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1976-05-06 第77回国会 衆議院 物価問題等に関する特別委員会 第4号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十一年五月六日(木曜日)    午前十時三十分開議  出席委員    委員長 板川 正吾君    理事 越智 通雄君 理事 加藤 紘一君    理事 高橋 千寿君 理事 萩原 幸雄君    理事 松浦 利尚君 理事 山中 吾郎君    理事 小林 政子君       加藤 六月君    三塚  博君       加藤 清政君    中村  茂君       有島 重武君    石田幸四郎君       和田 耕作君  出席国務大臣         国 務 大 臣         (経済企画庁長         官)      福田 赳夫君  出席政府委員         公正取引委員会         委員長     澤田  悌君         公正取引委員会         事務局官房審議         官       水口  昭君         公正取引委員会         事務局経済部長 吉野 秀雄君         経済企画庁調整         局長      青木 慎三君         経済企画庁国民         生活局長    藤井 直樹君         経済企画庁物価         局長      喜多村治雄君         経済企画庁総合         計画局長    宮崎  勇君         通商産業審議官 天谷 直弘君  委員外出席者         資源エネルギー         庁長官官房総務         課長      服部 典徳君         物価問題等に関         する特別委員会         調査室長    芦田 茂男君     ————————————— 四月二十七日  公共料金値上げ反対等に関する請願河上民雄  君紹介)(第三八七五号)  公共料金物価値上げ反対等に関する請願外一  件(塚田庄平紹介)(第三八七六号)  同(塚田庄平紹介)(第三九五五号)  公共料金引上げ反対等に関する請願浦井洋  君紹介第三八七七号)  同(小林信一紹介)(第三九五三号)  同(渡部一郎紹介)(第三九五四号)  公共料金値上げ反対に関する請願金子満広  君紹介)(第三九四六号)  同(田代文久紹介)(第三九四七号)  同(田邊誠紹介)(第三九四八号)  同(多田光雄紹介)(第三九四九号)  同(広瀬秀吉紹介)(第三九五〇号)  同(村山喜一紹介)(第三九五一号)  国民生活安定対策等に関する請願北側義一  君紹介第三九五二号) 同月三十日  公共料金引上げ反対等に関する請願渡部一  郎君紹介)(第四〇二四号)  同(梅田勝紹介)(第四〇七七号)  同(河上民雄紹介)(第四一三四号)  同(小林信一紹介)(第四一三五号)  同(土井たか子紹介)(第四一三六号)  同(渡部一郎紹介)(第四一三七号)  公共料金値上げ反対等に関する請願増本一彦  君紹介)(第四〇七六号)  国民生活安定対策等に関する請願梅田勝君  紹介)(第四〇七八号)  同(村上弘紹介)(第四〇七九号)  公共料金物価値上げ反対等に関する請願外一  件(平田藤吉紹介)(第四〇八〇号)  同(塚田庄平紹介)(第四一三三号)  公共料金等値上げ抑制等に関する請願石母  田達紹介)(第四〇八一号)  公共料金値上げ反対に関する請願梅田勝君  紹介)(第四〇八二号)  同(金子満広紹介)(第四〇八三号)  同(増本一彦紹介)(第四〇八四号) は本委員会に付託された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  物価問題等に関する件      ————◇—————
  2. 板川正吾

    板川委員長 これより会議を開きます。  物価問題等に関する件について調査を進めます。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。加藤紘一君。
  3. 加藤紘一

    加藤(紘)委員 きょうは各党とも質問時間が三十分程度に限定されておりますので、端的にいろいろなことをお聞きしてまいりたいと思います。  参議院予算委員会等で、副総理及び河本通産大臣各党との間で、最近の卸売物価についていろいろな論議が行われているようでございます。この中で幾つかの政府内でも若干の意見の違いがあるんではないかと思われる点がございますが、とにかく十二月に〇・六、一月〇・八、二月〇・七と、ずっとこの卸売物価上昇基調がある。これについて二つ見方がいまあるように思います。一つは、景気回復期にはこれはあり得ることなんだ、過去にもあった、だからいまそんなに神経質に考えるべきではない、いずれある時期になると月間〇・一ぐらいにおさまつてきて、年間では五%ぐらいにおさまるでしょうという見方。もう一つは、これはかなり異常だぞ、かなり注意しなきゃならぬぞ、その原因を追求しておかなきゃいかぬぞという見方があるようでございます。  で、最初に副総理にお伺いしたいと思うのですが、この二つ見方のうちどちらをおとりになるのか。過去の景気回復期卸売物価指数動きから見て、その辺はどう判断されるのか。これをまず最初にお伺いしたいと思います。
  4. 福田赳夫

    福田(赳)国務大臣 一言で言いますと、警戒はするが心配はしない、こういうことなんです。  今度の不況にその深刻度におきまして似ておるのが昭和四十年不況なんです。あれは、四十年の暮れごろから生産活動が活発になってきた、こういうことで景気回復過程に乗ったわけです。それと並行して卸売物価上昇現象があらわれてきておった。しかし、景気が定着をするという段階になりますと、卸売物価の動向もまた安定をする、こういうことになってきておる。ですから、私は、今度のこの動きを見ておりまして、景気上昇期摩擦現象である、こういうとらえ方をしているのです。しかし、御指摘のように、いろいろ見方があるわけでありまして、私もそういう見方に耳を傾けないわけではないので、ですから、警戒はする、しかし心配はしておらぬ、こういう立場でございます。
  5. 加藤紘一

    加藤(紘)委員 いま長官がおっしゃいましたように、四十年不況のときにも確かに指数回復期の初期に大分上がっておるようですが、過去の数字を見ますと、たとえば四十年の不況の底が四十年十月、それで年末からだんだん上がり始めてきたわけです。その当時、四十年の回復期の十一月から確かに指数は〇・二、〇・三という形になって、そして三カ月目ごろに〇・八、〇・七という数値が出てきている。しかし、それはほんの二ヵ月程度で終わりまして、そしてその後は〇・一、時にはマイナスになるときがあって、ずうっと安定基調をたどった。これと同じようなことになれば、確かにいまの警戒はするがそう心配はしなくてもいいんじゃないかということを言えると思うのですが、ただ、今回の場合には、去年の十二月の〇・六以来すでにもう四ヵ月も続いておる。そして、四月の数値はまだ発表されておりませんが、いろいろの部分的な数値から見ましても、〇・五以下とか、そう簡単な話ではないように思われるので、ちょっと息が長過ぎるのではないかと思われます。その点から見ても、いずれ下がるというふうに考えられるかとなると、ちょっと、警戒はするが心配はしない程度で済まないのじゃないかと思われるのです。特に、これから国鉄及び電力等問題がありまして、かなり卸売物価にも影響をすると思うのです。四十年の場合とパターンが大きく違っているのではないかと思われますけれども、その点についてもう一度お伺いしたいと思います。
  6. 福田赳夫

    福田(赳)国務大臣 四十年のときは、非常に急に卸売物価が上がった。上がったが短期間に済んでいるのです。それで、今度の場合はすでに四カ月間上昇が続いておる、こういうことで、ちょっと違った様相のようにも見えますが、私は、本質的に言いますと、やはり景気上昇期摩擦現象ではないか、こういうふうに見ておるのです。  いま、物価の状態が心配だ、ですから経済政策のかじのとり方をひとつ修正するというほどの見方はしておらぬわけでありますが、あのときと比べまして今日は、海外情勢先行き見通し、これが非常にむずかしいわけです。あのときは、何といっても豊富低廉な世界資源というものが世界じゅうを駆け回った、こういう時期です。今日は資源有限時代である、こういうようなことで、資源問題中心にして国際経済先行きが非常に不安定だ、そういう中で資源価格高騰するという傾向が前に比べて非常に違ってきているんじゃないか、そういうふうに思うのです。国内経済動き、それにつきましては、大体三年前のあの石油ショック、そのショックのもう吸収段階に入っておる、こういうふうに見ております。
  7. 加藤紘一

    加藤(紘)委員 参議院委員会でも問題になったようでございますが、今回の卸売物価上昇に寄与しているものとして、いまその四十年パターンと違うとすれば、いわゆる資源国際価格及び輸入可能性というものが一つ大きく影響しているだろうといういまの御見解のようでございますが、それとともに一般に言われておりますのが、政府中心となっております通産減産指導、ある種の管理価格政策というものが大きく影響しているのではないかということが論議されております。それはかなり大きな比重を占めて今度の卸売物価上昇影響を与えていると長官は見られますか。
  8. 福田赳夫

    福田(赳)国務大臣 通産省生産数量に対する指導というか、そう表立った指導というものがあるとは思いません。気は心という程度のものだろう、こういうふうに思いますが、そういうような通産省顔つきですね、そういうものが企業の方にも何らの影響なしというふうには思いませんけれども、最近の卸売物価上昇、それから企業操業度の向上、そういうような点をにらみながら通産省顔つきも大変また最近は変わってきておるように思いますので、これが今後大きな卸売物価上昇の要因になるという観察はいたしておりませんです。
  9. 加藤紘一

    加藤(紘)委員 そこで、問題になっております減産指導について若干通産省にお伺いいたしますが、現実にいま行っている品目はどういうもので、その品目を選定する際の基準はどういう点で選ばれているか、その点をお伺いしたいと思うのです。
  10. 天谷直弘

    天谷政府委員 通産省減産指導しておるという範疇に明確に入るかどうかは存じませんが、第一番目に、公取が認可した不況カルテルによる小棒の生産制限がございます。これは官庁としましては、公取が責任ある官庁でございます。  それから第二番目には、中小企業関係中小企業団体法に基づく生産制限がございます。これはくぎ、針金、それから黄銅棒等でございます。  以上の二つ法律に基づいておるものでございます。  それから、三番目の範疇といたしましては、需要見通しを発表するいわゆるガイドライン政策なるものがございます。このガイドライン政策を適用しておる品目といたしましては、石油化学関係樹脂、それからアルミ地金段ボール原紙、こういうものがございます。  これらについて生産制限をする場合の基準は何であるかという御質問でございますが、まず不況カルテルにつきましては、独禁法上の明確な要件がございます。  それから、団体法につきましても、要件法律上決まっておるわけであります。  それから、三番目の範疇ガイドラインポリシーでございますが、これは果たして生産制限というべきものかどうか、われわれは必ずしも生産制限であるとは考えておりませんが、ともかくそのガイドラインを出すことによりましてある程度生産影響を及ぼしておることは事実であろうかと存じます。これを発動する場合の要件は、まあケース・バイ・ケースでございますが、概略大ざっぱに申し上げますならば、市場需給状況が著しく均衡を失しておって、放任すれば非常な市場撹乱が起こるというような場合にガイドラインを出しておるということであろうかと存じます。
  11. 加藤紘一

    加藤(紘)委員 最初公取との関連で根拠のあるものと、二番目の中小企業業界のものについては論じません。  それで、三番目の問題ですが、いわゆるガイドライン政策を出す、それで若干の影響は及ぼしているかもしれないけれども、はっきり減産指導と言えるかどうかというお話ですけれども、やはり通産が、これだけの生産量でいきましょう、それが適当ですよと言った場合に、それは各業界がかなり自主的にそれを守る体制になっておると思うのですが、現実には、たとえば石油樹脂関係で、どういつだ形でそのガイドラインというものが実効的な影響を及ぼされているか、その辺の業界事情はどう見られているか、御質問したいと思います。
  12. 天谷直弘

    天谷政府委員 石油化学、それからアルミ地金等につきましては基礎産業局が担当しておりますので、私はやや概略的なことしか申し上げられませんが、その範囲で申し上げます。  石油化学関係等は、事情といたしましては、第一番目にナフサ価格高騰、これに従いましてナフサ主原料とするエチレン価格高騰をしております。御承知のとおり、石油化学製品は、エチレンその他、ナフサを分解して生ずるところの留分主要原料として製造する樹脂類でございます。ところが、この産油国の一方的な石油価格引き上げ原因といたしまして、次から次へとその原料価格上昇が行われるわけでございますが、他方不況のために、石油化学樹脂を使用するところの製品、すなわちフィルムであるとかあるいはバケツであるとか、そういうような製品価格はきわめて低迷をしておるわけであります。  それから第二番目に、石油化学工業は、その性格といたしましてスケールメリットが非常に高い産業でございます。すなわち、操業度を上げればそれに従ってそのコストが安くなる、そういう技術上の性格を持っておるわけであります。各企業といたしましては、できるだけ操業度を上げて安くすればいいわけでございますが、他方市場の方はきわめて不景気状況になっておる。しかも、こういう品物につきましては、需給関係が不均衡になりますと、すなわち市場供給超過関係になりますと、価格が暴落するような性格を持っておる。そういたしますと、この石油化学樹脂関係企業倒産等が頻発するおそれが生ずるわけでございます。  で、産油国値上げを円滑に吸収していく過程におきましては、ある程度過剰生産を避けるような配慮が必要ではないかということで、ガイドラインを出すことによりまして企業の行動に影響を与えようという政策をとっておる次第であります。
  13. 加藤紘一

    加藤(紘)委員 スケールメリットのある産業ですから、できるだけつくれば価格は下がるわけですが、それでは企業がつぶれてしまう可能性があるので一応そういうガイドポストを出していますと、こういうことになると思うので、では、端的に確認いたしますが、いまの通産減産指導というのは、そういう経営基盤の不安定さを、まあ一種行政指導で救っていこうという一種値上げ政策と見ていいと言えますか。
  14. 天谷直弘

    天谷政府委員 いま申し上げましたように、石油価格の急騰を円滑に吸収していくための政策であるというふうに考えております。
  15. 加藤紘一

    加藤(紘)委員 その今回の減産指導がいわゆる新価格体系にスムーズに到達できるための一つの手段であるといういまの御答弁でございますが、その新価格体系については後でちょっと御質問します。  しかし、ここで問題なのは、そのいろんな変動、いわゆるコスト要素変動が起こって、それを吸収するために減産指導をするといいましても、資本主義の教科書によりますと、そういううまく吸収できるところは合理化で残っていくんだ。しかし、いまの減産指導というのは、通産が大体これぐらいと出しますと、過去の各社生産量に応じて、おたくはこの程度と言って、すべての企業に均等にいわゆる保護政策がとられていくということと見ていいのじゃないかと思うのです。そうしますと、当然のことながら、こういう不況期変動期の中で優良企業が残っていくんだ、それで淘汰されるんだという体制の本当の意味でのよさというのは出てこないことになると思うのですが、その辺についての危惧感通産ではないわけでございますか。
  16. 天谷直弘

    天谷政府委員 市場機能による企業の淘汰ということは、原則として必要なことであろうと存じております。ただ、市場が余りにも異常な動きをするとき、すなわち、一九七三年のように食糧輸出規制がある、あるいは石油輸出規制がある、石油価格が一挙に四倍に引き上げられるというような場合には、市場に介入することが必要であるという考えに立ちまして、たとえば事前了承制という制度をしき、数十品目価格引き上げを抑えるというような市場に対する介入政策をとったわけであります。これは価格が異常高騰する場台にとった政策であります。逆にまた今度は、引き締め政策の結果不況が浸透いたしまして、価格コストを大幅に割ってしまうというような事態におきましては、臨時的に市場に対するソフトな誘導をすることが必要であるという考えのもとに、現在のガイドライン政策をとっておるわけでございます。
  17. 加藤紘一

    加藤(紘)委員 そこで、問題になりますのが新価格体系ということでございますが、その前に、最後に天谷審議官にお伺いしたいと思いますが、そういういわゆる減産指導というもの、いま行われているものをいつの時期まで続けられる見通しでございますか。
  18. 天谷直弘

    天谷政府委員 現在のガイドラインポリシーは六月まで出しておるわけでございますが、六月以降をどうするかということにつきましては、そのときの市場状況を見ざるを得ない。まず石油化学製品について申しますと、標準価格に基づくナフサ価格値上げがようやく始まったばかりでございます。そうしますと、それがエチレン価格に波及し、次いでエチレン価格石油樹脂に波及する、こういうプロセスをたどっていくわけでございますので、そういうプロセスが円滑にいくかどうかということを監視しながら、ガイドラインポリシーをやめるか続けるかこれから検討するということになろうかと存じます。
  19. 加藤紘一

    加藤(紘)委員 そうすると、六月以降も続ける可能性があるということでございますね。
  20. 天谷直弘

    天谷政府委員 これから慎重に検討いたしたいと思います。
  21. 加藤紘一

    加藤(紘)委員 ちょっと時間がございませんので中途半端になりますが、その減産指導は早く終わるべきであって、われわれは、これを続けることは一つ体制自殺行為につながるのではないかという、かなり厳しい危機感を持つべきではないかということを申し上げておきたいと思います。  それで次に、公取委員長にお伺いしたいと思うのですが、減産指導というのは、結局、ガイドラインが出されますと、それに従って各社が大体それに合わせてごそごそ話し合って現実にはやってしまうわけです。これは公取自身が行われております小棒のカルテル問題にいたしましても、ほかの中小企業もそうですし、それから、最近は終わりましたけれども、セメントの不況カルテル現実業界協調体制がとられてきた。そしてそれが、不況カルテルやそれからガイドライン政策が終わりましても、各業界が過去話し合って、そして生産数量をお互いに相談し合ったという人間の関係、ノーハウというものは生きていくと思うのですね。そして現実にそういう政策が終わった後も、ある種の寡占価格管理というものが行われていくと見るのが当然ではないか。その辺について公取はかなり厳しく見ておられるか。いろいろのうわさを聞きますと、ある種の基礎資材業界では現実に話し合いが行われているのじゃないかと思うのです。その点についてどう見られておるか、お伺いしたいと思います。
  22. 澤田悌

    澤田政府委員 各産業官庁が独自の立場から需要予測なり見通しなりを立てられるということ自体は原則として問題はないと思うのですが、その見通しによりまして個別企業減産指導を行うということは、自由な競争秩序を維持するという独禁政策立場上からはどうも好ましいとは言えないのでございます。それで、いずれにしても、行政指導のあるなしにかかわらず、カルテル等が誘発されますと当然厳重に取り締まるわけでございますが、ただいま御質問のそういう行政指導がなくなった後の問題も、行政指導があった業界なり企業関係についてはその後の物価動き価格動き等について厳重に監視をしてまいりたい、かように考えておる次第でございます。
  23. 加藤紘一

    加藤(紘)委員 この問題は具体的なある種の証拠みたいなものを出してこれからやらなければならぬと思うのですが、それは後の委員会で時間があったらやっていきたいと思います。  それで、福田長官にお伺いしたいと思うのですが、いまの通産省の説明でもわかりますように、結局、ある種の当然そこまでいかなければならぬ価格というのがあるのですよ、そこまでいってないからかわいそうだから見ていきましょうという考え方が当然あると思うのです。そうしますと、新価格体系とは何かねという議論になってまいります。  この間から新価格体系というのは、言葉自身がひとり歩きして、そしてその内容については余り論じられていない。たとえば石油部分を見なければいかぬとするならば、逆に、輸出の場合には高く売れるわけですから、交易条件悪化部分だけしか見なくていいのじゃないか、そしてさらに、交易条件悪化部分を見るとしても、それは合理化部分もあろうし、どこまで見るべきかという詰めた議論というのはいま行われてないものですから、電力料金石油については認めてほかの樹脂については認めてないから、ガイドライン政策がいいの悪いのという根本議論になってきて、そこで一つの混乱があると思うのです。  それで、新価格体系とは何か、それは石油部分を全部吸収していくところまで見てやるのか、それから人件費アップ分まで認めていくのか、新価格体系とは何かについて、より明確な具体的方針をここでひとつお伺いしたいと思うのです。
  24. 福田赳夫

    福田(赳)国務大臣 方針というよりは定義というか、そういうことかと思いますが、原油輸入価格は四倍、五倍と引き上がった。これは製品コスト面に非常に影響があるわけです。つまり原材料の価格がそれに準じて上がる、あるいはエネルギー価格がそれに準じて上がる、またそういうような影響を受けまして人件費が上がる。いろんな経済各般に大きな影響を持つわけでありますが、その影響に見合って原油価格高騰価格引き上げに作用してくる。その影響を受けて各製品料金などの価格が調整されないと正常な価格形成にならぬ、こういうことかと思うのです。  私は、しかし、その作用というものは大体終わっておる。いま企業は非常に苦しいと言う。私は確かに苦しいと思うのです。過去の不況は一年半くらいでまあ済んでおる。そうすると、もう好景気になってきます。ところが、今日は不況の度合いというものが非常に深刻でございまして、すでに二年半になりまするけれども、まだ不況色というものが強く残っておる。そういう事態に対しまして、企業価格のつけかえを行いたい、そこでそのしわ寄せを清算したいという考え方になってくる。私はその気持ちはわかりますけれども、そういうことを踏まえまして新価格体系論だ、こういうわけなんです。  しかし、その行き方をとりますと、これは私は、結局、自殺的行為になってくると思うのです。まあ、自分のところも上げる、ほかのところも上げれば物価水準が上がるということで、当面つかの間はその企業利益にはなりましょうが、少したつと、その利益はまた全部消滅しちゃう、こういうことになると、結局、私は今日の価格問題企業操業度引き上げるということによって解決しなければならぬと思っておるのです。もし適正な操業度になりましても、それがどうしても企業としてその価格では採算がとれないという場合におきまして、新しい体制下価格水準というものの改定が行われなければならぬだろう、こういうふうに思うのです。  現実議論としますと、公共料金は確かにまだ石油ショックから影響を受けたその新しい水準というところに来ておらぬと思うのです。ですから、国鉄や電電なんかの問題が起こってくる。しかし、民間の企業におきましては、私は大方新しい価格水準への調整というものが行われた、こう見ておるのです。  ただ、これから企業操業度をどんどん上げていく政策をとりますけれども、それによってもどうもこの適正水準というものに価格調整が行われないであろうというふうにはっきり見通されるものにつきまして、この際、臨時特例的な措置として価格指導というものが許されてしかるべきだ、それは今日までの段階において非常にいろいろな種目にわたって出てきておるわけでありますが、しかし、操業度の改善というものがたくましく行われつつある今日の段階になりますと、そういう新価格体系論による価格調整というものはもうそろそろここで清算しなくてはならぬだろう、こういうふうに考えております。
  25. 加藤紘一

    加藤(紘)委員 時間が来ましたので、最後に、いまの長官の御判断から見ますと、鉄鋼はいかがでございましょうか。もうすでにある程度の調整がされて、そして本年度うわさされております三千円から七、八千円になりますか、いろいろ議論されておる鉄鋼の価格引き上げは当然のものと思われますか、それともやはり、いまの説明からいくと、これ以上上げるというのは、もう新価格体系移行後の設備投資のための資金吸収的な色彩を若干持って、納得できないものと思われますか、本年度鉄鋼値上げについての長官の判断をお伺いして、最後にしたいと思います。
  26. 福田赳夫

    福田(赳)国務大臣 鉄製品価格、これは私は非常に重大だと思うのです。つまり、鉄は国家なりとまで言われるそういう商品ですから、その価格がどうなるか、これは非常に重大な問題だと思います。  新聞などの報道するところによると、新日鉄などが鉄鋼価格引き上げ考えておる、こういうように承知しておりますが、まだ通産省あたりにそういうような話は来ておらぬ、こういうふうに聞いております。  とにかく需給関係によって価格が動いていく、これはやむを得ないと思うのです。しかし、特に政策的意図をもってその引き上げ通産省指導するというような段階ではないように思いますが、需給関係がどういうふうになりますか、メーカーとユーザーとの力の関係がどうなりますか、その辺でいまちらほらしているそういう問題は解決されていくのじゃあるまいか、そういうふうに見ますが、しかし、メーカーに対しましては、大事な段階でありますので、ここで急激な値上げとそしてそれがまた一波万波を呼ぶような事態になるようなことにつきましては、慎重であってもらいたい、かように考えます。
  27. 加藤紘一

    加藤(紘)委員 どうも時間を超過して申しわけございませんでした。
  28. 板川正吾

    板川委員長 松浦利尚君。
  29. 松浦利尚

    ○松浦(利)委員 連休のために質疑の通告が事前にされておりませんで、いまちょっと政府と打ち合わせしましたから、答弁がしにくい面もあるかと思いますが、そこは副総理はベテランでありますから、しかも時間が限られておりますので、ひとつ簡単に御答弁いただきたいと思うのです。  それで、きょうは一般質問でありますから、福田長官の所信表明あるいは本会議の経済演説、そしてすでに発表になっております昭和五十年代前期経済計画概案等について総括的に御質疑を申し上げておきたいと思います。  この中で示しておられますように、四十八年十一月の石油ショックで、三カ年の調整期間が必要だということで、本年がその総仕上げの年になっておるわけでありまして、インフレの再燃を回避しながら景気の順調な回復を実現するという意味で、非常に重要な年だと思うのです。  そこで、お尋ねをしたいのは、この昭和五十年代前期経済計画概案でいきますと、その骨格としては、計画期間中の実質成長率は年率六%強というふうに見ておられるようであります。ところが、わが国が従来二けた成長を続けておったものを、この五カ年間で二分の一経済に落とすという方針だと思うのですけれども、西ドイツなんかの例を見ますと、大体二けた台に落とすのに二十年ぐらいの年数を経ておるわけであります。ですから、逆の意味で言うと、日本の今日の産業構造というのは、現実問題として高度成長を前提としたものがすでに残っておると思うのです。ですから、この高度成長的な産業構造の体質をそのままにして、五カ年間で二分の一経済に落としてしまうというのは、私は相当な摩擦が起こってくるということだと思うのです。  そこで、大体この前期経済計画概案に従った産業構造ビジョンというものを政府はどういうふうに見ておられるのか、その点を明らかにしていただきたい。そうしなければ、雇用不安、中小企業の倒産という問題といいますか、不安というのは私はむしろ増大をしていくのではないかという気がするのです。そこで、もちろん物価も大切であります。われわれは物価ですから物価も大切ですが、その物価と完全雇用と経済成長というこの接点はどうなるのか、どういうふうに見ておられるのか、その点をまずお聞かせいただきたいと思うのです。
  30. 福田赳夫

    福田(赳)国務大臣 いままではというか、三年前まではいわゆる高度成長という時代だったのですが、今日は世界情勢があの石油ショックを契機といたしまして一変をしてきておる。つまり資源有限時代、こういうふうになる。その新しい世界情勢の中でわが日本は重要資源のほとんどのものを海外から求めるという立場にある。そういうわが国とすると、経済の安全保障というような立場から考えまして、いままでのような高度成長政策はとれないのです。これは御理解願えると思うのです。  さてしからば、どの辺の高さの成長を考えるかということになりますと、やはり資源有限時代、そういうようなことでこれから先の経済国際情勢というものは非常に不安定になる。その不安定の中でわが国がどういう姿勢をとるかという問題になりますれば、やはりかなり腰を落とした考え方、つまり背伸びして何か変動があったら吹き飛ばされるというような姿勢でなくて、多少の波風がありましてもびくともしない、こういう姿勢、腰を落とした姿勢というものが必要だろう、こういうふうに考えられるのです。  その腰を落としたという姿勢はどの辺の姿勢が妥当であるかということを考えると、まさに御指摘のように、物価のことをまず一つ考える必要があるのです。それから国際収支のことを考える必要がある。それからまた雇用という問題考える必要がある。その辺を全部勘案いたしまして見る場合におきまして、六%強というくらいなところがこれから五年間の経済運営としては妥当なところではあるまいか、そういうふうに思われるのです。六%強程度の成長でありますれば、大体国際収支が破綻をするということもないし、また物価につきましてもまずまずこれからさらに今日の安定基調を固めていくことができる、同時にいわゆる完全雇用、この目標もぎりぎりこれを実現することができるということで、これからは六%強というところをにらんで、そして需要管理といいますか、成長管理といいますか、経済運営のかじ取りを、従来よりもさらに厳しくそういう姿勢をとっていかなければならぬだろう、こういうふうに考えております。
  31. 松浦利尚

    ○松浦(利)委員 大まかな数字は大体理解できるのですが、問題は、この高度成長経済から二分の一経済への誘導ですね、産業構造をどう誘導するかという、そのビジョンが数字的に言葉としてはわかるのですが、それより具体的にどうそういうふうに誘導していくのかということについて的確な指導がなされておらぬと私は思うのです。要するに、産業構造ビジョンをどうするんだ、そのことがはっきりしておらないと私は思うのです。  そこで、いま通産省の方は、ことしは何というのですか、産業再編成の年であるという意味だと思うのですが、要するに、政府主導型の集中合併というようなことを指導しておる。特に石油産業、民族資本を強化するという意味で、石油業界再編成というものを手始めに、行政主導型のこれは一つ産業再編成なんですね。そうして一方、伊藤忠と安宅産業のように、当事者ではない銀行がそれを合併させるという動きが出てきておる。片一方には、親会社の方が、新日鉄のように系列四社の平電炉の合併調印をやる。今後アルミ、紙とか、あるいは機械産業とか、こういったところがどんどん再編成に進んでいくのですが、大体政府は、この減速経済に移行する方法として、あくまでも通産がいまやっておるような政府主導型の市場経済形成といいますか、そういう方向に産業構造を誘導しようとしておられるのか、それとも、従来のように市場経済のメカニズムを活用する中で転換が順調に進んでいくんだ、あくまでもこれは市場にまかせておく、そのいずれをこの減速経済に誘導するための手段、方法として考えられておるのか、その点をひとつはっきりお聞かせいただきたいと思います。
  32. 福田赳夫

    福田(赳)国務大臣 高度成長から減速経済への転換でありますから、その転換を必要とするその根本的な理由、それを国民、学界、各層が理解するということが先決問題と思うのです。  これはひとり企業ばかりじゃない。そういう新しい体制に順応する必要がありますのは、これは国民生活においても必要である、同時にまた国家財政といいますか、国、地方公共団体の行政のあり方、そういうものにつきましてもまた大きな転換を要する。こういうことでひとり企業体だけの問題じゃないのですが、企業におきましては、これはやはりそういう転換を要する必要があるという認識の上に立って、みずからがみずからのあるべき形というものを求めていくということが中心にならなければならぬだろう、こういうふうに私は思います。  しかし、そういう企業立場が国全体の経済の整合性の中で妥当であるかどうかという問題になりますと、多少これは国の方でも目を配らなければならぬだろう、こういうふうに思っておるわけでありまして、これは民主官従というか、経団連でもすでに作業を始めておりますが、民間のそういう動き、これを中心とし、政府行政におきましては、それが欠陥のある行き方であるかどうか、そういうものをチェックするというような形が好ましいのではあるまいか、そういうふうに私は思っております。
  33. 松浦利尚

    ○松浦(利)委員 大体理解はできるのですが、自由市場経済の方向でいくのか、それとも、この際思い切って政府が中に入った計画的経済導入という方向へ持っていくのか、どちらにウェートが置いてあるのですか、民主官従、こう言われたのですが。
  34. 福田赳夫

    福田(赳)国務大臣 あくまでも民主官従でありまして、民間の自由経済メカニズムの中であるべき姿を自発的に求めてまいるということを中心とし、政府がこれに協力をしてまいる、こういうことにいたしたいと考えております。
  35. 松浦利尚

    ○松浦(利)委員 そうしますと、いま盛んに石油業界の再編成が通産で行われておりますし、また繊維あるいは特殊鋼、機械、こういったところを現実通産は、表面的な行政指導という言葉ではございませんけれども、ある程度の方向を示唆しておる。要するに、合併、提携という形がどんどんどんどん減速経済の中でつくられてきておるわけですが、従来の過当競争的な体質から寡占的な体質へこれがどんどんどんどん移行を始めておるわけですね。そうすると、当然のように、このこと自体は余り現在の独禁法には抵触をしない、こういうふうにされておるのですけれども、非常に大きな弊害が出てくるのはだれでも想像できると私は思うのです。  先ほど加藤委員も指摘しておりましたが、企業がだんだん少なくなれば、共通の利益を求めて意識的な平行行為というものが自由自在につくられてくるわけですね。かつて公取が三品目について管理価格調査をしましたが、その当時は、日本の産業自体が競争的な体質を持っておるからこれはいいんだ、こういうふうな言い方で終始してこられたのですけれども、今日の状態になれば、そうは言っておれない。現実に需要が減少しておるにかかわらず、価格が需要に反映されてこない。コストが下がっても価格が下がらない、こういう現象がそろそろ表面化してくることは私は間違いないと思うのです。  そういう減速経済下における指導、民主官従でありますから、そういう方向でずっとほとんどの企業が進んでいくということになれば、この際、具体的な問題としては、管理価格の対策をどうするのかということが政府方針の中になければ、これからの物価対策というのは不可能ではないかという気が私はするのです。  そういった意味で、これは経済企画庁長官と公取委員長お二人にお聞きしたいのですが、具体的に管理価格対策というものをお考えになる意思があるのかどうか、そういう意味で寡占規制というものについて何らかの処置を考えておられるのかどうか。それをひっくるめて減速経済下における——どっちにしたって寡占体制にだんだん移行していくわけですから、そういうものについてどう考えられるのか、その点お聞かせいただきたいと思うのです。
  36. 福田赳夫

    福田(赳)国務大臣 いま松浦さんが商社の合併を例に引かれておりますが、私はむしろ、いまわが国の産業は過当競争、これが非常に弱点だというふうに見ておるのです。しかし、これが整理されて、そうして寡占機構ができていくという、そこまではなかなかいけるもんじゃないし、またいかすべきものでもない、そういうふうに考えておるのです。商社もあれだけのものが過当な競争をしておる、いろいろな事件まで起こす、こういう状態である。そういう中で弱い企業がその体質を改善するという目的で、あるいは合併あるいは業務提携を求めるということがありましても、私は決してわが国の経済体制全体に対して寡占化を推し進めるという評価をするのは妥当ではないのじゃないか、そういうふうに考えております。  しかし、それはそれといたしまして、わが国の経済構造の中で寡占という体質のものがないというわけじゃない。ある種の寡占体質のものは現にあるわけです。その寡占状態が果たしてわが国の経済の中で適当であるかどうかということにつきましては、これは関心を持たざるを得ないわけでありますが、それに対してどういう行き過ぎ是正という措置をするか。それは各業界ケース・バイ・ケースというか、そういうことになるのじゃないか、こういうふうに思うのです。現に寡占化しておる企業が幾つかあります。ありますが、それに対してどういうふうにするか、それは各企業ケースに応じましてそれぞれの処置を講ずるということにならざるを得ないのじゃあるまいか、そういうふうに考えております。
  37. 澤田悌

    澤田政府委員 御指摘のように、高度成長経済から減速経済に相なりますと、各業界におきまして合併、業務提携あるいは各種の協調体制というような方向へ向かう傾向が出てきておりますこと、あるいは今後もそれが強まるであろうということは私どもも予測いたしておるところでございます。それが寡占による弊害が一段と強まるというようなことは、独禁政策上最も好ましくないところでございます。  ただ、現行独占禁止法によりますと、そういう寡占体制に対する規制力というのははなはだ不備でございます。しかしながら、その中におきましても、たとえば法四十条によります調査というようなことを活用いたしまして、そこにカルテル等の違法行為がありますれば厳重に取り締まるのはもちろんでありますが、そういう状況が明白でない、あるいはそこまではいっていないというものでもできるだけ調査を進めまして、大方の批判にも訴えて厳重に監視をしてまいりたい、かように考えておる次第であります。
  38. 松浦利尚

    ○松浦(利)委員 時間がありませんから、もっと掘り下げて議論をしたいのですが、また改めて寡占問題については議論させていただきたいと存じます。  いま減速経済に移行する段階でもう一つ問題になりますのが、先ほど加藤委員も触れられた問題であります通産省減産指導という方針があるわけです。これは一つの例ですが、セメントの不況カルテルは一月で期限が切れてしまっておるにかかわらず、本来ですと大手二十一社が自由に生産をしておるはずなのに、セメント自体の価格はずっと上昇してきておるのですね。確かに不況のどん底において産業界製品価格を上げるに上げられなかったから、コスト割れの状態を起こさないために通産省減産指導をしたということ自体は、そのときは認められたかもしれませんけれども、どうもそのことが逆に、最近になると今度は悪用されまして、生産を一定限度に抑えておいて価格に転嫁をする、こういう要するに、数量が上向かないにかかわらず、値段だけが上がる価格景気というような危険が出てきておると私は思うのですね。下手をすると、せっかく経済企画庁長官が言うように、一番重要な調整期間の最終年度でこれから減速経済に移ろうとする段階で、この減産指導というものが、逆に言うと、不況の中の物価高、俗に言うスタグフレーションというものに引き戻してしまうおそれが多分にあると私は思うのです。だから、この段階に来たら、もうちゅうちょする必要はないと私は思うのです。思い切って政府は値上がりしておるものについては減産指導を中止する、行政指導は撤退をする、そういう方針をとるべきだ、私はこういうふうに思うのですが、その点をどう思われますか。
  39. 福田赳夫

    福田(赳)国務大臣 政府におきましてもそのような考えでありまして、いわゆる通産省減産指導、そういうものにつきましては逐次これを撤廃するということを考えていただいておる、こういう現況でございます。
  40. 松浦利尚

    ○松浦(利)委員 私は逐次じゃなくて、もうこの際重要な段階ですから、思い切った撤退をすべきだ、公取委員長もそう思われると思うのですが、どうですか。
  41. 澤田悌

    澤田政府委員 実態に即してできるだけ早くそういう行政指導減産指導というのを撤廃してもらいたいというのが公取委員会の姿勢でございます。
  42. 松浦利尚

    ○松浦(利)委員 それから、これは基本的なことですから、先ほど加藤委員質問なさったのですが、新価格体系に移行するというお話がよく出るのです。ところが、この五十年代の前期経済計画概案を見ていきますと、これは大体昭和五十六年の三月で消費者物価上昇率を六%以下にするという目標になっておるわけですね。そうすると、これは非常に低いように見えますけれども、過去をずっと調べてみますと、経済社会発展計画では四%という計画の時代があったのです。夢物語のようですが、現実にそういう時代があったから、そういうものから見ると、非常に高いわけです。ところが、この五十年代の前期経済計画概案で見ますと、卸売物価上昇率も五%、こう見ておるわけですね。消費者物価卸売物価の数字が非常に接近しておるわけですよ。そのことは逆に言うと、五ヵ年間にできるだけ新価格体系に移行させていく、そういう発想がこの中にあるのではないかという気がするのです。下手をすると私はこの計画期間中にまたインフレの再燃の危機というものが出てくるのじゃないかという気がしてならないのですが、一体新価格体系移行というのは、この計画の中でいつごろまでを見通しておられるのか。先ほどは加藤委員質問に対して、好ましくないというようなことを言われたのですが、この計画でいくと五ヵ年間の中で依然として新価格体系に移行すると想像のできる数字が挙がってきておるわけですが、その点、副総理の方から、もういつの時点までということをはっきり言っていただきたいし、やめてもらいたい、こういうふうに思うのです。
  43. 福田赳夫

    福田(赳)国務大臣 民間の企業製品あるいは手数料、そういうものにつきまして五十一年から五十五年までのいわゆる前期計画におきましては、新価格体系というようなことを全然考えておりませんです。ただ、主要な公共料金につきましては、五十年度、五十一年度、五十二年度ですから、この前期の中には五十一年度、五十二年度が入るわけです。これはいわゆる新価格水準公共料金の調整を一巡させなければならぬ、そういうふうに考えております。
  44. 松浦利尚

    ○松浦(利)委員 それから、もう時間がありませんから最後になりますが、この計画でいきますと、まず昭和五十一年度が不況の脱出、それから安定成長への転換が五十二年から五十三年、そして安定成長の定着が五十四年から五十五年、こういうふうに一応言われておりますね。そうすると、一番大切なのは不況から脱出をする昭和五十一年なんですけれども、一つ非常に疑問があるのは、政府昭和五十一年度の経済見通しの中で、雇用者所得の伸びが一二・八%、こう見込まれておったわけですね。ところが、ことしの春闘が、副総理から言わせれば、労使常識的な線に落ちついた、こういうふうに言っておられるのですが、まだ最終的な結果は出ませんけれども、大体六、七%のところではないかと言われておるんです。物価局長は首をひねっておられますが、数字的に私に間違いがあれば訂正していただいて結構ですが、そういうことになってくると、個人的消費が確かに着実に少しずつは伸びてきておりますけれども、やはり名目成長が一三・七%伸びることは私は無理だと思うのですね。そうすると、副総理は、財貨サービス購入あるいは民間の設備投資あるいは在庫投資、輸出の伸長、こういったことを言っておられますけれども、実際に輸出問題につきましては、非常に好調で約二十四億ドル近くの国際収支の黒字が出たというような新聞報道をちょっと見ましたけれども、いずれにしても、アメリカの側でこの輸出急増に対してダンピングとかいろいろな意味の問題が出てくるし、世界各国はあのランブイエ会談の意思とは無関係に保護貿易的な色彩というのが非常に強くなってきていますから、輸出といえどもそうむやみやたらに伸ばすことは不可能だということを考えてきますと、この不況脱出の年である五十一年度に国内における個人消費がどう動くかということが非常に重要な要素を持ってくると思うのです。  そこで、賃上げで政府見通しよりも低かった分、賃金引き上げで非常に良識的な線で落ち着いた分、この分については、この際思い切って世界各国の例にならって減税をすることによって個人消費を伸ばす、そういう政策をとらないと、不況脱出昭和五十一年が狂ってくるんではないか。そのことは五ヵ年計画全体に影響を与えますから、この際、副総理が思い切って減税措置というものをお考えになる、考慮する余地はないのかどうか。  もう時間がありませんから、最後にもう一つ。副総理は、かつて独禁法の改正について商工委員会で、企業分割提案の入らないような独禁法の改正は意味がない、こういう御発言をなさっておられるそうでありますが、その点についても、ひとつ副総理並びに公取委員長から、どう思われるかをお聞かせいただいて、私の質問を終わります。
  45. 福田赳夫

    福田(赳)国務大臣 まずことしの春闘でございますが、まだ総体的な結果は出ておらぬ段階でございますが、大きな企業につきましては大体八%から一〇%の間で妥結する傾向のようでございます。  そういう場合に、経済企画庁が見ておる実質的な雇用者所得、つまり勤労者の総手取りがどうなるか、こういうことになりますと、私は、大体政府見通しの一人当たり一一・八、それから総体といたしまして一二・八、この線はそう変化してこないのじゃないかと思うのです。つまり雇用者所得というのは、大体半分が賃金交渉の争点となるベース賃金なんです。それから残りの半分が残業手当でありますとかあるいは賞与でありますとかその他の収入になるわけでありますが、いま景気回復期でありますので、残業手当というものなどの所定外賃金が非常にふえる傾向があるのです。このベース賃金、つまり賃金交渉、春闘で争点になっておる賃金ベースは、私どもが考えておったよりはややというか、心持ち低目であるけれども、この賃金以外の雇用者所得の要素であるところの時間外手当だあるいはボーナスだという、そういうものはかなり伸びる傾向にあるわけでありまして、それを総括してみますと、そう総体としての雇用者所得には影響はないのじゃないか、そういうふうな見方をしておるのです。  御承知のような財政状況でございまして、とにかくあれだけ巨大な赤字公債を出さなければならぬという今日でありますので、かなり堅実に伸びてきつつあるこの国民消費を、さらにこの上減税をして刺激するというようなゆとりはいまの財政にはない、こういうことで、せっかくの御提案でございまするが、これは本年度はなかなかむずかしい問題だ、こう御理解を願いたいと思います。  それから、独占禁止法の改正につきまして、私が、企業分割、これが挿入されないような内容では法改正と言えぬのじゃないかという見解を述べたというような御指摘でございますが、私の記憶では、そういう見解を述べたようには思いませんでございます。
  46. 松浦利尚

    ○松浦(利)委員 ちょっと。  見解を述べられたことがないとすれば、企業分割の入らない独禁法改正についてはどう思われますか。
  47. 福田赳夫

    福田(赳)国務大臣 独禁法についてはいろいろ御議論がありますが、しかし、あのいわゆる構造条項を削除した、いま閣議で決定された提案でも、これは独禁法とすればかなりの前進である、こういうふうに思いますので、構造条項がないからこの際改正は必要ないんだというような考え方につきましては、私は、ぜひもう一度考え直していただきたい、かように考えます。
  48. 澤田悌

    澤田政府委員 新しい政府案からいわゆる独占的状態の規制に関する条項が落ちておるということは、公正取引委員会としては残念に思いますけれども、ただいま副総理からもお話がございましたように、新しい法案にも、いわゆる過度の企業支配力の集中を防止する持ち株制限あるいはカルテルのやり得に対応する課徴金の制度を新しく設ける、罰則を強化する、いろいろ重要な改正が含まれておりますので、私ども公正取引委員会としては、この新しい案もぜひ御審議、御通過させていただきたい、かように考えている次第でございます。
  49. 松浦利尚

    ○松浦(利)委員 終わります。
  50. 板川正吾

    板川委員長 小林政子君。
  51. 小林政子

    小林(政)委員 最近の物価の動向については、いまいろいろと論議がございましたけれども、警戒をすべき動きが非常に強まってきている。私どももいろいろと数字等を調べてみますと、卸売物価指数動き一つを見ましても、これは対前年伸び率でもって昨年末には〇・八%と一%を割るというような状況もあったわけですけれども、特にことしに入りましてから、一月には二・四%、二月には三・七%、三月には四・五%と、再び上昇動きがずっと強まってきている。こういう状況の中で、これを対前月比で見てみましても、昨年の十二月〇・六%だったものが、ことしに入って一月では〇・八、二月は〇・七、三月〇・七と、連続四カ月〇・六ないし〇・八のアップで、これを年率に直すと、恐らく七%あるいは八%近くというようなことも言われています。政府見通しの年率では四・六%ということを政府は言っておりますけれども、これをも大きくはみ出してしまうのではないか。このように卸売物価上昇というものがことしに入ってから特に高騰を続けている。しかも卸売物価は、御承知のとおり、一半年くらいたちますと消費者物価にはね返ってくる。こういう点から見ても、私どもはこの動きというものは非常に警戒をしていかなければならないのじゃないか。また四月に入りましての都区部の速報では、一けた台と言われたものが四月段階では対前年月比一〇・二%と、これはもう二けた台に入っている。こういう動きが今後、公共料金の一連の値上げとかあるいはまた最近の景気回復状況の中でマネーサプライなんかも対前年比で相当伸びてきていますね。五十年代をずっと調べてみますと、一五%以下というような数字がずっと続いていたのが、五十一年度に入りましてからは一五・三%、一五・七%、こういう形でマネーサプライもここへ来て非常に急速な高まりを見せていますし、あるいは企業の手元流動性の動きなどもやはりこういった動きが出てきている。ここへ来て、予算ということもありますけれども、財政支出も相当急激に伸びて支出されるということになりますと、公共料金の一連の動き、こういう問題から見て、今後の景気動きというものは、やはりかつてのインフレ再燃への前段と同じような傾向の動きが非常に強まっているんじゃないか。私はこのように考えます。  副総理もこの点については、物価については一応安定したとはいえ警戒をしていかなければならないということを言っていますけれども、こういういまの状況の中で、物価政策として重点をどのような政策手段に置いて対処していくという方針を持っていらっしゃるのか、この点についてまずお伺いをいたしたいと思います。
  52. 福田赳夫

    福田(赳)国務大臣 小林さんの御心配されることにつきましては、私は警戒はしておる、しかし、これはまた四十七年下半期、また四十八年石油ショックまでのああいう過程につながっていくというような、そういう心配はしておらないのです。物価安定基調にある。ただ、いまさしあたり厄介なことがありますのは、公共料金をいじらなければならない、これがちょっとおもしなんですが、あの問題がなければ、かなり数字的にも安定基調というものが表現されるというような時期になってきておると思うのです。そういう基調を踏まえまして物価政策は堅実にやっていきたい、こういうふうに思っております。  卸売物価につきましては、いまの考え方見方は、景気上昇期の摩擦的現象である、こういうふうにとらえておるわけです。もとより海外要因なんかも若干響いておりますけれども、これからの推移は、警戒はしておるけれども、私はいまそう心配はいたしておりません。  それから、消費者物価は三月八・八全国ということになったわけです。その場合、東京が九九でしたが、それが四月になりますと一〇・二と、こういうふうに二けたに上りましたが、消費者物価の方も安定基調でありまして、これはそのときどきの生鮮食料品に大きく作用されるわけです。四月は冷え込みのために野菜が暴騰する、三〇%も上がるということでああいう高い消費者物価になりましたが、今日この時点になりますと、野菜もかなり出回ってまいりました。また数字的にも五月以降は、上昇のテンポはかなり鎮静してくる、こういうふうに考えておりますが、この上とも注意をしてまいります。  で、基本的には、経済成長の仕方がときに非常に急カーブで上昇するということになりますと、やはりどうしても卸売物価、消費者物価を通じて波乱含みになります。そこで、成長の管理といいますか、需要の管理といいますか、その辺にこれから特段の配慮をし、そして物価安定基調を損なうことのないように配慮をしなければならない、こういうふうに考えております。そういう基本的な考え方のもとで一つ一つの物資の需給に目を光らせてまいりたい。それから同時に、これは長い目の問題でありまするけれども、流通の問題あるいは競争の自由の問題、そういうことにつきましてもできる限りの努力をしてまいりたい、こういうふうに考えております。
  53. 小林政子

    小林(政)委員 物価は一応安定基調になっているということを主張されていらっしゃいますけれども、一つ公共料金動き心配だということは、具体的にここのところ電力料金あるいはまた国鉄、電信電話あるいは授業料、こういった公共料金の一連の値上げがずっとメジロ押しに出てきているわけですけれども、私は、公共料金の中でも国民生活景気に非常に大きい影響を及ぼすのは、一つ電力料金値上げであろうというふうに思いますけれども、この問題等についてひとつ見解をお聞かせいただきたいと思います。
  54. 福田赳夫

    福田(赳)国務大臣 電力につきましては、北海道電力初め四社から電力料金改定の申請が出ております。いまその申請に対しまして、通産省でその原価計算審査をやっておるわけであります。数日中にはその結果が明らかになるのじゃないか、こういうふうに思いますが、その通産省の査定といいますか審査の結果を踏まえまして、さあ、一般の物価にどういう影響があるか、またせっかくいま立ち直り過程に入りかかった電力消費産業企業経営の面でどういう影響が出てくるか、その辺をにらみまして、最後に政府としてどういうふうにするかを決めてまいりたい、これが今日の段階でございます。
  55. 小林政子

    小林(政)委員 電力四社から現在三〇%以上の大幅値上げ申請が提出されているわけですね。これに引き続いて他の五つの電力会社も年内にも値上げ申請をしたいという意向を表明しているというふうに伝えられていますけれども、私は、このように九社がまたここで一斉に料金を上げるということが、実際にいまこの申請どおり値上げを認めたということになれば、一体物価の観点からどういう事態になるのか、そしてまた、これについてどう対処されようとしているのか、この三〇%以上の値上げというものについて具体的にどのような見解をお持ちになっていらっしゃるのか、この点にしぼってひとつお伺いしたいと思います。
  56. 福田赳夫

    福田(赳)国務大臣 いま原価計算をしておるのですが、その計算を見た上で政府がどうするかということを決めるという手順を考えているのです。その手順の中で政府考え方が示されるわけでありますが、その政府考え中心をなすものは、物価政策との関係をどうするか、それから企業経営に与える影響、そう衝撃的なものでないようにしなければならぬという立場、これをどうするかということなんです。全体として物価それから企業経営、電力消費産業企業経営に衝撃的な影響がないようにしなければならない、こういうふうに考えておるわけです。  まあ、原価計算をした結果、これはそんな衝撃的な影響を及ぼすようなことのない低い水準でいいんだということになれば問題ありませんけれども、仮に、申請のように三九%というような数字が妥当である、こいうような通産省の原価計算の結果が出てくるということになると、三九%一挙に電力料金引き上げになるなんということになれば、これは企業から見ましても、あるいは物価というような立場から見ても、非常に衝撃的な影響があるだろうと思うのです。だから、そんな衝撃的な影響はないようにしたいというふうにいま考えまして、原価計算の取り扱いをどうするかということにつきましては、憤重に対処してまいりたいというのが今日の考え方でございます。
  57. 小林政子

    小林(政)委員 この問題については、後日物価特別委員会としても電力料金問題だけでもっといろいろと取り上げていこうというようなことも現在理事会で話し合われているところですけれども、こういうように一斉に物価に対する警戒動きが強まっている中で、特にいままでのように電力の問題にいたしましても、料金体系の問題も含めて、高度経済成長時代の体系をそのまま続けていくということではなくして、実際にはもっと国民生活、あるいは中小企業とか一般の零細な業者の生活との関連などで、料金体系そのものについても、いままでの延長線上の考え方の上に立っての取り扱いということ以上に、やはり根本的な検討が必要じゃないかということをしみじみと痛感をいたしております。  たとえば今度の値上げの内容を一つ見ましても、きょうは通産省も来てもらっていますが、私は時間がないので一点にしぼりたいと思いますけれども、従来の特約料金制度というのをそのまま残しているわけですね。そして新たに小口電力あるいはまた事業用の電力、こういったものについて逓増制を制度として取り入れていくというやり方を今回の値上げではとろうとしているわけですけれども、実際問題としてこのようなやり方をこのまま続けていくということに対しては、国民のコンセンサスといいますか、合意を得ることはできないんじゃないか、料金体系そのものについてもやはり根本的に変えていく必要があるのじゃないかということを考えているわけです。  これは改めてまた時間をかけて質疑したいと思いますけれども、時間の関係で一例だけ挙げますと、たとえば九電力の中で特約料金の供給を受けている企業は三百六十六件にわたるのですね。契約口数です。これはちょっと古い数字で、四十九年の数字です。そうして、これを結局大口電力よりもさらに割り安の——いろいろとそれは契約条件などもついておりますけれども、割り安の電力を提供するということでもって、九社でもって使っている特約の電力供給の量は六百五十三億キロワットアワーに達するわけですが、これを一般の大口電力の使用料で私ども実は計算をしてみますと九百七十二億四千二百万円、約一千億の差額が出る。非常に大きい額になるわけです。こういうものがあれば、今回零細な小口業者や、あるいはまた病院だとか学校だとかいうところに新たな特約料金制度を設けなくても、これでもってある程度カバーするということも今後できるのではないだろうか。料金体系という問題をもっと国民の合意を得られるような、こういう形で改正をしていくことが非常に重要だと私は思いますし、こういう中でやはり特約料金制度というようなものについて、これを廃止していくことが必要ではないか。これは一つの例ですけれども、非常に問題だと私は思うのです。  こういう点について、具体的に高度経済成長から低成長に移っているこういう現状の中で、電気料金値上げ問題一つをとっても、やはりいままでの考え方の上に立つのじゃなくて、新たな角度から国民の合意を得られるような形で再検討をしていくことは当然のことではないかというふうに思いますけれども、この点について通産省と、そして経企庁長官の見解をお伺いして、質問を終わりたいと思います。
  58. 服部典徳

    ○服部説明員 お答えいたします。  ただいま御指摘がございました特約料金制度でございますが、これは、たとえば昼間の負荷を夜間に移すとか……(小林(政)委員「そういうことを聞いているんじゃないのです。条件はわかっているのです。ですから結果だけを言ってください」と呼ぶ)ですから、ピークの負荷を調整するという性格のものでございますので、当然原価的に計算いたしましても、その場合には割り安な料金制度になるということでございます。  ただ、御指摘のように、その割り安の程度あるいは特約制度のあり方につきましては、料金査定の段階でさらに検討を続けたい、かように考えております。
  59. 福田赳夫

    福田(赳)国務大臣 まだ原価計算の段階の中でありまして、それに対して政府がどういう意見を申し述べるかというようなところまで来ておらないのです。そういう段階なのでございますが、御指摘の点等も十分検討いたしまして、とにかく国民の納得、合意が得られるように、また物価企業に対しまして衝撃的な影響のないように努力していく、そういう考え方でございます。
  60. 板川正吾

  61. 石田幸四郎

    ○石田(幸)委員 わずかな時間でございますので、よろしくお願いをいたします。  まず、長官にお伺いをするわけでございますけれども、日本経済は高度成長時代から、あの石油ショックを転機といたしまして、一挙に低成長時代へと変わってきたわけでございます。その石油ショックを吸収するのに両三年は必要とするであろうというような長官の御意見の表明等もありましたけれども、いままさに、そういった意味におきましては、経済社会は屈折の時代ではないか、こういうふうに思うわけでございます。しかも将来の低成長時代というのがどのような形で展開されていくのか、一般の企業にとりましても、特に中小企業等にとりましては、どういうような展開をしていくのかなかなかその方向がわからないというような声をしばしば聞くわけでございます。国民生活全般にとりましても、個別的に検討してみますといろいろな問題が中途半端なままに、特にこういうような時代でございますからよけいそうだとは思うのでございますけれども、住宅政策問題を取り上げてみても、交通政策問題を取り上げてみても、あるいは年金等の問題を取り上げてみても、なかなか大きな前進を示すことができない。そういった意味においても、国民生活全般にとりましても、まさに目標喪失の時代ではないかというような気もするわけですが、そういった意味におきまして、いよいよこれから安定成長の時代へ本格的な歩みを進めていかなければならないわけでございますから、特に経済社会にとりまして今後どういうような形で前進していったらいいかというような、新しい明確な目標を必要とするのではないか、こういうふうに私どもは考えておるわけです。  たとえば中小企業の実態等を見ましても、景気のいいときにはさほど問題になりませんけれども、一たん先般のような石油ショックが起きますと、たちまち連鎖倒産が起きて企業倒産数がふえてくるというようなことを考えますと、これからの時代は、安定成長でありますれば、やはり資本力を増加いたしまして、少々の波風には企業は倒れることはないのだというような、そういった意味の政策が必要ではないかというようなことも考えるわけなんでございますけれども、こういった意味におきまして、特に安定成長の時代に入るに際しまして、経済社会にどういう目標を立てていくべきか、この辺の御見解をまずお伺いしたいのです。
  62. 福田赳夫

    福田(赳)国務大臣 まず、新しい局面に対しましては、もう成長の高さというものをそう期待してはならない、またそれもできないことである、こういうふうに思うのです。ある程度成長を抑制しませんと、経済社会の安全保障という立場から見まして、非常に不安な問題を幾多醸し出すということになろうか、こういうふうに思うのです。  それからもう一つは、そういうときに国の歩みといたしましてどういう配慮をしなければならぬかというと、いままで高度成長というのは、これは何といっても成長中心です。さあ、産業をどういうふうに拡大するか、そのための関連の施設をどういうふうに整備するか、そういうところに重点があったのですが、これからは生活中心といいますか、国民の生活を質的にどういうふうに充実するかということに傾斜をかけての政策運営、こういうことが必要になってくるだろう、こういうふうに思います。  成長の高さというものが抑制されましても、生活充実という面は私はかなり充実できると思うのです。とにかくアメリカに次いで自由社会第二の工業力を持ったわが日本、そのわが国が実質六%の成長をするということになれば、それから生まれ出るところの果実、成果、これは偉大なものである。これの政策誘導をただいま申し上げましたような方向で過たずにやっていきますれば、りっぱな日本社会というものが実現できる、こういうふうに確信をいたしております。
  63. 石田幸四郎

    ○石田(幸)委員 その国民生活の質的向上という問題については、私どもも異論がないわけでございますけれども、しかし、六%の成長率の中から生まれてくる果実といいましても、これはすべてのものを短期間にやり切るというような状況にはならないと思うのですね。たとえば住宅問題一つを取り上げてみましても、最近の家族四人ぐらいの民間の住宅を取り上げてみましても、名古屋市あたりではすでにもう民間の家賃というのは五万円というようなことです。収入が十五万としても、三分の一は住宅費にとられるというような状況になっております。政府の言われる公共住宅建築という問題を取り上げてみると、そういう問題が進んでいるかといいますと、最近は環境面の問題等においてなかなか進まないですね。住宅公団の問題一つ取り上げてみても、たとえばこの間の東京の江戸川の方ですか、六価クロムの問題等において入居者がないというような状況、あるいは愛知県におきましても、ある町におきましては、とても町の負担がなし切れないから、大型のそういった公団住宅を建てては困るということで、もう七年間も四十万平米の土地があいているというような状況でございまして、そういうような問題一つ一つ取り上げてみましても、やはり国民生活全般を考えてみても、住宅も教育費の問題も年金もあるいはその他の国鉄運賃の問題も、すべてを短期間に全部解決してもらいたいというふうにはなっていないと思うのです。  それで、その国民生活の質的向上というものを、何と何を中心にまず進めていくのだという、少なくとも五年間ぐらいの目標をつくって進めていかなければ、国民としても明確な目標を定めにくいから、常にいろいろな問題で不満を抱きつつ、精神衛生上きわめてよくない状態で政治を見詰めているのではないか、私はこういうふうに思うわけでございまして、さらにもう少し突っ込んだ、国民生活の質的向上の目玉はどう考えるか、ここら辺についてお伺いしたいと思いますが、いかがでしょう。
  64. 福田赳夫

    福田(赳)国務大臣 私は、これから目玉といいますれば、衣食が足ってきた、そこで住の問題になってくる、こういうふうに思います。  しかし、狭い意味の住宅ばかりで生活の安定感というわけにはまいりません。生活環境の整備、そういう問題があります。それは公園の施設でありますとか、そういうものまでも含めまして生活環境の整備、こういうことが重要になってくる。ですから、いろいろありますが、住宅を中心とし、また生活環境を整えるということが、これからの長期展望の中では中心にならなければならない。したがって、それについて国家資金の配分等につきましても傾斜をした考え方、これが必要になってくる、こういうふうに考えております。
  65. 石田幸四郎

    ○石田(幸)委員 それからもう一つ。最近の状況を見ておりますと、それぞれの大企業におきましては、非常に稼働率が低いために、失業者二百万なんて言われておりますけれども、実質的にはもっと多いんだがという発言がしばしば新聞等に出ます。また中小企業等におきましてもなかなか仕事がなくて困っているというような声もまだ出てくるわけですけれども、いずれにしても私は、今後の経済活動というものはなかなかなだらかな線で進んでいくのは容易なことではないのではないか、やはり多少のこぎり型の、そういう景気の動向で推移していくんじゃないかということも考えられるのですね。たとえば物価が、本年度末どうなるかわかりませんけれども、必ずしも楽観を許す状況にない。そうすると、物価を抑えるためにはやはり金融引き締めを行わなければならないということもございます。また、この間の大蔵省の新聞等の発表を見ますと、いわゆる公共事業投資予備費一千五百億、これも凍結しなければならぬのではないかというような新聞記事等も出ておりますと、やはりのこぎり型にならざるを得ないんじゃないかと思うのです。  そういう面から考えて、やはり企業がそういういろいろなあらしに耐え得る措置というものをこの際かなり強力に進めていく必要があるのではないか。やはり自己資本力の強化というふうな問題などはかなり強く政策的にも打ち出していく必要があるのではないかと思うのでありますけれども、ここいら辺の問題について、長官、どうお考えでしょうか。
  66. 福田赳夫

    福田(赳)国務大臣 私は、新しい社会、その中では、企業も家庭も新しい構えをしなければならない、こういうふうに考えております。その一つは、いま石田さんの御指摘の、企業で言えば、自己資本の充実の問題です。まあ、企業に限りません、家庭でもそうですか、ストック、これを充実するという、こういう時代に入ってきた。大きく言うと、それが非常に重大な問題になってきた世の中である。また、それができると大変いいことである。企業でも家庭でも、多少社会環境の変化がありましてもそれに耐え得る体質になる。  国の政策、いろいろな面で改めなければなりませんけれども、一つの大きな柱としてはストックの充実、これが国民各階各層において求められておる、こういうふうに考えております。
  67. 石田幸四郎

    ○石田(幸)委員 時間がありませんから、あと二問ぐらいにしておきたいと思いますが、先ほど長官が、これからの低成長時代においては生活環境整備というものが軸になって動いていかなければならないというようなお話がございましたけれども、本年度予算のいわゆる不況対策の方向から考えてみますと、これは三兆五千億程度の公共事業対策費が出るわけでありますけれども、どうも先ほどのお話とは若干その方向が矛盾をしているのじゃないかと思うのですね。  と申しますのは、この間予算委員会でも大蔵大臣と若干議論のやりとりをしたのでございますけれども、地方財政が逼迫いたしておりまして、政府はたしか百二十何%かの公共事業費総体のうちで特に生活環境整備の公共事業費がアップしているんだというようなお話でございましたけれども、私どもは各県の地方自治体の予算をいろいろ検討してみますと、やはりそういったものは前年度に比べますとマイナス傾向を示しておるわけですね。四十九年度あたりから見ると大幅なマイナス傾向を示しておる。そうしますと、どうも政府がもくろんでいるこの公共事業による景気対策というのは、必ずしも効果が上がらないのではないかという、そういう面を私どもは非常に心配をしておるわけでありますけれども、それについてどうお考えになるか。あるいは、本年度の予算だけではなく、来年度予算の方からもう少し生活環境整備という方向が強くなり得る可能性があるのかどうか。私どもは特に本年度予算に対しまして、やはり景気対策ということは地域的な偏差があってはならない、それから業種別の格差があってはならない、そういった意味において、かなり住宅が不足をいたしておるわけでありますので、住宅政策に力点を置いてやれば、北は北海道から南は沖縄に至るまで平均的な需要を喚起することができるのではないかということで、かなりいろいろな角度から申し上げたのでございますけれども、そういった意味におきまして、ひとつもう少し生活環境整備の目玉になるようなそういう財政運用をぜひ政府にとってもらいたい、こういうふうに思います。  したがって、質問の要点は、今年度の公共事業対策というものが政府が本当に予期しているほどの効果が出るのかどうか、それから、来年度のそういった予算編成の方向の中に生活環境整備というのが強く出る可能性を期待していいのかどうか、この二点をひとつ。
  68. 福田赳夫

    福田(赳)国務大臣 こういう経済の停滞期におきましては、どうしてもこれは財政の役割りというものが非常に景気政策上も重要なんです。五十年度を顧みてみますと、大体実質で二・六%ぐらいの成長になっております。設備投資が四十九年度、前年度に比べましてマイナスの一〇%になる、それから輸出がもう横ばいである、しかも世界の先進諸国は全部マイナス成長だ、そういう中でわが日本がなぜ二・六%成長が実現できたかということを考えてみると、やはり国民の消費、これは着実に伸びているのです。五%は伸びたであろう、こういうふうに見ております。そこへ第一次、第二次、第三次、第四次と政府がいろいろの施策をしております。その中心は財政需要を喚起する、こういうことなんであります。その財政需要が実に四十九年度に比べますと実質で九%、それくらい国経済全体の上昇に寄与しているわけなんであります。この財政の役割りというのは、景気の動向に非常に大きな影響を持つわけです。  そういうことを考えまして、五十一年度におきましても財政、これは景気政策上非常に重視したわけです。幸いに五十一年度は輸出環境がよろしい。輸出と財政、これが二つの牽引力となってかなりの高さの成長が期待できる、こういう状態であります。予算はそういうふうに五十一年度としてはなっておるわけでありますが、その実効、これを所期のように上げていかなければならぬ。そのためには、予算は数日後には成立しますが、この予算の執行を適正にする、こういうことを行政当局としては格段の配意をしていかなければならぬ、こういうふうに考えております。五十一年度も財政の役割りは、そういう意味合いにおいてきわめて重大な役割りを持つわけでありまして、非常に苦しい中ではございまするけれども、赤字公債まで出してそういう任務を財政に担わせる、こういうことにいたしたわけであります。
  69. 石田幸四郎

    ○石田(幸)委員 言わんとするところはわからぬでもないのでございますけれども、これからの時代を考えますと、やはり生活環境整備、重要な問題でございますので、国民がなるほどこれならばわれわれの生活環境整備は相当前進するだろうというふうな、そういう性格をひとつ明確に打ち出していただきたいという要望をいたしておきたいと思います。  時間もありませんから、いろいろな問題、御意見伺いたいのでありますけれども、最近、この二月でございますけれども、公明党が中小企業の全国の実態調査を対象約五千件、議員を約三千人ぐらい動員いたしましてこれをやったのでございます。この中でいろいろな問題点がありましたけれども、いわゆる金融問題の中で歩積み両建ての問題、これは予算委員会でも大蔵委員会でもここの物価委員会でもしばしば問題になっているのでございますけれども、公明党の調査の数字を見ますと、歩積み両建てが行われているのは、その五千件ぐらい調査した中におきまして約二七%あるというのです。この前、公取の資料をいただきましたときには、信用金庫、信用組合等において二五%というような数字が出ております。さらにまだ個人名義の別建て預金というのを調べてみますと、一九%あるわけですね。この両方足して四六%というわけにはまいりませんけれども、少なくともその実態から見ますと、歩積み両建てのたぐいのものが三〇%を超すのではないかというような、そういう感じすらするわけでございます。  そこで、金融政策の上から考えましても、この歩積み両建てを何とかなくしていかなければならないし、なくしていくことによって通貨の発行高、その健全性が確保されるのではないかと思いますし、また商売のいろいろな取引上の不信感というものも取り除くことができるのではないか、各企業の運営のための着実性というのもより高くなるだろう、こういうふうに考えるわけです。  また、これは公取委員長にお伺いしますが、独禁法の立場からいきましても、明らかにこれは力の優位性で経済活動を支配しておる、そういった意味においては、経済活動の公正が著しく失われておるわけですね。経済活動の平等という立場から考えてみても、もっと強力にこれらの問題公取委員会としても推し進めていただかなければならぬのではないか、こういうふうに思うわけです。  こういうような、中小企業対策という立場から考えてみましても、どうも政府は日本は輸出で食っていかなければならないというようなことから、大企業優先で中小企業はいつもしわ寄せを受けているじゃないかというようなことで、そういったところにもいろいろな政治不信が渦巻いているわけですね。その不信の渦巻いている原因は、やはり不公正な取引が厳然として慣行として生きているというところに問題があると私は思うのです。こういうのを一つ一つきちんと整理をしていかないと、少なくとも経済運営の上でそういった公正が保たれるように、かなり強力な努力が行われているというようなことが表面に出てこなければならぬのではないか、こういうふうに思うわけです。きわめて一般論的なことかもしれませんけれども、この際、長官公取委員長からお伺いをして、終わりにしたいと思います。
  70. 福田赳夫

    福田(赳)国務大臣 御指摘の歩積み両建ての問題、これはいわゆる拘束性の預金ですね。この面からはかなり整理をされてきておるのですが、しかし、そうじゃなくて、拘束性のある預金のほかに、一般的にその預金と称されるものはかなりある。つまり債務者預金という立場から見ますと、これはかなりの多額なもので、びっくりするくらい多いわけなんです。これが存在するということになりますと、実際上の債務者の金利負担を重からしめる、こういうことになるわけでありまして、私どももどういうふうにしたらこの問題が解決されるだろうか、こういうことを常々考えておる。私も私なりにいろいろ考えを持っておるのですが、確かに御指摘のように、歩積み両建て、これは一般的な意味においての歩積み両建て、こういうことになりますと、これは確かに何とか工夫をこらさなければならぬ問題だ、こういうふうに考えます。今後ともいろいろ考えをめぐらしまして、何とかこの問題が今日のような非常に激しい状態でないような状態になるように努力してみたいと思います。
  71. 澤田悌

    澤田政府委員 御指摘のように、行き過ぎました歩積み両建てが独禁法上の不公正な取引に該当いたしますことはおっしゃるとおりでございまして、私どもの態度もその点は明確でございます。従来も、申告等がございますれば、それによって判明した事例については厳重に排除措置をとっておりますが、今後も一層厳正な姿勢で臨みたいと考えておる次第でございます。  なお、一般的な対応策といたしましては、御承知のように、年二回公正取引委員会におきまして実情調査をいたしております。これは銀行から金を借りている者について、主として中小企業でございますが、調査をいたしておりまして、これによりましてその実態を把握いたしまして、具体的な事例には、先ほど申しましたように、厳重に対処してまいりたいと思います。と同時に、これは銀行行政の面もございますので、問題につきましては銀行局に連絡の上、銀行行政の立場からも対処していただく、こういうような考え方で今後も厳重にやってまいりたいと考えております。
  72. 石田幸四郎

    ○石田(幸)委員 時間がありませんので、個別の問題についてこれ以上深く突っ込むことはできませんけれども、この問題はかなりもう長期にわたって話題になっている問題でございますので、ひとつ早い機会にこれを解決するようにお互いに努力をしなければならぬわけでございますので、また物価委員会等においても個別にやりたいと思います。以上です。
  73. 板川正吾

    板川委員長 和田耕作君。
  74. 和田耕作

    ○和田(耕)委員 一時から本会議のようでございますので、お食事の時間もありますから、早目に終わりたいと思っております。  まず第一にお伺いしたいのですけれども、いわゆる春闘の賃上げの問題なんです。昨年は物価が一四・二でしたかのアップに対して賃上げが一三・一ですか、今年は物価が八・八という三月期のあれに対して、まだはっきりしないようですけれども、大企業はその程度としても、全国平均になれば七%以下になるという見通しもあるわけなんです。つまり、このような賃上げの実情というのは非常に意外な結果なんですね。これは労働組合も相当の力を持っておる。そして相当の賃上げがなければ景気の回復もむずかしい。つまり個人消費のアップもむずかしいというように、いろいろ議論されておる状態であったのに、消費者物価よりもかなり下回る実績しか得られなかったという事実があるわけです。これは来年どうなるか。多分こういう傾向が続くと思うのです。  この問題についての見方なんですけれども、いままで高度経済成長期では、ずっと物価を上回る大幅な賃上げが行われてきた。労働組合の団結力あるいは闘争力というものが非常に高く評価されてきておったのですけれども、この二年間の状態を見ますと、相当の力を持っておる労働組合がおるにもかかわらず、一般の予想よりもはるかに下回る結果になっておるというこの事実をどのようにごらんになっておられるのか、長官、ひとつ御所見をお伺いしたい。
  75. 福田赳夫

    福田(赳)国務大臣 そういう和田さんのようなお話をされる方があるのでありますが、事実はそういうふうになっておらぬ、こういうふうに思うのです。つまり名目賃金ですね、これはかなり現実的には伸びておるわけなんです。それはたとえば数字が非常に明確に示しておりますが、ことしになりましてからの名目賃金の伸びが一月に一三・一である。二月が——これは前年同期比ですね、二月が一三・九、三月が一四・九、こういうことになる。一方、物価上昇傾向は非常になだらかになってきておる。この三月にはとにかく八・八、こういうふうになっております。したがって、名目賃金、これは物価上昇率に比べますと、かなり伸びておる、こういうことなんです。したがって、実質賃金が伸びておるわけでありまして、一月は三・八、二月は四・二、三月は五・五伸びる、こういうことになっておるわけです。  なぜ名目賃金がこういうふうに伸びてくるかというと、先ほども加藤さんにお答え申し上げましたが、名目賃金の中で、この半分ぐらいが賃上げ闘争の対象になるベース賃金なんです。あとの半分ぐらいは、これは所定外賃金と称するもの、そのうちで大きなものは何といっても残業手当でありますとかあるいはボーナスである、こういうのですが、そういうものを全部ひっくるめての名目賃金である、こういうわけなんです。  そういうことで、その全部をひっくるめまするときに、たとえベース賃金、つまり春闘の論じておるところの名目賃金が、これが私どもが経済見通しで思ったよりやや心持ち下目に仮に決まるにいたしましても、今度は、他の所定外賃金の方がかなり伸びる。そういう予想もありますので、雇用者所得としては、これは経済見通しで見ておるところとそう大きな差はない、こういうふうに思いますが、要は、実質賃金が一体どういうふうになるかということなんで、その点をにらんでこの賃金問題を評価しなければならぬじゃないか、そういうふうに考えます。
  76. 和田耕作

    ○和田(耕)委員 いまおっしゃるような問題ではなくて、私、いま御質問申し上げておるのは、物価のアップに比べて賃金のアップの方が低目になっているということですね。つまり、先ほど申し上げたように、昨年では一四・二の物価のアップに対して賃金のアップは一三・一。今年は物価の八・八に対して、まだはっきりわからないけれども、恐らく八以下だというような、普通考えますと物価のアップの率よりは賃金のアップの方が上回っていくというふうに一般にも予想されておったのが、物価のアップにも率として達しないというこの事実をどう見るかということなんです。  これはきょうは時間がありませんのであれですが、経済法則といいますか、労働力の需給という問題が、高度経済成長のときもあるいは減速の現在の場合もやはり決定的な要素ではなかったのかということですね。そういうふうなことになると、ある一定の実質成長というものを維持するということは、国民生活の側から見て非常に重要な要素を持っているという感じがするわけなんですね。  そういうような点でございまして、副総理は今年六%強の実質経済成長とおっしゃっておられるのですけれども、この問題が後で申し上げる物価問題との関連でどのようなことになるのか、私、非常によくわからない面が多いのでございます。したがって、まずそういうようなことをお考えになっていただいたところで、この四月の消費者物価上昇、三月に比べて二・七というかなり異常なアップをしておるわけですね。これはいろんな意味で予想されないことはなかったんです。三月の物価は野菜その他に対していろいろ補助金を出したり、農林省もずいぶん苦労惨たんして、経済企画庁もずいぶん苦労して公約をかろうじて維持した。四月になれば見ていてごらん、うんと上がるんだからという予想もあったんですけれども、それを裏書きするような形で二・七%もアップしている。この二・七というのは、狂乱物価時代の率に近づいている率であって、相当異常な感じを一般に与えておると思うんですけれども、これは五月にはなかなかそういうふうな状態にはならないという説明もあるようですが、この問題についてひとつ経済企画庁としての端的なお答えをいただきたいと思います。
  77. 福田赳夫

    福田(赳)国務大臣 四月の東京の消費者物価は大変上がってしまった。これは二・七という非常に高い上昇だったわけです。これを分析してみますと、野菜なんです。野菜が前月比で三〇・四%の上昇だ。それから次いで教育費でありまして、これは年度がわりでありますもんですから、幼稚園の授業料だ何だ、そういうものであります。これが一八・七%の上昇でありまして、その他そう大きな問題はないのですが、それがどういうふうに二・七%に寄与しておるかということを見てみますと、野菜が一・〇七なんです。これは大変な押し上げ要因だったわけです。それから教育費が〇・七二、こういうことなんです。これはしかし非常に臨時的、季節的なものであるという見方でございます。でありまするから、そういう季節商品を除きますと、東京の四月といえども非常に堅実でありまして、前年同期比の上昇率は八・七、こういうことになるわけなんです。現にいまごろは、野菜なんかは四月に暴騰いたしましたけれども、四月末また今日になりますと、出回り期になってまいりまして、これは今度大変な暴落をする。たとえば私どもの家庭なんかで買います大根なんか、高いときには一本四百円したんだ。最近はこれが五十円、六十円、そういうところまできておるわけです。そういう季節性というものが大きく響いてくるであろう、こういうふうに見ておるわけであります。  基調としては安定基調を進んでおる。ただ、季節的にどうにもならぬ天候というようなものがあるもんですから、ジグザグはありませんけれども、なだらかに鎮静に向かって動いているという見解でございます。
  78. 和田耕作

    ○和田(耕)委員 スタグフレーションという問題考えながら、私、御質問申し上げておるのですけれども、三月はさんざん苦労して野菜の値段を抑えた、しかし四月はそう苦労しなかった、これは本当ですか。
  79. 福田赳夫

    福田(赳)国務大臣 それは違います。野菜の暴騰に寄与いたしましたのは、一に天候でございます。
  80. 和田耕作

    ○和田(耕)委員 確かに教育費の問題は相当のウエートを占めておると思うのですけれども、先ほど来話になっております卸売物価上昇というのは、もう次第に悪い効果を及ぼしてくる。特に企業景気がよくなれば恐らく物価を上げようという意欲がかなり強いようなことは、いろいろな調査でわかるわけなんですけれども、私はこれで思い出すのは、ちょうど一番問題昭和四十七年のたしか一月から七月まで、ずっと卸売物価が上がったときがございました。あの七月に田中内閣が出現をして日本列島改造論をぶち上げた、そして急上昇したというのが四十七年の一月から七月までの卸売物価のずっと漸騰の時期だったと思うのですけれども、今度は田中内閣の出現というような要素がどういうことになりますか、福田内閣の出現というものがあるかもわかりませんけれども、そういう要素はないわけです。やはり国鉄運賃とか電話料金とかいうふうな問題が、あるいは景気の予想以上の上昇ということがあって、物価にまたある程度の、あの当時のものでなくても、火がつくようなことは、これはよほど警戒をしておいていいと思うのですけれども、その問題についてはいかがでしょうか。
  81. 福田赳夫

    福田(赳)国務大臣 全体として私は卸売物価も消費者物価安定基調をたどる、こういうふうに見ております。昨年だって、公共料金、かなり上げたんですよ。郵便料金だ、たばこだ、かなりの引き上げをし、それが全体といたしますと、他の地方の公共料金、民間の企業公共料金、そういうものをひっくるめますと二・七%の影響を持った。それでも物価安定基調に向かったわけです。そして昨年は一四%、昨年三月の上昇率は一三%だった。それが八・八になってきたわけです。ことしは公共料金全体といたしまして——これは国鉄も上がる、あるいは電信電話料金も上がります。上がりまするけれども、全体として、電力、あるいはバスだ、そういうものまでひっくるめまして二%強ぐらいな程度になる、またそういうふうに指導したい、こういうふうに考えておるのです。  そうしますと、公共料金の面から見ましても五十年度よりは楽な状態なんです。しかも、基調といたしまして、さあ、先はインフレだ、いまのうちに買っておけ、そういう思惑的な要素は私はこの目で見られないというような状態であります。政策運営さえ誤りなくやっていきますれば、さらに基調を固め得る、こういうふうに考えています。
  82. 和田耕作

    ○和田(耕)委員 昨年と今年とのはっきり違う点は、景気問題だと思うのですね。昨年は景気はかなり冷え切った形で、副総理のかなり楽観的な見通しもあったのですけれども、楽観を下回ってずっと冷え切った形で年末までやってきた。この年初までは非常に悲観的な空気だった。しかし、今年は違いますね。もう日銀等にしても景気の底入れをあるいは否定する、すべての指標が上がるという形になってきておる。そして予算の執行が本格的になってくる。そういう問題が背景にあるので、去年の状態とは全く違った状態だ、これはやはり勘定に入れておかないといけない問題だと私は思うのですね。  とにかく卸売物価はずっと漸騰を始めてきておるといった問題、そして人の気持ちもずっと、まあ、いままでの景気回復のときのパターンを思い出せば、心理的には非常に大きな要素だと思うのですね。そういうようなことを含めて、やはり物価問題については四月の二・七、これは季節的な要因がいろいろあると思いますけれども、季節的な要因というのは三月も同じくあったと思うのですね。この二月、三月、四月あるいは五月でも、気候はかなり異常なんですから、やはりそういう問題考えておかなければならない要素だと思うのですけれども、副総理物価指導によって非常に成功して物価がおさまってきた。しかし、おさまってきたということで、この状態が今後続いていくというふうにごらんになると、いわゆるスタグフレーションという問題の実態との関連で正しく見るゆえんではないのじゃないか、もっと警戒的に見たらいいのじゃないかという感じが私はするのです。  まあ、これは意見でございますけれども、そういう意見を申し上げまして、私の質問を終わりたいと思います。ありがとうございました。
  83. 板川正吾

    板川委員長 次回は、来る十一日火曜日、午前十時から理事会、午前十時十分から委員会を開会することとし、本日はこれにて散会いたします。     午後零時四十六分散会