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1976-01-29 第77回国会 衆議院 予算委員会 第2号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十一年一月二十八日(水曜日)委員長の指 名で、次のとおり小委員及び小委員長を選任した。  予算審議とその執行に関する調査小委員       井原 岸高君    奥野 誠亮君       倉成  正君    小山 長規君       塩谷 一夫君    正示啓次郎君       谷垣 專一君    藤井 勝志君       山村治郎君    小林  進君       田中 武夫君    楢崎弥之助君       松本 善明君    山田 太郎君       小平  忠君  予算審議とその執行に関する調査小委員長                 小山 長規君 ————————————————————— 昭和五十一年一月二十九日(木曜日)     午前十時開議  出席委員    委員長 荒舩清十郎君    理事 井原 岸高君 理事 小山 長規君    理事 塩谷 一夫君 理事 正示啓次郎君    理事 山村治郎君 理事 小林  進君    理事 楢崎弥之助君 理事 松本 善明君    理事 山田 太郎君       伊東 正義君    上村千一郎君       植木庚子郎君    江崎 真澄君       小澤 太郎君    大野 市郎君       奥野 誠亮君    北澤 直吉君       倉成  正君    黒金 泰美君       櫻内 義雄君    笹山茂太郎君       瀬戸山三男君    田中 龍夫君       谷垣 專一君    西村 直己君       根本龍太郎君    野田 卯一君       藤井 勝志君    保利  茂君       細田 吉藏君    前田 正男君       松浦周太郎君    安宅 常彦君       阿部 昭吾君    阿部 助哉君       赤松  勇君    石野 久男君       岡田 春夫君    田中 武夫君       多賀谷真稔君    堀  昌雄君       安井 吉典君    湯山  勇君       田代 文久君    中島 武敏君       林  百郎君    正木 良明君       矢野 絢也君    河村  勝君       小平  忠君  出席国務大臣         内閣総理大臣  三木 武夫君         国 務 大 臣         (経済企画庁長         官)      福田 赳夫君         法 務 大 臣 稻葉  修君         外 務 大 臣 宮澤 喜一君         大 蔵 大 臣 大平 正芳君         文 部 大 臣 永井 道雄君         厚 生 大 臣 田中 正巳君         農 林 大 臣 安倍晋太郎君         通商産業大臣  河本 敏夫君         運 輸 大 臣 木村 睦男君         郵 政 大 臣 村上  勇君         労 働 大 臣 長谷川 峻君         建 設 大 臣 竹下  登君         自 治 大 臣         国家公安委員会         委員長         北海道開発庁長         官       福田  一君         国 務 大 臣         (内閣官房長         官)      井出一太郎君         国 務 大 臣         (総理府総務長         官)         (沖繩開発庁長         官)      植木 光教君         国 務 大 臣         (行政管理庁長         官)      松澤 雄藏君         国 務 大 臣         (防衛庁長官) 坂田 道太君         国 務 大 臣         (科学技術庁長         官)      佐々木義武君         国 務 大 臣         (環境庁長官) 小沢 辰男君         国 務 大 臣         (国土庁長官) 金丸  信君  出席政府委員         内閣法制局長官 吉國 一郎君         内閣法制局第一         部長      角田礼次郎君         防衛庁長官官房         長       玉木 清司君         防衛庁人事教育         局長      竹岡 勝美君         防衛庁衛生局長 萩島 武夫君         経済企画庁調整         局長      青木 慎三君         経済企画庁国民         生活局長    藤井 直樹君         経済企画庁物価         局長      喜多村治雄君         経済企画庁総合         計画局長    宮崎  勇君         経済企画庁調査         局長      岩田 幸基君         科学技術庁原子         力局長     山野 正登君         法務省刑事局長 安原 美穂君         外務省アジア局         長       中江 要介君         外務省欧亜局長 橘  正忠君         外務省中近東ア         フリカ局長   加賀美秀夫君         外務省経済局長 本野 盛幸君         外務省条約局長 中島敏次郎君         外務省国際連合         局長      大川 美雄君         大蔵省主計局長 吉瀬 維哉君         大蔵省主税局長 大倉 眞隆君         大蔵省理財局長 松川 道哉君         大蔵省銀行局長 田辺 博通君         大蔵省国際金融         局長      藤岡眞佐夫君         国税庁長官   中橋敬次郎君         文部省初等中等         教育局長    諸沢 正道君         文部省大学局長 佐野文一郎君         厚生省医務局長 石丸 隆治君         厚生省薬務局長 上村  一君         厚生省社会局長 翁 久次郎君         厚生省児童家庭         局長      石野 清治君         厚生省年金局長 曾根田郁夫君         農林大臣官房長 森  整治君         通商産業省貿易         局長      岸田 文武君         通商産業省産業         政策局長    和田 敏信君         通商産業省機械         情報産業局長  熊谷 善二君         中小企業庁長官 齋藤 太一君         運輸省船舶局長 内田  守君         運輸省鉄道監督         局長      住田 正二君         労働省労政局長 青木勇之助君         労働省婦人少年         局長      森山 眞弓君         労働省職業安定         局長      遠藤 政夫君         建設省道路局長 井上  孝君         建設省住宅局長 山岡 一男君         自治省財政局長 首藤  堯君         自治省税務局長 森岡  敞君  委員外出席者         日本国有鉄道総         裁       藤井松太郎君         参  考  人         (日本銀行総         裁)      森永貞一郎君         予算委員会調査         室長      三樹 秀夫君     ————————————— 委員の異動 一月二十九日  辞任         補欠選任   安井 吉典君     赤松  勇君 同日  辞任         補欠選任   赤松  勇君     安井 吉典君     ————————————— 本日の会議に付した案件  参考人出頭要求に関する件  昭和五十一年度一般会計予算  昭和五十一年度特別会計予算  昭和五十一年度政府関係機関予算      ————◇—————
  2. 荒舩清十郎

    荒舩委員長 これより会議を開きます。  昭和五十一年度一般会計予算昭和五十一年度特別会計予算及び昭和五十一年度政府関係機関予算、以上三案を一括して議題といたします。  小林進君より、議事進行に関し発言を求められておりますので、これを許します。小林進君。
  3. 小林進

    小林(進)委員 第七十七回通常国会予算審議に当たり、与野党理事の一致した意見として、総理大臣に要望いたします。  本委員会は、ここ数回の会期を通じ、国会の本務とする国政に関する調査権監督権についても政府協力を強く要請してきたのであります。しかるに、行政府の側において国会要請に正しく応ぜざる点があることをまことに遺憾とするものであります。  議員質問に正しく答えないこと、あるいは答弁責任を負わざること、あるいは要求資料を約束どおり提出せざることなどの事例が幾つもあることはきわめて遺憾であります。  行政府に、もしもその場逃れ答弁に終始し、あるいは責任を負わぬというような態度がいささかもあるとすれば、これは断じて許されることではありません。立法府みずからも国民負託にこたえ、えりを正して審議権を行使しなければなりませんが、行政府においても改めるべきは改め、立法府要請に正しくこたえることを約束していただきたい。  第二点は、政府委員国務大臣にかわってしばしば政治答弁に立つことを改めることであります。  これについて三木総理も、「担当課長までが説明員と称して政府側答弁に立っているのは好ましいことではない。」と発表されたことがあります。国会答弁国務大臣責任を持って行うべきものであり、政府委員はもっぱら資料説明程度に限るべきものであって、政府方針政策を方向づけるような発言は厳に慎むべきであります。  新憲法の命ずるところ、行政国民のためにあり、行政官は中立を本義とするものであります。政党の要望に対し、専門的、事務的知識資料を提供するのが正しい姿勢であります。アメリカ議会はもとより、英国議会においても、議会内における政府行政官とは画然と区別されています。しかるに、わが日本では、官僚がだんだん政治に介入する悪例を強めつつあり、これが官僚政治と言わるる理由でもあります。  以上二点を、新憲法国政の場に定着せしめ、国民負託に正しく報いるという立場に立って、あえて強く要望するものであります。  なお、総理大臣答弁についてでありますが、答弁質問者の真意をつかみ、これに正しく、しかも簡潔にして要領よく答えていただくことを特に要望いたします。(拍手)  総理大臣責任ある答弁を求めます。
  4. 荒舩清十郎

    荒舩委員長 ただいま小林委員から御発言がありましたが、当委員会における予算審議の権威を高めるため、委員質疑に対して政府簡潔、明瞭に、誠意を持って内閣としての責任ある答弁をされるよう委員長から重ねて要望いたします。  右につき、総理大臣から御答弁をいただきます。  内閣総理大臣三木武夫君。
  5. 三木武夫

    三木内閣総理大臣 小林君から、ただいま立法府えりを正して審議に当たるから、政府の方においても責任のある答弁をし、また立法府要請にこたえて、提出すべき資料は迅速に提出すべきである、また、私に対しても数々の御注意をいただきました。まことにごもっともな御提案であると考えまして、そのようにいたすことにいたします。     —————————————
  6. 荒舩清十郎

    荒舩委員長 これより総括質疑に入ります。  質疑の申し出がありますので、これを許します。赤松勇君。
  7. 赤松勇

    赤松委員 質問に先立ちまして、私はおおむね内閣総理大臣答弁を求めますが、必要ならば助言は結構ですけれども、やはり三木さん自身責任を持って答弁をしていただきたい、これを要望いたします。いかがですか。
  8. 三木武夫

    三木内閣総理大臣 私が全部承知してない問題もございますから、国務大臣の場合は私を補佐して答弁する場合もあるということは御了承を願いたい。努めて私がお答えをいたします。
  9. 赤松勇

    赤松委員 その際は質問者の私がコントロールいたしますから、どうぞ御心配なく。ただ、メモをお読みになっても結構だし、助言をされても結構でありますが、答弁はあなたにしていただきたい。  それからいま一点。この予算案中心としまして、いまどのように不況を打開するか、日本経済をどのように持っていくか、これは大変国民関心を持っています。そのときに当たりまして、政党間の問題やあるいは不況打開余り関係のないような問題につきましては、社会党としては関心を持っておりません。私どもはいかにしてこの不況を打開していくか、国民本位不況を打開するか、大企業本位不況を打開するか、そういう点につきまして以下質問をいたしますが、恐らく内閣総理大臣社会党態度方針と同じだと思いますが、この際承っておきたいと思います。
  10. 三木武夫

    三木内閣総理大臣 不況克服というものを中心として論議を展開したいという社会党立場というものは、よく了解いたします。
  11. 赤松勇

    赤松委員 大変いろいろな政党間の矛盾を重要な外交、内政全般にわたる問題とすりかえて、そして本委員会を討論の場にするようなことは、私は避けていきたい。内閣総理大臣も同様な意見であるということを承りまして、そのように質問をしていきたいと思います。  まず第一に、この間三木さんの施政演説をお聞きしました。非常にむなしかったですね。白々しい。テレビを通じて聞いておった国民は何となくうつろな感じがしたと思うのです。これは私だけが感じたものではありません。現に、ある新聞は、二十三日の衆議院本会議での施政方針演説三木首相が「二十一世紀への挑戦」と高らかにうたい上げたときに、議場内から痛烈なやじが飛んだ。「二十世紀をどうしてくれる」、こういうやじです。ことしも不況と物価高に悩まされそうな国民の大半は、格調高い三木ビジョンを聞いて、これに似たいら立ちを感じたのではないか。将来の展望を持って現実を語るのは、指導的立場にある政治家として必要不可欠な条件ではあるが、同時に、現実打開策説得力を伴うことも要求される。首相演説は当面の課題注意深く答えているものの、果たして説得力を伴ったかどうかは疑問である。内政面課題焦点を当ててみると、特にその感が深いという新聞批評でありました。  これにつきまして、三木さんは、いま小林委員が御注意を申し上げましたように、高いビジョンも必要ではありますけれども、当面する問題に焦点を当てて、そして議論を重ねていきたいと思いますが、その点についてはどうですか。
  12. 三木武夫

    三木内閣総理大臣 私は、政治には理想が要るということです。その理想現実を踏まえて政治をしないといけないというのが私の考え方でございます。  私の施政方針演説に対しては、いろいろな批判もあるでしょうが、必ずしも全部が同じ批判ではなかったと承知をいたしております。
  13. 赤松勇

    赤松委員 あなたは、昭和四十七年七月の自民党大会総裁選挙で四位をとりました。事前の田中さん、大平さんとの上位連合協定で決選に持ち込みまして、田中さんを支持されました。新内閣無任所国務大臣として入閣して、後に副総理になられました。続いて、四十七年十二月の改造で環境庁長官を兼任されました。四十八年、田中内閣に対する批判が強まると、十月の三木派研修会で、「昭和初期ファッショ的国家統制に、日本を追いやってはならない。リベラル派が沈滞し、右翼バネが働くような事態はいかん。」という批判をされました。四十九年七月、参議院選挙田中派候補三木派候補との徳島地方区における空前の激突を経て、開票直後、金権政治を痛撃して副総理国務大臣辞任、党の近代化の構想に専念するということを声明されました。  ところが、近ごろのあなたを見ますると、——三木内閣というよりも三木総理です。近ごろのあなたの姿勢を見ますると、口は大衆の方に向けて、例の三木調で左のポーズをとりながら語っている。ところが、目は自民党の右派の派閥の方へ向いている、足は後ろを向いている、こういうような政治姿勢です。したがって、あなたのことをどう言っているかというと、都合の悪いときには責任を逃れる、そして他に責任を転嫁する。まさに変身総理だと、こう言っている。  私は、あなたがすばらしいリベラリストで、そして新しいビジョンを持って、理想を持ってそれに邁進する、保守派であっても日本における貴重なリベラリストとしての存在であると常日ごろ尊敬しております。ところが、最近のあなたを見ると、主体性を欠いておる、派閥によってすべてが左右されている、こういう深い感じがいたしますが、この点についてはどうですか。
  14. 三木武夫

    三木内閣総理大臣 私自身が、私は私としての信念を持っておるわけです。したがって、その私の信念というものを曲げることはないということであります。いろいろなことが、世の中で批判される人もおりますが、私は私としての信念に反しない道を歩み続けておると信じております。
  15. 赤松勇

    赤松委員 わが党の成田委員長の本会議質問に対してあなたは答弁されている。どういうことを答弁されておるかと言えば、あなたと私はすでに方程式で異なっているんだ。防衛問題を初め、その他で基本的に違っているんだ。したがって、そういうように基本的に考えの違っているものに対しては答弁できないというような意味を言われ、いわゆるこのいま提出されております予算案修正に応ずるかという成田委員長質問に対しては、応じませんと答弁をされました。ところが三木さん、余りおごってはいけません。おごる平家は久しからず。  一体、過去三回の選挙の結果はどうなっていますか。あなたは、対話協調を最大の目標として、そのためにそれに邁進すると言っておりますけれども、過去三回の選挙によれば、いずれも野党が多数派になっているじゃありませんか。議員数においては遺憾ながら野党が分裂をしておりますので、それが端的にはあらわれておりません。集中的にあらわれておりませんけれども、選挙の結果は明らかに野党の方が多数派になっている。これは御存じだと思うのです。  私は、念のためにあなたにお示し申し上げますけれども、四十六年の参議院通常選挙では、自民党のとった票が一千七再七十五万九千三百九十五で四四・四%。野党がとった票は二千二百十七万二千百八十八票、五五・六%。これが全国区の票です。地方区に至りましては、自民党のとった票が千七百八十八万五千百五十七、四四・三%、野党のとった票は二千二百四十四万五千七百五十八、五五・七%。これが四十六年の参議院通常選挙の結果であります。  さらに四十九年のそれを申し上げますと、院の通常選挙で、やはり自民党のとった票が二千三百三十三万二千七百七十三票、野党のとった票は二千九百二十九万一千九百五十六。自民党が四四・三%、野党のとった票が五五・七%。こういうことになるのであります。  このように選挙支持票を見ますと、野党自民党よりも多い。先ほども申し上げましたように、遺憾ながら野党の方は戦線を統一しておりませんのでそれが議席数になってあらわれておりませんけれども。したがって、この国民の総意を集中的に表現した選挙の結果について、あなたはそれこそ対話協調の精神で、国民の半数以上の意見を代表する野党の主張なり政策なりを三木内閣の中に取り入れていくということがやはり必要だと思うのです。  そうして、社会党予算案をつくりました。いつもあなたたち対案を出せ、対案を出せと言う。社会党対案をつくりました。で、対案をつくって、この予算委員会野党中心組み替え案をつくって、そして政府話し合いをしようというのです。それをあなたは頭から、修正に応ずることはできない、こういうことを本会議でおっしゃった。これが本当にあなたの言う対話協調ですか。これが民主主義ですか。まさに自民党独裁政治じゃありませんか。これについてどう思います。
  16. 三木武夫

    三木内閣総理大臣 私が成田君にお答えをしたのは、政府が現在の時点では一番よい予算だと考えまして予算提出いたしましたので、十分御審議を願いますというのが、私のお答えでございました。赤松君御承知のとおりでございます。政府予算提出をいたしておきまして、すぐに初めから修正に応じますということは、これは予算提出した政府としてそういう立場でないことは御承知のとおりで、一番いいと思って出したわけですから、十分御審議を願いますと答えることが私の思い上がった態度であると、赤松君、私は思わない。一番いいと思って出したわけですから、よく御審議を願いますと答えることは、やはり常識的に見ても私はそう思い上がりではないと考えます。
  17. 赤松勇

    赤松委員 結構な答弁をいただきました。それならば、野党の方から予算組み替え案を出しますから、その際は自民党政府の方も率直にいいものを取り入れて、そして予算修正をやるということに応ずる用意はございますね。
  18. 三木武夫

    三木内閣総理大臣 この予算委員会はそうして与野党予算についていろいろ論議をされるわけですから、国会というものはいろいろ修正も可能でございましょうし、ただ賛成機関だというわけではないわけですから、いろいろな御意見をこの予算審議を通じて承りたいと考える次第でございます。
  19. 赤松勇

    赤松委員 それでは野党の方とも十分相談をしまして、組み替え案提出のときには率直にそれに応じて、そして十分に野党の中の取り入れるべき意見についてはそれを取り入れていくということでありますので、次に移ります。  三木内閣昭和四十九年十二月に成立してから、五十年十月一日に逓信委員会郵便料値上げ強行採決をやりました。五十年十月一日に大蔵委員会で酒、たばこ値上げ法案強行採決をやりました。五十年十二月三日の大蔵委員会財政特例法強行採決をやりました。さらに五十年十一月二十二日には本会議において会期延長について強行採決をやっています。  こういうような自民党強行採決、つまり野党と十分に話し合いをしない態度、これは一貫して三木内閣が成立してからずっと行われてきているのです。したがって、先ほどから総理大臣答弁されているような、いわゆる民主的な運営というものが国会において行われていないというように思います。この点についてはどうですか。
  20. 三木武夫

    三木内閣総理大臣 全部強行採決というような形をとったとは思いません。たとえば公職選挙法、これは社会党の御協力を得て国会を通過したわけでございまして、協力できるものは協力をしてまいったわけでございますが、ただ、私は赤松君にもお願いをしておきたいのは、いろいろな公共料金値上げというものは国会の中でいままでの経過を顧みてもなかなか審議が進まない。まあ値上げ法案というものは国民一般から見れば不人気なことですけれども、責任を持っておる政府としては、どうにも収支償わないような状態になってくると、それは一般国民が負担すればよいという考えならばこれまた違うわけですけれども、やはり公共料金はそれを利用する人たちに応分の負担を願いたいというのが自民党考えですから、どうしてもこれはやはり結末をつけなければならぬわけです。それに対して、経過はいまさらここで申し述べる必要もございませんが、なかなか審議に応じていただけない場面があったことは御承知のとおりであります。会期というものも決められておるわけですから、先般の国会などもいままでにない長期だ言われますが、それだけの長期国会をしてもなかなかこの結末がつかぬ。審議を尽くすことは必要であるけれども、ある時期が来たならば賛否を表決に問うという原則が国会で確立をしなければ、国会というものは野党の諸君がいやだと言う法案は通らないということになりますから、われわれとしては自民党だけで採決することがいいとは思ってないのですよ、しかし、どうしたってそういうある時期には決着をつけなければならぬわけでございますからそういう場面があったわけで、その場合でもできるだけ一緒に来て賛否を述べてもらえないかということを繰り返しお願いをしたわけでございますが、それは実現をしませんのでありますから、結末をつけなければならぬという立場責任ある政府・与党の立場からそういうことをいたしたので、好きこのんでそういうことをいたしておるのではない、その間の事情をよく赤松君も御理解を願いたいと思うわけでございます。
  21. 赤松勇

    赤松委員 国民の多数派に対して国民の少数派が国会運営の面でも独裁的な運営をやる。その実態は恐らく国民の皆さんも数回の強行採決によってよく御存じであると思うのですが、しかし、この問題で余り時間をとっておりますとあれですから、今後公正な国会運営をぜひやるように努力してもらいたいということを申し上げて、次に移ります。  そこで、あなたはこの間自民党大会で一応洗礼を受けました。しかし、まだ国民には洗礼を受けていないわけです。三木内閣ができて一年有余になりますけれども洗礼を受けていない。そこで、この予算案が成立をした段階で衆議院の解散をやることが最適であると私ども考えておりますが、率直にこの際あなたの御意見を伺っておきたいと思います。
  22. 三木武夫

    三木内閣総理大臣 内閣国民の洗礼を受けるべきであるということは、民主政治のルールとして赤松君の御指摘のとおりだと思います。しかし、いままでの日本の経済事情ということに対しても御理解を願えると思うのです。不況を克服しなければならぬという絶対の命題を抱えておったわけですから、そういうことをいたしませんでした。また、いま御審議を願おうとする予算不況克服ということに大きな関連を持つ予算でございまして、それに関連するいろんな予算関連の法案もございますので、どうかこの審議を促進していただきたいということで、私自身がいまいつ解散をするかということを、解散というものを具体的に考えてはいないのが私の正直な心境でございます。ただ、この予算予算関連法案というものをぜひとも成立をさせたい、そのために政府も一生懸命に審議促進に努力をしたいという一念でございます。
  23. 赤松勇

    赤松委員 あなたはここでも腹と口が違うのです。あなたの腹の中は恐らく四月ごろ解散をしたいという腹だとまあ私は思います。ところが、自民党内の派閥などとの関係もあって解散ができないという状態ではないかと思うのであります。とにかく早期に解散をして、そして国民の洗礼を受けるばかりでなくて、この日本不況を打開し、そして経済を国民本位に立て直すためにはどうすべきかという政策論争を通じて国民の世論に問うということは大変大事なことだと思うのであります。その意味におきまして、この予算委員会は、特に与野党政策論争という点において重要だと思います。  ところが、あなたは三木内閣が成立した際に、クリーン三木だとかあるいは清潔だということを盛んに言いました。そして、党近代化とかいろいろなことを言いましたけれども、政治資金規正法がこの間成立する前、昨年の暮れに、政治資金規正法が成立すると財界から献金ができにくいので、あわてて自民党の借金百億、そのうちの五十億を財界に肩がわりをしてもらった。これはもう言うまでもない事実なんですから、その事実の確認はしません。これは世間周知の事実であります。そこで五十億の金を集めた、そうして借金の肩がわりをやった、そして独占禁止法の骨抜きを約束した、あるいは本予算の中に大企業を中心とする莫大な公共事業費を投資することを約束したということが世間に言われています。まさに財界と癒着した自民党三木内閣、こういうように世間は見ています。あなたは正しい形で国民から金を集めないで、いつも財界偏重で、財界から金をもらい、そのお返しに財界本位の政治をやってきた、またやろうとしている。これは改める必要があると思うのです。これを改めなければ、日本の保守党政治の腐敗は断じて一掃されません。この際、あなたの決意と、さらに昨年暮れに財界から五十億円を集めた、そういう恥ずべき行為に対するあなたの答弁を承りたいと思います。
  24. 三木武夫

    三木内閣総理大臣 自民党が多額な借金を抱えておるということに対して、これは党財政を圧迫いたしますから気の毒だ、これに対して、その借金の負担を軽くするために政治献金をしてあげよう、そういう声があったことは事実でございます。それを自民党が受け入れたわけでございまして、そのことが赤松君の御指摘のような、そういう政治献金を受け入れたから自民党政策というものがそれに報いるために曲げられるということは絶対にないことを、赤松君に私は明らかにしておきたい。  自民党が戦後ずっと政権を維持してきたし、また、これを国民は支えてきてくれたわけです。現行選挙法のもとにおいて、自民党に単独で政権を担当するだけの委任を国民が与えたわけでございますから、大企業と癒着して政治献金をもらって、自民党政策を曲げられるということならば、戦後何十年にわたる国民のこれだけの支持を受けられるはずはないのであります。自民党国民的な立場、大企業、中小企業あるいはまた農民あるいは労働者、広い国民の各層の上に立って、戦後の日本政治に対して責任を持ってきたということでありまして、自民党政治が大企業と癒着した政治を行うという考え方は、これは私自身も持っていないのですよ。そういう考えは持っていない。そういうことで、常に国民立場に立って政治を行っておるということは、どうか誤解のないように受け取っていただきたいと思うわけでございます。
  25. 赤松勇

    赤松委員 メリットがないのに、五十億というような莫大な金を財界が献金するわけはありません。あなたが何ぼここで弁明したって、国民は、ああそうですか、非常に説得力のある答弁です、ああそうですか、三木さんりっぱだ、と言いません。したがって、今後こういうことのないようにと言っても、依然この状態は続くでしょう。財界と癒着する自民党、これが強く国民に印象づけられておるということを申し上げておきます。  あなたは、施政演説の中で、福祉予算に大変力を入れておる、こうおっしゃっておる。ところが、以下私は福祉予算自民党が福祉をいかに軽く見ておるか、このことを指摘したいと思うのです。  三木さん、こう言っていますね。「社会的公正の中には、教育の機会均等、諸種の社会保障、税制改革、その他多くの問題が含まれます。中でも、老人、心身障害児者、母子世帯、生活保護世帯等の経済的、社会的に弱い立場の人々の生活の安定と福祉を図ることには、来年度予算でも特に配慮しました。」。特に配慮をしておりますか。田中厚生大臣がおるけれども、田中厚生大臣の腹の中は、大蔵省との予算折衝の中で、恐らく煮え返るような思いをしたと思うのです。  昨年、社会労働委員会でわが党の田口代議士が質問しました際、田中厚生大臣は、遺族年金を七割上げる、多賀谷委員質問に対しましては、老齢福祉年金を速やかに二万円にするように努力しますということを約束している。今度の予算の中では、老齢福祉年金に関しましては若干上がったけれども、しかし、この福祉予算を見ますと、まず保育対策の強化の中で、病休代替職員、これは保母さんが病気になったときにかわる人を雇う場合です。この職員費補助金を、一億二千八百万円を厚生省が要求したのに対し、予算では四千四百万円に削っているではありませんか。これは一体どうしたことです。さらにそればかりではない。保母さんが病気で休んでしまいますと、他の保母さんに労働が転嫁されて、そしてますます保育ができなくなるという状態を呈する。その重要な保育対策の中で、こういうように田中厚生大臣の要求したものを、大蔵大臣はばっさり切っちゃった。  児童健全育成対策の強化、その項目の、都市児童健全育成事業費、これはかぎっ子です。親が働きに行って子供が取り残される。このかぎっ子の対策費として四億七百万円田中君は要求した。それに対して三木内閣は一億一千七百万円に削っちゃった。何が不公正を直すのですか。  そればかりではない。在宅心身障害児対策の強化については、心身障害児通園療育事業強化費四千二百万円の要求に対して、ゼロです。ばさっと切っちゃった。ゼロです。在宅重度心身障害児緊急保護事業費、この心身障害児に対するところの緊急保護費、これを四千九百万円要求したのに対して、これまた三千三百万円しか出していない。社会福祉施設の整備費、これは四百二十億円要求したら三百七十六億円に削ってしまった。何ですか、この状態は。  重度障害者福祉手当を、四千円から五千円に引き上げた。あなた、胸を張って、どうだと、こう言うかもしれぬ。ところが、これ一日に割ってみなさい。幾らになる。一日に割れば三十三円。三十三円で何が食えますか。一日三十三円、これでおれは福祉予算をふやしたんだなんて言っている。介護人手当二千三百二十円を二千五百五十円にふやした。これ一日幾らになりますか。一日七円じゃないですか。一日七円。テレビを通じて聞いている国民は、あなたが本会議で福祉の予算に力を入れたと言っても、具体的にこういう状態では、あなた自身に対する怒りを感じますよ。老人クラブの補助費四千三百円、これを四千五百円にふやした。一日六円ふやした。六円。いいですか。  厚生省の福祉予算は二二%上がったと言っているけれども、当然増は幾らだと思います。当然増が一〇%。そうして医療費を今度上げるでしょう。医療費の値上がり分が五%じゃないですか。あとが、ふやした、ふやしたと言うところの福祉予算。それも重要なものは皆ばっさり切って、そして医療費の値上げだけを重点に組んでいる。こんな福祉予算がありますか。重度心身障害児、こういう人たちは身動きができないんだ。真っ先に救いの手を伸ばすのが本当じゃないですか。どうですか。
  26. 三木武夫

    三木内閣総理大臣 私が、福祉の予算には力を入れたと申しますのは、赤松君も御承知のように、今年度の財政は非常に窮屈の中で、一般会計のシェアは一八・四%から一九・八%ということで伸びたことは赤松君も御指摘のとおりで、昨年度に比べて社会保障関係二二・四%ふえたわけですね。四兆八千七十六億円。だから、ちょっと九千億円ほど昨年に比べて増加をさした、ふやしたわけでございまして、公共事業は二丁二%増しの三兆五千二百七十二億円。だから、これは六千億ぐらいの伸びであって、こういう公共事業と社会福祉というものとは、従来とも一応金額的には相当バランスのとれたようなものであったわけですが、しかし、昨年度の予算では一兆円公共事業よりもふえたわけです。今年もまた、いま申したようにふやしたわけで、その中には生活扶助基準の引き上げとか、老人の医療の無料制度を据え置くとか、年金、まあ厚生年金、国民年金、老齢福祉年金、こういうものに対しても改善をいたしましたし、在宅の重度心身障害者の緊急一時保護制度というものも今回新設をしたし、在宅の福祉の充実、こういうことも行いましたし、難病の治療研究センターも新設したり、社会福祉施設職員の増員とか、保育所の基準の面積の拡大とか、原爆障害対策費であるとか、公害対策の充実とか、いろいろ細かく気を配ったことは事実でございますが、赤松君の、それならそれで十分だと思っておるかというと、まあ十分だとは言えないにしても、こういう窮屈な財政の中において政府はできるだけ社会福祉という点については気を配ったんだということは、いまのような数字の上から私は申し上げておる次第でございます。
  27. 赤松勇

    赤松委員 三木内閣の福祉政策というものの実態が明らかになった。いま答弁がありましたけれども、おおむね医療費にこれは出しているんですが、これは間違いない。しかも、交際費天国と言われて、いま一兆九千億円というものが交際費に使われておる。その七割が課税されていない、こういうことなんです。いいですか。このことを私は問題にしたのじゃなくて、こういうことを野方図にほうっておいて、そして福祉予算には締めつけを行う。  また、許しがたいのは、会社臨時特別税です。これは時限立法ですから、もう必要なくなった、だんだん不況になってきたから必要なくなった、だから継続する必要がないと判断した、こうおっしゃるかもわかりません。ところが、昭和四十九年度の見込みは千九百八十億円。これで千八百十二億一千七百万円。多少見込みが違いました。しかし、これだけの課税ができるんです。それから昭和五十年度では当初見込みは二千六十億円だった。それから補正の見込みは一千百五十億円だ。これは見込みよりも九百十億円減ってます。いずれにしても、これだけのものがなお企業から取れるんです。企業から取れるんです。私は少なくとも、どんなに落ち込みがあっても、一千億以上とは言いませんけれども、一千億に近いものは取れると思う。税の公平を期する、政治の公正を期すると言うならば、なぜこれらに課税して、これを福祉予算に回さないんですか。飲み食いの交際費は課税しないで、臨時会社特別税についてはこれを廃止して、事実上減税しているじゃありませんか。大企業には減税して厚生予算は抑える。田中厚生大臣は答弁しませんよ、ばかばかしくて。  私は社会党政策を申し上げましょうか。あなたが若干今度の老齢福祉年金をふやしたと胸を張る。われわれは四万円要求しているのだ。月四万円です、老齢福祉年金。じゃ、どういうように四万円の原資をつくるかと言えば、三木さん、これはひとつあなたも研究しなさい、独創的な考えを出して。そうして役人だけに任しておくのではなくて、社会党のこういう政策も少し見習ったらいいと思う。それは、われわれはまず当初において一兆二千億を政府予算で組んでもらう。不足分の一兆二千億円については、厚生年金の積立金を借りて、そしてこれに充当していく。私はこのことについては、社会党の生活要求闘争本部として約一年間、労働側と厚生年金積立金の借り入れについて話し合いました。そして、そのオーケーを得ましたが、こうしてやればできるんですよ。財源がない、財源がない、だから、社会党の四万円老齢福祉年金というものは、これはナンセンスだというような考え方は誤りです。われわれは、ちゃんと財源を示しているじゃありませんか。これも、社会党がつくった今度の予算の中にちゃんと入っているんだ。明確に入っているんだ。そういうことをやればできるじゃありませんか。  また、今日医療費をどんどん上げていっておりますけれども、日本の医療費は年間四兆円です。この中で、薬剤費の占める割合は四六%です。ところが、ヨーロッパではおおむね二〇%ですよ。これは三木さん、御存じですね。おおむね二〇%。そこでヨーロッパ並みに——薬九層倍といいますけれども、これを社会党が提唱しておるように、公社をつくって、そこで原価計算をして適正な価格でこれを国民に供給する。そして、この四兆円の四六%を占める、つまり二兆円の薬代をヨーロッパ並みにしていけば、ここから原資が浮いてくる。そうすれば、これは後で私申し上げますけれども、政府の方は健康保険は赤字だ、赤字だなんて言っておるが、健康保険の赤字なんかこんなものは、健康保険料を上げなくても一遍でできるじゃありませんか。そういうことをやろうとはしないで、すべて借金、借金、あるいは受益者負担だ、負担だと言って大衆にこれを転嫁していく。これは政治ではありません。なぜ、こういう問題に基本的にメスを入れないのですか。社会党はここ十年間、これにメスを入れなさい、そして医薬分業をやりなさい、適正な医者の技術料、石けんやちり紙を売らなくてもいいように薬剤師の社会的地位を上げて、そして医療費の根本的な改善をやりなさい。薬の専売とは言いませんけれども、少なくともいまの薬は、政府の方は全然無干渉だ。干渉しろとは言いませんが、この公社で原価計算して適正な価格を出していけば、医薬分業に伴う医療費の改憲はやれるじゃありませんか。ここから、少なくとも五千億や一兆円の金は出てくる。そこに手をつけようとしないで、健康保険がちょっと赤字だといったら、すぐ受益者負担だ、保険料を上げちゃう。こんなやり方を保守党がやっておったら、いつの日か保守党は倒れますよ。保守党内閣は倒れますよ。これについてどうですか。交際費は一兆九千億も使っている、その七割はほったらかし。さっき言った会社臨時特別税については、時限立法だと言って今度は出してこない。健康保険の方は赤字だと言って値上げをしてくる。すべて犠牲を大衆に転嫁しておるじゃありませんか。これはどうですか。
  28. 三木武夫

    三木内閣総理大臣 今度社会党から、いろいろ具体的な提案をされながら質問をされるということは、われわれとしても非常に啓発されるところがあるわけです。しかし、たとえば福祉年金にしましても、四万円にすればいいということですが、一万円でやはり六千億円ぐらいの国庫の負担がふえるわけです。四万円というから二兆四千億円(赤松委員「後でやりますから。政治姿勢を問うているのです。」と呼ぶ)そういうことでございますから、賦課方式を厚生年金から崩したらいいというようなお話でございましたが、こういう問題について、私は年金制度というものはもう一遍根本的に検討しなければならぬ時期に来ておると思います。  薬のいわゆる医薬分業についてもいろいろお話がございましたが、後でお触れになるということでございますが、とにかくいろいろな提案があるならば、私も実行できるものは素直に受け入れたいと思うのですが、現実に即して考えないと、ただ一遍にいままでの長い慣習の間に生まれてきておるものを革命的に変更するということは、なかなかむずかしい場合もあるわけですね。そこに自民党政府としては、現実を踏まえて考えるところに、相当政策の距離が生まれてくるわけでありましょうが、われわれは、そういう社会的公正ということはこれからの政治の大きな中心の題目になりますから、いろいろ御注意のあったような点は十分に研究をしなければならぬ課題であると思います。
  29. 赤松勇

    赤松委員 成田委員長が本会議で言いましたように、ただ政府責任を追及するだけでなくて、野党側としても、特に社会党は、七割自分たち対案を示して、そして責任追及は三割する、この基本的な態度ですべて臨もうとしていますから、いま政治姿勢について質問しております。いま申し上げたような諸点については、さらに後で申し上げたいと思うのです。  そこで、政治姿勢の一つとして、三木さんは与野党共通の土俵というのはどういうように考えていますか。与野党共通の土俵、ルール。安保、防衛問題など国の基本問題について、見解が異なるから、イデオロギーや発想が違うから、方程式が違うから、こういう理由であなたはいつも野党の提案から逃げておられる。一体、共通の土俵、共通の土俵とおっしゃるが、共通の土俵というのは何ですか。共通の土俵で私ども与野党が解決しようと思うと、共通の土俵をどんどん広げていっちゃうじゃないですか。ルールも何もあったものじゃない。会期延長会期延長でどんどん土俵を広げていく。これでは共通の土俵にはならぬと思うのですが、共通の土俵とは一体何ですか。
  30. 三木武夫

    三木内閣総理大臣 私が共通の土俵と言った場合に使ったのは、国の安全保障の問題について、私が本会議でその点を述べたと思うのですが、一国の安全を保障するということは、これはまあ共通の課題であることは間違いないですね。ところが、いまは余りにも国の安全保障の問題について与野党の間の考え方の開きがあるわけですね。だから、成田君の御質問に対しても、もう安保条約を即時廃棄して非武装中立でいけと、こう断定されるわけです。われわれはそういうことでは日本の安全は保障されないと思うのですが、余りにも距離がある。だから何か立場は違っても、もう少しきめの細かい議論をするような場というものはつくれないであろうか。そういうことで、国会の中に安全保障に関して何か特別の委員会でもつくって、話し合うような場を持つことが必要なんではないか。意見が違うからもう言いっぱなしということでなくして、もう少しきめ細かくいろいろ議論をする場があることが、やはりこういう大事な問題に対して与野党の理解、考え方というものをある程度接近さすような動機になるかもしれない、そういうことで、やはりもう少しそういう場を持つことが必要なのではないかということを私は言ったわけで、そういうことがあることが、いわゆる共通の土俵というのはそういうことを指して私は申しておるのです。  何としても外交とか防衛とか教育とかいうようなものは政党政派を超えて、将来日本に大きな影響を持つのですから、もう少し歩み寄った話し合いができないかというのが私の日ごろの願いでございます。そのためにはその場を持たなければならない。場もないではないか。共通の土俵が、共通の場が要ると私が言ったのはそういう点からでございます。
  31. 赤松勇

    赤松委員 議会民主主義立場から言えば、共通の土俵というのは憲法なんです。憲法ですよ。憲法が共通の土俵でなければならぬ。憲法違反を犯しておっては共通の場を求めることはできません。憲法が共通の土俵の基本的な立場であるとすれば、成田委員長が非武装中立論を論議として展開するのは当然じゃありませんか。憲法はどう書いておりますか。憲法にはそれが明記してあるじゃありませんか。それをイデオロギーだ、方程式が違う、こういう考えで、そういう発想で与野党共通の——ことに先ほど指摘したように野党が多数派なんです、国民は。その野党意見を取り入れていかないということは議会民主主義に反すると思います。私は非常に残念でありますけれども、すでに一時間にわたって三木内閣というもの、三木総理政治姿勢についてお尋ねをしました。恐らく国民の皆さんは、社会党とあなたの考えをテレビを通じて聞いて、そして適正に判断をされると思います。  そこで私は、次は経済問題に移っていきたいと思います。  まず、現下の経済を論ずる場合に、一番大事な点は、高度成長経済政策が失敗だった、その教訓を学ぶことから出発しなければなりません。つまり、高度成長経済政策の失敗が今日この未曽有の不況を招いているのであります。この点について、三木さん、どう思われますか。
  32. 三木武夫

    三木内閣総理大臣 高度経済成長、これがすべてのいろいろな今日の不況、インフレを呼んでおる原因であるというふうにいま断定をされましたけれども、私は、高度経済成長のメリットのあった面というものを目を奪ってはいけない。日本があのような貧しい状態から国民の所得、生活の水準というものが高まってもきたし、完全雇用というものが実施できるようなことにもなって、そういう高度経済成長によって日本の経済的な一つの基盤というものが強化された面におけるメリットを目を奪ってはいけない。しかし、赤松君の御指摘されるように、いろいろなひずみというものが生じたことは事実でございます。このひずみの是正に対して積極的に取り組まなければならぬことは、これはもう言うまでもないわけですが、いままでの高度経済成長がすべて悪かったという評価には私は承服をいたしかねるものでございます。
  33. 赤松勇

    赤松委員 三木さん、その段階における経済が悪であるか善であるか、そういう割り切り方はいかぬですね。あなたの答弁はそういうことになる。  私の言っていることは、高度成長経済政策の中で学ばなければならぬものがあるんじゃないか、教訓があるんじゃないか。つまり、あの高度成長経済政策がピークのときに、西ドイツは何をやりましたか。西ドイツはすでに低成長の時代が来るということを予見して、たとえば労働対策については、——私は賛成しませんよ、賛成しませんけれども、共同決定法というものをつくって、そうして労使対等の立場で労働者を経営に参加させて、労使双方の安定を図って、低成長時代になっても西ドイツのストライキ件数は一千日でたった三日ですよ。日本の場合はどうなっているか。西ドイツが千日に三日、これが労働喪失日数です。フランスは七十日、イギリスは百三十日、イタリアは百七十日、日本は二百日を超えている。これは政府の労働政策の失敗なんだ。やればできるじゃありませんか。西ドイツはそれを証明しておる。だから、高度成長経済政策がピークのときに、すでに低成長に入ることを予見してそれぞれの対策を立てなければならぬ。  ところが、あなたたちのやり方はどうなんですか。高度成長経済がピークのときに、労働運動は犯罪視し、ストライキは犯罪視して、そして労働運動を弾圧し、労働者の賃上げを抑えて高度成長経済を続けていこうとしたではありませんか。どこに長期ビジョンがありますか、これは。何と政府が弁明しようとも、長期政策はなかった。三木さんの言う理想ビジョンがなかった。それを立証するのが、現に一年前小林議員やそれから予算委員の皆さんと一緒にここへ大商社、大会社、大企業の諸君を呼んだでしょう。狂乱物価のときに呼んだでしょう。あの諸君は何をやっていましたか。この予算委員会で明らかになったことは、高度成長経済で得た利潤で物資を買い占め、土地を買い占め、株を買い占める、こういうことをやってきたじゃありませんか。どこに低成長への見通し——低成長段階に移る場合には、その得た利潤というものを労働者に還元し、消費需要を拡大して、そして経済の安定を図っていこうというような、そういう努力をどこでしましたか。国会予算委員会に引っ張り出されて、各議員の皆さんから追及されなければならぬほど彼らはすごいもうけをしておった。  御承知のように、日本の企業は二〇%、もう一五%になっているかもしらぬ、自己資本一五%くらいだ。あとは銀行からの借入金でしょう。だから企業は不安定なんです。そういうときに、高度成長経済政策当時に、できる限り自己資本、これで賄っていく、銀行借り入れを減らしていく、労使の間には円滑に労使関係がいくような努力をする、そういうことはこれっぽっちもやらない。ストライキというものは犯罪として起こるのではないのです。ストライキというものは当然生活権が侵害されれば起きる。資本家がなくても労働者があれば生産できるのだ。富を生産するのは労働者ではありませんか。しかも、その労働者を犠牲にして高度成長経済政策というものは成り立っておった。それが低成長に移る場合には、今度は労働者にその犠牲を転嫁している。後で私は申し上げますけれども、少なくとも、こういう点が政財界含めての反省でなければならぬと私は思います。これはいかがですか。
  34. 三木武夫

    三木内閣総理大臣 高度経済成長反省の材料は、含んでおることは御指摘のとおりであります。  だから一つには、日本の経済成長というものが過去のような実質一〇%を超えるような成長ということは非常にいろいろな社会的矛盾が生まれてくるわけですから、今後は安定した適正成長の路線に切りかえなければならぬ、むやみな高度経済成長を望んではならぬということが大きな教訓であります。政府もそういう線に従って路線の切りかえをやっておるわけでございます。  もう一つは、やはり日本経済と世界経済とは分けて考えられないということ。いま直面しておるスタグフレーションの問題にしても、世界が同時に皆こういう問題に直面をしておるわけでございます。たとえば石油の危機という問題も、これがどれだけ日本の経済というものに対して混乱を与えたかということは赤松君御承知のとおり。そうなってくると、こういう相互依存性の深まったときに国際協力というものの必要というものがますます深まってきておる。国内においては、余り昔のような高度経済成長を望んではならないのだ、適正な規模の成長を図っていかなければいかぬ。国際的に見れば、国際協力というものの必要というものをますます痛感をした。われわれは、この高度経済成長がもたらしたいろいろなひずみに対してそういう反省をいたすものでございます。
  35. 赤松勇

    赤松委員 この経済問題ば春闘の問題と絡みます。したがって、これを後に回します。  まず、国債問題についてお尋ねします。  こういうようにして低成長の時代を迎えた。ところが、政府の方の歳入が落ち込んで公債政策をとらざるを得なくなった。五十一年度の公債発行額は七兆二千七百五十億円、一般会計の公債依存度は三〇%であります。これは恐らく戦前にもなかったことだと思うのです。大変不安定な予算であると思うのであります。  それで、一体政府は公債発行の歯どめをどこに置いているのか。これを、三木さんあれならば、大蔵大臣どうですか。
  36. 大平正芳

    大平国務大臣 公債発行については、まず第一に考えておりますことは、経済との均衡を考えておるわけでございまして、今日の経済において需給のギャップが大変大きい状況にございますので、ただいま御指摘になりました程度の公債を発行することによりましても、経済と財政のバランスを失し、財政インフレを招来するという心配はないものと心得たわけでございます。  しかしながら、こういう状態は臨時、異例の措置でございまして、いつまでもこういう状態であってはならないと政府考えておるわけでございます。したがって、なるべく早くこういう状態から脱却を図らなければならないと思います。したがいまして、歳入歳出にわたりまして全面的な見直しを鋭意行っておりますし、その一部はすでに五十一年度の予算においてわれわれが行って、御審議をいただくべく用意いたしておるところでございます。  それから、発行いたしました公債につきましては、厳重に市中消化の原則を堅持していきたい。言いかえれば、市中消化ができないような公債は発行すべきでないということで、シ団その他の意向も十分聴取いたしまして発行額を決めたわけでございますので、万々この公債の発行によりまして御心配のような事態が起こることはないものと私どもは考えております。
  37. 赤松勇

    赤松委員 あなたはいま、経済と国債、その関係で十分市中消化ができる、心配ないのだ、こうおっしゃった。国民総生産ないしは財政規模との対比で、それではどの程度なら容認できますか。市中消化が完全にできる、あるいはこの赤字国債に依存すべきではない、それ以上依存したら非常に危険だ、それをどの程度と思いますか。
  38. 大平正芳

    大平国務大臣 一般的にどの程度の公債が許されるという財政原則はないと思います。そのときの経済の状況に応じまして、公債を発行いたしましても抵抗なく市中消化ができるという限度は、経済の状況によって違ってくると思うのでございますので、一概に、何%であればよく、何%を超えることは危険であるという判断はいたすべきでないと考えております。
  39. 赤松勇

    赤松委員 あなたは原則がないとおっしゃったけれども、原則はある。その原則は、建設公債の枠内、市中消化が完全にできる、これが原則じゃないですか。これが原則でしょう。この原則がなかったら、どんどん発行はふえていく一方じゃありませんか。これが原則なんです。この原則の上に立って、本来赤字国債は発行すべきではないけれども、歳入の落ち込みからやむを得ず発行しました、これを将来はだんだん減らしていきます、こう言うのが本当なんです。こう言うのが本当の答弁でしょう。私が大蔵大臣ならそう答弁しますよ。どうですか。  そこで、あなたは、消化できない場合には国債を発行しないということをいま言う言った。そうおっしゃったでしょう。完全に消化の自信があるんですね。——それでは聞きますが、五十一年度の国債、地方債、政府保証債などを合わせますと十八兆円、うち政府資金分を除いて市中消化を要する金額は十兆六千億円なんです。これは全国の金融機関の流動性、定期性預貯金の増加額、これは四十八年度ですけれども、十一兆五千億円、それから四十九年度が九兆八千億円、これにほぼ匹敵するほどの膨大な金額でしょう。したがって、日銀から信用供与を伴わなければとても市中消化は困難である、こういうふうに思うのです。すでにもう各地方においては、地方のそれぞれの公債を地方の銀行が引き受けられないということは、この間の日経にも報道されておったでしょう。そうして日銀の方に何とか公債を消化するための信用供与、これを要請しようということはすでにもう地方から起きてきている。つまり、先ほど指摘をしましたように、預貯金のそれと匹敵するぐらいの状態で、これは銀行としても全部国債に切りかえるわけにいかぬ。そうでしょう。これは預金者に対して払わなければならぬし、あるいは貸出資金も置かなければならない、全部国債に回すというわけにいかない。ところが、消化ができないということになれば、すでに預貯金のそれの限界に達しておるとすれば、日本銀行に対して手形なりその他の方法で、ひとつお金を貸してくれ、信用を供与してくれ、こう日本銀行にすがらざるを得ない。そうしたら日本銀行が、ああそうですかと言ってまた輪転機を回して札をどんどんつくる、これを製造していく、そして市中銀行に回すわけです。これがインフレにならぬと言えますか。重要なインフレの要因じゃありませんか。日銀の信用供与というものは、国債を消化できない、だから日本銀行に札を刷ってくれ、これは札をつくっていけばインフレになりますよ。いまでもインフレ。インフレをよけい激化させます。  そこで、政府はこの市中消化が完全にできない場合、一体どうする、その対策はどうだ。あなたは完全にできる、こう言う。できなかった場合、最悪の場合を予想しておかなくちゃいかぬ。完全に消化できなかった場合はどうするのですか。
  40. 大平正芳

    大平国務大臣 最初の御質問で、赤松さんの言われる財政法上の原則は仰せのとおりでございまして、ただいま日本の財政法におきましては、建設公債の発行しか許されていないことは仰せのとおりでございます。そしてまた、それの市中消化が公債管理の原則であることも仰せのとおりでございます。したがって、特例公債を出すということは異例の措置でございますので、特別な立法の御審議をお願いいたしておりますことは御指摘のとおりでございます。  それから第二のお尋ねでございますが、公債の消化の問題でございます。  ことしの七兆二千七百五十億円、これは一兆円は資金運用部資金で消化をする予定でございまして、残余の六兆二千七百五十億を市中消化でお願いすることにいたしておるわけでございます。今日、資金の蓄積、貯蓄の状況は大変順調でございます。しかるに、産業資金の需要は必ずしも強くない状況でございますばかりでなく、五十一年度の政府と民間との資金の出し入れ関係を考えてみますと、相当程度政府からの散布超過が予想されておるわけでございます。  すでに御案内のように、去年の暮れからことしの春にかけて、今度下半期、相当程度、月々に五、六千億円の公債の発行をお願いいたしておるわけでございます。この太さはほぼ来年度の太さに相当するだけの消化を現にお願いいたしておるわけでございますが、その消化状況は、ただいままでのところ順調にいっておるわけでございます。したがって、私どもマクロ的に見まして、この公債の消化に支障があるものとはただいまのところ考えておりませんが、しかし、御指摘のように、地方によりまして、あるいは金融機関によりまして、資金の需要が殺到いたしまして、資金の供給に支障を来すという面が皆無であるとは言えないわけでございますので、そういう点につきましては、私ども十分周到な配慮をしていかなければならぬと心得ておりますけれども、全体といたしまして、公債の消化につきまして、地方債も含めまして、私ども、シ団等との間に十分な連絡、協調を図りながら周到に事を運んでまいりますならば、消化に支障はないものと判断いたしております。しかし、万一消化ができないという事態になればどうするかという御指摘でございますが、ただいまそういう事態は予想いたしておりません。
  41. 赤松勇

    赤松委員 予想してないというのは無責任なんです。この点は、私の後に阿部助哉委員がさらに追及しますので、大変私、不満でありますけれども、次に進みたいと思います。  さて、今日の不況の原因というのは何ですか。不況の主因、それは個人消費の伸び悩みであることは明らかでしょう。現に政府の月例経済報告も、本年一月ですよ、最終需要は依然として盛り上がりに乏しいとして、これを裏づけています。昨年の相次ぐ金利の引き下げによる金融緩和策、また一次から四次に至るまでの不況対策をもってしても景気がよくならないのは、肝心の個人の購買力を高める政策がなおざりにされているからであります。逆に、七五年の春闘では賃金を抑えて、そして労働者を中心とする大衆の所得増加を抑えてまいりました。それで、勤労大衆に依存している中小企業。勤労大衆の購買力に依存しておる、つまり勤労大衆が買ってくれなければ中小企業はやっていけない。勤労大衆は中小企業にとってはお得意さんだ。そこで、そういう消費の需要というものがだんだん落ち込んだ。アメリカのフォード政権は、赤字財政の中で七兆五千億円の大減税をやっている。そして、消費需要を拡大して景気の回復を図った。ところが、日本三木内閣は一銭も——大企業には先ほど言ったように減税はしたが、一般には減税してない。  ここでお伺いしたいのは、この際、不況対策の上から言っても、相当程度の賃上げをすべきではないかというように思うのですが、この点はいかがですか。これは、三木さん。
  42. 三木武夫

    三木内閣総理大臣 景気刺激という面から、いろいろ個人消費というものをもう少し高めなければいかぬ、そういう意味から賃金を思い切って上げるべきだというお話でございましたが、私は、やはり賃金は生産性の上昇に伴ってしないと、それを無視して景気刺激のために賃金のベースアップをするというような方法をとれば、これはもう日本がまた再び、あれだけ日本が苦心をしたインフレを抑制するという政策に逆行すると思いますので、景気刺激のためにベースアップをするというような考え方は、政府はやはりとるべきではないんじゃないか。むろん賃金は労使の相互の話し合いによって決めることで、政府は介入はいたしませんが、政府としては、生産性に見合ったべースアップであることが健全な姿であると、こう考えるわけです。
  43. 赤松勇

    赤松委員 日本経済の行き詰まりは、私どもの立場から言えば、現代資本主義の体制的な矛盾が累積をした結果であるというように判断いたします。これは三木さんとは少し意見が違うと思うのですけれども、要するに、生産設備を拡大して生産力をずっと高めてきた、それが消費需要と衝突をして、そして生産過剰になってきたというように私ども判断をしているのですが、そのことは別にしましょう。したがって、一時的な公債を発行したりそういうようなつけ焼き刃ではなかなかこの状態を脱することはできないと私は思う。  そこで、基本的には、国民の資産所得の再分配、生産と消費の計画化、産業、就業構造の改造、独占禁止法の改正による経済の民主的な規制、こういうものをやらなければ私は本当に経済の立て直しは困難だと思います。あなたに答弁を求めているとだんだん時間が——もうすでに一時間半これで費やしましたが、あなたはいま生産性ということを言われた。  そこで、日本生産性本部の春闘セミナーが、十九日、東京千代田区の赤坂プリンスホテルで開かれました。この席上、賃金問題の専門家である金子美雄日本賃金研究センター所長が、これは公労委の公益委員ですが、彼はこう言っているのです。「景気回復のため、支払い能力に余裕のある企業は、賃金引き上げに努力すべきだ。ベースアップのガイドポストは、五十一年度の八・八%という消費者物価上昇率見通しが下限となるべきだ。景気回復を目指すためには、少なくとも一二%の賃上げが必要」だということを述べている。私は金子さんの意見に必ずしも賛成ではありませんよ。ということは、私は後で数字を出しますけれども、春闘は二〇%、これも本当は五年間の落ち込みを補うには三五%必要なんですが、しかしそれを要求するのは無理でしょう。しかし、私は少なくとも二〇%が妥当だと思っていますけれども、この生産性本部の金子さんでさえ一二%の賃上げが必要だ、そうでなければ、ことしはこの不況にさらに輪をかけるということを述べているわけです。国民経済から見て最優先の政策課題であるとの前提に立って、政府が見込む五十一年度の五・六%の実質経済成長率達成のためには、いま言ったように最低一二%の賃上げが必要だ。ところが、政府が昨年当初、五十年度の実質成長率を四・三%と見込んだけれども、そして一七%程度の賃上げを予想しておったけれども、物価抑制への配慮から総需要抑制政策を長引かせ、日本版所得政策によって賃上げを一三・一%に抑え込んだ。その結果、個人消費は伸びず、景気回復がおくれたことについて、この金子さんは、これは三木内閣政策上の大きなミスである、こう指摘している。さらに金子氏は、日経連が今春闘で再びゼロを含む一けたという賃上げ抑制のガイドポストを設けることに対して非常な批判をしている。したがって、今日の不況を打開するためにはどうしても消費需要を拡大しなければならぬ、個人消費を上げていかなければならぬ。だとすれば、春闘に対するところのゼロもしくは一けたというような日経連あるいは経団連あたりの考え方は、私は不況打開の上から言ってもまことに不当な見解であるというように思うのであります。  ある新聞の社説はこういうことを書いている。国民経済のマクロ的な視野から見た場合も、過度の賃金抑制は個人消費の低迷をもたらし、景気の回復にブレーキをかける懸念が大きい。昨年春闘での賃金の引き上げ実績一三・一%は、五月、六月段階の実質賃金の上昇率をマイナスに転化させ、さらに昨年後半の経済成長をおくらした。政府が本年度の実質成長率を、当初見通しの四・三%から後になって二・二%に下方修正する事態となったのもこのようないきさつと無関係ではない。ことしの賃上げは一〇%を攻防の基準と見ている人が多いけれども、この一〇%以内の賃上げ率の正否は別として、再び昨年の轍を踏まない配慮が望ましい、こう言っている。  私はこの際聞きたいのは、昨年十二月経済審議会が決めた昭和五十年代前期経済計画は、最終年度の五十六年三月末の消費者物価上昇率をさらに六%以下にする目標を立てています。これは私はできないと思うのですが、立てている。政府がいまやろうとしている新価格体系への移行のための価格調整という形で、またぞろ物価上昇の圧力がいま高まっている。石油製品や鋼材、私鉄運賃など民間部門の値上げは、さらに自動車、電力料金、ガスと波及する勢いだし、公共料金でも国鉄運賃、電報電話料金、授業料値上げなどメジロ押し。こういう機運に、物価より景気回復に重点を置いた五十一年度予算が拍車をかけ、再び物価上昇のインフレーションに悩まされるのではないだろうか、こういうように私ども考えております。  それで政府の方は、いま市中消化はうまくいくということを大平さんが言ったが、その問題はともかくとして、五十一年度の公共料金及び社会保険料その他の引き上げによって、国民の負担がどれだけふえるか。酒が千四百億円、たばこが四千億円、国鉄運賃が五千三百億円、電話電報料金が五千二百五十五億円、国立大学授業料が五十五億、NHKの受信料が七百二十億、郵便が三千三十七億、国民年金七百八十億、政府管掌保険三百四十億、厚生年金五千四百二十七億、これで二兆六千三百十四億円になります。そのほか住民税の均等割りが今度上がる。これが三百九十億円、所得税の減税調整が二千四百億円、これで二兆九千百四億円になる。それから自動車の関係の税が今度引き上がる。これは当初予算でありますけれども、当初の予算は千七百四十億円、これで三兆八百四十四億円。そのほかに医療費の値上がり、それから塩、私鉄、バス、水道、電気、ガス、家賃、消費者米価、こういうものが相続いて上がってまいりますと、果たしてこれで国民が負担に耐え得るかどうか。国民生活がいよいよ圧迫されて苦しくなると思うのでありますけれども、その点については政府はどう考えていますか。
  44. 三木武夫

    三木内閣総理大臣 そういう公共料金の値上がりというものは大体二%程度の消費者物価の上昇を伴うというふうに織り込んで、消費者物価を今年は八%程度に抑えたい、そういう計算の中には、そういう公共料金値上げ等も算入済みでございます。
  45. 赤松勇

    赤松委員 これだけのものが、三兆円の値上げが行われて、それで二%の負担増だというのはまさにナンセンス。この問題はさらに同僚の議員諸君が後からやりますから、私は次に進みます。  そこで、昨年夏の財政制度審議会の中間報告は、五十年度の税収の落ち込みが三兆円ならば、五十五年度の歳入不足は十二兆円にもなるという。三井銀行が最近まとめた試算でも、五年後の国債発行額は十兆円、それから発行残高は国民総生産の一五・八%にも上るという、こういう見通しをとっております。  私はここで、もう時間がありませんから一々答弁は求めません。五十一年度の予算の公共事業費は、五十年度当初予算より六千百七十七億円ふえて、総額三兆五千二百七十二億円にふくらみました。伸び率が二一・二%。新たに設けられた公共事業費、つまり公共事業等予備費の千五百億円を加えると、公共事業費の実質伸び率は二六・四%になります。  ここで私は指摘しておきたいのは、国が公共事業費の支出をふやせば、公共事業の仕組みから見て、全国の地方自治体もほぼ同額の公共事業関係費を支出することになると思うのです。五十一年度の場合、公共事業費は国と地方合わせて約七兆円弱だが、波及効果が大きいから実際の需要創出効果は、支出金額の約二倍になるだろう、こういうふうに政府は言っておる。したがって、これで景気は上向くんだというように言っています。つまり公共事業費ですね、道路を中心とする公共事業費でもって景気は上向いていくんだ、こう言っている。ところが、先ほども指摘したように、地方自治体は軒並み赤字です。国が公共事業費を拡大してもこれについていけません。政府は公共事業の早期執行を目指して、自治体に対し公共事業関係予算の計上時期を早めるように呼びかけている。しかし公共事業返上の地方自治体がぼつぼつ出てくる状況なんです。  それに公共事業費の中身が問題なんです。災害復旧事業を除いた一般公共事業費を構成比の高い順に並べると、道路整備費、これが三一・一%。治山治水費一五・四二%。農業基盤整備費一二・三九%。生活環境施設一〇・五三%。住宅対策費一〇・二九%。道路整備費が三分の一以上を占めている。そこで政府の方は、特に三木さんは、この本年度予算には住宅の建設に重点を置いていますということを盛んに言っています。私どもは住宅建設に財政投資をすることにはもちろん賛成でありまして、これを大量にやりなさいということが社会党の従来までの主張でした。道路の整備よりもむしろ住宅に力を入れなさい。ところが、あなたは住宅に力を入れたと言うけれども、建設戸数は五十四万五千戸。前年度当初に比べて二万四千戸増にすぎぬ。前年度補正予算に比べれば四万七千戸減っている。建設白書によると、四十八年度現在住宅難世帯は八・五%、住宅困窮世帯が三五%ある、こう言っている。公営住宅の五三%が住宅困窮世帯。そこで、今回決まった第三次住宅建設五カ年計画でも、建設省計画は五十一年度から五年まで八百六十万戸。うち公的資金による住宅建設要求として三百八十四万戸。これが三百五十万戸に削られています。三百八十四万戸の要求に対して三百五十万戸に削られている。五十年度で終わる第二次住宅建設計画は、目標が九百五十七万六千戸、実績見込みが八六・三%、こういうことになっています。そこで建設省の幹部によると、それが進まないのは地方自治体の財政難だ、あるいは地価の高騰による土地取得難だ、不況による民間住宅の伸び悩みなんだ、こういうふうに言っている。自己資金で建てるマイホームが近時だんだん減ってきておることを私はここで統計を持っていますけれども、まあそれはさておきましょう。そういたしますと、政府が住宅に重点を置いてそうして公共事業費を使っていけば、それが中小企業その他にも波及して景気回復になるんだ、こういうことを言っているけれども、実際のこの計画は、先ほど言ったような理由、地方財政の財政難あるいは土地の取得難、いろいろな理由から、あるいは大衆所得が減っていくというような理由から、政府の計画どおりにはいかないというように私は思っています。  地方財政の問題ですけれども、地方税収は前年度の八兆八千八百億円を下回って、地方交付税交付金は前年度の四兆四千億円から五兆一千八百億円にふえたけれども、そのうち一兆三千億円が資金運用部からの借り入れなんです。しかも、一方で地方債は四兆八千億の発行が予定されている。そのうち三兆四千億近くは民間資金によるものであるが、財政力の弱い地方自治体が地方債を増発しようとすれば金利を高くせなければならぬ。そうでなければなかなか銀行は貸してくれない。すでに各都市では自治体と市中銀行との間にトラブルが起きている。これらの弱小地方自治体に対してどのようなめんどうを政府は一体見ていこうとしているのか。これは預金の増加で賄っていくのか。すでに先ほど申し上げたように、地方銀行の資金繰りが苦しくなって、そうして地方財政は悪化する。そこで地方銀行六十三行は公共債、これは国債、地方債を含んでの公共債ですが、その引受額は前年度の一・五倍、一兆七千八百億円に達している。ところが、預金増加の見込み額が半分しかない。秋口から企業、個人向けの貸し出しがふえてくる。預金増加で賄えない。資金は不足する。そこで地方銀行は全体で三・五倍の一兆二千億円。地方銀行がこれに対処するために、今後日銀に対して縁故地方債を担保にぜひ格別な取り扱いをしてくれ、いわゆる債券オペレーションの対象に加えるように働きかけておる。こういうように地方財政がきわめて困難な中に、先ほど言ったように政府は資金運用部の資金を貸しただけなんだ。  社会党は、新しく三%交付税に上乗せをさして、さらに第二交付税、これを加えて四三%交付税を地方自治体に渡すようなそういう予算を今度組みました。これはやがて予算組み替え案中心にいろいろ議論されますけれども、われわれは地方自治体の窮乏を救うためにこういう予算をつくった。そこで、一体政府の方はこの地方自治体に対してどういう対策をお立てになるのか。果たして預金増加が思うようにいくのか。預金がだんだん減退している。地方財政は金利を高めなければ市中銀行から借りることができぬ、地方債を消化することはできぬ、そういう状況なんです。日銀のオペレーションにその援助を求めるということになっていけば、これまたインフレの要因になっていくじゃありませんか。地方財政に対してどのような対策をとろうとしているのか、この際政府に聞いておきたいと思います。
  46. 大平正芳

    大平国務大臣 仰せのように、中央と同様地方財政も、急激な経済の落ち込みを反映いたしまして、自己財源が著しく不足してまいるし、また所定の交付税交付金の中央からの交付も著しく減少するということになりまして、二兆六千億にも上る計画上の資金不足を招来することになったわけでございます。私ども、地方行財政がそのために渋滞をするということはこの際絶対避けなければならぬということで、この資金不足につきましては完全に手当てをいたしまして、地方財政が支障を来さないように処理することにいたしたわけでございます。一部は直接一般会計の負担において賄います。しかし交付税の落ち込みに相当する分につきましては、交付税特会に対しまして資金運用部が金を貸しまして、その利子を一般会計が持つという姿におきまして、交付税の落ち込みに対処いたしていくことにいたしまして、一兆二千五百億円に相当する地方債対策につきましても、二千億は元利について責任を持つ。さらに二千五百億円につきましては、利子について責任を持つ。自余につき辞しては、政府資金と地方資金との間の利差について責任を持つというそれぞれの措置を講じまして、その消化に万全を期することにいたしたわけでございますので、こういう状況下にございましても、政府としてはできる限りの措置を講じまして、地方行財政が渋滞を来すことのないように処置いたしたことは御案内のとおりでございます。  第二に、それでは地方債の消化が果たして可能かという御指摘でございます。ことしの地方債計画は、全体として約四兆八千億ばかりの地方債の発行が予定されておるわけでございます。私どもできるだけ政府資金をもってこれをお助けしなければならぬと存じまして、一兆四千億余り資金運用部でこれを持つことにいたしておりますけれども、銀行等に依存しなければならない縁故債の消化につきましても、自治大臣と御相談いたしまして、大蔵省におきましてもその消化に御協力を申し上げることにいたしておるわけでございます。先ほど御説明申し上げましたように、銀行における資金の蓄積はいま順調でございますし、銀行に対する産業資金の需要は必ずしも強くない状況でございますので、マクロ的に見まして、この地方債の消化ができないはずはないと私ども考えております。しかし、赤松さんも御指摘のように、地方によりましては支障を来す面がないとは限りませんので、その点についての手当てにつきましては重々周到に配慮していくつもりでございます。
  47. 赤松勇

    赤松委員 そこで私は昭和四十六年から五十年までの春闘による賃上げ、これを計算してみました。まず年収百万円、貯蓄額が二百万円というように仮に設定いたしまして計算いたしましたところ、名目賃金では百八万一千四百二十円、確かに上がっています。ところが物価上昇によるところのマイナスが七十一万二千四百円、したがって五年間で賃上げ分は三十六万九千円、これを一カ月に直しますと賃上げは一カ月六千百五十円です。さらに今度貯蓄額、これを計算してみますと、物価上昇によるところのマイナス、五年前二百万円の貯金が八十六万三百六十八円というようにマイナスを示しておる。まさに半分近い目減りをしておる。賃金は五年間で三十六万九千円しか上がっていない。  そこで私はさっきから政府に聞いておったのですが、政府の方はこの際賃上げ額は幾らが妥当か、ということを聞きたいのでありますけれども、恐らく政府はそれは労使の問題だと、こう言う。そこで私は、こういう状況を示しておりますから、ゼロもしくは一けた以内、こういうように日経連や経団連が言っておる。それならば日経連の桜田会長あるいは経団連の土光会長をここへ呼んでその理論的根拠を聞こうではありませんか。これは労使にとっては重大な問題です。いま言ったように大きな落ち込みがある。これは春闘が社会問題になる。これは大変です。したがって、私は委員長に、日経連の桜田会長、それから経団連の土光会長をここに参考人として呼んでもらうことを提案します。
  48. 荒舩清十郎

    荒舩委員長 理事会で検討いたします。
  49. 赤松勇

    赤松委員 どこでやる……。
  50. 荒舩清十郎

    荒舩委員長 理事会で検討します。
  51. 赤松勇

    赤松委員 そんなに大きな声出さなくても、わかる。
  52. 荒舩清十郎

    荒舩委員長 つんぼだと思ったから、君が。
  53. 赤松勇

    赤松委員 いつ理事会を開くの。(「つんぼだというのは何だ」「おかしいよ」と呼び、その他発言する者あり)
  54. 荒舩清十郎

    荒舩委員長 ちっともおかしくはありません。おかしくありません。(「不謹慎だよ」と呼ぶ者あり)下謹慎ではありません。だって、どこでやるかといったら理事会以外にないでしょう。  赤松君に申し上げます。ただいま私が言ったこと、不謹慎でございますれば、謹んで取り消します。
  55. 赤松勇

    赤松委員 理事会を即刻開いてひとつ検討していただきたい。——いつ開いていただけますか。
  56. 荒舩清十郎

    荒舩委員長 理事会の皆さんと諮ってください。どうぞ。私もお諮りいたしますから。
  57. 赤松勇

    赤松委員 それではお昼に理事会をおやりになるようでありますから、その理事会でぜひ御検討を願いたいと思います。
  58. 荒舩清十郎

    荒舩委員長 さよういたします。
  59. 赤松勇

    赤松委員 ということを申し上げまして、これで午後の質問に移りたいと思います。
  60. 荒舩清十郎

    荒舩委員長 午後一時より再開することとし、この際、暫時休憩いたします。     午前十一時五十九分休憩      ————◇—————     午後一時二分開議
  61. 荒舩清十郎

    荒舩委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続行いたします。赤松勇君。
  62. 赤松勇

    赤松委員 予算編成の際に問題になりましたいわゆる老人の医療の問題であります。さきに田中厚生大臣は、来年度も無料化をそのまま進めていくという発言をされておりますが、三木さんはどのようなお考えでありますか。来年から有料化するお考えでありますかどうか、お尋ねしたいと思います。
  63. 三木武夫

    三木内閣総理大臣 老人の医療の無料化というものは、老人の社会保障の面から相当大きな役割りを果たしておると思いますので、私は、来年からこれを有料化するというそういう結論を持っておるものではないわけです。ただしかし、いろんな議論があることは事実なんですね。だから実態調査をしてみて、何か改善あるいは改革を加える余地がないかどうかという点は実態調査をいたしますけれども、老人の医療無料化を来年度からやめてしまおうという結論をもって実態の調査をするものではございません。
  64. 赤松勇

    赤松委員 この老人医療の無料化の問題は、三木さんも御存じのように、各地の革新自治体がそれぞれ実行に移しまして、そして集中的に政府に要求して実現したものであります。ぜひ来年度も無料化が継続されますように御検討いただきたいと思います。  次にお尋ねしたいが、一昨年、たしか齋藤君が厚生大臣の当時だと思います。私は齋藤君に対しまして、戦争中に災害を受けた犠牲者に対して災害援護法をつくるように進言しまして、そして一応全国調査をやろうと、その最初のケースとして愛知県を調査するということで、県庁に命じまして、そして厚生省は調査しました。しかし、その調査の結果は、身体障害者手帳を所持する者、それだけを調査しただけであって、まだ本格的な調査はできておりません。  そこで、お尋ねをいたしますが、いま私どもの方は参議院に戦災犠牲者の救護法案を出そうということで準備をしております。この点について、簡単でありますから、それが提出されました際においては、政府においても努力をするということだけ答えていただければ結構です。
  65. 三木武夫

    三木内閣総理大臣 いまのそれを近く提出をされるということでございますから、提出をされましたならば十分に検討をいたします。
  66. 赤松勇

    赤松委員 次に、雇用問題についてお尋ねします。  御承知のように、昨年の十一月十二日に、社会党は総評、同盟、新産別、中立、労働四団体と合意をしまして、そして社会党案というものをつくりまして、野党協力を求めて、野党共同提案で提出をしました。すなわち、その内容は、解雇制限を伴うところの雇用及び失業対策緊急措置法。内容につきましては、三十人未満の事業所で五人以上の労働者を解雇しようとする場合、三百人以上の事業所では五十人以上の労働者を解雇する場合には、中央、地方の雇用調整委員会に届け出なければならない。なお、これに伴いまして、雇用保険法に基づく失業保険給付の改善、三百日を四百八十日にするなどを含めて、また出かせぎ労働者に対する同様の保険給付の改善、これを付して法律案として提出しました。実はまだ一回も自民党の諸君がこれに対する討議をしておってくれませんが、これはもう緊急に成立をさせなければならぬ重要な法案であると思うのであります。社会党対案として、労働四団体の合意を求めて、そしてこの法案野党共同提案で出しています。これについては、成立にぜひ格段の努力をしていただきたい。総理、いかがでございますか。
  67. 三木武夫

    三木内閣総理大臣 いろいろ議論はあると思いますが、この問題についても当然に、野党各党の共同提案としてお出しになったわけですから、これは検討を加えることにやぶさかではございません。
  68. 赤松勇

    赤松委員 総理の御答弁がきわめて簡潔になっていることを大変うれしく思います。私の質問時間はあと五十分しかありません。その中で外交問題もやらなくてはならないので時間がありませんので、ぜひいまのような御答弁を続けていただきたいと思います。  まず、中小企業の問題でありますけれども、これは後ほど田中武夫委員が改めて詳細に質問をいたしますが、私は代表的にごく問題点だけを指摘して御答弁をいただきたい、こういうふうに思うのです。  まず第一にお尋ねしたいのは、御承知のように、中小企業の分野を確保する法律、これは社会党昭和四十年に国会提出しまして、そして翌四十一年、幸い政府法案を出してまいりまして、成立をいたしました。ところが、なお実効を上げるに不十分な点がありまして、これは格段にこの法律の具体的な運用について努力をお願いしたい、こう思うのです。  なお、官公庁が発注する中小企業向けの品物も漸次ふえつつあることは大変いいと思います。思い切ってこの際、中小企業が生産、販売するもの、これを具体的に整理して、これは中小企業から必ず購入するというもの、大企業でなければ生産できないものもありますけれども、中小企業の分野で販売納入できるというものについては、ぜひほとんど中小企業に発注するというような対策をお願いしたいと思うのです。いかがですか。
  69. 三木武夫

    三木内閣総理大臣 大企業、中小企業の事業分野というものを立法化して、それを法律的に規制せよというお考えでございますが、これは自民党政府としては行政指導でやることが実際的ではないか、これを法律で固定的にそういう問題を決めてしまうよりも実際的だというので、立法化は考えておりませんが、これは現行法と強力な行政指導によって行いたいということでございます。  また、この官公需については、私が通産大臣のときにあの法律は提案をしたわけで、いま三二%ぐらいですか、これを五〇%ぐらいまでには持っていきたいというのがその立法したときの精神でございます。今後とも御指摘のように、中小企業が官公需に対して五〇%を目標にその占有率を高めてまいる所存でございます。
  70. 赤松勇

    赤松委員 きわめて効率的な答弁をいただきまして、私の質問も余り時間を要しないようでありますが、さらにこの大規模小売店の進出規制についてはいかがでございますか。これにつきましては、スーパーの進出によりまして、かなり各地において中小企業が圧迫を受けている。これを具体的に申しまして許可制にして、そしていまは売り場の面積で規制しているわけです。それではとても防ぎ切れませんので、資本金によって規制していく。資本金によって規制し、かつ先ほど申し上げたように許可制にする。これをぜひ御検討願いたいと思うのです。いかがですか。
  71. 三木武夫

    三木内閣総理大臣 スーパーというものがもたらしておる非常な地域住民に便宜を与えておる面もあって、一概に全部いけぬとは言えないと思いますが、このことが既成の小規模経営の人たちを不当に圧迫をするということは、これはやはり考えなければなりませんので、赤松君の御提案はわれわれとしても検討をいたします。
  72. 赤松勇

    赤松委員 この際、付加価値税について質問をいたします。  付加価値税は、原料品生産者の段階で、代金側に一万円というものが一割の一千円税金がつくわけです。それから半製品製造業者の段階で、これが原料品生産者から送られたものが二万円の代金になるとして、やはり二千円の付加価値税がつく、税金がつく。それからまた、この完製品生産者、この段階で品物が四万円になれば四千円の税金がつく。卸売の段階で六万円になれば六千円つく。小売の段階で八万円になれば八千円つく。最終的には八万八千円。八万円の価格に対して八千円税金をつけて八万八千円で消費者に渡るわけです。そうすると、消費者は八千円新しく高いものを買わなければならぬということになるわけであります。  しかも、この法律の問題点は、中小企業の場合、たとえば夫婦共かせぎで商売をしておるという場合におきましては、帳簿の記入が義務づけられております。とてもとても二人の共かせぎで帳簿に記入するというようなことはできないわけです。仮に規模がもっと大きくても非常に困難であると思います。それから現金の収支に関係なく収益費用の発生を基準にして行われますから、納税は翌月または二、三カ月後ごとに行われます。そのたびに現金を用意しなければならぬということもある。それから、いま言ったように、帳簿に記帳することが非常にめんどうなんです。そういう場合に、記入しない場合には大体推定課税でくる。推定課税がいかに過酷なものであるかということは、中小企業の皆さん、一番よく知っておる。しかも、推定課税でまいりまして、そして、場合によれば帳簿の検査、立入検査、そういうことも行われる。日本の税務署の慣習として、ほとんど推定課税できているし、それから、事実上の立入調査などもやっておるわけです。  こういうことがどんどん行われますと、中小企業にとりましては大きな混乱が起きると思うのですね。でありますから、私は、もしもこの法律案が国会に出た場合に、社会党は命運をかけてこの法律を阻止するために闘うことを、ここで改めて明らかにしておきたいと思うのです。  まさか日本の中小企業の実情を無視してそんな乱暴なことを、三木さんおやりになるとは思いませんが、すでに、来年この法律を提出する用意が大蔵省あたりでは整えられておるということを聞いています。この点については、中小企業などの意見を十分聞いて、そしてむしろこういうものを出さない方向で他に税の財源を求めるというようにしていただきませんと、これは中小企業の中にも自民党の支持者は圧倒的に多いのですよ。それを敵に回して自民党成り立ちますか。私は、自民党のためにもこういう悪法を出すべきではない。社会党はこういう法律が出てさましたら、先ほど申し上げましたように、全党挙げて、すべての戦術を駆使してこれを阻止する。これは命運を賭してやりますから、三木さんひとつ御答弁をお願いします。
  73. 三木武夫

    三木内閣総理大臣 日本の財政面において、歳出の面においてはできるだけ節減、合理化を図らなければなりませんが、どうしても歳入面というものに対して国民の負担というものについてはここで検討をすべき段階に来ておる。その場合に、直接税というものもある水準には達しておるのですが、なおかつ今後の税収入を直接税に依存した方がいいのか、あるいはもう一部はやっぱり間接税に依存するような方向に日本の税体系を持っていくかということは大問題でございます。そして、やはり直接税はよくて間接税は悪いという考え方も、これは必ずしも——一般的にごらんになりましても、欧州諸国などはやっぱり間接税がむしろ税の中心になりつつあるということですから、今後はやはり研究をすべき課題でありまして、付加価値税は赤松君の御指摘のように弊害の面も確かにあるわけですから、政府は、付加価値税をいますぐに実施しようという、そういう結論に達して申し上げておるのではないのであって、これはやはり税制調査会などにおいて真剣に検討を願わなければならぬ問題で、付加価値税というそういう新しい税を新設しようという結論に政府が達したという、そんな段階ではないわけです。まだ、日本の税体系全体の中でいろいろ直接税と間接税の関係、かなり今後歳入を間接税に求めていくということになったらどういう税が適当であるかということは、まさにこれから研究の題目でございます。
  74. 赤松勇

    赤松委員 すでに大蔵省においてその原案ができているという話です。それから税調に出すと言うけれども、税制調査会に出すときはもう政府はこれを実施するということが前提なんですから、ぜひこれを取りやめていただきたいというように思います。  次に、私は婦人問題について一言しておきます。わが国の妊娠に起因する病気、流産、異常出産は非常に多い。妊娠中毒症はフランスの九倍、イギリスの七・三倍にも及んでいます。妊産婦死亡率は、先進資本主義国ではわが国は一位に及ぶ恐るべき現状です。まずそれを申し上げますと、妊産婦の死亡率が十万人に対して日本では四十五人、それからフランスは二十二人、イギリスは十七人、それからアメリカが二十二人というように出ています。  さらに、妊産婦の死亡率が多いばかりでなしに、さきに、これは自民党の賛成も得まして、野党各派の賛成も得まして、社会党が十年間、日本教職員組合と共同していままで提案してまいりました育児休暇ですね、育児休業法が、幸い昨年の国会において自民党の諸君の同意を得まして成立しました。大変ありがたいことだと思います。そこで、この育児休業法はできたけれども、その範囲が保母、教員、そして看護婦、これに限られています。したがって、その範囲の拡大と、同時に休業中の賃金の保障といいますか、全額ということは困難でありましょうけれども、ぜひこれをひとつ御検討願いたい、こう思います。これはいかがでございましょうか。
  75. 三木武夫

    三木内閣総理大臣 育児の休業に関する法案は、御指摘のように教員とか看護婦の人とか、特殊な人に限っておるわけですが、これを一般に拡大するということにつきましては、これはいろいろな問題がございますので、政府としても研究はいたしますけれども、ここで結論めいたお答え赤松君の御質問お答えすることはできませんが、研究はいたします。
  76. 赤松勇

    赤松委員 私はヨーロッパ各国の資料を持っておるわけです。おおむね五〇%ぐらいの給付をしています。  それからいま一つの問題。仮に育児休業法ができましても、今日の主婦の皆さんは保育所が足りないということで大変悩んでいます。保育所入所を希望する子供が二百四十三万人おります。八十三万人が入所できない状態である。ただいま認可保育所が公立で九千六百八十九カ所、私立で五千九百二十カ所、こういうようにあるのでありますけれども、さらにこれをふやしていくということは社会保障の上から、特に婦人の立場から言って非常に重要な問題であると思うのです。特に自営業の主婦の子供はなかなか入りにくいようになっておりますけれども、たとえば夫婦共かせぎの自営業があるとする。そうすると、彼女たちは子供をおんぶしたりあるいは四畳半ぐらいなところに子供を遊ばせて外へ出させない。そして夫婦で共かせぎをやっておるというような状態で、自営業の主婦たちは大変悩んでおるわけです。こういう点もひとつ勘案されまして、ぜひ自営業の主婦の子供も託児所に収容できる、そうして大規模な託児所をつくるために、ひとつ三木内閣は全力をこれに投入するというようにしていただきたいと思いますけれども、三木さんのお考えはいかがですか。
  77. 三木武夫

    三木内閣総理大臣 これは政府ばかりの問題でもございませんし、いろんな民間の事業主などの関係もございますので、そういう問題についてはできるだけ民間に協力をしてもらうような努力はいたしますけれども、やはり特殊な職業に限っておるわけですが、これを一般にということになりますと影響するところも多いわけで、できるだけそういうことに対して事業主の協力も得るように努力をいたすということでございます。
  78. 赤松勇

    赤松委員 これはおおむね自治体に任してあるようでありますけれども、この際日本の、大切な私どもの宝である子供を保育し、さらにそれから教育していくという観点からも、いまの三木さんのように民間に任していくというような考え方は、明らかに誤りであります。この点、一言でいいですから田中厚生大臣に、余り長くなると、後に外交問題をやらなくてはならぬので……。
  79. 田中正巳

    田中国務大臣 今後、社会福祉施設整備費の場合には、保育所と特別養護老人ホームを増設するはずでございます。それから、いまおっしゃるような中小企業のような場合において、自家営業によるところの結果、保育に欠ける者については、これを措置することについて厚生省の方針は定まっておりますので、そういう方針をさらに都道府県に督励をいたします。
  80. 赤松勇

    赤松委員 ぜひ田中厚生大臣、政治力を発揮して、そのようにしていただきたいと思います。  ただ問題点は、この際保母の増員、同時に保母が大変低賃金で保母のなり手がないという状態でありますから、給与の改善を行い、そして重労働によるところの職業病が大変多発しておりますので、そういうことのないようにひとつ十分な保護をしていただきたい、また自治体の超過負担の解消についても努力していただきたいということを申し上げて、私は次に外交問題に移りたいと思います。  私は、実は外交問題の前に、時間があればスト権について質問をしたかったのです。これは多賀谷真稔委員が後からやりますけれども、私は、ストライキ権というものが国際的に見てすでに百年前に労働者の基本権として与えられておること、そしてその与えられた経過についても申し上げ、また、憲法ができますときには金森憲法担当大臣が特にこの点に言及しまして、労働者の基本的な人権である、奪うことのできない、侵すことのできない基本的人権であるということを国会答弁しておりまして、すでに記録にそれが載っております。また、公労法ができますときには、当時私がGHQと折衝しまして、いろんな経過がありまして、これは便宜的な一時的な措置である、はっきり言えば対共産党対策である、したがって永久にスト権を奪っていくというものではないということを、当時のGHQのフーバー公務員課長が私に語っておりました。その後、公労法ができたことについて、私は衆議院の労働委員長当時、多数の学者、参考人を呼びまして、意見を聞きました。その記録もあるのであります。こういう原則的な立場から実は質問を展開したかったのでありますけれども、すでに時間もありません。多賀谷委員から、また詳しくその点を述べると思うのであります。  まず第一に私は三木さんに、外交問題についてお尋ねをしたいと思うのであります。  三木内閣成立以来すでに一年有余を経たが、特に外交面では、日中、日ソ、朝鮮問題など、いずれをとってみても、その無為無策ぶりは田中内閣よりもひどい。三木総理は昨年十一月、ランブイエでの先進国首脳会議に出席できたことを成果だと口にしておるけれども、もし三木総理の言われるように、アジアの代表として出席したというならば、当然二月下旬開催されるASEANの首脳会議に招かれてもしかるべきだと思うのであります。招待を受けた場合、国会審議中にもかかわらず出席するのかどうか。すでにもうどうも出席できない状況のようでありますが、これはいかがでございますか。
  81. 三木武夫

    三木内閣総理大臣 ASEAN諸国は東南アジアで重要な地域でありますから、できるだけ協力を強化していきたいと思っておりますので、招待がございますればそのときに考えるので、まだ招待は来てないのですから、何もこの問題に触れて私がコメントいたすことは差し控えさせていただきます。
  82. 赤松勇

    赤松委員 永久とは言いませんが、恐らく来ないでしょう。それはなぜかと言えば、三木内閣をアジアの一員と考えていないからであると思います。  そこで、今度は開発途上国との経済協力の問題について御質問をしたい。  三木総理は、昨年の臨時国会の開会中、異常な熱意を持ってフランスのランブイエ首脳会議に出席、特に開発途上国との関係改善の問題を提案しようとしました。しかし、大蔵省その他の反対に会って、何らの具体的な提案すらすることができずに、成果が上げられなかったわけです。総理は、開発途上国、第三世界の諸国との関係改善について基本的な原則は何だと認識されておりますか。その答弁を求めますと長くなりますから答弁は要しません。私は次に原則を申し上げます。  その大きな原則は、平和五原則、すなわち主権尊重、領土不可侵、自主独立、平和共存、平等互恵の基本に立った、相手国の自主、経済自立を目指し、そしてそれが平和と民主主義の展望に合致し、徹底していなければならないと思うのであります。これらの基本を通じて何よりも途上国に信頼を得ていなければ問題にはならないと思います。特に日本の場合は、戦前はヨーロッパの先進国の植民地主義、帝国主義をまね、アジア民族を侵略してきた歴史があり、戦後はしゃにむに高度成長でのエコノミックアニマルの姿がある。こうした歴史的事実の中で開発途上国から完全に信頼を得て経済協力を進めるには、まず日本政府態度を大きく改めることが大前提であると思うのであります。  かつて一九七三年の暮れに、石油危機のとき、当時の田中内閣が突如として中東政策を変更する政府声明を出して世界を驚かし、三木さんが特使となって中東諸国を大急ぎで歴訪したことがありました。しかし、アメリカからこの日本態度をさんざんしかられると、その翌年、新年早々に今度は同じ三木さんがアメリカに飛んで、頭を下げながら申しわけに歩いた事実があります。この態度を中東諸国が見て、一体日本政府は何をしているのだ、日本政府は中東政策を変更しながら何ゆえアメリカに謝りに行かなければならないのかという強い批判をしたことは御承知のとおりであります。こういう態度では第三世界の国々から信頼を受けることはとうていできないと思うのであります。  開発途上国の要求は、戦後南北問題と言われてきたように、先進資本主義諸国と開発途上国との間の矛盾、対立としてあらわれ、それが国連の国連貿易開発会議となって開発途上国の要求が示されているのであります。第一次産品の問題、諸国は途上諸国にGNP、国民総生産の一%を経済協力として援助せよという問題が最初からの要求でありました。日本政府は、かつて愛知外務大臣時代から、公式にしばしば一%の協力を約束してまいりました。しかし、一度もこの約束を実行したことがない。この点は三木内閣の公約と一緒であると思うのでありますけれども、外務省の報告でも、最高はわずか〇・七%にしか達していないというのであります。このような態度を続けていては、ランブイエ首脳会議に出席するからといって急に開発途上国問題を取り上げたところで、信頼を失っただけで何も得るものはないのであります。木村前外相は自民党の歴代外相として評価が非常に高いけれども、彼は昨年、国連の貿易開発会議に臨んで、日本態度は恥ずかしいと率直にこれを述べています。三木さんも外相経験者としてこの点どうお考えになりますか。時間がありませんから簡単にお願いします。
  83. 三木武夫

    三木内閣総理大臣 赤松君の御質問を聞いておって、社会党野党第一党ですか、陰の内閣とも称すべき社会党が何で日本の国際的地位をそんなに軽く見るのでしょうか、私はわからない。たとえばアジア諸国が日本をアジアの一員と思ってないと言う。これはもう、アジアでやはり日本というものは非常に頼りにするパートナーであると皆感じています。  また、中東問題についても、一九六七年、国連決議二四二号というのは、私が外務大臣のとき安保理事会の非常任国メンバーとしてあれは決めた。そのことが今日の中東和平のもう基礎になっているのですよ。日本は安保理事会のメンバーとして決めたわけです。いささかも中東政策というものは変更したものではない。石油の危機があって急に日本態度を決めたものではない。二四二号というものが今日も中東和平の基礎であって、また私がアメリカに行ったことがアメリカに謝りに行ったという。アメリカに対して謝る必要は何もないわけです。日本日本の国益を踏まえて自主的な外交をやっておるので、時にアメリカとの間に意見の違うこともあります。ただしかし、日米間に完全な相互理解は得ておきたい、こういうことを考えることは当然ですよ。アメリカというものは、日本の外交の中で、安全保障からも、貿易経済の上からも、政治理念の上からも、やはり非常な大きな日本のパートナーでありますから、日本のやる政策に対して理解を得ておきたいという努力はすることが必要で、それを私がアメリカへ行ったら刷りに行くと言って、今日これだけの国際的地位、国際的発言力を持っておる日本の地位をみずから軽からしめるような御発言をされることは私は残念に思う。お互いに日本の地位というものにもう少し自信を持たなければいかぬ。本当にそうですよ。ランブイエなんかに行っても、ランブイエの会議に対しての結論を出すまでの間に日本の影響力というものは非常に大きいわけです。  そういうことですから、余り低く日本の今日の国際的地位を見ることに対しては、遺憾ながら赤松君、これは承服することはできないわけでございます。
  84. 赤松勇

    赤松委員 私はアメリカと仲よくすることがいけないと言っておるわけじゃないのです。そんなばかなことは言っていません。どこの国とも仲よくしていただきたい、そう思います。それから、日本の地位なり立場というものを傷つけるような外交政策をとれというようなことは社会党は主張しておりません。私ども日本人でありますから、当然日本の国の立場が国際的に尊重され、かつ尊敬されるような外交政策を展開しなければならぬということはもとより当然であります。ただ、あなたのおとりになる外交政策というものが第三世界、発展途上国の気持ちを、つまり彼らの要求を、彼らの心配を重点的に、主体的に把握をしてない。でありますから、たとえば田中総理がアジアへ参りましても、デモで迎えられるというようなことが起きるじゃありませんか。発展途上国で、なるほど日本に対する評価の面もありましょう。しかしながら、再び侵略してこないか、本当に主体的にアジアというものを考え、そうして恒久平和というものを考えているのかどうか、これに対して疑問を持っていることは、あなたも御存じのとおりなんです。だからその疑問に答えるような、そしてアジアを主体的に、第三世界、発展途上国の利益、要求、そういうものを満たしていく外交政策をおとりなさいということを申し上げておるのでありますけれども、すでに時間は余すところ二十分足らずになりました。  そこで、一番重要な、実は中国問題なども用意してまいったのでありますけれども、これは早期に平和友好条約を結んでもらいたいということをあなたに強く申し上げて、まず朝鮮の問題に移りたいと思います。  朝鮮民主主義人民共和国についてはさまざまあなたに質問をしたいと思うのでありますけれども、私が金日成主席とお会いしたときに金日成主席が、われわれが過大なことを日本政府に要求しておるのではない、つまり朝鮮民主主義人民共和国に特に肩入れをしてくれというようなことを要求しておるのではない、朝鮮民族というものは一つであるから、南も北も同様な角度で、同様な視点で外交をしてもらいたい、こういう要求なんです。これについてはどう思いますか。時間がありませんから一口でいいです。
  85. 三木武夫

    三木内閣総理大臣 韓国との間には外交関係を持っていますね。北朝鮮との間には外交関係を持っておりませんから、そういう点で差があることはやむを得ないと思いますが、私は、施政方針演説でも申し述べましたごとく、北朝鮮に対してもできるだけお互いに疑心暗鬼で非常な過度の警戒心を持つようなことのないように交流を重ねていきたいというのが私の考え方でございます。
  86. 赤松勇

    赤松委員 自民党の久野忠治さんですね、いま日朝友好促進議員連盟の会長をしていらっしゃいます。久野君が北京に参りました。その出発前に朝鮮民主主義人比共和国側と接触するようにあなたから依頼を受けた。そして北京の朝鮮大使館に大使を訪ねて、日朝議連会長として五項目の提案を行っています。その提案の第一は、国会議員代表団を早急に朝鮮民主主義人民共和国に派遣をしたい。これによって、昨年後半から混乱した日朝貿易問題を解決し、発展させるための相互措置を進めたい。民間漁業協定の締結を急いでもらいたい。朝鮮民主主義人角共和国及び南の政府との平和と安定のため、南北間の話し合いの再開を呼びかける。米朝接触の実現に日本として何らかの寄与を図りたい。こういうものを首相の依頼によって朝鮮民主主義人民共和国側に提案をした。そして本国政府へその回答を伝えるようにということで彼は北京から帰っている、こう言っております。これは事実でございますか。
  87. 三木武夫

    三木内閣総理大臣 一新聞にそういうことが書かれておって、私は不思議なこともあるものだ、そういう事実もないのにこういう報道が出ることは。久野君に会ったこともないわけですからね、ことしになって。おかしなことだと思っておりましたところが、久野君が帰ってこられまして、何も私から新聞に話したのじゃないのだ、ああいう記事が出て、いろいろ事実に相違したことで御迷惑をかけたことは申しわけありませんでしたと、日本に帰るなり私のところに訪問されて。そういうことでございまして、そういう事実はございません。
  88. 赤松勇

    赤松委員 私は昨年十月に、日本社会党の代表団の団長として朝鮮民主主義人民共和国に参りまして、そして金日成主席といろいろ話し合いました。当時松生丸の乗組員が共和国におりまして、これを早く帰してもらうように話し合いをしました。これは約束どおり帰してくれました。  その際、漁業協定について朝鮮民主主義人民共和国政府に打診しました。共和国の方の意向としては、この協定は何もメリットがないわけです。というのは、この協定は朝鮮の東海、西海、この漁業に関する協定でありますから、朝鮮側には何のメリットもない。ということは、朝鮮側は日本近海に漁業に来たことはないのです。向こうはフグは食わない。日本近海はフグはもうほとんどおらぬのです。ところが、向こうの鴨緑江の下の方は大変たくさんいるわけです。そこでいわば協定というものは互恵平等というよりも日本側の利益になることなんですよ。しかも、あそこでもって、たくさんなイカ、フグを取りに行く諸君、東海、西海ともに、台風などがあるとみなあそこに緊急避難するのです、朝鮮の港に。避難するばかりでなしに、避難するときに、台風でやられてけがをしたり、油が切れたりあるいは衣服が破れたり、食料がなくなった、船が破損した。それを朝鮮民主主義人民共和国が人道的な立場から衣服を与え、食料を与え、船を直し、油を与え、ひどいけがをした者は入院させて、治して帰すというような人道的な措置を講じておる。これは韓国のように拿捕して刑務所に入れるようなことはしておりません。  そこで、日本の全く一方的な利益に関する問題でありますけれども、私はようやく政府間と話を詰めまして、民間漁業協定を結んでもよろしい。しかし、政府の何らかの保証があれば結びましょう。朝鮮の東海、西海に漁業に来る人は日本の貧しい勤労漁民の皆さんだ。ぜひ安心して漁業ができるように、自由に操業ができるように、安全操業ができるようにしてあげたい。ついては政府の何らかの保証、つまりその協定が責任のない協定でなくて、この協定に責任を負いますと政府が一口言ってくれれば協定を結ぶ、こう言うのです。  私ども社会党は、四月にはこのために漁民代表団を現地に派遣します。この際、三木さんは、仮にただいま外交関係がないにしても、かつて中国との間に民間漁業協定もやったし、インドネシアとの間にもそれをやっておるし、いろいろな政府の保証のやり方があると思うのです。この際、あなたは決断をもって、日本の、特に西日本の漁民のために思い切った決断を下してもらって、漁民が安全操業できるように何らかの方針を示していただきたい、こう思います。いかがですか。
  89. 三木武夫

    三木内閣総理大臣 北朝鮮との間に民間の漁業協定の話が非常に具体化していっておるという報告はまだ受けてないわけです。そういうことがあれば、これはほかにも影響するところがありますから、政府としてはいろいろ民間側の意見を承りたいと思っておりますが、まだ何にもこれが進んでおるという話は承ってないのです。外務大臣がもう少し私よりも詳細に知っておるかもしれませんので、補足をしてもらいます。
  90. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 ただいま総理大臣の言われましたとおり、民間にそういう話が進行しているという具体的なことを私ども聞いておりませんけれども、もとよりただいま御指摘のように、日中間にも長いこと民間協定がございましたのですから、両者でそのような協定ができるということになりますれば、政府として別段これに異存のあることはございません。
  91. 赤松勇

    赤松委員 それでは、漁民の側からそういう要求があれば、外務省が話に乗ってくれますね。いかがですか。
  92. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 御承知のようなわが国の自由経済のたてまえでございますから、民間の間でそのような話し合いができるということであれば、政府として別段これに異存を申す必要はないと考えております。
  93. 赤松勇

    赤松委員 あなたは私の意見聞いていなかったな。つまり、民間漁業協定は朝鮮側にはメリットがないけれども、しかし日本の漁民のために、勤労漁民のために結んでもよろしい、しかし政府の保証を何らかの形でしてくれればやりましょう。いま総理は、漁民からそういう要求がない、要求があったら考えるが、外務大国に答えさせる、こう言ったでしょう。どうなんですか。
  94. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 御質問は正確に承っておるつもりでございまして、わが国は国家経済ではございませんので、その間に政府が何らかのという部分が実は具体的に何であるかということになりますと、恐らく実体がないのではなかろうか。したがいまして、民間でそういう取り決めができるということにつきましては、政府として別段異存を持っておらない、こういうふうに申し上げておるわけでございます。
  95. 赤松勇

    赤松委員 向こうは、政府の保証があれば、メリットはないけれども協定を結びましょうと言っているんです。それについて、外務省が当然漁民の利益のために努力するというのはあたりまえじゃないですか。それはどうなんですか。
  96. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 基本としては、先ほど総理大臣の言われましたとおり、両国間に国交がないということでございますから、それを基本にやはり考えておかなければなりません。しかし、そういう場合でございましても、赤松君の言われますように、日中間で長いこと民間漁業協定が有効に働いておったというようなことが現実にございますから、同じような状態がつくられるということは、これは日本の民間の漁業のためになることであれば、政府として何ら異存を申すべきことでない、かように考えておるわけでございます。
  97. 赤松勇

    赤松委員 それでは最後に、私はひとつ提案しましょう。こんな禅問答みたいなことをやっておっては国民に申しわけない。いま西日本の漁民の諸君はこれを大変関心を持って見ていらっしゃるんだから、私は新しく提案しましょう、社会党として提案しましょう。  これは久野会長に相談しなければならぬことでありますけれども、幸いここには安宅常彦事務局長もいらっしゃる。そこで、議員連盟と外務大臣との間にこの話を具体的に煮詰めていく。非常に現実的な提案です。諸般の事情を考慮しながら煮詰めていく、そうして漁業協定が結べるような状況を前向きの姿勢でつくり出していく、これをひとつやっていただけますか。議員連盟と外務大臣との話し合い、これはできぬと言わぬでしょう。それすらできないと言うならば、もうあなた、何もやらないということになる。無誠意きわまる。西日本の漁民はこれをどれだけ要望していますか。どうですか。
  98. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 申し上げるまでもないことでありますが、日本政府日本国民に奉仕をすべき役割りを、義務を負っております。いわんや国民の代表である国会議員の方々に奉仕をすべき義務を負っておりますから、その限りにおいて私どもは全力を尽くすことはもとよりであります。
  99. 赤松勇

    赤松委員 それでは議員連盟との間に話し合いを進めていいということですね。重ねて念を押しておきます。
  100. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 国会議員の連盟からお話があれば、私は外務大臣としていかようにもお話に応じさせていただきたいと思っています。
  101. 赤松勇

    赤松委員 幸い安宅常彦事務局長もここにいらっしゃいますから、いまの答弁を受けて速やかに議員連盟で具体化していただきたい、こう思います。  それから、最後に申し上げておきますけれども、私は三時間にわたって三木内閣政治姿勢から始まって当面の経済問題、あるいは財政の問題、地方財政の問題、または春闘の問題、中小企業の問題、婦人の問題、そうして外交の問題などを取り上げてまいりました。この中で私どもは総理大臣から種々前向きの検討をすべき回答もあり、その部分については感謝します。これからもその姿勢でやっていただきたい。しかし、なお政府責任を追及しなければならぬ点はたくさん残っています。  私は、当初申し上げましたように当面、経済、とりわけ不況打開、これは非常に重要な問題なんですね。それを国民本位に消費の需要を拡大して、そうして不況を打開していくか、それとも大企業本位に公共土木事業を通じて打開していくか、この論点がはっきりしたと思うのです。さらに後からなお同僚議員によって追及をされますけれども、幸いさっき理事会におきまして私の提案も受け入れられたようであります。で、私は経団連の会長、それから日経連の櫻田会長がお見えになった際には、互いに問題点を明らかにしながら討論したいと思っています。その問題はそのときに譲ります。  私の質問をこれで終わりたいと思います。(拍手)
  102. 荒舩清十郎

    荒舩委員長 これにて赤松君の質疑は終了いたしました。  次に倉成正君。
  103. 倉成正

    倉成委員 私は、自由民主党を代表して、当面の景気対策を中心といたしまして内政、外交の諸問題について、三木総理外関係閣僚にお伺いをいたしたいと思います。  質問の第一点は、まず日中、日ソの外交についてお伺いしたいと思います。  日本外交を進める上において日米、日中、日ソの関係はそれぞれ第三者の介入を許さず、わが国の国益を守るとの立場から進めるべきことは当然のことでありますが、最近の中ソ関係、米中の接近、フォード大統領の新太平洋ドクトリン等を見ますと、日本とこれらの国々との関係は、それぞれ他の国の利害と複雑に絡み合っており、この間にあって国益擁護の外交を進めることは容易でないことと思うのでありまして、総理並びに外務大臣が御苦心のあるところと思います。  そこで、まずお伺いしたいのは、周総理の死去を契機として、従来の中ソ関係において変化があるかどうか。すなわち、中ソの対立の状況には変わりがないかどうかという点であります。この点は、わが国の国益にいかなるかかわり合いを持つかという点について、総理の御見解を伺いたいのであります。  一月二十六日のタイムによりますと、日ソ会談の後、三木総理の記者会見の後、タイムはこう伝えております。日本がこれまでとってきた中ソ巨大国に対する等距離外交から大きく離脱したことを意味する云々と。またニューヨークタイムズは、日本は、中ソの間にあって中国との協力の道を選んだと伝えられておりますが、総理は日中、日ソの関係をどう進めていく所存か、お伺いをいたしたいと思います。
  104. 三木武夫

    三木内閣総理大臣 しばしば申し上げておりますように、政府の外交方針は善隣友好の外交をやる。だから、たとえば日中、日ソ関係においても、どこか一国を、日本はその国のどちらか一方との善隣友好の関係を犠牲にするというようなことはいたさない。そういうことでございますから、日本が日中、日ソの間にあって中国の道を選んで、そしてもう日ソの友好関係を犠牲にするというふうに外交方針が変わったということはございません。善隣友好の外交というものは今後も進めてまいる所存でございます。
  105. 倉成正

    倉成委員 どの国とも仲よくやっていくということはまことに結構なことでありますし、宮澤外務大臣また総理方針の中にも述べられているとおりでございます。しかし、事柄には軽重、順序というものがなければならないと思います。日中平和友好条約問題に関し、総理と外相との話し合いで、一時静観の態度を決めたとの新聞報道がありましたが、その真相をお伺いしたいと思います。
  106. 三木武夫

    三木内閣総理大臣 それは少し私と宮澤君との話し合いの真意を伝えておらない。静観するというふうなことはございません。できる限り日中間の話し合いを進めて、そして早急に妥結をしたいということが変わらない方針だ。しばらく一服するというような、そういうものではないわけでございます。
  107. 倉成正

    倉成委員 グロムイコ来日の際、北方領土についてソ連の真意はどうであったか、お伺いしたいと思います。  わが国は、一九五六年十月、日ソ共同宣言によってソ連との外交関係が回復しましたが、白来二十年間、民族の悲願である北方領土の問題は解決いたしておりません。一九七二年一月、グロムイコ外相訪日に至るまでは、領土問題は解決済みとして交渉に応じなかったわけでありますが、その後、平和条約の交渉が大平外相の訪ソ、田中総理の訪ソ、官澤外相の訪ソを経て、ことしの一月、グロムイコ外相の訪日において、日ソ平和条約交渉がわが国において行われたことはきわめて意味深いことと思うのであります。  ソ連の態度は従来必ずしも一貫性がなく、国際情勢に応じて硬軟の態度を示してきておると思いますが、今後日本が自主的判断のもとに日中関係を進めた場合、ソ連側がどのような反応を示すかということでございます。もちろん領土問題を譲らないという事情は、ソ連の側にいろいろ事情があると思いますけれども、日ソ漁業協定があるにもかかわらず紛争処理委員会がまだスタートしておらず、今日、日本の近海においては、漁民の生活が毎日のように脅かされております。また、ごみまで捨てられて困っているという陳情がされていることを聞いておるわけでございます。領土問題と同時に、このような国民の日常の利益を守るというのが外交の方針でなければならないと思いますが、一体これらの問題についてどう対処をされようとするお気持ちか、お答えをいただきたいと思います。
  108. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 領土問題につきましては、グロムイコ外務大臣は総理大臣とも会談をいたし、私とも会談をいたしたわけでございますが、私どもは四島の一括返還ということを史実に基づき、また理を説きまして求めているわけでございますが、そのようなことは現実的な処理とは言えない、ソ連の考え日本考えとには基本的な開きがあるというような主張でございまして、今回も妥結に至らず、今年中に私が訪ソをして話の続きを行うということを合意をしたわけでございます。  他方で、漁業の問題につきましては、先方も事情はかなり知っておりますようでありまして、速やかに紛争処理委員会のソ連側のメンバーを任命しました上で、十分ここで話し合いをしていこうという態度でございました。
  109. 倉成正

    倉成委員 ただいまの問題は、ひとつ積極的に解決に当たられたいと思います。  およそ、平和憲法を持つ日本の外交上の武器は、国内の政治、経済の安定と国民の一致した世論であろうかと思います。この点に関しては、社会党の下平代議士が、歯舞、色丹、国後、択捉の四島返還を図ることが重要である云々の発言をしたと新聞報道は伝えておるのでありますが、従来の社会党の二島返還を先に行うとの主張に比し、わが党の主張に近づいたわけであり、国民的コンセンサス形成の契機となると思うが、総理の所見はいかがでございましょう、お伺いしたいと思います。
  110. 三木武夫

    三木内閣総理大臣 私も倉成君と同じように、最近下平君がそういう発言をされたことを承知しておりまして、やはり領土問題のようなこういう非常に困難な問題は、超党派的に推進することが外交の進め方としては好ましい。社会党の変化を歓迎するものであります。
  111. 倉成正

    倉成委員 国民のコンセンサスづくりと同時に、私はやはり外交にはある程度の秘密と申しますか、なかなかデリケートな国家間の問題でありますから、全部が全部国民の前に明らかにすることはできないかもしれない。しかし、国民の支持なくして日本の国の外交の力というのは発揮されないわけでありまして、なるべく親切に国民に外交の姿を伝えながら、国民とともに歩む外交、そういう姿勢が必要であろうかと思いますが、総理の所信をお伺いしたいと思います。
  112. 三木武夫

    三木内閣総理大臣 まさしく倉成君の言われるように、私は外交政策の限界というものは、国民が納得するというのが外交政策の限界だと思う。この納得というものを度外視して外交を進めていくということは、それは強力な外交政策にはならないわけでございますから、御指摘のとおり、外交交渉過程のものを一々明らかにすることは、これは国際的に見てもそういうふうな慣例ではないわけですから、交渉途中ではあるいは全部交渉の経過を御報告ができないにしても、常に国民とともに歩む外交を心がけなければ、民主政治のもとにおける外交の姿ではないと考えておる次第でございます。
  113. 倉成正

    倉成委員 ただいまの総理のお言葉どおり、ひとつ国民とともに歩む外交ということでお進めいただきたいと思います。     〔委員長退席、井原委員長代理着席〕  次に、総理は本会議における答弁におきまして、ASEAN首脳会議に深い関心を示されましたけれども、総理の招待をめぐって新聞報道がいろいろなされておりますが、現在の時点ではどうなっておるか、お伺いをしたいと思います。
  114. 三木武夫

    三木内閣総理大臣 私は、ASEANというものは自主的な地域協力機構として、政治、経済の面に大きな役割りを果たしておる、ASEANというものが健全に地域協力機構として発展していくことをこいねがっておるものでございまして、日本としてもできる限りの協力を惜しまない考えでございます。  ASEANの首脳会議が二月末に開かれる。この会議の成り行きに対しても私は関心を持っておるわけですが、私を招待するとかしないとかいう新聞記事は見ますけれども、まだ正式な招待を受けるというような確報には接してないわけでございます。そういう招待があれば参りたいとは思いますけれども、国会中でございますから、これはいままだ招待もなされていないときに、この問題について私がコメントをいたしますことは適当でないと考える次第でございます。
  115. 倉成正

    倉成委員 総理は、ランブイエ会議において、アジアの唯一の代表として南北問題に積極的な姿勢を示されました。それと同時に、私は減速経済下における経済協力のあり方について御見解をお伺いしたいと思うのでございます。  ランブイエ会議総理は、お互いにファーストネームで呼び合うような雰囲気をアジアでもつくりたいと言われた、ということを新聞報道は伝えておりますが、ASEAN諸国はそれぞれ政治、経済上の問題を抱えており、特に日本との関係は、経済が密接な関係でございます。したがって、わが国の経済の停滞の影響を強く受けており、輸入が減っている国も数カ国あるわけでございまして、これらの国々が日本の経済協力に期待するところはきわめて強いと聞いておりますけれども、アジア版ロメ協定の提唱云々の抽象的な一般的な姿勢だけでは、かえってマイナスになるのではないか。やはり具体的なものを十分準備をしていかなければならない。また、マレーシア、インドシナ諸国との政治的な緊張をやわらげる努力、そういう努力も日本がしていかなければならないとか、いろいろな問題をやはり十分準備をして、もし会議に御出席されるとすればしていただきたいことを御要望申し上げておきたいと思います。  時間の関係上、外交の問題は終わりまして、内政の問題に移らしていただきます。  次は、当面の不況対策について政府の見解をお伺いしたいと思います。  御案内のとおり、現在私どもが当面しております不況というのは、いまだかつてないような非常に深刻なものである、非常に不況の底が深い、そして長く続いておる、こういう事情があるわけでございますけれども、まずこの不況対策に必要なことは、この不況に対してどういう診断をするか、現在の不況がどういう状況にあるかということをしっかり診断することに出発しなければならないと思いますが、現在の不況をどのように御認識いただいておるか、福田総理からお伺いをいたしたいと思います。
  116. 福田赳夫

    福田(赳)国務大臣 非常に概括的に申し上げますと、昨年、世界経済は総落ち込みである、総マイナス成長です。その中で、ともかくわが日本だけがプラス成長を実現したという唯一の国になっておるのです。ですから、昨年の三月が底で、それから経済活動は、非常になだらかというか、微弱ではありますけれども、上昇の過程に移っておる。ところが、この上昇の過程が非常に微弱でありますので、そこで個々の企業について見ますと、大変収支状況、経営内容というものが悪化してきておる。つまり、マクロではさほどでもないにかかわらず、ミクロ、個々の企業につきますと、非常に苦悩に満ち満ちた状態であるというのが概括的に見たところではないか、そう思うのです。  しかし、そういう環境ではありますけれども、ことしというか、五十一年度を展望してみますと、世界情勢というものが急転換をしてくる、それを背景としてわが国経済も活発な上昇過程に乗るであろう、そういう見解でございます。
  117. 倉成正

    倉成委員 今日の不況は、単に企業の問題から離れて、茶の間の話題になっている。すなわち、サラリーマンの家庭でありますと、奥さん方が、一体自分の主人の会社はつぶれないだろうか、これから先どうなるだろうか、そういう心配をするようになってきた。また、大学を卒業する子供を抱えている家庭においては、どうも就職の問題が心配である。そういった茶の間の話題にまでなってくるように不況が浸透してきた、そういうふうに思うわけでございます。  指標の上から見ますと、鉱工業生産は昨年の八月以降一進一退を続けて、十一月にはマイナス一・七%と落ち込んでおりますし、十二月の日銀券の発行額は前年同月比九・四%と、十六年ぶりに低い伸びにとどまっております。また、十二月の倒産件数も千四百九十三件という高水準に達し、失業者も九十八万と、前年同月を約三十万上回っておるわけでございまして、まことに今日の不況は深刻なものがあると思うわけでございます。今後数カ月の間、少なくとも二月、三月ぐらいの間に失業、倒産がさらに増加する懸念がないかと国民は心配いたしておるのでありますが、この点についての御判断をお伺いしたいと思います。
  118. 福田赳夫

    福田(赳)国務大臣 今日の経済情勢は、普通過去においてわが国が経験してきた景気循環とちょっと事情が違ったものである。つまり、過去の景気循環過程では、一年ないし一年半、長いときでも二年、そういう不況が続きますと、次には三年ぐらい続く好景気が来るわけです。そういう循環を繰り返しておりましたが、今度はそう普通の状態ではない。かなり基本的な深刻ないろいろな問題を抱えておる。そこで、三年ぐらいは景気回復を実現するにはかかるのじゃないかという見通しをしておったのですが、いまちょうどその三年の二年目を終わろうとしておる。そういう時期だものですから、わが国の経済状態というものは、また特に個々の企業から見ますときに、今日が一番苦しい状態ではあるまいか、そういうふうに見るのであります。  そこで、とにかく早くそういう苦しい状態を脱却させなければいかぬ、それには企業の操業度を引き上げるという問題、これをねらいどころにしなければならない。こういうふうに考えまして、昨年の九月の第四次景気対策、これをやってみましたが、実際率直に申しまして、ずれがあるのです。おくれが非常にある。これがことしになってようやくその効果浸透が始まろうとしておる、こういう段階と見ておるのです。それからそれが終わりますと、今度は五十一年度の予算が活動するということになる。  そういうことで、五十一年度全体としますと、かなり活発な経済活動ということになると見ておるのですが、それまでの状態、これはほっておきますとかなり深刻な状態じゃないかと思う。しかし、第四次対策の効果が出てくる。それからまた金融上特別のいろいろな配慮をしておるわけで、とにかく苦しいときのつなぎ役は金融機関の役割りだ、こういう考え方のもとに、金融上かなり手厚い対策をとっておるというようなことで、季節的な関係がありますので、雇用情勢は一、二、三月、今日この時点よりは悪化する、こういうふうに見ておるのです。しかし、四月以降経済の活況を呈するとともに、この雇用情勢も改善をされてくる。それから倒産、そういう問題もこの二、三月くらいはなお厳しい状態ではあるまいか、こういうふうに思いますが、これも春以降においてはかなり改善をされる。経済的に悪い時期である一—三月、これを経過いたしますと、国全体の経済は明るい方へ明るい方へと向かっておる、そういうふうに考えております。
  119. 倉成正

    倉成委員 私も副総理の言われるように、今回の不況が非常に底が深いという点と、季節的な影響があるために二、三月はかなり失業者がふえたり、あるいは倒産も出てくる場合もあり得ると思うわけであります。やはり国民が知りたいのは、一体その先どうなるか、そういう見通しを知りたいわけですね。短期の目前のことと同時に、数カ月先あるいは一年先、二年先あるいはもう少し先に一体日本経済はどうなるのだろう、これが国民の知りたいところでございます。したがって、私はやはり正直に国の経済の実態を国民に知らせるという努力が必要と思うわけでありますけれども、その点について特に御要望を申し上げておきたいと思うのでございます。  いま副総理から稼働率のお話がございましたけれども、政府の経済見通しによりまして、ことしの経済の実質成長五・六%ということでございますけれども、昭和五十二年の三月の稼働率というのはどの程度に見ておられるか、お伺いしたいと思います。
  120. 福田赳夫

    福田(赳)国務大臣 来年三月は大体九三、四%、これは実質の稼働率じゃなくて製造業稼働率指数です。これについて言いますと、大体九三、四%のところにいくであろう、こういう見解です。
  121. 倉成正

    倉成委員 いま稼働率指数のお話がございましたが、これは御承知のとおり四十五年を基準としたものでございます。そこで、この四十五年を基準として九三、四%ということになりますと、実際の機械が動く操業度というのはかなり低いものになりますけれども、それは大体どの程度でございますか。
  122. 福田赳夫

    福田(赳)国務大臣 製造業については製造業稼働率指数というのがありますが、それに大体〇・九を掛けたものが実際の稼働率であろう、こういうふうに言われておるのです。したがいまして、五十二年三月における実際の稼働率、これは八四、五%程度じゃあるまいか、そういうふうに思います。
  123. 倉成正

    倉成委員 実際に機械が動く操業度、稼働率が八四、五%ということになると、仮に政府の経済見通しどおりに経済が動いたといたしましても、かつてのような好況感は出てこない。すなわち工場の機械は八五%ぐらい動いているにすぎないということに平均するとなるわけでございます。  したがって、この稼働率の問題を議論する場合に、どうもマクロで議論されておりますけれども、問題は業種別にこれを考えていかないと実際の経済の実態に合わないと思うわけでございますが、そういう業種別の稼働率ということについて、具体的な品目について最近どうなっておるか。これは恐らく通産省の御所管かと思いますけれども、過去の数字と比べてどうであるかということを把握しておられればお答えいただきたいと思います。
  124. 河本敏夫

    ○河本国務大臣 稼働率つまり操業率でございますが、これは統計上整備されておりませんが、昨年の十一月ごろの操業率を大体調べたところでは、粗鋼で六〇%程度、工作機械が三五%程度、標準モーターが四〇%程度、乗用車が九五%程度、ポリエチレンが六〇%程度、大体こういうところでございます。
  125. 倉成正

    倉成委員 いま通産大臣から二、三の業種についてのお話がございましたけれども、景気を見る場合にマクロで見ることも結構でありますけれども、実際はやはりミクロの個々の企業の実態というのが国民の実感としての景気の感じでございますから、どうしてもミクロの見方ということをもう少し突っ込んでやることが必要であるというふうに思うのでございます。  それと同時に、マクロの景気は回復し始めておるけれどもミクロは依然として悪い、こういう言葉が通常よく使われるわけでありますが、生活に密着しているこのミクロの業種別、地域別の景気、これを総合したものがマクロでありますから、ミクロが本当に不況であればマクロも不況であるというのがこれは理の当然でございます。マクロ、ミクロの議論よりもむしろ経済全体を物量の面と採算、損益の両面から見る必要があるのではなかろうか。物量的にも落ち込んでいるけれども採算の面ではさらに落ち込んでおる、異常な損益の悪化に直面しておるというのが今日の不況の実態ではなかろうか。すなわち、赤字企業が増大して失業、倒産がふえておる、中央、地方財政の大幅赤字という形で国民生活に困難を生じておると思っておるわけでございますが、これほど採算が悪化したというのは一体どういう理由であるか、お伺いしたいと思います。
  126. 福田赳夫

    福田(赳)国務大臣 それは一口で言いますと、企業の操業度が悪いということに尽きるわけです。それはさらにどういうことかと言いますと、わが国のマクロで見た経済は世界でただ一つのプラス成長国であった。去年は確かにそうだったのです。ところがミクロ、個々の企業について見るときには、三つその理由が挙げられると思うのですが、諸外国に比して会社の企業内容というものが非常に悪化した、経理内容が悪い、赤字経営に転落するものも多く、また黒字のものもその黒字幅が非常に減少する、こういう状態だったわけです。  その第一の理由は、雇用の問題にあるわけです。わが国の企業は終身雇用体制、そういうことで操業度が悪ければ人手の遊びが出る、その遊びが出ましても、諸外国では解雇を行う、そういうのに対しましてわが国ではそれをやらない、企業内にその遊ぶ人手を抱えておる、その人件費負担が企業を圧迫する、こういう問題があるわけです。  それからもう一つは、わが国の企業は自己資本体制じゃないのです。借り入れ資本体制である。諸外国におきましては大方の企業が資金を自己資本で賄っておる。そこで設備について遊びが出た場合に、その遊ぶ設備、それに対してわが国は金利を支払わなければならぬという金利費の負担の問題があるわけです。そういうことが諸外国の企業と個々に見るときには非常に違ってくる。  それからもう一つあるのですが、それは、わが国は、とにかく昭和四十年代について見ますれば、高度成長、一一%成長だ。諸外国ではその間三%、四%、五%という程度の成長で、わが国は先進諸国の二倍半近くの成長をしておる。その成長が、プラス成長であるとは申せ、大きく転落をする。その転落の落差というものが企業に大きく影響する、諸外国におきましては、マイナス成長だというにかかわらず、もともとが低い成長でございますから、落差とすると少ない。こういうような事情がありまして、個々に見るときには企業経営というものが非常に悪化し、弱体化し、これが満ち満ちて不況感また実際の不況ということになってあらわれてきている、そういう見解でございます。
  127. 倉成正

    倉成委員 私も副総理の見解と同じ考え方を持っておるわけでありまして、石油ショック以前のピーク時に比較いたしまして、欧米もマイナス成長でありながら、企業利益の面から見ますと、アメリカでは企業利益は約二〇%減、西ドイツ四%減、日本は七〇%減ということで、一部、二部上場会社で三社に一社ないし四社に一社が赤字経営ということは、まさにいまお話しのように過剰雇用と金利負担にあると思います。しかも、それに操業度が低いという点がある。したがって、この不況の克服というのは、単に不況の克服で足りるだけではなくして、この不況の克服の過程において、わが国の企業の体質の改善をし、またある場合には産業の再編成ということを考えていかなければ、これから先の国際経済の中に日本の企業は生き残ることができないのではないか、そういう認識を私は持っておるわけでございます。  したがって、企業の合理化を進めていく場合に、この過剰雇用を、もし欧米であれば切り捨ててこれは国がめんどうを見る、あるいは何らかの形で他に吸収をする。しかし、日本の場合に、それを企業にこれからも抱えさせていくというなら、それにふさわしいだけの用意がなければならない、基本的なそういう問題を含んでおると思うのでございます。  また、産業の再編成は、経営基盤の強化充実を進める有効な手段であるばかりでなく、エネルギーの問題では石油産業の今後の体制をどうするのか、また外国の巨大メーカーを念頭に置いた場合には、国産の電算機産業の開発体制をどう進めるのか、そういうもろもろの問題を含んでおると思うのでございますが、これらの分野で通産省はどのような再編成を進めるつもりか、通産大臣にお伺いしたいと思います。
  128. 河本敏夫

    ○河本国務大臣 不況が非常に長引きまして、ことしで三年目を迎えるわけでありますので、各業界で再編成、合併というふうな問題が相当起こってくるのではないかと思います。ことしの大きな課題であろうと思います。しかし、これは業界で自主的に進めらるべき問題でございまして、政府がとやかく言うべき問題ではございませんので、各業界の動きを見まして、そして政府もそれに対して適当な協力、指導をしていきたい、こう思っております。
  129. 倉成正

    倉成委員 わかりました。自由企業体制のもとで政府の関与すべき限界ということはおっしゃるとおりだと思います。しかし、このような激動期において産業構造のビジョンを示すということは、やはり政府の役割りではなかろうかと思いますので、この点についてはなお御検討をいただきたいと思います。  次は貿易関係でございますけれども、設備投資が冷え切っておる。輸出は、アメリカの景気がよくなり、西ドイツの景気がよくなりつつあるということで、多少先行きは明るさがございますけれども、まだ十分ではない。個人消費も落ち込んでおるということになってまいりますと、どうしてもこの輸出の面、財政支出と輸出という点に景気の浮揚を図ることが大切になってくると思うのでありますけれども、国民の最大の関心である今後の景気との関連で貿易問題についてお伺いをしてみたいと思うのでございます。  昭和五十年度の輸出は、当初の政府経済見通しにおいては六百八十三億ドルでございましたけれども、百億ドル以上の減となりまして、これは三兆円の金額でありますから、これが景気停滞の大きな要因となりまして、また最近は若干の明るさが見えておるようでございますけれども、景気全体にどのような影響をするのか、どういう見通しをこれからしておられるのか、お伺いをしたいと思います。通産大臣でも、副総理でも、どちらでも結構でございます。
  130. 福田赳夫

    福田(赳)国務大臣 ことしの経済、特に五十一年度の経済を展開した場合に、私どもは、これは非常に明るい展望だ、こういうふうに見ておるのですが、それはいま問題とされておる輸出です。世界環境が非常によくなってきておる。昨年は、輸出は一昨年に比べましてマイナスを記録する、こういうような状態でありましたが、これは世界経済総沈みのその影響です。ところが、ことしの世界経済は一体どういうふうに動くかというと、これは総沈みから今度は総浮揚という状態に動くであろう、こういうふうに見ておるのであります。現にアメリカなんかは、昨年は全体とするとマイナスですが、下期はかなりのプラスになっておる。そしてその勢いは定着しようとしておるのです。ドイツがもう景気回復のきっかけをつかんでおる。それからフランスだとかイギリスだとかイタリア、それも大変いま景気回復のための努力をしておる。そこで、世界全体としてこれは総プラス成長、こういう展望です。  そういう中で世界貿易が一体どういうふうになるか。これは昨年暮れにOECDの専門家たちがパリに集まりまして、さあ来年のOECD諸国の貿易はどうなるかということの検討をしたのですが、これは結論は実質で四・二五%ぐらいの伸びを見られるのじゃあるまいかというようなことです。まあパーセントにそうこだわるわけではありませんけれども、かなり輸出環境というものがいい。  その背景の中で、わが国は輸出を伸ばすチャンスをつかみ得るわけでありまして、そういう背景に、また波にわが国の輸出が乗り得るように、五十一年度予算におきましても、金融対策を初めといたしまして諸般の対策を講じておる。こういうので、これはわが国の五十一年度輸出というのはかなりの高さの伸びが見込めるのではあるまいか。実質七%というような見方もされるわけでありまするが、まあ大体その辺は確実に実現できるのではないか、さように考えております。
  131. 倉成正

    倉成委員 いま副総理からは、OECDの十二月に発表された経済見通し等お話しがございましたけれども、しかし、たとえば産油国を除く発展途上国の本年の経常収支は約二百十億ドルの赤字とされておりまして、輸入余力には限度があると見られておりますし、先進国でも、イタリアが為替相場を一時的にせよ閉鎖するという事態も生じておるわけでございまして、またOECDで二度にわたって貿易制限措置を自粛する宣言が行われ、さらに十一月の六カ国首脳会議、ランブイエ宣言でも、開放された貿易体制の維持が確認されたにもかかわらず、輸入制限が広がる懸念がなお大きいと考えられるのでございます。  こういった事情を考えてまいりますと、御答弁のような輸出見通しを実現することは必ずしも容易ではないというふうに思うわけでございまして、やはり、きめの細かい輸出に対する手当てが必要であろうかと思うのでございますが、プラント輸出等に関して、もし通産大臣、お考えがあればお伺いをしたいと思います。
  132. 河本敏夫

    ○河本国務大臣 プラント輸出につきましては、最近各地から引き合いが相当参っております。政府もこれがまとまるように積極的にバックアップをしておりますが、予算面でも今回相当大幅に輸銀資金等が増額されておりますので、大体ただいまの予定では、昭和五十年度のプラント輸出の目標は六十億ドルでございますが、五十一年度は少なくともその倍の百二十億ドル以上にしたいというのが現在の目標でございます。
  133. 倉成正

    倉成委員 輸出の動向というのが貿易立国の日本の経済にとって非常に大きな役割りを果たし、またこれが国民生活に響いていくということを考えますと、輸出については格段の御配慮をお願いしたいと思うのでございます。  そこで、輸出と関連いたしまして、最近新聞報道によりますと、通産省は武器輸出についての制限を緩和するとの方針であることが伝えられておりますけれども、これに対する通産省の御見解を伺いたいと思います。
  134. 河本敏夫

    ○河本国務大臣 武器の輸出問題につきまして、通産省が、いま述べられましたように態度が変わるのではないかという記事は誤りでございまして、これまでの方針は変わることはございません。
  135. 倉成正

    倉成委員 武器輸出三原則にいう武器の範囲というのは一体どういうものであるか、お伺いしたい。軍用に供されれば武器となるのか、また航空機の場合、US1、C1は武器に該当するか、お伺いをしたいと思います。
  136. 河本敏夫

    ○河本国務大臣 この武器の三原則というのは、御案内のように、国連の決議によりまして武器の輸出が禁止されておる国に対しては当然日本も武器の輸出はしない。それから、共産圏に対しては武器の輸出はしない。それからまた、紛争当事国または紛争のおそれのある国、これに対しては武器の輸出はしない。これが三原則でございまして、その基本原則に従って運営をしてきたわけでございます。  そこで、武器とは何ぞやということでございますけれども、武器は軍隊が直接戦闘に使うものである、こういう考え方でおります。そしてそのリストは、輸出貿易管理令の別表に列挙してございます。     〔井原委員長代理退席、委員長着席〕
  137. 倉成正

    倉成委員 業界が武器輸出の緩和を陳情しているという新聞報道がございますが、その真意はどこにあるか、お伺いしたいと思います。
  138. 河本敏夫

    ○河本国務大臣 私もそういう新聞記事は一、二見たことがございますが、正式に通産省に対して武器の輸出を緩和してくれ、こういう要請はございません。
  139. 倉成正

    倉成委員 武器の輸出三原則の対象地域以外に対する武器輸出に対する政府方針をお伺いしたいと思います。
  140. 河本敏夫

    ○河本国務大臣 この三原則以外の地域に対してどうするかということでございますが、その場合は、外国貿易管理法の四十八条の趣旨に基づきまして、ケース・バイ・ケースで処理することになっております。
  141. 倉成正

    倉成委員 先ほどUS1、C1が武器に該当するかということについてお答えがなかったようでございますから、補足をしていただきたいと思います。
  142. 河本敏夫

    ○河本国務大臣 いまお話しのものは該当しない、こう判断しております。
  143. 倉成正

    倉成委員 それでは、この深刻な不況の中で、やはり一番しわ寄せを受けるのは中小企業でございます。また、この中小企業の場合に、現在はまあ何とか息をついているけれども、一年、二年先には大変だという種類のものもございます。たとえて申しますと、造船の下請業のごときがその典型的なものでございまして、いま中小の造船は、仕事はある程度あるわけでございますけれども、これが一年先、二年先になると大変なことになるんじゃなかろうか、そういう感じがするわけでありまして、余力のあるうちに将来のことに備えていろいろな対策を考えておくということが、当面の中小企業の対策と同時に大切なことであると思いますけれども、この点について、これは運輸大臣がお答えがあるなら運輸大臣、あるいは通産大臣、どちらでも結構ですからお答えいただきたいと思います。簡潔に、要点のみをお答えください。
  144. 木村睦男

    ○木村国務大臣 御指摘のように、造船業界はいま非常に困難な事態に直面いたしておりまして、五十一年ごろまでは大手、中小いずれも何とか仕事を持っておりますが、それから先は非常に仕事量も減ってくるという状況でございます。それらの下請でございます中小企業、大体九万程度の従業員がおりますが、これらの今後どういうふうに対処していくかという問題でございます。  この対策といたしましては、雇用の面では雇用保険法によります雇用調整給付金制度の適用業種に指定をいたしまして、一時帰休した場合の助成策を講じておるわけでございますし、また、これらの造船業、中小企業に対する金融面におきましては、中小企業信用保険法による倒産関連業種に指定をいたしまして、さらには民間金融機関による中小企業救済特別融資制度、これによる融資のあっせん等をいたしておるわけでございます。  なお、今後の造船業をどうするかという問題につきましては、いま海運造船合理化審議会に諮問をしておりまして、できるだけ早く今後の長期の対策について答申をいただくようにいまやっておる最中でございます。
  145. 倉成正

    倉成委員 ただいまお答えがございましたけれども、万遺憾なきを期していただきたいと思います。  そこで、私は景気対策についていろいろなことを申し上げましたけれども、一番大切なことば何かと申しますと、政策がタイミングを失しないということ、先手先手といくこと、それからある程度の大胆さを要求すると思うのでございます。減速経済下における経済政策というのは、やはりタイムを失しますとうまくいかない。たとえば、先般の第一次不況対策から第四次に至る不況対策、それぞれその中身に盛られているところはある程度私は相当な内容を持ったものだと思うのでございますけれども、いずれもタイムがおくれた。九月十七日に第四次不況対策を政府は決定されましたけれども、これが実際に実行に移されるにはやはり数ケ月のずれがあった。この点が景気に大変な影響を与えておると思うのでございます。また、いろいろな金融政策等にいたしましても大胆に政策をやっていく。もちろん石橋をたたいて渡るということも必要であるかもしれませんけれども、景気は生き物であり、生きた経済を扱っておる。すなわち心理的な影響というのが大変強いわけでございますから、タイミングと大胆さということを要求されると思うのでございますが、この点について副総理の御所見を伺いたいと思います。
  146. 福田赳夫

    福田(赳)国務大臣 政策運営のタイミング、それから大胆さ、これはもう私もそのように思います。五十年度は、私どもがちょうど昨年のいまごろ考えておった展望と大変違ってきたのです。しかし、実質二%以上の成長だという結果にはなるのですが、設備投資が冷え切っておる、それから輸出がマイナスになる、そういう中でとにかくプラス成長だというのは、これはやはり第一次から第四次の対策というものが非常な貢献をしておるわけなんです。財政がプラス成長を引っ張ったと言ってもいいのですが、ただ、顧みてみまして、施策を決めた、その決めた施策の効果浸透、これは特に第四次対策については数カ月のおくれを見るというような状態でありましたので、そういう点は心してまいりたい、かように存じます。
  147. 倉成正

    倉成委員 設備投資、輸出、個人消費、それぞれ見ましても余りぱっとしない。そこで財政のエンジンを使ってこの景気を浮揚させようというのが昭和五十一年度予算の性格でなければならないと思うのでございます。その昭和五十一年度の予算をつくる際に、政府の部内でも、恐らく、公共事業を中心として景気浮揚を図るか、大幅減税をして景気浮揚を図るか、そういう議論があったことと思うのでございますが、選択としては公共事業をてことして景気浮揚を図る、公共事業と輸出をてことする、こういう形の昭和五十一年度予算になったと思うのでございますが、その点について、この公共事業が景気刺激効果としての役割りを果たすためには、やはり予算に盛られているとおりに確実に執行されてくることが何よりも大切なことであると思います。したがって、昭和五十年度の公共事業の執行状況、これがどうなっているか、お伺いをしたいと思います。
  148. 大平正芳

    大平国務大臣 昭和五十年度の予算は、十二月末現在におきまして八九%を超える契約をすでに終えておるわけでございます。目下鋭意残余の契約を進めておりますが、この進捗率は、公平に見まして、過去の不況期のそれに対しまして相当スピーディーなものとわれわれは評価いたしております。
  149. 倉成正

    倉成委員 それでは、昭和五十一年度の予算執行、もうすでに四月はやってまいるわけでございますが、五十一年度の予算執行についてはどういうお考えであるか、お伺いをしたいと思います。
  150. 大平正芳

    大平国務大臣 ただいま国会で御審議をお願いしておる段階でございますが、政府といたしましては、その御審議を受けてできるだけ早く個所づけを終えまして、年度が始まりますとできるだけ速やかに契約ができる状況に持っていかなければならぬと存じておるわけでございまして、いま具体的な個所づけの計画の準備を各省庁においてお急ぎをいただいておるところでございます。
  151. 倉成正

    倉成委員 いま大蔵大臣からお話がございましたけれども、通常の年と違って、この不況の脱出のための大きなてことして、唯一のエンジンとしてこの公共事業というのが考えられているわけでありますから、その執行体制、促進ということについてはひとつ格段の御努力をお願いしたいと思うのでございます。  そこで私は、この公共事業をてことして、エンジンとして景気を浮揚するという場合に、野党の一部からは、この公共事業は大企業本位じゃなかろうかと、そういわれなき批判が行われておるわけでありますけれども、新幹線、四国架橋、高速道路がそれぞれ例に挙がっておるわけでございますが、私の知る限りでは、公共事業三兆五千億のうち、下水道に二千四百三十一億、住宅対策で一般会計だけで三千六百三十二億、漁港が七百四十七億、農業基盤には実に四千三百七十三億、造林、林道に五百七十九億、あるいは災害復旧としてどうしてもやらなければならないものが三千三百五十六億、また、道路の中にも、地方道路、街路等がその予算の大部分を占めておると思うのでございますけれども、この点について国民にわかりやすく、この公共事業が真に国民生活に密着したものであるということを政府としてお示しをいただきたいと思います。
  152. 大平正芳

    大平国務大臣 公共事業でございますが、これは、公共事業ばかりでなく、財政投融資計画も含めまして、公共投資全体につきまして過去の推移を御観察いただければ、政府の苦心の跡は評価していただけるのではないかと思います。すなわち、公共事業全体の重心を、いま倉成委員が仰せになりましたように生活環境施設の改善、そういう方向に漸次移してきておりますし、財投におきましては、基幹産業に対する投資から、中小、零細に対する投資、さらには、最近特に生活関連施設に対する投資に重心をだんだん移してきた経緯が明らかでございまして、時代の進展に応じましてそのプロジェクトの緊要性と社会的、経済的な効果をはかりながら、政府といたしましては公共資金の選択的な投入に誤りないように努力をいたしておるところでございます。
  153. 倉成正

    倉成委員 ただいまお話しのように、この公共事業の中身をしさいに見ると、決して野党批判するようなものではないということは明らかでございますけれども、政府は、やはり親切に国民にその中身を示す努力をしていただきたいと思います。  そこで、公共事業を進めていく場合に一つ大きなネックとなりますのは、地方の裏負担がこれに伴うかどうか。いま地方財政が非常に苦しい状況にありますので、国が仕事をやろうとしてもなかなかついていけない。そういう事情があるということがわれわれの認識でございまして、第四次不況対策において補正予算を組む際には特に政府は地方財政について配慮をされたわけでありますが、昭和五十一年度の予算編成に当たって地方財政についてどういう配慮をされたか、わかりやすく御説明をいただきたいと思います。
  154. 福田一

    福田(一)国務大臣 お答えをいたします。  本年度の予算執行に当たりまして地方財政で最も困難をきわめましたのは、やはり御指摘のように財源が十分でないということでございまして、その結果単独事業がいささか減ったわけであります。これが、公共事業をふやしたにかかわらず景気浮揚が余り十分にいかなかった一つの大きな原因にもなっておるわけでありまして、景気浮揚をするにはどうしても地方財政の充実を図っていかなければならないということがもう一般的な認識になっており、また、政府部内においてもその点については特に力を入れていただいておるわけでございまして、結果において、今年度の私たちがつくりました地方財政計画は全部で二十一兆五下億円でございましたけれども、これを一七%ふやしまして二十五兆二千六百億円前後に実はいたしたわけであります。  そこで、しかしそれだけの仕事をするためには歳入といいますか、収入が二兆六千二百億円足りないことに相なるわけでございますので、その二兆六千二百億円につきましては、一兆三千七百億円は交付税の特別会計の借り入れによりまして増額をする、残りの一兆二千五百億円は地方の起債によるという形をとったわけであります。こういうことをいたしますと、これが将来にわたって地方財政の返還計画に非常に大きな影響を与えはしないかという心配がありますので、自治、大蔵両省の間におきまして、五十三年度以降においてこれが返還に当たる場合に、地方財政が非常に困っておるならばこれは十分に考慮をして、地方財政を圧迫しないようにするという両大臣間の約束も実はできておるようなわけでありまして、考えてみますと、今回の地方財政計画といいますか、われわれがっくりました予算によればこれは相当な浮揚効果を与え得ると思っております。  なお、御指摘のように景気浮揚ということが目的でございますので、去る二十日には各府県の総務部長を全部集めまして、そうして各省と連絡をとって、地域の指定を急ぐということと同時に設計まで進めるということにして、予算が成立したならば直ちに発注ができる準備を整えるべきであるというようなこともいたしておるわけでございまして、私といたしましては、今回はこれが大きく景気浮揚に寄与するものである、こういう考え方を持っております。  なお、御心配かと思いますが、起債が消化できるかという問題もあるのでありますが、これにつきましては、縁故債が相当ございますのでこれを担保適格債にしてもらいたいというような話もいろいろやってみたのでありますが、大蔵省としては必ずその縁故債が十分に消化できることについて協力するからということでございましたので、一応これは見送らせていただいておりますが、いずれにいたしましてもかなりの程度の成果を上げ得たのではないか、私はこういうふうに考えておるわけでございます。
  155. 倉成正

    倉成委員 いまお話しのように、地方財政についてこれは十分な手当てをしたというお話でございましたが、やはりこれは各県、各市町村それぞれときめ細かい打ち合わせをしていただいて、この景気浮揚のための施策が十分実を結ぶように御努力をいただきたいと思います。  そこで、次は税の問題に移りたいと思いますけれども、これだけの不況の中で、仕事はやらなければならないけれども財源が非常に不足をしているという異常な事態に立ち至っておるわけでございます。政府は五十一年度税制改正において実に十六年ぶりに所得税減税を行わないことにいたしました。そこで国民の税負担は実質的な増税になってしまうのではないか、そういうことが言われておるのでございますが、この点に対する政府の御見解を伺いたいと思います。
  156. 大平正芳

    大平国務大臣 お話しのように、五十一年度におきましては増税をお願いしないかわりに減税も御遠慮いただく、一般的なそういう増減税はしないという方針を貫かせていただいたわけでございます。だとしますと、仰せのように、若干の物価の値上げがございます場合におきまして税負担の、物価調整減税までも封殺するという結果を招来するではないかということでございまして、その点は仰せのとおりだと思います。しかしながら、国民の税負担の状況は何も単年度で評価しなければならぬというものではないと私は考えておるわけでございます。わが国のこれまでの予算編成の経過を見てみますと、毎年毎年相当大幅な所得税初め一般的な減税が幸いに成長経済を背景といたしまして実行することができたわけでございます。そして、その幅は物価水準の上昇よりはずっと大きな幅において行われておるはずでございます。そして今日、わが国の国民の租税負担は、中央地方を通じまして計算してみましても、先進諸国に比べましてある程度低位にありますことは大変幸せなことだと考えておりまするし、課税最低限も、最近アメリカがわずかにわが国を抜きましたけれども、夫婦子二人で百八十三万円という課税最低限は、先進諸国におきまして高位に位しておることでもございますので、このような状況を考え、一方、本委員会でいま非常に熱心な御論議をいただいておりまする大量の公債発行という問題を片方に抱えておる財政といたしましては、ことし減税を見送らせていただきましても、国民の理解を得られるのではないかと政府は判断いたしたわけでございます。
  157. 倉成正

    倉成委員 所得税減税を見送らざるを得ないような厳しい情勢の中で、企業に対する社会的不公正の是正という点から、今度の税制ではどうお取り組みいただいたか、お答えいただきたいと思います。
  158. 大平正芳

    大平国務大臣 租税特別措置につきましてこれを見直すべしという議論は、本委員会においても毎年強く御主張いただいておるところでございます。事実、政府も毎年これを受けまして、税調の御協力を得まして見直してまいったことは御承知のとおりでございます。しかし今日、社会的な不公正の是正ということが政治の第一義的な要請でございまするし、それから財政におきまして減税を控えなければならぬような状況でございますだけに、もっと彫りの深い見直しを行うべきであると判断いたしまして、去年以来鋭意税制調査会中心に御検討いただいたわけでございまして、主として企業関係の租税特別措置につきましてメスを入れていただいたわけでございます。  過去の歴史を見ますと、大体におきまして見直しの程度は、全体の租税軽減額の一〇%程度の戦果を上げると申しますか、その程度のものであったのでございますけれども、今回は百八十数件の項目のうち十一項目を廃止し、五十九項目につきましては改定を行い、税額にいたしまして約三分の一をもとに返すということにいたしたわけでございまするので、この努力はそれなりに評価していただきたいものと私は考えております。
  159. 倉成正

    倉成委員 総理にお伺いをしたいと思います。  税制と関連いたしまして、昨日の本会議での答弁で、総理は付加価値税を導入することを決めたという感じ新聞報道がなされております。この種の新税については、十分時間をかけて、慎重にも慎重に検討を重ねた上で導入の是非を決すべきではないかと思うのでございますが、ここに改めてこの問題についての総理の真意をお伺いしたいと思います。
  160. 三木武夫

    三木内閣総理大臣 日本の税体系の中で直接税というもののウエートが多いわけですが、これを間接税も加えて将来一体どういう税体系に持っていくか。もし間接税というものによって歳入の増加を図ろうとするならば、どういう間接税というものが日本の国情に一番適するかということは重大な問題である。したがって、私が付加価値税に踏み切ったということは事実と違います。これは大変、付加価値税というものは大問題でもございますから、十分検討を加えた後に結論を出すべきで、私は付加価値税を導入しようという考え方のもとに答弁をしたわけではない。研究はするにしても、導入ということを決意してそういう発言をしたものではないということを申し上げておきたいと思います。
  161. 倉成正

    倉成委員 総理の真意はよくわかりました。この問題は慎重に対処していただきたいと思います。  次は国債についてお伺いしたいと思いますが、五十一年度の国債発行額は一般会計規模の約三割、七兆円を超える膨大なものとなっております。特に、特例公債は三兆七千五百億の多額に上っております。これは戦前にも例のない、異例のものでございまして、財政の健全性の観点からいっても大きな問題であります。速やかにこの異常な事態を解消し、特例公債に依存しないような健全な財政に復帰すべきであると思うが、いつになったら特例公債から脱却できるのか、今後の財政の展望をお示しいただきたいと思います。
  162. 大平正芳

    大平国務大臣 この前の本委員会におきまして、本年度の補正の御論議をいただく際に、いまの御質問になりました問題が取り上げられたわけでございます。私は、当時この問題、将来の財政計画を長期にわたって示すことができないかというお話でございましたが、非常に不確定要素が多い内外の経済情勢でございまするので、計画めいたことはできない、しかしながら、中期的な財政の展望というものは何とか工夫してみたいということは申し上げてあったわけでございます。その後、大蔵部内におきまして、政府の他の部門における政策、たとえば公共投資の計画でございますとかあるいは社会保障政策その他が今後中期的にどういう足取りをとるであろうかというようなところも考え合わせ、あるいはわが国の税負担がどのような程度認容されるであろうかという基本的な問題について、税制調査会の御意見なんかも徴しながら、一つの試算をいま鋭意試みておるわけでございます。  私どもの気持ちといたしましては、この特例公債に依存する財政というものをここ一両年の間に早く脱却せよと言われましても、これはただいまのように、景気の立ち直りの足取りが必ずしも早くない状況におきましては非常に至難なことであろうと思うのでございますけれども、この五十年代の後半期にまで特例債に依存するような財政を編成しておったのでは申しわけないと考えておるわけでございます。すなわち、五十年代後半には特例債から脱却できるような状態にならぬものかという願望をも込めて、いまいろいろな他の政策との整合性も考えながら試算を試みておりまして、これはこの総括質問の終わるまでにはこの予算委員会に一応お出ししまして御検討を仰ぎたいと考えております。
  163. 倉成正

    倉成委員 今回の昭和五十一年度予算は、大量の国債を発行して、また実質的な減税をしないという厳しい姿勢国民に要求する予算でございます。こういう中で、私は、政府姿勢に求められるものは、行財政の改革について積極的に取り組むという姿勢がなければならないと思うのでございます。民間であれば、こういう状況になればもう大変な経費の節減、機構の改革その他行われるわけでございますけれども、どうしても親方日の丸の気風、そういうものがやはり官庁あるいは公企業体においてはあると思うのでございます。  行財政の改革について、この厳しい財政事情を踏まえていかなる決意で取り組もうとしておられるのか、総理の御所見を伺いたいのでございます。私ば、政府が一生懸命やっておられることはわかりますけれども、茶の間の主婦にも一般国民にも、なるほど政府はこうやっておるなあということがわかるような姿勢政治というものではなかろうかと思うのでございまして、この点に関する三木総理のお考えを伺いたいと思います。
  164. 三木武夫

    三木内閣総理大臣 倉成君の御質問、まことにごもっともなことであります。これだけの財政の窮迫した状態の中で、政府が行財政に対して厳しい態度をとらなければならぬことは言うまでもないことであります。今年度の予算編成についても、この点に対しては政府は十分な配慮をいたしたのでございますが、しかし、単にいまの行政機構というものを簡素化するというだけでは足りない。それは、世の中が複雑になってくるといろいろな行政事務というものもふえてくるわけで、一方にはもうすでにその必要度というものが少なくなった部門もありますし、これからますます力を入れていかなければならぬ部門もありますから、一律というわけにはいきませんが、やはり日本行政機構というものはこの際に根本的に見面してみる時期に来ておる。行政監理委員会もございますし、この問題は真剣に取り組んでみる必要があるということで、行財政の問題というものは、御指摘のように、この時代に即応したような行財政のあり方にならなければ国民の納得はなかなか得られないということで、これは真剣に取り組むことにいたします。
  165. 倉成正

    倉成委員 次は、金融問題に移らしていただきたいと思います。  昨年来、きわめて多額の国債が発行されてまいりましたけれども、一方でマネーサプライをふやしてきているために、一ころ懸念されたような民間資金の需要の圧迫、いわゆるクラウディングアウトという事態は一応回避されてまいりました。しかし、このところ一部の企業では余裕資金で株式を買うというような動きもあって、株価が急騰するなど、かつての過剰流動性に見られたような現象も一部出てきているわけでございます。このような現状との関連で、今後のマネーサプライを中心とする金融政策をどのように考えておられるか、日銀総裁からお答えをいただきたいと思います。
  166. 森永貞一郎

    ○森永参考人 お答えいたします。  引き締め下、マネーサプライいわゆるM2のボトムは、一昨昨年一〇・六でございましたが、その後だんだん漸増してまいりまして、十一月には一三・九%まで上がってまいりました。十二月の数字はまだわかりませんが、十二月における金融機関の預貯金の増加の実績等から推定いたしますと、もう少し上がってきておるのではないかと思っております。  こういうマネーサプライの増加は、引き締め下大変圧縮されておりました企業の手元流動性が漸次回復しつつあるということの一つのあらわれでございまして、それ自体といたしましては、そこに景気の着実なる回復への環境づくりも生まれていくわけでございますので、まだマネーサプライが多きに失するというような感じは持っておりません。一−三月につきましても、少し増加し続けることとは存じますが、金融機関の貸し出し姿勢もきわめて慎重でございますし、貸し競い等の事実も見られませんので、そう急激に増加することばないのではないかと思っておるところでございます。  お示しのございました昨今の株価でございますが、株式市場における需給関係といたしましては、昨年末における投資信託の大幅設定、それから外国の株価に対する日本の株価の若干の出おくれ感等による外人の買い進み、それに大口投資家あるいは中小企業の業主等の賢い意欲が重なって、今日のような結果が起こっておると思うわけでございますが、私どもといたしましてはそれが過剰なる流動性の結果であるとは考えておりません。  上場会社でございます事業法人について、最近の買い、売りの関係を調べてみますと、全体としてはまだ売り越しでございまして、中には、もちろん余裕が出てきて買い進んでおるものもございましょうが、全体としてはまだ売り越しというような状態でもございますので、この株価の高騰の裏に警戒すべき過剰流動性の問題が横たわっておる、そこまでの心配はいまのところいたしておりません。もちろん、将来の問題としてはマネーサプライの動向に慎重な注意を払って、かつて犯しましたような過ちを二度と犯さないように十分に気をつけてまいるつもりでございます。
  167. 倉成正

    倉成委員 今後、マネーサプライは、実体経済の動向に過不足のないようにコントロールしていっていただきたいと思います。  次に、金利の負担の引き下げの問題でありますが、企業は低操業を余儀なくされている結果、固定費の負担、とりわけ金利負担にあえいでいるわけでございます。ところで、銀行ではなおかなりの拘束性預金を要求するとか、あるいは継続的な短期融資を長期融資の高利の形に切りかえるなど、種々の方法で実効金利の低下をとめる動きがあると言われております。さらに今回の金融緩和の局面では、コールレートの低下も過去の緩和期に比べて小幅にとどまっている。要するに、せっかく政府が意図したにもかかわらず、実効金利の低下を図っていく上で、なお努力の余地があるのではないかというふうに考えますけれども、この点に対する日銀総裁のお考えを伺いたいと思います。
  168. 森永貞一郎

    ○森永参考人 企業の収益の現況にかんがみまして、私どもも極力実効金利の低下を図りたいということで、施策の運営に当たってまいりました。昨年来、四回にわたりまして計二・五%の公定歩合の引き下げ、最後の場合には預金金利の引き下げもあわせ行いましたのもその趣旨でございますし、さらにはまた、二度にわたる預金準備率の引き下げも、量的な面から資金需給の緩和を図り、金利の引き下げに資したいという念願にほかなりません。また窓口規制の運用に当たりましても弾力的に運用してまいっておるわけでございまして、量、質両面から金利負担の軽減を促進したいと努力している次第でございます。  昨年の四月に公定歩合を初めて引き下げましてから十二月までの引き下げの貸出金利の低下の状況を申し上げますと、都市銀行で申しますと、その間の約定平均金利の低下は一・二%に達しておりまして、追随率四八%、それを短期だけで申しますと、追随率六割を超えるというようなことになっておるわけでございます。その他の地方銀行等につきましてはまだ統計が出ておりませんが、十二月には相当の低下を見たのではないかと期待をいたしておる次第でございます。今回、第二回の準備率引き下げを実行いたしましたのも、景気回復に必要なる資金の供給の円滑を図ると同時に、金利の一瞬の低下を期したいという念願からでございまして、その際には、各金融機関の代表をも招致いたしまして、協力要請いたしましたところ、すでに全銀協ないしは地銀協等におきましては、金利の引き下げに一層の努力をすることを申し合わせておられることは御承知のとおりでございます。そういう金融機関の協力に待つと同時に、私どもも今後一層金融機関の実情を把握いたしまして、金利の低下に努力いたしたいと思っております。  約定金利は下がったが、拘束等の関係で実効金利は下がっていないのではないかというようなお話もときどき承るのでございまして、その点につきましては、大蔵省が非常に厳重なる監督をしておられることでもございますし、金融機関におきましてもその線に沿い、いやしくも、貸し付けに当たり強者の立場を利用して、不当に過大な拘束預金等を課することがないように努力してしかるべきものと考えておる次第でございまして、その線での一層の金融機関の協力に期待いたしたいと思っております。
  169. 倉成正

    倉成委員 大蔵大臣、ひとつその拘束預金の実態というものを十分調査をし、これを指導する用意があるかどうかということをお伺いしておきたいと思います。
  170. 大平正芳

    大平国務大臣 仰せのとおり、公共性の高い金融機関といたしましては、その点十分認識して自粛していただかなければなりません。今日、店頭に拘束預金の問題について、疑問、不満を持たれる方は申し出ていただきたい旨の店頭表示を行わせる等の方法によりまして、拘束預金の自粛方を強化する姿勢を貫いておるわけでございますが、今後も精力的に一層努力してまいるつもりです。
  171. 倉成正

    倉成委員 次は、国際通貨の問題についてお伺いしたいと思います。  国際通貨の制度は、一九七一年八月、いわゆるニクソン・ショックによって従来のブレトン・ウッズ体制の基礎が大きく動揺して以来、いろいろな場を通じて再建の努力が払われてまいりました。通貨制度の再建は、世界経済の安定成長のため不可欠のものと考えるのでありますが、国会開会中、しかも予算編成日程との関係でむずかしい時期に大平大臣が出席された昨年十一月のランブイエ会議や先般のジャマイカ会議を通じ、大きな進展があったことは、きわめて喜ばしいことと思います。  そこで、通貨問題につき具体的にどのような合意があったのか伺いたい。特に、通貨問題について米仏の両国の意見の相違が大きかったと報ぜられておりますけれども、これはどのような形で妥協が図られたか、お伺いをしたいと思います。時間の関係上、簡潔にお願いをしたいと思います。
  172. 大平正芳

    大平国務大臣 ジャマイカにおける通貨制度についての合意内容でございますが、第一は、IMFの協定改正後、各国は自由に為替相場制度を選択できる、これをIMFに通告する、各国の為替相場政策は、IMFの監視に従い、IMFはその指導原則を定める、それから世界経済が安定した暁は、IMFは八五%の多数決によりまして平価制度への移行を決定することができるということでございます。従来、アメリカは現在のフロート制の認知をIMFに迫っておったわけでございます。フランスは固定相場への復帰を主張しておったわけでございますけれども、この長い確執が今度氷解いたしまして、こういう合意に結晶いたしたことは、世界経済の秩序のために喜ぶべきことだったと考えております。
  173. 倉成正

    倉成委員 新しい通貨制度においても当分の間フロートによることはやむを得ないと思いますが、固定相場に戻る可能性はあるのかどうか、また米国の態度についてお伺いをしたいと思います。
  174. 大平正芳

    大平国務大臣 いま申しましたように、八五%の多数の合意が得られれば固定相場に返る道は開かれておるわけでございますけれども、当分固定相場に復帰するということは至難であろうと私ども考えておりまして、いまのフロートいたしております為替の状況をよりステーブルな状態に、各国の節度のある為替政策によりまして持ってまいることは、当面われわれにとって必要なことだと思います。アメリカもそういう方向で国際通貨政策考えておるものと私は承知しています。
  175. 倉成正

    倉成委員 私ども自由民主党は、このドル問題について、過去において長い間取り組んでまいりしたけれども、過去において政府の為替相場政策には、試行錯誤はあったと申しながら、いろいろな問題があったと思うのでございます。しかし最近は、全面フロートの中でわが国の為替政策は比較的うまく運営されていると思うのでございまして、市場の自主性に沿いつつも介入によって相場の乱高下を避け、相場の安定を図っていくことが大切であると考えます。余り不自然な無理をすることはできるだけ避けなければなりませんけれども、その意味で、現在の基本的な市場の自主性に従うが、乱高下を避けるため必要に応じ介入するという自然体の政策をとっていることば適切なものであると思います。今回合意された新しい通貨制度の中で一今後蔵相はいかなる為替政策をとっていこうとされるのか、お伺いをしておきたいと思います。
  176. 大平正芳

    大平国務大臣 だんだんとこのフロート制に慣熟してまいりまして、わが国の為替政策も、いま倉成委員が仰せになりましたように、大過なく推移いたしておるわけでございます。今度のジャマイカ合意があったからといって、わが国の為替政策に何ら変改を加える必要は私は感じていないのでございまして、今後、アメリカ初め各国の通貨当局と連絡を密にしながら、中央銀行との協力のもとで手がたく、あなたの言われる、よりステーブルな相場の維持ということに努力をしてまいりたいと思いますし、それは私はできると確信をしております。
  177. 倉成正

    倉成委員 次の問題に移らせていただきたいと思います。  減速経済下におけるあらゆる制度、慣行の見直しという意味において、減速経済下の福祉、教育、農業、これらの問題についてお伺いしたいと思いますが、まず教育についてお伺いしたいと思います。  明治維新の後、近代日本を興したのは、初等教育を中心とした教育の力であり、また、第二次大戦の荒廃の中から世界の奇跡とまで言われる目覚ましい復興を実現したのも、その基礎に充実した教育があったからであります。  総理は、施政方針演説の中におきましても、二十一世紀日本の担い手である青少年の教育の重要性を強調されたのでありますが、私も全く同感でございます。総理は、教育改革の方向として、入学試験制度の改善、教育の量的拡大並びに質的充実の三本柱を明示されました。中でも、入試の改善と教育の質的充実は、早急に改革を図らなければならない課題であると私は考えます。  戦後、経済の高度成長を背景として、教育もまた目覚ましい量的な発展を遂げてまいりました。たとえば、昭和三十年に約五〇%であった高等学校進学率は、昭和五十年には九二%に及んでおり、大学進学率も、この二十年間に約一〇%から三八%へ上昇しております。  このような国民の教育に対する需要の増大に対して、わが自由民主党も、義務教育諸学校の教員給与の計画的な改善、私学助成の拡充、医科大学等の新設、高校新増設に対する国庫補助制度の創設など、国民の期待に的確にこたえる諸施策を推進してまいりました。しかしながら、このような教育の量的拡大によって国民の教育に対する不満は果たして解消されたでありましょうか。教育の量的拡大が進む中で、国民の教育に対する不満はむしろ高まりつつあるというのが現実の姿であります。  激しい受験競争に幼き青春をむしばまれる小中学生、知育、徳育、体育の三位一体の教育の理想から遊離し、知育中心に偏向しつつある初等、中等教育の現状、高校教育が普遍化する一方で、生徒の約半数は分数計算ができないという学力の水準や教育課程の問題、三人のうち一人は大学生という高い進学率の中で、大学のレジャー化、大学卒のブルーカラー化の進展など、現在の教育に対する批判は枚挙にいとまもございません。  私は、このような教育の現状を、わが国の将来のために憂慮するものであります。私は、教育の量的な拡大を決して否定するものではありませんけれども、教育の場をつくることのみに力が注がれて、教育の内容がないがしろにされているようなことがあってはなりません。永井文部大臣も言われておるように、学校栄えて教育衰えるというような事態は絶対に避けなければなりません。  さらに、今後のわが国は、経済の低成長時代を迎え、財政支出もこれまでのような大幅な伸びを期待できないような現状であります。高校一校つくるのに三十億の金がかかるというのが東京付近の実情でございます。国及び地方の教育支出についてもその例外たることを得ないわけでございますけれども、財源の効率的使用を真剣に考える時期に来ておると考えております。  以上の理由で、私は教育の質的改善を図ることがきわめて重要であると考えるものでありますが、教育は広くすべての国民にかかわりがあり、また、日本の将来を託する大切な問題であります。その改善に当たっては、一部の教育専門家の手にのみゆだねるべきではなく、経験豊かで洞察力にすぐれた多くの方々の衆知を結集して、改善の方途を探求していくことが必要でありましょう。また、最近の高等教育の大衆化の傾向も反映して、高校教育、大学教育に対する国、地方の財政負担が増大しつつありますが、高校の教育内容、私学助成のあり方、国立大学の運営等につきましては、真に国民の負担に値するものであるかどうかという観点からメスを加えて検討していくことも必要であります。幸い、永井文部大臣は視野の広い学者出身の大臣であり、今後の御活躍を期待するものでございますが、この機会に入学試験の制度の問題についてお伺いしたいと思います。  三木総理から、競争第一主義にゆがめられた学校教育を是正するため、大学入試の改善策についてのお話がありました。私は、ここに有名校を目指す受験競争の昨今の風潮の一例といたしまして、単に学校教育をゆがめ、本来であれば伸び伸びと育成すべき児童、生徒の心をむしばんでいるのが実情でございまして、受験のために塾通いをしたり、家庭教師をつけることを一般化させたり、父母の家計に過酷な負担を課す一方、学校教育の失権とも呼び得るような深刻な事態を現出していることを指摘したいと思います。有名校につながる幼稚園の入学のための予備校があるとか、二月初めの有名中学の入試を目指して、正月、休日返上で小学生が特訓を受けておる、こういう実情が新聞に伝えられておりますけれども、これらはだれが見ても行き過ぎでございます。  私はここに、ある有名な進学校である国立大学の付属中学の入学試験の試験用紙を持ってきておるのでございますけれども、これは大学生の解けないような、恐らくここにおられる閣僚の皆さん方でも頭をしぼられるような問題がここに掲げられておるわけでございます。もし、受験技術あるいは受験に適応する能力だけに長じた者のみが有名大学に入り、その学歴をもってエリートとして遇され、将来の日本の指導者となるようなことになったら、日本の社会は一体どういう姿になるのか、私はそれを想像しただけで暗たんたる気持ちになるわけでございます。国立学校は永井大臣の所管であります。文部省みずからが国立大学付属校の入試に、小学校、中学校、高校を問わず、広く抽せん制を導入するなりして過熱する受験競争に水を注ぎ、国立大学付属校を教育実験校としての本来の姿に戻す努力を払うべきではないでしょうか。永井文部大臣の御見解を伺いたいと思います。
  178. 永井道雄

    ○永井国務大臣 わが国の教育の質的な充実の時期に来ているという先生の御指摘は、まことにそのとおりであると考えております。引き続き機会の拡充ということはやはり大事でございますけれども、しかし、何といっても教育の内容をよくしていくということが国民の広い要求であるということは、昨今の某大新聞の全国世論調査にも明らかでありまして、まず第一には先生方の質を高める。いまもりっぱな方、たくさんありますが、そういう要望を持つ国民は五四・五%に及んでおります。したがいまして私たちは、その角度から知徳体のバランスのとれた教育、特に国民が望んでおりますのは徳育とそれから体育というものを、いままでバランスがとれない姿で発展してこなかったのを是正せよということであり、私も全く同感でありますので、そうした角度から知徳体のバランスのとれた日本人をつくらなければいけないと思っております。  さて、そうした荒廃を招いておりますのは、確かにカリキュラムにもおかしいところがありますが、他方において総理大臣も施政方針において述べられましたように、入試第一主義あるいは競争第一主義ということがございますから、この受験体制の激化をどうするかということについて、私は就任以来の課題といたしてきておりますが、いろいろの面から考えなければいけませんが、試験のほかに雇用の形、これが学歴偏重に傾いているということで、昨年来経済界においても調査を事実していただきました。これは昇進の方は比較的よろしいけれども、採用の点でやはり学歴偏重、そういう点いま労働省などとも協議をしているわけでございます。  さて、最後の付属校の問題でございますが、これは従来から教員養成問題の審議会におきましても、付属学校というのは本来教育の研究をやる、そうした実験校であるという趣旨でありますから、受験校になるというようなことは不当なわけでございます。事実上そうした考え方が審議会にございまして、昨今付属においても相当の努力が進んできておりまして、抽せんを行ってきている学校の数がかなりふえてきております。これは特に小学校では、抽せんをテストの後で行っているところが六十二校、それから抽せんをテストの前に行っているところが五校、中学校におきましてはやはり抽せんを行っているところが、テストの前後いずれを問わないで考えますと五十九校ございますが、やはり将来の方向といたしましては、テストというよりは抽せんというふうな形をどういう形でもっと生かしていって、そうして本来付属学校というものが持っている研究校としての使命を生かしていくか。このことが、そうした学校の設置の趣旨でございますから、その趣旨に従って私たちは付属学校の改善というものを図るべく考えている次第でございます。それがまた、わが国における受験体制の激化というものを緩和する一つの政策として、きわめて重要なものであるというふうに考えているわけでございます。
  179. 倉成正

    倉成委員 文部大臣、長年の教育界の念願であった主任制度。給与改善の中で実施されることになりましたが、これについてのもろもろの議論があるようでございますけれども、主任制度をどのように考えるのか。調和のある学校運営を行おうとする文部大臣の御所見を伺いたい。簡単にお願いしたいと思います。
  180. 永井道雄

    ○永井国務大臣 主任というのは現在すでに存在いたしておりますが、これまで主任についての考え方といたしまして、これを管理的に見るという考え方、それから他方むしろ教育指導という角度から見るべきであるという考え方がございました。私は先ほど申し上げたように、学校教育において本当に先生方が活発になっていくという角度から考えますと、現状におきましても主任の大多数の方はむしろ教育指導という方向でございますから、それをはっきりさせて、管理の方は校長先生、教頭先生にお任せする。そうした形で学校の運営を管理とそれから教育指導という二つの柱をもとにしたバランスのとれたものにしていく。こういう考えで私の見解を発表し、それを省令化したわけでございます。
  181. 倉成正

    倉成委員 次は、一昨日、本会議において民社党の春日委員長が提起されました、日本共産党の宮本委員長に関する戦前の日共スパイ摘発事件についてお尋ねをしたいと思います。  文芸春秋新年号の立花氏の記事の中に、資料として当時の東京刑事地方裁判所の判決文が登載されておりますが、これは当時言い渡された判決内容と同じものかどうかということをお伺いしたいと思います。法務大臣。(発言する者あり)
  182. 稻葉修

    ○稻葉国務大臣 お答えいたします。  雑誌文芸春秋に掲載された判決内容は、原木のものと内容が同じであります。制限漢字になったりしたものですから、全く同じというわけにはいきませんが、そういう点。  それからもう一つは、末尾に「本判決ハ昭和二十年十二月二十九日公布勅令第七百三十号「政治犯人等ノ資格回復ニ関スル件」第一条本文ニ依リ将来ニ向テ其ノ刑ノ言渡ヲ受ケザリシモノト看做ス」と付記されております。「将来ニ向テ其ノ刑ノ言渡ヲ受ケザリシモノト看做ス」ということの意味、法的内容等につきましては、重要なことですから、資料に基づいて解説しなければなりませんから、事務当局にひとつ——小林さんの発言がありましたけれども、資料に基づいての説明でございますから、お許しを願いたいと思います。
  183. 倉成正

    倉成委員 時間の関係上次の問題に移らしていただきたいのですが、本判決文の、私は全部よく読んでないわけですけれども、刑事事件に関する部分はどのような内容のものか、ひとつ簡潔に、これは刑事局長からで結構ですからお答えをいただきたいと思います。
  184. 安原美穂

    ○安原政府委員 相当、判決自体は長文でございますので、その要旨を申し上げたいと思います。  本件判決の事案の概要は、昭和八年、当時日本共産党中央常任委員であった宮本顕治氏らは、当時の党中央委員大泉兼蔵、同小畑達夫氏にスパイ容疑があるとして査問処分を行うことを決定し、袴田里見、秋笹正之輔、逸見重雄、木島隆明及び木俣鈴子氏と共謀の上、同年十二月二十三日、右大泉、小畑両氏を東京市渋谷区内のアジトに誘致し、針金等で手足を縛り、目隠し、さるぐつわをして押し入れ内に監禁し、さらに殴る、ける等の暴行を加え、右小畑を翌二十四日外傷性ショック死により死亡するに至らしめ、死体を床下に埋没、遺棄した。(発言する者あり)なお、その際、正当の事由なく無許可で実包を込めた拳銃一丁を携帯したという事実と、そのころ宮本顕治氏らは党中央印刷局員大串雅美氏にスパイ容疑があるとして前同様査問処分を行うことを決定し、西沢隆二、高橋善治郎氏と共謀の上、同年十二月二十一日同人を東京市赤坂区内のアジトに誘致し、麻なわで手足を縛り、地下室に翌二十二日早朝まで監禁したというのが事案の概要でございます。
  185. 倉成正

    倉成委員 宮本氏の判決確定及び刑の執行状況を伺いたいと思います。(松本(善)委員議事進行について発言するのが何がいけないのだ」と呼ぶ)
  186. 荒舩清十郎

    荒舩委員長 いま発言中ですよ。(松本(善)委員議事進行について発言を求めているのだ」と呼ぶ)いや、議事進行より、発言しているじゃないか。発言しているのに、何が発言ができるか。
  187. 安原美穂

    ○安原政府委員 ただいま申し上げました事実につきまして、宮本氏は、昭和十九年十二月五日、東京刑事地方裁判所において、いま申し上げた事実を、治安維持法違反、監禁、監禁致死等の罪名によりまして無期懲役の判決を言い渡され、その判決は昭和二十年五月四日、上告棄却により確定いたしております。  判決確定後直ちに刑の執行が開始され、その後、六月十八日、網走刑務所へ移監され、引き続き刑の執行がなされておりましたが、昭和二十年十月九日、刑の執行停止により釈放されているのでございます。
  188. 倉成正

    倉成委員 宮本氏は、終戦後、政治犯人の釈放を命じた連合軍の覚書により釈放されたというが、いわゆる政治犯人に対する戦後の連合軍や日本政府の取り扱いはどうなっているか、お伺いしたいと思います。(発言する者あり)
  189. 安原美穂

    ○安原政府委員 お尋ねの政治犯人の取り扱いにつきましては、終戦後の昭和二十年十月四日、日本占領中の連合国軍総司令部は、政治的、社会的自由に対する制限除去に関する覚書を発出いたしまして、政治犯人の釈放等を命じ、これに伴って日本政府は直ちに治安維持法違反等の罪により身柄を拘束されていたいわゆる政治犯人を釈放し、次いで同月十七日、勅令五百七十九号大赦令等による恩赦の措置をとっているのであります。引き続き、同年十二月十九日に連合国軍総司令部が釈放政治犯人に対する選挙権の回復に関する覚書を発出し、政治犯人の資格回復措置の促進を命じましたので、日本政府は同月二十九日、勅令七百三十号「政治犯人等ノ資格回復ニ関スル件」を公布し、さきの大赦令等により資格を回復しなかった政治犯人等についても資格を回復するとの措置をとっている、というのが全般的な措置でございます。
  190. 倉成正

    倉成委員 宮本氏を勅令七百三十号による資格回復者として取り扱っているというが、その経緯はどうなっておるわけか、お伺いしたいと思います。
  191. 安原美穂

    ○安原政府委員 ただいま申し上げました資格回復に関します勅令七百三十号は、治安維持法等の罪が刑法の罪名に触れるとき、またはこれらの罪の行為の手段もしくは結果に当たりますときはその限りではないとし、通常の刑法犯を犯した者につきましては資格回復の対象外としておるのでございまして、先ほど申し上げましたように、宮本氏の罪名は刑法に触れるわけでありまするから、勅令七百三十号の文理上は、宮本氏は資格回復者には当たらないというふうに解釈されるのでありますが、宮本氏の判決原本には、ただいま御指摘のように「本判決ハ昭和二十年十二月二十九日公布勅令第七百三十号「政治犯人等ノ資格回復ニ関スル件」第一条本文ニ依リ将来ニ向テ其ノ刑ノ言渡ヲ受ケザリシモノト看做ス」と付記されております。したがいまして、同氏につきましては資格が回復されたものとして取り扱うことに至っていることは、これまでも申し上げているところでありますが、それに至る経緯につきましては、当時占領下のことでもありまして、種々の事情があったようにうかがわれ、何分三十年前の古いことでもございますので、現在調査中であります。
  192. 倉成正

    倉成委員 本件の経緯につきましては、いやしくも本会議であれだけの発言があった以上、国民が深い関心を持っていることは事実であります。その疑惑を晴らすためにも十分その真相を明らかにする必要があると思いますが、政府の善処をお願いしたいと思います。  時間がありませんので最後に、今日は、総理施政演説で言われているとおりに、歴史的な転換期を迎えている。いままでは高度成長を中心にして経済が先に走り、政治がこれについていったというきらいがあるわけであります。しかし、いまや日本をめぐる環境も変わり、経済も低成長期に入った今日、政治がいまこそ本来の姿を取り戻して経済をリードしていかなければならない。自由と民主主義を守るために勇気をもって前進していかなければならないと思います。三木総理の一挙手一投足を国民は注目しておるのでございます。国民とともに歩む政治を、三木総理、これからどのようにやっていかれるつもりか、決意をお伺いして、私の質問を終わりたいと思います。
  193. 三木武夫

    三木内閣総理大臣 戦後三十年、その間に国民は政権を、保守党といいますか自民党にゆだねたわけであります。それは一つには、国民党の持っておる自由、民主の精神というものが理念的に国民の支持を受けておる。もう一つは、国民の望んでおるものは、革命的な変革ではなくして安定のある進歩を望んでいる、ある意味において保守による改革を国民が望んだということだと私は思います。しかし、やはりこういう激動期でありますから、現状に自民党が甘んじておるならば、これはやはり国民の支持は受けられない。国民自民党を支持してきたのは安定の中における進歩である、停滞ではない、こういうことを心して今後自民党国民負託にこたえていかなければならぬ、非常な強い責任を感ずるものでございます。
  194. 稻葉修

    ○稻葉国務大臣 宮本氏の事件につきまして本会議でも、またきょうは予算委員会におきましていろいろお尋ねを受けました。これに対して私からも事務当局からも答弁をいたしましたが、まだ疑問はお残りになっていると思います。なぜ勅令七百三十号により刑法犯を伴う者が資格回復したか、その経緯について国民の間には疑惑というか疑問が残るかとも思われまするので、その真相について十分調査し、可能な限りこれを国民の前に明らかにするようにいたしたいと存じます。
  195. 倉成正

    倉成委員 これで終わります。
  196. 荒舩清十郎

    荒舩委員長 これにて倉成君の質疑は終了いたしました。  次に阿部助哉君。(「松本君の議事進行はどうしたんだ」と呼ぶ者あり)松本君の議事進行は共産党の持ち時間のときにどうぞおやりください。  阿部助哉君。
  197. 阿部助哉

    阿部(助)委員 三木総理、社会的不公正の是正、対話協調政治浄化などといった大変耳ざわりのいいプラカードをかついであなたは登場されました。高度経済成長から安定成長への転換を図ることを目指して、これは第二年目であります。実態は三木総理の正面の公約と異なるけれども、三木内閣が発足以来わが国の政治は急激に近来の歴史を画する大転換を遂げつつあります。     〔委員長退席、井原委員長代理着席〕  そこで、本日はきわめて限られた時間でありますので、私に割り当てられた財政の分野、第一には当面の不況対策、第二に不公正是正と五十一年度税制について、第三に社会保障政策について、そして最後に赤字公債に関して、それぞれ私は動かしがたい事実を挙げて、三木総理政治理念とまたそれがどのように実行に移されるかを明らかにしたいと思います。  三木総理はみずから議会の子と言われるが、あなたの今日は並みの議会の子ではございません。総理大臣として、主権在民を基本とするわが国の議会の意思を、やる気になれば一〇〇%政策化して実現できる地位にあるわけであります。またさらに、行政各部の官僚を正しく指導して、議会の意思をすべて行政に反映させ得る力をお持ちなわけであります。  私は、以下、そういった総理の持つ力の可能性を前提として質問をいたしますので、総理においては法規の言いわけ的なことではなしに、またその場逃れ答弁ではなくして、簡潔にイエスかノーかという形でお答えを願いたいと思います。  そこで私は、第一の問題といたしまして不況対策についてお伺いをしたいと思います。  昨年春闘が終わった五月から三カ月間、勤労者の実質的な賃金は連続して低下をいたしました。こんなことはヨーロッパでは見ることができないのです。昨年はボーナス・ゼロという中小企業も少なくございませんでした。失業者は、政府発表でも百万を超えております。実際に出かせぎに行けないというような人々の失業を加えれば、三百万とも四百万ともいま言われておる現実であります。また、いま就職をしておる人たちでも、いつ首になるかという不安に駆られているわけであります。先ほど来お話がありましたように、昨年一年間の倒産件数は、負債金額一千万を超えるもので実に一万二千件という、いまだかってない大きな倒産を記録しておるのであります。その内容を見ますと、資本金五百万円以下の企業及び個人で七六・九%を占めておるわけであります。そうして、その倒産の原因の最も多いのは販売不振であります。そうして、いま自殺者まで出ておるという現実は、もう連日の新聞等でこれは総理も御承知だと思うのであります。  これはほんの一例でありますけれども、新聞の記事をちょっと読んでみますと、東京江東区で母子心中があった。新築の家の借金苦が原因だ。そうして八歳の長女の引き出しに、「そんなにいそがしいのなら、わたしたちをつかってください。死なないでね」といった母親あての手紙があった。この子供にすらもう死の予感があったといわれておる。こういうことを考えてみますと、三木さんは役人のつくったところの平均的な数字だけで政治をやってはならないと私は思うのであります。  今日、数百万世帯に上る老人世帯、母子世帯、生活保護世帯の現状は極度に悪化しておるわけであります。戦後最大の不安であります。政府が昨年二月以降四次にわたって不況対策を立てられた。しかし、依然として景気はよくなっていないのであります。福田さんは、いまによくなる、いまによくなると、こう言うけれども、依然としてこれはよくなっていない。その一番大きな原因は何か。私は端的に総理にお伺いします。
  198. 三木武夫

    三木内閣総理大臣 これは、日本の経済は世界経済と切り離して考えられない。世界的な不況というものも大きな影響があると思いますが、日本においても非常な異常なインフレの中にあって、インフレを抑制しなければ日本経済はもう破綻に瀕するという状態であったわけですから、総需要抑制という政策をとってインフレを抑制をした。それなら景気を維持して、インフレというものは多少インフレ抑制というものに重点を置かなくても景気をある程度維持したらどうかというそういう議論もあるかもしれませんが、それは日本経済を破綻させる道である。政府は第四次にわたって不況対策をとりながらも、一方においてはインフレを抑制しなければならぬということに重点を置いた。そういうことが、世界的不況という背景のある上に、経済活動というものに対して総需要の抑制政策というもの、経済活動がある程度制約下に置かれたというようなことが相まったものだと思います。
  199. 阿部助哉

    阿部(助)委員 どうもさっぱりわからないですね。私はそれば違うと思うのです。戦後一度も経験したことがない個人消費の低迷であると思います。GNPの五〇%を超える個人消費の回復を抜きにして景気の回復があるはずがないのであります。これは通産省の小松事務次官でさえ、政府が第四次にわたる不況対策を打ち出さざるを得なかったのは、個人消費の動向についての判断を誤ったのが最大の理由である、彼もこう述べておるのであります。  いま国民は、所得の低い層ほど食費まで切り詰めて貯蓄に回そうとしております。ところが、諸外国の例を見れば、軒並みに個人消費の特別の施策を施しておるのであります。アメリカで減税をやっておることは総理も御承知のところでありましょう。フランスでは、九月発表した景気刺激策は画期的なもので、臨時措置として、老齢者、身体障害者及び児童に対する社会給付金支給をしており、また、病院、低所得者向けの公営住宅建設等にも重点が置かれておる。ヨーロッパの各国は、ほとんど大同小異、同じように個人消費の引き上げに努力をしておることは、皆さんの、政府のこの刊行物でもちゃんとこれは述べておるのですよ。しかし、日本ではこれは違う。個人消費の問題はさておいて、やれ公共事業だ、あるいは貿易という対外に依存しよう、こういうことであります。  私は、不況の立ち直らない一番いろいろな問題を起こした原因は、昨年の春闘で賃金を抑制したことだと思うのであります。第二には、社会福祉を敵視をして国民に不安を与えた。第三に、景気が上がる上がると言って、幾たびも言うけれども、さっぱり上がらない。そうして、これだけいろいろな失敗を犯したけれども、責任をとった閣僚は一人もいない。政治不信がつのる。そうして国民は自己防衛のために消費を切り詰めておる。これが私は原因だと思うのですが、総理、違いますか。
  200. 三木武夫

    三木内閣総理大臣 こういう経済的な混乱を呼んだ原因、まあ石油の値上がりというものが大きな導火線になっておることは明らかですね。日本ばかりではないということ、世界各国とも今日不況に悩まされていない国はないということ。GNPでもプラスというのはわずかに日本だけである。アメリカも西欧諸国も皆昨年は二%程度のマイナスである。ゼロからマイナスになっておる。その中で、日本だけが先進工業国の中では唯一のGNPがプラスの国であると、昭和五十年度はそういうふうに見込まれておる。皆マイナスである。  そういうんですから、世界的な不況、これは日本が輸出貿易においても不振にならざるを得ないというんですから、余り経済を日本だけで、世界経済と切り離しては考えられない。国際的要因というものもあるということは、これは阿部君も当然にお考えになることだと思うわけです。  そこで、各国とも個人消費というものを景気吸引のこれが原動力にしようという政策をとっておる、日本はなぜとらないかということですけれども、日本のような資源の少ない国で景気回復の政策に個人消費をあふるということは、私は、政策として問題があると思いますね。やはり国民の生活が非常に堅実になってきつつある、このことは悪いことではない。個人消費の問題も、だんだん落ちついてまいりますれば、もう少し伸びてはいくでしょうが、昔のように大量、使い捨てというのでなくして、何か物を大事にしようという国民のそういう堅実な消費の態度というもの、これがあらわれてきておる。ここで日本のような資源の少ない国が個人消費を景気刺激の原動力にしようという政策に対しては、政府はちゅうちょせざるを得ない。また、個人消費というものは全部需要に回るというわけではない。御承知のように、貯蓄性向は世界の中でも日本が一番高いわけですから、むしろ阿部君の御指摘のように、私どもは一日も早く景気を回復させなければいかぬ。雇用の不安定を呼ぶし、企業経営というものを非常にやはり不安定なものにする。  そのためには、公共事業のような、もうすべてが需要喚起に回るようなことが、政策の選択としてはその方が賢明なのではないか。それはやはり減税案も相当に検討されたわけです。けれども、やはり政策の選択としては、公共事業また輸出貿易、こういうものを中心として景気の回復を図ろうという選択をいたしたものであって、私は、この選択が日本の国情に照らして、それは間違った選択であるとは思っていない。
  201. 阿部助哉

    阿部(助)委員 総理は、公共事業を中心にして、上から大企業が景気になる、雇用が伸びる、そして行く行く個人消費が伸びて景気になる、こういうお考えでしょう。個人消費が伸びなければ設備投資をする民間企業はないんです。消費があるから企業が興るんです。あなたは上からやろうとするけれども、風が吹けばおけ屋がもうかるという言葉があるけれども、それはネズミがおけをかじってくれなければもうからないんですよ。行く行くはそうなるという期待を持つけれども、いま当面しておるこの不況を直すために、外国は個人消費を伸ばそうとしておる。あなたは個人消費を伸ばすんではなしに、大企業中心の公共事業によってこれを伸ばそうとしておる。  それならば私聞くけれども、大体これだけの財政の赤字を出した、その責任は一体どうするんです。これだけの赤字を出しながら、皆さん責任をとるという人は一人もいないじゃないですか。それなしに政治不信の解消なんというものはこれはあり得ないですよ。大平さんは痛いほど責任を痛感しておるなんて言ったって、国民は誰もわからないですよ。倉成さんじゃないけれども、各家庭でテレビを見ておる人は、一体、大平さんの腹の中わかる人いませんよ。私にもわからない。口先だけで責任責任と言ってみたってだれもわからない。個人消費を伸ばさないということで今度の春闘にまた立ち向かうつもりですか。昨年は、福田総理の言を借りれば、神に祈るような気持ちで賃金の抑えつけをと、こうやられた。しかし、もう財界でも、個人消費を伸ばさなければ景気が直らないという意見が出ておる。そういうときに私は、福田さんはあまり最近は賃金問題に触れられないけれども、腹の中では神に祈るような気持ちで一〇%以上のベースアップを期持しておるのじゃないか、こう思う。総理、それでも個人消費に目をつぶって、大企業へ走るつもりでおりますか。総理
  202. 福田赳夫

    福田(赳)国務大臣 私の名前が出ましたので、私からお答えをさせていただきます。  私は昨年も申したのですが、賃金決定には政府として介入しません。ことしもいたしません。しかし私は、昨年の賃金交渉が労使の間でどういうふうになるか、これは本当に妥当な解決になるように、神様にお祈りするような気持ちでこれを見詰めておったのです。おととし三三%賃上げだ、その前の年は二〇%の賃上げだ、その勢いで、昨年のあの時点での賃金決定というものがその惰性で決まったということになったら、これは私は日本経済再建というようなことにつきましては、考えられる余地がないくらい深刻な事態になったと思うのです。もし、あれが一昨年や一昨々年の惰性で決まったとしたら、企業の状態、今日は大変な状態だったと思う。それから賃金と物価の悪循環、これはもうとめどもない。不況対策、不況対策と言うけれども、いまごろ不況対策を論ずるようないとまはなかったと思うのです。私は、非常に昨年は結果はよかった。ことしもまた労使が良識を発揮いたしまして、妥当な水準の決定をしてくださる、これを昨年の経験にかんがみて確信をします。それを期待しておるわけです。
  203. 阿部助哉

    阿部(助)委員 政府はいろいろなことを言ってその場逃れをするけれども、昨年は政府はいろいろな形でガイドラインを主張し、いろいろと圧力をかけた、こう国民は見ておるわけです。都合が悪くなると、干渉はいたしません、こう言う。まあそれならそれでよござんす。しかし、昨年は皆さんが予算編成に当たって、賃金は幾ら上がるだろう、それによって税収は幾ら伸びるだろうというそろばんを皆さんはちゃんと立てた。ことしは、それならば税収の収入の面からいって、また経済運営の面からいって、どの程度のベースアップがあるだろうと見ておられるのか。総理、それをお伺いしたい。
  204. 三木武夫

    三木内閣総理大臣 労使の賃金というものに対しては政府は介入をしない、したがって、これは労使間が国民経済全体をにらみ合わせて節度のある決定をしてもらいたいと思うのですが、政府がここでガイドラインのようなものは持っておらないわけです。しかし、今日の経済状態からしてそう大幅なベースアップが行われるとは私は思わないけれども、幾らぐらいが適当だというガイドラインは政府は持っておりません。
  205. 阿部助哉

    阿部(助)委員 ガイドラインをとっておる、とっておらないというものは、私は別枠に置いてあるのですよ。私は、昨年は皆さんはガイドラインをしいた、こう見ておるけれども、労使の間の問題であるからそれには触れないと言って逃げておられるから、私はその問題を抜きにして、それならば予算編成に当たってどれだけの賃金上昇を見込んでおるのか、こう聞いておるのです。あなたにわからぬなら、大平さんでいいです。
  206. 大平正芳

    大平国務大臣 今度の税収の見積もりに当たりましては、雇用者数は一%ふえる、雇用所得の水準は二・八%増という前提で計算いたしてあります。
  207. 阿部助哉

    阿部(助)委員 まあ雇用所得の伸びであるとか超過勤務の伸びだとかいうことで皆さんは大体一三%を予定しておる。実際はベースアップは大体一〇%ぐらいだろう、こう言っておるのでしょう。こういうことでしょう。そういうことですね。——じゃ、もう一遍確かめます。
  208. 大平正芳

    大平国務大臣 だから、雇用所得総体として一三%程度を考えております。
  209. 阿部助哉

    阿部(助)委員 私は、そういたしますとやはりそれに見合う所得減税をすべきだと思うのです。所得減税をしなければ、一〇%ベースアップをした場合には、低所得層ほど税金の負担は重くなるのです。  いま財界が、ガイドラインとも言わないのですね、最近はゼロから一けた以内ということでガイドゾーン、こう言っておる。私は、やはり皆さんは個人消費の問題を考え、低所得層の苦しみを考え、これを撤廃するように勧告すべきだと思うのですが、その意思はございませんか。
  210. 三木武夫

    三木内閣総理大臣 経団連は経団連ですけれども、いろいろな見解があるでしょう。言論、発表、いろいろ自由でございます。政府はこれをとめるというわけにはいかない。私は、やはり日本の労使というものは非常に賢明でありますから、したがって、これは恐らく妥当な賃金の交渉の妥結を得るものである、やはり民間の労使関係というものは非常に国民経済全体を考えて賢明な妥結を図るものだ、こういう考えでございます。
  211. 阿部助哉

    阿部(助)委員 私は次に移りますけれども、いまのような形で、一方では公共投資主導型、また外国への輸出を中心にしていこう、こういう形でいった場合、日本経済は、国内の市場に期待しないでいくということになると、ますます奇形的な経済ができ上がると思うのです。私たちの言葉で言えば、ある意味では帝国主義的な経済へ移行せざるを得ないわけであります。私は、この政策は必ず失敗するだろうし、また、日本政治を危険な方向へ導くものだということだけを指摘して、次に移りたいと思います。  次に、税についてお伺いいたします。税制は政治の顔であると言われております。私は、今回は法律問題とか技術的なことではなしに、総理の理念と決断についてお伺いするので、総理からお答え願いたいのであります。  政府は昨年、間接税を増税し、ことしは所得税の減税を行わなかったのであります。そのために、低所得層ほど税負担は重くなっております。不公正の拡大であります。昨年も私、当委員会で指摘をいたしました。大臣、総理のところには大蔵省からの資料が行っておるはずであります。この資料が行っておると思うのですが、たとえば年収百万円の収入が一〇%上がって百十万円になりますと、税金は一万九千円から二万八千五百円に上がってくるのです。急増するのです。ところが、高額所得者になりますとその割合は大変少なくなってくるのであります。このように、低所得者に重くなる仕組みに日本の税の仕組みはなっておるのです。その上に物価の値上げ、社会保障関係の負担の増加であります。なぜことしこういう人たちに所得税減税を行わなかったのか、まずお伺いしたいと思います。
  212. 大平正芳

    大平国務大臣 先ほど倉成委員にもお答え申し上げましたように、税負担の問題は単年度で考えなくてならないというものではないと存じまして、過去数次にわたりましてわが国では年々所得税の減税を行ってまいりましたし、一昨々年から一昨年にかけては二兆円の減税を実行してまいりましたこと、阿部委員も御承知のとおりでございます。したがって、私どもといたしましては、ことし所得税の減税を見送らしていただきましても国民の理解は得られるに違いないという判断をいたしました。何となれば、公債に依存した財政を担いまして、極力健全な財政原則を貫いていく努力を重ねておるときでございまするので、ことしの減税につきましてはしばらく御遠慮いただこうということにいたしたわけでございます。
  213. 阿部助哉

    阿部(助)委員 国民が理解してくれるだろうとおっしゃるけれども、これは理解ができませんよ。それならばなぜ一体大企業や金持ち優遇の税制を直さないのです。国の財政が足らない、だから低所得の人たちもこれでがまんしろ、こうおっしゃるけれども、大企業や金持ちの方に減税をすることは何もないじゃないですか。不公正の拡大じゃないですか。金持ちの方にも出してもらうものは出してもらう、そうして貧しい人たちにも応分の御協力を求める、こういうことならばそれは理解するかもわかりません。  じゃ私は次に聞きますけれども、まあことしは会社臨時特別税の廃止をいたしました。千八百億円の減税であります。特別措置の手直しをいたした、こうおっしゃっておる。これによる増税額は百五十億円であります。つり合いがとれないじゃないですか。この事実をあなたは否定されるのですか。
  214. 大平正芳

    大平国務大臣 なるほど会社臨時特別税は延長をお願いすることにはいたしませんでしたことは御指摘のとおりでございます。これは申すまでもなく立法の趣旨がそういうことになっておりましたので、素直に立法の趣旨に従ったまででございます。もしそれでないとすれば、政治は便宜主義に陥ることを恐れたからでございます。  それから特別措置の整理でございますけれども、これは先ほど倉成さんにもお話し申し上げましたとおり、ことしは相当勉強いたしたつもりでございます。平年度、交際費の課税強化もございまして、千百五十億円の増徴をこの整理を通じて期待することにいたしておりますので、百五十億というのは、法人の事業年度の関係で初年度それだけしか期待できないということでございますことは、阿部さんも御承知のとおりと思います。
  215. 阿部助哉

    阿部(助)委員 何とあなたが言いわけをしようと、この事実は動かせないのです。あなたはいまも、ことしは鳴り物入りで特別措置の手直しをした、こう言っておるけれども、大物については全く部分的な修正、全く手を触れてないということである。私は、あなたが全面的な相当な手直しをした、こうおっしゃるならば、具体的な項目についてお伺いします。これは私は総理から御答弁を願いたい。  第一に公害防止準備金であります。なぜこれを一体全廃しなかったのです。こんな税制は世界じゅうどこにもないのですよ。公害をまき散らすことを条件にして減税をしておる。公害を出さない企業は減税の資格がないのですよ。どろぼうに追い銭というのはまさにこのことなんです。不公正是正、こうおっしゃる三木さん、こんなことができないはずないじゃないですか。直ちに廃止すべきだと思うのですが、これは総理の理念と決断を私は期待して答弁を求めます。
  216. 三木武夫

    三木内閣総理大臣 大蔵大臣から答弁いたします。
  217. 大平正芳

    大平国務大臣 現行の公害防止準備金制度は、不況期におきましても平準的に公害防止費用を支出することができるような状態を確保するために創設されたものであることは、阿部さんも御承知のとおりでございます。売り上げ高を基準に準備金の積み立てが認められておりまして、その取り崩しにおいて、当該企業の具体的な公害防止費用の支出の結びつきが不明確でございますので、単なる利益留保的な準備金となっており、税制の立場からいって余り感心できない制度であることは事実でございます。  今回、税制、特別措置の合理化の一環といたしましてこれを再検討いたしたところでございますが、公害対策の緊急性がなおきわめて高い状態でございますので、公害防止設備の特別償却制度につきましては、その他の特別償却制度の償却割合を一般的に削減いたしましたにもかかわらず、その償却割合を特に現行のまま据え置くことといたしました。  それから第二に、公害防止準備金につきましては、上記の問題点も踏まえましていろいろ検討を行いましたが、これという改善策がなかなかむずかしい、見つけ出すに困難を来しましたが、結局、繰り入れ率を大幅に縮減いたしまして現行の二分の一に引き下げた上、適用期限を二年延長するということにいたしたわけでございます。  以上でこの制度についての改定につきましては御理解をちょうだいしたいと思います。
  218. 阿部助哉

    阿部(助)委員 まあ大平さんもわりかし正直に、感心できない準備金である、こうおっしゃった。全くこれは感心できないなんというものじゃないんです、総理。それで、この準備金の効果はどうあるんだ、こう私は資料を要求しても出てこないのです。これは出るはずがないのです。こんな悪税を、ただ大企業、公害を出す、特にこれは鉄鋼、化学産業であります。税金をまけてやらなければならないということ。片っ方では低所得層はいま物価で、税金で苦しい、そういう人たちのおる反面、なぜこんな政策効果を持たない税金を温存しなければならぬのか。私はもう一遍総理の決断をお伺いします、廃止するなら廃止すると。
  219. 三木武夫

    三木内閣総理大臣 この件について私も説明は受けたのです。いろいろ問題はあることはわかります。研究さしてみます。
  220. 阿部助哉

    阿部(助)委員 大平さん、私ことしすぐ、こういう財政状態だからこの委員会でこれを直せ、こう言いたいんだ。少なくとも、百歩譲って、来年はこれは直しますね。廃止しますね。
  221. 大平正芳

    大平国務大臣 なお十分検討いたしてみます。
  222. 阿部助哉

    阿部(助)委員 検討、検討と言ったら、検討というのは何のことかさっぱりわれわれにはわからぬのですよ。これくらいのものを不公正是正を看板にする皆さんがやれないはずがないのですよ。技術的なことじゃないのです。しかもあなたは、先ほど来、税調に諮って、税調に諮ってと言うけれども、税調は大蔵大臣の諮問機関じゃないのですよ。総理大臣の諮問機関なんですよ。何もわからないであなたは諮問しておるわけじゃないでしょう。これくらいの問題が結論を出せないような総理大臣じゃどうしようもないじゃないですか。総理答弁を求めます。
  223. 三木武夫

    三木内閣総理大臣 二年間延長したわけですから、二年という期間がたちましたならば、これは検討をいたしまして合理的な解決をしたいと思っております。
  224. 阿部助哉

    阿部(助)委員 全くあなたはそんなことをやっておって、片っ方はきれいごとで不公正の是正をいたしますと、こうりっぱな看板を掲げた、それでこんな政策効果もないこんなものを二年間も残す。大体二年間、あなた総理大臣の席に着いておるかどうかわからぬでしょう。こんなものを直す勇気がない三木総理に不公正是正なんということはもう言ってもらいたくないと思うのです。  私は、じゃもう一つ次にお伺いしますけれども、交際費でありますけれども、四十九年の交際費が一兆九千億を超えたと国税庁は発表しておるのであります。いま新聞の見出しを見るまでもなく、日本は交際費天国だ、こう言われておる。勤労大衆が生活にあえぎ、老人や身体障害者が苦しんでおるとき、なぜ一体これをせめてヨーロッパ並みに一件別に規制をされないのです。なぜ一体買収、供応の費用まで税金でめんどう見なければならないのですか。  具体的に言えば、外国では料亭であるとか——料亭というのは余りないみたいですけれども、バーやキャバレーでの支出は認めないというのが普通であります。一回の支出の最高は一万以上なんという国は余りありません。たしか西ドイツでは交際費は全額課税にしようという計画がある。もう実施しておるかもわかりません。そういう外国並みにこれを直すというくらいのことは当然であります。まあことし少し手直ししたなどというようなことで国民が納得するはずもないのであります。一兆九千億という大きな金ですよ。大平さんじゃないけれども、財政が窮迫しておるから所得減税すらやらないと言う。こういうときに、なぜ一体これを全額課税対象にしようとされないのか。これは税制の技術上の問題じゃないのです。政治姿勢の問題だ。総理いかがですか。——これは総理ですよ。いつからあなた総理になったのですか。
  225. 大平正芳

    大平国務大臣 私から、所管でございますので……。  政治姿勢の問題として阿部さんがとらえられておることはよく理解できます。さればこそ、政府も数次にわたりまして交際費の課税につきましては強化してまいりまして、ただいま損金不算入割合は七五%になっておりますことも御案内のとおりでございます。これを今度は八〇%に引き上げることにいたしたわけでございます。また、基礎控除の場合に千分の〇・五に減らすという措置も講じたわけでございます。この交際費の支出でございますが、なるほど一兆九千億余りございますけれども、これを分解すると、中小法人が一兆三千三百億、大法人が五千八百億ということになっておるわけでございます。それで、これは一挙に強化すべしというお説でございますけれども、漸次強化してまいっておるわけでございまして、急激に経営に改変を加えるということもいかがかと存じまして、毎年毎年逐次強化して今日に至っておりますことは御理解をいただきたいと思います。
  226. 阿部助哉

    阿部(助)委員 交際費の金額はあなた毎年ふえておるのですよ。ことしは二兆円を超えておるはずであります。私は、これが高度成長の時代ならば、あなたのおっしゃるように、毎年何がしか直していくという漸進的な方向を是認したかもわかりません。しかし、今日あなたがあれだけ大きな、私に言わせれば憲法違反の赤字公債を発行してまで、そうして先ほど来言うように、低所得層の減税まで抑えておる。一体財政当局として、私はそれよりも三木内閣政治姿勢として、こういうものをこの程度の手直しで国民は納得するわけじゃないと私は思うのです。三木さん、もう少し思い切ってこれは廃止したらどうです。そして、皆さんはこのときにこういう問題が出ると、すぐ中小企業、中小企業とおっしゃる。私は、規制をするなら全面的な規制を要求するものであります。国民の大方はそれを望むと思うのであります。私はこれを全部課税対象にしてこそ、大多数の国民は拍手喝采で賛意を表すると思いますが、いかがですか。
  227. 三木武夫

    三木内閣総理大臣 この問題はいままでの経緯もあるわけですから、阿部君の言われるような革命的な変革ということはできませんが、しかしこの問題は、御指摘のようなことは私もよくわかります。この交際費の課税ということに対しては、今後とも一段と強化をしていかなければならぬ対象であることは私も認めます。
  228. 阿部助哉

    阿部(助)委員 私は、いま財政の立場から言って大変な大転換のときだからこう強く申し上げるわけです。私は本当に不満であります。  昨年、私はこの委員会で利子課税についてお伺いしました。利子は大変大きいのです。私のところに最近の資料はございません。四十七年一年間で五兆五千億も利子が支払われておるのです。恐らく今日であれば年間十兆円くらいの利子が支払われておると私は思うのであります。しかし、この大部分が税金がかからなかった、あるいは脱税をされておるのであります。私は昨年もこれを総合課税にすべきであるということを要求しました。私は特に銀行の名寄せの問題を取り上げて申し上げた。私は、やはりあれは違法だ、こう思うのであります。そういう違法なことをいつまでも温存することはないじゃないですか。昨年私はこの委員会でやった。違法なものはすぐ直さなければいかぬのです。一年たった今日何にも手を触れてないということは一体どういうことなんです。これは約束違反だと私は思うのです。なぜ一体手直しをしないのです。部分的な手直しでもここですべきだった、私はこう思うのですけれども、全然手を触れないというのは一体どういうことなんです。
  229. 大平正芳

    大平国務大臣 御質問は、四十五年の税制改正に当たって利子所得について総合課税と源泉分離課税との選択制度が導入されました際に、利子所得に対する課税を円滑に行うために国税庁と銀行局との間の覚書が交わされた経緯がございます。阿部さんはそれは違法ではないかという御指摘でございますが、私どもが違法なことをやることはないわけでございまして、違法なものとは考えていないのでございます。この覚書は、新制度が事務的に円滑に実施されるよう念のためにつくったものでございまして、その内容が違法であるなんということは毛頭考えておりません。しかし、覚書作成後相当な期間が経過いたしまして、支払い調書の提出もその後実行されておりますし、一方、覚書の存在が、法令のほかに特殊の了解事項があるのではないかという誤解を生ずるおそれもございますので、この件につきましては、昨年の十二月をもってもう廃止をいたしておりますことを御報告申し上げます。
  230. 阿部助哉

    阿部(助)委員 あなたは支払い調書が出ておると言うけれども、依然として支払い調書は支店別に出されておるじゃないですか。そして税務署へ行けば税務署はそっくりそのまま倉庫へしまってあるだけじゃないですか。なぜ一体総合課税にしないのですか。総合課税が原則なんです。私が言うまでもなく、あなたは専門家でしょう。なぜ一体それをしないのかと言うのですよ。私は直ちにそういう形のものをやるべきだと思うのです。五年間を待つなんということは大間違いであります。  それならば聞くけれども、利子と並んで配当課税についても、これはもう論議し尽くされておると言っても言い過ぎではないと私は思うのであります。利子、配当という金持ち優遇、不公正税制ということはもう論議し尽くされておるのですよ。なぜこれを分離課税にするのです。これは分離課税にすれば、年収一千万円以上の人たちが大変有利になっていく。一銘柄十万円ぐらいの配当は申告すら必要がない。株の値段でいけば恐らくは四百万円程度でありましょう。一銘柄三百万、四一万という銘柄を何百銘柄持ってみたって、この人は何も申告すらしなくたっていいなんという、こんな不公平な金持ち優遇の税制はありません。なぜ三木内閣で不公正是正と言いながらこういうものに手をつけないのか。私は当然これは処置すべきだと思うのですが、総理いかがです。これは常識問題ですよ。
  231. 三木武夫

    三木内閣総理大臣 常識と申しましても、これにはいろいろなやりにくい点もあるわけです。たとえば架名預金の問題、この把握をしにくいわけでございますから、そういう点で、これは総合課税にせよということはごもっともな議論だと思います。しかし、それを実際に実施するのにはいろいろ困難な、いま申したような事情もありますので、どういうふうにしてそういう困難を乗り越えて実態を把握できるかというのには、もう少し研究が要ると思うわけでございます。お説はごもっともだと思います。
  232. 阿部助哉

    阿部(助)委員 お説はごもっともだけれども、さっぱりやらないのじゃ問題にならない。それよりも源泉分離課税の制度については、これは皆さんの大蔵省の書類ですよ、選択税率は二五%から三〇%に上げてあります。少し重くしたのです。ところが今度は、源泉徴収税率の方は本則二〇%を一五%に軽減しておる。あなたがこれは直さなければならないというお考えならば、なぜ一体この税率を引き下げなければならぬのか。あなたの言っておることとやっておることは全くうらはらじゃないですか。これは税の技術の問題だとかなんとかではないのです。あなたの政治姿勢に関する問題なんです。私は、この辺は総理としてきっちり言うべきだと思うのです。
  233. 三木武夫

    三木内閣総理大臣 一般の源泉徴収は一五%にしておるわけです。これを直ちに二〇%にするということは、これは研究をいたさないと、ここでお約束はできません。
  234. 阿部助哉

    阿部(助)委員 私は、だから先ほど来申し上げておるように、技術的な点や何かを聞くのじゃなしに、せめて方向だけでも総理として出すべきだ、こういうことを言っておるので、それすら言えないというのじゃ余りにもお粗末じゃないですか。私は、あなたの政治姿勢としての理念を聞いておるのだから、いつからどうだということまではここでは詰めません。方向をあなたは答弁すべきです。
  235. 三木武夫

    三木内閣総理大臣 いまの前段についても、総合課税にいたしますような方向で検討すると申しておるわけですから、この問題についても一般の源泉徴収は一五%になっておるというのですから、こればかりの関連ではないわけです。一般との関連がありますから、この問題に対しては将来検討をいたしますというふうに申しておるのであって、これは何もそのままでおくというわけではない、検討してみましょうということですから、一応の方向はお答えをしておる。
  236. 阿部助哉

    阿部(助)委員 私は大変不満であります。本当に三木さんがいまの財政事情を考え、またあなたの公約の不公正是正ということで、私は大いにあなたを激励しておるつもりなんだけれども、あなたはさっぱりそれにこたえようとしない。全く私は情けなくなるわけであります。  私は、それにしても、政府の最近の文書あるいはまた施政演説を見ておると腹が立ってくるわけであります。最近は、どこを見ても福祉国家なんという言葉は消えてしまいました。高福祉という言葉も消えてしまいました。かわって社会保障の精神とは全く相反する言動が多過ぎるのであります。  たとえば財政制度審議会はこう言っております。社会保障につきまして「例えば、国民の保健、医療の問題についてみた場合でも、自らの健康は自らの努力によつて守ることが基本と考えられ、社会保障の諸施策は、これを支え、補つていくためのものであることが明記される必要がある。」。一見あたりまえなんだ。だれもみずから健康を損ねようなんという人はまあないわけであります。それだけれども、本人が努力するけれども、いろいろな環境の中で、苦しい人たち、困っておる人たち、それにどう手を差し伸べるかというのが私は社会保障だと思うのです。みずから努力しろなんというのは、そんなことは言わなくたってわかっておるのですよ。なぜ一体こういうことをおっしゃるのか、私には理解ができない。  また、大平大蔵大臣は新聞の対談でこうおっしゃっておる。「経済や財政状態のいかんにかかわらず、福祉を第一義的道標にすること自体が「病」だ。」、こう言っておるのですね。私は、大平さんの方がよほど病だ、こう思う。これはよほど大平さんの方が私は病気なんじゃないかと思うのです。それがまた今度の五十一年度の予算における社会保障の、私に言わせれば敵視論、こういうことになっておるのじゃないか。  私は、社会保障に対する総理の認識をもう一度お伺いしたいと思うのであります。
  237. 三木武夫

    三木内閣総理大臣 今年度の予算阿部君ごらんになりましても、社会保障関係の予算というものは、こういう相当窮屈な中においてかなり重点を置いた予算であることは御承知のとおりであります。四兆八千七十六億円、二二・四%前年度よりも増しておるわけでございます。予算の伸びに比べて相当な伸び率でございます。公共事業費が三兆五千二百七十二億、二一・二%に比べて、社会保障というものの関係費用は相当にウエートが置かれておる。こういうことから考えてみましても、こういう非常に窮屈な財政の中において、政府がかなり社会保障の重要性に対しては意を用いた予算の編成をしたということが言えると思います。
  238. 阿部助哉

    阿部(助)委員 予算原案ができたとき、これは十二月二十五日、このときの新聞、これは全部じゃありません、幾つか見出しだけ読んでみます。「思いやり忘れた三木さん負担増ずっしり重く 病気ダメ、電車も乗れず“弱者救済”イブに泣く」、こう一番大きな見出しをつけておる。「福祉冬の時代「もう、病気もできぬ」年金もそのまま怒る老人たち」「福祉ブルブル〃北風予算〃 医療も生活保護も次々ゼロ査定値上げパンチを目前に」。これは、いまあなたのおっしゃることとはうらはらに、社会保障に対して財政審や大平さんがおっしゃるのと同じように、当然行わなければ、社会福祉に皆さんが熱意を失ったということを国民が直観したのだと私は思うのです。  大体社会福祉、社会保障というものは、私はそういうものじゃないと思うのです。そのときそのときの政治が、重く見たり軽く扱ったりできる性格のものではないと思うのであります。憲法の条章を通覧するとわかるように、ほとんどの条文は、行政権を持った政府が勝手なことをしないように、禁止したりチェックする規定であります。その中でたった一条、第二十五条だけは、政府に対して積極的な努力を義務づけておるのです。すなわち、その第二項には「國は、すべての生活部面について、祉會福祉、祉會保障及び公衆衛生の向上及び増進に努めなければならない。」こう規定しておるのです。あなたは憲法を守り、発展させるという責任ある地位にある総理であります。そして国の政策としては、経済政策あるいはまた憲法に禁止された軍事費などに優先するものなんです。だから、あなたがもし社会福祉を重視する、こうおっしゃるならば、先ほど読んだような大平さんのこの発言は間違いであるということをあなたはここで言明すべきであります。いかがですか。
  239. 三木武夫

    三木内閣総理大臣 どういう発言をしたか私は……(阿部(助)委員「だから、これ」と呼ぶ)何人といえども、福祉を重視すればこそ大蔵大臣としていまのような予算を編成したわけでございますから、社会福祉を大蔵大臣が軽視しておるとは私は思いません。
  240. 阿部助哉

    阿部(助)委員 だから、あなたがわからないなら後で読んでください。また、先ほど財政審の書類を読んだ、ああいう考えがあなたは正しいと思うかどうか、こういうことなんです。
  241. 三木武夫

    三木内閣総理大臣 私は、これからの政治はやはり福祉の増進ということが政治の大きな目標になる。だから、福祉社会の建設ということについて、どういう形の福祉社会というものが日本の国情に照らして好ましいかということは、お互いにこれから政治というものが追求しなければならぬ課題であると考えておるわけでございます。
  242. 阿部助哉

    阿部(助)委員 あなたがそうお考えになっておるとすれば、先ほど読み上げた財政審の考え方、あるいはまた大平さんの発言はあなたの考えと違うんですね、こう聞いておるわけで、イエスかノーかだけ言ってくれればいいです。
  243. 三木武夫

    三木内閣総理大臣 いろいろな書類を持ってこられて、それを読み上げられますけれども、何人も今日社会福祉というものを軽視する者はあり得るはずはないわけでございますから、それは真意を伝えたものではないと思う。また、さきには、自分の健康については自分が注意すべきであって、それに対して、社会保障というものはその上に保障がなければならぬというようなことは、普通にさらっと読めば、そんなに反福祉政策を表現する表現だとも私は思わないわけでございます。
  244. 阿部助哉

    阿部(助)委員 あなたの感覚がその程度のものであるから、やはりさっき新聞を読み上げたように、お年寄りやそういう人たちはこの予算に対して幻滅を感じたわけであります。そして私は、いま私が申し上げたように憲法の条章を遵守していくという決意をもう一度私は国民の前に明らかにされたい。
  245. 三木武夫

    三木内閣総理大臣 一方的にそういう——何か読み上げられましたけれども、私のところへはいろいろと気を配ってくれてありがとうという感謝の意思表示もあるわけですから、一方的に、いかにも政府が社会保障というものに対して非常に冷たいという宣伝は、それは私は承服できない。これはやはり今回の予算に対して相当な、社会保障についていろいろいままでやらないことを新しくやる問題も相当取り上げましたし、感謝をされている面もある。一方的にこれを断定して、阿部君の言われるような、全く政府予算が社会福祉に対して冷淡な予算であるという断定は独断に過ぎると私は思います。そういうことでございますから、それは十分だとは思ってないけれども、こういう財政の非常に窮迫しておる中で、できるだけのことはしたのだということについては御理解を得たいと思うわけでございます。  憲法を守るということは、いまさら阿部君から御注意を受けるまでもなく、これは憲法の条章に従って政府政治をやっておるわけですから、十分に憲法の条章は尊重をいたします。
  246. 阿部助哉

    阿部(助)委員 あなたは、私が一方的だと言う。これは私の意見じゃないのですよ。東京の一流新聞のこれは見出しなんです。私が個人でならばもっと厳しく、もっと悪口を言うに違いないのです。だけれども、私はそれを遠慮して新聞の見出しを客観的に読んだ。それだけなんです。  それで、あなたがいま財政の窮迫しておる折だと、こう言うから私は、——税金の問題は小山君が盛んに大蔵委員会でやれみたいな話をするから、大蔵委員会に行ってやってもいいんです。ただ、あれを挙げたのは、いかに今日の三木内閣姿勢が不公正であるのか、そして今日の財政窮迫の中でなぜ一体こんな悪税を残しておくかという例を挙げるためにやったので、私は一方的だとは思わぬのであります。その辺も少し三木さん、民主政治家であるならば謙虚に私は国民の声に耳を傾けるべきだと思う。  あなたが施政演説の中で、三木内閣に対する批判を勇気を出して幾つかお挙げになった。私はその点に関する限り敬意を表したのであります。あの姿勢を持つべきであって、私が一方的ではないのです。いま私はあなたの発言の中で一番気になるのは、財政窮迫しておる今日の中で云々と、こうおっしゃるけれども、それならば金持ち優遇税制なんてやめたらどうなんですか。もう一度私はそれをあなたに聞かなければならなくなる。だから、言うこととやることに一貫性がないところに、私は三木内閣に対する国民の信頼感がなくなっていくのではないかという感じがするわけであります。  時間のこともありますので次に移りますけれども、昨年の十二月二十二日に決定されました、皆さんの「昭和五十年代前期経済計画」概案というものをおつくりになりましたね。これがこの見出しによりますと、皆さんは、これを予算の編成に反映させる、こう言っておる。しかも、これはこれからの五十一年度は一年目であります。しかし、これを見ていくと、五十五年度には国民所得に対する租税負担率が三%引き上げられる、社会保険料が一・五%引き上げられる、こうなっておるわけであります。そうしますと、国民所得に対する負担率は、四・五%引き上げられるわけであります。大体この金額は、その間で、五年間で三十兆円であります。国民一人当たり、おおむね三十万円の負担の増加になるわけであります。このような三%引き上げという場合、一体どういう税金で負担の増加をされるのですか、お伺いします。
  247. 福田赳夫

    福田(赳)国務大臣 五十一年度から先五カ年間の財政につきましては、先ほど大蔵大臣からその概案を作成する、こういう概略の展望を作成するというふうに申し上げておりますが、その過程におきまして一番問題になりますのは特例債ですね。この赤字公債と言われる特例債をいついかなる時点において整理できるか、これは最大の問題になってくると思うのです。  そこで、先ほど大蔵大臣は、一、二年ではとても解決はできない、さらばといって、五十年代の後期までこの状態を持ち込むことはできない。こういうことになりますと、大体あと三、四年の間に、これをまだ十分検討しておりませんけれども、三、四年の間に解消しなければならぬ、こういうことになるのです。  そこで、三、四年の間に解消するとなるとどうなるかというと、経済は六%強で伸びていくわけです。それを受けまして自然増収が出てくる。その自然増収が国民の負担率として若干加算されるだろう、こういうふうに思うのです。  それで、しかし三%まではいかないのじゃないか。そうすると、その三%と自然増収の差額というものは新税によってこれを賄う、こういうことになるのじゃないか。こういうふうに思うのですが、それはいかなる新税によってこれを賄うか。これはこれから税制調査会、そういうような機関もあります。政府におきましても慎重な検討をいたしまして結論を得るということで、この一、二年の問題じゃございませんけれども、先々に至ってどういう選択をするか、これが問題になる、こういうことでございます。
  248. 阿部助哉

    阿部(助)委員 新税によって賄う、こう言うけれども、これは二十七日の新聞です。大蔵委員会提出された資料新聞の写しです。私は資料現実に見ていませんので新聞でいきますけれども、国債償還十年間に二十二兆円になるとか、財政硬直化に拍車だ、こう見出しで書いておる。この中身を読みましたけれども、いまのような形でいけばことしも大変な公債を発行する。七兆何ぼの国債を発行する。来年もまた返済の財源なんというものは出てこない。こういうことになってくると、もう本当に四十九年度末と五十一年度末では公債自体が倍にもなってくるという形の中で、一体どうやって返済をしていくのかというめどが立たぬ。  いま福田さんのお話では、新税と、こうおっしゃる。これをやる場合には、いま大変なインフレにして税の自然増で返すということは、皆さんこの前の国会でも否定されました。それならば、もう一つの手は、予算を思い切って減らすことができるかと言えば、今日の日本の財政構造の中ではそれもできないだろう。何がしかずつ自然増的に予算もふくらんできておるのは、ことしの予算を見てもわかるのであります。そう一遍に大なたをふるって、三割も四割も前年対比減らすということは私はできまいと思うのです。そうすれば、いやがおうでも新税ということにならざるを得ない。  それが、この前の本会議また昨年の私の質問、そういう中で大蔵省当局も大体見当をつけておられるのは付加価値税じゃないかというのは、ほとんど国民の大半はそういうことに対して不安を持ちながらながめておると思うのです。皆さん、いよいよ最後のぎりぎりまで国民に伏せるつもりだろうけれども、ある段階で、もしおやりになるならば、やはり国民に腹を決めてもらうということが私は民主主義だと思うのであります。先ほど来付加価値税の問題が出ております。いま皆さんはすぐやるとかやらぬとかいうことが言いにくいようであります。しかし、この付加価値税は日本の税体系を大変大きく変える重大な問題だという点では、三木さんもこれはおっしゃっておるところであります。私もまた、これは大変重大な問題だと思うのであります。その認識は一致しておるのであります。  それならば、私は三木さんに提案をいたしますけれども、もしこれをやる場合には、あなたは先ほどから税調税調と、こうおっしゃるけれども、税調なんというものは、まず国会とのウエートにおいて問題にならぬのであります。そうして民主主義のたてまえをとるならば、私は、やる前にこれを選挙の公約にして国民に信を問うべきだ、こう思うのですが、それはいかがですか。その決意がありますか。
  249. 三木武夫

    三木内閣総理大臣 選挙は今年中にやらなければならぬ。今年中に政府がこの税に対しての結論が出るというわけではございませんので、この新税というものを選挙の公約にする考えはございません。これは阿部君の御指摘のように、やはり重大な、税体系にも影響しますから、簡単なものではないわけでございますから、十分な検討を加えなければならぬので、早急にこれが決められて、そうして政府方針が決まるという、そんなに簡単に結論が出る問題ではない。
  250. 阿部助哉

    阿部(助)委員 私は、今年中に行われる選挙にかけろとは言っていないのであります。あなたが重大だと言う。私も、これは日本の税体系を変えるというほど大きな問題だから、やるとすれば、その前に選挙国民に信を問うてから実施をしろと、こういうことであって、次の選挙がいつあるかわからぬけれども、それまではやっちゃいかぬということであります。その決意が当然なことだと思うのです。これだけ大きな問題を、皆さんがただ国会の多数決で押し切ろうなどということは、民主政治の上から許されないということで、私は、選挙で問うべきだ、こう申し上げておるのであって、あなた、ちょっと誤解しておるようであります。私の言葉が足らなかったようでありますから、もう一度御答弁願いたい。
  251. 三木武夫

    三木内閣総理大臣 ちょうど解散の時期にそういうことが、政府方針を決めた場合には選挙に問うてよろしいという考えでございます。しかし、それまで結論が出ないときには、これを選挙に問うということはできぬことは、もう申すまでもない。
  252. 阿部助哉

    阿部(助)委員 そうしますと、選挙で問うまでは付加価値税はやらないということですね。
  253. 三木武夫

    三木内閣総理大臣 いや、そういうことを言っておるのではないので、阿部君は、選挙をやる場合に、この問題は選挙の一つの大きな意思として国民の意思を問うべきである——解散はそんなにしょっちゅうできませんからね。ちょうど解散をする場合に、政府がもう方針を決めておるならば、それはやはりこの問題について国民意見を問うということは、民主政治のもとにおいて好ましい姿でありますから、総選挙をやる前に決まっておればそういたしますが、そのときに決まっていないときには、これはもう問いようがないということは御了解を願いたい。     〔井原委員長代理退席、委員長着席〕
  254. 阿部助哉

    阿部(助)委員 あなたも私も、またいままで数多くの人たちがこの問題を取り上げたのは、皆さんがみんな大変重大なことなんだ、こういう認識に立っておるからなんです。その点では意見が一致しておるわけです。それだけ重大な問題であるならば、少なくとも国民に信を問うまでは国会に提案をしないということを約束すべきだ、私はこう言っておる。今年中に行われる選挙までに結論が出なければ、次の選挙に問うた上で行うべきだ、国会に提案すべきだ、私はこう言っておるのでありますが、いかがですか。
  255. 三木武夫

    三木内閣総理大臣 ちょうど、やはりこのために解散をするという考えは持っておりません。その場合に、政府方針が決まればその一番近い選挙の場合にこの問題ば選挙の一つの公約として掲げるのが良心的な態度だと思いますが、しかし、この問題だけでもう一遍また解散をするという考え方は持っていないわけでございます。
  256. 阿部助哉

    阿部(助)委員 次に、赤字公債の問題についてお伺いいたします。  三木総理、今度の五十一年度予算における特例公債は、過去、昭和四十年の国債や昨年の臨時国会における国債とは、これまた本質的に異なるものだと私は思うのであります。  その一点は、前回の場合は二つとも年度半ばにして税収が欠落をした、財政不足を来した。そうですね。いわば緊急避難的なためであります。しかし、五十一年度予算における特例公債は初めから予算に組み込まれておるという点で大転換である、私はこう言わざるを得ないのであります。  第二点は、まあ昭和四十年の場合には高度成長政策の一休み、中休みの段階であります。やがて高度成長によって税の自然増収が期待できた、そうして返済のめどが立ったけれども、しかし、今度の場合は違うのであります。先ほど言った大蔵省の資料をもってしても、十年間に二十二兆円も返済をしなければならない。これは返済ですよ。国債の総額じゃなしに、返済金に二十二兆円も要るなんという時代が来たら、これは大変なんであります。そういう点で、この国債の問題は大変重要だと私は思うのであります。政府が、剰余金は全額これに充てるなんと言ったって、いま低成長でしかも赤字を出しておる今日、剰余金が出るはずがないのでありますから、剰余金は全部繰り入れますなんと言ってみたって、これは絵にかいたもちであります。したがって、今度のこの国債は、これは大変重大な転換の問題である、私はこう考えざるを得ないのであります。  わが国の憲法は、またこれを受けた財政法の立場からは、赤字公債については私は絶対反対であります。憲法違反、法律違反だという私の認識であります。私は、さきの国会において、そのためにこの赤字公債の問題を指摘いたしました。このまま行けば、私は、本当に財政民主主義は崩壊をするのではないか、三木内閣はそれの役割りをするのではないかという不安を持つわけであります。大体、憲法のこの規定は、赤字公債を発行しなければ政治が行えないような政府を初めから予定していないのであります。三木総理は口を開けば、議会民主主義、こうおっしゃるけれども、私は、憲法上もう内閣自体が失格をしておるんだ、こう言わざるを得ないのであります。三木内閣は一体どうお考えになっておるのか、私にはわからない。  この前の国会において、大平さんが最後に発言を求めて国民に約束された。それに対して私は反対の意見を述べてあの場は一応終わったのでありますけれども、私はもう一度あなたに考えていただきたい。私はもう一遍この項だけ読み上げますから、考えていただきたいのであります。   これは私の要求した償還計画とは違います。不満足であります。しかし、私の質問時間の持ち時間がありませんので、私の質問の真意を述べて、終わりたいと思います。   赤字公債の発行は、禁止されております。わが国の財政法は、日本憲法の平和主義、財政民主主義の厳格な規定を受けて、赤字公債の発行を一点の疑いもなく明白に禁止をしております。したがって、政府が特例法などというまやかしの表題を付して、あたかもこれが財政法の適用であるかのごとく装っているが、これは財政法また日本憲法の関係規定を覆すものであります。だから、赤字公債を出そうとしても、準用する規定が全くない。たった三条の法案をつくって、まさに法三条でこの蛮行を強行しようとしております。   私は、百歩、千歩譲って、私の赤字公債発行反対の努力が果たせず、赤字公債がまかり通る場合、最小限度、厳格な償還計画を出してもらいたいと要求いたしました。財政法第四条の建設公債の場合と違って、これが担保は国民であります。この公債の担保は国民であります。補正予算が成立すれば、直ちに国民の負担義務が生ずる。国民に犠牲を強いることになるのは、大蔵大臣のいまのお話でも明かであります。それがどういう形のどの程度の負担なのか、国民にはさっぱりわかりません、こういうことがあってはならないから、戦後日本憲法が財政民主主義を確立したのであります。   そういう観点で行った私の要求は、この程度のことで満足するはずがないのであります。このことは、いわゆる与野党の争いの次元で考えてもらっては困るのであります。日本憲法のもとで国民から選ばれたわれわれ衆議院議員の共通の責任の問題であることを、私はここに強調しておきたいのであります。  これが私のこの前のここでの発言であります。私は、今日もやはりこの私の考えは変わらないのであります。本当に百歩、千歩譲って、皆さんこれを出されるならば、償還計画というもの、これがせめてもの公債発行を食いとめる歯どめであります。その償還計画を今度またなぜお出しにならぬのです。皆さんの出したのは、これは何ですか。ただ、十年後に全額返します、これは皆さんの決意表明ですよ。決意表明であるかもわからぬけれども、償還計画などというしろものではないのです。なぜ一体償還計画をお出しにならぬのです。
  257. 三木武夫

    三木内閣総理大臣 いろいろと御発言があったわけですが、いまわれわれ政府に課されておるものは景気の回復ということ、景気の回復をするについては、ある一定の予算の面からも景気の回復というものをにらんで予算を編成しなければならぬ。なぜならば、阿部君御指摘のように、個人消費の伸びというものはそんなに景気を引っ張る力を持っていない。設備過剰のような状態ですから、設備投資も起こってこない。貿易は世界景気の好転から少し明るくなる展望を持てますけれども、しかし、そういうふうになってくると、今日の場合に景気を回復する一つの牽引力になるものというのは財政によらざるを得ない。ところが、財政の面においては、いま申したような財政のある一定の水準を維持しようとするならば、増税といってもいま増税はできない、そうすればどうしたって公債を発行して、そしてやはり財政的な面から景気の回復を図らなければならぬ、こういうことで、これはもうやむを得ず政府としてはある一定の行政水準を維持するためにこういう特例公債を発行したわけで、これは異例のことで、一日も早く正常な財政状態に復帰することが好ましいけれども、この景気を回復せなければならぬという今日の一番大きな命題から考えればこれはやむを得ませんから、そういうことでやったわけです。  その特例公債が、いま財政法、憲法に違反しておるということでございますが、そのために特例法を出したわけでございまして、この御承認を得られるならば私は憲法に違反するものではないという考えで出したわけで、償還計画というものについては、これはもう借りかえを行わない、こういうことで政府は必ず十年後には払うということを言っておるのですから、したがって、償還計画といっても、もうこれは政府は借りかえを行わなくて必ず償還をするということでございますから、政府がそういうことをしばしば繰り返しておるのですから、したがって、このことが何よりも償還の意思、これだけ強い意思を述べておることで御了承を願いたいと思うわけでございます。
  258. 阿部助哉

    阿部(助)委員 償還計画は建設公債でも出さなければならぬのですよ。  もう一つ、あなたのおっしゃることで重大なのは、景気浮揚をさせなければならない、だから何をやってもいいということにはならぬのです。いまこれが重大だから憲法を犯してもいい、法律を犯してもいいということにはならぬのです。そんなものは理屈になりません。私は本来ならばさっき言ったように、憲法は赤字公債を出すような政府を認めていないのです。それで私は百歩、千歩譲って——財政法は普通の法律よりも憲法の規定を受けた重大な法律です。財政民主主義をうたっておる。それを何です。償還計画——十年後に返すと言うから、そんなものは私は決意表明だと言うのですよ。あなたたちの決意表明だけで、主観的な決意表明で、これは客観的な返済計画とは言えないのです。  しかも皆さんは、昨年わざわざ大平大蔵大臣が立って、こういう約束を国民にしておるじゃありませんか。これは速記録の中にちゃんと載っておる。この約束すら皆さんは果たしていないじゃないですか。皆さんは三つのことを約束しておる。  それは、この既定の経費の厳しい洗い直しをやって、スクラップ・アンド・ビルドをやって節約をするというのが第一点。第二点は、政策税制の全面的な再検討を行うことを最重点として現行税制の仕組みの中で増収を図る、こう言っておる。図っていないじゃないですか。その次には、新規財源の検討に着手し、今後税制調査会において十分な審議をお願いする、こう言ってある。税制調査会に諮っていないじゃないですか。一体何を、新税を諮ったのですか。  皆さんは食言をしておるのですよ。昨年あれだけここで問題になっておりながら、しかも特に大蔵大臣は最後に発言を求めて国民に約束をしておるにかかわらず、その約束すらも果たしていない。償還計画は何といってもいま考えられる赤字公債の唯一の歯どめであります。その歯どめすら外して十年後に返しますなんという皆さんの決意表明をだれが信用しますか。こんなものではとても今年の予算審議するわけにはまいりません。
  259. 大平正芳

    大平国務大臣 特例公債発行がいかに重大なことであるかということについて、深い憂慮を込めて御質疑をいただいたことに対して感謝します。  それで私は、全般におきまして阿部さんが言われた御認識、全く同感でございます。ただ、若干阿部さんにお答えしなければなりませんのは、なるほど財政法は建設公債以外の公債の発行を認めていないことは御指摘のとおりでございます。しかし財政法は、法制的に申しまして一切の特例を設けてならないということではないと私は思うのでございます。すでに過去におきまして六回特例を設けて緊急な事態に対処をさしていただいておりますことを御指摘申し上げておきたいと思います。  それから第二の償還計画でございますが、私が申しましたことは、百分の一・六の定額繰り入れの実行、それから剰余金の全額繰り入れ、これは仰せのように、特例債を出しておる段階におきましては不可能でございまして、特例債が終わりましてからのことになることは御指摘のとおりでございます。  それから毎年度予算上の繰り入れということが第三の方法でございます。この予算上の繰り入れについて、年次別の繰り入れの見込みを政府国会に対して提出する用意はないかということが前の国会からの課題でありましたことは、私もよく承知いたしておるわけでございます。しかし、正直に申しまして、これから十年間の日本の財政の展望を数学的に的確にとらえまして、その中で幾ら幾らの金を国債整理基金特別会計に繰り入れることにするかということにつきましては、そのべースといたしまして財政計画がなければならぬわけでございますが、まだ政府はそういう長期的な財政計画を編むに至っていないので、それは御勘弁をちょうだいいたしたい。  ただし、私は皆さんの御憂慮もよくわかりますので、いつになれば赤字公債から脱却する財政が展望できるかということについて、何がしか審議の手がかりがないかということでございましたので、先般来いろいろ検討を重ねておりまして、近く中期の財政展望というものをお示しして御審議をいただくという意味は、そういう御心配がございまするので、日本の財政の五十年代の前半の展望はどういう状況にあるだろうかということを御審議いただくことを通じまして、今度の特例債の償還につきましても、財政上支障のない状況においてそれが償還可能な環境がつくられるであろうという御確信を持っていただきたいために、そういう作業を急いでおるわけでございまして、それを近く御審議いただきたいと思います。それで予算書におきましては、十年債のことでございますので、十年後に償還いたしますという償還表を添付して御審議をいただいておりますことは従来どおりでございます。
  260. 阿部助哉

    阿部(助)委員 あなたがおっしゃるのは、私も、年次別に何ぼずつ金を積めなんて言っていないのですよ。計画であります、償還計画でありますから、場合によれば十年間のうちに変更をせざるを得ない事態が起きるだろうということもわかるのです。しかし、あなたも償還計画ではない、償還表だ、こう言っておる。償還表ではだめなんです。皆さんの決意表明では法律に違反するわけです。償還計画を出せ、こういうことなんです。なぜ出さぬのです。中期何とかを出す、それを審議願うというならば、その審議まで委員会は財政の審議をするわけにはまいりません。  もう一つ、時間がないから続けて言いますけれども、なぜ一体あなたはわざわざ発言を求めて、最後に約束されたことをこの五十一年度予算の編成に当たって実行されないのか、これは食言であります。こんな一年間の問題、この前の十月じゃないですか。それを検討もしないで約束も果たさない、こんなものをわれわれは信用するわけにいかぬのです。私は、こんなことでは予算という一番大事な審議を継続するわけにはまいりません。
  261. 大平正芳

    大平国務大臣 第一の問題は、法律上償還計画を出さないといけないという御指摘でございますが、われわれが発行を認めていただこうとしておる公債は十年公債でございます。分割発行するのではなくて、一括発行するわけでございますので、ただいま添付してありまするように、六十一年度に償還いたしますということ以外の償還計画は出しようがないのでございますから、その点は法律論として明らかにしておいていただきたいと思います。  それから第二の問題は、この前の委員会審議の際に、私が発言を求めて、当委員会にお約束をいたしたことにつきましては、私は食言をいたしておる覚えは全然ありませんので、忠実にそのとおり、実行いたしておるつもりでございます。
  262. 阿部助哉

    阿部(助)委員 私はあなたの言ったことを、先ほど三つの問題を出したでしょう。たとえば税調に、特別措置や何かを何ぽか直しました、しかし、税調は何と言っておるのです。税調はこの特別措置の検討はしたけれども、これは増収を目的とするものではない、こう言っておるのですよ。あなたは、ここでは全面的な再検討をして、現行税制の仕組みの中で増収を図ると約束しておるのですよ。税調答申はこれとは全然違うのですよ。皆さん自体が約束を果たしていないのです。  もう一つは、新規財源の検討に着手して今後税制調査会に諮ると言っておるけれども、諮っていないじゃないですか。一体これがうそでないで何ですか。
  263. 大平正芳

    大平国務大臣 租税特別措置法の見直しは、お約束どおりいたしましたし、また、現行税制の中での増収措置は、自動車関係の諸税その他実行いたしたつもりでございます。  それから、新しい財源の問題でございますが、税調に対しまして、わが国の租税負担はどの程度お願いするのが妥当であるべきかという基本問題についての御審議をまずお願いいたしまして、税調の感じを伺っておるわけでございまして、私どもそれをベースにいたしまして、新しい財源の探索にかかるわけでございますので、その点について私が食言をいたしておるなんということは全然当たらないことであると思います。
  264. 阿部助哉

    阿部(助)委員 この問題は大変重大であります。この予算審議の上にとって、これは大変重大でありますので、私はその計画が出るまでこの問題の留保をいたしたいと思いますが、お許し願えますか。
  265. 荒舩清十郎

    荒舩委員長 阿部助哉君に申し上げます。私も、あなたさっき御指摘になりました前回のあれで約束があることでございます。  したがって、大蔵大臣、私から申し上げますが、なるべく速やかにこの処置をできるようになさるべきだと思います。したがって、それについての御見解をお願いいたします。
  266. 大平正芳

    大平国務大臣 中期の財政展望でございまするが、この総括質問の終わるまでの段階におきまして当委員会に御提出申し上げて、御審議をお願いしたいと思います。
  267. 阿部助哉

    阿部(助)委員 私は、最後に予備費の問題でお伺いをしたいと思うのであります。これは、官僚が法文をいかに解釈してその場を逃げ切るというような答弁ではなしに、総理大臣として憲法の精神を貫く立場、官位の逸脱を戒め、指導するという総理政治姿勢を明らかにするためにお伺いするのでありますから、その点を念頭に置いて御答弁を願いたいのであります。  第一に、憲法第八十七条は、「豫見し難い豫算の不足に充てるため」とこうなっております。財政法もまた同じような文句で言っておるわけであります。  予備費は、国会行政をコントロールする、財政民主主義立場から申し上げるならば、これはない方がいいのであります。特に、一番いいのは、予備費の幅は少なければ少ないほどいい、財政民主主義のバロメーターだと、私はこう思うのであります。ところが、今度の公共事業等の予備費、これは一体何なのです。公共事業という、予見しておるではありませんか。予見しがたい不足に対してやるのですよ。この予備費は、予見をしておるというのが第一点。第二点は、これは不足に対して、災害等金が足らなくなったというときにやるべきものが、これは公共事業費の追加であります。この二点は、何としても憲法の八十七条に私は違反をすると思うのであります。こういうものをやったら、私は総理が常に言う、議会民主主義であるとか財政民主主義であるとかいう問題が官僚のわがまま、そういうものに全部破壊されてしまうと思うのであります。  これは総理、間違いではありませんか。直される必要があると思いますが、いかがです。
  268. 三木武夫

    三木内閣総理大臣 阿部君の御指摘のように、予備費というものは予見しがたい経費に使われるものです。したがって公共事業というものが、予見し得る公共事業は本予算の中に組んだので十分であります。だから、公共事業の中で予見しがたいような事態にこの予備費は使われるわけでございます。また、政府は、国会の御承認を得て予備費というものは政府責任において使えるわけですね。これはあらかじめ、その政府責任において使える中でその使途を一つの抑制をしておるだけであって、しかも、その抑制した公共事業等というものは、予見しがたい場合における公共事業等に使うのであって、予見をするものについては一般の会計の中で公共裏業として計上されておるもので十分であるわけでございます。
  269. 荒舩清十郎

    荒舩委員長 ちょっとお待ちください。  さっきの阿部君の大蔵大臣との質疑ですが、お約束はこの総括質問ですから、二月の六日まで、大蔵大臣、間違いなく提出することはよろしゅうございますな。
  270. 大平正芳

    大平国務大臣 承知いたしました。
  271. 荒舩清十郎

    荒舩委員長 では、続けてひとつ。阿部助哉君。
  272. 阿部助哉

    阿部(助)委員 総理憲法も財政法も「豫見し難い」とこういうことなんですよ。公共事業にもう少し追加したいというようなことになれば、臨時国会を開いておやりになればいいのです。災害であるとか、国会を開くいとまもないなんということは、そのためにこれは予備費というものを認めておるけれども、何なんです。私は一番不安に思うのは、こういう形でわがままをしたら防御予備費が出てきますよ。皆さんはいま否定するかもわからぬけれども、やがて防衛予備費をつくるためのこれは前ぶれじゃないですか。私はこういうことは許されない。公共事業等なんというものは大体不足じゃない、これは追加するということです。どう違うのです。これは絶対に憲法の精神を踏みにじるものである。法制局長官立とうとするけれども、私は、憲法の精神を踏まえなければ三百代言的な法解釈なんというものはする必要がない。議会の子だとあなたおっしゃるならば、なぜ一体憲法の精神を踏まえておやりにならぬのか。予見しがたい予備費というのは、この公共事業というのはないですよ。何です、一体。
  273. 三木武夫

    三木内閣総理大臣 これは、阿部君声を大きくして言われても、私はいま申したような解釈でおるわけですが、憲法の条章と結びつけていろいろ御発言がございましたので、法制局長官からこの点についてはお答えをいたします。私自身はいまのように考えてこの予算を承認したわけです。
  274. 吉國一郎

    吉國政府委員 憲法第八十七条に、「豫見し難い豫算の不足に充てるため」とあり、また、財政法第二十四条にも同様の文言で書いてございます。この「豫見し難い豫算の不足」と申しますのは、費目において予算作成当時において全く予想しないような費目が出てきたという場合のほか、予算作成の当時においてはその費目があることは予想されたけれども、その費目に充てるだけの金額が予算に計上してなかったという場合も含むことは、もう憲法学のあらゆる学者において認められているところでございます。したがって、今度の公共事業等予備費千五百億、これも一般の予備費と一緒にいたしまして、四千五百億の予備費ということで使ってもよろしいわけでございます。ただ、それにつきまして、政府といたしましては、四千五百億のうちその三分の一については「公共事業等予備費」という名日にいたしまして、仮に予備費四千五百億のうち使うとしても千五百億の分は留保をいたしまして、現在の公共事業費として本予算に組んでおります金額ではどうしても足りない場合あるいはその中に組んでおらないような費目が生じた場合にそれにのみ充てる、それ以外のものには充てられないことにしようということで、政府側の予備費の使用の権能をみずから制約したものでございます。四千五百億全部を一般の予備費とすることはもちろん可能でございますけれども、政府といたしましては、予備費の額が非常に多いことにもかんがみまして、千五百億については国会にこういう費目、しかもそれは予想されないような費目あるいは予想されないような金額に充てる場合にしか使わないことは一般の予備費と全く同じでございますけれども、それ以外には使わないようにいたしますということを国会に対していわばお約束をいたしまして、政府側としては予備費の使用の権限をみずから抑制するというものでございまして、憲法、財政法に全く反するようなことはないと考えております。
  275. 阿部助哉

    阿部(助)委員 三木さん、そういう答弁国民は求めていないのです。憲法の精神は、私、先ほど社会保障のところで申し上げたように、議会国会がいかに行政府をチェックするか、わがままをいかにここでチェックするかというのが大体中心なんですよ。執行部としては、それはなるたけ予備費をいっぱい取った方が自由自在ですよ。そういうわがままをやっては民主主義は成り立たぬということで、憲法は厳しくこれを規制しておる。三木さん、その憲法の精神がわからぬことはないでしょう。それがわからないならば、あなたは議会の子だとか議会民主主義なんて言う資格はないのです。なぜ一体そういう執行部のわがままをこういう形でやるのですか。何と法制局長行が一日同じことを言ったって国民は納得しません。憲法の精神を踏まえていただかなければ困るのです。  三木さん、しかも「公共事業等予備費」ですよ。これは項目ですよ。「等」というのは一体何なんです。どこにでも使えるじゃないですか。それは内部でいろいろと申し合わせをしたとか、これだけしか使わないとかいろいろなことを言ってみたって、それは国民に対しては通用しないのです。そんなわがままな政府は、憲法がこれを認めていないと思うのです。財政民主主義という立場をあなたは守るつもりなんですかどうなんですか。これは憲法上の重大問題です。私はこんなもの、いまの答弁は納得しません。憲法の精神を踏まえて、三木さんからひとつ答弁してください。
  276. 三木武夫

    三木内閣総理大臣 これは全体を、千五百億の公共事業等の予備費の中にしなくても、一遍に予備費として計上してもいいわけですね。それをやはり別枠にして、だからその予備費の使用に対して政府を制約しておるわけです。したがって、政府のわがままと阿部君はおっしゃいますけれども、むしろ政府の使途を制約しておるわけですから、わがままをある意味において抑えて、チェックしておるような意味もあるわけです。全部これは計上していいのですから、予備費に。しないで、これだけ多くの、使途を抑制をしておるのですから、政府が何でもわがままをしようという御批判は当たらぬのではないでしょうか。むしろ政府をチェックしておるわけですから。
  277. 阿部助哉

    阿部(助)委員 私は全く三木さんからこんな三百代言のような御答弁をいただくとは夢にも思いませんでした。私は一番最初に、予備費の幅は少ないほど国会のコントロールが効くという民主主義のバロメーターだ、こう申し上げた。違法であるとか違法でないとかという問題よりも、憲法の精神を踏まえていくならば、こんな予備費をつくるなんということは、これは大変な議会の軽視であります。私は、こんなことでこの国会を無視して、これでいくならば防衛予備費だって何でもつくれます。みんな予備費にした方が一番皆さんは都合がいいのです。そうしたら財政民主主義は一体どうなるのです。国会で、予算委員会で、これだけみんなで審議をするなんということは何にも価値がないことになってしまいます。しかも、この予備費に「等」という字をつけてあるというのは一体どういうことなんです。どこにでも使えるじゃないですか。「公共事業等予備費」でしょう。どこへでも使える。それは皆さんは内部で申し合わせたなんと言ってみたって、そんなものは国会が何にもコントロールできるわけがないじゃないですか。こんなものは私は法律違反、憲法違反だと思う。  三木さん、余りにもあなたはひど過ぎますよ。私は議会の子だという立場質問したけれども、これではあなたは議会の鬼子ですよ。議会民主主義を破るその役割りをあなたがしておるということをあなたはいま認識しなければならぬのです。そういう点で、三木さん、もう一遍答弁してください。
  278. 大平正芳

    大平国務大臣 「公共事業等」の「等」でございますが、これは施設費を含むと、予算総則にもそういう表現をとっておりますので、そういう表現にいたしたわけでございます。  それから、憲法、財政法との関連につきましては、法制局長官がお答えを申したとおり心得ております。
  279. 阿部助哉

    阿部(助)委員 これじゃとても、こういう形で何でもこれから何々等予備費みたいなことでやられては、議会行政をコントロールするという議会民主主義というものは破壊されると私は思います。私は本当に締めくくりとして三木さんに申し上げたいと思ったんだけれども、こんなわがままな予算をおやりになる。赤字公債で憲法の規定を破っていく。三木さん、赤字公債だってなぜ一体日本の財政法をあれだけ厳しくしておるんですか。私は、やはりあの大きな戦争の犠牲、それを踏まえて、赤字公債を出すことがあの戦争を続けた原因だ。だから、公債なければ戦争なしという名言を吐いたように、私は憲法やこの財政法は民主主義を強くうたっておると思うのです。それにもかかわらず、あなたたちはここで一挙にあの戦争の反省を崩そうとしておる。それに対して皆さんは何らの責任もとろうとしない。私は、これは日本民主主義の破滅の役割りを三木さんは背負っておると思う。もう一遍私は三木さんに議会の子として御答弁を願いたい。
  280. 三木武夫

    三木内閣総理大臣 赤字公債の発行というものは、これは財政として普通の姿ではないことは言うまでもないわけであります。しかしながら、やはりどうしても政府の意図するような、今日の場合においては景気の回復というような問題を早急に解決しようとするならば、やはりやむを得ない措置としてやったわけでございまして、阿部君もごらんになってもおわかりのとおり、世界どこの国においても、財政上赤字公債は発行できるということでないとなかなかやはり財政政策というものは遂行できませんから、各国とも予期せないような事態になってきた場合には赤字公債によって財政政策の目的を達成しておるわけで、日本としても好きこのんでこういうことをやったわけではないですが、現在の状態においては赤字公債を発行せざるを得ないという事態でやむを得ずとった措置でありまして、いつもこういうふうな政策をとるわけではないわけですから、緊急やむを得ない措置であると御理解を願いたいわけでございます。  このことが、議会民主主義というものに対してこれを軽視しておるというふうには私は考えておらない。議会民主主義の上に立って考えてみましても、これはやむを得ないから国会法案提出して御承認願いたいというわけですから、議会民主主義のルールに従って国会の御承認を願っている次第でございます。
  281. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 議事進行について意見を申し上げたいと思います。  この公共事業費の予備費の点は、新憲法下初めて出てきた重大な問題であります。しかも、いままでのやりとりでも解明がされない。われわれの納得いく御答弁がいただけない。憲法との関係において、あるいは予備費との関係において、あるいは補正予算との関係において解明すべき問題が残っておると私は思います。  それで、これは時間が来たからこれで打ち切るというような問題ではない。根本的な、財政民主主義上の問題でございますから、この質疑応答のやりとり、これをどう取り扱うかについて、ひとつこのまま理事会にお預けをいただきたい。それを委員長に要望いたします。
  282. 荒舩清十郎

    荒舩委員長 ただいま楢崎君からの御発言につきまして、理事会でどうすべきか結論を出すことにいたしたいと思いますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  283. 荒舩清十郎

    荒舩委員長 よろしゅうございますか。(小林(進)委員「それまであしたは予算は休みだ」と呼ぶ)そういうこととは違います。
  284. 阿部助哉

    阿部(助)委員 それでは、いまのお話もありますので、この問題をさきの問題と一緒に保留をさせていただきたいと思いますが、よろしゅうございましょうか。
  285. 荒舩清十郎

    荒舩委員長 保留とかどうとかということでなく、ひとつ理事会で結論を出して、あなたに納得いくようにいたしたいと思いますが、お任せ願いたいと思いますが、よろしゅうございますか。——さよう決定をいたします。  これにて阿部君の質疑は終了いたしました。      ————◇—————
  286. 荒舩清十郎

    荒舩委員長 この際、参考人出頭要求に関する件についてお諮りいたします。  明三十日、日本銀行総裁の出席を求め、意見を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  287. 荒舩清十郎

    荒舩委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決定いたしました。  次回は、明三十日午前十時より開会いたします。  本日は、これにて散会いたします。     午後六時十三分散会