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1976-05-12 第77回国会 衆議院 文教委員会 第5号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十一年五月十二日(水曜日)    午前十時三十分開議  出席委員    委員長 登坂重次郎君    理事 河野 洋平君 理事 西岡 武夫君    理事 藤波 孝生君 理事 松永  光君    理事 三塚  博君 理事 木島喜兵衞君    理事 嶋崎  譲君 理事 山原健二郎君       上田 茂行君    臼井 莊一君       久野 忠治君    久保田円次君       高見 三郎君    床次 徳二君       楢橋  進君    西村 英一君       深谷 隆司君    辻原 弘市君       長谷川正三君    山田 鶴男君       栗田  翠君    有島 重武君       高橋  繁君    受田 新吉君  出席国務大臣         文 部 大 臣 永井 道雄君  出席政府委員         文部政務次官  笠岡  喬君         文部大臣官房長 井内慶次郎君         文部大臣官房会         計課長     宮地 貫一君         文部省大学局長 佐野文一郎君         文部省管理局長 清水 成之君  委員外出席者         厚生省医務局医         事課長     古賀 章介君         厚生省薬務局企         画課長     新谷 鐵郎君         文教委員会調査         室長      石田 幸男君     ————————————— 委員の異動 五月十二日  辞任         補欠選任   安里積千代君     受田 新吉君 同日  辞任         補欠選任   受田 新吉君     安里積千代君     ————————————— 五月十日  女子教育職員の出産に際しての補助教育職員の  確保に関する法律の一部を改正する法律案(鈴  木美枝子君外一名提出参法第一四号)(予) 同日  大学学生寮改善等に関する請願有島重武君  紹介)(第四一四〇号)  同(高橋繁紹介)(第四一七〇号)  同(山田太郎紹介)(第四一七一号)  同(北側義一紹介)(第四二四六号)  国立能楽堂の設立に関する請願藤本孝雄君紹  介)(第四一四一号)  同外一件(湯山勇紹介)(第四二四五号)  私学助成に関する請願石田幸四郎紹介)(  第四一四二号)  同(石田幸四郎紹介)(第四一六九号)  同(石田幸四郎紹介)(第四二四四号)  私立大学学費値上げ抑制等に関する請願(栗  田翠紹介)(第四二四七号)  同(中島武敏紹介)(第四二四八号) は本委員会に付託された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  国立学校設置法の一部を改正する法律案内閣  提出第一一号)  昭和四十四年度以後における私立学校教職員共  済組合からの年金の額の改定に関する法律等の  一部を改正する法律案内閣提出第五四号)      ————◇—————
  2. 登坂重次郎

    ○登坂委員長 これより会議を開きます。  国立学校設置法の一部を改正する法律案を議題といたします。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。嶋崎譲君。
  3. 嶋崎譲

    嶋崎委員 きょうは技術科学大学中心にして、ほかに幾つかの新設大学もございますが、技術科学大学にしぼりまして質問をさしていただきます。  最初にお伺いしますが「技術科学大学概要」という文部省から私のところに届きました文書がございますが、これはどこでつくったものですか。
  4. 佐野文一郎

    佐野(文)政府委員 文部省に設けられました調査会で、技術科学大学のさまざまな問題につきまして検討を進めているわけでございますが、その状況のうちで現在まで大綱的にとりまとめられておりますものについて私の方で取りまとめたものでございます。
  5. 嶋崎譲

    嶋崎委員 そうしますと、乙の概要最初に書いてありますように、昭和四十九年の三月に出された技術科学系の新高等教育機関構想に関する調査会、この長い名前の調査会報告に基づいてこの新構想大学概要が決められた、こういうふうに判断してよろしいですか。
  6. 佐野文一郎

    佐野(文)政府委員 御指摘のとおり、四十九年三月の報告に基づきまして、その基本構想をさらに具体化するための検討が進められておるわけでございます。その内容でございます。
  7. 嶋崎譲

    嶋崎委員 この技術科学系の新高等教育機関構想に関する調査会主査関口勲さんということになっておりますが、その調査会メンバーのリストを資料として提出していただきたいと思います。
  8. 佐野文一郎

    佐野(文)政府委員 御指摘のとおり、当時東京家政学院大学の学長でございました関口先生主査といたしまして、その他関係の大学先生方等中心に構成されたものでございます。この委員の名簿につきましては提出をさせていただきます。
  9. 嶋崎譲

    嶋崎委員 そうしますと、この調査会答申に基づいて文部省技術科学大学構想の要綱をまとめたものということで質問をさせていただきますが、この四十九年三月十五日の調査会木田局長あて答申の前文に「この報告に述べた構想については、今後、法律上の制度としてのこの高等教育機関位置づけを明らかにしたうえで」こう書いてあります。「法律上の制度としてのこの高等教育機関位置づけ」というのはどういう意味ですか。
  10. 佐野文一郎

    佐野(文)政府委員 この四十九年三月のときの技術科学系の新しい大学院構想内容というのは、すでに御案内のように、先般の当委員会におきましてもいろいろと御議論がありました修士課程中心といたしまして、それに進学するための特別の課程を設けるという構想でございます。したがって、当然それに伴って法律的な検討を必要とし、かつ制度的な位置づけを必要としたわけでございます。
  11. 嶋崎譲

    嶋崎委員 そうしますと、四十九年のこの段階答申で言っている法律上の制度というのは、この技術科学大学大学院中心とした技術科学大学ということを前提にした意味で使われたということになるわけですね。
  12. 佐野文一郎

    佐野(文)政府委員 そのとおりでございます。
  13. 嶋崎譲

    嶋崎委員 そうしますと、この答申と今度の出てきた「技術科学大学概要」との間には、そういう意味での直接的なつながりはないと判断できるのですか、つながりがあるのですか。
  14. 佐野文一郎

    佐野(文)政府委員 技術科学大学構想の基本的なねらいにつきましては、この調査会基本構想を受け継いでいるわけでございますが、制度的な位置づけにつきましては、当委員会での御議論をも受けまして、構想を変えて、一学年から主として工業高校卒業生受け入れ一般大学とするというふうに改めましたので、そういう意味で特別な法律上の措置をするということは必要がなくなったわけでございます。
  15. 嶋崎譲

    嶋崎委員 それで大体この答申意味と今度の構想大学概要との関連が明らかになりましたが、そうしますと、問題はその大学内容が、法律制度の上では変更を必要としないけれども、内容としてはここに出された調査会答申の見解に基づく新構想大学というふうに考えてよろしいですか。
  16. 佐野文一郎

    佐野(文)政府委員 そのとおりでございます。
  17. 嶋崎譲

    嶋崎委員 そこで、これは大臣にお伺いしますが、この「技術科学系の新しい大学院構想について」という答申ですけれども、先に答弁を考えていただく結論的な前提を申し上げますと、やたらに新しい言葉があります。たとえば、しゃれた言葉だと思いますが、「技術科学」と「科学技術」とはどう違うのですか。
  18. 佐野文一郎

    佐野(文)政府委員 「科学技術」と申します場合には、いま御指摘のように真ん中にぽつがございまして、言えば科学技術というような意味で使われているのが一般だと思います。この技術科学大学で言っております「技術科学」と申しますのは、技術分野について、諸科学の成果を十分に取り入れてその発展を図るという趣旨をもって「技術科学」というふうに使用しているというふうに理解をいたしております。
  19. 嶋崎譲

    嶋崎委員 そうしますと、私流に理解して、実用性のある技術科学する、そういう学問の領域というものを設定されての概念ですか。
  20. 永井道雄

    永井国務大臣 「技術科学」という言葉エンジニアリングサイエンスという考え方で、要するに技術研究発展させていくのには科学的基礎との連携が重要であるという考え方が、これは強くその中に含まれていると思います。  ですから、そういう意味においては技術発展を図っていくということの研究並びに教育が行われる、こういうことだと思います。
  21. 嶋崎譲

    嶋崎委員 そうしますと、この答申の中に「このような社会的要請に対応するために、実践的技術開発」という言葉があるんですね。そして今度はこの大学教育研究基本構想として「指導的実践的技術者」という言葉があるわけですね。そしてこの大学研究は「創造的技術開発」と言っているんですね。技術に実践的でないものはないと思いますけれども、「実践的技術」というのは何ですか、どういう意味ですか。
  22. 永井道雄

    永井国務大臣 実は私、この調査会に参加していなかったわけですから、詳細な議論はわかりませんが、しかし実は調査会メンバーは、たまたま私、東京工業大学にいたものですから、東京工大議論していた議論の人がたくさん入っていますが、私の理解いたしますところでは、いままでの「科学技術」というふうに分けまして、技術研究をやっていきますというと、たとえば、実験実習のようなものが非常に弱くなるおそれがあり、従来の日本の慣例というか歴史で見ますと、戦前の理化学研究所とかそれから東京高等工業専門学校、いわゆる蔵前工業、そういうふうなところで伝統的にやってまいりました技術研究する場合にも、実習実験というものを非常に重視していくという傾向が戦後かなり弱まった。そこでむしろこの際技術研究のためにもそういう側面というものを重視する必要があるということを、長い間、いわゆるエンジニアリングサイエンスに関、心を持っていた人が申してきておりまして、たとえば、東京工大の中でもそういう方向を打ち出したいという努力が繰り返されていたわけですが、この参加の方々の顔ぶれを見ますと、私はそういう点が考慮されているものと理解いたしております。
  23. 嶋崎譲

    嶋崎委員 一般的な抽象的議論をしていても始まりませんから、端的にお聞きしますが、今度は最後にまとめて「技術科学大学概要」の中で言っている「実践的な技術開発を主眼とした教育研究を行う大学院重点を置いた工学系の新しい構想による高等教育機関を新設しようとするものである。」新しい構想というのはどういう意味ですか。
  24. 佐野文一郎

    佐野(文)政府委員 一つには、この大学の場合には工業高校それから工業高等専門学校卒業生を主として受け入れて、そして学部修士入学定員を同じにして一貫した教育実施をしようという点が従来の大学とはかなり変わったねらいを持ったものということができるかと思います。それに対応して教育内容につきましてもいま大臣が申しましたような、そういうねらいを持って実施をするために、教育組織としては従来の狭い学科ごとの区分よりも、もっと広い、いわばコース制を採用した課程を六つ設ける。そしてそれに対応して大学院も六つの専攻を設けるというような工夫をいたしております。また、教育方法におきましても、できるだけそういう趣旨を達成するために実験実習重点を置いていくというふうな工夫もいたしております。そういった点が従来の大学とは変わった新しいところかと思います。
  25. 嶋崎譲

    嶋崎委員 いま局長は三つの側面を言いましたね。新しい構想の第一は、学校制度が新しい、つまり工業高校高専から行けるということ、そういう意味でそれに学部修士課程が一体化しているという制度的な面から見て、よその大学から見て新しいというのが一点。  二番目は、内容的に見て、いわゆる技術科学力点を置いたという意味で新しい。  三番目に、したがって教育方法においても実験実習などを中心とした新しいタイプの教育方法をやる、こういうことだというふうに理解しまして、その第一点から入りますが、この技術科学大学進学課程はどういう経路になるのかという点でありますが、ここに書いてある内容によりますと、「高等専門学校と同様、後期中等教育段階で実際的な技術教育実施している工業高等学校卒業者」まずここで工業高校から進学ができるという道を開いている、これが一つあります。  二、「この大学への進学の道を開くことも、この大学性格から見て意義のあることであり、その受入れについても考慮することが適当である。」と書いてある。したがいましてこの技術科学大学は、工業高校から四年制の大学の一年に入学ができるという道が一つある。この場合に、普通高校から技術科学大学の一年に進学するという道は閉ざすのですか、開放するのですか。
  26. 永井道雄

    永井国務大臣 普通高校からの進学者というものを、別に普通高校卒業者であるからといって入学資格者として制限することは考えておりません。
  27. 嶋崎譲

    嶋崎委員 そうしますと最初は六十人の定員ですけれども、工業高校それから普通高校からも受験することができる、そういう意味で開かれているわけですね。では今度は、高専の三年から技術科学大学入学する資格はどうなりますか。
  28. 佐野文一郎

    佐野(文)政府委員 資格としてはあるというふうに言わざるを得ないと思います。高専の途中から編入学をすることは望ましいことであるかどうかについては議論はございましょうけれども、入学資格としてはございます。
  29. 嶋崎譲

    嶋崎委員 実際には五年間やるコース学校に行ったんですから、三年から行くというのはアブノーマルな進学希望だと言えないことはないけれども、しかし四年制の技術科学大学と二年の修士課程が一体化されているということになると、高専五年卒業して学部の二年に入るよりも、四年で一年生から入るという場合に、よりもう一度基礎的でもあり、しかも専門的な研究をやるのに有利であるということも考えられるわけですから、それじゃその道も一応は開いているわけですね。——はい。  そうするともう一つ聞きます。今度は高専を卒業した人たちは、いままでの進学希望率はどのぐらいでしたか。
  30. 佐野文一郎

    佐野(文)政府委員 おおむね九%弱、八・七%程度だったと思います。
  31. 嶋崎譲

    嶋崎委員 それは高専を卒業した学生が、普通の大学工学部の三年に編入するという形で処理されていたんですか。
  32. 佐野文一郎

    佐野(文)政府委員 二年ないし三年に編入されるという形で処理されております。
  33. 嶋崎譲

    嶋崎委員 このコースは今日、今後も開かれているわけですね。
  34. 佐野文一郎

    佐野(文)政府委員 そのとおりでございます。
  35. 嶋崎譲

    嶋崎委員 いままでは国立高専というのは袋小路ですから、進学の道があっても大学側受け入れ体制もあったでしょうし、またいわゆる技術科学的な専門教育を小さいころからやっているために、大学一般教養や基礎的な研究中心にしてきた学部の二、三年に入るには入りにくいとかいうような隘路があったのではなかろうかと思いますが、制度としては開かれていた。しかし袋小路だったからなかなか進学しにくい。進学率は九%そこそこだが、本来ならばもっと開放されていれば他大学に行く可能性というのは含んでいるというふうに予測されると思うんです。  そこで今度は、高専卒から技術科学大学の三年、四年に、これは入学試験をやる編入ですか。
  36. 佐野文一郎

    佐野(文)政府委員 入学試験を行う編入学でございます。
  37. 嶋崎譲

    嶋崎委員 今度は、普通の大学学部の二年生の学生技術科学大学の三年ないし四年に受験をして編入するという道は開かれているのですか。
  38. 佐野文一郎

    佐野(文)政府委員 制度としては開かれていると思います。
  39. 嶋崎譲

    嶋崎委員 そして今度は、学部を卒業した学生大学院マスター進学しますね。そのほかに、マスターコースには社会的な職業人を採用するというふうに開放されているのですか。
  40. 佐野文一郎

    佐野(文)政府委員 もちろん、入学受け入れる場合の資格の問題としては、一たん社会に出た者も受け入れるということが考えられるわけでございます。また、この大学性格からして、将来は、高等専門学校を卒業して一たん社会に出てある実務経験を積んだ者がさらにこの大学院に入ってくることは、むしろ望ましいことであるというふうに考えております。
  41. 嶋崎譲

    嶋崎委員 そうしますと、将来の技術科学大学大学院というのは、いままでの高専を卒業して社会に出た人がさらに技術を身につけたい、専門的な勉強をしたいというので来るところに力点を置いているのであって、他大学を卒業した学士ないしは他大学学部在学中の学生——学士でなければマスターへいけないですね、他大学学士資格を持った人が社会に出ていて、そしてそこからまたこの大学院に来るということもあり得るし、制度としては開放しているわけですね。
  42. 佐野文一郎

    佐野(文)政府委員 制度としては開放されているということだと思います。
  43. 嶋崎譲

    嶋崎委員 いままでの幾つかの進学コースを考えてみますと大変複雑なわけなんです。技術科学大学というのは国立大学ですから、特にすべて進学できるように開放されていなければならぬと思うのですね。制度としては開放されているがという答弁ですけれども、実際は、高専卒社会に出た人がこの大学院コースにいくとか、ないしは高専卒業者学部三年編入に優先するとか、工業高校を済んだ学生学部の一年に進学するのに優先しているとか、そういうふうに、たてまえとしてはいろいろなところに開放されているけれども、事実上は、いままでの国立高専というものを軸にするかもしくは工業高校を軸にして上にでき上がった大学、こういうふうに規定してよろしいのですか。
  44. 佐野文一郎

    佐野(文)政府委員 この大学高等専門学校卒業生受け入れて、そして高等専門学校における教育趣旨特色というものをさらに伸ばしていこうということにあるわけでございます。そういうことで三年に受け入れ修士課程まで一貫した教育というものを考えていくわけでございますから、受け入れ段階では、当然修士課程までその人たちは本来進んでいくということを予定するわけでございます。もちろん途中で進路を変更するということはあり得るわけでございますから、それに対するカリキュラムの上での配慮等はしなければなりませんけれども、たてまえはそういうことであろうと思います。ただ、そういうたてまえをとりながらも、いま御指摘のような、ほかの分野からの志望者受け入れということも制度としては考えられるわけであるし、また、大学院定員に余力があればそういったものも受け入れていくということを考えていくべきだというふうに考えております。
  45. 嶋崎譲

    嶋崎委員 これは工学系大学院を持った大学ですから、しかも国立ということになりますと、他大学工学部を卒業した学生も当然この大学院進学する資格もあれば、それから、大学側としては受け入れなければならないのではないかというふうに私は思うのです。だから、工業高校というのは別としても、高専をつくってきた経過自身が、袋小路学校をつくってきたのですから、そうしていてそれが袋小路になったからといって上に延ばすためにだけあるのであって、他大学のいわば学士卒業者が同じ質格大学院を受験することができないということであってはならないと思うのですが、それはいかがですか。
  46. 佐野文一郎

    佐野(文)政府委員 実際問題としてどの程度受け入れが可能であるかという問題はございますけれども、制度のあり方として、そういったものの受け入れを拒むということはあり得ないことだと思います。
  47. 嶋崎譲

    嶋崎委員 そこが新構想大学学部大学院制度上の問題だと思うのです。つまり、いままでの大学学部卒学士を出す。それで四年制大学だったわけですね。ところがこの大学は、四年のうち二年は工業高校から来る六十名に限定しておいて、そして編入段階で二百四十名高専から入れて、そして三百名をストレートに大学院にそのまま持っていく、現在の段階はこういう考え方なわけですね。そうなりますと、大学院学部に連続した位置づけになっているところにこの制度の特徴があると思う。ところが、こういう制度だと、高専から編入してきた人間が圧倒的に優先してしまって、他大学工学部を卒業した学士がこの大学院を受けるという道は、客観的には閉ざされていくということになるのではないかと思うが、いかがですか。
  48. 佐野文一郎

    佐野(文)政府委員 御指摘のとおり、この大学を創設する趣旨高等専門学校における実践的な技術開発主体とした教育大学院レベル主体として実施したいということでございますので、三年時に編入学をさせた者が修士まで進んでいくということが主体になることはもとよりでございます。したがって、他の大学工学部を出て、この大学修士課程進学をしようという者は、道は開かれているけれども、実際問題としては、入り得る余地というのが少なくなるというのは実態であろうと思います。
  49. 嶋崎譲

    嶋崎委員 そこで技術科学科学技術という問題が関係してくると思うのですよ。つまり、技術科学という研究領域に基点を置いた大学をつくるというのは、いままでの大学工学部科学中心にして、その上に技術というものを考える傾向があって、極端なことを言えば実用性がなくとも理論研究や真理の研究をやっていく。つまりそういう基礎研究力点を置いた学部性格があった。そのことが今日の日本科学技術発展にとって研究貧困化、表現がいいかどうかは別として、そういう条件を招いているからこそ技術科学大学というものをつくったわけでしょう。だとすると、総合大学工学部でもって基礎的な研究をやった学士が、技術科学的なものをよりやりたいという意味においてその大学院を選ぶということを保障していなければ、国立大学としての技術科学大学院のレーゾンデートルはおかしいのじゃないかと思うのです。そういう意味で、高専から行くのを優先するというたてまえはとるべきではないのであって、実態がそうなるかどうかは別としても、少なくとも各大学学士資格を持った諸君が技術科学大学院入学試験を受けるということは開放しておくべきだというふうに私は思うのですが、いかがですか。
  50. 永井道雄

    永井国務大臣 ただいま先生指摘になりましたように、私は、制度的には、他の大学を出た人が技術科学大学大学院に入りたいという場合に道を開くことが将来できるということを考えるべきだと思います。しかし、むしろ力点はどこにあるかというと、高専卒という言い方がありましたが、今度の技術科学大学特色科学技術でなくて技術科学である。つまりこのやり方は、具体的な技術中心にして科学研究を行うという意味において従来の研究方法と違うわけです。それを確立していくことによって、ある意味では従来の工学部と違う傾向が生まれてくるわけでありますから、したがって、そういう意味において相互に刺激し合うことも起こってくるということが調査会メンバー方たちの考えにあると理解いたしております。
  51. 嶋崎譲

    嶋崎委員 いま教育制度の問題を幾つか申し上げたわけですが、今度は教育内容観点研究内容観点に第二番目の視点を移しますと、研究組織研究グループ答申に出されたものとこれは大体同じですね、ちょっと用語が変わっているだけで。これは六コースになっていますけれども、実際は計七つですね。これを見ますと、非常に新しい学際領域を考えた、既存のいままでの大学の講座ないしは科目、そういうものをいわば新しく発展させたものとして構想されているというのはわかります。ところが、今日自然科学の中でこういう新しい研究分野ないしは新しいものが要請されていると同時に、新しいものが古くなっているという点の研究反省があると思います。たとえばここで言っているところの機械工学電気工学、私の専門社会科学ですから細かなことはわかりませんが、たとえばこの中に生物系というものがなぜ入らないのか不思議でならないのであります。つまり、今日の技術科学が問題にしていることは、生産力発展や新しい技術開発も重要だけれども、環境破壊というものを中心にしたこととの調和がとれなければならぬという反省が今日のすべての科学で問題になっていることであります。そうしますと、当然このグループの中には生物系グループみたいなものが調和のとれた形で入ってこなければならないのではないか。そういうものが入らないというところにいままでの高度成長下におけるいわば企業の技術開発に対応していく諸側面が強調されていて、調和のとれた研究体系というものになっているんだろうか。私の言葉で言えば、新しいように見えて実は非常に古くさいという点が研究グループ位置づけ方として問題になりはしないかというふうに思うのです。その点いかがですか。
  52. 永井道雄

    永井国務大臣 実は、これも私の理解いたしておりますところでは、嶋崎委員が御指摘の点は非常に重要なことと思います。つまり、現在の環境破壊というような問題と技術の関係、こうしたものを十分に研究しなければいけない。その問題が、たとえばマサチューセッツ工科大学コースの編成では、嶋崎委員が御指摘になりましたように生物関係あるいは生命科学関係というような形でくくられておりますが、ここではそうではありませんけれども、しかし、そういうものがたとえばテクノロジーアセスメントというような形で研究されなければいけないということは、研究組織の方で見ていただきますと、計画・経営研究グループというのがあります。それからまた、情報工学研究グループというのがあります。そういうものがまた教育組織の方にもはね返る形になっておりますが、そうした形で、たとえばいまテクノロジーアセスメントというふうな形で総称されているような問題が研究されるものと私は理解しているわけでございます。
  53. 嶋崎譲

    嶋崎委員 いや、ここで言っている計画・経営研究グループというのは管理科学で、中身はそうじゃないのです。だから、やはり依然として生産力主義の前提に立っている科学領域だと私は理解していますけれどもね。だからその辺は、ぼくは専門家でもないですから議論はしませんけれども、そういう意味で、教育内容に関連してこの技術科学大学というものの研究コースは、今後そういう問題を、少なくとも調和のとれた研究をやっていかなければいけないと思うのです。特に、海洋なんというものをどう関連させていくかというのはこれから非常に重要になってくるので、陸ばかり言っていますけれども、海洋科学、それからこういういろいろな機械、電気すべてのものとの関連なんかは今後の研究課題として非常に重要になってくる。そういう問題をやっていきますと、生物系研究領域やグループが非常に重要視されてくることになると思うのです。だから技術科学という場合でも、環境破壊がこれだけ社会問題になると同時に、日本科学技術のあり方そのものが問われているわけですから、重視しなければならぬのではないかと思うのです。  たとえば、この科学技術白書を見ますとおかしなことを言っているんですね。日本技術というのはほとんど輸入技術だ、だからこれからは輸出する技術というものを考えなければならない。そういう意味で、外国の模倣をしていたというか、外国の技術日本に導入していく形でやってきた技術のあり方を、もっと自主的な研究に基づいて技術を外に向けて輸出していくというような自主性と同時に、高度の研究というものを要請しているわけですけれども、この考え方は、輸出なんということを頭に置いて考えていくのがいいのかどうか私は疑問なんです。そういう意味で、この研究グループ位置づけ方についても今後の課題があるということを申し上げたかったわけでございます。  そこで研究組織の問題に移りますが、もう一度制度的な根本を聞きますが、この研究組織大学院中心大学ですか、学部中心大学ですか。
  54. 佐野文一郎

    佐野(文)政府委員 大学院における教育研究というものに主体を置いた大学であるという構想は変わっていないわけでございます。
  55. 嶋崎譲

    嶋崎委員 そうしますと、ここで言っている研究組織教育組織というこの答申最初の方に出ている分けた図ですね。こっちでは大学院だけが教育研究組織として図表になっております。このこっち側の「技術科学大学概要」の方の図表と、それから四十九年三月の答申段階研究組織における図表、これは研究教育を分けてあります。  そこでお聞きしますが、この大学は、研究委員会学部の関係はどうなるのですか。
  56. 佐野文一郎

    佐野(文)政府委員 ただいま申しましたように大学のねらいとするところが、大学院レベル教育に主眼を置くということはもとよりでございますけれども、制度的なあり方としては一般大学と同様なものでございます。この場合には、教授会が学部大学院の双方について責任を持つというような形で運営されていくということが調査会でも検討されておりますし、私どももそれで適切ではなかろうかというふうに考えております。
  57. 嶋崎譲

    嶋崎委員 したがって、新しい構想だというのは、学部大学院が連続しているというところに新しい特徴があると言いましたね。そういう前提ですから、学部卒業者が全部大学院に行ける、大体三百ですから。そういうところに特徴があるわけなんですね。したがって、大学院研究教育のスタッフが中心になって学部大学院を運営していくという、そういう大学になるわけですね。その点いかがですか。
  58. 佐野文一郎

    佐野(文)政府委員 学部大学院を通じてこの大学の教官が全体として責任を持って運営に当たるということであろうかと思います。
  59. 嶋崎譲

    嶋崎委員 それはどこの大学でもそうですよ。大学院のあるところは、研究委員会学部とが一緒になって学部教育大学院をやっているのですよ。ところが、そこは同じなのに、この技術科学大学は、実際は大学院技術科学修士中心にして学部をくっつけた大学なんですよ、経過が大体そうですよ、途中なかったのを入れたのですから。だから、そうなりますと、ここで言っているこの「系」というのは、これはよその大学で言えば研究委員会の中のいままでの学科ですね。たとえば法学研究科の中の政治学専攻とかそれから法学専攻とか社会法学専攻とか、そういう専攻に相当するものがこの「系」になるわけでしょう。研究委員会と「系」との関係はどうなっていますか。
  60. 佐野文一郎

    佐野(文)政府委員 この大学の場合に、その研究委員会を設けるかどうかというのは、具体に大学が発足した場合にその創設に当たられるスタッフが教授会の運営と並んでその問題をどのように処理するかということに結局はかかるわけであろうと思います。  しかし、先ほどから申し上げておりますように、この大学特色からして、教授会が両方を担当するということで運営するということで足りるのではないかというふうに考えているわけでございます。
  61. 嶋崎譲

    嶋崎委員 そこはいままでの学校教育法で言う大学大学院と違うところなんですよ。学校教育法の六十六条で言っている、大学院というのは「数個の研究科を置くことを常例とする。ただし、特別の必要がある場合においては、単に一個の研究科を置くものを大学院とすることができる。」と書いてあるのです。だからいままでの大学は、研究科というものがあって、それが一つないしは数個なんです。そしてその下に学部があったわけです。そういう仕組みです。ですから、研究科には教授会というものはないのです。研究委員会があります。大学学部の教授会が中心なんです。学部教授会の上に研究委員会があって、そしてその研究科のメンバーは教授会のメンバーでもあるのです。技術科学大学の場合はその関係はどうなりますか。
  62. 佐野文一郎

    佐野(文)政府委員 従来の一般修士課程を持つ工学部大学とその点において相違があるわけではないというふうに考えます。したがって、その研究委員会というものをこの大学として設けるということを創設に当たられる方々が考えるのであれば、それは研究委員会を設けるということでいいと思います。
  63. 嶋崎譲

    嶋崎委員 しかし、この文部省が出している概要は、大学院——だからこれも不統一なんですよ。どう不統一かというと「大学院及び学部組織」と書いて、書いてあることはこれは大学院だけなんです。そして「大学院工学研究科及び工学部に、次の六専攻及び六課程を置く。」と書いてあるわけです。これはつまり、学部大学院がストレートにつながっておるものなんですね。そしてその設立の過程は大学院が先に優先しているわけですから、大学院研究科をこしらえて、それに学部を連続させているというか、系列化させているというか、それは両方関連するでしょうよ。そうした場合に、いままでの大学研究委員会学部の関係と同じと言うけれども、同じなのかどうかということを聞いているのです。
  64. 佐野文一郎

    佐野(文)政府委員 お手元の資料にございますように、この大学の場合には工学の研究科を置き、そうしてその専攻に対応した学部課程というものが置かれているわけでございます。研究委員会の場合には、申し上げるまでもなく当該大学院のことのみを処理をするわけだと思います。先ほどから申し上げておりますように、この大学の場合には、この大学に置かれる、つまり学部に置かれる教授会というものが両方について責任を持って運営に当たるということを基本に考えているわけでございます。
  65. 嶋崎譲

    嶋崎委員 そうしますと、この予算のつけ方はどうなるのですか。
  66. 佐野文一郎

    佐野(文)政府委員 通常の大学の場合と同じように、学部に置かれているいわば七つの教官組織、これが言えば大講座に相当するようなものだと思いますけれども、その学部の講座について、大学院を持っている通常の大学の講座と同じように予算措置をしていくということに相なろうかと思います。
  67. 嶋崎譲

    嶋崎委員 恐らくその単価は、まだそういうことははっきりしてないと思うけれども、他大学と比べてみると、学部の予算のつけ方、大学院の予算のつけ方は、違った基準か、もしくはむずかしい問題を先に残すと私は思います。いまの段階ではまだそういう設立は先の方ですから今後検討すべき課題だろうと思います。  そこで確認しておきますが、ではこの技術科学大学は、学部教授会というものを前提にしているということを確認できますね。そうして大学院はここで言っている研究科に相当するものというふうに理解していいですね。大学院学校教育法に言っているところの研究科に相当するもの、そう判断してよろしいですか。
  68. 佐野文一郎

    佐野(文)政府委員 この大学大学院がもちろんその研究科であることは間違いございません。この大学の教授会が学部の教授会というふうに考えるべきなのか、あるいは大学の教授会というふうに考えるべきなのかについては、さらに整理を要する点があろうかと思います。
  69. 嶋崎譲

    嶋崎委員 それになると違うのですよ。そこが違うのです。いままでの筑波大学の場合は別なんです、法律で起こしましたから。筑波大学の場合には、学系と学群というものを、特殊な大学だからわざわざ国立学校設置法法律で起こしたのです。ところが今度の大学は、いままでと同じように、国立大学設置法の中に、大学の名称と場所、そして大学院の名称と場所だけ書いたのですから、いままでの大学と同じ教員組織、伝統的な大学のいわば組織形態を持っていなければならない、そこがポイントだと思うのです。したがって、大学院の教授会と実体が学部教授会が一体であっても、それを大学院の教授会が学部教授会を兼ねられる、実質的には同じことだというふうに言うと、大学組織のあり方は変わるということになるのです。そうすると法律で起こさなければいけません。その点いかがですか。
  70. 佐野文一郎

    佐野(文)政府委員 御指摘の問題があるということは承知をいたしております。この大学の場合には、運営の面はともかくといたしまして、制度的な面では従来の制度を改めるということを考えていないわけでございますから、したがって先ほど来申し上げておりますように、学部に教授会を置き、その教授会が大学大学院の両方について責任をもって運営に当たるというふうな形に相なろうかと思います。
  71. 嶋崎譲

    嶋崎委員 ですから確認しておきますよ。いままでの大学と同じ大学院学部の関係なんだから、法律の上で起こした国立学校設置法考え方は。したがって技術科学大学学部教授会を軸にして、その上に大学院があるという組織でなければならない。実体は、研究教育を分離するとかしないとかいう非常にややこしいものも含めて新しいタイプではあるけれども、そういう意味で新構想なんだが、大学制度としては学部自治を前提にした教授会とその上に研究委員会に相当する大学院がある。大学院会議は教授会のメンバーと同じであっても、事実上は大学院学部とは区別しておかなければならないというふうに確認をしておいてよろしいですか。
  72. 永井道雄

    永井国務大臣 ただいま御指摘のように、制度的な角度から申しますと、教授会は学部教授会でありまして、大学の自治を原則として大学の運営に当たっていく、そして大学院委員会を設けることになりますけれども、しかしながら事実上はすでに東京工業大学などのように、非常に多数、研究科に進んでおりますようなああいう工科系の大学においても見られることでございますが、実際に、メンバーはいま先生手でお示しになりましたけれども、非常に入り組んだ形で全体の運営を討議しながら進めていくということがあるという形になる。ただし制度上は混乱を生じないようにする、かようなことでございます。
  73. 嶋崎譲

    嶋崎委員 そうしますと、予算のつけ方もいままでの大学の予算のつけ方と同じ方式になりますね。
  74. 佐野文一郎

    佐野(文)政府委員 現在そのように考えております。
  75. 嶋崎譲

    嶋崎委員 非常に大事なことですから、議事録に残しておきますよ。予算のつくり方も学部の講座を中心にした、単価を基準にして学部予算があって、その上に大学院の予算がプラスアルファの形をとる、そういうタイプの大学、いままでの大学のあり方と変わらないのですね。
  76. 佐野文一郎

    佐野(文)政府委員 調査会議論もそのような方向で議論をされておりますし、私どももそのように考えております。
  77. 嶋崎譲

    嶋崎委員 それは今後、また大学が動き出したときに、予算の単価やなんかをさらに点検さしてもらいますから。  というのは、たとえば広島大学の教養部が教養学部になりましたね。何と言うのですか、新しいタイプの、教養がとにかく四年になって上に大学院ができる、あそこの単価は、予算はよその大学の教養部に比べて高いのですよ。つまり博士課程を持っている大学院の単価に基づいてという答弁をここでぼくはもらっています。だから各大学によって、新構想大学ならばいままでの大学よりも予算のつけ方に色がつく。そういうことで新構想だというと困るということです。たとえば筑波大学なんかえらい鳴り物入りでつくったけれども、あそこへ行っている理科系の教授は何と言っていますか、いいか悪いかわかりませんが、あそこは制度はよくないけれども、金が来るだろうと思って行ったんだと言っているのですよ。その金もこのごろ余り来ないのでぶうぶう言っていますけれどもね。  それは別として、新構想大学をつくるときに、文部省の予算で誘導しながらその大学の改革や新しいものをやっていくという危険性を大学人は感じている。私もそう思う。だからいまのようにはっきり学部中心にして、そしてその上の研究委員会という制度、仕組みを前提にしてこの大学は運営されるということを確認しておきます。  そこで今度は、大体学生の数が三百ですから、教官の数はどのくらいですか。
  78. 佐野文一郎

    佐野(文)政府委員 その点はまさに今後の財政当局との折衝にかかることでございますので、現在では未定でございます。
  79. 嶋崎譲

    嶋崎委員 理工学系ですから、教授一人当たりの学生は少ないということはあるかもしれませんが、三百人として十人に一人だとすれば、三十人から四十人くらいですか、大ざっぱに言って。この系というのは、ここにこう書いてあります。「各教員組織には、それぞれの研究分野を包括し得るよう必要な定員を配置する。」と書いてあるのですから、それぞれの系について少なくとも答申はどのくらいの教官を定員と考えているのでしょうか。
  80. 佐野文一郎

    佐野(文)政府委員 御指摘のように、従来の工学部における教員の配置のルールというものがございます。ただ、この場合には大学院の規模が通常の大学の場合よりも非常に大きいという点がございます。したがって、通常の工学部の場合とは別途の配慮が教官定員については必要であろうと思います。そこのところの詰めを今後急ぎたいというふうに考えているわけでございます。
  81. 嶋崎譲

    嶋崎委員 そうしますと、この定員や何かは後で決まって、また当委員会でいろいろ議論をさせていただくということにさせていただきます。  さてそうしますと、今度はこの大学の教員組織は、この概要でいきますと、系を中心にして学部があるのですが、ここの教官は、この答申によりますといろいろなところから人が集まることになっておりますが、学界とか産業界から広く優秀な人材を求めて、そうして「各界から客員教授を任用する等の工夫が必要である。」と書いてありますね。つまりここの教官の人事の選考ですね、これは普通の大学の人事の任用と同じ方法ですか。
  82. 佐野文一郎

    佐野(文)政府委員 同様でございます。
  83. 嶋崎譲

    嶋崎委員 そこでひとつお聞きしますが、この答申には、最初調査会答申ですね、こっちには管理運営というところで二つの重要な問題が提起されている。一つは筑波大学と同じように、「弾力性ある管理運営体制を確立する。」これはいままでの議論で弾力性というのは筑波大学のような法律で起こすような新しいものではないということがわかりましたね。  その下に、「なお、教育研究の経費については、国費のほか、多様な公共資金や民間資金を導入しうるようにすることについて検討する。」と書いてある。この大学は民間資金を導入するのですか。
  84. 永井道雄

    永井国務大臣 ただいま御指摘の部分は「多様な公共資金や民間資金を導入」するという報告の中の文章であります。これはこの大学大学主体性を失うことのないような正しい意味での社会との連携は積極的に進めていくという意味合いでありまして、まず要点として申し上げておくべきことは、こういう文章がありましても、国立大学として運営経費を国費によることは他の大学と同じでございます。  しかしながらいまのような正しい意味において社会との連携を積極的に進めていくという意味合いでございますから、いろいろな具体的な課題が、大学教育研究に取り入れる場合に大学主体的な判断において妥当であると考える場合には、民間との共同研究あるいは官公庁の研究所などからの受託研究受け入れることも、現在も行われておりますが、そうしたことは妥当であると、こういう意味合いでございます。
  85. 嶋崎譲

    嶋崎委員 現在の大学で委託研究というのはありますね、企業なんかの委託研究、こういうものについては、いま大臣はどう考えていますか。
  86. 永井道雄

    永井国務大臣 これには受け入れ方法は決められているわけでございますが、大学主体的な判断において大学教育研究を進めていく上に妥当であると考えられるものが受託研究として受け入れられることは、特に工学部門などにおきましては事実上きわめて必要である場合も多々あるというふうに私は考えております。
  87. 嶋崎譲

    嶋崎委員 そこで、さっきの回答もちょっとあいまいなところがあって、ぼくが一方的に確認したところもあるのだけれども、大学組織というものの研究教育の自主性というものと企業の研究や国の設立している研究所、企業目的、国家目的でつくられている研究所の研究とが必ずしも結びつくかどうかというのは現実には大きな大学問題であるわけです。そうした場合に、いままでの大学で委託研究をしたり研究グループに参加して社会とのつながりを持つ場合には、大学には教授会を中心とした大学自治というものがあり、そして大学における研究教育の自由というものが前提になった上での自主的な結合だということなんですね。実態はどうかというと、そうでないかもしれません。しかし大学には学問研究の自由と大学自治という枠があって、その枠の中で結びつく場合の結びつき方と枠が取り払われた場合の結びつき方とでは行って帰るほど中身は違ってくるのです。それはおわかりだと思います。したがって、ここで言っている民間資金の導入というのは、さっき大臣の回答では運営経費については国費だが研究については社会との連携でかなり結びつくことがあり得る、そういう意味で民間資金の導入の可能性ということをほのめかされたんだと思うのですね。そこが実はこの大学といまの大学との違いになってきはしないか、既存の大学といまの技術科学大学との間に違いが出てこないだろうかということを危惧するのです。それはいわば既存の大学工学部やいままでの伝統的な大学は教授会、評議会それから大学自治を前提にしたものがあるわけですね。そういう中での結びつきですから、相当チェックが可能なわけです。たとえば教授がある企業の委託研究を受けるとしますね。そうした場合に教授の研究に助教授が系列化されるないしは助手がそれに使われる、そのことのために助手のいわばテーマに基づいた自主的な研究というものがスポイルされるという事態が起きるわけです。そうしますと、いまの大学ではそういう事態が起きた場合には、これは大学問題であり教室内部の民主的な討議の問題になってくるわけですね。それは大学自治というものが前提になっているからですね。また研究教育の自由というものが前提になっているからです。だからそういう意味で、研究教育の自由というものとその制度的保障というものが前提になりながら結びつく外との結びつき方とこっちが形骸化した場合の結びつき方とでは、大学が企業目的、国家目的に従属してしまうという危険性をはらむと思うのです。したがいまして、さっき聞いたここが教授会中心で、その上に大学院であって、いままでの大学と同じ仕組みで動かされる、管理運営が行われて、その前提の上に立って大学教育研究というものが行われるということをまず確認した上で、この民間資金の導入を、現在でも国立大学でやっている民間資金の導入が——民間資金の導入というよりか委託研究の形で入ってくるものが、今度のように堂々と民間資金の導入という形で許されていいのかどうか、そこが私大変疑問なわけです。大臣は、民間資金の導入というのは企業に結びついてやられる場合技術科学なんだからいいという、そういう考えですか。
  88. 永井道雄

    永井国務大臣 私も文科系出身ではございますが、東京工業大学に長くおりましたので、多少嶋崎委員と経験を異にするように思いますのです。といいますのは、たとえば東京工業大学あたりでも非常に苦労してきておりましたのは、それこそ科学技術発展がございますために、大学を卒業いたしまして社会で活動いたす場合に、会社に入ってからまた相当長期間のいわゆるオン・ザ・ジョブ・トレーニングというものをやらなければいけないというふうな事態を生じているわけです。そうすると、大学教育研究というものとそれから現在すでに社会で進行しておりますいわゆる技術的な活動というもの、いまの企業目的とか政治目的に従属するという意味合いではなくて技術の仕事をしていく上での相互の連携というものをもう少し強化する必要があるのではないかということが長く議論されてきておりました。ところが他方において、ただいま御指摘がございましたように、ただそのことに夢中になる余り、大学の自主性というものを喪失してしまって、そしてあたかも社会の一つの細胞であるかのごときことになっては困るわけでございますから、その間の兼ね合いを非常に明確にするということは大事なことでありますから、御指摘の点は十分にわかります。この調査会メンバーの方々の考えというのはどこにあるかと言えば、私は、大学としての自主性というものはもちろん損なわない、これは重視をしていきますが、他方においてそういう大学外の研究というものとどういう形で連携をしていくかということを一つの課題としてこの大学を出発させようという意味合いを持っているものと理解いたしているわけでございます。
  89. 嶋崎譲

    嶋崎委員 いまの大学でも企業の委託研究を受けますね。そうしてその委託研究に協力した学生が就職の条件になるのですよ、実際は。そういう例がいっぱいあるのですよ。だからこの技術科学大学というのは、企業の研究、企業のたとえば研究所ですね、ないしはそういうものと結びつきながら金を取るが人も来る、金はいただくが同時に人を送りますという、いわばそういう性格大学になりはしないかということを私は大変恐れるわけですね。だから職業教育、職業に重点を置くとか、技術科学力点を置くということの大学としての特性だとか研究上の必要性というものは認めるけれども、そこに力点を置いて民間資金導入ということをこういうふうに答申するような考え方の中には、大学と企業、いわゆる企業目的、国家目的に大学が従属する、つまり自立した市民を教育するのではなくて職業的な技術者を教育する、したがってこのマスターには技術修士という称号を与えてもいい、こう言っている。これは昔の技師ですね。そうなりますと、国立大学であって、そして憲法や学校教育法で要請されている大学でありながら企業目的、国家目的に従属する形で学校運営や教育が行われる危険性というものがありはしないかということを大変恐れるわけですよ。だからそういう意味でこの技術修士というのは何を意味するのかぼくはよくわかりませんけれども、工学士であったらなぜいけないのか、その技術士という修士号を設けるか設けないか今後の課題でしょうけれども、そういう意味で民間資金導入という問題については国が積極的に財政援助をすべき問題であって、最初から民間資金導入という形でひもつき研究をやりなから人間を送るというルートをつくるような大学のあり方はよくない、私はこう思うのです。そういう意味でこの民間資金導入という問題を前提にして技術科学大学を創設するというのは私は反対です。その点について大臣、どう思いますか。
  90. 永井道雄

    永井国務大臣 先ほども申し上げましたように、国立大学でございますし、そして大学の管理運営の基本的な原則といいますか、制度は申し上げたとおりでございますから、したがいまして、まず大学を運営していく財政的な根拠というものについて申しますならば、その前提はやはり国がこれを責任を持ってやっていくということがあるわけです。しかし、さらにそれ以外のものをも導入して、というのは資金のことになっておりますが、技術科学エンジニアリングサイエンスというものを十分に発展させたい、かような意味合いにおいて、さらにそれがあるということで、基本的には国がめんどうを見るべきであるということについていささかも変わりはないわけでございます。
  91. 嶋崎譲

    嶋崎委員 答弁ですから、大臣答弁みたいなことじゃなくて、最初から、国立大学技術科学大学をこしらえるのに民間資金の導入というものを創設の中でうたう、そういう考え方そのものがおかしいんじゃないですか、私はそう思うんですがね。技術科学という大学を、そういう研究の新しい領域を国が設置するわけでしょう。そうすると、それに必要な研究の資金が、社会との関連においてあるにしても、そこにいるスタッフはそういう問題について専門家を集めている、そういう新しい大学なわけでしょう。そのときに民間資金を導入するということが許されてもいいということを最初から考えること自身がおかしいじゃありませんか。
  92. 永井道雄

    永井国務大臣 仮に、国が国立大学に対する財政的な裏づけというものをきちんと行わないで、そうして民間資金の導入をやりますと、これはおかしいと思います。そういう意味合いではなくて、先ほど申し上げたとおりでございますから、この点、十分確認いたしておきたいと思います。
  93. 嶋崎譲

    嶋崎委員 なぜ大学工学部の教授たちや自然科学の教授が民間の委託研究と深く結びつくのですか。では、それを逆に質問します。どうなんですか。
  94. 永井道雄

    永井国務大臣 民間だけじゃございません。そうでなくて、たとえばいま環境庁との関係では公害研究所、これは前の東京工大の、理化学研究所の大山先生が所長になっておられますし、それから電電公社との関係では電気通信に関する研究所というようなものがございます。私がそういう工学部先生方から聞いているところの理解によると、その場合にも、官庁の研究所も直ちに役に立つ応用研究というものをやっている場合は比較的少ない。それよりもいわゆるエンジニアリングサイエンス的に基本的な問題を相当やっている。他方において大学の方でもやっているわけですが、従来と相当変わってまいりましたのは、社会的な、いわゆる相当の科学技術の変化の中で、そうした大学外の研究機関というものの発展もこれは著しいものがあるから、したがいまして、大学人たちもそういう意味合いにおいて共同研究というふうなものを行っていくことが必要であるという考え方を強く持っておられるというふうに私は理解いたしております。
  95. 嶋崎譲

    嶋崎委員 公共的な資金もあるし、民間の資金もあると思うのですが、ここでは民間の資金というものを、導入を前提にして答申しているものですからね。これは永井文部大臣の時代ではないですよね。だから、そういうものを前提にしてこの大学をつくるのについて、大臣自身もこの民間資金導入というものを前提にして大学の創設というものを、じゃ考えていると考えてよろしいですか。
  96. 永井道雄

    永井国務大臣 ですから、いまの文章のところを申しますと、私はいろいろな公共的な研究機関のことも申しましたが、まず一番初め国費というのがあるのです。それからその次に、公共資金というのがございます。それから民間資金という、その順列で書かれておりますので、私が先ほどから申し上げているような意味合いにおいて書かれているものと私は理解しているので、つまり、まず民間資金依存ということを考えているのでは全くないはずである、この文章からいってもですね。はずであるというのは、たまたまこの問題について従来議論をしていたそういう議論というものも多少聞いておりますので、私はそのように、その順列において考えられなければならないというふうに思います。
  97. 嶋崎譲

    嶋崎委員 この調査会の協力者名簿を見ましても、日立製作所の顧問だとか、日本プレスコンクリート会社の社長だとか、そういう企業の人たちがこの技術科学大学に対していろいろな要請というものを持って創設していると思うのですよ。だから、大臣はきれいな答弁をしていますけれども、今後、資金のあり方や何かについても、いま言ったような問題についてかなり大学の運営の中では慎重に対処しておく必要があるということを言っているので、その点を、基本はいままでの大学と変わらないと言っているけれども、技術科学大学というのは新しい構想だけに、そういう企業との癒着と、それに絡まって学生の就職あっせんが行われるという、そういうギブ・アンド・テークの関係にならぬようにしてほしいということですよ。実際には、この技術科学という教育の場合に、私が大変恐れているのは、その教育が自立した市民というものを前提にした技術者と、それから職能的な技術専門的だが、その自立的市民としての教養やそういうものが軽視されていく教育であってはならないと思うのです。ですから、企業と大学がいろいろな形で結びつきますと、学生の学問、思想の自由、研究の自由といったようなものに関連してくるし、また集まる教官の学問、思想の自由という問題と関連をしてくる。それだけに、この技術科学大学という新構想というのはこわいのです、筑波大学がひど過ぎるから。大臣自身も、東京工大の教授にこれ以上筑波みたいなものはふやさぬ方がいいということをおっしゃっていることをぼくも聞いていますからね。だから、そういうこわさがありますから、国立大学の設立だけに、その研究と資金という問題については、大学の自立性というものを尊重していくというたてまえを堅持していただきたいということでございます。  それに関連して、この大学がちょっとおかしな大学だなと思うのは、朝日新聞の四月の二十三日に、大学教官の十年任期制という問題が新聞で抜かれております。  まず最初に確認しますが、この新聞によりますと、「自民党文教部会としては、大学の目玉として、宿願の「任期制」を何とか盛り込みたい考えで、文部省との非公式な折衝でも、実現を強く働きかけてきた。」と朝日は解説していますが、この事実経過はいかがですか。
  98. 佐野文一郎

    佐野(文)政府委員 技術科学大学構想については、党の文教の先生方といろいろ意見交換をする機会はもちろんあるわけでございます。そのときに、任期制の問題というのは、これは従来から各大学におきましてもあるいは国立大学協会におきましても、問題あるいは課題として意識されているような重要な大学の教官の人事の閉鎖性を改善するための方途でございますし、議論になっていることはもちろんございます。しかし、そのことが文部省の方でいろいろなものを計画する場合にどうこうというふうなことではございません。
  99. 嶋崎譲

    嶋崎委員 新聞で言っている任期制を何とか盛り込みたい考えで、文部省との非公式な折衝で実現に強く働きかけてきたということは言えるのですか、言えないのですか。
  100. 永井道雄

    永井国務大臣 私に特に働きかけていただいたことはないけれども、よく御説明を申し上げますが、私はこの問題を考えるべきだと思っています。なぜかというと、これは中央教育審議会の答申の中にもある課題です。それからもう一つ、大学紛争が起こりました後に東京大学、京都大学を初めといたしまして、そういうところでも大学改革の中で任期制の問題をどのように考えていくべきかということが論じられておりますから、私は自民党だけが考えたとは思いません。  そこで、これをどうするかという問題ですが、まずこの問題について、確かに大学の人事というものに閉鎖的、停滞的な面があるということは、現在大学が出しております報告書、つまり紛争以来の報告書の中でも指摘されていることでありますから、これは何とかして教官人事というものを弾力的にすることが必要であると思っておりますが、しかし、現在任期制ということを言いますと法律改正が必要ということに相なりますが、そのような法律的な形の制度的改革というものは考えていないのでございます。
  101. 嶋崎譲

    嶋崎委員 そうしますと、その後に続いて朝日新聞は、これは文部省の見解ですね。「しかし、技術科学大学については1同大学が実践的な技術開発を主眼にしているため、研究実績の評価が行いやすい2産業界などの民間の研究機関では業績中心主義になっている、などから「技術科学大学では任期制を採用できる素地がある」との判断を固めたものだ。」と書いてある。これについての事実認識はいかがですか。
  102. 佐野文一郎

    佐野(文)政府委員 そこで1、2というふうに書かれている内容についても、私ども必ずしも直ちにそのように考えているわけではございませんし、だからこの大学で任期制を採用する素地があるんだというふうに判断をしたこともございません。
  103. 嶋崎譲

    嶋崎委員 大臣はどう思いますか。技術科学大学が実践的な技術開発を主眼にしているので、研究業績の評価が行いやすいと思いますか。
  104. 永井道雄

    永井国務大臣 いまの御質問にお答えする前に申し上げておくべきことは次のようなことでございます。大学の教官人事というものが停滞的、閉鎖的にならない方がいいというのは、これはもう大学人も一般に考えてきて、これをどうしたらいいかということでありますが、先ほど申し上げましたように、この大学の設立に当たりまして私どもは法改正をやろうという考えを持っていないということです。そこで、設立に入りましてからこうした問題については、先ほど嶋崎委員が御指摘になりましたように大学の自治といいますか、つまり当然設立準備室長というものもでき、そして大学をつくっていく主体ができるわけでございますから、いま文部省が、これこれの方式でいわゆる制度でなくて人事を従来よりも弾力的なものにしていくべきであるということを細かく限定することは妥当ではない。それよりもむしろ、準備室長というものが決まり、その大学を担っていかれるそういう諸先生方が現在の大学人として当然お考えになっているわけでございますから、その先生方の自由な御討議を基礎にされた御決定によってそうしたことを考えられていくということが最もよろしいことであると私は考えているわけでございます。
  105. 嶋崎譲

    嶋崎委員 ぼくの質問に答えていませんが、研究業績というものは実用的な技術科学の場合には評価がしやすいということが言えますかと聞いているんです。
  106. 永井道雄

    永井国務大臣 私が嶋崎委員の問いに直接お答え申し上げなかったのは、そうした角度もありましょうが、そうしたことについて私が断定的なことを申しますことは、今後の大学の自治的な運営にいささかでもある種の形の色合いを私がつけることに相なりますから、したがいまして先生の御質問に答えずに、それよりも重要な原則について申し上げたわけでございます。
  107. 嶋崎譲

    嶋崎委員 いま大学では研究業績と教育業績という問題があるんです。そしてここは研究だけやる大学じゃないのです。技術科学大学で、研究教育をやるのです。そうした場合に、研究業績については学会もあれば——学会へも行かないで筑波大学の教授になっているのもいるけれども、それは別として、とにかく学会もあれば、一定の業績を判断していくのはルールとしてはかなりあります。ところが教育業績というのは、大学の職階制というものを考えたときにその評価が非常にむずかしいわけであります。小中学校で勤評が問題になってもあれだけ話題になるぐらいでありますから、教育業績の評価というものは大変むずかしい。そこにこの任期制という問題を持ってきたときの一つの問題がございます。一つですよ。そのほかに身分保障という問題がありますがね。だから簡単に業績、実績の評価が行ないやすいなんて言うのは、これは技術科学大学というものを技術的にしか見ていない、教育を忘れている解説になると思うのですよ。だから、文部省が言ってないとすれば朝日が一面的に書いたということになるわけです。  それから三番目に朝日はこう書いています。「同省の話では、現行の国家公務員法などには「任期制」の規定がなく、「任期制」を本格的に取り入れるには、法律改正をするのが本筋だ。」これはいま大臣答弁されたとおりですね。「しかし、同省としては、両大学の内規のような形で実現したいと考えている、つまり、あくまで大学当局の意向でやるという形をとろうというわけ。」と書いてあります。そういうことといま大臣答弁されたこととは密接なつながりがあると思うが、いかがですか。
  108. 永井道雄

    永井国務大臣 いまの一番終わりのところ、つまり、これから大学を建設していかれる方々の考え方を尊重しようということはそのとおりでございます。それで、先ほど新聞報道は誤報ではないかと言われるのですが、誤報というよりも、この問題を考えていきます場合に、研究業績の評価の仕方その他についていまの新聞に挙げられているような問題点もあるということを話したことは事実です。ですから全然架空の事柄を新聞の人が書いたというのではない。しかしそれを討議、決定する主体大学になければならないという考え方です。
  109. 嶋崎譲

    嶋崎委員 そうしますと、内規で任期制は決められると大臣は考えますか。大学の内規で任期制ができる、制度は決められると考えていますか。
  110. 永井道雄

    永井国務大臣 任期制というものを法的に解釈いたしますれば、まずそういうものはできないという意味です。
  111. 嶋崎譲

    嶋崎委員 だから、大学の中で、内規でも、任期制というものを教官について、特に大学の教授、助教授、専任講師について決めたら、これは法律違反だと思うけれども、いかがですか大臣
  112. 佐野文一郎

    佐野(文)政府委員 任期制とか業績の審査制というものの内容にもかかわると思います。  ただ、大学が自己規律の問題として、教授会の申し合わせによって一つの自己規律のルールを決めるということはあり得ることであり、またそれが妥当な内容のものであれば、全学の支持を得て慣行として定着をしていくであろうと思います。しかし、そのことが法令的な拘束力を持つものでないことは、もとより大臣が申し上げたとおりでございます。
  113. 嶋崎譲

    嶋崎委員 いまの国家公務員法にしても、教育公務員特例法の八条にしても、管理職には事実上は任期はあります。しかし教官については任期制度を設けていないし、それは国家公務員法を前提にしている。その趣旨は、身分保障というものを非常に重視しているからであります。  現在の任期制は、裁判官の場合と、大学の場合に問題になるのは助手だけであります。したがいまして、専任講師以上の大学の教官について、この任期制を採用しない根拠というのは、業績上の問題もあると同時に、身分保障という非常に重要な法の精神から来ていると判断をしなければなりません。したがって、十年の任期を仮に内規で自主的ルールだと言って決めるにしても、では十年目に再審査をやった場合に、何が適格であり何が不適格であるかということは、教育公務員の場合にとっては特にむずかしい問題を含んでいますから、局長の言うように、自主的につくって、慣行になればいいという性質では私はないと思う。現在の法体系のもとではない。その点をも確認しておきたいと思いますが、いかがですか。
  114. 佐野文一郎

    佐野(文)政府委員 先ほども申し上げましたように、やはりその内容として、どういうものをどういうふうに決めていくかということにかかわる部分が非常に多かろうと思います。大学紛争が激しくなった後に、国立大学協会なり各大学で、大学の将来像についていろいろな検討が行われておりますが、その中で、任期制というのはやはり非常に重要な課題の一つとして検討されております。  ある大学報告を見ておりますと、任期制のメリットを評価しながらも、いま御指摘の教官の身分保障との両立ということを考えなければならないので、非常に慎重な配慮が要るということを述べ、そして、そういった点も考え合わせるならば、法令としてこれを実施するよりは、むしろ学内の申し合わせとして適切な慣行を形成していく方がいいんだということを大学人がみずからおっしゃっているケースもございます。やはり事柄によるであろうし、またその事柄が決められていく場合の全学の合意がどういう形で形成されるかにもかかわるのではなかろうかと思います。
  115. 嶋崎譲

    嶋崎委員 私は、大学自治と学問の自由が伝統的にある場合にはかなりうまく処理できると思うのですよ。問題は、ここが新構想大学なんです。新構想大学で、筑波大学みたいに学問、思想の自由のない大学は現在ないのですから。ですから、そういう大学が新構想大学の場合には必ずあらわれてくる。それだけに、こういう新構想大学に、大学自治の慣行や伝統を持たないところで、自主的にそういう問題を最初から問題として持ち込むと、そこには大変危険な、学問、研究の自由という問題に対する大きな問題が出てくる可能性を含んでいる。だから、新構想大学なるがゆえに、なおさら、こういう問題を最初から提起して検討の課題にさせるような指導はすべきでないと私は思うのです。大臣いかがですか。
  116. 永井道雄

    永井国務大臣 新しい大学をつくるときには、何らかの意味においてそれが社会に新しい貢献をするということはきわめて重要であると思います。他方、嶋崎委員が御指摘になりましたように、新しいところは慣行がないから、したがって用心深くいかないといけないという意味合いに相なると思いますが、そういう配慮も必要だと思いますが、ただいまの学校の人事の問題等につきましては、すでに幾つかの大学で、任期というのではありませんけれども、教官について相当年数を経た場合に再審査をやるということを全学の教授会で決めている例もございます。しかし、実は行われなかった。なぜかというと、決めたんですけれども、慣行に反するということで行われていないという実例もあるわけでございます。     〔委員長退席、三塚委員長代理着席〕 したがって、それはむしろ古いから行われないということでもございましょうから、こうした新しい大学におきましては、私たちが文部省から細かいやり方につきまして干渉することは避けなければならないと思いますが、やはり新しい大学をつくる意欲を持って諸般の問題を建設の主体となられる方々が自由に議論をしていただく、そういう形で自治的にしかも力強いものをつくっていかれるということを、むしろ私たちとしてはその縁の下の力持ちとなってお役に立つようにすべきである。ですから、どうも新しいことは余り試みない方がいいんではないかということになりますと、大変消極的になるおそれもありますから、必ずしもそうしたものについて一切論じないという態度は私はとらないで、むしろ建設の主体の方々の意欲と御判断にゆだねるべきであると考えているわけでございます。
  117. 嶋崎譲

    嶋崎委員 同じような議論を行ったり来たりしていますからね。いまの法律制度の仕組みでは、大臣ときどき言われるけれども、共同利用研究所のやつでもそうですね、大臣は私学と国立の間の差別はなくすると、願望を持っていらっしゃる。願望はあっても仕組みはそうならないわけ。大臣はやっぱり行政の最高責任者なんですから、仕組みを変えることによってその願望を実現することでなければならない。だから、現実の制度の上で法律を改正しないとおっしゃるならば、できないのですから、できないというのは消極的とかなんとかいう議論ではなくて、どうしたらそうなるかという問題を考えなければならないわけですよ。だから、大学の中で自主的にそういうものをおつくりになるのは自由ですということは、いまの法律の仕組みの中ではできないということが非常に重要なんで、だからそういう意味で、そういうプロモーターみたいな役割りをするときには法律改正をやらざるを得ないのじゃないでしょうか。そうしないと、いまでも大学の場合、助手問題というのは大変なんですよ。助手の場合だって、本来任期なんていうのはない。それを大学で自主的に任期をつくっている。しかし座り込んでしまったらどうにもならない。裁判官の場合だって、これは再任ですよ。再任でやって、決してそれで身分保障が問題になるようなことではないわけですから、憲法で保障された裁判官でさえそうですから、ましてや教育公務員の場合の業績というものが大変複雑であり、しかも大学自治のいままでの伝統からして、身分保障というものを非常に一方で重視してきているだけに、簡単にいまの制度の仕組みのもとでできるというふうに問題を立てられないと思うのです。どうですか。
  118. 永井道雄

    永井国務大臣 ただいま共同利用研についての私の発言を一つの端緒として御質疑がございましたので、その例に即して申しますと、私は、共同利用研の場合、現在の法制を重んじなければいけない。そういう法制を変えていきます場合には、当然国会における御審議が必要なわけでありますから、そこのところは重々尊重しなければいけないと思っております。しかし、そうなると私学の人が参加できないかということをいろいろ考えまして、幸いいろいろな配慮の結果、共同利用研には現行制度内でも非常勤講師として私学の方々に具体的には客員教授的な活動をしていただく道が開かれるということを考えられましたので、そのように措置したわけでございます。これは現行制度を曲げようということではなくて、やはり現在、国、公、私というものの間に本当に共同という実が上がりませんではいけないということを私が申しましたから、そしてまた、それについて先生の法制上の問題点の御指摘もございましたので、以上のように配慮いたしたわけでございます。  そこで、そのことを一つの端緒として御質疑がございましたから、それとの関連で、今後の技術科学大学について申しますと、これは当然現行法制というものを重んじていくわけでございますが、しかし、御承知のように、大学の運営というものは法制だけで全部を決めていくということより、いろいろ大学の中の教授会における話し合いというものによって、慣行が決まっていくという側面があるわけでございます。したがいまして、これは新しい意欲をもってつくられていく主体の方々がどう考えられるかというところに一つの重点があると思っておりますので、私は決してそれを強圧的な仕方でどうこうしろというのではなくて、社会一般の世論ではないかと思います。先ほどいろいろな例を挙げましたように、実は、大学人自身の中にそうした形の決議がたくさんあったわけでございますから、当然大学関係の方としては、新しい大学をつくられるときに、この種の問題も、現行法制をいじる、あるいはそれをねじ曲げるというようなことではなく、いろいろ配慮されるものと考えております。
  119. 嶋崎譲

    嶋崎委員 できないのですよ、大臣。国家公務員法の「身分保障」にも、七十五条に「職員は、法律又は人事院規則に定める事由による場合でなければ、その意に反して、降任され、休職され、又は免職されることはない。」とあるのですよ。まず身分保障が前提になっているのですよ。そうして、教育公務員については特例法の中で管理職だけに任期を決めているのですよ。そういうことはつまり、大学自治の慣行という、ほかの大学の管理運営一般の問題と違って、これは人権にかかわる問題であり、また同時に、大学の場合には学問、思想の自由がそれにさらに絡んでいるだけに、事は複雑なわけですよ。だから大学の中では、私も学会が主導権を握って、もっと専門家の交流を大学でやるべきだと思います。そういうための運営というのはどうあるべきかということは議論していいと思う。だから、一つの大学にいなくったって、ほかの大学に流動できれば解決できる問題なので、それは任期制の問題じゃないのです。それは研究教育のあり方を中心にした大学の運営の問題なのであって、人権にかかわる身分保障の問題とは切り離して考えなければならないのです。だから、大臣の言っていることは、そういう大学自治の慣行で言っている問題と大学の人事の交流という問題を法律制度と切り離して議論するから混乱してしまうので、いまの法律制度のもとでは、任期制というものを制度化することはできない。ただ、人事の交流は、おっしゃるように、大学の中で、これは私立、国立含めて、どうあるべきか、給与の問題もどうあるべきか等々は、これは学術会議の問題であったり、研究者の相互の関係の問題として解決すべき問題だというふうに言えるので大学の自主的な慣行でそんなものをつくれということは、いまおくびにも大臣の発言として言ったらえらいことになるわけですよ。だからその点はちょっとくぎをさしておきますが、これ以上深追いはしませんけれども、その点きちっとさしておきます。そういう意味で、いまの法制度のもとでは内規の形でもつくれぬのだということを確認しておかなければいかぬと思います。いかがですか。
  120. 永井道雄

    永井国務大臣 私は一番初めに申し上げたつもりなんですが、任期制というものを法律的な意味でつくるような制度的な改革は考えておりませんということでございます。ただ、閉鎖性、停滞性をどういうふうに打破していくかということについて学校においてお考えになるということが一つの問題である、かように申したわけであります。
  121. 嶋崎譲

    嶋崎委員 後段は大学における人事の交流の問題なんで、任期制の問題ではないと確認しておかなければいかぬと思います。
  122. 永井道雄

    永井国務大臣 交流ということもありますし、本当にたくさん改革書が出ましたですが、教授になりますとずっと停年まで教授ですから、私が知っております例では、ある時期が参りましたら、そのケースの場合は五年ですけれども、五年したらば学内に共同審査委員会というものをつくって審査をするという形で、研究教育も活動的にしよう、そういうことが行われたケースもあります。ですから、異動ということもありましょう。しかし、その場合にも当然人事に対する、人事の保障というものを法制的な意味においてねじ曲げるということであってはならないわけで、いま私が申し上げましたケースは、当該大学において教授会で決定しているケースでございますが、そういうものもあり得る。そうしなさいと言っているのじゃないですよ。だから、人事異動もあるし、そういうものもあり得るだろうと思います。
  123. 嶋崎譲

    嶋崎委員 どうも明晰な大臣としては、歯切れが悪過ぎるのですね。だから、大学で業績の再審査をするとか、それから教官としての研究業績というものをどう判定するかは、むずかしいにしてもやろうとか、そういう努力で、教官の人事の交流、それから研究をより進めていくための条件をつくるということは、私は一つも否定していないのですよ。しかし、そのことが任期制という制度の問題として大学で内規が決められると、いまの法律のもとではできない、違反のことをやっているということになる、そこを区別しておかなければいけませんといっているのです。     〔三塚委員長代理退席、委員長着席〕
  124. 佐野文一郎

    佐野(文)政府委員 御指摘のとおり、仮に申し合わせで一つの任期というものを決めても、それが本人の意に反して職を失わせる効果を持つような、そういう拘束力あるいは強制力を持った制度として定められないことはもとよりでございます。
  125. 嶋崎譲

    嶋崎委員 いまの局長答弁で問題ははっきりしました。——いや、結構です、もう時間がありませんから。
  126. 永井道雄

    永井国務大臣 二つの点は明確に局長が申したように私も区別しているつもりでございますから、それだけ確認しておきます。
  127. 嶋崎譲

    嶋崎委員 最後に、今度は国立高専ですね。専門教育における多様性というものを前提にして国立高専というものをいままでつくってきた。ところが、国立高専という袋小路ではより有能な技術科学マスターするスタッフができない、そしてまた時代の要請にもこたえられないというところから、この袋小路制度を開放するために、技術科学大学ができて、その上に大学院というものができたわけですね。こういう経過から見ると、国立高専というもののいわば学校のあり方を、全国にたくさんある国立高専から技術科学大学に来れるのは三百名ですよね。事実上は二百四十でしょう。そうなりますと、国立高専という制度そのものが再検討されていると同じことを意味していると思うのですね。そういう意味で、今度の法案には直接関係がありませんけれども、国立高専というものを、いつか木島委員がここで質問しましたように、四年制大学に持っていって、そして初めの三年を一種の付属高校的なもの、そして上に四年制大学という形で国立高専を充実していく、つまり制度を変えていくことを通じてより充実させるという片一方における国立高専発展があって、そしてさらに国立高専らいまの技術科学大学へ行くコースもある、そういう意味の多様性をこのコースの持っている、国立高専の持っている性格を生かすという意味でより充実させる観点から、四年制大学へ昇格させていくという考え方を今後とるべきではないかというふうにわが党の木島委員がかってこの委員会質問しましたが、その後どういう、検討はないとすれば今後の検討課題でしょうが、どうお考えでございますか。
  128. 永井道雄

    永井国務大臣 この点は木島委員にも御指摘をいただいた点でございますが、現段階におきまして、文部省としてやはり力を注いでつくってまいりたいと思っておりますのは、この技術科学大学でございます。  そこで、高専を四年制の大学に転換するというのは大変な重要課題でございますが、私どもは高専制度特色を生かすように、まずその内容の改善ということを十分に現在努力をすることが先決である、この段階にあるということを申し上げておきたいと思います。
  129. 嶋崎譲

    嶋崎委員 やはり国立高専をつくった段階の、あの高度成長時代につくってきた学校の設立の趣旨科学技術が進んできている今日の段階での社会的要請との関連で袋小路を上に乗っけたわけですから、だから、そういう意味では、国立高専のいままでのあり方を再検討する時期に来ているともぼくは言えると思うのです。だから、そっちにはお金はかかると思うよ。お金はかかるが、技術科学大学というものに力点を置いて、いままでの国立高専のレベルアップということについては後回しというのじゃなくて、やはり並行的に検討していくということを要望を申し上げまして、私の質問を終わります。
  130. 登坂重次郎

    ○登坂委員長 午後一時に再開することといたしまして、この際、暫時休憩いたします。     午後零時二十二分休憩      ————◇—————     午後一時一分開議
  131. 登坂重次郎

    ○登坂委員長 それでは、休憩前に引き続き会議を開きます。  国立学校設置法の一部を改正する法律案を議題となし、質疑を続行いたします。山原健二郎君。
  132. 山原健二郎

    ○山原委員 国立学校設置法質問に当たりまして、最初大学と障害者の入学問題について簡単に質問をいたしたいと思います。  御承知のように、本年の明治学院大学に対する身体障害者である小田君の入学試験の問題が出てまいりまして、私も文部省の方にお尋ねをしたことがありますが、この場合には残念ながら明治学院大学受け入れるところとならず、入学試験が拒否されたかっこうになっています。  それで、これから昭和五十四年度には障害者の全員入学という問題も出ております。したがって、養護学校等の高等部を卒業しまして、そして大学進学したいという学生が出てくるのはいままでよりももっと多くなるのではないか。これに対して当然適切な処理がいまからなされておる必要があると思います。そういう意味で、いま私は実例を挙げて文部大臣に御質問を申し上げたいわけであります。  これは、たまたま私の県の県立短期大学に木村俊光君という十九歳の学生がおるのでございます。彼は県立若草養護学校の高等部の卒業でございまして、その卒業に当たりましてそれぞれの学生が進路をどうするかということでかなり悩んだわけでございます。その中でこの養護学校先生方を中心としまして、特に木村君は大学進学したいという決意を表明されまして、それをどうするかということでずいぶん論議がなされてまいりました。ところが木村君は脳性麻痺でございまして、手も足も動きません。車いすに乗ったままでございまして、私も一昨日、この木村君にお目にかかったのでございますけれども、口しか動かない、こういう状態ですね。そして言葉にもかなり言語障害が出ておる。こういういわば重度の障害者が果たして大学へ行けるのかという疑問もあったわけです。そしてまたその志望をしましたところの大学はたまたま県立高知短期大学でございました。大学側にこの入学の問題を申し出ますと、大学の方も実は大変困惑したような状態であったわけですね。いきなり拒否するというようなことではもちろんありませんけれども、この施設のない中で、しかも車いすに乗った重度の障害者を一体教育できるのかということで、しばしば教授会が開かれておるわけであります。  私は、その教授会あるいは木村君を育てました養護学校の高等部の先生方のやりとりというものを、大臣にも昨日会議を通じてお渡ししたわけでございますが、本当にこの木村君を入学させるために、たとえば入学試験はどうなるのか、あるいは学校へ入ってから試験をどういうふうに受けるのかというような点につきまして、この養護学校では全国の調査もしたりいろいろ研究をしまして、入学試験のときにはたとえば木村君を別室に置きまして、そして一人の試験官がつきまして木村君の言うことを一人の先生が筆記する、それをテープコーダーを置いて、さらに正確を期すというような、そういう具体的な提案がなされておるわけでございます。そうしてついに県議会その他におきましても、もう超党派でこの入学に対して大きな関心を持っておったわけであります。ついに高知短期大学におきましては教授会の決定として入学試験を受けることを認めました。そして入学試験の結果は、彼は相当な成績をもって入学を許可されたわけであります。これが各新聞にも載りまして、そうしてこの木村君という重度の障害者の大学入学ということが全国の障害者、特に希望に燃えておる若い身障者にとりまして一つの大きな希望となったわけでございます。  さて、この大学入学を許可されまして、それから先のことでありますけれども、何しろ木村君のうちはこの大学から、私の目測でありますけれども、約八キロ近く離れています。お母さんはこの木村君を車に積みまして夜間の短期大学でございますので、毎日午後四時半に家を出発して、五時にはこの短期大学へ着くわけです。そうしますと、この木村君を待っておる学友たちが、もうそこにおる者みんなが援助しまして、木村君の体と車いすを入れますと約百キロでございますけれども、これを四人がかりで抱えて、彼の教室へ二階、三階と運び、そうして移動させていくという。それがいまお手元にお見せしましたところの写真でございます。実は私はそれをやっていただいたわけですが、そういう状態でございます。  そして木村君はこの一年間一日も一時間も休みをとっておりません。これが全学に与えた影響というのはどうかということで教授会の皆さんにも一昨日お目にかかったのでありますけれども、木村君の出現だけではもちろんないけれども、木村君に励まされてこの大学そのものが、学生諸君がもうきわめて時間をまじめにサボらなくなった、こういう結果が出ているわけでございます。同時に木村君を援助する全学の気持ちが一つになっておりまして、私はこの大学の空気に触れることができまして、大変な感激を受けたわけでございます。お母さんは、ここへ送り届けますと、じっと夜の九時半まで待つわけにはまいりませんので、この大学の食堂へ行きまして、みずから食堂の手伝いをいたしまして、そうして学生諸君にライスカレーとか、うどんとかいうものを差し出す仕事をしているわけであります。親も子も本当に全身を込めた努力で大学をあと一年間卒業してみせる、そういう気魄に燃えておるわけでございます。そして木村君はみずからハムの国家試験に合格をいたしました。これは松山の電波監理局からわざわざ参りまして国家試験を受けておりますが、それもみごとに合格いたしまして、口でキーをたたきながらハムの通信をやっておる姿も見せていただいたのでございます。  そしてこの一年間が終わりましてその成績でございますけれども、私は本人とお母さんの了解を得ましていま発表したいと思うのです。それは、取り残した単位がないわけです。受けた試験は全部合格しておりまして、たとえば法学は九十五点の優で四単位取っております。社会科学概論が九十三点、二単位、化学が九十点の二単位、社会思想史が八十点の四単位、社会政策が八十五点の四単位、景気変動論が八十点の四単位、法学がただいま申し上げました九十五点、優、四単位、行政法が七十三点、四単位、統計学八十点の二単位、法学特講が九十点の二単位、哲学が九十点の四単位、経済学特講が九十五点の四単位、法思想史が八十点の二単位、保健体育が七十五点の二単位、憲法が八十一点の四単位、日本経済論が八十九点の四単位、金融論が九十点の四単位。これが彼がこの一年間に取った単位でございまして、私はこの成績に驚愕したわけです。だから、重度の身障者であるから手心を加えたのじゃありませんか、こういって教授の皆さんに尋ねますと、私の大学では絶対にそういうことはいたしません、こう言っておられるのでございます。  そういう意味で、この教育の成果といいますか、教育のある意味でのとうとさといいますか、こういう重度の身障者、最初は不安を持ったでしょう。大学側としても困惑したでしょう。しかし、懸命になってやればこれだけの成果を挙げることができるということを見まして、これはどうしても全文教委員の皆さん、また文部大臣を初め文部省の皆さんにお知らせしたいと思って、きょうは資料を持ってまいったわけでございます。  いまこの大学で一番問題になりますのは、車いすの問題であります。あとのことはそれぞれ障害はありますけれどもとにかく一定の成果を挙げる効果的なことをやることはできますが、車いすに乗っておる場合、四階へ行くとかいうことはやはりこれは一つの重荷になっているのではないかと思うのであります。県はこれに対してことし七百万円の予算を木村君に対する対策として組んだわけであります。私はこれは県もりっぱだと思っているわけでありますが、この県の組んだ七百万円は木村君の教室を一階に移すという考え方であります。ところが、木村君が授業を受ける教室を一階に移すということになりますと、これは全学の変動が行われるわけでございまして、これは教育的ではありません。したがっていま全学が求めておりますのは、何とかこの七百万円を基礎にしてエレベーターをつけたい、こういうわけです。四階にある研究室にも彼がいつでも行けるような体制をつくりたい、そして全国最初の重度の障害者をみごとに大学をよい成績で卒業させたい、こういうことで全学が一致しておるわけでございます。  私のこの経過報告に対しまして、文部大臣はどのようにお考えになるか。また、これら重度障害者の大学進学について、またそれを受け入れ大学に対して、たとえ公立であっても文部省として何らかの措置をとってこれを援助していく必要があるのではないかと思いますが、大臣の見解を伺いたいのであります。
  133. 永井道雄

    永井国務大臣 ただいまの山原委員の高知短大におきます御報告を承りまして、また私もここに写真もいただいておりますし、それから養護学校での御努力の記録もいただいておりまして、非常に感銘深く思いました。私事なりますけれども、たまたま私の父親も身体障害でございまして、当時公立学校を出られなくて退学せざるを得なかったというようなことから、いろいろ身体障害で勉強することの苦労を聞いておりますので、人ごとと思わず承ったわけでございます。  文部省は基本的な態度といたしましては、先ほど御指摘の明治学院大学の問題などもございますが、国立、私立それぞれにつきまして一つの方針に基づきまして、国立国立として身体障害の方々の御勉強のために、予算執行上いろいろ配慮をいたしてきております。また私立大学につきましては本年度から、身体障害の学生の方が多数在籍している学校に特別な補助を行うことにいたしました。この方向というものは今後強化されるべきものと思います。  ただ、いまの具体の高知県における問題でございますが、ただいま承ったところでは、事務室を三階に移すということでは問題が解決しないために七百万円の予算計上ではうまくいかない、さらにエレベーターということになりますとなかなか県当局も対処できないというふうに承っております。そしてまたそうしたような形で各方面が御努力をしておられるのは、御本人はもとよりのこと、お母様や友人あるいは学校先生方の非常な御努力によるものであって、しかもりっぱな成績をおさめられたということでありますから、何とか解決があるとよろしいと考えております。しかしさしあたりまして私たちとしては、県当局が大変な誠意を持って対処しておられるということでございますので、何か実態に即した解決方法はないものであろうかと考えている、そういうことでございます。
  134. 山原健二郎

    ○山原委員 文部省昭和四十二年度大学入学者選抜実施要綱——これは毎年出しているのだろうと思います。その通知の中で「身体障害のある志願者については、その能力、適正等に応じた学部等への進学を広げる観点から受験の機会を確保するように配慮すること」と注意事項を示しております。これは当然のことであると思います。またすべての国民に平等に教育を受ける権利があることを憲法第二十六条は保障しておるわけでございまして、その点では文部省の指導としてもいま出したような通知が行っておりますが、残念ながらこれに対する財政上の裏づけがないというのが問題なんですね。  そこで、先ほども申し上げましたが、実は個人の努力にはもちろん限界があるわけです。このお父さんは県庁に勤めておられた方でありますけれども、県庁もおやめになって自分は自由な仕事につきながら、いま他の職業につきましてそして子供のめんどうも見る。お母さんは、この木村君のために七回家をかわっているわけであります。もともと徳島県の方でありますけれども、高知県に子鹿園という心身障害者のための施設がございまして、それが当時かなりすぐれたものであったわけでございまして、そこへ送るために高知市の方へ家を移す、また学校がかわれば近くへ家を移すというので、転々と七回かわっているわけです。孟母三遷という言葉がありますけれども、七回も家をかわって子供を何とか育てよう。自分の子の俊光が大学まで卒業できる。そしてそのことが、自分の子供ということだけでなくして、全国の障害者に対してどれだけ激励を与えるかわからない、そういう気持ちもあるわけでございまして、これは大変なことだと思います。また木村君自身も、教職課程をとりまして、心身障害者のために私は私の経験を生かして教育指導の仕事に携わっていきたいということを言っているわけでございます。そういうように考えますと、いわば一つの開拓的な意味も持っているわけですね。それであるならば、今後障害者のための大学教育を保障するためには、やはりもう一つ突っ込んだ文部省としての態度というものをぜひ私は検討していただきたいと思います。また、全国的な心障者の在学の状況、そこでどういう問題が起こっておるかというようなことについてもぜひ検討していただいて、これに対してきわめて前進した態度をとることがいま要請されておるのではないかと思いますので、担当の方でも構いませんけれども、重ねて御答弁をいただきたいのであります。
  135. 永井道雄

    永井国務大臣 私から御答弁させていただきます。
  136. 山原健二郎

    ○山原委員 御指摘のように、御本人並びに御家族の努力には限界がございますから、やはり条件の整備ということを文部省として考えるべきである。そうした考え方に基づきまして、国立大学については昭和四十九年度、そして私学につきましては昭和五十年度から条件整備のための予算の裏づけを図ってきた次第でございます。しかし、文部省が掲げておりますそうした新しい方向、いわば心身障害の方も適性、能力に応じて学習ができるということのためには今後一層の努力を必要とすると思いますので、ただいま御指摘になりましたように、今後さらにこの方向というものを強化いたしていくために調査をし、そしてどういうふうに前進していくべきか、検討いたしたいと考えております。
  137. 山原健二郎

    ○山原委員 時間の関係もありますし、これ以上ここで突っ込んだ答弁をいただくこともできなかろうと思いますので、この点はぜひよろしくお願いをいたしたいと思います。  二つ目の問題は、今回の医科大学の設置に関連をしまして、先日私は文部大臣のいないときに政務次官に対しまして、杏林大学の裏口入学の問題について資料を挙げて質問をいたしたわけでございます。これについていまどんな手を打っておられるか、簡単に御答弁をいただきたいのであります。
  138. 佐野文一郎

    佐野(文)政府委員 管理局から私が聞いたところによりますと、その後早速大学側に対して御指摘の諸点についての事実の説明を求めているところというふうに聞いております。
  139. 山原健二郎

    ○山原委員 この杏林大学には杏林短期大学というのがございます。本年の入学試験に当たりましてここで職業による差別が行われているのでございます。これは証人もおりますからここで申し上げたいと思うのでありますけれども、たとえば入学試験の第一次試験におきまして教授会が成績順にこれを認定しようとしたその途中に、おくれて入ってまいりました学長、これは杏林大学理事長が学長を兼ねておりますが、この学長が、当然成績順に採るのがあたりまえだが、この中には日教組、国労、北朝鮮系の者を親としている者がおるということを言われまして、これは採るわけにはいかないということで、入学試験の成績が第二位の方が不合格。第三位の人も不合格。第七位の方も不合格、この第七位の成績の方は在日朝鮮人の方でございます。そして第二十七位の方も不合格。こういう結果が出ておるわけでございます。  このように、言うならば入学試験におきまして、親の職業がたまたま教師である、それがたとえば日教組の組合員であるかどうか、もちろん私もわかりませんけれども、あるいは国労の組合員である、あるいは北朝鮮系の者であるなどということで、成績上位の者が不合格にされるという事態が発生いたしておるわけでございます。これは一般の就職問題あるいは入社試験の採用の問題等でもいろいろ問題になりますけれども、私は入学試験でこういうことが公然と教授会で最高の責任者である学長から発言されるということを聞きまして、これは全く異常な状態だと思っているわけでございます。したがって、この点につきまして、もしこういう事実があるとするならば、学校教育の立場からいってもこれは全く不正常なことなのでありまして、そんなことが許されてよいのか、まさに憲法違反の問題として厳重に注意をすべきであると思いますが、いかがでしょうか。
  140. 永井道雄

    永井国務大臣 学校入学するためのテストというのは当該大学が行うものでございますが、その原則というのは受験者の適性、能力のテストでございますから、それ以外の条件によって左右するということは妥当でないと私は思います。山原委員が御指摘の点を決して疑うわけではございませんが、それに反するような実情というものがあるか、そうしたものを私どもとしてよく調べまして、原則に従った試験が行われるように指導してまいりたいと考えております。
  141. 山原健二郎

    ○山原委員 この問題もぜひ調査をしていただきたいと思いますが、同時に、この前私が申し上げました裏口のやみ金の行方につきまして、私はまだ大変な疑問を持っております。したがって、当校から提出されました決算書につきまして、当然文部省へ決算書は来ておるわけでございますから、私どもに資料として提出をいただきたいと思いますが、委員長、いかがでしょうか。
  142. 佐野文一郎

    佐野(文)政府委員 管理局と協議をいたしまして善処いたしたいと思います。
  143. 山原健二郎

    ○山原委員 今回の法律によりまして幾つかの医科大学が設置されることになっております。医科大学の設置につきましては各県からも要望があります。また、それぞれの県がその県内における医療制度の充実のために医科大学の誘致の運動を起こしてきたことは事実であります。各県ともかなりの犠牲を払う決意はいたしておると思いますけれども、ある意味では、間もなく国立学校設置法法律として成立する段階を迎えましてほっとはしております。しかし、この財政負担というのが大変な状態にあるわけでございます。たとえば、私の調査によりますと、県財政の圧迫は全く軽視できないという実例といたしまして、四十五年につくられました秋田大学学部は二十二億円の県負担がなされておると聞いております。四十八価度に設立されました愛媛大学学部、これが十億円、四十九年七月の宮崎における医科大学では、宮崎県の支出が四十億円、それから今回法律案として出ております高知医科大学の場合には六十億円という金額が出てくるわけでございます。  国は、先例として、たとえば用地の買い上げをしたことがないと聞いておりますが、これは本当でございましょうか。たとえばこの用地の問題について、借り上げの場合も使用面積のみ、基準は相続税基準評価額を基準といたしまして、一年契約一平米当たり十九円六十六銭、残地は遊ばせておりますので、利子がかさんで地方財政の圧迫になっているわけでございます。  たとえば、高知医科大学の場合を申し上げてみますとこういう金額になるわけであります。もちろん本来国立大学でありますから国がやるべきでありますけれども、しかし誘致事業あるいは地元協力事業、こういうことで支出が当面なされるわけでありますが、県としては当然いつかは国がこれを買い上げてくれるものと、また国が負担してくれるものと期待をしておるのは当然のことであります。高知医科大学の場合には、用地関係費として二十三億六千二百万円が必要でございます。それから二つ目としまして、エネルギーサプライという費用が八億六千万円、それから関連教育病院整備費といたしまして六億六千四百万円、さらに教職員宿舎建設費として十六億三千四百万円、看護婦確保等の費用といたしまして三億八千五百万円、合計五十九億五百万円という金額が出てくるわけでございます。そのほかに事務費、協力費等がありますけれども、大略いたしまして約六十億の支出ということになりますと、今日の不況あるいは地方財政の危機、あるいは災害を受けた県等におきましては、これは全く財政圧迫の原因になっておるのでございます。  また、かつて秋田大学の医学部設置のときに私はこの文教委員会質問しましたが、あのときにも、これは地方財政法の違反であるということも自治省としては発言をいたしておるような状態でございまして、これらのせっかくつくる国立大学、それを誘致した各県がこのような財政負担に悩んでおることに対して、どのように今後対処していくのかということをお聞きいたしたいのであります。
  144. 佐野文一郎

    佐野(文)政府委員 医科大学を設置いたします場合に、御指摘のように創設に必要な用地の取得あるいは造成、さらに教職員宿舎の一部あるいは関連公共施設の整備等について地元に協力を求めているということがございます。これは医科大学の創設が地元の子弟の進学の機会を広げたり、あるいは医師の数の増加というものが地元で期待をできるとか、あるいはその地域における医療のセンター的な機能を果たす機関で設置をされるというような直接の利益というものがあるということがあるわけでございます。また、それだけでなくて、地域住民や地域医療の仕組み等の諸事情と密接な関連もございますし、地域住民の理解と協力を求めることが不可欠でございます。さらに、地元において実施する方が、地域住民のいろいろの要望により適切に対応し、進行を容易にすることができるというふうに考えられるから、このような措置をとっているところでございます。  しかし、御指摘のとおり、地方財政法の趣旨を尊重する立場から、地方公共団体の過大な財政負担はできるだけ避けなければならないというふうに考えております。そして提供を受けた用地、教職員宿舎等につきましては、有償で借用をするという措置を講じております。また土地についても、実情に応じ、国が取得することが適切と認められるものにつきましては他の国有財産との交換等の方法によりまして国が取得するように検討をいたしてまいりたいと存じます。  なお、医科大学の用地の借料でございますが、従来は、御指摘のように相続税の評価額の百分の二、これを積算の基礎といたしておったわけでございますが、五十一年度予算におきましては、造成費を含む取得額の百分の二というように積算の基礎の改善を図ったところでございます。  さらに教職員宿舎の借料につきましては、国の貸し付け基準に準じまして、建物価格の百分の六、これを積算の基礎として予算を計上しているほか、その大学の教職員の採用状況等を勘案しながら、国設宿舎の整備も進めているところでございます。
  145. 山原健二郎

    ○山原委員 この膨大な地方財政の負担というものは前々から問題になっておるところでございまして、これもまたここで一挙に答弁のできることではないと思いますが、しかし余りにもひどいということは、これはどなたが考えてもおわかりになるところだと思うわけです。そういう意味で、いままでほとんど解決してないわけです。秋田大学の医学部の問題でもまだ解決をしていないという状態で、結局大学は持っていくのだけれども、それが一つの足かせ手かせになりまして、確かに大学が来ることは、これは県民にとっても、どの県でも喜ばしいことでございますが、しかし一面では、大学を設立して付属病院ができるまでは、たとえば県立病院がこれに使われるということになりますと、県立病院では、普通の医療を行っておるうちに教育問題まで抱えてくるという、二つの仕事が持たされますと、結局県民に対する医療のサービスという乙とができなくなるというような問題も県の実情としてはどこにでもあるわけでございます。  そういう意味で、ただ、医科大学を設立してやったんだから少々の犠牲は構わぬというような考え方ではだめなのでございまして、これは当然大蔵省とも話をして、これらの負担に対してはこれを軽減していく、あるいはなくしていくという努力が重ねられなければならないと思うのです。現に残っておる医科大学のない県というのは、これはほとんど皆いわば弱小県が残っているわけですから、そういう意味ではこの問題は当然検討に値する問題として本日は提起をしておきたいと思うわけでございます。  さらに、高知医科大学の場合など、すでに設立準備委員会が持たれておりまして、それには基本構想その他が出ておるのでございますが、この大学内容についても、地域に密着した大学になってもらいたいという要求もあるわけです。たとえば救急病院、これは先般も大臣が本会議答弁をされておりましたが、救急病院がどうしても要るというようなこと、あるいはその地域における、たとえば私の県でありましたらハウス病などというものもございます。あるいは山林で働く労働者が多いものですから白ろう病などというのが新たな職業病として大変脚光を浴びるという状態ですね。これらに対して、その地域の住民の要望にこたえるような大学にするのかどうかという点ですが、私はこの設立準備委員会構想を見ますと、たとえば地理的、風土的な事情によって、高知医科大学には生活環境研究センターというようなものを設立をいたしまして、肺吸虫症、ヒラリア症、甲状腺腫、アルコール中毒、ハウス病、白ろう病あるいは潜水病、それから近親結婚が多いものですから特殊遺伝症等の部門を設立する構想が出ておるのでございますが、これは事実でございましょうか。  また、将来計画として、付属病院はもちろんですが、付属医療技術短期大学あるいは付置研究所、大学学部研究所、六十名の博士課程研究科あるいは歯学部、そういうものを構想されておると聞いておりますが、この構想文部省も御存じでしょうか。
  146. 永井道雄

    永井国務大臣 私どもとしてもそうした方向が出てきているということを存じているだけではなく、設置審議会におきましても、基準というものを考えます場合に、たとえばいま地元のサービス、特に地元に特有な病気などの研究並びにその治療というふうなものを考慮してやっていくように基準を弾力的に考えていった方がよろしいという方針でございますので、大学の設立構想に当たりましては、そういう方向で進んでいただくようにわれわれとしても要望している次第でございます。
  147. 山原健二郎

    ○山原委員 次に技術科学大学の問題について質問をいたしたいと思います。  まず、今回の提案に当たりまして文部大臣は、「実践的、創造的な能力を備えた指導的技術者の養成という社会的要請にこたえるため、実践的技術開発を主眼とした教育研究を行う大学院重点を置いた工学系大学を設置しようとするもの」とあるのでございますが、これにつきまして、社会的要請というのは一体何なのか、この点簡単に御説明をいただきたいのであります。
  148. 永井道雄

    永井国務大臣 私の理解いたしますところでは、今日わが国の経済社会におきまして、科学技術というものに基づきました発展は非常にございます。さらにその中に幾多の問題も含まれておる。それは先ほど嶋崎委員も御指摘になったとおりでございます。そこで、今後技術を一層発展させていくという乙とが、わが国全体の産業を見渡した場合に当然必要であると同時に、そこに含まれた問題の解決、そうしたものもきわめて重要である。社会的要請というのは、簡略に申し上げますと、そのようなものと理解いたしております。
  149. 山原健二郎

    ○山原委員 私どもも高度な技術科学発展ということに対して、これに反対とかそういう立場はもちろんとっておりません。問題は、それがなぜ一般大学でできなくて、新たな大学を設置しなければならないかという疑問でございます。現に高専卒業者一般大学への編入学は法的にも認められておりますし、一般大学編入の枠をもっと拡大をすればいいのではないかというふうに考えるわけでございますが、一般大学では指導的技術者が育たないというような特別な理由があるのでしょうか、この点を伺っておきたいのであります。
  150. 永井道雄

    永井国務大臣 私は一般のこれまでありました大学におきまして、指導的技術者が育たないということではないと思います。もちろんそういうところでもりっぱな人材が輩出しているわけでございますが、教育とか研究というのは一つの形だけではなく、やはり幾つかの形というふうなものがございまして、そうしたものがいわば相互に刺激し合いながら発展していくということが望ましいのではないかというふうに考えます。これはわが国だけではなく、諸外国におきましても、そういう意味大学研究教育というものを必ずしも一つの型にとらわれない方向で努力をしているわけでございますから、今度の技術科学大学は従来といささか形を異にいたしますが、それはそうした違う姿のものからまた指導的な人が生まれることによって、従来そういう人材を輩出いたしておりましたところとともに一層の発展が図られる、そういう意味合いでございまして、従来のものは全く意味はない、さような考えではございません。
  151. 山原健二郎

    ○山原委員 高専卒業者一般大学への編入学の推移を資料で見てみますと、たとえば進学希望者が昭和四十二年には百七十人でございました。四十七甲には三百五十九名となっております。その中で入学者数が四十二年には百三十七人、四十七年には九十四名とむしろ減っているわけでございます。そのうち国立大学が四十二年には十八名で、四十七年には五十四名となっておりますけれども、しかし進学希望者数に比べまして非常に少ない枠であるわけです。こういうことを改善をし、枠を拡大をするというその努力が必要であったのではないかと思いますが、いかがでしょうか。
  152. 佐野文一郎

    佐野(文)政府委員 高専卒業者大学二年次ないし三年次への編入というのは、大学の側の理解によりまして逐年むしろ拡充をしてきているというふうに考えております。もちろん全体の量としてはまだ卒業生の九%弱程度の状況ではございますけれども、徐々にふえてきているというふうに考えております。特に国立大学の場合には、幾つかの大学受け入れのための特別定員を設けることを行っております。五十一年度では東京大学、金沢大学にそれぞれ新たに十人ずつの受け入れ枠を設けるというような措置を講じてきておるところでございます。
  153. 山原健二郎

    ○山原委員 いずれにしましても、努力が続けられていることは間違いないと思いますが、しかし大変狭き袋小路になっているというのは事実だろうと思います。しかもその袋小路の問題につきましては、たとえば犬丸さんの書かれました「高等専門学校制度と関係法令の解説」ここに持ってきておりますが、それによりますと、「いくつかの異なった水準の学校系統を経て社会へ出る者が存在することを前提とし、それぞれに最も適した教育を行なおうとすれば、一つの学校系統へ進んだ者が他の学校系統へ転進する途が狭くなることは、ある程度やむを得ないのではあるまいか。いわゆる袋小路にある学校教育が沈滞するということも、結局誤れる学歴風偏重の社会風潮の、学校への反映といえよう。」というような論文も出ているわけでございまして、高専設立の当初から、この袋小路という問題は予想されておったのではないかと思うわけでございます。これに対して、当然これを改善していく努力がもっと大がかりに行われる必要があったのではないかと思いますが、いかがですか。
  154. 佐野文一郎

    佐野(文)政府委員 先ほど九%と申し上げましたが、それは大学への進学を希望する者の数でございまして、実際に編入学されている者の数は三%程度でございます。もとより学校制度である以上は、制度的にもまた実際的にもそれが袋小路になっているということはきわめて望ましくない事態でございます。高等専門学校の場合には、制度的にはもとより袋小路になっているわけではなくて、大学への編入学の道はあるわけでございますが、実態としてその編入学受け入れ状況というものが十分でないという状況が当初あった。これはもちろん進学志望者の数にもよるわけではございますけれども、先ほど申しましたように大学側にも理解が出てまいりましたし、また従来積極的に枠を設けていくような努力も続けてまいりまして、制度的な進学の道と並んで、それが事実上開かれていくような努力を大学への編入学については講じてきているとということでございます。
  155. 山原健二郎

    ○山原委員 この技術科学大学の問題につきまして、東京工業大学の学長である川上正光氏が「技術科学大学院基本構想等々」ということで発言をされております。この方は技術科学大学の準備室長をされておる方だとお聞きしておりますが、これは間違いありませんでしょうか。
  156. 佐野文一郎

    佐野(文)政府委員 技術科学大学の創設準備室は東京工業大学に設けておりますので、学長である川上先生が室長になっておるということでございます。
  157. 山原健二郎

    ○山原委員 昨年の七月三十日、日本教育協会主催のこれからの高専教育を考えるというシンポジウムの中で、この方が先ほど言いました「技術科学大学院基本構想等々」と題して講演をいたしております。その中で「高専教育の延長線上にさらに高度の技学に関する教育研究機関を設ける社会的必要が生じた。」と述べておるのであります。そしてその次に、技学とはいかなるものかというと、これは生まれながらにして前二者——前二者というのは理学と工学でありますけれども、理学、工学とは全く異なるものである。学問とは無関係であり、一般技術という範疇に属するものであると述べております。さらに引き続いて、テクノロジーというのは技道と言うべきであるが、日本人は学というのがお好きのようであるから技学ということにしようと述べておるのであります。この準備室長さんの御発言は御承知でしょうか。
  158. 佐野文一郎

    佐野(文)政府委員 川上先生がサイエンスを理学と訳し、エンジニアリングを工学と訳す場合に、テクノロジーの訳語として技術というのは必ずしも適切でない、むしろそれは技学というふうな形で日本では呼んだ方がいいという御説をお持ちであることは十分に承知をいたしております。その趣旨は、やはり技術というものが理学や工学の成果を取り入れて、工学に比べてより実践的な立場で事を処理をしていくということを川上先生としてはおっしゃりたいのだというふうに考えております。
  159. 山原健二郎

    ○山原委員 ここに書かれておりますように、前二者、理学、工学と全く異なるものである。学問とは無関係であり、一般技術という範疇に属するものであるという、ここらあたりに今度の技術科学大学の思想性があるのではないかいうとふうに私は感じておるわけでございます。  都立大学の名誉教授の下坂実氏がまたこの同じシンポジウムにおきまして、大学コースはエンジニアの養成を目標とし、高専コースはテクノロジストの養成を目標にしていますと述べているのでございます。この問題について、こういう強引な分け方をしておるわけですが、そういう点で、いわば職業人養成という立場がこの技術科学大学の設立を目指した意図ではないのかということを感じるのでありますが、その点はいかがでしょうか。
  160. 佐野文一郎

    佐野(文)政府委員 技術科学大学のねらいというのは、午前中にも御議論がございましたように、現実的な課題解決能力を持った指導的な技術者を養成しようということでございます。このことは決して肉体的、技能的な意味での技能者、技術者を養成しようというものではなくて、理学、工学に関する高度の学問的な基礎を必要とすることでございますし、十分に学部大学院のレベルの教育研究に該当するものというふうに考えているわけでございます。
  161. 山原健二郎

    ○山原委員 高専というものをつくられて十数年経過いたしておるのでありますが、この高専卒業者特色あるいは評価、実情、こういうものを見てみますと、またかなり問題が出ておるように思うわけであります。これは一つの資料として各部門における高専卒業者特色、評価というのが出ておりますが、たとえば能力的に大学院卒そして大学卒、高専卒というふうに歴然と区分けができるということも出ているわけであります。また専門に関する知識量においても大学卒より劣る、あるいは創造性、論理性、広い視野、解析力あるいは探究力、修得した知識、理論の活用などにおいて要望しなければならない点があるとか、あるいは応用力とか柔軟性においても欠落したものが出ておるというような評価が出ているわけでございますが、こういう実態でございましょうか。
  162. 佐野文一郎

    佐野(文)政府委員 高等専門学校卒業者につきましてはいま御指摘のように、一般的に申しまして教養が不足をしているとかあるいは視野が狭いというふうなことが巷間指摘をされているということは承知をいたしております。しかし私どもは、必ずしもその指摘が適切なものであるかどうかについては疑問を持っているわけでございます。高等専門学校においては若いときからいわば経験しつつ学ぶというふうな態度で実践的な技術というものを身につける、そういう教育を積み重ねているわけでございますけれども、五年間一貫した教育のもとで、一般教育についても一般の短大あるいは大学の場合よりは一般教育の時間というのはやや少ないということは事実でございますけれども、一貫教育の中で効果的な教育ということは実施をいたしておるわけでございますし、また高専特有な少人数教育であるとかあるいはクラス制、学寮制、そういったものを生かした人間的な教育というものについても各学校がそれぞれ十分に配意をしているわけでございます。そういうことを通じてまさに創造的に現実の課題に対応してそれを解決する能力を持った技術者を養成するというそういう趣旨高専教育というものは追い続けているわけごでざいますし、そういう意味高専卒業生に対する社会の評価というのは非常に高い、そういうことが言えるというふうに考えております。
  163. 山原健二郎

    ○山原委員 文部省としてこの十数年間経過をしてまいりまして、いろいろの批判があってもまた一面この特色が生きておるというその程度反省でしょうか。あるいはもっと突っ込んだ検討をされておるのではありませんか。
  164. 佐野文一郎

    佐野(文)政府委員 現在私どもが検討しております課題として、高専のカリキュラムの問題がございます。高専のカリキュラムについては、それが過密であるという指摘がございます。それは確かに問題として考えなければならないことだと思います。高専教育課程につきましては、現在調査会を設けて検討を続けておりまして、近く結論が得られると思います。  そこでは、一つは教育課程の基準、標準というものをもっと弾力化して、そして各学校がそれぞれ創意工夫をこらしたカリキュラムが組めるようなそういう弾力化の方途を講ずるということが一つ。それからもう一つは高専の総時間数がやはりやや多過ぎるという指摘がございます。これに対して検討をいただいているわけでございますが、目下のところ、時間数をもう少し減らして、学生を教室にとどめ置く時間をもう少し減らした方がいい。現在議論されておりますのは週平均二時間程度の授業時間数の減少を図ってはどうかということがございます。あるいは従来高専の教科というのは全部原則として必修になっておりますが、これについてもっと選択制を導入することを考える。そして高専全体の教育というものをもっと活発に展開をするような工夫をしよう、そういった点を現在検討しているところでございます。
  165. 山原健二郎

    ○山原委員 ここに一つの資料がありますけれども、こういうふうに出ております。「第一に、学校拘束時間が多いため、学生の自ら学ぶ努力が欠如し易く、また積極的に新しい問題に取り組む姿勢も形成され難い。第二に、大学型学問体系の導入から、単独完結型の多数科目必修修得のため学生は教授された知識の詰め込みに陥り、木を見て森を見ずの感があり、自分の専門分野の概念、学問の体系などの把握が困難となっているので、与えられた以外のものを自ら思考する発展性に乏しい。第三に、第一、第二の関係から生ずることであるが、学んだ理論を応用して、何らかの「物」を創り出すという機会が少いため、技術者として新しい「物」を創造する喜びを知らず、創造と理論を結びつける訓練が不足しているため、創意工夫に欠ける面がある。」という評価もなされておるのであります。木を見て森を見ずの感があるという言葉が私ども胸に刺さるわけでございますけれども、こういう評価も出ていることは御承知だと思います。  ところで、ではこの高専進学をした学生諸君はかなり優秀な成績をもって中学校を卒業した人々であることは御承知と思います。たとえば、いまここに資料がありますけれども、高専入学者は四・五ないし五の平均成績を持っておる人が六九・九%入学をいたしております。普通の高等学校の場合は四四・二という数字が出ておるのであります。これは国立の場合ですが、公立の場合は二三・五という数字が出ております。この数字から見ますならばかなり優秀といいますか、いわばできる子供たちが中学校を卒業して入っているわけですね。この子供たちが高専にいって木を見て森を見ることのできない子供にさせられておるということになりますと、高専の功罪というものについてはかなり深刻に検討する必要があると私は思うのですね。その点は文部大臣いかがですか。
  166. 永井道雄

    永井国務大臣 高専の持っている問題につきまして、調査会においても検討をいたしております。そして、ただいま御指摘になりましたように幾つかの問題点がございますが、調査会において論じられておりますことは、やはり教育課程の基準、標準を弾力化した方が今後の高専発展のために非常に重要であるだろう。そしてそういうふうにした方が教育内容に独自の創意と工夫を生かして、教育課程というものを変えていくことができる。また、総時間数につきましても過密感を与える点がありますので、学生にもっと余裕を与えるという方向で授業方法工夫をこらす。先ほど大学局長も申し上げましたように、授業時間数の減少ということも一つの課題として考える。また、履修に当たって必修ということが原則になっておりますが、もっと選択という方向を考える。私はこうした方向における改革が必要であると思いますし、先ほど山原委員が御指摘になりました川上学長の論文も実はそれから読んでおりましたのですが、高専教育というものと科学技術の進歩というものとの間に、あるギャップというものが予想以上に生じてきている側面があるということを指摘しておられますから、そうした角度からの改造というものが今後の一つの課題と考えております。
  167. 山原健二郎

    ○山原委員 私はかなり失敗した側面を持っておるというふうに思っておるわけでございます。先ほども嶋崎委員からお話がありましたように、むしろ高専をいわゆる普通の大学にしていくとか、あるいは短期大学にしていくとかいう方向を目指した方がいいのではないかという考えを持っているわけですが、この高専教育がさらにまたもう一つこれに上積みをされた職業人教育という形になって、いわば今日までの大学の理念と違ったものが並行して存在をしていくことになるのではないかということを指摘いたしたいわけであります。かつて荒木文部大臣高専設立のときに、いわゆる二級国道論というのを出しておるわけですね。東海道だけでは不十分だからもう一本二級国道的なものを考えなければならないと答弁いたしておりますが、一般大学と並行した二級国道的大学というのは屋の上にまた屋を重ねるという結果になるのではないかと思うのですけれども、これについての見解を伺っておきたいのであります。
  168. 永井道雄

    永井国務大臣 ただいまの御指摘でございますが、特に実務的職業人だけをつくるという角度になるのではないかということですが、私が理解いたしますところでは、先ほどの川上学長の論文も、実践技術と学理の調和の上に立つことが望ましいということをやはり言っておられるわけでございます。そこで、従来の工学部ではどちらかというと工学に傾斜している。そして川上学長のいわゆるテクノロジーの方に向いている。医学の方に乙の表がございますけれども、臨床的な角度が弱かったということを言っておられるわけでありまして、そういう意味においては確かに今度特色のあらわれたものが出てくるということでございますが、これは従来の学校と相互に刺激し合うことによってむしろ発展をしていき得る、またそういう方向を私たちとして——川上学長の論文の趣旨もそういうふうに理解いたしますが、そういうふうな角度でこの大学発展を図らなければならないと私は思っております。
  169. 山原健二郎

    ○山原委員 時間が余りありませんので次へ移りますが、今度の技術科学大学について新構想という言葉が使われております。これは一体何を指すのかということですが、先ほども嶋崎委員から質問がありました。たとえば高専卒業者を入れる、あるいは工業高校卒業者を入れるということと、それからもう一つは実務訓練の問題が出てくるわけでございます。もう一つは民間資金の導入の問題が出てくると思うのでございますけれども、こういうことが新構想の一つの内容になっておるのでしょうか。
  170. 永井道雄

    永井国務大臣 新構想内容というのは、先ほどの臨床的側面といいますか、そちらを重視して、しかも研究をしていく。一番の要点はそこにあるように私は考えますし、また、いわゆる七つの教育組織というものが考えられておりまして、従来の講座というようなものよりも幅広く考えておりますのも、課題解決的な形の学習の仕方あるいは研究の仕方を重視している。そこが新構想の一番のポイントであって、そして今度はそこに入学する方々の角度から考えますと、御指摘のように高等工業卒あるいは高専卒の方々に道を開いているという点があろうかと考えております。
  171. 山原健二郎

    ○山原委員 学校教育法の五十六条によりますと、「大学入学することのできる者は、高等学校を卒業した者若しくは通常の課程による十二年の学校教育を修了した者」となっておるのでございますが、普通高等学校卒業者受け入れるというのは、先ほど少し言われましたが、もうちょっと明確に言っていただきたいのであります。
  172. 佐野文一郎

    佐野(文)政府委員 普通高校卒業生ももちろんこの大学への入学資格を持っているということは、先ほど来お答えを申し上げたとおりでございます。本学の趣旨とするところからして一年次六十名の受け入れについては、工業高校卒業生が入ってこれるように、入試の科目であるとかあるいは推薦の入学制度等を活用して工夫をしていくということがございますけれども、たてまえとしてはもちろん普通高校卒業生も入れるわけでございます。
  173. 山原健二郎

    ○山原委員 たてまえはそうでございますけれども、五十六条の精神とはかなり矛盾する側面を持っているのじゃないんでしょうか。
  174. 佐野文一郎

    佐野(文)政府委員 普通高校卒業生でありましても、この大学趣旨というものを理解をして、その方向に沿った実践的な技術開発というふうなことを目指して修士までの教育を受けたいと希望する者については、もとより入学を拒むものではございません。
  175. 山原健二郎

    ○山原委員 次に民間資金の導入の問題でございますが、先ほども質問がありましたので、大体民間資金の導入などということを、たとえば大学院構想についてというものとか、こういうものにも公然と書いておるわけですね。こういうことはいままであったのですか。
  176. 佐野文一郎

    佐野(文)政府委員 この大学の基本的な構想検討した、その調査会報告書に書かれているだけであるというふうに承知をしております。
  177. 山原健二郎

    ○山原委員 この技術科学大学の場合、総予算というのは大体どの程度予定しておるのでしょうか。
  178. 佐野文一郎

    佐野(文)政府委員 午前中もお答え申し上げましたように、この大学の教官の全体の定員をどの程度のものとして整備をしていくかというような点がまだ固まっておりませんので、この大学の総予算がどの程度のものになるかということは、現在ではまだ未確定でございます。
  179. 山原健二郎

    ○山原委員 これまでの既存の国立大学、公立大学で民間資金がどういうふうに導入されておるか、大体教育研究費のどれぐらいの割合を占めているかというふうなことはおわかりになりますか。
  180. 宮地貫一

    ○宮地政府委員 国立大学における学外からの寄付金の額のお尋ねでございますが、四十九年度の決算ベースで申し上げますと、国立学校における奨学寄付金の受け入れ額は三十六億五千万円余でございます。これが国立学校特別会計の予算全体に対する割合でございますが、四十九年度の国立学校特別会計の当初予算総額五千七百億余りに対しまして、約〇・六四%に相なります。  なお、受け入れの手続等につきましては、文部省令、訓令等でそれぞれ定められておるわけでございます。
  181. 山原健二郎

    ○山原委員 民間資金の導入ということをお考えになっておるとすれば、それは研究実験設備、あるいは研究材料の提供というような形を予想されておるのでしょうか。
  182. 佐野文一郎

    佐野(文)政府委員 まずお断り申し上げておかなければいけないことは、そこに民間資金の導入、あるいは公共資金の導入の問題が提起をされておりますのは、調査会における先生方の御議論の結果の取りまとめとしてそこに出ているということでございまして、実際にわれわれがこの大学をつくっていくという、そういう行政の面からどう対応していくかということは、一つ距離があるということがございます。われわれとしては、その問題については午前中もるるお答えを申し上げましたように、できる限り大学主体というものを確立した上で、新しい現実の課題に対応をしていく。そして、それを大学の中に取り入れてくるというふうな趣旨で、社会あるいは官庁等の要請にも対応しよう、そういう趣旨のものと御理解をいただきたいと思います。
  183. 山原健二郎

    ○山原委員 先ほど言いました、私が資料として出しておるこの構想とはかなり離れたものであるということですね。たとえば民間からの委託研究なども、この当初の構想としては、四十九年三月十五日に出されました技術科学系の新高等教育機関構想に関する調査会のものを私は資料にしているのですが、ここではそういうことはお考えになっておったのでしょうか、委託研究などは。
  184. 佐野文一郎

    佐野(文)政府委員 考えられていたと思います。
  185. 山原健二郎

    ○山原委員 現在はどうでしょうか。
  186. 宮地貫一

    ○宮地政府委員 五十一年度の予算額では、受託研究費収入としては十七億九千万余でございます。
  187. 山原健二郎

    ○山原委員 現在ではどうでしょうか、というのは、そういう考えがあったけれども、現在はそうは思ってない、そういう考え方ではないという意味でしょうか。これは大臣、いかがですか。
  188. 永井道雄

    永井国務大臣 受託研究というのは、現在の国立大学に行われている金額を先ほど会計課長が申し上げましたが、現在の国立大学にも行われており、そして私は、今度の大学においてもやはり受託研究が行われると考えます。しかしながら、受託研究がどういう条件において行われるかというところが非常に大事でございまして、いわゆる受託者、つまり学外が研究方向を決めたりするというのではなく、大学主体的に研究教育の立場から判断をいたしまして、適切であると考えられるものを所定の手続を経まして受託するという方針が守られなければならないことは申すまでもないことでございます。
  189. 山原健二郎

    ○山原委員 このことに少しこだわっているわけですけれども、この法律のたてまえと、そしていろいろ言われてくるこの意見、その他資料というものが、そういう点で私どもとして危惧の念を抱かざるを得ないものが出てくるわけで聞いているわけです。  たとえば今回豊橋に技術科学大学ができるわけですけれども、トヨタ自動車工業の坪井さんという取締役人事部長の「これからの高専教育を考える」という、これは発言でしょうか、資料が出ているわけでございますが、これを見ますと、「自動車産業——米国ビッグ3の攻勢に対抗するため技術力強化 多数の技術者必要 今後も、排出ガス規制対策など技術的課題が多く、技術者は必要」という発言が出されているわけでございます。そうすると、いままでの資料をずっと総合してみますと、このような企業の考え方がすぐそばにあるわけでございます。そういうところから委託研究あるいは資金の導入などが行われてまいりますと、結局、企業優先の委託研究によって学問の自由というようなものが保障されるのか、あるいは、ひいては大学の自治が保障されるのかという疑問が出てくるのはまた当然だろうと思います。しかも、たとえば研究テーマあるいはその研究の成果は公然と公開される保証があるのかというような問題も出てくるわけでございます。そういう点で、この点については当然新しい構想大学の設立を審議するに当たって私どもはかなり突っ込んだ質疑をしておかなければならぬと思っておりますが、そういう心配は全くないとお考えになっておるのでしょうか。
  190. 永井道雄

    永井国務大臣 一企業の発展を図るというような角度からの大学にはならない、またなってはならないということは申すまでもないことでございます。ですから、しかしたとえば排気ガスというものの問題をどうするかということは今後の非常に重要な社会的課題、あるいは今日といいましてもそうでございますが、課題でございますから、そういうものを大学の立場から研究し、また教育していくということは非常に大事であると考えております。
  191. 山原健二郎

    ○山原委員 一方では中教審の答申もありまして、この中教審答申の変形のような形の大学院として考えておるのではないかという憶測ももちろん出てくるわけでございます。むしろ、民間資金を導入するという考え方よりも、やはり大学としてあるいは大学院として、しかも新たに構想している国立大学の新設に当たっては当然頭からその資金導入を考えるということではなくして、研究教育にとって十分な保証を国がしていくという、これが大学設立の基礎になるのではないかと思うのですね。そこのところが崩れてしまいますとやはり、たとえば排気ガスの問題で研究の成果が上がった、しかしすぐそばにトヨタ自動車工業があってそこから資金も導入され、その資金も借りて研究をした、成果が上がった、さてこれは公然と発表できるかというと企業としてはそうもいかぬという問題も出てくる可能性がありますね。そういうことになってくると、これはもう技術科学大学、せっかく文部省として高邁な理想を掲げてやったとしても、これは大変にゆがんだものになる可能性がないとは言えない。その心配は法案審議に当たってしておかなければならぬと思うわけですが、そういうことはない、特に研究教育に当たって、とにかく国立大学を新たな構想で新設するとするならば、それに見合う国の費用を出していくという立場、これが主眼にならなければならぬと思いますが、いかがでしょうか。
  192. 永井道雄

    永井国務大臣 もちろん国立大学というものが国立大学本来の使命に沿って発展していくために必要な財源というものを文部省が確保していかなければいけないということは、申し上げるまでもなく大原則でございますから、そういう立場で臨む考えでございます。
  193. 山原健二郎

    ○山原委員 次に、この技術科学大学組織運営、管理運営につきまして質問をいたしたいと思います。共有組織として学系を設けておりまして、学系は七コースに分けられておることは先ほど説明もありましたし、私たちのいただいておる概要の中にも出ております。それぞれのスタッフ、教授、助教授、助手、講師はどれだけの規模であるのかということですが、これは、先ほどのお話ではまだ未確定であるというふうに受け取ってよろしいですね。
  194. 佐野文一郎

    佐野(文)政府委員 まだ未確定でございます。
  195. 山原健二郎

    ○山原委員 この「技術科学大学院(仮称)の創立について」という文書をいただいておりますが、これを見ますと「教育研究基本構想に常に適切に対応しうる弾力性のある管理運営体制を確立する必要がある。」と述べておりますが、この「弾力性のある」という言葉はどういう意図で書かれておるのでしょうか。
  196. 佐野文一郎

    佐野(文)政府委員 この大学の管理運営の方式につきましては、現行の関係法令に基づきまして、一般国立の単科大学と同じように学部の教授会を中心として運営が行われることに相なるわけでございます。ただ各種の委員会制度等を活用いたしまして、この大学の全体の意思が円滑に運営に反映されるような工夫をすることが必要であるというふうに考えている、そういう趣旨と御理解いただきたいと思います。
  197. 山原健二郎

    ○山原委員 先ほども御質問がありましたが、学部教授会は当然置かれるということははっきりしているわけですね。
  198. 佐野文一郎

    佐野(文)政府委員 そのとおりでございます。
  199. 山原健二郎

    ○山原委員 先日の朝日新聞の問題が先ほども出ましたけれども、あの中に「人事選考委員会」という言葉が出てくるのでありますが、人事の公正あるいは学閥とか学歴偏重をなくするということは当然のことでありますし、これは大学が自主的にやっていけばよいことなのでございますが、こういったものは一応想定されたことがあるんでしょうか。
  200. 佐野文一郎

    佐野(文)政府委員 教育公務員特例法の規定に従いまして選考が行われるということでございまして、それ以上のことは考えておりません。
  201. 山原健二郎

    ○山原委員 特例法の立場からいっても、たとえばそういうものが設置されるとか、あるいは先ほど出ました任期制などというのはこれは当然問題になるわけでございまして、その点は先ほどの質問ではっきりしたように思います。私もそれは確認して進みたいと思うわけでございます。  さらに、教官は、産業界から広く優秀な人材を求める必要がある。それはあわせて各界から客員教授を任用する等の工夫と言っておりますが、具体的にどういう方面からどれだけの人を求めるというふうなことについてお考えになっておりますか。
  202. 佐野文一郎

    佐野(文)政府委員 午前中も大臣から申し上げましたように、この大学をどのように運営をしていくかということは、創設に当たられる学長あるいはその他のスタッフの方々が今後工夫をされていくことでございます。ただ、既存の大学あるいは高等専門学校さらには民間の研究所等との交流というものをできるだけ促進をする、そのために必要な方途というものは工夫をされることが必要であるし、また望ましいことだというふうに私たちは考えているわけでございます。その方法の一つとして、客員教授のような制度もできるだけ活用してはどうかということが考えられている段階でございまして、それ以上具体的にどこからどれだけというふうなことが現在検討されているわけではございません。
  203. 山原健二郎

    ○山原委員 先ほどから学長及びスタッフによってこの大学の運営という言葉がしばしば出てくるわけでございますが、創設に当たって学長、スタッフの問題は当然出てくると思います。しかし学校の運営については、これは先ほど教授会は当然に置くべしというお話がありますので、そういう点ではいわゆる教授会というものが構成されるに先行して、いろいろな管理運営の問題が決められるということではなかろうと思うのですが、その点ちょっと明らかにしていただきたいのであります。
  204. 佐野文一郎

    佐野(文)政府委員 もとよりその大学の運営の根幹に触れるような問題というのは教授会で御議論になり、その方向を決定していくべきものでございます。創設に当たる段階で、その創設に関与される方々がこの大学の教官の選考の問題であるとかあるいは教育課程の具体的な検討というふうなものを進められていくということがあるわけでございます。
  205. 山原健二郎

    ○山原委員 もう一つ、実務訓練の問題について質問したいと思うんですが、指導的技術者を養成していくという立場から申しますと、特にこれは人間性の陶冶の問題が出てくるわけでございますが、これはたとえば一学期間この実務訓練に入っていく。その場合下手をすれば労務提供というようなかっこうになってしまう可能性もないとは言えないと思います。これが一つの心配です。あるいは教官の指導は一体どうなるのか、教育評価はどうなるのか。たとえば三百人がばらばらにそれぞれの事業所へ行ったり、そこで実務訓練を受けるという場合、これが全員必須なのかということもありますけれども、その評価というのは一体どうなるのか、これはどんなふうにお考えになっていますか。
  206. 永井道雄

    永井国務大臣 実務訓練と申しますのは、まず第一に労務提供ということではなく、この大学教育の一環として行われるということは明らかにいたしておくべきことであると思います。そこで実務訓練を行うに当たりましては、半年ほど実施するということを考えているわけでございますが、その場合、その実務訓練の指導に当たる人は大学教官でございまして、その指導のもとに計画的に実施されるということでございます。そうしてその評価というものも当然教官が行いまして単位として認定するということでございますが、さらにそれが詳細にどのようになるかということは、この大学当局の考えに基づいて決められることと考えております。
  207. 山原健二郎

    ○山原委員 もう少しの時間で終わりたいと思います。  管理運営の面につきましても、資金、人材その他の点についてもまだ十分頭へ入らない面がありまして、審議としては非常にやりにくいわけでありますが、最後に、高専教育の問題について、先ほどから幾つか出ましたカリキュラムの問題とか、あるいは教育課程について文部省検討しておるとかいう点も出てまいりましたが、私の方からも、この学生諸君は大変優秀な学生諸君が集まっているわけでございますから、そういう点で、いま指摘されておる欠陥については、当然これを克服していく姿勢を持つべきであるというふうに考えるわけであります。  また、特に詰め込み教育の問題もありまして、学生諸君の声なども出ておりますが、それをちょっと読み上げてみたいと思います。たとえば豊田高専の榊校長は、詰め込み教育の問題について、腹がいっぱいで、もうこれ以上はと言っているのに無理に口をこじあけ、栄養になるからがまんして飲み込めとやっているようなものが高専教育実態であるというような指摘もいたしております。また、六九年九月三十日の朝日新聞の投稿を見ますと、これは学生の投稿でありますが、「僕たちは朝八時半から四時まで、新入生は教育課程の変更で五時まで、きっちりつまった時間表で学校にクギづけで、その上レポートに追われるんです。これではマジメにやったらバカになっちゃう。それで三年生ともなると、毎日、欠課や早退がメロメロ出るようになるんです」という投書も来ておるわけでございます。  したがって、時間数その他についても質問をいたしたいわけであります。先ほどの答弁の中でも若干出ております、また、一般教養の面でも社会科学、生物、地学といったようなものについての不足、そういったものも指摘をされていると思うのです。犬丸さんのアンケートによりますと、一般教養について、また、どうしたら授業がよくなるかというアンケートに対して、学生諸君の反応としては、自分の好きな授業を選択できるようにしてほしいというのが三五・一%、時間数を少なくしてほしいというのが一六・一%、授業内容をもっと学生の要求に合わせてほしいというのが七・六%というふうに出ております。そして不満の要因としては、時間数が多過ぎるというのが三八%、選択が少ないというのが一八・五%、こういう状態から見まして、選択制導入をすべきではないかというのが私の一つの意見でございます。この点について伺っておきたいのであります。そしてまた、各学校で自主的にカリキュラム編成ができるような措置をとるべきだというのが二つ目の問題でございます。この点についてどのようにお考えでしょうか。
  208. 佐野文一郎

    佐野(文)政府委員 先ほど、教育課程改善の問題につきまして現在調査会検討中である、その主要な意見の方向等を御紹介申し上げましたが、その中で履習方法の改善として選択制を導入するという方向が出てまいっております。結論を得て、私どももそういう方向で対処をいたしたいというふうに考えております。
  209. 山原健二郎

    ○山原委員 最後に、学校教育法五十二条「大学は、学術の中心として、広く知識を授けるとともに、深く専門の学芸を教授研究し、知的、道徳的及び応用的能力を展開させることを目的とする。」ということ、六十五条の「大学院は、学術の理論及び応用を教授研究し、その深奥をきわめて、文化の進展に寄与することを目的とする。」というこの目的からいたしまして、今回できょうとしております技術科学大学の目的、これは概要によりまして私は判断をするのでありますが、学校教育法五十二条そして六十五条に矛盾することはないのかという点を聞いておきたいのであります。
  210. 永井道雄

    永井国務大臣 五十二条または六十五条の精神は当然尊重すべきものでございますから、その精神を実現していくような大学として建設されると理解しておりますし、またそうでなければならないと考えております。
  211. 山原健二郎

    ○山原委員 少し時間を残しておりますので、栗田委員の方から高専の問題について関連質問があるのでお許しをいただきたいと思います。
  212. 登坂重次郎

    ○登坂委員長 関連質疑の申し出がありますので、これを許します。栗田翠君。
  213. 栗田翠

    ○栗田委員 それでは、高専問題で二点ほど関連の質問をさせていただきます。  一つは、教宮の昇任問題なんですけれども、いま国立高専の教官の昇任について審査をしている機関はどこでしょうか。
  214. 永井道雄

    永井国務大臣 国立高専の教員の昇任にとどまらず、採用は、教育公務員特例法によって文部大臣の選考によるものとされております。現在、教授、助教授、専任の講師につきまして、各学校長の申請に基づきまして文部省内の学識経験者で構成いたします国立高専教員選考委員会において選考を行っております。  なお、高専の教員になりますための基準といたしましては、高専設置基準がございまして、これは文部省令として公布されております。ただし、具体的な選考に当たります場合には、この基準に照らしまして、さらに担当の教科の別や個々の高専の実情を総合的に判断して決定いたしております。
  215. 栗田翠

    ○栗田委員 いまお答えのありました文部省内にある選考委員会、学識経験者が担当していらっしゃるということですが、どんなメンバーで、何人くらいがやっていらっしゃいますか。
  216. 佐野文一郎

    佐野(文)政府委員 まず教官の教育研究業績を審査いたしますために六十名程度専門委員を委嘱いたしておりまして、これは大学先生方でございます。そのほかに、省内に設けられております科学官がございますが、その科学官のほか大学局あるいは学術局の担当局課長等がメンバーとなっているわけでございます。
  217. 栗田翠

    ○栗田委員 ただいま基準についても高専設置基準でやっておるというお話でもありましたけれども、こういう中でも業績判断というものは当然入ると思うのですけれども、それはどんな中身でやっていらっしゃいますか。
  218. 佐野文一郎

    佐野(文)政府委員 先ほども大臣からお答え申し上げましたように、具体的にどのように判断をするかという点になりますと、担当教科の別等がございまして、一律の基準で判断をするわけにいかない。そこで各専門先生方にお願いをして判断をしていただくということによるわけでございます。非常にむずかしいのは、高専の場合に、これはもちろん大学の場合でもそうでございますけれども、研究業績としていわゆる論文、ペーパーがどのくらいあるかということだけで事を考えるのではなくて、高専の場合にはより教育上の業績がどのようにあるかということを見ていかなければならないということがございます。これは教育の経歴がどのようにあるかということがもちろん一つ具体的にはございますけれども、それ以外にそれぞれの高専において校長がどのような推薦、所見をしてくるかということもございます。その中で教育上の業績というふうなものについてももちろん十分推薦があるわけでございますので、そういったものを総合的に考えて、研究に偏らない判断が行われるように留意をしているところでございます。
  219. 栗田翠

    ○栗田委員 研究業績、教育業績がともに入ってきて、非常にいろいろ複雑な内容であるというお話でございますが、特に教育業績の場合には校長が判断をして意見を出してくるわけですね。そういたしますと、先ほども嶋崎委員の御質問などでも問題にもなっておりましたけれども、教育業績というのは非常に判断のしにくいものでもありますし、それを校長一人が判断をするということは、大変ある意味では勤評にもなるという中身ですねこういう弊害があると思うのですけれども、その点どうお考えになりますか。
  220. 佐野文一郎

    佐野(文)政府委員 その先生高専において講師なりあるいは助教授としてどれだけの年数教育に携わっておられるかということがまず基本にございます。あるいは高専にお入りになる前にその他の学校なりあるいは調査所、研究所等においてどのようなお仕事をされていたかということもあるでございましょう。そういうものを踏まえた上で校長の所見というものが添えられてくるわけでございますから、一方的に校長の所見だけで事が運ばれるということではないというふうに御理解をいただきたいと思います。
  221. 栗田翠

    ○栗田委員 しかし定員の枠というのがありますから、設置基準に言われます基準に合致した経歴をお持ちの方でも全部教授になれるとも限らないという場合、出てまいりますね。そこが大変私微妙だと思うのです。そのことでいま伺っているわけなんですけれども、その点いかがですか。
  222. 佐野文一郎

    佐野(文)政府委員 御指摘のように昇任の場合にはそれぞれ助教授なりあるいは教授なりの定員というものがあって、そして、それに基づいて行われるわけでございます。それには当然一つの枠というものがあるわけでございます。それであるからこそ、その昇任についての選考が誤りなく行われるように専門委員も設け、また全体で合議をいたしまして適正な判断ができるように心がけているということでございます。
  223. 栗田翠

    ○栗田委員 学校教育法によりますと、大学の教授の場合には五十八条で教授とそれからもう一つは研究に携わるということがはっきり述べられておりますが、高専の場合には学生の教授、それは入っていますけれども、研究が入っておりませんね。これはどういうわけでしょうか。
  224. 佐野文一郎

    佐野(文)政府委員 御指摘のように、学校教育法に規定されております高専の目的の書き方は大学とは異なって、いわば教育機関としての位置づけをそこで明確に行っているわけでございます。しかしながら、当該高専の個々の教授あるいは助教授というものについて、それでは教育だけの問題であるかといえば、もちろんそうではなくて、研究教育というふうに両方の面での業績というものが要請されるわけであるし、ことに教授の場合には学内の教官の指導ということがございますので、研究業績というものが重視をされるということになるわけであろうと思います。
  225. 栗田翠

    ○栗田委員 教育研究というのは両輪であるとよく言われますし、私も当然だと思います。そういう意味でいま高専の中身を見ますと、さっき大臣も、内容の改善の努力がまず第一であるとおっしゃっていますし、改善と充実ということはいま大変要望されていると思うのですけれども、研究時間が保証されていないというのは非常に大きな問題になっているのですね。大変授業時数が多いようでして、一般教育は週十八時間ぐらい持っておりますし、専門で週十二時間ですか、それ以外に運動部の指導、補導関係の仕事、寮の宿直、助手の研究指導、学生の相談、考えてみれば高専学生の初めの三年間は一般で言えば高校生なんですから、その年齢からいってこういうことは当然必要になってくると思います。こういう中で非常に研究の時間がないという嘆きが出されております。  しかし、実際には、その他昇任昇格、いろいろな場合、研究実績というのが判定されていくわけなんですけれども、先ほども例が出ておりました豊田高専の榊校長、この方が社団法人日本工業教育協会の第二十三次年次大会のパネル討議の中で発言しておられるのですけれども、こういう実態で、非常に研究したいのに無理がかかって苦しい。それで何とかそのための工夫をしたいということでいろいろ努力をしているのですけれどもと。返ってくる返事は、要するに、高専教育だけやっておれば結構、研究までお考えくださらなくてもよいということです、というようなお話が出ているわけですね。こういうことをおっしゃるのは、大体文部省あたりしか言う権限はないと思うのですけれども、どうなのかということなんです。  こういうことを一方で言われながら、しかし判定の材料としては、研究実績というものもきちっと上げていかなければならない。そのために、目下ない知恵をしぼって教職員には紙くずつくりを奨励していますということを発言しておられるのですね。こういう矛盾の中で、充実した研究ができないけれども、論文は出さなければならないという矛盾をこういう形でおっしゃったんだと思いますけれども、こういう発言もされておりまして、ここのところ、この矛盾の実態をどうお考えになるかということを伺います。
  226. 佐野文一郎

    佐野(文)政府委員 高等専門学校の場合には、設置基準におきまして「その教育内容を学術の進展に即応させるため、必要な研究が行なわれるように努めるものとする。」というふうに規定してございます。したがって、高専教育だけしていればいいというふうなことを、仮にも文部省の者が申し上げるというふうなことはあり得ないことであろうと思います。  ただ、実際問題として、御指摘のように高専の場合には、かなり研究ということを進める上においてむずかしい点があるという点はあると思います。それでございますので、私どももできるだけ高専研究用の設備を充実をしていくとか、あるいは高専の教官で内地研究なりあるいは在外研究を希望する者についてはその希望を入れるように努めるとか、あるいは教官当たりの研究経費についても大学の学科目の場合と同じように措置をするとか、そういった工夫をいたしているところでございます。
  227. 栗田翠

    ○栗田委員 いまのようなさまざまな実態がありまして、一つは中身で研究の充実などができるような保証、配慮というのが大変必要だと思いますが、もう一つがその判定なんですけれども、校長がいろいろ論文などについての材料をそろえ、それから教育実績の判定をしてそれを文部省の中でやっていらっしゃるわけですけれども、私は、実際には教育実績などというのは、やはり現場の先生方をともに交えましてある方たちが一番身近なところで判断をしていかれるのが一番正確なのではないかと思うのです。大学の場合には大学の管理機関、教授会がその判定をするわけですけれども、高専の場合そうなっていないのですけれどもね。実際には各高専の教官を交えまして、校長を交えて、そういうところが判定していくという、単に諮問機関としてではなくて、判定の機関にしていくべきではないかというふうに思います。ですから、高専の教官会議が人事権なども持って、言ってみれば大学の教授会に相当するような権限を持ってこういうことをやっていくべきではないかというふうに思うのですが、その点いかがでしょうか。
  228. 永井道雄

    永井国務大臣 文部省内ということでございますけれども、先ほど御説明申し上げましたし、またなお必要があれば追加いたしますが、専門家の方たちが集まって、そこで昇任等についての検討を行うわけでございますから、やはり専門家による審議を経たという意味におきましては、直接文部行政によって、たとえば私自身がそれをどうこうするというものではなくて、そこの御決定に基づいて進めるわけでございます。
  229. 栗田翠

    ○栗田委員 その点はわかっておりますが、専門家は結構なんですけれども、やはり身近な高専の中でともに仕事をしていらっしゃる方たち、そういう方が一番よく判定できると思うのですね。少なくとも教育実績については判定できるのではないかと思います。そういう点で申し上げているわけです。いかがですか。
  230. 佐野文一郎

    佐野(文)政府委員 先ほどもお答えしましたように、高専の教官の採用、昇任につきましては、特例法によりまして文部大臣の選考によるということになっておりますので、いまのようなシステムをとっているわけでございます。各高専においては、もちろんそれぞれの高専において学内の教官の意向を学校の運営に反映させることができるように、随時教官会議等が行われているというふうに承知をいたしております。もちろん、大学の場合と高専の場合とは制度の仕組みがその点においては違うわけでございますけれども、高専としての学内の意思というものを学校の運営に反映させるような工夫というものは、やはり校長を中心としてその高専において考えられていってほしいというふうに考えております。
  231. 栗田翠

    ○栗田委員 教育公務員特例法の十三条の二項によっても、大臣は「前項の選考の権限を校長に委任することができる。」というふうになっておりますね。ですから、そういう形で、しかも先生方、教授会と呼ぶのかどうかわかりませんが、そこにもっと大きな権限を持たせていくべきではないか、単なる諮問機関ではなくて、こういう考え方なんです。そのことを言っておりますが、御意見いかがですか。
  232. 佐野文一郎

    佐野(文)政府委員 現在、その規定によりまして、助手の採用につきましては校長に委任をいたしているわけでございます。講師、助教授、教授につきましては、校長に委任することなく、文部大臣において選考を行うことの方がより適切であるというふうに判断をして、現在実施をしているわけでございます。
  233. 栗田翠

    ○栗田委員 高専先生方からもそういう点での改革の大きな要望が出ておりますので、ぜひ御配慮いただきたいというふうに思います。  次に、先生方の定員増の問題なんですけれども、いま高専の場合、非常勤講師が非常に多いのですけれども、依存率はどのくらいになっておりますか。
  234. 佐野文一郎

    佐野(文)政府委員 授業時間数の二五%程度でございます。
  235. 栗田翠

    ○栗田委員 人数で言ってきますと二七・九%、これは全部かどうか。たとえば宇部高専なんかの例を挙げますと、二七・九%の方が非常勤講師で、しかも学年で見ますと、一学年が三一・六%、四年生で三六・二%など非常に多い。三分の一くらいまでが非常勤講師で賄われているという状態のように思います。さっき木を見て森を見ない高専の生徒ができているというお話も出ていましたけれども、この中で、特に国語、社会、理科、保健体育、芸術の授業時数が非常に少ない。この宇部高専の場合にはドイツ語、芸術なんかは常勤講師がいないし、理科でも生物、地学の授業がないというわけですね。これは非常に専門に偏り過ぎているということでして、特に十八歳ぐらいまでの子供たちの場合には一般教養というのは非常に必要になって、そういうものが十分に授けられない場合には、やはり偏った、全体を見られない人間ができてくるのではないだろうか、こういうふうに思うわけです。  また非常勤講師が非常に多いということで別のさまざまな困難な状態も出ておりまして、広島の商船高専などの例を見ますと、ここは僻地なんですけれども、遠くから通ってこられる非常勤講師の方が十六名もいらっしゃるそうです。そのために学校までの所要時間が余り長いので、学校側で苦労をしまして呉線の竹原から高速艇による往復の海上輸送をやって、それから桟橋から学校までの自動車輸送をやる、そのためにない人数をやりくりして特別の運転手をつくったり、こういうことをしているというわけですね。そこへ持ってきまして三時間日から六時間日ぐらいのゴールデンアワーですね、一番生徒たちが集中して授業もしやすいところを非常勤講師の方に受けていただいて、常勤の方は一時間日とか七時間日とかというところをやらなければならないので、不満も非常にあるという例も生まれているわけです。こうなってまいりますと、研究時間が取れないという初めの問題も出てまいりまして、多くの矛盾が出ているわけですけれども、高専内容の充実という点からいっても、もっと常勤の先生たちをふやす必要があると思いますが、この定員増についてはどういう努力をしていらっしゃいますか。
  236. 佐野文一郎

    佐野(文)政府委員 高専の場合には、確かに御指摘のような点があるわけですが、実態としては、単科の工業大学と比較をいたしますと、教官一人当たりの学生数は高等専門学校の場合とおおむね同じ十三人強くらいの数字が出ております。しかし、それはそれとして、やはり高等専門学校の教官の充実ということは鋭意努力をすべき課題でございます。四十六年度から五十一年度までの間に教員を充実すべく努力をしてまいったわけでございますが、一つは各学科に共通の基礎的な専門科目でございます応用数学の担当教官を、教授五十二人増加をし、さらに応用物理の担当教授四人を増加いたしております。さらに二学級編成の機械工学科の整備として教授十八人をふやし、また情報処理教育センターを設置することに伴いまして教官四人をふやすというような形で、その教官の増に逐年努力をいたしているわけでございます。こういった努力は今後とも続けたいというふうに考えております。
  237. 栗田翠

    ○栗田委員 先ほどお話をしました宇部高専なんかから出されている意見でも、文部省の必要と認めた定員、たとえば応用数学や応用物理は増すが、その他の一般教養については増してない、こういうことが言われているのですね。いまのお話でもまさにそのとおりなんですけれども、こうなってきますと、さっきも申しましたように、十八歳未満の高校生に当たるような年齢の生徒たちが非常に偏った専門教育を受けるということになると思います。そういう点を含めてのいま定員増の問題だったのですけれども、国高専の問題についての中間まとめの報告が出ていると思いますが、その中でも、定員をもっとふやしていく必要があるという意見が出ていると思います。これに沿って努力をしていっていただきたいと思いますが、その辺の方向はどんなふうに検討していらっしゃるのでしょうか。
  238. 佐野文一郎

    佐野(文)政府委員 一般科目の場合には、従来講師を助教授に昇任させたりあるいは助教授を教授に昇任させたりする、いわゆる振りかえによる教授陣の整備ということに努力をいたしてきたわけでございます。高専に限らずに国立大学全体にわたって財政並びに定員の状況というのは率直に申し上げて非常に厳しいものがございますけれども、教官の充実ということは非常に大切な課題であるということは十分考えておりますので、引き続き先ほど申しましたような努力を続けていきたいと思います。
  239. 栗田翠

    ○栗田委員 では、これで終わりますけれども、大臣高専内容の改善と充実がまず先決であるとおっしゃいましたが、いまのような実情に沿って今後どういうふうにしていらっしゃるか、御決意を伺いまして、質問を終わります。
  240. 永井道雄

    永井国務大臣 ただいま大学局長から申し上げましたように、定数あるいは財政につきましては高専に限らず国立学校に共通のなかなかむずかしい問題がございます。しかし、高専について申し上げましても、私たちは今後努力をいたしたいと思いますし、特に内容の充実につきましては、時間数をいまよりも減らす方向、しかしその場合に一般教育は減らさない、さらに選択というものをふやす、こういう方向が調査会においても出てきておりますから、十分こうした見解というものを尊重いたしまして、内容の充実に努めたいと考えております。
  241. 栗田翠

    ○栗田委員 これで終わります。
  242. 登坂重次郎

    ○登坂委員長 次に、高橋繁君。
  243. 高橋繁

    高橋(繁)委員 最初に、技術科学大学につきまして、若干質問をしたいと思います。  ちょっと具体的なことで確認をさしていただきますが、午前中の質問にもありましたように、大学院入学する場合に他の大学からの希望者も入れる。もちろんそこでは試験を行って入れる、これは間違いないですか。
  244. 佐野文一郎

    佐野(文)政府委員 他の大学工学部を出てこの大学大学院入学したいという者についても、道は開かれているわけでございます。
  245. 高橋繁

    高橋(繁)委員 この技術科学大学が一つの目的として、いわゆる高専卒業生あるいは工業高校卒業生を救済する目的が一つあるということからいきますと、他大学に開かれた大学院である、要望があれば入れるということでありますけれども、主としてこの技術科学大学を卒業した者が大学院に入っていくということになると思いますが、その辺どんなふうになりますか。
  246. 佐野文一郎

    佐野(文)政府委員 午前中にもいろいろと御議論のございました点でございますが、やはり高専を卒業した者を主体として考えて、そしてその人たち大学院までの一貫した教育というものを考えていくということが大学趣旨でございますので、それが主体になることは事実であろうと思います。
  247. 高橋繁

    高橋(繁)委員 卒業生定員三百名でありますから、もちろん大学院も三百名でありますので、他の大学から来る者はほとんど入れないというような現状になりますね。
  248. 佐野文一郎

    佐野(文)政府委員 他の大学からの進学希望者に対して道は開かれているといっても、実際に入り得る枠というのが少なくなるということは御指摘のとおりだろうと思います。
  249. 高橋繁

    高橋(繁)委員 この大学院につきましていろいろと従来から批判がなされ、あるいは御意見が出ておりますということはもう御承知のとおりでありますが、たとえばオーバードクター、いわゆる博士浪人、あるいは定員二百人以下の大学院、旧帝大は二千人以上と、非常に格差がある。あるいは国立の八割が自然科学系である。私立は人文社会が五割、非常に不均衡ということや、あるいは大学院というものが非常に閉鎖的であるという批判があって、そして大臣の私的諮問機関であります大学院問題懇談会、ここに将来の大学院というものはどうあるべきかということで諮問をされているようであります。まだ結論が出ておらないようでありますが、方向としていろいろと考えられることは、国公私立の枠を外して連合大学院のような構想を持つ方がいいではないかという考え方もありますし、あるいはそうした意味で格差をなくしていこう。その運営はどうあるべきか、今後の課題でありましょうけれども、それから大学院の国際化あるいは最近出てきております国立大学の共同利用研究所の利用、研究所を将来大学院にする。このように国公私立の交流や国際交流あるいは学問間の交流というものがそういう諮問機関で出てくる様相がかなりあるということを考えますと、ここで高専卒業生主体にした大学院というものはある程度閉鎖的なものになりはしないか。本当にひとりぼっちで特定な大学院になっていくあるいは国際間の交流がおくれていく、そういう、将来の大学院というものの構想が出てくるときに逆行するような大学院になりはしないかという危惧を持つわけですが、その辺の心配はございませんか。
  250. 永井道雄

    永井国務大臣 大学院を今後どうやっていくかということにつきましては、御指摘のように正田建次郎会長を中心大学院問題懇談会で御検討を願っております。その中で連合大学院とかあるいは独立大学院という構想がございますことは御指摘のとおりでございます。それはそれとして発展いたしていくと思いますが、しかし実は現在の大学院につきましても、すでに本年度大阪では、共同利用研究所であります民族学博物館と関西学院大学大学院との間に共同の研究という方向が出てきておりますし、また東京にも早稲田、東京工大に同じような方向も出てきておりますので、私はこの技術科学大学というものが大学院をつくるのは相当先のことになるかと思いますが、これはいまの方向で進んでまいりますならば、技術科学大学大学院先生方の人事の交流ということもございましょうし、また近接した大学大学院人たちと学習を交換するという方向も十分に考えられ得るものではないかと考えております。
  251. 高橋繁

    高橋(繁)委員 将来の、五十五年ですかから運営されるので、その運営いかんによってそういう心配はないとおっしゃるかもしれませんが、人事の交流にしても、この技術科学大学はいまのところ豊橋と長岡、三校しかないということから考えてみても、他大学との人事の交流ということがなされればいいのですけれども、なかなかむずかしいのじゃないかということもありますし、あるいは社会的な要請、先ほども御質問がありましたが、そういうことから見ても経営あるいは運営というものが大変むずかしくなってくるのじゃないかと私は心配するのでありますが、そういう意味でせっかくこの大学院構想というものが出るのに、しかも高専から上がってきた生徒がそのまま大学院へ行く。ある面ではそういうように技術が高度なものになっていくことも考えられると思いますが、ある面ではそういう国際化という面からいくと大変心配な点もあるのじゃないかということを心配いたしますので、今後の、できた暁の運営については十分な注意をひとつお願いをいたしたいと思います。  それから細かいことで、この大学は、いまのところ定員は三百名、しかも工業高等から六十名入ってきますから二百四十名、一校で四百八十名。ところが、国公私立の高等専門学校卒業者のいままでの編入学に関するものを調べてみると、編入学希望者数は昭和四十九年で七百二十八名、四十八年に比べて約五〇%の増であります。年々その比率は伸びてきておる。まだ去年のはわかりませんが、それから見ても、この大学編入する希望者は年々ふえていくということを考えますと、この高専入学定員が二百四十名、四百八十名でありますと、さらにこういう大学ができると希望者が大ぜいになってくる、このように思うわけですね。そういう点で、先ほど申し上げた高専卒業生を救済するということからいくと、かなりの激しい競争率になると思いますが、その辺の救済をどうするかということです。
  252. 佐野文一郎

    佐野(文)政府委員 御指摘のように四十九年度で編入学を希望する者の数が七百二十八名、全体の八・七%、それに対して実際に編入されている者が二百四十八名、三・〇%ということになっているわけでございます。御指摘のようにこの大学が創設をされました場合には、それに伴って進学を希望する者の数がさらにふえてくるであろうということは予測されると思います。それがどの程度のものになるかについてはなお予測しがたい点もございますけれども、傾向としてはやはり伸びるであろうと思われます。これに対応するために、この大学受け入れと、それからこれまでの国立大学あるいは私立大学における編入学受け入れと双方を考えているわけでございます。高等専門学校を卒業した者を受け入れるためにさらに技術科学大学を増設をするかどうかというふうな問題につきましては、私どもは、当面はこの二つの、豊橋と長岡の大学を充実したりっぱなものにするということを鋭意考えるというふうに考えておるわけでございます。
  253. 高橋繁

    高橋(繁)委員 従来もそうでありますが、将来にわたっても他の大学への編入は従来より以上に努力をいたしますか。考えておりますか。
  254. 佐野文一郎

    佐野(文)政府委員 引き続き大学側の理解を求めるようにいたしたいと思います。
  255. 高橋繁

    高橋(繁)委員 そうした豊橋あるいは長岡、これは医科大学も含めて、いろいろと地方にこういう大学ができる。地方では最近、企業よりもこうした文化施設あるいは大学というものを誘致をしたいという希望は確かにあります。その希望と、これをつくらなければならないということで、大変誘致合戦をやるわけですね。先ほども御意見が出ておりましたが、この技術科学大学にしても、地元で土地を立てかえ払いをしておる。それを国が分割払いで買い上げる。そういうことで、経済成長の大変華やかなりしころは、ある程度地方財政も豊かであったので、そう大変な苦にならない。それよりも、誘致をして大学が設置できればいいという考えがあったわけですが、最近は地方財政も苦しいということで、大変な負担になってきております。この豊橋の例をとりましてもそういうことが言えると思いますが、この土地の取得、今後の国の買い上げ、あるいは利子負担とかあるいは有償で借りる場合にはどういう条件になっているか、おわかりですか。
  256. 宮地貫一

    ○宮地政府委員 技術科学大学の土地についての問題でございますが、先ほど大学局長が医科大学用地の問題についてお答えしたのと同様の扱いで考えておるわけでございますが、基本的には技術科学大学の設置に当たりましてはその用地の確保について地域住民の協力と理解が不可欠でありまして、地元において実施する方が適切な処理が期待できるため、誘致いたしました地元において創設に必要な条件を具備した用地の取得をお願いし、その土地の造成、関連公共事業を行った上、国に提供することをお願いしているわけでございます。しかしながら、地方財政法の趣旨等を尊重する立場から、地方団体の過大な財政負担はできるだけ避けたいと考えておりまして、それらについて、提供を受けました用地について有償で借用する措置を講ずるとともに、実情に応じて国が取得することが適切と認められるものについては、他の国有財産との交換等によりまして国が取得するよう、検討をいたしておるところでございます。  なお、その実際の具体的な、五十一年度予算で不動産購入費といたしましては、五十年度四十億でございましたものを約五割近くふやしておりまして、五十九億一千五百万を不動産購入費の枠として予算計上をお願いしておるわけでございます。
  257. 高橋繁

    高橋(繁)委員 そうすると、土地は全部国で買い上げるということでございますか。
  258. 佐野文一郎

    佐野(文)政府委員 私ども大学の創設を推進する立場からいたしますと、土地についてもなるべく早期に国において取得をする措置を講じてほしいというふうに念願をしているわけでございます。困難な財政事情のもとでございますので、財政当局との折衝を経なければならないことではございますけれども、何とか努力をしたいというふうに考えております。
  259. 高橋繁

    高橋(繁)委員 次に、関連がありますので……。先ほども御意見が出ておりましたが、医科大学の、従来は地元が土地を提供するとか、医大を設置誘致する場合にですね。あるいは旭川医大のように、国が有償で借用するとかいうような申し合わせができているようでありますが、有償で国が借用するということになっておりますけれども、たとえば医大の土地、静岡県の浜松市を例にとりますと、たしか二十七万平米ですか、ところが、この二十七万平米を国が全体を有償で借りてないわけです。そのうちの十八万余の面積しか有償で借りてない、あとはただで使っているということになりますが、これは国が借用するときに条件があるのですか、あるいは何分の一は借用するとか、何分の一はそのままとか、その基準はございますか。
  260. 佐野文一郎

    佐野(文)政府委員 御指摘のように、医科大学において使用する面積について有償で借り上げるということでございます。
  261. 高橋繁

    高橋(繁)委員 使用する面積というのは一体どこを指しているのですか。
  262. 佐野文一郎

    佐野(文)政府委員 大学を建設いたしていきますために施設を逐次建てていくわけでございます。そういう工事を施行していく過程で必要とされる面積を借り上げていくわけでございまして、大学の建設が進んでいくにつれて使用面積はふえていくわけでございます。
  263. 高橋繁

    高橋(繁)委員 土地というものは医大の土地として一度に借り上げてあるわけですよ。運動場にもし、庭園にもし、駐車場にもし、あるいは校舎の敷地にもし、関連病院の場所にもなるということですが、だんだん使用していくということでいきますと、校舎の建った面積、いわゆるその敷地しか借りていないということですか。運動場なんか含まないのですか。
  264. 佐野文一郎

    佐野(文)政府委員 敷地面積ということだけでなくて、もちろん周辺の地域も必要な限度において含むわけでございます。運動場の面積も、運動場が使用可能なように整備されれば面積の中に入るということでございます。
  265. 高橋繁

    高橋(繁)委員 土地購入費が当時十三億九千六百七十万円、造成費が五億円、十八億というものは地方自治体が支出しているわけですね。そして、そのときも、地方財政法違反であるとかなんとかいうことで、地方議会でも問題になりましたし、この委員会でも問題になりました。そういうことで、国が有償で借用するから地方財政法違反にはならない、このようにたしか前の局長答弁をしたはずであります。有償で借用するということは医大の土地全部について有償で借用する、こうでなくてはならないと私は思うのです。ところが、全体の二十七万平米のうちまだ十八万平米しか国が借りてくれないということで、地方自治体では利子負担など大変な財政の圧迫で困っておる。いま浜松を例に挙げたのですが、これは浜松ばかりじゃなくて、ほかの大学でもそういう声はたくさんございます。でありますから、どういう基準、だんだんと使用していくということだけなのか、あるいは全国的にはっきりした文部省と地方自治体の誘致の方法、そういうことで若干違うと思うのです。旭川と文部省、あるいは浜松と文部省、あるいは滋賀県と文部省、大筋のものは一緒であると思うのですが、そういうことで早く全体を購入してもらうのが一番の希望であります。有償では借用する場合についても全部の土地がそういうことにならないと、先ほど申し上げた地財法の違反になるのじゃないかという懸念をするわけですが、その辺の考えはどうですか。
  266. 宮地貫一

    ○宮地政府委員 御指摘の浜松医科大学につきましては、五十一年度は、全体の面積が有償で借用する対象になる予定でございます。  なお、土地問題全体につきましては、先ほど大学局長が御答弁申し上げたとおりでございまして、私どももその線に沿いまして今後できるだけ早く、国有財産の交換その他の方法によりまして国の土地となるよう努力をいたしていきたい、かように考えております。
  267. 高橋繁

    高橋(繁)委員 使用するということでなくて、結局造成されてそれが直ちに使えるという場所になればこれは有償で借用する、そういうことですか。
  268. 宮地貫一

    ○宮地政府委員 さようでございます。
  269. 高橋繁

    高橋(繁)委員 そういうことで地方財政の負担にならないように今後もこれは——高知県、佐賀県も非常に財政難で大変だ。地方自治体、県債を発行して賄うけれども、農業県でこれもまた非常に大変であるという御意見であるようであります。せっかく医療水準の向上あるいは地域の医療水準の向上とあわせて、誘致するということで地方自治体に今後負担をかけないように特段の努力をお願いいたしたいと思います。  それから、医科大学あるいは医学部設置について一県に一校設置をするということでほぼ進んでまいりましたが、単科大学あるいは総合大学に医学部を設置する、いまこの二つの柱があるわけですけれども、世界的な一つの動きとして総合大学の一部であることが望ましいという御意見もあるようでありますが、将来、このまま単科大学にしていくかあるいは総合大学に医学部を設置していくか、そういう点で今後の文部省としての、あるいは大臣考え方をこの際お聞きをしておきたいと思います。
  270. 永井道雄

    永井国務大臣 総合大学の一部に医学部を設けることと、単科の医科大学を設けることとのどちらがよいかということにはそれぞれ功罪もあると考えます。確かに総合の方がよろしいという面もありますが、しかし単科にすぐれた面もあるわけでございます。文部省といたしましては、今日もそうでございますが、今後、医科大学を新増設いたしていきます方針といたしましては、単科のものをつくり上げていくという考えで臨むわけでございます。
  271. 高橋繁

    高橋(繁)委員 単科でつくっていくという御意見でありますが、それには先ほど申し上げた予算あるいはそれについての要員、こういう点で十分配慮がなされていないとかえって地方自治体に負担をかけ、あるいは教授陣の整備、看護婦、病院施設、その他いろいろなことで非常に大きな負担になってくると思いますので、そこら辺の将来に向かっての予算あるいは要員、病院、看護婦、いろいろな総合的なものがなされないと、単科大学で将来大変な問題が起きてくるのじゃないか。それができればいいと思うのです。そういうことを考えると、総合大学に医学部を設置していく方がより効果的ではないか、私はそういう意見を持っておりますが、そういうことであれば、将来に向かってそういうことをちゃんとしていかなければ単科大学にも大変な問題を残すというふうに危惧をいたします。その辺の心配、将来ありませんか。
  272. 永井道雄

    永井国務大臣 ただいま御指摘の関連病院をどうするか、あるいは看護婦さんを確保していくことをどのようにするかという問題に関する限りにおきましては、これは総合大学の医学部である場合も、あるいは単科でまいります場合にも、どちらの場合にも当然この関連病院、看護婦さんの問題は考えるべきことであるわけでございます。そこで、いま医科大学を建設していく過程におきまして私どもが考えておりますのは、確かにいろいろ財政上の理由等あって困難は伴いますけれども、医科大学として、関連病院あるいは看護婦さんの確保、そういうふうなものも勘案して総合的な計画で進んでいるわけでございます。総合大学の医学部が持っておりますメリットというのは、たとえば理学部というようなものとの関連におきましてやや広い学際領域というふうなものを開拓していくのに便があるわけでございますが、それに対しまして、総合大学でない単科の場合には、いわば身軽でございますから新しい考え方で積極的につくり上げていくということがやりやすいということがあると思います。しかし、先ほど御提起になりました病院、看護婦等の問題につきましては、その場合にも当然総合的に考えるべきである、かような考えで進めている次第でございます。
  273. 高橋繁

    高橋(繁)委員 先ほどの問題で、最近設置をされた十五、医学部を除きまして、医大の土地の面積、それから現在どれだけ文部省が有償で貸与しているか、それから借用の価格、ひとつこれの資料を要求をしておきたいと思います。  それからついでに看護婦の問題でありますが、今度熊本大学に医療技術短期大学部ができまして、看護科が八十名定員になっておりますが、この看護婦問題はいつもここで問題にもなってまいりました。最近の国立の医科大学十五県、国立大の付属病院で、五十年九千四百十五名、五十一年六千六百四十五名の看護婦の不足を来しておる、これは間違いございませんか。
  274. 佐野文一郎

    佐野(文)政府委員 御指摘のとおりでございます。
  275. 高橋繁

    高橋(繁)委員 特に付属の病院で五十一年六千六百四十五名の不足を来しておりますが、これの充足についていまどのようにお考えですか。
  276. 佐野文一郎

    佐野(文)政府委員 これらの国立医科大学等を設置する県におきましては、早くから県内の看護婦の需給計画を策定いたしまして付属病院の創設に伴う看護婦の急激な需要増から混乱を来さないように地元の看護婦養成施設において看護婦養成数の増員に努めてきているわけでございます。今後ともそういう努力を続けますと同時に、それぞれこれらの県においては広く全国的に看護婦を確保する努力をしておりますので、そういった方向を強めてまいるということを考えているわけでございます。
  277. 高橋繁

    高橋(繁)委員 こうした付属病院についてはただ単に数だけそろえればよろしいということではないと思うのです。大変に技術を要する、あるいは保険点数から言っても三千点ですか、以上の手術がきわめて多い。そういう面から、あるいは教育研究あるいは診療というようなものを備えた付属病院ではかなり高度な技術を擁した看護婦でないと勤まらないというのが現状のようであります。したがってこうした技術を擁する看護婦を確保するということと、あるいはせっかく採用してもやめていく看護婦が多いということで現場では非常に苦労しているようでありますが、そういう心配はないのですか。
  278. 佐野文一郎

    佐野(文)政府委員 新設の医大の場合には確かに御指摘のように所要の看護婦の確保ということについてそれぞれ非常に苦心をしているところでございます。すでに既設の国立大学の場合におきましては年々看護婦の充足というものについて努力をいたしておりまして、これは医療法の基準等をはるかに上回る数を確保いたしております。
  279. 高橋繁

    高橋(繁)委員 十五県の場合ですが、看護婦の中で正看護婦と准看護婦、調査で見ますと准看護婦が一四・七%、まだ付属病院の中におります。それはそれなりにいろいろと働く場所もあるでしょうけれども、正看護婦がいないから当然准看護婦を採用しなければならないと思うのですが、付属病院等につきましてはやはり正式な技術を身につけた正看護婦というものを採用すべきである、こう考えるのですが、いまのところ足りないから一四・七%の准看護婦を採用していると思うのですけれども、教育研究を進めるために一体支障はないのですか。
  280. 佐野文一郎

    佐野(文)政府委員 大学付属病院の場合の正看護婦と准看護婦の割合は、御指摘のように看護婦が八五%、准看護婦が一五%というような割合になっております。一般の病院の場合には、この割合は、御承知のとおり大体五対五というような状況になっております。大学付属病院の場合には、先ほども御指摘がありましたように教育研究機関としての使命、さらに総合的な医療機関としての使命の両面を持っておりますので、重症患者でありますとかあるいは特殊な症例の患者が多い。あるいは医師の数が多くてその医師の経験の度合いの態様もさまざまであるというふうなこともございますので、そういった特殊性に応ずるために高い水準の看護が求められているわけでございます。そういったことから、一般に比較しますとこのようなはるかに高い採用率で正看護婦が採用されているということでございます。
  281. 高橋繁

    高橋(繁)委員 看護婦の問題ですけれども、全国的には、五十年でも二万四千六百人の不足である。そうしますと看護婦の養成という問題が起きてまいります。ところがいま看護婦の養成は、大学、短期大学あるいは高等学校の看護科、それから各種学校、それぞれ養成機関というものはきわめて多彩になってきておる。今度熊本に短期大学のができて、短期大学でも若干ふえてきておりますが、そうした意味で養成機関というものをやはりここで整理をして、りっぱな技術を持ちりっぱな看護婦を養成するという面からいくと、この看護婦の養成ということで検討しなければならないじゃないか。あるいは准看の方が高等学校と各種学校で養成をされておる、果たしてそれでいいのかどうかという問題もありますので、この看護婦教育のいろんな多彩にわたっておるものを整理してある一定の教育をする必要があると思うのですが、その辺の将来にわたっての構想なり考えを持っておりますか。
  282. 佐野文一郎

    佐野(文)政府委員 現在看護婦を初めとして、その他臨床検査技師、診療放射線技師等のいわゆるパラメディカルの関係の方々の養成というのは非常にコースがいろいろございますけれども、その主要な部分は各種学校でございます。最近医学の進歩に伴って医療技術の高度化が進むにつれまして、医療技術者の資質の向上ということが非常に重要な課題となってまいったことに伴いまして、関係各方面から医療技術者の養成を学校教育法一条に基づく正規の学校でやってほしいという要望が非常に強く出てまいっておるわけでございます。文部省としてはこういった要請をも考えまして、四十二年以来五十年までに九校の医療技術短大をそれぞれ設置をしてきたわけでございます。さらに五十一年度にはいま御指摘の熊本大学に医療技術短大を創設をし、さらに五十年度に創設をいたしました弘前、京都、鳥取の各大学の医療技術短期大学部に衛生技術科を増設をする。さらに群馬大学と名古屋大学につきましては、医療技術短大の設置調査を行うというようなことを五十一年度で講じたわけでございます。国立大学付属の現在の各種学校につきましては、やはり方向としては医療技術短大として整備をしていくという方向をとりたいというふうに考えております。  ただ母体の大学の体制の問題もございますし、また非常に厳しい財政状況、定員状況がございますから、その対応については慎重に検討していく必要がございますけれども、国立に関する限りは、やはり方向としては従来の医療技術短大の設置の方向というものをさらに続けて努力をしていくということであろうと思います。  一般の場合には、これまた新しい制度として専修学校制度が発足をいたしております。こういった制度を活用して各種学校内容を充実させ、向上させていくということもあわせて考えていく必要があろうかと思います。
  283. 高橋繁

    高橋(繁)委員 学校教育法の一条に基づく教育をしてほしいという意見も確かにございますので、将来とも考えてもらうわけですが、その看護婦の養成に当たって養成する看護教員の問題が非常に地方でも問題になっております。この教員の養成についてはやはり文部省が責任を持ってやらないと、特に看護婦のこれからの使命といいますか、あるいは人間を扱うのですから、そういう人間教育という点から言っても重大な問題にぶつかってくるし、あるいは高等学校でも看護科をつくりたい、あるいは短大でもつくりたいのですが、教員で大変困っておるのが実情のようであります。したがって、その養成にも努力をしなければならないと思いますが、これはどんなふうに考えておりますか。
  284. 永井道雄

    永井国務大臣 まさに高橋委員が御指摘のように、看護婦の養成のためには教員というものをどうするかという角度は必要でございますので、千葉大にも看護学部を設けたわけでございます。そうした角度というものを強化していくことはきわめて重要だという認識に基づいて発足したわけでございますので、こうしたものを充実させていくことが非常に重要であると考えております。
  285. 高橋繁

    高橋(繁)委員 次に、あわせまして大学の夜間部、これも前に議論になったことがございます。ところが最近、この夜間部の内容がきわめてあいまいになってきていることもあるようです。たとえば勤労学生主体にした夜間部でありますが、勤労学生が大変少なくなって一部に不合格になった学生が夜間に入ってくる、こういうことで検討しなければならない事柄のようであります。中に国公立は夜間部が廃止をされたということは聞きませんが、私立の大学で若干年々夜間部というものが廃止をされてきておる。この理由は、そうした理由もあるかもしれませんが、私学の経営ということからも大変であるということで、それが影響されてなくなってきておるということのように聞いておりますが、昨年のこの委員会大臣も、総合的に放送大学とあわせてこの夜間部というものを検討しなければならないというように答弁をいたしております。その後の経過なりあるいは夜間部の問題について、大臣のまず考えをお聞きをいたしたいと思います。
  286. 永井道雄

    永井国務大臣 ただいま御指摘になりましたように、大学あるいは短期大学の夜間部というものは、勤労青年に高等教育を受ける機会を提供する役割りを果たしてまいったわけでございますが、確かに特に私立の短期大学の場合には、ここ数年来入学者数というものは横ばい状態であったり、あるいは入学定員を減じている場合もございます。また入学の状況を見ますと、職業に従事していない者が多数入学する傾向もございます。  かように考えますと、夜間部の実態というものもかなり変化していると思われます。つまり夜働きまして昼学校で勉強するというような種類の人もあるわけでございます。そうした諸般の条件の変化というものの中で、勤労学生に修学の機会を確保するということはきわめて重要でもございますので、文部省がどういう態度でこれに臨んでいるかという先生の御質問に対しましては、今回の私立大学における特別助成措置の中に夜間部を持つ大学、短期大学というものを対象とするものを含めまして、すでに五十年度の予算の配分をいたしたわけでございます。  ただ、それのみでは問題は解決いたしませんから、今後の勤労青年の高等教育につきましては、通信教育の充実を図るという方法もまたわれわれが重視しているところでございますし、そのほかに放送大学はいまだ創設には至っておりませんが、しかしその準備を進めていきます過程で履修課程を弾力化するというような措置を考えておりますが、こうした方法によりまして高等教育における学習の機会の多様化、拡充を図りまして、勤労している方々が学習しやすいようにという方向をすでにある程度実現したものもあり、なお将来にわたって一層実現していきたい、このような考えで臨んでいるわけでございます。
  287. 高橋繁

    高橋(繁)委員 夜間の部に特別な予算の配分をしたということでありますが、そのほかに通信教育をやっていくということです。これまた私立の大学にとって、この通信教育ほど金のかかるあれはない。なかなか通信教育をやろうとすると——いま実施をしている大学は恐らく十校足らずじゃないかと思う、八校ですか、若干本年度ふえるようでありますが、そういうことで、経営に非常に大きな負担をかけるということで、この通信教育もかなり隘路がある。したがって、この勤労学生入学者数が若干年々減ってきておる。  そうかといって、これをゼロにするわけにいかない。勤労学生を救っていかなければならない。全体の入学者の合計数からいくとわずかに三・三%ですか、そういうような状況になってきておりますね。この三・三%の人を救っていかなければならないが、そういうことの全体から考えて、いま大臣もおっしゃったように、私立の大学が四十九年に一つ、五十年に六つ減になってきておるという状況でありますので、私立学校の経営の負担ということが最大の理由になっていると思います。そういうことで、将来ともにあわせて、この夜間部の勤労青年を救うためにも、私学経営についての特段の措置をやっていただきたいということを強く要望しておきます。  あと関連で有島先生質問いたしますので、一応私はこれで終わりにいたします。
  288. 登坂重次郎

    ○登坂委員長 関連の質疑の申し出がありますので、これを許します。有島重武君。
  289. 有島重武

    有島委員 関連して二、三お伺いをさせていただきます。  いろいろな教育機関が並び存しているということ、これは社会の進展の上で当然のことでもございますし、教育の機会を拡大するということから大変結構なことであると思います。  さきの国会で、学校教育法の一部改正で、独立の大学院という考え方、これが、衆議院では可決しておるわけでございますけれども、先ほどからのお話をずっと聞いておりましても、従来の大学院大学に上部構造が付属している、そういうような形になっておりました。それで、いままだ参議院で決定しておりませんから決定的なことは申せませんけれども、時代の趨勢として独立した大学院ということもこれは可能であろう。きょうここで問題になっております技術科学大学というこの新構想は、いわば大学院にその下部構造である大学を付属せしめるというような形のように私は思えるのですけれども、そのように考えでよろしいかどうか。
  290. 永井道雄

    永井国務大臣 現在ここで御討議、御審議を願っております技術科学大学は、大学大学院に付属をしておるというよりは、私はやはり、大学大学院一貫の教育組織、そういうものとして考えられているのを御審議いただいていると考えております。
  291. 有島重武

    有島委員 形の上では確かにそうなっておりますけれども、この問題が起った経緯その他もずっとたどってみまして、まあ形の上ではそうかもしれませんよ。でも、大学院付属の大学じゃちょっとおかしいみたいだけれども、そういうような性格が非常に強いのじゃないかという印象を私は深くするのですけれども、もう一遍お答えいただきたい。
  292. 佐野文一郎

    佐野(文)政府委員 この大学制度的な位置づけというのは、いわば通常の工学部を持った大学修士課程が置かれているという形でございます。しかしながら、教育趣旨ということになりますと、やはり先生指摘のように、高専を出た者を主体といたしまして、それに対して大学院まで一貫した教育、いわば大学院レベル教育を行おうとするものでございますから、大学院重点を持ったものということは言えると思います。
  293. 有島重武

    有島委員 この構想が出ましたもとになっていると言われますのは、ここに「実践的・創造的な能力を備えた指導的技術者の養成という社会的要請」というふうに書いてあるわけですけれども、あるいは先ほど話題があったかもしれませんけれども、この社会的要請というのが、特に技術の世界、科学の世界におきましては、戦後三十年を境にして大変変わってきておるのではないかと思われます。この点について、大臣はどういうようにいま考えていらっしゃるか、承っておきたい。
  294. 永井道雄

    永井国務大臣 社会的要請というのは、社会、経済の発展に伴いまして、それをまた一方において引き起こすような科学技術発展があったということでございますが、戦後三十年を経ました時点におきまして、確かに御指摘のように当初は予想できなかったようないろいろな問題が生じてきている。特に環境をめぐる問題等がその一つでございますが、そうした問題の解決を含めて、今後それらの問題に対処していかなければいけないという意味社会的要請にこたえると、いまではそういうふうな角度から考えることが妥当であると思っております。
  295. 有島重武

    有島委員 余り大ざっぱ過ぎてよくわらない面があるのですけれども、いわゆるいままでの科学技術と言われていたものがここ二百年の間大変大きな成果を上げた、上げたにもかかわらず、それが一つの行き詰まりを示しているのではないか、科学技術そのものに対して非常な反省が加えられているということが背後にあるのではないかと思うのですね。そういうことをどの程度盛り込むことができるかということが、制度の上ではともかくとして、今度の構想がうまくいくかいかないか、これは本当にいまの社会的要請に沿えるのかどうかということが大きな問題になるのじゃないかと思うのですけれども、もう少しお話しいただきたい。
  296. 永井道雄

    永井国務大臣 実は、その点は先ほど嶋崎委員も御提起になりました問題でございますが、私は先ほど環境の問題と申しましたが。たとえば環境破壊というようなことが科学技術が予期せずにもたらした一つの重要な結果であると思います。そこで、だから科学技術というものを捨てるというのではなくて、そうした事態に、いわば科学技術的にまた対処していくにはどうしたらよろしいかということを考えなければいけない。そこでこの大学の今後の構想の中に、たとえば環境工学というようなものも含めて考えていきたいということがございますけれども、それは一例でございますが、そうした角度でいままで、二百年とおっしゃいましたが、考えられてきたような道筋というものは、日本だけでなく世界的にも反省段階でございますから、この大学が課題解決を中心にしていくということを言っておりますのは、そういう環境破壊のような一つの重要課題というようなものにも取り組んでいく、そういう形で発展していくというふうに私は考えているわけでございます。
  297. 有島重武

    有島委員 ことしの四月だったと思うのですが、各種学校が専修学校というふうに一つの格づけをすることができるようになったわけでございますね。それで、その専修学校の中に高等課程専門課程というのがあったかと思います。高等課程というのはちょうど中学を卒業して、いまの後期中等教育のレベルに当たる、それから専門課程というのは大体高等教育課程に相当たるというふうになっておりますね。これはまさに社会のいろいろな要請に応じて、非常に多岐にわたった教育を施しておるという一つでございます。今度の技術科学大学というものも、社会的要請に応ずる、純粋にそうであるならば、直ちにこれを大学とか大学院とかいう制度に当てはめなくとも、それだけの実力を備える各種学校的な存在といったものも今度考えられていくのじゃなかろうか。あるいは現実に、それに似たような、ちょうど大学レベルの各種学校、あるいは大学院レベルの各種学校的な教育機関というようなものも当然あってよろしいのではないかと思うわけです。こんなことを言いますのはどうしてかといいますと、社会的要請ということに、科学技術という問題が一つありますけれども、もう一つは学歴尊重といいますか学歴偏重といいますか、そういった問題があるわけですね。それでこれはそちらの、学歴社会社会的要請に引っ張られてしまうというようなおそれもあるのじゃなかろうか、そういうことを心配するわけです。資格を与えることは大切なことでございますけれども、そのためにまた大変な受験戦争が起こったりその他の弊害も起こってくるということも考えられるわけです。こういうことについて、冒頭に申しましたいろいろな種類、いろいろな段階教育機関を並列することはいいことだと思うのですけれども、各種学校の今後の強化ということについて承っておきたい。  それからもう一つは、今度のこの法案も一つの可能性として、いきなり大学大学院にしなくても、そういったような処置もあるいはとれたのではないかと私は申し上げたいのだけれども、そういうことについての御意見も承っておきたい。
  298. 永井道雄

    永井国務大臣 まず各種学校につきましては、その中で高校卒の人が入ります各種学校だけを取り上げますと相当な数に上りまして、それを現在の大学、短大の人口に加えますとおおよそ四九%の人が高等学校以上の学校に行っているということになります。高等教育懇談会では、高等教育というものを今後、いままでよりは広義に解釈していくという立場をとっておられますから、そういう各種学校というものは非常に大事なものであって、いままでのような意味で、いわゆる学位を取ったりすることはございませんけれども、しかし特定の技能を習得いたしまして、そして堂々と社会に出て就職をすることができるわけでございますから、それを一部、基準に合いましたものを専修学校としてこの四月一日に発足いたしましたことは、私は非常に有意義であると思っております。その数は、高校以上のものについて専修学校になりましたものが八百足らずでございまして、これが従来の高等教育性格を異にいたしておりますから、そうした意味で一つの刺激になりまして高等教育に新しい潮流をつくり得るものになるのではないかと考えております。  さて、技術科学大学も各種学校に考えてはどうかという御質問でございますが、なるほど技術科学大学などで考えていくような問題の中で、たとえばある一つの領域を取り上げて、コンピューターのソフトウエアプログラマーのようなものは現状におきましても各種学校で行っているところがございますから、確かにそういう特定のものを取り上げればそうでございますが、しかし技術科学大学が発生いたしてまいりまして、さらに大学院というところまで考えてこれに相当の国費を投ずることに相なりましたのは、高専という形で確かに技術者の養成をいたしてまいりました。また、他方においては、大学工学部におきまして技術者の養成もいたしてまいりました。しかし科学技術が非常に変化、発展を遂げまして、いわゆる実践的あるいは課題解決的なエンジニアというものも高専段階では足りないのではないかという認識がございまして、そうであるならば、高専を卒業された方で直ちに社会に出て活動される方もありましょうが、しかし、他方において、なお大学を卒業したいあるいは大学院というところまで行って、本当にいまの社会における技術は高度なものでございますから、そうした高度な技術を持って社会的に活動しようという要求が高まってまいりましたので、それを習得したいという人のためには当然国費を投ずべきではないかということでこの技術科学大学が発足しようといたしておる、そう私は考えております。でございますから、専修学校の場合にはどちらかといえば、非常に特定のものを除きますと、特に国が制度をつくりあるいは国費を投じて発展させるというよりは自然発生的な側面を持っておりますが、この技術科学大学の場合には積極的にこれを立案しあるいはこの国会の場において御審議を願いまして、そしてこれを設立することが望ましい、さようなものであると考えて御審議を願っているわけでございます。
  299. 有島重武

    有島委員 そうなりますと、これは将来のことになろうと思いますが、その専修学校を卒業した者を高専卒業者ないしは短大卒業者などと同じような扱いで受け入れてくれるというようなことも可能性としてはあるんだろうかどうだろうか。と申しますのは、これは制度上は、いま大学局長から言えばまだ制度上そんなことはございませんと言うに決まっていますけれども、この基本構想から申しますと、実践的な技術開発を主眼とした教育研究を行う大学院ということになりますから、そのような開き方ということも将来の可能性としてあるんだろうか。そういうことでございますけれども、大臣いかがですか。
  300. 永井道雄

    永井国務大臣 高等教育懇談会はいろんな可能性検討した方がよろしいというふうに述べておられますから、いまのような先生のお考え方というのは、これはよほど詳細に問題を検討いたしませんと、直ちに申しかねるわけでございますが、将来においては考え得るものかとも思いますが、しかし他方もう一つ大事なことを申しますと、専修学校のメリットというのは、いままでのいわゆる既成の学校体系と違いまして、それこそ各種学校というので各種あります。そして、そういうものにとらわれないで非常に発展してきているというところがございますから、余り専修学校になったからといいまして、既存の学校体系との方の組み合わせを考え過ぎますと角をためて牛を殺すようなことなりまして、専修学校の生き生きとしたところが失われてまいりますから、十分そういう点も考慮いたさなければならないものだと思います。
  301. 有島重武

    有島委員 国でやるべきことと、それから民間でやるべきことということは、これは余りまぜない方がいいということはあると思います。それから制度の中にどのくらい組み入れてしまうか、自然発生的なことをどれくらい尊重するか、そういうことも非常に注意深くやらなければならないと思うのです。  今度の技術科学大学につきましても、先ほどから伺っておりますと、研究の場合でも、委託研究であるとか、あるいは民間との共同研究であるとか、企業の研究ということですね。大分紛らわしい点がたくさん出てくるはずです。これは高額というようなことになれば避けられないことでございますけれども、特に民間資金導入というようなこと、これがさっき大臣のお答えでは、それを前提とするのか、民間資金導入を前提とするのかという質問に対しては、ちょっと歯切れの悪いお答えだったわけです。そうだと言うわけにはいかない、だけれども第一番は国費で、その次は公共資金で、民間資金は三番目だ、三番目だけれども入れるのだ、こういう結論ですね。企業の研究、それから研究員との交流、こういうことはいいのだけれども、でき得るならば、こういうことは私立の技術科学大学、ないしは大学院というものがあれば、そこでやる分には非常によろしいのではないかと思うわけです。それで、これは一つの制度、こうした道が開かれたわけですから、私はこれを国がやっている先導試行の一つであるというふうに考えたいわけだ。ですから、これがうまくいけばむしろ企業側がこの種のものをつくりたい、そうしてこれを申請してきて、同じようなレベルのものとして認めてもらいたいというそういった名のりが出てくることを私は期待したいなあと思うのですけれども、大臣としてはどうお考えになりますか。
  302. 永井道雄

    永井国務大臣 たとえば現在聖蹟桜ケ丘に東電学園というようなものがございまして、これは学校教育法の規定によりませんで、各種学校という姿でかなり高度な企業内教育を行っております。ですから、そういうものはやはり各種学校あるいは将来専修学校になるかどうかまだ私は把握いたしておりませんが、そういうものとして出てまいります場合には、われわれとしてはそれぞれの性格というものをよく審査いたしまして、専修学校となるものは専修学校、また私立大学となりますような場合にはそういう方向、そういう方向で考えていくべきであって、それは生まれてくるものがどのようなものであるか、それが現在のわが国の法制上どのように位置づけられるかということを十分に検討した上でのことであるかと思います。
  303. 有島重武

    有島委員 最後に伺っておきますけれども、独立の大学院という制度ができるということになるわけですけれども、それについて名のりを上げてきているところが出ているわけですか。
  304. 佐野文一郎

    佐野(文)政府委員 いまのところ国立大学の関係で、いわゆる連合大学院構想によりまして幾つかの大学が連合して博士の課程大学院を別につくる、そういう構想についてわが方から調査費を出しているものもございますし、またそれぞれの大学検討されているものもございます。それ以外には具体的な構想として出てきているものはございません。
  305. 有島重武

    有島委員 終わります。
  306. 登坂重次郎

    ○登坂委員長 次に受田新吉君。
  307. 受田新吉

    受田委員 この国立学校設置法の一部改正法案に直接つながる問題をまずお尋ねいたします。  例の技術科学大学の新設計画でございますが、目標とするところまことに結構に存じます。と同時に、入学資格者に実践的な技術教育をねらいとしておる高等専門学校に接続するような教育内容を持ったものとするという関係から工業高専卒業者を入れる、それからもう一つ国立学校には国立短期大学部というものがあるわけです。全国にたくさんの工業短期大学がある。これは工業高専と同様に工業高校から工業短期大学へ行っておる。その数においても非常に多数の工業短期大学があるのでございますが、その方はどうなるわけですか。
  308. 佐野文一郎

    佐野(文)政府委員 御指摘のとおり国立の短期大学の場合に限りましても、高専とほぼ同じ卒業生の規模を持ったものでございます。短期大学卒業生特に工業の短期大学卒業生については、高専の場合と同じようにこの大学への編入学ということが当然考えられることだと思います。
  309. 受田新吉

    受田委員 これにはそれがうたってない。国立工業短期大学がずらりと並んでいる、商業その他もありますが。この大量の工業短期大学を同時に書き上げるべきではなかったかということです。御説明を聞いても工業短期大学という言葉がいままで文部省から聞かれてない。工業高専のことばかり言われておる。いまのような御説明があるならば、国立学校設置法に大量の工業短期大学がある、なぜそれを一緒にこれへうたわないかということです。
  310. 佐野文一郎

    佐野(文)政府委員 御指摘の点大変ごもっともな点ではございますけれども、技術科学大学構想が、けさほど来るる御説明申しておりますように、若いときから経験しながら学ぶというような形で一貫した教育を行ってきているそういう高専特色というものをさらに伸ばす、そしてその教育に接続した大学院レベル教育まで考えていこうという趣旨のものでございましたので、短期大学ということが出てこなかったわけでございます。また実際の問題としても、いわゆる上級学校への進学の問題というのは短大の場合には高専の場合ほど従来強く指摘をされておりませんでしたためにけさほど来の説明では落としてきたわけでございますけれども、工業の短期大学学生であっても、これまでの教育というものの上に立って新しいこの技術科学大学というものの趣旨を理解をしてその方向に自分の勉強してきたものを伸ばそうということであるならば、当然技術科学大学の中に受け入れられてしかるべきものだと思います。
  311. 受田新吉

    受田委員 この提案理由の説明を見ましても、主として高等専門学校卒業者を入れ、また同様の趣旨から工業高等学校卒業者にも進学の道を開くとありまして、この提案理由からは工業短期大学卒業者進学の道は閉ざされておる。それは工業高等学校から工業短期大学と工業を目指して勉強している学生がたくさんあるわけなんです。文部省はこの工業短期大学という認識があるのかないのかという疑義を、いまの御説明を承っても工業短期大学卒業者というものは工業高専のような長期の展望で考えるべきものではないような御発言です。工業高専卒業者だけの将来の道を開くのが主流であってというようなお話を聞くと、文部省の認識の中には国立工業短期大学の認識が欠けておる。工業短期大学でおしまいになる学生というものは、これは勉学を目指す者にとっては非常に不幸である。短期大学を出てさらに長期の学校へ行きたいと言えば、こういう制度ができるときにはその道をぴしっとうたってあげるべきであると思うのです。工業短期大学は無視されたようになった、あれだけ並んでいるたくさんの工業短期大学。何か志願者において工業短期大学は余り志願者が多くないのでございますか。
  312. 佐野文一郎

    佐野(文)政府委員 工業短大の場合には志願者がやはり高専よりもやや少ないということでございます。
  313. 受田新吉

    受田委員 その数がどのくらいあるのか、工業高専も漸次志願者が減りつつある、全国的に減少しつつあるという時期に工業高専をどんどん増設してきたわけでございますが、工業短期大学制度国立学校設置法に明確にうたって、全国にこれほど大量の工業短期大学を用意しておきながら志願者が少なくなっているというけれども、志願者の数がどのくらいあるかも数字がすぐ用意されていないほど無視されているということになると、これはちょっと問題があると思う。工業短期大学と工業高専、その修業年限は同格である。高等学校を出てさらに二年の短期大学、中学校から五年の工業高専、その終着駅は全く同じ年齢で、同じ修業年限である。こうなってくれば、工業短期大学卒業者の優遇は当然考えられる。短期大学で中途半端よりも長期を卒業したいというのが余りおらぬ、余りおらないようなお話でございましたが、道を開けばおのずから大量の人が来るはずです。道を開いておらぬから、そうなるのです。
  314. 佐野文一郎

    佐野(文)政府委員 従来工業短期大学卒業生進学を希望する者につきましては、それぞれ併設されている大学には工学部が置かれているわけでございます。当該大学においてそういう進学希望の者については工学部にできる限り受け入れるような配慮をしてほしいということを大学当局の方にはお願いをしてきているわけでございます。
  315. 受田新吉

    受田委員 それが、工業短期大学から工学部に入った数が全国的にどのくらいあるのか、これは非常に参考になる数字でございますので、御調査の上後ほど、そこに数字がないとすれば、この次の質問の時間までに工業短期大学から工学部にそのまま入れておるのが何人おるか、お示し願いたい。つまりこうした技術教育の特別の大学ができれば、みんながその方へ行きますよ。同様に道を開いてあげるべきです。工業の短期大学に対する御認識をもっと強大に持っていただくべきであるということをここに提案をいたします。  その次に医科大学、さっきお尋ねに対してお答えがあったですが、単科大学にしたい。残った県、このたびの御提案よりもまだ外れている沖繩、山梨その他の少数の県、これも皆単科医科大学ということですね。全部を単科医科大学にする……
  316. 佐野文一郎

    佐野(文)政府委員 沖繩の場合には琉球大学の医学部として設けるという方針が従来から固まっております。それ以外のものにつきましては私どもは原則として単科ということで構想をしていきたいというふうに考えておるわけでございます。
  317. 受田新吉

    受田委員 沖繩は総合大学の一環として考えたい。そうすると、全部が単科大学じゃない、医科単科大学じゃなくして沖繩の場合には例外がある。文部大臣のさっきのこれからの医科大学、単科医科大学にしたいというお話の中では沖繩が例外であるというのをいま局長答弁されたと了解をいたします。  そこで、このたびの新設の歯学部、徳島大学に歯学部を設置するということでございますが、医学部は全部単科医科大学にしておきながら歯学部はなぜ総合大学の一翼にされたのですか。同じ医系の大学で首尾一貫していない。御答弁を願いたい。
  318. 佐野文一郎

    佐野(文)政府委員 やはり歯学部の場合には実際問題として、その大学の医学部との関係というものを十分に考えながら、それを基礎としながら創設というものが最初構想されてくるし、また整備をしていく段階でも医学部との関係というものを十分に考えていく必要があるということが一つございます。それからもう一つは、やはり何といっても歯学部というのは、学生の数におきましてもあるいは病院の規模におきましても、医学部、医科大学の場合と比べますと非常に規模の小さいものでございます。やはり単科の大学とするよりはその大学学部として整備をする方が適当であると考えておるわけでございます。
  319. 受田新吉

    受田委員 歯学部はなめられておるというような答弁に見れるわけでございまして、医学部の付属的な感覚で御答弁になっているようです。しかし、医学部、歯学部、それぞれ独立しているわけです。私立の歯科大学にも、歯科大学がそれぞれ独立しておるところがあるわけです。たくさんあるわけです。私立歯科大学がある、それが医学部とつながらなければならぬというような御答弁は私は理解に苦しむわけです。医学部、歯学部、それぞれ独立しているのです。医学部のあるところへ一緒につけて考えようというようなお考えに私は疑義をはさまざるを得ない。歯学部なら歯学部で歯科医科大学として独立してやればいいのです。全国に私立の歯科医科大学はたくさん並んでいる。私立の医科大学を認めておきながら、国立の医科大学は単科医科大学にこれからすると申されながら、歯学部は総合大学の一部に一学部として置くのだ、医科大学なら単科大学として独立させる、歯科大学なら独立をさせないで総合大学の一部へ置く、これは片手落ちじゃありませんか。
  320. 佐野文一郎

    佐野(文)政府委員 もちろん歯学部を軽視するものでもございませんし、また歯学部が医学部の付属であると考えているわけでは毛頭ございません。先ほど申しましたのは、具体的に特定の大学の歯学部の創設を考えていく場合には、その大学の医学部の中に歯科系の講座を置いたりあるいは付属病院に診療科を設けるという形でまず母体を築き、そして次第に歯学部の創設準備へと進めていくという形をとるわけでございます。そういった過程のことを申し上げたわけでございます。  私どもはやはり規模の問題からしましても、歯科については歯学部として準備をすることが適当であると考えているわけでございまして、別に軽視をしているとかいうことでは毛頭ございません。
  321. 受田新吉

    受田委員 御答弁でははっきり軽視しておりますよ。つまり、独立するほどのものではないのだ、総合大学の一環として考えればいいのだというのは明らかに軽視ですよ。医学と歯学はそれぞれ独立の学科のはずなんです。医学に続いているものではないのです。歯科医学としての独特の分野があるわけなんです。付属物ではないのです。したがって、歯科医科大学とすべきで、いまの御答弁は明らかに医学部とのいろいろなつながりがあるので、歯学部としてやる方がいいのだと言う。  現に私立医科歯科大学幾つあるか、御答弁をいただきたい。
  322. 佐野文一郎

    佐野(文)政府委員 十大学でございます。
  323. 受田新吉

    受田委員 私立の歯科の独立の単科大学は、文部大臣、十大学もある。にもかかわらず国立の歯科の独立大学は東京医科歯科大学、つながっておるものが一つある。文部大臣はせっかくこの際医科大学は単科にしたい、これからそうしたいという御発言があった。あるならば同じ医系の大学の歯学部も、歯学部でなくして医科歯科大学として独立させる。私立の歯科独立単科大学は十もあるというときに国立の歯科の単科大学が一校もないというところに文部省の事務当局の歯学軽視の傾向が多分にあるのです。  文部大臣、ひとつ事務当局の誤りを是正して——この認識、医学部の農のようないまの局長答弁です。明らかに文部大臣がお聞きになってもおわかりのとおり、この事務当局の余りにも医学部尊重の認識を変えるために英断をふるっていただくべきであり、歯科単科大学としての創設を考えるべきであると思うのです。
  324. 永井道雄

    永井国務大臣 私から弁明させていただきますが、事務当局が歯学部あるいは歯学というものを軽視しているということではないと思いますが、従来の計画がそのような形で進んでまいったということだと思います。ただ先生の御提起になりました問題というものをわれわれとしても考えるべきでございますから、これは十分に考えさしていただきたいと思います。
  325. 受田新吉

    受田委員 文部大臣が考えるということですから、これは考える価値のある問題でございます。  私立の大学にいま申し上げたような単科歯科大学は十もあるという御答弁国立、公立、私立、そのバランスから見ても、国立の歯科単科大学があって当然だ、いいチャンスだった。九州、中国、近畿とそれぞれ大学に歯学部を置いている国立大学がある。その中に四国がなかったから今度徳島に歯学部を置くことになったと思うのですが、そうですか。
  326. 佐野文一郎

    佐野(文)政府委員 御指摘のように歯学部あるいは歯科大学の設置につきましては、四十八年度に調査会を設けましてその設置の方針等を検討したわけでございますが、その際に歯科医師が著しく不足していて真に必要やむを得ない地方に限って歯科大学なり歯学部を新設することが望まれるが、その際、地域的配置や進学の機会均等などを考慮する必要があるため、できるだけ国公立の歯科大学なり歯学部の新設を考慮するのが適当だという報告があったわけでございます。それに基づきまして検討をし、御指摘のように四国の場合には歯科大学あるいは歯学部がございませんし、各県における人口十万人当たりの歯科医師の数も三十人余りというような状況にございますので、徳島に置くということを考えたわけでございます。
  327. 受田新吉

    受田委員 いまの歯科医師たちの要望も、歯科大学または歯学部ですよ。歯科大学が上に書いてある、歯科大学を置いてくれと書いてある。要望の第一は歯科大学なんです。その要望にこたえることです。あなたは何回も歯科大学というのを上にやっておる。要望は、歯科大学ができれば歯科大学にしてもらいたいと言っているのです、やむを得なければ歯学部という意味ですよ。そうじゃないでしょうか。
  328. 佐野文一郎

    佐野(文)政府委員 これは私どもはやはり歯科大学または歯学部というふうに受け取っているわけでございます。どちらをということではない、それはやはり設ける場合の形が両様あり得るということでそのような表記が行われているものと考えております。
  329. 受田新吉

    受田委員 初めに書いてある方に力点が置かれるのが文章の——最初に書いてある方が順序としては先なんです。大臣に御出席願う、大臣ができなければ代理の方に御出席願いたいという案内が来たときに、大臣または大学局長というときには、大臣の方にお願いするわけですよ。いかがですか局長、初めに書いてある方へウエートを置かれるのが文章の通則じゃないですか。
  330. 永井道雄

    永井国務大臣 この文章を読みます場合に、決して局長が歯科大学というものの提案を軽視している意味合いで申し上げたわけではなく、また先ほど私が申し上げましたように、歯科大学という問題は考えさせていただきたいと思いますので、いささかもわれわれの方に軽視の意を持って文章を読むような考えはないということを申し上げて、先生の御理解を得たいと思います。
  331. 受田新吉

    受田委員 結果としては歯科大学を軽視したことになっていることを、局長わかりますか。
  332. 佐野文一郎

    佐野(文)政府委員 お言葉を返すようで大変恐縮でございますけれども、決して軽視をしているつもりはございません。
  333. 受田新吉

    受田委員 そうしますと、今後歯科単科大学というのを当然考えていいと局長もお考えですか。先ほどの見解では、歯学部というものは、あなたの認識をちょっと変えなければいけないと思うのですが、医学部とつながっておる関係で常に医学を前提にされながら御答弁があるが、今後現場の先生たちの要望に対しても当然歯科大学というのができてしかるべきだという答弁をあなたがされてしかるべきだと私は思うのです。第一線の先生たちの要望に対しても、歯科大学を設置するという構想がいると思うのです。事務当局として、国立歯科大学をつくる、この先生方の要望に対して歯科大学をつくるという構想もあってしかるべきと考えるかどうか。大臣だけでなく、あなたの方の御答弁を願いたいのです。
  334. 佐野文一郎

    佐野(文)政府委員 歯科の高等教育機関を整備していく場合の形を、大学学部で行うか、単科大学として行うかというのはそれとして検討すべき問題であることは間違いなかろうと思います。
  335. 受田新吉

    受田委員 文部省昭和六十年の時点においてどれだけの医師を養成すべきである、国立、公立、私立でそれぞれ何名ずつ養成をし、そのために学生を何人採用する、こういう計画をお示しを願いたい。医学、歯学を含め、また薬学の学生——このたび岡山大学の医学部から薬学部を分離することでもありますので、これはお願いがしてありますので、その数字をお示し願いたい。
  336. 佐野文一郎

    佐野(文)政府委員 従来から、医師の場合には人口十万人当たり百五十人、歯科医師の場合には人口十万人当たり五十人というものを養成計画として厚生省の方がお持ちであり、またわれわれの方もそれを勘案しながら無医大県の解消等の施策を進めてまいったわけでございます。  入学定員で見てまいりますと、医学部入学者の数は、五十一年度におきまして、国立が三十五校三千七百八十人、公立が八校六百二十人、私立が二十八校二千九百二十人、トータルで七十一校七千三百二十人という数になります。今後公私立の歯科大学の新設を見込まないというふうにいたしまして、現在進められております無医大県の解消計画が残余の部分についても進められ、無医大県が解消したといたしますと、その時点においては、国立が四十二校、入学者の数が四千四百八十人ということになるわけでございます。  このような状況で推移をいたしますと、昭和六十年を待つことなく、人口十万人当たりの医師の数は百五十人を超えるということになるわけでございます。
  337. 受田新吉

    受田委員 歯科医師、薬剤師、全部お尋ねしておりますので、全部お答えください。
  338. 佐野文一郎

    佐野(文)政府委員 歯学部についても申し上げますと、五十一年度でございますが、国立が七校で入学定員四百人、公立が一校で入学定員百二十人、私立が十五校で入学定員二千百人、トータルで二十三校、二千六百二十人ということになっております。これは無医大県の解消というふうな形でセットされた計画があるわけではございませんので、とりあえず徳島大学の歯学部と現在創設準備中の鹿児島大学の歯学部を創設した場合における数を見込みますと、国立が九校で入学定員は五百六十人ということになるわけでございます。今後、公、私立の入学定員を五十一年度以降増員を見込まないといたしましても、この数をもって、同じように六十年を待たないで人口十万人当たり五十人を超えるということに相なります。  薬学部の場合にはそのような一つの養成計画と申しますか需要数を私どもは現在持っておりませんので、そのような意味でのお答えはしかねるわけでございます。
  339. 受田新吉

    受田委員 そうしますと、岡山大学の医学部から分離して薬学部を創設する理由はどこにあるのでございますか。
  340. 佐野文一郎

    佐野(文)政府委員 岡山大学の場合におきましては、四十四年度に医学部の中に薬学科を設置をしたわけでございます。これは、近年社会的にも医薬品の安全性とか環境汚染物質の生体に対する作用等が問題になっておりまして、これらの問題について系統的に教育研究を行うことが必要とされるというふうなこともございまして薬学科を設置したわけでございますが、さらに五十年度には製薬化学科を増設いたしました。これに伴って教育研究体制が整ったわけでございますけれども、岡山大学の場合にはこの薬学系統の校舎等の施設が医学科とは別の校地に設置をされております。そういったこともありまして、教育研究の機能を発揮する上に、あるいは管理運営の上にいろいろと問題が出てまいっているわけでございます。医学部と薬学部との間の緊密な連携というのはいよいよ必要になってまいるわけでございますけれども、岡山大学の場合にはすでに薬学科、製薬化学科の設置によりまして薬学部としての十分な教育研究体制を備えているということがあり、かつ、むしろ薬学科として医学部の中に置くよりは学部として独立をさせて、そして両学部の緊密な連携を図るということの方が適当であるということを考えまして、分離し、独立をさせることにしたものでございます。
  341. 受田新吉

    受田委員 いまお話を承って、薬学、製薬二つがちょっと距離もあるというところで独立して能力を発揮したいという御趣旨のようです。これは結構なことと思いますが、医学部の中に薬学科を置いたところがほかに全国で幾つありますか。
  342. 佐野文一郎

    佐野(文)政府委員 広島大学の場合に、やはり医学部の中に薬学科がございます。
  343. 受田新吉

    受田委員 医学部の中に薬学科を置いたのはいままでの岡山と広島だけですか。全国にほかにはないですか。
  344. 佐野文一郎

    佐野(文)政府委員 岡山と広島の二つでございます。
  345. 受田新吉

    受田委員 広島の場合は、薬学科を薬学部として将来創設する意思はないですね。
  346. 佐野文一郎

    佐野(文)政府委員 広島大学の場合には、現在御承知のとおり統合移転ということが重要な課題になっております。統合移転に伴って広島大学の全体の整備をどのように進めていくかということについては、現在大学の方でも鋭意検討いたしておりますし、私どもの方もそれに応じて考えているわけでございます。医学部の中の薬学科をどのようにするかということについては、まだ最終的に方向は出ていないと承知しております。
  347. 受田新吉

    受田委員 広島大学にはすでに医学部、歯学部がここへ出ておる。それに今度薬学部ができれば、ここに地方大学中心校としての勢ぞろいができるということでありまして、大学の中で、医学、薬学、歯学、この三師会の出身母体である三つの学部が整うようなのが幾つかあってしかるべきだと思うのです。そういう雄大な構想を一方では立てていただく。思いつきでやられるのではなくして、長期展望に立って学部の創設をやる、こういうふうに注文をしておきます。  私、この国立学校の設置について、いまもう一つ問題があると思うのですが、大学の格式というものが国立大学にはあるんだ。たとえば東京大学と京都大学は特に学長の地位が指定職の最高の号俸をもらっておるという、給与の上でもぴちっと決まっておる。その他の大学にまた七大学というのがあって、それがその次のランク、それからその他の地方の大学はその他大ぜいという仲間に入って、もっと階級がついておることになっておるのです。文部大臣、私、非常にこの点、教育の世界として問題があると思うのですが、中学校や小学校、高等学校というのは、小さな高等学校、小さな小学校に、学級数が少なくても、そこに長期勤務者で優秀な校長が勤務すれば、号俸が最高まで行くんです。大きな学校でなければ、特の一の最高まで行けないという規定はどこにもない。高等学校も同様です。しかるに国立大学だけは、東大と京大だけは指定職の最高の号俸をいただく。その次は七つの大学が次のランクにおり、地方大学はその他大ぜいで片づけられておる。これは大変問題があるので、国立大学でも地方の小さな大学国立である以上は、そこで長期に学長として勤務して名声を博するようなりっぱな学長であれば、東大、京大の人がいただく指定職の最高の号俸までいただいてしかるべきじゃないでしょうか。地方の国立大学はもう行き詰まりは決まっておるのだ。いかに優秀な教師がおり、学長がおり、長期勤続者であろうとも、東大や京大に勤務する学長が若くて年齢的にも差があっても、それよりは上へ行けないのだというような制度というものは問題があるのです。つまり、高等学校、中学校、小学校が、長期勤続者で優秀な校長先生は、勤める学校の大きさにかかわらず、最高号俸までいただける。国立大学も、やはり長期勤続の優秀な学長には、国立大学の学長の給与の最高をいただくべきじゃないでしょうか。これは文部大臣としては新鮮な感覚で文部大臣になっておられるあなたが、この問題は、学長の給与というものは東大と京大だけがよくて、あとは悪いというふうなことではいかぬ、基本観念としては賛成だとおぼしめされるかどうかです。
  348. 永井道雄

    永井国務大臣 ただいまの先生の問題提起の御趣旨は、十分理解いたします。
  349. 受田新吉

    受田委員 文部大臣は理解していただくウエートが非常に高いので、私の質問は理解をするということです。しかし、理解はするけれども、実施をするかせぬかはわからぬということですから、(「それは本当の理解ということにならない」と呼ぶ者あり)そうそう、いいことを言ってくださった。本当にやらなければ理解にならぬそうです。大臣、あなたのような感覚の方が文部大臣におられるときに、そうした国立大学に勤める学長の給与は、大きさによって違うのじゃなくして、勤続の長さ、その勤務によって決まるんだというところへ、中小学校、高等学校と同じように切りかえるという一つの構想を実行に移していただきたい。  私、さらに厚生省に来ていただいておると思うんだが、厚生省は文部省に医師、歯科医師、薬剤師の養成を依頼しておるわけです。そうじゃないですか。
  350. 古賀章介

    ○古賀説明員 厚生行政、厚生省の守備範囲は、卒業後を分担しております。国家試験以降が厚生省の守備範囲でございます。卒前教育文部省の所管でございまして、したがって、医師、歯科医師、薬剤師の教育というものの卒前教育文部省の方でおやりいただいておるということになっております。
  351. 受田新吉

    受田委員 国家試験から先が厚生省、国家試験の前は文部省、こういういまの御答弁でございます。  そこで、医科大学を出た者は六年で国家試験を受ける資格がある。いにしえといってもつい先年まではインターンという制度があって、そのインターンを終えて国家試験を受けられた。いまは厚生省は、国家試験を医科大学の六年の習得で受けさせるということじゃないですか。一年ほど試験を受ける時期を早めた。国家試験になる前の昔はインターンまで文部省にお願いしておったわけですね。今度はインターンを一年ほどあなたの方が横取りされて、一年早う国家試験を受けさせることになったわけですか。その経緯を御説明願いたいです。
  352. 古賀章介

    ○古賀説明員 昭和四十二年までは、いま先生指摘のように、六年間の医学部教育を経まして、その後一年のインターンを終えて初めて医師の国家試験の受験資格が発生したわけでございます。しかしながら、そのインターン生の身分処遇の問題等がございまして、非常に社会問題化いたしたことは先生御承知のとおりでございます。昭和四十三年に医師法の改正が行われまして、従来のインターン制度が廃止されまして、六学年の医学部教育を終えますと直ちに医師の国家試験の受験資格を取得するということになったわけでございます。しかしながら、その四十三年の医師法の改正の際に臨床研修制度というものが新たに設けられたわけでございます。これは強制ではございませんが、医師は免許取得後二年以上臨床研修を受けるように努めなければならないという努力義務でございますけれども、卒直後二年以上の臨床研修を行うことが努力義務として医師法の上に規定されたということでございます。現在卒業生と申しますか、医師免許取得者の大体八割は臨床研修を受けておる状況でございます。
  353. 受田新吉

    受田委員 これは二年ほど臨床研修をするというものを原則としてというような御答弁のようですが、インターンで一年学んで研修して国家試験を受けるのと、努力目標として六年で大学を出てすぐ試験を受けて後は二年努力してくれというのとは大分違うのです。つまり、インターンをやらなければ受けられなかったのと国家試験を受けて二年間やってくれというのとは違うのです。努力目標とやらなければならないのとは違うのです。したがって、医師の素質というものに対して四十三年以前の方がよかった。いまは大学を六年出てすぐ受けられて、国家試験を受かればすぐ医師になれるのです。二年の臨床研修をやらぬでもいいのです。やらない者は医師になれないという規定はないのですから、その点は力が抜けてくる。危ない要素が一つ入ってきておる、そう思いませんか。
  354. 古賀章介

    ○古賀説明員 しかしながら、実態を見ますと、医師免許を取得しまして直ちに開業いたすというようなことは、まず皆無でございます。やはり大学の付属病院でありますとか、それから医師法に基づいて厚生大臣の指定を受けました臨床研修指定病院などにおきまして、二年以上の臨床研修を行うというものが八割あるわけでございます。残り二割というのは、これは大学院に参りましたり、それから自分の父親の経営しております病院に勤務するというようなことでございまして、いずれにいたしましても、直ちに一本立ちの臨床医として開業する、ないしは指導医がいない状態で臨床に従事するということは、実際問題としてはほとんどないということは言えようかと思います。
  355. 受田新吉

    受田委員 ほとんどというような言葉は、生命を預かる職種に対して使うのは不用意な言葉だと思います。その一部には未熟な、試験には合格したが医師としてはまだ未熟な人がおるということに、ほとんどが入る。  そこで、国家試験を受験したけれども通らなかった場合には、それは文部省の方の所管に残るわけですか、不合格者は。
  356. 古賀章介

    ○古賀説明員 医師の受験資格は、やはり卒業した者に対しまして、これを受ける機会を与えるわけでございますから、卒業して国家試験を受けた、しかも合格しない、何回も合格しないというようなことになりますと、これはやはり卒業以後の問題ということになろうかと思います。
  357. 受田新吉

    受田委員 卒業以後国家試験に合格以前の所管はどちらに入るわけですか。
  358. 佐野文一郎

    佐野(文)政府委員 国家試験の不合格者というのは、いま御説明のありましたように、すでに大学を卒業している者ではございますけれども、しかし、やはり私たちとしては、その者の出身大学におきまして、各人の適性等を十分考慮をして、適切な進路指導を行うというふうなことは必要であるというふうに考えております。
  359. 受田新吉

    受田委員 厚生省では、毎年国家試験で、いま大学局長指摘されました、国公私立の医系の大学を卒業した者の最近の受験者が何人おって、合格者が幾らおって、合格率が何%あるか。
  360. 古賀章介

    ○古賀説明員 ことしの春の国家試験が一番直近の試験でございますが、この試験は五千十五名受験いたしました。合格の発表が今月の二十日でございますので、その合格者の数につきましては、まだ公表する段階ではございませんので、御容赦いただきたいと思います。  その前となりますと昨年の春の試験でございますが、四千五百二十八名受験をいたしまして、合格者が三千七百三十一名でございます。したがって、合格率が八二・四%でございます。
  361. 受田新吉

    受田委員 文部省におかれましては、八二・四%の合格率、残ったものは一八%近いものがあるわけです。二割近いものは落ちておる。繰り返しているうちに何とかなるという人もあろうが、とうとう最後には結局国家試験に合格しない医学部卒業生ができるわけです。そういう人はどういうふうにすればいいのですか。つまり、医系の大学に行ったが国家試験に通らない、そういう人の扱いをどういうふうに文部省教育的立場から考えられるか。厚生省はそうした何回やっても受からない——この率でいけば最後まで受からない人が出るのですよ。しかしそれは医系の大学に六年間学んだ、学んだだけに、何かそれを社会に有効に生かさなければ医系の大学に六年も行ったものの価値がないのだ。たくさんの経費を使っている。国費でも莫大な経費を使い、私立の医科大学では入学のときから大変な寄付金を取り上げて教育をしていかなければいかぬというふうな、教育の点では最高の金をかけて教育したその卒業生が、大学は卒業したけれど、医学部は出たが試験に合格しないという、この人々はある意味においては人材ですよ。この人材をどう生かそうとしておるのですか。
  362. 佐野文一郎

    佐野(文)政府委員 基本的にはまず医学の教育内容、水準の充実向上を図っていくということが重要であると思います。そのために、先般設置基準を改めまして、全般的に水準の引き上げを図ったわけでございます。  しかし、それはそれとして、やはり不合格者が出るということは、これは実際問題としてはあり得ることでございます。先ほど申しましたように、そういった者につきましては、出身大学で適性等に応じた進路指導ということを図っていくということが必要になるわけでございます。医学部を卒業した者で免許を取得できるものには、衛生検査技師というふうなものがございます。あるいは受験資格ができるものとして、臨床検査技師というものがございます。こういったものを含めて、仮に最終的に医師ということになれない者であっても、広くそういった医療の分野において六年間の勉強の成果を生かすということが望ましいというふうに考えるわけでございます。
  363. 受田新吉

    受田委員 最後に合格し得ない者に対してはいまのような関連の職種に持っていってこれを生かしていく、そういう構想をいまお示しになったわけですが、厚生省の方では、受け入れ側として、医療供給体制をどういうふうに考えるかという意味において、これらをどう活用するか。いまのようなのと同じ御意見でございますか。
  364. 古賀章介

    ○古賀説明員 いま文部省大学局長答弁されたとおりでございます。
  365. 受田新吉

    受田委員 もう一つここで文部省に伺いたいのですが、昨年私立学校振興助成法で、私立の医系の大学は増設をしないということであったけれども、しかし附帯決議の中に、やむを得ない場合の一つの条件がつけてあるわけです。全然しないとはなっていないはずですが、局長御存じですか。附帯決議の要望を御存じかどうか。
  366. 佐野文一郎

    佐野(文)政府委員 承知をいたしております。
  367. 受田新吉

    受田委員 それで、むしろ私立医科大学が、現実の問題としては、歯の先生のごときはむしろ私立に頼っておるのです。いま国立は四百名、公立が百二十名、それで私立の歯科大学は二千百名と、圧倒的に大半を私立歯科大学に頼っておる。この現実を無視はできないわけです。国立はささやかな一翼を承って、歯学のごときは圧倒的に私立歯科大学に頼っておる。それを私立を極度に抑えようとしても、歯学の方は手も足も負えぬわけなんです。むしろこれと勝負しようとすれば、さっき申し上げた単科歯科大学をつくってやるべきだと思うのですが、鹿児島に次の機会に置きたいというのですか、それを含めてとおっしゃったが、次の歯科大学構想、鹿児島はいつやるわけですか。
  368. 佐野文一郎

    佐野(文)政府委員 鹿児島大学、これも歯学部として今年度から創設準備に入っているわけでございます。これを具体的にいつ徳島大学の場合のように創設をするかというのは、これからの創設準備の進捗状況等を勘案して決定をすることであり、現時点ではまだ創設の年度を決定しているわけではございません。
  369. 受田新吉

    受田委員 準備の程度なら、せめて鹿児島に、西の端の鹿児島ではあるが、一つ国立単科歯科大学があるというお手本を示すべきです。いまから準備しているのですから間に合う。  そういうことで、歯科医師養成について、力を持ったお医者さん、安心して自分の生命を委ねられるお医者さんを養成するという意味におきまして、今後の文部省教育というものには、卒業したら試験が受かる力をつける、教育内容を充実してりっぱな医師を養成するというところを引き受けてもらいたい。  そこで、私立の医科大学にはとかく文部省も冷酷なところが一つある。財政上の支援などももっと——莫大な寄付金などを取らせぬようにもっと文部省が私立の医科大学を守ってやる愛情があれば、そこに優秀な学生がどんどん入ってこれる。野放しにしておくようなやり方でなくて、本当に私立の医科大学にも力を入れてあげるんだという愛情を示していけば、金が余りかからなくて私立のよさも味わえるので、そこに優秀な学生がたくさん来ると思うのです。しかしいまのように、私立はもう一切抑えるんだ、国立だけを大事にするんだ、私立の医科大学にはそう大きな応援もできないのだということになると、私立医科大学に学ぶ学生さんは国家試験なかなか通らなくなる。本当に力をつけて、医系の大学を出たら私立といえども国家試験が通るんだという、力づけるような文部省の激励が要ると思うのです。財政的な激励と精神的な激励、これをやらなければ、お医者さんの中で半分以上を受け持っている私立の医系の大学は希望を失う。文部省の御意思を伺いたい。
  370. 佐野文一郎

    佐野(文)政府委員 すでに設置をされております既設の私立の医科、歯科大学に対して、私学助成の面におきまして特に配意をしていくということはすでに方針として固まっていることでございますし、また、そのように現実に私学助成で運用が行われているわけでございます。これからつくられようとする私立の医科大学ないしは歯科大学については、問題として従来から指摘をされておりますいわゆる入学時の寄付金に依存をするというふうなことのない、しっかりした資金的な基礎というものを持っており、かつ、教員組織等についても十分整備をされているということを要求しなければならない。そういう意味で、私立の医科、歯科大学というのは厳正に審査をしていこうという趣旨であるというふうに考えております。
  371. 受田新吉

    受田委員 厚生省の課長さん、去年の試験で合格した八二・四%、これを、国立、公立、私立に分けて合格率を出しておりますか。そういうことは秘密ですか。
  372. 古賀章介

    ○古賀説明員 出しております。また、公表いたしております。
  373. 受田新吉

    受田委員 どうぞ公表してください。
  374. 古賀章介

    ○古賀説明員 申しわけございませんが、国公私立別の合格率、昨年の春の分につきまして資料を持ってまいりませんで、いまこの場において申し上げかねるわけでございます。後日、先生のところへお届けしたいと存じます。
  375. 受田新吉

    受田委員 これは全委員に数字をお示しいただいて、そしてみんなが励まし合ってよい成績をとれるように、名医が誕生できるように、文部省も力を入れ、厚生省も叱吃激励する、こういうことを要望して、ちょうど一時間になって皆さんおそろいのようでございますから、残余の質問は、改めて長時間いただける日があるので、そのときに回させてもらいましょう。  それでは、きょうはこれで質問を終わります。
  376. 登坂重次郎

    ○登坂委員長 これにて本案に対する質疑は終了いたしましたが、しばらく休憩いたします。     午後五時十六分休憩      ————◇—————     午後五時二十六分開議
  377. 登坂重次郎

    ○登坂委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  国立学校設置法の一部を改正する法律案を議題といたします。  本案に対する質疑は先刻すでに終了いたしております。     —————————————
  378. 登坂重次郎

    ○登坂委員長 この際、本案に対し、木島喜兵衞君外四名より、自由民主党、日本社会党、日本共産党・革新共同、公明党及び民社党の五常共同提案による修正案が提出されております。  提出者より趣旨の説明を求めます。木島喜兵衞君。
  379. 木島喜兵衞

    ○木島委員 私は、自由民主党、日本社会党、日本共産党・革新共同、公明党及び民社党を代表して、ただいま議題となっております国立学校設置法の一部を改正する法律案に対する修正案について御説明申し上げます。  案文につきましては、すでにお手元に配付されておりますので、朗読を省略させていただきます。  修正案の趣旨は、本法律案の施行期日はすでに経過しておりますので、これを公布の日から施行し、これに伴う在学年数の計算について必要な経過措置を講じようとするものであります。  何とぞ委員各位の御賛成をお願い申し上げます。
  380. 登坂重次郎

    ○登坂委員長 これにて趣旨の説明は終わりました。     —————————————
  381. 登坂重次郎

    ○登坂委員長 これより原案及び修正案について討論に入るのでありますが、別に討論の申し出もありませんので直ちに採決いたします。  まず木島喜兵衞君外四名提出の修正案について採決いたします。  本修正案に賛成の諸君の起立を求めます。     〔賛成者起立〕
  382. 登坂重次郎

    ○登坂委員長 起立総員。よって、本修正案は可決いたしました。  次に、ただいまの修正部分を除いて原案について採決いたします。  これに賛成の諸君の起立を求めます。     〔賛成者起立〕
  383. 登坂重次郎

    ○登坂委員長 起立総員。よって、修正部分を除いた原案は可決いたしました。  これにて本案は修正議決いたしました。     —————————————
  384. 登坂重次郎

    ○登坂委員長 ただいま議決いたしました本案に対し、木島喜兵衞君外四名より、自由民主党、日本社会党、日本共産党・革新共同、公明党及び民社党の五党共同提案による附帯決議を付すべしとの動議が提出されております。  この際、提出者より趣旨の説明を求めます。木島喜兵衞君。
  385. 木島喜兵衞

    ○木島委員 私は、自由民主党、日本社会党、日本共産党・革新共同、公明党及び民社党を代表いたしまして、国立学校設置法の一部を改正する法律案に対する附帯決議を御説明申し上げます。  まず案文を朗読いたします。     国立学校設置法の一部を改正する法律案に対する附帯決議(案)   政府は、技術科学大学の設置及び運営に当たっては、大学の重要性と本案審査における各意見にかんがみ、次の事項について特に配慮すること。  一 学問の自由、大学の自治を尊重するとともに、人事等管理運営については現行法令に基づいて行うこと。  二 十分な財政措置を講じ、いやしくも、民間資金を前提とした教育研究体制にならないようにすること。  三 高等専門学校についても、その充実のため一層の研究検討を加えること。 右決議する。 以上でございます。  本附帯決議案の趣旨につきましては、本案の審査に際し十分御承知のことと存じますので、案文の朗読をもって趣旨説明にかえさせていただきます。  何とぞ、委員各位も御賛成くださいますようお願い申し上げます。
  386. 登坂重次郎

    ○登坂委員長 これにて趣旨の説明は終了いたしました。  これより採決いたします。  本動議に賛成の諸君の起立を求めます。     〔賛成者起立〕
  387. 登坂重次郎

    ○登坂委員長 起立総員。よって、本案に対し附帯決議を付することに決しました。  この際、本附帯決議に対し、政府の所見を求めます。永井文部大臣
  388. 永井道雄

    永井国務大臣 ただいまの御決議につきましては、その趣旨に十分留意し、努力してまいりたいと存じております。      ————◇—————
  389. 登坂重次郎

    ○登坂委員長 次に、昭和四十四年度以後における私立学校教職員共済組合からの年金の額の改定に関する法律等の一部を改正する法律案を議題といたします。  これより質疑を行うのでありますが、質疑の申し出がありませんので、本案に対する質疑はこれにて終了いたしました。     —————————————
  390. 登坂重次郎

    ○登坂委員長 引き続き討論に入るのでありますが、別に討論の申し出がありませんので、直ちに採決いたします。  昭和四十四年度以後における私立学校教職員共済組合からの年金の額の改定に関する法律等の一部を改正する法律案に賛成の諸君の起立を求めます。     〔賛成者起立〕
  391. 登坂重次郎

    ○登坂委員長 起立総員。よって、本案は原案のとおり可決いたしました。     —————————————
  392. 登坂重次郎

    ○登坂委員長 ただいま議決いたしました本案に対し、木島喜兵衞君外四名より、自由民主党、日本社会党、日本共産党・革新共同、公明党及び民社党の五党共同提案による附帯決議を付すべしとの動議が提出されております。  この際、提出者より趣旨の説明を求めます。木島喜兵衞君。
  393. 木島喜兵衞

    ○木島委員 私は、自由民主党、日本社会党、日本共産党・革新共同、公明党及び民社党の五党を代表して、ただいまの法律案に対し附帯決議を行うべしとの動議を提出いたします。  まず、案文を朗読いたします。    昭和四十四年度以後における私立学校教職員共済組合からの年金の額の改定に関する法律等の一部を改正する法律案に対する附帯決議(案)   私立学校教育の重要性と私立学校教職員共済組合の実情にかんがみ、政府は左記の事項について検討し、すみやかにその実現を図るべきである。  一 長期給付に要する費用に対する国の補助率を百分の二十以上に引き上げるよう努めること。  二 年金額改定のいわゆる自動スライド制については、給与スライドの導入を検討すること。  三 短期給付に要する費用について国庫補助の措置を講ずること。  四 地方財政の実情にかんがみ、長期給付掛金に対する都道府県補助を充実するため、必要な措置を講ずること。  五 私立学校教職員の給与の実情にかんがみ、国・公立学校の教職員に準じてその給与の改善が行われるよう必要な措置を検討すること。   右決議する。 以上でございます。  この趣旨につきましては、本案の審査に際し、十分御承知のことと存じますので、案文の朗読をもって趣旨説明にかえさせていただきます。  何とぞ、御賛同くださいますようお願い申し上げます。
  394. 登坂重次郎

    ○登坂委員長 これにて趣旨の説明は終了いたしました。  これより採決いたします。  本動議に賛成の諸君の起立を求めます。     〔賛成者起立〕
  395. 登坂重次郎

    ○登坂委員長 起立総員。よって、本案に対し附帯決議を付することに決しました。  この際、本附帯決議に対し、政府の所見を求めます。永井文部大臣
  396. 永井道雄

    永井国務大臣 ただいま御決議のありました事項につきましては、御趣旨に沿いまして十分検討いたしたいと考えております。     —————————————
  397. 登坂重次郎

    ○登坂委員長 なお、ただいま議決いたしました両法律案に関する委員会報告書の作成等につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  398. 登坂重次郎

    ○登坂委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。
  399. 登坂重次郎

    ○登坂委員長 次回は、来る十四日開会することとし、本日は、これにて散会いたします。     午後五時三十六分散会      ————◇—————