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1976-02-04 第77回国会 衆議院 予算委員会 第7号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十一年二月四日(水曜日)     午前十時一分開議  出席委員    委員長 荒舩清十郎君    理事 井原 岸高君 理事 小山 長規君    理事 塩谷 一夫君 理事 正示啓次郎君    理事 山村新治郎君 理事 小林  進君    理事 楢崎弥之助君 理事 松本 善明君    理事 山田 太郎君       伊東 正義君    上村千一郎君       植木庚子郎君    江崎 真澄君       小澤 太郎君    奥野 誠亮君       北澤 直吉君    倉成  正君       黒金 泰美君    櫻内 義雄君       笹山茂太郎君    瀬戸山三男君       田中 龍夫君    谷垣 專一君       西村 直己君    根本龍太郎君       野田 卯一君    藤井 勝志君       保利  茂君    細田 吉藏君       前田 正男君    三塚  博君       森山 欽司君    安宅 常彦君       阿部 昭吾君    阿部 助哉君       石野 久男君    岡田 春夫君       田中 武夫君    多賀谷真稔君       堀  昌雄君    安井 吉典君       湯山  勇君    庄司 幸助君       中島 武敏君    林  百郎君       正森 成二君    沖本 泰幸君       正木 良明君    河村  勝君       小平  忠君  出席国務大臣         内閣総理大臣  三木 武夫君         国 務 大 臣         (経済企画庁長         官)      福田 赳夫君         法 務 大 臣 稻葉  修君         外 務 大 臣 宮澤 喜一君         大 蔵 大 臣 大平 正芳君         文 部 大 臣 永井 道雄君         厚 生 大 臣 田中 正巳君         農 林 大 臣 安倍晋太郎君         通商産業大臣  河本 敏夫君         運 輸 大 臣 木村 睦男君         郵 政 大 臣 村上  勇君         労 働 大 臣 長谷川 峻君         建 設 大 臣 竹下  登君         自 治 大 臣         国家公安委員会         委員長         北海道開発庁長         官       福田  一君         国 務 大 臣         (内閣官房長         官)      井出一太郎君         国 務 大 臣         (総理府総務長         官)         (沖繩開発庁長         官)      植木 光教君         国 務 大 臣         (行政管理庁長         官)      松澤 雄藏君         国 務 大 臣         (防衛庁長官) 坂田 道太君         国 務 大 臣         (科学技術庁長         官)      佐々木義武君         国 務 大 臣         (環境庁長官) 小沢 辰男君         国 務 大 臣         (国土庁長官) 金丸  信君  出席政府委員         内閣法制局長官 吉國 一郎君         内閣法制局第一         部長      角田礼次郎君         警察庁警備局長 三井  脩君         防衛庁防衛局長 丸山  昂君         防衛庁装備局長 江口 裕通君         防衛施設庁施設         部長      銅崎 富司君         経済企画庁調整         局長      青木 慎三君         法務省人権擁護         局長      村岡 二郎君         法務省入国管理         局長      影井 梅夫君         外務省アジア局         長       中江 要介君         外務省アメリカ         局長      山崎 敏夫君         外務省経済局長 本野 盛幸君         外務省経済協力         局長      菊地 清明君         外務省条約局長 中島敏次郎君         外務省国際連合         局長      大川 美雄君         大蔵省主計局長 吉瀬 維哉君         大蔵省関税局長 後藤 達太君         大蔵省理財局長 松川 道哉君         大蔵省国際金融         局長      藤岡眞佐夫君         文部省管理局長 清水 成之君         農林省農林経済         局長      吉岡  裕君         農林省構造改善         局長      岡安  誠君         通商産業省貿易         局長      岸田 文武君         通商産業省産業         政策局長    和田 敏信君         通商産業省基礎         産業局長    矢野俊比古君         通商産業省機械         情報産業局長  熊谷 善二君         通商産業省生活         産業局長    野口 一郎君         建設省計画局長 大塩洋一郎君         建設省都市局長 吉田 泰夫君         建設省河川局長 増岡 康治君         建設省住宅局長 山岡 一男君         自治省財政局長 首藤  堯君  委員外出席者         外務省情報文化         局文化事業部長 西宮  一君         予算委員会調査         室長      三樹 秀夫君     ————————————— 委員の異動 二月四日  辞任         補欠選任   大野 市郎君     三塚  博君   庄司 幸助君     正森 成二君   矢野 絢也君     沖本 泰幸君 同日  辞任         補欠選任   三塚  博君     大野 市郎君   沖本 泰幸君     矢野 絢也君     ————————————— 本日の会議に付した案件  参考人出頭要求に関する件  昭和五十一年度一般会計予算  昭和五十一年度特別会計予算  昭和五十一年度政府関係機関予算      ————◇—————
  2. 荒舩清十郎

    ○荒舩委員長 これより会議を開きます。  昭和五十一年度一般会計予算昭和五十一年度特別会計予算及び昭和五十一年度政府関係機関予算、以上三案を一括して議題とし、総括質疑を行います。正木良明君。
  3. 正木良明

    正木委員 私は、公明党を代表して、総理以下関係大臣に若干の質問をいたします。  まず第一に、武器輸出の問題が非常に大きな問題になりつつあります。特に財界、防衛産業筋からの、現在の日本の不況の中にあって武器輸出をやりたいというような強い希望があり、これに対して政府の方にも、武器であるか武器でないかということの判断の違いがございますけれども、われわれが武器であろうと思われるようなものの認可をしようとする動きさえ考えられる状態であります。したがいまして、この問題は、平和国家日本として、今後の国際的な立場という点から言いましても非常に重要な問題でございますので、この点少しく詰めて議論をしてみたいと思いますので、お願いをいたしたいと思います。  現在、この武器輸出の問題について国会で議論をいたしますと、まあ今回も代表質問予算委員会議論になりましたが、必ず、武器禁輸原則を厳格に守るから大丈夫だというお話があるわけです。ところが、御承知のとおり、この武器禁輸原則というのは、実は全面的に武器輸出しませんということの三原則ではないのでありまして、昭和四十二年四月、佐藤内閣のときの政府統一見解によりますと、この三原則は、まず第一にココム、いわゆる対共産圏輸出統制委員会禁輸令によるところの共産圏、第二番目はローデシアなど国連で決議されている地域、第三には紛争当事国またはそのおそれのある国、に対しては武器輸出しないという原則であります。確かに、この三つの原則は、武器禁輸というよりも、むしろ禁輸先武器輸出してはならないと考えておる仕向け先を限定したのみでありまして、これを非常に素朴な解釈をいたしますと、この三原則に該当する地域または国以外については、貿管令によるところの通産省許可さえあれば、武器輸出は必ずしも全面的に禁じられていないというふうに解釈できますが、総理、いかがでございますか。
  4. 河本敏夫

    河本国務大臣 そのとおりであります。
  5. 正木良明

    正木委員 そういうことになりますと、ただ、三原則がありますから日本武器輸出をいたしませんということの、いわゆる武器輸出を禁止するところの歯どめに十二分になり得るものではない、この三原則は。したがって、これにつきましては、やはりこれに漏れた地域または国に対しても武器輸出しないという何らかの措置を講じなければならぬと私は思いますが、総理、いかがですか。
  6. 三木武夫

    三木内閣総理大臣 三原則の中には、紛争当事国またはおそれのある国という原則がございますから、やはり政府がこの第三項に言われておる点を厳重に考えていくということで、その武器輸出というものが地域紛争をあおるような結果にならないような歯どめをしていきたいと考えております。
  7. 正木良明

    正木委員 これもしかし、総理全面的禁輸ではありませんね。紛争または紛争のおそれのある国でありますから、紛争のおそれのない国であるならば輸出できるわけじゃありませんか。これは全面禁輸にはならないと思います。私がお尋ねしているのは、全面禁輸について何らかの措置をとるという政府側のお気持ちはないかということです。
  8. 三木武夫

    三木内閣総理大臣 政府側考え方は、この武器輸出原則というものを厳重に守ってこの問題に対処したい、これが政府考え方でございます。
  9. 正木良明

    正木委員 いや、もうそのことはわかっていると冒頭申し上げたので、この三原則だけでは漏れるところがあるから、全面的な武器禁輸ということをやらなければならぬのじゃありませんか。そういう総理の御発言でありますと、武器禁輸原則仕向け地以外については武器輸出する可能性はある、このように解釈してよろしいですか。
  10. 三木武夫

    三木内閣総理大臣 その場合にもやはり個々許可が要るわけですから、厳重に検討を加えることにいたします。しかし、全面的にこの三原則以外の武器輸出、これも全部禁止してしまえというふうな解釈ではなくして、三原則を厳重に履行していこうというのが政府考えでございます。
  11. 正木良明

    正木委員 これはもうきわめて重大と思わなければなりません。ということは、従来、政府は三原則を盾にして、いかにも一見武器輸出日本はしないのだというふうな印象を国民に与えてまいりましたが、このように明確に詰めてまいりますと、いわゆる三原則仕向け地、いわゆる共産圏国連で決議をした国、そして紛争または紛争のおそれのある国以外のものについては武器輸出をする余地が残されていると私は解釈をいたします。そのような政府考えと私は了解いたしますが、それでよろしいですか。
  12. 三木武夫

    三木内閣総理大臣 三原則の中にはそういうふうな解釈も成り立ちましょうが、政府武器輸出に対してはできるだけこれを抑制していこうという立場ですから、個々のケースの許可を与える場合に、第三項の規定というものを厳重に解釈いたして、そして武器輸出というものが日本産業というものに対して大きなウエートを占めるようなことには持っていかないようにしたいと考えております。
  13. 正木良明

    正木委員 ここで二つの点が明らかになりました。一つは、紛争のおそれのない国であるならば輸出をする余地が残されておるということが一点。もう一点は、日本防衛産業が全産業界の中で大きなウエートを占めるような状態にしないようにしたい、いわゆる輸出をたくさんするようなことはしない。このような二点が明確になったと思います。  これは総理、重大ですよ。防衛産業というのは、総理も御承知のとおり、自己運動を起こすのです。自己繁殖を起こすのです。これは何回か私もこの予算委員会指摘をいたしました。輸出をする、そのために資本投下が行われる。しかし、こういう武器なんというものはだれでも買えるものじゃないのです。日本では防衛庁が買うか、ないしは輸出するかしかないでしょう。宝くじが当たったからといって機関銃一丁売ってくれというわけにはいかぬでしょう。戦車をうちで一台買おうなんということは、そんなことは国民に許されることじゃないじゃないですか。その投下された資本を回収するために、防衛産業自体が自分で運動を始めるのです。増殖運動を始めるのです。そうしてどんどん輸出が盛んになってくるのです。だからそういう武器輸出するというような余地を残さない、これが平和国家日本としてのいわゆる最大の方針でなければならないにもかかわらず、いまの総理の御答弁は、繰り返すようでございますが、一点は、紛争ないしは紛争のおそれのない国には輸出余地がある、そうして防衛産業はできるだけ大きくしないと言ったけれども、大きくなる可能性がある。こういう点では、私ばこの問題は非常に重要な問題であると思います。ですから、このことはもう明確ですから、私は次へ進みます。  大蔵大臣、ここでちょっと説明をいたしておきますが、昭和四十九年十二月十九日、吉國法制局長官はこの予算委員会で、武器とはどういうものであるかということの大体の定義というものを述べられました。それは、貿易管理令別表第一のいわゆる品目番号一九七から二〇五に至る品目がそうである、このようにおっしゃいました。     〔委員長退席、正示委員長代理着席〕 これは実はそのとおりでありまして、一九七には「銃砲及びこれに用いる銃砲弾」、一九八は「爆発物及びこれを投下し又は発射する装置並びにこれらの部分品及び附属品」、一九九「火薬類」、二〇〇「爆薬安定剤」、二〇一「軍用車両及びその部分品」、二〇一の二「軍用船舶及びその船体並びにこれらの部分品」、二〇一の三「軍用航空機並びにその部分品及び附属品」、二〇二「防潜網及び魚雷防ぎょ網並びに磁気機雷掃海用浮揚性電らん」、二〇三「装甲板軍用鉄かぶと並びに防弾衣及びその部分品」、二〇四「軍用照燈及びその制御装置」、二〇五「軍用細菌製剤化学製剤及び放射性製剤並びにこれらの散布、防護、探知又は識別のための装置」。これが一九七から二〇五に至る貿管令によるところの品目であります。これは明らかに武器であるということは私も納得いたします。  この一九七の「銃砲及びこれに用いる銃砲弾(発光又は発煙のために用いるものを含む。)並びにこれらの部分品及び附属品ライフルスコープを除く。)」ということになっておりますが、これは、いわゆる輸出に際しての通関統計では、実はこの分類は国際的な分類に従いまして、これに該当するものが九五一−〇六〇、これは通関統計の方の分類です。「銃砲弾、爆弾その他これらに類するもの及びこれらの部分品狩猟用またはスポーツ用のものを除く」、これに該当いたします。これを、大蔵省お願いをいたしまして、過去五年間の通関実績調べていただきました。その結果、過去五年間に九五一−〇六〇、これがいわゆる総理の言われる禁輸原則仕向け地に相当出ているのです。  これを申し上げますと、この銃砲弾と言われるものが、これは金額で出ておりますが、南アフリカに対しましては十七万円、北朝鮮には三百九十七万二千円、北ベトナムに二十七万円、中国に対しては八十三万八千円、これだけ出ておる。しかも、通産大臣、あなたが通産大臣におなりになった直後ですが、十二月十九日、同じ日に、社会党の岡田質問に対して、韓国は三原則に該当する地域ではないけれども、しかし国民経済上等の見地から、かつて韓国には武器輸出することを承認したこともないし、今後も承認するつもりはありません、という明確なお答えをなさっております。これは非常に紛糾した後の統一見解としておっしゃっております。ところが、韓国に対しましては、過去五年間に六百七万九千円の銃砲弾——ほかのものは省きます。銃砲弾輸出をされております。  大蔵大臣、私がいま読み上げたこれは大蔵省からもらった資料ですが、これに間違いありませんか。
  14. 大平正芳

    大平国務大臣 関税局長から御報告します。
  15. 後藤達太

    後藤(達)政府委員 数字のことでございますから私からお答え申し上げます。  ただいま先生の御指摘数字は間違いないと存じます。私ども通関統計に出ておる数字でございます。
  16. 正木良明

    正木委員 そういうことになると、いわゆる、吉國法制局長官がこれは武器でございますと言った品目一九七に該当するものは通関統計においては九五一−〇六〇に当たるものでありますが、その武器と言われるものが、事実この五年間にこれだけ税関を通って輸出をされておるのですよ。いわゆる銃弾並びに砲弾外国に向けて輸出をされておりますが、これについてどのようにお考えになりますか。どういうものですか、第一これは。
  17. 河本敏夫

    河本国務大臣 この銃弾とか砲弾とかいうものの中には、びょう打ちをするための空包であるとか捕鯨砲銃弾とか、そういうものも含まれておりまして、内容はいろいろあるのです。つきましては、政府委員から詳細に答弁をさせます。
  18. 熊谷善二

    熊谷(善)政府委員 お答えいたします。  通関統計とそれから輸出承認統計二つがございますが、通産省統計をやっておりますのは輸出承認統計でございます。  ただいま先生指摘韓国につきまして、輸出承認銃砲弾についておろしているかどうかという点でございますが、私どものたとえば一九七三年の韓国向け輸出承認は、びょう打ち銃用空包につきまして三万二千ドルの輸出承認をおろしております。それから一九七四年におきましては、同じく韓国向けに約一万八千ドルのびょう打ち銃用空包輸出をいたしております。七五年に入りましては輸出承認実績としてはございません。  なお、ただいま御指摘の九五一の〇六〇におきましては、その他の地域先生指摘になりました等々の地域につきまして私ども輸出承認のベースで把握いたしておりますのは、びょう打ち銃用空包と、それから捕鯨砲弾部品捕鯨用のもり等でございます。  以上でございます。
  19. 正木良明

    正木委員 産業用のものは、この〇六〇の中には入らないのです。そして捕鯨用とおっしゃいましたが、捕鯨用砲弾輸出されたということは私の調べでは出てこないのです。  この捕鯨用砲弾のことについて一言申し上げますと、この捕鯨用砲弾というものは、まず第一に、関税局調査によりますと、日本捕鯨船が積んでいった銃砲弾通関手続が省略されております。前提としてこれをまず頭に入れてください。もう一つ外国籍の船であろうと、日本で購入したいわゆる捕鯨用銃砲弾につきましては、これは船用品として通関手続が省略されております。これが私の確認したところであります。  そうすると、残されたものは何かというと、通産省見解によれば、この銃砲弾は明らかに輸出された捕鯨用銃砲弾であるということになりますね。ところが、捕鯨用銃砲弾をつくっているのは、捕鯨用砲弾爆薬と言っておりますが、これをつくっているのは日本には一軒しかありませんで、これは水産庁がよく御存じのとおりです。東京日本橋川口屋という銃砲店しかこれをつくっておりません。その川口屋について調べを行いますと、私どもの方は一発も輸出をいたしておりません、こう言うのです。また同時に、これは輸出できるような値段ではないのです。英国のICAという会社がございまして、これはホンコンから入っておりますが、この捕鯨用砲弾が安いためにとても国際競争はできません、したがって輸出はできません、こう言っているのです。  そうすると、捕鯨用砲弾輸出したということになって、しかも国内船が南氷洋へ捕鯨に行くために積んだ砲弾が、これが通関でそれだということになるとまた別ですが、それもないということになってくると、明らかに、捕鯨用砲弾と言っているけれども、その砲弾はいわゆるほかの砲弾じゃありませんか。
  20. 熊谷善二

    熊谷(善)政府委員 お答えいたします。  私ども審査の段階では、ただいま先生指摘の点につきましては十分審査をいたしまして、捕鯨砲弾部品と確認いたしまして承認をおろしておるものでございます。輸出承認書と現物とのチェックにつきましては、これは税関において確認がなされて、輸出されておるものでございます。  それから、先生がいま御指摘になりました日本捕鯨船が出ていく場合には、これは輸出の扱いにはなっておらないわけでございますが、ただいま御指摘のとおり、ここに上がっておりますのは商品として輸出されたものでございます。
  21. 正木良明

    正木委員 そうすると、いいですか、捕鯨用砲弾というものは輸出されていないと言うんですよ。なぜこういう問題になるかというと、事前に通産省にこれに該当する資料要求しても、あなたのところは資料要求に応じなかったのだ、調べがつきませんというので。それできょうどうして答弁できるのですか。  それでは、余り時間がありませんから、この〇六〇に該当する——私の方は通関統計資料しか手に入らないのです。武器輸出の問題について事実かどうかということを調べるためには、大蔵省はこういうふうにきちんと資料を出してくれたけれども、この通関統計資料しかないわけです。そうすると、〇六〇に該当するもの、いわゆるそれは貿管令によるところの品目百九十七に該当するものでありますが、それは通産省からその資料が出てこないからわからぬ。あなたがここで答えられるなら資料があるわけですね。  委員長、この資料提出を私は要求をいたします。この〇六〇に該当するいわゆる通産省品目内容についての資料要求いたします。  それともう一つ局長韓国のことを言ったけれども、それではほかの中国北ベトナム南アフリカ北朝鮮、これはどうなんですか。
  22. 熊谷善二

    熊谷(善)政府委員 輸出承認件数がずいぶん多うございますので、ただいま私が申し上げましたのは、先ほども言いましたように、一九七三年、七四年と、七五年の一月から十月の輸出承認統計を集計したものでお答えを申し上げたわけでございます。この統計によりますと、先ほど申しましたように、韓国につきまして、七三年と七四年に輸出承認をおろしております。先ほど申しましたとおりでございます。それからベトナムにつきまして、七四年に九百三十ドルのびょう打ち銃用の空砲の輸出承認をおろしております。七四年の一件だけでございます。それから中国につきましては、輸出承認実績はございません。この三年間につきましては、現在手元に上がっております資料によりますと、以上のとおりでございます。
  23. 正示啓次郎

    ○正示委員長代理 資料のことはどうですか。
  24. 熊谷善二

    熊谷(善)政府委員 ただいま御指摘輸出実績の総表につきましては、整理をいたしましてお届けをいたしたいと思います。
  25. 正木良明

    正木委員 通産大臣中国へは出しておりませんと言いますが、通関統計上は、いわゆる九五一—〇六〇のコード番号、いわゆる銃砲弾に該当するものは、一九七五年に、これは円に直しておりますが、十五万五千円輸出している。これはどうなんですか。
  26. 後藤達太

    後藤(達)政府委員 中国向け通関統計に載っておりますのは、私ども通関統計では昭和四十八年に六十八万三千円ございます。いま先生指摘の七五年にはございません。
  27. 正木良明

    正木委員 これはあなたのところの資料だよ。あなたのところの資料に十五万五千円と出てきている。  通産大臣、いずれにしてもあるのです。一九七三年に六十八万三千円あるのです。だから通産省資料を出してくださいよ。  要するに、大蔵省通関統計通産省輸出承認実績とは大きな違いがあるのです。違いがあるということになると、これは非常に大きな問題になってくるので、少なくとも、この通関統計というのは私たちの手元にございますが、通産省においては、それに該当する輸出承認資料というもの、これをきちんと調べたら出てくるに違いありませんから、これの資料を提出してもらいたいことを要求いたします。
  28. 正示啓次郎

    ○正示委員長代理 政府委員において、資料の食い違い等につき速やかに答弁を願います。
  29. 後藤達太

    後藤(達)政府委員 ただいま調べましたところ、やはり私ども調べでは、七五年には中国向け輸出実績はございませんのですが、あるいはほかの国のを見違えておりますか、そこら辺はもう一度詳細に調べさせていただきたいと思います。ただいま調べましたところでは、七五年にはございません。
  30. 正木良明

    正木委員 では一九七三年に六十八万三千円はありますか。
  31. 後藤達太

    後藤(達)政府委員 それはおっしゃるとおりございます。
  32. 正木良明

    正木委員 したがって、対中国については、いま一九七五年の問題についてはペンディングになりますが、一九七三年、昭和四十八年につきましては、対中国銃砲弾六十八万三千円輸出されているという通関統計は間違いありませんね。
  33. 後藤達太

    後藤(達)政府委員 間違いございません。
  34. 正木良明

    正木委員 対中国銃砲弾輸出されているにもかかわらず、通産省輸出承認実績においてはそれがないということになりますと、これは非常に重要であります。したがって、その資料提出を求めます。
  35. 熊谷善二

    熊谷(善)政府委員 先ほどお答えいたしましたように、輸出承認がまず行われました後、税関においておのおの確認をして輸出するわけでございます。したがいまして、承認をした時点と実際の輸出されます時点が年度によってまずタイムラグがございます。したがいまして、ぴたりとは合いません。それからまた、輸出承認をとりまして、その後の事情の変化によりまして輸出をしない場合あるいは数量を減少して輸出するというようなことがございます。そういったことは貿易の取引の上で間々あることでございまして、通関統計輸出承認統計は、そういう意味で厳密な整合はとりにくい実情にございます。
  36. 正木良明

    正木委員 それは局長、逆じゃありませんか。通産省の方にいわゆる輸出承認実績があって通関統計にないということになると、許可はもらったけれども輸出しなかったということになるかもわからないけれども税関を通ってながらあなたのところは承認していないじゃないですか、この場合は。あなた、中国へは銃砲弾輸出してないと言うのじゃないですか。輸出承認をしていないものが税関を通っているじゃありませんか。逆じゃありませんか。そういう答弁は困りますよ。
  37. 熊谷善二

    熊谷(善)政府委員 私が先ほど申し上げましたのは、七三年、七四年、七五年の私ども承認実績でございまして、それ以上のものにつきましては——一年に輸出承認件数約六万件ございます。この実績の整理はかなり時間も要しますので、私が先ほど申しましたように、この三年にわたります統計につきましては、いま手元で調査済みでございますので、それをもとにして御説明申し上げました。したがいまして、七三年の私ども承認がなくて、それから税関の方での通関があるという場合には、その前年の輸出承認というものがあるかもしれません。これは大蔵省さんの方の統計が、私どもの以前のものもベースにして出されておりますので、その期間の整合性につきましては、追って時間をかけて調べなければいけない点かと存じます。
  38. 正木良明

    正木委員 一九七五年、わかりますね。北朝鮮、どうですか。北朝鮮の答えはなかったけれども、どうですか。北朝鮮に三百九十七万二千円、銃砲弾輸出していますね。これはどうなの。一九七五年、わかるでしょう。
  39. 熊谷善二

    熊谷(善)政府委員 七五年につきましては、私どもの手元の実績では、北朝鮮には輸出承認をおろしておりません。
  40. 正木良明

    正木委員 いつならしているのだ。タイムラグがあると言うなら、一九七四年か。北朝鮮への銃砲弾輸出のことを言ってごらんなさい。
  41. 熊谷善二

    熊谷(善)政府委員 ただいま御説明いたしましたように、七三年からの私ども輸出承認実績には北朝鮮は入っておりません。
  42. 正木良明

    正木委員 幾らタイムラグがあると言ったって、二年も三年もタイムラグがあるわけはないでしょう。だからこれは、通関実績通産省輸出承認実績との間に大きなそごがあります。     〔正示委員長代理退席、委員長着席〕 これは資料提出を求めます。委員長、これは資料を提出してください。
  43. 山田太郎

    ○山田(太)委員 議事進行。委員長はいま席に着かれたところでございますが……
  44. 荒舩清十郎

    ○荒舩委員長 よくわかっております、事情が。
  45. 山田太郎

    ○山田(太)委員 聞いておられたわけですか。じゃ、聞いておられておわかりのように、大蔵省通産省と、いわゆる武器輸出統計の問題について全く違った結果が出ております。いまの質問の表題は、武器輸出の問題についての質問でございます。ところが、その通産省当局、大蔵省当局から出てきた答弁は、全く食い違った答弁が出てきております。いまその道程が解明されてきたわけでございますが、この点が明確になるまでは質問者は質問を続けるわけにはいかないと言っております。
  46. 荒舩清十郎

    ○荒舩委員長 わかりました。ただいまの正木君の質問に対しまして、通産省大蔵省両省より責任ある答弁をもう一遍開陳せられたいと思います。
  47. 熊谷善二

    熊谷(善)政府委員 いま大蔵省のお持ちの資料とそれから私どもの手持ちの資料の突き合わせをいたしましたところ、大蔵省の方の七五年の実績数字は七五年の一月から十一月までのものでございますが、私ども資料では一月から十月までのものでございまして、月の点で完全に一致はいたしておりません。その点はさらに調査をいたしたいと思います。(発言する者あり)
  48. 荒舩清十郎

    ○荒舩委員長 後藤関税局長。年月日が違うんだよ、しっかりしろよ。
  49. 後藤達太

    後藤(達)政府委員 どうも申しわけございませんが、私、先ほど申し上げました一九七五年の数字は、実は十一月までしかとれておりませんので、一月から十一月までの数字でございます。(発言する者あり)十一月まででございます。
  50. 荒舩清十郎

    ○荒舩委員長 質問者のとおりに答弁しろ。質問者が聞いているんだ。やじの方は別だ。
  51. 後藤達太

    後藤(達)政府委員 通産省は十月までの承認のことで御答弁になったと伺っておりますが、私の申し上げました数字は、十一月までが入っております。
  52. 荒舩清十郎

    ○荒舩委員長 ちょっとお待ちください。いずれにいたしましても、統計の年月日も違うようでありますし、それからまた、答弁にも多少の食い違いもあるようでございます。したがいまして、これは両方の数字をなるべく速やかな機会に提出させまして、理事会で決着をつけたいと思いますが、いかがでございますか。一週間以内に提出できるかな。
  53. 熊谷善二

    熊谷(善)政府委員 早急に突き合わせをいたします。
  54. 荒舩清十郎

    ○荒舩委員長 早急というのはいつのことだ。
  55. 熊谷善二

    熊谷(善)政府委員 できるだけ早くいたします。
  56. 荒舩清十郎

    ○荒舩委員長 できるだけ早い、ではだめだ。——通産省熊谷機械情報産業局長、いつだ。
  57. 熊谷善二

    熊谷(善)政府委員 それを申しますと非常に件数が多うございますので、私ども一週間の期間をいただきたいと思いますが、できるだけその期間以内で早く調査をいたしまして提出をいたします。
  58. 荒舩清十郎

    ○荒舩委員長 期日はどうだ。
  59. 熊谷善二

    熊谷(善)政府委員 最大限一週間いただきますとありがたいと思っておりますが、できるだけ早くその以内においてでき次第お届けをする、かようにいたしたいと思います。
  60. 正木良明

    正木委員 私はいたずらに混乱を好むものではありません。ただ、私が質問している趣意は何かというと、事実通産省から資料が何も出てこないわけです。事前に入手できなかったわけです。そのために通関統計を見て、われわれが武器と該当できるような通関コード番号の金額を拾い出したわけです。  知りたいのは、これは武器であるのかないのかという問題もありますから、むしろいただきたいのは通産からの資料なんです。通産から、われわれが通関実績調べ上げた数字に該当する輸出承認品目はどのようなものであったか。こういう場で、びょう打ち機械であったかもわかりません、空砲であったかもしれません、捕鯨用砲弾であったかもしれませんというような言い方では困るわけですから、これに適合するもの、通関実績に適合する輸出承認というものについての資料を具体的にいただきたい。大至急にいただきたい。このことが私の希望です。そうでなければ、本当に質問を続けられないのです。
  61. 荒舩清十郎

    ○荒舩委員長 河本通産大臣、ただいま質問者の発言のとおり速やかに責任ある回答を出すこと、よろしゅうございますか。
  62. 河本敏夫

    河本国務大臣 委員長の御指示のようにいたします。
  63. 荒舩清十郎

    ○荒舩委員長 では正木君、きわめて速やかにこれを提出させます。
  64. 正木良明

    正木委員 委員長を御信頼申し上げますから、大体ぼくは、速やかというのは三日か四日と思っておりますけれども、おまけをつけても一週間以内には出してください。
  65. 荒舩清十郎

    ○荒舩委員長 一週間以内に必ず提出させます。  なお、先ほど山田君の緊急動議もありまして、理事会でこういうようなことについての検討をいたすことをお誓いいたします。
  66. 正木良明

    正木委員 それでは、この銃砲弾輸出の問題につきましては質問を留保いたしまして、資料が出てから再びそれにつけ加えることにいたします。  そこで、法制局長官にちょっとお伺いをいたします。  先ほども私が申し上げましたように、貿管令にいうところの品目、数百ございますが、その中で一九七から二〇五に至る品目武器であるというふうに四十九年の十二月の予算委員会答弁がございました。そこで、そのほかにも軍用専用のいわゆる品目がございますが、私が調べました限りでは、別表「七九軍用火薬類の製造設備及びその部分品、一〇九兵器専用の工作機械、加工機械及び試験装置並びにこれらの附属品、一三〇航空用又は軍用の無線遠隔測定装置及び無線遠隔制御装置」、これがございますが、これは、あなたのお考えでは武器の範疇には入りませんか。
  67. 吉國一郎

    吉國政府委員 一昨年当委員会でお答え申し上げまして、昨年参議院の予算委員会でも同様なことをお答え申し上げましたが、私がお答え申し上げましたのは、武器輸出原則というものはどういうふうにして固まってまいったかということを申し上げる段階で、まず外国為替及び外国貿易管理法の四十八条の規定を援用いたしまして、それに基づいて輸出貿易管理令が制定をされておる。輸出貿易管理令の第一条におきましては「貨物を輸出しようとする者は、左の各号の一に該当するときは、通商産業省令で定める手続に従い、通商産業大臣の書面による承認を受けなければならない。」とございまして、その第一号で「別表第一中欄に掲げる貨物を同表下欄に掲げる地域を仕向地として輸出しようとするとき。」、そこで別表の第一九七号以下に銃砲以下のものが掲げてございます。そういうものの運用方針として、これらのものであって——これはもう直ちに武器であるものもございます。軍用車両でございますとか軍用航空機であるとか、軍用鉄かぶとというように、それ自体武器であるものもございますが、その中には産業用のものを含んでいるものもございますので、これらに該当する武器については、武器輸出原則によって三つの地域については原則として輸出をしない、それからその他の地域につきましても、輸出貿易管理令、さかのぼっては外国為替及び外国貿易管理法の「外国貿易の正常な発展を図る」という通商産業大臣の裁量によって慎重に対処をしておりますということを申し上げたつもりでございます。これは昭和四十二年ごろから次第に問題になってまいりまして、もう最近はほとんど固まった輸出貿易管理令の運用方針として通商産業省では取り扱っておりますということを申し上げましたが、その場合に武器輸出原則で問題としておりますのは、別表一九七号以下の物資であって武器であるものということでございまして、ただいまお挙げになりました、たとえば別表第一の一一〇号でございますとかいうものにつきましては、従来はこの武器輸出原則の適用対象としては通商産業省では扱っておらないと思います。今後の問題として処理してまいらなければならない問題だと思います。  重ねて要約して申し上げますと、従来運用してまいりましたのは、一九七号以下の問題として処理をしておるということでございます。
  68. 正木良明

    正木委員 ちょっと不明確ですが、これもやはり兵器専用だとか軍用であるとかということがはっきり出ている。これはプラント類でございますけれども、こういうふうな品目の種別をするとするならば、私はこういうものもこの武器の範疇に入れるべきだと思いますが、それについていますぐあなたから答弁をいただこうと思いませんが、検討の対象にしてくださいますかどうですか。
  69. 三木武夫

    三木内閣総理大臣 検討いたします。
  70. 正木良明

    正木委員 総理大臣が検討すると言いましたから検討してください。むしろ、私の方向はおわかりだろうと思いますので、その方向でお願いしたいと思います。  さて、最近武器輸出の問題が産業界、経済界から非常に大きな声になってきた一つの理由は、かつて防衛庁日本航空機製造株式会社に開発を依頼いたしました輸送機C1、これは性能が非常に優秀だそうでございまして、それを輸出の対象にしようという考え方が非常に強いようでございます。倉成さんがこの総括質問の第一日目に質問をされたときにも、これを輸出用に考慮するというような向きの答弁があったように思いますが、その点は総理、いかがでございますか。
  71. 河本敏夫

    河本国務大臣 この前もお答えをしたのでございますが、C1とかUS1とかいうものは武器とは考えておりません。
  72. 正木良明

    正木委員 US1についてはこの間わが党の渡部議員が質問いたしましたので、これは重複を避けまして、C1について申し上げます。  このC1が開発されたのは、もともと自衛隊が日本航空機製造株式会社に開発設計を依頼して製造したものであります。その当時の衆議院予算委員会におけるわが党坂井君からの質問につきましても、政府はそのことを明確に答弁をいたしております。しかも、日本航空機製造株式会社が民間航空機の開発製造を目的とする会社であることは法律に明記されているから、したがってこのC1の開発をしたことは不適当であるという政府統一見解が出ているのです。もっと説明しないとわからないかもわかりませんが、それだけでもうおわかりでしょう。要するに、これは民間機ではないということの判断が政府統一見解田中内閣当時に出ているわけです。  結論を先に申し上げますと、昭和四十八年三月三十日衆議院予算委員会の坂井質問に対して、日本航空機製造株式会社がC1の開発をしたことが、この会社をつくるための法律、いわゆる航空機工業振興法でありますが、この法案の審議のときに、民間航空機でなければ製造してはならぬということのいろいろの問答があり、政府答弁もあり、しかも附帯決議まで付されているのでありますが、そのことで非常にこの委員会が紛糾をいたしまして、結局予算委員長のお取り計らい、理事会の御苦労によりまして、この問題に関し政府統一見解が出されました。このことは田中総理がこのように統一見解として述べております。「日航製にC1の試作を発注したことは、航空機工業振興法案審議の際の担当大臣の答弁及び国会の附帯決議の趣旨に反するところがあると認められますので、本件については、政府においてすみやかに善処いたします。」、これは日本航空機製造株式会社において製造する航空機は民間航空機でなければならないということの規定で、附帯決議並びに担当大臣の発言でありまして、C1が日本航空機製造株式会社——もう長いので日航製と言いますが、日航製で製造するということはそれにかなわないということは、これは軍用機であるということの判断と私は認めざるを得ないのでありますが、その点どうですか。
  73. 河本敏夫

    河本国務大臣 私もそういういきさつにつきましては若干承知しておりますが、その間の詳細な経過につきましては、より明確にするために政府委員から経過を答弁させます。
  74. 熊谷善二

    熊谷(善)政府委員 ただいま先生指摘の点につきましては、当時日本航空機製造の防衛庁からのC1の設計試作の発注契約をめぐりまして、民間の輸送機等の振興、こういう観点からの附帯決議に反するという御指摘がございまして、この契約について議論が行われたことは承知をいたしております。ただ、これは防衛庁の方との契約の問題ということでございまして、私どもの運用しております輸出貿易管理令におきましての取り扱い上の軍用航空機あるいはその他の航空機、こういう概念とは直ちに同じものではないと考えておるわけでございます。と申しますのは、ただいま私どもが運用いたしております軍用航空機という概念でございますが、もっぱら軍用に供し、一般には転用できない、こういう概念を軍用という概念にいたしております。たとえば軍用の鉄かぶとあるいは軍用車両等々の運用と全く同じでございます。  このC1という航空機の構造、性能、設計等をしさいに検討いたしておるわけでございますが、この構造は、一般の民間の通常エアラインにおいて使われております航空機の構造と物それ自体の特性といたしまして基本的に何ら変わるところがございません。貨物の輸送それから物体の輸送、こういう構造でございまして、私どもはこれ自体の性能から判断いたしまして、いわゆる爆弾倉を増設するとかあるいは火器を搭載するとか、そういった構造には全くなっておりませんので、これはそういう軍用ということではございませんで、汎用性のあるという点に着目をいたしまして、私どもはこれは武器ではないという考え方で取り扱えるというふうに考えておるわけでございます。
  75. 正木良明

    正木委員 どうも局長通産大臣とは同じお考えのようでございますから、通産大臣もそうだろうと思いますが、ここでゆっくり考えてもらいたい。要するに、通産大臣、政治家として頭の中にそろばんだけでは困るのです。先ほど申し上げたように、また三木総理が毎度おっしゃるように、日本が今日までの発展を続けてきたのは、日本が平和憲法のもとで平和国家であったということ、そのことが長い長い時間をかげながら、東南アジア諸国で一部の認めないところがありますけれども、世界の各国がやや認め出してきた。日本は平和国家なんだ、平和でしか生きられないという国であるということを自覚して日本はやっていこうとしておる。このことは日本の今日の繁栄をもたらした一つの大きな国際的な信用であったと私は思っております。それが現に、全くの直接殺傷する武器である場合はもう当然いけないことでありますが、それに準ずるものであっても、武器かもしれないと言われるようなものを輸出するということについては、本当にこの日本が平和でしか生きられない、平和国家であるという原点に立ち戻って物事の考え方をしなければならぬので、できるだけそれは軍用ではないという解釈を拡大しながら、いま不況なんだからこれでもうけようという考え方は一切捨てていただかなければならぬと私は思うのです。  現に、これは一九七五年版の自衛隊の装備年鑑でございますが、この中でもこれは軍用ということがはっきりしている。この中では「尾翼の下の後部扉が開いて、カーゴをのみこみ、パレットにのせれば榴弾砲でもジープでも短時間、能率的に搭載して空中投下が可能。床に金属ロッドを立てれば担架をとりつけることができ、三十六人の患者の空輸が可能で、通常の人員なら六十人、完全武装した空挺隊員なら四十五人収容できる。」、こういうふうに完全に軍用に使われるために開発され、軍用に使われるためにいま自衛隊に配備されているのです。自衛隊が使うから軍用であって、自衛隊が使わなければ軍用じゃないという考え方でおられるのでありましょうけれども、少なくとも基本的な日本の平和という問題、平和というものを、本当に世界じゅうから得た信頼を覆さないためにも、やはり武器輸出、準武器輸出というものについては私は慎重であらねばならぬ、このように私は考えるのです。これは通産大臣総理、あなたの言うことを私はかわりに言うたようなものだから答弁してください。
  76. 河本敏夫

    河本国務大臣 決して政府武器輸出を奨励しようとかあるいは増加させようとか、そういう気は毛頭ないのです。繰り返し申し上げますけれども、過去三年間におきまして武器としての輸出実績というものはピストル二丁しかないということを申し上げたことがございますが、現にC1のごときも外国のほぼ同じ性能の飛行機に比べますと、価格なども四割も五割も高いわけですね。そういうこともありまして、現実にこういうものが輸出されるとは私ども考えておりません。また日本武器輸出国として今後実績を積み重ねてこれをふやしていこう、そういうことは毛頭考えていないわけです。ただ武器原則に言う、これが武器であるかどうかという御質問がありました場合に、私どもはこれを無理に拡大解釈したりあるいはまた縮小解釈したりしないで、そのものの性能に即しまして純粋に技術的にこれは武器であるとかないとか、そういう一応判断を下すだけでございまして、そのことと現実に武器輸出することとは別問題でございまして、決して私ども武器輸出することによりまして産業を盛んにするとか貿易をふやすとか、そういうことは毛頭考えていないわけです。事実日本には武器輸出実績はございませんし、軍需産業というものは微々たる状態でございますから、はるかに他の分野で貿易の振興を図る方が何十倍も何百倍もの効力があると私は確信をしております。したがいまして、御質問が出ますからこれは武器であるとか武器でないという一応判断をいたしますけれども、そのことと将来武器輸出をどうするかということは全然別問題でございまして、武器輸出を盛んにするとか、そういう考えは毛頭ないということを申し上げておきたいと思います。
  77. 三木武夫

    三木内閣総理大臣 いま正木君の御指摘のような一部の例があるとしても、日本原則的には武器輸出承認をできるだけしないようにしようというのが基本的な考えでございます。
  78. 正木良明

    正木委員 ですから、C1はもともと軍用として開発された輸送機であるということです、私の申し上げているのは。そういうものを直接殺傷の兵器であるとかないとかというふうなそういう範囲で物を考えずに、少なくとも軍用で開発されたというのは武器なんですから、そういうものを輸出するということについては非常に慎重であらねばならぬのじゃありませんか。しかし、C1はそうじゃありません、武器じゃありません、武器輸出しませんけれども、これは武器じゃないのですからどんどん輸出していいじゃありませんかという考え方に私は警鐘を鳴らしているわけですから、もともと軍用機として開発されたC1の輸出については通産省として非常に慎重な扱いをしようというなら、ぼくはそれはそれでいいわけなんですから、どうなんですか、それは。
  79. 河本敏夫

    河本国務大臣 先ほども申し上げましたように、これとほぼ同じような性能の飛行機がございまして、ロッキードが開発したものですけれども、アメリカンエアラインズなんかで十九機使っているわけです、そういうものに比べますと値段が四割も五割も高いわけです。でありますから、現実に私はそういうふうな貿易ができるとは思っておりません。しかし、仮に万が一できた場合といえども、御案内と思いますが、武器輸出原則のほかに外国為替及び外国貿易管理法というのがございまして、それに基づいて、いま法制局長官がお話しになりましたように輸出貿易管理令というものができたわけでございますが、そのもとの外国為替及び外国貿易管理法の第四十八条に、貿易というものは国民経済全体がプラスになるように、また国全体の外貨あるいは貿易関係を総合的に考えてそして総合的な立場から判断すべきである、そういう趣旨のことが書いてありますので、そこで韓国などは武器輸出原則の対象国にはなっておりませんけれども、その条項を適用いたしまして武器輸出しておらぬわけです。そういうことでございますから、仮に万が一そういう商談ができましても、こうして議論がある間は十分慎重に対処をいたします。いやしくも日本が誤解を受けるようなことはしないつもりでございます。
  80. 正木良明

    正木委員 やろうとされている意味はよくわかります。ただこのC1については、先ほども申し上げましたように、田中総理大臣がこの予算委員会政府統一見解を発表したという経緯があるのです。これが純粋に、あなたがおっしゃるように民間航空機、単なる輸送機であるということであるならば、わざわざ田中総理大臣がこの予算委員会でこのような政府統一見解を発表する必要なかったわけです。これは軍用の飛行機だから、軍用に開発されたC1だからこれを日航製に製造させることは間違っておるのではないか、こういう議論が行われて、これは趣旨に反するところがあったから政府において善処するというぐらいのことを言ったわけです。いいですか。だからこれは軍用に開発された飛行機で、そのためにこの国会で議論になって、政府統一見解が出て、これは裏返せばC1というのは軍用の航空機でございます、輸送機でございますということになったわけじゃありませんか。そのことを問題にしているのです。だからどうかひとつこのC1については非常に慎重に取り扱うということを、簡単で結構ですからはっきりおっしゃってください。
  81. 河本敏夫

    河本国務大臣 そういう過去の経緯等もございますので、十分慎重に取り扱います。
  82. 正木良明

    正木委員 時間がありませんので、これはさらに私の同僚が続けてやってくれるでしょう。  次に、実は春闘のベースアップの問題を副総理とちょっとやり合いたかったわけですが、これちょっとやっていますと時間が足りませんので……。  国会の論議を通じましてほぼ明らかになったことは、いわゆる不況の中で、その不況を克服し、景気を回復するための手法というものについて、政府がやはり輸出の面もある程度、財投の方でございますけれども、しかし主として財政支出としては公共事業で進めていこうとなさっていらっしゃるわけですね。これは五十一年の経済見通しから見ますと、五七・二%に及ぶところの個人消費の問題をどうするかという問題についてはこれは、もう再三の議論がございましたけれども、結局のところはこの議論が平行線のままで現在まできております。  この点を私は追及したかったわけでございますが、一応これは時間があればということにいたしまして、後の方を先にやりますが、それじゃ政府の言うように公共事業中心でやるとして、私は、これはもう実に効率的な運用をしていかなければ実際問題としてこの公共事業によるところの経済的な波及効果、いわゆる景気回復のための需要創出効果というのはなかなかあらわれてこないだろうと思うのです。そういう意味からわが党の矢野書記長が質問いたしましたときにも一つは例を挙げておりましたが、この公共事業費の中で占めるいわゆるきわめて経済効果の薄いもの、これは何といってもぼくは用地取得費だと思う。それと用地取得等に関連しての補償費であろうと思うのです。これはもう補償をもらったいわゆる権利者やないしは土地の所有者が、地主さんが、その土地代や補償金というのはそのまま銀行へ行ってしまうということが考えられるわけですから、やはりこれが即景気刺激というものにはなかなか作動してこないということは、これはだれが考えてもわかるわけです。したがって、こういう五十一年度のような深刻な不況の中で景気回復をしよう、しかも公共事業を中心に据えてやろうとするためには、どうしてもこれが効率的なもので、いわゆる緊急事態として、できるだけ非効率な土地の取得費やないしは補償費なんかを使わない公共事業、しかもそれが国民生活関連の公共事業で遂行していくのが一番効果があるのじゃないかというふうに私は考えます。その点——いま配った資料、ぼくの質問といま関係ありません、後口の方ですから。副総理、どうですか、この私の考え方
  83. 福田赳夫

    福田(赳)国務大臣 私は考え方としてはそのように思います。
  84. 正木良明

    正木委員 そこで、これを建設大臣と、それから文部大臣にお伺いしたいのです。  実はまあそういう方向で私も実際問題としてできるだけ用地費、補償費なんというような経済効果、需要創出効果のないものを節約しながら公共事業を推進するために何がいいだろうかというふうにいろいろ考えてみましたが、その中で、一つはやはり現在公立小中学校、義務教育の小中学校のいわゆる危険校舎と言われるものが相当あるわけです。私の調べによりますと、これが七百二十五万平方メートル。ところが、来年度の予算案で、いわゆる五十一年度予算で見込んでおりますのは、面積に直しますと百十一万三千平方メートルでございます。したがいまして、相当残るわけです。これはいわゆる文部省の基準の四千五百点以下の危険校舎、老朽校舎と言われる義務教育諸学校のものでございます。これに対しましてやはりある程度集中的な、老朽校舎の建てかえですから土地は全く要らぬわけなんですが、これだけしか予算を組んでおりません。だから、残っておる方がずいぶん多いということになるわけでありますし、しかも、毎年平均八十万平方メートルというのはいわゆる老朽校舎として新しく発生していく耐用年数等の問題があるわけでございますが、この点、文部大臣、老朽校舎の改築というものを積極的に進めていくという考え方があるのかどうか、これをお答えいただきたいと思います。
  85. 永井道雄

    ○永井国務大臣 老朽校舎を改築いたしましてそして鉄筋化していくというのは従来からの方針でございまして、たとえば十年前の小中学校と現状、四十年と五十年を比較いたしますと、鉄筋になりましたのは十年前が二三%が十年後に六四%、これは小学校ですが、中学では三四%から六八%ということで、計画としては、いま御指摘のように老朽校舎を改築して鉄筋化していく、これが基本的な方針でございます。  なお、いま御指摘になりましたように用地取得を伴わない老朽校舎の改築ということが非常に大事ではないか、特に本年大事ではないかということでございますが、私どもも全く同じ考えでございまして、本年は前年度の当初予算に比べますと危険改築のための予算は二八%増ということでそこに力を注いでいく考えでございますが、これは従来の考え方に沿っておりますけれども、特に重視をしているわけでございます。
  86. 正木良明

    正木委員 これはまた後で問題点申し上げますが、さて建設大臣、建設省の所管においていまのような問題は、一つはやはり中小河川の改修問題があるわけです。  それで、近年著しい都市化によって、集中豪雨等プールするところがございませんので、やはり非常に河川のはんらんが多い。それで建設省の資料によりますと、一時間に五十ミリの雨量があったときに耐えられる、これはまあ五十ミリぐらいなら、ちょっと問題があるかもわかりませんけれども五十ミリまでなら耐えられるということにするための整備、いわゆる河川改修は、それに必要な延長が七万三千五百キロメートルあると言われていますね。ところが、いままでに整備されたのが九千四百キロメートルで、率にいたしますと一二・八%、残ったのが六万四千百キロメートルでありまして、八七・二%はいわゆる一時間五十ミリの雨量には耐えられない河川とされているわけです。これが非常に重要でございまして、河川の付近の住民というものは非常にそのはんらんということについて危険を感じておるわけでございますが、この河川改修についてどのような方針で進むのかどうかということです。これがまず一つ。  それから次は、住宅問題が非常に重要です。この前の矢野質問でも、住宅金融公庫の融資ということも結構だけれども、しかし土地を持っている者でなければならないし、住宅金融公庫から融資を受けたそれに自己資金をつぎ足さなければなりませんから、相当余裕のある人でなければなかなか融資を受けて家を建てることはできない、やはりどうしても公共住宅が望ましいということが言われておりましたが、そういう意味ではこれも非常に入居者の問題がございますけれども、いわゆる木造平家建ての公営住宅、これをできるだけ入居者の積極的な了解を求めながら推進していくということが非常に重要な問題であろうと思います。  私の調べによりますと、耐用年数を超えたものが全国で十二万四千戸あるというふうに言われておりますが、これがやはり高層化していくということは、一つは大きな住宅難の解決の方途でありましょうし、これ自体がやはり土地代の問題も解決できるわけであろうと私は思いますので、この公営住宅の建てかえの問題についてはどのような方針でお進みになるかということ、この点をまずお聞きいたしたいと思います。
  87. 竹下登

    ○竹下国務大臣 正木委員お答えいたします。  いわゆる景気対策としての用地費、補償費の基本的な考え方につきましては、副総理お答えになったとおりであります。  その中で、率直に申しまして、五十一年度建設省関係予算そのものを精査してみましても、比較的正木委員指摘のような用地補償費の割合が低く、かつ国民生活に密着しておるものの伸び率がいま御審議いただいておる予算の内容でございます。  その中で、特に御指摘になりましたいわゆる公営住宅の建てかえの問題、これは土地そのものは現在あるわけでございますから、まさしくそのものが需要喚起につながっていく、お説のとおりであります。しかしながら、今日までやってみた結果として、反省もしなければなりませんが、いわゆる中高層化によってその地域の人口が非常にふえて、それに伴って道路の問題でございますとかあるいは小中学校、幼稚園、保育所、こういうような問題についての隘路が一つあります。これも、年々これに対する、地方自治体に対応していただける助成措置等が行われてきたところでありますけれども、さらにはいま正木委員指摘のとおり、その地域に住んでいらっしゃる住民の方が、言ってみれば平屋建てで五十坪といたしますと、中高層化された場合、いま自分の住んでおる生活様式が非常に変わっていくんじゃないかとか、あるいは、それはそのまま払い下げてもらいたいではないかとか、いろいろな要求がございまして、思うとおりに進んでいないというのが実態でございます。残念なことでございますけれども、ことしの予算等を見ましても、なかんずく大都市圏を中心として、いわゆる返上がありましたりして十分に消化できていないということは事実でありますが、お説の趣旨を体して、今年度さらに御審議いただいております予算案の中あるいは助成措置、起債の充当率等々によりまして、さらに積極的な住民の方へのアプローチをして期待にこたえなければならぬというふうに思っております。  それから河川改修でございますが、確かにおっしゃるとおり、まだいわゆる時間雨量にして五十ミリ相当の降雨に対して現在の進捗率はまさに一二・八%にすぎません。そうして推定いたしますと、五十一年度これをさらに延長してまいりますと、それでもまだ一三・六%。いまのような状態でいきますと、五十五年度末を見ても一八%、これは推定でございますけれども、そういうことにならざるを得ないわけであります。しかしながら、なかんずくいわゆる中小河川の用地費等の比率は非常に少ないものでありますだけに、これらを重点的に取り上げていくという方針には変わりありません。  なおこの機会に、いわゆる用地補償費の場合でございますが、補償費の場合は、いずれは時と所を得て、立ち退いた家もお建てになるだろうから、それがすそ野の広い住宅産業の中で需要を喚起するではないかとか、あるいは用地費等におきましても多額のものが入ってきて、一体いままでこれが需要喚起にどれだけつながっただろうか、いろいろな議論もしたことがございます。実際問題といたしまして八十数%が用地補償費に取られる事業もあるわけでございます。これらについて経済企画庁の調査によって、一応臨時収入については四四%程度が貯金に回るのではないかとか、ブルーカラーの方の場合は三十数%ではないか、こういうような調査が出ておりますけれども、これも何を対象にして調査したかと言えば、主としてボーナスを対象にして調査したものでありますので、そのボーナスというのは、臨時収入とはいえ、実際問題、予測した生活費の一部であるという感じ方からいたしましても、いわゆる用地補償費とは性格も異なるし、一体用地補償費等がどういうふうになっているかということを追跡調査すべきであるという議論も四十年、四十一年の不況対策のときにやっております。しかし、これは現実、私有財産がどういうふうに変化していったかということについては定かな統計等はない、残念ながらそのようにお答えしなければならないわけであります。
  88. 正木良明

    正木委員 そこで、政府当該省がそういうような姿勢でいったとしても、たとえば老朽校舎の建てかえの問題なんかは補助率が三分の一ですね。一般の市であるとか、ないしは人口急増地帯において三分の一しかない。過疎地でようやく三分の二、沖繩で四分の三ということになっておりますが、この補助率をやはり変えてあげないと、地方自治体が実際問題としての行為はできないわけです。したがいまして、この点はひとつ十分に考慮していただかないと、そのような枠組みはつくったけれども、しかし、実際それを施行する地方自治体は、とてもじゃないけれども手を出せないという状況が起こってくると私は思うのです。補助率が低い上に、なおかつ超過負担という問題が重なってくるわけでありますから、この点についてはひとつ文部省、十分に考えていただきたいと私は思います。  それと同時に、お断りしておかなければならぬのは、老朽校舎の建てかえばかりが必要であって、生徒数が急増しておるようなところで新設校を全く無視してしまえということではないわけです。ただ、昭和五十一年、この深刻な不況の中の緊急事態に対処するためには、やはりそういう経済効果が非常に大きいであろうと思われるようなものに積極的な重点を置いていくべきであるということを申し上げているわけであります。  そこで、自治大臣にお聞きしたいのですが、地方財政計画も発表されまして、いま私も細かくは分析をいたしておりませんが、地方自治体もやはり景気回復のために積極的に公共事業を推進しようとしている意欲がうかがわれるようでありますし、そのように指導なさるようでございますが、しかし、実際問題として、先ほど申し上げたように補助率は低い、超過負担はある、ないしは裏負担となるべき税収が非常に枯渇をいたしておりますので、やはりどうしても地方債に頼らざるを得ないというような状況がありますね。そういう状況の中で、縁故債等の借り入れが非常に困難な状況であるということが言われておるわけです。主として地方銀行が地方債の引き受けをやる中心でございますが、これはすべてではありませんけれども、ある地方銀行を私が調査いたしますと、大体五十一年度で国債が一兆一千三百億は引き受けなければいかぬだろう、政府保証債が千七百億くらいは引き受けなければいかぬだろう、公募地方債二百億、縁故地方債一兆二千三百億、地方公社債等二千三百億、合計二兆七千八百億、こういう公共債の引き受けということを予想しておるようです。そういう中で、預金の伸びが前年比二八%として、五兆四千八百四十億、貸し出し額が一四%増として、これは一般の貸し出しですよ、地方債とは別にいたしまして三兆八千三百億。だから、預金額の伸びから貸し出し額を引きますと、一兆六千五百四十億残が出るという予測です。これで地方債、国債を賄うわけです。そうすると、どうしても二兆七千八百億、そういう公共債、国債、地方債の需要があると見込んでおるわけですが、その中で、これだけの残しかないから、結局の話が一兆一千三百億資金が不足するということになるわけです。これは大蔵大臣も聞いておってください。そうすると、この一兆一千三百億というものの不足はどこへしわが行くかというと、これは地方債へ行かざるを得なくなるのです。というのは、やはり銀行といたしましては、国債、政府保証債というのは一年後いわゆる日銀の買いオペレーションの対象になります。ところが地方債は、その買いオペの対象になりませんから、これを抱えていかなければならぬということになるわけですね。そうなると、いわゆる地方債をあれだけ地方財政計画でお見込みになっています——細かいことはうちの小川君がまたやると思いますが、お見込みになっている。しかし実際問題として、その地方債が消化できるかどうかということについては、きわめて悲観的な予想しかできないような状況があるわけです。これについて地方債をどのように銀行引き受け等によって、いわゆる縁故債と言われるようなものを含めて消化のことをお考えになっているか。これは自治大臣と大蔵大臣お答えをいただきたいと思う。どういう方法をお考えになっているか。
  89. 福田一

    福田(一)国務大臣 先ほど来、正木さんが、今回の予算は中央地方を通じて景気浮揚に重点を置いて運営されなければならないという御指摘がございましたが、まことにごもっともな御指摘であると思うのでありまして、そういうような方針に基づいて運営をしてまいりたいと思いますので、まずもって、地方財政もそのような方針に基づいて運営をするということを申し上げたいと思うのであります。  そこで、その次に地方債の問題でございます。これは、われわれも、実は予算編成の時期におきまして非常に憂慮をいたしたのでございますが、ただいま御指摘になったのは、恐らくは相当大きな中央における銀行の計画ではないかと私は思っておるのであります、これは私の予測でありますが。むしろ地方債の問題になりますと、遠隔の地方ですね、そういうところの地方銀行というものが、県、市町村から指定を受けて取り扱いをいたしておりますと、やはり縁故債を引き受けないわけにいかないということになるわけであります。そうすると、その縁故債の方へ金を回わせば、中小企業、その地域の金融に大きく影響するということを考えていかなければなりません。したがって、地銀では、何としてもやはり地方債についても買いオペレーションの対象になるように、いわゆる担保適格債にしてもらいたいという強い要請が実はございまして、私たちもこれを踏まえて予算編成のときに当たりましては十分大蔵省と話を続けてまいったのでありますけれども、まずこの点ついては、今年度予算におきましては、大蔵省としても十分その点を配慮して、そうして必ず地方債が消化されるように努力をするということでございます。御案内のように予算編成は相当暮れの短い間に行われました。もとより、この問題は前からずっとやってはおりましたけれども、一応私らといたしましてはやはり大蔵省の言明を信じ、また適切な措置をしていただけるという考え方に基づいて実は承知をいたしたのでございまして、しかし、特に配慮いたしましたことは、実は地方債が四兆八千十億円でございますけれども、そのうちで大体一兆四千二百億円は政府資金をもって見ているのでありますが、同時にまた、やはり金利の安い、いわゆる公営企業金融公庫の資金も五千五百億ほどございます。これらのものはできるだけ財政力の弱い市町村に割り当てる。財政力の弱い市町村にそういうものを、政府資金の分を割り当てるということにいたしまして、そうして資金の残りの分については縁故債でやると、こういうような運営の仕方も実は考えておるわけでございまして、御指摘の点はわれわれとしても十分参考にさしていただいて、万遺憾ないように運営を図ってまいりたい、かように考えておるところでございます。
  90. 大平正芳

    大平国務大臣 いま自治大臣からお話がございましたように、資金調達能力の弱い市町村等に対しまして、政府資金あるいは公営企業金融公庫等の資金をなるべく充当するようなことを考えてまいらなければならぬと思います。しかしながら、中央地方を通じまして五十一年度の金融の展望を見てみますと、産業資金の需要は必ずしも強くないわけでございます。また、中央地方を通じて、われわれが編成いたしました中央地方の財政資金が出てまいりまして、それが地方の金融機関に預金として還元されるという状態考えますと、明年度の金融情勢必ずしも窮屈ではないと考えておるわけでございます。しかしながら、前々申し上げておりますように、地方によりましては、あるいは金融機関によりましては、楽観できない状況が出てこないという保証はないわけでございますので、そのあたりは金融機関とも、あるいは地方自治当局とも十分周到な打ち合わせをしながらネックの打開に努めてまいりまして、支障のないように配慮いたすことにいたしたいと考えております。
  91. 正木良明

    正木委員 まだまだ質問したいことがたくさんございますが、中途半端になってしまいまして……。一言最後に申し上げたいことがございます、これは特に大蔵大臣お願いをしたいのですが。  公共事業予備費千五百億円の計上、これは非常に私は問題だと思うのです。そういう意味からいって、憲法上の問題もありましょうし、財政法二十四条の問題もあるだろう。ただ、景気回復のために相当機動的な予算運用をしなければならぬために、こういうものを手元に持ちたいというお考えのようでありますけれども、しかし私は、やはり財政民主主義という折り目というものはできるだけ崩さない方がいい。このことは何遍か私は指摘をいたしました。最初はたしか昭和四十九年度予算でありましたか、五十年度の歳入を取り込んだんですね。国債の発行を、会計年度三月三十一日に終わるのではなくて五月三十一日まで、出納閉鎖期まで国債の発行の期限を延ばしてみたり、なおかつ今度はまた公共事業予備費というようなものをつくり出してきた。それぞれに理由はあるでしょう、理由はあるでしょうが、しかし、こういう会計制度というようなものについて、やはり折り目というものはきちんとすべきものはしておかなければならぬのじゃないかというふうに私は思いますね。きのうも社会党の田中委員からいろいろこの問題について御質問がありましたので、私はそれをあえて繰り返しませんけれども、むしろ予備費それ自体も、四十九年、五十年の状況を見てまいりますと、これはそれぞれ本来の予備費も、やはり一千億程度は補正予算の財源に回してきていますね。だから、そういう意味から言うと、私は、ことしの三千億の予備費それ自体にも相当やはり今後の補正予算財源としての余裕を持たしてあるのではないかというふうに考えます。さらに加えて、公共事業予備費千五百億。要するに、財源がないから減税も何もできないのだというふうに言いながら、事実上いままでの例から言うと、本来の予備費の中には約半分近くのものについては補正予算の財源となるべきような余裕財源があるし、さらには千五百億の公共事業予備費、これなんかを考えてまいりますと、むしろそれをすっきりして、予備費も従来の例から見て、これは四十九年が千百九十億、五十年度は一千億、それぞれ補正予算の財源に回しておりますが、ことしも三千億の本来の予備費の中から一千億ぐらいは余裕財源を見込んでおると仮にいたしますと、公共事業予備費一千五百億円、これをなくして、これは余裕財源だということになりますと、二千五百億出てくる。大蔵省で聞きますと、大蔵省が減税についての案をいろいろお立てになった中で、現在、標準家庭百八十三万の免税点でございますが、これを百九十九万に上げても、二千五百億円の財源があればこの減税は可能だというふうに言われております。実際問題として、減税というのは一兆ないし二兆はやらなければならぬと私は思いますけれども、しかし、単に物価調整減税ということだけでも、大蔵省が物価調整減税として案を立てた百九十九万までの約二百万までの免税点まで引き上げても、財源は二千五百億円で大体足りるわけです。そうなると私は、どうしても余裕財源としか思われないようなこの本来の予備費の中の一千億と公共事業予備費一千五百億円をプラスすれば二千五百億、これで物価調整減税が財源としてできるのじゃないだろうかというふうな感じもするわけです。ですから、公共事業予備費の性格というものはきわめてあいまいもこといたしておりまして、このことが慣例となりあらゆる費目にこういう予備費的なものが、しかもこの公共事業予備費自体も大きな金額にふくれ上がっていくという可能性の道を開くということ、これが私は非常に重要な問題であろうと思うのです。だから会計制度上、財政運営上、やはり折り目、切り目というものをきちんとしていく、それが財政民主主義というものを守っていく道である、私はこのことを強く大臣に申し上げたいわけであります。時間がありませんので、私はこれを意見の発表にとどめまして、その後公共事業予備費の問題については別なわが党の代表がいろいろと議論することになると思いますが、この点だけはひとつお耳におとめをいただきたいと思います。  以上です。ありがとうございました。
  92. 荒舩清十郎

    ○荒舩委員長 これにて正木君の質疑は終了いたしました。  午後一時より再開することとし、この際、暫時休憩いたします。     午前十一時四十三分休憩      ————◇—————     午後一時三分開議
  93. 小山長規

    ○小山(長)委員長代理 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続行いたします。松本善明君。
  94. 松本善明

    ○松本(善)委員 私は外交、防衛問題について質問をします。  まず総理に伺いますが、ベトナムでアメリカがアメリカの史上初めてという敗北をしてからアメリカのアジア政策は新しい展開をしております。フォード大統領の新太平洋ドクトリンでも、それからラムズフェルド国防長官の国防報告でも、日本の位置づけは非常に高くて、国防報告では日米安保はアメリカの戦略の柱とまで言われております。朝鮮に焦点を当てた日米軍事同盟が強化をされ、米日韓軍事一体化が進められておりまして、安保の問題は朝鮮問題と結びつきまして現在日本国民の平和と安全に関しては最も重大な問題になっていると思います。この問題について三木総理初め関係大臣質問をしたいと思います。  三木内閣は成立後約一年になるわけでありますが、その間に際立ってこの軍事同盟が強化をされております。三木・フォード会談で新韓国条項を確認をして、事実上アメリカの朝鮮作戦の基地に日本を完全に提供する。そしてさらに坂田・シュレジンジャー会談で公然と新たに日米軍事協議を進めるということになってまいりました。これは日米の共同行動、言うならば日米共同作戦の協議であり、三矢計画の現代版であります。こういうことは歴代の自民党内閣でもかつてやらなかったことであります。いまアジアでは四半世紀ぶりに戦火がおさまっている、こういうときに、三木内閣がなぜこういうような戦火の起こったときの措置考え、そういう方向のことをいろいろやっているのか、このわけはどういうことなのかということをまず総理に伺いたいと思います。
  95. 三木武夫

    三木内閣総理大臣 松本君の御指摘のように、ベトナム戦争の後に日米が軍事提携を強化して、そして朝鮮半島をにらんで日本がアメリカのアジア政策の拠点になっていこうとしておるなどということは、全然そのようには考えていないわけでございます。また新しい太平洋ドクトリンにしても、そのようには私は太平洋ドクトリンを読まないのですよ。新太平洋ドクトリンと言われておるものは、アジア安定のために、アメリカが軍事的にアメリカの駐留というものはだんだん減らしていって、アジアの安定のために政治、経済の面で寄与する、またアジアの自主性を尊重するというようなことが新太平洋ドクトリンと言われておるものの流れておる精神であって、日米が軍事的に提携を強化して、そしてこれから日本がアメリカのアジア戦略の中心になっていこうなどと、そういうふうには全然考えていないわけでございます。
  96. 松本善明

    ○松本(善)委員 総理は事実を否定をしておられる。国防報告では、日米安保はアメリカの戦略の柱だとはっきり言っております。それは読み方の問題でなくて事実です。しかも、日米軍事協議は安保条約五条の問題も討議をしようというわけですから、日本がいわゆるいざというときのことを協議をする、だから総理の言っているのは全く事実に反するわけです。日本の内的な要因からはそういうことをする必要は全くない、外的な要因から、アメリカの要請からそういうことになっているのではないか、これは多くの国民考えている。総理のそういう答弁にもかかわらず事実は進んでいるのです。アメリカの要請でいろいろやってきておるのではないか、そういうふうに考えるわけですけれども、改めてもう一度御答弁をいただきたい。
  97. 三木武夫

    三木内閣総理大臣 安保条約は、日本の安全確保のために現段階において必要であると考えておるわけで、したがって、いま御指摘のように、アメリカのためというより、日本のために安保条約は結んでおるのですから、日本のため、日本の安全のために結んでおるので、アメリカのために安保条約を結んでおるわけではないわけですから、この日米安保などに対しても松本君の評価とは私は全然違うわけです。しかも、それは戦争の抑止力の中に安保条約の大きな意義があるわけです。したがって日米間で、日本の安全というものに対してアメリカが責任を持っておる、そういう国との間にいろいろと軍事的な面において話し合いをしておくということは、何も強化するというようなことではなくて当然しなければならぬことである。アメリカとの間にはやはり話し合いをして、そうしていろんな事態に食い違いが起こらぬようにするということは当然のことであって、松本君の説から言えば、すべてが戦争に向かって、そうして日米が軍事力を強化していこうという、そういう考えは全然ない。われわれが望んでおるものは、やはり日本の安全であるし、またアジア・太平洋における平和と安定ということが中心であって、それをまた何か別の軍事的緊張を深めるような、そういうふうなことは全然考えていないということでございます。
  98. 松本善明

    ○松本(善)委員 総理のそういう考えが一体正しいのかどうかということをここで少し論議をしようと思います。  安保条約についてどう見るかということは日本の外交の根本問題でありますが、安保条約が改定をされてから十五年たっておる。日本国民はその中で重大な経験をいたしました。ベトナム侵略戦争の基地として日本が使用されたということであります。この結果、安保条約は総理の言うように日本を守るためのものではないということを多くの国民が知り、世論調査でも七割の国民が中立がいいということを言い出すようになりました。  そこで私は、ベトナム侵略戦争の結果が出た今日、総理がこれをどう考えているか。これは朝鮮その他の今後のアジア政策の根本にかかわりますので明確に伺いたいのでありますが、三木総理大臣は、一九六七年の五月十六日に外務大臣として内閣委員会で、ベトナム戦争の問題について、安保条約を結んでいる関係上、日本の国際的立場を中立というふうには考えないのである、こういう趣旨の答弁をされました。御記憶があるかと思いますが、私はここでこの際伺っておきたいのは、総理は、ベトナムでのアメリカの軍事行動に対して、いままで自民党内閣として、安保条約があるからということで価値判断なしに協力をしてきたのか、それとも何らかの価値判断をして協力をしてきたのか、この点をまず伺いたいと思います。
  99. 三木武夫

    三木内閣総理大臣 私も、外務大臣当時においても、ジョンソン大統領に向かって、何とかベトナムのような戦争というものを早く終結さすことはできないかということでこの問題を話しましたし、何とかベトナム戦争の早期——ああいう問題を解決するということに、一々は発表しておりませんけれども、私は私なりに努力をしたわけでございます。したがって、ベトナム戦争というもの、これを日本があおるような立場では全然なかったわけでございます。
  100. 松本善明

    ○松本(善)委員 私の言いますのは、価値判断をして協力をしてきたのかどうかということを聞いておるわけです。三年前に、七三年の予算委員会で当時の田中総理大臣は、これは自衛のためだということで協力をしているとはっきり言っておられます。三木総理大臣もそういうことでやってきたのかどうか。あるいは安保があるから仕方がないということで無条件で協力をしてきたのか、価値判断なしにやってきたのか。それともアメリカの行動は自衛のためだったということで協力をしてきたのか。その点についての総理大臣の考えをいまはっきり伺いたい、こういう質問であります。
  101. 三木武夫

    三木内閣総理大臣 安保条約の範囲内において協力をしたということでございます。
  102. 松本善明

    ○松本(善)委員 安保条約の範囲内で協力をしたということは、どうですか、私の聞いていることに面接お答えいただきたいのですが、アメリカのベトナムでの軍事行動を自衛のためというふうに判断はしなかったということですか。それとも判断をして、そして自衛のためだから安保条約で協力をするのだ、こういうことで協力をしたのか、そのどっちかということをはっきり聞きたいわけであります。
  103. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 条約の解釈との関係で申せば、極東あるいは極東の周辺に起こった事態がわが国自身の平和、安全と無関係ではないという考え方でございますが、したがいまして、どういうことでもするということではなくて、わが国の平和と安全にそれが関係をする範囲において、その判断の基準において条約のもとに協力をしてきたと考えております。
  104. 松本善明

    ○松本(善)委員 大平さん、いま私が聞いた、田中総理から答弁をされたときに、あなたは外務大臣でおられた。そしてベトナムの問題については、じゃ、いつ、どこから侵略があったのだ、田中総理は白布のためだということで協力をしているということを言ったのですけれども、それに対して一体どの時期にどこから侵略があったのかという話がありまして、大平さんは、そのとき外務大臣として、トンキン湾事件のときに侵略が起こったのだ、こういう話をされました。いまなおあなたはそういうふうに考えておられますか。トンキン湾事件でベトナムが侵略をされて、その自衛のためにアメリカ軍が行動したのだ。それで日本が協力をしたのだ、こういうふうに考えておられますか。
  105. 大平正芳

    大平国務大臣 私いまもう外交を離れていますので、外交の問題について国会に対して御答弁申し上げることは差し控えさせていただきたいと思います。
  106. 松本善明

    ○松本(善)委員 当時のあなたの答弁を、当時外務大臣だったから、これを訂正するとか、間違っているというならこの機会に訂正をされればいいし、そうでなくてあのままでいいのだということであれば特別に取り消されないかもしれません。この点はいかがかということであります。
  107. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 外務当局としての考え方を申し上げますのですから私から申し上げますが、いわゆるトンキン湾事件というものの真相が何であったかということはその後いろいろ問題になっております。しかし、当時私どもとしてはトンキン湾事件というものが一つのきっかけであったと考えておった。しかし、このことの真相はただいまでも明らかでなく、やはり長いことたちまして、客観的な事実が明らかになったときにはっきりするのでございましょうが、私どもとしてはそう考えておったということであろうと思います。
  108. 松本善明

    ○松本(善)委員 大平さんはお答えにならなかったわけですが、結局富津さんがそれを肯定するような発言をされましたけれども、トンキン湾事件というのは、話がありましたけれども、トンキン湾決議がでっち上げだったということでアメリカの国会でこれが取り消されて、結局撤回になっておるという経過ですね。これは宮澤さん御存じと思いますけれども、事件の内容等、それから経過について、詳しくなくとも結構ですが、この議場にいる人にわかるようにちょっと御説明いただきたい。
  109. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 要するに、トンキン湾におきましてアメリカの艦船が攻撃を受けたということが、当時米国がこれに対して対応するという米国の上院における決議のもとになったわけでございますが、その後になりまして、当時からこれについては若干米国の中でも疑問を差しはさむ者がおったようであります。後になりまして、アメリカが挑発を受けたのであるかあるいはその挑発をむしろ誘ったのであるかということについていろいろ議論が起こりました。このことは、しばしば上院において関係者が証言をし、査問を受け、議論になったわけでございます。結局のところ、必ずしも事実は当時アメリカ政府が説明したとおりでなかったかもしれないという相当な疑問が持たれるに至りまして、したがって、その後になってトンキン湾決議というものは効力を失うに至ったということであると思います。しかしその当時、そのような解釈のもとに米国の上院が決議をしたことは事実であります。でございますから、トンキン湾事件というのは結局何であったかということは今日相当な疑問を持って見られておるということは確かでございますけれども、その真相というものは、かなり時間がたって、両者の持っておる事実解釈が平静な状態で歴史の中で解明されない限り、はっきりはいたさないのではないだろうかというふうに考えております。
  110. 松本善明

    ○松本(善)委員 そうすると、これはフルブライト外交委員長なんかはだまされたと言って結論を出し、ニクソン大統領が署名をして決議が失効したわけです。アメリカ政府としては正式にやめておるわけですね。これは当時は自衛の行動だということで判断したということだけれども、いまなおその判断は変えない、まだ歴史の判定が出ていないからベトナム戦争はアメリカの自衛の行動だ、こういうふうに日本政府考えているのか。そうだとすれば、いまはベトナムは侵略をされている状態だ、こういうことになるわけです。その国と国交を結んでいることになるんです。私は現在、いまの現状でこの問題はあいまいにすべきことではないと思っています。これについては政府はどう考えているか、はっきりお答えいただきたいと思います。
  111. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 何が侵略であり、何が防衛であったかというようなことは、やはりある程度時間がたって客観的に、歴史になってみなければ本当のことは実は言えないのではないであろうか。ただ、具体的にトンキン湾事件そのものをとってみますと、当時アメリカ政府が説明しておったところは、今日きわめて大きな疑問を持って見られておるというところまでは、私はおっしゃるとおりだと思います。フルブライト氏はいわば錯誤で、事実でないことを信じたと感じておられるようでございますから、相当な疑問を持たれておることは事実だと思いますけれども、しかし全体としてベトナムの戦争がどういうものであったかということを議論するには、やはりまだ時間がたっていないであろう。どちらが侵略をした、どちらが侵略をしなかったと私は申しておるのではなくて、歴史として考えれば、それはやはりもう少し時間がたちまして、歴史の中で判断をせられるべきものであろうと思っています。
  112. 松本善明

    ○松本(善)委員 そうすると、ベトナム侵略戦争当時に日本がした協力、基地の提供ですね、これもやはり疑問が起こってくる、こういうことでありますか。歴史の中で最終的な判定はされるけれども、いまもうすでにアメリカの説明は変わってきているから疑問が起こる、こういうことかどうか。  ついでに申し上げておきますが、トンキン湾事件の前からアメリカは軍事行動を公然とやっていたんですけれども、一応その観点で議論しますけれども、そういうふうに、先ほど申しましたように、政府は当時のベトナムヘの日本の協力に疑問を感じている、こういうことでありますか。
  113. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 政府の一貫した考え方は、インドシナ半島であのような戦乱が起こっているということ自身、それが拡大するということ自身が、極東あるいはその周辺における一つの争乱でございますから、そのことは、遠近の問題はございますけれどもわが国の繁栄と平和に無関係ではない、ないと考える程度においてこれに協力をしたということであろうと考えます。
  114. 松本善明

    ○松本(善)委員 無関係であるというだけでは済まないんですね。日本の基地の提供は、安保条約によれば極東の平和と安全に寄与しなければならない。寄与する場合だけです。いまの話でいきますと、もし、トンキン湾事件が間違いであった、フルブライト委員長の言うとおりである、アメリカの侵略であるということになれば、むしろ侵略に協力をしたということになるわけです。だからこの評価は非常に重要なんです。  そこで私はお聞きしたいのだが、日本の安全と平和にかかわると言ったけれども、しかし一体日本の基地の提供は極東の平和と安全に寄与したのかどうか、平和のために積極的に役に立ったのかどうか、その点は一体どう考えているのか。これは非常に大事な問題でありますので、総理大臣に伺いたいと思うのです。一体このベトナム侵略戦争に日本が基地を提供して協力をしたのは平和のために役立ったのかどうか。この点総理は何と考えておられるか、お聞きしたいと思います。
  115. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 平和と安全に寄与するということは、極東の平和と安全が脅かされるということは、そういう争乱が拡大するということはさらに脅威を増大するものでありますから、それがそうならないようにわが国の基地が使われるということは、すなわち寄与するということにほかならないと思います。
  116. 松本善明

    ○松本(善)委員 総理に確かめたいと思います。  アメリカの侵略だということで始まったのはトンキン湾事件だ、トンキン湾事件については疑問が起こるということを宮澤外務大臣ははっきり言っているのですよ。にもかかわらず、侵略であるかもしれない、歴史がもうちょっとたったらそういうふうになるかもしれません、私はもう明白になっていると思う。アメリカ政府は正式にあの決議を撤回したんですからね。それを侵略に協力をしているかもしれないということを、あの基地の提供だけは平和のために役立ったのだ、こういう結論を出しているのです。三木総理も賛成ですか。
  117. 三木武夫

    三木内閣総理大臣 ベトナム戦争を早く終日心しなければいかぬということを日本政府として考えておった、そういう意味においてこれは安保条約の範囲内で極東の平和と安全に寄与するという見地からなされたものであって、いまこれが歴史がたってみて、トンキン湾事件なんかのいろいろな価値評価は、これはやはり歴史にまたなければならぬ問題がありますが、当時において日本考え方はできるだけこの問題を早く解決したいということで安保条約上の義務を日本が履行したということでございます。
  118. 松本善明

    ○松本(善)委員 三木総理も宮澤外務大臣も、皆さんお聞きになっているけれども質問に答えないで、価値判断はしない、結局、安保による協力はよかったのだということだけを言っているのです。私はそういう議論ではだめだと思います。  総理に伺いますが、施政方針演説であなたは日本が平和を乱すもとになってはならぬということを言った。いまインドシナは平和なんですよ。ベトナム戦争への日本の基地の提供がなくなり、アメリカ軍の軍事行動がなくなって平和になっているのです。いまの事態から考えれば、明らかに日本の基地提供は平和を乱すもとになっていたのです。あなたはそう考えませんか。インドシナのいまの状態は平和ですよ。いま私が申しましたことについて、総理は何と考えられるか、お答えいただきたい。
  119. 三木武夫

    三木内閣総理大臣 安保条約による協力が平和を乱すもとになったとは考えていない。
  120. 松本善明

    ○松本(善)委員 これは私は、結局いまの議論総理は安保がある以上は無条件で協力するのだ——一つ一つの、子供でもわかる価値判断を聞いているのです。それについて答えないで、は安保条約で協力したのは平和を乱すもとではない。それが対米追随なんだ。これは非常にはっきりしていますが、もう一つ伺います。  それはベトナムでアメリカが侵略をして悪だったということ、これははっきりしましたけれども、戦時でなくてもアメリカは干渉政策をとっている。それがCIAの問題ですよ。これは非常にはっきり出てきています。  去年の十一月二十日にアメリカの上院の情報活動調査特別委員会が外国要人の暗殺計画の報告書を発表しました。これはカストロ首相だとか、ルムンバ・コンゴ首相だとか、あるいはシュナイダー・チリの陸軍司令官なんか、みんな含まれていますね。これはみんな知っていることです。目的のためには手段を選ばずということでいろいろやりました。これも詳しくやるには時間がありませんので、みんな知っていることだと思いますので申しませんが、さらに七五年の十二月の四日にはチリのクーデター、これについて秘密活動をやったということの発表がありました。チリのクーデターのときにはアメリカの政府は、国務省は、アメリカ政府は全然関係していないと一生懸命言ったのですよ。ところが、それから二年後にもう、はっきり関係していた、クーデターに大きく寄与していたということが明らかになった。さらにその次の報告書はどうなったか。これは一生懸命押さえたけれども、UPIが暴露しました。イタリアのクーデターに金を出していたということであります。  これらを通じて特徴的なのは、アメリカの政府の首脳が全部関与しているということです。この暗殺計画については、たとえばカストロ首相の場合はマクナマラ元国防長官が提案をして、ケネディ大統領がそれを知っていた。これはちゃんと証言があります。チリの場合にはニクソン大統領が直接指令をして、キッシンジャー国務長官がその設計者であり、その中心人物だということを調査特別委員会のスタッフは語っている。国家資金三十九億を投入している。イタリアの場合には、キッシンジャー長官がそのクーデターのための金の支出を承認をして、駐在アメリカ大使を通じて右翼の軍人に二億四千万出している。こういうことが国家活動としてやられている、平時でも内政干渉が。こういうやり方ですね。こういうアメリカの対外政策を三木総理、支持できますか、お答えいただきたい。
  121. 三木武夫

    三木内閣総理大臣 CIAの問題では、松本君御承知のように、アメリカ国会でも問題になって調査がされておるわけで、まだ決定的な結論というものは出ていないと承知するわけです。したがって、これに対して、日本政府が結論も出てない問題にコメントをすることは差し控えたいと思います。
  122. 松本善明

    ○松本(善)委員 総理、ここまで全世界でもう大問題になっていることですよ。それをコメントできないという答弁自身が私は大問題だと思うのです。そういう内政干渉だとか、クーデターを支援するとか、あるいは外国要人を暗殺をするとか、そんなこと悪いに決まっているじゃないですか。なぜそれが言えないのですか。それば正当ですか。
  123. 三木武夫

    三木内閣総理大臣 それは、内政干渉したり暗殺計画を立てたりすることは、だれもいいと思う人は一人もいないわけです。しかし、いま調査をして、CIAの活動に対して事実そういうことをやったのかどうかということに対しても調査の結論が出てないわけですから、その前に日本政府がCIAの活動に対していろいろコメントをするということは、これは適当でない。しかし、伝えられておるようなそういうことが、何人もこれが正当な行為であるとして、これを擁護する人はだれもないと思います。
  124. 松本善明

    ○松本(善)委員 CIAの今度長官になりましたブッシュ氏、これは長官になりましてから、クーデターへの支援は一切やらないというふうには言えないと言っているのですよ。そしてフォード大統領は、その新長官の就任式に行って、CIAの活動は非常に重要であると激励している。重要なのはアメリカの国家活動としてそれがやられているということです。そういうことが本当にそうであったら、これはアメリカの対外政策、支持できないでしょう。やっていることはよくない。それを国家活動としてやられているというんなら、アメリカの対外政策は支持しないということをはっきり言えますか。そういうことを含んだ上でコメントできない、こう言っているのですか。総理、お聞きしたい。
  125. 三木武夫

    三木内閣総理大臣 全貌が明らかになってないいま、これに対して日本がいろいろコメントすることは適当でないと言っておるわけですから、したがって、CIAがいろいろな情報収集をするということは、これは国際法においても認められていることですが、それが暗殺計画を立てたり、いろいろ内政干渉にわたるようなことがCIAの正当な活動であるとこれを擁護することはできない。
  126. 松本善明

    ○松本(善)委員 私は、このCIAの問題とそれからベトナムの問題を例を挙げて、アメリカの対外政策このまま支持できるかということを言いました。私、この論議自身がやはり三木内閣の立っている立場というものを非常にはっきりさせたと思います。それはもう明白に悪いことも悪いとは言えないで、基本的にはアメリカの政策を支持する、都合の悪いことは言わない、こういうことがいまはっきりしているのです。で、これは結論がついてないと言うけれども、アメリカの正式の機関が結論を出して発表しているんでしょう。それ以上の結論がどこにありますか。それ以上の結論は一体どこで出すのですか。これがいまの日本の外交の根本問題だ。安保堅持というのは、結局こういうアメリカへの追随なんですよ。これは国民立場に合致してない。やはり国民立場から、日本立場からこれは一体一つ一つ正しいかどうかということを考えられなければならない。総理は、自主的な協力は追随ではないということを施政方針演説で言いましたけれども、私はここの論議はそういうものではないということをはっきり証明したと思います。  いま重要なのは、アメリカは日米安保を軸に干渉政策を再編をしようとしているということであります。ベトナム侵略戦争についてのアメリカの教訓は、軍事力の行使がやり足りなかった、こういうところに求めています。これは経過を見れば明らかで、シュレジンジャー元国防長官が昨年の五月に、ベトナムの教訓を生かした行動をとらなければいかぬ、朝鮮半島で事が起これば一挙に敵の心臓部をたたくと言う。フォード大統領は核先制使用宣言を去年の六月にしました。ホリングズワース中将になると、これは米韓統合第一軍団の司令官ですけれども北朝鮮の攻撃があれば一時間当たりに三十波のB52を出撃させて、九日間で敵を鎮圧、撃滅するという九日間戦争を提案した。ラムズフェルド国防長官も基本的にこの政策を継承していることは、彼が就任してからの発言ではっきりしています。総理、こういう方向がアメリカによってとられているということは、これはその後の事態、ベトナム戦後の事態からはっきりしていると思うのですけれども、どうお考えですか。
  127. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 おっしゃっていることの根本に私には異存があるわけでして、つまりアメリカがベトナム戦争についていま反省をしている、軍事干渉が足りなかったからであるというのがアメリカの考え方であるとおっしゃいましたけれども、私は寡聞にして、ベトナムに百万も二百万も兵隊を送ったらあの戦争は勝てたろうというような議論は、余りアメリカで聞きません。私はそんな反省はアメリカはしてないと思うのです。ベトナム戦争がああいう結果になったことについて、アメリカの反省はもっと違う種類のものである。したがって、あなたのおっしゃったことは、全部私は違っておるというふうに考えます。
  128. 松本善明

    ○松本(善)委員 どういうふうに反省していますか。それじゃあなたの考えている、アメリカがどう反省しているのかお話しいただきたい。私が先ほど言ったことは全部事実ですよ。敵の心臓部をたたかなかったからベトナムではぐあいが悪かったのだ、だから心臓部をたたく。核も使わなかったからぐあいが悪いので、核を使う、こういう話ですよ。そして長々と戦争をやったからいけない、九日で戦争を終えるのだ、この話ですよ。事実はあなたの言っていることが間違いだということを証明していますよ。あなたの反論があればもう一度お聞きしたいが、同時に私は、そういう前提でこのアメリカとの新しい軍事協議がなされている、そういう力の政策を誇示するやり方がいまやられているのだと思う。あわせて御答弁をいただきたい。
  129. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 ベトナムで早く原爆を使えばこの戦争は勝っただろう、そうすべきであったというようなことは、一部の軍人に考えている人があるかもしれませんが、それがアメリカの大体の世論であるというふうにおっしゃいますから、それは私の見ておるところと根本的に違います。アメリカの反省というものはそういうところにあるのではないと私は見ておりますから、したがって、そういうあなたのおっしゃるような反省に基づいてその後のアメリカの外交政策、軍事政策が遂行されているという御立論ならば、もとが全部違っておるというふうに私は思っているわけです。
  130. 松本善明

    ○松本(善)委員 だから、どういうふうに反省しているか、どう思っているのかということを言ってくださいというのに、何も言わないじゃないですか。
  131. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 それはその後の太平洋ドクトリンにしましても、あるいは昨年の五月以後アメリカで議論されておるところから見ましても、一つではございませんけれども、やはり自分を助ける意欲のない政権にどれだけ応援をしても、その結果は徒労であったというようなことを初め、一つではございません、いろいろございますけれども、少なくともあなたのおっしゃったように、もっと軍を投入して、原爆を使って早く済ましてしまえばよかったのだ、しまったことをしたというような、これがアメリカの世論であるというふうには私は開いたことがない。
  132. 松本善明

    ○松本(善)委員 そうすると、あの戦争は間違ったという反省をしているのですか。間違った侵略戦争だということを、アメリカの立場から見てあの侵略戦争をやったということについての根本的な反省がある、こういうふうにお考えなんですか。
  133. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 それはまたアメリカの論者によって考え方は違います。おっしゃいますように、松本さんのように言っておられる人も多少はあるようでございます。また他に、いや、これは結局善意であったけれども、自分を助ける意欲のない、民衆の支持を受けない政権をどれだけ支援しても、これは結果は徒労であった、そこを間違えたのではないかと考えている者の方が私は多いのだろうと思いますが、はっきりした一本の結論があるわけじゃないと思います。
  134. 松本善明

    ○松本(善)委員 宮澤さん、自分ではっきりした結論を持たずに反論しているものだから大変弱いわけですけれども、私はいまの話でも、自分を助ける気を持ってない政権を応援しても在方がないということで、いろいろ各国に軍事力の強化を求めているのじゃないか、日本にもそうではないか、そういうふうに考えられるものが幾つもあります。後から問題にしますけれども。そういう全体として力の政策を強化をするという前提で、だからこそ戦う力を強くするんだということで軍事協議が始められているんじゃないか、こういうふうに思うのです。自分も朝鮮に焦点を置いて。そんなことはありませんか。
  135. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 そこがまた違いますので、自分で自分を助けるということの意味が、先ほど私が民衆の心から離れた云々と申し上げましたように、それは自分の軍を強くするということが全然ないわけではないが、それが主ではなくて、やはり国民が持っている政治についてのいろいろな希望、願いというものを、ちゃんとそれば政治が反映するかしないかということがその国のレジリエンスということではないか。それが主でございますね。大きな軍隊を自分で持つからそれば助けようというようなことは、全然それに関係がないとは言えないが、主な部分ではない。
  136. 松本善明

    ○松本(善)委員 まあ一つ一つあなた方が言われていることが事実と違うということを明らかにしていきましょう。  実際に朝鮮半島へ向けて力の政策が強化されているんです。ベトナム侵略戦争が終わりましてから、米軍は全部朝鮮向けになっています。非常に活発な動きが沖繩の米軍の中に起こっております。ベトナム侵略戦争型の軍事介入をアメリカが準備しているということです。総理ひとつ、あるいは総理は知っていることか知らぬことかわかりませんが、私がいろいろな事実を挙げますからよく聞いておってください、一体こういうことがあっていいのかどうかという問題をいろいろ出しますから。  昨年の十一月にわが党の内藤参議院議員が参議院の予算委員会で、アメリカの第三海兵師団第三偵察大隊が韓国で大規模な冬季山岳演習をやる、これは重大じゃないかといって質問したら、政府は、安保条約上問題がないといって、調査さえしなかったのですよ。ところが、一月二十八日、つい先日ですね。アメリカの第七艦隊のヘリコプター空母だとか上陸作戦支援艦など四隻の艦船が、完全武装したアメリカ海兵隊員と武器弾薬などを積載して沖繩のホワイトビーチから出港して韓国へ出動したのです。これはわれわれが指摘したとおりに事が起こっているということの一つの証拠なんです。  総理、こういう演習が沖繩でやられている、実際に行われている。沖繩米軍が出て行って韓国でやられるということ、こういうことはいいんですか。結構なことですか。総理のお考えをまず聞きたい。
  137. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 何かに、条約等々に違反をしているのかしていないのかというお尋ねであれば、別に違反ではないと思います。
  138. 松本善明

    ○松本(善)委員 総理、私はこういうことはいいのかどうか、こういうことは歓迎すべきことなのかどうかということを総理に政治判断として聞いているのですよ。当然のことだと思われますか。別に憂慮すべきことでも何でもない、こう思われるかどうか、それを聞きたいのです。
  139. 三木武夫

    三木内閣総理大臣 日米安保条約の条約の範囲内で米軍が演習したりいろいろすることに対して、われわれは悪いことをしておるとは思っていない。
  140. 松本善明

    ○松本(善)委員 沖繩米軍が朝鮮へ出かけていって演習するのは悪いことだとは思っていない。私はもう少し事実を挙げて皆さんの共通の認識にしたいと思うのですけれども、七五年四月、あのカンボジア解放面前までプノンペンにいた、そしてカンボジア侵略に参加をした沖繩のアメリカ第三海兵師団の第四海兵連隊第二大隊の上陸チームが沖繩に戻ってきて、ことしの三月から四月にかけて韓国韓国軍と合同訓練をすることになっています。この内容は、戦闘司令部の現地演習、実弾射撃演習、上陸作戦、山岳戦訓練、まさに朝鮮有事に備えた訓練なんです。  それだけじゃなくて、一年前には嘉手納にいたF4ファントムの第一八戦術戦闘航空団、私たちがたびたびここで問題にいたしました、核投下訓練をやっている、この第一八戦術戦闘航空団が、一個中隊だったのが四個中隊に増強されています。  そうして、嘉手納にいる第一特殊作戦中隊のC一三〇というのがフォールイーグル作戦という訓練を、これも三月末から四月上旬にかけてやります。アメリカと韓国の特殊作戦部隊が一緒になって要員降下と補給物資の空中投下訓練をやる。これはどういうものかといいますと、航空幕僚監部が配りました米空軍のべーシックドクトリン、これは予算委員会にも配られたのでみんな知っていることですけれども、これによりますと、不正規軍の部隊の敵性領土への進入及び撤収というようなことをやるのです。だから、結局敵国の中へゲリラ部隊を降下させるという訓練を沖繩の部隊が、アメリカと韓国と合同で朝鮮でやるのですよ、三月から四月に。  それからさらに、一部の例を挙げるだけですけれども、これをちょっとごらんください。総理、これは朝鮮への給油作戦の地図なんです。これはどういうものかといいますと、沖繩の嘉手納におります三七六戦略航空団、これの給油作戦の地図です。日付はことしの一月の六日付なんです。ごく最近のものです。これにはどういうことが書いてあるかというと、COPE DIA、これはコリア・プレストライク、朝鮮攻撃前の給油はどうするか、それが初めの方の地図なんです。帰りは、カデナ・プレストライク、それからコリア・ポストストライク、朝鮮を攻撃して嘉手納が攻撃をされる前にやる給油はどうするかというのが後の方の地図です。朝鮮攻撃作戦をやっているのですよ。  私は幾つかの例を申し上げました。ベトナムの場合は、日本の基地なくしてはベトナム戦争なしと言われたのです。今日は朝鮮へ向けています。日本の基地からいま申しましたような作戦の訓練を朝鮮へどんどん行ってやっているわけです。一八戦術戦闘航空団——総理、聞いていますか。それが行って衝突して事故を起こすぐらいやっているのですよ。そういうことは日本の安全に対していいことですか。私たちが心配しなくてもいいことですか。総理は何と考えられるか。私はこれはなかなか大変なことだと思う。いますぐ事が起こるかどうかは別として、大変なことが、ちょうどベドナム戦争と同じ型のことが日本を基地としてやられるというようなこと、その準備がされている。重大なことだと思いますけれども総理はそうはお考えにならぬのかどうか、お聞きしたいと思います。
  141. 三木武夫

    三木内閣総理大臣 これは松本君が、松本君自身の情報収集の能力ですかね、それによっていろいろとここに御提示になってどうだこうだというので、事実そのものが、やっぱりそういう事実があるのかどうか。また、アメリカは韓国との間に条約も結んでおりますし、そういう範囲内で韓国とアメリカが演習することもあるでしょう。一々これに対して、あなたの情報を中心にして、こういうことがあった、どう思うというようなことは、なかなかやはり、お答えをするとしても、事実そのものがどうかという問題もございますから、そういうことで、一々これを私がいいとか悪いとか言うべき性質のものではないと思います。
  142. 松本善明

    ○松本(善)委員 三木総理、私も国会議員としてこういう提起をするわけですから、全部確実な資料をもとにして言っております。  私が聞きたいのは、あなたが国会で、国権の最高の機関で問題になっている、その問題についてどういう関心を示すかということを聞きたかったのです。あなたはこういうことについては、松木君の調べてきたことだ、それは論評するにも値しない、こう思うのですか、本当に。これを本当にやられたら、さっき一番最初に内藤議員のことを話したでしょう。政府はそのときには、これは安保条約上当然のことだから調べる必要もないと言った。そうしたらちゃんとそのとおりやられた。あなたはいま同じ答弁をしていますよ。松本君の情報で、一々コメントする必要はない。それをやられますよ。現にこれはやられているという具体的な証拠じゃないですか。これは私は日本国民の平和と安全にとっては重大な問題だと思うのですよ。そういうことが本当にやられていくということになったらば、これは全くゆゆしいことですよ。それについて総理大臣はその程度の答弁しかされないのかどうか。私は、それで三木内閣というものは、日本国民の平和と安全についてどう考えているかということがわかると思うから聞いているのですよ。あなたはどう考えられますか。もう一度御答弁をいただきたい。
  143. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 まず、米国と韓国との間には、おのおのの自由な意思によって米韓条約がございますので、このもとにどういうことが行われるかということ自身はわが国には直接関係のないことであります。それが第一点です。  次に、在日米軍がわが国の施設、区域をどのように使用するかということにつきましては、これは極東の平和と安全、それと密接に関係したわが国自身の平和と安全というものを守る、寄与するという目的のために使われなければならないということでございまして、場合によりましては御承知のように事前協議を必要とするケースがございます。  第三に、朝鮮半島の平和とわが国の平和と繁栄というものは、しばしば総理大臣がこの国会で説明しておられますように密接に関係がございます。  したがいまして、以上のことを結論いたしますと、わが国の基地が、ただいま松木委員の言われましたことが仮にそのとおりであったといたしまして、そのように施設、区域が使われたといたしましても、それは安保条約の目的を逸脱するものではないというふうに考えます。
  144. 松本善明

    ○松本(善)委員 日本国民で、宮澤さんのように考える人はないと私は思います。ああ、そんなことまでなっておるのかというふうに思うのが一般の国民ですよ。そういうような答弁——米韓条約であるのはあたりまえだ、安保条約であるのはあたりまえだ、そして全体としてはそういうふうに使われても何ら差し支えない、こんなことで日本国民の安全が守れるか、成り行き任せということですよ。アメリカ任せということですよ。私はそういうような態度では日本の安全は絶対に守れない、日本国民の安全も絶対に守れないと思うのです。  さらにお聞きします。いま安保条約は新しい段階に来て非常に重大なんです。それば理論上もいろいろな問題が起こってきています。私はお聞きしたいのですけれども、シュレジンジャー元国防長官が去年の八月二十九日に東京で記者会見いたしまして、こういうことを言いました。日本の自衛力、特に航空、海上自衛隊等の存在は周辺海域全般の安全を高めるという波及的効果を持つということを言っているのです。英語で言えば、スピル・オーバー・ベネフィット、あふれ出る恩恵というような意味ですね。だから日本の安全よりもあふれ出る恩恵がほかにある。日本の自衛力が波及的効果を持つというのは新しい言葉であります。シュレジンジャー国防長官は、朝鮮でもこれは言いました。これは大変大事なことだと私どもは思っているのです。宮澤さんでもそれから坂田さんでも結構です、一体この波及的効果ということについてあなた方はどういうふうに受けとめられたか、お聞きしたいと思います。
  145. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 わが国の自衛力あるいは安保条約に定められておりますもろもろの取り決めというものが、わが国が自衛のためにわが国の領海、領空、領土にその行動が限られなければならないというものでないことは当然のことだと私は思います。航空機の場合においてはことにそれは明らかでございますけれども、領空を一切日本の航空機が出られない、自衛隊機が出られないということであれば、これは自衛というものを全うするゆえんではないであろう、これは恐らく御異論のないところでございますから、そういう意味で、わが国はわが国の最小限の自衛力を持ち、あるいは米国との間で安保条約の取り決めを持っておるということが、わが国の周辺において不測の事態が起こらないために役立っておるということは、これはもう当然のことであって、それをスピル・オーバーと呼ぶのなら、呼んでも少しも差し支えないことであると私は思います。
  146. 松本善明

    ○松本(善)委員 それは領海、領空の外へ出ちゃいかぬなどというようなことではないと思うのですよ。直接の出兵はないけれども、あらゆる軍事的な支援や援助を朝鮮半島にもやる、こういうようなことが考えられているのじゃありませんか。そういうふうには受け取れませんか。直接出兵するのじゃないけれども、いろいろな、それ以外のあらゆる支援を、たとえば朝鮮なら朝鮮半島、韓国へやる、そういう意味とは受け取れませんでしたか。
  147. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 正確に御質問の意味が受け取れなかったかもしれませんけれども、朝鮮半島あるいは韓国との平和維持関係は米韓条約の問題であって、それ自身がわが国の自衛隊、わが国自身の持つ防衛力との関係ではないであろうと思います。
  148. 松本善明

    ○松本(善)委員 総理も坂田防衛庁長官も大事な問題ですからよく聞いておってください、非常に大事なことなんです。  宮澤外務大臣はそういうふうに米韓条約の問題なんだ、こう簡単に言うけれども、そういうことでは簡単に済まないことが起こっているのじゃないかと思います。  といいますのは、サリバン国防次官補は、去年の四月に上院軍事委員会の兵力人事分科会で、日本の自衛力は日本列島のみのためには十分な防備を実際にもう保持していると考えると証言しているのです。そして昨年十月、日本への核持ち込みの問題で有名になりましたあのラロックさんたちが論文を出しまして、シュレジンジャー国防長官が訪日の際に、日本の自衛力は不十分だから強化せよと迫ったけれども、これは日本の本土防御のためではなくて、韓国防御との関係で不十分だとしたのだ、こういうふうに論じているのです。アメリカは日本の自衛以上の軍事力を求めてきているというのが実際ではありませんか。
  149. 坂田道太

    ○坂田国務大臣 昨年の八月二十九日にシュレジンジャー国防長官と私といろいろお話をいたしました。しかしアメリカ側として、日本に対してこれ以上に強力な防衛力を増さなければならぬという意味のことはございませんでした。私からむしろ、わが国は特別の憲法がある、あなたも御承知のとおりだと思う、専守防衛である、その自衛を高める努力をしておるのだ、そのことはよくわかる、こういうことでございます。特にわが国は四面海に囲まれておるし、しかもまた、資源を多くの国々から受けてそして立っておる国である、したがいまして対潜能力というものは日本の国を守るために当然考えなければならないことである、それもよくわかる、こういう意味でございます。その辺が松本さんの認識がちょっと違っておりますからあえて申し上げた次第でございます。  向こうが強力な防衛増強といいますかそういうものを求めたことはございません。
  150. 松本善明

    ○松本(善)委員 あなた、もうめちゃくちゃででたらめですよ。報道されているようなことはもう真っ正面から否定しているのです。ラムズフェルド国防長官が出しました国防報告、あるいはブラウン統合参謀本部議長の軍事情勢報告、両方とも日本の対潜水艦作戦の改善を求めていますよ。そんなもの新聞に発表されているのです。そんなこと全くないなんて全くうそですよ。軍事情勢報告を引用してみますと、日本の太平洋における重要な交通路に対する米国の防衛を補強する対潜水艦能力を発展させるようにする。これは日本の防衛以上のものを求めていることと違いますか。
  151. 坂田道太

    ○坂田国務大臣 私とシュレジンジャー国防長官と話しました中にはそういうことはないわけでございます。  で、昨年一月でございましたか発表されましたシュレジンジャー国防報告書にも、それから今度のラムズフェルド国防長行の報告書にも対潜能力を高める、そういうことを希望するということは私も承知をしておるわけです。しかし、私がシュレジンジャー国防長官と話しました中においてそのような要請はなかった。これは私がシュレジンジャー国防長官と話したわけでございます。松木さんがそこの席におったわけじゃないので、私が事実を知っておるわけです。そのことだけを国会でございますからはっきり事実を申し上げて、もしあなたが間違いならばそれを訂正しておくのが私の責任だと思いまして申し上げた次第であります。
  152. 松本善明

    ○松本(善)委員 坂田長官、何もシュレジンジャーがどう言ったなんということを聞いてないですよ。アメリカは日本の自衛力に対して日本の自衛以上のものを求めているのではないかということを言っているのですよ。そうしたら、軍事情勢報告でも国防報告でも言うのはあたりまえじゃないですか。同じようなことを何遍言われても同じことだから、私続けて言います。——まだ質問中だからあわてることはないですよ。  けさの新聞でも出ているじゃないですか。アメリカの下院軍事委員会でハロウエー海軍作戦部長が、日本の海上自衛隊が対潜能力を向上させて海上交通路確保に補完的役割りを果たすことはわれわれにとっても大きな関心事である。特に、アメリカは日本海での制海権を失ったのでこれを日本が補うべきだと言っているのですよ。  ということで、アメリカの戦略を助けるために自衛隊を増強するというのは一体あり得るのか。これを下院が日本に圧力をかけろと、アメリカの議会で言われていますよ。——私の質問を最後まで聞いてから、落ちついて少しお答えいただきたいと思うのですよ。何も言い合いではないのですから。日本の将来を、日本国民の安全を本当に守るというためにどういう道があるかということを問いただしているのですから、何も言い合いをするようなことでこの論議に臨んでもらうのは、私は迷惑千万だと思いますよ。私が聞きたいのは、単なる反論ではなくて、日本の自衛以上の軍事力を日本に求めることば一体アメリカは正しいのかどうか、そういうことがいいのかどうかということであります。  私は、坂田さんにも後で聞きたいけれども総理に、アメリカがそういうことを求めるというのはいいのかどうかということを聞きたいのですよ。
  153. 三木武夫

    三木内閣総理大臣 去年の八月、フォード大統領と私とは数回にわたって会談をしたわけであります。そのときの会談を通じて、アメリカが日本の軍事力の増強を求めるというようなことは一言も出ていない。アメリカを代表する最高の責任者からそういう要請はないわけでございますから、いろんな発言がアメリカの政府部内からあるにしても、それを代表する最高の責任者であるフォード大統領からそういう要求は一言もなかったということが、私がアメリカの態度を判断する一番大きな材料でございます。
  154. 坂田道太

    ○坂田国務大臣 落ちついて申し上げますけれども、わが国は御承知のとおりに憲法がございます。でございますから、この憲法の制約のもとに必要最小限度の防衛力を持つのがわが国の防衛にとって一番必要なことである。しかして、他国に脅威を与えるようなものであってはならない、民生をはなはだしく圧迫するようなものであってもならない、つまり過大でもなく過小でもない、そういうような防衛力というのが日本の安全にとって一番必要である、こういうことを私はるるシュレジンジャー長官に申し上げたわけでございまして、その日本の自衛への努力というものを評価する、わかった、こう言ったわけでございまして、そのことを私は申し上げておるわけでございます。そこはよく冷静にお考えをいただきたいと思います。
  155. 松本善明

    ○松本(善)委員 坂田さんのは話をほかへそらすだけで、全然問題にならぬですよ。三木総理、あなたは、フォード大統領がそういうふうに言わなかった、だからアメリカの政策でないと言うけれども、国防報告ですよ、それから軍事情勢報告ですよ。そこに書かれているのですよ。これは間違いだ、こんなものはだめだ、こう言うのですか。総理に伺いたい。
  156. 三木武夫

    三木内閣総理大臣 松木君の御質問を聞いておりますと、いかにも日本が日米の軍事的提携を強化して、しかも日本に対しては軍事力を増強してという、そういう角度からあなたの質問はずっと続けられておりますが、それはアメリカを代表する大統領と何日間も、何回か会ったわけですからね。そのときにもそういうことは言い出さなかったから、それが日本に対するアメリカの態度であると断ずることは私は適当でないというふうに考えるわけでございます。アメリカは松本君の言われるような立場ではなくして、やはりどうして戦争の勃発というような事態を招かないように、戦争の抑止といいますか、そのことが会談の中心題目であったわけで、アメリカが日本の首脳部と会えば、常に軍事力の増強を要求するというふうにとられますことは、アメリカの真意というものを松木君は——アメリカは常に戦争を考えているような国のように考えることは事実と相違します。
  157. 松本善明

    ○松本(善)委員 総理がいかに弁明をされ、アメリカを弁護されても、国民は国防報告や軍事情勢報告を読んでいますから、その議論が正しいかどうかいつでもわかると思うのです。  私は、いつまでもそんなことはやっていません。具体的にちょっと聞きたいのですが、朝鮮半島だとかその周辺で米軍が交戦をするときに、自衛隊がその作戦計画の中に組み込まれて活動するというようなことはあり得ますか。これは、総理でも、外務大臣でも、防衛庁長官でも、どなたでもお答えいただきたい。
  158. 坂田道太

    ○坂田国務大臣 先ほどから申し上げますように、日本の自衛隊というのは日本を守るためにあるわけでございますから、朝鮮へ出動するということはございません。朝鮮へ派兵をするということはございません。  それから、国防白書をみんな読んでおるからとおっしゃいますけれども先生もよく読んでおられると思うのですけれども、もう一つ、こういうことも言っているのです。このことを明らかにしておきたいと思うのです。「われわれの政策は、日本をして太平洋全域に深刻な影響を及ぼすような攻撃目的のための大規模な再軍備をさせないようにすることにある。また、われわれの政策は、日本が核装備を志向する必要性を排除することにある。」ということを申しておることもよくお読みいただきたいと思います。
  159. 松本善明

    ○松本(善)委員 大規模でなければいいというふうにも読めます。  それで私、ちょっとさっきの質問であなたに言ったのは、派兵ということではないのですよ。自衛隊が作戦計画に組み込まれるというようなことはありますかというのです。その問いにずばり答えてください。派兵というようなことができるわけのものではない。わかっています。作戦計画に自衛隊が組み込まれることはあるか。
  160. 坂田道太

    ○坂田国務大臣 あなたのおっしゃっておる作戦計画というのがどういう意味か、でなければ、ちょっと正確なお答えはできません。
  161. 松本善明

    ○松本(善)委員 ちょっと資料をお配りしたいのです。私は、大変大事な問題なんで資料を提示して御質問するのですけれども、提出しましたものは、アメリカの第五空軍の司令官、在日米軍司令官が、この一月の五日から七日に沖繩の嘉手納に行ったのです。そのときに第一八戦術戦闘航空団のバーナム中佐が説明をしているわけです。その中の抜粋であります。このバーナム中佐のブリーフィングは英文で文書になっていて、だから皆討議をしてやられたもので、個人の意見ではないものです。この中で非常に重要なことをいっぱい書いているのですけれども、特に私は問題にしたいと思いますのは、第一八戦術戦闘航空団、これが攻撃的な空対空訓練計画を開始をした。そうしてそのときに、これは終わりの方にありますので、ごらんいただきたいのです。点々を打ってありますが、「日本の航空自衛隊の地上要撃管制サイトの利用をふやすことで、作業関係を改善し、言語の障害を少なくします。」これは、要するに航空自衛隊の管制サイトをしょっちゅう使って、まあ日本人は英語が下手だから英語になれさせて、いつでも実戦に使えるように改善していかなければいかぬ、こういう趣旨です。こういうことが起こっておるのです。  そうして、この問題について言いますならば、その後「注」ということで「沖繩における防空責任」というのが書いてあります。これは私たち調査しました第一八戦術戦闘航空団の「作戦準備態勢点検・演習計画書」のオペレーションプラン一二三というのがあるのですけれども、その中でこういうふうに書いているわけです。「在嘉手納の第一八戦術戦闘航空団は、嘉手納での防空任務にはかかわっておらず、嘉手納空軍基地には現役の防空警戒管制部隊をもっていない。日本国沖繩の防空責任は日本の自衛隊が引き継いでいる。」これは知っている者にとっては当然のことなんですが、このレーダーの要撃管制サイトですね。いまの空中戦とか対空航空作戦は、みんなレーダーで誘導して、そうしてやるわけですけれども、そのレーダーは、要撃管制サイトは航空自衛隊が持っている。それをアメリカ軍が使っているわけです。そうして問題なのは、こういう攻撃的な訓練計画の中に日本の航空自衛隊の管制サイトが使われて、これはもうレーダーで戦闘するわけですから、まさに一緒に戦争するわけです。  そういうふうに自衛隊が使われるということ、これは一体どういう仕組みになっているのか。一体こういうことが許されるのかどうか。これは重大問題なんです。私はこのことについて防衛庁長官から御説明をいただきたいと思います。
  162. 坂田道太

    ○坂田国務大臣 防衛局長から御説明を申し上げます。
  163. 丸山昂

    ○丸山政府委員 これはただいま先生も十分御承知のとおりでございまして、御案内のように日本の領空侵犯に対します態勢は、松前・バーンズ協定によりましてわが国が逐次昭和三十五年以降引き継ぎまして、そしてバッジシステムによりまして要撃管制を航空自衛隊が実施をしておるということでございます。沖繩の場合には、沖繩の返還後当方が引き継ぎまして、要撃管制業務はわが方がやっておるわけでございます。  この松前・バーンズ協定は、かねがね申し上げておりますとおり、平時におきます協定でございます。したがいまして、この要撃の管制はいわゆる当方としてのトラフィックコントロールに相当するものでございまして、アメリカが、ただいま申されましたような訓練内容をやっておるかどうかということは、この管制については全然無縁でございます。実際に飛んでおるものについての管制を行う、これだけのことでございます。
  164. 松本善明

    ○松本(善)委員 ちょっと確かめておきますけれども、松前・バーンズがあることはもうそのとおりです。それが平時の場合はそうですが、一体、空対空訓練です。戦闘のときに航空自衛隊が組み込まれている。そのことが言われているから問題にしているわけです。これは当然のことであるのかどうか、このことを聞きたいわけです。平時だったらこれは何でもないです。聞くまでもないです、いいかどうかは別として。
  165. 丸山昂

    ○丸山政府委員 いまおっしゃるのは平時の訓練を指しておられるのだと思います。平時の訓練は、これは当然平時の分として考えられることでございます。戦時についてはまだ協定はございません。これは今後の問題でございます。     〔小山(長)委員長代理退席、委員長着席〕
  166. 松本善明

    ○松本(善)委員 防衛局長、平時について、訓練についてはそのとおりだ。いいでしょう。訓練というのは戦時を考えてやっている。だから問題にしているんです。戦時の場合にはこういうことはできないというのが現在ですか。現在のたてまえでは戦時はこういうことはできないはずだ、こういうことですね。
  167. 丸山昂

    ○丸山政府委員 戦時の問題については、できないのではなくてできるわけでございますが、具体的にまだ取り決めがないということでございます。それから平時の訓練は、これはもういわゆる戦時の特別権限というものが出ておるわけではございませんので、平時の態勢の中で行われますので、何ら問題はないと思います。
  168. 松本善明

    ○松本(善)委員 戦時はできるというのはどういう根拠です。アメリカ軍が戦闘するときに、日本の航空自衛隊のレーダーがずっと誘導していって戦闘するわけですね。それは戦時もできるとあなたは言われた。じゃ、それはできるという根拠を言ってください。
  169. 丸山昂

    ○丸山政府委員 戦時にできます根拠は安保条約の第五条でございます。
  170. 松本善明

    ○松本(善)委員 それでは五条発動以前はどうですか。
  171. 丸山昂

    ○丸山政府委員 五条発動以前は戦時に相当する権限は発生をいたしませんので、それはできないと思います。
  172. 松本善明

    ○松本(善)委員 総理も外務大臣も皆さんよく聞いておってくださいよ。日本には航空自衛隊しか管制サイトを持っていないのです。米軍は全部それでやるというたてまえなんです。いまのお話だと、平時はよろしい、五条発動時もよろしい、五条発動以前の場合にはこれはできないという。といって、アメリカの飛行機はレーダーを使って飛んでいく。そしてそれが戦闘に入っていく。五条発動までは、何か問題が起こってもこれはやらぬ。実際にやらない。五条発動以前の場合には中断してしまうのですか、戦闘の場合には。絶対にやらない、こういうことになるのですか。そうしたら、一体アメリカの飛行機はどの管制サイトを使って飛ぶのですか。私は、いまの日本の現状では日本のレーダーの管制サイトの中でそんなことはできないと思う。技術的には、それは軍事専門家から言えば、レーダーの専門家から言えば、そんなばかなことはないだろうということになると思う。その関係は一体どういうふうに説明するのか。
  173. 丸山昂

    ○丸山政府委員 要撃管制は、御案内のようにわが国に対して、国籍不明機がわが国を攻撃をするというそういう前提、事実が出まして、それに対して当方から要撃をいたす。その要撃を誘導、コントロールするのが要撃管制の任務であるわけでございます。したがいまして、安保条約の第五条、つまりわが国に対する武力侵害の事態というものが出てまいりません以上は要撃管制ということがあり得ないということでございます。
  174. 松本善明

    ○松本(善)委員 これは丸山防衛局長の言っていることでは済まないのです。日本には、要撃のときだけだと言うけれども、攻撃のときだってそれを使わなければほかにレーダーはないんだから、そんな子供だましの答弁では済まないのです。現に、いま私が申しましたこのバーナム中佐の報告では、ちゃんと攻撃的な空対空訓練に日本の自衛隊を使うということが問題になっているじゃないですか。  私は総理に伺いたいんです。朝鮮での、この第一八戦術戦闘航空団というのは攻撃的な任務を持っている部隊です。これは核投下訓練もやっていますし、爆弾もたくさん持って地上攻撃もやるのです。それから、KC価という給油機も持って遠くまで飛んでいく攻撃用の部隊なんです。それの訓練の中に航空自衛隊の管制サイトをうんと使えるようにやらなければいかぬと書いてあるから問題なんですよ。朝鮮でのアメリカの作戦に航空自衛隊がしょっちゅう使われる、それ以外に技術的にないということになったら大問題でしょう。あなたは聞いておられてどう思いますか。
  175. 三木武夫

    三木内閣総理大臣 丸山防衛局長答弁を聞いておりまして、整理された答弁だと思っております。
  176. 松本善明

    ○松本(善)委員 あなた、そんなことを言われるなら、じゃ具体的に説明してください。あなた理解したというならここで御説明ください。そんないいかげんなことでは済まないですよ。あなた説明できるなら、もう一回防衛局長と同じことを説明してください。理解して整理されていると言うなら、あなたの頭も整理されていると思うのだ。お願いします。どうぞ総理
  177. 丸山昂

    ○丸山政府委員 大変技術的な問題も入っておりますので、私もう一回問題を整理して申し上げてみたいと思います。(松本(善)委員「まだ整理されてないじゃないですか」と呼ぶ)いや、お互いのために整理をいたしてみたいと思います。  有事のとき、わが国に対する武力侵害という目的を持って外国の爆撃機なり戦闘機なりがわが国に向かってくる、こういう事態が出ました場合に、これに対する要撃態勢に入るわけでございますが、この要撃機は日本の航空自衛隊の航空機である場合、これはもちろん言うまでもないことでございますが、アメリカが、第五空軍の航空機が飛びます場合には、やはりこの要撃管制にのってやるということになると思います。思いますと申しますのは、先ほどから申し上げておりますとおり、松前・バーンズは平時の領空侵犯に対する措置の取り決めをしたものでございまして、有事についての取り決めはまだできておりませんので、これは日米間においてそういう取り決めをしなければならないということでございます。  そこで、いま先生の御指摘の沖繩におきます第五空軍一八戦術戦闘団の航空訓練でございますが、これについての管制でございますが、これはあくまでも平時の訓練でございます。平時の訓練である以上、現在の松前・バーンズの枠内で行われるものでございます。したがってこの点については、その中身が仮に空中戦闘というものを中身にしているといたしましても、問題は、当方においてはエアトラフィック、空の交通整理ということの機能を果たせば十分であるわけでございまして、この点については何ら問題はないというふうに考えるわけでございます。
  178. 松本善明

    ○松本(善)委員 それは素人はそういうことで済むかもしれぬけれども、交通整理じゃないですよ。要撃管制サイトというのは、これは戦闘するためのレーダーなのです。敵と遭遇するということもそうだし、それから撃つというときもそうです。レーダーでやるのです。交通整理だなんてとんでもないですよ。そういうふうな言い方をすれば、これは国民をだますものなのです。  私は総理に伺いたいのですが、演習にしろこの攻撃的な計画、それに自衛隊が組み込まれてあるわけですよ。これから新しい軍事協議をやるとかなんとか言っているわけだけれども、演習をやっているということは、そういうことがあり得るということを想定して米軍の方はやっているというのですよ。大体、総理、そういうようなことをやっていることを知っていましたか。米軍がそういうことで航空自衛隊を使っているということを知っていましたか。お聞きしたいです。
  179. 三木武夫

    三木内閣総理大臣 一々のことを私、全部知っておるというわけではございませんが、しかし、やはりわれわれとして安保条約上の義務は誠実に履行しなければならぬ。また演習ということも、世界各国とも演習というものはいろいろの場合を想定するのであって、想定なしに演習ということは起こり得ないわけです。そういうことでありますから、そのことが、攻撃された場合を想定して演習するということが非常に悪い行為をしておるとは言えない。演習はいろいろな場面を想像して、それに対してあらかじめ備えるわけであって、そのことが戦争を非常に挑発する意図を持ってやっているというふうに演習というものの意味を私はとらないです。
  180. 松本善明

    ○松本(善)委員 国防会議の議長がこういうことを知らぬで、しかし安保条約上演習するのはあたりまえだということを言われるのは私はとんでもないことではないかと思うのですよ。いま防衛局長答弁でも、協定はまだできておりません、有事の場合。  これはちょっと技術的に聞いておきましょう。これは協定をつくるつもりで交渉するのですか、坂田防衛庁長官。それはいつごろから始めるのか、ついでに言ってください。
  181. 坂田道太

    ○坂田国務大臣 松前・バーンズ協定はただいま防衛局長が申し上げましたとおり平時のものでございます。有事の際のものはまだできておりません。いずれこれは考えなければならない問題だと思っております。
  182. 松本善明

    ○松本(善)委員 総理、協定を考えなければいかぬと言っているでしょう。演習をするにしても、これは協定なしに私はやれることではないと思うのですよ。協定が変わるかもしれないです。航空自衛隊のレーダーを使ってアメリカの戦闘をするのですよ。協定が後だということは普通ではとうてい考えられない。  坂田さん、山中・シュレジンジャーとか坂田・シュレジンジャーとか、そういう歴代の防衛庁長官の中でこれは協定していませんか。——いや、あなたに聞いているのです。あなたが知らないはずはないのだよ。この問題を答えられなければならないはずなんです。
  183. 坂田道太

    ○坂田国務大臣 私が承知いたしておりますのは、松前・バーンズ協定のみでございます。
  184. 松本善明

    ○松本(善)委員 総理、私はこれは簡単に済むものではないと思うのです。日本側の正式の意思表示なしに——戦闘訓練ですよ。一八TFW、戦術戦闘航空団は常に攻撃的です。その作戦計画の中に入れられて実際にやられている。一体これはどういう経過でやられたのか、だれが責任者でそういうことを認めたのか、それはいまの事態の中で許されることなのか。協定なしにその訓練をやるということですよ。これは五条発動時あるいは五条発動前の問題、さっきちょっと議論しかけましたけれども、あるいは五条発動時でもどういうことができるのか、そういうようなことの取り決めなしにできるはずのものではない。やったとすれば相当な越権だと思うのです。松前・バーンズの範囲では一応説明できますけれども。というのは、平時にレーダーの使用については協定があるという意味では。しかし、作戦計画の中に航空自衛隊が入れられて、これはもう一緒に戦闘するのと同じことなんですから。これは私は事実を解明をして、どういうことになっているのか、これをはっきり解明をして、そして御報告をいただきたい。その上で質問をしたいと思うのです。この問題は本当に国民の安全にとっては重大な問題なんです。これを報告を受けた上で質問をしたい。それまで質問を留保したいということで、委員長にこれを理事会でお諮りをいただきたいというふうに思うわけです。質問を留保したいと思います。
  185. 荒舩清十郎

    ○荒舩委員長 どういうことで留保になるのですか。おかしいじゃないですか。
  186. 松本善明

    ○松本(善)委員 これはもう一度言いますと、なぜかというと、アメリカの攻撃的な作戦訓練の中に日本の自衛隊のレーダーを使う——委員長がおいでにならなかったから……。
  187. 荒舩清十郎

    ○荒舩委員長 おいでにならないでも、聞いていますからわかります。
  188. 松本善明

    ○松本(善)委員 そして日本のレーダーを作戦に使う、そういうことが、バーナム中佐という第一八戦術戦闘航空団の中佐が在日米軍の司令官に一月に報告をした、その中で出てきたわけです。その問題は、私の考えでは、日本政府との協議なしにそういう訓練をし、そして日本の航空自衛隊を使っていくというようなことは許されないことじゃないか。そして国防会議の議長がそれも知らないというようなことは、これでは困るのではないか。こういうことについてはちゃんと、なぜこうなったのか、それについての取り決めはどうだったのか、だれが責任者でこのことを了承したのかというようなことを正確に報告をしてもらって、そして質問をしたい、こういうことであります。そういうふうにしたいと思います。
  189. 荒舩清十郎

    ○荒舩委員長 それはわかりました。まだ五分ありますから、ひとつ丸山防衛局長、しっかりした答弁をしなさい。
  190. 丸山昂

    ○丸山政府委員 私も根拠ははっきりしていると思います。これはあくまでも松前・バーンズの枠内で行われているものでございます。  それから、米軍が訓練を行うということにつきましては、これは安保条約の枠内で行われているものでございます。従前の体制の中で実施されているものでございまして、特に新しい権利義務を負うものではないというふうに判断をいたします。
  191. 松本善明

    ○松本(善)委員 そういうような訓練、米軍が戦闘訓練をするのに航空自衛隊を使う、どういう訓練であろうと訓練であれば自由だ、こういうことで、勝手に任されているのかどうか。私は、それは重大なことだと思います。米軍がこういうことをやっているのかどうか、そしてそれはあたりまえのことだというふうに総理はお考えになるのかどうか。それは、私は絶対に許されることではないと思うのです。米軍が航空自衛隊をどういう戦闘訓練に使おうとそれは勝手だ、松前・バーンズの範囲内だ、それが三木内閣の態度であるのか、それは総理、はっきりお答えいただきたい。そういうことでいいのかどうか、どんな訓練をやろうと勝手だということですか。
  192. 三木武夫

    三木内閣総理大臣 それは松前・バーンズ協定の範囲でなければならぬ、協定の範囲内でなければならぬということです。
  193. 松本善明

    ○松本(善)委員 ですから、平時ですから範囲内だと言えば範囲内ですよ。けれども戦闘訓練に、どんな戦闘訓練でも米軍が勝手に航空自衛隊を訓練にあれしていくことがいいのか、そんなことについては何の規制もないのか、こういうことですよ。国防会議の議長も知らぬで、ただ米軍に任せっきりなのか。それならそれでいいですよ。そういうものとして理解します。
  194. 丸山昂

    ○丸山政府委員 繰り返して申し上げますが、全体の枠は松前・バーンズ協定の枠の中で行われておる。それから米軍の訓練は、先ほどから申し上げますように、安保条約の枠内で行われているものでございまして、自衛隊の要撃管制はあくまでも要撃管制だけの中身でございます。米軍の訓練の中身には当方は立ち入っておりません。
  195. 松本善明

    ○松本(善)委員 訓練の中身に立ち入ってないと言っても、これは航空自衛隊の関与するものなんです。それは航空自衛隊は立ち入ってなくて、米軍の方が勝手に計画をしてそれで使われる、そういうようなことがいいのかということです。(「抽象論ではだめだよ、ちっとも具体的でない」と呼ぶ者あり)具体的ですよ。  総理は、いいということですか。
  196. 三木武夫

    三木内閣総理大臣 安保条約の第五条の場合は、いろいろと協力関係について話し合いたいと防衛庁長官も言っておるわけであります。これは演習の場合ですから、演習の場合は松前・バーンズ協定の範囲内で行わなければならぬ。範囲内で行われる場合に、日本がこれに対してとやかく言う立場ではない。
  197. 松本善明

    ○松本(善)委員 私は、政府に、この関係はやはり調査をして、何の了承もなしにただ米軍がこういうふうに考えてやっていたのかどうかということを調査して報告をしてもらいたい、それに基づいて質問をしたいと思います。
  198. 坂田道太

    ○坂田国務大臣 松前・バーンズ協定でやっておる範囲内のことでございますし、演習は演習のことでございますから、いろいろ申し上げる必要はないと思っております。
  199. 松本善明

    ○松本(善)委員 私はとうてい了解はできないです。それで、やはりこれについては調査を求めます。そして、それに基づいて再質問をしたいと思いますので、留保をさせていただきたいと思います。理事会で御相談いただきたい。
  200. 荒舩清十郎

    ○荒舩委員長 これは百年たっても同じ平行線だと思いますが、まあしかし、理事会で研究をいたします。——研究をいたします。  これにて松本君の質疑は終了いたしました。  次に安宅常彦君。
  201. 安宅常彦

    ○安宅委員 まず私は、日朝国交問題について質問いたします。  昨年秋の国連総会において、ついに朝鮮民主主義人民共和国支持派の決議案が採択された。これは国連の歴史上非常に画期的なことだと私は思いますが、こういう状態の中で、日本が、朝鮮半島に対する従来の政策すべてについて再検討を行う時期に来ているのではないか、私はそう思いますが、何回もこの予算委員会で、これまで首相並びに外務大臣その他の皆さんに質問して、日朝国交の問題についての政策というものが非常にあいまいで、いま独自の日本の自主的な政策、たとえば死の商人であるとか、いろいろな情報が飛びますけれども、自分の立場に立った毅然たる態度をとる必要があるのではないかと何回も言っておったのでありますが、こういう時期をとらえて、大きな転換をすべき時期に来ているのじゃないかと私は思いますが、これは総理見解をお聞きしたいと思います。——総理です。
  202. 三木武夫

    三木内閣総理大臣 私は、朝鮮半島というものは日本の安全にとってきわめて重要な地域でありますが、基本的に政府考え方は、南に対して急激な変化、一つのバランスを保っておるそこへ急激な変化を与えることは、朝鮮半島の安定に役立たない、これが一つですね。北に対しては、さりとて、北との間に相互の理解を欠いで、そしてお互いに非常な過度な猜疑心が生まれるということは、朝鮮半島の安定のためにも役立たないから、北との間には、交流を通じてお互いの相互理解を深めていきたい。しかし、現在の段階で北鮮を承認するという考え方には達していないということでございます。
  203. 安宅常彦

    ○安宅委員 これはたとえば、国連総会がああいう状態になった後です、あなたが、両決議案が通ってしまったものですから、一本化の何らかの解決案が国連で探求されていくことを期待する、そういう動きに協力したい、こう言っているのですね。すべて受動的であって、みずからが最も近い朝鮮半島の問題について、何か他人が言えば私もという態度を改めないのは大変間違いではないか、こう思っておるのです。いつかも私はあなたに対して大変皮肉がましいことを申し上げました。たとえば政治家の交流であるとか、文化や経済の交流であるとか、貿易の増大であるとか、スポーツや芸術の交流であるとかいうことは、困難な中で、あなたが野におったときに、そういう状態では困ると言って常に批判をしておった、そういう人々の、若手の内閣官房長官や副長官や、そういう人々が築き上げてきたのが今日までの経過だ。だからたとえば、それはそのとおりだと言っていたのは、あなたを師表として仰ぐようなそういう人々が、具体的に名前を挙げますと、たとえば宇都宮先生であるとか、それからここにおられる塩谷先生であるとか田川先生であるとか、こういう人々が全部三木さんの周りの人たちなんですよ。この人たちが推進役を買ってやってきた仕事ではないか。ところが、あなたが総理の座についた途端に、いままで上昇のカーブをとってきたのがぴたりととまってしまったのはどういうわけか。あなた、そういうことについて何か後ろ暗いみたいな、くすぐったいみたいな気持ちになっていませんかということまで言ったことがありますよ。段階的にやりますとか言いましたし、ただしかし、あなたがいまおっしゃったことは、急激な変化を与えることはまずい、バランスということをとらなきゃならない、片一方を承認しておいて片一方を承認しないというのは、それがバランスではないと私は思いますが、どうなんですか。急激な変化は別として、それがバランスでございましょうか。両方とも友好的に扱うのがバランスじゃないでしょうか。これは世間の常識なんじゃないでしょうか。どうですか。
  204. 三木武夫

    三木内閣総理大臣 いろいろな歴史的経過を経て、日本政府は南と北との外交関係を一方は持っておるし一方は持っていない。これにはいろいろな歴史的な経過があるわけですから、私は現在ある朝鮮半島の均衡というものに非常に急激に変化を与えることが朝鮮半島の安定に役立つとは思わない。それだけで終わりではないわけです。北との間の相互理解を深めるために前進的な交流を深めていく努力をして、できる限り相互の理解を深めていくということがこれまた朝鮮半島の安定のために必要である。これは安宅君、いきなり北を承認をして、対等といっても、いろいろな外交関係の歴史的経過があれですから、一気にはそういうことにやれない、いろいろな背景があるわけですから、せめて人間とか貿易とか文化とか、そういうものを交流を積み重ねて相互の理解を深めていきたい。願うところは、やはり何とかして朝鮮の民族、最終的には南北の平和的統一だと私は思いますよ。現在いきなりその段階にいくことの客観的条件というものはできていない。それなら南北が平和共存をして、そしてある過渡的な時期はそういう方法よりほかにはないのではないか。  そういうことで、この過渡的な措置として、国連などに対しても南北ともに加入したり、一遍開かれた南北の対話というものが再開されたり、またそういう緊張を緩和さすような国際的環境をつくることに対して、日本もただ受け身だけでなしに、あらゆる場合にそういうことが可能にならないかという努力をするということも政府の意図の中に含まれておるわけでございます。
  205. 安宅常彦

    ○安宅委員 何か、ある期間平和共存してということですね、それは私は非常にひっかかるので、後でいろんな問題を例にして、あなたとあるいは外務大臣と論争することになるかもしれませんが、申し上げます。  ただ率直に申し上げますと、たとえば貿易を拡大するために、その他の文化の交流を拡大するために——これは非常に抽象的な話なんですが、これを具体的に私提案してみます。  たとえば、中国と国交が正常化にならない前に、それこそ大変長い期間あなたもそれにかかわりましたね。高碕達之助さんやいろんな人がやりましたね。そういうときに、通商代表部はこれは民間がやったことにして、政府がある程度の保証をするという形をとりました。一つはそういうことをやる意思はないのか。それから、この間赤松勇委員がわれわれの党を代表して初日にあなた方に要請をしました漁業協定、漁業協定というのはなかなかむずかしいと私は思います。実際研究しておりますが、そんなに簡単にいくものじゃないと思うのです。領海の問題もありますし、南との協定がありますから、それと同じなんて言われたら、いままで鴨緑江のそばまで行って、河口まで行って殺されたとか撃たれたとかなんという、あんなところまで入れませんからね。今度はフグなんか釣れなくなりますよ。ですから、漁業代表だって容易じゃないと思っておると思います、いろいろ当たってみましたが。しかし、そういうものを含んで、たとえば漁業だけではなくて、電信電話であるとかいろんな気象の問題であるとか、中にはできたものもあるかもしれませんが、そういう諸協定をやれる部門、たとえば電話だったら、国際電話ですから国際電信電話株式会社がやっているわけですから、ただそれを政府が保証する形で、いまの電話回線が北京経由であったりモスクワ経由であったりするのを直通にするとか、いろいろな方法をたくさんわれわれとしては考えておるのですが、そういうことについて政府が保証しなければ、向こうはすべて国営ですから、民間と民間というわけにいきませんから、そういうことについてやる意思がないか。たとえば、まず一つは通商代表部を置くということについて中国と同じようなあれが——しかし情勢が進んでいますから、あれよりも進んだ措置で何かやる方法を考えてみたことがあるかあるいはやる意思があるか。これがなければ、段階的にとか少しずつとか急激にバランスを崩さない程度に何かやるといったって、何をやるんだかさっぱりわからない。  そういういろいろなことを言いましたが、通商代表部のことについてだけ、あるいは漁業協定を含むいろんな協定、民間で結んでやれるような問題、こういうことについて政府が保証するということについてのやり方を計画的にやろうではないかという、そういうことについてあなたの意思といいますか、それを表明していただきたいのです。これは具体的な問題ですから。
  206. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 この問題につきましては、安宅議員から従来からしばしば御指摘のある問題でありまして、実は私ども、わが国の持っております外交の課題の中でこの問題が一番むずかしい問題であるというふうに考えております。そして、それはまた大事な問題であるという意味でもあるわけでございます。したがって、政府がいろいろに思いめぐらしている、悩んでいるということについては、恐らく言葉の裏からおわかりいただける場合もあるのではないかというぐらいにこの問題はむずかしい問題と思っているわけでございますが、やはり基本的には先ほど総理大臣が言われましたように、急激な、いまの朝鮮半島におけるバランスを崩すということがわが国の国益にも沿わないという判断を今日までいたしておるわけであります。  それで、先ほど安宅委員が言われましたように、国連で決議案がああいうことになった、両方の決議案が通ったわけでございますが、これは問題のむずかしさを示すと同時に、まあいわば票争いのようなことをいたしました。しかし、それが一体どれだけ問題の解決に貢献したであろうかというようなことを考えますと、やはり片方でむなしい感じもいたさないわけではない。ですから、もう少し何か実のある問題の解決への接近というものはないであろうかということを、正直申して私自身もしばしば考えるわけでございます。先ほどお話しになりました今度の国連の決議案をめぐる動きにつきましても、これは私の感じでございます、また別の感じもあるだろうと思いますけれども、理想的には一九七二年の七月に示されましたようなことが基本でありますけれども、そこへいくまでの間に何かお互いに認め合うとか話し合うとか、話し合うという精神そのものは七二年にはあったわけでございますので、そういうところへ戻ってくれば、これは何か一つそこに道があるのではないかということが、わが国がこの決議案をめぐって国連で最も努力をいたしたところでありました。そのことは具体的には結実しませんでしたけれども、やはり七二年の精神というものは両方で認め合い、話し合おうということではなかったのかというふうに考えるわけでございます。これはほかの見解もあろうかと思いますけれども、私はやはりそういうふうに考えるわけでございますが、他方でいろいろ御提案になりましたようなこと、政府というものがそこへ介入しない、これはどうしても原則論としてはそう申し上げざるを得ないわけですが、そういうことを基本にしました上で、どのような交流、接近ということができるだろうかということは常に私どももやはり考えなければならない問題と思います。
  207. 安宅常彦

    ○安宅委員 何か漁業協定のときは、日中議連が話に入ってくれば幾らでも相談しますみたいな体裁のいいことを言いましたけれども、大体あなた、外交官特権の問題もあるし、通商代表部を開くにしても、漁業協定だって、それは本当に民間でということにはならないことは重々知っておって、そんなことを言うんだったら私は話に応じますと言ったって、何だかわけわからないコンニャクみたいなところに相談に行ったって仕方がないのじゃないですか。そういうことではいけないのじゃないかと聞いているのです。私は、話し合い、話し合いと言うけれども、たとえば七二年に戻れとあなたが言いましたけれども、七・四共同声明というものは何か。自主的に、平和的に外部勢力の影響を受けないで、そして民族は大団結しようではないか。これは朴さんも金さんも皆認めたわけですね。ところがどうですか。これに対して、たとえば国連に単独の加入を申請を出してみたり、あるいは北を信用するに足らないとか言ってみたり、いろいろなことを言って、二つの朝鮮をつくるために必死に動いているのが朴正煕政権じゃないですか。こういうことについて言うならば、私どもはその人たちの立場というものに反省を与えるためにも、ある程度のことをしなければならないのじゃないかぐらいのことを日本考えてもいいのじゃないでしょうかね、内政干渉でも何でもないのですから。いろいろプラントの輸出なんかは出ていましたけれども、そういうものではなくて、きちっとした一つのルートができないことには、幾ら思いあぐんだって悩んだって、少女じゃあるまいし、仕方がないことじゃないでしょうかね、私、それは時間をとりますから、もうそれでやめます。あなた方の態度というのはどうにもならない態度だ。  福田さん、ぐっと口びるこうやっていますが、あなたはベトナム民主共和国に、アヒル一羽だの何か言われながら外務省の係官を派遣したり、やはり政治家は政治家らしいことをしたですよ。もっとはっきり言うならば、いま建設大臣の竹下さんだとかあるいは亀岡さんだとかそれから木村さんだとか、ああいう人たちが官房長官であったり副長官であったりしたころ、法務省や外務省が渋るのを、帰還の問題であるとかいろんな問題について、よし決断してやろうじゃないかと言ってやった実績を持っている人たちなんですよね。いま本当に考えてみますと、三木さんの時代になってから、それが一つもないですよ、三木さん。ありますか、何かあったら言ってくださいよ。何あるんだ。
  208. 三木武夫

    三木内閣総理大臣 それは私の時代になって、それが非常に後戻りしたとは思わないんです。人事の交流でも、安宅君、やはり私らができる……(安宅委員「人事の交流はあんた方がやったのはないよ、進んだことは何やったんだ」と呼ぶ)いろんな場合に、いままでのような窮屈な枠を少し、できるだけ人事の交流を広げていきたいということで、私自身が……(安宅委員「具体的な例を言ってください、全部私は反駁します」と呼ぶ)そういうことで、特にこれは後戻りというんでなくして、できる限り、いま言ったような承認をしていないという事実、この上を踏まえてやらなければなりませんが、できるだけ交流を積み重ねたいということは、私は心から思っておることですから、後戻りというようなことは全然私はありません。
  209. 安宅常彦

    ○安宅委員 総理、あんた抽象論を幾ら言ったってだめなの。この人たちは具体的にこういうことをやったのだ。あなたの時代になってから何やったか。人事の交流をやったなんて、人事の交流なんか、もう政治家をどうするかというだけで、ほとんど全部自由化されているんですよ。そして今度政治家の場合だって、あなたがこういうことについて、向こうの相当の政治家と具体的な話し合いを今後の問題についてやろうじゃないかなどといった提案もしたこともなければ、政治家と言いたくないから人間なんて言ってみたり、そういうことで私は昨年の予算委員会であなたにごまかされて、恥ずかしい思いを自分自身しましたよ。政治家も人間のうちだなんて、そうあんた言いましたね。政治家なんかサルだと思っている人もいるかもしれないよ、そんなこと言うなら。何言ってやがんだということになるんです、私らみたいな頭の単細胞の男は。これはそういうことはいけません。  あなた、官房長官、歌ばかり詠んでないで、そういうことについては補佐をしなければなりませんよ、いいですか。そういうことについて、あなたのところに具体的な提案に行きますから、三木さんがやるんだと言ったんだったら、具体的な提案を持っていきます。応じてくれますか、どうですか。——いや官房長官。
  210. 三木武夫

    三木内閣総理大臣 安宅君から提案があれば十分検討いたします。
  211. 安宅常彦

    ○安宅委員 このくらいにしておきましょう。  それでは、私は、いまあなた方国連外交をやる、国連外交をやると言う中で一番気にかかるのは、一九四八年の十二月十二日の第三回国連総会の決議、これはその前の年に出た決議とともに国連が朝鮮の独立あるいは統一に関して初めて口を入れた、介入したといいますか、非常にこの二つの決議は重要な決議なんですね。日韓条約を結ぶにしてもこれが基本になっているわけですね、ちゃんとこれを想起して書いてありますから。この中で重要な面、簡単に言いますと、たとえば朝鮮の独立に関して言うならば、この決議では——時間がないから詳しいこと言いませんけれども、大多数の人民が住んでいる朝鮮にこの種の合法的な政権はこれ一つしかないと言って大韓民国なるものをつくって、そしてアメリカを中心とした当時の国連の、圧倒的にアメリカの強い勢力で、いろいろなことがありましたが、それを乗り切って強引につくった、こういう歴史的な決議なんですね。それにすべて基づいているのですよ。ところが、この実体はいまないのではないかというのが私の議論なんです。ようござんすか。国連総会は二つの決議案を通すところまで来ておるし、合法政権でないと国連総会で決定した朝鮮民主主義人民共和国は九十一カ国の承認を得ておりますね。そして今日、国連のオブザーバーで、オブザーバーの事務所を持っているでしょう。ようござんすか。オブザーバーの事務所を持っている国が合法的な政権ではないなどというとんでもない昔の決議をいまでも生きていると考えてやっているのでしょうか。合法的な政権でないものを国連の下部機構に入れたり、あるいはオブザーバーの事務所をニューヨークに置くこと、非合法の政権に対してそんなことを国連がやるでしょうか。これはどうですか外務大臣、ここはどうなんですか。
  212. 三木武夫

    三木内閣総理大臣 これはもうだれの目にも明らかで、たとえば南北朝鮮の間に対等の立場で話し合いを始めたんですから、そういうふうなことが、やはりそういういま言ったような唯一の政府だと言ったら両方が話し合ったりしないですから、対等の立場で話し合ったんですから、現実にはそういう問題というものは大きなやはり情勢の変化がある。
  213. 安宅常彦

    ○安宅委員 外務大臣、大変おもしろくなってきましたね。あなたも同じ結果でしょうな。総理大臣がそう言ったんですから、違うとは言えないよ。
  214. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 韓国との基本関係条約の第三条に引用されておりますように、ただいまお話しの国連決議一九五号を引用しておりますので、そこは非常に慎重に基本条約も書いてあるわけでございまして、おっしゃるとおりのことでございます。
  215. 安宅常彦

    ○安宅委員 そんなことはどうでもいいんです。私は日韓条約のことを聞いているんじゃないの。この総会決議は、「この政府が、朝鮮のその部分の選挙民の自由意思の有効な表明であり、臨時委員会が観察した選挙に基づくものであること、並びにこの政府が朝鮮における唯一のこの種の政府であることを宣言する」、北にオーソリティーがあるということは認めた上でのことだといままで言ってきた。だけど、そんなことはどうでもいいんだが、この種のであろうと何であろうと、合法的な政権でなければ国連のオブザーバーになったり国連の下部機構に入れたりすることはできないはずだから、この国連決議というものはすでに有名無実になっているはずだと思うがどうかと言ったら、総理はそのとおりでありますと言ったから、それで私は結構なんです。  そうしますと、ここで非常に重要なことが起きてくるわけです。国連決議によってできた、それに基づいてできた第三条を持っている日韓条約も、したがってこの部分に関する限りは、少なくとも百歩譲ってここの部分に関する限りはもはや死文に等しい、こういうふうに理解してようござんすな。
  216. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 それは、私どもは、そう解すべきではありませんで、第三条にこの決議を引用いたしましたのは、つまり、平ったい言葉で申せば、北の部分についてはこの基本条約は言及していないぞと言って、それを、白紙という言葉は適当ではありませんが、平ったい言葉でお許しいただきますが、そこへ残しておるということがこの基本条約の大事な部分であるのではないかというふうに思います。
  217. 安宅常彦

    ○安宅委員 そんなことないですよ。条約を結ぶときにはそういうふうに韓国に伝えたよというだけの話、あなたのは。いいですか。しかし、この基本的なもとになる国連総会の決議一九五の(III)というのは、総理がおっしゃるように、もうすでに朝鮮民主主義人民共和国が非合法な政権ではない、合法な政権として認められたからこそ、両方とも話し合いしろとか国連にオブザーバーを送ってくるとかになったんでしょう、そうでなければおかしい問題でしょう、と総理が言ったんでしょう。だから、日韓条約締結当時は朝鮮民主主義共和国は非合法な政権だということだけは、この条約の解釈として認めざるを得ないわけですね。一方、一九五の(III)の決議では、北のことを非合法な政権だとか合法だとかとはこの決議には書いてはありませんが、しかし裏を返せば合法でない、非合法であるということ。朝鮮民主主義人民共和国なんかあるかもしれないけれども、この種の政府というのは、韓国が朝鮮における唯一の合法的な政府だとこの決議は言っているんです。朝鮮における合法的な政府がもう一つふえたということになる解釈になるかは別として、今度、いままで合法でない政府国連に足を踏み込んだんですから、そして話し合いをしなさいという——あなた方、満場一致でこの決議は賛成したものね、おととしのやつは。そうでしょう。だから、合法の政府でなければそんな話し合いをしろなんて、非合法の政府にやれるものじゃないんだから、もうすでに、日韓条約の第三条の引用した部分というのは、何にもならない空文に等しいものになったのではないかということを聞いているんですよ。
  218. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 そういう観点のお話であれば、実はもっと言っても私はいいのだろうと思います。すなわち、この一九五号の決議は、よく御承知のように、あるところの部分についてということをわざわざ区切って言っておるわけでございますから、その残りの部分についてこれは非合法であるとかなんとかいうことは全くもとから言っていない。
  219. 安宅常彦

    ○安宅委員 そんなことはありません。いいですか。最後の方の文章を見てみなさい。「この政府が朝鮮における唯一のこの種の政府である」、朝鮮のある地域におけるとは書いてない、どうですか。
  220. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 でございますから、「この政府が」と言われたところに、わざわざ「臨時委員会が観察し、及び協議することができたところの」と言って限定を付しておるわけでございます。
  221. 安宅常彦

    ○安宅委員 だから、それは政府自体には限定しているさ。だけど、地域については限定してない、「朝鮮における」と言うんだから。
  222. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 そうではございません。それはよくお読みになりますと、ここは非常にはっきり書いてありまして、日本文と英文両方ございまして、英文の方がむしろはっきりしておりますが、「その部分」というように限定を付しております。その「政府」とおっしゃいますけれども、「観察し、協議することができたところのその部分」というふうに書いてございますわけでございますから、それ以外の部分についてはこれが言及していないというところで、その部分をそういうものとして考えておる。
  223. 安宅常彦

    ○安宅委員 わかった。それはあなたの解釈はそれでよろしい。どっちみちここでもう三十分も過ぎてしまいましたから、これはえらいことだ。だから……(発言する者あり)わかったというのは了解したという意味じゃないので、総理が言ったとおりのことが政府統一見解だと思いますから……。その条文の読み方については論争がある。朝鮮民主主義人民共和国というのはその地域であるかないかは別として、国連にオブザーバーとして出て、九十一カ国の承認を得て、そして国連に事務所を持っておる。それは合法な政権でなければ話し合いをしろなどという決議は通るはずがない。もしそれだったらかえっておかしいと言った総理の言明が正論だと思いますから、それで結構であります。  ここで論争しようと思ったのですが、ただ、そういうときに、私申し上げたいのは、宮澤さん、朝鮮における韓国政府立場ですよ。これは占領軍である米ソが非常に確執をしておりました当時、だからいろいろ問題はありますけれども、あなたの方では——原本はその辺にあるのか私の部屋にあるのか、どうしても見つからないのですが、あるのです。外務省調査局第五課で昭和二十三年七月に発行した「戦後における朝鮮の政治情勢」というパンフがあるのです。これは「執務参考用」「禁転載」と書いてありますけれども、これはあなたの方にあるのです。ないなんて言ったってだめ、あるのですが、この中にはこの韓国というものができるときの選挙の実態というものが詳しく書いてあるんですよ。どういうふうに書いてあるかといいますと、その選挙委員会というか、そういうものがアメリカ軍のホッジという司令官に、準備の都合上選挙を延期されたいという申し入れをしたけれども、アメリカ軍司令官はこれを拒否した。そうしてたった一日だけ延期した。米国政府はその選挙のときにどういうふうにしたかといいますと、巡洋艦一隻を仁川に、駆逐艦一隻を釜山に派遣し、地上部隊を警戒に当たらしめ、空軍も南鮮各地上空を示威飛行して、選挙中に左翼分子が紛争を惹起することのないよう監視すると発表した。いいですか、こういうことをやって、それから南北会談の当時——これは右翼だと言われた金九という有名な人、後で暗殺されますけれども、こういう人々の会談、南北の協商会議があったんですね。これはソビエトのやり方で、あれは宣伝のものだから何にもならないぞということを必死になって南鮮でアメリカ軍が説得をし始めた、こういうことを書いてありますね。選挙期日が接近するとともにいろいろなテロ、サボなんか起きたので、表面化してきたので、米軍の軍政長官は一あのときは反対の人がうんとおるんですからね。まだ南と北というのは軍事境界線も何もないときなんですよ。そこを頭に入れてください。米軍軍政長官は、秩序維持の一助として地方の愛国的朝鮮人の郷保団に、これは愛国的朝鮮人というのは非常に意味深長なのですが、警察官補助の権限を与え、メーデーの危機に備えて、済州島の米人婦女子を引き揚げさせるとともに、二十八日には南鮮の米軍に待機命令が発せられて夜間外出禁止令も行われた。そうして選挙が行われたけれども、その日は南鮮全地域に六万の武装警官と百万の自警隊が配備されて、米軍もMPのほか軍政要員、一般米人までが治安維持に当たる措置を講じて、そうして司令官もソウル市中を巡察した、こういう選挙が行われておるんですよ。ちょうど朴正煕大統領がクーデターを起こしたときと同じですね。同じやり方で選挙が行われた。これが民主的な政府、民主的な政府だから、自由陣営だからという一番大きな誤りをずっと今日まで犯したのです。  幸い、きょうは非常にいい答弁三木さんやったですよ。これは非常にいい答弁です。こういう事態になってきた、それは合法的な政権があるのだということを国連が認めたからこそそういうようになったのです、それでなければかえっておかしいと言った。これはあなたは歴史的な答弁ですからね。このことだけは私、胸に刻んでおく。その上に立って、今度は政策はどういうふうに変えるべきかということになるわけでありますから、この点について私は評価をいたします。ただ言うときはそのとおりだけれども、やるときあなたさっぱりやらないから新聞なんかに書かれるんで、そういう点は厳しくあなたに今後要求していくであろうということを申し上げておきたいと思います。  最後に聞きますけれども、たとえば南北共同声明を日本政府は支持するという立場ですね。そのときに、国連軍あるいは国連というのは外部勢力なのでしょうか。外部勢力の影響を受けないで自主的に平和的に統一しようというのが七・四共同声明、あなた方それを支持する。国連並びに国連軍、こういうものは外部勢力であるかないか、日本政府立場を表明していただきたい。
  224. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 この南北両方で話し合って他の国の干渉を受けずにということが、七二年七月の声明の趣旨であると考えますが、国連そのものはああいう機関でございますから、これを一つの国家という意味での勢力と考えずに、そういう話し合い、和解の場というふうに考えましても、恐らくはあの声明の趣旨にもとるものとは私は思いませんけれども、これはしかし声明をされた当事者両方の意思を聞かねば私から申し上げられることではないと思います。
  225. 安宅常彦

    ○安宅委員 それを外部からの力を排してやるというのでしょう。国連軍は解体することにあなた方は賛成したのでしょう、この間条件つけながら。そういう決議案を出していますよね。だから外部からの勢力、軍隊を含めてそれは解体し、撤退しなければまずいからああいうことに——いままでは撤退しないでがんばっていたのだけれども負けそうだからやむを得ない、解体しようではないか、そういうことだけ入れようと言ったことが、もうあなた方は正しい方向に、後ろ向きながら何とか足を踏み入れざるを得なかった実態なんじゃないですか。ですからこれは外部の力ですよ。そう思いませんか。南と北と二つの政権があってこれを統一しようという、そういう相談なんでしょう。そしたら外部の力というのは、日本から客観的に見て国連軍というのは外部の力でしょうね。そうじゃありませんか。それじゃ国連軍はそうじゃないですか。
  226. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 国連というものと国連軍というものを分けて申し上げるべきだと思いますが、国連というものはそういう和解の場を提供するものとして考える。軍そのものは政治的な体でございませんから、これはそういうものについて私は発言権を持つべきものじゃないと思います。
  227. 安宅常彦

    ○安宅委員 日本政府が発言すべきでないという意味ですか。軍が、じゃ外部勢力だという意味ですね。はっきり言ってください。
  228. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 私は、国連軍というものに発言権があるとは思わないのです。
  229. 安宅常彦

    ○安宅委員 七・四共同声明に書いてある外部——外勢と書いてありますね。外部勢力というものだから発言権がない、こういうふうに理解していいですね。
  230. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 国連でなく国連軍というものであれば、これは両者の和解について私は発言をすべきものだとは思いません。
  231. 安宅常彦

    ○安宅委員 だから外部勢力だということをなぜ言えないのですか。
  232. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 外部勢力といいますと、普通国ということをやはり考えますから、国連軍そのものは国ではありませんから、いずれにしても発言をすべきものだとは私は思わない。
  233. 安宅常彦

    ○安宅委員 こういう政府だから困るんですよね、言えないんだから。  それから、これは決議にならなかったけれども、ちょっとさっき触れましたが、朴政権による国連に対する単独加盟の申請が出ましたね。あれは日本は賛成するつもりだったんでしょうか。議題は途中でなくなりましたけれども韓国政府国連に加盟申請を出したでしょう。それは日本は、ああいう場合には賛成の立場をとるつもりだったかと聞いているのです。
  234. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 日本政府の本来の立場は、両者とも加盟を申請することが望ましい。しかし、どうしても申請が片側しか出ないということであれば、国連の普遍性から言えば、一国でも加盟をしたいものは認めることが本来であろうという立場をわが国はとりました。
  235. 安宅常彦

    ○安宅委員 これははっきりさせておきたいのは、中国の場合も非常にこれに関連する情勢が長く続きましたが、両方とも二つの朝鮮とはまだ言ってないのです。ここで非常に重要なことは、北朝鮮側のアルジェリア外何カ国かの決議案、これをごらんください。これは全部国という言葉が出てきません。日米案も、それからフランス修正案、まとめたのもありますが、これにこそ当事者国だとかそれから韓国立場だとかということが出てくる。あなた方は、いま国連にどっちからでも申請を出してきたら認めようという立場をとりますと言う。二つの朝鮮だということを、分割、分断をするということについて、もう言わないけれどもちゃんと腹の中がそうなっているから、この決議案の中にも出てくるんですよ。宮澤さんいいですか、両方とも一つの朝鮮だと言っているんです。いいですね、ここを間違わないでくださいよ、三木さん。あなたは当面の間平和共存をしながらと、当面と言いましたね。当面だから私は余り文句言わないんですよ。だから、もしできるならば高麗連邦共和国という古い国の名前を引用して、それでひとつ一緒になって国連に加盟しようではないかと言っているのが北側ですよ。つまり、まだわれわれの政権は二つあるか知れないが、国としては、民族としては一つだという考え方でやっている。そっちの方こそ正しいのであって、日本やアメリカが決議案に出している国という表現を用い、そして韓国ということも言い、そして韓国は片一方でも国連に加盟申請を出すならば、それは結構なことだから賛成するつもりでありましたというのは、二つの朝鮮の立場に立つ、そういう外交路線だ。ここはひとつ私は警告しておきますから、きょう論戦いたしません。どうか、今後こういうことについてそういう立場では、この問題は未来永劫解決しないだろう、ここだけは言っておきたいと思います。  次に、別な問題に入らしていただきます。そういう時期に私ども非常に心配するのは、韓国に対する武器輸出やそれからプラントそのものの輸出ですね。この間の国会でも私言いました。この問題では、非常に簡単に申し上げたのですけれども、きょう正木さんがある程度——相当やってしまいましたから、私論議するところ余りありませんが、だから具体的な結論のことについてだけ質問しておきたいと思うのです。  武器輸出ということを非常に私ら心配しているのです。これは韓国の参謀本部の——資料はここにないのですが、どこかにあると思いますけれども局長が、朝鮮戦争のときはアメリカ軍の軍需物資、兵器その他日本で調達されたことは周知の事実だ、その後もその傾向は続いております、その一番いい例としては、最近数万台に上る軍用車両がわが国に日本から入っています、これは一九六三年の談話なんですね。陸軍大佐の人です。これは参謀本部の局長ですから、非常に信憑性のある言葉なんですね。それで武器輸出原則というのは一体——そういうことがあったから議事録ずっと調べてみますと、当時の佐藤総理が、そういうものがあったけれども日本武器輸出してはいけないという世論があって、だから武器輸出原則というものをだんだんと成文化して今日まで至ったんだ、だからそこのところ、そういう歴史的な過程があるんだということを、議事録ではっきり言っておりますよ。一たん出ておったものをとめたんだと言うのです。いいですか。さっきの通産大臣の話は、とめたものをもっと広げているんですね、あの言葉は。ここが非常に違うんですよ。  三木さん、あなたが総理になって、そんなことをしてはいけないと言うんです。ようございますか。それで今度はやはり佐藤さんが総理田中さんが通産大臣のときに、わが党の楢崎弥之助さんの質問について非常に困って、田中通産大臣が具体的に質問されて、結局政府統一見解をもう一回出しているんですよ。それが今日、兵器の輸出原則と言われるものなんですね。だから、通産省に聞いても、文書になったものはないとか何かかにか言っていますけれども、国会の議事録に載っておるということで、何か言っておるのですけれども、これはいろいろ批判はありますけれども、きちっとしたものなんですね。それをどうも、朝鮮戦争の終わった後だとか、昭和四十年の初期の不景気のときだとか、今日の不況のときだとか、あるいは防衛庁が兵器の大きな更新をやるときだとか、この死の商人たちが大騒ぎをするときは決まっておるのです。そういう時期にいま来ている。ですから、経団連やあるいは日商会頭やあるいは三菱商事の社長や何だかんだ言っておりますが、通産大臣の言っておることは、そんなことは外国為替及び外国貿易管理法の四十八条でやっています、そう言えば大丈夫だと官僚から教えられているのかもしれませんよ。しかし、そんなものではないのです。田中さんは何と言っているかというと、その地域のいかんを問わず日本国憲法の精神にのっとってそういうところに武器を出すことは慎まなければならないというのが統一見解の柱なんですよ。あなたはケース・バイ・ケースだ、この前も言った。きょう正木さんにもケース・バイ・ケース。ケース・バイ・ケースと、日本国憲法の精神にのっとって慎まなければなりませんと、当時の田中通産大臣が言ったこととは天地雲泥の差、月とスッポンぐらいの違いがある。あなた、これをどう思いますか。ケース・バイ・ケースというのと、「田中国務大臣 武器輸出してはならないという法律が明定はございませんが、これは憲法の精神にのっとりまして、国際紛争は武力をもって解決をしないという精神で、日本から輸出をされた武器が国際紛争で使われるということになれば、これは間接的なものにもなると思いますので、武器というものの輸出ということに対しては、非常に慎重でなければならないということは当然だと思います。」これは「三つの地域以外だったら武器輸出してもいいという解釈でございますか。」という楢崎君の質問に対する答弁ですよ。あなたは、戦争のおそれがあるとか、あるいはまた紛争当事国ではないけれども、たとえば朝鮮なんかそうだと言っていますね。四十八条で処理していると言っている。その地域でもこういう立場で臨むんだというのが当時の田中通産大臣のきちっとした国会答弁、あなたとは大変違う。どうです、三木さん。違うと思いますか。三木さんから言ってください。
  236. 河本敏夫

    河本国務大臣 韓国がいま問題になっておるわけでありますが、武器原則にいうところの対象地域というものは御案内のとおりでございます。しかし、武器原則にいうところの対象地域でなくても、外国為替管理法並びに外国貿易管理法に基づきまして国民経済全体の立場から、また貿易全体の立場から考えまして、これは十分慎重に考慮すべきものでありますので、ただ単に武器原則によりまして輸出を禁止するとかとめるとか、そういうことではなくして、さらに二重にチェックするという意味におきましてこの外国為替管理法並びに外国貿易管理法の精神を十分生かしまして慎重に対処をいたしておるわけでございます。そういう意味から韓国に対しましては、武器輸出も、武器原則の対象地域ではありませんけれども輸出をしていないというのが現状でございます。
  237. 安宅常彦

    ○安宅委員 私は韓国なんて言っていません。いいですか。三つの——ここも関係があるのですがね、とにかく共産国だとかなんとか言っていますよ。いろいろ批判はあっても、そして紛争当事国あるいは国連決議で決められている地域、こう言っているでしょう。その他の地域の分は、これはケース・バイ・ケースだとあなたは言った。ところが、そうではなくて、田中さんの答弁はいま言ったように、「憲法の精神にのっとりまして、国際紛争は武力をもって解決をしないという精神で、」それで日本輸出は慎重でなければならない、こういうふうになっているのですね。そして楢崎さんからまた、先ほど言ったように念を押されて「行政指導としては必ずしも三つの地域に限らないのだ、いわゆる輸出について」、輸出そのものについては「そういう行政指導でやる、そういうことでございますね。」と言ったら、そうしたら「外国輸出するということは、きめられた共産国その他の国以外でも、日本の現状では武器輸出は慎むべきだと思います。」と明快になっているということを言っているのですよ。ケース・バイ・ケースどころの騒ぎじゃないのです、この答弁は。大変な後退なんだということを私、言っているのですよ。どうなんですか。
  238. 河本敏夫

    河本国務大臣 私が申し上げておりますのは、日本輸出貿易管理令の運用方針といたしまして……(安宅委員「同じなのか違うのかと聞いているのです」と呼ぶ)それをいま説明しているところです。一九六七年に武器輸出原則というものを決めました。決めまして、禁止する対象地域というものを一応決めております。ただしかし、武器輸出というものに対しては慎重でなければならないので、なおそのほかに、さっき申し上げました別の法律によりまして、つまり外国為替並びに外国貿易管理法によりまして、その精神を十分生かしまして、国民経済全般の立場、貿易全般の立場から念には念を入れ、かつ慎重にやっておるというのが現状でございます。
  239. 安宅常彦

    ○安宅委員 これはとんでもない議論でして、別の法律とは何ですか。これをきちっとするために別表がある。この別表は外国為替及び外国貿易管理法のもとにおける政令の別表なんですよ。別の法律では決めてないじゃないか。とんでもない話じゃないか。そして管理令じゃない、四十八条というのは政令じゃなくて本法なんです。本法で決まっていることなんです。別な法律じゃありませんよ。武器の三原則というのは、そこの別表なんかを中心にして論議が起こって、この問題もこの法律に基づいて、本来ならば運営方針として、行政指導としてですかね、明定はないのですから、それで武器輸出の三原則というのができたので、そんなことを言っているのじゃない。つまり田中さんは、そういう一般的な地域であっても、日本は憲法の精神にのっとって武器輸出することは慎まなければなりませんと言っているのです。具体的な例として公明党さんが言いましたね、C1は日航製がつくったんだ、日航製は民間の飛行機だけつくるのだということになっている、軍用機をつくったのはおかしいではないかと言われて、誤りでありましたからというので、統一見解田中さんは謝っているのですよ。したがって、そういう軍用機を、今度は民間の飛行機で、あんなものはいろいろに使えるから、だから落下傘部隊なんか、けつの方からばっと飛び出せるようにちゃんと仕掛けまでなっている。そういう飛行機を今度は輸出するのは当然だ、ただ単価は合わないだろうなんという、ばかなことを言うから、私はかんかんになって聞いているだけの話で、あなたの態度は違うのです。じゃ、このことは保留して、後でまたやりましょうよ、問題とあわせて。これは、田中さんがもっと言っているようなことはいろいろございます。武器の定義というものは、武器等製造法という法律もありまして——ただ具体的に言うならば、これは「自衛隊が使っておればやはり武器だと思います。」と言っているのです。ここが問題なんですよ。どうなんですか。防衛庁長官防衛庁で使っていますね、買っちゃったんだもの、C1、武器ですか。どうです、防衛庁長官
  240. 坂田道太

    ○坂田国務大臣 自衛隊法上の武器とは、「火器、火薬類及び刀剣類その他人を殺傷し、又は武力的闘争の手段として物を破壊することを直接の目的とする機械、器具、装置等」をいうわけでございまして、防衛庁におきましては一般的に言って、車両、航空機、艦船は武器としての扱いをしておりません。
  241. 江口裕通

    ○江口政府委員 お答え申し上げます。  防衛庁の扱いにおきましては、たとえば物品を調達いたします場合に、装備品、船舶、航空機、需品というような分類で取り扱っております。その意味におきまして、扱いといたしまして、航空機を武器という扱いには必ずしもいたしておりません。
  242. 安宅常彦

    ○安宅委員 一国の国務大臣、通産大臣、しかもこの人は総理になられた人です。前総理ですよ。あなたはその田中内閣の中で閣僚としておったこともあるでしょう。そうでしたな、たしか河本さんは。いなかったか、いなかったらかえっていいんだけれども。だから、そういう人が言った議事録に残っている国会答弁というものを否定するんですか、いまのお役人さんも。どうなんですか、これは。こうなっておるじゃありませんか。自衛隊で使っておるのはやはり武器だと思います、と言っているのですよ。そうしたら今度は役人が来て、武器じゃありませんと、これはおかしいではないですか。あなたは、聞くところによると、通産省から来たそうですね、局長。産軍癒着もいいところではないですか。兵器についてはどういうふうに答弁するかと一生懸命教えているんだ。きのう本家に行って教えなければならないと言っていたもの。
  243. 荒舩清十郎

    ○荒舩委員長 江口装備局長、手だけ挙げないですぐ来るんだ。
  244. 江口裕通

    ○江口政府委員 防衛庁の取り扱いといたしまして、航空機というものは一応航空機という扱いをいたしております。いわゆる武器と申しますのは、装備品の中に武器という扱いをいたしておりまして、それは先ほど長官にお答えいただきましたように、人の殺傷もしくは物の損壊を直接の目的とする武器、機器その他の物品という扱いをいたしております。
  245. 安宅常彦

    ○安宅委員 それでは三木さんに聞きます。  田中総理が答えたことは、もう通産大臣防衛庁長官防衛庁の役人も全部ほごにした見解を堂々と述べてはばからない。こんなことで政治の綱紀が正しく保たれると思いますか。あなたの所見を聞きたい。
  246. 三木武夫

    三木内閣総理大臣 午前中の御質問にもお答えしたと思いますが、やはり武器輸出原則があるわけですね。これによって……。
  247. 安宅常彦

    ○安宅委員 自衛隊が使っておれば武器だ、と田中さんが答えているんだと言うのです。それを武器でないと言い出したから、おかしいではないか、それで綱紀の正しさが保たれるか、と総理に聞いているのです。そういうことなんです。
  248. 三木武夫

    三木内閣総理大臣 武器についてはいろいろ答弁がありますが、私は、基本的にはやはり例外のものであっても貿管令などでできるだけ武器輸出は抑えていこうという考えです。  それから、自衛隊の武器とは……(安宅委員「C1というものについて特定して答えてください」と呼ぶ)その武器という解釈はやはりなかなかむずかしい面もあると思いますが、この問題については防衛庁は……(安宅委員「おかしいよ、そんなばかなことはない」と呼ぶ)これはやはり、安宅君、防衛庁が自衛隊法によって武器の管理もするわけですから、防衛庁の意見というものもやはり尊重しなければいかぬ。自衛隊はこれを武器として取り扱っていないということでございます。私もそういう解釈をとります。
  249. 安宅常彦

    ○安宅委員 だから、これを確定するために——防衛庁ではそう言っている、防衛庁考え方もあるでしょうとあなたは言うけれども、それこそおかしいのですよ。防衛庁が何と考えようと、田中さんが、自衛隊でC1を使っているのだから自衛隊で使ったらそれは武器ですよと言ったのが、防衛庁長官通産大臣防衛庁の装備局長も違うと言っているのです。それで日本の政治の綱紀が保たれますかということを私は聞いただけの話なんです。それで聞きますけれども、これは産軍癒着なんというふうに冗談みたいに言ったんですが、これは防衛庁で言う武器、兵器というのはおもしろいのです。ようございますか。私が資料として要求したのは、全部扱っている武器ですね、これの一覧表を持ってこいと言ったら、一番先に来たのは小さな紙です。これは何が来たかというと、ピストルと小銃とそれから機関銃と迫撃砲ぐらいしか書いてないのですよ。これはなぜかと言ったら、よく私も研究してみましたら、警察官職務執行法に基づく武器という意味で武器という言葉が自衛隊法の条文に初めて出てきます。それを武器と言っているのだそうですよ。ミサイルだとか、すごい戦車だとか、航空機だとか、それは武器でないのだよ。武器と言ったら鉄砲なんだ、昔の考え方で。そういうのが武器であって、あとは武器ではないと言っているんだ。それで答弁のつじつまを合わせようとするから武器でなくなるのですよ。武器というのは何かと言ったらこんなものをよこした。そしてなお艦船、車両、航空機、通信器材等は武器の範囲に含まれていない。艦船は入っていないのですか。おかしい。法律では船舶といっているのですよ。防衛庁設置法やそれから自衛隊法では艦という言葉は絶対使わないんです。昔戦車は特車と言ったように。だから、艦という言葉は使っていないのです。ところが、今度はその内容の駆逐艦だの何だのというと艦が入ってくるのです。そして、ここにもなお艦船と書いてあります。艦船の艦があるじゃないかと言ったら、それは説明のしようが悪いとこの人たちが言うのです。説明はこっちの方が正しいじゃないかと言ったら苦笑いしていましたが、こんなばかなことはないですよ。軍艦は兵器じゃないのですよ。いいですか、総理防衛庁の意見も聞かなければならないとあなた言ったけれども、聞いたらそうなるのですよ。艦船、車両——車両というのは戦車も含まる、自走砲も含まる、ミサイルの運搬車も含まる。航空機、戦闘機も爆撃機も偵察機も、あるいはさっき言ったC1のような輸送機も全部含まる、これが武器じゃない、こう言うのですよ。  それではおかしいから、武器需品課長というのが防衛庁の方にありますね、武器需品課長というのがいるのだからそれじゃ武器を扱っているのかと言ったら、扱っていますと言うのです。だから武器需品すべて持ってこいと言ったのです、一覧表を。そうしたら持ってきましたよ。どういう区別をしたかというと、今度はおもしろいのです、装備品と船舶と航空機とそして需品と書いてあるんです。この装備品の中に武器が入っています。武器はどれだと言ったら、小銃と機関銃と迫撃砲と手りゅう弾だ、こうなんです。そうすると、あとの地対空ミサイルだとか自走砲だとか装甲車だとか戦車だとか、そういうのは何だと言ったら、これは装備品であって武器じゃないと言うのです。その分類武器輸出のことを何とかしてごまかそう、逃げようとするから合わなくなるわけですよ。合うわけがないじゃないですか。だからC1は兵器でないという理屈がそこから出てくるのです。  私はこういう言葉で言ったのです。私が空挺師団の一兵士だとする。鉄かぶとをかぶる、あるいは手りゅう弾も持つ、あるいは一緒に対戦車砲ぐらいは降下部隊だからおりてくるかもしれないですね。それじゃその始末をしなければならない。機関銃を持たなければならない。それを装備するのが装備であって、装備品の中には武器類もあれば、被服もあれば、腹が減ると悪いからといって食料品も入っているのだ、それを装備というのだろうと言ったら、そのとおりでございますと言う。装備の中に武器というのは小銃しかない、そんなことはないだろうと言ったら、いわゆる俗論的な武器も入っていますと言うのですよ。俗論的な武器というのは戦車だ、本物の武器は小銃だ、そんなばかなことがあるかと私は言うのだ。そんなあほらしいことで国会が運営されてたまるか。みんなあなた方、外務大臣、ゲラゲラ笑っているが、そうでしょう。そんなばかなことがありますか。ばかばかしくてこんな論議ができるか。  これは委員長、だめです。絶対だめです。絶対答弁なんか合うわけないんだから。
  250. 荒舩清十郎

    ○荒舩委員長 答弁させましょう。
  251. 安宅常彦

    ○安宅委員 答弁なんかできないのだ。武器武器でないと言う答弁だもの。本当にしようがないですよ。田中さんが、自衛隊が使っているものは武器ですと言ったものを武器でないと言っているのですから、話にならないじゃないですか。
  252. 荒舩清十郎

    ○荒舩委員長 江口装備局長、しっかり答弁しろ。
  253. 江口裕通

    ○江口政府委員 先ほど長官の御答弁申し上げましたのは、自衛隊法上武器と申しますのは、「火器、火薬類及び刀剣類その他人を殺傷し、又は武力的闘争の手段として物を破壊することを直接の目的とする機械、器具、装置等」を申しております。  それから先ほど御答弁申し上げましたのは、しかしながら防衛庁の取り扱いといたしまして、一応先ほど御指摘のありました装備品、艦船、船舶、航空機、需品という扱いをいたしておりまして、その装備品の中に武器を読み込んでおる、こういう扱いをいたしております。
  254. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 議事進行。  お聞きのとおり、安宅委員が提起した問題は二つある。これは公明党の正木委員もそうなんです。  どういうことかというと、一つは、その武器禁輸原則の中の武器の範疇です。これは問題はどこにあるかというと、その三原則はゆるがせにいたしません、それはわかります。ところが、武器の範疇をだんだん狭めていって、いわゆる三原則を骨抜きにしていく方向がある。したがって、武器の範疇というものがここで問題になる、これが一つです。  二番目の問題は、その武器だと、たとえば七四戦車を三地域以外に輸出していいかという問題ですよ。これについて問題を提起しておる。  ところが、武器の範疇でどこが非常識な点があるかというと、いまの論争でおわかりのとおり、たとえば爆撃機がある。爆撃機は武器かというとそうじゃないのです、政府見解によれば。爆撃機の爆弾だけが武器であって爆撃機は違うんだと、こういうあれなんです。それから船の場合は砲塔と弾帯だけが武器であって、船そのものは、軍艦そのものは兵器じゃないという、そういう答弁をするから、C1は兵器でないというような見解になる。これをわれわれは盛んにやって、かつての田中総理通産大臣は、だからそういう常識に合わせるために、自衛隊が使っておるものは武器とみなします、こういうことになったんですよ。それをきょうの答弁では、いま坂田長官は自衛隊のC1は武器ではありませんと言いましたね。だから、これは完全に前の答弁を覆す答弁です。  それからいま一つは、今度は武器ですよ、七四戦車のようなもの。これを外国輸出する際に、どう答弁が変わったか。田中さんは、輸出は慎みますと言っているのです。それは憲法のこれこれしかじかの精神があるから慎みますと言っているのに、総理はきょう正木委員質問に対して——じゃやはりケース・バイ・ケースだとすると輸出することもありますね、ということを正木委員は追及した。ところが、それについて三木総理はやはり厳格な答弁をしなかった。田中答弁では、慎むんだからやらないということなんです。ところが、河本通産大臣及び三木総理は、ケース・バイ・ケースということなんです。だから、輸出することもあり得るということ、完全に答弁が違うのです。このように政府答弁が変わってきておる。われわれはこれを解明しなければならない。いまのような変革についてはわれわれは了承することができない。これが問題点であります。  したがって、国民一般の常識に合うような兵器というもの、武器というもの、これに合わせなくちゃいけませんよ。そういう三百代言的な、昔の武器製造法とかあるいは貿管令による別表とかいうものを持ってくるから、それに限定するからおかしなことになってくるのです。常識に合わしてくださいよ。
  255. 坂田道太

    ○坂田国務大臣 従来ずっと、御承知のとおりにわが自衛隊では武器という概念はどうするかということについては、いま申し上げたとおりに言っているわけなんです。(楢崎委員「だから違うと言っている」と呼ぶ)ずっと言ってきているわけです。ただ武器原則の問題は、これは私の方じゃなくて、まさに通産大臣の御判断ということになっておるわけでございます。
  256. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 その通産大臣の判断が、田中通産大臣は自衛隊が使っているものは武器とみなさざるを得ないというのが答弁だった。それを河本大臣は変えたんだ。そんなことは許されぬというのがいまの問題です。
  257. 河本敏夫

    河本国務大臣 さっきからのお話のように、自衛隊で武器と言っておられる概念と、それから武器原則に言うところの武器という概念は違うんです。武器原則に言うところの武器という概念は、これは軍隊が直接戦闘に使うものである、こういうことを繰り返し申し上げておるわけでございまして、それがこれまでの統一解釈でございます。(楢崎委員答弁になっていない。そんなことはさっきから聞いておる。おかしいですよ」と呼ぶ)
  258. 荒舩清十郎

    ○荒舩委員長 ちょっとお待ちください。ちょっと待ってください。  ただいま楢崎弥之助君から御発言がありまして、武器解釈通産省防衛庁と、私が聞いても違いがあるように思います。したがいまして、早い機会にこれは統一した見解をここに発表するように、政府の方で考慮してもらいたいと思います。したがいまして、この質問等につきまして理事会でもよく研究し、その答弁の速やかに出ることを待っております。
  259. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 いまのは、二つ出した問題の一つの方ですね。
  260. 荒舩清十郎

    ○荒舩委員長 そうです。
  261. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 もう一つの、これは三木総理に明確に御答弁をいただきたいのですが、いわゆる武器なるものをあの三地域以外に輸出する問題について、三木総理は、田中総理の、慎む、つまりやらない、憲法の精神から、これをあなたは訂正するんですか、ケース・バイ・ケースということで。どうなんですか。田中総理答弁の方に戻りますか、はっきりしてください。
  262. 三木武夫

    三木内閣総理大臣 午前中から私申しておるように、原則的にはなるべくこの武器輸出というものは抑制していきたいというのが私の基本でございます。しかし、三原則以外に、三原則に抵触しないような武器輸出という場合は、そういう問題が具体的に起こったときに検討いたしますが、全体としての政府の態度は、できるだけ武器輸出はこれは抑制をしようという立場において貿管令でこれを検討するということでございます。
  263. 安宅常彦

    ○安宅委員 楢崎君の関連質問が中心ですから、いま私が発言するのはおかしいかもしれませんけれども河本さん、あなたは大変初歩的な誤りを犯しているんですよ、あなたのいまの答弁だって。いいですか。自衛隊とは違うんだ、おれたちの武器というのは、自衛隊で武器でないものだって武器だという意味にとれる答弁をしておりますね、武器輸出の三原則の場合は。防衛庁がどういうふうに解釈しようと、私らは、殺傷するものとかなんとかとあなたが言って、そしてそれは武器だと思っております、違うんですと、こう言ったんです。ところが、そういうことでごまかしたってだめなんです。田中当時の通産大臣が、自衛隊が使っているものは武器です、と言った。だから、自衛隊が何と言おうと、防衛庁が何と言おうと、装備品などと言っても——装備局長は装備品と言った。装備品の中に何々があるかと言ったら、自衛隊法上の武器と俗論的ないわゆる武器。俗論の方は戦車、軍艦の方よ。そして、あと被服だとか需品だと言うのですよ。そういう考え方とあなた違うのは結構ですよ。だけれども、違うがゆえにあなたそういう主張をしたけれども田中通産大臣が楢崎君に当時答えているのは、自衛隊が使っている以上、何と言おうと武器だと言っているんですよ。そして、自衛隊がつくったものが余ったから外国に売るなんというのはけしからぬとまで言っているんですよ。いいですか。そういう根性はけしからぬと言っているんです。それから、初めはトラックは武器じゃないかもしれないけれども、上に銃座をつければこれは武器だと言っていたんです。そんなことがあるかというんで、わあわあなって、トラックごとみんな武器だと言っちまったんですね。そういうことをちゃんと訂正しているんです、田中さんは。ようござんすか。いまその中でC1に類似した航空機が問題になって、そして今度は自衛隊で使っているのは武器だから、これは輸出はしませんと言ったんですよ。それを今度C1は、防衛庁の話を聞いたのか知らぬけれども武器ではないから輸出します、と言っているからおかしいと言っているのですよ。そこのところを、ごまかし答弁はだめだと言っているのですよ。
  264. 河本敏夫

    河本国務大臣 先ほども申し上げましたように、繰り返しで恐縮でございますが、自衛隊の方でいま御説明になりました武器という概念と武器原則に言う概念は違っておりまして、しからばこの武器原則に言う武器とは何ぞやといいますと、それは貿管令のリストの中に含まれておるわけです。それはずっと列挙してあるわけですね。その列挙してある対象品の中に武器が含まれておる。そういうことでございますので、自衛隊が使うものは全部武器である、自衛隊、いろいろなものを使いますから、その自衛隊の使うものは全部武器だ、そういう考え方には立っておりません。
  265. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 では、鉄かぶとが武器で、戦車や護衛艦が武器でないという理由はどこにあるのですか。(「そんなこと言っていないよ。」と呼ぶ者あり)いやいや、そうなっておるのです。いや、鉄かぶとは武器でしょう。どうなんです。武器でしょう。
  266. 熊谷善二

    熊谷(善)政府委員 従来の輸出貿易管理令の運用基準といたしましての武器原則の問題でございますので、事務的な点、補足説明を申し上げたいと思います。  いま安宅先生の御指摘の、四十七年の三月二十三日の田中大臣の御答弁は、読み上げますと、「端的に武器ということばは、法律上制定しておるものは武器等製造法第二条第一項でございますが、そのように明定されておるような武器というもの、俗に言う大砲をつくったり何かして、外国輸出するということは、きめられた共産圏その他の国以外でも、日本の現状では武器輸出は慎むべきだと思います。」こういう御趣旨でございます。  これを引用させていただきましたのは、武器等製造法におきます武器の定義が法律上ございます。これは銃砲銃砲弾爆発物爆発物を投下し、または発射のための機械器具及び部品ということでございます。あと政令で細かい点、指定がございますが、この武器等製造法によります武器の定義と、それからただいま自衛隊法におきます武器、これにつきましては法律による明らかな定義はございませんが……(安宅委員「鉄かぶとの話をしているのに、長々と何をしゃべるんだ。時間ばかり食ってだめだ」と呼ぶ)ただいま御答弁あったような内容に自衛隊法でなっております。  そこで軍用鉄かぶと、これは現在輸出貿易管理令の中で、しばしば私どもが御説明しております別表第一の一九七号から二〇五号までの中に含まれておるわけでございまして、軍用鉄かぶとは、これは一般の、たとえば土建の場合に使う鉄かぶとその他の鉄かぶとと明らかに違いまして、弾丸の貫通をはね返す、こういうことをねらいました特殊の材質と構造と形状を持ちました鉄かぶとでございます。これはもっぱら軍用に供するものでございまして、一般民用にはこれは適用いたされない機構、構造を持ったものでございます。私どもは、この軍用の鉄かぶとは、戦場におきまして敵との戦闘に真接使用する、こういうことで武器だという脅え方でいたしております。(安宅委員「だめだ、もう話にならない。」と呼ぶ)
  267. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 あなたたちは武器でないものを武器というふうに言っておるから、私のあれと食い違うのですよ、私が総理に言っているのは、そっちの方を常識に合わしてくださいと言っておるのです。鉄かぶとが武器であって、タンクが武器でないなどということが国際的に通りますかと言っているのです。軍艦が武器でないなどということ、あるいは爆撃機が武器でないなどということが通りますかと言っているのですよ。——あなたに聞いているのじゃないのだ。私は総理に聞いておるのです。常識の方に合わせなさいと言っているのです、どうですかと。
  268. 河本敏夫

    河本国務大臣 それはさっきから繰り返して申し上げておりますように、自衛隊の方で武器と言っておられる概念と、それから武器原則に言う概念は違っておるのです。そこで、武器原則にいう概念は貿管令にリストがございまして、そのリストの中に含まれておる、こういうことを申し上げておるわけでございますから、明確であると思います。
  269. 安宅常彦

    ○安宅委員 総理に聞いておるので、もう一回総理言えよ。よく聞いてくださいよ。いまそんなことを聞いていない。楢崎さんの質問というのは非常に重要なんです。どういう意味かというと、私、さっき通産大臣に注意したのですけれども、いま楢崎さんが言ったことと非常に重要な関係があるのですが、当時、C1という航空機、これは軍用の飛行機だと。これは公明党さんや何かの問題になりました。と同じように、MU2など二極ばかりの飛行機が海外に出ておるじゃないかということになって、そしてそれは自衛隊では海難のときの救助用の飛行機として買い上げているから、そういうものを売ってもいいのかという話になっていって、初めはいいみたいな話をしていたけれども、やはり自衛隊で買い上げている以上武器だ、だから輸出はしないということになったのですよ。C1という飛行機はもっともっと軍装備ができている飛行機なんですよ。そんな小さなものじゃないのですよ。だから、それは田中さんが言ったことをあなたは否定することになりますから、防衛庁と違うとか違わないとかにかかわらず、防衛庁が買い上げた航空機、軍用に使っているんだからそれは兵器ですと——一般論じゃない。そういう航空機、C1だったらC1、MU2だったらMU2、それに限って、私が質問したことについて一般論で答えたって意味がないということを私言っているのですから、ここも整理してやってくださいよ。田中さんが武器だと言うのに自分が武器でないというばかな話はない。(「統一見解を聞いているのだ」と呼ぶ者あり)
  270. 荒舩清十郎

    ○荒舩委員長 委員長から総理に申し上げますが、実は鉄かぶとが兵器で戦車が兵器でないというようなことは世界じゅうの常識から通らないと私も思います。したがいまして、こういう見解は、ひとつ内閣で統一した見解をつくっていただくべきだと思いますが、総理はこれに対して御答弁願います。
  271. 河本敏夫

    河本国務大臣 重ねて申し上げて恐縮でございますが、先ほどお尋ねの、たとえば戦車ですね、戦車などは武器原則にはもう明らかに武器というふうに明示してあるわけでございます。自衛隊の方の解釈はどういうふうになっておるか知りませんが、武器原則には、鉄かぶとも武器であるし、それから戦車も武器である、つまり、軍隊が直接戦闘用に使うものは全部武器である、こういうふうに規定してあるわけでございます。そしてそのリストは、さっき申し上げますように、貿管令の幾つかの例示品の中に入っておる、こういうことでございます。(安宅委員防衛庁通産省の違いを聞いているんじゃないんだ」と呼ぶ)
  272. 荒舩清十郎

    ○荒舩委員長 ちょっとお待ちください。  ただいまの河本通産大臣解釈について、坂田防衛庁長官、どういうふうに考えるか、答弁願います。
  273. 坂田道太

    ○坂田国務大臣 自衛隊では、先ほど私が解釈申し上げたように、自衛隊法に基づいて武器の概念がはっきり決まっておるわけでございます。しかし、いま通産大臣がおっしゃいましたように、その武器原則における武器の概念というのは、いま申されたようなことになっておるのです。(安宅委員「違う、どこで統一するんだ」と呼ぶ)
  274. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 私は、総理に最終的な統一見解お願いしたいと思うのです。国際的な常識に合わない。日本の常識でも合わない。たとえばストックホルムの国際平和研究所から、これは非常に権威のあるところですが、この「世界の兵器と軍縮」七五年版、ここでやはり日本の場合の統計が出ておるのですね、七四年に日本は二百万ドルの武器輸出していると。この中には、いわゆる自衛隊が使っているものを、MUも入れているのです。それが国際常識なんです。だから、世間の常識に合わして、ひとつ三木総理、憲法の精神にものっとった統一見解お願いしたい。あんなに分かれておるのですから、これではどうしようもないわけです。
  275. 安宅常彦

    ○安宅委員 これじゃ私は審議に入ることはできませんから、統一見解出してくださいよ。これは休憩じゃないか。これは重大な問題じゃないか。
  276. 三木武夫

    三木内閣総理大臣 いま私も聞いておって、この武器輸出原則に言うのと自衛隊と武器というものの解釈が違っておると言っておるのですね。たとえば自衛隊で使うものが全部武器だというのは常識に反する点もありますね、これは。(安宅委員「そんなこと私は言ってないよ」と呼ぶ)
  277. 荒舩清十郎

    ○荒舩委員長 ちょっと静かにしてください。
  278. 三木武夫

    三木内閣総理大臣 だから、たとえばヘリコプターなんかでもしょっちゅう私は乗せてもらったりしますが、これはヘリコプターでも輸送機ヘリコプター、こういうものが武器だと直ちに国民的な常識では言えないものがありますから、やはりカテゴリーが違うんだということを申しておるわけですね。輸出原則のものと自衛隊のものとは分け方が違うんだということでございまして、そういう点で食い違いというよりか、もう両方初めから武器というものに対してのカテゴリーが違っておるというのがいまの説明であるわけですから、初めから違っておるのですからこれを一緒といっても無理があるわけです。
  279. 安宅常彦

    ○安宅委員 納得できません。問題にならぬよ、だめだよ、絶対だめですよ。
  280. 荒舩清十郎

    ○荒舩委員長 ちょっとお待ちください。(発言する者あり)ちょっとお静かに願います、いま考えているところだから。(発言する者、離席する者あり)とうぞ着席願います。——どうぞ着席願います。  委員長から申し上げます。  政府において早い機会に統一見解を出してもらうように、出すことが正しいと思いますので、総理からそうしたことについての御答弁を願います。
  281. 三木武夫

    三木内閣総理大臣 いまここで問題になっているのは、そのときは田中通産大臣ですか、そのときの答弁、長い答弁ですからこの答弁をよく検討してみまして、そして政府がいまどう考えておるかをお答えをいたします。
  282. 荒舩清十郎

    ○荒舩委員長 安宅君に申し上げますが、多少の時間、空白がありましたのをおまけをいたしますから、御承知を願います。
  283. 安宅常彦

    ○安宅委員 私は総理要求いたします。それから予算委員長にもお願いいたしますが、この統一見解というのはこの場ではできないと言うのでしょう、何回も。ですから、本当に協議をして直ちにやらなければ、この次の論議——私は、経済援助というのは一体何か、軍事援助とは何か、そしてそれがプラントごとにいった方がかえってもうかると通産大臣言っておりましたね、ああいうことと関連して、対韓経済援助にこの問題と関連して入らなければならなかったのです。ですからだめだと言ったのです。ただごねたのじゃないのですよ。  ですから私がお願いしたいのは、そういうふうに御裁定になった以上、服しますが、締めくくりの総括は六日が最終ですね。あさってまでその統一見解を出してもらう、いかがでしょう。お取り計らい願いたい。
  284. 荒舩清十郎

    ○荒舩委員長 いいですか。——政府承知したようでございますから、さよう決定をいたします。
  285. 安宅常彦

    ○安宅委員 済みませんが、ちょっと速記をとめていただけないでしょうか。
  286. 荒舩清十郎

    ○荒舩委員長 速記をとめます。     〔速記中止〕
  287. 荒舩清十郎

    ○荒舩委員長 速記、書いてよろしい。
  288. 安宅常彦

    ○安宅委員 それでは経済援助の軍事的な部分を除いた分だけちょっとやりまして、あと二、三質問を申し上げたいと思います。     〔委員長退席、小山(長)委員長代理着席〕  ただ、この問題と大変いま問題になった武器の問題と関係がございますから、一つだけ通産大臣に聞いておきたいんですけれども、去年の十月二十四日の予算委員会で、あなたの方の通商政策局長の橋本さんという方がこういう答弁を私にしておるのです。武器輸出するというのは、飛行機が二、三台や十台は別として、そういうプラントをつくるところの会社を向こうで一〇〇%自分が資本を持つか、五〇%、五〇%の合弁で韓国で工場をつくるか、そういう手段でやった場合には一体どうなるかという質問に関連いたしましていろいろ議論がございまして、橋本さんの答弁を申し上げますと「武器輸出あるいは武器の製造設備に関する輸出に関しましては、先ほど大臣から申し上げましたように、武器原則あるいは貿易管理法の規定に従って規制いたしておるわけでございます。特に韓国に対しては、前国会でも、武器関連製品については輸出しないということを申し上げておるわけでございます。」中略いたします。最後に、「武器製造関連設備、特に専用の製造設備は輸出しないことにいたしております。」こういう答弁をいたしておるわけでありますが、非常に重要なことですから、でき得るならば後でまた論戦することは避けたいと思いますので、いまの問題とあわせて考え統一見解をしてもらえば大変ありがたい、こう私は思います。よろしゅうございますか。関連設備と直接製造設備と非常にきちっと分かっていますからね。  それでは次に入ります。  外務大臣にお伺いいたしますが、韓国に対する経済援助、この問題についてアメリカ政府は一応否定はしておるようですけれども政府資料を駆使した「迫りつつある韓国の経済危機」という、これはワシントンの国際政策研究所、カール・マーシーという人が所長ですが、ここで出している第一巻第一号の、一九七五年十二月に出した文書があります。この文書によりますと、いろいろなことが書いてありますが、ここで一つ聞きたいことは、去年の十月のやはり同じ日の私の質問の中で、私の立場から言うと、外債がふえる、その償還のために莫大な金が要る。そして石油ショックやなんかで非常に経済が混乱をしている。第三次経済五カ年計画というものは失敗したのではないか、こういう議論の中で、宮澤外務大臣はこういうことを言っているのです。「韓国経済がいわゆる発展途上国の経済から今日まで来たことについて、これを成功と見るか失敗と見るかは評価の立場が分かれると思いますけれども、」と明確な答えをしないで、「少なくとも世銀あるいはIMFの評定では世界経済の中でやはり模範の一つであるというふうに評定をいたしておるようでございます。」そこからが問題なんです。「ただそれだけに石油ショックから受ける打撃がやはり大きかったであろうということは想像にかたくないと思います。」。優等生ならば少しぐらいショックがあったってびくともしないというのが優等生というのであって、優等生であるがゆえにその打撃が大きかったというのはどういう意味なのか。これはどうなんですか。
  289. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 世銀、IMF等では、韓国経済が過去二十年ぐらいの間に、いわゆる離陸状態と申しますか、近代化が進んできたという意味で優等生と評価しておると聞いておるわけですが、石油ショックを受けますときに、ある程度近代化したといいますか工業化した場合の方がショックを感じる度合いが強い。つまり、そこまで行きませんで、もう一つ発展段階が低いところですと、余り石油等々に頼る度合いが大きくない、そういう意味で、かえってある程度離陸状態になったために、石油ショックから来た影響が大きかった、こういう意味で申し上げたわけでございます。
  290. 安宅常彦

    ○安宅委員 これは非常に宮澤さん一流の答弁でございまして、優等生というのはやはりそうじゃないと思うのですよ。開発途上国からきた中では優等生という意味なのかなんかは別として、優等生というのは、そういうことがあってもびくともしない経済を持っているのが優等生よ。そしてかっこうだけよくて、外債に頼って、石油に頼って、そして資源のないのに高度成長の経済政策をじゃかすかやって、私ら国民から見れば、おやじが道楽して、酒飲んで、後の始末は赤字公債で何とかしなければならない息子の立場考えてくださいと大平さんに言いたいみたいなものですが、そういう立場に立ったのは、これは本来ならば優等生じゃないのです。本当は問題にならない論法だと思うのですが、こういう状態に今日韓国はなっている。  たとえば、あなたの方で出した資料によりましても、外債の年次別の返還を要する金額、これはべらぼうな金額になっています。ことしは大体八億八千万ドルぐらいになっているとあなたの方の資料が出ています。そうしますと、あのとき、去年私が質問いたしましたときに、IECOKの報告を出してください、IMFと世銀から出ている資料を出してくださいと言ったら、あなたは見せられませんと言った。私は盲で論議しているのですよ。あなた方は皆見ているのですよ。ようございますか。だから非常にハンデキャップがあるのですけれども、とにかく結論としては、年間二十億ドルの資金を韓国に投入しなければどうにもならないという結論になった。これは事実ですね。これは認めますか。
  291. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 二十億ドルというのは、ちょっと私正確に覚えておりませんけれども、大体そういうことがございますと思います。
  292. 安宅常彦

    ○安宅委員 十九億七千五百だか五千だったと思います。ちょっとわかりませんけれども、大体そういうふうになっている。そうしますと、元利の償還だけで八億近くになる。いろいろな統計があるのです。五億か七億ぐらいだと言う人もおりますし。しかし、きょう私が申し上げたのは、あなたの方から出てきた、大蔵省から出てきたのですが、韓国資料なんですよね。だから一番正しいと思いますが、かえってその方が大きいのです。援助をもらいたいから大きくしたのか何かは別として、とにかく二十億ドル金をつぎ込むと、三木さんいいですか、八億ドルは露と消える金なんですね。そうでしょう。そのほかに、去年のやつで、七五年で八億八千万ドルですから、今度は十億を超すだろうと言われていますよ。これは世界の定評です。そうしますと、せっかく金をつぎ込んでも、半分は利息の返すやつに吹っ飛んでいって、そして設備の計画やそういうものには使われないということになるのですね。(小林(進)委員「あとはリベートだ、やみ金だ」と呼ぶ)それもあるでしょう。だからそういう経済援助のあり方というのは、言うなれば更生会社みたいになったものの債権者だからやむを得ないというのだったら格別ですよ。格別ですが、そうではない優等生に対して、いつの時期に倒れるかわからないようなものに必死になって、バランスをとるために、よござんすか、あなた方がさっき言ったバランスをとるために援助をしなければならない理屈はないというのが私の議論ですが、どうなんです。
  293. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 これはいろいろ御議論のあるところだと思いますけれども、工業化を進めていきます過程で、ある段階でかなりいわゆるデッド・サービス・レシオといいますか、比率が高くなるということはございます。したがいまして、考えるべきは、導入された外資が工業化されて経済的に動いていくかどうか、今後導入される外資がどのように使われるかということがやはり大事なのであろうと思いますので、従来概して韓国に導入された外資は、有効な経済力あるいは輸出力となってあらわれておるというのが評価であったと思います。
  294. 安宅常彦

    ○安宅委員 いろいろ議論して、経済の分析みたいなことを長々やったって、これは議論かみ合わない。したがって、時間がございませんから具体的に私聞いていきます。  たとえば去年の日韓民間合同委員会あたりでは、去年の五月、ちょうどサイゴンが陥落した直後、日韓民間合同委員会というのは、私はこの制度は非常におかしいじゃないかと言ったのですが、この人たちが韓国で集まることになったけれども、大きなメーカーは全部辞退したのですね。三菱重工以下全部辞退ですよ。そして余り人が集まらなかったのです。これは、韓国は危ないなと思ったからなんですよ。今度一生懸命になり出しました。これは昌原の機械工業団地、七三年あたりからせっかく経済界は調査しておるようですが、これが第四次五ヵ年計画の機械工業、重化学産業、これをあなたいまおっしゃったとおり発展させるというそういう要請に基づいて必死になって、目の色を変えてぶら下がろうと、いままでしゅんとなっていたのが急に盛り返してきたのです。  ここのところで非常に私は考えていただきたいのは、経済的にはこういう危機に立っている国、本当にここのさっき言ったレポートでは、韓国は実際後で約束しても金を返すだろうか、と言っていますよ。このレポート、ちゃんと書いてあるのです。最後の方なんか見ますと、もし万一の状態で南朝鮮に経済的な危機が訪れた場合には次のような被害企業があるはずだというので、被害者一覧表を書いてありますね。その中には日本の東京銀行、第一勧業銀行、富士銀行、三和銀行、これは金額まで書いてありますよ。その他、ですから相当大きい金額ですね。これは千五百万ドル——百五十万ドルですか。どっちだか後で、数字は位取りを間違えるといけませんから……。そういうことで、そこまで評価されてしまっている国なんですね。政府が一体これを輸銀を利用したり何かしたりしてやること自体、相当慎重に考えなければならない時期ではないのでしょうか。私その辺を本当に心配しているのですよ。これはどうなんですか。これが一つと、それから具体的なことを言いますと、アメリカのモルガンギャランティーですか、これは、対韓援助シンジケートから手を引いたということがこれに載っています。これは事実かどうか。情報が入っているのならば聞きたい。それから、幾つかの国際銀行が韓国をブラックリストに入れている、これは本当なのかどうか、このことだけ聞いておきたいと思うのです。時間がありませんから、この辺でこの経済援助に関しては一応警告にしておいて、あとは分科会なりそういうところで詰めていきたいと思いますから、この二つだけは答えてください。それから心配だということについてあなたの見解と、三つになりますね。
  295. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 韓国の政治の問題であるとか、あるいは防衛費の問題であるとか、経済だけの面から見ますといろいろな批評はあり得ると私思いますけれども韓国経済自身の運営で申しますと、従来IMF、世銀等々も言っておりますように、まずまず堅実に運営をしてまいりましたし、非常に大きな国際情勢の変化とかいうことを、経済外の要因を別にして習えば、私は安宅委員のような危惧は、私の急見をお求めでございますから申し上げますが、私は持っておりません。
  296. 安宅常彦

    ○安宅委員 この問題について、大蔵省立場を聞かしていただきたい。特に、国際金融局なんか詳細に調べておかなければならない。人に金を貸すのに、貸し倒れなんか、わけもわからないでべらぼうに貸すばかは世の中にいないですからね。大蔵省はどういう考え方を持っておられますか。
  297. 藤岡眞佐夫

    ○藤岡政府委員 ただいま安宅先生が御指摘になりましたアメリカの民間団体の調査につきましては、なるほどそういう見方も一部にはあろうかと思いますが、こういう問題につきまして、専門的に国際機関でやっております世銀、IMF等におきましては、先ほど外務大臣がおっしゃいましたようなことを言っております。そこで……(安宅委員「そんなことはだめです。否定しているようですがとわざわざ言っておる」と呼ぶ)国際機関のことを言っておるのであります。  それで、もう一つ申し上げたい点は……(安宅委員「聞かないことを答弁することはないよ」と呼ぶ)元利金のことをちょっと申し上げたいと思いますが……(発言する者あり)
  298. 小山長規

    ○小山(長)委員長代理 安宅君に聞きますが、国際金融局長答弁を求めたのでしょう。
  299. 安宅常彦

    ○安宅委員 そんなことないですよ。国際金融局は、貸し倒れになるような人に金を貸すなんてばかな借り貸しはやらないものだということ、詳細に調べているはずだから、大蔵省見解を大臣にお願いしたいと言ったのです。そうしたらのこのこ出てきて……。そのことを言っているのじゃなくて、こんなレポートは世銀やIMFは否定しておるのでありまして——そんな、否定しているようですがと一番先に言って私は質問しているのですよ、遠慮しながら。ようございますか。一部ではそういうものがあるようでございますなんて、そんなことを答弁しろとは一つも言ってないですよ。自民党の皆さんに聞いてくださいよ。否定しておるようですがと私は前提にして申し上げておるのですよ。だから、そのことを、一官僚が出てきて、私に対して、そんな資料は世銀でもIMFでも否定しているのでありましてなんて、何もこっちが否定しているのを——わかっていて、前提にして質問しているのですよ。そんなことを聞いてないのです。ただ韓国に対してはどういう状態だということを一たくさんの外債はたまって、元利償還はしなければならないし、いいですか、二十億ドルも必要だ。そのうち半分も使い物にならない。来年はもっとふえるだろう。そういう中で貸したって大変なことじゃありませんか。民生安定のためにも、設備投資にもならないんじゃないですか。半分は露に消えるような金じゃありませんか。そういうことで、義理でもそんなことをやる必要はないのではないかと、ただその見解を聞きたいと言っておるのです。それはあなた方官僚が答弁するものではない。
  300. 藤岡眞佐夫

    ○藤岡政府委員 それで、先生指摘のように、韓国の元利金の返済金は八億ドルというふうなオーダーにふえておるわけでございます。ただ、この額が危険なところまでいっているかどうかという判断につきましては、やはりその外貨の導入がどういうふうにその経済の再生産に回っているかという観点から見る必要がございまして、先ほど外務大臣がおっしゃいましたように、輸出の収入と対比いたしますと、必ずしもその韓国の元利返済の率、いわゆるデッド・サービス・レシオというものでございますが、それが大きいという段階ではございません。現に中南米とかアジアの国はもっと大きい国もあるわけでございまして、私どもは、そういった全体としての経済の動きを見ながら、外資がどういうように役に立っているかということを判断しておるわけでございます。
  301. 安宅常彦

    ○安宅委員 そういう政治判断みたいな答弁はお役人さんにさせないでくださいよ。重要なことじゃないですか。東南アジアの国やそういう国はもっとひどいところがございまして、それから比べると大したことないのだみたいなことまで、これは政治的な立場じゃないでしょうかね。こういう収支になっておりまして、実態はこうでございますというのだったら、政府委員としての答弁はそれでいいと思うのです。それを注釈を加えてやるとは間違いだと思いますよ。大変なことじゃないですか。これはいけないことだと思います。こういう習慣はやめさせてくださいよ。委員長、今度は注意してください。私は大きな声は上げたくない。昔から耳が片っ方悪い方だから声は高いんだ。声は高いけれども、声の高いのがもっと高くなるのではいやだから、なるべく静かにしようと思ってやっているので、そういうことをさせないでください、怒らせないでくださいよ。  それでは宮澤さんに最後に聞きますけれども、あなた実際その実務者会議をいまやられているようですけれども、議題にならなかったと言っていますが、浦項製鉄所の増設工事にやはり輸銀を三億ドル、それからもう一つの麗水のあれでしたかに三億ドル。やはりこの二十億ドルの割り当てを日本は受けなきゃならないでしょう。IECOKに加盟しているのですからね。何億ドルかは年間に割り当てをやらなきやならないでしょう。それはそういう三億ドルずつの輸銀使用の分で何とかやりたいとあなたの方は考えているようだけれども、その割り当ての一部ですか全部ですか、これはどういうことなんでしょう。
  302. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 第一に、わが国はそのような義務を負っておるわけではございません。それから、ただいまのようなプロジェクトにつきましては、これから先の問題でございますから、それが出てまいりましたときに、わが国からの機材、プラント等の輸出が適当であるということになりますれば、輸銀がこの金融をするということはあり得ることと思いますが、ただいま決定もいたしておりません。
  303. 安宅常彦

    ○安宅委員 しかし、去年からあなた南という副総理と話したりいろいろやっておるようですし、実務者会議ではなるほど議題にならなかったかもしれないけれども、議題外としていろいろ話があったかどうかは新聞が書いていますね。だれかが、外務省の当局者が発表しない限り、その輸銀使用で三億ドルずつの六億ドルを前向きで検討するということに大体話が煮詰まったなどと書かないと思うんですよね。ですから、ざっくばらんに言っていただきたいのは、なるほど義理はないかもしれませんよ、二十億ドルの何割なんという義務はね。しかし、大体つき合いをやっている以上、通り相場というのはあると思うのですよ。やはりそのうちの五億ぐらいは出さなきゃならないのじゃないかというような、みんな一般世間の常識。だから、そういう問題は考えられ得る。まあ決定はしてないけれども、そういうことになるのではないかと思うということぐらいは、いまのうちに腹を固めておかなければ、来年の話じゃない、ことしの話ですからね。これは、あなたの見通しについて、ちょっとだけ——もし言えるのだったらですよ。まだ決まってないことはわかっている。それをちょっと答弁していただきたい。
  304. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 たとえば浦項の増設分の第三期でありますとか、麗水化学というようなものは、韓国が確かに第四次の計画の重点に考えているところでございます。が、それをわが国との経済協力において行うか。恐らく韓国はそういうことを考え、またわが国のメーカーも応札をしたいと考えておると思いますが、そういう話ができてまいりますれば、自然に輸銀の金融がついていくということは、これはあり得ることと存じます。ただ、計画の内容がまだ固まっておりませんし、何年間にその金融をするかということも実ははっきりいたしておりませんから、具体的には申し上げることができないというふうにただいまの段階では申し上げておきます。
  305. 安宅常彦

    ○安宅委員 そういう韓国の中でいろいろなことがいま起きています。在日韓国人、この人たちが向こうで、留学生が逮捕されたり、あるいは肉体的な拷問までされた、こういう女性が訴え出たり、あるいはまた予算委員長の御手配で、これは私どもなどというよりも自民党さんの筋の方にお願いをして日韓議員連盟の皆さんも署名していただいたり、三木さんの奥さんまで御署名をいただいたりして、人道上の問題として与党の方々も御努力を願った人を含めて、大変予算委員長が好意ある、そして激励をしていただいて、大変結構だと思います。内閣もいろいろやってくれることになったのを私は大変喜んでおります。  いろいろな問題がいま起きております。たとえば、韓国大使館の館員が外交官のナンバーの車で朝鮮総連の組織破壊のためにぐるぐる回ってみたり、それから坂本三次という人がおりますが、この人は日本人です。帰化した人ですが、日本人です。その家に朴載京という韓国大使館の参事官が行って取り調べをやっておる。これはわが党の参議院の田さんがやっていますが、こういうことがあっても——日本人であっても、在日韓国人だって、もちろん日本の国に税金を払っていますよね。こういう人々に対する対処の仕方がアメリカあたりと余りに違うのですね。アメリカは、KCIAだということがわかって何か好ましからざる行為をしたというとすぐ国外に追放する。日本は何もやらない。バランスをとるだとか友好のためだとか、あるいは内政干渉になるおそれがあるとか言って、自分の国の方は内政干渉をめちゃくちゃにされても黙ってじっとがまんの子ですよね。韓国大使館って日本にとって何なのさと言いたいところですよ。こういうことがたくさんあるのです。  きょうは時間がもうなくなりましたから私言いませんが、ほとんどやりませんけれども一つ、政治亡命というのが認められない。簡単に言えば政治亡命、そういうことで最高裁から判決を受けた尹秀吉さんというのがおられる。この人が密入国で入っておって、そして見つかって大村収容所に引っ立てられて、収容所の中から、これは大変だ、帰っていけば死刑か何かやられるというので裁判を起こして、一審は無罪、じゃなくて日本におれるようになったのですが、二審、三審は——こっちが裁判を起こしたのですから無罪もへったくれもないわけですね。裁判を起こして、最高裁で、結局、こういう政治亡命というか政治的難民というか、そういうことの不引き渡しのことは国際の慣行法になっていないんだということを理由にして、もう一つは、簡単に言えば、韓国に帰っても死刑にされたり殺されたり、身に迫害を受けたりすることはないはずだということなどを骨子として、そして結局帰りなさいという判決を最高裁はやってしまったのですね。このことについて私は非常に残念だと思うのです。最高裁は、三権分立ですから言いたくはありませんけれども、しかし非常に形式的な裁判だと思うのですね。いま日本国の国民なり在日韓国人なり朝鮮人なりというのは、韓国に行ったならば、政治運動なんかやったりいろいろな活動をやった人は直ちに殺される。日本人においていろいろな言動をして、朴政権というのはおかしいなんと言ったら、それは全部ひっかかる。外国人にもひっかかるというのですから、安宅常彦なんかもひっかかる、国会でがちゃがちゃやっているのだから。そういうところに行ったって罪やなんか受けないはずだなどということを、どういうことを根拠にして最高裁がやったのか。本当に法務大臣、あなたは共産党さんに対して奇妙きてれつだなどと言ったけれども、あんなのは奇妙きてれつじゃないですよ。これが奇妙きてれつだ、私らから言わせれば。これは裁判所が言うんだから、あなたを非難する意味で言うんじゃないから勘弁してくださいよ。いいですか。このことについて法務大臣としてどういう見解を持っているか、ぜひお聞かせ願いたいのです。
  306. 稻葉修

    ○稻葉国務大臣 御指摘の人物につきましては、法務省の退去強制令書発付処分が最高裁の判決によって適法性が確認されたわけであります。ただ、右処分の行われた昭和三十七年六月以来すでに十三年を経過しており、その間内外の情勢や本人をめぐる諸般の事情が変わってきていることを考え、今後の具体的措置については慎重に検討したいと考えております。
  307. 安宅常彦

    ○安宅委員 これは法務大臣にお伺いしますが、内外の情勢が変わってきている。——日本が治安維持法のときのような時代から平和の方に変わった、それとは違う。逆に、最高裁の判断した、まだ政治亡命なんて日本にする必要ない、帰りなさい、大丈夫だ、政治的な迫害なんか受けないはずだというあれから大変違ってきて、緊急措置は連発されるし、保安法は出る、反共法は出る、めちゃくちゃになって、今日たくさんの人が逮捕されている。日本から行った人も逮捕された人がたくさんいる。死刑までやられている。こういう状態に変わったというふうに受け取ってよろしゅうございますか。大臣、どうぞ。
  308. 稻葉修

    ○稻葉国務大臣 おっしゃるとおりのような情勢の変化があった、こういうことでございます。
  309. 安宅常彦

    ○安宅委員 これは総理大臣に伺いますが、どうでしょう。法務大臣がそこまではっきりおっしゃるのでございますから。この人は本当に仲間がおるのですよ。ある新聞を出しておった仲間がおる。その仲間の一人が、わが党の元代議士をしておった猪俣浩三先生という弁護士さん、この人のところに、大村収容所、これは困るというので、何とかならないだろうかと相談に来た人がいるのです。その人たちといま思想的に合わなくてばらばらになっているのですよ。ところが、思想的に合わない方の、この男さんの反対派の方は、密入国したのは同じなんですよ、だけれども、この人は特別在留許可をもらっているのですよ。ようございますか。そうしてこっちの方の反対だというのは三人ぐらいいるのですよ。尹さんの方に賛成の方が三人いる。この人は裁判を起こしたのだから特別在留許可をくれられないでしょうけれども、それよりも先にばかっと逮捕して、パクって大村収容所に真っすぐ入れる。つまり、韓国の現体制を批判した人は日本政府は特別在留の許可をくれないで、密入国のままにして、仮放免といってそのままあやふやな地位に置いておく。一人は捕らえて大村収容所へ送る。そして、いまの朴正煕の政権に忠実なグループは、同じ密入国してきたのですけれども、そしてその中には韓国で罪名を犯した人もいるのですけれども、この人たちは日本において法務省は特別在留の許可をやっておるのです。  そういう差別をやることが、一つ一つさっき言ったようにバランスを崩すことになるのですよ。これは大変大きな問題なんです。こういうことについては今後至急検討するということをまず法務大臣から言ってもらい——私の要求ですよ、それから総理大臣に最終的にお願いしたいことは、この人はどうしても日本にいなければならない。二十数年間いるのですから、そのうちの十三年間は裁判にかけていたのですから。この人は、スウェーデンですか何かから記者が来て、あなたはわが国に亡命しないかと言われて、いや日本にいたいのだ、だけれども、どうにもならないときは頼むかもしれないみたいなことを言ったら、亡命決定したなんて新聞に出されて実はおたおたしているのです。日本にいたいのですからぜひ日本におらしてください、お願いします、と私のところに来ているのです。ぜひひとつそういう昔の仲間と、いまは違うかもしれませんが、同じような同等の待遇をして、特別在留だけではなくて、もう三十年近く日本の生活に根をおろしているのですから、どうかひとつ在留という特別のやり方をやってあげる、こういうことを、慎重に考慮しますではなくて、そういうことを確答してもらえないだろうかというのが私の責任ある総理に対するお願いでありますけれども、いかがでしょう。
  310. 三木武夫

    三木内閣総理大臣 日本は亡命を許しておりませんから、その間いろいろの人道上の見地から見ても問題を起こしますが、これは十分検討いたします。
  311. 安宅常彦

    ○安宅委員 私はいわゆる亡命と、新聞に亡命と書いてあるから亡命と言っているのですが、何も亡命したいと言っているのじゃないのですよ。これは法務大臣、よくわかりますね。これは法務大臣——総理は知らないだろうから、総理は何を聞いたって知らないのだからしようがないのだ。先ほど言ったように、あなたから答えてもらいたいのです、具体的に。慎重に考慮じゃなくて、そして今度特別在留の、非常に悪い方のことじゃなくて、みんないられるようにしてくれということです。  それから居住地における条件なんかも、ここからどこに出てはならないと——いまは彼は埼玉に住んでいるのです。東京には来れないのですよ。国会を傍聴したいからぜひと言われて、私は法務省に特別にお願いしまして、東京の入管の所長さんとも連絡をつけてもらって、きょうは、書類は後で出すけれども、とにかく来てもいいということにして特別の計らいをしてもらったのです。首都圏にいる人が東京に来れないなんというようなばかな条件をつけないで、本当にあらゆる制限条件をつけないで日本に住まわせていただきたいというのがお願い。  それから聞きたいのは、世界人権規約というのが今度できましたね。A規約とB規約があって、A規約は一九七六年の一月三日に発効しています。三十五カ国の批准がなければだめだというのでいままで延び延びになっていたのですが、B規約も、これは市民的及び政治的権利に関する規約というのですが、これは、政治犯とかなんとかというよりも、人権的な立場から見たいろいろなそういう保護条約なわけですけれども、このB規約は一九七六年の三月二十三日に発効する予定になっているのです。日本はどっちも批准してないのです。ですから、亡命とは違って、政治的難民やいろんな立場の人がいるのですよ。亡命とあっさり言わないで。いいですか、総理。そういう立場の人をどういうふうに扱うかということは、日本の政治家は案外無知なんですね。われわれを含めて無知ですよ。ですから、こういう立場の人は、こういう規約を批准するなりして、そうしてただいま私がお願いを申し上げたことについて、慎重に考慮しますでなくて、それに近いようなことについて——具体的に条件がたくさんつきましたからね、後で。とにかく在留権は与えてもらいたいということは、そのとおりしましょう、ということを中心にして、後は少し考えさせてください、というような答弁ができないでしょうか。いかがでしょうか、法務大臣。
  312. 稻葉修

    ○稻葉国務大臣 安宅委員のお考えになっている人物が数名にのぼると思いますね、もっと余計かもしれませんな、人は。それらの人について、こっちは在留許可を与えた、こっちは仮釈放のままでほっておくというようなまちまちなことは人権擁護上不適当だと思います。しかし、おのおの事情が違えば別ですね、また条件が。ですから、それらのことにつきましては、本人の経過もございますから、それを調査した上、決して人権擁護上不公平にならないように、不公正にならないように善処いたします。
  313. 安宅常彦

    ○安宅委員 私は、それで本人も大変喜んでおると思います。差別にならないようにということがついた以上、善処の仕方というのは、片一方はもう在留権をもらっているんですからね、だから、そういうふうに理解しますから、結構だと思います。
  314. 稻葉修

    ○稻葉国務大臣 あなたのお考えになっている人人を、承知しました、全部在留許可を差し上げますと、こういうことを答弁しているんじゃありませんから、その点だけは……。
  315. 安宅常彦

    ○安宅委員 じゃ、法務大臣聞きますが、結局最高裁の判決は、韓国に行けという判決ですよ。ようございますか。だから、ほかの人は別として、この弄さんという人は、行けと言われるかおれと言われるか、二つ一つよ。ようございますね、中立なんてないんだ、これは。だから、いる以上はこういうふうにしてくれということを言ったのは、いるということも言わないうちに私は言ったから、日本にいさせてやりますということをまず言って、それから特別在留許可をくれるかどうかという問題と、もう少しはっきりした答弁をもらわないと私は困るんです。そういうことです。これはしかし相当私は打ち合わせておりますからね、余り木で鼻かんだような返事しないで、聞いてくれや。
  316. 稻葉修

    ○稻葉国務大臣 経過と事情をよく知っておる入管局長に確たる答弁をさせます。
  317. 影井梅夫

    ○影井政府委員 最初に最高裁の判決でございますが、これは退去強制の決定が行われました昭和三十七年の六月二十九日でございますが、この昭和三十七年六月二十九日の処分につきましての最高裁の判決でございます。したがいまして、この判決の中にはその後の情勢、今日に至りますまでの十三年以上の期間がございますが、この間の事情というものは含まれておりませんので、したがいまして、これは私どもといたしましては、その後の十三年余に及ぶ本人のいろいろな事情その他、これを詳細に聞きまして慎重に考えていきたい、こう考えている次第でございます。  それから第二に、先ほど御指摘の、一部にはすでに特別在留を許されている者があり、他に特別在留を許されていない者があるという御指摘でございましたが、特別在留を許されております者につきましても、これは十分に事情を調査いたしまして、本人の方からひとつよく調査してほしいというお申し出もありましたので、よく調査いたしました上でいたしました決定でございます。それから、特別在留を受けていない者につきましても、お申し出があれば、今回の尹秀吉に関すると同様に、私どもよくその事情を調査するつもりでございます。
  318. 安宅常彦

    ○安宅委員 確たる答弁じゃないね。確たる答弁じゃないじゃないか。  それでは、最高裁の判決はそうであるけれども、時日を経過して情勢が違っている、いろいろなその他の理由がある、したがって韓国に帰すことは法務省はやりませんということは、いさせるかどうかは別として、それは言えるんでしょう。情勢が変わっていますから慎重にやっているんだと言うんだもの。
  319. 稻葉修

    ○稻葉国務大臣 処分有効なりとする最高裁の判決どおりやる意思はありません。
  320. 安宅常彦

    ○安宅委員 これは名答弁です。珍しく名答弁だ、法務大臣。大変結構です。     〔小山(長)委員長代理退席、委員長着席〕  これは外務省に聞きますが、実は鄭義采という人が、一九七五年の十月一日から三十一日にかけて一カ月間、国際文化交流の目的をもって、国際交流基金の経費でもって、その経費は七十五万三千円出ているのですが、これは何か短期的に文化人を招待する事業の一つとして日本に入っているんですが、これは外務省がそれを認めてはおるんですけれども、こういう場合には、文化的にこういう文化人を招待した場合には、こういうところを回り、あるいはこういう事業をし、こういうことをやりましたという報告書ぐらいは、これはいただけないことになっているんでしょうか。金を出しっ放しなんでしょうか。いかがでしょう。細かい質問になるようですけれども、相当重要なんですけれども
  321. 西宮一

    ○西宮説明員 招聘者が帰国します前後あるいは帰国しましてから、簡単な報告をいただくことになっております。
  322. 安宅常彦

    ○安宅委員 これは、できるならば、大変失礼な言い方だかもしれませんが、情文局長ぐらい出ておいでになって、その人が答弁するようにしてください。大臣は遠慮していることは初めから私考えておりましたが、そういう運営を外務省もなさっていただけませんか。  そういう簡単な報告書というのは、もらっているでしょうか。
  323. 西宮一

    ○西宮説明員 本人から国際交流基金の方に提出かございました。
  324. 安宅常彦

    ○安宅委員 これは個人的な名誉のことにかかわるといけませんから公表しろとは言いませんが、私に見せていただくことはできるでしょうか。
  325. 西宮一

    ○西宮説明員 後ほどお届けいたします。
  326. 安宅常彦

    ○安宅委員 韓国からいろいろな名目でいろいろな人が参ります。芸術の研究に来たなんと言いながら、かの有名な「秘苑」というところで、そしていわゆるキーサンみたいな仕事——みたいなじゃない、キーサンの仕事をやっている人がたくさんおったり、私のところにも、日本の学校に入るんだということで、実際入っているんですけれども、夜は別な仕事をしている、こういう女の人が参りまして、それが、雇い主が金を余りくれないから助けてくれなんという人が来たりするんですよね。目的と現実とは非常に違った人が余りに多過ぎるんです。日本の法務省も大変だと思います。いまこっちも不景気だというのに、あの出かせぎだか何かわけのわからない何千人、何万人という人が、日本韓国から密入国をしている状態ですから大変だとは思いますが、少なくとも、こういう文化人なり学者なりそういう人は、そういう目的のために費用を、ほとんど旅費から滞在費は日本で負担しているのでございますから、きちっとした行動をとってもらいたいと私は思っておるのです。この人が悪いとは言いません、これはカトリックの牧師さんですから。私はそういう非難をして言うのではありません。この人を言っているのじゃありませんが、どうかひとつ、これは報告書を見せてもらった上でいろいろ討論したいと思いますから申し上げるのですが、こういうことについて法務省も非常に困るだろうし、特に外務省の場合、KCIAの要員が非常に動いている。  たとえば、さっきちょっと申し上げましたけれども、朴載京という参事官が坂本三次という人のところに——これは日本人です。国籍は日本なんですから、帰化したと言ったって、日本人ですよ。何世紀前帰化したら日本人で、この間帰化したら日本人でない——帰化した韓国人なんて書く新聞もありますが、そんなことはない。日本人です。そこに来ていろいろなことを尋問したりしているんですね。それを参議院の委員会で田さんが発言しているんですね。そういうことを警察庁あたりでは知っておられるのでしょうか。きょう警察庁、どなたか来ておられるはずですが。局長、来ておりますか。
  327. 三井脩

    ○三井政府委員 ただいまの点、私たちは把握しておりません。
  328. 安宅常彦

    ○安宅委員 これは国会の方の議事録に載っていますから、後でお見せしますから、あなたの方では言わなければ動かないのかどうかは別として、そういう事実があれば、日本人を在宅で取り調べたなんということば内政干渉でありますから、この問題は非常に重要な問題になりますので、警視庁に、その事実というものを田さんと私ではっきりさせに行きますから、そのときは措置をとるでしょうね。
  329. 三井脩

    ○三井政府委員 警察の任務は、申し上げるまでもないことでございますけれども、違法行為がある場合には、もとよりこれを取り締まるわけでございます。違法行為にわたらないというものについて、警察の出番がないということでございます。
  330. 安宅常彦

    ○安宅委員 警備局長、ちょっと待ってください。  これは国会で、そのときは恐らく私の記憶では、外務省だけではなくて、法務省かな、警察庁もその委員会へ出ておったはずです。だから、把握していませんというのは非常に悪い言い方じゃないんでしょうか。もしおったとすればですよ。いなかったらしようがないです。知っておるのですから、国会で問題になったくらいのことは新聞にも載っているのですから、把握しておりませんというのは非常に間違った答弁だと私は思うのですよ、三井さん。ようございますか。そういうときには、どういうことかと事情聴取するなりそういうふうにするのが当然ではないでしょうか。あなたら、つかんでおりません——まるっきりの木で鼻をかんだみたいな返事をするけれども、その委員会には警察庁もどなたか呼び出されているはずであります。知らないとは言わせないわけですね。日本の警察というのは世界でも有名な警察でしょう。そういう御答弁をなさらないで……。私は後で田さんと二人で御相談に上がりますよ。そういうときのことについてはここで答弁しろと言ったって、聞かなければわからないと言われればそれまでですから、もう言いません、時間が来たから。  ただ問題は、あなたの方では、国会でも問題になったのを把握しておりません、それから国会で問題になったと新聞に出ている、これも把握しておりません、こんな警察は世の中にない。  公安委員長、気をつけてください。あなた、どうですか。そんなことを知らないでいる警察はちょっとまずいのじゃないでしょうか。
  331. 福田一

    福田(一)国務大臣 安宅委員の御指摘になりました案件について、警備局長が事情をつまびらかにしておらないと御答弁しておるのでありますが、ただいま御指摘がありましたので、十分に調査をいたしてお答えをすることにいたします。
  332. 安宅常彦

    ○安宅委員 終わります。
  333. 荒舩清十郎

    ○荒舩委員長 これにて安宅君の質疑は終了いたしました。      ————◇—————
  334. 荒舩清十郎

    ○荒舩委員長 この際、参考人出頭要求に関する件についてお諮りいたします。  明五日、日本鉄道建設公団総裁及び新東京国際空港公団副総裁の出席を求め、意見を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  335. 荒舩清十郎

    ○荒舩委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決定いたしました。  次回は、明五日午前十時より開会いたします。  本日は、これにて散会いたします。     午後四時五十七分散会