○井原
委員 私は、自由民主党を代表し、ただいま議題となりました
昭和五十一年度
一般会計予算外二案の
政府原案に対し、
賛成の討論を行うものであります。
申すまでもなく、五十一年度
予算に期待するものは、
景気の着実な
回復と
雇用の安定を実現することであり、これは最大の
国民的
課題であると考えます。
しかるに、本
予算審議の途中において、米議会に端を発した、いわゆる
ロッキード問題は、わが国を含む多くの国々に波紋を投じたのであります。
これがため当
委員会は数日にわたり本問題に関する
証人尋問などを含む
審議を行い、
真相究明に
努力したのでありますが、三月八日以降分科会による審査に入ることなく、
予算審議が空転したことはまことに残念であります。そこで三月二十九日、本
予算の年度内成立が困難となったので、
国民生活に必要な最小限度の経費を計上した四十日間の
暫定予算の措置をとったことはやむを得ないものであったと考えます。
自来、四月六日まで
予算審議の
空白状態が続き、昨日ようやく
予算審議再開の運びとなったことはまことに御同慶と存じます。
以下、五十一年度
予算に対し簡単に私見を述べることといたします。
第一点は、
予算の規模とその性格についてであります。
五十一年度
一般会計予算の規模は二十四兆二千九百六十億円で、前年度当初
予算に比べ一四・一%の伸びとなっておりますが、歳入にあっては、経済
活動の停滞により税収不足が生じたので既定経費の見直しを行うとともに、国債をもって財源の確保を図り、歳出にあっては、公共事業関係費等の拡充により
景気回復の促進に努めた
予算となっておりますることは、
現下の経済情勢に最も適合し、かつ緊急な
課題に対処したものとして賛意を表するものであります。
また、財政投融資計画につきましても、前年度当初計画額に対し一四・一%増とし、その資金配分は
国民生活に最も関係の深い住宅、生活環境整備、厚生福祉、文教、中小
企業対策等に重点を置いたことは妥当な措置であります。さらに、同計画が
日本輸出入銀行の輸出金融について対前年比八〇・九%の増額を行ったことは、今後のプラント輸出等に対する資金需要にこたえるとともに
景気浮揚に対し一層の
役割りを果たすものと期待をいたしております。
第二点は、国債の発行についてであります。
国債の発行が、五十年度においても財政法第四条の建設公債三兆五千二百億円のほか、三兆七千五百億円の特例公債を発行せざるを得なかったことは、当面の経済情勢から判断して、
景気回復に対する財政の
役割りを考慮すれば、真にこれはやむを得なかったものと考えるのでございます。
特別公債の償還に当たっては、期限までに全額償還をなし、借りかえは行わず、発行は五十二年の出納整理期間までとし、税収の動向により、できるだけ発行の限度を少なくする余地を考慮した法案を提出していることは、
政府の財政に対する節度を示すものであります。また、国債依存率二九・九%という多額の国債発行に対し、その依存率減少のための方途を
政府が中期財政見通しとして
予算審議の参考に提出したことは、財政
運営に対する今後の指針としてまことに意義深いものがあります。
国債発行は、インフレとの関係において市中消化の原則を守ることはもちろんでありますが、一方、金融面におけるマネーサプライの量的規制に配意しつつ、国債管理政策の面においても公社債等の流通市場における魅力ある国債の位置づけについて、額面、金利、償還期限等を含め、一層の検討を願うものであります。
第三点は、
不況対策についてであります。
政府は、今回の
不況に対し、財政主導による資源配分を重点的に公共事業と輸出に置くとともに、一方、
雇用の安定確保を図っていることはまことに当を得たものであります。すなわち、公共事業関係費は前年度当初
予算に対し二一・二%増、住宅は二三・三%、生活環境施設整備三一・二%と大幅な伸びを示しております。
また、五十一年度を初年度とする住宅、下水道、公園、港湾等八事業の五カ年計画を長期的視野に立って策定したことは適切なことであります。
なお、今回の
予算において従来の一般的予備費と区分して、公共事業等予備費千五百億円を計上したことについて、憲法、財政法の
立場から種々論議がありましたけれども、予備費に対し、
政府みずからその使途について制限を設け、
国会の議決により、予見しがたい
予算の不足に充てることとしたことは、
予算が経済の動向に即応し、機動的に活用される点からもまことに当然の措置であり、時宜を得たものとして高く
評価するものであります。
公共事業費は、
景気の
回復に対し最も需要創出効果の大きいものでありますが、その実施が早期に、しかも着実に執行されなければ効果を発揮することができません。そのためには、本
予算の早期成立が望まれるものであります。
一方、
雇用の安定についてでありますが、わが国の
雇用制度は諸外国の諸制度に比し、終身
雇用の面が強く、これが
企業の過剰人員の抱え込みとなり、経営悪化の一因ともなっております。
政府においては、昨年来、
雇用調整給付金制度を設け、一時帰休等に対し資金的措置を講じ、対象業種の指定、受給人員等の拡大適用について配慮しているが、今回、高年齢者
雇用率制度の創設を含む中高年齢層への
対策を図ることとしております。
また、新たに、
企業倒産による賃金不払いの被害労働者に対し国が事業主にかわって立てかえることとする救済制度を設け、労働者の生活保護を行うこととしたことは、最も適切な措置として賛意を表します。
第四点は、社会保障の充実についてであります。
社会保障関係費は前年度当初
予算に対し二二・四%の伸びでありますが、今日の厳しい財政事情にあっては、真にやむを得ない福祉施策を重点にその充実を図っております。
たとえば、社会的、経済的に弱い
立場にある人人の生活安定に資するため、生活扶助基準を一二・五%
引き上げたほか、新たに、在宅重度心身障害者緊急保護事業に対する補助、厚生年金、
国民年金及び福祉年金の年金額を
引き上げる等、諸施策についてきめ細かな配慮を行っております。
今日の厳しい財政制約の中にあっては、社会保障についても優先度を考慮することは当然であり、社会的公正確保の見地から、医療及び年金制度間の格差是正並びに効率的運用等について、整合性ある見通しに一層の
努力が望まれております。
第五は、地方財政についてであります。
地方財政も国と同様、法人税を含む
国税三税の落ち込みにより、多額の財源不足を生じております。これに対して
政府は、地方交付税の総額を五十年度当初
予算に対し、国家
予算の伸び一四・一%を上回る一七・一%増の額を確保するとともに、地方債の大幅な発行を特別に認めることにより地方財政の
運営に支障のないよう措置をいたしております。
しかしながら、今後の地方財政は、五十年度を初年度とし五十五年度に至る中期財政展望にも見られるごとく、社会保障など住民福祉の向上に意を用いる一方、公債の依存度を低減させるためには、税負担への
考え方をさらに検討する必要があることを示しております。今日の最大
課題である
不況を乗り越えるためには、地方自治体においても国と同一基調に立って、一般行政費の抑制と財源の効率的配分により節度ある
運営を望むものであります。
以上をもって、
政府原案に対する
賛成討論を終わります。(拍手)