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1976-02-28 第77回国会 衆議院 予算委員会 第19号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十一年二月二十八日(土曜日)     午前十時三分開議  出席委員    委員長 荒舩清十郎君    理事 井原 岸高君 理事 小山 長規君    理事 塩谷 一夫君 理事 正示啓次郎君    理事 山村新治郎君 理事 小林  進君    理事 楢崎弥之助君 理事 松本 善明君    理事 山田 太郎君       伊東 正義君    上村千一郎君       植木庚子郎君    江崎 真澄君       奥野 誠亮君    北澤 直吉君       倉成  正君    黒金 泰美君       櫻内 義雄君    笹山茂太郎君       瀬戸山三男君    田中 龍夫君       谷垣 專一君    西村 直己君       根本龍太郎君    林  大幹君       藤井 勝志君    保利  茂君       前田 正男君    安宅 常彦君       阿部 昭吾君    稲葉 誠一君       岡田 春夫君    久保 三郎君       佐野  進君    田中 武夫君       多賀谷真稔君    堀  昌雄君       安井 吉典君    湯山  勇君       栗田  翠君    林  百郎君       山原健二郎君    鈴切 康雄君       河村  勝君  出席国務大臣         国 務 大 臣         (経済企画庁長         官)      福田 赳夫君         法 務 大 臣 稻葉  修君         大 蔵 大 臣 大平 正芳君         文 部 大 臣 永井 道雄君         厚 生 大 臣 田中 正巳君         通商産業大 臣 河本 敏夫君         運 輸 大 臣 木村 睦男君         労 働 大 臣 長谷川 峻君         建 設 大 臣 竹下  登君         自 治 大 臣         国家公安委員会         委員長         北海道開発庁長         官       福田  一君         国 務 大 臣         (総理府総務長         官)         (沖繩開発庁長         官)      植木 光教君  出席政府委員         内閣法制次長  真田 秀夫君         人事院総裁   藤井 貞夫君         人事院事務総局         給与局長    茨木  廣君         公正取引委員会         委員長代理   橋本 徳男君         公正取引委員会         事務局官房審議         官       水口  昭君         公正取引委員会         事務局取引部長 後藤 英輔君         警察庁長官官房         長       鈴木 貞敏君         警察庁刑事局長 土金 賢三君         警察庁刑事局保         安部長     吉田 六郎君         経済企画庁調整         局長      青木 慎三君         経済企画庁物価         局長      喜多村治雄君         経済企画庁総合         計画局長    宮崎  勇君         経済企画庁調査         局長      岩田 幸基君         法務省民事局長 香川 保一君         法務省刑事局長 安原 美穂君         公安調査庁次長 渡邊 次郎君         大蔵省主計局長 吉瀬 維哉君         大蔵省主税局長 大倉 眞隆君         大蔵省関税局長 後藤 達太君         大蔵省理財局長 松川 道哉君         大蔵省銀行局長 田辺 博通君         国税庁長官   中橋敬次郎君         国税庁次長   横井 正美君         文部省初等中等         教育局長    諸沢 正道君         文部省管理局長 清水 成之君         厚生省医務局長 石丸 隆治君         厚生省年金局長 曽根田郁夫君         通商産業審議官 天谷 直弘君         通商産業省貿易         局長      岸田 文武君         通商産業省産業         政策局長    和田 敏信君         通商産業省生活         産業局長    野口 一郎君         中小企業庁長官 齋藤 太一君         運輸省鉄道監督         局長      住田 正二君         労働大臣官房審         議官      吉本  実君         労働省労働基準         局長      藤繩 正勝君         建設大臣官房長 高橋 弘篤君         建設省計画局長 大塩洋一郎君         建設省住宅局長 山岡 一男君         自治省財政局長 首藤  尭君         自治省税務局長 森岡  敞君  委員外出席者         予算委員会調査         室長      三樹 秀夫君     ————————————— 委員の異動 二月二十八日  辞任         補欠選任   森山 欽司君     林  大幹君   阿部 昭吾君     稲葉 誠一君   阿部 助哉君     久保 三郎君   石野 久男君     佐野  進君   田代 文久君     山原健二郎君   中路 雅弘君     栗田  翠君   矢野 絢也君     鈴切 康雄君 同日  辞任         補欠選任   林  大幹君     森山 欽司君   稲葉 誠一君     阿部 昭吾君   久保 三郎君     阿部 助哉君   佐野  進君     石野 久男君   鈴切 康雄君     矢野 絢也君     ————————————— 本日の会議に付した案件  昭和五十一年度一般会計予算  昭和五十一年度特別会計予算  昭和五十一年度政府関係機関予算      ————◇—————
  2. 荒舩清十郎

    ○荒舩委員長 これより会議を開きます。  昭和五十一年度一般会計予算昭和五十一年度特別会計予算及び昭和五十一年度政府関係機関予算、以上三案を一括して議題といたします。  これより一般質疑に入ります。  質疑の申し出がありますので、これを許します。稲葉誠一君。
  3. 稲葉誠一

    稲葉(誠)委員 最初に、福田さん、副総理ということで聞くわけですが、問題はロッキードの問題で、アメリカの財界日本財界あるいは日本政界、右翼、こういうふうなものが絡んでいるというふうに言われているわけでしょう。こうした問題が一体なぜ起きているかということについて、また、一体それについてどうしたらいいのかというふうなことを、あなたから副総理という形で——ぼくは副総理の副が早くとれた方がいいと思うのですが、それは別として、お聞きしたい、こういうふうに思うわけです。     〔委員長退席、正示委員長代理着席
  4. 福田赳夫

    福田(赳)国務大臣 私は昨年の国会で、決算委員会であなたとこの問題についていろいろ意見の交換をしたことを思い起こすわけですが、私は、こういう疑惑を持たれるような事件が起こる背景というものがあると思うのです。つまり、わが国の社会的風土といいますか、あるいは政治的風潮といいますか、そういうものに、物、金、これがとにかく非常に貴重なものであるというか、お金さえあれば、物さえあればそれが人生だというような風潮が流れておるというところに、私は非常に基本的な問題があると思うのです。  そういう風潮がどうして醸し出されたかということになれば、これはいろいろむずかしい問題が伏在しておるわけでございますが、ともかく、金で政治が支配される、金で政治を支配するというような風潮がわが日本政界にないかということを深く反省させられる、こういうふうに思うわけでありますが、非常に今回の問題は大きなそういう意味における問題提起をしておる、こういうふうな認識でございます。私は、何々事件というようなもの、これの解明、これはケース・バイ・ケースで解明しなければならぬけれども、同時に、その根源に横たわる背景といいますか、そういうものについて深く反省すべきいい機会である、そういうふうにとらえております。
  5. 稲葉誠一

    稲葉(誠)委員 その金で支配する風潮とかいろんな背景について反省すべきだということは、一体だれが反省すべきなんですか。国民全体が反省すべきだというのか、あるいは自由民主党が反省すべきだというのか、その点はどうなんですか。
  6. 福田赳夫

    福田(赳)国務大臣 私は、大きな意味におきまして、これは国民全体の中にもそういう風潮がなしとしないと思うのです。これも私はみんなして反省しなければならぬ。しかし、そういう風潮を醸し出した原因は一体どこにあるのだ、こういうことを考えますと、やはり政治に非常に大きな責任がある、そういうふうに思うのです。ですから、何よりもまず政治家が反省を要する。特に、いま政権を担当している自由民主党、これは本当に心から反省すべき非常にいい機会である、かように考えております。
  7. 稲葉誠一

    稲葉(誠)委員 福田さん、ちょっと古い話になりますけれども、あなたが総裁選挙を戦って敗れたというか、そのときの後に、ある新聞に、もうこういう総裁選挙はいやになっちゃった、まるで金で総裁選が動いているような——そこまで言ったかどうかは別として、そういう意味のことで、もういやになっちゃったというふうな意味のことをあなたは言われたように私は新聞で拝見したのですがね。その根源というのは、一つは、総裁選挙が金によって動いているということは事実かどうか知りませんよ、いいですか、そういう印象を少なくとも国民に与えておるということにも原因があると見てよろしいでしょうか。
  8. 福田赳夫

    福田(赳)国務大臣 それは私もそういうふうな感じをいたします。あの総裁選挙で、政界における金支配風潮というものが一段と高進をした。断層というか、非常に区切りをつけてそういう傾向が前進したというふうな感じであります。
  9. 稲葉誠一

    稲葉(誠)委員 いまの一般的な問題はまた後にしまして、個別的な問題に入っていきたいというふうに考えるのですが、まず一つ、こういうことから取り上げていきたいというふうに思うのですが、田中彰治代議士恐喝事件というのがありましたよね。これは主に法務大臣に伺いますが、その中で、小佐野賢治という人が恐喝手形の書きかえでの被害者になって出てくるわけですね。そのときに、その恐喝されたというところに、児玉譽士夫なる人物が小佐野さんのところにいたということが言われているのですけれども、それは事実でしょうか。もし事実とすれば、そのときのことを、あなたの方で得ておる証拠書類か何かによってある程度説明をしていただきたい、こういうふうに思うわけです。
  10. 稻葉修

    稻葉国務大臣 その事実関係を私よくわきまえておりませんので、事務当局から答弁をさせます。
  11. 安原美穂

    安原政府委員 お答えいたします。  すでに確定をいたしました田中彰治に対する恐喝等被告事件確定記録の中にあります証人尋問調書によりますと、いま稲葉委員お尋ねのように、田中彰治と共謀した田中彰菅谷恒進被告昭和四十年七月二十七日ごろ国際興業小佐野賢治氏を脅迫した際に、たまたま児玉譽士夫氏が国際興業を訪ねていて隣室にいたということが、証言調書記載にございます。
  12. 稲葉誠一

    稲葉(誠)委員 これは確定した記録ですから、訴訟法上だれでも見られるわけで、私もそれを見たのですけれども、昭和四十二年の六月七日の公判廷において、小佐野賢治という人が証人に呼ばれておるわけですね。そこで、これは検察官の主尋問に対していろいろ答えておるわけです。ちょっと長くなりますけれども、私の方からそれを読ましていただきたいというふうに思うのです。   問 そこで彰被告人菅谷被告人が帰ったあと、児玉さんにその状況について話をしました  か。   答 話をしました。ちょうど児玉先生が私の会社の、隣りの応接間に来ておりましたので、先ほど申し上げましたように、金を持ってくるのか、あるいは、手形書換えの依頼にくるのか、わからないけれども、ということで、お話しした通りでございますが、ご両人が帰られてから、隣りの部屋で待っておりました児玉先生に、どうだったと、こういうふうに聞かれましたから、いや、実は、勧進帳を読まれたんだと。勧進帳とは何だと、こういうふうに児玉先生が私に尋ねられましたから、それから、先ほど申し上げましたようなことを児玉先生にもお話し申し上げたんです。そしたら児玉先生が、それじゃ、脅迫じゃないか、小佐野さん、告訴したらどうかと、こういうふうに言われたんですが、私は、事業家としていたずらに告訴したり、そういうことは避くべきであるというようなことで、いや、告訴などは、私もする意思もないし、する必要もありませんということを児玉先生に申し上げておいたんです。   問 児玉さんは、そのとき、読み上げられた内容を聞いて、メモか何か、しておりましたか。   答 はい。私の会社の電話のあるところに、色鉛筆、または普通の鉛筆とメモが必ず置いてあるんです。そのメモに書いていたようでした。 メモ一枚、これは検察官が領収してあるようですが、これを裁判所の許可を得て示す。   問 このメモの用紙は、見覚えありますか。   答 はい。これは国際興業で使っておるメモであります。   問 このメモには、田中の件、ついに勧進帳となる、光明池、八王子、虎ノ門、新潟、来たのは、せがれ、うんぬん、と書いてありますが、これは当時、児玉さんに証人が話したようなことなんでしょうか。   答 そうなんです。まあ、その他ありますけれども、こういうふうに証人調書に書いてありますね。まず、これは事実ですか。
  13. 安原美穂

    安原政府委員 お答えいたします。  確定した公判記録調書にある、証人尋問調書にそう書いてあるということでございます。
  14. 稲葉誠一

    稲葉(誠)委員 ここに八王子事件というのが出てまいりますね。これは八王子——チョウボウと言うんですか、ナガフサと言うんですか、八王子長房所在土地売買問題ということですね。これは検察官冒頭陳述にも出てくるのですが、検察官冒頭陳述にはどういうふうに出てきますか。そこに児玉譽士夫という人がまた出てまいりますか。
  15. 安原美穂

    安原政府委員 冒頭陳述等あるいは公判記録等を総合いたしますと、八王子土地売買ということは、大要次のようなことであったとうかがわれます。  昭和三十八年四月ごろ、町井久之氏は、八王子長房所在土地約三十三万平方メートル、約十万坪を地元民から約五億円で買い受け、翌三十九年十月ごろ、これを興亜建設株式会社に六億円で売ったことにして、同社から日本通運株式会社日綿実業株式会社に各七億五千万円で売却したが、日綿実業は、このうち三億五千万円を小佐野から融資を仰ぎ、国際興業と共有にしたものである、なお、この売買仲介児玉譽士夫が行っているということに記載がなされております。
  16. 稲葉誠一

    稲葉(誠)委員 この冒陳は、ちょっと文章がはっきりしないところがあるのですが、この売買というのは、どことどこの売買児玉譽士夫が中に入ったという意味にとれるのですか。
  17. 安原美穂

    安原政府委員 公判記録等を総合いたしますと、これは興亜建設から日本通運日綿実業への土地の売却について児玉譽士夫仲介をしたということにうかがわれます。
  18. 稲葉誠一

    稲葉(誠)委員 同じく四十二年六月の証言調書の中で、小佐野児玉譽士夫と知り合ったというのは、三十九年ごろ京成の株をめぐり知り合いになったというふうなことが出ておるようですね。この間の詳細はどういうことですか。京成の株をめぐって知り合いになったということは、どういうことなんでしょうか。
  19. 安原美穂

    安原政府委員 お答えいたします。  いま稲葉委員御指摘のような契機、動機で知り合ったということはうかがわれますが、それ以上のことは、詳しいことは現在のところわかりません。
  20. 稲葉誠一

    稲葉(誠)委員 現在のところわからないのは、急な質問だったから、私も無理がない、こう思うのですが、その点は後々非常に重要な問題になってくる可能性があるわけですから。検察当局として記録があるわけですからね。これは確定記録ですから、これはだれが行っても見られるわけですが、膨大なものなのであれですかもわかりませんが、あなたの方でこの点について十分調べていただきたいということが一点です。  それからもう一点は、やはりこの冒陳の中に、旧虎の門公園跡国有地の払い下げ問題を利用して、小佐野賢治氏と丸紅飯田との関係が出てくるようですね。これはどういうふうなことで出てきますか。五項……。
  21. 安原美穂

    安原政府委員 何分細かい細部にわたるお尋ねで、即刻お答えができなくて恐縮でございますが、本件に関係土地朝日土地が持っておった土地を、丸紅飯田朝日土地担保に提供しているというような関係で、丸紅関係があるようでございます。
  22. 稲葉誠一

    稲葉(誠)委員 これはまたあれだけれども、その前の昭和三十三年だか四年ごろに、横井英樹が東洋精糖ですかの株の買い占めのことがありましたよね。それに関連しての事件があったと思うのですが、そのときに児玉譽士夫という人は出てくるのですか、出てこないのですか。
  23. 安原美穂

    安原政府委員 お答えいたします。  児玉譽士夫氏がいわゆるそういう関係で名前の出てきているのは、二件ほどは承知しておりますが、いまのお尋ねの点についてはわかりません。
  24. 稲葉誠一

    稲葉(誠)委員 その二件ほどというのは、何と何ですか。
  25. 安原美穂

    安原政府委員 お答えいたします。  先ほど来お尋ね田中彰治に対する恐喝被告事件一つ。もう一つは、私の承知している限りでは吹原産業事件でございます。
  26. 稲葉誠一

    稲葉(誠)委員 それから、これはだれに聞いたらいいのですか、偽証という場合に、知っていることを隠したり、知らないことを供述したりするのが宣誓した上での偽証だと、こう思うのですが、知っていることを隠すという場合は、一体具体的にはどういう場合があるわけですか。どの程度のことを偽証と言うのですか。
  27. 安原美穂

    安原政府委員 知っていることを、つまり知っていながら知らないと答えることは、明らかに偽証に当たると思います。
  28. 稲葉誠一

    稲葉(誠)委員 この二月十六日の予算委員会議事録を見ると、最初自民党塩谷さんの質問の中で、小佐野さんに聞いていましたね。「塩谷委員 児玉譽士夫氏とはかなりごじっこんの間柄と思いますが」というのですけれども、塩谷さんがそういうように思ったのは、どういうわけで思ったのですかね。「いつごろどんな関係でおつき合いなさったか。その後、児玉氏とこの関係でお話し合いをしたことがあるかどうか、伺います。」ということで言っていますが、小佐野証人の答えは、「その後、特別にということではなく、普通のおつき合いをさしていただいています。」と言っていますね。それから、その後で別の方の永末さんの質問に対しても、「別にこれという問題もありませんから、話もそれほど親しくはしておりません。」というように答えているわけですね。  ところが、田中彰治のこの恐喝事件のときには、隣の部屋にいてメモまでとって、告訴したらどうかというようなことを勧めておるんですよ。ということは、相当な親しい関係にあったというふうに常識的にはとられるのではないでしょうかね。それから見ると——私は偽証だと直ちに断ずるわけにはいかないと思うのです。なぜかというと、それじゃ田中彰治のこの事件のときに、小佐野の事務所にいまの児玉譽士夫がいたかいないかと聞かれて、いませんでしたというように答えたのなら、これは明らかに偽証ですよ。そうじゃないから、そこまでの質問がないから、それは問題は確かにあると思うけれども、断ずるわけにはいかないけれども、いわゆる普通の関係でないということはもうはっきりしているのじゃないでしょうか。非常に密接な関係にあった。だから塩谷さんの質問も、かなりじっこんの間柄と思いますがなんて言って、自分の方から先に聞いているんですからね。  だから、どうもここのところで、小佐野証人証言というのは、偽証疑いというものが私は出てくるというふうに思うのです。断定しませんよ、疑いが出てくるというふうに聞くわけですね。その点については、法務省当局はどういうふうに考えますか。断定しませんよ、いいですか、疑いの問題ですよ。法務大臣、どうなんですか。
  29. 稻葉修

    稻葉国務大臣 ここで塩谷さんの尋問に答えた小佐野賢治氏の言葉は、普通のおつき合いをさせてもらっているというふうなことですな。普通でないつき合い、普通以上のつき合いというか、普通以上の深いつき合いであることを自分が知っておって、いや、さらっとした普通のつき合いです、こうなるのであれば——仮定の問題ですけれども、そうなるのであれば、非常に偽証疑いが濃くなると私も思いますね、常識的に。
  30. 稲葉誠一

    稲葉(誠)委員 そういうふうになるから、だからやはり小佐野証人というものを国会で再喚問をして——この点だけで再喚問しろという意味ではもちろんないわけですよ。この部分も全体の中の一部分としてという意味になりますけれども、再喚問をして調べるということが私は必要だと、こう思うのですね。これはだれが見てもそういうように思うのじゃないですか。  それから、丸紅飯田との関係も出てくるのじゃないですか、いろいろな関係がね。丸紅飯田檜山会長は、この十七日の証言では、小佐野なんて全く知りませんと言っていますよ。全く知らないのか、いまの担保の問題と土地の問題から、関係しても知っていたということも考えられるし——私は断定しないですよ、いいですか、そういうことも考えられるし、いま言ったような疑惑も出てくるから、当然証人として呼ぶべきだというふうに思うのです。  福田さん、あなた副総理という形で聞くんですけれども——一々副総理と断らなければならないのであれですが、何か副総理と言わないで、副の早くとれた方があなたとしてもいいんじゃないかと思うのですけれども、これは別の話になりますが、そこで小佐野証人喚問に一体なぜ自民党が反対したのですか。何か都合が悪いことがあるの。あなたには関係がないかもわからぬけれども、あなたは三木内閣のあれだからということで聞くのですけれども、今度は小佐野証人喚問がいたし方がないというふうに変わったのですか。まあ、変わりつつあるというのか、変わったのか知らぬけれども、そこら辺のところはどうなんでしょうか。ひとつフランクに話してくださいよ、あなたの人柄はフランクなんだから。
  31. 福田赳夫

    福田(赳)国務大臣 私は、喚問問題のいきさつ、全然承知しておらないのです。これは率直にそうなんです。(稲葉(誠)委員「だから、どう思うんですか」と呼ぶ)これは国会のことでございますので、国会で十分御相談の上決められるべき問題である、そういうふうに思います。
  32. 稲葉誠一

    稲葉(誠)委員 話は最初に戻るというか、捜査の現況のことについてお尋ねをいたしたいというふうに思うのですが、まず、警察の方が担当しておるのは、丸紅飯田の二人の外為法違反を担当したわけですね。  そこで、これは二十六日に楢崎さんの質問に対して、吉田という人、これは保安部長ですか、その人が答えている事実として、この二人の事実は、「共謀の上、昭和四十八年八月ごろから四十九年二月ごろまでの間、前後四回にわたって、いずれも丸紅株式会社東京支社において」云々、五億円を受け取った疑いだ、こういうふうに言っていますね。これは議事録の翻訳ですからね。この四回というのは、いつ幾らでいつ幾らだという内容を説明してくれませんか。ここまで話しているのだから、それを話すことは決して差し支えないと、こう思うのです。
  33. 吉田六郎

    吉田(六)政府委員 お答えいたします。  四十八年の八月九日、これが一億円ございます。それから同年の十月二日一億五千万円、それから四十九年の一月二十一日一億二千五百万、それから二月二十八日一億二千五百万、合計五億でございます。
  34. 稲葉誠一

    稲葉(誠)委員 そうすると、捜索、差し押さえ令状が出たのですから、罪を犯したと疑うに足りる相当な理由があって、これは捜索令状が出たのでしょう。それはどうですか、国家公安委員長
  35. 吉田六郎

    吉田(六)政府委員 米国からの資料とかその他の捜査資料を総合的に検討した結果、ロッキード社から日本国内における丸紅関係者並びに児玉譽士夫に金が流れた疑いがあるので捜索をいたしたということでございます。
  36. 稲葉誠一

    稲葉(誠)委員 だからぼくの言うのは、犯罪を犯したと疑うに足りる相当な理由があるのですか、こう聞いているわけですよ。これはあたりまえの話ですよ、刑事訴訟法にそういうふうに書いてあるのですから。どうなんですかと聞いているのですよ。
  37. 吉田六郎

    吉田(六)政府委員 疑うに足りる理由があるというように判断いたしたわけでございます。
  38. 稲葉誠一

    稲葉(誠)委員 そうすると、あたりまえの話ですが、逮捕状で逮捕するだけの法律的な容疑が訴訟法上すでにそこにあるということになりますね。そう見てよろしいですか。
  39. 吉田六郎

    吉田(六)政府委員 いまだその段階にはないというように考えております。
  40. 稲葉誠一

    稲葉(誠)委員 いや、罪を犯したと疑うに足りる相当な理由があれば、法律的には逮捕できるのかと聞いているのですよ。いま逮捕しろとかしないとか、そんなことは国会で聞くべき筋合いのものでもないから、ぼくはそんなことは聞かないですよ。法律的には逮捕できる状況にあるわけだよね。
  41. 安原美穂

    安原政府委員 御指名ではございませんが、脱税事件との関連もございますので、一応この際考え方を述べさしていただきたいと思いますが、もう稲葉委員も先刻御案内のとおり、逮捕状の請求につきましては、いま御指摘のように、被疑者が罪を犯したことを疑うに足りる相当な理由があることが逮捕状の請求の必要条件でございます。そしてそのためには、逮捕の理由と逮捕の必要があることを認めるべき資料の提供が刑事訴訟規則で必要になっております。これに対しまして、捜索、差し押さえ許可状の請求につきましては、逮捕状とは違いまして、「被疑者又は被告人が罪を犯したと思料されるべき資料」の提供ということで、逮捕状の場合とは違う表現になされております。  そのことは、私ども理解いたしますに、いやしくも人を逮捕するということはいわゆる基本的人権に対する一応の侵害としては最大のものであるということから、やはり嫌疑の程度あるいは疎明の程度も、逮捕の場合は物的な強制処分である押収、捜索の場合よりも疎明の程度が強くなければならぬということを訴訟法は期待しているものと思いますので、さしあたりその意味におきまして、捜索、差し押さえを許されたから、すぐ逮捕ができるのだというふうに即断することにはいかないというふうに訴訟法的には思われるということを御理解いただきたいと思います。
  42. 稲葉誠一

    稲葉(誠)委員 それはわかっているのですよ、こっちは。それはわかって聞いているわけですから。  そこで、逮捕の必要性は刑事訴訟法の規則でも違いますね。必要性があるとかないとかいうあれがあるでしょう。そこで問題となってくるのは、これはだれに聞いたらいいのか、法務大臣に聞いたらいいのかな。いま仮に国会証人喚問を受けたその人が逮捕されたときに、国会への出頭というものを警察なりあるいは検察庁なりが拒むことは一体できるのかできないのか、どうなんです、それは。よく研究してくださいよ、非常にむずかしい問題だから。どうなっているのだ。
  43. 稻葉修

    稻葉国務大臣 これから起こる問題で、非常にむずかしい問題ですから、よく検討しておきます。
  44. 稲葉誠一

    稲葉(誠)委員 むずかしい問題って、どこがむずかしい問題なんだ。どこがむずかしいのだ。
  45. 稻葉修

    稻葉国務大臣 どことどこがむずかしければ、むずかしくないのです。どことどことどこということが言えるようなら、大してむずかしい問題じゃないのです。それも非常にむずかしい問題です。
  46. 稲葉誠一

    稲葉(誠)委員 いやいや、ぼくはだれとだれをいつ逮捕するなんて、そんなことは聞いていませんよ。そんなことをあなた聞いたら、ぼくが笑われちゃうからね、そんなことはぼくは聞きませんよ。そうじゃなくて、証言拒絶の場合に、出頭の場合に正当な理由があるかないかの問題になってくるのでしょう。それを聞いているわけですよ。国会が国政調査権として正式に発動をして喚問をしている場合に、身柄が逮捕されたということで一体出頭を拒むことが正当な理由に当たるか当たらないかということの判断ですよ。それは国政調査権の方が当然優先するというふうに考えるのがあたりまえじゃないですか。そこだよ、問題は。
  47. 稻葉修

    稻葉国務大臣 その辺のところは学説の分かれるところでむずかしい問題でございますから、単に国政調査権が常に優先するというふうにはなっておりませんようでございます。
  48. 稲葉誠一

    稲葉(誠)委員 そこのところがなかなか、確かにあなたの言うとおりなんです。そこで問題は、国政調査権というものといわゆる守秘義務との関係になってくる、こう思うのですよ。いままでは税法上の問題で守秘義務ということが問題になっていたけれども、捜査の秘密ということでこれは言えません、これは出せませんということが——国政調査権が正式に発動した場合の話です、いいですか、それとの関連において、一体どこまで言えるのかということです。だから、ぼくは国政調査権というものの発動の内容とか仕方にもよる、こう思うのですよ。いいですね。これは単に個人の——そんなことはないと思いますよ、ないと思うけれども、単に個人の私的なと言うと語弊があるけれども、そういうことからこういう資料を出せ、こういう資料を出せということなら、その場合は守秘義務というものがある程度強くなってきてもぼくはいいと思う。そうでなくて、非常に強い公益的な要求、しかもそれも国民的な要求、それが非常に強いものであるというふうにだれが見ても考えられる場合には、捜査の秘密だということで提出を拒むという守秘義務、これは非常に矮小されてくる、非常に小さくなってくる、こういうふうに考えられるのですよ。いいですか。ここら辺についてどう考えますか。
  49. 稻葉修

    稻葉国務大臣 現に犯罪の嫌疑が非常に濃厚で、逮捕までしていま取り調べておるという間に、それを出して国会証言台に立て、こういうような国政調査の行き方を国会は果たしてなさるかどうか、その辺のところも良識をもってなさるとは思いますが、ただ、あなたが最後に言われた、非常に社会的な大きな問題になってきて、国民の要望を負うて国会がどうしてもこれは呼びたいというようなときには、またそのときの情勢に応じることでございまして、いま一般論としてどっちが上だ下だというふうににわかに断定できない、こう私は思います。
  50. 稲葉誠一

    稲葉(誠)委員 身柄を逮捕されているときに出頭しろということだけにあなたは限定しちゃったんだけれども、ぼくはそういう意味で言っているんじゃないんですよ。その話は、一応前にあなた、いろいろ学説があってああだこうだと言っていたから、あなたも法学博士なんだから、法学博士だから間違いがあるかないか知らぬけれども、それはとにかく別として、そうじゃなくて、一般の捜査の秘密だということで押収した——国会が要求しているたとえばいろいろな書類があるわけだ。どうしても国政調査の上から必要だというんで要求している書類があるわけでしょう。しかも委員会で議決しているわけだ。それに対して、押収されてしまったからということで、その要求が出ているのに、後から、押収してしまって、これはもう捜査の秘密だから出さないというのでは、国政調査権というものは結局非常に減殺されちゃうんじゃないかということがあるじゃないか、こう言っているのですよ。そこら辺のところをどういうふうに考えるのか。
  51. 稻葉修

    稻葉国務大臣 それはそうでしょう。今度、総理がアメリカの大統領に要求されて、そういう書類は一切公表する、こう言ってあるのですから間違いないと思います。
  52. 稲葉誠一

    稲葉(誠)委員 何だか私の質問とあなたの答えとは合わないが、よく聞いてないんじゃないの。(稻葉国務大臣「聞いている」と呼ぶ)聞いているのかな、聞いてないようだが……。(稻葉国務大臣「あなたの聞いていることに答えておる」と呼ぶ)ぼくはそんなこと聞いてない。アメリカの高官の話はまた後から出てくるのだ。そうじゃなくて、国会委員会で正式に議決した書類で押収になったもの。たとえば、二月十七日にわが党の川崎氏から要求になっているのは、「ロッキードから丸紅に対するトライスター購入についての明細書」、これが正式の要求になっているでしょう。それから共産党の方から「ロッキード、丸紅の基本契約第四条(d)項による丸紅からのリポート」、それから「丸紅、ロッキード間の基本契約とLAIL四〇一一の契約」、それから「ロッキード、丸紅のF104、L一〇一一、C1、P3C、YXなど機種ごとの契約及びその後の修正資料」、それから小林さんからのもので「トライスターの手数料について現在までの受領分及び未受領分の数字」、それから「トライスター一機ごとの手数料が十六万ドルから九万二千五百ドルになった経緯」、これが正式に要求になっているわけだ。なっているから調べてくださいよ。これ全部押収して持っていっちゃったわけだ。だからこれがないと——いまのは何か委員会の決議じゃなくて理事会の話し合いだそうですか……。(「理事会の申し合わせだ」と呼ぶ者あり)理事会の申し合わせだそうですから訂正しますが、みんな持っていっちゃったんだ。これがないと、あなた、予算委員会の審議も、特別委員会をつくったって審議が進まないじゃないですか。だから、国民の前に真相をあなた方が明らかにするという意思があるならば、こういうものも当然、これは現物を出すかコピーを出すか別として、出さなければ、あなた、国会の審議が進まないですよ。国民疑惑に対して国会はその任務を全うできないのじゃないですか。少なくともいま言ったようなものは出すべきですよ。当然出すべきですよ。それはどう考えるのです。
  53. 稻葉修

    稻葉国務大臣 真相の究明が一番の最終目的ですから、捜査当局の捜査の順序とか手段とか、捜査の手口ということはないかもしらぬけれども、そういうものがあらかじめ知られて逃がしたり証拠隠滅されたりするおそれがあるというようなときには出せませんかもしれませんけれども、そういうおそれがあるのに出したら逃がしてしまって真相究明が究極的にできなくなるから、そういうことに妨げのない限りはそれは当然出すべきものだと私は思います。
  54. 稲葉誠一

    稲葉(誠)委員 それじゃ、いま言った一つ一つについて、これを出すということについてどれだけ証拠隠滅のおそれがあるのか、それをよく説明してください。その証拠隠滅というのはいままでもう当然できているわけですよ、幾らでも。
  55. 稻葉修

    稻葉国務大臣 それは私、あなたみたいに検事やったりして捜査したりそういう技術知りませんから、それはやはり捜査当局、検察庁に聞かないと、私答えられないな。あなたの方が知っているくせにそんなことを言っちゃいけない。(「そんな答弁ないよ」と呼び、その他発言する者あり)
  56. 稲葉誠一

    稲葉(誠)委員 あなたも非常に率直に話してくれて、ぼくはうれしいと思うのですよ。あなたのそういう態度が非常にいいのですよ、本当。だから憲法に対してもそういうふうに率直に答えてもらいたいと思うのだけれども、もう憲法になると黙っちゃうからきょうは聞きません。  そうすると、いま言ったような押収物件、これはなぜ国会に出せないのか、きょうでなくてもいいから後で説明してください。いや、一つ一つ説明しろとは言わぬ。いまでなくていいです、時間があれだから別の人のときでもいいから説明してください。  そこでもう一つ問題になるのは、これは国家公安委員長にもそれから法務大臣にも聞くのですけれども、これはいまは外為と脱税ですね。外為の場合は通常、形式犯と言われていますね、まあ普通言うでしょうね。脱税の場合、形式犯と見るか実質犯と見るか、これは議論のあるところだけれども。そうすると、外為と脱税、これだけであなた方はもう捜査を終わらしてしまうつもりなの。これだけでいいの。どうなんだ。これは今後はどうするつもりなのか。これで終わりか。公安委員長から先に答えてください。細かいことはいいですから大筋で。
  57. 福田一

    福田(一)国務大臣 私は、調査の進むに従ってその余の問題に及んでも、これは捜査当局としては当然追及すべきものは追及していかなければならない、こう思っております。
  58. 稲葉誠一

    稲葉(誠)委員 法務大臣は。
  59. 稻葉修

    稻葉国務大臣 このたびの事件国民の一番関心事は、外為法違反とか税法の違反とかそういうこともあるでしょうけれども、要するに、あそこからこう流れ出てきた金が政府高官に渡ったなんということが向こうの証言にあるものですから、一番大事なのは、贈収賄罪が成立するかしないかということが国民一般の重大関心事じゃないですか。ですから、この捜査の結果、進んでいって、そういう捜査に及ぶことは当然じゃないでしょうか。そう思います。私、警察庁を指揮する立場ではありませんけれども、法律論としてそういう常識論を申し上げておきます。
  60. 稲葉誠一

    稲葉(誠)委員 そうするとその贈収賄罪というのは、あなたいま言われたけれども、本件に限定してどういう場合に成立するの。
  61. 安原美穂

    安原政府委員 一般論といたしまして、本件の場合ということで考えれば、ロッキードの飛行機の売り込みに関して金銭の授受が行われ、その金銭の授受が、公務員が金銭を受け取り、それが職務に関しておれば贈収賄罪が成立するということでございます。
  62. 稲葉誠一

    稲葉(誠)委員 そうすると、法務省としては、法務大臣としては、いま言ったような決意で臨むという、そして国民疑惑を晴らしたいということですね。そういうふうに承ってよろしいですね。
  63. 稻葉修

    稻葉国務大臣 そういうことでなければ、法秩序を維持する法務省としての権威に関すると私は思っています。
  64. 稲葉誠一

    稲葉(誠)委員 児玉という人の家宅捜索に行きましたね、税法違反かなんかで。この病状というのはいま一体どういう状況なんですか。これは法務省の方に聞くんだけれども、一番新しいやつはどうなの。
  65. 安原美穂

    安原政府委員 捜査の過程で、現在のところ児玉譽士夫を取り調べる必要がある段階に来ておるか、今後の見通しということについては、検察当局から報告を受けておりませんが、一般論といたしまして、病気であるようでございますので、検察当局としては、捜査の必要性と人権ということの兼ね合いから、慎重、適確な処置をとるものと考えております。
  66. 稲葉誠一

    稲葉(誠)委員 いや、そんなことを聞いているのじゃなくて、家宅捜索に行ったでしょう。行ったときに、何か自分一人で起きたのかどうか知りませんけれども、支えられたか何か知らぬけれども、歩いて行ったとかなんとかということが伝えられているから、そういうことは事実なのかどうかということなんですよ。
  67. 稻葉修

    稻葉国務大臣 私、よくわかりませんが、ただ行った人の報告を聞いているところによると、きょうあすというような病人ではないということです。
  68. 稲葉誠一

    稲葉(誠)委員 それはもちろんきょうあすという病人じゃないでしょうけれども、ぼくの言っているのは、いま世間で言われているのは、立ってどこかへ行ったというんでしょう、自分一人で行ったかどうかは別として。そういうことも皆検事が見ているというんでしょう。だから、その点は一体どうなの。
  69. 安原美穂

    安原政府委員 そういう報告は受けておりません。
  70. 稲葉誠一

    稲葉(誠)委員 そうすると、検察庁としてはやはり独自に児玉という人の病状について調べておるのか、また調べる必要があるんですか、どうなんですかこれは。
  71. 安原美穂

    安原政府委員 先ほども申し上げましたように、そういう段階に来ているかどうかは別といたしまして、検察庁としては、先般予算委員会で正森委員の御質問にもお答えいたしましたように、公正、客観的な判断のできる医師を帯同して、病院に入院中の被疑者を逮捕したこともございますので、そういう基本的人権のうちで最も大事な生命の安全ということを考慮しながらも、最大限の努力をして、適確な処置をとるはずであると信じております。
  72. 稲葉誠一

    稲葉(誠)委員 そうすると、税法違反の場合、これは児玉氏本人を調べなくても、いままでの調べの中で——これは税法だから告発が起訴条件ですね。告発がなければだめですけれども、告発ができ、そして起訴できるというふうにこれは考えているわけですか。これはどうなんだ。
  73. 安原美穂

    安原政府委員 まだ捜査中でございますので、さような嫌疑の段階に達したかどうかはわかりませんが、理論的には被疑者本人を調べなくても立証できれば起訴ができることは当然でございます。
  74. 稲葉誠一

    稲葉(誠)委員 そうすると、国税庁ですかね、脱税の捜査、査察官がやっているのは。現在どういう状況になっているんですか。きょうの新聞なんかを見ると、太刀川という人とかなんとか、もう一人、鬼という人か、調べたということになっていますね。これは時効が四十七年度分はもうすぐ切れるわけでしょう。これはいまどういう状況になっているんですか。
  75. 中橋敬次郎

    ○中橋政府委員 去る二十四日、東京地方検察庁と共同いたしまして、東京国税局で、所得税違反の疑いにつきまして児玉譽士夫の自宅ほか関係先について国犯法に基づく強制調査を行いました。また取引銀行などについても調査をいたしております。そこで、差し押さえました証拠物件等につきまして、現在東京地方検察庁と連携をとりまして分析検討をいたしておりますし、関係人からの事情聴取を行っております。特に取引銀行の調査等に強力な調査を行いまして、財産形成の実態を明らかにすることを今日努めておる次第でございます。
  76. 稲葉誠一

    稲葉(誠)委員 その四十七年度分の時効というのは、三月十四日という説と十五日説と、いろいろありますね。十三日説もあるけれども、時効は一体いつなの。法律的にどっちが正しいの。三年間というのはわかっているけれども。
  77. 安原美穂

    安原政府委員 これにつきましては犯罪の既遂がいつか、脱税犯の犯罪の既遂がいつかということにつきまして二説あるようでございまして、現在の通説は、当該税金の納期を過ぎたときに既遂に達するということでございますので、三月十五日になりますと時効が完成するということになると思います。(稲葉(誠)委員「十五日が終わってからでないの」と呼ぶ)十四日を終わればいいわけです。十五日から始まるということになります。
  78. 稲葉誠一

    稲葉(誠)委員 そうすると、脱税の方は非常に急ぐわけですわね。  そこで、お聞きしたいのは、税法違反で家宅捜索したときに、税法違反があるという事実の認定を一応しなければ令状はとれないでしょう。これは何と何で疎明をしたの。アメリカの議会の資料と、それから領収証でしょう。どういうものでしたんですか。
  79. 安原美穂

    安原政府委員 前回にもお答えいたしましたが、疎明をしたことは事実でありますし、犯罪があると思料されるに足りる疎明をしたことは事実でございますが、どういう手のうちであったかということは、いわば、裁判所には御説明申し上げましたが、いまだ公開をする段階ではないというふうに存じておりまするが、ただすでに公開をされておりますアメリカから参りました領収証が有力な疎明の資料であったことは事実でございます。
  80. 稲葉誠一

    稲葉(誠)委員 その点は警察の方は、外為法違反のときにわれわれにはっきり言っているんだよね、いまのにしても。あなた、法務省の方はやけにそれを言わないんだけれどもね。  そうすると常識的に考えて、この捜査が予告捜査だということを言う人があるんですけれども、これはちょっとぼくは法律家として予告捜査ということは言いませんよ。言いませんが、ただ問題なのは、脱税の方は、これはあなた、申告とアメリカのあれと、それから領収証が出ているわけですからね。だから脱税と外為とは別なんで、外為の方は技術的に法律が非常にむずかしいからということもあるし、証拠の関係もあるから、これの家宅捜索がある程度おくれたのは、これは私やむを得ないと思うのです。これを何も一緒にやらなくたっていいんで、脱税の方、所得税違反の家宅捜索というものはもっと早くできたはずですよ。できなくちゃおかしいですよ。非常におくれたわけですよ、だれが見ても。これは国会が十六、十七日の質問があった次の日あたりできなければならないはずですよ、脱税の場合はとにかく。これは法律の専門家はみんなそういうふうに言っていますよ。ぼくらが見たってそういうふうに思うんだ。外為はなかなか法律がむずかしいところがありますから別として、税法違反のあれがどうしてこんなにおくれたんですか。これは国民疑惑を持っているところですよ。どうしてこんなにおくれたのかね。
  81. 安原美穂

    安原政府委員 お答えいたします。  われわれ捜査に一応の経験を持っておる者の常識から申しまして、外為法違反の捜査よりも脱税事犯の捜査の方がむずかしいというのが定説でございます。なぜならば脱税犯は、たとえば所得税ならば、その一年間の当該人間の財産の得喪、変更、すべて把握しなければ脱税があるかどうかもわからないという意味において、いわば一年間全部のその人間の行動を把握しなければならないという意味において、基本的には脱税事犯の方がむずかしい。外為法は、単なる一つの取引行為が大蔵大臣の許可があるかどうかというようなことの形式的要件を欠けば直ちに立証できるわけでありますから、むしろわれわれは常識としては脱税犯の方がむずかしいというふうに考えております。それは一般論でございます。  今度の場合になぜ一緒にやったかということは、結局、外為法で違反とされて疑われておる事柄と、脱税犯において脱税したではないかと思われている所得とがうらはらの、あるいは密接の関係があるということで、同時にやることが最善の施策であったというふうに考えております。  なお、遅かったということにつきましては、そういう批判を受けるということは、新聞の報道と捜査当局の進行の度合いとが、新聞の方が先行したということからあるいはそういう印象を与えたのかもしれませんけれども、決して遅かったとは思っておりません。
  82. 稲葉誠一

    稲葉(誠)委員 どっちがむずかしいかというのは、それは身柄を逮捕してから後の問題になってくると、これは脱税の方がむずかしいですよ。家宅捜索の段階においてはそういうことはないはずですよ。家宅捜索の場合は、やって、その後の経過のことに日数に制限がないのですからね。身柄だったら、二十三日間で延長したって制限があるからだけれども、本件の場合は、資料が、アメリカの国会の資料とかそれから領収証なんというのがすでに入っているわけですからできたはずですよ。ぼくはどうしても、普通よりも、意識的にというかどうかは別ですが、おくれたというふうに思わざるを得ないのです。国民新聞が先行したからそう思っているかどうか別として、私もそう思いますよ。脱税というのはもっと早くできたはずだというふうに思うのですがね。  そうすると、問題は、いまの段階で脱税事犯というものは時効までに——四十七年度分ですよ。これは起訴できるということの自信が、確信があるのですか。
  83. 安原美穂

    安原政府委員 お答えいたします。  かかって検察当局の考え方でございますが、少なくとも犯罪の嫌疑があり、それが起訴できるに値するだけの客観的な証拠がそろえ得るにかかわらず、時効にかけるなどということは検察としては最も恥ずべきことでございますので、そういうことのないように目下鋭意努力中でございます。
  84. 稲葉誠一

    稲葉(誠)委員 あなたは答えを……(「ずらすな」と呼ぶ者あり)ずらしているというか、まあ答えをずらしていないとも見えますけれども、もっとはっきり、時効にかけないで起訴をする確信がございますというふうに答えられないのか。どうなんだろう、これは。どうなのか、大臣。
  85. 稻葉修

    稻葉国務大臣 優秀な検察当局がそろって一生懸命やっていることでございますから、必ず期待にこたえるものと私は信じております。
  86. 稲葉誠一

    稲葉(誠)委員 そこで、太刀川という人が出てきますね。これは調べていますね。この人は、これ以上私も聞きませんけれども、どんな経歴の人なんですか。これは国税庁でも調べているでしょう。
  87. 稻葉修

    稻葉国務大臣 私は直接知りませんけれども、友人の事務所におりましたから問い合わせましたところ——中曽根事務所に問い合わせましたところ、本人は山梨県の出身で、高等学校を卒業後、大学受験の浪人中である昭和三十八年に、衆議院議員中曽根康弘氏の書生を志願、同事務所に入った。これはリキアパートというところへ持っていたときです。力道山アパートです。このため、中曽根氏は、本人に司法試験を受けて弁護士の資格を取るよう指導し、本人は中央大学法学部第二部に入って勉学した。あなたの後輩であります。その傍ら、昼間は同事務所でいわゆる下働きをしました。しかし、大学卒業前に本人から司法試験合格に自信がないとの話があり、同事務所をやめた。なお、この間の本人の身分は秘書ではなく、秘書の名刺も使わせていないとのことでございます。
  88. 稲葉誠一

    稲葉(誠)委員 あなたの後輩だよ。まあ、それはどうでもいい。そんなことはいいけれども……。  それから、今後の捜査の問題として、検事をアメリカに派遣するという話が出ていますね。これは、従来は、ラストボロフの事件と、もう一つ、フランス機長のピストル密輸事件で派遣したことがあるわけですね。これは現在どういうふうになっているのかということと、それから、その場合、行って相手が応じなかったときはどうなんですか。応ずるものと確信するわけですか。
  89. 安原美穂

    安原政府委員 御案内のとおり、当然にはアメリカ国内におきまして日本の捜査官、検事等が捜査権を行使するというわけにはいかないわけでございますので、国際法から見ましても、先方の国の承諾を得ますれば刑事訴訟法に基づく職権の行使ができるというのが一般論でございます。そして、ラストボロフ事件はその先例でございまして、検察官がアメリカに行きまして調書を取った。その調書は刑事訴訟法上の検察官調書としての証拠能力があるということも判決で認められておるわけでございます。  問題は、今回の場合にそういうことをやることになったかどうかということでございますが、もう御推察のとおり、アメリカにまたがる密接な関係のある事件でございますので、捜査の方法としては十分に考えられることでございますが、まだ派遣をするということを決定した段階ではございません。
  90. 稲葉誠一

    稲葉(誠)委員 そうすると、このアメリカの議会の議事録は、日本の国の捜査の中で、あるいは裁判の中で、証拠能力としてはどういうふうにあるのですか。
  91. 安原美穂

    安原政府委員 議事録記載されております供述した内容を証拠とするといたしますれば、供述した人の署名、押印がなければわが国の刑事訴訟法上は三百二十一条一項三号の書面にはならないと思います。それがどういう形式か、私はよく存じませんので、そこは明言いたしかねますが、そういうことだと思います。  ただ、そういう供述があったということ自体、そういう供述がなされたということ自体を証明するものとしては——内容の真否は別として、そういう供述をしたということを立証するための資料としては、これは刑事訴訟法のたしか三百二十三条の業務の通常の過程において作成された書面としての証拠能力を持つものであろうと考えております。
  92. 稲葉誠一

    稲葉(誠)委員 ひとつこれは別のことを聞くわけですが、児玉譽士夫という人が右翼を、まあ脱退というのか、何と言うのですか、そういう声明というのか、宣言というのか、そういうことをしたことがあるというふうに仄聞するのですが、これはどういうふうなことでしょうか。
  93. 稻葉修

    稻葉国務大臣 公安調査庁に答えさせます。
  94. 渡邊次郎

    ○渡邊政府委員 児玉譽士夫は、昭和四十五年七月四日に行われました青年思想研究会、俗に青思会と言っておりますが、その団体の会議において、右翼運動から手を引くと発表したと承知しております。
  95. 稲葉誠一

    稲葉(誠)委員 右翼運動から手を引くというのはどういうことなんですかね。どういう経過でそういうふうになったのか、その後どういうふうになっているのか、その点はどうなんですか。右翼運動から身を引くということは具体的にどういうことなんだろう。それで実業家に転身したという意味なのかな。実業家か何か知らぬけれども、とにかくそこら辺の経過はどうなんですか。
  96. 渡邊次郎

    ○渡邊政府委員 それまで児玉譽士夫は大分いろいろな右翼の役職などをやっておりましたけれども、その機会にそれから全部手を引いたようであります。それが実業界に乗り出すためかどうかは私の方ではよくわかりません。
  97. 稲葉誠一

    稲葉(誠)委員 いまの実業界に乗り出すというのは、何というか、後で取り消すというか、余りウエートのあるあれじゃありませんが……。  そこで、福田さんと大平さん——福田さんが先かな。あなたに先に聞かないと悪いのかな。あなたは児玉譽士夫という人に会ったことがありますか。どうなんですか。
  98. 福田赳夫

    福田(赳)国務大臣 二、三回会ったことがあります。
  99. 稲葉誠一

    稲葉(誠)委員 それはどういうところで会ったのでしょうか。あなたの秘蔵っ子の安倍さんもある右翼の集まりに出たようなことがこの前ちょっと出ていましたね。出たって別に悪いことはないのですよ。思想の自由なんだから構いませんよ。どういう機会にあなたは二、三回お会いになったのでしょうか。
  100. 福田赳夫

    福田(赳)国務大臣 これはいろいろ私も友人がおりましてね。そういう人たちの会合があった席で会ったことがあります。
  101. 稲葉誠一

    稲葉(誠)委員 もう少し詳しく発表できませんか。発表するとあなたに傷つくの——それならいいじゃありませんか。あなたの人柄からいって、ぼくはそんなことはないと信じていますから大丈夫ですよ。何も気がねしなくたっていいから楽にしゃべりなさいよ。
  102. 福田赳夫

    福田(赳)国務大臣 私の懇意な人がおりましてね。その人がパーティーなんかやりましてね。そういう席でお目にかかったことがあります。
  103. 稲葉誠一

    稲葉(誠)委員 だから、二、三回と言うから、一回はいつで一回はいつだと聞くわけよ。昔なら昔でいいからちゃんと答えた方がいいですよ。議事録に載っておった方があなたのためにもなるんだからね。
  104. 福田赳夫

    福田(赳)国務大臣 いつごろというようなことは覚えておりませんけれども、私の親しい人がおりまして、その人が児玉さんとまた親しいのですよ。そういうあれがありますが、その私の親しい友人がお宅でパーティーをしましてね。その席なんかでお目にかかったことがあります。
  105. 稲葉誠一

    稲葉(誠)委員 その親しい人というのは、差し支えなかったらお名前を聞かせていただけませんかね。差し支えなかったらとぼくは言っているんですよ。非常に紳士的に聞いているんだが、ぐあいが悪いですか。(福田(赳)国務大臣「こういう際だから」と呼ぶ)こういう際かどうかは別として、だから、こういう際だから言えないなら言えないでいいじゃないですか。(「こういう際だから言った方がいい」と呼ぶ者あり)こういう際だから言った方がいいという意見もあるわけです。
  106. 福田赳夫

    福田(赳)国務大臣 これは財界の人です。財界の人でも、普通の財界じゃありません。小さい商売をしている人ですが、その人がパーティーなんか好きなんですよ。で、お宅で人を寄せてごちそうするというようなことがありますが、その席でお目にかかったことがあります。
  107. 稲葉誠一

    稲葉(誠)委員 だけど、小さい会社の小さなパーティーにあなたが行くというのがおかしいね。だんだんおかしくなってくるんじゃないの。もう少しはっきり言った方がいいんじゃないかな。その方があなたのためですよ。本当よ、それは。こっちは笑って紳士的に質問しているんだから、ぼくはあなたが総裁選挙に出ることを心配しているんだから、それはもう少し答えた方がいいんじゃない。ぐあいが悪いですか。
  108. 福田赳夫

    福田(赳)国務大臣 ここはそういう人の名前を言う席じゃないと私は思うのです。
  109. 稲葉誠一

    稲葉(誠)委員 それで、きょうは——このきょうはというところに問題があるんですよ。きょうはあれしますが、大平さん、どうですか。福田さんだけに聞いてあなたに聞かないと悪いもの。それは礼を失するよ。それはどういう関係でしょうか。お会いになったことがありますか。
  110. 大平正芳

    ○大平国務大臣 十数年前にお目にかかったことがあります。
  111. 稲葉誠一

    稲葉(誠)委員 十数年前というと、児玉さんと小佐野さんとが会ったころかな。どういう機会ですか、それは。
  112. 大平正芳

    ○大平国務大臣 児玉さんのところで、ある問題がございまして、説明をしておかなければならぬ必要を感じまして、一回事務所へ伺って話したことはあります。
  113. 稲葉誠一

    稲葉(誠)委員 そのときに、大平さん、あなたの役職はどういう役職だったでしょうか。大臣ですか。あるいは自民党の何かをやっていたときですか。ちょっとわからぬけれども、何のときですか。吹原産業のときか、何のときだろう、それは。
  114. 大平正芳

    ○大平国務大臣 その当時——よく調べてみなければわかりませんけれども、十数年前です。ともかく、私が浪人をしておったか、政府の役職をやっておったか、私はちょっと記憶していないのです。
  115. 稲葉誠一

    稲葉(誠)委員 そうすると、あなたは代議士に出られたのはいつでしたっけ。
  116. 大平正芳

    ○大平国務大臣 昭和二十七年です。
  117. 稲葉誠一

    稲葉(誠)委員 じゃ、十数年前に浪人していたというのは……。(大平国務大臣「政府におったかどうかです」と呼ぶ)代議士になっている場合はわれわれも浪人というのか。それじゃいっぱい浪人がいるよ。  それはいいけれども、いまのはよく調べてくださいよ。あなたの名誉のためにもね。何であなたが児玉さんの事務所へ行ったのか、何で行ったんだろうか、そこら辺のところは、きょういまから調べるといっても無理かもわかりませんけれども、だれか後でまた別の日か知りませんけれども質問が出ますよ。そのときにあなたやはり答えた方がいいですよ。福田さんも答えた方がいいな。ぼくはそう思いますよ。あなた方の政治生命にかかわるかかかわらないか知らないけれども、次期総理大臣を二人がねらっているのに、二人とも変なふうになっちゃまずいよ。  大平さん、あなたがそのときにどういう役職をしていて、どういう用件で行かれたのか、いますぐでなくてもいい、将来明らかにしていただきたいと思うのですが、どうでしょうか。
  118. 大平正芳

    ○大平国務大臣 よく調べてみます。
  119. 稲葉誠一

    稲葉(誠)委員 そうすると、児玉という人は、あなた方の内部と言うとぐあいが悪いけれども、自民党の中に非常に大きな影響力のあった人ですか。福田さんは小さなレセプションに出かけるし、あなたは児玉の事務所に出かけたと言うし、そんなに影響力のあった人なんですか。どうなんですか、これは。  公安調査庁はこの児玉という人をどう見ているのですか。
  120. 渡邊次郎

    ○渡邊政府委員 私の方は右翼運動を見ているわけでございまして、引退前はかなり右翼界で力があったと思いますが、引退後はそういうことはないと思います。政界関係は私の方にはわかりません。
  121. 福田赳夫

    福田(赳)国務大臣 政治に対する影響力は全然私は感じません。
  122. 稲葉誠一

    稲葉(誠)委員 じゃ、何に対する影響力があるのか。きょうは時間があれですからこれ以上聞きませんけれども、こういう話があるのですよ。これはぼくは確かめているわけじゃありませんから、こういう話があるというふうにお聞き願いたいのです。これは公安委員長なり、それから法務大臣なりに念を押しますよ。こういう話があるというのですよ。いいですか。断定しませんよ。(「用心深いな」と呼ぶ者あり)それはぼくも用心深いですよ。  政府が児玉さんという人をいろいろな問題で活用しているという話があるわけですね。活用ですよ、いいですか。利用と言うと言葉は悪いから、活用と言いますかね。たとえば右翼なら右翼というような、日中国交回復運動に対して反対する人がいると、それを抑えるために利用しているとか、それから外国から——どこの外国か知りませんよ。ある外国から外務大臣が来ると、そうすると警備しなければなりませんね。たとえば北方領土の要求とかいろいろな問題が出てきますわね。そういういろいろなことのときに政府なりあるいは警察なりが児玉さんをいろいろな形で活用しているというのか、いろいろなことを頼むというのかなあ、活用しているというのかなあ、そういうようなことが一部にまことしやかに伝えられているわけですよ。まことしやかにですよ。伝えられているわけです。これはそういうふうな事実というものがあるのですか、ないのですか。考えられぬの、いま即答できないというの、どうなの、それは。
  123. 福田一

    福田(一)国務大臣 私の承知している限りにおいては、そのような意味児玉君を活用しておるというような事実はないと承知いたしております。
  124. 稲葉誠一

    稲葉(誠)委員 法務大臣、どう。
  125. 稻葉修

    稻葉国務大臣 政府は、と言われましたが、法務省に関してはそういうことは断じてございません。
  126. 稲葉誠一

    稲葉(誠)委員 盛んにそういうことを言われるのですよ。どこから言われているかは別ですよ。そういうふうなことがいろいろ伝わってくるわけですよ。そこで、これに対してはいままで手ぬるかったのじゃないかとか、いろいろなことが言われてくるのですが、ここら辺は国民の大きな疑惑がまだそこにあるのじゃないかと思うのですが、私は、まあ疑惑というか、あれですから、これ以上のことはここで聞きませんけれども、自由党か自民党か、前の自由党ができたときに児玉氏がつくった金でできたなんてことも言われているでしょう。鳩山さんがどうとかかんとかということが言われている。そういうことは新聞や雑誌にいっぱい書いてあるんで、これは世間の常識というか、いわゆる法律上に言うと公知の事実というようなもので、証明を要しないということになる。そういうふうに言われてくるかもわからないくらい言われていますからね。まあ、この問題はここら辺にしておきます。時間の関係もありますからね。  そこで、この問題の締めくくりに入る前にもう一つちょっと聞きたいのは別のことですよ。全然別のことで、これは法務省の民事局長に聞きたいのですが、法務大臣でもわかっていればいいのですけれども、全日空のトライスターのあれなんかについてよく出てくるでしょう。オプションというものが出てきますね。オプションというのは一体どういうふうに日本語に訳したら一番いいのですか。まず、訳ですが、ぼくもこれはわからないんだ。それから、法律上の民法で言うものに当てはめると、これは一体何があるのかということなんですよ。これは余り新聞なんかも出てこないのでぼくはいつも疑問に思っていたところなんですけれどもね。各新聞はいろいろなふうに訳なんかも書いていますが、オプションというものが出てきますね。この点はどうなんでしょうか。
  127. 香川保一

    ○香川政府委員 オプションを日本語でどういうふうに訳せば一番いいか、これは的確な訳はちょっと見当たらないと思うのですが、強いて申しますれば、広い意味の選択権つき契約とでも申しますか、さようなものではなかろうかと思います。  稲葉委員御承知と思いますが、オプションはイギリスのコモンローの関係で出てきた一種の契約でございますので、したがって、成文法がなくて、判例でいろいろ積み重ねてまいったものでございます。現在アメリカでも、英米法系の国で使われておるものでございますが、典型的な例を申し上げますと、一番実務的に多いのは、銘柄を特定しまして株式の売買をする、したがって代金もそのとき決まっておるわけでありますが、したがって、その場合の選択権つき契約と申しますのは、買い主の方でいま買ったら得だというふうな判断をしたときに、それを買いましょうという意思表示をすれば、前に決めてあった数量、値段で株式が取得できる、こういうのが典型的なものでございます。  しかし、いろいろの態様があるようでございまして、たとえば甲と乙というものを決めておいて、そして買い主が将来一定の時期に甲を買うか乙を買うか決めて、そこで売買が成立するというふうな態様のものもございますし、また、不特定物の売買契約をしておいて、そして銘柄を、これの数量幾らというふうなことを選択して、そこで決まるというふうな態様のもの、いろいろあるようでございまして、日本の民法のどういうものに当たるか、近いかということはちょっと言いかねますけれども、いわば広い意味の予約的な——予約といいますか、そういうふうな、しかも拘束力が余りないような態様のものを含めての予約というふうなものに近いのではないだろうかというふうに理解いたしております。
  128. 稲葉誠一

    稲葉(誠)委員 拘束力のない予約と、それから拘束力のある予約と、これは売買の予約でしょう。具体的には法律的な効果はどういうふうに違うの。まあ、拘束力のない予約の場合は法律的な効果は発生しないだろうけれども。
  129. 香川保一

    ○香川政府委員 わが国の予約につきましては、御承知のとおり、予約完結権の行使によって予約での法律関係が成立する、こういうものがあるわけでございます。しかし、このオプションの場合には、そういう完結権を行使したら法律関係がそのときに成立するというふうなものもございますけれども、そもそも、完結権を行使しないといいますか、非常に拘束力の弱いというか、買うような契約はしておってもやめたと言えばやめたことになるようなものも判例法上認めているようでございまして、そういう意味で拘束力がわが国の予約に比べれば薄いものもあるのではないか、こういうふうに考えておるわけでございます。
  130. 稲葉誠一

    稲葉(誠)委員 では、最終的な締めになるわけですが、福田さん、アメリカからの資料が届いたときに、それを三木内閣としては一体どういうふうにするのですか。どういうふうな考え方を持っているわけですか。あなたは三木さんともいろいろ相談されているはずだと思いますが、どういうふうにするつもりなんですか。政府高官名が入っていても、それは国会のこれだけの問題で——国民の前にそのままそれを発表するということなんですか、それはそういうふうに決まっているのですか、どうなんですか。また、そういうふうに決めたいのですか。
  131. 福田赳夫

    福田(赳)国務大臣 三木総理が明確にお答え申し上げておるとおり、原則として公開する、ただし、アメリカからこれは何か条件がつくかもしらぬ、そういう際にはその条件について相当慎重に考えなければならぬ、こういうふうに私は承知しております。
  132. 稲葉誠一

    稲葉(誠)委員 そうすると、アメリカ側からつく条件というのは、考えられるものとしてはどんなことが考えられるのですか。
  133. 福田赳夫

    福田(赳)国務大臣 そこまで話はしておりませんけれども、たとえばこれはこういう軽い意味の資料だ、なお裏づけを日本政府においてよくやって、その上公表せられたい、こういうようなことなんかもいまちょっと私の頭に浮かんだのですがね。何か意見がつくケースがあり得るのじゃないか、そういうふうに思います。  そこで、三木首相もこの席で、先般、アメリカからの条件につきましては慎重に検討した上やらなければならぬだろうと、こういうふうにお答えしておるわけです。
  134. 稲葉誠一

    稲葉(誠)委員 総理から、三木さんからそういう話があったわけですけれども、これは三木内閣全体としても、それから自民党としてもというか、この問題には臭い物にふたをしないで、全部を国民の前にさらけ出して、そして国民の審判を仰ぐという気持ちであることは間違いないのですか。これで質問は終わりますが、そういうふうにわれわれは受け取ってよろしいのでしょうか。これもあたりまえだと思うのです。
  135. 福田赳夫

    福田(赳)国務大臣 臭い物にふたをするというような考え方は一切なさない、これが政府の基本的な考え方でございます。
  136. 正示啓次郎

    ○正示委員長代理 これにて稲葉君の質疑は終了いたしました。  次に多賀谷真稔君。
  137. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 総理府の昨日の東京都区部における消費者物価指数の発表がありました。前年同月比で、二月が一〇・七%と、いわば急騰しておる。こういうことになっておるわけです。これは全国的な指数は出ておりませんけれども、しかし上がっております多くの原因が、一つは雑費が上がっている。これは郵便料金のはね返りもある。そうすると、これは何も東京都だけではないのではないか。それからさらに野菜も二月は全国的なそういう情勢にあるのではないか。こう考えますと、一体あなたの、否三木内閣の最大の公約である九・九%に三月末で抑えられるかどうか。この見通しをお聞かせ願いたい。
  138. 福田赳夫

    福田(赳)国務大臣 三木内閣の政策目標は、消費者物価全国平均が一けただ、こういうことでございます。  そこで、二月の指数が昨日発表になっておりますが、これは東京区部なんです。それが一〇・七になる。それを全国ベースに換算いたしますと、大体九・五である、こういうことになるわけでありますが、三月は一体それがどういうふうになってくるか。私は、東京区部につきまして一けたになるのは、これはかなりむずかしい情勢だ、こういうふうに思います。しかし全国につきましては、これは相当努力は必要でありますけれども、一けた達成可能であり、またそうぜひいたしたい、こういうふうに見通しておるわけであります。
  139. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 全国の二月の見通しは、指数でどうなりますか。
  140. 福田赳夫

    福田(赳)国務大臣 九・五でございます。
  141. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 これはまさに三木内閣の、一けたであるか二けたであるかというのは、政治生命にかかっておると思うのであります。率直に言いますと、春闘にも影響があるとも言われておるわけです。これはわれわれとしては重大な関心を持って見守りたいと思います。  そこで、まずベースアップを春闘で行う場合に、私の計算でいきますと、二けた台にならないと実質賃金が下がる、こういう計算になる。まず調整減税が行われていないというのが一つ大きな原因です。それから保険料が上がる。ですから物価のほかに給料から直接控除されるものを、物価のあなた方の見通しと給料から直接引かれるその増加分とを入れますと、二けた台にどうしてもなるわけです。たとえば三百万円、夫婦子供二人でこの収入の世帯が一〇%上がったとすると三百三十万円、そうすると所得税が七万六千八百円から十万四千四百円になる。住民税、これは主として前年度の所得に影響いたしますが、このたびは均等割りも上がりますから、前年度が一応五万三千二百五十円、そうすると五十一年度が六万一千二百五十円、そういたしますと、トータルとして税金が十三万五十円から十六万五千六百五十円になる。そこで本人のなにが三万五千六百円の増税になる。そういたしますと、この三万五千六百円の増税は三百万円世帯であった人幾らに当たるかと言いますと一・一八%になる。そこで厚生省の今度の厚生年金の引き上げが〇・九%、これは被保険者です。一緒にいたしますと、労使一緒で一・八ですから、本人は〇・九、それから医療費が被保険者分が今度〇・一上がるのですよ。これは予定しておる。労使で〇・二上がるわけです。これは弾力条項で上がっていく。そういたしますと、どうしてもここに二・一八%上がる。二・一八%上がると、あなたの方は五十一年度の消費者物価指数の伸びが八・八%だ。これは年度平均をとらなければなりませんから、年度平均です。そういたしますと、どうしても三百万円所得の人はこれは一〇・九八%上がらなければ実質所得の維持ができない。これはきわめて単純な計算なんです。まず消費者物価指数の上がりが政府のとおりであると仮定して、一方あなた方が予定しております税金、それから保険料増額、これを給料から控除して引かれますから、そうするとどうしても一〇・九八ないと実質所得の維持ができない、政府の言うとおりを考えても。こういう計算になるのですが、実質所得の維持をするとすると、これはどうしても二けた台にならざるを得ないのです。私の計算にどこか誤りがありますならば、どうか大蔵省でも厚生省でも御指摘を願いたい。私はそう計算するわけです。どうですか。
  142. 吉瀬維哉

    ○吉瀬政府委員 全般にまたがる問題でございますので、こちらの方からお答えするのもあれかと思いますが、多賀谷委員の御計算のようにやりますとそういう計算も成り立つと思います。ただ、多賀谷委員御承知のとおり、一つの年金掛金は将来の一つのりターンへの担保でございますし、また税金アップも、税金による国家財政のリターンも若干あるわけでございますので、それらの実質所得の維持という定義にもよるかと思いますが、そういう計算も成り立つと思います。
  143. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 これも後から質問いたしますけれども、リターンという、それは六十歳になってからの話ですから、リターンは。これに反論しておりますと時間がありませんから反論しませんけれども、とにかく政府の見通しの物価指数と現実に給料袋から引かれる保険料と税金だけを入れても、どうしても一〇・九八%ないと実質賃金の維持ができない。  それから、もう時間がありませんから簡単に申し上げますが、二百万円の人を計算いたしますと、大体一〇・六六ですよ。ですから、どうしても実質賃金の維持をしようとし、政府の言うとおりの計算をしても、二けた台に賃金はならざるを得ない、こういうように考えるのですが、副総理はどういうようにお考えですか。
  144. 福田赳夫

    福田(赳)国務大臣 賃金問題には政府は介入いたしませんです。
  145. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 そういたしますと、私の言った計算は認められますね、大蔵省を含めて。どうですか、この計算。何か違う点がありましたら、いや、税金はそれよりも安くなりますという、ありましたらお知らせ願いたい。調整減税してないのですから、そうなるのです。
  146. 吉瀬維哉

    ○吉瀬政府委員 ただいま税の計算につきまして伺いましたが、ちょっと税金の担当者もいないわけでございますが、国税、地方税含めまして、そういうような税率負担アップになるかどうか、なお検討させていただきたいと思います。
  147. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 住民税の均等割りについては、あれは条例で決めますからね。住民税については条例で決めますから、あるいは若干差があるところも出てくると思います。しかし、これは平均で出したわけであります。でありますから、どうしても一〇・九八、三百万円、それから二百万の人が一〇・六六、こういうように、給料袋から引かれるものと物価の上がった分を引いて、それだけでなるのですよ、政府の計算どおりして。ですから、あれだけこの前はあなたの方は一五%、一五%と言ったのですから、一言ぐらい物を言ったらどうですか、今度は。やはりこれは政府の計算によれば二けた台にならざるを得ないぐらいちょっと言ってみたらどうですか。
  148. 大平正芳

    ○大平国務大臣 いつも多賀谷さんの御質疑からいろいろ啓発されるのでございますが、きのうもあなたは、福祉年金の老人年金のスタートのときに、拠出制と拠出制でないものとのスタートが同じであった、いま落差がついてきたのじゃないかということを経過的に指摘されたわけでございます。私は、いま、税金の問題——減税は確かにことしは物価調整減税も含めてやっていないわけでございますから、しかし、消費者物価は、ごらんのように若干の上げ幅は落ちついてきたといえ上がっておるわけでございますから、計算いたしますとあなたが計算したようになることは私は当然だと思うのです。しかしそれは単年度だけででなくて、減税というのは、これは長い過程の中で、大きく減税する年もあれば、ことしのように減税を御遠慮いただく年もあるわけでございますので、私の立場から申しますと、単年度だけでなくて、きのうのように、長い過程の中で負担がどうなっていくかというところを見ていただきたいと思うのであります。
  149. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 大蔵省はひとつ自治省とも話し合って——ぼくはいま階層別にお話をしたわけですが、これはひとつデータをこの委員会に出してもらいたい。これは問題によりますと、たとえば〇・九上がるけれども、それは決まった賃金の中ではないかという議論もあると思う。それならば、私の方は、その指数は新しい賃金でとられる。前の賃金でとられるわけではないですから、新しい賃金でとられるわけですから、ボーナスは入らなくても、今度は金額としては多くなる。ですから、そういうことも若干配慮をして計算をしたわけですから、どういうようになるか、ひとつ出していただきたい。  とにかく二けた台でないと実質賃金は下がる。たった一・二%しか一けたに余裕がないのですから。そうでしょう。副総理、どうですか。一・二%しかないのですよね、その一〇%までに、余裕は。物価が八・八%上がるのですから。三月の時点の八%じゃだめなんですよ、年間を通じなければ。給料の税金の方は先に取るわけですから。ですから、どうしても二けた台にならなければ実質賃金の維持はできないでしょう。それはお認めになるでしょう。
  150. 福田赳夫

    福田(赳)国務大臣 大筋といたしますと、いまの実質賃金の問題は、賃金の上昇、それはそのベースアップのベースばかりじゃないのです。実質というか、総体の賃金、雇用者所得ですね、これが上がるというのと、それが差し引きされる物価、それから公租公課、そういう種類のものとか、そういうものを比較対照してみる、こういう結果どうなるか、こういうことだろうと思うのです。これはいろいろ関係する省庁が多いわけでありますから、それはひとつ計算はいたしてみますが、そういうことをしてみないと、お尋ねのようなことにつきましてはここで即答はいたしかねる。しかし基本的な考え方といたしましては、これは賃金決定には政府は介入したくない、介入しない姿勢の方がよろしかろう、こういうふうに考えておるわけであります。
  151. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 私は、経済見通しをされる場合あるいは公共料金を引き上げる場合、税金も上げ、保険料も上げ、物価も一度に上がる、こういう政策手段がありますか。それで私はあえて聞いておるのですよ。税金も上げる。そうして、後から申し上げますけれども、何もいま取らなくてもいい厚生年金の保険料まで上げる。そうして医療費も上がる。それを一度におやりになる必要がどこにあるのか。ですから、経済企画庁としては、少なくとも、物価はこのくらい上がった、税金は幾らだ、保険料もこの際幾ら、これはちょっと一度に上げなくてもいいじゃないか、こういうチェックぐらいあなたの方はできそうなものですね。だから、あなたの方が、賃金が上がるから物価が上がるという説をなされた、まあ最近ちょっとおやめになっておるようですけれども、そういう御説をするならば、やはりチェックする必要があるでしょう。これは簡単なんですよ、厚生省と自治省と大蔵省にお聞きになれば……。各省にまたがってない。それは政府の法律要綱にある値上げで私は聞いているわけです。単なる見通しではない。ですから、これは早急に出していただきたい。  続いて質問いたします。  そこで、いまの問題に関連して質問したいのですけれども、厚生年金を今度一・八%上げるわけです。一体、なぜいま厚生年金をこんなにお上げになるのか。そして、政府の出された資料によりますと、厚生年金の昭和八十五年における積立金額が実に三百四十三兆になる。一体、なぜこんなにいまの時期に——いま物価を抑制するのが最大の問題だと言っておるときに、なぜ実質収入の下がるようなことをあえておやりにならなければならないのか、これをお聞かせ願いたい。
  152. 曽根田郁夫

    ○曽根田政府委員 厚生年金の来年度の改正に伴いまして、御指摘のように保険料率を男女それぞれ一・八%引き上げることにいたしておりますが、今回の給付改善に伴いまして、当然、いわゆる先生御承知の平準保険料というものが前回改正時に予定されておりました平準保険料よりかなり大幅に引き上がることになりまして、大体一五%程度と予定いたしておりますけれども、これを結局現在の被保険者あるいは将来の被保険者にどのような負担増の傾斜をもって財源を確保していくかということでございますが、私ども昨今の経済事情等もございますので、余り大幅な引き上げというのは実際問題としては困難なのではないか。いろいろそういう情勢を踏まえまして、本来ならばもう少し上げたいところでございますが、一・八%の引き上げにとどめたわけでございます。
  153. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 いま私が申しましたように、これはいままでにない異常な引き上げですよ。しかも、御存じのように現在積立金はどのぐらいありますか。五十年度末十二兆幾らありますか。五十一年度末は予定は幾らになりますか。
  154. 曽根田郁夫

    ○曽根田政府委員 五十年度末見込みでございますが、厚生年金、国民年金合わせて約十四兆でございます。五十一年度末は、恐らくこれに二兆五千億程度が上乗せされるものというふうに考えております。
  155. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 そうすると、五十一年度の支出予定は幾らですか。
  156. 曽根田郁夫

    ○曽根田政府委員 五十一年度の支出すなわち保険給付費は、厚生年金につきましては一兆四千億、国民年金につきましては七千億強でございます。
  157. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 そして五十一年度の収支の残は幾らですか。五十一年度だけ見ると。
  158. 曽根田郁夫

    ○曽根田政府委員 厚生年金につきましては、収支残が二兆五千億でございます。国民年金につきましては、財政が逼迫しておりまして、収支残はゼロでございます。
  159. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 その二兆五千億が資金運用部資金に入るわけです。一体、大蔵大臣、この共済年金、いまこれは皆自主運営ですよね。各種共済年金は全部自主運営。それから、調整年金として企業がプラスアルファをする場合は、標準報酬比例分については厚生年金基金というのがあって、資金運用部資金に行かないで、高い給料の人は別の基金がある。問題は、労働者でわりあいに恵まれない層の人々が資金運用部資金に出しておるのです。これは私は非常に矛盾を感ずる。一方、積立方式というのは運用利子をなるべく高くして運用するというのが性格じゃないですか。ところが、積立方式は運用利子を高くするというのに、実は資金運用部資金の中に入れて、そして低い金利で貸しておる。それは日本経済の繁栄、安定のためということでしょう。ところが、わりあいに恵まれた層の共済年金やあるいは厚生年金基金は別の基金として自主運営をしておる。ですから、逆に高い金利になっておるのですね。ですから、きょうは自治省見えておられませんから、厚生年金基金は一体利回りはどのくらいになっておるのか、それから運用部資金の年金はどのぐらいの運用利子になっておるのか、これをお聞かせ願いたい。
  160. 曽根田郁夫

    ○曽根田政府委員 四十九年度末でございますが、厚生年金の運用利回りは六分六厘、国民年金は六分二厘九毛でございます。  なお、御指摘の厚生年金基金でございますが、これは八分八厘一毛であったかと存じます。
  161. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 共済はたしか国公共済、それから地方公務員共済、いろいろありますけれども、利回りは国家公務員共済で六分六厘五毛、国鉄が七分四厘、専売が六分七厘、電電が六分八厘、それから地方公務員共済は大体六分四厘か五厘です。  ただし、ここにも問題があるのは、国公あるいは地公共済は組合員に貸し付けているのですよ。直接貸し付けをしている。地方公務員共済でありますと約五割、半分ぐらい直接貸し付けが行われておる。これは住宅資金にほとんど行っているのですけれども、直接貸し付けですから、これは低くてもいいのですよ。直接恩恵があるわけです。ですから、直接貸し付けは直接貸し付けでいいのですよ。それは何も高い利子で、このインフレのときに利子だけを一生懸命上げることを考えなくても、恩恵がある。ところが、厚生年金の場合はその恩恵がきわめて微々たるものです。もう時間がありませんから私は余り言いませんけれども、最近厚生年金も企業を通じて直接貸し付けをするようになった。しかし、これはわずかです。ほんのわずかです。恐らく七百億かそこらじゃないですか。非常にわずかですよ。とにかく一割よりもずっと低い。パーセンテージはものすごく低い。一方、今度は基金の方でありますと、利子が八分八厘もいっているのですよ。ですから、結局どういうことかといいますと、厚生年金の被保険者が一番泣いているわけですよ。金は全部政府に、そしてかつては、申し上げませんけれども、民間、しかも大企業にずっと行っている。還元融資と言っても、これはみな財投に行ったものを借りてくるわけですから。そしてほとんど共同施設ですよ。ですから、こういうところに問題点があるんじゃないか。ですから、それならそれで、一体厚生年金の金をどういうように大蔵大臣としては今後運営するのか。これは自主運営に任すのですか。厚生年金だけですよ、年金基金で自主運営のできないのは。ほかの共済とか基金は全部できるんですよ。これは一体どういうように考えられているのか、将来展望として。お聞かせ願いたい。
  162. 大平正芳

    ○大平国務大臣 政府がお預かりいたしまして統一運用をいたしておりまするゆえんのものは、零細な庶民の金が有利かつ確実に管理され、運用されるということを保証するためでございます。したがって、か弱い立場にある方々のために、そういう政府の信用において有利かつ確実な運用をして差し上げるというところから預金部資金、いまの資金運用部の資金というものが造成されてきたものと私は思うのであります。したがって、厚生年金の積立金がその中に繰り入れられまして運用されてまいりましたゆえんのものも、その方々に対しての利益を政府が守るという趣旨のものであったと思うのであります。自主運用ということは確かに各機関にとって魅力のあることでございますけれども、これは順調にまいりますときは結構でございますけれども、もし間違いを起こせば大変なことになるおそれがないとは言えないわけでございます。したがって、どこにどういう運用の方法をとるかということはいろいろな角度から十分、当面の金利だけという観点からだけでなくて考えておかなければならぬ問題だと思います。  それから第二の問題といたしまして、しかし、よかれあしかれ、厚生年金の積立金が資金運用部に組み入れられまして、大きな財投資金を形成してまいりました要素になってきておるわけでございまして、財投資金というのがいわゆる政府の財投計画を支えておる柱なんでございますが、それがいまわが国の経済、財政の運営に非常に大きな機能を果たしておりますことも多賀谷さん御案内のとおりでございます。したがって、いまこの体制を崩しまして自主運営に返しますと、この財投計画というものを根本から考え直さなければならない。しかし、政府がいまいろいろ財投計画を通じてやっておりますことを直ちにやめるわけにいかぬとすれば、政府は、恐らくさらに公債を発行するとかなんとか別な方途を講じなければならぬということになるのではないかと思うのでございまして、財政政策といたしましては非常に基本的な転換を決意しない限り、これはできる相談ではないと思うのであります。  考え方を言えということでございますから、私はどうもそういうことが気にかかるわけでございますけれども、しかし、いまいろいろの年金制度、機構につきまして、積立金の運用問題というものは確かに問題の一つでございますので、それを丹念に検討して、改善すべきものは改善してまいるということにつきましては鋭意やってまいらなければならぬと思いますけれども、基本的な仕組みを変えるという踏み切りは私にはなかなかつきかねるわけでございます。
  163. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 なぜ、要するに株を持ったり不動産を保有したりというような他の基金のようにはできないのかということについて、実はこれを預金部資金に入れたのは、国民経済の発展に寄与する部面に投資して、これによって国民純生産を増加させ、その増加した分から分配を受ける、これだから預金部資金に入れたのだと、こう言って説明をしておるわけですよね。有利、確実というのは、確実はそうですか、有利というのは全く修飾語にすぎない。それは有利、確実と書いてあるけれども、確実は最も確実だが、有利は、現実に基金が八分八厘でやっておるのですから、それはきわめて低い。それならば恩恵を、国の経済が伸びたのならそれだけ分配をするんだ、これも一つですよ。ところが、補助率の方は一つも上げないで、一般の労使から取る分だけ取るというのはおかしいじゃないですか。それなら、国の経済はそれだけ栄えたんですから分配すべきです。それなのに、依然として積み立て方式をずっとやりながら、分配をしないで、補助率を上げないで、労使の保険料にだけ依存をして上げていくということはどうも納得できません。  昭和十七年に労働者年金ができてからほとんどこれは、最初のうちは大企業に融資しています。もう時間がないから言いませんけれどもね。そしてまた、外国にも例がないですよ。郵便貯金は外国にも例があります。それが国債の償還になっていっております。しかし、第一、よその国は年金保険は賦課方式ですから、積み立てておる金というのはほとんどないのですよ。ですから、年金基金を預金部資金の中へ入れて、そうして大企業に、あるいは日本経済発展のためにということで使った例はない。ないならばないで、私は、一方自主運営を考えると同時に、もう一つは、その恩恵を分配をするという、日本経済が繁栄したなら分配をするという、そのことを考えなければいかぬじゃないですか。これは一体どういうようにお考えですか。それは確実性がどうも危ういと言うんならば、厚生年金基金だっておかしいですよ。各共済だっておかしいですよ。ですから、直接被保険者の貸し付けをふやすとかあるいは恩恵を与えるとか、こういうような方法をとるべきではありませんか。これについてどうお考えですか。  それからもう一つ、時間がありませんから。この前厚生大臣が私に約束をしておりました。私は、少なくとも遺族年金は七割五分ぐらいにすべきであるということを言いましたところが、その七割五分、四分の三というわけにはいかないけれどもその近辺にするように努力をしたいということをおっしゃっておるわけですが、一体なぜそれができなかったのか。そうして、その遺族年金を七割にするにはどのくらいの財源が要るのか、これをお聞かせ願いたい。
  164. 松川道哉

    ○松川政府委員 国民に対する還元の問題でございますが、これは私細かく申し上げるまでもなく先生よく御存じのとおり、年金資金等につきましては、財投計画をつくる上におきまして、特にどういう使途に充てるかということに格別配意をいたして運営いたしてきております。たとえば、いわゆる一−六分類におきましても、かつて昭和二十八年には一−六分類が全体の三八・二%でございましたが、三十年には四五・一、三十五年には四七・二と、順次ふえてまいりまして、五十一年度のただいま御審議いただいております案では六六・一%と、これが一−六分類で国民の生活の関連が深い分野に回るというふうにして運用いたしております。
  165. 田中正巳

    田中国務大臣 遺族年金を七割給付することについて、私どもが予算要求をしたものは実は全部ではございませんで、五十五歳以上の寡婦と、それから十八歳未満の子または廃疾の子を持った寡婦に対して支給をしようということで予算要求をいたしました。この額は、たしか四十四億円であったと思います。
  166. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 いまの還元融資の問題はわかりますけれども、余りに額が少ないじゃないですか。被保険者住宅資金貸付金だってたった七百三十四億ですよ。もう時間がないですから私言いますけれども、二兆円以上預金部資金に入れるのに、たった七百三十五億くらいしか住宅には貸付金がないのですよ、被保険者に。それからそのほかのいろいろな施設は何も厚生年金資金から出さなくてもいいじゃないですか。当然それは国の政策ですよ。それをさも厚生年金の還元融資なんというのは——これは厚生年金がなかったらどこかが必ず出さなければならない。それをいかにも厚生年金の資金からこれを出しておるのだと恩恵的に言うけれども、何も恩恵じゃない。どこの国だって貸し付けをしておるのですよ。しかも厚生年金はほとんどどこも賦課方式ですからない。ないけれどもやらざるを得ないのです。ですから、もったいぶった話をするというのはけしからぬと思うのだ。しかも厚生年金の層は一番低い層なんですよ。それにわずかしか還元がないということ。直接還元はいま私が言った程度ですよね。何%に当たるのですか。  そこで、大蔵大臣、たった四十四億くらいでしょう。私は全部に七割でなくてもいいと思いますよ、五十五歳以上の寡婦で。しかし、たった四十四億の金がなぜ出せぬのですか。預金部資金には金が余って、五十一年度は二兆五千億、五十年度は二兆円も預金部資金に出す財源があって、たった四十四億の金をなぜ惜しむのですか。これはもうはっきり要求したのですから削ったのは大蔵省です、間違いなく。それから厚生大臣は、予算編成後に遺族年金が引き上げられなかったことが非常に残念だと言っておるのですから間違いない。なぜ四十四億の金を削るのですか。大きな政策ですよ。
  167. 大平正芳

    ○大平国務大臣 寡婦に対する加算にいたしましても、最低の金額を保障することにいたしましても、ILO条約の要件を満たすという立場から考えまして精いっぱいのことをいたしたつもりでございますが、こういう制度は漸進的に改善してまいるものでございまして、本年度といたしましても、財政当局といたしましてはそれなりに精いっぱいのことをいたしたし、世間もまたそれを評価していただいているものと私は思います。
  168. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 世間は評価なんかしていませんよ。私は福祉年金の公約違反のことを言った。遺族年金でもそうですよ。私の質問だけじゃないのです。厚生大臣はあっちこっちで遺族年金の話はしているのですよ。それがたった四十四億のために遺族年金の給付の引き上げができなかった。しかも金は余って、五十年度には二兆円も預金部資金に入れた、五十一年度は二兆五千億、それから今度はまた利率を上げるというのです。時間がないから私はもう言いませんけれども、これはいま法案がかかっておるのだから、ひとつ改正の気持ちが——これは国会の問題ですけれども、政府としては受け入れるかどうか、院でまとまれば受け入れるかどうか。
  169. 吉瀬維哉

    ○吉瀬政府委員 ただいま御質問にございました遺族年金の件でございますが、これはもう多賀谷委員十分御承知のとおり、ILO条約との関連で遺族年金の支給要件がほかの国に比べて日本はやや緩やかな面がある。御承知のように諸外国でございますと、たとえば子供のない若年の寡婦などはそういうものは支給されてないのでございますがわが国では支給されているとか、国民年金等の任意加入が被用者の妻ができるとかいろいろな面がございまして、そういう点の調整を要することがまず先じゃなかろうか、こう考えたわけでございますが、厚生省から要求がございました四十四億につきましては、私どもそういう点の要件を調整できるような範囲で、厚生省とも相談いたしまして、御承知のように定額の寡婦加算を設けたわけでございまして、この結果ILO条約でいろいろ言われております。たとえば三割の要件とかいろいろなものを満たせるようになったわけでございまして、その点で四十四億に対しまして計算いたしますと十六億の新たな財政負担、それから恩給が御承知のようにあるわけでございまして、恩給まで含めますと九百億円の財政負担を行っておるというのが実情でございます。
  170. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 どうしてILO条約に適合していますか。大体あなた方、従前の所得の計算を間違っているのじゃないですか。日本ではボーナスを含めて従前の所得と言うから四割というのが日本では六割になるのだ、こういう計算をしているのですよ。しかも大体五カ月ボーナスをもらっているでしょう。ですから十七分の十二として、六〇%としても遺族はその二分の一ですから、遺族はわずか〇・二一くらいです。要するに二一%しかないのですよ。御主人がいままで働いておったときの給料の二一%しかない。しかもそれはやめるときの給料じゃないのですよ。それは生涯を通じての給料の——これは読みかえもやっておりますけれども、給料の平均の六〇%で、しかもいま申しますように十七分の十二、大体五カ月のボーナスにすると四割ちょっとで、それで二割一分くらいしかないのですよ。そういう計算になるのです。それがなぜILOに適合していますか。ILOは子供二人の場合は一〇〇%でしょう。御主人の一〇〇%です。どこの国だって最高は一〇〇%です。時間がないから、素人が答弁をしても間違ったことばかり言うからもう聞きませんけれども。  だれか大蔵省にメモを渡したのがいるのだ。大蔵省はそこに持っているんじゃないの。ILOに合っているなんてあなたの方は思っているんじゃないの。ILOは、ただ資格条件が日本の方が遺族の場合早いから、四〇%という率から一〇%減でもいいですよということを言っているのですよ。そう言っておるだけで、それで適合しておるというその四〇%のもとがそもそも違うのです。そんな素人議論をここでしてもしようがないけれども、とにかく私は非常に残念です。ひとつどうですか、これは大蔵省でオーケーを言えばすぐできるのですよ。金はある。そして厚生大臣も非常に要求した。予算編成後非常に残念だった、この点は残念だった、こう言ったくらいですから。これはやってあげなさいよ。どんなに助かるかわからない。しかも常識から考えてもわかるでしょう。夫婦がおって一人が亡くなったから年金が今度は半分だなんて、そういう国はどこにもないですよ。生活費が半分で済むかというと済まないでしょう。こんな簡単なことがどうしてわかりませんか。いろいろの条件をつけるのはいいのですよ。基準として条件をつけるのはいいですよ。いいけれども、これはひど過ぎるのじゃないですか、あれだけ国会で答弁をしておいて。どうですか、大蔵大臣。
  171. 大平正芳

    ○大平国務大臣 これは社会保障制度の中の非常に大きな問題でございまして……(多賀谷委員「そんなことはわかっている」と呼ぶ)社会保障財政の中で特に大きな問題なんでございまして、したがって、私ども財政の許す限りにおきましては精いっぱいやりますけれども、七割給付というようなことを大胆に踏み切るというところにはとうていまだまいらないわけでございまして、せっかくことしも努力いたしましたし、今後も努力を積み重ねてまいることはお約束いたしますけれども、直ちにこの七割というようなことにつきまして何らかのお約束をこの段階で申し上げるというわけにはまいりません。
  172. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 私は、年金制度というのは漸次日を追うてよくするという考え方は、本来日本の場合は適合しないのじゃないか。ここで一挙にやらなければだんだんお年寄りが多くなるのですよ。いまのうちに、お年寄りの少ないときに制度をつくっておかなければ今後コンセンサスが得られませんよ。お年寄りが多くなってほとんどが賦課方式になって、そのときに給付を上げようなんということは私はなかなか困難だと思いますよ。よっぽどそのときの若い層の理解を得なければ。ですから、今日のようにお年寄りが少ない、何とかやりくりができるときに制度を改革しておかないで、お年寄りが多くなって改革しようなんで、それは本来は間違いだ。お年寄りが多くなったら、国の財政がよくなったって、なかなか困難なんですよ。ですから、順次やるなんというのは私はおかしいと思うんですよ。これはやはり現代の年寄りをどうするかという問題が最大の問題でしょう。将来の年寄りは何とかしてやるけれどもと言っても、余りに現代の年寄りはかわいそうでしょう。ですから私は、現代の年寄りを見殺しにしたら、これはいかないと思うんですよ。これはわれわれの世代の責任です。自分たちが年寄りになったときだけを考えたって、それはもういかない。いま少ないのですから、いまのうちに制度改革をしておかなければ、非常に重圧になったときに制度改革はなかなかむずかしい。ですから、順次何年を待って計画的にやるなんという性格のものじゃ本来ないのです。いまやらなければ、いま踏み切らなければ、いまならできるのです。  これは、大蔵大臣、最後に質問をして終わりたいと思いますが、厚生大臣の公約もあり、あるいは委員会でまだいろいろ審議をされますから、われわれはその席を通じてさらに質疑を続けていきたい、こういうように思います。最後の答弁。
  173. 大平正芳

    ○大平国務大臣 いま改正しておかないと、というお気持ちはよくわかります。そしてまた、政治はそのように勇断を持って対応すべきだというお説も私、わからぬわけではないのです。だけれども、予算はなかなか飛躍しないのでありまして、(多賀谷委員「金があるのにどうしてできぬのか」と呼ぶ)それは、いまはそれで改正しておいて、今度老齢化社会が実現した場合の負担の状況もいろいろわれわれは考えておかなければいかぬわけでございますので、にわかに賛成いたしかねますけれども、かねがね申し上げておりますように、あなたからの御質疑につきましては大変啓発を受けておりますことは感謝いたしておきます。
  174. 正示啓次郎

    ○正示委員長代理 久保三郎君から関連質疑の申し出があります。多賀谷君の持ち時間の範囲内でこれを許します。久保三郎君。
  175. 久保三郎

    久保(三)委員 時間が限られておりますので、私は主として国鉄問題を質問するわけですが、当委員会でこれまで究明に当たっておるロッキード問題について、航空政策の担当者である運輸大臣に一言だけ冒頭にお尋ねしたいと思うのです。  これまでの本委員会での質問に対して、運輸大臣並びに運輸省は、全日空が機種決定の経緯について知らなかった、こういうふうな答弁をしておるようでありますが、いわゆるDC10からトライスターにかわったいきさつなども余り知らぬような話をしているのでありますが、これははなはだしく不見識だし、われわれから見ればおかしな話だと思うんですね。     〔正示委員長代理退席、井原委員長代理着席〕 これに対してどういう考えを持っておられるのか。  それからもう一つは、当時の航空政策の一つである、いわゆる大型機の導入に当たっては機種を統一するというのが政府の方針であったと私は記憶しております。ところがいま現実には、日航は747、全日空は、問題になっているトライスター、それから東亜国内はDC9、言うならばアメリカの飛行機会社三社の分け前を全部与えられているような形でありまして、これは航空政策上も言うならば問題があったのではないのか。従来、航空政策は、世間でも国会の中でも、まさにからの政策だと言われておりました。すなわち、いつでも一転、二転、三転していく、こういうならわしが非常に強い。しかも裏では、政治的な力がいわゆる加えられたといううわさがいつでも飛んでいる。こういう無責任な政府の航空政策がやはり問題を引き起こした一端であると思うので、この責任はやはり重大だと思うのですね。これに対しての御所見を伺いたい。
  176. 木村睦男

    ○木村国務大臣 全日空が大型機種を購入する際の経過について、運輸省があずかり知らなかったということを申し上げておったわけでございますが、これは民間の航空会社につきましては、機種を決定しましたときに正式な報告を受けるわけでございまして、それまでは、いわゆる監督官庁として権限に基づいて、機種決定の経過等を一々報告を求めるというふうなことはありませんという意味で申し上げておるわけでございます。したがって、今回の場合は、全日空が内部に機種選定の委員会をつくりましていろいろと最終的な決定までに委員会で検討をしてまいりましたそういう経過につきましては、事実問題としては聞いておるわけでございます。先般も私、若狭社長にそういう経過を聞いてまいったわけでございまして、それは事実問題として聞いておるということでございます。  それから、運輸省が同じ機材が望ましいという方針を決定したにもかかわらず、結果は違っておるではないかというお話でございますが、四十七年の大臣通達だと思いますが、その中に、同一の機種が好ましいということをたしか言っておると思います。これはやはり、同じ路線で競争するわけでございますので、公平な、公正な競争という意味からそういうことが望ましいということを言っておるのでございまして、強制するほど強いものではない。運輸省の考え方としては、機種の同じことがむしろ望ましいという程度の意味で言っておるわけでございます。
  177. 久保三郎

    久保(三)委員 時間もありませんから、なんですが、いまの御答弁ではわれわれ納得しないんですよ。機種は統一が望ましいと言うなら、望ましい方向に行政指導なりあるいは権限に基づく措置をとるべきなんですね。ちっともとっておらないじゃないですか。三つの機種が入っているのですね。これではどうにもならぬじゃないですか。いつでも航空機製造会社の暗躍によって政策が左右されていく。そこに変な政治が介入してくるという、そういう基本は何にあるかというと、政府の航空政策がいつもぐらぐらしているのですね。たとえば小さい会社をぶつぶつつくって、それでこれが左前になったというので、今度は合併しようじゃないか。合併がいやだというので、それじゃ少数な会社を合わせて一つ会社をつくろうじゃないか。最近でもありますね。これは運輸委員会で改めて時間をとりますけれども、近距離航空の問題もそのとおりだ。これはやはり人の話じゃなくて、ロッキードの問題は政府自体にあるということですよ。スキャンダル問題は別としても、航空政策がしっかりしていないから一つにはそういう問題が出てくる余地があったということをかみしめてもらいたいと思うのです。  時間がありませんから次へ行きます。  次に、国鉄問題ですが、国鉄の総裁はこの十九日に辞表を提出しております。いま空席でありますね。なぜやめたかというやめた理由は、なるほど表面は健康上の理由とか一身上の理由、そういうことであなたを通して政府に辞表を出していると思うのですが、巷間というか伝えられる問題、いわゆる天下周知の事実としては、五十一年度の国鉄予算案並びに運賃値上げを含む関係の法律案、そういうものの与党内部での事前審査の際に、理不尽にも経営に対して相当な強制的な圧力を加えられて、じりじりと後退はしてみたものの、後退し切れなくなってその座を引いたというふうに言われておる。これは天下周知の事実であります。  こういうふうに理不尽な幾つかの問題を押しつけられてやめていかねばならぬような国鉄総裁に対して、運輸大臣は何も責任はないのか。いかがでしょう。  しかも、この中で問題になったのは、幾つか後からも質問を申し上げますが、再建の対策要綱というのは、去年の暮れの十二月三十日ですか、閣議了解事項としてできている。閣議了解事項以外にいろいろな条件をつけられたというが、この条件はどういうふうに消化する考えであるのか。いかがでしょう。
  178. 木村睦男

    ○木村国務大臣 藤井総裁は去る十九日に辞表を出されたわけでございます。実は私は、藤井総裁は学校の先輩でもございますし、公私ともにいろいろと交際が深かったわけでございます。昨年の暮れから、それまでもそうでございましたが、非常に健康上無理をされまして、正月前後も病院に入っておられたようなわけでございますが、そのときかぜで肺炎を併発をされたのでございまして、その後もそれがまだ十分に治らないままに出てこられた。それから、心臓の脈搏が非常に変動が大きくて、鉄道病院の院長も、半年は少なくとも静養をすべきであるというようなことも言われておられて、そのころから私に機会あるごとに、やめたいということを言っておられたわけでございますが、国鉄の再建並びに五十一年度の予算案の作成、再建方策等で一番重大な時期でございましたので、私は、藤井さんをおいてはほかにもありませんし、重要な時期でございますので、極力そのころからがんばっていただくようにお願いをしてまいったのでございますけれども、藤井さんの辞意は次第にかとうございまして、ちょうど予算並びに予算関係の国有鉄道運賃法及び国有鉄道法の法案がいよいよ国会に提案になりましたので、この機会にぜひやめたいということで、私も何回か慰留いたしましたけれども、辞意が非常にかたいわけでございまして、やむなく辞表を取り次いだようなわけでございます。
  179. 久保三郎

    久保(三)委員 運輸大臣、時間も限られておりますので、わかり切ったお話はここでお聞きする必要はないのです。私の質問にぜひ簡単にお答えいただきたいのであります。  特に、与党の事前審査の中で、二つの問題が大きな問題で取り上げられたと思うのです。  一つは、要員の合理化の問題であります。対策要綱は閣議了解事項で、政府の御方針だと思うのですね。これ以上のこともこれ以下のこともないだろうと思うのでありますが、その中で、御承知のように、運輸大臣がある程度引き受けてきたのかどうかわかりませんが、五万人合理化というのが対策要綱の中身であります。ところがそれ以上に一万五千人、あるいはさらに五万人削減するというような約束をしたというふうに新聞で報ぜられております。この問題の御処理はいかが考えておられるのか。  それからもう一つは、市町村会議員のいわゆる職員の兼職の問題であります。これは運輸大臣が国鉄に文書で指示するとかなんとか言っておられるようでありますが、そういう御権限が運輸大臣におありであるのかどうか、疑問がたくさんあると思うのですね。もしもそういうことを約束されたとするならば、これは白紙にならざるを得ないのではないかというふうに思うのです。はなはだ不見識なお約束をしたものだと私は思っているわけなんです。いまの国鉄の現状からいって、六万五千人も要員の縮減ができる計画というかそういうものは立ちますか。恐らくないでしょう。この二つの問題についてお答えをいただきたいと思うのです。
  180. 木村睦男

    ○木村国務大臣 要員合理化の問題でございますが、閣議決定をいたしました再建案の中では、昭和五十五年度までに五万人の要員の合理化を図るということになっておるわけでございます。その後、法案の審議その他で党との調整の段階におきまして、五十五年度までの五万人はいいとして、国鉄の現状から見てさらに一層要員の合理化に努力すべきであるという議論がいろいろ出まして、国鉄もそれに入って検討いたしたわけでございまして、その結果といたしまして六万五千人、これは十年間ぐらいな期間の間に合理化をするということに国鉄としても方針を決めたわけでございます。  それから地方議員の兼職の問題でございますが、これにつきましては、片方で要員の合理化もやらなければならないような非常に急迫した環境の中におきます国鉄の職員が、とてもそういう地方の議員としてそれに時間をとられるような余裕はないであろうというふうな意見がいろいろ出たわけでございます。これらについても、国鉄としては十分考慮すべきであるという意見も出たわけでございまして、これにつきまして運輸大臣から国鉄総裁にその旨を伝え、国鉄総裁からは、そういう兼職の問題につきましては、国鉄の置かれておる現状並びにその兼職にとられる時間等が国鉄の業務の遂行に支障があるかどうかというふうなことを一層よく検討した上で善処いたします、という回答をもらっておるわけでございます。
  181. 久保三郎

    久保(三)委員 次にいきますが、新しい総裁の選考に御苦労されておるようですが、目鼻がついていないようですね。これは空席のままでいつまでおくのですか。あなたが兼任というお話もありますが、まさか兼任はできませんから、おやめになって総裁にでも天下るほかないかもしれませんが、難航している主な原因というのは何ですか。財界の方でもいろいろこの問題について言及しているようですが、まあまとめて言えば、いまのように自主性を与えられない国鉄の総裁はだれが引き受けてもできない、こう言っておる。その問題が一番焦点だと思うのです。これについてはどういうふうにお考えなのか、見通しがおありになるのか。はっきり言うと、この際、言うなら二つ返事で引き受けるような人は余り国鉄総裁のいすに座れる資格はないだろうと思っておるのですよ。そういうような気持ちも私は持っている。いずれにしても、どういうふうに考えているか。  それから、新しい総裁になる関門と言ったら語弊がありますが、選考の前提条件は、再建対策要綱にも述べているように、財政再建といわゆる労使の関係の正常化が必要である。これは前総裁もそのとおり、車の両輪であるということを言っているわけでありますから、特にこの際は労使の正常化をきちんと前向きでとらえる人でなければ新しい総裁のいすにつくわけにはいかないのではないかというふうに思われる。それは言うまでもありませんが、スト権付与の問題ですね。政府の方針はこれからきちんと決めるのでありましょうが、いままでの抽象的な方針でなくて、具体的にお決めになると思うのでありますが、前国鉄総裁は条件つきスト権付与は現状打開のためにぜひとも必要であると言って、彼はいすを去ったわけなんです。ですから、そういう関門をくぐるというか、前提条件なくして新しい総裁はいすにつかれないのではないかというふうに思うのだが、御所見はいかがですか。
  182. 木村睦男

    ○木村国務大臣 十九日に総裁の辞表を受理いたしまして、その後、後任の総裁につきましては、鋭意政府部内で検討をいたしておるところでございますが、何しろ久保委員御承知のようないわば破産状態に陥っておる国鉄の再建でございますし、また、総裁に対する権限も従来とも非常に制約をされておるというふうな環境のもとでございますから、非常にむずかしいわけでございます。しかし、一日も早く適任者を選考いたしまして、後任総裁を決めなければならない、こういうことで現在それを急いでおるわけでございます。  なお、いまお話がございましたように、この国鉄の再建には、財政の再建と同時に、労使一体となって四十三万人の職員が再建に取っ組んでいけるだけの統率力があり、また労使関係の改善を身をもって行い得る方が最も好ましい、かような考え方でいろいろと選考いたしておるわけでございます。
  183. 久保三郎

    久保(三)委員 通り一遍のお答えでありますが、重ねてお尋ねします。総裁選考に苦労されておるようでありますが、目当てがあるのですか、どんなところからお見つけになるつもりですか、いかがでしょう。
  184. 木村睦男

    ○木村国務大臣 これは一日も早く適任者を求めてお願いいたしたいと思って、目下鋭意選考いたしておる実情でございます。
  185. 久保三郎

    久保(三)委員 十九日に辞表を出しているわけでありますから、これは大変異常な形ですね。いまに至るまで選考ができない、任命ができないということは、これはいままでかつてない異例のことですね。これに対してあなたは御責任を感じておられませんか。万が一、さっきの冗談じゃありませんけれども、あなたでも運輸大臣をやめて総裁につくほかないかもしらぬという話も出てくるさなかですが、御責任をどうとられるのですか。大体いつごろまでにめどをつけて任命されるのですか。いかがですか。
  186. 木村睦男

    ○木村国務大臣 非常に責任を感じて鋭意努力をいたしておるわけでございまして、一日も早く新しい総裁を選任いたしたいと思っております。
  187. 久保三郎

    久保(三)委員 めども何もないようでありますから、当分空席ならば——これは副総裁もやめることになっています。そうなると、みんなシャッポがなくなってしまう。それでも汽車は動いているようですから安心だというなら仕方がない。シャッポは要らぬということかね。  しかし、あなたはさっき総裁の権限というものが制約されておると御指摘になりましたね。その上に今度は提出されておる法案をちょっとのぞきますと、経営改善計画というものを出すことに、法案が通ればなるのですね。この経営改善計画というのは、しさいにわたって運輸大臣が指示したことについて計画を出してくる、一々これはチェックする。変更する場合も許可を受ける、実施についてもこれは点検するということで、これはもうあらゆる管理運営全体についてやられるようになっているのですね。これではますます自主性がなくなってくる。そういう形で、だれが来るというのですか、はっきり言うと、恐らく来手はありませんよ。経営改善計画などは、自主性、いわゆる当事者能力をつけてやるのではなくて、当事者能力をますますなくする方向で考えているんじゃないですか、いかがでしょう。
  188. 木村睦男

    ○木村国務大臣 これから御審議をいただきます法案等で御承知いただけると思いますが、この再建に当たりまして政府も思い切ったいろいろな援助の手を差し伸べておるわけでございまして、国鉄当局と政府が一体とならなければ再建はできない、こういうふうに考えておるわけでございます。国鉄の方では改善案をつくるわけでございますが、やはりこれは政府と一体となってつくるべきものであるわけでございますので、その改善案については運輸大臣がこれを承認をする、また改善案の中身についてもいろいろ指示する余地も残しておくということで、国鉄当局と政府が一体となって改善の実を上げようということでございまして、総裁の権限をますます縮小するというような考え方でおるわけでは毛頭ないということを御承知おきいただきたいと思います。
  189. 久保三郎

    久保(三)委員 いずれ機会を見てまたしさいに質問しますが、時間もありませんので、再建対策要綱を中心にして二、三お尋ねするのでありますが、特に運賃の値上げの問題であります。  運賃の値上げについて五〇%今年度上げる、収支の均衡は五十一、五十二年両年度において収支の均衡を図る、こう言っていますが、五〇%値上げというものをはじき出した根拠ですね、いろいろな与件があると思うのです。一番問題になっているのは、人件費がいつでも問題になるのでありますが、収支の均衡を図るというたてまえからいって、一つは来年度五十一年度は五〇%だが、五十二年度についてはこれはどういう計算をされているのか、これが第一点。二つ目は、計算の与件であるところの人件費については、特に五十一年度、五十二年度についてはどんなふうに考えておるのか。第三点は、収支の均衡を図るというのは、五十二年で黒字にするというのか、それともとんとんにするというのか、いずれであるか。いかがでしょう。
  190. 木村睦男

    ○木村国務大臣 五十一年度に五〇%の運賃改定を行うということで現在予算も組んでおりますし、法案も出しておりますが、いままでの過去の再建の実情から見まして、いま国鉄の状況が非常に悪いわけでございますから、これを短年度で何とか自立経営ができるように持っていこうというのが根本的な考え方でございまして、短期二年間でひとつ収支の均衡がおおむぬ償い得るように改善をやっていこうということから、今回の五十一年度五〇%の運賃改定を決めたわけでございます。  五十二年度はどうかというお話でございますが、五十二年度につきましては、今年じゅうの経済の推移あるいはその他諸般の経済情勢も考えなければなりませんが、運賃改定で足らないところを全部賄うとすれば、やはり五〇%の運賃改定が必要な数字になるわけでございますけれども、しかし、たとえば再評価の積立金をこれに充てるとかいろいろな方法もあると思いますし、それから政府の助成、国鉄の自主的な努力、そういうものもさらに一層いろいろ検討いたしまして、五十二年度の予算はその時点で編成をいたしたいと思っておるわけでございます。  いずれにいたしましても、そういうことを通じまして、五十一、五十二年度の両年度でもっておおむぬ収支が相償うようにいたしたい。五十三年以降は、そのときどきの情勢で多少の運賃の調整等は必要でございますけれども、それはそのときの情勢でごく軽微な改定等の必要が出てくるかとも思うわけでございますが、一応二年度で収支が均衡できるようにいたしたい、かように考えておるわけでございます。  それから人件費は、大体、いままでの毎年の人件費のアップ等を勘案をいたしまして、ある程度の人件費の増加というものを考えておるわけでございます。人員の削減等につきましては、先ほど申し上げましたような合理化の線に従って人件費を計上しておるわけでございます。
  191. 久保三郎

    久保(三)委員 いまのお話は五十二年度で収支の均衡を図るというのでありますから、均衡を図るというからには、大まかに言って運賃値上げはどの程度とか、あるいは人件費についても、抽象的なお話じゃなくて、たとえば五十一年度に限定しても、どういう与件でそういう計算をなさるのか、それをお答えいただかねば回答にならないのじゃないですか。  時間もありませんから、どうです、簡単に。あなたらが計算している与件というのは、当てずっぽうと言っては大変口が悪いことでありますが、それに大体近いようなものを当てはめて計算しているのではないか。それから、巷間伝えられるところによりますれば、来年度も五〇%値上げをするという前提でいるようですね。これをはっきりさせないで、どうして五十二年に収支均衡をいまのままで図るのか。ちっとも回答にならないのじゃないですか、いまのお話では。簡単にお答えいただきたい。
  192. 木村睦男

    ○木村国務大臣 五十一年度、五十二年度で収支が均衡をいたしますためには、先ほど申し上げましたように、五十二年度でもって約五千億に近い赤字が出るわけでございまして、これを全部運賃改定で賄うか、先ほど申し上げましたような再評価積み立てでやるか、その問題につきましてはことしじゅうに検討をしなければなりませんので、いまの段階で五十二年度幾ら運賃改定で賄うかということはまだ決められない状況であるわけでございます。  それから、要員の問題につきましては、合理化につきましては先ほど申し上げましたような状況でございますが、なおその詳細は局長から御答弁いたします。
  193. 久保三郎

    久保(三)委員 いいです。五〇%も運賃を値上げしていこうというのに、その計算も、つじつまがきちんと合うような御答弁ができないというのでは、内外ともにこれに賛意を表するわけにはいかないのじゃないですか。     〔井原委員長代理退席、委員長着席〕  時間もたくさんありませんのでなんですが、大体、対策要綱そのものは、運賃値上げと合理化だけに焦点をしぼっていて、本当の国鉄の赤字要因というか、構造的な欠陥に対応していないと私は思っているのです。たとえば長期債務にしても六兆八千億ある。これに対して二兆五千四百億、これは無利子で肩がわりしようというのですね。あとの残りはどうするのかという問題です。全然目鼻は立っていませんね。しかも、この長期債務に見合うところの投資でありますが、これは第二次五カ年計画、昭和三十二年から今日までの国鉄の投資は大体六兆五千億になっている。これに対して政府の出資は、四十九年度まででたった三千七百七十一億というのです。それで国有と言えますか。しかも五十一年度は、政府出資は一文も出さぬというのです。これは今後の方針もそのとおりでありますか。  これは大蔵大臣にお聞きした方がいい。出資はもうやらぬつもりでありますか。いま申し上げたように、国鉄の投資はこれまでに六兆五千億にもなる。政府出資はわずかに三千七百七十一億。そういうさなかに、やったものは二兆五千四百億の無利子の肩がわりだけだ。出資はもうやめたという。これは非常な矛盾じゃないですか。いかがです。
  194. 大平正芳

    ○大平国務大臣 再建計画は、今年度から国鉄に新しい出発をしてもらうという意味でつくり上げたものでございます。  いまお尋ねの投資でございますが、ことしはなるほど投資はございませんで、四千五百六十億既往の出資がございますけれども、今後、再建計画の遂行の途上におきまして絶対に出資をしないという方針を政府が立てたわけではございませんで、今後の推移を見ましてどうしても必要であるという場合には考えなければならぬのではないかと思っております。
  195. 久保三郎

    久保(三)委員 時間もありませんから先にいきましょう。  地方閑散線区の対策ですが、これは対策要綱で見る限りは何を言っているのかよくわからぬ。これはいままでいろいろ議論もありましたが、最近、ローカル線といえば大体九千二百キロぐらいだろうという。九千二百キロから出るところの赤字は二千数百億ですね。これに対して、ことしは百七十二億の助成をしよう。この計算も非常にあいまいで、握りでつけたといううわさもありますが、いずれにしてもこれは明確な対策ではない。しかも、このローカル線に対して、これからどうやっていくのか、ちっとも明確でないのです。  これは運輸大臣に聞いた方がいいと思うのです。九牛の一毛という話がありますが、百七十二億ではローカル線はもっていけませんよ。そういうふうに、長期債務にしてもローカル線にしても、言うならばそれぞれの赤字構造の中にメスがちっとも入っていない。  もう一点、ローカル線に関連して新線建設についての所信を聞きたいのであります。新線建設は、御承知のように予定線が三百三ある。その中で工事中は四十七線。約二千キロですね、これは鉄建公団が中心になって建設する。運営は自動的に国鉄が引き受けなければならぬ。後の対策もないままにやらせられる。そういうことで構造的に赤字はどんどんふえていく仕組みになっているのです。そういうものにちっともメスを入れない。  それから新幹線鉄道網、これも七千キロの構想があるわけですが、この新線建設並びに新幹線鉄道網七千キロの構想についてこれは見直す時期だと思うのです、いろいろな意味から言っても、国鉄の再建から言っても。これについての御所見はどうなのか。  それからもう一つ、貨物輸送について。貨物輸送は五十五年度までに固有経費で大体収支均衡を図ろう、こういうのです。これは縮小生産の方向を目指しているのか、どうなのか。今日、省エネルギー、省資源あるいは環境保全、安全輸送、そういう枠組みの中で考える場合に、当然国鉄の貨物輸送というものの位置づけをきちっとしなければならぬ。これではどうも縮小生産のようだけれども、この点はどうなのか。  それからもう一つ、これは大蔵大臣にお答えいただきたいのですが、公共割引というのがありますね。政府の政策上による割引。これはいま、言うならば一般の利用者が負担している、あるいは企業である国鉄が赤字として処理、負担している、こういう矛盾をちっとも解決しないのですね。この公共負担の処理について全然対策要綱は触れてないところに私は問題があると思うのですね。こういう問題を大ざらいにして、その後で運賃値上げを計算するならばこれはいざ知らず、全部そういうものをたな上げしておいて、それで運賃だけあるいは合理化だけ目当てにするところに問題があると思うのです。特に運賃値上げについては、国民生活にどんな影響があるか、運輸大臣、あなたはどう考えています。去年、大幅な料金値上げをした、その上に今度五〇%上げようというのでしょう。とんでもない直負担になるわけですね。直接的な負担になる。だから、そういうものについて考慮を払わないで強引に上げようというところに問題があると思うのですね。  それから、運賃の法定制度について弾力化を図ろうというのがあります。これは法定制撤廃ということだと思うのでありますが、いま運賃で問題があるのはそんな問題じゃないのですね。利用者がちっとも納得しないままの機構である。それからもう一つは、ばらばらな運賃制度である。これは言うならば、それぞれ思い思いに運賃制度を決めて、利用者みずからの選考に任せてやっていこうという競争原理を導入したものであって、時代逆行もはなはだしいと思うのです。  こういう問題についてどう考えますか、時間がありませんから簡単にお答えいただきたい。
  196. 木村睦男

    ○木村国務大臣 項目が非常に多うございますのでちょっと時間がかかると思いますが、できるだけ簡単に申し上げます。  まず第一点、赤字ローカル線の問題でございますが、御承知のように、総合原価主義の上で運賃等を考えておりますので、赤字はローカル線のみならず、一部幹線にもあるわけでございますが、その上で特に地方の赤字ローカル線をどうすべきかという問題が残るわけでございまして、これはいろいろの方法をいま検討いたしております。一つは廃止する、それからその次には適切な他の民間私鉄業者等で譲り受けるものがあれば譲り受ける。それから地方公共団体等がこれを譲り受けて管理する、そういうふうな方法がいろいろあると思いますので、それらを総合いたしまして、赤字の地方路線の処理はやっていきたい、まあそういうふうな考えで、一応総合原価で予算をつくっておりますので、特に赤字ローカル線の赤字を一部補てんするということで百七十二億の予算を五十一年度でつけたわけでございますが、これはいま申し上げましたようなローカル線の今後の処理の仕方、これは国鉄の方で改善方策の中で具体策が出てくると思いますので、それによってこれからは処理いたしたい、かように考えております。  それから新線建設の問題でございますが、従来の普通の新線はお話のように鉄建公団が建設をいたしております。で、相当多いわけでございますので、これらにつきましては現在の計画をさらに検討いたしまして、本当に必要なものはやっていく、必要性のきわめて少ないものは、これは整理するというふうな方向で検討いたすつもりでございます。  また、新幹線につきましてはすでに法律で約七千キロの予定というものができておりますけれども、これは国民の要望でもございますが、国鉄の再建の問題とも非常に絡む大きな問題でございますので、これの着工あるいは実施等につきましては、それと勘案しながら今後計画を立てていかなければならないと考えておるわけでございます。  それから貨物につきましては、これは国鉄の貨物輸送体系というものが今日の貨物の陸上における輸送のいろいろなパターンの中で相当変わってきておるのに対して、十分それに対応できてこなかったというふうなところにも一つの大きな今回の貨物の赤字等の原因があると思いますので、こういう点を十分に考えまして、外部のいろいろな輸送の形態を見まして、それほど貨物輸送は国鉄にはふえないのではないかという前提で合理化を図っていくということでございます。そして最終的には固有経費が償える程度の貨物運賃にいたしたい、こう考えております。  それから公共割引でございますが、これは大蔵大臣から御答弁があると思いますけれども、私の範囲内で申し上げますと、大体五百億程度の、いろいろな公共割引で得べかりし増収がございません。そこで今回一般運賃を五〇%上げるというかなり大幅な値上げでございますので、この際は公共割引の点はこのままでまいりますけれども、これも今後の改善対策の中で、将来の公共割引については趣旨がそれぞれ異なっておりますから、個別的に検討いたして、改善すべきものは改善いたしたいと考えております。  それから運賃の法定制の問題でございますが、過去の実情から考えましても、やはり適時適切な運賃改定ということが何としても国鉄の再建には必要なことでございますので、そういう意味で運賃の法定主義を外してもらって、政府の責任において、また他の公正な審査機関等を考えまして適時適切な改定ができるようにいたしたいという考えでおるわけでございます。なお、そういう場合には一般利用者層、そういう人も参加していただくような構想も今後検討いたしたい、かように思っておるわけでございます。  それから今回の五〇%の大幅運賃値上げは物価にどう響くかということでございますが、これはいろいろ心理的な波及その他がございますけれども、一応われわれのところで検討しておりますのは、国鉄の場合には一〇%の運賃値上げをいたしますと消費者物価には〇・一%ぐらいの影響があるというふうな結果になっておりますので、そういうのを一つの基準にいたしまして物価への影響等を考えて運賃改定を進めてまいるわけでございます。
  197. 大平正芳

    ○大平国務大臣 学割、身体障害者割引等の公共割引でございますが、これは木村さんからいまお話がございましたけれども、今日までその交通機関のいわば利用者の連帯に支えられて運営してきた制度であると思います。したがって、国鉄だけに特有の問題ではないと思います。交通機関全体の問題でございますので、その問題として特に政府として取り上げるつもりはございませんけれども、しかし、国鉄対策、それから地方鉄道等各交通機関の対策等について、政府は、その健全な運営について、いろいろどうしてもなさなければならぬことは支援してまいらなければならぬものと考えております。
  198. 久保三郎

    久保(三)委員 時間でありますので、やめますが、いまのお二人の御答弁は全然問題になりませんから、いずれまた機会を改めてお伺いします。  以上です。
  199. 荒舩清十郎

    ○荒舩委員長 これにて多賀谷真稔君の質疑は終了いたしました。  午後二時より再開することとし、この際、休憩いたします。     午後一時十分休憩      ————◇—————     午後二時三十一分開議
  200. 荒舩清十郎

    ○荒舩委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続行いたします。林百郎君。
  201. 林百郎

    ○林(百)委員 これは国家公安委員長に初めお尋ねしたいのですが、わが党の正森議員が二月十七日のロッキード問題での証人喚問をした際に、ロッキード社と丸紅との契約書に基づいて丸紅からロッキード社への報告書が四半期ごとに出されておるということを大久保証人が認めているわけです。     〔委員長退席、井原委員長代理着席〕 ところが、この十七日に、この丸紅レポートの提出を正森議員が求めて、理事会でそれが問題になりまして、理事会でも全会一致でその提出を求めるように丸紅へ連絡するということになったのでございますが、いまだに国会に提出されておらない。  実はこのレポートというのは、内容を見ますと、政治的、経済的条件並びに競争的条件についてロッキードに報告するという項目がございまして、したがって、この丸紅レポートなるものを見ますと、ロッキード社の製品を日本の市場に入れるについて政治的、経済的条件はどうか、また競争的な条件はどうかということが書かれておるわけでございます。ところが、二十四日の捜査によりまして、警察庁によって丸紅への押収捜査が行われたのでありますが、この押収されたものの中にこの丸紅レポートが存在しているかどうか、丸紅の方へ予算委員会の事務局が問い合わせしましたところ、丸紅の方は提出する準備をしておりましたところが、警察に押収されたということを言っておるわけでございます。これは予算の事務局がそう言っているわけです。これは警察でおわかりのはずですが、重要な証拠書類です。どうなっているでしょうか。
  202. 福田一

    福田(一)国務大臣 これは私、直接のあれではございませんが、きょう三十分時間がおくれましたのは、その種の問題について、理事会においていろいろお話し合いがあったやに承っておるわけであります。したがいまして、このことについては、まだわれわれの方にどういう連絡があったか否か、まだ私、いまこの段階において承知をいたしておりませんので、後刻調査をいたしまして、なお当委員会との関係も、理事会でお話があったようでございますから、それらともにらみ合わせながら処理をいたしたいと考えておる次第でございます。
  203. 林百郎

    ○林(百)委員 丸紅の方は警察に押収されているということをはっきり言っておるわけですし、それから予算の事務局からも問い合わせが行っているわけなんですから、警察としては、すでに四日もたっているわけですから、このレポートがあるかどうかということを調べればわかるはずでございますが、まあ国家公安委員長はいろいろ御多忙かもしれませんが、捜査の任に当たった、これは公安部長ですか、だれですか、これはもう当然わかっているはずなんですけれども、ひとつ事務当局からでもいいですが、答弁してください。
  204. 井原岸高

    ○井原委員長代理 ちょっと速記をやめてください。     〔速記中止〕
  205. 井原岸高

    ○井原委員長代理 速記を始めて。  それでは吉田保安部長
  206. 吉田六郎

    吉田(六)政府委員 お答えいたします。  何らかの方法により、捜査上支障のないものにつきましてはできる限り御要望に沿うように努力いたしたいと思います。ただし、若干の日時を要するので、御了承をお願いいたしたいと思います。
  207. 林百郎

    ○林(百)委員 今度は政治的な問題として国家公安委員長お尋ねしますが、御承知のとおり、衆参両院では、アメリカ側に対しては政府高官氏名をも含め、すべての資料の開示を要請して、しかもその決議をする際の前文には、今度のロッキード問題の「真相の解明は徹底的かつ迅速になされなければならない。」こう書いてあるわけです。これが国会の基本的な態度なんです。この国会の方針に基づいて当予算委員会で論議をされて、非常に重要な丸紅レポートがあるということがわかり、大久保証人もこれを認めて、そしてこの提出を、予算委員会理事会が各党一致して要求しているわけです。丸紅の方は警察へ行ったと言っているわけなんですよ。これがわからないはずないのです。私の方の正森議員からも問い合わせが行っているわけなんです。だから、これを確かめることと、もしあったとすれば、それなら提出できるかどうかということですね。そうでないと、丸紅国会へ提出する準備をしているのを、警察が持っていってしまって、国会側に協力してもらえないというならば、一日にせっかくそれぞれの証人喚問をしましても、国会議員が国政調査権に基づいて国会で、最高の真相究明のための場に国会をしようと思ってもできないことになってしまうわけですね。その証拠書類を捜査当局が横へ持っていっちゃうことになるわけですから。  だから、これは先ほども問題になりましたけれども、捜査がそういう真相究明をする妨げになるようなことになってはいけませんので、これは警察の権威のためにも、国会で要求するものに対しては当然提出する。ただ、その審議の仕方については、捜査の段階でいろいろあるでしょうから、それは、そういう希望については捜査当局の希望を聞くにしても、国権の最高機関である国会の国政調査権に基づいて各議員があるいは委員会の理事会が要求しているものに対して、捜査当局が押収してしまって、まだあるかないかわかりません、出すかどうかもわかりませんでは、それでは捜査当局は証拠書類を横取りしたと言われても、これは弁解の余地がないことになりますから、その点、これは非常に重要な点ですから、国家公安委員長にお聞きしたいのですよ。もうわかるはずなんです。
  208. 福田一

    福田(一)国務大臣 国政調査権の問題といわゆる捜査の問題、警察とか検察というようなものとの関連の問題は、これは、国会が国政の最高機関であるという立場から言えば、国会の要望に原則としてはできるだけこたえることがいいのではないかと私は思っておりますが、しかしまた一方において、捜査というものに影響があるというか、捜査の必要上、機密にしなければならないものもあることもまた当然だと思うのであります。私は、国会がこの最高の機関であったといたしましても、立法、司法、行政というものの相関性というものをどういうふうにして処理していくことが国政を運営するに正しい方法であるかということについては、やはり個々の問題について考えなければならないのではないか、こういうふうに、捜査との関係ですね。  したがいまして、私はいま原則を申し上げておったのでありますけれども、いまあなたのおっしゃるのは、丸紅が出そうとしておったものであるけれども、すでに捜査当局が引き揚げていってしまった、したがってこれを得ることができないのであるが、当然これは出したらいいではないか、こうおっしゃるわけでありますが、資料の中にそれがあるかどうかということ自体を私は確認をしておりません。これは当然、あるかないかということは確認しなければいかぬでしょう。事実の問題は別にして、確認はしなければならぬ。確認した上で、出すべきかどうかということについては、また捜査の問題として、一応捜査は捜査の立場で考えてみなければなりません。そうして、その間においてこの両者の意見が食い違ってきたような場合においては、やはり政府としての判断もしなければならない場合も起きるかもしれません。いまは仮定のことでございまして、いまどういう材料があるかということも、私、もちろん調べることは調べますけれども、そういうことが明らかになっていない段階で、こうするとかああするとかということは、いまこの場ではお答えはできないかと思っておるわけであります。
  209. 林百郎

    ○林(百)委員 国家公安委員長、ひとつ経過をよく知っていただきたいのですが、正森議員の方が二月十七日に先に要求しているのですよ。そして、しかも予算委員会理事会では、それは丸紅に要求しますよということを決定しているのですよ。で、丸紅国会へ提出する準備をしていたのです。それを後になって、二月二十四日の捜査の際に持っていってしまっているわけです。念のために予算の事務局の方が丸紅に問い合わせたところが、それは警察が持っていったと言っているのですよ。丸紅の方が持っていったと言っているのに、まだ警察庁の方でわからないということは、これは怠慢じゃないのですか。しかも、これは非常に重要であって、このレポートがあるかないかということは、一日の証人喚問に当たって、真相究明するについて決定的な材料にもなるわけです。だから国会議員として要求しているわけなのですよ。それを、警察が押収したから、第一段階はまずあるかないかを確かめる、出すか出さないかはそれから考えます、そういうことでは国会の真相究明を妨げることになるのですよ、客観的には。国会へお出ししますけれども、捜査の段階、いまこういう段階ですから、国会で適当にこれを処理してもらいたいということならわかりますよ。そうでなければ、憲法で保障されている国会の国政調査権というものは行使できないじゃないですか。捜査を口実に国政調査権を妨害することになりますよ。  世間では今度の捜査について、国家公安委員長に耳の痛いことを申しますけれども、捜査というものは、秘密に、いつ来るかわからないときにやるのが強制捜査なんですね。ところが、今度の捜査のごときは、一週間も前からやるぞやるぞと言っている。丸紅のごときは、もういろいろの資料がごみ箱に捨てられているなんということを新聞社に写真まで撮られている。本来そういう捜査というのはないんですよ。  そのことはそのことで言っておきますけれども、しかし対国会との関係で、これでは全く国会の審議は妨げられることになりますよ。いまの昼の予算の理事会でも、各党の理事の皆さんが一致して警察にこの点を求め、警察も協力をするということを約束されたやに私は聞いておりますが、一体それはどうなっているか、ちょっとここで答弁してもらいたい。
  210. 吉田六郎

    吉田(六)政府委員 先ほど答弁申し上げましたが、何らかの方法によりまして、でき得る限り捜査上支障のないものは御要望に沿うようにいたしたいと思っております。ただ、何分にも押収物件が六千三百件もございまして、簿冊の中にいろいろなものがとじられたものが一件ということになりますので、それらを全部調べまして、そのものが御要望のものであるかどうか確かめる必要がございます。しかも、英文のものが大変多いという関係もございますので、若干の日時を要するということを御了承をお願いいたしたい、かように思います。
  211. 林百郎

    ○林(百)委員 国家公安委員長、これはあさってに間に合うように、ぜひきょうじゅうに——あるかないかぐらいあなたわかるでしょう。丸紅は出したと言っているんですから、丸紅に問い合わせればすぐわかることじゃないですか。しかも、これは政治的な条件について報告がしてあるということですから、いま国民が注目している、だれのところへこの金が行ったかということを解くには、これは決定的な材料になるんですよ。それが国会へ出てこないなんということになれば、一日の証人喚問だってこれは魂が入らないことになるわけですよ。非常に重要なことですから、ではいつまでに返事をもらえますか。どうしてもきょうじゅうに、あるかないか、それから出すか出さないか、きょうじゅうに私のところへ返事をしてもらいたい。当然これは私の要求は出せということですよ。出さないなんということを承知するわけにいきませんからね。きょうじゅうに私のところへ返事してください。  委員長、そう計らってください。そうでなければ理事会でもう一度……(小山(長)委員「それは私のところじゃあれだから、委員会だよ」と呼ぶ)それじゃ委員会でもいいですよ。質問は私がしていますからね。それじゃ委員会でいいです。きょうじゅうに委員会に、あるかないか、そして、あるに決まっていますから、あったらこれを出せ、そのことについての回答を当委員会の理事会に国家公安委員長言ってください。
  212. 福田一

    福田(一)国務大臣 いま吉田保安部長もお答えをいたしておるわけでございまして、警察庁としては前向きに検討するということをいま申し上げておるわけであります。しかし、御案内のように今度の押収した物件は、丸紅から実は五トン車に二台、六千三百数十点押収いたしております。そこで、いまあなたがおっしゃった種類のものがその中のどこにどう入っておるかというようなことを調べるだけでも、物理的にも大変な問題があると私は思うのであります。  そういうようなことでございますから、いまここで出すか出さないか私に明言せよとおっしゃっても、これは私としては努力をするということだけでございまして、それ以上のことを申し上げるわけにはまいりません。私を信用していただく以外に道はないと思う。  それから、それがどういうような内容を含んでおるかということを検討しないうちに出すというわけにも、私は警察庁としてはできないと思います。あったとしても、それをやはり内容を検討するという時間の余裕も与えてもらいたいということは、ただいま吉田保安部長から申し上げておるところでございまして、その意味で、あなたの申し入れ、またそれがこの委員会の全体の申し入れであるということになれば、それは当然やはり尊重をしなければならない、これはそう考えざるを得ないのでありますが、ただしかし、あなたがおっしゃった、それ以上のことは言わずもがなのことかもしれませんが、捜査をする前に請求してあったんだからということでありまして、その意味では確かに一つの時日の問題が、何かすぐに捜査にでも着手しておればそういうことはなかったんじゃないかというような疑惑がいろいろあったりしまして、私自身は、国民から疑惑を持たれているということで非常に不愉快に思っているのです。  実を言うと、国家公安委員全員の同意を、話し合いで、これはもう徹底的にやらなければいかぬということを私から、国家公安委員長として申し入れをしておったわけであります。それはあなたも御承知のとおり。それで十六、十七の二日の証人喚問がございましたが、しかし、この問題は為替管理法の関係と脱税の関係とが相互に絡み合っている問題でございますからして、そこでこれはどうしても国税とそれから検察庁と警察が、三者が一緒になってやらなければいけないということになりますと、本当を言うと、この種の疑獄みたいな問題については、内偵を非常に綿密にやってからやるのが従来のしきたりでございまして、証人喚問があった後わずか一週間を出ないうちに三者で構成をし、そうしてまた人員を集め——大変な人員を必要といたします。また専門官でなければいけませんが、そういう者が集まって、そうしてこれまで踏み切ったについては、これはみんな一生懸命、私は警察などは本当に一生懸命やってくれたと思っておるのでありまして、この点についてわれわれが何か懈怠をしておるというような誤解があったといたしましたならば、ひとっこれは払拭をしていただきたい、かように私は考えるのであります。  これからも、絶対にこの問題をそういうないがしろにしてやろうなどという考えはございません。徹底的にやはり調査をさせる、また事態を解明するというのが警察庁の方針であり、また政府の方針であるということもひとつ御理解をしておいていただきたいと思うのであります。
  213. 林百郎

    ○林(百)委員 副総理、これは三木内閣を代表して、三木内閣の姿勢としてお聞きしたいのですけれども、何か本来ならこういう問題は時間をかけて綿密に内偵しなければならないというのですが、こういう外為法違反だとか国税犯則違反事件昭和四十七年後ずっとあったというのが、外国の委員会で言われて初めて気がつくなんというのは、これは懈怠ですよ。しかも四十七年度の国税犯則事件は、もう三月の十四日になれば時効で刑事責任は問えないというのでしょう。そんなことをしておいて、いまになって十分時間がなければできない、そんな急いだってできませんなんて、国会の方がむしろ真剣にやろうとしているじゃないですか。だからそういう意味で、きょうじゅうにとにかく当委員会の理事会でもいいですから、丸紅の方は警察に押収されたと言っているのですから、その丸紅のロッキードに対するレポート、ことにこれは政治的な影響力がどのように、政治的な条件がどのようにあるかというようなこともレポート、四半期ずつやっているわけですから、これは重要な証拠書類になるわけですから、確かめて当委員会に本日中に、福田国家公安委員長と御相談して、とにかく当委員会の理事会にその模様をぜひ報告してもらいたい。私たちの希望としては、あることを確かめ——あるに決まっていますから、それをすぐ提出して、一日の証人喚問に間に合うように、こういう希望です。こういう希望ですので、きょうじゅうに理事会にとにかく報告をしてもらいたい。それができないようでは、口で実態を明らかにすると言ったってできないですよ。
  214. 福田赳夫

    福田(赳)国務大臣 本件につきましては、国家公安委員長がお答え申し上げましたように、誠心誠意努力してみる、国家公安委員長を御信頼くださいと、こう申し上げておるわけでございますので、ひとつ国家公安委員長のその言明を御信頼願いたいと、かように存じます。
  215. 林百郎

    ○林(百)委員 この問題は理事会でも非常に真剣に御論議くださっているそうですから、理事会におまかせをしておきます。国会の権威のために、そういう押収されたことを口実にして国会の審議が的を射ることができないようなことのないように、当委員会の権威のためにも、理事の皆さんにひとつぜひ御努力願いたいと思います。この問題の質問は、これで終わりたいと思います。  次に、地方財政の問題をお尋ねしますが、昨日の質問で、大蔵大臣と自治大臣の間で、若干交付税の税率の引き上げの問題についてニュアンスの違う答弁があったわけなんですけれども、大蔵大臣は国の財政の方は詳しいと思いますが、実は地方財政の交付税の方はいろいろのやりくりをしておるわけなんですね。  五十年を見ますと、三税の三二%というと約三兆三千億ぐらいになるわけですが、やむを得ずこれを交付税特別会計が一般会計から一兆一千百九十九億借りまして、交付税は四兆四千七百十億になっていますが、これは三税の四三%にもうなっているわけなんですね。こういう措置をしているわけです。それから本年度は、三税の三二%というと三兆八千九十七億ですが、これも交付税特別会計が資金運用部資金から一兆三千百四十一億借りまして、それへ臨特が六百三十六億加わりまして、交付税総額五兆一千八百七十四億になっています。実はこれは三税の四二から四三%になるわけなんですね。  これは大蔵大臣も御承知だと思いますが、昨日も問題になりましたが、交付税法の六条の三によって、引き続いて基準財政需要額と収入額が著しく異る場合は制度の改正か率を変更しろということがあるわけなんですね。これはもう当然それをやるべき時期に来ているのではないか。  それから、地方財政計画でも中期見通しをしたのですけれども、この中期見通しをしますと、五十二年度も一兆九千二百億の不足額が出、それから五十三年度も一兆四百億円の不足が出てくるわけですね。ですから、こういう条件だとしますと、これはもう地方税法の六条の三で根本的な地方財政に対する見直し、交付税率も引き上げて、そういうことをしなければ処理できないときに来ているわけですね。  ことしの財政対策債の一兆二千五百億もありますけれども、このうちの四千五百億というのは、これは実質的には交付税と同じ性格を持っているものですから、うち二千億は元利償還とも政府で見るということになっているわけですから、これはどうもやっぱり——それは予算の組み方やそれから政策のやり方は、私の方とあなたの方と違います。大蔵大臣としては、中央の予算も考えなければならない、いろいろの事情があると思いますが、しかし、交付税法の六条の三で、そういうときが引き続く場合は率を変えなければならないとあるのですから、この点についてはひとつ前向きに御検討願いたいと思うわけなんです。  念のためにこの点は、今度は福田自治大臣、国家公安委員長でなくて福田自治大臣、それから大平さんと、お聞きしておきたいと思うのです。これは、このままではいけないわけなんですよ。びほう策、びほう策で続けて、交付税特別会計が資金運用部資金を借りては、そして三二%じゃ足りないものですから足していくという形でこうやっていく。ことしのごときは、交付税で本来見るべきものを起債へ肩がわりしていくということまでやっているわけですから、この点はやはり根本的に考え直さなければならないんで、あなたは国の財政の方も考えておられるから、いろいろの慎重な答弁をなさるのはわかりますけれども、これは地方交付税法の六条の三からいえば考えていかなければならない時期だと思いますが、いかがでしょうか。お二人の答弁をお聞きします。
  216. 大平正芳

    ○大平国務大臣 申し上げたように、検討しないとは言っていないわけでございまして、検討はいたします。
  217. 福田一

    福田(一)国務大臣 ただいま大蔵大臣からも検討をするというお話がありました。しかし、六条の三は国の行財政の見直しをするかあるいは交付税率の引き上げをするかというような幅もちゃんと付せられてあって、どちらをするかということも一つの考え方になるわけであります。それからもう一つは、これはそんなばかなことがあるかと言われるかもしれませんが、やはり税収の見通し、景気の見通しというようなことも、秋までにひとつ十分に予測を、その時分になれば五十二年度の分も大体方向がはっきりしてくると思いますから、それらを踏まえながら、いまの試算の段階ではなくて、もう少し五十二年度についてはコンクリートな数字が得られるのではないかと思いますので、これらの点も十分勘案をした上でよく大蔵省とも相談をさしていただきたい、すなわち検討をさしていただきたいということを先般来安井さんにも申し上げておったところでございます。
  218. 林百郎

    ○林(百)委員 大平さん、地方財政の問題になるとばかにぶっきらぼうになるんですけれども、検討なさるということは、交付税率の引き上げということも含めて検討なさるということですか。私はいまその点にしぼって質問しているわけなんですね。こういう事態が起きた場合には交付税率の引き上げあるいは行財政の根本的な改正ということもありますけれども、税率を引き上げるということを含めて御検討なさるということですか。そうでなければ六条の三というのは全く形骸化されてしまって、こんな二年も交付税会計が資金運用部資金から一兆近くの金を借りてきてくっつけていく。それが来年も、五十二年度も五十三年度もそういう状態が続くという見通しがずっと出ているときに、まだ六条の三が考慮されないということは、幾らあなたが国の方の財政を見ているからといっても、これは国務大臣としても、それから地方財政も含めての国の財政全体の責任を持つ大蔵大臣としてもちょっと無責任なことになると思うのです。ですから、さっきあなたのおっしゃる検討するというのは、交付税率の引き上げをも含めて当然検討するという意味にとっていいのでしょうか。
  219. 大平正芳

    ○大平国務大臣 国の財政も地方の財政も同様に心配していかなければいかぬわけでございます。リップサービスばかりが芸じゃないので、やはり地方についても、中央が苦しくてもいろいろな手を講じて財政運営に支障のないように配慮をいたしておりますことは、林さん御承知のとおりでございまして、私は口が下手でございますけれども、心は温かいつもりでおります。  それから検討でございますが、かたわな検討をするつもりはありませんで、そういうことも検討の対象になることは当然のことと思っております。
  220. 林百郎

    ○林(百)委員 温かく検討されるそうですから……。  それから国債と地方債と含めまして大体国で——国の財政がやるようなことは地方財政もどうしてもやるようになりまして、地方債の発行が企業債も入れまして四兆数千億になるわけです。国債も入れますと約十一兆近くになるわけですが、この消化の問題がやはり問題になると思うのですよ。それは大蔵大臣と自治大臣が御相談なさって地方自治体に迷惑かけないように、金融機関にもいろいろお話をしているということも聞いておりますけれども、具体的には、たとえば五月というようなときを見ましても、五月になりますと国債が集中的に出てくる。そうして財政の支払いはまだない、税金は納めなければならない時期にある、企業は配当する時期になる、国との契約はまだできないというようなときになるわけですね。こういうときに金融機関としては国債も引き受けなければならぬ。地方債はまだそのときは金融機関引き受けというところまではいかないかもしれませんが、いずれにしても、ある時期には市中金融が、地方債まで、政府保証債まで入れますと年に十二、三兆、こんな大きなことになりますと、金融機関としても引き受けに対して非常に困難を来す時期があると思うのです。  大体ことしの預金増をどのぐらいと見ておいでになるか。もう時間がありませんからここで言いますと、大体われわれは二十三兆ぐらいと見ていいのではないか。そのうち国債、地方債、政府保証債が十一、二兆ということになりますと、預金増がほとんど公共債の引き受けの方に充てられてくるということになるわけなんで、これは地方自治体としては、都銀で取引できるのはいいですが、地方銀行に行ったり、中には信用金庫まで——信用金庫の監督権は地方自治体が持っているわけです。自分の監督している金融機関に行って金を借りなければならないという事態も起きてくるわけです。現にある県なんかでは、そういう事態が起きている。  そういう場合に、大蔵省と自治省と相談してどこか窓口をつくって、そこへ行けばそういう地方債なら地方債を消化する相談に乗るというようなこと、そういう具体的な窓口を自治省か大蔵省、あるいは自治省と大蔵省と相談して設けて、そういう問題の処理が円滑にできるような構想は持てないでしょうか。大蔵大臣どうでしょう。
  221. 大平正芳

    ○大平国務大臣 たびたび、地方債の消化につきましては自治省と協力いたしまして、金融機関にも協力を求めまして、支障のないように最善の努力をいたしますということと、あわせて、来五十一年度の金融情勢を展望いたしますと、政府と民間との資金のやりとりの関係等から見まして、また資金需要の強さから見まして、五十一年度に関してはマクロ的にそう私ども心配をしていないということ、そして現在すでに五千億とか六千億とかというオーダーで国債が消化されているわけでございますが、現在のところ支障なく消化されておりますことも本委員会で申し上げておるわけでございます。したがって、自治大臣ではございませんけれども、しばらく御信頼をいただいて、支障のないように最善を尽くしますので、もしそれについて、いまのメカニズムでこなせないというようなことがございましたならば、林さんがおっしゃったようにいろいろ工夫をしなければならぬと思いますが、いまの体制で私はこの事態に対処できるというふうにいま思っておるわけでございます。御心配いただくことは大変ありがたいことでございますけれども、いまの体制で最善を尽くして御期待にこたえたいし、またこたえられると私は考えております。
  222. 林百郎

    ○林(百)委員 国債の方は適格債ですし、一年たてば日銀のオペの対象にもなりますが、地方債の、ことに縁故債というのは、地銀からは適格債にしてもらってというような希望もあるわけですが、恐らく大蔵大臣がお考えになっている以上の苦労を実際の自治体は縁故債の消化についてはしていると思うのですよ。また、縁故債のために金融機関と、たとえば都道府県が余り密着していくようなことになると行政の癒着も出てきまして好ましくない事態が起きてくるわけです。ですからあなたの考えられているように、いまのところでマクロで行けば心配ないではないかというふうにお言いになっておりますけれども、やはりこの点はあらかじめ工夫なさって、実際都道府県でそういう点で困っているならば、どういう機構のところへ行けばそれが解決できるかというようなことをひとつ自治大臣とよく御相談をされておく方がよろしいか、こういうように思います。  時間がないので大変後を急ぎますが、あともう一問だけ。  実は、そういう起債への依存度が非常に高くなりますので、しかもその起債の許可権を自治省が持っているということで、自治省がいろいろの技術的な指導と助言というようなことかもしれませんけれども、たとえば、ここに「五十一年度地方財政運営についての財政課長内簡」というようなものが出ているわけです。これを見ますと、高校授業料は二・六七倍にして月額三千二百円にするとか、それから地方財政計画を見ますと、使用料及び手数料の増減率は対前年度比約四〇%アップになっているわけですね。こういうことをしなければ起債の許可がおりないのではないか、そういうことを自治体としては受けとめるわけなんです。やはり自治体というのは、県がどういう態度をとるか、自治省がどういう態度をとるかということを、あなたが考えているよりはもっと神経質に考えるわけです。  だから、こういう自治省の出す内簡だとか通達だとかそういうものは一体どういう性格を持っているかということが一つと、それからせっかく文部大臣にお見えになっていただいているわけですが、自治省の財政課長の通達を見ますと、授業料は前年度比二・六七倍にする、月額三千二百円にする予定である、これをしないと高校新設についての補助金を出さない、こういうようなことも言われているわけなんです。私たちはそれを書面か何かで確認したわけではありませんが、そういう事実があるかどうか、その二つを答弁願いたいと思います。ことに使用料及び手数料の四〇%アップというのは、これは相当のアップになりますので、しかもこれが財政課長の内簡という形で出ておりますので、こういうものの性格をはっきりさしていただきたい。自治大臣から……。
  223. 福田一

    福田(一)国務大臣 いまお話がありましたとおり財政課長から内簡を出しておりますが、それはこういうふうにしたがよろしいと思う、こういう意味でございまして、もちろん命令でもなければ強制権を持っておるものでもありません。こういう問題についてはすべてやはり県の議会、市の議会、町村の議会というようなものが理事者との間において話を詰めて決めていくべきものであるけれども、一定の方向を示し、そしてこういうことが好ましいというような姿を出すということは法律的にもちゃんと認められておるところでありますから、そういう意味に御理解をしていただきたいと思うのであります。私はそれだからといって、そういうことを何もしないでいいということでは、やはりそれでは曠職のそしりを免れません。やはり法律に基づいて指導助言を与える任務がわれわれには与えられておるわけでありますから、その任務をそういう強制的な意味でなくて述べるということは、自治省としては今後も当然やらなければならないことだと思っております。
  224. 永井道雄

    ○永井国務大臣 先ほどの高校授業料の二・六七倍、それから三千二百円、これに上げない場合には文部省の方の高校新増設補助をやらないかということでございますが、私どもの方では、この数字に上がらない場合に補助をやらないということを考えたこともございませんし、言ったこともございません。ただ新増設補助というのは、やはり今後も原則は地方債によるとか、地方交付税によるということだと思いますけれども、しかし何しろ緊急事態でございますから、五年間にわたって行っていくというものの第一年度でございますけれども、これをやっていきます上には、やはりいろいろの要件はある。それはたとえば学生の進学率がどうであるかとか、それからどのくらいの数がふえていくかとか、それからその自治体において財政運営上の自助努力が行われているかというような、一般的に申しますとこういう要件はあると思います。この要件に基づいて将来個別に考えていくことでございますが、お示しの数字以下のの場合には出しませんというようなことは、考えてもおりませんし、申したこともない次第でございます。
  225. 林百郎

    ○林(百)委員 時間が参りましたので……。
  226. 井原岸高

    ○井原委員長代理 山原健二郎君から関連質疑の申し出があります。林君の持ち時間の範囲内でこれを許します。山原健二郎君。
  227. 山原健二郎

    ○山原委員 いま問題になっている主任制度の問題について伺います。  今度の主任制度の省令化に当たりまして、管理職ではない、指導職であるという言葉も言われ、管理の面のきしみが出てきたので、指導の面を強化するのだというのが文部大臣の見解でありますけれども、これは従来の文部省の見解とは異なっておりますが、大臣はお気がついておりますか。
  228. 永井道雄

    ○永井国務大臣 従来の文部省の見解と申します御指摘になりますものは、恐らく一つの例は、文部省直接でございませんけれども、学校管理読本などの考え方の中に、いわゆる上司としての職務命令というようなものがございますから、これは文部省直接でなく、文部省の職員が研究会を組織して市販した本でございますが、そういうものと相反する面があることは承知いたしております。
  229. 山原健二郎

    ○山原委員 私がいま尋ねておりますのは、文部省が現在使っておりますこの管理読本、これは、二月十日に終わりました筑波における校長、教頭の研修会でもこの本がただ一冊の参考書として使われているのです。その中に法令用語の解説として、管理とは何か。「管理の作用を学校についてみれば、教職員の任免、職務の監督、懲戒等の人事上の管理、施設、設備の維持等の物的管理、学校の組織編成、教育課程、学習指導等の運営に関する管理の三つの領域がある。」こうなっていますよ。したがって、教育指導というものは、これは管理の中に含まれていると言うが、文部省は今日まで一度も否定せずに来たところの指導方針であったわけですね。したがって、これはいま大臣の言われる見解からするならば、明らかに違っているというふうに解釈してよろしいですか。     〔井原委員長代理退席、正示委員長代理着席
  230. 永井道雄

    ○永井国務大臣 従来、管理というものの定義によって、その中に教育指導上を含めているというものがあることは承知いたしております。
  231. 山原健二郎

    ○山原委員 だから、管理と教育というものを二分して考えるという見解は、文部省はいままでとっていないのです。教育指導も管理の一翼の領域であるという考え方ですからね。この点については、まさに管理読本というのはいまの大臣の見解と違うというならば、法令用語の解釈まで突如この十二月の省令発表以来変わったと断定せざるを得ないのです。これが一つ。  二つ目の問題は、今度の主任については、校長のあるいは教頭の職務命令を伝達する任務があると私は判断します。なぜなら、次官通達を見ましても、「必要があれば、校長及び教頭の指示を受けてこれを関係教職員に伝え、あるいは、その内容を円滑に実施するため必要な調整等を行うものである」、こう通達は書いております。  法制局にお伺いをいたしますが、この職命伝達の任務がこの制度化された主任にあると私は判断しますが、法制局としてはどのようにお考えでしょうか。
  232. 真田秀夫

    ○真田政府委員 いわゆる主任の制度は文部省令でできておりまして、文部省令の内容にわたることにつきましては、私の方で御相談を受けて制定されたものでもございませんので、的確なことは制定された文部省の方にお聞き願いたいと思うわけなんですが、一般論といたしまして、校長なら校長、あるいは教頭が当該学校の教職員に対して命令をすることはできますが、その際に自分で直接やるのが一般であると思います。ですが、事柄によりましては、それぞれ主任の職務に属する事項に関する命令であれば、主任を介して下へ伝達するということはもちろん可能だと思います。ただその場合でも、それは伝達機関でありまして、命令をするのはやはり校長なり教頭であるというふうに考えざるを得ないのだろうと思います。
  233. 山原健二郎

    ○山原委員 ただいまの法制局の見解によりますと、従来学校において制度化されざる主任がありましたが、これは職命伝達の任務を持っておりません。その点では、今回制度化された主任は、明らかに職命を伝達する任務もその中に包含をしておるといった点で、従来の主任とは明らかに異なるものであると私は断定をする次第であります。  次の問題です。  文部大臣は、指導職あるいはまた一方では職ではない、こういう言い方をしておりまして、私どもも大変迷うわけですね。指導職と言われておりますのは、子供を指導する指導職ではない、子供を指導するというならばすべての教師が指導職であります。この場合には、明らかにこの指導職というのは教職員に対する指導職となるわけでございます。その意味で、この主任というのが制度化されるわけですから、いままでございますと、指導、助言といいましても経験豊かな教師が若い先生を指導する場合もあります。また若い先生が新しい知識を大学やその他で得て帰ってまいりまして、これをまた年のいった方々にも伝えるという、相互に援助し合う形態が学校でとられておったわけです。しかし、今度の場合は連絡調整、指導、助言という任務が付加されたところのものが制度として固定するわけでございますから、言うならば指導される側と指導する教師と、このように分けられるのではないか。上下関係はともかくとして、指導する職と指導を受ける教職、こういうふうに分かれるのではないかと私は思うのですが、この点についても法制局の見解を伺っておきたいのであります。
  234. 真田秀夫

    ○真田政府委員 先ほども申しましたように、文部省令の当該条文の中身のことでございますので、文部省の方から的確なことはお聞き取り願いたいと思いますが、一般論といたしまして、おっしゃいますように今度の文部省令には、主任は「連絡調整及び指導、助言に当たる」と書いてございますので、この文句からいたしましても、指導、助言をする主任とそれから主任の指導、助言を受ける教職員と二種類あるとうかがわれるわけでございまして、これは申し上げるまでもないことだろうと思います。  ただそこで、どうも先ほどからのお話を聞いておりますと、ここに「指導」という言葉が使ってありまして、指揮監督というような言葉を避けてあるように私はうかがえるわけでありまして、その意味で、いわゆる普通の役所における上司と下僚というような指揮監督でがっちりとつながるようなそういう関係とはやや違うのだろうというふうに、私は文部省令を読みましてそう感ずる次第でございます。
  235. 山原健二郎

    ○山原委員 いまのお答えで、指導する側と指導される側とが生まれることは、一般的に考えましても明白なところであります。ただ上下関係が存在するかどうかということにつきましては、私はいまここで時間がありませんから、そこまで問い詰めるつもりはありません。ただいまの質問によりましても、一つは校長、教頭の職務命令を伝達する仕事を包含した主任、それからもう一つは、指導する側の主任、この二つの性格というのは、明らかにいままで学校に存在する主任とは性格を異にいたしております。この点を指摘をいたしたいと思います。  さらに、連絡調整という問題について文部省はいままでどのように指導してきたか、これは学校管理読本の八十四ページに出ておりますけれども、連絡調整を行うには縦と横があり、「縦とは、校長の決定、判断、方針等を職員に伝達することであり、」こう述べまして、「縦の関係からいえば、教頭、教務主任、教科主任等のいわゆる中間管理者を通じて行なえば足りる」と、こう述べております。したがって、いままで文部省の指導方針としては、これも四十四年以来今日までただ一つの参考書として使い、全国の中堅教員を研修させたり、あるいは校長、教頭の研修をさせたり、全国の教育委員会に対する研修をこれで行ってきたわけですから、その観点から見るならば、明らかに教務主任あるいは教科主任を中間管理者として文部省は見ておったのであります。この点でも、いまの文部大臣の発言とは見解が違うように思うのですね。そうするならば、もう何カ所もこの本はいま文部大臣の言っておられることと違った見解が述べられ、しかもこれがいま活用されておるというところに問題があると思うのです。本当に誠実に文部大臣がこれを使うと言われるならば、いま文部省が昭和四十四年以来使い、しかも文部省そのものが有益、適切な本であると推薦をしてきたこの本については抜本的に変えるか検討をし直すか、あるいは少なくとも文部省主催の研修会には用いないか、これのいずれかの実効ある処置をとらなければ、文部大臣の単なる空論にすぎないということになるわけですが、これに対する処置をどうされるか、お伺いしたいのであります。
  236. 永井道雄

    ○永井国務大臣 私の考えは、省令、通達にも表現されておりますから、その点からも明確ではございますが、しかしその本につきましては、先生御指摘のような配慮が必要であると思いますが、その前に一つ申し上げておかなければいけないのは、これは研究会の本であって、そして文部省の職員に研究の自由、そして表現の自由というものがございますから、そうしたものとして市販されることは私は当然のことと考えます。しかしながら、文部省の研修会において研修を行うという場合に、考え方に混乱を生じるということは避けなければなりません。したがいまして、御指摘のような点、たとえば上司として職務命令を発するというがごとき個所に関しては、これを用いる場合には必ずコメントを付して用いるべきものであると考えております。
  237. 山原健二郎

    ○山原委員 この本に流れる思想は、特別権力関係論であります。これが全部一貫して流れている権力主義というものであるわけですね。一部についてコメントをつけると言ったって、この間筑波で行われた研修会では、全く録音もとらせないという秘密主義の研修会が行われているのです。実態は、これが一冊の参考書として使われているのです。あと法令集が使われているだけですけれども、これが現実にいまも使われている。しかも、十二月以来私は文部大臣に対してこの点を質問をいたしております。文部大臣、きょう私は幾つかの個所を指摘をしたわけです、この前は一カ所だけでしたけれども。それにコメントをつけると言ったって、全体に流れる特別権力関係論というものがあるのですから、これに対して当然検討を加えなければ、幾ら言っても文部省の方針は変わりませんよ。  そういう点で、もう時間がございませんのでこれ以上申し上げませんが、いま言いましたように、一つは、職命を伝達する、あるいはまた指導する側というこの主任ですね。さらにこれが上級機関が一定の権限と責任を持つものとして任命するのですから、結局上命下達の関係における中間管理職としての性格を持つのではないか。どんなに中間管理職ではないと言っても、教育指導そのものが管理の範疇に入るというこの法令の用語の解釈からいたしましても、この点は大変問題のあるところであります。さらに、これが勤務評定によって評価されるわけですね。この新たにできた教務主任なら教務主任というのは、その職務内容に対していまの勤務評定体制のもとでこれが評価されるということになりますと、ますますエスカレートをしていって、これが一層中間管理職としての役割りを果たすことになることは私は明白だと思うのです。その点をいま全国の教師やあるいは教育委員会が心配をしておるからこそ、三月一日、あさってです、あさってに実施すると言ったって、ほとんどの県が実行できないという。これがまさに国民的合意のあらわれだと私は思うのです。こういう点で、中間管理職ではないと申しましても、この新たにできる制度化された主任というのは、明らかに中間管理職的性格を持っているということを率直に言われた方がいいと思うのですね。そのことを申し上げておきたいのでございます。  もう一つの問題を、これは法制局にお尋ねをいたしたいと思うのですが、この制度化に当たりまして、文部省が示した準則があります。その準則の一つは、これは「校長の意見を聞いて、教育委員会が命ずる。」こうなっています。現在調べてみますと、いま実施したといわれる鹿児島県がまさにそのとおりの文言を使っております。さらに香川県、岩手県も使っているのであります。そうしますと、昨日言われました四つの県のうち三つの県が、校長の意見を聞いて地方教育委員会が任命するとなっているわけでありますが、この際、校長の意見を一〇〇%地方教育委員会は聞くのか、あるいはそれは地方教育委員会の判断にまつものであるのか。校長がAという人物を主任として意見を述べた場合に、これに対して地方教育委員会は一〇〇%これを認めるのか、あるいはそれに対しては地教委自体の判断によってそれを拒否する、あるいはそれと別の人がいいんだというようなことを言う権限を地教委は持っているのか、これを明確にしていただきたいのであります。
  238. 真田秀夫

    ○真田政府委員 特定の規則なり命令でそういうことが書いてある場合のことは、それは当該法令の趣旨にまたのっとって解釈しなければならぬと思いますから、そういうことじゃなくて、一般に法令上、いまおっしゃったような規定がある場合の効果はどうであるかという問題としてお答えさせていただきたいと思います。  ある機関、甲機関がある行政行為をするに当たりまして、事前に乙機関の意見を聞かなければならないというような規定は、国の法律にもよく見かけるところでございますが、そういう場合には、国の法律の趣旨としましては、その権限のある甲機関が当該行政行為をするに当たって乙機関の意見をなるべくそこに反映させてやろう、そういう反映させるのが望ましいという趣旨からできているのが普通でございまして、そういう場合には、もちろん事前に甲機関は乙機関の意見を聞いて、そしてその乙機関の意見を十分に尊重して、そして最後は甲機関がみずからの責任と判断において当該行政行為をするという公式になるわけでございます。  いま申し上げましたように、十分に意見を反映させる、尊重しなさいよと言うにとどまるのでございまして、おっしゃいましたように一〇〇%乙機関の意見が甲機関の判断を拘束するというものではない、それが一般の解釈でございます。
  239. 山原健二郎

    ○山原委員 ただいまの点で明確になったわけですが、いわば一〇〇%校長が職員の意見を聞き、民主的に主任を選出をして意見を申しても、これを判定をするのは地方教育委員会であるというのがこれが正当な解釈であろうと私も思います。まさに地方教育委員会にこの任免に対する拒否権があるわけでして、その点では、民主的に選ばれた校長の意見というものもこれは反映しない場合があると考えるのは当然のことなんですね。それを文部省は、いままでの主任を選んだ選び方あるいは校務分掌としての決め方、それとは全く違うものではないのだというオブラートで包むわけです。現実にはそういうことが地方教育委員会によって拒否されるにかかわらず、いままでとは違いはないのですよ、こういう言い方ですね、これが非常に問題を混乱させているわけです。だから私はその点について、文部省自体がいままで調査をされておりますその資料によりましても、たとえば、小中学校、高等学校におきまして教務主任はほぼ八九%が校務分掌として決められ、そして校長の発令はほとんど一〇〇%です。学年主任もそうなんです。これでいま学校は運営されているわけですね。今度はそれと違って、ほとんどが文部省の準則に従って、校長の意見を聞いて教育委員会が任命する。しかも、校長の意見は場合によって聞かない場合があるのだ、それは尊重するという立場にすぎないのだ、こうなってまいりますと、まさに幾らいままでとは違わないのだと言っても、省令化されあるいは制度化されたこの主任というのは、いままでの主任とはおよそ性質を異にするものであることは明白であります。この点について文部大臣の見解を伺いたいのであります。
  240. 永井道雄

    ○永井国務大臣 準則について初中局長から答えさせます。
  241. 諸沢正道

    ○諸沢政府委員 主任の命令の仕方につきましては、文部省が各都道府県の教育委員会に示しました準則には三つの方法を規定しておるわけであります。その一つは、ただいま御指摘のありましたように、教育委員会が校長の意見を聞いて任命する、第二の案は、教育委員会の承認を得て校長が任命する、三案は、校長が任命して教育委員会に報告する、こうなっておるわけでありまして、文部省といたしましては、各県ないしは市町村の教育委員会がこの教育委員会規則を制定するに当たっては、従来のやり方というものを頭に置いてそのいずれかをおとりなさい、こういうふうに言っておるわけでありますから、決して従来のものを全部教育委員会発令に変えよう、こういうようなものではないわけでございます。
  242. 山原健二郎

    ○山原委員 それはまさに詭弁であって、現在四つの県のうちの三つがそういう状態ですね。それからもう一つの愛媛の場合が、この教育委員会の承諾を得て校長が任命をする、発令をする、こうなっているわけです。しかも、それもこの承諾という言葉でありますけれども、地方教育委員会が校長の申請あるいは意見具申に対して一〇〇%承諾を与えるという保証はないわけです。だから全国の情勢から見ましても、校長任命の一〇〇%あるいは八九%に及ぶ校務分掌としての決定、あたりまえで、いままでと変わりないとするならばそれでいいわけですね。それをなぜ今度省令化し、制度化したかというこの問題です。だからこそ幾ら文部省がこれを強制しようとしても、あさってに控えて、なおかつ大半の県が実行しないという事態が発生をしているわけです。したがって、この問題を、この三月一日などと期限を切って早くやれなどと言って追い込んで、きょうは土曜日です、あすは日曜日です。そんな中で三月一日へ駆け込みのようなことをやったって、それは教育的なスタイルではありません。そういう意味では、まさにいろいろの見解がある段階で、これを強力に持ち込んで実行せよというやり方こそ、政争の具を教育の場に持ち込むことであることは明らかであります。それをやろうとしておるのが、まさにいまの永井文教行政であると私は断ぜざるを得ません。言葉でいろいろのあやをつけられても、実態は、これは歴史の判定を見るならば、恐らく最も戦後反動的な民主教育に対する挑戦の文相としてのこの汚名を残すのではないかということすら私は憂えているわけであります。したがって、この問題については十分教育関係者の間で討議をし、検討すべき問題であるということを私は重ねて指摘をいたしまして、私の質問を終わりまして、栗田議員に関連で質問をしていただきたいと思います。
  243. 正示啓次郎

    ○正示委員長代理 栗田翠君から関連質疑の申し入れがあります。林君の持ち時間の範囲内でこれを許します。栗田翠君。
  244. 栗田翠

    栗田委員 私は、主任の手当と人事院勧告との関連について質問いたします。  まず最初に、人事院に伺いますけれども、人事院は勧告に当たりまして主任手当という制度を新設されるおつもりでしょうか。
  245. 藤井貞夫

    藤井(貞)政府委員 教員の待遇改善のための勧告は、過去二回にわたって人確法に基づいても行われてきてまいっております。今回はその第三回に当たるわけでございますが、この内容をどういうふうにやっていくかということにつきましては、目下われわれの方で連日慎重に検討中でございます。  ただその間に、御承知のように、昨年の三月七日でございましたか、第二次、第三次の勧告に当たりまして、文部大臣の方から私向けで、この勧告を考えるに当たっては教育行政の実態から見てこういうような点について特に配慮をしてもらいたいという要望が出ております。これは事柄といたしまして、一般の人事院勧告の場合でもそれぞれ関係各省からは所管の問題について申し出があり、要望があるのと同じことでございますが、そういう意味で要望が出されております。  その中で、一つの問題として主任の関係についての言及がございました。それは、規定の整備を待って、これらの教務主任等の主任というのは大変職務も重要性を持っているから、それにふさわしいひとつ処遇をやってもらいたいんだ、それは規定の整備をやってからやってもらいたいんだということがございます。したがいまして、それらを含めまして現在鋭意慎重に検討中というところでございまして、いまここに主任手当というような名称のものを具体的に織り込むかどうかということは、現在未定でございます。
  246. 栗田翠

    栗田委員 三月一日からの実施ということを文部省は言っておられまして、勧告も少なくとも三月半ぱには出さなければならないと思うのですけれども、主任手当という制度になるかどうかまだ決まっていないということでございますが、文部大臣に伺いますけれども、大臣は主任を制度化するということを省令化されました。いままでも全国の学校には主任というのがありましたけれども、それは制度化はされていなかったわけです。これに手当をつけるようにという要請もされておりますけれども、今度の主任のどういう性格に対して手当をつけるべきだとお考えになったのでしょうか。
  247. 永井道雄

    ○永井国務大臣 昨年、主任について待遇の改善を人事院にお願い申し上げましたが、規定の整備と相まってということでございました。そこで、私どもは主任の実態を調べて、そして考えましたことは、まず主任は管理職的なものでございませんから、主任の手当は管理職手当的なものではない。そこで主任の役割りは何か、これは指導、助言、連絡調整ということでございますから、これをどういう名前のどういう形のものに具体的にされるかということは人事院でお決め願うことでございますが、私どもの考え方は、管理職手当でなく、現在主任の方々が当たっておられるそうした指導、助言、連絡調整というものを明確化して、そのお仕事に対して手当が出るように、かように考えている次第でございます。
  248. 栗田翠

    栗田委員 そうしますと、主任という職に対して出るということでしょうか。
  249. 永井道雄

    ○永井国務大臣 主任の役割り、活動に対して手当が出るのだ。といいますのは、いわゆる五段階給与との関連について申しますと、そうした意味において教諭の中から特別に主任という違う段階を設けるのではございませんので、教諭の方々が主任に当たられるわけでありますから、そのお仕事に対して私たちは手当てをしていただきたいというふうに考えているわけでございます。
  250. 栗田翠

    栗田委員 特殊勤務手当というものがいまありまして、一般の先生のお仕事にプラス何かされた場合、困難が伴ったり危険が伴ったりする場合に、御苦労であるからということで出る手当がありますが、そんな性質だと考えてよろしいのですか。
  251. 永井道雄

    ○永井国務大臣 私ども考えていることは先ほど申し上げたとおりでございますが、給与の明確な限定の問題というのは、これは人事院がお決めになることでございますから、私としては先ほど申し上げた程度の意味において、これは管理職手当でないということは明らかでございますが、その他の性格を申し上げて御要望申し上げている次第でございます。
  252. 栗田翠

    栗田委員 人事院に伺いますが、いま省令に明記されている主任には全部手当が出るのでしょうか。
  253. 藤井貞夫

    藤井(貞)政府委員 主任の規定の整備については、昨年の末に一般の規定の整備が一応行われまして、それに基づきまして本年に入って二月の十日でございましたか、国立学校の管理規則の改正が行われたということでございます。御承知のように、人事院の所管をいたしますのは、これは無論国家公務員でございます。したがって、国立学校の、この場合具体的に言えば付属ということに相なるわけでございます。これは二月になって管理規則が改正をされましたので、これを中心にして目下いろいろ検討をいたしております。省令化されたものというものは一応別表に掲げてございますけれども、そのほかに、学校の都合で実情に応じてさらに別の主任を置くこともできるというようなそういう規定もあるようでございます。それらを含めまして、われわれとしてはさしあたりどうしていくのか、今後どういう方向で処置をして制度的に落ちついたものにしていくのか、現在それらも含めて慎重に検討中であるという段階でございます。
  254. 栗田翠

    栗田委員 ちょっとお願いしておきますが、持ち時間が大変少のうございますので、伺ったことを簡潔にお答えいただきますようにお願いいたします。  それでは、いまのお答えですと、省令に明記されたもの、その他拡大していくということはいまちょっと別にしても、明記されたものでも全部手当がつくのかどうかもまだ御検討中でいらっしゃるということのようですね。  大臣に伺いますが、大臣のお考えですと、制度化された主任については画一的に手当をつけていくべきだとお考えでしょうか。
  255. 永井道雄

    ○永井国務大臣 私どもが希望しておりますのは、小学校について二つの主任、それから中学につきまして三つ、高校につきまして六つでございますね、これらの主任、主事の方々に手当をつけていただきたい、かように希望している次第でございます。  そのほかに盲、聾、養護学校もございます。
  256. 栗田翠

    栗田委員 いま小学校二つ、中学校三つとおっしゃいましたが、そうしますと主事はどうなるのでしょうか。
  257. 永井道雄

    ○永井国務大臣 もう少し具体的に申し上げますと、小学校は教務主任、学年主任、そうして中学は教務主任、学年主任、生徒指導主事、それから高校の場合には、教務主任、学年主任、生徒指導主事、進路指導主事、学科主任、農場長、それから盲、聾、養護学校につきましては、小中高に準ずるほか、寮務主任でございます。
  258. 栗田翠

    栗田委員 先ほど大臣は、手当の性格ということでお答えくださいましたが、いま進路指導主事などが入っておりませんけれども、進路指導主事も今度の改正によりまして、やはり他の主任と同じような内容が含まれておりますね、指導、助言、それから連絡調整。それなのになぜ進路指導主事など抜けているのでしょうか。
  259. 永井道雄

    ○永井国務大臣 進路指導主事は高校の中に含めております。
  260. 栗田翠

    栗田委員 中学校にも進路指導主事ございますね。それをお入れになりませんでしたが、入っていますか。
  261. 永井道雄

    ○永井国務大臣 中学校の進路指導主事は含めておりません。
  262. 栗田翠

    栗田委員 私は大変不思議に思いますが、管理職手当であれば話もわかりますけれども、先ほどのような内容ですと、進路指導主事も主任と同じような中身であり、仕事の中身がそうであり、しかも忙しさからいいますと、中学三年の進路指導主事など大変な忙しさですね。これは教務主任とどちらが大変かと思われるぐらいですが、それなのにそこにはつかずに、新たに省令化されたものについているということは一体どういう違いがあるのですか。
  263. 永井道雄

    ○永井国務大臣 必要でしたらなお詳細に初中局長から御説明申し上げますが、この主任を省令化するに当たりまして調査をいたしましたときに、非常に重要な尺度として考えましたのは、全国的な普及度の問題が一つと、それから仕事の重要性という、そうした角度から選ばれておりますために、高校の進路指導主事というものが入っているわけでございます。
  264. 栗田翠

    栗田委員 中学の進路指導主事は全校どこにもございますね。しかも重要性から言ったら、それは大学進学も大変ですが、中学から高校進学、就職も実に重要だと思いますし、実際に中学校の進路指導主事はずいぶんいま、それこそ学年末ともなれば大変な仕事を負っていらっしゃいますが、それで重要でないのですか。
  265. 諸沢正道

    ○諸沢政府委員 私どもが今般人事院に手当を考えてほしいと要望しました主任は、いまの中学校の進路指導主事のほかに、たとえば保健主事のように省令化されておりますけれども要望していないものもあるわけでございまして、その点、省令に載っておるものは全部要望しておるというわけではないわけでございます。  ところで、それではどういう基準で考えたかと申しますれば、一つは、それぞれの学校の教育活動の中核的な仕事をしていただいている、学校運営の基本にかかわるようなお仕事、そういうことと、もう一つは、その主任の設置状況が全国的に見てかなり比率の高いもの、こういうような二点から考えたわけでありまして、その点を考えますと、中学校の進路指導主事の設置率は全国で五八・三%となっておりまして、この点、高等学校の進路指導主事が九三・五%というのと比べますと、かなり率が低いわけでございます。そこで、手当を支給するにいたしましても、どこかで線を引かなければならないわけでございますので、いま申しましたようなことで中学校の進路指導主事ははずしてございます。
  266. 栗田翠

    栗田委員 それでは次に伺いますけれども、すでに省令の中にあるものでも手当が出ないものもあるということがいまわかってまいりましたが、それでは大臣、いま主任の枠も拡大していきたいということもしばしば発言しておられますけれども、県教委や地教委が自分たちで独自に主任をつくった場合、こういうものについての手当は、大臣どういうふうにやるべきだとお考えでございますか。
  267. 永井道雄

    ○永井国務大臣 現段階においては、直ちにこれを本年度の給与の改善に結びつけるというふうには考えておりません。しかし、本年度を二年に分けましたから、検討課題としてはそうした主任の問題は考えなければならないものとして残ると思っております。
  268. 栗田翠

    栗田委員 行く行くは考えていかなければというお話でございます。  私は、先日鹿児島に行きまして調査をしました。鹿児島は、省令で決められた主任以外に教科主任などを独自に置いておりますけれども、こういうふうになってきますと、たとえば鹿児島の平均規模以上の中学校で教職員が二十人ぐらい、三百何十人ぐらいかの生徒数です。ここに学年主任、教務主任それから教科主任、そして御苦労であるということで進路、保健、生徒指導主事などももし加えていきましたならば、全部で十七人ぐらいが主事になるんですね。そうしますと、校長、教頭それから養護教諭の方を抜きますと、標準的な学校で、鹿児島ですと十五人ぐらいの一般教員の方がいらっしゃいますが、主任などが十七名になってしまいますと、これは全部手当をつけてどういうことになるのだろうか、これでは教員給与の改善でも一般的にやった方がいいのじゃないかということになるわけです。これは鹿児島でなくても、いま全国的に平均的な小中学校を見ますと、小学校で大体先生が二十名から二十一名ぐらい、中学校で二十三名ぐらいになりますが、同じことが言えます。二十三名のうち十数名、十六、七名ぐらいが主任になるということも起こるわけですから、こういうときにこれに手当をつけていくことを考えるとおっしゃいましても、なかなか問題があると思います。  人事院に伺いますけれども、ずいぶんこれは問題があるんじゃないでしょうか。こういう形で勧告ができるでしょうか。いかがでございますか。
  269. 藤井貞夫

    藤井(貞)政府委員 そういう点が大変問題でございまして、われわれもそういうようなことについては特に関心を持って考えておるのであります。それの前提といたしまして、いま文部大臣からお話もありましたように、文部省自体から主任について何らかの給与措置を講じてもらいたいというふうに意見の申し出がございますのは、別表で制度化された主任全部でなくて、その中の若干のものであるということは、恐らく文部省として実態をいろいろ把握、調査され、それの普及度その他を考えられた結果、重要性等について判断をされてそういう結論が出たものであろうかと思います。しかし、われわれといたしましては、所管ですから文部省の意見というものはないがしろにできません。実情もよく把握されておることでありましょうから尊重はしてまいりますけれども、しかしいろいろな問題がこれの周辺にはございます。いまお話しになりましたような、任意的に各県がその実情に合わせてやっていくというようなことがあった場合にも、これはわれわれ国家公務員だけが対象であるからそんなことは知らぬというような、一応通り一遍にはそうでありますけれども、事実上いままでわれわれの勧告と、それに対応する一般の県、市町村の対応の関係ということから考えますと、そういう水臭いことも実は言えないということで、十分関心を持ちながら、横ににらんで推移は考えていかなければならぬということでございます。  それは恐らく、今後事態が推移していく段階において各県の実情もだんだん明確になってまいりましょうし、その段階において文部省の方針、あるいはこれと並行して各県の人事委員会がどういうふうな対処をしていくかという問題によって、それぞれ具体的に解決がついていくことに相なるのではないかと思っておりますが、われわれといたしましては、いまは文部省の申し出がありましたことを中心にいたしまして、その中でどういうような位置づけをし、どういうような措置を講じていったらいいかということを、大変むずかしい問題としながら、慎重に検討をいたしておるということが現在の段階でございます。
  270. 栗田翠

    栗田委員 いま主任の制度化ということを一般に考えましたときに、みんな省令化された主任には手当がつくように思っている方が多いのですが、いまのお話を伺いましても、つかない場合もあるし、また主任同士に手当に差がつく可能性もあるし、また拡大された場合、地教委などが単独につくりましたものについてはどうなるかわからないということだということもわかりました。そういうことだと思います。これはなかなか地方財政が危機な中で、ただ文部大臣は拡大していくとおっしゃるけれども、これも地方にとって非常に重要な問題になってくるなということを、いまのお答えで感じたわけでございます。  時間がありませんので次に進みますけれども、大臣は勧告に当たりまして、四つの柱というのを出しておられます。  第一が教員給与の改善、全般的にやる改善、それから二番目が、特にすぐれた、経験豊かな先生の一等級渡り、それから次が主任に対する手当とか、特殊勤務手当のようなもの、この順位でやっていくのだということを大臣は繰り返し発言しておられます。ですから、そういうお考えでいらっしゃると私は思います。  そうしますと、人事院に伺いますけれども、五十一年度の教員給与改善の予算ですけれども、これはいま二・五%で組まれておりますけれども、勧告に当たっては大体こんな内容でやられるお考えですね。
  271. 藤井貞夫

    藤井(貞)政府委員 人確法の趣旨並びに予算措置等、これは一般の勧告その他とは違った一種の特殊性を持っていることは事実でございます。そういうことから、第一次、第二次についても、予算措置が講ぜられたということを大変重要な要素として加味をしながら勧告をいたしてまいりました。したがって、第三次につきましても、平年度化されました五十一年度の予算額というものを頭に入れながら、勧告でございますからそういう措置に絶対的に拘束されるという趣旨のものではございませんけれども、これは十分に頭に入れながら勧告をいたしたいということでございます。
  272. 栗田翠

    栗田委員 いま二・五%の枠内であるかどうかわかりませんが、そういう枠内でやられるとしますと、全教員に平均して給与改善をやっても、平均の改善額は三千三百円です。ましてこれを四つの柱に分けて、主任手当だとか、それよりももっと順位の高い、すぐれた、経験豊かな先生の一等級渡りということなどもやっていきますと、一体これはどういうことになっていくのだろうか、一体一般教員の給与改善というものはどんなことになってしまうのだろうか、こういうふうに思うわけでございます。  もう一つあわせて伺いますが……
  273. 正示啓次郎

    ○正示委員長代理 栗田君、時間が参りましたからどうぞ。
  274. 栗田翠

    栗田委員 はい。人確法の精神に沿って考えてみましても、こういう状態の中では全教員の給与改善ということをまず第一にやっていくべきだと私は思いますし、少なくとも三月度の分ですね、これは実際には実施されるところが四県と言われました。しかもこれは準則が改正されたところが四県で、鹿児島などは三月実施とは言っておりませんし、もっと数が減ります。主任手当を中に含めて考えましても、実際には手当の分としては使われないものが多くて、まあ三十八億、主任手当の分は使われないものが非常に多くなる以上、これは全教師の給与の改善に充てるのが最もよいのではないかと思いますが、この点いかがでしょうか。
  275. 永井道雄

    ○永井国務大臣 ちょっと一言だけ申し上げますが、私は先ほど各地方自治体でいろいろ考えられる主任、これは考えなければいけないと申し上げましたが、無制限拡大という考えは持っておりませんので、そのことだけつけ加えさせていただきます。  なお、やはり順位から申しまして、全教員の待遇改善に充てていくということは何より重要である。その点は栗田議員もそうお考えでございますが、では、もう主任というよりむしろそこに集中したらということでございますが、私どもの考えは、これもあれもということに相なりますけれども、やはりその四つのものに対しましてぜひ人事院においてお考えをいただきたいということで御要望している次第でございます。
  276. 正示啓次郎

    ○正示委員長代理 栗田君、時間ですから、また別の機会にお願いします。
  277. 栗田翠

    栗田委員 終わります。
  278. 正示啓次郎

    ○正示委員長代理 これにて林君の質疑は終了いたしました。  次に佐野進君。
  279. 佐野進

    佐野(進)委員 私は、不況下における中小企業問題について、関係各大臣に質問をいたしたいと思います。  まず、福田総理お尋ねするのでありますが、あなたは経済上の見通しについて、大変私どもからすると確信に満ちて、しかも間違いないようなことをいつもおっしゃっておられるのですが、結果的に見ると、大分確信に満ちたお話と違って、状況が御発言にそぐわないような、そういう場合が大変多いように感ずるわけであります。  たとえば、今年度中に完全雇用は実現し、経済成長率は六・五%になると確信を持っておっしゃっておられるように見受けられるわけであります。昨年度のいまごろ私どもが委員会で副総理質問いたしましたときも、同じように確信を持って発言されておりましたが、一年たった今日、いささかもあの当時の状況と変化せず、むしろ何かこう状態が深刻化しているのではないか、こういうように見られる条件もあるわけでございますけれども、これらについてまず最初に所見を承っておきたいと存じます。
  280. 福田赳夫

    福田(赳)国務大臣 経済の見方はいろいろな角度がありますが、一番重要なのはやっぱり物価、国際収支、それから景気、雇用、そういう点じゃないかと思います。  そこで、昨年のいまごろ私が皆さんに申し上げておったことをその諸点について顧みてみますと、まず物価につきましては、大体申し上げておったような線に動いてきておるわけです。国際収支も大体申し上げたような改善を示しておるわけです。ところが、景気、雇用という側面になりますと、あのとき申し上げたのとかなりおくれを生じておる、そういうふうに思います。  これはどういうことかといいますと、これは世界が、ほとんどの方々が世界の方々も含めて予想しなかったような総落ち込みの状態になってきた。その影響を受けまして、わが国も輸出が百億ドルも見込み違いを生ずる、こういうような状態になり、その結果、企業活動というものが非常に不振になってきておる、そういうことだというふうに思うのですが、世界がそういう総落ち込み、つまり先進諸国の全部がマイナス成長だ、そういう中でわが国は実質二%台の経済成長を実現された、こういうふうに見られるわけでありますが、そういう状態で、景気の側面は私が皆さんに御説明申し上げたようにはなりませんでしたけれども、そういう環境の中ではまずまずの歩みであった、こういうふうに回顧しております。
  281. 佐野進

    佐野(進)委員 私はこの問題できょう長くやっている時間がございませんから、また機会を改めていたすといたしまして、それでは、いまことしの末を見通して、景気の見通しはどうなのかということについて、端的にひとつ御所見を聞きたいと思います。
  282. 福田赳夫

    福田(赳)国務大臣 五十一年度は、これは四月から始まる年度になりますが、これは私は輸出がかなりふえる。これはもう昨年世界貿易が大変な落ち込みを示した、世界各国の経済は総マイナス成長であった、こういう年でありましたが、ことしはどうやらこれがいずれの国もプラス成長に転じようとしておる。そういう中において世界貿易も拡大される。わが国の輸出がかなり伸びてくるであろう。もうすでに昨年の暮れごろからそういう徴候を示しております。これは私は実質七%は下らざる拡大になっていくだろう、こういうふうに踏んでおるのです。あるいはそれ以上になるかもしらぬ。それから今度の御審議いただいております予算、これの中で公共投資、これにかなりのウエートを置いておるわけですが、これが大方実質で八%ぐらいの拡大になりはしないか、五十年度に比べまして八%の拡大になる、こういうふうに見ておるわけです。他の国民経済を動かす要素としての国民消費、これは五十年度におきましては実質五%程度のものになろう、こういうふうに思いますが、五十一年度は大体この勢いは続いていくであろう、こういうふうに見ておるのです。ただ設備投資につきましては、まあこれはそう多くを期待できません。まあ二%強ぐらいしか、実質二%強の増勢しか期待できませんけれども、それらを総合しますと五ないし六%の成長、こういうものはこれは私は実現できる年になる、そういうふうに見ておるわけでありまして、何としてもわが国をめぐる環境、世界情勢というものが非常に明るくなってきておりまして、特にアメリカあたりでは景気回復の基調を固めた、ドイツにおいてもまずまずというところへ来ておる、その他の国々におきましても、ことしはまあプラス成長に転ずるという見通しを得るに至っておる、そういうことを考えますときに、わが国もその程度の成長は実現できる、そういうふうに考えております。
  283. 佐野進

    佐野(進)委員 ともかく副総理の見解は、私どもから言うと非常に甘いというように判断をせざるを得ない実績があるわけですが、しかし、まあいい方面にいくということでありますから、別にそれを否定する必要はございません。だがしかし、そこにいかなかったとき、期待の外れた国民が多く迷惑をこうむることになるわけでありますので、これらについてはよほど慎重に対応していただかなければならぬと思うわけでありますが、大蔵大臣、いまの福田さんの見解にどうお感じになりますか。
  284. 大平正芳

    ○大平国務大臣 私どもの方でも景気の動向につきましていろいろな角度から検討をいたしておりますが、いま副総理がおっしゃったように輸出が活気を呈してきておるということ、それから最近、二月へ入りまして、日銀券が一けた台の増発ではございましたけれどもこれが二けた台に二月になって増加してまいっておりますことは、末端の経済活動の実態を反映しておるのではなかろうか。さらに雇用の面では時間外労働に対する需要がやや強まってきたというような非常に明るい徴候が見えるわけでございます。  一方また、最終需要、消費の動向も足取りは非常に遅々たるものでございますけれども、着実な増加を見ておることもまた事実でございますが、ただ民間の設備投資というものが非常に冷え込んでおりまして、これがどのような動向を示すかというような点については、いま非常な注意を持って見ておるところでございまして、総じて全体の基調といたしましては明るい方向に転じてきつつあるのではなかろうか、またそれを促進するように政策で仕向けていかなければならぬのではないかと考えております。
  285. 佐野進

    佐野(進)委員 通産大臣、あなたは積極的に景気浮揚に取り組まれたということについて私も認めるわけですが、しかし四次にわたる不況対策、そのたびごとにこれをやれば、これをやればと言いながら、結果的に昨年はその試みが失敗したと言ってもいいような状態で新しい年を迎えておるわけであります。あなたはそういう意味において、いま両大臣が述べられたことに対して、これからことしの景気対策についてその両大臣の見解に対して確信を持って対応して施策を講ずることができますかどうか、見解を聞いておきたいと思います。
  286. 河本敏夫

    ○河本国務大臣 五十年の景気回復は計画のようにいかなかったことは事実でありますが、しかしこの点につきましては、先ほど副総理がお述べになりましたように、世界的な事情それから日本の貿易関係、こういうことが大きな原因であったわけでありますけれども、最近はこの世界の経済情勢も大分よくなっておりますし、それにつれて貿易関係もだんだんと明るくなっております。特にプラント輸出は非常に大きく伸びが期待される、こういう状態でもございますので、私はことしは予定どおり景気の回復ができるのではないか、こう考えております。
  287. 佐野進

    佐野(進)委員 三大臣から景気の見通しについてその見解を聞きました。以下、具体的な問題について、それに対応するような状況の中で施策を進めてもらいたいという願いを込めながら質問を続けてみたいと思います。  第一に、独禁法改正の問題であります。御承知のとおり昨年の通常国会の最後、ついに参議院において廃案になりましたけれども、衆議院は五党修正案が通過をいたし、その後、総理以下各責任ある立場にある大臣は、通常国会には必ず出す、こういう説明がなされておるわけであります。しかるに、今日すでに通常国会が召集されてから二月になろうとする、いわゆる昨年末から言うならばもうまる二月たとうとする現段階の中において、いまだこの手続をどう進めておるかということについて政府の熱意というものをいささかも感ずることができない状況にあるわけであります。特に公取委員長、積極的に推進されたと言われている公取委員長は辞職され、新しい公取委員長が選ばれておるという形の中で、公取の姿勢もまた退却したのではないかという疑問さえうかがわれるような状況であります。しかし、この独禁法改正は国民の願いであり、政治の最大の課題であることはいまもって条件としては変わりはないと思うわけであります。  したがって、この問題に対する、今国会において提出し成立させるという、その政府当局の見解をいま一度この機会に明らかにしてもらいたいと思うわけでございまして、福田総理並びに公正取引委員長並びに植木総理府総務長官の見解を伺っておきたいと思います。
  288. 植木光教

    植木国務大臣 独占禁止法の改正につきましては、時代の要請にこたえますために節度のある自由経済体制を堅持する必要がございまして、そのためのルールづくりといたしまして必要であるという考え方には変わりはございません。したがいまして、この改正案はただいま自由民主党との間に調整を行っているところでございまして、御承知のとおり、与党でございます自由民主党の中の調査会は今年に入りましてすでに九回にわたって会議を開き、検討を進めているという状況でございます。したがいまして、私どもは政府・与党間で調整を行いました上で、できるだけ早く提出をいたしたいと考えております。
  289. 福田赳夫

    福田(赳)国務大臣 ただいま総務長官からお答え申し上げたとおりでございますが、あれは前の通常国会末期に参議院で行き詰まったわけであります。あの参議院での行き詰まりはいろいろ事情があったようでありますが、特に自由民主党の中でも異見が出てきた、こういうことが原因の大きなものになっておる、そういうふうに見るわけでありまして、そういうことを回顧しますと、この独禁法の改正案を成立せしむるためにはやはり自由民主党内の意見の統一を図る必要がある、そういうふうに考えまして年末から意見の調整の段階に入っておる、こういうことであります。鋭意この調整を進めまして、今国会におきましてはぜひ御審議を願いたい、かように考えております。
  290. 橋本徳男

    ○橋本(徳)政府委員 独禁法改正問題ということは、独禁法を扱っている者にとりまして基本的に非常に大きな問題でございます。ところが、御承知のように、うちの機構、構成が現在委員長不在という形になっております。したがいまして、基本的に大きな問題の意思を決定するのに、委員会として不規則な状態においての意思決定というものはするべきではない、間もなく委員長もおいでになることでございますので、その段階でこの問題につきましての公取の正式態度を決めたい、こういうふうに考えておりまして、現段階におきましては直ちに公取の意思を表明するのは差し控えさせていただきたい、こう考えております。
  291. 佐野進

    佐野(進)委員 新しい委員長は昨日本会議で決まりましたが、私ども関係者で集まりまして協議をいたしました結果、好ましくない結論を出す、いわゆる本問題に対して消極的な取り組みをする委員長でないかという判断をしておるわけであります。この委員長が来てから相談するといういまの委員長代理のあいさつは、公取の姿勢が全くこの問題に熱意を喪失しておるのだ、こう判断せざるを得ないと思うわけであります。  福田総理は、いま自由民主党の内部の調整が終わり次第と考えを述べられましたけれども、自由民主党の内部の調整はさることながら、政府の機関は一体どこがこの問題の取り扱いに当たっているのか。総務長官は前回の処理が終わった後、この問題についていささかも総理府の中で取り扱いをしているという状況でないということは、私どもが聞いておるところであります。とすると、政府は結果的に調整が終わったら今国会に出す。今国会は、先ほど申し上げましたとおり、もう三月になろうとしておるわけであります。そういたしますと、また五月ないし六月の末という形になりますと、結局日切れになって提案をしない、調整が整わなかった、独禁法はまたまた改正はでき得なかった、こういうことで締めくくりをするということ以外に判断することができ得ないわけでありますけれども、自由民主党の調整ということに対して、政府は全面的にその調整が終わるまで待つのか、あるいは責任ある部署を設けて、その部署が積極的にそれとの調整を行うべく活動を開始するのか、その活動を開始する部署は一体どこなのか、この点、政府の責任ある立場において明確に答弁いただきたいと思います。
  292. 植木光教

    植木国務大臣 独禁法改正問題についての昨年の成案を得ましたのは、申すまでもなく総理府においてでございます。したがいまして、その後の作業は一向にやっていないではないかというような御指摘がございましたけれども、ただいま行われております与党の調査会の会議の席上には、総理府から担当者が出席をいたしまして、必要に応じましていろいろな点について説明などもいたしているのでございます。したがいまして、私どものこの問題についての熱意はいささかも変わりがないのでございまして、総理府におきましてこの改正案取りまとめを与党とともに行ってまいるという手順でございます。
  293. 佐野進

    佐野(進)委員 それでは、この法案提出の時期はいつごろまでにするということですか。これは総務長官ですかあるいは副総理ですか。
  294. 植木光教

    植木国務大臣 先ほど申し上げましたように、できるだけ早い機会に行いたいということを私どもも考えておりますし、また政府・与党といたしましてもきわめて精力的に、一週間のうち四日間かけまして協議を続けている状況でございます。したがいまして、現在何月何日ごろということを申し上げることはできませんけれども、できるだけ早い機会に出すという姿勢でございますから御理解をいただきたいと存じます。
  295. 佐野進

    佐野(進)委員 副総理のこの点についての決意をもう一度はっきり、いつごろまでに出すということについての希望を含めてひとつ言明してください。
  296. 福田赳夫

    福田(赳)国務大臣 いま、いつごろまでにということを申し上げられる段階でないのです。ありませんけれども、ただいま総務長官からお答え申し上げましたように、鋭意努力いたしまして、なるべく速やかに御審議を願えるようにいたしたい、かように考えます。
  297. 佐野進

    佐野(進)委員 次に、付加価値税の導入問題について質問します。  副総理は、付加価値税は中期財政見通しの中においてはこれは断じて考えていない、こういう見解であると言われております。そういたしますると、中期財政見通しは御承知のとおり五カ年であります。五カ年間この問題が、いわゆる財政問題としては対象としてこれを導入するということはない、こう判断してよいと思うのでありますが、大平大蔵大臣の見解を聞いておきたいと思います。
  298. 福田赳夫

    福田(赳)国務大臣 私、きのう本会議でお答え申し上げましたが、中期財政見通し、またそれのもとになる中期経済計画、その前提といたしまして付加価値税を導入するということはいささかも考えておらぬ、こういうことを申し上げておるわけでありまして、付加価値税の導入問題、そういう問題は、これは前提としては考えておりませんけれども、いろいろ各界に意見のある問題ですから検討課題になる、こういうことはあり得るわけです。いま前提として考えておらぬということを申し上げておるわけであります。
  299. 大平正芳

    ○大平国務大臣 中期の財政収支の試算でございますが、あれは政府が考えておりまするような、公共投資でござい、社会保障でござい、そういった歳出需要というものを一方において満たし、一方においていわゆる特例債からわが国財政の脱却を図るということを同時に満たしていくためには、この程度の増収を考えなければなるまいという、一つの数字的な試算でございます。しかしこの増収は、今後経済の推移によりまして自然増収でどれだけ実現できるのか、あるいは増税を、あなたがおっしゃるように考えなければならぬのか、あるいは国民の財政思想のいかんによりまして歳出をもっと切るべきじゃないかという議論が強くなりますか、いずれにいたしましても、これをどのようにして埋めていくかということにつきましては、この財政収支試算は何も答えていないわけでございます。という意味は、これからこの試算を一つの手がかりとして、各方面の御討議もいただきながら検討していこうというのが、いまの政府の姿勢でございます。  したがって、付加価値税の問題というのも、確かに仰せのように検討の材料になるかもしれません。なるかもしれませんけれども、いままでのところ政府は、どこに対しても付加価値税を採択するつもりだとか、付加価値税について税制調査会の検討を求めるとかいうようなことはいたしていないわけなんでございまして、もっとオープンに、もっと虚心に、この歳入問題というものについて検討を重ねていかなければならぬということを真剣に考えておるにすぎないということでございます。
  300. 佐野進

    佐野(進)委員 この付加価値税が、中期財政見通しというか財政収支試算の中に占めるウエートというものが非常に強いことは、だれもがはだをもって感じておるわけですね。そう感じておるとき、副総理がこれは前提で考えていない、こう言われれば、付加価値税はこの五年間の中期見通しの中には入らないんだという希望が起きてくることは当然であります。だから私はいま大蔵大臣に、その希望を、国民が得た希望を確認することができるのかということをお聞きしているわけです。副総理と同じだということであれば同じだということでも結構なんです。
  301. 大平正芳

    ○大平国務大臣 いまから検討して答えるべき課題であるわけでございまして、いま前広に答えられるような性質のものではないということは、あなた重々御承知のとおりです。
  302. 佐野進

    佐野(進)委員 ですから、これはこれで時間をまたとるわけにいかないので、いまの答弁は先ほどの福田総理の答弁と一緒に相関連いたしますると、この中期見通しの中にいまは考えてないけれども、当然検討の課題の一つであるというように考えておるんだ、そう理解していいか悪いか。よければ答弁しなくてもいいし、悪かったらひとつ答弁してください。
  303. 大平正芳

    ○大平国務大臣 検討の対象にしないと政府は考えておるわけじゃございません。
  304. 佐野進

    佐野(進)委員 次の質問は、中小企業の不況対策の現状について幾つかの点について質問してみたいと思います。  御承知のとおり、ことしの一月の倒産実例は、去年の実績に対して相当大幅に増加をいたしておるわけであります。一千七十五件ということは、去年に対して八%の増である。こういう形の中で倒産の危機にさらされている中小企業は、あるいは大企業の一部もそのような状況下にあろうと思うのでありまするが、非常に多いわけであります。大企業は政府の諸機関挙げてこれを助ける、あるいは同業相助け合うという形の中でしのぎますが、中小企業は結果的に倒産させられてしまうというような状況の中で、深刻な事態を迎えつつあることは御承知のとおりであります。  そこで、幾つかの点について質問してみたいと思うのでありまするが、過日、田中委員が本席上においても鋭く追及をされておりましたが、倒産の原因一つに、いわゆる銀行協会の機関である手形交換所における処理のミスによってその事件が発生をするということが明らかにされました。  大蔵大臣に質問いたしたいのでありまするが、私も実はこの問題について、小さな、本当に七人か八人ばかりの小さな零細企業の経営者がこの銀行ミス、取り扱いの粗漏さによって倒産一歩手前まで行った事件についてたまたま話を聞き、関係当局の協力を得る中でその倒産を防ぐことができたわけでありまするが、その経験を通じて感ずることは、手形交換所の現在の機構に改正、改変を加え、政府がもっと積極的にこれに関与し、この関与する中で中小企業の倒産が銀行側のミス、金融機関のミスによって引き起こされるというがごときことは断じてない積極的な対策を立てるべきだと思うのでありまするが、大蔵大臣の見解を聞いておきたいと思います。
  305. 大平正芳

    ○大平国務大臣 銀行の取り扱いのミスによりまして不渡り報告が行われた例がありますことは、たとえ手形交換制度の中で事務量が膨大でございますとか、時間が非常に切迫しておるとかいう中でのことであるということは遁辞にならないと思うのでございます。仰せのように一つの誤りも重大な結果をもたらすわけでございますので、金融機関におきまして十分これの改善の方法を考えなければならぬわけでございまして、従来もこれにつきまして若干の、たとえば二月六日には手形交換所から各金融機関に厳しい通達が出ておりますことは御承知のとおりでございまするし、銀行協会は専門の研究会を設けまして事務処理体制の改善を検討いたしておりまするし、また各銀行内部の相互の牽制、チェック、あるいは二重のチェックの制度を工夫いたしましてミスの防止に努めておりまするし、あるいは機械の活用でその防止を図るとかいうようなことはいま鋭意やっておるわけでございますけれども、なお検討を重ねて、より有効な手段はどしどし採択していかなければならぬものと思っておりまして、大蔵省としても鋭意その推進に当たるつもりでございます。
  306. 佐野進

    佐野(進)委員 大蔵省が積極的に対処していることを私は否定するのじゃないのです。ただ、行政的にこれに対するいま少しく介入するというか、指導するというか、あるいはそれの指導の中で、このような事故が再び起こらない、そういう対策を立てるべきではないか。そういう積極的な取り組みについて、報告を聞くというのではなくして、積極的に対処していく、介入していく、そういう点について検討する気持ちがあるかないかということを聞いておるわけです。
  307. 田辺博通

    ○田辺政府委員 ただいま大臣から答弁申し上げましたとおり、いままでのミスの発生の原因とかなんとかというものをよく分析しろということを言ってありまして、これは御承知と思いますけれども、東京手形交換所の例で申しますと、東京銀行協会の中の一つの機構でございますので、銀行協会に対しまして厳しく指摘をしておりまして、それによってそれぞれの研究会をつくって検討していく。その後どういうぐあいになっているかというのはやっぱり関心を持って、そしてなお、私ども本当は専門家でございませんのであれですけれども、公の立場から言うべきことがあれば言う、こういうことで指導もしてまいりたいと思っております。
  308. 佐野進

    佐野(進)委員 大臣、わかっているんです。だから、私の言わんとするところは、その銀行協会の手形交換所ですね、この運営に対して行政的にいま少しく積極的に、あるいは法律的にということが適当かどうかわからないけれども、この手形交換所あるいは銀行のミスによって発生した倒産件数が、あるいはそれに関連した犠牲者が非常に多いという現況の中において、いま銀行局長が答弁になった程度でなくして、いま少しく積極的な姿勢を示してください、こういうことを、先ほどから私はこの質問は願いを込めてと、こういうことを言っておるわけですから、多くの中小企業者が期待しておるその期待にこたえてひとつ答弁してください。
  309. 大平正芳

    ○大平国務大臣 一層周到にかつ積極的に手形交換所並びに銀行協会等の指導に当たるつもりです。
  310. 佐野進

    佐野(進)委員 次に、金融問題について質問をしてみたいと思います。  御承知のとおり、中小企業金融が中小企業対策の中に占めるウエートはきわめて大きいわけであります。したがって、中小企業問題と言えば金融かと言われるほどこの問題に対しては大きく評価されておるわけであります。したがって、政府も積極的にこの面に対して対応されておる、その努力に対して、私も否定するものではございません。だがしかし、現下の情勢下において、その努力にもかかわらずいまなお幾多の不十分さが目立っておるわけであります。  以下、それらの点について指摘をしてみたいと思うのでありますが、まず政府系金融機関前年度対比本年度のそれぞれの伸びがきわめて少ない。不況が深刻化しているにもかかわらずこれに対する伸びがきわめて少ない、こういう点について不満を持つものでありますが、通産大臣、大蔵大臣の見解を聞いておきたいと思います。
  311. 大平正芳

    ○大平国務大臣 去年に比べてことしの中小三機関の貸し出しが積極性を欠くと申しますか、増加割合が少ないじゃないかという御指摘でございますけれども、私は実はそう考えません。去年の秋早々と四千八百億の追加枠も設定いたしまして、必要にして十分な資金は三機関に用意いたしたつもりでございます。いま、佐野さんも御案内のように、経済界におきまして設備投資需要その他資金の需要自体が旺盛なものではないことはあなたが御承知のとおりでございまして、去年からことしにかけての越年もきわめて平静に、平穏に推移いたしておるわけでございまして、三機関からも、非常に原資が少なくていまその対応しにくいという声は私ども聞いていないわけなんでございまして、重々この三機関の持っておる任務の遂行には支障を起こさしてはならぬということで、いろいろ、公庫はもとよりでございますけれども、私どもの方も通産省の方も非常に気をつけて配意いたしておるつもりでございますが、何かまだ足らぬところがありましたら御指摘をいただきたいと思います。
  312. 佐野進

    佐野(進)委員 私どもが中小三機関に対して貸し出しの要請を受けて折衝している限りにおいては、まだ不足しておるようでありますが、なお大蔵大臣の方ではそういうような意向だそうでございますので、一層私どもも調査をしながら、不足であるという認識に基づいて努力をしてみたいと思います。そういうようにまた大蔵大臣も努力をしていただきたいと思います。  次に、民間の金融機関でございますが、この問題については、いわゆる拘束性預金の問題であるとか、あるいは国債発行に基づく、あるいは地方債発行に基づくところの圧迫等々から金融事情が非常に苦しくなっている、こういうようなことも一部聞いておるし、いままた大臣の言われるように、金融が緩んだ形の中で、そうではないというような見解もあります。私どもは、しかし、七兆三千億近い二千七百五十億のこの公債が発行され、前年度と比較いたしますならば、やはり大変な金融逼迫の情勢が出てくるのではないか、こういうような気がいたすわけでございまして、拘束性預金についての大蔵省調査が、この資料によればきわめて甘いというようにも思われますので、さらにこの面についてはひとつ一層努力をされるようこれは要望をしておきたいと思います。  特にこの際、質問をして明らかにしていただきたいことは、都市銀行、地方銀行等においては金がだぶついてくると中小企業に貸し付ける。だぶついてこなくなると中小企業からいち早く吸い上げる。こういうような形の中で、中小企業がそのためにいわゆるつぶれなくてもいい状態の中で倒産をしていくというようなこともあるわけでございますが、こういうような状況に対しては、一定割合を中小企業向けにその枠を確保する、好況、不況にかかわらず枠を確保するというような指導をする必要があるのではないか。特に不況下においては、その枠を中小企業向けとしてそれぞれの銀行が確保しておくことについて政府が指導をするということは絶対必要ではないかと考えるわけでありますが、この点についての大臣の見解を聞いておきたいと思います。
  313. 田辺博通

    ○田辺政府委員 お答えいたします。  中小企業金融につきましては、都市銀行、地方銀行、相互等につきましてかねてから、いつもやはりしわを寄せられる関係にあるわけですから、そこに十分配慮するようにということを指導してまいっておるわけでございます。  先生の御質問は、あるいは法律的に一定の枠を義務づけたらどうかというようなことではないかと思いますが、いまのところ私ども考えますのに、やはりこれはそのときの資金需要の状況とかあるいは当該銀行の資金の事情あるいは得意さんの関係、そういうものがありますから一律にはなかなかいかないのではないかと思います。そういうわけでございますから、もっと弾力的な方法といいますか、やはり行政指導というような方法で常にそこに目を光らして指導を強めていくというのが一番適しているのではないかと思っております。
  314. 佐野進

    佐野(進)委員 大臣、局長の答弁は、そのことは必要だけれども若干いまなおいろいろ調整を要する問題もあるからという答弁なんですね。しかし、そのことの必要性は否定していないですね。そういうような方面に、これはいますぐできるということではないか知らぬけれども、いわゆる努力するということは、中小企業金融を確保するという意味において、あるいは都市銀行の健全なる運営を促す意味において必要なことではないかと思うのですが、その見解をひとつ示してください。
  315. 大平正芳

    ○大平国務大臣 要するに問題は、目的は中小企業金融が充実した状況において必要資金が確保される状況をつくり出さなければいかぬわけでございますので、画一的に幾ら幾らを押しつけるということになりますと、地域によりまして、また金融機関によりましては、そういう画一的な枠組みを押しつけること必ずしも実態に合わない。問題は中小金融が円滑に疎通できるような状況に常に注意をして、目的を達することが大事ではないかという趣旨を銀行局長は申し上げたと思うのでございます。私どももそういう意味で、金融というのは非常にむずかしい仕事でございますので、そう画一的にいかぬと思いますけれども、御趣旨は十分体して指導に当たってまいっておるつもりでございますけれども、一層注意は怠らないつもりでおります。
  316. 佐野進

    佐野(進)委員 次の問題は、いま中小企業が最も求めておることは仕事の確保であり、さらにまた、その仕事を円滑に行うに必要な条件であろうと思うのであります。幾つかの問題点を持ってまいりましたが、時間の関係で省略せざるを得ませんので、二、三の問題について質問をしてみたいと思います。  まず第一は、建設大臣に質問をしてみたいと思うのでありますが、いわゆる政府の不況対策の柱は公共事業であり、減税はそのために切り捨てられた、こういうような形の中で、その公共事業がそれぞれ歩み出しておるわけであります。しかし、私は、この中で政府がこの不況対策の柱として常に住宅建設ということを言っておりながら、その効果が余り顕著にあらわれていないということについてきわめて不満に感じておるわけであります。たとえば今日、製材業界あるいは合板業界等住宅建設によってそのなりわいを立てているところの多くの中小業者が、かつて百九十万戸にも近い建設戸数が、いま百三十万戸ないし百四十万戸程度で鎮静している。こういうような形の中で、その存立の基盤が大きく揺らいでおるということは、あなたも御承知のとおりだと思うのであります。  公共事業は道路をつくることであり、橋をかけることであるということも公共事業としての一つの目的であろうけれども、これはともすると、大企業優先と受け取られやすい。しかし住宅建設は、その面からすれば多くの住宅を購入することに対して希望を持つ人たちに夢を与えることであり、それにふさわしい、いわゆる景気対策としてふさわしい一つの大きな事業ではないかと思うのでありまするが、これに対してはきわめて消極的であると感ぜざるを得ない面が幾つかあるわけでありまする。建設大臣の見解をこの際聞いて、公共事業の中に占める住宅建設部門に対する熱意をひとつ明らかにしてもらいたいと思うのです。
  317. 竹下登

    ○竹下国務大臣 佐野委員にお答えをいたします。  確かに、住宅建設の促進が景気対策としてもきわめて有効であるということは、委員御指摘のとおりであります。そこで、いわゆる住宅建設意欲という問題を促進するにつきましては、最初佐野委員の御質問に答えて副総理から総括的な答弁がありましたが、いよいよ建築に着手した場合、あるいは途中で物価の高騰等によって非常に不安定な要素があってはならないとか、そういう社会的、経済的、広範な安定的環境があって初めて潜在した住宅需要が顕在化してくる、これは総論的にはそう考えざるを得ないと思うのであります。しかしそれは、そうした経済の見通しの中で、私はそうした環境は逐次整備されつつあると思っておるところであります。  したがって、これを具体的な今日の課題として、この購買力を増大させるための施策といたしましては、委員御承知のように、住宅金融公庫融資の拡充であり、そうして民間住宅ローンの拡充であります。なかんずく、この公庫融資につきましては個人住宅融資に重点を置いて予算を計上しております。確かに住宅一戸建てますと、大体総需要を喚起するのが、建築費そのものの二・一七倍あるいは二・一八倍とも言われておりますので、すそ野の広い産業でございますだけに、特に公庫融資の個人住宅融資について重点を置いておるわけであります。しかし、幸いにして、この民間住宅ローンにつきまして、昭和五十年度においては、過去の年に比べまして、だんだん格段の増加をいたしておるわけであります。  私自身もいわゆる民間住宅ローンの問題についてちょっと調べてみまして、数字を申し上げますと、昭和四十九年は合計で、すなわち三月、完全な年度いっぱいで一兆九千九百七十五億になっておりますものが、五十年度では十二月末でおおむねそれに見合う一兆九千八百七十一億円、こういうことになっておりますのも、私は、この財政当局の住宅ローンに対する行政指導等のあらわれではないかというふうに見ておるわけであります。  したがいまして、今年度におきましても、当委員会においても御指摘を受けたところでありますが、いわゆる補正後に比べれば四万八千戸少ないではないか、こういう議論もございましたが、当初予算に比べますならば、二万三千戸というものをあらかじめこの予算ベースでもふやしていただいておるわけであります。  これは私の権限ではもとよりございませんけれども、いま御審議をいただいております予算総則の中において、予見しがたい経済事情の変動によって、この事業資金の増額を必要とする特別の事情を大蔵大臣がお認めになった場合には、公庫融資等のいわゆる枠の拡大ということも弾力条項としてあり得るわけでございますので、住宅需要の情勢に適応する必要があれば、そうしたこともまた私の方からもお願いをしなければならぬと思っておるわけでございます。  いずれにいたしましても、私も五十年度予算の消化を一〇〇%行いたい、これがまあ理想でございます。しかし残念ながら、公営住宅等については返上があって、かなりの金額が不執行に終わる、そういうことに対してもやはり大きな反省を持って、総合的な対策として推し進めていかなければならぬと、このように考えております。
  318. 佐野進

    佐野(進)委員 大蔵大臣、いまのお話でもわかるとおり、住宅産業の持つすそ野の広さは、多くの人たちに仕事を与えることになるわけでありますが、いまの建設大臣の見解に対して一言、ひとつ所感を述べていただきたい。積極的に対処すると言明していただきたいと思います。
  319. 大平正芳

    ○大平国務大臣 建設当局の御要請はできるだけ充足できるように配慮せねばならぬと思いますし、同時に、ひとり公共資金ばかりでなく、民間資金の住宅ローンその他への導引につきましても、精力的に推進してまいるつもりでございます。
  320. 佐野進

    佐野(進)委員 次に私は、御承知のとおり、中小企業の問題を論ずる際とかく忘れられがちでありながら重要な問題として存在しておるのが、いわゆる中小企業に働く人たちあるいはともに働きつつある小規模零細企業の人たちの存在だと思うのであります。この人たちに対する対策としては、御承知のとおりいろいろの面からとらえておるわけでありますけれども、中小企業の経営者ないし働く人たち、いや全労働者と言った方が適当であるかもしれませんけれども、三千数百万人のうちに二千数百万人ある、この人たちが労働組合にも加盟しない、加盟することのできない状況の中で合理化、首切りあるいは失業、その他いろいろな不安の中に日を送っておるわけです。したがって、労働行政のこの面に対する対策というものはきわめて重要であろうと思うし、また関係者からは常に多くの要請を受けておられると思うのであります。  昨日の総理の答弁の中で、年内においていわゆる完全雇用は可能である、こういうような言明等もあったやに私どもは聞いておるわけでありますが、労働省として、今日の雇用情勢並びに中小企業労働者に対する対策、福祉を含めてその方針をひとつお示しいただきたいと思うのであります。
  321. 長谷川峻

    ○長谷川国務大臣 まあいまの一番問題は、何といっても景気の浮揚と雇用の安定でございます。そうしたときに、こういう長引く不景気の中では、おっしゃるとおり中小企業の方々が一番先に痛手をこうむる、そういうことでございますし、そのためにこそ、私たちが毎日こういう御議論をお伺いし、また全国のいろいろな統計なども見、職安の話なども聞いておるわけであります。  そこで、何といたしましても、労働基準法なりあるいはまた雇用保険法、持っておる法律をフルに活用しましてやっていくということが一番大事じゃなかろうかと思いますし、さらに今度の国会でお願いしたいことは、企業倒産によって賃金が未払いのままになる、そういう問題に対しましては賃金の支払いの確保法案を今度出して、そういう面からもひとつ大いに保護と申しますか、元気づけをしていきたい、こう思っております。  先ほど副総理、大蔵大臣からお話もありましたように、毎日の情勢を見ておりましてもそうですか、幸いなことに、総合経済政策の推進が進むことによりまして、一月の製造業の残業時間が二年四カ月ぶりにアップされたというところを見ましても、私たちは曙光を見出し、その中に推進していく問題があるのではないか、こう思って、将来ともに万全を期してまいるつもりでございます。
  322. 佐野進

    佐野(進)委員 次に、官公需の問題について質問をしてみたいと思うわけであります。  政府は、五十年度は三二・九%を政府発注の仕事についていわゆる中小企業に振り向けるという方針を決め、本年度は五〇%にするということを総理も言明されておるようでございます。この目標達成が可能であるかどうかという点について、これはだれがよろしいのですかな。
  323. 河本敏夫

    ○河本国務大臣 中小企業に対する官公需の発注の割合はだんだんとふえてきております。昨年は三〇%、一昨年は二七%でありますが、ことしは約三三%でございます。府県の発注状況が七〇%以上になっておるということを考慮いたしますと、中央、地方を通じますと大体五〇%、こういうことになるのです。ただ、先般総理が将来は五〇%を目標にしたいということを言われましたのは、中央だけで五〇%を目標にしたい、こういう趣旨であったと思いますが、私どもも、一度にはそこまではまいりませんけれども、あらゆる機会をとらえましてこの割合がふえるように努力をいたしておるところでございます。
  324. 佐野進

    佐野(進)委員 これは中小企業問題としてきわめて重要な課題であります。各要望の中においてもこの問題が出るわけでございまするが、しかし、ここでいわゆる官公需に対するところの発注の方法は、会計法二十九条六の第一項によって行われているわけでございますけれども、この場合、最低価格がともすればダンピングされる。受注したくとも、ダンピングされた価格で受注を受けたのでは結果的には赤字になる、辞退せざるを得ない、結局大手がとる、こういうような形の中で処理をされているやに私ども多くの中小企業者から聞いておるわけであります。この種問題についてはおわかりでないと思いますけれども、十分御調査の上、そのようなことのないようにひとつ対応していただきたいと思います。  さらに建設業等の場合におきましても、これは建設省きわめて積極的にこの問題については指導をなされておるようでございます。しかし、もう問題にならないような小さな仕事まで大手がこれをとるというような事態等もありますので、指導はされておりますけれども、今後積極的にひとつ対処していただきたいということを、これまた建設省に対する要望を申し上げておきたいと思います。  次に、下請企業の問題でありますが、この下請企業については特に建設関係において多いわけでございますけれども、大手が受ける、その大手の下をまた大手が受ける、その下を中堅が受ける、その下を中が受ける、それをさらに小が受けるという形の中で、実際に仕事をやるのは四段階ないし五段階下の人たちがやっているような状況も間間見受けることができるわけであります。これは全く人権というか企業倫理というか、そういうものが無視された形の中で、下請零細企業の人たちが困難な状況の中でその仕事をやらざるを得ないし、その苦情の持っていきどころもなかなかないわけであります。したがって、これらについてはひとついま少しく実情調査の上、積極的なる対応をしていただきたいということを、これまた要望でございますが、総括して通産大臣からこれらの問題についての見解をお示しいただきたいと思います。
  325. 河本敏夫

    ○河本国務大臣 いまお話しの点は大変大切な点だと思います。建設省等とも十分連絡をとりまして御指摘の点は今後配慮してまいりたいと思います。
  326. 佐野進

    佐野(進)委員 次に、私は中小企業問題の中で最も大きな問題となっておる点について質問をしてみたいと思うわけであります。  その前に、これに関連いたしまして、いま通産省が積極的にその対応をしながら結果的に地方公共団体の財政難のためにそれが行われることのできないという状態に陥っている事業があるわけであります。それは御承知のとおり近代化、高度化についての問題であります。中小企業庁ないし通産省がかねや太鼓でそれが最大の事業であるがごときことを宣伝し、またその宣伝するにある程度ふさわしい仕事であることを私も否定するわけではございませんが、しかし、結果的にその事業を高度化事業として認定し、それによって中小企業振興事業団が金を渡したとしても、都道府県負担分がこれに対応され得ないという形の中においてその事業が行われない。特に繊維の構造改善事業は事業団が六〇%、都道府県が一〇%という形の中において、そういうような状況が一〇%の負担金さえ都道府県が出すことができないために構造改善事業が行き詰まっているという状況を私も聞くわけでございます。これらに対しては都道府県負担分に対して政府が積極的な措置をおとりになる必要があると思うのでありまするが、これについての見解をひとつお示しいただきたいと思います。
  327. 河本敏夫

    ○河本国務大臣 高度化問題のうち一般の事業につきましては、これは中央と地方との負担分が決まっております。しかし、府県の財政事情から非常に困るということで、四十九年度からは府県負担分については起債が認められる、こういうことになっておりますし、それから先般法律の改正をしていただきまして、数府県にまたがる近代化事業、高度化事業等につきましては特別の割合を政府が負担する、そういうことにしていただきました。  それから繊維の問題につきましては、地方の負担分は非常に少額でありますけれども、御指摘のように数府県におきましてこの少額の負担を府県ができないために流れたという例もございますので、この点につきましては、今後関係方面と十分折衝いたしまして何とか解決の方法を考えていきたい、こう思っております。
  328. 佐野進

    佐野(進)委員 それでは次に、分野調整の問題について質問してみたいと思うのであります。  すでに、中小企業の分野を確保しろ、調整しろという問題につきましては、各方面においてその声が高まり、国会の中におきましても、昨年の七月四日、商工委員会におきまして全会一致をもって、「大企業が中小企業の分野へ進出し、深刻な影響を及ぼしている実情にかんがみ、中小企業の事業分野確保のため、早急に立法措置を検討すること。」このような決議が行われておるわけであります。にもかかわらず政府当局は、この商工委員会満場一致の決議、委員長発議による決議にもかかわらず、いまなお分野調整に対しては消極的な姿勢を示しておるわけであります。そして、消極的な姿勢を示すだけでなく、この問題に対しては、事業転換法を提案する形の中において、長期不況下におけるところの中小企業者に対してはこれを切り捨てると誤解されるがごとき状況の中において対応しようとしておるわけであります。中小企業者の願いが分野調整の実現であるとするならば、通産当局の目標は中小企業の切り捨てである、このように巷間言われておるわけでありまするが、この二法の問題について、通産大臣の基本的な見解をまず最初にお伺いしておきたいと思うのであります。
  329. 河本敏夫

    ○河本国務大臣 分野調整の問題は、これは私は中小企業問題の最大の課題である、こう思っております。そういうことのために、先般も商工委員会でこのことについてのいろんな決議がされた、こういうふうに承知しておるわけでございます。  ただ、この分野調整を進めていきます場合に、法律によってこれを行うという場合と行政指導によって行う場合と二つあるわけです。通産省としてはきわめて真剣にこの問題と取り組んでおりますけれども、ただいままで総合的に判断をいたしました結果、法律によってこれを行いますと果たして今後その分野における近代化が進むだろうか、その場合に消費者の利益が確保できるだろうか、こういう問題も真剣に検討しなければなりませんし、それから業種指定を法律で決めます場合に技術的な問題等もあるわけです。これまでそういうことを考慮いたしまして、全力を挙げまして行政指導で、トラブルが起こりましたときにはこれを解決してまいりました。大抵の問題は行政指導で解決したと考えておりますが、今後はさらに紛争の発生をできるだけ早く掌握をする、こういうことには努めますと同時に、それから紛争処理機関を強化していく、こういう方法でさらにこれまでの行政指導を強化していくならば、通産省といたしましては十分これで対処できる、またその方が、当初に申し上げましたその分野における産業の近代化及び消費者の利益に適合する道でなかろうか、こういうふうにいま考えておるわけでございます。  それから、事業転換の問題は、これは高度成長から安定成長時代に入りますので、やはり事業の転換をしたいという業種が相当出てきておるわけです。そういう業種に対しましては、これは積極的に政府が資金面その他で援助していく、こういう内容でございまして、今度の通常国会に御審議をしていただくことになっておりますけれども、この事業転換法とそれから分野調整という問題は、これは別の問題でございまして、いずれにいたしましても、この二つの問題とも中小企業の当面する最大の課題と心得まして、いま全力を挙げて取り組んでおるところでございます。
  330. 佐野進

    佐野(進)委員 大臣、あなたはすでに何回か、前に前向きに検討するということをお約束してもらっておるわけです。さらに、それだけでなくて、中曽根前通産大臣ももう何年か前にそういうことについてその必要性を否定はしておらないわけです。さらに、各界、各般の情勢を判断してみるに、いまやまさに分野調整は、今日の不況下、低成長下における日本経済の中においてこれを制定することは絶対必要であるという、そういう空気になりつつあるわけです。  ただ、いまそれら空気であるにもかかわらず頑強に反対をしているのが経団連、通産省、中小企業庁、一部反対しているのは日本商工会議所、この団体にしかすぎないわけであります。通産省は本来中小企業者のためにその施策を行うという、その目的を持つ中小企業庁を通産省は抱えておるわけであります。したがって、中小企業庁が時代の変化に敏感に反応することのできる機能性、機動性を持つならば、今日いまなおかたくなにその門を閉ざすがごとき態度は断じてあってはならないと私は思うわけです  大臣、去年からことしにかけての一定の動きの中で、あなたの見解はいまだ変わらず、これからもいま言われたようなことについてその見解はお変わりになりませんか。この際、ひとつ返答を伺いながら、次の質問に入っていきたいと思います。
  331. 河本敏夫

    ○河本国務大臣 この分野調整の問題は、通産省、中小企業庁におきましても、中小企業政策の最大の課題である、その認識においてはいまの御意見と全く私は一致しておると思うのです。ただ、やり方といたしまして、法律でやるか行政指導でやるかというだけの問題だと私は思うのですね。  そこで、さっき申し上げましたように、行政指導でこれを行うというやり方を実情の早期掌握、それから同時に紛争処理機関の強化、この方法でやれば私たちは十分できると、こう思っておるのです。と申しますのは、過去に幾つかの紛争がありましたけれども、これはもう全部行政指導で解決したと思っております。でありますから、現在の体制を強化すれば十分これでできる、こういう判断でいっておるわけでございまして、分野調整問題に対してこれを軽視しておる、こういうことでは絶対ございませんで、最大の課題である、取り組んでおるという点については、ひとつ御理解を賜りたいと思います。
  332. 佐野進

    佐野(進)委員 なぜ中小企業者がこれほどこの法律を制定してもらいたいという願いを込めているか。来月の二十三日には日本における中小企業団体、全国的な主要なる団体全部が集まって協賛しあるいは主催してこの分野調整の法律を制定する大会を開催することになっているのです。いま反対をしているのは、先ほど申し上げたとおり正式な反対は経団連一つでしょう。日本商工会議所が消極的な見解を示しているとはいいながら、私はこの商工会議所の性格についてはいまここで議論する必要はない、いずれ機会を見て議論をしたいと思うのですが、本当に中小企業者のための団体であるかということに疑問を持たざるを得ない。大企業の会長がその会長になり、副会長がそれぞれ大企業において占められ、大企業の意図のもとに中小企業対策を行おうとして政府とタイアップをしながら中小企業の要求を避けようとするがごときことがあったとしたならば、これはもはや中小企業者のための団体だとは言い得ないとも思うのであります。  そういうような情勢の中で、あなたがいま言われたとおりいわゆる消費者の保護、利益が守られないということをまず第一言われるわけであります。消費者団体の皆さん方はそうは言っていないのです。大企業は中小企業の分野へ入るためにその持つ資本力と組織力とをもって分野を荒らす、荒らすまではダンピングして安く売る、しかし一たびシェアを掌握したならばいわゆる管理価格的な形の中において価格のつり上げを行うだろうということをおそれているわけです。近代化がおくれる、近代化がおくれるなどというがごときは断じてないと思うのであります、その指導のよろしきを得るならば。もちろん大企業と同じような形の中における近代化は通産当局の指導のない限りできないことは当然のことであります。しかし、それをあなた方はいま一生懸命やっておられるのでしょう。この団体の人たちがその近代化に乗らないというようなことを言っておる人たちは一つもないでありましょう。今日の大企業のいわゆるなりふり構わずその業域を広げようとする行動は目に余るものがあるではございませんか。いまここで、ロッキード問題の中であらわれている丸紅商法というものがどのようなやり方をやってそのシェアを拡大していったかということを、いまさら申し上げるまでもないのではないでしょうか。西武がタイ焼きにまでその大量生産方式で進出を試みようとしているとか、枚挙にいとまのない事件が日一日と発生しておるではございませんか。行政指導でこれらが解決しておるというがごときことは、断じてその一部であってすべてではないということを私ははっきりあなたに申し上げたいと思うのです。  いま一つの問題を申し上げてみましょう。あなたは日本におけるところの最も巨大なる企業である三菱重工という会社のあるのを御存じでしょう。一千六十三億余の巨大なる企業であるこの三菱重工が、零細小規模の企業あるいは中小の中においてもそれほど大きくない企業の中に殴り込みをかけて、いわゆる印刷業界、印刷をつくる業界に殴り込みをかけて、この殴り込みをかける形の中でたび重なる通産当局の勧告、要請をけって相変わらず勝手気ままな行動を続けておるではありませんか。すでに三年以上にわたってその行動を続けておるではございませんか。六十カ月、しかも一銭も金を取らないで、月賦でその生産物を売っておるではございませんか。中堅中小企業がそのようなことをやって太刀打ちできるわけがないではございませんか。結果的に倒産している企業がどれだけあるでございましょうか。その企業に働いておる人たちが血の叫び声を通産当局に持ってくる、通産当局も一生懸命努力をされる、通産当局の努力に対して会社当局は一顧だにも顧みず、たび重なる通達、指令に対して、それを無視して同じようなことを繰り返しておるではございませんか。このようなことは枚挙にいとまがないのであります。通産大臣が行政指導をもって事が足りるということは、行政指導をもってその目的を達することができ得ないで通産当局の役所、通産当局の職員の皆様方がどれほど苦労をしておるかということを、大臣であるあなたがおわかりにならないということはおかしいと思うのであります。あなたは職員の方に目を向き、中小企業者の方に目を向いているのではなくして、三菱重工の方に目を向いておるというほか言いようがないじゃありませんか。私はこの三菱重工の株式構成を見たら、三光汽船が、こんなことは言いたくはないでありまするけれども、何%かの株主になっているなんということを聞いて、あるいは大臣そのためにやっているのじゃないかと誤解したくなってしまう。これは誤解でしょうけれども……。もう少し温かみのある答弁をひとつここでいただけませんか。実例を一つ申し上げます。もっと詳しく言えと言えばまだあるのですよ。
  333. 河本敏夫

    ○河本国務大臣 この分野調整の問題は、先ほど来繰り返して言っておりますように、私どもは非常に大きな問題だと思っておるのです。最大の課題である、こう心得ております。そういう気持ちで取り組んでおるわけでございまして、決してこの問題が解決されないまま放置されるというようなことでは断じてよくない、こう思っております。ただ、いま直ちに法律を制定するということをしなくても、行政指導でこれまでの問題は大部分解決された。いまのお話では、ごくわずかしか解決されないで大部分は未解決だと、こういうふうにおっしゃいますけれども、大部分が解決されてきた、こういうふうに私たちは考えておるわけです。  三菱重工の印刷機械の支払い方法の問題、非常に有利な条件を出しまして一時市場を荒らしたということも承知しております。それに対しては、通産省といたしましては厳重に注意をいたしまして、そういうことのないようにいま指導をしておりますが、必要とあらば、いま中小企業庁の長官が参っておりますから、その後の実情について御報告さしてもいいと思っておりますが、とにかくできるだけトラブルが発生をしないように事前に十分にチェックをいたしまして、そして紛争処理体制を強化していく、それでやれるのではないか、私たちはこういう考え方でございますが、どうしても仮にやれないということであれば、これまた別の方法を考えなければならぬとは思います。  いずれにいたしましても、紛争処理という問題は最大の課題である、これはもう十分認識は一致しておるわけでございまして、とにかく紛争が起こらないように、起こりましても直ちにこれが解決できるようにあらゆる努力を傾けていく、こういう考え方でございます。
  334. 佐野進

    佐野(進)委員 公正取引委員会の方に質問したいと思うのですが、このように六十カ月の月賦販売、しかも現金を取らないで、支払いを猶予して、そして中小企業の分野に殴り込みをかけるような形で売り込み、販路の拡大を図るということが不公正な競争ということになりませんかどうか。これに対する取り締まりをする気持ちがあるかどうか、この際、見解を聞いておきたいと思うのであります。
  335. 橋本徳男

    ○橋本(徳)政府委員 私、その具体的な問題につきましていま直ちにここに持ち合わせございませんので、やり方によりましてはあるいは不公正な形にならないというふうには考えません。すなわち、やり方によりましては不公正になるおそれもございますので、実情をよく調査したいと思っております。
  336. 佐野進

    佐野(進)委員 大臣、時間がもう大分たちましたから、この問題だけで時間をとるわけにもいきませんので結論に入ってまいりたいと思うのでありますけれども、あなたがいわゆる調整で大部分解決したと、その大部分の事件について私も一応関与さしていただいておるわけです。それはそれは担当官が血のにじむような苦労をされておるわけです。その血のにじむような苦労を担当官がなぜされておるかと言えば、法律的に調整する権限がないのですね。単なる行政上の指導にしかすぎないのです。たとえば、あなた方がよく言われるところの団体法の中におけるいわゆる特殊契約の条項なるものは、私もずっと勉強してまいりました。結果的にこれを適用して調停をするということは不可能なんですね。だから、昭和三十九年いわゆる答申が出されて、これが法律になって今日まで一件もこの法律に基づくところの行為が行われていないわけなんです。どだいこの特殊契約なるものの条項をこの団体法の中に組み入れたこと自体に無理があるわけなんです。この法律の活用が行われ得て、その法律に基づくところの措置が適切に行われ得て紛争が処理され、調停が実現していると言うなら、あなたの言うことに対して私はそれほど強い反撃というか、反論をしないのです。しかし、実際上はそのことができ得ない状況の中で担当官は何をやっておるか、行政指導を直接権限のない形の中でやっておるわけです。いま新しく設けられようとする中小企業分野調整官は一体何の法律によって裏づけられているのか、各商工会議所等に配置されようとするところのモニターの人たちは一体何の法律によって財政的な措置を行い、この裏づけを行おうとしておるのか、特殊契約の条項のどこにその根拠を求めようとするのか、いま一つ一つこれらの問題について議論をいたしますならば時間がなくなりますから私は省略いたしますけれども、いずれにせよ、あなたがいま言われる調整的な機能を中小企業問題最大の課題としてお取り組みになろうとするならば、新しい法体系のもとにすっきりした形の中で大企業も発展し、中小企業もともに生きていくことのできる新しい法体系をつくることこそ望ましいのではないのでしょうか。私どもは大企業を打倒しろと言っているのじゃないのです。大企業がその事業活動を縮小しろと言っているのではないのです。大企業は節度ある行動をすることを指導するに足る法体系を通産省がお持ちなさい、持つことのできるような条件をおつくりになったらいかがですか、こういうことを申し上げておるのです。あなた方の立場を不利にしよう、あなた方の権限を弱めよう、そのために法律をつくろう、つくるべきだというようなことは一言も言っていないのであります。いま一度あなたのこの問題に対する、もしできるならば新しく設けようとする調整官あるいはまたその他モニターに対する答弁をいただきたいと思うのでありますが、それは恐らくおわかりにならないと思いますので、基本的な考え方だけについて見解をひとつお示しいただきたい。
  337. 河本敏夫

    ○河本国務大臣 この団体法に基づく特殊契約による調整がなかったということでありますが、これは大体全部一応話し合いで、行政指導で解決したということによってそういう事態が発生をしなかったわけでございます。重ねて申し上げて恐縮でありますけれども、この分野調整という問題は中小企業政策の最大の課題であるというその認識においては佐野委員と全く一致しておるわけです。私が申し上げておるのは、過去も行政指導で大部分解決できたし、いまの指導体制を強化するならば十分であろう、こういう判断のもとにいまの通産省としてのやり方を説明をしたわけでございます。どうしてもこの行政指導が効果を発揮しないということであればこれはもう当然話は別でありますけれども、私たちは行政指導でやってきたし、十分成果は上がった、またこれでやれる、またこの方がよかろう、こういう判断でいま進めておるわけでございまして、この問題が最大の課題である、そういう認識において取り組んでおるということについてはひとつ御理解をしていただきたいと思うわけでございます。
  338. 佐野進

    佐野(進)委員 大臣がそうきょうは言わなければならぬという立場で言っておられるようでありますから、これ以上言ったって時間がたつばかりでございますから、いずれにせよ、この問題があなたの言われている最大の政治課題でありますから、今国会中たびたびまた質問をいたしますので、ひとつ少なくとも今国会中この問題の解決ができるようあなたも積極的に対処していただきたいと思うわけであります。  最後に、私はこれと同じような問題でいま問題になっている一つの課題として大規模小売店、いわゆる百貨店、スーパーが無原則的に東京はもちろん地方都市に進出していろいろトラブルを起こしておるわけであります。これにつきましては、大規模小売店舗法を制定してその調整をする機能を私どもは法律審議の経過を通じて通産当局がお持ちになったということはよく知っておるわけであります。にもかかわらず紛議が絶えません。紛議が絶えないことは、その法律の精神を曲解するかあるいは悪用するか、あるいはまた、それを無視するかする形の中において地方に進出する形の中でトラブルを発生しておると思うのであります。     〔正示委員長代理退席、委員長着席〕 私は多くのそれらの事例を知っておるのでありますが、一つの事例といたしましてイトーヨーカ堂がいわゆる東京の中における下町のある地域に進出する、その地域住民の反対にもかかわらずその事業を推し進めようとしておるその動きに対して憤激を覚えておるわけであります。と申し上げますことは、この地域は、かつて二年前西友ストアーが進出をしようとした。地元と話し合いの上に、四年待ちましょう、四年待って条件が合ったときは進出することを認めてくださいという協定に基づいてその地域から後退した。その空き巣をねらうがごとくイトーヨーカ堂がその地域に同様の進出を図る。同志も友だちもあったものではない、自分だけよくなればいい、こういうような形においてその地域に進出を図ろうとする、こういう大型小売店舗があるとするならば、この紛議はいつまでたってもおさまらないと思うのです。それこそいわゆる行政指導の必要性がきわめて強調されると思うのでありますが、この種の問題に対して、特にいま大規模小売店舗の問題については、届け出制から許可制にしろという運動が行われておる状況の中において、政府として、通産当局として積極的に対応していただきたいと思うのでありまするが、その見解をお聞かせいただきたいと思います。
  339. 河本敏夫

    ○河本国務大臣 いまお話しのように、一定規模以上のものは商調協でこれを調整するということになっておりますが、一定規模以下のものに対しましてはそういう調整機関がないわけです。行政指導はできますけれども、これは法的な根拠がない、こういうことでありますけれども、しかし、これは大問題でありますので、いまあらゆる角度から取り上げまして、いろいろ対応策を検討しておるわけでございます。各地で紛争が発生しておりますので、いま御指摘の点は十分考慮いたしまして、さらに善処をしてまいりたいと思います。
  340. 佐野進

    佐野(進)委員 いまの問題については、各所に事件が発生しておることはあなたも御認識のとおりであります。そこでいま一言、あなたがお話しになった形の中で問題になることは、いわゆる指定都市は三千平米、地方は千五百平米。三千平米だから二千九百九十平米ならいいだろう、千四百九十平米ならいいだろうということがささやかれておるわけです。実際そのような計画が立てられるわけです。今度の場合も、三千平米に対して二千八百八十平米、こういうような巧妙なる形の中において、地域住民の意向を無視し、進出を図ろうとするようなことに対しては、厳重にその措置を進められることを、いまの御見解とともに要望しておきたいと思うわけであります。  そこで、時間が参りましたので、私、最後の質問をいたしたいと思うのでありまするが、大蔵大臣、先ほど来、中小企業問題全般について、非常に範囲が広くなりましたけれども、今日不況下に苦しむ中小企業者に対して温かい対策を施すことは、政府の今日果たすべき大きな責任であろう、こういう見地に立って質問を続けてまいったわけであります。その中で特に私が強調したことは、いわゆる景気の動向、この景気の動向の中にその進路を過たず探し出しながら仕事を確保し、あるいはまたその他いろいろな諸制度の中に研究し、勉強しながら生き抜いている今日の多くの中小企業者に対して、温かい財政的な見地に立つ対策をおとりになることが必要であろうということを強調してまいりました。  特に、その問題の中においても重要なのは、付加価値税がどうなるのかということは、中小企業者にとっては大変重要な関心事であります。この問題がもし導入されたということになるならば、中小企業がそれでなくても繁雑な諸制度の中において苦しめられつつある状況の中で、とんでもないことになるのではないかという心配を持たれておるわけであります。これらの問題について大蔵大臣としての総括的な私の質問に対するところの御見解をお聞かせいただきたいと思います。  さらにまた、通産大臣に対しましては、分野調整の問題について、積極的なる私の見解を表明し、あなたもまた考えられる点についてはそれぞれお述べになりました。遺憾ながらきょう一致点を見出すことはでき得ませんでした。しかし、私の言わんとするところ、中小企業問題に対して何がいま必要なのかということについては、よくおわかりになったと思うのであります。したがって、今日中小企業問題は、われわれが中小企業省をつくりなさいと言うにもかかわらず、通産省の中にある一外庁として存在するという形の中で、通産大臣の果たされる役割りはきわめて大きいと思うのであります。したがって、これらの質問を通じての私の要望に対して、ひとつ誠意あるまとめとしての御見解をいただいて、私の質問を終わりたいと思います。
  341. 大平正芳

    ○大平国務大臣 経済が順調に推移し発展いたしておる段階におきましても、中小企業問題は注意を怠ってはいけない大きな課題でありますことは申すまでもないのでありますが、今日のように戦後空前の危機に際しまして、一番抵抗力の弱い面に対しまして大きな衝撃が加えられておる段階でございまして、中小企業問題は一層の施策の中心に据えなければならぬことは、佐野委員のきょう取り上げられたもろもろの問題を通しても明らかなところであると思うのであります。したがいまして、政府としては、そういう感覚をもちまして、財政面、金融面ばかりでなく、その他行政各分野にわたりまして、最大限の努力を傾注して、事態に対応しなければならぬと考えております。  とりわけ問題は、いま焦点として取り上げられました付加価値税問題でございますけれども、これは中小企業者にとりまして非常に広範な利害を持つ、ゆゆしい、税務の問題を越えた、経済の問題でもあり経営の問題でもございますけれども、同時に大きな政治問題と心得ておるわけでございまして、こういう問題を軽々に取り扱うべきでないことは重々心得ておるつもりでございまして、検討をしないと言いますとうそになりますから、検討はいたすことになろうかと思いますけれども、こういう問題につきましては、与野党を通じあるいは国会の内外を通じまして広く、深く、各方面の意見を十分くみ上げた上で、いろいろな角度から検討を遂げた上でないと取り上げられない問題であると私は考えております。
  342. 河本敏夫

    ○河本国務大臣 先ほど来いろいろお述べになりました御意見は、中小企業が当面するいずれも大きな問題点だと思います。この問題点の中には、景気の回復によりまして解決できる問題も幾つかあると思うのです。そういう意味で政府は景気回復に全力を挙げなければならぬと思いますが、同時に中小企業本来の問題点もたくさんあったと思います。こういう問題点につきましては、中小企業庁を中心といたしまして、真剣に取り組んでまいりたいと思います。
  343. 荒舩清十郎

    ○荒舩委員長 これにて佐野君の質疑は終了いたしました。  次回は、来る三月一日午前十時より開会いたします。  本日は、これにて散会いたします。     午後五時三十九分散会