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1976-02-07 第77回国会 衆議院 予算委員会公聴会 第1号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十一年二月七日(土曜日)     午前十時六分開議  出席委員    委員長 荒舩清十郎君    理事 井原 岸高君 理事 小山 長規君    理事 塩谷 一夫君 理事 正示啓次郎君    理事 山村新治郎君 理事 小林  進君    理事 楢崎弥之助君 理事 松本 善明君    理事 山田 太郎君       上村千一郎君    植木庚子郎君       大野 市郎君    奥野 誠亮君       櫻内 義雄君    瀬戸山三男君       田中 龍夫君    谷垣 專一君       藤井 勝志君    安宅 常彦君       阿部 昭吾君    阿部 助哉君       石野 久男君    田中 武夫君       多賀谷真稔君    堀  昌雄君       安井 吉典君    湯山  勇君       田代 文久君    林  百郎君       増本 一彦君    小濱 新次君       河村  勝君  出席公述人         大阪大学名誉教         授       木下 和夫君         出稼労働者   野尻  茂君         立教大学名誉教         授       藤田 武夫君         名古屋市立大学         教授      藤田  晴君         岡山県商工会連         合会会長    辻 弥兵衛君         東京都老人クラ         ブ連合会事務局         長       小林 文男君  出席政府委員         内閣官房副長官 海部 俊樹君         総理府総務副長         官       森  喜朗君         行政管理政務次         官       近藤 鉄雄君         北海道開発政務         次官      寺下 岩蔵君         防衛政務次官  加藤 陽三君         経済企画政務次         官       林  義郎君         環境政務次官  越智 伊平君         国土政務次官  野中 英二君         法務政務次官  中山 利生君         大蔵政務次官  唐沢俊二郎君         大蔵省主計局次         長       高橋  元君         大蔵省主計局次         長       松下 康雄君         文部政務次官  笠岡  喬君         農林政務次官  浜田 幸一君         通商産業政務次         官       綿貫 民輔君         運輸政務次官  佐藤 守良君         郵政政務次官  羽田  孜君         建設政務次官  村田敬次郎君         自治政務次官  奧田 敬和君  委員外出席者         予算委員会調査         室長      三樹 秀夫君     —————————————  委員の異動 二月七日  辞任         補欠選任   庄司 幸助君     増本 一彦君   正森 成二君     田代 文久君   矢野 絢也君     小浜 新次君 同日  辞任         補欠選任   小浜 新次君     矢野 絢也君     ————————————— 本日の公聴会意見を聞いた案件  昭和五十一年度一般会計予算  昭和五十一年度特別会計予算  昭和五十一年度政府関係機関予算      ————◇—————
  2. 荒舩清十郎

    ○荒舩委員長 これより会議を開きます。  昭和五十一年度一般会計予算昭和五十一年度特別会計予算及び昭和五十一年度政府関係機関予算、以上三案について公聴会を行います。  この際、御出席公述人各位にごあいさつ申し上げます。  本日は、公述人各位には御多用中にもかかわらず御出席をいただきまして、まことにありがとうございます。  各位の有益な御意見を拝聴いたしまして、今後の予算審議の上におきまして貴重な参考といたしたいと存じます。何とぞ昭和五十一年度予算に対しまして、それぞれの立場から忌憚のない御意見をお述べいただくようお願い申し上げます。  次に、御意見を承る順序を申し上げます。  ます木下和夫君、次に野尻茂君、次いで藤田武夫君、藤田晴君の順序で、お一人約二十分程度ずつ一通り御意見をお述べいただき、その後委員各位からの質疑がございますので、お答えを願いたいと存じます。  なお、藤田晴公述人は、都合により出席が少しおくれるということでございますから、御了承を願いたいと思います。  それでは、木下公述人お願いをいたします。
  3. 木下和夫

    木下公述人 それでは、御下命によりまして、昭和五十一年度政府予算案につきまして、公述人としての意見を申し述べます。     〔委員長退席井原委員長代理着席〕  明年度財政は、当面いたします不況からの脱出と、今後恐らく定着すると予想されます低成長への適応を図るという二つの困難な課題を持つと言わなければなりません。ところが、この二つ課題にこたえる財政政策内容は、必ずしも矛盾なく両立し得るものではないのであります。したがって、この二つ課題をどのように調整していくかという点に予算編成の最も大きな眼目があると思います。  このような観点から見まして、個々の点には問題がないわけではありませんが、全体としてはまず妥当な内容を示していると私は判断をいたします。  まず第一に、一般会計予算及び財政投融資計画規模は、前年度の当初予算に比べまして一四一%の伸びに抑えられております。この伸び率は、昭和四十年代の平均的な伸び率に比べますとかなり低いものとなっておりますが、政府経済見通し名目成長率一三%を上回っておりますし、また、公共事業費等投資的経費財源の重点的な配分を行っておりますし、景気刺激のねらいというものに沿うものと判断してよろしいと思います。しかし、問題はこれで景気回復が十分に財政によって主導され得るかという点にございます。そこで、執行面におきまして公共事業支出を上期に集中し、下期には公共事業予備費を機動的かつ弾力的に活用するという方法に期待をいたします。公共事業費規模は、予備費を加えますと約三兆六千八百億円になりまして、規模といたしましてはおおむね妥当であると思います。しかし、これがこのような方法によって景気浮揚を図るということを、今後ともこの種の公共事業に求めるということにはある程度問題が残っていようかと思います。なかんずく公共事業優先順位内容配分の問題を、今後はかなり厳重に検討して計画を立てる必要があるであろうと考えております。また、財政全体をさらに積極的に拡大せよ、あるいはこれに伴って減税も併用しろという意見がございますが、それはまさにインフレの再発と国際収支の悪化をもたらす可能性がきわめて大きいと思います。しかも、その上今後、望ましい成長軌道へ日本の経済を移行させていくのにも重大な支障を来すというふうに考えておりますので、これらの意見については賛成できません。  次に、公債金による収入が七兆二千億を超えるに至ったことは、全くやむを得ないことでございます。ただ、安易に公債による収入に頼っていくということは、国債費増高をもたらすばかりでなく、財政を著しく硬直化させることになります。したがって、可能な限り早く、少なくとも特例債への依存をなくするような努力が必要であります。五十一年度予算編成に当たって、公債依存度を約三〇%の線に置くということをめどとされたようでありますが、この数字には私は格別の意味はないと考えております。恐らくこの数字の背後には、今後数年の財政見通しを念頭に置いてこの程度の線が財政として可能な限度であるという判断に基づくものと推測をしております。  さらに、租税収入につきましては、財政現状から見て新規減税を行うことは困難であります。しかし、当面の経済情勢から見て一般的な増税を行うことも避けねばなりません。したがって、租税特別措置見直しに重点を置いた税制改正にとどまったことは、これもやむを得ないことと存じます。また、この改正景気対策に逆行するのだというような非難が、特に租税特別措置見直しについて議論されておりますが、今回の見直しでこのような非難を行うということは当たらない。むしろ今後、年を追って既得権化しつつある従来の制度合理化を行うべきであろうと思います。さらに、個人消費を刺激するという効果を期待して所得税大幅減税を主張する向きもございますが、現在の状況のもとで所得税減税を行うべき時期ではないと判断をいたします。また、一部には賃金上昇の幅を狭くすることの代償として減税を主張するというような意見もございますが、これにも賛成できません。  また、今後は自然増収を期待して補正予算編成するという従来の考え方は、恐らく捨てなければならなくなるでありましょう。また、予算の単年度主義というものも次第に崩れてくる傾向さえ見せております。したがって、長期とは申しませんが、せめて中期の財政運営の中で単年度予算をどのように位置づけるかということが、これからは大切になっていくのではないかと思います。この意味で、中期的に見てやむを得ない赤字額めどをつけるとともに税制改正方向づけを行って、また、公共事業費につきましても、この際、中期的な視野から優先順位をつけるということを試みることが必要であろうかと思います。  なお、公共料金等につきましては、費用と著しく乖離したままに長い間抑制をしておくという過去の政策に対して、私は重大な反省を促したいと思います。すなわち、それはまず価格機構にゆがみを与えます。また、財政負担一般的増高をもたらします。さらに、負担の公平を著しく阻害いたします。その結果、一時に大幅な引き上げをしなければならないという窮地に追い込まれます。今回の引き上げ案は、まさにその適切な例であると思うわけです。したがって、できるだけ早くコスト、費用との関連で適正な水準公共料金を是正することが必要でありまして、今回の引き上げは、受益者負担のあり方という観点から見まして妥当であると思います。ただ、引き上げ幅が非常に大きくなっておりますが、これは過去の抑制政策の誤りの結果と言わざるを得ません。なお、公共料金の適正な水準を決定する場合に、とりわけて事業経営体合理化や節約への経営努力が前提とされるべきことは申すまでもないところでございます。  そこで、歳出予算における個別問題につきまして、二点だけ意見を申し述べさしていただきます。  まず第一は、地方財政関連の問題でございますが、地方交付税交付金について、法定の三二%のほか臨時特例交付金の繰り入れ及び交付税特別会計に対する運用部資金からの借り入れが認められました。新年度地方財政は、これに地方債計画をもあわせて、国の地方に対する資金措置としては一応の評価をすべきものと考えております。ただ、昭和五十一年度には無理であるといたしましても、今後できるだけ早く国と地方を通じての行財政につきまして、過去三十年の地方制度運営経験を生かし、かなり大幅な制度改正が行われる必要があると存じております。また、国庫補助負担金につきましても、地方超過負担が発生しないように今後努力する必要がありますし、地方負担増加をもたらすような新規施策や、地方職員増加をもたらすような施策を国の立場としては抑制すべきであります。  第二点は、社会保障についてでございます。新年度予算におきましては、まだ全体として整合的な社会保障制度への接近という見地に立ちますと十分であるとは申せません。また、社会保障運営につきましても、現在のように非効率と不均衡というものが大きい場合、これを排除する努力が必要であると思います。また、社会保障に関する長期計画の策定がおくれておることもありまして、低成長経済のもとにおける福祉充実方向づけが明確に示されるとは思われません。しかし従来、高度成長のもとで福祉財源調達長期的な見通しが欠如したままであったわけでありますが、今回の予算では、受益者負担の原則が基本的な考え方一つとして明確に打ち出されたという点が特徴であろうと思います。  なお、医療保障制度の中心問題は、国民健康保険財政の改善と、これに関連する老人医療制度合理化であると思います。このうち、老人医療無料化のもたらした弊害は、最近数多く指摘されているところでございますが、問題は、老人医療政策を、老齢年金雇用の開発、老人福祉などと絡めて一括して検討すべき問題ではなかろうかということでございます。もちろん、合理的な自己負担の導入や所得制限検討というものが必要であることは強調しなければなりません。今後の方向といたしましては、老齢保障政策の中の一つの項目として、他の老人対策の問題と絡めて議論をしていただきたいと思うわけであります。  また、年金につきましては、改正される予定になっております厚生年金標準年金及び国民年金の十年年金につきましては、国際水準と比較いたしましても妥当だと判断をいたします。しかし、受給開始年齢格差の是正とか福祉年金所得制限検討などが見送られておりますので、今後に残された課題となったままでございます。  さらに、社会保障の基本というのはどこにあるかと申しますと、最低生活保障にあると考えます。したがって、現在のような医療年金に余りに偏向した福祉予算の構造には問題があると考えております。  最後に申し上げたい点は、今後、わが国が福祉国家への前進をさらに進めようといたしますとき、警戒すべき問題点についてであります。すなわち、公の手による福祉を充実させるということが、国民行政一般に対するニーズを誘発させながら、それに対応する費用を進んで負担しようという気持ちを必ずしも喚起していない、その結果、財政赤字が定着し、かつ赤字増高する可能性があるという事実。また、これと絡めまして、財政規模ないし公共部門の比重が不断に上昇を続ける、このことによって国民経済活動への意欲を減退させる可能性があるという事実。この事実の二点を強調したいわけであります。ここで私は、古典的な意味での安上がりの国家というものを主張しておるのではありません。公共部門への安易な依存傾向の深まりというものは、現在のいわゆる財政危機のもとで警告を発すべきまたとない機会であるということを申し述べたいわけであります。  以上で終わります。(拍手)
  4. 井原岸高

    井原委員長代理 どうもありがとうございました。  次に、野尻公述人お願いをいたします。
  5. 野尻茂

    野尻公述人 ただいま御指名いただきました野尻でございます。  私は、山形県西田川郡温海大字関川というまれな山村に五十アールの水田とわずかな山林を持って生活しているものでございます。そして現在は、横浜市のある建設会社に昨年十一月から冬型出かせぎ労務者として働いております。今回この場において、出かせぎ問題についていろいろ申し述べる機会を与えられましたことを心から感謝申し上げるとともに、浅学非才しかも口下手であることをまずもっておわび申し上げます。温海町と言えば、温泉あり、海あり、山の幸ありで、この上ない自然に恵まれた土地でありますが、私が住む部落は、海岸より十五キロ山の中に入っておりますので、いわゆる豪雪地帯でございます。この豪雪の中で、いま私の家の中には、妻が一人で寒さと吹雪の音におびえながら、出かせぎという二重生活のさみしさを味わいながら生活しております。このような生活は、私が出かせぎに出始めて以来十年も続いています。長男は三年前高校を出ると、千葉県のある製造会社に働き、年に二回ぐらい、わずかですが、仕送りをしてくれております。長女は五十キロ離れた鶴岡市に下宿し、高校に行っておりますが、やっと今年三月卒業できるまでにこぎつけました。  私は、農閑期である秋から春までは都市へ出かせぎに出ておりますが、農業経営面積も、後ほど申し上げるように非常に少ないため、やむなく危険ではありますが、山林でのチェーンソーによる伐採作業集運材作業をやっております。これもなまやさしい作業ではありませんが、せめて一年に半年ぐらいは家にいて、何とか円満な家庭生活を営みたいと一生懸命がんばっているわけです。この夏場仕事も、順調に働いて八十日間ぐらい、賃金は一日危険手当を含めまして四千円弱です。しかし、不況の波は木材界にも二、三年前から及び、特にパルプ材の暴落が著しく、工場着石当たり三千円余りもしたものが二千円にもならない状態ですから、山があっても買い手もなく、広葉樹を持った山主は宝の持ち腐れとも言うべき時代です。したがいまして、夏場の山仕事探しにも大変です。やっと仕事があっても、五十キロも車で通うことがしばしばです。妻は、五十アールの水田と少々の山林を管理し、それにたまに依頼されれば地元土建業に働きに出ております。私の農業経営は、わずか二十俵が政府売り渡し米で、あとはほとんど自家用だけです。そこで、何とか現金収入を得ようと果樹を取り入れてみましても、たとえば栗の木などを植えても、すぐに雪に折られてしまうような状態でうまくいきません。私の地域は、山菜豊庫と言われておりますが、雪の消えが非常に遅いために、半値になってから売るようになってしまいますので、山菜としての現金収入も多くは望めません。  そこで、私の生活具体的数字をもって申し上げますと、まず第一に、冬場の出かせぎ収入が、残業などその月によってばらつきますが、約四十万円から四十五万円、そして夏場山林での労働収入が三十万円、妻の土建業で働く収入が約十万円、長男仕送りが約二十万円、米その他の農業収入が三十万円、合計約百三十万円が私ども家族三人の一年間の生活費です。これで、出かせぎ収入がなければとても生活していけるものではないことは明らかだと思います。  私が住んでいます関川部落は、九〇%の水田基盤整備が終わりました。補助対象になったもの、あるいは融資だけのもの、また自己借り入れといろいろありますが、十アール当たり平均二十五万円が個人負担です。それに、山を切り開くためにやせ地であり肥料も倍近く入れないと収量は半分になり、とても採算は合いません。そして、開田から育苗設備、トラクターなどの農業用機械の購入による莫大な借金で苦しむ農家がほとんどです。この借金を返して生活を守るために、やむを得ず出かせぎに出ざるを得ないのです。関川部落は戸数五十四戸ですが、出かせぎ者は五十一人、そのほか通年型出かせぎが二人、平均一戸から一人出ていることになり、冬場は男の姿は全く見かけられないのです。子供老人のさびしい部落になってしまいます。  なぜにかくも多数の出かせぎを出さなければならないのでしょうか。それはさきにも述べましたが、第一に農業経営の零細さでありますが、第二はいつかは農業もきっとよくなるだろうと金をかけ過ぎて借金に追われていること、第三は十一月の中旬から雪のため全く交通が麻痺するような過疎の状態に置かれていることが原因と思います。町まで出るには、夏場バスを利用していますが、バスも十一月中旬からはとまります。しかも赤字路線という理由で来年からは全面廃止するとのことなので、私ども会社側に何とかいままでどおり運行してほしいと猛運動を起こしております。このバス路線廃止は、ます第一に子供たち通学に直接影響いたします。現在小学生は夏場バスに乗って本校に通っていますが、冬場は、交通手段がないため冬期分校で何とか教育機会を得ています。また中学生は冬期寄宿舎に入って勉強しておりますが、バス廃止になりますと、全く通学手段がなくなるので、父母の大きな心配の種となっています。  また、教育面だけでなく、他町村に仕事があるとしても通勤できるものではありません。部落の中で何とか仕事を見つけようにも何の仕事も残されていないのです。もし冬期間、家にいるとしたら収入は全くゼロです。昔の出かせぎをしないで生活を支えてきたものは雪ぞりによる木材搬出と木炭の生産、それにナメコ好景気時代でありましたが、石油使用などの燃料革命ナメコの栽培の規模が小さいため、一たまりもなく押しつぶされてしまいました。  幸いにして一昨年秋、関係各省の御理解により県道が国道三百四十五号線に昇格されました。部落民はどんなに喜んだことか。しかし、現実は除雪もしないで、一台の雪上車五人乗りが隣部落まで一日二往復、とぼとぼ走っている現状であります。国道改修こそ私の部落のみならず周辺部落の命運がかかっておると考えていますので、早期解決お願い申し上げる次第でございます。  現在よりもっと悪い生活でもよいから年間を通して家にいたい、これが私たちの願いでありますが、しかし現在の不況のあらしの中では、よりよい生活をするための出かせぎではなく、借金を返し生命を守るための最低生活をする出かせぎに変わりました。私は昨年までは三年間、千葉県のある製造会社で働いてきました。そこでは比較的安定した賃金を得ておりましたところ、一昨年の正月過ぎから残業カットが始まり、契約の八十時間がゼロまでになってしまい、何とかみんな話し合いした結果、三十時間だけは確保されたという、厳しい出かせぎの経験を持っております。そして今年はなお厳しいとの世論のように、製造会社は全然就業できず、三年間行っておりました製造会社からも求人はなく、やむを得ず昨年から同郷の友人四、五人が働いた現在の建設会社にやっと就業できることができました。しかし賃金は昨年並みとの約束でしたが、いざ支払われてみたら、八%も安いのです。一般の予想からして、悪く見て賃金は据え置きぐらいと判断していたのが間違っていたようです。しかも一方的に会費だけは一日当たり五十円も値上げされました。このような異常な事態に百五、六十人の出かせぎ者の人々はがっくりしてしまいました。製造会社の出かせぎの経験を持つ私は、建設業仕事はきつく、しかも危険度も高い土木業であり、宿舎設備も悪く、私はがっかりしました。と申しましても、現在では他の仕事も手おくれであり、雇用保険の適用の問題もあるので、なかなか現在の就労先を切りかえることはできません。  しかし出かせぎ者の中には、まだまだ悪い例も数多くあります。私と同じ部落人たち正月前は十日ぐらいしか就労できずに帰され、お正月過ぎは二十日過ぎでなければ就労できない例も出てきています。不況とはこんなに厳しいものでしょうか。不況のしわ寄せは、全部と言っていいほどわれわれ出かせぎ者にのしかかってきています。だが、われわれ出かせぎ者は、長い間の出かせぎによって、大都市のビルも建てました。下水道工事もやりました。道路もよくしてやりました。私たち出かせぎ者の果たしてきた役割り社会にとってりっぱなものだと思っております。  どうしても出かせぎしなければ生活していけない私たちは、この機会に次のことをぜひ実現するよう要望いたします。  まず第一に、出かせぎをしないで済む農林漁業政策を立てていただくとともに、出かせぎ者が地元で正当な収入が得られるよう、全国一律最低賃金制を確立し、地場産業を育成していただくとともに、賃金労働条件地域格差の解消を図るなど、適正な就労機会が得られるよう総合的な政策を確立してください。  また五十一年度予算には、現に出かせぎに出ている者に対する予算はゼロと言ってもいいと思います。そこで出かせぎ者の安全衛生管理の徹底とともに、労災法を大幅に改正休業補償は現行の六割から十割に、遺族年金も八から十割に引き上げていただきたい。職場、宿舎において生活環境作業環境と関係ある死亡は労災法を適用していただくとともに、弔慰金事業主負担の義務づけをしていただきたい。  また建設業に横行している賃金不払いを根絶するため、特に、同一職種の重層下請の禁止、ピンばね、もぐり業者の一掃を行い、賃金不払いの元請業者の立てかえ払い制度を徹底させていただくとともに、また建設業附属寄宿舎規程を完全に守らせていただき、これを法制化していただきたい。  次に、職業安定所は失業保険給付の窓口規制及び就労強制はやめていただきたい。また、就労あっせんをする際、求人側に対する調査を十分行うとともに、地方においては出かせぎ者の受け取る保険金より低い賃金しか支払わないような事業所には紹介しないなど、責任あるあっせんを行ってください。また、求人申告と違う事業所、労働関係諸法、規則などに違反している事業所には絶対あっせんを行わないでください。また、就労、年末帰郷、離職時の旅費、忌引帰郷旅費、支度金、退職金の支給を事業主に義務づけするとともに、最低一ヵ月一日以上の有給休暇と忌引有給休暇を与えるよう制度化していただきたい。  以上をもちまして、私の公述を終わらせていただきますが、ただいま申し上げたことをぜひ国政の場に反映させていただき、出かせぎ者が安心して就労できるよう特段の御配慮をお願い申し上げる次第でございます。  どうもありがとうございました。(拍手)
  6. 井原岸高

    井原委員長代理 どうもありがとうございました。  次に、藤田武夫公述人お願いをいたします。
  7. 藤田武夫

    藤田(武)公述人 藤田でございます。  私は、新年度予算その他につきまして、地方財政の面から意見を述べてもらいたい、そういう要請を受けましたので、ここでお話しすることは、地方財政の面からの新年度予算の問題ということに限りたいと思います。そうして、地方財政の面からと申しましてもかなり問題が多いので、非常に時間が限られておりますので、一応三点にしぼりたいと思います。  一つ地方財政危機対策の問題、それから公共事業費の増大と地方負担の問題、第三は地方債の問題。もし時間があれば、国、地方を通じての高負担の問題ということに触れたいと思いますが、これはまた時間の関係で調整したいと思います。  まず第一に、地方財政危機対策の問題であります。  御承知のように地方財政は非常な危機に見舞われておりまして、昭和五十年度に約二兆四千億円の財源不足を生じた。それで、五十年の秋に、御承知のように国の補正予算で手当てをしたのですが、それは、地方交付税特別会計が資金運用部から一兆一千二百億円を借り入れる。それから地方債を増発して、それで一兆二千六百億円、その他わずかな手当てをして過ごしたわけであります。ところが、五十一年度予算並びに三日ばかり前に発表された地方財政計画によりますと、地方財源不足額は二兆六千二百億円に上る。それに対する政府の対策は、交付税特別会計が資金運用部から一兆三千百億円借り入れる。そして地方団体の借金である地方債で一兆二千五百億円を見る。ほかに一般会計から臨時地方特例交付金六百億円を交付する。こういうことで一応対策を立てたわけであります。  しかし、以上述べたことで明らかなように、全く借金による急場しのぎのびほう措置であります。これは決して危機対策などと言えるものではありません。これはもちろん政府の方でも十分認識していられると思うのですが、こういう状態では、昨年とことしの交付税特別会計の借入金がこの二年だけで二兆四千三百億、地方債の増発、不足財源のための手当てが二兆五千百億、こういうことになるわけで、これはいずれも借金であります。  これから低成長で、そうでなくても地方財政運営の困難なときに、この借金が、早いのは五十三年度からツケが回ってくる、こういう状態なんで、この場合、何としてもこれは政府でも国会でもよく考えていただいて、今後の低成長下において地方財政の基本対策を確立する必要がある。これは先ほど木下公述人もお触れになった点でありますが、それについて一体どういう対策を立てなければならないか、これは非常に広範にわたるので、短い時間に申し上げられませんが、ごく方向だけ申し上げておくと、一つは、いままで高度成長になれ、税収入が大幅にあった時代になれた地方自治体側の安易な財政運営、そういうものに反省を加える必要もありましょう。しかし、それにはおのずから狭い限界があります。したがって、もっと抜本的な対策を立てる必要があるので、一つは、国と地方の間の行政事務の再配分を断行する。これは昔から言われているのですが、終戦後になっても、新憲法や地方自治法では地方自治体はいかにも自治権が強いようですが、実際はそうではないので、機関委任事務とかいろんな形で行政権が中央に握られている。そういうことを改めて、国と地方の行政事務を再配分して、そしてそれに伴って法人税、所得税、そういうものの一部を地方へ移譲する。  ちょっと例を申し上げますと、今日、法人と個人にかかる所得課税の七一%が国に入っています。府県は一七%、市町村はわずかに一二%、こういう状態。それから一方、国から地方団体がもらっているいわゆる依存財源というものが、地方債の国の引き受け分を含めますと、五十一年度には四九・五%、五〇%にもなる。こういうことでは、国の財政が左前になるとすぐに地方財政が窮迫する。また、地方団体としても国に大きくおんぶしておれば財政運営が無責任になる。そういうことをやめて、もっとこの所得税あるいは法人税を地方へ移譲して、よく言われるように、現在は税金の収入の七割が国で三割が地方だ、これをせめて五対五ぐらいにしていく。その前にもちろん行政事務の再配分が行われなければならない。これが一つ。  それから、もう一つ地方交付税。今度ずいぶん借金をしてやっと当面を糊塗していますが、これは今後低成長下では十分に交付税の組織を再検討する必要がある。これは理想的に言えば、前の地方財政平衡交付金に復帰した方がいいのですが、この交付税の再検討、そして、できれば低成長下にも貧弱な地方団体の十分な行政ができるように再検討する必要がある。  それともう一つ申し上げておきたいことは、今度の予算全体を通じて見ても、公共投資については非常に重視されておりますが、社会福祉関係——これも苦しい財政のうちで、ある程度の手当てはされています。しかし、従来の伸びに比べると非常に伸びが落ちている。したがって、今後、いま言ったような基本的な方向において、財政対策、地方財政対策を講ずる場合には、昔の高度成長の産業中心型の財政ではなくて、人間中心の、福祉重視型の財政というものを考えていただきたい。そのために、所得税、法人税の地方移譲も必要になるということであります。  それから、第二の問題に入りますが、何しろ今度の予算景気浮揚策ということが中心になって、公共事業費は三兆六千八百億円。これは公共事業予備費を含めてですが、非常に伸びている。前年度に比べて二六・四%伸びている。四十九年、五十年は財政需要抑制策によって伸びはほとんどゼロであった。  こういうふうに公共事業費は非常に増大したのですが、その内容を少し見てみますと、住宅関係の二三%、下水道その他の生活環境施設の一三%といったような伸びが見られますが、しかし、こういうものも昨年に比べると落ちている。一方、道路とか港湾とか農業基盤、そういうものはかなり大幅に伸びている。そして事業費全体で見ますと、道路、港湾、産業基盤、そういった産業基盤関係の事業費が全体の公共事業費の五四%、生活基盤関係のものは二一%の比重である。この比重は昨年度より落ちております。こういうことでいいのかどうか。いまの内閣も非常に生活基盤、社会福祉ということを強調して成立した内閣ですが、公共事業景気浮揚策をとるのはいいにしても、その内容を十分検討する必要がある、昔の高度成長型になってはいけない、そういうふうに思います。  それから、この公共事業費に伴う地方負担の問題でありますが、公共事業の補助率というのは、平均しますと大体大まかに三分の二であります。したがって、三分の一は地方負担を伴う。だから、三兆七千億もありますと、大体一兆二千億ぐらいは地方がかぶらなきゃいけないということであります。ところが、地方が御承知のような財源難でもってこの公共事業を消化できない。すでに五十年度予算で、東京、三重、広島等で一部が返上されております。地方の単独事業、これは補助金のない仕事ですが、これは今度の新しい地方財政計画で二一%の増を見込んでいます。しかし、これについては私は疑問を持つわけで、五十年十二月現在で地方の単独事業は、前の年の同じ時期、これは総需要抑制策が行われた、抑えられた時期ですが、それに比較して九・二%も減っている。つまり地方自治体は財源難で、国から補助金の来るものはまだやっていけるが、単独事業はできない。それを一二%の増を見込むということは、私は疑問を持つわけであります。  こういうふうに見てきますと、公共事業費を増大して景気浮揚策を進めていくといっても、それの三分の一を負担する地方団体で公共事業が実施できないということであると、これはせっかくの景気浮揚策もしり抜けになるということであります。この点、公共事業費の増大に伴って地方負担のめんどうをどうするか。もっぱら借金で賄うということにも問題があると思います。  それで、第三番目の地方債増発の問題に移ります。  新年度予算並びに地方財政計画で見ますと、一般会計の地方債の額は、財源不足債を含めまして約二兆九千二百億、前年度の二倍を上回っております。そして歳入の地方債への依存率は昨年の五・九%から一一・五%と非常に依存率がふえている。これは戦後最高であります。その上に交付税会計で借り入れている借入金を加えますと、一七%の伸びになるという状態であります。そのために五十一年度公債費だけでも一兆四千億円地方団体は支払わなければならない。これは明らかに今後地方財政の硬直化の大きな原因になります。したがって、現在では公共事業をやるにしても、財政危機の手当てにしてももっぱら借金公債で埋めておりますが、こういう政策は基本的に再検討する必要がある。  さらに、この地方債の消化の問題でありますが、五十一年度地方債計画によりますと、全体で四兆八千億円。前年度に比べて六九%の増であります。しかも、その資金源を見ますと、政府資金が一兆四千二百億円で三〇%に満たない。昨年も一昨年も政府資金が六〇%であった。半分に減っている。そして全体の六割が民間資金、約二兆八千億円が民間資金で賄わなければならない。特に縁故資金が二兆四千億を超えておる、こういう状態であります。ところが一方御承知のように、国債は七兆二千七百五十億円発行する。その他政府保証債、いろいろ加えますと、公共債は地方債を含めてこの新しい年度に約十五兆円発行しなければいけない。こういうことが果たして消化されるかどうか。  現在、この縁故債の大部分を引き受けている地方銀行の状態を見ますと、地方銀行の地方債引受見込み額は来年度六〇%ふえるだろう。ところが、預金の増加額はせいぜい見積もって二二%だ。しかも、この秋口からは企業も回復するだろうから、その資金手当てが必要になるということで、肝心の縁故債の引受手である地方銀行が悲鳴を上げている状態であります。  こういうことになると、どうしてもこの企業の要求する資金需要も賄う、公債も発行するということになると、通貨の増発になる、インフレーションになるというわけであります。現に二、三日前の新聞にも出ていましたが、日銀の公債保有率が四年前の九倍になっている。五十年末の総発行残の四四・六%まで日銀が抱え込んでいる。こういうことでは、これはまた再び物価暴騰をいざなうわけであります。そうかといって、もし地方債が消化されないと、地方財政は完全にパンクするわけであります。パンクしてしまえば公共事業もできない、景気の浮揚も困難になるというわけであります。  これに対して、自治大臣と大蔵大臣が国で協力して消化に努力するという申し合わせをしているようであります。こういうことは、前例によりますと、大蔵省が金融機関に対して通達を出して協力を要請する、そういうことでありますが、こういうことで果たしてこの巨額の地方債が消化できるかどうか。もし消化できなければ、地方財政借金に大きく頼っているだけに完全に破産をするというわけであります。  もう時間が来たようでありますので、まだいろいろ述べたいこともありますが、一応これで終わります。(拍手)
  8. 井原岸高

    井原委員長代理 どうもありがとうございました。  次に、藤田晴公述人お願いをいたします。
  9. 藤田晴

    藤田(晴)公述人 名古屋市立大学の藤田でございます。  五十一年度政府予算案についての私の意見を申し上げます。  五十一年度におけるわが国の経済政策の緊急の課題は、言うまでもないことでありますが、景気の着実な浮揚を図りまして、一日も早く日本経済の活力を取り戻すことであります。それと並んで重視しなければならない中期的な政策課題があります。その課題と申しますのは、今後の政策運営の目標となります福祉優先型経済の構図を明らかにいたしまして、日本経済景気浮揚過程を通じまして、新しい安定成長路線への誘導を図るということであります。  このような考え方をとりますならば、五十一年度予算編成当たりましては、次の三点に留意することが特に重要であると思われます。  まず第一は、財政主導型の景気回復を可能にするような総需要刺激効果を予算に織り込むということであります。  第二は、減速経済下で達成できる福祉政策の総合的なプログラムを明確にいたしまして、その実現の第一歩となるように予算案を編成するということであります。  そして第三は、減速経済に対応した福祉財政システムの確立を目標としまして、財政体質の強化を図ることであります。  以上、三つの課題が重要であるということは政府自身も認識しておられるところでありまして、「昭和五十一年度予算編成方針」の前文を見ますと、「国民生活経済の安定及び国民福祉の充実に配意しつつ、財政の改善合理化を図るとともに、景気の着実な回復に資するための施策を実施する」このように述べられております。  そこで、以下におきましては、いま申し上げました三つの点を基準にいたしまして、五十一年度政府予算案を評価してみたいと思います。  まず景気政策観点から見た場合でありますが、五十一年度予算案は、財政主導型の景気回復を保証するような積極策を持つことが望ましいものであります。その理由は、すでに多くの専門家が指摘しておられるところでありますが、五十  一年度には民間需要の大幅な伸びを期待することはむずかしいという点にあります。すなわち、民間の設備投資及び在庫投資が強力な景気浮揚力を発揮する可能性はほとんどありませんし、実質民間消費の伸び率もそれほど大きくないと予想されます。もちろん第四次不況対策の効果は今後次第にあらわれてくることが期待できましょうし、輸出及び民間の住宅建設の伸び率は相当高くなる可能性があります。しかし、企業の設備稼働率を比較的速やかに正常な水準まで高めるためには、なお強力な需要喚起策が必要であると推定されます。  ところが、残念ながら五十一年度予算案は強力な需要拡大効果を発揮することが期待できるようなものではないと思われます。  その理由は、まず第一に、一般会計予算及び財政投融資の伸び率がともに約一四%であるということであります。この値は、新経済計画の概案で予定されております名目GNPの平均増加率一三%強でありますが、それとほとんど同じであります。新計画におきましては、公共支出の平均的な伸び率を名目GNPの伸び率よりも高くいたしまして、公共支出のGNPに対する比率を計画期間中に相当引き上げることが予定されております。したがって、一四%という予算増加率は、正常な経済情勢のもとにおきましてもやや低目ではないかと思われる程度のものであります。  第二の理由は、実質個人消費支出の伸び率を抑制するような効果を持つ幾つかの措置が実施されようとしておることであります。すなわち、所得税減税を見送りました上に、若干の増税措置がとられておりますし、さらに各種の公共料金の大幅改定が予定されており、社会保険料の料率も引き上げられようとしておるということであります。  第三の理由は、一般会計の公共事業関係費は、五十年度当初予算と比較すれば高い伸び率を示しておりますが、地方財源の強化策が必ずしも十分でありませんために、地方の公共投資特に単独事業の不振が足を引っ張るおそれがあるということであります。また仮に、地方財政支出が政府の見込みどおりに伸びたといたしましても、国民所得勘定ベースの政府財貨サービス購入の増加率は一三・三%と推定されております。これは、新経済計画が予定しております名目GNPの平均成長率と同じ程度のものにすぎないわけであります。  以上のような理由から、五十一年度予算の需要刺激効果は、それほど強力なものではないと推測されます。そこで、公共投資支出などをできるだけ促進するという配慮が必要であります。また、民間の住宅建設と地方の公共投資を刺激するために、住宅金融公庫の融資枠を拡大するとか、あるいは地方公共事業の補助率を一時的に引き上げるというような追加措置をとることも考慮に値すると思われます。さらに、個人消費伸び政府の見込みどおりにいかないという最悪の事態が予想されます場合には、福祉年金の給付水準引き上げであるとかあるいは所得税の年内減税のような消費需要刺激措置を検討すべきであります。この場合、短期的にはもちろん国家財政赤字が一層拡大するわけでありますが、景気の早期回復を図るためにはこれもやむを得ないと考えます。  次に、第二の問題の検討に入ります。それは、今後の福祉政策のあり方につきましての長期的かつ総合的な展望を基礎にしまして歳出内容が決定されているかどうかという問題であります。  この点に関しまして、国民は五十一年度予算案に大きな期待を寄せてもよい理由があったと思われます。その一つは、今回の予算案が新経済計画の第一年次のものであるということであります。もう一つは、三木総理が、いわゆるライフサイクル構想の実現に強い熱意を持っておられると伝えられていたということであります。  ところが、五十一年度予算案の内容を見ますと、残念ながら福祉政策についての明確な長期展望を踏まえまして予算案が編成されておるという印象は受けないのであります。たとえば、年金政策に関しましては、原則といたしましてすべての老齢者に対して年金最低生活保障すべきだ、こういう考え方が今日有力になっております。ところが、予算案における福祉年金引き上げ率は一二・五%にすぎないものでありました。これは名目GNPの予想成長率よりも多少低い値であります。そして厚生年金は、モデルケースにおきましては九万円の水準に改められておりますが、これに対しまして福祉年金は、夫婦で二万七千円にすぎないという状況であります。これでは、公的年金の充実につきまして政府がどのような長期方針を持っているのか判断に苦しみます。いわゆる国民基礎年金の構想をできるだけ早く具体化しまして、最低年金を思い切って引き上げることを検討すべきであります。  次に、医療保障に関しましては、医療供給体制の整備が最大の急務でありますし、また、保険料や一般財政負担による医療費の公的な保障は、入院その他の高額の医療に最も重点を置くべきであります。さらに、社会的公正の見地から見まして、各種の医療保険の間に現在存在する給付面の格差を速やかに是正する必要があると思われます。これらの点に関しまして五十一年度予算案を検討してみますと、まず医療供給体制の整備が予算上次第に優遇されるようになってきたということは認められますが、医療関係の予算の大部分が医療保険の補助、特に国民健康保険の助成に充当されるというこれまでの傾向は、依然として基本的には変わっておりません。次に、医療費の保障の重点化に関しましては、むしろこれと逆行するというような印象を受ける点もあります。すなわち、入院時における差額ベッドや付添看護料の問題が非常に重要でありますが、これは一向に解決されないままでありまして、入院費の一部自己負担額が大幅に引き上げられ、さらに高額療養費の自己負担限度が引き上げられておりまして、これらの個人負担を増大させることによって、保険財政の健全化を図ろうというような方向が目立っております。また、各種の医療保険の間の給付格差の是正に関しましても、今回は別に対策は考えられておらないわけであります。  以上で指摘しました幾つかの医療保障に関する問題点は、すべて医療保険制度の抜本的な改革につきまして長期的な視野に立った思い切った構想が準備されておらないというところから生じたものであります。  今回の経済計画の策定に当たりましては、五十一年度予算案の決定に先立って、新計画の概案と公共投資の概案を取りまとめまして、これらを予算案に反映させよう、こういう新しい工夫が行われております。それにもかかわらず、五十一年度予算案が、福祉政策についての長期展望を欠くものとなったのはなぜでありましょうか。それは新経済計画の概案それ自体が、福祉政策についての総合的かつ具体的なプログラムをほとんど含んでいないためであります。もちろん、経済計画の策定作業はまだ終わったわけではありませんから、今後の努力に期待すべきであります。しかし、計画期間中における公共投資の総額と、それからその部門別配分は、実質的にすでに決定されております。このような決定を行う前に、社会保障、文教、住宅、生活環境の整備に関する政策プログラムの内容をもっと十分に検討すべきであったと思われます。  最後に、減速経済に対応した財政体質の強化という観点から五十一年度予算案を検討してみたいと思います。  減速経済という新しい環境条件のもとで、国民福祉の向上を目指す財政運営を成功させるということは、もちろんきわめて困難な課題であります。そのためには、一方につきましては政府支出の効率化、重点化を積極的に推進する必要があります。他方におきましては伸長性に富んだ福祉財源の確保に努力する必要があります。  これらのうち、政府支出の効率化、重点化が、深刻な財政危機のもとにおきまして特に急務であることは言うまでもないことであります。この点は五十一年度の子算編成方針でも認められておりまして、たとえば各省庁部局や特殊法人の新設は行わない、あるいは公務員の増加を抑制する、そういう対策が挙げられております。しかしながら、五十一年度予算案でとられました効率化のための措置には、重大な二つの問題があるように思われます。その一つは、行財政制度それ自体を、政策目的を有効に達成するための手段として弾力的に変革していくという姿勢に欠けておることであります。もう一つは、長期的な視野に立つ総合的な計画に基づきまして、政府支出の重点主義的な再配分を行うという方式がとられておらないことであります。  たとえば、先ほど触れました医療保障に関しましては、この分野に投入されている巨額の財政資金の効率を高めることが急務であります。そのためには医療保険財政財源のプール化ということと、保険料率の適正化が必要であります。それによりまして医療保険に対する補助を大幅に削減いたしまして、同時に医療供給体制の整備には思い切った資金量を投入する、これが望ましいやり方であると思われます。ところが、医療保険関係の制度改革を避けようといたしましたために、対症療法的な医療費の自己負担引き上げであるとか、あるいは保険料率の引き上げというような措置が中心にならざるを得なかったわけであります。また、たとえば公立高校の大増設が急務であるということは広く認められておるところでありました。ところが、これにつきましては、比較的わずかな補助金しか計上されておらないという状況でありますが、これなども政府支出の重点主義的な再配分が不徹底であるということの一例であるように思われます。  次に、福祉政策財源確保に関しましては、当面のところはもちろん公債の大量発行に依存せざるを得ないわけであります。しかし、長期的に見ますならば、経常財源を強化することによりまして公債依存度を引き下げるべきであります。そのためには租税、社会保険料、料金手数料、公債などをすべて考慮に入れました上で、幾つかの代替的な長期的な財源強化策を立案いたしまして、国民の選択を求めることが望ましいと思われます。また、負担増加について国民の合意を得ようとする以上は、総合的な福祉プログラムについての構想、特に社会保障長期計画を明確にすべきであります。つまり、政府が昨日提出いたしました「中期財政展望」をもっと具体化するということが必要であるというわけであります。  公債政策に関しましては、安易な公債依存はもとより慎むべきであります。しかし、現在の高い個人貯蓄率が続く限りは、国民貯蓄を福祉社会の建設のため活用するという姿勢が必要であります。したがって、国債の安定的な大量消化体制を確立することが急務であります。その観点から見て特に重要であると思われますのは、割引国債の創設などの手段によりまして国債の種類を多様化することと、国債の販売及び換金の窓口を拡大するということによって、個人の国債消化を強力に推進することであります。また、国債管理政策の面におきましては、国債利子負担の増大を避けようとして経済安定を犠牲にするような結果にならないように、特に留意する必要があると思われます。  以上におきまして、私は三つの観点から政府予算案検討したわけでありますが、全体としての印象を一言で申しますならば、厳しい財源不足問題に対する応急的な対応策に追われて、福祉政策に関する長期的な展望を欠く予算案だということであります。  日本経済は現在大きな転換期に直面しておりますが、これに対応して財政運営態度も脱皮を迫られております。すでに申し上げましたように、財政収支いずれの面におきましても、今後は長期的な視野に立つ計画化を一層重視いたしまして、経済計画予算案との統合性を確保することが大切であります。また、支出面では、特に社会保障に関する長期計画を確立するということが急務であります。収入面におきましては、経常財源の強化策の立案を急ぐ必要があります。財政当局は、これらの点に十分配慮されまして、減速経済に対応した福祉財政システムが確立されることを期待いたしまして、意見表明を終わらせていただきます。(拍手)
  10. 井原岸高

    井原委員長代理 どうもありがとうございました。     —————————————
  11. 井原岸高

    井原委員長代理 これより各公述人に対する質疑に入ります。  質疑は、お一人十分間でお願いいたします。奥野誠亮君。
  12. 奥野誠亮

    ○奥野委員 木下教授と立教の藤田教授に一言ずつお尋ねをいたしたいと思います。  木下教授は、現在の政府提出予算案を是認しながら、将来方向についていろいろ御示唆をいただいたわけでございます。歳出面につきましても、原価と離れた価格をいつまでも続けるべきでないという御示唆や、あるいは社会保障につきまして、最低生活保障を中心にして行うべきである等々のお話がございました。そういうことで、歳出の姿も変わってくるわけでございますけれども、また歳入の問題につきましては、特例法の依存度を少なくしていくべきだ、これは当然のことだと思います。歳出のあり方によって歳入も変わっていくわけでありますが、私は私なりに、将来やはりもろもろの政策を行って、いくためにある程度の租税負担増加を決意せざるを得ないのではないかという気持ちを持っている一人でございます。そうであるとしますならば、それだけに国民の合意が得られますように、時間をかけて努力をしていかなければならない、こう考えているものでございます。  そういう意味で、租税負担の今後の姿、どうお考えになっているかということが一つと、それにつきまして、わが国の租税負担のあり方は所得課税に非常に重点が移っていっているわけでございまして、アメリカ型の租税収入になっているわけでございます。収入に着目する、あるいは流通過程に着目する、あるいは消費過程に着目する、そういうことで考えてまいりますと、流通過程に着目する租税収入はわが国では少ないわけでありますけれども、この租税負担のあり方、将来どういう点に着目していくことが妥当とお考えになっているか、この二つについてお考えを伺っておきたいと思います。
  13. 木下和夫

    木下公述人 ただいまのお話でございますが、奥野先生御指摘のように、将来の租税負担増は不可避の傾向でございまして、特に国、地方をあわせて中期的な見通しを立てます場合に、恐らく、大ざっぱな見当ではございますけれども、現在の負担率よりも三ポイント程度上昇ということは、国民皆納得してくれるのではないかと思っております。もちろん、その反対側に行政のサービスの充実ということが当然あってしかるべきでありますが、諸外国ではもう福祉行政は結構で税を下げてくれという状況に入った国もございますけれども、まだわが国はそこまで達していないという意味で、ここしばらくの間は租税負担増加はやむを得ないことという点につきましては、御意見に全く同意いたします。  次は中身の問題でございますが、いま御指摘の、わが国の租税構造が国及び地方を通じて所得課税中心という性格を持っておりますことは、おっしゃるとおりでございますが、先ほど藤田名誉教授の御意見では、地方にも所得課税をもう少し国から譲与と申しますか、せよというような御意見がございました。ただいまの奥野先生の御意見は、むしろ所得課税中心になり過ぎで、流通や消費のプロセスに課税をするような税目を考えてはいかがかというように私理解をしたわけなんでございますが、この辺の考え方につきましては幾つかの理屈があろうかと思います。国税、地方税を通じまして所得課税中心あるいは資産課税というものをそれにわき役として伴いながら、直接税中心とでも申しますか、そういう税が、税のあり方としては負担の公平あるいは経済に対する影響、その他、納税者の個人的事情をしんしゃくする場合にやりやすいとか等々の長所があることは否定できない事実でございまして、私ども理屈ばかりこね回しております人間から申しますと、やはり直接税中心主義の税体系というのが一番望ましいんだと思います。しかし、現実の税制の仕組みを考えます場合には、納税者の納税意識とかあるいは社会的風土とか、あるいは行政面で一体そういう税が、理想ではあっても適実に執行できるか等々の問題があろうかと思いますが、その点でむしろ、国、地方の全体の税制の中で、アングロサクソン的と申しますか、英米的な税制をいままでとってきたわけでございますが、これには長所もございました、自然増収の幅が大きい、あるいは不況の場合には自然減収が大きいという、長所、短所があったわけでございますが、今後は長期的に考えます場合には、私は余りに直接税、所得税依存するような税体系はわが国の環境には不適であろうというふうに思っております。同じような議論は国についても地方についても適用できますので、これをどのように仕組んでいくかは今後の問題だと思います。
  14. 奥野誠亮

    ○奥野委員 藤田教授にお伺いしたいと思います。  私も地方財政のいまの姿について大変疑問を持っておる一人でございますから、御主張よくわかるわけでございます。いろいろおっしゃった中で、行政事務の再配分、なかなか言うべくして行いがたいことでございますけれども、具体的に財政に響く問題として何を頭に描いておられるのか、それを伺いたいわけでございます。戦後の改革の中で、国と地方のあり方という点につきましては、相互に責任の所在を明確にする、これが私は非常に大切なことだと思うのでございます。そういう意味で、一たびは思い切って補助金の整理が行われ、地方財政平衡交付金制度が生まれたわけでございますけれども、今日では補助金がどんどんふえまして、改革前の補助金のあり方よりもふえているのじゃないか、私はこう思っておるわけでございます。名古屋市立大学の藤田教授も、補助金を高校増設などについてもっと大幅にしろなどというお話がございましたけれども、私は補助金制度に非常に疑問を抱いている人間でございます。その中で、行政事務の再配分、それに見合った税源の再配分を御指摘になったわけでございまして、そういう方向をたどれるなら非常に望ましい。しかし、なかなか言うべくして行いがたい、こんな心配を持っておるものでございます。そういう意味で具体的に御指摘をいただきたいな、かように考えたわけでございます。  ただ、お話しになりました中で、法人及び所得の課税、これは国が七一で地方が二九だというお話がございましたが、私はやはり、三二%は地方交付税に向けられているわけでありますから、これもあわせて論じないと少し誤解を招くのじゃないかという心配を持っている一人でございます。同時にまた、所得課税を地方に移しますと大都市に非常に集中してくるわけでございますので、これまた独立税のままで所得課税の移譲ということになりますと大変問題が起こるのじゃないかな、こういう心配も持っておりますが、いや、おれはそんなことは考えていないんだ、こんな方向で考えているんだ、恐らく藤田教授はそういうお考えもあろうかと思いますので、私のその疑問にもあわせ答えながらお話しいただければ幸せだと思います。
  15. 藤田武夫

    藤田(武)公述人 終戦後ずっと地方財政の専門家でいられる奥野先生からの御質問なので……。  それで、第一は行政事務の再配分の問題であります。いま御指摘のように、これはもう明治以来の懸案で、日本の行政機構全体にかかわる問題で、簡単には解決しないかと思いますが、今日の地方財政の非常な危機、ことに低成長下ではやはりそれに手を触れないでは財源措置の問題、公債の問題もなかなか解決しないのじゃないかと思うのです。その場合に、端的に申しますと、社会福祉とかあるいは保健衛生、そういった住民の生活に非常に身近な行政はなるたけ地方へ回す。そしてそれについては、いま御指摘があったように、なるたけそれを裏づける補助金をつけるということは  この補助行政というのはいろいろな欠陥がありますので、まあ超過負担だけでなくて、中央統制が強化されるとか、いろいろな問題があるので、なるたけ補助金は抑えるような方向で考える。実は、そのことも含めて法人税、所得税地方移譲というようなことも申し上げたわけですが、さしあたり、いま申しましたように、住民の生活に身近な保健衛生、広い意味の保健衛生、生活基盤、下水道、清掃というものも含めてですね、それから社会福祉関係、そういったものは地方へ移譲する方がいいのではないか。そして、住民と密着してきめの細かい行政を行うということがいいのではないか。  それから二番目の問題ですが、所得税、法人税の三二%が実際土地方へ来ているので、それを含めて考えなければということなんですが、もちろん税金の収入の計算の上ではそうなります。しかし、国で取っている所得税、法人税というのは、国税として国の租税政策なり、国が税率を上下するとか、そういった形て——自治省あたりでは固有の財源だとは言っていますが、それは国が徴税をして、国の租税政策で税率を決めたり、そういうことをやっているわけではないので、地方へ一部を譲与して、地方が自主的にやる場合とはやはり関係が違うのではないか、そういうふうに思います。  それから、法人税、所得税地方へ譲与すると裕福な団体には非常に集中する、それもお話しのとおりでありますが、そういう意味を考えて、先ほど私が申しましたように、地方交付税を前の地方財政平衡交付金のような様式で、つまり所得税、法人税あるいは酒税の三二%というような枠をはめないで、平衡交付金式にやっていく。そして交付団体は、法人税、所得税の移譲によってもちろん減ってくると思いますが、それについては十分な、やはり基準財政需要を充足できるような交付税——これは交付税の構造の問題で、技術的にいろいろ問題があると思いますが、そういうふうに持っていくべきだ、そのように考えております。
  16. 井原岸高

    井原委員長代理 湯山勇君。
  17. 湯山勇

    ○湯山委員 野尻さんにお伺いいしたいと思います。  非常に具体的に、今日の不況のしわ寄せを自分のはだ身で感じておられる方で、公述を拝聴していろいろ感ずるところがございました。そういう点、具体的なことをお尋ねいたしたいのですが、御公述では、出かせぎ、それから農業収入等を合わせて年収百三十万程度だということでございましたが、所得全体として非常に低い感じがいたします。それに今度はまた住民税が上がってくる。それから国保税が上がってくる。国保については三割の負担をしなければならないということや、諸物価、公共料金等が上がってくるというようなことを考えますと、百三十万で一体どの程度生活ができておるのか、あるいは非常に備えての預貯金等をする余裕がおありになるのかどうか。収入の方は大変詳しく御説明いただいたのですけれども、支出についてはどういう状態なのか、ひとつその辺のことをお聞かせ願いたいのと、それから、大変極端なことを申し上げますが、条件の整っていないところへは紹介しないようにしてもらいたいという御意見がございました。今日、職場が非常に狭くなって、それへも行けない人も出ているということですが、そういうふうに条件を厳しくすればするほど出かせぎの就労先は少なくなってくる。いよいよ、ぎりぎり出かせぎがなくなったら、一体どういうことになるとお考えなのでしょうか。それは生活できないと言えばそれまででしょうが、そうじゃなくて、そのときにはどうやって切り抜けていくというのか。具体的にそういうことをどうしているということがあれば、これも簡単にお述べいただきたいと思います。  第二番目にお尋ねいたしたいのは、条件が非常に厳しくなって、賃金が約束よりも低かったということでしたが、これは賃金だけじゃなくて食費も高くなってきている。そのほか、宿舎の条件も悪いということでした。私も行ってみましたところが、夜は裸電球一つで、これじゃ新聞も見えないでしょう、テレビはどうなんですかと言ったら、テレビもない、われわれは金もうけに来ているのであって、新聞を読みに来たり、テレビを見に来たりしたのじゃないから、とにかくしんぼうするのだということでしたが、それらの点は一体どうなのでしょう。そして、そういう場合に、現在あなたの行っておられる職場では、こういうことを改めてほしいと言って使用者側と交渉ができる体制なのかどうなのか。それから、交渉しても聞き入れられないという場合に、栗林さんがやっておられる全国出稼組合というのがございますね、そこなんかへは、いまのようないろいろな悪い条件について連絡をとるあるいは協力を求めるというようなことをしていらっしゃるかどうか、これが第二点です。  第三点は、いまバス路線廃止になるとか、社会機能の問題にお触れになっていらっしゃいました。バス路線の問題とかあるいは教育の問題とか医療の問題、これは非常に重要な問題ですが、それらのいずれもが脅威を受けているということです。  バス路線については、生活路線は国も八十億ばかりの補助を出しますし、融資も特別な窓口をつくってそういうところに融資もする。それから陸運局長等があっせんして借り入れの手伝いもするということなんですが、これについて、県とかそういう行政機関があなた方の陳情にタッチしておるかどうかということ。  それから教育では、問題は冬の分校ですけれども、これはどれぐらいの子供を何人くらいの先生がやっておる分校なのか。教育では、やはり一年生、二年生、複式はできるだけやらないようにしようというので、三個学年以上の複式はやってはならない、つまり二年、二つの学年以内でなければならないということになっていますし、特に一年生のいる場合には、他の複式は二十名以上ですけれども、一年生のいる場合はたしか十二名以上はいけない。これは教育の条件なんで、その冬の半年間の分校というのが非常にそういう条件が悪いとすれば、これはまた別途考えなければ問題があるかと思いますのでその辺がどうなっているか。  ついでに医療のことは、お医者さんがあるのか、ないのか。そういう場合にはどうするのかというようなこともおわかりでしたら、ひとつ具体的にお述べをいただきたいと思います。
  18. 野尻茂

    野尻公述人 それではお答えいたします。  うちの支出面の点から申し上げますと、いま高校生が一人おりますので、下宿費その他小遣い合わせまして一ヵ月三万円と見込んでおります。生活費の方は子供もいないので、私と妻だけなので、相当かかりますけれども、これも一人一ヵ月三万円ぐらいに切り詰めようじゃないか、そのように思っております。  それから、さっきも申し上げましたとおり基盤整備なるものをやっておりますので、農業機械それから税金、光熱費、交際その他のことなどについては、やはり三十万から五十万円の生活費が必要であります。五反歩の基盤整備を行いましたが、ただいまとしてはほとんど赤字になっております。  以上で、大ざっぱでございますけれども支出の方を終わらせていただきまして、次に、非常に厳しい質問でございますけれども、出かせぎがもしなくなった場合、あなたはどうしますか、このような問題で非常に厳しいのでございますが、これはどうしても現在の状態では出かせぎしなければ生活はできないような状態になっております。したがいまして、生活の糸口は出かせぎである。ですから、出かせぎというものをもしなくしたならば生活はできないし、はっきり言って死になさい、このように私は考えておりますので、その場合、都市に移住したら、こういう問題にもなりますけれども、なかなかそれができる段階にはないので、出かせぎがなかったならば生活は絶対できない、かように考えております。  次の問題であります。現在働いている会社の内容についでありますけれども賃金は基本給が三千八百円から四千五十円となっております。これは鶴岡の安定所に出されている賃金であります。しかしながら、安定所に出しておったものも知らないで、社長との電話連絡によって、大体昨年並みと思って来てくださいと、何回もそのような返事をもらったので、昨年並みと思って来たわけでありますけれども、最高が四千五十円なので、これを三千八百円にされますと残業分を含めて四百何十円不足してしまいます。それで八%の減となっております。  次に、宿舎についてでありますが、これは私も三年間は千葉県の会社、その前は川崎の製造会社におりましたけれども、余りにも土建業宿舎が悪い。トイレ、洗面所、そうしたものがなっていない。それから光熱というもの、暖房というものが全然ございません。電気コンロ六百ワットぐらいは黙認しておるわけでありますが、電気も昨年度までは螢光灯二つけておったそうでございますけれども、ことしは一本に減らしてしまった。ですから、新聞を読むのにも、私が原稿を書くにも非常にまいってしまった、そのようなわけであります。  また、食費について一日五十円ことし値上がりをいたしましたが、これは前もって通知があったわけであります。これは五百円で非常に安い。その点が会社の言い逃れの一つになろうと思います。  それから、賃金が安いので交渉ができますかという問いでございますけれども、大体安定所に三千八百円から四千五十円、そのように出しておったものを私たちが知らないものですから、法に触れるところが全然ない、ただ口約束の昨年並み、これが大きな間違いであって、私たちもいろいろ考えて、それじゃ別のところへ行こうじゃないかと話してみましたけれども、まあがまんして現在いるわけであります。  次の点、関川には冬期分校というものがあります。夏分は全然生徒が住んでいないので、バスがとまる十一月の中旬から一年生から六年生までが冬期分校生として、はっきりした数字を私、時間がないので調べてみませんけれども、大体十二、三人ぐらいか十五人いると思いますけれども、先生は二人ぐらいのはずです。中学生は、六キロ離れた部落に寄宿舎がございまして、そこに泊まっているわけであります。したがいまして、中学生のあるうちは、出かせぎはお父さん、子供は寄宿舎、母さんはうちと三重生活をしているようなわけで、非常にお金もかかる、かように考えております。これも道路整備によっては、スクールバスでもあれば解決できる問題だと私は考えております。  それから医療の問題であります。これは一番の問題点でありますけれども、さっき申し上げましたように、雪上車が一台あります。六キロ離れたところに医師がおりまして、電話で連絡し、役場の係の人にお話しいたしますと、その雪上車の人が動いてくれます。それで先生を雪上車に乗っけてきてくれまして、注射なり薬などいただいております。それで、もし急病人が出た場合は雪上車で運んでおります。  以上、終わります。
  19. 井原岸高

    井原委員長代理 時間がないから簡単に願います。
  20. 湯山勇

    ○湯山委員 大変よくわかりました。  それはほっておけない問題だということを痛感いたしますが、もう一つお尋ねした中で残ったのは、栗林さんなんかがやっておる出稼組合ですね。これと連絡をおとりになるようなことをしていらっしゃらないかどうか。このことが落ちたようですから、その点だけ。
  21. 野尻茂

    野尻公述人 私も、庄内出稼組合に加入しておりますので、そのような契約違反の場合はすぐ連絡をとってやっているけれども、何分にも電話連絡という最悪の口約束なので、これは何ともしようがない。それで、安定所で提出したものをもっと早く見るべきだった。来る前の日に安定所に行って、このところに就職しますのでと、こういうふうに言ってきたら、三千八百円から四千五十円だった。もう手おくれであったので、法にも触れるようなことが全然ありませんので話をしてありません。
  22. 湯山勇

    ○湯山委員 終わります。
  23. 井原岸高

    井原委員長代理 安井吉典君。
  24. 安井吉典

    ○安井委員 奥野委員のまねをするわけではありませんが、大阪の木下先生と立教の藤田先生にひとつ伺いたいと思います。  租税の今後のあり方について考えてみますと、いまの租税制度は、現実の社会財政需要に充てていくというたてまえなんですけれども公債政策にのめり込んでしまったこれから先の税制のあり方は、その年における財政需要を賄うというだけじゃなしに、過去の借金返しという要素が非常に強くなってくるわけです。たとえば国は、ことし七兆円の借金を発行するわけでありますけれども、しかしそのうち一兆四千億円は、もうすでにことしじゅうの償還財源に充てていかなければいけないというのですから、これから先行きそういう状況が深まってきます。ですから、その際に大切なのは、それを国民が税負担という形でする場合に、負担の公正さというのが非常に強い要請になってくるのではなかろうか。いまでも交際費だとか広告費の問題やら租税特別措置やらたくさんの問題が取り上げられて不公正さが言われています。それが将来においてまた付加価値税というふうな悪平等な税制ができて、不公正さを増すような仕組みで将来の税負担が拡大されていくということになると、私は大変ではなかろうかと思います。ですから今日、それからまた今日から将来にかけて、税の公正負担という側面が非常に強く要請されてくるのではなかろうかと思います。その点についてのお考えを伺いたいのが一つ。それから、時間がありませんので続けて藤田先生への分を伺っておきたいと思うのですが、先ほどの公述をお聞きいたしておりまして、私がここでこの間総括質問の中で、地方財政の問題を取り上げた問題意識と全く同一です。ですからその点は繰り返しませんが、一つは先ほど奥野委員が言われました将来の行政並びに税、財政の再配分の問題です。  行政の方はおきまして、行政事務の再配分というものがきちっとなければならぬのでありますけれども、それによって財政の再配分のあり方も変わってくると思いますが、ことしの地方交付税は国税三税の三二%の税率を上げろと私たちは口を酸っぱくして主張したり、社会党は社会党で対案を出したりしたのですけれども、それはだめだと言った。ところが、実際は三二%分で足りないものですから、それで借金をし、あるいは特別交付金のような名目で入れたりして、三税ベースに計算しますと、たしか四三%を上回る額が交付税という形で交付税特別会計に入れられて、それで支給になるわけですよ。だからもう三税の三二%でなければいけないなどという主張は根拠がなくなってしまった、私はそう思わざるを得ないわけです。そこで五十二年度以降はこんなことにはいかぬわけですから、政府の方も何らか対策を立てる、こう言っております。したがって、暦年の五十一年中にやはりきちっとした対応策を立てて、それが明年度の通常国会できちっと決まっていく、こういうところまでいかなければいかぬので、いままさに重大な時期に来ていると思います。そういう意味地方財源のあり方はやはり主体的には税だと思いますね。それからもう一つ交付税、この二つが重要な財源措置であるということは、もうだれしも認めるわけなんですけれども、その割合をどう置くかということが私は非常に重大になってくるのではなかろうかと思います。政令都市までが交付税をもらわなければならないというふうな事態、あるいはまた都道府県も、神奈川県も交付団体に脱落いたしましたし、実質的に言えば東京都でも不交付団体でなくなってきているのではないかと思うのですけれども、自治省はメンツにかけても東京を交付団体に落とすことはできません、こう言っているようであります。だからそういう意味で優先的に地方税をがっちり、国税の一部を地方に割る形でやって、それによってどうしても生ずるでこぼこの是正やら、先ほど野尻さんのお話がありましたような、農村に行きましたら、税金を幾ら上げたって、税源がないわけですから、これはやはり交付税に頼らざるを得ない。ですから私は、少なくも政令都市が全部交付税を受けなくてもいいくらいなところまで地方税を拡大をしていく、それからその残りは地方交付税で財源措置をしていく、こういうような形で、国と地方が半々くらいな行政も財政も責任を持つ、こういうところまでいかなければいけない、こう思うのでありますが、その点についてのお考えをひとつ伺いたいと思います。
  25. 井原岸高

    井原委員長代理 まことに恐縮でございますが、時間の関係もございますので、公述人各位におかれましては、質疑の要点をつかんでいただきまして、簡潔にお答えくださいますよう、重ねてお願いを申し上げます。
  26. 木下和夫

    木下公述人 安井先生の御質問に簡単にお答えいたします。  先ほど御指摘の問題点は、まさにそのとおりでございますが、私は、今後の税収が過去の借金返しであると否とを問わず、常に税制の中心的な目標は、課税の負担の公平にあるべきだと思います。ただ、公平とか公正といいます場合に、実はこれはかなり主観的な概念でございまして、なかなか皆さんの一致した客観的な同意というのが得にくいということと、それから第二には、御指摘ございました特別措置などの問題から言えば、公正とか公平は、やはり税の終局的負担者である個人と個人の間の問題として考えるべきであって、法人と個人とをかけ渡しをして公平であるとかなんとかいうような議論はできないであろう、こう思っております。  それから、将来付加価値税などを導入するという機運があるが、それが不公正の拡大になるというような御意見でございますが、私はたびたび現地に参りまして付加価値税の実態を見てまいったわけでございますが、少なくともECの諸国では、これが社会全体としての非常な不公平な税という印象は受けませんでした。ただ、公平につきましては、同じ経済的な状態にある人には同じ税をということが一つの公平の意味だと思いますが、それからまた出てきます議論は、所得の異なる人にはまた異なる税を負担さすべきである、特に累進課税などの議論というものが出てまいります。その前者の方の、同じ経済状態にある人には同じ税負担という趣旨は、私は付加価値税は少なくとも合致するというふうに思っております。ただわが国でも、先ほども奥野先生の御質問にお答えしましたように、できるなら私は所得税中心の税制が根幹をなすのが望ましいと思いますけれども、果たして現実に執行上あるいは納税風土上、それが適実に行われておるかということになると、若干危惧する点がございます。したがいまして、よく申されますように、納税者番号制度というのは社会の管理化を招くとか、個人のプライバシーを侵害するというような御反対がございますけれども、これをひとつ考慮していただきますれば、私は所得税でもうまくいき得る可能性があると思います。しかし、それはだめだということであるならば、やむを得ず消費課税の一番望ましい、欠陥の少ない形態を考えなければならない、そういう選択の問題だと思います。  以上でございます。
  27. 藤田武夫

    藤田(武)公述人 要点だけを委員長さんからの御注意もありますので簡単にお答えします。  いま安井先生からお話がありましたように、私の公述でおわかりかと思いますが、基本的には所得税、法人税を一部を地方へ移譲することによって地方の自主財源をまず強化する。そして強化しても、お話のように貧弱団体では、府県でも市町村でもやっていけない。それで、一方で交付税をつける。いまは逆でもありませんが、かなり交付税の比重は高い。そういう体制に持っていくということはこれは私も全く賛成であります。しかし、その五対五にするといっても一挙にそうはいかないんで、やはりそれの経過過程として、たとえば道府県民税というのは御承知のように個人の所得割りはいま二段階の百五十万以下百分の二、それ以上百分の四というような、もう非常に古い時代の、百五十万以上は全部比例税率、そういうことはおかしいんで、これは前は道府県民税は累進税率であったんですが、それを累進税率にする。あるいは市町村民税の累進税率ももっと引き上げる。あるいは法人住民税などの制限税率、標準税率をもっと引き上げるとか、そういうふうに一歩一歩その方向に固めていく、そういうことがまあさしあたりは問題だと思います。しかし目標は、先ほど申しましたような五対五ということであります。  それから地方交付税の問題ですが、いまも御指摘がありましたように、五十年度も五十一年度も、とにかく地方交付税特別会計が一兆何千億という借金をしてやっと交付税の役割りを果たしている。これは明らかに現在の交付税というものの仕組みの破産であります。そう言っていいと思う。したがって、一方で税源を地方へ移譲すれば、交付税は特定の税金に結びつけないで、特に変動の激しい所得税だとか法人税だとか酒税に結びつけないで、前の平衡交付金のように下から積み上げたものを交付する、そういう仕組みに持っていく。まあ積み上げの仕方にもいろいろ社会福祉中心とか、改造すべき点はありますが、とにかくそういうふうに持っていくべきで、この際、地方交付税の根本的な再検討が必要である。そうでなければ野尻さんのお話のような、地方の農村の事情もなかなか救われない、そういうふうに思います。
  28. 井原岸高

    井原委員長代理 阿部昭吾君。
  29. 阿部昭吾

    阿部(昭)委員 野尻公述人にお伺いをいたします。時間がございませんので、三点ほど簡単にお伺いいたします。  一つは、税金の問題ですが、しばしば私どもも非常な不合理ではないかと思いますのは、出かせぎによる所得、これと野尻さんの場合で言いますると、五十アール程度農業経営、これにわずかばかりの山森、年収、出かせぎ所得を含めて百三十万ということでありますから、税金問題は余り問題には感じていらっしゃらないかもしれません。しかし、この出かせぎ所得と、小なりといえども農業所得が機械的に合算されて課税されておる。この問題について、最近農村の出かせぎは、比較的二ヘクタールあるいは二・五ヘクタール、三ヘクタール程度の専業農家の皆さんもほとんど出かせぎに出なければならぬという状況になっておる。そういたしますと、この出かせぎ所得を機械的に一〇〇%農業所得と合算をして課税をするということにいろいろな不満を私ども聞くのでありますが、野尻公述人、その点のことについて、出かせぎをなさっておる仲間の皆さんでどういう御意見を持っていらっしゃるか、お聞かせをいただきたい。  それから第二、御案内のように昨年の四月一日より従来の失業保険制度雇用保険制度に変わりました。従来は家族と別れて半年間の出かせぎをいたしますれば九十日間の失業保険給付をされておったわけであります。今度雇用保険制度になりまして、五十日一時金の保険給付ということに変わった。これもずいぶん私どもいろいろな議論を聞くことがございますが、このことに対する野尻公述人の御意見を伺いたい。  三番目に、私ども、五十一年度のこの予算の中におきましても、野尻公述人が立っておられる農山村現状に対して、どれだけわれわれが国の政策の中でこたえたであろうかという反省をいつでも厳しく持っておるのでありますけれども、いま予算内容は別といたしまして、出かせぎという立場野尻公述人が一番の関心を持っておられる問題は一体何か、一番痛感されておる問題点は一体何か、このことをぜひお聞かせをいただきたいというふうに思います。
  30. 野尻茂

    野尻公述人 それでは、簡単にお答えいたします。  その課税については、私が先ほどから申しましたとおり規模が小さいので、私には余り関心はございませんけれども、いろいろ税金について不満を言う人がずいぶんおります。私も実はその不合理というものについて考えておりますけれども、出かせぎというものは非常に苦しい、非常に労力を費やして得ている金額であります。それがもし家内、家族、親類に不幸があった場合、一週間なり十日なり、しかも高い旅費をもってくにへ帰ってこなければなりません。一律に四十万とか五十万というのがはっきりわからないのであります。しかしながら、出かせぎに行くと幾ら、そのようなわけなので、規模の比較的大きい農家では出かせぎ収入と合わせまして莫大な税金を課せられるわけでありますので、これを何とか大幅に控除してもらえないものでしょうか、かように考えております。  第二点でありますが、いままでは半年以上働きますと九十日の保険金がもらえました。しかしながら、今度は一時金で五十日分であります。これは考え方としては、仕事があった場合はすぐ就職できるという非常に強さがあるけれども、現在の農村においては全然仕事がないので、これはもう収入減というものがはっきりしております。したがいまして、私は要望いたしますけれども、どうしても前の九十日に戻してもらいたい。そしてしかも一時金で九十日もらえないでしょうか。そのような改正を私はお願いしたいと考えております。  第三点の私に対する現在の関心は何かという問題でありますが、非常にむずかしいけれども、これから先というものはどんなものになるのだろうか。出かせぎは出てきたけれども帰される、物価は上がるけれども賃金は下げられる、非常に将来に期待が持てないわけであります。そして雇用保険が五十日になったり、いろいろ私たち出かせぎをしている、これは指導者にとっては関心の高い問題であろうと思います。また私たちもだんだん年をとります。これから先どうなるのだろうか。一体、出かせぎもできないし仕事もなくなる、そうした場合、全くまいってしまうわけで、村で農業やほかの仕事で家族そろって暮らせるような政策がないものだろうか。それには農業政策並びに山村政策をぜひ新しくつくってもらいたい、かように考えております。  以上、簡単でございますが終わります。
  31. 井原岸高

    井原委員長代理 石野久男君。午後の公聴会の予定もございますので、質疑の持ち時間は、まことに済みませんが、答弁を含めて十分間ということで御了承願います。
  32. 石野久男

    ○石野委員 時間の関係がありますので、きわめて簡単に野尻公述人一つ聞きます。  それは、ただいまもお話がありましたが、とにかくあなたのところでは五十四戸のうち五十一人が出かせぎに出ておって、あとまた三人出てくるということで、一戸で一人ずつ出る。それで出かせぎの場所での問題もさることながら、残された村の問題、そこでの問題が非常に重大。一つは過疎の問題があるのだと思いますけれども、こういうふうにして外へ出ているあなたにとりまして、そういうふうに全戸から出かせぎが出て、残ったのは奥さんと子供だけだ。こういうふうなときのいわゆるその郷里のあり方の問題、そういうふうなことで皆さんがよりよりいろいろ話ししていることがあるだろうと思うのです。その点についてどうあるべきかというようなことで皆さんがいろいろ話し合いしているようなこと、そしてそれをことしの予算などにぶっつけて、どういうような御希望があるかというようなことをひとつお聞かせいただきたい。  それからもう一つは、藤田武夫公述人にお聞きしますけれども、とにかく地方財政の基本対策を確立すべきだということで交付税の再検討をしなさい、する必要があるというお話がありました。この点は、先ほどからお話もありますけれども、非常に問題提起としてはみなお互いに持っているところですけれども、端的にことしあたりではどういうふうにすべきであろうかというようなこと。  それから藤田晴先生は、国債の安定的消化のため個人の消化を促進しろというお話をなさっておりました。それには窓口を広げたりなんかというお話もありましたけれども、果たしてことしそれができる可能性があってのお話なんだろうかどうだろうかということについてお聞かせいただきたいと思います。
  33. 野尻茂

    野尻公述人 お答えいたします。  ただいま先生の申し上げましたとおり五十四戸中五十一人の出かせぎ、通年型が三人、一人ずつの平均でありますが、部落行政においても非常に行き詰まっております。というのは、役員が十二名おりますけれども、七名ぐらいまでは出かせぎに出ております。しかしながら経済的な問題もありますので、一応御相談その他には帰らなくてもいい、かような申し合わせをいたしておりますので、会長は若いにしても、その他は六十歳以上の人が二、三人で部落運営をいたしております。それで出かせぎを励ます会とかそんなものをつくろうじゃないかとかあちゃん連中が考えておりますし、私も明るい出かせぎをするためには電話なり手紙なりをやり合おうじゃないかと有線で放送してきましたけれども、なかなかさみしい、本当に過疎的な部落でありますので、どうしたら明るくなるか見当がつかないようであります。  以上であります。
  34. 藤田武夫

    藤田(武)公述人 簡単にお答えします。  私の基本的な考えは、先ほどから二回ばかりお話ししたのでおわかりいただいたと思いますが、いま交付税だけの御質問ですね。  交付税の問題ですが、これは基本的には先ほど申しましたように昔の平衡交付金に持っていって、特定の税の何%というふうにしないで、下から積み上げていった基準財政需要と収入の不足を埋め合わす、こういう方向が一番いいと思うのですが、いまお話しのようにいまどうすればいいかということになりますと、そういう抜本的な改革というものはなかなか、ことに国の財源の乏しいときにかなりむずかしいと思うのですが、せめて、これはもう本当の経過措置ですが、地方交付税の繰入率を三二%というのを、二%でもあるいは三%でも引き上げるということがことしの問題としては一応必要ではないかと思います。四十一年度の御承知の財政危機の場合には、交付税を二九・五%から二・五%引き上げて現在の三二%にしたのですが、そういうこともありますので、一応の経過措置としてはそうする。しかしそれは、やはり不況が続きますとどうしても所得税、法人税、酒税が低下するので、交付税は十分には計上されない、だからこれはもう少なくとも五十二年度からは、私が申しましたような方向に向かって根本的にひとつ検討をしていただくと……。
  35. 藤田晴

    藤田(晴)公述人 国債発行についての長期的な見通しというのは非常にむずかしいものでありますが、五十年代の前半には非常に大量の国債が出されることは、これは必至であるということがほぼ確実に見通される状況であります。昨日大蔵省から提出されました中期の財政展望を見ましてもこの点は明らかでありまして、相当な増税をやるとしましても、なお大量の国債発行と相当高度の国債依存度ということが予想されるわけであります。したがって、現在必要なのは国債の大量にして安定的な消化体制を確立することでありますから、そのような観点から、ぜひとも個人消化を促進する措置を強力に推進しなければならないと思っております。  ただ、現実の問題としましては、割引国債に関する経緯もございますし、本年度に関しては非常にむずかしいと思いますが、いま必要なのは金融の流れを基本的に変えることでありますから、金融秩序を乱すというような反対論に基づいて、従来どおりの国債消化体制でいこうということは非常に無理があるということを強調したいと思います。
  36. 井原岸高

  37. 増本一彦

    増本委員 時間がございませんので、野尻さんはひとつ逆境の中でもがんばっていただきたいと思います。  それで、木下先生にひとつお伺いします。  先ほどのお話ですと、所得税減税を見送ったのもやむを得ない、それから公共料金の値上げもいまの時点でやむを得ない、こういうお話でしたけれども、しかし、この不況下で、やはり国民負担増が一層強まるという事実は一方では否定することができないと思います。所得税減税見送りによる実質増が六千億を超えるということでありますし、それから国鉄、電電公社の両方の値上げでも一兆円を超えますし、さらに国民健康保険料の値上げ等々含めますと、どう見ても、ことし一年間三兆円近い公共料金その他の実質的な負担増になる。こういう状況のもとで、いま一つは、国民の消費を刺激して購買力を拡大することによって、下から景気の回復ということを図るべきではないか。実際に経済の実情を見てみましても、この予算での、政府の消費である公共事業、これを進める、あるいは輸出を進めるということだけでの最終需要の喚起ということだけで、いまのこういう景気の状態を浮揚させるということは、きわめて至難ではないだろうか。だからこそ、国民消費支出を伸ばすとか、あるいは購買力をもっとつけるというような面で、特別の手だてというものが必要ではないだろうか。そういう関連から見て、所得税減税の見送りとか、あるいは公共料金のこうした今日この瞬間での大幅な引き上げというものが、実際には予算あるいはこれからの財政経済運営一つの重要な柱そのものにブレーキをかけるからという、マイナスの影響もきわめて大きくなるのではないかということを非常に痛切に感ずるわけですが、その点での先生の御見解をひとつ伺っておきたい。  それから、特にこうした公共料金の大幅な値上げがこれからの物価の押し上げ要因にもなっていくということは、これはもう非常に指摘されてきている点ですが、そういう点から見ても、今後の景気の動向という点でも非常に大きな問題になる。その点では先生はどうお考えなのかという点についてお伺いしておきたい。  それから地方財政の問題で一点だけですが、藤田立教大学の先生にお願いしますが、この公共事業政府がやっていますが、しかしやはり、地方財政の裏負担は結局十分な手当てがとれないとか、あるいは自主的に単独の公共事業をふやしていくという点でも地方自治体は非常に困難に見舞われている。一方では、私は、いまの時点で一つ地方交付税率の引き上げ、それからもう一つ超過負担の解消、この二つが今日この時点では地方財政の危機対策としては非常に急務であるというように思いますが、その点についての先生の御見解を簡単にお伺いしたい。  この二点であります。
  38. 木下和夫

    木下公述人 ただいまの増本先生の御質問に対してお答えいたします。  まず問題は、所得税減税をすべきではなかったかという御議論の主たる目的が、個人消費の拡大をねらって他の景気回復政策の補完をするという意味で主張をされておりますが、私は個人消費の拡大を目標にして、目的にして所得税減税を、どのくらいの程度やるかは別問題にいたしまして、たとえば仮に一兆円あるいは五千億というようなレベルで考えてみますと、それは格別重要な個人消費の増大をもたらさないと思います。したがって、全然別の見地から御主張になると思っておったわけでございますが、それは負担がふえるので、物価の問題があるので調整をしろという御議論かと思ったのでございますが、先ほどのような御意見ならば、これは私は反対の意見を続けて持っております。  それから、公共料金の値上げについてずばり申しますと、物価の押し上げ要因になるのは、少なくとも値上げの時点において一回でございます。後ずっと続いて上げるわけではございません。それから値上げを不当に抑えておきますと、ツケがどこかに行くということはもうおわかりのことだと思いますが、そのツケの回り方は財政に来るわけでございます。その場合、財政の税の負担者は  一般納税者でございますが、公共料金を払うのは利用者でございます。この利用者と一般納税者は必ずしも一致いたしません。この間の不公平をどう考えるかという問題に帰着すると思います。  以上でお答えを終ります。
  39. 藤田武夫

    藤田(武)公述人 簡単にお答えしますが、いまの御意見では、当面の問題としては、交付税の税率の引き上げ超過負担の完全解消といいますか、それがいまの一番力を入れる問題ではないか。交付税のことは先ほども申し上げましたので、超過負担はこれは実は触れるはずだったのですが、まあ私もいろいろ物を書いておりますが、きょうは時間の都合で割愛したわけです。  それは、お説のとおり地方団体側の調査では、四十九年度に六千三百億の超過負担を背負っておる。それに対して政府では、昨年の五十年度補正予算で百九億円、今度はまだその数字ははっきりしませんが、恐らく二百億かせいぜい三百億かと思いますが、そんなことではとても、これは全く焼け石に水であります。そういう意味超過負担の解消、これは非常に重要だと思います。しかし、私先ほど申し上げましたが、それだけではなくて、やはり地方の自主財源を強化するという立場から、まあ行く行くは所得税、法人税のかなりの需要という目標で、やはり現在の住民税の累進税率を、いろいろな形がありますが、引き上げるとか、あるいは法人事業税に外形標準を導入するとか、それから固定資産税の検討とか、いろいろなそういう問題もあわせて検討される必要がある。これはまだ地方税法案は国会で審議されておりませんから、今後の問題として十分国会で検討され得る問題で、そういうことを強く希望します。
  40. 増本一彦

    増本委員 終ります。
  41. 井原岸高

  42. 小濱新次

    ○小濱委員 地方行政の立場から、藤田武夫先生に要約して三点についてお尋ねをしていきたいと思います。また、野尻さん、大変遠いところを御苦労さんでございました。  第一は、先生から地方財政の危機対策について貴重な御意見をお伺いをいたしましたが、持ち時間が少なかったので非常に残念であったと思っておるわけですが、もう少し詳細に、たとえば税源の配分の問題あるいはまた交付税の問題、いろいろ話がありました。そのお話の中に、仕組みの破綻という言葉も出てまいりましたし、あるいはまた再検討、根本的、そういう改革の言葉も出てまいりましたが、以上のような問題点についてもう少し御意見を聞かせていただきたい、詳しくお話を承りたい、こういうふうに思います。  第二は、ただいまちょっとお話が出ましたが、超過負担についてであります。地方自治体は莫大な超過負担を抱え、その額は一兆円にもなろうという知事会からの報告もございます。その超過負担について国はどのような対策をとるべきなのか、いろいろ御意見がありましたけれども、国はどう責任をここでとるか、その基本的な考え方を先生がお持ちならば聞かせていただきたいと思いますし、また、国庫補助制度のあり方についてどういうお考えをお持ちになっておられるのか、この点あわせて率直な御意見をお伺いしたい、このように考えております。  第三は、政府国民に実質増税あるいは公共料金の値上げ、社会保険料の値上げなど高負担を強要しようとしておるわけでございますが、地方財政の方でも危機打開のために住民税の均等割りの引き上げなどを図ろうとしております。私は、住民に負担を強いる前に、租税特別措置の改廃あるいは地方税の非課税措置の是正などをまずとるべきだ、こう考えておるわけでございますが、この点についてお答えを賜りたい、こう思います。  あわせて、最後に、木下和夫先生と藤田晴先生にお伺いをしておきたいと思いますが、景気対策の面からも地方財政の危機打開が急務とわれわれは考えておるわけでございますが、この点についての両先生の御意見を最後にお伺いをしておきたい、こういうふうに思います。よろしくお願いいたします。
  43. 藤田武夫

    藤田(武)公述人 いまの御質問は、私に対しては三点あったと思います。  第一点は、地方財政をこの際基本的に再検討して大幅な改革を加えなければいけない、それについての具体的な詳細な意見を述べろというお話です。私は最初の公述では方向だけをお話ししたのですが、その後、安井議員なりその他の方からいろいろ御質問があって、大体ある程度詳しく述べましたので、余り詳しく言っておりますと、時間が限られておりますのでごく簡単に申しますが、やはり自主財源を強化するという意味で、法人税、所得税の一部を地方に移譲する。そのためには、一挙になかなかできないので、先ほどもお話ししましたが、地方の住民税について標準税率を引き上げる。同時に、道府県民税などに累進税率を、これは前は累進課税しておったのですが、導入する。あるいは法人事業税に外形標準を引き入れるとか、そういうことを一歩一歩進める必要がある。  それから、交付税を平衡交付金に変えるということが理想なのですが、これもその後御質問にお答えしたようになかなか大きな問題なので、とりあえず地方交付税の繰り入れ率を引き上げていく。しかし、これだけでは、現在交付税は破産しているので、不況のもとではとうてい追いつかないので、やはり平衡交付金に変える必要があると思います。  大体そういったことなんですが、それから超過負担の問題ですが、先ほどもちょっと御質問がありましたが、超過負担は、これはいまお話しのとおりに、地方団体の非常に大きな負担で、この解消は年来の希望であります。これは国から地方へのしわ寄せであるわけで、これは何としてもこの際、なかなか完全解消まではいかないでしょうが、政府の方でも幾らか手当てをしていますが、先ほど申しましたように、六千億円を超える超過負担に対して二、三百億程度のことしかやっていないので、これではとうてい追いつかない。  それから、それに関連して補助金のあり方という御質問ですが、この超過負担が生まれるというのはそもそも補助金が非常に多い。地方歳入のうちで地方税に次ぐ二五、六%の比重を持っている、そこに原因があるわけです。ところが、この補助金というのはまたなかなかやっかいなもので、地方に中央の各省からいろんな法令などによっていろんな事務を委任している。機関委任事務と団体委任事務とあるのですが、一番厳しい統制の加わる機関委任事務、これは知事とか市町村長に委任される事務ですが、それが府県の場合には府県知事の行う行政事務の八〇%を占めている、市町村長の場合にも約七〇%に達する、こういう状態であります。これは中央の中央集権的な行政機構ですが、そういう状態であればそれに伴って国から補助金を裏づけとして出す、こういうことになるので、だから国庫補助制度の改革ということは、単なる超過負担とか小手先の問題でなくて、本来的に言えば行政機構の改革の問題に連なる問題である。しかし、今日根本的に再検討する場合には、それも含めて考えるべきだというふうに思います。  それから、第三番目の高負担の問題ですが、いまも御質問のうちにありましたように、国の方でも地方の方でも非常に高福祉負担という名前でもって、保険料、年金公共料金引き上げというふうなことが行われ、地方でも今度住民税の均等割りが個人の場合には三倍、法人の場合には三倍ないし六倍というふうに引き上げられます。また、使用料、手数料を地方財政計画では約四割引き上げている。これは公共料金ですが、こういうことで、全体的に見ると非常に低額所得者の大衆課税の方向に向かって増税される、負担がふえるということが私は言えると思います。  そうでなくて、いまお説にあったように、地方税だけを見ましても、国の租税特別措置による減収が五十年度一千四百七十二億円、地方税の非課税による減収が二千五百十億円、合わすと約四千億円の減収が生まれております。その住民税の均等割りの引き上げというのは、引き上げてみてもわずかに三百九十四億円なので、片一方にはそれの十倍ですか、四千億ものそういうことがあるわけで、これは先ほどからお話が出ていますように、公正負担という上からいっても十分に検討すべき問題だというふうに思います。
  44. 木下和夫

    木下公述人 先ほど先生の御質問は、景気対策をめぐる地方財政役割りということに焦点があっておったと思いますが、お話の前提としては強力な景気対策をやらなければいけない、それには地方財政の資金の手当てが不十分であっては困るということだろうと思います。本来私は、地方財政景気対策の主役を担当するのは、これは困ると思います。また、できないと思います。したがって、国家財政のわき役として、国の財政政策の方向に逆行しない程度の消極的な役割りしか地方財政というのはなかなか果たし得ない。理由は、一般の日常生活に直結した住民サービスの供与ということは、景気の変動にかかわらず、恒常的に必要だということから説明ができると思います。ただ、国の直轄事業の裏負担の問題、それから地方単独事業の資金不足というものができますれば、いまお説のように景気対策が十分に効力を発揮しないおそれがあることは御指摘のとおりでございまして、私は、少なくとも予算案を拝見いたしまして、その線に沿って編成をされておるのではないかと解釈しております。  ただ、最後に申し上げたいのでありますが、私自身は、実は景気対策をいまの日本経済の状況、環境の変化を前提にして考えますと、現在の時点で非常に強力な景気対策をとることには賛成ではございません。したがいまして、お説の仮定を置きました上でいま御返事を申し上げたわけでございます。
  45. 藤田晴

    藤田(晴)公述人 地方財政が景気政策の主役になり得ないということは確かに事実でありますが、現在の状況というのは、地方の公共投資が、特に単独事業が非常に落ち込んで、国が予定したほど政府の資本形成が伸びないという危険があるという状況かと思います。そのような状況に対して、いわゆる借り入れの形での財源のめんどうを見るということでは問題は解決しないということは、先ほど藤田先生が御指摘になったとおりであります。  そこで、そのような観点から申しますと、まず第一に、政令指定都市が軒並み交付団体になっているというような状況を是正すべきでありまして、そのためには当然住民税を増税して、そのかわりに国の所得税減税する、そういう形での地方への税源の移譲が必要である。それからさらに、長らく固定されておりました交付税率を、短期的な政策でありますけれども、この場合は思い切って引き上げる、抜本的な交付税制度の改革ということは困難でありますから、そういう税率の引き上げをやるということが必要かと思います。  ただ、そのような措置は、すべて国の財政に大きな負担になるものでありますから、当然一年限りの臨時措置としてしかやり得ない。ということは、少なくとも五十二年度あたりには国の方で新たに新税を導入する、あるいはそれに匹敵するような新しい財源の確保になるような措置をとるということが必要だということであります。
  46. 井原岸高

    井原委員長代理 河村勝君。
  47. 河村勝

    ○河村委員 もう時間が大変遅くなりましたから、簡単に名古屋の藤田さんとそれから木下さんにお尋ねをいたします。  減税のことで藤田さんにまずお伺いいたしたいことは、先ほど年度内の所得減税をやれというお話でありましたが、その意味は、これからの消費支出の動向、そうしたものを見ながら今後の情勢いかんによってやれ、こういう意味であるのか。それから、もしそうであるとすれば、それはさかのぼって年度の初めからやれ、そういうようなどういう手法でおやりになるのか、これが一つですね。  それから中期財政計画という問題で、これは木下さんも単年度主義はもうだめだというお話で何かお考えのようであります。藤田さんの場合も、経済計画財政との整合性ということでやはり同じことを考えておられるようであります。それについて二点。  一つは、いまこの時期、減速経済下あるいは国債を大量に抱えておるこういう事情のもとで、特にどうしてもいまこれが切実に必要を迫られているというその理由、いまやらなければならぬという理由、それが一つと、もう一つは、そのやり方ですね。いままでの経済予測というのは大体失敗の連続みたいなものであって、大体政府のは当たったことはないわけですね。したがって、市場経済を前提とする限りそういうところはどうしても残るわけであるけれども、一体その辺のところをどうやって整合性を保っていくのか、その二点、それをお二人からお伺いしたいと思います。以上。
  48. 藤田晴

    藤田(晴)公述人 まず第一の年度減税の問題ですが、これにつきましては、私が申し上げましたのは、政府見通しておる個人消費支出の伸び率を下回るような事態が生じるおそれが非常に強い場合にはという前提をつけてのことであります。  それから、私自身は、むしろ福祉年金の増額というような福祉政策の拡充に同時に寄与するような方向での消費刺激が望ましいと思っておりますので、そういうふうな措置がとりにくいとか、あるいは効果が不十分であるという場合に年度減税を考慮すべきであるということであります。そして、もしやるといたしますならば、これは当然できるだけ早い時期の方がよいわけでありますし、できればさかのぼってやるというような考え方も考慮すべきかと思います。ただ、非常にむずかしい問題でありますけれども、来年度以降にむしろ財源の強化が必要であるときに減税をやりますと後に尾を引くという問題がありますので、効果を減殺するという問題はあるのですが、むしろ期限をつけてやった方がいいんじゃないかと思っております。  それから第二番目の中期あるいは長期財政計画の問題でございますが、これは現在の時点でなぜ必要かと言えば、昨日すでに大蔵省から提出されております中期の財政展望もある意味の中期の計画でございます。といいますのは、展望と計画といえば違うようでありますが、実態は、外国での財政計画と言いますのは、現行の政策あるいはすでに意思決定の行われておる政策を前提にしました長期見通しでありました。そういう意味では、展望というふうに呼んだ場合と計画と言った場合とそう実質の差があるわけではありません。そして、大蔵省の資料からもわかりますように、もしも一切の減税を見送ったとしましても、公債依存度というのは非常に下げにくいものでありまして、何らかの積極的な財源強化の策がなければ赤字公債からは脱却できない。そういう状況でありますから、当然国民負担を租税の形か、あるいは社会保険料の大幅な増徴か、あるいは公営企業料金等の引き上げか、何らかの形で増大させることは必至であります。その場合に、高福祉というメダルの半面がなければ、高負担だけがあらわれてくるのでは、国民の合意はとうてい得られない。そうだとしますならば、大蔵省から出されましたような資料は、たとえば社会保障に関しましてはっきりした裏づけがある、移転支出の伸び率がこれだけであるというようなものでない、もう少し具体性を持ったものが必要であるということであります。  それから、このような中期計画をつくりました場合、過去の経済計画経験から見ましても、すぐに数字が非現実化するという危険が大きいわけでありますが、この点はすべて外国ではローリングシステムを採用しておるわけでありまして、いわばソフトな計画であります。そのようなやり方を財政計画は当然とるべきであります。したがって、毎年改定し延長していくならば、その計画自体の拘束性という点でも比較的柔軟性を持ったものになりますし、また、いろいろな環境条件の変化とかあるいは予測の誤りとか、そういう点についての是正も可能になるわけであります。
  49. 木下和夫

    木下公述人 河村先生の挙げられました問題、二つでございますけれども、前者の減税問題につきましては、私は積極的ではございませんので、理由は幾つかございますが、個人消費の促進効果というのはほとんどない。また、いま減税をして、近い将来税負担合理化を図るかあるいは増税をするというような気配があるときに効くものではないという気がいたします。  後の方の問題中期財政計画の問題でございますが、これは先ほど私もそういう考え方で、いままでの単年度予算の問題をやはり中期の視野の中で考えるべきではないかということで触れたわけでございますが、そのときに引き合いに出しましたのは、公共投資の優先順位とか政策優先順位というようなものをある程度固めておくということが必要ではないかと申したわけでございます。  御承知のように、西独やイギリスなどの国が何らかの長中期の財政計画をつくっておるということは事実でございますけれども、しかし、それが財政運営に非常に有効であって、これさえあれば財政運営はうまくいくといったものではございません。私が先ほど申しましたように、第一には、そういう政策の優先度に関する判断というものにしましても、長期にわたるような計画の場合にはその変化もございますので、先ほど藤田先生が御指摘のように、絶えずこの改定をしなければならぬという問題が、これは問題としてあるわけでございます。それから第二番目の問題は、そういう中長期財政計画に計上されました経費が、やはり予算とは違いますけれども計画というような名前がつきますと、もう既定のものと見られるという可能性がございまして、かえってその財政の膨張とか硬直性を強化するのではないかという問題もございます。それから、恐らく、わが国は、企画庁でやっておられます経済計画、それから建設省その他のさまざまの工事の長期プロジェクトがございますが、こういうものとの関係をどのように調整していくかというような問題を初めとする各省庁間にまたがる問題、協力関係というようなものも残っておると思います。こういうものの整備を十分に詰めた上で中期、せめて中期というような枠の中で一定の趨勢といいますか、あるいは展望といいますか、というものをつくる時期が近づいておる、積極的に検討していただきたいと思うわけでございます。
  50. 井原岸高

    井原委員長代理 以上で各公述人に対する質疑は終了いたしました。  この際、委員会を代表いたしまして、公述人各位に対しまして一言お礼を申し上げます。  本日は、長時間にわたりまして貴重な御意見をお述べいただきまして、まことにありがとうございました。厚くお礼を申し上げます。  午後一時二十分より再開することとし、この際、休憩いたします。     午後零時五十四分休憩      ————◇—————     午後一時二十六分開議
  51. 井原岸高

    井原委員長代理 休憩前に引き続き会議を開きます。  御出席公述人各位に一言ごあいさつを申し上げます。  本日は、御多用中のところ御出席を賜りまして、まことにありがとうございます。この際、各位の有益な御意見を拝聴いたしまして、今後の予算審議の上におきまして貴重な参考といたしたいと存じます。  何とぞ昭和五十一年度予算に対しまして、それぞれの立場から忌憚のない御意見をお述べいただくようにお願いを申し上げます。  次に、御意見を承る順序といたしましては、まず辻弥兵衛公述人、次に小林文男公述人順序で、お一人約二十分程度ずつ一通り御意見をお述べいただき、その後、委員各位から質疑を行うことといたします。  それでは、辻公述人お願いを申し上げます。
  52. 辻弥兵衛

    ○辻公述人 私、ただいま御紹介いただきました岡山県商工会連合会の会長をいたしております辻でございます。  本日、昭和五十一年度の総予算につきまして、私ども意見を申し述べる機会をお与えいただきましたことに対しまして、厚くお礼を申し上げたいと存じます。  私は、先ほど申し上げましたような肩書きの関係もございまして、予算の中で特に中小企業関係の予算につきまして、私の意見並びに要望を申し上げたいと存じます。  昨年度に引き続きまして、かつてない深刻な不況の中で迎えます五十一年度でございまして、数兆円に及ぶ赤字国債の発行を余儀なくされるというふうな予算案の中で、昨年度の千二百七十億円余に対しまして五十一年度千四百八十四億円という、伸び率一一六・九%でございますが、この中小企業対策費を計上していただきましたことに対しまして、業者としても深く敬意を表したいと思うのでございます。特に、中でも小規模事業対策の推進につきまして、前年度の四百一億余円に対しまして五十一年度におきましては四百九十六億円余、伸び率一二三・八%であり、またこれは中小企業庁関係予算の中で四一・五%を占めておるわけでありまして、このような予算が計上されましたことは、私ども商工会関係者といたしまして、小規模事業対策推進に対します政府の並み並みならぬ御決意のあらわれと考えまして、高く評価をいたしますと同時に、深く感謝をいたしておるところでございます。  次に、項目別にわたりまして意見を申し述べたいと思いますが、ます最初に、小規模事業対策の推進についてでございますが、これは先ほど申し上げましたように、額におきまして大幅な増加を見ておるわけでございますが、なかんずく小企業経営改善資金融資制度、俗にマル経融資制度と申しておりますが、この制度は、御高承のようにいまから三年前に発足いたしたのでございます。その当時の最初の資金枠はわずかに三百億円でございましたが、五十年度におきまして二千四百億円、さらに五十一年度におきましては三千五百億円までその枠が拡大されようとしておるわけであります。また、貸付条件につきましても、私どもが発足以来要望いたしておりました設備資金に対します据え置き期間が六ヵ月間認められましたということも、特に評価できることだろうと思います。この制度の末端におきます運用におきましても漸次定着しつつありますことは、一昨年来の深刻な不況下におきまして、この制度が中小企業、なかんずく小規模零細企業者の金融対策としてきわめて大きな役割りを果たしておるということを私どもは身をもって感じておるわけでありまして、この機会に厚くお礼を申し上げたいと思います。  ただ、この機会にぜひお願いを申し上げたいのは、将来の問題としてでございますが、現在御承知のようにマル経融資制度は貸付対象をいわゆる小企業に限っておるわけでありまして、製造業におきまして従業員五人以下、商業、サービス業におきましては二名以下という非常に零細な対象になっておりますが、いわゆる小規模企業者と申しますのは、すでに基本法で決められておりますように、製造業におきましては二十人以下、商業、サービス業におきましては五人以下という一つの範疇がございまして、それらの人々との間にこのマル経融資の恩典を受けられるかどうかということについて若干そこに差があるように思いますので、何らかの形でこの小規模企業者のところまでこのマル経融資の恩恵が及ぶような扱いを今後の問題としてぜひ御検討をいただきたい、かように考えるわけでございます。  次に、小規模事業対策推進費についてでございますが、これは五十年度におきまして百六十八億円余でございましたが、五十一年度予算におきましては二百一億円余となりまして、待望の二百億円台に乗ったわけでございます。そして、私ども一がかねてから要望をいたしておりました幾つかの問題点といいますか要望が、今回の予算案におきまして解決を見、あるいはまた予算面で頭を出すことができておるのでございまして、これまた大変感謝をいたしておるところでございます。たとえば、経営指導員の給与改善制度の確立あるいはまた記帳専任職員の人件費化の問題、その他幾つかの項目を挙げることができるわけでございます。  ただ、ここでもぜひひとつ将来の問題として御検討いただきたいことがございます。それは、御承知のように国の財政も大変でございますが、地方自治体の財政がここ一、二年急速に悪化いたしてまいりまして、御高承のように、この小規模企業対策費は都道府県が予算化をした場合に国が一定の割合で補助金を出す、こういうふうな形になっておりますので、都道府県の、自治体の財政が悪化したために、せっかく国で先ほど申し上げましたようないろいろな意欲的な中小企業政策がとられましても、現実にはこれが地方におきまして日の目を見ないというふうなことになるおそれが多分にあるわけでございまして、すでにそういった傾向は昨年来あちこちの都道府県においてあらわれておるわけでございまして、このまま参りますと、せっかく商工会法の制定以来十五年間にわたりましてようやく定着してまいりました小規模事業対策があるいは挫折するのではないかというふうなことも、非常に憂慮されるわけでございまして、この点につきまして、国の補助率などにつきまして十分にひとつ御検討いただきまして、せっかく国で意欲的に取り上げられた施策地方においてみごとに開花するように、格段の御高配をいただければ大変ありがたい、かように存ずるわけでございます。  なお、これは中小企業振興事業団の運営につきまして関連した予算でございますが、中小企業大学校という構想が、これもわれわれ多年の要望でございましたが、本年度からようやくその予算化が行われ、長年の要望がその緒についたわけでございまして、五十一年度におきましてもその施設整備のための予算が計上されておることは大変ありがたいわけでございますが、この中小企業大学校の運営につきましては、中小企業団体中央会とかあるいは日本商工会議所あるいは私どもの全国商工会というふうな、私ども民間指導団体の意見も十分にひとつお聞きをいただきましてこの運営をやっていただきますならば、私どもとしても大変ありがたい、かように考えるわけでございます。  その他、振興事業団の運営につきましても、五十一年度の出資枠は五百億円を超えまして、総事業規模も、五十年度の二千三百七十九億円に対しまして一二〇・六%の伸び率を示しまして二千八百七十億と、三千億に近い大幅な増加を見ておるわけでございまして、これも政府の中小企業施策に対します強い意欲を十分にうかがうことができるように思います。  その他、下請中小企業の振興につきましても、現下の経済情勢にかんがみまして、都道府県の下請中小企業振興協会の増設などを含みます幾つかの意欲的な施策がとられようとしておることも、十分に評価ができると思います。  次に、金融対策につきましては、マル経融資のことにつきましては先ほど申し上げましたが、その他政府系の金融機関であります商工中金への出資また信用保証協会への基金の補助あるいは中小企業信用保険公庫への出資などが大幅に増額をされておることも、十分に評価できる施策と考えるわけでございます。  さらに、本年度予算の中で、金額はわずかではございますが、非常に注目すべき予算の費目として、中小企業の分野調整対策に関連いたしまして予算が計上されております。この中小企業の分野調整、さらにまた中小企業の事業転換対策、この二つは現在の中小企業が当面しております大きな問題の二つでございまして、そのいずれもが今後大きな論争の種になろうかと思いますが、この問題について、政府が分野調整につきましては分野調整指導調査員を主要な商工会議所、商工会あるいは中央会等に設置され、また各通産局には中小企業の調整官を配置するというふうなことによりましてそれらの問題についての紛争を解決していこう、さらにまた、現在まだ東京都ほか九府県しか設置されておりません都道府県の中小企業調整審議会を各府県に設置促進をいたしまして、それらの機能を十分に活用することによってこの分野調整の問題に当たろうとしておられるわけでありますし、また転換につきましても、現在、この不況の中で日本の産業構造全体が大きく転換を迫られておるわけでございまして、発展途上国とのいろいろな問題等もございまして、どうしても現在のままで営業を継続することが不可能だというふうな判断に立たなければ仕方がない業種も次々と出てくると思います。そういった業種の方々が円滑に新しい分野へ転換していくためにはかなりの思い切った措置を必要とするわけでございまして、これらの問題について、従来計上されていなかったと申しますか、いわゆるこの問題について正面から政府が取り組んでいこうというお考えを明確にされたということについて、私どもはこれを高く評価し、これらのいろいろな措置が十分な機能を発揮いたしまして、できるだけ少ない犠牲のもとにそうした転換が行われることを期待いたすわけでございます。  以上、五十一年度の中小企業関係の予算全体につきまして、私の意見なりまた要望を申し上げたわけでございます。どうもありがとうございました。(拍手)
  53. 井原岸高

    井原委員長代理 どうもありがとうございました。  次に、小林公述人お願いをいたします。
  54. 小林文男

    小林公述人 小林でございます。よろしく願います。  最初に私の立場を説明させていただきます。  いま全国に六十歳以上の地域老人が加入しておる老人クラブというのが約十万ございます。それでお年寄りの数は六百万人でございます。まさに民間の団体としては一番大きい団体じゃないかと思うわけです。私は、この団体の代表といたしまして、全国大会その他で集約されたお年寄りの声を御報告するわけでございます。  最初に、五十一年度予算案に対する印象を総括的に申し述べさせていただきます。  そういたしますと、日本の老人福祉全盛時代というものは余りにも短かった、こういうような印象を非常に強くしておるわけでございます。亡くなられた佐藤さんが、四十七年度予算編成当たりまして、生産と輸出の好調でゆとりが出たからその分を国民福祉に回します、こういうふうに公約して日本の老人福祉全盛時代がやってきたわけなんですけれども、わずかに五年間にして崩壊の危機にあるというのが昨今の情勢であります。こんなばかな国はないのじゃないかと思われるわけです。特に崩壊の要因というのが財政硬直、ないそでは振れないよというようなきわめて、申しわけないのですが、次元の低い要因でございます。  およそ一国の老人福祉社会保障というような大切な基本的な施策が、このような要因で崩壊するということはまことに残念でたまりません。ないそでは振れないよという、結果から来るこういう冷たい仕打ちではなくて、そうさせないためにという最大限の努力、その効果、これが国家責任のとうとい本質ではないか、こんなふうに全国のお年寄りは考えておるわけでございます。どこの国の社会保障というものも、御承知のように幾多苦難の歴史を経てみんなでき上がっておるわけでございます。そんなようなわけで、ちょっとこれは冷た過ぎるんじゃないか、こんなふうに考えるわけでございます。  財政硬直でお金がないのならば、目的税をはっきりとつくって、それを取ったらいいじゃないか、こんなふうにも全国のお年寄りは考えております。私スウェーデンへ行きまして、若い勤労青年に会ったのですが、この青年がこういうことを言っておりました。給料はわれわれ若いから安い、その給料の中で大体税金三〇%も納めておる、だけれども老後の心配がないからがまんしておりますよと、こんなことを言っておったわけでございます。日本でも、あなたの老後のために、あなたのおじいちゃん、おばあちゃんのためなんですよと、こう言って使途をはっきりした税金ならば、そうあえて反対する人はないんじゃないか。私自身もおじいちゃん、おばあちゃんいるんですが、本当にそういう感覚を実際に持っております。そんなような意味で、ちょっと残念でたまらない、こんなふうに思うわけです。  と同時に、では日本人の税負担可能性がないんだろうかと申しますと、決してそうではない。ちょっと統計を申し上げますと、これは厚生省でつくった統計なんですが、日本人の福祉のために課税しておる税負担の率、これは先進国の約半分。だけれども、貯蓄率というものは逆に二倍になっておる。ここのところがちょっと大切なんですが、これは、国が社会保障、老後保障というものをきちっとやってくれないから、日本の国民は貯蓄という個人作業で老後対策をやっておる、こういうふうにも解釈でき得るわけでございます。そこで、国がしっかりやってくれればこういうような行動にもあらわれないのじゃないか、こんなふうにも思われるわけでございます。  以上が総論なんですが、次に各論的に申し上げたいと思います。  皆さん御承知のように、日本の老人福祉の究極は何だといいますれば、私たちも多くの国民も、みんな医療保障と所得保障ではないか、こんなふうに考えておるわけでございます。したがいまして、各論的に医療保障と所得保障の不備な現況、これを申し上げまして、五十一年度予算案に対しまして皆様方の厚い御協力をお願いしたい、こんなふうに考えるわけでございます。  では、まず第一に医療保障の改善していただきたい点、これを申し上げます。  第一でございます。これはもちろん仮称なんですが、退職者の医療制度、こういうものを新設してほしい、こういうふうに思うわけです。その理由を申し上げますと、次のとおりになります。  いま日本で定年制を施行しておる企業体というのは大体六九%ございますが、その内訳を見ますと、五十五歳の定年制をやっておる企業というのが五二・七%、五十六歳というのが一一・五%、五十七歳が一七・三%、五十八歳が三・〇%、六十歳が一四・四%でございます。このような定年制がしかれておるわけでございますから、年齢が参りますと、御本人が好むと好まざるによらず、あなたはもうおやめくださいよ、私なんかもその一人なんですが、そういうふうに追い出されるわけでございます。そういたしますと、その職場におる間いろいろお世話になっておったその会社の健康保険というものとも絶縁になってしまいます。ところが日本の医療保障の年齢、これは御承知のように七十歳でございます。もっと生きたいというのが人間本来の欲望でございます。この欲望を維持するために、ここからはみ出された多くの定年者というものは当然国保に加入していきます。このようなお年寄りが国保にどんどん入っていきます。そして、自分の生命を長く保ちたいから医療機関を訪ねます。ところが、この人たち医療費は御承知のように公費負担でございます。そんなようなわけですから、高齢者をまる抱えにしておる国保というものは毎年毎年赤字が累積していってしまう。ところが、一方を見ますと、企業側の健康保険組合というものは財政が非常にだぶついておる。観光地にホテルまがいのような保養所を建設しておる。そしてこの財政内容につきましては、去る四日の日に厚生省が各新聞に正式に発表しておりますね。その積立金が三十五年後には実に三百四十八兆円になりますよ、こういうことを言っている。この裕福な財政に私たち目をつけないわけにはいかないのじゃないか。この裕福な大企業の保険組合に定年後の退職者の医療保障を引き受けていただきたい、つまりやめてももとの職場の健康保険にめんどうを見ていただきたい、退職者医療制度、こんなものをつくっていただくと非常にいいのじゃないかな、こういうふうに思うわけでございます。そして、これをきっかけにいたしまして医療保険制度の根本的な手直しに着手していただきたい、こんなふうに思うわけでございます。  それから第二のお願いの点でございます。これは私たちとしては非常に大切な問題なんでございますが、いろいろ論議されておりますが、老人医療というものは多少の修正はあっても本質的には無料化であるべきではないか、こんなふうに私も考えるし、多くのお年寄りもそう願いたい、こう言っておるわけでございます。ところが昨今は財政硬直、低成長、こういうような理由によりまして、お年寄りの資産それから所得、生活状態、こういうものがよければ有料化するのは当然じゃないか、こんなふうに多くの人が考えておるわけでございます。また大蔵省なんかも政府も、そういう方向に五十二年度は持っていこうじゃないかというふうに態勢をじわじわと固めておることは皆さん御承知のとおりでございます。ところが、無料化が実施されておる現段階でも所得制限というものがございまして、その内容は、たとえば本人が年収百五十三万円、東京はちょっとそれじゃ低過ぎるというのでこれを二百万円にしておるわけでございますが、いずれにいたしましてもこういう所得制限がありまして、豊かなお年寄りに対する医療というものは決して無料ではないのです。そういうようなわけで現行法で結構じゃないか、こんなふうに考えられるわけでございます。  その次の問題点、大蔵省は財政悪化の防止策としてこういうことを言っております。つまり、お年寄りも一般患者と同じように六百円の初診料を支払いなさい、一日二百円の入院料を納めなさい、そうすることが財政悪化の防止策なんだ、こういうことを言っており、そしてまた五十二年度は恐らくそういう方向に向かっていくのじゃないかということが心配されるわけでございますが、お年寄りというのは大半は職がありませんね。ですから無収入、あっても九〇%近くは低所得者である、こういうことは当然考えられるわけです。そのようなお年寄りに、お金がないから払いなさいよ、入院料も払いなさい、そういう一つ方法論が果たして財政硬直の防止策になるのか、ここが問題点でございます。私たちは、また多くのお年寄りは決して歯どめにはなりませんよ、こういうふうに考えておるわけです。  そしてまた、その実証を厚生省統計から申し上げますとこんなふうになります。これは国保の中に占める七十歳以上のお年寄りの医療費の統計でございます。医療費の大半を老人医療が食ってしまうのだ、こんなふうに言われておるわけなんですが、国保の中でその実態を見ますと、たとえば昭和四十七年度は全体の中の一七・五%きり老人医療ではなかったわけでございます。四十八年度には二二・五%、四十九年度には二三・二%、この数字を見ましても無料化ということが決して財政を圧迫している原因ではない、こんなふうに私も考えるし、多くのお年寄りたちもそう言っておるわけでございます。  その次に医療機関の乱診乱療、これが問題だ、こういうふうに言われておるのでございますが、こういうふうに立ち至ったのを直す方法は、お医者さんに対する医療報酬制度の改善で直せる、こんなふうなのが実態でございます。御承知のように、多くのお年寄りがどこのお医者さんに参りましても、これはちょっと言葉が悪いのですが、余り親切な診療をしてくれないで、しかし帰りには持ち切れないほど薬を持たせてくれる。こういうふうな現状であれば、お年寄りの医療人口が七百万を超しておる現在でございますが医療費がかさんでしまうのは無理ないのじゃないか。したがいまして、医療の報酬制度をきちっと変えていく必要があるのじゃないか、こんなふうに思うわけでございます。  以上申し上げましたことを結論づけますと、医療財政の悪化の主因は老人医療の無料化と現行法の中にあるのではない、もっと大きな要因というのは別の面にある、こういうふうに私たちは考えておるわけでございます。その証拠をちょっと、簡単でございますが次に申し上げることにいたします。  まず、各医療機関が老人クラブ化してしまって困るのだと、どこへ行ってもじいさん、ばあさんの集まりだ、こういうふうに言われておるのですが、では実態は果たしてそうなんだろうかということを厚生省統計で申し上げます。これは七十歳以上のお年寄りが病院を占領しておる率でございます。これを見ますと、昭和四十六年度八・〇%、四十七年度一〇・二%、四十八年度も同じく一〇・二%、四十九年度一一・九%、五十年度一八・四%、これでお年寄りが医療機関を全部占領しておるというのは余りにも大胆な物の言い方ではないか、こんなふうに考えるわけでございます。  なぜお年寄りが病院に集まるかという、今度は必然性をここでちょっと見たいわけでございます。そういたしますと、老人の有病率、お年寄りが病気にかかる率、これを申し上げますと、これは人口百人当たりでございますが、六十四歳までの有病率、これは日本の場合一二・七%、六十五歳から七十五歳未満が三三・五%、七十五歳以上が三五・八%、こういう有病率になっておるから、まあ長く生きたいという人間本来の欲望から、当然病院を訪ねるわけでございます。したがって、こういうお年寄りを温かく迎えてやるというのが、やはり先進国の社会保障制度ではないか、こんなふうに考えるわけでございます。  第二番目、病院の老人クラブ化という原因、もう一つあるわけでございます。これはなぜこんなふうになってしまったかと申しますと、老人医療の需要と供給がアンバランスである、つまり国は昭和四十八年に無料化を実施したのでございますが、医療体制を整備しないうちにこの無料化を実施してしまった、原因はむしろこれを実行した政府側にあるのであって、お年寄りの側にあるのではない、こんなふうに言いたいわけでございます。  こういうような現象を直していく一つ方法論、これは老人専門の病院を各地に新設してほしいということ、それから老人ホームとか老人の施設、そういうものの社会化を図りたい、そういう医療機関をその地域のお年寄りに開放するようにしてやったらいいじゃないか、こういうことでございます。  御承知のように、福祉方法論が昔の施設ケアという古い考え方から、いまやコミュニティーケアという新しい方向に向かっていっておるわけでございます。こういうことを考えますと、やはり現在の老人施設というものの社会化こそ非常に大切なんじゃないか、こんなふうに思うわけでございます。  以上で医療の点を申し上げまして、第二番目の各論といたしまして所得保障、特に年金について申し上げます。  これは御承知のように、七十五国会の国民に対する一つの公約みたいなもので、年金を所得保障化いたしますよというふうな印象を非常に国民に強く与えたわけでございます。ところが、この善政がいまや崩壊の危機にある、こういうことが言えるわけでございます。たとえば七十歳以上のお年寄り四百三十万人がいただいておる老齢福祉年金の場合でございます。現行では月一万二千円、これが十月から一万三千五百円にアップするんでございますけれども、アップしたものの生活のでき得る年金ではありません。ですから、七十五国会で所得保障化をいたしますよという公約はどうなったんだろうか、こんなふうに多くのお年寄りが言っておるわけです。私が言っておるのではありません。したがいまして、たとえば所得制限があっても軽費老人ホームに入って暮らせるくらいのお金、生活保護費に匹敵するくらいの金額、つまり最低生活保障するくらいの年金お願いしたい、こんなふうに多くのお年寄りが願っておるわけでございます。  ところが、この年金のアップに対しまして、大蔵省は、財源難だからだめだよ、こういうふうに言っておるわけでございますけれども、これではちょっと冷た過ぎるんではないか、こんなふうに思うわけです。  そういうような関係で、では日本の年金の額、最近は九万円年金なんということを非常に調子よく宣伝しておるわけなんでございますが、おしなべて日本の年金額というものを外国とちょっと比較してみますと、こんなふうになるわけです。きわめて水準が低いということでございます。たとえば日本の年金の指数を一〇〇といたします。その場合、西ドイツ、同じ戦争に敗れた国でございますが、その国でございますけれども、五六五、アメリカ五四三、スウェーデン四五九、イギリス二八一。そしてこの年金を受けておる受給者の率でございます。日本はわずかに一〇%、西ドイツが八二・五%、アメリカが八二・六%、スウェーデンは御承知のように一〇〇%、イギリスが八四・二%。ですから、政府は非常に勇ましいことを言っておるんですけれども内容としてはこういうふうに非常に低いし、その年金制度はきわめて未成熟である、こんなふうに言えるわけでございます。したがいまして、よく多くの方々から望まれておる、現在のいままでの積立方式、こういうものから賦課方式への転換、これをやはり多くのお年寄りが非常に望んでおるわけでございます。よろしくお願いしたいと思います。  そして御承知のように、日本の老齢化のスピードというものは全世界にないほどそのスピードが速いわけですよね。老齢化と申しますれば御承知のように六十歳以上の人口の総数が全人口の八%から一八%に達することを言うわけでございますが、たとえばフランスの場合は八%から一八%に達するまでに百七十七年かかっておった、スウェーデンは百三年かかっておった。ところが、日本はわずかに四十年でいってしまう。こういうように日本のスピードは速いわけですよね。こういうときにやはり早く保障制度をきちっとしておかないと大変なことになってしまうんではないか、老齢化社会の到来に追いつかないんじゃないか、こんなふうに思われるわけでございます。  それから第二のお願いしたい点でございます。  これは、いま日本には御承知のように年金制度というのが八つもありますよね。ところが、この八つある年金のお互いの給付の額、それから給付が開始される年齢、これが全部ばらばらですよね。たとえば老齢福祉年金の場合は年齢が七十歳、国民年金が六十五歳、厚生年金が六十歳、と申しますが、この六十歳も職について、お年寄りがやはり生活に苦しいからといって再就職すれば、六十五歳から。共済年金、これは国家公務員、地方公務員が入っておる年金でございますが、これは五十五歳。年金をいただく年齢、みんなこんなふうにばらばらでございます。そういたしますと、この間私たちは、多くのお年寄りは実際どうして暮らせばいいのか、こういうふうに考えられるわけでございます。どうしてもこういうような年齢になっておるわけでございます。  そうして先ほど申し上げましたように、定年制によって出される年齢、定年制の年齢というのは五十五歳ですよね。したがいまして、年金をいただくまでに十年あるいは十年以上もあるわけです。どうか、この点につきまして、六十五歳以上の老齢年金というものに対しましては、所得水準に関係なく、加入者すべてが一律に同額の給付を受けるような、そんなふうに調整をとっていただきたい、こんなふうに多くのお年寄りが皆様方にお願いしておるわけでございます。  最後に、高齢者の雇用対策と定年制についてちょっとお願いいたします。  これは、いま東京にはお年寄りに職業をお世話をする高齢者無料職業紹介所というのが九つございます。全国では百十一ヵ所あるわけでございます。ここへお年寄りたちが非常に希望に燃えて訪ねておるのでございますが、昨今の就職率、定着率というものは平均しましてわずか一二%前後にがた落ちしておるわけでございます。  その理由を聞いてみますと、こういうことでございます。これは非常に大切な問題じゃないかと思うわけでございます。御承知のように、いま日本の各企業というものは資本主義経済の原理によって、つまり生産性、合理性を基本として運営しておるわけでございます。ところが、お気の毒にも、悲しいことにはお年寄りには理想的な生産性、合理性はありませんよね。そうしてさらに各企業というものは石油ショック以来非常に内容が苦しくなっておる、自分の企業の経営さえも苦しいのに生産性、合理性の落ちたお年寄りを、福祉ですよ、こんな甘い考え方でわれわれは雇うことはできないのだ、こんなような考え方で、非常にもう希望に燃えておるお年寄りの定着率、就職率というものもがたがたに落ちておるわけでございます。  したがいまして、お年寄りに対する理想的な老人雇用対策というのはやはり定年延長ではないか。そうしてなれた職場に健康な間は働いていただく、定年が来たらば、六十五歳以上はどの人にも一律の定額の年金を与えられる、こういうのが日本全体のお年寄りが望んでおる社会保障老人福祉である、こんなふうに多くのお年寄りが皆様方にお願いしておるわけでございます。よろしくお願いいたします。  どうも御清聴ありがとうごさいました。
  55. 井原岸高

    井原委員長代理 どうもありがとうございました。     —————————————
  56. 井原岸高

    井原委員長代理 これより両公述人に対する質疑に入ります。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。多賀谷真稔君。
  57. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 まず辻公述人にお尋ねいたしたいと思います。  いま中小企業官公需の確保に関する法律というのがありまして、そうして中小企業に対して官公需品を優先的に発注したい、こういう法律があるのですがね、現実商工会議所等でお感じになっているのは、果たしてその法律が生きておるかどうか、こういう点についてどういうようにお考えですか。  たとえば、建築あたりでも最近はわりに需要がないものですから、大手が皆地方に乗り出していっている。そうすると、ある大きな工事をする。ですから、それは基準から言えば当然大手でなければならぬ、こう言うのですけれども、しかし、それを何も一括をして大手にやらさなくても、そこの中小の建設業者が共同してやって、しかも逆に言いますと、仕事の面ではなくて、中小育成の面から、ある事業体をつくればそれに合わしたように区分をしてやったらいいんじゃないか。現実はそういうようになっていない。ですから、そういうような要求を熾烈になさっておるのかどうか、こういう点をお尋ねいたしたいと思います。  時間の関係がありますから、一括してお尋ねいたしたいと思いますが、それから、先ほど中小企業分野調整に対して若干芽が出た、こうおっしゃいますけれども予算措置で指導くらいではこういう大きな調整はできないのじゃないか。ですから、法制的にはどういうようにお考えであるか、お尋ねいたしたいと思います。  それから、日本で今後の大きな産業構造の問題は、何を申しましても、日本経済がいわば東南アジア等の比較的賃金の安い産業から押される運命にあるわけです。かつて日本がランカシャーとかあるいはアメリカの繊維を押しまくったように、今度は逆に日本は受け身に立たざるを得ない。そういう場合に、この中小企業の方々、それから業種によって非常に競合する業種、そういう方々は  一体どういう気持ちでどういうことを端的に政府に要請をされようとしておるのか、こういう点をひとつお聞かせ願いたい。
  58. 辻弥兵衛

    ○辻公述人 ただいま私に対します御質問は三点あったと思いますが、いわゆる中小企業に対します官公需の確保の問題、それから中小企業分野調整の問題それからいわゆる発展途上国などの追い上げによりますところの影響を受ける産業構造の転換の問題、この三つであったと思います。  まず最初に、やはり官公需の問題は、いま先生の御指摘のありましたように、実際に末端においてどのようにやられておるかということについては、余り細かい事実すべてのことについて私存じておるわけでございません。ただ私ども商工会関係は、御承知のように、主として過疎地域の多い町村部のようなところにありますので、非常に零細な業者が多いわけで、それらの方々がやっておりますたとえば土木工事とか建設工事とかそういったものは、非常に小さい規模のものでございますから、ほとんど中小企業の方が受けておるように私ども地元では思っております。ただ、国全体のレベルにおきましては、いま国から出ておりますいろいろな資料によりまして昭和四十七年以降のいろいろな推移を見ますと、中小企業向けの契約目標額あるいは官公需に占める比率というのも、国のレベルで、たとえば五十年度におきましては三九・五、公社公団等においては二八・四、こういうふうな目標値を示されておるわけでありまして、この平均は三二・九、こういうふうなことでございます。ただ、私ども見ますのには、これは国のレベルでありまして、地方の自治体へおりました場合には、いわゆる都道府県レベルでございますが、そうなりますと、いわゆる中小企業の方々がその官公需を受けております率はかなり上がってくるのじゃないか、こういうふうな感触は持っております。  ただ、先ほど御指摘がありましたように、いろいろな工事も大企業でなければ受けられない、大きなプロジェクトというふうなことになりますと、やはり大企業でないとどうしてもだめだ、しかし、それを幾つかに分割すれば中小企業でも受けられるのじゃないかという御指摘がございまして、全くそのとおりであろうと思います。したがって、私どもとすれば、やはり公共企業体等のいろいろな組織をつくりまして、中小企業者であってもそれを受注できる資格を得るとか、あるいはまた自分自身がそうした官公需を受けられるような体質に中小企業を持っていくというふうなことの努力が必要ではないか。それに対しまする十分な指導とか助成とかいったことは、当然行政のべースでお願いをしなければならないと思いますが、私どもの感触としましては、そうした行政の誘導によりまして、年々官公需に占める比率というものは、わずかずつではありましても上がってきつつあるのではないか、かように見ております。  それから次に、中小企業の分野調整の問題でございますが、御指摘によりまして私が申し上げましたのは、もちろん予算がついたからといって、それですぐそれが実現するわけではございませんし、率直に申しまして、この調整の立法措置によってこれをやるかやらないかというふうな問題が現在大きな議論の対象になっておりますが、現在政府がおっしゃっておられますいわゆる行政指導によりましてこれが実現するという可能性は、率直に申しまして非常に少ないのじゃないか、かように考えております。したがいまして、実際にそうした紛争のさなかに巻き込まれております業種業態の皆さん方にとりましては、国の行政指導なんかは待っておれないということで、強く立法措置を求められる気持ちというものも十分私どもは理解しております。ただ、ことし、金額はわずかではございましたけれども、国のべースにおいては、先ほども申し上げましたように、この分野調整につきましてはいろいろな手だてを考えておられるわけでありまして、これらのたとえば分野調整の指導調査官とかあるいは調査員とか、あるいはまた中小企業調整官というふうな方々がどの程度の機能を発揮されますのかいまのところ私どもわかりませんので、それらのいろいろな手だてが国のべースでとられまして、それによって現実にそうした分野調整の問題が混乱なく調整されていくかどうか、その状況を十分に見定めた上で私ども判断をいたしたい、かように考えておるわけでございまして、予算がついたからすぐうまくいくというふうなことは、私どもも考えておりません。  それから、最後の産業構造の問題でございまして、いま御指摘がありましたとおり、日本の繊維工業がかつてイギリスのランカシャーを追い上げ、それと同じようにまた発展途上国によって私どもが追い上げられておるわけでございますが、この発展途上国も、韓国にいたしましてもあるいはまた中華民国にいたしましても、また東南アジアとかあるいはインドとか、そういったようなまだもう一つ下の発展途上国に同じ追い上げの運命に遭うのではないか、こういうふうに思いますので、どういうふうな産業構造であれば未来永久に安全だということはあり得ないと思いますし、その過程においてはどうしても、そうした付加価値の低いものを私どもよりもはるかに労働賃金の安い国でつくられるものに対しまして競争していこうということ自身が無理でございますので、そういったものはやはり発展途上国に任せて、いわゆる知識集約型と申しますか、付加価値の高いものに変わっていかなければならないと思います。ですから、そういうふうな努力をやらなければいけないのでありますが、そのために、その業種の中でそういった努力によってそれが達成できるものはそれでやっていくべきであろうと思いますが、またどうしてもそれがやれないということになれば、そういう業種業態の方々は業種を転換せざるを得ないと思います。  ただ、一番私どもが心配いたしますのは、転換と申しましてもそう簡単にできるわけではございませんので、どういう業種に転換していいのかそれがわからないということと、そうした転換には必ずいろいろな困難があり、またそれが軌道に乗るまでの間にはかなりの期間がかかるわけでありまして、その間の経営が維持できるかどうかということについて非常な不安があろうかと思います。したがって、私は政府にあるいは役所にお願いを申し上げたいのは、そういった面での転換業種をそれぞれの産業の種別の中でお示しをいただく、そしてそういう方向へ誘導していただくということが必要ではないか、かように考えておるわけでございます。  十分なお答えになったかどうかわかりませんけれども、以上お答えさしていただきます。
  59. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 どうもありがとうございましたが、問題は転換する場合の摩擦をいかに少なくしていくか。これは時間をかければ自然に淘汰されるものは淘汰されるのですが、これが急激に来る場合、どういうふうにして摩擦を最小限度に防ぐか、これが政策ではないか、こういうふうに思います。  そこで、これはわれわれの任務ですからやらなければならぬと思いますが、小林さんにお尋ねをいたしたいと思いますが、先ほど医療保障の問題で、ことに定年を過ぎてそれから無料化になるまでの間、六十歳ぐらいから七十歳ぐらいまでの間、これをぜひひとつ、収入はなくなるし医療費はかさむという層の救済をしてもらいたい、従来会社に勤めておったと同じような医療保障ができるようにしてもらいたい、こういうことでありました。現実、どういうようにお困りであるのか、例がありましたらお示しを願いたいということが一点。  もう一点は、いま年金の資格がないにしても、かつては厚生年金に入っておった人が相当多いと思うのですよ。これは脱退一時金をもらったり、その知識がなかったものですから途中で放棄したりという場合が非常に多いのじゃないかと思います。と申しますのは、社会保険庁の事務所に行きますと、八千数百万のカードがある。でありますから、ある人が二度も三度も改めて加入をしておる。それが通算されていないわけです。大体、昭和十七年にできてからもうすでに三十四年もたつのに、成熟をしていないということです。どうも私はそこが、どこか制度に欠陥があったのじゃないかという感じがするわけです。ですから、いま年金の資格がない、福祉年金しかないという人も、かつては人生の中で厚生年金に入っておった時期があるのではないか、あるいは共済に入っておった時期があるのではないか、こういうように考えるわけですが、そういう現実が相当あなたの周辺にあるのかどうかということ。  それから、福祉年金は七十歳以上で大体どのぐらいもらったらいいかという、まあ感じでよろしゅうございますからお聞かせを願いたい、こういうように思います。
  60. 小林文男

    小林公述人 いま先生が御指摘のように、確かに通算されるものと通算されないものとあるのですね。それで、どちらかというと、通算されないで、先生が御指摘されたように、後で困っておるという人たちが私たちの身辺にも非常に多くおります。ですから、でき得るならば、厚生年金のように通算ができ得るようなものが欲しい、こんなふうにも考えるわけでございます。御指摘のように、確かにそういうふうなずさんな点が多いものですから、困っておるお年寄りが非常に多い。整理する必要が、本当に身辺に多いということでございます。  それから福祉年金の額でございます。これは最低生活保障してくれる額。ですから、たとえば軽費老人ホームに入っておる実費、これは自炊しても大体四万円ぐらい。それと生活保護法の額でございますが、都市の生活保護を受ける給与の額なんというのは、老齢福祉年金よりもぐっと上なんですね。そんなようなわけで、少なくとも四万円ぐらいはというふうに多くのお年寄りが言っております。簡単ですが……。
  61. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 実は厚生年金の場合に脱退一時金をもらっているのですよ。それが本人が十分納得して、もらったというよりも、大体年金に対する知識がないから、会社の方で退職金が少ない場合に脱退一時金を初めから計算してやってくれるわけです。それが非常に多いわけですよね。ですから、恐らくあなた方のグループの中には、脱退一時金は返済してもいいから、もう一回掛けさせてそうして資格を欲しい人が多いのじゃないか、こういうように感ずるわけですね。二十年でなくても、十五年でも資格がありますから、脱退一時金は一応あのときはついうっかりして、退職金の中に入っておって、もらいましたけれども、あれをひとつ返しまして、さらに少し掛けますから、続けてもらいたい、資格をもらいたいというのが相当多いのではないか。と申しますのは、実は昭和十九年に八百万人加入者がいるわけです。そして、三十年たった今日、受給者がまだ百万人しかいないのです。ですから、どこかで落ちこぼれておるということが相当言えるわけです、もう三十年たっておるわけですから。ですから、そういうのは何か全体的に救済する必要があるのじゃないかと思うのですが、そういう声は余り聞かれませんか。
  62. 小林文男

    小林公述人 先生も御指摘のように、非常に多く出ております。特に私が身近に接しておるのは東京を中心といたしますから都市老人でございます。都市老人というのは、かつてお勤めしたことのあるお年寄りの方々で、先生が言われるとおりの内容が非常に具体的な実例として出てきております。
  63. 井原岸高

  64. 増本一彦

    増本委員 御苦労さまです。簡潔にお答えください。  まず、辻さんにお伺いいたします。  先ほど五十一年度予算案の中小企業関係の施策について、かなり積極的な評価を含めた御意見がありましたけれども、しかし、一つは、この危機の深刻さというものから見て、まだまだ十分でないということが実はあなたの御本心じゃないか。せっかく岡山からおいでになったのですから、ほめるばかりが能じゃないので、虚心坦懐に切実な要求を、ひとつこうしてくれというやつを、もっとはっきり出していただきたい。それが一つ。  それから、先ほどお話がありましたけれども、中小企業の官公需の問題ですが、私は、これは一つは中小企業のサイドで受けざらをどういうようにつくっていくかということが一番大きい問題だと思うのです。私たちもその点でいろいろ苦労しているのですが、皆さんの実情に即して自主的な協業化を進めていく、あるいはいま中小企業の経営指導については国が補助金を出しているけれども、たとえば中小企業の自主的なサイドからのオルガナイザーについても、そういうものを養成し、具体的な活動を進めていくという点で、もっと国がそういう面でも援助すべきじゃないかというような御意見もあるでしょうし、そういう面での妙案なり、日ごろお考えになっている点がありましたら、ひとつお聞かせいただきたい。  それから三番目は、分野調整の問題ですが、私はもう法的な規制がどうしても必要だと思いますし、だから単純な行政指導にだけ皆さんが期待をするということでは、いまのこの矛盾は、中小企業の経営を守るという立場からは解決にならないのじゃないかというように感ずるわけです。その点でもう一つの問題は、いま小売部門に大手のスーパーや何かがどんどん進出をしてきている。大型小売店舗法の具体的な処理の問題が非常に切実な問題だと思うのです。これは私たちはもう一度許可制に戻すなり、中小企業の意見がもっと具体的に反映し、分野がきちっと守れるようにすべきじゃないか。首都近辺ですと、いま実際には売り場面積の五〇%から六〇%近くが大手に占有されてしまっているというような状態も生まれているわけで、皆さんのところでもやはりいろいろそういう問題がこれからも出てくるだろうと思いますね。その面での皆さんの御意見もひとつお伺いしたい。この三点です。  それから小林さんに、これは一点ですが、日本ではお年寄りの就労率が国際的にも非常に高い。それはもう社会保障社会福祉が非常におくれていることの反映ですね。大体日本では六十五歳以上で働いていらっしゃる方が五四%というような統計も総理府では出ています。ところがその反面、今日ほどに雇用、失業の問題がまだ深刻でなかった四十九年の十月の労働省の統計を見ましても、有効求人倍率が六十五歳以上のお年寄りで〇・〇二ですね。六十歳から六十四歳ぐらいまでの方ですと〇・〇七、先ほど東京都で九ヵ所お年寄りの就職のあっせんの施設があるというように伺いましたけれども、いま一つの問題は、仕事をどうやって保障していくかということだと思うのですね。その点で皆さんの方でお考えになっている、あるいはこうしてほしいという要求がございましたら、その点をひとつお教えいただきたい。この四つについてお伺いします。
  65. 辻弥兵衛

    ○辻公述人 ただいま私に対しましての御質問は三点あるいは四点あったのじゃないかと思います。  まず最初に、ことしの中小企業予算についてほめるばかりが能じゃないという御指摘でございまして、大変恐縮いたしておりますが、私どもはこの予算の金額だけふやせばそれでいいというふうなことではなくて、むしろ、予算の金額よりもいま切実に私どもが一番頭にありますのは、将来の日本の産業構造がどう変わっていくのか、その中で、私どもは零細企業者の集まりでございますけれども社会政策の対象としていわゆるお涙ちょうだいのような形ではいきたくない。小さくてもやはりそれなりに社会的な機能を果たし、日本の国民経済の発展に寄与できるというそれだけの何らかの誇りがないと、われわれはこういう仕事に従事できないと思います。そういう意味で、私どもはできるだけ私ども自身の力でそうした体質を獲得していきたい。そしてお互いに置かれておりますいろいろな条件が非常に違いますので、なかなかこのくらいの規模の業者はこういうふうにやったらいいというふうな、全国的に通用するノーハウというようなものは、御承知のようにないと言っていいのじゃないかと思います。したがいまして、いま御指摘のような予算につきましては、決して私どもはそれで十分に満足しておるわけではございませんので、たとえば現在私どもが一番関心を持っておりますのは、いわゆる金利の問題あるいはまた先ほど申し上げましたマル経融資制度がようやくここで制度的に一つの定着を見てきましたので、これをもっと規模を拡大していただきまして、いわゆる政府系金融機関は先ほど申し上げましたように補完金融という立場でございますけれども、私どもはむしろそうした政府系の金融機関が私どものメーンバンクになるのだというぐらいな気持ちで枠を広げていただく。このことはこの前の予算委員会でも、金利の問題で大分銀行あたりに対するあれが出ておりましたけれども、これはやはり、私がこういうことを申し上げるのは大変失礼と思いますが、大蔵大臣の修身のお話だけではなかなか実効が上がりにくい。したがって、やはりこれは政府系の金融機関が思い切った資金量を用意することによって改善されていくものだ、私はかように考えますので、このマル経融資制度の大幅な、ことしは三千五百億にふやしていただいたのですけれども、早く一兆円ぐらいまでにこれを引き上げていただきまして、せっかく先生にそう言っていただきましたので、ひとつお願いを申し上げたいと思います。  それから分野調整の問題につきましては、これは先ほどの御質問にもお答えいたしましたのですが、私どももいままでのような役所の行政指導だけではとてもむずかしいだろう。簡単に言いますと、従来の行政指導が十分な効果を上げておるのであればこういう状況にならなかったわけですから、確かにそういう点は言えると思うのです。ただしかし、私どもはことしのこの予算におきましては、先ほど申し上げましたようなことで幾つかの手だてを役所が真剣に考えておられる。でありますから、それらが本当に十分にワークして機能を発揮できるかどうか。それに対して私どもも自分の力でそうした調整機能を——いろいろな大規模店の問題もいま御質問がございましたが、これなども東京都の周辺におきまして先生の御指摘のような状況であることも私ども十分承知いたしておりますし、私、岡山の田舎でございますが、私の町にもダイエーがやってくるというふうな問題がいまありまして、この商調協が十分に機能するかしないかという非常にむずかしい問題が出ております。  しかし、私はこの問題については、やはり基本的には地元の業者の人が協業によって、そういった大型店をつくるということが消費者サイドからの強い要望であるならば、やはり私どもも消費者の要望に沿うような一つの協業体をつくりまして、そして大規模店の出店を来させないようにするということが本質的には解決の一番大切な問題だと思うのです。ただ、そのためには非常に膨大な資金と優秀な指導者が要るわけでございますし、私ども商工会とか会議所のレベルでそういったような優秀なリーダーを見つけて、そしてそれらのそういう協業体によってそういったものをつくる場合の資金の問題とか税制の問題とかそういったことについてもっともっと思い切った助成をやっていただかなければなかなかむずかしい問題じゃないか、かように思います。先ほども御指摘ありましたように、大型小売店につきましては、まず千五百平方メートル以下というものが規制を外れていますので、大体大型店の方もその下の千四百平方メートルとかそういったようなところをねらって合法的に大型小売店舗法の適用を受けないような形でチェーン店化を図っておる、こういうのが彼らの作戦だろうと思います。したがいまして、それらについて、それではどこの辺にやったらいいかということになりますと、その都市の人口とか購買力の問題とかそういうことでなかなか一律にはまいらないと思いますけれども、結局は私はそういうことで規制をすることも当面必要だと思いますが、それよりもやはりそういうものを受けて立てる力を地元の業者に与えるということが政策としては本筋じゃないか、かように考えるわけでございます。  それから、官公需の問題につきましては、御指摘のように、私どもは先ほども申し上げたわけでございますが、末端の実態におきまして、いわゆる官公需を受けようにも受ける規模がないとか資格がないとかそういったようなことで官公需から外されるというふうなケースも非常に多いわけでございますから、そうした官公需を受けるためにもやはりそれを受けるだけの技術なり力なりがその業者の人にできるようなそういった体質の改善といいますか、そういうことをする必要が非常にあろうかと思います。その点については、私ども自身の自助努力ももちろん必要でございますが、やはり行政ベースでの援助をお願いしなければならないと思いますし、御指摘のように、そういった点につきましての私ども努力も不十分であったことも十分反省をいたしておりまして、まあ私のところもこれは官公需とは直接関係ございませんが、水島に立地してきております大企業と地元下請企業との間のいろいろなトラブルがありまして、大企業の方は地元の中小企業を下請その他において利用したいと思っても結局利用できない。だからやはり地元の業者の人がそれだけの対象になれるだけの力をつけてもらわないと、私どもの方に言ってもらっても困るというふうなお話もございますし、官公需の場合も基本的には同じだと思います。そういう点についての努力はまだ私ども不十分であったことも十分に反省いたしまして、今後その線で努力をさせていただきたい、かように考えております。  以上でお答えといたします。
  66. 小林文男

    小林公述人 老人福祉について、まず、お年寄りの就労率がなぜ高いのだろうかという御質問に対して……。
  67. 増本一彦

    増本委員 それはいいですよ。それはわかりますから。だからこれに仕事保障するためにどうしたらいいかということを……。
  68. 小林文男

    小林公述人 仕事保障するというきちっとした制度的なものはございません。全国の高齢者職業紹介所はすべてそう言えると思います。  これは東京の場合なんですが、お年寄りはやってくるけれども、その職場開拓のセクションというものが全然ないわけでございます。したがって、お年寄りを雇ってくれます、雇いたいんですという業者の申し出を待っておる、それではちょっと足りないのではないかというので、ちょっと積極的な所長のおるところは、業者の団体あるいは商工会議所、そういうものと連携をとって仕事保障したい、またしておる、こういう方法をとっております。  それから、今度は制度的なものですが、これは御承知のように奨励金制度があるのでございますけれども、この方は、でき得るならば労働省の考え方を六十五歳以上まで枠を広げていただくといいのですが、現段階ではどうしても六十五歳までというふうになっておるので、そこら辺ひとつよろしくお願いいたします。
  69. 増本一彦

    増本委員 終わります。
  70. 井原岸高

    井原委員長代理 以上で両公述人に対する質疑は終了いたしました。  この際、委員会を代表いたしまして、両公述人に一言お礼を申し上げます。  本日は、貴重な御意見をお述べいただきまして、まことにありがとうございました。厚く御礼を申し上げます。(拍手)  次回は、来る九日午前十時より公聴会を開会いたします。  本日は、これにて散会いたします。     午後二時四十二分散会