○春日一幸君 私は、民社党を代表し、
わが国政が当面する内政、
外交上の重要問題について、
政府の対策、方針をただしたいと存じます。(
拍手)
われわれは、ここに激動の七〇年代も第七年目を迎えました。平和と繁栄を希求する人類の願望はいまだ満たされず、
世界も
日本も、いまなお
政治的に
経済的に長くて暗いトンネルの中にあり、かくてわれわれは、戦後かつてない試練の関頭に立たされております。
現に、米中ソの三極構造のパワー
戦略は虚々実々に展開されて、国際政局は依然として不安定の様相をたたえております。このような国際情勢に対処して、
わが国の
外交並びに安全保障
政策はいかにあるべきか、いまこそ
政府は想を新たに決意を固めて、ここに当面する諸課題について、確固たる
態度、方針を固め、
自主外交を積極的に展開すべきであると考えます。
まず、その第一は、日中平和友好条約の締結を促進することであります。
この条約は、日中友好の前進のために、最も速やかに締結されなければなりませんが、本日なおそれを妨げているものは、あの覇権条項の位置づけの問題であるとされております。一体、この覇権条項に対する
政府の方針はどのようなものか。
昨年十一月七日、宮澤外相は、参議院
予算委員会で覇権問題について四
項目の原則的理解を示し、すなわち、一、覇権反対は特定の第三国に向けられたものでないこと、二、覇権反対は中国との共同行動を意味しないこと、三、これは
世界のどこでも覇権を求める試みには反対するものであること、四、覇権反対は国連憲章の精神と同じものと理解することという、これらの趣旨が中国側に確認されれば、この覇権条項は条約本文に明記してもよいとの
見解を示されておりますが、これは
政府の方針としてこのまま受けとめてよろしいか、この際、
三木総理より改めて言明していただきたい。また、宮澤外相のこのような
見解に対する中国側の反応はどのようなものでありますか、あわせて伺っておきたいと存じます。
なお、この覇権条項の処理をも含めて、
政府は、日中平和友好条約締結の時期をいつごろにめどを置いておるか、その他、本条約締結に関する
政府の
態度、方針を
三木総理よりお示し願いたい。
第二の問題は、ソ連に対し速やかに北方領土の返還を求めることであります。(
拍手)
このほどのグロムイコ・ソ連外相の訪日を機会に、北方領土問題は、解決に向かって何らかの接近が図られるものと大きく期待しておりましたが、この問題が一切サイレントにされて、何ら発表の行われなかったことはまことに遺憾に存じます。ここに、北方領土の処理については、あの戦争状態終結宣言が署名された直前の一九五六年九月二十九日、
日本を代表する松本俊一全権委員と、ソ連邦を代表する時の第一外務次官グロムイコ氏との間に、両国間の
外交文書によって、すなわち、日ソ「両国間の正常な
外交関係が再開された後、領土問題を含む平和条約締結に関する交渉を継続する」と、このことが厳然として確認されているところであります。しかるに、今回の日ソ会談の共同声明に、この肝心の領土問題に関する事項がことさらに隠蔽された理由は何か、われわれはとうてい理解できません。
およそ北方領土問題についての法理論や歴史的事実の論証は、すでに出尽くしております。北方領土の返還なくば、なお戦後は終わったとは言えません。しかるに、この日ソ間の最大の懸案が依然として解決されず、昨今においては、日中平和友好条約の締結に対する牽制の
態度、また、ソ連漁船の
日本近海における恣意的な活動など、これでは
国民の対ソ感情は勢い冷却の
方向に傾斜せざるを得ません。
政府は、この際率直に対ソ友好の真意を披瀝し、速やかに日ソ平和条約の締結を目指し、まず歯舞、色丹、国後、択捉、四島の一括返還を求めるため、
総理がみずから身を挺してソ連首脳との間に強力なる交渉を展開なさるべきであると思うが、
総理の御所信のほどをここに改めて伺っておきたいと存じます。(
拍手)
第三は、
日米安保条約の運営上の問題点を是正することであります。
日米安保条約は、
アジアの平和と
わが国の安全について、有効にその機能を果たしておりますが、それにしてもこの条約は、なお、その事前
協議制度の明確化とともに、その過大な在日米軍基地を整理縮小することが、緊急に解決を要する重大な課題となっております。
すなわち、在日米軍基地は現在百三十九カ所に上り、特に沖繩には過大な基地群がいまなお惰性的に存在し、その整理縮小は遅々として進まず、これが住民
福祉を大きく妨げております。第六十七
国会における沖繩施政権返還協定批准に当たっての附帯決議にも徴し、
政府は積極的に基地の整理縮小を米国に要求すべきであると考えるが、
政府の方針はどうか。また、事前
協議制度における
わが国の発議権、拒否権は、条約上有権的に確立しているかどうか、あわせて
総理より御
答弁願いたい。
第四は、朝鮮問題を平和的に解決するために、
わが国は進んでそのリーダーシップを発揮することであります。
歴史的、地理的に見て、朝鮮半島の平和は
日本にとって密接なつながりを持つものであります。この
見地から、われわれは、朝鮮半島の平和維持と、さらには南北朝鮮の平和的統一を心から期待するものであります。
そこで私は、この際、
わが国の今後とるべき朝鮮
政策について、以下具体的にその大綱を提示し、これに対する
政府の
見解を伺いたいと存じます。
その第一は、
わが国は、韓国との
関係を十分に配慮しつつ、北鮮との接触をも図ること。第二は、朝鮮半島の緊張緩和を促進するため、中ソ両国に働きかけること。第三は、南北朝鮮の国連への同時加盟を促進すること。第四は、南北の国連加盟とともに、
わが国は北朝鮮を承認する方針に立ち、その場合、
アメリカが北朝鮮を、中ソが韓国を承認するというクロス承認を実現するよう
努力すること、第五に、国連軍解体後の朝鮮半島に日米中ソを含む新たな安全保障機構の樹立を推進すること。
わが党は、以上の五
項目を
わが国の朝鮮
政策の主柱としてこれを積極的に推進すべきであると考えるが、
政府の御
見解はいかがでありますか。あわせて、朝鮮問題に対する
政府の
態度、方針を
総理よりお示し願いたい。
次は、
わが国の安全保障
政策について
質問いたします。
そもそも、
政治の目的は
国民福祉にあり、
国民福祉の基盤をなすものは国の安全保障にあることは申すまでもありません。しかるに、
わが国会における安全保障論議と言えば、野党の多くは、これを
日米安保条約の危険性、侵略性を部分的に摘出することによって、これを安保廃棄論に結びつけることに傾倒し、また自衛隊については、その装備や演習、研究をとらえて、その攻撃性を非難することに終始し、一方、これに対する
政府・与党は、常に紛糾をおそれて、ことさらに本格的な
防衛論議を回避し続けてまいりました。
かくて、シビリアンコントロールという最高の
責任を担う
国会は、その機能を十分果たし得ないままに、自衛隊の規模はいつしか無
性格に
増大し、また在日米軍基地は、ともすれば
アメリカの
アジア戦略によって一方的に使用される危険性をも内包する状態に置かれております。
ここに、
ベトナム以後における
アジア情勢は、
わが国がその安全保障をこのようなその場しのぎのあいまいな状態にとどめ置くことを許すものではありません。いまこそ
政府は、国政の大本とも言うべき国の安全保障
政策について、その構想を
国民の前に提示し、
国会の論議を通じ、もって
国民的合意の形成に当たるべきであると思うが、
総理の
見解はいかがでありますか。(
拍手)
そのためには、まず
国会に
防衛委員会を設置することが先決の要件であります。(
拍手)私はこの認識に立って、昨年七月末、
総理訪米に先んじて持たれた党首会談において、このことを提議し、
総理もまた、これに全面的に賛成されました。
総理は、あのとき私との間に交わされたこの公的な約束を実行するために、速やかに所要の
措置をとらるべきであると思うが、これに対する
総理・総裁としての御方針はいかがでありますか、
責任ある御
答弁を願いたい。
次は、
財政問題について
質問いたします。
その第一は、明年度
予算案についてであります。
すなわち、
予算総額の二九・九%に当たる七兆二千七百五十億円を
国債に依存するということは、戦時にも匹敵するほど、これは
赤字財政もまさに極端をきわめたものであり、何としても納得することができません。
言うまでもなく、
赤字国債の発行は、これ以外の手段をもってしては緊急不可欠な
財源を確保できない場合に限ってのみ許される非常
措置であるべきであります。
そのためには、まず既往の歳出歳入を徹底的に洗い直し、行政費、補助金、その他万般にわたって極力歳出の
削減を図るとともに、不公正
税制を是正して
財源の確保を図るなど、これらの
措置が徹底して断行されなければなりません。
政府は、この点についてどのような
措置をとられたか、
総理よりこれを具体的に御説明を願います。
なお、この際伺っておきますが、
政府は、新規
財源確保の手段として、新しく付加価値税の五十二年度
創設を目指して、近く
税制調査会に諮問することになったと伝えられるが、その真相はいかがでありますか。かねがね論及されているとおり、付加価値税なるものはまさしく大衆
課税であり、わけても
中小企業者に及ぼす影響は最も大きく、これは
国民生活を著しく圧迫する悪税中の最たるもので、さればこそ、このような
課税は、かつて国家存亡の非常事態においてさえも、これが
導入は厳に差し控えられてきたものであります。
これらの理由にかんがみ、
政府は付加価値税の
導入は今後とも断じて行うべきではないと考えるが、
政府の方針はどうか、
総理より明確なる御
答弁を願います。(
拍手)
次は、
経済改革の主柱とも目すべき
独禁法の改正について伺います。
独禁法の改正は、前通常
国会において不幸にして廃案にされてしまいましたが、今後の
安定成長路線を確保するためには、この際、
独禁法を
強化することが必須不可欠の要件であります。私的独占、不当、不公正な取引方法のごとき、弱肉強食的な
経済活動は、今後絶対に許してはなりません。これを防止するには、現行法の不備を是正し、公正取引
委員会の権限を
強化することが必要であります。
政府は、
独禁法改正案を今
国会に必ず再提出されますか。また、それは公取の機構を弱体化したり、
独禁法を逆に骨抜きにするようなものであってはなりませんが、ここに
独禁法改正に関する
総理の御決意とその
改正案の骨子を承りたいと存じます。
次は、
食糧、
農業政策について伺います。
従来の選択的
拡大を柱とする
基本法農政は、その結果として、主要
食糧の
自給を極端に
低下させ、中核的
農業者の近代化意欲を減退させるとともに、それを
農業の域外に流失し、兼業化を
増大させるなど、これは明らかに失敗でありました。主要
食糧の国際的な先行き不安に照らしても、これからの農政は、総合的な
食糧自給度の向上を明確に位置づけることが肝要であり、そのために必要な
農地、漁場の
拡大、確保に努め、その高度利用を実現するよう、この際、諸
制度の改革と、それに要する
財政の裏づけを行わねばなりません。
わが党は、この
見地に立って、いち早く
食糧基本法の制定を提唱してまいりましたが、わが党は、このような
政策転換によって、湿潤に恵まれた国土に、適地適産による
計画的生産を推進し、
日本農業の真髄を発揮して、農林漁業の健全なる
発展と、あわせて
食糧の安定的確保を図るべきであると考えるが、(
拍手)
政府の
見解はどうか、あわせて
総理より今後の農政に対する構想をお示し願いたい。
次は、
中小企業政策について
質問いたします。
経済的弱者の
立場にある
中小企業は、ここに長期にわたる深刻な
不況の
犠牲者となり、現に
倒産が続出しております。このような
中小企業の
危機を救い、進んでその安定と振興を図るためには、従来の
政策のほかに、根本的施策として、それは、
中小企業の
事業分野の確保法、下請取引の適正化法などの制定とともに、銀行法を改正してその
資金の確保を図るべきであると思うが、
総理より、これに対する
政府の対策、方針を伺いたい。
次は、
税制改正について
質問いたします。
政府は、本年度
予算において、
所得税減税を見送るばかりか、逆に住民税均等割りと固定資産税を
引き上げ、また、一方では、自動車
関係諸税の
引き上げを行おうとしております。五十年度は九・九%、五十一年度は八%という消費者
物価の
上昇予想を立てながら、
物価調整減税すら行わないというならば、それは
実質的に増税の結果を生じ、
国民生活にそれだけの重圧が加わります。かくては
国民の
個人消費はますます圧縮され、
景気回復は一層後退することになりましょう。
政府は、この際、民生の安定を図るとともに、景気浮揚に資するため、少なくとも一兆円規模の所得減税を断行すべきであると思うが、これについて再考慮する意思はないか。(
拍手)
また、自動車
関係諸税、すなわち揮発油税、地方道路税及び自動車重量税の増徴は、それはことごとく自動車利用者に転嫁されるものであり、他の物品に比べ余りに
課税の公正を損なっております。この
現状に照らし、この上さらに自動車
関係諸税を増徴することは、
政府として慎むべきであると思うが、再
検討する意思はないか。
以上の二点について、
総理より御
見解をお示し願いたい。
次は、
教育問題について
質問いたします。
人間の幸福は、物質的
福祉だけでなく、精神的
福祉が
充実されなければ、満たされるものではありません。戦後の
日本は、あたかもやせた豚から太った豚になることだけを志向したような傾向があり、そのゆえに精神の荒廃が進み、いまやわれら
国民は、物心両面にわたって重大な
危機に立っております。この
危機を克服するには、改めて人間モラルの原点に立ち返り、そこから
教育行政を再出発させるべきであると考えます。
わが国の
教育体制の
現状を見るに、それは学校
教育のみが
教育であるかの観を呈し、ために、学歴偏重社会の出現と相まって、人間形成に不可欠な家庭
教育や社会
教育がほとんど顧みられておりません。しかも、学校
教育においては、生徒、学生の知識だけを対象にして選別が行われ、また、一方においては、
教育の場がしばしば政争の具に用いられ、かくて、これら
教育制度のあり方が相絡んで、
国民モラルの荒廃の
原因となっております。
政府は、速やかに
教育改革の理論と原則を明確にして、この際、
教育と
政治を分離して、
教育は司法、立法、行政の三権に準ずる国の第四権として文部省から独立せしめ、これを
国民的規模に立つ中央
教育委員会のごとき機関にゆだねることとし、国はそれに必要な機構を新しく組織すべきであると思うが、このような構想に対する
総理の御
見解はどうか。なお、この際、
総理の
教育改革に関する
具体策をあわせて伺っておきたいと存じます。
次は、
福祉政策について伺います。
政府は、明年度
予算案で、厚生
年金、
国民年金などでその給付の増額を図っているとはいえ、その反面において、これら
福祉掛金の増徴とともに、健康保険の初診料や入院
費用の自己
負担を大幅に
引き上げていることは、これは歴然たる
福祉の後退であります。
所得税減税ゼロの中で、受益者
負担という名目でこのように各種の社会
負担が増額されることは、
福祉は常に
改善、
充実を目指して前進させるべきもので、途中で後退さしてはならないとする社会
福祉の原則的戒めにもとるものであるが、
政府はこれらについて改めて考慮する意思はないか、
総理より御
答弁願いたい。
次は、行政改革について伺います。
わが国財政は、いまや中央、地方ともに膨大な借金を抱え、その運営はますます困難を深めてまいりました。ここに、
国民生活の安全を確保しつつ、行
財政の健全なる運営を図る道は、もはや、行政費の節減を目指し、この際、思い切って行政機構の大改革を断行するしかありません。(
拍手)この行政改革は、多年にわたる
わが国政の懸案であり、
国会においても行政簡素化がしばしば強調されてまいりましたが、いまだ根本的な改革は何
一つ実現しておりません。のみならず、各省庁のなわ張り争いによって、行政機構は逆に肥大化の傾向にあります。もはや、冗長な行政機構をこのままにして、膨大な国費をこのために消耗させておくことは許されません。いまこそ
政府と
国会はこの問題を真剣に考え直すべきであります。(
拍手)
また一来年度
予算案において七兆円近くに上る各種補助金についても、そのあり方には幾多の問題があります。
政府は、これを総点検し、思い切って整理または廃止の断をとるべきであります。
また、現在、
政府関係の公団、公社は、その数百十三の多数に上り、これまた、役人の天下り領地として整理縮小が叫ばれて久しいのに、いまだそれらしい実行はなされておりません。
政府は、この際、この公団、公社に対しても、整理統合の大なたをふるうべきであります。(
拍手)
なお、この際、
総理は
国会運営改革の試案をまとめられ、この問題は、きのうきょう、議運においても問題になったようでありまするけれども、とにもかくにもその中で、「行政部に対する
国会の監督機能を高めるため、
国会に行政監察
委員会の
制度を新設する」ことを提唱されておりますが、これは今後どのようにして具体化される御所存か、以上、まとめて
総理より御
答弁願います。(
拍手)
次は、
物価政策とともに、公営
企業の経営
合理化について
質問をいたします。
インフレはやや鎮静の
方向に向かいつつあるとはいえ、一面、
物価値上がりの趨勢は根強いものがあります。
政府は、かねて
物価安定が最大の
政策課題であると言いながら、昨年は酒、たばこ、郵便料金の
値上げを強行し、さらに本年は、
国鉄運賃、電信電話料金、
国立大学授業料、それに塩の専売価格などの
大幅引き上げを断行しようとしております。ここに、
公共料金の
値上げは便乗
値上げを誘発し、
物価の
上昇を刺激する要因を持ち、その波及効果の大きさは容易にはかり知れないものがあります。
政府が真剣に
インフレと闘う決意ならば、この際は、まず
政府みずからが
公共料金を凍結して、不退転の
方向を
国民に示し、その上で諸般の
物価政策をこれに並べて
強化すべきであると思うが、
政府の
態度は全くそれとは逆であります。
特に納得できないものは、あの
国鉄の大幅な運賃
値上げ要求であります。すでに
国鉄運賃は、
昭和五十年度に特急料金など三二%の
値上げを強行し、相次いで本年度はざらに五〇・四%の運賃
引き上げを求め、明五十二年度においても、その上に引き続き五〇%以上の運賃
値上げを行うことを予定しているとのことであります。まことに
国鉄当局の
態度は、相手は日の丸式の典型で、現に従業員の管理統率もろくに行えず、
企業としての
合理化も生産性の向上もほとんど投げやりで、その経営
赤字は借金や国の助成におんぶして、その上、鉄面皮にも何はばかるところなく毎年大幅な運賃
値上げを要求するとは、彼らは一体その公的
責任を何と心得ておるか、まさに憤激にたえません。(
拍手)
いまや
国鉄の経営建て直しは緊急焦眉の急務であるが、
政府は、この際、国が
政策上
負担すべきものはこれを
負担することとし、一方、
合理化すべきものはちゅうちょなくこれを整理することとし、速やかにその経営の近代化、
合理化を断行させるべきであると思うが、
政府の方針はどのようなものか。(
拍手)
また、わが党が昨年来提唱しているこの公営
企業体
合理化審議会設置に対する
政府の
見解はいかがでありますか。
以上の諸点について、この際、
総理より
責任ある御
答弁を願いたい。
次は、公企体
労働者のスト権問題と違法スト処分について
質問をいたします。
公企体
関係労働者のスト権については、わが党は、労働
基本権と公共の
福祉との調和を図る
見地に立って、一定の規制のもとにこれにスト権を付与すべきであると考えます。
したがって、国は、この場合、当事者能力や経営形態の問題に籍口していたずらに解決を遷延することなく、速やかに公労法を改正して、これが全面的解決を図るべきであると思うが、これに対する
政府の
見解はいかがでありますか。
しかしながら、国労、動労、全逓などによってしばしば繰り返されてきたあのようなストライキは、明らかに違法ストであって、事情はいかがあれ、断じて許されてはなりません。(
拍手)現に、昨年十一月二十六日から十二月の三日にわたって行われた国労、動労のゼネストによって、あのとき、全
日本の交通は麻痺し、通勤、通学は足を奪われ、私鉄は悲鳴、怒号の混乱の中でけが人を続出し、滞貨となった野菜、魚介類は腐敗し、わけても日給
労働者らは就労できずして糊口を断たれ、特に
中小企業者は致命的な打撃を受けて、塗炭の苦しみをなめさせられました。まさに反
国民的暴挙と断ぜざるを得ません。(
拍手)
これに対し、特に注目すべきことは、あのような無謀な違法ストの渦中にあって、同じ
立場にある鉄労、全郵政らの組合員が、遵法の精神に徹し、断固として変わりなくその職務に精励されたことであります。(
拍手)
政府は、この両陣営のこのような対照的なあり方を何と見られておるか。もしそれ、法治国において、法律が無視され、それがじゅうりんされて何のとがめも受けないならば、その国の秩序はやがて崩壊し、かくて
国民生活は大いなる混乱に陥ることになりましょう。(
拍手)
一殺多生の剣なるものは、政道のとうとき戒律であります。
政府は、この際、「法律を誠實に執行し、國務を總理する」との憲法の条章に従い、厳然として
関係当局を指揮し、違法ストの処分を断行すべきであると思うが、この際、
総理より
政府の
態度、方針を明確にお示しを願いたい。(
拍手)
次は、昨今、雑誌「文芸春秋」を初め、その他マスコミを通じ報道せられ、現に深刻な
国民的疑惑を呼び起こしている、いわゆるリンチ共産党事件について
質問をいたします。(
拍手)
申すまでもなく、本件は遠く既往にさかのぼる事件とはいえ、本日この問題が公然とかつ深刻に論議せられ、なおその真相が不明であるということにかんがみ、本件はいまだに今日的な問題であります。(
拍手)
すなわち、評論家立花隆氏は、このほど雑誌「文芸春秋」に「
日本共産党の研究」と題する論文を発表し、その中に、
昭和八年十二月二十三日、時の
日本共産党中央委員宮本顕治氏らによって行われた、あのいわゆるリンチ共産党事件を取り上げ、それを浩瀚な記録に基づいて論述されておりますが、これに対し
日本共産党は、これを反共デマ宣伝ときめつけ、現に「赤旗」を中心に全国的な一大キャンペーンを展開されているのであります。
この論争の焦点は、あのとき、時の
日本共産党中央委員小畑達夫氏の査問に当たった宮本顕治氏らにリンチ行為があったのか、それともそのような暴力行為は全然なかったのか。また、小畑達夫氏はそこで死亡したが、それは、医学博士古畑種基氏の死因鑑定に示されたような、リンチによる外傷性ショック死であったのか、それとも小畑達夫氏は査問やリンチに
関係なく、異常体質のために忽然と死んでしまったのか、問題はこの二点に集約されるのであります。(
拍手)
立花氏は、これについて数々の資料と証言に基づいて
検討された結果、それは当時、裁判所が判決で示したとおり、そこではリンチが行われたものであり、小畑氏の死因は傷害致死であるとの判断を立て、これに対し
日本共産党は、リンチはなかった、そして小畑氏の死因は特異体質によるショック死であると抗弁されているのであります。いずれにしても、真実は断じて
一つのものでしかあり得ません。(
拍手)
すなわち、裁判所の判決に示されたものが真実であるならば、
日本共産党の抗弁はうそであり、
日本共産党の主張が真実ならば、あの判決は宮本氏らに無実の罪を科したことになりましょう。すなわち、裁判所のあの判決は真実に即した正当なものであるのか、それとも
日本共産党が主張するがごとき、それは当時の特高警察によってでっち上げられ、かつ、その言う天皇制裁判によるでたらめな判決であったものか、このことは、本件がいかに戦前の司法機関の
責任に属するものとはいえ、問題の重大性にかんがみ、その真相をこのままあいまいにしておくときは、本件に対する
国民の疑惑はますます大きくなるばかりであります。(
拍手)
したがって、国はこの際、ここに論争の焦点となっているあのリンチ共産党事件なるものの事実
関係を、改めて
国民の前に明らかにする必要があると思うが、
政府の
見解はいかがでありますか。
次に、この際、特に
政府の
責任において御解明願いたい問題点は、
昭和二十年十二月二十九日公布せられた
政治犯人等の資格回復に関する勅令第七百三十号と、その後宮本顕治氏に与えられた
東京地検による公民権回復の
措置との
関係についてであります。
すなわち、勅令七百三十号はその別表二において、刑法第二編の罪に該当する者は、その項の適用から除外された者以外はこの勅令による資格回復の対象にしないことを明記しております。
すなわち、宮本顕治氏が受けた確定判決に示されたその罪名は、治安維持法違反、監禁、監禁致死、監禁致傷、傷害致死、死体遺棄等の観念的競合であって、これは勅令七百三十号が資格回復の対象外に置いているものと見なければなりません。(
拍手)このことは、宮本顕治氏が
昭和二十年十月九日、網走刑務所において刑の執行停止を受けた後も、
昭和二十二年五月二十九日、
東京地検より改めて公民権回復の証明書を受けるまで、この間、その公民権は回復されていなかったことに徴して明らかであります。
問題は、この
昭和二十二年五月二十九日、
東京地検が宮本顕治氏に交付した公民権回復の行政
措置についてであります。
以上の経緯を踏まえて判断するとき、この
東京地検のとった資格回復の
措置は、一体いかなる法律に基づいて行われたものかと、ここに重大なる疑義を抱かざるを得ません。(
拍手)もし、これが法律、命令の定めによったものでないとするなら、それは、当時の連合軍司令部が、宮本顕治氏の復権について特に別個の指令を発したものか、それとも、そのほかに何か特別の事情があってのことか、この事実
関係を把握することなくしては、本件に対する疑義を解消することはできません。
したがって、
政府はこの際、
わが国政の権威のためにも、また、本件の実態を
国民が正確に判断するためにも、その経緯と真相を厳格、公正に
国民の前に御説明願いたい。(
拍手)
また、本問題の重要性にかんがみ、
国会は国権の最高機関たるの
立場に立って、われわれはなお調査を進める必要があると考えるので、この際、宮本顕治氏に対する裁判所の判決原本及び同氏が網走刑務所において刑の執行停止を受けることになった医師の診断証明書、並びに同氏に交付された公民権回復に関する文書等の写し、その他本件に関連を有する連合軍司令部より発行せられた
関係文書等を、一括して国政調査用資料として本
国会に提出を願いたい。(
拍手)
以上三点について、
三木総理より明確なる御
答弁を願います。
最後は、
三木総理の
政治姿勢に関連して、この際、改めて御所信のほどを伺っておきたいと存じます。
そもそも、あなたは金脈問題で倒れた田中内閣の後を受けて、あのとき、対話と協調による新規まき直しの改革
路線を推進することを言明して、
総理の座につかれました。しかるに、その後一年余のあなたの足跡を顧みるとき、そこには余りにも公約の
破綻が目立ち過ぎます。
スタグフレーションのもと、
不況は依然として深刻であり、
企業倒産と
失業が猛威をふるい、戦後最大の歳入欠陥によって、国家
財政と
地方財政は極度に窮迫し、これが
公共料金の
値上げや
福祉行政の足踏みとなって、
国民生活はここに大いなる脅威にさらされております。
これは端的に申せば、
三木総理が、党内諸勢力に右顧左べんされて、事ごとに公約の改革
路線を後退させ、ひたすら政権の座を守ろうとされている結果にほかなりません。まことに
総理の
責任は重大であります。
かくて世論は、
三木内閣はすでに
政策遂行能力を喪失して、もはやその実体は死に体同様のもので、いまはただ政権の座に無重力状態で浮遊しているにすぎないものであるとさえ酷評しております。特に、
三木内閣は、成立後一年余を経過し、その間、年度
予算を二回も重ねて編成しながら、いまだに主権者
国民の審判を受けていないということは、憲政史上きわめて異常なことと批判されております。
もとより、あなたは
自民党の総裁であられまするけれども、憲法に基づき、一たび内閣
総理大臣に選ばれた上は、あなたは全
国民の運命をその双肩に担われる
日本の
総理大臣であられます。望むらくは、党内派閥の間隙を縫って危うく余命を保つような、そんな弱々しい
態度は、もはや
総理の権威において潔くこれを一てきされるべきであります。
政情は煮詰まって、解散、総選挙の機運はすでに熟し切っております。初心忘るべからず、
総理はこの際、一日も早く厳然として
衆議院の解散を断行し、もって人心を一新して政局の
転換を図らるべきであると思うが、
総理の御所信はいかがでありますか。このことをお伺いして、私の
質問を終わります。(
拍手)
〔内閣
総理大臣三木武夫君登壇〕