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福田参考人 私は、今回の衆議院物特で
電気料金の問題を取り上げていただいたことに、大変感謝を申し上げる次第であります。
まず、私は、
電力の
各社と通産省の査定と、この二つに分けまして、考えておることを申し上げてみたいと思います。
一つは、
電力の
各社に対してでございますけれ
ども、基幹エネルギーであり、
地域独占
企業の
社会的責任という問題をどのように考えておられるのかということをまず指摘をしておきたいのであります。
今回の
申請と通産省の査定の差を見ますと、先発四社の場合は、
申請が三四・三三%、これに対しまして認可が二七・〇七%、暫定
料金として二四・九五%となっております。この
申請と認可との差が七・二六%、暫定
料金との差が九・三八%になりました。関電の場合は暫定
料金がございませんから、
申請の二九・〇八%に対して査定が二二…二二%、その差が六・八六%、こうなっておるわけであります。ところが
前回は、
平均いたしまして六二・九%に対して、査定は五六・八%、その差が六・一%であります。
私は、通産省の査定が、後から申し上げるように、非常にいろいろ問題があるとは思いますけれ
ども、
前回は六三%
程度の
申請に対して、その査定との差が六・一%
程度であった。約一割である。今回は、いろいろ
社会的責任を感じておられると言いながら、その差は四分の一もあるわけですね。こういうような
各社とも不況で非常に苦しんでいる中で、
電力の
各社だけがなぜこのような水増し
申請を行ったのかということの問題であります。これだけ
各社とも苦しんでおる中においては、私
どもの常識で言えば、
申請と通産省の査定との差がほとんどないというのがしかるべきではなかろうか。
前回は一割、今回は三割に近い
申請と査定との差があるということは、いかにこの
電力の
各社が水増し
申請をしておるかという証拠であろうかと思うのです。このことは後から査定になる東電以下の四社についても同様ではなかろうかと思うわけであります。これが第一点であります。
第二点は、先ほ
ども委員長も言われましたように、大変
物価の
高騰が言われている中で、また春闘の賃金も低く抑えられて勤労者の家計が苦しい中で、そしてまた
産業の中では
電気の
値上げによってつぶれる
産業さえ出ようとしておる、またそのことによって労働者の雇用問題が起こっております。アルミを初め
電力多消費の
産業においては特にそうであります。そういう中で、先ほど
各社の責任者のお話を聞きますと、大変苦しいということでありますけれ
ども、苦しいのは
電気だけではあるまい。このことによってつぶれる、また配当もできないような会社のことを
申請に当たって一体考えたのかどうかということを指摘をしておきたいのであります。
第三点に、政治献金の問題でございますが、東電が四十九年八月十三日に政治献金中止の決定をされたことは私は非常に評価するものであります。しかし、その後の関電を初め再開の動きがあるということも一部新聞に伝えられておりました。公益
事業であり、
地域独占
企業である
電力会社が特定政党なり個人に対して政治献金をするというのは、これはもう論外であって、私
どもも訴訟等を通じましてこれに反駁をしてまいっておりますが、いま政治献金を中止されていることはまことに結構と思いますけれ
ども、現在のロッキード問題は実はその前に起こっていることであり、
電気が銀行なり鉄鋼と並んで献金の御三家と言われてきたわけでありまして、今日の金権政治の一端を
電力各社は担ってきたということを指摘しておきたいのであります。したがって、
電力の
各社は、さきに社債法案が成立し、二倍から四倍という他社にない優遇措置がとられておるわけでありますから、この際、さらに
社会的責任の立場を明確にして、今後とも反省をして厳しい態度をとってもらいたいと思うわけであります。
次に、通産省の査定の問題について申し上げておきたいと思います。
今回、通産省が政策的に三割以下に査定をするという判断を示したことは、
インフレの懸念される中で非常に一つの英断であろうかと思いますが、しかしながら、
前回の査定を見ますと、先ほど言ったように、相当厳しい査定がされたと言われているけれ
ども、しかし、査定と実績の差は非常に大きなものが実はございます。その一例を申し上げるならば、たとえば九社合計の総括
原価において査定と実績の差、実績がこれだけ少ないわけでありますが、二千九百五十二億円、二・三%の水増し査定がされております。それから
燃料費なり
修繕費で、九社全体で見ますと、二千九百二十六億円というのが出てまいりました。特に
修繕費におきましては、実は三割近い水増しがされているわけであります。総括
原価即
料金といういまの原則のもとに立つならば、総括
原価の水増しということは、
電力会社に超過利潤を与えたということになるわけであります。以上のような水増しで私
ども計算してみますと、東電の場合、
前回の査定で一
キロワット時で十一円五十七銭ということになりましたが、これらの水増しの分を引きますと、十一円三十一銭という
計算が実は出てまいります。したがって、通産省の査定は相当厳しいものをやられたといいながらも、さらにその後の実績を見るならば、相当の水増し、そして
電力各社に超過利潤を与えたというふうに言わざるを得ないわけであります。その意味からいきまして、総括
原価のあり方は、この
料金の決定の中身につきましても検討をする必要が出てきたのではないかと思うわけであります。
次に、暫定
料金の問題でございますけれ
ども、先発四社に暫定
料金をとりながら、その後の関電以下の、
あとの四社もそうであろうかと思いますが、なぜ暫定
料金という制度をとらなかったのか。
物価の面からいうならば、二、三カ月前よりも現在の方がむしろ
物価の
上昇率の懸念がされているわけでありまして、きわめて一貫性を欠く態度と言わねばならないと思うわけであります。
さらにまた、低所得者層への政策
料金でありますが、今年度中は据え置くということになっておりますけれ
ども、来年はこれを上げるということでありまして、来年度上げて、一体低所得者対策ができるのかどうかということにつきましても大変懸念をいたします。私
どもは、引き続いて来年度でも低所得者層に対する政策
料金はとるべきであろう、こう思うわけであります。
以上、
料金査定の問題について簡単に
意見を申し上げました。
次に、基本的な問題について二、三申し上げておきたいと思います。
一つは、
料金決定のあり方の問題でございます。今回、九社に対しましての公聴会が一斉に行われましたが、この公述人の数を見ましても、二年前と比べまして、かつてないくらいに、
関西電力関係を除きますと千名から三千名近いという公述
申請がされております。大多数は反対の公述
申請であります。なぜこんなに多くの人が
申請をしたのかということをまず考えてみなければいけないと思います。
そしてまた、ブロック一カ所で大変形式化されている公聴会のあり方に対して、非常に大きな批判がいま示されているわけであります。一体、公述の
内容が査定にどんな
程度に反映したのか一向にわからないということでございました。さらにまた、ブロック一カ所で旅費も支給しないわけですから、該当の地方通産局の所在地近くの者しか実は公述できない。九州各地から福岡まで行く、その旅費を一体どうするのかということが一向にないわけでございまして、しかも、結果がどういうふうに査定に反映したか一向に示されていない。こういう形式化されている公述のあり方、そしてまた、このような公述を経て通産大臣が一方的に認可をするというような
料金決定のあり方については、もうこれは限界に来たし、
国民から厳しい批判がされているということなのであります。私
どもは、
地域独占
企業であって、
電気なくしていまの生活はできない、非常な強制力を持っているこの
電気料金については、慎重に慎重を重ねた民主的な決定をしなければならないと思います。したがって、この
料金決定に当たっては、少なくとも三者構成
程度の民主的審議会を持つということが必要でありますし、本当からいえば、国会での決定が最も必要だろうと思います。公聴会のあり方、
料金決定のあり方に対して根本的な問題がいま出されているということであります。ちょっと時間が長くなりますが、
あと簡単に終わりますから……。
もう一つの点は、われわれがいろいろやってまいりましたけれ
ども、
電気の会社がなぜ九つ必要なのか、そしてなぜ私
企業でなければならないのかという基本問題が出されているように思うわけであります。北海道の
電気料金と
東京の
電気料金がなぜ違うのかという基本的な疑問がございます。いま広域
運営ということが言われておりますけれ
ども、いまのような
地域独占で、基幹エネルギーである
電気というのは、もう私
企業として限界に来たのではないか。それからヨーロッパの各国を見ましても、国営化が
資本主義国で進んでいるわけでありますが、なぜ国鉄が公共
企業体で、
電気を公共
企業体にできないのかという基本的な疑問が実はございます。そういう一元化、公的所有という問題を速やかに通産省としてもやるべき時期に来たのではないか。そうすれば、
原価の
計算等なりあるいは利潤の問題等もややこしいことを言わなくても結構であります。すっきりしたものになるというふうに思いますし、また原発等の問題につきましても、非常に問題がいま出てきておることは御
承知のとおりでございます。
最後に一つだけ
委員長に
お願いしておきたいのは、この問題とはあれですけれ
ども、実は
物価指数の問題でぜひこの際、物特の皆さんに
お願いだけして終わりたいと思います。
物価指数が九月に新指数に
改定になると言われておるわけでありますが、
前回、四十六年に新指数になったことによって一・八%
物価指数が下がっているわけです。いま政府のやっていることは、
物価を下げることではなくして
物価指数を下げることをやっている。もしこういう経緯をたどるならば、
物価は上がっているけれ
ども、
物価指数だけが、六十五ふやすことによって下がるということになったならば、これは大変な事態だと思うわけであります。したがいまして、九月以降も相当の期間、旧指数と新指数を並行して発表して、この際、
物価指数が生計費指数ではございませんから、勤労者の家計を反映するような指数のあり方はどうかというような問題について、ぜひ物特の皆さんに今後ともひとつ御審議を賜りたいということを最後に
お願いいたしまして、若干時間が長くなりまして恐縮でございますが、
意見陳述を終わりたいと思います。