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1976-05-13 第77回国会 衆議院 内閣委員会 第7号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十一年五月十三日(木曜日)    午前十時三十九分開議  出席委員    委員長代理 理事 木野 晴夫君    理事 阿部 喜元君 理事 竹中 修一君    理事 藤尾 正行君 理事 松本 十郎君    理事 上原 康助君 理事 大出  俊君    理事 中路 雅弘君       有田 喜一君    大石 千八君       中馬 辰猪君    旗野 進一君       林  大幹君    三塚  博君       箕輪  登君    吉永 治市君       石橋 政嗣君    木原  実君       山本 政弘君    和田 貞夫君       鬼木 勝利君    鈴切 康雄君       受田 新吉君  出席国務大臣         法 務 大 臣 稻葉  修君         国 務 大 臣         (総理府総務長         官)      植木 光教君         国 務 大 臣         (防衛庁長官) 坂田 道太君  出席政府委員         人事院総裁   藤井 貞夫君         人事院事務総局         任用局長    今村 久明君         人事院事務総局         職員局長    中村  博君         内閣総理大臣官         房総務審議官  島村 史郎君         総理府人事局長 秋富 公正君         行政管理庁長官         官房審議官   川島 鉄男君         行政管理庁行政         管理局長    小田村四郎君         防衛政務次官  加藤 陽三君         法務政務次官  中山 利生君         法務大臣官房長 藤島  昭君         法務大臣官房司         法法制調査部長 賀集  唱君         法務大臣官房訟         務部長     貞家 克己君         法務省民事局長 香川 保一君         法務省刑事局長 安原 美穂君         法務省人権擁護         局長      村岡 二郎君         法務省入国管理         局長      影井 梅夫君  委員外出席者         人事院事務総局         給与局次長   角野幸三郎君         警察庁刑事局保         安部防犯課長  四方  修君         防衛庁人事教育         局厚生課長   原中 祐光君         法務大臣官房営         繕課長     水原 敏博君         法務大臣官房審         議官      鈴木 義男君         法務省刑事局青         少年課長    村上 尚文君         法務省刑事局公         安課長     石山  陽君         法務省刑事局参         事官      山口 悠介君         法務省入国管理         局次長     竹村 照雄君         大蔵省理財局特         別財産課長   松岡  宏君         労働省労働基準         局労災管理課長 田中 清定君         会計検査院事務         総長      鎌田 英夫君         内閣委員会調査         室長      長倉 司郎君     ————————————— 委員の異動 五月十二日  辞任         補欠選任   大石 千八君     丹羽 兵助君   吉永 治市君     本名  武君   受田 新吉君     安里積千代君 同日  辞任         補欠選任   丹羽 兵助君     大石 千八君   本名  武君     吉永 治市君   安里積千代君     受田 新吉君     ————————————— 五月十三日  旧陸軍又は海軍の戦時衛生勤務に服した者に係  る恩給法の特例に関する法律案片岡勝治君外  一名提出参法第一六号)(予) は本委員会に付託された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  防衛庁設置法及び自衛隊法の一部を改正する法  律案内閣提出第三号)  一般職職員給与に関する法律等の一部を改  正する法律案内閣提出第四八号)  国家公務員災害補償法等の一部を改正する法律  案(内閣提出第五三号)  法務省設置法の一部を改正する法律案内閣提  出第五号)      ————◇—————
  2. 木野晴夫

    木野委員長代理 これより会議を開きます。  防衛庁設置法及び自衛隊法の一部を改正する法律案議題といたします。  趣旨説明を求めます。坂田防衛庁長官
  3. 坂田道太

    坂田国務大臣 防衛庁設置法及び自衛隊法の一部を改正する法律案提案理由及び内容概要について御説明いたします。  まず、防衛庁設置法の一部改正について御説明いたします。  これは、自衛官の定数を、海上自衛隊八百十一人、航空自衛隊六百七十七人、計千四百八十八人増加するための改正でありまして、海上自衛官増員は、艦艇、航空機就役等に伴うものであり、航空自衛官増員は、航空機就役等に伴うものであります。  次に、自衛隊法の一部改正について御説明いたします。  これは、航空自衛隊第三航空団司令部の所在地を愛知県の小牧市から青森県の三沢市へ移転するものでありまして、当該部隊任務遂行の円滑を図るためであります。  以上、法律案提案理由及び内容概要を御説明申し上げましたが、何とぞ慎重御審議の上、速やかに御賛成くださいますようお願いいたします。
  4. 木野晴夫

    木野委員長代理 これにて趣旨説明は終わりました。      ————◇—————
  5. 木野晴夫

    木野委員長代理 次に、一般職職員給与に関する法律等の一部を改正する法律案議題といたします。  趣旨説明を求めます。植木総理府総務長官。     —————————————
  6. 植木光教

    植木国務大臣 ただいま議題となりました一般職職員給与に関する法律等の一部を改正する法律案について、その提案理由及び内容概要を御説明申し上げます。  一般職職員給与に関する法律及び学校教育水準維持向上のための義務教育学校教育職員人材確保に関する特別措置法並びに義務教育学校等女子教育職員及び医療施設社会福祉施設等看護婦保母等育児休業に関する法律規定に基づき、去る三月十一日、人事院から国会及び内閣に対し、それぞれ教育職員給与改善すること及び女子教育職員看護婦等職員に対し、育児休業給を支給することを内容とする勧告が行われました。政府としては、その内容検討した結果、これらの法律趣旨にかんがみ、人事院勧告どおりこれを実施することとし、このたび、一般職職員給与に関する法律等について、所要の改正を行おうとするものであります。  次に、法律案内容について、その概要を御説明申し上げます。  第一は、義務教育学校等に勤務する教育職員に支給する義務教育等教員特別手当支給月額限度額を一万百円から一万五千二百円に引き上げることとしております。  第二は、当分の間、義務教育学校等女子教育職員及び医療施設社会福祉施設等看護婦保母等職員に対し、育児休業の期間中、育児休業給を支給することとし、その支給月額は、俸給の月額職員の所属する共済組合掛金率を乗じて得た額とすることとしております。  第三は、特別職である防衛庁職員についても、一般職国家公務員の例により、育児休業給を支給することとし、また地方公共団体職員に対しても、条例で育児休業給を支給できる措置を講ずることとしております。  また、附則においては、これらの実施時期について、義務教育等教員特別手当は本年三月一日から、育児休業給については本年四月一日から実施すること等について規定しております。  以上が、この法律案提案理由及びその内容概要であります。  何とぞ、慎重御審議の上、速やかに御賛同くださいますようお願い申し上げます。
  7. 木野晴夫

    木野委員長代理 これにて趣旨説明は終わりました。      ————◇—————
  8. 木野晴夫

    木野委員長代理 次に、国家公務員災害補償法等の一部を改正する法律案議題といたします。  質疑の申し出がありますので、これを許します。和田貞夫君。
  9. 和田貞夫

    和田(貞)委員 国家公務員災害補償法あるいは地方公務員災害補償法というのは、もともと昭和二十二年の四月七日に労働基準法ができて、それに伴って労働者災害補償保険法というのができたわけですから、国家公務員法地方公務員法のなかったときには、労働基準法あるいは労働者災害補償保険法、これの適用を国家公務員地方公務員も受けておった。したがって、この労働者災害補償保険法というのがやはり基本になってくるわけです。おのずから労働者災害補償保険法性格なり基本的な考え方なりが、やはりこの国家公務員災害補償法地方公務員災害補償法に影響、関連をしてくるわけです。  一方、社会労働委員会の方では、もうすでに労働者災害補償保険法が通過しておりますが、労働者災害補償保険法性格というのは、当初制定されたときから、文章表現にかかわらず——その文章表現というのは、おのずからこの法の性格をあらわしてくるわけですが、だんだん性格が変わってきているように思うわけです。たとえば労働者災害補償保険法で、当初は「災害補償を行い、」という、補償というたてまえをとっておった。それが「保険給付」という表現に変わってきているし、今度の労働者災害補償保険法改正案では、さらにそれが「必要な保険給付」を行う。いつの間にやら「災害補償」というのが「保険給付」という形になってきている。そこらあたり国家公務員災害補償法審議をする前に当たって、その基本になる労働者災害補償保険法性格がその表現どおりに変わってきておるのはどういうことなのかということを、労働省お見えになっておりますから、労働省の方からまずお聞かせ願いたいと思います。
  10. 田中清定

    田中説明員 ただいま先生の御指摘のように、昭和二十二年に労働基準法労災保険法が同時に制定されたわけでございますが、その段階労災保険法内容は、労働基準法災害補償中身をほとんどそのまま保険給付の形で制度化したという内容となったわけでございます。それが昭和三十五年の法改正のときに、打ち切り補償にかえて長期傷病者補償ということで年金を含んだ給付を設け四十年にはその年金額をさらに幅を広くするということで、補償中身労働基準法の範囲を越えて拡大をされてきたという経過がございます。その間、昭和四十八年に、通勤災害についてもこれを保険給付対象にするということで、労働基準法上の災害補償のほかに通勤災害も含めて保険給付対象に入れた。このときに、目的規定に「迅速且つ公正な保護をするため、災害補償を行ない、」という字句を「保険給付を行ない、」という字句に改めたわけでございます。  改めた理由といたしましては、通勤災害に対する給付労働基準法上の災害であるかということになりますと、やはり労働基準法では業務災害のみを補償対象にしておりますので、災害補償という言葉をそのまま通勤災害の場合に使うのはやはり問題があるんじゃないか。現に労災給付中身をごらんいただきましても、業務災害に関するものは何々補償給付という中身内容を書いてございます。これに対しまして通勤災害に関する給付の方は、補償給付を抜いて別の系列の給付という名前にしておるわけでございますので、両方をひっくるめて一つ言葉で言いあらわすために「保険給付」という名前に切りかえたわけでございますが、業務災害に関する給付部分災害補償という性格を持っていることはいささかも変わりはないというように考えております。  それと、今回の改正保険給付の上に「必要な」という形容詞をつけたわけでございますけれども、これは従来の規定では、迅速、公正な保護をするため保険給付を行うということで、表現としてやや舌足らずではないかという感じがあったわけでございます。これこれのためという目的を書いて、それに「必要な保険給付」ということが言葉としても自然であろうということで、いわば表現上の改善を図ったというふうに考えておるわけでございます。したがいまして、「必要な」という字句を入れたことが給付中身に具体的に影響する、あるいは給付の解釈に影響するというふうには考えておりません。それほど積極的な意味はございませんけれども表現整備と申しますか、目的保険施設に関する規定を改めたということとあわせて、字句の面での整備を図った、こういう趣旨でございますので、字句の変更によって労災法性格が変わったというふうには考えていないわけでございます。
  11. 和田貞夫

    和田(貞)委員 さらに労災補償保険法の目次中に、「保険施設」を「労働福祉事業」というように改めるということになっていますね。一条では、災害補償を行う、あわせて労働者福祉に必要な施設をなす、これは公傷をカバーするためにあるべきものです。いま補償というのが給付というような性格に変わってきているということとあわせて、労働者に対するところ福祉施設というのは福祉事業ということにも変わってきている。だから当初この保険法ができた性格とこの二つの面を合わすと、本来補償でなくてはならないのが何か給付事業というような性格に変わってきている、こういうように私は受けとめるわけです。そうじゃないですか。
  12. 田中清定

    田中説明員 御指摘の点につきましては、先ほども申し上げましたように、災害補償という言葉給付に変わったというのは、通勤災害を含めて総称するために変えたわけでございますので、業務災害に関する給付部分災害補償としての性格が変わったということではないと考えております。  それから、従来の現行規定が「必要な施設をなす」という表現をとっておるのでございますけれども、これは表現自体として施設とは何かということになりますと、やや表現としては古い表現に属することではないかというようにも考えられますし、また発足以来、保険施設中身労災病院であるとかリハビリテーションであるとかあるいは安全衛生対策であるとかいろいろなものを徐々に拡大をしてまいりました。施設中身も、必ずしも病院その他のいわゆる施設というものに属さな  い援護事業ども含まれるようになっております。そういう中身を勘案いたしますと、やはり表現を改めて、施設事業というふうに言いかえた方が実際に即するのではないかというふうに考えられるわけでございますし、また、従来、「労働者福祉に必要な施設」ということできわめて抽象的かつ漠然と書かれておりましたのを、この際具体的な中身に即して、社会復帰に関する事業であるとかあるいは援護に関する事業であるというように中身をある程度具体的に明記して、この性格を明らかにした方がいいのではないかと考えて字句整備をしたわけでございます。もちろん労災保険基本的な性格災害補償にあるということは当然でございます。福祉事業というのは、あくまで基本になる事業に対する付帯的な関係にある事業、こういうふうに考えますので、全体としての制度の幅は広がってまいりましたものの、基本的な性格が変わったというふうには私ども必ずしも考えていないわけでございます。その辺は労働災害発生状況であるとかあるいは被災者の実情であるとか、諸般の事情に即応して制度改善整備を図るということから、制度中身が幅も広くなり、あるいは奥行きも深くなるというふうに考えるわけでございます。
  13. 和田貞夫

    和田(貞)委員 通勤災害が入ったからと言うけれども通勤災害というのは、業務にかかわりがある、業務因果関係がある。公務員の場合は、通勤というのは公務因果関係がある、だから業務とみなす、公務とみなす、こういうたてまえなんですよ。業務通勤と別個に考えているのはおかしいのです。長い間の論議の中で、業務範疇通勤途上災害を入れるべきであるという議論の中から通勤というものが出てきたんじゃないですか。そうでしょう。それに、あなた内容が変わってないと言うけれども公務員の方は別として、労災の場合は現実に今度の傷病年金制度に変えることによって、一級の傷病者は別として、二級、三級の傷病者については、福祉施設を含めなければ、従来の給付より減っているじゃないですか。ことさらに減る分については、既得権としてカバーするために福祉施設でカバーしているだけのことじゃないですか。当初の補償というのは、事業者企業者のそこに働く労働者に対するところ補償ということがたてまえですよ。それをいつの間にやら保険法にすりかえて、企業責任保険に転嫁していくという形になってきているのじゃないかというように思うのですが、どうですか。
  14. 田中清定

    田中説明員 前の、通勤災害業務との関連性の問題で御指摘がございました。確かに通勤というものは、労働者にとって業務密接不可分関係にあるということは御指摘のとおりでございます。そういう趣旨から、何らかの形でこれを業務災害並み保護すべきであるということはかねがね各方面から御要望があり、これは昭和四十八年の法改正で実現したわけでございますが、労災保険法労働基準法災害補償を基盤として、労働基準法上の災害補償責任基礎として成立しているという一つ基本的な性格のものがございます。労働基準法上では、業務因果関係があるものは業務災害ということで補償責任発生原因になっているわけでございます。通勤災害業務災害範疇に含まれていない。そういたしますと、労働基準法では業務災害だけが補償対象になる、労災保険法では通勤災害を含めて給付対象になるということになりますと、そこにおのずから給付の幅に差があるわけでございます。その通勤災害部分まで含めてこれを業務災害だというふうに割り切りますと、労働基準法上の使用者災害補償責任との関連上やはり問題があるということで、給付水準は全く同じにする、しかし位置づけは業務災害外枠として位置づけて、それを合わせて労災保険給付対象の中に持っていく、こういうような処理をしたわけでございますので、通勤災害がストレートに基準法上の使用者責任というところまで規定することには、現在の基準法のたてまえでは無理があるということで、目的規定を含めてそういう処理をしたわけでございます。  それから後段の御指摘の問題で、新しい傷病補償年金が従来の給付より下がるではないかという御指摘でございます。現在の長期療養者対象としております長期傷病補償給付年金は、平均賃金、つまり給付基礎日額の六〇%が給付率になっております。これに対して新しい傷病補償年金は、給付基礎日額の六七%から八六%にわたる三段階給付率を決めておるわけでございますので、法定給付としてはかなりのレベルアップになる。ただ問題は、御指摘の中にもありましたように、長期療養者につきましては長期傷病補償給付たる年金のほかに、特別支給金として二〇%上積みをしております。この二〇%上積みが今度の改正でなくなるわけでございます。そのかわりボーナスその他の特別給与基礎とした特別支給金が新しい傷病補償年金にはプラスされますので、通常の場合には問題ないというふうに考えておりますが、ボーナスにつきましては、民間労働者の場合に非常に少ない、あるいは職種によってはそういう特別給付のない方もある。そういたしますと、確かに御指摘のように、新しい傷病補償年金の二級、三級受給者の中には、特別支給金の面で計算上ダウンをするというケースもあり得るわけでございます。これにつきましては特別支給金についてダウンをしないような手当てをするとかいうことで、現在の受給金が低下するようなことは絶対ないように措置するということで、いわばカバーするという趣旨でございます。
  15. 和田貞夫

    和田(貞)委員 カバーするというのと下がるというのと違うのですからね。本質はやはり下がるのをカバーするというだけの話。われわれはなぜそうやかましく言うかというと、先ほども言ったように国家公務員法なり地方公務員法、それに伴うところ公務員災害補償法というのは後でできてきておる。いま公務員労働基本権もとのとおりにせい、労働基本権を回復せいということを言っておる。労働基本権が回復するということになったら、国家公務員法地方公務員法それ自体も必要がないというようなことにもなりかねない、もとへ戻るんですよ。あなたのところでしっかりやってもらわなければいかぬ。当然団体交渉権が伴えば、それは使用者としての国あるいは地方公務員の場合自治体、団体交渉の中で労働基本権最低を上回る労働条件というものを確保したらそれまでだけれども、その最低になる基準法に伴うところ労災保険というのはもっと切り離して、いまの保険法をとにかくいらいまくるというのではなくて、断じて給付内容というものは、補償内容というものは上がるとも下がるべきでないという、こういう基本的な考え方に立ってやってもらってあくまでも補償給付じゃないんだ、福祉事業じゃないんだ。問題点をすりかえるような、そういう疑問を持たれるような法改正というのは厳に慎んでもらわぬといかぬですよ。  さらに、労働基準法自体最低基準じゃないですか。そうでしょう。労働基準法というのは最低基準なんですよ、この労災補償についても。言うならば大きな企業であれば、あるいは国とか地方自治体というような使用者の場合であれば、これは支払い能力がある。いかに基準法最低補償が決められておっても、支払い能力がない事業所があるでしょう。支払い能力が伴わない企業がある。そういう企業のために、事業所のために、最低基準法で保障されたものを補償しようというのがこの保険じゃないですか。労災保険じゃないですか。違うのですか。そうでしょう。いわば自動車保険性格がよく似ているじゃないですか。そうじゃないですか。
  16. 田中清定

    田中説明員 先生指摘のように、確かに労災保険の問題が他の公務員災害補償の場合非常に重要な意味を持っておるのでございまして、そういうことで私ども労災保険をできるだけいいものにしていく、そういう気持ちはかねがね強く持っているわけでございます。  今回の改正につきましても、実は一昨年来労災保険審議会の労使三者の構成の懇談会の中でいろいろな角度から検討してまいりました。その過程で、四十九年には年金を中心とした給付水準の全体のレベルアップということを進めたわけでございますが、その際給付水準の問題のみならず、たとえばスライドの問題であるとかメリット制の問題であるとか、あるいは他の社会保険との関係調整の問題であるとか、そういう給付の仕組みに関するいろいろな問題点についてまだ手をつけていない面がある、それを今後の検討課題にしていくということで、残された問題をまとめて今回手をつけて、制度改善整備を図るという一つ改正の目標をそこに置いたわけでございます。  しかしながら、御指摘のようにもちろん給付水準自体の問題も、今後の検討課題ということで十分私ども検討を進めてまいりたいと思いますが、ただ先ほど指摘のように労働基準法との関係から申しますと、労働基準法補償中身というのは、あくまでも個別の個々の使用者法律上の負担を課する中身でございますので、おのずから限度がございます。しかしながら、労災保険におきましては、そこに一つの根拠を求めながらも給付中身労働基準法レベルを超えている。これは年金化も進めましたし、また一時金に対しても、たとえば障害保険については労働基準法の一時金の金額を上回る改善も進めておる。労働基準法レベルにとどまることなしに、給付改善も進めてまいっておるわけでございます。特にいま御指摘のように大企業中小企業、それぞれ企業負担能力に差がございますので、労災保険が特に中小企業といった方々に非常に有効に働いておるというふうに私ども考えております。ただ、企業内の上積みその他いろいろな企業独自の立場での処理もあるわけでございます。これは労災保険という一つの定型的な給付のほかに、いろいろな企業内の処理もあるわけでございます。それはそれなりに一つの評価をしておるわけでございます。  いずれにいたしましても、労災保険としては、現状に即してできる限りの充実した給付水準を確保していきたいというふうに考えております。
  17. 和田貞夫

    和田(貞)委員 繰り返しますが、法定補償給付、これはやはり原則に考えてもらわなければいかぬ。福祉施設というのはそれに伴うもの、カバーするものであるということですね。  そうしてもう一つは、あくまでも労働基準法補償というものは最低補償ということ、それを上回るように保険給付水準を高めていくというように改正を図ってもらわなければいかぬ。そうでないと、大きな企業で能力のあるところは、法定外給付を労働組合との協定の中でやっているところがあるし、それができないところがある。そうすると、いつの間にやら労災補償というのが最低でありながらそれが最高のようになってしまう、そういう可能性があるんですよ。  それからまた、小さな企業に働いておる労働者やあるいは事業者のことを考えたら、たとえば死亡補償給付なんかは法定外給付でできるような企業はいいとしても、小さな企業では保険しか頼るところがない。そのために事業者保険金を払っておるんですね、加入しておるんですよ。それは確かにあなたの方では独立した事業所の中では、安全管理も監督指導というのをなさっておられるでしょう。しかし、外での労災というのがあるんですよ。特に土建請負業の場合です。だから施設をしようと思っても、たとえば大手の土建屋さんの場合だったら、何十億という請負金額の中では、一千万も一千五百万も相当する安全施設というものはできますよ。一千万や二千万の請負企業がどうして安全施設ができますか。やれというのは無理でしょう。もともと元請を大手がとって、下請、孫請、ひ孫請というようなことになって、最終的な小さな土建屋さんになれば工事量が一千万、二千万ぐらいのところで、そういうところ災害が起こっているんですよ。労災が起こっているんですよ。大きなところは何もない、小さなところほど劣悪な労働条件の中で働かされておるんです。そこで死亡ということになってきたら、その保険自動車保険よりも悪いというようなばかなことがありますか。第三者事故によって自動車ではねられた方が補償が上であって、労働者が日日働いている中で間違って死亡したという場合には微々たる補償だ。これは労災補償じゃないでしょう。そういうような金額のせっかくこの改正案を出すのに、そういうような点は検討しなかったんですか。いま一番問題になっているところをなぜ検討しなかったのですか。
  18. 田中清定

    田中説明員 御指摘のように、特に建設業に関しては、下請、孫請け含めて、労災給付中身でも非常にウエートの高いものでございます。特に建設業の場合には、死亡事故に対する給付面もいろいろございまして、実はその点に関しては先ほども少し触れましたけれども昭和四十九年の改正の際に遺族補償年金の約一二%平均の引き上げを行ったわけです。遺族補償に関しては、かねがね年金と一時金と両方の給付の形がございました。昭和四十年に遺族補償給付年金化して以来、私どもとしては、できるだけ年金給付を中心に充実を図りたい、こういう考え方で今日まで来ておるわけでございます。  そこで、先ほど申し上げましたような年金給付レベルアップをしたわけでございますが、民間企業で一時金あるいは一時金の形での弔慰金の慣行もかなりあるわけでございます。そういう経緯もございまして、特に特別支給金という形で四十九年以来遺族補償支給金として一時金を支給するという制度も導入したわけでございますが、今後その辺についてもさらに十分検討してまいりたい。また、そういう被災者の実情に即した形での給付なりあるいは福祉なりの進め方を考えてまいりたい、こう思っております。
  19. 和田貞夫

    和田(貞)委員 新聞紙上で出てくる現場の労災というのは、全部そういうところですよ。雇用の関係が全く不十分な農村出かせぎ者が必ずそういう労災に見舞われて死亡したり、現場の事故でけがしたりしているじゃないですか。そういう点を考えたら、労災保険内容というものをそういう労働者に照準を当てて水準を高めるということに改正検討してもらうことをひとつぜひともお願いしたいと思うのですね。  そこで、国家公務員の場合は、使用者としての国が国家公務員に対して災害補償制度をつくっておられるわけですが、人事院月報を読ましていただきましたが、「災害補償制度について」、こういうように書かれている中で、「災害補償の意義・特質」、その第一点として、「災害補償使用者としての国の責任に基づいて行われることである。」それから第二点としては、「国の補償責任がいわば無過失の責任であることである。」それから第三点としては、「災害補償職員災害を受けたことによって生じた損害を償うことを目的としているものであるが、その内容が生命、身体について生じた災害に係るものに限られることである。」ということで、災害発生の原因が職員の過失、国の過失の有無にかかわらず国の補償責任があるということ、それから行政としての国じゃなくて、使用者としての国の責任に基づいて行われるということ、それから災害補償を行っても国の損害賠償の責任が排除されるものじゃないということが、この災害補償制度について人事院の見解として述べられているわけですね。  いま労災保険法について労働省にお伺いした中で、労働省がどう言おうとも、私はやはり、この労災補償制度性格というのは次第に変わってきているというように受けとめているわけです。国家公務員災害補償制度についてあなたの方で述べられている点、いま指摘いたしましたけれども、今度の改正を含めて、今後といえども国家公務員災害補償制度についてはここで述べられているこの内容に何ら変化をしないということですか、どうですか。
  20. 中村博

    ○中村(博)政府委員 ただいま御指摘になりました点は、国家公務員災害補償法基本と相なるものでございますので、その考え方を直ちに変えるという考え方は、現在のところ、持ってございません。
  21. 和田貞夫

    和田(貞)委員 労災補償と同じように、国が使用者としての責任を持って補償をするというたてまえ、法定補償を中心に考えていくという考え方を踏襲するのか、あるいは福祉施設を充実するというところに重点を置いていくような補償制度にしていくのか、どっちですか。
  22. 中村博

    ○中村(博)政府委員 その補償本体と申しますか、たとえば療養の給付でございますとか、あるいは休業補償あるいは障害補償、そういった給付内容につきましては、これはやはり、先ほど労働省からも御説明ございましたように、逐年改善をして、現段階においてはILO百二十一号条約、勧告の線まで来ておりまして、国際水準が確保されておるわけでございます。そのように、補償本体につきましては明白に法律でその支給要件が書き込まれておるわけでございます。  一方、福祉施設というものも、これは法律にその基礎を持つものではございますけれども、やはり災害を受けられた方々に対してより手厚き保護をするために、まあ言葉は変でございますけれども、いわば小回りのきき、現状に適応するような措置ということで福祉施設が考えられてあるのでございますので、したがいまして、両者相まって、おのおのその特性を生かしつつ補償の十全を図ることが、今後におきましても、また現在までもそうでございますが、私どものとるべき筋道である、かように考えております。
  23. 和田貞夫

    和田(貞)委員 今度の改正案を見てまいりますと、これはもちろん労災補償制度関連して改正されている部分がございます。あなたの方から意見書、それに基づいてこの法案が提案されているわけですが、身体障害者に対する評価の改善、あるいは他の法令による給付との調整方法の改善、平均給与額の算定方法の改善、審査の申し立て制度改善年金年額のスライドが、平均給与額の変動、いままで二〇%であったのが一〇%以上であればできるようにするような改善、これらの改善策は今度の改正案改善である、前進である、こういうように思われるわけですね。  しかし、傷病補償年金制度の創設は、先ほど労災の方で申し上げましたけれども、私は必ずしも改善だというようには一〇〇%受けとめるわけにはいかない。あるいは法に基づくところ補償改善ということよりも福祉施設の増大に力が注がれておるような改善、いわば法の改正というのも、人事院規則で、あなた方の意見でも言っておりましたように、カバーするために、長期給付について特別な給付金の支給制度福祉施設として創設する、あるいは障害特別援護制度福祉施設として新設するという考え方、あるいは障害補償年金または遺族補償年金を受ける者に対して子弟の奨学援護金の改善を図る、あるいは介護料の改善をするとかというように、これは全部法定外の補償給付改善であって、福祉施設としての改善ですね。  それに、たとえば傷病年金制度に変えられた点を見てみましても、確かに一級の方は四十万円ほど増額になっています。ところが二級の場合は、あなたの方の資料で平均給与五千円の場合ということで例示されているわけですが、二十万二千円ふえているだけでしょう。三級に至っては一万円ふえているだけです。  だから、先ほど申し上げましたように、改善には違いないとしても、さほど大きな前進を遂げた改善策であるというようには私は思わない。むしろ労災制度の変質と同じように、国家公務員災害補償制度も、本来の法定内におけるところ補償給付を充実していくという考え方よりも、やはり福祉施設の増大によってこれをカバーするという内容が今度の改正案でも如実に出ているんじゃないか。それはあくまでも、公務災害に対して国の使用者としての責任を感ずるのならば、やはり法定内の災害給付ということに重点を置いた改正を図っていくということがあるべき姿じゃないか、こういうように思うのですが、どうですか。
  24. 中村博

    ○中村(博)政府委員 確かに先生指摘のように、基本的には法によってコンクリートなもので補償を行うということば一つの筋であろうと思います。法の委任を受けまして人事院規則で行われておりますものが、確かに補償本体と福祉施設ということで、何か本筋を外れたような印象を与える場合もあり得ると思うのですけれども、しかし、福祉施設は、先ほど先生がお読み上げになりました人事院の論文にもございますように、あくまで使用者としての立場で現状に即した被災者援護を行おうという意味合いのものでございますので、むしろその場合に応じ、あるいは世の中の状況に応じて随時適切に使用者責任をその面で果たすということが必要であるというような考えで現在人事院規則で行われておるのでございまして、その意味では、これも先生十分御承知のように、先ほど御議論がございましたように、労災で法定の給付をいたしますほかに、支払い能力のある民間企業の一部においては、いわゆる法定外給付を支給いたしておるわけであります。その法定外給付に見合うものが、いわばごく大ざっぱに申し上げまして私ども福祉施設でございまして、その意味では民間の労働者の方々のある程度の方が受けておられるそのような福祉につきましては、国の場合にも同様にすべきだ、そこは小回りがきくように——小回りという言葉はちょっと恐縮でございますけれども、随時適切に行い得るように人事院規則でこれを確保していく、こういうことで努力いたしておるわけでございますので、両者合しまして、やはり広義の補償の充実を図る、そういうファンクションをいたしておる、かようにお考えいただければと思います。
  25. 和田貞夫

    和田(貞)委員 カバーするという点、よくわかるわけですがね。やはり労災補償というのはあくまでも使用者責任で、本来ならば、公務の場合あるいは民間の業務の場合でも、自分の仕事をさせて、その労働者災害に遭ったら、極端に言うならば、死ぬまでめんどう見るのがあたりまえじゃないですか。これが原則ですよ。それがこの労働基準法最低基準というのがうたわれておる。それに基づいて労災制度ができた。国家公務員地方公務員ができたために、国家公務員地方公務員災害制度ができた。あくまでも人事院がおっしゃっておるように、使用者としての国の責任ということを感ずるのであれば、これは労災制度と横にならしていくということも保険制度としては必要であるかもわからぬけれども、やはり国がその模範を示すために、その本質を踏まえて、法定内におけるところ補償給付というものの水準を高めていく、極端に言うならば、福祉施設でカバーしなくても本来の法定内におけるところ補償給付水準を上げていく、こういうたてまえに立ったところ改善を図っていくことが必要じゃないかということを私は言いたいわけなんです。
  26. 中村博

    ○中村(博)政府委員 ただいま御指摘の点は、確かに一つの貴重なる御意見だと思いますが、私ども現在の体系は、いわばフィックスされた部分とフレキシビリティーを持っておる部分と二つがあって、その両者をもって保護のより十全を期せよう、こういう態度であるということは、先ほど申し上げましたとおりでございます。  その前段につきましても、これも労働省からも御説明ございましたように、先回の改正におきまして給付水準の大幅なるアップをいたしまして、国際条約及び勧告の線まで達した国際的な水準を確保しておる現状にある。もちろん、現在のそのような状況になっておるということをもって満足しておるわけではございません。あらゆる場合にその改善には努めたいという気分を持ってやっておるのでございます。
  27. 和田貞夫

    和田(貞)委員 そういう議論、余り続いてもなんですから、やはり本質を踏まえて、あくまでも労災公務災害に対しては使用者責任によるところ補償というたてまえを貫いてほしいと思います。  ただ、今度の改正案で、休業補償傷病年金制度に変えるという中で、一年六カ月というこういう線を引いたわけですが、医師の診断が、三年あれば、あるいは二年あれば治癒するか治癒できないかという判断ができても、一年半では少し短過ぎるというような傷病の内容労災患者、公務災害の患者もやはりあるわけですよ。一年半という根拠は何かあるのですか。
  28. 中村博

    ○中村(博)政府委員 一年半の根拠につきましては、いろいろな考え方があり得るわけでございますが、まずそれは、いままで国家公務員災害補償法のケースでは、労災の方で持っておられました長期傷病補償給付という概念は全然なかったわけでございます。ところが、私どもの調査によりましても、一年以上の療養を続けていらっしゃる方が残念ながら相当数ございますので、そういう方方に対しまして、今回、傷病補償年金制度というものを導入することによって、先ほど来いろいろ御指摘がございましたが給付改善を図るという線でそのような制度を導入してきたのでございます。  そこで、一年半というのは何かという御議論でございますけれども、これは、その方は現在療養の給付を受けておられるのでございます。したがいまして、病状はいろいろ変わるのでございますし、私どもとしましても、療養の給付が行われてよりよく事後の障害を残さずもとの体になっていただくということを期待しつつ、しかし現実に大変重度な廃疾状態になっておられる方々は、そのような場合に毎日毎日給付の、その療養のためにこの日は国の休業補償を支給すべきであるというようなことをせずに、そういう長期また重大な廃疾にあられる方々につきましては傷病補償年金ということで、御本人にも御納得をいただき、またその御家族にも御安心をいただくというような年金制度を導入することが一つの大きな改善である、こういう観点からいたしたのでございます。一年半という議論についてはいろいろ御議論あり得ると思いますが、これは労災及び厚年等々の先例を他の例と平仄を合わせた姿でございます。
  29. 和田貞夫

    和田(貞)委員 たとえば認定の問題が非常にむずかしいわけですが、現場で肉体労働をやっておる場合と、そうでない行政職を中心とした事務系統の者が、職場で仕事をしながら発作で倒れた。それが労災であるかどうかということは、いつも議論されているところですが非常にむずかしい。それと通勤災害の場合、あるいは業務上職場を離れて、いわば出張ですか、そういうような場合、いろいろ認定にむずかしい問題が絡んでくると思います。  たとえば通勤による災害一つ例を挙げてみますと、交通機関を使って通勤されている公務員がおる。いつもそれで通っておるのだけれども、明くる日にはどうしても自分の勤務場所に九時に行かなくてはならぬ。たとえば会議なら会議がある。自分は前の日にいろいろとそのための準備をしてきた。ところが、家へ帰ったところが何か一つ忘れておった。いつも来る通勤の経路ではどうしても間に合わない。たとえ十分でも十五分でも早く行かないと朝のそれには間に合わない、そういう自分の正義感から、日ごろの通勤経路に使う交通機関を使わないで、たとえばバイクに乗って別の経路から十分前、十五分前に自分の勤務場所に着こうとした。途中で何かの事故で通勤途上災害に遭遇した、こういう具体的な場合、本人は死んでしまった、死人に口なし、これは公務死であるかどうかということを、だれがどういう場で認定するのですか。
  30. 中村博

    ○中村(博)政府委員 いま先生お挙げになりましたような例の場合には、残念ながら死亡という大変不幸な転帰をたどっていらっしゃいますので、恐らく警察の調書、目撃者の証言その他いろいろあるわけでございます。そういうような点を十分に調査いたしまして、その死がいまおっしゃったような態様で行われたものかを確認する方法はございます。  それからなお、御質問の中で、その日はいわば本人が公務員としての自覚に目覚めて、ある仕事のために早く、あるいは別の経路で出てきたという点も第二の問題としてあり得ると思いますが、その場合には、これはいつもの経路とは違っておりましても、私はいま御指摘のポイントから判断いたします限りにおきましては、これは明白なる通勤災害として言ってよろしいと思います。と申しますのは、たとえばマイカーで通っておられる方々は、九時なら九時までに役所へ着かなければいけません。ところが、ふだん通っている道が工事なんかいたしております場合には迂回路をたどることは当然なことでございますし、また、ある点から役所へ行く道というものは実は非常に多様にあるわけでございます。したがいまして、あるところが工事でなくてもつんでおった、混雑しておった、渋滞というような場合に、九時にできるだけ着こうと努力するために他の道、他の道と避けていかれて、そしてお着きになる、その途中、不幸にして災害が発生した場合には、これは筋道として合理的な経路であると考えるべきである、かように私は存じております。
  31. 和田貞夫

    和田(貞)委員 用地買収というのがありますね。用地買収で、大概、夜——土地の所有者が勤務先から帰ってくるとか、あるいは仕事を離れたときでないと、昼、役所の勤務時間内に行ってもなかなかそういう交渉はできない。大概夜になる。夜、交渉に行った、日参して交渉がようやくまとまった、まとまった過程で、土地の旧所有者がその公務員の労をねぎらうために、まあきょうはまとまったんだから一杯飲めやということで一杯飲んだ、飲んだあげくの事故があった、こういう場合は公務災害というように認定されるかどうか。どうですか。
  32. 中村博

    ○中村(博)政府委員 ある災害公務上あるいは通勤上と認定するかどうかにつきましては、いろいろなファクターを必要とするわけでございまして、いまお示しのようなスケルトンの議論でも、その他のファクターによっていろいろな御見解があり得ると思いますが、いまの御設例を、それが公務のために出張なさっておるという態様でカバーされておるというようなことであると考えますと、それは向こうへいらっしゃる間、それからその仕事が済んでから、まあ、いわば儀礼的に、かた苦しく申しますとそのような住民の方々の好意を受けることが事後の仕事のためにも十全に役立つというような場合であって、単に飲酒のみを目的としておるというような場合でございませんければ、多分公務上に考えるべきであろう、かように思います。
  33. 和田貞夫

    和田(貞)委員 ここで議論をやっておると、あなた非常にいいことを言ってくれるんだけれども、現実にはやはりそういう点が問題になるのですよ。したがって、一体だれが認定するかということです。特にその本人が死んでしまったら、本人から聞くということもできないですよ。そうすると、やはり職場で同じ働いている同僚、あるいは労働組合のあるところはその労働組合というように利益代表者も含めて認定をしていくというような、こういう方途というものは考えられないですか。
  34. 中村博

    ○中村(博)政府委員 いろいろなケースがあるわけでございますが、やはり公務上外のあるいは通勤上外の認定をいたします場合には、やはりできる限りのその事実の確認という方法をとらざるを得ないのでございます。先生おっしゃいますように、確かに亡くなられた方に口はないわけでございますが、たとえばよくある例でございますけれども、役所で超過勤務をして、そしてさらにうちへ持って帰ってその書類の調査あるいはいろいろな作業をしておられるというような場合でございます。そういう場合に、その出勤途上なりあるいはそういう苦労を重ねた上でお役所で亡くなられたというような場合につきましては、御家族の証言もあり得るわけでございます。したがいまして、先ほども申し上げましたこととあわせて、警察なり御家族なりあるいはある場合には職員団体の方々なりあるいは目撃者の方々なりあらゆる方途を通じてその実態を正確に認識するということが必要なことでございまして、特定の方はだめ、特定の方じゃなければならぬ、そういうへんぱな考えは一切持ってございません。
  35. 和田貞夫

    和田(貞)委員 任命権者だけでやっていくという姿よりも、いわゆる労災患者をできるだけ救う、救済するというために同僚なりあるいは労働組合のあるところは労働組合の意見も聞いて認定していくというような認定の制度というのは、ひとつ検討課題にしてほしいと思うのですよ。  さらに、特殊な職種の職員があります。たとえば病院に勤務する看護婦あるいは地方公務員の場合には保健婦、そういう保健婦だとか看護婦だとかいうのが労災に遭遇した、こういう場合に、今度水準を引き上げてもらったけれども、特に視力障害者になったあるいは聴力の障害者になった、こういう場合に看護婦もしくは保健婦の資格がなくなってしまう、そういう場合の補償というのはどういうふうに考えていますか。
  36. 中村博

    ○中村(博)政府委員 確かにいまお挙げになりました設例は大変心を痛ませる事案でございますけれども、やはり資格はいろいろな観点からお考えの上で資格が与えられておるわけでございますので、不幸にして公務災害をいま申された方々がお受けになりました場合につきましては、当然公務上になると思います。したがいまして、公務上としての補償は差し上げるわけでございますけれども、免許資格を取り消されたるためにほかの仕事に移らざるを得なかったという点の補償は、補償法それ自体としては考えていないわけでございます。それはむしろ一般の任用上の配慮によってそういう方々がそのために特に損害を受けられることのないような暖かい配慮がなされるべきであり、また当然、いろいろなお考えで任命権者におかれてはそのような措置をなさっておる、かように思います。
  37. 和田貞夫

    和田(貞)委員 保健婦助産婦看護婦法という法律がある。そこの九条では、絶対的欠格事由というのがある。どういうように書いてあるかというと、「つんぼ、おし又は盲の者には、免許を与えない。」当然、資格要件ですから、資格を備えるために試験を受ける場合に、つんぼ、おし、盲——これ自体が差別用語ですがね。これは改めなければいかぬ。厚生省の所管ですが、改めなければいかぬけれども、いまだに看護婦法と同じようにつんぼ、おし、盲、こういう差別用語がれっきとして書かれた法律があるのですよ。ここらはやはりぼくは問題だと思う。聾というのは初めからしゃべることもできないし、耳も聞けないわけですが、ことさらにつんぼ、おしと書いておるのですね。そうすると、つんぼ、耳が聞こえなくなった、耳が不自由になったという場合に、この法律さえなければ、聴力が支障を来たしたということであっても物も言える、目も見える、また看護婦としてあるいは保健婦として資格が継続できるのですよ。ところが、わざわざことさらにつんぼ、おし、こういう差別用語を使ったこの法律があるために、そういう労災患者を救うということができない、こういう問題が出てきているわけです。  これは労災なり公務災害制度範疇には入らないけれども、こういう問題があるということで、これはひとつ労働省の方も、民間の労災患者にこういう例がやはり出てくるのですよ。そうでしょう、公務員の場合にもやはり出てくるのですよ。厚生省の所管でありますが、労働省なりあるいは人事院なりあるいは公務員全般にわたる人事を所管されておる総理府ですね、こういう労災の一策としてもこの点はぜひとも改正する必要がある、こういうように私は思うわけなんですが、このことについてはひとつ、せっかくいま指摘したことでございますので、総務長官がおられるので、この法の改正、これに関連してひとつお答え願いたい。
  38. 植木光教

    植木国務大臣 ただいま看護婦等法律の中にそのようなおし、つんぼ、盲というような用語が使われているということは初めて知ったわけでございまして、申すまでもなく、私どもはそのような用語は不適切であり、あるいは聾唖者等の用語を使うべきであるというふうに考えます。これは厚生省と早速連絡をとりまして、善処方を私から要請をいたします。
  39. 和田貞夫

    和田(貞)委員 公務災害補償の問題については時間もありませんので、先ほどから申しましたように、やはり国が災害公務員使用者であるという責任、こういう立場に立ってもらって、あくまでも公務災害におけるところ補償責任を堅持するという立場に立っていただいて、むしろ民間の労災制度よりも進んだ内容に将来ともひとつ改善策を図ってもらいたいということをお願いすると同時に、労働省の方もせっかく来ておられますので、いま同時に審議されておる身体障害者の雇用促進法、参議院で先議されておりますが、そこで論議をすべきだと思いますけれども、ひとつあなたの方の耳にしてもらいたいのは、身体障害者の雇用率ですね。ややもいたしますと、労災患者が自分の企業には幾ら抱えておるかということを身体障害者の雇用率というようにすりかえてしまって、おれのところ企業は身体障害者はこれだけの雇用率があるんだというような企業が多くあるのですよ。また、そういうようなことを頭に入れない、身体障害者の雇用率はこれだけ高まっておるというような労働省の統計の数字というのは、私はまるまる受け入れることはできないです。そういうようなことで、労災患者を身体障害者の雇用促進とごっちゃにしてすりかえてしまうというようなおそれのないように行政指導をしてもらいたいということを、この機会につけ加えて申し述べておきたいと思うのです。  そこで、せっかく人事院もおられることでございますので、会計検査院の職員のことについて議論をしたいと思うのですが、御案内のとおり会計検査院は、憲法九十条によって、いわば国民にかわって公金の使途について厳正に検査する、そして内閣や国会に報告をするということが、内閣とは独立した機関として保障されておる。それに違いないでしょう。どうですか。
  40. 藤井貞夫

    ○藤井(貞)政府委員 御指摘の点はそのとおりでございます。
  41. 和田貞夫

    和田(貞)委員 ところが、現実の姿としては、同じように、憲法で内閣とは独立した機関に最高裁判所あるいは国会があるわけです。国会の場合の職員特別職、あるいは最高裁判所の職員特別職ということになっておるわけですが、憲法で保障されておる、内閣から独立しておる会計検査院の職員が、いまだ特別職になっておらない。国家行政組織法によるところの定員の配置ということじゃなくて、独立しているわけですから、会計検査院が独自に職員の定数について大蔵省と折衝して、予算内定員を確保しているということになっておりますが、身分の点については一般職の扱いになっているわけですね。これを特別職下にすべきであるということは、会計検査院自体も従来から主張してこられたことだと思うのですが、会計検査院、間違いないですか。
  42. 鎌田英夫

    ○鎌田会計検査院説明員 いま先生指摘のありました会計検査院の職員は、現在一般職職員でございますが、これを特別職に移行したいという検討は、事実昭和四十七年、四、五年前から現実に検討をしてまいっておるわけでございます。
  43. 和田貞夫

    和田(貞)委員 検討しておるだけですか。
  44. 鎌田英夫

    ○鎌田会計検査院説明員 この検討いたします中には、やはり関係当局の御意見を伺う、あるいはその是非の意見も聞かなければいけない。また、会計検査院自体といたしましても、特別職に移行した場合のメリット、デメリットといったものも検討をしなければならないわけでございまして、特別の組織を持ちまして鋭意検討すると同時に、関係方面の御意見を伺う、こういう努力を重ねてきておるわけでございます。
  45. 和田貞夫

    和田(貞)委員 会計検査院の内部だけで努力しておるのですか。
  46. 鎌田英夫

    ○鎌田会計検査院説明員 これは、もちろん関係方面と申しますのは、具体的に人事院でありますとか、総理府の人事局であるとか、あるいは法制的に関係ございますので内閣法制局、そういうようなところの方へ意見を申しまして、その御見解を伺うという努力を重ねてきたわけでございます。
  47. 和田貞夫

    和田(貞)委員 その努力をした結果、現在どうなっていますか。
  48. 鎌田英夫

    ○鎌田会計検査院説明員 これは非常にむずかしい問題でございまして、なかなか一朝一夕にわれわれが希望しておりますような結論は得られない。まあ一つには、国家公務員制度はもう長年現在の姿でまいってきておるわけでございますけれども、その国家公務員制度全体の問題としても考えねばならないというような御意見もありますし、また、一方におきまして、先ほど申し上げました特別職とした場合のメリット、デメリットといったことも考えねばならない。その辺のことを全般的に考慮しながら、もう一つには、検査院内部、いままでの体制で関係方面にいろいろ御意見を伺ってきたわけでございますけれども、なお、検査院自体として検討すべき余地、これは組織とかそういったものでございますけれども、そういう点をなお検討しなければならないものがあるのではないかという反省をしながら、検討を続行しておるわけでございます。
  49. 和田貞夫

    和田(貞)委員 それは官僚用語でありまして、検討というのは、大体何年ぐらいが検討の期間だという常識があるでしょう。もうすでに新しい憲法ができてから三十年ですよ。三十年で、新しい憲法に基づいた会計検査院が、独立した機関として、旧会計検査院から変質しているわけでしょう。三十年間も検討して、これから何年検討するのですか。あとどのぐらい検討するのですか。
  50. 鎌田英夫

    ○鎌田会計検査院説明員 これはこの先何年というわけではございませんで、検討しながら関係方面折衝なりその努力を図るということでございますので、あるいは一年先に結論が出るか、二年先に結論が出るか、その辺は何年先というあれはちょっとつかない現状でございます。
  51. 和田貞夫

    和田(貞)委員 国の財政というのは、御案内のとおり年々増加している。政府関係機関も三十年間にかなりふえていっている。公団や公社や特殊法人がふえていっているわけです。そういう中で、やはり国民の監査、検査をする権利を代行して、あなたの方は検査するのですよ。そういう重要な、国民に代行して会計の監査、予算の執行の検査をする機関なんですよ。そうすると、あなたの方の権能を高めるためにも、おのずから、それはいつまでも検討するのじゃなくて、早急に結論を出す必要があるのじゃないですか。  そこで、国家公務員法の二条の規定によりましては、人事院がこれを決定するということになっているわけですが、いま会計検査院の事務総長が鋭意関係当局と相談をしてと言っておられるわけですから、恐らく相談があり、そして人事院の方ももう三十年間——人事院が発足して三十年もなりませんが、いままで検討してまだ結論が出ないのですか、どうですか。
  52. 角野幸三郎

    ○角野説明員 会計検査院の調査官等、職員特別職とするかどうかということについての、国家公務員法の二条の人事院の決定する関係についてのお尋ねでございますが、現在そういうことでいままで人事院が決定いたしておりますものにつきましては、たとえば二条の三項の宮内庁の関係職員について人事院が指定するというような過去の実例があったように記憶いたしておりますが、本来、ある職が国家公務員法の身分保障でありますとか、任用、給与、その他服務等の一般規定を適用して処遇することが妥当であるかどうかという原則的な、一般的な判断に属する問題でございます。  それで、先生お話しのように、会計検査院の職員の職務内容は、一般の行政官庁に比べましても特殊な関係にあるということはよく理解いたしておりますが、一般職の各省の職種の中の、このような特別の関係で検査を行ったり実地検査をやるというような立場にある者との関連もございまして、その他一般的にこれを特別職として処遇する、取り扱う必要が直ちにあるかどうかということについては、なかなか決定いたしかねておる次第でございます。
  53. 和田貞夫

    和田(貞)委員 そうすると、一体どこが検討して結論を出すのですか。会計検査院が三十年間検討してきておるというお答えです。もちろん、内部だけじゃなくて、関係当局と相談をしてきているということなんです。総理府の人事局の方にも相談した。人事院の方にもその相談をしている。いまの答えでは、一体どこが結論出すのですか。わからぬです。
  54. 藤井貞夫

    ○藤井(貞)政府委員 私がお答えすることが適当であるかどうか存じませんが、一応お尋ねの点について申し上げたいと存じます。  一般職公務員である者について国家公務員法というものは適用する。すなわち国家公務員法では、給与その他の面について重要な保障制度を確立をいたしておるわけでございますが、その基準を適用してまいることがいいのかどうなのか、適当であるのかどうなのかということを一つの目安として、特別職一般職の区分けをいたしておるのであります。その基準は、いま和田委員も御指摘になりましたような法律規定の原則がございます。この中で、釈迦に説法でございますけれども特別職というのは、大体、要するに選挙であるとか国会の同意を得るとか、その他三権分立のたてまえからいたしまして、やはり内閣の管理下にございます国家公務員法というものの適用をやっていくことが適当でないと認められるものについて特別職規定を設けて、これについては国家公務員法の適用を排除するというたてまえをとっておるのであります。そういう意味から申しますと、現在、会計検査院につきましても、職務の特殊性というものはよくわかりますけれども、これはやはり内閣所属の機関であり、内閣所属の職員でございます。そういう意味では、人事院職員といえども、その点においては変わるところがないわけでございます。  そこで、特別職にするほどの特殊性があるのかどうなのか、また、その利害得失はどうなのかということにつきましては、大変慎重な配慮をもって検討を加えてまいらなければならぬ問題であろうかというふうに私自身も考えるわけでございます。  それと、一般的に人事院の立場といたしましては、やはりいろいろな面で保障措置を講じております国家公務員法の適用を受ける一般職の範囲というものは、これは余り縮小すると弊害がございますけれども、これの範囲をそう随時変更するということは適当でないという基本的なたてまえもございます。したがいまして、これを特別職にするかどうかということにつきましては、私自身といたしましてはさらにもっと関係当局の積極的な御意見等も拝聴して検討を加えていかなければならぬ問題であろうかと思います。  ただ、会計検査院の職員の職務の特殊性というものは十分わかります。したがいまして、それらにつきましてはやはり独立性を保たしめるというか、その職務に専念をさせる張り合いと申しますか、そういう身分安定と申しますか、そういうことのために給与その他の面で特殊的な配慮をする必要は従来から認めておるところでございまして、その角度から人事院として与えられた権限に基づきまして等級の格づけでありますとか、またその他、最近におきましては特殊勤務手当の創設でございますとか、そういうような点ででき得る限りの配慮を加えておるつもりでございますし、これらの努力は今後も継続することについてやぶさかではございません。このことだけを申し上げておきたいと存じます。
  55. 和田貞夫

    和田(貞)委員 予算の執行は内閣がするわけです。金を使うのは内閣です。その内閣の予算の執行に当たって、憲法で、会計検査院は独立をして、国民にかわって検査をし、内閣、国会にその内容を報告する、こういう独立機関であるということは、憲法の九十条で保障されている。そして憲法九十条でさらに、会計検査院の設置については別に法律で定めるということで、これは人事院内閣の所管に属するということと会計検査院は違うと私は思うのです。しかも、会計検査院法が憲法に基づいてつくられて、その会計検査院法の第一条では「会計検査院は、内閣に対し独立の地位を有する。」予算を執行する内閣とごっちゃごっちゃじゃないんだ、予算を執行する内閣とは独立して、内閣が執行した予算の適否について検査する、こういうことになっているわけですから、これは裁判所なりあるいは国会というものは三権分立の立場に立っているけれども制度上から言うならば、内閣から独立した監査機関、検査機関である以上は、やはり特別職という姿で、体を張って内閣に対して検査もし、意見も言い、報告もする、こういう姿が好ましいんじゃないですか。
  56. 藤井貞夫

    ○藤井(貞)政府委員 御指摘の特殊性は、私も十分承知をいたしておりますけれども、果たして現在の会計検査院の職員の身分また国家公務員の分類上において、一般職からはずして特別職にするほどの特殊性というものがあるのか、現在の特別職を決めておりますその基本的な理念、基本的な基準というものから見て、それほどの特殊性があるのかということについては、私といたしましてはいまだ軽々に判断を下すべきではないという立場でございます。
  57. 和田貞夫

    和田(貞)委員 いま、この判断は軽々にできないけれども、この点についてはやはり前向きに検討するという考え方にはおなりにならぬのですか。
  58. 藤井貞夫

    ○藤井(貞)政府委員 長年ずっと継続してきている問題であるようでもございます。私が人事院に参りまして直接そのことを部外の方々からお聞きしたのはきょうが初めてであります。そういう面もございますし、問題点は十分把握いたしておりますので、検討は続けてまいりますが、前向きで偏るかどうかということについてはこの席上において申し上げる段階ではございません。
  59. 和田貞夫

    和田(貞)委員 総理府の長官はどうですか。いま議論されている中で、内閣から独立した検査機関であるという以上は特別職にするということについてはどうですか。
  60. 植木光教

    植木国務大臣 実は検査院の御意向は先ほど伺いましたが、総理府人事局といたしましては、まだ御相談にあずかったことはないということでございまして、きょう初めてお聞きをしたわけでございますが、これは人事院の判断にまつということが国家公務員法の第二条によりましても明白でございますので、私どもといたしましては、ただいまの御指摘趣旨などを御勘案になって人事院が判断をせられるのを待ちたいと存じております。
  61. 和田貞夫

    和田(貞)委員 これは総長、人事局はあなた、いままで相談受けてないと言っておるじゃないか。だからこの議論をやってたらしようがないから、一応あなたの方も自信を持って総理府の人事局なりあるいは人事院にあなたの方の主張を強く言って、そうして信念に燃えた折衝というのをやらなければいかぬですよ。その点ここで何ぼ議論していたって何ですが、私は特別職とする方がやはり職員の検査業務に対して自信も持てることでもあるし、検査院自身もその権能を生かして、しかも内閣となれ合いでない、予算の執行はやはり内閣がやる、その執行に当たって適正であるかどうかということを検査するんだ、こういう独立機関としての権能を生かすというこういう立場に立って、自信を持って折衝してもらいたい。人事院の方もその点検査院の方から受けた意見を入れてひとつ前向きになって検討してもらいたいということを私の意見として強く要請しておきたいと思う。  そこで、そういうようなことでありますから、人事院が総裁の方から、特別職ということについて踏ん切りはまだついておらぬけれども、独立した特殊な業務であるということはよく理解しておるから職員の待遇について考慮を払っておる、こういうように言われたわけですが、特にその一線で実務をやってなさるのは調査官であります。検査官というのはこれは特別職でありますけれども、実際には実務をやっておられない。調査官でありますから、この調査官が特別職にいま一挙にならなくても、その職務の内容というものはきわめて高度な専門知識が必要であるとか、あるいは検査技術が高度に必要であるとか、責任の度が非常に高いとかというようなことは十分おわかりのことであろうと思いますので、その点でこの際一般職給与法に基づくところの俸給の調整額、職務の複雑あるいは困難もしくは責任の度云々という中でこの俸給の調整額が必要となされているわけですから、俸給の調整額によるところの調整手当をこの際つけてあげようというような検討はいままでなされたことないですか。
  62. 角野幸三郎

    ○角野説明員 会計検査院の調査官等についての俸給の調整額の適用ということで御相談を受けたことがございます。現在の状態で申し上げますと、昭和四十七年以来毎年の勧告の際に、給与報告の中で、俸給の調整額制度についてはそのあり方について検討する問題があるので、原則的にはそういうことで新設を見送ってきたという関係がございます。  それで、なおまた調査官の職務内容について考えてみますと、ほかの省のほかの職種の中にも、給与上の問題としてとらえましたときに、会計検査院の行う業務と似たような職務の特殊性があるものもございます。程度の差はいろいろあろうと思いますが、たとえば通産省にございます鉱務監督官でありますとか、あるいは運輸の船舶検査でありますとか立入検査あるいは監査をやるという職種が相当ございます。そういうこともありますし、これらの方々からも調整額の適用ということでいろいろ問題を提起されておりますが、全部そういう関係で見送っていただいている、現在そういう状態にございます。  そういうことでございますが、一方でやはり給与上の処遇問題といたしましてこれをとらえるということで大変努力をいたしておりまして、調整額ではございませんけれども、いま先生おっしゃいましたように、その調査官の職務が複雑困難であります、専門性でありますということを評価いたしまして、調査官でありましても、等級の格づけにおいて高い等級に専門職として優遇措置を講じておる、等級上そういうことをずっとやってきておりまして、本年、来年度もそういうことを引き続いて考えておる次第でございます。それで、さらにそういう調整額ではありませんが、それ以外に特殊勤務手当ということで、昭和四十九年に会計実地検査手当を新設いたしまして、実際に検査業務に従事された日一日について幾らということで手当を支給している制度もやっている次第でございます。
  63. 和田貞夫

    和田(貞)委員 私は、先ほど申し上げましたように、やはり特別職にすべきであるという前提に立っているわけです。検査の業務というのは、やはり現場に行きまして、その所属の長が、たとえば局長級のクラスの人であろうが部長級のクラスの人であろうが、調査官として検査をした結果指摘した事項については、正々堂々と、遠慮会釈なく検査の実態について意見を述べるという必要があるから私は特別職ということを先ほど言ったんだけれども、まだ結論が出せない、こういうことでありますが、せめて調査官手当というのを調整額でやはり出すべきだ、こういう意見なんです。これは一般職の特殊勤務手当だとかいうような形でなくて、前提としては特別職だ、しかし特別職ということはいま結論が出ないから、それにかわるべき措置として調査官手当というのを調整額によって出すべきじゃないかという考え方、そういう考え方に会計検査院自身もなって、いまから数年前から総理府なりあるいは人事院に対して要求されているのでしょう。
  64. 鎌田英夫

    ○鎌田会計検査院説明員 特別職と待遇改善、これは別個の問題としてわれわれとらえておるわけであります。もちろん、先ほど先生から御指摘いただきましたように、特別職に移行したいという根底には、やはりわれわれが先生の御指摘のとおり自負心を持って、そうして困難な仕事を自信を持って遂行していく、こういう立場にありたい、基本的にそういうところから特別職に移行したい、こういう希望があるわけでございますが、この点と、それから待遇改善の面、これはもちろん特別職に移行したいという考え方とうらはらというわけではございませんけれども、いかに調査官が書面検査あるいは現地における実地検査において困難な仕事をしているか、あるいは危険を顧みず、トンネルとかダム、そういうところにもぐり込んで検査しなければならない、そういうふうに非常に肉体的、精神的にも苦痛があるということで、待遇改善をお願いしてきたわけでございます。  先ほど人事院の方からお話がございましたとおり、確かに検査特別手当というものも昭和四十九年度の予算からつけていただきましたし、また等級別定数、これは調査官制度というものの特殊性を十分御理解いただきまして、級別定数の配分を厚くしていただいている、これは事実でございますけれども、私どもといたしましては、特別職という問題と待遇改善という問題は、今後も職員の労苦に報いなければならない、こういう考え方で、なお継続してお願いしていきたい、こういうふうに考えております。
  65. 和田貞夫

    和田(貞)委員 これは特殊勤務手当だとかそういう形ではなくて、俸給調整額に該当するのではないですか。勤務の複雑、あるいはきわめて責任の度が高い、全く当てはまるじゃないですか。それで、特別職についてはいま結論が出なくても、四十三年以来検査院が要求しているのにかかわらず、いまだにその調整額の適用をした調査官手当を支給しないというのは一体どうなんですか。人事院、これはどうですか。
  66. 角野幸三郎

    ○角野説明員 先ほど申し上げましたように、現在俸給の調整額制度については、そのあり方について再検討しておる段階でございます。これは会計検査院の当該の官職ということではございませんで、給与体系の中の給与制度としての俸給の調整額の制度そのもの、それから運用の現在のあり方について、大変問題が出てきておりますので、全般的に検討ということで新規適用を一時見送っておるという状態にございます。  それで、いま先生お話しの調整額になじむかどうかという話でございますが、これも先ほど申し上げましたように、候補の中にはほかに鉱務監督官でありますとか、労働基準監督官でありますとか、監督とか検査というような業務関係がございますので、給与上の評価としてそういういろんなものも多面的に横並びを考えまして、調整額としては評価したいというような考え方もございます。したがいまして、そういう全体の調整額制度検討の中で今後検討していきたい、そういうように考えております。
  67. 和田貞夫

    和田(貞)委員 あなたのところは得手勝手なことを言ってはいかぬよ。当てはまりもせぬのに学校先生の主任手当については特殊勤務手当というようなこじつけた考え方になっておる。調整額というのはちゃんと書いておるではないか、さっきも読んだように。非常に職務の内容が困難である、複雑である、責任の度が高い、会計検査院の調査官の業務というのは、いまの三つのことについて当てはまるのじゃないですか。ほかのことと一緒に検討するというのじゃなくて、具体的にそういうように指摘してきた点については、片方では主任手当をこじつけてやろうと言っておるのに、なぜこれはできないのですか。片方ではこじつけておるじゃないですか。これはこじつけよと言っておらぬ。全く法文に書いてあるとおりの字句に当てはまるじゃないですか。だからこそ会計検査院がそれに基づいて要求しておるのじゃないですか。そうでしょう。検討しなさいよ。
  68. 角野幸三郎

    ○角野説明員 現在調整額の検討中でございますが、その中で慎重に検討いたしたいと思います。
  69. 和田貞夫

    和田(貞)委員 いつまで慎重にやるのですか。四十三年から要求しておるのですよ。あと何年検討するのですか。
  70. 角野幸三郎

    ○角野説明員 調整額制度につきましては、定率で維持しておりますことに伴って、ほかの給与水準の格差等の維持の仕方との間に乖離ができてまいりましたものですから、この制度について現在検討しておりますが、それと、いま先生がおっしゃいました一般に新たに調整額を適用すべきものがあるかどうかという検討と、双方早急に検討いたしていきたい、こういうふうに考えております。
  71. 和田貞夫

    和田(貞)委員 たてまえは、私がさっきから繰り返すように、あくまでも特別職であるという前提に私は立っておるのです。立つべきだと思う。予算を執行するのは内閣じゃないですか。予算を執行する内閣に付随していったら、何が検査ができますか。あくまでも独立して、調査官という一人の公務員が、たとえ相手が局長であろうが部長であろうが、次官であろうが大臣であろうが、あなたの方の所管するところの予算の執行についてはこういうふうに間違いであるということを正々堂々と言うこと、これが会計検査の本来の姿じゃないですか。そのために特別職にしなさいということを私は言うておる。そのことの結論が出ないのであれば、せめて現場の第一線で検査をやっておる調査官の権能を高めるためにも、単に優遇するということだけじゃなくて、その勤務の内容というのはきわめて複雑である、きわめて高度な責任がある、困難性がある、こういうところから、調整額に伴うところの調査官手当を早急に結論を出しなさいということを言っているのですが、そういうふうにしますか、どうですか。
  72. 藤井貞夫

    ○藤井(貞)政府委員 先刻も申し上げましたように、特別職の問題につきましては、これは大変慎重な検討を要する問題でございますので、非常に渋いお答えになって恐縮でありますが、前向きということをいま申し上げる段階ではないというふうに申し上げたのでありますが、しかし、会計検査院職員、特に調査官の職務の特殊性というものにつきましては、るるお述べになりましたこともございますし、また私自身もよく認識はいたしておるつもりでございまして、その認識から、それぞれでき得る限りの処遇の面での配慮を加えてきておったつもりでございます。その点は会計検査院の当局も御認識、御了解をいただいておるところだろうと思うのであります。  ただ、具体的にいま御指摘になった調整額の問題につきましては、事務の方からも申し上げましたように、調整額全体の問題として現在検討を加えております。これは専門家の和田委員ですから御承知のように、調整額は率でずっときております。もともとの本俸がずっと上がってきておるものですから、それの点でいろいろ問題点が生じておることは事実でありまして、全体のそれの取り扱いをどうするかということの検討をいまやっております。これは早急に結論を下すつもりでございますけれども、それとの見合いもあって、いま申したように、総合的に検討するということを申し上げましたが、しかし、特別職の問題とは違って、調査官の特殊性というものはよくわかりますので、これについては、ひとつその処遇の問題について前向きに検討をいたします。
  73. 和田貞夫

    和田(貞)委員 ひとつ前向きになって検討してもらいたいと思います。  時間もありませんので、最後に、会計検査院が新しく発足した当時から比較してみますと、先ほども申し上げましたように、きわめて業務量がふえておるというように思うのですね。総長、いまあなたの方の、出先を含めて検査対象になっている関係個所は一体幾らあるか。そして、それだけの対象になっておるにもかかわらず、検査を現実にしておる率というのはどのぐらいなのか、ひとつお答えを願いたい。
  74. 鎌田英夫

    ○鎌田会計検査院説明員 昭和五十年の数字で申し上げますと、検査対象個所、これは重要な個所をとりますと、七千九百五十一カ所、その他の個所三万三千六百五十四、合計で四万一千余りの個所になっております。  それで、実地検査を施行いたしました比率で申し上げますと、重要な個所につきましては二千六百一カ所で、比率につきましては三二・七%、こういう数字になっておりますが、これを先ほど申し上げました四万一千カ所という数字で考えますと、八・三%、こういう数字になってございます。
  75. 和田貞夫

    和田(貞)委員 いま、事務総長が言われたように、検査対象個所というのは、四万一千カ所もあるのです。これらは、もちろん特定郵便局もありましょう。国鉄の個々の駅もありましょう。私は、そういうところは検査対象個所であるが重要な検査対象個所でないからほっといたらいいというのじゃなくて、そういう国鉄の個々の駅についても、あるいはその特定郵便局についても、やはりあなたの方から、他の個所については一年に一回、三年に一回であっても、たとえ十年に一回であっても、そういう対象個所については、全部は行かなくても抽出して検査の対象として行かれる、こういう姿勢が私は好ましいと思うのです。そうじゃないですか。
  76. 鎌田英夫

    ○鎌田会計検査院説明員 先ほど申し上げました数字でちょっと足らざるところがございましたので、補足いたしますが、いま先生がおっしゃいましたような、それほど重要でない個所というものも、やはり検査には行っております。これは、二年に一遍行くところとか、三年に一遍行くところ、あるいは五年、十年というようなことにならざるを得ないわけでございますが、これも行っておりまして、そういう重要でない個所について比率をとりますと、わずかでございますけれども二・五%程度の個所には行っておるわけでございます。
  77. 和田貞夫

    和田(貞)委員 昭和三十五年の一般会計が一兆七千六百五十二億、昭和五十年の一般会計の予算が二十一兆二千八百八十八億ですよ、これは特別会計と重複している点は除いて。それに特別会計がある、政府関係機関の予算、その予算の規模が、財政の規模が大体もう十倍以上になっているんですよ。そうして、検査の対象個所も増大しておる。政府機関だけじゃなくて、公団なりあるいは公社なりあるいは特殊法人なりがふえていっておる。ところが、あなたの方の予算定員というのは、昭和二十年に発足されるときは二百七十五人であったのが、特に占領下でマッカーサー司令部の指示によって増員されて千二百五十六人になった、今日千二百十六人、マッカーサーの指示によって増員をした昭和二十五年のあなたの方の職員の数よりもいまの方が、若干ではありますがまだ少ないじゃないですか。これは一体どういうことですか。
  78. 鎌田英夫

    ○鎌田会計検査院説明員 新しい会計検査院になりまして定員がふえまして、一時は現在よりも多い時点があったわけでございますが、やはりその間行政整理と申しますか、定員削減というようなこともございまして、会計検査院といえども行政庁の一つである、やはり協力をしてほしいというような御要望もございまして、幾分の御協力をしたというような事態はございます。しかしながら、私どもといたしましては、先生が御指摘になりましたように、定員が現在の定員でいいということを考えているわけでございませんで、年々やはりある程度の増員をお願いしているわけでございます。しかし、やはり先ほども申しましたとおり行政庁の一つである、一般の行政庁が定員を削減して非常に苦しい中においては、やはり検査ばかり充実していくということもなかなかむずかしい問題もございまして、やはり私どもの希望する数字には達しないわけでございますが、昭和三十九年に千二百十二名になりまして、その後十年間余り定員が移動しなかったのでございますけれども、ようやく昭和五十年度に四名、五十一年度には二名増というようなことをしていただきまして、現在の定員は千二百十八名、こういうふうになっております。
  79. 和田貞夫

    和田(貞)委員 人員が削減されておると言いますけれども国家公務員昭和二十一年現在で百六十一万九千四百四十八人あった。それが占領下でいわゆるレッドパージ、行政整理で二十五年には百四十五万人に減っておる。そのときに、むしろあなたの方の検査院は二百七十五名から千二百五十六名に、大方約一千名ふえておるのですよ。片方では首を切れというマッカーサーの指令、片方ではマッカーサーの指令であなたの方はふやせ、それだけ重要視している。いま国家公務員の数は百九十九万人ですよ。ふえているのですよ。百四十五万人から百九十九万人になっている。あなたの方はむしろ、若干ではあるけれども、三十人ないし四十人減っているのじゃないですか。そうして財政規模が非常に増大されている、検査対象が非常にふえているというようなことで、これで国民の信託にこたえる検査体制にあるかどうかということです。ないと私は思う。  しかも、時間がありませんので何ですが、その間新しく職員を採用しておらないから、——特に先ほどからも繰り返しておるように、特別職にせよという考え方の私の意見、そういうようなきわめて高度な専門職的な業務をやらなければいかぬのに、新しく採用しておらないために、四十歳以上の調査官が半数以上はおるじゃないですか。そうでしょう。しかも、これは五十五歳以上のあなたの方の職員は百十人おるのです。五十歳以上で百四十八人、四十五歳以上で百三十七人、これではあとどうなっていくのですか。これじゃ検査体制というのは責任は持てないじゃないですか。やはり新しく職員を入れて、そして後進を、次の専門職を養成していくということでなければ、いま採用してすぐに役に立たない、こういうことになるじゃないですか。そういうことでしょう。やはりそういう点を考慮して人員の増ということについてもっと真剣に考える必要があるんじゃないですか。これは総定員法の枠外でありますからなんですが、大蔵省きょうは来ておりませんけれども、あなたの方はもっと真剣になってこの職員の増、検査体制の万全を期すようにやはり総長として努力をしてもらいたい、ここでひとつあなたの方の決意を述べてもらいたいと思う。
  80. 鎌田英夫

    ○鎌田会計検査院説明員 行政機関の定員がどんどんふえて検査院の定員がふえないという点でございますけれども、やはり一般行政庁の定員がふえたという中には事務的にどうしてもこれをふやさなければならない、つまり社会経済の変動に伴ってどうしても人手がかかるという物理的に必要であるという人員増があろうかと思うわけでございます。だからといって、検査院が少なくていい、こういう理屈にはなりませんけれども先生指摘のとおり検査院は重大な使命を持っているわけでございまして、予算の額も先刻おっしゃいましたとおり三十五年度に比べて十倍あるいはそれ以上になっている、こういう認識はわれわれ重重持っておるわけでございまして、今後も定員の増、あるいは老齢化——これは検査院だけにとどまらず戦後急にふえた役所はいずれもそういう悩みを持っているわけでございますけれども、そういうことの解消とやはり定員の増、新しい戦力を補給していく、こういうことに努力したい、こういうふうに考えております。
  81. 和田貞夫

    和田(貞)委員 まあひとつ、会計検査院の役割りというものは非常に重要であるわけですから、しかもそれは国民にかわってあなた方の方が予算の執行を検査をするわけですから、何も人をふやすのが能じゃないというようなことを言われる方もあるけれども、やはり物理的に財政の規模がふくれ上がっているし、検査の対象個所はふくれ上がっているわけですから、三年に一回しか行っていないところを二年に一回にする、できるならば一年に一回行くということの方が検査業務としてやはり正当なことですから、ひとつ特に定員の増についてなお積極的に大蔵省に働きかけていただいて万全を期するように強く要望して、時間がありませんので、この辺で私の質問を終わりたいと思います。
  82. 木野晴夫

    木野委員長代理 中路雅弘君。
  83. 中路雅弘

    ○中路委員 一問だけ御質問したいのです。  この災害補償法の問題で二つの附帯決議につきまして理事の間でお話もついていますので、私は実は労働者災害補償保険法を社労で論議をされまして、これにつけられている附帯決議の関連で、こちらにも関係がある問題については附帯決議の中にできれば入れていただきたいという要望も持っていたのですが、せっかく話がまとまったものですから、それに関連したところで一間御質問をして、それに対してひとつお答え、見解をこの席で述べておいていただきたいということなんです。  労働者災害補償保険法等の一部を改正する法律案に対する附帯決議の中の四項、五項、六項、——一項については大出議員の方からも御説明がありましたし、いいんですが、四、五、六は関連がやはり少しずつあると思うのですが、四項の新制度ですね。傷病補償年金への「円滑な移行を図るため、長期傷病補償給付、休業補償給付等の受給者については十分配慮すること。」いわゆる賃金スライドが不利になる場合もあるわけですから、その点の配慮。それから五番目が「厚生年金等との調整率を定めるにあたっては、受給者保護に欠けることのないよう十分配慮すること。」この点につきましては私も質疑の中で取り上げましてお答えもいただいているわけですが、この問題。それから六番目の「給付水準については、スライド制、最低額」——保障額といいますか、この「引き上げ等今後ともその改善に努めること。」ということで、いままでの二〇%から一〇%に改善はなっていますけれども、さらに改善の努力を行っていただきたいと考えるわけですが、この三点について人事院政府の方から一言ずつ見解を承っておきたいと思います。一括してで結構です。
  84. 中村博

    ○中村(博)政府委員 ただいま御質問の三点につきましては、私どももこの御趣旨に沿いまして十分配慮いたしておるつもりでございます。なお、このような御趣旨のものにつきましては、ただいままでの御質問の中で私ども考え方の現状を申し上げておるところでございますが、なお現在のままで十分であるとは必ずしも考えてございませんので、今後とも引き続き努力させていただきます。  ちょっと補足させていただきますと、いずれの各点につきましても改善でございまして、結局既得権は十分尊重され、それよりも増してよくなることでございますので、御了承いただきたいと思います。
  85. 秋富公正

    秋富政府委員 ただいま人事院からお答えいたしましたように、現状の補償ということは必ずいたすわけでございますが、なお人事院の方とも協議いたしまして、今後の改善についてはやはり検討を重ねてまいりたいと考えております。
  86. 中路雅弘

    ○中路委員 終わります。
  87. 木野晴夫

    木野委員長代理 これにて本案に対する質疑は終了いたしました。     —————————————
  88. 木野晴夫

    木野委員長代理 これより討論に入るのでありますが、討論の申し出がございませんので、直ちに採決に入ります。  国家公務員災害補償法等の一部を改正する法律案について採決いたします。  本案に賛成の諸君の起立を求めます。     〔賛成者起立〕
  89. 木野晴夫

    木野委員長代理 起立総員。よって、本案は原案のとおり可決すべきものと決しました。     —————————————
  90. 木野晴夫

    木野委員長代理 ただいま可決いたしました本案に対し、竹中修一君外四名から、自由民主党、日本社会党、日本共産党・革新共同、公明党及び民社党の各派共同をもって、附帯決議を付すべしとの動議が提出されております。  提出者から趣旨説明を求めます。竹中修一君。
  91. 竹中修一

    ○竹中委員 ただいま議題となりました自由民主党、日本社会党、日本共産党・革新共同、公明党及び民社党の各派共同提案に係る国家公務員災害補償法等の一部を改正する法律案に対する附帯決議案につきまして、提案者を代表してその趣旨を御説明申し上げます。  まず、案文を朗読いたします。    国家公務員災害補償法等の一部を改正する法律案に対する附帯決議(案)   政府は、次の事項について速やかに検討の上善処すべきである。  一 一般公務員が、特に危険をおかして職務を遂行し災害を受けた場合には、特別公務災害としての補償を行うこと。  一 民間企業における業務上の死亡等に対する法定外給付の実情にかんがみ、公務員の場合においても適切な措置を講ずること。  右決議する。  本案の趣旨につきましては、先般来の当委員会における質疑を通じて、すでに明らかになっていることと存じます。  よろしく御賛成くださいますようお願い申し上げます。
  92. 木野晴夫

    木野委員長代理 本動議について採決いたします。  本動議に賛成の諸君の起立を求めます。     〔賛成者起立〕
  93. 木野晴夫

    木野委員長代理 起立総員。よって、本案に対し附帯決議を付することに決しました。  この際、植木総理府総務長官から発言を求められておりますので、これを許します。植木総理府総務長官
  94. 植木光教

    植木国務大臣 ただいま議決されました附帯決議の御趣旨につきましては、今後人事院の調査、研究をまって十分検討いたしたいと存じます。     —————————————
  95. 木野晴夫

    木野委員長代理 なお、ただいま議決いたしました法律案に関する委員会報告書の作成につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  96. 木野晴夫

    木野委員長代理 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。
  97. 木野晴夫

    木野委員長代理 本会議散会後委員会を再開することとし、この際、暫時休憩いたします。     午後零時五十一分休憩      ————◇—————     午時二時十九分開議
  98. 木野晴夫

    木野委員長代理 休憩前に引き続き、会議を開きます。  法務省設置法の一部を改正する法律案議題といたします。  趣旨説明を求めます。稲葉法務大臣。
  99. 稻葉修

    ○稻葉国務大臣 法務省設置法の一部を改正する法律案につきまして、その趣旨を御説明いたします。  この法律案は、法務省の大臣官房に置かれている訟務部を廃止し、訟務局を設置しようとするものであります。  現在、法務大臣官房訟務部におきましては、国の利害に関係のある争訟に関する事務をつかさどることとなっておりますが、近年社会情勢の変化に伴い、この種事件はますます増加するとともに、その内容も複雑困難の度を加えてきております。このため、現状のように、官房の一部門をもってしては、この種事件を適正円滑に処理することが困難な状況となっておりますので、ここにその機構を改め、訟務行政の円滑な運営を図るため、訟務局を設置し、この事務をつかさどらせるようにしようとするものであります。  なお、訟務局設置のための改正とあわせて、入国管理局次長を廃止するため、所要の改正を行っております。  以上が法務省設置法の一部を改正する法律案趣旨であります。  何とぞ、慎重御審議の上、速やかに御可決くださいますようお願いいたします。
  100. 木野晴夫

    木野委員長代理 これにて趣旨説明は終わりました。     —————————————
  101. 木野晴夫

    木野委員長代理 これより質疑に入ります。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。上原康助君。
  102. 上原康助

    ○上原委員 法案の質問に入る前に、法務大臣に少し心境のほどをお尋ねしておきたい。  ロッキード問題との関連で、一、二問お尋ねしたいと思うのですけれども、昨日の法務委員会で、ロッキード問題との関連で、稻葉法相がかつて河本現通産相に児玉譽士夫を紹介したということが明るみに出ているわけです。その事実については、法務大臣もお認めになったようですが、国民はこの事実が明らかになったことによってかなりショックを受けたのではないかという感じを私は持っているわけです。私自身も、やはり稻葉法相もそういう経歴があるのかということを感じたわけです。といいますのは、児玉譽士夫といいますと、ロッキード汚職事件の中心人物だと言われておりますし、いろいろな意味で国民の厳しい関心がいま向けられている。また一方の法務大臣は、もう申し上げるまでもなく、このロッキード問題を捜査する捜査陣営の最高責任者と言っても過言ではないと思うのですね。そのあなたが、法務大臣の地位にあられる段階じゃないわけですが、過去の時点において児玉譽士夫と親しいといいますか、じっこんの関係にあったということは、国民の側から見ると非常にいろいろな疑惑を生みかねない。そういう面で、改めて法相のお立場としての心境をまずお聞かせをいただきたいと思うのです。
  103. 稻葉修

    ○稻葉国務大臣 心境ということですから、率直に現在の心境を申し上げますと、ああ何の因果かこういうことになって、というのが私のいまの偽らざる心境です。あなたはいま児玉譽士夫と稻葉修がじっこんの間柄だと言われましたが、それは事実に反しますね。きのうの夕刊にも十遍ばかり会ったということになっておりますけれども、会ったという意味はどういう意味か。話をしたとか、ある事柄について世話をしたということが会ったということになるのでしょうな。私の十遍ばかり会ったというのは不正確でございまして、三遍は会ったけれども、あとの七遍は見たと言った方が適切ではないかと思うのです。  それは、いまから二十年前に民主党時代に、春秋会という派閥がございました。河野一郎氏を首領とする派閥でございます。それが第一ホテルの地下室に春秋会事務所を持っておって、事務所の責任者格というか世話役というか、そういう人は森清君だった。そのころ初めて河野さんに会いに来た児玉に紹介されたことがあります。そして、ああ、あなた児玉君かい、私は稻葉だ、これが会ったということになるのでしょうね。あとはときどき来ておったのを碁を打ちながら見た。ああ来ているなという程度です。それから、第二回目に会ったのは、河野さんの葬式の日、これは通夜から何から一緒でしたから会いましたし、話もしました。  第三回目が、問題になっているジャパンラインと河本敏夫君の社長をしておった、いまはそうではありませんけれども、三光汽船との間の株のやりとり、業務協定とかそういう事件。これは新聞に報道されておりますが、その時期です。その時期に、われわれの仲間が忘年会をやっておったところに、女中が児玉さんという人を知っていますか、ああ知っていないことはないな、いま至急にお会いしたい、そんなに時間はとらせません、こういうことでございますから、宴会の席を外して応接間で会ったのですね。何だと言うたら、いまのこの事件についてひとつお骨折り願いたいと言うから、おれはそういうことはだめだね、法律ならばともかく経済のことはだめだね、こういう関係で断った。そうしたら紹介してくれと言うから、ああそれは紹介はしてやろう、おまえどうしてそんなことを知っているのだと言ったら、いろいろなことからあなたに言われれば河本君もうんと言わざるを得ない間柄ぐらいのことば私も知っていますよ、そんなようなことを言っていました。そこまで知っているなら紹介してやろうかということで紹介して、その事実はすでに二月の終わりごろの週刊文春という週刊誌に出ておるのです。そしてそのころいろいろ人に聞かれたから、それはそのとおりですよ。しかもなかなかいいことが書いてあるのだ。稻葉に頼んだけれどもだめであって、そしてどこかだれかのところに行って話がついた、こうなっている。事実そのとおりなんです。  ですから、すでに旧聞に属することであります。しかし、そういう事実があったことは事実なんですから、これは否定すべくもない。そんなことはなかったなどと言っているのじゃない、あったと言っているのです。それがたまたまこの時期に、国民を関心のど真ん中に投げ込んでいる、国際的に太平洋をまたにかけた大疑獄事件の一番の容疑者である児玉誉士夫と、時の法務大臣稻葉修とそういうことがあったということが報道されるということは、まことに何の因果かと言いたいぐらいだ。何の因果か、ひどいことだな。  そして、週刊文春にすでに二カ月も前に出たことでございますし、その後何もないから、ああこれは済んだ、旧聞ということに思っておりましたら、きのうの法務委員会、きょうの朝の参議院の法務委員会でも同じ質問がありましたから、よくいま言ったことを説明して、旧聞に属することを新聞が書こうとは思わなかったと私は言った。新聞というものは新聞を書くので、旧聞を書くのじゃないと思ったがね、今度新聞記者会見をするときに旧聞記者会見とでも言おうかね、こう言った。しかし、国民に対しては非常にショックを与えることは事実ですからね。  ただ、そういう事実ではあったけれども、あなたがいまおっしゃったような、児玉譽士夫と稻葉修がじっこんの間柄だということは全然ありません。いま言ったような関係で、何の因果かそういうめぐり合わせになったということでございますので、質問者の方でも、それからここにお聞きになっている皆さんの方でも、そんなのじゃないよということを、いまの事実を人に聞かれたらどうかひとつ、私も一生懸命にそういう点は弁解いたしますが——だって事は検察庁の若い検事なんかの士気にも関することだから、重大なことだと思いますからね。それがために解明に疑いを持たれたり、また国会の国政調査権について、それだから法務大臣はもたもたしているんじゃないかと言われたりすることは心外千万でございますから、この機会に私の心境を明らかにしておきたいと思います。
  104. 上原康助

    ○上原委員 私も別におもしろ半分にこのことを取り上げているわけじゃありません。事が非常に重大であるからこそ、いま法務大臣の御所見といいますか、伺っておかなければいかぬということでお尋ねしているわけですから、もちろんじっこんであったかもしれないという発言は私もしていると思うのです。それはそのことについてきょう深く議論をしていこうとは思いませんが、ただ、私が指摘をしておきたいことは、少なくとも御面識があったことはお認めになっている。そうしますと、いま捜査当局の捜査というのはかなり進展をしている、いよいよ山場に差しかかっているんじゃなかろうかと私たちは見ているわけです。そういう時期に時の法務大臣が、いみじくも大臣もおっしゃったように、過去において関係があったという事実があるとすると、やはりこの捜査の成り行きに手かげんを加えるんじゃなかろうかという疑惑を一部に持たれかねないことも否定できない常識なんです。  そういう意味で私もお尋ねをしたわけですが、こういういきさつがあったからといって事件真相の解明にはいささかもブレーキにはならない、そのことは国民の前に断言できますか。
  105. 稻葉修

    ○稻葉国務大臣 お問いになるまでもなく、ただいま申し上げましたような関係はございました。けれども、そのために、そういう関係があるなしにかかわらず、それからまたロッキード事件のこういう段階で、そういう関係のためにいささかの同情も加えたりあるいは憎悪に燃えたり、そういう冷静、沈着さを欠くものではありません。国民は恐らくきのうのあの記事を見て大変に心配していると思いますが、これから一生懸命に、そういうことについて事実をもってその心配が杞憂であったということの証拠を私は示したいという願望であります。
  106. 上原康助

    ○上原委員 ひとつ願望に終わらさずに、私たちもこれからの法相の御言動について十分監視もしつつ、また、追及すべきところはやってまいりたいと思います。  それとあと一点、ロッキード問題との関連でお尋ねしておきたいのですが、捜査当局に現時点で説明できる範囲のお答えしかいただけないと思うのですが、いろいろ報道されていることなどからしますと、このロッキード事件の捜査に当たっては、全日空のトライスターの購入の是非をめぐる、これが児玉譽士夫を仲介にいろいろやられておるわけですが、そのことに非常にウェートが置かれている感を受けるわけです。しかし、私たちはPXL、いわゆる防衛庁が購入をしようと考えておった、あるいは国産化の問題等があるわけですが、この次期対潜哨戒機をめぐるいろいろのロッキード社との関係についてはどういう捜査が進んでおるのか、ここいらの点についてぜひお答えをいただきたいと思います。
  107. 安原美穂

    ○安原政府委員 具体的な捜査の内容に関することでございますし、御案内のとおり、どこに重点があるかということを申し上げることはこの際差し控えさしていただきたいと思いますが、いずれにいたしましても、本件はアメリカの多国籍企業委員会におけるコーチャン証言等を発端にいたしました国際的なスケールのいわゆる容疑事件でございまして、検察当局といたしましては、ロッキード社のわが国国内における企業行為の全般にわたりまして不正の行為の存否を明らかにするのが検察の使命であるという意味で調査、捜査を進めておる段階でございますから、必ずしも御指摘のように何かに限ってやっているということではなく、全般にわたって重大な関心を持って調査、捜査を進めているということで御理解をいただきたいと思います。
  108. 上原康助

    ○上原委員 そうしますと、PXL問題も当然含んでいるという理解でよろしいですか。
  109. 安原美穂

    ○安原政府委員 先ほど来申しましたように、ロッキード社の国内における企業活動の全般にわたって不正行為の存否を明確にすべく調査、捜査を進めているということでございます。
  110. 上原康助

    ○上原委員 ここいらの点についても早晩明らかになると思うのですが、やはり政府高官問題をめぐるいろんな疑惑の解明ということについては、当然PXL問題も含んでいる、むしろ、ある面においてはその方がより重要じゃなかろうかという感も私たちはぬぐい得ないわけです。したがって、いま捜査の段階だから内容についてはお答えできないということですが、ぜひこの疑惑を持たれていることに対しても解明できるようにやっていただきたいと思うのです。  あと一点は、これも、例のユニット領収証の件については、これまで公開の場では公にされておりませんでした。しかし、すでに新聞などにはユニット領収証が発行された事実についても明らかになっております。私たちは当然、米側から入手した資料の中にはこれなども、もっと明細な裏づけ資料を含めて入っていると思うのですが、当然そういったユニット領収証の点についても資料の中には含まれておりますか。
  111. 安原美穂

    ○安原政府委員 御案内と思いますが、日米の実務取り決めによりまして入手いたしました双方の資料の内容を申し上げることは、協定の関係で申し上げるわけにいかない、秘密取り扱いにするということになっておりますので、よろしく御理解をいただきたいと思います。
  112. 上原康助

    ○上原委員 そのことについては後日また機会もあると思いますので、さらにお尋ねをしてまいりたいと思います。  そこで大臣、いま大臣の御発言の点とこのPXL問題について一、二問だけお尋ねしたのですが、やはりロッキード問題の真相を解明しないと大臣のお立場も、きのう、きょうの問題より、より政治的に問題になってくるわけですね。最も国民が知りたがっているのは、一体、このロッキード問題と関連をして賄賂を受けた政府高官名がどうなっているのか、あるいは灰色の高官をどうするのかというようなことなんですね。要するに政治家の政治的、道義的責任の問題だと思うのです。そういう意味では、私たちはやはり一日も早く真相を解明することによって日本の議会制民主主義の信を、国民から理解ができるような場にしていかなければいけないと思うのです。  そういう意味で、もう一度、このロッキード問題に対する法相としての、解明をしていくのにタイムリミットとか、そういうことはいまの段階で御発言できないと思うのですが、改めて決意のほどをお伺いして、私は次の質問に移りたいと思います。
  113. 稻葉修

    ○稻葉国務大臣 このロッキード問題で大きな金が動いたということはほぼもう常識上明らかですね。そうして、どこから出てどこまで来たというところは、大体児玉を利権で起訴してやることからいいましても、そこのところはいいのですが、あと、その先どうなったか、上原さんおっしゃった政治家の手に渡ったか、公務員の手に渡ったか、それがいま国民の知りたがっているところですね。そしてそれについては捜査を一生懸命いまやっている段階でだんだんだんだんじりじりと真相のところまで近づきつつあると、こう見るべきでしょう。  そこで、捜査当局、法務省は法秩序の維持、つまり刑事責任の追及の役所であります。そうして灰色とか白とかということがありますけれども、われわれは黒をつかまえようとしておる。黒とこういうようにつかまえられればその人間は、黒になった人間は政治的、道義的責任も同時にまとめて追及されるわけですね。ところが、刑事責任上は黒だけれども、職務権限がなかったとか、時効にかかったとか、証拠不十分だとかあるいは微罪で起訴猶予だとか、そういったような場合はどうするんだ。これはやはり総理大臣もしばしば言っているように、この事件は刑事的な面と政治的、道義的な面、両方全部解明しなければ国民は満足しないのでありますから、その残った方の道義的、政治的責任はどうするんだ、これは国会は政治的、道義的責任の解明の場としてと、両院議長の裁定案にあるとおり、国会の権限でおやりになることである、その国会の権限が国会法百四条等によって発動された場合に、政府は刑事訴訟法の立法の趣旨を踏まえて最善の協力をするということになっているのです。絶対の協力ではないけれども、最善の協力をするという意味は、わが国の法制上許された範囲において公益比較考量の責任者の判断に基づいてやる、決して逃げも隠れもしません、こういうことになっているわけでございまして、いわゆる灰色とかいうもののあれは、黒が決まって初めて灰色であったり白だったりするのが残るのですから、そこのところまでひとつお待ち願えませんかというのが私の心境でございます。決してうやむやにはいたしません。国会の政治的、道義的責任の解明には最善の協力をいたしますと、こう言うておることによってひとついましばらく御猶予を賜れば、そういうチャンスは必ずある、こういうふうに私は思っております。
  114. 上原康助

    ○上原委員 大体法務大臣の考え方についてはわかりましたので、次の質問に移りたいと思います。  御提案されました法務省設置法の一部改正、いわゆる訟務局の設置の問題ですが、これは指摘するまでもなく、昭和四十三年に局であったものを部に降格して、今日また復活しようとしているわけですね。いろいろ官房長さんも来られて説明も受けましたし、また、いま大臣の趣旨説明もあったわけですが、やはり釈然としないものを感ずるわけですね。  そこで、今回復活するに当たってまず行政管理庁にお尋ねをしておきたいのですが、四十三年に局を廃止をするあるいは行政機構の縮小ということで全般的に行ったわけですが、今回この法務省の訟務部を局にするということに対して、行政管理庁としてはどういう御見解を持ったのか、なぜこれを認めたのか、このいきさつについてまず御説明をいただきたいと思うのです。
  115. 小田村四郎

    ○小田村政府委員 政府といたしましては、行政機構の簡素化、合理化ということには毎年努力をしているわけでございまして、機構の膨張は極力避ける、そうしていろいろ情勢の変化によりまして、機構が現実の行政に必ずしも適当でないという状況も出てくるわけでございます。そこで、そういう場合には、スクラップ・アンド・ビルドということで、全体としての機構の膨張を防ぐということを主眼に機構の再編成を進めてきたわけでございます。そういうような例といたしましては、たとえば農林省でございますとか通商産業省でございますとか、大規模な機構改編をいままでにもいたしております。  そこで、今回御提案申し上げております法務省の訟務局の問題でございますが、これはただいま御指摘のございましたように、四十三年の一省庁一局削減の法律によりまして、訟務局を廃止して官房の訟務部にいたしたわけでございます。ただ、当時から比べまして非常に客観情勢が変わってまいりましたのは、訴訟件数が飛躍的に増加してまいった。現在係属しております訴訟件数にいたしましても、四十二年当時に比較いたしますと、件数において約二倍になっております。また、その内容が非常に複雑かつ困難な問題を抱えているものが多いわけでございまして、これは当時と客観情勢の大きな変化があったという判断に基づきまして、機構の縮減に対します一つの例外措置として訟務部の局昇格を認めることとしたわけでございます。ただ、先ほど申し上げましたように、全体としての機構膨張は極力防ぐという観点におきまして、訟務部のほかに入国管理局の次長を廃するという措置をあわせてとらしていただいた次第でございます。
  116. 上原康助

    ○上原委員 そうしますと、例外的にこの訟務部を局に再び昇格させることを認めたということですが、四十三年に各省庁一局縮小ということで局の統合なりあるいは廃止なりいろいろな機構改革があったわけですね。それを全般的に復活させることには当然ならぬと思うのですが、その点は確約できますか、今度のこの訟務部を局にするということとの関係において。
  117. 小田村四郎

    ○小田村政府委員 先生指摘のとおりの考え方でございます。当時の一省庁一局削減でその後変わってきたものといたしましては、たとえば経済企画庁の水資源局、これは国土庁に移りましたけれども、国土庁の水資源局ということで、これは国会修正でございますが、ただいま存続いたしております。それから厚生省の国立公園局、これが環境庁ができました際に自然保護局といたしましてほぼ同様の機能をいたしております。そういうような例外的な措置はございますけれども、こういう今回の御提案によりまして、今後すでに削減した各局を新たに復活させるということは全然考えておりません。
  118. 上原康助

    ○上原委員 なかなかお役所というのはいろいろな事情なり関係もあるんだとは思うのですが、なかなか人事の配置等もあってむずかしい面もあると思うのですが、しかし、一省だけ認めると、やはり減らされた方はそれぞれまた不満を持つわけですね。今回のこの法務省の訟務局設置については、各省庁とも非常な関心を持っているという見方を私たちはやっておるわけですよ。そっちを認めるならばこっちも認めてくれということが当然次年度あたりから出てこないとも限らない。そこでいま、例外的にお認めになった、また復活させる御意思はないんだということは一応確認をしていただいたわけですが、その懸念は十分持たれているということも指摘をしておきたいと思うのです。  あと私、お尋ねしてみたいことが二、三点ありますので、ちょっと急ぎます。  最近の事務量の増加、もちろんこれは相当ふえていることは事実だと思うのです。だから四十三年段階でも、私もちょっと会議録を読ませていただいたのですが、本当に部にしていいのかという、むしろそういう指摘が野党の先生方の方から出されている。それがいまの段階指摘されたとおりのことになってきているのです。しかし、私はここでまた一つ疑問を持つのは、確かに事務量の増加なり繁雑さ、いろいろ出てきているでしょうが、仕事をするのは何も局長さん一人じゃないわけですね。当然職員の協力を得て初めてりっぱな国民サービスもできるし、仕事もできると思う、また役所のチームワークもとれると思うのです。しかし、今回の改正に当たっては、局長を置くということで、職員の数は本庁においては全然変わらないわけですね。そういうことからすると、何か局長のポストを創設をするために、あるいは横とのバランスをとるためにだけ、この局の昇格ということにウエートが置かれているんじゃなかろうかという気がしてならない。この点は法務省はどうお考えなんですか。
  119. 藤島昭

    ○藤島政府委員 職員増員の点でございますが、本年度の予算で訟務関係で二十三名の事務官の増員が認められております。  それから、局の昇格の点でございますが、先ほど先生のお尋ねにもございましたように、四十三年の一局削減の当時に法務省としては閣議決定に従わざるを得ない立場にございますので、どの局を部にするかということについて十分慎重に検討いたしたわけでございまして、当時官房訟務部は訟務局であり、次長を持っていた大きな局であったわけです。ところが、法務省にはそうたくさんの組織がございませんので、万やむを得ず閣議決定の線に従って部にいたしたわけでございまして、当時の気持ちとしては、事件数がいまほどございませんので、地方の八つのブロック局に法務局というのがございますが、そこに訟務部というのがございます。そこの地方の方に事件を多少委譲いたしまして、官房長の指揮監督のもとに何とか訟務部としてやっていける、こういうことでスタートしたわけでございます。  ところが、確かにその当時の委員会において、先生方からそれでいいのかというようなことを私ども御質問を受けまして、大丈夫ですと申し上げたことが結果的には処置できないということで、また同じ復活のような形で局をお願いするということで、結果的に見まして大変不明を恥じておるわけでございます。しかし、官房長の私が訟務部を指揮監督するということになるわけでございますが、官房長の仕事は御承知のように、官房各課の統括その他法務省のいろいろな部局の重要案件が全部官房長のところに上がってまいります。そのほか国会その他対外関係も非常にある。その上に事件が非常に複雑困難になりまして、従来の判例にないような事件とか、また新しい専門的な知識を必要とするようないろいろな事件がどんどん出てまいりまして、私、官房長がとうてい指揮できないという形になりまして、いま実態と組織が全く遊離した形になってしまったわけでございます。したがって、そういうことは訟務部の仕事に従事している職員の士気にも影響するわけでございまして、どうしてもこの際訟務局長を頂点とする責任体制を確立いたしまして、そういう複雑困難な訟務の仕事に当たってもらうということが必要だ、こういうことになったわけでございます。  もう一つは、それと関連いたしますが、官房の訟務部ということになりますと、いろいろ事件が各省庁の関係の事件でございます。ところが、会社でも社長は社長に対する、官庁で言えば局長局長に対するということでございまして、官房部長でございますと、どうしてもいきなり局長というわけにまいりませんので、いろいろ次長とか審議官とかそういう方と折衝する、そういうことで二重、三重の手間もかかるわけでございます。そして訟務としては、やはり各行政庁に対して事件処理の上から十分に助言指導を行っていかなければいけないわけでございますが、そういう強力な関係省庁に対する助言、指揮、勧告、そういう関係でどうしても欠けるところが出てまいりまして、結局そういうことが訴訟の長期化につながっていくわけでございます。そこで局長を頂点とするそういう責任体制をとることによって、強力に関係官庁に訟務としての指導力を発揮することによって事件を短期に、迅速に解決するということにもつながると思いますし、そのことはまたひいて国の相手方である当事者の権利の保護にもつながっていくのではないかと考えておる次第でございます。
  120. 上原康助

    ○上原委員 長々と御答弁、御説明があったのですが、人員は現在はたしか五十七人でしょう。二十三人の増になるというのですが、これは訟務局に二十三人の配置にはなりませんね。
  121. 藤島昭

    ○藤島政府委員 現在官房訟務部には、検事、事務官を合わせまして六十一人おります。そのほかに各ブロック局にも検事、事務官がおりまして、その合計が新しい予算で申し上げますと三百二十八人になっております。内訳を申し上げますと、そのうち事務官が二百五十八名おります。その二百五十八名は、二十三名が増加した数でございまして、その二十三名は、いまのところ訟務部では官房訟務部ではなくて、それぞれブロックの訟務部に相当たくさん仕事がございますから、その二十三名はそちらの方に向けるような一応の計画は立てております。
  122. 上原康助

    ○上原委員 ですから、残念ながら細かい議論はできませんが、要するに現在の官房訟務部にいるのは六十一人、各地方の法務局の訟務担当にまた二十三人を配置するということでしょう。したがって、私が指摘をしたいのは、事件件数が多くなると本庁の業務量もふえる。もちろん、役所は本庁だけでやるのではなくて、地方の法務局もいろいろ関連はあるでしょうが、局長を一人つくることによって、本当に本来的に言うと、その下にいる職員増員をして強化するというなら話はわかるのだが、そうはなっていないところは問題がないのですかという指摘なんです。増員の枠の問題もあるでしょうが、そこいらにまた片手落ちの点はないのかどうか、改めてお尋ねをしておきたいと思うのです。  それと、これと見返りと言ったら語弊があるかもしれませんが、たしか参事官を二人減らすわけですね。入国管理局の次長もなくするわけですね。次長制を廃止する。そういうことによって、現在参事官が担当している仕事なりあるいは入管の次長を減らすことによって、役所の仕事としてその面でのしわ寄せばないのかどうか。局長一人のポスト欲しさの余り、全体的なバランスの上ではむしろ後退をする懸念はないのかどうか、ここいらも明確にしておいていただきたいと思うわけです。
  123. 藤島昭

    ○藤島政府委員 まず人員の点でございますが、二十三名は一応地方支分部局の方に配置する予定と申しましたが、これは予算が一年まるまる入っている予算じゃございませんで、六ヵ月予算あるいは九ヵ月予算でございますので、まだはっきり確定をしておるわけではございません。訟務の方の担当の方でなおその点については、官房訟務部の方に増員するのか、地方の方に増員するのか、いろいろ検討する余地は十分残っていると私は思っております。  それから、局長をつくるために入国管理局の次長あるいは参事官というものを減らす、それが相当法務省の行政に支障を来すのではないか、こういうことでございますが、確かに私どもといたしましては入国管理局次長というものを廃止されるということはまことにつらいわけでございます。しかし、これはただいま行政管理局長から御答弁がございましたように、政府の方針として私どもは受けざるを得ないわけでございまして、大変重要な仕事でございますから、次長が廃止になってそのままということになりますと、入管の仕事は確かに適正円滑な運用に支障を来すということになりますので、私どもとしては、法務省に現在官房審議官というポストが一つございます。これを官房の立場から入国管理関係を担当してもらうことによって、入管行政がこの次長の廃止によって適正円滑な運用が支障を来さないように努力したい、こう思っております。  参事官二でございますが、これはいまのところどこの部局で減らすか、まだ確定はしておりませんけれども、いずれにしてもどこかのところから参事官二つを減らすわけでございますが、これはたまたま検事が占めておるポストでございまして、検事は官職と俸給とが完全に見合っていないわけでございます。したがって、参事官を減らして、私どもの官職で申し上げますと法規専門職ということになるわけでございますが、そうすることによっても、検事であるという特殊事情がございますので、それほど業務の運営には実際問題として支障を来すようなことはないというふうに考えております。
  124. 上原康助

    ○上原委員 大体この訟務局設置をどうしてもやりたいというお気持ちなり考え方についてはわかったんですが、しかし一方、先ほど指摘しましたように、朝令暮改的な機構改革であってはいかぬと思うのですね。ひとつそういったことのないようにぜひ十分御配慮をいただいて、今後の行政面にかかわることについてやっていただきたいと思うのです。ですから、私たちもこの法案についてはもっと検討をさしていただきたいと思います。  次に、法務省と関連いたしますので二、三お尋ねをしておきたいのですが、一つは、復帰時点の沖繩の弁護士資格の問題についてなんです。これは、御承知のように来年の五月十五日で五年間の暫定措置が切れて、現在沖繩弁護士として弁護士業務をやっている方々が、現行どおりにいくと資格を失うわけですから、これをどうしても再度検討してもらいたいという強い要望が出されていることは御案内のとおりなんですね。そこで、この問題に対して法務省としてはどういうお考えを持っておられるのか。少なくとももうほぼ一年しか時間的な余裕はないわけですから、早急にその方向づけをやらないと、関係者にとっては非常に重要な生活のかかるあるいは仕事の上での問題になる。事弁護士業務をやっているわけですね。そういう意味で、これまでも非公式には御見解も賜ってきた面もあるのですが、現段階でどういう方針をおとりになろうとしているのか、ぜひ明らかにしていただきたいと思います。
  125. 賀集唱

    ○賀集政府委員 御指摘のとおり各方面から要望がございました。要望を一番先に受けましたのは日本弁護士連合会からでございます。その趣旨は、現在おります沖繩弁護士二十名につきまして、再度選考を行って——選考の前に講習を受けさせてもらいたいという要望もありましたけれども、再度選考を行って正規の弁護士にしてもらいたいというこういう要望がございました。その次に、沖繩県知事からも全く同趣旨の要望がございました。それから昨年の暮れになりまして、沖繩県議会が私ども一法務大臣に意見書を提出しまして、その意見書の中では、正規の弁護士資格というはっきりした線は出しておりませんけれども、現在の沖繩弁護士が引き続き弁護士業務を行うことができる特別の措置を講じてもらいたいというのであります。書面で私どもいただきましたのはその三件であります。その間に、沖繩弁護士会所属の弁護士さんを初め県議会の方々が部屋へ訪れてこられまして陳情を受けたこともございます。  さっそく法務省としましては検討いたしました。ことに日本弁護士連合会の要望書には非常に詳しい理由が書いてありましたので、その理由について逐一検討しましたし、それからその理由に書いてある事実関係が果たしてそうかという証拠固めといいますか事実認定もいたしました。それで、結論的には現在のところそういう御要望に応ずるというのははなはだ困難であって、要望にはいろいろ問題点が多いということでございます。  その問題点の主なものを二、三紹介といいますか申し上げますと、復帰前の沖繩弁護士の資格問題につきましては、もうすでに復帰に際し、私ども沖弁法と言っておりますが、そういう特別法によって解決済みでございまして、いわばけりがついた問題である。そして再度これを検討し直すべき特別の事情は現在のところ見当たらないというのが第一の理由でございます。  それから第二の理由として問題にしておりますのは、五年間の暫定措置というのは、沖繩弁護士が従来復帰前から持っておった受任事件がございますが、それの整理とかそれから沖繩時代の弁護士さんが復帰に際し職を離れると非常に気の毒だということで転職のための準備期間として五年だ、こういうように設けられた制度でございまして、その点は四十五年に、いわゆる沖弁法ができましたときに法案審議段階でも御説明申し上げておりますが、そういうようにしまして現在の沖繩弁護士さんに対する配慮というのは十分なされておる。したがって、いまさらこれを再度どうするという意味は見当たらない。  それから三番目といたしまして、沖繩弁護士は現在二十名おるわけでございます。沖繩弁護士という特殊の弁護士が沖繩にできました事情といいますのは、復帰前の沖繩弁護士というのは本土の弁護士よりもかなり緩やかな資格であったわけでございます。だから復帰に際しまして、かなり緩やかな弁護士さんを本土の弁護士と同様の資格を与えるということは困難であるというわけで試験をしたわけでございます。その試験というのは、どちらかといいますと親心の入った緩やかな試験だと思いますけれども、その試験の結果、多くの方が正規の弁護士として本土のどこへでも登録して弁護士活動ができることになったわけでございますが、いま御指摘の沖繩弁護士というのはその試験に合格しなかった方あるいは試験を受けなかった方、そういう方が沖繩弁護士になったわけでございます。そういう方については、先ほど言いましたように、すぐ職を失うのは気の毒だというわけで五年間の暫定措置というのを設けたわけでございますが、通らなかった方あるいは受けなかった方は全部で百五十名あるいはそれ以上いるわけでございます。その百五十名ぐらいの多くの方のほとんどは五年間の暫定措置ということを法律の条文の額面どおり受け取りまして、沖繩弁護士になり得たにもかかわらず、ならなかったわけでございます。現在要望等で問題になっております二十名というのは、ほとんどの方は額面どおり五年間というわけでならなかったのですけれども、二十名だけはなった。しかもその二十名というのは、非常に困ったことに、四十七年沖繩復帰の年になって、私ども言葉では滑り込みといいますか駆け込みのような形で登録された方もいらっしゃるわけでございます。その駆け込みのような形で登録された方は十一人もいるわけでございます。そうすると、この五年間に限定した暫定措置を設けた理由というのは、本来ずっと長く沖繩で弁護士さんをやっておられた方の残務整理とか転職のための準備でございますが、四十七年の復帰の年になられた方に果たしてもう一遍暫定措置の延長とかいうことをすべきであろうか、額面どおり受け取った方との間に大きな社会的な不公正がなかろうかということで、これがかなり大きな問題になっております。
  126. 上原康助

    ○上原委員 そんなできないための理屈をたくさん言ってもらったら、こっちは困るのだよ、あなた。  そこで、それはいろいろ経緯があるということは、私も法律は知りませんがわかるわけですよ。ただ、そういった特別な配慮を一遍やったにもかかわらず試験を受けなかった、受けなかったのも意図的に受けなかったわけじゃなくしていろいろ理由があるわけですね。そこで私も日本弁護士連合会から出された要望書も目を通してみましたが、また沖繩弁護士会からの要望もあります。問題は、確かに行政サイドで言うと、いろいろ不公正な問題等も出てくるんじゃなかろうかという懸念もあるでしょうが、要するにこの二十七年間のブランクがある中で一遍にすべて問題を処理しようとしたってなかなかできないわけですよね。落ちこぼれはどうしても出てくるのですよ。ですから、これは法務大臣、最終的にはやはりある程度の政治判断をやらなければいかないと思うのですね。だから弁護士会も無条件でやれと言っているわけじゃないでしょう。いろいろ資格付与の方法として、簡単に言うと、一つは、沖繩弁護士名簿に登載されている者に限る、そのための何らかの立法措置なり特別措置改正する方法を講ずべきだということ。二番目に、司法試験管理委員会もとに選考及び同法第三条のような講習を改めて行うべきである。三番目に、先ほども申し上げたように、来年五月の十四日という期限があるから、遅くとも一年前にそういった選考委員会もとにおける講習などは実施して、残務処理と転職の機会を、万一通らないあるいはどうしても弁護士として不適格であるという方についてはそういう機会を与える措置をとりなさい。四点目に、この特別措置は沖繩における弁護士に本土資格を付与するための最終的な措置とする、というような具体的な方法も付してやってあるわけですからね。これをそう一遍、親心なんて言ってやったけれども、あたかも資格を取れなかったのは本人たちのせいだからしようがないということでやるのは私はやはりどうかと思うのですね。  ですから、きょうの段階ですぐ、はいやりますというお答えはいただけないと思うのですが、法務大臣、大臣は非常に人情家ということを私は聞いていますので、これはいま少し政治的な判断も含めて沖繩の戦後処理という面からよく御相談をしていただいて、申し上げた要望が通るような措置を、向こう一年しかございませんから、その間にぜひ講じていただきたい。これは要望を含めてですが、御所見を賜っておきたいと思うのです。
  127. 稻葉修

    ○稻葉国務大臣 この問題はきわめてむずかしくて、いま上原さんからそういうじゅんじゅんとまた切々と希望された意見を言われまして、私も自分でも人情家でないとは思っておりませんのです、そういう人情がなくちゃいけないと思っている方なんですが、ここでそれじゃ前向きに検討しますとかおざなりな答弁をして、またかえって期待を持たせて、ついに後はだめであったというようなことになりますと、これは非常に人情に反するわけでございますので、いまこの段階ではひとつ御勘弁を願いたい、こう存じます。
  128. 上原康助

    ○上原委員 この段階ということですから、まだ私もこの件は継続していろいろ御要望も申し上げていきたいと思いますので、ぜひひとつ関係者が主張、要望しているような方向で解決できるように改めて要望申し上げておきたいと思います。  次に、時間の関係がありますので、いまの特別措置法一つの復帰処理特別措置法なんですね。これも法務省と関連することですから法務省の見解も尋ねておきたいのですが、例の沖繩の公用地等暫定措置法、いわゆる米軍基地あるいは自衛隊基地その他の公共用地に供しているところの公共用地の暫定措置法の件です。せんだっても本委員会で防衛施設庁と開発庁の意見あるいは国土庁の意見も聞いてみたのですが、いわゆる新しい特別措置法を考えているわけですね。この件についてはわれわれは憲法との関連においても非常に疑問を持っています。具体的にはきょうは触れませんが……。  そこで、少なくとも法律行政を預かるあるいは特別措置法について担当する面も持っておる法務省として、県民全体が反対している特別措置法は強行しようとする、一方ではこういった弁護士特別措置法の特別措置については特別措置を新たに講じてもらいたいということにはなかなかやらない。どう考えても県民の立場からは納得しがたいですね。この公用地暫定措置法について法務省はどういう考えで対処しておるのか、基本的な点だけきょうは明らかにしておいていただきたいと思うのです。——だれもいないのですか。
  129. 稻葉修

    ○稻葉国務大臣 民事局長の管轄なんですけれども、そういう要求があって来なかったとすれば、いかぬ。御要求がなかったものですから、民事局長が来ないのです。
  130. 上原康助

    ○上原委員 いや私は、法務省は全部来ると言ったものですから、特に指定はしなかったわけですよ。それじゃ、この件については民事局長に報告していただいて、どういうふうに施設庁と詰めて協議をしてきたのか、後で報告していただけますね。
  131. 稻葉修

    ○稻葉国務大臣 上原さんのいまの御要求に対し、民事局長によく調べてあなたに御返事申し上げるように、あるいは委員会の席で機会を得て答弁をいたしますように処置いたします。
  132. 上原康助

    ○上原委員 大臣御自身はこの公用地等暫定措置法をどうお考えですか。あくまで新たな法律をつくりますか。御専門ですからちょっと一言聞いておきます。
  133. 稻葉修

    ○稻葉国務大臣 専門ではないです。
  134. 上原康助

    ○上原委員 もうつくらないということに私は理解しますので……。
  135. 稻葉修

    ○稻葉国務大臣 そうではない。
  136. 上原康助

    ○上原委員 時間ですがあと一点お聞かせいただきたいのは、沖繩刑務所の移転問題が、いろいろ経過はありますがそのことは別としまして、跡地の利用の問題で非常にいま問題になっているわけですね。跡地についてはどういうふうな計画を持っておられるのか。かつて都市計画法に基づいて都市計画審議会では公園用地にするということが一応合意を見たのじゃなかろうかということですが、最近はどうもまた総合庁舎をつくるとかいろいろな意見が出ているようですが、やはり那覇が過密都市で緑地帯がない。本土と比較してもたしか五分の一程度だと思うのですね。そういう面からしても、都市計画法に基づいて審議会が出した公園緑地にするということが最も望ましい跡利用の仕方だと私たちは思うのです。これはぜひ大蔵省とも協議をしていただいて、法務省としても——刑務所移転についてはいろいろここで議論したいことも私はあるのですが、いまさら決まっていることに対して一々けちをつけたり、また問題が発展するような方向にはやりたくございませんのでこれはさておきますが、少なくとも跡利用の問題についてはいま申し上げたようなことを法務省としてまずそれは考えていただかなければいかない問題だと思うのです。どうお考えですか。
  137. 水原敏博

    ○水原説明員 敷地は現在四万九千平米余りございます。昭和五十三年度中に現在の楚辺の刑務所は島尻郡知念村の移転候補地の方に移る予定でございます。現在の楚辺の刑務所用地は大蔵省の御所管でございまして、四万九千平米余りのうち沖繩拘置支所をあそこに残さなければ業務上大変支障を来すことになります。  それを除きまして、跡地につきまして法務省としての希望を申し上げますと、現在那覇の地方検察庁が先生も御案内のとおり県庁の庁舎の一部をお借りいたしております。県の職員並びに理事者からは、できるだけ早く県庁の実情を認識の上ほかに立ち退いてほしいという要望が出されております。それから那覇の地方法務局、これは久茂地というところにございましょうか、土地は大蔵省、建物は復帰前からの法務支局でございまして、法務省の所管にさせていただいておりますが、これも御案内のとおり敷地が大変狭うございまして、法務局にお見えになります住民の方々の駐車場用地も全く確保できないという実情にございます。住民サービスを旨とすべき法務局がそのように大変御不便をかける立地条件にあるということ、それから保護観察庁が労働基準監督署等の合同庁舎に入っております。これまた大変不便な暗いところにございます。それらを入れました法務合同庁舎の新営予定地にお願いいたしたいということを大蔵省には申し入れているところでございます。
  138. 上原康助

    ○上原委員 大蔵省はどういう計画を立てていらっしゃるのですか。
  139. 松岡宏

    ○松岡説明員 沖繩刑務所の跡地のうち、ざっと一万平米足らずの土地を公園予定地ということに残しまして、それ以外の部分は総合庁舎の敷地ということに充てたいと考えております。  上原先生十分御存じのように、沖繩におきましては、沖繩総合事務局を初めといたしまして国の出先機関が全部で五十八官署ございますが、その大部分が現在民公有地の上、あるいはまた建物を借り上げて事務庁舎といたしておりまして、これが各地に散在しているために非常に県民の皆様方に御不便をかけているわけでございます。また、建物も役所の庁舎ということで建てられたものでないものを使っているために、事務効率上も非常に不便であるというようなことがございまして、総合庁舎を建設する必要は前々から関係者一同の深く痛感しているところだったわけでございます。  これには、先生も御承知でございますけれども、経緯がございまして、すなわち、与儀にありました与儀タンクの跡地を小学校及び幼稚園のために活用してもらうという話が昨年決着がついたわけでございますが、そのときにそれとの絡みで、刑務所の跡地は総合庁舎の敷地にするんだということも沖繩県あるいは那覇市ともうすでに約束済みでございます。そもそも与儀タンクの跡地を総合庁舎の敷地にしたいということで関係者話し合っておりましたのを、与儀小学校がマンモス小学校である、とにかく分離して新しい古蔵小学校をつくらないとどうにもならぬということで、いわばそちらを先取りという関係であの与儀タンクの跡地を小学校用地の敷地にいたしましたので、その際に刑務所跡地は必ず合同総合庁舎の敷地にするんだ、こういうことで昨年夏に与儀の問題を最終的に決定いたしました段階で、沖繩県知事及び那覇市長と大蔵省の間でその旨のかたい約束が取り交わされているわけでございます。
  140. 上原康助

    ○上原委員 どうもいまの点については私は合点がいかないのですが、それは行政ベースでどういうことをやったか、それまで私が知るすべもない。しかし問題は、いまおっしゃったように一万平米前後は緑地帯に残すということです。これは確約できますね。それは狭い土地ですから、公共用地もないわけですから、効率的に活用せなければいかぬということは私もわかりますよ。いずれにしてもあの地域の住民の皆さんが緑地帯も欲しいということです。そこいらのバランスは十分法務省の方も大蔵省の方も考えていただかないと、地域住民の協力がないでやっさもっさした中で庁舎をつくったってだめですよ。それらはむしろ緑地帯にした方がいい。それを含めて、これには大臣お答えいただけますね。
  141. 稻葉修

    ○稻葉国務大臣 刑務所移転の問題は各地に問題を起こすわけです。やっぱり地域住民と法務省あるいは大蔵省のそういう行政ベースの方針とかみ合わないで問題を将来に残して騒ぎを起こすようじゃ政治にならぬと思っておりますが、お説のとおりです。しかし、説明を従来も聞き、いまここで聞きましても、緑地帯もつくると言っているのですから、どうでしょうか上原さん、地域の住民をあなたほどの人が説得できないわけがないのですから、そういうことでひとつ御協力願えませんでしょうか。お願いいたします。
  142. 上原康助

    ○上原委員 これで終えます。
  143. 木野晴夫

    木野委員長代理 中路雅弘君。
  144. 中路雅弘

    ○中路委員 最初に法案について二、三、簡潔にお伺いたい。  訟務部の局への格上げですが、四十三年の各省庁の一局削減によって廃止をされたのを、訟務部を訟務局に復活するということなんですが、事前に説明をいただきましたところ、格上げでも当面定員の増加や仕事の内容は変わらないのだという説明を受けているわけですが、間違いはございませんか。
  145. 藤島昭

    ○藤島政府委員 人員の点につきましては、先ほど説明申し上げましたとおり二十三名の事務官が増員になっておりまして、これについては訟務局がもしお認めいただければ、その局に増員するか、地方法務局の方へ増員するか、そういう点も含めて訟務当局で検討いたす予定でございます。  それから、仕事の内容が変わらないということでございますが、今度の局への昇格は、一局削減後に事務が非常にふえてまいりまして、しかも非常に複雑になってまいったわけでございます。中には科学的な専門知識を要するような事件あるいは従来の判例にないような新しい形態の事件、こういうものが相当出てまいりまして、結局従来考えておりました官房長の指揮監督のもとに訟務部を把握する、こういう形が実際問題としてとれなくなってしまった。したがって、官房長は実際には決裁とかそういうものを見ないで官房長の指揮監督を受ける訟務部長がそれを全部やっている。そういうように組織と実態が違ってしまいまして、そういうことは訟務に従事している職員の士気に非常に影響するわけでございます。  したがって、そういう実態をそのまま組織としてお認めいただいて、局長を頂点といたしまして大臣、次官に直結して責任体制をとることがどうしても必要だということと、これも先ほど申し上げましたが、やはり局長となって関係の各省庁に強力に法務省の立場からいろいろ助言、勧告、場合によれば指揮をすることによって訴訟の迅速な処理、または相手方の権利の擁護に尽くしていきたい、こういうようなことでございまして、仕事の内容それ自体は局になったからといってすぐ全く変わっていく、事務量が変わっていくわけじゃございませんけれども、事情はそういうことでございます。
  146. 中路雅弘

    ○中路委員 行管にも一言お聞きしておきたい。  去年の八月に法務省から行管にこの機構の問題について要求があって行管もオーケーされたのだと思うのですが、一度廃止をしたのを復活する問題ですが、行管の方のお考えをもう一言お聞きしたいと思います。
  147. 小田村四郎

    ○小田村政府委員 先ほど上原委員に申し上げたとおりでございますが、行管としては機構の膨張を極力抑制するということで、五十一年度の予算におきましても部局の新設は認めない、こういうのが原則的な方針であったわけでございます。     〔木野委員長代理退席、竹中委員長代理     着席〕  しかし、ただいま法務省官房長から説明申し上げましたとおり、訟務の実態は部としては非常に不十分、局としてふさわしい実態になっておる、これを訟務局にすることによって実際の仕事の内容もさらに円滑化が図られるという客観情勢の変化がございましたので、訟務局につきましてはただいま申し上げました原則の例外としてこれを認めることとしたわけでございます。ただ全体の機構の膨脹を抑制する観点から、訟務部を廃止いたしますほかに、入管局の次長及び政令職でございます参事官二を廃止する、こういうことにいたした次第でございます。
  148. 中路雅弘

    ○中路委員 いま御説明がありましたが、先ほど特に官房長の説明の終わりにあった、私は局へ格上げする一番の背景といいますか、聞いていますと他の省庁に対する指揮監督を強めていこうというのが一番中心じゃないかと思うのですね。最近特に教科書の検定訴訟だとか長沼のナイキ基地の訴訟あるいは大阪の国際空港訴訟など、国が被告になっている裁判が非常に多くなってきているわけですけれども、こういう中で国の方の裁判体制といいますか、主張をひとつ貫徹していこうという考えがこの背景にあるのじゃないか。そうだとすれば、私たちもこの法案については検討を、単に局をもう一回復活するということだけではなくて、いまのそういう情勢とも関連して見ますと、この問題は十分検討をしていかなければいけないと考えていますので、法案の審議の過程を、皆さんの御答弁ももっとよくお聞きして、最終的には態度も決めていきたいと考えているわけです。  そこでもう一つ、この法案と関連もしてくるのですが、お聞きしておきたいのは、若手の裁判官を訟務部に送って勉強させるとか訟務部の検事等が国が当事者になっている事件の裁判官になっているというような交流といいますか、かつて朝日訴訟のときのような裁判所と訟務部の人事交流が現在もあることを聞いているわけです。資料もいただいていますが、大変ですから資料でいいのですが、最近の、たとえば四十八年から三年間ぐらい、判事補から訟務担当の検事に転官するとか、あるいは訟務の検事から判事ですね、裁判の方に転官されるとかいうのは何名ぐらいおられるのか、数字で結構ですが、簡単にお答えいただきたいと思います。
  149. 貞家克己

    貞家政府委員 裁判官と訟務検事の人事交流の点でございますが、これは暦年でございますが、昭和四十八年に裁判官から訟務担当の検事になりました者が三名、昭和四十九年には九名、昭和五十年は同じく九名となっております。  これに対しまして、訟務検事から裁判官に転官いたしました者は、四十八年が四名、四十九年が六名、五十年が四名となっております。  ただ、この中には御指摘の判事補以外の判事の数字が入っているわけでございまして、判事補から訟務検事になった方の数を申しますと、昭和四十八年に一名、昭和四十九年は五名、昭和五十年は四名、こういうことになっております。  また、訟務検事から裁判官になりました者のうち判事補に転出いたしました者が、昭和四十八年には三名、四十九年には四名、五十年が三名、かようになっております。  いま一つ補足的に御説明いたしますと、訟務検事から裁判官になった者の数を先ほど申し上げたわけでございますが、これは裁判官から訟務検事になりまして、訟務検事から裁判官になった者以外に、当初から検事であった者あるいは司法修習生から直接訟務検事になって、それから裁判官に転出したというものの数字も入っておりますので、念のため申し上げておきたいと思います。
  150. 中路雅弘

    ○中路委員 もう一点、これはきょう論議するつもりじゃないのですが、お聞きしておきたいと思うのです。  先ほどお話ししましたように、現在国等が当事者になっている事件、この担当裁判官の中で法務省の訟務部または局に勤務した経歴を持っている人がいるとすれば、その事件名と裁判官名を教えていただきたいのです。これは資料で事前にいただきましたのを見ますと、件数で、本省関係で十七件、それから東京七件、大阪六件というのをいただいておりますので、全国は大変ですから、このいただいた資料の範囲でいいのですが、この資料では東京地裁昭和三十八年第何号とか、何とか請求事件という書き方で出ています。ちょっと私、専門でないのでわかりにくいものですから、先ほど言いましたように、たとえば世間で言われているいわゆる事件名というのがありますね。簡単でいいですが、それでひとつこの事件名をちょっと挙げていただきたい。そうしないと、この事件が何の事件なのか。先ほど言いましたように、たとえば北海道では長沼ナイキ訴訟というように普通言われているのがありますね。北海道はなくていいのですが、ここで資料でいただいた大阪、東京、本省ですね、この件についてだけひとつ事件名を教えていただきたい。
  151. 貞家克己

    貞家政府委員 これは全部申し上げますとちょっと時間がかかるかと思いますが、逐一申し上げてよろしゅうございましょうか。
  152. 中路雅弘

    ○中路委員 事件名だけでいいですよ。ここに出ている何年とか何号というのはいいです。主なものでいま社会的にわりあい注目されている事件名。
  153. 貞家克己

    貞家政府委員 実はこの中にはかなり、社会的に注目されていないと申しますか、されていないと言うと語弊がございますけれども、必ずしも有名でないような事件もございますが、一応全部簡単に申し上げます。  一番は、これは通称はございませんが、名城大学の理事に対する文部大臣の解職処分が不法行為を構成するということで争っている事件でございます。  二番は、これは全林野の労働組合の争議行為を理由とする懲戒処分を争う事件でございます。  三番は、中野の民主商工会の関係の損害賠償請求事件でございます。  四番は、グライダーの滑空練習場の使用禁止要求措置及び占有許可取り消し処分を争う事件でございます。  五番は、スモンの薬害訴訟でございます。  六番は、ストレプトマイシンの製造販売等の許可処分を争う損害賠償事件でございます。  七番は、全林野の労働組合の違法な争議行為を指導したことを理由といたします懲戒処分を争う事件でございます。  八番は、税金の事件でございまして、現物出資に係る譲渡所得の収入金額の算定方法を争っている事件でございます。  十三番は、反戦自衛官に対する懲戒処分を争っている事件でございます。  十四番は、教科書検定に関する家永訴訟でございます。  十五番は、留置場における戒具使用の違法を争う事件でございます。  十六番は、いわゆる大島サラリーマン減税訴訟でございます。  十七番は、東大付属病院の医師の医療過誤に係る損害賠償請求事件でございます。  十八番は、海外出張中の国家公務員が、帰国命令に従わなかったことを理由といたしまして戒告処分にいたしましたところ、これを争っている事件でございます。  十九番は、成田空港の暫定パイプライン工事におきまして凝固剤を使用したその土壌の撤去を求める仮処分命令請求事件の抗告事件でございます。  東京法務局の一番は、土地を払い下げることを約束したということでその土地の明け渡し等を求めている事件でございます。  二番は、北大付属病院の医師の医療過誤に係る損害賠償請求事件でございます。  三番は、農地買収処分の違法を事由とする国家賠償請求事件でございます。  四番は、基地周辺の騒音防止のため国が買い上げました土地の所有権を争っている事件でございます。  五番は、旧軍隊が買収して未登記になっております土地の移転登記を国の方が求めている事件でございます。  六番は、やはり同じような土地の移転登記を国が求めている事件でございます。  七番は、飛行機操縦訓練中に機体が空中爆発をいたしまして自衛隊員が死亡いたしました。その相続人が国家賠償を請求している事件でございます。  大阪法務局の一番は、農地買収処分の無効を理由といたしまして登記の抹消を求めている事件でございます。  二番は、賃料請求事件でございます。  三番は、用地買収に伴う補償金が課税対象となるかならないかということを争っております課税処分取り消し請求事件でございます。  四番は、農地売り渡し処分の無効確認を求める事件でございます。  五番も同様でございます。  六番は、国税滞納処分による差し押さえ債権の取り立てを国が求めている事件でございます。  以上でございます。
  154. 中路雅弘

    ○中路委員 本省と東京、大阪で合計三十件ですね。いま御報告いただいたのですが、全国的に見れば相当多いと思うのです。私は、国等が当事者になっている事件の担当裁判官の中で、いま言いました法務省の訟務部または局に勤務した経歴のある人たちが入っている事件ということでお尋ねしたのですが、挙げられたのを見ますと、社会的にも非常に皆から注目されている裁判がこの中にたくさんあるわけですね。そういう点で見ますと、司法と行政の独立の問題の論議とも関連してこの問題は十分私は公正な裁判という立場から検討してみなければいけない問題があるんじゃないかというふうに考えているわけですけれども、これはまた別の機会にこの問題として私は論議をしてみたいと思うわけです。きょうは一応どういう事件があるのかということだけ、時間の関係もありますので、この席で御報告をいただいたというにとどめたいと考えております。  そこで、きょうお尋ねしたいのは、法務省が所管している各種の審議会について幾つか行管それから法務省にお尋ねしたいと思うのです。  法務省に現在国家行政組織法の第八条に言う審議会としてどういうものがあるのか、名称と定員それから実際の実在員、簡単に御説明していただきたいと思います。
  155. 藤島昭

    ○藤島政府委員 お答えいたします。  すでに資料を提出してあると思いますが、申し上げますと、検察官特別考試審査会、これは委員は五名でございます。副検事選考審査会、委員は七名でございます。法制審議会、これは委員は二十四名でございます。これは現在員でございます。公証人審査会、これは委員は七名でございます。民事行政審議会、これは現在委員の任命を行っておりません。矯正保護審議会、これは委員は三つの部会に分かれておりまして、四十五名でございます。中央更生保護審査会、委員は五名でございます。
  156. 中路雅弘

    ○中路委員 そうしますと、第八条に言う審議会として七つあることになるわけですが、あわせてこの機会にこの第八条によらない、基づかないもの、たとえばいろいろ協議会とか懇談会とか研究会とか置かれている場合がある省庁がありますが、法務省の関係ではこういうものに該当するものはありますか。
  157. 藤島昭

    ○藤島政府委員 ございません。
  158. 中路雅弘

    ○中路委員 行管にお聞きしたいのですが、これまで各種の審議会への国民の直接参加の道を拡大するということに関して行政監理委員会として意見を何か述べているとかあるいは述べた場合の文書、趣旨をひとつ簡単に御説明願いたいと思います。
  159. 小田村四郎

    ○小田村政府委員 行政監理委員会がそのような意見が出たかどうかということにつきまして、私ちょっとただいま覚えておりませんので、後ほど調べさせていただきたいと存じますが、審議会の問題につきましては、これは必ずしも行管のみではございませんで、人選の問題になりますと、総理府人事課の所掌になるわけでございますが、そういう関連を含めまして、三十八年九月に、「各種審議委員等の人選について」という閣議口頭了解がございます。それから昭和四十年の八月十七日、これは閣議決定におきまして、「関係閣僚協議会及び審議会等の整理活用について」、こういう閣議決定がございます。それから四十二年十月十一日に、「審議会等の設置及び運営について」という閣議口頭了解がございます。なお、四十四年七月十一日には、第二次行政改革についての閣議決定におきまして、審議会の整理統合につきましての決定をいたしております。  ただいままで、審議会に関します主たる方針の決まりましたのは、以上のようなものでございます。
  160. 中路雅弘

    ○中路委員 これは行政監理委員会の出されている「行政改革の現状と課題」という中に、「行政改革今後の課題」というところでこういう個所もありますね。「審議会等行政に対する国民の直接参加の制度は、社会経済の進展と国民のための行政の姿勢を確保する必要性に伴って、ますます重視されなければならない。それが、いわゆる御用機関化したり隠れ蓑的に利用されたりすることは、審議会等の構成と審議に国民のための行政の実質が伴わず、形骸化していることに由来する。審議会等には、行政に対する専門知識の導入の目的もあるが、これも含めて、制度目的に即した実効を確保するように改革されなければならない。」ということがこの中に述べられているわけです。  こういうものと関連して、いま挙げられた中で、私も一つ一つ見てみたのですが、たとえば先ほどお話しになりました中の昭和四十四年の七月十一日に第二次行政改革についての閣議決定をしているわけです。この中で、皆さんの方で読んでいただいてもいいのですが、時間の関係で私の方で、こういう点がありますね。この中で審議会の設置、運営について決定しているわけですが、たとえば「委員の数は、原則として二十人以内とする。」ということですね。それから「国会議員及び行政機関の職員は、原則として審議会等の構成員にしないものとする。」というのも閣議決定の中にあるわけです。そしてこの閣議決定の「備考」として、「上記のほか、委員の任命にあたっては、」先ほどお話しの「昭和三十八年九月千日の閣議口頭了解によるものとする。」というのがありますから、この三十八年九月二十日の閣議の口頭了解を見ますと、たとえば「会議によく出席して十分にその職責をはたし得るよう、本人の健康状態、出席状況に留意し、これに該当しないような高齢者又は兼職の多い者を極力避ける。兼職の数は最高四とする。」というふうになっているわけです。そして任期についても、「任期三年のものは三期まで、任期四、五年のものは二期までを原則とする。」約十年までですね。これが昭和三十八年九月二十日の閣議の口頭了解の中にも触れられているところなんですね。  私は、これらの閣議決定や了解事項を幾つか挙げましたけれども、たとえば委員の数は原則として二十名以内、あるいは国会議員及び行政機関の職員は原則として審議会等の構成員にはしないということ、あるいは高齢者または兼職の多い者は極力避けるとか、兼職の数は最高四とするとか、任期の問題とか、こういった閣議決定や口頭了解は、それ以後訂正されたというような話は聞いていないのですが、今日でもなお生きているのかどうか、いま私が挙げたような部分で変更をされた部分はないのかどうか、まずお聞きしたいと思います。
  161. 小田村四郎

    ○小田村政府委員 変更をされておりません。現在でもこの閣議口頭了解、閣議決定等は生きておるわけでございます。ただ、先ほどちょっと申し上げましたように、委員の任命等の人事に関するものにつきましては、これは総理府の人事課の方で個別的のチェックをいたしております。
  162. 中路雅弘

    ○中路委員 ここで職を兼ねる、兼職という場合ですね、先ほど言いました国家行政組織法の第八条に該当する審議委員の兼職ということなのかどうか、その他の各種の懇談会委員やその他の公職等も含むのかどうか、この閣議決定の文庫と関連して説明をしておいていただきたいと思うのです。ここでたとえば兼職最高四というのがありますね。これは第八条で言う、該当する審議会の委員だけを言うのか、その他の問題の兼職についても含めて言われているのかどうか。
  163. 小田村四郎

    ○小田村政府委員 総理府の所管でございますけれども、兼職と申します以上は、ここにございますように、行政機関としての正規の審議会の委員のことを当然指しておるものと考えております。したがって、いわゆる懇談会につきましては、この兼職の中には含まれないというふうに理解しております。
  164. 中路雅弘

    ○中路委員 第八条に基づいた法務省の審議会ですね、七つの審議会。一つは定数だとか現在の委員が決められてないのがありますから、六つですが、先ほど報告がありましたが、たとえばこの法務省の審議会を見ましても、委員の定数が二十名を超えているというのが、この中で二つありますね。それから、国会議員または特に行政機関の職員が加わっている審議会ということになると、中央更生保護審査会を除けば全部行政機関の職員審議会に加わっているということになりますから、この閣議決定や口頭了解事項ですね、いまも変更されていないこれの基準で一応見ますと、法務省の関係審議会でも、一応その基準に合っているのは一つだけ、あとはみんな閣議決定されたものよりもはみ出ちゃって構成されているということになるわけですが、先ほどの報告によりますと、そのように理解していいですか。
  165. 藤島昭

    ○藤島政府委員 形式だけを見てみますと、確かに先生のおっしゃるとおり、人数その他出身、そういう点について閣議口頭了解あるいは閣議決定の線と抵触している面があるわけでございますが、この閣議口頭了解あるいは閣議決定は、私どもはあくまでも原則というように理解をいたしておるわけでございます。  私ども法務省としては、この委員の任命についていままで一番細心の配慮を払ってまいりましたのは、この口頭了解あるいは閣議決定の中にございます高齢者はなるべく避けるということと、兼職は最高四である、それから任期は三年のものは三期、四年、五年のものは二期、大体十年というような点に重点を置いていろいろ委員の任命をしてまいったわけでございます。ただ、審議会のいろいろ性格がございまして、人間が二十名よりも多いのは、法制審議会あるいは矯正保護審議会がそれに該当いたしておるわけでございますが、法制審議会と申しますのは民事法、民法、刑法その他基本的な法令に関する調査、審議を行うところでございまして、これは実は九つの部会に分かれておるわけでございます。したがって、民法、刑法、民訴、刑訴、そういうような基本の法令に従いまして部会が分かれている。矯正保護審議会と申しますのは、矯正というものと更生保護というものは機能が違うわけでございますから、本来二つにしてもいいのかと思いますが、これを一つにいたしまして矯正保護審議会というものをつくった関係で、これも三つの部会に分けているということで、多少人間が二十名よりもオーバーしたわけで、まあ、ある程度やむを得ないのではなかろうかと私どもは考えておるわけでございます。任期とかそういう点についてはできるだけ細心の注意をいたしておるわけでございますが……。
  166. 中路雅弘

    ○中路委員 いま任期だとかあるいは高齢者、こっちの方に重点を置いてとおっしゃったから、私もちょっと言いたくなるんだけれども、じゃ、高齢者というのは、失礼だけれども大体どのくらいのことを言っておるのですか。
  167. 藤島昭

    ○藤島政府委員 この年齢あるいは任期の点についても、まあ法務省の特殊事情としてお聞き届けいただきたいのでございますけれども、やはり民法とか刑法とかそういう基本法令の審議会でございますので、相当その方面の第一級の学者をお願いしなければならないということでございまして、なかなか余人をもってかえがたい面もあるわけでございます。  ただ、先般も私ども官房でいろいろ検討いたしまして、法制審議委員の年齢が相当高齢化しておる、それから相当長期にわたっている方がおいでになりましたので、この際、年齢を下げまして七十五歳、または在任期間十年、このどちらかの条件に当てはまりましたならばひとつ御辞退をいただこうというような方針を昨年つくりまして、それを実行いたしております。
  168. 中路雅弘

    ○中路委員 あなたは実行いたしておりますと言うんだけれども、いまそちらがお挙げになったから法制審議会に例をとりましょう。お名前を挙げて失礼なんだけれども、法制審議会で、たとえば岩松三郎さん、八十二歳で、在任期間二十六年七カ月、小野清一郎さん、八十五歳、二十四年八カ月、鈴木竹雄さん、七十歳、十四年四カ月、あと七十四歳、七十六歳、ずっと七十歳以上になると半分ぐらいおられるのじゃないですか。さっきのお話では、ただ年齢と任期をほぼ重視したんだ、人数と兼職の方はともかくとしてということでおっしゃったから、それで昨年、十年ですが、年齢は七十五歳で、どっちかにかかった方はというお話だけれども、実際にいま挙げたように二十何年という方がずっとおられるじゃないですか。どういうことですか。
  169. 藤島昭

    ○藤島政府委員 先ほどの私の説明がちょっと足らなかったわけでございまして、いま挙げられました八十歳を超えておられる方が二人おられるわけでございますが、このお二人は法務省の特別顧問といたしまして、法務省の法案の立案、研究等についてこの方々からいろいろ御指導を現在でもいただいておるわけでございます。したがって、この特別顧問の方に限っては例外的に、特別顧問としてお願いしている間は法制審議会の委員としておやりいただくのが適当ではないかということを考えたわけでございます。  それから、十四年四カ月という方が一人おられますが、この方は確かに在任期間が長いのでございますけれども、実は商法の大家でございまして、ちょっと余人をもってかえがたい。現在商法部会の会長をしていただいておりますので、この方も例外的にどうしてもそのまま引き続いておやりいただくということにならざるを得ないということになったわけでございます。  なお、そのほか七十五歳を超えておる方が一人おられますが、この方は近くおやめいただこうというふうに考えておるわけでございます。
  170. 中路雅弘

    ○中路委員 じゃ、もう少し別の角度でお話ししましょうか。たとえば職員ですね。「行政機関の職員は、原則として審議会等の構成員にしない」、これも閣議決定あるいは口頭了解事項であることですね。法務省の関係のさっきの審議会でちょっと挙げてみましょうか。その中で皆さんの出された資料で見ると、たとえばさっきの法制審議会なんかは、半分近い十名がそうですね。行政機関の職員ですよ。それから矯正保護の場合は十四名ですよ。つい最近まで小佐野賢治氏までここにいたのでしょう。矯正保護、悪いことをした人を取り締まるのに小佐野賢治氏が入っているのですね。それから副検事、これも六名職員がいる。それから検察官、これは四名。あと公証人のが四名。全部入っているじゃないですか。「行政機関の職員は、原則として審議会等の構成員にしない」ということが閣議口頭了解であるわけですね。しかし、みんな半分近く審議会に入ってるじゃないですか。「原則として」というのはどういう意味なんですか。
  171. 藤島昭

    ○藤島政府委員 私が申し上げました七つの審査会、審議会というのがございますが、これは審議会等ということで性格が若干違うんじゃないだろうか、こう考えるわけです。たとえば検察官特別考試審査会、副検事選考審査会、それから公証人審査会、こういうような機関と法制審議会、民事行政審議会、矯正保護審議会というものとの性格が違いがあるのではなかろうかと考えるわけです。  といいますのは、検察官特別考試とか副検事選考審査会というものは部内の職員を試験をいたしまして副検事に任命するための、言うなれば試験機関。検察官特別考試も同様でございます。それから公証人の審査会も、いろいろ公証人の規律、懲戒等を行うところでございますので、こういうような審査会的なものには、やはり何と申しましても法務省のそれぞれの行政を担当している人を入れる必要が私はあるように考えるわけです。  それから法制審議会、民事行政審議会、矯正保護審議会、こういうところは一般の各省の審議会と同じでございまして、確かに行政機関の職員が多いわけでございますが、やはり私ども審議会の特性と申しますか、法律専門的なことをいろいろいたします関係で、それぞれの所管の行政の人に入っていただいて、その審議会の場においてそれぞれの行政の実態、実情等を十分説明していただき、そういうものを審議会の場に反映させて、そして審議を行っていただきたいというようなこともございまして行政出身の方が入っておる、こういうわけでございます。
  172. 中路雅弘

    ○中路委員 そういうごまかしばかり言ってはだめですよ、逃げを。私がさっき言った閣議決定は「審議会等の」と、全部「等」がついているのですよ。第八条ですね。「審議会等の設置及び運営について」という閣議決定なんですよ。それからさっきの閣議の口頭了解も、「高齢者又は兼職の多い者を極力避ける。兼職の数は最高四とする。」とか「任期三年のものは」云々というのも「各種審議委員等の人選について」ということで、第八条に基づいて設置をされるこの審議会等というのを全部つけて言っているのですよ。だから、いまのようなお話だったら、閣議決定は全く空中分解しちゃって意味はなさないでしょう、閣議決定だとか口頭了解やっているとか。それぞれこの委員会は特殊なんだ、この委員会は特殊なんだ——そうすれば、こんな閣議決定やらなければいいのですよ。全く実情に合わないわけですね。行政の職員を入れない。入れないと言って半分近く入っちゃっている。一人が入っているとか二人たまたま入っていたとかいうんじゃないわけですよ。だから私はこの問題を取り上げているわけなんです。  この三十八年の閣議口頭了解あるいは閣議決定、これはいまも審議会の運営はこの方向でやっていくんだということだとすれば、いまの審議会をそういう立場でもう一回見直してみる、すぐがっと変更するのはむずかしいかもしれないけれども、閣議決定の方向で改善していくとか、そういうことのあれをとらなければ、一つ一つわけあってつぶしていったんでは、せっかく閣議決定をしていても、全部省庁の、自分たちの都合を言って、それが通っていないということになるんじゃないですか。大臣どうですか。
  173. 稻葉修

    ○稻葉国務大臣 中路さんのおっしゃるように思いますね。それですから、やはり閣議決定がある以上はそれに合わしていく、そういうのがいいのでしょう。だから、さっき言った法制審議会等でやむを得ないものがあるん、だが、さあそうなると、閣議へ持ち出して、この閣議決定は言うべくして行われぬ点もたくさんあるから、この辺で考える。そっちの方を考え直してみようかということもあり得るわけですね。検討します。
  174. 中路雅弘

    ○中路委員 いや、また例を挙げますと、さっきの審議会の委員のうち、これは原則として——兼職の場合は原則も何もないですよ。最高四と閣議決定は書いてあるのですよ。しかし、その中で、ずっと見ていただけばいいのですが、八つも七つも兼職している人がいるのですよ、委員で。最高四だと決めてあって、実際は七つも八つも兼職しているのですよ。そういうのがずっとありますから、私のお話ししているのは、法務省の審議会、法の守り手ですからね、法務省というのは。その法務省がこの閣議決定に事実上反しているわけですね。最低限自分たちが決めた閣議決定は守っていくということにしていかなければ、七つあるうち一つ除いてほかは全部閣議決定や口頭了解にも事実上反するような構成になっているということは、いずれにしても問題だ。     〔竹中委員長代理退席、木野委員長代理     着席〕 この閣議決定が生きているのですから、おっしゃったように。閣議決定、口頭了解が変わっているのだというなら別ですよ。しかし、閣議決定は生きているし、口頭了解もそれに基づいて指導されているのだといえば、その法務省の審議会がそうでないということは、やはり私は検討しなければいけないという考えで持ち出したわけですね。  行政管理庁、いまの実状についてどうお考えですか。
  175. 小田村四郎

    ○小田村政府委員 任命の問題につきましては、先ほど申し上げましたように、私ども所管しておりませんので、ちょっと答弁申しにくいわけでございますが、ただ、この閣議決定はいずれも原則を書いたものでございますので、その中には審議会のそれぞれの性格によりまして例外があることを否定するものではないと考えます。その個別的な例外が果たして適当であるかどうかという問題は別途あるかと思いますけれども、例外があることまでも絶対的にいかぬというわけではございません。たとえば法律によりまして、審議会によっては国会議員何名、行政機関の職員何名ということを法定してある審議会もございますので、すべてこのとおりというわけにはなかなかまいらないのではないかと存じます。
  176. 中路雅弘

    ○中路委員 私が言っているのは、例外というような現状じゃないからお話をしているので、これは大臣も先ほどおっしゃいましたから、十分検討していただきたい。閣議決定と了解事項がいまも生きて、そういうことで審議会の設置、運営をやっていくとすれば、やはりここで検討しなければいけないだろうという意見ですから、ひとつこれで検討してほしいと思う。
  177. 稻葉修

    ○稻葉国務大臣 どっちが原則でどっちが例外だかわからないようなはみ出し方は、法秩序を担当する役所としては、まことに不愉快に自分も思いますね。検察官の任用の審議会みたいなものは、やはり部内の者が入らぬとうまくないといって官房長も言うていますが、それならそれのように閣議決定にもある程度弾力性を持たしたものでないと、行われもしないものを閣議決定をいつまでも固執しているというのも、どういうものだろう。  こういう貴重な御質問を受けまして、何だかまことにお恥ずかしいようなはみ出し方でございますから、早速総理府総務長官にもこの事情を言うて、こっちも閣議決定に沿うよう、すぐ、ばかっとはいかぬけれども、順序を追うてなるべく早い機会にそれに近いものになるという努力をいたしますとともに、閣議決定にも無理なところがあるのじゃないか、よく調べてみます。そして、両々相まって決定と実際とが合うようにしなければ国民の信用に反すると、こういうように私は思いますね。
  178. 中路雅弘

    ○中路委員 検討していただくというお話なのでいいのですが、こういう委員の中で、たとえば元法制局長官の林さんですね、林さんなんかも五つ兼職になっているのですね。それから元国家公安委員長の青木さん、この方もふえています。だから、元法制局長官や元国家公安委員長がみんな閣議決定からはみ出ちゃっているのですから、こういうことではやはり本当に国民本位の民主的な行政管理という立場からいっても締まらないわけですよ。例外というのではなくて、いま現状はどっちが原則かどっちが例外かわからない現状だとおっしゃったとおりなのです。だから十分この点は検討してもらいたいと思っています。  もう一つお聞きしておきたいのですが、これは行政管理庁にお聞きしたいのですが、私、前に取り上げたことがあって、まだどうなったか御返事をいただいてないのですが、行政監理委員会委員長はどなたですか。
  179. 川島鉄男

    ○川島(鉄)政府委員 松澤行政管理庁長官でございます。
  180. 中路雅弘

    ○中路委員 委員長が行政機関の長で、そして国会議員なわけですね。これはさっきの閣議決定了解事項からいっても、厳密に言えば決定違反でもあるわけですが、委員長が行政機関の長であるという場合、結局自分自身が自分自身に諮問して自分自身に答申するということになるわけですし、審議会本来のあり方からして問題があると私は思うので、昨年の夏以来これを問題にしたわけですけれども、その時は検討するという答弁をいただいているわけです。以前から検討問題として言われていながらまだ結論が出されていないのですが、これはどういうように検討されたのか、この問題の結論をどういうように出されるのか。検討するという約束ですから、どうなっているのか、ひとつお尋ねしたいのです。
  181. 川島鉄男

    ○川島(鉄)政府委員 この閣議決定の線に合っていないという点につきましては、実は、これは行政管理庁設置法という法律によって設けられた機関でございまして、そこには法定されて、行政管理庁長官委員長を務めることになっております。そういう意味で、もう少し上位の概念になるかと存じます。  それから、委員長と諮問者である行管長官とが同一人格であることはどうだろうかということでございますが、実はそういうような審議会という形のものはほかにも若干ございます。ですけれども、とりあえず、行政管理庁の機関である行政監理委員会は、なぜ両者が同一人格の者が兼ねているかということが問題だと存じます。実は先生から去年そういうような問題を御指摘いただきまして検討いたしました。というのは、法律で定められたときと事情変更があって、そういうようなことを変える必要があるかどうかということでの検討をいたしたわけでございますが、実は立法の際の、またこの当委員会におきましても御承認をいただきました考え方といたしましては、行政監理委員会審議される内容のものが行政制度あるいは行政運営の非常に基本的なような問題につきまして御審議をいただくことが多いということの事柄の性質から申しまして、そういう議題につきましては閣議の問題として重要なテーマであるということで、閣議での御議論なんかを煩わすことが多々あるのではないかという意味におきまして、閣議の方にその監理委員会審議の状況などを反映される必要があるのではないか、かつはまた監理委員会の方にも台閣に列しております行管庁の長官が直接に会議に参加いたしまして内閣方面の意向を反映させる必要があるのじゃないかというような点につきまして特に着目いたしまして、行管長官が委員長であるということに相なっていることかと思います。  そこで、そのような運営が行われるに当たりまして、現時点で事情がいろいろと変わってきて委員長を行管長官が兼ねるのは考え直してもいいんじゃないかという事態があるかということについて検討いたしました。結論は、現在の運営では特に支障がないというふうなことで、あえて法律改正を求めてまでそういうような改正をする動機づけがないという結論になっております。当分は現状で進みたいというのが結論でございます。
  182. 中路雅弘

    ○中路委員 私はいまの結論には意見があるのですが、改めてその点は別の機会にまた論議をしたいと思うのです。  この問題の終わりに大臣にも聞いていただきたいのですが、いま法務省の審議会の問題を私は取り上げましたけれども、しかし、ちょっと調べてみたのですよ。全体の審議会がどういう状態になっているのかということで私の方で調査をしたのですが、いろいろ項目がありまして、たとえば二十名以内にするというのがありますね、それから行政機関の職員は原則として構成員にしないとか、こういう幾つかの点だけ一応当てはめてみて、条件はいろいろあるでしょうけれども、こういうことだけずっと延べにして見てみました。そうしましたら、これは大臣にもいろいろあるのですが、たとえば事務次官の兼職の状態ですね。こういう点も見てみたのですが、さっきの二つの問題、二十名以内、それから行政機関の職員や国会議員は原則として構成員にしない、こういう二つの条件だけで見ますと、すべての審議会の中で、これからはみ出てないというのは二九%ですね、三割しかないです。だから、先ほどどっちが原則でどっちが例外かという話がありましたけれども、私は、それぞれの審議会で言えば事情が、言い分があるだろうと思うのです。しかし、少なくとも閣議で決定しているわけですから、それを、自分たちで決めたことを自分たちで政府が守れないということでは問題だし、それが三分の一しかそうなってないということになれば、文字どおり例外と原則が逆になっているわけですからね。これは検討すべきじゃないか。だから法務省の例で挙げましたけれども、全体がそういうことになっているので、ひとつこの点は閣議決定でもありますから、閣議の中でも一度問題にしていただきたいと思うのです。  それから、もう一つのたとえば兼職の問題を見ますと、事務次官だけで例を挙げますと、最高四というのがありますけれども、十以上兼職している事務次官が十二名いますね。二十を超えるのが八名います。ひどいのになると三十以上兼職しているのがあるのですね、事務次官で。国土庁二十三兼職、大蔵省三十四、厚生省二十四、農林省三十、運輸省三十一、建設省三十、自治省二十八、これは全部閣議決定違反だけじゃなくて、聞いてみますと、兼職が多いために代理出席がどこでも公然とまかり通っているわけです。そして定足数が足りないというので審議会が有効に成立してないですね。にもかかわらず物事が決定されるという審議会も、調べてみると相当数に上っています。そうしますと、審議会で審議していると言っても、任命された審議会の委員が、兼職が多いために実際には自分は出席していない。代理出席や欠席をしている。だから厳密に言えば実際には成立していないけれども、そこで大事な物事が決定されておるということも審議会の中には非常に多いわけです。こういう事態はやはり放置しておいてはまずい。いまの、たとえば三十も兼職していればみんなは出られないですよ。名前だけになるのですよ、次官が。この点はもっと実情に合ったように検討をし直さなければいかぬのじゃないか。そうしなければ、本当に国民の負託にこたえられるような行政、そういったものもできないだろうというふうに思うのですよ。  これは全部の省庁にわたっての問題ですから、私、簡単に数字だけで調べてみたので一つ一つについてはまたいろいろ論議があるだろうと思いますけれども、そういう現状なので、この問題についても一度検討いただけませんか。大臣、ひとつ……。
  183. 稻葉修

    ○稻葉国務大臣 機会を見て総理府総務長官にこれを強く言うて、おれも困っちゃうよということを訴えまして、担当は総理府総務長官ですから、閣議へ持ち出して検討して各省に注意を促して、余りはみ出さないように申し合わせでもしようじゃないかということをやってみたいと思います。
  184. 中路雅弘

    ○中路委員 それでは一応この質問は終わりまして、短時間ですが、あと一問だけ、全く別の問題ですが、お聞きしたいのです。  これはまだ検察庁に告発するとか、法的な手続をとったという問題ではないのですが、きょうの私の質問や御答弁、それから今月の関係者のいろいろの話し合いによっては、ぜひ法的な手段もとりたいという問題ですので、ひとつ聞いておいていただきたいと思うのですが、防衛庁はお見えになっていますね。  横須賀の防衛庁の共済組合の土地の取得に関する問題なんです。神奈川県の横須賀市で防衛庁の共済組合、代表は防衛庁長官ですが、職員の住宅をつくるというので関係農民から土地を買われたわけですが、事実上その代理人になって間に入って土地を取りまとめた日伸産業、これは下平邦義というのが社長ですが、それが等価交換で換地を予定したわけですね。防衛庁の共済組合の方は公正証書もそろっているということで、十三回にわたってですか、たしか七億二千五百万円もう金は支出されておるわけですね。しかし、十六名ぐらいと思いますけれども関係の農民には、五年たっていますけれども換地はまだ渡りませんし、そこへ土地の譲渡が実際にはまだないにかかわらず税金は来ているという状態なわけですね。しかもその換地の土地は宅地造成の規制が行われていまして、造成がされる見通しはいまないですね、まだ。それだけじゃなくて、最近の周辺の平作川のはんらんとかいうことで市の方も厳しい規制をやっていますから、造成されるという見通しも立たない。簡単に言いますと詐欺同然の形で土地を取られている、それでそのままにされているという状態で、訴えもありまして、これは共済組合の皆さんにも御足労願って、現地で関係の農民と、それからこれを取りまとめた下平日伸産業の上にロイヤル観光という会社があるわけですが、防衛庁の共済組合はこの会社に金を払われたわけですね。この観光の代表者と協議をしたのですが、まだ問題は解決をしない、関係者は逃げ回っているという状態なので、農民の人たちはこのまま解決しなければ、防衛庁の共済組合、いま仮登記になっていますから、契約不履行で仮登記を抹消してほしい、そして法的にも訴えたいという話もあるわけです。  ですから、現状がいまどうなっているのか。この問題を共済組合は、いますでに七億二千五百万から共済組合の金が出ているわけですから、どういう現状なのか、どういうふうにこれを解決されようとしているのか。共済組合としても私は責任があると思いますので、ひとつお考えをお聞きしたいと思います。
  185. 原中祐光

    ○原中説明員 申し上げます。  いま先生がおっしゃった中で、私ども実は御指摘の土地は、四十五年の十二月十四日に北軽井沢ロイヤル観光株式会社、現在はロイヤル観光開発株式会社と名を改めておりますが、この会社と土地の売買契約をいたしまして、やはり土地と申しますものは確実に確認した上で代金を支払わなくてはならないという見地から、所有権の移転登記、農地につきましては所有権移転請求権仮登記が終わりましたものにつきまして代金を払ってまいりました。四十五年から四十九年七月で一応すべて代金を払ったわけでございます。ところが昨年になりまして、いま先生がおっしゃっておられますように、私どもの相手となりましたロイヤル観光開発株式会社の下で日伸産業株式会社という会社が取りまとめをしたということを承知したわけでございまして、そのことにつきましてはわれわれは知らなかったわけですが、特に調べてみますと、土地を売るよりも等価交換で土地をもらいたいという地主の方々十九名に対しては、当時公正証書を作成いたしまして、私どもの取得いたしました近辺の会社の土地を造成した暁には、その土地を交換の現物としてお渡しするというようなことになっていたわけでございます。  そういうことでございますので、交換すべき土地の宅地開発につきまして私ども調べますと、会社側は四十七年三月には事前審査願を横須賀市に提出しておりまして以来、学校用地あるいは公園用地、道路の設計等々、いろいろと許可に当たりましての市側の指導を受けてまいってきている事実がございました。しかし、四十九年の七月でございますか、六、七十年来の豪雨がございまして、先生がおっしゃいました平作川という川がはんらんいたしました。この地区の開発に当たっては、どうしても排水の問題が解決しない限りちょっと、市街化区域に指定されてはおりますけれども、開発許可の見合わせと申しますか、そういうことになったわけでございます。  それで、とにかく地主さん方と会社側とはその時点でそれぞれ納得して契約されたことでございましょうが、いろいろなこういう情勢に立ち至りまして、会社側としてもできるだけ早くお約束が果たせるよう努めているように聞いておりますし、私どもも何の問題もない土地だということで購入いたしたわけでございまして、一日も早い解決を望んでいるわけでございます。  御存じのとおり、現在職員の家を持ちたいという希望は大変切なるものがございまして、特に自衛官は各地に転任してまいりますので、おおむねが五十歳で停年になる方々は、停年後の住宅ということについては本当に真剣な悩みを持っております。そこで、防衛庁の共済組合といたしましても、宅地分譲用地をとにかく入手して、皆さんの福祉に役立てたいというふうにやってまいったわけでございますが、るる申し上げました事情で、この地区の測量は一応終わりましたけれども、開発の許可の見通しが立たないので、事業の推進は中断しているという状況にございます。私どもといたしましても、事情がわかりますと地主の方々の心情も理解できることでございますので、会社に対して地主と円満な解決を図るよう強く要請しております。  以上でございます。
  186. 中路雅弘

    ○中路委員 公正証書がそろったので金を七億から払ったということなんですが、実際訴えを見ますと、特に仲介をした業者が、土地売買に大変不慣れな農民の皆さんにつけ込んで、実際は印鑑や印鑑証明を勝手に使って所有権移転の登記をしてしまったという訴えもあるわけですね。自分が車の車庫証明をとりに行って初めて宅地もみんな渡されたということがわかったという人たちもあるわけです。しかも、いまお話しの代替の土地というのは、市の方で開発がストップされているというだけでなくて、業者が所有していない第三者の土地というのも中にはあるわけなんです。だから、この問題は交換の問題だけどうするかということでは解決しませんし、横須賀市も、こういう事態になっていますから、共済組合の方が農地転用の申請を出しても、この問題が解決するまでそれは受け付けないということを農業委員会は決めています。そうしますと、皆さんの方は七億二千五百万からの金を出したのだけれども、実際には農地の転用はできませんから、先ほど切なる願いだというお話でしたけれども、その切なる願いの住宅は実際には建たないわけですね。そういう意味では、やはり防衛庁の方でもこの解決についてひとつ積極的に関係者と話をして、たとえば等価交換の土地の別のところを何か考えるとか、いろいろ方法はあると思うのですね。そういう点で十分関係者と話をしてもらうということも、ここでひとつお約束を願いたいと思うのです。  それで、きのう私、電話で聞きましたら、現地で業者と農民の人たちの話し合いがやられておりまして、そこで五月の末までには防衛庁の関係者の皆さんを含めてひとつ三者で話し合いをしたいということがきのう決まったということなんで、ぜひともその点は皆さんの方も参加をしていただいて、この話をひとつ解決できるようにしていただきたい。話がつかなければ、先ほど言ったように法的にも告発もしたいという話なんで、その際は検察庁の方もぜひ調査もしていただかなければならないので、きょうこの席で事情だけ聞いておいていただきたい。  だから、もうこれで終わりますけれども、防衛庁の共済組合の代表の皆さんには、ひとつ防衛庁の方も責任を持って関係者と話し合って解決するということで努力していただくということの発言をお願いしたいのと、それから検察の方では、そういう告発があれば当然調査をして、いまお聞きになっているのですから、この問題について調べていただきたいということもお願いをしておきたいと思うのですが、一言ずつ発言を願って終わりたいと思うのです。
  187. 原中祐光

    ○原中説明員 努力してみます。
  188. 山口悠介

    ○山口説明員 現在の時点でどういう犯罪が成立するか確定的なことは申されませんけれども、告発を受ければ誠心誠意捜査するつもりでございます。
  189. 木野晴夫

    木野委員長代理 鬼木勝利君。
  190. 鬼木勝利

    ○鬼木委員 私は、本法案について御質疑を申し上げたいと思いますが、その前にちょっとロッキード問題について法務大臣にお尋ねを申し上げたいと思います。  稻葉先生は私、日ごろから非常に御尊敬申し上げておるんですが、連日大変お疲れだと思っております。ロッキード疑獄事件は、私が申し上げるまでもなく国民の重大な関心をいま集めておるわけでございます。国会におきましてもほとんどこの一点に論議が集中されておるわけでございますが、大臣は司法の最高責任者としてロッキード事件の真相解明ということを、国民が、すっきりした、本当によかった、こういうときに人格高潔な稻葉法務大臣であったればこそ、よかった、みごとに解明をしていただいた——率直に申しまして、非常に稻葉法務大臣に対する国民の期待は大きいのです。これは私、決して稻葉先生にお世辞を申し上げているのではない。かねてから豪胆無類をもって鳴る稻葉法務大臣だから、必ず快刀乱麻を断つごとく解明してくれるだろう、よかった、国民はこのように期待をかけておる。言いかえますならば、この問題の解決はまさに稻葉法務大臣の御双肩にかかっておると言っても過言でないと私は思います。  そのように国民が期待しておりますので、先生は必ずおれの手でこれは解決するんだ、りっぱに解決してみせるという御確信があるかないか、国民の期待に必ずおれは沿うぞ——どうも三木さんが明確にこれは徹底的に追及して解明いたしますと言っておりながら、あいまいもこでだらだらして、われわれは全く承知ができない。そこでわれわれは先生に大いに期待をかけておりますが、先生の御見解、御確信のほどを承りたいと思います。
  191. 稻葉修

    ○稻葉国務大臣 ロッキード事件の徹底的解明に関しましては、当面の責任者としてきわめて責任の重大なることを痛感しておりますから、自信のほどはどうだ、私はこの事件の解明は、法務行政人事におきましてもきちんとやってございますから、先生も御承知のとおりいまの検察首脳部のあの陣容を見ていただけば、十分信頼するに足る陣営であります。この信頼関係に基づいて、いやしくも世間から、政党人である大臣がなまはんかに資料を見たりすることは、責任を回避するのじゃありませんけれども、検察陣営の士気に関する点もなしとしないということから、ああいう措置をとりました。しかし、責任は法務大臣にあるんだから、責任云々のことを心配せずに濶達自在に、ことにこの事件につきましては政界に疑いを向けられておることでありますから、厳正公平、不偏不党——その不偏不党のところが大事であるのみならず、余りおれがやってみせるんだというような、そういう功名心に走っちゃいかぬ。難事件であるから、冷静沈着に事態の究明をしてもらいたい、こういう段階で、鋭意捜査をし、じりりじりりと真相究明に近づいておりますということを申し上げ、万全の自信があるというような大それた、謙虚でないことではかえって真相究明を危うくいたすと思って、謙虚にしかしまじめに、あの有能にして勤勉な検察国家公務員に対する満幅の信頼を置いていまやらしている。  幸いにして、こういう法務大臣の態度に対し、検察首脳部としてはこれまた信頼してくれておりまして、この事件に関する限り法務大臣と検察首脳部、ことに検事総長との間にこんなに信頼関係のあったことはいまだかつてないのではないか、この点は自負しております。御期待に沿いたいと思います。
  192. 鬼木勝利

    ○鬼木委員 これはおれがやるんだというような功名心というようなことではない。なおまた、司法当局を信頼して謙虚な気持ちでやるんだ。そこがあなたの大変いいところであって、私が御尊敬申し上げているところはそのあなたの人となりで、いまの大臣のお言葉を聞いて私も非常に意を強くするわけでございますが、おっしゃるとおり司法当局の今回の陣容はまことに前代未聞で、みごとなもので、そして司法当局を信頼し切ってあなたが任せられておる、まことに結構で、私も大いに敬意を表します。  ところが、司法の最高責任者としてこの事件をいつごろまでには解決したい、いつごろまでには何とかけりをつけたいという大体のめどといいますか目途といいますか、——私もそんな根性の悪い男じゃございませんから、時期的に大体の目途を言われて、それを取り上げてどうだこうだとかそういうけちなことは私は申し上げません。しかし、およそ目的というものが、行く先がはっきりしていなければ、そういう点は司法当局と打ち合わせていないというようなこともおありであるかもしれぬと思いますが、大体大臣のお気持ちはおよそどの時期ごろまでには何とかしたい、これが全然わからないと、二年になるか三年になるか四年になるかでは、これでは私、国民が絶対承知せぬと思う。でございますから、法務大臣にお心やすいままに私はお尋ねするんだが、君は心やすいと言うが、おれはお前とはそんなに心やすくないとおっしゃるかもしれぬけれども、そんなことはおっしゃらぬと思うし、ことに私はあなたと会館でも隣組ですからね。朝晩先生のごけいがいにも接しておるのでそういう気持ちでお尋ねをしたわけでございますが、その点をひとつ……。
  193. 稻葉修

    ○稻葉国務大臣 それは、まことに手痛い御質問でございますね。まあ、わが国の民主政治の健全育成にも重大な影響を及ぼす事件であり、民主政治に重大な影響を持つ事件はやはり選挙にも非常に関係のあることであります。したがいまして、事態の黒白というものがないまま選挙はやらぬ方がいいという私の政治家としての判断からは、選挙の時期はぎりぎり詰まっているのですから、それにある程度余裕を持たした時期に解明しなければ困るではないかということは言えると思うのですけれども、七月の末であるとか、いなかのお盆の八月十五日であるとか、そういう時期を明確にして私がここで、そのころにはできるでしょうというようなことをもし申し上げますと、法務大臣の検察当局に対する積極的な指揮権の発動にもなりかねないおそれがあることは、鬼木さんも重々御承知のとおりでございます。  そういう点を踏まえまして、刑事訴訟法の第一条にも、適正、迅速にとあるわけですから、その立法趣旨に適合するよう、いま一生懸命にやっているということで、この段階では答弁をとどめさせていただきたい、こう思うのでございます。それを、ああ六月の末までだとか七月末までにやりますよと、かっこういいことばかり言うだけでは事態の究明になりません。先ほど言ったように、その辺は謙虚に、じりっじりっとやっていかなければならない。非常に難局、難局も一番の難局のところへ差しかかっているような段階でございますから、これからこの手で後何時間で終わるなんと言ったら碁になりません。なかなかむずかしい詰め碁ですから、碁の名人である鬼木さんにはおわかりいただけると私は思うのです。
  194. 鬼木勝利

    ○鬼木委員 御趣旨まことにごもっともで、お答えはさもあらんかなと私は思っておりましたが、しかし、迅速に処理するようにという、これは法的御説明もいまあったようですが、国民は、これも従来のように、疑獄事件なんか起こってもあいまいもことして、やいやい言っても最後は竜頭蛇尾でわけわからぬ、そういうことにまたなるんではないかという非常な危惧を持っておる、いつごろこれは解決するのだと。巷間いろいろ伝うるところによりますれば、自民党が解散できないのはこれが解決しないからできないのじゃないか、だから解散前には何とかこれをやるんであろう、いろいろな憶説、議論百出でございますが、それはそれとして、いまおっしゃるとおり、そういう簡単なものじゃない。ですけれども、これが二年も三年も四年もかかったのじゃ、これは話にならぬ。それは、なるほど法務大臣がおっしゃるように、かつてない捜査陣容を整えておる、だから私は信頼している。これはまことに結構であると思う。だけれども、信頼し切っていらっしゃると同時に、また、司法当局と互いに連携をとられて、あるいは最高責任者として大いに皆の労をねぎらってやる、あるいは督励する、あるいは激励するというようなこともおありであろうと思う。ですから、いつだという、私はそんな御無理なことは申し上げないが、少なくとも国民が納得するような早い時期に、迅速にこれを処理したいというお気持ちはおありだろうと思うのです。具体的におっしゃることはなかなかむずかしいだろうと私も思いますが、その辺のところまで、ちらっとでもいいからひとつ御答弁願いたい。
  195. 稻葉修

    ○稻葉国務大臣 それはもう申すまでもないことなんです。またうやむやになるのではないかと国民は不安を持っているということをおっしゃいましたが、それは私もうなずけるのです。この事件が、国際的なきわめてむずかしい事件であることが一つ。もう一つは、過去において、具体的には造船疑獄事件のときに、捜査して逮捕に踏み切る寸前に、その前の晩までいいよと言っておった法務大臣が、明くる日の朝、当時の検事総長に言わしめれば、呼んで話してくださればいいものをメモを持ってだれかに、それも余り高い地位でない人に持ってきて、これは大変だというので居どころを捜したけれども行方不明になったりいたしまして、遂にああいうことになったという悪い実績が過去においてあるものですから、これが一つ原因になって、またうやむやになるんじゃなかろうか、するんじゃなかろうかというあれがございます。  私は、第一の点については、事案のむずかしい点でございますから、それに対してやってくれればいいがな、うまくいくんじゃないだろうか、まずくいくんじゃないだろうかという不安は肯定しましても、第二の不安はどうかひとつこの際払拭して、御信頼願いたい。法務大臣稻葉修を御信頼願いたい。迅速に督励して国民の期待に沿いたい、こういう気持ちでございますが、ただ、いつごろまでというようなかっこうのいいことは申し上げる性格になっておりませんので、御勘弁願いたい、こういうことでございます。
  196. 鬼木勝利

    ○鬼木委員 これより以上大臣に追っても、それは同じだろうと思います。  そこで、この事件捜査に当たって司法当局の方から、その都度といいますかあるいは必要な場合に大臣に御報告があっておるのか、あるいはまた指示を仰がれたようなことがあったのか。先ほどから、司法当局をすっかりおれは信頼している、だから一切任せている、まことに結構だと思いますが、全然任せっ放しで、最高責任者である大臣が何も知らない、傍観しているんだというようなことではあるまいと思いますけれども、何か司法当局から報告でもあったか、あるいはまた指示でもなさっておるのか、そういうことが行われておるのか、おらないのか、その点をひとつお漏らしできれば……。
  197. 稻葉修

    ○稻葉国務大臣 任せっぱなしではないのです。日露戦争のときの大山元帥みたいな、あんな偉い人ではありませんから、きょうはどこで戦してますかなんという調子で、その辺で酒飲んでいるというわけにはいかないのです。それはそうです。ですから、報告も受けています。私の記憶では、児玉譽士夫を脱税で起訴する段階において、刑事局長を通じて報告を受けました、そこまでいきましたと。公判維持の自信があるかいという問いもいたしました。自信があると言っております。それから丸紅の大久保、伊藤両人を外為法違反で起訴することになりましたというときも、刑事局長を通じて受けたわけです。それからもう一つは、ついおとといでしたか、さきおとといでしたか、児玉譽士夫を外為法違反で明日起訴いたしますという段階のときに、これも刑事局長を通じて言ってきました。もっと重大なのは贈収賄でございますから、これのときば刑事局長を通じなんということではなかろうと思っております。  そういうことでございます。
  198. 鬼木勝利

    ○鬼木委員 児玉譽士夫氏の件あるいは丸紅の件、それから昨日の児玉譽士夫を紹介された件とか、いろいろ国会で——それは大臣は随時御発言なさっております。それも結構だと思いますが、相当この事件についても時日を要しておりますし、国会ももう残り少なくなっておりますので、一度ロッキード事件に対して中間報告といいますか、大体こういうふうになっているというようなことは国会で中間報告でも、系統的に、お漏らしできる範囲内において、捜査に支障を来すようなことはかねがねおっしゃるとおり困ると思いますが、そういう点はお考えはございませんか。その点ひとつ、やはり国民が知りたがっておりますから、一体どういうふうになっておるか、いまどこまで進んでどういうふうになっておるだろうかということを非常に国民は求めておりますので、そういうお気持ちは大臣にはございませんか。
  199. 稻葉修

    ○稻葉国務大臣 捜査当局の捜査の妨げにならない範囲とおっしゃいましたから、そういう範囲で国民の知りたがっておることを国会を通じて知らせるのは民主政治の要諦であると思います。したがいまして、よく法務省部内においてもまた警察当局との打ち合わせもしまして、事態の推移を見て、その段階において差し支えない範囲においてそういうことを中間報告をすることは検討をいたします。  なお、先ほど丸紅の二名につきまして起訴をするときと言いましたが、まだ起訴の段階に至らないという報告を刑事局長から受けたことがございますし、児玉の外為法違反の起訴は、報告を受けたのが五月十日でございます。訂正いたしておきます。
  200. 鬼木勝利

    ○鬼木委員 最高責任者としてはいろいろ慎重にお考えにならなければならぬだろうという先生のお立場は私も大いに了承いたしますが、その点はひとつ考慮していただきたいと思います。  それから、本問題について最後に一つお尋ねしたいのは、昨日、法務委員会でございましたか、安原刑事局長が刑事訴訟法の四十七条のただし書きについて、法務大臣は、理論上いずれの公益が優先するか否かを判断することは可能である、こういうわかったようなわからぬような言い方をしておるのです。つまり、言いかえまするならば、法務大臣は灰色高官の名前を四十七条のただし書きによって明らかにするところの権限を持っておる、こういうことを安原刑事局長は言ったものだと私は理解しておる。言い方はいま申し上げたようなことを言っておるけれども、私がこれを解釈すれば、法務大臣の権限にある、こういうふうに私は理解するし、皆さんもそう理解しておると思う。  そこで法務大臣は灰色高官名を公表することもあり得る、このように大臣は明言されますか。おっしゃられますか。それをはっきりひとつ言ってもらいたいと思う。
  201. 稻葉修

    ○稻葉国務大臣 いまの段階で捜査終了後の時点の事態の究明を想定しあるいは予想して断定的なことを申し上げることは、総理にもちょっと慎重に願いたいと言うて、総理もそういうふうに答弁しています。私も同様なんでございますね。とにかく捜査当局、私どもとしては黒を追及するわけです。そして黒が明らかになって初めて、みんなが想像しておったのが白だったり、灰色だったりということになるわけでありまして、いまは犯罪捜査をする当局は、どうしても黒と、こういう決着をつけたい。そうしてだれが黒であるか、黒の存否をつかみたい、こういうことですから、その後の段階で初めて灰色とか白とかいうのがその時期に出てくる。それをいま予想して、いわゆる灰色の政府高官という表現で、それを公表することもあり得るとかあり得ないとか、そういうことを断定的に申し上げるのはどうか。ただ刑事訴訟法上、四十七条のただし書きはございますから、国会の国政調査権に基づいて国会が正式に捜査当局、法務省あるいは政府に要望をお出しになったときに非常な重大な場面に遭遇するわけでありますが、これについてのきちんとした覚悟はできているのか。ひそかに持ってはおりますが、いま申し上げるという段階ではないことを御了解願いたいと思います。
  202. 鬼木勝利

    ○鬼木委員 いや大臣、私はいま四十七条のただし書きを行使しろ、こういうことを申し上げているんじゃないのです。なお、いま総理のお気持ちもおっしゃっておったですが、私は総理のことをお尋ねしているんじゃない。総理はどう言うか、それはまた別で、いやしくも司法の最高責任者として四十七条のただし書きの行使については、これは法務大臣の権限にあるんだ、こういうことを安原刑事局長は言ったんだと私は思うのですね。というのは、こういうのですよ。法務大臣は理論上いずれの公益が優先するかいなかを判断することは可能である。だから、これはこうやったらいいか悪いかということは法務大臣の権限である、こう言ったわけですね。ですから、いま直ちにどうだこうだということを私は申し上げているんじゃない。ですから総理のことは別です。これはこちらへ置いておいて、法務大臣として、司法の最高責任者として四十七条のただし書きを——それは灰色というのは疑わしいから灰色と言うのであって、決定的には黒になることもある、白になることもあり得ると思うのですよね。だけれども、少なくとも灰色の高官名を法務大臣の判断によって公表される権限はあるんだから、それはあなたは法律の大家、オーソリティーで大先輩だから、私がどうだこうだ言うことはないのだけれども、お尋ねをしておるのですからね、もっと生徒に教えるようなふうにおっしゃってくださいよ。ようございますか大臣。
  203. 稻葉修

    ○稻葉国務大臣 鬼木先生に生徒に対して教えるような学力は持っておりません。ただ、お尋ねでございますから刑事局長の発言の意味内容を申し上げますと、刑事局長は衆参両院の法務委員会委員各位からお尋ねがあって、刑事訴訟法四十七条本文は非公開、ただし書きはその例外を規定したものだから、だれが一体どちらの公益が優先するかの判断をするかという問いに対して、刑事局長は、第一次的には本件に関しては当該捜査官です、そう申しましたところ、こういうような事件については公益の比較考量というものはいろいろ政治的判断を要するではないか、単なる一検事のよくするところではないではないかというお尋ねがあって、それに対し、上司にも相談するでしょうし、上司の方では最高の検事総長にも相談する場合もあるかもしらぬ、検事総長も決しかねれば法務大臣に相談する場合もあるだろう、こういうことを言ったわけです。その相談があれば別ですけれども、それに対して第一段階における判断権者である当該検察官が全然知らぬ顔をしているというような場合に、検察庁法第十四条に基づいて法務大臣は検事総長を通じて公開しなさいと言う指揮権の発動は可能か、こういうお問いでしたから、法律上、理論的には可能でございますということをお答えしただけであって、そういう方法による公開は果たして妥当であるかどうかについては、藤木論文などにおいてもそれは妥当でないという一般の見解のようでございます、ですから、やはりぎりぎりは国会の調査権に基づき正式な要求があった場合に、これは内閣全体としての問題として重大な判断の場面に遭遇する問題であります、こういう解釈論や運用論を御答弁したのが、そういう御指摘になったような一つの前後を抜きにした文言に入っていることは事実です。  新聞では、法律上は指揮権を発動して公表を指示することが可能だという点だけを報道されておりますけれども、前後の関係はそういうことでございますから、そしてそれが行政的に妥当であるかどうか、あるいはそういう意思を法務省が持っているかどうかというようなことは全くいま考えておらない。ただ法律理論的に解釈を問われれば、十四条を発動することは可能だ、こう申しただけでございます。そこはよく質問者も御理解をいただくと同時に、こういう質疑応答を通じて正確な報道がなされることを望んで私はやみません。
  204. 鬼木勝利

    ○鬼木委員 それはいまおっしゃるとおり理論上ということでございますが、政治的に国会の国政調査権の発動によってそういう要請があれば、そういう非常事態に立ち至った場合には考えなければならぬ、こういうことをおっしゃっておるようです。そういう場合には、では灰色の高官名は公表する、このように解釈してようございますか。
  205. 稻葉修

    ○稻葉国務大臣 それは重大な御質疑でございますが、私はいまの情勢ではぎりぎりいって——黒は発表になりますわな。自然にまた知られる場合もありますね、起訴するのですから。公判でどうなるかは別として、起訴するのですからそれは明瞭になると思います。しかし、世間が非常におかしい、おかしいと言っておるものを、それじゃ黒じゃないのかというようなことになれば、この国会の情勢からいっても、国会を正常化するためのあの議長裁定の第四番目の項目からいっても、まあ国会から国政調査権に基づいて政治的、道義的責任を明らかにせよという要求があると予想するのが常識じゃないでしょうか。したがって、その場面に遭遇したときには内閣としては非常に重大な判断を迫られる。その結果、公表する可能性もあるし公表しない場合もあり得るかもしれない。これ以上申し上げられませんのです。その場合は公表するつもりでいまおるのですなどということを申し上げるわけにはまいりません。
  206. 鬼木勝利

    ○鬼木委員 それで私の質問が大体ゴールに到着したようでございますが、そういう重大な事態に立ち至った場合に、国政調査権を発動して、公表をするつもりではあるが、あるいは公表ができないというようなこともあり得ると、いまそうおっしゃいましたですな。公表をするつもりとはおっしゃらなかったかな。公表をすることもあるが、ないこともあると、そうおっしゃったようですが、じゃ、ないこともあるかもしれぬというのはどういう場合ですか。
  207. 稻葉修

    ○稻葉国務大臣 そこのところは非常に——公益上の必要その他の事山があると認めるということの解釈ですが、ロッキード事件、ただ単にこの事件のみについて言えば、それはこれだけの疑惑があり、そして犯罪は免れたけれども、金銭の授受があったとか時効になっておったとかいろいろあるでしょう。それでいわゆる灰色というジャーナリズム語が生まれたのでしょうが。それを公表する利益と、ああ、いつも灰色は公表されるのが例になるなということによって、犯罪捜査の多くの他の事件へも、長い将来に向かって起こり得る犯罪事件の捜査当局の機能が将来長きにわたって低下する、妨げられるという公益は一体どうなるのだろうという悩みもあるわけですね。これは永遠の将来の問題については、非常に重大な、大きな犯罪捜査能力を堅持するということは、公益ですからね。それらの点についてまだ決意がいまの段階ではできておりませんということを申し上げたつもりでございます。あり得るし、あり得ない場合もあるというふうにおとりになったのは、その意味内容はそういうことでございます。
  208. 鬼木勝利

    ○鬼木委員 いや、ところがそういうことによって将来へ、いま大臣のおっしゃるお言葉を平たく解釈いたしますと、将来、捜査上困る場合がある。しかしこれは道義上、仮に灰色の高官を公寿なさって、それは当然私は——灰色と言うのだから、これは当然黒になることもありましょうし、白になることもある。それによって将来そういうことでは困ると、こうおっしゃっておりますけれども先ほどから申し上げておりますように、これは政府高官ということになっておりまして、いまだかつてない非常な国際的な大きな、一億国民がひとしくこの行方については関心を持っておる重大な問題ですから、たとえそれが灰色が白になろうが黒になろうが、私は道義上こういうのは当然公表すべきだ。それで何ら将来に禍根を残すことはない。いささかもそんなことはない。そうすることが私は大いに公益に優先すると、こう思う。ただ一部の人の問題ではなくして、これは国民全体の問題ですから、これより以上の公益の大なるものはない。ですから、そういうことを公表することはあり得る、これは私はそれで満足しますが、ない場合もあると。これはどうですかね、大臣。他の場合はあるいはあなたのおっしゃるようなことがこれは当てはまるかもしれない。尊重という意味から、人の名誉尊重というような点からあるいは考えられるかもしれない。しかし、今回の件についてはそういう考慮はさらに要らない。それはどうですかね。大臣、いかがです。
  209. 稻葉修

    ○稻葉国務大臣 私の申し上げていることが鬼木さんの方にまだ正確に伝わらないようでございますから、繰り返すようでございますけれども、捜査の結果黒ではなかった。まあ全然白というわけでもない。そういう場合の政府高官を発表することが将来の民主政治の正しい育成に合致して、これほどの公益の大なるものはないではないかということもそのとおりです。  ただ、そういう捜査にいろいろな人が取り調べに協力してくれて初めてそういう黒、白、灰色というような色合いがある段階で出てくるわけです。それだのに、これからは常にこういう重大な事件については灰色も法務大臣が公表するのだ、総理大臣が公表するのだということになりますと、将来長きにわたっていろいろなこの種の犯罪が仮に起きたとして、犯罪捜査に、任意捜査などに応じてくれる度合い、人の範囲、そういうものを狭めるおそれが、これは何と言ったって多分にございます。そういう将来のこの種の事件についてこれが例になるという印象を与えると、今後のこの種犯罪の捜査機能を非常に阻害するのではないかというおそれを抱くのも、当面のこの問題だけが問題ではないわけですから、将来の国民の期待する捜査当局に対する犯罪捜査機能能力が著しく妨げられるような慣例をつくっていいのかどうかということも考慮をすべき重大な公益ではないかということもあるわけで、したがって、この事件についてだけこれはこうこんな重大な公益はないから発表することもあり得ると断言せい、こうおっしゃられましても、ことにただいまは捜査の段階でございますからね、なおさらきちっと犯罪捜査を詰めて、国民の期待にこたえたいと思えばこそ、そういう熱意があればこそ、ただいまの段階で、公表の場合もあり得るという発言をこういう公の席上で、鬼木先生の質問で法務大臣が明言した、これがまた新聞に出るということになりますと、捜査当局は困るんじゃないでしょうか。御賢察願いたいと思うのです。したがって、未定である。十分質疑者の御意見は貴重なものとして拝聴しなければならぬ、非常な貴重な御意見である、こういう感想を申し上げるにとどめさせていただきたいと存じます。
  210. 鬼木勝利

    ○鬼木委員 大体わかりました。決して貴重な意見じゃありません。愚見でございますけれどもね。時間がございませんので、この問題はこれでおきたいと思いますが、いずれにいたしましても、稻葉法務大臣も大変御心労が多いと思いますけれども、断固これはひとつ勇をふるって解明に当たっていただきたいということを私も要望いたしておきます。  次に、本法案の内容について一、二申し上げたいのですが、これは四十三年の四月であったと思いますが、当内閣委員会で質疑があっておりますが、その場合に一局削減ということによって——当時の法務大臣は赤間さんだったと思いますが、「私は行政簡素化とか人減らしは思い切ってやらなければいかないのじゃないかという感じがいたします。やはり人を減らしたり簡素化は、もう今日思い切ってやらなければいかぬ。」こう言って、そしてわれわれ野党が反対するのを押し切って訟務局を部にされた。ところがいまになって、訴訟事務がますます近年増加する、内容も複雑困難の度を加えてきておる、そこで官房の一部門ということをもってしてはこういう複雑な仕事を適正、円滑に処理することが困難である。法務省みずからが局から部に下げておって、野党がひとしくこれに反対したにもかかわらず、部におろした。今度はまた忙しくなったから部を局に上げる。これではまるで子供の仕事みたいで——そのころは稻葉先生じゃなかった、さっき言ったように赤間さんだったと思いますが、大体法務省には子供が集まっているのか、どういう仕事をしているのか。また、来年あたりはこれを減らすんじゃないか。愚にもつかぬようなことを、これは私はどうしても納得いかないのです。しかも機構や組織、内容は変わっていない。ただ部を局にするという看板を塗りかえるだけなんです。内容は何もそのままなのです。いささかも変わっていない。これは一体どういうことですかね。大臣は、こういうことは余り部下を信頼して任せ切りでおやりになっているのかと思うが、局長でもだれでもいいが、法務省から偉い人がたくさん来ているから……。
  211. 稻葉修

    ○稻葉国務大臣 官房長がお答えします。
  212. 藤島昭

    ○藤島政府委員 ただいま先生仰せのとおり、四十三年の一局削減の措置がございまして、これは行政の簡素化ということで各省おしなべて一つの局を削減するという大変厳しい措置であったわけです。私とも法務省といたしましては——法務省は御承知のように事業官庁でございません、法秩序の維持を任務といたします典型的な事務官庁でございますので、ほかの官庁と比較して必ずしも部局の数が当時においても多くなかったわけでございます。また、法務省は、法務庁、法務府、法務省と組織が変遷しておりますが、そのたびに省内の組織の合理化にいろいろ努めておりまして、その当時、閣議決定でございましても、なかなか削減する局がございませんもので、何とか法務省はお許しいただけないかということで、当時の担当者がいろいろ関係官庁と折衝した形跡がございますけれども、これは何と申しましても閣議決定でございますので、どうしても一局を減らさなければならないということで、さてどこを減らすかということを当時いろいろ検討いたしたわけでございます。  その結果、当時訟務局で次長制をしいておりました大きな局でもございましたこの訟務局を、どうしても削減して、廃止して部を新設するという形を当時とらざるを得なかったわけでございまして、当時といたしましては事件が現在ほどございませんので、私どもに八つのブロックがございましてそこに法務局の訟務部というのがございますが、そちらの方に事件を多少回しまして、局の事件数を減らしまして、そうして官房の長の下に官房の一部として訟務部を置くという形で何とかやっていけるのではないか、こう判断いたしたわけでございます。  しかし、いま仰せのように、またそれを復活するような形で出してくるのはまことにおかしいということでございまして、確かに、当時法務省としては、今日のように訟務の事件がふえ、しかも内容が今日のように困難であり質的に非常にむずかしい事件がふえるということをここまで長期の見通しを立てることができなかったわけでございまして、その点は本当にまあ不明を恥じておるわけでございます。  しかし、先ほど来私、御説明申し上げておりますように、事件が非常にむずかしくなりまして、官房長の指揮、監督が及ばないような形になってしまったために、組織と実態が全く遊離してし走った、そういうことで、やはりこの際に、訟務局局長を頂点とする一つ責任体制をはっきりつくって、そういうむずかしい困難な仕事に対応していくよりほかにない、こういうことで、現在も行政の簡素化あるいは人員の抑制ということで大変今日でも財政当局は厳しい態度をもって臨んでおるわけでございますが、幸い、財政当局の御理解を得てこの法律案提出することができたわけでございますが、四十三年の審議のことを振り返ってみますと、確かに法務省としては長期的展望について見通しが甘かったことを恥じております。ただ、どうしても一局を削減せざるを得なかったという事情がございましたことを御賢察賜りたいと思うわけでございます。
  213. 鬼木勝利

    ○鬼木委員 官房長さんのお話はよくわかりますけれども、仕事の量はふえたからといっても内容はいささかも変わっていない。組織、機構は何も変わっていない。ただ部長を局長にするということになれば看板の塗りかえであって、私が考えますとそれはただ権限の強化ということにしかならない。権限の強化をねらっているのじゃないですか。そういう点はどうも——おっしゃることはわかる、一応理屈はわかる。この前はどうしても局を減らさなければならぬということでやむを得なかった、将来このように事務が錯綜してくるというようなことの先の見通しが甘かった、なるほどそのとおり。だがしかし、内容は全然変わっていない。ただ部長を局長にする、看板を塗りかえて権限を強化する。それでは、そういう複雑煩瑣な仕事を迅速かつ円滑にやっていくことがどうしてできるか。入れ物をかえただけで入っている物はもとのとおりで同じ物だ。そこに私は疑問を持つわけです。
  214. 稻葉修

    ○稻葉国務大臣 入れ物は違うが内容は全然変わっていないじゃないかとおっしゃいますけれども、全然変わっていないのではない。不十分ではございます。それは後で官房長から説明させます。  ですから、四十三年のときに野党の反対にもかかわらずこうなったというやむを得なかった事情については申し上げました。その後、公害だとかそういう国が被告人になる事件が非常にふえまして、七年たちますと事情がずいぶん違ってきました。そこで、野党の見通しの方が正しかったなという反省に立ってこれは局にした方がいい、過ちを改めるにはばかることなかれ、こういうざっくばらんな気持ちでございまして、当時反対された野党の御趣旨にもいささかこれは全面的満足のいくような状態ではありませんけれども内容はきわめて不十分です、しかし、内容が全然変わっていないで入れ物だけをかえたということでも、これは事実に余りにも厳し過ぎると思います。変わっています、しかし不十分である、それはこれからの問題であるということです。  私は、国を被告とするいろいろな事件がありますが、権限を強化して全部勝ちたいなんて思ってるのじゃないのです。負けるべきものは早く負けて、理屈に合わないものをいつまでも引っ張っていては国民の不利益になるから、そこのところをきちっとしたものにしたい、こういうところにむしろ重点があるくらいです。  そういうことで、この問題は重大な決意をもって昨年法務大臣として臨みました。いいと言ったやつなのに、原子力安全局だけで訟務局はだめだみたいなことだったら重大な決意をしなければ——そうしたらたまげて来年はやると言った。それがことしになったわけですね。そういういきさつもございまして、決して全部初めからへ理屈つけて勝とうなんという、そんなおかしな考えで権限だけを強化するのだというふうにはひとつお考えにならないでいただきたい。内容も多少は充実しているのですから、その点は官房長から説明させます。
  215. 藤島昭

    ○藤島政府委員 四十三年に一局削減で官房の部になりましてから、事件がただいま申しましたように、いろいろ質的にも複雑になってまいっておりますので、それに対応して検事の数あるいは事務官の数等につきましても、毎年の予算におきまして財政当局の御理解を得て増強いたしておるわけでございます。今度の五十一年度の予算におきましても二十三名の事務官の増員をいただいておるわけでございまして、関係の財政当局もこの訟務の仕事の重要性を御理解していただいておると私は理解しておるわけでございます。  なお、権限の強化ということがございましたので、私、ちょっと御説明させていただきますと、この法務省の訟務の仕事は各省庁に関係する、いろいろな省庁がございますが、たとえば大蔵省の国有財産関係とかその他厚生省の薬品関係とかいろいろな仕事があるわけでございます。そこで、訟務とその関係官庁との関係をちょっと御説明申し上げて御理解を得たいと思うのでございます。  私どもの訟務の検事と行政官庁の関係は弁護士と依頼者という関係とは違うわけでございます。一弁護士でございますと、一私人から事件の依頼を受けます、委任契約をするわけでございますが、その場合には、その私人の依頼の趣旨に従って弁護士として活動をしなければならない義務を負うわけでございますが、私どもはその関係官庁の指示を受けたり、その意に沿って訟務の仕事をしなければならないというようなことは絶対ないわけでございます。  訟務事件は、権限法という法律がございますが、それにおきましても、民事事件については、法務大臣が国を代表する、行政事件については、法務大臣が関係行政庁を指揮するということが法律で明記されておるわけでございます。したがいまして、具体的な事件の処理に当たりましては、訟務の職員は一方においては国の関係庁のいろいろな事情、公共の福祉とかそういう面を考える。一方においては、相手方である私人の立場というものも十分に考えるわけでございまして、結局訟務の職員基準とするものはどこにあるかといいますと、やはり法の精神ということになろうかと思うのです。法の正義というものはどういうふうにすれば貫徹できるのか。言葉をかえますと、この事件はどのように処理していくことが社会通念に従った、健全な常識に従った処置であろうかということを考えるのでございまして、関係官庁の意を受けたり、意に沿うようなことをするということではないわけです。両者の立場を十分に考えて一番妥当な方法を講じていく、そのためにはやはり訟務というものが一つのそういう官房の部ではございませんで、局になってそういう関係官庁に対する強力な助言、勧告、そういうものができるようにならないとだめだと思うのです。先ほど大臣もおっしゃいましたように、何も全部が勝つということじゃないのです。やはり一方の私人の立場を考えて、この事件はもうここいらで示談したらどうだろうか、もう和解にしたらどうだろうか、こういうようなことを強力に言えるような訟務の体制を整えていくということが、ひいては訴訟の迅速な処理ということにもつながるわけでございますし、相手方の私人の立場から見れば、その人としても大変いい結果に終わる場合があるわけでございまして、権利の保護ということにもつながっていこうかと思うわけでございます。権限強化というといかにも何か国側の、相手の関係官庁の方ばかり味方するような、そっちの方ばかりが強くなるような感じをちょっと受けるわけでございますが、そうではないということをここで御説明を申し上げたわけでございます。
  216. 鬼木勝利

    ○鬼木委員 あなた方の説明を聞くと、まことにごもっともな、もうそうなければならぬように思いますけれども、しかし、あなたのおっしゃるように、やはりこれだけ見れば本当に何もないので、やはり権限強化としか思わないのですよ。それはいまあなたも肯定された、だがしかし、そうじゃないということを言われたのだが。それは四十三年以降内容は変わっておるでしょう。だけれども、今回のこれに対しては、内容は何も変わっていない。それはいま大臣がおっしゃるように、四十三年からずっと見た場合は、逐次この内容は変わっておりますね。だけれども、今回のは単に局長になすだけで、あとは何にも変わっていない。変わっておるならば、われわれのところには説明資料は何もない。だったら不都合だということになる、ごまかしだということになる。だから、大臣のおっしゃることはよくわかる。こういういい大臣を持って、あなたたちは本当に幸せだよ、部下をかばって。過ちを改むるにはばかることなかれと、なかなかうまいことをおっしゃって、そうして部下をかばっていただいておる。一生懸命やりなさいよ。  それで、それは子供が親にせがむように、どうしてもそうしなければ困るのでしょうから、あえて私は反対はしないけれども、一応物の理屈はそうなっているんだから、これは困ったことだと私も思ったのです。ことに入国管理局の次長を削ってある。大体将棋のこまみたいにあっちへやりこっちへやりして、じゃ入国管理局の次長はいままで要らなかったのですか、要らないものを置いておったのですか。片方は局長にする、そして片方は抹殺する。まるで品物みたいにあっちへ動かしこっちへ動かし、消したり生かしたり、これはどういうわけですか、官房長。局長になるのと何の関係があるのですか。これは次長こそ迷惑なものです。
  217. 藤島昭

    ○藤島政府委員 私ども法務省といたしましても、できれば入国管理局次長を廃止するということは避けたかったわけでございます。しかし、現在の政府の方針と申しますか、そういう機構の新設は認めない、認める場合にはスクラップを出すというような、スクラップ・アンド・ビルドという方針が政府の方針でございまして、したがいまして、そういう一つの局をつくるということは法律職が一つふえるわけでございます。そういう場合には法律職を差し出してもらいたい、こういうことになりまして、私どもは五十一年度の予算要求折衝のぎりぎりの段階で行管庁を初め財政当局といろいろ折衝をいたしたわけでございますけれども、しかし、それが政府の方針ということであればのまざるを得ない。そうすれば、何か法律職を廃止しなければならないということで、いろいろ上司にも相談いたしまして検討いたしました結果、入国管理局次長を廃止するということを、まことに残念ではございましたけれどもそういうふうに決めて行政管理庁の方に伝えたわけでございます。  仰せのとおり、それじゃ次長は要らなかったのか、こういうことでございますが、そうではございません。次長は局長を助けまして入国管理行政全般を統合整理するきわめて重要な職務を持っておるわけでございます。そこで、そのままの形で廃止したままということになりますと、明らかに現在の入国管理行政の適正、円滑な運営に支障を来すということは目に見えておりますので、そこで、私どもの法務省の中に官房審議官という官職が一つございますので、これを入国管理局次長廃止と同時に入国管理局担当の官房審議官といたしまして、これを活用することによりまして何とか入国管理行政の平常の運営が支障を来さないように努めてまいりたい、こういうふうに考えておる次第でございます。
  218. 鬼木勝利

    ○鬼木委員 それはわかりました。つまり、次長を廃止して、そして入国管理審議官になす。それも承りましたが、いずれにしましても、じゃ片方に局長をつくるための犠牲になったわけですね。それは次長というのと審議官と名前は変わっておるかもしれぬけれども、本人にとっては——まあそれはだれがなるのか知らぬ、また別にそういうトレードマークを変えて新たに来るのか知らぬけれども、私はそういう点についてこれは後でまたお尋ねしたいと思うのですけれども、入管の事務なんかは、私はいままでよりももっとまだ多くなると思うのですよ。決してこれは軽視すべきものじゃないと思うのです。これは後でまたお尋ねしたいのですけれどもね。  だから、私が言うのは、いかなる理由をもってそう簡単に次長を審議官にしてしまうのか。入管なんかの仕事はまあどうでもいいのだから、次長は審議官にしておけというような簡単な、将棋のこまをあっちへやりこっちへやりするような気持ちでやられたのでは私は困る。そういう点は十分お考えの上おやりになったのですか。
  219. 藤島昭

    ○藤島政府委員 入国管理局の仕事を私、決して軽視したわけでもございませんし、この入国管理局次長という法律職を一つ廃止するというために、長い期間省内でいろいろ議論をいたしまして、何とかほかにいい方法はないであろうかということで検討したわけでございますが、ほかに廃止する官職もないために、どうしても一つ差し出さなければならないということで次長の廃止に踏み切ったわけでございまして、まあ政府の方針でございますから、法務省としてはそれに従わざるを得ませんので、官房審議官をもってそれに充てまして何とか仕事が支障を来すことのないよう法務省全体としてもいろいろバックアップして努力していきたい、こう思っておるわけでございます。
  220. 鬼木勝利

    ○鬼木委員 まあそれは、先ほどから申し上げますように、私は反対のための反対をするのじゃないから、あなた方の御希望はやはりそうだろうからそのとおりしなければならぬと思うが、これは大臣によくお考え願いたいのですが、それは訴訟事務が非常に複雑で局をつくるんだ、それも結構だと思いますが、これは賢明な大臣だからおわかりだと思うけれども、地方法務局の職員が非常に少なくて困っているんですよ。これは私にも陳情書が来ておるのですが、簡単に読んでいきますと、地方法務局の事務が非常に渋滞しておる。そこで部外者に応援を頼んでおる。これば法務省あたりにも私は陳情が行っていると思うのです。部外者応援と称して地方公共団体あるいは公団、公社の職員や司法書士、土地家屋調査士等の人に登記用紙の記入や謄本のコピー作業等に応援をしてもらっておる。なおまた、地方税法第三百八十二条に基づく市町村への通知業務を含めた業務処理が遅延し、また地面師の登記簿持ち出し等の不正も防止できないという状態である。そこで、「法務局の職場を真に国民のためのサービスのできる官庁にし、自前で住民の期待に応えられるよう法務局職員の大幅な増員を要求し、地域住民の財産、権利の擁護のため特段のご配慮を得たく強く要望いたします。」こういう陳情が来ております。  そこで、私が申し上げたいのは、大臣は内容は違っておるとおっしゃるけれども、看板の入れかえみたいな部長を局長にするということを急ぐよりも、本当に大衆に直接密着したこういう法務局あたりの末端機関の最も苦しんでいるところを大臣は御存じであるかどうか。こういう悲痛な叫びというか、声というか、要望というか、悲願というか、いろいろ言葉はあるでしょうが、こういうのが参っておるのです。大臣が御存じないならば、大番頭の官房長やその衝に当たっている人たちは、これを一体どういうふうに考えておられるのか。これは非常な問題なんですよ。  そこで、私が実情調査をあちらこちらやってみた。ところが、事実そういう人を雇ってやっておる。登記事務なんというのは、大事な個人の財産ですから、命から二番目のものなんですね。一番大事なものだよ。今日この事務は非常に多くなっておる。ことに高度経済成長によって登記事務は殺到しておる。石油ショックなんかで一時低下しましたけれども、今日まただんだん生活が安定して、経済が安定してくればますます多くなる。で、行ってみますと、なるほどいろいろな人を使ってやっている。それから臨職といいまして、臨時職員を入れて、そして更新している。二カ月雇ってまた更新、三カ月でまた更新、そんなのをいつまでもいつまでも置いておく、身分の保障はない、無論待遇もよくない、そういうので間に合わせておる。ですから、私が申し上げるのは、そういう大事なところへは手が届かない。上の方のいわゆる政府高官で部長が局長だなんて、そういうことを急ぐばかりで、一番大事なこういう仕事はほったらかしていると言うとはなはだ御無礼で、そんなことはないと思いますが、一体これはどういうふうにお考えになっておるのか、これをひとつお尋ねしたい。
  221. 稻葉修

    ○稻葉国務大臣 法務局、それから支所、いわゆる登記所の事務が非常にふえて人手が足らない、そのために部外者に頼んだり、場合によっては書類を持ち出したりして国民に非常な迷惑をかけている実情はよく把握しているつもりでございます。ことに綱紀紊乱、汚職事件などを起こしてまことに困ったものだ、だから、そういうところをほったらかしておいて訟務部長を訟務局長にする、そんなことばかりやっておって何だと、先ほどは顔から火の出るようなおだて方をされたり、今度は百八十度、えらい目の玉から火の出るようなおしかりを受けたりいたしますわけでございますが、ごもっともだと思うのでございます。  それにつきましては、予算時期になりますと必ず法務省の全司法労組の諸君も見えまして、よく懇談するわけですが、もっともな点が非常に多いので、民事局長を通じて、やや不十分でありますけれども、年々充実しつつあると私は思っております。ですから、民事局長から、どういう点がどういうふうに充実しつつあるかという点の説明をお聞きいただきたいと思います。
  222. 香川保一

    ○香川政府委員 御指摘のとおり、昭和三十年ごろから四十八年ごろにかけまして、高度成長に伴って登記事件が急増してまいりまして、確かに現在におきましてもいわゆる職員の絶対数が不足しておる事実は否定できないと思います。ただ、御承知のとおり総定員法のもと国家公務員増員抑制、これは政府の大きな一つの施策でございますし、今日のように不況のさなか、失業者が出る、倒産があるというふうな時代におきまして、いかに職員数が足りないからといって、ただ増員をもって対処するというわけにもまいらない事情はひとつ御賢察願いたいと思うのであります。  さようなことで、事務処理上御指摘の部外応援というふうなものを得ておることも事実でございまして、五十年の後期に実態調査をいたしました結果、人数に換算いたしまして約千五、六百名から千七百名ぐらいの部外応援を得ておる実態と思うのでございますが、この中身はやはり先ほど仰せの司法書士、土地家屋調査士の補助者、それから市町村その他公共団体の職員というものによっておるわけでございます。  これはちょっと御理解いただきたいのは、司法書士、土地家屋調査士の補助者の部外応援と申しますのは、そのような者が国民にかわって謄抄本の交付申請をするわけでございますけれども、大都市の登記所におきましては即日に謄本を交付するというわけにまいらない事務の遅延があるわけでございます。そういたしますと、非常に国民に迷惑をかけるわけでございまして、そういう場合に司法書士の補助者なり土地家屋調査士の補助者によりまして、御承知の謄本作成のコピーの機械による複写作業を手伝ってもらうというふうなやり方をしておるわけでございます。  また、地方公共団体、市町村等の職員による部外応援の実態は、先生御承知と思いますけれども、土地改良法による土地改良事業の結果の登記とか、あるいは道路施設による道路地の買収等の登記とか、あるいは土地区画整理の関係の登記事務、こういったもの、あるいは国土調査法による国土調査の登記事務というふうなものは大量の事件がどかっと登記所に集中的に持ち込まれるわけでございます。そういう事件の持ち込まれる登記所というのは、どちらかと申しますと地方のわりあい田舎の方でございますので、これに対応する登記所も小規模で少人数しか職員がいない。そこで市町村の職員にいろいろの弊害を生じない事務の手伝いをしてもらっておるというふうなことが御指摘の部外応援の実態でございます。  さような状況にあるわけでございますが、これに対処するためにどのような措置をとるか。率直に申しまして、私どもといたしまして何と言っても大幅な増員措置によることが望ましいことは当然でございますけれども、これは幾らそう申しましても、今日の時世のもとで全部増員によって解決するというふうなことは、かえって国民の側から批判を受けることではなかろうかというふうにも考えるわけでございます。したがって、財政当局にもお願いいたしましてできる限りの増員措置、私は、結果的には数字的にはそれは三けた台のものでありましても、今日の情勢からは十分財政当局としては理解を示した増員措置はとっていただいておるというふうに思っておるのでございます。ただ、その増員措置だけでは足りませんので財政当局にお願いいたしまして、先ほどちょっとお言葉にございましたような臨時職員、つまり私どもは賃金職員と申しておりますが、賃金をもって職員を雇い入れまして、そして繁忙対策に対処するというふうなことにいたしておるわけであります。  予算的に申しますと、賃金予算を基本にして考えますと、昭和五十一年度におきまして賃金職員を千名ぐらい措置していただいておるわけでございます。したがって、先ほどの部外応援の全面的な解消というところまでにはまだまいりませんけれども、そのほかにできるだけ機械化できる事務は機械によって処理する、つまり能率機具の導入とかというふうなことも極力予算措置を講じまして対処しておるわけでございますけれども、これで十分とは決して考えていないわけでありますが、このような方向で何とか国民に御迷惑をかけない登記行政をやってまいりたいということで一層努力いたしたい、かように考えておるわけでございます。
  223. 鬼木勝利

    ○鬼木委員 決して十分でないと考えておる、十分でないどころか全然だめなんだ。局長は実態をよく把握していらっしゃらぬですよ。決して十分でないと思っております——十分でないと思っておるぐらいならわれわれ質問をしませんよ。こんな陳情なんか出やしませんよ。全然だめなんだ。しかも、部外者の応援なんというのは無報酬でやっている。いまあなたのおっしゃるように、ある一定期間になさなければならぬ道路工事なんかある、それによって登記事務に移さなければならぬ、だったら市町村あたりからおまえたちは応援をやらなければ登記事務はやらぬぞ、そういう卑劣なことをやっているんじゃないか。しかも無報酬なんだ。臨職というのは賃金制度で、それは予算化されておる、千名分取っておられる。賃金制度というのは、これはパートタイムみたいにいわゆるほんのアルバイトでやるなら別だけれども、臨職と言って、賃金制度だと言っておきながら、三カ月、そして更新し更新してまた三カ月、また更新して一年も二年もやっておる。部外者に圧力をかけて仕事させているんじゃないですか。そういうことがあるんじゃないですか。十分でないどころか全然だめだ。十分でないということは、ある程度やっておってまあもうちょっとと、こういう場合に十分でないと言う。あなた、言葉意味知っていますか。御存じですか。そんないいかげんなことを局長ともあろう者が、十分でない、十分でないからこうして陳情も出ている。  本年度において法務省は二千八百六十二名職員増の要求をしておられる、それで五百七十八名認められておるように私は承っておりますが、では昨年度はこれだけで、本年度はどうなった、どれだけ補強した、その実態をひとつはっきりおっしゃってください。  また、それがわからなければ、東京法務局の場合はどうなっておるか、それで大体全国のあれはわかりますからね。職員数が何ぼで、臨職が何ぼで、部外者の応援は何ぼ、ちょっとそれを示してください。
  224. 香川保一

    ○香川政府委員 いまお示しの増員数は法務省全体の数字でございますが、問題になっております法務局関係だけについて申し上げますと、御承知のとおり定員削減の措置がございますので、削減後の純増分だけについて申しますと、昨年は定員削減を受けてそして増員が認められて、差し引き純増が法務局全体で百七十八名でございます。本年度はいま申しました削減を受けて増員されて、差し引き純増が百二十名でございます。  賃金職員につきましては、本年度予算で、先ほど申しましたように職員に換算しまして約千名分でございますが、五十年度は約八百名前後の数字になろうかと思います。
  225. 鬼木勝利

    ○鬼木委員 いや、東京の法務局の実態はどうなっておるか。正式の職員と臨職と部外応援者。
  226. 香川保一

    ○香川政府委員 ちょっと正確な数字は自信がないのでございますが、私の記憶によりますと、昨年は東京法務局分としての純増がたしか六名、本年度は九名を予定いたしております。賃金職員につきましては、東京法務局は現在、職員数に換算いたしますと二十三名分になろうかと思います。
  227. 鬼木勝利

    ○鬼木委員 部外者の応援は。
  228. 香川保一

    ○香川政府委員 部外者の応援につきましては、延べで約五十万前後だと思うのであります。東京法務局だけの分はちょっと手元に数字がございませんですが、全国的に集計いたしますと頭数だけで五十一万ぐらいになるんじゃないかと思うのであります。しかし、五十一万と申しましても、先ほどちょっと部外応援の例として申し上げましたように、司法書士の補助者が謄抄本の請求に参りまして、即日謄抄本が交付されないことから自分の分をコピーで焼くところを手伝ってもらうというふうなものは、実は時間的に申しますと、それ自体考えれば三分か五分というような時間になるわけでございますが、これはいろいろの形態がございまして、一時間連続でやっておるものもあれば、いま申しましたような五分だけ応援をしてもらっておるというものもございますので、正確な実態がなかなかつかみにくいのでございます。
  229. 鬼木勝利

    ○鬼木委員 よろしいです。  ちょっと大臣にお尋ねしますが、これは延べですけれども、一時間とかあるいは三十分というような時間やっておった人もあるでしょう。いずれにしましても延べ五十一万だ。しかもこれは無報酬ですからね。これは、そういうことを勝手にやっていいという何か法的根拠でもありますか。先生法律の大家だから。
  230. 稻葉修

    ○稻葉国務大臣 そういう法的根拠があるわけはないと思いますね。人をただで使うほど罪悪はないと思いますな。ただ、それが強制的にそうさせるのか——国民が自発的に協力するというのに、ああ、おまえらいいや、こういうことも国民の利益からいってもよくないので、やむを得ず自発的な協力を仰いでいるという状況ではないか。国の法務局は人をただで使う権利があるなんという法律がどこにあるわけはないと私は思います。
  231. 鬼木勝利

    ○鬼木委員 それはそうだと思う。だから私はお尋ねしたのです。法務局であるから、法務省であるから人をただ使いする、延べといえども全国的に五十一万という人員を動員してただ使う。その点において、先ほどおっしゃるように魚心あれば水心で、手伝ってくれよ、そうすればおまえたちにも早くしてやるぞというようなことがもしあるとするならば、私は言語道断だと思う。しかも、国の機関がただで人を使うなんというようなこと自体が権威に関する。これは何らかの処置をとっていただきたいと私は思う。どうでしょうかね、法務大臣。
  232. 香川保一

    ○香川政府委員 ただいま大臣から答弁されましたように、これはまあ自発的な協力でありまして、自発的な協力というのは、私どもから見ればまことに情けないと申しますか、見るに見かねての自発的な協力ということではございますけれども、この部外応援が決して好ましいものでもない、廃止すべきものであることはもう百も承知いたしております。しかし、今日の状況におきましてこれを一挙に廃止するということに踏み切れない。そうなりますと、先ほど申しましたように、登記を急がれる地方公共団体にとってはかえって不都合な結果が生ずるおそれもございますので、私どもといたしましては、できるだけいろいろの手を尽くしまして、部外応援を何年かかかって解消してまいりたい、かようなことで現在対処しているわけでありまして、まことに申しわけない仕儀でございますけれども、ひとついましばらく御猶予願いたいというふうに思うわけでございます。
  233. 鬼木勝利

    ○鬼木委員 自発的にやっていると言うのだが、それはあなた方はそのように御解釈になっておると思う。なるほど自発的に、お手伝いしますよといってやる、それはあると思います。それもあると思う。しかし、全部が全部自発的に、喜々として皆さんの御要望にこたえて応援しているとは思えない。というのは、ここに陳情書が来ている。こういう部外の応援をこれだけやっている、それで事務の渋滞を来しておる。これはいやいやながらやっているんだ。だから増員してくれ、それでてきぱきと処理をしてくれと言っている。自発的にやっているんで、われわれはいささかも困っていない、大いに応援します、国の都合で人員が補充できなきゃ、構わぬ、われわれが引き受けますよという陳情じゃないのだ。困っているという陳情なんだ。その辺は大臣もお考えいただきたいと思うですね。やはり市町村としても、手伝って一生懸命やらぬと早くしてくれぬからという気持ちがあるんだ。何月何日に来てくれという命令権がどこにあるか。また、人をただで使うところの法的根拠はどこにあるか。あるわけがない。これはよくないことだと私は思うんですよね。いま局長も、将来はそういうことのないようにいたしますとおっしゃっているけれども、ただそういう空手形だけじゃ困る。ただ口だけで、ああ、鬼木がああ言うからひとつうまいとこ答弁しておけということで——どこかのだれかが妙なことを言うたことがある。だれか知らぬけれども、いいかげんな答弁というような、そんなことを言うた人もおったが、そういうその場しのぎの簡単な答弁じゃ困りますよ。いいですか、局長。あなたは納得がいかぬようだが、やはりそんないいかげんな答弁かな。
  234. 香川保一

    ○香川政府委員 決して口先だけのいいかげんなつもりで申し上げているわけではないんでありまして、ただ御理解いただきたいと思いますのは、市町村の部外応援の全面的な解消ということは一体どういうふうにすればいいかということにつきましていろいろの方法を考えておるんでございますけれども、これを万全のと申しますか、全く部外応援を完全に断ち切るようなところまで行くにはちょっと一年や二年では私はとうてい不可能ではなかろうか。さような意味で、むしろここでそういう解消に努力すると申し上げる以上は、逆に私自身といたしましては慎重に答弁しているつもりでございまして、これは端的に一つ例をとって申し上げますと、市町村の何千件という事件がばっとある日登記所へ提出されるというふうなときに、この部外応援という問題が起こるわけでございます。そうしますと、大体田舎の方の土地改良なんかに至りましては、まさに農村地帯でございますから、さようなところの登記所というのは大きいところで三、四名、小さいところは一名の職員しか、平素は事務量がないためにその程度の職員しか配置しておけないというふうな事情にあるわけでございます。そういたしますと、他のところから正規の職員をそこへ事務応援に出張させるというふうなことにする解決策が一つあるわけでございますし、さらに、そういう場合に臨時の職員を雇用いたしまして手伝いをさせるというふうなことも考えられるわけでございますけれども、何分にも登記事務の処理でございますので、全くの素人がきょうから雇い上げたからといってその事務を処理するわけにはなかなかまいらない。そうしますと、結局よそからベテランの職員をそこへ一時派遣しなければならないというふうなことになるんでございますけれども、それにしましても平常事務が職員が一名分あるいは多くて三名分というふうな出張所は、事務所自身がそれだけの規模しかないわけでございます。そこへ大量の職員を派遣して事務応援させるというようなことはこれは入れ物自身が無理があるわけでございまして、そうしますと可能な限り入れましてもやはり二月、三月というふうな期間を要することになるわけでございます。そういたしますと、事前に、市町村側から登記所に持ち込む前の段階において、実質的にまさに部外応援でございますけれども、市町村の職員が登記所長の指導を受けて間違いのない書類をちゃんとつくってもらうというふうなところから始めないことには、なかなか短期に迅速に、適正な処理をするということが困難になるわけでございます。  そういうふうな事情もございますので、いろいろの点を配慮いたしまして、できるだけ早期に部外応援を断ち切れるような方策を少しでも積み上げてまいりたい、かように考えておるわけでございまして、決してその場限りのことを申し上げておるわけでないわけでございまして、それほど部外応援の問題というのは、実は私どもとしては一日も早く解消したい深刻な問題でございまして、ひとついましばらく御猶予を願いたいと思うわけでございます。
  235. 鬼木勝利

    ○鬼木委員 それより以上にやかましく言ったってしょうがないな。それは、あなたのお気持ち、わかりました。  時間がありませんので、もうちょっとお願いしたいのですが、これは昨年でしたか、予算分科会で大臣に親しく御質問申し上げた外国人タレントの問題でございますが、その規制について大臣から親しく御答弁いただいて、五項目——低賃金を排除する。外人が安く入ってくるということで、日本の国内のそういうタレントが圧迫されるというので、そういう安い賃金はやらない。月収十万円を十五万円に引き上げる。それから長くおる、継続を防ぐ。二カ月たって出国したならばその後半年ぐらいはもう入れない。それから資格がはっきりあるかないか、それをただす。なお日本の招聘する方のプロダクション、招聘する方の法人のブラックリストをつくっておく、そして管理能力があるかないかをはっきり確かめる。そしてまた、今度初めて外人タレントを招聘するようなプロダクションについては厳重にこれを調査する。こういう規制を大臣につくっていただいてやっていただいておるということを承りました。  今日、非常にタレント問題で、これは私、この前も申し上げましたが、国際親善を阻害するようなことは、私は絶対そういうことは申し上げておるんじゃない。国内の本当に正しい、りっぱな生活をしているまじめな芸能人の方々の生活権を脅かすようなことをされたら困る。そこで、そういう意味でこの前お話を申し上げたところが、こういう五項目の規制をつくっていただいておる。でございますが、一体その後、これはお尋ねしなければわからぬけれども、そういう実態を随時調査なさっておるのか、あるいはそういう契約をして許可された、認可された、そして更新する場合にまた調査されるのか、あるいは定期的に年に一回とか二回とか調査されるのか、そういう点をひとつ、どなたかその責任者の方……。
  236. 稻葉修

    ○稻葉国務大臣 出入国管理局長に答弁させます。
  237. 影井梅夫

    ○影井政府委員 ただいま鬼木先生指摘のような一つ基準を設けまして、これは昨年の四月からこれを実施しております。そこで、その実態はどうか、その実態についてどのような調査ぶりをしているかというお尋ねかと思いますけれども、常時これらについて非常に広く調査するということは、実際問題として非常に困難でございますので、まあ随時と申しますとやや抽象的になりますけれども、私どもの入国警備官の手の及ぶ範囲で調査をいたしておりますし、また、こういった問題については入国管理官署のみならず、警察等の協力も得ましてその実態を見ていくというのが実情でございます。  昨年の四月からこのような新たな基準を設けました趣旨は、ただいま先生おっしゃいましたとおりに、私どもといたしましては、海外からのこういったタレントの来日ということは基本的に歓迎をいたしますし、これを阻害する意思は毛頭ないのでございますけれども、他面、同じ業種の日本の方々に圧迫が及ぶというところに至っては、これは規制をせざるを得ないだろう、こういった観点から、先ほど先生がお述べになりましたような、現在五つの基準を設けまして実施をしておるという次第でございまして、大体におきましては私どもこれでしばらくいけるのではないか、また、現状は大体において満足すべきものではないかというふうに考えております。
  238. 鬼木勝利

    ○鬼木委員 先ほども申し上げましたように、昨年の四月からこういう規制をつくっていただいた。まことに結構で、いまあなたのおっしゃるとおり、海外からりっぱな方がお見えになるのは大いに歓迎すべきである。しかしながら、観光客というような名前を装うてやってきて、そしてもぐりでバンドマンになるとか、あるいは女性の方であったら観光客と言っておりながらホステスをやるとか、いわゆるもぐりですね。そうしますと、日本の大事なまじめにやっていらっしゃるプロダクションの方々が、正直者がばかをみるというようなことではいけない。国際親善という意味からは大いに私どもは賛成しておるわけですけれども、御承知のとおり近ごろああいう芸能人の非常にいかがわしい方の問題も起きておりますし、また一面、プロダクションも、事務所も何もなくて、電話一本でそしてよからぬことをやっている。御存じかどうか知らないけれども、大原みどりなんというのは二億円からの金をやれ宣伝費だとかいろいろな名目のもとに取られてそしてだまされた。そういうのがありますから、だがら私はこういうことをお尋ねしておるので、実態がどうなっておるか。その後、随時でも構いませんが、実態調査の上、皆さんが許可をされて正しくいった方と、昨年度なら昨年度でいかほど認可した、そして結果がよくなくて摘発したというのがありましたら……。なかったらいいです。
  239. 影井梅夫

    ○影井政府委員 先ほど御答弁申し上げましたのは、外国人が当初から芸能人という資格で日本に入国したい、こういう人々についての規制の仕方、それからその結果が私ども大体満足すべきものと考えている。これは対象は当初から芸能人ということ、その目的を明らかにして来ている人たちについて申し上げたわけでございます。  ただいま先生指摘のとおりに、それ以外にと申しますか、目下非常な問題と私ども考えておりますのは、日本に入国いたしますときに日本に観光に来たいという名目で日本に入国いたしまして、そして実際は日本の観光ではなくて、ただいま御指摘のような風俗営業的な活動をしている外国人がかなりある。これは先生指摘のとおりでございまして、私どもこういった本人が申告いたしました目的でないほかの稼働をしている者を資格外活動と呼んでおりますが、この資格外活動をやる者の約九割ぐらいは日本に観光客ということで入ってまいりました外国人でございます。これらの人たちの御指摘のような資格外活動、バーのホステスであるとかその他が多いのでございますが、この規制につきましては、私どもといたしましては、まず日本の業者、特にこういった風俗営業関係の業者の方でございますが、そういった業者の方がこういった観光目的で入国した外国人をホステスに雇ってそれが違法行為であるということを意識されない業者が相当に多いということに気がつきましたので、全国的にこういった料理店その他を経営しておいでになるその組合等を通じまして、外国人観光客をホステスその他に採用されることは違法行為であるということをかなり徹底させたつもりでございます。あるいはその結果かと思いますけれども、現状におきましては、大都市のみならず地方の小都市におきましても、このような件がありますと同業者であるとかあるいは一般の方から通報がかなりやってくるということで、こういった種類の資格外活動は逐次規制の効果があらわれていくのじゃないかというふうに考えております。いましばらく事態を見たいと思いますけれども、現在までの私どもの感じでは、この規制はだんだんその効果を発揮するだろうというふうに感じております。  それから実数でございます。当初から芸能人ということで入国してまいりました人の数でございますが、昭和四十八年が七千五百人余り、昭和四十九年が約九千八百人、それから昨年が一万八百人という数字でございます。なお、これは入国を許可した人数でございますが、そのほかにも入国を当初から拒否いたしました人数が、昭和四十八年が百八十四名、昭和四十九年が二百七十五名、昭和五十年が二百七十名となっております。  それから最後に、日本側のプロモーターの問題でございますが、これは従来の実績と申しますか実情にかんがみまして好ましくないと判断いたしましたプロモーターはこれをリストに載せまして、入国管理官署はもちろんでございますが、在外公館にもそのリストを送りまして、当該芸能人のプロモーターがそのリスト記載のプロモーターである場合には、それらのプロモーターは管理能力がないということで当初から拒否するという方針をとっております。具体的なリスト記載のプロモーターの数は大体二けたの数でございまして、こういった面からの規制も効果を発揮しているのではないかというふうに考えております。
  240. 鬼木勝利

    ○鬼木委員 その効果が非常に上がっている、なおまた、芸能人の入国した状態、拒否された状態、詳しくお話を聞きまして、非常にいい傾向であるということはまことに同慶にたえませんが、外人の資格外のバンドマン等芸能人なんか、それをキャバレーやあるいはクラブあたりに仲介をするいわゆる呼び込み屋といいますか口きき屋というか悪徳ブローカーといいますか、そういうような者がおる。これはもぐりですかな。これは職安法にも関係しますし、労働省の方も関係しますが、警察庁の方お見えになっていますか。——大変御苦労でしたが、こういう点は警察庁の方ではおわかりでないでしょうね。何か問題が起これば、それを検挙されるということは皆さんのお仕事だと思うが、こういう悪徳ブローカーみたいなものによってのもぐり外人というような者の実態はおわかりないでしょうね。
  241. 四方修

    ○四方説明員 御質問のとおり、警察の場合には具体的な被害等をキャッチいたしました場合に捜査に乗り出すということで、先生指摘のとおりに、具体的に数字等で把握はいたしておりません。たとえば、昨年の場合に、静岡県警でフィリピンから前後十六回ばかりにわたって合計八十名のバンドマン、ホステスを日本に連れてきておったという事件を検挙した。その後は神奈川、千葉、和歌山等でタイ国あるいは香港等から女性をだまして連れてきまして、最後には軟禁状態に置いたり、あるいはおどかして売春までやらしておるという事犯を検挙いたしております。  そういう状態でございまして、総括的に数字としては把握いたしておりません。
  242. 鬼木勝利

    ○鬼木委員 警察としては、そういう事態が起これば当然検挙ということで最善の策を講じられると思いますが、これは大半が少年、少女ですからね。まだ義務教育も終えていないような中学校あたりの女の子なんかを、口きき屋とか悪徳ブローカーによってだましてそういうところへもぐらせる。そういう点において、少年保護という意味から、かつまた防犯という意味から、警察ではそういうことを事前にキャッチできませんか。
  243. 四方修

    ○四方説明員 もぐり芸能プロダクションと呼ばれておるようなものが、電話で募集をしたりあるいは広告で募集をしたり、それによって少年、少女多数が被害を受けるという事犯はお話しのように後を絶たないわけでございまして、毎年十件前後の悪質もぐりプロダクションの検挙をいたしておりまして、いずれも少年保護の見地から児童福祉法違反等で検挙いたしております。最近も御存じのとおり、例の大原みどりの事件は警視庁の少年二課の方で事件を洗っております。これは詐欺罪でございますけれども、少年課でやっておるというのはあくまでも少年保護の見地からであります。  したがって、そういう事犯が後を絶ちませんので、新しい今日の社会に見られる少年の福祉を害する犯罪としてとらえまして、従来そういう通達を出したことがないのですけれども、警察庁からことし一月にも通達を出しまして、常に新聞広告とかいろいろな情報の収集に当たりまして、少しでもおかしなのがあれば内偵を進めて、職業安定法違反とか児童福祉法違反等で迅速に検挙するように示達いたしておりますので、そういう悪い者が大手を振って長期間少年、少女を食い物にするという事態はわれわれの努力によってかなり食いとめられておると思っております。
  244. 鬼木勝利

    ○鬼木委員 先ほど局長から御説明があっておったが、あなた方としては、警察権があるわけじゃないから、常時これを調査するとか、立入検査をするとか、あるいは取り調べるというようなことは、多少御遠慮なさるかもしれないと思うが、警察と十分連絡をとっていただいて、どうもあそこはいかがわしいとか何かあるというときには、警察と互いに相寄り相助けて、影の形に沿うごとくおやりいただきたいと思います。いまもそうやっていらっしゃると思いますが、その点ひとつ局長の御見解を聞きたい。
  245. 影井梅夫

    ○影井政府委員 先生指摘のとおりに、私どもは人数から申しましても、また権限から申しましても、いろいろ制約がございますので、警察との協力ということは当初からやっております。最近、資格外活動事案が急にふえましたので、これに応じまして当初から警察の協力を仰いでおりますし、私どもといたしましては十分な協力を得ているというふうに考えております。
  246. 鬼木勝利

    ○鬼木委員 そこで、最後にちょっと局長にお尋ねしたいが、おかげで五項目の規制をつくっていただいて、十分効果も上がっておるというお話を承りましたが、各方面からいろいろな通報が来るということもいまちらっと承った。各方面から通報が来ることに耳を傾けられることもむろん大事なことだ。だが、積極的に芸能人の組合とか、プロダクションの組合とか、あるいは演奏家組合とかいう組合の方の意見を聞く、あるいはそういう方に来ていただいて結構だと思う。来ていただいて、どうですか、皆さんお困りになっていることがあるのじゃないですか、あるいはあなた方の気づいていらっしゃることはないですかというように声を聞くということは積極的にはおやりにならぬですか。
  247. 影井梅夫

    ○影井政府委員 入国管理事務所というところが一般的に日本の国民とはほとんど縁のない役所である。そこで、どういうことをやっているかということを御理解いただくという意味で、いろいろ私ども広報活動をやっているつもりでございまして、先ほど申し上げましたように、地方都市においても資格外活動がありました場合に、入国管理事務所なりその出張所の方に通報いただけるようになりつつございます。  それから、ただいま御指摘のような、たとえば日本人の芸能人の組合等の意見を聞いたらどうかということ、これは私どももちろん喜んでやっております。それからまた、ごく一部ではございますけれども、そういった活動を始めている事務所もございます。これを逐次広げていきたいというふうに考えております。
  248. 鬼木勝利

    ○鬼木委員 私の考えていることをすでにやっているところもある、まことにうれしく思います。  それでは、時間が非常に超過しまして大臣もお疲れと思いますけれども、もう一点ひとつごしんぼう願いたい。  密入国の問題で一つお尋ねをしたいのですが、全国で警備官が七百人足らず、六百九十二人とかいう話を承った。私どもの九州全体で三十名足らず、福岡が二十名、鹿児島に十名程度です。これは沿岸から夜陰に乗じて密入国をどんどんやってくる。どんどんと言うとなんですけれども、やってくる。わずか三十名ぐらいで九州全土どこへ上がってくるかわからぬ。これはどういうふうにやっていますか。現状ば一体どうなっているのですか。警備官がわずか六百名か七百名でできますか。
  249. 影井梅夫

    ○影井政府委員 入国警備官の定員は、御指摘のとおりに七百名弱でございまして、しかも、そのうちの相当数の者、百名以上でございますが、これは入国審査官が臨船審査に行く場合に使用いたします舟艇、ボートでございますが、この乗員、また事務所との併任等がございまして、人数はきわめて少のうございます。しかしながら、密入国の防止につきましては、警察それから海上保安庁の御協力と申しますか、と連携をいたしておりますし、また、その間の意思疎通をするために、一年に一度ぐらいかなり大規模の会議を行っております。  こういうことで、入国警備官の数がふえることはもちろん望ましいのでございますけれども、当面の問題といたしましては、警察、海上保安庁等関係省庁との緊密な連携ということで対処していかなければならないというふうに考えております。
  250. 鬼木勝利

    ○鬼木委員 そうしますと、あなたのいまのお話を承っておると、六百九十二名ぐらいで、七百名足らずで警備官は完璧だ、十分だという御意見ですか。
  251. 影井梅夫

    ○影井政府委員 もし誤解をお与えいたしましたら、私の言葉不足でございますが、もちろん私ども十分とは思っておりません。この体制の強化というものを図っていかなければならないと考えております。現実の問題といたしまして、ただいま当面の措置といたしまして行っております措置の一例といたしまして、警察、海上保安庁との協力ということを申し上げたのでございまして、入国警備官が現在の人員で十分であるという意味では全くございません。
  252. 鬼木勝利

    ○鬼木委員 そうでしょう。だから、私が言っているのは、それはむろん海上保安庁もありましょうし、水上警察署もありましょうと思いますが、警備官が七百名未満で、手っ取り早い話が、先ほど申しましたように、九州全土に三十名しかいないというようなことでどうしてできるか。大体いま国内の密航者の実態は把握しておられますか。どのくらいおりますか。これも非常に諸説ふんぷんだが。
  253. 影井梅夫

    ○影井政府委員 もぐって入国する者の数でございますので、これはどうしても推定しかできないわけでございます。人によりましては十万以上と言う人もございますし、また五万ぐらいではないかというふうに見積もる者もございますけれども、従来、私どものいままでの経験と申しますか、まあ一人密入国者を発見できる場合には、そのほかに大体三人ぐらいの潜在密入国者があるのじゃないかというふうなことを言う者がありまして、それによりましてももちろん明確ではございませんけれども、大体五万から十万の間ではないかというふうに見ております。
  254. 鬼木勝利

    ○鬼木委員 私もそのように聞いています。ある人いわく、五万ぐらいだろう、またある人いわく、十万ぐらいだろうというようなことで、五万から十万の間の非常に幅の広いことを聞いておりますが、これはなるべく送還するようにやってもらいたいと思うのですよ。なぜならば、いまおっしゃるように、一人入ってくるということは、こちらに手引きがあるわけなんだから、潜在密入国者が手引きをするんだということになりますと、国内の正しいりっぱな家庭を持っておる労働者が非常に圧迫を受ける。今日、ことに仕事がなかなかなくて労働者があぶれておる。職業安定所なんかの前に行くと、もう毎日列をなしておる。それで仕事にあぶれておる。ところが、そういう密航者は、非常に低賃金で、しかも重労働。雇い主は、労働基準法もくそもありゃしない、安い賃金で奴隷のごとく仕事をさしておる。そういう悪い雇い主がまたおるわけなんですよ。そうしますと、正しい、純良な、善良な労働者が非常に困っております。これは大きな社会問題であります。だから、それを労働省あたりも盛んにウの目タカの目で捜しておると思いますが、そういうのはなるべく早く送還してもらいたい。  ところが、これは去年も大臣にお話し申し上げたと思うが、九州の大村から送っております。あそこに今度りっぱな収容所が建ちました。だけれども、これも三百名しか収容できない。横浜にも収容所——まあそれは私が言わぬでもあなた方がつくられたんだからな。だけれども、あれは他の外人の収容所だから別。そうなりますと、国内には五万から十万おる。それを収容しておるのは大村で三百名。船に乗せていくときには二百名しか乗らぬ。去年までは年に二回しか送らぬ。ことしから三回送っておる。三回送ったって六百人。こうなりますと、正式にパスポートを持ってきた人はばかを見て、密航してやってきた者は裏街道でいいかげんなことばかりやっているということになるわけですね。だから、そういうのはなるべく送還してもらいたい。もっと船を何回も出す。なるべく国内のそういうのは全部ひっ捕らまえて収容する。収容所だって三百名しか入らぬ。これはまた大臣の方の問題かもしれぬけれども、大臣、どのようにお考えいただけますか。
  255. 稻葉修

    ○稻葉国務大臣 密航労働者がどういうところで働いているか等の調査は、やはり労働大臣にしてもらわなければいかぬと思います。ですから、そういう労働法秩序の維持は第一義的には労働大臣の所管でございますので、労働省とも入国管理局を通じて密接な連絡をとり、そういう密航者である低賃金の労働者によるわが国の労働者の圧迫、労働秩序破壊の事実を摘発して、なるべくよけい送還するという鬼木さんの御要望というか、御意見は全くそのとおりで、文句はございません。どうしてもそういうふうにやってもらわなければならぬのですから、よく労働大臣とも、そういう御質問のありましたことを機会あるごとになにして、そっちの方の係とこっちの方の入国と密接に連絡をとるように、あなたの方も頼む、こういうふうに措置したいと私は思います。
  256. 鬼木勝利

    ○鬼木委員 大臣のおっしゃるとおり、これは私、先ほど申し上げましたように、労働省としましても、ウの目タカの目、一生懸命やはり摘発しようと思ってやっておるわけなんですよ。だけれども、密航者というのがなかなかわかりませんから、実際の話が御苦労だと思うのですよ。おれは密航者だと自分から言う者はおりませんから、これは非常に困難なことだと思いますけれども、なるべくそういうのはつかまえて、これを収容所に収容する。そして速やかに送還する。収容所をもっとつくって収容する。そして船を何回も出して送り返す。三百人や二百人ぐらいの船でなくして、もっと大きい船をつくって出すというような措置を、ひとつ稻葉法務大臣の政治力によって、現閣僚の最も重鎮で、また火の出るようなこととおっしゃるかもしれぬけれども、ひとつそういうところをやっていただきたい。実際私は大いに期待しているのですよ。そういうことですから、大変遅くまでお疲れになったと思いますけれども御了承願いたいと思います。  それでは、時間が経過してはなはだ恐縮千万でございましたが、私の質問はこれで終わります。どうもありがとうございました。
  257. 木野晴夫

  258. 受田新吉

    受田委員 稻葉先生今晩は。御苦労でございます。  私、稻葉法務大臣は先生という名称が非常に当たる大臣であると思うのです。御自身大学の教授でいらっしゃるし、法学の権威でもあるし、めったに言わぬことですが、きょうはあえて稻葉先生先生という名称を用いて質問さしていただきます。  稻葉先生は、現在の日本国憲法に対する御認識におきまして、ある意味の憲法学者としての定見を持っておられることを私はよく知っております。それで、あえて稻葉先生のお話を導き出すというような意図でなくて、本当に日本国の憲法の制定の由来等を考えて、この憲法の掲げている自由主義、平和主義、基本的人権の尊重、こうした基本原理が新しい国づくりに貢献をしてきておることも私よく知っております。  そこで、法と道徳との関係でお尋ねしたいのでございますが、罪刑法定主義、憲法の三十一条、これは大臣もちょうどいま御自身でタッチしておられる大事な事件に関係する規定ですね。「何人も、法律の定める手續によらなければ、その生命若しくは自由を奪はれ、又はその他の刑罰を科せられない。」これは罪刑法定主義の考え方が流れている規定と思われるかどうかでございます。
  259. 稻葉修

    ○稻葉国務大臣 ずばり罪刑法定主義を規定したものであると思います。
  260. 受田新吉

    受田委員 そうしますと、この規定が、ある行為を犯罪と見る、そうしてそれを犯した者に刑罰を科するというときに、あらかじめ法律をもって罪刑を定めなければならないという要件を持っておるものかどうかです。
  261. 稻葉修

    ○稻葉国務大臣 鈴木審議官に答弁させます。
  262. 鈴木義男

    ○鈴木説明員 罪刑法定主義の要請の中で一番大切であるというふうに私どもが理解いたしておりますのは、犯罪となる行為につきましては、その行為が行われる前に、あらかじめ、こういう行為は犯罪になるということを法律でもって明らかにしておくということが罪刑法定主義の最も重要な要請である、このように理解いたしております。
  263. 受田新吉

    受田委員 そうしますと、一定の行為を犯罪とするというとき、それが正義の要請にこたえなければならないものであることが前提になるかどうかです。
  264. 鈴木義男

    ○鈴木説明員 この犯罪とされます行為のうち大部分の行為は、およそ人間の社会においてそういう行為をしてはならない、それは道徳的にも悪でありますし、またそれが他人の生命、身体、財産その他の利益を害するという意味でも反社会的な行為である、こういう行為に対してこの刑罰という制裁が科せられるのが通常でございます。  ただ、刑罰法規の中には、このほかに、もともと悪い行為ではないけれども、そういう行為を規律いたしませんといろいろな弊害が出てくるということから犯罪の対象になるような行為もあるわけでございまして、たとえば自動車の左側通行ということは、左側を自動車で運転するということは必ずしも道徳的にそうでなければいかぬということではございませんけれども、やはり交通秩序を維持するためには左側なら左側、右側なら右側を通らなければいけない、こういうことで定められた刑罰法規もあるわけでございますが、大部分の刑罰法規は、先ほど申しましたように、道徳に基礎を置いて、道徳に反する行為、かつ他の人々に迷惑をかける行為、こういうものを処罰することは正義の要求である、こういうことで犯罪にされるものでございます。
  265. 受田新吉

    受田委員 同時に、憲法上の規定に掲げてある諸自由を尊重するという背景がなければならない。いかがですか。
  266. 鈴木義男

    ○鈴木説明員 まさに御指摘のとおりでございます。
  267. 受田新吉

    受田委員 稻葉先生、いま法律論争を審議官とやったわけでございます。この憲法第三十一条は、犯人のマグナカルタというか、あるいは善良な国民のマグナカルタという形で、この点がただされなければならない。これは三十一条からずっと五、六条まで続く問題でございますが、そこで今度のロッキード事件、このロッキード事件にこの三十一条の精神を用いることになると非常に厳しい制約を受ける、つまり犯人の捜査に当たって。そうお考えではございませんか。
  268. 稻葉修

    ○稻葉国務大臣 なかなかむずかしい御質問でございますね。ロッキード事件についていろいろ容疑者があり、それを刑事訴訟法という法律手続で起訴をし、それが確定判決を受けて刑罰を科せられるという道順を踏むについて、憲法三十一条の掲げる要件に厳格に当てはめるように捜査をするのはむずかしい、そのとおりだと思いますね。そうだろうと思います。
  269. 受田新吉

    受田委員 そこで、この間の国会で、最後に民社党がすでに自民党との間で約束をし、さらにそれが結局同工異曲で五党の申し合わせになったあの大事な一項、政治的道義的な責任において処理の必要が起こったときの問題に及ぶわけでございます。つまり、三十一条の精神をもって罪刑法定主義を唱えるとするならば、一々それに当てはめていくことになると、その自由を奪う、生命の危険があるとかいうようなところでなかなか捜査の厳しい制約を受ける。しかし、政治的道義的な問題として、この問題を、捜査の過程においてもこれをたださなければならないという場合がある。法務大臣はこれに大変抵抗されたのでございますが、しかし国会の意思は、五党の最後の申し合わせによりまして、捜査の過程で、いわゆる公益優先というような問題、正義の立場というような問題等を含めた政治的道義的な問題として、捜査の過程においても高官の名を発表することがあるという意味に理解してよろしいかどうかでございます。
  270. 稻葉修

    ○稻葉国務大臣 憲法第三十一条は、刑罰を科する場合の手続は法定手続によらなければいかぬ。すなわち、刑事責任を問う場合の規定でございます。政治的責任、道義的責任を追及する場合の手続は法定されていなければならないという規定ではないわけですね。そうして、法務省、検察庁の法秩序維持の任務は、刑事責任を追及するのが分限というか限界というか、そういうことでございまして、     〔木野委員長代理退席、竹中委員長代理着席〕犯罪になるかならないか、罪刑法定主義によってちゃんと構成要件を定めた刑法典に当てはまるか、刑法典に規定する犯罪になるかどうか、そういう点については私どもの分限でございますけれども、そういう規定に当てはまらないものについて、それは刑罰にはならないけれども、社会的な、また廉直を要求される国家公務員や、それから品位を保つべき議員に対しては、それ以上の道義的な政治的な責任があるわけですから、あの民社党と自民党の協定の中にも、また議長裁定の中にも、国会は、ロッキード事件について道義的政治的責任を追及する場として、こういう文句があるのは、それが非常に正しい分析の仕方だと思っておりますね。
  271. 受田新吉

    受田委員 先ほどちょっと質問が出たようですけれども、私の質問しようとするところと当たるか当たらぬかでございますが、この捜査の過程におきまして、法務大臣には検察官に対して指揮権の発動をなし得る権利があるわけです。法務大臣の一般的な指揮監督権というのは、これは一般行政と同じでございまするが、特に検事総長に対する特定の事件の取り調べ処分についての指揮権の発動、これは法務大臣はやらないという御意見を国会で開陳されておるが、そのとおりでございますか。
  272. 稻葉修

    ○稻葉国務大臣 消極的なやめろという指揮権も、こういうふうにやれという指揮権も、積極的、消極的両面の指揮権は、この際、検事総長の意思に反していたすようなことはよろしくない、やるべきじゃない、こういうふうに思っております。
  273. 受田新吉

    受田委員 現在の検察当局の捜査状況というものは信頼するに足るという前提でございますか。
  274. 稻葉修

    ○稻葉国務大臣 信頼するに足るという前提でございます。  私は、この事件は非常に難事件でございまして、非常に重大な責任が法務大臣にある。しかし、直接捜査に当たる者は検察庁でありますから、そのトップにある検事総長を信頼し、まあ神よ仏よと言うが、神よ閻魔よ検事総長よという気持ちで見守っておるというわけでございます。
  275. 受田新吉

    受田委員 稻葉先生の——あえて先生と申さしていただく稻葉先生の崇高なる使命感、信念に敬意を表します。と同時に、検察当局は、この法務大臣に信頼されておるということにおいて、最も大きな責任を感じてやってもらいたい。  バイブル詩編百二十五に、「エホバよ、主に信頼される者は動かされることなく、とこしえなるシオンの山のごとくである。」法務大臣、好きな詩ですね、どうでしょう。
  276. 稻葉修

    ○稻葉国務大臣 まことに感動をいたします。
  277. 受田新吉

    受田委員 稻葉先生がこの問題に深い信頼感を持って、神に誓って間違いない道を歩もうとしておられること、私、それを信頼いたします。そして、この問題の処理に消極的にも積極的にも指揮権を発動しないということであるだけに、検察当局は、この日本の全国民的規模で期待されている醜悪なる事件の結末を正義のやいばでつけてもらうことを要求申し上げておきます。  次に、憲法第三十六条、公務員は残虐なる刑罰を一切やらないというこのことでございます。これは正確には、憲法の三十六条の規定に、「公務員による拷問及び残虐な刑罰は、絶対にこれを禁ずる。」ということ。そうすると、大臣も特別職公務員、それから刑を執行する刑務所の死刑執行官も公務員、その公務員が、死刑ということは最も残虐なる刑罰ですね、その死刑を行うということ。とにかく法務大臣は死刑を執行せよというサインをされる。  ちょっとお聞きしますが、大臣、一年有半にわたる法務大臣在任中に、死刑の執行をサインで命ぜられたことがあるかないかです。
  278. 稻葉修

    ○稻葉国務大臣 死刑の執行を署名したかという点につきましては、法務省の従来の慣例上、したとか、一件もないとか、何件やりましたとか、そういうことを世間に発表しないという慣例があり、世間からもまた国会からも、従来そういうふうに容認されておるところなんでございますので、この際その御質問にお答えをいたしますことは、従来の慣例を破りますので御想像願いたい、こう思っております。
  279. 受田新吉

    受田委員 法務省は、過去一年間に死刑の執行をやった数が何人あるか、これは発表できると思うのです。それも発表できないのか。死刑執行者は全部発表をしないということが法務省にあるとするならば、これはまた大変な問題があるのです。裁判所において死刑の判決を受けた受刑者は何人おるのか、これはわかるはずですね。裁判の秘密じゃないはずです、こういうことは。ちょっと発表してほしい。
  280. 鈴木義男

    ○鈴木説明員 先ほど大臣から申されました趣旨、すなわち、どの時点でどの程度の死刑の執行が行われたかということにつきましては、従来からの慣例で発表するのを控えさせていただいておるわけでございますが、ただ、死刑の執行が一体どの程度行われているのか、あるいは死刑の言い渡しがどの程度行われているのかということにつきましては、特に秘匿すべき問題でもございませんので、従来私どもの方からは、大体五年間ぐらいの間にどの程度の死刑の執行が行われてきたかということは、いろいろな機会に申し上げてきておりますが、最近の五年間でございますと、死刑の執行人員は五十七名でございまして、平均いたしますと一年に十名ぐらいということになっております。それで、裁判所で言い渡されます死刑の判決につきましては、これは統計等も公表されております。毎年公表されておるわけでございますが、昭和四十五年から四十九年までを見てみますと、四十五年には十四人、四十六年には六人、四十七年には八人、四十八年には四人、四十九年には二人、こういうことでございます。  もう先生御承知だと思いますけれども、日本における死刑の言い渡し数、あるいはこれに応じて死刑の数も同じでございますが、戦後次第に減少してきておりまして、戦後非常に多かった時期には年平均二十名、三十名という執行あるいは言い渡しもあったわけでございますが、最近は、ただいま申しましたように、平均いたしますと年に十人ぐらいの執行、それから判決の言い渡しも、先ほど申しましたように、ここ数年一けたというようなことになっておりますので、執行についてもこれに応じてさらに減っていくのではないかというように思っております。
  281. 受田新吉

    受田委員 審議官、死刑の執行で、その執行の仕方は残虐なる方法を用いているか、安楽なる方法を用いているか、御答弁を願いたい。
  282. 鈴木義男

    ○鈴木説明員 現在、この死刑の執行は、刑法に「絞首シテ之ヲ執行ス」ということになっておりまして、先生も御存じだと思いますが、首になわをかけた上、その床を外すということによりまして執行するということになっております。  それで、この絞首という方法が残虐であるかどうかという点については、見方もいろいろあろうかと思われますけれども、たとえば、絞首のほかに行われておりますガス殺あるいは電気殺というような方法を用いておる国もあるわけでございまして、これらの中でどれが一番安楽な方法であるのかというのは、なかなか決めにくい面もあろうと思いますが、少なくとも、たとえばガス殺等を見たという人の報告等によりますと、大変苦しんで、まあ引きつったような顔をして死んでいくというのに対して、絞首という方法では、これは瞬間的に、それから死亡する前に、意識を失うというようなこともございまして、これは見方にもよりますけれども、少なくともほかの死刑の執行方法に比べて残虐であるということは言えないように思っております。  なお、最高裁判所も、この絞首という方法による死刑の執行は残虐な刑罰ではないというように判断しておるわけでございます。
  283. 受田新吉

    受田委員 首を絞めてつり下げるのが残虐な行為でない、そういう解釈が成り立ちますかね。これは残虐なんですよ。そうして生命を断つのです。首をなわで縛ってぶら下げて殺すのが残虐な刑罰でないという最高裁の判決は、いつ下ったわけですか。その文句を読んでいただきます。
  284. 鈴木義男

    ○鈴木説明員 ただいま正確な最高裁判所判決の日付を覚えておりませんが、昭和三十年代に下された判決でございます。
  285. 受田新吉

    受田委員 ここまで詭弁を弄する判決があるとするならば——首を絞めてぶら下げて殺して残虐でないなどという説明は私にはいただけません。これは公務員の拷問または残虐なる刑罰を禁止している憲法の精神にも反するわけです。そういう考え方でその絞首台に上らせて、そうして首を絞めてぶら下げてがたんと落として、何分かの後に死を待って処理をするという行為は、終戦の直後に行われた残虐なる戦争犯罪人処刑で、われわれはいやというほど体験したのです。  私は、憲法三十六条の精神を——法務大臣は、この憲法三十六条は別として、憲法をある程度改正をしたいという御希望を持っておられるわけなんですね。そうでしたね、御答弁を願いたいです。
  286. 稻葉修

    ○稻葉国務大臣 私は、日本国憲法の主権在民、民主主義の原則であるとか平和主義であるとか、最も近代的な憲法の中核をなす国民の基本的権利、自由の擁護、人権尊重という原則は堅持しつつ、なおかつその実効性、実際の効能が上がるように、漸進的に改正すべき点もたくさんある、こういうふうに思っております。ただ、改正するまで現行憲法を擁護し、これを尊重すべきことは当然でございまして、そういう点については去年の憲法問題のときに多少皆さんにも申し上げたわけであります。  ただ、死刑の存廃につきましては、刑法上最も重要な問題の一つとして論議があり、法務省の先輩である、刑事政策の大家と言われる正木亮さんなどは廃止論者だ。その弟子である、私どもの同級生にたくさん廃止論者があります。たとえば向江璋悦法学博士。ことに向江君などは憲法第三十六条を根拠として、残虐な刑に当たるから、憲法違反になるから、死刑を廃止すべきだ。ただ三十六条の厳密なる解釈として、拷問及び残虐なる刑罰を科してはならないということが、直ちに死刑はこれを廃止すると書いたのと同じことになるかというと、これは憲法学岩間にむしろ消極論が多いんですね。御承知のとおりです。西ドイツ共和国基本法百二条のごとく、死刑はこれを廃止す、こういうような明文があれば、これは死刑廃止論者にとっては一番明確なんです。事実三十六条の残虐なる刑に当たるから廃止すべきものだという廃止論をも含め、あらゆる角度から慎重にこれは検討しておるところでございます。  ただ、いまなお凶悪な犯罪が後を絶たず、国民の大多数も、死刑に凶悪犯罪抑制の特別な効果がある、一般的な警戒心を国民に与えて、残虐な、それこそ凶悪な犯罪を防止する効果があると信じているというふうに世論調査では思われます。すなわち、死刑の廃止に賛成する者が約二割というところを見ますと、そういうこともありますので、鋭意目下検討中ではありますけれども、いま直ちに受田先生おっしゃるような、三十六条の残虐なる刑に当たるから死刑は廃止するがいいというふうに結びつく、そういうふうに決断する、そういう段階ではないように思うのでございます。  客観的にそういう状態でありますことを踏まえて、おまえ自身はどうかこうかということは、この際ひとつ私は答弁を控えさせていただきます。
  287. 受田新吉

    受田委員 稻葉先生に憲法改正はどういうところ改正したらよいかと聞こうと思ったんですが、残虐なることになる危険もありますので、それはお尋ねしません。  私がいま結びつけたというわけではないんですけれども、この残虐なる刑罰ということは、これはやはり生命を失う段階において、その人の安楽に死にたいという基本的人権もあるわけなんです。それを抑えるわけですから、その意味では、死刑にすることと死刑の執行の仕方が残虐であること、要素が二つあるのです。だから、刑罰としては死刑というのは残虐な刑罰ですよ。何といったって生命を絶つほど大きな刑はないですよ。しかも、残虐ですよ、殺し方としては。間違いないです。だから、大臣も殺せとサインすることは、残虐な刑罰であって、本当は憲法違反の命令を下すわけだと私は思う。これは見方がある。ボン基本法の百二条に言うように、すかっと死刑の廃止が書いてあれば、これは明確でございますが、憲法第三十六条を日本国は遵守しなければならぬという意味から言えば、公務員は拷問とかあるいは残虐な刑罰ということをやっちゃならぬということにやはり当たりますよ。命令を下す方も執行する方も、残虐な刑罰をやっておる。この文章を素直に読むときはそれに当たる。しかし、それとはまた別に、死刑というものは廃止する方向に行く。高度の文化国家になった以上は、別途道義的な世界で、私がさっき申し上げたように法律と道徳、道徳の世界をもっと高めて、こういう罪を犯さないようなよい環境をつくって、自然に社会人がその中から極悪の刑の執行を受けるような人を生まないように育てる道義世界をつくることです。そこから自然に、手厳しく法律で決めても守れないものが道徳の世界で美しく築かれていく。大臣、そういう高度の文化国家らしい日本を、平和国家を築くために、死刑というものについては角度を変えて、高度の文化国家らしい国づくりをすることによって、死刑が当然廃止されるような情勢を政治的につくっていかなければならない。  イソップ物語の、風と太陽とが旅人のマントをどっちが脱がすかと争うた。風が強くまず吹きつけた。マントをはぎ取ろうとした。ところが強く吹けば吹くほどマントを体につけた。一方で太陽がにっこり笑って、ぽかぽかと暖かい光を送ったら、旅人はマントを脱いで手に下げて悠々と歩き始める。どっちが勝ったかということですね。法律、罪刑法定主義は結構、されど同時に、道義の世界を高く築いて、法の網をくぐって犯すような人をつくらない社会をつくる、法務大臣の任務はそこにある。罪を防ぐ、予防する、犯罪を犯さないようにするというところに法務省にも責任があると思うのです。そうじゃないですか。
  288. 稻葉修

    ○稻葉国務大臣 それは大いにありますことは、私は申し上げるまでもないと思います。それから、犯罪を予防することもあれですが、やはり社会秩序を守るためには、犯罪を犯した者を法的手続に従って処罰することは、この三十一条等に認めているわけですね。そうして、どうでしょう。一般的にいかなる刑罰でも、刑罰を受けるその人にとっては、それは残虐なんじゃないでしょうか。  ただ死刑などになりますと、執行の仕方いかんによっては、昔の少しずつ鼻をそいだり耳をそいだり、その次は手もやり、そういう死刑の執行の仕方は、文字どおりそれは残虐だ。だから、死刑の存廃論に関して、死刑そのものが一般的に言って残虐なんだということになれば、刑罰全般が、やはり刑罰を受ける個人にとっては残虐ということになろうかと思います。そういうことのないように教育や文化の程度を高めて、悪いことをしない社会の建設は理想でございますけれども、浜の真砂は尽きるとも世に盗人の種は尽きまじといったようなことがあって、なかなかそこにいかぬから仕方なくこういう刑法、しかし、それも公務員のでたらめでやっちゃいかぬから罪刑法定で、あらかじめどういうものが罰になるか、そのものについてはこういう量刑が行われるのだということを知らしめておくということが、現在行われる精いっぱいの文化的な制度であるというふうに思わざるを得ませんのですよ。
  289. 受田新吉

    受田委員 はい、わかりました。  いま、相当な震度の地震が来たわけですけれども、法か道徳かで道徳を説きよると、こういう警告が出るわけです。だから、ちょうど私の質問のときでなくて大臣の答弁のときにあったから、やはり死刑を廃止せよという天の声じゃないか。  そこで、常に人間を大事にするという意味で、いつも感じるのですが、私の知っている人たちが刑務所に入る、そうすると、非常に勤務がよくて改俊の情が顕著であるというので仮出獄の恩典に浴する。ところが刑法の二十八条には、懲役または禁錮に処せられた者が改俊の情が顕著であれば刑期の三分の一を経過した後には仮出獄ができる。私はあの出獄の獄という字が非常にいやなんです。あれは地獄の獄ですから、監獄法のこんな……。いまの刑法になお「仮出獄」——仮出獄というのは、これはいやだね、この言葉は。ほんのちょっとした出来心で間違いを起こして刑務所へ入った。しかし、改俊の情が顕著で本当に生まれ変わっても、いま現に山口刑務所に入っている本当に善良な人がおるのです。刑期の三分の一じゃなく、もう二分の一を過ぎている。仮出獄の要請を行政を通じてしているのですが、まだそれができていないようです。本当に改俊の情が顕著で、だれが見てもわかる、もう刑務所の所長も言うておった、模範的な人だと言うておる人が、それがやはり何か刑期の三分の一を超えても、本当は二分の一とかなんとかというような内規があるのですか。法律にうたってあれば三分の一でさっと出していいじゃないですか。もう社会に出て、改俊の情が顕著で、本当にだれが見てもりっぱな社会人になってくれる人です。それを刑期の三分の一を超えたら当然法律の適用を受けると思っておるが、実際はやはり二分の一以上だという説を私、聞いたのです。これはそうした行政審査機関というようなもので、何かそこに内規か何かあるのかどうか。法律で決められた規定を早く実行して、これこそ道義社会をつくるのも大事なことです。審議官。
  290. 鈴木義男

    ○鈴木説明員 この仮出獄、現在では仮釈放と呼んでおりますが、仮出獄の問題につきましては、法務省の保護局の方で担当いたしておりますので、私のお答えはあるいは不正確な面もあるかと思いますので、また調べた上で正確に御返答申し上げたいと思いますが、刑法におきましては三分の一たったら仮釈放ができるということを書いておるわけでございまして、別に二分の一たたなければ仮釈放ができないというような内規はないというように理解しております。  ただし、仮釈放につきましては、三分の一がたてばすぐ仮釈放ということではございませんで、三分の一あるいはもっとたった場合に、いま世の中へ出した方がこの人は改善するのに一番適しておるかどうかということを考え、かつ、出てから一体職業につき得るのかどうか、あるいはちゃんとした帰住先があるのかどうか、あるいは出ることについて被害者等の方から大変不満が出るおそれはないであろうかというようなことなどを考慮して行うわけでございまして、三分の一が経過しただけでは、三分の一では足らなくて二分の一とかいうような基準を設けているということはないはずでございます。
  291. 受田新吉

    受田委員 ないはずですね。けれども、事実は三分の一でぴしっと出すことはほとんどないそうです。そういうところに、もう改俊の情顕著で家族も受け入れ態勢ができている。その人というのは、いま私が申し上げている人は、農協の金を使い込んで、それはもう弁済を全部終わったんだが、使い込んだというそのこと自身に誤りがあった。それはもうだれが見てもやむを得ぬような雰囲気に追い込まれて使ったわけですが、私もお手伝いしようと思っているのに、それができてない。まことに厳しいところがあるということです。  もう一つ、保釈制度。つまり検事が起訴した、そして裁判の結論が出るまでのその途中の保釈制度。これもせっかく刑事訴訟法に規定があるにかかわらず、その保釈されるのには銭がなければいけない。銭がよけいあれば、相当な重い犯罪を犯した者でも、もうちゃんと銭を積んで保釈される、銭のない者は保釈されない。兄弟姉妹までの間の人が協力して救う道があるにかかわらず、銭がなければ救えないという、保釈にも銭の世界だという、これは私はいやですね。ちょっとした大物になると何百万円、何千万円と積んで保釈されるのがおるのです。法務大臣、不愉快な話でしょう。銭で保釈というのは、これはいかぬね。この制度には問題があると思うのです。相当の大物で犯罪を犯した者は大量の銭を積んで保釈しておる。新聞などでちょいちょいこれを読むときに、不愉快なことはなはだしいです。法務省のお仕事の中に、銭で勝負をつけるなどというこの制度をもっと改めて、銭がなくても保釈できるような、もう銭で片づけるというのが本質じゃないんだ、本当にもう出ても間違いないのが本質で、やむを得ぬときに銭というふうなかっこうにこの制度を変えてはどうなんでしょうか。
  292. 稻葉修

    ○稻葉国務大臣 専門的なことは審議官に答えさせるほか仕方がありませんけれども、私はあなたと同意見です。人生の万事、選挙でも何でも銭で万事片づけるということが、こういうことになっちゃって、えらいことになったんだから、人生のもめごとの九〇%は銭で片づくという人生観は、政治家は持たぬ方がいい。そういう意味で、あなたのその御説には私、賛成です。
  293. 受田新吉

    受田委員 ありがとうございました。  私は本当に不愉快です。大物ほどよけい金を積んで出てくるのです。ずうずうしいもはなはだしいです。これは不愉快至極のことです。法務事務当局、大臣の御決意の表明があったわけですから、その趣旨に沿うて、大物ほど銭をよけい積んで保釈する、起訴から裁判まで、未決囚の処遇をさらに検討しなければならぬことを、大臣の意図として、選挙でも何でも、とにかくすべて銭で片づける社会はいやであるということだけ、いま大臣が本当に神の声として発言されました。私は大変ありがたい法務大臣の御発言と思います。
  294. 稻葉修

    ○稻葉国務大臣 それ、神の声でしょうか、普通じゃないでしょうか。
  295. 受田新吉

    受田委員 神の声もそうだし、それからまた当然のことでもある、相通ずるものがあるのです。神に通ずるものがあるのです。  それで、もう一つ私は正義の声を提案したいのです。政治の世界、行政の世界のすみで大変苦労している貧しい人々、貧しい人々は裁判をやりたいけれども銭がない、弁護士に出す金もなければ訴訟費用がない、そういう人々が法律扶助の制度に浴しておる。一部あるのですが、しかもそれは非常に末端のわずかな貧困者に限っておるのです。これは人権擁護にも関係する問題であると思うのでございますが、この法律扶助協会に対する国庫補助金、運輸省分は千五百万円というものをこの間削減しておるのです。こういうようなことを考えると、社会情勢の変化で行政機構のあり方を新しく考えようというときに、行政の末端で、一隅を照らすものでなくして一隅に追いやられた貧しい人々に、裁判の手続もできないような貧しい人々に法律扶助制度を設けておるにもかかわらず、それはもうきわめて末端の一部にすぎない。普通の生活を持ち得る人であっても裁判費用までは出せないという人までももっと範囲を広げるべきであると思うが、社会正義の声を村岡人権擁護局長、御答弁を願いたい。
  296. 村岡二郎

    ○村岡政府委員 現在、仰せの法律扶助は、財団法人法律扶助協会が行っておりまして、国はその事業に国庫補助する、補助金を交付しておるわけでございます。その補助金を交付する場合の資力の点についての要件でございますが、それには交付要領というのが定められておりまして、これは第一に生活保護法で定める要保護者、第二に訴訟のための出費によって生活を脅かされるおそれのある生活困難者、つまり、これは現在生活は困難であるというわけではないけれども、訴訟をするための費用で生活を脅かされるおそれがある、そういうものでございます。第三といたしましては、前号に準ずるものという定めをしております。  これにつきましては、具体的に基準を決めることが実務処理上必要でございますので、一応の内規がございまして、これによれば、現在のところでは独身者で月収十万円、これに家族が一人増すごとに二万円を付加した金額、こういう月収を一応の基準額として運用しております。     〔竹中委員長代理退席、木野委員長代理     着席〕 したがって、五人家族であるといたしますと十八万ということになるわけでございまして、この点は先ほどの交付要領に定めました基準から見ますとかなり緩やかに運用されているということは言えようかと考えております。
  297. 受田新吉

    受田委員 村岡さん、これは先ほどから理論が一貫しておると私は思うのです。不幸な人々、そして社会正義の観点から道義を高めながらという主張をやる一環でお尋ねしておるのです。本当に訴訟費用がなくて——金があれば裁判で勝とうとして裁判で最後までやる。選挙違反やったんでも最後までどんどんいって、そのうちに次の選挙が始まるんだよね。最高裁にいくまでに次の選挙で勝負つけるから、選挙違反などというものはいいかげんなものだ。ところが、本当の正義の裁判になっては、時間がかかって費用に負けて、ついに泣き寝入りになる人が多いのです。これでは裁判の公正にはならぬです。そこを、いまの社会制度の欠陥からくる法律扶助制度というものは、予算をもっと幅を広げて、社会正義のために、不幸な人々に裁判による正義の勝利を与えるべきである。弁護士に払う金もない、その他の訴訟費用もないというような不幸な人がたくさん転がっているのを局長御存じですか。
  298. 村岡二郎

    ○村岡政府委員 仰せのとおりでございまして、訴訟の費用を支出することができないために自分の権利の擁護ができないということは、これは裁判を受ける権利の実質的侵害でございます。このようなことのないように、そういう者のための法律扶助、訴訟の援助ということは全力を挙げて行うべきものだと考えております。鋭意努力をしておるところでございます。  ただ、実際上の問題として一つだけ申し述べておきたいと思いますことは、これは財団法人法律扶助協会という公益法人が行っているわけでございますが、最近の統計にあらわれた件数で見ますと、必ずしも件数が伸びていないということがございます。これがそういう扶助を要する者がなくなったがために件数が落ちるというのなら結構なことだと思いますけれども、私どもは必ずしもそうは思っていない。その扶助を得て訴訟を行いたいという者が、この制度を知らないために、あるいは何らかのその他の障害によって利用できないでいるということがまだまだあるのではないか、こう思っております。そのためには、いろいろ法律相談であるとか人権相談であるとかいうような機会をとらえ、またその他のマスコミを利用するなどいたしましてこの制度の広報を図りまして、そういう扶助を必要としながら扶助を現実には受けていないということがないように、表面にあらわれてきておらない事件を発掘していくということにも全力を尽くしたい、こう考えております。
  299. 受田新吉

    受田委員 お話を続けることは大臣に苦痛であることがよくわかります。時間がもう迫って、早く委員会が終わればいいというお気持ちがおありだということはよくわかるのですが、やはり大臣も、いま私が指摘しているような問題をお聞きになっておられるわけです。結論は大臣がお出しにならなければいかぬです。村岡さんのお父さんが代議士であり弁護士であって非常にりっぱな人である、私、よく記憶しておるのです。そうした家庭に育たれた裁判官であった村岡さんが、いまそれに対する社会的な矛盾、また一方ではその件数が少ないという矛盾等も指摘しておられるわけだ。一隅を照らす法務行政というものへ力点を置いていかれる。同時に、人権擁護委員というのが全国にたくさんいる。全国に何人いるか。その人権擁護委員の待遇は幾らであるか。そして陰に隠れた人権擁護の大事な仕事をする人々に対して本当に報いる待遇がしてあるかどうかをお答え願いたい。
  300. 稻葉修

    ○稻葉国務大臣 人権擁護委員が全国に何人あって、それに対する処遇が幾らであるということを私、記憶をしておりません。よくやってもらいますが処遇は非常に悪いものだなということはよく承知しております。  それから、先ほど法律扶助協会のことでございますが、これもよく財団法人の理事長が来られてやっておりますが、この財団の経理というものがどうもうまくないという大蔵省のことを聞きまして、びっくりして、そのことを前の石田理事長さんに申し上げましたら、そういう点はあるのですと言うのです。それじゃひとつそれを直して、財団法人なんだから、経理がきちっとよくいってない状態では、私、幾らやっても大蔵省がうんと言うわけはないじゃないですか、今度の理事長は山本忠義君、これが理事長になってあいさつに来たから、ひとついい会に——いい財団なんだし、それから人権擁護上、これこそは、先ほど言ったように金のために権利の擁護ができないで泣き寝入りになるなんていうものは文化国家の名に恥じるじゃないか、そういうことをよく言いまして、今度はしっかりやれと言うているから、やってきたら大蔵省へ大いばりで要求したい、こういうことをついでに申し上げておきます。
  301. 受田新吉

    受田委員 局長、その待遇の実情をひとつ。
  302. 村岡二郎

    ○村岡政府委員 人権擁護委員の人数は、現在全国で一万四百人が予算定員でございます。これはただいま御審議になっておられます来年度予算におきましては百人増の一万五百人ということになっておりまして、人権擁護委員に対しましては人権擁護委員法第八条に規定がありまして、「給与を支給しない」「予算の範囲内で、職務を行うために要する費用の弁償を受けることができる。」つまり給与、報酬、手当のたぐいは一切支給しない、ただ実際にかかった費用の弁償をするというたてまえになっております。これはあくまでも民間のボランティア活動にまつという思想がここにあらわれているものだと思いますが、そういうこともございまして、確かに金銭的な処遇という面では非常に劣っておることは事実でございます。  その実費弁償としてどういう予算が計上されておるかと申しますと、これは予算の算定の便宜上一人当たり幾らという計算がございますが、これが五十年度予算では一人当たり九千円平均でございましたが、これはただいまの予算案では一万円に増額になっております。先ほどの定員増と単価の増ということで若干の改善は見ておるということでございます。
  303. 受田新吉

    受田委員 きょうはせっかくの機会でございまするから、私が特に平素から問題視している少年問題にちょっと触れます。  法務省では、すでに法制審議会等から刑法の改正法案の提案をされており、また少年の法律につきましても、その関係審議会から意見も聞いておられることですし、法務省と裁判所、あるいは弁護士の会等といろいろと相談しておられると思うのですが、私、最近の子供たちの成長ぶりで、大体十八歳になれば一応大人の世界に入ってくると思うのです。それは大臣も御存じのように、高等学校を出ると、初級公務員試験に合格してすぐ公務員になれる、警察官も十八歳でなれる、自衛官のごときは、少年自衛官はもっと若くしてなれる、公務員も警察官も十八歳でみな就任するのです。にもかかわらず民法第三条は、満二十歳をもって成年とするとなっている。そして成年に達しない者のやった法律行為は一人前でないのでございますから取り消しをすることができるという規定があるわけです。これは民法の三条の方を改正して、ソ連のように満十八歳をもって成年齢とする、こうしておけば少年法の災いもなくなるし、そして十八歳から二十歳の間を特別の規定を設けて、成年に達したとは言いながらも、二十歳まではある特別の規定を設けるというようなことをやることにして、それを救う、こういうふうにやればいいし、国内の行政法規を見ると、援護関係、児童保護関係、そのほかの労働その他の諸関係法規を見ると、十八歳以上には成人としての扱いがしてあるのです。手当が出るのは十八歳未満であって、援護法でも十八歳未満に手当が出て、それ以上は手当が出ない、恩給法だけが二十歳になっているだけで、あとは全部十八歳で諸手当がとまっているのです。一人前と見ている。行政法の対象となる各種の法規を見ると、もう十八歳で大人になっておる。銭も出なくなっておる。そうなれば、少年法問題も、民法の三条も、成年齢は二十歳でなくて十八歳とする。天皇、皇太子、皇太孫は十八歳で成年です。もうちゃんとそうなっておる。それからソ連その他新しい傾向がみな生まれておる。また、最近はどんどん成長が早まって、十八歳で一応身体の方も生物的に成長をしておる。精神的なものが少しあるが、それは少年法で二年間教育をすることでいけばいい。こういうことで民法の三条を改正する方が手っ取り早いのじゃないか。これは民事局長の御答弁を願いたい。  それから、少年法についてはいまどういう改正意図が試みられ、従来裁判所は反発しておったが、しかし、最近裁判所の方とも話がどうやらついたという話で、むしろ弁護士の方がまだ抵抗をしていらっしゃるという話のようでありますが、これらはどういうことになっておるのか。少年法のあり方というものを御説明願いたい。
  304. 香川保一

    ○香川政府委員 民法三条の満二十歳をもって成年とするという規定の二十歳を十八歳に引き下げたらどうかという御質問でございますが、確かに現在十八歳になりますと、いろいろの意味で一人前の扱いがされるということは、そのとおりだと思いますけれども、民法の考え方は、やはりその国の国民の法律生活と申しますか、当然権利があれば、それに伴って責任が生ずるわけでございますので、そういった国民生活における法律関係の複雑さというふうなものも当然勘案しながら、むしろ未成年者保護という観点も十分配慮しながら現在二十歳になっておるわけでございます。したがって、法律行為の中には軽微なものもございますけれども、いろいろの場合を想定いたしますと、私どもといたしましては、現在直ちに二十歳を十八歳に引き下げるというのは、まだ相当慎重に検討しなければならぬのではないかというふうに考えておるわけでございます。
  305. 受田新吉

    受田委員 ちょっとそのお答えに反論したいのですが、二十歳に達しないでも、結婚すると成年の扱いを受けるわけですね、そういうこと。それからいま私が指摘しました初級職公務員、警察官。いまあなたのお話によると、これは二十歳に達せぬから、まだ未熟な公務員だから指導を加えなければいかぬのだとか、単なる単純なる仕事ならいいが、複雑なものは判別する能力がないのだということになると、この辺で執務している警察官でも、おれはまだ半人前としか見ないかということになりますよ。十八で公務員になった警察官、一般公務員、いま法務省にも初級で十八歳で公務員として採用したのがおるはずです。そういうものをおまえら二十歳に達するまでは民法の規定によって一人前には見れないのだよ、こうおっしゃいますか。
  306. 香川保一

    ○香川政府委員 民法が二十歳で成年とするということにしておることから、すべての関係において二十歳未満を未成年扱いにするというわけではないわけでございまして、民法の限りの二十歳をもって成年とするという意味は、いわゆる人の一人前としての法律行為能力を二十歳というふうにしているわけでございます。たとえば不動産を売るとか、いろいろ商取引をやるというふうな場合の法律行為能力を、十八では十分それに伴う責任までしょい切るだけの法律行為能力はあるだろうかという観点から民法は考えるわけでございます。したがって、民法が二十歳を成年にしておるからといって、すべて他の法律分野におきまして成年は二十歳でなければならぬという扱いをするというわけではないわけでございまして、これは現在十八歳でいろいろ、たとえば自動車の免許を与えるとかいうふうなこともございますし、公務員としても十八歳になれば採用できることになっておりますが、民法の分野における、つまり法律行為能力を持つと同時にそれに伴う責任を負わせるものとして、現在、十八歳が適当かどうか、二十歳を下げる必要があるかどうかという観点から考えるわけでございます。  さような意味から申しまして、直ちに十八歳にしていいと言うにはなお慎重な検討を要するのではないかというふうに考えておるわけでございます。
  307. 村上尚文

    ○村上説明員 御質問のございました少年法の改正作業につきまして概略申し上げますと、少年法の改正につきましては、昭和四十五年の六月、少年法改正要綱を法制審議会に諮問いたしまして、以後、法制審議会の少年法部会におきまして審議が行われてきたのでございますが、この要綱の基本とする事項に関しまして、賛成あるいは反対の意見が激しく対立したまま推移いたしまして、最終結論を得るまでには相当の長年月を要するような情勢にありましたために、昨五十年に入りまして審議方針の再検討が行われまして、その結果、諮問に係る要綱の是非に関する結論はしばらくおきまして、さしあたり早急に改正すべき事項として大多数の御意見のまとまるところを中間報告の形で法制審議会総会に報告することに決定いたしまして、この方針に基づきまして、部会長から中間報告に盛り込むべき事項に関する試案が提示されました。当面この試案を検討対象として中間報告の内容を決定すべく審議が行われている状況でございます。  立法に携わっておりますわれわれといたしましては、この中間報告が行われまして、これを受けて法制審議会から答申がなされましたときには、その趣旨を十分に尊重いたしまして、できる限り速やかに改正の実現を図りたいと考えておるわけでございます。
  308. 受田新吉

    受田委員 現行少年法では、十八歳から二十歳の間の少年に対して死刑の刑罰を与えることができる規定がありましたね。
  309. 村上尚文

    ○村上説明員 犯罪を行いましたときが十八歳未満の少年に対しましては死刑の言い渡しはできない、かようになっておりますが、それ以外の少年に対しましては死刑の言い渡しは可能でございます。
  310. 受田新吉

    受田委員 つまり十八歳を超えて二十歳までは死刑を執行することができる、死刑を言い渡すことができる、そこに一つの問題があるわけなんです。私たちとしては、女子とかあるいは少年の二十歳未満とか、これはたとえ民法の成年齢が十八歳になっても、そうした経過措置はとっていかなければならぬと思うのです。二十歳までの分を特別配慮をする。だから、未成年者の待遇ということにおいて少年法あるいは民法というものが大体一貫できるように、これは民法で十八歳にしたって決して不都合は起こるわけじゃない。つまり、二十歳までの経過的な手続を別に設ければいいわけですからね。そうすると、一般的には、社会では一般の法律が大抵十八歳で少年期を終わっておるのです。民法と恩給法だけが二十歳が残っているわけなんです。成年齢の基準を十八としてぴしっとしていい時期である。そして二十歳までは死刑を宣告しないというような制度など設けるべきである。女子も、か弱い女性を、中には悪らつな者もおるが、大体女子は弱いもんですから、やはり死刑は女子は少し緩和するとかいうことで、何かひとつ残虐刑の緩和を図るべきだ、かように思います。  それからもう一つ、少年院というこの言葉も、院という言葉を使うと何やら類推させる危険があるから、いま全国の少年院の中に何々学園などと称して上品な言葉を使っておるところがあるから、少年院ということにしないで、たとえば山口県で言うならば、平生にある新光少年院などは平生学園とかいうふうにしてやれば、対外的にもいい印象を与えるから、少年院、少年という名称はひとつ考えるべきじゃないか。中にはもう変えたところがあるのですね。いかがでしょう。
  311. 村上尚文

    ○村上説明員 少年院の問題は矯正局の御所管でございますので、私の方ではちょっと答弁しかねるわけでございますが、先生の御趣旨は十分に私も理解できるところでございます。
  312. 受田新吉

    受田委員 担当局でないので何ですが、それじゃ最後に、せっかくいい機会でございますので、ちょっとこの間の白鳥警部殺害事件についてお尋ねしたいのです。最後にもう一つ、入国管理問題があるのです。  白鳥警部殺害事件、北海道の道警の警備部は、昭和二十七年の白鳥警部殺害事件の直後に中国へなぞの密出国をして、ほとぼりのさめた最近に至ってひそかに帰国した同事件の容疑者を書類送検したという新聞報道を見たのです。このことがもし事実とすれば、同事件が持つあの陰惨な記録は、いまもって継続中であるということを示すものですね。国民としても重大な関心を寄せざるを得ない問題であります。そこで具体的な事実経過と現在の捜査状況について御説明を願いたい。
  313. 石山陽

    ○石山説明員 ただいま先生お話しの白鳥事件と申しますのは、昭和二十七年の一月二十一日夜に、当時札幌市警察署の警備課長をいたしておりました白鳥一雄警部が自転車で帰宅の途中、背後から何者かに拳銃で撃たれて殺されたという事件でございます。この件につきましては、共犯者といたしまして、当時の日共札幌委員長でありました村上国治なる者が犯人であるということになりまして、一審、二審、三審と公判審理が進みまして、三十八年に有罪裁判が確定いたしました。それに対します共犯者の一部の者が当時中国に逃亡しておったということがわかりましたので、最近それに関します共犯者の数名を目下札幌地検において捜査中であるという状況でございます。  その捜査の状況を簡単に申し上げますと、大体新聞報道等に出ております主犯と申しますか、現在の捜査の中心になっている者を事例的に申し上げますと、植野という者がおりまして、この人につきましては現在三つの被疑事実、すなわち昭和二十六年の十二月中ごろから二十七年の二月初めごろまでの間に、先ほど申し上げました当時の村上委員長らと共謀して米国製の拳銃一丁を不法に所持しておったという事実。二番目といたしまして、二十七年の一月上旬ごろから中旬ごろまでの間に、同じく村上委員長らと共謀いたしまして、人の財産、身体を害する目的で爆発物三個を所持しておったという爆発物取締罰則違反の被疑事実。三番目に、昭和三十年ごろに中国に密出国をしたという事実。以上の三点につきまして、現在札幌地検が、ただいま申しましたように捜査中であるという経過でございます。
  314. 受田新吉

    受田委員 海外逃亡の期間を時効停止するという態度でおるわけですか。
  315. 石山陽

    ○石山説明員 先生御案内のとおり、刑事訴訟法によりまして、犯人が国外に逃げ隠れている間は公訴の時効は進行しないという規定がございますので、昭和三十年ごろ出国をいたしまして昭和五十年ごろ帰国したという間は、時効が進行しないという解釈をとっております。
  316. 受田新吉

    受田委員 その密出国と密入国との明確な時点がはっきりしておるのですか。
  317. 石山陽

    ○石山説明員 ただいままでの捜査の経過で簡単に申し上げますと、まだ全部捜査終了したわけでございませんので、ごく概要的に申し上げることをお許しいただきたいと思います。  大体昭和三十年前後に出国いたしまして、昭和五十年ごろに帰ってきたということでございますが、帰国の時期は一応五十年の五月初めごろというふうに考えております。密出国の時期は余り正確ではございません。
  318. 受田新吉

    受田委員 入国管理局は、そうしたいまの事件に関する密出国また帰国というようなものをつかんでおるのですか。
  319. 竹村照雄

    ○竹村説明員 現在刑事手続によって調査中でございますから、そういった点が問題になりますけれども、われわれ自身が現実に扱うのは外国人でございます。これは日本人でございますから、日本人自体の出入国管理令違反につきましては刑罰法令によって処置する、こういうことになります。
  320. 受田新吉

    受田委員 この事件に対してもうちょっとだけ、一口で答えていただきたいと思うのですが、当時の日本共産党札幌軍事委員会というのは一体どういうような性格を持っておったものか、それが白鳥警部殺害事件と何のかかわりがあったのかという点をちょっとお答え願いたい。
  321. 石山陽

    ○石山説明員 日本共産党軍事委員会と申しますのは、私どもがただいままでの資料で承知しておりますところによりますと、昭和二十年の十月ごろに日本共産党の第五回全国協議会、略称五全協という大会がございました際に、革命間近しという見地から武装方針が指示されました。それに基づきまして各地に軍事組織がつくられたという事実がございます。それに即応しまして設けられました委員会の中枢的な機関であるというふうに理解いたしております。
  322. 受田新吉

    受田委員 これは国民が一つの疑惑を持っているわけですから、あいまいな処理の仕方でなくして、きちっとした処理をして国民の疑惑を一掃してほしいと要望しておきます。  最後に、今回の法律改正案を見ますと、訟務局をつくるために入国管理局の次長さんのポストをなくするという提案です。ここに行政機構のいじり方に、はなはだ理解に苦しむ点があるのですが、入国管理局の仕事は、先般も入管白書が出されて、政府に対する直言、裁判批判などを行って大変注目されておるわけです。こういう一般国民に関係がないように見えて実は非常に重大な問題をはらんだ役所がある。歴代の局長は外交官の大使経験者である。また次長も指定職として検事出身の優秀な人が歴代続いておるという特別のポストです。それをもぎ取って局長のポストへ充てるという、いかにも機械的な感じがするわけでございます。この行政のいじり方について、また入国管理局の従来の次長制、この厄介な出入国管理を担当して長い間出入国管理法をつくろうとしているような行きがかりのあるものを、指定職の次長までもぎ取って訟務局をつくるというような行き方にいささか疑義を感ずる。訟務局の仕事が大変ふえたということはわかる。しからば何かほかによい方法はなかったかということでございます。
  323. 稻葉修

    ○稻葉国務大臣 国を被告とするあるいは原告とする、そういう訴訟がたくさんになり、複雑になり、官房の一部では、他の行政省庁との訴訟進行に関する協議などにも、格が一つ下なものですから不便があるというようなこともございますし、まあ人員も次第に充実することを前提として、とにかく部を局に復活したいということが、四十三年以来の事件の趨勢にかんがみて近年強く要望されてきたわけです。私も就任してもっともだと思いまして、何とかしなければいかぬ、就任早々ではありましたけれども、相当強い決意を持って大蔵当局、行政管理庁当局に談判をいたしましたが、ついに五十年度予算編成のときにはうまくいきませんで、来年は最優先的に考えるということで、五十一年度予算編成のときにこれができた。そのときに、御承知のように予算の最終段階におきましては大臣折衝、大蔵大臣と私の折衝では決裂、承服できない、大蔵大臣も認めるわけにいかない、こういうことになりましたものですから、党三役と政府の折衝ということになりまして、去年等のいきさつもあるから、それから事情もよくわかっているからこれは認めようということになった。そして行政管理庁長官もそれに承服することに最終的にはなったわけです。なるについてはスクラップ・アンド・ビルドということを言って、そんなばかなことを言ったって、法務省になんかスクラップするところなんかないよと私は言った。まあそう言わぬで、ひとつここは法務省事務当局と行政管理庁の事務当局で詰めることにして、ここはまあ、局は設置するというんだから法務大臣も余りがんこなことを言わないで、そういう事務折衝に任したらどうですか、こう言われた。事務折衝でうまくやってくれるかなと思って期待して事務折衝を待っておったところが、まさか竹村君のところに行くとは思わなかったもので、えらいことになったなとこれは思ったわけです。しかし、もう折衝もそうなって、予算の最終段階ですし、これをやらなければ閣議が開かれませんし、そういう状況でまことにざんきにたえません、申しわけないと思うております。  そういう事情だけを申し上げて、こんなことは答弁になりませんけれども先生指摘の点をもっともだと思えばこそ、こういうことを泣き事みたいに申し上げて、はなはだ見苦しいことですけれども御勘弁願いたいと思うのです。
  324. 受田新吉

    受田委員 稻葉先生にしては大変お弱い御発言がいまあったわけでございますが、ただ一つ私いま疑点が出たのです。財政的にはこの次長のポストを外して局長にすることによって、どれだけ予算がふえるわけですか。予算折衝で大変苦労されたということですが、どれだけ予算がふえたかということでございます。事務当局で結構です。
  325. 藤島昭

    ○藤島政府委員 お答えいたしますが、人件費の関係は、両方とも、官房の訟務部長が指定職でありましたのが局長で、同じように指定職になり、入管の次長は指定職でございましたが、その指定職がなくなったということで、人件費的にはほとんど関係がないわけでございます。
  326. 稻葉修

    ○稻葉国務大臣 それで、予算がふえるわけじゃないんじゃないか、そうしてこの訟務事務が格が上がり、士気が上がって一生懸命にやれば、負けてしょっちゅう金を取られるのが防げるじゃないか、こういうことも言いました。国の予算の支出を減らせ、しかも局にすることによって予算をよこせというわけじゃないんだから、こんなのがどうして大蔵大臣認められないのだ。こういうのが私の理屈なんですけれども、まあしかし、結果がこういうふうなことになって非常に事志と違ったような、だまされたとは言わぬけれども、そういうようなことになっておるわけですから、これまた法務大臣であるとなしとにかかわらず、政治家である以上は、こういう欠陥を粘り強くひとつ今度はもとへ戻す、そうして充実するというところへ努力したいと思っているのがいまの心境でございます。
  327. 受田新吉

    受田委員 私また、財政的に大変苦労されたとおっしゃるから、ずいぶん予算でもよけい取ったかと思ったら、財政的には何もプラスになってはおらぬということです。そうすると、財政的貢献はゼロ。ただポストを異動したというだけ。指定職と指定職です。入国管理局は従来次長が充て検でいらっしゃる。したがって検事の俸給をもらうから、局長よりも月給が高い人が——竹村さんどうなっておりますか。これは局長が大分先輩だから、この場合は局長の方が高いですか。どうですか、いま。あなたの方が高い。影井さんの方が高いようです。ところが、充て検をもってする職種でございますから、次長の方が高いことがある。どっちも指定職である。大物が二つそろっておるわけである。  そういう意味で、法務省には非常にいろいろな種類の職種があって、大使経験者もいらっしゃれば、検事出身、また判事の人が検事にかわってこられる人もある。だから私、十数年前に官房長ができるとき、いま各省は全部官房長ができたが、最後に文部省と法務省しか官房長を置かぬところはないんだが、法務省は官房長を置かれてこの雑多な職種をまとめる役が要るんじゃないかと言うたら、いや要りません、法務省には官房長がない方がいいのですという答弁だったのです。大変な役所だったのですよ。私が質問したからよく覚えている。そうしたら、いまになってみるとやはり官房長があった方がいいということになっておる。そんなふうに法務省というのは非常におかしい役所なんですよ。そういう調子で長い歴史を持っておる。一番最後に法務省が官房長をもらったのです。それも要らぬと言ったのです。行管の方からやろうと言っても要らぬと言うた時代があった。それよりはいまの官房長よりもほかのポストが残っておる方がいいから、官房長などというのは遊離したポストだから、ちゃんとしたポストに局長がおる方がいい。官房長などは、大臣が幾らでもやれれば事務次官がぴしっと調整できるという役所だったのです。  だからいま大臣も、竹村君のところによもやとばっちりがいこうとは思わなかったという御答弁がございました。私も、竹村さんも影井さんもよく存じ上げておる。あなたの高級部下はそれぞれりっぱな人が勢ぞろいしておられる、これは私が確認しますよ。確認しますが、あなたとしては、それは竹村さんだって次のポストは幾らでも前途洋々ですから、別に大臣が心配されなくとも、あなたがそのポストについては十分力を入れてあげていけばいいわけですが、何か将棋のこまをちょこちょこと動かすような行政機構の改革が行われている。人数の一番少ない役所と言えば、村岡さんのところの人権擁護局というのは二課で二十人しかおらぬ役所です。人権擁護という問題が非常に大事な憲法上の問題でなければ、そうすれば人権擁護部にして官房に置けばいいわけだ。行政機構をいじくろうと思えばいろいろの手がある。  そういうことがいろいろあるのです。あるが、結果としていま法案が出ておるし、こう夜遅くまで皆さんにおつき合いをしていただいておるし、私も長い間行政機構をいじくってきた野党の議員でありますが、野党であっても行政機構のことに非常に心配があるのです。つまりその職務に、重要ポストにとまっている人たちが精励できるような環境づくりをしてあげなければいけない。事務の能率が上がらなければいけない。入国管理局が、従来外交官出身と検事出身の二人が名コンビで、検察関係の出身が大事な取り締まりをやる、それから大使出身が外交的な仕事をやる、いい名コンビできた歴史があるのです。その歴史が壊されるのです。本日をもって終わりということになるのですよ。だから、そう簡単にポストを接いだりもいだりするものではないのです。何かいい方法がなかったかだ。  もう一つは、入国管理局という名前も問題がある。出入国管理局ですよ、出す方もあるんだから。そういうことも法務省に何回か私が質問しました。入国管理局でなくして出入国管理局とせよということでございましたが、これも一向におみこしが上がらない。これは大臣、いいチャンスだから、入国管理局を、出もあるんだから出入国管理局、入国管理令でなく出入国管理令、その数量においては多少バランスが崩れておっても、しかし出と入との扱いをするんだから、出入国管理局とした方がいいとお考えじゃないですか。
  328. 稻葉修

    ○稻葉国務大臣 これは、こちらの顔を見ないで私の感情を言えば、まことにそのとおりだと思います。そして、事務がそういうことになっているのですから、名は体をあらわすし、きちんとした方がいいと思う。言葉の乱れは世の乱れという。出入国管理をするのに入国管理局なんて言うているから次長が削減されたりろくなことはない。言葉を正していかなければならぬというふうに思います。ごもっともだと思います。
  329. 受田新吉

    受田委員 大臣、長い間おつき合いをさしていただいて非常に気持ちのいいお答えです。そういうお答え、そのとおりです。名は体をあらわしますよ。すかっと次の機会に名称変更の事務当局への命令を出していただきたい。指揮権の発動をしていただきたい。  最後に、入管白書をちょっと伺いたいのです。この入管白書、これを見ると、在日韓国人、朝鮮人、台湾人が大いに苦労をしておりまして、それぞれの地位も高まってきておるという、また永住権、送還などについて、法的地位の安定を図るべきだというようないい提案が出ておるわけです。この白書について、国民に言いたいことをちょっと局長さん言ってください。ポイントをひとつ。
  330. 影井梅夫

    ○影井政府委員 入国管理局の白書は、過去四年ないし五年に一度ずつ出しておりまして、目的はいずれも同じでございますけれども、今回の白書をつくるに当たりまして、まず、われわれのやっております仕事に関連する事実、これを従来に比べましてもう少し多く国民に理解していただきたい。それから、事実をお示しするのみでなく、われわれ行政に携わっておりまして、ふだん問題意識としているところ、これは私どもの日常の実務を通じての問題意識でございますので、あるいは間違っているかもしれないけれども一つ問題意識というものを率直に出しまして御理解いただこうというのが、今回、白書作成に当たりましての方針でございました。  その中に、当面している問題といたしまして掲げましたのは、現在の在留資格制度、これはもう御高承のとおり、昭和二十六年の当時の政令、その後いわゆるポツ勅ということで法律の効果は持っておりますが、この時代の在留資格制度というものは今日の事態に即応しなくなっているので、これを考え直す必要があるのではないか。  第二点は、ただいまお触れになりました在日韓国・朝鮮人、それから台湾人の処遇。これも平和条約の効力発生時に、在日韓国・朝鮮人または台湾人、これは戦前から引き続いて日本に在留している人々についてでございますが、これらの人々の法的地位というものは、平和条約の効力発生時にはいずれ法律を制定して、そこで確定する、それまで当分の間という趣旨規定が置かれておりまして、それが今日に及んでおる。これに該当いたします在日朝鮮人なり台湾人の方から見れば、実際の処遇につきましては、私ども不便のないようにしているつもりでございますけれども、しかしながら、法的な基礎がはっきりしないという意味では不安を感じておられるだろう、また、それはわれわれ除去しなければならぬだろうということでこの問題を掲げたわけであります。(受田委員「要点だけ」と呼ぶ)  あとは、現行出入国管理令・外国人登録法につきまして改正を要するであろうということ。それから退去強制を受けました者の送還に関連する問題。それから行政訴訟に関連する問題。最後に定員とか施設をさらに充実したい。こういった点を掲げた次第でございます。
  331. 受田新吉

    受田委員 いまの当面する諸問題で一つ、私、昨年指摘したことがあるのですが、韓国の原爆被爆者、これが日本で被爆した原爆手帳を持っている。そして日本で引き受けの病院がある。引き受け人があるというときは、その入国について最高の配慮をするという方針を承ったんですが、これは間違いないですね。
  332. 影井梅夫

    ○影井政府委員 昨年の委員会で申し上げましたところに従いまして、すでに入国を始めている例がございます。
  333. 受田新吉

    受田委員 山口県の防府で神徳という病院がある。そこには原爆の担当医師がおる。毎月三人ずつ引き受けようという計画的な治療を始めておるのに、法務省へお願いしてあるのが、入国に対する承認を順調にやっていただかないためにとぎれてくると、病院でも計画的な治療、毎月三人ずつ引き受けるという治療ができないという心配があるということでしたので、そうした人道的な問題については、この入国の扱いについて優先して取り扱うように要望しておきます。それで質問を終わることにいたします。法務大臣、どうもありがとうございました。  訟務局ができるわけですね。最近私自身が関与した裁判事件で、訟務部が国の責任でやった訴訟です。広島県の大竹の栗谷事件。これは戦後、現地の所有者が一時的に取り上げられた土地を返還せよという請求をした裁判でございまするが、栗谷側が勝ったわけです。地元の皆さんが広島の地方裁判所で勝った。国が負けたんです。訟務局が今度できてきたら、こういうものを国の圧力で、地方裁判所が判決を下したことまでも、後からまた控訴、上告によって厳しく争うというようなことになったのでは、本当は円満な解決にこれはならぬと思う。こういう問題は話し合いで解決するという方針をもって進むべきであるのですね。それを裁判で争って、さらに長い年月をかけて、一方では現場の人々というものは年を取って生命が短い、そういう人々が控訴、上告で争うというのは大変です。一審の判決に国が服するべきであったと思うんです。そういう事件があるのです。国が負けたときは潔くかぶとを脱ぐのが、これはやはり法務当局じゃないのかね。これはむずかしいことを大臣にいまお答え願うと、後から大変厳しいことになるから、だからそういうことを含めて、訟務局になるとますます国家の強権を発動するというようなことにならぬように、個々の争訟の事件に対しては、きわめて国民を愛する側でやってもらいたいと思うのです。よろしゅうございますね。  以上をもって、質問を終わります。
  334. 稻葉修

    ○稻葉国務大臣 ただいまの御発言については全く同感でございまして、先ほどの鬼木さんの質問にも、それから上原さんの質問のときにも、私こういうことを申し上げたんです。国が何でもかんでも勝ちたい一心で、部を局にするんじゃありません。負けるべきは負けるべきものだとさえ思っているのです。そして国民に迷惑をかけない、そういう本当の訴訟を担当するために権威を高めたい、こういう気持ちから、これもあって、こうしたいのだということを申し上げたんですが、同じような御質問でございますので、ごもっともでございまして、重々その点を気をつけつつ、今後の訴訟進行に当たりたいと思っております。  きょうは受田先生から大変貴重な御意見をいろいろ拝聴しました。私、勉強になりました。飯も食わされなかった不利益よりも、あなたのお話を聞いたことがはるかに公益に合致しておりますことを申し上げ、どうぞひとつ御健康に御留意をお願いします。
  335. 受田新吉

    受田委員 どうもありがとうございました。御苦労さんでした。
  336. 木野晴夫

    木野委員長代理 次回は、来る十七日月曜日、午後一時理事会、一時三十分より委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。     午後九時十分散会      ————◇—————