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1976-02-14 第77回国会 衆議院 予算委員会 第13号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十一年二月十四日(土曜日)     午前十時七分開議  出席委員    委員長 荒舩清十郎君    理事 井原 岸高君 理事 小山 長規君    理事 塩谷 一夫君 理事 正示啓次郎君    理事 山村新治郎君 理事 小林  進君    理事 楢崎弥之助君 理事 松本 善明君    理事 山田 太郎君       伊東 正義君    上村千一郎君       植木庚子郎君    江崎 真澄君       大村 襄治君    奥野 誠亮君       北澤 直吉君    倉成  正君       黒金 泰美君    櫻内 義雄君       志賀  節君    瀬戸山三男君       中村 弘海君    根本龍太郎君       野田 卯一君    葉梨 信行君       藤井 勝志君    保利  茂君       前田 正男君    松浦周太郎君       松永  光君    森山 欽司君       安宅 常彦君    阿部 昭吾君       阿部 助哉君    石野 久男君       岡田 春夫君    田中 武夫君       多賀谷真稔君    堀  昌雄君       安井 吉典君    湯山  勇君       田代 文久君    中路 雅弘君       林  百郎君    三谷 秀治君       石田幸四郎君    渡部 一郎君       玉置 一徳君  出席国務大臣         国 務 大 臣         (経済企画庁長         官)      福田 赳夫君         大 蔵 大 臣 大平 正芳君         文 部 大 臣 永井 道雄君         厚 生 大 臣 田中 正巳君         農 林 大 臣 安倍晋太郎君         通商産業大臣  河本 敏夫君         運 輸 大 臣 木村 睦男君         郵 政 大 臣 村上  勇君         労 働 大 臣 長谷川 峻君         建 設 大 臣 竹下  登君         自 治 大 臣         国家公安委員会         委員長         北海道開発庁長         官       福田  一君         国 務 大 臣         (内閣官房長         官)      井出一太郎君         国 務 大 臣         (環境庁長官) 小沢 辰男君  出席政府委員         経済企画庁長官         官房参事官   佐々木孝男君         経済企画庁調整         局長      青木 慎三君         経済企画庁調査         局長      岩田 幸基君         環境庁水質保全         局長      堀川 春彦君         大蔵省主計局長 吉瀬 維哉君         大蔵省主税局長 大倉 眞隆君         大蔵省理財局長 松川 道哉君         大蔵省銀行局長 田辺 博通君         文部大臣官房長 井内慶次郎君         文部省管理局長 清水 成之君         厚生省環境衛生         局水道環境部長 山下 眞臣君         厚生省薬務局長 上村  一君         厚生省児童家庭         局長      石野 清治君         厚生省保険局長 八木 哲夫君         農林省農蚕園芸         局長      澤邊  守君         水産庁長官   内村 良英君         通商産業省生活         産業局長    野口 一郎君         中小企業庁長官 齋藤 太一君         運輸省船舶局長 内田  守君         運輸省鉄道監督         局長      住田 正二君         郵政大臣官房長 佐藤 昭一君         郵政省経理局長 高仲  優君         労働大臣官房審         議官      吉本  実君         建設大臣官房長 高橋 弘篤君         建設省道路局長 井上  孝君         自治大臣官房審         議官      横手  正君         自治省行政局長 林  忠雄君         自治省財政局長 首藤  堯君         自治省税務局長 森岡  敞君  委員外出席者         参  考  人         (釧路市長)  山口 哲夫君         参  考  人         (大井川町長) 渋谷 昇次君         参  考  人         (大阪市立大学         教授)     吉岡 健次君         参  考  人         (日本蚕糸事業         団理事長)   伊藤 俊三君         参  考  人         (元日本紡績協         会会長)    松本 良諄君         参  考  人         (日本造船工業         会会長)    山下  勇君         参  考  人         (社団法人東京         都中小建設業協         会理事)    小川  博君         参  考  人         (日本消費者連         盟代表委員)  竹内 直一君         参  考  人         (元参議院予算         委員会調査室         長)      正木 千冬君         参  考  人         (東北大学教         授)      小嶋 和司君         予算委員会調査         室長      三樹 秀夫君     ————————————— 委員の異動 二月十四日  辞任         補欠選任   小澤 太郎君     中村 弘海君   大野 市郎君     松浦周太郎君   田中 龍夫君     志賀  節君   谷垣 專一君     大村 襄治君   西村 直己君     葉梨 信行君   田代 文久君     中路 雅弘君   増本 一彦君     三谷 秀治君   正木 良明君     渡部 一郎君   矢野 絢也君     石田幸四郎君   河村  勝君     玉置 一徳君 同日  辞任         補欠選任   大村 襄治君     谷垣 專一君   志賀  節君     田中 龍夫君   中村 弘海君     小澤 太郎君   葉梨 信行君     西村 直己君   松浦周太郎君     大野 市郎君   石田幸四郎君     矢野 絢也君   渡部 一郎君     正木 良明君   小平  忠君     河村  勝君 同日  辞任         補欠選任   玉置 一徳君     小平  忠君     ————————————— 本日の会議に付した案件昭和五十一年度一般会計予算 昭和五十一年度特別会計予算 昭和五十一年度政府関係機関予算      ————◇—————
  2. 小山長規

    小山(長)委員長代理 これより会議を開きます。  委員長の指名により、私が委員長の職務を行います。  昭和五十一年度一般会計予算昭和五十一年度特別会計予算及び昭和五十一年度政府関係機関予算、以上三件を一括して議題といたします。  本日の午前中は、参考人として釧路市長山口哲夫君、大井川町長渋谷昇次君、大阪市立大学教授吉岡健次君、以上三名の参考人の御出席を願っております。  参考人各位には、御多用中のところ御出席をいただき、まことにありがとうございました。委員会を代表して厚くお礼申し上げます。  参考人には、委員質疑にお答えを願う方法で、順次、意見を承ることといたします。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。奥野誠亮君。
  3. 奥野誠亮

    奥野委員 参考人皆さん方も御承知のように、五十一年度の国の予算編成、そしてまた地方財政計画の策定に当たりましては、不況からの脱出ということを、一つの大きな目標にしてまいってきているわけでございます。不況税収入が非常に少ないにもかかわらず、仕事はそれ相応にやっていきたい。したがって、国の歳入におきましても三〇%を国債収入に求めているわけでございます。地方財政計画におきましても、前年度の当初と比べますと、地方債収入二・三倍を予定いたしているわけでございます。同時にまた、わが国の財政運営は、国と地方公共団体とが、ともに力をかし合って進むというたてまえに立ち、そのような仕組みをとっているわけであります。国民の拠出しました租税収入を、七割は地方団体の手を通じて使われていく、国の手で直接使われるのは三割にすぎないというような状況でございます。したがいまして、地方団体が今度の財政運営に当たりましては、こういう点を踏まえて御協力いただきませんと、せっかくの不況からの脱出というような目標も達成することが困難になってくるわけでございます。  くどいようでありますが、地方財政法の第二条に地方財政運営の基本が示されておるわけであります。「地方公共団体は、その財政の健全な運営に努め、いやしくも国の政策に反し、又は国の財政若しくは他の地方公共団体財政に累を及ぼすような施策を行ってはならない。」と書かれておるわけでございます。もとより、国に対しましても同様に「地方財政の自主的な且つ健全な運営を助長することに努め、いやしくもその自律性をそこない、又は地方公共団体負担を転嫁するような施策を行ってはならない。」としておるわけでございます。もちろん、こういう点につきましては、超過負担があるじゃないかとか、いろんな問題はございますけれども、基本的な姿勢につきましては、きょうの御参考人の御三方も何ら御異論はないことだろうと思うのであります。  そのようなたてまえの上に立って、今度の国の予算案なり、あるいは地方財政計画なりについて、いろいろな御注文があるだろうと思います。まず、そういう御注文をごく簡単にお三方から伺って、さらに審議を進めさしていただくことが一番適切じゃないだろうかな、こう私なりに考えているわけでございます。  最初に、釧路市長さんに三分程度お話を伺えれば幸せだと思いますが、特に北海道地域は、早く事業決定をいたしませんと、冬のおとずれが早いものでありますから、なかなか仕事が進まない。しかし、なかなかその決定期待どおりには来ていないというような問題もあろうかと思いますので、運営改善に留意する問題でございますけれども、そういうことにもお触れいただければ幸せだ、こう思います。
  4. 山口哲夫

    山口参考人 私は、北海道釧路市長でございます山口と申します。  ちょうど、いま私のところでは、予算編成を終えたばかりでございます。地方財政計画におきましては一七・二%の伸び率を見込んでいるようでありますけれども、いま予算編成を終わったばかりの実態を申し上げますならば、私どものところでは残念ながら、一般会計におきましては四・一%の伸びより見込むことができませんでした。特別会計あるいは企業会計を含めますと、実に伸び率は二・五%でございまして、これは戦後最低の、いわば超緊縮型の予算というように言えるのでないかと思います。せっかく政府の方で地方財政計画一七%以上の伸び率でありますけれども、残念ながら私ども自治体におきましては、財政計画で示すような財源を求めることができない。そういう苦しい実態でございまして、いわば地方財政計画のたてまえ論と自治体における本音との間には、ずいぶん相違があるのでないだろうかというように考えるわけであります。  そういうことで具体的に今後、地方財政計画実行の中でお願いいたしたいことは、何といっても自治体の主要な財源であります地方交付税配分の問題でありますけれども昭和五十一年度交付税配分については、都道府県が中心になるのでないかということが言われておるわけであります。そうなりますと、市町村にとりましては、これは大変な問題でございますので、ぜひ、この配分に当たりましては、市町村を重要視した配分というものを政府としてもお考えいただきたいというふうに考えておるところでございます。  それから、もう一つは、いま奥野先生からもお話がありましたように、北海道寒冷地でありまして、政府の方といたしましては景気浮揚策ということで予算を組んでいただくわけでありますけれども補助事業決定がおくれますと冬期間にぶつかって全く工事ができなくなる、これでは、せっかくの景気浮揚策も無になるのではないだろうかというように考えるわけでありまして、北海道につきましては特別の配慮をもって、この補助事業早期決定をぜひしていただきたい、かように考えるところでございます。  最後に、たくさん、ありますけれども、中でも、私ども予算を組む中で一番困っておりますのは財源不足でありますが、その大きな問題に、何といっても超過負担を挙げることができると思います。私ども二十万都市で、総額一般会計で二百二十三億程度予算でありますけれども、そういった中で超過負担が実に七億を超えるという実態でございます。これは当然政府において支払うべきものでありまして、私どもは、この超過負担解消だけは早急にやっていただきたい、かように考えているところでございます。
  5. 奥野誠亮

    奥野委員 いま、お話しになりましたように、従来のペースでお考えになっていきますと、伸び率四・一%、そのとおりだろう、こう思います。地方財政計画そのものが、税収入あって一七・二%伸ばしているのではなくて、借金歳出を伸ばしているわけでありますから、おのずから借金による歳出を頭に置かなければ、お示しのようなことになるわけでございます。  同時にまた、私は釧路市の四十九年度決算をちょっと調べてみたのでありますが、単独事業が全体の中で一〇・九%、類似団体が一九・一%、かなり補助事業に重点を置いて運営しておられる、これも一つの行き方だろうと思います。そういう傾向もあるからだろうと思うのでありますが、そうなりますと一層、地方債運営ということが大変重要なことになりますので、後で、また自治大臣その他に私から伺いたい、こう思っているわけでございます。  超過負担の問題につきましては、これまた議論のある問題でございます。われわれも積極的に解消を図っていかなければならない。しかし、七億という数字につきましては、これまた、いろいろ議論が分かれてくるのだろうと思います。  次に、大井川町の町長さんからも、同じような趣旨で簡単に、ひとつ御意見をお述べいただきたいと思います。  同時にその際に、私も四十九年度決算を拝見しまして、大井川負担金などの受益者負担歳入の二割近くを占めておったような気がしまして、かなり妙味のある運営をしておられるのじゃないかなという感じも持ちましたので、こういう点も一言お触れいただければ幸せだと思います。
  6. 渋谷昇次

    渋谷参考人 私が大井川町の町長でございますが、参考人としてここに出まして意見を述べる機会を与えていただきましたことを感謝申し上げます。  実は、予算編成をやっておりますが、県とか市とは違いまして、町村段階だと全く予算をつくるのに困難で、恐らく全国の町村は、どうして五十一年度予算をつくるかということで、全然切るものはない、入ってくるものは、もう借金も限度があるということで、全く予算が組めないというのが現状ではないかと思います。  幸い、私どものところは、町営で大井川港という港を築いております。これは一部、国の方から四割だけ補助をもらっておりますが、港の規模は、皆さん御存じの県なり国で開発しました田子の浦港より大きな港を町単独事業として築いているわけでございます。ですから当然、住民負担というものをかけさせられませんから、企業からかなりの負担金を取りまして地方財政運営をしております。  また、この四十九年度には、五十年度もですが、やはり私ども財政が困難になるということを想定いたしまして、大井川町だけではございません、どこの町村も、人員をふやすということは恐らくやめていると思います。欠員の補充もなるべくしないようにいたしまして、そうしてやっているのが現下の町村だと思います。  ですから国の地方財政計画のように、昨年の予算に比べて本年度当初予算伸びるという町村はほとんどないのではないかと思うのです。ですから、そういう点を実はこれからの国政レベル段階としまして、県や市でなくて、町村に対しての地方交付税配分等をもっと傾斜配分するように、これはぜひやっていただかなければ、都市町村との格差が開くばかりだ。このことだけは、ひとつ何とか皆さんに御配慮を願いたい。  それから私どもは、予算の執行のあり方においても申し上げたいのは、町村が県や国の事業をやっていただくのに負担をするお金は、大体、七月か八月ごろに、九月ごろに国へ納めるという通知で納めますけれども、国や県からもらう補助金とか起債というものは大体年度末、三月か四月ごろに、その町村お金を送ってくるわけですね。これではどこの町村も、予算規模は少ないし金のやりくりはできない。最初の当初予算で決まっているならば、なぜ八月か九月ころには、少なくとも十二月までには起債とか補助金を送ってくれないか。これは私は、もっと一生懸命で、その担当の国家機関がやれば、できないわけはないと思うのです。ですから、恐らく五十年度の十二月においては、町村で一時借入金なしでお金やりくりができるなんていうことは当然ないわけなんです。ことに、本年度のように起債に頼る、そうして起債の枠を増大するというようなことを執行するに当たりましては、起債などについても、これは簡易に事務的なことをしなければならない。  それから、やはり町村でございますので、一つの課が、たとえば産業経済課が漁業も水産も商工も観光も全部やるというように、非常に町村仕事人員も少なくて仕事量が大きいわけです。そのときに、やれ会議だ何だという、出張とかいろんな連絡、それから国家機関、県の出先機関との連絡業務というものが非常にふえております。このたびに職員を派遣をする。なるべく市町村としましては経費を節約するために、出張を少なくするとか、あるいは時間外を減らすとか、これはもうどの町村でもやってない町村は全くないわけなんです。だから、そういう問題の議論よりは、いかに政府市町村との、あるいは国家機関との書類上の連絡を簡素にして、このいまの行政を執行するかという点についても、ひとつ十分御配慮をお願いしたい。こういうことを申し上げまして、簡単でございますが、後で、また質問に答えさせていただきたいと思います。
  7. 奥野誠亮

    奥野委員 私も大井川町の四十九年度決算を見まして、なかなか経常的経費を詰めておられるな、類似団体と比べまして経常的経費が人口一人当たりも低くて、投資的な経費が多いようであります。よい成果を上げていらっしゃるんだろう、こう思っておるところでございます。  また、大井川町の町長さんからも、年度末になってから起債決定補助金決定が集中してくるというような御指摘がございました。これも後で自治大臣の方から、改善についての御決意を承らしてもらうつもりでおります。  次に、大阪市立大学吉岡教授にお伺いいたしたいと思います。昔は吉岡さんの論文も拝見したのでありますけれども、最近、拝見してないものですから、どういう御主張をなさっているのか知らないわけでありますが、地方財政について、ごく端的にポイントだけお話をいただきたいと思います。
  8. 吉岡健次

    吉岡参考人 私は、五十一年度地方財政計画の中で問題であると思われる点だけを簡単に申し上げてみたいと思います。  第一点は、五十一年度地方財政計画によりまして、これは申すまでもなく国の景気政策がこの地方財政計画に貫かれておるのが、この地方財政計画の特徴でございますが、この景気政策の効果について疑問を抱いておるというのが第一点でございます。  今日の窮乏下にある地方財政現状は、国から補助金地方債をもらえさえすれば、それで直ちに事業が実施できるというふうな状況にはないということでございます。言うまでもなく、公共事業費地方裏負担が必要であります。ところが、この裏負担財源措置に問題がある。一番大きな点は、今日、五十一年度地方債総額は四兆八千十億でございますけれども、従来はこのうちの大体六割が政府資金である。ところが、五十一年度地方財政計画では政府資金は三割くらいです。あとの七割の大部分市中消化ということになっているわけでございます。ところが、五十一年度国家予算では七兆円を超える国債が発行されて、しかも、その大部分市中消化を予定されておるわけでございます。国債と比べますというと地方債はどうしても弱い立場にあるわけでございますので、地方債消化がスムーズに行われるという保証が一体あるだろうかという点でございます。つまり国債と競合して地方債消化が困難である。そうなりますというと事業実施が危ぶまれる、こういうことでございます。  それから第二点は、五十一年度地方財政計画では、やりようによってはインフレーションを加速化する要因が出てくるということでございます。  聞くところによりますというと、政府は、地方債市中消化を図るために、たとえば地方債日銀買いオペの対象にするとか、あるいは担保適格債にするというふうな措置を講ずるという話も聞くのでございますけれども、もし、そういうふうなことになりますというと、これまでの国債役割りと同じように、地方債でもインフレーションを加速化する、そういう道を開くことになる、こういうことでございます。  それから第三点は、五十一年度地方財政計画が果たして地方財政窮乏を緩和するであろうか、むしろこれは促進するのじゃないかということを危ぶむのでございます。  まず第一に申しますことは、この五十一年度地方財源不足額二兆六千二百億、これはできるだけ地方交付税措置すべきものでありますが、財源不足対策債として一兆二千五百億をいわゆる地方債に振りかえております。交付税でありますならば、事業をやろうと、やらなくても一般財源として保障されます。ところが、地方債に切りかえられるということになりますと、そういうことができません。少なくとも、そういうことができないたてまえでございます。これが第一点。  それから、もう一つの点は、地方財政窮乏、これを端的に示すものは申すまでもなく赤字、収支の帳じりが合わないということでございますが、起債が、非常に借金が多いという点でございます。これは詳細やめます。  それからもう一つは……(奥野委員「それくらいでいいです」と呼ぶ)そうですか。本当はしゃべりたいんですけれども、それじゃこれで。
  9. 奥野誠亮

    奥野委員 吉岡さんの発言を抑えて相済みません。時間の制約がございますので。  いま、おっしゃいました点、もっともだと考えている点もございますし、御理解をいただきたいなという点もございます。地方財政窮乏を緩和しないで促進するというお話などございましたが、むしろ借金して負担を残しても、住民の幸せにつながる社会資本の充実に五十一年度地方団体にも心がけてもらおうじゃないか、こういう趣旨でできております点は、ぜひ御理解をいただいておきたいな、こう思います。  いま御三方から御意見を伺ったわけでございます。そこで、まず自治大臣に、むしろ答えてもらうということになるのかもしれませんが、地方債につきましても、よほど早く個々の地方団体に、その資金財源として事業ができるような仕組みがとれる配慮をしていただかなければならない。また各省の補助金などにつきましても、裏負担にかなり問題があるわけでございますだけに、早目に決定をしてもらわないと、従来よりも一層早目にやってもらわないと、なかなかこなせないんじゃないか、こういう心配があるわけでございます。地方交付税の傾斜配分の問題につきましても、私は府県の投資的な経費を基準財政需要額から引っこ抜いて地方債に振りかえる、そういう作業の関係で、私はかなり市町村の方に地方交付税交付金が多くいくことになるのじゃないか、こう思うのでありますが、一言そういう点についても触れていただきまして、簡単にあと大蔵大臣にも伺いたいと思いますので、お話しいただければと思います。
  10. 福田一

    福田(一)国務大臣 ただいま参考人からいろいろとお話を承っておるのでありますが、まあ来年度といいますか五十一年度予算編成は、地方自治体がいままで高度成長で税収がふえるということを踏まえて五十年度もある程度考えておったし、またそれに基づいてある程度単独事業も考えておったというような状況から見まして、こういうような非常に苦しい日本経済の状況になってきた段階においては、いろいろな面において不自由でもあり、また予算編成も困難を感じておられるだろうと私は思うのでありますが、自治省としてはそれらの点も踏まえながら、ある程度起債によりあるいは交付税の増額により、これに対処するようにいたしたわけであります。  五十年度予算も、御案内のように二十一兆五千億円というのが地方財政計画規模であったわけでありますが、われわれの見るところでは、単独事業が二兆円ぐらいそのほかにあったと思うのであります。それを加えてみますと、二十三兆五千億円。これに対して今度は二十五兆二千五百五十億円というような地方財政計画を組んで、それに基づく起債地方交付税の問題を決定をしているのでありまして、私たちとしてはこの苦しい状況下においては、大蔵省当局においてもかなりお互いに協力をし合うという立場で予算編成をいたしておると考えておるわけであります。  なお、起債の問題については、なるべく早くこれが地方団体に及ぶように、またこれが的確に及ぶような工夫もいたしたいと思いますし、それから超過負担の問題でいろいろございましたが、これは対象の範囲とか数量とかいうような意味で非常に違ってくる面がありますから、具体的にお話ししないと正確なお答えをいたすことは困難であると思いますが、しかしいずれにしても超過負担というものがないように今後も大いに努力をさしていただきたい、かように考えておるわけであります。
  11. 奥野誠亮

    奥野委員 大蔵大臣に伺いたいわけでありますが、吉岡教授からも景気政策の成否について疑問が投げかけられたわけでございます。今日の地方財政計画だけを見てみますと、果たしてそのとおりうまく運用をできるのだろうかなという疑問を持たれるのは私は当然だろうと思います。それだけに大蔵大臣に格段の御努力を煩わせたい。  そこで、二つについてお伺いしたいわけでありますが、一つは、やはり裏負担にはふだんのとき以上に、問題の多いときでありますから、国庫補助負担金の早期交付に特段の御努力を煩わさなければならないと同時に、場合によっては地方交付税交付金を繰り上げて支給するような施策を適宜お取り上げになることが必要じゃないだろうか、私はこんな感じを持っておるわけでございます。こういうことについてのお考え方を伺いたいのが一つ。  もう一つは、地方債資金の確保を個々の地方公共団体に容易ならしめるということでございます。公営企業の関係の分まで含めますと、五十年度の当初計画が二兆八千三百五十億円、ところが五十一年度の計画は四兆八千十億円で一・七倍にふえておるわけでございます。一・七倍にふえながらも政府資金は逆に減っているのであります。そして市場公募によらない銀行縁故債がふえているのであります。市場公募によらない銀行縁故債が五十年度の当初計画では六千億円弱であったものが、今度は二兆三千四百億円になっているわけであります。大変なふえ方でございまして、それだけに一体銀行等がこういう縁故資金に簡単に応ずるだろうかということでございます。  そういうこともございまして、こういうものであっても、債券発行の方法をとっているもの——御承知のように、市場公募債については市場公募のシ団を結成するわけでございますが、このごろは銀行縁故の資金でありましても、縁故のシ団を結成してそして債券発行の方法をとっているわけであります。それなら市場公募の地方債と銀行縁故の地方債、同じように日本銀行の適格担保債にしたらよろしいじゃありませんか、こう私は日銀総裁に申し上げているわけであります。必ずしも地方銀行は日銀に持ち込むつもりはないのだ、銀行の資金状態によっては短資市場でコールの資金を取りたい場合もたくさんある。そのコールの資金を取る場合の担保にも適格債になっていないと取ってもらえないのであります。私は、金融機関が一番心配するのは弾力性を常に確保していくことだと思うのであります。ところが地方団体の縁故資金を受け入れたら弾力性がなくなってしまう。いざという場合にそれを処分して資金を得ようと思いましても、なかなか引き受け手がない。雑金融機関が引き受けてくれる場合であってもたたかれてしまう。でありますから、日銀適格担保債にすることによって、日銀に持ち込むんじゃないのだ、短資市場でコールの資金を確保する、そして資金の弾力性を維持していきたい、それが金融機関の希望だろうと私は思います。  何かそういう点につきましても、縁故債についても自治大臣に大蔵大臣は協力するのだというお約束をなさっているようでありますが、具体的に一体どういう考え方をお持ちなのか。具体案がないと、いま御三方から話が出ましたように、やはりこれは絵にかいたもちにすぎないじゃないか、不安でならないよ、成功するかどうかは疑問ですよ、こういう意見が出てくるのだろうと思います。でございますので、この点について明確なお考え方を明らかにしていただきたいと思います。
  12. 大平正芳

    ○大平国務大臣 第一問の交付税交付金の交付時期の繰り上げ問題でございますが、従来は御承知のように四月、六月、九月、十一月でございますか、交付いたし、あと残りを二月にまとめて交付するという手順でやっておったと思いますが、ことしは法律を改正いたしまして、二月にいままで交付しておりましたものを年内に交付ができるような措置をお願いしようといたしておるわけでございますので、御要請にそういう方法で応じたいと考えております。  それから第二点の地方債消化問題でございますが、たびたび本委員会でもお答え申し上げておりますように、来年度の金融状況を考えてみますと、民間の設備投資資金資金需要はそう強くないわけでございます。若干設備投資がふえると思いますけれども、ふえるということを勘定に入れましても、資金の需給関係はそんなに緊迫していない状況が予想されます。それから対政府と民間の資金の収支を見てみますと、これだけの国債を発行し、地方債の計画を考慮に入れましていろいろ計算してみましても、どうしても散布超過になる傾向を持っておりまするので、来年度の金融状況はマクロ的に見てそんなに私は心配いたしておりません。  しかしながら、地方財政は、地域によりまして、また財政主体によりまして、一般論で律し切れないものであることは承知いたしておりまするので、そういった点につきましては、その地方団体あるいはその地域の金融機関、それから自治省とよく御相談いたしまして、対応策に過ちのないように処していかなければならぬと思っております。御案内のように、まだ公社債市場が非常に弱い、ひ弱な日本でございまして、なかなか問題が多いわけでございますが、この来年の状況に対応する過程におきまして、いろいろ問題が出てくると思いますけれども一つ一つを丹念に解いてまいりまして、御期待にこたえるようにしなければならぬと思っております。  それから、地方債と日本銀行のオペレーションとの関係でございますが、これは本来日本銀行に求めるのは無理でして、日本銀行は適正通貨を供給するためにオペレーションをやっているわけで、地方財政のためにオペレーションをやっているわけではないわけでございますから、その点はむしろ私どもといたしましては、担保適格手形にするかどうかというような問題よりは、その地方債消化できる状況、それをつくり上げていくことが一番大事なことなんでございまして、その点につきましては、せっかく自治大臣ともお約束をいたしておることでございますので、われわれの方の全機能を挙げて御協力を申し上げるつもりでございます。私、いまのところ心配をいたしておりませんけれども年度の途中におきましていろいろな問題は恐らく出てくると思いますが、それには機敏に対応いたしまして、御期待にこたえるつもりでございます。
  13. 奥野誠亮

    奥野委員 時間がなくなりましたのでこれで終わりますけれども、私は、いまの大蔵大臣の発言だけを聞いておりますと、やはりまた、せっかく景気打開を考えたけれども地方財政が足を引っ張ったなということを振り返って嘆くという事態が起きないとも限らないという心配を持ちますので、地方債問題につきましては、さらに積極的に御検討いただきますよう希望だけ申し上げておきます。
  14. 小山長規

    小山(長)委員長代理 次に、安井吉典君。
  15. 安井吉典

    ○安井委員 この委員会では、公聴会で、神奈川県知事から大体都道府県段階財政の問題について、いろいろ伺いました。かつてない地方財政の危機の中で、市町村段階の問題、生々しい自治体の現場からの御報告を参考人である山口市長さんや、渋谷町長さんから伺いたいし、それについてのコメントを吉岡教授からもいただきたい。さらにまた関係大臣からも問題点の論議に加わっていただきたい、こう思うわけであります。  いま、奥野委員から大きな問題点の取り上げがありましたので、私はもうじかに具体的な問題に入ってまいりたいと思うのです。  地方財政の根幹をなすのはやはり地方税でありますが、その地方税に対してさまざまな矛盾を自治体の側で感じていられると思います。問題がたくさんあると思いますけれども、特にきょうこの場ではこれを訴えたいという点がございましたら、山口市長、ちょっとお話し願いたいと思います。
  16. 山口哲夫

    山口参考人 地方税の問題点でありますけれども、残念ながら地方税法の中においてさえ、企業に優遇措置を与えている。そのために地方自治体における自主財源が非常に少なくなっているというそういった点を指摘せざるを得ないわけであります。  その端的な例が地方税法四百八十九条の電気税の非課税並びに減税であります。釧路におきましては、本来ですと大体五億五千万円程度の電気税を見込めるわけでありますが、そのうちこの四百八十九条における非課税並びに減税によりまして、三億二千万円が減免されておりまして、自治体に入るのはわずかに二億三千万、半分以下にすぎないということでございます。これは御存じのとおり、製品コストを軽減して産業振興を図るという目的のもとに、昭和三十六年に制定されたわけでありますけれども、現在におきましてはこの電気税率が百分の十からすでに百分の六まで下がっておりまして、いわゆる電気料が製品コストにはね返る度合いというものは、この税を決めた当時から見ると非常に低くなっているのではないだろうか。にもかかわらず、依然として企業関係にこの電気税の減免をしているというのは、やはり企業優先の税制と言わなければならない、こう思うわけでありまして、ぜひ私どもといたしましてはこの自治体の苦しい地方財政実態を踏まえてて、自主財源を与えるという立場からも、この電気税を制定している地方税法四百八十九条を直ちに改正をしていただきたい、かようにお願いする次第です。  それからもう一つは、日本銀行に係る法人市民税の問題であります。すでにずいぶん報道されておりますけれども、私ども釧路市にも日銀の支店がありまして、大体五十年度で三億一千万程度の税収を見込んでおりました。しかし残念ながらこのうちの二億一千万が落ち込んで、わずかに一億程度より納入されていないわけであります。これは御案内のとおり、昭和四十九年度下期の日銀の国庫納付金が九百九十億でありましたけれども、翌五十年の上期になりますとこれが一躍四倍にはね上がって四千億も国庫納付されておるわけであります。そのために法人市民税の課税対象額が千七百億から実に十分の一以下の百六十億に激減をして、そのことが都道府県やあるいは市町村で日銀の支店を持つところの市税の税収に大きくはね返ってきているわけであります。  大蔵省御当局はこのことについて、新聞紙上でありますけれども、国庫納付金をどの程度計上するかは日銀の権限である、かようにおっしゃっておりますけれども、私どもといたしましては、国と地方財政秩序ということを考えるならば、非常に一方的やり方でありまして、どうしても筋が通らないというように考えるわけであります。政府といたしましては、確かにこれに対する減収補てん債ということを予定しておるようでありますけれども、しかし、それにいたしましてもあくまでも借金でありまして、これは二年間据え置き、八年償還という借金であります。もちろんこの借金に対しましても、交付税で償還分のめんどうを見るやに伺ってはおりますけれども、しかし、私どもといたしましては、交付税という枠はある程度決められておるわけでありますから、もしいまこれをもとに戻すことができないとするならば、当然これは地方交付税の別枠をつくってでも、地方のこの落ち込みの分を補てんしていただきたい、このことを特にお願いをする次第でございます。
  17. 安井吉典

    ○安井委員 いま山口参考人から、電気税とそれから日本銀行の法人税の落ち込みに対する地方税の減収の問題が提起されたわけでありますが、これは自治大臣、それから日銀の関係は大蔵大臣にも関係があるわけですが、この辺の事情をもう少し政府側から御説明していただきたいと思います。特に電気税は今度の国会にも改正法案をお出しのようでありますけれども、私どもの聞く限りでは、とても自治体側の要望にこたえるようなものになっていないようでありますが、その点も含めてちょっとお答えいただきます。
  18. 福田一

    福田(一)国務大臣 お答えをいたします。  電気税の問題につきましては、これはもう御案内のように、順次非課税措置を撤廃するというやり方をやりまして、五十一年度においても八品目だけはこれを非課税措置から除くということにいたしておるわけであります。  ただこの問題については、従来しばしば言われておりますので、税制調査会等におきましてもひとつ十分に審議をしていただきたいと思って提案いたしておるのでありますが、まだこれについてはいろいろもう少し検討すべき面があるという答申をいただいておりますので、いま言われたような抜本的な案にまではなっておらないわけでありますが、今後引き続き検討を加えまして、順次改善を図ってまいりたいと考えておるわけであります。
  19. 大平正芳

    ○大平国務大臣 日銀納付金と法人税及び地方税との関係でございますけれども、これは法令の規定に基づきまして、収入から経費、内部留保、配当、諸税の負担を控除した残額として結果的に納付金が出てまいるわけでございまして、納付金が多くなったから法人税、地方税が減るという筋合いのものではないわけでございます。ただ、四十六年度の為替差損による事業の内部留保が全部枯渇してしまいまして、それを適正なところで埋める作業をここ何年かやってまいりましたので、一時異変が起こりましたけれども、いまは正常に返っていると思うのでございますが、詳細につきましては銀行局長から説明させます。
  20. 田辺博通

    ○田辺政府委員 日銀の納付金は、いま参考人の方がおっしゃいましたように、日本銀行がいかようにでも自由に決められるというものではございませんで、大要いま大臣から御答弁申し上げたとおりでございまして、結局、収支計算の結果出てきましたいわば純益から諸準備金、引当金を積み増します、それから配当をいたします、それから納税引当金、これは税に充てるもの、それを控除したものの残りが納付金になる。こういう実際の計算になりますが、問題は、恐らくその四十九年の下期に納付金が四千七億と前期に比べまして非常に大きくなっている。ところが、地方税、これは法人税もそうでございますが、前期に比べてむしろ減っている。そこからそういったような誤解といいますか、御心配が出たのだろうと思いますけれども、これは日本銀行の収支が四十六年の下期から御承知のとおり非常に悪化いたしまして、結局いままで積んでおりました諸準備金、引当金を取り崩すというような状態になりました。これは日本銀行の本来の性格からしてきわめて遺憾なことでございますので、いわゆるその諸準備金、引当金、つまり内部留保の積み増しをその後一生懸命やるべく準備金への組み入れの率をふやしていくわけでございます。しかし、これが四十六年の下期から四十八年の下期までもまだ——本来留保しておくべき自己資本といいますか内部留保は、大体日本銀行券の発行額の一〇%の準備を持つというのが従来からの考え方でございまして、この一〇%になるまでは積み増しをしていったわけでございます。その過程におきましては、内部留保がふくれてまいります。内部留保の増加が多くなるわけでございますから、それに対応する税金——内部留保は当然課税所得になりますから、税金が大きくなります。そして納付金はそんなに多くない。こういうかっこうになるわけでございますが、四十九年の上期でもって大体一〇%のラインに内部留保が達しましたので、その後は内部留保の積み増しをそうやる必要がなくなった。そこで今度は、純益は出ます、けれども内部留保を多くする必要はございませんので、結局課税上の所得の増加というものはそう高くない。したがって、税金はそう大きくならない。片一方、納付金はふえている、こういう状態でございます。
  21. 安井吉典

    ○安井委員 いまの御説明で、わかったようなわからないようなわけでありますが、内部留保の取り方がこういうふうな事態を引き起こしているのだということですが、ただ、それに基づく法人税——法人税の方は日銀だけの法人税が少しぐらい減ろうとふえようと大した差ではないのですが、それを基礎にして計算する法人事業税だとか、それから市町村の場合の法人に対する住民税、これの方が、釧路は日銀の出張所があるだけで一億円も一年間の税金が減ったりふえたりするというのでは、これは大変だと思うのですね。ですから、この問題点は、きょうはもう少し幅広く問題を取り上げたいので別な機会に譲りますが、とりあえず私がここで明確にしていただきたいのは、一億円も減ったその減収を自治省として、減収補てん債というお話もありますが、もっと自治体の身になって考えたカバーの方法をとりあえず考えるべきではないかということが一つ。  それから自治大臣、電気税の方も、何といったって百品目以上もあるわけです。釧路にパルプ工場があって、そのパルプ工場その他で、いまのお話で言っても二億三千万も違うわけですね。その部分だけ減税がされている。つまり、釧路に幾つ工場があるのか知りませんが、その工場だけで二億何千万も税金がもうかっているし、市民の方はそれだけ損をしている、アンバランスが起きている、こういう実態であります。百品目以上もあるものに、七つや八つ減らしたからといったって、これは問題の解決にはならない。特に、大牟田市では、これは自治大臣を相手どって行政訴訟さえ起こしているわけです。やはり税の公正化という上において、全廃の道を明確にしていく、こういうことでなければならぬと思います。  その二点について、これは自治大臣から伺います。
  22. 福田一

    福田(一)国務大臣 お答えをいたします。  法人税の減収の、いま御指摘になった分につきましては、交付税においてめんどうを見るという方向でやっておりますから、私は、そのことが即直接に全部自治体に影響を与えるということはない、できるだけめんどうを見るようにいたしたいと思いますが、後年度においてそれが、先ほどちょっと負担になるというお話がございましたが、起債の償還等については、これまた特別の措置を考えておることは、安井さん御案内のとおりでございます。いずれにしても、いまの法人税の問題については、われわれとしては交付税でこれをめんどうを見ていくということでやってまいりますし、それから税金全体としての問題は、また別に起債の問題も考えておるわけであります。両方でめんどうを見ることに相なると私は思っております。  それから、電気税の問題ですが、百品目もまだ残っておるじゃないかというお話がありますけれども、それはお説のとおりでありますが、これをどうするかということについては、常に税調に審議を願っておる段階でありまして、今年度においては、まだこれは消費税的な性格もあるし、いま急にこれを改めるということは困難であるという答申を得ておりますので、さしあたり八品目だけは五十一年度で処置をする、こういうことにいたしたわけであります。
  23. 安井吉典

    ○安井委員 いまの御答弁では私も不満なんですが、とりわけ電気税の方は、この場での議論は、よく租税特別措置法だけが議論の対象になるわけでありますけれども地方税法の中でこのような非常な不合理が起きているという事実を私はこの際明確に指摘しながら、いまのような態度ではだめなんで、もっと真剣にお取り組みをいただきたい、ほかの問題がありますので、そのことだけ強く要求をしておきます。  次に、地方交付税の問題ですが、特に力の弱い町村の場合は交付税に頼るという部分が非常に大きいと思います。現在の交付税のあり方につきまして、渋谷参考人の方で御注文がありましたら、この機会にひとつお話しいただきたいと思います。
  24. 渋谷昇次

    渋谷参考人 地方交付税においては、先ほども私が申し上げましたように、交付税の税率を上げることを私どもは何回もお話をしておりますが、実質的には上げたと同じくらいのものをやるからいいではないかということでおりますが、これは地方自治の六団体からもそういう意見を十分政府の方へも上げてあるわけでございます。  それから、特に、私どもは直接住民行政を預かっておりまして、地方交付税町村財源の頼りなんでございます。したがって、ぜひとも地方交付税を——先ほどの自治大臣は、まあ早く交付すると、こういうことでございますが、これも法律を改正して配分率をはっきりしていただければ、町村では安心すると思うのです。  それと同時に、市とか県の方へ来年度交付税がうんととられまして町村へ来る分が少なくなるのではないかということを町村段階では考えておりますので、これはむしろ県や市の方は財政がどうにでもなるわけでございますので、町村はどうしてもやりくりができませんから、町村の方へひとつ来年度においては手厚い傾斜配分を何とでもこの際していただきたいということを、これは総括でございますが、お願いをしたいわけでございます。
  25. 安井吉典

    ○安井委員 自治大臣、いま町村段階配分が少し減りはしないかという心配があります。というのは、これは都道府県の方が法人税の減収に伴う都道府県税の減収部分がどうしても多くなるから、そちらへ片寄って行ってしまいはしないかという心配につながっていると思います。ですから、ことしの場合は、地方交付税配分の方式そのものについて根本的な見直しが必要な年ではないかと思うわけですが、いまの参考人お話に絡んでお考えをお聞かせいただきたい。
  26. 福田一

    福田(一)国務大臣 地方交付税配分町村に非常に不利にならないかということでありますけれども、われわれとしては、やはり町村が県段階等に比して非常に弱い面があることも考えておりますから、この配分については十分考慮を払っていかなければならないという方針でありますが、細かいことは、もし必要であれば、財政局長からお答えをさせます。
  27. 首藤堯

    ○首藤政府委員 交付税配分問題の県と市町村の関係でございますが、先生御案内のように、交付税は基準財政需要額から収入額を引くというかっこうで出てまいります。そこで、われわれといたしましては、ただいま御指摘もございましたように、今回の配分については投資的経費をある程度起債に振りかえるという操作をいたしますので、基準財政需要額そのものの算定につきましては、これは県分よりは市町村分の方がうんと伸びがいい、こういう計算に相なろうと思います。ですから、需要額そのものは市町村に傾斜をする、こういう結果になろうと思います。  ただ、収入面でございますが、収入面で法人関係税の減収が非常に大きいために、都道府県の基準収入の減り方がこれもかなり大きかろうと思います。市町村の方は固定資産税、住民税等の問題がございますので、それほど大きな基準収入の減がない。そこで、増加をしました財政需要から減少の大きい府県の収入を引いた結果と、それから増加をしました増加率の大きい市町村財政需要から減収率の少ない税を引いた市町村、この合計がどうなるかということだろうと思います。具体的に税の非常に小さい町村、これにはかなり交付税が結果的にも傾斜配分になる、このような結果に相なろうと考えます。
  28. 安井吉典

    ○安井委員 そこで、国庫補助負担金の関係では、何といいましても、先ほど来もお話が出ました超過負担、これが最大の問題であろうと思います。六団体の調査の結果でも、恐ろしい数字が出ているわけですが、きょうはひとつ市長さんや町長さんのそれこそ現場での超過負担実態について、簡単にこの機会にお聞かせいただきたいと思います。
  29. 山口哲夫

    山口参考人 現場における超過負担問題につきまして申し上げてみたいと思いますけれども、私どもいま一番悩んでおりますのは、学校の建築に係る超過負担が非常に多いということでございます。それで政府御当局におきましても、学校関係のこの補助基準額を相当引き上げていただいております。  いま北海道釧路市におきましては、一平米当たり八万六千二百円というように若干引き上げてはいただいておりますけれども、残念ながらこの補助基準額ではとうてい学校は建ちません。いま、ちなみに約千人子供を入れる標準的な学校を建てるといたしますと、六千平米になります。政府補助基準からいきますと、約五億二千万円で学校が建つことになりますけれども釧路市における建築の単価というのは十一万六千五百円でございます。これは決して多く見積もっている金額ではありません。それを掛けますと、約七億かかるわけであります。したがって、実際に七億なければ建たない。ところが、政府御当局は五億二千万で建つということでありますから、これを差し引きますと、一億八千万の超過負担になるわけであります。小学校一つ建てるのに一億八千万の超過負担をしなければならないというのは、これは自治体にとっては大変なことでございますので、ぜひこの超過負担解消を早急にやっていただきたいと思います。  もう一つ例をとりますと、保育所でありますが、これは政府補助基準は八万六千六百円でありまして、五百二十二平米で計算しますと四千五百二十万であります。この五百二十二平米は、私どもとしては非常に小さいと思いますけれども、しかし、政府の言うとおりの面積で計算いたしましても、保育所は釧路市における実際の単価は十三万七千六百円でありますから、総計七千百八十万なければ建たないわけでありまして、したがって、保育所一つつくるにも二千六百六十万の超過負担を市民が負担しなければならない、こういうことになるわけでございます。  こういったものが、国民年金あるいは健康保険、失業対策事業、主なもの十種類だけ取り上げてみましても、私どもの市で四十九年では約六億、五十年におきましては七億八千万という金額になるわけであります。この問題が自治体財政をきわめて貧困にしている大きな原因でないだろうかというように考えますので、ぜひこの解消をしていただきたい、かように思う次第です。
  30. 渋谷昇次

    渋谷参考人 私の町は人口一万八千でございますので、保育所が三ヵ所ございます。保育人員が二百七十名ございますが、どうしても保育所の経常経費が約九千二百九十万くらいかかりますが、これを国の基準によって計算しますと六千七百万ということになって、実際の所要額との差は二千五百万、こういうようになります。  また、保育所をつくります費用におきましても、国の基準を上げてはいただいておりますが、五十一年度で示された七四%増で計算いたしましても、保育所を一ヵ所つくるのに、やはり町の持ち出しが六千九百万かかるわけでございますが、この中には保育所をつくる用地の買収費千九百万は入っておりませんし、浄化槽、備品費、こういうものは全然入れないでやっても超過負担というものがきわめて大きな数字になるということは、もう実態調査でもわかっておりますが、特に超過負担の大きなのは、住宅関係についてはかなり改善を見ましたが、学校、それから保育所、それから廃棄物の処理施設、こういうようなものについては大変低いわけで、この点はひとつ厚生省と文部省でもう少し実態を調査して、実際に合わした数字を出していただければわれわれは非常に助かるわけですが、どうしても厚生省が一番弱いじゃないかと思うので、予算委員皆さんもひとつ厚生省と文部省に大幅に予算をつけて、この超過負担解消をぜひしていただきたいというのが、これは全国の町村のどこの願いでもあると思いますので、ひとつよろしくお願いをいたします。
  31. 安井吉典

    ○安井委員 自治大臣、大蔵大臣に、やはりこれだけの実態の御報告があったら伺っておかなければならぬと思うのですが、一つには、いまの報告の中で、建設省とか農林省という声が余り出ないわけです。文部省とか厚生省とかがひどい、こういうわけで、つまり人間の命と暮らしにかかわる問題やあるいは文教政策だとか、そういうところにいまの政府がウィークポイントを持っているのだということが、どうも超過負担という一つの側面からも出てくるような気がするわけです。そしていままでは数量差については若干の解消措置があったということは明らかでありますけれども、対象の問題や、恐らくここで出てきている超過負担の数字というのは、いままで政府が検討をしていない部分、そういう部分からのものも相当多いのではないかと思います。単なる単価差だけじゃなしに、数量差や対象差、そういうような側面にもう少し真剣に取り組んでもらわなければならないということが報告されているように思うわけであります。この問題についての御決意をひとつ伺っておきます。
  32. 大平正芳

    ○大平国務大臣 地方公共団体のいわゆる超過負担の問題につきましては、従来からわれわれといたしまして適実に配慮しておるつもりでございますが、毎年度予算編成に際しても、物価の動向その他を考慮いたしまして適切な補助単価の設定に努めてきております。特に問題となる補助金につきましては、関係省庁による共同実態調査を行いまして、所要の是正措置を講じております。  いま問題になっております学校、保育所等の施設につきましても、四十七年度及び四十九年度に大蔵、自治及び関係各省と共同で実態調査を行いまして、所要の是正措置を講じてございます。  今後とも経済事情の変化を十分見守りながら、新たに超過負担が生ずることのないよう適切な補助単価の設定に努めてまいりたいと考えております。詳しくは数字を申し上げてもようございますけれども、この補助、どういう費目を選ぶかという問題につきましては、関係省庁と相談いたしまして実態調査をして、それを受けて予算の是正をしてまいるという仕組みを将来も続けてまいるつもりでございます。
  33. 福田一

    福田(一)国務大臣 この小学校のあるいはまた保育所の建築等についての地方の要望は相当強いものがあります。そういう意味で超過負担が非常に多い。この点は、自治省としては関係省庁に、できるだけ対象差とか、いま御指摘になったような範囲とか、そういうものをひとつ順次是正するように強く申し入れをいたしておるわけでありまして、今後も努力をいたすつもりでございます。(発言する者あり)
  34. 安井吉典

    ○安井委員 自治大臣少し弱いぞという声が出ていますが、これは自治大臣だけの責任じゃなしに、きょうはあと農林大臣しかおりませんけれども、各省がもっときちっと態度を明確にしてもらうということが必要だが……(発言する者あり)
  35. 小山長規

    小山(長)委員長代理 お静かに願います。
  36. 安井吉典

    ○安井委員 全体的な取りまとめはやはり自治大臣ですからね、そして最終的な結論を出すのは大蔵大臣、私はこうなるのではないかと思います。  ただ、大蔵大臣、いろいろ是正措置をやっていると言うが、その坪当たり単価は、インフレで人件費、物件費が上がってきてその単価を引き上げてきたという、それだけは間違いありません。しかし、その単価の引き上げでも、こんなインフレの時代では、当初予算で決めても、暮れになって仕事をするときにはもう上がっちゃっているわけですね。それだけでなしに、対象に当然入れなければならないたとえば人件費なら、北海道なら寒冷地手当などというものは、なければ給与の払いができないのだが、そんなのは対象外にするとか、それからまた学校の建設、保育所等についても、当然対象に入れなければいけないのを外すとか、あるいは数量差の問題だとか、そういうところについてはいままでノータッチなんですね。そういうような意味合いでの真剣な取り組みを私たちは強く、要求してまいります。  時間が短いので、たくさんの問題をと思って欲張ってもなかなかそういきませんが、「市町村段階の最大の苦労の一つは、公立病院が大きな赤字を抱えてどうにもならないという問題だというふうに聞いているわけでありますが、釧路実態等についてもう少しこの際お聞かせください。
  37. 山口哲夫

    山口参考人 公立病院につきましては、全国でも約一千を超える公立病院がございまして、知事会を初め市長会そのほかの関係団体で、この公立病院の財政逼迫について、政府として何らかの財政援助をしていただきたいということを実はお願いをいたしているところでありますけれども釧路の市立病院は、いわば東北海道の基幹病院でございまして、約五百五十床のベッドを持つ病院でございますが、今日累積赤字がすでに十億円を超えております。隣の根室市におきましては、私どもよりも小さい病院でありますけれども、さらに多くの累積赤字を抱えているというように聞いております。  一昨年、政府の方ではいわゆる特例債を考えていただきまして、七億二千万円ありました赤字を一応不良債務ということで肩がわりをしていただいたわけであります。しかし、その後医療費の改定のおくれなどもありまして、毎年約二億円の単年度赤字を抱えております。病院会計の方からは、財政が苦しいために一般会計の繰り入れを強く要望してまいりますけれども、御案内のとおり、一般会計そのものが火の車でございますので、なかなかこの病院会計の赤字を一般会計で埋めるということにはならないわけであります。  こういうことを考えてみますときに、やはり東北海道の医療過疎地帯の貴重な総合病院でもありますし、こういった病院では、無理をしてもいわば一年に何回かしか使わない医療機器もぜひ入れておかなければならない、そういった不採算医療部門も非常に多いわけでございますので、政府の方で特例債で問題が解決したというふうにお考えにならないで、自治体病院に対して大幅な財政援助をぜひお願いしたい、こう思うわけであります。  ちなみに、四十九年におきましては、この一千の公立病院で約千百六十億も一般会計から繰り入れておりますけれども、それでもなお千四百億を超える累積赤字を抱えておりまして、恐らく五十年度では二千億を超える赤字を抱えるであろうと言われております。こうなりますと、公立病院も場合によっては閉鎖さえ余儀なくされるようなことが起こりかねないということで、これは市民にとっては重大な問題でございます。  私どもも一生懸命に赤字を解消するために内部で努力いたしますけれども、何といっても根本的な政府財政援助をお願いせざるを得ないと思いますので、ぜひよろしくお願いしたいと思います。
  38. 安井吉典

    ○安井委員 自治省も公立病院の赤字対策でたな上げ債等の措置がかつてあったんですけれども、とても焼け石に水だというのが現状ではないかと思います。第二次再建措置をやるべきであるというふうな声もあるし、やはり法律的な基礎を持ったしっかりした措置が必要だという声もあります。これは自治省だけではなしに、厚生省にも半分以上またがった問題だと思いますが、きょうは厚生大臣がいませんので、自治大臣からこの点どうするのかということをひとつ伺います。
  39. 福田一

    福田(一)国務大臣 御指摘の公立病院の問題でありますが、御案内のように、四十九年には再建債を発行しまして処置をいたしてまいったのでありますが、とうていこれでは十分でないということはわれわれも承知をいたしております。しかし、それでは今度さらに第二次の再建策を考えたらどうかという御指摘でありますけれども、この問題はやはりいろいろの、厚生行政といいますか、社会保険診療報酬のあり方であるとか、あるいは医療機関の適正配置の問題とか、医師や看護婦等の確保の問題というような基本問題、こういうものが確立いたしませんと、なかなか抜本的な対策が立てにくいことは御案内のとおりでございますので、これらの点をにらみ合わせながら、関係各省庁と今後とも問題の解明並びに対策に努力をいたしたいと考えておるところであります。
  40. 安井吉典

    ○安井委員 これは提案ですが、自治大臣、自治省だけでもどうにもならぬ問題ですし、診療報酬やそれから公立の診療所を医療体系の中にどう位置づけるかという問題、こういう基本的な問題もあると思うのですよ。しかも、自治体の病院というのは、その地域の住民の命と暮らしを守るとりでなんですから、そういう意味合いで地方自治の原点につながる問題でもある。だから、私は、両方でそれぞれやっているんだというんじゃなしに、政府の中に自治省も厚生省も関係省みんな入った総合的な対策の機構をつくって、そういう中で対応していく、どうすればいいのかということを真剣に考えていく、こういうことが必要だと思うのですが、どうでしょう。
  41. 福田一

    福田(一)国務大臣 新しい何らかの協議機構をつくって、ひとつ対策を研究してはどうかという御指摘でございますが、十分参考にして研究をさしていただきたいと思います。
  42. 安井吉典

    ○安井委員 次に、これも釧路市長がお見えになっておられるし、農林大臣もおられますから、日本一の水産の水揚げ基地である釧路が、例の海洋法会議の結果大きな影響を受けるのではないかという不安を持っておられて、もしそういう事態になれば市の財政も大変なことになるという、そういうお話も漏れ聞いているわけでありますが、その辺ちょっと伺っておきたいと思います。
  43. 山口哲夫

    山口参考人 釧路は幸いに七年間連続日本一の水揚げをしているわけであります。日本の魚の水揚げの約一割を揚げているわけでありますが、その中でこの二百海里が完全に施行されたといたしまして、私どもは科学的な実は分析をしてみました。産業連関表というものをつくってみたわけであります。これを四十八年度に推計してみますと、水揚げ量におきまして約七〇%が失われることになります。水揚げの金額では七三%失われます。したがって、漁業基地でありますので、市のいわゆる他の工業等も含める総生産額に対しまして一〇%の打撃を与える、こういう結果になります。就業者はいま八万七千人おりますけれども、漁業に関係するいわゆる水産加工関係そのほか商業関係一切を含めまして約二五%、二万二千人の就労者が失業を余儀なくされる。したがって、人口全体からいたしますと、五万四千人の人口減になるであろう、かように言われております。もちろん二百海里が完全に施行されるというふうには考えませんけれども、こういう大きな打撃のあることを考えるときに、地方財政に与える影響は、いわば石炭を抱えておる都市、石炭が崩壊をする、あの実態を上回るような結果が到来するのではないだろうか、漁業基地におきましてはそういう心配があるわけであります。  したがいまして、二百海里の問題につきましては、強力な外交によりまして、少なくとも現在水揚げしております既得権と申しますか、この量だけは何としても確保していただくように御尽力を賜りたい、かように考える次第です。
  44. 安井吉典

    ○安井委員 これは釧路だけではなしに、全国の水産基地の各自治体も同じような問題だと思うのです。いま予想された数字の結果が出ないように、やはり農林大臣としても最大限の努力を払うべきときだと思うのですが、どうでしょう。
  45. 安倍晋太郎

    ○安倍国務大臣 経済水域二百海里はいまや世界の大勢になっておるわけでありますが、いまお話がございましたように、経済水域が国際的な取り決めとして設定されたときは、わが国の沿岸漁業は相当な影響を受けるものというふうに考えなければならぬわけでございまして、いまわが国の総水揚げは千百万トンでございますが、経済水域二百海里が設定された場合は、その中で水揚げされる量は大体四百五十万トンから五百万トンというふうに推定されるわけでございます。したがって、影響が大きいわけでございますが、しかし、アメリカの今回の上下両院で通りました専管水域二百海里の法案の内容を調べてみましても、伝統的な漁業実績はこれを重んずるということが書かれておるわけでございますし、われわれも、来るべき三月のニューヨーク会議におきまして、経済水域二百海里が設定されるということになる段階におきましては、日本のこれまでの伝統的な漁業実績が十分尊重されるように、そういう原則がこの経済水域二百海里の設定の中に明記されるように全力を尽くしていかなければならぬと思うわけでありますが、同時に、設定された場合においてもいろいろと諸外国の制限が起こってくるわけでございますから、これに対しては外交活動等を通じまして、わが国の漁業実績が少しでも削減することがないように最大の努力をする決意でございます。
  46. 安井吉典

    ○安井委員 渋谷さんにちょっと伺いますが、国や都道府県がさまざまな行政措置——そのしわ寄せを市町村にかぶせているということについて市町村側の不満をよく聞くわけでありますが、何か具体的な例でもありましたら、この際お聞かせください。
  47. 渋谷昇次

    渋谷参考人 いま私どもが一番困っている問題は、農林省関係に多いと思いますが、少額の——少額と言ってはなんでございますが、少額の補助金とか交付金というのがございまして、たとえば薬剤の防除とか、あるいはまた家畜に対する防除の薬品の頒布とか、あるいは養鶏あるいはまた公害とか、そういう問題につきまして補助金等をもらうんですが、これは町村が受けてそのまま農協へお払いをする金になっておりまして、こういうような行政事務は非常に多いわけでございまして、こういうように地方財政が非常に苦しいときには、もう少しそういうような点で国、県、町村行政事務をもっと簡素化していただくような方法にしていただく、こういうような問題をひとつ五十一年度では真剣に取り上げていただきたい、こういうことを私どもはお願いをしたいわけでございます。  それから、この際私どもは、この地方行政のあり方を何とか根本的にやりかえていくための特別な委員会といいますか、国家的に考えていただくことをぜひお願いをしたい。もう町村の方も非常に頭も進んでおりますし、いろんな意味でそういう問題をやりたい。  それから、その少額の補助金などをもらう点については、つまり申請の書類を抱いて、領収証を抱いて、そして説明会に来い。そういうところへ行ってもらう金よりそういう行政費にかかるお金の方が多いというような補助金は、この際行政の見直しをやってもらって、そういうものはもう打ち切るようなことをしても結構だと思うのです。そのために職員を動員することは困難だ。そういう細かい問題等についてはいままで取り上げていただかなかったけれども、申し上げるとそういう問題がたくさんございますので、そういう問題をひとつやっていただきたい。  それから、公害問題等につきまして、政府とか県庁等から公害防止に対するいろんな通牒が参りますけれども、この通牒だけでは、各企業にただわれわれも通達をするだけで、これは一向に公害の防止にならないので、これについては、まあお金をつけてそういう通達をよこしてもらうとか、あるいはそれに対する公害の改善のための融資をあっせんするとか、そういう問題について何もなくて、ただ通達だけでもって公害が防止できるように考えられておったんでは、住民の窓口を扱う町村としては、これは全く実態に合っておりませんので、そういうような点もひとつ十分改善を加えるようにお願いをしたい、こういうことでございます。
  48. 安井吉典

    ○安井委員 いまちょうど行政事務の改革の問題も出ましたけれども吉岡参考人に、いまのような財政危機に対する一時糊塗的な、その場限りの対応というのが五十一年度地方財政措置だと思うのですが、これから先、中期的なあるいは長期的な地方財政はこうなければならないということについてのお考えを、あと時間が十分ありませんけれども、最後にお聞かせください。
  49. 吉岡健次

    吉岡参考人 簡単に申し上げますが、当面のところは、まず先ほど来お話のありました超過負担解消、それから地方交付税を、住民のための最低水準の行政を保障するように今日の地方交付税の繰り入れ率を引き上げるということ、これが当面一番緊急を要する対策であろうと思います。  しかし根本的には、ただいま御指摘になっておりますように、国と地方との行政事務の再配分の問題でございますが、この内容を検討して、国と地方とどういうふうに分けるか。しかしながら、特に地方自治ということと、それからやはり住民福祉ということを基本理念として、そういう理念の上に立ってできるだけ地方自治を尊重して、地方でできることは地方行政事務を移譲する、それに対応して税源を国と地方とにどう分けるか、こういう問題がやはり根本の問題であろう、こういうふうに考えます。
  50. 安井吉典

    ○安井委員 その行政事務の再配分、言葉では幾度も幾度も繰り返されるんですけれども、なかなかはかどりません。しかし四十九年度、五十年度、そしていまの五十一年度とこう来て、五十二年度から一体どうなるのかということになりますと、普通の考え方では乗り切れる道理はないと思います。これは国の財政も同じでありますけれども。ですから、五十二年度からはこうするのだということを、いま五十一年度ですが、年内に私は方向づけをしておく必要があると思います。政府の方でも考えていくようですけれども、私たちは私たちなりに検討を現在も進めつつあるわけでありますが、それにつきまして、ひとつ具体的なお考えで、こうすればいいじゃないかというのがありましたらお話しいただければありがたいと思います。
  51. 吉岡健次

    吉岡参考人 政府の方かと思っておったのですが……。  五十二年度にどうしたらいいかということ、その点をただいま私は述べたわけでございます。つまり、超過負担というものも完全に解消する、交付税の繰り入れ率を引き上げる、当面はそういうことだ。しかしながら、五十二年度を期して本当にこれから根本的に、直ちにはできませんけれども、国と地方との間の行政事務をどういうふうに再配分するかということを具体的に検討してかからなければいかぬ、こういうことを申しているわけでございます。
  52. 安井吉典

    ○安井委員 それじゃ自治大臣、いまの質問も政府かと思ったと、こういうことでございましたが、具体的なその問題についての取り組みのスケジュール、それを自治省としてお持ちなのかどうか。つまり、いつごろまでにこういうふうな考え方を打ち出していくのだ、そしてそれを明年度はこう具体化していくのだというそういう方針をいまここで話してくれと私は言いません。それへの作業スケジュールですね、それについて伺います。
  53. 福田一

    福田(一)国務大臣 御案内のように、景気の動向その他をにらみ合わせながら、交付税率の問題等については、年度というか、今年の終わり前後にはどうしても考えていかなければならない問題であるとわれわれは考えております。  それから行政の機構の改革という問題については、これは総理もお答えをいたしておるのでありますが、今後ともひとつ取り組んでまいりますが、いまここで具体的にどうしてこうするということについては、まだここで申し上げるところまで案が固まっておらないというのが実情でありますけれども、今後とも大いに努力をいたしてまいりたい、かように考えております。
  54. 安井吉典

    ○安井委員 地方財政の中期的な見通しだとか、それから地方債の償還の見通しだとか、縁故債の償還の見通しだとか、そういうような問題については、私が資料要求をしていることについて、来週の後半に御返事がいただける、国会に提出をいただけるというふうに内々伺っておりますが、それでよろしいですか。
  55. 福田一

    福田(一)国務大臣 先般は四、五日でということを実は安井さんに申し上げたのですが、なかなか作業が複雑なものでありますからして、大変遅くなって恐縮なんでありますが、来週末までにはひとつ提案をさしていただきたい、かように考えております。
  56. 安井吉典

    ○安井委員 じゃ、それを待ちまして、さらに討議を続けさせていただきたいと思います。  参考人、御苦労さまでした。ありがとうございます。
  57. 小山長規

    小山(長)委員長代理 次に、三谷秀治君。
  58. 三谷秀治

    三谷委員 先ほどからの質疑を聞いておりますと、地方債について大蔵と自治が全く見解が隔たっております。たとえば大蔵の方では、適格担保にする意思はない、買いオペの対象にはする意思はない、こうおっしゃっております。ところが自治の方では、そうしなければ地方債は欠格商品であって、不良商品であって流通性がない、消化の可能性がないということを事務次官などがしばしばおっしゃっております。そうしますと、一体大蔵の見解と自治の見解は、どちらが政府としては今後において実行される方法なのか。これを各大臣にお尋ねしたいと思うのです。
  59. 大平正芳

    ○大平国務大臣 地方債でも、公募債はすでにオペレーションの適格対象になっておりますことは御案内のとおりでございまして、問題は縁故債なんでございます。縁故債というのは、地方によりまして非常に偏在しがちなものでございまするし、これをオペレーションの対象にただいま直ちにせよということは、オペレーション政策の目的からいっていかがかという感じをわれわれは持っておるわけでございますが、問題は、適格の対象にせよということは、その消化を促進する趣旨のものと承知いたしておりますので、その消化の促進にわれわれが鋭意努力いたしまして御期待に沿うことができれば、それで目的を達するわけでございますので、私どもはそういう方向で努力をいたしますということを申し上げておるわけでございます。
  60. 福田一

    福田(一)国務大臣 お答えをいたします。  ただいま大蔵大臣からも御答弁がありましたが、われわれとしてはこれを消化するには担保適格債にしてもらいたいという希望を持っておりますが、今年さしあたりやってみた段階において、その経過を見つつ、縁故債が順調に消化されるということであれば結構でありますが、そこいらをにらみ合わせた上で、今後とも対策を考えるというか、大蔵省とも協議をいたしてまいりたい。この問題については、したがって、両省の間において何らかの協議の機関でもつくるということにいたしておるわけであります。
  61. 三谷秀治

    三谷委員 そうしますと、地方債、特に縁故債の消化について大蔵が責任をもって当たる、消化については全面的な責任を政府が持つんだ、こういうお考えですか。そのことが約束できますか。
  62. 大平正芳

    ○大平国務大臣 自治大臣と私との間で協力を約しておりますので、その信義に忠実でありたいと思います。
  63. 三谷秀治

    三谷委員 五十一年の地方債残高は二十数兆円になるわけでありますが、政府資金がおおむね二年据え置きの八年償還、縁故債で三年据え置きの七年償還でありますから、五十年度の減収補てん債、五十一年度財源対策債などは、あわせまして五十三年度から償還が始まりますが、この償還についての見通しですね、償還財源についてはどうお考えになっておりますか。
  64. 福田一

    福田(一)国務大臣 お答えをしますが、ことしといいますか、今年度の補正予算におきます分につきましては償還は五十二年度から始まりますし、五十一年度の分につきましては償還は五十三年度から始まるわけでありますが、その場合において、地方財政が非常に苦しい状態にあるときには、その償還についても何らかの救済というか、余り地方財政に無理がいかないように措置をする、こういうことに大蔵省との間で話し合いがついておるわけでございます。
  65. 三谷秀治

    三谷委員 大蔵省はこの償還財源の構想についてどうお脅えでしょうか。御承知のように、財政法の四条によりますと、公債を発行し、または借入金をなす場合においては、償還計画を国会に提出しなくちゃならないという規定がありますが、これは地方債におきましても、特に特別地方債におきましても準用される性質のものだと思います。そうしますと、こういう地方債の承認を求めようとする場合に財源を示してもらうということは当然なことであると思いますが、財源についての大蔵省の構想をお尋ねしたいと思います。
  66. 吉瀬維哉

    ○吉瀬政府委員 御承知のように、昭和五十年度の補正の段階から相当地方税の落ち込みがございますため多額の地方債が発行されておる、この償還についてどういうことに相なるかということでございますが、この間大蔵省といたしましては、今後の経済企画庁の経済計画の概案に大体準拠いたしまして、今後五ヵ年間の財政バランスを提出した次第でございます。  今後税収がどう伸びるか、またその税収のうちに所得税、法人税がどういうような地位を占めるか、あるいは酒税——交付税の基礎になる三税でございますね、こういうものの見通しによって変わってくることと思います。また、地方税そのものの今後の増収が経済情勢によってどういうぐあいに変わってくるかという点も問題になるかと思います。  それで、多額の借入金を地方においては行っておるわけでございますが、今後自治省の方から提出される一つ財政収支に対する見通し、こういうものを勘案いたしまして、財源というものは個別に特定できませんが、そういうものの上に立ちまして総合判断いたしたい、こう思っておる次第でございます。
  67. 三谷秀治

    三谷委員 償還の財源もなしに借金をする、返す見込みもなしに借金をするという処置がいまとられようとしておりますが、それは財政法上からいいましてどうなるわけですか。償還財源を示すということが一つの要件になっておると思いますが、その点はどうでしょうか。  それから、税収が伸びる展望が見込まれない中で、償還財源の当てもなしにその場逃れの借金地方自治体に負わせるというだけの地方財政政策というものは、後年度負担というものを膨張させる、金利負担をさらに加重するという面からしまして、財政危機をさらに慢性化する可能性があるわけでありますが、この点についてはどうお考えでしょう。
  68. 吉瀬維哉

    ○吉瀬政府委員 御質問の前段について、こちらの方と関係ございますのでお答え申し上げたいと思いますが、前段の方の償還計画でございますが、本委員会においてもいろいろ議論が行われておりまして、償還計画を出すということは財政法に規定してございますが、これは先生御承知のとおり満期償還でございますので、十年債なら十年債がその時期において償還されるという形の計画表が添付書類として出ているわけでございます。  しからばその財源をどうするかというお尋ねかと思います。この財源につきましては、先般来御説明申し上げますとおり、財政の全体の収支バランスの中で判断していかなければいけないということで、その一つの判断のよすがといたしまして五年間の財政収支バランスを提出した次第でございます。そういうような点で財源を付して償還計画を出すということは、いまのところ財政法上の一つの要件にはなっておりませんが、そういう点、財政のいわば歳入歳出の総力を挙げて何とか返していきたいという形の見通しになっているわけでございます。
  69. 福田一

    福田(一)国務大臣 お答えをいたします。  後年度において返還する場合に、それが地方財政を圧迫することがないようにいたさなければいけないのでありまして、その意味においては大蔵省とその段階において詰めをいたしますが、まず、この金利の負担その他につきましては交付税で十分めんどうを見るということだけははっきりいたしておるわけであります。
  70. 三谷秀治

    三谷委員 その交付税の問題については後でお尋ねいたしますが、償還計画というものは償還方法、償還財源、そういうものを含めて検討しなければ、果たしてその債務が妥当かどうかという結論は出ないわけなんです。ですから、それは単に方法だけ示せばいいという考え方、これは解釈がはなはだしく恣意的であって、当然これに伴う財源処置等につきましても提示してもらわなければ、果たしてこの地方債が正当かどうかという判断ができないという性質のものだと思いますが、その点はどうでしょうか。  それからさらに、御承知のように地方財政法五条によりまして地方債の制限が行われております。これは言うまでもなく、適債事業は後年度における住民の受益を保障する場合にのみ限られる。ですから、一般行政費については後年度負担を転嫁すべきではないというたてまえになっておることは御承知のとおりであります。そこで、普通の歳出は普通の歳入に求めなければならないということは原則でありますが、これにつきましてはどのようなお考えでしょうか。そしてその問題と、五十一年度処置との関連はどう結びつくものでしょうか。
  71. 首藤堯

    ○首藤政府委員 地方債の償還問題でございますが、ただいま御指摘のように非常に多額の地方債が発行されることになるわけでございますが、この償還につきましては、将来その償還に要します財源地方財政計画上の歳出に計上いたしまして、地方財政計画を通じまして、地方財政全般としてその財源措置が的確になされるように将来とも措置をとり続けていきたい、そのことを通じて償還に支障なからしめるように措置をしたいと考えておるわけであります。  それから、もう一点の地方財政法五条に規定をされております地方債との関連でございますが、御指摘のように、本来地方債そのものは後代に負担を残しますので、地方財政法五条で適債事業を制限をいたしておるのでございますが、本年度の例の税の減収補てん債、それから明年度におきます一部の地方債への交付税の振りかえ、この点につきましては、財源が不足をいたしておりますためにやむを得ずとられた措置でございますので、このような地方財政法五条の特例、こういうかっこうで、国におきまして特例法が制定をされますのと同じかっこうで地方財政法の特例を制定をいたしまして、その発行を認める、こういう法案を提案をし、御審議をいただいておるところでございます。
  72. 三谷秀治

    三谷委員 地方財政計画に組み込みましても、地方財政計画に組み得る財源というものが一定しておる限りは、これは何ら償還財源として特定なものとして判断ができないことなんです。  もう一つ財源がないとおっしゃいましたが、この財源がないという問題はそのままには私どもは了解ができません。財源が果たしてないか、あるいは削除すべき費目はないのかという点になってきますと、これは問題が全般的になりますから、この場所でこの時間では指摘ができませんが、ただ財源問題を言います場合に、地方税収入の中にもなお財源が多数含まれておるということは指摘ができると思います。  たとえば、事業税や法人住民税を見れば非常に明白でありますが、事業税はこれは物税ではなかったのでしょうか。ですから、事業税というものは事業という収益活動を行っておる事実に着目して、そこに担税力を見出した税であるというふうに規定されております。したがって所得課税ではないことは明白でありますが、この点はそのとおりでしょうか。
  73. 森岡敞

    ○森岡政府委員 お答えいたします。  事業税の性格につきましては、従来の税制調査会の答申におきましても、事業税は事業の活動に応じて負担を求めていく、特に都道府県の行政との受益関係に着目して課税する税である、そういう意味合いで、御指摘の物税であるという観念が強く出ております。ただ現在の課税の方式につきましては、御案内のように電気、ガス、保険業については収益金額課税でございますが、その他は所得を課税標準にいたしております。そういう意味合いで、事業税のあるべき形というものと現実の税制のたてまえというものとに若干の乖離があるということに相なろうか、かように考えます。
  74. 三谷秀治

    三谷委員 その乖離を克服するということがどうしてできないのか、これをお尋ねしたいと思うのです。  事業税が今日所得税、法人税の付加税化してしまっている。そのために、御承知のように五十年度における事業税の免除法人が三一%に達しております。この中には、十億以上の大企業でも一二%が事業税を全く払っていない、こういう状態になっておるわけであります。これは所得課税が実施されておりますから、さまざまな所得の控除によりまして、つまり所得隠しによりまして所得が圧縮されるというところに一つの要因があるのであります。しかも、所得課税でありますならば当然累進制によるべきものである。しかるに比例制というのはこれは奇怪な話である。あるいは七百五十万円を基準にしまして、それ以上には青天井になっている。それ以下を二つに区分して税率を決めておる。こういう大変矛盾した処置が行われておるのであります。特に、税を免除されました法人といいますのが、公害対策だとか水利用だとか、あるいは道路、港湾の利用率などが最も高い企業に多いわけでありまして、事業税というものはそういう行政受益を分担させるために設けられたものであって、そういう行政受益を最も濃厚に受けておる企業が税金を払っていない。特に重化学工業に圧倒的に多いわけでありますが、これはきわめて不合理な税の取り方であると思いますが、これがどうして税のたてまえに基づいた徴収方法に改善されませんのか、その点をお尋ねしたいのです。
  75. 森岡敞

    ○森岡政府委員 事業税は、御案内のように二兆円に達する都道府県税収入の大宗を占める税でございます。したがいまして、そのあり方の問題は地方税制としてはきわめて重要な問題でございます。そういう意味合いで昨年の税制調査会におきましても事業税のあり方についてかなり突っ込んだ御検討を願ったわけであります。特に、外形標準課税を導入する問題につきまして、たとえばその対象をどういうふうに考えるのか、あるいは中小企業などにつきましては相当な負担の激変が来るのではないかという具体的な問題もございます。あるいはまた外形標準として売上金額を用いるのかあるいは資本を用いるのかあるいは付加価値額を用いるのかというふうな税制上のいろいろな問題点がございます。これらについても検討が行われました。さらにまた、税率をどういうふうに定めるのかという議論もいろいろやっていただいたのでございますが、最終的に結論を得るに至りませんでした。特に現在の経済の現状から考えまして、事業税に外形標準を導入するのは現時点ではなお時期尚早だという御意見もあったわけであります。さらにまた、今後の経済社会の変動に応じましてやはり国税、地方税を通じて税制に相当の根本的検討が必要だ、その姿を見ながら事業税のあり方を検討すべきではないかという慎重な御意見もあったわけでございます。いま申し上げましたように結論は得ませんでしたが、今後引き続き税制調査会において真剣な御検討をお願いし、努力を続けてまいりたい、かように考えております。
  76. 三谷秀治

    三谷委員 時期尚早とおっしゃいます意味が私はよくわかりませんが、事業税というのはもともと物税としてつくったものなんですよ。ですから、それを別のものにかえるということになれば、それは時期が早いとか遅いとかいう問題があるでしょうが、本来つくったたてまえに基づいて税を徴収するということにするのがなぜ時期尚早というふうな認定になるのか、全く不可解でありますが、この点あわせてお尋ねをしたいと思います。  それから、この問題につきましてはすでに昭和二十六、七年当時から自治省内部におきましても検討されまして、物税だからいまの状態ではよくないということが討議されてきました記録がありますが、それが今日すでにもう二十数年を経ましてなお時期尚早だとおっしゃっておる、これは一体どういうことなのか、まことにめんような気持ちを免れがたいのでありますが、これは副総理にでも見解をお尋ねしたいと思うのです。
  77. 森岡敞

    ○森岡政府委員 お答えいたします。  時期尚早という御意見がありましたのは、先ほど申し上げましたように現在の経済情勢のもとでいろいろ税負担に大きな変動を与えることについては問題があるということが一点でございます。  それからもう一点は、これは先ほど申し上げたことでございますが、国税、地方税を通じまして税体系についてかなり根本的な検討を加える必要があろう、そういう全体の姿をにらみ合わせながら事業税についての外形標準導入という問題をあわせて検討する必要があろう、こういう観点からそういう御意見があったわけでございます。  なお、御指摘にありましたように、昭和二十六年から昭和三十八年まで、地方税法上は事業税は付加価値税という形で企業活動に対して課税する税制が法文上書かれておりましたけれども、これは税負担の面からいろいろな御議論がありまして、御承知のように実施に移されなかったわけであります。事ほどさように大変むずかしい問題でありますので、かなり慎重な御検討がなければ具体的な結論がなかなか出にくい、こういう状況にあるわけでございます。
  78. 三谷秀治

    三谷委員 現在の経済情勢というのは、いまの要するに不況時だという意味だと思いますが、これは不況、好況にかかわらず歴史的に問題になってきた問題であって、いまの不況時だから時期尚早だという説明は、これは納得できるものではありません。  それから、国税、地方税を通じての根本的な見直しの問題がありますが、そのことは大変必要だと思いますが、ただ租税の創設されました基本的な概念に反する税の徴収が行われておる問題については、これは別個に、速やかに改善をするというのが当然の処置であって、これをおやりになる必要があるはずだと私は考えておりますが、この点は大臣はどうでしょうか。
  79. 福田一

    福田(一)国務大臣 御指摘の点は、事業税においても外形標準その他を加えてこの際見直しをすべきではないかという意味であると理解をいたすのでありますが、この点は先ほども税務局長からも申し上げておりますが、われわれとしても慎重に検討いたしており、また税調にもこの点について審議を願っておるという段階でございます。
  80. 三谷秀治

    三谷委員 これだけお尋ねしておるわけにいきませんから次に行きますが、これは事業税だけではありません。たとえば法人住民税の課税方式にも問題があります。法人住民税均等割りの税率の区分というのは、一千万円以下とそれから一億円以下、一億円以上、三区分になっている。ですから、一億円を基準にしまして、それ以下を二つに区分してある、一億円以上は全部青天井になっている。今日の、経済の高度成長の時代で、資本の高蓄積の時代において一億円を基準にしてそれ以下を二つに割って、それ以上は青天井だというような課税方式が妥当だろうかということはだれしもが考える問題であります。一億を一つの区分基準としますならば、一億を超すごとに税率の累進制を実施するというような処置をとるのが当然ではあるまいか、私はそう思いますが、一千万円と一億で区分した根拠はどこにあるのか、今日の資本金が非常に膨張しました時代に、こういう区分の仕方で果たして国民が納得するだろうかという点についてお尋ねしたい。
  81. 森岡敞

    ○森岡政府委員 お答えいたします。  均等割りというものの性格でございますが、これは御承知のように、地方団体と法人とのいわば応益関係というものに着目いたしまして、地域社会の費用を広く負担していただく、こういう観点で立てられておる税制であろうと考えます。そういうことでありますので、やはり定額でありますけれども、その法人の規模によりまして差を設けたいということで、従来、一千万円を境にいたしまして、一千万円超と一千万円以下ということで税率の差等を設けておりました。今回御指摘のように一億円以上というのをさらに設けまして、一億円以上については従来の税率の六倍というふうにかなり思い切った引き上げを図ったわけでございます。均等割りの、先ほど来申し上げました性格から申しますと、段階をそうたくさんつくるということはやはり私どもは税制としてはいかがか、かように考えます。やはり今回設けました三段階というのが一応の姿として妥当ではなかろうか、かように考えておるわけでございまして、一億円増すごとにということで均等割りをつくるというのはやはり均等割りの性格からして妥当ではないのではないか、かように考えます。
  82. 三谷秀治

    三谷委員 均等割りというのは平均割りじゃないのですよ、それぞれの条件に応じた適正な負担をするという意味のものでありますから、今日一億円以上百億であろうと一千億であろうと同じであるというふうな意味の平等性といいますか、悪平等といいますか、そういう性質のものであってはならない、能力やあるいは受益に応じた負担の均等性というものを考えていきますならば、これは当然さらに百尺竿頭一歩を進めて是正をする必要があると私は考えておるものであります。  これにつきましても繰り返して申し上げておる時間がありませんが、このようにしまして不公正な税の制度というものが数多く残っておるということは、地方税の部分だけを取り上げましても明確なんです。さっき釧路市長さんもおっしゃっておりましたが、その他の地方税の中にも非常に不公正な税の制度が残っておるということを考えてみますならば、これは財源がないということだけで今日の借金財政というものを合理化するということはできないということを私は指摘しておきたいと思うのであります。  そこで、こういう大企業優遇の税制を改めるべきだ、これをやる意思があるかないか、これをお尋ねしておきたい。
  83. 小山長規

    小山(長)委員長代理 三谷君に申し上げますが、参考人に対する質問はないのですか。
  84. 三谷秀治

    三谷委員 あります。
  85. 小山長規

    小山(長)委員長代理 いまのはどなたに対する質問ですか。
  86. 三谷秀治

    三谷委員 だれがお答えになるか知りませんが……。
  87. 森岡敞

    ○森岡政府委員 税制における公平の確保、これは一番大事なことでございます。企業規模に応じて特定の企業が大変有利な税負担になるというようなことは、これはぜひ回避しなければならないと思います。そういう意味合いで、特別措置等の整理につきましては今回もかなり国税、地方税を通じまして検討いたしました。引き続きなお真剣な検討を続けてまいりたい、かように考えております。
  88. 三谷秀治

    三谷委員 そこで参考人の方にお尋ねしたいのですが、吉岡先生にお尋ねをしたいのは、地方財政による景気対策の基本的な考え方といいますか、こういう点について御意見をお聞きしたいと思います。
  89. 吉岡健次

    吉岡参考人 まず最初に申し上げておかなければならないことは、公共投資というものの配分の点でございまして、今日の政府の公共投資のあり方というものは、一口で申しますと、日本列島改造の大型プロジェクトを中心とした産業関連公共投資に重点が置かれておる、こう言うことができると思うのでございます。そういう点で私は、いまのような公共投資のあり方ではなくて、むしろ住民福祉というものを中心とした公共投資のあり方が中心になければならない。そういう公共投資はつまり景気政策に直結するわけでございまして、生活関連の公共投資による景気政策というものは、産業関連を中心とする景気政策と比べまして、私は大体三点ばかりすぐれた点があるのではなかろうかと思うのでございます。  第一点は、まず、従来しきりに批判をされてまいりました経済成長優先主義から福祉優先という今日の世論となっておる点、その理念というものに即応するものであるという点でございます。今日この不況下の中で、特に地場産業とか中小企業は非常に困っておるわけでございますけれども、そういう人たちにとっては、たとえば道路をつくるよりは、さまざまな住宅とか上下水道とか清掃施設とか保育所とか学校とか、そういうふうな生活関連の公共投資というものがより景気対策としてよろしいものである、これが一つでございます。  それから第二点の問題は、たとえば道路でしたら砂利とセメントでございますけれども、ただいま申したような生活関連ということになりますと、これは非常に需要が多面的でございます。そういう意味で、景気政策として有効であるという点でございます。  それから三番目の点におきましては、産業関連の公共投資でございましたら、いわゆる拡大再生産というものを刺激をして、そして高度蓄積というものをあおって、そしてその後、より大なる不況を準備する、そういうことじゃなくて、拡大再生産を刺激しないで、しかも景気政策として非常に有効である、こういう点におきまして、政府の公共投資を中心とする公共投資のいわば流れと申しますか、そういうものを変えていくということが今日大事な点であろうと思います。  しかし、それと同時に、より根本におきましては、何と申しましても一番大事な景気政策というものは国民の購買力の問題でございますから、これは賃金あるいは税金の問題、そういう点において国民大衆の購買力を上げていくということがやはり根本の景気政策であろう、こういうふうに考えます。
  90. 三谷秀治

    三谷委員 そこで、政府にお尋ねしますが、今度の公共事業費を見ましても、道路建設に非常な比重が置かれております。しかも、道路建設事業というのは、従来から超過負担が全然出ないわけなんですね。この道路建設事業というものは、事業計画を立てまして補助金を申請した段階で実行可能な単価とすることをわざわざ建設省が指示しておる、通達を出しております。そこで各自治体は、建設物価速報などによりまして地域における時価をもとにして算定をする、そして事業費を要求する、これを国は受けて概算払いをする、こういう制度になっている。ですから、年度途中におきまして物価の変動が生じますと、自治体事業変更を申請する。そうしますと、建設省はこれを受けまして事業量のカットかあるいは事業費の増額のいずれかの処置をとる、こういう処置がなされております。ですから、全然これは超過負担出ない。ところが生活関連につきましては、これは精算段階補助金を交付して、物価変動によるスライドもなければ、調整処置もない。どうしてこういう不公正な格差があるのか、これをお尋ねしたいのです。
  91. 竹下登

    ○竹下国務大臣 三谷委員にお答えいたしますが、私がすべてお答えする対象ではなかろうかと思います。が、三谷委員御説のとおりでありまして、建設省事業におきましては、いまおっしゃったとおりの仕組みになっておりまして、工事計画設計の取り扱いについてという道路局長の通達、またほかの局におきましても、都市局所管国庫補助金交付申請要領とかそれぞれの局においてもおおむねいま委員御指摘のとおりの形でやっておりますので、確かに超過負担は起こり得ない、こういうことになるわけでございます。  他は私の所管でございませんので、私からお答えすることは差し控えさせていただきます。
  92. 三谷秀治

    三谷委員 建設省じゃなしに、厚生省あたりもお答えいただきたい。
  93. 小山長規

    小山(長)委員長代理 その質問の相手をちょっと言ってください。
  94. 三谷秀治

    三谷委員 厚生大臣にお尋ねしたい。道路のことじゃない。
  95. 小山長規

    小山(長)委員長代理 厚生大臣答えますか。
  96. 吉瀬維哉

    ○吉瀬政府委員 文教とかそれから社会福祉の施設でございますが、これにつきましても単価是正なりあるいは対象、量の是正は毎年行っておるところでございまして、特に三谷委員御承知のとおり、学校などにつきましては、四十九年度の調査に基づきまして、四十九年度の補正後、五十年度七百七十五億の単価是正を行っております。また社会福祉施設におきましても、同様に百三十三億というような是正を行っております。また五十一年度予算におきましても、物価の上昇に応じまして所要の七、八%、七%強の是正を行っておりまして、そういう点で先ほど来いろいろ御議論が出ましたけれども、私ども関係各省庁と連携をとりながら必要な是正を行っているところでございまして、その点だけお答えいたしておきます。
  97. 三谷秀治

    三谷委員 産業関連におきましては超過負担が出ないように仕組んである。生活関連におきましては日常不断に超過負担が出ておるということは、先ほど市長さんや町長さんの意見の中でも明確に示されている。なぜそういう格差がありますのか、同じ国の事業の中でどうしてそういう不合理なことがあるのかということをお尋ねしているわけで、政府のどなたでも結構ですが、一番責任をお持ちの方にお答えいただきたい。
  98. 吉瀬維哉

    ○吉瀬政府委員 これは実態調査の結果で、それで各省庁と十分に連携をとりまして調査した結果でこういうことになっているわけでございますが、いまの三谷委員の御質問で、生活関連について超過負担が生じているというような御質問でございますが、全般の計数を見て判断しないといけない問題でございますが、一つの原因としては、自治体として、福祉関係の行政につきまして最近非常に急激に行政需要が伸び、また行政支出も伸びている。また国の補助対象として、効率的な事業運営を基準といたしましていろいろな補助対象の面積だとか単価とかをはじいているわけでございますが、やはり住民福祉の需要に応じまして、若干そういう種類のもの、たとえば児童一人当たりの保育所の面積とか、そういうものに対しまして面積を増そうとか、そういうニードがふえておるのではなかろうか、そういう面につきまして、私ども追跡調査いたしまして是正しておりますが、そういう点で、昔からあった道路とか港湾とか、そういう種類の産業関連と違いまして、こういう点のところが、社会経済情勢の変動に応じまして、超過負担の形で言われているのではなかろうか。私どもよく、たとえば保育所なども五十一年度におきましては面積を二割アップする、そういうような、必要に応じましてそういう是正をやっているわけでございますが、なおそういう点の超過負担の発生しないように、十分国の基準とも合わせまして調査を続行いたしていきたい、こう考えております。
  99. 三谷秀治

    三谷委員 いまの実態について市長さん町長さんにその実情を、いまああいう答弁をなさっておりますが、これについての御意見をお尋ねしたいと思うのです。
  100. 渋谷昇次

    渋谷参考人 私どもが四十九年度におきまして地方公共団体で集計をいたしますと、地方公共団体超過負担分は六千三百六十億円というような膨大な数字になります。これは一般行政費の職員の実態の給与を、ラスパイレス指数を用いて国家公務員の給与水準に置きかえて計算をいたしましても、六千三百四億円となるわけでございます。この中でやはり施設費が非常に多く、施設費、措置費、人件費等が多いわけでございます。特に保育所の措置費等は千三百八十八億円という大きな負担額になっているわけでございます。  これ以外にもどうしても、先ほど私が申しましたように、用地の取得とか浄化装置をつけるとかあるいは備品を購入するとか、そういうものがなかったならば、これは保育所なりそういう施設ができないわけで、こういうものはこの対象外になっておりますから、そういうものを全部含めました、全部の四十九年度超過負担総額は一兆二千億円、全国集計でこういうことになっていることは、これは全国の超過負担解消特別委員会市町村段階でつくりまして、そういう実態調査に基づいた総額でございます。  これが地方財政を圧迫しているということはもう確実に国民のだれもがわかっていることでありますので、この際、大蔵省初め、実態調査をしていただけばわかることなんです。これを解消していただくだけでも、五十二年度以降における地方債の償還も可能になってくるのではないかと思うわけで、特にこの点を強調してお願いをしたいと思います。
  101. 三谷秀治

    三谷委員 いま参考人の方がおっしゃったように、生活関連事業における超過負担というものは毎年度調査をして改善しておるとおっしゃるけれども、実際におきましては、依然としてこれが持続しているという状態なのです。これは制度に問題があるのであって、これも道路のような仕組みでやっていけば出るわけがないのです。これは全然やり方が違うわけなんでしょう。そこで、なぜ道路についてはそういうふうな処置がとられるのか。たとえば道路なんていうものは、今日におきましては可住面積当たりにして見ますと、道路延長量を見ますとアメリカの八倍という膨大な道路建設が進んでおるわけなのです。何のための道路投資かという疑問が出るような状態になってきている。そういうところにはふんだんに国庫支出金を出す。そして、いまの景気対策の面からも、いま吉岡先生がおっしゃいましたが、きわめて重要な地域の生活関連事業につきましては、いま言いましたように必ず超過負担が出る。これを直してもらわぬといかぬのでしょう。直さなければ法令に反することになるわけなのですよ。これについて副総理なり大蔵大臣なりの見解をお尋ねしたい。
  102. 大平正芳

    ○大平国務大臣 お話を伺っておりますと、問題は、つまり超過負担というものそれ自体をどう考えるかという点に一つはあるように思います。と申しますのは、超過負担が完全に解消する、いま釧路市長さんが言われたような状態を招来するためには、中央、地方を通じて超過負担という観念に全然そごがない認識を持っていなければならぬと思うのです。ところが実際におきまして、中央が考えておりますのは、最も能率的な姿において合理的な工事をやって、適正な事業をやった場合に必要とするコストは幾らかという点で見ておるわけでございますが、実際、地方におきましてはそれぞれの事情があると思いますけれども、単価におきまして、あるいは面積規模におきまして、現地の事情もございまして、中央が期待しておるとおりにいかない場合があると思うのでございまして、そういう場合には自然その間に間差が出てくるわけでございますが、われわれはそれをしも超過負担とは考えていないわけでございます。  第二の問題は、道路のような産業関連に出ないで、保育所でございますとか教育施設でございますとかそういうものに出るのはどういうわけかということでございますが、道路にいたしましても河川にいたしましても、それぞれ適正な単価をまず考えるわけでございますが、それを実施した場合にそのとおりの単価で工事ができるということには、インフレの進行時期におきましてはなかなか期待できないわけでございまして、自然でき上がった事業の分量において調節が行われておるのではないかと私は思うのでございまして、産業関連において特に甘く、生活あるいは教育その他の関連におきまして特に辛くしておるというようなことは、財政当局としても、また事業を実施いたしておりまする関係当局といたしましても、そういうことは全然いたしていないものと確信しております。
  103. 三谷秀治

    三谷委員 あなたの確信だけではだめなんですよ。具体的に出てきている行政実態が問題なんだ。それでいきますと、さっき言いましたように生活関連事業におきましてはスライドもない、調整措置もないわけなんですよ。そして、事業が終わった段階で精算をするという措置なんでしょう。道路は違うのですよ。概算払いをするのですよ。そして調整措置をとる、スライドをするわけなんです。なぜこれほど露骨な差があるのかということが問題だということをお尋ねしているわけであります。  それから参考人の方にお尋ねしますが、肥の始末やごみの始末はいま各自治体で非常に深刻な問題になっておりますが、これについてはどのような処置をおとりになっておるのか、あるいはどういう状況にあるのか、お尋ねしたいと思います。大臣、この問題は後で一緒に答えてください。
  104. 渋谷昇次

    渋谷参考人 ごみ並びに屎尿処理等の問題でございますが、この問題については大変困ってはおりますが、ごみ焼却場、それから屎尿処理等につきましては、現在それぞれ担当させておりまして、ありますが、特に私たち問題になっているものは不燃物の廃棄物の処理施設、それから公害で出てきますそういうもの、汚泥の廃棄施設、そういうものにつきましては全く手のつけようのない状態でございます。これらの施設におきましても、通達とそれから実際の施設をやる過程との間にはきわめて大きな差がございますので、これも改善をしていただきたい。  それから、先ほど超過負担の問題で大蔵大臣からお話がありましたが、政府超過負担解消はやってくれておりますが、これは私どもから申し上げれば、全く申しわけ程度に、お茶を濁す程度にしか単価アップをしていないわけであって、これはもうちゃんと法令で決まっている措置費で人間を何人配置しなさい、そういうようなことを法律で縛って保育所を設置させておりますから、もし、その超過負担が、どこまでが超過負担の限界で、どこまでが超過負担ではないかという問題があるならば、その保育所を設置するのに、国はこれだけお金をやる、あとは地方自治体お金をたくさんかけようと自由にやりなさいというならばいいのです。ところが、これに対しては、その生徒についてはこれだけだとか、こういう内容をしなさいという細かい法律でもって市町村を縛っておきながら、それを措置するお金はついてこない。ここを私どもは申し上げておるわけでございます。ですから、私ども自治体でございますから、政府だとかあるいは皆さんに御協力しないわけではございませんので、もしそういうような問題があるならば、その細かい法律で決めた設置基準とかというものを緩めていただいて、お金市町村には、保育所なりそういうものをつくる場合にはこれだけだよ、あとは自分たちでいかにお金をかけようとどうしようが自由にしなさい、こういうことをして、その内容についてもある程度市町村に任してくれても、そんなに変なことはしないと思うのです。この辺の見解の相違が、私どもが考える地方超過負担の内容と政府当局が考えられている超過負担の内容との間には全く見解のずれがございまして、われわれは上意下達でもってその縄で縛られて地方行政というものをやっているわけで、これは各県の地方課に聞いていただけばわかると思いますが、こういう問題を私はひとつ改めて政府当局でも基本的に見直していただきたい。これは財政が非常に豊かなときならいいですけれども、これから五十一年、五十二年度は全く苦しくて地方自治体が全くやれないのです。こういう状態になっている現状をおくみ取りいただいて、これを基本的に改めていただければ、われわれは与えられたる金で、しかも足りなければ自分で住民から負担をとっても、これはつくるものはつくっていくわけです。この措置が全然とられてないというところに問題点があるだろう、この点をひとつお願いしたいと思うわけであります。
  105. 三谷秀治

    三谷委員 さっきのをお答えいただきたい。
  106. 田中正巳

    田中国務大臣 一般廃棄物についての補助というのは、実は沿革的に見ますると、奨励的補助金から始まったものであります。しかし、廃棄物行政が非常に重要になってまいりましたものですから、その後逐年実勢単価に近づけるように努力をしてまいりました。いろいろな経緯がございますが、昭和五十一年度予算では、ただいま御審議願っておりますが、屎尿については三一%、ごみについては四一%上げておりますが、しかし、実勢とはまだ開きがあることでございますので、今後ともこれの実勢との差を、間差を埋めるように努力をいたさなければならない、かように思っているわけでございます。
  107. 三谷秀治

    三谷委員 さっきお尋ねしましたのは、生活関連と生産関係の国庫支出金の扱い方の差はなぜかとお尋ねしたのですが、これはお答えいただけませんか。
  108. 大平正芳

    ○大平国務大臣 事業の性質によってどういう予算の配賦の仕方をやるかという問題だろうと思うのでございます。私ども、先ほど申しましたように、産業関連であるから甘く、生活関連であるから辛くというような考え方は毛頭ないわけでございまして、事業の性質によりまして予算の配賦の仕方が違っておるというものと考えます。
  109. 三谷秀治

    三谷委員 どのような事業でありましょうとも、物価の変動があれば即時それに応じてスライドをするというふうな措置は何ら変わりなしにできる問題なんですよ。ところが一方においてはそれがある、一方はない、それはおかしいじゃないですかと言っているのです。
  110. 大平正芳

    ○大平国務大臣 でございますから、毎年実施官庁と共同で実地調査をしまして、その結果を踏まえて超過負担解消措置をその年度から直ちに実行に移しておりますことは、御案内のとおりでございます。
  111. 三谷秀治

    三谷委員 こだわるようですけれども、毎年度調査をされて一定の時間差がたった後において改善されているわけなんだ。さかのぼって超過負担分の損失を賄うという措置は、いままでないわけなんですよ。それをおやりになれば、それはある程度是正ができますが、超過負担調査をしました結果出ました超過負担につきましては、翌年度におきましても、あるいは明年度におきましても、年度を区切ってよろしいが、それを損失補てんをするという形で補てんをされますか。それをされればやや措置が類似してくるということになってきますが、その点どうですか。
  112. 大平正芳

    ○大平国務大臣 仰せのように、翌年度予算超過負担解消措置を講じておったわけでございますけれども、補正を組みます段階、補正予算を組む年は、その補正予算から直ちに超過負担解消措置をとりましたことは、あなたも御承知のとおりでございます。そのように、できるだけ時間的間差を置かないで是正措置が講じられるように努力をいたしておるわけでございますが、過去にさかのぼりまして、いままで損した分を埋めろというおぼしめしでございますけれども、そこまではまだ政府は考えておりません。
  113. 三谷秀治

    三谷委員 時間がたちますからおいておきますが、非常に道理に合わない措置をおとりになっている。道路の場合ですと、実行可能な単価にするということをあらかじめ指示して、そして相談をしておやりになるわけですが、他の場合は、これが国の基準単価なんだ、これが国の調べた標準的な単価なんだ、こういう措置なんです。実行可能という問題でなしに、国の一方的な単価の押しつけになっておる、ここに一番基本の問題があって、参考人の方がしばしばこれは繰り返しておっしゃるとおりなんです。これは改善をしてほしいと私は思っております。  そこで、吉岡先生にお尋ねしますが、いま全体の財政地方財政、国の財政を通じまして、生産関連事業を強めて企業がもうからなければ国の財政地方財政も賄えない、こういう思想というものが根底になっておることが非常に明確でありますが、これについて吉岡先生の見解をお聞きしたいと思います。
  114. 吉岡健次

    吉岡参考人 大変根本な問題について御質問があったわけでございますが、これは詳細にわたって御説明しなければいかぬ問題でございますけれども、時間もございませんから簡単にお答えを申し上げたいと思いますが、大体日本の経済は、世界の資本主義国と比べて違った点がございます。  まず一つは、国民の所得水準が低いという点でございます。その基礎にはもちろん賃金の問題があろうかと思います。これは日本の資本主義発展の当初からそうでございまして、これは後進資本主義国日本が、大急ぎで諸外国の後を追っかけて追いつかなければならないという要請からきたものだと思いますが、とにかく低米価、低賃金で賃金が非常に低い、これが特徴でございます。  もう一つは、財政金融政策を通ずるところの国家の資本保護政策と申しますか、そういう点がよその資本主義国よりも日本においては非常に強いという点でございます。  つまり、言葉をかえて申しますと、高度経済成長政策と申しますか、戦後で申しますならば高度経済成長政策、それを具体的に申しますと、私は大体三つに分かれると思います。  一つは、今日言われておりますところの租税特別措置を中心とするところの大資本の優遇税制でございます。これが一つでございます。  それからもう一つは国家財政一般会計特別会計財政投融資を通ずるところの、終戦直後でございましたら価格差補給金とかその後の財政投融資、今日で申しますと産業関連を中心とするところの公共投資、こういう点でございます。これが二つ目。  第三番目には、先ほど他の参考人からもお話がありましたが、上意下達というお言葉がございましたけれども、要するに地方の行財政に対する国家の統制が非常に強いということ、これが世界の資本主義国よりも特に強いという点でございます。  そして実はこの三点こそが私は国家財政地方財政、それからまた住民の所得水準が低いということ、そういうことの根本の原因であろう、今日のインフレーションあるいは経済不況、これも要するにここに原因がある、こういうふうに思うわけでございます。  つまり、言葉を強めて申しますと、地方財政自治体財政住民の犠牲において、六〇年代のあの世界に比類のない非常な高度成長というものが実現できたのじゃなかろうか、こういうふうに考えるわけでございます。いま財政が困るのは、インフレーションあるいは経済不況ということが原因である、確かにそのとおりでありますが、インフレーションと経済不況というのは、やはりそういう根本の問題につけ加わった問題であろうというふうに思うわけでございます。したがって、不況が回復すれば、あるいは好況になれば財政もよくなる、あるいはみんなよくなるという考え方は、これは私は問題であろう。つまり、好況である、経済が高度成長したということは、その底にやはりそういう資本の保護政策というものが非常に強まっておるということ。そうであればこそ高度成長が実現できておるのだ。したがってまた、高度成長でたとえば自然増収が生まれましても、この自然増収はすぐ福祉の方へつながってくるとは限らない、むしろ産業関連の方に流れていく、こういう関係になるのであろうというふうに思うわけでございます。  私が言いたいことは、結局、要するに世界の資本主義並みくらいにでも経済成長の度合い、テンポというものを減速させたならばずいぶんと違ってくるのじゃなかろうかということを言いたいわけでございます。
  115. 三谷秀治

    三谷委員 そこで、高度経済成長というものは超過達成をしたけれども、本来の目的である生活福祉、生活環境の改善というものは進んでいないというところに大きな問題があるわけでありますが、たとえばいま屎尿の問題を町長さんにお尋ねしましたが、今日の屎尿の海洋投棄は一千万人分に達しております。四十九年度で一千万人分、約五百万トンの海洋投棄が行われている。これが海洋汚染や漁業資源に重大な悪影響を与えておりますことは言うまでもありません。こういう国際的にも例のない無法な処置が行われておる。これは下水処理や屎尿処理場が立ちおくれて、陸上処理が不可能であるところに主要な原因があることは言うまでもないのであります。この屎尿処理場などに対する国の補助率が、たてまえは三分の一なんですが、実態を調べてみますと、大阪などでは実質補助翼は十分の一程度にすぎません。そういう状態になっておる。それからごみ処理にしても一緒なんです。ごみ処理も、これはたてまえは補助率四分の一になっておりますが、実際はこれも十分の一、十六分の一というふうな状態が実態になっているわけなんです。そのためにごみの処理に困ってしまっている。ごみの特に残灰の処置にどうにもこうにも手のつけようがないというので、大変これは困って、いまごみの問題が全国的に深刻な問題になっておりますが、こういうところに対する補助率などはもっと大胆に引き上げていくということが当然必要ではないでしょうか。補助率が三分の一、四分の一でありましても実態は十分の一程度にすぎないという実態については、速やかに改善する必要がありはしないかということを考えますが、この点はどうでしょう。
  116. 田中正巳

    田中国務大臣 お説のとおり屎尿、ごみの補助実態というものが、補助率そのものから見てかなり低位にあることは事実でございます。法律上は三分の一以内、四分の一以内と書いてありますが、しかし実態にかんがみて私どもは実勢に近づけるようにしなければならない。先生、補助率をおっしゃいますが、私は補助率そのものよりも実勢単価というもの、これを実現するように努力をとりあえずする方向が望ましい方向だと思いますので、今後そういう努力をいたしたいと思います。
  117. 三谷秀治

    三谷委員 補助率、補助対象とも実態とかけ離れておりますから、いまおっしゃいましたことはきわめて重要なことでありますが、実際にやってもらわぬと困る。  そこでひとつ具体的に聞いておきたいのですが、大阪の柏原市、羽曳野市、藤井寺市の清掃組合というのがあるのです。これがごみ焼却場から出ます残灰や不燃ごみの処理に困ってしまって、山を買ってそこにほうっておいた。ところがそこから汚染物質が出てきまして、重金属などが流出をして大変な問題になった。そこで、残灰や不燃物を圧縮してコンクリートブロック化するプラントを五億円で買った。これに対して国の補助は六千五百八十万なんですよ。それで、厚生省はプラントのうち粗大ごみの圧縮装置を補助対象としたけれども、残灰のコンクリートブロック化の工程に対しては補助対象から外れておるのだと言って、全然これは補助の対象になっていない。こういうことでいいでしょうか。こういうことで、この特に深刻な公害問題の解決などができるでしょうか。これは当然補助対象にすべきものではないでしょうか。
  118. 田中正巳

    田中国務大臣 先生おっしゃいました問題、二つございまして、一つはごみの処理施設から出るところの有機性の汚染物質や有害な重金属、これについては、これを今年度から補助するようになりました。  いま一つは、先生おっしゃるこうした残灰等をコンクリートで固定化して処理する、これに補助を出したらどうか、こういうことでございます。私どもは、これについては今後の処理方法の一つとして十分考えられるものであると思いますが、技術の確立とそれから全国的な普及の度合い等をいろいろ勘案をして研究をいたしたい、かように考えております。
  119. 三谷秀治

    三谷委員 厚生省の調査でも、全国のごみ焼却施設は千四百四十五ヵ所のうち、重金属の除去ができるのは二百にすぎないわけなんですよ。こういう状態の中におきまして、大気汚染あるいは水質汚染が進んできておる。だから、これはもっと積極的な補助政策をとってもらう必要がありますが、いまのコンクリート詰め、これをやらぬと処置のしようがないわけなんですよ。やらなければ、ほってしまうわけですから、どうしても必要な問題であって、この補助制度をぜひ早急に確立をしていただきたい。これについてもう一遍お答えいただきたい。
  120. 田中正巳

    田中国務大臣 ただいま直ちにこれを補助化するということを明言申し上げるわけにはいきませんが、ただいま申し上げましたとおり、技術の確立と全国的な普及の度合いを見て、そういう点も勘案をしながら研究を続けていきたいというふうに思っております。決して否定はいたしません。
  121. 三谷秀治

    三谷委員 それでは終わります。
  122. 小山長規

    小山(長)委員長代理 参考人各位には御多用中御協力をいただき、まことにありがとうございました。  午後一時半から再開することとし、この際、休憩いたします。     午後零時五十一分休憩      ————◇—————     午後一時四十四分開議
  123. 荒舩清十郎

    ○荒舩委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  日本蚕糸事業団理事長伊藤俊三君、元日本紡績協会会長松本良諄君日本造船工業会会長山下勇君、社団法人東京都中小建設業協会理事小川博君、日本消費者連盟代表委員竹内直一君に御出席を願っております。  参考人各位には、御多用中のところ御出席をいただきまして、まことにありがとうございます。委員会を代表して厚く御礼を申し上げます。  参考人には、委員質疑にお答えを願う方法で順次意見を承ることといたします。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。楢崎弥之助君。
  124. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 私は、輸入生糸の問題にしぼってお伺いをいたしたいと思います。蚕糸事業団の理事長にお願いをいたします。  五十年十一月六日でございますか、通産省から通達が出されております。生糸の輸入一元化継続措置に伴って緊急の対策としていろいろな対策がここへ出されておりますが、その一環として裏地用の絹織物業界、業界の名前は日本裏生地連合会と言うのでしょうか、その裏地用絹織物業界に昨年の十月から本年五月まで一万五千俵、毎月千九百俵の生糸が蚕糸事業団より売り渡しが行われておるということは事実でございましょうか。
  125. 伊藤俊三

    ○伊藤参考人 お答え申し上げます。  昨年の十月からだと思いますが、ことしの五月にかけまして、いまお話のありましたように一万五千俵の生糸を、裏生地連合会だけではございません。輸入が最近になりまして大変ふえまして、そのために非常に影響をこうむっておりますような絹織物業界に対しまして、先ほどお話がございましたような数量の売却を毎月行うことにいたしておる次第でございます。
  126. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 その理由はどういう理由になっておりますか。
  127. 伊藤俊三

    ○伊藤参考人 これはただいまも申し上げましたように、最近になりまして大変輸入がふえて外国製品との競合関係で非常に苦しい立場に立っております業界、ことにこれは加工度の非常に低い織物業界でございますけれども、そういったところに救済の手を差し伸べるというようなことをお役所の方で御検討になりまして、そのために一万五千俵の生糸を特別の値段で売り渡す、こういうことにいたした次第でございます。
  128. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 お役所とはどの省でございますか。
  129. 伊藤俊三

    ○伊藤参考人 農林省、通産省でございます。
  130. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 いわゆる行政指導というものですか。
  131. 伊藤俊三

    ○伊藤参考人 さようでございます。
  132. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 輸入過剰の問題もありますが、不況対策という意味も含まれておるのですか。
  133. 伊藤俊三

    ○伊藤参考人 必ずしも不況対策ということではないと私どもは承知いたしております。
  134. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 この法的根拠は一体何でございましょうか。
  135. 伊藤俊三

    ○伊藤参考人 繭糸価格安定法でございます。
  136. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 繭糸価格安定法では、この種の放出のときには一般競争入札になっておるのじゃございませんか。
  137. 伊藤俊三

    ○伊藤参考人 必ずしもそういうことにはなっておりません。
  138. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 それはまさに今回のような放出のやり方もあり得る、こういうことでございますか。
  139. 伊藤俊三

    ○伊藤参考人 さようでございます。
  140. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 この繭糸価格安定法によりますと、一般競争入札が原則でありまして、この種の措置は例外でしょう。
  141. 伊藤俊三

    ○伊藤参考人 今回の措置は例外であると私も思っております。
  142. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 現在、基準糸価はどういうふうな水準にあるのでございましょうか。
  143. 伊藤俊三

    ○伊藤参考人 ただいまの基準糸価は一万一千二百円と決められております。
  144. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 上限、下限はどうなっておりますか。
  145. 伊藤俊三

    ○伊藤参考人 私どもの買い入れ価格は一万一千百円でございます。それから、中間売り渡し価格は一万二千百円、こういうことに相なっております。
  146. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 先ほど申し上げた緊急措置としての、いま行われておる蚕糸事業団から売り渡されておる価格は一体幾らになっておりますか。
  147. 伊藤俊三

    ○伊藤参考人 ただいま特別措置につきましては、九千百円で売り渡しております。
  148. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 キロ当たり九千百円というのは輸入原価と比べてどういう関係にありますか。
  149. 伊藤俊三

    ○伊藤参考人 輸入原価というのはいろいろございます。     〔委員長退席、正示委員長代理着席〕 また、輸出国によってもいろいろ違っておるわけでございますけれども、この九千百円につきましては、特別措置であるというようなことから比較的安い輸入原価のものを売り渡す、こういうような方法を考えております。
  150. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 私どもが調べたところによりますと、輸入原価すれすれだ。つまり、これでいくならば赤字が出る可能性がある——可能性です、予測、そういうふうにわれわれには思われるのですが、どうでしょうか。
  151. 伊藤俊三

    ○伊藤参考人 私どもはこれによって赤字が生ずることはないであろうというように見通しております。
  152. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 こう言っては何ですけれども、赤字が出る心配があるというのは、おたくの事業団の相当の人が口をそろえて言われておるのです。まあ、お名前は言いませんが、しかし、お言葉はそうだと思いますが、事実はその可能性あり。これは、いまおっしゃったとおり非常に安い、特別の価格だということがそのことを証明しておると思うのです。それで、九千百円の価格構成はどんなふうになっておりますか、御説明をいただきたい。
  153. 伊藤俊三

    ○伊藤参考人 これは中国産の生糸を中心に考えておるわけなんでございます。中国産の生糸は、私どもが買いました値段は約八千三百円程度でございます。第一回に入りましたのは。そういったものを中心に考えまして、それにある程度の金利、保管料というものを加えたものでございます。
  154. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 いまの御説明はちょっと簡単過ぎますが、いわゆる法的な根拠になっておるこの繭糸価格安定法の場合は、当該輸出適格生糸の買い入れの価格にその保管料に要する金利、保管料及び日本蚕糸事業団の定めるその他の諸掛かりの額の合計額となっていますね。だから、こういう項目に応じたその価格構成をお願いしたいわけですが、すぐ出ますか。出なければ後ほどでも結構ですから、ひとつ明確にお示しをいただきたい。
  155. 伊藤俊三

    ○伊藤参考人 相当細かい資料でございますから、後ほど提出させていただきたいと思います。
  156. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 私がそれをあえて要求するのは、やはりこの九千百円というのは相当思い切った価格である、まあ赤字が出る可能性がある価格であるという考えを私どもは持っておりますので、それを検討してみたい、こういう理由でありますから、お出しをいただきたいと思います。  そこで、さっきはおっしゃいませんでしたけれども、いま、とにかく糸価がやや上向き状態にある。一俵一万二千二百円ぐらいですか。だから赤字は出ないんじゃないかということを皆さん方思っていらっしゃると思うのですが、しかし、これはやはり赤字が出る可能性がある。くどいようですけれども、これを申し上げておきたいと思います。  そこで、私はここで申し上げたいのは、どこに放出しておるかということなのでありますけれどもね。まあ、それをお聞きはいたしますが、要するに困っておるのは、あるいは不況にあえいでおるのは——あなたは不況の対策じゃないとおっしゃいましたけれども、現実に不況なんですよ。だから、たとえば裏地用の絹織物業界だけにそういう安いあれで放出をされるということについて、私は大変な不公平さを感ずるわけですね。絹織物業界の不況というものを一体どのように理解しておられるか。不況対策ではありませんとあなたは言い切られたけれども、現在の絹織物業界の不況の問題をどのように理解されておりますか、お聞きをしたいと思います。
  157. 伊藤俊三

    ○伊藤参考人 私の直接の所管のことではない御質問でございますけれども、昨年末にかけまして大変在庫がふえておるというように私どもは承っております。要するに、売れ行きが不振であるというようなことを絹織物業者の方で言っておられる。この一月になりまして売れが少し伸びてきたというようなことも聞いております。
  158. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 それじゃ、裏地用の絹織物業界に売り渡した数量を県別にちょっと報告してみてください。
  159. 伊藤俊三

    ○伊藤参考人 県別と言われますとちょっと困るのでございますけれども、一万五千俵を割りましたのは必ずしも裏地だけではございません。大きなところを拾いますと、たとえば福島県が千二百二十八俵、群馬県が千三百二十七俵、埼玉県が千四百五十俵、小松、石川県になるわけですが、二千百五十四俵、福井県が三千四百六十三俵、春江が千五百五十一俵、こういったところが大口になっております。
  160. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 たとえば博多織なんかもあるのでございますけれども、そういうところへもいっておるのですか。
  161. 伊藤俊三

    ○伊藤参考人 博多には百五十七俵の割り当てになっております。
  162. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 目をみはるような大変少ない数字でございます。私は博多織の産地の出でございますけれども。そうすると、この絹織物業界の不況というものは、まあ自分のところの担当のあれではないということですが、結局は通産省、農林省から要請があった、だからそうしたのだ、こういうことだと思うのですね。  そこで、いまの数字、群馬県がちょっと抜けておったのですがね、大きいところでは。
  163. 伊藤俊三

    ○伊藤参考人 私、申し落としたら申しわけございません。群馬県千三百二十七俵でございます。
  164. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 どうもこう言っちゃ何ですけれども、どうもこの数字を見てみますと、いわゆる今日の与党の実力者もしくは有力者等々がおられるところに数が多くいっている感じです。わが福岡県福岡市、博多織の名産地におります私ごときは軽量でございますから、こんなに少ないのであろうというひがみも出てくるほどの感じをこれから受けるのですよ。非常に私はこれは不公平である。  そこで、これほどの緊急措置をいわゆる通産省、農林省御指導になったわけですけれども、この輸入の実態を見ますと、これは大変なんですよね。五十年の一月から八月までと、それから四十九年一月から八月までの実績をちょっと比べてみますと、たとえば中国からの絹織物、これはまあ二百八十三倍になっておりますが、韓国からの撚糸、これなんかは前年対比一万五千五百七十倍になっておるんですよ。驚くべき倍率ですね。一万五千五百七十倍でしょう。首ひねられておるけれども、いや、統計はこうなっておる。これは韓国からの撚糸になっておりますがね。それで、こういう輸入のあり方というものが今日非常に市況を混乱させておる。これは同じ認識であろうと思うのですね。  それで私は、農林省、通産省はそれぞれの立場から、輸入一元化継続の生糸あるいはまた輸入承認制に基づいて行われておりますところの撚糸や絹織物、こういうものに対して、異常な混乱状態に対してどういう対策をとろうとしておられるのか、これをひとつ明らかにしていただきたいと思うのです。つまり、生糸などの輸入制度の今後のあり方は一体どうあるべきか、これについてひとつ通産省からお考えをお伺いしたいと思います。
  165. 野口一郎

    ○野口政府委員 先生がいま問題にしておりますところの絹糸あるいは絹製品の輸入の急増ぶり、それに伴いまして国内の産業が大きな影響を受けているということは私どもも認識しているわけでございます。その対策といたしまして、昨年の春以来、私どもはまず第一にその主要な輸出国に対する話し合いによって問題の解決を図ろう、すなわち秩序ある輸入、安定的な取引ということで、一つは主要輸出国との話し合いによる問題解決が一つ。それからもう一つは、国内に対しましては、商社あるいは輸入業界あるいは流通業者等々に対しますところの輸入の自粛要請、この二本の柱を中心にいたしまして、昨年来輸入の秩序化を図ってきたわけでございますが、さらには、先ほど先生の御指摘になりましたような絹糸あるいは絹織物で非常に輸入がふえているということにつきましては、もう一歩立ち至った強い行政指導及びその行政指導を裏づけるための先ほど先生の御指摘になりましたような、事前承認制あるいは事前許可制というような措置も併用いたしまして、輸入の鎮静を図っているわけでございます。  それで、絹関係につきましては、一つ大きな原料の問題がございまして、私どもユーザーの側から見ますると、その主原料である生糸の価格がいわゆる国際価格に比べましてかなり割高である。これが絹製品の国際競争力に対して影響を与えておる、こういうふうに見ているわけでございまして、その生糸の輸入のあり方といたしまして、現在の一元輸入制度はどうあればいいかということにつきまして、その運用の改善あるいは一元輸入制度のあり方等につきまして現在検討を続けている段階でございます。
  166. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 今後のあり方についてもう少し具体案を持っているんじゃございませんか。じゃ、一問一答でいきますか。たとえば一元輸入制度を廃止して、何かこれにかわるものを考えていらっしゃるんじゃないですか、通産省は。
  167. 野口一郎

    ○野口政府委員 当面、一元輸入制度を廃止することは、これは農林省の問題でございますが、私どもの方も当面廃止することはできないというふうに見ております。
  168. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 それは明確に決まりましたか。
  169. 野口一郎

    ○野口政府委員 現在、その他の措置を含めまして検討中のことでございまして、近々のうちに合意を得て結論を出すことになろうかと思っております。
  170. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 あなた方がいま考えておるのはこういうことじゃございませんか。一元輸入制度を廃止して、これにかわるものとして新たに許可法人の協会をつくる。協会は、生糸及び絹製品の輸入業者並びに国内製糸業者から納付金を徴収し、これを財源として補給金を養蚕農家に交付する。現行繭糸価格安定法による安定措置は維持するけれども、市場支持価格は国内コストと国際コストの加重平均値まで引き下げる。こういうことを考えていらっしゃるんじゃございませんか。
  171. 野口一郎

    ○野口政府委員 昨年におきますいろいろ検討をしている過程におきまして、正確には先生のおっしゃったとおりではございませんけれども、そういうような方向におきまして検討をいたしていたことはございますけれども、現在におきましてはそういうような考えは直ちには実施できないということで、考えておりません。
  172. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 いま考えていないということでございますが、農林省としてはいま言ったような案についてどういう見解をお持ちですか。
  173. 澤邊守

    ○澤邊政府委員 ただいまお尋ねがございましたような案が通産省の内部で検討され、私の方にも御相談があったことがございますが、私どもといたしましては、現在の国際的な生糸、絹織物過剰基調、しかも国内の絹製品の需要が非常に停滞しておるというような情勢のもとにおきましては、そのような課徴金的な考えだけで輸入の秩序化を図るということはなかなか困難であるというふうに考えますので、私どもといたしましては、そのような制度の以前に、輸入の秩序化を図るための対外的な話し合いあるいは国内的な措置をきちっと整備すべきである、こういうような考えに立っております。
  174. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 いま私が申し上げたのは、外に出してはならない資料の一部であるはずでしょう。だから、こういう点はきちっとぼくはやってもらいたいと思うのですよ。  そこで、この前通産省の生活産業局長と農林省の繭糸課長が韓国に行かれておりますね。いつ、何のために、そしてどういう話し合いをされてこられたか、お話しをいただきたいと思います。
  175. 野口一郎

    ○野口政府委員 ただいまのことにつきまして先ほど農林省の澤邊局長から発言がございましたように、私ども、綿製品貿易の秩序化を図るためには、主要な輸出国とぜひ話し合いを重ねまして、両方が合意の上で秩序ある輸入を実現いたしたい、こういうことを第一義と考えているわけでございます。先ほど先生の御指摘になりました韓国に参りましたのも、私どもと同じように韓国の貿易を担当するところと話し合いまして、絹製品の日本への輸出につきまして、秩序ある体制をつくるための相談に行ったわけでございます。  具体的には、絹糸及び絹織物につきまして秩序ある輸入体制をつくるためにどうしたらいいかということで参ったわけでございまして、できれば双方たとえば一年間なら一年間の輸出数量につきまして、何らかの取り決めができればということで参ったわけでございますが、期日が非常に短かったこともございまして、意見の一致を見ない部分もございました。双方で意見の一致を見ましたのは、秩序ある安定的な取引をやろう、こういうことにつきましては双方基本的な意見が合致したわけでございますが、何について具体的にどうするというところまで話は行くに至らなかったわけでございます。
  176. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 蚕糸事業団の方にお伺いしますが、結局あなた方としては、国内の市場安定のために、生糸だけでなくて、撚糸も事業団の一元輸入の対象にして市況の安定を図るというような考え方はどうなんですか。そしてそれを適正に、公平に払い下げていく、こういう考え方はどうですか。
  177. 伊藤俊三

    ○伊藤参考人 私どもは繭糸価格の安定ということが使命になっておるわけでございます。繭糸価格の安定ということのために、従来から国内生糸の価格安定を図るための措置を講じ、さらに輸入生糸の一元輸入ということをやったわけでございますけれども、先ほど来先生お話しのように、撚糸なり織物なりというものがかなり入ってきてしまいまして、このために国内の糸価というものがかなり混乱をしたということは事実でございます。したがいまして、私どもの使命から考えますと、やはり絹織物それから撚糸というようなものについて、きちんとした輸入というものが行われるような、そういったことが確保されるような措置をどうしても講じていただきたいというのが私どもの念願でございます。撚糸につきましては、その性質が生糸に似ているようなこともございます。取り扱いも生糸に似ているようなところがございますので、今後の問題としてこれは検討していってよろしいのじゃないか、こういうようには思っております。
  178. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 これは農林省、通産省にまたがっておりますので、井出官房長官においでをいただいたわけですが、いま私が最後にお願いをしたいのは、要するにキロ当たり九千百円、これは相当思い切った放出価格なんですね。これは不況対策という点から見ればまさに待ち焦がれておる品物であるわけでしょう。それが一部の業界に偏っておる。つまりはっきり言って裏地用の絹織物に偏っておる。だからこれをやはり公平を期するために——ほかの絹織物業界だってやっぱり苦境にあるわけですからね。これが政治のよこしまな力でそういう偏った放出の仕方になっておるとすれば、これはロッキード問題じゃございませんけれども、またそこに政治に対する不信が出てくるから、これは絹織物業界全般に公平に渡るように、博多織も含めてひとつ再検討を——京都だってありますよ、ネクタイだってありますから、ひとつ公平にこれが配分されるように御指導いただきたい。これのお約束をいただければ私はこれでやめたいと思います。
  179. 井出一太郎

    ○井出国務大臣 楢崎さんにお答えをいたしますが、ちょうど一緒に農林大臣も通産大臣もおられます。したがって、私に特にお名指しになりましたのは、その辺を調整せよ、こういうことかと思いますが、私もいま初めて伺った問題であり、ずっと御質問を傾聴しておりました。政府当局の答弁は、裏地というような比較的付加価値の少ない部門を特に考えたというふうに聞いたのでありますが、もしその間に御指摘になるようなことありとしまするならば、これは公正を期するために考えなくちゃなりませんし、私も農林、通産両大臣ともよく相談をしたい、かように存じます。
  180. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 長野県なんか特に少ないですよ。あなたは注意しておかぬといけませんよ。これは雑音ですけれども、全般に不況でございますから、公平にこの恩典が行き渡るようにひとつ御配慮をいただきたい。いまの御答弁に期待をいたしまして、質問を終わりたいと思います。御苦労さまでした。
  181. 正示啓次郎

    ○正示委員長代理 次に石田幸四郎君。
  182. 石田幸四郎

    ○石田(幸)委員 私は、この予算委員会におきまして、今回の五十一年度政府予算案、これが大幅な赤字国債を発行しての景気対策予算案である、このようにしているわけでございます。さらにまた、その景気対策の中心が公共事業であると言われておりますが、果たしてこの公共事業が本当に景気回復の目玉になるのかどうか、そういった問題について参考人から御意見を伺うと同時に、各大臣にまたそれに対する所見を承りたいと思うわけでございます。もう一点、今日このような不況の中ではございますけれども、同時に公共料金の生活に占める重要度というものがいろいろな角度から大きな話題になっておりますので、この点についても参考人から御意見を承ると同時に、各省庁に対して見解を承りたい、こんなふうに存ずるわけでございます。  まず最初に小川参考人お話を承るわけでございますが、その前提といたしまして、若干状況を申し上げますれば、いわゆる景気対策の目玉と言われる公共事業対策、一般会計予算の中には三兆五千二百七十二億とされておるわけでございます。また、財投計画におきましても、住宅、貿易に重点を置いておる。そのために、輸出金融については八〇・九%の伸び、また農林漁業三六%の伸びというふうになっておりまして、きわめて特色のある景気対策である、このように政府は言っておるわけでございます。しかしながら、景気対策の目玉である公共事業にいたしましても、本四架橋であるとか東北新幹線等、あるいは中央高速道路等、いわゆる大型プロジェクトを中心とした公共事業というものは、地域的差別、格差と申しますか、また業種的な格差を生むのではないか。そういった意味からも、真の景気対策とはなり得ない、こういう批判がこの予算委員会でもずいぶん見受けられたわけでございます。また、一般会計予算におきます公共事業の目的別分類表を検討してみますれば、いわゆる生活関連公共事業にも、伸び率だけを見ますとかなりの配慮があるように思うのでございますけれども、果たしてこれが景気を回復させるキーポイントになるかと言えば、はなはだ疑問を抱かざるを得ないわけでございます。  特に地方公共団体財政はきわめて深刻でございまして、二月一日の自治省発表によりますれば、四十九年度決算で、市町村の赤字団体は、百二十一団体から百五十七団体と、三十六団体も増加をいたしておる。さらにまた、日経の推定ではありますけれども、都道府県の五十年度決算においては、四十九年度の赤字六団体から三十九都道府県へと、いままでの最高を記録することになるだろう、こういうような状況が言われておるわけでございます。さらにまた、去年の暮れの建設省の発表によりますれば、地方財政難のために、都道府県の単独事業というのは前年度比三〇%から四〇%落ち込んでいる、こういうようなことも発表になっておるわけでございます。  そういうわけで、こういうようないろいろな状況の中から、建設業界と言えば比較的公共事業の恩恵をこうむる方ではあるわけでございますけれども、中小建設業界として、本年度予算に対してどのような御意見を持っているか、また、この公共事業を執行するに当たってどのような点に留意すれば、よい中小企業対策になるのか、こういった点について、まず小川参考人から御意見を承りたいと思います。
  183. 小川博

    ○小川参考人 ただいま石田先生から、建設業界としての、公共事業に対する意見を述べるようにというお言葉でございますので、三項目に分けまして申し述べたいと存じます。  なお、私の参考人としましての陳述は、東京都における中小建設業界の立場からの発言でありますことをあらかじめお断り申し上げておきますので、御了承のほどをお願いいたします。  まず第一に、五十一年度予算案についてでございますが、その前に、昨年九月、第四次不況対策が発表されました当時は、本年度下半期には相当の景気回復が望まれるということで、大いに期待しておったのでありますが、その意に反しまして、実は今日に至りましてもわれわれには何らの効果も上がっておらないのが実情でございます。それだけでなく、逆に経営環境が日々に悪化の一途をたどっているわけでございます。  石油ショック以来急角度で減速しました経済のあらしの中で足かけ三ヵ年、ともすればついえ去ろうとする身を支えつつ、今日まで曙光が見える日を待ち続けてまいりましたのでございますが、この間、政府関係の金融機関から長期資金のお貸し付けをいただきましたので、それが大きな支えとなりまして今日まで耐えているわけでございます。  しかし、第四次不況対策の目玉でございました公共事業は、本四架橋を初めとします大型プロジェクトの方向に消え去ってしまいまして、われわれを素通りしてしまったような現状でございます。そのあとに置きみやげとして残りましたのは、建設資材の値上がりという逆な現象が私たちを目下苦しめ始めております。鋼材やセメント、生コン等の値上がり等がそのよい例でございます。五十一年度予算が、このようにわれわれを素通りする予算であってはならないと、その動向に対しましては深い関心を持っておる次第でございます。  特に、地方財政対策と公共事業費の前年比二六・四%という増加が果たしてだれのためのものになるか、大いに注目をしているところでございます。新聞の活字等が大きく中小企業対策を取り上げますので、その気になって中身をのぞいてみましたら何もなかったというのが、われわれ中小企業の受けておる従来の印象でございます。五十一年度予算は、地方公共団体を通じた生活関連公共事業を中心とする景気浮揚予算であることを切にお願いする次第でございます。  公共事業の振興によって潤うはずの中小建設業が、全産業の中でなぜ最高の倒産率を占めているか。その原因はいろいろあると思いますが、政府直轄の公共事業、すなわち大型プロジェクトを中心に進められているところに問題があると思います。大手企業とその傘下にあります中小企業には有利となり、その他の元請であります中小企業には不利となっているのが現状であります。この点を考慮していただきまして、社会的不公正の是正、弱者救済に通ずるよう、特別の施策を考えていただきたいと存じます。  第二に、地方財政危機と中小建設業についての問題であります。  われわれ中小建設業者は、地方公共団体の発注工事にすべてを依存しております。したがって、地方財政の動向につきましては、強い関心を持たざるを得ないのであります。第四次不況対策は、われわれにとって不発に終わったとはいえ、五十一年度予算案に中小企業対策がどのように盛られているかは、重大な関心事であり、注目せざるを得ないところであります。  いまわれわれの身辺では、一片の肉に群がる野獣のように、醜い戦いが行われております。生き残ろうとする本能はどの企業にとっても同様でございまして、借入金を返済しあるいは利息を生み出すためには企業規模を縮小することはできないし、まして端末企業でありますわれわれ中小企業者は、艱難辛苦をともにしてきました家族同様である従業員を整理することすら人情的にできないのが現状であります。経営者は、いまやそのジレンマの中で希望なき日々を送っているのが実情でございます。そうかといいまして、簡単に業種転換が行われるものでもございません。五十一年度においてももしこのような状況が続くとなると、放漫経営は別といたしまして、堅実経営を行っているまじめな企業の中からも倒産者が続出しまして、失業者が町にあふれるような事態となるのではないかと、はなはだ憂慮している次第でございます。  東京都の場合、超過負担とか地方債の制約が大幅に事業を縮減させていると聞いております。五十年度の公共工事の発注量の推定は、確実な数字をつかむことはできておりませんが、四十九年度に比しまして金額面で約三割ないし四割、件数で約五割の減少と言われております。それに加えて、大企業には大企業それなりの事情があるものとも思いますが、われわれの分野に属する領域へ進出する機会が多くなりつつありますので、われわれのシェアはますます縮小し、あらゆる手段の過当競争が日を追って激しくなりつつあります。この辺で、どうか大手の方々の進出に対しましての歯どめの措置も考えていただきたいと心から念願しております。どうかこのような実情を御賢察くださいまして、一日も早くこの不況から脱出できますよう、地方財政の早期再建と中小企業の受注分野の確保を、国の浮揚政策として五十一年度予算に反映していただきますよう、衷心からお願い申し上げる次第であります。  第三番目は、中小企業保護に関する諸施策の活用についてでございます。  新年度予算を通じてのわれわれ中小企業者に対する積極的施策につきましては先ほどお願いいたしたとおりでありますが、中小企業に対する現行法令等を十分に活用していただいて、われわれに対する施策を適正に行っていただけるならば、その効果は十分上げ得るものと確信いたしております。たとえば官公需法の基本精神に基づく閣議決定事項の徹底、受注機会に対する特別配慮等がきめ細やかに行われるとともに、話し合いによる大手企業との受注分野の調整についての行政指導などは最も効果的な措置と考えております。  われわれは、地域住民と密接な関係を保ちつつ、今日までまじめな気持ちで経営を維持してきた中小企業者であります。この不況脱出するための施策から漏れることのないよう特に御配慮をお願いいたしますとともに、地方財政の危機に関係なく、生活関連事業の振興等によって安定した経営基盤が確立でき、しかも安定成長の軌道に乗りおくれないよう御指導と御援助をお願い申し上げる次第であります。  重複した点もあったかとも存じますが、これをもって意見の陳述を終わらしていただきます。ありがとうございました。
  184. 石田幸四郎

    ○石田(幸)委員 まず大蔵大臣にお伺いをするわけでございますけれども、いま中小企業問題の実情、特にこれは中小建設業界でございますから、比較的、先ほど申し上げたように、今回の公共事業投資ということについては関連のある企業なわけでございますけれども、それでもやはり大型プロジェクトというものは大手の系列下の中小企業にはかなりの恩恵がいくだろうけれども、それ以外の中小建設業界には余り恩恵が出ないのではないかというような御意見でございます。その他いろいろな各業種を考えてみますと、やはりそういった、たとえば窯業であるとか繊維であるとか、いろいろな問題があると思うのですけれども、ここら辺に対する効果というのは余り期待できないのではないかという批判がございます。これについての御意見を承りたいと思います。  それから、時間がありませんのであわせてお伺いをするわけでございますけれども、先ほど私が若干申し上げましたけれども、この五十一年度の公共事業投資というのはいわゆる一九・七%伸びになっておるわけですね。しかし、五十一年度地方公共団体予算を見てみますと、大臣も御存じでございましょうが、公共事業関連費の目的別分類表というのをつくっていらっしゃるわけですけれども、これにあわせて、たとえば愛知県の状況を私ざっと調べてみたのでございますけれども、住宅では国の予算は二三%の伸びになっています。しかし、県予算は実質一〇パーセント減、五十一年度予算ですよ。それから下水道においても、特にこれは大蔵省は配慮したとおっしゃって、三五・七%の伸びでありますけれども、県予算においては一七%減、以下、同じような状態でございまして、わずかに県予算の中で伸び率が出てきたのは、農業基盤の問題について四%の伸びが出ております。あとは軒並み各県——各県とは言いませんけれども、愛知県なんか、わりと裕福な県と言われておりますけれども、そういう県においてすら、大体一二%から一七%ぐらいの減になっておるわけですね。  いまお話をお伺いいたしますと、大手の系列外の中小企業建設業界というのは、特にこういった県予算に期待するところが大きいというふうにお話がございましたけれども、そういった意味におきまして、国が予想している一九・七の伸びよりも十数%減ということになりますと、実に三五%から四〇%近いギャップが出てくるのではないか、こういう問題に対して、この批判に対してどのように大蔵大臣がお考えになっていらっしゃるか、御所見を承りたいと思います。
  185. 大平正芳

    ○大平国務大臣 政府の公共事業の中小企業による受注の問題でございますが、この問題につきましては、従来から中小企業に対する受注の増量を図りまして、政府としてはいろいろ工夫をいたしておるわけでございまして、各事業の実施官庁におかれてそれぞれ中小企業への受注に十分配慮していただいておることと私は考えておりますがいなお、こういう時節でございますので、その点は一層周到な配慮を加えていかなければならないと考えております。  それから、公共事業自体は、去年、おととしと全然伸びを、ノミナリーにも、総需要抑制の政策を遂行いたしましたので、公共事業費はふやさなかったわけでございます。ようやくことしになりまして、景気の回復という必要もございまして若干の予算の増加を考えたわけでございまして、去年、おととしの予算の抑制ということが相当深刻に現場に響いておりますことは想像にかたくないところでございまして、去年の補正予算からことしにかけましての公共用事業費の増額がどのように業者を潤してまいりますか、これは今後十分その発注の状況とともに注意をいたしまして、公平に受注の機会が得られるように配慮してまいらなければならないと考えております。  それから第二の問題でございますが、中央の予算に比べて地方予算が必ずしも歩調が合った姿になっていない、非常な落差が府県段階においてあるのではないかという御指摘でございます。いま石田さんが挙げられたデータはどういうデータであるか、私は存じませんけれども、まだ府県の予算はできていないのじゃないでしょうか。現実に予算が成立いたしまして、また府県はいろいろな段階において予算を補正してまいっておる経緯がございまするので、いまの全体の姿としてあなたの御指摘のようなことがございますれば、これはゆゆしいことだと思いますけれども、よくデータを伺いまして、要すればよく調査を進めてみたいと思います。
  186. 石田幸四郎

    ○石田(幸)委員 いまの問題については、各県段階におきまして予算が全部そろった段階でもう一度御討議をお願いしたいと思いますが、建設大臣に一言お伺いをするのでございますけれども、今回の不況問題が非常に中小零細企業の方に大きなしわ寄せがいっていることは御存じのとおりでございますけれども、こういった公共事業投資を行うに際して、大企業がやはり中小企業の分野までどんどん進出をしてくるんだというようなこと、これはどこへ行っても聞くわけでございますけれども、これに対する中小企業向けの十分な配慮が望ましい、こういうふうに思うのでございますけれども、これに対して具体的な所見を承っておきたいと思います。
  187. 竹下登

    ○竹下国務大臣 石田委員にお答えをいたします。  官公需についての中小企業向け発注を増大すべきであると思うがという御意見でございます。私どもの方も同感であります。この受注機会の確保につきましては、毎年度閣議決定をいたしますところの国等の契約方針に基づきまして配慮しておるわけでありますが、所管公共事業の実施につきましては、五十年の四月及び十月の二回、依命通達で次の点において指示をいたしました。一、分割発注の推進、二、発注標準の遵守、三、共同請負制度の活用。さらに、これは先般の本委員会でも御指摘をいただいたところでありますが、本年の一月九日に地方建設局等に対しまして、本局、事務所等ごとに会議を開催して、各事項の具体的実施の促進のため検討、打ち合わせ等を行うように、事務次官名によります通達を発しまして、趣旨の徹底を図ったところであります。  昭和五十一年度事業の施行に当たっても、中小建設業者の受注機会の確保に配慮するよう、先月私が就任して早々でありましたが、地方建設局長会議あるいは土木部長会議等で指示をいたしたところであります。  私どもの基本的な考え方といたしましては、先生御承知のように、建設省あるいは局別に大手、中小等のランクがございますが、上のランクが下のランクに入らないように、たとえば企業体でございますとか、あるいは事業協同組合でございますとか、そういう形で、必ず下から上へ上げることはあっても、上から下へはおりないようにということだけは厳守してきているつもりでございます。  ただ、私が先生のお感じになっておりますこととほぼ感じを同じくいたしますのは、もろもろの分離発注において説明を聞いてみますと、一つ一つでは分離そのものがなるほどむずかしい点もございますけれども、さらに努力をすべき課題として五十一年度は十分対処しなければならないと、このように私は考えております。
  188. 石田幸四郎

    ○石田(幸)委員 それでは、時間がありませんから、なお他の委員会においていろいろ質疑を詰めることといたしまして、次に、公共料金の問題で竹内参考人にお伺いしたいと思います。  御存じのとおり、今回国鉄が五〇%以上の大幅値上げ、それから電信電話料金あるいはまた保険料の値上げ、その他大学、高校の授業料等の値上げが行われているわけなんでございますけれども、特に私どもがいろいろ調査をしてみますと、この公共料金の物価に占めるのはまあ大体二%くらいだろう、五十一年度の物価上昇が八・八%でございますから、その影響を見ても大したことはないというような政府の言い方なんでございますけれども、いわゆる五分類に分けた消費生活指数、そういうものを見ますと、四十九年度の公共料金値上げですらも所得の低い層には一四%ないし一五%くらいの支出増というようなことになっているわけですね。そういうようなことから、今回の公共料金値上げ問題を総体的にごらんになってどういうような御意見をお持ちなのか、お伺いをいたしたいと思います。
  189. 竹内直一

    ○竹内参考人 今度の予算で公共料金が軒並み値上げの案が出ておるわけですけれども、まあ私、生活する者の立場から見まして、これは非常な反福祉型であるし、それから弱者切り捨て型の考え方ではないかと思うわけでございます。  政府は公共料金値上げの際に、いつもその説明に、これこれは上げてもコンマ以下しか家計には響かないということを申します。確かに国鉄をとってみ、あるいは郵便料金をとってみればコンマ以下であるかもしれませんけれども、広い意味での公共料金というのは、私たちの家計の約二〇%を占めると言われているわけです。私たちは、個々の公共料金の値上げ額が——いつだか消費者米価の値上げのときにも、たったコーヒー一ぱい分だ、奥さん方はパーマネントにずいぶん高いお金を払うし、デパートへ行くとお昼御飯にずいぶん高い物を食べているじゃないか、そういうものに比べれば、コーヒー一ぱい分の消費者米価の値上げなんというものは無視していいではないか。そういうような説明が政府筋からなされているわけですけれども、私たちは値上げ額が問題ではなくて、値上げ率、アップ率が問題である。そういう意味からいたしますと、郵便料金がその何倍の値上げ、今度の国鉄も五〇%の値上げ、こういうように高い比率の値上げが民間企業にどういう影響を与えるか。これは商売をやっている人たちにとってはしめしめというわけで、便乗値上げということが行われるのは当然で、たとえば、佐藤内閣自身があの当時消費者米価を二年間据え置いた。そのときに国会での説明では、公共料金の値上げをすると民間物価に波及するから抑えているんだという説明をなさっている。それを今回の公共料金の上げ方では、そういう考えは一切捨てて、とにかく赤字なんだから上げるというような考えで押しまくってきておられる。まことにこれは心外至極であるというように思うわけです。  こういうような大幅な値上げがまかり通るという原因は、公共料金あるいは公共料金で賄っている国や地方公共団体がやっている公の事業、そういったものに対する経営の考え方が混乱しているからではないかというように思うわけですね。私が考えますのに、こういう国や公営の企業がある理由というのは、一般の営利会社にやらしておいたのでは採算ベースに乗らない、民間会社ではもう手をつけない仕事がある、しかし、それをほうっておくと国民の福祉に反するから、国や地方公共団体が手を出す。言うなればナショナルミニマムあるいはシビルミニマムを確保するために、税金でもって役人がそういう仕事をやっているんだというように考えるわけです。ということは、本来民間営利会社の採算ベースに乗りにくい事業を国や地方公共団体がやっているんだ、したがって、当然コストは高いということになるわけです。ところが、こういった国鉄にしろ何にしろ、日本の場合は、そうでなくてもコストの高い事業をますますコストを高くしている。それは何かと申しますと、普通の企業の常識であれば、設備資金は自己資金でやるというのが原則であるし、ヨーロッパの企業は自己資金で増資をやって設備拡張をやる。日本の場合は非常に変則で、何でも借金経営でやっておりますけれども、それと同じことを国鉄にしろ何にしろ、設備資金まで借金で、利息つきの返済を要する資金でやっている。そのためにコストがまた高くなっている。企業体としての経営の大原則を踏み外している。したがって、これは高くなっているんだ。  しかも、その負担の原則は受益者負担、独立採算ということで値上げをしてきている。これは、安くしておくと病院に殺倒する、列車に殺倒する、だから価格を上げ、料金を上げて客が来ないようにするんだというような言い方があったり、あるいは税金で負担をすると、列車に乗らない人あるいは病気にならない人が、病気の人や列車に乗る人の分を負担するというのは不公平だというような理由で受益者負担ということが言われているわけですけれども、そういうことになると、私たちはお金を持っていなければ福祉を得ることができないというようなことになる。  本来、こういう公共料金で賄っている事業というものは、能力に従って負担をするという、いわゆる応能負担の原則で貫かれる必要があるじゃないかというように考えるわけです。たとえば、義務教育は無償であるとかいうことは憲法に書いてあるし、社会保険においても応能負担の原則が貫かれている。よその国を見ましても、フランスでは教育費は無償に近い。それからアメリカにおいても、水道料金は無料のところがある、あるいは電話料金は基本料金だけで、度数料は市内においては無料であるというような制度もある。それからイギリスの国鉄総裁はこう言っております。鉄道は、医療の国営と同じように社会政策なんで、採算を度外視して運営しなくてはいけない、そういうように言っております。そういうような観点で公共料金の事業というものは運営されるべきではないかというように考えます。
  190. 石田幸四郎

    ○石田(幸)委員 もう一点、竹内参考人に簡単にお答えをいただきたいのでございますけれども、今回の国鉄運賃の値上げは、来年度も五〇%以上と言われておりまして、四十九年十月以前に比較をしてみますと、大体二・九倍、三倍ということになるわけですね。仮にこれが値上げを強行されたとしましても、国鉄の再建計画の内容が全然出てきてないわけでございますので、果たしてこれで経営が軌道に乗るかどうかということは全く不安でならない。そういうような再建計画すらもはっきりしない段階において、値上げだけどんどん決めるというやり方については、非常に私は不満を持つのですけれども、この点について竹内参考人はどうお考えになりますか。
  191. 竹内直一

    ○竹内参考人 国鉄の場合を例に申しますと、先ほども言いましたように、国鉄の赤字の一番大きな原因は設備資金借金のためにその元利払いの負担が大きいということが原因だろうと思うのです。したがって、国鉄の場合膨大な設備資金が要るわけなんですから、その設備資金一般会計から出資金として出すということを経営の大原則にすれば、いままでの赤字は当然出資金として肩がわりすればいいし、今後の設備資金も出資金で賄えばいいではないか、私はそう思います。
  192. 石田幸四郎

    ○石田(幸)委員 運輸大臣にお伺いします。  いま経営の基本的な考え方について竹内参考人がお述べになったわけでございます。その問題と、それからもう一点、私が申し上げておりますように、再建計画というのは、確かに基本的な考え方は自民党の政調会にお示しになったようでございますけれども、あの程度のことでは国民を納得させるような再建計画の内容じゃないわけですね。貨物をどうするか、あるいは通勤通学の混雑をどうするか、今度の値上げによってそういう問題がどう改善をされるのか。しかも二年間にわたって、四十九年十月から比べれば三倍も値上げになる。そういう三倍も値上げになって、なおかつ国鉄の将来はどうなるか、これは何にもわからぬじゃないですか。そういうわからぬ時点において値上げを政府が国民に要求するというのははなはだ不穏当である、こういう意見に対してどうお答えになるか、二点お伺いをしておきます。
  193. 木村睦男

    ○木村国務大臣 五十一年度、五十二年度二ヵ年を通じまして、国鉄の自立経営ができるように再建しようというのが基本的な考え方でございまして、その中で運賃改定は、五十一年度におきましては大体五〇%の運賃値上げをする。この運賃値上げによりまして、五十一年度予算から見ますというと、約三兆円の予算のうち運輸収入が二兆三千億になるわけでございます。この二兆三千億というのは、物件費、人件費、つまりランニングコスト、これがちょうどそれに相当するわけでございますので、国鉄という鉄道経営の事業として考えますときに、政府もいろいろ助成を今度はやるわけでございます。石田さん御承知のような過去債務のたな上げであるとか、あるいはその他の助成をやりますけれども、おおむね鉄道企業としてはランニングコストは運賃収入で賄うという、大体それと見合う線でございますので、それが五〇%の運賃値上げということになるわけでございますので、また、他の公共料金との関連で考えてみましても、比率から言いますとそれほど不均衡ではない。むしろ指数から言いますとまだ低いという状況でございますので、この程度はやはり利用者に負担していただく。あと政府が助成いたしますのは、これは言いかえれば税金でございますので、国民一人一人からのお金で助成するわけでございますので、その両者のバランス等から考えましても、大体御納得いただけるんではないか、かように考えておるわけでございます。  それから、再建についての詳細な再建計画がいまないではないかという御指摘でございますが、実は石田さんの御意見の中にもお述べになっておられましたように、今回の再建関係の予算編成に当たりまして閣議了解を求めました再建の要綱というものがあるわけでございます。貨物につきましても、あるいは地方路線対策にいたしましても、あるいは経営の合理化等にいたしましても、基本的な項目はあの中にすでに決めておるわけでございまして、その基本的な項目を受けまして詳細な再建計画を目下検討し、また現在それをつくりつつあるわけでございまして、それらは、この関係の法案が委員会で審議いたしていただきますまでにはそろえてお出しする、こういう考えでおりますので、どうぞひとつ御理解をいただきたいと思います。
  194. 石田幸四郎

    ○石田(幸)委員 じゃ、時間がありませんから、それらの問題はまた運輸委員会で討議をするといたしまして、文部大臣にお伺いをするわけでございますけれども、最近の受験期に際しまして、一斉に各新聞で取り上げられておりますのが、高校、大学の入学金の問題でございますね。たとえば私立高校におきましても、実にもう四十万円時代である。一番高いのは七十四万千六百円もかかるということでございます。こういうような状態が果たしていいのかといえば、これは父兄負担という問題を考えてみれば、なかなかたえ得ない状況にあるわけですね。それで、これらの問題について、特に私立大学の問題については去年物価の委員会で、二重、三重に合格した場合も入学金、授業料、設備使用料まで全部徴収してしまうというのは行き過ぎではないか、こういうような議論がございましたのですけれども、この結果は一体どうなったのか、これをまず一点お伺いをしたいと思うのです。  それからもう一点、こういうふうに入学に際して年間の授業料その他を全部納入をするという制度になっているわけなんでございますけれども、このほかにいわゆる学校の寄付金というのが膨大になっておりますね。私立高校の中で一番ひどいものになると五百万円という話が出ておる。これは私はまだ真偽のほどは確認しておりませんけれども、百万円なんというのはざらだというようなことも世間一般には言われておるわけなんです。それから私大の医学部、歯学部関係におきましては、三千万円から四千万円と言われておりますでしょう。こういう状態では、教育の機会均等という憲法にうたわれた精神は、破壊されつつあるというよりは、もう破壊された事実が余りにも多過ぎる。こういう問題についてどうお考えになるのですか。  それからもう一点は、実は私のところにもいろいろな訴えがありまして、私立大学でございますけれども、いろいろな要項をつくって募集をしました。その受験生の父兄に対して、もしあなたの子供さんが合格をした場合に一体幾ら寄付金を納入をしてくれますか、一口幾らというふうに書いて、印刷物で父兄にそういうものを配付している状況も見受けられるわけです。私ここに資料を持っておりますけれども……これなんかはもう完全に受験の公平という問題を破壊してしまった暴挙と言わざるを得ない。いわゆる私学教育という問題、教育という問題が前面に立つのではなくして、経営が教育を支配してしまっている、そういう状況が見受けられるわけで、これをどうお思いになるか。また、こういったことを文部省の調査によりまして実態を調査していただくと同時に、びしびしこれだけは御注意を願わなければならぬと思うのでございますけれども、いかがでしょうか。
  195. 永井道雄

    ○永井国務大臣 先生の御質疑は三点にわたっていると了解いたしますが、すべて、私立学校の経営というものが教育の機会均等あるいは教育の要求というものを不当に圧迫している実情についてどう思うかということでございます。  われわれ文部省といたしまして、その実態というものを突きとめまして、そうして私立学校全体についての助成を行っていくということで、私学振興助成法に基づきまして、大学については本年度千二百九十億円、それから高校以下につきましては百八十億円ということで、それぞれ二八%、一二五%の補助金の増を図りまして、何とかして経営を健全化していきたいというふうに考えております。  それが全体的考え方でございますが、第一点の、入学時に当たって入学金以外の施設費であるとか、それから年間授業料を先取りするというのが先年国会で問題になりました。これはやはり非常に重要なことであると考えまして、私どもは昨年の九月一日付で文部省から大学あてにそういうことをやめてほしいという要望をいたしました。その結果、現状どうなっているかと申しますと、昭和五十一年一月十六日現在までの報告によりますと、大学と短大を合わせまして、報告を得ました学校が五百九十二校でございますが、その中からわれわれの要望どおり、施設費とかそういう入学金以外の金を取ることはやめるという学校が四百九十一校でございます。ですから、九〇%を超えるところがやめることになりました。なお、従来の方法どおりでまだいくというところが十四校、現在検討して何とかしていかなければいけないという学校が八十八校でございます。したがいまして、まずこれは方向全体といたしまして、幾つも学校を受けているという人が不当な施設費などを取られない方向に幸いに進みつつあるわけでございます。  次に、入学時の寄付金が高校などでもひどい、特に医歯系の大学がひどいのではないか。これもまことに御指摘のとおりでございます。これについては三つの角度から考えております。一つは、学校を設立いたします場合にいろいろな寄付金を目当てにして、それを財源にしてつくっていくというようなことはとうてい許すことはできない、やめてもらわなければいけないという方針をきわめて明らかにしているということでございます。その次には、先ほど申し上げました私立大学の振興助成のための費用でございますが、これを、特に医歯系の大学につきましてはほかの学科よりも積算基準を高めまして助成をたくさん行っているということでございます。次に、国立の医歯系の大学をつくることによって、そういう状況というものを脱していこうという考え方でございます。  それから第三点として、試験を受ける前から寄付金を取るというのは、圧迫を加えるような、これは非常に不当でございますから、これに対してはそういうことはあってはならない、またそういう疑惑を招くということもいけないことでございますから、調査して改善していくように考えております。もしもそういう事例が判明いたしました場合には、その学校に対して厳正な指導を行う考えでおる次第でございます。
  196. 石田幸四郎

    ○石田(幸)委員 文部大臣に御要望申し上げておきますが、そういった入学金その他寄付金の問題につきましては、どうか試験の公正が失われないようになお留意してもらいたい旨、各私立大学には特に通達を出していただきたい、これは御要望として申し上げておきます。  時間がありませんから、簡単に郵政大臣にお伺いをいたします。  前回新聞にも発表になりましたけれども、電話電報料金が大幅に値上げになりますね。しかし、値上げだけではわれわれは納得できないわけでして、一体電電公社というのはどういう経営をしているかということについて郵政省としても厳重にこれは指導してもらわなければならぬと思うのですが、前回出た記事によりますれば、「月に三千五百円までタダ”役得電話”三万人 電電公社の課長級以上 全職員の一〇%」こういうような新聞記事が出ておりますね。これに対してどう思うか。  それからまた、郵政省の資料を私要求をして検討してみましたら、郵政省——これは、いま申し上げたのは電電公社の経営の姿勢だと思うのですけれども、今度は郵政省では、この業務用の住宅電話、いわゆる課長級以上の幹部クラスに対して自宅に電話を設置する場合に、債券はもちろんのこと、設備費はただ、それからまた通話料金についても、限度額を設けてそれ以上納入する必要はない、そういうような状態になっておりますけれども、これは明らかに役人天国で、役人の役得という感じを免れません。その本数が郵政省だけでも実に五千四百十四本。こういう血税をだらだらたれ流しているような実態について一体どうお思いになりますか。基本料金あるいは通話料をわれわれが算定して考えてみますと、郵政省だけでも約一億五千万、これは税金の中で支払われているじゃないですか。これは各省庁全部ということになりますと、実に年間で三十五億から五十億ぐらいの血税が役得という形でたれ流しをされているということになりますね。こういう問題について電話料金や電報料金を値上げしようとおっしゃる郵政大臣としては、一体どういうようなお考えがございますか、お伺いをいたします。
  197. 村上勇

    ○村上国務大臣 お答えいたします。  電電公社の一定の管理職の職員住宅には、電電公社名義の業務用の電話を設置いたしまして、その設置費及び維持費は電電公社の負担として、通話料につきましても一定限度まで無料扱いとしていることは御指摘のとおりでございます。  この業務用の電話は、二十四時間サービスという電電公社の業務の特殊性から、常時、非常時災害あるいは障害発生等の緊急連絡の必要に備えるために設置しているものでありまして、その必要性は電電公社の使命から見ても十分認められるところでありますが、その制度の運用に関しましては、適正を欠くことのないように厳に監督指導してまいっておりますが、なお一層指導してまいりたいと考えております。
  198. 石田幸四郎

    ○石田(幸)委員 さっぱり意味がわかりませんが、これをあなたは容認をされるわけですか。改正する必要はないというお考えですか。これだけ批判が起こっている問題に対して改正をしないというのは、私は納得いきませんね。いかがですか。
  199. 村上勇

    ○村上国務大臣 十分、そういう不都合なところがあればこれを是正していくということは当然でございます。
  200. 石田幸四郎

    ○石田(幸)委員 時間がありませんからやめますけれども、これはまた改めて物価の委員会で問題にしましょう。  大蔵大臣にもついでにお伺いしますが、一省で五千四百十四本の電話が役得で使われておるのです。これが三公社五現業までいっておるのです。大変な数じゃないですか。恐らくこれだけでもやはり五万本近くになるのじゃないですか。そういうように、血税がそんなふうな使われ方をしているということについて、私はぜひこれは改善をしてもらわなければならぬ問題だと思いますが、大蔵大臣いかがでしょう。
  201. 大平正芳

    ○大平国務大臣 長い慣行として、いま仰せになったような制度が各省においてとられておるようでございます。確かに御指摘のような問題点があると思います。われわれといたしましてもよく検討いたしてみたいと思います。
  202. 石田幸四郎

    ○石田(幸)委員 終わります。
  203. 正示啓次郎

    ○正示委員長代理 次に、玉置一徳君。
  204. 玉置一徳

    玉置委員 最近の経済情勢につきまして、政府は、生産はある程度増加しておる、在庫は一時に比べて非常に減少基調にある、商品市況も活況を呈しておるなど、景気は順調に回復しているかのように説明をされておるのであります。特にアメリカの景気回復と、自動車、弱電機等の輸出の伸び、大型プラント輸出の受注の殺到などを見ますと、確かにわれわれも昨年度よりはやや上向いてきたような感じがすることは否めないと思います。しかしながら、個々の企業をとってみますと操業度がこれまでになく低いわけでございますので、経営が非常に苦しい、深刻な状態にあるものも非常に多いことは実態でございます。しかも、こうした状態は、いま政府の公共事業を主軸とする対策だけでは、そう簡単に回復するとは思えないのであります。  特に、ここで私が指摘しておきたいのは、今回の不況には、単なる景気循環的な要因のほかに、長期的な、構造的な要因が強く作用しておるのでありまして、中、長期的に見て、経済成長率が低下していく中で、発展途上国の追い上げが激しく、好むと好まざるにかかわらず国際分業化が強まってまいります。また、資源エネルギーのナショナリズムの横溢は、目下世界的な不況でありますので表面には大きくは出ておりませんけれども、底辺にはこれまた非常にむずかしい問題を包蔵しておると思います。  そこで私たちは、わが国の産業の構造の転換が、この不況の中で、しかもこういった問題を一緒に解決する方向で不況脱出をせなければならないところに非常にむずかしい問題があるんだと思います。  そこで、今日は、こうした産業の一例として繊維産業並びに造船工業会から参考人に来ていただいたのでありますけれども、時間が余りございませんので十分な意見の御開陳を願うことができないのは残念であるが、お許しをいただきたいと思うのです。  そこで、繊維産業でございますが、御承知のとおり、今日までわが国の産業の代表として輸出もしくは雇用問題等に大きく貢献をしてまいったのでございますけれども、だんだんと開発途上国との生活程度の差異というようなものが追い上げてまいる原因となりまして、また先進工業国の輸入規制等とも相まちまして、思い切ってこの際、不況脱出と構造的な変化を一緒にやらなければならないところへ追いやられておると思うのであります。     〔正示委員長代理退席、小山(長)委員長代理着席〕  まず最初松本参考人にお伺いしたいのでありますが、繊維産業がややもすると大体、在庫と言い、あるいは収縮と言い、ほぼ底をついたのじゃないか、やや好転をしてきておるじゃないかとこう言われますが、あなたの方から見られた実感はどうであるか。次に、当面の不況打開のために何が一番ネックであるのか、そのネックについて政府施策の要望をされることがあるかどうか、簡潔にお答えいただきたいと思います。
  205. 松本良諄

    松本参考人 繊維産業のうちでも紡績業を中心にいたしまして御質問にお答えいたしたいと思います。  紡績は、今回の不況ではいち早く四十九年の三月ごろからすでに不況に入りまして、その後オイルショックの混乱、特に世界不況の同時的なシンクロナイズというようなことから、四十九年の秋には糸の値段が原綿代をも下回るというような、まことに考えがたいような大暴落をいたしまして、自主操短あるいは五十年一月からは五ヵ月間不況カルテルを実施をいたしまして、生産調整に努力をいたしました。しかしカルテルが五ヵ月しか認められませんでしたので、その後は自主減産によりましていろいろ不況打開に努力をいたしておりますが、現在なお特に国内需要の落ち込みが非常に激しいのと、輸出が先生も御指摘になりましたようにきわめて不振でございますので、需給のアンバランスは改善をされておりません。したがいまして、不況カルテルの末期において一時、在庫調整の効果があらわれるかに見えたのでございますけれども、今日まで二年近く、なお採算線をはるかに下回ったところにおる状態でございます。これがために、紡績といたしましては工場閉鎖その他あらゆる不況対策を打っておりますとともに、資産を売却するなり、またぎりぎりまで緊急融資等を受けまして現在不況をしのいでおるわけでございますが、紡績の体力もすでに限界に達しておるというような状況でございます。  そこで、現在私どもの一番要望を申し上げたいことは二つございます。  一つは、紡績は市況産業でございまするので、消費需要の喚起ということについて特にお願いを申し上げたい。  次に、第二点は金利負担の軽減ということでございます。  昨年から四次にわたる公定歩合の引き下げその他不況対策が実施をされましたけれども、回復の足取りがまことに重く、現時点ではいまだ市況好転の兆しが出ておりません。繊維産業は不況には  一番早く入りまして、またこれからの脱出は一番遅いという産業的特質を持っておりますので、どうか早く景気が本格的に回復をいたしまして消費需要が伸長をいたすことを特にこいねがっておるのでございます。本委員会等を通じまして前向き、積極的な景気回復型の予算編成をされまして、一日も早く景気浮揚の実績が上がるように切望をいたしておるものでございます。  金利の面につきましては、わが国の企業は全般に自己資本比率は欧米などに比べますと非常に低うございますが、特に製造業の中でも紡績は自己資本比率が低うございまして、昨年の上期あるいは下期を見ますと一六%、一四%というふうなところまで低下をいたしております。したがいまして、金利コストは経営費用面では非常に大きな割合を占めておるのでございます。このことは、現在潜在的な過剰労働力を抱えておりまして、人件費の固定費的なものでも苦しんでおりますけれども、それと肩を並べ、あるいはそれ以上に金利負担というものが企業経営の弾力的な運営を圧迫をいたしております。しかも、一昨年来の非常な不況で、融資もちょうど金利のピークのときにたくさんの緊急融資その他を受けましたために、大変現在呻吟をいたしておるのでございまして、この際、公定歩合引き下げもさらに期待いたしたいのでございますが、少なくとも公定歩合引き下げに対する市中金利の追随率を高めていただきまして、長期金利を含む実質金利の引き下げを強力に実施していただきたいということをまずお願いを申し上げたいと存じます。
  206. 玉置一徳

    玉置委員 もう一つお伺いしますが、金利負担はどのくらいになっておりますか。
  207. 松本良諄

    松本参考人 一番最近の実績で申し上げますと、五十年十月期の中間決算におきまして、紡績大手九社の経常赤字の合計が五百九十三億円でありますが、そのうち、それの八〇%に当たります四百七十九億円というのが支払い金利になっております。
  208. 玉置一徳

    玉置委員 そうすると、年間に直しますと約千億円弱になるわけでありますが、大蔵大臣にお伺いしたいのですが、一番金利の高かったときに、しかもそれは高度成長の一番よかったとき、そのときに莫大な運転資金その他が入ったやつが、このように今日の不況のときにその金利負担のために呻吟しておる。聞けば、金利負担が赤字の大体八割あるいは八割五分になっておる、赤字は資本金とほぼ同じである、こういうような非常な不況に悩んでおるわけでありますが、一般的な金利負担をさらに下げるためにどのような手をお打ちになるか、お伺いしたいと思います。
  209. 大平正芳

    ○大平国務大臣 過去四回公定歩合の引き下げがございまして、それに並行いたしまして短期の貸出金利が徐々に下がってまいったわけでございます。去年の四月から十二月にかけて公定歩合が二分五厘その間に下がりましたが、都銀で言いますとその約半分ぐらいが金利の低下として実現していることになっております。しかし、これは短期金利の追随は早いのでございますけれども、長期の方はこれからが本番だと思うのでございまして、したがって、私どもといたしましては、この一般の金利の引き下げということが当面の金融政策の一番の道標でございまして、それに精力を集中していまかかっておるわけでございます。しかし、いまこのままの状態で、すでに整備した条件が金利低下につながるということを推進していく途中でございまして、新たな条件を今度つくり出すということになりますと、実効を期するためには、もはや公定歩合をただ単に下げるだけではいけない、やはり預貯金の金利というようなものにつきましてもあわせて考えなければならぬのじゃないか、そう考えておるのがいまのわれわれの立場でございます。
  210. 玉置一徳

    玉置委員 これ以上金利を下げようと思えば預貯金金利も下げなければいかない、まして、という話にいつも突き当たるのですが、信用金庫、信用組合等の一番弱小の金融機関、これ以上下げたらもう銀行がだめなんだ、信用組合がだめなんだ、信用金庫がだめなんだ。それから上の大銀行は余裕がたくさんあるのじゃないか。この間から話がたくさん出ておりますように、私は不当とは言いませんけれども、貸し倒れ引当金が全国の銀行の合計が一兆二千六百十一億に上っておるとか、あるいは退職積立金が、社員の半分が一斉に退職してもすぐに払えるような総額四千八百七十七億円に上っておるとかいうようなものを見ますと、不当とは申しませんけれども、こういういまの実態を見ましたときに、資本金と同額ぐらいなものが毎期赤字が出るとか、あるいは金利が二割で人件費が五割だというような割合を見るにつけて、やはりもう一つ施策を考えて思い切ったところへ踏み込まなければ、日本の、本当に汗をしながら一時帰休やあるいは希望退職やなんかとりながらふうふう言って働いている御連中に対して申しわけないのじゃないか。繊維産業も従業員、流通を合わせれば、家族合計で一千万と言われております。こういう大きなところで雇用問題が発生するようなことになればえらいことであり、将来とも、輸出はできなくなったって輸入を防遏できるような基礎でなければ、これはまた大変な問題になる、こう思うのです。  そこで、さらにこれを検討するお考えがあるかどうか。と同時に、この不況産業が、構造政策等を掲げられたときに、たとえば中小企業であれば一年間猶予して後ろへ回してあげる、償還条件の変更をするわけであります。大企業だから悪いということは一つもないと思うのです。これは市中金融機関でしょうが、何かのそういう特殊な手当ての仕方もお考えになるような積極的な御意思があるかどうか、もう一度大蔵大臣にお伺いしておきたいと思います。
  211. 田辺博通

    ○田辺政府委員 やや金利の技術論にわたりますので私からお答えさしていただきたいと思いますが、公定歩合とそれから市中の貸出金利との関係、これはいまの慣行によりますと、市中貸し出しの最優良金利というものが公定歩合の〇・二五%アップというようなことでもって、公定歩合が下がればその優良貸し出しのプライムレートが下がる、それに従ってまた一般の他の金利も下がっていくというような、そういう仕組みになっておるのでございますが、現在は御案内のとおり、一年定期預金の金利とプライムレートの金利とが同一の水準でございます。これを預金金利を据え置いたままでこのプライムレートを下げて一般的に金利を下げよう、こういうことになりますると、その金利体系が逆転することになります。一般的に申しまして、そのような状態が長続きすることはとても許されない。つまり体系上おかしい。と申しますのは、企業としては金を借りて一年定期にすればそれでもうかってしまう。そういうようなことはおよそ金融のシステムとしてはおかしい、こういう問題があるわけでございまして、そういう意味から、仮に公定歩合をいじるとすれば、やはり預金金利の問題に逢着せざるを得ない、こういうことでございます。ただそういうような公定歩合を引き下げ、プライムレートを引き下げる、そういうことでもって一般の金利水準を下げるという手段もございますれば、すでにこの十一月には預金金利も下げたわけでございます。そのまだ中間段階でございますから、これまでの公定歩合の引き下げ、プライムレートの引き下げ、それからまた預金金利の引き下げの効果というものはこれから続いて発揮されていく、こういうぐあいに期待しておりますので、当面のところの問題といたしましては、全体として資金需給の緩和の傾向をそのまま持続する、金融政策の、日銀の問題にもなりますけれども、この緩和状態を続けていく、現にことしの初めから……
  212. 玉置一徳

    玉置委員 簡潔にお願いします。説明を求めているのではありません。
  213. 小山長規

    小山(長)委員長代理 質問に対して簡潔に答えてください。
  214. 田辺博通

    ○田辺政府委員 コールの金利も下がっておりますし、全体としての貸し出し平均金利は今後なお一層下がっていく、こう考えております。
  215. 玉置一徳

    玉置委員 説明を求めているのではありませんで、やる方法があるかどうかということを聞いたのであります。したがって、こんなものは時間の中に入れる必要がないのだと思うのですが、どちらにしても銀行については非常に多くの議員からいろんな抗議的な要請を受けていることは御存じのはずです。ロッキード問題も大変だけれども不況産業の景気浮揚策のために、銀行問題に限って二日か三日衆議院の予算委員会で集中論議をしてもいいぐらいに私は思っておる。つまらぬ説明をして、どういう決意かと聞いておるのに、逃げようというようなやり方は非常にふらちだ、大蔵省の猛省を促しておきたいと私は思うのです。(発言する者あり)出てきたら邪魔になるだけだから、これは理事会でやってもらうことにします。  そこで、通産大臣にお伺いしたいのですが、先ほど申しましたとおり、繊維産業は開発途上国の追い上げの構造的な問題を一緒に抱えながらやっておりますので、非常にこれはむずかしいと思います。この不況対策に、当面の問題に手当てをしながら、なお構造的な問題をひっかけていかなければならないわけでございますので、通産省が所管の官庁でありますから、業界その他学識経験者等をお入れいただいて、速やかにガイドラインをつくるなり、構造政策をお考えいただきたい。そのときに、もしも非常に金利が重圧になっておる、ネックになっておるというようなときには、何か政策金融その他のやり方でもって、この重圧を、ネックを解消するようなお考えもともにやっていただきたいのですが、構造政策についてどのように処理をされようとしておるか、お答えをいただきたいと思います。
  216. 河本敏夫

    ○河本国務大臣 繊維産業は最悪の事態はようやく脱したと思います。幾らかいい方に向かいつつありますが、しかしなお、全体的に景気が悪うございますし、それから、近隣の発展途上国からの追い上げの問題等もあります。構造問題等もあります。金利負担の問題等もありますし、いろいろたくさんの問題がございまして、本格的な立ち直り、再建ということは、これからなかなか大変だと思います。そういうさなかに新しい構造改善事業を進めるわけでございますが、特に、いま御指摘の金利の問題につきましては、業界一律に特利等を適用するということはむずかしいと思います。ただしかし、個々の企業につきまして非常に困難な企業がある、こういう場合にはそれぞれケース・バイ・ケースということで、関係当局とも相談をいたしまして善処をするつもりでございます。
  217. 玉置一徳

    玉置委員 構造政策としては別にお考えになっておりませんか。
  218. 河本敏夫

    ○河本国務大臣 中小企業関係の場合は、中小企業振興事業団から構造改善事業の場合は資金が提供される、こういうことになっておるわけです。しかし、一般の市中銀行からの借り入れ等もたくさんございますから、先ほど申し上げましたように、一律に特別に安い金利を適用するということはむずかしい。しかしケース・バイ・ケースで善処をいたします。
  219. 玉置一徳

    玉置委員 ちょっと意味が違ったのですが、そこで、松本参考人にお伺いしたいのですが、政策を行う上で輸入問題というものは、非常に皆さんやかましくおっしゃるのですが、どのように希望されておるのですか。
  220. 松本良諄

    松本参考人 この数年間における東南アジア諸国における繊維生産規模の増大、なかんずく輸出能力が急速についてまいりましたことは御承知のとおりでございまして、この輸入問題というのが、当面の不況の立ち直りの一つの阻害要因でありますとともに、中、長期の繊維産業の見通しにおいて強い圧迫要因になっておるのでございます。わが国の生産、流通構造が横断的であり、かつ中小零細的な体質を備えておりますために、輸入に対する抵抗力というものが弱いという面もございまして、業界の一部には根強い輸入抑制措置を要望する声もつとにあったのでございますが、私どもは、わが国が自由貿易を原則とするたてまえということにつきましては、これを理解いたしておりますので、そういうふうなたてまえに立ちまして、輸入のはからざる急激な増加というようなことは、失業、倒産などの深刻かつ経済的、社会的な混乱を国内に巻き起こすのみならず、わが国の繊維市況が混乱をいたしますことに伴いまして、相手輸出国におきましても非常な混乱を生じた事実が今回起こっておるのでございます。したがいまして、国内の生産、需給とあわせ、また国際貿易環境に合致するような輸入体制の秩序化ということが、わが国の繊維産業につきましてはアジアの中で先進国の立場にあるということから、絶対に今日必要である、かように考えておるのでございます。  これの具体的な問題につきましては、先般稲葉秀三氏を座長といたしまする繊維問題懇話会におきましていろいろ問題が取り上げられまして、今日また繊工審におきましてその具体化がフォローされておりますので、その中にわれわれがやるべきこと、業界がやるべきこと、特に政府がいろいろ強力に実施をしていただかなければならないというようなことが盛り込まれております。これらのことを今後順次詰めてまいりまして、意見のまとまったものから政府の方においても強力に実施をしていただきたい、かように存じております。
  221. 玉置一徳

    玉置委員 もう一つ問題となりつつありますものに、造船業が御承知のとおりあるわけでありますが、世界のトップを走っておりましたわが国の造船業も、石油ショック以来タンカーの動きが非常に少なくなるというようなことで、操業の見通しでは五十一年度が七割、五十二年度に至りましては五割、その先は見当がつかないという、非常に気の毒な実情であるわけであります。こういうことで、大手企業の見通しだけじゃなしに、中小企業、下請企業、あるいはこれに関連産業が非常にたくさん集まっておるわけでありまして、これの雇用問題等は非常に大きな問題を包蔵しておるわけであります。  そこで、運輸大臣にお尋ねしたいのでありますが、これらの造船業のあり方を一体どういう方向に持っていこうとしておるのか、その具体的な問題を簡潔に御説明をいただきたいと思います。
  222. 木村睦男

    ○木村国務大臣 玉置さん御指摘のような現在の造船事業の現況でございます。需要構造の変化ということが一つの大きな問題でございまして、それらに対応いたしますためにも、LNG船あるいはプラント船の技術の開発、あるいは需要に対応した建造設備の縮小、陸上部門等他部門への積極的な進出等、そういう面で今後積極的に検討をいたし、策を進めていくつもりでございます。  なお、関連産業、下請企業等に関する影響も非常に大きいわけでございます。見通しはいまお話しのような状況でございますが、その後の状況もきわめて遅いテンポで、回復するとすればせざるを得ないというふうな状況でございますので、当面の対策といたしましては、現在いろいろ講じておるわけでございますが、五十二年度以降におきましては、現在、海運造船合理化審議会の方に詳細なその対策についての検討をお願いしておりまして、四月か五月には、五十三年度予算編成の案をつくるのに間に合うように答申をいただく予定にいたしておりますので、それを受けまして今後の恒久策は講じてまいりたい、かように考えておるところでございます。
  223. 玉置一徳

    玉置委員 造船工業会の方では非常に御苦労なすっておいでになるわけであります。少なくとも現在の対策としては一杯でも二杯でも外注をとればいいわけですが、一番大事なのは、だんだんと延べ払い競争になるというように承っておりますけれども、いまの資金手当てだけで間に合うのかどうか。なおその他について、資金について御希望があれば、この際御開陳をいただきたいと思います。
  224. 山下勇

    山下参考人 お答え申し上げます。  先ほどからお話がございましたように、造船業が直面しております不況というのは、今日現在の不況というよりは、あした、あさっての不況であるということで非常に特異な形をとっておるわけでございます。御指摘のございましたように、現在の手持ち工事量から見ましても、輸出船の占める比率が非常に高いということでございます。今年度予算といたしましては、輸出入銀行の資金枠を二千百十億という金額をいただきましたが、この金額では実は今年度の予想されます輸出船の全体の金額には不足いたしておりまして、したがいまして、輸出入銀行の方も従来の融資比率五五%を四五%に下げられるということになっておりまして、したがって市中銀行の負担分がふえてくるということになってまいります。その点で、まず当面この輸出入銀行の不足分に対する補てんの意味における市中銀行の金融というものをぜひ確保していただきたいということが第一でございます。  さらに、御指摘のございましたように、今年度はまだ前に注文をいただきました現金払いの船が残っておりますので、二千百十億という金額をべースにまだ賄えるわけでございますが、明年の分を予想してみますと三千億を超えるんではないかというふうに予想されますので、そういう意味で来年度以降におきます輸出入銀行の資金の枠をさらに増大するように御配慮いただきたい。  それからもう一つは一般的な金融の問題でございますが、われわれの造船業の金利負担の状態というのは、現在のところ、だんだんと延べ払い船等がふえてまいりまして、借入金依存度がふえてまいっております。現在のところはまだ、大手の方でまいりますと一・八%くらい、中手でまいりまして二・五%くらいの金利負担になっておりますが、これが悪化する方向に向かっておりますので、先ほど来お話のございました長期金融の場合における金利の低下というものは、造船業におきましても期待したいわけでございます。と同時に、中手の造船所の中には設備投資負担の大きいところがございます。こういうところの中には、すでに減配、無配に追い込まれておる会社もございますので、こうした会社につきましては、個別に設備資金の元本の返済の繰り延べというようなことを個々のケースとしてお願いしなければいけないことが出るのではないかというふうに考えております。  以上でございます。
  225. 玉置一徳

    玉置委員 操業度が、先ほど申しましたとおり、五十一年、五十二年、だんだん下がってまいります。しかもその下がり方は非常に大きゅうございます。したがって、先ほど言いました構造改善に必要な繊維産業の問題にいたしましても、ただいまの造船業にいたしましても、まずもって将来あるべき姿をはっきりさせることが必要でありまして、その上でそれを実現するための手だて、あらゆる方策を各方面から考えるということが必要だと思います。これは産業政策の問題でもありますけれども、大きな雇用問題の対策でもなければならないと思うのであります。  そこで産業構造の転換に際しまして問題となるのは、いま申します雇用問題でございますが、産業構造の転換はそれを円滑に実施するにはどうしても雇用面でしっかりと受けとめる対策がなければ十分な効果は上げ得ないと思います。当然離職者の発生が予想されますし、特に経済成長率が低下いたしますから、これからの時代においてはこれまでの高度成長時代のように、どこを離職したからどこへ行けるというようなわけにはまいらぬと思います。  そこで労働大臣にお尋ねしたいのでありますが、産業構造のこのような転換に伴い発生いたします雇用問題に対して、今日までの当面の施策のほかに、特別の対策を講ずべきだと思いますが、具体的には繊維産業の構造改善あるいはいまの造船業でございますが、どのようにお考えになっておるか、御所見を承りたいと思います。
  226. 長谷川峻

    ○長谷川国務大臣 繊維につきましては、数年前に対米繊維輸出規制、そうしてまたその織機の廃棄等々があって、その際もいろんな対策で、その経験がありましたから、御案内のように、このたびの不況に当たっては雇用調整給付金で労使ともどもお話がありまして、これが非常に役に立っているんじゃなかろうか。いまから先の問題は、いずれにいたしましても失業というものを出さないようにしなければなりませんから、構造改善は民間で非常に熱心に、繊維の場合に行われている話も私はいろいろ聞くわけです。そういう中から私の方はできるだけのことはやっていこう。造船の場合でもそうでございます。いま手持ちがあると言いましても、下請関係が非常に悪うございますから、これなども労使ともどもからの話もありまして、御承知のように、調整給付金を出しつつある。そうしてまた、通産大臣が答弁されたように、全体の構造改善の中に私たちの方が受け持つものを十分にひとつ手配してまいろう、こういうふうなことで、いろんな諸問題について準備もし、考えているところであります。
  227. 玉置一徳

    玉置委員 銀行局長がちょっと変な説明をしたから、その分一問だけお願いします。  そこで、福田副総理にお伺いをして終わりたいと思います。  五十一年度予算は公共事業の主導型で、その上に、昨今の自動車あるいは弱電、その他大型プラントの輸出の好転と相まちまして、確かに景気は幾分か持ち直しつつあるような感じがすることも事実でありますが、これだけでは福田副総理の言われる、五十一年度こそ不況脱出の最後の年にしたいというのにはちょっと物足らぬことは事実だと思います。つまり、ただいま申しましたように、わが国の経済は、必ずしも石油ショックからの脱出だけではなしに、開発途上国の追い上げや、資源に対する対応策だとかあるいは公害による立地問題のむずかしさとかいうようなことで、構造を変えていかなければならない問題が実在するわけであります。副総理も先日私の質問にお答えになりましたように、「企業不況脱出の過程において、将来への対応のための姿勢転換を行わなければならぬ。そういうときになっております」、こうおっしゃっております。  そこで、ここまでお気づきの副総理でございますので、先ほど来、政府当局や参考人に私がお伺いしておりましたような、個々の不況の業種ごとにやはりきめの細かい構造政策をひとつお立ていただいて、そして金融、雇用その他の面からもできるだけのことをしてあげていただくことが、私はあなたのおっしゃる本当に不況脱出の年にし、低成長下の安定成長の軌道に乗せる方策だと思います。この一年間そういう意味でこういった面にも十分にひとつお気をお配りいただいて御精進をいただきたい。特にそのうちで金利、金融問題が非常にガンになっておることも事実であります。そういうようなこともあわせてひとつ御所見を承っておきたい。
  228. 福田赳夫

    福田(赳)国務大臣 先ほどから玉置さんのお話を承っておりましたが、大体私の所見と一致するわけです。つまり、われわれは当面の不況脱出という問題ばかりでなくて、世界情勢が、それにつれてわが国の体制が変わってきた、それに応ずる企業の姿勢転換、体質転換あるいは構造の転換といいますか、そういう問題に同時に当面しておるわけなんです。ですから、政府の方では不況脱出のためのいろいろな施策を講じますけれども、同時にこれは企業側の姿勢というかイニシアチブ、これも私は大事だと思うのです。それと両々相まちまして体質改善、構造改善、転換、こういうことをぜひやっていきたいと思うのです。  そこで、いま特に金融問題に触れられましたが、いまケース・バイ・ケースといいますか、企業と金融機関、そういう間ではかなり詰めた話は進められておるケースが多いわけであります。金融機関もかなり協力もしておるわけですが、そういう個々のケースのみならず、情勢が必要とすればこれを一般的な対策というようにも及ぼす、そういうことも考えなければならぬだろう、こういうふうに思うのです。全体の経済、マクロの経済もありますけれども、同時に並行して個々の企業の体質改善、これには政府としてもきめ細かな配慮をしてまいりたい、かように考えます。
  229. 玉置一徳

    玉置委員 終わります。
  230. 小山長規

    小山(長)委員長代理 伊藤参考人松本参考人山下参考人、小川参考人、竹内参考人には、御多用中のところを御出席をいただきましてありがとうございました。御退席を願って結構でございます。(拍手)     —————————————
  231. 小山長規

    小山(長)委員長代理 元参議院予算委員会調査室長正木千冬君、東北大学教授小嶋和司君、両参考人にただいまから御意見を承ることといたします。  質疑を行います。正示啓次郎君。
  232. 正示啓次郎

    ○正示委員 いよいよ三日間にわたる集中審議の最後のテーマ、公共事業等予備費という問題につきまして、正木、小嶋両先生においでをいただいたわけであります。御苦労さまでございます。  私、大変時間が制限されておりますが、正木先生は御承知のようにもう参議院の予算問題の権威であり、いまは鎌倉の市長さんとしてその実際問題に取り組んでおる、理論、実際の両方の権威であります。またきょうお初にお目にかかります小嶋東北大学教授は、憲法と行財政法の権威であられるわけであります。両先生からひとつ適切なる御意見をお願いいたしたいと思います。  本年度予算で公共事業等予備費というものを設けましたことにつきまして、先般来当委員会においていろいろ論議が交わされたのであります。その論議において、大体これを二つに分けることができると思うのでありますが、一つは法律論、一つ政策論、政治論、こういうふうに分けることができると思います。  そして、いままでの質疑応答を聞いておりますと、質問者の方に若干誤解もございまして、たとえば公共事業等予備費の「等」というのは何にでも使えるじゃないかというようなことでございますが、これはもう改めて貴重な時間で申し上げるまでもなく、予算総則ではっきり決められておることでございますので、そういう点はひとつこの際触れずにまいりまして、憲法八十七条と財政法二十四条で御承知のように予備費制度が設けられております。その条章等はもうすでに御承知のとおりでありまして、今回の新しい公共事業等予備費の考え方は、この条章に照らして拡張解釈じゃないかというふうな御議論もあったが、私は縮小解釈だと思う。憲法や財政法の条章では非常に広い範囲の予備費が設けられるのであるけれども、この際は政府みずからその使途について制限を設ける、すなわち、一般予備費の機能を縮小いたしまして、つつましやかなる予備費をひとつこの際にやろうか、こういう考え方でございますから、これは法律の拡張解釈じゃなくて縮小解釈であろう、こういう、規定の範囲内における問題であるというふうに考えるのでございますが、この点について、大変時間がございませんから、まず東北大学の小嶋教授の御解釈をお願いいたしたいと思います。
  233. 小嶋和司

    ○小嶋参考人 実は答え方がちょっとむずかしいのです。というのは、憲法八十七条の予備費という規定が一体どういう趣旨のものかということは、これは御承知のような事情で憲法ができましたために、当初日本側に余りわかってなかったんだということが、だんだん後で資料が明らかになりますとともにわかってまいります。総司令部部内で草案を練りましたときには、たとえば予算が成立しないようなときにも使えるようなリザーブファンドなんだというつもりでああいう予備費の規定を入れたのだということが、これは占領末期にわかっておりましたし、その後、起案者のメモなどが持ってこられまして、だんだんわかってまいりました。しかし、当時日本の財政法をつくりましたときには、そういう司令部部内の事情というものがわかりませんものですから、明治憲法六十九条の予備費と同じ性格のものだろうというような気持ちで、恐らくいまの財政法二十四条になったのだろうと思うのです。問題は、年度開始のときに予算が成立しないときに使えるというのですから、本当は歳入歳出予算の中に規定するなんということは、全然性格の別のものでございます。したがって、現在予備費と言われているものが本当に総司令部が考えたような予備費なのかどうかということも、これはもうそうでないということはわかっておりますが、ただ、そうしますと、憲法の解釈というのは一体何だということになってしまいまして、一応現在のところはこういうふうに考えるのが妥当なんじゃないのか。八十七条では「國會の議決に基いて豫備費を設け、」というふうに書いてございます。この「國會の議決に基いて」というのはいろいろな形の議決があるだろう。予算外に法律でつくるということもあり得るし、歳入歳出予算の中に入れるという予備費もあり得るだろう。これは一種類じゃなくて二種類あっても構わぬだろうというふうに私は考えております。  そういう立場で私は物を書いておりますが、そうしますと、いまの財政法二十四条の予備費というのは、憲法八十七条の予備費というのをそのまま制度化したものじゃなくて、その一部を制度化したものであるというふうに私は理解しております。特にあそこでは内閣の責任で支出することができるなんて書いてあるのですね。これは非常に物々しい使い方でございまして、その辺に総司令部内の考え方が私は出ているのだと思うのです。憲法の関係はそういうふうに一応整理して御了承願ったことにしまして……。  二番目に公共事業等予備費の問題でございますが、実は私などのように書斎におりますと、日本のいままでの財政制度及びそれに与えられた運営というのは非常に古臭いものじゃないかという印象を持っているのです。と申しますのは、これは御存じだと思うのですが、日本の予算の法的効力に関する、あるいは効果に関する考え方というのは、明治九年ごろの会計法とちっとも変わらないのです。何といいますか、国家はなるべく金を使わぬ方がいいんだ、したがって予算の拘束力というのは定められた金額をオーバーしてはいけないのだというような、そんな考え方で運営されているように私は思うのです。しかし、先般来そこで私拝聴しておりますと、現在の財政なんというものは決してそういうふうにチープガバメントがいいなんということは考えていないので、積極的に経済に対して干渉していくという機能を大いに発揮しなければいけない。そういたしますと、昔のように金を余せばいいという思想での制度及びその運営というようなものは、やはりやめなければいけない。  これは一つの観点は、国会議決主義ということを考えますと、ある項目はなるほど金を余す方がいいだろう、しかし、ある項目はむしろ全部使い切ることの方が国会の意思を尊重するゆえんじゃないのだろうか。これをアメリカではミアオーソライゼーションとマンデトリーオーダ一というふうなことを言っております。日本ではそういう項目の区別も実はまだやっておりません。国会議決主義というようなことは項目としてはよく聞くのですけれども、それはやっておりません。  それから他方でもう一つは、予算というものは余せばいいんだ、上限だけを決めておくというやり方をいたしますと困ることは、こういうことになるのですね。たとえば政府景気政策などをやろうとするときには、あらかじめ余分に取っておきまして、そして要らなければ余してしまうのだというような組み方をせざるを得ない。そうしますと、そういうことは、一方では税金をよけい取る、あるいは国債をよけい出すというようなやり方になってくるわけで、そういたしますと、増税するとかあるいは国債をよけい発行を認めてもらうということは決していいことではありません。  私、余り外国のことは知らないのですが、二十年ぐらい前にフランスのことをやりましたときに、あそこの制度は非常にうまくできておると思いましたのは、あそこでは、日本のように余せばいいという項目もあります、しかしその項目を超えて支出してもいいという項目もあるのです。たとえば裁判官の給料みたいなものは、足らぬからといって支出しないというわけにいかないし、あるいは民事上の裁判による賠償の支払いのごときも、予算がないからというようなことで支出しなくていいという性質のものじゃありません。そういうものは、日本語で暫定的経費あるいは暫定的支出許容と私は翻訳したのですけれども、フランス語ではクレディエバリュアティフというふうに言うのですが、そういうものもある。他方で今度、日本のようなものとの中間に、この金額を超えても構わない——先ほど言いました裁判官なんかの場合には、国会にかけましても別段審議もただ形式的にやるようなものでございますね。そうでなくて、もう少しポリティカルな決定になるのですけれども、必要があればこの項目は景気調整等のために使っていいという、そういうものがあります。これを予測的支出許容と私は訳したのですが、フランス語ではクレディプロビジョネルというふうに申します。そういう予測的というものは、フランスでは、じゃそれを超えたらどこから取っていくのだろうといいますと、ちゃんと予備費の中に、予備費というものを二分しまして、一方では色のつかない予備費、他方ではそういうときに使うべき財源の予備費というような形で使うのです。今回の公共事業等予備費というものを拝見いたしまして、日本も少しフランスのそういうやり方に近くなったわい。昔のやり方で何かレッセフェールみたいな財政制度及びその運営ということを実はちょっと感じたのです、正直に言いまして。  じゃ、従来の日本のやり方が、いまの財政法の二十四条から、これは全くあれしか固定的に許せない制度であるかというと、あそこには憲法と同じように「予見し難い予算の不足に充てるため、」と書いてあります。そういういわば弾力的運営を与える余地というもの、そういうものがあそこにはあり得るわけで、現代的な財政に対して期待された機能にこたえ得る条文だろうと私は思うのです。そういうことは、一方では恐らく国会の議決権を制限することになるだろうと思うのですけれども、国会の議決権よりも、もう少し日本の財政制度及びその運営を現代国家が要請されておる方向に近づけて運営する、そういうことは私は可能だと思いますし、むしろ何といいますか、外国では二十年も前にやっていたことをやっとここまでという印象を私は持っております。
  234. 正示啓次郎

    ○正示委員 正木参考人にひとつお伺いしたいのですけれども、あなたは前に参議院の予算専門エキスパートとして、昭和二十五年以来印刷局の特別会計の中に予備費を設けまして、そのうちの一定金額は外国紙幣の製造だけに限定するという制度が一つあったわけですね。これは二十五年以来ずっとありました。それから昭和二十八年には、一般会計の中に災害だけの予備費を普通の予備費のほかに特定した例があります。そういう事例を参議院の予算の専門家としても御存じである上に、いま鎌倉市長として鎌倉市の財政運営をやっておられて、なるほどこういう予備費は必要だという理論と実際の面から、法制的にもいまちょうど東北大学の小嶋教授が言われたような考え方もあると思うのでございますが、いまの小嶋教授お話は、前のいわゆる第一予備金、第二予備金なんかの制度にも非常に近いものがあると思うのですね。事務的な経費で——前は補充使途と言いましたね。事務的な経費でどうしても足らぬやつは、大蔵大臣だけの判断でどんどん第一予備金で出していっていいという制度が昔ございましたね、ああいうのとは少し違うけれども。すなわち、予備費の中に二つ性質があるじゃないか、そこで目的を限定したようなのも一つあっていいじゃないかということ、これが法制的な解釈で私は別に憲法八十七条と財政法三十四条に抵触しないと思いますが、そういう点については、正木さんは理論と実際の面からどういうふうにお考えでしょうか、御意見を……。
  235. 正木千冬

    正木参考人 ただいま御質問の点でございますが、印刷局の予備費の点につきまして、私つい失念いたしておりまして、はっきりしたことは覚えておりませんが、私は先ほど東北大学の先生のお話を伺っておりまするけれども、日本の旧憲法から新しい憲法に移り、旧会計法から財政法に移っていったその過程におきまして、やはりこの国会の財政に対する権限を強化するといいまするか、それを中心といたしまして国会議決主義というものが非常に強く財政法に出ておる。したがいまして、その面から言えば、日本の予算は前の時代よりもはるかに拘束性の強い予算にならざるを得ないということになっていると思います。そういう意味で、私はやはりいまの財政法における予備費の概念というふうにいたしますると、やはり予備費を使うまでに、たとえば予算の不足等についての移用、流用の規定があるとか、あるいは制度的に予備費が出てくるとか、あるいはさらに補正予算の制度がある、こういうような何段階かの中で予備費というものを置き、そして予備費というものが、国会の議決ではありまするけれども、具体的内容を決めておりませんので、行政府に使用を一方的に委譲するといいまするか、そういうのでありまするから、これは最小限度にとどめるべきである。また、その使用につきましても、予見しがたい予算の不足であれば何でもいいのかというと、そうではなくて、それはちょうど二十九条の補正予算の項にございますように、その規定を裏返しにしたようなもので、やはり予備費というものは金額的に比較的軽微でなければならぬとか、あるいは経費の性質が客観的に自動的に決められるといいまするか、何にでも使えるというような、政策的選択で使えるというようなものではないということが、この予備費の一つの、表に出ておりませんけれども、補正予算の規定の方から逆に類推すればそうならざるを得ないのじゃないかというふうに私は考えるわけであります。  そういう点で、今回予備費を二つに分けて出されたわけでありますが、それがいまの財政法の規定、旧会計法の第一予備金、第二予備金から今度の一本化になりましたこの規定だけから言いまして、分けてはいけないというふうには必ずしも考えておりません。しかし、分けるには分けるだけの理由がなければいけない。いまお話しのように限定的な予備費であるということですから、いまの場合のこれが果たして限定的予備費と言えるかどうか、そこが私は問題だと思います。
  236. 正示啓次郎

    ○正示委員 お話はよくわかります。さすがに実際に苦労をしておられる。だいぶしらががおふえになりましたね。御苦労さまです。  補正予算にするか予備費にするかは、これは大体法制的にはそう私は本質的に変わらないと思いますが、しかし制限的に考えるべきである。すなわち、制限的ということで今度の予備費には公共事業という冠をかぶせて制限をつけた、そういう意味で実は正木先生のお考えとわれわれの考えとは大体よく似ている。  そこで、今度は政策問題に移らしていただきます。時間がありません。  ことしの予算はいわゆる総合予算主義、できれば補正予算などというものはなるべく避けたい、そして最初に大きなフレームワークをつくりまして、その財政の枠の中で雇用、不況、この問題をひとつ解決しようというふうな心構えをもって予算編成せられておるということはもう両参考人御承知のとおりでございます。  そこで、実はこの委員会におきまして先般来の政府と野党側の質疑応答を聞いておりますと、こういうふうになっておるのです。こういうことなら一応初めから公共事業費をそれだけふやしておけばよかったじゃないか、これが第一案。それでなければ、いまお話しのように補正予算を組めばいいじゃないか、これが第二案。そして、一般予備費を増額しておけばいいじゃないか、第三案。こういうふうなことを野党の先生方から御提示になりました。しかし政府側は、そういう三つの案じゃなくて、第四の案、特定予備費ということで出したのでございます。しかもこの特定予備費は、御承知のように一般予備費とその支出の態様は一つも変わりません。すなわち、支出後、事後の国会の承諾を求める、これは法律にはっきり掲げられておるわけであります。それから、先ほどちょっと小嶋先生がお触れになりましたが、これは建設公債の対象になっていないのでございます。もし公共事業費を増額すると、これだけ建設公債の対象になってしまうのです。それがすなわち、先ほどいみじくも言われた、国債をそれだけふやすというふうに形になってしまう、あるいは租税をそれだけ増徴するという形になってしまう、そういうことをこれはあえて避けて、そして万一必要な場合には、すなわちGNPを五・六%ふやしましょう、そして完全雇用の面をひとつ何とかしましょう、しかしそれには公共事業でやると同時に、輸出というふうなものもございまして、外国の方が景気がよくなって伸びてくれれば結構であるがというふうなところが、あわして経済の大きな見通しの柱になっておるわけです。そっちの方が、仮に輸出なんかが思うように伸びなかったような場合は、この千五百億という新しい公共事業等予備費を使うこともあるかもしれませんから、それについてはひとつあらかじめ国会の議決を願いますというきわめてハンブルな態度を政府は示しておると私は思うのであります。  こういう政策的選択というものがこの際とられたのでありまして、しかして、これはすなわち正木先生が言われた国会の議決を尊重するという態度に対して、むしろ腰を低くしたきわめて謙虚な政府の態度であると私は思うのでありますが、この点について小嶋参考人正木先生から、もう実はあと十分しかございませんので、ひとつ簡単に御所見をお伺いしたいと思います。
  237. 小嶋和司

    ○小嶋参考人 いまのお話、予備費というものをどういうふうに運営するかという問題ですが、あるいは先ほどの私の言い方で言いますと、そういう予算の弾力性というのをどういうふうにつけるかという問題で、一つにはたとえば調整費というような形で執行の弾力性を図るということもあるのだろうと思うのです。しかし、調整費という形での調整の弾力性ですと、これは事後に国会の承諾を受けるというようなことがございませんですから、やはり調整費ではなくて、憲法の条文で言いますと、内閣の責任で支出することができるという体制にしておきまして、事後の国会承諾というような形のものを、ああいう調整費ではなくておつけになることは、これは国会の審議権をむしろ尊重されたのじゃないかというふうに私は考えております。
  238. 正木千冬

    正木参考人 私は、先ほど申しましたように、やはり予備費というものは厳しい制約のもとに置かれているというふうに考えておりますので、その限りでは調整貧的に考えるというふうな考え方よりも、実際に必要であれば補正予算——臨時会でその経済全体の見通しなりその他の状況がどう変わったかということを論議した上で正しい補正予算を組むのが議会の財政に対する権限の行使だ、かように考えます。  それで、あらかじめ総合予算主義ということを考えて補正予算を出さないようにするんだという形で、何でもかんでもそういうものを大枠に入れておくということになりますると、これは総合予算主義を言われておりますけれども、かえってそういう精神に反するのではないか。そういった茫漠たる内容の、実際的に限定されない公共事業等予備費といったものを、財政法を変えられるとか憲法にそういった規定、全部の予算制度を何らかの形ではっきりと変えていくということ、それから、もし変える場合には議会におけるそういったものを十分に判定できるような一つの機関をつくるとか、そういうことなしには軽々にルーズにすべきじゃない、かように私は考えておりますので、私は今回の措置は好ましくない、違法とは存じませんけれども、適切ではない、かように考えまして、こういったものはやめていただきたい、かように思います。
  239. 正示啓次郎

    ○正示委員 最後に正木先生にもう一つ申し上げたいのですが、実はこの一般会計予算総則というのを今度は大変細かく書いていまして、この第七条に、第四条による公共事業費の範囲というのがございまして、それの範囲以外には使ってはならぬということを予算総則第十五条にちゃんと書いておる。ですから、いまちょっとお言葉の中に「何でも」というふうなことでございますけれども、これははっきりと使途を限定しておるということが一つと、それからもう一つ、「何でも」という意味は、たとえば公共事業以外に、この前も議論が出た防衛費なんかにも予備費がというようなことがありますが、とんでもない話でございまして、これはさっき申し上げたように、この今度の総合予算主義というものと景気対策というものとがずっと一本の方針で貫かれておって、そしてそのフレームワークの中で、公共事業、輸出あるいは国民消費の増加あるいは設備投資の増加というふうないろいろなファクターで、景気の動向がいかになるかということに非常に慎重にやれ慎重にやれというのが国会の先生方の非常な一致した意見なんです。それで、見通しが狂ったら、狂ったじゃないか、責任はどうだとこうきますから、そこで千五百億ぐらいのものを一応念のためにとっておいて、そしてほかのファクターの点からこれの支出の必要があったときには予備費の支出をして、事後に国会の承諾をはっきりと取りつけますという、きわめて議会尊重の、国会議決の尊重の主義に徹しておるということを、もし正木先生いずれ大蔵大臣にでもおなりになったら、これはよかったということにおなりになりますから、どうぞこの際、よろしく御理解を賜りたいということを申し添えて私の質疑を終わります。ありがとうございました。
  240. 小山長規

    小山(長)委員長代理 次に、田中武夫君。
  241. 田中武夫

    田中(武)委員 いま正示君から、いろいろと意見を述べながら参考人の二人の先生方に意見を求めたわけなんですが、残念ながら、私は正示君とは真っ向違った見解を持っております。そのことをまず申し上げておきます。  そこで、まず正木参考人にお伺いいたしたいと思うのですが、いま正示君も若干触れましたが、その前例というか、二十八年に災害予備費があった。政府はそれが前例にあったからというようなことも言っているようですが、これは私は、当時の機構上の問題等々から特別の事情があったと思うのです。     〔小山(長)委員長代理退席、正示委員長代理着席〕  そこで、当時参議院の予算の専門員をしておられた正木さん、その当時のことについて簡単でよろしいですが、今回のような場合とは違うんだ、こういうふうに私は思いますが、その点についていかがでしょうか。
  242. 正木千冬

    正木参考人 お答え申し上げますが、私、具体的に余り詳しくは存じておりませんけれども、二十七年まではたしか経済安定本部というものがございまして、公共事業はそこで計上して、そこであんばいして各省庁に配っておったという時代もございます。特に災害関係の当年度災害の経費をそこらのところでもって計上した例もございますが、それがだんだん大きくなってきて、二十七年でありますか、当年災の対策費が八十億、一般の予備費が三十億というようなことになりまして、そういったものをこれでいいかどうかといった議論も出まして、一部には、こういったものは形式的に予備費というのは使ってないから、普通の予備費の処置と違った取り扱いをするのは余り形式的ではないか、これはむしろ予備費的なんであるから、災害予備費というものをつくったらいいじゃないか、こういう議論も大蔵省の中にもあったと思いまするし、当時議会にもあったと思います。それから同時に、二十八年にそういうふうなものを設けられた一つの理由は、経済安定本部が経済審議庁に変わりまして軌道が少し変わってきた。そういうこともありまして、従来のような災害対策費を置けないというようなことから大蔵省の方につけたというような経過だと思います。そういう点から考えまして、今回のような機構改革と関連のないものとは違うというふうに、とりあえずお答え申し上げておきます。
  243. 田中武夫

    田中(武)委員 委員長もお聞きのように、昭和二十八年の災害対策予備費というのは、受けざらに問題があったんですよ。それまでは経済安定本部、それが経済審議庁と変わった。この場合でも相当論議を呼んだ。それが、それじゃいけないというので大蔵省へ、もとへ戻ったというか、そういう経過があるので、はっきりと申します。昭和二十八年の災害対策予備費というのは、今回の場合とは違う。これだけを特に委員長にも申し上げておきます。  次に、小嶋先生にお伺いいたしますが、残念ながら先ほどの御答弁を聞いておりまして、私どうも先生の御意見に賛成できない。  そこで、まず基本的な問題として憲法八十三条、すなわち財政法定主義と言われ、あるいは財政国会主義といいますか、この点をどのように解釈しておられますか、お伺いします。
  244. 小嶋和司

    ○小嶋参考人 憲法八十三条でございますね。これは財政法定主義じゃございませんで、読みますと……(田中(武)委員財政国会主義」と呼ぶ)そうですね。(田中(武)委員「俗に法定主義と言うんです」と呼ぶ)「國の財政を處理する権限は、國會の議決に基いて、これを行使しなければならない。」ということでございますが、ここで言う「財政」というのは、たとえば支出とかあるいは徴税とか債務の負担だけではなくて、もっと広く、たとえば債権の管理とかあるいは国有財産の売買とかあるいは不用物の廃棄等に至るまで含む広い概念だろうと私は思うのです。国会の議決に基づいてこれをやらなければいかぬというのは、たとえば、不用物の廃棄というようなものを一体どういうふうにして行うのかということも、これは本来は国会の議決に基づいてということに当然になるのです。そういう場合に、国会の議決のあり方というのはいろいろなグレードがあると思う。国会は一般的に法律をつくりまして、その法律のとおりやっていればそれでいいというやり方もあります。それからさらに、どういうやり方をしたのか。国有財産のように現在高を示せというやり方、報告をしろというやり方もあると思うのです。あるいは事後承認で足りるというやり方もあると思うのです。あるいは事前決定をするというやり方もあると思うのです。ですから八十三条の国会議決主義ということを申されますと、本件の暫定予算の場合に、そこは先生は非常に強いお考えをお持ちでございますが、そこには国会の議決の仕方というのはいろいろなグレードがありますから、それだけで強い効果というものを読み取ることはできないだろうというふうに私は考えております。
  245. 田中武夫

    田中(武)委員 国会の議決にはいろいろの方法がある、それはそのとおりであります。だがしかし、まず憲法で、財政の章の冒頭に国会議決主義ということを設けたということは、先ほども正木先生がおっしゃったように、むしろ旧憲法と会計法、新しい憲法と財政法との間において、より一層国会の占める権限というか範囲を強くした、このように考えており、日本国憲法を通したところの精神からいって、その方がよりシャープな解釈ではなかろうかと私は思いますが、いかがでしょうか。
  246. 小嶋和司

    ○小嶋参考人 一般論としては確かにそうなんです。憲法の規定自身でも、たとえば旧憲法時代は予算修正権には制限がございましたですし、それから、たとえば手数料などは法律によらなくてもいいということでございましたから、一般論としては私はそうだと思います。ただ具体的に、この問題について国会議決主義だから、もうすべて事前に細目の決定をしなければいけないというほどの要求をするものじゃなくて、それはそれぞれの事態に応じた適切な、何といいますか、制度を国会御自身がおつくりになる、そういう可能性を宣言したのがこれだろうと私は思うのです。
  247. 田中武夫

    田中(武)委員 方法は国会でいろいろ考える、これは私にもわかります。しかし、少なくとも、旧憲法、会計法と、現在の憲法とそのもとにできた財政法との間においては、国会の持つ権限が強化というか、幅を広げたということについてはいかがでしょうか。
  248. 小嶋和司

    ○小嶋参考人 それはもう当然のことでございます。
  249. 田中武夫

    田中(武)委員 小嶋先生もこの点については私の意見に賛成しておられる。よう覚えておいてくださいよ。  そこで次にお伺いしたいのは、これは両参考人にお伺いいたしますが、私はこの予備費というのは、これも一般会計ではあるが、いわゆる他の款項目がちゃんと決まっておるのに比べて例外的な規定である。たとえば憲法八十七条もそうだし、財政法二十四条は他の条文に比べて例外規定である、例外的なものである。したがって、例外規定は私は厳格に解するというのが法の精神である、法解釈の精神である、ところが、どうもこれが拡張解釈せられたのではないか、このような解釈をとっているわけなんです。しかも、その予備費には二つの点で要件が決められておると思うのです。その一つは、予見しがたいということが一点です。もう一つは、真にやむを得ない経費といいますか、予見しがたい緊急的なもの、こういう意味だと思うのです。この二点がその予備費を認める要件である。したがって、私は、一般の款項目をちゃんと決めた予算に対しては例外的なものである、したがって厳格に解すのが当然ではなかろうか、このように考えておりますが、いかがでしょうか。両参考人、まず正木先生から。
  250. 正木千冬

    正木参考人 私も先ほど申しましたように、予備費というものは、ただ単に予見しがたいものであれば何でもいいかということではない、やはり厳しく考えるべきだと考えております。それで、そういう点から、この公共事業費というものの不足ということは——いまの予算の概念での公共事業費の決め方というものは、恐らくはその基本には経済情勢の状況を十分検討した上でこれに対処して、どれだけの公共事業を施行すべきか、どういう性質のものをすべきかとか、どこでやるべきかとか、そういうことをあらかじめ考えた上で政策決定するわけですから、その後において予見しがたい云々ということは、論理的にはあり得ないというふうに私は考えるわけでございます。
  251. 小嶋和司

    ○小嶋参考人 予備費の問題、田中先生、二つの要件がある、予見しがたいというのと緊急性というふうにおっしゃいましたですが、緊急性というのはどこに出てくるのだろうというふうに私は実は若干……(田中(武)委員「いや、緊急性というか、真にやむを得ないという……」と呼ぶ)やむを得ないということでございますか、これもどこに出てくるのだろうと私はちょっと思うのでございます。その辺はもう少しフレクシブルにお考えになる方が——国会議決主義ということを先生は非常に強調なさいますものですから、予備費の使い方もそういうふうにそちらの方から、何といいますか、憲法の八十七条の規定はいわば日陰者みたいな、八十三条の方はこれは晴れの舞台にある、八十七条の方はむしろ陰の方に引っ込んでおれというふうな、そういうお考えだろうと私は思うのでございますが、私はそういうふうには思わない。かといって、余り八十七条というのをむちゃくちゃに、これは何でもやれるんだというふうになりますと、これは国会——しようがない、自分が自分で機能を放棄したようなことになってしまいますから、これはやはり困ると思うのですが、必要やむを得ないというふうに限るのは、政治論としては私は大いに傾聴に値すると思うのでございます。しかし、法律論としては、私は、どういうことで出るのでございましょうか、政治論としては私は非常に傾聴に値すると思っております。
  252. 田中武夫

    田中(武)委員 私は、同じ憲法の条項です、したがって、陰とかひなたとか考えておりませんが、八十三条は原則を決めたものである、八十七条はそれに対する例外規定である、このように私は解釈しておるわけなんです。これは違いますか。
  253. 小嶋和司

    ○小嶋参考人 私は、八十三条というのが原則であることは承認いたします。これに対して、後の方が例外、だということですが、例外ということは、たとえばこれは制限的に解釈あるいは運営しなければいけないという意味では、私は例外的だろうと思うのです。しかし、あれもやはり「國會の議決に基いて豫備費を設け」でございましょう。で、事前に議決が、これは白紙ではございますが、あります。今回の場合はしかも白紙じゃないのですけれども、これはいまの御質問じゃありません。それから、その後にしかも国会の事後承諾というのがあるんだということですから、国会の議決を行使するやり方としては例外的なコースかもしれないというふうに私は考えます。——それで御不満でございましょうか。
  254. 田中武夫

    田中(武)委員 私は何も専門の学者を相手にとは思っておりませんが、八十三条は財政の原則を決めたものである、八十七条は「豫見し難い豫算の不足」云々という前提を設けて次にこたえておる。だから両方とも「國會の議決」ということはそのままです。しかしながら、一方は原則的に、すべて財政には国会の議決を必要とする、こうなっておる。八十七条の方は、いわゆる予見しがたいとかなんとかいったような、経費の不足で予見しがたい、こういういわゆる制限を頭に置いてつくっておるところからいって、私は、八十七条は八十三条の例外をなすものである、これは間違っておるでしょうか。
  255. 小嶋和司

    ○小嶋参考人 その点では確かにそうでございます。実際、予見しがたいことについて議決なんかできるはずは、本当はないんですね。
  256. 田中武夫

    田中(武)委員 大臣、よく闘いとけよ。例外であるということについては、小嶋先生も全く、まあ同感——同感というか、認められたわけなんですね。いいですね。委員長、どうですか。  そこで次へ参りますが、この一千五百億円の予備費、これを一体どのようにしてやるのかということを先日大蔵大臣に聞くと、財政法三十五条と同じ、いわゆる一般のというか、いままでの、本来の予備費の管理使用と同じ方法だ、こう言うのです。ならば、なぜ二本立てにする必要があるのか、こういう疑問が出るわけです。特に公共事業等に使うのだというならば、それを所管するたとえば建設省とか国土庁とか、そこの大臣の管理運営に任すというならまた考え方もあると思うのです、それがいいか悪いかは別として。だが、同じように三十五条によって管理運営は大蔵大臣が握るというなら、分ける理由がどこにあったのでしょう。これは先生方に聞いても、御本人に聞かなければいかぬと思うのですが、どうですか。大蔵大臣、分けた理由をもう一度明確に言ってください。
  257. 大平正芳

    ○大平国務大臣 四千五百億の予備費にするか、三千億にするか、三千億と千五百億に分解してまいりますか、いろいろわれわれも考えてみたわけでございますけれども、今日の流動的な経済の状況に顧みまして、公共事業等に千五百億だけ使途を特定した予備費を設けるということが適切である、単純にそう考えたわけでございます。
  258. 田中武夫

    田中(武)委員 説得性がないですよ、あなた。いまの説明で、国民がなるほどそうかというような説明があなたはできたと思いますか。説得性がないですよ。なぜ分けたのか、分ける積極的な理由をひとつもう一遍はっきりと言ってください。
  259. 大平正芳

    ○大平国務大臣 政府に与えられた権限の中でそういうことは可能である、そういうことが適切であると政府が判断したからでございます。
  260. 田中武夫

    田中(武)委員 その政府に与えられた権限の根拠は何ですか。憲法及び財政法で答えてください。
  261. 大平正芳

    ○大平国務大臣 予備費の管理は、政府が国会から与えられておる権限であると承知しております。
  262. 田中武夫

    田中(武)委員 それは予算が通って、予備費これこれといったときに、初めて三十五条によって大蔵大臣の管理使用になるわけです。前から二つに分ける、三つに分けるというようなことが三十五条によって与えられておりますか。解釈してください。
  263. 大平正芳

    ○大平国務大臣 いま国会の承認を求めておるわけでございますから、国会がこの予算を御承認いただきますならば、私が申し上げることは可能であると思います。
  264. 田中武夫

    田中(武)委員 あなた、予算が成立をした後にはそれはそうですよ。最初から分けねばならぬという積極的な理由はないじゃないですか。さらにもう一つは、それが三十五条によって与えられた政府の権限だというようなことは出ませんよ。小嶋先生、いかがでしょうか、財政法の上から言って。
  265. 小嶋和司

    ○小嶋参考人 実は、どういうふうにお答えしていいのかぼくはわからないのですが、確かに田中先生おっしゃいますように、予算が成立した後に政府にそういう権限が出てくるということでございますが、ただ、そのことが、何といいますか、予算のああいう組み方というものが違法であるという決め手には私はならぬだろうと思うのです。これは田中先生と——非常に恐縮でございますが、私は教師なものですから勝手なことを申させていただきますと、田中先生と大蔵大臣のお答え、どうも少しちぐはぐしておりまして、どうしてそんなことになっちゃったんだろう、私は正直なところ、そういうふうに考えております。というのは、その議論は三十五条の議論で、どうしてあれが組み方が違法になるんだろうというふうに——私はならないということでございますよ。三十五条というものは、そういう組み方についての制約じゃないんじゃないかと思います。
  266. 田中武夫

    田中(武)委員 でしょう。だから、三十五条によって政府に与えられた権限だというのは間違いだと思うのですよ。そうじゃないですか。予算が成立した後、予備費の管理使用は大蔵大臣。ところが三十五条によって、予備費を二つ、三つに分けるということについて与えられておる権限だということはどうですか。出ないでしょう。その点だけをお答え願います。
  267. 小嶋和司

    ○小嶋参考人 三十五条というのは、結局予備費制度をどう運用するかによって、三十五条の成果というのも変わってくるんだと思うんです。私が先ほど申しましたように、二十四条というのは公共事業等予備費というような——これは先生の先ほどの御議論は国会議決主義だったのですけれども、むしろ国会議決主義に沿っておるわけでございましょう。あの千五百億分につきましては、使途が指定されておるわけでございますから。そういう制約された形で大蔵大臣が管理するということで、それから使途を制約されない形で成立しておる予備費と、三千億分でございますか、これがあるのでというふうに私は思うのですが……。
  268. 田中武夫

    田中(武)委員 それはもちろん議決に出ておるのですから、だから国会議決主義から外れたとは言っておりません。しかし管理使用その他からいって、本来の予備費と区別するところが一つもないんですよ。だからなぜ分けたのか、積極的な理由は何か。もう一つは、政府に与えられた権限だとこう言っておる、二つに分けようが三つに分けようが。じゃ、その根拠は何かというと、三十五条と言われたから、三十五条からそんな権限が出ますか、こう申し上げておるんですよ。したがって、その点をお答え願いたいのです。三十五条から、政府にそういう権限が与えられておるかどうか。
  269. 小嶋和司

    ○小嶋参考人 私は、三十五条から出てないと思います。ただし、憲法八十六条の予算作成権というのが内閣にございますから、そっちじゃないんでしょうか。
  270. 田中武夫

    田中(武)委員 内閣が予算提出権を持っておる、すなわち編成権を持っておることは、これは憲法も認めておる。しかしながら、それは憲法の第七章「財政」の条項、それと財政法から出てくると思うのです。したがって、国会議決を求めておるのだから八十三条には外れていないという、これはわかるのです。しかし、三十五条からいって本来の予備費と区別する必要がどこにあるのか、じゃ一本にしたらいいじゃないかというのが私の主張なんですよ。いいですか。それを三十五条に与えられておると言うから、おかしいと言っておるのですよ。大蔵大臣、三十五条にはそんな権限は与えられておりませんよ。それは八十六条で政府予算編成権を持っています。提出権を持っています。だからといって自由に編成はできない、それは制約は憲法及び財政法にある、こういうふうに申し上げておるのですが、その点小嶋先生どうですか。私の言っておること、間違いですか。
  271. 小嶋和司

    ○小嶋参考人 その限りにおいては、非常に正当でございます。
  272. 田中武夫

    田中(武)委員 大蔵大臣、どうですか。
  273. 大平正芳

    ○大平国務大臣 私も間違ったことを言っておる覚えはないのです。三十五条で、予備費は大蔵大臣が管理するということになっておりますので、その大蔵大臣の管理の権限の中で、予備費が特定の用途に、政府みずからがこの予備費は公共事業等の予備費だというようにみずからに制約を加えても、それは違法ではないと私は考えておる。
  274. 田中武夫

    田中(武)委員 みずから制約を加えておるといって、加えたことになるんですか。もちろん本来の予備費なら、それを三千億と千五百億、四千五百億にしても、それは公共事業に出そうと何に出そうと、それはいわゆる決められた範囲において支出できると思うんですよ。あなたは、そういうことじゃなくて、上に公共事業と頭をかぶっておるからむしろ制約しておるのだ、こういうように言われておるけれども、どうもそこが納得いかないのですよ。あなたの説明では私はどうでも納得できないわけなんです。きょうは参考人の先生方を呼んでおる場所ですから、ふろしきに包んで予算を持って帰ってやり直せとは言いません。が、私の気持ちはここではまだ変わっておりません。  そこで、これは正木先生にお伺いしますが、地方自治体予算等々については後で安井委員が行うことになっておりますが、先日安井委員がこの問題を質問したときに、福田自治大臣は、地方自治体にはこういったような予備費は認めない、それじゃこれによって出されたときに、地方自治体が自然に支出するような必要があるじゃないか、支出した場合は、それは予算を補正しなさい、こういうように答えておるわけなんです。この点から言って、中央ではこうやっておって、地方には認められない、使うならば補正をやればいい、これは筋だと思うのですよ。その点鎌倉の市長もしておられる立場で、いかがでしょうか。
  275. 正木千冬

    正木参考人 御承知のように地方財政法のたてまえから言いますと、今度政府でやりましたようなほとんど何でも使えるような、そういった費目を予備費の中では計上できません。厳重に制約されております。そして中央の方でそういったむしろ財政を機動的に運用する、こういうやり方は従来もやられてきておりますが、われわれ地方自治体の方から見ますと、それがある意味で大変迷惑するわけであります。むしろ地方自治体の方としては、年間ほぼ決まった財政需要というものがあり、それをなるべく早く中央からそれに沿った計画、したがって補助金なりそれに対する裏づけの起債なりというものを現実に年度内に、たとえば年内の十二月とかくらいまでにはせめて欲しい。ところがだんだんとおくれまして、現実にそういったものが地方自治体の方に回ってきますのは二月だったり三月だったり、そういうような形でわれわれの方は非常に苦しんでおる。そこへ中央がいまのような弾力的運営といってさらにいろいろな仕事をおっつけてきますが、そのときにはすでに地方自治体の方ではそういった財源的な準備ができておりませんので、それを流してしまうとか、あるいは流したために特に一、二の自治体の方にこれをやってくれぬかと中央の方から頼まれるような事例もしばしばあるわけなんです。
  276. 田中武夫

    田中(武)委員 それは、国と地方自治体との適用法規も通いますが、自分の方ではこういうような予算の立て方をして、地方自治体にはそんなことを認めぬ、金が必要ならば補正したらいいじゃないか、補正予算を出したらいい、こう言っておる。先ほど正示委員は総合予算主義ということを言われました。これは私は否定しませんし、ですが、これは政府の御都合じゃないのですか。政策というか政府の考え方でしょう。総合予算主義だ、だから補正はなるべくやらないのだ——これは政策ですよ、あるいは政府の方針なんですよ。だからといって憲法なり財政法を離脱することは許されないと思うのですが、いかがでしょう。
  277. 小嶋和司

    ○小嶋参考人 私は、そこで先生が憲法なり財政法を離脱することは許されないということはお言葉のとおりだと思うのでございます。ただ、総合予算主義という言葉は、何か拝聴しておりますと、要するに予算というのは一年の……(「あたりまえのことだ」と呼ぶ者あり)あたりまえのことで、一年を見越してつくるものだ。これは御承知のように、いまの憲法になりまして毎年補正がなかった年はないのでございますけれども、しかし、かといって補正があることを前提として内閣が予算を出すというのは、これまた憲法からいっておかしいものじゃないか、私はそう思うのでございますが、その辺はどうでございましょうか。
  278. 田中武夫

    田中(武)委員 それはそうだと思うのです。したがって、一千五百億円というものを本来の予備費に入れるとか、あるいは大体わかっておるなら必要な本来の公共事業費の款項目に従って入れていくとかすればいいじゃないですか。それを私言っているのですよ。必要に応じて景気の状況等々によって出す必要があるから云々というのなら、じゃその場合何をやってもいいじゃないか、補正したっていいじゃないか、こう申し上げておるわけです。したがって、総合予算主義というのは政府の方針である。先生のおっしゃる初めからわかっているものはというわけで千五百億円設けておるのならば、それは本来の予備費に入れるかあるいはまた本来の公共事業費に分けて入れるかにしたらどうかと言うのですが、これはおかしいでしょうか。いかがでしょうか、小嶋先生。
  279. 小嶋和司

    ○小嶋参考人 私は、その観点からじゃなくて、これはやはり予算の弾力性という問題だろうと思うのです。予算の弾力性ということですと、やはり公共事業費というふうな形でしぼったところに弾力性を設けるのが、これが現在の財政が果たすべき機能、これは景気調整その他の機能でございますね、公共事業のところがやっぱり一番直接的でございますから、そういう意味で予算の弾力性という形でああいう制度が出てくることは、これは一番素直な制度といいますか、自然な制度なんじゃないかと思います。特に使い切りになるような費目のところで弾力性があって余分に使えるなんというのはおかしい話で、やはり後に残っていくようなところが大切だ。のみならず、これは予備費でございますから、財源一般財源でございますね。一般財源の中には、これは御承知のように、ことしが毎年の例にはなりませんけれども、赤字国債ということもありますし、国債ということもある年も、当然今後はあるだろうと思うのでございます。そうしますと、弾力性なんというのはやはり余り変なところで弾力性は認められない、そういうふうに考えておりまして、公共事業というふうなしぼり方というのは、経済原則からいいましても私はわりに素直な制度なんじゃないかというふうに評価いたしました。
  280. 田中武夫

    田中(武)委員 小嶋先生、予算の弾力性という問題は一応私どもある程度認めます。だがしかし、それならば本来の予備費に入れておったって使えるのです。あるいは本来の公共事業のどこかへ入れておっても、たしか項目の中では融通し合うこともできるわけですね。しかも、弾力条項というのがいつも予算総則に出ておって、私その点から言ったら別に分ける理由はないじゃないか、こういうように思うのですが、いかがでしょうか。
  281. 小嶋和司

    ○小嶋参考人 形式論理としては全くそうだというふうに私は思うのでございます。ただ、実質的にはやはりそこに制約のある方が国会議決主義の趣旨に沿うのだろうと私は思うのでございます。恐らくそういうあれをおつけになったのは、国会議決主義を、先生がおっしゃいます一〇〇%じゃありませんけれども、そういう弾力性をつけるときには、先生がおっしゃいますとおりですと、全然そこのところが色づきでなくなってしまいますね。やはりそういう色をつけてというところが、ぼくはそれは努力は評価したいというふうに考えております。
  282. 田中武夫

    田中(武)委員 形式的には私の言うとおりだ、こういうことです。私は先ほど来言っているように、本来の予備費に入れておっても、あるいは本来の公共事業費のどこかに大体入れておいても、弾力性は持たすことができるわけですね。だがしかし、公共事業等ということを頭にかぶせておるからむしろ政府としてはしぼったんだと言う、これがわからぬのですよ。二本立てというのがわからないのです。なら一本にしたらいいじゃないか、こういう意見なんですが、それは間違っているでしょうか、憲法、財政法から。間違っておるんなら、どこが間違っておると言ってください。
  283. 小嶋和司

    ○小嶋参考人 実は二本立て、まさにそうなんだろうと私は思います。二本立ての中の一つが白で、一つが色がついているというだけのことだと私は思います。
  284. 田中武夫

    田中(武)委員 大蔵大臣、どうなんでしょう。二つに分ける積極的な理由が私はわからぬのですよ。いまの先生のおっしゃったのも、私は、形式的というか理論的には私の方が正しいようにお述べになったと思うのです。違いますか。違うのだったら、私の言っていることはこういう点が憲法から言って、あるいは憲法の精神、財政法の精神から言って間違っておるというなら、積極的に指摘していただきたいのです。私は積極的に大蔵大臣に、あなたの考えは間違いであるということを申し上げておるのですよ。だから私の考えが間違っておったら、積極的に言ってください。
  285. 大平正芳

    ○大平国務大臣 私は、田中さんの考えが間違いであるとは言った覚えがないのです。あなたの考えも正しい、私が言っていることも正しい、それだけのことを言っているにすぎないのです。
  286. 田中武夫

    田中(武)委員 私は、私の言うことは正しい、あなたの言うことはおかしいと言っておるのです。(「それはおかしい」と呼ぶ者あり)それがおかしい。そのおかしい理由を言ってくれというのです。あなたは、そういうことは政府に任された、行政府に任されたところの権限だと言う。その権限がどこにあるのか。あなたは三十五条だと言うが、それはだめなんだ。むしろ小嶋先生は憲法八十六条の内閣の予算編成権、提出権に求められた。あなたはどうなんです。三十五条からは出てきませんよ。
  287. 大平正芳

    ○大平国務大臣 憲法八十七条「國會の議決に基いて豫備費を設け、内閣の責任でこれを支出することができる。」、これで予備費を設けることと、内閣の責任で管理することが許されておると思うのであります。そして、財政法の三十五条はこれを受けて「大蔵大臣が、これを管理する。」こうなっておるわけでございます。  で、私ども、この予備費の場合に、予備費でいくか、あなたの言うように補正でいくか、あるいは公共事業費であれば公共事業各費目の中にあらかじめ組み入れておくか、これはいろいろあるだろうと思うのであります。またそういう方法をとっても間違いではない。しかし、私どもが予備費の一部を公共事業費として特定しておくことも間違いではないと政府は確信しておるわけでございまして、もしそれが違法であるということを説得力を持って私どもを御説得いただけまするならばシャッポを脱ぎます。あなたのお考えどおり、政府がやっておることが間違いでございますならば、私は田中さんのおっしゃることに聴従することにやぶさかではございませんけれども政府がやっておることが間違いでなければ、これは田中さんといえども尊重していただかなければならぬと思うのです。
  288. 田中武夫

    田中(武)委員 まず、いまのお答えから反駁しますが、憲法八十七条の「豫見し難い」というのをどう解釈しておられますか、それが一点。  それからもう一つは、あなたの方のが間違いだと私が言っておる根拠は、いわゆる憲法八十七条は八十三条の原則からいって例外である、例外については厳格に解する、拡張解釈を許さないというのが法解釈の基本である、財政法二十四条またしかり、こういう根拠なんです。あなたの方が拡張解釈をやっておると言う。したがって「豫見し難い」という八十七条、これをどのように解釈しておるのか。  と同時に、原則に対する予備費は例外である、その点についてどう考えておるのか。私は、その辺を根拠に間違いだ、拡張解釈は許さないと言う。あなたの方のは、大蔵省は拡張解釈の上に立っておる、したがって間違いであると言うておるのですよ。積極的な根拠を示して言っておるわけなんですよ。どうなんです。私が間違いであったら理論的に論破してくださいとこの間から言っているわけです。
  289. 大平正芳

    ○大平国務大臣 「豫見し難い」というのは、予算編成の時点におきましてそのことが予見しがたいということにすぎないと思っております。  それから、例外は厳しくやらなければならぬということは、仰せのとおりだと思うのです。これが例外に当たるか当たらないかの法理論は私よくわかりませんけれども、しかし、私どものこの公共事業等予備費を設けた思想は、先ほど小嶋さんもおっしゃったとおり、むしろ政府の授権された権限をみずからしぼって制約しておるという趣旨におとりをいただきたいと思うのでございまして、私どもこれを拡張しておるなんということは全然政府の意図していないところであることは御理解を賜らなければならぬと思います。
  290. 田中武夫

    田中(武)委員 この「豫見し難い」というのは、本当にわからない。ところが公共事業等ということだけはわかっておるのですか。それが「豫見し難い」の中に入るのか入らないのか。  それから本来の予備費、それに一つの枠をはめておる、だから国会の議決に対し、言いかえるなら政府の権限を抑えておるのだ、そういう考え方については——基本的に私が言っているのは、いわゆる例外規定である、したがって拡張解釈は許さないのだ、なぜ公共事業なんというのが「豫見し難い」の中に入るのか。
  291. 大平正芳

    ○大平国務大臣 経済の情勢の今後の推移に照らしましてこれを必要とするかどうかということが予算編成の時点において予見しがたいということでございます。
  292. 田中武夫

    田中(武)委員 これはいつまでやってもらちが明かぬと思うのですよ。予算編成のときに予見しがたいといっても、公共事業費というものには限定をしておるのでしょう。それなら「豫見し難い」じゃないじゃないですか。私はそういう解釈です。  先ほど来、両先生方ともいろいろ質疑応答をしてまいりました。私の解釈をもう一遍おさらいをしてみます。  いわゆる旧憲法、明治憲法と会計法、新憲法、日本国憲法と財政法、この間には国会の持つ権限が大きく幅を広げたというか、財政は国会の承認、いわゆる国会議決主義、俗に法定主義と言うておるが、これは法律でなくちゃならぬというわけじゃないから憲法の見出しのとおり議決主義と言いましょう、それが大原則である。したがって予備費というのは例外である。例外は厳格に解するのであるというのが私の一貫した主張なんですよね。したがってそこから出てくるのは、総合予算主義というのは政府の、悪いとは言わぬが、方針であり政策である。政府の考え方である。それを避けるためにこういうことを言うことは通らない。これが一点。  そこで、先ほど私の結論は正示君も言ってくれておりますから、あなたはぼくの結論をさっき聞いたからね、けれどももう一度申し上げます。私のは、三つの結論のどれかにしろ、こういうことなんです。それは、先ほど正示君も言いましたが、一つは、一千五百億円はこれを削って本来の予備費と一緒にしろ。それは、先ほど来言っているように、財政法三十五条からいってその管理なり使用の仕方に何らかの違いがあるならば分ける理由があるけれども、同じではないか。ならば、分けてあるが一緒にしろ、これが一点。  もう一つは、この一千五百億円の予備費を削って、そして景気の情勢により公共事業費等に現実に出すならば、その時点において予算の補正をしろ。  もう一点は、大体公共事業に出すということがあらかじめわかるなら、あるいはそれに決めておるのならば、本来の公共事業の各項目に配分したらいいじゃないか。しかも、それなら硬直だと言うが、そうじゃなしに、先ほど来言っているように、同じ款の中においては項目の重要なあれもいただいておる、弾力性もあるじゃないか。この三つのどれかを選びなさいと言っておるんだ。そこで議論になりまして、私はそういう三つの一つを選んで出直せと。そこで、実は先生方を、きょうはひとつ鑑定人というようなことも含めてどっちの主張が正しいのか、ひとつその御意見を聞きたいということで提案をして先生方においで願った。もう一人実は東大の武田先生をお願いしておったのですが、これは入学試験の関係等々でどうにもならぬということで、三名の先生方をお願いしたところが二人になったわけです。どうでしょうか、私の言っておることにどこか、おまえの言っておることのここが間違いだということがあったらひとつ御指摘を願いたいと思うのですが、どうでしょうか。
  293. 正木千冬

    正木参考人 いろいろと御議論を伺っておりまして、私の結論といたしますると、千五百億円というものは違法ではありませんけれども適切ではないと考えますので、これは削るべきだと考えます。もし、そういう理由としまして三千億といたしましても、最近の予備費の使用状況を見ますると、大体千四、五百億で済んでいるわけでございまして、いま三千億が不足だということにつきましては、本来の予備費的な使用を考えました場合にはちょっとつじつまが合わない、そう思いますので、私は、端的に言えば千五百億円は削るべきである、どうしても削れないとおっしゃるならば、これは公共事業費の各主要な部面に配当しておかなければ、これはこういった議論をたびたび繰り返すことは余りおもしろくないと思います。
  294. 小嶋和司

    ○小嶋参考人 私の意見はもう何度か申し上げてしまいましたようですけれども、現在のやり方が違法だとは私は思っておりません。結局それが適当かどうかという政策的な判断なんだろうと思うのですが、財政制度のあり方としては、私は今後弾力性をそういう形で設定されていく方がいいのじゃないかというふうに、それはフランスにも例はありますし、私はそう考えております。
  295. 田中武夫

    田中(武)委員 小嶋先生がフランスの例を挙げられていることは先ほどから承知しています。ならば、私はそれに向くように財政法なり変えたらどうか、改正するべきじゃないか、こう思うのですが、その点はどうですか。
  296. 小嶋和司

    ○小嶋参考人 私は、理想としては財政法なんて、何といいますか、二十何年間ほとんど動いておりませんね。外国で、十年間動いてない財政法というのは実はないのです。日本ですと、財政法というのは憲法付属法規だからというので金科玉条視しまして、動かさない。これはおかしいんで、もっと自由に、制度というものはどうせ国政の内容がよくなるように組み立てかえるのが本当なんで、そういうふうにする方がいいと思うのですけれども、じゃ、現行のものでできないかというと、私はできるというふうに考えておるということなんでございます。
  297. 田中武夫

    田中(武)委員 その辺が先生とは違うわけなんです。  そこで、これは少し私の解釈が概念法学的にというか、概念法学にとらわれているのじゃないかというふうに言われるかもわからぬが、私は、あくまでも予備費というのは、八十七条にしろ二十四条にしろ、憲法、財政法、それぞれの例外規定である、したがってこれは厳格に解するべきである、拡張解釈は許さない、この上に立って、しかも先ほど正示君も言いましたが、そこまではいかぬと思うのですが、こういうことが認められるならば何々等予備費、何々等予備費とずっと並べておいて、これで予算は終わりですということも可能になってくるんじゃないか、そういうことも将来考えて、ここではっきりとしたけじめをつけておかなければならない、こういう気持ちが一つなんです。  もう一つは、これは先生方には聞き流してもらっていいと思うのですが、仄聞するところによると、田中総理の時代に、総理が自由に使えるような予算を置けないかということを言ったそうですよ。そのときは大蔵省は抵抗した。ところが、今度それかどうか知りませんが、出てきたのがこれじゃないかと見ておるわけなんです。しかも、御承知のように国会の開会中は予備費の使用は原則的に認められない。これは閣議決定もやっておる。ならば、ことし単年度をとった場合、じゃ自由に使えるのはいつかというと、国会解散から特別国会召集日までですよ。まさに選挙費用じゃないか、こう申し上げたい。したがって、さっき言いましたように、その三つの方法のどれかをもって出直せ、こういうことなんです、私の主張は。  そこで、このことをここでけじめをはっきりとしておかないと、これはやはり憲法の精神、財政民主主義というか、これを破るものである、同時に行政府の解釈を拡張せしめて、言いかえるならば国会の権限を侵すものである、そういうように私は解釈しているわけなんです。その点について、これは先生とは大分意見が違うようだが、ひとつ私の考えが、おまえここが間違うておる、こういう積極的なものがあるなら教えていただきたい。いかがでしょうか、両参考人の先生方……。正木先生からどうぞ。
  298. 正木千冬

    正木参考人 私は、先ほどからいろいろと申し上げておりますが、大体田中先生の御趣旨のように制限的に解釈すべきだと思いまするし、これは国会で議決をしてその責任支出の範囲を決めるわけでございますから、それが少なくなければいけないし、公共事業のように広範なものですと、その千五百億が十分なのか過大なのか、そういうことも限定できない。国会が決められないような形で、包括委任のような形を要求してくるのはけしからぬじゃないか、こういう考えでございます。
  299. 小嶋和司

    ○小嶋参考人 いま、何かそういう公共事業等予備費がどういう政治機能を持って使用されるかということを先生からお話伺ったのですが、実は私書斎の者でございまして、そういうことは考えておりません。これは国民の一人としては、そんなことがあるのかなという、何というか、余りいい気持ちでは私はおりませんですけれども、そのほかの点につきましては、そうでございますね、結局従来繰り返しましたことと同じことになりますものですから、このくらいで勘弁してくださいませ。
  300. 田中武夫

    田中(武)委員 小嶋先生とはそれはもう初めから意見がすれ違いになるだろうということを考えておりました。なぜならば自民党の推薦なんですからね。自民党が恐らく私の言ったようなことを肯定する先生方を推薦せぬと思います。だがしかし、私の言っていることに対して、私は先生から積極的な反発なり説得を受けたとは思っておりません。したがって、もうそろそろ時間ですから終わりますが、これでこの問題はけじめがついたわけではございません。いいですか、大平さん。あくまでも予算書はふろしきに包んで一遍持って帰りなさいとまた言いますからね。——何か言うことがあったら言ってください。
  301. 大平正芳

    ○大平国務大臣 田中君の非常に真摯な、しかもより精緻な法律論には敬意を表しますが、あなたの言われることは間違いではございません。しかし、政府が提案していることにも間違いがないと私は思っておりますので、その点については御理解を賜りたいと思います。
  302. 田中武夫

    田中(武)委員 これは何ぼやっても同じことを繰り返すんですね。そこでひとつ先生方に来てもろうて、鑑定人のような気持ちでひとつお答え願いたいと思ったのですが、これもすれ違いに終わりました。(発言する者あり)それは裁判官の言をまつまでもない。何だったら、またあなたと討論してもいい。それはそれとして、裁判官といえども負けません、やります。いつでもやりますよ。刑訴でも民訴でも何でもいらっしゃい。  まあそれは冗談といたしまして、結局はすれ違いに終わった。正木先生の方は、これは大体私と同じ意見であった。こういうことで結論になるが、私は、小嶋先生からも積極的に、おまえ、このここが間違うておるぞ、こういうような御意見を承ったとも思いません。ただ、おっしゃるフランスの例等を持ってこられて、弾力的な運営云々については、それはまた違った観点から見ますが、私は、あくまでこの問題についてはここではっきりしておかない限り、いわゆる憲法の精神あるいはそれを受けた財政法の運営精神が曲げられる、このようにあくまでも考えておることを重ねて強調いたしまして、私の質疑を終わります。
  303. 正示啓次郎

    ○正示委員長代理 次に、安井吉典君。
  304. 安井吉典

    ○安井委員 私は、きょう二人の参考人が大変お忙しいときにおいでをいただいて、おつき合いをいただいていることが、本当に心苦しいような気がするわけです。といいますのは、こんな形でことしの予算が組まれたという経過は、昨年の予算編成のときに、与党自民党の方は公共事業費を大きくふやせと言う。大蔵省は出せないと言う。じゃ、これだけのところで手を打とうと言ったが、それで足りないので、じゃ大蔵大臣、予備費に置こうと言う。しかし予備費の中に置いたんでは何に使われるかわからないから、それじゃ公共事業等予備費というような形でこの予算が誕生した。その問題を私どもこんなに必死になって議論しているような気がするわけであります。そんな経過じゃないというふうに言われるかもしれませんけれども、私はそういうところに、いまの行政府の方に、小嶋教授が言われるように、みんなげたを預ければうまくやってくれるだろう、そういう予見性の上に立っての御発言かもしれませんけれども、信頼できないという、そういう基本的な考え方が私たちにあるということだけ先に申し上げておきたいと思います。  そこで、自治大臣にきょう特においでいただいたのは、この間の議論の中で私は地方予算編成の立場から問題を提起したものですから、その議論の続きというふうなことでおいでをいただいております。ですからもう別に新しい問題提起ではありませんが、自治体が公共事業等予備費というふうな形で、予備費にひもをつけたような形での提案のしかたというものは、いまの地方自治法、それに基づく施行令、施行規則の中で許されていないということ、それをもし自治体がやればそれは違法になるのだということ、この点だけまず先に確認しておきたいと思います。
  305. 福田一

    福田(一)国務大臣 先般も申し上げたところでありますが、予備費に関しては規則ができておりまして、それに基づいて計上いたしておるというわけでございまして、今度の公共事業に関係のある分について、これを……(安井委員「いや、制度論として言っているのです。」と呼ぶ)制度論として言えば、規則がございますから、その規則に基づいてわれわれはいまやっておる、こう申し上げたいと思います。
  306. 安井吉典

    ○安井委員 もう一度確認しますけれども、鎌倉の市長もおられるが、どこかの市町村長が款、項、目、予備費、予備費、予備費と書いて、節まで自治省は規則の中できちっと決めておるわけですよ。そういう中で、何々費等予備費というふうな形での提案に対しては、自治省はだめだ、こうおっしゃるわけでしょう。
  307. 福田一

    福田(一)国務大臣 そういうような規則がちゃんとできておりますのと、必要がある場合には、もう御案内のように県会は年に四回も開いておりますし、それから臨時県会も開くことができますし、それから専決処分といって、やって後で承認を求めるということもできますし、従って私たちはその必要はないと考えておるわけであります。
  308. 安井吉典

    ○安井委員 つまり、補正予算も組めるし、議会を開いてやるのがたてまえだという、そういう論拠に立っての地方自治法の仕組みができている、こう思います。——自治大臣はそれだけで結構です。お忙しければ、どうぞ。  そこで、国の場合は自治体の場合と違いますね。その点を私は否定するものではありませんけれども、基本的な考え方にそういうものがある。国の方は勝手にやってもいいし、自治体の方は型にはめたものでやらせなければいけないという、そういう論理はどうも通らないように思うものですから、そのことだけ先に申し上げておいたわけであります。  先ほど正示委員は、公共事業等予備費という「等」のせんさくはしない、こうおっしゃったが、私はきょうは問題点の総ざらいの場だと思いますから、もう一度ひとつ伺っておきたいと思いますが、この「等」とは何を意味するのですか、大蔵大臣。
  309. 吉瀬維哉

    ○吉瀬政府委員 予算総則十五条に書いてございますとおり、予算総則の七条の公共事業費及び施設費、これを含んだものでございまして、十五条に書いてありますとおり、この公共事業費及び施設費以外には使えないということになっておるわけでございます。
  310. 安井吉典

    ○安井委員 そうすると、この「等」というのは施設費を意味するわけですか。
  311. 吉瀬維哉

    ○吉瀬政府委員 さようでございます。
  312. 安井吉典

    ○安井委員 そういたしますと、公共事業費というのは何ですか。
  313. 吉瀬維哉

    ○吉瀬政府委員 公共事業費というのは、財政法四条に、四条公債の対象として公共事業費の範囲というようなことがございまして、公共事業関係費というのが、いわゆる予算の主要分類項目で公共事業関係費がございます。安井委員御指摘のとおり、公共事業費というのを厳密に規定した言葉はございませんけれども、ただ総則の七条で公共事業費等の範囲、これを決めてございますので、帰納的にそういう定義になっておるわけです。いわゆる公共事業関係費の中で、たとえば利子補給金だとかいろいろな種類が入ってございますが、公共事業関係費の中で建設的な使途に充てられるものを公共事業費、こういうことが総則の七条から帰納的に判断される、こういう形になっておるわけでございます。
  314. 安井吉典

    ○安井委員 そういたしますと、この七条の公共事業費の規定、詳しく各省ごとにたくさん書いてありますね。「等」というのは、これ以外にさらに施設費が入る、こういう意味ですか。
  315. 吉瀬維哉

    ○吉瀬政府委員 七条に書いてありますのは、公共事業関係費の中のいわゆる建設的経費、そのほかに従来施設費と言われたものも七条の中の公共事業費と定義してございます。ただ、今度のところで公共事業費等予備費といたしませんでしたのは、公共事業と定義いたしますと、一般的に施設費等が含まれないと誤解されるおそれがございますので、名称としては公共事業等予備費といたしまして、その内容は総則の七条にゆだねた、こういう形になっています。したがいまして「公共事業等」と書いてございますが、その内容は総則七条の中身、こう御理解願っていいと思います。  それで、七条の中の、分解いたしますと公共事業関係費の中の建設的な経費のほかに、いわゆる施設費、こういうものが入っておる、こういうことでございまして、「等」と言いますのはそういう意味でございます。
  316. 安井吉典

    ○安井委員 この七条の中には、衆議院施設費、参議院施設費から始まって、施設費みんな入っているのですよ。ところが、この前の大臣の御答弁では、「等」というのは施設費が入るから「等」というのだという御答弁があったものだから、私いま明確にしていただきたい、こういうわけです。ちゃんと入っているのですよね。たくさんありますよ、これ。ですからいまの御答弁は、十五条では公共事業等予備費、これは七条に掲げる経費以外には使用しないものとするとこうある以上、この七条に掲げてあるものは全部入る、こう見ていいわけですね。つまり、施設費も含めて全部ですね。
  317. 吉瀬維哉

    ○吉瀬政府委員 安井委員御指摘のとおり、公共事業費の定義が、正確には総則の七条にしかございません。そのほかにもいろいろなところで使われておりますが、ただ、一般に公共事業と言われますと施設費も含まないというのが通念でございますので、そういう点から、十五条でわざわざ七条を引用して「公共事業等」と——「公共事業等」というのはいわゆる七条における公共事業費を「公共事業等」と言うんだということを繰り返したわけでございます。
  318. 安井吉典

    ○安井委員 つまり、公共事業というのと公共事業費という費がついたのとの区分、それをいま言われるのだろうと思うのですが、この七条の規定が余りにたくさんあるので、実はこれはびっくりするわけであります。森羅万象みんなこれに入るわけですよ。衆議院の施設費というと、たとえばどういうことを予想されますか。
  319. 吉瀬維哉

    ○吉瀬政府委員 たとえば、現在参議院で一部施設の拡張が行われたりしておりますけれども、衆議院の方で建物その他の施設の拡張が行われる場合には、施設費の中に入るわけでございます。
  320. 安井吉典

    ○安井委員 念のために伺いますが、この公共事業等予備費の千五百億円の財源は何ですか。
  321. 吉瀬維哉

    ○吉瀬政府委員 財政法四条の公債以外の財源でございます。
  322. 安井吉典

    ○安井委員 そうしますと、これがもしなければ財政特例債を千五百億円削ってもいい、そういう性格のものですね。
  323. 吉瀬維哉

    ○吉瀬政府委員 この予備費の歳出がなければ、そういうような結果になると思います。
  324. 安井吉典

    ○安井委員 私はそれがいいと思いますね、大蔵大臣。この問答、大蔵大臣がお入りにならないで、主計局長だけとの論議になってしまったわけですが、これは大事な問題だと思いますから、やはり明確にしておいていただきたいわけであります。  そこで、予見しがたい公共事業費とは何を予想しているわけですか。予見しがたい公共事業費でなければこの予備費という名前はつかぬわけですが、何を予見しておられるのですか。
  325. 吉瀬維哉

    ○吉瀬政府委員 先ほど来いろいろな御議論があったわけでございますが、五十一年度の経済情勢が非常に不透明である。したがいまして、経済情勢の変動いかんによりましては、公共事業の単位を追加する必要が出てくる。追加する必要が出たときに、それが住宅であるか、あるいは下水道であるかわかりませんが、予見しがたい経済事情の変動と申しますものは、私ども、先ほど来いろいろ御議論がありますように、雇用とか一般経済情勢、そういうものを含めまして、公共事業費の単位の追加の支出が必要である、こういう判断をせられたときが、その予見しがたい状況が起こるのではなかろうか、こう思っているわけでございます。
  326. 安井吉典

    ○安井委員 これは災害なら、さっき正木参考人も言われましたけれども、直下型地震がいつ起きるかわかりません。あるいはその他大水害や何か起きるかもしれない。これは予見しがたいというそういう概念に当たると私は思う。ただ、予見しがたい公共事業というのは一体何なのか。その公共事業というのは、国会、裁判所、総理府、法務省、外務省、文部省、みんなあるじゃないですか。第七条の四ページにわたって書いてある、これはみんな公共事業なのですね。国会がもし焼けたら、建て直しをするということまでこれは入っているわけですよ。だからそういう意味の、先ほど予備費についての御議論がありましたけれども、いまの憲法や財政法のたてまえにおける予見しがたい公共事業費——、災害のようなものと公共事業費というのは違うじゃないですか。道路をやる、河川の工事をやる、いまやるべきものは全部予算化してしまっているわけでしょう。だから、すべてのものはみんな予見しがたいわけですよ。公共事業だけじゃないと思う。政府はもう少し景気が回復すると言うけれども、あるいはもっとひどい事態が起きて失業者がわあっと出てくるかもしれない。生活扶助費や失業対策費をふやさなければいけないかもしれない。じゃ、福祉等予備費をつくっておいたらどうです。私は、そういう政策論的な問題まで予見しがたいという言葉の中に包み込んでしまうということは、これは反対です。どうです。
  327. 吉瀬維哉

    ○吉瀬政府委員 確かに御指摘のとおり、個々の施設費を見ますと、相当細部にわたって全部網羅しているわけでございます。ただ、こういうものまですべて挙げました理由の一つは、安井委員御指摘のとおり、こういう種類のものも災害等に使い得るわけでございまして、もし災害でこういう施設に被害を受けた場合には、そういう場合に使える。一般的に、まあたとえば景気の落ち込みとか雇用対策上使うということは、委員の御指摘のとおりそう予想されるわけじゃございませんけれども、公共事業等予備費が災害等まで含みまして不測の事態に備えるというような意味から、こういう種類のものを含めたわけでございます。  それから特にまた、先ほど来いろいろ不況対策で御議論がございましたように、たとえば文教なり福祉施設、こういうものの充実につきましてもいろいろな御要求があったわけでございますが、もし非常に経済の落ち込み等がありまして一単位の公共投資の追加が必要な場合には、そういう施設費も含まれ得ると私ども解釈している次第でございます。
  328. 安井吉典

    ○安井委員 景気の落ち込みという言葉を使われたが、それは公共事業だけやればいいのですか。それは失業対策やその他、要りませんか。だから、なぜ公共事業にだけひもをつけた予備費というものを置かなければいけないのか。それは政策の問題でしょう。そんなひどい事態が起きたら国会を開いてやればいいじゃないですか。大臣、どうです。これは大臣の問題ですよ。政策の選択の問題ですよ。主計局長がそんなところまで発言できるような筋のものではないと私は思う。政府の責任においてはっきりお答えを願わなければならない問題だと思う。
  329. 大平正芳

    ○大平国務大臣 いま御審議をいただいておる予算案をもちまして、五十一年度通年いたしまして賄ってまいる総合予算でありたいとわれわれは念願いたしておるわけでございます。  もし、それを覆すような異変が起こった場合、政府はどのように対処するかということは、これはまた別問題でございまして、私ども、いまのような流動的な経済情勢のもとにおきまして、しかも、この予算をして総合予算的な機能を果たさせるというために必要にして十分な措置といたしまして、いまの予算を提案いたしておるわけでございます。
  330. 安井吉典

    ○安井委員 大蔵大臣、ことしは補正予算は絶対組まないというおつもりですか。
  331. 大平正芳

    ○大平国務大臣 組みたくないわけでございます。
  332. 安井吉典

    ○安井委員 それは、この公共事業等予備費があるから組まなくて済む、こういう御判断なんですか。
  333. 大平正芳

    ○大平国務大臣 予算全体の編成上、補正予算を必要としないようにできるだけ配慮いたしたつもりでございまして、この予備費ばかりでございませんで、三千億の予備費もそうでございまするし、全体の編成が総合予算として機能するように一応私どもとしては編成いたしたつもりでございます。しかしこれが絶対、これでどんな事態が起きても賄い切れるのであるなどと抗弁をするものではないわけでございまして、通常の状態に——こういう流動的な状態でございますけれども、この程度の流動性の状態でございますならばこの予算でもって賄い切れるのではないか、また、そうしないといけないのではないかと考えております。
  334. 安井吉典

    ○安井委員 普通の年の場合は、米価その他の農産物の価格の決定あるいは公務員の給与べースの改定、こういったようなものが補正要因になるわけです。幾らにしましょうか、公務員の給与がもし一〇%——少ないかな、まあ一〇%にしましょう。仮に一〇%上がっても大丈夫ですね、組まないでいく、こういうお考えですね。
  335. 吉瀬維哉

    ○吉瀬政府委員 当初予算に、公務員給与分五%といたしまして二千二百億円ほど組んでございます。もし五%をすべて予備費で賄うとすると、二千二百億円の追加需要が予備費の中から食われるわけでございますが、安井委員御承知のとおり、昨年度の補正のときにも、四百数十億でございましたか、人件費の節約等で対処しておりますし、仮に一〇%上がりましても、既定の予備費の中で賄えるんじゃなかろうかとも思っております。
  336. 安井吉典

    ○安井委員 それは地方公務員の分もあわせて、地方交付税措置もあわせてできますね。
  337. 吉瀬維哉

    ○吉瀬政府委員 さようでございます。
  338. 安井吉典

    ○安井委員 それじゃもうことしは補正予算は組まないというふうに理解していいんですか。これ以上われわれは補正予算を必要とするような状況はない、それは千五百億円の公共事業等予備費があるからだ、そういう理解でいいんですか。
  339. 大平正芳

    ○大平国務大臣 世の中に絶対ということはないわけでございまして、なるべく組みたくない、この予算でもって通年賄い切りたいという気持ちでございます。
  340. 安井吉典

    ○安井委員 そういうふうなおっしゃり方でいまだけ逃げていて、秋になってまた補正予算を何とか通してくださいと大蔵大臣が頭を下げなければならないような段階が来ないように私は祈っておりますがね。そのころまで三木内閣があって、大蔵大臣が大平さんかどうかわかりませんけれども、一応きょうのお話だけは承っておきます。しかし私は、そんないいかげんな答弁で公共事業等予備費なるものを合理化しようという言い方には納得できません。  小嶋参考人にちょっと伺いたいのですが、国の予算の中の予備費は総予算に対しどの程度くらいまでが適当だと思われるのか。先ほどのあなたのお話によれば、相当程度ゆとりを持った方がいいというふうなお考えを、フランスの例を引いてお話がございましたが、どうですか。
  341. 小嶋和司

    ○小嶋参考人 どの程度ということを数量的に私は考えてもいないのです。というのは、ほかの項目の拘束力というものがどれほど強いかということとも関連があるのです。たとえば彼此移用などがどの程度できるかということとも関連がございますから、一概に言えないと思うのです。  それから、数量的にたとえば一〇%だとか五%だとかということは、もう法理諭からはとうてい出ませんし、あとはさじかげんみたいなもので、そのさじかげんはちょっといま持っておりません。
  342. 安井吉典

    ○安井委員 恐らくそうだろうと思いますね。これは時の政権が国民から大変な信頼を受けていて、何もかも任せていいというふうな場合は、もう款項目も何も要りませんよ。全部予備費にして、さあお使いくださいとこうやってもいいぐらいなものでもあろう。しかし、ロッキードの問題が起きたからと言うのじゃありませんけれども、国民的なチェックというものが国会の機能を通して必要だという理解の上に立っている場合は、私は、政府限りで自由に処理できる予備費というものはできるだけ少ない方がいいと思う。そういう行政府と立法府との関係も考えるべきではなかろうかと思う。ですからこれは、大臣なり大蔵省の皆さんおられるけれども、その行政府の立場と、こっち側にいるのはみんな立法府のわれわれでありますが、むしろ予備費を小さく抑えることの方が、先ほどの田中委員の国会の議決権を極力尊重すべきだという精神の強調の立場からいっても、議会制民主主義のバロメーターのようなものにも私は受け取ることができるのではないかと思う。ですからこれは、大蔵大臣が行政府の立場から、それから私どもが立法府の立場から議論したって、どっちも正しいのですという妙なお答えが返ってくるばかりでしょうから、私はあえてお聞きはいたしませんけれども、そういう関係にあるということも私たちは頭に入れて、今度の予算の中に出てきた妙な公共事業等予備費に対応していかなければならぬのではないかと思います。  もう一つ、これは大蔵大臣に伺いますが、このような、田中委員の発言によれば違法な、少なくも疑問の多いという点については、いろいろな角度から話があるわけでありますが、そのような疑問の多い公共事業等予備費というやり方を明年度も明後年度もその次もお続けになるおつもりか、これっきりでおやめになるのか、さらにまた続いてこういう仕組みをおやりになるのか、その点について伺います。
  343. 大平正芳

    ○大平国務大臣 五十一年度予算案として御審議をいただいておるわけでございまして、五十二年度以降につきましては、そのときの状況に応じてそのときの政府が考えるべきことと思っております。
  344. 安井吉典

    ○安井委員 私たちはもうやめてもらいたいわけですね。ことしでもだめなんだから、これから後も、こういうふうな一つのきっかけができたら、あと何が出てくるかわからない。やはりそれを芽のうちから摘み取るということが必要ではないかという立場から、これまで議論を続けてきているわけです。来年もその次も模様を見て、これと同じような仕組みをやるかもしらぬということをお聞きすればするだけ、私たちはことしはだめだ、こう明確に言っていかなければならぬと思うわけであります。  もう遅いですからこれで終わりにしたいと思いますけれども、先ほどの両参考人お話なり大蔵省側のお話を聞いておりますと、行政を執行する側からすれば、若干ひもをつけようととにかく予備費は多い方がいいし、みずからが予備費の中にひもをつけて、みずから制限を加えているのだからいいじゃないかという論理が行政のサイドから出てくる。しかし、議会のサイドからは、そのことが予算の審議権を侵すことになるという論理がこれは当然出てくるわけですよ。そうじゃないですか。行政の側の方は議会というこの関門を通るのにずいぶん苦労されるわけだ。大蔵大臣も、衆議院で三十日、参議院もまた三十日、そこへ座ってがまんをされなければいけない。何か爆弾が出てこないとも限らない。しかし、予算というものは、これさえ通ってしまえばもうこっちのものだということになるわけですよ、国会はあとチェックの方法がないわけですから。ですから行政の側の論理というものはそういう形で働いてくる。しかし、私ども議会の側は、あくまで国民の負託にこたえてむだな使われ方がないように、あるいは物によっては先ほどの小嶋教授お話じゃないが、予備費を流用してでもどんどんやってもらいたいものはありますよ、福祉など私たちはそう思う。ですから、少なくも議会の、憲法に保障されている議決権を侵されまいとする、こういう論理に立って主張するというのは、私は当然ではないかと思います。予算というのはもともとこれは予見しがたいものですよ。いろいろな予算を組んでいるけれども、あとこれは何が起きるかわからないわけですからね。相対的にそうだと思います。いかなる費目についても絶対という言葉を使われないとさっき大臣言われましたけれども、来年の三月三十一日まで絶対これで間違いがないという、そういうものはないと思う。みな予見に立って組まれているわけです。しかし、その中でも幾らかでも明確に予想されるものだけは、これはもう憲法や財政法の条章に従って組んでおられるわけですから、どうしても予見しがたいものが予備費という形で残るのは、これはまた当然だと思う。また、なければいけないですよ。しかし、それをむやみにふくらまして、政府の勝手な使い道を確保していく、そういうことに対する鋭い疑問を私たちは投げかけているわけであります。ですから、これは田中委員の発言じゃないけれども、やはりふろしきに包んで、もう一度大蔵大臣、帰っていただかなければいけない。たとえそれができないにしても、私たちはあくまで修正を求めます。  きょうは両参考人、特に正木さんにお尋ねしないで、先ほどずいぶんお話を聞きましたから、御意図はわかっておりますからお聞きはいたしませんでしたけれども、そういう問題点をひとつ明確にして、一応きょうのところは質問を終わります。
  345. 正示啓次郎

    ○正示委員長代理 参考人各位には遅くまで御出席をいただき、まことにありがとうございました。御退席願って結構です。  以上で、不況・雇用問題の集中審議は終了いたしました。  次回は、来る十六日午前十時より開会いたします。  本日は、これにて散会いたします。     午後五時五十二分散会