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1976-02-03 第77回国会 衆議院 予算委員会 第6号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十一年二月三日(火曜日)     午前十時一分開議  出席委員    委員長 荒舩清十郎君    理事 井原 岸高君 理事 小山 長規君    理事 塩谷 一夫君 理事 正示啓次郎君    理事 山村新治郎君 理事 小林  進君    理事 楢崎弥之助君 理事 松本 善明君    理事 山田 太郎君       伊東 正義君    上村千一郎君       植木庚子郎君    江崎 真澄君       小澤 太郎君    大野 市郎君       奥野 誠亮君    北澤 直吉君       倉成  正君    黒金 泰美君       櫻内 義雄君    笹山茂太郎君       瀬戸山三男君    田中 龍夫君       谷垣 專一君    西村 直己君       根本龍太郎君    野田 卯一君       藤井 勝志君    保利  茂君       細田 吉藏君    前田 正男君       森山 欽司君    安宅 常彦君       阿部 昭吾君    阿部 助哉君       石野 久男君    岡田 春夫君       田中 武夫君    多賀谷真稔君       堀  昌雄君    安井 吉典君       湯山  勇君    庄司 幸助君       中島 武敏君    林  百郎君       大橋 敏雄君    岡本 富夫君       河村  勝君    小平  忠君       玉置 一徳君  出席国務大臣         内閣総理大臣  三木 武夫君         国 務 大 臣         (経済企画庁長         官)      福田 赳夫君         法 務 大 臣 稻葉  修君         外 務 大 臣 宮澤 喜一君         大 蔵 大 臣 大平 正芳君         文 部 大 臣 永井 道雄君         厚 生 大 臣 田中 正巳君         農 林 大 臣 安倍晋太郎君         通商産業大臣  河本 敏夫君         運 輸 大 臣 木村 睦男君         郵 政 大 臣 村上  勇君         労 働 大 臣 長谷川 峻君         建 設 大 臣 竹下  登君         自 治 大 臣         国家公安委員会         委員長         北海道開発庁長         官       福田  一君         国 務 大 臣         (内閣官房長         官)      井出一太郎君         国 務 大 臣         (総理府総務長         官)         (沖繩開発庁長         官)      植木 光教君         国 務 大 臣         (行政管理庁長         官)      松澤 雄藏君         国 務 大 臣         (防衛庁長官) 坂田 道太君         国 務 大 臣         (科学技術庁長         官)      佐々木義武君         国 務 大 臣         (環境庁長官) 小沢 辰男君         国 務 大 臣         (国土庁長官) 金丸  信君  出席政府委員         内閣法制局長官 吉國 一郎君         内閣法制局第一         部長      角田礼次郎君         公正取引委員会         委員長代理   橋本 徳男君         公正取引委員会         事務局長    熊田淳一郎君         公正取引委員会         事務局経済部長 吉野 秀雄君         公正取引委員会         事務局取引部長 後藤 英輔君         経済企画庁調整         局長      青木 慎三君         経済企画庁国民         生活局長    藤井 直樹君         経済企画庁物価         局長      喜多村治雄君         経済企画庁総合         計画局長    宮崎  勇君         環境庁自然保護         局長      信澤  清君         環境庁水質保全         局長      堀川 春彦君         法務省民事局長 香川 保一君         外務省条約局長 中島敏次郎君         外務省国際連合         局長      大川 美雄君         大蔵省主計局長 吉瀬 維哉君         大蔵省銀行局長 田辺 博通君         文部省初等中等         教育局長    諸沢 正道君         農林大臣官房長 森  整治君         農林大臣官房予         算課長     石川  弘君         農林省農林経済         局長      吉岡  裕君         農林省構造改善         局長      岡安  誠君         農林省農蚕園芸         局長      澤邊  守君         農林省畜産局長 大場 敏彦君         農林省食品流通         局長      今村 宣夫君         水産庁長官   内村 良英君         通商産業審議官 天谷 直弘君         通商産業省立地         公害局長    宮本 四郎君         通商産業省生活         産業局長    野口 一郎君         資源エネルギー         庁長官     増田  実君         中小企業庁長官 齋藤 太一君         労働省職業安定         局長      遠藤 政夫君         労働省職業訓練         局長      中原  晁君         建設省計画局長 大塩洋一郎君         自治省行政局長 林  忠雄君         自治省財政局長 首藤  堯君  委員外出席者         参  考  人         (日本銀行総         裁)      森永貞一郎君         予算委員会調査         室長      三樹 秀夫君     ————————————— 委員の異動 二月三日  辞任         補欠選任   染谷  誠君     江崎 真澄君   田代 文久君     庄司 幸助君   正木 良明君     岡本 富夫君   矢野 絢也君     大橋 敏雄君   河村  勝君     玉置 一徳君 同日  辞任         補欠選任   大橋 敏雄君     矢野 絢也君   岡本 富夫君     正木 良明君   玉置 一徳君     河村  勝君     ————————————— 本日の会議に付した案件  昭和五十一年度一般会計予算  昭和五十一年度特別会計予算  昭和五十一年度政府関係機関予算      ————◇—————
  2. 荒舩清十郎

    ○荒舩委員長 これより会議を開きます。  昭和五十一年度一般会計予算昭和五十一年度特別会計予算及び昭和五十一年度政府関係機関予算、以上三案を一括して議題とし、総括質疑を行います。玉置一徳君。
  3. 玉置一徳

    玉置委員 私は民社党を代表いたしまして、景気浮揚策についてまずお伺いを申し上げたいと思います。  政府は五十年度の経済成長は二・六%と見積もっておいでになりますけれども地方における財政の逼迫によりまして、思うように公共事業が消化し得ていない。その他酒、たばこ等々の値上げを含めまして、二・六%が確実に達成できるかどうかということに若干の懸念を抱くものでありますが、どのようにお考えになりますか。福田総理からお答えいただきたいと思います。
  4. 福田赳夫

    福田(赳)国務大臣 今年度は設備投資が大変な落ち込みをいたしまして、実質でも約一〇%ぐらい減りそうであります。それから、輸出が大変な見込み違いでありまして、見通しよりは百億ドルも減る、こういうような状態で、結論としてはこれは横ばいぐらいなところになろうと思うのです。そういう状態ですから、なかなか厳しい情勢ではありますが、政府が第一次から第四次まで、財政中心とする施策をとっております。その結果、財政需要がかなり進みまして、プラス八%ぐらいになると見ておるのです。また、個人消費がはかばかしい状態ではございませんけれども、なお着実に伸びている。これは五%ぐらい伸びる。そういうことを総計いたしまして、年率二・六%ぐらいなところになる、大体その辺に行くのだろう、こういうふうに見ております。
  5. 玉置一徳

    玉置委員 続きまして消費者物価でございますけれども、五十年度末に一けただというので非常に努力をいただいておるわけでありますが、野菜異変その他なかなか思うに任せない要素も入ってまいります。東京都内等では一けたがあるいはむずかしいのじゃないかと思われておりますけれども諸般施策を講ずることによってこれを一けたに抑え得るかどうか、これもひとつ所見をお伺いしておきたいと思います。
  6. 福田赳夫

    福田(赳)国務大臣 消費者物価は、かなり基調としては鎮静でございます。季節的商品動きで流動的ではありますが、とにかく暮れ、十二月の消費者物価指数は八%ということになっておりますが、野菜が一月になってからかなり暴騰でございます。それから、季節的な関係もありまして、魚が上がってくる、こういうようなことがありまして、一月の東京区部の消費者物価指数は一〇%というところに来ておるわけであります。これから先を展望してみますと、二月、三月おのおの〇・九一%の上昇以内にとどまりますれば一けたという目標の実現ということになるわけでありますが、けさも閣議で、特に野菜対策に非常にいま努力している旨の農林大臣からの報告もあり、政府といたしましてもいろいろな施策を講じておりますので、何とか一けたという目標はいけるのじゃないか、万難を排してひとつこの目標を実現いたしたい、かように考えております。     —————————————
  7. 荒舩清十郎

    ○荒舩委員長 質疑の途中でありますが、ただいまオーストラリア国会議員団ステイリー団長以下三名の方々が傍聴に見えられましたので、御紹介申し上げます。     〔拍手〕     —————————————
  8. 荒舩清十郎

    ○荒舩委員長 玉置一徳君。
  9. 玉置一徳

    玉置委員 以上、冒頭に質問をいたしましたのは、私は今年度の二・六%経済成長等諸般の事情でうまくいかなかった場合には、その上に算術的に足し算をするのではないだろうけれども一つのカーブとして前進をしていく基底が、それがもしも二・六がゼロになるというような形になりますと、次に五十一年度の指向しておいでになります五・六%というものが、達成が危なくなるんじゃないだろうかというような懸念からいま申し上げたのであります。そこで、それについてはどのような所感をお持ちになっておりますか。
  10. 福田赳夫

    福田(赳)国務大臣 二・何%というパーセントまで私はこだわっておりませんけれども、大体二・六%、その周辺ですね。これが五十年度におきましては実現される、こういうふうに見ております。当初四・三%成長ということを言っておったのが、そういうふうに下方修正をせざるを得なくなってきた。これは設備投資が思ったよりは大変な落ち込みになった、それから輸出の激減ということでございますが、それに対処いたしまして政府が第一次から四次までの対策をとりました。その第四次が、いま玉置さん御指摘地方財政関係なんかもありまして、かなりこれはずれてきておる、こういうふうに思うのです。しかし、ことしになりましてからは、一−三、これが順調に政策効果を発揮する、こういうふうに見ておりますので、二・六%成長、大体その周辺目標に達し得るのではないか、そういうふうに考えておりますが、仮に多少のずれがありましても、一月から来年の三月、つまり十五カ月をとってみますときには、大体私どもが展望しておる軌道を歩んでいくだろう、こういうふうに見ております。
  11. 玉置一徳

    玉置委員 そこで、五十一年度の予算公共事業主導型で、その上に米国の景気の回復と、それからプラント輸出を主軸としました輸出好転と相まちまして五・六%の経済成長率達成をおっしゃっておりますけれども、私はこの程度公共事業、つまりGNP百六十八兆円のところに三兆五千億円程度の、あるいは地方財政を入れましても七兆円程度公共事業でもって景気浮揚さすというのは少し行き過ぎじゃないだろうか、こう思います。ましていわんや、プラント輸出等主導型の輸出好転ということも好ましいことでありますけれども、いたずらに企業間格差を広めるのじゃないだろうか。やはり繊維あるいは工作機械造船その他の不況産業に至りましては、それぞれの業種において構造改善的な施策を講じながら、あわせて全般の景気浮揚基調ができてこなければ、私は、堅実な低成長時代に対応した安定成長安定帯というものには到達し得ないのじゃないかということを思うのであります。したがって、依然ここ一年二年は不況産業においては何らかのそういう手をきめ細かく講じない限り、雇用問題等々はここ一、二年引き続いて大きな問題として処理をしなければならないように迫ってくる、かように思いますが、どうお思いになりますか。
  12. 福田赳夫

    福田(赳)国務大臣 御指摘の点は、私も全く同感でございます。いまわが国経済は、石油ショックによる混乱からの脱出という問題ももちろんあるわけです。これらが緊急の問題ですが、同時に、その危機を脱出した後の日本経済をどういうふうに運営するかというまたもっと基本的な問題、この二つの課題に取り組んでおるわけであります。  そこで、五十一年度、これを不況からの脱出の最後の年という構えで不況脱出方策を進めておるわけでございますが、同時に、この過程におきまして、それから後日本経済は一体どういうふうになるか。もう再び高度成長時代を復元するわけにいかぬ。そうすると、かなり低目の成長のもとに各企業とも運営しなければならぬ。その大きな転換に対応いたしまして、企業不況脱出過程において、将来への対応のための姿勢転換を行わなければならぬ。そういうときになっておりますので、そういう問題はまた緊急の対策と並行いたしまして、企業はどうあるべきか、その体質改善をどうするかという課題といま取り組んでおる、こういうことでありまして、全く私は御所見のとおりに考えております。
  13. 玉置一徳

    玉置委員 通産大臣にお伺いしたいのですが、わが国産業は、この不況からの脱出と同時に、それはどこまでも海外の競争力に耐え得るような産業として、体質を強化しなければならない宿命を一方には担っておると思うのです。ただいま申しましたとおり、繊維工作機械造船あるいは製鉄の部門におきましては平電炉、特殊鋼、こういうものにつきましては何らかの構造政策をやって、それに政府施策をきめ細かくやっていかないと存続もし得ないし、また体質の強化されたものが成長しない、こういう感じがしますが、通産大臣としてはそういう部門ごとの何らかの構造政策をお立てになる御用意があるかどうか。     〔委員長退席、正示委員長代理着席
  14. 河本敏夫

    河本国務大臣 いろいろ不況対策を立てておりますが、私どもが特に注意をしておりますのは、中堅企業に対しましていま特別の配慮を払っておるわけであります。中小企業は、御案内のように三機関中心といたしましていろいろ手厚い対策がございますし、特に最近は返済猶予とかあるいは担保等につきましても弾力的に運用する等、きめ細かい対策を立てておるのですが、中小企業よりやや上の資本金二、三億から大体十億前後、ここらあたりの企業日本で約八千ばかりございますが、このうち若干の業種につきまして監視体制を強化いたしまして、毎月業界ごと報告を聴取しておりますし、それからその業界におきまして特に要注意というふうな企業に対しましては、特別に経営の内容の推移につきまして関心を払っております。そして、問題が起こりそうになった場合には、日本銀行大蔵省とも相談をいたし、また関連の取引先等に対しましても特別に援助を要請する等、いろいろ配慮をいたしまして倒産等の起こらないように十分気をつけております。  それからまた、そのほかの動きといたしましては、これだけ不況が長引きますと、やはり業界に合併とか業務提携とか、そういう再編の動きが起こってまいりますが、これはもちろん自主的にそういう動きが起こることは大変結構なことだと思います。それに対しては、政府は積極的にバックアップしていく、こういう体制をとっております。  そういう一連の不況対策を考慮しながら、やはりいまお述べになりました、一方においては積極的に国際競争力を確保していく、また強めていくということ、これが非常に大事なことでございますので、その方の対策もあわせて当然やっていかなければならぬことであると考えております。
  15. 玉置一徳

    玉置委員 そこで、このような不況産業の現に一番困っておることは、借入金に対する金利だと私は思います。あるところで伺いますと、人件費全額が経費の五〇%とすれば、二〇%が金利だと言います。そのくらい金利の負担というのは苦しいのです。新規採用の抑止をしたりあるいは人員の配置転換をするなり、合理化を徹底的に追求しながら、なおかつ借入金三千億円程度のものの二百数十億円の金利だけが結局赤字として残っていく。しかも工場を売りながら、売ったものでその赤字を幾分減らしていっておるというのが現状じゃないかと思います。片や御案内のとおり、中小企業におきましては、借入金償還条件変更というようなことで、一年それを後ろに回したりいろいろなことを役所も政府系三公庫もやってくれているわけでありますが、いまの中堅企業以上になりますと、どうしても市中銀行に頼っておるわけでありますので、この点について日銀総裁にお伺いしたいのです。  今度は民間企業が非常に苦しい。本当に倒産寸前にあえいでおるにかかわらず、銀行だけは御承知のとおり所得番付の上位の八番目まで独占した。それから、超過所得に対する税を今年撤廃しました。いまだったら産業界ではほとんどありません。まるっきり銀行のためにあれは廃止したような感じすらするわけであります。銀行は、いまこそ国民的な社会的な責任を痛感して、本当に日本のこの不況を乗り切るために国や業界民間方々とともに苦労しなければ、風当たりが非常に強くなるんじゃないかということをかえって私はおそれるわけであります。したがって、ただいま申しましたとおり、せっかく経常収支とんとんまできておりますけれども、二百数十億円の企業赤字というのは何だというと、それは借入金金利であるわけであります。こういうものについて日銀も何らかの手を講ずることによりまして、債権銀行団と申しますか、そういう方々がよくその企業の実態を見まして、償還計画変更するとかあるいは金利をもう二、三%下げるような運営方法を講じることによって、ともに苦労することによって、私は銀行というものは永遠の繁栄があり得るんだと思います。ぜひともこの点だけは御承知願い、御努力をいただきたいと思うのでありますが、総裁の御所見を承りたい、こう思います。
  16. 森永貞一郎

    森永参考人 銀行利ざやは逐次縮小はいたしておりますが、それでもお説のように比較的余裕のある決算をいたしてまいりましたことは事実でございます。  昨五十年上期では総体的には約一割の減益になっておりますが、そしてまたいま申し上げましたような利ざやの逐次減少ということがございますので、今後さらに利益は減少していくものとは思っておりますが、それにもかかわらず比較的に余裕がございますので、その余裕がある限り貸出金利の一層の低下努力をしなければならないことは当然の責務だと思っております。公定歩合の引き下げが始まりましてからのそれに追随する市中金融機関貸出歩合低下は、今回の場合は前二回の場合よりも比較的順調でございますが、預金金利も下がったことでございますので、なお一層金融機関貸出金利低下努力をすべきだと思っております。  先般、預金準備率を引き下げました場合にも、特に金融機関代表者を招致いたしまして、今後なお一層金利低下努力をしていただくよう要請したのでございますが、全銀協あるいは地銀協等におきましては早速機関の申し合わせをいたしまして、今後さらに金利低下を図る努力を誓っておりますので、さらに低下を見ていくものと期待をいたしておる次第でございます。
  17. 玉置一徳

    玉置委員 総裁、今後引き続いて実勢金利を引き下げるように御努力を願うという御決意はありがたいのですけれども、私の言わんとしておるところは、まさに倒産寸前にあえいでおるような不況業種がございます。それが従業員三百人なれば、中小企業として政府系金融機関によりまして償還条件変更等を、一番苦しい一年間くらい考えられることによって、私はこの苦難を乗り切っていっておると思うのです。同様なことを三百人以上の大企業中堅企業にも、市中銀行のことでありますので、日銀が何とか手を打つことによって、そういう条件変更等をお考えいただきたい。そのことは、会社が倒れまして裁判所に申請をして会社更生法適用になれば、適用中は利子が免除されるわけであります。そのようなことを考えれば、事前にそのことをやることが私は大きな雇用問題、社会問題を発生させないための必要な緊急事だと思いますので、お願いをしておるわけでありますが、重ねて御答弁をいただきたいと思います。
  18. 森永貞一郎

    森永参考人 全体として金融量的緩和並びに金利低下を促進しておるというのが現在の私ども施策運営姿勢でございますが、お話のございましたように、個々の企業につきましてもミクロ的な配慮を怠ってはならないと思っております。特に健全な経営方針でやってまいりました企業が、金融のために企業の維持ができなくなるというようなことは極力避けなければならないわけでございますので、特に繊維業等につきましては、所轄の支店長に対しまして、管下の企業に対しまして常にきめ細かな配慮をするように金融機関の協力を求めていくようにという指導方針をとっておるわけでございまして、今後とも健全な企業が、単に金融のために行き詰まるような事態を極力回避するための努力は続けてまいりたいと思っております。
  19. 玉置一徳

    玉置委員 総裁お話は、先ほど私が申しましたとおり、健全な企業が一生懸命苦労しながら再建強化方策を講じておるときに、その相談にはあずかる、そうして担保も悠々存する限り、一つの何と申しますか、償還計画の若干の変更です。私の言うておるのは、一年なら一年だけをせめてその半分なりとも後年度、一年後に回してあげるとかいうようなきめの細かい手を打ってあげていただきたい。そのことを今後指導していただくように御了承いただいたものと考えたいと思います。  そこで、それと並行いたしまして、一般的な金利、先ほど申しましたように、人件費五〇%、銀行金利二〇%というのが極端な例かもわかりませんけれども、そういうことになっておると、みんな銀行のために働いておるようなものでして、本当にこれはゆゆしき問題だと思います。したがって、なお一層公定歩合も下げ得られるだけ下げていただきたい。  というのと同時に、大蔵省にお伺いしたいのですが、同じような意味で歩積み両建て。先般の予算委員会アンケート調査もする、こういうお話でありましたけれども、私は大蔵省銀行局の局長なんかを経験された方が銀行の頭取をたくさんされておる、そういう実例から考えてみても、言うべくしてこれはなかなかできぬ話じゃないかなと、何回もこのことを繰り返してきょうまで予算委員会でやっておるけれども、実効が余り上がらぬ。しりに火がついてくるようになってきたら、そういう答えだけはいただける。こういうのですが、できればこれは銀行局でアンケート調査するのじゃなしに、市中の興信所その他第三者機関を使ってアンケート調査をするようなことをされることは、非常に当予算委員会としては望ましいことだと思いますが、それに応ずる意図はあるかどうか。
  20. 田辺博通

    ○田辺政府委員 歩積み両建ての問題につきましては、私どもの行政上の目的の中でも重点項目にしておるわけでございまして、先般大臣から、直接企業側に対して銀行局から調査をすることを検討中であると御答弁されましたのですが、それはまさにいままで私どもが行政上の目的をもちまして金融機関から年二回の報告を徴しておるわけでございますが、その数字はかなり改善の跡が見られていると判断されるわけでございますけれども、いろいろと他の面から実態はそういう実態ではないというようなことも聞こえますし、また公正取引委員会が別途これは中立的な立場と申しましょうか、アンケート調査を実施しておられますが、それによりましてもいわゆる狭義の拘束比率とそれから広義の拘束比率と二つの分類をされておるようでございます。これはいろいろ問題がございますけれども、私どもは本当に拘束しておるか拘束していないかというものをはっきりさせまして、その拘束しておるものについては所要の措置をするという方針でまいっておるわけでございまして、そのところがどうも本当に拘束しているのか、拘束してないけれども事実上何となく遠慮があって引き出せないというようなものがあるらしい、そういう点から実態を、銀行側からだけではなくて、直接企業側に対してアンケートをしたいと思っております。これは私どもの行政上の目的から出るものでございますので、やはり私どもの方から調査をすべきものだろうと思います。  第三者的な機関からのアンケートをさせたらどうかという御提案でございますけれども、これにつきましては先ほども申し上げましたように、公正取引委員会によるところの調査もございますし、もちろん自主的に組合なり、あるいは全国的な機関というようなものが、そういうものを調査なさることは私は歓迎いたしますけれども、私の方からお願いをするというようなことは現在は考えておりません。
  21. 玉置一徳

    玉置委員 大蔵当局にお伺いしたいのですが、私は予算委員会その他を通じまして何回も、この問題の注意を喚起しておっても、同じことがずっと繰り返されておる。そこにまた業者そのものも一つの錯覚を持っておるのかもわかりません。いわゆる狭義の歩積み両建てと、それから広義の歩積み両建て。特別、狭義というのは本当によくないんだというもの。それはどういうのが狭義であり、どういうのが広義であるか、この際、明らかにしていただきたいと思います。
  22. 田辺博通

    ○田辺政府委員 公正取引委員会アンケート調査で、狭義の拘束預金と広義の拘束預金と二通りの調査をなさっている。その狭義の拘束預金というのは、この調査書によりますと「借入または手形割引に関連して、質権の設定、預金証書差入れ、念書、口約束等によって拘束されている預金をいう。」、それから広義の拘束預金というのは「上記の預金には入らないが事実上引出せない預金をいう。」、この両方、足したものを広義、こういうぐあいにされているようでございます。私どもの方で過当な歩積み両建てを自粛するようにと厳しく指導しておりますのは、まさしくこの「質権の設定、預金証書の差入れ、念書、口約束等によって拘束されている預金」、これを対象にしているわけでございます。
  23. 玉置一徳

    玉置委員 そこで、もう一つ、この際、御提案を申し上げておきたいのですが、銀行から金を借りるときに担保を設定しまして、その印紙税、登録税まで、金を借りる方が出しておる。金を借りるんだからやむを得ぬかもしれませんけれども、おかしな話で、考えてみれば、抵当権を設定してもらって、あなたの方へ差し入れますというのは、向こうが自分の債権を確保するための手段であります。これはおかしいとお思いになりませんか。検討の余地のない問題か、昔からやっているんだからこれはいたし方ありませんと言うのか。大蔵大臣どうお思いになりますか。担保を設定して金を借りる。金を借りた者が抵当権設定をしてもらうのか何か知りませんけれども、その印紙税、登録税というものは全部金を借りた個人が出しておる。それは銀行の債権を確保する手段である。これもおかしな話だと思うのですが、この際検討に値するかどうか。即答は無理としても、所見をお伺いしたいと思います。
  24. 田辺博通

    ○田辺政府委員 これは、お互いに商取引上の慣習と申しますか、いろいろ物の取引の場合に印紙を張らなければならないとか、証明書を持ってこなければいかぬとか、そういうことはございますので、それをどちらが負担するかというのは、まあ商取引の実際の、その両方の話し合いにゆだねられるというのが当然ではないかと思います。これを特に細かく、その手数料等を銀行の方が負担しろというようなところまでは、ちょっと行政指導としても行き過ぎではないかと考えております。
  25. 玉置一徳

    玉置委員 この問題は、商習慣のこともわかっておりますが、あのくらい利益を上げておるなにを見まして、金を借りに行くのはきゅっと言って大赤字を出しておる企業であります、少し、おかしいのじゃないかと思うので、どのくらいの印紙税、登録税を払っておるものか、ひとつ概算でも構いませんから資料を提出いただきたい。そしてなお機会があれば議論をして詰めていきたい、こう思います。(「登記料もだ」と呼ぶ者あり)登記料も。  それから、いまの歩積み両建てにつきまして公取委員長にお伺いしたいのです。  あなたの方は、どのような根拠の法規に基づいて、どのような調査をしておいでになりますか。そして、このような社会的な世論の沸き立っておるときに、今後どのように対処しようと思っておるか。そして、いまスタッフは何人おるのか。これだけをひとつお答えいただきたいと思います。  なお、あわせまして時間の関係で、判例があるようにお伺いしておりますけれども、被害者個人の被害を救済するような何かが判例の中にありはしないか。ありましたらお答えをいただきたい、こう思います。
  26. 橋本徳男

    ○橋本(徳)政府委員 歩積み両建ての問題につきましては、独禁法の第十九条、いわゆる不公正な取引方法、それの指定がございまして、優越した地位の乱用という規定がございます。これは告示でございますが、それを根拠にいたしまして歩積み両建てをわれわれの方では規制したいというふうな考え方で、現在、調査とか監視をやってきております。  調査につきましては毎年二回、先ほど大蔵省の方から御説明がありましたので、細かいことは省略いたしますが、そういう形で調査をいたしまして、これは、われわれの方は具体的に中小企業八千社から調査をやっておりますので、中小企業の方が、自分らが拘束されておるというふうに思ったものをその資料に書いてきておるというふうなことで、その調査からまずマクロ的に把握をし、こういうものの傾向を十分監視をしてきております。従来までのところの傾向としては、ごく最近のものは集計はまだでございますが、昨年あたりまでの状況では、一時に比べますればかなり改善はされてきておるというのが実態だろうと思うのでございます。  それから次に、この問題につきましてどう今後やっていくかというお尋ねがあったかと思うのでございますが、この点につきましては、公正取引委員会の取引課というところが不公正な取引を全般的に監視しておりまして、問題のあるものにつきましては審査部の協力ないし審査部に回しまして、そこで具体的にやっていくという形になっております。  その不公正な取引の一環として現在、この歩積み両建ての問題をやっておりますが、必要に応じまして、そういったものにつきましては取引部全体として、機動的な人の活動によりまして十分、特に最近のような状況におきましては、その的確な把握と指導に努めたい。それからまた非常にわずかではございますが、具体的な問題も持ち出されておりますので、こういった問題につきましては個別に金融機関等から事情を聴取しております。そうしますと即刻改善されるというのが実態でございます。  それからもう一つ、判例でございますが、かつて岐阜の信用組合で非常に大幅な歩積み両建てをしたということで裁判になりまして、岐阜の地裁では、独禁法違反で無効である、したがって、債権全体が効力を失うといったような判決が出ました。しかし、それが名古屋の高裁におきまして、確かに独禁法違反である、しかし、債権全体が無効とは言えないというふうなことで、その違反の部分だけ無効であるというふうな形をとっております。この点につきましては、まだ最高裁までいっておりまして、そこで、いま係争中でございますので、われわれからの判断は差し控えさせていただきたいというふうに考えておりますが、いずれにいたしましても、独禁法上は十分今後とも厳重に監視し、指導してまいりたい、こう思っております。
  27. 玉置一徳

    玉置委員 総理にお伺いしたいのですが、先ほど申し上げておりましたように、一般的な景気は、公共事業だけですべてのものが片づくというようなわけにはまいりません。プラント輸出等の大きな好転が見込まれますので、これはいいことだと思うのですけれども、これとても不況産業全部にまで、そう直接に潤うものではない。こういうことになってまいりますと、先ほど申しましたとおり、非常に大きな問題は、やはり金利の問題というのは、不況産業、個々の企業にとりましては重大な要素である。中小企業に至りましては、通産省その他大蔵省等のあっせんによりまして、償還計画変更等で危機を脱しておるわけでありますので、ただいまも日銀総裁に私が特にお願いをしておきましたとおり、大蔵省その他、通産省あるいは運輸省等も関係があると思いますが、各省がやはりそういう配慮のもとに、この不況産業のここ一年、二年の体質強化までの間の特段の配慮が必要だと思うのですが、さもないと大きな雇用問題を発生しかねまじいので、特に御要望申し上げたいと思いますが、御所見をお伺いしておきたいと思います。
  28. 三木武夫

    ○三木内閣総理大臣 玉置君の御指摘のように、金利負担というものが非常に企業経営に重圧を加えている。日本のは自己資本が一八・三%です。アメリカなんかは六〇%もいっているのが普通で、三、四〇%は西欧でも自己資本でやっているわけです。こういうので、やはり、この問題は資本市場なんかの育成の問題もありましょうし、いろいろ、すぐに一遍にというわけにはいかぬにしても、その間、将来はやはり自己資本を充実していかなければ、不況になってきたときに、終身雇用制からくる雇用面の重圧、自己資本が少ないことからくる金利面の重圧で、企業がまいっているわけですから、この問題については政府が、体質改善をするまでの過程は、やはりいま御指摘のように——実際の公定歩合なんかが下がってくると、実際、公表金利は下がっているのですよ。去年の三月から暮れまでの間に〇・九%ぐらいは全国の銀行金利水準は下がっている。けれども実勢金利が、預金を凍結されるものですから、そういう意味で実勢金利というものはいま言ったように一〇%を超えるような状態になっている。こういう中小企業のみならず企業をめぐる環境というものは、もっと適正成長期に即応したような一つの環境をつくらなければ、企業というものは非常に諸外国と競争していくのについてハンディキャップになります。いままでは高度経済成長ですから、金を借りてやらなければ間に合わなかったわけでしょう。今度は緩やかな成長ですから、いままでのような状態でもないですから、こういう点で、そういう日本を取り巻く企業の環境の整備のつくまでは、いま御指摘のように各省が、日本銀行も含めて、できるだけ中小企業金利負担を少なくするような努力というものは、御指摘のとおり、しなければならぬというふうに考えておるわけでございます。
  29. 玉置一徳

    玉置委員 そこで、労働大臣にお伺いしたいのです。  いまや、ずっとお話をしてまいりましたとおり、結局、不況産業は、ここ一年、二年、なお企業としては合理化の追求を徹底的にやっぱりしていかざるを得ないようなところへ追いやっているのだと思います。そこで、ここ二月、三月、なお失業者が増加するような見込みがあるように思いますけれども、雇用問題で、せっかく御努力をいただいております雇用保険法におきます調整交付金の制度は、それなりに大きな効果を上げたと思います。しかしながら不況産業は、この短期間を目標にしたものだけでは若干間尺に合わないような感じがいたします。  そこで、不況の長期化にかんがみまして、雇用保険法の調整交付金の業種指定を延長していただいたものもございますが、さらに再々延長をとりあえずお考えいただきたい、実行していただきたい。  二番目に、同時に、改めて指定を受けたものは、七十五日間の給付を受けておったものも、再度、改めて受け得られるように当面お手当てをいただきたい、こう思います。  と同時に、ただいま申しましたとおり、調整交付金のこの制度も、六カ月ないし一年ぐらいの不況には非常に即効がございますけれども、このような長期の見通しをまだせざるを得ない現状においては、さらに長い対応策を至急にお考えいただく必要があると思います。  このことにつきまして、三問につきまして御答弁をいただきたいと同時に、時間の節約のために一緒にお願いをいたしますが、九十日分の給付の追加というものは、企業が四%以上の失業率を出したときにという基準でありますが、先ほど来お話があるとおり、日本の特殊事情によります会社内における潜在失業者のことを考えれば、四%というのは酷じゃないだろうか。このぐらい不況で、いまだかつてなかったような不況におきましても三%を若干上回るというのが現状でありますので、こういうときにそれが発動でき得ないようなことでは、空文に等しいことになりますので、重ねて四番目として、この点も検討願うわけにはいかぬだろうか。こういうことを特にお願いを申し上げ、御答弁をいただきたいと思います。
  30. 長谷川峻

    ○長谷川国務大臣 皆さんから御心配いただきました雇用調整給付金が昨年百四十二億円で発足いたしましたが、こういう情勢にかんがみまして、五十年度一年間の予算五百四十八億円、こういうことで、お役に立っていると思っております。  一方、再々延長の話がありましたが、これはすでに御承知のとおり一月から再々延長しているものもあります。そういうことでございます。  ただ、七十五日の問題は、やはり雇用調整給付金の支給限度日数あるいは指定業種の延長の場合を含めまして、この制度が短期的、応急的な対策であること、あるいはまた過去における在庫調整などの実態やら雇用保険の失業給付日数との均衡を考えまして、慎重に検討して決定したものでありまして、これをいますぐに引き上げるということは考えておりません。  一方、長く、こういう不況になりますと、いまから先の問題はどうかということでございますが、まさにそのとおりでございます。雇用調整給付金制度だけで十分対応できるかどうか、こういう難問題がありますので、私の方としますれば、雇用の問題を含めて一歩前進して積極的な制度の確立も必要じゃないかということで、雇用安定基金というふうな構想なども実は考えております。  不況業種の特殊的なものについて考えろということでございますが、これは政府全体として、やっぱりケース・バイ・ケースで考えていくべきじゃないか。  それから、四%の問題がありますけれども、この全国延長の発動基準というものは、これは皆さんで御審議いただいた雇用保険法成立の国会審議の経緯あるいはまた現下の雇用、失業情勢を当時十分考慮して関係審議会で御結論いただいたことでありますが、しかし、いまおっしゃったような問題も含めて、今後の制度の運用のあり方について、現在中央職業安定審議会においても種々御議論をお願いしているところであります。
  31. 玉置一徳

    玉置委員 いずれにいたしましても、会社がつぶれてしまって失業者が社会に出るということになりますと、これはどこかで国の金は要るわけであります。それで社会不安だけが醸成されるわけでありますので、どうかそのようなことのないように、金利と同時に雇用問題というものが不況業種を安定せしめるための最も直接的に必要なあれだと私は思いますので、さらに至急に御検討を続けていただきたい。それで前向きに要望をかなえていただきたい、こう思うわけであります。  その次には、赤字国債でございます。赤字国債はいつまで発行せざるを得ないだろうかということが考えられるわけですが、この際、安易に赤字国債に頼っているわけにもいかないので、来年度から新規財源の獲得を検討せざるを得ないというような趣旨だろうと思いますが、付加価値税の導入も研究せざるを得ないとする総理の御答弁と、そのようなことを考えたこともないという大蔵大臣の答弁、これは事務的答弁かもわかりませんが、今日まで一応食い違っておりますので、若干お気の毒と思いますけれども、この際、政府の統一見解をお示しいただきたい。
  32. 大平正芳

    ○大平国務大臣 特例公債脱却をなるべく早くいたしまして、正常な財政均衡の状態に返さなければならぬということはかねがね政府が申し上げておるとおりでございます。  そこで、先般来本委員会からの御要請がございますので、中期的な財政の展望を一応試算いたしまして、こういう前提が与えられこういう努力をいたしますならば、いついつまでに脱却が可能であろうという展望をお示しいたしまして、御審議をいただきたいと念願いたしております。  そこで、その場合、歳入の問題といたしまして、政府がそのラインに沿ってどういうことを考えておるかというお尋ねでございますので、いままでやりましたことは、現行の税制の中に不公正、不合理がなお残っておるということでは次のステップを踏み出すわけにもまいりませんので、鋭意その見直しをやります。それで、ことしは御披露申し上げましたように、企業関係中心といたしまして相当見直しをやったわけでございます。同時に、今後の税負担の状況はどうあるべきかというような点につきましても、いろいろ検討をいたしたわけでございますけれども、いうところの付加価値税という税目を特定いたしまして調査会に御審議を願った覚えはございませんというのが、いまの時点における政府姿勢でございます。今後財政正常化のために新しい財源を必要といたします場合に当然、恐らく税制の問題に触れてくると思いまするし、その場合に、直接税でまいりますか間接税でまいりますか、間接税の場合に付加価値税という問題を検討しないというお約束はいたしかねます、ということも私申し上げたわけでございますけれども、そういうことをいま検討のテーマとして税制調査会にお願いしたようなことは、まだいたしておりませんで、これから、どのようにして財政正常化のための財政運営の基本を立ててまいりますかということを、鋭意いま検討いたしておる最中であるというのが私の答えでございまして、総理大臣の答えと別に私はそごいたしておるようには思いません。
  33. 玉置一徳

    玉置委員 大蔵大臣の答えは、付加価値税を導入しないとは言いません。これは逆な方でおっしゃったので、そのようなことだったら……(大平国務大臣「導入じゃなくて検討と言ったのです」と呼ぶ)したがって、しまいごろは検討だ。こういうことで、総理大臣と、考えてみれば、えろう違ってないんだなという感じはするのですが、いずれにいたしましても、これは非常に問題の多い、反対の多いものだということも御存じでございましょうから、なかなか慎重なあれは必要だと思います。  これは、もっと詰めたいのですが、詰めてみたってしようがないだろうと思いますので、そのことよりは、これだけ膨大な赤字国債を発行した行財政の責任者である三木総理大臣と大平大蔵大臣は、後世のために、やはり行財政の簡素化ということを当然思い切ってやっておく責任があるのじゃないだろうか。入ってくる財源のことも考えざるを得ないところへ来るだろうと思いますけれども、それよりも前にやらなければならないことは支出を思い切って節約する。高度成長時代は過ぎて低成長時代に入るわけでありますので、行財政もいままでのしきたりのままでいいということは断じてあり得ないわけであります。われわれの個人生活も同じであります。  こういうような意味におきましては、この間、公団、公社等の廃止、統合、整理につきましての案も拝見いたしましたけれども、あんなものでは私は手ぬるい、こういう感じがいたしてなりません。いわゆる三木総理がよくおっしゃいます蛮勇をふるってというのは、このときの言葉に取っておいたのじゃないか、こう思うのです。と同時に、かつて民間の知恵をかりまして、自分らのやっていることを、ひとつ皆さんの良識で思い切って指摘をしていただきたいというので臨時行政調査会をお設けになりました。一つの方法だと思います。こういう二点について三木総理の決意と、そうしていま、お伺いいたします、その臨時行政調査会のような第三者機関を設けることを御検討になる用意があるかどうかをお答えいただきたいと思います。
  34. 三木武夫

    ○三木内閣総理大臣 玉置君の御指摘のように赤字公債発行をして財政を賄っていかなければならぬ状態でありますから、行政コストの低減を図って、国民の負担を軽減するということ、これはもう政府の当然の責任であって、この点は御指摘のとおりだと思います。現在も行政改革の閣僚協議会があり、行管長官を本部長とする推進本部もございますが、私は、いま御指摘のように、やはりこれだけで国民の要望にこたえていけるかどうかということで、臨時行政調査会のお話が出ましたが、いままでの機構だけで十分だというのでなしに、もっと行財政の簡素合理化を推進するような何らかの仕組みが要るのではないかということを私自身もいま考えておる段階でございまして、いまここでこういたしますとは申せませんけれども、これは少し研究をしてみたい。どうもいままでだけのでは積極的に推進するのには少し足らないのではないかという感じがいたしておることを率直にお答えいたします。
  35. 玉置一徳

    玉置委員 私は、いまほど大事なときはないし、いまほどやりやすいときはない、こういう感じがしてなりません。と申しますのは、蛮勇をふるうというようなときは一つの時期がなければなかなかできないものであります。民間企業が本当に人減らししたり、そのほか徹底的な合理化をやっておるときに、税金でもってよってもって成り立っておる役所と、それから銀行だけは一時帰休なんというのは見たことない。これでは民間との均衡も私はとれないんじゃないだろうかという感じがしてならないのです。それにはやはり、行政に堪能な方ばかりでありますけれども、行政に堪能な人ばかりが集まったのでは——しかも身内のことは三木総理にしたって、自民党でもなかなかむずかしいものです。ましていわんやお互いに役人同士が、おまえのところはこれは減らせということは、ぼくらでも二つや三つ本当に不要なものは一遍に指摘はできますけれども、われわれでもつい遠慮もございます。こういうものだと思うのです。この際は、ぜひとも民間全部のお知恵を拝借してという形でやったときにその強さが私は本当に出てくるのではないか。こう思いますので、ぜひとも先ほどの心ひそかに悩んでおいでになる三木さんの心情を承りまして、特に要望しておきたい、こう思います。  福田自治大臣にお伺いしたいのですが、私はやはり地方自治体でも同じことだと思うのです。先ほど国の財政でも新規財源ということは——行財政を徹底的に簡素化しておいても、なおかつ当然増というのが二割ずつほど一生懸命抑えても出てくるのが当今の仕組みであります。だから、住民は本当に人件費だけふうふう言って毎年担いでおるだけでして、それにほんとに気の毒なような財源まであせりもって地方でもつくっておいでになります。だからといって、直接住民への幸せに直結する行政が伸びるという形には、なるほど高度成長時代のような残は出ませんです。こういう意味では地方公共団体の方はなおさら——国の方では行政管理庁がありまして、八年前からでしたか、思い切った定員の削減なりあるいはそのまま抑えております機構の膨張も許しておりませんけれども地方はそういうわけにはまいらぬです。その上、高度成長時代の、じんあい焼却その他屎尿処理あるいは保育園の増設等々、また本当に必要なものがたくさん出たわけであります。だからというて、私はこのままでほっておくわけにはまいらぬ。  こういう意味で自治大臣にお伺いしたいのは、地方公共団体の財政も完全に行き詰まっております。その原因の主たるものは一体何なのか、これが打開のためにはどんな手を打たなければならぬかということを、ひとつこの際御開陳をいただきたい。  なお、この際、渡り昇給というようなことをお伺いしますけれども、あれは違法なのかどうかということもあわせて御説明いただければ結構だと思います。
  36. 福田一

    福田(一)国務大臣 お答えを申し上げます。  御指摘のように、中央の行政の簡素化が必要であると同時に、地方の行政を合理的に見直すということも非常に大事な問題でありまして、いままでに行政調査会におきまして種々指摘されておりまして、自治省としてはその線に沿ってある程度指導はいたしておるのでありますけれども、今後も一層この点は重視をして施策の強化に努めてまいりたいと考えておるところであります。  次に、また、地方財政が行き詰まっておるが、その原因は何であるかという御質問でございます。これはもう玉置さんも御承知かと思いますが、大体高度成長から低成長へ入りまして、そうして高度成長時代のいわゆる国の税収入が非常に減ってまいりました。そのために地方交付税が非常に不足をいたすということに相なったわけであます。なお、地方におきましても税収が非常に減りましたので、自己財源の調達が非常に困難を来たしておるという、この二つが大きな原因に相なっておると思うのであります。  同時に、今度は歳出の面で見ますと、高度成長時代でございましたからして、単独事業であるとか福祉事業であるとかというようなものについて、将来に対する確たる歳入の見通しがないままにこれをやったような事実もあるのでございまして、これはすでに昨年来、人件費の問題等において、数においてあるいはまた昇給の問題等について、国家公務員との間で差ができておるというような一つ指摘も大きくクローズアップされた原因に相なっておるわけでございまして、これらの点について、いわゆる歳出面においても一つの大きな問題点があるということは事実でございます。  そこで、これについて、歳入の面につきましては、やはり国の政策でいわゆる景気浮揚をいま図っておる段階でありまして、この景気浮揚が図られる段階において税収入もふえてまいるでありましょう。また地方の税収入もふえるでありましょうから、ある程度はこれに期待することができると思うのでありますが、しかし、いまの地方財政を大きくながめて見ますと、果たしてそれだけに期待しておっていいかということは大きな問題であります。この機会に、地方交付税の見直しを考えてみるとか、あるいは起債の面におきましても、地方債というものがいわゆる担保適格債になっておりませんので、地方銀行がこれを引き受けることに非常にちゅうちょをいたすような傾向があるということ等もにらみ合わせながら、これらの問題をにらみ合わせて地方財政一つの見直しをする、いわゆる歳入面における見直しをするという必要があると考えるのであります。  一方、今度は歳出面におきましては、いまあなたが御指摘ございましたが、確かに人件費が、数においてあるいは量において非常にふえておるということをどのようにチェックするか、またいわゆる行政の簡素化というような形においてこれをどう見直していくかというような点を十分われわれとしては考えていかなければなりません。これに関連して、渡りであるとか一斉昇短という問題が従来しばしば行われておったことは事実でございまして、これが大きく地方人件費の増加に連なっておるわけでございます。  御質問の御趣旨は、この渡りとか一斉昇短というものが法的に認められておるのかどうかということでございますが、これらのことば、条例によって決めればこれは認めるということになっておるのでありますが、従来行われておった渡りであるとか一斉昇短というのは、通常条例をつくらないで行政措置によって行われておったという点において法的に非常に疑義があるのでございます。したがって、この点は今後十分にやはり監視もし、またわれわれとしても指導をいたしていかなければならないのでありますが、これらの点については、これは地方自治体がやることも大事であり、また中央が指導することも大事でございますけれども、一般住民の監視というものをひとつ十分に期待をするというか、一般住民の方にもお願いをいたしたいと思うのであります。監察委員会というのがございまして、これは主として財政の問題を取り扱うところでありますけれども、一般の住民からこういうことがあるからこれを監察してもらいたいという申し入れがあればこれはできることになっておるのでございます。現に東京都において、ストがあった後の賃金カットの問題でそういう要請が出て行われたこともあるのでありまして、今後私たちとしては住民監視ということについて、もっともっとこれをわれわれとしては、奨励するというのもおかしいのですが、この住民のお方に御協力を願うということも必要ではないかと考えておる次第であります。
  37. 玉置一徳

    玉置委員 条例に書いてない以上は法律の枠から外れていることでありますので、違法性が非常に強い、こういうことのお答えだと思います。  と同時に、やはり人員削減の具体的な方策を考えるように御指導があるべきだ、こう思いますが、どうお思いになりますか。
  38. 福田一

    福田(一)国務大臣 そこで、問題は少しあれでありますけれども、これが条例に書いてあればじゃそれでいいのかという問題が一つ残っておるわけでありますけれども、一体、この昇給をするとか渡りをするのに、一斉昇短をするとかあるいは渡り制度というようなものが、これが社会的ないわゆる俸給制度の面で見て適法であるかどうかという今度は一般論が一つあるわけでございまして、われわれから見ればそういうことは望ましいことでない、むしろ違法である、こういう見解をとっておるわけであるのでありまして、今後においてもそのような趣旨で運営を図ってまいりたいと考えておるところであります。
  39. 玉置一徳

    玉置委員 人員削減について。
  40. 福田一

    福田(一)国務大臣 人員の削減につきましては、これはやはり制度の問題、特に地方人件費の問題になりますというと、教育費の問題とか警察の関係、消防の関係というのが非常なウエートを占めておるのでございまして、一般行政関係人件費の問題はまあ二、三割ということに相なっておるかと思うのでありますけれども、しかし非常な二百何十万人という人員があるわけでありますから、この点についても今後ひとつ行政の見直しというような面あるいは認可、許可事項の整理というような面等々から見て大いに合理化を図っていかなければならない、かように考えておる次第であります。
  41. 玉置一徳

    玉置委員 前に定年制の問題に触れた地方自治法の改正案が出まして、国会はあれいたしましたが、あのときとは一般国民の考え方が非常に変わっておる時期だと思います。非常に元気な者でも一般民間ではどんどん希望退職等を募ってやっておるときであります。これについてはどのようにお考えになっていますか。
  42. 福田一

    福田(一)国務大臣 定年制の問題につきましては、ただいま御指摘がありましたように、数次国会に提出されておるのでありますが、四十三年についに不成立に終わって以来いままで見送られてきておるわけでございます。しかし、各方面におきまして、定年制を設けるべきではないかという意見がいま相当出てきておりますし、それから行政調査会等においてもそういう意見が答申をされておる段階でございます。  したがいまして、この問題についてはわれわれとしてもただいま慎重に検討をいたしておるのでございまして、慎重に検討しておるという意味は、やはりこういう事態において定年制を出してまた通らないというようなことになりますというと、これはたなざらしになってしまう傾向があるわけであります。これらの点も十分勘案をしなければなりませんし、といって、一方においてそういうような要望も強いということもまた見てみなければなりません。これらの点を両者をにらみ合わせながらこの問題の解決に当たりたい、かように考えておるところであります。
  43. 玉置一徳

    玉置委員 外務大臣にお伺いしたいのですが、領海十二海里説をこの間わが国もとることに閣議決定されまして、きのうもそれについて同僚議員から質問がありました。  そこで、端的に申し上げますが、津軽海峡等の自由航行と非核三原則、これをどのように処理しようとお思いになっているか。端的にお答えをいただきたい。  と同時に、もう一つは、核拡散防止条約を前に見送られましたけれども、今度は速やかに国会で審議を願いたい、こういうような御意向のようにきのうのあれを承っております。ところが、これと同時に大陸だなの問題も審議してもらいたいのだという話が一緒にあったように新聞は報じております。そうしますと、片一方の大陸だなの問題は若干問題があるから、これは海洋法会議の結論を待ってやろうじゃないか、そうせぬと、にわかに国益を損したらいかぬからというように前は説明を受けておったのでありますが、その問題はどのように考えられての話であるか。この二点をお答えいただきたいと思います。
  44. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 領海の問題につきましては、昨日総理大臣からお答えがあったわけでございますが、さしずめ三月に行われます海洋法会議並びにもし必要であればその締めくくりとしてのその後にもう一度設けられますでありましょう会議の結論をできるならば待ちたい。十二海里の決心は政府としてはいたしておりますものの、昨日申し上げました諸種の考慮からさように考えております。そのようにして海洋法会議の国際的な合意ができました場合には、いわゆる国際海峡につきましての法律上の新しい概念が生まれるわけでございますので、わが国としてはそれに従うというのが本来ではないかと考えておるわけでございます。  それから、核拡散防止条約につきましては、すでに本院の外務委員会におきまして四十時間に近い審議を終えておられますので、継続審議になっておりますが、できるだけ速やかに批准のための御承認を得たいとお願いをいたしております。  日韓大陸棚条約は、事柄の性質上、核不拡散条約と別段内容として関係があるものではございませんが、これも継続審議の案件でございます。二国間条約におきまして先方が批准をすでに終了しておりますので、わが国が余りに批准がおくれますことは、両国間の信義の問題でもあり、また内容そのものが、わが国が独自のエネルギー開発をするという立場から申しますとわが国にとりまして有利のものである。ことに、海洋法会議におきまして大陸だなの自然延長という議論が強くなってまいりますので、やはりこの条約はわが国の国益に沿うものであると考えておりますので、継続案件でございますから、これも二国間条約であることでもございまして、速やかに御承認を得たいと考えております。が、政府として、もとよりこの二つの条約を何か関連づけて考えるという立場はとっておりませんし、また両条約が内容においてそのような関連を持つというふうにも考えておらない次第でございます。
  45. 玉置一徳

    玉置委員 いまの問題につきまして、世界海洋法会議の結果をまって、非核三原則の問題も、領海内にそういうものが潜水艦等が入ってくる問題も処理したい。そのときは、そうすると核の持ち込みその他についても、海洋法会議に出るとおりにやります、こういうことなのですか。それと同時に、大陸だなの問題は、前は向こうは自然延長説を非常にとっておるわけですが、海洋法会議ではその傾向が非常に強いから、恐らくそういう方向に定まるだろうから、いまや待っておっても日本に有利に展開しないからというお見通しかどうか、ということをお伺いしたいのです。
  46. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 前段の問題で、昨日総理大臣が答弁をされましたのは、わが国としては海洋法会議が実体的な結論に今年の少なくとも下半期には達することを期待する、その上にわが国としてはそれに従って行動したいと言われたわけでありまして、もしその結実ができませんときにはどうするかという問題については、これはわが国として独自に考えなければならないということを含みとして総理大臣は昨日お答えになったと思います。したがいまして、国際海峡という新しい国際通念が海洋法会議の結果生まれますれば、わが国はそれに従いまして国内法を定めるということになってまいるであろうということでございます。わが国の固有の権限が及びます限りにおいて、非核三原則が適用されるということは、これはもとより海洋法会議の結果にかかわらず当然なことであるというふうに考えております。  後段の問題は、海洋法会議におきましてやはりこの大陸だな自然の延長というものが一つの大勢になりつつある。そういたしますと、わが国は大陸に属さないという立場から、韓国に比べますと自然不利な立場に立つことはどうも否定ができません。ただ、他方でそれだけがすべてになるわけではございませんから、結局のところはこのようなケースは両国間で話し合いで決めるということにならざるを得ないと思いますので、そういたしますと、振り出しに戻りまして、日韓間の話し合いに戻らざるを得ない。ということは、中間線ということが、われわれが話し合いの結果、われわれの主張を通した結論でございますので、ベストの場合を考えましても同じような結論に戻らざるを得ない。ただ、環境そのものが自然の延長論が強くなってまいっておりますだけに、客観的には韓国の立場がそれだけ有利になっておる、そのような背景に変化があっておるのではないかというふうに考えておりますので、あの条約が現在の情勢にかんがみてわが国の国益に大きく寄与するという判断をいたしておるわけでございます。
  47. 玉置一徳

    玉置委員 終わります。
  48. 正示啓次郎

    ○正示委員長代理 これにて玉置君の質疑は終了いたしました。  午後零時三十分より再開することとし、この際、暫時休憩いたします。     午前十一時二十四分休憩      ————◇—————     午後零時三十三分開議
  49. 荒舩清十郎

    ○荒舩委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続行いたします。田中武夫君。
  50. 田中武夫

    田中(武)委員 まず最初に、総理に一言だけ簡単にずばりお尋ねいたします。したがって、総理も一言ずばり明確にお答え願いたいと思います。  それば、予算は一体だれのためにあるのか、予算は一体だれのものか。いかがですか。
  51. 三木武夫

    ○三木内閣総理大臣 国民のためのものであります。
  52. 田中武夫

    田中(武)委員 国民のためにある、そうお答えになると私もここに書いておるんです。  そこで、それでは現在の予算編成から復活折衝、最終的な予算の決定までの間を見たときに、果たして国民のための予算編成であるのかどうかが疑わしいのであります。予算編成時期になると、大蔵省を初め各省庁、自民党、さらに圧力団体等々の予算獲得競争が始まりまして、いわば力と力の綱引きというか、ぶつかり合い、こういうことで、力の力学というか、これによって左右せられているように思うわけであります。それは、すべてが組織と組織、言うならば力の寡占状態であります。力の寡占、このことによって結局は決まっておるのではなかろうか。したがって、組織を持たない者は——この組織というのは、主として自民党系というか、与党系の組織なんです。一般国民はただただそのらち外に置かれ、発言あるいは希望を聞いてもらえる機会もないままに決まっておるのではなかろうか。したがって、国民のためにある、こうおっしゃりながら、実際は国民不在、納税者不在の予算ができ上がっておるというのが現在の状況ではないでしょうか。いかがです。
  53. 三木武夫

    ○三木内閣総理大臣 自民党系の側ばかりの声を聞いて予算を編成しておるのではないかということでございますが、そういうことではありません。今日は、予算に対して国民の要望というものは非常に各方面に、それは自国党系とか社会党糸というんじゃなくして、そういう国民側の予算に対する要望は非常に高まっておるので、そういう自民党系の圧力によってということではないわけでございます。  いろいろ予算に対して国民の側から要望が出てくることはこれは当然でございますが、それを力で押しまくられていく予算、それによって予算が編成されるということになれば、政府は国民に対して責任を果たしてないことになりますから、そういういろんな力があっても、そこはやはり国民全体のことを考えて予算を編成するところに、政府予算編成に対する責任があると心得ておる次第でございます。
  54. 田中武夫

    田中(武)委員 総理、そのようにおっしゃるが、本当にそうでしょうか。予算編成というか、予算というものは巨大な経済行為であると私は思うんです。経済とは、本来、経国済民の言葉を略して経済と言っておると承知いたしております。  それでは、済民というが、民の声、しかも社会的弱者の声をどれだけ取り入れておられるのかということが私は疑問である。いま独禁法等の改正をめぐって寡占状態ということが言われておる。私は、予算編成においても、先ほど言ったように、力の寡占状態によって決められておる、一握りの力によって決められておる。このようにしか思わないのですが、どうですかね。そうであるとは肯定されないと思うのですが、実際、反省してどうですか。
  55. 三木武夫

    ○三木内閣総理大臣 それは圧力団体というものの力というものに押されて政治が動かされていくということが、やはり民主政治というものの危機は一つそこにあると私は思う。それを、やはり民主主義というものを健全に育てていくためには、圧力団体に屈しないだけの、国民全体のバランスを考える予算を編成するだけのやはり政府が責任を国民に果たさなければ、政府は責任を果たしてないと言われても私はやむを得ないことで、その点は非常にむずかしいことですよ、近代政治の中において。  常に政府が心がけなければならぬのは、力の強い者に押されて、そのことで影響を受ける予算を編成してはならぬということをみずから常に戒めなければならぬ。やはり今日の政治的な風土の中には、そういうことを常に政府が戒めなければならぬということがあることは、私も常に心をいたしておる次第でございます。
  56. 田中武夫

    田中(武)委員 総理、そのようにおっしゃるけれども、実際、あなたあるいは大蔵大臣あるいは副総理関係閣僚、皆考えてみて、私の言っていることが当たっておると実は腹の中では思っていませんか。  それでは、予算復活折衝の状態は一体どうなんです。私は復活折衝というものを一概に否定はいたしません。しかしながら、大体四カ月かかって積み上げてきたのを四、五日で詰めるという。しかも、その詰め方は、担当者から局長クラス、次官、大臣、党三役と、そのたびに若干ずつつけていく。まるでバナナのたたき売りじゃないですか。しかもそれは、圧力団体には屈しないとおっしゃるが、力のある圧力団体の力に押しまくられる。あるいはその役員の顔を立てる。あるいは、ずばり言って、与党の人たちの顔を立てる。もちろん、そういう仕組みでありますから、われわれも党として申し入れを行いますが、しかし、結局は、私は、それは選挙運動だ、こう断定したいんですよ。ことに、ことしというか、昨年末なんかそうじゃないですか。ことに、ことしは地方財政が危機だ等々も言われておるから、幾らか、と思っておったが、そういうことでどんどん上京して与党の人あるいは政府——これはみんな税金かあるいは会議費ですよ。それが相当むだ使いせられているということは、これは肯定されると思うのですよ。ああいうあり方はどうです。さらに、聞くところによると、予算を内示するときに、ともかく九五%を明らかにして、五%は官房調整費として残す。また本年は、千八百億ですか、という公開財源というのがあって、それは初めから半分は閣僚、半分は党三役が持っておるというようなことも言われておりますが、そういうのと、予算折衝のあり方を見た場合に、私はそう言う以外にないのじゃないか、こういう感じがするんです。  最初言ったように、私は予算折衝を一概に否定はしません。だがしかし、ああいうばか騒ぎのようなこと、バナナのたたき売りじゃあるまいし、だんだんと上位へ行くほど金が出てくるというようなやり方は少し反省せられたらいかがですか。どうです。
  57. 大平正芳

    ○大平国務大臣 この前に予算委員会で御説明申し上げましたが、予算はだれのためのものかという御質疑に対しまして、私どもがどのように考えておるかということをかいつまんで申し上げ、予算の編成の過程においての判断もあわせてお聞き取りをいただきたいと思います。  私ども予算は、いま総理が申されたとおり、文字どおり国民のためだと考えております。さればこそ、予算関係いたしております私どもといたしましては、国会内外の予算関係した論議というものにつきましては終始緊張した関心を払い、注目もしておるつもりでございます。     〔委員長退席、正示委員長代理着席〕 与党の中の予算論議はもとよりでございますけれども、この白亜の殿堂というのは、いわば野党に開放された論議の権威のある場でございまして、ここで展開された各委員会、分科会等における論議は、十分吟味されて次の予算の編成の場合におきましてそれなりの配慮をいたしておるつもりでございます。  それから、各省から八月の末には概算要求が出てまいりますけれども、夏ごろから主計局を中心にいたしまして、明年度の予算はどのように配慮するかということについて勉強を重ね、それから各省から材料が届きますので、十月からヒヤリングを始めまして、一応の原案をつくるまでには相当のエネルギーを投入いたしまして苦心をいたしておるところでございまして、一部少数の者の恣意的な作業であるというようなおとり方は、いかにも田中さんらしくない御判断ではないかと思うのでございまして、私ども、その点は謙虚な気持ちであらゆる方面に耳を傾けてやっておるつもりでございます。  それから、予算編成の最終段階におきまして全国から多くの方が御上京になっておりますことは御指摘のとおりでございますけれども、それがお祭り騒ぎに終わったり、あるいは過度に流れたりすることのないように、これは与党とお話をいたしまして漸次秩序を立ててきておるわけでございまして、ことしあたり、私はみずから経験いたしまして、よほど秩序が立ってきたように、改善の跡が見られるように思うのでございますが、その点は田中さんどう評価されますか、そういった点につきましては精いっぱい努力をいたしておることも、公正にひとつ御理解をいただきたいと思います。
  58. 田中武夫

    田中(武)委員 それは私の言うとおり、あなたのおっしゃるとおりだということになれば、あなたも商売にならぬからね、それはそういうようにおっしゃるだろうと思うのですよ。しかし、じっくり考えてみたら、あの予算復活折衝なんというのは少しばか騒ぎ過ぎやしませんか。  実はけさの朝日新聞の投書欄ですが、そこに四十七歳の教員の人が投書しておる。「選挙対策の具となった政治」という投書なんです。「人民は選挙の時にのみ主権者であり、選挙が終わると再び奴隷に戻る」というルソーの言葉を引用して投書がありました。これは「選挙対策の具」というように書いておりますが、このことは、結局はあなたあるいは総理がおっしゃるような、われわれの声が果たして予算なり国の政治に生かされておるかどうかということに対する不信の声ですよ、これは。そうじゃないですか。  それは、この国会議事堂は、白亜の殿堂は野党のために開かれておる、こうおっしゃったのです。ならば、われわれの主張する予算修正を認めますか。いかがです。その点が一つ。  さらに、もう一点は、予算復活折衝のあり方について、今後もっと違った方向に考えるということに対して前向きの答弁、この二つを要求します。
  59. 大平正芳

    ○大平国務大臣 予算修正の問題でございますけれども、これは国会の問題でございまして、それを政府が認めるとか認めないとかいうことは申し上げるべきでないと思いますが、ただ、私が先ほど申しましたように、この国会を中心にいたしまして、各委員会で長い時間をかけて精力的に御審議をいただきました結果は、次の年度の予算、後年度の予算におきまして血となり肉となって予算案ににじみ出ておるものであるということだけは御理解をいただきたいと思います。  それから第二の点でございますが、復活折衝のやり方はどうかということでございますけれども、私ども、大部分の予算はすでに大蔵原案のときまでに一応の積み上げを終えておるわけでございます。しかし、これは人間のやることでございますから、専門家がいろいろ見ておりましても、どこに落度があるか、これはもう一度やはり各段階において見直していただかなければなりませんので、与党におかれましても、政調会の部会から始まりまして党の首脳に至るまでの段階におきまして、それぞれ見直していただいておるということは、私は決して間違っていないと思うのでありまして、比較的短時日の間に能率的に予算の最終の仕上げが行われておるのではないかと、むしろ自負をいたしておるように思うのでございまして、もしもっと能率的に短時日の間に最後の予算の仕上げができる方法を御提示いただくならば、私どもも喜んで傾聴をいたしたいと思います。
  60. 田中武夫

    田中(武)委員 あなたはいまそういうようにお答えになったけれども、はたから見ておると、ずばり言わしてもらうならば、これは与党というか政府というか、選挙運動だ、こういうように受け取るのですよ。そうであるとはおっしゃらないでしょう。だがしかし、そういうように受け取るんですわ。もちろん、私は、最初から言っているように、否定はしない。しかし、あのような、ともかく粘って何かやっておると少しついた、徹夜すればまた出た、あのバナナのたたき売りのような、いわば茶番劇のようなことはおやめになったらどうかと言っておるのですよ。  もっといい方法、それはつけるべきものは最初からちゃんとつけなさい、そして政治的に詰めなくてはならぬ問題だけを政治折衝に残す。  あるいは党三役と閣僚が一千八百億円の半分ずつを持っておるというようなこと。これはどうなんです。大体ばかにしたことじゃないですか。そういうことをおやめになったらどうです。私の提案については謙虚に聞くとおっしゃったのですが、いかがです。
  61. 大平正芳

    ○大平国務大臣 あなたのいわれたとおりやっておるわけなんです。すなわち、二十四兆円の予算の大部分は原案の形ででき上がっておるわけでございまして、最後に仕上げをする場合にどこかに考慮すべきものがありはしないかという点。それは予算の一%あるいは二%という程度の金額でもって最後の仕上げをしておるわけでございまして、必要なものはちゃんと最初からつけておるわけでございますから、あなたがおっしゃったとおりやっておるわけでございますし、最終的の仕上げを、広い視野から、豊富な経験、識見を持った方に見ていただくということは、私は決して間違った方法であるとは考えない。あなたが言われたラインに沿って現に行われておると思います。
  62. 田中武夫

    田中(武)委員 そうおっしゃるから、そう受け取りましょう。だがしかし、こればかりやっておれませんから、私は——あなたも腹の中では、なるほど田中の言う点も一理屈あるわいと思っておるんじゃろう。そうじゃないですか。思ってないかな。(「改悛の情はないよ」と呼ぶ者あり)改悛の情がなければ、死刑の判決でも下そうか、どうです。まあ、ひとつ、私の言っていることも十分に考えていただきたい。うんうん言うておるから、大丈夫でしょう。  そこで次に入りますが、公共事業と予備費の問題であります。これはもうすでに何人かの人がここで取り上げておる。ことに、わが党の阿部助哉委員は、憲法違反、財政民主主義の破壊だ、こういうように言っています。私もそうだと思うのです。  そこで、ひとつ予備費の性格というものをお伺いしたいのですが、これは憲法八十七条と財政法二十四条にあるわけなんですが、どうですか。何なら、こっちからもう少し言いましょうか。予備費の性格、ぴしゃり一言。
  63. 大平正芳

    ○大平国務大臣 予算は、御案内のように、年度が始まるに先立ちまして歳入、歳出を見積もるものでございますので、予算を実際に実行するに当たって、予見しがたい事情により過不足が生ずることは免れがたい事情であろうと思います。そこで、予見しがたい事情によりまして歳入歳出予算に見積もった経費に不足を生ずる場合、あるいは予算に見積もらなかった新たな経費を必要とするような場合に、あらかじめ国会の議決を経た金額の範囲内におきまして、内閣の責任においてこれを支出することを認める制度がございまして、これが予備費の制度であると承知いたしております。
  64. 田中武夫

    田中(武)委員 予備費も一般会計のうちに入るのですが、いわゆる一般的な会計に対して予備費というのは例外なんです。したがって、憲法八十七条もそうですが、財政法二十四条は例外規定なんですよ。違いますか。したがって、例外規定は拡張解釈を許さない、厳格に解するというのが法解釈の第一歩であります。したがって、二つの条件を厳しくつけております。一つは、あなたがおっしゃったような予見しがたいということが一つ。もう一つは、真にやむを得ない場合という、この二つが要件なんですよ。私はそう見るんです。予備費の条文というか、予備費というものは一般的なものに対して例外である、したがって、拡張解釈を許さない、厳格に条件を守るべきである、このように考えますが、いかがですか。
  65. 大平正芳

    ○大平国務大臣 仰せのとおりでございます。
  66. 田中武夫

    田中(武)委員 ならば、この第二予備費というか、公共事業予備費は、いま私が言いましたような線の上に立って考えた場合、おかしくはないですか。  続けてお伺いします。財政法三十五条には、予備費の管理及び使用についての規定があります。この予備費は、これは三十五条の規定のとおり大蔵大臣が管理、使用するものか。それとも「公共事業等」となっておる、「等」もおかしいのですが、ならば、建設大臣とかあるいは国土庁長官とかいったような、そういう公共事業関係のある部署の閣僚が管理するのか。どちらです。
  67. 大平正芳

    ○大平国務大臣 大蔵大臣と心得ています。
  68. 田中武夫

    田中(武)委員 でしょう。ならば、一般的な本来の予備費とどこが違うのですか。なぜ、三千億円プラス一千五百億円、計四千五百億円の予備費として組まないのですか。どこが違うのですか。
  69. 大平正芳

    ○大平国務大臣 あなたのおっしゃるように四千五百億にするか、四千五百億を分解いたしまして三千億と一千五百億の公共事業費等予備費にするか、その選択は政府に任された授権の範囲内においてやり得るものと政府は判断したわけでございまして、予備費であることに変わりはございません。
  70. 田中武夫

    田中(武)委員 政府に与えられた権限内だとおっしゃるのですか。予備費というのは、先ほど来言っておるように、憲法八十七条、財政法二十四条、これでぴしっと枠が決められておるのですよ。これはあくまで仄聞ですが、仄聞するところによると、四十八年というから四十九年度の予算編成のときだろうと思うのです。時の総理田中さん、この総理が、総理が自由に使えるような予算というか金をひとつ予算に盛ることができぬかというようなことを言ったとか。ところが、その当時大蔵省は、どう考えてみても一それはだめですと言って、立ち消えになったということを聞いております。ところが、その構想が出てきたのがこれではないか。ことしは選挙の年である。去年は三百六十五日のうち二百九十六日間会期が開かれておった。会期中は原則として予備費の支出を認めない、これは閣議決定をいたしておりますね。そうなると、ことしを例にとるならば、議会解散から特別国会までの間、わずか二カ月くらいですよ。その間に自由に使う金、すなわち選挙資金、これを置こうとしておるのがこの予備費ではないですか。どうですか。
  71. 大平正芳

    ○大平国務大臣 この公共事業費等予備費も予備費でございまして、政府の管理のもとに、大蔵大臣の管理のもとにあるわけでございます。したがって、これと国会会期との関係につきましては、一般の予備費と少しも変わらないわけでございまして、したがって、予備費の使用についてという閣議の決定が二十九年以来ございまして、何回か改定が行われておりますけれども、この閣議の決定は、この公共事業費等予備費にもそのまま適用されるものと承知しております。
  72. 田中武夫

    田中(武)委員 きのう安井委員の質問に対して福田自治大臣は、地方の自治体の予算にこのようなことは認めない、そして必要に応じて出すならば補正予算を組むべきだ、こう言っておるのです。私はそれが筋だと思うのです。したがって、景気浮揚のためというか、景気の情勢によって公共事業をふやさねばならぬというようなことなら、補正予算を組んだらどうなんです。このことは、結局は行政府の裁量の幅を広げ、言うならば、私がいつも言う行政府の立法府に対する挑戦である。立法府の権限を制約する。本来出さなければならぬものなら、出して補正を組むべきです。それが一点。もう一点は、先ほど来言っているように、財政法三十五条の点から言っても何ら性格が変わらない。ならば、本来の予備費として出してくるべきである。これが二点。三点目は、もうすでに公共事業としてある程度の予定があるとするならば、本来の公共事業費に入れるべきである。この三つのどれかを選ぶべきである。私はそう主張する。そのように予算を組み直して出直しなさい。
  73. 大平正芳

    ○大平国務大臣 田中委員の御主張になることも御見識がある見解と思いますが、私ども、補正予算を組むべきか、あるいは総予算の原則を尊重して予備費の充当で賄ってまいるかということもまた、政府の判断に立法府はゆだねてあるという解釈をとっておるわけでございます。したがって、この場合補正予算によらない方法をとりましても間違いではないと心得ております。  それから第二でございますけれども、一般の予備費とすべきであって、公共事業費等予備費とわざわざする必要はないじゃないかという御主張でございますが、一般の予備費とするよりも、そのうちの一部を使途を特定して掲げることが、政府みずから授権された権限を制約することでございますので、国会のお立場から見て決して間違っていないものであると考えておるわけでございますので、このたびとりました措置は、そういう意味で、憲法から申しましても、財政法から申しましても、決して間違っておるとは考えていないわけでございます。
  74. 田中武夫

    田中(武)委員 私は了承できません。先ほど来言ったように、憲法、財政法から言っても、予備費というのは一般的な予算から言って例外である。したがって拡張解釈を許さない。だから三点挙げたのです。そのうち、それじゃ一般的なというか、本来の予備費に当てはめると、じゃ一本にして出しなさいということ。この三つのどれかにして出直していただきましょう。それでなければ私は了承できません。私の言っている点に誤りがあるのだったら、各閣僚どなたでもよろしいから、おまえはこの点が間違っておると指摘してください。
  75. 大平正芳

    ○大平国務大臣 先ほど第三点の御質疑がありまして、この千五百億円をむしろしょっぱなから公共事業費に計上する方がよろしいじゃないかという御指摘でございます。私どもは、それは今後の経済回復の状況を見さしていただきましてからの判断に任してもらいたいということで、公共事業費等予備費に計上さしていただいているわけでございまして、そのことが財政法上許されない道でございますならば、そういう道を選べないわけでございますけれども、それをわれわれに与えられた授権の範囲内でできることだと判断したからでございます。  それから、いま田中委員が言われておることが間違いであるなんという大それたことは、私申し上げておることではないのです。あなたが言われること、皆正しいわけです。それから私が申し上げていることも正しいわけなんです。どちらを選ぶかということは、憲法、財政法は政府に選択を任せておるという解釈に立っておるので、そのことが、それは政府にゆだねてないということでございますならば、私はあなたとの論戦に敗れるわけでございますけれども、そうである限りにおきましては、私が申し上げておることもあなたに容認していただくよりほかに道がないのではないか。あなたのおっしゃっていることが間違っておるなんて一つも言っていないんで、あなたの見識のある御見解であるということは、私も申し上げているわけです。
  76. 田中武夫

    田中(武)委員 真理は一つ、あなたも正しい、私も正しいんじゃないのです。私は自信を持って言うておるのです。だから、私の主張が誤りだというなら論破してください。でなければ出し直してください。これ以上問答は無用であります。どうですか。出し直しなさい。
  77. 大平正芳

    ○大平国務大臣 いま申し上げたとおりでございまして、田中委員の仰せられたこと、そういう方法をとって予算を編成してまいるということも正しい方法だと思うのであります。また同時に、いま政府が御提案申し上げるような方式において予算を編成することも、財政法上、憲法上許されておるという解釈に政府は立っておるということでございますので、さよう御理解を賜りたいと思います。
  78. 田中武夫

    田中(武)委員 その政府の見解が間違っておると言っておるのです。理由は私はいままで言いました。だから今度逆に、私の言うことが間違っておる論証を挙げてください。でなければ引っ込みがつきません。出し直してください。
  79. 吉國一郎

    吉國政府委員 予備費の問題についての憲法論も田中委員から御提唱がございましたので、一応憲法に関して所掌事務を持っております者として一言だけ申し上げますが、田中委員が先ほど御指摘になりました三つの方法、これはまさにその三つの立て方があることはそのとおりでございます。ただ、私どもといたしましては、申さばその第四の方法といたしまして、今度のような四千五百億という予備費を組むのでなしに、四千五百億という予備費という観念を二つに分けて、一般のいかなる用途にでも、またいかなるものにでも使えるというのは三千億、そこの中で、特に用途を特定してこれ以外の用途には使ってはならないという予備費が千五百億、そういう分け方をして予備費を設けることも、憲法なり財政法なりの規定が禁止するものではないということを考えたわけでございまして、いわば四つの方法がある、その第四の方法として今回の方法を御採用いただきたいということでございます。
  80. 田中武夫

    田中(武)委員 だれだ、拍手したのは。討論に加わるか。  吉國さん、私はあなたの法解釈には権威があり敬意を表しておったわけです。だが、いまのはちょっとおかしいです。あくまで予備費というのは、憲法、財政法から言って、一般的予算から言って、これは例外である、したがって例外規定は厳格に解釈する、この点間違っていますか。  なぜ二つに分ける理由があるのです。たとえば、公共事業等となっておるが、予見しがたいというのですが、それでは公共事業について予見があるのですか、ないのですか。どうです。  そんな議論をしておってもしようがないです。それよりか、基本的にやり直せと私は言っておるのです。私の言うことが間違っておるなら理由を出してください。そうでなかったらやり直してください。
  81. 大平正芳

    ○大平国務大臣 何遍も同じことを申し上げて恐縮でございますけれども、第一の問題につきましては、経済の状況が流動的でございますので、この公共事業予備費等を使うか使わないかということは、ただいまのところまだ予見しがたい状況にあると政府は判断いたしておるわけでございます。  それから、くどくどしく繰り返して恐縮でございますけれども、あなたの言われておることが間違いであるということは言った覚えはないわけでございまして、あなたが言われることは正しい措置でございます。しかし、私どもが提案申し上げておる方法も、憲法上、財政法上許されておる方法であると政府は判断しておるということでございますので、そのように御理解を賜りたいと思います。
  82. 田中武夫

    田中(武)委員 どうけりつけてくれます。私は、あくまで私の言っておることが正しい、もし誤りがあるなら指摘してくれ、でなければ私の言うとおり出直せと、こう言う。だれでもいいから、私の主張に誤りがあるというなら言ってください。でなければ出直しなさい。どうけりつけますか。
  83. 正示啓次郎

    ○正示委員長代理 田中委員に申し上げます。  委員長が聞いておりまして、四つの方法があって、その第四の方法を……(田中(武)委員「だめだめ」と呼ぶ)ちょっと待ってください。第四の方法を政府は選択したと申しております。そこで、その選択が誤っておるかどうかということについて、なお田中委員からお尋ねをしていただければいかがかと存じます。
  84. 田中武夫

    田中(武)委員 いまお尋ねと言ったって、もう言っているのですよ。拡張解釈は許さない、例外規定であると。それを幅を広げて解釈しておるからだめだと言っておるのですよ。どうなんです。  もういいよ。けりをつけよう。どないするんだ。出直すのか、出直さないのか。四つの方法なんてあなたが言っちゃだめですよ。臨時に座っておって。四つの方法なんて、憲法かあるいは財政法か、どういうところから出てきますか、ひとつ委員長、解釈してください。財政法を渡してくれ。憲法も。そうして聞きましょう。どうです。
  85. 正示啓次郎

    ○正示委員長代理 田中君に申し上げます。  委員長は、質疑者と答弁者の話を聞いておりまして、その両方についての見解を申し上げたわけであります。  なお、御質問を続行していただきたいと思います。
  86. 田中武夫

    田中(武)委員 いや、あなたの見解があるのなら——じゃあなたはひとつ委員長として裁断を下してください、憲法、財政法の上に立って。あなたも大蔵官僚だ。東大法学部だろう。そのくらいなことはわかるだろう。渡してやれ。どうだ。
  87. 正示啓次郎

    ○正示委員長代理 田中君に申し上げますが、委員長はそういう立場にございませんので、なお質疑をお続けいただきたいと思います。
  88. 田中武夫

    田中(武)委員 じゃ勝手なことを言うな。だめだ。
  89. 正示啓次郎

    ○正示委員長代理 なおどうぞ御質疑をお続けください。
  90. 田中武夫

    田中(武)委員 だめだと言っておるのだ。どうけりをつけるのだ。
  91. 大平正芳

    ○大平国務大臣 私ども公共事業等予備費を設けたことが予備費を拡張する措置であるという意味の御非難でございますが、私どもそう考えていないわけでございます。何となれば、四千五百億のうち千五百億につきまして、どこにでも使われる予備費ではなくて使途を特定しておるわけでございますから、みずから政府が使途を特定して自己制限しておるわけでございますから、これは拡張解釈しておるという非難は私は当たらないと思います。
  92. 田中武夫

    田中(武)委員 ならば、なぜ一本の予備費にしなかったかということですよ。どこが違うのだ。そうでしょう。だから拡張解釈ですよ。もうよろしい。もう同じことやりとりしておってもだめだ。この始末をどうつけるか。
  93. 正示啓次郎

    ○正示委員長代理 答弁をひとつ……。
  94. 田中武夫

    田中(武)委員 もう同じような答弁はだめだ。変わった答弁ならばいいけれども……。
  95. 正示啓次郎

    ○正示委員長代理 大平大蔵大臣、御答弁を願います。
  96. 大平正芳

    ○大平国務大臣 なぜそれじゃそうしたかということでございますが、それはこの間阿部委員にもお答え申し上げましたように、ことしの予算は総合予算でいきたいというのが政府の願いでございまして、したがって、公共事業等を将来必要とする時期におきましても、補正をお願いすることではなくて、この予備費の運用におきましてその事態に対処さしていただいて、総合予算主義は貫かしてもらおう、そういう方針を政府が採択いたしたわけでございます。(発言する者あり)
  97. 田中武夫

    田中(武)委員 いまそういう意見も出ていますが、全部予備費にしておけという意見もあります。これはあなたが何とおっしゃろうと私は了承できません。委員長、どうけりをつけてくれますか。出直せとぼくは言っておるのだ。全部予備費にしなさい。福祉関係等予備費、防衛関係等予備費、地方財政等予備費、これでもいいじゃないですか。そんなよけいなのが通るのなら。  実は私のノートには、ここで一歩も引くな、気張れと書いてあるんです。(笑声)ところが、この問題はすでに理事会において検討ということになっております。そこで、うちの理事諸君からもそういう話がありました。私も長年理事をしたのですからね。  じゃ、そのことですが、そこで私は提案します。この問題については、財政法あるいは憲法において疑義がある。したがって、憲法学者、財政の専門家等を参考人に呼んでください。そしてそこではっきりいたしましょう。それまでは保留します。たとえば鎌倉の市長である正木さん、この人は、二十八年に同じようなことがあって問題になったときの参議院の予算の専門員だったと思います。したがって、鎌倉市長の正木さん等も適当な人だと思います。憲法、財政法の専門家を呼んでください。そして私の考え方が誤りだということを権威ある人から聞かない限り一歩も引けません。それでもそうではないというなら、与党を含めてだれでもいいから出てこい。
  98. 正示啓次郎

    ○正示委員長代理 委員長から申し上げます。  ただいま田中武夫委員からのお申し出については、理事会において取り扱いを協議することにいたします。
  99. 田中武夫

    田中(武)委員 ということに最後はならざるを得ぬということは考えていました。だがしかし、これは本当ですよ。さっきから私の言っておることを間違いだというのだったら、本当に私は自信を持っておるんだ。だれか権威ある、まいりましたと私が言うような学者でも呼んでくださいよ。あなた方の言うことじゃ私を説得できません。福田さんはどうですかね。説得する自信あるかね。どうだ、東大法学部、大分おるだろう。出てこい。
  100. 正示啓次郎

    ○正示委員長代理 どうぞ。理事会で……。
  101. 田中武夫

    田中(武)委員 それじゃ不本意ながら、そういうことで理事会で……。しかし、私の言ったことに、これはもうなるほどあなたのおっしゃることで、私の考え方が間違っていましたというような権威ある人を呼んでください。私は絶対自信を持っているんだから。そのことを保留いたしまして、次に入ります。  次は、久しぶりに、十年ぶりというか、十何年ぶりに中小企業問題をやってみたいと思います。  まず最初に中小企業の倒産。これが史上最高である。このことはもういまさら統計を示すまでもなく御承知と思います。私はここに業種別の倒産あるいは原因別の倒産の資料を持ってきております。  そこで、中小企業倒産は、簡単に言うと、五十年中の倒産件数は建設業で三千四百四一三件、これは一千万円以上の負債。商工リサーチの調査です。製造業が二千四百二十六件、うち金属、機械が多いです。それから商業関係、これは卸、小売を含めますが、これが四千二百四十三件。いずれも昨年を大きく上回っております。     〔正示委員長代理退席、委員長着席〕  まず、倒産の原因についてどう考えておられますか。これは通産大臣か、総理か。
  102. 河本敏夫

    河本国務大臣 いまお話しのように、昨年の倒産件数はかつてないほど多い数に達しております。倒産の原因でありますが、やはり大半は不況ということが原因になっております。
  103. 田中武夫

    田中(武)委員 大半が不況ということが原因であります、それだけですか。どうも困ったね。  本年に入ってから、経営不振とか資金難とかいうことが原因で自殺した人が相当おります。これは、まず読売ですか、読売新聞自体が一月の一日から十六日まで調べたのがあります。私は、それにプラス一月一日から一月二十五日までの中小企業の倒産というか、資金繰りというか、それが原因で自殺した人を調べてみましたら、二十三件、二十三名おります。その中には、もうこれ以上自分の手には負えないとか、私の力ではどうしても会社を建て直すことはできなくなった、申しわけないという遺書を残して死んだ中小企業経営者、これは東京です。会社経営不振はすべて私の責任という遺書を残して死んだのは、これは神戸の例です。はなはだしいのは、先日浅草の方でありましたね、資金繰りに困って、結局は狂言強盗まで仕組んだ中小企業経営者がおった。  こういう二十五日二十三名。正月二日を除くと日に一人ずつ死んでおるんですよ。これに対して、不況が原因でありますぐらいで通産大臣拱手傍観しておるのですか、どうです。
  104. 河本敏夫

    河本国務大臣 政府の方といたしましても、不況対策といたしまして、あらゆる方法を、手を尽くしております。たとえば、中小企業に対しましては金融上いろんな対策を考えておりますし、それからまた仕事の量をふやすという意味におきましても、ありとあらゆる対策を立てておるわけでございますが、何分にも現在のような不況が続いておりますので痛ましい事故が出てくるわけでございますから、やはり抜本的な対策は一刻も早く景気を回復する、そこにあるのではないかということで、ことしじゅうにはぜひ景気を回復したいということを最高の目標といたしまして、いま取り組んでおるわけでございます。
  105. 田中武夫

    田中(武)委員 倒産原因を、私は自己の責めに帰すもの、自己の責めによらないものと分けてみたのです。いままでの中小企業の倒産では、放漫経営とか過小資本とか、そういうのがわりに多かったのです。それに設備投資の過大、こういう自己の責めによるものと、そうでない他社の倒産の波及、不況のしわ寄せ等々、ずっと分けてみましたら、自己の責めによるものが、去年一年間の統計のうちで、全体の三五・六%。それから、自己の責めによらないものは六四・四%。負債額で言うと前者が二九・九%、後者が七〇・一%。まさに自分の責めに帰さない原因によって倒れている。それは通産大臣の言う不況が原因、これも当たっておるでしょう。だからといって、不況が原因でございますと言うだけじゃ済まされないのです。  しかも驚くことには、銀行のミスによって倒産に追い込まれた事例がたくさんあります。それは、たしか朝日でしたかがそのことを特集しておりましたが、ある中小企業者に対して、銀行のミスでいわゆる不渡りを通告したのです。ところが、そうじゃなかったのです。中小企業に対して銀行が取引を停止するとか不渡りということを発表することは、まさに死亡予告、死亡通知なんです。先日来、銀行の問題が大分出ておりますが、こういうところにも銀行のミスからくる倒産、これが相当あるのです。そういう点についてどう思いますか。
  106. 河本敏夫

    河本国務大臣 何しろ、昨年一カ年で一万三千件足らずの倒産があったわけでありますから、私は一つ一つの具体的事例につきましては承知いたしませんが、あるいはそういうことがあったかとも思います。  そこで、金融対策といたしましては、期限が来たときには、そして、まじめに仕事しておるにかかわらず仕事がないということ等のために金が返せない、こういうものに対してはできるだけ相談に乗って返済猶予に応じたり、あるいはまた担保切れ等が来まして経営上困る、そういう場合も、仕事そのものをまじめにやっておるという場合には担保等についても十分相談に乗るようにと、こういう指導をいたしまして、できるだけトラブルが起こりませんようにいろいろ指導をいたしておるわけでございますが、何分にも一万三千件近い倒産でございますので、あるいはそういうふうな事例があったかとも思いますが、今後そういうことのないように十分気をつけます。
  107. 田中武夫

    田中(武)委員 これは朝日が調査した記事です。昨年、三菱銀行のミスで、いわゆる不渡りだということを発表したのです。ところが、後でミスであったと言ったときには、もうそれが原因で一直線に倒産、破産に追い込まれたのです。これは現在裁判で係争中です。  そこで、これは朝日の記事をかりて申し上げますが、四十九年中に銀行のミスで不渡りの予告をせられて倒産したのが四百十五件。それは、都市銀行から信用組合に至るまでの、いわゆる市中金融機関の統計が出ております。その四百十五件のうち、都市銀行四二%、信用金庫二五%、地方銀行二八%、相互銀行一〇%、信用組合その他が七%。また銀行取引の停止、後でそれが取り消された、もちろんさきに不渡りを一たん言うておいて後で取り消した事例なんですが、これは、一遍銀行にそう言われると中小企業はもうおしまいなんですね。それが百三十三件。うち、都市銀行四四%、信用金庫一九%、地方銀行一七%、相互銀行一〇%、信用組合その他一〇%ということになっておるのですよ。切り捨て御免なんですよ。  銀行のあり方は後で問題にします。どうですか、大蔵大臣、銀行の監督者として。そういう銀行のミスによって、合計して六百に近い企業が倒されておるのです。どうです、一遍調査してください、銀行に、いわゆる市中金融機関に対して。どうですか、果たしてこの記事が本当かどうか。私は権威ある大新聞ですから間違いないと思いますが、あなたはあなたの方で一遍調査したらいかがですか。あなたはそういうことに対してどういう処置をとりますか。切り捨て御免じゃないですか。ただ単に、通産大臣不況だということだけじゃないのですよ。銀行の誤りによって一割以上の人が、合計して六百件に近い中小企業が倒されておるのですよ。どうですか、両大臣。——いや、先に大蔵大臣だ。
  108. 大平正芳

    ○大平国務大臣 銀行がひとりみずからの債権の保全、これは大事なことでございますけれども、それに走って、債務者、借入人の立場に対して周到な配慮、親切な思いやりが足らないために不慮の問題を起こしておるということがありとすれば、それはゆゆしい問題であると思います。したがいまして、とりわけこういう不況の段階におきまして、倒産が非常に多くなっておるという時点、よほどの緊張をもって仕事に当たっていただかなければならぬ段階でございますが、そういうことがありとすれば、これはゆゆしい問題に違いございません。私どもでも所要の調査をいたしまして、正すべきは正してまいらなければならぬと思います。
  109. 田中武夫

    田中(武)委員 ちょっと通産大臣、後でいい。  要求します。その調査及び大蔵省が講じた手段というか措置ですね、いつまでに報告願えますか。
  110. 田辺博通

    ○田辺政府委員 ちょっと細かい問題でございますので、お答え申し上げておきますが、不渡りを一度出しまして後でそれを取り消すという事案がいつも出てくるのは御案内のとおりでございますが、その中には——これは手形交換所でたしかその件数全体はわかると思いますが、その中に純粋の銀行側のミスといいますか、錯誤による取り消しと、実は私よく聞くのでございますが、債務者側から頼まれまして、事実不渡りになったのだけれども、その後急遽いろいろ手当てをして、特に自分の事業の都合上銀行側からそれを取り消してほしいというのを頼まれてやる分、こういうぐあいに大別できるような気がしますが、その内訳については、これは計数は手形交換所ではわかりませんので、その内訳まで調査をしろと言われましても、それはちょっと私不可能だと思っております。
  111. 田中武夫

    田中(武)委員 君は一体どこの味方なんだ。憲法にもはっきりしておると思うのだがな。国民のための公僕でなくちゃいかぬよ、銀行を擁護しちゃいかぬよ。だからこんなやからには出てくるなと言うんだ。  大蔵大臣、どうなんだ。わかるだけでもいい、推定でもいい、やってくださいよ。と同時に、どういう措置をとったかということが大事だ。とってくださいよ。いかがです。
  112. 大平正芳

    ○大平国務大臣 いま御提起になりました問題につきまして、どういう範囲で調査をどういう方法でやってどのくらいかかりますか、それからそれに対してどういう措置を監督当局としてやるかという問題については、私どもの方で若干時間をかしていただかなければならぬと思うのでございまして、いつまでにやりますということを私がいま卒然とお答えするだけの用意がございませんが、できるだけ早くやりますけれども、若干の時間をかしていただきたいと思います。
  113. 田中武夫

    田中(武)委員 若干という意味はどうです。ともかく予算採決までには出るでしょうな。出なければ予算採決に応じませんよ。直接予算関係ないとしても、これだけの倒産、しかも日に一人ずつくらいの平均で自殺者が出ておるのですよ。どうですか。
  114. 大平正芳

    ○大平国務大臣 もちろん予算案が本委員会において御審議をいただいておる間に、できるだけのことをいたしまして御報告いたします。
  115. 田中武夫

    田中(武)委員 お聞きのとおりでございますので、その資料がというか、調査及び措置の結果の報告があったところで改めてこの問題をやります。保留します。いいですね。
  116. 荒舩清十郎

    ○荒舩委員長 大蔵大臣、なかなかこれはむずかしい問題だと思いますが、それ、個々に全部調べられますか。
  117. 田中武夫

    田中(武)委員 ともかくやると言っておるのだから、委員長、やるだけのことはやると言っておるのだから……。
  118. 荒舩清十郎

    ○荒舩委員長 やるだけのことはやるという答弁でございますから、予算の採決のあるまでにひとつ誠意を持った御回答を願いたいと思います。
  119. 田中武夫

    田中(武)委員 それでは、この点保留しておきます。  そこで、通産大臣に答弁いただくのですが、ついでにもう一緒に申し上げます。  それはどういう対策を持っておるかということはこっちも調べておるのですよ。まず金融上の措置、政府関係あるいは中小企業信用保険法に基づくとかいろいろあります。それから次に下請取引の適正化、中小企業相談室、こういうように、これをあなた言うつもりだろう。これはこっちも知っておるんだ。  そこで、私が申し上げたいのは、通産大臣、この中小企業に対して業種別振興ということがありますね、それを積極的な中小企業対策とするならば、原因別の倒産防止対策、これは消極的といいますか、これを一つに考える必要があるんじゃないですか。原因別に手厚い倒産対策、どうですか。
  120. 河本敏夫

    河本国務大臣 不況がもうこうして二年以上続いておりますので、当面のやはり最大の課題というものは、いまおっしゃるように倒産をできるだけ防いでいく、こういうことだと思います。そのためにはやはり業種ごとにできるだけ仕事をふやしていくということが一つと、それからきめの細かい金融上の対策配慮を払っていくということ、これを業種ごとだけではなく、また地域別、できればさらに細かく企業別に配慮を払っていく、そういうことを徹底させるということによってある程度の私は倒産の防止はできる、こう思いますので、これまでもやってまいりましたが、さらにこのやり方を徹底をさせまして、少しでも倒産を防ぎたい、こう思います。
  121. 田中武夫

    田中(武)委員 もちろん負債が原因で倒れるのですが、だから金融上の措置は大切です。しかし、ここにずっと金額が書いてあります。私も持っております。しかしもう一つは、やはり下請取引の適正化ということ、金よりか仕事ということなんです。この下請取引の適正化、なお中小企業相談室も各通産局にあります。これでは少ない。したがって市町村にまで、あるいは商工会議所ないし商工会、そこに経営指導員がおります。そういう人がひとつきめ細かい相談に乗ってやる、そういうことで商工会法ができたときにいわゆる中小企業経営指導員という制度ができたわけなんです。だからそれにはやはりある程度予算をつけてやる、金を出してやる。そうして、ただ通産局だけでなく、もっと地域的に密着した、もっと気安く行けるところですね、市町村あるいは商工会議所、商工会あたりでやっておるとは思いますが、そういうことをやれるような方法を講じてもらいたい、いかがですか。
  122. 河本敏夫

    河本国務大臣 ごもっともな御意見だと思います。そこで、いま全国の商工会議所、商工会に約七千名ばかりの経営指導員を置いております。ことしも予算で約七百名を増加いたしまして、年度末には七千七百名ということになるのですが、ただやはりこの人たちの能力というものを高めませんと、いまのようなむずかしいときになかなか経営指導ということができないわけですね。そこで、数をふやすだけではなく、能力を高めるという意味におきまして今回中小企業大学をつくることにいたしまして、昨年五十年度と五十一年度で予算を組みまして、五十一年度末に大きくなる、中小企業大学が整備される、こういうことになっております。いまお述べになりました市町村別の細かい経営指導というものもこれによってある程度は強化される、こう思います。
  123. 田中武夫

    田中(武)委員 経営指導員ですね、この量と質を高めることは必要だと思います。そういうように原因がわかっておるのですよ、だから原因別の対策があるのではないか、こういうことを申し上げておるのです。それにはいち早く手当てをしてやるということですね。  ここで通産省あるいは中小企業庁が考えておる中小企業の事業転換ということに触れて、それが果たして今日のこういう中小企業の倒産あるいは不況を切り抜ける一つの決め手になるかどうかということを論議したかったのですが、これはもう時間の関係で、そういう考え方を持っておられる、だが、それはかつてのドル対策法と同じようなことじゃないか。余り官僚の押しつけだということなら中小企業はついてきませんよ。現にプロパンガス業界あたりはもうお断りだと言っておるでしょう、この事業転換について。そういうことは論議はやめますが、これは考えてくださいよ。法律をつくっても、押しつけではだめですよ。これだけ申し上げておきます。現にドル対策法が、何件今日まで件数があったということも調べております。ほとんど利用してないじゃないですか。そして、もうすでに限時法の期間が来かけておる、だからということで事業転換ですが、まあ、これは商工委員会等のあるいは一般質問等の論議にまちましょう。  次に進みますが、これはやはり大蔵大臣がいいのかな。公定歩合が数次にわたって引き下げられた。いち早く金融機関は、これは市中金融機関、大衆預金の金利の引き下げもやった。だが、金融機関、これは都銀から先ほど言ったように信用組合まで含めて、貸し付けの金利はどうなっておるのか、これが一向にわからないのです。大企業に対する金利中小企業に対する実質的な金利、これは玉置君も午前中に触れておりましたが、そういういろいろな登記料とかなんとかというようなことも玉置委員はおっしゃっておったが、いわゆる実質的な金利、拘束預金を除いた、本当に借りた金に対して幾らぐらいの金利になっておるか、これを明らかにしていただきたい。
  124. 大平正芳

    ○大平国務大臣 最近四回にわたって公定歩合が引き下げられまして、最初の三回は預金利子の引き下げを伴わなかったわけでございます。四回目の引き下げが初めて預金金利の引き下げを伴いましたことは、田中さんも御承知のとおりでございます。その結果どのように下がったかについて、大企業中小企業とに分けての実効金利がどのように下がったかということの実績を示せということでございますが、実は大企業別、中小企業別という統計が私の手元にはないようでございまして、金融機関別のもの、長短期のものの約定金利はあるわけでございます。  それから、実効金利ということになりますと、これはいろいろと立ち入った判断が要るかとも思うわけでございますが、ただいま手元にあるだけの計数において報告させます。
  125. 田中武夫

    田中(武)委員 手元にあるだけではだめだ。要求します。これは、大企業中小企業に対する実質金利、どうなっておるのか調べてください。そして出してください。出さないという法はないでしょう。銀行擁護のような答弁ならやめておいてくれよ。
  126. 田辺博通

    ○田辺政府委員 現在とっております約定平均金利中小企業向けとその他向けとを区分した統計はございません。それで、いま大臣から申しましたように、中小企業専門の金融機関とされておりますところの相互銀行、信用金庫、これの約定平均金利はあるわけでございます。これは、都市銀行だとか地方銀行の平均金利に比べますると、現状は若干高い状態にございます。  それから、いま一つ実効金利というお話でございますが、これは一つお話の前提に、その債務者の預金を全部相殺といいますか、その実質貸し出しの中から減らして、そして計算をすべきかどうかというのは、これは、取引の実態から見まして、ちょっと問題があるわけでございます。債務者の預金というものは常時あるのも普通でございますし、ですからその実効金利をどうとるかというのは、平均してはなかなかとりにくいので、個別の案件ごとに一体どれぐらいの負担になっているかということは、これはできると思いますが……。
  127. 田中武夫

    田中(武)委員 やはり銀行をかばう姿勢なんですよ。したがって要求します。いま私が言ったような資料を出してください。できないところは、なぜできないかという理由を付して出してください。いいですか。  いまはしなくも相殺という言葉が出ました。そこで、その問題に入ります。  拘束預金については、もうすでに何回かここでやられておる。だがしかし、最近私の知人から、いまお手元へ出したような——大蔵大臣、見てください。相談の手紙をもらったわけです。これを一口に申しますと、そこにはちゃんと名前も書いてありますが、これは加古川の運送会社——と言ってもほんの小さな運送会社、仮にI運送といたします。それから、そのI運送が金を貸した尼崎の運送会社、これをS運輸といたします。そして取引先は、兵庫県に本社のある日新信用金庫、その魚崎支店であります。神戸です。そのことについての相談の手紙でありまして、これは実は拘束預金というか日新信用にこれこれの預金がありますからということで、そのI運送がS運輸に対して一千百七十四万六千三百円の手形を切ったわけです。これは融通手形というか、ともかく裏づけたわけであります。それば、そのときには日新信用にこれだけ預金があるからと、こういうことだ。ところが、昨年の十一月二十日になって、そのS運輸の社長以下が逃亡して行方不明になった。そして十一月二十六日に取引停止が行われた。それがわかって十二月二十五日に、その日新信用金庫の魚崎支店へ行って聞き合わせたところが、相殺の結果現在残高ゼロ、ありません、こういう返事であって、まあ弱っておるが、どうでしょうかという意味の相談の手紙なんですがね。  そこで、一つお伺いしたいのですが、ここに私、日新信用金庫の信用金庫取引約定書なるものを持っています。同時に、これは地方銀行ですが、地方銀行取引約定書ひな形というものを持っています。この内容、全く一緒なんです。ならば、都市銀行も他の市中金融機関もそうだろうと思うのです。  まず、その約定書の五条に「期限の利益の喪失」という項があるのです。あなたも持っておるでしょう、きのう言ったから。——持っているだろう。五条に、「期限の利益の喪失」という項があります。そうして、がたがたがたと書いてあるが、一番最後、二項三号に、「その他債権保全のため、とくに必要と認められるとき。」とある。ということは、その金融機関が、主観的に、自由に選択できるということです、いつでも。そうして七条に「差引計算」というのがありまして、これは、いわゆる拘束預金を含む定期預金あるいはその債務者が銀行に持っておる債権を、期限のいかんにかかわらずいつでも相殺できるという意味のことが書いてあります。いいですか。しかも、この取引約定書は、ここにひな形が出ているように、これは一般化しているのだと思います。そこで、まず民法五百五条以下の相殺規定を頭に浮かべてください。それは同種の債権で、かつ期限の到達したものという制限があるわけなんです。ところが、これによって全部飛んでしまうわけなんですね。これが有効か無効かということについていろいろ論議もあります。  そこでまず具体的にお伺いいたしますが、中小企業金融機関と取引する場合に、いわゆる定型化せられたこういう印刷物に、ここに判を押しなさいと言って判を押さされるわけです。これは借りる者の弱み、貸す者の強い地位。そして、いいですか、拘束預金をさせられるといったようなことがついてくるわけなんです。先ほど言った取引約款の五条、七条が果たして私は有効かどうかということに疑問を持つ。そういう優越した地位を利用し、かつ決められたもの、これに判を押せというようなことが——そうしなければ借りられない、この弱みがある。だから、言われるとおりこれに判を押す。そういうことが果たして公の秩序、善良の風俗からいって許されるかどうか。すなわち、民法九十条からいってこの特約は無効ではないかということが一点。  さらにもう一点は、いかに契約自由の原則があるとはいえ、こういったもので押しつけられるところに果たして契約に対して合意があるのかどうか。一方的ですよ。そういう行為が契約自由の原則によって守られるのかどうかが二点。いかがですか。
  128. 大平正芳

    ○大平国務大臣 銀行等の金融機関は、国民大衆から預金を受け入れてこれを安全確実に運用する責任を持っておるものでございますから、不測の事態にもできるだけ債権の保全に努めなければならぬ立場におりますことは理解できると思うのでございます。したがって、金融機関として預金者保護の立場から債務者の同意を得まして所要の措置を講ずる必要があって、いま仰せのように銀行取引約定書というような定型化した契約が行われておりますことは御指摘のとおりでございます。これはあくまでも私契約上の約款でございまして、当局が認可したものではございません。銀行の立場でそういうものが債権保全上考えられることも理解できると思いますので、それがあなたの言われるいわゆる公序良俗に違反する、民法九十条違反と決めつけることは必ずしも直ちに言えることではないと思います。  ただ、実際の運用は田中さんも御承知のとおり、債務者の事情もできるだけ配慮することが当然銀行の務めでございまして、いやしくもこういう約款上の権利というようなものを乱用するようなことは努めて避けなければならぬことは当然と考えるわけでございます。したがって、当局の意見を求められるとすれば、私どもとしてはそういう観点から、必要に応じて金融機関に対しまして、こういう約款の乱用ということは慎まなければならぬという立場から行政指導はしてまいらなければならぬと考えておるものでございます。  第二の点は……。
  129. 田中武夫

    田中(武)委員 契約自由の原則からいってどうか。本当に契約の上において合意ということが言えるのか。
  130. 大平正芳

    ○大平国務大臣 これは債務者の同意を得た上での措置、契約であると私どもは承知いたしております。
  131. 田中武夫

    田中(武)委員 だからだめなんですよ。借りる弱み、これに判を押しなさいということで判を押さされるのです。そこに合意なんて成立する余地がありますか。しかも、このことは第三者に対して大きな影響を持つ。いま私があなたに渡したこの相談の手紙、まさに第三者なんです。相手方に対して金を貸す。だが、その借り主は銀行にこれだけの定期預金をしております、これだけの取引があります、だから信用する。ところが、先ほど言ったように、この取引約定書というか約款によっていつでも期限の利益を喪失し、相殺をやってしまうのですよ。そうした場合に、第三者はこうむる影響は大きいですよ。当事者間だけではない。第三者のことを考えた場合にどうですか。これについては、相殺特約の有効性については、特に第三者、債権者に対する点について最高裁は制限する立場からの判例を下しております。私が言うのは、ただ当事者だけではなくて、第三者の期待権というか、これを勝手に制限する、こういうことが公の秩序、善良の風俗からいっていかがか、こう言うのですよ。  さらに、あなたが言っているように合意があったなんて全然言えないですよ。一方的契約です。もちろん汽車に乗るのも一つの運送契約です。だから、切符は、ということも同じことですが、それとはまた立場が違う。強い立場に立って、いわゆる取引の優位性の上に立ってこういうことを押しつけることは私は問題だと思うのですよ。どうですか。私の言っていることについてどうですか。民法九十条、契約自由の原則。反発があればやってください。
  132. 大平正芳

    ○大平国務大臣 先ほど申しましたようにこれは私的な約款でございまして、契約であることに間違いございませんで、契約でないとは言えぬと私は思いますが、いずれにいたしましても、これは債権保護の意味で銀行として最後の立場を守るために講じた措置であると思いますけれども、しかしあくまでも先ほど申しましたように債務者の立場を考えて乱用は慎まなければならぬことでございまして、したがって、直ちにこういう契約自体が公の秩序、善良な風俗に違反するというように決めてかかることはやや無理でないかという感じがするわけでございまして、あくまでも乱用は慎むように自粛をしていかなければならぬことは当然と考えるものでございますが、直ちに違反と決めつけることは私は多少無理があるのではないかと思います。
  133. 田中武夫

    田中(武)委員 あなたがそれは無理があるかと思うと言うことは、それはあなたの見解。私は、相殺規定、これが任意規定か強行規定かということについても検討しました。これは残念ながら強行規定だということは言えない、というのが私の研究の結果。これが強行規定なれば、それに反する契約は全部違反ですね。私的な契約であるからと言うのなら、それなら、大平正芳を殺してください、百万円やりますという契約を私が小林君とした、これは私的な契約ですよ。どうなんですか、有効ですか、これも私的な契約として。
  134. 大平正芳

    ○大平国務大臣 それはまさに公序良俗に反すると思います。
  135. 田中武夫

    田中(武)委員 私的な契約だと言うが、金融機関は公的な存在ですよ。いいですか。あくまでも利益追求だけにあるものではない、公共的な存在である、これは認めますか。いかがですか。
  136. 大平正芳

    ○大平国務大臣 これは公的責任を持った機関であると思います。
  137. 田中武夫

    田中(武)委員 ならば、いいですか、その社会的企業責任の上に立って、こういうような契約は、いかに私的な契約であるとはいえ、しかも契約自体に合意があったとか言ったって、これはもう言わなくてもわかっておるでしょうが、これに判を押さなければ金を貸してくれぬ、しかも二割に近い拘束預金を取られる、あるいは三割も取られる、承知で貸してもらわなければ命がない、そういうせっぱ詰まった人にそういう約款を押しつけることは、これはどうなんです、許されますか。  もとのこれに戻ります。ちょっと見てください。この日新信用金庫は、ほかに枚方市に宅地三百九十平米の第一順位の抵当権を設定しておるのです。それだけはわかっておるのです。そのほかのことはわからないのです。さらに、公取、どうです。これは不公正な取引である、いわゆる自己の優位な地位を利用しての取引であることは間違いない。したがって、一般指定でなくて、この件を特殊指定にすべきだと思うのですが、こういう件については公取の見解はいかがですか。
  138. 橋本徳男

    ○橋本(徳)政府委員 この点につきましては、先ほどのこの契約約款自体から独禁法違反かどうかというふうな問題は、直ちには非常に引き出しにくい。要するに、これに基づく一つ一つの行為を取り上げて、その行為がどうかというところで判断しなければならぬだろうと思うのでございます。したがいまして、いま先生おっしゃいましたようなケース、そういうふうなケースにつきまして、たとえばこの約款でも、使用の仕方によってはかなり乱用にまたがる項目もございます。したがいまして、そういうふうなケースを具体的に把握いたしまして、そしてそれをさらに検討いたしまして、これを事件処理という形をとった上で特殊指定にするかどうかということを考えさせていただきたい、こういうふうに考えております。要するに、具体的な問題から入っていきたい。いろいろな契約の形だけでは非常にわかりにくいので、具体的な問題から入らしていただきたいというふうに考えております。
  139. 田中武夫

    田中(武)委員 だめだな、やはり通産出は。ともかく自己の優位な立場をとっての取引ということは間違いないですね。もういいですよ。だから、私は、あくまで一般指定でなくて特殊指定を行うべきである、こういう主張をします。意見があったら伺います。また改めて他の場所でやります。高橋委員長病気で入院しておられるが、あなたの答弁聞いて、いい答弁したと思っておるかな。
  140. 橋本徳男

    ○橋本(徳)政府委員 いままで、特殊指定の問題につきましては、個々のケースにつきまして十分検討いたしまして、それの積み上げとして特殊指定をしております。したがいまして、この件でも十分そういう点につきましてわれわれとしても研究はしたい、しかし個々のケースから入らしていただきたいというふうに考えております。
  141. 田中武夫

    田中(武)委員 大蔵大臣、これは民法九十条からいってどうかということについては、あなたと私の見解、解釈が違う。しかし、少なくとも契約自由の原則からいって、本当に自由に契約ができたかというと、それはもうそういうものじゃないことはあなたもわかるでしょう。また、独禁法上から言うても不公正な取引であるということははっきりすると思う。したがって、少なくともこういう約款ですね、「期限の利益の喪失」、相殺規定、これは本当に「その他債権保全のため、とくに必要と認められるとき。」なんていうたら、あれですよ。同時に、何回も言いますが、善意の第三者を保護する上において、行ってみたらもう相殺で何もありませんと、しかも、それじゃそのときの債権は幾ら、債務は幾らと聞いたとしても、これは銀行の守秘義務、秘密を守る義務だと言って一切言ってくれないのですよ。後で守秘義務についても論議します。どうです、こういう約款に対して、何とか内容を変えさす、あなたは指導をすると言っているが、前向きの答弁、ことに、この内容について検討して直さすぐらいの答弁はできませんか。どうです。
  142. 大平正芳

    ○大平国務大臣 先ほど申し上げましたように、銀行といたしまして預金者保護の最後のとりでとしてこういう約款を考えたものと思うのでございますが、しかし、これはあくまでも一般的な約款でございまして、これがどのように適用に相なるかという具体的なケースが問題だと思うのでございます。で、これは現実には債務者の立場というものを考えて銀行が振る舞わなければならぬことは仰せのとおりでございまして、事実そうしておるはずでございます。したがって、この乱用をこそ戒めなければならぬわけでございますが、この約款の存在自体を否認する、あるいはこれを換骨奪胎というか、根本的に改定をするというまで考える必要はないのじゃないか、その乱用を戒めるということに私どもが努めてまいりますならば御期待に沿えるんじゃないか、といまのところ考えております。
  143. 田中武夫

    田中(武)委員 どうも、これ以上やっておっても同じことに、行き違いになると思うのです。すれ違いになると思うのです。  そこで、委員長理事会において検討することがお得意でございます。したがって、御提案します。この問題をひとつ理事会へ私は持ち込みたい。いかがですか。こんなばかなことが許されるかということですよ。銀行呼んでやろう。
  144. 荒舩清十郎

    ○荒舩委員長 理事会で研究をいたします。
  145. 田中武夫

    田中(武)委員 銀行を呼んでもらう、そして、そこで、それは理事会の協議の上ですが、そういうことでこの件は保留します。こんなことでは許されませんよ。いいですか。
  146. 荒舩清十郎

    ○荒舩委員長 含めて、研究をいたします。
  147. 田中武夫

    田中(武)委員 銀行が、金融機関が公的な存在であるということについては、大蔵大臣否定しませんね。私は、かつて商法改正について当委員会あるいは法務委員会でも提案したことがあるのですよ。それは、制限があるのですが、特定の大企業あるいは公害企業等については市民をも含む学識経験者等々による経営監視委員会をつくれ、こういうことを主張したことがあるわけなんです。で、法務省は検討することになっておるはずなんです。そこで、まずその手始めに、銀行にそういう市民参加の監視体制をしいたらどうですか。ここに私は二月一日、だからおとついの朝日の一つの切り抜きを持ってきておりますが、これは婦人有権者同盟の会長が、投書か何かしらぬがやった中に同じようなことを言っておるのですよ。「市民参加の監視制を」ということを提案しておるのです。そういうことをいま提案しますが、いかがですか。銀行に対する監視体制、いかがですか。
  148. 大平正芳

    ○大平国務大臣 銀行は確かに公的な責任を持ちました機関でありますことは先ほどお答えしたとおりでございます。さればこそ銀行を規制する立法もございまするし、また監督体制もしかれておるわけでございまして、ただいまの体制で誠心誠意対応してまいりますならば、私は当面の問題に支障なく対処できると思うわけでございまして、特に市民参加の監視機関というとげとげしいものはつくる必要はないと私は思います。
  149. 田中武夫

    田中(武)委員 当委員会でもいままでに何回か言われておる。景気であれ不景気であれ銀行だけはもうけておる。何回も言われておる。しかも、いろいろな点において保護を受けておる。そういう銀行に、金融機関に勝手気ままなことを許していいのですか。それによって泣かされている人が何人おるのか。自殺に追い込まれた人が何人おるのか。しかも、銀行の守秘義務ということでポンとけってしまうのですよ。  そこで、銀行の守秘義務、秘密を守る義務についてどのような見解を持っておられますか。時間の関係があるから私から申し上げます。これは果たして法律上の義務か道徳上の義務かという論争がある。法律上の義務だとした場合には、商慣習説あるいは信義則説、契約説という、三つばかり代表的な説がある。そこで大蔵大臣、このうちのどれをとりますか。
  150. 大平正芳

    ○大平国務大臣 実定法上の規定はございませんので、どういう学説によるかという問題だと思います。
  151. 田中武夫

    田中(武)委員 あなた不勉強だね。銀行の秘密保持義務ということでいろいろな論文なりが出ております。だから、あなたはそのうちのどれをとるのか。とったら、それを完膚なきまでにやっつけます。どうです。これも預けておきますか。
  152. 大平正芳

    ○大平国務大臣 商慣習説もございますれば、御説のように信義則説あるいは契約説というのがあるようでございますけれども、いずれにいたしましても、単に道義的なものではなくて、ある程度法的規制力を持ったものだと考えております。
  153. 田中武夫

    田中(武)委員 これもはっきりしないけれども、大体法律的な法律上の義務だということが通説のようですね。しかし、それに対する裏づけの議論が分かれておる。法制局長官そうでしょう。だから、あなたがどういう立場で来るかこっちは用意して、こうきたらああ、ああきたらこうとちゃんと用意しておるんだ。これはとてもぼくに太刀打ちできぬよ。それを認めるなら次に行きます。それともやりますか。いかがですか。ほかの閣僚諸君、どうです。法制局長官どうですか。  そこで具体的に、あなたに渡してある私に対する相談の手紙のコピー、これを言っても守秘義務でポンとけられて、一体幾らあってどうだというのは全然言われないのです。そのくらいは調査して報告してくれますか。これも保留だな。報告してください。できますか。信用金庫の名前まで挙げておるのだ。
  154. 田辺博通

    ○田辺政府委員 具体的な事案の問題でございますので、資料をいただきましたらその内容につきまして調査した上で、先生に直接御報告したいと思います。
  155. 田中武夫

    田中(武)委員 これは報告するということだから認めます。だがしかし、先ほどから聞いておって、あなたおどおどしておって実際自信を持っておらぬじゃないですか。大蔵大臣、次に総理になるかわからぬ人がそんなことじゃだめですよ。これはまだたくさんあるのですが、どうもおたおたしておるから飛ばしましょう。  中小企業事業分野確保の問題についても、これは三十九年、私が商工委員で社会党の中小企業政策委員長の当時つくった法律なんです。それが何回出しても成立していないのだ。いまようやく各党間で話し合いがついておるところですが、総理は、いやこれは行政指導がいいとか何とか言っておる。この点についてどうか。  それから、官公需の問題について、総理は先日の本会議で五〇%云々と言われた。そこで、具体的に各省庁にわたって、私は、たとえばあなたのところは何%中小企業の方へ発注していますかと聞きたいのですが、その時間もありません。  そこで総理、どのようにして五〇%に持っていこうということなのか、具体的にひとつ示していただきたい。さらに、各省庁ごとに現在どういうことであって、それを五〇%にするためにはどうするのかということを書類で資料として出していただきたい。いいですか。いかがです。
  156. 三木武夫

    ○三木内閣総理大臣 最初にこの法律をつくったときには五〇%くらい持っていきたいということが立法のねらいでした。いま三二%ですか、したがって、これは田中君の御指摘のように、各省庁にまたがりますから、これは精神規定みたいなことではだめですから、各省庁の連絡協議会を開きまして、これを設けます。そうして、お互いに各省庁によって多少の数字上の違いもありますから、各省庁ができるだけ中小企業の官公需を確保したいという政府の意図に従って皆努力せなければならぬわけですから、そういう一つの連絡会議を置きまして、今後官公需を、中小企業ができるだけシェアを確保できるように努力をしたい、これはいままで置いてなかったのです。今度置きます。
  157. 田中武夫

    田中(武)委員 これは、五〇%にしたいということを総理みずからが本会議で答弁しておられるのです。したがって、具体的にどのようにして五〇%に持っていくのか。現在各省庁はどの程度なのか。平均としては三〇%そこそこだと思うんですがね。それをどうして五〇%いくのか、これを文書で回答をお願いします。(三木内閣総理大臣「すぐにはできませんよ。時間がかかりますよ」と呼ぶ)いや、だから具体的な方法と、各省庁がいまどうしておるか、現状。委員長、いいですね、確認してください。
  158. 荒舩清十郎

    ○荒舩委員長 よろしいですか。
  159. 河本敏夫

    河本国務大臣 官公需のいまお話しの問題につきましては、各省ごとに調査をしていただきまして、中小企業庁で取りまとめて文書で御報告をいたします。
  160. 田中武夫

    田中(武)委員 通産大臣、これは、ぼくは十二年前と同じことを言うておるんですよ。いいですか。三十九年に事業分野確保法を出したのです。三十八年に中小企業基本法が通ったのです。そのときにつくった一連の法律の一つなんです。十二年前と同じ議論がここで通るということは、中小企業政策に対して十年以上おくれておるということなのです。認めますか、どうです。これは私、別に勉強したんじゃない。十二年前の、かつての私の商工当時の中小企業政策を持ち出したわけです。ここに佐野君等がおるが、新しい問題についてはまた改めて佐野君がやるでしょう。私は十二年前のことを言っておるんだ。それが通るんですよ。反省がありますか、どうです。
  161. 河本敏夫

    河本国務大臣 中小企業基本法ができましてから、いまお話しのように十二年になりますか、その際、中小企業の問題点が指摘されたわけでございます。その問題点を解決するために、政府は十二年間努力を続けてまいりました。しかし、なお問題がたくさん残っておりますので、今後とも法の精神が実現するように引き続いて努力するつもりでございます。
  162. 田中武夫

    田中(武)委員 後で法務大臣、まあ答弁はどっちでもいいですがね、会社更生法を悪用しておるという例が多いと思うんですよ。これは銀行あたりが手を引く、もうあかんと見たらつぶすんですね。そのために会社更生法適用申請をする。もちろん裁判所は更生決定にまではいろいろ調べるでしょう。だが、それが決定の認可があるかないか別として、更生法適用申請を出した段階において、もうだめなんだな。しかも、中小企業の倒産というか企業倒産は、第一次から第二次へ——最近第二次製品をつくった大きなところが倒れましたね。言うなら、川上から川下に向かって流れていくように、まだまだ倒産は出ますよ。そのことについて、会社更生法等々にわたっても論議したかったのですが、もう時間がございませんのでやめますが、感じとして、法務大臣、どうですか。そういう乱用というか悪用というか、これは裁判所がチェックするのですが、何か御意見があれば——なければ結構です。手を振っておられるので、ないようです。しかし、私がここで言いたいのは、そういうことで銀行の思うままにつぶしてきよるのです。それは決定を下すか下さないか、これは裁判所がやります。そこまでわれわれは申しません。しかし、申請をしたということでもうだめなんです。それをひとつよく考えていただきたい。  そこで、少しとまったというか、ごてごてした時間ももらうことにしても、最後に一言だけお伺いしますが、きょうの読売に、これはまあ自民党の方針として出ておるのですがね、独禁法の改正について。委員長の権限に枠をはめる等々書いてありますが、総理、もうすでに何回も言われておることだが、本院は全回一致で修正で通しておるのですよ。これが衆議院の合意というか、意思なんですよ。それを自民党は、まあいろいろと財界等とかのてこ入れ等もあったんでしょう、委員長の権限に枠をはめるとか、閣僚に任命したということで、もう、一つの行政官というか閣僚にしてしまってくつわをはめてしまうとか、いろいろあるわけなんです。そういう考え方があるようです。  そこで、どうです、総理。独禁法については、あなたは時期を見て云々と何回も言っておられるが、少なくとも本院においては全会一致で修正で通っておる、この事実をどう見ますか、お伺いします。
  163. 三木武夫

    ○三木内閣総理大臣 重みを持っておると思います。全会一致で通ったという重みは持っておると思います。
  164. 田中武夫

    田中(武)委員 それならば、その上に立って考えますね。いかがです。
  165. 三木武夫

    ○三木内閣総理大臣 そういう事実を踏まえて、自民党の方でよく検討をして、現在の時点において国民のために一番いいと思う案を得たいと思っております。
  166. 田中武夫

    田中(武)委員 もう余り無理も言えませんから、これでやめますがね。総理、この場限りの答弁じゃだめですよ。現にそういうことが新聞にも出ておるのです。じゃ、その全会一致で通ったという事実を踏まえて、それは総裁らしく、総理らしくきちっとやってください。要望します。  以上で終わります。
  167. 荒舩清十郎

    ○荒舩委員長 これにて田中君の質疑は終了いたしました。  次に、湯山勇君。——どんどんやってください。
  168. 湯山勇

    ○湯山委員 総理は、施政方針演説におきまして、二十一世紀を展望した長期的政策というので、第一に教育を取り上げておられます。そして、特に教育を政争の外に置くということについては、昨年に続いて今回もお述べになっておられますし、また新たに今度は、指導面を強化して教育の質的な充実を図るということ、それからまた、文部大臣の提唱された助け合いということについては、これは適切なものとして評価されております。  私も、その限りにおいては総理の御意見に全く賛成ですけれども、問題は、最近問題になっておる例の主任制の問題でございます。たまたま文部大臣が主任制についての見解として発表になられたことと、総理の演説とは全く一体になっている。そこで、総理もまたこの主任制というものを頭に置かれて施政方針演説をお述べになったか、あるいは文部大臣の方からの要請によってこれをお述べになったか、いずれにしても、この主任制というものが含まれておることは否めないと思います。  ただ問題は、予算委員会ですから申し上げますならば、このことに関連して、第三次の給与改定、優遇措置として二百三十億ばかりの予算がいま提案されております。二百三十億程度でございますけれども、この予算の使い方いかんが、総理のお述べになったこと全体をひょっとすると違った方向に持っていく、文部大臣の意図されたこと全部を違った方向に持っていく、そういう心配もありますので、この問題をきょうは取り上げて御質問申し上げたいと思います。  その前にお尋ねいたしたいのは、昨年の暮れにかけまして、文部省では、この主任制の問題をめぐりまして、就任して二カ月しかたっていない初中局長が初中局長の職を転じました。やめたとも言えるかと思います。それから、当時の政務次官は、もう交代の時期があと数日になっておるのに、政務次官の辞表をお出しになりました。なおまた、事務次官もやめるのではないかというようなことが新聞によって伝えられました。これはきわめて異常なことである。総理も長い閣僚の御経験で、自分の選んだ局長がわずか二カ月ぐらいでその職を去るというようなことは異常なことだと思うでしょうし、また、政務次官が辞表を出すというようなことも異常なことなんだと思いますけれども、こういう事実を総理は御存じなのかどうなのか。御存じであれば、一体どのようにお感じになっておられるか。最初申し上げましたことは順次お尋ねいたしますから、後の質問に対してだけお答えいただきたいと思います。
  169. 永井道雄

    ○永井国務大臣 ただいま湯山議員から御質問がございましたことにつきまして総理大臣がお答えになると思いますが、私の所管でございますので、一言答弁をさせていただきたいと思うわけでございます。
  170. 湯山勇

    ○湯山委員 文部大臣には後でお尋ねしますから、総理大臣に、知っておるか知らないかだけ聞いたらいいので……。
  171. 永井道雄

    ○永井国務大臣 それで、総理大臣は恐らく事実は御存じであるに違いないのですが、その事実について申し上げますと……。
  172. 湯山勇

    ○湯山委員 事実はよく私も知っていますから結構です。——もう結構ですから、本当に。大変大事なことで、言ってもらうことがたくさんありますから、済みませんけれども……。
  173. 荒舩清十郎

    ○荒舩委員長 文部大臣、後で答弁してください、総理に質問しているんだから。文部大臣、交代。
  174. 三木武夫

    ○三木内閣総理大臣 異動があったことは承知しておりますが、その事情がどういう事情かは、詳細には私は存じておりません。
  175. 湯山勇

    ○湯山委員 そういう事実だけは御存じであって、それがどういうわけかわからないから、自分の所感というのは述べられないという御答弁だと思います。それはそれで結構でございます。  これについては、ずいぶんどの新聞もあるいは報道も、名前を申し上げれば自民党の圧力によってそうなったということを伝えておりますが、これは御存じでしょうか、いかがでしょうか。     〔委員長退席、正示委員長代理着席
  176. 三木武夫

    ○三木内閣総理大臣 自民党は日本の教育に圧力をかけようという意思は、湯山君、全然ないのですよ。これに圧力をかけて、たとえば教員を選挙に利用しようなどという大それた考え方を自民党は持ってないのです。やはり自民党は、日本は究極において頼るべきものは人間以外にないのですから、だからこの二十一世紀に通用するようなよき日本人、よき世界人をつくるりっぱな教育をしてもらいたいと願う以外に、教育を政治に利用するという考え方は全然ない。また、ごらんになっても利用してないでしょう。それは湯山さんの思い過ごしである。そういうことはどうぞ御感受を願いたい。
  177. 湯山勇

    ○湯山委員 総理がそれだけ力をお入れになるのですから、そうだと思いますけれども、ただ申し上げておきたいのは、このことについてあらゆる報道機関が自民党の圧力というのを言ったことは御銘記願いたいと思うのです。総理がいかにおっしゃっても、すべての報道機関が挙げてそういうふうに報じておったことだけはひとつよく頭に入れておいていただきたいと思います。  したがって、なお念を押したいのです。もう押すまでもないと思いますけれども総理は、昨年ですけれども、本会議におきまして、自民党の考え方を教育に押しつける考えは全然ない、党人でない永井文相の起用もここにある、永井君は大いに自由にやってもらいたいということを述べておられますが、これはこのとおり今日も変わりませんか。はっきりしておいてください。
  178. 三木武夫

    ○三木内閣総理大臣 全然変わりありません。
  179. 湯山勇

    ○湯山委員 それは安心いたしました。  そこで私は、総理大臣、そうおっしゃるのにお聞きするのは非常に失礼のようですけれども、なお念を押したいのは憲法の問題です。  これをお尋ねする意味は、教育基本法によりますと、こうあります。「われらは、さきに、日本国憲法を確定し、民主的で文化的な国家を建設して、世界の平和と人類の福祉に貢献しようとする決意を示した。この理想の実現は、根本において教育の力をまつべきものである。」。これは総理も同感だと思うのです。文部大臣はこの精神に従って文教行政を進めていかなければならない、こうだと思いますが、これは文部大臣から、そうであると御自覚になっておられるか、そうでないとおっしゃるか。
  180. 永井道雄

    ○永井国務大臣 文教行政は憲法、教育基本法の精神に基づいて行われるべきものであると考えております。
  181. 湯山勇

    ○湯山委員 私がこういうことをお尋ねするのは、去る一月二十一日に自民党大会が開かれました。そこで党の政綱として——政治の「政」と綱領の「綱」なんで、これは非常に重要な問題です。そこでは「現行憲法を再検討し、国民の合意を得てその改正をはかる。」ということが党議として決定されました。この党議は文部大臣を拘束するものではないというように総理総裁の口からはっきり言ってもらえますか。
  182. 三木武夫

    ○三木内閣総理大臣 私は、湯山君、こう考えておるのですよ。憲法は永久に変えていかぬというものではない。よりよい憲法を持とうとすることは政党として各党がそう考えていいわけです。大事なことは、国民の総意ということである。自民党も言っているでしょう。国民の総意というものは——憲法を改正するというときには、ある一部の人が憲法を改正するなどと言って、こんな国の基本に触れる問題を軽々しく出すべきではない、国民の総意がそういう熟したときにおいて憲法は改正をしていいのですよ。そのために憲法は改正の規定まで設けておるのですから。自民党が言うのは、国民の総意というものがそこへ向かなければ、自民党は軽々しく憲法改正に乗り出すことは絶対にありません。
  183. 湯山勇

    ○湯山委員 私は、自民党が決めたことについて意見を申し上げてはおりません。決めたという事実、しかも政綱で決めている、そのことが文部大臣を拘束するかしないかということだけお尋ねしたわけです。これはいかがですか。
  184. 三木武夫

    ○三木内閣総理大臣 自民党の党大会において、こういういま言ったような現行憲法を再検討し、国民の合意のもとに改正を図るという中間報告を、松野政調会長が報告したことは事実です。
  185. 湯山勇

    ○湯山委員 それは文部大臣を拘束しますか。
  186. 三木武夫

    ○三木内閣総理大臣 何も拘束しないでしょう、いまのところどうこうするということではないのですから。
  187. 湯山勇

    ○湯山委員 そこで、拘束しないということですから、それは当然だと思うのです。  次に、総理大臣が昨年議会に対して、三木内閣では憲法を改正しない、それから閣僚は憲法改正のような会議には出ない、それからことしになりますが、憲法を守っていくための行事をやるというお約束をなさいました。これは、さきの一月二十一日の大会の有無にかかわらず変更はございませんか。
  188. 三木武夫

    ○三木内閣総理大臣 私は最初に言ったように、憲法改正は国民の総意というものが前提になるわけですから、いま私どもの内閣で憲法改正を発議するというそういう条件もありませんし、また、そういうふうな国民の総意も熟しておりませんから、その考えはございません。したがって、憲法改正を促進する会議に閣僚が出ることはありません。また、憲法記念日には、簡素にして厳粛な式典を行いたいと思っております。
  189. 湯山勇

    ○湯山委員 昭和二十七年以来、そういう行事はなかったのです。二十何年目に復活する行事ですから、どういう簡素にして厳粛な、しかも国民に訴える行事をされるのか、せっかくですから、構想があればひとつ総理からお述べいただきたい。
  190. 植木光教

    植木国務大臣 来る五月三日に、内閣の主催によります憲法の施行を記念する式典を行いたいと考えております。現在、式典は憲政記念館におきまして、関係者の御参集を願いまして、厳粛かつ簡素な式典を行ってはいかがかと考えておりますが、憲政記念館で行いますことにつきましては、国会方面の御意向も伺う必要がございますので、それをただいま伺いつつあるところでございまして、それに基づきまして内容を決めてまいりたいと思っております。
  191. 湯山勇

    ○湯山委員 それについて、特別に予算があるのですね。
  192. 植木光教

    植木国務大臣 五十一年度予算に五百八万円を計上いたしております。
  193. 湯山勇

    ○湯山委員 それが忠実に守られておることは大変結構だと思います。  さて問題は、今度の主任制につきまして、また教育を改革していく方向として、総理はさきのように指導面を強化する、それから教育の質的な充実を図るということを言っておられますし、文部大臣もまた御見解の中で、やはり指導面を強化する、調和のとれた学校運営をしていく、そのために主任制を設けるのだ。そして、従来の教育の場を見ると、どちらかといえば管理面が重くなってきている、そこで、それを補うために今回の主任制は総理が言われたとおりに指導面を強化するのだ、こう言っておられますが、そのとおりかどうなのか、一言だけ、大変勝手ですが……。
  194. 永井道雄

    ○永井国務大臣 まことにそのとおりでございます。
  195. 湯山勇

    ○湯山委員 調和のとれた学校運営というのは、それでは管理とそれから教育指導との調和という意味でございましょうか、念のためにもう一度。
  196. 永井道雄

    ○永井国務大臣 大局的に申しますれば、管理とそれから教育の指導という二つの柱の間にバランスが保たれているのが調和のある学校運営であると私は考えております。
  197. 湯山勇

    ○湯山委員 私はその点、大臣といささか考えを異にしております。それは、教育というのは、教師と生徒児童、こういう人間関係以外には教育はありません。先生対児童生徒をのけて、教師対教師あるいは校長対教員、主任対教員、その中には何の教育もないのです。ですから、教育の原点は教師と児童の関係にある。管理というのは、いまおっしゃるのは教師対教師あるいは校長、教頭対教師、そういう関係でいまのように御把握になっておるようですけれども、それは私は教育じゃないと思うのです。したがって、管理面と指導面という言葉をお使いになりますけれども、教育指導をやっていくための必要な補助が管理であって、管理と指導というものは、調和をとれぬ、対立するものではありません。まして管理が前に出るなんということは、それはあってはならないことだと私は考えますが、ここでひとつお考えを伺いたい。
  198. 永井道雄

    ○永井国務大臣 ただいま承っておりますと、湯山委員と私の考えは同じであるというふうに考えます。学校の最も重要なことは、申すまでもなく生徒児童を教育することにございます。そこで、学校は何の場であるか。私の大臣見解に書いてございますが、教育の場である、そこが中心でございます。その教育を行うために運営ということが起こってまいります。その運営上二つの柱を考えたらよろしいということで、私は二つの柱を立てているわけでございまして、運営、二つの柱、すべての目的はまさに生徒と教師の接触する教育にあるという点につきまして全く異論がございません。  さらに、補足見解で申しておりますが、将来これは管理と教育指導のどちらが強くなっていくことが望ましいかというならば、これまでわが国において、とかく管理強化ないしはこれに反対ということできしむことが多かったのでありますが、私は、今回教育指導というものを重視してバランスを保ちますようにしてほしいが、将来はむしろ教育指導というものが前面に出てきて運営され、そして先生の言われるような最終目的を達成すべきである、かように考えております。
  199. 湯山勇

    ○湯山委員 よくわかりましたし、私と意見が違ってないようです。ただ、それに対してどうするかということについては大変違っているので、一体管理面が強くなってきている、そこで今度はそれに対抗して指導面を強める、こういう積み上げをやっておったのでは、いつまでたっても片づかない。じゃなくて、強くなり過ぎた管理面ならば、それは下げればいいのじゃないですか。こういうことをお考えにならないで、いきなりすぐ現場へ主任制度を持っていくというやり方は、これはいささか間違っているのじゃないか。大臣が言われるようなことは、いまの制度を忠実にやればそうなっているのです。そのことを私は御指摘申し上げたい。今日のようにした責任というものは、今日までの文部行政の責任だと言っても言い過ぎじゃありません。  これは幾らか具体的な例を挙げてみますと、大臣は御見解の中で、教育委員会の中では管理主事を先に書いております。管理主事、指導主事が相補的にうまくやっておる、こういうことですが、一体法律のどこに管理主事という言葉がございますか。職制は法律のどこにございますか。何法律の何条……。
  200. 諸沢正道

    ○諸沢政府委員 お答えいたします。  管理主事という職制はございません。
  201. 湯山勇

    ○湯山委員 それでいいです。  総理大臣、こういうことなんです。間違っていますでしょう。  それでは、教育委員会の事務局に置かなければならない職というのは何なのですか。大臣、これは大事なことですから答えてください。
  202. 永井道雄

    ○永井国務大臣 教育長、指導主事が最も重要なものと考えます。
  203. 湯山勇

    ○湯山委員 あと何が入りますか。
  204. 永井道雄

    ○永井国務大臣 教育委員会事務局ですか。
  205. 湯山勇

    ○湯山委員 そうです。
  206. 永井道雄

    ○永井国務大臣 教育長、指導主事、それから教育関係の他の職員を必要とする。それは地方教育行政法に書いてあるはずでございます。
  207. 湯山勇

    ○湯山委員 結構です。そういうことまで大臣は御存じなくて結構です。  私から申します。地方教育行政の組織及び運営に関する法律第十九条、都道府県教育委員会の事務局に指導主事、これは置かなければなりません。その次、「事務職員、技術職員その他の所要の職員を置く。」管理主事なんかないんです。その職務を言うと、指導主事には非常にたくさんの職務があります。しかし、いま大臣が管理主事と挙げておられるそれは事務職員、何をするかというと、「上司の命を受け、事務に従事する。」その上司の命を受けて事務に従事する管理主事が——大臣も管理主事が前へ出過ぎておる、いばっておる、こういう体制にしたのは一体だれですか。今日までの文教行政の誤り、これはひとつ真剣に考えてもらわなければ、この補いを現場へ持っていって、主任というものをつくるなんということはとんでもないことです。おわかりでしょうか、文部大臣。
  208. 永井道雄

    ○永井国務大臣 先生も私の見解をお読みいただけばおわかりいただけるように思いますが、私は主任のことだけを論じておりません。この国会におきましても、教頭問題というものがありました。その際、国会ないしは国会外における議論というものも、教頭の問題を管理の側面からとらえる傾向がきわめて強かったのでございます。そこで、私は今回その見解の中に、校長、教頭についてもこれを教育指導の側面というものから考えるべきであると申しておりますし、また、それとの関連において指導主事の重要性を述べているわけでございますから、先生の御指摘のように、構造的に単に主任だけでなく、そういうふうな新しい方向を工夫すべきであるというのが私の考えでございます。
  209. 湯山勇

    ○湯山委員 いまおっしゃったように、現に管理部分が強くなっているという一つの原因はそこにあるのです。そこで、校長とか教頭とかいうのは管理なんです。おっしゃっているように管理ばかりやるから、もっと指導せい、指導しますということもありますけれども、教育委員会の事務局に対する指導助言はできるのですから、もっと強い勧告もできるのですから、これをまずやってもらいたい。  第二は、もう一つその根源になるのは教育長です。教育長というのは置かなければならない。そこで、教育委員会にはいまおっしゃったようにたくさんの職があります。事務職員、たくさんあります。しかし、教育委員会の教育公務員というのはどれとどれですか。大臣、おわかりですか。本当の教育公務員というのはどれですか。
  210. 諸沢正道

    ○諸沢政府委員 お答え申し上げます。  現在の教育公務員特例法によりまして教育公務員と定められておりますものは、学校の校長、教員のほか……
  211. 湯山勇

    ○湯山委員 そんなのじゃない。教育委員会です。
  212. 諸沢正道

    ○諸沢政府委員 「教育委員会の教育長及び専門的教育職員」、こういうことになっています。
  213. 湯山勇

    ○湯山委員 だから何と何かと聞いているのです。
  214. 諸沢正道

    ○諸沢政府委員 具体的に言いますと、教育長それから指導主事ということになります。
  215. 湯山勇

    ○湯山委員 社会教育主事は。
  216. 諸沢正道

    ○諸沢政府委員 はい、社会教育主事は入ります。
  217. 湯山勇

    ○湯山委員 もうちょっとしっかりしてくださいよ、時間がないですから。教育公務員は、教育長と、いまの法律で決められた指導主事しかないのです。社会教育主事は別としましょう。あとは教育公務員じゃありません。管理主事とか、何とか教育次長とか、何課長とかあったって全部これは事務職員です。手伝いです。ところが、その教育長は本来ならば資格要件がありました。これを昭和三十一年にのけたのです。しかし教育公務員である以上は、教育に対する経験、見識を持っていなければならない、これは当然です。そこで文部省も、これはぐあいが悪いというのでのけたんだから、極力そういう人を、資格と経験を持った者に就任してもらうようにという指導はしています。しかし、実態はどうかというと、今日管理面が強くなってくるに従って、本来教育公務員としての資格を持っていなかった人、たとえば県の農林水産部長とかあるいは県の民生部長とか、そういう知事部局の職員が教育長になったために教育公務員になっている。逆なんです。こういう事例が昭和五十年全国四十七都道府県に二十名あります。指導面を強くすると言いながら——本当に指導できる人も中にはあるでしょうけれども、大体形の上で本来ならば教育公務員としての資格のない人、教育長になったために教育公務員になったという人が二十名、半分近くいます。ここにも大きな問題があると私は思う。  これを一体どうして改めないのか。改める努力が足りないと思うのです。県だけじゃありません。市町村はこれよりももっとひどいのです。これをほうっておいて指導面を強化する、主任をつくったからといって、どうして一体指導面が強化できますか。体制は教育長から、いまの事務局の構成から、全部指導面が引っ込むようにして管理面ばかり出るようにして、校長、教頭まで管理職にしておいて、それで主任をこしらえて指導面をやれと言ったってそれは無理です。この責任は挙げて文教行政にあるわけですから、その反省なくして、こんなやり方は間違っている、速やかに正すべきだ、このことを——どういう方法があるかということはまた別な機会に申し上げますが、ほうっておけないということは総理もおわかりいただけると思うのです。いかがですか。
  218. 三木武夫

    ○三木内閣総理大臣 これからは教育指導面といいますか、これを強化しなければならぬということは私もさように考えるわけでございます。
  219. 湯山勇

    ○湯山委員 ですから、そういうゆがんだ上へ主任とかいうもので間に合わせの地ならしをしても、根本的に教育は改まらないということをひとつ御認識願いたい。  それから、教育の内容の充実の問題ですが、これは大変時間がなくて、しかも内容の細かいことに入ることはかえって混雑いたしますから、若干触れておきます。  それは、いまの学校教育法によれば、文部大臣が検定した、あるいは文部省がつくった教科書は使わなければならない、こういう教科書ですけれども、使わなければならないということが学校教育法の第二十一条に明記されています。四十条によって中学も同様です。使わなければならない。ところが問題は、それの教科課程の基準になるところの学習指導要領、これを見ますと、学習指導要領ではまた教科の内容に関する事項は総則において、全部取り扱わなければならない、これも書いてあるのです。だから、これの中にある内容は全部取り扱わなければならない。それによってつくられたこの教科書は使わなければならぬ。いずれも「ならない。」「ならない。」ときています。しかし、果たしてそうなのかどうなのか。この指導要領を見ますと、これはほかの教科だといろいろ主観的なものが入りますから、最も入らない理科について申しますならば、理科ではどうするかというと、「自然に親しみ、自然の事物・現象を観察、実験などによって、論理的、客観的にとらえ、自然の認識を深めるとともに、科学的な能力と態度を育てる。」とこうあるのです。これで見ると、これによってやらなければならない、教科書を使わなければならないというけれども、理科の場合は自然物、自然現象から学習せい、教科書から学習せいと書いてないのです。これはもし教科書から学ぶとしたら、どういうことになるかというと、いろいろありますけれども、教科書というのは皆答えが書いてあって、たとえば、物が「大きくふえる」と「大きい音」が出ると書いてあります。「小さくふるえる」と「小さい音」が出る、「速くふるえる」と「高い音」が出る、「おそくふるえる」と「ひくい音」が出る、答えがちゃんと書いてある。こんなのを並べて、あっちを引け、こっちのつるを引っ張れと、結局出ておるのですから、実際にやらなくたって答えが出ている。こんなのを教えたって、ちっとも自然物、自然現象につながりません。だから、これは使わない方がいいのです。むしろ使っちゃいけない。  それは、私は古いことを申し上げて失礼ですけれども、この検定教科書以前、この教育法以前はそんなことは言っていません。総理大臣は、小学校で理科をお習いになったと思うのですが、理科の本を並べて、こうやって読みながら理科の授業を受けましたか、思い出してください。ないでしょう、そんな記憶。
  220. 三木武夫

    ○三木内閣総理大臣 それは湯山君の方が正確に言われるとおりだと思います。
  221. 湯山勇

    ○湯山委員 そうでしょう、御記憶ないでしょう。そうなんです。戦前のはちゃんとこう書いてある。これは机の上へ根っこのついた草も置いたり、ビーカーの水もひっくり返ったり、そこで児童用書はどう書いてあるかというと、この教師用書を使って授業をします、指導要領のようなものを使って授業をします。「児童用書は教師用書を用ひて教授したる事項の大要を後日」——「後日」と書いてある。その日ではありませんよ。「後日生徒をして回想せしむる為のものにして、これを用ふれば生徒に筆記せしむる時間と労とを節約するを得べし。変更したる教材に就いては適宜生徒に筆記」させる、これだけ丁寧なんです。だから、いま先生迷いますよ。一体学校教育法のとおりに使うのか、この指導要領のとおりに使わないのか、実物を使って教科書は使わないのか、この判断は一体だれができますか。どちらもやらなければならぬ。その指導が一体主任にできますか。この点では、いま非常に不親切です。  その例をもう一つ挙げてみます。それは古いことですけれども、修身の本がありました。総理大臣は一年のときの修身の本を覚えておられますか、御記憶ですか。——覚えておられます。これはいつできたかというと、明治三十九年です。ですから、もちろん御存じのはずです。ところが、その修身の本を持たすか持たさないかということについて、「文部省ハ明治三十九年一月其ノ用書ノ有無ニ関スル可否ニツキテ各高等師範学校並ビニ各府県師範学校ノ意見ヲ徴セシニ答申総数六十八中其ノ有ルヲ可トスルモノ五十三ノ多キヲ占メタリ。其ノ理由トスル所ハ主トシテ児童ノ感興ヲ助ケ又善良ナル感化ヲ受ケシムルコト、掛図ト相須チテ教授ノ効果ヲ完カラシムルコト、復習ノ便ヲ与フルコト、家庭トノ連絡ニ益スルコトノ諸点ナリキ其ノ有ルヲ否トスル理由ノ中経済上父兄ノ負担ヲ少カラシメントスルハ頗ル考慮スベキ問題ナレドモ、今回ハ教育教授ノ効果ニ着眼シ、又多数実際家ノ希望ニ鑑ミテ之ヲ編纂シタルナリ。但シ之が編纂上其ノ価ヲシテ廉ナラシムルコトニ努メタリ。」どうですかね、これ、全部聞いて、賛成が幾ら、反対が幾ら、理由はこうと、しかも、反対の理由の大事なのはこれだから気をつけますと、まことに民主的です。こういう配慮がいまありますか。ないでしょう。だから、これを使えと言うんです。  算数の本なんかというのも問題集なんですよ、結局ぎりぎり言ったら。よけいなことをずいぶん書いてあります。大平大蔵大臣、これでも要らぬこと書いてある、いまのように。だから、あれ、うんと要るところだけ抜けば、教科書は三分の一あれば結構です。そうすると大蔵大臣は文教の財源がたくさんできるわけで、もっとほかへ回せるわけです。  これはやはり、使え、使わなければならないなんて、学校教育法で決めておいて、使える教科書はありません。おわかりですか。よっぽど明治の方が親切です。こういう配慮をしないで、中身をどうせいと言ったってそれはだめです。文部省はまずみずからお始めなさい。検定教科書から改める。これも改める。それなくして、幾ら試験問題をどうするとかあるいは分量を減すと言ったって、減したって同じこと。決して理科の力はつきません。算数の力はつきません。  これ、ひとつお考え願えますか、文部大臣。
  222. 永井道雄

    ○永井国務大臣 ただいま先生のお話を承っておりますと非常に勉強になりますが、同時に、私の考え方もほぼ先生と同じであって、この問題に対処いたしますのにはやはり多角的でなければいけないということでございます。現行教科書の場合にも、そしてまた指導要領につきましても、相当弾力的に使うべきであるということが……(湯山委員「ありません」と呼ぶ)いや、通達にもございます。しかし、先生が御指摘のように、現在の教科書というものに相当問題があるということは広く論じられておるところでございますから、それがまさに教育課程審議会で現在議論をしている点でありまして、去年の秋ですか、中間まとめが出ましたが、本年その報告が出てくる。そこで教科書も新しい方向が生まれるわけでありますが、しかし、教育は、そういうふうに私たちが検討しております最中にも、今日ただいまも学校で行われているわけでございます。そうしますと、現状において勉強している人たちに対して少しでもいい方向に教育をやっていくというためには、やはり教育指導というものが現状では必要ではないか。ですから私は、こうしたものを並行して進めていくほかないというふうに考えて、主任のことも考え、他方教育課程審議会のことも考えながら進んでいる、こういうことでございます。
  223. 湯山勇

    ○湯山委員 ですから、私が申し上げたいのは、いまの学習指導要領を法的に強制する、教科書も学校教育法で使わなきゃならないというような、そういう法的な拘束を、よけいなことをするといけない。それは大臣はそういうことについて弾力性を認めておると言うけれども、法律は認めてないのです。法律は認めてないでしょう。それだけ言ってください。
  224. 永井道雄

    ○永井国務大臣 法律は確かに現行の教科書というものを義務づけておりますが、しかし同時に、先生はもう先刻御承知のとおりでございましょうが、先ほど申し上げました昭和四十七年の通達というのは、教科書の使用法は、学習指導要領の教科目、こうしたものに照らして実態を加味すべきであるということを述べております。  それから、先生が御指摘のこの学習指導要領、一ページでございますが、一ページにつきましても、この指導要領の使い方というものもいろいろ細かいことを書いておりますが、要するに、動きがとれないような形で指導要領を使うべきではないのである、そうではなくて、むしろ児童の実際の事情というものを考慮すべきであるということが一ページ目からあるわけでございますから、したがいまして義務づけるというと、何かすべて動きがとれないようなふうにつくられているかというと必ずしもそうではない。しかし、なお現在の教育課程審議会ではその今後のあり方について一層考えていくということでございますので、この点は御承知でしょうが念のために申し上げておく次第でございます。
  225. 湯山勇

    ○湯山委員 法的にそうなってないということだけで結構です。それからまた通達のことは存じております。ただ、管理面が強化されれば法律が優先するのです。だから大臣、見てごらんなさい。いま小学校へ行ったら、中には理科の本を机の上に並べてやっておる授業がありますよ。これは何年たったってこんな授業は本物じゃないとすぐわかるのです。なぜかと言えば、使わぬといかぬからというので、とにかく置いて広げている。それじゃ理科にならない。これです問題は。  さて、大臣は並行して主任制ということをおっしゃいましたから、私もそれについてなお確かめたいと思います。  今度のはいかにも唐突で、十二月二十六日に省令をお出しになって、それから一月の十四日に全国の教育長会議ですか、これをお集めになって意見を聞かれた。これはそうですが、本来ならば意見を聞いて省令をつくるというのが順序ではないのでしょうか。私どもは、民主的な教育を進めていく、民主的な教育行政ということであれば、そうでなくてはならないと思うのです。で、さっき修身のところで申しましたが、そのときに一体、大臣の方からお尋ねになったときに、その集まった教育長は何名で、可とする者何名、否とする者何名。その可とする者の中で条件つきもある、否も条件つきもある。何名がどうで、何名がどうという正確な数字をおとりになっていらっしゃいますでしょうか。
  226. 永井道雄

    ○永井国務大臣 ただいまの先生の御指摘のように、まずいろいろな人の意見を聞いて、そうして省令をつくるなりあるいは通達を出すという手続が必要ではないか、それはまことにそのとおりであると思います。この主任の問題についての意見というのは、すでに教育長協議会からこの意見が出ておりまして、それを設けてほしいというのは昨年の七月。さらに教育委員長会議からも出ております。小学校長会その他数を挙げますと枚挙にいとまがないのでございます。他方、もちろん絶対反対、制度化は反対という立場の団体もございます。それは日教組でございます。したがいまして、すべての団体が賛成ということではございませんが、団体に関する限り、いまのようなことが昨年の春から私どもとして行ってきたことであります。  さらに、世論調査というふうなものもございます。これはサンケイ新聞が十二月中旬に行った千人調査がございますが、これでは賛成が反対を上回っております。  そのほか、いろいろな社説というものもございまして、そうしたものが大臣見解というようなものについての意見を表明しておりますが、大体においてその考え方をとっているものが多いのでございます。必要でございましたらその数を申し上げます。  さらに重要なのは国会における御審議でございますが、それは昨年の十二月、実はストが行われましたが、その前後、幸いに日教組御出身の議員の方々も含めて、衆参両院文教委員会において十九時間行うことができたわけでございます。
  227. 湯山勇

    ○湯山委員 私のお尋ねしたことにお答え願いたいのです。いま団体の名前をお挙げになりましたけれども、それは私は余り大事だと思っていません。文部省がいよいよやるという省令を決めて、それから教育長を集めてやったときに反対の意見も幾つか出たということも新聞でも見ました。また、その人の意見、間接ですが聞きました。だから、これは機関で決めておるからといって、すんなりみんながいったわけじゃありません。  そこで、さっきの明治三十九年じゃありませんけれども、可とする者何名、否とする者何名、その数を明確にしていただきたい。言わなかった者何名でも結構ですから。
  228. 永井道雄

    ○永井国務大臣 恐らく先生御指摘になったのは、教育長協議会を本年になって開いた場における反対があったのではないかということと思いますが、これは実は省令、それに反対というのではなくて、実施の時期等についていろいろ意見が出たわけでございまして、それ以前の教育長協議会からの基本的な要望を覆すような発言ではなかったわけでございます。
  229. 湯山勇

    ○湯山委員 大臣、私は文部大臣のおっしゃることは大体信用しておるつもりなんですけれども、いまのはちょっと信用できないのです。そんな時期だけの問題ですか、反対の理由は。
  230. 永井道雄

    ○永井国務大臣 時期あるいは範囲、そうしたものについてまだ検討しなければならない問題がある、そういう御意見がございました。
  231. 湯山勇

    ○湯山委員 それで、賛否の数を言ってください。
  232. 諸沢正道

    ○諸沢政府委員 教育長協議会が終わりました後、個々の教育長に一人一人お会いして意見を聞きましたけれども、先ほど大臣が答弁されましたように、この主任制省令化について反対という方は一人もおられませんでした。ただ、その実施の時期あるいは範囲等につきましてはなお慎重に検討さしてくれというようなことでございました。
  233. 湯山勇

    ○湯山委員 そういう条件をつけたのは何名ですか。
  234. 諸沢正道

    ○諸沢政府委員 いま具体的に人数をはっきり申し上げることは、ちょっと記憶してございませんが……。
  235. 湯山勇

    ○湯山委員 それがわからぬというのは全く、何のために聞いたのですか。もう三月一日実施と決めて聞いたのでしょう。そして、それに意見があるというのが何名あったかわからぬ、そんなことでやっていいのですか。
  236. 諸沢正道

    ○諸沢政府委員 いま私がはっきり申し上げられないと言いましたのは、お一人一人の慎重にしたいという、その考え方の基礎になっております各県のそれぞれの事情にいろいろありますので申し上げたわけでありますが、それではごく大ざっぱに申し上げますと、端的に言って省令の施行日でありますところの三月一日に、まあ問題なくやれそうだというような発言をしておられました教育長が約三分の二ぐらい、あとはもう少し時期的に検討したい、こういうような言い方でございました。
  237. 湯山勇

    ○湯山委員 それも三分の二と三分の一なんという数をここで言うのじゃないのですよ。これは何千も何万もあるならともかくも、わずかに百人そこそこで三分の二とか三分の一とか、まことにこれは残念ですけれども、ないなら仕方がありません。しかし、これは非常に遺憾だということを申し上げたい。  それから、私、もっとあるのです。手当の問題です。手当の問題については非常に大きいのです。物で動くか人で動くか。あなたは、文部大臣は、愛情、いたわりということが望ましいと言っておられます。いままでは教務主任になれば、みんなが二十時間ずつ持つのなら、十時間はほかの人が持ちましょう、その持つのを、私は体育が得意だから体育を持ちます、音楽や編み物は専科がやる、私はほかのができないから自分の得意なこれを持ちますという形できておって、これは愛情、いたわりです。労力をもって補って報いておった。今度はそれを金を出すというのでしょう。そうするとこれはもう大臣の期待しておるような愛情、いたわりで動くのではなくて、もう金で動く、物で動く、そういう風潮をつくります。そうすると、やってあげたらいいと思ったって、おべっかを使うように見えるから、気骨のある者は言いません。現にそう言ってきたのがあります。それからまた頼む方も頼めない。  これは私のところへ来ておる手紙の要約ですが、こういうことです。年は何ぼかわかりませんが、とにかく教務主任です。そこでいま言うとおり音楽、図画は専科、若い人が体操を持ってやる。体操は自分も自信がある。けれども申し出があったので、まだ若いのに、体操を持ってやるなんて失礼だと思って、不愉快に思った。その若い男というのは体操の担任で、雨の後は、朝来て運動場の水たまりをみぞをつくって水をなくして授業をできるようにする。暇があったら子供とよく遊ぶ。そこで、その次が大事なんです。音楽はだれ先生、それから図画はだれ先生、体操はA先生と言ったら、子供は手をたたいたというのです。私はこれがいまの学校における人間関係だと思うのです。これは金にかえられますか。これを金でやって——これでは、この男の人なんかはもうやりませんよ。それからあとの人も同じ。そうすると、進んで申し出ることがなくなれば、校長、教頭が命令でしかできない、業務命令か何かで、あなたは何年の授業を何ぼ持てと。これは拒否できるのですか。
  238. 永井道雄

    ○永井国務大臣 ただいまの先生の御指摘でございますが、手当を払いますというと、直ちに、いままで存在したところの協力関係がなくなるというふうには私は考えない。ただ、先生がお読みになりましたような懸念というものも実は私も幾つか聞いております。  そこで、問題はどういうことであるかというと、これも見解に書きましたけれども、やはり主任の場についた人を固定化しないような形で、そうしてほかの人たちが専門的に適格であれば、でき得る限り多くかわり合っていくということも書いているわけでございます。  それから、主任になられる方が、今度手当が出るからといって、たとえば授業時数を減らすというふうなことはなく、やはり授業に直接接触していくという形は崩さないようにしてほしい。そういうことでまいりますと、先ほどから申し上げますように、この主任になって仕事をしていくのは、いま教育の変化の時期でございますからやはり相当の重荷になる、その重荷になって、その場にある方に仕事をしていただいたお礼として手当が出るということによって、協力の関係というようなことは、先ほどから申し上げたような点を注意すれば、これは運営の問題として大事な課題であるということは私は賛成でございますが、手当が出れば直ちにもういかようもならなくなってしまうというようなものではないのではないか、かように考えている次第でございます。(「いまはうまくいっている」と呼ぶ者あり)
  239. 湯山勇

    ○湯山委員 いまはうまくいっているのは、いまお話しのように相互のそういう人間関係でいっているのです。それを今度金を出すということになれば——これはこう言っています。いままで本来全部に渡ってきたものだ、それを一部の主任が取るというのは何か先生のピンはねするような感じがする。そしてこの先生は、その言うてくれた体操の先生のような人にこそ手当を上げてもらいたい、こう言っておるのです。これを無視してやれるかどうか。この金の使い方というのは重大です。下手したら総理大臣の理想も文部大臣のお考えも飛びます。一体何々主任に幾ら出るか、一般には幾ら出るか、それはどうなっておりますか。
  240. 永井道雄

    ○永井国務大臣 主任は小学校において二種類、中学三種類、それから高校三種類でございますが、これは省令において定めております。そしてわれわれの方は予算を計上いたしておりますけれども、どの主任にどれだけ出るかという問題は人事院がお決めくださることであって、私どもの方が現段階で主任に幾らというふうなことは申せないのではないか、かように考えております。
  241. 湯山勇

    ○湯山委員 それでは主任手当が出るか出ないかを含めてまだわからないということですか。
  242. 永井道雄

    ○永井国務大臣 最終的な決定は人事院にありますが、私たちとしては、予算を計上いたしましたのは主任手当が出ることを望んでいるということでございます。
  243. 湯山勇

    ○湯山委員 私最初申し上げたように、これが出るか出ないか、どれだけ出るかというのは非常に重大な問題です。これが決まらないで審議しても、これいかんによっては反対、場合によっては賛成、きわめて大きなポイントだし、全国の教育に及ぼす影響は非常に大きい。まだ主任に幾ら出るのかわからない、一般にどれだけ出るのかわからない、こういうことでは審議できないと思うのです。どれだけ出ると決まったら私は徹底的にこれを論議したい。いま出るか出ないかわからない、人事院が言わぬからどうだということだと、これはここからもう審議できないのです。これはひとつそれが出るまで留保することにしたいと思います。(「わけのわからないものは予算なんか審議できない」と呼び、その他発言する者多し)
  244. 永井道雄

    ○永井国務大臣 第三次給与改善は、これも先生は御案内と思いますが、最も重要なものは教員全体の給与の改善を図ることでございます。これは法律に基づきますから第一でございます。  第二は、現在一等級あたりの先生を、教頭などにならない場合にも考えていく。これは附帯決議にございますから非常に重要であると考えております。  第三番目といたしまして、ただいま御審議をいただいております主任とそれからクラブ活動の担当というものがあるわけでございますが、これについて文部省としてほぼどの程度のものをお願いしているかということについて初中局長から御答弁を申し上げますが、念のために繰り返しますと、最終的な決定は近く出るでありましょう人事院勧告を待つということになるわけでございます。
  245. 諸沢正道

    ○諸沢政府委員 お答えいたしますが、従来、第一次、第二次の給与改善におきましても、予算的には大体の改善のめどとして一定の金額を計上しておりますけれども、具体的に、たとえば二次改善でも何号俸くらい上げるとか、平均どのくらいとかいうようなことは、すべて人事院の判断にお任せしてその結論を待つ、こういうことでやっておりまして、今回の場合も、文部省の希望としては、いま申しましたように四つの事項についてこれを考えてくれということでございますので、具体的に何について幾らというようなことは、いまだ明確にしておらないわけでございます。
  246. 湯山勇

    ○湯山委員 そういうことなんです。それで、従来は大体全部平等にいくというので問題ありませんでした。しかし、今度は主任手当という政治的な配慮が入っておるのですよ。それがどうなるかわからないでこれはできないから、出るまで私は質問を留保します。そうしてください。     〔正示委員長代理退席、委員長着席〕
  247. 荒舩清十郎

    ○荒舩委員長 諸沢初中局長、しっかり答弁しろ。
  248. 諸沢正道

    ○諸沢政府委員 お答えいたします。  処遇改善の予算の積算の基礎は、第一次改善につきましては、その当時のベースにおいて一〇%、第二次改善も一〇%、それから第三次改善については五%というその金額をめどとして、具体的改善を図るというのが積算の基礎でございます。
  249. 湯山勇

    ○湯山委員 そこで問題は、主任手当が幾らかというのは全然わかってない、私の一番聞いている点が。問題は、主任手当をいま論じておるのであって、ほかのはいいですよ。全部同じに分けるなら賛成します。そうじやないので、ピンはねになるのじゃないかというのもあるし、そんなものが出たのじゃかえって調和を壊すというのがあるし、責任持てないというのがあるし、そこが問題ですからやはりだめです。
  250. 荒舩清十郎

    ○荒舩委員長 植木総務長官。
  251. 湯山勇

    ○湯山委員 関係ないです。
  252. 荒舩清十郎

    ○荒舩委員長 いや、関係ある。植木総務長官。
  253. 植木光教

    植木国務大臣 公務員給与を担当いたしておりますので私からお答え申し上げますが、第三次教職員給与の改善につきましては、近く人事院勧告が行われるという模様でございまして、政府はこれを尊重するという態度で臨むべきであると考えております。  なお、ただいま問題になっております主任制度につきましては、文部省の方から人事院に対しまして、第三次改善に当たりましてはこの主任制度というものを勘案をした改善をしてほしいという要請が出されておるわけでございまして、それに対しまして人事院がどういう中立的専門的判断を下すかということは近くわかるであろうと思います。
  254. 湯山勇

    ○湯山委員 総務長官のおっしゃるとおりです。ですから、まだ全然わかっていない。出るか出ないかも、考慮してくれと言っておるだけであって、されるかされないかもわからない。出る、出ないが重大問題ですから、やはり委員長お聞きのとおりです。何にも具体的なものはありません。審議の対象にすべきものなし。
  255. 荒舩清十郎

    ○荒舩委員長 植木総務長官、はっきりと答弁しなさい。
  256. 植木光教

    植木国務大臣 お答え申し上げます。  湯山先生御承知のとおり、公務員の給与改善につきましても、これは教職員を含めましてそうでございますけれども、すべて人事院の勧告によるものでございます。当初、予算にいろいろ計上ををいたしておりましても、いろいろな面で過不足が起こるということは御承知のとおりでございまして、その都度政府といたしましては国会の御審議を仰いでいるという実情でございますから、そういう実情に基づいて御判断をいただきたいと考えます。
  257. 湯山勇

    ○湯山委員 いまのことはよくわかるのです。わかっておりますけれども、出るか出ないかわからないのに、県で教育委員会規則変えろ、条例変えろというのをやっているでしょう。三月一日から実施。鹿児島もやるというのですが、これでも、鹿児島の教育長、文部省から行って文部省へ帰って、また行ってまた帰って、今度またこれをやっておいたら文部省に適当なときに帰るのだといううわさが流れておりますよ。三月一日のに反対があったというのはそこなんです。出るか出ないかわからない、任命だけしてどうします。ですから委員長、これは留保して、理事会の方で取り上げてもらう……。
  258. 小林進

    ○小林(進)委員 議事進行ですが、先ほどからもう議論をお聞きのとおり、何を根拠にして一体——第一次、第二次、第三次というお話がございましたけれども、そういう要求を人事院にされるについては、その要望する根拠がなければいけない。その根拠をお示しいただきたいというにもかかわらず、何らその根拠のお示しがないのであります。ないが、まあ人事院は、何とか政府が、圧力とは言いませんけれども、要望すればそれを承諾して前向きの勧告をしてくれるだろうという手前勝手な勘案の上で予算を組んでおいでになる。そういう予算を一々組まれたのでは、もう法治国はどこにあるか、われわれ予算委員がどの責任を持ってこれを審議していいのか、全くこれはでたらめ至極と言わなければならぬ。  しかも世評は、いまも言うように、きょうも、鹿児島あたりが全国に先駆けてそれを何か議会の中でお決めになったというようなことで、全国的には反対運動が起きて、現地ではそれをやめてもらいたいという激しい運動も起きておる。それ以外には東京都、大阪あたりの知性に富んだ各自治体では、そういうものは受け入れない、そういうような世論も非常に大きく強まっているのでありますから、常識的に考えればこれは山のものとなるのか、海のものとなるのか、川のものとなるのか、全く予想もつかない、五里霧中であります。やみの中の手探りであります。そういう問題を麗麗しく予算の中に組んで、われわれにそれを審議、可決せいなんということは実にふまじめきわまると思うのでございまして、この問題はぜひともひとつ委員長においてお取り上げいただいて、理事会の場でもっと慎重にひとつお取り計らいいただきたいと思うのであります。
  259. 荒舩清十郎

    ○荒舩委員長 承知いたしました。理事会で取り上げて十分研究をいたします。(「それまで休憩」と呼ぶ者あり)休憩はいたしません。林百郎君のやじはお慎みください。
  260. 湯山勇

    ○湯山委員 それでは、いまの主任制の問題、文教の問題は留保いたしまして、次は食糧の問題。  食糧自給について、お尋ねをいたします。これは総理も施政方針演説でやはりお触れになっておりますし、予算を見ましても、大蔵大臣も基盤整備には相当御努力いただいておるということも見られます。それは大変結構なことなんですけれども、しかし、総理の本会議での御答弁は、自給を図らなければならないということをおっしゃっておきながら、何もかも自給できるものではない、したがって安定的に輸入も考えなければならないということをおっしゃっています。一体、先進工業国中、日本の食糧の自給率は最低であるということを総理は御存じでしょうか。
  261. 三木武夫

    ○三木内閣総理大臣 穀物の自給率というものは、日本は非常に低い水準である。
  262. 湯山勇

    ○湯山委員 そこで、そういう状態ですから、一体その日本の自給率というものをどこまで持っていくかということはもう当然めどを立てなければならない。最大限どこまでいくと総理はお考えになっておられますか。
  263. 安倍晋太郎

    ○安倍国務大臣 食糧の自給力を高めていくというのが農政の基本でございますが、御存じのように、昨年の閣議で決定をいたしまして、昭和六十年を目標とする農産物の生産と需要の長期見通しを決定したわけでありますが、その見通しによりましてわれわれは、総合食糧自給率につきましては現在七一%か二%でございますが、これを七五%まで持っていきたい、こういうのが政府の考え方であります。
  264. 湯山勇

    ○湯山委員 七五というのは四十七年が七三ですからね。そうすると、この二年間は自給率は低下したのですか。
  265. 安倍晋太郎

    ○安倍国務大臣 正式には四十七年七三%ということがはっきりしておるわけでございますが、その後の全体的な判断をいたしますと、多少低下しておるのではないかというふうに考えるわけであります。
  266. 湯山勇

    ○湯山委員 総理大臣、去年も食糧には力を入れる、その前には田中総理も力を入れると言ってこられたのですが、実際はいま農林大臣の言うように過去二年間自給率は低下しておるのです。これは私は重大な問題だと言わざるを得ません。一体、本気で自給率を上げる気持ちがあるのかないのか。少しそういう心配を持って見ると、自給率というものを使っておったときもありますし、農林省は昨年は自給度というのを使っています。ことしは総理も農林省も、自給率でも自給度でもない、自給力というのを使っています。これは測定する何か自給力測定法というのはあるのですか。
  267. 安倍晋太郎

    ○安倍国務大臣 自給率と自給力につきましては、基本的には変わってないわけですが、自給率ということになりますると、これは消費仕向け量と生産量との数値ということになるわけでありますが、自給力は地力であるとか、あるいは資本であるとか土地であるとか水であるとか、そういうふうな総合的なものを含めた活力、あるいは潜在生産力、そういうものも含めて自給力、こういうふうにわれわれは考えております。
  268. 湯山勇

    ○湯山委員 大変残念なんですけれども、そういうふうなお考えが積極的に前向きに働いているんではなくて、下手すると自給率が低下したのを何かカバーするために自給力という言葉を使わざるを得ないというようなふうにもとれますので、大変残念だと思います。国際的にはやはり自給率、これで通していく、下がってもいいから、下がったら下がったで決意を新たにして取り組んでいく、やはり国際的に通用する使い方をしてもらいたい。そうしないと比較ができないのです、よその国と。自給力の測定なんてできないのですから、これはひとつ以後そうしてもらいたいと思いますが、いかがですか。
  269. 安倍晋太郎

    ○安倍国務大臣 六十年見通しにおきましても、自給率でそれぞれ農作物についてはこれを示しておりますが、われわれは先ほど申し上げましたように、潜在的な自給力というものも含めた意味におきまして、全体的にとらえて自給力、こういうふうに言っておるわけでございます。
  270. 湯山勇

    ○湯山委員 そこで、時間が余りありませんから……。農林大臣は昨年アメリカに行って、バッツ農務長官との間に千四百万トンの輸入の、契約まではいかぬのでしょう、約束をしてこられた。内容はこちらから申し上げますが、間違っておったら御訂正願います。小麦三百万トン、えさ八百万トン、それから大豆三百万トン、こう承知しておりますが、これ間違いありませんか。
  271. 安倍晋太郎

    ○安倍国務大臣 大豆三百万トン、小麦三百万トン、飼料穀物八百万トンでございます。
  272. 湯山勇

    ○湯山委員 私どもは一生懸命に苦労しまして大体八五%、あるいは場合によればもっと高い自給率、これは本当の自給率です。いま政府の言う総合自給率のような空洞化した自給率じゃなくて、えさは入れないようなのじゃなくて、本当の自給率、そこまでいくという案を持っています。そこで、本気でやればここまでいくのじゃないかというのをここで一緒に考えたいのですけれども、時間の関係もありますし、非常に複雑な数字になりますから、私は現在の景観、作物の状態は余り変えないで、しかも安倍農林大臣が契約してきたそれらのものを自給できるということを御一緒に考えてみたいと思うのです。で、それぞれの御意見をお述べいただきたいと思いますが、それができれば、これ序の口ですが、後また全体の自給をここまで持っていくということの御検討を願いたいと思うのです。  まず第一は、これ簡単な暗算が要るのですけれども、大臣、いいですかね、総理も都合によったら簡単な暗算をちょっとしてもらいますから。小麦三百万トン——これは大体一ヘクタール当たりの収量、小麦はどれくらいになりますか。
  273. 澤邊守

    ○澤邊政府委員 約二百七十キロ前後でございます。
  274. 湯山勇

    ○湯山委員 この長期見通しには、六十年には三・一一トンとなっておるのです。三・一一トンですから、丸めて三トンにしましよう。いいですか、農林大臣。そうすると三百万トンの小麦をつくるためには土地が幾らあったらいいですか。
  275. 澤邊守

    ○澤邊政府委員 百万トンでございます。(湯山委員「百万ヘクタールでしょう」と呼ぶ)失礼しました。百万ヘクタールでございます。
  276. 湯山勇

    ○湯山委員 そこで、麦ですから、冬できます。冬遊んでおる水田、冬作放棄しておる水田は幾らありますか。
  277. 安倍晋太郎

    ○安倍国務大臣 われわれの試算では大体百五万ヘクタール程度だと思います。
  278. 湯山勇

    ○湯山委員 その百五万ヘクタールというのは違うでしょう。もう一遍。
  279. 安倍晋太郎

    ○安倍国務大臣 裏作可能な面積をいま言ったわけであります。
  280. 湯山勇

    ○湯山委員 減反で、冬作放棄しておるところは……。
  281. 安倍晋太郎

    ○安倍国務大臣 大体二百万ヘクタールと思います。
  282. 湯山勇

    ○湯山委員 その中でいま農林大臣が言われましたように——これはこちらは農林省の資料で言いますからね。いま百五万ヘクタールというのは乾田、乾いた土地です。そうでしょう、農林大臣。乾いたのが百五万ヘクタールあるのですから、その中の百万ヘクタールへ小麦をつくれば三百万トンの小麦ができますね。総理大臣、できましょう。ちょっと言うてください。——まあいいです。いま言う計算だけ言ってください。  それから今度はえさの八百万トン。えさですから、それは豚を飼うのを羊を飼っても牛を飼ってもいいとしましょう。えさですからどれだけが養分になるか、可消化成分TDNというのが大事です。えさ用穀物ですから、八百万トンのTDNは大体六百二、三十万トン、そういう計算でよろしいか、農林大臣
  283. 安倍晋太郎

    ○安倍国務大臣 そのとおりでございます。
  284. 湯山勇

    ○湯山委員 そこで、これは土地はわりあい湿田が多いと思うのです。土地改良して乾田にするとして、そこでえさをつくります。一ヘクタール当たりの牧草です。TDNは最大限どれくらいできますか。
  285. 大場敏彦

    ○大場政府委員 一ヘクタール当たりの生草の生産量は、長期見通しでわれわれが見ているものでは大体五十二、三万トンと見ております。
  286. 湯山勇

    ○湯山委員 五・二トンでしょう。
  287. 大場敏彦

    ○大場政府委員 失礼しました。五・二トンになります。
  288. 湯山勇

    ○湯山委員 どうも皆こっちが教えていかぬといかぬのですが、これは長期見通しもだめなんです。いま私が持ってきたのは、四十八年九月の農林省水産技術会議事務局で実際に実験してつくった成果です。これで見ると——皆冬ですからね、あいておるたんぼですから。しかも全部関東以西です。いま寒いのをおっしゃったからのけて言っています。あと残っている百万ヘクタールは、これで見ると、冬作で、場所は農事試験場。これはポットじゃなくて、実際に近い作付体系による試験データで、冬作は十一トンとれています。九州、これも冬作は十トンとれています。長野県、これが水田の転換畑ですからちょうど似合う。これで九トン半とれています。大方十トンとれています。これでいけば北海道でも——北海道のしかも草っ原、上士幌と言うのですか大型プロジェクトの大規模草地、それでも六・六トンとれています。こうやってみると、七トンや八トンとれなければ話は合いません。まあしかし、あんなに言われるのですから、六トン余りにして、残りの一いまの百万ヘクタールでは小麦をとりました。残りの百万ヘクタールで、七トン、六トン半にしましようか、六トン半ずつとれる。農林省自体の発表でいまとれるのですから。そうすると、六百四十万トンとれますね、農林大臣。計算はそうなりましょう。言うてください、そうだと。
  289. 安倍晋太郎

    ○安倍国務大臣 計算上はまさにそのようになります。
  290. 湯山勇

    ○湯山委員 それで結構なんです。  それから次です。さて、大豆が大変むずかしいのです。私も困ったのですけれども、農林省の方で将来、いまはそうじやないけれども、農用地開発可能地の面積、これば大分問題がありますけれども、一応これを信用しましょう。その中で農地というのが六十万ヘクタール、北海道、東北で半分あります。それから草地、これが九十四万ヘクタールと見ています。合わして百五十万ヘクタール。幸いなことに大豆は夏作ですから北海道、関西を考えなくてもいいのです。少しがんばって草地も少し金をかけてもらって、大豆をつくれば、これで百五十万ヘクタールですから、大体一ヘクタール二トンと見て——これも農林省の長期見通しに書いてあるとおりです。二トンずついけば百五十万ヘクタールで計算上三百万トンとれますね、農林大臣
  291. 安倍晋太郎

    ○安倍国務大臣 計算上はそうなりますが、大豆の場合は御存じのように輪作体系でございますので、実際には四倍ぐらいの土地が要ることになるのじゃないかと思います。
  292. 湯山勇

    ○湯山委員 そのとおりです。そのほかの問題もありますけれども、それは入れかえていけばまた方法はあるわけですから、草をやったり大豆をやったり交換でいけばできるので、細かいのを余り言ってもらわない方がいいのです。さっき二百万ヘクタールあると言うけれども、うねもあるし、みぞもあるし、その中には二十何万ヘクタールあります。でも丸めていきましょうと言うのはそれなんで、そのかわりうんと余るのもあるのですよ。この中でゴルフ場だけでも二十五万ヘクタールあるのです。これはいい悪いは言いません。  それからわらを全然使っていない。千五百万トンのわらからはTDN五百万トンのえさがとれるのです。これも私は、わらは土地へ返して地力を維持するために当てにしていない。だからいまのようなことを言わないでやっても計算上はできます。  問題は土地改良をどうするかです。湿田をどうするか。そこで大体いまは基盤整備一ヘクタール当たり単価どれくらいかかっていますか。
  293. 岡安誠

    ○岡安政府委員 基盤整備にはいろいろございますけれども、圃場整備、これが一般的だと思いますけれども、大体十アール当たり四十万円ぐらいだと思います。
  294. 湯山勇

    ○湯山委員 いまのでやっても、細かいことを言わぬというのですから言いますまいが、暗渠排水なら十アール当たり九万円、客土なら十二万円、いまのような圃場整備、これが四十万円、四十万円といったら最高です。新たに農用地をつくるのは、これは土地代も入っているそうですが、内地で八十万円くらい、それから安いのは、それでも二十万ぐらいのもあります。北海道は全部二十万以下ですから。これも丸めてまあ四十万としましょう。反当たり四十万円、つまりヘクタール当たり四百万円でいまの全部やったとして——やらぬでいいのもありますよ。すぐ使えるのもありますけれども、全部やるとします。三百五十万ヘクタールをいまのようにヘクタール当たり三百万で何ぼかかりますか。
  295. 安倍晋太郎

    ○安倍国務大臣 十二兆じゃないかと思います。
  296. 湯山勇

    ○湯山委員 大体十二兆、もうちょっとかかるかもしれませんが、十二兆としましょう。そこで、大蔵大臣、御存じと思いますけれども昭和四十八年に発足した土地改良の十カ年の長期計画、これの事業量は幾らか、大蔵大臣は覚えていらっしゃいますか。
  297. 安倍晋太郎

    ○安倍国務大臣 十カ年計画で十三兆でございます。
  298. 湯山勇

    ○湯山委員 そうですね。その中でいま使っておるのはどれだけですか、いま使い果たしておるのが。
  299. 安倍晋太郎

    ○安倍国務大臣 二兆九千億程度でございます。
  300. 湯山勇

    ○湯山委員 二兆九千億、大体三兆ばかり使っております。残り何ぼありますか。——そういうことです。大蔵大臣、まだ十兆残っておるのです。私は大ざっぱに三百五十万の三百万と言いましたけれども農林大臣は北海道なんかの低いのを入れると十二兆ぐらいと、あと二兆あればとにかく土地はできる、これだけ自給できる、これはおわかりいただけたでしょうか。あとの問題は多いですけれども、一応ここまで御理解いただけたかどうか、総理大臣、大蔵大臣。
  301. 三木武夫

    ○三木内閣総理大臣 湯山君の御説明は非常に懇切丁寧でありますので、よくわかりました。
  302. 大平正芳

    ○大平国務大臣 計算はよくわかりました。
  303. 湯山勇

    ○湯山委員 よくわかっていただいて大変ありがたいのです。そうなんです。ですから本当にここから向こうは政治です。ですから、本当にやる気になってこれをやるかやらないか。これだけもし自給できてごらんなさい。穀物、えさ千四百万トンが自給できれば、総合自給率は八〇%を超えます。穀物だって、三木総理大臣、七〇%近くになるのです。三七%になりそうなのが七〇%近くまでいきます。この努力を私はしなければならない。それにはどうするかということが問題ですけれども、気はついておられるのです。どういうことかというと、今度の麦、大豆、えさ対策、これはやはり農林大臣が総合食糧対策というので、麦だけ例にとれば、一俵当たり二千円、それから一反歩当たり五千円、これを奨励金として出すということです。さて、そうすると、麦だけに限って言いますと、これで麦は百万ヘクタールですから、百万ヘクタールの麦に反当たり五千円、それからこれで三百万トンできるのですから、その中の一俵当たり二千円ずつ出す、合計幾ら金が要ることになりますか。計算してごらんなさい。違っておったら言ってください。五千円ずつ百万ヘクタールでしょう、これが五百億でしょう。そうですね。それから六十キロ二千円ですから、三百万トンだと一千億です。そうなりますね。いいですか。千五百億あれば価格保障も含めて、奨励金も含めて、大体これなら米の労賃部門に対応します。できるのです。  この前の国会で申し上げましたように、アメリカの、千四百億も出して向こうの宣伝をやっておって、これはお気づきになって今度直されましたが、結構だったと思うのです。これだけあれば国内で麦が自給できるのです。この方をやる方がいいでしょう、千五百億なら。向こうへやるより、こっちをやればできるのです。数が違っていますかね。
  304. 安倍晋太郎

    ○安倍国務大臣 計算は大体間違っていないと思っておりますが、ただ、麦につきましては、いまお話しのように二千円の一俵当たりの奨励金と五千円の反当たりの助成をいたすわけにしておりますが、われわれは六十年計画では大体麦類は百五万ヘクタールの中で二十八万ヘクタールを裏作として可能な限界だというふうに考えて奨励を図っておるわけであります。その他は飼料作物にして大体七十万ヘクタール、百五万ヘクタールの中で七十万ヘクタールを麦、飼料あるいは野菜等で増産を図りたいと考えております。
  305. 湯山勇

    ○湯山委員 農林大臣のお考えはよくわかっておって、私はそれを非常に評価しておるのです。ただ、それはいまおっしゃったことがとまったらだめなんで、いまやっているのはテストですから序文です。農林大臣の千四百万トンだけじゃない、自給にはもっとたくさんしなければならない。それができるかできないかを、最大限を追求するために申しておるのですから、いまやっているのはほんの、どう言うのですかね、百里の道を行く者が一歩踏み出したというところを評価しておるわけですから、それでいけば、それは途中で何か変えるのは構わぬですよ。しかし、わかりやすいから言っておるだけの話。  そこで、それだけあればできるのです。あとをしていっても、そういう計算でいけばびっくりするほどの金じゃありません。本当にここで自給する気になればもっとできます。それは何を言ったって、草でやる分には限度があるじゃないかということもありますが、無理に豚を食べなくても、東欧のように夏は羊を食べる、冬は豚を食べるというふうにすれば、食生活も変化があるし、そして草を食べる羊を飼えるのですから、そういうのをやっていく。卵が多少減るとか、それはありますけれども、とにかく大ざっぱに言っていまのように自給ができていく。  これは学ばなければならないのはECです。ECの諸国が一体どうやって今日本当の自給率九七%を確保したかという問題は非常に参考になります。農林大臣、御存じでしたら御披露願いたいと思う。
  306. 安倍晋太郎

    ○安倍国務大臣 私、詳細には存じておりませんけれども、EC全体としての自給体制を計画的に行っておるということにつきましては知っております。
  307. 湯山勇

    ○湯山委員 私がお尋ねしたいのは、EC諸国が自給体制をつくるために国際価格と域内価格と遮断してその自給を高めていった段階で、EC諸国の小麦の値段というのは国際価格のどれぐらいについておったか、いまじゃありません、その当時。
  308. 安倍晋太郎

    ○安倍国務大臣 いま確実にわかっておりませんので、資料を調べまして御答弁いたします。
  309. 湯山勇

    ○湯山委員 これは私も農林省から聞いたのですから、もう返事をいたします。約二倍強です。いまは国際価格が上がったのと自給体制ができましたから、去年、ことしあたりは逆にEC諸国の方が安くなっているぐらいですが、とにかく自給率を高めていく段階では、国際価格と遮断して課徴金を輸入する物にはかけて、そして域内での自給を強めていったのです。これは学ばなければならない、これ抜きにして自給はできない、これを私はまず申し上げたいのです。  それから約二倍強になったというのは、その作物の価格を、従来言っておりますように生産費所得補償方式、つまり他の労賃部門に対応する労賃補償をやっておる、これも非常に大事です。このことによって、結局今日九七%までいって、もう安心です。だから日本が、総理がおっしゃるように、どんなにしたって自給できないんだと投げるのはまだ早い。もっともっと努力によって伸びる余地はあるわけです。ここをひとつしっかりわかってもらいたい。  それから、もう余り時間がございませんので、次に参ります。  その次に、スイスという国、これはECに加盟していないでしょう。宮澤さん、スイスは入っていないですね。
  310. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 入っておりません。
  311. 湯山勇

    ○湯山委員 ECの中に入っておりません。中立を守るためでしょう。そうすると、あの強い国に囲まれたスイスは、今日一体自給率幾らかというと、総合自給率六八%です。カロリーで五九%、それからオリジナルカロリーにすると五一%、まあ日本よりは多少いい程度です。しかし、いまのような状態ですから、いつ食べ物がストップするかわからない。そこでこの自給体制をつくることになりました。どうやったかというと、これは、いまの三千二百二十四カロリーを約二千四百カロリーによそからこないときには落とす。そして畜産の部分は穀物に振りかえる。そうやっておおよそ二千四百カロリーの一〇〇%自給を達成する。それには、とまってからその体制ができる、自給ができるまでには四年かかる。そこで、その四年分を備蓄する。これがスイスの今日の体制です。  私がこういうことをいま申し上げるのは、十二海里の領海と二百海里の経済水域、これは日本もいよいよやる、三木総理も今年中にはやるということをおっしゃいまして、それは非常に結構なことだと思うのです。しかし、それでは今日日本の船が、外国のそれらの領海なり経済水域でどれだけ魚をとっているか。農林大臣、これはどれぐらいとっていますか。パーセントでも何でも結構です。
  312. 安倍晋太郎

    ○安倍国務大臣 千百万トンの日本の水揚げの中で、大体四百五十万トンから五百万トン近くだと思います。
  313. 湯山勇

    ○湯山委員 それだけとっています。もしそれらの国が日本を締め出すというようなことがあったら、これは大変です。そこで今度、いまのように領海あるいは経済水域を決めるということのためには、その魚が一体どうなるのか、どれだけ入ってこなくなるか、そのこなくなったものをどうやって補うんだということがなければ、ただ条約で決めた、日本は宣言した、これだけでは、国民の皆さん安心してくださいということにはならない。ただ外交上の文書で済む問題じゃないのです。やはりこれをやるのにはそこまでの決意が要る。それから、アメリカは大丈夫と思っていましたが、これもいまのように、領海の問題、経済水域の問題では必ずしも日本に対して好意的じゃありません。これは言い方が悪かったらかえますが、必ずしも日本のことだけ考えてやってくれてはいない。そうすると、いまの穀物の輸入だっていつどうなるかわからないというのが、これがやはり国民全体の不安であって、昨年、一昨年の米価が、生産者米価、消費者米価ともに余り抵抗なくあそこまでいったのは、あの当時食糧不安というものが全国民の意識の中にあったからだ、こういうことも否めない事実です。  そうすれば、こうやってこうしてこうすればこうなる、いまなってなくてもこうはやれるのだ、だから安心してくださいというのがなければ安定的供給とは言えない。その態勢を一体どうとっていくかということがなければ、食糧政策はこれは成り立たないのです。そうですよね、農林大臣。  そこで、私はやはり備蓄のことをお聞きしたい。今度四十万トンのえさ穀物と五万トンの大豆ですか、とにかく備蓄をすることになって、その要綱なんかのようなものもできたのですか、できてないのですか。農林省つくっておられましたが、これはどうなんですか、ちょっと……。
  314. 安倍晋太郎

    ○安倍国務大臣 いまお話しのように、わが国の食糧を確保するという立場におきまして、備蓄を本格的に行う時期が来ておるということで、今回の五十一年度予算におきまして、飼料穀物が十万トン、大豆五万トン、そして食管会計によるところの麦は二十五万トン、こういうふうに備蓄をする。そのうちの飼料穀物、それから大豆につきましては公益法人をつくって、そうして政府がこれに助成をして備蓄をするということで、今後ともこの備蓄はふやしていかなければならない、こういうふうに考えております。
  315. 湯山勇

    ○湯山委員 いまのことよくわかりましたが、農林大臣、こういうことをやり始めたばかりではありますけれども日本の備蓄については哲学がないということを言われておるのを御存じでしょうか。つまり、ECの諸国がああ言うから備蓄をせぬといかぬだろう、キッシンジャーが六百万トン備蓄しようと言うからうちもやっておかなんといくまい。つまり、キッシンジャーに気がねしたりECに気がねしながら、まあ備蓄というものもやっておかなければいかぬということは、これは備蓄のうちに入らない。蓄だけで備えがないのです。これを哲学がないと言うのです。そうでしょう。どこでどうなってどうなるから、どれだけを備蓄しなければならない。それは持っていけばどこまで必要なんだ、どれだけ持たなければならないというのがなければ、これは備蓄になりません。一体その計画はあるのですか、つくる予定ですか。
  316. 安倍晋太郎

    ○安倍国務大臣 五十一年度からいよいよ本格的に備蓄というところへ踏み出したわけでありますが、これはキッシンジャーの言うような備蓄構想ということではなくて、わが国わが国で自主的にやはり備蓄を進めなければならない、こういう見地から備蓄の本格実施に踏み切ったわけでございまして、これは私が申し上げるまでもないわけですが、先ほどから御論議がありましたように、可能な限り自給をしていくということは当然でございますが、やはりどうしてもわが国において生産が困難な、たとえば飼料穀物等につきましては、安定をして輸入をする。ただ、その安定した輸入の中においても、たとえば港湾争議、ストライキ等もあるわけですから、そういうことも考えて、われわれは十万トンの飼料穀物、当初は五万トンの大豆あるいはまた飼料用麦としては食管によって二十五万トン、こういうふうな考えで踏み出しているわけであります。
  317. 湯山勇

    ○湯山委員 いまおっしゃったのは、港湾のストライキ等があった場合の緊急備蓄ということならばそれはそれでもいいのですが、安定的に食糧を確保する、確保していくということになれば、そんなことでは済みませんですね。一朝事あったときに、こうするから国民の皆さん安心してくれという備蓄はそういうことでは、とてもこの程度のことでは追っつかぬ。どれくらい備蓄しなければならないという構想がおありですか。最終的に日本の備蓄というのはどれだけなければならないという構想をお持ちになっていらっしゃいますか。
  318. 安倍晋太郎

    ○安倍国務大臣 私たちは、現在の国際情勢、今後の国際情勢を判断をいたしまして、やはり食糧の輸入というのは、農産物の輸入というのは伸びていくわけでありますが、国内で自給できない農産物につきましては、安定輸入ということで私が昨年アメリカとの間に行いましたような一つの約束をいたしまして、輸入の安定に努める。同時に、緊急の港湾ストというような事態が起こることに対処もして最小限の備蓄は持たなければならないということで、先ほどから申し上げましたような数量を持っていく。これは、外国からの輸入農産物だけでなくて、米につきましても、たとえば、二百万トンというものを備蓄の目標にいたしておりますし、その他食管の食用麦等につきましても、数ヵ月分の備蓄は絶えず持つようにいたしておるわけであります。
  319. 湯山勇

    ○湯山委員 初めてのことですから、一年たって修正する、二年たって修正するということは、これはやむを得ないと思うのです。しかし、いまのように、こういうことだからこれだけはどうしても備蓄しなければならないというしっかりしたものをやはり農林省は持たないと、国民の食糧に責任を持つということにはなりません。  そこで、大変無理かもしれませんけれども、この国会中にというのはできないだろうと思いますが、来年までには、ことしじゅうには不完全でもいい、そういうものをつくるということのお約束が願えますか。
  320. 安倍晋太郎

    ○安倍国務大臣 これは備蓄につきましては、御承知のように財政的にも相当高額な負担が要るわけでございますから、そういうことも十分相談しなければなりませんが、しかし、この備蓄は今後とも積極的に進めていかなければならない、こういうふうに私たちは考えておるわけであります。
  321. 湯山勇

    ○湯山委員 まだどうも哲学が出てこないようで非常に残念ですが、ひとつぜひこれはがんばっていただくし、大蔵大臣もそういうことで、不完全でもできなければそれは備蓄じゃない、蓄だけだというんで、少しやっていただいて、やはり農林省はがんばってもらわないといかぬわけです。そうしないと、この間のように食糧関係で何万人も余っているじゃないか、遊んでおる、この人らに本気でいまの麦の問題とかやらしてごらんなさい、食糧庁なんかもっと人をふやさないといかぬですよ。そういうことを考えますと、もっとひとつ農林大臣、お若いんですから、本気で取り組んでいただきたい。  最後に、要望します。こうやっていくと、やはり農民の人たちがどれだけ生産意欲を持ってくれるかということへかかってくるのです。これについて私はもう余り時間がありませんから結論だけ申します。それは米の生産調整をやめること。これは財政問題、いろいろあるかもしれぬけれども、どれだけ生産意欲を阻害しておるか。いまのように計算上できます、資金上もできますということになっても、やってくれる農民は、いまの米の生産調整が続く限りは意欲は起こってきません。これは本当に考えてもらいたい。これをもし来年も続けるというような農政でしたら、私は残念ながら安倍農林大臣とどうも席を同じゅうせずということを言わざるを得ない。このことをひとつしっかり考えてください。総理大臣、私が申し上げましたこと、おわかりいただけましたでしょうか。それについて御所見があれば伺いまして、また後で質問することもありますから、きょうはこれで終わりたいと思うのですが、総理大臣、いかがですか。
  322. 三木武夫

    ○三木内閣総理大臣 湯山さんのお話はよく承りました。食糧の自給率を高めなければいかぬ、備蓄もやる、こういうことを中心にして、お話はよくわかります。ただしかし、食糧の自給自足ということは、これはやはりそういう時代でもないわけですから、まあできるだけ高めていく。必要なことは食糧の潜在生産力を培養することである、そういう点で、土地基盤の整備というものはやはり力を入れなければいかぬ。そういうこともあわせて考えないと、平時において何かむちゃくちゃに自給率を高めるということが好ましいことだとは思わない、できるだけ高めていかなければならぬ。そういうので、日本の土地の持っておる生産力、これを高めておくということは非常に大事なことだ。土地基盤整備の重要さというものは農政の中で大きな位置を占めなければならぬと思っております。
  323. 湯山勇

    ○湯山委員 私もいま申し上げたのは、やろうと思えばできる。しかし、国が立っていくためには、それはできるけれども、できる力は持っているけれども、これは輸入した方がいいとか、たとえばここで魚をとらしてもらうためには、これは買った方がいいとか、そういうことを——だから、いま言ったこと全部つくれというんじゃないのです。ただ、その力は、その可能性は持っていなければならないということですから、総理大臣と私は同じようなことだと思うのです。ただしかし、それなるがゆえに怠ってはならない。いまのような生産調整というような消極的な間違った政策をとってはいけないということだけ、ひとつ御理解願いたいと思います。  以上で終わります。
  324. 荒舩清十郎

    ○荒舩委員長 これにて湯山君の質疑は終了いたしました。      ————◇—————
  325. 荒舩清十郎

    ○荒舩委員長 この際、公聴会の件について御報告いたします。  公述人の人選等につきましては、さきに委員長に御一任願っておりましたが、理事会において協議の結果、次のとおりに決定いたしました。  二月七日午前十時から、大阪大学名誉教授木下和夫君、出かせぎ労働者野尻茂君、立教大学名誉教授藤田武夫君、名古屋市立大学教授藤田晴君、午後一時から、岡山県商工会連合会会長辻弥兵衛君、東京都老人クラブ連合会事務局長小林文男君、二月九日午前十時から、株式会社三菱総合研究所取締役社長中島正樹君、神奈川県知事長州一二君、全国農業会議所専務理事池田斉君、午後一時から、全国銀行協会連合会会長板倉譲治君、島田療育園児童指導員山本治史君、法政大学名誉教授渡辺佐平君、以上十二名の方々を決定いたしましたので、御報告申し上げます。  次回は、明四日午前十時より開会いたします。  本日は、これにて散会いたします。     午後四時四十分散会