこぼれ福祉でしかない、それに対していまやようやく新しい時代がやってきた、とすると、全体の福祉についての本腰を入れてこれから福祉の充実に取り組むとしたならば、やはり全体の見直しをやらなければならない、福祉の問題だけを取り上げても困るのではないかということが一つの趣旨でございました。  そういう中で、一つには、一体福祉とは何かということ、福祉の質、一体どうすれば国民はみんなハッピーになれるのかということについてもっと徹底して理念的な議論をやるべきだということ。それともう一つは、福祉社会の体系についてもっと系統的に科学的に考えていくべきでないかということでございました。  この体系的にと申しますのは、いまも安井先生が御指摘のように、たとえば年金制度が貧困なままで自治体だけが福祉の後追いをしておってはどうにもならない。やはり、年金のようなナショナルミニマムとしては、国の措置がきちっとしておって、それに対して県、市町村、それから住民、企業、それぞれがどういう役割り分担をし、どういう計画で着実に福祉の体系を整えていくかという、こういうことについて議論を徹底的にやることによって本格的な福祉時代を招来することができるのではないかと、こういうようなことが私の趣旨でございまして、私は、自治体その他が先行してやりました福祉政策について批判めいたことは一切申したことはございません。それを継承して新しい発展をするにはどうしたらいいかという問題提起をしたつもりでございます。  それから、二番目の公共事業景気対策でございますが、私は現在の日本の大きな課題はやはり不況対策にあるというふうに認識しておりまして、そのためには、先ほど中島公述人からもお話がございましたが、個人消費投資あるいは輸出となかなか自立的な回復力が乏しい。とすれば、財政景気回復の主導を務めるということは必要であると思います。そういう点で、公共事業その他財政による景気刺激には私は賛成でございますが、ただ、御指摘のように、公共事業と申しましても、実際に仕事をいたしますのは地方でございますし、それに応じた負担をしなければなりません。現在ではそうした地方負担への措置が率直に申し上げて非常に不十分でございまして、公共事業でも返上しなければならない、せざるを得ないところも出てまいりますし、まして単独事業につきましては非常に財政措置が貧困でございます。この点全く御指摘の点に同感でございます。ぜひこうした点をあわせて考えませんと、景気回復と言っても不発に終わるというふうに私は考えております。また、先ほども申しましたように、公共事業というのを何か財政法上の狭い意味考えずに、もっと学校とか病院とか等まで含めまして——波及効果も非常に大きいのですし、地元の中小企業も担当できる建設事業は幾らもあるわけでございますが、そうした点への補助は非常に少ない、したがって地方が実行できない、こういうことでございますので、公共事業というものの考え方もぜひここで抜本的に変えていただきたいというふうに思います。  最後の、税制の制度改革の問題でございますが、御指摘のように、従来地方と国の間では国が七〇、地方が三〇、そして実際に使うのは国が三〇、地方が七〇などとよく言われております。それをフィフティー・フィフティーに持っていっていただくというのは、私もぜひそうお願いしたいと考えております。私どもは自治体におりますので、わがまま、我田引水になるということは自戒しておりますけれども、やはり、本格的な福祉社会をつくろうと思ったら、国民の暮らしと仕事の場に最も密着している自治体にもう少し行財政上の力を与えていただくことがどうしても本当の福祉社会を実現する今後の日本のあり方ではないかというふうに思い、これは自治体におります者のわがままではないというふうに信じておりますが、そういう点で、いろいろと税配分等につきましては、先ほどもちょっと簡単に一部触れましたようにお願いしたいと存じます。  交付税の問題も、先ほども申しましたように、三二%という率になりましたものからすでにもう十年を経過しておりまして、その間国がいろいろ措置をなさり、結構な措置が多いのですけれども、しかし、地方への措置が十分でないままに、教員の人材確保でも何でもそうでございますが、行われますと、もうすでに三二%の交付税率では賄えない実態が生じている。そのことは、先ほども申しましたように、すでに実際の計数の上でも明らかにあらわれているのではないか。五十年、五十一年度は多少臨時的な要素もございますけれども、すでに四〇%を超える交付税の総枠を事実として確保しなければやっていけないことを政府もまた認めざるを得ない、こういう現実になっているのではないかというふうに存じます。ことに、これから国債がある程度長い期間発行される。国は赤字国債でも発行いたしますが、それに応じまして、地方が何かの財源措置をしていただかないとぐあいが悪いわけでございまして、国債発行に伴う、その国税三税の交付税率分に相当する分ぐらいはやはり交付税率をアップするということの、恒常的なアップでも結構ですし、ある意味では臨時の交付税でも結構でございますが、措置をしていただくことがどうしても不可欠だというふうに私どもは感じております。
  18. 安井吉典

    ○安井委員 ありがとうございました。
  19. 小山長規

    小山(長)委員長代理 続いて、堀昌雄君。
  20. 堀昌雄

    ○堀委員 私は中島公述人に二点ばかりお伺いをいたします。  最初に、私は、この間の予算委員会の総括質問で中島さんの研究所のデータを引用させていただきまして、高く評価をさせていただいておるわけでありますけれども、現在、経済界、エコノミスト、政府と私どもの中で、現在の日本経済に対する考え方が大別三つぐらいあるのではないかと思います。一つは下村治さんに代表されるところのゼロ成長論で、いろいろとやってみてもしばらくはもうだめなんだというお考え一つあります。二つ目は、どちらかというと循環的自然回復を待つといいますか、ですから、消費の拡大をやや軽視いたしまして公共事業中心でいきたいという、言うなればしごき方式、福田さんに代表されるところの物の考え方であります。三つ目は、最終需要の拡大がどうしても必要なのではないか、そのためには必要とあれば減税等も行うべきではないかという考え方が三つ目の考え方ではないかと私は思います。近代経済学者の皆さんの多くがややこの側に回っているように思います。     〔小山(長)委員長代理退席井原委員長代理着席〕  そこで、中島さんは、この三つのうちのどれが日本経済の今後を安定成長の軌道に乗せるのに最も適当だとお考えになっておるのかということでございます。三菱経済総合研究所のデータを拝見いたしますと、十二月の初めにお出しになったもので大変うまく当たったと私は思うのですが、予算の伸び率一四・一%、春闘は九%程度——これは別でありますが、一つの仮定として九%程度とするならば実質成長三・九%だ、個人消費の伸びは実質で二・一%だというふうにお出しになっております。私も実は党内でいろいろ議論している中では、いまの政府のやり方では大体実質成長は四%程度だというふうに見ておりますが、それでは私は、いまの日本経済を雇用面から見ましても、あらゆる面から見て、回復させる軌道に乗せるのにはちょっと不十分だという判断をしておりまして、少なくとも政府が出しております実質五・六%程度は達成されることがこの際日本経済にとっては望ましいと私も見ておるわけであります。  そういたしますと、三菱総合研究所でも、私もそうですか、いまのままではどうも五・六%までには及ばない、ある時期にはそのことがはっきりしてくるのではないかと思いますが、その際にそれではどういう手だてをとるべきだろうか。さっき中島さんはアメリカの減税に触れられて、小切手による一種の戻し税だと——私どもも提案しておりますのは、実は戻し税制度でございます。特に政府がいま私どもの提案を受け入れそうな見込みはございませんから、現実にはいまの所得減税なしでスタートをしていく。しかし、たとえば六月ごろになって、あるいは七月ごろになって、これはどうにもならないという段階になれば、そこで私どもの言う戻し減税方式をとるということになれば、実は、年末調整と同じように、ある時期において現金による戻し税を行うということが私どもは可能だと考えております。さらに、単に減税だけではなくて、現在減税を受けない低所得国が約一千万世帯程度ございますけれども、この人たちに対して、社会保障基金特別会計というものをつくりまして、社会保険料、健康保険及び国民健康保険の保険料、保険税に対するところのやはり同じような戻し税をこの社会保障基金特別会計を通じて行ったらどうだろうか。三つ目は、所得保障をもう少し充実することによって、低所得層の非常に抑えられておるところの消費性向を引き上げたらどうだろうか。こういうことが私たちの最終需要拡大に対する一つの提案でございます。     〔井原委員長代理退席小山(長)委員長代理着席〕  先ほどちょっとお触れになった投資減税については、私は、いまの日本の諸情勢から見て、投資減税をして設備投資が出てくるとは考えられないというふうに思っておりますので、輸出はもちろん、今度輸銀を非常に拡大をいたしましたので、望ましい方向に行けばいいと思いますが、これは相対的で、こちらでどうしようと言ってもなることではございませんから、現実に経済を確実に浮揚させる手段というものは、財政の手で処理ができるものということでなければならないと思います。  公共事業については、お触れになったように、地方財政の現状から、この委員会でも申しましたけれども、政府の経済見通しの実績見込みと実績がわずか三ヵ月でも大きく狂うというような政府の財貨サービスの購入の姿でありますから、公共事業に過大な期待をかけるのは間違いではないか。もうすでにお話のあるように、補正後六・四%しか伸びておりません。三千六百億程度の伸びでもありますし、地方財政の今日から見て、公共事業の問題はそんなに過大視できないと見ておりますので、以上の二点、要するに、日本の経済回復方式は一体いずれによるべきか、同時に、五・六%程度の実質成長を確保し、雇用も安定させるためには、もし見通しが狂ってきたということになったときに何を行うべきかの、この二点についてお伺いをいたします。
  21. 中島正樹

    中島公述人 堀先生からいろいろとお話しいただきましたが、大部分の点で私と考えが非常に似ているところがたくさんあると思うのです。  ただ、いまお話のございました最初問題点といたしまして、私自身としては、何と申しましても国民の総支出が個人の所得でありますので、そういう意味におきましては個人の需要の回復がやはり一番主眼になるものだろうと考えております。ただ、今日の場合、緊急避難という問題があるものでありますから、いまそこの問題をいきなり広めてしまうことは少し問題があると思います。その点につきましては、御説のとおり、公共投資効果あるいは景気浮揚効果がもう少し進んだ段階においてもう一遍考えるべき問題だと思いまして、今日の段階では、先ほど申しましたように、そういう問題点があるということだけを申し上げたので、全面的に反対と申し上げておるわけではないのでございます。  それから、投資減税については御批判がございましたのですが、これは私は、すべての産業について投資減税をしようというのではなくて、主として電力とかガスとかというような非常に長期的なものを要するものにつきましては特別な配慮があっていいのではないかと、そういうふうに思っております。  それから、回復の前提として、比較的論議されておりませんが、金利政策につきまして、私はやはりもう少し柔軟性があってよろしいのではないかと思います。機動性が非常にないように思います。もうさんざん利下げをする、利下げをすると言って、最後にいやいや利下げをしたというような利下げは利下げの効果がきわめて乏しいと思います。むしろこの際はどんどん下げることは下げていって、ただし、預金金利等のような関連につきましては、公定歩合というものは景気指標として考えるというような考え方を少し取り入れてよろしいのではないかと思います。  特に、私として心配いたしますのは、かつての過剰流動性が日本において大きな災害をもたらしたという意味におきましては、日本でもまた景気が浮揚してまいりまして、ことに最近でもすでに若干はそういう円が高くなりつつあるというようなことで外資が入ってくる等もありますものですから、そういうときに対応するためには即座に公定歩合を引き上げるというような政策もとってもらいたいわけでありますが、いまのような状態だと余りにも弾力性を失っておりますので、時期を失うということのために再びまたああいう問題を起こす可能性——諸政策的に見て、現在そういう流動的体制というものが日本金融全体の組織に抜けているという点があるのではないかと思いますので、その辺のことで一応お答えをさせていただきまして、もしもまた不足だったならば御説明をさせていただきたいと思います。
  22. 堀昌雄

    ○堀委員 前段の方は私の提案とそんなに御意見が相違しないようでありますが、いま新しい問題で金利政策のことがちょっと出ましたのでちょっとそれに触れておきたいと思うのであります。  私は、もう一年ぐらい前からこういう提案をいたしております。銀行勘定の中では、個人勘定とそれから企業勘定といいますか事業勘定と二つありまして、個人勘定はいつでも超過勘定、そして事業勘定はいつでも貸し出し超過、こうなっておるわけであります。そうしますと、個人勘定の方は超過勘定ですからできるだけ高い金利が欲しいことは当然でありまして、貸し出し過多の事業勘定の方はできるだけ安い金利で金を貸してくれということが要求だと私は思います。  そこで、この両方を満たし得る方法はないのかということについて、一つの提案をしておりますのは、いまその事業勘定が持っております定期預金、これはある意味で両建てになっておるわけですけれども、この定期預金をやめたらどうかという提案を昨年来しておるのです。これを全部通知預金にいたしますと、公定歩合は一%動かして、そして預金レートをそのままにして、貸し出し勘定は実は一%下げられるのです。定期預金が全部なくなったとしましたらね。これは時間が切れ目がありますから、全部切れ目が来たところで一%切るのですが、少なくともいまの状態では、公定歩合が動いても、金融機関というのはやはり自分のところの利益を考えるものですから、預金レートが動かない限りはなかなか下げない、追従率がなかなかうまくいかないというのが現状でございますから、そういうときに、よりいまの機動性を持たせるためには、日本における事業勘定の人たちは預金は当然していただいていいわけですが、ひとつ通知預金でやってください、そのかわりそれだけ実質金利を下げますという形にした方が機動性が非常にふえてくるんじゃないか。私もかねてからこの委員会で金利弾力化論ということを長年にわたってやっておりますけれども、残念ながらなかなか弾力化しませんが、その金利の弾力化の一つの手段としてもこの方法は非常に有効ではないか。その点では私も貸し出し金利が下がることに反対ではありませんが、少なくとも物価がことしはまだ一〇%程度いくだろうというときに預金金利を下げることは、貯蓄性向がこんなに高いときに国民期待を裏切ることになりますから、これには私どもとしては絶対反対ですけれども、しかし、そういう方法を講ずれば、実は、貸し出し金利は下げられるし機動性が確保できると思いますので、その点についてのお考えをひとつ伺いたい。
  23. 中島正樹

    中島公述人 ただいまのお話は大変おもしろいお話、御意見であるように思っておりますし、非常に各方面がうまくいくという御趣旨だと思いますが、ただ問題は、私の感じでは、個人と事業とをどういうようにして区別をするか、ボーダーラインで日本の中小企業関係者の場合に個人と認めるかあるいは企業と認めるかというような問題が恐らくあるのではないかと思いますので、どういうふうにしてその問題を進めるかということは非常に検討に値するし、私個人としてはおもしろい御提案だと思いますが、そこの問題だけが非常にあれだと思いますので私の感想をちょっと述べさせていただきました。失礼いたしました。
  24. 堀昌雄

    ○堀委員 いまの区別は、要するに、住宅ローンであるとかその他の生活ローン以外に貸し出しのあるものはすべて事業勘定とみなすということでございます。ですから、普通の個人はまさか住宅ローンなり生活ローン以外に借りているはずはございませんで、それは何か事業をしているわけですから、それ以外に銀行の窓口で貸し出しのあるものは個人、法人を問わず全部事業勘定として処理をするということにいたしますと非常にはっきりして、処理は可能だという判断です。  終わります。
  25. 小山長規

    小山(長)委員長代理 続いて、増本一彦君。
  26. 増本一彦

    増本委員 時間がございませんのでお三人の公述人にそれぞれ続けてお尋ねをして、後でそれぞれお答えをいただきたいと思います。  先に長洲公述人にお尋ねいたしますが、一応来年度の神奈川県の予算編成を終わられた直後でございますから、しぼりまして、主としてこの五十一年度の国の予算案との関連で当面緊急に国に対してどういうことをやってほしいかという、その要求をひとつ具体的に明示をしていただきたいというように思います。  先ほどからのお話でも、住宅とか学校、病院その他波及効果の高い公共的な事業にもっと国の補助や助成を十分にやるべきだという御意見もございましたし、それからまた、地方単独事業についてももっと助成をなさるべきだという御意見も拝聴いたしました。まさにそのとおりだと思いますし、それとあわせて国の直轄事業に対する地方の分担金の制度も、これも地方財政を圧迫する一つ原因でもあると思います。こういう問題については私たちは廃止をすべきだというように思いますがや知事としてはどういうようにお考えか。また、神奈川県では水道料金の引き上げが行われましたし、こういうような水道事業が地方財政一つの赤字の大きな原因にもなっている。この水道事業に対する国の補助制度というものはどうあるべきか、どういうことを要求されるか。あるいはまた、ほかの地方公営企業についての御要望ではどういう点があるか。そういう点を取りまとめてひとつ当面の問題として御意見を伺いたいと思います。  それからもう一点は、これは特定国有財産整備特別会計に関係がございますが、神奈川県は基地県で、知事も先頭になっていろいろ基地の返還を要望してまいりました。しかし、二月の六日の国有財産中央審議会の返還財産処理小委員会でいわゆる三分割方式というものを決めたように報道されています。神奈川県ではキャンプ渕野辺、それから東京都では東大和、埼玉県では朝霞がそれぞれ問題になっていて、要するに十ヘクタール以上の基地の跡地については地方が三分の一、国が保留地として三分の一持ち、そしてあとの三分の一を国の事業でやる。これでは、これまで各地方自治体が基地の跡地を公共用地として活用していこうというこの計画が非常にとんざを来すというように思われるわけであります。こういう点で、各地方自治体ぐるみで基地の返還と後の住民本意の利用ということでいろいろ御努力をなされてきた知事の、国のこの方針に対する御見解もあわせて伺っておきたいと思います。  それから中島公述人には、先ほどのお話で老人福祉との関連で、お年寄りになってもやはり働くということをもっと考えるべきではないかというお話がありました。今日、全体としての有効求人倍率も〇・五二という非常に深刻な状態のもとで、なおかつ中高年齢者の求人倍率は極端に悪化をしてきています。まだこれほどタイトでなかった四十九年十月の労働省の統計しか最新のものはございませんけれども、これを見ましても、六十歳から六十四歳までで〇・〇七、六十五歳以上になると〇・〇二という求人倍率であります。こういう状態のもとで、中高年齢者の雇用の促進ということが、これを制度的にきちんと保障することなしに、実は老人福祉との関連で働くという問題を考えることはできないわけであります。今年度予算で定年制の延長について奨励金の制度がさらに若干拡充を見るというような手だてしかなされていませんけれども、公述人としては一体どういうような制度でこれを解決しなければならないとお考えなのか、この点を明らかにしていただきたいと思います。  それから池田公述人には、非常に農業問題で御努力をされていらっしゃるわけですが、やはり農業を基幹産業一つとしてきちんと位置づけるということが何よりも大前提として重要だと思いますが、特に緊急の問題として、農業所得を増加させ、農業経営を安定させるという点では、いまのこの厳しい農業環境のもとでは主要農産物の価格保障制度を特に拡充し、それを全面的に採用していくという手だてが何よりも重要であるというように私どもは思うわけです。そのことを抜きにして中核農家の育成もあるいは農業経営全体の安定も図ることはできないというように思いますが、農業基盤の整備とあわせてこの価格保障制度についてどのようにお考えなのか。  これらについて、それぞれの公述人の御意見を伺いたいというように思います。
  27. 長洲一二

    長洲公述人 いろいろ御指摘いただきましたが、私もほぼそのように、増本議員の御指摘のように考えております。やはり波及効果が高くて、福祉につながって、しかも地元で消化できる、そういうような公共事業、たくさん私どもはやりたいものを抱えておりますが、そういうことに対する財源措置がほとんどありませんのでやれないでいる。こういう点で、ぜひそうした公共投資につきまして県単独のものも含めまして、市町村単独のものも含めて助成措置を考えていただくことが国全体の景気浮揚策とも合致するというふうに感じております。  国直轄事業の分担金についての御指摘がございましたが、これは私どもまことに困っているわけでありまして、実際払い切れないでいる自治体が続出しております。国直轄の事業であれば、ぜひ地元の負担をなくしてやっていただきたいというのが、私どもの切なる願いでございます。  そのほかいろいろ本来県なり市町村なりがやるべき仕事、病院の問題もあります、水道もあります、あるいは下水道のこともございます。こうしたことにつきましても、現在の段階ではやはりある意味ではナショナルミニマムみたいな性格を帯びているわけでございますので、ぜひこれらについても国全体で考えていただくということをお願いしたいと思います。  また、一例でございますが、国保のように、どうしても事実問題として制度的に赤字になるのがわかり切っている事業を市町村が押しつけられている。市町村はみんなバンザイをしている。そして県がそれに多少の助成をしなければならないところに追い込まれる。しかし県の方もバンザイ、こういうことでありまして、こうした点は、もうすでに問題点はほぼ専門家の間では明らかになっておりますので、後は改正の実行をどうするかということではないかと存じます。  五十一年度当面の問題といたしましても、以上申しましたようなさまざまな、ある程度制度的な改革の問題、これにつきましては、実は先ほども触れましたが、知事会——知事会の意見だけが正しいとは私はあえて申しませんけれども、かなり実行可能な具体案が知事会を初めとして方々で出ているわけでございまして、このすべてとは申しませんが、まずできるところから手をつける、そのことによって五十二年度以降の展望を開く、こういうことが何より大事な時期に来ているのではないかと思います。  また臨時の措置といたしましても、五十一年度の財源難、五十年度は、率直に言いまして不十分ですが、ある程度のことはやっていただきました、減収補てん債のようなこと。五十一年度もやはりどうしても五十年度よりも一層財政状況は厳しいわけでありますので、ああした臨時措置を現在考えられておりますものにさらにプラスしてぜひお願いしなければならないと思います。  地方債、借金だけで切り抜けるのは私どもも残念でありますけれども、しかし、当面は借金でもこの緊急事態を切り抜けたいと思いますので、そうした地方債の枠組みにつきましてもう一度増強を考えていただきたいというふうに思います。  最後の基地の問題でございますけれども、これは最近新聞報道でも出ております大蔵省の三分割案、そしてまた、有償で非常に巨額の負担をして初めて地元に譲与するという案は私どもは全く反対でございます。この問題は、私どもから言わしていただきますと、単なる国有財産一般の処理の問題と考えていただいてはまことに心外でございまして、戦前から、さらに戦後三十年にもわたって戦争の傷跡として私どもがしょっているわけでありまして、この問題は基地問題であって、財産処理の問題ではございません。そのことを何か国の財源の問題というふうにお考えになったりしてはまことに困りますし、また、計画的利用のためには国がというようなお考えのようでありますけれども、私どもは地元だって、何も地元の方がというふうにあえて申しませんけれども、地元に計画的利用ができないはずはございません。私どもは、キャンプ渕野辺という神奈川県では六十六万平米の土地、これはもう地元が多年悩みに悩みに悩み抜いて、そして返還の暁はここに緑の公園もつくる、高等学校も三つつくりたい、小中学校もつくりたい、こういう計画を練りに練って、地元の市民総ぐるみでつくり上げたものでございまして、これがいま一挙に崩壊しようとしているわけでありまして、私たち地元にいる者としましては、国には国の言い分があるかもしれませんけれども、まことに心外きわまる事態でございます。まして私ども、キャンプ渕野辺の場合には、あの戦車問題のような大きな問題の中で、相模原市民だけでも四十万近い市民の文字どおり総意で、みんな手弁当でやった運動が実ってやっと手元に返ってくる、それがたちまち——私どもが多年考えておりましたこと、また政府からお約束もあったというふうに当時新聞報道等で承っておりますが、それが突如財政その他の理由で全くほごにされて、私どもに事実上負担できない形で処理がゆだねられる。まして三分の一しか私どもの利用ができないということでは、私どもとしては、とても地元はおさまるまいというふうに感じております。  こういう点で、ぜひこの問題は国会の皆様方のお力もかりまして、基地を抱えている、数十年の戦争の傷跡を抱えている住民の心情を御賢察願いまして、適正な処理をお願い申し上げたいと存じます。  先ほど国直轄事業のことを一言申し上げましたが、神奈川県だけでも数字的に申しますと約三、四十億円の負担をしております。なかなか負担にたえかねておりますし、また、制度的にもぜひもっと地元と協議をして直轄事業をお進めくださるよう、これは現在のシステムをそのままにいたしましても、そういう点は特に要望申し上げたいと存じます。  以上でございます。
  28. 中島正樹

    中島公述人 ただいまの御質問にありました中高年齢層の老人福祉の問題については、非常にむずかしい問題だと私は思います。しかし、その問題の基本には、私は、日本人が全体としてだんだんと長生きするようになって、高年齢者層が毎年毎年ふえているということは明らかな人口統計にも出ておるわけでありまして、これらに対する社会の対応の姿はまだできていないというところに非常に大きな問題点があるのじゃないかと思います。大体企業におきましては五十五歳というのが一応定年制ということは、これは当時恐らく男性の平均年齢が六十歳以下だったという時代にほぼできた制度ではないかと思いますので、そういう意味においては、現実の問題としてはこういうように平均年齢が男子が七十一歳にもなった時代におきまして、これに対する何らかの形が、いずれ社会的にも問題が出てくると思いますが、現実には、たとえば企業ではよく言われます関連企業へ出ていくというような形で第二次就職というような言葉が行われ、二次就職でもだめになり、また三次就職にもなるというようなこともあるわけであります。  しかしもう一つ、先ほどの老人の求人倍率が非常に激しいというような悪い数字が出ておるお話でございましたが、反面、老人の場合は、これは扶養家族がそのころには大体なくなってきているわけでありますから、特別な人を除きますれば、やはり核家族というようなことは——しかし、最近日本では親と一緒に住んでもいいというような意見もだんだんふえてはきておるのでありますけれども、やはり一緒に住んでいてはぐあいが悪いから、長年の習慣で外へ出て働きたいという一つの希望による就職希望も相当あるのではないかと思われますので、そういう人たちは必ずしも一般の人並みの給与を要求する場合ではないこともあり得るのではないかと思うのでありまして、企業の場合でも、ですから多くの場合定年に達した後嘱託という制度を用いまして、その場合は昇給というのはしないという、そうしてそういう形でいてもやはり働いていこうという、そういう考え方もあるわけでありますので、同時にそういうこともまた考えられると思います。  それからやはり社会全体が新しく変化してきている体制に応じまして、老人にふさわしい職場というものをこれから先考えなくてはいけない。そういうやはり新しい高年齢者層になってきたことに対する、国家全体としても国民も、その問題に対しては対決しなくてはいけない。これは要するに根本は、先ほど申し上げましたように人口問題という大きな問題とも絡んでおる問題だと思って、そういうふうに対処する道もあるのではないかと思うわけでございます。  失礼しました。
  29. 池田斉

    池田公述人 いまお話しのように所得の増加、経営の安定、これと価格政策の関係の御質問でございますが、御案内のように、いま全農産物の生産の七割以上は何らかのかっこうで政府財政で支える、しかもその財政の中で食管が一番大きいのですが、総体として恐らく国の農林予算の半分以上は価格政策だと思います。  で、われわれ一つ問題は、各主要なこれから日本で増産をしていかなければならぬあるいは守っていかなければならぬ、こういう作目別の価格政策が、御案内のように米等は生産所得補償方式、麦はパリティ、畜産物はどうだこうだと、そこに整合性がない。当面を糊塗するという形ではこれはやむを得ませんが、やはり基本的にはその辺の整合性を含めた総体としての価格政策をどうするか、それで本当に国が必要とし、国民の需要に対応するそういう問題をにらみ合わせながらやることが基本ではないか。ただ、これは私個人意見としては、やはりこの価格政策で従来は余り糊塗し過ぎた。やはり基盤整備等を中心として農業の基礎づくりをどうするかという構造政策が立ちおくれておるという点は基本的に私は問題だし、長期的な展望に立つと、価格政策で擁護をしながら基礎的な、基礎条件の構造政策をどうやっていくか、そして本当にやる気のある、私はプロという言葉はちょっと誤解を受けては困るのですが、本気の農業者をどう基盤から支えていくかという問題が並行しなければならないというふうに考えるわけです。  それで、国の財政が豊かなときはそれは相当量価格政策で擁護するということは可能でしょうが、だんだんと安定成長になりますと、先ほどお話しのように財政がだんだんと不如意である、こうなりますと、私は基本的にはやはりその消費者価格につきまして、消費者が国内でつくれるもの、これは国際的な環境の中では今後一種の安心料といいますか、保険料と申しますか、そういう形で、若干消費者価格が高くてもこれに乗ってもらう、こういう問題も含めて国民的な啓蒙を、啓発をひとつお願いしなければならぬ、こんなふうに考えております。
  30. 増本一彦

    増本委員 結構です。時間がありませんので終わります。
  31. 小山長規

    小山(長)委員長代理 続いて鈴切康雄君。
  32. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 本日は三人の公述人の方々から貴重な御意見を承りまして、ありがとうございます。  時間の都合がございますので、長洲公述人にしぼってお伺いを申し上げたいと思うのであります。  長洲知事は経済学者としての立場から現実世界に飛び込まれまして、何かと大変な面があろうかと思います。で、理想と現実のギャップをどのように埋められていかれるか、その点の御構想をまずお伺いをした上において、一つは、神奈川県が富裕団体から交付団体に転落をされました。それには当然の税収の落ち込みと同時に、人口増の問題が一つの大きな問題になってきているのではないかと思います。まず、それには義務づけられた施設の増設、そして福祉施設、それに伴うところの教職員あるいは警察官の増員等の人件費、これが急激にふえていくわけでありますから、それに伴う施設の超過負担の問題を考えたときに、人口増が地方財政をさらに圧迫することも考えられるわけであります。現在居住をしておられる県民と流入をしてくる人口増に対して、神奈川県としてはどのようにこれに対処されていこうとされているのか、また、その対策をどのようにお考えになっているか、これが第一点であります。  それから、景気対策を推進する場合、わが党としては景気浮揚の公共事業はあくまでも生活関連公共投資を重視すべきだと主張しておりますが、たとえば公共住宅の大量建設などをしていく場合、地方自治体ではこれに全面的に協力することができるかどうか。地方の裏負担との関連が重要な問題になっておりますので、その点の御意見をお伺いをいたします。  それから、低成長の時代になって、府県税の根幹をなす法人事業税の落ち込みによって地方財源も当然苦しくなってくるわけでありますが、その場合、どのような税体系がよいと思われておられるか。また、補助制度のあり方、交付税のあり方についてはどのようにお考えになっているかという問題であります。  最後に、本年度予算を分析をいたしますと、財政措置による不況対策に力点が置かれております。経済学者としての長洲さんの立場に立って御見解を承りたいわけでありますが、それは国民の中に需要創出効果がどうも思わしくない。このままでいくと、不況対策は不発に陥る懸念があるばかりか、政府は公共料金の軒並みの値上げを予定をしております。再びインフレ再燃のおそれがあるのではないかというふうな不安がありますが、その点どのようにお考えになっておられるか。また、不況対策とインフレを同時に解決するにはどの点の配慮が必要であるか、この点をお伺いをいたします。
  33. 長洲一二

    長洲公述人 いろいろな論点、お尋ねをいただきましたが、初めの、学者から実際の行政官に転じましたので、いろいろ理想と実際との食い違いは、御指摘のように私どもの苦しみの種でございますけれども、しかし、首長という立場におりますと、やはりある程度、たとえば十年先、あるいは大げさに言えば二十一世紀の世の中といったようなことを頭に描きまして一定の方向を出さないと、実際にはただ毎日のルーチンの仕事だけやっている限りでは事態は解決いたしませんし、首長としてはそうした長期展望に立った理想をやはりきちっと職員に示すことが何より大事だと思います。同時に、財政問題のようにきわめて合理的にリアリスチックに解決しなければならない問題にもぶつかっておりますので、この兼ね合いはむずかしいわけでございますが、やはり現実的に、しかし理想を追求していく。そういう意味で、スピードは速くなくとも着実に県政のあり方を変えていく、そういうことを絶えず自分に言い聞かせながら努力している次第でございます。  次に、財政問題に関連いたしまして、人口増の圧力について御指摘がございましたが、これは文字どおり全く御指摘のとおりでございます。私どもはある意味で、少し長い目で見ますと、神奈川県の根本問題は人口問題にあるというふうに考えております。実際神奈川県は、高度成長ということで、最近十五年ほどで人口が倍増しております。現在六百四十万人でございますが、最近ちょっと減ってまいりましたけれども、それでも年々十数万人ずつふえてまいります。しかも全国から若い人がふえてくるわけでありますから、将来の人口圧力を内臓したままでふえていくわけでありまして、これがもうさまざまな財政需要となって噴出いたします。神奈川県は、国土全体の〇・六%の面積でございますが、国土全体の〇・六%ほどの県土のところに六%ほどの人口を擁しておりますので、平均の十倍の密度でございます。これがもう神奈川県の最大の悩みでございまして、人口抑制ということを第一義に考えざるを得ないところに追い込まれておりますし、また私は、神奈川県を守るためにもそのことが必要だというふうに感じております。  ただ、この実際の対策はなかなか実際には立てにくいわけでございまして、できるだけ県内優先、また開発も、そういう意味では人口増につながる開発は規制しております。先ほど増本議員の御質問の中にもございましたキャンプ渕野辺という大規模な基地がやっと返ってまいりますが、そこに大規模な住宅団地をつくるという政府側の御計画があるやに聞いておりますが、そうしたことをやられましては私どもとしては全く将来の展望を失うわけでございまして、このような点で、何とかして人口抑制策を今後も強めてまいりたいというふうに感じております。  次に、法人事業税についてでありますけれども、これは税率その他の改正あるいは標準税率から制限税率いっぱいまでの超過課税といったようなこともいろいろ考えられますが、私はやはり先ほど申しましたように、景気変動で余りにも振幅の大き過ぎる現在の法人事業税制度を、何とかして外形標準課税を導入しまして、安定した財源にしていただくということが急務だろうというふうに感じております。この点はほとんど専門家の間でも基本方向は一致していると思いますので、あとは実施の困難を取り除いて実現に踏み切るかどうかということでありまして、こうした点でも、これはやはり政府並びに国会のお力をかりなければならない問題です。  補助金制度のあり方につきましても、私どもは非常に、正直のところ矛盾を感じております。ぜひ増強していただきたい補助金制度もありますが、もう整理していただきたいものもたくさんあるのが実情であります。県だけでも、たしか千数百種類の補助金の体系の中で、職員は書類づくりや政府との交渉に忙殺されているわけでありまして、もっと補助金は整理していただくことが、整理統合が可能ではないかと思います。この補助金整理というのは既得のいろいろな利害関係とつながりまして非常にやりにくいわけでありますが、私ども県段階では、かなり勇気をふるってこの合理化、効率化に努力しております。少なくも、余り数の多い補助金は整理して、たとえばメニュー化していただくとか、あるいはできれば補助金を一々細かいひもつきではなしに総合補助金制度にしていただく、こういう形で、言ってみれば補助金の交付税化のような方向は今後当然考えるべきではないか、国政段階の仕事の合理化の点からいっても、そう存じます。  交付税の問題につきましては、先ほども触れましたように、三二%の税率は、その後の仕事の実態と合わせましてすでに低過ぎるというのが、私どもの実感でございます。  最後に、景気対策とインフレーションの関係でございますが、これは非常にむずかしい問題でありまして、現代資本主義経済の基本問題でございますけれども、御指摘のように、安易な景気対策を続け、まして赤字国債、赤字地方債等の増発が続きますと、必ず将来インフレーションの問題が出てまいると思います。ただ、当面のところは、かなり生産施設その他に遊休部分がございますので、財政による有効需要の付与が直接インフレーションにつながるかどうかは、やはり財政の運用の仕方によるだろうと思います。無秩序にやりますと、御承知のような、一部に需要が集中してボトルネックを通ずる爆発的なインフレが始まるということがございますが、そうした点で、公共事業、公共投資等につきましても、対象をよく選びながらある程度景気浮揚をやってまいりますならば、今日は設備が遊んでいるわけでございますから、その意味では直接インフレーションにつながることはないだろうと思います。また、そうした意味でも、実は地方その他全国の実態に合わせまして、公共事業といったようなものにつきましても、少しふくらみのある形で景気対策考えていただきたい。特別の新幹線も本四架橋も、ある意味では、特に私の立場から反対したりなんかすることではございませんけれども、もっと実際の遊休施設や労働力を稼働させ、雇用を増加させ、インフレにつながらない形での公共投資の対象は豊かにあるはずでありまして、それについての地方その他への財源措置を御考慮いただければ、景気回復につながり、しかも余りインフレの刺激にならない、そうした対象事業の選定を私どもはすることができるのではないかと思います。そうした中で、あわせて先ほど来申しております制度改革をやりまして、五十二年度以降とにかく展望を開いていただけば、赤字国債、赤字地方債でやっていくという事態を切り抜ける時期が一日も早く来るのではないか、そうしたことを私どもは切望しているわけでございます。
  34. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 大変に貴重な御意見を承りまして、ありがとうございます。  以上をもって終わります。
  35. 小山長規

    小山(長)委員長代理 以上で、各公述人に対する質疑は終わりました。  この際、委員会を代表して、公述人各位にお礼を申し上げます。  本日は、長時間にわたりまして貴重な御意見をお述べいただきまして、まことにありがとうございました。厚くお礼を申し上げます。(拍手)  午後一時より再開することとし、この際、休憩いたします。     午後零時三十四分休憩      ————◇—————     午後一時八分開議
  36. 井原岸高

    井原委員長代理 休憩前に引き続き会議を開きます。  御出席公述人各位にごあいさつを申し上げます。  本日は、大変御多忙のところ御出席をいただきまして、まことにありがとうございます。この際、各位の有益な御意見を拝聴いたしまして、今後の予算審議の上におきまして貴重な参考といたしたいと存じます。  何とぞ、昭和五十一年度予算に対しまして、それぞれの立場から忌揮のない御意見をお述べいただきたくお願いを申し上げる次第でございます。  次に、御意見を承る順序といたしまして、板倉譲治公述人、山本治史公述人、渡辺佐平公述人、以上の順序で、お一人約二十分程度ずつ一通り御意見をお述べいただきまして、その後、委員から質疑を申し上げることといたします。  それでは、板倉公述人にお願いを申し上げます。
  37. 板倉譲治

    ○板倉公述人 ただいま委員長から御紹介をいただきました全国銀行協会連合会の板倉でございます。  本日は、五十一年度予算案に関しまして意見を申し述べるようにという御趣旨でお呼び出しをいただいたわけでございますが、まず五十一年度予算案に関します概括的な考え方を申し上げまして、次に予算の運営等につきまして、私の希望あるいは意見を若干申し述べさせていただきたいと存じます。  まず、最近のわが国経済を見ますと、幸い物価は落ちつきを取り戻してまいりましたが、最終需要は依然として弱く、いまだに停滞を続けております。特に設備投資は、四十九年一—三月以来一貫して減少を続けており、極端な落ち込みとなっております。先行きを見ましても、機械受注額が五十年四月以降八ヵ月連続して前年水準を下回るといったような状態でございまして、企業投資マインドは完全に冷え切ったと言ってよい状況にあります。輸出も同様に不振を続けておりまして、五十年五月以来十二月まで八ヵ月連続して前年水準を下回っております。しかしながら、輸出の先行きにつきましては、輸出信用状接受高あるいは輸出認証額が上向きに転じてまいりまして、一部に明るさがあらわれてきているように認められるのであります。  一方、個人消費を見ますと、百貨店販売額の伸び悩みに見られますように、これまた低迷状態が続いております。ただ、設備投資などは異なり、一応前年の水準を上回っておりまして、その意味では、景気の下支えの役は果たしていると言うことができると思います。  以上申し上げましたような景気の長期停滞のもとにおきまして、企業収益は四十九年三月期以来四期連続して減益を続けておりまして、五十年九月期には東証上場会社の三分の一が経常利益の段階で赤字を計上するに至っております。また、企業の倒産件数も依然として高水準にありまして、本年一月も一千件を上回る水準に達しております。一方、雇用の面を見ますと、完全失業者は百万人前後に達し、四十九年平均の七十数万人を大幅に上回っております。  以上のように、景気の長期にわたる停滞が企業経営や雇用に深刻な打撃を与え、国民生活に大きな不安をもたらしているのであります。したがって、これまで達成されました物価の安定傾向を今後とも維持しつつ、速やかに景気回復を図り、国民の不安を取り除くことこそが、五十一年度わが国経済の最も重要な課題であると考えられるのであります。  中でも、停滞の最も著しい設備投資輸出、この二つの項目をいかに速やかに回復させるかということが最大の課題ではないかと考えます。かかる観点から、五十一年度予算案によります公共投資の拡大、輸出の促進といった景気浮揚策に寄せられた期待は著しく大きいと言うことができるのであります。  さて、五十一年度予算案を当面の最重要課題であります景気浮揚という観点から見ますと、厳しい財源事情の中でかなりの配慮が加えられておりまして、評価すべき内容であると考えられます。  すなわち、まず、一般会計予算では、限られた枠内で、景気刺激効果の大きい公共事業関係費に重点的に財源が配分され、予備費を含めますと前年度当初比二六・四%増と、予算案の中で最も高い伸び率となっております。  しかも、その事業内容を見ますと、住宅、不水道等の生活関連投資と並んで、産業関連投資にもある程度の財源が充当されるなど、全体としてバランスのとれた内容となっておるように認められます。  また一方、財政投融資では、輸出入銀行の輸出融資枠が大幅に増額され、輸出促進による景気浮揚が図られております。  御承知のように、現在輸出は長期にわたる停滞から緩やかな回復を示しつつありますが、その牽引力となっておりますのは家電や自動車、プラント輸出などであります。特にプラント輸出は単品輸出とは異なりまして、他産業への波及効果も大きく拡大が期待されているのでありますが、通常延べ払いの形で輸出が行われますため、多額の資金手当てが不可欠となります。  こうした状況のもとで、五十一年度予算案により、輸出金融に十分な配慮が加えられましたことは、今後の輸出回復を円滑にする上できわめて適切な措置であったと存じます。  以上申し上げましたように、五十一年度予算案では、限られた財源を極力景気浮揚面へ重点的、効率的に配分する努力が加えられております。今後予算の適切な執行により早期に景気浮揚効果のあらわれることを期待いたしたいと存じます。  なお、五十一年度予算案では、以上の景気浮揚のほか、中小企業対策、社会保障の充実等、福祉面の施策にも前年度に引き続き重点が置かれております。特に中小企業対策につきましては、中小企業の当面の資金繰り救済に重点が置かれ、企業倒産等深刻な事態の回避に努力が払われております。そのため、無担保、無保証の小企業経営改善資金融資の条件がかなり緩和されたほか、政府系中小三金融機関の融資規模が大幅に増額されております。こうした一連の措置は、当面の厳しい経営環境のもとで、企業倒産の増加、雇用不安の発生といった摩擦現象のあらわれるのを防止する上で十分評価できるものであります。  しかしながら、現在中小企業対策として最も強く要望されておりますのは、言うまでもなく仕事であります。したがって、事業量を極力ふやし、中小企業に仕事の機会を確保することが最大の中小企業対策となるはずであります。こうした観点から五十一年度財政投融資を見ますと、前年度当初比一四・一%増となっておりますが、前年度追加後比では〇・八%減となっておりまして、事業量の拡大という面では、中小企業の仕事の確保という点でいま一歩であったと考えるのであります。今後の財政運営に当たりましては、財政投融資の持つ弾力性を十分に生かし、極力事業量の拡大に御努力賜りますことをお願いいたしたいと存じます。  以上、五十一年度予算案につきまして、概括的な考え方を申し述べさせていただきましたが、次に、私ども金融機関として最も大きな影響のあります国債の問題について二、三問題点を指摘させていただきたいと存じます。  御存じのように、五十一年度国債発行予定額は七兆二千七百五十億円と、前年度の五兆四千八百億円を二兆円近く上回る膨大な額に上っております。しかし、極端な財源不足の中で、当面の景気問題に対処していくためには、この程度国債発行はやむを得ないことでありまして、私どもといたしましても、政策運営に御協力申し上げるという見地から、最善の努力を払ってこれをお引き受けいたす所存でございます。  ただ、問題となりますのは、第一に、こうした巨額の国債発行がインフレーションにつながらないかという点であります。国債発行がインフレーションを引き起こすかいなかは、国債が赤字国債であるか建設国債であるかにかかわらず、それによる財政支出の増加及びその波及効果としてのマネーサプライの増加に伴う需要の増大が供給力を上回るかいなかにかかっていると存ずるのであります。  御承知のとおり、現在のわが国経済は巨額のデフレギャップを抱えておりまして、企業の操業率も低い水準にとどまっておりますので、当面需給が逼迫するような懸念はないものと考えております。したがって、現在予定されております国債発行によって、当面デマンドプルのインフレーションが引き起こされる心配はないと考えます。  第二に問題となりますのは、国債消化に当たる金融機関の一部に資金ポジション悪化が起こり、一般産業界の資金需要が圧迫される、いわゆるクラウディングアウトの問題であります。銀行が国債を引き受けました場合、その資金はいずれ財政支出として市中へ支払われ、銀行預金として還流してまいります。しかし、これを金融機関別に見ますと、国債の引受額に見合って資金がそれぞれの金融機関に必ず流入してまいるという保証はないのであります。このように運用額に見合う資金が調達できないということになりますと、こうした資金不足を来す銀行といたしましては、資金ポジションの悪化に伴う外部負債金利の重圧を極力防ぐために、一般産業界向けの貸し出し等、他の資金運用を抑制せざるを得なくなるということも考えられるのであります。  幸い、現在まで実物投資も低調で、一般産業界の資金需要もそれほど大きくはなく、コールレートも以前よりは低水準で推移しておりますので、こうした事態は回避されておりますが、今後景気が順調な回復を示し、一般産業界の資金需要が強くなってくることになりますと、銀行が十分にそれにこたえにくくなる懸念もあるのであります。しかし、もちろん私どもといたしましては、現下の不況乗り切りのために、一般産業界の資金需要を初め、中小企業金融、住宅ローン、地方公共団体への融資等諸般の資金需要に対しては十分にこたえていかなければならないと考えております。そこで、このような融資がスムーズに実行できるような政策的配慮を当局にお願いいたしたいと存じております。  第三の問題点は、国債の円滑な消化という問題であります。  すでに申し上げましたように、五十一年度国債発行予定額は七兆二千七百五十億円という膨大な額であります。しかもこのほかに、政府保証債が七千六百億円、地方債が地方債計画によれば四兆八千十億円の発行予定されており、五十一年度の公共債発行規模は、実に十三兆円に近い巨額に達する見込みであります。  こうした大量の公共債の円滑な消化を図るためには、国債を初め、公共債の発行条件を流通市場の実勢に沿った適正な水準に維持することが何より肝要であります。このことは、国債等の引き受け機関ですとか、購入者に採算上大きな負担を与えないということばかりではなく、発行の歯どめという面からも重要であります。昨年十一月の発行条件の改定に当たりましては、かなりの配慮が加えられておりますが、引き続き国債等の市場需給実勢を尊重した魅力あるものとしていただきたいと存じます。国債個人消化を促進するためにも、また公共債を大量に消化する金融機関国債等を現実に役立つ支払い準備資産として活用するためにも、国債等に流通性を付与することがぜひとも必要であります。公共債の流通市場の整備が喫緊の課題であると考えられます。  以上申し述べましたように、来年度国債発行につきましては、まことに必要やむを得ないものと考え、極力その消化に御協力申し上げる所存でおりますが、関係当局におかれましても、以上の諸点を十分に理解され、応分の配慮をしていただきたいと存じます。  最後に、今後の財政運営のあり方について、希望なり意見なりを申し述べさせていただきます。  まず第一は、景気の早期回復を実現するため、特に年度当初において公共事業の施行促進等、極力財政面からの景気浮揚に努力していただきたいと考えております。  現在の不況の状況を産業別に見ますと、企業規模の大小を問わず、設備投資関連、輸出関連の産業個人消費関連産業に比較して深刻となっております。したがって、これらの産業に需要をつけていくことが肝要でありますが、民間産業設備投資につきましては、現在のような需給関係を前提にいたしますと、これが早急に回復してくるということは困難でありますし、輸出につきましても、先行き明るさは見えてまいりましたものの、相手国の事情もあって、わが国が一方的にこれを増加することには限界があります。そこで当面は、特に年度の前半において何よりも公共投資を大幅に拡大し、その波及効果をもって民間投資の浮揚を図ることがぜひ必要であります。それによって、企業倒産、失業といった摩擦現象を解消することも可能となるのであります、かかる観点から、極力公共事業の上期施行促進を図り、波及効果を高めることが適切であると考えるのであります。  第二は、年度後半に、幸い景気が順調な回復軌道に乗り、デフレギャップが縮小してまいりました場合には、デマンドプルのインフレーションを再燃させることのないように十分配慮していただきたいということであります。  すでに申し上げましたように、現在の大幅なデフレギャップ、低操業率を前提とする限り、当面、国債発行によって供給力を超えるような需要の拡大が起こり、デマンドプルインフレーションが再燃するというような懸念はないと考えておりますが、今後景気が順調に回復し、需給ギャップが縮小し、税収も予想以上に回復する兆しが見えてくるような状況になりました場合にも、なお惰性に流れて、安易に大量の国債発行が継続されるとか、あるいは補正予算などにより財政支出が拡大されるというようなことがありますと、一部に当然需給逼迫が生じ、全面的なデマンドプルインフレ再燃の契機をつくる懸念が多分にあります。したがって、こうした明るい兆しの見えたときには、遅滞なく優先的に国債減額を実施するといった配慮を加え、国債発行規模を今後の景気動向、需給の状況から見て、適正な規模に勇断をもって減額することが肝要であると考えます。  以上申し述べました点を十分勘案いただき、適切な予算執行により、五十一年度予算案の所期の目的が十分に達成されることを期待いたしたいと存じます。  以上、五十一年度予算につきまして所見を申し述べさせていただきましたが、申し上げるまでもなく、私ども銀行といたしましては景気回復を図り、雇用の安定を実現するというわが国経済の課題を達成するために政策の運営に十分協力し、金融面から最大限の努力を払う所存であります。  具体的に申し上げますと、まず第一に、中小企業貸し出し及び住宅ローンには一層の配慮をいたしたいと存じます。特に中小企業貸し出しにつきましては、健全な経営を行っている企業が、資金繰りの圧迫のために倒産するということがないように万全の努力をいたす所存であります。また、住宅ローンにつきましても国民の需要が増大しておりますので、これまでにも増して円滑な資金供給に努めたいと存じます。  第二に、貸出金利の引き下げに引き続き努力を払いたいと存じます。銀行の貸出約定平均金利は、たとえば都市銀行の場合、昨年四月から十二月までの間に通算一・二%低下し、短期金利だけを見ますと、同じ期間に一・七%低下しておりまして、貸出金利低下のスピードは過去の金融緩和期を上回っております。一方、預金金利につきましては極力最小限の引き下げにとどめております。この結果、銀行の収益基調はかつてない厳しい状況にありまして、特に五十年度下期、五十一年度上期決算におきましては経常利益でかなりの減益が予想されるに至っております。しかし、私ども銀行といたしましては、わが国経済の置かれている現状にかんがみ、引き続き貸出金利の引き下げに一層の努力をしてまいる所存であります。  なお、銀行の収益との関連で申し上げますと、米国では貸し倒れの増加によります銀行収益の悪化や不良債権の発生などが社会問題となっているようであります。申し上げるまでもなく、銀行経営の根幹は国民の預金を安全に預かり、信用秩序を維持することにありますので、私どもといたしましては今後とも一層経営努力を払い、いやしくも預金者に不安を抱かせることのないようにいたす所存であります。  御清聴ありがとうございました。(拍手)
  38. 井原岸高

    井原委員長代理 どうもありがとうございました。  次に、山本公述人にお願いをいたします。
  39. 山本治史

    ○山本公述人 私が山本治史です。民間重症児施設島田療育園で児童指導員をしております。  島田療育園は東京都多摩市にあり、十五年前に日本最初の重症児施設として設立されました。重症児施設という乙とは児童福祉施設になるわけですが、実際には十八歳以上の者四五%、体重三十キロ以上の者五一%と、もはや成人施設と言ってもよいほどです。  島田療育園には知恵おくれ、肢体不自由など、重い障害を持った者が四個病棟に百六十二名生活しており、彼らを直接介護している職員が百三十四名、事務、給食など間接部門の職員が六十五名、計百九十九名の職員が働いております。  私はここで、ともに働く仲間や、政治や社会に直接その思いをぶつけることが許されないでいる子供たち、さらに家族の方々の思いを代弁できたらと思います。  私が島田療育園に就職してから五年余りの月日がたちました。その間、私が強く感じてきましたことは、何とやめる人の多い職場だろうということです。四十五年の十月、同じころ就職した数人の仲間と採用の辞令を受け取ったのですが、そのときの現場の仲間たちは一年たち、二年たつうちに一人、二人と欠けていき、そしていまでは私のほかにだれも残っておりません。そして二年、三年と勤めていくうちに、私よりも後から来て、子供たちに親しまれた若い仲間たちがどんどんやめていくのは身を切られる思いでした。実際に一年の間に半数近い職員が入れかわっていくのです。これは就職の際、遊び半分で島田を選んでいるためではありません。仕事がきつく、腰痛が多発しているということは周知の事実ですから、重症児への理解と熱意とがなければ勤まるものではありません。私は、いまの島田療育園は肉体的にも精神的にも耐えがたく、一生の職業としては成り立ち得ない職場だと思います。こうも多くの職員がやめていくのはそれが原因だと思います。私は、職員が健康と生活を保障され、それによって定着し、経験の積み重ねができ、子供たちのより人間らしい生活を保障し得る仕事のできていくことが職業として成立させる基本的条件であると思っております。また、これさえできないのであれば、どうして福祉と言えるでしょうか。  いままでマスコミや国会において、民間重症児施設の問題についてたびたび取り上げられてきました。しかしその内容は、人手不足、腰痛の多発、子供を返さざるを得ない、財政ピンチなど暗い話題がほとんどでした。高度成長の中でやっと安定しかかったに見えた島田の運営も、安定成長とか低成長とかに移行した途端、かつての暗い時代に逆戻りしつつあります。財政ピンチにあえぐ経営者側からは、このままいけば閉鎖に追い込まれるという声さえ出ております。  さて次に、島田の現状と問題点を述べてみたいと思います。  第一に、五十年度分の賃上げが未解決です。そして、悪くすれば五十一年度分の賃上げも不可能になりかねません。仕事はきわめて大変であり、諸物価高騰の折、一〇%ぐらいの賃上げは低過ぎるくらいです。四十八年度は、年度途中で、余りにも施設が大変だとして腰痛代替費が国から出て、島田療育園にも一千七百万円ほど来ました。四十九年度には、初頭に医療費及び指導費の改定があり、終わりごろまた医療費の改定とそれにリンクされた指導費改定があり、それらによって賃上げがされてきたわけです。しかし、五十年度においては指導費の改定が見送られ、医療費改定にゆだねたわけですが、その医療費は昨年十月改定のはずがいまだにめどさえついておりません。もし仮に三月に改定されるにしても、五十年四月に遡及するというものではありません。  島田療育園では、五十年度予算を組んだ際、五千万円の寄付金収入を見込みました。好況のときでさえ一千万円程度である寄付金を五千万も見込んだのは、そうしないと収支が合わないからです。最初から医療費と指導費、自治体からの運営費補助の改定がなければ賃上げが不可能であるばかりか、四千万円程度の赤字が出ることは目に見えていたわけです。現在、職員の欠員補充がストップされ、すでに人員配置は一・二対一まで落ち込んでおります。それでも賃上げの財源はなく、三千万近い大幅な赤字を抱え込み、銀行も返済能力なしと見て金を貸してくれず、経営者側は給与の遅配が確実に起こると言っている状況になっています。  五十年度において賃上げができないところは一島田のみでなく、私の知り得た範囲でも、北海道のあしりべつ療育園、京都の花明、木の花学園、兵庫の砂子療育園でも同様のことであるということです。また重症児施設以外でも、千葉県のベテスダホームなどがあるかとも思います。  第二として、このことの意味は大きく、職員の定着及び欠員補充、新規採用についても非常に大きな障害になっております。たとえば島田では、いずれの病棟においても、あと一人看護婦がやめたり腰痛で倒れたりすればローテーションが組めなくなるという状態にあり、もう肉体的にも限界に来ていて、やめるか腰痛で倒れるかは時間の問題であるという状況ですが、しかし、補充のめどは立っておりません。  人員比率を、子供一・三人当たり直接介護職員一人に下げる、そういう人員削減により人件費支出を抑え、子供を二十三名入園させて収入増を図り、財政危機を切り抜けるという方向が経営者側から出されております。しかし、一対一の人員比率は最低であると思います。四十八年四月三日、私どもは当時の山口政務次官と交渉いたしました。そのときに私たちが訴えたことは、やむを得ないから一対一くらいで何とかしてくれ、本当は一対二くらいが欲しいのだということを強く訴えたことです。そうして島田においては、もともと一・一対一と、一割少ないところからざらに職員の削減、子供の増員が行われるのは、療育現場以外の職場も含めて、確実に労働の加重と処遇の低下につながり、子供たちに人間としてのあたりまえのことをしてやりたいという責任感と情熱を捨てなければ仕事ができない状況になります。それはすでにふえている退職傾向を加速しますし、看護婦についてはもはやどうにもならないところまで来ています。はっきり言えば、国が財政措置を緊急に講じてくださらない限り、島田は崩壊せざるを得ないと判断せざるを得ません。  現在、島田が形の上で成り立っているのは、かなりひどい腰痛のある人でも休まず働いているからです。病院に行けば診断書が出て休むことになる、それでは他の人にしわ寄せがいくし、だれかが倒れてしまうだろうと、ぎりぎりの状況で働いている人もおります。またある婦長さんは、診断書で軽作業、夜勤禁止になっていたにもかかわらず夜勤をせざるを得なくなり、その結果倒れて二ヵ月の入院になりました。またある人は、家庭の事情で夜勤は月四回の条件で就職したにもかかわらず、それを超えて夜勤せざるを得なくなりました。その結果、ここにはもう長く勤められないと言っています。これらはほんの一例です。こうした無理は、過去の経験からも何倍にもなって返ってきます。腰痛の爆発的発生、大量の退職者、これも時間の問題です。  現在、特に看護婦不足が深刻です。参考までに数を申し上げますと、在籍は三十四名、うち病棟看護婦三十一名、病欠中四名、労使協定による月十回までの夜勤可能な者十二名となっています。この十二名というのは主任、婦長さんを除いてあります。いわゆる二・八体制を組もうとすれば、四個病棟ですから六十八名が島田の場合必要となります。  次に、腰痛について若干触れます。  まず第一に、三年以上の勤続者で、腰痛で長期に休んだ経験のない人はほとんどいないこと。第二に、腰痛と無関係の理由だけで退職した人は少ないこと。腰痛で休んでいる人は現在八名、最高のときで三十名を超えていました。まさに若年労働力の使い捨てです。また、こういう中で豊かな療育が育つはずはありません。腰痛、頸腕の症状を見ますと、歩行が困難であるとか、はしが使えなくなった、握力がわずかに二キロ、ひどい頭痛がある、吐き気がある、貧血が強くなる、体重の激減、妊娠及び出産障害、流産などがあり、手術をする人がいます。しかし、あまりよくはならない人が多いようです。こんな状態で、仕事はもちろん、育児や家事にも事欠いております。二年ほど休んでいて最近島田療育園に戻ってきた人がいます。しかし、病棟に勤務はできなく、腰痛の治療室に勤務しております。いつ病棟に戻れるのかのめどさえ立っていないということです。その人の強い訴えでもあるのですけれども、腰痛の厳しさは結局自分ひとりで負わなければならないことです。一生治らないだろうと医者から言われている人も何人かいます。施設が新しい障害者をつくり出す場になっている状況は変わっておりません。いままた一層そうなる危険をはらんでいると思います。  さて次に、以上のような職員の状況の中で、子供たちがどういう処遇を受けているかについて申し上げてみたいと思います。  一言で言えば、人間らしい文化的な生活というところからはほど遠いということです。朝五時過ぎに起こされ、夕方七時にはベッドに入られます。夕食は三時二十分ごろからです。入浴は週二回に限られ、しかも午後まだ日の高いうちにベルトコンベヤー式に、楽しむ間もなく入られます。プライバシーが守られないのはもちろん、ゆったりと落ちつく部屋もなく、自分専有の空間といったら、冷たい鉄さくで仕切られたベッドの上だけです。それほど文化的とは言えないある精薄施設の指導員さえ、島田の部屋を見て、これが部屋か、これでは子供たちが落ちつけるはずがないと言っていました。三十平米ほどで、この中に平均年齢が二十を超えている八人が生活しているのです。しかも、この部屋にさえベッドが入り切らず、廊下で寝ている者もいます。そんな状態でも、島田の中ではスペースに一番余裕のある病棟なのです。  また、外に出る機会も少なく、教育の保障もないし、職員が他の子や他の仕事に追われ、一人一人ゆっくりつき合ってはいられず、ほうりっ放しになったり待たせたりすることも多いわけです。また、やむを得ずかぎをかけたりひもでつながざるを得ない状態も変わっておりません。  私たちは数少ない経験からも、人手があって手さえかけられれば、子供たちの表情が生き生きとし、明るくなったり、職員や他の子供たちとの人間関係も豊かに育っていくということを知っています。また、そのことに確信を持っています。しかし、こういう人手不足、腰痛の多発、生活環境の悪さの中では、他の子に乱暴する子、無断で病棟を飛び出す子、職員に泣いて反抗する子、だれとも口をききたくないと言って何日も食事を拒否する子、よどんだ顔つきをしている子、職員の疲労や腰痛を気遣って、排泄の介助や、してほしいことを遠慮する子などが出てくるのです。大分前の話になりますが、以前、すでに亡くなった脳性麻痺の子がおりました。人手が少なくなるとその子にはおむつをしたことがありました。トイレに二、三十分座らせている暇が職員になかったのです。その子から泣いて抗議をされました。  人員削減は、高度成長から低成長へと言われる流れの中で強く出てきています。この流れは、最も弱い者の上に最も重くのしかかってきているように思わざるを得ません。  一方、子供たちの家族の方々から、園や病棟あるいは職員個人に切実な思いが寄せられています。人目につくようなところには出さないでほしい、外に出すことの意味もわかるが、中での療育をもっと充実させてほしい、つめを切ってほしい、髪や体を清潔にしてほしい、ひげをそってほしい、職員は腰痛にならないよう無理しないでほしい、家庭への帰宅はもっと短くしてほしい、自分が持ってきた着物は自分の子供に着せてほしいなどなど、たくさんのことが言われます。また、職員の努力でひとりで歩けるようになったり、食事が自分でできるようになったり、おむつが取れたりすると、ことのほか喜び、それが私たちの励みにもなります。家族の方々は当然のことながら、何といってもわが子がかわいいわけです。白い目で見られないようにとか、つめを切り、体をきれいにとか、子を思うあたりまえの人情です。就学年齢に達し、普通の子供たちはランドセルを買ってもらえるのに、わが子には背負っていくべき学校がない悲しみ。もし自分の子に障害がなかったら、もっと軽かったらと何度夢見たか知れないと思います。そして、たとえわが子に障害があったにしても、政治や社会がこの子と、子を持った親の悲しみをわかってくれたのなら、せめて見下した同情心や白い目で見ないでほしいと願望したでしょう。  島田では春の遠足で近くの多摩動物園に行くことがあります。そこで近所の子供たちやその親たちとかち合うのを恐れ、幼稚園や学校に電話し、当日動物園に行くかどうかを確かめる親もいます。重症児の兄弟がいるということで何度も破談になった兄弟もいます。親戚にも近所にも、自分のところには重症児がいて、島田にいると気軽に話せる親が何人いるでしょうか。それは理屈ではなく、日本の歴史の中でつくられてきた感覚であり、こうした悲しむべき実態の解決には、広い意味での教育と社会的な連帯が必要であると思います。  また、子供がかわいいと思いながらも、腰痛になったら申しわけない、余りがんばらないでくれとも言われます。私たちは子供にとって必要なことはしなければならないと思っています。親はそんなにと言います。なぜそこで互いに遠慮が出てくるのでしょうか。これは人手がないという物理的条件の欠如のもとでは決して解決されないと思います。子供を中心として親と職員と経営者とを、おのおのの責任や当然の要求について遠慮が取り巻いています。しかしそれらは、国が果たすべき責任をきちんと果たしてさえくだされば大半は解決すると思います。  大平大蔵大臣は今国会の財政演説の中で、福祉の見直し、対象の厳選などと述べておられます。しかし私は、日本にはもともと重症児・者の福祉と言える人間としての権利の保障、処遇があったのかどうかに強い疑問を持たずにはおられません。もしそれがないとしたら、ないものを見直したりしたらつぶれてしまうのはあたりまえだと思います。現状ではどうにもならないのです。思い切って福祉を守るという国の責任をはっきりと打ち出してほしいと思います。まずは五十一年度予算においてそのことの姿勢を示していただきたいと思います。  民間重症児施設の危機打開の方策について幾つかの具体的な提案をしてみたいと存じます。  第一は、子供自身のための施設とすることです。現在のような非文化的、非人間的水準から、少なくとも一般の家庭における生活水準へと近づけることです。そのため、四十八年の国会で齋藤厚生大臣が約束をされました重症児一人に対し直接介護職員一人の人員比率はすでに実現を見ていなければならないはずです。一対一の確保を早急にしていただくこと、及び実働で一対一が置けるような財政措置を速やかに講じていただきたいと思います。  さらに、直接介護職員以外の職員も十分に配置できるよう財政の措置を講じてほしいと思います。  第二、賃上げ及び福利厚生、たとえば職員の住宅なども含み、そういった福利厚生まで含めた労働条件については、せめて公務員と同一のものを保障してください。本俸やちょっとした手当だけではいけないと思います。すべての点で公務員とせめて同一のものをつくってください。  腰痛で倒れた仲間の治療、リハビリテーション、生活の保障に万全を期してください。それが三番です。  第四は、慢性疲労の状態から脱却し腰痛を未然に防ぐために、週休二日制の実施を図ってください。なお、そのための人員は一対一と別枠としてください。  五番目は、子供に対する教育の保障について、重い子供だということで置き去りにされないよう対策を講じてください。  六番目は、看護婦確保のために国が特別に養成機関等を整備し、優先的に重症児施設に回せるように配慮してください。  七番目、学校教育の中で障害児への理解を深めるような教育内容を十分に盛り込み、配慮をしてください。  以上ですが、最後につけ加えたいのは、四十八年の予算委員会で田中前総理は、重症児施設の整備水準について先進工業国の名に恥じないものにしたいと述べておられます。人間としての生活という面から見ればそれが当然だと思いますし、ハンディを持っている人に対しては、国がハンディを持っていない人の水準まで、生活、教育、医療、労働とあらゆる面で保障すべきです。それでこそ、差別なく対等な人間関係や社会が築かれると思います。私はそれをすぐに実現せよとは申しませんが、少なくとも、経済情勢が変わるとすぐに崩壊の危機にさらされるようではどうにもならないと思います。毎年毎年、一歩でも二歩でも前進できるようにしてほしいと思います。そして、これは一島田療育園の問題ではなく、日本福祉を守るのかどうかという問題であり、予算委員の皆様にその辺を十分に御理解をいただき、施設の崩壊を食いとめ、福祉の前進を図っていただきたく思います。これが私の願いでもありますし、福祉施設で働く労働者と施設利用者などの切なる願いでございます。  御清聴ありがとうございました。(拍手)
  40. 井原岸高

    井原委員長代理 どうもありがとうございました。  次に、渡辺公述人にお願いいたします。
  41. 渡辺佐平

    ○渡辺公述人 渡辺でございます。  五十一年度予算につきましては幾つかの問題があるかと存じますが、時間の制約もございますので、私が私なりに最も重要な点の一つであると考えております公債発行の問題に関しまして公述させていただきたいと思います。  五十一年度予算における公債発行に関して私が申し上げたいことは三点ございます。  第一点は、この予算において予定されております公債発行の額が巨額であるという点に関してでございます。第二点は、このたびの赤字公債発行財政法との関係についてでございます。それから第三点は、巨額な公債発行を含むこの予算の執行とインフレーションとの関連についてでございます。  まず第一点から申し上げます。  五十一年度予算が歳入の約三割を公債発行に求めていることは、戦前を通じて見ましても、平時においてはきわめて比すべき例の乏しいものであるということが申し上げられるかと思います。また、予算総額が巨大であるということと相まって、公債発行の額が非常に巨額に上っているということ、これももちろんであります。私がこの予算のいわゆる公債依存率と発行総額の数字を見まして感じましたことを率直に申し述べますと、それはまず、このように公債発行に依存する割合の高い予算を今年度において組んだ場合に、次の年度からの予算はどうなるのか。今後何年かの間は同じように公債発行に多く寄りかかる予算が編まれていくことになるのではないか、そして公債の発行残高も非常に巨大になってしまうのではないかという懸念が感じられたということでございます。  昨年十一月初め、国会でこの問題が取り上げられた際に、もしこのような公債依存の方式が続けられていくならば、五十五年度には公債残高はおよそ七十兆円になるという大蔵省の試算が示されたと聞いております。仮に五年先に公債残高が七十兆円にもなるとしますと、そのときには公債の利払いだけにしても七兆円近い歳入が必要となってくるわけであります。ちょうど五十一年に予定されている公債発行額に等しいくらいの歳入がつまり必要になるわけです。このような状況になりますれば、公債、特に赤字公債の発行を打ち切ることは非常に困難になるということは申すまでもないと思います。また、そうであるとしますと、公債の発行はみずから赤字公債の発行を呼ぶといういわゆる悪循環に陥るということになるのではないかという心配も感じられます。  私などがよく耳にする話に、付加価値税の新設が財政の均衡化に役立つのではないかというような話がございます。付加価値税というものにつきましては、具体的には私もよく存じておりませんが、一般的に言って、それは収税費用と中間納税者の経理負担というものを非常に多く必要としますし、それにもかかわらずまた物価上昇には大いに効き目があるという点で、この税は余りよくないものだと考えます。しかし、仮にそういう芳しくない税が課せられましたにしても、その税から上がる国の実際のネット収入は、五年先の公債利払いに見合う額でしかないということになるわけです。  申すまでもなく、公債が国の借金である限り、その元利は国民が払わねばなりません。いっそのツケがどのような金額となってわれわれ国民の肩に押しつけられてくるか、私はいわば戦々恐々としていると言ってよいかと思います。私は、五十一年の公債発行額の巨額な数字をそういう心配を持ちながら読んだものでございます。  第二点は財政法との関係であります。皆様もすでに御承知のように、同法の第四条には「国の歳出は、公債又は借入金以外の歳入を以て、その財源としなければならない。」と書かれており、いわゆる赤字公債の発行はこの財政法によって禁止されているわけであります。財政法がこのような規定を設けているのは、わが国民を再び悲惨な戦争に巻き込まないための保障としてであるということが同法成立当時からの通説であると私は理解しております。また、公債がなければ戦争はないというのは古くからの、いわばアダム・スミス以来の言い伝えであります。したがって同法の第四条は、憲法における戦争放棄の条項に対応し、その条項を財政の面から裏書きし、保障するものであって、国民の悲願を込めた憲法の右の条項と同様に重大な条項であると解釈されます。  もちろん、それにしても同法では公共事業に関しては公債発行を容認しております。私はこの種の公債発行も厳密に検討し、その発行は抑制的に行わるべきものであると考えます。しかし、ここでそれとは別ないわゆる赤字公債の発行について申しますと、この発行財政法の第四条、さらには財政法そのものの基本精神に全く反するように感じられるわけです。そのことについて若干私の感想を述べさせていただきます。  まず一つには、五十一年度の赤字公債も公債発行の特例として、新たに法律を制定してこれを発行しようというわけですが、こういう方式の赤字公債発行の先例について見ますと、御承知のように、その最初の例は四十年度末における二千五百九十億円、実際にはこれより下でございましたが、その発行でございます。この場合について見ますと、租税及び印紙収入の実収が見込みよりその額だけ減少するということになったから、既定の歳出を賄うために公債を発行するということでこの発行が行われたわけであります。次に行われた第二回、五十年度補正予算に関連しての赤字公債の発行を見ますと、これも年度の途中において歳入に大きな欠陥が生じたということで、そして租税及び印紙収入の見積収入額の欠陥以内で赤字公債が発行されました。私は、こういう場合でも赤字公債の発行には問題があるとは思いますが、それは別といたしまして、いま五十一年度の赤字公債の発行を見ますと、その発行が当初予算において予定されているのです。これには私は非常に驚いたと申し上げたいわけであります。  と申しますのは、一つには、財政法の第四条は、予算を組むに当たって公債発行を当てにしてはならないということを規定しているものと私は考えるわけです。少なくとも、同条はそう解するのが財政法を制定したその基本の精神に合致すると考えます。そう考えますので、まず驚いたわけであります。  次に、いわゆる赤字公債の発行を可能にするいわゆる財政特例法は、前例によりますと、財政法にかかわらず公債を発行し得るということに文章がなると思います。こういう法律は、歳入に欠陥が生じたからというので、年度の途中で出されるのであれば、賛否はともかくとしまして、一つの口実を持っていることになります。そして、結果的には赤字公債発行の限度がそこに示されることになります。しかし、予算の当初において、財政法の規定にかかわらず、赤字公債を発行する法律を制定することは、歳出をまず決めて、赤字公債発行の額をそれによって決めるということになります。これは財政法の精神に反するだけでなく、赤字公債発行の限度をなくするものであります。そして、赤字公債を自由に発行し得るようにするものと考えられるわけです。このことは、今後の赤字公債発行の情勢に照らして考えますと、そういう特例法が毎年制定される前例をつくることになると思われます。そしてその結果は、この財特法の毎年の積み重ねによって、財政法第四条が埋没もしくは空文化してしまうのではないかとおそれられます。このように考えて、私は、赤字公債の当初発行予定について大いに驚いた次第であります。  第三の問題点は、公債の発行とインフレとの関連であります。もちろん、公債を発行すればいつでもインフレになるというようなことは、だれしも言っているわけではありません。インフレの問題は、流通する紙券の通貨の発行制度、それから発行元である中央銀行の発行の仕方と深くかかわり合いがあります。また公債の発行についても、その発行量の大きさ、公債が発行されてから後、それが紙券通貨やその代用をなす銀行預金の増発にどういうかかわりを持つかということが、このインフレにつながってくるものと私は考えております。  こういう考えに立って、五十一年度予算におけるその予算総額の約三〇%を占める公債発行を見ていきますと、それが今日のインフレを再び激化させるのではないかというおそれを私は感じますので、その点を申し述べたいと思います。  私のような年寄りは、戦前からのインフレのつらく、痛ましい経験を味わわされてきております。いま思い出しても残念でなりませんのは、戦前戦中においていわゆる公債消化論というものが横行したことであります。その論者はこう言ったのであります。すなわち、政府が公債を発行して日銀にこれを引き受けさせても、後にこの公債を日銀が市中に売り出して資金を吸収すれば、インフレは進行しないとこう言ったわけです。これに対して私たちは、日銀が市場に公債を売り出したときには、すでにインフレは起こって進行しているのである、政府が次から次へと公債を発行することによって、広い意味の通貨は膨張し、インフレは進行すると申したのであります。  この論争は事実がわれわれの主張の正しさを証明してくれました。すでに御承知のように、戦争のさなかにおいて物価統制も行われましたし、種々な金融統制が行われましたけれども、やみ値は上がり、いわゆる公債の市場消化もだんだん行われ得ないようになり、しまいには、一たん市中に売りさばいた公債を日銀が買い入れねばならないという結果になったのであります。こういう事実を経験したために、財政法は、その歴史に顧みて、第五条において、公債の発行については、日本銀行にこれを引き受けさせてはならない、と規定したものと解釈されます。  今日においては、この規定が存在するために、もちろん、政府が公債を発行するに当たって、直接に日銀にこれを引き受けさせることはいたしません。しかし、事実の流れにおいて、つまり公債を発行するときの一こまだけを見るのでなく、多くのこまが連続しているフィルムを回転させてみますと、戦中、戦末期の状況と同じように、政府発行した公債が日銀に逆流してくるその動きが認められます。  現に、予算参考書の数字で見ましても、四十九年度末の内国債発行残高の十兆円ほどに対して、五十年度末における日銀の公債保有額は約八兆円と見込まれております。これでは、日銀が買い入れ得る適格公債の約八割が日銀に流れ込んでしまうことが否定し得ないものと言えるわけであります。そして、少なくともその額だけは、広義の通貨のもととなる日銀のいわゆる信用が増発されるということになるわけでありまして、これがインフレの激化に連なるということを私はまずおそれるものでございます。  日銀の市中からの公債買い入れについては、日銀はそれによって成長通貨を供給しているのだという説明もなされているかと思います。しかし、通貨の流通速度や銀行預金などによる紙券通貨の節約度合い、そういうものは数字的に把握することが全く不可能なものと私は考えます。そういうような要因を含んでいる通貨量というものについて、これが適正な通貨量であるということをどうして数的に算出することができるでしょうか。むしろ現在の条件下では、通貨は増大することによって物価を引き上げますから、どれだけの通貨量を出しても、常にそれが結果的には適正な通貨量のように見えてくると言ってよいかと思います。したがって、日銀が公債をどれだけ買い入れても、適正量の通貨を供給するためだということが言い得ることになるわけです。  次に、公債発行量が大きいこととの関連で私が申し上げたいことは、五十一年度予算案で「大蔵省証券及び一時借入金の最高額は、二兆六千億円」と規定されていることに関してでございます。現在の金融市場の状況では、市場に資金の余裕があるから公債のいわゆる市中公募はその資金を固定化するので、むしろインフレ化を抑える作用をなすというような説もあるかと思います。しかし、これもいわば長いフィルムの一こまを見ていることにすぎません。今後景気が幾分なりとも回復に向かえば、産業界からの資金需要が伸びてくるものと思われますし、また国債のみならず、今後地方債の発行が四兆八千億ですか、これが加わってくるということもございますので、地方、中央を通じての公債引き受けの負担も金融機関にとっては非常に重くなってくると考えられます。したがって、そういう状況となりますと、公債の日銀への逆流も前例のように起こってくるに違いありません。しかし、この場合においても、発行後一ヵ年を経過しない公債は日銀の買い入れ対象とはなりませんから、新年度の公債発行額に対して既発公債の日銀に入ってくる額はもちろんよりはなはだ少ないということになります。  そこで、こういう場合においては、さきに申しました蔵券の発行が登場してくると思われます。この蔵券は日銀引き受けで発行しても法的に差し支えありませんから、政府は将来の公債発行を前提にしてまずこの蔵券を発行し、日銀創出の資金を使ってこの歳出を賄います。しかし、この方式を行っていきますと、金融市場に資金の余裕ができて、市中の銀行は産業資金需要に応ずることができますが、また新発公債を引き受ける力を持つこともできるようになるものと考えられます。したがって、この蔵券発行は日銀による市場資金増強のための有力な手段をなすものと見られるわけですが、この手段が使われる経過の中で、戦中に見られましたような広義の通貨そのものも増大し、インフレが進行するものと私は考えるわけです。そのために、私はインフレとの関係においてこの蔵券制限額の拡大が注目されねばならない要素と感じまして、この点においてもインフレのおそれを深く感ずる次第であります。  以上、三点にわたって、公債発行に関連して私の考えを申し述べさせていただきました。大変お聞き苦しいことも多かったと思いますが、御了承願います。  以上をもって私の公述を終わらせていただきます。ありがとうございました。(拍手)
  42. 井原岸高

    井原委員長代理 どうもありがとうございました。     —————————————
  43. 井原岸高

    井原委員長代理 これより各公述人に対する質疑に入ります。  なお、御質疑は、午前と同様、答弁を含めて十分程度といたしたいと存じますので、御協力を賜りますようお願いを申し上げます。  質疑の申し出がございますので、順次これを許します。正示啓次郎君。
  44. 正示啓次郎

    ○正示委員 きょうは三公述人の先生方、御苦労さまでございます。  時間が制限されておりますので、私は全国銀行協会連合会会長の板倉公述人にしぼってお尋ねをいたします。  先般来、この予算委員会で金融機関に対するいろいろの問題が提起され、大変議論になっておるわけでありますが、きょう先ほどの御公述で、企業の採算を改善するために、貸出金利については都市銀行としては非常に熱心にその引き下げに一段と努力をするというお話があったわけであります。  一方、先般来のこの委員会における質疑では、いま各企業不況で非常に苦しんでおる中で金融機関が比較的安定した経営をしておる、特に金融機関だけがいわばこの不況の中で繁栄をしておる、こういう見地から、御案内の大蔵委員会等で前からずっと問題になっております歩積み両建てに関する質疑が非常に活発に行われたわけでございます。それで、大蔵大臣初め総理もこの問題について大変重大な関心を払いまして、これはひとつ従来の大蔵省行政指導だけではなくて、アンケートその他によりまして実情を把握して、一般国民のこれに対する疑惑を晴らすように努力したい、こういうことまで言ったわけであります。  そこで、先般、実は板倉全銀協会長のこの歩積み両建て問題に関する非常に明快な、銀行協会としてひとつこの際思い切った措置を講じたいというふうなことを私も拝見をしておるわけでありますが、この機会全国銀行協会連合会会長としてこの点に関するひとつ思い切った構想を、どうして改善していくかというふうなことについてひとつお伺いしたいことが第一点であります。  それからもう一つは、この不況下いろいろ企業の倒産問題が起こっておりますが、伝えられるところによりますと、企業の合併等の場合に大変金融機関が積極的に介入して、労働組合等からは相当金融機関のビヘービアについて横暴だ、たとえば合併するような際にはいち早くメーンバンクが新しい社長なんかを送り込むとかあるいは重役を送り込むとかというようなことが伝えられまして、これが労働組合等の非常な反発を招いておるような点もあろうかと思いますが、私はやはりこういう不況下、非常に公共性を持った金融機関としてはいまの歩積み両建てについて思い切った措置を講じて世人の納得を得ると同時に、いまのような企業の合併等の場合もこの辺は大変慎重におやりをいただいて、金融機関に対する国民期待にこたえていただくべきではないか、こんな感じを持っております。  この二点について、板倉公述人からひとつお答えをいただきたいと思います。
  45. 板倉譲治

    ○板倉公述人 まず、歩積み両建ての問題につきましてお答え申し上げます。  歩積み両建てにつきましては、銀行界といたしましても、かねてこういう御非難があることはよく承知いたしておりますし、また、絶対にこういうことがあってはならないという考えで、長年にわたりまして自粛に努めてまいっております。  まずもって、いままでやってまいりましたことは、過度の歩積み両建ては絶対に発生させないということが一つでございます。それから、拘束しております預金、この拘束預金の比率を引き下げていくということも実施いたしております。それから、拘束いたしております預金につきましては、必ず金利措置をするということでございます。  こういったようなことが主な点でございまして、こういった自粛措置を従来着実に進めてまいったのでございますが、そのかいありまして、私どもの見ております限りでは、従前と比べますと非常に改善を見てきておるという確信は持っております。しかし、いまだに、特に問題として残っておりますのは、たてまえとして拘束をしていないということになっておりながら、事実は銀行がそれの引き出しを拒否しているではないか。銀行が拘束しないんだ、引き出しは自由なんだと言いながら、現実にそれが拒否されているという例があるではないかという御批判があるわけでございます。そういうことがありましてはまことに申しわけのない次第でございまして、こういうことが絶対ないようにということで、どうしたらばこういうようなことがなくなるかというので私どもも長年考えてきておりまして、従来やっておりますのは、取引先、貸し金先すべてに対しまして、拘束預金のある先、ない先、全部の先を網羅いたしまして、各支店ごとに、あなたのところの御預金の中で拘束されておりますのはこれだけでございます。それ以外の預金はすべて預金の契約に従いまして自由に御使用ができるのでございますということを漏れなく御通知いたしております。これが一つでも漏れてはいけませんので、郵便局の郵便の受付まで照らし合わせて、各支店にそういう漏れがないように確認をいたしております。そういう点につきまして、本部にもこの管理監督体制をつくっておりまして、本部から一年に一ヵ店について二度は検査に行くというようなことを大体各銀行ともやっておるような次第でございます。  ところが、そういうことをいたしておるにかかわらずなおそういう御批判が出ておるということは、まことに問題なわけでございまして、そういうことでございますので、私どもとしても、この点はもっと徹底的に、これは行内にもまた行外にもよくわかっていただかなければいけないということを考えまして、行内に対しましてはもちろんそういう教育は十分いたしておるつもりでございますが、それをやはり外部から監督していただく、取引先から監督していただくという意味で、店頭が主体でございますが、先般各支店の貸付係にこういう拘束通知を出しております。それ以外の預金は絶対に、もう自由に契約に従ってお引き出しできるのでございますから、御心配なくお引き出し願いたいという趣旨の御通知を差し上げておりますということをポスターで掲示をいたしまして、それで取引先の方にわかっていただくと同時に、銀行員にも、これが平素目につくというふうにいたしておるわけでございます。しかし、まだそれだけでは十分ではないと思っております。それで、たしかきょうの新聞あたりに出ているかと思いますが、こういうポスターを出しておりまして、拘束していないものは本当に拘束していないんだ、どうぞ御安心していただきたいのだ。もし万一これについて何か支障がございましたらば、支店の責任者に直接お申し出いただきたい。それでもなおわからなければ、無論本部の顧客相談室においでくだすっても結構でございますし、銀行協会のよろず相談所というのが前から開かれておりますが、ここへこの苦情をお持ちくだすっても結構でございます。決して御迷惑をおかけしないように対処いたしますということで、そういう新聞広告も今週あたりからやってまいることにいたしております。  こういったようなことで、こういうことはちょっと水かけ論になりまして非常にぐあいが悪い問題でございますので、これは銀行サイドも、また取引サイドにも同じような認識をはっきりと持っていただく、これが何よりもこの問題の解決の方策ではなかろうかというふうに思って、努力いたしている次第でございます。  それからもう一つ御質問がございまして、企業の合併のときに銀行が介入して、重役を派遣するとかあるいは銀行の行員を派遣するとかいうようなことで、企業の中から組合などの反発が起こっているではないか、これは慎重に対処すべきであるというお話でございます。  これはまことにごもっともなことと存じます。合併に限りませんで、企業がぐあいが悪くなりました場合に、その再建につきまして、銀行から企業の側に人が出ていくということが実例として確かにございます。これも、もちろん銀行から無理に押し込むという形でやっていることは絶対にないと私は思っております。企業側からの御要請に従って、財務、経理その他に経験のある者を欲しいという御希望に沿ってやっているわけでございまして、決して銀行が無理に押し込んでいるということではないつもりでございますが、最近ある社の合併につきまして、銀行が何ですか顧問団を大ぜい入れたというようなことが新聞に出ておりまして、その関係で組合側の反発があるというようなことも聞いております。こういったことにつきましても、銀行として先方を御援助するというたてまえで当然やるべきものでございまして、無論先方の御意思に反してそういうことはやれるものではございません。先方が拒絶されれば無論そういうことはやれないわけでございますので、先方の御承諾を得てやったことだと存ずるわけでございますが、やはりこれにつきまして組合の方からいろいろ異論が出るような事情もございますので、御承知のとおり、今後とも銀行としてはこの点は慎重に対処していかなければいけないというふうに思っております。  ありがとうございました。
  46. 正示啓次郎

    ○正示委員 終わります。
  47. 井原岸高

  48. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 時間がございませんから、簡単に質問申し上げたいと思います。  まず、板倉さんにお聞かせ願いたいと思いますが、実は地方債の四兆八千億のうちで、縁故債がことしは、五十一年度は二兆四千億程度見込まれておるわけであります。五十年度が六千七百億ぐらいでしたから、まず四倍ぐらいの縁故債を政府予定しているわけです。これにつきましては、大蔵大臣と自治大臣の間で、その消化については取り決めがなされておるようでありますが、銀行協会としては、この地方債のうち縁故債の消化に  ついて一体どういうような態度で臨まれるのか、これをひとつお聞かせ願いたい、かように思うわけです。これが一点であります。  それから山本公述人にお尋ねいたしますが、先ほどからいろいろ切々たる公述がありました。われわれ政治に携わる者として非常に多くの責任を感じたわけであります。  そこで、具体的にお聞かせ願いたいと思いますが、まず第一に、五十年度の賃上げすら全然できない。いまの見通しでは五十一年度も無理だろうということになりますと——これは四十八年度は特別措置をいたしましたし、それから四十九年度は医療費の値上げ、さらにまたそのリンクした指導費の値上げということで何とか賄われたわけですが、医療費改定が非常におくれておるのでこの両面の財源がないということですが、これは五十年度から何とか措置をしなきゃならぬ問題ですが、ただ職員だけではなくて施設の側は一体厚生省にどういう要求をしておられるのか。これをひとつお聞かせを願いたい、かように思います。  それから第二点は、われわれがこの席でかつて齋藤厚生大臣に約束をさしたのは、大体一対一というのを約束をさせたのです。いま聞きますと、一対一・二ということでありますが、もっとも一・二あるいは一といいましても、三交代ですから実際は一人が一人見るんじゃなくて、やはり三人見ることになるわけですけれども、それにいたしましても、先ほどから聞きますと、腰痛で療養しておるとかいろいろ故障が起こっておるので、この一対一とか一・二というのは実働では一体どういう比率になっておるのか。職場に来られる人の関係ではどういうようになっているか、これをお聞かせ願いたいと思います。それから、看護婦さんがことにやめていかれるということで人員配置の組みかえもできないということですが、これについて施設の方はどういう看護婦さんの確保対策を持っておるのかあるいはそれに対して厚生省はどういうようにしておるのか、わかりましたらお聞かせ願いたい。  それから第三は、五十年度予算に寄付金を四千万円施設の方は予定をしておられる。しかし、いままでですら千万円しか入っておらないのにどうしてあとの三千万円入るだろうかという疑問を投げられておりますが、自治体との関係はどういうふうになっているのか。どういう援助が自治体からはあっておるのか、これをひとつお聞かせ願いたいと思います。  それから、週休二日制は、むしろこういう施設からやるべきだろうと思いますが、公務員と実質的に、ただ賃金だけでなくて同一にということでありますが、これらの重度心身障害児のような施設は本来民間機関では無理ではないか、何か大きな基金を持っておられて、特別な基金の中で運用していくというならこれは民間機関でもいいでしょうけれども、ただ普通の運営ではこれはもう、むしろ非常に無理がきておるんじゃないか、従業員の方も不安だし、あるいは入れております子供たちの親御さんも不安だし、また小林先生のような非常に積極的な、一生を賭してこれをやるんだと言われた園長すら、自分はもう続かないというのでやめざるを得なくなったというようなことが——一体民間機関で園長やあるいは職員さんが、金も集めなければならぬ、子供も見なければならぬというような運営ができるんだろうか、こういうように考えるんですが、どういうように職員としてお感じになっておられるか。これらの点をお聞かせ願いたい、こういうふうに思います。
  49. 板倉譲治

    ○板倉公述人 お答えいたします。  地方債につきまして、昨年と比べますと、五十一年度は非常に増額になるということでございます。確かにそういうことに相なっておるわけでございますが、もとよりこの景気浮揚のためには国の予算の執行が順調に行われるだけではなくして、それと関連のあります地方予算が順調に執行されませんと効果が上がらないわけでございますので、その点につきましては、銀行界といたしましても深く認識をいたしております。そういう関係で、大蔵省の方からも地方債の引き受けについては銀行界として十分な協力をするようにということを言われております。私どもといたしましても、国債だけではなしに地方債、なかんずくその中で縁故債というものがあるわけでありますが、この縁故債の消化につきましても十分な御協力をいたすということで各地に、各県にシンジケート団を組織しておるのでございますが、そのシンジケートをつかさどっておりますのは、都市銀行もございますが、数から申しますと地方銀行が大部分であるわけでございます。そういった地方銀行におきましても縁故債の引き受け、消化につきましては存分の御協力を申し上げるという方針にいたしておるわけでございます。  以上でございます。
  50. 山本治史

    ○山本公述人 お答えいたします。  まず、五十年度のベアができないだけではなくて五十一年度においても非常に厳しい、では施設側は厚生省にどういう要求をしていたのかということについてなんですけれども、私たちが団体交渉その他で聞いておりますのは、まず昨年十月の補正予算に向けて、少なくとも人事院勧告が実施できるだけの措置費をふやしてほしいということで強く陳情していった。同様にして、自治体に対してもしていたということを聞いております。そして現在は、措置費が昨年十月において増額が認められないということがはっきりしてからは、医療費が施設の収入のかなり大きなウエートを占めているので、その医療費の中で特殊疾患管理料というのが現在一日三十点、三百円あるわけなんです。それを百点にしてほしいということの増額を要望していたということを聞いております。  それからその次なんですが、一対一とか一・二対一とかいろいろ言うけれども、現在、島田療育園では実働ではどれくらいいっておるのかということでございます。それは実働では約一・三対一でございます。  それから、看護婦の確保について施設はどういうことをやっておるのか、厚生省はどういうことをやっておるのかについてなんですけれども、施設がやっておることは、方々の看護学校を回ったり、看護婦の免許を持っていてまだ家庭にいる人たちに向けてぜひ島田で働いてくれないかということで呼びかけているようです。厚生省がそれに対して何をやっているかということについては私存じ上げておりません。  それから、自治体からどういう援助があるのかということについてなんですけれども、——その前にちょっと訂正しておきますと、寄付金は当初五千万組んでいるのです。そしてふだんは、好況のときでさえ一千万ですから、四千万円はもともと入る見込みがない、そういうことです。  いまの自治体のことなんですけれども、実は島田療育園は、ほぼ六割ぐらいの子供が東京都の措置児童でございまして、東京都及び神奈川、それから政令都市の横浜、川崎などは東京都と同じなんですが、一ヵ月一人の子供について四万一千九百円の特別加算といいますか、運営費補助という名前でも呼ばれているのですが、そういったものが来ているわけです。御参考までに、ついでに申し上げますと、一人当たり一ヵ月に入ってくる総収入は全体で二十八万五千八百円ぐらいなんです。ですから自治体に依存しておる部分というのは、約七分の一ぐらいということです。  それから、こういうような施設を民間で運営するということは無理ではないかということが最後の御質問だったと思うのですけれども、それは私、こういうふうに考えています。本来ならば、これはやはり国や自治体の仕事ではないだろうかと思うのです。しかし、現実民間の重症児施設が三十数ヵ所ありますし、重症児施設以外にもかなり民間に依存している部分が多いと思うのです。ですからそういったところの運営が円滑にいくためには、少なくとも国やそれぞれの自治体にかけていると同じくらいのお金を民間の方にもかけてほしい。そういう中で、民間民間予算を生かしてやれるのではないか、そういうふうに思います。
  51. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 国が主として病院に併設しておるのですが、一人当たりの措置費は大体わかりますか。——あなたの方ではわからぬ。結構です。ありがとうございました。
  52. 井原岸高

    井原委員長代理 石野久男君。
  53. 石野久男

    ○石野委員 公述人の皆さん大変御苦労さまです。時間がございませんので、私は山本公述人にだけお尋ねしたいと思います。  いま多賀谷委員からも御質問がありましたので、あと一つ二つお聞きしたいのですが、いろいろお述べになりましたことで島田療育園の方が非常に財政的に御苦労なさっていることがよくわかりました。  そこで、具体的に、たとえばことし何とか維持していこうとする場合に、皆さんの考え方でどのくらいの金が現実にあったらいいのだろうかというものを、わかりましたらお考えをちょっと聞かしていただきたいことが一つ。  それからいま一つ、職員の皆さんや看護婦の皆さんが施設児のごめんどうをいろいろ見ていらしておりますけれども、この皆さんに協力する体制でボランティアの活動があると思うのですが、このボランティア活動についてどういうあり方であったらいいだろうか。これは私たち民間でこのあり方の問題についていろいろいい面もあれば、こうあったらいいのじゃないかなというようなことも思ったりしておりますけれども、施設に働いておる皆さん方から見て、ボランティアのあり方というものはどういうものであったらいいだろうかということをお聞かせいただければと思います。  以上です。
  54. 山本治史

    ○山本公述人 維持するには幾らかかるのかということなんですけれども、ことしの場合はっきり言って一億円欲しいと思います。一億円を収入として得るには、昨年四月にさかのぼって一人当たり六万何千円かの上積みをしてくださらないと、一億の金が島田としては収入として入ってこないわけです。  もう少し補足しておきますと、一億というお金が出てくるその根拠なんですけれども、これはまずは国家公務員並みの一〇%余の賃上げをするということですね。それから増員を図るということですね。一対一まできちっと置くということ。それからすでにいままでに賃金の中だるみ現象ができていたり、たとえば住宅手当が三千円なんですね。これは国家公務員の場合ですと四十七年の水準なんですよ。それから扶養手当が配偶者二千四百円、第一子が八百円、これもやはり四十七年の水準なんです。  なぜそうなってしまっているかと申しますと、私たちとにかくあのころは人手が足りなくて、人を一人でも確保したいということで本俸をできるだけ上げることに努めてきたわけです。経営者側もそれに同じ考え方で妥結しまして、ですからほかの部分がかなり犠牲になっているのですね。本俸を上げて、しかも初任給クラスを厚くしたというような経過があるので、いまになっていろいろな問題が生じているわけです。その是正とベア、人員の確保のために約一億、来年についても同じくらいの金がかかると考えています。  それからボランティア活動についてなんですけれども、まず基本的にボランティアというのは一体何なのかということから若干話をしてみたいと思うのですが、まずはこういうことだと思うのです。私たち現場の職員が基本的な生活については一応一定の水準まで確保する、その上に積み上げるものとしてボランティアがあるのではないか。現在はボランティアさんにとにかくわれわれの仕事がものすごく足りないところを補ってもらっているという状態一つあるわけです。しかも弊害はこういうところにもあります。もしもわれわれの方がボランティアを受け入れる体制が十分にあるのならば、もっとボランティアさんに子供たちのことや福祉についていろんな話、オリエンテーションなんかができますし、意見交換ができるわけですね。ところが、とにかく人が足りないから手伝ってもらっているということで、ボランティアの皆さんには十分勉強ができなくて申しわけないと私たち思っています。ですから、ボランティア活動が本当に花開くためには、やはり人員の面でもっとゆとりが出てこないと無理ではないかというふうに考えています。  そういうことです。
  55. 石野久男

    ○石野委員 ちょっと重ねてもう一度だけお聞きしますが、いま一億の金があればことしはとにかく何とかやっていけるだろうという見通しだというのですが、施設自体ではとてもそれは集まる見通しもないようですし、いろいろな方策も講じられているのですが、当面皆さんが働いている者として、その金は、それじゃ国からなのかあるいは自治体からなのか、それともどういうふうにしたら一番いいとお考えになっていらっしゃいますか、皆さんの考え方として、その一億の金を手にするのには。
  56. 山本治史

    ○山本公述人 ことしはもうどん詰まりに来ているわけですね。ですからここまで来てやれる方法というのはただ一つしかないと思っているのです。それは、四十八年に腰痛が多発したときに、つかみ金で島田に一千七百万、国全体では八つの施設に対して計六千万が出されたのですけれども、そういうつかみ金の形で何とか国が捻出してほしい、そう思っています。
  57. 井原岸高

    井原委員長代理 林百郎君。
  58. 林百郎

    ○林(百)委員 私は、渡辺公述人と板倉公述人に二、三点御質問したいと思います。  まず、渡辺公述人に御質問したいのですが、政府景気刺激対策ですか、スタグフレーションに対する対策として財政に依存するということですね。国の財政に、渡辺先生依存するというそういう方針が貫かれているのじゃないかと思うのです。私たちの考えとしては、今日の世界的なインフレと不況の資本主義国の中でのそういう中で、特に日本の国のこの深刻なスタグフレーションというのは、やはり構造的なもの、たとえば燃料エネルギーの石油の九〇%をアメリカ一国だけに依存している、メジャーに依存しているとか、あるいは食糧の五〇%近くを主としてアメリカ並びにアメリカの経済的な影響力のある国に依存しているというような形、それから、GNPが世界第三位になったと言いますけれども、これが貿易によって得た利益あるいはGNP第三位の富が主として租税特別措置等によって大資本の資本の蓄積だとかあるいは社内保留に蓄積されていくというような、こういう構造的なものから来ている要因があるのに、財政的な刺激だけで果たして今日の景気が立ち直り得るものかどうか。政府も長期の安定した安定成長という言葉で、もう経済の高度成長性という言葉を政府自身も使わないのですけれども、この景気刺激対策というものが国の財政主導型によることの限界というものがあるのではないかというように思われるのですが、その点が一点、どういうものかということです。  それから、この莫大な国債発行あるいは地方債の発行、これを長期的に見るともうインフレの要因になるということは否定できない、これは戦前の経験によっても明らかだということで、戦前のある時点時点をとらえられて先生御説明なさったのですが、いまはもうそういう戦前のあの莫大な戦費を国債で賄って、とめどのないインフレーションへ突入していった端緒的な時期と見ていいのかどうか。この調子でいったら、これは国会でも、莫大な公債の発行の償還問題について政府からの確たる償還の計画が出ないということで論争になっておるわけですけれども、これは相当雪だるま式に広がっていく、国債発行の、われわれが戦前経験した苦い経験、これの端緒的な時期に入っている、昨年、ことしというような莫大な公債を発行するに至れば、そう見ていいかどうかというのが第二点です。  それから第三点は、先生先ほど御説明なさいました、戦前のいろいろな財政的な苦い経験から、再び国民にそういう過酷な財政的な被害を加えないような民主的な諸条項が設けられている、そのうちの一つに、赤字公債の発行をとめる、こういう制度も設けられたと言うのですが、これが昭和四十年から崩れてきたわけです。私も先ほどから調べてみたのですけれども、財政法五条によると、「日本銀行にこれを引き受けさせ、又、借入金の借入については、日本銀行からこれを借り入れてはならない。」とあるにもかかわらず、一年たてば買いオペの対象にするということを、法律で決まっているのに日銀の規則で崩していくというようなことができるのかどうか。あるいは他に根拠があれば別として、いま私たち、関係者と研究してみましたら、そういう形になっておるので、これはやはりもっとけじめをきちっとつける必要があるのじゃないかということが一つ。  それからもう一つ、これは共産党もそうですか、社会党の皆さんからも御意見が出て一つの論争になったのですが、財政法の二十四条の予備費の問題で、ことしは公共事業等予備費というようなことで千五百億組んだのですが、二十四条を見ますと、「予見し難い予算の不足に充てるため、」ということなんで、公共事業に充てるということならこれはあらかじめ予見してあるので、もしこういうことが許されるということになれば、将来防衛等予備費というようなこともあるんじゃないかということがこの委員会で論議されたのですが、こういうような使途先が明確に示されている予備費というようなもの、しかも千五百億、一般の予備費が三千億組んであるのに、その半分の千五百億をつかみ金で政府に渡して政府の自由に使わせる。人によっては、これは選挙対策に使うんじゃないかということを言う人もありますけれども、こういうことが財政民主主義のための諸制度を崩していくまた一つの穴になっているのではないかというようなことが考えられますので、その点をひとつ。  この四点を御説明願いたいと思います。  それから板倉公述人には、先ほど社会党の多賀谷さんからも御質問がありましたけれども、御承知のように、ことしは莫大な国債地方債が発行されておるわけなんですけれども、これと金融との関係です。政府は、これによってことしの後半期には景気が上向きになるんだ、それは、かつての経済の高度成長政策を夢見ることはできないがということは言っておりますけれども、しかし、そういうように景気刺激になってくるとすれば、設備投資とかあるいは財貨の買い入れとか、これは金融のデマンドが出てくると思うのですね。そういうときに、その景気を上向きにするための金融のデマンドが出てくるその基礎にもうすでに公債の引き受けが大きく——都市銀行や地方銀行が引き受けさせられるということになれば、銀行の金融の枠だってそう無制限にあるわけじゃありませんから、これは非常に窮屈になるんじゃないか。ことに、中小企業に対する融資が心配になるんじゃないかというように思われるわけなんですが、いまお話を聞きますと、歩積み両建てについては、非常に御注意をなさっているという話ですが、何か昨年の暮れからことしにかけてこういう莫大な公債——国債地方債それから政府保証債等もありますけれども、私たちの計算ですと、政府保証債もことしは七千六百億円ぐらいになるらしいのですけれども、前年は四千億円ぐらいだったのですが、こういうものが参りますと、このこともあって歩積み両建ての一つのファクターになっているんじゃないか、それでなるべく貸し出しを何とかしてセーブしていこうということに歩積み両建てが使われる危険があるのではないか、こんなように考えられますけれども、その公共債の引き受けと、それから企業の融資に対するデンマンドと、それを賄うための歩積み両建てというような、銀行側としてはそういう手段に訴えざるを得ないような事態があるのかないのかという点が一つ。  それから、先ほどもありましたけれども、地方の縁故債ですね。これは主として地銀ですけれども、これが適格債でないものですから、なかなか地方銀行としては引き受けを渋るわけなんですね。ところが、大体四兆数千億の地方債のうち六割は原資が政府資金で、あとの四割は民間金融機関から借りなければならないものですから、それには、ことに地方銀行としては融資の枠が都市銀行よりは狭いわけなんですから、これを何とかして適格債にしてもらえないかというような声もあり、これは午前中の神奈川県の知事の長洲さんからもそんな意見が出たのです。そういうことになりますと、これはまた日銀券との関係とインフレの関係とがいろいろと絡みついてくるのですが、これについては何かお考えがおありになりますか。この点をお尋ねしたいと思うのです。  以上です。
  59. 渡辺佐平

    ○渡辺公述人 お答え申し上げます。  ただいま私に対して御質問いただきました、四点かと思いますが、第一点は、現在の政府景気対策というようなものは、景気を刺激するという形で予算にそれを盛り込んだり、その他の公共事業を考えているというようなこと、これが現在の不況とインフレに対してそれを抑えるような、あるいは失業を減らすようなそういう効果があるかどうかというようなことなどの問題で、現在の不況はそういう政府景気刺激策ではそこから脱出できないんじゃないかという御質問であったかと思いますが、確かに現在の不況そのものが、これまでそういう政府景気刺激政策を繰り返し行ってきて、しかも高度成長政策、極端な経済成長政策を行った結果として出てきて、つまりそういう方式の破綻を現在は示しているわけで、同じようなその破綻の原因となった政策をここで行うことによってこれの回復を来すような結果になるかというわけでありますから、まことに不可解な政策だ、こう私は考えるわけで、現在の状況に対しては、これまでの高度成長政策、この基本には、私は細かいことはよくわかりませんけれども、ケインズ流のスペンディングポリシーとか、そういうふうな人為的に景気をふるい起こす、そういう考え方で政策が行われたと思うのですが、この政策の基本になった経済学の反省と、それを実行した結果についての実績からの反省をもとにしてこの現況に対処することが正しい対処の仕方であると思うのです。現在はそういう反省でなくて、同じことを繰り返そうということであると思います。  反省した場合にどういう問題が出てくるかといいますと、先ほど御質問いただきましたように、日本の経済の構造の問題、その経済の構造によって制約されている政策そのものを改めるという問題になる。     〔井原委員長代理退席、正示委員長代理着席〕 おっしゃるとおりのことだと思いますので、まず第一には、これまでの経済政策の反省、反省した結果当然こうなるんだというところから出発すべきじゃないか。お答えとなっておりますかどうかわかりませんけれども、そう申し上げておきたいと思います。  それから、現在すでに物価は一けたの上昇だと言われながらも、なかなか抑え切れないで二けたになる、ちょくちょく頭を出しているわけですけれども、片方において不況がある。しかし、こういう中でさらに公債の発行をふやしていく、そういうことをすれば、これが今後のとめどないインフレの一つのきっかけあるいは端緒になるのではないかという御質問でございますが、私も非常にそういう理屈以前に、こういうことは前にあったんだというふうな感じで危機を身に覚えるわけです。  数字的にいろいろ申し上げることも用意はございませんけれども、第一に、インフレにしろ景気振興政策にしろ、物価が上がるよりは所得が上がってあるいは会社の利益が上がって、税金がそれによって増大し、たとえ端緒的に公債が発行されても、公債が発行されないで税収で賄っていけるというような形に戻っていく場合には、これはインフレはおさまっていくというふうに見ても、全く全面的に安心はできないにしても、ある安心感を持つわけですが、この税収が伸びないのに財政の支出が多くなる。そして物価の上昇がさらに自然的に財政膨張させるというその徴候があらわれたときは、これはもう非常な危険な徴候じゃないかというふうに考えるわけでありまして、五十一年度予算の編成を見ますと、その編成の仕方の中にあるいは支出の項目の中に、もう少し削ってこの財政の均衡化に資する必要があるんじゃないかという項目はあると思いますし、もっと税金が取れるんじゃないか、もっと当然の負担として企業から取れる税金があるんじゃないかというふうな点も多々あるかと思います。  そういう点も考えてですけれども、しかもこの財政が自然的に膨張していくということは、すでにインフレがその大きな原因になっているのでありまして、それがこの財政の欠陥を生んでいく、そういうことはやはりこのインフレの、私は自動的にインフレが進行するというふうにはまだ言いたくありませんけれども、そういう傾向をあらわしているんじゃないか。財政膨張の方が景気の振興よりテンポが早いというそのずれが出てきたときは危険な徴候である。現在は非常にそこが微妙な段階と思いまして、今度の予算がこの形で執行されますと、この微妙さが微妙でなくなる。もう少し鮮明になるんじゃないかというふうな、こういうおそれを先ほど申し上げたわけでございます。  それから第三の、財政法では日銀が公債発行の引き受けをすることは禁止されている。しかし、日銀が既発の公債を、その何割は買い上げるということを日銀の方で決めることは、実際的に財政法に反するんじゃないかという御質問であったかと思いますが、私は、日銀法そのものが現状においては非常に問題を含んでいると思いますし、条項は覚えておりませんけれども、日銀法の中では引き受けができるような規定もあるように思います。そういうのを盾にとって、日銀のたてまえから言えばこれは援用である、そういうことは禁止していないんだということになれば、まあこれはいろいろ議論の起こるところと思いますが、この日銀というのは、片方においては通貨の安定を役割りとしてしばしば日銀総裁はそれを口にされ、演説などに申されておる。これは当然のことだ。そういう本来の使命から言って、こういう既発の公債を買い入れて、これは適正な成長通貨を発行するんだという説明だとすると、私が先ほど申し上げましたような疑問が大いにあると、こう申しておきたいのです。やはり日銀は、いろいろ説もございますけれども、国民一般のためを思えば、通貨の安定ということを重大な使命とするものだと思いますが、そういう観点からこの問題が考えられるんじゃないかというふうに思う次第であります。  それから、財政法の規定で予備費というのは一つであって、各支出が決まったところの項目に予備費を置くのはおかしくないか、あるいは財政法のたてまえから問題ではないかという御質問と思いますが、私も妙な話だと思って伺ったわけです。財政の原則をここで申し上げることもないのですけれども、予備費というようなものは一つのところにまとめておいてこそ節約が可能であり、効率的だと思うのです。これが財政の常識だと思うのです。予備費というのは、あらゆる予想しない用途に向ける、そのために一つ置く。これは何にでも使える、何が起こるかわからない、一つに置くということは節約の原則にもかなうし、どういう事態にも対応できるという機動性を持つという意味においても、これは非常に理想的な姿だろうと思うのです。各項目にそれが予備費として置かれて、あらゆるたくさんの項目に非常なむだといいますか、節約の原則に反すると思いますし、財政の使い道もわりあい緩やかに使われるもとになるんじゃないか、お説のとおりだと思います。  大体、先生よろしゅうございますか、以上です。
  60. 板倉譲治

    ○板倉公述人 ただいまの先生の御質問、二つございまして、一つは、国債地方債が非常に多くなる。そうすると、銀行貸し出しがそのためにはみ出してしまうのではなかろうか、やりにくくなる。そのために歩積み両建てというようなことが起こるのではなかろうかというふうな御質問でございますが、この国債地方債が多額に出ましても、国債地方債を銀行が持ちます場合に、国債地方債のかわり金がやはり預金として金融界全体に還元してまいりますので、国債地方債を持つことによって銀行の全体としての資金繰りは逼迫にならないわけでございます。金融界全体としては資産、負債が見合いまして逼迫はいたさないわけでございますが、ただ、その中で銀行によりまして、金融機関によりまして、国債を持っただけの預金が必ずその銀行に入ってくるという保証はないわけでございますので、銀行によって金の余る銀行、国債を持った以上に預金が入ってくる銀行、国債を持っただけの預金が入ってこない銀行とがございますので、金の余る銀行と金の不足になる銀行と、こういうのが出てまいります。そういう、いわゆる資金偏在ということが起こりますと、金の足りなくなる方の銀行は余っている方の銀行からインターバンクのコールマーケットを通じて資金を引いてまいりまして、それでその資金不足を補うわけでございますが、従来インターバンクの金利が非常に高うございまして、貸出金利より高いというような状態でございますので、このインターバンクで金を引いてきて貸し出しをいたしますと逆ざやになる。そういうことで採算的に貸し金がしにくい、こういうことが起こるわけでございまして、これがいわゆるクラウディングアウトと言われておることでございます。  それからもう一つ国債地方債が出まして、いわゆるマネーサプライがふえるというようなことで、マネーサプライをふやしますのは国債地方債だけではなくて、そのほかに銀行の貸し出しもあるわけでございますので、この銀行の貸し出しの方を抑えて、それでマネーサプライが全体として多くなるのを防ごうというような政策がとられますと、そのために窓口規制が強化されるというようなことが先々あるいは起こらないとは言えないかと思いますが、そういうようなことが起こりますと、いわゆるクラウディングアウトが起こるということになるわけでございますが、現在までのところ、このインターバンクのマーケットも非常に落ちついてきておりまして、金利も下がってきております。そういう関係で、資金偏在が起こってもクラウディングアウトになるというような現象は起きておりませんし、今後ともその点につきましては、金融政策上の十分な配慮が加えられまして、支障なく貸し出しが行われるように金融政策が実行されるのではなかろうかというふうに私ども期待をいたしております。  ただ、その場合に、歩積み両建てとどういう関係があるかという肝心な点でございますが、そういうことでございますので、歩積み両建てとは関係のない問題であるというふうに私ども理解いたしております。  また、歩積み両建てと申しますのは、貸した金がその銀行の預金にとまるということでございまして、本当は貸した金というものは流通転々してどこの銀行に入るかわからないのが普通なんでございますが、その銀行だけにとどまっているというだけでございまして、その銀行にいたしますと、貸した金が預金になっているわけでありますから、それによって金繰りが楽になるということにはならないわけでございますので、国債地方債の発行に伴う資金不足をそれによって補うということとは関係がないというふうに御理解いただきたいと思うわけでございます。  それからまた、もう一つの御質問、地方縁故債を適格にしてもらいたいというふうに銀行は希望しておるけれども、日本銀行がなかなかそうしない……(林(百)委員「自治体が」と呼ぶ)自治体が御希望になっておるだけではございませんで、この銀行サイドも、地方縁故債を引き受けますシ団といたしましては、そういう点を内々希望いたしております。  ただ、日本銀行さんにはやはり日本銀行さんのお考えがございまして、いままでのところ適格にするという御意向にはなっておりませんのでございます。それは公募債と縁故債とが性格的に非常に違うということが理由ではなかろうかと想像いたします。私も日本銀行さんから詳しくお伺いしているわけではございませんので、どういう御意向か的確なお答えができませんのでございますが、縁故債と申しますのは、一般に公募されます公募債と違いまして、その地方自治体とお取引をしている特定の金融機関が集まりましてシ団を組みまして、その銀行だけが引き受けるわけでございまして、これは一般に売らないというたてまえになっておるわけでございます。したがいまして、その点で公募債と違って、一般の有価証券とは性質が基本的に違うのではないかという考え方も当然あるわけでございます。要するに、貸出金の変形ではないかという考え方が当然あるかと思います。そういう理由でございますかどうか、私もはっきりいたしませんが、そういったように基本的に性格が違うという面があります関係で、日本銀行さんがいままでのところはお認めいただいていないということでございます。  以上でございます。
  61. 林百郎

    ○林(百)委員 板倉さんに一つだけ……。
  62. 正示啓次郎

    ○正示委員長代理 時間が超過していますよ。
  63. 林百郎

    ○林(百)委員 それなら結構です。また、しかるべき機会にやります。
  64. 正示啓次郎

    ○正示委員長代理 次に有島重武君。
  65. 有島重武

    有島委員 御苦労さまでございます。  全国銀行協会連合会の板倉譲治会長さんに伺っておきたいのですけれども、一つには、いまさらさかのぼって成長経済政策の功罪を論ずるというようなことではないのですけれども、高度経済成長政策が、これはそろそろいかぬなと、何か行き詰まりをお感じになったというのはいつの時点であったかということを伺わさしていただければありがたい。  それから、いわゆる狂乱物価の状況がありましたときに土地が非常に高騰して、いまのような状況が起こったんだけれども、それを積極的に演出なさったのはむしろ金融機関ではなかったかというようなことを私たちも考えておりますし、世間でもそう言われました。そのことについて、何らかやはり一半の責任をお感じになっていらっしゃるのか。あるいは、それはいたし方なかったんだというようなことになるのか。何らか責任をお感じになっていらしたかどうか。現在もそういった御反省がおありになるのかどうか、そういうところを承っておきたい。  それからもう一つは、インフレ対策といたしまして総需要抑制政策をとったわけですね。それでほかの対策といいますか、総需要抑制政策と併用してといいますか、何か私たちはほかの政策の枝がまだあったのではないかと、そのときいろいろ議論をいたしました。そういうことについて、銀行業界としてはいろいろな御議論があったのであろうか、あるいは全くなかったのであろうか。ちょっと歴史的な話になりますけれども、そういったことを三点承っておきたいと思います。  それから法政大学の渡辺先生に承っておきたいことは、ただいまお話しいただきましたように、多額の公債発行をいたします。五十五年の公債残高は恐らく七十兆円になるであろうというような恐ろしいことであるということでございますけれども、現在の時点において先生、学者としてほかの何らかの方法が考えられるであろうかということでございますね、このことを数えていただきたい。もうすでに国の政策、方針の方はこのように傾いてしまって、いまさらということもございますけれども、学者として、こうではない、ほかにこういう切り抜けられる方法があったはずだというようなことがもしおありになるならば教えていただきたい。  それから、板倉さんにも御質問したわけですけれども、渡辺先生にも、いつごろから高度成長政策というのはもう見切りをつけなければいけないということをお考えになっておったかというようなこと、渡辺先生にも伺っておきたいと思うわけなんです。  これは西ドイツなんかの場合には、もう初めからと申しますか、一九六〇年代にはすでに成長政策と同時に社会資本を投下するということを非常に並列といいますか、積極的にバランスをとるようにというようなことをやったのではないかと私たちは思うわけですけれども、われわれもそういうような道をとるべきではなかったかと思うわけです。それで、そういうことを含めまして先生に承っておきたいと思います。  それから、ちょっと言い忘れましたけれども、板倉さんにもう一つ承っておきたいのは、もし石油ショックという現象がなかったならば、金融政策は従来どおりといいますか、石油ショックがなかったならば一体どういうふうになっていたであろうかというようなことですね、そのことを承っておきたい。  以上であります。
  66. 板倉譲治

    ○板倉公述人 お答えいたします。  まず、成長が行き過ぎているということを感じたのはいつの時点であるかという御質問でございますが、特に成長が行き過ぎているというふうに感じたのがいつであったか思い出せないのでございますが、ただ非常に長いこと高度成長が続いておりまして、いつまでも永久に日本がこういう姿で行けるものではないということは、もう四十年代の初めのころから、私個人考え方でございますが、感じておりましたわけでございます。こういうふうにいつまでも経済が高いスピードで成長し得るのであれば大変結構ではありますけれども、それによって国民生活も豊かになるという意味で結構だと思うのでありますが、そううまいことにいくわけがないので、結局いつかは資源の点その他設備拡張といった点の隘路の問題が出てまいりまして、行き詰まるのではなかろうかというふうに心配はいたしておりましたです。四十年代の中ごろからと申し上げたらいいのかと思いますが、どうもその辺、別にはっきりと意識いたしておりませんのでございますが、これは全く私個人の感じだけでございますので、御了承いただきたいと思います。  それから、狂乱物価のような状況、これを積極的に演出したのは銀行ではないか、その点について責任を感じておらないかという御質問でございますが、狂乱物価が起こりましたのは、四十八年の暮れ石油ショックが起こりましてから四十九年の前半にかけて激しい物価高騰が起こったわけでございます。そのときに銀行が積極的に貸し出しを進めて、この物価の騰貴を後押しするような行動をとったといたしますと、これは確かに銀行として大いに責任を感じなければいけない問題であるかと思うのでございますが、すでに四十八年の春から金融引き締めに入っております。現実には、日本銀行さんの御指導がございまして、四十七年の秋ごろからすでに銀行の貸し出しは慎重な態度に変わっておりまして、四十八年に入りましてからは厳重な窓口規制が施行されまして、銀行といたしましては、窓口規制の範囲内以上には貸し出しはできないということで抑えられてまいっております。したがいまして、四十八年の暮れに石油ショックが起こりましたときには、もう金融としては相当強い引き締めの段階に入っておりました。したがいまして、狂乱物価のそのさなかに銀行が積極的に貸し出しを行ったということはございません。そういう意味で、直接的には銀行が特にこの狂乱物価を演出したとか支援したとかいうふうには私ども理解をいたしておらないわけでございます。  ただ、強いて申し上げれば、四十六、七年、狂乱物価の二年くらい前でございますが、四十六、七年の外貨の流入によりましてM2がふえた、マネーサプライがふえました。そのマネーサプライがふえましたときには、金融は緩和の状態でございまして、そのときに貸出金は確かに非常にふえております。その関係で、企業の手元資金も非常に増加しておりまして、その高い水準が、伸び率はずっとその後下がりましたけれども、比較的高い水準でその後経過してきたということはあるかと思います。これがあるいはインフレ追認というような作用をなしたということは考えられないこともございませんのですが、この辺につきましては、大分タイムラグもあることでございますので、どういうふうに理解したらよろしいものか、むずかしい問題ではなかろうかというふうに存じております。  それから三番目の、総需要抑制策がとられたけれども、これの適否について銀行として議論をしたことがあるかという御質問でございますが、銀行協会の問題ではございませんもので、銀行協会としてはこういうことを論議したことはございません。ただ、銀行屋が集まりましたときに、恐らく雑談でこういった問題は出てきたかと存じます。しかし、総需要抑制策の金融面にあらわれました政策は、いわゆる窓口規制の強化によりまして銀行の貸出額が抑えられるということでございますが、やはりあの物価高騰のときでございましたので、窓口規制が強化されて貸し出しが抑制されるのはやむを得ないというふうに私ども受け入れておったわけでございます。特にこれは議論をいたしたということではございませんです。  最後に、石油ショックがなかったらば日本の経済はどうなったかということではなかろうかと存じますが、石油が四倍にも上がるということがございませんでしたらば、日本の輸入物価がいまのような——四十七年当時の輸入物価が現在倍ぐらいになっていると思います。四十七年当時を一〇〇といたしますと現在二〇〇ぐらいの輸入物価指数になっておりますので、そのくらいに高くなっておるわけでございますが、石油ショックがなければむろんこれほど高くなっているわけはないわけでございますが、ただ、石油ショックがございませんでも、四十七年当時から、干ばつなどが起こりまして世界の食糧が不足になりまして、穀物の相場が上がりますとか、あるいは綿花、羊毛その他の物価が上がってきたわけでございますね。その関係で、石油ショックの前でも日本の輸入物価が、どのくらいでございましたか私よく覚えておりませんが、恐らく一〇%や二〇%は上がっておったと思います。したがいまして、その後はまたロイター指数が下がりまして、国際物価が下がりましたので、それが前の水準まではいきませんけれども、かなり落ちついてきておるわけでございますので、石油の値段が上がらなければ、そういった国際物価が若干上がったという程度影響日本経済にありまして、日本経済のコストが上がって、その程度の物価高ということでとどまったのではなかろうかというふうに想像いたしております。  以上でございます。
  67. 渡辺佐平

    ○渡辺公述人 お答えいたします。  私に二つの御質問をいただきました。  第一点は、現在のこういう状況で、いま七兆円の公債発行を含む予算が立てられている、これにかわるような何か具体的に可能な方式があるかというような御質問であったかと思うのですが、なかなかこれは非常にむずかしい問題で、ぱっとお答えできれば私もありがたいのですけれども、実際、問題はむずかしいと申しますけれども、基本的には、やはり物価が上がるような予算の組み方をして、また来年必然的に予算膨張する、こういう予算ではとめどがないという、そういう危機感を申し上げたので、逆の方式がとらるべきであるということを私は第一点として申し上げたいと思います。景気がよくなって、そして所得が増加して税収が上がっていく、したがって赤字が減っていくのだ、現在あっても減っていくのだというふうな方式でなければ、この現状に対処できないと思うわけです。  そういう点から申しますと、抜本的な方策とは言えないかと思うのでありますけれども、まず現在のこの大規模な予算の枠そのものを検討することが大事である。まだ切り詰めるべき歳出はないか、大きな公共事業の大プロジェクトといったものは果たして今年度に必要なのかどうか、物価がもっと静まる情勢をつくって、あるいはそれをつくることによって物価が上昇するような心配がないような形でこれを組めないかどうか、この点、そういう支出の面における検討、そして全体をその面から圧縮するということ、これがまず必要だと私は思うのです。  それから収入の面でも、まだわれわれ個人の負担は大きいと思いますし、この上間接税などがふえてはこれは困るわけですが、そうでない面において、たとえば大企業、独占企業などにおいてもっと余裕があるんじゃないか。たとえば引当金等々の、あるいは広告とか交際費とかいろいろある。そういうふうにもっと増収を図ることができないのかどうか。できる限りそういうものを増徴してインフレを抑える。インフレを抑えれば、来年度予算膨張はそれだけ小さくし得ますし、それからまた縮小さえできるかもしれない。  そういうのを一たん通らないでは、これはどうしようもないと思う。その無理な、むずかしい点ではございますけれども、そういう方策をとらずしては、それは先ほど林先生の御質問にあった構造的な問題ということにつながるかと思うのですけれども、やはりそういう、いままでに考えられなかったかもしれない、考えてもこれはいろいろ理由をつけて反対が多かったかもしれない方策、これをも洗ってみる必要がどうしてもあると思う。そうして、これは抜本的ではありませんけれども、少なくとも赤字公債の三兆七千億というものを発行しないで済むかどうか、そこまで切り詰めていくことを考える、これが私はさしあたって必要であり、そうできないことではないような気もいたしますけれども、社会的に反響もございますしいろいろありますけれども、検討すべき点はそういうことではないかというふうに考えるわけです。お答えになったかどうかわかりませんが……。  それから第二点は、高度成長政策の行き詰まりをいつごろ感じたかという御質問でございますが、私は前々から、経済というのは、そう高度とか成長とか促進とか言わなくても成長するものだということを基本的に考えているわけでありまして、政策としていわゆる所得倍増計画というのが立てられて、その計画に沿って国の財政が行われるようになったあの段階で、すでにもう、こういう人為的な経済成長政策というのは、それはいつか行き詰まる、経済の生活力というものをもっと強めることが大事だと思う。そしてまた、方法にしましても、われわれ国民の生活に直接関連ある産業、あるいは放っておけば日陰に沈むような人たちの生活をめんどうを見る方面に支出を多くする、まあ購買力もそれによって高まるし、経済も成長する、こういう方向に変換していく、そういうのが政府の経済促進の政策の一つ考えております。こういうようなことでなければならないという考えで、もう四十年の、あるいは三十九年の不況のときに、こういう政策の行き詰まりは明らかである、こう感じたわけです。この間感じたわけではありません。いつからかということでありますと、まあ高度成長政策の行き詰まりあたりから行き詰まりを感じた。特に、いわゆる超高度成長政策というのが行われたときには、初めからこれはいずれ行き詰まるというふうに感じていたわけであります。  以上であります。
  68. 正示啓次郎

    ○正示委員長代理 どうもありがとうございました。  それでは、最後に小林進君。
  69. 小林進

    ○小林(進)委員 きょうはロッキードの問題でどうも走り回っておりまして、先生方の貴重な御意見を承る時間もなかったわけでありますが、板倉先生にはかねがね私は御質問申し上げたいと思っておりました。ここへ参りましたらお顔が見えましたので、ちょっと思いつきのようで悪いのでございますが、ひとつお教えをいただきたいと思うのであります。  それは、ほかでもございませんけれども——また、私は言葉が悪いのでございますけれども、ひとつ誤解のないように、腹はきれいな男でございまして、決して意地悪く申し上げているわけではございません。  ただ最近の、また政治献金を開始されるというようなことに関連をいたしまして、たしか昨年の秋かと思いますけれども、どうも銀行筋では、自由主義経済を守る政党には献金をするんだ、こういうようなことを理由にして献金を再開になったようでございますが、その後の経過はわかりません。あるいは五十億をお上げになったのか百億をお上げになったのかわかりませんけれども、ただそのときのお言葉の、自由主義経済を守るというその自由主義というのは一体どういうことを言うのかという疑問をちょっと私持ちましたものでありますから、自由主義経済を守るために政治献金をする、しからば自由主義経済というものの定義は一体何なのか、これは一つどうしても私はお教えをいただかなければならないと実はそのとき考えたわけでございまして、私どもが習いました自由主義経済というのは、あれは十九世紀の終わりでございますから少し古典的な定義になるかもしれませんけれども、原則としては、自由主義経済というものは国家権力と関係を持たない、国家権力の保護も受けないが、そのかわり国家権力の干渉も受けない、われわれ自由主義経済に携わる者は国家権力のらち外に置いてくれ、そして自由奔放にわれわれの経済活動をするのをひとつじゃまをしないでくれ、保護もしないでおいてくれ、これが自由主義経済の原則であるというふうに私どもは教え込まれてきたわけでございます。しかるに、今日の日本の経済を見ますると、その自由主義経済を守るとおっしゃる企業の方々も、現実は大変国家権力から保護を受けているじゃないか。一般国民よりも、あるいは庶民階級よりも、あるいは中小企業者よりも大変手厚い保護を受けている。しかしその反面には、やはりある程度国家の干渉も確かにあることも事実であります。政府権力が特に皆さん方の金融資本家に対して干渉していらっしゃることも私は認めざるを得ないのでありますけれども、それに幾十倍する大変な手厚い保護を受けておられる。だからこそ日本を離れた外国人は、一体日本企業、あれは日本株式会社だ、あのくらいの国家権力の保護を受ければ、どんな無能力な者でも事業をやれば成功することができるわいという、そういう一般の風評も海外からあることをしばしば私どもは耳にするのであります。  そういう実態の中でどうも皆さん方は、われわれは自由主義経済を守る、その自由主義経済を守るために政治献金もやるのだとおっしゃることは、何か私どもはどうも腑に落ちないものでございますから、そこでひとつ、決して私は意地悪で申し上げるのではありませんけれども、自由主義経済の定義をここでひとつお聞かせをいただきたいというのが第一問でございます。これは皆さん方の考えるいわゆる自由主義経済の定義であります。  それから第二問といたしまして、これは具体的な問題でありますけれども、もう中小企業者が、政府の失政と言いますとまた自民党の先生お怒りになるかもしれませんが、まあそういうことで大変破産、倒産で苦しんでいらっしゃるわけでございますが、この中小企業不況に対する銀行の仕打ちが、特に都市銀行、大変どうも仕打ちが冷たいのではないかという感じを受けるのでございまして、その冷たい仕打ちをよそに、他方に銀行は、言わずもがなでございますが、租税特別措置法により、貸し倒れ引当金などという大変手厚い保護を受けていらっしゃるわけでございます。なお、私どもの調査によれば、銀行がこの引当金等に類似する政府の特別保護を受けているものは十数種類あるのではないかと言われております。実は私、資料を持っているのでありますが、ここへ来てあなたの顔を見てひょっと質問に立ったものでありますから、資料をここまで持ってくるいとまもありませんでしたけれども、そのくらい手厚い保護を受けておいでになっている。特にその中でも、引当金だけを取り出してみても、従来は貸し出しの千分の十五であった、これが世論にだんだんはたかれて千分の八まで引き下げられてきたわけでございますが、まだ世論は承知をいたしておりません。そこで、大蔵省は今度これを千分の五まで引き下げようというふうな案をお持ちになっているということでございますけれども、これはまだ具体的に実施されたわけではございません。  そこで、現在この引当金の総額だけでも金融機関全体で二兆円以上になっているということをわれわれは聞いているわけでございますが、これは大変な恩典ではないか。この不況の中で手ぬらずで二兆円もの引当金をお持ちになっているということでありまして、とてもロッキードの三十億や五十億などスズメの涙みたいなものでございますが、これに対してどうも皆さん方は、これほど潤沢なものを手ぬらずでお持ちになっておりながら、一万件以上もばたりばたりと倒れていく中小企業者の方々のめんどうも見れない、損することはいやだと言ってこれを放任されていることは、私どもの言葉で言えば少し残酷過ぎるではないか、冷た過ぎるのではないかという感じを受けるのでありますが、この二点についてひとつ御答弁をいただきたいと思うのでございます。
  70. 板倉譲治

    ○板倉公述人 お答えいたします。  最初の政治献金の点でございますが、自由主義経済を守る政党に献金をするというふうにおまえは言って献金を始めたではないかというお言葉でございましたが、私、いままで自由主義経済を守る政党に献金をするというふうなことを申したことはないわけでございます。私は新聞記者などによく聞かれまして、非常に答えにくいことなんでございますが、なぜ政治献金をやるんだという質問に対しましては、私どもといたしましては、議会制民主主義を支えているのは政党である、政党がなくては国民の政治意思の結集はむずかしいのだ、したがいまして、そういう意味で議会制民主主義を支えておりますところの政党が健全に発展していくことに対して、銀行も社会的存在の一つでございますので、その社会的存在の一つとして応分の支援をしていくことは当然の務めではないかというふうにわれわれは思っておるのだ、こういうふうに私は答えてきておるわけでございます。したがいまして、自由主義経済を守る政党に限って献金をするのだというふうなことは、私はかつて申しておりません。  さて、しからば自由主義経済とは何かという御質問でございます。これは国家の干渉も保護もするな、自由に行動させてくれというのが自由主義経済ではないかという御趣旨でございますが、私も自由主義経済の当初の考え方はまさにそのとおりであると思います。したがいまして、私どもとしましても保護も干渉も欲しくないという根本理念を持っております。ただ、公益のために政府のいろいろな政策が金融機関に対して行われるということに対しまして、私どもそれを拒否するわけにはまいりませんので、そういう意味でできるだけ自由にさしていただきたいと願ってはおるわけでございますが、そういう政策に対しましては事情を考えて、公益上必要であるという考え方で受け入れをいたしておるわけでございます。  第一問に対するお答え、はなはだ至りませんが、一応それで終わらせていただきます。  それから、次が銀行の仕打ちが冷たいではないか、貸し倒れ引当金などで非常に手厚い保護を受けておるではないかということでございますが、貸し倒れ引当金と申しますのは、評価性引当金でありますと同時に、偶発的な損失に対する準備金という性格を持っておるわけでございます。従来貸し倒れ引当金は、高度成長の時代に現実の銀行の貸し倒れの実績は一万分の幾つしかなかったではないか、それなのに千分の十、今後は八に下がるわけでありますが、それまであるのは多過ぎるではないかという御批判であるかと思うわけでございますが、御承知のように、従来の日本経済は非常に順調に推移してまいりました。そういった関係で実際の貸し倒れは少なかったわけでございますが、しかし、長い歴史を見てみますと、いつ大きな貸し倒れ引当金を必要とするような時が来るかもわからない。やはりそういった偶発的な損失に備えるためにこれだけの引当金を認めていただいておるというふうに私どもは理解いたしております。これは戦前の話で恐縮でございますが、関東大震災のときあるいは昭和二、三年の金融恐慌のとき、このときの銀行の貸し倒れは両方とも千分の四十くらいに達しております。したがいまして、現在の千分の十とか千分の八とかいう比率は、やはり何かの大きな不幸が起こりましたときにはこれでは多過ぎるということではないのではなかろうかというふうに思っております。  現在、御承知のような非常に深刻な不況になっておりまして、私ども銀行といたしましても産業界、規模の大小を問わずあらゆる企業が無事にこの不況を乗り切っていただきたいというふうに念願いたしておりまして、その関係で銀行としてできる限りの救済融資を行っておるわけでございます。何とか救済融資で、現在は赤字が出ていても何とか持ちこたえて、この景気回復してその後順調に一本立ちになれるように持っていきたいということで努力をいたしている次第でございまして、決して中小企業に対しましてその意味で冷たい仕打ちをいたしておるということではないというふうにひとつ御理解をいただきたいと思うわけでございます。中小企業に対しましても、特に不況で困っておられる業種があるわけでございますね。そういう業種に属します中小企業の方は、決して自分の経営の失敗というようなことではなくて、やはり不況によって仕事の量が減って、それで赤字になっていっちゃっているというような業種があるわけでございます。したがいまして、その業種に属する企業はどこもここも皆同じように悪いというような業種もあるわけでございまして、そういうような業種に属します企業は、決して自分の責任で悪くなっているというふうには私ども考えておりません。したがいまして、そういった業種に対しましては中小企業特別融資制度というものも一昨年から発足させておりまして、金利も保証料込みでたしか八・九%、期間も三年という長期でございまして、一件当たり五千万という金額を、これは業界団体の御推薦ということになっていると思いますが、そういう御推薦のあった先に対しましては、銀行の貸し金の枠外で最優先的に取り扱うというふうにいたしておるわけでございます。そういった意味でいろいろ中小企業に対して御支援をいたしておるつもりでございますので、御了承いただきたいと存じます。  以上で終わります。
  71. 小林進

    ○小林(進)委員 板倉先生から二つの問題で御意見を拝聴いたしました。全部私は了承したわけではございませんけれども、せっかくどうも御高見を承るためにお呼びをいただいたお客さんに対して議論を吹っかけたのでは失礼でございますので、きょうはこれで終わることにいたしますが、後日またひとつ日を改めてお伺いいたしたいと存じます。ありがとうございました。
  72. 正示啓次郎

    ○正示委員長代理 以上で各公述人に対する質疑は終了いたしました。  この際、委員会を代表して、公述人各位にお礼を申し上げます。  本日は、長時間にわたりまして貴重な御意見をお述べいただき、まことにありがとうございました。厚く御礼申し上げます。  これにて公聴会は終了いたしました。  本日は、これにて散会いたします。     午後三時五十一分散会