運営者 Bitlet 姉妹サービス
使い方 FAQ このサイトについて | login

1976-03-03 第77回国会 衆議院 予算委員会 第22号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十一年三月三日(水曜日)     午前十時三分開議  出席委員    委員長 荒舩清十郎君    理事 井原 岸高君 理事 小山 長規君    理事 塩谷 一夫君 理事 正示啓次郎君    理事 山村新治郎君 理事 小林  進君    理事 楢崎弥之助君 理事 松本 善明君    理事 山田 太郎君       伊東 正義君    上村千一郎君       植木庚子郎君    江崎 真澄君       小澤 太郎君    大野 市郎君       奥野 誠亮君    北澤 直吉君       倉成  正君    櫻内 義雄君       笹山茂太郎君    瀬戸山三男君       田中 龍夫君    谷垣 專一君       西村 直己君    根本龍太郎君       野田 卯一君    藤井 勝志君       保利  茂君    前田 正男君       松永  光君    森山 欽司君       安宅 常彦君    阿部 昭吾君       阿部 助哉君    井上 普方君       石野 久男君    岡田 春夫君       田中 武夫君    堀  昌雄君       松浦 利尚君    森井 忠良君       安井 吉典君    湯山  勇君       庄司 幸助君    寺前  巖君       林  百郎君    北側 義一君       坂口  力君    河村  勝君       小平  忠君  出席国務大臣         国 務 大 臣         (経済企画庁長         官)      福田 赳夫君         法 務 大 臣 稻葉  修君         大 蔵 大 臣 大平 正芳君         文 部 大 臣 永井 道雄君         厚 生 大 臣 田中 正巳君         通商産業大臣  河本 敏夫君         運 輸 大 臣 木村 睦男君         郵 政 大 臣 村上  勇君         労 働 大 臣 長谷川 峻君         建 設 大 臣 竹下  登君         自 治 大 臣         国家公安委員会         委員長         北海道開発庁長         官       福田  一君         国 務 大 臣         (内閣官房長         官)      井出一太郎君         国 務 大 臣         (環境庁長官) 小沢 辰男君         国 務 大 臣         (国土庁長官) 金丸  信君  出席政府委員         公正取引委員会         委員長代理   橋本 徳男君         公正取引委員会         事務局経済部長 吉野 秀雄君         警察庁刑事局長 土金 賢三君         警察庁刑事局保         安部長     吉田 六郎君         経済企画庁調整         局長      青木 慎三君         経済企画庁国民         生活局長    藤井 直樹君         経済企画庁物価         局長      喜多村治雄君         環境庁長官官房         審議官    伊勢谷三樹郎君         環境庁自然保護         局長      信澤  清君         国土庁土地局長 河野 正三君         国土庁水資源局         長       宮崎  明君         法務省民事局長 香川 保一君         法務省刑事局長 安原 美穂君         大蔵省主計局長 吉瀬 維哉君         大蔵省理財局長 松川 道哉君         大蔵省理財局次         長       吉岡 孝行君         大蔵省銀行局長 田辺 博通君         文部大臣官房会         計課長     宮地 貫一君         文部省大学局長 佐野文一郎君         文部省管理局長 清水 成之君         厚生大臣官房長 宮嶋  剛君         厚生省公衆衛生         局長      佐分利輝彦君         厚生省医務局長 石丸 隆治君         厚生省薬務局長 上村  一君         厚生省社会局長 翁 久次郎君         厚生省保険局長 八木 哲夫君         厚生省年金局長 曽根田郁夫君         社会保険庁年金         保険部長    河野 共之君         通商産業審議官 天谷 直弘君         通商産業省貿易         局長      岸田 文武君         通商産業省基礎         産業局長    矢野俊比古君         通商産業省生活         産業局長    野口 一郎君         資源エネルギー         庁長官     増田  実君         資源エネルギー         庁公益事業部長 大永 勇作君         運輸省海運局長 後藤 茂也君         運輸省港湾局長 竹内 良夫君         運輸省鉄道監督         局長      住田 正二君         運輸省鉄道監督         局国有鉄道部長 杉浦 喬也君         運輸省自動車局         長       高橋 寿夫君         郵政大臣官房電         気通信監理官  松井 清武君         郵政大臣官房電         気通信監理官  佐野 芳男君         郵政省貯金局長 神山 文男君         郵政省電波監理         局長      石川 晃夫君         労働省労働基準         局長      藤繩 正勝君         労働省職業安定         局長      遠藤 政夫君         建設大臣官房長 高橋 弘篤君         建設省計画局長 大塩洋一郎君         建設省道路局長 井上  孝君         建設省住宅局長 山岡 一男君         自治大臣官房審         議官      柳沢 長治君         自治省財政局長 首藤  堯君  委員外出席者         日本専売公社総         裁       泉 美之松君         参  考  人         (日本住宅公団         総裁)     南部 哲也君         参 考 人         (日本道路公団         副総裁)   尾之内由紀夫君         予算委員会調査         室長      三樹 秀夫君     ————————————— 委員の異動 三月三日  辞任         補欠選任   岡田 春夫君     松浦 利尚君   田代 文久君     庄司 幸助君   正木 良明君     坂口  力君   矢野 絢也君     北側 義一君 同日  辞任         補欠選任   松浦 利尚君     井上 普方君   北側 義一君     矢野 絢也君   坂口  力君     正木 良明君 同日  辞任         補欠選任   井上 普方君     森井 忠良君 同日  辞任         補欠選任   森井 忠良君     岡田 春夫君     ————————————— 本日の会議に付した案件  参考人出頭要求に関する件  昭和五十一年度一般会計予算  昭和五十一年度特別会計予算  昭和五十一年度政府関係機関予算      ————◇—————
  2. 荒舩清十郎

    荒舩委員長 これより会議を開きます。  昭和五十一年度一般会計予算昭和五十一年度特別会計予算及び昭和五十一年度政府関係機関予算、以上三案を一括して議題とし、一般質疑を行います。松浦利尚君。
  3. 松浦利尚

    松浦(利)委員 私は、ロッキード関係の、特に丸紅との国際契約についてお尋ねをいたします。  まず事務的なことをお尋ねするのですが、昭和四十七年度の公正取引委員会年次報告の百六ページに、国際契約届け出督促のために一千十四事業者対象として督促をした、こういう条項が入っておりますが、この中に、四十七年十一月及び四十八年三月の二回にわたって行った、こうしておるのですが、この中に丸紅対象に入っておったかどうか、その点をお聞かせいただきたいと思います。
  4. 橋本徳男

    橋本(徳)政府委員 お答えいたします。  四十七年十一月に行いました千十四社につきましては、これは東京の分だけでございますので、丸紅は入ってございません。しかしながら、引き続きまして大阪地方管内をやりましたのが、四十八年十二月以降やっておりまして、丸紅に対しては四十九年の五月に督促をしてございます。
  5. 松浦利尚

    松浦(利)委員 いま御報告がありましたように、丸紅に対しては、四十九年五月七日、独占禁止法第六条二項に関する届け出について個別的に督促指導をなさいましたが、この手続から言いますと、国際契約を締結した三十日以内に公正取引委員会提出しなければならぬというふうに明示されておるわけでありますが、丸紅側は、公取がせっかくそういう指導をなさっても提出に応じたのか応じなかったのか、その点をひとつお聞かせいただきたいと思います。
  6. 橋本徳男

    橋本(徳)政府委員 今回のロッキードとの契約書につきましては、督促はいたしましたけれども、その時点において提出はされていないようでございます。
  7. 松浦利尚

    松浦(利)委員 わが党の安井委員が、公正取引委員会にこの契約についての提出方資料要求をした段階で、公正取引委員会の方から丸紅に対して、ロッキード契約については独禁法届け出義務があるのではないかという質問の電話をかけたというふうにお聞きをしておるのでありますが、間違いありませんか。
  8. 橋本徳男

    橋本(徳)政府委員 そのとおりでございまして、五日の日に新聞発表をされましてから、国際契約届け出義務があるのではないか、その内容はどういうものかというふうなことを向こうに連絡し、それで向こうがそれに基づいて提出してきたという経緯でございます。
  9. 松浦利尚

    松浦(利)委員 それはこの独占禁止法三十九条による守秘義務に該当する報告書内容なのかどうか、その点をお聞かせいただきたいと思います。
  10. 橋本徳男

    橋本(徳)政府委員 個々の契約内容につきましては、すべてのものにつきまして三十九条の秘密事項という取り扱いをしてございます。
  11. 松浦利尚

    松浦(利)委員 それでは、若干内容に立ち入ってお尋ねをいたしますが、公取提出されたこの契約契約月日は何年になっておりますか。
  12. 橋本徳男

    橋本(徳)政府委員 契約月日守秘義務対象にはならないと私は感じます。したがいまして、これにつきましては、四十七年十一月一日となってございます。
  13. 松浦利尚

    松浦(利)委員 届け出をした正確な日にちは何日になっておりますか。
  14. 橋本徳男

    橋本(徳)政府委員 本年の二月十二日でございます。
  15. 松浦利尚

    松浦(利)委員 明らかに丸紅は、公正取引委員会が四十九年五月七日、丸紅対象として独禁法に規定された契約届け出指導したにかかわらず、本ロッキード問題が本委員会で議論されたときに、公正取引委員会督促を受けて五十一年二月十二日に提出をされたということがここで明らかになったわけでありますが、そういった丸紅指導のあり方、あるいは丸紅の姿勢というのは、私は政府をなめたやり方だと思いますし、それをまた今日まで見過ごしてきたところに巨大企業を増長させる、あるいは反社会的な行為をしてもなおかつ恬として恥じないというような風潮をつくり出したというように、私はまず第一点、批判を加えておきたいと思うのであります。  そこで、守秘義務対象になりますから、公取の方からは提出を受けませんが、本委員会資料要求として丸紅側資料の請求をいたしましたところが、わが党の安井委員のもとにおとといの晩これが提出をされて、各党に配付するというので、実は昨日の午後三時ごろ、わが党に丸紅提出した資料が出されました。この内容は、丸紅株式会社機械第一本部輸送機械部長の伴さんという人が提出された資料であります。この中で「貴委員会より提出の御要求のございましたロッキード関係契約につきましては、本日警視庁より添付の文書を受領いたしましたので、お届け申し上げます。なお、二月十七日貴委員会におきまして大久保証人がお願い申し上げたとおり、機密事項もございますので、同封文書につきましては委員会限りとしていただきますよう、御高配のほどお願い申し上げます。」というふうにこれに書いてございます。  したがって、委員長にまず取り扱いについて質問いたしておきますが、ここに伴さんが「文書」として記載をしておる事実については、本委員会にすでに提出されたものとして、ただいまから内容に立ち入って質問をするということについて、委員長の方の御了解をいただいておきたいと思います。よろしいですか。
  16. 荒舩清十郎

    荒舩委員長 結構でございます。
  17. 松浦利尚

    松浦(利)委員 それではそのように取り運ばしていただきます。  それで、公取の方に提出された資料をお見せをいたします。この資料は、公取提出された契約書届け出した契約書同一のものですかどうですか、見てください。——いま公取委員長代理にお示しをいたしましたが、余り膨大ですので係が来なければわからぬということでありますから、そのときにこれは確認をさしていただきたいと思います。したがって、質問は続けさしていただきます。  この丸紅提出してきた雷類の中で、「一九七二年十一月一日付をもって本協定は終了する」という部分があるんです。そして、この一九七二年十一月一日以降新たな契約書がここに出されてくるわけですね。それで現在生きておるのは、私が手元にしておる和文と英文と同一になったものが現在生きておる国際契約であります。こっちの方のものはすでに終了しておる、一九七二年十一月一日付で失効しておる契約書でありますが、この契約書公正取引委員会ではどういう扱いになっておりますか。提出されたことがありますか。
  18. 橋本徳男

    橋本(徳)政府委員 それは提出されてございません。
  19. 松浦利尚

    松浦(利)委員 そうすると、手続として提出されなかった国際契約丸紅側から本委員会提出をされておるのです。当然これは独占禁止法手続から言えば違反行為として、公取の方は九十六条の手続に従った告発対象事項になるんじゃありませんか。いままでなぜ告発をする手続はなさらなかったのですか。
  20. 橋本徳男

    橋本(徳)政府委員 その点につきましては、私の方で再度資料要求をしたいと思っておりますが、この告発の問題につきましては、実はこれは手続法でございまして、こういう手続法と、それからその実体法との関係におきましてその均衡を保つ必要上、現在のところはよほどでない限り、こういうものについての告発という問題は実は考えてございません。したがいまして、現在のところでは、直ちに告発という考え方はとりにくいかと思っております。行政指導によって、全部処置しておる次第でございます。
  21. 松浦利尚

    松浦(利)委員 私は、公取手続についても疑義がありますが、その問題についてはまた機会を改めて議論させていただきます。     〔委員長退席井原委員長代理着席〕  そこで、現在公正取引委員会提出されておる規定の中で、法務大臣お尋ねをしたいのでありますが、この代理店契約の中にこういう条項があるわけです。第七条「代理店行為と権限の制約」という部分があるわけでありますが、そのa項に、「本契約に基づく代理店行為は、ロッキードが都度出す政策指示に従う」という、そういう条文が七条のa項にあるわけです。だとすると、これに対する反論の機会というのは、この契約の中には全く見られません。たとえば相手側政策相手側指示に反対の意思を表示することは、これは禁止されておるのです。ということになりますと、ロッキード側が仮に丸紅の専務なりあるいは社長に対して、政府高官に金を出せ、あるいはこういう領収証を書け、こう言った場合に、それに対して異議を唱えることのできない契約条項というふうに理解がされるわけですけれども法務大臣見解としては、こういう代理店契約、「本契約に基づく代理店行為は、ロッキードが都度出す政策指示に従う」という大変厳しい条文が入っておることについて、どういうふうに判断をなさいますか。
  22. 稻葉修

    稻葉国務大臣 その七条というのは、初めていま聞かされるわけでございますが、お読みになった条文からするとお説のようなことになろうかと思いますが、なお専用的な知識に私は不十分な点がありますから、民事局長に正確な答弁をさせたいと思います。
  23. 香川保一

    香川政府委員 ただいまお読みになりました条項、お聞きした限りでお答え申し上げますが、そのロッキード社指示に従うという意味は、その代理店契約関係だけについての指示の問題だと思うのであります。もちろんそういった条項は、その限りにおきまして有効でございますけれども、ただいま御質問にございましたような契約履行以外の事項、本来契約が庶幾しております契約履行上の問題外のことについてまで、その条項の効力が及ぶというふうな解釈にはならないんじゃないかというふうにも思われるわけでございます。
  24. 松浦利尚

    松浦(利)委員 もう一遍確認をしておきますが、ただいまの民事局長のお話は、ロッキード営業行為に関する範囲内だけの問題だと理解をする、そういう意味ですか、簡単に言えば。そういうことですね。
  25. 香川保一

    香川政府委員 契約全部を拝見しておりませんので、つまびらかにいたしませんが、代理店契約ということでございますので、大体お説のようなことになろうかと思います。
  26. 松浦利尚

    松浦(利)委員 それでは公正取引委員会お尋ねをいたしますが、実はこの本契約に対していまあった本協定補足する協定、一九七五年、昨年の十一月十日、これを補足する内容協定がつくられておるわけでありますが、これは公正取引委員会提出されておりますか。
  27. 橋本徳男

    橋本(徳)政府委員 提出されておりません。
  28. 松浦利尚

    松浦(利)委員 これは大変重要な協定内容だと私は思うのです。それで、この内容に入ります前に、若干その背景を大臣皆さん方に御説明を、わかっておられるでしょうが御説明を申し上げておきたいのですが、実は昨年の八月の二十五日にはすでにロッキード問題が米上院銀行委員会で問題になっておりました。そしてまた、九月十二日にはチャーチ委員会、多国籍企業小委員会ですね、ここで社内資料として二百五ページにわたるものが公表されております。そして昨年の十月二十三日本委員会におきましてわが党の楢崎委員がこのロッキード問題について汚職ありという指摘を実はしておるわけであります。そしてこの補足的な協定ができたのがその後の十一月の十日であるということ、この点をひとつ皆さん方よく御理解いただきたいと思うのです。  私は英語は余り上手でありません、ほとんどわかりませんので、実はきのう四人の皆さんにこれを全部翻訳してもらったのです。ところが、この内容はどういうことかといいますと、大した文章じゃないのです。「一九七二年十一月一日、ロッキード社丸紅は、協定に述べられていた地域において丸紅ロッキードに対して提供する役務に関し市場代行協定に入るものとする。本補足ナンバーワン目的は、右協定修正補足するにある。」こういうものなんです。ですから本文を補足するものが結ばれておるわけです。この条文の第IV項に「第三者との関係」という部分があるのです。この「第三者との関係」のc項にどういうことが書いてあるかというと、「丸紅は、本協定に基づいて行動するに当たり、政治目的支払いを行わないことを契約し、同意する。」というのが入っておるのです。しかも、これはアメリカロッキード社と、この前証言しました大久保利春サインをしておるのです。そうすると相手側は、ちょっとリコピーがはっきりしませんから定かでありませんが、大体ロッキードの会長というふうに思われます。そうしますと、なぜ丸紅側がこういう政治目的支払いを行わないことを契約する必要があるのですか。  先ほど民事局長は、本協定ロッキードに関するものについてのみ大体常識的に言えば一般論としてこの種契約は考えるものだというふうに言われました。だとするなら、この契約の中に補足として「本協定に基づいて行動するに当たり、政治目的支払いを行わないことを契約し、同意する。」ということを大久保氏がサインをしなければならなかったことは、一体何を意味しておるのか、どういう意味なのか。しかも、これが昨年の十一月に実は締結をされておるわけでしょう。しかもそのときには、先ほど言ったように、アメリカではロッキード問題がどうやら問題になった、チャーチ委員会も発表した、本委員会楢崎委員指摘をした。そうなってきますと、明らかに丸紅は本協定に従って政治目的支払いを行わされたのか、先ほど言ったように、七条のa項によって行わされたのか、それとも丸紅自身も知っておってやっておったのか。逆に言うと、本協定修正をこういうふうに完全な形で行ったわけでありますから、明らかに過去において何らかのことをやっておった、丸紅側政治工作資金を出しておったことを知っておった、明らかに丸紅側は本協定を結ぶまでは何らかの形で政治目的の金を支払っておったという事実は、みずからがこういうふうにして明らかにしておるのじゃありませんか。法務大臣見解を求めます。
  29. 稻葉修

    稻葉国務大臣 先ほどの協定七条及びただいまの補足IV項c項ですか、それを総合して考えますと、あなたの御指摘になるようなことが疑われるわけでありまして、捜査上大変にいい参考になると思います。
  30. 楢崎弥之助

    楢崎委員 いま松浦議員指摘をいたしましたとおり、これは修正なんですね。修正ということは、過去はやっておったけれどもこれからはやらないというふうにとるのが普通であります。したがって、この契約ロッキード問題の非常に核心に触れた一つの部分であろう、このように私ども判断せざるを得ないわけであります。したがって、いま三木内閣としても真相の解明に全力を挙げておられるという話でございますから、このいまわれわれが指摘判断をした問題について、官房長官の御見解をここでただしておきたいと思います。
  31. 井出一太郎

    井出国務大臣 私も突然の呼び出しでございまして、いま松浦さんの御質問をずっと伺っておりました。したがいまして、その御趣旨をよく検討いたしてみたい、こう思っております。
  32. 楢崎弥之助

    楢崎委員 いま松浦議員指摘しましたとおり、一方の丸紅側当事者大久保利春氏というのがはっきりしているのですが、相手側ロッキードのこれは責任者であろうと思いますけれどもサインが明確でないわけですね。それから、この政治報告等についてはやはり大久保氏かタッチをしておったということになるわけでしょう。したがって、ここでもまたこの契約の一方の当事者である大久保氏をもう二度再喚問をしてたださなければならないというふうに私たちは思うわけです。すでに予算委員会において理事会で決定はいたしておりますけれども、さらに喚問必要性を私どもはここで指摘をしておきたい、このように思います。
  33. 松浦利尚

    松浦(利)委員 国家公安委員長お尋ねをいたしますが、法務大臣は先ほどのような御答弁をなさいました。いま楢崎委員指摘しましたように、明らかにこの協定に参加しておるのは大久保利春であります。ということは、金のそういったものについては十分熟知しておった。ところが、先般の本委員会における大久保利春発言あるいは丸紅社発言、明らかに偽証の疑いがある。その点について国家公安委員長の御見解を承ります。
  34. 福田一

    福田(一)国務大臣 ただいま御指摘がありました件につきましては、警視庁ではすでに把握をいたしております。そうして御指摘の点等も含めて適切な捜査を行っているものと私は信じております。
  35. 松浦利尚

    松浦(利)委員 国家公安委員長、あなたの御答弁は私の質問に答えておらないと思う。ということは、この前、ここで証人喚問で答えた大久保利春答弁を聞いておられて、与野党通じて厳しく追及したにかかわらず、そういうものはなかった、知らなかった、こういうことなんですね。こういう事実が仮に出てきたとすれば、これは明らかに偽証罪の疑いがあるでしょう。偽証罪とは申し上げません、疑いはあるでしょう。その点の見解です。
  36. 福田一

    福田(一)国務大臣 偽証罪の問題につきましては、これは国会が調査権をといいますか、証人喚問をしたのでありますから、国会の方から偽証があったということであれば、この偽証罪というものは成立すると思うのでございます。しかし、私が申し上げますことは、いまあなたが御指摘になったような条件につきましては、すでに捜査当局は知っておるものと理解しております。そうして、これを踏まえながら捜査をいたしておるものと考えます、こう申し上げたわけでございまして、偽証の問題は、これはここの院の問題ではないかと思います。
  37. 松浦利尚

    松浦(利)委員 まあ答えにくければお答えにならなくて結構ですが、私は、あなたの言われている、院のあれだということはわかっています。ですから、あなたはこの前見てどうだというふうにお聞きをしているわけなのです、どう思われたかということを。手続としてはそのとおりです。ですから、国家公安委員長の立場で言いにくければそれで結構です。  それで、法務大臣は何か委員会があるそうで、突然私がお呼びしたので、向こうの方からということで……(小林(進)委員「いやいや、用事があればいいですよ、こっちが先なんだから。なければ帰ってもらっていいですけれども」と呼ぶ)結構です。どうぞ。  それから、これは丸紅皆さんが本委員会要求で、公正取引委員会提出をしておらなかったために、あわててばたばた法的な手続はする、委員会資料を出すということだったのでしょう。ですから、この中に実は一番最後に契約でないものが出てきたわけです。契約でないものが出されました。これはさっき委員長に聞いたら、全部やってよろしいということですから、この内容を申し上げますと、おととしの九月ですか、全日空大阪支店長というんですか、その人からいろいろとトライスター導入についてのお話を聞いておられる。そして、その聞いておられる人は丸紅の松岡です。松岡という人がエリオットに対して出しておる手紙です。この手紙の内容を見ますと、実はあの大阪の住民の皆さんたちが騒音で大変乗り入れ反対だということを言っておられる。そして三つの条件を出して、大体大阪の住民の人たちも納得をしてくれておる。そして、仮にこれがこじれてしまえばトライスターの就航というのは来春に延びてしまうかもしれません。そしてさらに、官房長官、よく聞いておいてくださいよ。今度新しくなった三木総理はかつて環境庁長官をしておったので、公害に対しては非常に厳しい人だ、しかし大型機の導入については理解のある人だというようなレポートをエリオットに丸紅が出しておるのです。エリオットあてに丸紅の松岡という人がレポートを出しておるわけです。こういう点について官房長官、こういうものがどんどんどんどん毎月のように、あるいは、私、わかりませんが、大変なあれが行っておるわけですが、そういうものについてあなた、どういうふうに思われますか。
  38. 井出一太郎

    井出国務大臣 いまの御発言でありますが、私ども、これは関知しないところでありまして、そういう報告をしきりに出して送っておるということは初めて伺ったわけでございまして、まあそういうことが事実なりとせば、よく実情を調査してみたい、とう思います。
  39. 松浦利尚

    松浦(利)委員 官房長官にさらにお願いをしておきますが、これに対して、三木総理の見解ですね、どういう見解を持たれるのか、その点を後刻本委員会に、三木総理と御相談いただいて、御報告いただきたいということをお願いしておきたいと思いますが、よろしいですか。
  40. 井出一太郎

    井出国務大臣 これは総理と相談をいたします。
  41. 楢崎弥之助

    楢崎委員 いまの趣旨は、この松岡なる、丸紅のトライスター、これは担当者だと思うのですけれども、この松岡氏に、そういう印象を三木総理が与えておるわけでしょう、現にこう書いてありますから。だから、そうなると、当時は環境庁長官でございましたけれども、三木環境庁長官にもやはりこの話をしているということの裏づけになるわけですね、この文章からいくと。私が言っているのじゃないですよ、この文章からいきますと、そうならざるを得ない、そういう印象を松岡氏に与えておるわけですから。だから、その辺をひとつ三木総理によく事情を聞いていただいて、早急に御返答をいただきたい。それいかんによっては、一般質問でございますけれども、やはり三木総理の特別の御出席を願わなくてはならないことになるかもわかりませんから、重ねて要望をいたしておきます。
  42. 井出一太郎

    井出国務大臣 ただいま名前の出ました松岡なる人物がどういう印象を受けた、これは向こうさんのことでございまして、三木総理と何か接触があったかどうか、その辺はどうも、私も恐らくそういうことはなかったのだろうと思いますが、ただいまの御発言の点は、一度相談をいたしてみましよう。
  43. 松浦利尚

    松浦(利)委員 丸紅の松岡さんが全日空大阪支店長の松田さんのアドバイスをいろいろ受けて、こういうレポートを出しておるわけですね。  そこで委員長にお願いをいたします。これはたまたま本委員会要求した資料の中に紛れ込んでおったわけです、偶然と言えば偶然ですが。ですから、こういうレポートが常時丸紅からエリオットに出されておると思う。その資料を本委員会にすべて提出いただきたい。そうしなければ——こういう三木総理の考え方からあらゆる動静が逐一報告されておるということは、相当な詳細にわたった丸紅レポートというものがエリオットに出されておると思うのです。その点の資料について、本委員会提出してもらいたい。国政調査権は本委員会の腹一つで決まるのです。だらしのない国会だとかなんとかという国民の批判もある。それはわれわれが腹を決めないからなんだ。国政調査権を発動すればやれるんだ。われわれが国政調査権を、口では国政調査権と言いながら、それを形式的に、形骸化しておるところに、形の上だけの国政調査権というところに問題があると思う。私はその意味でこのレポートを全部提出していただきたい、丸紅側にそういうふうに伝えていただきたい。委員長に要望しておきたいと思いますがよろしいですか。
  44. 井原岸高

    井原委員長代理 すでに当委員会理事会においては、再、三度にわたり資料要求をいたしてまいりました。ただいまの御要求に対しましても、理事会で協議いたしまして善処いたしたいと存じます。
  45. 安井吉典

    安井委員 ちょっといまの資料要求について関連してお願いしたいわけでありますが、いま松浦委員が取り上げているのは、第一次の証人喚問二日目の際に、永末委員と私とが契約書として要求した分であります。その中にも問題点がいま出てきて、松浦委員の追及があったわけですが、その日、正森委員から、いわゆる丸紅レポートとか大久保レポートという、契約書に基づいて丸紅が定期的にロッキードへ送っているレポートの資料要求があったわけです。で、それに対して提出されたのは五十年度分だけなんですね。五十年の分しか来ていないで、そのうち、たまたま二枚だけが私の要求の後にくっついてきて、それがいまの三木首相が出てくる部分なんです。  だから、私はそういう意味からいっても、このレポートというものが非常に重要な疑惑解明の決め手になる、こう思います。たった二枚のレポートの中にもこういうのが出てくるわけですよ。だから、五十年だけで国会をごまかそうというふうな態度を私どもは許すわけにいかぬ。やはり四十九年のものも四十八年のものも四十七年のものも、それ以前のものも、ロッキード丸紅の間の契約に基づいたレポート、これは全文出していただきたい。そのことを私は特に委員長に、きょうは代理ですけれどもお願いしておきます。どうでしょう。
  46. 井原岸高

    井原委員長代理 わかりました。理事会で協議いたします。
  47. 松浦利尚

    松浦(利)委員 ぜひ提出をしていただきたい、提出させるべきだというふうに申し上げておきます。  それでは続いて質問をいたします。  実は、大庭、若狭両証人を呼んでここで議論をいたしまして、大庭社長がやめた理由についていろいろな証言をなさい、また食い違いの証言もありました。しかし、決定的なものはブラック資金ですね、俗に言うM資金の融資問題に絡む念書を書いたことが、株主総会における筆頭株主あたりからクレームがついて、任期半ばでやめざるを得なかった、こういう事態でありますが、実はこの問題について、国家公安委員会はその背後関係について捜査をなさったのかどうか、その点をまず国家公安委員長にお聞かせいただきたいと思います。
  48. 土金賢三

    土金政府委員 お答え申し上げます。その当時のことについて御報告申し上げます。  その当時、警視庁におきまして、昭和四十四年十月に全日空株式会社常勤顧問の長谷村資氏から全日空社長名の三千億円の融資あっせん依頼書などが鈴木明良を通じて人手に渡っているので、回収したいがどうしたらよいか、こういう相談を受けました。それについていろいろ聞いてみますと、刑事事件として取り扱うことはむずかしい状況であったために、当事者の話し合いで解決するよう指導したことがあるということが判明いたしました。しかし、事件処理をするに至らなかったため、相談を受けた具体的内容など、詳しいことはわかっておりません。
  49. 松浦利尚

    松浦(利)委員 これは後の祭りですが、あの大庭社長がそういう事情でやめた背景というものは当時徹底的にやはり捜査をしておくべきだったというふうに私は思います。  そこで、大蔵大臣お尋ねをいたしますが、こうした動きというのが現在も現実にある。昨年、銀行局長から各銀行に対してブラック資金の問題について通達あるいは口頭示達というのですか、何か連絡をなさったことがございますか。
  50. 田辺博通

    ○田辺政府委員 ちょっと恐縮でございますが、ブラック資金とおっしゃいましたですか。
  51. 松浦利尚

    松浦(利)委員 要するに大庭全日空社長に対して巨額のやみ融資をする、やみ資金を融資する、そういうふうな動きに対して、依然として続いておるから、昨年そういう何か口頭か文書か、そういうことをやられたことがないか、こういうことです。
  52. 田辺博通

    ○田辺政府委員 失礼しました。  大分前から政府管理の特殊資金であるとか、何だか出所がはっきりしません相当巨額のお金がどこかにあって、それは何かたとえば大蔵省の某という人の許可とか指図とかいうようなことでお金が貸し付けられる可能性がある、それを自分は紹介するから、あなたひとつどうですかというような話がときどき金融機関にあらわれている例がございました。昨年にもたしかそういう話が出てまいりまして、普通の人ですとそういうことは全然信用しないわけでございますけれども、いろいろ金融機関にあらわれて被害を与えてはいけないということで、私どもの銀行局からは銀行協会と関係のところに注意を促しております。
  53. 松浦利尚

    松浦(利)委員 ただいま大蔵省の銀行局長の方からお話がありましたように、この問題は依然として続いておるわけです。しかも企業が合併集中するときとか、あるいは役員の交代でいろいろ問題が出てきたとき、こういったときに限ってこういう問題が現実に出てきておるのです。きのうすでに警察庁の方には、どこから出たか、出所も私は申し上げておきましたから、ですからいまから申し上げることは事実であります。直ちに調査していただきたいと思いますが、本委員会では、だれからそういうあれがあったかということは省略をさしていただきます。ただし、企業であったことだけは事実であります。  これは最も新しい例でありますが、昨年の春、中谷という四十歳ぐらいのタイプの人が、五千億融資の枠がある、これはすでに大蔵省の認可の枠がおりておる、本部からも指示が来ておるので、大庭さんと同じように——大庭さんと同じようにというのは、これは描写でありますが、念書が欲しい、それで、それを断ったら、再三にわたって、念書が欲しい、こういうふうに言ってきておられる。もう一つの企業では、近畿大学の教授、四十歳、そして、その人が六十歳ぐらいの人を伴って、やはり同じように大蔵大臣——大平大蔵大臣であります。それから日銀、そういったところからすでに了解を得ておるから、融資を受けないか。あなたはだれかと聞いたら、宮内庁京都御所事務所長だ。いいですか、これは名前をかたっておるんだと思うのです。そういうふうな何か宮内庁という言葉を使えば相手が信用すると思ったのでしょう、この持ってきた人たちは。そういうやり方で依然として同じケースというのがあちらこちらに出てきておるのですね。これにいろいろな抗争が絡んで、大変不明朗なものをつくり出してしまう。あるいは悪用されるおそれがある。こういったものは断ち切るべきだ。全日空で大庭社長追い落としに——これは私の判断でありますが、成功した。またやろう、そういう動きになりかねないおそれもある。  こういった問題について、国家公安委員長は、それこそ本腰を入れて取り締まるというお考え方ありますか。
  54. 福田一

    福田(一)国務大臣 ただいま御指摘のような件は、どういう思惑を蔵しておるかは別といたしましても、関係者に非常に悪い状態というか、影響を与えるものでありますし、それからまた、いま指摘されたようなことで簡単に何千億という金融ができるはずがありません。その裏には詐欺とかあるいは何らかの犯罪の要素を含んでおることもうかがえますので、この種の件はやはり厳重に調査をすべきものと考えます。
  55. 松浦利尚

    松浦(利)委員 直ちに厳重に調査をしていただきたい。そして、もう一遍、大庭社長がやめた背景についても同時に調査をしていただきたい。あわせお願いをしておきますが、よろしいですか。いいですね。
  56. 土金賢三

    土金政府委員 ただいま御指摘のありました企業に対する融資申し込み、二つ事例を申されましたけれども、私どもはいままでそういうことについては承知しておりませんで、これについては、管轄の警察におろしまして処置にゆだねたい、こういうふうに考えております。  なお、この種の多額金融の話が全部犯罪を構成するというふうなことは必ずしも直ちには言えない問題もございます。しかし、いま話にも出ましたような異常な事案につきましては、警察といたしましても、その実態を十分に注意して、詐欺等の具体的な犯罪の容疑が認められる場合には、徹底した捜査を行うようにいままでも指示しておりまして、何件かいままでも検挙いたしておりますし、また、今後もそういう方針でやってまいる所存でございます。  ただ、最初の鈴木明良事件につきましては、私どもの方でも、話を伺いまして早速調査いたしたのでございますが、その当時事件にならなかったということで資料を作成しておらなかった、正式のそういう調書もつくっておらなかったということで、真相がいまのところわからない、こういうことでございますが、今後もそういうふうな点についてはできるだけ調査してみたいと思いますが、現在のところではそういうようなことはわかっておらない、こういうことでございます。
  57. 松浦利尚

    松浦(利)委員 あわせて調査をしていただくということでありますから、調査をしてみてください。  国家公安委員長、お仕事があるそうですから、結構です。  それから、続いて商社関係について、お残りの副総理、大蔵大臣、通産大臣お尋ねをいたしたいと思うのであります。  きょう、丸紅の檜山会長が株主総会でおやめになるという新聞報道がございましたが、実はこの丸紅というのは、再三にわたって本委員会でも問題になり、四十八年四月十一日の物特委員会、四十九年二月二十五日の予算委員会の物価集中審議、そのたびごとに当時の檜山社長は本院の委員会に呼びつけられておるわけであります。そのたびごとに国民に対して反省を示しておるわけであります。  最近の事例を挙げてみましても、四十八年二月に輸入豚肉の関税脱税容疑で東京本社が捜査されております。輸入価格操作による脱税容疑であります。これは四十八年十一月に起訴されて、五十年三月二十日に判決が確定をしておるわけであります。あるいはやみのモチ米買い占め容疑で東京本社が捜査をされ、食糧庁から告発をされ、四十八年六月六日に起訴され、現在係争中であります。四十九年一月十六日には輸入銅の関税法違反で罰金相当額処分を大蔵省から受けて、行政処分が確定をいたしております。そして今度また、国民にそして世界に大変な衝撃を与えておるロッキード事件に巻き込まれておる。しかも内容的には、あってはならない大変なことが公然となされておる。  いままで何遍も何遍も総合商社という問題について、われわれはまじめに本委員会で議論をしてきました。与野党を通じて、商社のあり方は、厳しく議論されたはずであります。依然として、特に丸紅の態度というのは変わっておらない。公正取引委員会行政指導してもなおかつその行政指導に従わない。所管官庁は通産省であります。総合商社に対して一体どういう指導をなさったのか。行動基準をつくらせます、こう言われた。確かに行動基準はつくった。行動基準は見せかけであって、何らこれが効力を発しておらない。通産大臣の御見解を承りたい。これからの総合商社についてどのような措置をされるのか、御意見を承りたい。あわせて、副総理であり、物価担当大臣であります福田さんからも御見解を承っておきたいというふうに思います。
  58. 河本敏夫

    ○河本国務大臣 商社は、昭和四十八年の後半に各社それぞれ行動規範をつくっております。その内容はきわめてりっぱなものです。でありますから、商社の憲法とも言うべきこの行動規範を実行すれば何も問題は起こらぬわけでございますが、果たしてそのとおり実行されておるかどうかということにつきまして、通産省では四十九年から毎年聞き取り調査をいたしております。毎年三月にしておるわけでありますが、ことしも第三回目の調査を今月する予定になっております。ただ、聞き取り調査等を通じて痛感をいたしますことは、商社の規模が非常に大きくなりまして、何十何百という企業が一つの企業に集約されておる、こういう形になっておるわけですね。それぞれ事業部制等をつくりましていろいろな組織はつくっておりますけれども、その管理体制というものが非常に問題があると私は思うのですが、余りにも大きくなり過ぎまして管理体制が不十分である、そういうことがありますので、ことしの聞き取り調査は、この管理体制を中心に、果たして憲法ともいうべきこの行動規範が実行されるような形になっておるのかどうかということについて十分調査をしてみたい、かように考えておる次第でございます。
  59. 福田赳夫

    福田(赳)国務大臣 四十八年の石油ショック、あれを契機といたしまして、総合商社のあり方につきましては、これは厳に行動基準に従ってやってもらいたいという指導を通産省がしておるわけであります。この行動基準が守られる限りにおきましては、世の批判を受けるようなことはあり得ないわけでありますが、今回のこの問題が提起された、これを契機といたしましてさらに一層その方針を推し進めてまいりたい、かように存じます。
  60. 松浦利尚

    松浦(利)委員 さらにこの問題についてお尋ねをしたいのでありますが、どうも商社に対する金融政策そのものが、私は商社を増長させておるんではないかというふうに思います。  五十年三月末東京証券取引所の報告から資料を収集したわけでありますが、総借入額が七千六百五億四百万、大変な額であります。その中で政府系資金、輸銀、農林中金、そういった政府系の資金が一体その借入金の中のどれくらいを占めておるかというと、一四・七%を五十年三月末で示しておるのですね。思い出していただきたいのですが、あの予算の物価集中審議が行われましたときに、商社に対する融資の問題が議論になって、御承知のように大蔵省の大口融資規制というものが行政指導としてなされたはずであります。  ところが、こういう事件をやってきておるにかかわらず、依然として政府系輸銀の占める比率というのは非常に高い。しかも四十五年三月末から四十七年三月にかけては倍に増加をしておる。そうしてどんどんとふえ続けておる。減ることはない、ふえ続けておる。アメリカの証券取引委員会では、ロッキードのおととし行われた大統領の緊急融資法に伴う融資についてもストップするという厳しい姿勢をアメリカ政府は打ち出そうとしております。私はそれに右へならえせよと言うつもりはありませんが、少なくとも政府系資金を大量に借り入れておるところが逆に法に照らして違法行為をする、先ほど言ったように輸入豚肉にしてもやみモチ米にしても、あるいは輸入銅の問題にしても、国民としては考えられない、もうけるためには手段を選ばないということでやっておる。しかもその内容政府系の輸銀なり農林中金の金が使われておったと言ったら、国民はどういうふうに感ずるでしょうか。大蔵大臣、どういうふうにお考えでありますか、大蔵大臣の御見解をまずお聞かせいただきたいと思います。
  61. 大平正芳

    ○大平国務大臣 総合商社は内外にわたって非常に多彩な営業活動を展開いたしております。そのうちで貿易につきましては、輸出入銀行が相当巨額の金融をいたしておりますことは御指摘のとおりでございます。また農林中金等も、その営業領域におきまして農産物の取り扱いについて総合商社と関係を持っておる面が相当あると思うし、したがって、総合商社に対しまして中金からの融資も相当巨額に上っておると承知いたしております。  私ども、商社の活動というものを、国民を無視して、もうけ本位でただ利益を裸で追求していくということのみに没頭しておるとは思わないのでありまして、それなりに日本の経済、産業の維持に貢献いたしておるりっぱな機能を果たしておるものと思います。  ただ、政府関係の資金を活用する場合におきまして私どもが注意いたしておりますのは、せっかく政府関係金融機関の資金が使われる場合におきまして、それが目的以外に流用されるというようなことがあっては国民に申しわけないわけなんでございまして、その点につきましては終始監視を怠っていないわけでございまして、そういうことのないように検査もし、チェックもいたしておるつもりでございます。したがいまして、その使用が適正、有効である限りにおきまして、商社に対する融資をあながちとめるべきものとは思いません。アメリカ政府ロッキードに対しまして融資保証をいたしておったということは承知いたしておりますけれども、わが国の政府はそんなことはいたしておりません。
  62. 松浦利尚

    松浦(利)委員 結局、中小企業の場合は資金繰りに困って倒産をする。まじめに額に汗をして努力をして、低成長あるいは調整期間のために倒産をし、失業者が出る。一方、商社の方は先ほど言ったようなことが、これは丸紅に関してだけで私は申し上げておるのですが、そういうことをやってもなおかつ政府系の資金が注入される。そのことに対して国民が憤激するのは、私はあたりまえだと思う。そういうことがあったら減るならいいです。逆にまたふえてきておる。そういうものについて国民が納得しないじゃないか、こういうふうに申し上げても、大蔵大臣は、いや商社はむしろ日本の経済発展に非常に貢献をしておるんだから、厳しく監査はするが、チェックはするが、従来どおりの方針をとるというお考え方ですか。そういうふうに受け取ってよろしいですか。
  63. 大平正芳

    ○大平国務大臣 政府機関の融資をとめるというにはよほどの理由がなければならぬと思いますが、丸紅におきましてそういう状態にあるかどうかということにつきましては、これは融資の問題でございますから十分検討しなければいかぬと思いますけれども、私どもがただいままで受けておる報告によりますと、政府機関の融資につきまして間違いがあるということは承知いたしていないわけでございます。
  64. 松浦利尚

    松浦(利)委員 それでは間違いを起こさないはずなんですよね。大蔵大臣が言われるようなことなら、こんなことが起こってくるはずがないのですよ、常にチェックしておってもらえれば。輸銀の使い方というものをじゃんじゃんチェックしていけば、あるいは農林中金の融資分をチェックしていけば、こんなことはあんまり出てこないと思うのです。私は、国民を信用させるために、一体丸紅の輸銀というのは何に使われておるのか、どういう目的のために輸銀の金が融資せられておるのか、農林中金の金が何に使われておるのか、融資されておるのか、それをこの際、この委員会資料として提出していただきたいと思います。  四十五年三月末以降、返済を終わったものについては返済を終わった月日を含めて、使われておる融資先、その点の資料を出していただけますか。
  65. 大平正芳

    ○大平国務大臣 輸出入銀行の丸紅に対する融資残高は、五十年三月末で、これは有価証券報告書提出の時期で見てあるわけでございますが、八百九十一億円でございます。その後どのようになっておりますかは御報告をいたします。  それから政府系金融機関としての輸銀は、たとえばプラント輸出に融資する場合であれば、当該輸出案件の内容を個別に審査いたしまして、輸銀融資対象としての適格性、所要資金量等につきましてチェックをいたしております。また貸し付けの実行に当たりましても、当該案件の資金需要が発生したことを確認の上実行しております。借入人が資金を他に流用することができない仕組みに相なっております。さらにその後も貸付金の使途状況を必要に応じて借入人から随時報告させる等、貸付金の使途管理に万全を期しているところでございます。貸付金の使途を十分チェックする体制にあることは御理解いただきたいと思うのでございます。  農林中金でございますが、農林中金の丸紅に対する貸付残高は、五十年三月末二百二十九億円、すべて短期融資であると承知いたしております。農林中金はいわゆる政府関係金融機関ではございませんけれども、農林系統金融機関として貸し出しを行っており、一般企業に対しましてはその農林系統金融機関としての性格から、たとえば飼料の輸入等、農林漁業との結びつきのある業務が行われている点に着目いたしまして貸し出しを行うことが認められております。丸紅に対しましてもこれに基づき貸し出しが行われておるものと承知いたしております。農林中金における貸し出しの審査、管理等は、一般の民間の金融機関と同様でございまして、大蔵省としても農林省と連絡をしながらその貸し出しが適正に行われておるよう従来から指導しておるところでございます。  したがって、今日両機関に対しまして、丸紅に対する融資といたしまして、事改めてチェックを行うことは考えておりませんけれども、いま御要求でございますから、どのような融資の現状になっておるか、それをどのようにチェックしておるか、そういった点につきましては御報告いたします。
  66. 松浦利尚

    松浦(利)委員 いま大蔵大臣からまじめに御答弁いただいたのですが、大蔵省としてのチェックの様子は私はまじめにやっておられると思います。しかし、現実にこういう問題が起こってきておるから、その中に政府系資金が融資されておるということについて国民側は非常に納得できない面がある。再三申し上げてきたのです。この事件が起こるたびに、丸紅の事件のあるたびに委員会では再三大蔵当局に対して申し上げてきた。しかし、個々の融資についてはこれは私契約だから守秘義務になるんだ、だから公表することはできませんということで、一体どういうところに輸銀が出されておるのか、どういうところに農林中金の金が使われておるかということがわからないですね。ただチェックがあったというだけの御報告なんです。ですから、これほどしょっちゅうこういう事件が起こってきますと、先ほども申し上げたように、具体的に個々のケースケースについて何にどれだけの金を融資した、そういう明細を本委員会資料として出してくれぬか、出していただけませんかということを私は申し上げておるのです。大蔵当局の御努力は私は決して否定はいたしておりません。その資料を出していただけますか、こう申し上げておるのです、個々の契約について。
  67. 田辺博通

    ○田辺政府委員 輸出入銀行がある特定の商社に対して融資をしておるその内容の詳細、これはやはり私契約でございますので公表するというようなことはいかがであろうかと思いますが、ただ先ほど来御質問の趣旨が、国民が疑惑を持っておる、こうおっしゃいますので、たとえばどういうものに大きな貸し出しがあるかということの例をちょっと申し上げたいと思いますが、現在の貸出残高の中で四十五年以降に貸されたものの大きなものを申し上げますと、四十五年にはフィリピンの火力発電用ボイラー設備のプラント輸出でございます。それから同じく四十五年にソ連向けABS樹脂製造設備一式、それから韓国に対しましては石油コンビナート用発電設備、四十六年に入りましては、アルゼンチンに対しましてクラフトパルプ製紙プラント一式、それからイランに対しまして鉄道用自動信号装置一式、それから四十七年になりまして、アルジェリアに対するセメントプラント用ミル一式、四十七年同じくフィリピンに対して火力発電用ボイラー設備一式、四十八年になりまして南アフリカ共和国に対します半連続式ビレットミル一式、四十九年になりまして、アルゼンチン向けの電車九十二両設備品一式等でございまして、いずれも大型のプラント輸出に関連いたしましてのこの輸銀からの融資というものはやはり相当の金額になってまいるわけでございます。そのほかごくウエートは少ないのでございますけれども、輸入あるいは海外投資というようなものがございます。
  68. 松浦利尚

    松浦(利)委員 いまどういうところに何をというふうに数量、一式一式ということで御報告がありましたが、やはりどこに何のために幾ら、しかも融資内容はどういう条件ということについても私は明確にしていただきたい。いつも私契約だから秘密だからということで、概括的なことで終始されている。結局また同じことの繰り返し。しかも政府融資は減るどころか逆に年々ふえていくという実態ですから、だから私が言った資料について、確かに守秘義務があるとするならば——やはり本委員会で国政調査のために必要な案件でありますから、ぜひ出していただきたい。委員長、やはりその資料がないと国民の疑惑というのは——これ一遍ならいい、何遍も過去にあるわけだから、資料を出すようにしてください。
  69. 井原岸高

    井原委員長代理 理事会で検討いたします。
  70. 大平正芳

    ○大平国務大臣 御要望承りましたので、できるだけ努力して資料をつくってみますから、吟味を願いたいと思います。
  71. 松浦利尚

    松浦(利)委員 それでは最後に、私はやはり政府の監督指導というものが商社の姿勢に対して厳しければ厳しいだけに、こういう過ちは是正されていくと思うのです。もう本件のような事件が再度発生しないように政府としては厳重に処置するということについて、国民の前にひとつここで、三木内閣として、副総理、そしてそれぞれの担当大臣から、もう絶対に二度とこういうことは起こさないように指導するということについて確約をしていただきたい。もう何遍も同じことの繰り返しでありますから、ぜひここでその約束を国民に向かってしていただきたいというふうに思います。
  72. 福田赳夫

    福田(赳)国務大臣 商社活動はわが国の経済の維持のために大変大事なことでございますが、同時に商社というものが非常に巨大な経済活動をしておるということにかんがみまして、商社がその行動基準を厳格に守っていくということにつきまして今後とも最大の努力をしてまいりたい、かように存じます。
  73. 河本敏夫

    ○河本国務大臣 当初に申し上げましたように、商社の今後のあり方につきましては監督指導をさらに徹底をするつもりでございます。
  74. 大平正芳

    ○大平国務大臣 商社に対する金融につきましては、その機能の適正な維持を図らなければならぬことは当然でございますけれども政府資金の活用等につきましては十分の注意を怠らないつもりでございます。
  75. 松浦利尚

    松浦(利)委員 もうあと時間がありませんから、それでは鉄鋼の値上げ問題について残された時間だけ御見解を承っておきたいと思うのであります。  五十年の十二月十日、公正取引委員会が高炉メーカーの値上げ発表についての見解をまとめられまして、問題点を指摘しながら公取見解として発表なさっておられます。これについて公取の方では問題点ありと、今日でもそういうふうに判断をしておられるのかどうか、その後変更する気持ちがあったのかどうか、その点をひとつ明確にお聞かせいただきたいと思います。
  76. 橋本徳男

    橋本(徳)政府委員 今日におきましても、まだもし実態としてこういう状況が続いておるんならば、この考え方は変えてございません。
  77. 松浦利尚

    松浦(利)委員 それに対して通産大臣、担当大臣として公取見解、問題ありという御見解をこれまた新聞に発表しておられますが、その見解をお変えになるつもりはありませんか。
  78. 河本敏夫

    ○河本国務大臣 鉄鋼の値上げ問題につきましては問題はない、こう考えております。
  79. 松浦利尚

    松浦(利)委員 物価担当大臣として間に立っておられる副総理、どういうふうに考えられますか。どちらに軍配を上げられますか。
  80. 福田赳夫

    福田(赳)国務大臣 鉄鋼値上げ問題は、これは通産省ともよく連絡をとって、適正に推移するように、こういうふうに考えておりますが、ただいま通産省として別に問題はない、こういう見解でありますので、私どもといたしましてもその通産省の見解に大体異存はない、こういうふうに考えております。
  81. 松浦利尚

    松浦(利)委員 私はそこにどうも大変な問題点があると思いますから、逐次資料をお見せして、これは私が市場で集めた資料公取にいただいたもの、通産省からいただいたものと比較してお尋ねをいたします。  御承知のように、今回の値上げ以前の値上げ、四十九年六月値上げをした、この前の値上げは四十九年六月の値上げだったというふうに理解してよろしいですか。
  82. 河本敏夫

    ○河本国務大臣 四十九年のときの値上げと昨年の年末の値上げは、事情が非常に違うと思います。四十九年の分は、狂乱物価当時の混乱を受けまして上限を抑えた、これ以上上げてはいかぬ、こういうことで上を抑えた、こういう趣旨の値上げでございます。
  83. 松浦利尚

    松浦(利)委員 いや、私がお聞きしておるのは、今度の値上げの前の値上げは四十九年六月の値上げだったですね。そのことだけ、だったらだったで結構です。
  84. 矢野俊比古

    矢野政府委員 先生のおっしゃるとおりでございます。
  85. 松浦利尚

    松浦(利)委員 石油パニックのときには、御承知のように、通産省の方で価格を凍結をして、そして四十九年六月には各メーカーから資料をとって、四十九年六月に値上げを通産省の指導で行ったわけであります。これは局長さんで結構でありますが、この四十九年六月以前の値上げ平均価格は、前の各社別の値上げは二千円からあるいは三千円等のばらつきがあった、価格については不統一であったということについては認められますか。これは通産省の資料でいただいたんです。それば認めていただけますね。
  86. 矢野俊比古

    矢野政府委員 お説のとおり、四十九年三月に価格凍結が行われまして、その事態におきまして各社に差異があったことは事実でございます。
  87. 松浦利尚

    松浦(利)委員 そして今度の値上げに関する各社別のユーザーに対する価格表をユーザーの方から手に入れたわけです。これを見てまいりますと、四十九年六月に通産省が行政指導する前は、価格に非常にばらつきがあった。二千円から三千円のばらつきがあった。ところが、今度の値上げの根拠になる旧価格というのは、各社別全部同じなんですね。全く同じ。極端に言うと一物一価というものがつくられているわけです。通産省の当時の発表を見ますと、新聞記者団に四十九年六月十八日、基礎産業局として鋼材の価格指導についてという値上げの希望額がここに出されておる。値上げが出されておる。ところが、この値上げ希望額というのはバンドがあるわけですね。格差がある。九千円から幾ら、これは各社平均でありますから、あるところは九千円であったり、あるいはあるところは一万二千百円であったりするんですね。そういうふうにばらつきのある価格指導を行ったという発表をしておるのですが、実際に調べてみたら、前にばらつきがあったところも含めて全部価格が横一線に並んでおる。ということを逆に言いますと、四十九年の六月の通産省は、当然コストその他で市場価格や卸価格に格差があるものまでも含めて、一物一価というものを逆に行政指導によってつくり出した。前は各社は価格というのは企業秘密でありますから、絶対に発表しなかった。ところが、一物一価で価格が安定してしまったら企業秘密でありませんから、全部どんどん発表する。通産大臣は常に一物一価、一物一価とこういうことを言われるのですが、実際はこの前は一物一価じゃなかった。ところが四十九年六月以降、一物一価というものを通産省の行政指導でつくり出したというふうに言われても、私はこの結果から見て仕方がないと思うのです。公正取引委員会、どう思いますか。私の見解は間違っていますか。
  88. 橋本徳男

    橋本(徳)政府委員 一物一価というのも、非常にこれはむずかしい問題ではございます。昨年の七月の鋼材の値上げにつきまして一物一価ということを業界が言っておる。しかしそういう考え方をとれば、将来ともそういう形でカルテル的な結果を生むことをきらいまして、そういう考え方は捨ててほしいという考え方を私の方は打ち出しております。ただ、どういう場合にでも価格が一つにならないかと言えば、必ずしも実態上はそうではないというところは、私たちの方でも十分承知をしてそれを言っております。したがいまして、もし採算ベース以下で値上げというものが行われるというふうな場合に、当然その天井に張りつくことがあることはわれわれも知っております。しかし、将来への警告という意味におきまして、ああいう形での一物一価という考え方を捨ててほしいという考え方で警告を出したわけでございます。
  89. 松浦利尚

    松浦(利)委員 通産大臣の御意見を……。
  90. 河本敏夫

    ○河本国務大臣 私は粗鋼の現状から推しまして、一物一価という考え方はいまでも持っております。ただしかし、非常に好況になりまして世界各国から鉄がとにかく引っ張りだこになる、そういう場合には、コストを超えて各社それぞれまちまちの値段が出てくるわけですね。仮にコストが五万円といたしますと、世界各国から引き合いが殺到するという場合には、七万円になったり、八万円になったりする場合も当然あるわけです。それからまた、現在はやはりコストを割り込んでおるのではないかと思いますね。コストがこれであってもそのとおりはいかない、こういうことも言えると思うのです。でありますから、コストが仮に一物一価でありましても、経済界の現状によりまして、大幅にそれを、各社ばらばらで上回る場合もありましょうしあるいは下回る場合もある、こういうことだと私は思います。現在、昨年の九月に値上げをしまして、引き続いて年末に約一万円弱の値上げをしたわけでありますが、それでもなお赤字が続いておるわけですね。赤字が続いておるんだけれども、ヨーロッパの鉄鋼価格と比べますと二割ぐらい安い。しかし、なかなか採算点まではいかない。こういう状態をお考えいただきますと、コストは一物一価であっても、市況によって実際に出てくる価格というものは変わる場合がある、こういう点をひとつ御理解をしていただきたいと思います。
  91. 松浦利尚

    松浦(利)委員 副総理、物価担当大臣ですからひとつ明確にお答えをいただきたいのですが、四十九年六月、本来ですと企業秘密として価格の発表を差し控えておった各メーカーが、一斉にユーザーに対して価格の発表を行うようになってきたということは、逆に言うと、一物一価という考え方が企業の中にもだんだん浸透してきておる。その背景をなしたものは四十九年六月の通産の行政指導だったと私は思うのです。低成長になればなるほど、企業の合併集中がいま盛んに言われておるのですが、寡占状態が生まれてくると思うのですね。寡占状態が生まれてきたら、価格で競争するということがなくなってくるのですよ、寡占価格という形で。現にビールがそうですね。ビールは自由価格だと言うけれども、全部同じ価格なんだ。幾ら通産大臣が強弁してもコストを割っておらないところまで同一価格なんだ。緊急避難として行った行為だからと言って許されたとしても、一遍こういう行政指導をするとそれが永久に持続をするんです。市場原理が働かなくなる。価格で競争することを避けようとする。寡占になればなるほど問題が起こると私は思うのです。そういうものに対して、私は、確かに緊急避難だという言い逃れは前の通産大臣ですから、いまの通産大臣のやられた真の背景というものはおわかりにならないと思うのです、思想は同じだとしても。下手をするとこういう状態になるわけですね。だから、私は、行政指導によるこういった一物一価というようなやり方を仮にすることは、将来に禍根を残すというふうに思うのです。特に、寡占化状態に進めば進むほど問題が残る。だとするなら、思い切ったこういうものについてメスを入れることのできる独占禁止法の改正、低成長段階になればなるほど、私は、独占禁止法の改正というものは必要だ、価格で競争しなくなるわけですから。しかも、それに通産行政が力をかすという場合が出てくるわけですから、その点に対して、最後に物価担当大臣の明確な御答弁をいただきたい。
  92. 福田赳夫

    福田(赳)国務大臣 私は一つ一つの物の価格、これは自由経済メカニズムで決められることがこれは最善である、こういうふうに考えておるわけです。ただ、この自由経済メカニズムもこれを妨害する要素がないとは言えない。特に企業形態が業界全体として寡占体制、そういうふうに進む場合におきましては、これは自由経済メカニズムが働くことが非常に妨害される、そういうふうに考えます。そういうことでその企業の寡占化、そういうことにつきましては、これはよほど注意をしていかなければならぬだろう、そういうふうに考えます。通産省におきましてもその辺を十分心得ながらやっておりますので、ひとつそのように御理解願いたい、かように考えます。  独占禁止法の改正につきましては、この問題が前の通常国会におきまして廃案となりました。あの経過は一体何かといいますると、参議院において自民党の中で意見の統一がとれなかったという点もまたあるのです。そういうことを考えまして、いま自民党内における意見統一を急いでおるわけです。これは非常に精力的にやっておるわけでありますが、その中におきまして、御指摘の点等も含めまして十分検討して結論を得たい、かように考えております。
  93. 井原岸高

    井原委員長代理 これにて松浦君の質疑は終了いたしました。  次に寺前巖君。
  94. 寺前巖

    ○寺前委員 私は最初に、いま国民が、だれが黒いピーナツを食べたのか、みずから名のり出たらどうなんだ、あるいはアメリカから早く資料をもらって、賄賂をもらったと言われている政府高官のその氏名を早く国民の前に知らせろ、こういう声は、迅速にロッキード問題に対する真相を知りたいということを望んでいる国民の声だと思うのです。  そこで国家公安委員長に、丸紅レポートの問題について聞きたいというふうに思います。私どもの党の正森議員が十七日の証人尋問の際に、大久保証人に対して、ロッキード社丸紅との間に結ばれているところの代理店契約、基本契約の第四条d項、f項という問題を指摘しております。国家公安委員長はその内容について御存じかどうか、御説明をいただきたいと思います。
  95. 福田一

    福田(一)国務大臣 政府委員から答弁をいたさせます。
  96. 吉田六郎

    ○吉田(六)政府委員 お答えいたします。  承知いたしております。
  97. 寺前巖

    ○寺前委員 それじゃd項、c項内容を読んでください。
  98. 吉田六郎

    ○吉田(六)政府委員 d項でございますが、「テリトリー内での商品販売に影響を及ぼす経済、政治、競合的な状況並びに商品に対する潜在的な顧客のニーズ(要求)、経済力についてロッキードに助言する」、f項「前記のaからeに関連する情報を含め、適当かつ要求されたときに、ロッキードに対し報告を行う。」以上でございます。
  99. 寺前巖

    ○寺前委員 いま読まれた代理店契約のこの基本契約というのは、非常に重要な内容を含んでいると思います。すなわち、その領域内で製品の販売条件に影響を与えるような政治的、経済的あるいは競争的な条件をアドバイスをするというんですから、すなわち、日本に売り込むところの会社というのはダグラスなりロッキードなりあるいはボーイングですか、三つの会社がアメリカとしては売り込み競争をやっている。買い手の方はどうかというと、日航とかあるいは全日空あるいは東亜国内を入れて、さらに日本の自衛隊なりとこういう関係が買い手の方ですから、限られた範囲内の政治的動向や経済的なあるいは競争状況について、ロッキード社にちゃんとアドバイスする責務を基本契約で持たせておるのだ。ですから、この内容というのは会社の基本的な営業上のきわめて重要な問題を占めることになるから、このレポートが今度の丸紅問題をめぐっての疑惑を解明する重要な報告文書になるということが言えると思うのです。  ところで、十七日の大久保証人の尋問のときに、大久保証人は、これについて、四半期ごとに報告を出しているということをこの委員会で述べております。そうなると、警察としても当然これは重要な資料として追跡をやっておられるというふうに思うのだけれども、そういう位置づけで取り扱っておられるのかどうかをお聞きしたいと思います。
  100. 吉田六郎

    ○吉田(六)政府委員 御質問の基本契約を含めまして、現在捜査資料の分析を詳細に検討するなど、必要な捜査を行っているところでございます。したがいまして、このような捜査中の事件でございます関係から、基本契約内容に対する判断はどうかと申されましても、いまここで申し上げることは差し控えさせていただきたい、かように考えております。
  101. 寺前巖

    ○寺前委員 国民の真相解明に対する要求、それに基づいて予算委員会で取り上げて、予算委員会で重要な焦点となって、そうして資料要求をしている。その資料要求に対して丸紅の方からも、その丸紅レポートについていま整理中でありますというのが、ここで問題になった二、三日後の状況、それは委員部がちゃんと報告しています。早くせよと言っておったやさきに警察が入った。そして警察がみんな持っていってしまったために、そのものは私の方にはございませんと、こうなっておる。国会で重要な審議過程の資料なのに、警察が押さえてしまったらとんでもないことになるじゃないかということで、その問題について資料をよこせと言うたら、仮還付ということで、三月一日の審議をやっている最中の午後にやっと届けられる。これは審議に非常に重大な障害を与えていることになっているわけです。  ところで、重要な位置づけをして当委員会で審議している内容が、それじゃ、押収目録として重要な位置づけをしておったのかどうか。国会が事件解明のために取り組んでいるとき、このものをどういう位置づけをしておったのかということは、私は警察にとっても重要な問題だと思う。押収目録としてちゃんと位置づけがあるのかどうか、ちょっとはっきりしてもらいたいと思うのです。
  102. 吉田六郎

    ○吉田(六)政府委員 お答えいたします。  押収した資料は何分にも多数でございまして、その中で丸紅レポートがどの程度の重要なウエートを占めるかどうかということにつきましては、詳細に分析検討した上でないと何とも申し上げるわけにはいかないということは御理解をいただきたい、かように思っております。
  103. 寺前巖

    ○寺前委員 私の聞いていることにちゃんと答えなさいよ。重要な位置づけとして押収品目の中に位置づけをやって捜査をやったかどうかということを聞いている。
  104. 吉田六郎

    ○吉田(六)政府委員 捜索をやる以前に、前段階にそういうものがあるかどうかということは判断してなかったわけでございます。
  105. 寺前巖

    ○寺前委員 国家公安委員長に聞きたい。  国会で真相究明をやるために、国会の決議の中でも迅速にこれをやるのだ、そういうことはちゃんと国会でも決議をしていますよ。こういうような内容、ここで問題になっているこういうことについて、重要な位置づけとしてここでこれを取り上げなければならないのは私は当然だと思うけれども国家公安委員長、どう思います。
  106. 福田一

    福田(一)国務大臣 捜査の立場においていろいろの問題を注意深く取り扱っていかなければならないことは御説のとおりだと思います。しかし今回の場合において、やはりそういうことも含めて私はやっておったと思うのでありまして、特にそれだけを中心にしてやった、あるいはあなたのおっしゃるように何と何と何と何が中心で捜査をする、こういうようなことはあの段階においては私は無理があったかと考えております。
  107. 寺前巖

    ○寺前委員 国会の審議を警察も注意深く研究するのは当然だ、国権の最高機関の論議だから。  そこで聞きたい。あの国会で、四半期ごとに報告を出しておるように伺っておりますと大久保証人は言っています。出しているということを言っています。基本契約にもある。さて、それじゃここに出されてきたところの三月一日の審議半ばのこの提出資料というのは丸紅レポートということになるのかならないのか、国会審議との関係で、あなたはこれを見てどういうふうに思われます。
  108. 吉田六郎

    ○吉田(六)政府委員 お答えします。  四半期のレポートというようには見られませんけれども、レポートの一つであるというように判断いたしております。
  109. 寺前巖

    ○寺前委員 いま警察は、これは四半期のレポートとは思われないとおっしゃる。私もこれを見て、ぱらぱらと見ただけでも、まず英語が読めなくたって、日は読めます。いつの時期にこれが出されたものか。ずっと見ると、一九七五年の一月段階から、四半期ごとじゃなくして、しかも中身を読むと、政治情勢のことについてもいろいろなことが書いてあるけれども、手紙的な内容です。四半期ごとの報告書というわけにはいかない。とすると、私はここで疑惑が生まれてくる。すなわち、警察が入って次の証人喚問、この段階までに証拠隠滅を丸紅がやったのか、あるいはまた、この文書をみんな持っていかれました、こういうことの中で警察の中にこの資料があるのか。ともかく丸紅の方は全部持っていかれましたと、こう言っているのだ。私は今度の国会の審議の中でも、製品の販売条件に影響を与えるこういうようなものの基本契約があるのだから、それを資料としてここへ出して、国民のために究明をこの委員会が果たすのだということで要求したこの資料が、明らかに答弁で四半期ごとに出すとこう言われておった内容、それがここに出ていないことは事実だ、こうなったら、警察としても、自分の内部にあるのか、証拠隠滅なのか、これについて私は調べる必要があると思う。国家公安委員長どう思います。
  110. 吉田六郎

    ○吉田(六)政府委員 基本契約には、私ども承知していますところでは、適宜または要求のあったときに報告するというような条項があることを見ておりますが、ただいま御指摘のありましたような点を含めまして今後捜査してまいりたい、かように考えております。
  111. 寺前巖

    ○寺前委員 私は国家公安委員長にお聞きをしたい。  国会であれだけ問題になって、資料要求をしている内容について、いよいよ審議を前にして警察が入って物を全部持っていってしまった。少なくとも国会で問題になって、資料提出しなければならなくなっている課題については、警察として持っていっても、自分の都合だけでは物を言うわけにはいかないのだ、やはり国会にすべて協力するのだということを一つの基本的考え方としてお持ちなのかどうか、お聞きしたいと思うのです。それが一つです。  それから、いまも警察当局の人がここで言われましたが、この丸紅レポートですと言うて持ってきたものは、ここで証言のあったところの話とは違う、四半期ごとの内容ではないのだということはここで確認されました。それでは、四半期ごとに出したというふうにまたわざわざ証言されたのだから、そのものがどこかにあるはずだ。どこかにあるはずだという問題に対して、警察が全部持っていったと言う以上は、警察としても全面的にこれを捜させるようにさせるべきだと思うのです。それは、また国民の疑惑を解明させる上で非常に重要な問題だ。これについてちゃんと指揮してやられるのかどうか、私はその問題についてはっきりお聞きしたい。そして、第一番目の問題と関連して、警察官身持っているものの中から、国会にその資料は確実にお届けいたしますということが言えるのかどうか、それをお聞きしたいと思うのです。
  112. 福田一

    福田(一)国務大臣 ただいまの御質問の中に、警察を指揮してというお言葉がございましたが、国家公安委員会というものは警察を指揮して、具体的な事実をどうせいこうせいと言う権限は持っておらないことは、あなたが御承知のとおりだと思うのであります。警察権が厳正公平に行使されておるかどうかという責任は、国家公安委員長が持っておるところであります。この立場からお答えをいたすわけでございますけれども、衆議院においてこの問題を取り上げられまして、そうして調査をしておいでになりますのでありまして、その意味で、警察としてはやはりできる限り御協力を申し上げることは当然なことだと思っております。しかし、そうかといって、やはり警察には警察の問題を捜査する一つの大きな権限がありますが、これとの関連性をどう考えていくかということは、やはり警察において適宜判断をいたすべきものであるかと思うのでございます。これは三権分立のたてまえとしてお認めをいただけるかと思うのでございます。  私は、そういう観点から申しまして、いま御質問のあったような件については、何かレポートがなくなっておるのじゃないかというような御疑問が出たように承っておりますが、これは当然警察は調べておるだろうと思います。また、そういう姿勢であることを私は期待をいたしております。しかし、ずばり、そのものを調べよとか、そのものをどうせよというようなことは公安委員の任務ではない、かように私は考えております。
  113. 寺前巖

    ○寺前委員 いま私がこの問題について提起しているのは、真相を解明するためには、丸紅レポートというのは非常に重要な位置にある。したがって、重要な位置にあるこの資料について、警察当局は協力されて当然だ。それが明らかに、四半期ごとに出しているというふうにここで証言のあった内容と違うものだということが認められたら、当然のことながら証拠隠滅がされたというふうに見るのが筋だろうと私は思う。あるいは自分の内部に持っていっているか。それはだれだって考えられる話だ。したがって、私は、そこからの結論は、国会に対して協力して、その資料をここに持ってこられる条件をつくりますということを、警察当局をしてやらせるようにするのが政府としての当然の責務だろうと思うのです。その点についてもう一度確認をしたいと思います。いかがなものでしょう。
  114. 福田一

    福田(一)国務大臣 先ほども申し上げたところでございますが、国会においてこの問題をお取り上げになったわけでございますから、警察当局としても可能な限りにおいて御協力を申し上げるということは当然であり、また御疑問のあるような点についても調べるのがその姿であると思うのでございますけれども、具体的な内容について私がそれを指揮監督するというようなことは、国家公安委員というものの任務から考えて逸脱する可能性がありますので、私としては、厳正公平にやれ、あくまでもこの問題の究明をしなさい、そういうことにおいていささかでも懈怠があればやはり指示をし、あるいは監督もその意味ではいたさなければなりませんが、個々の内容についてまで立ち入って、国家公安委員あるいは公安委員長指示をするということは、法のたてまえからいって許されることではないと考えておるのであります。しかし、それだからといって、私が申し上げておるのは、警察がそういう意味で協力しないということは、警察と議院との関係においてこれはやはり十分に考慮されなければならない問題である、こう考えておるということを申し上げたのでありますから、ひとつ御疑問のないようにしていただきたい。私は、この問題については、徹底的に解明するという姿勢はいかなる場合においても崩す考えはございません。
  115. 寺前巖

    ○寺前委員 時間の都合でこの問題は終わりますが、丸紅レポートはここで証言された内容とは違うのだから、速やかに政府においても措置されることを要望します。  次に、社会保障の問題について幾つか聞いてみたいと思います。  厚生大臣にお聞きしたいと思いますが、社会保障の給付費が国民所得に比べてどういう状況にあるのか、国際的に見て日本の水準はどういうものなのかということについて御説明をいただきたいと思います。
  116. 田中正巳

    田中国務大臣 社会保障給付費の国際比較という問題は、しばしば国会内外で議論になりますが、実は簡単にいかない非常にむずかしい問題であることは先生御存じだと思います。取り入れているアイテム、そしてまた社会の構造等が違いますので、一概にこれをただノミナルな数字で比較することは困難かと思いますが、わが国においては、昭和四十八年度において社会保障給付費の国民所得に対する割合は六・七%、四十九年度については、確たる数字が出ていませんが、大体七・八%ぐらいだろうというふうに思われるわけであります。  こうした数字だけを見ますると、いわゆる西欧社会保障先進国と言われる国に対して、この種の比率は三分の一程度だろうというふうに言われているわけでありまして、ここからわが国の社会保障の充実が急がれなければならないと私どもも認識をいたしております。しかし、さっきちょっと申したように、社会構成が大分違います。最も典型的なものは人口の老齢化率が大分違っておりまして、したがいまして、こういったような、それを捨象して平板な比較はできないと思いますが、西ドイツ等の社会保障費の伸びを見ましても、人口の老齢化率とほぼパラレルな姿で動いているということを考えるときに、今後こうしたことを踏まえて、われわれは社会保障給付費を国民所得との対比においてさらに進める努力をいたさなければならないものというふうに認識はいたしております。
  117. 寺前巖

    ○寺前委員 それじゃその次に、六十五歳以上の男性の人々が就労している状況について、国際的に見て日本はどういう状況にあるのかということについてお聞きしたいと思います。
  118. 田中正巳

    田中国務大臣 これは前に寺前さんから社労委員会で御質問があったことでございますが、わが国においては、四十九年度の総理府の調査によれば四五・六、きわめて高いのでございまして、国際比較をいたしますると、アメリカが二四・八、イギリスが一五・八、スウェーデン、西ドイツ等も大体一五%台でございますので、これはわが国においては相当高いというふうに考えなければなりません。
  119. 寺前巖

    ○寺前委員 いま私は二つの指標をお聞きしました。一つは、社会保障費というのが国際水準から見ても非常に低いということが御指摘にありました。もう一つは、六十五歳、いまから三十年前に戦争が終わったわけですが、三十五歳ということになりますから、子供を抱え、一家を支えて、一番大変な年齢の方々がこの六十五歳以上の人の中にいまあるわけです。そういう人々が日本の国民の中で半分は働いていなければどうにもならない状況というのが、国際的に見ても異常なほど高い。老齢対策が叫ばれてくるというのはそこにあると思うのです。ですから、こういうように見たときに、日本の政治というのは国民の中に、また言葉を変えて言うならば戦後は終わっていないと言っても過言でないくらいの姿があるんじゃないか。私は、ここに政治はどこになければならないかということを国民が見詰めるところの具体的な指標がそろったと思う。  そこで福田副総理に聞きたいわけだけれども、これについてどういうようなことを感じられるか、あなたの感想を聞きたい。
  120. 福田赳夫

    福田(赳)国務大臣 社会保障制度は、これはわが国は実質的に始まりましたのは戦後だと言っても過言でないと思うのです。その前にも形はありましたけれども、非常に中身の薄いものであった。そういうことで、先進諸国に比べますとやや立ちおくれというような感じがいたします。特に国民所得、これがこの十五年ばかりの間非常な勢いで伸びた。そういう国民所得全体の伸びという中で社会保障費がどういうふうになるかという割合も、国民所得の伸びが大きかっただけに国際社会における比率よりも現在低い、こういうことになっておる、こういうふうに思いますが、この状態は、これから社会も変化してくる、つまり老齢化社会というのがわが日本にもやってくるわけです。そういうことも考えなければならぬ。また同時に、とにかくこれだけ国民経済の力がついてきたのですから、またその力を一つ一つの家庭の安定、社会保障という方面にも注入しなければならない、こういう時代になってきておると思うのです。  そこで、政府の方では、五十一年度を初年度とする中期計画の策定をただいま急いでおるわけです。すでに概案はつくり上げたわけでありますが、この概案の中におきましても、振替所得の国民所得の中での配分といいますか、そういうものにつきましてもこれを引き上げてまいるという方針、高度成長から低成長には移りまするけれども、国民所得全体の中の社会保障質的なもの、経費への配分という比率は高めてまいる、そういうことを基軸として個々の具体的な社会保障政策、その項目を決めていきたい、かように考えております。
  121. 寺前巖

    ○寺前委員 そこで私は、社会保障の水準が低い、それから歳がいってからもうんと働いていなければならない、こういう実情を考えたら、国民生活のここの分野は特段に力を入れなければならないということが、そこから結論的に考えなければいかぬ話だろう、こう思う。  ところが、今度の予算を見ると、社会保険料は値上げになるでしょう。それから国鉄や電電公社などのああいう予算を見ても、公共料金の値上げが出てくるでしょう。それから所得減税の方はいわゆるゼロという姿になっているでしょう。こういうものが、それじゃ、実態として社会保障の水準は低いのに、歳いっても働かなければならないのに、この今度の予算でそういうものを具体的に出してきているということになると、国民生活に、そういう保険料を上げたりあるいは公共料金を上げたりするものがどういう影響を与えるのか、これは政治については一番考えておかなければならないところだろう。一体どういうふうに計算しておられるのか、お聞きしたいと思うのです。
  122. 福田赳夫

    福田(赳)国務大臣 御指摘のように、今度の五十一年度予算では公共料金の引き上げ、これを考えておるわけです。しかし、公共料金の引き上げに当たりましては、五十年度ではやはり酒、たばこ、郵便料金などですね、これは消費者物価を二・七%引き上げる影響を持つ公共料金の引き上げというものが実施されたわけであります。五十一年度におきましてはそれをもう少し緩和いたしまして二%強程度のものにしたい、こういう考え方から、国鉄、電信電話あるいは授業料等につきましてその改定を行う、こういうことにしておるんです。  公共料金は、とにかくこれは上げないでおくということになれば当面はいいかもしれませんけれども、それでは、国家財政やあるいは企業会計が成り行かぬ、こういう問題がありますので、これを注意深く、物価に悪影響がないようにという配慮をしながら徐々に改定していくという考えのもとにそういう改定をする。しかし、寺前さん、一方において物価が、私どもは五十年度に比べまして五十一年度はまた一段と下がるようにしたい、こういうふうに考えておるのです。そういうことを彼此勘案いたしますると、私は、公共料金のある程度の引き上げがありましても、これが国民生活の圧迫になるというそういう重大問題ではない。とにかくあの狂乱状態から立ち直る日本の経済の安定化工作のためにこれはやむを得ざるものである、こういうふうに考えております。  それから社会保険費の負担増加でございますが、これは他方におきまして給付が改善されるのです。非常な改善、これがまた同時に予算案にも盛られておるわけなんです。給付を改善するということになれば、その財源を一体どうするか、こういうことになりますが、やはりこれは国民の負担をその程度上げなければその改善ができない、こういうことなので、一方において負担の増加はありまするけれども、同時にわれわれの大事な家庭の安定化のための施策も大いに前進をする、こういう性格のものでありまして、特に負担の増加だけを取り上げて論議するということは妥当でないと、こういう見解でございます。
  123. 寺前巖

    ○寺前委員 最後の保険を上げぬことには給付はよくならないという問題がありますが、これは後に厚生大臣に論議を詰めたいと思います。これはあなたも認識を研究してもらう必要がある。聞いておってもらいたいと思うのです。そういうふうに単純に考えてもらったら無責任だ、私はそう言いたいと思う。  それはさておいて、私の手元に日本生活協同組合連合会から、国鉄や私鉄や電気代やNHK受信料などを含めて一連の改定がなされると一ヵ月の負担増はどうなるか、年間負担増はどうなるかという資料をもらっているのです。これはまず、自分たちの現状の経費はどうかかっているかということと、値上げ率がどういうふうに加わるかということを単純にずうっと整理しているのです。これを見ると、一カ月一万三千五百二十円の負担増になるということが、一つずつここで数字挙げませんが、出てきますよ。物価そのものに対する影響その他は別にしてです。ともかく、かかる量がふえることは事実ですよ。国鉄三十円の最低が倍になるというたら、もうそれは無条件に国鉄料金全部上がっていくのですから、それはもう単純に、ほかの作用云々を言わなくたって、単純計算でその分だけずうっといろいろ出てきます。NHKの問題にしても。ですから、これはちょっこらそっこらの値上げではないんだ。このことをよく認識してもらわないと、この予算案全体にかかわると思うので、このことを、認識の度合いを私は最初に副総理にちょっと聞いてみたので、これ以上詰めて言いませんが、あなた本当に計算してやってみたことがあるのですか。
  124. 福田赳夫

    福田(赳)国務大臣 いろいろ計算し、他の諸施策とも総合いたしまして検討して、その結果この程度の値上げはやむを得ないと、こういう結論でございます。
  125. 寺前巖

    ○寺前委員 これはもうこれ以上詰めませんけれども、私は認識としてはこれは大変な認識だというふうに思いますよ。ともかく一年間で一カ月分が飛んでしまうという値上げ、生活費が上がってしまうというのだから、私は、もう一度歩いてみて細かくこの問題について副総理が検討されることが、経済の企画を立てていく上から見ても重要なことだと思いますので、それをひとつ要望しておきたいと思います。  そこで、先ほどから問題提起しているお年寄りの問題です。私は、お年寄りの問題といえば何といっても年金というのを避けて通ることはできなかろう。そこで年金なんですが、去年、福祉年金を二万円に来年度はしてみたいというようなことをここでおっしゃっておった厚生大臣にお聞きしたい。実際にことし予算に組まれた福祉年金は違いますね。そこで、あなたは去年言われたこととの関連性において、この福祉年金、この水準でいいのか、来年にはなぶりたいと言われるのか。この年金給付の水準についてお聞きしたいと思うのです。
  126. 田中正巳

    田中国務大臣 年金プロパーの水準の問題と福祉年金の給付水準の問題と二つございますが、先生のいまの御質問は福祉年金の給付水準の問題だろうと思いますので、これに限って御説明申し上げますが、私は、福祉年金いわゆる国民年金制度が発足をしたときに、すでに相当高齢になって拠出年金に入れなかった者についての年金水準、いま一万三千五百円ですが、いま少しくやはりお願いしておりますが、これはもうちょっと高いものにしなければならないというふうに思っております。そこで、まあ財政方式を改めることによって、そうした給付水準を確保いたしたいというのが私の本来の素志であります。かような意味で、そのような検討をいたしておりますが、五十一年度予算編成までには間に合いませんでした。したがいまして、一般会計方式による従前の方式を踏襲をせざるを得なかったわけでございまして、さような意味で一二・五%、つまり一千五百円の給付アップをいたしたわけでございますが、これは私の本来の素志から見まして本志ではございませんで、年金の財政方式、システムというものを改めることによって、そのような私どもが従来考えているナショナルミニマムに近いような福祉年金を支給するような努力を今後とも続けなければならないと今日でも思っております。
  127. 寺前巖

    ○寺前委員 それじゃ、本志でないから、給付の水準をもっと高めるようにしたいというお答えでした。国民年金の今度は保険料を改正し、給付を改正する法律案が出ますね。これを見ると来年度の保険料までちゃんと含めての法律の提案ですな。ということは、給付水準はことしと来年は同じ水準でやりますよということと違うのですか、いかがでしょう。
  128. 田中正巳

    田中国務大臣 国民年金の拠出制の方の給付水準の問題だろうと思いますが、御案内のとおりただいま法案を出しておりますが、これは今年、五十一年度の分についての審議をお願いしているわけであります。もちろんあれにはスライド条項がくっついておりますので、必ず、厳密に言って、これがことし五十一年度と五十二年度同じだというわけではないと思いますが、しかし、保険料の方は御承知のとおりいわゆる平準保険料との兼ね合いがございまして、次第に保険料の額を上げていかなければ、保険数理上これが間に合いかねる。ことに先生もうすでに御存じだと思いますが、国民年金の経理はなかなか端倪すべからざるところへ来ているということでもございますので、そうしたように、保険料は今後段階的にこれをしばらく引き上げていくようなプロセスをとらざるを得ないというのが私どもの考え方であります。
  129. 寺前巖

    ○寺前委員 従来の予算の組み方から言うたら、保険料というのはこういうふうに上げますよという一回限りの提案でした。今度の保険料は二回分値上げする金額が出てきている保険料ですね。その前提に立つのは、法律に基づくところのスライド制はそれは行われるでしょう。しかし、給付の水準としての考え方から言うならば、その物価スライドが取り入れられるだけであって、前提は給付は変えませんよという水準になるじゃありませんか。物価スライドが伴うだけでしょう。そうすると、来年度は拠出制の国民年金については、給付そのものは物価スライド以外は考えませんよといういわば提案だ。一方で福祉の水準については、これは本志ではないとおっしゃる。それじゃ来年度新しいものを国民に期待を持たすのかと言えば、拠出制国民年金の方では来年もこれでいきますよという給付の水準を提起している以上、福祉の方も事実上は来年もやらぬのだぞということになるじゃありませんか。それとも福祉の方は拠出制と関係なしに上げますのじゃと、そうおっしゃるのか。私は、二年度分の保険料の値上げが出されてきているから、あえて聞くのですよ。
  130. 田中正巳

    田中国務大臣 国民年金の法律にある給付水準を確保するためには、現在お願いをいたしています保険料では実は不十分であるわけであります。したがいまして、給付水準があの程度のものであっても、今後保険料は上げていかなければならぬ。つまり、いまお願いしている給付水準を確保するためにはいまの金額ではやり切れないのでございまして、しかし、一遍に上げることはいかがかということで、徐々に保険料も上げてください、そうすればいまの保険給付水準というものは何とか確保できましょうというのが私どもの考え方でございます。いまの給付水準を来年も上げなければ、保険料も来年上げてはいけないというロジックについては、いささか私どもとしては見解を異にするということだろうと思います。
  131. 寺前巖

    ○寺前委員 それじゃ最後的に聞きます。保険料の値上げ、これは積立方式をやっている以上いろいろ計策をされるわけだけれども、給付の水準については、福祉の問題についても心ならずもということしの段階だった、来年については改善するようにやりたい。それは拠出制の方においても、保険料が決められておるのは、前提が物価スライドだけだということにはならないのだ。来年度には、給付についてはいまの水準とは関係なしに検討するというふうにお約束されるのかどうか。
  132. 田中正巳

    田中国務大臣 寺前先生、福祉年金と拠出制年金とをコンバインして議論なさっているんじゃなかろうかと思われるわけであります。福祉年金については、いま言うとおり、私どもとしてはもっと上げたいものだというふうに考えております。しかし拠出制年金については、いまお願いをしているような程度の給付水準、これがもし物価等でスライドしなければならぬ場合にはスライドをいたしますが、今日当分の間、ああした給付水準を確保することによって国民年金の給付はやっていきたいものだというのがわれわれの考え方であります。
  133. 寺前巖

    ○寺前委員 余り時間を割きたくありませんのでやりませんが、拠出制と無拠出制は関係ないというわけにはいかぬと思います。無拠出制の水準が高くなって、五年年金や十年年金は低いままでよろしいというわけにいかぬでしょうが。だから私はあえて言うているのですよ。混同しているのではなくして関連性がある。だから、その関連性を見たら不本意だとおっしゃるんだったら、福祉年金も不本意なんだから来年改善をする。国民年金についても、したがって水準問題については福祉の方の、無拠出の方の不本意を基礎に考えるならば、拠出制の方も給付について来年度改善するということがなければおかしいじゃないか、こういうことです。
  134. 田中正巳

    田中国務大臣 先生、経過年金、五年年金、十年年金のお話をしているようでございます。本来の拠出制国民年金とまた経過年金とはおのずから性質が大分違うということは、先生御存じだろうと思います。したがいまして、福祉年金の給付水準が上がって、経過年金の給付水準を突き抜けるようなことがございますれば、この点につきましてはもう改善をせざるを得ないということでありますし、従来からそのようなやり方はやっているわけでありまして、その点については如才のないつもりでございます。
  135. 寺前巖

    ○寺前委員 次に私は、制度審のときに、厚生年金保険の保険料率の見通しの表をいただきました。これは手元にございますね。私が資料要求をしたのは、将来見通しはどういうふうになっているんだ、今度の法改正で厚生年金の掛金をずっと上げることになっているじゃないか、厚生年金の一年間に入ってくるお金と給付するお金と比較したら、まあ二対一くらいの関係で積立金というのは毎年毎年ずいぶんできるじゃないか。そこで、一体将来見通しをどうやって積み立てをやるのか、保険料率を賦課方式にした場合と、それからあなたたちが考えている積立方式にした場合との比較表を提出してもらいたいと言うて、制度審のときに私いただきました。  そこで、私が最初に聞きたいのは、右から左に保険を集めてお金を出したら半分ぐらいで済むのに、それが何で保険料率を厚生年金またもや上げんならぬのか。現在の千分の七十六を千分の九十四にしよう、こういうわけでしょう。何で上げんならぬのです、これは。
  136. 曽根田郁夫

    ○曽根田政府委員 今回厚生年金、国民年金それぞれ相応の給付改善を行いますので、当然それに伴って、これを費用面で支える保険料の引き上げも必要になるわけでございますが、先生も御案内のように、厚生年金あるいは国民年金とも本来の意味での積立方式という形を非常に崩しておりまして、本来必要とされる保険料をかなり下回る保険料が実際に課されておる。しかし、いずれにいたしましても、今回の給付改善でその本来必要とされる平準保険料そのものがかなり大幅に上がるわけでございますから、これを今回余り上げ幅を抑えるということは、結局後代の方の保険料負担がその分だけふえるということでございますので、やはり各年次ごとの負担のバランスというものも考えなければいかぬ。そういうことを総合的に判断いたしまして、今回千分の九十四という料率を設定したわけでございます。
  137. 寺前巖

    ○寺前委員 いまのお話だと、積み立てておかなかったら後代になると大変だということなんでしょう。ところが、後代になって大変だと言うけれども皆さん方がこれから計画を立てて掛金をふやさしていこうというこれと、賦課方式とが一緒になる時期はいつかということになると、この表を見ると、二十五年先の昭和七十六年じゃありませんか。それまでの間というのは、せっせせっせとためさせられるだけでしょう。ところが、ためておったならば、そのお金というのは、たとえば物価が一〇%上がっていくとするならば、お金の値打ちはそれだけ減っていくわけだ。目減りしていくわけでしょう。ですから積み立てておって、その金の値打ちはだんだん下がっておって、たとえば五十一年度の状況について言うならば十四兆五千億円の積み立てがある。一〇%の物価上昇があるということをもしも考えてみるということになると、一兆四千億円の目減りが起こっているという勘定になるわけでしょう。それじゃ給付は一体五十一年度で何ぼやるのかといったら、一兆四千億ほどやるわけだ。要するに、いまだって目減り分でもって給付をやっている勘定ですがな。そういうお金の使い方というのは、将来大変だと言うけれども、大変以前に目減りをしている大変さという問題があるじゃありませんか。  私が聞きたいのはそれが一つと、それから二十五年先まで賦課方式の方が安上がりでいけるわけだ、保険料の側から言うたら。ところが、それ以後大変だと言うけれども、たとえばピークだというふうに言われている昭和八十五年を比べてみても、積立金は恐るべき三百四十八兆円という膨大な積立金をつくってしまうけれども、実際に大変だという給付の関係を比較してみると、一対一・一八という関係ですよ。そうしたら将来大変だと言うけれども、大して大変なあれでもないじゃないか。結局積み立てて目減りさせられていっているだけじゃないか。しかもその積立金は財政投融資に使って、そちらの方で便利でございます。こう言うんだったらわかるけれども、将来大変だということを論拠にされるとするならば、将来問題というのは二十五年、三十年先の話であって、その話も結局のところ大したことじゃないじゃないか。そうしたら、私は、方式としても、いまこれだけ、国だって国民年金の場合に金がないというので積立金を取り崩そうという提案を今度やっておられますよ。国が財政が大変だというときには、国民全体が財政大変なんですよ。この財政大変なときに、二十五年先になって保険料率が賦課方式と初めて一緒になるんだということを考えたら、目減りをさせるようなこんなことはする必要がないというふうに思うのですが、いかがなものでしょう。
  138. 曽根田郁夫

    ○曽根田政府委員 二つお尋ねがあったわけでございますが、後の方からお答えいたしたいと思います。  御指摘になりましたのは、この賦課方式になると後代の負担が大変になると言うけれども、たとえばこの計画の八十五年度を見ると、私どもの計画プログラムでは千分の二百四十三、賦課方式によった場合は千分の二百六。ですから、そう決定的な差はないのではないかという御指摘だと思いますが、この点に関しては、私はそういう見方も十分成り立つと思います。しかし、私が申し上げましたのは、この八十五年度以降の問題ではなくて、たとえば昭和五十五年から六十年まで、あるいは六十年から六十五年というふうに非常にごく近い時点での料率を見てみますと、賦課方式によった場合は、五年ごとにおおむね千分の二十五とか三十というふうに非常に大幅な引き上げが必要になってくる。そういったことがその加入者の負担のバランスから言って、一体許せるのかどうか。五年間で給付改善が仮になくても千分の三十も上げなければならぬ。そういう非常に長期のことではなくて、ここしばらく予想される年次ごとのその保険料負担のアンバランスを申し上げたつもりでございます。  それから、この積立金の物価上昇等による減価の問題。これはまさしく御指摘のとおりでございまして、したがいまして年金制度にとってインフレというのが一番の望ましくない事態でございます。しかしながら、この年金制度というものは、言ってみれば、無限の長期にわたって財政計画を考えなければならぬ制度でございますから、そういう何十年、何百年という長期にわたって非常に大きな物価上昇がいつまでも続くという前提では、実は財政計画は成り立たぬわけでございます。このことは、何も物価上昇に伴う積立金の減価を肯定するものではございませんけれども、基本的な態度としては、やはり長期にわたる制度として、少なくとも積立方式を基本とする制度においては、制度が成熟化して年金受給者がそう出るまでは、どうしても結果として巨額の積立金が累積される。したがいまして、これは結果的に累積される問題でございまして、私どもの財政計画でも、積立金をふやすためにこのような計画をつくっているのではございませんで、世代間の負担を考えて保険料の引き上げをどういうふうに持っていったらいいか、その結果このような積立金が累積されるということで御了承願いたいと思います。
  139. 寺前巖

    ○寺前委員 何を言うたって、要するに、いま直ちに賦課方式にしたら、掛金はいまの給付水準だったら四〇%で済むと書いてあるんだ、このグラフを見るとね。そう書いてあるでしょう、いまの水準だったら。要するに、半分ぐらいで済むということですよ。そうすると、労働者の、たとえばいまの水準での話ですよ。労働者の掛金も資本家の掛金もその水準でできるんだ。そうすると、二十五年先までの間は、賦課方式の方が確かに目減りやそんな心配要らぬから安くいくという勘定になるわけだ。そうすると、その差額分を、中小企業は労働者並みにしても、大企業の場合にその差額分をたとえば国民年金の方に、社会的にやはり都市へどんどん集中させるという社会的な関係もあったんだから、特別税として課す、さらに、もっといまの水準以上に課すということをやったら、国民年金の財源もできてくるじゃないか。ですから私は、積極的に全体計画から考えてみても、積立金ばかりできていくけれども目減りもものすごくつくっていくようなそういうやり方はやめて、直ちに賦課方式を研究する、そうして大企業に対する年金の特別税を研究する、そうして国民年金の水準を高める、ということを検討したらどうなんだろうか。私は率直に、このグラフを見ながらそう思うんだけれども、いかがなものでしょうか。
  140. 田中正巳

    田中国務大臣 私も国民年金の財政方式、ただいまのものが万全であり、今後とも検討を必要としないものであるとは考えておりません。したがいまして、先生がいまお示しになっているグラフを私どもも常日ごろ見まして、いろいろと検討の方向を模索しているわけであります。したがいまして、いま先生がおっしゃる賦課方式というのも、かねがね私が申したように、一つのまことに考慮に値する財政方式であるというふうな認識を持っており、そのような答弁をいたしております。しかし、これをいついかなる形でどの範囲でやるかということについては、いま少しく精細な検討が必要であろうというふうに思っているわけであります。  なお、いまの給付水準ですと四十で済むということでございますが、こうしたことを考えないで、現在水準というところから伸ばしていくということも一つの考え方だろうと思いまして、あれやこれやいろいろな角度から年金の財政方式については検討をいたす意欲を持っていろいろとやっておることは事実でございますが、いま直ちにどういう形でもって賦課方式をとるのだというようなことを申し上げるまで検討は煮詰まっておりません。
  141. 寺前巖

    ○寺前委員 私は、いま国の財政は大変だといったときは国民も大変なんだから、この大変なときにこそ積極的に考えるべきだ、これが非常に重要だ。そこで私は、方式問題というのは重要な一つの位置にあるということの提案を一つしたわけなんです。もう一つは、その賦課方式でいまは料率は少なくて済むはずなんだから、そうすると、積極的に能力を持っている大企業がこの国民全体に対する社会的な責務に対するところの特別税を考えるというのも重要な一つの提案だ、私はそう思っているんだ。この問題について検討するのかどうか。
  142. 田中正巳

    田中国務大臣 財政方式について、賦課方式を含めて検討することについてはやぶさかではございませんし、事実、あれこれ検討をいたしておることは事実でございます。  なお、その財源の捻出につきまして、いま何ですか、年金税というものを使用者側から、あるいは企業側から取るということについて御提案がございましたが、これについては、私どもとしてはいまのところそのようなものにだけ頼るというようなことは考えておりません。諸外国のこの種の年金についても、やはり被保険者の拠出というものを相当の財源にしていることは事実でございますので、その辺についてはさらに幅広く検討はいたしたいと思いますが、いまにわかにそのことについてその方向に進むのだということは、私としては御答弁ができません。
  143. 寺前巖

    ○寺前委員 フランスで使用者、資本家に対する年金の特別税ということが実施されております。私は、十分研究に値する問題だし、賦課方式問題を取り入れた場合には非常に重要な検討材料になると思う。これについては、私は再度厚生大臣に検討されることを要望したいと思います。これは後からひとつ御答弁いただきたい。  それと、私はせっかく年金の問題を提起しましたから、二、三、年金の不合理の問題についてこの際にただしておきたいと思います。  一つは、障害年金の通算。厚生年金は三級まである、国民年金は二級までだ、そうするとこの問題について、最終が厚生年金で終わるのか、最終が国民年金で終わるのかによって、障害年金をもらうことに違いが生まれてくる。両方とも三級でそろえてしまうというふうにしないことには不合理ではないかという問題。あるいは遺族年金の問題として、厚生年金の場合と国民年金の場合、これは制度の違いがあるけれども、事実上母子年金という形のものが存在するのだから、これについても国年の場合にどうするかという問題について、これも速かに検討しなければだめなんじゃないだろうか。  さらにまた昨年の暮れに、年金に入っていない人に対する、あるいは全面的に納めていない人に対する特例納付ということをおやりになった。実際にずいぶん努力をされて、たくさんの人が入られて、目下整理中だろうけれども、それにしてもこの問題というのはまだたくさん残っている。将来もまた引き続いて残る話だ。だから、特例納付の問題についてどうするのかという問題があります。  さらにまた諸外国では、毎月支給という形で老齢者に対する保障や障害者に対する年金支給というのをやっているけれども、日本の場合、いまのやり方でいいのかという問題があります。そしてさらに、それは、すべていまの支給の割合でやるのだったならば、せめて支給月を変えろという要求もあります。そこを現実的にはどうされるのか。  さらにまた老齢加算の問題があります。七十歳以上の人に対しては、生活保護者の場合八千円の加算だけで、あとは加算分から減らしてしまうという問題がありましたけれども、それでは六十八歳以上の人、六十五歳になって年金が出る人、六十五歳の年金の出る人は生活保護者の場合にはまるきり渡さないというのがいまの制度じゃありませんか。私はこの加算問題について、せっかく期待をしておられたんだから、そういう期待に対して無にする加算のやり方というのは、ちょっとこれは問題じゃないかと思うのだけれども、こういう問題についてどう考えられるのか、御説明いただきたい。
  144. 田中正巳

    田中国務大臣 年金の制度について、いろいろ御質問がございました。  第一に、通算年金の制度についてでございますが、従来老齢通算年金だけがございましたが、遺族と障害についてございません。そこで何とかいたしたいということを私も申し上げ、これについては、やっと今度御審議をお願いしている法案でこれを一応取り上げることにいたしました。しかし、先生御案内のとおり、これにつきましてはいろいろ等級あるいは支給の要件等がそれぞれ違っておりますので、非常に苦心をいたしました。基本的には、通算年金の出るその年金の要件に合わせるというようなシステムをとっておるのでございますが、しかしやはり等級の一元化ということを今後やらなければなりますまいし、また、遺族年金等につきましては、給付の要件というものも一元化を図っていかなければ、先生のおっしゃったような問題は根本的には解決をいたさないということでございますから、そうした方向について、関係省庁との間に話を詰めてさらに改善をしていきたいというふうに思っておりますが、とりあえず私どもとしては、非常に条件の違うばらばらなこの種の年金の中でも通算制度というものを実現いたすべく、第一歩として今日このようなことを策定をいたしまして、法案の御審議をお願いをいたしているのがこの問題についての現状でございまして、今後とも、そのような通算が非常にフラットにできるような、公平にできるような制度に改めていくことについて努力をしなければならないものというふうに思っております。  特例納付については、昨年の十二月、第二次特例納付をやりまして、相当に成果は上がったようでございますが、これについては件数等も一人で何件というふうに含まれているものもございますので、これは整理をいたしてみてさらにひとつ考究をいたしたいというふうに思っております。  毎月支給の問題あるいは支給月の問題については、かねがね御議論があり、個人的には私もまたその方が親切であるというふうに思われる幾多の事例がございますことは否定はいたしません。ただ実際問題として、いろいろこれについては、社会党の多賀谷委員からも御質問がございまして、私もまじめになって検討をしてみました。しかし実際問題として、事務的になかなか、いまにわかにこれが解決をするというようなことについてはそう簡単にはいかないということでございますが、今後ともできるだけのことをいたしたいというふうに思いまして、さらに努力もいたしますし、また実際にこの事務を扱っている関係省庁との間に話を詰めていかなければなるまいと思っております。  老齢加算の問題、これにつきましてはいろいろ御議論がありますが、福祉年金が月千円ないしは三千円という程度のときには問題になりませんでしたが、今日のような金額になりますると、現在加算制度をとっている以上、やはり本来の生活保護基準、これは単身老人世帯の場合と比較をいたしますると、これを全部加算いたしますと非常なアンバランスになるというような御議論もございますので、したがって、いま先生がおっしゃったように八千円程度の加算制度にとどめさせていただいているわけでありまして、したがいましてこれについては、要するにバランス論、福祉年金とこれとがオーバーラップして出るというかっこうになりますと余りにも較差がひどくなるというところに、こうした加算制度の調整を行わなければならなかった理由があるというふうに認識しています。
  145. 寺前巖

    ○寺前委員 加算の問題では、ぼくは、せっかく拠出をしてきて六十五歳になってもらえないという生活保護の事態の加算問題、これはちょっと考えなければならぬ問題だというふうに思うのだけれども、全然加算がないのですよ、厚生大臣御存じですか。この問題は私は直ちに改善をすべき性格のものだと思うのです。それと、毎月支給はやはりすぐに検討に入ってもらわなければいかぬ。それができなかったら、せめてお正月前とか入学期前とか夏休みとか、こういうしかるべきときに支給できるように、全力をふるってそのことを可能にする、ここに力を入れるということが、先ほど一番最初に申し上げたように、六十五になっても働かなければならないという日本の国際的に見でもとんでもない姿になっていることを考えたときに、これは考えてもらわなければいかぬ問題なんです。これは郵便局の方の仕事の関係もあるでしょう。郵政大臣、どうですか、本気になってこの問題を全面的に取り上げて、来年度検討してみたいというふうに思われませんか、どうでしょう。
  146. 村上勇

    ○村上国務大臣 御指摘の毎月支給ということにつきましては、非常に事務量がふくそういたしまして、とうていいまの段階では無理だと思っております。  それから盆、暮れとか、支給期日を改めてなるべく受給者に便利な方法をとれというような点につきましても、現段階におきましては、盆、暮れというような時期を指定されますと、その時期が一般の取り扱いが非常にふくそういたします。したがいまして、何とか、この点につきましてはできる限りその時期に近づくような方法も考えてみたいと思っておりますし、厚生省と十分緊密な連絡をとりながら、少しでも御期待に近づくようにいたしたい、かように思っております。
  147. 寺前巖

    ○寺前委員 いつごろからそれは期待にこたえる方法に近づきますんや。大体いつごろをめどにして考えているのか、ちょっとお聞きしたいと思うのです。
  148. 村上勇

    ○村上国務大臣 それは、いまいつごろからというようなことは申し上げられません。郵政省のいろいろな機械化等も終わらなければ……。十分検討して、なるべくその御期待に沿うようにいたしたいと念願いたしておる次第であります。
  149. 寺前巖

    ○寺前委員 時間の都合もありますから次へ行きますが、これは長年問題になってきていることだけに、速やかに御検討されんことをお願いしたいと思うのです。  次に、今度の社会保障の問題のもう一つの大きな柱に健康保険の改正問題というのが大きな位置の一つにあります。私は、この健康保険という保険財政をやはり見なければならぬことになる。保険財政を見る上において、財政的に見て大きな位置を占めるというのは、薬剤費の位置が非常に高いということを検討しなければいけないのじゃないかと思うのですが、厚生大臣、いかがなものでしょう。
  150. 田中正巳

    田中国務大臣 社会医療保険における薬剤費の比率の高いこと、そしてこれを何とか引き下げるように努力をしなければならぬこと、これは医療保険における古くて新しい課題であることは事実でございます。私どもとしては、薬剤費が無用に高くならないように、また薬剤によって保険が運営をされるとかあるいは保険収入が確保されるというようなことはできるだけこれを避けるようにいたさなければならないし、そのような検討は過去においても、またただいまもいろいろやっているところであります。
  151. 寺前巖

    ○寺前委員 国民皆保険と言われてきた昭和三十六年以前の段階は、医療費の中に占める薬剤費の位置というのは二割前後であったと思うのです。それが今日では、昭和四十四年、四十五年時分から四五%とかあるいは四六%という数字が出てくるような薬剤費の占める位置に変わってきたと思います。だから、当然のことながらここにメスを入れるということはないのかあるのかということは、保険財政を見る場合には一番重要だというふうに私は思うのです。  そこで、この薬剤費を考えるということになったら、出てくる問題は、薬価の基準をどういうふうに決めて保険財政を払っているのか。薬価基準の決め方は一体何なのかということを聞きたいと思うのです。
  152. 八木哲夫

    ○八木政府委員 お答え申し上げます。  薬価基準につきましては、現在、現行の市場価格、薬価の実態にできるだけ合わせるというようなことから薬価調査を実施いたしまして、その結果に基づきまして薬価を決めるという考え方で進んでおるわけでございます。
  153. 寺前巖

    ○寺前委員 それでは、実勢にふさわしく反映しているというふうに見ておられるのかどうか。どうです。
  154. 八木哲夫

    ○八木政府委員 薬価の決め方の問題につきましては、中医協でも従来から御審議いただきまして、厚生省におきまして薬価調査を実施いたしまして、実勢価格の九〇%バルクラインという点に焦点を合わせまして薬価を決めているということでございます。  なお、最近は薬価調査が行われておりませんので最近の実態を反映しておりませんけれども、先般再開されました中医協におきましても、薬価調査を実施するということで、本年の五月に薬価調査を実施するということでございますので、最近の実勢価格が、今後の薬価調査の結果に基づきまして、できる限り実勢に近いところに反映できるというふうに考えている次第でございます。
  155. 寺前巖

    ○寺前委員 実勢を反映させるようにやりたいと言うているけれども、それではちょっと聞きますよ。  私、公立病院へ行ったのです。机の上にぽんと資料が置いてある。それは何やろなと思ってこう見ると、薬の名前が、単品がずっと書いてあって、何ぼで買うたらよろしいという購入価格がそこに書いてある。どこの公立病院へ行ったってみんな持っておって、それはあたりまえだと言うのだ。医薬品の購入価格というのは薬価基準比で三五%引きになっているというふうに公然とビラまで出ています。インチキ会社のビラじゃないのですよ。ちゃんと新聞社が、専門紙の新聞社がちゃんと、そういうビラがずっと職場に行ったら置いてある。公然と配られていますよ。あなた、そのことを知っていますか。
  156. 上村千一郎

    上村政府委員 御案内のように不況の影響もありまして、一部の医薬品で大きな値崩れがあるという事実は承知しておるわけでございます。特に抗生物質についてそういう動きがあるということは承知しておりますけれども、厚生省自身の直接の把握というのは、いま保険局長から申し上げましたように、この四月の取引価格を中心にして行います薬価調査の結果正確に把握できるものであるというふうに期待しておるわけでございます。
  157. 寺前巖

    ○寺前委員 公立病院で三五%引きで買うているということを知っていますかと、私はそれを聞いているのです。
  158. 上村千一郎

    上村政府委員 私自身直接把握したわけじゃございませんけれども、自治体病院共済会が、これは会社でございますけれども、会員である自治体病院に安い医薬品のあっせんをしておるという事実は報道等を通じて把握いたしております。
  159. 寺前巖

    ○寺前委員 公立病院はそうやって安く買うことをやっている。公然と。もう天下周知の事実だ。  その次に、国立病院はどうなんでしょう。
  160. 石丸隆治

    ○石丸政府委員 医療機関によって異なりますが、やはり会計法に基づきまして入札価格でやっております。実態は施設によって異なりますが、薬価基準の何割引きかで購入をいたしております。
  161. 寺前巖

    ○寺前委員 物によって違うし、そこによって違うけれども、全体としては薬価基準対比で七五%以上の品目は極力七五%以下になるように努力するように指導をやっていませんか。
  162. 石丸隆治

    ○石丸政府委員 病院経営の立場から考えまして、薬価をできるだけ安く購入するよう努力はいたしております。
  163. 寺前巖

    ○寺前委員 公然と四十九年にそういう指導を国立病院課長名でおやりになった。ちゃんと問題になっていますよね、これ。そうすると、国立病院でも公立病院でもみんな薬価基準対比何ぼで抑えよと、こういう病院経営からいっているということは、逆に言うと、薬価基準は実勢を反映していないというのは公的病院においてもしかりだということになるのじゃないでしょうか。そういうことになるのじゃないでしょうか。それが一つ。  それじゃ薬価基準の調査の仕方、これ自身においても再検討しなければならぬところに来ているんじゃないか。要するに、薬でもうけるということを考えることが経営上公然と行われているのだということになったら、薬剤費にメスを入れるのじゃと言うけれども、実際はそんなことはできぬぞということになるんじゃないか。薬価基準の決め方のあり方そのものは再検討を要する段階に来ているんじゃないでしょうか。
  164. 上村千一郎

    上村政府委員 まず薬価基準価格と実勢価格との乖離の問題というのは、一つは薬価基準価格の性格から来る問題があるわけでございます。一つは、御案内のように医療機関が購入する価格というものを保証する仕組みで薬価基準が決められておりますから、それは市場価格主義になっておるわけでございます。まあ市場価格というのは、取引条件によって千差万別である。  それからもう一つは、現在の薬価基準の定め方というのは、九〇%バルクラインの方式をとっておる。つまり購入総量の九〇%が買い得る価格ということでございますから、それ以下で買うものも相当あるという事実がございます。これはこの薬価基準の性格から来る当然の成り行きになるわけでございます。  それからもう一つは、現在問題になっておりますけれども、医療用医薬品の多くのものは、薬価基準上統一限定収載という形で載せられておりまして、同じ成分の医薬品でも銘柄によって非常に差がついておるという事実があるわけでございます。そういった点は、薬価基準を今回の薬価調査に基づきまして組み立てますときに、銘柄別に収載をするという形でより実勢価格に近づけるというふうなことにする予定でございます。
  165. 寺前巖

    ○寺前委員 何ぼ言ったって、それは実態を反映さして薬価を決める、こう言ったって、実態の操作がともかく経営を前提に置いて考えるんだから、いかに安くもうけようかと経営を考えたら、薬価基準との差をどうもうけるかということは経営者自身の方にもある。それから薬をつくっている側自身にも、今度は添付をやることによって病院の方も喜ばれるし、よけい品物を売ることができる。操作をそういうふうにやらすことができる。いずれにしても、薬価基準の調査の場合に自計式でみずから書かしているというやり方をやっている限りにおいては、正しい反映を、そこを基本に置いて薬の値段を決めるということには無理がある。もう時間がないのでこれはまた別の機会に譲りたいと思うのですが、私はそれ自身に無理があると思う。  そこで、ちょっと別の角度からこの問題結論的に聞きたいと思いますけれども、新薬の場合には実勢価格の反映というわけにいかぬでしょう。そうしたら、そのときにはどうするの。それに似たようなものを反映させて計算をする、こうおっしやるのでしょう。ところが、実態はそうじゃないのじゃないの。新薬の場合に、ちゃんと原価表を出させて、それをもとにして検討するんじゃないの。どうですか。原価を基礎にして検討するんじゃないのかどうか。
  166. 上村千一郎

    上村政府委員 新薬収載の場合につきましては原価計算表を出させておるわけでございますけれども、これはあくまでも一つの参考でございまして、いまお話しになりましたように、同一薬効の医薬品との比較で新薬の収載価格を決定するというふうな取り扱いにしておるわけでございます。
  167. 寺前巖

    ○寺前委員 時間がございませんので、私、簡単に問題提起をしますけれども、いま局長がおっしゃったように原価表を出さすというんだ。そうすると、原価を基礎にして物を見る条件というのは新薬の場合に考えている。それにもかかわらず新薬が大もうけどころになっているわけですよ。とすると、新薬の値段の決め方自身が、片一方では実勢価格との勘案を見るということによって大もうけどころをつくっているんだから、新薬の決定方式において、適正な価格になるように新薬の立場を見直しする必要がある。新薬でそれができるんだったら、すべての薬剤について原価を中心にして物を見ていくというやり方をしなければいけないんじゃないか。それをやらない限り——私は、国際的に薬剤費の比較を見ると、イギリスと日本との薬剤費の差が余りにも大き過ぎる。ヨーロッパではイギリスとの対比でどこの国でも薬剤費を抑えることを検討していますよ。それを思ったら、日本の場合にも原価を中心にして適正な薬価を決めさしていくというやり方をイギリスからも学んで改善をしなかったら、メスを入れることにはならないと思うけれども、最後に厚生大臣にその点に対する見解を聞きたいと思います。
  168. 田中正巳

    田中国務大臣 薬の値段、諸外国との比較はなかなかむずかしゅうございます。高いのか安いのか、品目によってそれぞれ違うということも私は事務当局からレクチュアを受けております。  いずれにいたしましても薬価が適正に形成されるということが必要でございまして、現在までのところは実勢価格、取引価格の九〇バルクラインというものを設定をいたしてやっている手法というのは長い間行っておりますし、中医協でもこのことについてコンセンサスを得ているわけであります。したがいまして、今後これについての改善の必要がないとは私、申しませんが、いろいろな手法をやりまして、できるだけ実勢の価格が反映をするようにいたさなければなるまいというふうに思っておりますが、いま先生の御提唱になった他計方式というものについては、実際問題としてなかなか簡単にはいきません。また原価主義、これについても薬の場合、独特のいろいろな理由がございまして、原価主義をこの際踏襲することを全面的に採用することは困難かと思います。
  169. 井原岸高

    井原委員長代理 これにて寺前君の質疑は終了いたしました。  午後二時より再開することとし、この際、休憩いたします。     午後一時八分休憩      ————◇—————     午後二時十二分開議
  170. 荒舩清十郎

    荒舩委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  この際、参考人出頭要求に関する件についてお諮りいたします。  日本住宅公団総裁及び日本道路公団副総裁の出席を求め、意見を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  171. 荒舩清十郎

    荒舩委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決定いたしました。      ————◇—————
  172. 荒舩清十郎

    荒舩委員長 質疑を続行いたします。井上普方君。
  173. 井上普方

    井上(普)委員 三木内閣が発足しまして、社会保障を充実さすんだあるいは社会的不公正を正すんだ、こういうことがスローガンになっておったわけでございます。しかしながら、このたびの施政方針演説を拝聴いたしますというと、はなはだその点が薄くなっておると思います。     〔委員長退席井原委員長代理着席〕 もう住宅問題は、いま国民の間におきまして非常な関心を持つと同時に、住宅に対する不満がうっせきいたしております。しかしながら、三木内閣が住宅問題を取り上げるのは景気対策の一面としか取り上げていない、ここに私どもは大きな不満を感ぜざるを得ないのであります。したがいまして、このたびの予算案に盛られておる住宅予算について、これで十分と大蔵大臣はお考えになり、かつまた大蔵大臣といたしましてはどういう姿勢で住宅問題に対処をするおつもりであるか、この点お伺いしたいと思うのです。
  174. 大平正芳

    ○大平国務大臣 財政の任務は、資源を適正に配分することを任務とするわけでございます。したがって、財源の配分に当たりまして、国民のニーズにこたえてどのように配分するかという点につきまして、政府はずいぶん苦心をいたしたつもりでございます。ことしの予算におきましては、国民の要望は生産中心から生活中心へ、GNP中心から福祉中心へという方向に要請が向いてきておりますことは御案内のとおりでございまするし、そういう方向に沿いまして、予算ばかりでなく財投計画も通じまして力点を生活、福祉中心に考えてまいりましたわけでございます。  その中で、住宅は仰せのように国民のニーズが非常に強いものでございまするので、その点に照準を合わせまして、去年の補正予算からことしの本予算にかけまして画期的な増強を図ったつもりでございます。もとより住宅は景気対策の面から申しましても、非常に影響のするところが大きいわけでございまするので、住宅対策をとることが景気対策に影響する、裨益するところ多いであろうという評価は政府として持っておりましたけれども政府の根本的な考え方は、この時代に処しマの国民のニーズにこたえるための住宅対策の推進ということでございまして、予算、財投を通じて努力をいたしたばかりでなく、民間の住宅ローンにつきましても強力な指導を展開いたしまして、井上委員も御承知のように、かつてない増加を見ておると思うのでございます。
  175. 井上普方

    井上(普)委員 国民のニードにこたえていないと私は思います。これは三木内閣の姿勢といたしましても、単に、私はここに施政方針演説の速記を持っておりますが、景気対策の一つとしかことしは盛っていない。はなはだ不満に思うのであります。この点について建設大臣、あなたの方は第三次五カ年計画を立てられておられます。これで十分になされるとお考えになっておられるか、この点をお伺いしたいのです。
  176. 竹下登

    ○竹下国務大臣 新五カ年計画につきましては、この過去の反省に基づきまして、実行可能の数を計画として盛り込んでおります。その上にいま大蔵大臣からもお答えがありましたように、財政当局の強い御協力をいただければ私は実行可能の計画である、このように承知いたしております。
  177. 井上普方

    井上(普)委員 第三次五カ年計画は住宅宅地審議会の答申に基づいて一応計画が立てられております。しかし、その計画は四つの大きな柱にあるのですが、これが満足されているとお考えでございますか、どうでございます。
  178. 竹下登

    ○竹下国務大臣 基本的にはこの量から質への転換という形の中で、私どもは与えられた計画の中で苦吟し、模索し、必ず実行、実現をいたしたい、このように思っております。
  179. 井上普方

    井上(普)委員 この五ヵ年計画の内容を見てみますと、果たしてこの年の予算案で、ことしが第一年度でございますから、できるかどうか、私どもは大きな不満を持たざるを得ない。三木内閣はたてまえと本音とがどうも違うようでございますので、その点では内閣としては御満足かもしれませんけれども、実際問題といたしましてこれを見てみますと、質より量への転換、確かにそのとおりです。しかし、それに対する対策が十分できておるか。いま都会におきまして木賃アパートに住んでおられる勤労者の諸君、この実態を考えましたときに、公共住宅をまず建てること、それと同時に、公共賃貸住宅を建てることによって質への誘導的な役割りを果たしてきたことは、いままでも御承知のとおりであります。しかるに、このたびの五カ年計画というものは公共賃貸住宅、これを減しておる。うんと減しておる。そして、民間自力住宅にのみ重きをかけてきておる。ここに第三次五カ年計画の本質があると思うのです。  先ほど建設大臣は、実行可能な予算である、こう申されました。そうでしょう。昭和四十六年、四十七年、四十八年、四十九年、住宅公団は九万戸の賃貸住宅を建てる計画で毎年毎年説明してきた。それが実行できない。毎年六万戸しか建てることができなかった。こういう経過にかんがみて、ことしは六万戸にするのです。第三次五カ年計画は、住宅公団の建設戸数は三十一万戸ですか、ぐっと減らしておるのであります。ここらあたりに私は、国民が要求しておる住宅と、政府が考えておる住宅とは大きに違うと思うのですが、建設大臣、いかがでございますか。
  180. 竹下登

    ○竹下国務大臣 私が先ほど申しましたように、いわゆる公営住宅というものが、今日までいろいろな努力をしたにもかかわらず、社会的経済的客観情勢の中でその目標を達してこなかった。その反省の上に立って、あるいは関連公共施設の問題でありますとか、あるいは地方自治団体に対して特別な御協力をいただくだけの財政的背景を整備するとか、そういう努力は今後とも続けなければならないと思いますものの、実際私も五十年度、この不況下において予算の完全消化を至上命題としてちょうだいしながらも、結局返上されるものは公営住宅等であるということを考えますとき、その問題点はおおむねあらわれたと思いますので、それらを洗い画しながら、今後公的資金によるところの住宅の建設が促進されるように努力をしたい。  今年はまさにおっしゃいますとおり、実現可能という角度の上に立って計画をいたしたものであります。
  181. 井上普方

    井上(普)委員 建設大臣、この問題は、住宅公団が十分に家が建てられない、計画達成できないというので、建設委員会といたしましては小委員会をつくって、どこにネックがあるかということを研究し提言もいたしております。あるいはまた、福田副総理が行政監理委員長であられたときに、行政監理委員会としての提言もなされております。幾多の提言がなされておるのでございますが、それを実行されていなかった政府のために公共賃貸住宅は建たなかったと思われるのであります。もちろん、その間には公団自身の能力の問題もございましょう。ここらあたりがはっきりしなければ、政府がいままでこの公共賃貸住宅に対する熱意が足らなかったという反省の上に立たなければ、この五カ年計画も達成できないし、かつまた公共賃貸住宅を重点に置くような政策もできない。私は、結局政府の姿勢いかんにあったと言わざるを得ないと思うのであります。  先ほども大蔵大臣は、民間の住宅ローンの拡大をやったので心配ない、こう仰せられます。しかし、御承知のように、銀行はいま株であるとかあるいは土地に投資する、こういうことが主題であったが、そちらの方に投資ができぬから住宅ローンに回ってきておるのであります、今日におきましては。したがいまして、景気がどうなる、左右をられることによって住宅ローンというものはぎゅっと圧縮されて、民間自力住宅それ自体もなかなか建てられないと思うのであります。  そこで、私は一つお聞きしたいのですけれども、大蔵大臣、あなたは、お気の毒でございましたが、四十八年暮れにたしかお家を焼かれて、その後お家をお建てになっておるのでしょうか。いかがでございますか。そのときに坪当たりどれくらいでできましたか、お伺いしたいと思います。
  182. 大平正芳

    ○大平国務大臣 まだ建てておりません。
  183. 井上普方

    井上(普)委員 ああそうですか。  まあ私どもの家といたしますと、東京で建てるとしますと、大体坪三十五万かかるのが普通だろうと思います。しかも、建設大臣、あなたのこの第三次五カ年計画の目標とすべき平均住居水準、これを見ますと、四人家族で百平米、これが面積でございます。そうしますと、それに要する費用は、坪三十五万といたしまして計算いたしますと、家だけで、平均的水準をつくるにいたしましても、三十五万の三十・三倍ですから、これはもう御承知のとおりです、千六十万円かかるのです。その上、土地がついてまいります。したがいまして、一戸の平均的家をつくると、最低に土地が七十坪つくといたしましても二千七、八百万の金を要するのであります。これは一例としまして私は申し上げるので、二千七、八百万円の金がかかる。そうしますと、八百万の自己資金があったにいたしましても、二千万円は借りなければこれは家が建たぬということに相なります。そうすると、二千万円の借金をして毎月どれくらい払わなければならぬと思いますか。しかも、この家というものは、あなたのこの第三次五カ年計画の家というものは、これは社会的資産でもあるので世代的に見なければならぬというので、かなり長期の建物の耐用年数を考えなければならぬような家になっておる。そうすると、先ほど申しましたように、坪三十五万というのは決して不当な価格でもない。二千万円と申しますと、これは年に大体二百五、六十万円払わなければなりません。しかも、あなたの方のこの第三次五カ年計画によりますと、住居を持つためには収入の約二五%持つのが適当である、こう言われます。そうしますと、二千五百万円で八百万円の自己資金があったといたしましても、一千万円以上の年収がなければ家は建たないと思うのであります。そうすると、年収一千万円の収入がなければ、あなたのおっしゃるこの第三次五ヵ年計画の平均的住居というものは持てない、こういう計算に相なるのです。とするならば、一体一千万円以上の年収のある国民はどのような階層であるか、もう私が申すまでもございますまい。とするならば、このあなたのおっしゃる五カ年計画も、これはまさに絵にかいたもちにならないか、こう思うのでございますが、どうでございます。特に、民間自力建設に主力を置くこの第三次五カ年計画であります。私どもとは大きに意見の違うところであります。どうお考えになります。
  184. 竹下登

    ○竹下国務大臣 井上委員のお考え方の中で、私に対する御質問、特に数字を挙げての御質問でありますが、その場合はおっしゃるとおり民間自力住宅ということを対象にされての御質問であろうと思うのであります。これは時と所とによって、それは上物の単価はおおむねそろっておるといたしましても、いわゆる土地に要する経費というものはかなりのばらつきがあると思っております。したがって、私はあえて一千万円にしようということを必ずしも根拠としてお答えするわけではございませんけれども、従来の経過からして実現可能の問題については、私は民間自力の問題は解決し得る課題であるというふうに思っております。ただ、なかんずく三大都市圏の方々の御意見として私どもの方へ寄せられてまいりますところの、いわば昭和三十年代に就職をしたという方々にとっては、確かに持ち家とか、いま先生の御指摘になった規模というようなものに先行して用地取得等を行っておるからその夢はまだ持てるのである、しかしながら、四十年以後に勤労者として三大都市圏に出てきた人にいまおっしゃったような夢をかなえてあげるためには、より強いいわゆる宅地政策というものを行わなければいけないということは私も十分理解しておるところであります。ただ、御指摘のいわゆる公営住宅の問題につきましては、確かに先生の御指摘理解しつつも、私は実現可能な数字の中で精いっぱいの努力をしなければならぬと思っております。
  185. 井上普方

    井上(普)委員 あなたはいま土地の価格が合わない、こうおっしゃいますけれども、これは国土庁が出されておる地価公示価格です。これを見て計算いたしましたならば、決してそのようなものができるわけはございません。やはり一戸をつくるとすると二千七、八百万円かかるのであります。そうすると、その方々の所得階層はといえば、年間一千万円以上の収入がなければできない。民間自力でも建て得ないということに相なるのであります。八百万円の自己資金を持っておってもです。その間に住宅金融公庫の五百五十万円の借金をいたしましても、民間ローンというものが、御承知のようにいま八分七、八厘しております。あるいは九分三厘しておるものもあります。平均いたしますと、年間にいたしましてやはり二百五、六十万円の償還をしなければ家は建たない。そうするならば、第三次五カ年計画の、この計画の中身から私は類推するのでありますが、年間所得が一千万円の階層でなければ民間自力住宅というものは建ち得ないという結果に相なるのであります。私はここに大きな五カ年計画の欠陥があると思います。いかがでございます。  同時に、竹下さん、あなたは私らと同じ世代の方でございますが、私ども以上の世代といいますもの、あるいは四十歳以上の者でありましたならば、あるいは戦前からの家族制度というのがございまして、私どもお互いに家を建てるには、あるいはきょうだいあるいは親というものから援助を受けながら家を建てることもできました。しかしながら、いまの三十歳あるいは二十歳の若いゼネレーションの諸君は、これはもう核家族の中で育っておる人たちであります。したがいまして、そういうような援助というものを受けられない。とするならば、全く自力でやっていかなければ住宅というものはなかなか建たないという現状になると思う。竹下さん、昭和四十年代あるいは四十四、五年代に、私らのゼネレーションでありましたならば、インフレヘッジのために土地を買ったということもございましょう。しかし、若いゼネレーションの諸君がどうやって家を建てるのでございましょうか。これは若いゼネレーションの諸君のために私は申しておる。この諸君はこれで建ちますかと言うのです。私はとても望みがないと思います。これに対して何か言うことがありましたら私はお聞きしたいのです。だから、低廉で良質な公共賃貸住宅というものを大量に都市の勤労者の諸君に与えなければならないと思うのでございますが、いかがでございます。そういう面からいたしましても、公共賃貸住宅に重点を置いた住宅計画でなければならぬと思いますが、どうでございます。
  186. 竹下登

    ○竹下国務大臣 確かに井上委員指摘のとおり、いわば昭和二十年代から働く立場になったわれわれのゼネレーション、あるいは昭和三十年代に勤労者としての立場を得たゼネレーション、それはいまおっしゃった、言ってみれば土地の先行取得等が、あるいは別の意味における財産貯蓄性に志向したりしながら土地を取得することができたという意味において、その後住宅ローンとかもろもろの制度金融の中で持ち家を持つことができたという可能性は私もそのとおりだと思うのであります。私どもがいまいろいろな会合でそういう御質問を受けます際は、昭和四十年代以後に都市、なかんずく三大都市圏に自分の勤労場所を得た、しかしそれには持ち家というのはしょせん高ねの花ではないか、夢ではないか、だから公的住宅というものによって大量供給された中に、せめてみずからのマイホームの夢をつないでいく、だからこれをよけい建てろ、こういう議論が答申をいただく段階におきましても一番活発になされた議論であると私も聞かされております。しかし、率直に言って、私なりにことしの予算を顧みて、また井上委員から御指摘のあった住宅公団の実績等から見ますと、これが目標達成に至らなかった要因はたくさんあるのであります。しかし、それも小委員会で問題提起をされておることも私も聞かされております。そういう問題を踏まえて、そういう問題によって経済的、社会的環境というものを改善していくならば、私は全く高ねの花であって、夢に終わってしまうものではない、その環境をまたつくらなければならぬというふうに考えております。
  187. 井上普方

    井上(普)委員 しかし、竹下さん、これは昭和六十年までの計画の第一でしょう。昭和五十一年から五十五年までの計画、これに基づいて昭和五十五年から昭和六十年までつくるのですよ、この計画は。これは今日的な問題ですよ。いまのお話ではそれにはお答えになっていないと思う。  政府がいかに住宅に、特に大蔵省がいかに住宅に対して関心がないか、一つの例を申し上げましょう。これは西ドイツのまねをいたしまして財産貯蓄制度というのをおつくりになっておる。この点の是非については言いませんけれども、非常に西ドイツと日本の内容が違います。先般私も西ドイツへ参りまして聞いたのでありますが、国家予算の五・六%を実は住宅建設につぎ込んでおった、あるいは住宅の補助に使っておったという話を聞いて一驚いたしたのであります。しかしながら、この問題は別にいたしまして、その財産形成は名前だけはドイツからそのまま輸入をしたようであります。  そこで、財形住宅貯蓄というのをやっておりますね。これは大臣でなくてよろしいのでございますが、これは財形のうちの何%ぐらいやっておられますか。わかっていますか。
  188. 藤繩正勝

    藤繩政府委員 お答えを申し上げます。  財形貯蓄は現在約五百万に近い労働者が行っておりまして、残高も七千億になんなんとしておりますが、そのうち住宅貯蓄と銘打ってやっておりますのは約一割だと思っております。
  189. 井上普方

    井上(普)委員 一割。実は一割に満たないのです。私の県で言いますと大体三%です。それしかやっていない。なぜやっていないんだといいますと、財形住宅貯蓄というのは優遇措置がございます。これは、大臣、御存じですね。ところが、これを組合が申し込みましても——財形貯蓄というのは、御承知のように使用者側と半数以上占める組合との間の協約によってできるのであります。ところが、これを申し込みいたしましても、専売公社、この協約を昨年までは結んでおったけれども、昨年からやめておるのであります。専売公社、やっておらぬでしょう、このことは。どうなんです。おたくの方は、この財形住宅貯蓄をやると後の監督がうるさいからという理由で、去年までやっておったが、去年これを打ち切ったじゃありませんか。
  190. 泉美之松

    ○泉説明員 お答えいたします。  専売公社と全専売労働組合との話し合いで、財形貯蓄は行っておりますけれども、住宅の方につきましては、やめております。
  191. 井上普方

    井上(普)委員 大臣、大蔵省の直轄のところでやっていない。いままでやっておったのですよ。これをやめておるのです。これは単に専売だけじゃない。全逓もそうです。全電通もそうです。三公社いずれも全部ともかくこの財形住宅貯蓄というのを去年からやめておるのです。これで、どこに政府の住宅に対する関心があると言えますか。大臣、いかがでございます。あなたの監督下にある専売公社は去年までやっておったが、やめておるのです。
  192. 大平正芳

    ○大平国務大臣 冒頭、あなたの御質問にお答え申し上げましたように、われわれの任務は国民のニーズにこたえて財源の配分を適正にやるということなんでございます。住宅政策もその一つでございますが、国民のニーズが熾烈でない場合、そういう場合におきまして、これにいかにしてこたえるかということはなかなかむずかしいと思うのでございまして、今日そういう要請がどの程度、どういう状態においてあるかということを、各実施官庁あるいは労働組合において判断されて、いま申し上げたような状況になっておるのではないかと思いますけれども政府はそういう努力を減殺するようなことは一切いたしておりません。
  193. 井上普方

    井上(普)委員 しかし、減殺しておるじゃありませんか。これはなにと違うのですよ。一般の住宅貯蓄の場合でございましたら年間の積立額の六%の控除率がある。ところが、長期の財形住宅貯蓄の場合は八%になっているのです。ささやかではありますけれども、こういうようになっているのです。それを組合側が申し入れしましても、あなたの、大蔵大臣の指揮下にある専売公社は、当局が、これはめんどうくさいからということでやめておるのであります。これは単に大蔵省だけじゃありません、専売公社だけじゃありません。全逓もそうです。全電通もそうです。国鉄もそうです。どうですか。労働大臣、あなたは、せっかく名前も輸入して財産形成貯蓄なんというりっぱなものをつくったんだ。ところが、こういうような実態について、あなたはどうお考えになります。
  194. 長谷川峻

    ○長谷川国務大臣 勤労者の生活安定にはいろいろな条件がありますが、その中に住宅は大事なものなんだ。こういう面で西ドイツの労使関係は非常に正常と申しますか円滑だと私は思う。そうしたことからしまして、西ドイツの財産形成というのは、私もいろいろなところで研究をし、また昨年もここでその改善策について御審議をいただいたわけでありまして、これは労使で話し合っていることでございますから、いま初めてその話は聞いたことでして、非常な関心を持って持ち家制度というものを私の方は推進しておるときですから、どういうところにネックがあるか、いまから先研究してみたい、こう思っております。
  195. 井上普方

    井上(普)委員 労働大臣、あなたはおっしゃいますけれども、たちまちこの問題がこういうように出てきているのです。これで政府の姿勢を問われておると私は思うのです。専売公社の姿勢はもちろんのこと、指揮をする大蔵大臣——運輸省どうですか。運輸大臣、どうです。あなたのところの国鉄、どうしています。あなたでなくて結構です。どなたでも結構ですよ。
  196. 木村睦男

    ○木村国務大臣 国鉄の持ち家対策につきましては、私は詳しく承知をいたしておりませんが、鉄道弘済会等で国鉄の従業員の住宅確保のために土地のあっせん等をやっておる程度のことは聞いております。
  197. 井上普方

    井上(普)委員 その問題は後で申します。  せっかく労働省がこういう制度をつくっておりながら、あなたの方の当局側が全部拒否しておるのであります。どうですか。大蔵大臣、どう思います。あなたの直接の指揮下にある専売公社が、当局側が拒否することによって締結できないのです。どうです。
  198. 大平正芳

    ○大平国務大臣 当局と労組との間の話し合いがどういうことであったのか、私、よくつまびらかにいたしておりませんので、よく聴取してみたいと思います。
  199. 井上普方

    井上(普)委員 これは、できるように努力されるということで解釈してよろしゅうございますか。
  200. 大平正芳

    ○大平国務大臣 せっかくそういう制度をつくったわけでございますので、それが円滑に実現してまいることを私どもは希求いたしておるわけでございますので、労組と当局との間で話がつきますことは本当に望ましいことでございます。
  201. 井上普方

    井上(普)委員 財形貯蓄制度については、当局側は、使用者側は協力しなければならないということが明文化されておるのです。しかるにそれを、住宅貯蓄については拒否しておる。まことに私は、政府当局あるいは出先と言ってもいい、ここでは出先にしておきましょう。その諸君がともかく政府の意図を解しておらない、ひいては責任は政府全体にあると言わなければならぬと思うのであります。  こういうような姿勢でありますから、この計画というものは、先ほども申しましたように、持ち家制度そのものの実現が非常に不可能な計画であると申さなければならないのであります。先ほども申しましたように、若いゼネレーションの諸君はどうしても公共賃貸住宅に入れなければならないと思います。いま東京におきまして、六畳一間と三畳ぐらいがついて、炊事場は共同、便所は別についておる家で、家賃は大体四万五千円ぐらいかかるのです。この山手線沿線内におきます木賃アパートですよ。こういう劣悪なる状況の中で勤労者の諸君は働いておるのです。これを重点に解消しなければ、幾ら福祉だと言っても福祉が泣くというものであります。  したがって、いまの政治が将来のゼネレーションの諸君に対しての責任というものは、大量に公共賃貸住宅を建てて、低廉な、良質なる住宅を与えることが、いまの経済情勢の中において最も必要だと私は考えるのです。この点について、大蔵大臣どう思います。そのような方向に今後進まなければならないと思うのですが、きょうは副総理がおられませんので、大蔵大臣にお伺いするのですが、副総理も行政管理庁長官のときには、そういう提言もせられておるのです。副総理になったら、いつの間にやらこの持ち家政策を中心にするような五カ年計画を出されておる。まことに責任の所在というものが、言うこととすることとが違うと言わなければならぬと思うのでありますが、大臣、いかがでございますか。
  202. 大平正芳

    ○大平国務大臣 たびたび申し上げて恐縮でございますけれども、国民のニーズがございますならば、それにこたえて施策するのが政府の任務でございます。  公共住宅の場合は、私はあなたが言われるように、そんなに熾烈なニーズがいまあるとは思わないのでありまして、むしろいまの公共住宅の質をよくしてまいるという方向に施策が展開されるのが望ましいと思うのでございまして、ことしの予算におきましても、そういう方向で内容の拡充、改善に努めておるつもりでございます。
  203. 井上普方

    井上(普)委員 いま、公共賃貸住宅に対する国民のニードがそんなにないというお話を承りまして、私はこれほどびっくりしたことはございません。いま、公団住宅への申し込み、通勤時間一時間以内のところは倍率はどれくらいありますか。これは大臣でなくてよろしゅうございます。
  204. 南部哲也

    ○南部参考人 お答え申し上げます。  倍率につきましては、東京圏といいますか、首都圏が全国で最高でございます。それから、首都圏の中におきましても、いま先生お話しの交通の至便な土地ということになりますと、何十倍の……(井上(普)委員「何百倍でない」と呼ぶ)なるところもございます。
  205. 井上普方

    井上(普)委員 大臣それは認識不足というものです。もう少し住宅問題について御勉強になっていただきたいと思います。  そこで、もう私も時間の関係がございますので、土地について少し質問申し上げてみたいと思います。  きょうの朝日新聞に、財界が土地恐慌の危機感を持って国に買い上げ要望という記事が出まして、実は私も何とまあ得手勝手なやつらだなという感を深くいたしておるのであります。集まった連中というのは、不動産屋であるとか、あるいは銀行であるとか、あるいは信託銀行、それから商社。連中が集まって、政府に強力なる呼びかけをするということがこれに出ております。いいかげん土地の値上がり、転がしによって金もうけをした諸君が、今度は金利の負担に苦しむから国に買ってくれ、国民に転嫁し押しつけようというこの姿勢、これが今日の土地騰貴をもたらした最大のものであります。その諸君がぬけぬけとこのような要望を出すこと、私は怒りをもってこの記事を読んだのでございますが、土地主管をいたされております国土庁の長官はどうお考えになりますか。
  206. 金丸信

    ○金丸国務大臣 私もその新聞は見せていただいたわけでございますが、土地の問題につきましては、先生と一緒に国土利用計画法という法律をつくるというようなことで苦労しました。その苦労というものは、当時一億国民が、すべてと言わないけれども、土地を買えば、転がせばもうかるというような考え方から土地が騰貴をいたしたわけでありまして、その最大のものは不動産屋だとか大手企業というようなことになっておったわけでございますが、われわれは、この問題につきましては厳正な、それを簡単に受け入れるなんという考え方は毛頭持っておらないことを十分御理解をいただきたいと思うわけであります。
  207. 井上普方

    井上(普)委員 実際、この財界の諸君の自民党政府に対する甘えっぷりというものは、まさに国民的怒りを呼び起こすものではないかと私は思うのであります。  そこで、土地がいかに買われておったか、ともかく土地さえ買えば金もうけができるんだということであらゆる者がやっておる。銀行は、御承知のようにダミーをつくって買いあさった。買いあさるどころか、おまえのところはひとつあの土地を買え、わしら融資してやるということで買わせておいて、売却をするときにはまた子会社を使ってその土地を売却させるというような、非常なもうけを銀行の諸君はやっておる。その一番端的な例が例の興人の倒産、蝶理の倒産に見られますように、信託会社が中心になってやられておることは御承知のとおりであります。この銀行あるいはまた信託会社に対する問題は厳しい処置を大蔵省がとられておると思いますけれども、しかし保険会社に対してはやられておらない。保険会社に対しては大蔵省の指導、規制というものが行われておらないが、一体どういうような方針で臨まれておるのか、お伺いいたしたい。  それから通産大臣にお伺いしますが、電力会社も同じように国から温かい保護を受けておる会社であります。ところが、電力会社も子会社をつくって、一〇〇%出資した会社で土地の買いあさり、転がしをやっておる。  あるいはまた、運輸関係で申しますと、先ほど申された弘済会、この弘済会というのもこれは公益法人のはずです。公益法人が出資して九十何%の株を持っておる弘済建物という会社を持って、これで土地の買い占めをやる。単に国鉄職員に土地を売却しておるだけじゃありませんよ。一般にも売り出して金もうけをしておる。  文部大臣、大学もそうです。大学も土地の転がしをやっておる。このことをお調べになっておられますか。  皆さん方の、ただいまお伺いしたことにつきましての処置をお伺いしたい。  さらに、自治大臣にお伺いする。地方自治体が公社で金もうけをしておる。これを役場の建設に使うとか一般行財政費にまでつぎ込んでおるという事例が間々見受けられるのであります。税金でともかく立っておる自治体ですらそういうことをやろうとする。事実やっておるのがあるのです。これに対する処置をどうされるのか。  この点を各大臣から承りたいと思います。
  208. 大平正芳

    ○大平国務大臣 四十六、七年ごろの金融緩和時に不動産部門に進出いたしました企業が、最近の不動産の売れ行き不振等によりまして資金が固定化いたしまして、経営を圧迫している事例が多いことは御指摘のとおりでございます。当時の銀行の不動産関連融資につきまして、その融資態度にやや行き過ぎの面があったと思われます。  大蔵省といたしましては、土地取得関連の資金などで投機、思惑につながるおそれのある資金、その他いわゆる不急不要の資金につきましては、その融資を抑制するよう厳重に指導していたところでございますけれども、今後とも金融機関にその自重を求めていきたいと思います。金融機関の側でも、当時の融資態度について深く反省いたしておりまして、われわれがその後の事跡を見ておりますと、反省の事跡が具体的にあらわれておると思うのでございます。  これらについて、どのような実情になっておるか、いまどのように対処しておるかということにつきましては、銀行局長から御報告させます。
  209. 田辺博通

    ○田辺政府委員 四十七年ごろから、金融機関に対します土地取得関連の融資を厳に抑制するような通達を累次にわたって出してまいったわけでございますが、これを事跡でみますと、不動産業向け貸し出しという分類がございますが、その総貸し出しに占める割合は四十八年の三月がピークでございまして、これは総貸し出しに対しまして六・九%でございましたけれども、その後報告をとっておりますと次第に下がっております。五十年九月末現在では六・三%ぐらいになっておりますので、まあ銀行の融資方針というのは相当改まっている、こう思われます。  それから生命保険、保険会社はどうしているかという御質問でございましたが、生命保険等の保険会社は、従来から銀行とはちょっと違いまして、かなり長期の資金を持っておるといいますか、抱いておるわけでございますので、従来から不動産関係の投資が多かったわけでございますが、これも銀行に対しましていま申しましたような抑制方針を貫くことを求めますと同時に、生保に対しましても同様な趣旨で今後運営をしてもらいたいということを言っておるわけでございます。
  210. 木村睦男

    ○木村国務大臣 弘済建物株式会社と申しますのは、国鉄の永年勤続者が大部分が持ち家を持っておりませんし、土地を獲得するのにもなかなか不案内でございますので、そういう従業員に便益を与えるという趣旨で、弘済会が全額三億出資をいたしましてつくった会社でございます。  私の知り得ております範囲では、この弘済建物がやっておりますこの趣旨に沿った仕事は、大体全体の六割ぐらいはこれをやっておる。四割ぐらいが他の方に土地を売ったりなどしておるということでございますので、今後はさらにこの六割というものをもっともっとふやして、この趣旨に一〇〇%沿うように努力するように指導いたしたいと思っております。
  211. 永井道雄

    ○永井国務大臣 先生が大学とおっしゃいましたのは私立だと思いますが、私立の学校の場合には、校地のほかに運用財産としての土地を購入するということは認められているわけでございます。ただし、私立学校が収益を得るような種類の職種につきましては、これは文部省から告示が出ているわけでございます。三十四種類ございます。そういうものの中に、不動産売買によって収益を行う、そういうものは含まれておりません。したがいまして、学校法人が不動産を運用財産として取得することは法的に認められておりますけれども、これによって収益を上げるということは告示によって認められていないことでございます。
  212. 井上普方

    井上(普)委員 いま質問いたしましたけれども、この保険会社につきましては非常に監督ができておりません。長期にわたる金だからとおっしゃいますが、それならもう信託銀行と変わらぬです。信証銀行がいかに罪悪を及ぼしてきたか、あなたも御存じのとおりです。蝶理にしましても興人にいたしましても、だれにつぶされたかということは皆さんもう御存じのとおりです。同じように、生命保険会社も、自分は子会社をつくって別荘開発をやっておるというようなケースがたくさん見受けられるのであります。もう少し厳重にやっていただきたいと思います。  それから、この信託銀行につきましても、名前が出てくるのはどうも、この間の滋賀県の上田の問題にいたしましても日本信託の名前が出てくるし、もう少し大蔵省としては指導監督をやっていただきたいと思うのであります。  運輸省につきましては、弘済建物というのは四割が一般に売っておるのだと言いますけれども、設立の目的、弘済会というのは公益法人なんですよ。それが一〇〇%出資した会社が、国鉄職員に対する土地の提供というなら話はわかるが、一般にまでやっておるのです。このほかにも、おたくの運輸省、国鉄関係で、この前申しましたが、日本交通がやっておることは御存じでしょう。監督が少し緩過ぎやしませんか。  あるいはまた、文部大臣、あなたは、私立学校が土地を買って、これを個人に転売しておるというような例が東京都の土地白書にも出ておるじゃありませんか。八つ出ておるのですよ。これは文部省当局が知らぬというわけがない。私も、私らのくにのところでそういうようなケースを見ております。  いずれにいたしましても、この土地に対しまして、もうけるのだというたら、もう恥も外聞も捨てて、ともかく不動産に群がり集まって、特に銀行の主導権のもとに今日の土地投機をしたのでございます。中には、自治大臣は御答弁なかったけれども、自治体も企業のごとく考えて金もうけをし、それで庁舎を建ててみたり一般行政費の中へ及ぼしたりする自治体がございます。これらにつきましても、ひとつ厳重にその本旨というものを見失わないようにしてやっていただきたいことを私は強く要求いたしまして、質問を打ち切ります。
  213. 井原岸高

    井原委員長代理 森井君より関連質疑の申し出がありますので、これを許します。森井忠良君。
  214. 森井忠良

    森井委員 割り当てられた時間があと三十分くらいですから、私はずばり本州と四国の架橋の問題について、いわゆる本四架橋についてお伺いをいたしたいと思います。  あらかじめお伺いをしたいわけでありますが、建設大臣、本四架橋につきましては御視察願ったことがございますか。
  215. 竹下登

    ○竹下国務大臣 残念ながらまだございません。
  216. 森井忠良

    森井委員 運輸大臣、いかがでございますか。
  217. 木村睦男

    ○木村国務大臣 私は、郷里でございますので、視察をいたしました。
  218. 森井忠良

    森井委員 郷里といいましても、ルートはいまのところ三つ考えられておるわけでありまして、恐らく私の理解では全部見ていらっしゃるとは考えられません。  実は、いままで本四架橋につきましては、まあどちらかというと夢のかけ橋ということで、メリットばっかり宣伝をされてまいりました。しかし、私ども現地を先般調査をいたしまして、これは大変な問題だなあということをまず感じました。たとえば、橋がつくことによって島そのものが橋げたになるような地域もございますし、あるいはまた、高松あたりへ行きますと、これは橋はじかに高松にはかからないわけでありますが、国鉄の連絡船がなくなることによりまして、駅で弁当を売っていらっしゃる皆さんが、大体八割ぐらいは連絡船で買ってもらっておった、これがばっさりなくなる。あるいはまた、港々へ行きますと、港湾労働者の皆さんが、一体おれたちの職場はどうしてくれるんだ。また船員は船員で、やはりこれは橋がかかるのでありますから、当然内航船が要らなくなる、おれたちの仕事をどうしてくれるんだ。この大変な問題があるわけでありまして、メリットよりもデメリットの方が非常に大きい、私はそういう印象を受けて帰ってきたわけであります。  そこで、第一にお伺いしたいわけでありますが……(「まず予算を通すことだよ」と呼ぶ者あり)予算を通すことだとおっしゃいますが、建設大臣、私は大三島橋を現地で見ました。これは関連事業も入れますと百九十億にたしかなると思うわけでありますが、その島では、住民の皆さんに聞いてみますと、二百億近い金をかけて橋をかけてくれることもありがたいが、それよりはこの島には水がない、あるいは学校や保育所も足りない、医療機関もない。二百億も金があるのなら、せめてそちらに回してもらいたいというふうな感じがございました。これは率直に申し上げるわけでありますが、一体一ルート三橋と言われます中で、特に大三島橋を急いでおかけになった理由、並びに、予算を見ますと、新年度で大鳴門橋あるいは因島大橋と、三橋にわたって着工を計画していらっしゃるようでありますが、本当の意味での住民のニードにこたえているのかどうなのか、まず所信を承っておきたいと思うわけです。
  219. 竹下登

    ○竹下国務大臣 私自身この現地の調査もいたしておりません。そして就任早々でございますので、森井委員の御質問に的確に答えられるかどうか、幾らか私も不安がございますが、大局的に私なりに把握いたしておりますのは、まず一つ大局論といたしまして、こういう新しい交通網等が整備されることによって、大きな経済の流れが変化をしてくる、こういうことがあります。したがって、まず私は、こういう大型プロジェクトによっていろいろなメリット、デメリットを考えることに三つの問題がありはしないかということを思うのであります。  一つは、先ほど申しました経済上のメリット、デメリットの問題であろうと思います。  それから二番目は、そこに直接住んでいらっしゃる住民のお方の、まあ住民エゴイズムという表現は変えまして、個人または集団の自己主張、それが全体の公共性の中でどこに調和点を求め決断をするか、これが第二の問題だと思います。  それから第三番目の問題は、あるいは環境の問題あるいは自然景観の問題、そういう問題であろうと思うのであります。これもまた、美というものには、仮に自然美と人工美なり造形美なりというものがあるといたしますならば、その調和点を適切に求めることにより、より高度な美というものが人間の力によって創造されていくということも考えのうちに入れてみますと、大ざっぱに言ってこの三つの問題になると思うのであります。  したがって、経過的に今日、大鳴門橋については諸般の準備を進め、因島大橋については引き続き着工時期について検討するということが八月十八日に決定したと私は聞かされておるわけであります。したがって、公団におきましては、この決定に基づいて準備を進めており、目下大鳴門橋については環境庁と協議中であります。そうして因島大橋については、引き続き着工時期について検討を進めておるという段階でありますが、私は、いずれにいたしましても、基本的な考え方としては、いわゆる大型プロジェクト工事が行われることによってできてくる経済の流れの変化、メリット、デメリット、そうしてこの住民意識と社会公共性の調和をどこに求めるか、それから環境との調和をどこに求めるかという三つの点について、やはり最もしっかりした考えで対応しなければならないと思うわけであります。  それからさらに、先生御指摘になりましたいわゆる内航海運の問題でございますとか、私なりにもいろいろ勉強してみました。直接補償というむずかしい法律論をいたしますならば、これは完全にそれが失業状態になるものである。しかし考えようによれば、行きは橋を渡って帰りには船で渡るというようなケースも、過去においては一ヵ所だけですがあるわけであります、かえって発達したということ。したがって、この新しい大型プロジェクトによるところの交通網というものができるというのは、競合関係が生じたのであって、必ずしもこれが完全な直接補償にはつながらないという議論も、聞いてみればなるほどなあと思いますけれども、これはやはり電車が通って人力車がだめになったという以上の私はその差はあると思うのでございまして、そういうものをどうした形でとらまえるか、鋭意目下検討をしておりますが、決してないがしろにできる問題ではないというふうに私も考えております。
  220. 森井忠良

    森井委員 建設大臣、聞かないことまで答えていただいたわけですけれども、後で聞こうと思っておりましたが、今回の意図は、御承知のとおり、四十八年の十一月には一たん着工を凍結しておられて、これは総需要抑制の関係です。そうして去年の九月に凍結解除、これはいわゆる第四次不況対策として突如あらわれて、そうして凍結解除されて着工になった。これは去年の十二月なんです。もしもあなたが言われるように住民のニードにこたえる、その他いろいろあると思うのでありますが、それですと、優先順位についても私は問題があると思うのです。いまいみじくもおっしゃいました。たとえば因島大橋等につきましては、これはもう尾道から向島というところまで橋が来ておりまして、しかも因島市という市そのものが造船所の町ですし、ずいぶん本土から通勤者もあるという形で、したがって、順位として大三島橋とそれから因島大橋では、これはずいぶんニードが違ってまいります。ですから、明らかにあなた方が計画しておられますものは、これは第四次の不況対策の一環としておやりになるもの以外の何物でもない、こういう印象がしてならないわけです。  そこで、それならお伺いしたいわけでありますが、一応不況対策と理解していいのですか。
  221. 竹下登

    ○竹下国務大臣 これは私はやはり最終的には、三全総の問題はございますものの、従来の全国総合開発計画に基づいて決定したものが、たまたま構造的要因におけるこのインフレーションの高進に基づいて総需要抑制政策がとられて、これが中断されたものが、たまたまこの不況対策として解除されたということであって、不況対策そのものがこの架橋イコールではない、やはり基本的にあるものは総合開発計画であると、このように認識をいたしております。
  222. 森井忠良

    森井委員 総合開発計画は、すでに新全総は練り直さなければだめだ、田中さんの列島改造に起因するものはこの際全部やり直しという形で、いま三全総の準備がされているわけでしょう。ちょっと私、定かに聞きかねたわけでありますが、これは新全総の計画で進めておられるわけですか。それとも三全総ですか。
  223. 井上孝

    井上(孝)政府委員 お答えいたします。  先ほど先生もおっしゃいましたように、昭和四十八年の十一月までは新全総の線で三ルートとも昭和六十年までに完成させる、こういう意気込みで着工の準備をいたしました。大三島橋につきましては、実はすべての準備が整いまして、中止の指令のかかる直前に実は入札もいたしまして、業者も決まっておりました。その後は、先生の御質問にもございましたように、総需要抑制等で昨年の八月まで凍結をいたしておりまして、八月の十五日に国土庁長官、経済企画庁、建設省の関係大臣が集まりまして、三ルートを並行して建設する方針はやめる、当面早急に完成するルートとして一ルートを決める、これは鉄道併用橋である、そのルートは三全総で決める、他の二ルートにつきましては、地域開発あるいは工事の難易度等によって準備の整ったものを関係各省が協議をして定めて工事に着工すると、こういうことが決定されました。二、三日置きまして十八日に運輸、建設、国土庁の協議によりまして、まず大三島橋は、すべての準備が整って凍結されておったこの凍結を解除する、こういうことで大三島が一番先に着工する段階になったわけであります。なお、先ほど大臣が申し上げましたように、諸準備が整っております大鳴門橋については、従来の方針で八月から直ちに準備に入る。因島大橋もほとんど準備が済んでおりますので引き続き準備を進め、着工時期について検討する、こういうことになった次第でございます。したがいまして、御質問にございました三全総に関係いたしますのは、当面早急に建設する一ルートを、いま審議中の三全総で定めていただくと、こういうように了解いたしております。
  224. 森井忠良

    森井委員 環境庁長官、実は私ども三ルート見ました。どのルートも技術的にはもう着工オーケーと、本四架橋公団の当局者は言っておるわけであります。いまも御答弁にありましたように、大鳴門橋につきましても因島大橋につきましても新年度でやりたい。何か建設省の方が先に走って、肝心の環境庁が、瀬戸内海環境保全臨時措置法等ができまして瀬戸内海は大切にしようということになっているわけですが、どうもあなたの方のコントロールがきかなくて、すでに予算的にもそして技術的にももう準備がされているという状態になっておるわけです。環境庁のお考えはどうですか。若干の経過も含めて御答弁を願いたいと思うのです。
  225. 小沢辰男

    ○小沢国務大臣 すでに、環境庁に国立公園の仕事が移管になる前に、この問題は全体的に承認をされておったわけでございますが、瀬戸内海の多島式、特徴のある国立公園の景観から言いますと大変な問題をもたらすわけでございますし、また国立公園のみならず、これに橋がかかるということになりますと大気汚染の問題やら騒音の問題やら、その他いろいろ起こってまいりますので、われわれとしてはこれはもう慎重に十分環境影響評価をやって、その上で結論を出さなければならぬなあと、こうなりまして、大三島橋につきましても十分アセスメントをやり、しかも自然公園の関係の小委員会までつくりまして先生方に集まって議論していただいて、何回かやりまして結論をつけた。また、ただいま大鳴門橋についても、わざわざ現地の視察までやっていただいたり、いろいろやりまして、きのうもちょうどその委員会がございましたのですが、あの渦潮の問題がどの程度影響を受けるか、本当に慎重に検討をしていただいているわけでございます。  ただ、瀬戸内海は多島式の世界でも珍しい国立公園と言いましても、この国立公園に指定されている地域というのは、実は海全体を指定しているわけじゃありません。指定をしているのは景観のすぐれた一部、島の近くとか、いままでのやり方がそういう、何といいますか総体を押えていないわけでございますので、その辺のところは、私どもやはり、先ほど建設大臣も言われましたように、自然美と人工美の調和ということが成り立つかどうか、また今後この橋によってその景観全体がどういうふうになっていくかという点は、やはりあの国立公園協会の調査によりましても、人工美的なものとの絡み合った造形美がどうなるかということについての観点からも、これはある程度考えるべきだという意見等もございますし、いろんなことで、とにかく慎重に、この自然公園関係の影響というものは検討した上で回答を出す。しかし、私どもはやるやらぬの決定権があるわけではありませんので、そういう面では他の大気汚染なり、あるいはその他自然景観、動植物に与える影響、水に与える影響等の事前の影響評価を十分やった上で回答を出すと、こういうことにいたしておるわけでございます。
  226. 森井忠良

    森井委員 環境庁長官、あなたは瀬戸内海は部分的に公園になっておるとおっしゃいました。しかし、瀬戸内海環境保全臨時措置法をごらんいただくと、瀬戸内海すべてが世界の公園だというふうに銘打ってある。納得できないですよ、そういう考え方は。やはり瀬戸内海そのものに対する認識を新たにしてもらいたい。少なくとも瀬戸内海環境保全臨時措置法ができておるわけですから、この線に沿ってぜひとも環境保全のチェックをしてもらいたい。  そこで具体的にお伺いしますが、その一つは、自然環境保全審議会の本四連絡橋問題小委員会というところで、いま議論をしてもらっておるわけでありますけれども、これはお話しのようにきのう結論が出なかった。しかし、建設省等は何とか年度内にオーケーをもらって新年度から着工したいという腹のようでありますが、少なくとも環境庁長官は、この小委員会なりあるいは自然環境保全審議会の答申を完全に尊重してもらいたい。このことを約束していただけるかどうかお伺いしたい。  それからもう一つは、お聞きのように一ルート三橋ということで、たとえば大鳴門橋にしましてもそれから因島大橋にしましても、一つ一つの橋にわたってアセスメントその他をチェックしてもらうというかっこうになっているわけでありますが、私は、環境庁としてはやりにくいと思う。少なくともあれはそれぞれ将来三つかかるつもりで設計その他やられているわけでありますから、この点やりにくくないのかどうなのか。たとえば、これから因島大橋の審査におかかりになるはずでありますけれども、その場合には単にその橋だけなのか。あるいは将来にわたって、もうルートは引いてあるわけでありますから、全般的に全体計画の上でチェックがされるのか。その点についても明確にしてもらいたい。
  227. 小沢辰男

    ○小沢国務大臣 私は、小委員会の結論を尊重するかというお尋ね、これはもう尊重してまいります。そうでなければ何のために諮問したかわからない。尊重しないようだったら最初からかけない方がいいと思っております。当然尊重いたします。  それから、因島大橋につきましては、まだ公団のアセスメントの資料が出てまいっておりません。出ましてから私の方が受け取って検討する、こういうことになります。  それから、先ほど瀬戸内海環境保全臨時措置法等もあるから、これは十分考えろ、部分的な指定ということを言うけれども、やはり全体として考えなければいかぬじゃないか、それはおっしゃるとおりでございます。ただ、私が申し上げたのは、国立公園地域については許可の云々の問題が私の方へ来るわけでございまして、一般のそうでないところは来ないわけでございます。ただ、環境アセスメント全体のことをそれぞれの自治体がいろいろやって私どもの承認を受ける、こういうことになるわけで、それでちょっとそれを申し上げたわけでありますが、やはり三ルート全体としての影響を考えていかなければいかぬことは当然でございます。ただ、鳴門大橋は、御承知のように淡路島という大きな島で明石海峡もあれも遮断されているわけでございますから、あすこだけを地域開発の橋として考えて審査をしても、それはAルートならAルートとして、Aという名前でございましたか私はっきりしませんが、明石までつながる前提で自然景観上は余り考える必要はない。ただ問題は、つながったときには車の通る度合いというものはうんと違ってまいりますから、そういう意味においては大気なり水なり全体の騒音なりの問題が起こってくる、こういうことでございます。それは当然頭において私どもとしては考えていくつもりでございます。  それから、瀬戸内海全体として考えますと、いま大体五千隻ぐらいの大小の船があそこを交錯しているわけです。われわれの方は、先生方心配のように船の問題がどうなるか、労働者の問題がどうなるかということは当然あると思います。あると思いますが、環境庁から見ますと、この油の汚染というもの等を考えた場合に、これはやはりプラス、マイナスとして橋という効果もある。これは瀬戸内海を汚染する場合のことを考えますと、どっちが一体メリットがあるかという問題もこれはひとつ頭においてかからなければいかぬと思うのでございまして、そういう点も一例でございますけれども、やはり先生方もひとつよく検討の材料にしておいていただきたいと思うわけでございます。
  228. 森井忠良

    森井委員 運輸大臣にお伺いしたいのですが、先ほど指摘をしましたように、橋がかかることによってずいぶんの船員が職を失うことになる、あるいはまた港湾荷役で仕事をしておられる労働者の皆さんがずいぶんこれもまた仕事を失うことになる。あるいはまた、離島航路として就航しているそれぞれの船舶が、橋がかかることによって乗客数も違ってまいりますし、航路の変更も出てくる、そういったもろもろの調査をいままでしていらっしゃいますか。
  229. 木村睦男

    ○木村国務大臣 いまお話しのように、港湾それから船員、特に旅客船は非常に多くの会社が瀬戸内海の中で離島航路あるいは本四間の航路事業をやっているわけでございますが、これらの受けます影響はかなり大きいわけでございます。すでにそういう方たちも対策協議会をつくってしばしば私のところにも見えておられますし、私の方もそれに対して基本的な調査をいたして、そしてどういうような影響があるかということから調べていかなければなりませんので、現在は本四架橋公団を中心に、学識経験者その他を入れました調査会ができておりまして、そこでまず基本的な調査をしていただくことになっております。多分三月、今月いっぱいぐらいで結論ないしは中間報告的なものが出るように聞いておりますので、それを受けまして、今後の対策を進めてまいりたい。それで、これは離島航路の補助の問題もございますし、それからそういう定期船業者の統廃合の問題もございます。御指摘のように、船員の転廃業の問題等非常に多くの問題が絡んでおりますので、この調査会から出ました結論を中心にして今後の対策を練っていきたいという手順を踏んでおるわけでございます。
  230. 森井忠良

    森井委員 運輸省からの資料によれば、関係をすると思われます港湾労働者の数は四万人近くいらっしゃるわけですね。これは常用です。それから日雇いに至りますと六十万を超すぐらいの人が影響を受けるという形になっておるわけであります。いまあなたが言われました旅客船問題等調査会は、これは船員、それから運航業者に限って調査をするという形になっておるわけです。あなた方の通達も見せていただきました。したがって、肝心の港湾労働者が残っておる。ですから、ぜひともこの点については配慮をしていただきたい。  もう時間がありませんから、そういう前提に立って後労働大臣にお伺いするわけでありますが、これはゆゆしい問題である。いまは港湾労働者でありますが、船員の方も七千人ぐらい私ども影響を受けると見ております。そうしますと、数万の方々が少なくとも影響を受けるわけでありますが、これは大問題です。橋はかかったが失業者はうようよ。いまでも百万という失業者があふれておるわけですから。したがって、どうしてもこれは、炭鉱離職者臨時措置法が昭和三十四年でしたかできましたが、それに近い立法をする必要があると思う。労働大臣にはその点をお伺いしたい。  それから建設大臣、先ほど航路補償についてよくわからなかったわけでありますが、いま法的に認められております補償としては漁業補償だけなんですね。先ほど電車の例等をお引きになりましたけれども、それとこれは違うと思うのですよ。本州と四国を結ぶという大事業ですし、影響がはかり知れない。過去に例がないくらいの大きな問題なんで、航路補償について特別に立法なさるとか、そういったお考えがあるのかどうなのか、お伺いをしておきたいと思うのです。  以上、三大臣にお伺いしたい。
  231. 長谷川峻

    ○長谷川国務大臣 こういう橋がかかることによって心配される失業者の方々、組合の諸君からも労働省の方に陳情もありまして、関係省庁といろいろ情報交換しておりますが、失業を余儀なくされましたならば、いま持っておる船員保険法とかあるいは雇用保険法、さらにまた雇用対策法に基づいてやるような構えをしております。  もう一つ、炭鉱離職者の特別立法の話が出ましたが、こういうことなどはいろいろな情勢を勘案しながら勉強してまいりたい、こう思っております。
  232. 竹下登

    ○竹下国務大臣 森井委員指摘のとおり、私も実は本日、森井委員質問に対して答弁をするために勉強をいたしました。そしていままでの例をいろいろなのをとってみたのでございます。しかし、委員指摘のとおり、この大事業に先例として参考とすべきほどのものは見当たらないという、事ほどさように私は大きな問題であるというふうに理解を深めた次第であります。したがいまして、先ほどおっしゃいましたとおり、現行の損失補償基準にはもとよりよらないこと、そして救済対策を——救済対策という考えでありますが、補償という問題は法律上幾らか議論が残ると思いますものの、これに対応する施策については、先ほどお話がありました調査会の結論と申しましても、一段、二段とこれもすぐ出るようなものではないような私は感じがいたしましたものの、それを踏まえて適切な措置をとらなければならぬ、大変な構えで当たらなければならぬという印象を強くいたしました。  立法措置を要するかどうかという問題につきましては、その問題についても、私は昨日私なりに部内で議論をいたしてみたのでありますが、本日私がにわかにこれを断定する段階にまではまだ至っておりません。
  233. 木村睦男

    ○木村国務大臣 先ほど調査会の方で調査をいたしますと申し上げたのですが、港湾関係の方は調査会ではございませんで、架橋公団が直接にいまいろいろ調査をいたしております。それは、こういう架橋に関連いたしまして影響を受けます港湾の貨物の出入り、それがどういうふうに変わってくるか、あるいは港湾関連のいろいろな施設がどういうふうな影響を受けるかということをいま調査をいたしておりますので、その調査の結果が出ますと、港湾労働者がどういうふうに影響を受け、どういう数量的に転廃業も考えなければいかぬかという問題が出てくると思いますので、その結果を待ちまして労働省関係とも十分連絡をとって善処いたしたいと思っております。
  234. 森井忠良

    森井委員 最後に申し上げておきますが、ずいぶんデメリットが多いので、私どもこれを解決を完全にしていただいて工事に着工していただきたいと思いますが、数々の問題を抱えておりますので、いままで私ども関係各省と折衝してまいりましたが、窓口がばらばらで非常に困る。そこで、具体的に建設事務次官を窓口にして、今後架橋にまつわりますもろもろの問題についてぜひとも統一した政府見解その他をまとめていただくように、総合的なものをお願いしたいと思うが、その点について建設大臣からお考えを伺いたいと思うわけであります。  それから労働大臣には、労災が非常に多いのです。それに対して、たとえば救急医療機関等もないという問題もありますので、いままですでに通達を出していらっしゃいますが、新幹線の事故等もありますので、厳重にチェックしていただきますように、これは要望しておきたいと思うわけであります。  以上で質問を終わります。
  235. 竹下登

    ○竹下国務大臣 前任者の仮谷大臣答弁の中にも、調査結果を待っていろいろな、いわゆる窓口の一本化についての御答弁も残っておりますが、いま森井委員指摘のとおり、建設省があくまでも窓口となってこれが総合的な解決に当たりたい、このように思っております。
  236. 長谷川峻

    ○長谷川国務大臣 それに従事する労働者の諸君の災害の問題についての御心配、まさにそのとおりでございますので、四十八年の末に本四架橋公団の方に私の方からこういうものを超大規模工事として特別に指定しまして、新幹線もそうでしたが、特別に労働災害の起こらないように万全の措置を講じていくつもりでございます。
  237. 井原岸高

    井原委員長代理 これにて井上君、森井君の質疑は終了いたしました。  次に、北側義一君。
  238. 北側義一

    北側委員 まず私の質問に当たりまして、最初に愛知学芸大学の跡地問題についてお伺いしてまいりたい、かように考えております。  戦後間もないころは、大学等の設備につきましては地元負担が非常に多く行われたということはもう御存じのとおりであろうと思うわけであります。そこで、愛知学芸大学の名古屋分校につきましても同様で、やはりその創設期においては地元からの巨額な負担によって大学の設備がなされてきたわけであります。そのことは、ここに私「愛知教育大学史」という資料を持っております。これは百四十二ページです。そこに「第一章創設期」の中の、名古屋施設の整備のためにも——ちょうど創設期の後ですね、後年の昭和三十三年の九月現在の調査によりますと、この愛知学芸大学がどういう寄付によってこれが設備がされたか、それが載っているわけです。それを資料を見ますと、愛知県の寄付が四千万円、名古屋の寄付が一千万円、尾張区部の五市と八つの郡、この寄付が九百五十一万円の地元負担がある、このように云々されているわけです。このことについて御存じでしょうか。まずそれをお伺いしたいと思うのです。
  239. 永井道雄

    ○永井国務大臣 ただいま先生の御指摘と同じ文書を私ども持っておりまして、存じております。
  240. 北側義一

    北側委員 同じ文書を持っておられるということで、間違いないでしょう。その後この愛知学芸大学の名古屋分校の跡地は、文部省からいただきました資料によりますと、学校が刈谷市に移りましたので、その跡地は二回にわたって国に寄付がなされておるわけですね。このこともあなたの方の文部省の資料で明確なわけです。  そこでこの文部省の資料によりますと、愛知学芸大学名古屋分校の跡地十二万八千八百五十二平米の国に対する寄付が二回にわたって行われた、このようになっているわけです。これはこの大学の整備に当たって、私が先ほど述べましたとおり巨大な寄付がなされたわけです。そうしてこの大学が刈谷に今回は移転されたのですね。これは移転されたのはもう大分前ですよ。そうしますと、その跡地というものは当然国に帰属するものである、このように私は考えておるわけです。     〔井原委員長代理退席、正示委員長代理着席〕 というのは、そういう大学の設備がされるために、地方公共団体等の巨大な寄付金で成り立っているわけですから、それが用をなさない場合には国に帰属するのは当然だと思うのです。そのために二回にわたって国に寄付がなされた、このように思うのです。  ところが、その跡地の一部、九千一坪、これが名古屋施設整備後援会の所有として残されておるわけてす。なおその九千一坪の一部——これは私地図を持っております。これは関係書類一切です。ここに地図を持っております。文部大臣。その一部約千五百坪、これも文部省からいただきました資料によりますと四千九百六十六・四七平米、ざっと千五百坪ですね、それが愛知学芸大学名古屋施設整備後援会から、愛知教育大学付属中学校の運動場拡張用地として、契約金一億二千五十一万円で国にこの後援会から売買されておるわけです。これも私いただいた資料で明確であります。  そこで私は、この後援会は、現在愛知教育大学の前身である愛知学芸大学の名古屋施設整備のために設立された後援会だと思うのです。学校をりっぱにするためにつくられた後援会であろうと思うのです。ところが、その後援会が、設立の目的である愛知教育大学付属中学校運動場拡張に、土地千五百坪、すなわち各地方自治団体から寄付を集め、そうして得た土地をその中学校用地として売ること自身に非常に私疑問を持っておるのです。このことについて文部大臣のお考えをお伺いしたいのです。
  241. 永井道雄

    ○永井国務大臣 ただいま先生から御指摘がございましたように、この愛知学芸大学施設整備後援会から二度にわたりまして国に寄付がなされまして、その計が十二万八千八百五十一平方メートルでございます。その後、なお後援会が持っておりました土地の中から、先生いま九千一坪の中から千五百坪とおっしゃいましたが、その千五百坪の土地を購入したという事情は次のようなものという報告を受けております。  これは、愛知教育大学の付属名古屋中学校では、その当時校地が基準に満たない状況にありましたために、運動場を拡張する必要に迫られておりました。かねてから隣接地の一部を拡張用地として取得することを強く希望いたしておりました。しかしながら、その土地は、愛知学芸大学名古屋施設整備後援会が、付属中学ではなく付属高等学校の建設用地に充てるために保有していたものでございまして、後援会側では中学校用地としての寄付には応じがたいとの意向でありました。そこで学校側の校地拡張の必要と後援会の意向とを勘案いたしまして、中学校拡張用地として昭和四十五年九月十八日、後援会から、いま先生の御指摘の千五百坪、同中学校に隣接する四千九百六十六平方メートルの土地を一億二千五十一万円で購入したという報告を受けております。
  242. 北側義一

    北側委員 大臣、その高校の設立のために九千一坪残しておったというのです。そうですね。いまそうお答えになったのです。その高校設立は事実できなかったのです。できなくなった時点の年月日、御存じですか。
  243. 宮地貫一

    ○宮地政府委員 ただいま大臣が御説明いたしましたとおり、付属高等学校設置の要望はそれぞれ愛知教育大学につきましては名古屋、岡崎双方からございまして、四十五年当時においても、名古屋側においては付属高校の設置の希望を持っておったわけでございます。それで結論的には、高等学校設置の問題は統合地の刈谷に四十八年度から設置されたというぐあいに承知しております。
  244. 北側義一

    北側委員 それと、いま会計課長のお答えになった問題については後で私は論議します、これについては矛盾点があるから。  そこでまず、付属中学校の運動場拡張用地を買収したんですね。ところが、この愛知学芸大学の名古屋施設整備後援会は、もともとは運動場は中学校は使っておったわけですよ。買収する必要はなかった、使っておったのだから。こういうことも私考えられるのじゃないかと思うのですよ。それについてはどうですか。
  245. 宮地貫一

    ○宮地政府委員 問題の土地につきまして、大学側から土地取得協議書が出ました際の取得の事由の説明で御説明いたしますと、先生御指摘のとおり、事実上中学校用地として後援会から無償で使用しておった部分でございますが、その土地について中学校側としては、先ほど御説明しましたように、従前から基準に満たないということで、ぜひ手に入れたい、しかしながら後援会側は、先ほど大臣から御説明申しましたような事情で高等学校用地として確保してあるものであるというような事情もございましたので、中学校用地として国有にするために、それらの事情を勘案いたしまして先ほど申しましたような大学側申し出のとおりの処置をいたしたわけでございます。
  246. 北側義一

    北側委員 高校用地として残しておったので、中学校にはそのまま寄付はできなかった、国に寄付して、中学校に寄付できなかった、こういう意味のことをおっしゃっているわけですね。しかし、九千一坪あって、約千五百坪校庭用地に売って、あと七千五百坪残っておるのですよ。この論議は後でします。  そこで、この付属中学校の運動場拡張用地、これが国が買収したのは、あなたの方からいただきました資料どおり名古屋市東区鍋屋上野町字中川千二百四の五、四千九百六十六・四七平米、こうなっておるのですが、この土地の登記謄本を私調べましたところが、土地登記謄本では三菱重工業株式会社の会社合併によって存続されました東京都千代田区丸の内二丁目七番の三号菱重株式会社の所有権となっておるのですね。この点はどうなんですか。
  247. 宮地貫一

    ○宮地政府委員 御指摘のとおりでございます。
  248. 北側義一

    北側委員 ぼく聞いているのは、御指摘のとおりですって——あなたの方は後援会から買ったとおっしゃっているわけですよ。登記謄本は菱重株式会社になっておるのですよ。なぜかと聞いておるのですよ。
  249. 宮地貫一

    ○宮地政府委員 私ども大学側からいただいております報告によりますと、この土地については後援会が、昭和二十五年当時でございます。三菱重工から手に入れたという話を承っております。ただ、後援会は任意団体でございますので、登記簿上は後援団体のものに移されていなかったものというぐあいに大学側から報告を聞いております。
  250. 北側義一

    北側委員 国有地を、いわゆる用地を買収するに当たって——これは国の財産になるわけです。それに当たって、登記謄本と売る名目者が違うわけです。これは実におかしい話なんですね、私たちから見ますと、一般世間から見ますと。買う以上は、国は買収する以上は金を渡すのですから、金を渡す以上はその登記謄本が、その金を渡す相手が間違いないのか、事実この土地の所有者なのか、これをやっぱり確かめぬと金を渡すことはできないと思うのですよ。そうでしょう。そこいらが事実金を渡した相手が登記謄本と違う。もう一遍お答えください。
  251. 宮地貫一

    ○宮地政府委員 土地売り渡しに関しましては、当該土地につきましては所有権登記名義人から、四十五年八月五日付でその土地が施設整備後援会へ売り渡し済みであるということを証明する書面をいただいております。
  252. 北側義一

    北側委員 その書面をあなたはいま持っていますか。
  253. 宮地貫一

    ○宮地政府委員 ただいま手元にコピーを実は持っております。
  254. 北側義一

    北側委員 あなたたちにいただいたコピーは判を押しておらぬ。つくったと疑われてもやむを得ない。国が土地を買収するに当たって、そのような買収の仕方でいいのかという疑義が残ると思うのです。
  255. 宮地貫一

    ○宮地政府委員 その土地につきましては、国に所有権移転登記が完了いたしております。
  256. 北側義一

    北側委員 では、金を渡した相手方は、愛知学芸大学名古屋施設整備後援会にお支払いになったわけですね。あなたの方の資料にはそうなっておるわけですよ。そこから買収したんだとなっておるのですよ。  そこで、では後援会の内容というのは一体どうなっているのですか。金を渡す相手じゃ御存じでしょう。
  257. 永井道雄

    ○永井国務大臣 この後援会は、愛知学芸大学の名古屋施設の整備に協力することを目的として、昭和二十五年愛知学芸大学名古屋施設整備後援会として結成されたものであります。後援会は、会の趣旨に賛成する愛知県尾張地区の市町村関係者、愛知学芸大学関係者等で組織されました任意団体であります。後援会の規定によりますと、会長一名のほか副会長、顧問、理事、評議員、監事、それぞれ若干名を置くこととされております。
  258. 北側義一

    北側委員 この後援会の内容はどうかとぼくは聞いておるのですからね。会長が何名ぐらいおられて、現在会長が何代目か。そうして理事は現在何名おられるのか。これを教えてください。
  259. 佐野文一郎

    佐野(文)政府委員 お答え申し上げます。  現在私どもが愛知教育大学から提出を求めて持っております資料によりますと、先ほど大臣から申し上げましたように、会長一名のほか理事、監事あるいは評議員、顧問等若干名を置くということになっておりますけれども、その理事の現に置かれている者の数あるいは氏名等については、私どもはつまびらかにすることができないでおります。
  260. 北側義一

    北側委員 金を払った相手方のそういう会長名やまた理事が何人かわからない、そんなばかなことがありますか。言ってください。
  261. 宮地貫一

    ○宮地政府委員 これを国が取得いたしました四十五年時点におきましては、私ども後援会の会長から適正な書面の売り渡し申し出書を大学側に提出をいただきまして、それに基づきまして事務処理を進めたものでございます。
  262. 北側義一

    北側委員 ここへあなたの方の資料が来ているわけです。会長名もちゃんと書いてあるのです。いまの読みなさい。時間がないのですから、あなた余り手間取らしちゃだめですよ。
  263. 宮地貫一

    ○宮地政府委員 後援会の会長は丹羽兵助氏でございます。
  264. 北側義一

    北側委員 これはあなたの方から来た資料ですよ。見なさい。あなたの方から来た資料ですから、あなたの方から来た資料をなぜ読めないのです。まずそれを聞きましょう。なぜ読めないか。
  265. 宮地貫一

    ○宮地政府委員 所在地、名古屋市東区鍋屋上野町字中川千二百四の五でございます。契約月日昭和四十五年九月十八日。土地面積は四千九百六十六・四七平米でございます。契約金額は一億二千五十一万円でございます。相手方は愛知学芸大学名古屋施設整備後援会会長丹羽兵助でございます。購入理由は、付属中学校運動場の拡張用地でございます。財務局協議年月日昭和四十五年八月十八日。財務局の同意年月日は四十五年九月十七日。土地の評価者、日本不動産研究所名古屋支店で、評価額は一億三千三百九十万円でございます。移転登記年月日は、昭和四十五年九月十八日でございます。  以上でございます。
  266. 北側義一

    北側委員 最初から読んでくださいよ、そうやって。特に先ほどあなたの方で、大臣もおっしゃっておられたが、高校設立についてそれがあるので、この用地は中学校には譲れなかった、だから売った、こういうことですね。では、残りの土地が現在あるわけですね、七千五百坪。これは一体だれの所有になっておりますか。またこれの登記謄本の所有権はだれになっていますか。
  267. 永井道雄

    ○永井国務大臣 残りの七千五百坪は、愛知学芸大学名古屋施設整備後援会が所有しております。登記簿上の問題は、先ほど会計課長が申し上げたとおりと思います。
  268. 北側義一

    北側委員 登記上も、これは現在三菱重工業の登記になっておるわけですね。そして、しかもその所有権は愛知学芸大学名古屋施設整備後援会が持っておるわけですね。先ほどの答弁と少し違うところは、高校設立はもう現在だめになっておるのです。いいですか。そうすると、この用地は一体今後どうしたらいいのかという問題ですね。先ほども言いましたとおり、この用地はもともとは地方公共団体等の多額な寄付によって得た土地です。そうでしたね。大学はもうすでに移転しております。高校も設立できないわけです。その場合、この七千五百坪は一体どうなるのですか。いまだにそういう名義のままでいいのでしょうかね。これはどうでしょうか。
  269. 永井道雄

    ○永井国務大臣 これについて報告を受けているところを申し上げます。  この愛知教育大学が刈谷地区に移転等をいたしました。そして愛知教育大学名古屋分校が廃止されましたので、この後援会はさしあたって活動の直接の目的を失ったことになるわけであります。そこで、それ以後のあり方の検討をしなければならないという段階にあるわけであります。そこで後援会側では、愛知教育大学の後援のための法人を設立する等のことも検討しているという報告を受けております。また文部省では、後援会の組織された目的、また後援会が当該土地を取得いたしました経緯を考えますと、当該の土地が教育振興のために有効適切に利用されることが一つの方法でございますから、そうしたことも期待しておりまして、この方向で大学に対して指導をいたしていくべきであると考えております。
  270. 北側義一

    北側委員 文部大臣、私ここに持っております資料は、愛知学芸大学名古屋施設整備後援会の小委員会の議事録なんです。これはいつの議事録かというと、昭和四十六年十一月の議事録です。もういまから五年前の議事録です。そのときにすでにいま大臣が述べられた話は出ておるのです。ひとつ読みましょう。「なお、後援会所有の土地約七千五百坪の処理などもあるので、法人格を持つ財団法人に切替えて運営をしていきたい。」、いま財団法人はできていますか。
  271. 宮地貫一

    ○宮地政府委員 現時点では設立いたされておりません。
  272. 北側義一

    北側委員 このようにもう五年になるのです、大臣。だから私はそんな答弁では納得できないですよ。
  273. 永井道雄

    ○永井国務大臣 五年を経過しているということでございますが、そうであれば、いよいよ教育的にこれをどう使用するかということを文部省として考えるべきものと考えます。
  274. 北側義一

    北側委員 私はいまの文部大臣答弁が当然だと思うのです。だから文部大臣、これは早く何とかやった方がいいでしょう。  それから次に、大蔵省にお伺いします。名古屋市の東区鍋屋上野町所在の土地の学校法人内木学園に対する国有地の払い下げについてその概要を説明してもらいたいのです。
  275. 大平正芳

    ○大平国務大臣 事務当局から御報告いたします。
  276. 吉岡孝行

    ○吉岡(孝)政府委員 御質問の内木学園に対する払い下げにつきましては、いま愛知教育大学名古屋分校の刈谷への移転に伴いまして、その土地が四十八年八月三十一日に用途廃止され、大蔵省にその処分の依頼がされてきたわけであります。それで大蔵省としましては、具体的にこの事務を担当しましたのは出先の東海財務局でありますが、文部省とも協議の上、国有財産東海地方審議会に諮問して四十九年七月五日学校法人内木学園に売り払い処分をしたわけであります。
  277. 北側義一

    北側委員 では警察庁来ておられますか。名古屋市の学校法人内木学園中京女子学園に暴力事件が起きて、現在副校長と同校の専務理事が逮捕されておる。こういう記事が新聞報道されておるのですが、これも一遍簡単に経過報告してください。
  278. 土金賢三

    土金政府委員 お答え申し上げます。  御質問の内木学園の暴力事件でございますが、本年の二月二日の夜名古屋市内において内木学園専務理事及び柔術道場経営者ら三名計四名が不動産業者を不法監禁し、日本刀などで脅かした上傷害を負わせた事件でございまして、警察は本年二月十二日愛知県警察において内木学園専務理事ら四名を逮捕し、現在も引き続き取り調べ中でございます。
  279. 北側義一

    北側委員 いま大蔵省の払い下げた土地は、そういう学園です。  そこで、そこに在校なさる生徒さんについては、こういう事件が起こりまして本当に気の毒だと私は思うのです。約千七百五十人近くおられる、なかなか学校の方は古い伝統のある学校らしいのです。そこで、この事件で感情的に非常に変化しやすい年齢の生徒さんたち、またこの事件において生徒を持つ御両親として非常に御心配なさっていらっしゃると思うのです。また不安を持っておられるのじゃないかと私は思うわけです。私の知る範囲で新聞記事全部集めましたが、その一部の新聞報道によりますと、経理面で非常に乱脈であるとか、また移転用地の取得をめぐって黒いうわさが取りざたされておるとか、こういう報道がなされておるわけです。  そこで、文部省としてはこれらの生徒の皆さんや、また生徒の御両親の皆さん、また学校関係者、こういう人をやはり一日も早く安心して学べるようなそういう行政指導が必要だと思う。いままでそういう内木学園に対して文部省としてどういう行政指導をなされたのか。また今後どういう行政指導をなされるのか。またなされた時期はいつなのか。ここらひとつお答え願いたいと思うのです。
  280. 永井道雄

    ○永井国務大臣 先ほど報告がございました暴力事件というのがありましたのは二月十二日でございます。そこで、その二月十六日にこの内木学園の理事会が開かれまして、理事の内木冨貴子さんが辞任いたしました。そして新たに理事長代行は谷岡太郎という人が選任されまして、理事会が新執行部にかわったわけでございます。  文部省は、この件に関しまして学校の理事会において暴力行為が行われるというようなことはこれは全く許されないことでございますから、こうした新執行部によりまして学校法人の運営が正常に行われていくということを望んでおりますが、さらにいま学んでいる人たちの問題もありますから、したがって新執行部の選任を契機といたしまして学校が正常化されてまいりますように、県当局とも連絡をとっているわけでございます。
  281. 北側義一

    北側委員 ひとつよろしくお願いします。  それから実はこの内木学園の買収した国有地、この問題について大蔵大臣にお聞きしたいのですが、愛知学芸大学の跡地の文部省所管の国有地、これは普通財産として大蔵省に戻ったわけですね。そして第三十七回国有財産東海地方審議会が昭和四十八年十二月十三日に開かれたわけであります。そして四十九年七月五日に学校法人内木学園に売買契約がなされたわけです。全部ここに資料があります。これについて国有財産特別措置法第三条第一項第四号による減額措置がされておるわけですね。この減額措置については、土地は大体時価の二分の一、こういうぐあいに大体了解してよろしいでしょうか。
  282. 吉岡孝行

    ○吉岡(孝)政府委員 ただいま御質問の国有財産特別措置法第三条第一項四号による減額規定でございますが、これはいわゆる私立学校法に基づく学校法人に対する売り払いの場合で、いわゆる五割を限度として減額することができるというこの規定に基づきまして、五割の減額措置で売り払っておるわけでございます。
  283. 北側義一

    北側委員 五割以内というのが五割になったわけですね。非常に大幅に減額しておると思うのです。  そこで、これは非常に大事な問題なんですが、この内木学園と国との昭和四十九年七月五日の売買契約の前に、内木学園と愛知学芸大学名古屋施設整備後援会と覚書が交換されておるのです。これについて文部省、大蔵省、御存じでしょうか。
  284. 宮地貫一

    ○宮地政府委員 ただいま御指摘の点については承知いたしておりません。
  285. 吉岡孝行

    ○吉岡(孝)政府委員 大蔵省としてはそのような覚書については承知しておりません。
  286. 北側義一

    北側委員 この覚書というのは、先ほど申しましたとおり昭和四十九年七月五日の内木学園と国との売買契約、その約一カ月と五日前にこの覚書が交わされておるんです、この後援会と内木学園の。ここにその資料を持っておりますが、実はこの資料が真実であるか真実でないか、私確かめました。いつ確かめたか、どういう確かめ方をしたかといいますと、実はきのう、三月二日の約午後三時三十分から午後五時ごろまで、私の方の愛知県の県会議員をやっております馬場県会議員と、私の方の愛知県県本部の嘱託である加藤君、この二人が、後援会の事務を扱っておられたという現在名古屋大学医学部附属病院付設学校勤務の岸夫精一氏を訪ねました。そうしてこの真偽をただしたわけでありますが、この覚書の意見交換は名古屋市中区のすいほう園において行われたというのです。それは、内木学園側が四名、後援会側が四名で決定されたというのです。その後、後援会側の四人の一人として、これを聞きました岸夫精一氏も、その席に参加しておったというのです。本人が言うので間違いないです。さらに、この覚書の内容についていろいろと確認したのです。そうしたら、岸夫氏は間違いない、こう認めておるわけです。こういうことでございまして、この覚書の内容というのはそちらの方で御存じないようですから、こちらから話しましょう。  「覚書愛知学芸大学名古屋施設整備後援会会長(以下「甲」という。)と、学校法人内木学園理事長(以下「乙」という。)は、次の条項により本覚書を決定した。」。要点だけ言います。この中の第三条にこう書いてあります。「甲が、」甲というのは後援会長ですね。「さきに払い下げ申請を予定していた国有地(甲より国に寄付した土地)二百三十八万五千六百五平方米 名古屋市東区鍋屋上野町字中川一二〇四の二 同上字前浪四五一の三について、乙が」理事長がです。「甲に代つて払い下げを受けることを、甲は諒承する。」、こういう内容になっています。第四条ではこうなっております。「乙は、」乙というのは学園側です。「甲が将来行なう予定の事業基金として金二億円也を甲に寄付するものとする。」。そうして第六条ではこうなっております。「第四条の寄付金支払方法は次のとおりとする。第一回支払 金五千万円也 第二回支払 金一億円也 第三回支払 金五千万円也」、計二億、こうなっております。こういう覚書が交わされておるわけです。大臣、わかったらどうぞ。いいですか。  そこで、内木学園に売られたこの用地というのはあくまでも国有地なんですね。その国有地の売買について二億円もの大金を寄付する覚書が出てくるなんということは、私にはこれ全然理解できないわけです。先ほど大蔵省の方に答えていただきましたとおり、国有財産特別措置法第三条第一項第四号では、学校法人は公共の利益の増進等のために特例を設けて、その土地の時価から五割以内を減額した対価で譲渡し云々とあるのです。そういう学校用地のためであるならば公共上の利益があるから五割まで減額して「そうして売っておるわけです。ところが、このような二億円というような膨大な寄付問題が、売買する一月少し前に覚書が結ばれておるということになりますと、これはまことに奇妙な話なんですよ。いまの話を聞いておられて、これはやはり文部省も関係あることでしょうし、大蔵省も関係あるでしょうし、これについて両大臣の御意見を一遍聞きたいと思うのです。
  287. 永井道雄

    ○永井国務大臣 ただいまの覚書というのは全く存じませんで、承りましたのを別に疑っているわけではないですけれども、私どもとしてもこれを調べるべきことであると思います。
  288. 大平正芳

    ○大平国務大臣 本件につきましては文部省とよく打ち合わせてみます。
  289. 北側義一

    北側委員 調べて事実であればどうします。事実であったらどうなさいます。確かめて事実であったら、どうします。私もここで発言する以上はそれだけのことをやっておるわけです。確信を持っておるわけです。
  290. 永井道雄

    ○永井国務大臣 これはまず事実を明らかにいたしますことが第一でございまして、それでその後どうするかということは、事実関係が明らかになった次の段階のことでございますから、いま初めてその覚書のことを承りましたので、まず覚書というものを読んでいただいた事実関係を明らかにするということをいたしたいと考えております。
  291. 大平正芳

    ○大平国務大臣 よく調査の上、当初払い下げの目的に従って使われる以上は支障がないと思いますけれども、そうでない場合におきましては適正な措置をとらなければならぬと思います。
  292. 北側義一

    北側委員 適正な措置をとらなければ仕方がないと思うんですよ、これは。またこの第三条にあります「乙が甲に代つて払い下げを受けることを、甲は諒承する。」、国有地の払い下げに対して後援会が了承する必要はないと私は思うのです。また乙が甲にかわって払い下げを受けるということになりますと、甲は、後援会側は、払い下げの申請なり話を文部省なり大蔵省にしておったのか、こういうことになるのですね。これ、どうですか。
  293. 永井道雄

    ○永井国務大臣 そういう話し合いは別になかったわけでございます。
  294. 北側義一

    北側委員 大蔵省、どうですか。
  295. 吉岡孝行

    ○吉岡(孝)政府委員 大蔵省としましては学校法人内木学園を相手にしてその払い下げ契約を結んだわけで、その内容、そういう覚書そのものについては何も存じ上げておりません。
  296. 北側義一

    北側委員 そういうことであるから一遍——まだいろいろここにありますが、何遍ここでやっても同じような答弁しかそっちからは返ってこないと思うのですよ。だから、事実をよく調べてください。こういう問題は非常に問題があると思うのですよ。大蔵省と内木学園との国有地売買契約の一カ月前にこういう覚書があるということ、そこに疑問があるのです。だれが見たって、何か変な約束をしたのと違うだろうか、また文部省なり大蔵省に対して何らかの働きかけがあったんじゃないだろうか、こういう受け取り方をせざるを得ないのです、これを私ども調べて見ますと。こういう不明朗な話は私もしたくないのですが、しかしやはり重要な問題ですから、この点について後で明確にして御返事をいただきたいと思うのです。どうでしょうか。
  297. 永井道雄

    ○永井国務大臣 御指摘のとおり重要な問題でございますから、これは十分に調査をいたしまして、われわれとして適切な措置をとるべきものと考えております。
  298. 大平正芳

    ○大平国務大臣 大蔵省といたしましてもよく調査をいたしまして御報告いたします。
  299. 北側義一

    北側委員 最後に、警察庁、この覚書が真実であったならば、法的に一体どう考えるか。また、これについて今後どう検討なさるか、お伺いしたいと思います。
  300. 土金賢三

    土金政府委員 お答えします。  具体的な事実関係について把握いたしておりませんので、関係警察に連絡して、御指摘の点、検討してみたいと存じます。
  301. 北側義一

    北側委員 では次に、有線放送関係についてお伺いしてまいりたい、こう考えております。  まず、現在、喫茶店やバーなんかに音楽が流されておりますあの有線放送について伺いたいわけですが、昨年の七月に大阪の堺市で有線放送ケーブルを無断で張ってトラブルが起こったり、また、昨年の十二月の十九日の読売新聞夕刊でも報道されておったわけでありますが、大阪市の市道に約千キロメートルにわたって有線放送ケーブルが三年間不法占拠しておったわけです。その三年間の不法占拠料約一億円ということです。それが現在未払いになっておる、こういうことが報道されておりました。  そこで、この有線放送のケーブル線のいわゆる不法占拠について、一体建設省または郵政省はどうお考えになっておられるのか、それをお伺いしたいと思います。
  302. 竹下登

    ○竹下国務大臣 お答えいたします。  有線放送の不法占拠については、各道路管理者においてその正常化に今日まで努めているところでありますが、建設省といたしましては、昭和四十七年の九月道路局長名、それから四十八年の八月路政課長通達を発して不法占用状態を是正し、正常化を促進するよう指導をいたしておるところであります。なお、一般国道のうち、指定区間、いわゆる直轄管理国道においては不法占用の実態調査を行い、昭和四十八年度に無許可音放送の占用料相当分を徴収するなど強力な措置をとった結果、現在ではほぼ不法占用状態は解消しておると承知しております。これ以外の、いわゆる直轄以外の道路でございますが、さきの通達のほかあらゆる機会をとらえて万全の措置を講ずるよう指導してきたところでございますが、今後においても郵政省等の関係機関との連携を密にしてこれが指導を強化する所存であります。
  303. 村上勇

    ○村上国務大臣 お答えいたします。  有線電気通信法及び有線ラジオ放送業務の運用の規正に関する法律による届け出を行わないで有線音楽放送事業を営む者につきましては、従来から法に基づく届け出を励行するよう指導いたしております。無届けの有線音楽放送事業者につきましては、今後ともさらに一層厳しく法の運用を行っていくとともに、道路管理者、電柱所有者との連絡協議を一層密にして、無届けの事業者を根絶するよう努めてまいりたいと考えております。
  304. 北側義一

    北側委員 いま、両大臣がおっしゃいましたとおり、法律的にはたとえば有線電気通信法第三条では「(有線電気通信設備の届出)」、第二十六条では罰則規定、有線ラジオ放送業務の運用の規正に関する法律第三条では「(業務の開始の届出)」、第十四条では罰則規定、また道路法第三十二条「(道路の占用の許可)」、第三十九条「(占用料の徴収)」、四十一条「(添加物件に関する適用)」、百条罰則規定、こう法律は完全にできると思うのですよね。ところが、先ほど建設大臣言われたとおり、なるほど国道の方はこれはなくなってきておるようですが、地方道ですね、こっちの方はいまだにやはり非常に多いのです。こういう実態になっておるのですがね。この有線放送の方は、南は沖繩から北は北海道、非常に多いわけです。施設の数も非常に多いわけですね。現在この放送施設はどれぐらいあるのですか。
  305. 村上勇

    ○村上国務大臣 お答えいたします。  最近の措置状況といたしましては、昭和四十九年四月以降違法施設四十九施設に対しまして、指導、警告等を行った結果、昭和五十年八月末現在、二十施設については違法状態が解消いたしましたが、残り二十九施設については未解消施設となっております。なお、この未解消施設に対しては今後さらに一層厳しく法の運用を行うなど、厳正に対処していく所存であります。
  306. 北側義一

    北側委員 やはり法律があります以上は、これはやはり厳正にやらなければいけないように思うんです。たとえば今回の大阪の場合でも、何かきょう電話がありまして、昨日三月二日にこの問題解決したとかいうて電話が入ったわけでありますが、しかし法律があってそういう不法を許しておくというのは一番いけないと思うんですね。その法律があって不法を取り締まることができない。いま監視状況はどうにもならないというんだったら、監視状況をちゃんと今度はしなければならないわけです。なるほど通達は二回ほど出ておりますが、やはり通達出てからでも、地方道の場合においては非常に不法占拠されておる、こういう実態です。一体この道路の占用料未払い、どれぐらいあると思います。道路局長でも結構ですから。
  307. 井上孝

    井上(孝)政府委員 調査いたしました結果は、実は県道と指定市の市道しかわかりません。市町村道の方は数が非常に多いもんですから調査が十分でございません、恐縮でございますが。  現在、県道及び指定市の市道で有線音楽放送線で占用料を納めておるというものが、適法のものが、納めた占用料は約三千百万でございます。それ以外に不法占用は、現在件数で八十九件、延長で千八百三十五キロメーターばかりございます。  以上でございます。
  308. 北側義一

    北側委員 だから法律があるんですからね。やはり不法のやつは何とか早くしてくださいよ。  そこでいま一つ考えなければいけないことは、なぜこういう不法が出るのかということを考えなければいかぬと思うのですよ。私、少し調査したのですが、たとえば道路管理者の各都道府県に、占用料単価、これに非常に大きな差があるのです。たとえば国道ですと一メーターにつき年間二十六円。大阪市道の場合ですと一メーターについて年間三十円。京都市は一メーターについて十二円。まちまちなんですよ。そこらにやはり道路占用料を払わないという、払いにくいというそういう事情もあるんじゃないかと思うんですがね。そこらのやはり統一とか、統一できないとしたら何らかの形の措置を講じなければ、こういう道路の不法占拠はやはり出てくるのではないか。こういう心配をしておるのですが、その点どうでしょうか。
  309. 竹下登

    ○竹下国務大臣 占用料をちょうだいする方は私の方でございますので、私の方の側から見れば北側委員の意見はごもっともでございますし、私も詳しく承知しておりませんが、そういう行政指導措置等ができるものかどうか、早急に検討さしていただきます。
  310. 北側義一

    北側委員 この道路占用料だけでなくして、たとえば電柱の添架料、これについても違うんですね。通産省お見えですか。——たとえば関電ですと電柱一本に対して年間で一千百円。電電が年間九百円。こうなっておるんですね。東京電力はもっと高いんです。そういうように、電柱の添架料も全部違うんですね、電力会社によって。だから、そういう点も一つ、不法者側からしたら非常にこの法律を守りにくい要件になっておるのじゃないかということも私、考えるわけなんです。一番困るのは、たとえばお金を徴収する方が一番困るんです、徴収しにくいから。たとえば大阪府と、一たん京都市に入ると全然値段が違うんですね。向こうは十二円やないか、何でうちはこんなに高い、こうなるんですね。で、この電柱の方は、各電力会社で、年間で一体どれぐらいの添架料を取っていられるのですか。
  311. 大永勇作

    ○大永政府委員 まだ全部調べがついておりませんが、東京電力の場合でございますと、二千二百八十円でございます。
  312. 北側義一

    北側委員 関電は千百円、電電は九百円、東電は二千二百八十円、こういう状況ですよ。だから、これは郵政大臣、また建設大臣どうですかね、何とかならぬものですか。そうせぬと、徴収する方が非常にしにくいと思うのですよ、各地方公共団体が。どうでしょうかな。
  313. 松井清武

    ○松井(清)政府委員 現在、郵政省、建設省あるいは電電公社等関係諸機関集まりまして、この適正化につきまして協議をしているところでございます。今回の先生の御趣旨を体しまして、なお今後そういった場で検討を続けてまいりたいと思います。
  314. 北側義一

    北側委員 ぜひとも検討してもらいたいと思うのです。  それから、道路管理者の人に聞きますと、その不法占拠がわからぬと言うんですよ。道路は線を張られても、一晩でささっと張ってしまうんですから、全然わからぬと言うんです、関心持ってないから。わかるのはだれかといいますと、電力会社なんか、やはり自分の仕事ですから、よくわかるのです。不法占拠であってもわからないという頭が一つあるんですね。だから、不法占拠をやっても絶対だめなんだということをきちんと、不法占拠はすぐ見つかるんだということになりますと、これは不法占拠をしないと思うのですよ。そのためには、やはり一番発見しやすいところが何らかの形でお金を徴収するようにしたらいい。そうして、それを道路占用料の分だけそっちの管理者の方に渡す、こういう何かの形をとったらどうかなという感じを私、持っておるわけなんです。あわせてこういう点もひとつ検討してください。お願いします。  それから、一番問題なのは、有線放送は非常に広い地域に張りめぐらされておるわけです。この放送ケーブルの線が、添架してはならないと言われる国鉄の高架線の上、一級河川の橋梁の下、そういうところに事実添架されておるんですよ。これは私、証拠を出せと言ったら、写真持ってますけど、これは非常に危険やと思うんですよ。たとえば、国鉄の高架の上なんてやりますと、これがもし切れた場合に、電流が通じたら、全部その線を伝っていってしまうんです。非常に危険なんです。これについていままでどういう取り締まりをなさっておるのか。その点、そこらの問題はどうでしょうか。
  315. 木村睦男

    ○木村国務大臣 そういうところの取り締まりその他は国鉄がやっておるはずでございますが、よく調査いたしてみたいと思います。
  316. 北側義一

    北側委員 これは相当数ありますよ。だから、この点ひとつ、やはり危険ですから、人命にかかわる問題ですから、早急に調査をしていただきたいと思うのです。  それと、こういう法律がある以上は、不法を見つけた場合には、やはり罰則まで規定されておるわけですから、代執行してもらいたいと私は思うのですね。また、不法をやった場合に何らかの処罰をしなければいけないのじゃないかと思うのです。そうせぬと、まじめにやる者が、正直者がばかを見るというようなことではいけないと思いますよ。その点、ひとつよろしくお願い申し上げます。もう答弁は、先ほどから、いろいろやるとおっしゃってますので、これで一応この問題については終わらせていただきます。  次に、高速道路のバスストップについてお伺いしてまいりたいと思うのですが、高速道路が建設されております中で、国鉄高速バスも東名及び名神、こういう高速道路等に運行されておるわけですね。高速道路のドル箱路線というのはやはり東名、名神であろうと私は考えておるわけです。一体この東名、名神の収支状況、これは国鉄バスについては毎年赤字がふえてきておる。そういう関係で、他の私営のバス会社は経営が悪化して、名神などでは日本急行バス、これは昭和四十九年十月に京都−神戸間を廃止しております。そこで東名、名神における国鉄バスの昭和四十七年度以降の収支状況、これはどうなっているか、ちょっと答えてください。
  317. 木村睦男

    ○木村国務大臣 東名、名神ともに国鉄がバス事業をやっておりますが、いま御指摘のように、非常に成績が悪いのでございます。東名におきましては、四十四年度に運行開始をいたしましたのですけれども、四十四年、四十五年は大体収支とんとんというところでございまして、あとはほとんど赤字となっております。四十八年度で約四億五千六百万円、四十九年度で約八億八千六百万円という赤字を計上いたしておるわけでございます。当初、あの高速道路のバス事業は非常にいいということで、申請競争まであったのでございますが、その後、新幹線との競争関係になり、運賃関係も国鉄の方の運賃が安いということで、高速道路のバスの運賃もそう上げるわけにいかぬというふうなことも原因となって、こういう状況になっております。
  318. 北側義一

    北側委員 運賃を上げないにこしたことはないわけですが、しかし、国鉄の現状というのは、これはもう運輸大臣御存じのとおり、経営状況が非常に悪いわけですね。今度の国鉄総裁についても、新聞で見た限りでは非常に難航した、こういう状況ですね。そういう点から考えますと、やはりこの国鉄バスについても、将来の見通し、こういうものを考えなければならない時代が来たのじゃないかという考え方を私は持っておるわけなんです。その点、どうですか。
  319. 木村睦男

    ○木村国務大臣 国有鉄道のバスは、従来は、民営のバスではもう初めから赤字であるというふうな路線を、それに肩がわりをしまして、公共的使命ということでやってまいったわけでございますが、そういうところが非常に赤字が出てまいりまして、現在では国鉄バスの赤字が年間たしか百五十億から二百億の間ぐらいだと思います。したがいまして、国鉄再建に当たりまして、やはり国鉄バスをどうするかということは今後十分検討していかなければならない。ただ、地方の代替する交通機関がないようなところをやっておるところもございますので、一概に廃止もできませんので、これはちょうど国鉄の鉄道の方の地方路線の廃止問題と同じような状況にございますので、国鉄の今度の経営の改善の中で検討をしてもらうように指示をいたしております。
  320. 北側義一

    北側委員 そこらのこと、いま言われたような方向でやはり進めざるを得ないんじゃないかと、私もそう思います。  そこで、資料によりますと、これは運輸省から多分いただいた資料だと思うのですが、東北縦貫自動車道、これは現在岩槻から仙台間三百十七キロが昨年四月から供用開始されております。これは日本道路公団、そのとおりでしょうかね。うなずいておられるからそうだと思います。そこで、運輸省、この路線について現在路線バスの申請が運輸省に申請されておりますか。
  321. 木村睦男

    ○木村国務大臣 申請がまだされていないと思います。
  322. 北側義一

    北側委員 今後の見通しどうですか。これは申請されそうですか。
  323. 木村睦男

    ○木村国務大臣 名神、東名の高速道路が開通しましたころに、将来東北においても高速道路が建設、開通されるということで、当時からその構想を持ちまして、普通の国道に長距離のバスの運行をやっておるわけでございますけれども、だんだん高速道路のバス事業の成績が、いま国鉄で申し上げましたような状況でございますので、今後東北縦貫道においてバス事業を、在来の路線をやっておりますのを高速道路に乗せかえるかどうか。乗せかえる方向で現在やっておりますけれども、ただ首都高速とこれがつながりませんと効果がないものですから、その状況を待っておるような状況ではないかと私は考えております。
  324. 北側義一

    北側委員 私はこの路線についても、非常にバス運行というのはむずかしいのじゃないかという考え方を持っているわけです。ああいう非常に寒い地方へ行きますので、旅客自身も——国鉄がうんと赤字を出してやるというなら別ですよ。しかし民営ではとてもできないです、名神、東名でできないのですから。ところが、私の持っております資料を見ますと、この岩槻−仙台間で約四十五カ所のバスストップがあるのですね。仙台−盛岡間で二十三カ所、計六十八カ所のバスストップがもうすでにできておるわけです。このバスストップをつくるに当たって、やはり用地買収しなければならない、寒いところですからやはり覆いをしなければならないということで、非常に高いものについておるのですが、これは一体六十八カ所どれくらいかかっておりますかね。日本道路公団どうでしょうか。
  325. 尾之内由紀夫

    ○尾之内参考人 お答えいたします。  現在建設中のものは、まだはっきりしたかかりました経費が出ておりませんから、岩槻から仙台までの区間について申し上げますと、平均いたしまして一カ所四千万円かかっております。
  326. 北側義一

    北側委員 ちょっと待ってください。ちょっと聞きにくかったのですが、四十五カ所あるのですね。それで四千五百万円ですか、一カ所ですか。
  327. 尾之内由紀夫

    ○尾之内参考人 お答えいたします。  一カ所平均四千五百万円でございます。
  328. 北側義一

    北側委員 このバスストップについては、高速道路の供用開始までの事務手続を見ておりますと、大体施工命令が出て路線発表をなされて、設計協議がなされて中杭の設置が完了して工事着手して供用開始と、こうなるわけですね。大体供用開始の前後にバス申請というのは出されているのですね、いままで見てみますと。全然見通しがつかないわけです、初め設計段階で。設計段階でもうすでにバスストップはつくる設計になっておるわけですから、そのときは。そうしますと、仮に東北縦貫道の場合、これは四十五カ所ですね。一カ所四千万円というようなことになりますと、十八億円ですな。それでずっと見ておるわけですよ。しかも、いま運輸省の方から聞きますと、バス申請はいまだ一件もない、首都高速と通じたら出るかわからぬ、こういう御返事なんですよね。建設大臣、こういう状況なんですよ。やはり今後の高速道路建設についても、こういうむだな金は必要ないんじゃないでしょうかね。どうでしょうか、そこらの問題は。
  329. 竹下登

    ○竹下国務大臣 先ほど運輸大臣からお答えいたしましたが、いわゆる首都高速と完全につながった場合はどういう影響が出るであろうか。同じような議論で、北側委員の御質問に対する答弁資料の勉強を私がいたしました際、結局いまの高速道路に関連するあらゆるネットワークができた段階では、もう少し利用度も高まるじゃなかろうか、こういう感じがいたしまして、一概にやはり中距離輸送または自家用車を持たない方の輸送等から考えて、初めからバスストップを放棄してしまうということにはまだいささか抵抗を感じますので、もう少し事務的にも詰めさせて正確な御返答ができるように努力をいたしたい、このように思っております。
  330. 北側義一

    北側委員 では、次の問題に移っていきたいと思うんです。時間が余りありませんので、途中で終わりになるかわかりませんが、今回の昭和五十一年度の予算編成に当たって不況克服のための予算の重点を公共事業に置く、このようになっておるわけですね。そこで今回の予算を見ますと、災害復旧事業を除いた一般公共事業の内訳を見ますと、道路整備費が全体の三四・三%、約三分の一強です。治山治水関係が一七・三%、港湾漁港関係が八・八一%、住宅対策費が一一・三七%、生活環境整備が一一・六三%、林道工業用水が二・八二%、このようになっておるわけです。群を抜いて道路整備事業が多いわけです。そこで私考えますのに、政府が不況対策の一環としていわゆる公共事業に重点を置く、そういう点から考えますと、景気刺激の効果から見ましても、やはり地理的にも狭いそういう道路整備事業というのは、波及効果が非常に少ないんじゃないか、こういう考え方を私は持っておるわけです。たとえば、これは私の持っております資料は、昨年の十二月の資料ですが、昭和五十年十二月末の直轄事業にかかわる公共事業等の契約状況によりますと、次のとおりになっておるわけですね。これは先ほど言いましたとおり、昨年の十二月末です。これは五十年度分です。その契約率は、道路整備が八六・九%、治水海岸が八〇・一%、都市計画が六二・五%、官庁営繕が八〇・三%、災害関係が九六・九%、住宅対策が四一・七%。直轄事業にかかわる公共事業の住宅とか都市計画とか、波及効果の多いようなものが非常に契約率が低いわけなんですよ。また建設省の資料によります特別分類部門逆行列係数表、これは生産者価格ですが、これを見ましても、波及効果の多いのは住宅投資だということになっておるわけです。昭和五十年の契約率も、住宅などはいま申し上げましたとおり非常に悪いわけですが、昭和五十一年の予算においては、先ほど申し上げました道路整備が重点になっておる。これらについて、なぜこのように、昨年度の直轄事業の、いわゆる五十年度直轄事業の住宅対策費、不況対策に一番効果があるという住宅対策費がこのように契約率が低いのか。これはどうなんでしょうか。
  331. 高橋弘篤

    高橋(弘)政府委員 いま先生の御質問は直轄事業についてでございますけれども、直轄事業の中でいま十二月末まで第三・四半期末までの数字でございますが、非常に低いのが都市計画というのがございました。これは六二・五%。これは実は直営でございますから、いわゆる国営公園でございます。国営公園は今度そういう法律の改正を御審議願うことになっておりますけれども、福岡県の海の中道が新しくつきまして、まだ制度ができないものですから、地元との関係でまだ調整がつかずに執行できないという特殊なもので、今度制度ができますので、近くこれは執行できるようになります。住宅対策は直轄の住宅が実はないわけでございますが、ここの表の挙げ方でございますが、調査費でございます。調査費でございますからこれは金額もほんのわずかなもので、その関係調査費が、まだ調査が終わってないので比率が非常に低いということでございます。
  332. 北側義一

    北側委員 先ほど井上委員が住宅対策でいろいろ質問なさっておられたわけです。私も少しやりたいのですが、住宅対策の関係については次の建設委員会で一遍やりたい、こう考えておりますので、まずこの不況対策を続けて質問してまいりますが、先日建設大臣は、地方建設局長会議でこの長期の不況対策と打開策として、一つ、今年度事業の三月末までの年度内消化、二つ、早期来年度予算執行、すなわち四月一日より発注体制の準備をすること、三つ、上半期で七〇%の消化、こういうことを言われたわけですね。これについてどのような見通しになっておるのか。
  333. 竹下登

    ○竹下国務大臣 お答えいたします。  地建局長会また土木部長会等におきまして、大体同じようなことを言っておりますが、ただ第三番目の上半期に七〇%という数字につきましては、審議中の予算でございますので、これが執行については、一定の時期に達しないと数字そのものを明確にするわけにはいかない、こういうことを注釈をつけて申しておるわけであります。  したがって、まず第一の五十年度予算でございますが、いろいろ督励をいたしました。で、委員、建設委員会に長らくいらして御承知のとおり、いままで最高に消化できたのが切り上げ九八・二%、今度はそれを上回ろうというのが精いっぱいの目標であります。それを何とか九八・三%以上にまでは持っていける体制が大体ついたのではなかろうか、このように思うわけであります。  それから二番目に申しておりますところのいわゆる五十一年度予算執行に際して、もとよりこの審議中の予算に対して新規個所づけを決定しますとか、そういう執行の行為を行うわけではございませんが、予算執行の諸準備を予算通過されたその日から、表現は少しオーバーでございますが、実施できるように準備を整えられたい、こういうことを申しておるわけでありまして、幸いに自治省の協力もいただきまして、いま地方団体との連絡調整というものは大変うまくいっておる。不幸にして昨年はおおむね三分の一の都道府県が二月県議会は骨格予算だったわけでございますが、今度は完全に肉づけ予算にしていただいておりますので、早急に予算を御審議いただきまして、これが成立を見ますならば、私はこの執行体制の準備はおさおさ怠りない、むしろ地方団体の方が大変意気込んでおられる、それに対応しなければならぬというふうに思っておるわけであります。     〔正示委員長代理退席、委員長着席〕  それから第三番目の問題につきましては、数字は私だけで決めることでなく、大蔵大臣を中心として将来決めるわけでございますけれども、何とか上半期に集中発注を行うという方針は貫かしていただきたい、このように思っております。
  334. 北側義一

    北側委員 そこで、建設大臣に第二番目の早期来年度予算の執行、四月一日発注体制の準備、この問題ですが、私思いますのに、いわゆる新年度の住宅金融公庫の融資ですね。これについても、現状では予算の通るそういういろいろの関係もあるんでしょうが、公庫融資を受けて二カ月ぐらいたたなければ、実際これは着工できないわけなんですよ。受け付けてから二カ月、いろんな準備があって、初めて着工の——早いもので二カ月ですね、で着工するわけですよ。だから、景気回復のそういういろんな面から見ますと、やはり三月末までにそういう準備をしておいて四月にはちゃんと着工できるように、現在、きょうすでに三月ですが、そういう何らかの方法もとれなかったのかなという考え方を私持っておるわけなんです。これについてはどうなんでしょうか。
  335. 竹下登

    ○竹下国務大臣 北側委員の御主張は、私も検討いたしました。いわゆる仮申し込みにしておいて、諸準備を整えておいて、それで四月へ来たら直ちに実行する、こういうことも検討いたしてみましたが、仮申し込みということについては若干疑問がございます。したがいまして、諸準備を整えれば、四月の半ばをめどに大体申し込みを受け付けをすることの体制が十分整うという自信がおおむねついた今日でございますので、そのような方向で努力をさしていただきたいと思っております。
  336. 北側義一

    北側委員 時間がありませんのでずっと急いでまいりますが、七〇%消化の件についてもいままでの経過を見ますと、その契約率、いわゆる上半期で七〇%、これはかなりしんどいんですよ。だから、やはり景気回復のために皆待っておるわけですから、こういう不況のときですから、これを大臣がそのような所信を述べられたような形において何とか七〇%を達成してもらいたい、こういう希望を持っておるわけです。  時間がないので前へ進んでまいります。  そこで、なお今回のこういう深刻な不況で中小建設業者が非常に苦しんでおるわけです。大手建設業者がこの不況で中小建設業者の仕事の低い額でも受注しちゃうわけですね。特に私の調べたところでは、大都市の中にある中小建設業者、これは一番困っているように思うのです。大都市は、御存じのとおり大手の業者が非常に多いですから、全部吸い取られてしまう、こういう実態が出ておるわけです。建設大臣も先般中小企業の建設業に対して配慮を払って受注の確保、いろいろなことをやりたい、こうおっしゃっておられるようですが、一体具体的にこの中小企業建設業者に対してどのような施策を打たれるのか、それをお伺いしたいと思うのです。
  337. 竹下登

    ○竹下国務大臣 お答えいたします。  これは最近、私もいま北側委員指摘のような、言ってみればまさに中小企業向けのものに対して大手さんが積極的に乗り出しておる。これは一、二の例外はございますけれども、官公需の中でも——国ではございませんが、一、二の例外はございますものの、比較的官公需の方はそれでも秩序が保たれてきておるんではないかというふうに私は思っておるわけであります。大ざっぱな表現をいたしますならば、ああしてランクがございますが、上から下へおりることは断じてあってはならない。下が上へ上がることは積極的に推し進めていくべきである。それは事業協同組合の問題でございますとかあるいは企業体の問題等につきまして、これは十分な指導をしていかなければならぬ。また、委員かねがねの御主張でありますいわゆる分離発注の問題でございますとか、そういう専門工事業者に分離発注する方向で積極的に指導していく問題、あるいはまた中小企業——大体建設業自体は神代の昔から前渡金制度がありますのか、金融に比較的ふなれな業界でございますので、それらに対する指導をおさおさ怠りなく、通産当局からの強い中小企業対策についての御指示もございますので、積極的に努力をしていきたい、このように思っております。
  338. 北側義一

    北側委員 いままで大体県単独事業がありましたね。補助事業じゃなくて単独事業、これがいま物すごく減ってきておるわけですよ。私もこれを全部調べて、資料がありますが、年々県単の比率が落ちてきております。この県単の事業では大体中小の建設業者の受注分野なんですが、それがぐっと減ってきておる。だから不況感がよけい強い、こういう実態なんであります。そういう点もありますので、何とかこの施策についてもひとつ真剣に取り組んでいただいてやっていただきたい。このことを要望いたします。  もう時間がないので、まだいろいろあるのですが、最後に通産大臣おられますので……。  実は、今回の公共事業中心の不況対策において、生コンの需要が非常に強くなると思うのですね。ところが、現在全国的に生コンクリートの値上げ問題が持ち上がりまして、たとえば大阪では価格改定に同意する同意書が建設業者に配布されておるわけです。ここに持っておりますが、これです。この同意書に署名、捺印して発注した場合は優先的に出荷するというのです。東京においても、生コン業界の条件が認められない場合、無期限休業で生コンの出荷を拒否する、こういう新聞報道がなされておりますね。こういうことで、不況対策のいろいろな面から、なるほど価格のいろいろ複雑な問題があろうと思いますが、この問題は今回の不況対策の一環として非常に重要な問題になってくるんじゃないかと思うのです。そういう点で、通産当局はこれに対して一体どういう措置を講じておられるのか。  それから公正取引委員会お見えですか。そういう同意書に署名をしなければなかなか発注してくれない、こういう場合はどうですか、独禁法違反にならぬのですか。価格、いろいろな問題もあるでしょうが、その点、まず答弁いただきたいと思うのです。
  339. 河本敏夫

    ○河本国務大臣 生コン業界のことを申し上げますと、大体四千業者ぐらいございまして、非常にいま過当競争になっておるわけです。そういう関係で、昨年の不況の影響を受けまして、大体昨年の秋ごろまではトン一千円ぐらいの赤字経営になっておるわけです。そこへ今度セメントの不況カルテルによりましてセメントの価格が上がったものですから、その赤字経営が非常に大きなものになったということで、各地でいま御指摘のような若干のトラブルが発生をいたしました。しかしその後、建設省などにもごあっせんをしていただきまして、ほとんど全部いま解決の方向に向かっております。まだ一部、今後の分について残っておるものもございますが、近く全面的な解決が見られる、こう思っております。
  340. 橋本徳男

    橋本(徳)政府委員 お答えいたします。  具体的な案件でございますので、直ちに違反であるかどうかということを申し上げることは差し控えたいと思います。  一般的に、事業者団体が値段を決めまして、それに従わなければ出荷はしないといったような出荷の拒否というものは、一般論といたしますれば、これは独禁法違反の疑いが非常に強うございます。ただ協同組合の場合は、独禁法の適用が協同組合に対してはかなり制約的になっておりますので、具体的な問題につきまして十分検討しなければ、いまのところ何とも言えないという状況でございます。
  341. 北側義一

    北側委員 時間が参りましたので、これで終わります。
  342. 荒舩清十郎

    荒舩委員長 これにて北側君の質疑は終了いたしました。  次回は、明四日午前十時より開会いたします。  本日は、これにて散会いたします。     午後五時十五分散会