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1976-02-13 第77回国会 衆議院 予算委員会 第12号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十一年二月十三日(金曜日)     午前十時三分開議  出席委員    委員長 荒舩清十郎君    理事 井原 岸高君 理事 小山 長規君    理事 塩谷 一夫君 理事 正示啓次郎君    理事 山村新治郎君 理事 小林  進君    理事 楢崎弥之助君 理事 松本 善明君    理事 山田 太郎君       伊東 正義君    上村千一郎君       植木庚子郎君    奥野 誠亮君       北澤 直吉君    倉成  正君       黒金 泰美君    櫻内 義雄君       笹山茂太郎君    瀬戸山三男君       田中 龍夫君    谷垣 專一君       西村 直己君    根本龍太郎君       野田 卯一君    藤井 勝志君       保利  茂君    松永  光君       森山 欽司君    安宅 常彦君       阿部 昭吾君    阿部 助哉君       石野 久男君    岡田 春夫君       田中 武夫君    多賀谷真稔君       堀  昌雄君    安井 吉典君       湯山  勇君    田代 文久君       林  百郎君    増本 一彦君       広沢 直樹君    松本 忠助君       河村  勝君    小平  忠君       竹本 孫一君  出席国務大臣         国 務 大 臣         (経済企画庁長         官)      福田 赳夫君         大 蔵 大 臣 大平 正芳君         通商産業大臣  河本 敏夫君         郵 政 大 臣 村上  勇君         労 働 大 臣 長谷川 峻君  出席政府委員         公正取引委員会         事務局長    熊田淳一郎君         経済企画庁長官         官房参事官   朴木  正君         経済企画庁長官         官房参事官   佐々木孝男君         経済企画庁調整         局長      青木 慎三君         大蔵省主計局長 吉瀬 維哉君         大蔵省主計局次         長       田中  敬君         大蔵省主税局長 大倉 眞隆君         大蔵省銀行局長 田辺 博通君         国税庁長官   中橋敬次郎君         中小企業庁長官 齋藤 太一君         郵政省貯金局長 神山 文男君         労働省労働基準         局長      藤繩 正勝君  委員外出席者         参  考  人         (全国銀行協会         連合会会長)  板倉 譲治君         参  考  人         (全国地方銀行         協会会長)   伊原  隆君         参  考  人         (全国相互銀行         協会会長)   早坂順一郎君         参  考  人         (全国信用金庫         協会会長)   小原鐵五郎君         参  考  人         (成蹊大学教         授)      武田 昌輔君         参  考  人         (谷山税制研究         所所長)    谷山 治雄君         参  考  人         (税制調査会会         長)      小倉 武一君         予算委員会調査         室長      三樹 秀夫君     ————————————— 委員の異動 二月十三日  辞任         補欠選任   細田 吉藏君     松永  光君   石母田 達君     増本 一彦君   正木 良明君     松本 忠助君   矢野 絢也君     広沢 直樹君   河村  勝君     竹本 孫一君 同日  辞任         補欠選任   広沢 直樹君     矢野 絢也君   松本 忠助君     正木 良明君   竹本 孫一君     河村  勝君     ————————————— 本日の会議に付した案件  昭和五十一年度一般会計予算  昭和五十一年度特別会計予算  昭和五十一年度政府関係機関予算      ————◇—————
  2. 荒舩清十郎

    ○荒舩委員長 これより会議を開きます。  昭和五十一年度一般会計予算昭和五十一年度特別会計予算及び昭和五十一年度政府関係機関予算、以上三案を一括して議題といたします。  全国銀行協会連合会会長板倉譲治君、全国地方銀行協会会長伊原隆君、全国相互銀行協会会長早坂順一郎君、全国信用金庫協会会長小原鐵五郎君、成績大学教授武田昌輔君谷山税制研究所所長谷山治雄君、税制調査会会長小倉武一君、参考人各位には、御多用中、御出席をいただきまして、まことに御苦労さまでございます。委員会を代表いたしまして厚くお礼申し上げます。  参考人各位には、委員各位質疑お答えを願う方法で、順次意見を承ることといたします。  質疑の申し出があります。順次これを許します。藤井勝志君。
  3. 藤井勝志

    藤井委員 きのうに引き続きまして、不況脱出雇用安定、こういった題をめぐって集中審議が行われる第二回目、本席は金融機関関係方々並びに税制専門参考人方々、一応問題を金融税制にしぼりまして質問をさしていただきたいと思います。大変御多用のところ、まことに御苦労に存じます。  まず私は、金融関係につきましては、銀行協会連合会会長さん並びに地銀、相銀、信金、こういったところで、一応私の質問に対して、相互銀行信用金庫の場合は、もし補足説明をしていこうというお気持ちがあればひとつお願いしたい。私が指摘した場合はまた別でございます。そのようにひとつあらかじめ御用意願いたいと思います。  御案内のごとく、石油ショック以来深刻な不況脱出に現在日本経済はあえいでおります。今年は、この不況をいかにして脱出するかということで、民間、政府一丸となって現在努力中であり、政府は第四次不況対策に続いて、今年度、五十一年度の景気浮揚型の大型予算を組んだことも御承知でございますけれども、問題は、五十一年度予算案はこれからでありまして、われわれも一刻も早くこれが成立を見なければならない、このようにも思います。ただ、いままでのところ、景気はどこまで回復できるのか非常に心配をしております。と申しますのは、景気分析の最も基本的な前提としてのいわゆる経済全体の指標経済企画庁あたりがいろいろわれわれに月々報告をしてもらう会にも出ておりますが、全体のいわゆる基調となる指標というものは底入れして上向きになっておる。しかしながら、個々の肝心の企業というのは収益がますます悪化しておる。これを世に言う「マクロ底入れ、ミクロ大不況」というこういう状態であります。よく森を見て木を見ずという言葉がある。しかし森は木によって形成されておる。非常にわれわれはこの判断に苦しむわけでございますが、こういった問題につきまして、実は参考人方々、御専門でありますから、目を通されておると思いますけれども、私はときどき日経の「一言多言高橋亀吉先生論文を興味深く見るわけですが、この問題をまず最初に、基本的な認識として、私も同感するところが多いわけでありますから、これを指摘して、御紹介を申し上げて、各金融機関認識をひとつ確認しておきたい、このように思います。  最後のくだりをちょっと御紹介をいたします。このような無理をして何とか耐え続けてこられたのは、次のような特殊な事情によるものであるが、それらの原因がいまやその限界線突破危機に直面しつつあるのである。この実情こそ、この際の最大な要注目点があると思うのであり、また自分がこの論説を掲げた意味がある、というので四つばかり指摘しておられます。  第一は、「これまでは過去の蓄積によってこの赤字を支ええたが、いまやそれを食い潰(つぶ)して、穴埋め的借金を重ねざるをえず、しかも、担保能力上その極限に直面しはじめた企業が少なくない実情となるに至った。」、これが第一。  第二、「最初の間は、価格凍結が解かれ、価格形成が自由になれば赤字は解消しうると期待していたところ、その自由化の時期がおくれたため、関連企業そのもの収支難がすでにひどく、および需要減のため、企業存立上必要な価格改定そのものが思うように進まないことが明らかになってきた。」  第三、「従来の不況回復を物差しにして、景気は自律的に、または政府景気浮揚政策によって間もなく回復し、企業収支難は解消すると期待し、それを唯一の頼みにこれまで無理を続けてきたが、その期待はこれまですでに何度か裏切られた。しかし、今度こそは政府がいよいよ本格的に景気浮揚対策に乗り出したのであるからと、最後の望みをこれにかけてきている。従って、もし、景気期待ほど早く好化しないことが明らかになると」——で、この高橋先生は「私はその公算の方が多いとみている」と、こういう注がついておりますが、「いよいよ自衛的最後対策を断行せざるをえなくなってくる。」  第四番目、「企業赤字累積が広くかつ危機線に接しつつあるにもかかわらず、企業倒産がこれまで意外に少ない」、これはまあ相対的でありまして、「それでも五十年の倒産は戦後史上最大である」という注がついておる。相対的ですね、思ったよりは。その「わけは、銀行企業系列化——企業銀行との癒着に負うところが多大である。」、これはいい意味癒着ですね。「しかし、それにも自ら限界があるが、いまや銀行そのものも、企業赤字累積の面倒を従来のように甘く続けえない危機感を持たざるをえない実情に迫られつつある。」、これが第四点。  この四つ認識の上に、以上のことは新年に企業倒産の大津波が来るということを強調しているわけでは必ずしもないけれども、「企業銀行も、従来のような甘い期待企業累積赤字を続けていたのでは、いよいよ大変なことになることを、遅ればせながら自覚せざるをえない局面となり、抜本的自衛対策を強行せざるをえなくなるのではないか。そのことをここで強調したいのである。」と、これが最後ですね。「具体的には、企業銀行とが一体となって、新経済事態、すなわち、従来の一一—一二%の成長経済から五—六%成長基準の新経済事態に適応する企業経営抜本対策(新事態即応企業整理合理化および再編成の徹底−過剰人員整理を含む)に、いよいよ本格的に乗り出さざるをえない重大な節に、今五十一年上期がなるのではないかといいたいのである。」  「また、わが経済が本格的な景気回復軌道に乗るには、こうした関所を一度通過してはじめて可能なのではないかといいたいのである。現状のように赤字累積企業体力がひどく損なわれている実情の下では、そうした関所を通らずに、政府景気浮揚対策だけで、企業健康体回復期待するのは無理ではないかといいたいのである。」と、一応こういう結びでございます。  きょうの新聞を見ますと、伊藤忠と安宅産業がいよいよ提携調印という、こういう大型のなにも進んでおりますが、こういったことは、大から小まですべて思い切ったいまのような構造改革に対応しなければ、ただ政府——自由主義経済体制でありますから、統制経済をとっておれば政府が全部責任をかぶるべき必要がありましょうけれども、本来が基本的には自由主義経済体制であり、それを支える動脈としての資本を中心に金融機関経済活動をしているといったことであろうと思います。  私がいま読み上げました高橋論文は、おおむね私の現在の認識と非常に近いのでありまして、そういうことを踏まえまして、いかにして現在のこのような異常な、戦後初めての——新しい経済秩序へ転換しなければならぬ関頭に立っておる、正念場に立っておるというふうに思います。これにつきまして、一応関係金融機関からのお答え参考人からお聞かせ願いたいと思います。
  4. 板倉譲治

    板倉参考人 お答えいたします。  いまの高橋亀吉先生の御見解でございますが、非常に事態を深刻に見ておられます。確かに実態は、先生のおっしゃることにほぼ近いように私も感じております。非常に深刻であることは間違いございません。銀行の目から見ておりましても、昨年あるいは一昨年来御承知のような、企業の規模の大小を問わず、三分の一が赤字に転落しているということで、企業赤字累積が四期にわたって続いております。そういう状態でございますので、累積赤字が非常に大きくなっておりまして、銀行のそれに対します救済赤字見合い融資というものが月ごとに激増いたしておるような次第でございます。私どもの方の支店貸出金を見ましても、特殊な地帯、一定の不況業種が蝟集しております地帯にございます支店の過去一年間の貸出金増加額を見ましても、それの大半が赤字救済融資であるということが言えるような状況でございます。  また、大企業につきましては、御承知のように上場会社につきましては赤字が公表されておりますので、よくわかっておるわけでございますが、前期だけでも確か一部上場会社だけで赤字の合計が、これはその一期だけの期間損益でございますが、大体千何百億ということになっておりまして、恐らく累計では数千億という膨大なものになっているというふうに考えるわけでございます。  そういう事情でございますので、いずれこういった景気回復過程に入ると私ども大いに期待いたしておるわけでございますが、その上で企業の再編とかあるいは再建とかいったような措置が講ぜられませんと、この赤字を解消することがむずかしい。その場合には、銀行といたしましてやはり応分犠牲を負って再建に協力していくということが必要であるというふうにかたく信じておる次第でございます。銀行といたしましても、何としてでもこの不況産業界とともに助け合って乗り切っていかなければならないという決意を持っておりまして、そのためには、銀行としても応分犠牲を負うときが必ず来るというふうに考えておる次第でございます。  お答えになりましたかどうか自信がございませんが、これで終わらせていただきます。
  5. 伊原隆

    伊原参考人 ただいま藤井先生のおっしゃいましたように、私ども地方銀行の窓口から見た現在の景気段階と申しますか、不景気段階、それに対して地方銀行がどう対応しておるかということは後ほどお尋ねがあると思いますが、いまの景気段階を私ども見ておりますと、いい面から申しますと、農村がお米の豊作とかいうふうなことでわりあいによろしい。それから漁業がよろしい。またリンゴその他のものがいいとか、弱電、自動車、繊維等がいいという部面もございますが、おしなべまして大体不況に呻吟をしておるということが事実でございます。倒産の数も、地方では細かくなっておりますが、相当の数が非常に高水準が続いております。雇用の方も、いままでいろいろ持ちこたえてまいりましたけれども地方から見ますと出かせぎが非常に減ってきている。それからまた、地方の工場の閉鎖あるいは減産等のために、雇用の方もなかなかむずかしくなってきておるという現状だと判断をいたしております。  ただ、公共事業地方等に及ぼします影響につきまして、みんな期待をしておるというのが現状でございますが、ただいまの高橋さんのお話をお引きになりましたように、ただいままで企業がいろいろこの困難に耐えてまいります中で、私ども地方銀行としましては、助け合いの精神というふうな言葉で呼んでおりますが、非常にいろいろな融資倒産防止のための緊急融資というふうなものを相当な額、千三百五十億に上りますか、そういうふうなものをいたしましたり、地方銀行の特色といたしまして地方公共団体制度融資というのがございます。これは不況対策とか倒産防止制度融資等がございます。これらは金利も安うございますし、そういうふうなことをいたしまして、累計二千数百億に上る企業支え役と申しますか、癒着というより抱き合いと申しますか、そういうことで現在まで耐えてきておるという状況でございます。  ただし、いまお話がございましたように、私どもも、やや個人的な見解でございますが、ことしの上期あたりは、時間の要素から申しますと、各企業がいままで内部蓄積その他で吐き出して耐えてまいりましたけれども、この辺でやはり今後の安定成長経済に乗ることを本当に皆さんが自分でお考えになっておるようでございまして、金融機関としましては、後ほどお尋ねがあるかもしれませんけれども、前に企業再建整備というのを、戦争経済から平和経済に移るときに、これは法律等でいたしたことがございます。ある意味ではそこに似たような感じで、高度成長から安定成長に移る企業の体質が相当変わってくるというふうなことに相なると思いますので、お取引先一つ一つときめの細かいお話し合いをいたしまして、新しい成長軌道に乗るというためには金融機関としてどういうふうにしていったらいいかということを、前の企業再建整備法とやや背景が似ておるような気がいたしますので、金融機関も相協力しまして、新しい軌道に乗るように個々の具体的のお取引先とのお話し合いに入る時期に入っているような気が私どもいたす次第でございます。     〔委員長退席小山(長)委員長代理着席
  6. 藤井勝志

    藤井委員 時間の関係で、他の金融機関参考人に御意見を承ればいいのですけれども、ちょっと後段で予定しているので、割愛をさせていただきます。  いまおっしゃったように、ひとつぜひきめの細かい配慮——現在の経済社会実態から言うと、何といっても金融機関にきめの細かい行き届いた手当てをしてもらわないと、どうもわれわれが過去一年間の大蔵省あるいはまた経済企画庁、こういったところないしは日銀、ここら辺のいろいろな見通しなり、その見通しの上に立ってのたとえば公定歩合の問題、金利の取り扱い、こういったことが全く、根っこの木が枯れてしまって、ただ上の方の森だけがまだあります、ありますというふうなことではいかない。もちろん木を見て森を見ざるこの見通しの悪い認識もいけませんけれども、どうも根っこは枯れてしまっているのに森はこうだというふうなことで、何か森の上にはかすみがかかりいろいろしておって、本当の実態がわかったときには取り返しのつかないようなことになってはいけない、このように思います。  そういう点において私は今度は、具体的に問題をお尋ねをし、参考人の御意見を承りたいと思います。  金利の問題ですが、何といっても日本企業は、自己資本比率というものがもうきわめて少ないということは、お互いもう百も承知しております。これはいろいろな見方、二割もいっていないというのが現状ではないかというふうに思います。したがって、金利問題というのは、これはもう大企業だけではない、現在のような後ろ向きの金融も受けなければならぬこの在庫融資そのほかを考えますと、中小企業の端々まで金利という問題は、企業負担の軽減という面において大変な重大な関心事でございます。  ところが、現在の市中貸出金利というのが高過ぎるんではないか、こういう認識を私は持っております。すなわち、五十年十二月現在で都銀貸出約定平均金利というのは八・四二七%である、こういうふうに私は数字を心得ておりますが、従来の不況時においてはおおむね六%台ではなかったか、このように思うのです。これはちょっといまの状態から見て、きめの細かい配慮という面において金融機関に工夫の余地がないかどうか。この点をひとつまず、これはもう金融機関を代表して板倉さんの方からお答えを願いたいと思います。
  7. 板倉譲治

    板倉参考人 四十六、七年当時の金融緩和のときにはおっしゃいましたように、確かに現在よりはるかに低い金利水準であったわけでございます。現在の不況が深刻であるにかかわらず、その当時よりは金利水準がなお高いということはそのとおりでございますが、当時と現在とで客観的な状況が大きく変わっておりますのは、現在ではなおインフレが完全におさまっていない。特に一昨年から昨年にかけまして、非常に高い速度でインフレが進んでおったわけでございます。そういうときには、やはり預金に限りませず、あらゆる金銭債権のいわゆる目減りというような問題が起こるわけでございまして、債権を持っておられる方が実質的に損をされるというようなことがございます。そういった問題がございます関係で、預金者あるいは金銭債権者の立場を考えまして、預金金利が下げにくい、その他の金利も下げにくいという事情があるというふうに私は考えております。  そういう事情で、貸出金利につきましても、なるべく預金金利を下げないで貸出金利だけを下げるという方針で、昨年四月からの一回、二回、三回の公定歩合引き下げのときにはそういう方針でいったわけでございますが、現在、貸出金標準金利預金の一年定期が同率になっておりまして、それ以上貸出金利だけを下げますと、預貸金金利が逆転するというような金利体系のゆがみを生ずることになるわけでございます。そういう関係で、やはり預金金利が下げにくい事情にございます関係で、貸出金利も勢い下げにくくなってきているということで、前回よりは高い水準にやむを得ずなっているというふうに考えております。
  8. 藤井勝志

    藤井委員 いろいろ金融機関側事情もありましょうけれども、私はぜひこれは今後、いろいろ御苦労でしょうけれども、現下の不況状況日本企業実態、これをひとつよく御理解いただいて、一層の御努力をお願いをいたしたいと思います。  昨年四月以来、ちびりちびりですが、公定歩合が二・五%下げました。この下げ方については、私はもう去年の四、五月ごろ、下げるんなら思い切って、ともかく上げるとき思い切って七%から九%上げたのですから、一遍に二%ぐらいは下げたらどうですかという、こういった提案を内輪の中ではしばしばしたわけですけれども、こういうように一応結果的には二・五%公定歩合が下がりました。しかし、市中貸出金利はこれに順調に追従をして低下しているかどうかということについていささか努力が足らないのではないか。すなわち、昭和五十年の四月から十二月までのいわゆる追従率というものは四八・一%ということに都銀べースにおいてなっております。従来は、私の記憶では、大体半年ぐらいで六〇%ぐらいは追従されておるということを記憶しております。私の記憶が間違っているかどうか。この時代においては、企業金融機関も一緒になって不況脱出をするんだという構えにおいてもう少し努力がほしいというふうに私は思います。  それに対してひとつまた板倉参考人の方からお答えを願います。
  9. 板倉譲治

    板倉参考人 公定歩合引き下げに対します貸出金利追従率でございますが、今回は、昨年の三月末から十二月までの九ヵ月間に、御指摘のように四八・一%の追従率に相なっております。それから、前回の四十五年当時の緩和のときでございますが、そのときには一六・六%という現在よりもはるかに低い追従率でございまして、その当時よりは現在の追従率は格段に速くなっております。ただ、もう一つ前の四十三年のときの追従率は、これは六ヵ月でとってみますと五四%という大変高い率に相なっております。確かにこれが先生指摘の六〇%近いのではないかとおっしゃられました数字ではないかと思っておりますのですが、この四十三年六月のときの六ヵ月間の追従率と申しますのは、このときは公定歩合引き下げが当初一回あっただけでございまして、四十三年のたしか八月に下がりまして、それから六ヵ月をとっておりますので、六ヵ月間にその影響がほとんど出切っておるという状態になっております。そういう関係で五四%という高い率になっております。今度のものは四回に分けて順次行われておりますので、最後に行われました公定歩合引き下げ、それに伴う貸出金利引き下げはまだ十月の末でございますので、それから数ヵ月しかたっておりませんので、そういった関係追従率が前前回よりは低くなっておるということでございます。  しかし、いずれにいたしましても、私どもといたしましては、企業が非常に苦境に立っておりまして、御指摘のように金利負担の軽減を求めておることはよく十分承知いたしております。したがいまして、企業不況乗り切りを何としてでも助けていかなければならないという決意はやはり持っておりますので、この金利引き下げにつきましては格段の努力をいたしております。  先般準備預金引き下げがございましたときに、日本銀行総裁からも金利引き下げ努力するようにというお話がございまして、私どもといたしましても、銀行協会の名で全国銀行に通知を出しまして、今後とも金利引き下げには格段の努力を払うということを要請いたしたわけでございますし、また、各銀行ともそういうかたい決意を持ってその引き下げ努力をいたしている次第でございますので、この点御了承いただきたいと存じます。
  10. 藤井勝志

    藤井委員 せっかくの御努力を希望いたします。  今度は、私は、地銀協会の会長と、それから信用金庫協会会長の小原参考人と、それからもしこの問題について御意見が承れれば、成績大学の武田参考人にお願いしたいと思いますが、これは金融機関としてはどういう感想を持っておられるかということであります。問題は日銀の関係であり、大蔵省関係でありますけれども、その関係は私はきょうは尋ねようとは思いませんが、現場における感想と、それから専門家の大学の先生からは御意見を伺いたい。  すなわち、現在の公定歩合は過去の不況時に比して高過ぎるのではないかという問題でございまして、経済がまだずっと高度成長を続けておった昭和四十七年の一月、この辺が底ですね。四・七五%。まだ底がありました。四十七年の六月、四・二七%。それから四十八年の四月、この辺までずっときまして、一応公定歩合が上がったのが四十八年の十一月から十二月。それからぐいぐい上がってきて五十年の四月。こんなところですね。  このような減速経済体制に移行もしてきておるわけですから、好むと好まざるとにかかわらず、こういった公定歩合については、日銀とか、ここら辺がひとつ決断をして、減速経済体制に即応する、まず経済体制のもとでやる公定歩合のあり方についてこの際思い切った検討をされて、早急に新事態に対応する基礎づくりをすべきではないか、と、このように私は思いますが、この点について、いまお尋ね申し上げました参考人からそれぞれ簡単にお答えを願いたいと思います。
  11. 伊原隆

    伊原参考人 ただいまの金利公定歩合の問題が高過ぎるというお話しでございますが、これは板倉さんからもお話がございましたように、私ども、資金の提供者、主として預金者の方がどう考えられるか、いまの物価水準がどうかというふうな問題との関連がやはり非常に深いように思います。ただ、いまの資金需要の様子から見ますと、また日本銀行の通貨の供給量が相当ふえております。こういうところから見ますと、金利はだんだんに実勢は下がっていくのではないかというふうな感じもいたしますが、同時に、国際収支に及ぼす国際的な影響等もございますので、その辺は無理に下げるというわけにもいきませんし、むずかしいところではないかと思います。  私どもがむしろある意味で警戒いたしておりますのは、国とか地方団体というものが大きな借り手として登場いたしまして、借り手は金利は安い方がいいということでどんどん下げていくというふうなことが戦争中ずっとございましたけれども、これはインフレを助長いたしまして、預金者の利益というふうなものを無視することになるということでございますので、やはり、実勢に従っていくという意味でほどほどのところがいいのじゃないかというふうな感じを抱いております。
  12. 小原鐵五郎

    ○小原参考人 お答え申し上げます。  その前に一言ちょっと。私の方の信用金庫ですが、信用金庫といたしましては、現在の不況で非常に中小企業金融の面で困っておられるという面について、経営がふまじめで放漫経営のところが行き詰まって倒産するというのはやむを得ませんけれども、まじめに一生懸命やっている中小企業がこの不況のために倒産することのないよう、一生懸命ひとつ努力をするという考え方でございます。  ただいまのお尋ねの面につきましては、私ども信用金庫日本銀行から金を借りていないのであります。現在借りておりませんから、公定歩合の面についてわれわれの方はそう影響はないわけなんでございますけれども、この金利の面につきましては、現在、物価の問題と比例しまして、目減り預金なんというものもつくらなければならないような事態でございますので、預金金利がそう下げられないというような時代にありますので、先ほどからいろいろとお答え申し上げておる人もおありのようでございますけれども、そういったような面を考慮して、できるだけ企業には安い金利を提供することは結構なんですけれども、われわれは中小企業にもできるだけ安い金利でもって提供したいと思いますけれども、何にしましても預金金利と連動いたしますので、その点をひとつ御考慮のほどをお願い申し上げる次第でございます。
  13. 武田昌輔

    武田参考人 私は専攻が税法、税務会計でございますので、大変申しわけございませんけれども意見は差し控えさせていただきます。
  14. 藤井勝志

    藤井委員 それじゃ相互銀行協会の早坂参考人、いまの問題と同時に、あなたのお立場から、こういったことば参考人としてひとつ聞かせておきたいということがあったらお願いをいたします。
  15. 早坂順一郎

    ○早坂参考人 ただいまの御質問でございますが、公定歩合が相当下がっておりますので、私ども相互銀行も当然金利が引き下がらなければならぬと思うのでございますが、相互銀行公定歩合とは連動いたしておらないのでございます。これは信用金庫も同様だと思いますが、そういう関係はございますけれども、それはそれといたしまして、やはり金利低下ということに全力を傾注いたしておるような次第でございます。  日銀の再割引との関係等、相銀は道が非常に狭くなっておるのでございます。民間金融機関は、金利引き下げの、まあ自分努力と申しますか、資金コストの低減に限界がございますので、やはり、預金金利と見合ったものでなければとうてい経営ができなくなるという環境にあるのでございますので、その点を申し上げたく存じます。
  16. 藤井勝志

    藤井委員 今度は、金融の量的規制問題に関連いたしまして一、二点参考人にお聞きいたします・が、全体を代表して板倉参考人の方からお願いをいたします。  現在日銀が依然として窓口規制というものを継続しておられる。この問題につきましては、現場の窓口である金融機関としてはどういうふうにこれを受けとめられておるか。このような状態昭和四十九年十二月以来ずっと実施されてきておると私は承っておりますが、この大口融資制度というのはもちろん商社とか鉄鋼会社とか電力会社等に影響を与えましょうし、こういったところは鉄鋼や電力会社の設備投資がなかなか困難であると同時に、また逆の、設備したところで市場が目安がつかないという点もありましょう。それはありますが、少なくとも電力関係あたりはこの際積極的な手当てが必要ではないか。それが窓口規制においてブレーキがかかっておる。同時にまた商社方面は、これは大型プロジェクトで、今度は輸銀資金というようなものもこれに連動してこれから大いにやらなければならぬ時期に来ておりましょうけれども、こういった問題と同時に、また、そういった大企業には中小企業が関連をしてきており、中小企業にも結局しわ寄せがいく。こういったことを考えると、私は、この問題についてはもう少し現在の日本経済の置かれた実態に沿うて考えるべきで、日銀の従来の発想の延長線ではいけないという感じがいたしますが、参考人として板倉さんはどのようにお考えでしょうか。  その問題が一つと、これに関連いたしますが、結局、この窓口規制が必然的に金融機関のシェアを固定化するという結果をもたらして、預金金利貸出金利と一定のシェアが変わらぬということになれば、もともと自由主義経済体制というのは金融機関もそのらち外ではないというふうに私は思うが、そうすると、何のことはない、かちっと固まってしまって、大いにきめ細かいサービスをこの不況の中でやる銀行は伸びてくる、そうでない銀行は伸びないという自由主義経済のいいところが一番大切な金融機関において全く抹殺されておる、と言うと大げさでありますけれども、そういう点がないであろうか。やはり、経済活動の源泉は、現在の経済体制から言いますと、何といっても金融機関というものが前提になっておりますから、こういう問題とあわせて参考人の御意見を承りたいと思います。
  17. 板倉譲治

    板倉参考人 窓口規制の問題でございますが、私個人の考え方といたしましては、先生最後におっしゃいましたように、やはり、自由経済のいいところを発揮させるためには金融機関に自由な競争をさせるということが何より肝要でございますので、そういう意味で、これは金融政策として決して理想的な政策であるというふうには私は思っておりません。  しかし、わが国の実情を考えますと、御承知のように金利が非常に硬直化しておりまして、金利の弾力性あるいは金利自由化を通じまして資金量を規制するというような方策がなかなかとりにくいというような基盤にあるわけでございます。それに対しまして、従来からわが国の経済は非常に底が浅いと申しますか、大きく激変を繰り返しておりまして、国際収支の問題もございまして、非常に強度な引き締めを行わなければならないというような事態も数年置きに従来起こっておったわけでございます。そういった体制に即応するために、日本銀行といたしましても、理想的な手段ではございませんけれども、この窓口規制という手段をとらざるを得なくなってきておるのではないかと思います。  それから、現在この窓口規制があるために企業金融が不自由になっておるのではないかというような御懸念でございますが、昨年四月以来の金融引き締め政策の方針に沿われまして窓口規制も漸次緩和されてきておりまして、現在では、窓口規制があるために企業あるいは産業の適正な資金需要に銀行が応じられないというような事態にはなっておりません。非常に適正な規制をされておりますので、そのために企業が非常に困るという状態では少なくとも現在ではなくなっておるというふうに私どもは感じております。  まあ、今後M2がふえるというような問題もあるわけでございまして、その場合に一番直接的に効く方策は窓口規制であるというふうにも言われておりますので、そういう意味で窓口規制そのものは残しておきたいという御意向であるのではなかろうかというふうに、これは私の推測でございますが、考えておる次第でございます。
  18. 藤井勝志

    藤井委員 次に、私は、銀行行動、銀行経営の姿勢という問題について、これまた総括的にお二方にお願いいたします。板倉さんと伊原さんに、まだあとありましたが、大分残りそうですから簡単にお答えを願います。  一般企業は、先ほど申しましたように、経常損益は三社に一社は赤字になっておる。人によっては二社に一社は赤字であるという。現在こういう深刻な状態であるにかかわらず、銀行は一社たりとも赤字になっていない。また、収益の増減等の状況を見ますと、一般企業に比べて著しくいいではないかということは庶民みんなが痛感をしております。それはなるほど昭和の初頭のあの金融恐慌といったような混乱はわれわれは避けなければなりませんが、しかし、ちょっと銀行がよすぎはしないかという感じは庶民の偽らない受けとめ方ではないかと私は思います。すなわち、銀行産業界犠牲の上に不当にもうけ過ぎてはいないかという問題であります。  これは私事を申し上げて恐縮ですけれども、私のおやじもさがない地方銀行の雇われマダムをしておりましたが、ところが、私が幼いころの何でありますが、私の父親いわく、孫子の末まで金融機関はさせないという。こういうおやじの思い出を私は思い浮かべるのでありますが、ともかく手あかのついた札びらをきちんと勘定して、やはり貸出先を検討しなければ貸し倒れになる。ともかく銀行というものは、金融機関というものは利ざやによって成り立っているということ、もとは企業ではないかということ、こういうことを考えますと、現在の企業はもう本当に大変な時期になっておるが、しかるに銀行は、なるほど金融恐慌のような線を出してはいけないということで大蔵省は非常に気を配っておるが、その気を配っておる大蔵省金融財政政策の背景の上に立ってあぐらをかいてもらっては困る、過保護に陥ってはならないという、こういったことが、この時点において、特に先ほど読み上げました高橋論文を踏まえますと五十一年の大切な問題ではないかというふうに思います。  こういう面におきまして、金融機関の経営の姿勢、心構えについて、金融機関を代表して板倉参考人からひとつお答えを願います。
  19. 板倉譲治

    板倉参考人 簡単にお答えいたします。  銀行は大ぜいの方から大切な預金を預っております関係で、預金者保護という重大な使命を持っております。それから、また、信用秩序の維持発展という面での重大な責務も持っております。そういう意味で健全経営に徹しなければならないということは当然と思っておるわけでありますが、しかし、現在のように産業界が大変苦労しておりますときに銀行だけがひとりぬくぬくとしていていいということはもちろんあり得ないわけでございます。ともに助け合ってこの不況を切り抜けていく、そのために金融機関応分犠牲を負うべきであるというふうな覚悟を持っておるわけでございまして、そういう関係で、預金金利は極力引き下げないで、貸出金利の方をできるだけ下げていくという努力を皆尽くしておるつもりでおります。そのために利ざやが非常に縮小いたしておりまして、当期の決算は、過去、有史以来の最低になるわけでございます。一見表面の利益の減少が少ないように見えるわけでございますが、現実には貸し倒れ引当金の引当率が引き下げられてきておりますので、過去の内部留保のはき出しということが利益に計上されて、そのために表面が少なくなっておりますが、実態の利益は非常に大きな減少を来たしておるわけでございます。  そういうような関係で、企業に対しましてはできるだけの御援助、御協力を申し上げるという精神でやっておりますということを申し上げておきます。
  20. 藤井勝志

    藤井委員 ひとつ、せっかくの御奮闘を心からお祈りをいたします。  もう一つ、ちょっと各論的な質問を追加で申し上げますが、これは地方銀行協会が代表してお願いいたします。  すなわち、信用保証協会の保証つき貸し出しの金利について、私は、この大蔵省の調査を見まして、保証協会の保証がついているやつは一般のものよりは〇・四%から〇・五%程度下げられておるという実態承知いたしておりますけれども、保証協会が保証をつけるのですから債権確保は一〇〇%できる。しかも、融資調査がある程度簡略にできますし、それに抵当権の設定は保証協会がやるということになれば、資金コストというものはもうほとんどかからないではないか。しかも、債権を確保できているということになれば、思い切って下げて、すなわち、保証料だけ合わせても普通の金利と同じようになるということがこれを借りる担保力のない中小企業にとっては必要なことではないか。これがなぜできないか。私はいまこれが非常に疑問でありますが、これに対して不可能である理由があるかどうか、ここら辺を、不可能の理由をひとつ御説明願いたいと思います。
  21. 伊原隆

    伊原参考人 ただいまお話しの保証協会の保証つきの貸し出しの金利につきましては、私ども本当におっしゃった精神でずいぶん研究もいたしまして、おっしゃったようにだんだんに減してまいっております。今後もひとつ研究を重ねたいと思いますが、たとえば緊急融資と申しますか、そういうふうな場合には保証料込め八・九というふうな非常に低い金利を出しておりますが、今後とも研究してまいりたいと思います。それから、同時に、先ほどお話がございました銀行の経営姿勢でございますが、地方銀行とし工は、地元の企業との抱き合いと申しますか、助け合いをやって、それから今後は個々企業とよくお話し合いをいたしまして、一般金利水準のほかに個々企業実情に応じました金利の低下というふうなものを図ってまいりたいというのが会員のみんなの覚悟でございます。
  22. 藤井勝志

    藤井委員 もうすっかり時間がなくなりましたので、もう税制の方は取りやめます。  最後に私は伺いますが、実は私の友人が世話役の委員長をしておりまして、日刊工業新聞の一月三十一日号の「中堅企業政策を見直せ」ということで、私に一つの論説を送ってくれました。ちょうど日経の一月三十日の新聞記事の中で、「資金調達難の中堅企業支援を」というので小松通産次官が記者会見をしておるが、小松次官いわく、「「期待したよりも(景気回復は)はかばかしくない」と語り、景気の回復が足踏み状態にあるとの判断を明らかにした。さらに同次官は金融機関が選別融資を強め、資金の偏在がひどくなってきていると指摘するとともに、資金調達難に陥っている中堅企業資本金五億円程度)の動きを注視して、」大いにこれをひとつ支援しなければならぬと、こういう記者会見をしているのです。  あたかもそれと相前後しますが、この提言は、「安定成長下では資源、公害、立地、輸出市場などの諸制約を受けることなく、日本経済の成長を補完できる産業を見出し、重点的にこれを育成することによって望ましい産業構造に移行することを考えなくてはならないとし、その戦略産業として専門的高度加工産業、ファインケミカル、システムエンジニアリング、ファッション産業、新しい流通産業などの中堅企業をあげ、これらの幅広い発展を促進すべきだと主張。このためには大企業への優遇政策と中小企業政策の谷間にあり、政策上、相対的に不利な立場にある中堅企業政策を見直す必要があるとし、具体的に「中堅企業保険金融制度」の設立も提起している。」、こういったことなんですね。  それで、中堅企業というのは、この中の考え方では、おおむねいわゆる中小企業の枠を越えて、資本金が一億から二十億ぐらいな企業、それで従業員が製造業で二千人、商業で五百人ぐらい、そしてこれはいま申しましたように、「専門的高度加工産業、ファインケミカル、システムエンジニアリング、ファッション産業、新しい流通産業などを中心とする中堅企業の幅広い発展を促進する」、そして「日本経済の主柱である大企業の技術が主として基礎資材の大量生産技術であるのに対し、これらの産業は新しい製品の創出であり、あるいはその製造方法であり、ニーズに対応する技術開発であり、問題を解決するためのエンジニアリングである。」、こういったことを指摘いたしまして、そして「一方、中小企業に対しても税制金融上の手厚い優遇措置がとられてきた。しかし中堅企業は」大企業中小企業との「両者の谷間に置かれ、相対的に不利な立場に置かれてきた。」、こういったところから提案していわく中堅企業保険金融制度、このことについてちょっとお答えを願いたいのです。  「中堅企業保険金融制度——不況に直面した場合、中堅企業の打撃はきわめて大きい。多くの中堅企業は成長の過程にあるため含み資産も少なく「一時しのげば回復できる場合」でもしのぐことができない。そこで、たとえば収益のあるときに申告所得の二−三%、または資本金の五%ていど(最高限度額を設ける)を毎年保険金として専門機関に積み立てて、企業赤字になったとき、その何倍かの金額を無担保で借りて使用できる方法はどうか。」、これが第一。  第二の方は、ひとつ成績大学の武田参考人からお答えを願います。  法人税の問題ですが、「法人税率は東京都の調査によると資本金一億−十億円ていどの企業の税率が一番重い。これを是正するためには大企業、小企業を問わず、最低限の利益に対する基礎控除的考え、たとえば年間所得五億円までの法人税率を三三%とし、これを超える金額に対しては四〇%とするような税率を検討すべきではないか。」。  税率については、小倉参考人からもあわせて御答弁をお聞かせ願いたい。  以上で私の質問を終わります。
  23. 板倉譲治

    板倉参考人 ただいま先生から、中堅企業金融信用保険制度というものを確立したらどうかという御意見が提出されたわけでございます。確かにおっしゃいますように、中小企業につきましては信用保証協会の保証といったような制度が確立いたしております。その他いろいろな対策が講ぜられておるわけでございますが、中堅企業につきましてはその谷間にあって困っているという点は確かにあると思います。その意味で、私ども金融機関といたしましては、中堅企業につきましてもそういう信用保険制度があれば非常に融資がしやすいというふうには考えております。結構な御提案であると思います。  ただ、あるいはこれを設立するのにつきまして財政負担その他の問題もあるかと存じますので、そういう点も考えまして慎重に検討を要することかと存ずる次第でございます。
  24. 小倉武一

    小倉参考人 ただいまお尋ねの法人税率の問題、特に中堅企業についての税率のあり方についてのお尋ねでございますが、法人税につきましては、税制調査会で四十九年に相当詳しく、外国の法人税制ども研究いたしまして検討したことがございますのですが、御承知のとおり法人税につきましてはいろんな問題がございまして、特に大中小といったような、法人税につきましてある程度税率を変えていくということになりますと、まさにこれは法人税のあり方の基本的な問題になるかと思いますので、今後機会あるごとに法人税についてもひとつ検討してまいりたい、かような考え方を税制調査会としてはしておる次第でございます。
  25. 武田昌輔

    武田参考人 簡単にお答えいたします。  東京都の新研究会ですかの計算方法について、若干異論といいますか、若干問題がある点があると思います。したがいまして、中小のちょうど谷間のところが果たして高いかどうか、これについてはもう一度検討し直す必要があると思います。これが第一点でございます。  第二点は、やはり法人税の率を変えるということは基本的には適当でない、かように考えます。
  26. 藤井勝志

    藤井委員 どうもありがとうございました。
  27. 小山長規

    小山(長)委員長代理 次に、田中武夫君。
  28. 田中武夫

    田中(武)委員 主として金融機関関係の四参考人にお伺いいたしたいと存じます。  まず最初に、先ほどもちょっと話が出ておりましたが、公定歩合が数次にわたって引き下げられた。そうして大衆預金金利引き下げた。そこで、市中金融機関の現在の貸出金利はどの程度であるのか。大企業中小企業に分けてひとつ御答弁を四名の参考人から承りたい。ことに中小企業におきましては、その名目金利でなくて、実質金利といいますか、拘束預金を差し引き、あるいはその金を借りるためのいろんな手数ですね、たとえば登記等も含めて、実際に借りた金に対してどの程度の金利になっておるのか。四参考人から順次お答えを願います。
  29. 板倉譲治

    板倉参考人 中小企業に対する金利がどういうことになっているのか、特に実質金利がどうなのかという御質問でございますが、私ども考えておりますのは、金利を決定いたします場合には、その貸出金の資金の使途でございますとか、貸出金の期間あるいはその企業の信用力その他いろいろな要素を勘案いたしまして、ケースバイケースで貸出金金利というものを考えておるわけでございまして、したがいまして、中小企業であるから大企業であるからという企業の規模によりまして金利の区別はいたしておりませんし、そういう考え方も全くとっておらないのが実情でございます。  そういう関係で、従来から中小企業だけの金利がどうなっているかというようなことを出しておりませんのですけれども、昨年の九月でございましたか、一時的に調査をいたしましたものがございますので、これは統計として発表されておりませんので全体のものはわかりません。私どものものをちょっと調べてまいりましたのでございますが、私どもの五十年九月末の計数で申し上げますと、貸出金全体の総平均金利は、当時は八・九%になっております。まだ公定歩合が現在より高い状況でございましたですけれども貸出金の総平均金利が八・九%。これに対しまして中小企業の約定平均金利、これが九・一%になっております。ただ、この統計にはその算出の内容にいろいろなものが入っておりまして、長期も短期も一緒になっております。それから資金の使途別といったような、ただいま申しました金利決定のいろいろな要素が区別してございませんで、全部込めてございます。  それから、総平均金利というのは、これは大企業中小企業も全部入っておるわけでございますが、この中にはたとえば地方公共団体に対する貸し金とか、そういったものも全部含まれておるわけでございまして、したがいまして、一概にこれだけで中小企業金利がどうということは言いにくい点があるかと思いますが、一応の出した数字はこういうことになっております。  それから、御指摘の実効金利がどうなのかということでございますけれども、債務者の預金と申しますのは、これは借入人が自己の金繰りの都合でたくさん置く企業もございますし、そうたくさん置けない企業もございます。いろいろな支払い準備の関係あるいは特定の積み立ての関係で置いているというようなものもございまして、通常の商いの繰り回しのために必要とする最小限度の預金だけを持っているわけではございません。そういう関係で、こういった常に変動いたしております。そして企業のそれぞれの自己の判断で多く置いたり少なく置いたりいたしておりますこの預金を考えまして、それでその預金貸出金と相殺された場合のたしか残った貸出金に対する総収支金利、総支払い金利と総収入金利との差額をそれに掛けたものを実効金利とおっしゃっておられるのだと思いますけれども、そういうような考え方を私どもとっておりませんもので、そういう金利は出しておりません。したがいまして、これは何とも申し上げられませんのでございますし、またそういうふうな考えをとりましても、預金が常に変動いたしておりますし、自発的に非常にたくさん置いておられる、貸し出し以上に預金を置いておられるところもございますし、そういう実効金利というものを出しましても余り実際上の効果がないというふうに考えておりまして、したがいまして算出しておりませんので、申し上げるわけにいかないわけでございます。御了承いただきたいと存じます。
  30. 田中武夫

    田中(武)委員 時間の関係がありますので、要点だけを……。
  31. 伊原隆

    伊原参考人 お答え申し上げます。  約定貸し出しの平均約定金利につきまして、地方銀行は現在十二月末で八・六二四でございます。都市銀行の八・三七五とかいうのに比べてやや高くなっておりますが、これは実は昨年の七月のころは地方銀行金利が一番低かったわけでございます。それがやや逆転をいたしてまいりました。しかし、先ほど申し上げましたように極力金利を減して、低くしていくということに努力をいたしております。  なお、その中の中小企業はどうかというお尋ねでございますが、ちょっと数字を持ち合わしておりませんけれども、八・六二四というのより、これは地方公共団体に対する貸し出しその他も含んでおりますのでやや高め。ただし、先ほど申し上げましたように、中小企業に限りまして緊急融資というふうなものを千三百億もいたしたり、それから制度融資というのがございますが、これらは先ほど申し上げましたように保証料込めて八・九%というふうなこと、あるいは制度融資に至りましては七分から八分というふうなものもございますので、そういうものを平均いたしますと、あるいは中小企業だから特に高くなっておるということはないように思います。  それから、実効金利につきましては、いま板倉さんが申し上げましたように、個々預金の難き方でわかりません。ただし、地方銀行は債務者預金の比率と申しますと、貸し出しと債務者の預金の比率では、金融機関の中で全銀の平均が四一・二九%、それに対しまして地方銀行は三八・七二%でございますから、債務者預金の比率は低い、こういうことを申し上げ得ると思います。
  32. 早坂順一郎

    ○早坂参考人 御存じのとおり、公定歩合は昨年の四月以来四次にわたりまして都合二・五%の引き下げを見たわけでございますが、相互銀行の貸出平均約定金利は、昨年四月から十二月までの九ヵ月間に全体として〇・四二八%の低下を見ております。しかしながら、これは長短、新旧の別なく、すべてを包含したものの平均約定レートの低下幅でありまして、公定歩合に連動しやすい短期貸し出しについて見ますと、割引手形の金利低下幅は〇・六三五%で、手形貸し付けは〇・五六四%の低下で、追随率は大きくなっております。  なお、新規貸出分についての金利統計は残念ながらございませんが、貸出金利引き下げは新規分を中心に行われておりますので、これの追随率はさらに一層大きくなると思われます。  実効金利という場合には、いわゆる拘束預金を問題にするのでありますれば、御当局の御指導を受けて、拘束預金応分につきましては金利措置を講じまして、債務者に対し過当な金利負担とならないよう配慮いたしております。  この自粛金利は、預金金利が下がったときはそれにスライドして引き下げたのはもちろんでありますが、さらに本年一月には自主的な引き下げを実行いたしました。その結果、一件百万円超の貸し出しで、二年定期あるいは一年定期を担保とするものは、預金金利と自粛金利との利ざやがワンポイント、すなわち〇・二五%となっております。しかし、その他のものについてはなおそれ以上の利ざやがありますので、その点は今後とも極力早い時期に引き下げを行うよう努力いたしてまいりたい考えでございます。  また、問題がいわゆる債務者預金となりますと、預金と貸し出しの関係はそれぞれ個々事情によって異なりますので、実質金利は計算できません。しかし、最近相互銀行の平均約定金利は毎月低下しておりますし、債務者預金の比率も上がっていないと思われますので、平均約定金利の低下に相応いたしまして、実効金利も下がっておるものと考えております。  以上でございます。
  33. 小原鐵五郎

    ○小原参考人 お答え申し上げます。  信用金庫の貸付金は、御案内のように、中小企業と申しましても、中小企業の中で大、中、小がございますが、その中の中と小というふうに、どちらかというと零細企業の方が主でございます。それと一般大衆に対する小口貸し付けというのが非常に多いのでございます。そういう関係から、ほかの金融機関よりも金利が幾分高いという面もございますけれども、できるだけ債務者の金利負担を軽減するように努力いたしております。昨年の六月末現在と昨年の十二月末現在との半年間の比較にいたしましても、ちょうどこの金利を〇・一八三%の低下をさせまして、現在九・六一八というふうなことで、これは全部私の方はいま申し上げました中小企業と一般国民大衆に対する小口貸し付けでございますことを御了承願いたいと存じます。  なお、実質金利につきましてどうだというふうなお尋ねでございますが、これはなかなかっかみにくい面でございますので、この点答弁をひとつ御勘弁願いたいと存じます。  以上でございます。
  34. 田中武夫

    田中(武)委員 先日この委員会でも問題になったのですが、たとえば抵当権設定の場合、その費用、登録税からいわゆる登記の諸手続の費用はばかにならぬと思うのです。それをみんな債務者が負担しておるというようなことが問題になったので、そういうものを差し引いた本当の金利は幾らになるか、それが知りたかったのですが、どなたもそういうことは出せないと言っておるのですが、どうですか、大蔵省、それは出せませんか。何か特定のケースをより出して抽出的にやれませんか。どうですか。
  35. 田辺博通

    ○田辺政府委員 先日もお答え申し上げたのでございますけれども、登記の手続のための手数料であるとか、あるいは印紙税の負担であるとか、書類を整備するための手続は、いま、債務者と債権者との要するに約定によって、どちらがどうするというぐあいになっておるわけです。  これを計算してみろとおっしゃるのでございますけれども、ちょっと手がかりがございませんので、平均的にどうだとおっしゃっても、これはなかなか計算はできないのでございますから、何か仮定を置きまして、そういう手数料のたぐいを計算することはあるいはできるかと思いますが、一つの仮定に基づくと思います。
  36. 田中武夫

    田中(武)委員 きょうは時間の関係等で出しませんが、具体的なAとかBとかという個人ないし企業の借りた実例をもって示した場合はやれますね。示せますよ、きょうはやめますが。  そこで、私の申し上げたいのは、大企業中小企業、これは大企業の方がもちろん信用担保力がある、中小企業はそれに対して低いということで、それは若干金利も高くなるであろうと思うのですが、いわゆる実質金利がどうなっておるかということですが、きょうは残念ながらそれが出ないということで、次へ参ります。  これはよそさんのことで、余り好んで言いたくはないのですが、新聞によりますと、現在自民党は五十億銀行から借りておる、百億あったが五十億返した、これは新聞情報です。  恐らくこれは都市銀行であろうと思いますので、都市銀行の方の代表の板倉参考人にお伺いしますが、こういう場合の金利はどの程度ですか、わかりませんか。それは具体的に何銀行が幾らあるかわかりませんが、自民党が借りておる五十億に対して金利はどのくらい出ておるか、わかりませんか。
  37. 板倉譲治

    板倉参考人 個々の取引の問題でございますので、こういう場で申し上げることを差し控えさせていただきます。また、現在私そういった資料も持ってきておりませんので、御了承いただきたいと存じます。
  38. 田中武夫

    田中(武)委員 まあ余りいやらしくなるから私も追及しませんが、一般の金利に比べてどうです。高いですか、安いですか。
  39. 板倉譲治

    板倉参考人 一般の金利よりむしろ高いかと存じます。
  40. 田中武夫

    田中(武)委員 まあそれならそういうことにいたしておきましょう。  次に、銀行のミスによる倒産というのが問題になったのですが、これは先日も私、当委員会で申し上げたのです。朝日新聞の調査した結果でありますが、四十九年一年間に、一たん不渡りの報告をしておいて取り消したといいますか、それが四百十五件。銀行取引停止が、一たん言い渡しておいて取り消したというか、それが百三十三件。その内訳は、いわゆる不渡り報告の取り消し四百十五件のうち、都市銀行が四二%、信用金庫が二五%、地方銀行が一六%、相互銀行が一〇%、信用組合その他が七%。それから銀行取引停止報告の取り消し百三十三件のうち、都市銀行が四四%、信用金庫が一九%、地方銀行が一七%、相互銀行が一〇%、信用組合その他が一〇%というような新聞社の調査が出ておるわけなんです。  それで、大蔵省、どうですか、この数字を、間違いないか、ひとつ確認してもらうように先日お願いしておいたのですが、ちょっと報告願います。結果だけ、簡単でいいですよ。
  41. 田辺博通

    ○田辺政府委員 先日の御質問がございましたので、早速東京手形交換所を通じて過去三年間の概数を調べました。  手形交換総枚数で申しますと、五十年一年間、暦年でございますが、一億四千八百万枚弱、約一億四千八百万枚が交換になっておりますけれども、そのうち不渡り届け出が出ましたものが三十九万二千枚でございます。この三十九万二千枚の不渡り届けの一たん出されましたものが、錯誤による取り消しということで銀行から撤回されましたものが四百五十七件でございます。  四十九年の数字が朝日新聞に出ておりまして、先日御質問があったわけでございますが、これは私ども調べましたところでは五百七十九件でございます。若干数字が違いますが、五十年の数字で申しますと、四百五十七件でございます。これは総手形交換枚数に対しましては、百万枚のうち三・一という数値に相なります。なお、四十八、四十九、五十と取り消し件数自体はかなり減ってまいっております。  その四百五十七件のうち、一回目の、つまり不渡り報告を掲載したものを取り消した、これが三百六十二件でございます。それから、六ヵ月以内にもう一遍不渡りを出しますと、規定によりましていわゆる取引停止ということになりますが、その取引停止報告がなされまして、それを錯誤によって取り消したというものが九十五件ございます。したがいまして、この九十五件というものがいろいろと後でもってあるいは迷惑をかけるというような事態にならないとも限りませんので、とりあえず私どもはその九十五件についてトレースをしてみたのでございますが、この点は後で申し上げます。  なお、いまの錯誤による取り消しのうち、各銀行種類別の数字でございますが、四百五十七件のうち都銀が三四%、地銀が一六%、相銀が一四%、信用金庫が二七%、信用組合その他が九%というような数値になっております。  それで、先ほど申しましたこの九十五件が結局銀行取引停止報告として回報された後に撤回されるというものでございましたが、この九十五件の相手先企業がその後どういうぐあいになっておるかということの追跡調査をやってみたわけでございます。この九十五件中六十五件は、その後不渡り処分というようなものがございません。ですから、そのまま健全に経営が行われていると思います。また、別途不渡りを発生したというものがつまり残りの三十件でございますが、この内訳もございますが、省略いたしまして、これらはいずれも錯誤による不渡り報告が直接原因となっているということではないようでございまして、平素から資金不足で、常に入金のおくれという状態が続いていたようでございます。いずれにいたしましても、錯誤による不渡り届が判明した際には、金融機関は直ちに相手方に対して誠意を持って陳謝をし、そして相手方の取引先企業に対しましては十分釈明をして回るというような措置を講じております。  先日引用されて御質問になりました、朝日新聞に掲載されました某都銀についての係争事件は、これは第一回の不渡り報告が取り消されました事案についての問題でございます。その後二回の不渡りを出して銀行取引停止となったわけでございますが、これにつきましては、双方の言い分があるようでございまして、目下裁判所に持ち込まれておりますので評価は差し控えたいと思います。  そこで問題は、金融機関がこのような錯誤を生じた原因といいますか、あるいはそのケースの種類が問題になるわけでございますが、いろいろな問題がございます。一部にはごく単純な銀行のミス、残高を読み間違えたというようなもの、あるいは口座の振込先を間違えたというようなものがございますが、大部分といいますか、多くのものは、態様といたしましては、手形交換時におきましては預金残高がゼロであった、足りなかった。それを不渡りの手続をします間、ぎりぎりの刻限まで入金待ちをしておる。それで最後になって、また営業時間を過ぎまして持ち込まれたものが、たまたますでに報告を出すべくつくっておりました書類とうまく連絡ができないで、その書類だけ先に行っちゃったとか、いろいろな問題がございます。これらにつきましては、いろいろなお分析いたしまして、今後この防止策について研究したいと思っております。
  42. 田中武夫

    田中(武)委員 そこで、中小、ことに零細企業は、たとえ銀行あるいは金融機関のミスであっても、取引の停止処分あるいは不渡りあたりが発表されると、後で取り消されても、これは死亡通知と一緒なんですね。そこで私は、こういうことを去る三日にこの委員会質問したわけです。その一部が新聞に載ったためだと思うのですが、私の手元へたくさんの投書が参っております。その投書を一つ一つ読み上げて追及をしたいのですが、これはもうやめます。中にはそういうことを種に何とか金融の道を開こうというような人もあるのじゃないかと思いますが、そういういろいろな投書が来ております。これはもうやめますが、そういう点についてどうでしょう。これは大蔵当局も含めて、どういう対策をとるか。何か名案がございましたらお答え願います。
  43. 板倉譲治

    板倉参考人 今後どういう対策をとるかということでございますが、また、現にどういうことを対策としてやっているかということについて御説明申し上げます。  東京銀行協会におきましては不渡手形審査専門委員会というのを毎週開催いたしておりまして、ここでこういった事例の説明、それからこういった事故の防止策の協議を現にずっと続けて行ってきております。今後はさらに、この防止策という点でございますが、この点につきまして特別な研究会を設けまして対策の強化を図ってまいりたいというふうに考えております。さらにまた、一層の注意を喚起するために、取り扱い錯誤防止の通牒をさしあたり出状いたしております。なお、手形交換に参加しております普通銀行以外の金融機関も入っておるわけでございますので、これに対しましても別途合同会議におきまして不渡り事故防止を協議しているということを申し添えておきたいと思います。  次に、各行個別の事情を調べましたところ、ほとんどどの銀行も、こういった不渡りの決定につきましては、これは最重要事項でございますので、すべて支店長権限ということで、支店判断によって決定するという措置を前から講じておる。これが大部分でございます。その他、再鑑と申しますか、一遍人が見たのをさらに別の人が見るというような再鑑といった制度、あるいは電算機によりまして口座番号と名前を連動してチェックしていくということを新しいシステムとして導入しつつございます。これは口座が間違ってほかの口座に入ったというケースがかなりございまして、それが原因になった事故がございますので、そういったことが起こらないように氏名と口座を電算機でチェックしていくというシステムを開発いたしております。  ただ、銀行努力ばかりではこういう問題はなかなか解決がむずかしい。取り扱い錯誤を出さないような環境をつくることも大切であると思うわけでございます。日本では御承知のとおり、諸外国と違いまして手形が決済手段として非常に広く使われております。小切手以上に手形がたくさん使われておるわけでございます。手形の場合には、小切手と違いまして、決済資金が入金された上で手形が振り出されるというのではございませんで、将来お金が入るであろうということを見越して手形があらかじめ振り出されてしまうわけでございます。そういった関係で、手形期日が到来する間際にその予定した金が入らないということがございまして、計画的に決済資金をあらかじめ準備することができないようなことが多いのではなかろうかと思うわけでございますが、決済日になって急いで金集めに奔走するということが少なくございません。ミスが起こりましたものの大部分はやはり当日資金がなかったということが原因になっておりまして、それで非常にごたごたが起こります。まあ弁解にはならないと思いますけれども、そういうことが一つの環境になっておるわけでございますので、今後はなるべくそういったぎりぎりの資金繰りではなくて、若干の余裕を持った資金繰りをつけていただくように取引先の方にもお願い申しておるわけでございます。  いずれにいたしましても、手形交換枚数がいかに多いといたしましても、こういった重大な間違いを銀行が起こすということはどうしても避けなければならないと思っておりますので、この点につきましてはなお万全の措置を進めてまいりたいと考えております。
  44. 田中武夫

    田中(武)委員 参考人さん、簡単にお願いします、時間がないですから。同じようなことだったら、もう右のとおりで……。
  45. 伊原隆

    伊原参考人 ただいまお示しの点は、事務ミスは絶対にいけないということのほかに、こういう不況時で倒産が相次いでおるときに、銀行が間違えて倒産の誘因になったということは最もいけないことでございますので、地方銀行協会でも銀行錯誤による不渡りは最重点項目として注意をいたしております。たとえば私の銀行ども、不渡返還チェック表の制定とか、事務指導役が臨店時に重点指導するとか、この点だけは絶対に起こさないようにということで努力をいたしておりまして、上期、下期を通じて当行などはゼロに相なっておるような次第でございます。
  46. 田中武夫

    田中(武)委員 まだありますか。——特にあれば言ってください。
  47. 早坂順一郎

    ○早坂参考人 特にといってございませんが、私どもの方の銀行関係で一件、銀行のミスによりまして倒産に追い込んだようなケースがあるのでございます。それで銀行協会といたしましても、いままでは余り内容にタッチしておりませんが、積極的にタッチいたしまして、両者和解、なお今後倒産の起こらぬような方法ということで防止策を講じつつあるのでございます。  以上でございます。
  48. 小原鐵五郎

    ○小原参考人 お答え申し上げます。  不渡りを出すか出さないかということは、企業にとって大変重大な問題であります。そういったような観点からいたしまして、こういう間違いのないようにということで、信用金庫業界といたしましては、昨年からノーミス運動というものをやっておりまして、全国の信用金庫に対しまして、こういう失敗のないようにひとつ皆でもってやろうじゃないかということで、そういう運動をしておりますので、将来こういうことのないように努力しているということをひとつ御了承願いたいと思います。
  49. 田中武夫

    田中(武)委員 実は時間の関係で、一問一答でお伺いしたいと思っておったのですが、どうも時間もありませんので、ずっと意見を並べて、後で御意見を聞くことにいたします。  実は私、ここに信用金庫、具体的に言うなら日新信用金庫です、これの取引約定書、それから主要銀行の取引約定書を持っておるのですが、これは全く同じなんです。恐らく他の金融機関も余り変わりないと思うのですが、この約定書を見ますと、私が見ればずいぶん過酷であろうと思われるようなことが書いてあります。たぶん同じだと思いますが、信用金庫及び地方銀行も一緒ですが、ことにその五条に「期限の利益の喪失」という項がございます。それが一項、二項と分かれておっていろいろ書いてありますが、二項の三号に「その他債権保全のため、とくに必要と認められるとき。」こういう規定があります。これを発動するならば、いっでも金融機関の思うままに期限の利益の喪失ということを発動することができます。さらに、七条に「差引計算」すなわち相殺規定があります。これによりますと、期限のいかんにかかわらずいつでも相殺することができる、そういう規定があります。それは、私は理論的に法律的にこの間ここでやりましたが、一口に言うならば、これは強い立場の金融機関が、借りなければもうどうにもならないという弱い立場の、ことに中小企業に対して、これに判を押しなさい、でなければ金を貸すことができませんと言われると、押さざるを得ないのですね。そこに本当の合意があったのかどうか。いわゆる契約自由の原則から言っても、私は真の合意があったとは考えられない。いかに契約自由の原則云々と言っても、これに判を押しなさいと言うのは、これは取引上の優位な立場を利用しての取引だと思うのです。  そこで、さらにこのことについて問題は、当事者間だけでなくて、その中小企業と取引をする善意の第三者であります。善意の第三者は、拘束預金あるいは預金がこれだけあるということで信用をして金を貸す、あるいは取引をする。ところが、その善意の第三者が知らないうちに、その金融機関がいま言った条項でいつでも思うように相殺規定を発動することによってパアになる。不測の損害を善意の第三者に与える危険が多い。先日、この委員会においてその一つの事例を示しました。そして大蔵省にその調査を依頼いたしました。それは、兵庫県に本社のある日新信用金庫であります。そのことについて後ほど調査結果を簡単に言っていただきたいのですが、同時に、この善意の第三者がこうむった不測の損害に対して何らかの救済方法を考える必要があるのではないか。  それで、実は試みにあのときに挙げましたのは、日新信用金庫と取引をしておる兵庫県尼崎のS運輸という名前で申し上げました。大蔵省の方へは実際の名前を言うてあります。そして、それを信用して貸した善意の第三者を加古川のI運送と申し上げます。これも名前を言うてあります。そのI運送が一千百七十四万六千三百円という手形をS運輸に対して切った。手形融資をしてやった。それがパアになって、そして調べに行ったら、いや、もう相殺でゼロですということで全然わからない。そこで、依頼して調べてもらった結果は後で言ってもらいますが、同時にそのI運送の取引金融機関を調べたら、播州信用金庫、姫路信用金庫が主であります。それから阪神相互銀行とも取引があるようであります。したがって、そういうのに対して何らかの救済方法をそれぞれの金融機関、あるいはこの場合は信用金庫協会あるいは相銀の協会等々でひとつ考えてもらう必要があるのではないか。同時にまた、大蔵省もそのような御指導を願いたいと思う。それからまた通産省も、そういったことによる関連倒産等があるとするならば、これは通産省の立場からも何らか救済の方法を考えてもらう必要があるんじゃないかと思うのですが、それぞれに、いまのことについて何かありましたら御答弁を願いたい。
  50. 小山長規

    小山(長)委員長代理 まず事実関係から。田辺銀行局長
  51. 田辺博通

    ○田辺政府委員 先生から資料をいただきました日新信用金庫とS運輸との取引の状態を調査をいたしてみました。先日お渡しいただきましたI運送のお手紙によりますと、十一月二十五日に相殺されているということでございまして、確かに十一月二十五日に貸し出しと預金が相殺されておりますが、この前の十一月十日に、相手先のこのSの状態が芳しくないということを察知いたしまして、それまで非拘束でありました定期預金に対しまして質権を設定いたしております。つまり拘束預金になったわけでございますが、相殺直前の状態を申し上げますと、貸出金が五千百数十万円に対しまして預金が千二百万円、これはほとんど全額が拘束されております。それで、翌十一月二十五日にこれを相殺をいたしまして、金利等の関係がありますので必ずしも計算がぴたりと合いませんが、相殺日におきましては貸出金が三千五百数十万円ございまして、預金はなし、こういう状態になっております。  なお、あのお手紙によりますと、十二月の二十五日にI氏が来店をされておりますが、そのときにお聞きになりましたその当時の状態を見ますと、貸出金がやや減っておりまして三千百数十万円、預金はなし、こういう状態でございます。
  52. 田中武夫

    田中(武)委員 小原さん、何かありますか、このことについて。
  53. 小原鐵五郎

    ○小原参考人 この問題、ただいま初めて伺うのでございまして、私存じませんものですから、よく調べまして善処したいと思います。
  54. 田中武夫

    田中(武)委員 時間の関係で簡単に申しましたが、時間が許されるならば、私はもっと理論的に、法律的に申し上げたいのです。  いずれにいたしましても、他の金融機関もそうだろうと思うのですが、取引約定書の、ことに五条とか七条あたりは検討する必要があるのじゃないかと思うのです。この間これを問題にしたときには、大蔵省は乱用を防ぐ、こういうように言っておりましたが、善意の第三者に及ぼす影響は大きいですよ。最高裁の判例もあります。時間がないので法律的なことはやめますが、どうでしょうか、ひとつこういう点について検討なされる用意はありませんか。これなら生殺与奪の権利を金融機関が握ったのと一緒ですよ。ことに善意の第三者に及ぼす影響は大であります。参考人の方、特に御意見がありますか。ぜひ検討をし直していただきたいと思いますが、いかがですか。
  55. 板倉譲治

    板倉参考人 銀行取引約定書でございますが、これは昭和三十七年にできたものでございます。十年経過いたしておりますので、内容の見直しにつきましては四十六年、ちょうど五年ほど前から全国銀行協会連合会の法規部会の検討項目になっております。この取引約定書自体は検討項目になっておるわけでございます。  この見直しに当たりましていろいろな点を取り上げていくと思います。たとえば約定書の形式をどうするかといったようなこと、あるいは企業向けと個人向けの約定書を変えた方がいいかどうかといったような問題、それから各条項のあり方などについても全面的に検討いたしてまいることにいたしております。ただ、先生のおっしゃいましたただいまの条項がどうなりますか、私ちょっと存じませんので何とも申し上げられません。
  56. 田中武夫

    田中(武)委員 他の金融機関で特にありますか。——全面的に検討する、しかし私が指摘した二点についてはどうなるかわからぬ、こういうことですが、私は特に関係があったから調べたのですが、五条、七条なんというのはちょっと考えてもらう、あるいは運用に歯どめをかける必要があると思うのです。特に御意見ありましたら……。
  57. 板倉譲治

    板倉参考人 先生のおっしゃるとおり、運用につきましては確かに慎重を期する必要が十分あると思っております。ただいまの「その他債権保全のため、とくに必要と認められるとき。」という条項でございますが、これにつきましては、もちろん従来から銀行が主観的に勝手に認定いたしておるというような事実はございませんで、客観的に肯定できる事由がある場合にこういうものが発動されているということでございます。従来からこの運用に当たりましては、権利の乱用と申しますか、専横のそしりを受けないようにしなければいけないということで、細心の注意を払ってやってきておる次第でございます。
  58. 田中武夫

    田中(武)委員 いま言ったそういう条項発動のために不測の損害を受けた、この場合はI運送ですが、これに対して、中小企業倒産と言ったらあるいはI運送に悪いかもわからぬが、倒産する状態ではないかとも思いますが、いま挙げたような取引金庫等があります。それに対して通産大臣どうです。中小企業倒産という立場から何かお考えがあったら御指導を願いたい。同じことを大蔵大臣も……。
  59. 河本敏夫

    ○河本国務大臣 倒産をできるだけ防止するということは当面の最大の課題でございますが、いまお述べになりましたようなケースで、善意の第三者に影響が出てくる、こういう場合には、やはり政府としてもできるだけのお世話をしなければならぬ、こう思います。たとえば、政府系の中小企業金融三機関等を動員いたしまして、実情に応じて善処したいと思います。
  60. 大平正芳

    ○大平国務大臣 定款が債権の保全を預金保護のためにやらなければならぬことは御理解いただけると思いますけれども、それが大変行き過ぎたことになりまして、債務者に不測の損害を与えるというようなことになりますと、約款の運用として遺憾なことでございます。したがって、この乱用を極力慎まなければならぬことは当然でございますが、同時に、長い得意先といたしまして、相互の信頼の上に立ってどこまでも経営上の御相談に親切に乗るという態度に終始していただいて、この約款は最後のよりどころ、ぎりぎりのラストリゾートというところでなければ、軽々にこれに依存するようなことではいけないと思います。そういうラインで、私どもも厳重に行政指導をやってまいるつもりです。
  61. 田中武夫

    田中(武)委員 善意の第三者の不測の損害に対する救済方法は……。
  62. 大平正芳

    ○大平国務大臣 これは個々のケースによりまして、政府が責任を持つべきものかどうかということにつきましては、にわかに私ども結論が出ないわけでございますけれども金融機関がどのようにまず対処をいたしますか。それは金融機関判断にまたなければならぬと思います。しかし、その判断が適正なものであるかどうかということについて金融機関判断が出ますれば、それに対して政府が妥当なものであるかどうかということを問われれば、その段階におきまして政府見解を申し述べるべきものと思います。
  63. 田中武夫

    田中(武)委員 別に国家賠償を言っているわけじゃないのですよ。そこで小原さん、信用金庫同士ですから、具体的な名前等は大蔵省の方へ渡しておきますが、よく内容を聞いていただく。それから、相互銀行にも関係がありますから、十分相談をして、何らかの救済方法を考えてもらいたいと思います。また、大蔵省もいまおっしゃった線に沿って指導してもらいたいと思います。  もう時間があとわずかですから、続けて二問お伺いします。  一つは、金融機関の守秘義務、いわゆる秘密を守る義務について。これは法律的には相当問題があります。いわゆる道徳的か法律上か、あるいは法律上といっても契約説とかあるいは商慣習説とか信義則説とかあります。しかし、そういう問題をいま論議しようとは思っておりません。皆さん方がその守秘義務についてどの程度把握せられ、その限界をどのように考えておられるかをお伺いいたします。と申しますのは、この事案につきましても、行ったときに、幾ら拘束があって、幾らこうあってと、いま銀行局長が答弁したようなことを言うてやれば、少しは納得したと思うのです。ところが、全然何も言えぬということで、これは日新信用金庫ですが、そういうことで説明もしてやらなかったから、ますます不安になって、私どものところへ相談を持ち込んだというケースなんです。したがって、守秘義務についてどう把握し、その限界をどう考えておられるか。  もう一つは、金融機関はいわゆる公器なんです。公共企業とでも申しましょうか。したがって、その社会的責任は大きいと思います。その社会的責任について、それぞれの代表の方はどのように把握をしておられますか。  この二点について、それぞれから御意見を承りたいと思います。
  64. 板倉譲治

    板倉参考人 銀行の守秘義務をどう考えているかということでございますが、これは銀行に慣習として長年定着いたしておりまして、私どもといたしましては、簡単に申しますと、やはり法的な義務の一つであるというふうに考えて、行動をいたしております。これは、いろいろこれに優先する法的なあるいは行政指導上の問題がありますれば、守秘義務を越えて申し上げるということはあるかと思いますが、普通の第三者に対しましては、一般に申し上げられないということでやってきておるわけでございます。  それから、銀行の社会的責任をどう思うかという御質問でございますが、銀行は大勢の預金者から大切な御預金を預かっておる金融機関でございますので、やはり預金が払い出せないというような御迷惑をかけるようなことがあっては何よりいけないわけでございますので、その意味で、何よりも健全経営に徹していかなければいけないということを考えております。それから、銀行は信用の仲介機関をなしております。一国の信用秩序の中核に位しておるわけでございます。そういう意味で、信用秩序の維持、発展を守っていかなければならないというふうに考えております。さらに金融機関は、集めました資金を国民経済、国民の生活安定、向上に役立つように有効に、適切に使用していかなければならないというふうに考えております。  以上が一番基本的な銀行の社会的な責務であるというふうに考えておりますが、一言で言えば、銀行自体の業務を通じて社会に奉仕していくサービス業であるというふうに考えておる次第でございます。
  65. 伊原隆

    伊原参考人 ただいまの守秘義務につきましては、板倉さんからお答えのとおりでございまして、銀行は、一般的にはお取引先の様子を他にお知らせするというふうなことはしてはいけないという考え方でございます。ただし、先生のおっしゃいましたように限界があるんじゃないかと思いますので、何でもかんでも秘密ということでいいかどうか。むしろこういう時期には、銀行はこういうことをしておるということを一般にわかっていただくというふうなことが必要な時代ではないかとわれわれは考えております。  それから、第二点の銀行の社会的責任でございますが、一般的な問題はいま板倉さんのおっしゃったとおりでございますが、地方銀行といたしましては、地域に奉仕をして、地域とともに発展をしていくという理念を持っております。現段階におきましては、不況を何とかして克服するために、地元の企業と支え合い、あるいは助け合ってまいりたいというのが現在の心境でございます。
  66. 早坂順一郎

    ○早坂参考人 銀行の守秘義務につきましては、お二人からすでに申されましたので、ほとんど変わりございません。  それから、社会的責任ということでございますが、これは最も重大な問題でございまして、金融機関経済社会において果たしておるところの役割りの重要性からいたしまして、私ども金融機関のいわゆる社会的責任は、他の一般企業に比べまさるとも劣るものでないということを自覚しております。私ども相互銀行といたしましては、基本的には相互銀行法の第一条に定めるところの「国民大衆のために金融の円滑を図り、その貯蓄の増強に資する」ことを目的に、その機能、役割りを十分に発揮していくことがみずからの社会的責任を果たすものであると思量いたしておるのであります。  また、社会的責任を果たすということにつきましては、現下の国民福祉推進の見地から福祉金融の面、たとえば住宅金融を中心とした個人金融か零細企業金融、あるいは地方公共団体などへの貸し付けに今後大きくウエートをかけていかねばならないと考えております。この点、私ども相互銀行業界といたしましては、従来より個々相互銀行において、個人向け住宅金融を積極的に行っているほか、三年半ほど前より、相互銀行七十二行が共同事業として、相互銀行住宅ローンセンターの創設をいたしまして、この面を通じましても国民の皆様方の住宅資金需要等にできる限り応じる体制を整えておるのでございます。また、地区ごとに相互銀行共同信用保証会社を設立いたしまして、個人の信用を補完することにより、住宅ローンや庶民ローンの円滑化を促進する体制を整えつつあるのでございます。  以上でございます。
  67. 小原鐵五郎

    ○小原参考人 金融機関の本来の社会的使命をよく果たすということが基本であろうと考えております。この意味で、経営の健全性を維持し、預金者の保護に万全を期することにまず心がける必要があると思われます。これと同時に、その資金を国民経済的な観点に立って適正に供給するよう留意することも大切で、信用金庫といたしましては、そのビジョンといたしておりますのは、中小企業を健全に育てること、国民大衆の生活を豊かにすること、地域経済の発展に協力し、住民の幸せに奉仕するという考え方に立って、その資金を利用者の立場を考えながら安定的に供給することであろうかと存じております。  ことに 御案内かもしれませんが、信用金庫は、先ほど申し上げましたビジョンの中で、生活の安定ということで、いままで三千六百万もいる一般サラリーマン金融というものがどうも完全でなかった、この面を何とかしたいということで、昨年からサラリーマン金融の面で心配を始めたのでございますが、これが最近非常に成績よく、数も多く、それから金額も相当の残高になっているということをお答え申し上げておきます。
  68. 田中武夫

    田中(武)委員 時間が来たのでおきますが、最後に一言だけ要望を申し上げておきます。  と申しますのは、守秘義務と公共企業というこの二つの上に立って、守秘義務は絶対ではない、公共のため等々についてはそれが優先するということ、したがって、守秘義務についてもそのときどきにやはり相手に不測の疑惑あるいは不測の損害を与えないようにひとつ考えてもらいたい。  もう一点は、先ほど申しましたように、具体的に挙げた例について救済方法を関係金融機関で御相談願いたい。  二つを要望しておきまして、終わります。
  69. 小山長規

    小山(長)委員長代理 参考人各位にはまことに恐縮でございますが、午後三時三十分に再びお越しくださるようにお願いいたします。  午後三時三十分より再開することとし、この際、休憩いたします。     午後零時十分休憩      ————◇—————     午後三時三十三分開議
  70. 小山長規

    小山(長)委員長代理 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続行いたします。小林進君。
  71. 小林進

    ○小林(進)委員 おいでいただきました参考人方々に申し上げますが、きょうは集中審議の二日目でございます。集中審議というのは、公聴会と違いまして、公聴会というのは公述人の皆さん方に貴重な御意見を拝聴するというのが公聴会でございますが、集中審議というのは一昨年から初めて国会の予算委員会に設けられた新しい一つのやり方でございまして、その年における最も特異な現象をとらえまして、これは一体どこに原因があるのかというようなことを国民に成りかわって解明をしていこうということでこの形が設けられたのでございまして、今年は三年目でございます。ことしのテーマは、もう御承知と思いますが、不況雇用という問題でございまして、この驚くべき不況はどこが一体原因で起こったのか、その不況のためにどうしてこういう雇用者が失業の中に泣いていかなければならぬのかという、これをひとつ国会の場で、予算委員会の場で追及をしようじゃないかということで設けられたのでございます。  きょうは二日目でございまして、金融関係の代表者の皆さん方においでいただきました。その意図するところは、こうした大きな不況と失業の中に金融機関はぬくぬくと利益を上げているじゃないか、中小企業倒産に対しても少し金融機関は冷淡過ぎるのではないか、勤労者の貯金や目減りの上に乗っかって黒字経営をしていらっしゃるのは、これは少し考えものではないか、国からの過保護ともいうべきもろもろの法律上の保護を受けていらっしゃる、これでよいのかどうか、国民の立場でこういう疑問を投げかけて、ひとつ金融側のあるいは関係者の皆さん方の率直な御意見を承りたいということが二日目の集中審議の目的でございまするので、この点をひとつ御理解の上に、率直に御意見をお聞かせ願いたいと思うのであります。  でありまするから、私の限られた時間はまことに短いのでございまして、私は金融関係に関するもろもろの問題を駆け足で申し上げます。決して明快な回答を得ようというのではございません。皆さん方のお考えをお聞きすればよろしいのでございます。  まず、金融の上から見た不公正と不公平に関する問題でございます。ここにも資料がございますが、全国銀行銀行勘定業種別貸出残高表、五十年の九月、これは日本銀行の発行の調べでございますが、これによりますと、五十年度の貸し出しの残高が八十四兆六千四百九十二億円でございます。貸出先の数が六百二十四万百四十三件でございまして、その中で資本金一億円以下に対する貸し出しの残高が二十八兆三千百七十七億円、件数にいたしまして二百五十万六千八百七十九件でございまして、この件数では一億円以下は四〇・一%を占めておるのでございますが、残高は三三・四%でございます。これに対して資本金十億円以上の貸し出しの件数は幾らかと言えば、わずかに四万二千五百七十四件、件数においては一%にも達しない、〇・六%にすぎないのでありますが、その残高は三十四兆八千五百三十三億円であります。まさに貸出残高の四一・一%を占めているという状況でございます。  この数字の上からも明らかなごとく、まさに皆様方の金融はこの〇・六%の大企業、十億円以上の資本金のために金融はあるとわれわれはとらざるを得ないのでありまして、ここに金融の二重構造というものが明らかに浮かび出ているのであります。すなわち、大企業中小企業者に対する差別的形があらわれていると見なければならない。具体的には借り手企業の規模別金利格差に代表される貸付条件の差別化であります。貸付条件の差別化。第二番目は、静態的には銀行の特定大企業に対する集中融資や人的交流による癒着関係ないし系列化であります。系列支配。こういう形が明らかにあらわれている。この未曽有な不況の中で倒れかかっている中小企業者に対する皆さん方の親切な形は、この計数の中にはあらわれてこないのであります。これを一体、これは午前中にも質問が出ましたが、やむを得ないものとお考えになっているのか、あるいはこれはやはり金融業者としては適当なんだというふうにお考えになっているのか、あるいはいささかでもこれを改革するという御所見をお持ちになっているのかどうか。各金融業者を代表しまして都市銀行板倉さんから御意見を承っておきたいと思います。
  72. 板倉譲治

    板倉参考人 中小企業に対します貸し金と、大企業に対しますあるいは中小企業以外の企業に対する貸し金の割合がどうなっておりますか、ただいま私、手元に持ち合わせてきておりませんのですが、大体貸し金は資金の需要に応じて出されておる関係がございまして、従来、昭和三十年代には、たしか重化学工業化ということで、わが国の大企業によりますところの高度成長が続いたわけでございます。したがいまして、そのときには比較的、全国銀行の計数をとりましても、中小企業に対します融資比率よりか大企業に対します比率の方がかなり高かったわけでございます。その後、昭和四十年代になりまして、だんだん大企業の発展に伴いまして中小企業の方が発展してまいりまして、そういう関係中小企業金融の比重がふえてまいっております。それで現在、全国銀行といたしましては、大体大企業が六〇%、中小企業が四〇%というような数字になっているかと思うわけでございます。この比率が適正であるかどうかということでございますが、これは国民経済に占めます中小企業と大企業の生産、売り上げの割合が一体どうなっているかということに基本的には基づくものではないかというふうに私ども考えております。そういう点から考えますと、政府系の金融機関も含めました全金融につきまして、中小企業に対します貸し出しとそれ以外に対する貸し出しの割合を見てみますと、現在ほぼフィフティー・フィフティーぐらいになっているのではないかというぐあいに私ども理解いたしております。  それから、生産、売り上げという数字をとってみましても、中小企業中小企業以外の生産、売り上げの割合は、大体同額のような姿になっております。そういうところから見まして、この中小企業と大企業との割合は、ほぼその生産活動に応じて配分されておるというふうに私どもは考えておる次第でございます。  私ども、決して大企業のみ優先して貸し金を取り扱い、中小企業の方は冷遇するというような考え方は毛頭ございません。中小企業の方がどちらかと申しますと、——どもの商売の実情を申しますと、中小企業の方が私どもの競争が激しい、中小企業との取引の方にむしろ私ども最近は非常に重点が向かっておりまして、そっちの面の方がはるかに競争が激しいというのが実情でございます。  さらに、今後とも中小企業はわが国においてさらに発展していくと思われます。そういう意味で、私どもといたしましても、さらに今後は中小企業の方にこの融資の重点を移していくように努めることになると思いますし、現実にそういうふうにいたしておるつもりでございます。  以上で、答えになりましたかどうか、不十分かと思いますが、一応以上で終わらせていただきます。
  73. 小林進

    ○小林(進)委員 時間もありませんし、私の考えに同調していただく必要もないのでございまして、ただ金融機関のそれぞれのキャップとして御意見さえお聞かせいただければいいのでございます。賛否は私が後で決めますから、どうぞ……。  次に、これはやはり国民の側から金融機関に対する疑問点の一つでございます。それは、金融機関は自由主義経済を守るという基本に立っている、こういうことがしばしば言われておるのでありまして、板倉さん、これはこの前も、公聴会においでいただいたときにもそういう御発言がございました。自由主義経済というものは、古典的であろうと新しい解釈であろうとも、言いかえれば国家権力から保護を受けない、国家権力のらち外にあって自由奔放にみずからの経済活動をやりたいというのが、自由主義経済のこれは原則であります。そういうことから見るならば、言葉では金融機関は自由主義経済とおっしゃるけれども、その実情は、これくらい国家の保護を受けている、権力の保護を受けている企業はないというふうに私は解釈をしているわけでございます。  それは第一番には、これもしばしばこの中で言われたことでございますけれども、貸し倒れ引当金だのあるいは退職給与引当金だの、価格変動準備金だのその他の引当金等、これは皆税金なしに国家から保護をされている積立金でございますが、貸し倒れ引当金だけを見ましても、ここには日銀の経済統計月報五十年の十二月号がございますが、これだけでも、全国銀行の貸し倒れ引当金が驚くなかれ一兆二千六百十一億円であります。銀行は何にも担保なしに貸し付けていらっしゃるわけではないのであります。ちゃんと、取り立て不能の場合にはそれに該当する担保をお持ちになっているから、五億円あるいは十億円の貸し倒れはあったとしても、この引当金に見合うような貸し倒れが生じた例はいままでもないはずであります。その中に、一体一兆二千六百十一億円などという膨大なこういう金を無税のままに積み立てておくような、こういう保護を受ける価値があるのかどうか。あるいは退職給与引当金にいたしましても、驚くなかれ四千八百七十七億円、これは昭和五十年十一月現在で四千八百七十七億円であります。この退職給与引当金だって、これは全社員の半分が同時に退職するまでの見込み額まで対象額から除外をされているということでございまして、お互いに皆さん方の銀行から半分が同時に職員が退職するなどということは、これは非常識きわまる前提だ、そういう前提の上に立って、こういう大きな金を、これは準備金としておありになって積み立てていらっしゃるのでございますが、こういうものの課税を強化しろと言うのではない、まあ常識並みにこれに税金をかけていけば、私は一兆円や二兆円の税金をすぐ取り上げることができると思っておる。大蔵大臣、眠たいような顔をしていらっしゃいますけれども、ちゃんと聞いていらっしゃるかもしれませんが、何も七兆円も八兆円も、そんな赤字公債や何やら、特例法などお出しにならなんだところで、こういうところから徐々に問題を解決していけばいいのではないかと私は思っておる。なおそのほかに、引当金と称して、その他の引当金だけでも、これは二千十九億円が無税で積み立てられているわけでございます。そのほかに、法定準備金として資本準備金が一千三百六十九億円、利益準備金が三千五百十六億円、こういうふうに幾重にも、準備金とか引当金とかいうものの法律の保護をお受けになっていらっしゃるわけであります。  私は、こうした企業の優遇措置による減税、これを全部やめいとは言わぬけれども、縮小しただけでもこっちの方から三千億円や五千億円の税金はいまでも取れると私は思うのでありますけれども、こういうふうな手厚い税法上の恩典を受けておいでになりながら、私どもは自由主義経済を守るのだ、国家の保護も受けなければ干渉も受けない方がいいのだ、こういうふうなことを一体自信を持って言っていらっしゃるのかどうか。  私はどうも日本金融機関、まあそれば金融機関だけではありません、大企業を含めて日本株式会社、外国人は日本は株式会社ということをよく言うのでございまするけれども、本当に皆さん方は、いわゆる自由主義の経済をそのまま実行していらっしゃるという自信をお持ちになっているのか、確信をお持ちになっているのか。どなたでもよろしいと言っても、これはやはり都市銀行が一番兄貴分でございましょうから、板倉さんからひとつ御所見を承っておきたいと思うのであります。
  74. 板倉譲治

    板倉参考人 いろいろな引当金で銀行が特別な保護を受けているのではないかという先生の御指摘でございますが、貸し倒れ引当金あるいは退職給与引当金、その他の引当金につきまして、私どもこれは特別な保護というふうに理解をいたしておりませんのでございます。  貸し倒れ引当金につきましては、確かにいろいろ議論があるように伺っております。従来の貸し倒れの実績が非常に少ない、そのわりに貸し倒れ引当金の無税積立率が多過ぎるではないかという御意見があるということは承っておるわけでございますが、従来の日本経済が順調に高度成長をしてまいりましたときには非常に貸し倒れも少なかったわけでございますが、しかし、いつでもこういう順調なときが続くとは限らないわけでございまして、何十年に一度かは大変な経済状態というものも起こり得るわけでございます。貸し倒れ引当金と申しますものは、評価性引当金でありますと同時に不時の偶発的な損失に対する準備金であるというふうに私ども理解いたしております。いつも申し上げることでございますけれども、関東大震災のときあるいは昭和二、三年の金融恐慌のときには、千分の四十くらいの貸し倒れが現実に発生いたしております。そのときには貸し倒れ引当金という制度がございませんでした関係で、この損失が金融機関の資産の欠缺としてそのままあらわれてまいりましてああいう金融恐慌が起こったというふうにも考えられるわけでございます。そういう意味で、特に最近の情勢を考えますと、非常に企業の業績が低下いたしております。企業赤字が多いということは、それに見合う銀行貸出金がその赤字見合いになっているということでございます。銀行貸出金はすべて担保つきというわけではございません。全体の金額の中で担保がついております方がむしろ少ないのではないか、はるかに少ないというふうに私は理解いたしております。  そういう関係で、銀行の資産内容が、今後こういう不況が続きますと、どういう事態になってくるかわからないというような情勢でございます関係で、私どもといたしましては、やはり現在の千分の十あるいは千分の九・五といったような、その程度の引当金はどうしても必要であろう。外国の例を見ましても、アメリカでは千分の十八の積み立てが認められております。諸外国でも大体千分の七、八が認められておるようでございます。そういう点から考えまして、日本銀行だけが特に不当に保護を受けているというふうには私ども考えておらないわけでございます。  さらに、退職給与引当金につきまして、確かに先生指摘のように、銀行は一〇〇%の積み立てをいたしております。そのうち五〇%が無税でございまして、五〇%は有税ということで、有税積み立ても行っておるわけでございますが、この点は、企業の会計原則という面から申しまして、できれば企業はすべて一〇〇%積むことが望ましいという考え方になっているというふうに私ども理解いたしております。そういった関係で、統一経理基準の方針といたしまして、金融機関としては一〇〇%を積み立てているということでございます。  以上のような点から考えまして、私ども、こういった税制の面で特別な優遇を受けておる、それが自由主義経済に反するのではないかという御指摘につきましては、私どもの方といたしましては、そういう感じを受けておらないということだけ申し上げさせていただきたいと存じます。
  75. 小林進

    ○小林(進)委員 のど元過ぎれば熱さを忘れるという言葉もあるぐらいでありまするし、あんまりどうも温室の中にぬくぬく入っておりますと、世の中のありがたみさえわからぬと思うのでございまするけれども、世の中には、企業というものはそれば幾万、幾千万もあるのでございます。しかし企業というものは、全部、申し上げるまでもなく、これは一つの危険は自己において負担する。それは、しがない、大道で店を張っているものも、それは一つ企業であり商売であるからには、必ず危険というものはついて回るのですよ。当たれば成功するだろうし、見込みが違えば失敗するだろうし破産もするだろう。しかし、そこに、自由主義経済というか、企業のまたおもしろさがあるのであります。その企業の自己危険負担の中で、金融資本だからということだけで、こうやって政府から特別の保護を受けなければならぬ理由は、皆さん方から見ればあたりまえでしょうけれども、その他の一般の自由業者や自由職業に従事している者から見れば、やはり大変それは納得できない皆さん方の理屈なんです。  私はまた申し上げますけれども、一体銀行が四〇%も五〇%も大きな損失で破産をした——震災でやられたと言うけれども、それは古きいにしえの物語であって、いまわが日本の独占の中に、ここらにいらっしゃる自民党政府や内閣が一体皆さん方をつぶしますか。新しきときには、山一証券なんか、一つの証券会社も、倒れそうになれば、国の税金をどんどん追い込んで、ちゃんと助けているじゃありませんか。そういう中で、古い昔物語をして、私はこういう政府の保護を受けているのは決して恩典だとは思わないなどという主張は、少し私は、その世間の目というか大衆の目を恐れざる、思い上がりの言葉ではないかと感ぜざるを得ないのでありまして、私は、それは危険負担のために、その危険に備えて、それは何兆円の金を皆さん方が引当金のために貯蓄なさるのは一向差し支えないのであります。二兆円が、現在まあ恐らく二兆円くらい引当金がありましょうけれども、五兆円になろうと、十兆円になろうと、それは構わない。それを引当金と称して政府の保護を受けて、税金をまけてもらっているという、私はそれを言っているのだ。それを過保護ではないかと言っているのでございまして、まあ時間もありませんから言いませんけれども、七十五国会でわが党の阿部委員が、ちゃんとこれは例を出して言っております。もう時間もないから駆け足で言いますけれども、「四十八年下期で、都市銀行の貸し倒れ額はほとんど数字にあらわれていないのであります。三木総理、これをごらんになっていただけばよくわかります。銀行全部ですが、この太陽銀行のところをごらんになってください。たとえば太陽銀行の場合は、貸出金が三兆一千九百七十四億円、これに対して貸し倒れ額は千三百万円」これに対して貸し倒れ引当金、引当金で無税で貯金しているのが四百三十億円だ。四百三十億円無税で貸し倒れ金に当てて、その中で実際に倒れたのは千三百万円、スズメの涙じゃないか。それであなた方は、あとはそのかわり引当金と称して、それをどこかでこの無税の金を皆融資をして、二重にも三重にももうけていらっしゃるでしょう、とは言いたいけれども、そこまでは推定ですけれども、まあそういうような、私は金融機関が保護を受けていらっしゃるという事実に対して、皆さん方はどうお考えになるかと言うのでありますが、いや、これはあたりまえだ、ちっとも恩典だとは思わないという御返事をいただきましたから、これはこの点でひとつ終わりにいたしまして、時間もありませんから次にいきます。  私は、次に、税の不公平の問題を、これはいまちょうどいみじくも租税特別措置法、けちくさい租税特別措置法の改正案をお出しになりまして、いま本会議でやっと通してきたばかりでございまして、それによれば、三分の一を縮小し……(「提案があっただけだ」と呼ぶ者あり)趣旨説明であります。まだ通ったわけじゃありません。提案をして、三分の一を縮小し、新しく四項目を加えて百八十九項目のいわゆる特別措置法をお出しになった。なかなかけちくさい改正案でございますが、そんなことをやっていると時間がありませんからいきますけれども、その中には、私は時間があればこれは全部読み上げたい、企業に対する税制上の措置について。  まず、法人税法の規定によるものの特例だ。  1は、受取配当等の利益不算入。2、各種引当金。——急いでいきますから……。貸し倒れ引当金、返品調整引当金、賞与引当金、退職給与引当金、特別修繕引当金、製品保証等引当金。3が欠損の繰り戻しによる還付。  二が租税特別措置法の規定によるもの。  1、特別償却。まず特定設備等の特別償却で、公害防止設備、無公害化生産設備、工業用水道の転換設備、労働安全衛生設備、廃棄物再生処理設備、省エネルギー設備、製品安全検査設備、民生安定機械等、電子計算機、特定鉄道設備、原子力発電設備、地中送配電設備、ガス供給設備、船舶、航空機等、これはみんな租税特別措置法で税金をまけている。それから低開発地域等における工業用機械等の特別償却、これも無税。  それから割り増し償却。特定備蓄施設等の割り増し償却で、石油貯蔵施設、トラックターミナルの荷扱い場及びその付属設備等。それから障害者を雇用する場合の機械等の割り増し償却。新築貸し家住宅等の割り増し償却。  3は配当軽課措置。配当等に充てた所得に対する法人税率の特例、法人の受けた配当等の益金不算入の特例等。  4、各種準備金。価格変動準備金、海外市場開拓準備金、海外投資等損失準備金、公害防止準備金、自由貿易地域投資損失準備金、金属鉱業等鉱害防止準備金、特定鉄道工事償却準備金、原子力発電工事償却準備金、特定ガス導管工事償却準備金、電子計算機買い戻し損失準備金、株式売買損失準備金、証券取引責任準備金または商品取引責任準備金、それから渇水準備金、違約損失補償準備金、異常危険準備金、探鉱準備金または海外探鉱準備金等。  それから5には圧縮記帳であります。特定の資産の買いかえの場合の圧縮記帳、特定の資産を交換した場合の課税の特例、特定法人の現物出資による株式等の圧縮記帳。  6、収益計算上の課税の特例。社会保険診療報酬の所得計算の特例、寄付金(法人が支出した寄付金のうち一定の限度額は、損金に算入する)。  7、その他。交際費等の損金不算入。  第三はキャピタルゲインの課税であります。  1は有価証券譲渡所得の非課税。2、事業用資産相互の買いかえ特例。  これを読み上げれば切りがない。これはみんな大企業に対する課税上の特例です。これほどまで特例を与えられている。だから外国人の企業者は言うんだ。日本企業をやれば、どんな無能力でもばかでも必ず成功する。これくらい十重二十重に政府の保護を受けているのだから企業をやって損失することはないわいと言われているのがもっともと思われるくらい、これほどの特例法があるのでございます。  まずこの中で私は御質問いたしまするが、きょう午前中もありました交際費、四十八年が一兆六千五百億円、四十九年が二兆円弱、この中にも当然私は政治献金が含まれているものと思うのでございますが、一体金融代表の皆さん方はこれをどうお考えになっているか。皆さん方がお出しになっている政治献金がこの交際費の中に入っていることをお認めになりますかどうか。  それからいま一つは、ロッキードの問題がいま日本のみならず世界を震骸させておりますけれども、このロッキードのコーチャンという副会長は言っているのだ。日本という国はこういうようなリベートといいますか献金といいますか、贈収賄しなければならない国なんだから、私は差し上げたのでございます。こういうことを言われておるのでございます。日本はこういう企業があるいは政党その他に政治献金をしたり、リベートをやったり、贈賄するのが長い間の習慣になっていると言われているのでございまするけれども金融資本家の立場からこの問題をどうお受け取りになっているか、簡単にひとつ御所見を承っておきたいと思うのであります。
  76. 板倉譲治

    板倉参考人 お答えいたします。  私の理解しております限りでは、交際費と寄付金とは別に経理されておりまして、交際費の中には寄付金は入っておらないというふうに、私、理解いたしておりますが、その辺なお詳しくございませんので、帰りましてからさらに確かめてみます。
  77. 小林進

    ○小林(進)委員 この交際費ですけれども、一兆九千二百三十六億円です。これは大変な金だ。この中で税金がかかったのは六千億円。一兆九千億のうち六千億円ぐらいが主として法人税がかかっている。その税金としてお納めになったのが大体二千億足らずだろう。あとの一兆八千億足らずは、飲んだり食ったり踊ったり政治献金に化けたりして、これは銀座のバーやクラブのホステスさんに一年間四千万円だとか五千万円のいわゆる所得を与えているわけであります。これは、私はこの前もここで申し上げましたからやめますけれども、京橋の税務署が調べた。銀座のホステスさんに年収三千万円、四千万円の方が、たくさんとは申し上げませんけれどもちゃんといらっしゃる。これはみんな交際費の中から生まれてきた。そういうような不健全な形をおやりになりながら、一方には中小企業者や労働者を失業に泣かしておいて、これが正しい姿だと一体皆さん方はお考えになっているのかどうか。お考えになっているとすれば、その常識をこそわれわれは疑わざるを得ないのであります。これはどこから生まれてきたか。皆さん方は自由主義経済を守るあるいは政党政治を守る、議会政治を守るために政治献金は正しいことだとおっしゃっているのでございますが、企業からお出しになる金は私は正しいとは考えられないのでありまするけれども、時間がありませんから、こういう姿がいいとお考えになるか、こういう企業に対する税の不公正はこれでいいんだ、自由主義経済を守るためにこれを正しい制度だとお考えになっているかどうか、お聞かせをいただきたいと思うのであります。
  78. 板倉譲治

    板倉参考人 お答えいたします。  交際費の中には寄付金は確かに入っておらないと私は考えております。  なお、それにいたしましてもそういった交際費が多いのは不公正ではないかという御質問だと思いますけれども、商売にはある程度そういった交際というものがどこの国でも必要であるということで、これを経費として認めるという慣習はどこの国でも定着いたしております。現在の交際費の非課税の率が適当であるかどうかということにつきましては、私、税の専門家ではございませんし、また私の個人的な考え方といたしましては、交際費がそんなに多い必要はないような感じもいたしますけれども、それ以上、税制という見地に立って多過ぎるかどうかということは、ちょっと私にはわかりかねる次第でございます。
  79. 小林進

    ○小林(進)委員 時間もありませんから御意見を聞く程度にしておきまして、次は大蔵大臣にちょっとこのついでにお伺いします。大蔵大臣と、時間もないから通産大臣にもお伺いしましょう。  大蔵大臣には、こういう企業がおやりになる政治献金は無税だ。税金はかからない。しかるに労働者諸君が、これは政党にもやはり献金します。自分たちの政党を守るために献金する。だから、企業が個人の資格において献金なさるのはいいけれども企業がやる献金は無税だが、労働者やわれわれの仲間が私どもに献金してくる金は、これは所得税がかかって、かかった後の金をわれわれに献金をしてくる。これは不公平じゃありませんか。企業の方は、本当はまだ株主総会にかけない、企業と株主が全部してもうけた金をさっと献金すればそれは無税だ。労働者の方は、ちゃんと所得税を取られた、月給の中から納めたその余りの、いわゆる自分の生活費の中から政党献金をしている。私は、労働者の金も企業の献金と同じように、政党に献金した金は無税にすべきだと思うけれども、大蔵大臣いかがでございますか。これは大蔵大臣。  それから私は通産大臣にお伺いしますけれども、こういうような税の不公正をやりながら、まだ通産省は投資税額控除制度、それから大規模プロジェクト損失準備金という、新しいまた税金を控除する準備金制度を創設をして、この実現を迫っていられるということも聞いておりまするが、その真相はどうなっているのか、簡単でようございますがお聞かせいただきたいと思います。順次ひとつ……。
  80. 大平正芳

    ○大平国務大臣 法人も一つの社会的存在といたしまして政治献金をする場合がございまして、その場合に、所定の許された範囲内においての献金でございますならば、それが無税の取り扱いを受けていることは御指摘のとおりでございます。個人につきましても同様の制度になっておるわけでございまして、個人がだめで法人がよろしいという制度ではなくて、法人は法人、個人は個人といたしまして、それがどの政党であろうと、全然現行の制度において差別はないものと承知いたしております。
  81. 小林進

    ○小林(進)委員 それじゃ無税にしてもらうと解釈いたしまして、そのようにひとつ善処をしていただきたいと思います。これはいい発言をいただきました。  次は通産大臣にひとつ……。
  82. 河本敏夫

    ○河本国務大臣 最近、千億を超えます大型プラント輸出が非常に多くなっております。中には千億をはるかに突破いたしまして一兆近いプラント輸出等もございまして、こういうものは完成までに数年かかります。非常に危険負担も大きいわけでございます。しかも、プラント輸出がある程度伸びるかどうかということが日本景気振興にも非常に大きな影響がありますので、昭和五十一年度から千億以上の特別の大型プラント輸出に対しましては若干の税法上の恩典を考えていただくように、いまお願いしておるところでございます。
  83. 小林進

    ○小林(進)委員 通産省はそういう姿勢だから、私どもはどうも賛成できないのでございまして、それはどろぼうにも三分の理屈といいますから、理屈は幾らでもつけられるのでありますけれども、本当に一銭の減税もせられないで苦しんでいる大衆の立場で物を考えたときには、そういうあなた方の理屈にわれわれは了承できないのであります。本質的に考えが違うのだ。少しやはりそういう通産省サイドからながめて——あなたもいつまでたったって三光汽船の社長でもないでしょう。少しはちゃんと大きなところで見たら、大衆がそんな特別措置だとか引き当てなんかを持ってきたときに、どう一体それを受けるか。国民の感情を逆なでするようなそういう行為はひとつ控えていただかなくちゃならぬと思います。きょうはしかし質問じゃありません。考え方をお聞きすればいいのでございますから……。  次に、私は歩積み両建ての問題をお伺いいたします。めんどうなことは要りません、お考えを聞けばいいのでございますから。  これは昭和四十一年二月十八日に私自身が衆議院の大蔵委員会でこういう質問をしているのです。私はこの歩積み両建ての問題について、いまも言うように国会の速記録を十年来のものを全部読んできたのであります、これを見て率直に驚いたことは、歴代の大蔵大臣、特に銀行局長などの答弁は、終始一貫して銀行擁護論であります、金を借りたいばかりに苦しみ抜き、痛めつけられながら歩積みをしたり両建てをしたりしている、そういう中小企業者や借り主を幾らかでも守ってやろう、弁護してやろう、助けてやろうという気持ちがいささかも見えないのは残念でなりません、こういうことで私は質問している。四十一年の二月十八日で十年前の速記録を見たのでありますから、考えてみるとこの歩積み両建ては、この衆議院の中では昭和三十年からこれは繰り返されてきたわけであります。実に古いものであります。  そこで私は、私の質問をした四十一年の二月十八日から以後、一体この衆議院でこの歩積み両建ての問題がどれだけ論じ尽くされたかということを、これは全部速記録を取り寄せて私は調べてみた。調べてみましたら、驚くなかれ、その後、四十一年の二月十八日の私の質問から五十年の二月二十一日民社党の玉置君が質問をするまでの間、これは毎国会論ぜられている。しかも二十一人の衆議院議員がこれを論じている。その中には、驚くなかれ社会党以外で質問をした人は五人であります。あとの十六人は全部社会党の衆議院議員であります。専門家であります。この専門家が繰り返し繰り返し質問をしているのに対して皆さんみんな——その中には、単に大蔵大臣だけじゃございません。この中には日銀総裁もいらっしゃいます。あなたの前任者の佐々木さんもいらっしゃいます。みんないいことを答弁をしている。しかし、なお今日これを繰り返さなければならぬ理由はどこなんですか。考えてみると、私は実に国会の力の無力さをつくづく考えなければならぬし、日本金融資本というものの勢力が見えないところでいかに強大であるかということをこの二十年にわたる速記録を読み返し読み返し私はつくづく考えた。なぜ一体これができないのか。時間がありませんから私は結論だけ申し上げますけれども、それは第一にはやはり銀行ですよ。皆さん方が依然としてそういう歩積み両建てなどを、厳格にこれをやる気がないということなんだ。ないということなんです。国会の議員が何をおっしゃろうとも、力のない者たちが、ヒバリがさえずるようにさえずっているが、こっちはまあいいかげんな答弁をしておいて、やることだけやっていけばいいという、そういう気持ちが何といったって二十年の実績がこれを示しているじゃありませんか。これが第一です。皆さん方の姿勢が、歩積み両建てを真剣に取りやめようという姿勢がないからです。  それから第二番目は、大蔵省なんです。大蔵大臣を初め大蔵の官僚が——役人はいいけれども、官僚となるとこれが悪くなっちまう。実に悪い。これがもう全部政治と癒着し権力と癒着し、やろうとしないのであります。これが今日なお歩積み両建てで大衆を泣かせている根本なんです。それで、きのうも大蔵省から来ましたよ。私が質問すると言ったら、官僚の卵みたいなのがやって来た。そこで私はこれを何と言って話をしたか。みんな資料を持ってまいりました、これ。資料を持ってまいりましたよ。こういう資料なんか見ると、これはまるで歩積み両建てを金融業者の立場に立ってわれわれに言いわけの資料です。やれ狭い意味の拘束預金でございますの、広い意味の拘束預金でございますと。拘束預金に広いも狭いもありますか、一体。そういうような、その軌道に乗せた言いわけの資料だけで終わっている。さすがに公取の方はまだ少し、国家権力の下におりながらもまだ良心的なところがある調査資料を持ってきておりますけれども、要はやる気がないということなんだ。そこで私はお伺いいたしますけれども、本当に大蔵省がこの拘束預金、歩積み両建てをおやめになるというんならば、銀行から意見を聞く必要はない。加害者から意見を聞く必要はない。この歩積み両建てで苦しめられているいわゆる借り主ですよ。借り主です。被害者です、私に言わせれば。被害者から切実な話を聞いて、その立場でこれをひとつ解決するという姿勢を示してもらわなくちゃいけない。二十年一日のごとくわれわれは声を大にしているが、それならばやりますやりますと言って、やるのは何かというと、銀行の入り口へ行って、何か歩積み両建てで不思議な点がありましたら本社の方へ御通知してください、大蔵省の方へ投書してください、まるで切ない気持ちで金を借りに行った者が、銀行のそんな紙を見て銀行の本社へ、私は歩積み両建てでいじめられておりますなんて、そんなたれ込みができますか、あなた。そういうお体裁のいいことだけやって問題をごまかしているから解決できない。切実に泣いている大衆の中に入っていって聞けばいいじゃないですか。なぜそれをやらないと言ったら、きのう来た小官僚が、これからひとつやろうかと計画をいたしておりまするなんという、二十年もたってこれから先やりましょうとは一体何事だ。私は、皆さん方の本当に甘っちょろい言いわけは聞きたくないですが、銀行屋さん、本当にこれからおやりになる気があるのかないのか、それだけお聞かせを願いたいと思うのであります。
  84. 板倉譲治

    板倉参考人 歩積み両建てにつきましては、先生おっしゃいますとおり、あるいはもう二十年来の問題かと思います。その間、非常に改善されているというふうに私どもは考えております。今後ともこれの撲滅を期しまして、まじめに努力をいたすつもりでございます。
  85. 小山長規

    小山(長)委員長代理 あとはいいですか。
  86. 小林進

    ○小林(進)委員 もう、あとは時間もありませんから、大体代表して御意見を聞いておけばわかりますが……。  ただ、大蔵大臣だけは、そのとおりです、そういう被害者や金を借りている大衆の声を本当に聞いてこの問題に取り組む決意があるかどうかだけは大蔵大臣から聞いておきましょう、一言でよろしゅうございますから。
  87. 大平正芳

    ○大平国務大臣 従来、御指摘のように、金融機関について調べまして、ここ数年来相当改善の結果が見られるということは御報告申し上げたとおりでございます。しかし、それは利用者、債務者の側からの調査でないという御指摘もございまするし、私どもといたしましても、これは強制的に借入者に対して権力をもって調査するわけにはまいりませんけれども、自発的に御協力をいただいて、私どもがアンケートを差し上げますならば、それに答えていただきまして、債務者の側の事情も十分承知した上でこの改善の方途についてなお一層精力的に努力してまいるつもりでございます。
  88. 小林進

    ○小林(進)委員 まあ時間もありませんから、問題だけ提起しておきまして、あとは終わりたいと思います。  次に、私は、預金の目減りの問題について、これももう繰り返されたことでございまするけれども、ひとつ念を押しておきたいと思います。  これは四十七年のこの委員会におけるわが党の石橋書記長の質問でございますが、彼は、個人預金の残高が四十七年で六十兆一千八百六十七億円ある。三十五年からの消費者物価の指数との見合いの中で、どれくらい一体減額しているかというに、累計で、四十七年までに二十三兆三千八百八十三億円の目減りで減価をしている。単年度でとると、六十兆一千八百六十七億円の個人預金に対し、消費者物価が大体一四%上がると計算してみると、これは一年間で八兆四千二百六十一億円の減価になる。国民の大切な貯金がこれだけ盗まれたことになるのだが、これを一体どうするんだという質問をやっている。同じような質問を、今度は七十五国会には、わが党の副委員長の江田三郎氏が一月三十日に同じくこの目減りの問題の質問をしている。同じく七十五国会の二月の一日には、わが党の堀昌雄政審会長がやはりこの問題を追及している。同じ二月十七日には、いま論じている小林進議員が同じくこの目減りの問題の質問をしている。続いて、そこにいらっしゃる阿部昭吾委員もまたこの目減りの問題を質問している。これはみんな切実に数字を挙げて具体的にこれを論じているわけでございますが、われわれはささやかな計数の能力を持ちながらも、こうやって計算をしながら実際に損害を受けたものをやっている。銀行屋さんですからそろばんはお得意だ、この三十五年から五十年末あるいは五十一年に至るこのインフレの中で、ささやかな貯蓄をした大衆の預金が一体どれくらいの目減りをしたものか、私は総合計の数字をひとつお知らせ願いたいと思うのです。これは個人だけでなくたって、中小企業者、あるいは十億円なら十億円の線を引いて、その下の預金をした預金者が三十五年から一体どれくらいの目減りで実害を受けているのか。私のほんのささやかな計算でありまするけれども、そうしますと、三百兆円か、あるいは五百兆円という数字が出てくるのであります、これは大ざっぱでありますが。それくらいこの目減りというものは大きく大衆の財産を収奪している。この収奪に対して、一体金融業者はどう考えられているか。  これに対して、もう時間がありませんから私が申しまするけれども、この同じ質問全国銀行協会長の佐々木さんに私がしたときに、彼は、目減りの問題で金融機関はこれを取り上げるつもりはありません、こう言って、ここで証言をしているのです。預金者は非常に気の毒だが、私どもの体力を考えながら、何か新しい金利の高い商品でも開発したいとは思っておりますがということで、これはごまかされて、百万円の一割貯金くらいでこれはごまかされてしまったという形になっているのでありますけれども、これはお気の毒ですと言って一体これは済む問題かどうか。あなた方はその仲介者なんだ。零細なこの人たちの貯金を預かってこれを目減りさせながら、どんどんどんどんと大企業の方へこれをみんな送り込んで、そしてこれほどの日本のいわゆる高度成長をおつくりになった。仲介の労をとられたのですから、それは銀行屋だなんていったことでこれは済みません。やはりあなた方はこういう大きな目減りを痛めつけた責任者なんでありまするから、こういう問題をどうお考えになるか。  時間もありませんから、ついでに私はここで結論を一つ申し上げますけれども、西ドイツにおいてはいわゆる財形貯蓄というものをおやりになって、そして労働者が貯蓄をしたときには、もちろん政府も補助をしている、地方自治体も補助をしているが、関係企業金融機関も、応分のこの労働者の貯蓄に協力をして、そして労働者、勤労者の財産の形成に力をかしていっている。このドイツの為政者たちは、このドイツが今日の繁栄を来したものは、勤勉なドイツの労働者の力でこれだけの繁栄を来した、しかし政府は忙しくて、これまではこのドイツの財産をつくるために資本家を中心にし、企業を中心にして利益を与えてきたが、もう今日のドイツはこれまで犠牲になって働いてくれた労働者に報いる時期が来たから、労働者のために応分のひとつ協力をいたします、こういうことをやっている。それに企業もついて回っている。  労働大臣、この財形貯蓄の問題はあなたも一生懸命のようでありまするけれども、あなたのやり方はずいぶん貧弱だ。こんな貧弱なことでは、この労働者の目減りの問題や財産形成には余り役に立たぬが、企業家もおられるのでありますからして、少し企業の方からでも協力を得て、もっとこれを手厚いものに成長せしめるというふうなお考えがあるかどうか、簡単でよろしゅうございますが、承っておきたいと思うのであります。
  89. 長谷川峻

    ○長谷川国務大臣 小林委員御存じのように、西ドイツはコンサート方式と言って、政労使三者でハーモニーをとりながらやっております。そういう中に勤労者の財産形成、これはもう十数年前でございます。わが国は、それにあやかる意味ではありませんが、ここ三、四年前から、そしてまた昨年の国会でも、まだまだ不十分ではございますが、そういう方向に向かって発足もし、また実施もし、それをいまから拡大する、こういうことで私の方も政労使ともどもにそういう姿に向かっていこう、こう思っております。
  90. 小林進

    ○小林(進)委員 銀行会長さんたち、お聞きのとおりであります。ちゃんと資本家も入って、そして労働者の財産形成に応分の寄与をしているんだ。皆さん方は、金融機関は公益性があるとおっしゃるのならば、これほどの目減りで労働者の財産をみんな食っちゃっているのですから、せめて罪滅ぼしにそういう方向でひとつ新しくお手伝いするという計画を私は考えていただきたいと思います。これはどうか労働大臣と相談して、具体的にそういう策もひとつ進めていただければ、皆さん方の死に際もよくなると思いまするから、考えていただきたいと思います。  最後に一言申し上げて失礼いたしたいと思うのでありまするけれども、郵政大臣、これも私はここで申し上げていまするけれども、いまの厚生年金や船員保険や労災や国民年金で、現在郵政省が預かっている金額が四千六百億円です。そのほか福祉年金で三千六百億円、恩給等で五千三百億円、援護資金で四百八十億円等々で、一兆五、六千億円に近い社会保障の給付金が郵便貯金になって入っているわけであります。  ところが、この郵便貯金は今度は、年金で郵便貯金している人たちが、水道料金を納めたい、NHKの聴視料を納めたい、あるいはガス料金を納めたい、電話料金を納めたいということになりまするというと、これが自動的にいかないのであります。一々郵便局へ行って、そして自分の貯金の中から手続をして支払いの労をとらなければならない。これが銀行へこの年金を自動的に払い込んでおきますと、銀行は非常に便利がよくて、ガス料金も電話料金も水道料金も全部自動的に払えるようにしていただけますから、こういう老齢年金をもらっておるお年寄りは、自分の年金を銀行に扱わせれば寝ながらにしてその労は要らないが、郵便局へその取り扱いをさせると、一々郵便局まで出かけていかなくちゃいけない、こういう不便があるわけでございまして、この前郵便局の局員に聞きましたら、いや、そういうガスや水道の払い込みのためには特別に郵便振替貯金制度というものを郵便局は設けております。こう言った。それじゃ、その振替制度というのは自動的にできるのかと言ったら、それはやはり郵便局に来て手続をしてもらわなければいけません。これは、年金をもらっている方々は私のようにみな健全じゃないのです。お年寄りなんですよ。遠い遠い道のりを電話料金や電灯料金やガス料金や水道料金を払うために行くということは大変な労苦だ。銀行はやってくれる。ところが、こういう方々はやはり銀行の窓口は威厳があって入りづらい。なるほど私も入りづらいのでありまするから。銀行の玄関を入りますと、身がふるえるのであります。あれは庶民の入るところじゃない。やはり庶民のところは郵便局だけれども、郵便局にはその便利がないから、これを何とかできないか、これが切実な声であります。何かどうもこれを聞きますると、いや、それは銀行屋さんの方でなかなか反対をされるのでこれをおやりにならぬというような意見も聞いておりまするが、真偽は別といたしまして、一体郵政大臣は、こういう庶民のためにこの切実な要望を満たす意思があるのかどうか。銀行会長さんの方はこういう庶民の気持ちを素直に受け入れて、こんな人の年金なんかはあなた方は扱わぬでも郵便局の方に任せた方がいいが、任せられる意思があるかどうか、これだけ承っておきたいと思うのでございます。
  91. 村上勇

    ○村上国務大臣 お答えいたします。  年金、恩給等の支給金につきまして、これを一時、受給者の預金に預け入れておく振替預け入れの制度を設けて、また電気、ガス、水道料金などの支払いについても郵便振替制度によって取り扱っておりますが、国民の一層の利便を図るためには、一般の銀行で行われている預金口座への振り込みや自動振替を郵便貯金に導入することが必要であると考えます。しかしながら、このような業務を円滑に実施するためにはどうしても郵便局のオンライン化が前提となりますので、現在その計画の実施方を取り運んでおる次第でありまして、決して他の圧力によってこういうことになっておるのじゃないということを御了承願いたいと思います。
  92. 板倉譲治

    板倉参考人 お答えいたします。  ただいまの郵政大臣のお答えのとおりではないかと私も思っております。銀行の方でそういうことに対して反対をしているというような事実は全くございません。
  93. 小林進

    ○小林(進)委員 早くオンライン制度を実施されまして——いまのところはこの年金関係銀行と郵便局は大体半々ぐらいです。早く全部郵便局に集められるように最大努力を払われることを強く要望いたしまして、私の時間が終わりましたので、終わることにいたします。
  94. 小山長規

    小山(長)委員長代理 次に阿部助哉君。
  95. 阿部助哉

    阿部(助)委員 まず最初に、地方銀行会長伊原さんにお伺いしたいのであります。  御承知のように、いま地方財政もまた大変な赤字財政でございます。     〔小山(長)委員長代理退席、井原委員長代理着席地方債も大変よけい出るようでありますが、私の聞くところでは、何とかいまのところは処理をしておるようだけれども、なかなか銀行の方も簡単には応じてくれそうにないという話、交渉に非常に手間取っておるという話も聞くわけでありますが、これからまた地方債は大変大量に出るわけであります。その上に皆さんのところは、国債もやはり引き受けさせられておるわけであります。そういう点からいって、地方債の引き受けの見通しというものをちょっとお伺いしたいと思うのであります。
  96. 伊原隆

    伊原参考人 お答え申し上げます。  ただいま先生の仰せのとおり、広い意味地方債が非常にふえてまいりまして、地方銀行の引き受けだけでも、昨年に比べましてことしは五千四百億増加の一兆五千億円程度が予定されております。地方銀行に集まりますお金のうち、国債と地方債に充てました金額が四十九年度ごろは三割くらいだったのですが、五十年度になりますと四割程度、五十一年度、これは預金が幾ら集まるかわかりませんが、どうも国債と地方債をお受けいたしますと五割程度になるのじゃないか。あとのお金で地元の企業あるいは住宅ローン等をやってまいらなければならないということで大変苦慮いたしておりますが、昨年の暮れあたりは大変なことになるのじゃないかと予想していろいろ工夫をいたしました結果、政府資金も相当入れていただきましたし、各地方団体がずいぶん御努力になりまして、無事に越年をいたしました。したがいまして、なかなか苦労だと思いますが、この地方債は国債と同じ、景気浮揚のために必要なものであるという意識で地元銀行としては対応してまいりたい。ただし、そういうことにつきましてはいろいろお願いしたいこともございますのですが、いまのところそういう気持ちでございます。
  97. 阿部助哉

    阿部(助)委員 私は、これから主として税調会長にお伺いしたいのでありますけれども、まあこの委員会でも大蔵委員会でも論議をするときには、大臣は大体、税調にお諮りをしてと、こう逃げるわけであります。私はそこで、この税制調査会というものはどういう目的でつくられておるのか、また会長の抱負をお伺いしたいと思うのであります。
  98. 小倉武一

    小倉参考人 税制調査会がどういう目的で設置されておるのか、これは私必ずしも当局者でもございませんので、有権的にお答えできにくいのでありますが、多分、国民各層の税制に関する要望あるいは学識というものを税制調査会で集約いたしまして、それによって政府税制改正の参考にするといいますか、それを十分踏まえて税制を考えていくというような趣旨で置かれているものかと思います。法律によりますと、税制の基本的事項を調査審議するというようなことになっておりますが、また、委員もその方面の学識経験者で任命をするというようなことになっております趣旨から見ても、さように考えております。  また私自身、会長としてどういう抱負を持っておるかという二段目のお尋ねでございますけれども、いま申しましたような趣旨が税制調査会の設置の目的であるとしますならば、税制調査会の場におきまして、各委員意見が答申等の形になりまして外部に発表され、あるいはまた、政府に答申されるということができるだけ円滑にいくように心がけるというのが、私の、抱負でもありませんが、気持ちでございます。
  99. 阿部助哉

    阿部(助)委員 私はまたこう思ったのでありますが、違いますか。税調は日本税制のあるべき姿を検討し、答申をするのだ、簡単に言えば、私はそういうことだと思っておったのでありますが、違いますか。
  100. 小倉武一

    小倉参考人 いま阿部委員お話のように、そういう基本的な税制のあり方というようなことが問題になり、あるいは問題にすべきときには、当然そういうふうな負託にこたえるということになろうかと思います。
  101. 阿部助哉

    阿部(助)委員 その場合に一番大切なのは、公平の原則、これが一番大切なものだ、私はこう思うのですが、違いますか。
  102. 小倉武一

    小倉参考人 これはお話しのとおり税制の基本的な原則、第一に恐らく公平の原則ということでありますから、現行の税制を考えます場合も、あるいは新しく税制の手直しを考えます場合にも、それが最も優先的に考慮さるべき事柄か、こう存じます。
  103. 阿部助哉

    阿部(助)委員 そこで、五十一年度税制改正の答申に当たって、税調の論議の中で最も大きな焦点となっているものは、これは何でございましたか。
  104. 小倉武一

    小倉参考人 五十一年度の税制改正に関連しまして税調で大きく問題になりましたのは、所得税の問題と、もう一つはいわゆる租税特別措置の整理合理化、この二つが大きな柱だったと思います。
  105. 阿部助哉

    阿部(助)委員 まあ昨年は間接税の増徴をおやりになった、答申されましたね。それでことしは所得減税がなかった。物価は上がる、そして何がしかのべースアップがあれば、低所得層には大変重く税金がのしかかってくるということは、これはもう会長さん、私はお認めになるところだと思うのです。だけれども、ことしは実質的には増税になる。私は、その一番問題になった所得税が、皆さんのこの答申を拝見しても恐らく国民は納得しないのじゃないか、こう思うのであります。  そうして、不公正の是正、これは三木内閣の一番大きなスローガンだと私は思うのでありますが、不公正是正というのがまたさっぱりわれわれにはわからぬのです。一体、不公正是正の目的が達成されたというふうに会長さんはお考えになるのですか。
  106. 小倉武一

    小倉参考人 所得税につきましての減税の意見は、ずいぶん税制調査会でも出まして、税制調査会の答申もごらんになっているかと思いますが、いわゆる景気調整減税と、それから物価調整減税、この二点につきましてずいぶん審議をいたしたわけでございますが、結論を申しますれば、こういう状況のもとで所得税減税は適当でなかろう、むろんそれについての議論もございましたが、大方の意見はそういうことでございました。  なお、不公正の是正につきましては、物価の状況あるいは国民所得の状況等から見まして、必要なときは所得税の減税も当然いたすべきでございましょうが、この際は国民の皆様方にひとつがまんを願いたい、こういうのが調査会の全体としての大方の結論であったわけであります。  なお、特別措置に基づきますいわゆる不公正税制につきましては、これは従前はむろん一つのテーマであったわけでありますが、五十一年度の税制改正におきましては、大きなテーマとしまして個々の特別措置一々について具体的にそう検討したわけでございませんけれども、大きな考え方に基づいて財政、税務当局にいろいろ勉強してもらいまして、不公正是正につきましては一歩も二歩も前進している。それで不公正な税制が全面的に面されたということは毛頭考えておりませんので、今後ともいまのような方向で税制調査会も政府も努めてまいりたいというのが考え方の基本になっているかと思います。
  107. 阿部助哉

    阿部(助)委員 これは毎年ここでも論議され、大蔵委員会でも論議されるのでありますが、大体公平の原則と政策云々という場合は、これは矛盾するのですね。政策税制に重点を置けば、公平の原則というものはどうしても飛ばざるを得ない。皆さんの方はそこに何がしかの接点を求めておられるかもわからぬけれども、税法は余り政策に使ってはいかぬというのが私の考えなんでございます。あなたといまここで議論しようと思っておりませんけれども、やはり公平の原則というものを一番大きな柱として立てなければ、国民は税制を信頼し、納めるわけにはいかなくなるわけであります。そういう点からいくと、先ほど小林委員からのいろいろなお話もありましたけれども、せめて、この不公正の代表的なチャンピオンとして言われてまいりました利子課税だとか、配当課税、それと特別措置ぐらいは、当然答申の中に盛られてしかるべきものじゃないかという感じがするのですけれども、私はこの答申を見て大変がっかりしたわけであります。皆さんのこの答申を見ますと、特別措置の中で、政策減税と何か別の本法に入れるべきものとを分けて、政策減税というか政策税制の特別措置だけを見直した、こうおっしゃっておるのですけれども、皆さん税調は、これは本法の中に入るのは別枠にするなんという考えはおかしいんじゃないですか。これはことしだけの特別の扱いでおやりになったのですか。
  108. 小倉武一

    小倉参考人 いわゆる特別措置でございますが、これがお話しのように租税の公平の原則という一方の税制上の大きなたてまえと、他方また各種の産業その他の政策上の要請、その辺をどう調和するかということでございますが、今回の答申におきましては、そういう税制と、それからその他のものと一応区分けしまして、政策税制というものの整理合理化に重点を置いた次第でございます。  ただし、政策税制という範疇に入った以外のもの、これにつきましては検討しないということではございませんので、これにはいまお話しのございましたように、税制の本則に当然含まれてしかるべきものといったような性格もございますし、あるいは配当等の問題になりますと、法人税のあり方の問題にもなります。先ほど、午前中もお話のございましたような各種の引当金をどうするというようなことも、広く言えば所得の計算上の問題でもございますので、これは別に今後ひとつなお検討するということに相なっておる次第でございます。
  109. 阿部助哉

    阿部(助)委員 政府の方からは、ここへ何か出ております非常に簡単な諮問でございますか、何か五十一年度の「社会経済の進展に即応する税制のあり方」という程度の諮問があるだけなのでございますか、もっと詳しくこういうのを検討してくれというような諮問があったわけですか。
  110. 小倉武一

    小倉参考人 いまお読みになりました諮問は、四十九年十月に現在の税調の委員の任命になった面後だと思いますが、そういう趣旨の諮問がございまして、これは各種審議会いろいろたてまえがありまして一様でございませんが、従来税制調査会では、いまお読みになりましたようなはなはだ包括的な一般的な諮問が例であったようでございます。そういう非常に包括的な一般的な諮問の中で、その年度その年度に応じて必要な改正については税制調査会の事務局を担当されておる主税局それから税務局、税制調査会等が寄り寄り話し合いをしているうちに具体的な提案というものになって、諮問という形はとりませんけれども、審議をする、こういうかっこうに相なっておる次第であります。
  111. 阿部助哉

    阿部(助)委員 その辺で、どうも国民は税調というあり方がわからぬのですよ。ぼくらもここで論議をする場合大変困るのは、総理も大蔵大臣も、何かあると税調にお諮りしてと逃げるわけですよ。ところが皆さんに諮問するのは、ごく抽象的な五十年度の何とかで検討してくれみたいな話なんですね。たとえば特例公債を発行するに当たって大蔵大臣はここで約束をしておるのですね。この返済は十年後には耳をそろえてお返しをいたします、そのためには政策税制は全面的な見直しをしますとか、ここでいろいろな約束をしておられるのですよ。ところが、出したものは非常に抽象的である。皆さんは、大蔵大臣は先ほどの本会議でも、特別措置については全面的な見直しをしました、こう言っておられるけれども、皆さんのこの書類を見れば、二つに分けて、政策税制——皆さんの言葉で言いますよ、私は、この特別措置の見直しをするという約束なんだから、みんな全面的にやるんだ、こう思っておったところが、皆さんは二つに分けておられる。私はそれを踏まえて、この前時間がなかったけれども、大蔵大臣、食言じゃないかと言ったら、食言じゃありませんと力んでいた。そういうことがあるので、私は皆さんのところにどういう諮問をされ——実際は大蔵省がいろいろとサゼスチョンしたり材料を出したり、いろいろやるのだろうと思うのですけれども、どうも税調のあり方自体が政府の隠れみのになっておるのじゃないか。そうして、ここにおける大臣の答弁やなんかが十分に反映をしていないのじゃないだろうかという点で、どうも国会審議がぼやけてかなわぬというのがわれわれの不満なんです。そういう点で、私は税調のあり方は一体何なのかというような、ある意味では非常に失礼かもわからぬけれども、一番原則からお伺いをしたわけなのでございます。  これは皆さんの四ページですが、皆さんはこうおっしゃっておるのです。特別措置の項です。「今回の整理合理化は、税収確保を直接の目的とするものではなく、財政経済環境の変化に伴いこれまで以上に課税の公平を重視する必要があるとの基本的認識に立って行うものである。」こうおっしゃっておる。皆さんは、この特別措置の見直しは整理合理化と税収の確保を直接の目的としない、こうおっしゃっておるのです。ところが、特例公債を発行する論議の中で大蔵大臣は、政策税制の全般的な見直しをして税の増徴を図ります、こうおっしゃっておる。政府方針は、そういう注文は出なかったのですか。
  112. 小倉武一

    小倉参考人 租税特別措置の項目は、たしか百九十六でございましたか項目がありまして、一応全部それを羅列しまして整理分類するというようなことから始まりまして、今回たしか特別措置の改正の対象になっておりますのは六十九項目になっております。約三割くらいが整理合理化の対象になっておる。この数字はちょっと少ないように見えますけれども整理合理化のこととしては、恐らく今回が初めてそういう多くの項目に及んでおるということかと思うのであります。特に法人関係の項目は九十八でございましたか、そのうち六十九が整理合理化の対象になっておりますので、相当大幅な特別措置の是正である、こういうふうに言うことができるのではないか。これは評価の仕方、いろいろございましょうが、そういうふうに思います。  なお、税収を目的にするかしないかという点については、これは多少微妙なところがございます。一方におきまして、こういう不況のさなかに特別措置を全面的に改廃して企業に重税感を与えるということはどうかということで、特別措置の手直し自体に対する反論も当然あり得るわけであります。しかし、他方、お話しのような税の公正を確保するという点もむろん必要でありますし、政府の五十年代前期の経済計画の概要などを見ますと、今後ある程度、国民の税負担の三%でしたかの増徴といいますか、負担増といいますかというようなことも予想されるわけでありますから、そういう際に、まず税収自体よりは不公平是正ということを考えた方がいいのではないかというのが税制調査会の考え方でございました。と申しますのは、これもお聞き及びのとおりと思いますが、初年度の増収というのは、特別措置関係で百五十億というふうに聞いておりますが、そういう点ですから、これでもって増税のためにそうしたのだというふうにはちょっと言いにくい。平年度化すればずっとふえますけれども、ことしの五十一年度の問題としては、増収というのを第一の目標とはちょっと言いにくい、こういう実情であったか、こう思います。
  113. 阿部助哉

    阿部(助)委員 私は税調のあり方として、皆さんが余りにもこのいまの政策、現時点における政策をお考えになると、これは公平の原則というものに近づくわけにはいかぬのですよ。税調のあり方としては、やはり将来の税金どうなるか、公平の原則というものを柱にしなければ、そのときそのときの政策なんというものを皆さんがお考えになれば、これは公平の原則なんか守るわけにいかぬのは当然なんです。ところが皆さんのこれを見ると、余りにも今日的な政府の意図を反映し過ぎて、そうして特別措置だ、あるいはまた、先ほど来話になっているこの不公平税制の代表的なものまで全部ノータッチで終わった。こういうことになれば、これはもう、税調というのは何をするのか、実際言って私にはわからなくなる。そうして一番悪いのは、国会における答弁においては政府の方は何でも、何か税調を隠れみのにして、税調にお諮りしてお諮りしてと、こうおっしゃるのです。  皆さん、ところでこれからの税金は大変なことになります。先日私の質問で大蔵大臣は、私の要求じゃないのです、私の質問に関連して五十五年までの財政展望をお出しになりました。これを見ると、これは大変な増税をせにゃいかぬ。その前の経済の概案を見ると、税収は三ポイント重くする、こうなっておるわけであります。これは大変な金額なんです。こういう問題、一体それは何からやるかというのはずいぶん論議をされてきたわけでありますが、そういうものはこれから討議をされるのですか、ことしの税調では。いかがなんです。
  114. 小倉武一

    小倉参考人 とりあえずといたしましては、五十年代前期のこの経済計画概案はございますが、さらにこれは正式のものとして経済審議会で審議がされると思いますが、そういう時期に合わせまして税制調査会では、昨年少し差し迫ってですけれども、基礎問題小委員会というものを設置いたしまして、今後の税負担のあり方等をこの経済計画とにらみ合わせて、少し理論的に検討するということを始めております。いま中断しておりますが、さらに経済審議会あるいは企画庁等の作業が再開され、進められるということでありますれば、とりあえずは基礎問題小委員会で、学者の諸先生方を中心にした討議を進めてまいりたい、こう存じております。
  115. 阿部助哉

    阿部(助)委員 もっと端的にお伺いしますが、それだけの税金を取ろうとすると、いまの税制の中であれだけのものは私は取れないと思うのです。これはまあ常識でだれしもが感ずるわけです。  そこで、ここでもたびたび論議になり、政府の方も出したり引っ込めたりという形で付加価値税の問題が出てくるわけであります。新税の創設なしにあれだけの税金を取るということはまず不可能だぐらいのことは、これは常識論でわかるわけであります。ただ、まあ選挙を控えておるからどうだこうだという思惑もあるかもわかりません。しかし、五年後、十年後に、たしか五十五年には、第一案によると五十一兆からの公債がたまるわけです。大変な国民の借金になるわけです。そういうものを一体どう処理していくのか。これはつらくとも、阿部助哉が選挙に落ちようと上がろうと、三木総理が一代ぐらいでかわろうと何しようと、もっとそれ以上に国民にとっては大きな問題なんです。やはりつらいことも国民には訴えて、納得してもらって政治をやり、税金をいただいていくという姿勢がなければ、ただ選挙だから、いや、なんだからということでごまかしながらいって、ばっさりと首切るようなやり方というものは、民主政治の中でとるべきでないというのが私の考えです。  そういう点で、私は税調会長に、付加価値税の検討をするかどうか、しておるのかどうかという点をお伺いしたいのであります。
  116. 小倉武一

    小倉参考人 先ほど御質問の中にちょっと出ました政府の財政見通しの試算でございますが、私も拝見はいたしておりますけれども、税負担の動向等を見ますと、相当の負担増になるようなことになっております。無論あれは財政計画といったようなものではないようでございますので、別にあれですぐ税制とどうなるという結びつきはないかと思います。しかし、仮に試算をしてみますと、いまお話しのように、いわば税制の改正のない前提で、GNPの伸びによって税収がどれくらい伸びるんだろうというその弾性値は、最近どうも一・四くらいになるようでございます。ところが、あの試算による税収の伸びというのは、まあケースIとケースIIとでは違いますが、ケースIではたしか一・六二、ケースIIのときは一・七六でございましたか、そのようなことで、いまの一・四とは相当の開きがある。したがって、これはGNPの伸びによって当然に伸びる税の見積もりではないという、そういう試算になっておりますので、恐らくああいう試算を仮に前提にしますれば、今後の税制のあり方についても重要な検討を加える必要があるということをあれは示唆しているんではないかというふうに私は考えております。  そういう際に、では付加価値税が問題になるのだろうかというお尋ねでございますけれども、付加価値税も、税制調査会としては、最近は四十六年でございましたか、昭和四十六年に相当深く検討いたしまして、その結果、将来は付加価値税の導入について検討する必要があるという趣旨の答申を出されております。その後も多少似たようなことがございますようでありますが、当時ずいぶんEECの付加価値税等を政府あるいは学者の先生方も検討されましたし、また、その後は各種団体の方も勉強をされておるようでございますので、政府がどういう態度をおとりになるかは知りませんが、税制調査会としては、重要な検討項目の一つであるというふうに考えております。これはまだ調査会自体に諮っての御返事でもございませんが、こう世の中にいろいろ論議をされるものを税制調査会として討議しないというわけにはこれは恐らくいくまい、こう存じております。無論、これは結果がどうなるか、どうしたらいいかということは全く白紙でございます。
  117. 阿部助哉

    阿部(助)委員 もう時間がありませんから最後のあれになりますけれども、国民は大変不思議に思っておるのですよ。まあお話のように、税調は各界の人たちを集めて意見を集約するんだとこうおっしゃっておるけれども、毎年出る皆さんのこの答申と、大体その前の日に出る自民党の税調の発表とは、まあよくこれぐらい似たものだ、これは双子の兄弟よりもまだよく似たものが出るというところに国民は不可解なものを感じておるわけであります。一体まあよくこれだけ似た答申というか案が出るものだということなんです。これは一体どういうことなんですか。これは会長さんはどうお考えになっておりますか。
  118. 小倉武一

    小倉参考人 お話しのように、比較的最近、政府・与党の税調と政府の税調の答申が非常に酷似しているという傾向を持つようになったようであります。その経過はよく存じませんけれども、それは現実としてそうなっておるのでありますが、どういうふうにしてそうなるか、これは私よく存じませんけれども、党の税調へ直接私どもが参りまして先生方の御意見を聞くというようなことも実はやっておりませんので、直接連絡が全然ないのでございます。ただ、事務局は、大蔵省、自治省それぞれ主税局ないし税務局でございまするから、また政府税調の方もそうでございまするから、そんなに、白と黒のような答申の結果になるということは、これまた双方の税調としても困るし、政府としてもお困りになるだろう。恐らく事務当局が大変苦労なさってそういうようなことになっておるのだろうと思うのです。もっとも、非常に重要な点において違うことがときどきございます。だけれども、おおよそのことはだんだんと、相互の違いというものは事務局を通じて、党の方、政府の方、両方で考え直したりするというようなこともあるいはあって、そういうふうに一致するということ、これはいい悪いは別にして事実だと思うのであります。
  119. 阿部助哉

    阿部(助)委員 しかも、その一日前に自民党の税調が発表されるあたりに、一体税調というものは何の役なんだろうと——たった一つ違うところがあります。それは、診療報酬に対する皆さんの御意見と自民党の案とは違うわけです。  そこで、大蔵大臣にお伺いをするのでありますが、皆さん、何かあるとすぐ、税調にお諮りしてと言って逃げるのでありますけれども、一体税調の答申を皆さんはどういうふうにお考えになっておるのですか。これは大蔵大臣です。大蔵大臣、これはどうお考えになっているのです。答申が出たって、やらなくてもやってもいいのであります。皆さんの参考にするだけならいいけれども、それならば、国会で、税調に諮ってなんということは言わないで、国民のために、一番権威のあるのは国会だと思いますので、国会に堂々ととにかくおっしゃればいいのであります。大蔵大臣はなぜ一体、税調答申にあるこの診療報酬に対して、税調の答申に沿う改革をしなかったのですか。
  120. 大平正芳

    ○大平国務大臣 五十年度の税調の御答申では、この問題について明確な御答申をちょうだいいたしております。五十一年度は特にこれに触れられておりませんけれども、この御答申は生きておるものと政府承知いたしております。したがって、私ども政府といたしまして、税調の御答申はあくまで尊重していくことに変わりはないわけでございます。この御答申をどのように生かしてまいるか、そして、国民の御納得がいく措置をどのようにしてとってまいるか、これは鋭意政府が考えておることでございますので、政府がこの問題について断念しておるというものでは決してございません。
  121. 阿部助哉

    阿部(助)委員 答弁にならないですよ、大蔵大臣。五十一年度に触れてないと言うけれども、五十年度でこういう答申をしたが、改正しないのは「まことに遺憾である。」と言っておる。そして、これを改正することなしに「税制上の不公平是正に対する政府の姿勢について、納税者の納得を得ることはできないと考える。」というふうに、ちゃんと触れておるのです。税調というのは総理大臣の諮問機関だから、あなたの関知するところじゃないのかもわからぬけれども、大蔵大臣ともあろうものが税調答申も読んでないようじゃ、これは問題にならぬのですよ。ちゃんと触れておるのです。それで、いまの答弁のように、やるのかやらぬのか、それは考えておるなんということじゃ、これは税調答申、どうしようもないのですよ。十年も二十年も考えておられたのでは、税調答申は毎年出す必要はないのです。それならば長期見通しの答申を出せばいいのであって、皆さんは税調そのものを、都合がいいときには隠れみのにして、都合が悪いときには、答申が出てもそれに全然一顧だも与えない。こういうやり方ならば、税調というものは解散した方がいいのじゃないだろうか。特に最近は財政窮迫の折でもありますので、むだな経費は節約をした方がいいと思うのですが、これは、大蔵大臣いかがです。もっともあなたの所管じゃないからな。
  122. 大平正芳

    ○大平国務大臣 五十年度に御答申をちょうだいしまして、五十一年度に繰り返し言及されておりますことは御指摘のとおりでございます。私は、五十年度に御答申をいただきましたその答申は生きておるものと承知しておると答えたわけでございます。これをどのように具体化してまいるかということが政府の責任になってまいるわけでございます。政府といたしましてもこの問題を等閑に付しておるわけでは決してないのでありまして、国民の御納得がいく措置を講じなければならぬと考えておるわけでございますが、いつどのようにするかということにつきましてはまだ具体的なお答えができませんけれども、これを決して等閑に付しておるわけではない。御納得がいく措置は、税制調査会の御答申を尊重して具体的な措置を講じなければならぬという政府の責任はいつも痛感いたしております。
  123. 阿部助哉

    阿部(助)委員 あなたに何遍聞いたって、これはもうその程度しかあれだから、いずれ別の機会に御質問をいたしますけれども、この税調の答申を読んでみますと、医師の診療報酬だけは別ですが、どうも最近は政府の政策に余りにも迎合し過ぎまして、税の本来のあり方というものから大分外れてきておるのじゃないか。もう少し公平の原則というものを大きな柱にしておやりにならないと、これはそのときそのときの政府のやり方に従わざるを得ないのであります。私は税制が余りにも政策的に使われることに疑問を持つわけであります。やはり国民に負担をしてもらうのです。税というものは本当に、フランス革命以来この問題でいろいろと革命が起き、いろいろな問題が起きてきたという歴史的な経過も持っておるわけであります。それだけに、税というものは公平の原則をもっともっと慎重に考えていかないと、やれ不景気だから、やれ景気がいいから——通産省なんというのは一年に次から次へと特別措置の要求をしてくるわけであります。そういうものに一々こたえておったら、税の公平なんというものは期されないと思うのです。そういう点で、政府自体の問題だと思いますけれども、税調のあり方も、私はもう一遍原則を再検討していただきたいと思います。  終わります。
  124. 井原岸高

    ○井原委員長代理 次に増本一彦君。
  125. 増本一彦

    増本委員 先に金融の問題からお伺いしてまいります。  最近、通貨の供給量がずっとふえてきているということで、ことしの一月ですとこのマネーサプライ、M2で大体一四%台に上るだろう、それがさらに三月ぐらいでは一七%ぐらいに上り、今年度では一九%ぐらいにいくんではないかということを、実は板倉会長がせんだって生産性本部のトップセミナーですかでも何かお話しになったようで、新聞の報道でも伺ったのですが、まあその数字のあれはともかくとして、非常に金融緩和状況が出てきている。しかし、それにもかかわらず景気は非常に冷え込んでいますから、そういう状況のもとで、銀行などだけでなくて、ほかの大手の企業ども有価証券に対する投資もふえて、もう株が非常に値上がりをしているとかいろいろな状況がいま出ているわけですね。こういう状況になりますと結局、インフレの再燃という危険がますます強まるという心配を私はするわけであります。  通貨の増加率というのは、いろいろな考えがあるのだと思いますけれども、OECDなんかですと、大体潜在成長率プラス許容し得る物価の上昇率ぐらいというような話もありますけれども、しかし、そういうような状況から見ると、実体経済から見て、会長がおっしゃったこの一九%とかいうことになると大変な、ふえ過ぎるという状況になるんじゃないかというように思いますが、その点についてどういうようなお考えを持っておられるか、まず伺っておきたいと思います。
  126. 板倉譲治

    板倉参考人 お答えいたします。  せんだっての生産性本部のセミナーで私が話しましたときには、実はケースIからケースIIIぐらいまで用意をいたしておりまして、一つの前提といたしまして、もし不況が五十一年度いっぱい続くというようなことでございますと、恐らく金融緩和政策というものが終わりまで続くことになるのではなかろうか、そういったような場合には、最高であるいは一九%ぐらいまでふえる可能性があるということでございます。  その場合の根拠として使いましたのは、国債、地方債その他の有価証券は大体予想がつくわけでございますが、貸出金につきましては、今後の日本銀行の窓口規制の政策いかん、あるいは企業がこの貸出金を返済するようなマインドになるかどうか、こういうことにかかっておりまして、貸出金がどれだけふえるかという予想はむずかしいわけでありますが、一応これを最高の場合では、現在の窓口規制の伸び方と申しますのは、大体一−三あるいは去年の十−十二月の伸び方、この一−三の伸び方、このくらいの勢いでもし五十年度いっぱい伸びるとすればという前提でございます。そういう前提をつくった場合に一九%ぐらいになるだろう。しかし、そうならない可能性は多分にある。それは窓口規制が強化されるということもあり得るわけでございます。マネーサプライがふえ過ぎるということで金融政策が変わるということが当然あり得るわけでございますし、またマネーサプライがふえるということは、企業の手元流動性が高くなるということでございますので、企業がその手元資金をもって貸出金の返済を行うということが十分考えられるわけでございます。そういうことが一番望ましいことであるというふうに私は申し上げたわけでありますが、そういう望ましい状態が起こりますと、最低の場合には一七%ぐらいに五十二年三月末でもとどまるのではなかろうかというふうに申し上げたわけでございます。一九%だけを申し上げたわけではございません。  それから、もし一九%ぐらいになった場合、インフレになるかどうかという御質問かと思うのでございますが、マネーサプライがふえることによってインフレになるかどうかということは、これはまた一つの別の過程を経なければならないことではないかと思います。
  127. 増本一彦

    増本委員 しかし、一つ企業が借入金の返済をしていくような、そういうビヘービアになるかどうかという点は、従来の経験則から言っても、流動資金はやはりほかへ投資をしていく、特に証券投資なんかに流れていくという可能性が非常に強いわけで、現実にもやはりそういう推移があるわけですね。ですからいろいろな予見の組み合わせがあるけれども、この点はこれからの金融を担当していらっしゃる皆さんとしても、ひとつインフレ再燃の危険に対してはきちっと手綱をとってやっていくべきだということを申し上げておきたいと思います。  それから二つ目の問題は、公定歩合引き下げの追随率について、せんだって日銀がその結果を発表しましたが、大体それによりますと、全国銀行べースで一次から四次までの引き下げで三五・八%だ、五十年四月から十二月までで見ても六一%、こういうような状況のようであります。皆さんは、先ほどのお話を聞いても、かなり追随のスピードが速いというようにおっしゃっておるけれども、しかし、実際になぜ今日でもこれだけ下がっていかないのかという一つの大きな原因として、たとえば皆さん方が、特に都市銀行を中心にして内部で金利の下げについて操作をしているのではないかという気がするのですね。私は、三菱の頭取さんでもお見えになっておれば直接お話をしてもいいのですが、他行の話ですからあれですけれども、たとえば半分の下げについては本店の稟議にかけなければ下げちゃいかぬとか、そういうような内部での営業上のいろいろなベースで物を考えるということ、金利操作は営業の問題と関係がありますから、そういうことを口実にして実際に下げるべきものを下げないという傾向というものがやはりいまの金融機関の中であって、それが実質的にはまだまだ国民が期待するような追随率のアップになっていってないというように思いますが、その点ではどうですか。  それから、今後の方向、見通しについてもお話しになってください。
  128. 板倉譲治

    板倉参考人 公定歩合が下がったのに対しまして貸出金金利追従して下がってまいりますのは、貸出金の期限が参りまして新しく切りかえた場合に、その新しい貸し金に対して新しい金利が適用されるということになります。したがいまして、貸出金の切りかえが三ヵ月後、六ヵ月後にわたりますので、やはりその切りかえが進むにつれて漸次引き下がってくるということになるわけでございます。そのときに新しく適用される金利につきまして、内部でそういう引き下げに対して適度にとどめるようにというようなチェックをしているのではないかというような先生の御質問でございますが、そういうことはないと私は考えております。これはあらゆる銀行につきましてどうこうということを存じませんけれども、現在のところ、各銀行ともこの不況状態を身にしみて感じておりますし、取引先企業が悪くなるということはイコール銀行の資産内容にも影響する問題でございまして、企業銀行は運命をともにしているような状況になっておりますので、企業不況乗り切りにつきまして銀行として非常に真剣に協力をする構えをとっておりますので、内部でそういうチェックをするというようなことはやっておらない。ただ、従来公定歩合が引き上げられまして貸出金金利が上がりましたときに必ずしもそれにスライドして全部の金利を上げておらないわけでございます。それから預金担保の貸出金どもございまして、これもスライドして上がってこない、長期の貸出金もスライドして上がってこないという事情がございますので、すべてのものが新しく引き下げになりましたときに必ずスライドして下がるというふうにはいっておらないわけでございまして、そういうものについては、従来上がった程度また下げていくというようなことがあるいは行われていることは考えられると思います。  今後につきましては、先般預金準備率が引き下げられましたときに、銀行協会といたしましても今後の貸出金利引き下げについては最大限の努力をするようにという通牒を各銀行にお出ししております。今後とも引き下げは、前回引き下げなどと比べますとはるかに速いスピードで下がっていくものと期待をいたしております。
  129. 増本一彦

    増本委員 では、大体ことしの三月でこの追随率はどのくらいまでいく目標を立てておられるのですか。
  130. 板倉譲治

    板倉参考人 別に目標は立てておりません。従来から目標を立てるということは全く不可能でございまして、やはり期限到来、たとえば十二月には〇・二二六%でございましたか従来と比べまして非常に高い引き下げ率になったわけであります。これなども十二月にはこれだけ下げるという計画のもとにこういうふうになったわけではございませんで、いろいろ技術的な問題も絡んできておるかと思います。十一月末が休日であったというようなことも絡んでおったと思います。そういったような関係で先々幾らまで下げるという計画を立てておりません。期限別にもどれだけが毎月新しい貸し金に切りかわるというような計数も出ておりませんので、そういう計画は立てようがないというのが実情でございます。
  131. 増本一彦

    増本委員 ところで、この不況下で住宅ローンの返済に勤労者が非常に困っています。自殺者も出ている。住宅ローンの金利を下げるとかあるいは返済期限を延長してほしい、こういう要求が非常に強いわけです。皆さんの方でも、たとえば債券市場で長期の金利の一部がずっと下がりぎみになっているとか長期金利についても下げる環境がずっと出てきていると思うのですね。この際、返済期限の延長と、それから金利引き下げるという面で私は一段と英断をふるった努力をさるべきであると思いますが、その点はいかがですか。
  132. 板倉譲治

    板倉参考人 住宅ローンの金利でございますが、これは金融制度調査会の答申によりましても、長期金利預金金利が下がったときには引き下げるべきであるという御答申が出ておりまして、そういう考え方で私どももいままで引き下げてきておるわけでございます。それで現在住宅ローンの金利は、十年以上二十年という普通の事業資金には見られない長期の貸し金につきまして九%という金利を提供いたしております。一般産業に対します長期の金利、大体五、六年の長期のものでございますが、プライムレート、最優遇レートが九・二%ということに相なっておりまして、これよりも住宅ローンの方が期限が長いけれども金利を低くいたしておるというのが現在の実情でございます。数年前までは長期のプライムレートよりも住宅ローンの金利の方が一、二%上であるという姿であったわけでございまして、これが金利体系から申しますとノーマルな姿ではないかというふうに思っておりますが、ただ住宅ローンに対します国民の御要求が非常に強うございますし、もろもろの事情を考えましてこの長期金利が上がってまいりましたときに住宅金利だけは極力引き上げの度合いを少なくしてまいりました。そういった関係で長期のプライムレートよりは低くなっておるわけでございます。そういう点で今後どうなりますか、これはやはり先ほど申しましたように預金金利と長期金利引き下げがありました場合には、そのときに検討するということになるかと思うわけでございますが、現在のところは将来どうなりますか白紙でおるわけでございます。
  133. 増本一彦

    増本委員 一つは自殺者が出るほどに返済の面で借りた人たちも非常に苦労をしている。実情に応じて返済の猶予をするとか期限を延ばしてあげるとか具体的な手だてをいまとってあげませんと、ますますひどい状態になると思うのですね。この点についてはそれぞれの銀行が一斉に具体的な手だてをとるようにすべきだと思いますが、この点はどうですか。
  134. 板倉譲治

    板倉参考人 住宅ローンの返済に困っておられる方が多少出ておることは私も承知いたしております。現実に私どもの方の銀行の取り扱っております住宅ローンを見ましても、期限に御返済が滞っておるというものがぼちぼちふえてきておるわけでございます。そういう場合にも、銀行といたしましては事情をよくお伺いいたしまして返済猶予をいたしておるのが現実でございます。いままで住宅ローンにつきまして、約束どおりの期日に返済がないというので、担保権を実行してあるいはこれを競売に付するといったような例は一つもございません。御事情に応じて猶予をいたしております。
  135. 増本一彦

    増本委員 地方銀行や相銀それから信金、その他の関係の皆さんもそういうことで具体的に処置していただけますね。
  136. 伊原隆

    伊原参考人 ただいま仰せのように、地方銀行はことに住宅ローンの比率が貸し出し総額の中の七・五%ということで、平均より非常に高いわけでございます。金利につきましても、いま板倉さんのおっしゃったような金利でございますが、いまの返済がだんだんむずかしくなるというふうな事例も若干ないではございませんけれども、ただいまお話しのように個々のケースに従いましてよくお話し合いをいたしてまいりたい、こう考えております。
  137. 早坂順一郎

    ○早坂参考人 相互銀行といたしましては、自行の住宅ローンと相銀全般の出資による住宅ローンと二つございますが、ただいま御説のとおり、いろいろな関係で滞りがちなところもございます。そういうときは延長を認め、あるいは肩がわりをするというようなことで、話し合いの上で処置しておるような次第でございます。
  138. 小原鐵五郎

    ○小原参考人 ただいま皆さんからお話のございましたように、そういったような場合がありましたときには、できるだけ金を借りた人の立場に立って考えていく、こういう考え方でやっております。  それから、私の方の信用金庫としましては、住宅ローンは国民生活に非常に必要な資金ですから、現在貸し出しの残高に占める割合は一〇%といって、どこの金融機関にも負けないパーセンテージを持っておる、こういうことでございますが、将来も積極的に、いま貸しておる人ばかりでなくて、これからも量も質もいい住宅ローンを提供したい、こういうふうに考えておる次第でございます。
  139. 増本一彦

    増本委員 そこで、昨年末で預金残高が二百兆円を超した。その陰には預金獲得の競争で非常に奔走をした銀行の従業員の皆さんの努力があるわけですね。私たちもこれまで国会の中でも、銀行の従業員の皆さんの労働条件についてもいろいろと気を配ってまいりました。ところが、労働基準法の中でごくあたりまえな、いわゆる役付と言われている支店長代理とか次長、調査役、そういう人たちが幾ら時間外の労働をやっても時間外手当が支払われていないという問題があるわけです。しかし、地方銀行その他の銀行はほとんど全部解決を見て、それなりの手だてをとられているようです。まだ不十分さはいろいろあるし、問題があります。ところが、事都市銀行に至ってはそれがほとんどないのですね。  たとえば、全銀協の会長さんの銀行を挙げて申しわけありませんけれども、調査役になられると職務手当がつきますね。五万六千円ぐらいでしたでしょうか。しかしそれで、あと一ヵ月に何十時間時間外をやっても、時間外手当というものがないわけですね。これは労働基準法で、ちゃんと時間外は割り増しで賃金を払わなければいけないというようになっているのですから、それを職務手当とかそのほかで肩代わりをさせて、そして払うべきものを払わないというのはいけないと思うのですよ。  私ちょっと会長さんの銀行を調査をさせていただいたのですが、三十二歳になると大体調査役になるのだそうですね。すると定例の給与が二十四万九千七百円ぐらい。基本給が十八万二千七百円、職務手当が五万三千円です。それから扶養手当が二人として一万四千円。これで一ヵ月に五十時間ないし五十五時間ぐらいの残業を皆さん一生懸命やっていらっしゃる。たとえば朝早く一番先に来て、そして金庫のかぎをあけなくちゃいけない、あるいは一番最後まで残って、金庫のかぎを締めて、そうしてから帰らなければいけない。ですから、そういう人たちは、役付にならない方が時間外手当がもらえるということで、調査役にならない人の方が実際には手取りの給与が高くなる、そういう妙な現象も生まれているそうです。  昭和四十五年に、労働組合の方で、何とか改善をしてほしいということで要求を出されたのだそうですか、いまだにたなざらしみたいな状態になっているそうです。  これを時間給に計算いたしますと、大体一ヵ月百五十七時間としますと、一時間当たりの賃金は千五百九十円、一ヵ月に五十時間時間外をやったとしても、割り増し金を除いたとしても九万円になるわけですね。しかもいわゆる調査役以上の、本来それだけの時間外の手当をもらってもよろしいというように私どもには考えられる人が大体二千人ぐらい、会長さんの銀行は大きいですから、いらっしゃるから、そうすると結局一ヵ月だけで二億円以上の不払い賃金があるという勘定になると思うのですね。労働債権というのは御承知のように時効が二年ですから、だから五十億円ぐらいの不払い賃金が、二年間で、あるという勘定になる。こういうことはちゃんと労働基準法で最低限の条件として認められているわけですから、この点はきっちり改善をしてあげないと公共機関だとか公共性があるという銀行が何だ、こういう状態になると思うのです。私はすべての都市銀行がこの問題を早急に解決をさるべきだと思いますが、全銀協の会長さんとしてその点はいかがですか。
  140. 板倉譲治

    板倉参考人 ただいまの問題は、御案内のとおり労働基準法第四十一条に労働時間、休日などの適用を除外するものとして定められておりますところの管理監督の地位にある者、こういう者に銀行の役付者が該当するかどうかという問題ではなかろうかと思っております。各金融機関ともその職場の内容、実態がそれぞれ非常に異なっておりますので、それぞれの実態に照らしましてこれに対処しているものと考えるのでありますが、ただいま御指摘のございました私ども三井銀行の場合について申し上げますと、調査役というのがございます。書記一級というのが一番平の上でございまして、その上の段階が役付になりまして調査役というのがございます。これを役付と言っております。調査役以上の役付者の職務の内容はそれぞれの店で実際に部下を掌握しております。それから店の営業方針の決定にも直接参画いたしております。また、部下の昇給昇格等人事考課あるいは配置転換などの決定につきましても、こういった調査役が直接タッチしているわけでございます。さらにこの調査役は、出退時間につきましても非役付者とは区別して自主的な管理に任せられておるわけでございます。こういったような管理監督者としての重責を担う者でございますので、そういう者として処遇面におきましてはこれにふさわしい水準の職務手当と定例給与、賞与を支給いたしているのでありまして、こういった職務内容、実態に照らしまして私どもは役付者を労働基準法第四十一条における管理監督の地位にある者として時間外手当の適用除外の扱いをいたしているわけでございます。  それから三井銀行でそういった問題が内部で起こっているのではないかという御指摘でございます。確かにそういったような要求を従業員組合から受けたことは事実でございます。しかし、この要求の基本には銀行全体になお存在いたしておりますところの残業の問題、この残業が多いということからこういう問題が起こっているわけでございまして、これは残業問題を銀行の労働条件の見劣りのする部分として具体的な解決を図ることにあるのではないかというふうに理解しております。  したがいまして、銀行といたしましても昭和四十六年以降本格的な残業縮減対策に着手いたしております。これによりまして相当な成果をすでに上げてきておるわけでございます。こういうことで、本格的な残業縮減対策を行おうではないかということで、組合との合意の上でこういうことをやって、現実に実績を上げてきているということでございます。従業員組合ともその後、この要求に関しましては労使協議をしながら協力して取り組んでいくということでさらに合意を見ておる次第でございます。
  141. 増本一彦

    増本委員 それだと、お払いにならないということですね。  では、労働基準局長いらっしゃいますか、結局この四十一条の解釈の問題ですね。これまでにもこの点では議論があったし、昭和二十二年九月にすでに労働基準局の通達が出ていますね。それから二十八年一月二十四日には、これは一つの解釈先例になっていますけれども、大阪労働基準局長がやはり解釈通達を出している。私はこれは早急に実態を調べるべきだと思うのです。何でも人事に参画するとか配転に参画すれば管理または監督の地位にある者だというように言えるのかという問題ですね。その点でまずひとつ労働基準局の御意見を聞いて、それから労働大臣として、これは調査をして是正するというお考えがあるかどうか、その二点についてお伺いをしたいと思います。
  142. 藤繩正勝

    藤繩政府委員 お尋ねの点についてお答え申し上げます。  問題になっておりますのは労働基準法四十一条の解釈でございますが、いまお挙げになりましたように、昭和二十二年の解釈例規では、「監督又は管理の地位に在る者とは、一般的には局長、部長、工場長等労働条件の決定その他労務管理について経営者と一体的な立場に在る者の意であるが、名称に捉われず出社退社等について厳格な制限を受けない者について実態的に判断すべきものであること。」こうなっておるわけでございます。ただ、実際問題といたしまして、名称ではなかなか判断しがたいわけで、実態に即して個別のケースに当たっていかなければならないわけでございますが、私どもは、いまの解釈例規に立脚しまして、たとえば、実際に労務管理について経営者と一体的な立場にあるかどうか、あるいは自己の勤務について自由裁量権を有し、あるいは出社退社について厳格な制限を加えがたいような地位にあるかどうか、その地位に対して何らかの特別給与が支払われているかどうかというような、そういう条件をそれぞれ押さえまして、行政指導を行っておるわけでございます。いまお挙げになりましたような問題は、各行についてそれぞれ実態も違いますので、私どもとしましても、十分調査して、対処したいというふうに思っております。
  143. 長谷川峻

    ○長谷川国務大臣 あなたの御質問の中にも、地方銀行相互銀行信用金庫、そういうところは大体問題が片づいた、こういうお話がありました。いま局長からも御答弁しましたように、これは実態の問題でございますから、都市銀行につきましても管理監督者の実態を十分判断した上で、適切に対処してまいる方針であります。
  144. 増本一彦

    増本委員 会長昭和二十二年にすでに出されている解釈例規でも、「出社退社等について厳格な制限を受けない者について実態的に判断」する、こうなっているのですよ。三十二歳で調査役になって、その人がそういうような、労働条件についても拘束を全然受けないでやっているような地位にあるのか、ここのところが一つの問題ですよね。ですから、単に職務手当を払えばもうそれで管理職になるのだというぐあいにはいかない。こういうようなことをやっているのは都市銀行だけです。年間一行で五十億だ、四十億だというような不払い賃金がある。ですから、皆さんの方も、これは早急にやはり解決をするように努力をされるべきだと思います。  では、労働省はいつごろまでに実態調査して、解決をなさるつもりですか。日限を切ってください、前からの問題ですから。
  145. 藤繩正勝

    藤繩政府委員 お答え申し上げます。  ただいま大臣から申し上げましたように、すでに地方銀行とか相互銀行については相当実態承知しておりますので、私どもとしては、都銀との間にアンバランスがあってはなりませんから、できるだけ早く調査を行いたいと思っていますが、実は銀行協会等とも連絡をとりまして、関係の方にも来ていただいて、その辺の指導をすでに始めておるわけでございますから、できるだけ早くやりたいと思います。
  146. 増本一彦

    増本委員 結論はいつごろ出るのです。
  147. 藤繩正勝

    藤繩政府委員 各行それぞれございますから、いま期限を言えと言われましてもなんでございますが、できるだけ早く実態を把握したいというふうに思います。
  148. 増本一彦

    増本委員 それでは、次の問題に移ります。谷山参考人には大変お待たせをしちゃって申しわけございません。  いままでにもいろいろ議論が出ましたけれども、私は、今後の税制はどうあるべきかという点についてひとつ御所見を伺っておきたいと思います。  まず第一は、五十一年度の政府税制改正についてどういうような御意見をお持ちなのか、どういう点に問題点があるというようにお考えになっておるかという点について御意見を伺いたいと思います。
  149. 谷山治雄

    谷山参考人 いまの、五十一年度の税制改正についてどういう問題点があるかというお尋ねでございますけれども、非常に膨大な中身がありますので、一口に申し上げるのはなかなかむずかしいのですが、端的に申しまして、先ほど税制調査会の会長さんからお話がありました二つの柱の問題があるわけで、第一は、所得税の減税をやらなかった、そういう問題があるわけです。これは現在の経済情勢から見ましても、現在の税制のあり方といいますか、これを見ましても、減税を全然しなかったというのは私は明らかに間違いであるというふうに考えているわけです。  これにつきましては、いろいろ私の意見を申し上げたいところがあるわけなんですけれども、所得税減税の問題が景気対策という観点から取り上げられているわけなんですが、それだけではなくて、基本的な生存権といいますか、生活権という問題があるわけですから、この観点からもやはり取り上げていく必要があるわけで、それだけ申し上げても抽象的ですからもう少し申し上げます。  税制調査会の答申及び政府税制改正では、たとえば所得税の課税最低限が国際水準に達しておるからいいというようなことを言っておられると思うのですけれども、私はこの国際水準の取り方についていろいろの疑問があるわけです。各国とも税制が違うわけですから、一概に比較のできない問題があるわけで、国際水準というものをいろいろな角度から検討する必要はありますけれども、やはりそれはそれであって、日本の独自の立場から考えてみる必要があると私は思うのです。  そういうわけで、所得税の減税をしなかったことにつきまして、景気対策の観点からの問題、それは消費がふえないのではないかというそういう問題、それから国際的な最低限に達しているから課税最低限の引き上げはいい、そういう観点から中止したということは、私は非常に間違いであるというふうに思っております。  それから第二の租税特別措置の整理の問題でございますが、これももうすでにいろいろやりとりがございましたのでごく端的なことを申し上げますけれども、先ほども言われましたように、租税特別措置の整理によりますところの初年度の増収が百五十億円、法人税に比べますと〇・三%にすぎないわけですし、平年度でも千百五十億円の増収ということで、これは法人税に比べますと二・五%くらいである。ところが、税制調査会及び政府が租税特別措置の整理に取り組みました比較的大きな時期は昭和三十二年度であるわけですが、このときは租税特別措置によりますところの初年度の増収が大体三・五%くらい、平年度の増収が八%以上になっていたわけですから、それに比べますと非常に微々たるものということになるわけで、その一つの理由は、先ほどもありましたように、租税特別措置の整理というものを、狭い租税特別措置法だけに限定しておる点に一つの問題があるわけで、これはもっと広範に取り上げて検討をすべきである、私はそういうふうに考えます。  大変抽象的で簡単でございますけれども、今度の税制改正の二つの柱の点については、片一方は間違っていると思いますし、片一方は非常に不十分であるというのが私ども見解でございます。
  150. 増本一彦

    増本委員 いま付加価値税の論議が非常に国会内外でも深刻に、しかも盛んになってまいりました。参考人は、EC諸国で付加価値税の調査なども積極的におやりになっておるようですが、この付加価値税についての参考人の御意見を聞かせていただきたいと思います。
  151. 谷山治雄

    谷山参考人 私もEC諸国に前後数回視察に行ったわけでございますけれども、まあ率直に言いまして、日本とEC諸国との状況の違いというものがあるわけで、要するに、いままで売上税や取引高税があったそういうEC諸国が付加価値税を採用した事情と、これからやろうという日本とでは非常に状況が違うという点がEC諸国との大きな違いであるわけですが、それはともかくとしまして、付加価値税そのもの、いま導入しようとしておられるようですが、いわゆるEC型の付加価値税と言われるものの中身は、これは言うまでもございませんけれども、まず第一に物価を非常に上げる、そういう役割りを果たすわけでありますし、それに一般的に物価を押し上げますので、税の負担というのがいわゆる逆進的になる、つまり所得の少ない人の方が負担が多くなるという問題が当然第二に出てきますし、それからもう一つは、私はヨーロッパに行きましていろいろ実務を見て感じたのですが、中小企業、零細企業に非常に大きな財務的あるいは実務的な負担をかけるという点が大きな特徴点でございますので、私はこれは非常に重要な問題になるかと思います。したがって、私は付加価値税の導入にはもちろん反対でございますし、また、付加価値税を導入しようと思います場合には、他の税との整理統合がどういうふうになるかという問題も——もちろん反対ということになりますと、そういうことはどうでもいいことになりますけれども、そういったほかの税との統合なんかもどういうようになるのか、それから地方財政との関係なんかもどういうふうになるのか、そういう問題も検討しませんと問題がいろいろあるわけで、私は率直に言いまして、付加価値税は税そのものとして一番悪い形の大衆課税であるというふうに思いますし、その税制改革に及ぼす影響というのは非常に広範なので、ひとつ慎重に検討していただく必要がある、かように考えております。  以上でございます。
  152. 増本一彦

    増本委員 今月の六日に大蔵省が当委員会に中期の財政展望というのを出しました。新聞などでもごらんになったと思いますが、それに基づいて私どもで税収の伸びの弾性値をずっと見てみますと、どうもやはり一・六から一・七ぐらいにかなり鋭角的にいかざるを得ない。いままでの高度成長のあの時代でも弾性値が大体一・三九から四ぐらいですから、そういう点から見ると、新税ということにならざるを得ないわけですね。いま各方面からいろいろ新税についての構想が出てきています。一つは包括所得税というような考え方もありますし、また資産課税を強化しろ、あるいは富裕税の考えもこれは古くて新しい問題になっています。これらについてどういうようにお考えになっておるか。あるいは、それでは今後の税制というものはどこを中心にやっていくのが公平が図られ、かつ所期の正しい意味での財源確保になるのか、この点についてはどういうようにお考えでしょうか。
  153. 谷山治雄

    谷山参考人 今後の税制の問題のことでございますけれども、いま御指摘がございましたように、政府の方の中期財政計画を見ますと、大変な増収、増税がもくろまれているわけで、たとえば昭和五十二年度を見ますとたしか二五、六%の増収を見込んでいるわけで、こういうふうに税の増収が期待できるというのは、過去の経験で言いますと昭和四十七年度の税収がたしか二三%ぐらいの増になっていたわけで、今後の昭和五十二年度の経済というものを見通しますと、そのまま昭和四十七年度、四十八年度のようなそういう経済情勢というものは見込み得ないというふうに考えるわけで、そうなると新税の創設なしにそれだけの増収を図るということは、大変むずかしいというふうに私は考えているわけです。私としましては、そういう増収、つまり増税計画というものを無条件にそのまま認めていいのかどうかという大前提の問題があるわけですけれども、しかし全体として見ますと、財政がだんだん膨張していくということは、ある程度これは必然的であるというふうにも考えられますので、そこで当然財源対策というものも考えざるを得ないということは、これはそうだと思うのです。  そこで、どういうふうな税体系が望ましいかということであるわけなんですけれども、これも大変抽象的、一般的で申しわけないのですが、やはり税源としまして特に公平という観点から考えますと、また低所得者の救済あるいは保護という観点から考えますと、やはり税源として取り上げるべき順序は所得、次に財産、最後に消費、そういう順序になろうかと思いますので、今後税体系というものを考えていく場合にはいま言った順序で考えていくべきである、そういうふうに私は考えているわけです。  そうしますと、所得の場合にはいま御質問がございましたような包括的所得税という考え方も最近いろいろ言われておるわけで、簡単に言いますと、所得税の課税べースをもっと広げるという、そういう問題もあるわけです。時間の関係もございますでしょうから細々したことを申し上げるのは差し控えますけれども、早い話が五十一年度の税収予算を見ましても、企業所得控除の額だけで一人当たり平均九十万になるわけで、これは御承知のように青天井がなくなったことに起因するわけで、これを仮に最低の五十万に抑えますと、それだけで給与所得のタックスベースというものは約十一兆円ぐらい広がってくるわけで、それがそれじゃいいかどうかは別としまして、そういう考え方も包括所得税という考え方の一つでもあるわけですから、やはり所得税というものは、言うまでもなく民主的な税制であるわけですから、そういう考え方も取り入れて所得税のことを中心にひとつ考えてみる必要がある。  それから第二には、先ほどから議論になりましたような企業に対する課税の問題でございまして、いま御承知のように三社に一社が赤字であるとか、したがってそういう企業に対する課税は重くできないとかいろいろあるわけでございますけれども、その点私は二つのことを簡単に申し上げてみたいのです。  まず一つは、赤字であるということは一体どういう中身を持つかという検討の問題です。これはやはり所得計算の問題があるわけですから、現在の企業会計なり税法なりというものを前提にして赤字であるということなのか、それとも先ほどからいろいろ特別措置の問題が出ておりますように、そういうものを考え直した上で赤字なのか、そういう問題がまず第一にございます。  それから第二には、これは次のテーマと関係をするわけですが、こういう低成長といいますか減速経済ということになりまして、これは将来どうなるかわかりませんが、当面そういう状態になりますと、やはりいま現実に国民の生活が困っている。失業者も出てくるし、いろんな面でも困っているということになりますと、私は現在三社に一社が赤字であろうと何であろうと、過去に蓄積したものを社会還元といいますか政府の手に渡していただくということが非常に必要なことではないだろうか。つまり企業のいままでの蓄積というものを社会還元といいますか、要するに税金として取り上げるということは必要なんじゃないかというふうに考えますので、ここで私は一つの財産課税——名前は財産税と名づけますか富裕税と名づけますか、そういう財産課税というものを早急にしかも真剣に検討する必要があるだろうというふうに思うわけです。そういう点で、この不景気に財産税を取るというのはとんでもないという批判もあるとは思いますけれども、ともかく過去の高度成長で非常に蓄積をして、しかも非課税の引当金、準備金を非常に膨大に蓄積されているわけですから、私は多少のそういった社会還元という意味での財産課税というものがあってしかるべきである。それを臨時的なものとして考えるか、あるいはさらに経常的なものとして考えるか、それはいろいろ検討していただく必要があると思います。  時間が長くなりますので、最後ですが、消費課税の問題は、そういう意味で、やはり税負担の公平とかあるいは低所得者の救済ということを考えますと、一番後回しにすべき問題で、私は消費課税をしてはいけないとは申し上げませんが、考え方としては一番最後に回すべき問題で、今後の税体系の構築というものは、繰り返し申し上げるようですが、公平という観点からも低所得者救済という考え方からも、いま言ったような順序で検討するのが当然ではないか、かように私は考えている次第でございます。  大変抽象的でございますが、一応考え方の基本は以上のとおりでございます。
  154. 増本一彦

    増本委員 時間がなくなってしまったので、かためてちょっと国税庁に伺っておきたいと思います。  確定申告の時期が近づいてきまして、そのときにこのロッキードの献金問題で、この児玉誉士夫氏なども脱税の疑惑があるのじゃないかというような議論がなされているわけであります。これは、非常に、まじめな中小零細企業を初めとする納税者にとっては、労働者はもちろんですが、大変な問題であります。  そこで、国税庁に伺いたいのは、まず第一点は、現在どんな調査活動をしているのか、それから児玉誉士夫氏の申告は青色申告であるのかどうか、そうだとすると、この青色申告には法律上収支明細書が添付されていなければならないはずなので、いままで、一九六九年の一月十五日からいわゆる市場開発コンサルタント契約というものが結ばれて毎年五千万円ずつもらっていたとか、あるいは昭和四十七年の十一月のわずか五日間の間に四億二千五百万円のコミッションを受け取っていたとかいうようなことが、この確定申告書添付の収支明細書に記載されて申告されているのかどうか、まずこの点だけ、時間がありませんから簡潔にひとつお答えいただきたいと思います。
  155. 中橋敬次郎

    ○中橋政府委員 いわゆるロッキード問題につきましてどんな調査をやっておるかということでございますけれども、それは、いままでにいろいろ私ども承知をいたしております報道内容、それから外交チャンネルを通じまして得ました資料等を分析、解明いたしております。あるいは、納税者御本人の代理人等についての接触も必要になるかと思っております。  それから、児玉氏につきましては、白色申告でございます。したがいまして、いまお尋ねのコンサルタント契約その他につきましての収支明細というものは申告には添付されておりません。
  156. 増本一彦

    増本委員 もう少し時間がありますね。  国税庁としてはどうなんですか。この一九六九年一月十五日付の市場開発コンサルタント契約というものがチャーチ委員会によって六日に公表になりました。これに基づくエージェントとしての毎年の五千万円の収入とか、あるいはコミッションとしての四十七年の四億二千五百万円の収入というのは、事業所得というように認定をすべきであるというように思いますが、その点はどういう判断をお持ちですか。
  157. 中橋敬次郎

    ○中橋政府委員 いまお示しの一九六九年一月十五日からのコンサルタントとしましての契約書の写しは、外交チャンネルによりまして入手をいたしました。それには、新聞等でも報道されておりますように、児玉誉士夫というサインが日本文でございます。そのサインが一体いかなる程度に信憑性があるかということについて現在調査をいたしております。そういう契約がございますれば、恐らくそれによりますところの、契約の文言の中にあります年五千万円の収入というのは事業所得に当たるのではないかというふうに考えられております。  それから、その他につきまして、これも入手をいたしました児玉誉士夫氏の名前によりますところの仮領収証に明示されております金額と、それからこのコンサルタント契約との関連というのは現在までよくわかっておりません。
  158. 増本一彦

    増本委員 そうすると、これは従来の確定申告の金額がいろいろ報道をされていますけれども、この確定申告の内容は、児玉氏の場合、ほかにこの収支を明らかにするような明細書その他は全然添付をされていないのですか。通常こういうようなサービス業の場合、私などもそうですか、こういう弁護士とかそのほかの場合には、税務署の方でも積極的に収支明細書の添付を行政指導として要求をしていますね。ですから白色申告の申告書用紙だけで四千五百万とか五千万もの申告を、収入から経費を引いた所得としてぽっと出す、その申告書だけでこれだけの高額所得者の申告を受理するというのは、そういうことであったのか、それとも添付書類その他のいわゆる資料せんですね、そういうものも添付をされて申告をされてきたのかどうか、この点はどうなんですか。
  159. 中橋敬次郎

    ○中橋政府委員 先ほどお尋ねの青色申告者としての収支明細書は添付をされていないことはお答えしたとおりでございます。それで普通の申告書に添付をされます所得の明細に関しましては添付をされてきております。  それからまた、現行の規定で申せば、二千万円以上の所得の人につきましては、財産、負債の明細書というのが必要になっておりますが、そういうものについて提出されておる年分もございます。したがいまして、そういうものについて私どもは現在まで毎年分につきまして調査をいたしてまいりました。
  160. 増本一彦

    増本委員 それではその添付されている資料せんに、先ほどお話をしたこのコミッション料とかあるいはエージェントとしての五千万円ずつの収入とか、そういうものは記載をされておるのですか。
  161. 中橋敬次郎

    ○中橋政府委員 申告の内容につきましては詳細申し上げるわけにはまいりませんけれども、私どもが先ほど申しましたような契約書のコピーを入手いたしましたことは、新しい事実として検討しておる最中でございます。
  162. 増本一彦

    増本委員 ですから、これはその契約書の信憑性が一つあるでしょう。しかし、それとあわせて、現実に税務署にある申告書の資料せんの中の所得明細書の中にそれに符合するような記載があるのかないのかということを伺っているのですよ。その点どうですか。
  163. 中橋敬次郎

    ○中橋政府委員 その点につきましては、先ほどお答えいたしましたように、詳細については申し上げられませんけれども、先ほど申しましたコンサルタント契約のコピーにつきましては、新しい事実として検討しておる最中でございます。
  164. 増本一彦

    増本委員 ということは、結局その所得明細書にはそれに符合するような記載がないというように理解してよろしいですね。
  165. 中橋敬次郎

    ○中橋政府委員 申告書の内容について申し上げられないことは再々お答えしたとおりでございます。
  166. 増本一彦

    増本委員 もう終わりの結論です。  そういうことで非常に疑惑が多い。申告の時期である。ですから、この問題については政府の方でも厳重に調査をするということですから、今後また引き続いて質疑をしてまいりたいと思います。  それでは終わります。
  167. 井原岸高

    ○井原委員長代理 広沢直樹君。
  168. 広沢直樹

    広沢委員 本日は多数の参考人に御出席をいただいておりますが、きわめて限定された時間の中でありますので、簡略にお伺いしますから、お答えの方もひとつ簡略にお願いしたいと思います。  そこで、まず最初小倉税制調査会会長さんにお伺いしたいと思います。  まず一点は減税の問題でありますけれども、この税制調査会の五十一年の答申によりますと、所得減税を見送った理由がるる書いてあります。まあこれはこれなりに、私もよく読んでみましたけれども、要約しますと三つの点に分かれているわけですね。  一つは、政府経済見通しによれば、わが国経済が回復する、いわゆる経済見通しどおりにいくだろうという前提を踏んでいるということが一つ。  それからもう一つは、公債を多額に発行するから、そのための減税の公債というのはいかがなものだろうか、こういう認識ではないだろうか。  それから三番目には、やはり消費行動から見ると、恐らく減税してもこれが消費に回らないで貯蓄に回っていくんではないか、ですから効果の面から言うといかがなものだろうか。  それから物価調整減税につきましては、いわゆる課税最低限の問題とかあるいは生活水準、所得水準、こういった問題を挙げられて、一応いまはこれは実施しない。  この問題については再三お話があっております。しかしながら、私はどうもこの点やはり納得がいかないわけでして、重ねてお伺いするわけでありますけれども、要するに政府経済見通しによれば、この経済見通しが仮に大きく狂うようなことがあるならば、次の対策としては、やはり税調としての考え方の中に減税ということは考慮すべきであるという余地があるのか、考え方があったのかなかったのかということが一つであります。  それから、多額の公債を発行云々とありますけれども、少なくとも調整減税の上におきましては、政府の当委員会に提出されておる資料から試算してみましても、調整減税で、政府見通しの八・八%の物価上昇であるならば、大体二千五百億の財源があればいい、こういう資料が出ておるわけであります。  その財源は、決してないわけではありません。いま公共予備費、いわゆる景気対策のために使用を限定したと言われておりますが、予備費を組んであります。あるいは歴年見てみましても、多額の予備費を組んでおりますが、その半分は補正予算等の財源に回されております。したがって、いま三千億の予備費を組んであるその半分を使ったとしても、当然調整減税の財源というものは、現在の政府が発行している公債の枠内ででもできないことはないわけであります。  それから、生活水準云々の問題もありますけれども、これは御存じのように、確かに表面的に考えていきますと課税最低限は、きょうも本会議で大蔵大臣から答弁があっておりましたけれども、世界で第二番目の水準にまで来ている、こういうことです。それは事実でありましょう。しかしながら、可処分所得から見た場合は、先進諸国の中でまだそういう立場ではないわけですね。アメリカ、西ドイツに次いで、まだ低いわけです。したがいまして、そういうことから考えていきましても、もっとそれは考慮する余地がなかっただろうか。  というのは、いままでの税調の答申をずっと調べてみましても、あるいは政府の答弁を考えてみましても、物価調整減税というのは、物価が相当高騰している場合においては、これはいかなる状態でもずっとやっていかなければならぬ、去年もこういう答弁をしているわけであります。したがって、その点がどうも納得しかねる。あるいは消費に回らぬではなかろうかということも、これは現在、不況下における消費構造が変わってきている、ああいう好況期における消費構造と、低成長下における消費構造が大きく変わってきている。これは総理府の五分位別に見ましたその統計を見ましても、はっきり出てくるわけであります。  そういったことを、時間がありませんから一々詰めているわけにいきませんけれども、そういった点から考えてみますと、なお考える余地があったんではなかろうか、こういうふうに思うわけであります。  したがって、私がお伺いしたいのは、税調の答申の中にもありますように、減税につきましては、経済環境が現在予想されているものと大きく異なるような場合においては、これに対処するための税制を考えてもいいという前提つきでいまのことをおっしゃっていらっしゃる。ですから、そういうことが仮にあった場合においてはどういうふうなお考えになるだろうか。  これは、きょう経済閣僚会議がありまして、それに経済企画庁から報告をされた経済見通し、これが出ておりますけれども、この見通しは大きく修正されている。すなわち、現在景気の底だというのは、昨年の一−三月が恐らく景気の底であり、それから徐々に回復に向かうであろうというのが、いままでの政府経済見通しの基本になっておったわけです。ところが、きょう報告された報告によりますと、そうではなくて現在が底ではないか、底入れの兆しではないかという見通しが出ているわけです。したがって、一年間その間にずれがあるということは、やはり経済見通しはここに大きくもう狂い始めていることが明確であります。  さらに五十年の経済見通しも、御存じのようにあれだけ大きく当初の見通しから一年間で変わりました。そのために何回か不況対策を、一次から四次まで打っております。  そういうことを考えてみますと、もしもそういう事態の場合においては、やはり景気対策のための減税、こういう措置も税調としての考え方にはあったのではなかろうか。その点の考えをまず伺っておきたいと思います。
  169. 小倉武一

    小倉参考人 お答えします。  所得税減税についてのお尋ね、二点ばかりになるかと思いますが、まず第一は、特に関連をいたしますのは、ことし、来年の経済見通しに関連をする事項かと思います。政府経済見通しのようなことでなければ云々ということに関連をいたすわけでございますが、税調といたしましては、政府経済見通しのごとく経済不況が回復することを望んでおりましたし、また、政府見通し以外にこれというよるべきところもございませんので、経済不況になる、さらに深刻になるというような前提でのいわば景気対策減税といいますか、というようなことはこの際考えなくてもよろしいんではないかということでございます。  それを裏返しまして、仮にそういう事態になったならば、それでは所得税減税を税調は考えておったのかというお尋ねでございますが、そこははっきりとはいたしておりません。むろん委員の中には、そういう事態が起これば当然所得税減税を考えるべきだという御説もございましたけれども、答申の中に明示的にはそういうことは入ってございません。  それから、第二点の物価調整減税のことでございますが、これもお話のとおり、ある程度物価が上昇するということであれば所得税減税をするのが当然であるというふうにこれまでも恐らく税調は考えておった、あるいは政府もそういうお考えだったのだろうと思うのです。しかし、去年、ことしの経済状況、財政収入の状況等から見ますと、なかなかこの際はそこまで踏み切るわけにはいかないじゃないか。  と申しますのは、一つには、例の二兆円減税等のことで所得税の課税最低限が相当上がってきた。まあこれは縦に見た話。もう一つは、いまの最後お尋ねの中にございました、横に他の国と比べましてそう見劣りはしない。そこで、こういう財政上困っておる事態でありますから、国民の皆様にも、この際はひとつがまんを願えないのだろうかというのが税調の答申の趣旨でございます。
  170. 広沢直樹

    広沢委員 いままでの考え方はほかに述べられておりますし、再三御答弁があっておりますからわかりますけれども、やはりこういうふうに経済見通しがもう変わってくる、こういう段階になりますと——これはまあ皆さんの方からそうせいと言うわけにはいかぬのでしょう。どうせ政府の方から諮問があれば、それに対してまた検討するということに相なるかと思います。  そこで、大蔵大臣にこの問題についてお伺いしますが、きょうの経済閣僚協議会におきましてそういう景気見通しを修正された、こういうことでありますから、それに対してきょう本会議でわが党の坂口議員が、もしも経済見通しが変わり、なおかつ加えて景気対策のための手段を打たなければならない。第五次の云々という話も出ておりますけれども、そういう段階においては、やはり一方で公共事業とかあるいはそういう企業優先の景気刺激策だけではなくて、いわゆる減税を行う等の個人消費支出、それを拡大していく、こういうような対策というのは私は当然だと思うのです。そういう段階においてはやはり減税は考慮するのかどうか、ひとつお答えいただきたい。
  171. 大平正芳

    ○大平国務大臣 きょうの経済閣僚懇談会におきましては、当面の経済情勢の判断といたしまして欧米経済がアメリカ、ドイツの立ち直りを初めといたしまして、ようやく回復の徴候を見せてきたということ、そして各国の輸出が、しかも各地域にわたりましてふえてまいったということでございますので、それを反映いたしまして、わが国の輸出も先行指標を見ましてもやや明るさを見せてきたという判断が企画庁から示されたわけでございます。広沢さんおっしゃるように、ただいままで持っておりました政府経済情勢の判断というものをきょう変えたわけではないのでありまして、いままでの判断の基調の上にそういう一つの明るい展望が開かれかけたという判断が示されたにすぎないわけでございます。したがって、ただいま政府の政策姿勢を変えるというような話は全然出なかったわけでございます。  本会議におきまして私からお答えを申し上げましたように、政府といたしましていま経済見通しを変えるつもりもございませんし、政策の組み立てをいま変えるというようなことは考えておりません。
  172. 広沢直樹

    広沢委員 ですから、これが狂ったからいますぐ変えてしまえとこう言っているわけじゃないのです。要するに、こういうふうに一応基礎になっているものの考え方が修正されたということは、やはりいろいろな面にそれは影響は出てくると思いますよ。いままでは、昨年、一年前にもう底入れをして、それから順次回復に向かう途中に一時低迷をしているんだ、ですからここに刺激をしていけば上がっていくだろうということで、第四次対策を打った。それがいろいろな関係でずれたということもありましょうけれども、しかし、それが見誤っておって、ちょうどそれが一年ずれていまが底の兆しじゃないかということになりますと、やはり基本が、もともとの基礎が一年ずれたわけですから、感覚的に、それからやはり考えていくと、いろいろな問題が出てくると思います。しかし、それはまだ出てきたわけではないですから、云々言えませんので、仮に五十年度の政府経済見通しが当初からあれほど狂ってきたわけですね。その点から考えても、——経済見通しは狂っちゃいけないとは言いません。見通しですから、いろいろ狂うでしょう。たとえばいま問題になっております賃金の問題についても、それをどこまで結果的には決まるかということによって、それによってもまた少しぐらい変わってくるということはあり得べきです。ですから、そういうふうに考えていくと、これがずっとずれていくと、やはり次の対策を打たなければならない場合には、われわれ多くの国民が期待し、われわれが要求している、そういう下から、底から上げていくような対策、いわゆる景気刺激のための減税政策をその時点で考えるのか、そのことだけ一点、簡単にお答えください。
  173. 大平正芳

    ○大平国務大臣 去年の年末に経済見通しを立て、それをべースにいたしまして予算を組んで、いま御審議をいただいておるわけでございまして、この予算は、年度を通じて総合予算の考え方で五十一年度全体を切り盛りをいたしたいということで編成をいたしました予算でございます。したがって、今後の経済の推移によりまして若干弾力的な、機動的な配慮ができますような内容になっておりますことも、広沢さん御承知のとおりでございます。  したがいまして、私どもといたしましては、一日も早くこの予算が成立をいたしまして、活発な執行過程に入ることを期待いたしておるわけでございまして、そのことによって、政府がいま期待いたしておりまする経済の見直しが着実に実現することをこそ願っておるわけでございまして、いまの段階におきましてそうならない場合にどうするかというようなことをお聞き取りいただくのは、まだ多少無理じゃないかと思います。
  174. 広沢直樹

    広沢委員 この問題ばかりにかかっておれませんが、また当該機関の大蔵委員会でよく詰めてみたいと思います。  次に、租税特別措置法。これを今度は全面的に見直す、洗い直すということは、大蔵大臣もずっと表明してきたわけであります。したがって、いろいろ議論がありましたけれども、いままでにない全体的な見直しをした、すなわち現行の百九十六の措置の中で十一を廃止し、五十八をいわゆる縮減した、こういうことでございます。しかしながら、やはり私どもが見ておりますと、確かに総体的に見たのかもしれませんけれども、具体的に現実の実態に合ったような見直しがなされたであろうかどうかというところに、私は大きく疑問を持つものなんです。  そこで、小倉税制調査会長に伺いますけれども、いわゆる租税特別措置その他本法にあります、法人税法の中にある引当金もございますが、そういった一応見直しの対象にしなければならないものについて、具体的な実態に基づいて検討されたのかどうか、その点、簡単にお答えください。
  175. 小倉武一

    小倉参考人 特別措置につきましては、二つ分けまして、いわゆる政策減税を中心に審議をいたし、ある程度の方向を出したつもりでございました。  政策減税以外の特別措置的なものといたしましては、ただいま例に挙げられました引当金などがそうでございますが、そのほか配当軽課措置あるいは法人の受け取り配当、あるいは配当控除その他ございますが、これは、一つには法人税のあり方にも関連しますし、それからもう一つ、引当金につきましては、課税所得をどう計算するかという問題にも関連します。そういうことで、それの検討は別途検討する、たとえて申しますと、貸し倒れ引当金等については、これは実態を踏まえまして今後検討する必要があるというふうに考えております。  なお、銀行、保険についての貸し倒れ引当金につきましては、昨年の答申等によりまして多少ずつ縮減するということになっていることは、御承知のとおりかと思います。
  176. 広沢直樹

    広沢委員 それでは一つだけ具体的な例で聞いてみます。ちょうどきょうは各銀行の協会長さんがいらっしゃっておりますので、銀行関係の準備金、引当金について聞いてみたいと思います。  貸し倒れ引当金につきましては、再三これも指摘されておりましたし、私どももいろいろ実態について調べてみました。これはあるときには一千万分の幾ら、二とか三とかいう場合もありますし、あるいは実態が百万分の二とか三、それからあるいは十万分の幾らというふうなときもあります。したがって、これについては問題になっておりますし、順次また引き下げていくようになっておるわけでありますが、実態から考えてみると、これは余りにも開き過ぎている。やはりそのまま実態に合わせて小さくしてしまえというものでないことは、引当金ですから性格上よくわかっておりますけれども、余りにも実態が開き過ぎているというのは、これはやはり利益を留保していると見られてもいたし方ないのではないかという点が一つ指摘されております。  さらに、もう一点伺っておきたいのは価格変動準備金であります。これは租税特別措置でありますが、これも今回の場合は確かに洗い直しの対象にして、積立率を通常のたな卸し資産にあっては現行の三%を二・七%、非上場の株式等にあっては現行一%が〇・九、いわば一割、それだけ引き下げているということはわかります。しかしながら、私どもは調べられる限りいろいろこれはどのようになっているかという実態を調べてみました。これは有価証券報告書に頼る以外にありませんし、あるいはその中に出ているいろいろな資料から判断したのでありますけれども、いわゆる引当金明細、その中には、当期に目的利用したものはここに記載しろと載っているわけですが、価格変動準備金につきましては全部ゼロです。これは必ずしもこれに載ってくるとは限りませんけれども、それではほかに価格変動による損失があったのかということで調べてみましても、これは損益のところに出ておりません。したがいまして、都市銀行の場合でありますが、大体百億近くを毎期ずっと積んでいるわけですね。そういう現実から見てみますと、これはあるにしてもごくわずかだ、こういう実態の上に立ってこの問題を洗い直したのかどうかということを私は非常に疑問に感ずるわけです。その点はどうでしょうか。こういう実態に基づいて具体的な検討をしたのかどうか。
  177. 大倉眞隆

    ○大倉政府委員 答申の中にもお触れいただいておりますが、今回の整理合理化につきましては、税調としては基本的な方針をお示しになりまして、具体的な項目は、専門的な事項でもございますので関係省で十分詰めなさい、後で報告しなさいというステップをおとりになったわけでございます。したがって私からお答えいたしたいと思います。  価格変動準備金につきまして、ただいまの御質問の中で、目的使用が出てこないというのは、この準備金の性格上結果的にそうならざるを得ない面がございます。というのは、御承知のとおり洗いがえの準備金でございまして、期末のたな卸し資産をべースに引き当ててまいります。前期の分は益金に戻してまいりますから、期中に出てまいります評価損相当部分というふうなものは出てこないわけでございます。期中には、たな卸し資産を売却いたしますと、それは売却時に帳簿価格よりも低くなって出てくるというふうな意味で一種の売却損的なものがございますけれども、これは原価の方に入ってまいりますから、取り出してやるということはできない。有価証券につきましては、かなり個別のものでございますので、有価証券の売却損が幾らであったかというふうなことは後で振り返って追跡することはできると思いますが、財務諸表の表示で目的使用というふうな項目としては出てこない。その点はこの準備金の性格からそうなると御理解いただきたいと思います。  今回の整理縮減の割合でございますが、これは非常に広範囲にわたって取り上げましたので、それぞれの政策目的を非常に貴重なものとお考えになっておる関係各省では、政策目的からしてこれを削減すべきでないという非常に強い御主張がございまして、途中ではとにかくもう一律にカットする以外に出口がないのじゃないかという御意見の方もございましたけれども、やはり政策目的に応じて濃淡の差をつけながら考えるべきであろうということで、個別に差が出てきております。  価格変動準備金の場合に、価格変動の著しい物品については、広沢委員承知のとおり、今回は縮減いたしておりません。五%のままにいたしてございます。その他の一般たな卸し資産につきまして一割の削減を御提案申しております。これはほかの、たとえば公害防止準備金とか所得控除とかの削減率に比べて比較的低いのはデータで御承知のとおりだと思いますが、価格変動準備金というのはかなり広く利用されておりますので、ここの削減を余り強くいたしますと、いまの段階ではいわば一般増税に非常に似てくるという要素を考えまして、今回の削減としてはこの程度にとめたということでございます。
  178. 広沢直樹

    広沢委員 私が申し上げたいのは、一、二の例を引いたわけでありますが、租税特別措置、いわゆる税の優遇措置をとっている、それが一応過大ではないか、あるいは実態とどれだけ違いがあるかというようなことは、総洗いがえのときには検討しなければならぬ。そういうことで、私どもがいまこういうふうな有価証券報告書等で拾い出してみましても、非常に現実と大きく開いたものがあろうかと思います。したがいまして、私は資料として要求したいと思うのですが、各銀行の業態別に、引当金そして準備金、これの実態がどうなっているかという資料をひとつお出しいただけないだろうかと思いますが、銀行局長いかがですか。
  179. 田辺博通

    ○田辺政府委員 貸し倒れ償却引当金それから価格変動準備金は、いま主税局長お答えしましたように、洗いがえでございますのでバランスシートには載っておりませんけれども、損益計算の場合に、貸出金の償却それから有価証券の売却損ないしは期末に持っております有価証券の評価損が立ちますものですから、それを業態別に集計いたしまして、資料として提出いたします。
  180. 広沢直樹

    広沢委員 次に、金融関係のことについてお伺いしたいと思います。  まず最初にお伺いしたいことは、御承知のように不況が深刻化している中で、企業は相当苦しい立場に追い込まれているわけでありますけれども、その中で私がきょう取り上げたいのは、拘束預金の問題であります。これは、再三取り上げられ、また、銀行当局におきましても指導は徹底しているという答弁がありますし、あるいは当局においてもこれに対する厳しい通達を出している、こういうふうに言われているわけであります。しかし、再三論議されながら一向にこういう問題が解決されていかない、後から後から出てくる。表面にはないように見えるけれども、実際にはそういうことは非常に多いという苦情が持ち込まれております。毎年五月と十一月に公正取引委員会はこういった問題についてアンケート調査をやっております。したがって、これはいわゆる独占禁止法の立場から、不公正な取引方法の一つである取引上の優越した地位の乱用行為、一般指定十号、これに該当するおそれがあるとして調査している。その結果は出てきていますね。今度大蔵省は、さきの委員会におきましても問題になった折に、アンケート調査をするというようなことを申しておりますが、私は結論的に、公取が調査したのと大蔵省が調査したのと、経済は動いておりますから少しは違うのかもしれませんが、余り大きな違いは出てこないのじゃないか、こういうふうに思うわけです。やはり、それは隠れた中にあるいわゆる不満というものが出てきているわけであります。したがって、これからも業界においても十分注意をし、こういうことのないように徹底をしていただかなければなりませんけれども、まず公取の調査の資料にあって指摘された中で、この問題についてはどう思うかということを二、三率直に聞いてみたいと思います。  と申しますのは、たとえば口約束や念書による拘束預金がなくなったかわりに事実上引き出せない暗黙の拘束預金が増加したとか、その他債務者名義でない個人名あるいは無記名の預金を要求されるようになった。これも公取の調査では相当ふえております。あるいは新規貸し出しに際しては拘束せず、時期をずらして預金を拘束するようになった。これも最近の調査ではふえているというお答えが出ています。こういったことに対しては大蔵当局はどういうふうに考えているか。それから公正取引委員会につきましては、これはいまの不公正な取引方法の一つ、こういうふうな見方ができるのかどうか、簡単にお答えください。
  181. 田辺博通

    ○田辺政府委員 公取の調査は私どもも関心を持って見ておりまして、これによりまして、いま先生が御指摘になりましたような、たとえばいままで預かっていた預金証書は返されたけれども、口頭で引き出さないように言われた、これは私どもが自粛をするように規制をいたしておりますところの拘束預金に当たるわけでございます。厳重に注意をすべきであると思います。それから、たとえば私どもの方では即時両建てというものを厳重にチェックをいたしておりますが、新規貸し出しに際しては拘束せず、時期をずらして預金を拘束するというようなものがややふえている。これもやはりその趣旨は同じでございますので、厳重に注意すべき問題でございます。いずれにいたしましても、私どもは検査の場合にそれぞれを一つ一つチェックをいたしておりまして、その結果によって注意をいたして是正を図るように講じております。
  182. 熊田淳一郎

    ○熊田政府委員 ただいま御指摘のございました点につきましては、確かに公取の調査によりますと若干割合がふえておるということでございますが、これを個々に見ました場合に、それが果たして不公正な取引方法に該当するのかどうか、これは一概にそういうふうに申すわけにはいかないと思います。これは個々のケースに当たってみまして、本当に優越的地位の乱用に該当しておるのかどうかということを判断いたしませんと、この席で直ちにそれが不公正な取引方法かどうかということは申し上げられないわけでございます。
  183. 広沢直樹

    広沢委員 これは参考人としておいでになっている協会長さんにお伺いいたしますが、これは同じ意見だろうと思いますので全銀協会長さんにお伺いしたいと思います。  こういうふうに非常に問題が調べるたびに指摘されるわけです。したがって皆さんの方でも相当努力をしている、やはり当局の資料によりましても数字的には減ってきているという形も出ているわけですが、具体的にこれを店頭に表示したり、あるいは広告を出して、一般にこういうことはないのですという周知をしたり、あるいは顧客に、あなたの拘束預金はありません、したがっていつでもお使いくださいという通知を出しているような手段を講じても、こういう問題が起こる。したがって、そのために一生懸命監督して努力しますということだけではこれはなくならないわけです。こういう非難を受けるということになれば、皆さん自身が姿勢を正していただかなければならぬが、具体的にこれからどういう考えでおるか。その点、簡単にお答えください。
  184. 板倉譲治

    板倉参考人 拘束預金、歩積み両建て預金の自粛、根絶につきましては過去から非常にいろいろな手段を講じてきておるわけでございます。歩積み両建てがいまだに論議されておりますことは、その点非常に遺憾に思っておるわけでありますが、最近私どもで一番肝心なことは何かということを考えまして、それは結局正規の歩積み両建て、これは確かに本当に減ってきております。ただ、やみの拘束と申しますか、表面拘束していないということでありながら、事実心理的に拘束されているというようなもの、これが一番問題として残っているものではないかと思うわけでございますが、これを退治する方策といたしまして、この一月から店頭にポスターを出すということを始めたわけでございます。それから新聞広告につきましても、今週の初めからこういうものが出だしたわけでございます。したがいまして、まだこの効果というものは十分あらわれておらないわけでございまして、これからこの効果があらわれてくるはずであると思うわけでございます。いままでこういうことはやったけれどもあらわれておらぬではないかというお話でございますが、しかし、何よりも大事なことは、債務者の方に、拘束預金として通知をしていないものは本当に拘束していないのだ、もう安心して出して差し支えないのですということを本当に理解していただく。また、銀行の貸し付けの者自体にもこれが常々理解されるように、貸付係のところにそういうポスターを現実に張ったわけでございます。そういうことでやっておりますので、ひとつ御了承いただきたいと思います。
  185. 広沢直樹

    広沢委員 それで、これは大蔵省が毎年毎年定期検査をやっておりますね。それによりますと、検査をした数の約一割、これがやはり指摘されていることになっております。先ほど銀行局長が答えておりましたけれども、そういうふうになっておりますね。  そこで、公取にもう一遍お伺いいたしますが、こういうふうに毎年五月と十一月にこういう見地から皆さんの職務上からアンケート調査をなさっていらっしゃるのですが、それでは銀行とかそういったところへ行って実態の調査をなさったことがあるのか。何もそこに事件があるからというのじゃなくて、経済憲法を持っている皆さんの方は不公正なことがあってはいけないということで抜き取りなりそういう調査をすべきでしょう。いかがですか。
  186. 熊田淳一郎

    ○熊田政府委員 私どものやっております調査は、中小企業者に対しましてアンケート調査をやっているわけでございまして、その内容によりましてさらに相手先金融機関の方にまで調べをするということは、まれにはございますけれども、一般的にはございません。
  187. 広沢直樹

    広沢委員 私は、そういったところも一つの姿勢じゃないかと思うのです。それは銀行局は当局ですから、定期検査をして調べる。それでも調べたうちの一割は指摘事項があるわけであります。したがって、皆さんは毎年二回こういうふうに調べて、事実問題があるということの答えが出てきているでしょう。資料として出ているのです。それであるならば、実態がどうかということをお調べになるのは当然じゃありませんか。それは、いま言う大蔵省当局は、自分の所管ですからあたりまえですけれども、皆さんの側から今度は公正に行われているかどうか、あらゆるそういう形が積み重ねられていってそういうことがなくなっていくわけですよ。ただアンケートをして聞いて、そんなことはありますか、ここにこういう問題がありますよという、これを発表して、そのたびごとに銀行さんおかしいじゃないかというようなことだけ言っているのでは解決しないのです、ただ努力しろと言っても。今後この点についてはきちっとやっていただきたいと思うのです。  そこで、もう時間もおおむねなくなってまいりましたが、最後に一点聞いておきたい問題は、住宅ローンの問題であります。これは簡単にお伺いしますので、時間もありませんからひとつ簡潔にお答えいただきたいということは、いま住宅ローンにつきましては各銀行がそれぞれ積極的な貸し出しをやっている。ところがまだそのシェアは、都銀で五十年九月末に四・九、それから地方銀行で七・五、相銀で八・五、信金で九・三、これは総貸し出し残高に占める住宅貸し付け残高の割合であります。したがって、この割合をどこまで広げていく考えなのか。企業金融でありますから、果たしてこれがどこまで広げられるかということは一つ問題である、そこに姿勢があらわれてくると思いますので、これを簡単にひとつお答えいただきたいと思います。  さらに金利の問題につきましても、金融制度調査会の「民間住宅金融のあり方について」によりますと、金利は長期プライムレートに連動してやはり下げていかなければならぬ。しかしながら、これはエコノミックに考えるのではなくて個人の家計部門でありますから、そういうふうに経済の変動でしょっちゅう変えられては困る、こういう考え方もありますので、その点をどのレベルで考えておられるか。これでもう時間いっぱいなものですから、あと残余の予定した質問については当該委員会においてまたお伺いする機会があればひとつお尋ねしてみたいと思いますので、お答えいただきたい。
  188. 板倉譲治

    板倉参考人 お答えいたします。  住宅ローンのシェアがどのくらい今後ふえていく見込みであるかということでございますが、この見込みは非常に立てにくいわけでございます。住宅ローンの需要がどれだけ今後ふえていくかということになるわけでございますが、最近の需要の状況に応じまして、銀行といたしましては大体一三%以上、高いときには一八%くらいのシェアで現実に住宅ローンをふやしております。増加額の中のシェアがそのくらいになっております。したがいまして、今後とももし一三ないし一五ぐらいの需要の増加がずっと続くものと仮定いたしまして、それで計算いたしますと、十年後には住宅ローンの総貸し出し残高に占めますシェア、これは残高シェアでございますが、一二、三%程度には上がるのではなかろうか、それは現在の増勢がそのまま続くというふうに予定した残高の予想でございます。  それから金利を下げられないか、金利の下げについてどういう考え方を持っているかということであったかと思いますが、これはやはり長期金利の一環として考えております。金融制度調査会の答中もそういう御趣旨でございますので、今後長期金利が下がるような場合に住宅ローンの金利をどうするかということは、その段階で考えさせていただきたいと思っておりますが、先ほども申し上げましたように、住宅ローンの金利は現在すでにもう九%というかつての最低になっておるわけでございまして、プライムレートよりは低いという状況にございますので、これは格別に低いレートの状態にあるということを御理解いただきたいと存じます。
  189. 井原岸高

    ○井原委員長代理 次に竹本孫一君。
  190. 竹本孫一

    竹本委員 参考人の各位には大変遅くまで御苦労さんでございます。国会というところは基本的人権を余り尊重しないところですから、お許しをいただきます。  私は三点だけお伺いをいたしたいと思っております。  第一は景気回復、不景気の問題と関連いたしまして、この問題。第二は銀行法改正についてということでお伺いをしたいし、第三は付加価値税を中心にしてちょっとお伺いをいたしたいということであります。  まず第一に、景気の回復の問題でございますけれども、御承知のように景気は大体二年間トンネルの中へ入りまして、やっと今度の経済企画庁の報告で底離れができそうだということでございますが、どうしてこんなにいつまでも不景気であるか。油ショックの問題もありましょうし、ベトナム戦争の問題も議論が出たようでございますが、資本主義を前提にする立場において考えてみても、なおかつ政府の手の打ち方にいろいろ問題がある、私はさように思いまして、政府の手の打ち方、経済政策は、大体において時期がいつもおくれ過ぎておる、ツーレートである、次には小出しに過ぎる、ツーリトルである、次には次元が、資本主義のたてまえをとりながらも余りに低過ぎるという意味でツーローである、こういうふうに言っております。  専門家の各位でございますからもう説明は要しまいと思いますけれども、私ども経済政策の転換を言ったのは一昨年の十月でございますから、一年、少なくとも半年はおくれておる。これがツーレート。ツーリトルというのは、公定歩合でよく言われるように〇・五、〇・五、〇・五、こんな小出しにやって、経済経済心理学であるというマーシャルの言った言葉もありますが、国民にショックを与えるというかあるいは刺激を与えるというか、そういう大きな手を打たなければ話にならぬ。何を考えてぐずぐずしたのかわかりませんけれども、余りにもツーリトルの手を打ってきておる。  次には、いま申しましたように次元が低過ぎる。たとえば油の問題で、ここでも櫻田さんも大分論ぜられたようでございますけれども、百五十億ドルの支払いがふえるということになれば、これは輸出の三分の一、大体鉄と自動車は飛んでしまったようなものです。あるいはわれわれの生活程度から言えば五%切り下げなければならぬという問題なんだ。そういうことに対する対応は何もできていない。ただ、一時石油の使用を制限したけれども、物理的に入ってくるからもうよかろうといって通産大臣は非常の体制を解いてしまった。しかし、代金の支払いはどうなるかということについては十分に論議はされていない。これはツーローである。あるいは三公社五現業のあり方につきましてもわれわれはいろいろ議論をいたしておりますけれども、それもそのままになっておる。あるいはまた、高度成長を支えてきた間接金融と低金利という問題についても、福祉国家をつくるという言葉は出てきたけれども、一体われわれの財政、金融税制がどういうふうに変わったかというと、余り変わりばえがしない。いずれにいたしましても、そういう意味政府の手の打ち方というものはいまの体制を前提にして考えても余りに遅過ぎる。あるいは余りに小出しに過ぎる。あるいは余りに次元が低くて、抵抗のあるものはみんな避けて通っておる。これがいつまでも景気を低迷させた根本原因であるというふうに思います。  板倉さん、伊原さんあるいは早坂さんにお伺いするのですけれども政府の財政経済政策が不況脱出について、あるいは不況をこんなに深刻化したということについて、皆様方の立場において、もっと積極的にやってほしいとかあるいは少し手の打ち方が遅過ぎるとかいうような要望といいますか批判といいますか、御意見があれば承っておきたい。
  191. 板倉譲治

    板倉参考人 政府景気政策につきまして、どうも結果論として見ますと、先生のおっしゃいますような、あるいはツーレート、ツーリトル、ツーローでございますか、そういったようなふうにも考えられないことはないかと思うわけでありますが、私ども、その時点、時点での政府の考え方というものも存じておるつもりでございますが、第一次から第三次までの景気政策が講ぜられましたときには、物価の問題がまだ尾を引いておりまして、したがいまして、そう急激な強い景気刺激策をとることがしにくかったという事情は確かにあったと思います。したがいまして、一次から三次までの景気政策というのは景気の下支えというような程度にあるいはとどまった。その点がツーローであったというような御批判もいただくことになるのかと思います。ただ、第四次の不況対策から、かなり本格的な不況対策が講ぜられたというふうに私ども理解いたしておりまして、この効果はまだこれから出てくるのではなかろうか。したがいまして、第四次の不況対策が効果がまだ出ないというのは、少し忍耐を持って見ていく必要があるのではなかろうかというふうに考えております。それから、さらに本当に本格的な対策は五十一年度の予算、これが本格的な対策として講ぜられたわけでございまして、これは今後五十一年度に必ず出てまいる、期待するような景気浮揚になってくるのではなかろうかというふうに了解いたしております。
  192. 伊原隆

    伊原参考人 お答え申し上げます。  ただいま竹本先生のおっしゃったように、国全体から見ますと、非常に交易条件が悪くなりまして、ほかの国に比べて日本が、いろんな数字が出ますが、一〇〇に対して六五ということでありますから、国全体の富が非常に減ってきた。分配すべき。ハイが非常に減ってきたということと、それから成長から墜落した度合いがほかの国に比べて多いというふうなことから非常にむずかしい問題になっておると思います。私どもも、マクロの政府対策その他がミクロの方の収支に及ぶ速度についていろいろむずかしい問題があるんじゃないか。なかなか企業家の心理というものは、マクロの数字がよくなっても、個々の収益がよくなりませんものですから、そっちの方からもっと積み上げていく努力が必要なんじゃないか。金融機関といたしましては、ことに地方の、地域の企業等に対しまして助け合いということで何とかこれをしのいでまいりたい、そんなふうな考えでおる次第でございます。
  193. 早坂順一郎

    ○早坂参考人 率直に申し上げますが、御存じのとおり、最近のわが国の景況は、一部業種で操業度アップ、受注増といった景況回復の徴が見られるのでございますが、全般的に回復力が非常に弱いのでございまして、依然一進一退といった状態が続けられておるのでございます。といって、私どもは、本年一月上旬時点で実施いたしました最近の景気金融動向調査の結果によりますと、一部の公共事業を除きましては各企業とも業績が不振であり、採算割れといった状態が続いておるために、借り入れ態度は縮小均衡ということになっておるというのが現状でございます。  このため、増産拡販資金とか新製品開発資金というような前向きの設備資金需要は依然として鎮静いたしておりまして、ほとんど見るべきものはございません。他方、運転資金需要につきましては、昨年十月−十二月期には赤字補てん資金や滞貨減産資金などの後ろ向き資金の需要のほかに、季節資金や決済資金の需要が重なりまして資金需要は繁忙を呈しましたが、幸い政府不況対策としての金融措置もありまして、また日本銀行の窓口の指導の弾力化ということもある程度ございましたので、民間金融機関の貸し出し態度の弾力化もありまして、年末の企業金融は繁忙の中にも大過なく過ぎたのでございます。今一月から三月期の企業金融につきましては、全般的に緩和基調にあると思いますが、例年一、二月は資金不需要期でもありますので、従来資金需要の中心となっていた後ろ向き資金の需要も昨年十一、十二月でピークは越したのではなかろうかというふうに思っておるのでございます。  ただ、一言お願い申し上げておきたいのは、金融政策についてでございますが、これは希望でございますが、中小企業金融に対するところの日銀の窓口規制の弾力化でございます。これは一昨々年の私の方ので申し上げますると、二月一ヵ月分の融資を六ヵ月間まかなうということで、こういう割り当てになったのでございます。これでは企業はとうてい立ち行かないものと思うのであります。その後余り変更されておりませんが、昨今多少弾力化されておりますが、もう少し弾力化するようにひとつお願い申し上げたく存ずる次第であります。
  194. 竹本孫一

    竹本委員 時間がありませんから要望ですけれども、私は政府経済政策、先ほど言うように批判をいたしておりますが、日本の民間、特に銀行なら銀行の中にもいろいろな意見があっていいと思うのですね。また、なければ困ると思うのですよ。ところが、政府あるいは大蔵省意見と日銀の意見が全く一致しておる。そしてまた銀行屋さんの皆さんの御意見もまた一致しておる。そしてかつてはどんどんインフレになってしまった。こういう状態は望ましきものではないので、やはりもう少し、この席がいいかどうかは別といたしまして、民間の意見というものが活発に出ることを私は要望したい。これは要望にとどめておきます。  次は景気回復の問題について、先ほど来いろいろ議論が出ましたけれども、一緒にお尋ねしますが、税制調査会長武田先生にまずお伺いするのですが、一兆円減税ということをわれわれが言っております。これも先ほど申しましたように、国民にどうして購買力を発動させるかということについて、フォードさんが考えついたあの減税案、チェックで去年の税金を返してやるといったようなやり方はある程度おもしろい案だと思うのですね。事実そのことが相当の効果を示して、アメリカの景気は去年の四月ごろには大体底をついた、こういうことになっておる。いま日本では、税収が少ない、七兆円公債を出さなければならぬのだ、だから減税の余地はないのだ。数学的に計算すれば確かにそのとおりですが、それは初等数学だ。もう少しステーツマンシップを発揮して考えてみれば、やはりアメリカのフォードの打った手の方がぼくは一つ上だと思うのですが、そういう意味で、一兆円減税というのは庶民の物価調整のための問題もありましょうし、何よりも景気刺激ということで、一番困るのは個人消費なんです。個人消費が動かないから、銀行さんには預金はふえたかもしらぬけれども全体の景気は出ない。これは八十四兆円ばかりある個人消費というものが景気見通しに自信を失ったために一割しぼめば八兆円の購買力がしぼんでいるわけです。そこへ一兆円ぐらいの手を打ってみたって何の役にも立たない。あたりまえのことなんです。でありますから、一歩退いて二歩前進というような意味でここで減税をするということは、一つ経済政策としてぼくはりっぱな条件を持っておる、こう思うのです。  そこで、お二人にお伺いいたしたいのは、一兆円減税について税調会長はどう見ておられるのか、武田教授はいかがお考えになっておられるか伺いたい。  なおあわせて、第五次の公定歩合と第三次の預金準備率の引き下げというような問題も巷間いろいろいわれておりますが、板倉先生どういうふうにお考えであるか、お尋ねいたしたい。
  195. 小倉武一

    小倉参考人 いまのお話、一兆円というのはあるいはたとえの話かもしれませんけれども、相当多額の所得税減税をするという趣旨で、景気回復に資するという御趣旨かと思うのでありますが、確かにそういう御意見があるわけです。国会であるというだけでなくて、税制調査会にもそういう御意見がございました。そういう御意見を踏まえて、なおかつそこまで考える必要はいまのところないのではないかということで税制調査会の答申はできておるわけでございます。無論、今後絶対永久にそういう御趣旨のような減税を行っちゃいかぬというところまでは含んでおりませんが、当面のところはそういうことまでは考える必要がなかろうということで答申に及んだわけでございます。
  196. 武田昌輔

    武田参考人 大変政策的な問題でございますけれども、ます減税をするかどうかという点は、一応私の考えでは、政策を離れまして、いわゆる課税の公平という立場からます考えるべきではないかというのが第一点でございます。  それから第二点は、現実の問題といたしまして、財源があるかどうかということが第二の問題になる、かように考えます。  アメリカの減税、いわゆる繰り戻しの効用と申しますか、あれが直ちに景気刺激をしたかどうかということについては大分評価が分かれておるようでございまして、必ずしもそのために景気が上回ったとも言えないのではないか。大体三点でございます。
  197. 板倉譲治

    板倉参考人 お答えいたします。  第五次の公定歩合引き下げがうわさに上っておるが、これについてどう思うかという点から申し上げます。  現在の不況実態を考えますと、貸出金利がさらに下がるということはきわめて望ましいことだというふうに私個人としては思っております。ただ貸出金利を下げます場合に、預金金利が下がりませんと預貸金金利が逆転するという現象が起こります。四十五、六年のあの過剰流動性のときに、なぜあれだけ貸し出しがふえたのかと申しますと、これは全く預貸金金利が二年にわたって逆転しておりまして、企業がどんどん借りて預金すれば、もうそれで利ざやが上がるというような状態が二年近く続いたわけでございます。こういう変則な金利体系状態というものが起こりますと、やはり過剰流動性という大きな問題のもとになりますので、これは避けなければなりません。したがいまして、今後公定歩合を下げるといたしますと、やはり預金金利引き下げと一緒に行わなければならないというようなことになるわけでございますが、ただ預金金利引き下げにつきましては、物価の問題もございまして、やはりまだ目減りというような問題が残っておる、これが完全に解消したというふうにも必ずしも言えないわけでございます。そういう点から申しまして、預金笠利の引き下げが国民のコンセンサスを得られるような時期が到来することと思いますので、そのときには、やはり第五次の公定歩合引き下げが可能になるのではなかろうかというふうに、私見でございますが、考えております。  それから、第三次の預金準備率の引き下げということでございますが、預金準備率はすでに二回にわたって下がりまして、非常に低い準備率に相なっております。世界的に見ましても、恐らく世界一低い準備率ではなかろうかと思うわけでございますが、やはり預金準備率というものは、金融政策の量的統制のクッションとしてある程度のものはどうしても必要なものでございますので、これ以上果たして下げられますかどうか。これは日本銀行の資金操作の技術的な面からも考えていかなければならないかと思うわけでございまして、ちょっと私としてさらに下げるべきであるかどうかという御返事はその点からいたしにくいものでございます。
  198. 竹本孫一

    竹本委員 次に、銀行法改正について一言お答えをお願いいたします。  まず第一は、先ほど来もいろいろ同僚の委員から御意見が出ましたけれども、最近新聞等でも銀行の社会的責任ということが非常に言われておる。そのことを板倉参考人はどういうふうに受けとめておられるか、またこれに対していかに取り組もうとしておられるのか。きわめて簡単で結構ですが、銀行の社会的責任云々についてのお考えなり御決意なりを伺いたい。
  199. 板倉譲治

    板倉参考人 銀行の社会的責任は先ほどもたしか触れたかと存じますが、やはり一般国民の大切な預金を預かっておりますので、健全経営ということ、それからさらに信用秩序の維持発展ということ、それから適正な資金配分というこの三つのことが柱になっておると思います。ただ基本的に考えますと、一言にして申しますと、やはり国民のニーズに沿って銀行銀行業務の面で行動していくということにもなるかと思うわけでございます。したがいまして、先ほど申しました三本の柱と申しますのも、やはり時代により情勢によってそのウエートの置き方が変わってくるものであるというふうに私は理解いたしております。  最近のこういった情勢を踏まえて考えますと、やはり資金配分の適正化ということが非常に重要になってきていると思います。中小企業産業界に占める割合、日本の国民経済の中に占める割合が高くなっておりまして、その面からの需要のウエートが高くなってきておりますので、当然われわれはそれに対して十分こたえていく必要がある。さらに個人も従来は銀行から借りるというような姿勢がなかったわけでございますが、そういったニーズが非常に強くなってきておりますので、それに対しても十分にこたえていくということが必要であろうかと思っております。  それからさらに資金の吸収面につきましても、やはり国民のニーズに合った有利な貯蓄手段を銀行として開発してまいりたいというふうに考えております。  それから第三番目に、最近の情勢を考えまして、やはり銀行の従来からとっております取引慣行、先ほど銀行取引約定書の規定につきましていろいろ御批判が出たわけでございますが、そういう点につきましても従来銀行債権保全という立場から主として考えられてきたわけでございますが、やはり顧客と銀行が平等な立場に立つというような見地で、こういった取引慣行につきましても今後さらに見直しを進めていくということが必要であるというふうに考えております。
  200. 竹本孫一

    竹本委員 私は銀行の五つの反省というようなことを言っておるのですね。  一つは、第一もうけ過ぎはしないか、これもいろいろ議論が出ました。また、そうでない、もうけは大部分は社内留保の関係だというような御答弁もありました。第二はいばり過ぎはしないか、第三は走り過ぎはしないか、第四は貸し過ぎてはいないか、第五は癒着し過ぎてはいないか、こういう意味でポイントを五つに整理しながら、銀行のあり方が姿勢を正してもらいたいということを考えておるわけであります。  そういう意味で私どもとしては銀行法の改正ということを叫びまして、その一番中心的な眼目は、銀行法に目的条項をつくって、銀行の社会的使命や社会的責任を明らかにすべきである。昭和二年ごろにできたかたかなの銀行法ではもう時代の要請に沿えない。先ほど、時代の動きとともに、考え方やあるいは重点が変わらなければならぬと参考人板倉さんが申されましたけれども、それをやはり銀行の制度あるいは仕組みあるいは法的な基礎の中にも、その時代とともに動くのだということを反映させなければ、そう思っているというだけではまだ余りにも主観的になり過ぎる。  そういう意味で私は目的条項の設置、その中にはいまお話のありましたような資金の適正配分といったような問題ももちろんありますけれども、何といっても第一は、銀行は国民経済の健全な発展のために通貨価値の維持と安定に協力する、インフレに協力するのではなくて、通貨価値の維持安定に協力するのだということで、いままでのあり方を少し再検討してもらいたいし、資金の再配分の問題も、これは説明は要しませんが、そういう問題を書きたい。二番目は集中融資の問題あるいは株式の保有制限の問題、三番目は中小企業への貸し出しの問題、これもいろいろ議論がありました。四番目は住宅ローン等の問題、五番目は情実貸し出しの禁止の問題、六番目は長期貸し出しの制限の問題、七番目は預金の支払い準備、八番目は預貸率の問題、九番目は役員の派遣の問題、十番目は不動産保有の制限の問題、こういうような新しい時代の要請を盛り込んだ銀行法をつくるべきではないかと三木さんの内閣ができたときに私は予算委員会質問をいたしまして、三木さんも前向きに取り組もうというお約束をいただいて、現在金融制度調査会でこの問題が取り上げられておることは御承知のとおりであります。  そこでお伺いしたいことは、金融制度調査会で一つの結論が出るのでしょうけれども、やはりこういう問題というのは上から法律をつくって枠をはめるとか、あるいは調査会で一つ意見が出るとか、あるいはデモをやって銀行を取り囲んで、そうした荒々しい空気の中で一つの方向が決まるとか、いずれも私は余り望ましいものではないと思うのですね。それよりも有識者というか、あるいは社会のオピニオンリーダーである銀行の皆さんが、それこそ自主的にこういう銀行のあり方をみずから反省をして、みずからこういうふうに前向きに取り組むのだ、銀行はこれからこういうふうに出直していく、ひとつ国民全体の支持を得たい、こういうアピールを自主的にやられることの方がよりベターではないかと思うのです。  そこで、協会長方々にお伺いしたいのは、それぞれの特殊事情もありますから、そしてわれわれが、あるいは官僚が上からちょっと考えてみたって、なかなかむずかしいデリケートなことはわかりにくいのですから、あらゆる事情のよくわかっておる皆さんが、しかも時代の要請を先取りして、みずからひとつこういうふうに銀行法は変わるべきであるし、われわれの姿勢はこういうふうに変えていきたいんだという方向をまとめられたらどうか。そういう意味で、それぞれの協会に銀行法改正について、それぞれの立場からの前向きの積極的提案をまとめ上げる特別委員会でもおつくりになるお考えはないか、あるいはこれからそのことを検討してみるお考えはないか、それだけを伺っておきたい。
  201. 板倉譲治

    板倉参考人 銀行法改正に関しまして、銀行協会内にそういったものを検討する会をつくる意図はないかということでございますが、まだ正規にそういうものが具体的には発足をいたしておりませんが、内々そういう研究は進めております。金融制度調査会の審議が進行するに伴いまして、やはり銀行といたしましてもそれなりの意見を申し述べる必要が出てくるはずでございますので、それに対応して現在準備を進めておるところでございます。
  202. 伊原隆

    伊原参考人 竹本先生のこの銀行法改正についてという御所見、昨年六月にいただき、またきのうも一生懸命読んでまいりました。大変裨益するところが多かったと思います。  銀行法の改正の問題につきましては、地方銀行では、板倉さんの言われた銀行の基本的ないろいろな問題の変型と申しますか、地域に奉仕する銀行であるというふうな特色から、一体銀行法の改正に対してどういうふうな意見を申し述べるべきかということを、基本問題調査会というのがございまして、すでにいろいろと検討をいたしておる最中でございます。いただきました書類等につきまして一生懸命見て、参考にさしていただきたいと思います。  なお、ここの最後にございますように、銀行としては世間の皆さんの声をよく聞いて、先取りをしていけというお示しで、これは全く同感でございまして、いまの歩積み両建ての問題にいたしましても、実は個々金融機関個々企業との具体的な問題の方がだんだん多くなって、そういうふうな点について、従来銀行は、お客様に何とかPRと称して、自分のもうけの方に結びつけた考え方ですが、それより皆さん方がどうお考えになっているかということを吸い取り、また銀行はこういうものだというふうなことを申し上げる機会を得たいと思っております。  銀行は、地方銀行としては三百万のお客様との毎日接点を持っておりますし、それからお取引先預金者四千万とか株主四十五万と、各地域でそれぞれ活動いたしております。そういう努力をいたしたいと考えております。
  203. 竹本孫一

    竹本委員 時間がなくなりましたので、残念ながら割愛させていただきましょう。  それで最後に一口だけですが、付加価値税の問題がこれから取り上げられるだろうと思うのです。いろいろ経過も聞きたいし、御意見も聞きたいのですが、時間がなくなりましたので私の方からひとつ申し上げて、前向きに検討するというのは私の議論の中身を検討してもらいたいということなんだが、まず第一は、付加価値税をこれから新税を起こしていくということで考えるとなれば、たとえば今度も七兆円の公債を発行しなければならぬという歳入の不足がある。大蔵省がお出しになりました一つの試案によれば、五十二年度において税収入が二十兆円というような試算が出ておる。いま十六兆円ですから、二十兆円ということになれば、四兆円も自然増収があるわけはないので、これは付加価値税でも考えておられるか、あるいは特別な新税を考えておられるかよくわかりませんけれども、相当むずかしい問題であろう。二十兆円に十六兆円の税収入がふえたとしても、なおかつ試案によれば三兆四千百億円の赤字公債が予定されておる。こういういろいろの事情を考えてみると、これから新税を起こすということになれば、少なくとも四兆から五兆円の税収入を頭に置かぬとできないではないか。いままでは付加価値税も二兆円かななんということを言ったこともあるのですけれども、今度はちょっと情勢が変わりましたので、そういう意味で相当大規模のものを考えなければならぬが、付加価値税を考えられる場合には、一体どの程度の収入を予想して問題を検討されようとしておるかということが一つであります。  第二番目は、付加価値税の逆進性とかそういうことは一応やめて、中小企業に対する影響が非常に大きい。これをどういうふうにこなしていくつもりであるか。フランスのフォルフェとかいうやり方を見ると、協定課税でその点大分摩擦を避けておるようでございますが、いずれにいたしましても、付加価値税というものは特に中小企業に与える影響が大きいが、その点をどういうふうに考えられるのであるか。  三番目に、最も重要な問題の一つは、徴税技術の問題でございます。イギリスは、大体この税を考える場合に百万の事業所を前提にして、八千人の人をふやすとか充てるとかいうことになっておるようです。そういう計算でいきますと、日本で一千万か八百万かは、これは事業規模の決め方によって決まりますけれども、それだけの大規模の対象を相手にして、そしていまの五万人の国税の職員の諸君では間に合いませんので、あるいはイギリスの計算をまねて計算をすれば、六万も八万もふやさなければならぬようになるわけですけれども、それだけの徴税要員をいかにして獲得するか、また現在の徴税に当っている人たちをいかに、どのくらいの期間で再訓練するのであるかとという問題も大変むずかしい問題である。  さらにもう一つ大きな問題は、これを直接税としていくのか、あるいはこれは間接税が当然だと思うが、間接税ということになれば、国税犯則取締法の適用を受けることにするのかしないのか。もしこれを受けるということにすれば一々処分が出てきますから、これはまた中小企業に対する影響は大変重大、深刻であると思うがどうか。そういうようないろいろの問題点があるのですが、最後小倉さんの方から、こういう問題についていまどういう構想でおられるのか、その点だけ伺って終わりにいたします。
  204. 小倉武一

    小倉参考人 ただいま最後に検討事項としてお述べになりましたことは、実はいままで余り検討してない。一般的にEECの税制が付加価値税がどうであるか、またそれを日本に及ぼした場合にどういう難点、長所があるかということは相当調査が進んでおるようでございますが、具体的に課税対象をどうするか、税率構造をどうするか、あるいは中小企業に及ぼす影響をどう緩和するか、あるいは物価は一度だけであるかもしれませんが、物価に及ぼす影響、あるいは便乗値上げ、そういうことが伴うことを予想されますので、そういうことをどういうふうに防止できるのか、また、実施するとしていかなる経済上の時期がよろしいのか、そういう日本に具体的に適用する場面についての検討は、必ずしも十分でないわけです。まして、徴税技術の問題などにつきましても、多分検討をいたしていないのではないかと思います。少なくとも税制調査会の場面ではまだそこまで議論をいたさないわけで、付加価値税の是非を決めます場合は、そういうことまである程度調査が進み、論議が進んでからというふうに考えるのが妥当ではないか、かような考え方をいたしております。
  205. 井原岸高

    ○井原委員長代理 以上で参考人に対する質疑は終了いたしました。  参考人各位には、長時間にわたりまして御出席を賜り、まことにありがとうございました。厚くお礼を申し上げます。  次回は、明十四日午前十時より開会し、引き続き集中審議を行います。  本日は、これにて散会いたします。     午後七時四十分散会