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1976-05-11 第77回国会 衆議院 内閣委員会 第6号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十一年五月十一日(火曜日)     午前十時三十分開議  出席委員    委員長代理 理事 木野 晴夫君    理事 阿部 喜元君 理事 竹中 修一君    理事 藤尾 正行君 理事 松本 十郎君    理事 上原 康助君 理事 大出  俊君    理事 中路 雅弘君       有田 喜一君    大石 千八君      小宮山重四郎君    旗野 進一君       林  大幹君    三塚  博君       木原  実君    和田 貞夫君       木下 元二君    瀬長亀次郎君       鬼木 勝利君    鈴切 康雄君       受田 新吉君  出席国務大臣         外 務 大 臣 宮澤 喜一君         国 務 大 臣         (総理府総務長         官)         (沖繩開発庁長         官)      植木 光教君  出席政府委員         内閣法制局第二         部長      味村  治君         人事院総裁   藤井 貞夫君         人事院事務総局         管理局長    長橋  進君         人事院事務総局         給与局長    茨木  廣君         人事院事務総局         職員局長    中村  博君         内閣総理大臣官         房総務審議官  島村 史郎君         総理府人事局長 秋富 公正君         防衛庁長官官房         長       玉木 清司君         防衛庁防衛局長 丸山  昂君         防衛施設庁長官 斎藤 一郎君         防衛施設庁施設         部長      銅崎 富司君         沖繩開発庁総務         局長      亀谷 礼次君         沖繩開発庁振興         局長      井上 幸夫君         外務大臣官房長 松永 信雄君         外務省アジア局         長       中江 要介君         外務省アメリカ         局長      山崎 敏夫君         外務省欧亜局長 橘  正忠君         外務省条約局長 中島敏次郎君  委員外出席者         沖繩開発庁総務         局企画課長   柳川 成顕君         国土庁土地局国         土調査課長   高田 徳博君         大蔵省理財局国         有財産第二課長 吉田 哲朗君         厚生省援護局庶         務課長     柴  義康君         厚生省援護局調         査課長     石田 武雄君         労働省労働基準         局監督課長   倉橋 義定君         建設省道路局路         政課長     海谷 基治君         消防庁危険物規         制課長     永瀬  章君         消防庁防災課長 永井 浤輔君         内閣委員会調査         室長      長倉 司郎君     ————————————— 委員の異動 五月七日  辞任         補欠選任   受田 新吉君     安里積千代君 同日  辞任         補欠選任   安里積千代君     受田 新吉君     ————————————— 五月十日  天皇陛下御在位満五十年奉祝国民大会開催に関  する請願外七件(八田貞義紹介)(第四一三  八号)  旧治安維持法等による犠牲者補償に関する請  願(稲葉誠一紹介)(第四一六四号) は本委員会に付託された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  国家公務員災害補償法等の一部を改正する法律  案(内閣提出第五三号)  在外公館の名称及び位置並びに在外公館勤務  する外務公務員給与に関する法律の一部を改  正する法律案内閣提出第七号)      ————◇—————
  2. 木野晴夫

    木野委員長代理 これより会議を開きます。  しばらくの期間委員長が御出席になれませんので、委員長の御指名により、委員長が御出席になられますまで、私が委員長の職務を行います。  国家公務員災害補償法等の一部を改正する法律案を議題といたします。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。上原康助君。
  3. 上原康助

    上原委員 まず最初に、法案について一、二点お伺いをしておきたいと思うのです。すでに、この公務員災害補償法案につきましては各委員の方からもお尋ねがありましたので、ごく簡単にお尋ねをさせていただきたいのです。  今回のこの改正案を見てみますと、傷病補償年金制度を取り入れたこと、あるいは身体障害者に対する給付改善、また他の年金との調整方法改善面においてもかなり配慮をされたことは評価できるのではないかという気がいたします。しかし反面、傷病補償年金となる廃疾等級の面における第一級から第三級までの障害補償年金との関係において、やはりこれも第一級から第三級程度の傷病補償を予定しておられるのか、そういう点がちょっと不明でありますので明らかにしていただきたいと思うのです。  さらに、障害補償も第一級から第七級までが年金となるわけですが、傷病補償年金制度についても休業補償の六〇%以上の補償を四級以下について拡大していくというようなことなども将来の改正として考えておられるのかどうか、そういったところについていま少し明らかにしていただきたいと思います。
  4. 中村博

    中村(博)政府委員 第一点の傷病補償年金受給者の決め方につきましては、御承知のように、まだ障害が治っていないわけでございます。療養給付を受けつつあるさなかでございますけれども、やはりその身体能力の全部喪失という点に着目いたしまして、保護の厚きを図ろうという趣旨に出たものでございます。したがいまして、身体能力の全損である三級相当以上の方を対象といたすわけでございます。したがって、もしそのような方がそのままこれ以上の療養給付を加えても症状がよくならない、いわゆる症状固定になりまして治った場合には、多分三級以上の障害補償年金支給される、こういうことに相なるわけでございます。  それから、第二点の御質問趣旨がちょっとよくわかりかねるのでございますけれども傷病補償年金を受けられる方は休業補償にかえて受けるわけでございます。その方が、そういった疾病の状態に着目いたしまして、より保護の十全を期し得るという立場に立ってございますので、そのような考え方をとらしていただく、かように相なっておるわけでございます。  その他の休業補償を受けておられる方々につきましては、現在給与を受けられない場合には、先般も御説明申し上げましたように、福祉施設として二〇%の上積みをいたしております。そういったことのあり方については、今後いろいろな検討は進めてまいりたいと考えております。
  5. 上原康助

    上原委員 それと、災害補償制度の抜本的な検討も必要じゃないかという気がいたすわけです。これもせんだっていろいろお尋ねがあったと思うのですが、公務員災害の場合は法定給付が最高になっているわけですね。しかし、民間企業における労災基準というのは、もちろん法定給付基準はあるわけですが、そのほかにいろいろ企業側からの見舞い金的なものも給付をされている。したがって、そのバランスがとれていないんじゃないかという公務員関係者の御不満もあると思うのです。そういう面からしますと、この法定給付外給付に見合うものをどう充てるかということも当然考えていかなければいかない点だと思うのですね。そういう点はどのようにお考えになっておられるのかという点が一つですね。  さらに、労災では、いわゆる補償については本人平均給与額に対して一定の日数を掛けた補償を行っている。したがって、たとえば年齢の行った方で平均給与が高い方なら高く補償ができるということになるわけですね。しかし、若い方が災害に遭って、平均給与も安い、しかもその生活する期間は長いわけです。そういう面については完全補償にはなっていないわけです。物的補償というか生活保障ということにはならない。そういうところも抜本的な改正面として当然考えていかなければいかない点だと思うのです。ここらの点はどうお考えなのか、将来この点を改正をしていくお考えなのかどうか、お答えをいただきたいと思います。
  6. 中村博

    中村(博)政府委員 御質問の第一点の法定外給付の問題でございます。確かに、おっしゃいますように法定主義給付をいたしてございますから、民間企業労働協約等によっていわゆる法定外給付として補償あるいは見舞い金弔慰金等の積み上げをするという構造にはなっていないということは事実でございます。しかし、そのような民間との乖離が公務員なるがゆえに許されるわけではございません。したがって、使用者としての国の責任において、そのような民間実情も考慮しながら、いままでに御遺族に対して、法に定めましたもの以外に福祉施設として百万円を差し上げるという特別援護金という制度をつくってございます。またこの四月一日からは、障害を残された方につきまして、三級の該当の方のところで百万円を障害特別援護金として差し上げるというようなこと。それから奨学援護金を初めとするいろいろな福祉施設を拡充強化いたしまして、民間法定外給付との差を使用者としての国においてできるだけ埋めていく、こういう施策を逐年講じてまいっておるのでございます。  私ども調査によりますと、百人以上の企業でそういった特別の措置をいたしてございますのが大体四分の三前後でございます。四分の一はまだ実施していない。それ以下の企業については、事情はつまびらかではございませんけれども、恐らくやっていらっしゃるところは少ないだろう。そういうな実情も今後の一つ検討をする場合の大きな課題であるとは思いますけれども、私どもとしましては、福祉がよりよく向上されるということは大変結構なことであると存じまして、その専門の方々にもお集まりいただきまして、そういった、いわば法定外給付、正確には福祉施設はいかがあるべきかということについて現在だんだん御検討願っておる段階でございますので、その御結論等をいただきました上は、また可能なものから逐次拡大していこう、そういう意欲を持っておるものでございます。  それから第二点の若年者遺族補償についての御指摘でございますけれども、確かに現在の災害補償体系というものは、その亡くなられた方あるいは災害を受けられた方の稼得能力喪失を補てんという基本構造に相なってございます。したがいまして、その方がお亡くなりになった場合には、遺族方々が受けらるべき被扶養利益補償する、こういうような考え方でございまして、したがいまして、その場合に若年の方であれば御遺族も御両親もお若いわけでございまして、御遺族の被扶養利益の代償というものをどの程度考えるかという大変むずかしい問題はございますけれども、いま申し上げましたような点を、若年者の方に限っていろいろの措置補償体系の中でいたしますことは、また体系全般バランスの問題にも相かかわるかと存じます。したがいまして、いま申し上げましたような、たとえば御遺族の方に対します特別援護金支給というような、あるいは奨学援護金支給というようなかっこうで、できるだけそのような場合にお困りになっていらっしゃる点をカバーしていこうという態度でこれに対処いたしておるわけでございます。
  7. 上原康助

    上原委員 いまお答えがあったのですが、そういうことについてもぜひ御検討いただいて、ひとつより内容を充実させる方向で今後とも御努力をいただきたいと思うのです。  そこで、時間の関係もありますので、ちょっと労働省お尋ねしておきたいのですが、この法案と直接は関係ありませんが、労災ですので、昨年の八月に沖縄米軍基地でいわゆる六価クロム流出問題が起きて、現に働いている基地労働者あるいは離職した人々の健康が害されているのじゃないかということが問題になりまして、その後、第一次の健康診断なり、あるいは政府としてのこの問題への対策も進めておるとは聞いているのですが、昨年八月に起きて、たしか十月ごろから健康診断実施をするということじゃなかったかと思うのですが、私も労働大臣にもお会いをして、うやむやにはしないということを明らかにしてきたにもかかわらず、今日まで、健康診断を受けた方方にしても、どのような結果になっているのか、またどういうふうな内容であったのか、つまびらかにされていないわけですね。これではうやむやにされたようなことにしかなっていませんので、この問題について一体政府はどういうふうに対処していこうとしておるのか、ぜひ明確にしておいていただきたいと思うのです。
  8. 倉橋義定

    倉橋説明員 ただいま先生の御指摘がありました沖縄におきます牧港補給基地から六価クロム廃液が流出したことに伴いまして、同基地に働く従業員、さらには過去に同基地に働いた労働者方々の健康問題につきまして危惧される面がありますので、これについて健康診断実施するようにという強い御要望がございました。  これを受けまして、在職従業員につきましては、使用者であります施設庁及び沖縄県が中心になりまして、すでに昨年十月までに二百三十一名の健康診断実施をいたしております。  退職者につきましては、現在健康診断実施義務となるべき主体につきまして必ずしも明白でございませんが、非常に社会的な問題となりましたことでございまして、臨時緊急の措置といたしまして、労働省が国の費用をもちまして健康診断実施することに決定いたしたわけでございます。  元従業員方々につきましては、その把握等につきまして関係労働組合等の御協力をいろいろいただきまして、名簿を作成いたしまして、昨年末に一部の者の健康診断実施して、ことしに入りまして二月七日までに百八十三名の離職者につきましての健康診断を完了しているわけでございます。なお、名簿に登載されて健診の受診漏れの方もありましたので、それにつきましては、それ以後御本人に対しまして連絡をいたしまして、本人受診意思を確かめた上で、二月の七日に健診を一応終了したことにいたしております。  これらの百八十三名の受診者につきまして、地元医師三名によります判定医師団と申しますかを結成いたしまして、その後、健診の項目に従いまして、業務上の疾病有無等検討してきたわけでございます。たまたま健康診断実施いたしましたのが冬場でございましたので、かぜ等を引いた方が非常に多かったわけでございます。したがいまして、三名の方につきましては一部鼻炎等症状が見られまして、これにつきまして再度健診をすることがいいのではないかという医師判断から、ただいまの三名の方につきましてそれ以後健診を実施することにいたしたわけでございますが、一名の方につきましてはすでに就職をされておるので辞退いたしまして、二名の方につきましてその後の健診を実施いたしておる、こういうことで、現在のところ一応判断の材料が整ってきたわけでございますが、近く判定医師団によりまして最終的な結論が出るというふうに県からの報告を受けております。  なお、国が実施しております現職者につきましては、現地におきましては地元関係機関労働基準局との間の連絡はとっておりますが、まだ労働省に対しましての正式な報告はございません。  以上でございます。
  9. 上原康助

    上原委員 これはいつまでに結論を出すのですか。
  10. 倉橋義定

    倉橋説明員 労働省といたしましては、離職者受診につきましては、医師判定結果が出次第、直ちに発表といいますか、御本人に御連絡申し上げたいと思います。
  11. 上原康助

    上原委員 在職者については、後で時間があれば施設庁との関連でお尋ねしますが、当時この問題が社会的に大きく表面化した段階で、もちろん課長にもお会いしていろいろ要望しました。少なくとも離職者を含めて体に異常を訴えている人については健康診断をするということだったと思うのです。したがって、大体その異常を訴えて健康診断を受けたいという人は、いま御報告があった百八十三人に入っていると思うのですが、健康診断は受けたけれども内容については一切本人には通知をされていないという苦情が非常に強いわけです。しかもその人々は相当病状が一もちろんこの因果関係については十分わかりませんが、その疑いが強いということで本人たちは心配をしている。ですからそういう方々を物色して早急に手当てをしていただかないと、ただ形式的に健康診断をやりましたということでは何にもならぬわけですね。そのことは早急に実施して対策を立てますね。
  12. 倉橋義定

    倉橋説明員 健康診断の結果につきまして、御本人に異常の有無にかかわらず連絡申し上げたいと思います。
  13. 上原康助

    上原委員 ですからそのことは、せんだって現地でも基準局長に会ってもそういうお答えがあったわけです。私がお会いしてからたしかすでに約一月過ぎているのです。去年の十月ですよ。もう五月です。七、八ヵ月になっていますよ。これでは余りスローモーじゃないですか。やりますとは言うのですが、いつまでにやるかということをぜひ明確にしておいていただきたいと思う。
  14. 倉橋義定

    倉橋説明員 ただいま申しましたように、三名の再度健診がございました結果は若干おくれておりますが、早急に医師判定をもらいまして、本人に御連絡申し上げたいと思います。
  15. 上原康助

    上原委員 三名しか二次健診をやる人はなかったということですか、いまの答弁からいたしますと。
  16. 倉橋義定

    倉橋説明員 詳細につきましては現地から報告が来ておりませんが、健診の結果、個々の、もちろんかぜをひいたとかそういうような症状につきましてはございました。そういうものにつきましては若干ございましたが、いわゆる有機溶剤、六価クロムに起因する症状というものにつきましては、先ほど申しました三名の鼻に鼻炎なりがあるという者以外が見当たらなかったというふうな報告を非公式に受けております。
  17. 上原康助

    上原委員 その報告書と結果についてはでは後ほど御報告していただけますね。
  18. 倉橋義定

    倉橋説明員 医師の正式な報告を待ちまして、先生の方に御連絡申し上げます。
  19. 上原康助

    上原委員 では早急にこの問題は結論を出すようにしていただきたいと思います。  次に、人事院にちょっとお尋ねしておきたいのです。以前にも私、この問題を取り上げたんですが、いわゆる沖縄に所在するところの政府機関で働いている職員への亜熱帯手当といいますか、酷暑手当の問題についてお尋ねをしてまいりましたし、人事院としても検討を進めていくということをたしか二度ばかり総裁初め局長などの御答弁があったと記憶しております。この問題については現地の各出先機関もそれぞれ協議を持って、たしか四月二十八日付で要望書も出されているんじゃないかという気がいたします。そこで、いま給与調査どもやっておられるようですし、次の人事院勧告もどの時点になるかわかりませんが、恐らく八月の前段階、中旬までには出るんじゃないかという感じがいたします。これだけ関係の、単に職員団体だけじゃなくして、管理職を含めて強い要望が出ている以上は、この問題についてもう何らかの方法で早急にめどを立てなければいかぬじゃないかという感じがしますので、改めてこの点についてのお考えと、そのめどは立っているのかどうか、お答えをいただいておきたいと思います。
  20. 茨木廣

    茨木政府委員 この前御答弁申し上げました以後も引き続き検討はいたしております。民間企業等におきます状況も、一般民間給与調査とまた別に抜き調査もいたしてみておりますけれども、どうも現在まで酷暑でございますとかあるいは隔遠地とか物価とかいろいろな要素を総合いたしましても、特別の手当支給しておるというのはきわめて少ないようでございます。三十五ばかり調査をいたしておりますけれども、そのうち本土の方から行っております十一社は全部含めてあります。そういう調査でございますけれども、その中で特別のものを出しておるというのは五社ございます。そのうち三社は全部こちらの本土から行きましたものについてだけでございます。それからあとの二社は五十一年度いっぱいの暫定的なものが一社、それから夏の期間が一社というきわめて暫定的なものということでございまして、その他のものはそのようなものは全くないような結果になっております。  そんなところの調査一つ吟味のものとしていまやっておるわけでございますが、そういう調査から見ますと、公務員について別途の手当をこの際新設するというような意味の模範になるものはどうもまだ民間には育っていない、こんなふうに考えられます。  それからもう一つ、この前触れました大洋上の島から成っておるというような意味から、隔遠性というようなところから吟味をする必要があるだろうということで、これは沖縄だけでなくて全国的な特地官署についての一斉調査みたいなものをやっておるわけでございます。これは約四千ございます。これはいま三課の方で担当いたしておりますが、三課の中でいま集計をせっかくやっておる最中でございまして、これは山間僻地の場合と、それから特に沿海なり内海の中の島の場合と外洋上の島の場合とで何らかの違う取り扱いをする必要がないかどうかというような感じで実は吟味をさしてみておるわけでございます。そういう点からいった場合に、沖縄というものが外洋上に展開している島であるということから、何らかの現行の特地勤務手当に対する、特殊手当に対する特例を開く必要がないかどうか、こういう吟味をさしておるわけでございます。これはそういうことで、まだいま中間的な集計が漸次まとまりつつあるというような状況でございます。  あと、その他この前出ました気象上の問題になりますと、これはどうも寒冷の問題と酷暑の問題と相打ちになるという要素もございますものですから、その辺で、酷暑であるからすぐどうこうというものを導き出すということは、いままでの吟味ではなかなか困難でないかなという感じがしておるわけでございます。  大体いま申し上げましたような点が現在までその後吟味してまいりましたものでございます。引き続きこれは吟味を続けてまいるつもりでございますけれども、夏の一般勧告までの間にみごとに結論が出るというふうにはいまのところちょっとまだ自信を持てないような状況でございますが、鋭意そういうことで勉強はさせておるつもりでございます。
  21. 上原康助

    上原委員 これは亀谷局長お見えになっていますが、一番最初に言い出したのは沖縄総合事務局長をしておって、向こうで要望が出ておった。証言ではありませんが、その必要性は認めているんじゃないか、ちょっと見解を聞いておきましょう。
  22. 亀谷礼次

    亀谷政府委員 ただいまお尋ねがございましたが、現地におりまして、関係出先機関がたくさんございます。それと同時に、ただいま人事院の方からも御発言がありましたように、やはり民間ベース出先機関といろいろな問題がございまして、われわれといたしましては、関係出先機関を通じまして人事院その他に現地実情を数度にわたりましてるる御報告を申し上げた事実はございます。
  23. 上原康助

    上原委員 どうも、沖縄にいるころとこっちに来られてから大分言い回しが違うようですが、御参考にはなったと思うのですね。ここに長文が出ているのです。出先関係十八ですか十七ですか、これは後ほどまたぜひこの問題については一般勧告までに結論が出せるようにひとつ御努力いただきたいと思うのです。もちろん、それは民間企業調査するということも一応皆さんのお仕事上やらなければいけないと思うのですがね。しかし、ある意味じゃ、それは公務員関係が、公的機関が先行している部門もあるわけですから。じゃ民間が先行しているものはすべて公務員に適用されているかというと、必ずしもそうじゃない。また議論としてはそれはいろいろ出てくるわけですから。そこは局長お答えはありますが、総裁、その点御努力いただいて、おやりになりますね。
  24. 藤井貞夫

    ○藤井(貞)政府委員 いわゆる酷暑手当と申しますか、あるいは亜熱帯手当と申しますか、これの点につきましては、当委員会においても先生から過去数回にわたって御発言がございまして、われわれはわれわれなりに地元のいろいろの要望なりというものも受け取って、内容は承知をいたしております。  ただ、これについてどういう措置を講ずる必要があるのかということになりますと、何分にも給与ということでございますので、これは資料の積み重ねに基づく相当厳密な調査の結果、結論を出してまいりませんと、いろいろなところに影響がくるという問題でございますので、われわれといたしましては、その角度でいろいろな点を調べておる段階でございます。  いま、給与局長からもるる申し上げましたような点の問題点がございますことは事実でありまして、こういう点、やはり資料的にも整備をし、われわれとしてもそれに対してどういう評価をしていくかということの基礎を確立することが大切でございますので、せっかく努力をいたしておるような次第でございます。この点は、この間来私からも申し上げておりますように、決しておざなりで、ただ単に検討を続けていくんだとかいうことだけでもってこれを糊塗してまいるつもりはございません。方向といたしましては、やはり何らかの問題点があることは事実でございますので、そういうものをはっきりと把握した上でどういう措置を講ずることがいいのか、それがまた全体の給与制度のあり方として均衡のとれたものになるのかというようなことを鋭意慎重に検討した上で何らかの解決策を見出してまいらなければならぬという基本的な態度に立っておるのであります。したがいまして、今後もこの点につきましては誠意をもって問題の検討に当たってまいるつもりでございます。  ただ、お話のございましたこの七月あるいは八月の一般勧告の際までにこれの結論が出るかと申しますと、この点は、私も、いまの段階ではそこまでの確信がございません。これは、無責任なことを申して、それが実現をしないということになりますと、そのことの方が重要でございますので、この点、私も慎重に構えておるわけでございますが、事務当局も督励していろいろな点を詳細に調べておりますことは事実でございまして、今後もこの態度はひとつ堅持をしながら、できるだけ早い機会に結論を出す努力は誠意をもっていたしてまいりたい、かように考えております。
  25. 上原康助

    上原委員 いま、人事院総裁の強い御答弁がありましたし、また誠意をもって事務当局にもその旨作業を進めさせていくということですから、私の要望としては、一般勧告が出る段階までには何らかのめどをつけていただきたいということもあわせて御要望申し上げておきたいと思うのです。  次は、これも給与の件なんですが、この問題も何回となく取り上げてきたことなのですが、駐留軍労働者の賃金改定方法のあり方についてなんですがね。七五年の給与改定が実に三月の末日、実は四月一日にしか日米間で合意を見なかったという経緯があります。昨年も二月いっぱいかかっているわけです。このことについては私はかねてから強く要望してきたことなのですが、法律上の雇用主は一応日本政府防衛施設庁長官ということになっているわけです。しかも、駐留軍労働者給与改定についても国家公務員と同時同率実施という一つの慣行といいますか、原則的なものが踏襲されてきているということであるならば、人事院勧告か出て給与関係法案が国会で通過をした時点においては、当然それに準じて駐留軍労務者の給与改定も政府の責任においてなさるべきだということも、また理屈としても論理上も合わないことじゃないわけですね。その点を、特に七五年賃金改定の段階で私も主張してきましたし、ようやく日米間でもそういう話し合いも緒についたというお答えもあったのですが、これに対して防衛施設庁は一体どう考えておられるのか。また、政府全体としてそういう方向で解決をしていく、七六年の給与改定からは改定方法改善していくという立場で作業は進んでおるのかどうか、基本的な姿勢と、現段階における日米間の話し合いの状況等について、明らかにしておいていただきたいと思うのです。
  26. 斎藤一郎

    ○斎藤(一)政府委員 米軍の日本人従業員給与の問題については、いま御指摘がございましたが、私は、基本的には日本政府法律的な雇用主でありながら米軍が経済的負担をするというところにまず問題があると思っておるのでございます。しかも、これは過去においてはさほど大きな障害にはならなかったのでございますが、昨今、御案内のように日本人給与ベースが非常に高くなって、もう米国、ドイツ、その次は日本だということになってまいりましたので、これが米軍の三軍の大変な負担になりつつある。そこで、雇用主は日本政府であるが、この負担を軽減したいという米国の立場となかなか話がうまくいかない、先生御案内のところでございますが。そこで、この二、三年大変問題が深刻になり、昨年度もやっと年度末ぎりぎりに解決したというまことに遺憾な状態でございます。  そこで、私どもはやはり、先ほどお尋ねにございましたように、従前から国家公務員の例に準じていわゆる同率を、しかも国家公務員と同じ時期から適用する、同時同率の原則というのを長い間の慣行としてやってきましたので、その線で国家公務員給与改定が行われるに引き続いて米軍の従業員についても給与改定が行われるよう最も強く望んでおります。そういう立場でおります。  ただ、先ほど申し上げたような大変むずかしい状況になりつつあるので、施設庁現地におる米軍とだけで物がうまく片づくかどうかという点については、私ども基本的な問題をもう少し検討すべきではないかという考え方で物事に臨んでおりまして、七六年度の給与改定からはぜひそういう態度でもって、何も当面の給与だけでなくて、それを取り巻くいろいろな、たとえば健康保険の事業主負担の問題などがございますので、そういったものを一切合財、給与周辺の問題をも含めて物を考える必要がありはせぬかということを考え、外務省その他関係省庁ともそういう観点から御協力を得られるように話をしたい。この点については米側に対しても働きかけておりまして、まだ具体的にどうするかということは詰まってはおりませんが、姿勢としてはそういう態度で問題解決に臨みたいというふうに考えております。
  27. 上原康助

    上原委員 この問題は確かに予算の裏づけが必要であることもあって、そうたやすい問題だとは私も思っておらないのです。しかし、それはやりようによってはできないことでもないと思うのです。ですから、いま基本姿勢は堅持をして話し合いを進めているということですから、施設庁だけでなくして、外務省あるいは大蔵省とも関係してくる問題でありますので、私はきょうはこの点については基本姿勢だけ伺っておきまして、後ほど外務省なり大蔵省の関係者にもおいでをいただいて、さらに私の考え方も提起をしながら、この問題を七六年度の給与改定からは解決できるようにぜひ御努力をいただきたいと思いますので、さらに各関係機関とも協議をしながら、かつ米側にも強く申し入れをしておいていただきたいと思います。  次に、きょうは、総務長官は開発庁長官でもあられますので、いままで私がお尋ねしたこともすべて関連をしてくるわけですが、復帰後の特別措置法の取り扱いについてお尋ねをしてみたいと思うのです。  この点についてはすでに県当局なりあるいは各関係団体からも、大体来年の五月の十四日といいますか十五日時点で切れる特別措置の延長方についての御要望が出ていると思うのです。これまでもいろいろ政府考え方については、私個人的にも、またほかの関係団体なり県当局、知事さん初め関係者からも聞いてはいるわけですが、延長をする御意思があるのかどうか、どういう取り扱いをしようとしておるのか、公的の場ではまだ政府の態度の御表明はないような感じも受けますので、その点をお答えをいただきたいと思います。
  28. 植木光教

    ○植木国務大臣 この沖縄の復帰特別措置につきましては、昨年十二月に沖縄県から政府に対しまして期限延長等の要請がなされました。そこで開発庁といたしましては、県を初め各種の団体等からも事情を聴取いたしまして、現在検討を進めているところでございます。同時に、これは財政措置と関連するものが少なくございませんので、関係省庁とも十分連絡をとりながらできるだけ早急に結論を出しまして、沖縄県の方々の御要請にできるだけおこたえをいたしていきたいというふうに考えております。  なお、本日の閣議におきまして政令の一部改正を行いました。沖縄県産の酒類の酒税特別措置につきましては本年五月十五日から、とりあえず一年間でございますけれども、本則の七〇%を、すなわち現行税率でございますが、据え置くということにしたのでございます。私どもといたしましては、先ほども申し上げましたように、沖縄県の経済、社会情勢というものを十分考えながらこの要請にこたえてまいりたいという姿勢でございます。
  29. 上原康助

    上原委員 この特別措置法のいろいろ免税措置とか、あるいは特別措置法ですからそういうことでの県経済に与えているメリットといいますか、それは年間どのくらいと見ておられるのですか。
  30. 亀谷礼次

    亀谷政府委員 お答え申し上げます。  先生も御案内のように、行政措置それから法律、政令による免税その他あるいはまた輸出入の物資につきましても特枠措置と、いろいろの多方面にわたっておりますことは御案内のとおりでございまして、そういうものすべて含めまして申し上げますと幾らというふうに数字ではいまちょっと申し上げかねます。
  31. 上原康助

    上原委員 おおよそも見当つかないですか。
  32. 亀谷礼次

    亀谷政府委員 ちょっと手元に数字を持っておりませんが、後ほど……。
  33. 上原康助

    上原委員 私がいろいろ聞いているところによりますと、大体三百億程度じゃないのかという県の試算なんです。そういう関係者の数字があるのですが、そうしますと、いまの沖縄の経済状況なりいろいろな観点からすると、せめてこの特別措置の取り扱いには、相当県民生活に与えている影響なり経済動向については重視をしなければいかないと思うのです。そこで、長官の方で鋭意努力をするというお答えがあったのですが、私はこの問題は各関係省庁に縦割りで延長方をお願いをするという筋合いのものじゃないと思うのです。政府一つ沖縄復帰の戦後処理といいますか、そういった政策としてこの問題は取り扱っていただかないと、大蔵省は大蔵省、通産は通産、建設は建設だというようなことで縦割りでいきますと、役人の中には、年間たったの二、三千万から四、五千万程度の金じゃないのかという言い方をする方も事務ベースではいるようです。縦割りでいくと、確かに一つの政令なり法律の特別措置考えるとそうかもしれませんが、全体的なマクロで見ると、いま申し上げたような数字になるわけで、そうなると、やはり開発庁なら開発庁でこの復帰特別措置についてはこれだけの経過措置ではまだ不十分であるというなら、まとめてやるという施策をとっていただかなければいかない。いわゆる窓口問題です。開発庁なら開発庁あるいは内閣官房なら官房というようなことで、総理府でも結構ですよ。そういう政府の方針を立てて、せめて県から出ている二十三項目ですかについては関係団体の要望を入れてやるということでないといかないと思うのですが、そういう方向でこの問題は処理をしていただきたい。この点についてはぜひ長官のはっきりしたお答えをこの際明らかにしていただきたいと思うのです。
  34. 植木光教

    ○植木国務大臣 仰せのとおり、特別措置につきましては、各措置ごとにそれぞれ担当省庁が所管をしているわけでございます。しかしながら、この延長問題につきましては、沖縄実情を十分に参酌をいたしまして、各措置ごとにばらばらに行うのではなしに、総合的に検討する必要があるということは私も全く同感でございます。  御承知のとおり、現地にございます総合事務局にも、それぞれの担当者がいろいろな省庁から配置されておりまして、それぞれ現地状況を十分に把握しているわけであります。また同時に本庁におきましても、沖縄開発庁にはそれぞれの省庁からいろいろなポストに配置をされているという状況でございますから、したがいまして、沖縄開発庁がやはり窓口となりまして、関係所管省庁と緊密な連絡をとりながら対処していくというのが望ましい姿でございまして、私どもといたしましては、ただいまそのような取り組み方をしているということでございます。私は、ただいま仰せられたことはごもっともな御指摘であると思うのでございます。
  35. 上原康助

    上原委員 そうしますと、この特別措置法の延長問題については総合的に開発庁の方でまとめて、政策的な判断でやっていかれる、こういう理解でいいですね。
  36. 植木光教

    ○植木国務大臣 復帰特別措置そのものがいわば政策的と申しますか、過去の沖縄県の置かれておりました地位及びその後の沖縄県の持っております社会経済情勢に対応するものでございますから、したがって私どもといたしましては、先ほど申し上げましたように、沖縄県の実情というものを各省庁に十分に認識をしていただいて、そしてこれに協力をしていただくということでなければならないと思います。
  37. 上原康助

    上原委員 ですから、復帰特別措置そのものがもちろん政策的なことですが、私が強く要望しておきたいことは、この取り扱いについては各省庁ばらばらでやるのでなくして、やはり閣議なりで沖縄の復帰後の状況なり現在の実態というものを把握をした上で、これこれの法案の延長方については県なり各団体から出ているわけだから、そのことは総合判断として開発庁が窓口になってやるという強い行政指導といいますか、政策指導をやらないとできないことじゃなかろうかということですので、そういうお立場でこの問題には対処していくというのが開発庁長官の決意だというふうに受け取っていいですねと私は聞いておるわけです。
  38. 植木光教

    ○植木国務大臣 事実上いまおっしゃいましたような姿勢でこれに取り組んでいるわけでございますから、いまの御要請と申しますか御所見というものに対しまして私は同感だということは、先ほど申し上げたとおりであります。
  39. 上原康助

    上原委員 ぜひ改めてこの問題について総合的な御判断をいただきたいと思います。  そこで、最後になりますが、県民が非常に求めておる特別措置の延長方についてはなかなか渋っていらっしゃる。しかし、だめだというものについては、いま一生懸命やろうとしていることがあるわけですよね。沖縄国会でも非常に問題になって、最終的には強行採決という不測の形でいわゆる沖縄の公用地等暫定使用法が成立をしたわけですが、これの期限も、御案内のように来年の五月十四日で切れるわけですね。しかし、報道されているところによりますと、防衛施設庁はこの沖縄の公用地等暫定使用法にかわる新しい特別措置法を制定する考えでいま作業を進めているということですが、一体この新規立法を制定しようとする趣旨、目的は何なのか、まず明らかにしていただきたいと思うのです。
  40. 斎藤一郎

    ○斎藤(一)政府委員 防衛施設庁は、御案内のように、自衛隊の施設あるいは米軍に提供しておる施設にかかわる仕事をやっておるわけでございますが、沖縄の場合、過ぐる戦争において土地の境界が不明確になった、いわゆる地籍が不明確になった、一般に土地問題としていろいろ煩わしい問題が出ておるのでございますが、防衛施設庁関係しておる防衛施設の中においてもこの問題が大変むずかしいいろいろな事柄を引き起こしております。むしろ、一般の人が自由に立ち入りできない防衛施設の中であったからこそ、かえって他の土地より問題が、解決が長引いたり複雑になったりしておるというふうに理解しております。そのために、たとえば施設を返還しようと思ってもなかなか処理がうまくいかない、あるいは返還になっても跡地の利用が、地籍が不明確なためにうまくいかない、あるいは賃貸借契約をするについてもいろいろな問題が出てくるということで、防衛施設庁としては、施設の中における土地の境界が、いわゆる地籍が不明確な問題が、大変取り扱いづらいかつ困難な問題だということで、従来悩んできたわけであります。  その一つとして、いまお話がございました公用地暫定使用法の期限切れの問題もございまして、御案内のように、沖縄返還の時点で防衛施設として必要なものは五年の期間を限って使えるんだということで今日まで約四年近くたったわけでございますが、あの法律の一条二項の中に、この法律で土地を使えることにしてあるが、できるだけ所有者と話し合って賃貸借契約等を行って、適法に使えるように、合法的に使えるようにしろという訓示規定がございますので、われわれとしては過去四年間大いに努力をして、当時約三千件ぐらいの未契約土地があったのが、現在では約九百七十件ばかりになっております。この九百七十件の土地が、今日なお契約の努力をいたしておりますけれども、ある程度どうしても来年の五月十四日の時点に残っていくだろう。その場合にどうなるか。その場合には、いわゆる暫定使用法の期限が切れた後は一般の土地収用法、米軍の場合には米軍に対するいわゆる特措法に基づいて強制収用の手続を、必要なものについてはやる、返すべきものについては返すということになるわけでございますが、境界が不明確で土地が特定できない土地についてはこれらの手続が手続上とれないというふうに解釈されております。そういうことなので、とにかく一般法に戻るためにはどうしても土地の境界を明確にする必要がある、あるいは現在の時点で契約ができないものについて返そうと思ってもそれを特定する必要がある、返還のためにも地籍を明確にする必要があるということになってまいったので、われわれとしては防衛施設の中の地籍を明確にするということがすべての問題の解決の基本になるというふうに理解しまして、防衛施設の中の土地の境界を明確にすることに対する促進方法をとっていきたいというふうに考えております。それによって土地の返還が容易になり、あるいはどうしても必要な土地については、これを一般法によって収用手続で収用するということが可能になるというふうに考えておりまして、来年の五月十四日の時点において無権限で土地が使用できなくなるということのないために、目下その準備としてわれわれが検討しておるということでございます。
  41. 上原康助

    上原委員 沖縄実情を知らない方がいま長官の御答弁を聞くと、もっともらしく聞こえるのですね。余りにも現実を無視したといいますか、基地問題なり土地問題に対する県民の気持ちを全く理解しない答弁に私は改めて義憤を感ぜざるを得ないですね。  きょうは内容については触れる時間もありませんし、また法案そのものがまだわれわれの目には入っていませんので議論できませんが、ただ、いま復帰時点では三千件の契約できない面があった、努力によって九百七十件まで減ってきたと言うのですが、そうしますと、一言だけ伺っておきたいのです。境界が不明確だからそれを認定をするために新しい特別措置法が必要なんだということを言いたいわけでしょうが、九百七十件のほかは全部境界は明確になっているのですか、いつでも認定されるのですか。冗談じゃないよ。
  42. 斎藤一郎

    ○斎藤(一)政府委員 契約ができたということと境界が明確であるということとは別でございまして、いままで契約ができたものについても境界の確定していないものはたくさんございます。
  43. 上原康助

    上原委員 だから裏を返せば、この法律ができても、仮に契約しておる分で境界不明の土地を返した段階では地籍の確定はできないんじゃないですか。そんなごまかしはやるなと言うんだ。そういう議論は、具体的な資料もありますので、いずれ時間をかけてやりたいと思うのです。  そこで、この特別措置法の内容ですが、何か要綱を見てみますと、沖縄県の区域内に所在する位置及び境界が明らかでない防衛施設用地等に関する特別措置法案、長ったらしい名称のようですが、法律はもうできたのですか。また、この法律の名称は私がいま言ったような名称なのか、この点も。
  44. 斎藤一郎

    ○斎藤(一)政府委員 まだ法律案としては確定しておりません。目下成案を得つつある段階でございます。いまお話しになったのは、その経過におけるいろいろな資料、まことに素案の素案のようなものが出ておるのだと思います。
  45. 上原康助

    上原委員 法律案はまだできていない。きのうあたりの新聞報道によりますと、十四日の閣議にでも諮って決定をして、今国会にも提出をするということなんですね。しかし、今国会にこういう重要な法案を提出するというその無神経ぶりがわれわれには理解できないのです。まあやみ討ち、切り込みを、自衛隊がそこまでやるのかどうかわからぬですが、少なくとも国会対策なり議運あたりでは、連休前に提案をされていないものは今国会は見送るという与野党の間の話し合いも、われわれ確かめたらあると聞いているわけですね。今国会にこの法案を提出するのかどうか明確にしていただきたいと思うのです。  それと、この法案をつくる過程でどこどこと防衛施設庁は協議をしてこられたのか、その点も明らかにしてください。
  46. 斎藤一郎

    ○斎藤(一)政府委員 今国会に提案するかどうかということは、最終的には閣議でお決めいただくわけでございますが、私どもとしては、先ほどるる申し上げたような事情がございますので、案を確定して御判断いただきたい。でき得れば早い機会にということで努力してまいっておるわけでございます。  それから、これまでどういうところと相談したかということでございますが、建設省その他役所間の関連のあるところとは当然相談いたしまして、目下法制局と法的な相談をしているという段階でございます。
  47. 上原康助

    上原委員 国土庁、来ておられますか。国土庁は施設庁がいま検討しているという法案に同意をしたのですか。
  48. 高田徳博

    ○高田説明員 国土庁といたしましては、官房の方で一括話を承ったんだと思います。私としましては、素案の段階で話は聞いております。
  49. 上原康助

    上原委員 そこで、国土庁にちょっとお尋ねしておきたいのですが、いま施設庁の口実に使っているのは、地籍が確定をしていないから特別措置法が必要だということを絶えず強調しているわけですね。一体国土庁という役所の任務、もちろんこれは防衛施設等を担当する役所ではありませんが、少なくとも国土保全、国土の開発、地籍調査等は国土庁の主要な任務、役割りですよね、国土調査法を見てみましても。しかも、これは開発庁長官にも後で御見解をお聞きしたいのですが、国土調査法のたしか第六条の二では、「地籍調査に関する特定計画」ということが明確になっていると思うのですよ。こういう現行法でも、政府が本当に沖縄の振興開発なり地籍の困難というものを解決していこうという姿勢と意思とがあれば、できない相談ではないと私は思うのです。こういうようなことを前提にして、この地籍調査の問題等を一体やろうというお考えはないのかどうか、いま私がお尋ねしたことに対する見解だけをきょうは聞いておきたいと思うのです。
  50. 高田徳博

    ○高田説明員 国土調査法に基づいて実施しております地籍調査でございますが、沖縄県におきましては、復帰前につきましては、琉球政府が土地調査法というもので実施しておりまして、復帰後につきましては、国土調査法に基づきまして現在実施しておるわけでございますが、そのうち六百平方キロを国土調査十カ年計画用として現在その推進に努めておるところでございます。それで、現在まで十カ年計画で実施いたしました数量が、四十七年から五十年まで百六十七平方キロでございます。国土調査法に基づきます地籍調査は、現況の境界を確認してその地籍を確定するという作業でございまして、境界の不明な土地におきましての新しい境界設定作業というものは国土調査法から外れるというふうな解釈でございまして、現在、境界の確認できない部分につきましては沖縄開発庁等で実施されておるわけでございます。
  51. 上原康助

    上原委員 しかし、国土調査法で、あなた、そうなっていないんじゃないですか。目的においても、それといま私が指摘をした第六条の二——きょう、こういう議論をする時間がありませんが、少なくとも地籍調査に関する特定計画を内閣総理大臣が諮問をしてやらなければいかぬ、指示をしてやらなければいかぬということが明確にされているわけですね。これ読んでいますか。第六条の二は適用しようと思えば、沖縄のあれだけの地籍の混乱問題と沖縄振興開発計画との関係においては、やろうと思えばできない相談じゃないと思うのですがね。やらないで防衛施設庁にそういうことを任せているところからこういう問題がよけい出てきているんじゃないですか。開発庁がやっているのは私もわかりますよ。復帰前に返還された土地については開発庁がやっている、返還後については施設庁がやるということになっているのでしょう。国土庁は何をしているか。
  52. 高田徳博

    ○高田説明員 地籍調査、国土調査の特定計画と申しましたのは、国土調査促進特別措置法が昭和三十七年にできておりまして、それの第二次の十カ年計画を昭和四十五年から現在実施しておるところでございます。特別措置法によりまして、特定計画はその十カ年計画の方で計画を立てるということになっております。その計画量が、先ほど申しました六百平方キロでございます。で、沖縄が復帰になりました昭和四十七年時点でその六百平方キロを取り込んだわけでございます。
  53. 上原康助

    上原委員 ちょっと開発庁長官に聞いておきたいのですが、いま施設庁は地籍の問題と関連をさせて新しい特別措置法の法案を出したいということなんですが、この件については開発庁も、地籍問題と絡めて、この種の法律をつくるということには疑問を持っておられるのじゃないかと私は思うのです。地籍問題と基地の使用ということは、これは別個の性格の問題なんです。少なくとも地籍については、私たちもかねがね特別立法が必要である、また、政府もその必要があればやっていくというようなことは沖縄国会から議論されてきたことなんですね。土地を継続使用したいがために、しかもいま施設庁長官が言ったように、地籍の確定はこの法案でもできないわけですよ、結果的には。別個にして法律を提案する、そういうお考えはないのですか。  また、施設庁がごっちゃにして提供しようとしていることに対して、もう私が指摘をするまでもなく、これは県も各関係団体、県民を挙げて反対をしていますよ。いまさっきの特別措置法は県民がこぞって延長してもらいたいということに対しては、ああでもないこうでもないということで打ち切りをしようとしておる。百万県民が求めない法律については沖縄国会でも強行採決をし、また、いま憲法問題との関連においても多くの疑惑を持たれている法案を新たに出そうとしている。余りにも身勝手じゃありませんか、政府のやろうとすることは。論理的にも矛盾するのじゃないですか。先ほどの特別措置法についてははっきりしたお答えは得られない。しかし、こういう特別措置法については国家権力を使ってどんどん強行しようとしている。私は、それは行政運営の面からも民主主義という面からも当たらないと思うのですね。この点について長官の御所見をぜひ聞かせておいていただきたいと思うのです。
  54. 植木光教

    ○植木国務大臣 ただいま防衛施設庁から法案についての作業の状況について御答弁がございましたが、開発庁といたしましては、その内容が未確定でありますし、また成案を得られておられないということであると思いますが、開発庁に対して協議がないという段階でありますので、現時点においては、防衛施設庁がお考えになっております法案内容そのものにつきましての意見は申し述べることができないというような状況でございます。  ただ、私といたしましては、御案内のとおり本年一月に開催されました基地問題閣僚協議会におきまして、二つの点を述べております。それは開発庁といたしましては、沖縄振興開発にとって基地の整理縮小は必要であるという見地から、早期実現について今後とも協力をしていただきたいということが一つでございます。また、沖縄における米軍施設、区域をめぐる諸問題解決の大前提として、地籍の明確化を図る必要があり、これについて留意をしていただきたい、この二点について発言をしたわけでございます。  なお、開発庁所管のものにつきましては、いまお話しのとおり、非軍用地域の境界不明土地の明確化を県を通じまして調査してまいりまして、五十年度からは境界確認のための作業に入っております。西原村につきましては関係者の多大の御協力を得まして、最終成果の取りまとめを行っておりますし、五十一年度におきましては沖縄市及び読谷村につきまして調査実施する、こういう予定でございます。いずれにいたしましても、土地所有者の合意による問題解決が最善の方策であると考えておりますので、私どもといたしましてはいま行っておりますような方式で、開発庁所管の問題については地籍明確化のために対処してまいりたい、こういう考え方でございます。
  55. 上原康助

    上原委員 いま長官から御発言があったわけですが、きわめて重大だと私は思うのですね。事沖縄のこれだけ問題になってきている地籍の問題を取り扱う、しかも表に出てきたのは境界不明である、それを確定をするために特別措置法が必要だから新しい法案を制定したいということを言っているわけですが、これだけ重要な問題について開発庁とはまだ素案の段階でも協議をしていないとは一体何ですか。それは明らかになったわけですよね。そこで、閣議でもこの問題についてはまだ全然話し合いはないわけですね。
  56. 植木光教

    ○植木国務大臣 私は、先ほど協議がないと申し上げましたのは、法案内容についてはまだ未確定でございまして、防衛施設庁を中心に作業を進められているということでございまして、素案の段階につきましては、開発庁に対しまして協議と申しますか、その素案の提示があったという事実はございます。しかしながら、いずれにいたしましても、先ほど施設庁長官から答弁がありましたように、最終案ができていないわけでございますので、現時点において開発庁としての意見はまだ申し述べられない、こういう状況であるということで御理解をいただきたいと思います。
  57. 上原康助

    上原委員 最終案ができた段階では開発庁の見解を明らかにしますか。
  58. 植木光教

    ○植木国務大臣 最終案の段階になりましたならば、当然開発庁としての所見を述べなければならないと思っておるわけであります。
  59. 上原康助

    上原委員 先ほど長官がお答えになりました沖縄の振興開発計画との関連で、基地の整理縮小問題の推進、いま一点は、混乱している境界不明の地籍確定問題等は並行して進めていかなければいかぬ、そういう立場からすると、あくまでも基地使用の問題、米軍基地あるいは自衛隊公用地等いわゆる皆さんの言う公用地等の使用の件と地籍確定は別個の性格の問題として扱うべきだという見解を私たちは持っている。県民もそういう立場に立っている。これは何も革新だけでなくして保守的な方々だってそういう見解を持っているわけですよ。そういう二つの柱を開発庁として持っているということからすると、当然沖縄開発庁も長官もそういう御見解だと思うのですが、その点は間違いないですね。
  60. 亀谷礼次

    亀谷政府委員 先ほど大臣から御答弁がございましたように、沖縄開発庁といたしましても、振興開発計画を推進する上において、基地の縮小整理が早期に実現することが望ましいことは、しばしば大臣からも御言明のとおりでございます。  なお、あわせまして地籍不明確の問題の解決が、これらの土地の有効利用の促進を図る面でも非常に重大なことは申すまでもございません。ただ、大臣御言明のように、今回の防衛施設庁の立案しておられます法案の最終案が提示されておりませんので、現段階におきまして、開発庁といたしましてもこれに対する正確な見解を表明することはできないわけでございますが、いずれにしましても、私どもが現在県を通じて行っております地籍調査の態様からいたしますと、これは復帰前の、先生指摘のような、すでに解放された民地でございますのと、防衛施設庁御所管のいわゆる賃貸借契約の当事者としての軍用地という問題とにおいては、それぞれ現在分担が異なっておることも御案内のとおりでございますが、若干、その性格にも実質的にいろいろと見方はあろうか、こういうふうに思っております。
  61. 上原康助

    上原委員 ちょっとすっきりしないのですが、もう時間も来ていますので……。  まだ最終的な法案ができていない、しかも十分開発庁とも協議がされていないという段階のようですので、一体防衛施設庁はいつまでにこの法律案の成案を見るつもりなんですか。私たちとしては、これはいろいろ問題が出てきますし、すでに反戦地主会の訴訟も起こされているわけですね。そういう面からすると、憲法違反だという見方もますます強くなってきている。したがって、この法案というのはあくまでも撤回すべきだ、地籍の確定をするならそれの独自法案を出すべきだという見解を持っているわけです。しかし、これについては恐らく皆さんの御見解は異なるでしょうが、少なくとも今国会にこの法案が提出をされるというのは、時期的に見ても、いま開発庁長官が言ったように、政府部内でも十分検討されずに、いつの間にか施設庁だけの作業を進めて、ひょっこり出てくるという危険もあるわけですね、いまの言い分では。これではまたよけい問題。改めて、あくまでこの法案を強行しようと思うのか、それとも一応見合わすことになるのか、また、施設庁の進めている法案はいつまでに閣議なりに提起をするのか、この点だけ明らかにしていただきたいと思います。
  62. 斎藤一郎

    ○斎藤(一)政府委員 私どもとしては、先ほど最初お答えしたような考え方でこの法案について成案を得て、努めて早い機会に成案を得て、そうして政府関係機関と十分連絡をして成案を得て、後は政府としての御判断をいただく、事務担当者としてはそういう気持ちでおります。
  63. 上原康助

    上原委員 ですから、その時期はいつまでですか。
  64. 斎藤一郎

    ○斎藤(一)政府委員 努めて早い機会にやりたいと思っております。
  65. 上原康助

    上原委員 努めて早い機会というのはきわめて不明確、漠然としているわけですよ。そうしますと、この七十七国会は会期は二十四日までですよ。その開かれている間には法案は提出する意思は変わらない、そういうことですか、具体的に申し上げると。
  66. 斎藤一郎

    ○斎藤(一)政府委員 事務担当者といたしましては、先ほど申し述べたような事情がございますので、できるだけ早い機会に——目下法制局とは話をしておるところでございますが、早い機会に事務担当者としての成案を得て、そして後を御判断いただきたいと思っております。
  67. 上原康助

    上原委員 もう約束の十二時ですので終わりますが、最後に植木長官に申し上げておきたいのです。  先ほどの特別措置法については、県民が非常に強く延長を求めているにもかかわらず、その可能性が薄いという受けとめ方が強いわけですね。しかし、一方の基地確保のためには、あくまでもあらゆる手段を尽くしてやろうとしているところに、ますます沖縄県民なり国民感情そのものを——感情というよりも沖縄に対する政府の施策の姿勢として問題が出てきているわけですから、あえてそういう混乱に輪をかけるような法案提出については、沖縄担当大臣として、閣議の場でも確たる態度をとってもらいたい。もちろんあなたにたくさん期待することはできないと思うのですがね。しかし、私が言ったことについても、また十分受けとめていただける面もあろうと思うのです。改めてこの法案に対する大臣の見解を聞いて、質問を終えたいと思うのです。
  68. 植木光教

    ○植木国務大臣 基地が整理縮小せられまして沖縄振興開発が積極的に行われなければならないということは、もう沖縄振興開発計画の中にうたわれていることでありますし、これは基本的な私どもの態度でございます。同時にまた、沖縄におきます地籍の明確化というものは、これはいずれにいたしましても、返還されましたときの利用問題についても、非常に重要なことでございます。したがいまして、先ほど申し上げました二つの柱を私どもの姿勢といたしまして、この問題の処理に対処してまいりたいと存じております。
  69. 木野晴夫

    木野委員長代理 木下元二君。
  70. 木下元二

    ○木下委員 私は、国家公務員災害補償改正案に関連しまして、公務災害のもとをなす職場の安全衛生の問題についてまず伺います。  非現業の一般職国家公務員に適用される人事院規則の一〇−四、これによりますと、職員の健康の保持増進ないしは安全の確保に関して定めております。ところが、この人事院規則一〇−四をよく検討いたしますと、どうも公務能率の増進の一環として職場の安全衛生問題をとらえておるようであります。憲法二十五条の生存権であるとか、二十七条の勤労条件の基準といった精神に基づいて制定されたものではないように思います。民間労働者あるいは地方公務員や五現業の国家公務員等に適用される労働安全衛生法というのがありますが、この法律の安全衛生をとらえる観点とも幾らか異なっておるようであります。  労働安全衛生法は、第一条で目的といたしております労働災害防止のための総合的、計画的な対策の推進であるとか、快適な作業環境形成の促進であるとか、こういったこともこの人事院規則には何一つうたわれていないのであります。どうも労働安全衛生法に比べて内容がきわめて不備であります。不十分であります。この点いかがでしょうか。
  71. 中村博

    中村(博)政府委員 確かに先生指摘のような御批判もあり得るかと存じますけれども、労安法は一般の、たとえば製造業者等もこれに含まれておるわけでございますけれども、国家公務員の健康、安全を定めました人事院規則一〇−四におきましては、そのような直接関係のない部分を除きまして相互に対比いたしますと、ほぼ完全な平仄がとれておるわけでございます。しかに加えて、たとえば共同野外実験の規定のように、国の場合に特有だと考えられるような作業につきましては、これを民間の場合と違って特殊的に取り入れておるという構造になってございまして、その内容全般としては労安法より劣るものではないというふうに私は考えております。
  72. 木下元二

    ○木下委員 たとえば使用者の責務について申しますと、労安法では、「事業者は、単に労働災害の防止のための最低基準を守るだけでなく、快適な作業環境の実現と労働条件の改善を通じて職場における労働者の安全と健康を確保するようにしなければならない。」というふうに書かれておりますが、人事院規則の方では、「各省各庁の長は、職員の健康の保持増進及び安全の確保に必要な措置を講じなければならない。」これだけであります。労働災害防止のための最低基準を守らせるという考え方がどうも薄いように思えるのであります。  それから安全衛生管理体制の点でありますが、この点も労安法は、健康障害を防止するため作業環境の管理を重視するという立場から衛生管理という考え方をとっておりますが、人事院規則一〇−四では単に健康管理という立場にしか立っておりません。突っ込みが足りません。また労安法は、安全管理と衛生管理とを一体のものとして遂行する立場から、統括安全衛生管理者という制度を設けております。そして、その選任を義務づけておりますが、人事院規則にはこういう立場がありません。あるいはまた、労安法は労働災害の原因調査及び再発防止対策に関する業務を管理させることにしておりますが、人事院規則はこれも欠落いたしております。これらの点、その違いは私、否定できないと思うのでありますが、いかがでしょうか。
  73. 中村博

    中村(博)政府委員 確かにたとえば先生おっしゃいました統括責任者の問題にいたしましても、表現上は違ってございますが、国の場合にはまず各省各庁の長の責務として、先ほど御指摘のような健康、安全の確保という責務があるわけでございます。したがいまして、その下に安全管理体制として安全管理者、健康管理者及び同担当者をそれぞれ置くことになってございまして、健康、安全管理体制としては私は径庭があるものだとは考えません。そのほかにやはり日常の執務を通じて、九十八条一項によります職務上の命令によってより十全を図り得るものでございます。  国の場合には総括的に一体となった一つの上下関係を持つ組織と相なってございますので、安衛法が考えております。対象といたしておりますような非常に多種多様にわたり、また広範にわたっておる民間の事業所を管理する場合とその体系において異なるのは当然であろう、かように考えております。
  74. 木下元二

    ○木下委員 いま私、幾らか具体的にも指摘をしたのでありますが、たとえば最後の、労働災害の原因調査及び再発防止対策に関する業務というのを労安法の場合には所掌事務として管理させることにしておるのでありますが、こうした点はないわけですか。結局ないということですか。
  75. 中村博

    中村(博)政府委員 確かに御指摘のように規則一〇−四の字面ではあらわれてはございませんけれども、しかし、各省各庁の責務として、ある災害か不幸にして起こりました場合には、その災害原因を探求いたしまして、自今そのような災害を起こさないようにすることが職員の健康、安全のために基本的な重要な事項でございますので、そのような点は当然の前提として予定しておるわけでございます。
  76. 木下元二

    ○木下委員 人事院としてもそうした指導をやっておるということですか。
  77. 中村博

    中村(博)政府委員 人事院としましては、先生指摘のように、職員の健康、安全ということは何にもまして重大なことと考えてございます。したがいまして、担当者の会議を年間数回にわたって稠密にいたしますとともに、あわせていろいろな管理体制研究会等を濃厚に行いまして、可能な限りの努力をいたしておりますとともに、各省の十全なる御協力をお願い申し上げておる、かような次第でございます。
  78. 木下元二

    ○木下委員 私は、やはり安全衛生管理体制の一環としてそういうふうな労働災害の原因調査であるとか、あるいは再発防止対策を進めていくという仕組みを、この人事院規則の中にどうして盛り込まないのかという点が問題であると思うのです。この点一つとってみましても、労安法と人事院規則では安全衛生管理体制の厚味に格差がある、こう言わざるを得ないと思うのです。これは現実に十分なことをやっておるからという考えがあるようでありますが、やはりこうした管理体制そのものに十分な配慮を払う必要がある、整備をする必要がある、こう思うのです。いかがですか。
  79. 中村博

    中村(博)政府委員 先ほどもちょっと触れましたが、規則一〇−四の第八条に、「野外実験等の場合の体制」という規則が特殊的に設けられてございます。これは先般起こりました野外実験による多数の方々の不幸な事態、そのような事態を重大なる反省の資料といたしまして、このようなことを二度と繰り返さないようにという観点からこのような規定を設けられたということでございまして、そのような観点に立って、私どもとしましては諸般の事項に常に留意してこれを運用しておる、かような考え方に立っておるわけでございます。
  80. 木下元二

    ○木下委員 私がいま問題にしておりますのは、人事院規則による安全衛生に関する管理体制、そのこと自体を問題にして、不十分ではないかということを指摘しておるのであります。たとえば作業環境の維持、管理についての規定にいたしましても、人事院規則では、健康保持のために必要な措置を講じなければならないと規定しておるのみで、労安法のように、衛生水準の向上、作業環境の快適な状態の維持、管理を義務づける規定、六十四条にありますが、そういう立場に立っていないわけであります。あるいはまた健康の保持、増進についての規定、これを見ましても、人事院規則では、十五条でこれまた必要な措置を講じなければならないと規定しておるのみでありますが、労安法のように、体育活動やレクリエーション活動等への便宜供与を義務づける規定、七十条がありますが、そういう立場が明確でありません。  この時間外のレクリエーション活動で庁舎の使用が認められなかったというケースがあることも私は聞いておるのでありますが、やはりそのもとはこのような人事院規則の不備にあると思うのです。この点いかがでしょうか。
  81. 中村博

    中村(博)政府委員 たとえばいま御指摘のレクリエーションの問題につきましては、人事院規則でレクリエーションの根本基準を定めてございまして、ある条件下においては勤務時間内にも十全に行い得るような体制というものをつくり上げておるわけでございます。
  82. 木下元二

    ○木下委員 私は、安全衛生問題としてこれを、労安法に規定があるのにない点を、その点の不十分さを問題にしておるのでありますが、いまのレクリエーション活動について、これは時間外のレクリエーション活動でありますが、庁舎が使えないなどの支障がない限りは便宜供与をすると明言されますか。
  83. 中村博

    中村(博)政府委員 この勤務時間内及び外に行われます職員のレクリエーション活動につきましては、総理府の方から通達が出てございまして、その通達に従ってその承認が行われる、こういう構造になってございます。この通達の中では、そのような場合には絶対だめだということは書いていないのでございます。
  84. 木下元二

    ○木下委員 いや、安全衛生という観点あるいは健康増進という立場から、時間外の庁舎内のレクリエーション活動をお認めになるのかどうなのか、この点を再確認したいのです。
  85. 秋富公正

    秋富政府委員 庁舎につきましてはそれぞれの庁舎管理規程がございまして、管理者がございます。ただいまの御指摘でございますが、これはそれぞれの管理者の判断によって措置いたしたいと考えております。
  86. 木下元二

    ○木下委員 そこで人事院、こうした問題についてもこれはやはり健康の増進ということを強調して言われるわけでありますから、そうした角度から、レクリエーションというものは非常に大事なものですから、健康増進のためのレクリエーション活動は特別の支障がない以上はやはり自由にできるように、これはやはり人事院としてはそういう立場で各省庁に対して指導をされるということが私は当然ではないかと思うのですが、いかがですか。
  87. 中村博

    中村(博)政府委員 先ほど申し上げましたレクリエーションの根本基準の運用に関しまする点につきましては、当該人事院規則の精神にのっとって、その精神に適合するような方策において運用いたしたい、かように考えております。
  88. 木下元二

    ○木下委員 どうもその点はっきりしないようですが、そういう点もやはり私はいまの安全衛生法との違いがあらわれておると思うのです。これは安全衛生法では、体育活動やレクリエーション活動等への便宜供与を使用者に対して義務づけておるのです。これがどうして人事院にはできないのか、私はわかりません。  それからさらに、労働安全衛生法と人事院規則一〇−四では、労働者の権利、義務に関して重要な点で違いがあります。労安法では、使用者実施をする安全衛生の確保、増進に関する措置労働者は協力をする、または労働省令で定める必要事項の遵守を義務づけておるにすぎないのでありますが、これは四条、二十六条、二十七条であります。人事院規則一〇−四では、各省庁の長が実施をする措置には、それがどんなものであっても無条件に従わなければならない旨を四条に規定しております。この違いは、結局安全衛生の確保増進を労働者の権利として見るかどうかの基本的な観点の違いのあらわれだと思うのです。  そして労働者の意見を聞く制度、これにも大きな違いがあるわけです。労安法は、危険防止、健康障害防止等についての対策に関する重要事項を調査、審議をさせる、意見を述べさせるために、安全委員会、衛生委員会または安全衛生委員会の設置を義務づけております。これは十七条ないし十九条です。人事院規則一〇−四では、ただ単に「職員の意見を聞くために必要な措置を講じなければならない。」とあるのみで、これはきわめて不十分であります。  さらにまた、この点についての労働組合または労働者代表の参加の点でも違いがあります。労安法は、安全委員会等の構成について統括安全衛生管理者という制度を設けておりますが、その統括安全衛生管理者以外の委員の半数以上を労働組合または労働者代表の推薦に基づいて指名しなければならないと規定しております。こうして労働組合や労働者代表の参加に道を開いておるのでありますが、人事院規則には明文の規定がありません。  この安全衛生、危険の防止、労働災害対策などは、労働者の職場における最大の関心事であることは申すまでもありません。労働者が参加をする委員会がこれらの問題を調査、審議をし、事業者に対し意見を述べる仕組みというのはきわめて適切かつ必要なものであります。どうしてこの人事院規則にはこれを規定しないのでしょうか。
  89. 中村博

    中村(博)政府委員 まず第一の点でございますけれども、安全衛生法にはレクリエーションの規定があるのに、人事院規則一〇−四の中にはないとおっしゃいますけれども、これはいろいろ御議論のあるところではございましょうけれども、能率増進のための能率の中の一環としてとらえられておるわけでございまして、したがってその点について言いますと、規則一〇−四と一〇−六がある、こういう構造でございますので、あわせてひとつ御判断をいただきたい、かように思います。  それからいま一つは、確かに第二の点はいろいろ御議論はおありだと思います。しかし、国の場合におきましては、先ほど御指摘のように、職員の責務もそれから各省各庁の長の責務も明白に定めてございます。また、その精神は先ほど申し上げたとおりでございます。さらに十四条で、「職員の意見を聞くための措置」という条項を特に設けてございます。したがいまして、このために職員側のあるいは職員団体の意見というものは十全に吸収されるはずでございますし、また、そのように私どもとしては指導いたしておるわけでございます。  なおまた、そのほかに一つの体制としては、行政措置要求制度というのがございます。したがいまして、特に特殊的にそのような職員の意見を聞く会を通じても十全に反映されない場合は、人事院に対して行政措置要求をなされば、それに対して人事院判定をする、かような構造で、非常に多方面、多岐的な構造になってございますので、総体的に御判断をいただければ幸いであると思います。
  90. 木下元二

    ○木下委員 いまの措置要求のことを言われますが、どうも人事院の指導は、この措置要求をいたしましても一般的、抽象的であって、拘束力もないということで実効が伴わない、こういう批判が強いわけです。  私がいま聞いておるのは、こういう労働者の意見を聞く仕組みというものをどうしてつくらないのかということを聞いているのですが、ただ抽象的に職員の意見を聞くために必要な措置を講じなければならないと言うだけでは、これはもう各省各庁によりましてばらばらなことにもなり得るし、やはり労安法のようなそういう委員会制度をつくることがどうしてぐあい悪いのかということを聞いておるのです。
  91. 中村博

    中村(博)政府委員 確かに御指摘のように、「職員の意見を聞くため」という点の規定そのものは大変簡潔な規定でございます。そのほかに健康安全管理規程の中にも問題もございますし、また、各省各庁のいろいろな特殊事情があるわけでございますので、そのような特殊事情も踏まえて、私どもとしましては、この規定は先生指摘のように労働者側の、特に職員団体の御意見を聞く、そしてより十全に安全衛生の施策を行うということを何ら否定するものではございません。ただ、各省各庁にいろいろな特殊性がございますので、それは現実にもいろいろ実例がございますように、いろいろな形で職員の意見を吸収して、安全衛生のためによりよき施策をしようという体制をとっておる、こういう実情でございますので、何ら否定していない、むしろそういうことはこの目的にとって大変有益であるという判断に立っておるわけでございます。
  92. 木下元二

    ○木下委員 人事院はこの健康安全に関する委員会の設置について通達を出しておりませんか。
  93. 中村博

    中村(博)政府委員 通達を出してございまして、通達には、「職員の意見を聞くための措置とは、健康又は安全に関する委員会の設置、職場懇談会の開催提案制度の採用等をいう。」ということでございます。
  94. 木下元二

    ○木下委員 それはいつお出しになったのですか。
  95. 中村博

    中村(博)政府委員 四十八年の四月でございます。
  96. 木下元二

    ○木下委員 そういう通達をお出しになって、それに基づいて現状がどうなっておるのか、たとえば健康安全に関する委員会が設置されておるのはどこであるのか、あるいはされていないところはどこなのか、その実情はどういうふうに掌握をしておられますか。
  97. 中村博

    中村(博)政府委員 私どもいま、本日この場で持っております資料によりますと、そのような職員の意見を聞くための委員会等を設置していらっしゃるのは運輸省、北海道開発庁、農林省等でございます。
  98. 木下元二

    ○木下委員 人事院自体はどうなんですか。
  99. 長橋進

    ○長橋政府委員 お答えいたします。  名称といたしましては福利厚生委員会というものを設けておりまして、これは大体月に一回程度会合がありますが、各局、課、それから年齢的な構成も考えまして二十二名になっておりますけれども、そこでいろいろ相談しております。  それから、安全関係につきましては、これは人事院自体が職員が少のうございますので、定例的にやっておりますけれども——定例的にと申し上げますよりも折に触れてと申し上げた方がよろしいかと思いますけれども、安全関係についていろいろ意見を聞いております。
  100. 木下元二

    ○木下委員 その福利厚生委員会は結構ですけれども、これは安全衛生関係とはまた別個のものですね。人事院がほかの各省庁に対して健康安全に関する委員会をつくりなさいという通達を出しておきながら、肝心の自分のところが何もつくっていないというのは一体どういうことですか。これは灯台もと暗しというけれども、自分のところが通達を出しておきながら何もつくっていないなんというのはなっちゃいないと私は思うのですよ。
  101. 長橋進

    ○長橋政府委員 冒頭にお断わりしておきましたけれども、どだい人事院職員が全体として少のうございますので、名称は違いますけれどもそういう委員会はつくっております。  それから、後に触れましたけれども、安全関係につきましては定期的に会合をしております。直接担当者自身と会合して、いろいろ意見を聞いているという状況でございます。
  102. 木下元二

    ○木下委員 名称が違うというのは、どういう委員会ですか。
  103. 長橋進

    ○長橋政府委員 福利厚生委員会でございます。
  104. 木下元二

    ○木下委員 だから私は言っているのですよ。福利厚生委員会とこの健康安全衛生委員会というのは違うでしょう。安全衛生関係も一切やるのが福利厚生委員会ですか。そうじゃなくて、福利厚生とは別に安全衛生をつかさどる委員会が安全衛生委員会なんで、そういうものをつくりなさいといって指導しているわけでしょう。通達を出したわけでしょう。福利厚生委員会があるから安全衛生委員会は要らぬ、これではいかぬと思うのですよ。
  105. 中村博

    中村(博)政府委員 私どもはその名称を特定いたしてございません。職員の健康安全のために職員の意見を十分に聞く措置があればいいということでございますので、人事院でやっておられる福利何とかということは、それは名称の問題でございまして、実態を御注目いただきたいと思います。
  106. 木下元二

    ○木下委員 そうすれば安全衛生関係も一切やるところの福利厚生委員会があるということを初めにきちんと言われたらいいのですよ。  それでは総理府はいかがでしょうか。
  107. 島村史郎

    ○島村政府委員 総理府におきましては、御存じのように庁舎が本府、それから恩給局、統計局、第二庁舎、それから学術会議等ございます。したがいまして、それぞれの庁舎におきまして、本府におきましては福祉委員会、それからレクリエーション委員会をつくりましてそれぞれ職員の意見を聞く。それから統計局、恩給局等につきましては、厚生委員会というのを設けまして職員の意見を聞くことにしております。
  108. 木下元二

    ○木下委員 総理府は、健康安全管理規程というのを人事院規則によってつくることになっておりますが、まだつくられておりませんね。そして健康安全委員会というものもない、そうでしょう。
  109. 島村史郎

    ○島村政府委員 御指摘のように本府におきましては健康安全管理規程というものをまだつくっておりませんが、現在検討中でございまして、来月ぐらいには成案を見る予定にしてございます。
  110. 木下元二

    ○木下委員 たとえば、ほかの各省でも、沖縄開発庁はまだつくられておりません。健康安全管理規程もありません。自治省は制度的には何もありません。健康安全管理規程は一応つくられているのですか。消防庁はありません。さすがに労働省はつくられておるようであります。建設省もつくられていない。厚生省も何もない。健康安全管理規程もない。これつくられているのはごくわずかで、幾ら人事院が通達まで出してそうした委員会をつくりなさいという指導をしておっても、大半がつくられていないという現状ですね。しかもこれ、四十八年で三年たっている、こういうことでは困るじゃありませんか。
  111. 中村博

    中村(博)政府委員 いま先生指摘になられましたうち、自治省、消防庁、つくってございます。建設省はモデル的な、模範とすべきものをつくってございますので御了承お願いいたしたいと思います。  それからなお、総体の中で確かに御指摘のようにいまだ作成されていないところがございます。大変残念でございますけれども、私どもとしましては、この基本は健康安全管理規程にあるということで、各省、各庁にお願いをいたしまして総体の四分の三はすでに実施されておる、こういう構造になっておるわけでございます。先ほども総理府から御説明ありましたように、いろいろ各省、各庁によりまして組織、構成その他違いますものですから、いろいろと御苦心のことと思いますけれども、私どもとしてはできるだけ速やかな機会にそのような規程をまず基本的に整備していただくことが大切である、かように考えております。
  112. 木下元二

    ○木下委員 つくられているかいないか、幾らか食い違う点がありましたが、その点は私の方もよく調べてみたいと思いますが、まあつくられていないところがあることはお認めになったわけです。通達が実行されていない、こういう現実があるわけです。運用通達で指示をする程度ではなかなか現実には推進をされないということを私は物語っておると思うのです、このことは。この健康安全委員会あるいはそのほかの職場懇談会であるとか提案制度の採用といったことも通達にあるわけであります。人事院としては、まだつくられていないところもあるわけでありますが、これを推進するために一体どういう方針で臨まれますか。
  113. 中村博

    中村(博)政府委員 先ほどもちょっと触れましたように、担当者の会議あるいは人事管理官会議等におきまして、あらゆる機会をつかまえてこのような規程の重要性を申し上げ、できるだけ早い機会に整備していただくことをお願い申し上げたのでございます。  実は、この一〇−四ができました後、相当の期間、なかなか新しいことでもございますのでおつくりにならなかった省庁が多かったのでございますけれども、いろいろ御連絡を申し上げ、また、私どもでできる限りのことは御協力申し上げることによりまして、現在、先ほど申し上げましたような段階に至っておるわけでございます。この点は御指摘のように根本でございますので、今後ともより一層の努力を続けたい、かように考えてございます。
  114. 木下元二

    ○木下委員 それからもう一つ具体的なことを聞きますが、違反事業者の告発の問題ですが、労安法は法令に違反する事業者を告発をする権利と、告発をしたことにより不利益扱いを受けない権利を保障いたしております。九十七条ですが。人事院規則一〇−四には、この明文の規定かないのでありますが、この点も私は不備な一つの点だと思うのです。これも私は検討してもらいたいと思うのです。
  115. 中村博

    中村(博)政府委員 民間の多種多様な多数の企業を対象といたしまする場合と、先ほど申し上げましたように、国の機関として相互に平仄がとれ、上下関係として密接な構造に相なっております場合とは、その態様が違うということは私は基礎の違いとして是認さるべきだと思います。しかし、国の場合につきましては、先ほど申し上げましたように、各機関の上下関係において、またあるいは、上司が下司に対する関係において非常に厳密なかつ濃厚な一つの命令体系ができてございますので、そのような不特定——不特定と申し上げてはあれですが、多種多様なそのような構造になっていない事業所を対象といたします場合とその点において異なることがあるのは当然のことである、かように考えております。
  116. 木下元二

    ○木下委員 それはおかしいですよ。そのあなたの言われる趣旨は仮にわかるといたしましても、そのことと——じゃ結局、国公関係の職場においてはそういう違反はあり得ない、そういう前提ですね。国は悪をなさず、悪かどうかは別として、そういう問題ではなくて、これは国公関係の職場もやはり民間の職場と同じなんですね。それはいろいろ違いはあるでしょう。また、民間のような幅というものもないでしょう。けれども、やはり国公関係の職場においてその安全衛星の管理ということが非常に大事な問題になっておるわけですね。違反的な状態というものはないとは言えないわけですよ。じゃ、それに対して一体どういうふうにしてそうした違反状態をなくしていくかという問題があるわけですが、これはやはりそうした違反事業者の告発ということは国公関係においても私は必要だと思うのですよ。
  117. 中村博

    中村(博)政府委員 国は悪をなさずという前提に立っておるではないかという御指摘でございましたが、私どもとしてはさような大それたことは一切考えてございませず、職員の健康安全の確保のためにはどこまでも謙虚であるべきだ、かような精神に立ってございます。  それでなお、確かに規則その他におきましては、その表面を見ます限り十全ではないかもしれませんけれども、先ほども御説明申し上げましたように、職員の意見を聞く措置をとってございます。また、ある場合には措置要求もあるわけでございます。さらに加えて、職員団体として御意見があるならば、管理運営事項に関しますことを除きましては、交渉権が正当に認められておるわけでございますので、それらの各般の措置を通じていろいろなまあ悪と申しますか、それが未然に防止され、また仮に悪がございました場合には、その悪はできるだけ程度の低い期間に是正される、こういう構造になってございますので、多様な措置があるという措置を前提としてのこの規則であるということを御理解いただきたいと思います。
  118. 木下元二

    ○木下委員 総務長官に伺いますが、この人事院規則は、私がいまずっと指摘をいたしましたように、いろいろ答弁はされますが、この労働安全衛生法と比べまして不備、不十分な点がいろいろあるということは、——少なくとも規定の上においてですよ。規定を比べたらわかるわけですから、これは一目瞭然であります。このことは明らかだと思います。  私は、その点はさておきまして、より根本的に職場の安全衛生に係る一切の事項を人事院規則にゆだねるという仕組みについては再検討すべきではないか、こう思うのです。労働安全衛生法の定めるような詳細にわたる事項は、これは人事院規則に任ぜるといたしましても、安全衛生に関する基本事項についてはやはり法律をもって定めるような仕組みにすべきではないかと思うのです。この問題についてはこれまで検討をされたことはございましょうか、あるかないかで結構です。
  119. 植木光教

    ○植木国務大臣 現在まで検討してはおりません。
  120. 木下元二

    ○木下委員 私は、どうしても法律が必要だと思うのですよ。たとえば労安法は安全衛生の最低基準を守らせるために、最高で「三年以下の懲役又は三十万円以下の罰金」というような罰則規定を設けております。ところが、人事院規則ではこれは罰則規定は設けることができません。しかし、職場の安全衛生の確保、増進をより実効的に保障をする上で罰則を設ける必要はあると思うんです。しかも、労安法の適用を受ける使用者は罰則を受けるのに、人事院規則の適用を受ける使用者は罰則がない、これは法制的に著しく均衡を失した不公正な問題でもあると思うんですね。この点いかがお考えでしょう。
  121. 植木光教

    ○植木国務大臣 職員の健康安全につきましては、国家公務員法第七十一条第二項の規定に基づきまして、人事院規則で定めておりますことは御承知のとおりでございますが、これは人事院が、国家公務員勤務条件につきまして専門的中立的な機関であるということに着目をいたしまして、その人事行政に関する専門的、技術的能力をゆだねようとする趣旨によるものと私は承知いたしております。したがいまして、現時点で法律化をし、罰則を設けるというようなことはいま考えておりません。  ただ、先ほど来の御質疑の中にありましたように、人事院職員の健康、安全の管理につきまして、各省庁に対しいろいろな指導を行っておられるところでございますけれども、健康安全管理規程を設けているところと、いない省庁がある、あるいは職員の意見を反映する委員会等につきましても、必ずしも万全を期しているかどうかということにはまだ疑問があるというふうに私は存じます。したがいまして、人事院の指導の趣旨を受けまして、各省庁におきましていろいろ条件は違うところがあろうかと存じますけれども、国家公務員勤務条件充実のために、私どもといたしましても、人事行政を預かっている者といたしまして、努力をしてまいらなければならないと存じます。
  122. 木下元二

    ○木下委員 私が最後にお尋ねしたことにはちょっとお答えになっていないんですが、安全衛生に関して労安法の適用を受ける使用者は、それに違反したということで罰則の適用があるわけですね。ところが、人事院規則で安全衛生に関して決めておる、同じように違反したということがあっても、それは罰則の適用がない。あるいはさっきの答弁もありましたけれども、そもそも国の側には違反とか罰を受けるというようなことはあり得ないという考えがあるならば別ですけれども、そうでないとすれば、やはり均衡という観点から見ましても、これは私は不合理だと思うんです。不公正だと思うんですよ。この点も私はひとつ検討をいただきたいと思うんです。
  123. 中村博

    中村(博)政府委員 確かに御指摘の点はございます。しかし、先ほど来申し上げておりますように、国の場合におきましては、御承知のように懲戒処分制度というのがございます。人事院規則に違反した場合には、当然法令遵守義務違反として懲戒処分の対象に相なるわけでございます。したがって、国の特殊な組織の態様を考えれば、その懲戒処分があるということによって十全に確保されるというように考えます。
  124. 木下元二

    ○木下委員 懲戒処分は民間にもあるんですから、それでもっていまの均衡を失するという問題の解決にはならないんです。  さらに、私は、時間がありませんので、総務長官にお尋ねしますが、実はこの問題というのはまだ問題があるわけです。憲法第二十七条第二項の問題であります。これは「賃金、就業時間、休息その他の勤勞條件に関する基準は、法律でこれを定める。」という規定です。職場の安全衛生に関する事項がこの憲法の「その他の勤勞條件」の一つであることは、疑いないと思うんです。したがって、これに関する基準は本来法律事項だと思うんです。この趣旨から言いましても、安全衛生に関する基本事項ないし基準というものについては法律を制定するように、私はひとつこの際、いますぐとは申しませんが、検討をしていただきたいと思うんです。
  125. 植木光教

    ○植木国務大臣 いま御指摘ございましたように、憲法二十七条第二項には「勤勞條件に關する基準は、法律でこれを定める。」という規定がございます。国家公務員につきましては、基本的な勤務条件につきましては国家公務員法あるいは一般職の職員給与に関する法律など法律自体で規定をされておりまして、細目的な事項を人事院規則に委任をいたしておりますので、憲法第二十七条第二項の趣旨に適合をしているというふうに私ども考えるのでございます。したがいまして、いま御指摘がありましたようなことは必要はないというふうに判断いたしております。
  126. 木下元二

    ○木下委員 それは認識不足もはなはだしいんですよ。労働条件の細目的なことについては人事院規則でと、これは結構ですよ。じゃ、安全衛生に関する問題は労働条件の細目的なことなのかということになるんですよ。職場の安全衛生という問題は、労働者が就労するに当たって基本的な問題ですよ。労働者の命と健康にかかわる重大な問題なんですよ。だから、この二十七条二項の「その他の勤勞條件に關する基準」とありますが、この「その他の勤勞條件」の中にはそうした安全衛生に関する問題というのがあるわけなんです。だから、その安全衛生に関することすべてを法律とは言いませんよ。少なくともその基本事項については法律で決めるべきではないかということを言っておるわけです。  この問題については検討をいただくとして、それに関連いたしまして、私はもう時間の関係質問をしたいのでありますが、それは、いま私が憲法二十七条二項を申しましたが、休息の問題であります。憲法二十七条二項は賃金、就業時間と並べて休息を掲げております。そして「その他の勤勞條件に關する基準」とともに「法律でこれを定める。」ということを明定しておるのです。ところが、賃金、就業時間については給与法で定められておりますけれども、休息については人事院規則で定められております。この点は憲法の法定主義の上から言いまして非常に問題ではないか。法制局にこの点聞きたいと思うんです。あわせて、安全衛生に関する事項も勤労条件としてその基準は法定されるべきではないかという点についても伺いたいと思います。
  127. 味村治

    ○味村政府委員 憲法二十七条第二項の休息と申しますと、休日あるいは有給休暇その他の休暇、それから労働時間内での休憩時間と申しますか、そういったようないろいろな休息に関する制度というのが考えられると思います。そのような休息に関する制度につきまして法律基準を定めるということを憲法は要求しているわけでありますが、どの範囲まで法律で定め、どのような程度の基準を定めるかということは、法律に任していると、このように考えられます。  そこで、国家公務員につきまして、制度的に見ますと、休日につきましては一般職の職員給与法で、いわゆる日曜日は休日とするというように休日の制度が定まっておりますし、さらに有給休暇につきましては、これは経過的な法律でございますが、昭和二十二年の法律第百二十一号という法律がございまして、この服務に関する規定が整備されますまでは、「従前の例による。」ということになっておりまして、それによりまして、大正十一年の閣令六号によりまして有給休暇の制度がございますので、それが法律によって援用されていると申しますか、法律の形になっているわけでございます。したがいまして、有給休暇、休日につきましては法律で、基準というよりはむしろもっとかっちりしたものが決まっているということであろうかと存じます。  さらに、労働時間内の休憩時間につきましては、これは一般職員給与法の十四条で、職員勤務時間を定める規定におきまして、「職員勤務時間は、休憩時間を除き、一週間について四十時間を下らず四十八時間をこえない範囲内において、人事院規則で定める。」となっておりまして、これは裏から申しますと、休憩時間を与えなさいということであろうかと存じます。休憩時間をどの程度与えるかということは、これは人事院規則に一任されているわけでございます。  このような制度全般を見ますと、休息に関しましては一応国家公務員につきましても法律基準を定めている。したがって、憲法には違反しない、このように言えようかと存じます。  安全衛生につきましては、先ほど総務長官がお述べになりましたように、この憲法は賃金、就業時間、休息その他の勤労条件ということでございまして、これをまとめて全体につきましてその基準法律で決めろ、こういうことを要求しているわけでございます。したがいまして、先ほども申し上げましたが、どの範囲の勤労条件に関する規定を法律基準を設けるかということは、これは法律に一任されている、このように考えられますので、安全衛生に関しまして国家公務員についての基準がそれ自体はないといたしましても、その他賃金、就業時間、休息時間といった勤労条件に関する基準法律で定まっております以上、憲法違反ということはないと考えます。
  128. 木下元二

    ○木下委員 私はもうここで時間がありませんので、本会議が迫っておりますので、詳しい憲法論を展開するわけにはいきませんけれども、ただ、いまの休息の問題についてだけ、いろいろ言われましたので、意見を簡単に申したいと思います。  私は、あなたのいまの説明を聞いておりまして、もうまるで綱渡りのような、危なっかしい法解釈だと思うのです。仮に形だけそれで取りつくろったといたしましても、国民が聞いて納得いたしません。憲法違反の疑いは濃厚であります。  大体、休息について三つ言われました。最後の「休憩時間を除き、」というふうに給与法で規定しておる、だから休憩について決めているじゃないか。これは法制局の見解としてはちょっと私はお粗末だと思うのですよ。この給与法十四条が規定しておるのは、「職員勤務時間は、休憩時間を除き、一週間について四十時間を下らず四十八時間をこえない範囲内において、人事院規則で定める。」とあるんですね。ここのどこに休憩時間について規定しておりますか。「休憩時間を除き、」とあるから休憩時間を与えるということが含まれておる。だからそれでよいというような解釈は、私はこれはちょっとひどいと思いますよ。休憩時間を与えるというようなことも書かれていないし、しかも一週間の勤務時間のうちに一体どの割合で与えるというようなことも何も書かれていないわけでしょう。  それから休暇の問題も、これは法律百二十一号を言われましたけれども、これはもう単なる経過規定であります。この経過規定自体が、ただし書きで新たな法律の制定を予想しておるわけですね。だから、この法律百二十一号の規定によりまして、閣令六号という古色蒼然とした大正十一年の閣令を持ち出して、憲法二十七条に従って法律で決めておるというふうなことは、私は少なくともこれは法律で実質的に定めたということにはならないと思うのです。  もう時間がありませんので総務長官に伺いたいと思いますが、これを仮にいまの解釈でやっと形だけつないで取りつくろったといたしましても、そんな状態をいつまでも続けることは私は許されないと思うのです。憲法に基づいて休息について新たな法律をつくるというのは当然のことであります。また人事院の方は、給与法の二条五号というのがありまして、人事院は、「休暇に関する制度調査研究して、その適当と認める改定を国会及び内閣に同時に勧告すること。」と定められております。こうしたことから言いまして、私は、この作業を人事院また政府が早急に進めていかれるべきだと思うのでありますが、その考えがあるかないかを伺っておきます。
  129. 藤井貞夫

    ○藤井(貞)政府委員 国家公務員についての健康、安全その他万般にわたっていろいろ御意見を承ったのであります。われわれといたしましても、職員局長を主体としていろいろ御答弁を申し上げ、現在の制度のたてまえなりその趣旨について申し上げたところでございますけれども、私たちといたしましても、現在の制度がすべて理想的で、そこに変改の余地が全くないというような、そういう思い上がった姿勢をとっているわけではございません。問題のあるような点については検討もいたしておりますし、またその時期が来れば、改善の方策をとるために考えていくということについてはやぶさかではないつもりでございます。  また、休暇につきましては、いま御指摘になりました給与法の関係検討を義務づけられておりますし、事実われわれといたしましても、休暇の制度というものは、これは先刻来お話のありました閣令その他の問題あるいは現実の休日制度の問題等との絡み合いでなお整理、検討をすべき問題点があるということはよく承知をいたしておりまして、その線に沿って鋭意検討も続けておるような段階でございます。したがいまして、結論が得られますれば、その段階においてわれわれとしての判断をいたしまして、所要の措置を講ずる必要があれば所要の措置を講じていくということについては考えてまいりたい、かように考えます。  ただ、先刻来の御議論の中でもございましたが、国家公務員の職場というものとそれから民間の職場というものとにはニュアンスと趣を大分異にしたところがあることもこれは事実でございます。国の方は悪事をなさず、また間違いはなさずという、そういう不遜な態度はとりませんけれども、それに対する所要の是正措置等につきましては、これは必要な場合においては法的措置を講じておりますことは御承知のとおりでございます。  なお、職員の安全、健康管理につきましては、その重要性はわれわれとしても人後に落ちず認めておるつもりでございまして、そのための規則改正等につきましては、民間の労働安全に関する法規の推移その他も十分に参考にし、また職場の実態等を踏まえつつ、改善すべきことは改善し、また所要の指導を徹底すべき点については指導の徹底を図ってまいる、そういう万般の措置につきましては、今後とも大いに検討し、努力をしてまいる所存であることを申し上げておきたいと思います。
  130. 植木光教

    ○植木国務大臣 ただいま人事院総裁が御答弁になりましたように、いろいろだだいま検討せられているわけでございます。その判断あるいは結論に基づきまして、私どもといたしましても所要の措置を講じてまいりたいと存じます。
  131. 木下元二

    ○木下委員 もう時間がありませんが、よく検討し、判断をして所要の措置を講じるということであります。いまの休暇の問題については、これは調査研究が義務づけられておりますが、私が指摘をしました休暇も含む休息の問題ですね、この法律化についておおよそいつごろをめどとしてというふうな点はいかがですか。
  132. 藤井貞夫

    ○藤井(貞)政府委員 大変問題がむずかしい事柄でございまして、かなり長期にわたってわれわれも問題意識を持って検討を続けてまいっておりますが、まだ結論を出すという段階には至っておりません。いまこの時期で、いつごろまでに結論を出すというめどを申し上げる段階に至っておりませんことははなはだ遺憾でございますけれども、その点はひとつ御了承を賜ります。われわれといたしましてもその点は誠意をもっていろいろな点について資料を集め、また精力的に検討を続けてまいって、できるだけ近い将来に結論を出すべきことは出していくということだけをこの席上で申し上げておきたいと思います。
  133. 木下元二

    ○木下委員 もう時間が来ましたので、これで終えたいと思います。
  134. 木野晴夫

    木野委員長代理 本会議散会後委員会を再開することとし、この際、暫時休憩いたします。     午後一時二分休憩      ————◇—————     午後四時三十五分開議
  135. 木野晴夫

    木野委員長代理 休憩前に引き続き会議を開きます。  在外公館の名称及び位置並びに在外公館勤務する外務公務員給与に関する法律の一部を改正する法律案を議題といたします。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。大出俊君。
  136. 大出俊

    ○大出委員 本会議が間に入る予定でございませんでしたので、大変時間が窮屈になってまいりました。在勤法そのものにつきましても、数字を含めましていろいろ問題があるのでありますけれども、なるべく簡略にしていきたいと思っています。  いずれにしても、この在勤法は、出先の皆さんのこともございますからこの国会で何とか通したいというふうに思っているわけでありますが、何しろ大臣が忙し過ぎる状況にありますので、こちら側で困っているわけであります。したがって、先に少し関連をして幾つかの問題を片づけさせていただいてから在勤法に触れたい、こう思っております。  そこで、いま横浜川崎直下型地震ということで、中央防災会議その他の皆さんといろいろやり合ってまいりまして、私もさきの国会では前後三回質問に立ちまして、結果的に、文部大臣においてはこの周辺の老朽の講堂その他義務教育施設の新設、補強なども予算を組んでやっていただきましたし、また、お亡くなりになりまして残念ですけれども、仮谷建設大臣、金丸国土庁長官の二人で、私の要望にこたえていただきまして視察においでをいただきました、こういう地域であります。地震周期説等がございまして、けさの新聞などでも取り上げておりますように、これは朝日新聞でありますけれども、巨大地震ということで、その周期に入ってきているという学者の発表等も行われているわけでありまして、六十六年云々ということで、大変横浜、川崎は地震帯でありまして、明治以来周期的な地震がたび重なっているところであります。きのう私、こういう地域の真ん中にある米軍の貯油施設、住民の皆さんの心配もございますから、直接現場に参りまして見てまいりましたし、意見も聞いてまいりましたが、地域の非常に大きな社会問題になっているという感じがいたします。  そこで、事を分けて承りたいのでありますが、地位協定ができましてから久しくなるわけでありますけれども、この長い期間に、世の中の移り変わりという意味で、大変に当時の事情とは違った形のものが出てきている、何しろ十五年たっているわけでありますから。三十五年に地位協定はできておりますので、だから本来ならば実情に合わせて地位協定に手を加える必要があると実は私は思っているわけであります。  そこで、承りたいのでありますが、この地位協定の十六条で、「日本国において、日本国の法令を尊重し、及びこの協定の精神に反する活動」などについては慎むこと、こういう地位協定の十六条がございます。これは、ベトナム行き戦車について争いが横浜、相模原というところでございましたときに、時の外務大臣大平正芳さんでございました、建設大臣が木村武雄さんでございましたが、さらに防衛庁長官、三大臣御出席をいただきまして、——地位協定草案ができまして以来三十五年にまとまりますまでに、十六条という条文は歴史的に調べてみますと挿入条文でございまして、つまり、日本国の法令尊重ということが合衆国軍隊の構成員及び軍属並びにそれらの家族の義務であるという、これを入れたわけであります。そういう特筆すべき条文でございます。これを取り上げて詰めました結果、大平さんも木村さんも防衛庁の長官も、国内法尊重の原則を認める、優先の原則を認める。このときに建設大臣の方は、日本の国内法に反するようなことを何も米軍にやらせることはないのだというようなことを、大変オーバーな答弁までしたいきさつが実はございまして、この原則はいかなる場合にも存在する、こういうふうに私は思っておりますが、この点いかがでございましょう。
  137. 山崎敏夫

    ○山崎政府委員 一般的な問題といたしまして、米軍が日本の国内において日本国の法令を尊重するということは当然のことでございます。
  138. 大出俊

    ○大出委員 これは「合衆国軍隊の構成員及び軍属並びにそれらの家族の義務である。」こうなっておりまして、ただ単なる尊重ではなくて義務とまで入っておるのであります。そこで、今回の問題の焦点は、大臣もお聞き及びだと思いますけれども、横浜市鶴見区安善町というところがございまして、一丁目、二丁目に分かれておりますが、この両方に一つずつエアリア1、エアリア2ということで米軍の貯油施設がございます。この米軍の貯油施設は中身はどういうことかと言いますと、たびたび私もこの委員会で問題にして取り上げました横浜市金沢区にございます小柴の貯油施設という巨大な貯油施設がございます。この小柴の貯油施設から海上輸送で持ってまいりまして二つの桟橋で入れたり出したりするのでありますが、ここのタンクに燃料を貯蔵をする、そのすぐそばに国鉄の安善駅という駅がございまして、ここでタンク車に載せて横田の基地などに搬送する、こういう施設でございます。中身は皆さんに承った方がいいのでありますけれども、時間の関係がございますから申し上げますが、ジェット燃料、軽油、重油、ガソリン、これらの一時貯蔵施設、こういうことになっておるわけであります。そして敷地面積は十八万三千七百平方メートルもありまして、タンクの数は片っ方が十五基、これはエアリア1でありまして、エアリア2の方に八基、合計二十三基の巨大なタンクが並んでいるわけであります。貯油能力は十三万キロリットル、こういうものでございます。この施設のすぐそばが東京瓦斯の大きな工場でございまして、しかもこのタンクの周辺はカルテックスであるとか、あるいはモービルであるとか、あるいは昭和石油であるとかという七社ばかりの石油の貯蔵施設がございまして、まさにタンク群の林立する真ん中にある、こういう地理的条件であります。そしてここから二百メートルばかりのところに密集地域でございます横浜市鶴見区の寛政町という町がございます。こういうところであります。  そして、中央防災会議その他との連絡の上で、横浜市が法律に基づきましてこの辺のタンク群を点検をしていっているわけでありますけれども、どうにも瞬時もほうっておけない。つまり、タンクの底が腐食してしまって油の流出を始めているタンクなどが合計四基、このすぐ周辺で見つかりまして、おのおのそれぞれの企業の責任において手を加えて完全なものにする、こういうことに進んでいる地域であります。これらのタンク群よりもこのエアリア1、エアリア2の二十三基のタンクはさらに建造時期が古いタンクでありまして、これから六本の油送管が配置をされておりますけれども、この油送管は安善橋という橋の周辺は表へ出ておりますが、これも大変に古い、戦前、戦中のものでありまして、日石カルテックスという企業が敷設した油送管でありまして、それを米軍が借りている形になっております。二本道路の左側に入っている油送管は調達庁の時代につくったものでありまして、調達庁の時代でございますからこれまた大変古く、これは大蔵省財産でありますけれども、実はこういうものであります。  そこで、これをしさいに点検をした消防関係の、たとえば横浜の消防局長等の手元の資料によりますと、この寛政町に民家が二百戸ばかり密集しておりますけれども、ここから二百メートル足らずのところにこの施設があるのでありますが、エアリア2のタンクが壊れてガソリンが流出し炎上すると、放射熱で二百二十メートル以内の木造家屋が火災を起こし、三十分後には延焼面積が六千八百平方メートルに広がり、鶴見区寛政町の民家百五十から二百戸が焼失、さらに隣接企業にも連鎖反応を起こすおそれが十二分にある。学者を入れて計算をしてみた結果こういう結果が出ている。これはこの地域の諸君が自治会主体の住民集会等を開きまして取り上げられている問題でもあります。それからエアリア2のタンクから一万二千キロリットルのガソリンが防油堤、高さ一・五メートルでありますが、この中に流出をし炎上した場合、この放射熱は六十メートル離れても二万キロカロリーに達する。木材の燃焼の度合いが四千キロカロリーの熱量でございますから、これで発火するわけでありますから、国鉄安善駅をはさんで約二百メートル離れた寛政町の住宅というのは完全に燃えてしまう。  これは横浜市議会でも議論をされておりまして、海の方にあるエアリア1というタンク地域、十五基ございますけれども、こちらから一万キロリットルのガソリンが流出をすると、海上に広がると、三十分後には油面の半径は三百四十メートルになる、こういう計算になるわけであります。この周辺から修理を必要とするタンクが幾つも出てきているという現実から見て放任ができない。建造年数その他から言っても、その後手を加えていない、こういうふうに見えるわけでありますから、横浜市側としては、横浜川崎地震等との関連もありまして、一遍点検をさしてもらいたいという、消防法の規定もあるわけでありますから、そういうことを米側に、それぞれ手続を踏んで申し入れをしているわけでありますが、これに対して米側の方は、御訪問ならば喜んで迎えます、質問をしてください、お答えします、その後一巡だけ認めます——一巡というのは車ですっと歩いてくるわけであります。これはいつも例がありまして、池子の弾薬庫なんかでも、質問をしてください、お答えします、一巡だけいたしますということで、私も参りましたが、一巡だけして何も見せてくれない。いつものことでありまして、横須賀でもそういうことであります。厚木でもそうであります。私どももうさんざんそういう目に遭っております。これではいずれにしても市民の安全、これを最優先をしなければならぬ時期に、しかも直下型地震の不安が非常に住民の間にあるのに、これはいささかひどくはないかという、それが実は市議会の側の議論の焦点でありまして、国会の側でもどうしてもこれを取り上げてもらいたいという市議会側の熱意もありまして、きょうはそういう意味で宮澤外務大臣に承りたい、こう思っているわけでありまして、なお細かい点ございますから後ほど申し上げますけれども、これを何らか市民の安全のために解決方途への御努力がいただけるかどうかという点をまず承りたいと思います。
  139. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 このことは前から大出委員から承っておりまして、私、詳しい現地の事情を知っているわけではございませんけれども、防衛施設庁においても米国側といろいろ話をしまして、先方もそのような視察の目的については立ち入りということに同意をするというような、基本的にはそういうことになっておるというふうに聞いておるわけでございます。  いま大出委員の言われましたことは、私はしごくもっともなことであると思います。地位協定におきましても、先ほど十六条を御引用になりましたが、それ以外にも公共の安全に妥当な考慮を払わなければならないという規定もありますので、問題は何か秘密の兵器があるかとかないかとかいうような話とはその事柄が違うように思います。事故が起こればお互いに迷惑をするということでございますから、私、基本的には大出委員の仰せられることはごもっともなことであると思いますし、したがいまして、基本的には米側もやはり同じ目的を持ってそのような、何と申しますか、安全の確保に協力をしてもらってしかるべきものだというふうに考えております。したがって、政府としてはそのような米軍の協力方の取りつけについて努力をいたすべきものであるというふうに考えます。
  140. 大出俊

    ○大出委員 私も実は苦い経験がありまして、相模原を中心にしてかつてM48戦車をとめる集団が行動を起こしたときに、道路一本でございますから、運んでくる先はノースピアでございまして、村雨橋を通る。そうすると、横浜側も黙って見てられぬということで、ああいう騒ぎになってしまったわけでありますが、正直を申し上げますと、一人の市民がけがしても自治体側の責任でもございますし、また国の責任でもございますから、当時安保課長松田さんがおやりになった時期でございまして、アメリカ局長さんが、ちょうど吉野さんがおやめになった直後でございまして、空席でございました。橘参事官の時代でありましたが、私と三人でずいぶん苦労して、大使館から米軍に行く、帰ってくる返事というのを三時間も私はアメリカ局長の部屋で待ったことがありますが、こじれるとこれまた感心しないいろいろな物の考えが入ってまいります。  これはそうではなくて、事の起こりというのは、さっき申し上げましたように、直下型地震であれだけの発表が行われたわけでありますから、それに端を発してコンビナートの防災対策をどうするかという、その問題に関係のある各省全部をお集まりいただいて、私ここで聞いたのでありますけれども、どっち聞いても要領を得ない、さんざんやりとりをいたしまして、二人の大臣にお見えをいただくようなことまでやって、結果的に自治体が前へ出てやれということになりまして、それで始めた一連の点検調査なんでありまして、決してほかに他意があるわけではない。あくまでも市民の安全——周辺の民間企業の大きなタンク全部調べたわけでありますから、専門家であり、明確な資格のある方々が行ってやったわけでありますから、その真ん中のここだけ残っているというのを、これは幾ら地位協定があって、管理権というものが三条でございますが、私も長年扱っておりますから、知らぬわけじゃないのでありますが、それにしてもなぜ、ほかに何の目的もないのだし、タンク群のある場所に違いないのだし、ほかのものがあるわけじゃないのだし、それをかたくなに一巡ですよ、質問のやりとりだけですよという念の押され方をすると、市議会というものがありますから、引き下がりようがない。文書質問なんかもたくさん出てきているわけでありますから、だから、市側としても引くに引けない。また、地域住民の側も新聞その他で書いたりする面もありましょうけれども、直下型地震が大騒ぎになったのですから、小学校の先生もちょいちょい避難訓練などもやっている地域であります。  だから、そういうことになると、これはいま大臣おっしゃいました前向きの御答弁をいただきましたが、なぜこういうことになるかという点を少しこれは掘り下げて承りたいのでありますけれども、まず消防庁の皆さんにこの種のコンビナート災害対策ということで法的な根拠を挙げていただいて、どうするのが一番いいのかということ。遮断帯の問題なんかもございますが、これまた適切な案がないというかっこうで、当時私の質問に明確な御答弁がないままに打ち過ぎているのでありますが、遮断帯のつくりようがないというようなことですね。したがいまして、そこらも含めまして一体どういうふうにこれを考えればいいか、いかがでございますか。
  141. 永井浤輔

    ○永井説明員 コンビナート地帯の防災対策でございますが、御承知のとおり石油コンビナート等災害防止法というものができまして、いままで市町村なり県の防災計画でそれぞれ定めておりましたものを県の一本の防災本部というものに統一いたしまして、そこで防災計画というものをつくる。それでさらに企業等につきまして必要な自衛防災組織等を義務づける。地域全体といたしましては、知事が本部長になりまして計画をつくりまして、それぞれ関係行政機関連絡を密にして防災対策に当たる、こういった方向で現在進めております。
  142. 大出俊

    ○大出委員 つまり、石油コンビナート等災害防止法ができましたので、これも私もやかましく言ったわけですけれども、それでできた。そこで県一本の本部をつくって、横浜市にも本部をつくって、それで実は一生懸命やっている。その一環ですね。それに協力をしない米軍ということになるとすると、これはやっぱり地域の諸君は納得しない、しょうがない。  そこで、もう少し消防庁の方に承りたいのでありますけれども、自治体は消防法に基づきまして立入検査の権限を持っている、このことに間違いないと思うのですが、いかがでございますか。
  143. 永瀬章

    ○永瀬説明員 消防法の規定によりまして自治体が危険物施設に対しまして、あるいは四条の規定によりまして一般の施設に対して立入権を持っていることは、先生指摘のとおりでございます。  ただし、個々の場所の問題になりますと、また問題はちょっと別な問題になります。
  144. 大出俊

    ○大出委員 これは消防法十六条がございますから、これで消防活動並びに危険物貯蔵施設への立入検査、これが消防組織法六条では、消防は市町村が果たすべき責務を負う、こういうふうに規定されていますね。十六条で立ち入りの権限がある。こうなっていますね。だから、自治体に権限がある。はっきりしている。これと地位協定の関係なんですね。  そこで、さっき大臣が挙げられましたが、地位協定の三条三項では、「合衆国軍隊が使用している施設及び区域における作業は、公共の安全に妥当な考慮を払って行なわなければならない。」によって安全確保が明記されている、こういうわけですね。大臣さっきちょっと触れておられましたが。そうすると、この三条の三項というのは、一体これは何なんだ。つまり、ただ単なる訓示規定であって、実効面からすれば、まあこうなっているという体裁を整えているだけのものなのか。ここから先のところは地位協定の三条三項はどう具体化されているのか、そこのところは一体どうなるのか、何にもないですね。これは十五年間たっているわけですけれども、ここのところは一体どう考えればよろしゅうございますか。目の前に横浜地震の、つい最近もイタリアに地震がありましたが、そういう戦々恐々たる住民の不安状況がある、増幅されている、こういうものを目の前にして、この三条三項にあるからいいやでは済まない。じゃ、これは一体具体的に、市民が安心する  ためにはどうならなければならぬかという、これは私は外務省の所管だと思うのでありますが、いかがでございましょう。
  145. 山崎敏夫

    ○山崎政府委員 米軍といたしましても、周辺住民の方々の安全については十分な考慮を払っておると思います。ただ、米軍はその施設、区域内において管理権を持っておりますので、日本の法令をそのまま適用するような形でのいわゆる立ち入り調査ということについては、原則の問題として受け入れることはできないということを申しておるわけでございます。したがいまして、この問題は、結局その地方公共団体と米軍との間の話し合いによって原則として解決さるべき問題ではないかと思います。現に、施設庁を通じていろいろ横浜市の方も米軍と話し合ったようでございます。そして、一応の条件が提示されたわけでございますが、横浜市の方では、そういうふうな視察の条件では不十分であるということで、その施設へ入ることは実現しなかったようでございまして、ここは外務省としても非常に残念なことでございますので、こういう話し合いについては、もう少しお互いに共通の目的、つまり公共の安全というものを頭に置いて話し合っていくべきものと考えておりまして、その点につきまして外務省としても御援助できることがあれば、できるだけのことはいたしたいと考えておる次第でございます。
  146. 大出俊

    ○大出委員 山崎さん、しばらくぶりなんですがね。私は、ロッキード問題で去年の十二月十六日に、プロキシマイヤー委員会の議事録に従いまして、どうもこれは気になってかなわぬということで、お調べ願えないかということで承ろうと思ったら、大臣はおいでにならなかったのだから全く責任はございませんが、局長答弁は、他の委員会でもとおっしゃいましたが、八月二十三日の楢崎質問に答えたんだと思いますけれども、これに類する質問があったのだが、日本に関してそういうことも全くないと言ってこれを否定なさった。全くないはずのものが大騒ぎになっているわけでして、欠陥が出てしまって騒いでも、これはしようがないのですね。やはり欠陥が出ない前に手は打たなければならぬことになる。私はそこを心配するわけであります。  ついでに述べたので、きょうここでロッキードのことなどをやっていると時間がなくなってしまうものですからやめたわけですけれども、また特別委員会等もできるわけでございますからあれですけれども、今度も、横浜市長あての外務省の回答は山崎さんの回答なんですね。大臣じゃないです。市の方からは、これはどなたの名前だって結構でございますけれども、中身いかんなので、大臣あてにここに二月二十七日付でお願いをしたわけですね。そうしたら、山崎さんの方から回答が来て、「防衛施設庁、消防庁ともに外務省の回答による。」という三くだり半が来ているわけですね。この山崎さんの御回答は、一つは、「外国軍隊の駐留を認めている場合に、受入国としては、派遣国又は当該軍隊の同意がない限り、その駐留施設・区域内に立入って調査することができないのは一般国際法上の原則であり、在日米軍に対してもこの原則は適用があります。」こう述べられている。つまり、地位協定三条一項、管理権といいうのをその上にお出しになっている。そして二のところで、「これら危険物取扱施設等の管理は公共の安全、就中当該地方公共団体の住民の安全を脅かすことのないよう、その安全に妥当な考慮る払って行われなくてはならないことは言うまでもなく、この趣旨は、地位協定第三条三項に規定されている通りであります。」こうなっている。  そこで、私が承っているのは、さっき申し上げたように、規定はそうなっているのだが、しかし、それは地域住民の側や自治体の側に立ってみて、しからば一体、具体的にどう安全なのか。どう安全の措置を、妥当な考慮、じゃどういう妥当な考慮を払っておられるのか。御訪問ならば歓迎しますよ、質問をしてください、答えますよ、一巡だけ認めますから、ぐるっと回ってお帰りください。これじゃ、地位協定というのはまさに訓示規定、うたい文句にすぎない。中身は何にもない。その何にもないものを地位協定に表現されているとおり、あなたはお書きになって答えておられるというにすぎない。こういう無責任な回答は、事市民ということですから、あり得ないはずだと私は実は思うのです。  三番目に何を言っているかというと、「貴市」つまり横浜市「が鶴見貯油施設の視察、同施設に関する実情聴取等を希望されるのであれば、現地限りで調整可能であると考えられます。」こうくっついているのですね。これもまたずいぶん不親切きわまると私は実は思うのですね。まあ現地でやりなよ、ということなんですな、これは。そうでしょう。これは私は受け取れぬですよ。  現に横須賀基地で油漏れがあって大騒ぎした直後なんですね。しかも、これはいままでに、神奈川というのは基地県でございますから、至るところ基地の問題で、この種のことでひどい目に遭っっている。たくさん例がございます。一、二挙げておきますが、四十九年の九月三十日、ついこの間ですよ。大和市、綾瀬町にまたがる例の厚木の航空基地で米軍の燃料タンクのパイプが破損して飛行機用燃料が大量に漏れた。引火爆発の危険ということで大騒動になって、米軍消防隊から逆に通報してきたのですよ、こっちの住民に避難してくれと言って。それで、住民はあわてて、とるものもとりあえず逃げたのです。これは大騒動だったんですよ、私は取り上げる機会がなくて質問せずにしまいましたが。この原因を調べた。ところが、事故の三日前の四十九年の九月二十七日に、この地域に震度四の地震があった。このためにタンクから滑走路、つまり滑ってくる通路、ここに地下油送管があるのですけれども、これに亀裂が入った。それで油が噴出して、米軍消防隊の総出動になった。そうして米軍の消防隊の方から避難してくれと通報してきた。あわててこれは大騒動で避難したんですよ。これはもうつい最近の話です。しかも、これはさっきの小柴から持ってくるのですけれども、小柴の方は三十四年の十二月、これも大騒動。これは米軍タンカーなどもっと入っておるから、どんどん油が出てくる、基地の方からも出てくる。これは漁協が補償請求いたしまして、米軍は大変な損失補償を払っております。  それから、昭和三十八年の十二月十二日、これも小柴の貯油施設から大量の油流出、これもまた損失補償申請がありまして、これもまた大量の補償金を米側が払っている。たくさんある。  こういう時期、こういう地域なのですから、私は、この答え方というのは余りといえばひどくはないかという気がするのですが、いかがでございますか。
  147. 山崎敏夫

    ○山崎政府委員 横浜市に対する回答が十分われわれの意を尽くさなかったことはまことに申しわけないと思います。ただ、この種の地方公共団体からの申し出に関しましては、やはり一応それぞれ防衛施設庁の事務所がございますので、そこを通じて米軍と接触していただくというたてまえになっておりますので、そのようにお願いし、また現実に横浜市と米軍との間で防衛施設局を通じて話し合いが行われたわけでございます。その話がまとまらなかったことは残念でございまして、われわれとしても、横浜市からも承りましたし、また、この問題について米軍とも話はしております。  ただ、米軍としても、地方公共団体からの申し出もあるので、一応そういう現地のレベルで話し合ってくれ、それについてはもちろんわれわれとも連絡をとってできるだけのことはしたいということを言っております。ただ、先ほどから申し上げましたように、日本法令のいわば全面的適用の問題として施設に立ち入り調査をするんだというふうなたてまえでこられると、米軍としても非常に対応しにくいということを言っておりますので、この点はもう少しお互いに、安全の問題でございますから話し合う余地があるのではないかと私は考える次第でございます。
  148. 大出俊

    ○大出委員 私、横浜市にこの山崎さんの回答をくれと言ったらよこしたのですよ、担当の消防局が。ところが、よこしたのを見たら、ここに赤でこれだけは聞いてくれといって走り書きがしてありまして、一が、関係政府機関は従来から自治体が取り組んでいる石油コンビナート防災についてどのように認識しておられるのか聞いていただきたいというのが一つ。それから二番目に、地位協定によるたてまえ論というのは初めからわかっているというわけですね。これとは別に、本市の要請を受けて実際に米軍とどういう折衝をなさってこられたのか、合意を求めた事実があるのか、そこらもあわせて聞いてほしいとここに書いてあるのですね。  これも担当者の要望だと思うので、一生懸命やっていますから……。きのうも私現地へ行きまして、消防局だれか来てくれと言ったら来ましたが、一生懸命なんですよ。せっかく書いてありますからこれは答えていただけませんか、山崎さん、具体的にどういうところとどう折衝なさって……。いかがでございますか。
  149. 斎藤一郎

    ○斎藤(一)政府委員 ただいまお尋ねの件については、先ほどアメリカ局長から話がございましたように、現地における折衝は防衛施設庁がやっておりますので、その経緯をかいつまんでお答え申し上げます。  先ほど来大出先生からお話があったように、ことしの一月十九日に市から文書でもって横浜の施設局にお話がございました。これは先ほど来御指摘があったように、水島の精油所のタンクの重油が流れた事故、あるいは四日市のコンビナート火災、あるいはまた徳山の出光興産の火災、そういう大型の災害が発生するので、この川崎地区についても直下型の地震があるという説もあるから、大いに防災対策を立てるんだということをお書きになって、この米軍の施設に対する、鶴見の施設に対する立ち入り実施を、立ち入りの日を二月二十日、それから検査は横浜市の消防職員がやる。検査項目は四項目ございまして、消防用設備及び消防資機材の状況、二つ目は、屋外タンクの老朽度及び沈下状況を調べたい。三番目は、防油堤の状況を調べたい。四番目は、危険物施設の実態把握をしたいという申し入れがございまして、これがそもそもいまお尋ねの鶴見の関係についての立ち入り調査の初めでございます。  そこで、私の方ではこれを受けまして、現地の鶴見の施設の関係者を通じて米軍側に、いま申し入れがございましたとほとんど同じような内容のことを申し述べて、そうして立ち入り希望日を二月二十日ごろ、立ち入り者は消防局の職員、立ち入りの対象としていまお読みした四つのことを書いて、さらに一つよけいに将来の防災協力についてよく協議したいという内容のことを米側に申し入れをしたわけでございます。それに対する回答が二月の初めにございまして、先ほど来先生がお話しになったような回答になっている。これに対して、市の方にその回答をお伝えしたところ、市から再度申し入れがございまして、これはなかなか詳しく、二月二十七日でしたか、再度詳しい申し入れがありまして、われわれとしてはこれに基づいて関係の省庁の間で検討して、そして先ほど来お話しの四月十四日の、わが方は外務省の局長の回答の線で、三下り半とおっしゃいましたが、簡単にお答えしたという経緯になっております。
  150. 大出俊

    ○大出委員 大臣、いまの御答弁でわかったのですけれども、山崎さんはああいうふうにお答えになったけれども、山崎さんのところでおやりになったわけじゃない。さっき外務省がおやりになったようにお答えになったので念のために聞いたのですけれども、そうじゃなくて、施設庁出先がやりとりをされたわけですね、これははっきりしたわけですけれども。どうもそれじゃちょっと困ると私は思いますよ。前に進まないんじゃないかと思うんですよ。  というのは、この米軍から来た文書はいただいております。覚書の形になっております。これは施設部長銅崎さんあてに来ているんですね。中身を読みますと、前はアクセサリーがついておりまして、実体はここに書いてあるんですけれども、「横浜市消防職員が昭和五十一年二月二十日に訪問されることについての昭和五十一年一月二十六日付貴要請に対し、在日米軍は該訪問者を歓迎するとお答えいたします。」歓迎してくれるのはいいんですよ。「横浜市の代表者には業務の概要、それから施設、消防の安全手順等についての質疑応答を伴った包括的な説明を行います。これら話し合いの」——だから話し合いをするわけですね。「話し合いの後施設一巡がございます。」こういう回答なんです。いらっしゃい、歓迎します、聞いてください、答えます、終わったら一巡して、はいさようなら、こういう答えなんです。これは幾ら何でも、市議会でいろいろ議論をしてやっているわけですから、そうでございますかとは言えぬですよ、市の側として。そうでしょう。  しかも、この後に、大変詳しいという斎藤さんからお話がございましたが、これはさっき御答弁いただきました石油コンビナート等災害防止法という法律があって、県一本で本部をつくってこういうふうにやれとなっているんですよ。だから、きわめて詳細な地震災害等に関するコンビナート災害防止法なんですから、だから、それに基づいてこれこれのことを点検、調査をしなければならぬということなんだからといって、細かく書いたということなんです。これは全く国内法の指示に従ってやっているわけなんで、そこから全然一歩も出ていない。それを宮澤さんのところからの、つまり山崎さんの答弁というのは、さっき読み上げたとおりの全く三下り半みたいなのがありまして、そうして防衛施設庁答弁の方は外務省一任なんですよ。  これは斎藤防衛施設庁長官の横浜飛鳥田市長あての文書です。この文書を読みますと、「参照文書により照会がありましたこのことについて、次のとおり回答いたします。すなわち在日米軍施設区域は、いわゆる「地位協定」の規定するところに従い、米軍の管理権の下に置かれており、施設区域である本件米軍貯油施設の安全管理等は、米軍がその責任において行われるものでこの点については、昭和五十一年四月一日」——先月です。「四月一日付外務省アメリカ局長発の貴職あて回答文書のとおりでありますから御了承ください。」と書いてある。  これは議会が法律を決めて石油コンビナート等災害防止法というのをこしらえて、何とかこの地域の災害を防がなければならぬ。それには起こってからでは間に合わないんだからこうやれ、本部は県一本でということで法律に基づいて進めているわけですね。そのやってきた中で、七社ある、林立している巨大なタンク群の真ん中に米軍のものがあって、これだけは手がつけられない。その周辺ではヒヤッとするものが幾つも出てきているという現実、だから住民だって心配をする。市側だってこれはいかぬということだから、それを点検をさしてくれと意を尽くして、実は水島事故だ何だ、一ぱい挙げて、こういうこともあるんだから、こういう法律もできたんだからそこだけひとつやらしてくれと言っているわけですから、それを外務省答弁もさることながら、また防衛施設庁はそれ以上短い三下り半じゃ——三下り半までないぐらいの文書ですよ、あなたの方の出したものは。これでは幾ら何でも筋が通らな過ぎるですよ、これだけ災害防止が叫ばれている世の中に。  地震の周期説からいって、日本というのはその周期説に入ってきているわけですから、これは学者が認めているとおり、けさの新聞さっき例に挙げましたが、地震帯というのは中国から韓国から日本、みんなつながっているという学者の発表なんです。朝日新聞大きく書いていますが、周期説から言っても入ってきている、いつあるかわからないという、だから防災対策急がなければならぬという。この法律もそうですか、コンビナートというのは真ん中だけ抜けたらだめなんだということになっているんだ、全部やらなければだめだ。一カ所抜けたってそこが何かあれば、これはもう七社のタンク群一挙に火を噴くわけですから、だからその真ん中の安全点検ができないという、これが地位協定三条三項によってというだけの話では説得のしようもないし納得のしようもない。  どうですか大臣、これ私はもう少し、せっかく国会も議論して新しい法律もつくったのですから、防災体制をということでやっと進めてきたわけですから、ほかのことじゃないのですから、小柴があり、タイアップしていて運んでくる貯油施設、だれも知っているわけですから、もう少しこれは外務省の側でも御努力を願う、そういう前向きな姿勢をいただけませんですか、いかがでございますか。
  151. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 確かに大出委員の言われましたように、この文章にしますといかにもそっけないといいますか、そういうことに役所というのはよくなるもので御承知のようなことでございますが、実際にはいろいろ話はしておるらしいのです。事柄は確かに大出委員の言われるようにずいぶん時間もたっておるわけですから、年月もたっておるわけですから危ないかもしれませんですね。事故があれば本当にお互いに困るということまではっきりしているので、ですから米軍もおいでになっちゃ困ると言っているわけでもないわけでして、聞いてみますと、その検査というようなことで横浜市としては当然検査には一定の基準があって一定の方式もある、それをそのまま言っては酷かもしれませんが、そのとおりにやはりやるんだというような御主張があるんだろう、そうすると理屈で言えば同意のもとにおいでを願うのだからそう基本の国内法が真っすぐに適用される場合と同じようにおっしゃってもらっても困りますとかなんとかいうようなことで、恐らくはその検査というような言葉一つをとりましてもその権限がある検査であるか、同意に基づく視察というのもいけませんが、同意に基づくところのチェックであるかというような、そこらあたりにお互いに何かこだわりでもあるのではないかと私想像するのです。  しかし、基本的には大出委員のおっしゃっていることは、私は目的そのものは間違っていないし、米軍もそのことを拒否するということでもないようでございますから、ひとつ横浜市は実際上の目的を達せられるように、また米軍としてはいわゆる地位協定上のたてまえと申しますか、それは崩さないというような、彼らもまた上に対していろいろ立場もあるのでございましょうから、そういうようなことで何とか話していけそうなケースであると私は思うのでございます。というのは、大出委員のおっしゃっていらっしゃることが私は無理でないと思うわけでございますから、そういうふうに少しまた政府としても、私は防衛施設庁にかわってちょっと返事をするわけにはいかないのでございますけれども考えるとして、横浜市におかれてもその辺はひとつ実際の目的を達すればいいというふうに考えてみていただいてはどうだろうかと思います。
  152. 大出俊

    ○大出委員 大臣のおっしゃっている、何とか前向きに市民の安全をという気持ちがあっておっしゃっているお気持ちは私もよくわかるのですが、実は宮澤さんあてに横浜市が差し上げた五十一年二月十七日の文書には、「出先でいろいろやりとりしてもすぐたてまえ論になってしまう、だから改めて日米合同委員会などを通じて本市の立入検査が」——検査という言葉が悪いと言うならどうなるかやってみなければわかりませんけれども、「実施できるよう取り計らわれるとともに、今回の措置に関連して次の点について」ということで照会しているわけですね。何かそういうふうな措置をとって上の方でひとつほぐしてくれぬか。出先で物を言うとすぐに、一巡ですよ、いらっしゃい、質疑応答しますよということになってしまう。それでは対市民という意味で安全の保障を得るわけにいかない、それは市の方としては困る、だから合同委員会か何かを通じて、事を荒立てようというのではないのですから、話してくれないかということを書いてあるわけですね。ところが、御回答はいわく地位協定三条三項ですよと言う、ぽんと出てきている、こういうことなんですね。だから、筋の通らぬことを市側も出しているわけじゃないので、そこのところを、だからもう少し何とかこの種の法律もできたわけですから、防災対策に小中学校の先生まで入れて、町内会まで入って一生懸命やっている地域なんですから、そこらが納得できるような話にほぐしていただけぬかという気持ちがございまして、それで私は取り上げているわけなんですが、大変くどいようでございますが、いかがでございますか。
  153. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 多少こうたてまえ論でぎくしゃくしているようなところがあるのではないかと思いますから、おっしゃることはよくわかっておりますし、米側もひどくわからぬことをもとから言っておるわけでもないようでございますから、私の方でもう少し事をほぐさせていただきたいと思います。
  154. 大出俊

    ○大出委員 大臣、せっかく前向きで答えていただいておりますから、事筋論云々じゃなくて、市民対策、防災対策ですから、しかも新しい法律もできておるわけでございますから、一生懸命やっている現場の諸君の気持ちもあり、住民の側の気持ちもございますから、ぜひひとつ御努力いただきたいと思います。  あわせて幾つかこの際申し上げておきたいのでありますが、この種のことはやはりこの基本的な地位協定三条三項などの中身についてもう少し前に出て、米側との間で地位協定そのものを手直しができないとすればできないような、この種のことは方々に例がありますから、何かそこに、皆さんすでに御存じのとおりなんですけれども基地基地の外という関係における消防対策なんというのは協定を結んでいるわけですね、たくさん方々でずっと現地ごとに。だから、そこらのことも踏まえるともう少し私はやりようがあるように思うのですよ。何しろこれは地位協定ができてから十五年もたっているのですから、だからそこらも考えてひとつ根本的なことを御検討願えないかという気がするのですね。こんなことを一々たてまえ論みたいなことでやり合っていたのでは、これは地域の安全対策なんて進みはせぬですから、基地はまだたくさん横浜、神奈川にございますので、全国にもあるわけですから、ひとつ基本的に少しこの辺のことをどうするかということを御検討願いたいという気がするのですけれども、いかがでございますか。いまの点はいまの点で結構でございますから。
  155. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 ホストとゲストということなのでしょうが、御承知のように十何年、二十年のいきさつがいろいろなときにいろいろなことがあるものでございますから、お互いぎくしゃくしたようなことが出てくる場合があるのだろうと思います。協定自身が、それは本当を申しますと確かに世の中相当変わっているわけでございますけれども、これはもう運用で読めないことはないケースがほとんどだろうと思いますので、要するに運用するお互いの心構えということになるのであろうと思います。また、米国側は米国側で上の方はわかっておっても、だんだん現地に行きますと具体的な事象がいろいろあって、お互いに出先ではかたくなるというようなこともあるのだろうと思いますので、運営について責任者の間で心構えにつきまして随時よく話し合いをしていきたいと思います。
  156. 大出俊

    ○大出委員 運用でやれないことはもちろんないわけですから、ぜひひとつこれはいまのような形でお進めをいただきたいと思います。  それからもう一つ、これはさっき私が取り上げました六つの石油の輸送管の件なんですけれども、私、きのうそこを全部歩いて克明に見てきました。これは何とも古いものでございまして、鋳鉄管が表になっているのですけれども、それも真っ赤にさびてしまって腐食しているところもありというぐあいの管でございます。危ないなと思うところも何カ所かあるわけであります。橋の下なんというのは橋の下の真ん中をそのままむき出しで走っています。しかも、タンクから出てくるところから道路の中心線を走ってきているのですね。  これは建設省の皆さんに伺っておきたいのでありますが、現地を歩いて、土かぶりと言ったらわかるのだろうと思いますが、地下の埋設の仕方ですね、これがナンバーワン、ナンバーツー、ナンバースリーと三カ所点検をしているわけですけれども、これを見ると、ナンバーワンの点検の場所は三十三センチ、二十九センチ、二十三センチ、二十七センチとある、この油の輸送管ですね。それが安善駅まで走っているわけです。三十三センチ、二十九センチ、二十三センチ、二十七センチというのがナンバーワンのところ。ナンバーツーの点検地は四十六センチ、四十センチ、四十センチ、四十九センチ。ナンバースリーのところで四十一センチ、三十五センチ、三十四センチ、四十四センチ。この油の輸送管が走っているそこから一・五メートルないし二・五メートルぐらいのところが東京瓦斯の大きな工場になっているわけですから、これは漏れれば危ないわけであります。六本のうち二本は使っていないと言いますけれども、使っていなくても使おうと思えば使えるわけであります。これは新しい法律によりますと一・五メートルなければならぬはずだと私は思うわけでありますが、施設庁との協議のやりとりの中で、古いものは法律ができる前だからしようがないのだという話が出てきているようですけれども、現に危険なら何とかしなければならぬ。一本ひび割れて水があふれている。水道局が行って掘ってみたら、それはパイプラインのパイプの一本だったという。それで大騒動になったといういきさつまで最近ある。いま何をやっているのだ、危ないじゃないかと言ったら、市が仮に舗装をしまして、つまり土かぶりが少ないのでひびが入っている管もあるものですから、市側がそれの応急処理をして舗装をして振動を下げるような形にしているわけですね。どうもこれがまことに危な過ぎるわけですが、建設省の道路法に基づくこの辺のところはどういうことに理解すればよろしゅうございますか。
  157. 海谷基治

    ○海谷説明員 ただいま先生おっしゃいましたこの地区におきます石油パイプラインについてでございますけれども、おっしゃいましたように、現在六本この地区に占用物件として存在しているというふうに考えております。そのうち四本につきましては、先生おっしゃいましたように確かに二十数センチから三十センチ前後の土かぶりでありますけれども、そういうことだということに報告を受けております。それからあとの二本は九十センチぐらいあるというふうに聞いております。ただし、その浅い方の四本はかなり前から使用はされておらないということのようでございまして、使用されておりますのは大体九十センチぐらいあるというふうに横浜市の方からも聞いておるわけでございます。  それから、現在におきます道路法との関係でありますけれども、確かに新しい現在の道路の体系におきましては、こういう石油輸送管につきましては、市街地であるとかあるいは市街地でないとか多少の違いはありますけれども、大体一メートル五十ぐらいの土かぶりといいますか深度、そういうことになっておりますけれども、これは四十八年にそういうふうに改正をいたしましてそれで一メートル五十ということになっておるわけでございまして、そのときの改正のいわゆる経過規定ということもございまして、それ以前のものにつきましてはそういうものを適用にならない、こういうことに一応制度上はなっておるわけでございます。しかし、そういう適用除外がどうとかということではなしに、道路管理者の立場というものもございますから、安全上の立場から、われわれとしては適用除外とかなんとかいうこととはまた別の見地からそういう油送管の構造その他を考えましてその都度指導していく、そういう考え方をとっておるわけでございます。
  158. 大出俊

    ○大出委員 これはいま四本はと言いますが、この四本の中の二本はデッドパイプとかなんとか表示してある。これは死に管だという。二本はちゃんと生きている管でしょう。それでこっち側に新しく二本入っている。この四本は何かというと、日石カルテックスの石油輸送管を米軍が今日でも借りている。その四本、べらぼうに古いものですが、四本のうち二本は使っていませんと明確に表示している。二本は生きている管になっている。こちらの方が、いま申し上げた二十センチとか古い管ですから、べらぼうに浅いのですね。腐食しているから動かせないのです。新しい方で九十センチというのだけれども、これは一メートル五十センチなければならぬというふうに四十八年に改正したわけですね。百五十センチというものが九十センチとか九十二センチしかない。  なぜ一体百五十センチに改正したかというと、危険だからなんです。ただそのときに経過措置として、ぶうぶう言ういろいろな者が出てくるから、まあそれ以前のものはとりあえずしようがない、一遍で日本じゅうすべてを直すわけにはいかないのだから。だけれども、百五十にしたのは、走るトラックだの何だのの重量もどんどんふえるばかりですよ、最近は十八トンなんというものじゃない。鋼製橋梁耐荷重量基準というのが当時あった、環状七号なんかオリンピックの前につくるときに。あれは十八トンですよ。だから橋の角がみんなだめになっちゃった。鋼製橋梁耐荷重量基準というのをかつてぼくは調べたことがある。十八トンになっている。それで高速道路を建築している。ところが、トラックがどんどん重くなるものだから、みんなそこがだめになってくる。同じ意味で、ここのところを通っているトラックだって同じように大きくなっているわけだから、百五十なければならぬということに改正したのだ。  そうだとすれば、パイプラインはジェット燃料を初め石油が通っているので危ないからふやしたのだから、そういうのはやはり新しい基準に従わなければならぬ筋合いになるだろう。横浜市の側としては協議云々のこともあるようですけれども、危なくて仕方がない。横須賀の例もある。したがって、道路管理者の責任においてこれはもう油を送ることは認めない、今日そこまでいこうかというところなんですね。それを古いのは仕方がないのだと言ってほっておく手はないだろうと私は思う。ここのところはいかがでございますか。
  159. 海谷基治

    ○海谷説明員 実はこの二本につきましては、古いことで詳しいことはわからないわけでございますけれども、三十年ぐらいに、さっき先生も調達庁とかおっしゃいましたけれども、その時代に敷設したというふうには聞いておるわけでございます。したがいまして、二十年前でございますので、そのころとしましてはあるいは九十センチぐらいで適当ということであったろうというふうに推測はいたしますけれども、少なくとも現在の道路法の体系からいきますと、一メートル五十という基準がございます。しかし、これはくどいようでございますけれども、新しく敷設する場合の基準というふうに一応考えられるわけでございますので、直ちにそれをそのまま適用することはいいかどうか。それからまた、この問題の特殊性ということもございますので、その辺を勘案しまして横浜市とも十分協議していきたいと思っておるわけでございます。聞くところによりますと、横浜市と施設庁の方ですでにこの問題につきましてかなり突っ込んだ協議が何遍も行われておるというふうに聞いておりますので、われわれとしましても、その協議の結果を見ていきたい。それから、場合によりましては、もちろん道路管理者という立場にございますので、道路の安全という観点から、われわれとしましてもひとつ施設庁と協議なり打ち合わせをしていきたいというふうに考えておる次第でございます。
  160. 大出俊

    ○大出委員 これは横浜市の道路局が建設省の道路占用埋設管に関する質問をしているわけですね。建設省道路局路政課長補佐の方が答えておるわけですね。その答えを読んでみますといろいろなことがございますが、それは省略いたします。「道路法施行令第十四条の二に定める石油管の占用場所及び構造基準の技術的細目は現在まだ制定されていない。」こうなっているのです。いないの、だからしようがない。「消防関係法規、石油パイプライン事業法等を勘案しながら市において独自に行政指導をされて結構である。」こう言っているのですね。細目は決まっていないのだから市でやってください、結構ですからというわけだから、それでは市の方でやろう、こういう危なっかしいものはやめてもらおうじゃないかという進み方にいまなっている。そこであわてて、施設庁の皆さんの方は、やめろなんということじゃ困ってしまうからということで協議が始まっているわけですね。これは事安全にかかわるのですからね。  もう一点だけ、これは時間の関係ではしょりますが、つけ加えておきたいのであります。安善町一丁目、二丁目と申しましたが、どうも最近はこの安善町は安全じゃないのです、危険町なんですね、不安全町。ここにまた御丁寧に安善橋という橋がかかっているのですよ。この安善橋は何と昭和二年にできた橋なんです。私は行ってみてびっくりしました。橋の欄干がないのです。コンクリが割れていてこんなになっちゃって、綱で引っ張っている。それで車が通るのを見ていると、こんなに揺れちゃうのです。安善橋じゃなくてまさに危険橋なんです。その危険橋のたもとの石油パイプラインが四本並んでいる角に、たばこを吸っちゃいかぬという喫煙を禁止する大きな棒くいが、消防局と石油関係七社の連名で立っているのですよ。何と横浜市の中で天下の公道でたばこが吸えない。歩きながら吸わぬ方がいいですけれども、天下の公道でたばこの吸えない場所がほかにあるかと言ったら、実はここ一カ所しかない、こう言うのです。しかも法律、条例で規制できないのです。ここはパイプラインが四本あって橋と連動しているのですから、橋が揺れれば揺れるのです。そこを毎日石油を送っているのです。その橋のこっち側を見ると、そこに安全壁があって、国鉄のタンク車がずらっと並んでいるのです。それに毎日そこでパイプで入れて積み込んで、横田に向けて走っているわけです。だから地域の皆さんが協議の上で、ここから向こうは一切たばこを吸っちゃいけないということを協定して、ものすごく大きな棒くいを立てた、こういう地域なんです。そこの前の土かぶりが片や二十何センチ、片や九十センチ、四十八年から危ないというので新法で百五十センチにしているのに、しかもぶっ壊れ橋のところにパイプがつってあるのです。それでしようがないので、横浜市に聞いてみたら、金のないところを、市財政で一億円その橋に金をかけて、ことしから橋をかけ直す、合計で四億三千万かかるわけですが、ことし一億、来年三億三千万かけてこの橋を直す、こういうことなんですね。さて、この橋を直そうということなのだが、その橋の下は、こっちに四本、こっちに二本、石油パイプラインを抱えちゃっておるわけですよ。そこで市側としては、言うことを聞いてくれないのなら油送管を撤去してくれ、使ってないのだからと言うなら、使ってないものはどけてくれ、こういうことにいまなっておるわけですね。そういう地域の諸君なんというのはかっかしているから、そんないいかげんなものはみんなどけさせろと言って騒いでいる。そこから二百メーター離れたところは人家の密集地域です。工場ばい煙の大変な、潮田ぜんそくの一角で、環境の非常に悪いところですからね。施設庁の皆さんの側とか建設省の皆さんの側とか、出先は相当おありになるのだから、そこらはやはり気をつけて対処していただかないと不測のトラブルが起きかねないという気が私はするのです。それで心配になって、実は大臣のところで取り上げさせていただいたのですが、何とかてっぺんの政治力をいただいてこの問題を解決していただきたい。  何よりもその地域の人の安全を考えなければいかぬわけであます。ここにも書いてありますが、送油停止なんという措置をとろうというようなことまで相談をされていたりするので、かつての車両制限令じゃありませんけれども、例の車両制限令の騒ぎがあったわけですが、そういうことになるとまた妙なことになりますから、ぜひひとつそこらのところは気を使って安全の措置をとっていただきたい。まさに安善町が本当の安全町になるように、安善橋が危険橋じゃ困るので、そこらの御協力をぜひいただきたい。お願いをしておきたいのですが、いかがでございますか。
  161. 斎藤一郎

    ○斎藤(一)政府委員 ただいまお話がございましたパイプラインの問題については、私も地元要望をたびたび伺って、先生ほど詳しくないかもしれませんが承知しておりますので、ことにその安善橋の下のパイプラインの問題については、安全の観点から対処したいと思って、施設庁の立場でも努力し、市とよく話をしまして、あるいは米軍とも話をしまして措置をしていきたいと考えております。
  162. 大出俊

    ○大出委員 いろいろございますけれども、時間も遅くなっておりますので、ごくかいつまんでお願いをしたわけでありますが、大臣、前向きの御答弁をいただきましたので、ぜひひとつほぐしていただきますようにお願いを申し上げて、この件は終わらしていただきたい。  それからもう一点、これはあわせて承っておきたいわけでありますが、相模原の補給廠、これは例の大きな騒ぎになったところであります。この相模原補給廠は、現在千人ぐらいの整備、テスト等の一般の人がいるのでしょうけれども、ここに赤羽、これは昔の兵器廠でございますが、そこの自衛隊関係の方であるとか、あるいは十条、これは陸上の武器補給の支廠でございましょうけれども、それが入ってくるという話が前々からあります。北区という自治体は出ていってくれということでございまして、相模原周辺では自治体を含めまして大変心配をしておるわけでありますけれども、ここらのところはどうお考えでございますか。
  163. 斎藤一郎

    ○斎藤(一)政府委員 いまお尋ねの件は、突然のことなので、私詳細に調査をしておりますが、そういう話はいまのところ存じませんので、よく調べてはみたいと思います。
  164. 大出俊

    ○大出委員 この間、平井参事官にお見えいただいて承りましたら、赤羽、十条というのは土浦との関係で立地条件が非常によくて、ここにずっと置いてきているのだけれども、相模原が返ってくるということになると、昔、相模原に自衛隊がという考え方が一時あった、あるいは話は再燃をするかもというところまでなんです。だから、当時私は、相模原の市会議員の諸君に北区区役所まで行っていただいて話し合いをしてもらったことまであるのでありますが、最近の相模原補給施設の動向と絡んで、またまた風聞が耳に入る時期になったということで地元も再燃をしているわけであります。いまそこで御答弁をいただきにくいのであれば、時間がもったいないわけでありますから、実情を申し上げて、終わりくらいまでにもしお答えをいただければ、お答えをいただきたいと思います。
  165. 丸山昂

    ○丸山政府委員 ただいま先生指摘の相模原の米軍の補給廠でございますが、私どもの自衛隊の配備予定地として相模原の補給廠を使うという計画はございません。はっきり申し上げられます。
  166. 大出俊

    ○大出委員 ないということでございますから、当面はそれを承っておきます。  次に、瀬谷区でございますけれども、海軍道路というのがございまして、横浜市瀬谷の通信基地の両方に分ける真ん中にあるわけでありますが、これも実は市側が、いろいろなことがございましたが、私ども仲に入りまして、その周辺は住宅が密集してしまいましたので赤土のままで歩きもできないところでございましたから、この委員会でも取り上げさしていただいて、各方面の御努力をいただき、りっぱな舗装もしていまは通路として住民が大変喜んでいるわけであります。ところが、ここで交通事故が起こりまして大けがをするようなことがあった。ところが、これは米軍の用地だから米側は道路じゃないと言うわけですね。また、一般法規からいっても道路じゃないから道路法規の適用ができないという妙な話が出てきたりして困ったことがございまして、したがって、これだけ周辺の諸君、家屋も密集していて道路として現に使っているわけだから、横浜市に移管をしてもらって横浜市が保守管理をするというはっきりしたことにしたいという当然な地域の要求でありました。この問題は一体どういうふうにお考えなのか。途中省略をいたしますが、当面の考えを承りたいのであります。
  167. 斎藤一郎

    ○斎藤(一)政府委員 ただいまお尋ねのいわゆる上瀬谷の通称海軍道路の問題は、お話がございましたように、現況においては施設の外にある部分と施設の中を通っている部分が大変ふつり合いでございまして、地元の交通環境を著しく妨げておるというふうに私は認識いたしますので、地元方々の御要望もさもありなんという気がしますが、一方、御承知のように上瀬谷通信場は大変むずかしい規制をしておりますので、たとえば道路を拡幅して車がたくさん通るようになると障害がありゃせぬかとか、米軍は米軍の業務の態様からいっていろいろ取り越し苦労のようなところもございますが、要望がございますので、私どもとしては地元要望のもっともなことを踏まえまして米軍に強力に折衝しまして、そしてできるだけ米軍に要望をかなえてもらうようにと思っておりますが、見通しとしてはなかなか米軍側もかたかろうと思うので安易なお約束を申し上げるわけにはまいりませんが、地元要望が少しでも満たせるようにできればという考えでおります。
  168. 大出俊

    ○大出委員 時間がございませんからこの件もう一件だけ承りますが、先ほど例に挙げました安善の貯油施設に運んでくるもとになっております小柴の貯油施設、十八号タンクが返還した土地の下にいつの間にかつくられたというようなことで、何遍か私この委員会で取り上げてまいりました。また幾つも事故も起こっております。これは現在予算もつき、進んでいるわけでありますが、現状をどういうふうに把握すればよろしゅうございますか、簡単にお答えをいただきたい。
  169. 斎藤一郎

    ○斎藤(一)政府委員 小柴の貯油施設はたびたび先生から御質問を受けまして私自身もお答えしたところでございますが、米側と折衝を重ねた結果、施設内に代替の貯油タンクをこしらえてくれれば返還に応ずるという意向が示されましたので、昭和五十一年度から二カ年計画で所要の工事に着手するという考えで、昭和五十一年度予算としては貯油タンク二基分三億七千八百万円を計上しておりますので、予算が成立しましたのでこれを実行に移したいというふうに思っております。あと昭和五十二年度分としていまのところ二億九千八百万円で残りの二基を施設したいというふうに思っておりますが、五十一年度については予算が確定したことでございますし、なるたけ早い機会に着工したいというふうに思っております。
  170. 大出俊

    ○大出委員 もう一点。  前に久保横浜防衛施設局長さんの時代に、米軍との折衝の間に遊休地四万五千平米ばかりの返還話が進んだことがあるのでありますが、この件についてもあわせてお答えおきいただきたいのであります。
  171. 銅崎富司

    銅崎政府委員 いまお尋ねの四万五千平米につきましては、市の方から跡地利用計画について大蔵の所管の方に跡地利用計画の申請の手続をしているというふうに聞いております。それではっきりしますれば返還の方向で考えていきたいと思っております。
  172. 大出俊

    ○大出委員 そうすると、たとえば施設委員会でやるとかそういうふうな手続で進んでいくというふうな方向になるわけでございますか。
  173. 銅崎富司

    銅崎政府委員 跡地計画が決まりまして返還の申請が出てまいりますと、そういう施設委員会で取り上げて米側と話し合うということになります。
  174. 大出俊

    ○大出委員 わかりました。ついでと言ったら申しわけないのですが、土地の問題が出ましたのでちょっと承っておいたわけであります。  もう一点だけ別な問題でちょっと承っておきたいと思います。  私は、この委員会で遺骨収集問題を何回かにわたって細かく突っ込んだ質問を続けてきた経緯があるのでありますが、どうも、外務大臣おいでになるのですけれども、私が長年調べてその都度承ってきた過程から見ると、御努力はいただいてはいるのですけれども、もう少し外務省の皆さんの方も、厚生省がやっておるわけでありますけれども、思い切った御努力が願えないかという気が長年していたわけであります。いわゆる打ち切りということをめぐりまして、私が何遍か取り上げております関係で、いろんな関係者からも意見が参りましたり問い合わせが参りましたりいろいろなんですけれども、まずもってこれを厚生省の側でどういうふうに考えておられるのか。約三百十万人の太平洋戦争の戦没者がおいでになるわけですね。このうち二百四十万人が海外戦没者なんですね。したがいまして、まだ収集されない遺骨が概数で百十万柱あることになります。この収集の仕方等もございますのであるいはもっと多いのではないかと思うのでございます。確かに三十年ばかりたっているから土に返っているとかいろんな意見があることはわかるのでありますが、相変わらず岸壁の母と言われるような方々もおいでになるわけでありますし、ここらの点をどういうふうにお考えなのか。  さらにまた、ソビエトなどの例からいきまして、帰ってきた方々のお話で埋葬地点がわかっている個所が相当多いわけでありますが、今日まで外務省の御努力などもいただいているようでありますけれども、どうも余りといえば少ない個所しかソビエト側は出してきていない。ここらももう少し突っ込んで明らかにさせていただく御努力が必要なのではないかという気がするのでありますが、そこらは一体どういうふうにお考えかという  こと。  さらに、先般私は、私ども同期の小野田寛郎さんがお帰りになったときに、お帰りの日に厚生大臣等を相手に質問していたのでありますけれども、この種のラオスからお帰りになった山根さんという方の話も最近はございますし、ソロモン戦線でまだ生存をしている残存日本兵と見られる諸君がおるということで、けさもNHKで話しておられましたが、ソロモン会の事務局長さんである浜崎積三さんですか、この方のお話等もございまして、きわめて具体的な証言が十ぐらいあるわけであります。この種の件について、私は前から何遍も言っているのでありますけれども、ルバングの問題だって、政府方々の御努力ではなしに民間の一青年の努力の結果として無事に最後の一人である小野田氏が救出をされたということであります。もう少し積極的といいますか、ほかでも恐らく質問が出ている問題だとは思いますけれども、私も同期をたくさん沖縄で亡くしている一人でございますので、そういう個人感情もあるのかもしれませんが、何とも残念に思っておるわけであります。ここあたりは特に外務省筋でもう少し御努力をいただける筋合いではなかろうかという気がいたします。この辺をひとつお考えをお聞かせいただきたいのでありますが、いかがでございますか。
  175. 柴義康

    ○柴説明員 厚生省でございますが、戦没者の遺骨収集につきましては、昭和四十八年から第三次計画を策定いたしまして、全主要戦域をカバーするという計画のもとに、民間方々の協力も得まして大規模な収集を実施したわけでございますが、特に昨年度、五十年度はその三カ年計画の最終年度でもあり、また終戦三十年でもあるということでありますから、一応遺骨収集にはめどを立てたいということで、予算の方も相当増額いたしまして大規模な実施をいたしたわけでございます。しかしながら、一部の地域におきましては、やはり相手国の事情によりまして入域ができなかったとかあるいは季節的な事情によって収骨ができなかったといったような地域もあるわけでございます。したがいまして、今年度以降はそのような地域につきまして補完的に実施していきたいというふうに考えておるわけでございます。
  176. 石田武雄

    ○石田説明員 海外に現在生存しておるかもしれないと思われる元日本兵の問題でございますが、一般的な調査方法といたしましては、まず在外公館にお願いをすることが一つと、それから現地に進出しております企業がたくさんございますので、その企業にもお願いをしておるということでございます。なおまた、これとは別に情報源といたしましては外電によりまして入る場合があるわけでございます。  私どもの方といたしましては、こうした情報が入りました場合におきましては、まず戦史に照らしまして、当時その地域の戦況がどうであったのか、あるいは作戦がどうであったか、撤退がどうであったかというような点につきましてまず照準をいたします。次いで、これら情報に関連あると思われる復員者等の協力を得まして、当時の状況等をさらに把握をし、審査をいたします。そうして、さらに必要があるならば、相手政府の方にその情報の確認を求める。これが一般的な要領でございます。  次に、ただいま先生から御指摘ございました、今回も全国ソロモン会事務局長浜崎積三さんがたまたま去る三月から四月にかけましてソロモン諸島を視察旅行においでになったときに、ギゾ島におきましてたくさんの情報を現地の人から聞いてございます。  先生いまおっしゃいましたように、私の方で一応整理いたしますと十ぐらいあるわけでございますが、そのうちの、終戦直後ないしは終戦一年後のものにつきましてはこれは別といたしまして、一番私どもが重視しなければならぬのは、本年の三月でございますが、ココロペというところで複数の元日本兵らしいのがあらわれた、そうして現地の人であればそういうこともやることがないような、サトウキビを荒らしたとかあるいは農園を荒らしたとか、そういう情報でございます。こういう情報を私どもは重視しておるわけでございますが、いずれにいたしましても、直接現認者から聞いた情報ではないというのが一つの弱点になるわけでございます。  それはそれといたしまして、私どもの方といたしましては、去る三月末でございましたか、一斉に新聞等が取り上げましてこれが報道されました。それで、私の方といたしましては浜崎積三さんに早速接触いたしまして、当時の状況をさらに詳しく聞く、それからさらにまた浜崎積三さんの協力等によりまして、先ほど申し上げましたように、現地から帰りました、この情報に関連あると思われる復員者等を選定いたしまして、去る五月六日に一堂に会しまして当時の戦況等を承ったわけでございます。  その結果によりますと、大体お集まりになった方は、これは昭和十八年の十月の七日の撤退作戦でございますが、その撤退作戦のときに、直接関連ある周辺には撤退漏れはなかったけれども、当時短時間の深夜の撤退行動であり、取り残しがあったかもしれない、こういうような情報でございますので、私どもといたしましては、早速その結果を外務省を通じまして現地政府の確認を求めるように目下手配中でございます。
  177. 大出俊

    ○大出委員 外務省の側ではどういう扱いをなさっておられますですか、この件は。
  178. 中江要介

    ○中江政府委員 大出委員の御指摘の遺骨収集なりあるいはまた生存者の問題は、そのお気持ちにつきましては、私自身も個人的にはその世代に属するものですから、十分理解もできますし、同情も感ずるわけですけれども、これが外務省の仕事ということになって出てまいりますと、やはり、アジア地域について言いますと、そのほとんどの国が、戦争が終わってから独立して、いま開発途上で非常に苦しい状況で国づくりに邁進している。そういう国と、奇跡的に経済発展をしまして非常にうらやましがられている地位にある日本、両方の関係の友好促進ということがまず第一の目的になるわけでございますので、そういう観点から、この問題について事を運ぶに当たってもそれを損なうような形ではなかなかしにくい。そういうことで、十分な理解を得なければならぬ、こういうふうに思っております。  そういう観点から、戦後もうすでに三十年、いろいろの地域で遺骨収集なり生存日本兵の救出というようなことを、具体的なケースにつきましては厚生省の情報その他も参考にさせていただきながら協力、努力をしてまいりましたけれども、何分これだけの長い期間をとってこういう活動をしてきておりますものですから、現地の住民の方にもあるいは現地政府当局の方でもぼつぼつ複雑な感情も出てきているというのもあるわけです。そういうところについて余りわが方の希望なり心情だけで進み得ない面も出てきております。その辺がむずかしいところでございますので、そこのところに留意しながら、具体的な相当はっきりしたケースにつきましては今後ともできる限り国民の期待に添い得るような解決ができるように、こういうふうに思っておる、これが現状でございます。
  179. 大出俊

    ○大出委員 大臣、短い時間でございますから意が尽くせませんが、妙な言い方で恐縮なんですが、横浜に二葉百合子さんという浪曲師が参りまして、「岸壁の母」なるビラを張っておやりになったわけですが、大変なこれは、私は人に聞いたんですけれども、盛況なんですね。つまり、芸道に生きる人ですからうまいには違いないのでしょうけれども、やはりそれのみならぬものがある感じですね。まあいろいろな意見はありますが、私はたくさん調べましたから、遺骨収集にかかわる問題というものは比較的詳しいわけですけれども、ここにも細かい例年の予算の内訳、中身、派遣人員等みんなありますけれども、何かどうも、これで打ち切るのかという感じが残るのですよ。いまの生存者の情報の扱いなんかでもそうなんですが、そこらはやはり国民感情として納得しがたい方々もたくさんいるだろうと思うのです。何かそこを少し外務省の段階で、所管の厚生省と協力をしてという御努力が願いたい気がするのであります。今回のその生存者情報等をめぐりましてもそうなんでありますが、そこいらをひとつ、せっかくきょうは大臣がおいでになるところであえて承ったのはそこに理由があるんですけれども、お考え方を聞かせていただきたいと思います。
  180. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 これはやはり私なんかにとりましても、非常に何とも申し上げることのむずかしい種類の話でありまして、従来数回にわたって政府派遣の遺骨収集団がともかくずいぶん一生懸命にいわゆる収骨をしてまいりました。それについては、外務省もできるだけ相手側の受け入れ態勢をつくってもらうことに努力をしてきたつもりでございます。先ほどアジア局長が申し上げましたような事情の場合もあるようでありますし、また、東南アジアと申しますか、いわゆる南方の一部については、必ずしもその安全が期せられないとか、十分に組織的な活動ができないとか、あるいはまた、別な意味での多少の違和感をもって迎えられるということもございましたようですし、また国によりましては、非常に一生懸命協力をしてくれて、そのために建物をどけた、しかし、もうなるべくこういうことは今後はというような、悪い意味ではなく、そういう反応をしたところもあるというようなことも聞きますし、まあこういう問題については、お互いの感情がいつまでも残るわけでございます。そうでございますから、ただいまのようなお尋ねについては、可能な限りわれわれとしてはできることはやはりやっていく、こうお答えするしかお答えのしようがない。大出委員もよくその辺の気持ちはおわかりでいらっしゃる問題でございますので、その辺のお答えをもってひとつお許しをいただきたいと思います。
  181. 大出俊

    ○大出委員 大臣の答弁、わからぬわけではないのですけれども、しかし、やはり私が二十何回か沖縄に行ったりしておった過程でも、とんでもない近いところにたくさんの人が気がつかなかった遺骨があって、大きな騒ぎを起こしたこともある。私は、さっき防衛庁の平井さんの話などしましたが、彼は前橋の士官学校ですが、私は豊橋で、同期でございまして、彼と一緒にいた是常君なんというのが私の士官学校の私と一緒に教官をやっておったわけですが、ついこの間もしばらくぶりで福知山鎮国会などという戦友会をやったわけでありますけれども、出てくる話はすべてそちらの方にいくわけであります。したがって、やはりこの情報を、ここで切るんでなしに、できるだけとっていただいて、その都度の努力をしていただくことにしていただかなければならぬ筋合いではないかという気がするのでありまして、やめるんだからというようなことで——ここにございますけれども、四十九年が四百六十八名でありますが、それに五十年度を加えて、二十七年の政府十三名、協力団体十名で二十三名で始めたわけでありますから細々とということでございましたから、ここでやめでなしに、やはりそういう姿勢でお進みいただきたい、こういうふうに実はお願いをしておきたいわけであります。  三十五分から始まった時間のようでございますから、残る時間はわずかでありますので、あと何点か承って、いまの問題はひとつ改めて機会を得て申し上げたいと思います。  時間がありませんので、できるだけポイントだけ承っておきたいのでありますが、防衛白書を二回目をということで坂田長官が、そこにおおむねこういうことがということでお出しになった文書がここにございます。「防衛白書に盛り込むことを考えている要点」、これを読ませていただきましたが、「近年デタントといわれる動きがみられる。」ということで、共存と抗争とこういうわけでありますが、切って、あとデタントは消えているわけであります。  ソビエト側の動き、アメリカの動き、選挙含み、いろいろなことがございますけれども、基盤防衛力構想というものが前もってあるわけでありますが、この情勢の分析なるものは、外務省の意見が相当強く入ったやに承るのであります。つまり、デタントをめぐる物の考え方、アメリカのフォード大統領が三月一日に、以後デタントという言葉は使わぬという言い方をしたということが、どうもわが日本の分析の中で同じように、このデタントという表現は抑えるという、これは見方はいろいろありますが、そういう結果になっておるわけでありまして、この辺は、三月の五日からでございましたか、ソビエトの党大会が開かれておりまして、二十何カ所かデタントに当たる言葉を使ってブレジネフ党書記長がしゃべっているわけであります。  そこらの、つまり幾つか確かにアメリカ側の挙げる問題があったこともわからぬわけではないのですが、外務大臣、一体この情勢分析になるに当たっての外務省のこの問題の見方、受け取り方、分析、そこらはどう受け取ればいいのか、やがてこの委員会で審議をすることになるかもしれぬ防衛二法との絡みもございますから、あらかじめ承っておきたいのであります。
  182. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 いま大出委員の言われたようなことが報道にございまして、何かそういうことが外務省側にあったのかと思いまして、私もちょっといろいろ聞いてみておるのでございますけれども、どうも必ずしもそういうことでもないということを申しております。ところがしかし、こういう場合、こうあれだけ報道されますと、案外その方が本当のようなときもございまして、——だれがうそをついているということでなしにですね。だから、何となくそういう気分というものが何か防衛庁が白書を書かれるときに映ったとかなんとかいうことが、あるいは多少あったのではないかというような気もするのです、大変率直なことを申しまして。  しかし、改めてどう思っておるかということでございますから、私は、そのデタントというものは、私の解しておる限りは、米ソの間で核戦争をしないということを目的にした物の考え方であって、その限りにおいてはその成果を上げてきておるという判断でございます。しかし、デタントだけが仮にアメリカ側から見まして外交政策のすべてであるはずはないわけです。それは一つの限られた目的を持った、限られた政策でございますが、どうもアメリカの為政者も、ある段階ではこの考えを強調するために、これさえあれば何でもソ連との関連においては片づくというような印象を、意識的にではないかもしれませんが、国民に与えたと思われる節もありますわけで、それがアンゴラとかなんとかいう事件が起こりますと、こんなはずではなかったとか、そのようなソ連に小麦を売るのはおかしいではないかとかいうような議論になってきたので、私はこれは、もともとデタントという政策が限られた目的を持っておったものであったにもかかわらず、それを過大評価したとかあるいは誤解したとかいうことから出てきておると思うのです。フォード大統領がこの言葉をもう自分は使わないということを言われたのも、私が率直に言えばそれは少し極端なお話であって、まあ東西お互い選挙になりますとつい話が極端になりやすいものでございます。ですから、そういうこともうそではなかろうというような感じもいたしまして、私は米ソの間で核戦争を行わないという物の考え方は、両方の、ある意味ではそろばんをはじいた上での考え方であろうと思いますから、それだけ現実性のある物の考え方であるとも言えると思います。したがって、そういうデタントの関係というものは、仮にアメリカの大統領がその言葉を使わないということを言われたというような、それだけの事実をもって変わるわけのものではないというふうに私は思います。
  183. 大出俊

    ○大出委員 丸山さんにもちょっと聞いておきたいのですが、変わるわけのものでないはずなんですね。いま外務大臣いみじくも言われましたから、私も一つだけ、時間がありませんから例を挙げておきたいのですが、先般ケンブリッジ公開討論会というのが学者諸君によってアメリカで行われまして、私、興味を持ちまして調べてみたんですが、ポール・ドーティーという、いろいろな著書もございますが、ハーバード大学の教授でございまして、武器管理という一つの理論を立てておるわけです。こういう学者は案外少ないのですが、武器管理と非武装理論の研究家と言われている人であります。またリチャード・ガーウィンという人がおりまして、これはハーバード大学の客員教授でございまして、対潜水艦戦争の権威であります。もう一人ジョージ・B・キステコワスキー、これがハーバード大学教授で、マンハッタン計画に参加しましたり原爆の内部構造を設計した学者であります。さらにジョージ・ラスジェンスという人がおりまして、マサチューセッツ工科大学の教授でございまして、防衛分析研究所というのがございますが、このシステム評価ケースなどの研究家ということでありますが、この人はハーバードとマサチューセッツ両大学の合同の武器管理ゼミナーの設立メンバーの一人でもあります。こういう諸君であります。  ここで調べてみると、ドーティーという教授は「過去二十五年間核戦争を回避してこられた幸運が次の四分の一世紀にまで持続できるかどうか非常に不安である。われわれは核戦争をなくすための幾つかの助言を持っているが、しかし、核戦争の可能性が増大しているという事実を認めざるを得ない。」こういう言い方ですね。キステコワスキーさんの言い分は、「私は一九九九年までに」——つまり今世紀という意味でありますが、「までに核戦争が起こらないとしたら、それは多分幸運によるものであろうと思う。政治家の努力によってそうなったのではない。偶然が幸いして人類が生き延びられたというべきであろう。私は核戦争の起こるパーセンテージは年々増大していると思う。」こういう言い方をしています。ラスジェンス教授の言い方というのは、「今後十年間の核保有量はどうなるか。何しろ核の原料は膨大にある。米ソ超大国は一週間に一発の割合で核爆弾を製造するのに十分な原料を現在生産している。このままでいけば今世紀末には世界の国々がそれぞれ数千発の核爆弾を生産することは可能である。仮に核戦争が起こると想定するなら、急に核武装」——つまり開発途上国、発展途上国などでありますね。「急に核武装した国、すなわち核管理体制が整備されてなくて国情も不安定な国ではないかと思う。」というふうな一連の論述をしているのですね。それで討論をしているわけであります。  私は、いま外務大臣いみじくもおっしゃいましたが、いろいろな理屈はそれはあります。ソビエト側の階級闘争とデタントはおのずから別だという言い方も出てきています。しかし、だれが考えても同じことになると思われるのは、拡防条約を向こうで審議しておりますけれども、あるいはSALTIだIIだという議論がありますけれども、今日われわれがながめていても、これは核の拡大均衡なんですね。一つも縮小していない。巡航ミサイル一つつかまえても、これは新たな競争を巻き起こす結果になりはせぬかと私は思うわけでございます。そうするとそのためにこれは拡大均衡なんですね、広がる。ちっともこれは縮小していない。まさに武器管理の非常に悪い国々が、ある専門家は触媒核戦争などという言い方をしますけれども、追い込まれたときにある目的を持って核を使う、大国間の核戦争を誘発するなどということがあり得るという議論もありますけれども、どうもそっちの方に進む。それを何とか抑えようとすればやはり大臣がいまおっしゃっているようにSALTI、IIのような核軍縮という方向に持ち込まざるを得ないですね、いい悪いは別として。それはフランス語の表現はともあれ、デタントというものの中心にそれがある限りは、私はそれは現実に通常兵力を考えながらやっておられる制服の方もおいでになるはずだけれども、それにも増してデタントというものの考え方、大臣がおっしゃったようなことになる限りは、これはやはり大上段にその問題は掲げていかなければえらいことになるという心配を私はする。  だから、それがそう簡単に変わってしまうのでは困るのでありますけれども、実は大臣がいまちょっとおっしゃっておりましたが、「防衛白書に盛り込むことを考えている要点」の中で、前書きの一番最後みたいなところに、「近年デタントといわれる動きがみられる。」ということであって、あとこの中にどこにもない。まさにフォード大統領が言った、外務省がどういうふうにどういうレベルで話をされたか、それは私もわからぬけれども、各新聞ほとんどが取り上げているんだから、火のないところに煙は立たぬ道理でありまして、そうなると防衛庁の内部でもいろいろ討論があったということを聞いていますけれども、どうもそこのところが、ポスト四次防についての指示なんかお出しになった坂田さん、しきりにデタントを至るところで協調されてきた坂田さん、基盤防衛力構想もそうです。どうもぎくしゃくつじつまが合わぬわけでありまして、一体なぜそういうことになったかという防衛庁側の見解というのをひとつ承りたいのと、あわせて私は、いろんなことがある、それにもかかわらずデタントというものは追求をしていかなければならぬ日本の立場というものはより強くあるという気がするのであります。  これは外務大臣に重ねて承りたいのですけれども、したがって外務省がそれを消そうとしたのなら、全くそれは選挙だけじゃないことはわかるわけでありますけれども、ポルトガルだ、やれアンゴラだ、あったわけでありますから、わからぬわけではないけれども、余りといえばどうも日本人の本来の付和雷同性が強過ぎる感じがするので、そこらのところは一体どうお考えかをあわせて大臣にも承っておきたいのであります。いかがでありますか。
  184. 丸山昂

    ○丸山政府委員 防衛庁の方から、防衛白書の御質問でございますので、ただいまの大出先生の御質問の御趣旨に沿いまして申し上げたいと思います。  まず第一番目にお断りを申し上げておかなければならないと思いますのは、実は防衛白書そのものは、防衛庁が作成をいたしまして、閣議に報告をいたしましてから公表するということになっておりますので、現状は、一応防衛庁の案というものはできておりますが、関係各省庁と調整中でございますので、最終案というものが出ておるわけではございません。それではこの間なぜああいう形で出たのかということでございますが、これは各新聞社の取材がございまして、事務次官から事務当局の考え方として御説明を申し上げたものが大体ああいう形で出ておるということでございます。  そこで、ただいま御質問のデタントについてどういう考え方を持っておるか、また防衛白書ではどういう位置づけといいますか表現をしておるのかということでございますが、このデタントにつきましては、先ほど外務大臣からお話がございましたのと私ども全く同じ考え方を持っております。もちろん、今回の防衛白書を出します過程におきまして、部内におきましても大変この問題も論争の焦点になったことは事実でございます。この辺が今後の防衛計画をどう立てていくかというような問題とも非常に密接に関連してくる問題でございますし、それから不確定要素が非常に多いということからいたしまして、はっきりと断定的なことをこの際われわれとして確信を持って述べることができるのかどうかというような問題もあったわけでございます。  そこで、デタントという言葉自体によりまして表現される中身は、これはもう釈迦に説法になると思いますが、先生御案内のように、非常に漠然とした意味合いでございます。しかしながら、このデタントという言葉によって表現される国際関係と申しますか、これはやはり米ソ並びにそれに直接つながるNATOといったところの関係を指すのではなかろうか。結局問題は核の均衡ということ、いわゆる核の手詰まりと申しますか、こういったことから米ソともに全面的な核戦争はもちろんのことでございますが、これにつながる通常戦争、在来型の兵器を用いる戦争、全面対決というもの、あるいはそれにつながるおそれのある紛争、こういうものは極力回避しようという米ソの共通の利害がこういう関係を生み出しておるというふうに理解をしておるわけでございます。  そこで、このデタントの用語その他については、ただいまお話がございましたように、フォード大統領が今回の選挙演説中この用語を使わないという話が出たりいろいろしておりますけれども、いま申し上げました全面核戦争につながる戦争は極力回避していこうという、こういう基本路線というものはやはり今後の国際情勢の基本として考えていかなければならない。また、それがなければ、国際的な平和の維持というものの基本線をこれ以外のものに求めるということは非常にむずかしいのではないか。現実的な意味から申しまして、やはり米ソの間のデタントの関係が基本になっているというふうに私ども考えておるわけでございます。もちろん、これによって地域的な通常型の紛争、戦争というものが減少する、あるいは絶対にそれによって回避できるということはこれとは無関係な問題であって、米ソの問題としてわれわれは理解をしておりますけれども、それ以外の紛争の生起については十分警戒をしておかなければならない、こういうふうに考えておるわけでございます。  結論的にどういう形のものになりますか、実は私もこれを作成いたします直接の担当者ではございませんので、はっきりしたことを申し上げられないのはまことに残念でございますが、大体いま私が申し上げたような方向に進むものというふうに考えております。
  185. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 核戦争をいかにすれば防がれるかということは、私は結局管理能力の問題ということに尽きてしまうであろうと思います。先ほど核拡散防止条約のことを仰せられましたが、あの条約の御承認をお願いしております一つ意味は、この管理能力を欠いているものが核兵器を持った場合の危険ということを考えざるを得ないからでありまして、大出委員も言われましたが、何かの特定の目的を持って、あるいは相手方の情報の不足から、あるいはまた何かの誤算から、あるいはその国自身の中の内部権力闘争からというようないろいろなケースが考えられるわけでございますから、そのような管理能力を欠いていると思われる国が持つということはことに危険であるというふうに考えるわけでございます。幸いにして米ソは、ともに管理能力を持っておると現在考えていいのではないか。これもしかし一九六二年のキューバ危機のときの経験というものがあって、それで初めて、がけっ縁まで行って管理能力を本当に持つようになったというふうに申すべきではないかと思うのでありますが、幸いにしてといいますか、他の三国に比べて米ソが圧倒的に優勢な立場にございますから、この両者が管理能力を欠かないことが大事であるというふうに思いますし、それはそう考えていいのではないかというふうに思うわけでございます。  確かにSALTの交渉にしましても、やや拡大均衡になっておるということは残念ながら事実であります。事実でありますけれども、しかし、いわゆる青天井の競争をするよりはともかくも天井を設けようということは、不満足ではあっても、考え方としては何がしかの進歩だと考えることができるのではないか。ことにお互いにもう入り用のないものを積み重ねておる、何十倍ものオーバーキルになっているということはお互いに知っておりまして、それが財政の負担になっておるということも事実でございますから、そういうところからSALTというような交渉ができていく利己的な動機というものがやはりあるというふうに考えるわけであります。  そういうふうに考えてまいりますと、まずまずそのような米ソの間のデタントというものは今後続いていくと信ずる理由があると考えるのが、私は十分理のあることであるというふうに思うのであります。
  186. 大出俊

    ○大出委員 三つだけ承って終わりたいと思うのであります。  一つは、防衛庁に承りたいのですが、F14の装置の欠陥なんという記事もありまして、FX選定の中でF14についての欠陥機なるゆえんをここに米側の議員が明らかにしているのがございます。火器管制装置主要部分に問題を抱えているとか、それから米海軍の現有機、つまりF14ですね、現有機のうち四分の一しか常時稼働状態にないとか、時間がありませんから多く申し上げませんが、この火器管制装置なんというのは、平均千六百時間は修理せずに作動するはずという設計上の計画になっていますが、平均九十四時間で故障する、あるいはパイロットに必要な情報を与えるコンピューター、これが二千七十時間は支障なく作動するという計算が、平均百五十六時間ごとに修理している、エンジンがF14の稼働率を下げている主要な要因だとか、細かくこうありますが、これは私は非常に心配するというか、憤慨するのでありますが、F104採用の後いろいろな問題が起こりました。耐湿性に弱いとか、あるいは暗いときの着陸が非常に困難だとか、サイドワインダー、空対空ミサイルなんというのは雲の中ではどうだとか、まさに聞くにたえぬいいろいろなことが後から出てきました。まして、今日ロッキードの問題があります。ここらは、私は非常に神経質になっていただかなければならぬ筋合いだと思うわけであります。  そこらを踏まえまして、FX選定の調査団の派遣ということはどういうことになり、八月とかなんとかいろいろ言われておりましたが、どの辺で、いまロッキード問題がございますけれども、あえてお決めになろうとするのか、また、あえて調査団を出そうとなさるのか、そこらを承っておきたい。  それからもう一つ防衛庁の皆さんの方に承っておきたいのは、P3Cオライオンでありますが、コーチャン氏にも私会って、いろいろやりとりいたしておりましたら、途中からコーチャン氏ががらっと態度を変えて、私が防衛をやっている人間だということで売り込みに転じまして、あなたがうんと言ってくれれば議会が認めてくれて買ってもらえるんだなんて言い出しまして、隣の自分の社長室からこんな大きなP2VからP2JからP3Cまで模型を抱えてきまして、でんと机の上に置いて説明を始めたわけですね。  その過程で一つ問題は、まさに日本の防衛庁というのはP3Cオライオンを買わざるを得ないんだと言わんばかりの話も出てくる。なぜならば、アメリカの国防総省の中にDSAといいますか、ディフェンス・セキュリティー・エ−ジェンシーですか、調達本部みたいなものだと私思いますが、この一番てっぺんの人はゼネラル・フィッシュですか、魚と同じスペルを書きます。フィッシュ中将でしょうね。この人は空軍だと私は思うのですが、その下に海軍のアドミラル・ファンクスという方がおいでになるのですね、ファンクス提督。コーチャン社長はこのファンクスさんと大変仲がいいのだということを言いまして、P3が一番すぐれているのだと言う、ロッキードがIBMとかユニバックなどを一括した主契約者でございますから。そうすると、機体は要らないから中身だけ売ってくれと言ったって、それはできないというわけです。だから、私が向こうに行って調べている過程で、防衛庁の方は四月中に意思表示をする筋合いだということになっている。本当に四月中に意思表示をするのか、本当に、こんな時期に、と思っていたわけでありますが、たまたま出てまいりました。皆さんの海幕の方がP3Cがいいんだということで、ポスト四次防で防衛力整備計画の中でP3C四十一機と明記をして要求した、これは穏やかならぬ、こう私は当時思ったわけであります。ところが、今度はもう一つ出てまいりましたのが、この電子装置の国産はできない。つまり、これは坂田さんですけれども、機体は国産をする、だが中身はと言ったら、中身だけは買えないと言うんですね。さっき私が申し上げたように、主契約者はロッキードでございまして、これはもうロッキードの社長さんがそう言っているのですから。ユニバックだのIBMだのというのは、わが社が全部代表してやっているのだと言うわけですね。海軍と一括契約だ、中身だけと言ってもできないと言うのです。そこで、海幕の方の言うように、それならもうP3を買わざるを得ぬということになる。これは穏やかならぬ。ところが、今度は、そういう意思表示だけはしておいて、PXLの配備は二年延期だと言う。P2Jというのを調べてみたら、稼働時間数その他が実はまだ二年ぐらい先まで使えるんだったのだ。石油ショックのときなんかに余り訓練しなかったからというもっともらしい理屈ですが、それはその金が流れているのだから、いまうっかり——まだP3C買ってないから、選挙の前に金をばらまいて騒ぎになっても立候補しなければ消えていくと同じ意味で、P3Cまだ買ってないじゃないかということになると、金は流れたけれどもということになると、これは成立しないなんということになりかねぬですからね。そこで二年延期、何が一体本当なんだということになる。さっぱりわからぬ、防衛庁さんお考えなのは。ただ一つわかるのは、私が向こうでいろいろ話をしたり聞いたりしてきたDSAの話をいたしましたが、もう四月あたりには日本側は意思表示をする、意思表示は明確にした、四十一機ポスト四次防でP3Cと書いて、新聞に載ったのですから。だが、それを今度は二年というので延期をした。まん中で電子装置の国産は困難だという。だから買わなければいかぬ。形の上では英国のニムロッドなどもあるわけであります。独仏共同開発のアトランチックなんかもあるわけでありますから、まだできてないけれども。そうでしょう。並んではいるけれども。その中でP3なんだと海幕の方から要求を文書で出したということは並み並みならぬことだと私は思う。そこらにも触れて、一体何が本当なんだ、わからぬものですから、承りたいのです。
  187. 丸山昂

    ○丸山政府委員 最初にFXの関係について御説明申し上げたいと存じます。  まず、FXにつきましては、現在のところ、予定といたしましては、五月二十一日から五十六日間でございますが、約十名でございますが、アメリカに派遣をするという予定になっております。団長はまだ発令になっておりませんが、小松空将を充てる予定になっております。そういうことで、今回御存じのようにこの調査の対象になっておりますのはF14、15、16の三機種でございます。  それから、先ほどF14について稼働率が低いという問題でございますが、これは先ごろエアロスペース・デイリーというアメリカの航空機専門の雑誌でございますが、これにその問題点が指摘をされております。それから、新聞の報道によりますと、アスピン下院議員がやはりこの問題を、下院の軍事委員会だったと思いますが、ちょっと委員会ははっきりいたしておりませんが、この質問があったということでございまして、大体私どもいまわかっておりますのは、まずエンジンのトラブルが一つ大きな要素のようでございます。これは御案内のようにターボファンを使っておるわけでございますが、このファンの部分と、それからあと、空気をシールいたします部分との中に問題点があるということで、これはエアロスペースによりますと、すでにこれに対する回収措置はとってあるというふうに伝えられております。  それから、この稼働率が低いということの一番大きな原因となりましたのは、適正な交換部品の準備がなかった。これは新しい航空機の開発の場合には、それぞれの部品についてどの程度の使用率があるか、故障率があるかということをあらかじめ推定をいたしましてやりますので、どうしても実際に運用しました場合のそごが出てくるわけでございます。そこで、一番クリティカルな交換部品について足らなかったというようなことが原因になっておるようでございまして、この点は初期の見誤りであって、今後是正はできるということのようでございます。  それからあとは、御案内のように空母エンタープライズ、それから大西洋の場合にはケネディに載せまして運用試験をやりまして、特にエンタープライズの場合には太平洋のモンスーン地帯を経由したということで、湿気のために電気の配線に湿気の漏れがあるということが原因のようでございまして、この点について是正をする必要があるというようなことが指摘をされます。  いずれにしましても、こういう問題については、一機大変に高いものでございますし、どういう航空機に決定をするかということについては、在来もいろいろその点について後から考え調査が不徹底であったというような反省も出ておりますので、この際、再びそういうことのないように、十分念の入った調査をするように心がけておるわけでございます。  それから次のP3Cの問題でございますが、海幕がP3C四十一機というこの書類を内局へ出しておるということでございますが、これはこの前予算委員会であったかと思いますが、御答弁申し上げましたように、要するにこれは舌足らずでございまして、性能を表示するためにP3級のものを海幕は確かに、四十数機でございますか、これを要求をいたしております。それは間違いございません。しかし、海幕としてもP3Cということに決めておるわけではございません。  それからP2Jが二年ぐらい延期できるんではないかというお話でございますが、この点につきましては、御案内のようにP2Jそのものも、ある時期に来て突然としてダウンしてなくなるというのではなくて、全体がなだらかな線でだんだん減っていくわけでございまして、それにかえて新しい飛行機をここへ入れていくという、こういう計画を立てているわけでございまして、P2Jの場合には耐用が七千五百時間でございます。それと実際の運用の実績というものを詰めてまいりまして、もちろん石油ショックが——これは一極の冗談でございまして、あのときもやはり最小限度の演習はやっておりますので、別にあれが原因をしておるのではございませんで、それを実際計算値とそれから実績値との間の誤差と申しますか、その幅で若干、一年ないしは二年ピークの時点をずらすことが可能ではないかということを内局で検討しておるということでございます。この点は海上自衛隊と十分詰めてまいらなければならぬというふうに考えております。  それから中を、機体とはらわたを分離するという考え方は、これは昨年の当委員会において大出先生に私どもお答え申し上げましたが、あの当時からみんな考えておるわけでございまして、その辺については技術的にいろいろ問題点がございまして、まだ最終的な結論には到達をいたしておりません。この点については、私、それから久保次官がアメリカに行かれましたときに、先ほど名前の挙がっておりましたDODのゼネラル・フィッシュにもこの可能性について久保次官から直接要請をいたしております。ただし、これはいずれも、当方の技術的な検討の結果、確信を持って正式にアメリカに申し入れているのではございませんで、一応の打診を行っておるというところでございます。この点は、たとえば先ほども御掲示になりましたイギリスのニムロッド、それからアトランチック、これもいずれも中の電子機器は大部分がアメリカ製品でございます。こういう点から、アメリカ製品を使って航空機は日本で開発というような形のものができないのかどうかという点については、いろいろ問題はあるようでございますが、全く可能性のない問題ではないというふうに考えておるわけでございます。  いずれにいたしましても、こういう点についてロッキード事件ということでいろいろ国民の疑惑という問題もございますので、かねがね総理並びに大臣が言われておりますように、国民の納得のいける決定の仕方ということでこのPXL問題についてのはっきりした解決といいますか、方針をお決めいただくということにもってまいりたいというふうに考えているわけでございます。
  188. 大出俊

    ○大出委員 時期的にはいつごろになるつもりですか。
  189. 丸山昂

    ○丸山政府委員 一応本年の八月のポスト四次防全体計画を取りまとめまして、その初年度としての五十二年度予算を財政当局に要求を出します九月初めまでには、何とか方向を決めたいというふうに考えているわけでございます。
  190. 大出俊

    ○大出委員 最後ですけれども、大臣に承りたいのです。  民主党候補のカーター氏の在韓米軍撤退論なんというのもございまして、選挙で公約をしておやりになって当選をすれば、多少なりそっちの方向に向かざるを得ないだろうと私は思うのであります。キッシンジャー氏がやめるにしてもやめないにしても、大分混沌たる政治情勢のようであります。また、日本海がソビエトの海であるなんということになってきているわけでありますが、ここらのところを外務大臣の側で、冒頭に申し上げた情勢分析については旧来から外務省のいろんな意見が入っているわけでありますけれども、どういうふうにこの辺ごらんになっておられるんでございましょうか。これから先の防衛論争等とも関連もありますから、最後にちょっと御見解だけ承っておきたいわけであります。
  191. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 カーター氏がそういうことを言っておられるということは私も報道で読んでおるわけでありますが、これもやはりある意味で選挙中には発言が多少極端になるということは、民主主義国ではどこでもそういうことがあろうと思いますが、ただあの考え方は少し注意深く読んでみますと、韓国の朴大統領が、数年先のある時点では、陸上の兵力といいますか、それについては韓国自身で整備し得る時期が来るということを言っていることを頭に置いて、そういうことになればというような前提はついておるようでありまして、非常に具体的にスケジュールを無条件にカーター氏が言ったものではないようでございます。  私といたしましては、一般的に、朝鮮半島の状況に急激な変化を与えるような一方的な措置にアメリカが出るということは、現在の段階でないと考えてよろしいのではないかというふうに考えております。
  192. 大出俊

    ○大出委員 時間がございませんからこの辺で終わらしていただきますが、丸山さんにお願いしておきたいのです。  FXにしろP3Cにしろ、PXLの段階であるにせよ、これだけは私は——一九五〇年に自衛隊が歩き始めましてから二十六年ばかりになるんですけれども、五兆円を超える買い物をしているわけですね。あるいは六兆円に近いかもしれない。その三分の一は航空機ですね。そうすると、二兆円に近いものを買っている勘定になる。コーチャン氏が私が問い詰めてお話しになっていましたが、商社マージン二%なら、商社マージンが四百億もあることになる。のみならず、今度ライセンス生産をすれば、三菱重工以下日本の企業はそれなりにすそ野で企業利益があることになる。おまけに、それにロッキードの問題で賄賂を上乗せしてやるから国民に迷惑をかけぬとなると、これは国防の名によってとんでもないものを買ってきたことになるわけでありまして、こういう時期に——確かにこれは二つの報告が本年初めに米議会に出されていることも知らぬわけでもなし、日本の対潜能力を高めることがアメリカの責任だという言い方などもあの中にありますけれども、かと言って国民的な意味の基盤防衛力構想がそうであったように、立場は違いますけれども、やはりコンセンサスを求めるということならなおのこと、よほどこれは慎重に、あせらずに、どっちの方向に日本が向くのかということを検討する必要があると私は思っておりますから、安易にいつごろというようなことにすべきではない嵐のではないかという気がする。この点だけは特にひとつ申し上げまして終わらせていただきたいと思います。遅く始めたので大変遅くなって恐縮でございます。
  193. 木野晴夫

  194. 瀬長亀次郎

    ○瀬長委員 沖縄における公用地等の暫定使用に関する法律、いわゆる公用地の問題について質問したいと思います。  その前に、沖縄における土地収用の経過、歴史というのですか、これを簡潔に申し上げて、その段階段階質問したいと思います。     〔木野委員長代理退席、竹中委員長代理着席〕  最初に軍用地として接収されたのが一九四一年から一九四四年まで、これは日本軍の軍事権力によって、その当時は治安維持法もあり、特高警察もあり、憲兵というそういった軍事権力がバックにあって、総動員法によって収用されたというのが大体の経過でありますが、これが第一段階。第二は、占領軍が沖縄に進攻して、それが四五年四月の五日にミニッツ布告が出されて占領支配が始まる。そして中国の革命と中華人民共和国の成立や朝鮮戦争を契機にして、一たん返したものをまた接収するという状態。その次はヘーグ陸戦法規に基づいてやったということになり、第三段階は一九五二年の四月二十八日、講和発効後接収が始まる。いろいろ占領軍は布令、布告というものを出しております。これによって接収されているわけでありますが、これが第三段階。第四段階が一九七一年の十二月三十一日に発効した沖縄における公用地等の暫定使用に関する法律、これが第四段階。さらに現在、坂田防衛庁長官の記者会見では、十四日の閣議にかけて今国会に提出する運びであるというようなことが新聞記事にありましたが、これが第五段階。これは何か新聞報道によると、沖縄県の区域内に所在する駐留軍用地等の境界の明確化等に関する特別措置法といったような長い名前になっておるようであります。  最初お尋ねしたいのは、旧日本軍によって一九四一年以降接収された土地の面積及びどこどこがどういうふうに接収され、現在何に使われている、その土地代は払われているのかどうかといった問題について、これは防衛施設庁ですか、防衛庁ですか、おわかりであれば発表してもらいたいと思います。
  195. 斎藤一郎

    ○斎藤(一)政府委員 防衛施設庁は、法律によりまして御案内のように自衛隊の施設に関する事項とそれから駐留する米軍の施設に関する事項をその仕事としてやっておりますので、いまお尋ねの戦争中の軍用地の問題については、もしわかっておればお答えできるのですが、いま全然手元に資料がないので、直ちにお答えしかねます。
  196. 瀬長亀次郎

    ○瀬長委員 これは昭和五十年六月二日に、沖縄県読谷村村長から防衛施設庁長官久保卓也殿あてに、読谷飛行場跡地の返還要求に関する陳情が出されて、二項目です。読谷飛行場跡地を速やかに元地主等に返還すること、終戦以来現在までの軍用地料を支払うことといって出されております。さらに昭和五十一年三月六日に、沖縄県議会は、旧日本軍用地の返還に関する意見書を全会一致で決議して政府に出しております。この措置について、政府はどういうふうな措置をとられたか。どこの省か、おわかりですか。
  197. 銅崎富司

    銅崎政府委員 旧軍が終戦の直前に飛行場にするということで土地の接収をしたということは承知しておりまして、ただ、詳細な数量その他いま記憶ございませんが、その間の事情がどうであったのかということにつきまして、現地でいま調査をしているという段階でございます。
  198. 瀬長亀次郎

    ○瀬長委員 これは県議会が決議したときの資料とわれわれが行って調査したものだけで、現在面積九百四十三万九千平米になっております。これは伊江村が七十三万平米、接収年月日、地主の数、全部書かれておりますが、現在の状況、伊江島の例の射爆場、これは核爆弾模擬訓練をやったところですね。それから与那城村が三万七千平米、勝連村が十万、読谷村が二百十六万一千、嘉手納村が四十八万、那覇市が百三万七千、佐敷村が六千、与那原町が四万六千、宮古、これは一番多い三百三十四万、石垣——八重山ですね。百五十万二千、この合計がいままで申し上げました九百四十三万九千平米、これが全然未処理であります。たとえば、伊江村七十三万平米、これは大部分が現金未受領。それから与那城村三万七千平米、全部現金を受け取っておらぬ。勝連村は大部分が現金は受領している、現在保安林、農耕地、軍用地、その三つに分かれている。それから嘉手納村、これは大部分が現金未受領。那覇市、現金、ただし預金受領。それから佐敷村、全部が現金、手形でやられた。与那原町、全部が現金、預金受領。  こういったことで、私が申し上げたいのは、これだけの大きい面積を総動員法で取り上げておいて、要求があるにかかわらず未処理にしてある。しかも実情すらわからない。しかも、沖縄県議会が超党派でこの返還を要求している。  これは資料によれば、たとえば「宮古島飛行場用地買収事情についての認定書」、これは昭和三十九年十二月十四日、厚生省援護局長の名で、「第二次大戦中日本軍が宮古島に飛行場を設定するため土地を買収するに際し、地主に対し、「戦争が終れば土地は旧地主に払い下げること」を口約したことは事実であると認定する。」と向こうの地主にやっている。  いろいろ証拠はあるんですよ。たとえば、元第三二軍参謀陸軍大佐八原という有名な人がおりましたが、この人も同じことを言っているのです。戦争が済んだらお返しするという了解のもとでやったんだということですね。  それから、これは一九六五年八月三十日、高等弁務官が任命した土地諮問委員会が弁務官あてに、「不用の旧宮古飛行場用地について」という題で出している中で、最初に、「地主は土地に対する適正な補償を受けませんでした。というのは、恐らく地主のために買上価格が日本政府により国債に投資されるか或るいは郵便貯金にされたためであります。」といったようなことが、高等弁務官の任命による土地諮問委員会の意見として出されている。  こういったのはたくさんあります。いわゆる戦争協力、御国のため、まあいまは公共の利益というふうに表現が変わっておりますが、いずれにしても、御国のために土地を収用した。これはもうひどい。読谷の地主会長の言ったことを見ると、大変な脅迫が行われた中で接収されているという実情です。こういった件について、政府は全然何の手だてもしておらないということになると、一体どうなるのかということですね。これは施設庁の方で担当しておられるんですか、開発庁ですか。
  199. 吉田哲朗

    ○吉田説明員 いまお尋ねの第二次大戦中に旧陸海軍が買収した土地の問題は大蔵省が担当しております。御案内のように、復帰まで米軍が管理しておったわけでございますけれども、復帰と同時に大蔵省が引き継いでおります。  なお、その数量につきましては、先ほど先生の方から数字のお示しがございましたが、一応私どもで把握しておりますのは、第二次大戦中に買収した国有地の総数量は約千二百万平方メートルというふうに把握しております。
  200. 瀬長亀次郎

    ○瀬長委員 いまの地主の要求に対しては、まだ処理できていないということになるのですね。
  201. 吉田哲朗

    ○吉田説明員 このいわゆる旧軍買収地問題につきましては、復帰当時からいろいろ地元から御要望もございましたし、また、国会でもいろいろな委員会等で何回も取り上げられてきております。そういういろいろ国会の質疑の過程等の中におきまして、一応三カ年をめどにしまして買収の実情調査するということを当時政府の方から答弁いたしました。それで現在まで調査をやってきておるわけでございますけれども、大体目ぼしい物的な資料は収集し終えたというふうに考えております。
  202. 瀬長亀次郎

    ○瀬長委員 いま大蔵省から答弁がありましたように、いまだにこの収用された土地の問題が解決し得ない。そしてとうとう四五年、アメリカに占領になって、相当いろいろ、いまから考えても身の毛のよだつような方法で接収しておりますが、この点御承知かどうか。たとえば一九五二年に講和条約が発効するわけですが、五三年、那覇市の銘苅、いまは軍用の住宅地になっております。それから同じ年の那覇の小禄の具志部落。さらに五十五年、伊江村の真謝部落、現在射爆場。それから宜野湾伊佐浜、これがいま軍のモータープールに使われておる。こういったような場所で、どういう方法でアメリカはこの用地を接収したか。政府はこの点について御承知ですか。これは防衛施設庁あたり、何か御承知ですか。
  203. 銅崎富司

    銅崎政府委員 書いたものによりまして承知しておるわけでございますが、土地の接収につきまして、地元住民の方がそれに反対されて、いろいろ激しい抵抗をされたということは承知いたしております。
  204. 瀬長亀次郎

    ○瀬長委員 これは私、土地接収を直接見て知っておりますが、銘苅はいま米軍の住宅地になっておりますが、ここは墓地をブルドーザーでつぶして、白骨も全部ブルドーザーの下敷きにして、機関銃で両方からはさんで、あれは接収じゃなしに強奪した。これは事実歴史の証言なんですよ。小禄の具志部落、いまでも軍用地になっているんですけれども、これは催涙ガスを風下からまいて三中隊で包囲したが、風下からまくものだからアメリカは自分が吸ってしまうというようなことも起こりました。いずれにしても機関銃でもって威圧してとったところです。伊江村の真謝部落、これは石油を上からかけて焼いて、それから家を倒す、ブルドーザーを入れる。伊佐浜しかりなんです。これは占領中ですからヘーグ陸戦法規を守らなくちゃいけないわけです。とりわけ占領軍のやっちゃいかぬということ、私有財産は尊重されなくちゃならぬということと、略奪は無条件に禁止されているはずなんです。占領目的のためであれば略奪をしてもいいということはない。そうなりますと、現実にアメリカ軍が使っている大半の中心部分は、ヘーグ陸戦法規を踏みにじり、武力をもって強奪したという歴史の事実は否定できないと思います。これが占領中における米軍の土地収用の実態であった。  だから、沖縄返還当時この公用地の問題が審議されたときは、この公用地法は強奪法だというようなことまで言われたわけなんですが、その点について、ヘーグ陸戦法規はそういう行為を許しているのか、許していないのか、これは外務省に一応お伺いしたいのだが、どうなんでしょう。そのときは、占領軍のよりどころはヘーグ陸戦法規と言っておりましたが、そういった点どういう解釈をされておるか、お伺いしたいと思います。
  205. 中島敏次郎

    ○中島政府委員 ただいまお尋ねの点でございますが、手元にヘーグの陸戦法規を持っておりませんので、正確なお答えができませんが、いずれにせよ、ヘーグの陸戦法規は私有財産の尊重という原則に基づいてつくられているものであるというふうに理解しております。戦争中に陸戦法規に照らして実際問題としていろいろ問題があったということは、文献その他で伺っておる次第でございます。
  206. 瀬長亀次郎

    ○瀬長委員 陸戦ノ法規慣例二関スル規則の第四十六条、私権の尊重、「家ノ名誉及権利、個人ノ生命、私有財産並宗教ノ信仰及其ノ遵行ハ、之ヲ尊重スヘシ。」「私有財産ハ、之ヲ没収スルコトヲ得ス。」これははっきり私有財産没収の禁止をうたっている。それから四十七条、略奪の禁止、「掠奪ハ、之ヲ厳禁ス。」いわゆる占領地における軍事権力、占領軍といえども私有財産を没収したり略奪したりすることは絶対にやっちゃいかぬ。ただし書きとして、占領目的を達成するために法律を停止したり、いろいろなことばありますが、少なくとも一私有財産の没収あるいは略奪、被占領住民をスパイに仕立て上げること、これは全部禁止条項になっている。にもかかわらず、いま申し上げた個所ではほとんど、武力接収によってアメリカが基地を構築したということは事実なんです。  私がそれを申し上げますのは、これは引き継いだわけですから、そういった原点からいろいろ検討しないと、今度またつくろうとする新しい収用法に対する国民の理解の仕方がまちまちになっちゃいかぬ、はっきりする必要があるということでそれを聞いておるわけです。いま言っているところでは事実やったのです、私は見たのだから。これは当時の佐藤総理にも申し上げたのですが、向こうは返事をしませんでした。外務省、それについて何かありますか。
  207. 中島敏次郎

    ○中島政府委員 戦闘行為が行われております間の米軍の行動及び実際上戦闘行為が終わってから後の占領軍としての米軍の行動、これらはいずれも、米軍としては、アメリカ自身の指令、もろもろの軍隊の法規に従って彼らなりにはやっていたのであろうと思われます。ヘーグの陸戦法規上略奪などは許されないことは当然でありますが、陸戦法規のもとでも収用の概念に合致するようなものは基本的には許されるはずで、ただそれに伴った補償とか請求権の問題が生ずるということであろうかと、法律的には思われます。それらのアメリカ側のとりました行動から生じた請求権の問題は、沖縄の復帰に当たりまして、返還協定の交渉において、第四条でそのようなことから生じた請求権の問題を処理したという形になっておる次第でございます。
  208. 瀬長亀次郎

    ○瀬長委員 この問題は、今月の十五日に、国相手に地主から違憲立法であるということで現在の軍用地の解放を要求する第一回裁判があって、国の方がそれに対して答弁しなくちゃいかぬということになりますが、その点は後にしまして、いまの公用地法は七一年十二月三十一日に立法されて、来年の五月十四日ですかに期限切れになる。それで、引き続き新しい法律をつくってアメリカに基地を提供し、自衛隊が基地を使うといったような政府考えであるようでありますが、この法律はどういう名前でどういう内容のものであるか、これは施設庁の方からお答え願いたいと思います。
  209. 斎藤一郎

    ○斎藤(一)政府委員 ただいまお尋ねの件は、ただいまの時点においてまだ成案が確定したわけでもございませんし、これからの取り扱いも必ずしも明確ではないのでございますが、いまの時点における私ども考え方、それから今後どうなるだろうかということ、現況などを少しく御説明したいと思っております。  御案内のように、いま防衛施設庁は、先ほども申し上げましたが、自衛隊の施設及び米軍の施設にかかわる仕事をやっておりますが、一方沖縄の場合、先ほど来御説明があったように、過去の戦争のために土地の境界が明確でない、地籍が不明確である。その他いろいろな問題がございますが、地籍不明確という問題が施設の外でもいろいろ問題でございますけれども、われわれが取り扱っておる防衛施設の中でも境界が不明確であるがためにいろいろ困難な問題が出ております。たとえば施設を一部返還するということになってもなかなか返還の処理がそのためにうまく進まない、あるいは返還して跡地を利用しようといっても所有者の境界が明確でないので跡地処理がうまくいかない、あるいはまたいま賃貸借料を契約ができた人に払っておりますが、その際にも地籍が明確でないために真に正しい面積に相当する賃貸借料が払えておるかどうか疑問があるといったようないろいろな問題がございます。  そういうものの一環として当面一番問題になってきたのは、先ほど来お話しのいわゆる公用地暫定使用法でございますが、これが来年の五月十四日で五カ年の期限が切れるので、その場合にわれわれといたしましては米軍に提供しておる施設の中で必要なところはなお話をし続けてでも使用したい、話がつかなければしかるべき適法な手続で使用することにしたいと思うのでありますが、なかなか契約が進まなくて、過去この暫定使用法ができたときの一条二項の訓示規定に基づいて契約を進める努力をしてまいって、三千件ばかりの契約地が現在では約九百七十件ぐらいになっておりますが、これがまだまだどうなるかわからない。したがって、来年の五月十四日の時点で契約ができない土地についてはどうするかということになりますが、これはわが国内の一般法によって、たとえば土地収用法なりあるいは米軍の場合であればいわゆる特措法によって手続をとって、そして合憲、適法な手続をもって使えるようにしたいと思うのでございますが、その場合に地籍が明確になっておらない、境界がはっきりしない土地は特定できませんので、これらの土地収用法なり特措法の手続に乗せることができないという、要するに地籍不明確なために生ずる一つの大きな問題があります。  それやこれや考えますと、やはり防衛施設の中で地籍を明確にするということがいろんな問題を解決する根本であるというふうに考えまして、防衛施設の中では防衛施設庁がこの地籍を確定するための世話役をするということを法律でもってお決めいただく、そしてなるたけ早く地籍を確定していろんな混乱をなくしたい、それができるまでは未契約の土地についても一時使用をすることを法律で認めていただく、そしてなるたけ現行の一般法に移っていくということがいま問題の処理に対する正しいやり方ではなかろうかというふうに考えて、そういう立法を関係省庁あるいは法制局と相談して立案を急いでおるわけでございます。その成案はまだなかなかはかどっておりませんので、いま申し上げた考え方がまた変わっていくかもしれませんし、あるいはまた細部にわたってはかなり変化があるかもしれないので、以上申し上げた考え方をもって御了承いただきたいと思います。  いつ法律にするかということも、私ども行政官庁としてはしかるべき成案を得た上で高度の立場から御判断いただくというふうに私は思っております。
  210. 瀬長亀次郎

    ○瀬長委員 去る一月の二十九日に地籍問題で施設庁の係からいろいろ聞いたんですが、現在、施設庁は返還後の土地に対する確定作業を行い、開発庁は返還前の土地に対する地籍確定作業を別々に行っているということでしたが、現在の地籍確定作業の現状と計画と展望を簡潔に両方から説明してもらいたいと思います。あのときはずいぶんうまいぐあいに計画が進んで、五、六年すれば完成するんじゃないかということでしたが、地籍の確定作業の現状と計画と展望、これを簡潔に両方からお願いします。
  211. 銅崎富司

    銅崎政府委員 最初に、復帰の後に所有者に返還されました土地の境界確定でございますが、この境界確定につきましては防衛施設庁におきまして原状回復補償の一環といたしまして境界設定費を補償して、それによりまして関係土地所有者が集団和解と俗称しておりますが、集団和解を基礎として境界確定作業を進めることにしております。その際、那覇の防衛施設局が可能な限り協力、援助するということで、四十九年度に行いました航空測量によります現況測量、この結果作成されました航空写真、それから現況測量図、それに戦災前の航空写真を土地の所有者、団体及び市町村に提供いたしております。  それで、現在、五十一年五月十日現在でございますが、既返還施設で境界確定を要するものがボロー・ポイント射撃場等二十三施設ございまして、面積で約千百万平方メートルございます。このうちで境界設定費の支払いが終わりました施設は二十一施設になっております。そして、五施設につきましてはすでに境界の確定が終わっております。それから、残りの十七の施設につきましては現在境界の設定工事を実施または準備しておるということでございます。それから瑞慶覧通信所等三施設につきましては現在現地調査中でございまして、これも、調査が終わりましたら境界設定工事の実施あるいは準備にかかるわけでございます。  これは復帰後返還になりました施設でございますが、現在提供しておる施設につきましても、施設庁におきましては境界の確定作業をいたしておるわけでございますが、沖縄県におきます現在の提供施設五十七のうちで、土地の境界の確定を要すると認められるものが二十八施設ございます。当庁におきましては、先ほど申し上げましたように、航空測量による現況測量を実施いたしまして、その結果作成されました航空写真、現況測量図、それに戦災前の航空写真を関係土地の所有者に参考資料として提供いたしております。五十年度におきましては、これらの資料を基礎にいたしまして、市町村界、大字界、小字界を順次測量いたしまして、小字の中をさらに地形、地物をもとに区画測量することにいたしております。これらの工事は五十年三月に完了いたしております。こういうふうに、市町村界、大字界、小字界、それからさらに小字の中の地形、地物を区画測量していくわけでございますが、実際にこの土地がどなたの土地になるかというその土地の確定につきましては、これは私権にかかわる問題でございますので、土地の所有者が主体的になって作業を進めるということが原則でございます。  そういうことで土地の所有者が主体的になりまして作業が終わりました段階で、今度は関係の土地所有者全体による集団和解を基盤とした境界確定作業を進めるということになるわけでございますけれども現地の那覇防衛施設局が積極的にこれに協力、援助して、問題の解決を図りたいと考えております。  この調査はまず三段階に分けて考えているわけですけれども最初にいろいろな関係の図面を差し上げるわけですが、その後図根測量をいたしまして、それから地図の編さんのための基礎作業に入り、それから地図の編さんをするわけでございますが、ただいま申し上げました地籍確定を要する二十八施設につきましては、一、二を除きまして大体図根測量を終わっておりまして、現在第二段階の地図の編さんの基礎作業にかかっておるという段階でございます。
  212. 柳川成顕

    ○柳川説明員 沖縄開発庁では、非軍用地域、これは復帰前に返還された軍用地が大部分でございますが、この境界不明土地の地籍の明確化のため、かねて沖縄県を通じまして調査実施いたしているところでございます。それで、五十年度からは土地所有者の合意に基づく境界確認の作業に入っておりまして、五十年度実施しました西原村につきましては、県及び西原村並びに関係者の多大の努力によりまして、大半の土地所有者の合意を得て、現在最終成果の取りまとめ中でございます。地籍の明確化も間もなくできるというふうに考えております。  なお、五十一年度におきましては、沖縄市及び読谷村において境界設定調査実施する予定でございます。それで、五十年度を初年度としまして大体五ヵ年計画で沖縄開発庁所掌の境界不明土地の地籍は明確化したい、かように考えております。
  213. 瀬長亀次郎

    ○瀬長委員 いま防衛施設庁の方では集団和解方式で三段階に分けてやっている。施政権返還後において返還された土地についての地籍確定の作業の方法が明らかになっている。さらに、返還前の返還土地については開発庁の方で大体五ヵ年計画を立て、しかも、この前もおっしゃっていましたが、西原あたりでは非常に順調にいっているということであります。それで問題は、法律をつくってこれをやらなければならないというふうなものではないという結論がそこから生まれてくる。  私、もう一つ聞きたいのは、軍に提供した施設、この地籍の確定が、いま皆さんが考えているような方法で事実できるのかどうか。たとえばいま地主が入り込んでいって、ここら辺に私の井戸があった、ここら辺に何か農道があったとかいったような、嘉手納なら嘉手納へ入ってそれができるのかどうか。できれば非常にいい方法だと思いますが、そこら辺の見通しを言ってください。
  214. 斎藤一郎

    ○斎藤(一)政府委員 いまお尋ねのような見通しの問題いろいろございまして、私どもも、その点については十分実情考えながら検討してみておるのでございますが、これは基地の態様によって一概には言えないかと思うのです。たとえば弾薬庫のように原形が大体維持されておって一部分だけ工作物があった、あるいは居住地なんかも余りもとが変わっておらないというところがございますし、それから、一番困難であろうと思われるのは、飛行場の滑走路のようになって、のっぺらぼうになってしまってちょっとめどがないというところもありましょうし、一概には申しかねると思うのです。実情によって、非常にスムーズにいくところと大変困難なところというふうに相当開きがあるのじゃないか。そういうぐあいで、簡単なところは非常に容易にできますが、非常に困難なところについては、かなりの根拠があって、私どもとしてもお手伝いするためには、その法律に定められた手続、しかも手伝う以上はかなり明確に手順が決まっておるということが必要だというふうに考えておるわけです。
  215. 瀬長亀次郎

    ○瀬長委員 基地の中に入って事実上調査できるのかどうかという問題は、いまあなたがお答えしたような単純な問題じゃないと思うのですよ。事実はわからぬでしょう。できますか。いま航空写真を撮ってやっていると言うのですね。航空写真の場合には、飛行機を飛ばせてくれと言って撮るかもしらぬが、実際土地主が入り込んでいって——あなた方、援助すると言いますね、お考えは。これは可能ですか、可能でないのか。これはあなた、常識ですよ。パイプラインは後でまとめて申し上げます。あのパイプラインの施設も提供した施設であるというので、現にあの上は道路になっておるのですよ。ところが、その道路になっているところを舗装しようとしても、軍の許可がなければ舗装もできぬというような実態でしょう。現に軍事基地、区域、施設を提供しているその中で、地籍の確定作業が一体できるのか、これを明らかにしないといけないところまできているんじゃないですか、言ってください。
  216. 斎藤一郎

    ○斎藤(一)政府委員 お尋ねは、米軍との関係がむずかしいだろうということでございますが、私ども権限を持ってするということになれば、米軍と十分話し合って、米軍の十分な協力を得ながらやるべきことはやらなければならぬというふうに思っております。
  217. 瀬長亀次郎

    ○瀬長委員 その件について、こうこういう法律をつくるので、法律ができたら米軍は立ち入りを許可するかという点についての話はついているのですか。
  218. 斎藤一郎

    ○斎藤(一)政府委員 現在でも、作業の段階でいろいろと話をつけてやっておりますので、そういう法ができた場合には、なおさら話がつきやすいというふうに思っております。
  219. 瀬長亀次郎

    ○瀬長委員 これは、だろうということじゃ問題にならぬですよ。事実、そういった目的が実際——まあ後で聞きますが、この法律をつくる一番大きい目的は何ですか。まず言ってください。切れますね、来年五月十四日には切れる。臨時につくったものですね。あくまでも臨時だ、切れる。それが目的でないのですか、米軍に土地をやる、自衛隊にも土地をやるというのが主目的じゃないのですか。そこら辺、答弁してください。
  220. 斎藤一郎

    ○斎藤(一)政府委員 先ほどもお答えしたように、地籍が不明確なためにいろいろな問題が片づかない。そのうちの一つとして、公用地暫定使用法が切れた場合に、本来ならば収用法なり特措法にのっとるべきなんですが、この手続は、特定できないものを対象にできないという別な法解釈の論理がございますので、その間に立って合憲かつ適法に、どういうぐあいに扱えばいいかということを考え、地籍確定をすることによって諸問題のいろいろ難点が解決するというふうに思っております。
  221. 瀬長亀次郎

    ○瀬長委員 現在の公用地法の場合には、地籍確定はしないで一括してやったですね。その間に、そういった準備は何もなされなかった。だから、今度は地籍確定をするということを一つの目的にし、それまで土地は提供しておく。確定後はこれはどうなるのですか。
  222. 斎藤一郎

    ○斎藤(一)政府委員 地籍が確定しましたならば、返還できるものは返還いたしますし、なおわれわれが条約に基づいて米軍に提供する必要があるというものについては、現行の一般法律の手続によってこれを適法に使えるようにしたいという考えです。
  223. 瀬長亀次郎

    ○瀬長委員 そのときにはまた新しい法律をつくるのですか。
  224. 斎藤一郎

    ○斎藤(一)政府委員 先ほど詳しく申し上げたのですが、いま一般に、自衛隊の場合ならば土地収用法、それから米軍に提供した土地についてはいわゆる特措法というのがございますので、それにのっとってやりたいという考えです。
  225. 瀬長亀次郎

    ○瀬長委員 そこで、もう一つお聞きしたいのは、この提供されておる施設、区域の地籍確定はいつまでに確定できるのか。この見通しはどうなんですか。私が聞いているのは、この法律をつくりますね、長ったらしい名前の沖縄県の区域内に所在する駐留軍用地等の境界の明確化等に関する特別措置法でしょう。この地籍確定作業がいつごろまでに終了するという見通しがありますか。
  226. 斎藤一郎

    ○斎藤(一)政府委員 それも先ほどお答えしたのですが、非常に速やかにできる場所となかなか困難をきわめる場所と、いろいろその差があると思いますが、必ずいつまでにやるという具体的な見通しは持っておりませんが、いずれにしても早く処理をするということが必要だと思っております。
  227. 瀬長亀次郎

    ○瀬長委員 これは法律ですから、出されてからいろいろやりますわね。いまのような自信のない答弁ではあなた方困らぬですか。たとえば、ある個所はもう急速にできるかもしれない、ある個所は、弾薬庫みたいなところは非常にむずかしい。さてむずかしいところは一体いつごろまでにできるのか、これがわからぬといかないのじゃないですか、立法者としては。どうなんですか。無期限ですか。
  228. 斎藤一郎

    ○斎藤(一)政府委員 私どもとしては極力早く決める段取りをいたしますが、最終的には土地所有者が協議して——先ほど来集団和解というお話がございましたが、私権のことでございますから、関係者が相寄ってお決めになることになると思います。そういう関係所有者がお決めになることが速やかに行えるように、われわれがいろいろな資料を提供してお手伝いするというたてまえでございます。
  229. 瀬長亀次郎

    ○瀬長委員 取り違わないでくださいよ。いまの和解方式は、返還されたものは地主は立ち入りもできるでしょう。いま申し上げているのはアメリカの基地ですよ。提供した施設、区域ですよ。そこに事実上地主さんが入り込んでいってできますか、集団和解。これはできないでしょう。だから、これはできないとして——あなた、できるとは言えないんだ。困難なところもあるし、すぐできるところもある。たとえば弾薬庫のことも言いましたね。嘉手納の四〇〇部隊だと思いますが、そういったようなところはむずかしいわけだから、むずかしいところはいつまでにできるのか、その見通しがつかないと、こういった法律は無期限になりますよ。そうでしょうが。
  230. 斎藤一郎

    ○斎藤(一)政府委員 いつまでという期限づきの法律ではございませんが、事柄の性質上、問題が片づけばそれでその法律が働く必要もなくなるということでございます。
  231. 瀬長亀次郎

    ○瀬長委員 問題が片づくか片づかぬか、この法律をつくるときに見通しがつかぬでしょうが。全軍用地の提供された施設、区域、これの地籍確定作業がいつまでに完了するという確固たる見通しはないじゃないですか。ありますか。答えてください。
  232. 斎藤一郎

    ○斎藤(一)政府委員 先ほど来お答えしておるように、いろいろ状況が違いますので、早く見通しのつくものと大変手間がかかるものとあると思います。いつまでと具体的に申し上げることはできないと思います。
  233. 瀬長亀次郎

    ○瀬長委員 だから、いつまでという答えができないというのは、無期限じゃないですか。どうなんですか。
  234. 銅崎富司

    銅崎政府委員 ただ、この地籍の確定問題につきましては、先ほど来御説明申し上げておりますように、確定しないためにいろいろな不都合なり制約が出てまいっておるわけでございまして、沖縄の皆様方もこの地籍の確定は早くやりたいという強い御希望をお持ちでございます。     〔竹中委員長代理退席、木野委員長代理着席〕 それからもう一つは、昔のことをよく知っておられる古老の方がまだ健在でおられるうちに確定しないと、これは確定がなおむずかしくなるということで、私どもいろいろな資料その他の便宜を図って、皆さん方で話し合いによって地籍を確定していくというお手伝いをするわけでございますから、そういうことでみんなで決めようという気持ちがございますときには、私はこれは期限が無期限に延びるとは考えていないわけでございます。
  235. 瀬長亀次郎

    ○瀬長委員 返還された土地は、私、理解するのですよ。たとえば開発庁はちゃんとりっぱな返事しましたよ。五ヵ年計画をつくって、西原がいま成功しつつある。私、西原へ行きましたよ。ちゃんとここに井戸があったとかなんとかいって、あれはうまいこといっている。さらに施政権返還後、この返還後に返還された土地、これは集団和解方式、それはいいのですよ。  私が申し上げているのは、提供した区域、施設です。米軍がいま使っている区域がどうしてできるのか、できないじゃないですか。あなた方はうそ偽りを言ってやるような段階じゃないと思うのです。現実に基地に立ち入りできるのかできぬのか。国会議員すら外務省を通じて基地調査をやりますね。それで三回とも、これは変な調査だなと思いましたが、車に乗せて、おろさぬですよ。そういった状態なんです。これはあなた、この法律ができました、さあ解放してください、何のために、調査します。これが果たして基地の性格、そんな性格ですか。それではもう基地じゃありませんよ。たとえば核兵器、どうもくさいといった場合に、地籍がわからぬじゃしようがない。あれはフェンスが三重になっていますよ。そういったところの地籍の確定が一体できるのか、できぬのか。常識じゃないですか。どうなんですか。だから聞いているのです。
  236. 銅崎富司

    銅崎政府委員 いま先生はできない方の例を挙げられましたけれども、私ども復帰の前にその事前準備で、たまたま沖縄復帰対策部長をした関係で事前の調査に行ったわけでございますけれども、目的がはっきりしておって、どういうことで立ち入るということが明らかな場合、復帰前の立ち入りにつきましては米軍は便宜を図っていただきまして、私ども見たいところは全部立ち入って見ることができたわけでございます。  したがいまして、地籍確定というのが沖縄の土地問題を解決する上でとにかく最大の重要な問題であるということで、どうしても立ち入って調査をしたいという場合に、米側が便宜を図ってくれるであろうという期待を持っておるわけでございます。ただ、軍の機密がありまして立ち入れないところもあるかもしれませんが、全部だめだというふうには私ども考えていないわけであります。
  237. 瀬長亀次郎

    ○瀬長委員 それで、これをつくる前に、何か米軍と会って、これができたら、法ができておるんだから立ち入り調査させてくれという要求をし、また向こうから、多分できるだろうといったような返事でもありましたか。
  238. 銅崎富司

    銅崎政府委員 それはございません。ございませんが、先ほど申し上げました航空写真を撮ったわけですが、この航空写真を撮る場合も、基準点を地上に設置しなければいけませんが、この基準点を設置したいということで、基地内に基準点を設置するということにつきましては米側は承認したといいますか、そういう基準点設置は何ら支障なく行われたわけでございまして、それで全施設の航空測量ができた。それに基づきまして現況図その他実測図をつくっておる、こういうことでございます。
  239. 瀬長亀次郎

    ○瀬長委員 地籍の確定が航空写真みたようなものでできるのであれば、それは至って簡単ですよ。簡単でないものだから五ヵ年計画をつくったり和解方式をつくったり、あるいは三段階に分けての調査をしたりするのでしょう。これは子供だましみたようなものを言わぬ方がいいと思うのですよ。現実にアメリカに提供した基地を、極秘なんでしょう、秘密で入れないのですから。それを法律ができましたから地籍確定の作業のために地主が入り得るかどうかということは、常識じゃないですか。どうなんですか。入れますか。あなた方、地主さんの援助をする。この地主の土地はここら辺にあるが、嘉手納飛行場が真ん中にあるので、たとえばP3なんかいるところ、まずこれがあるときにできますか。できないというのが常識じゃないのでしょうか。外務省に別に聞くまでもないと思うのですよ。
  240. 銅崎富司

    銅崎政府委員 私の経験とそれから現地におりました経験から申し上げますと、米軍の施設の中でもたとえば黙認耕作地、施設の中に住民の方が入っていろいろ耕作もしておられますし、それから施設が町の中にあるところで、どうしてもその道路を通らなければ目的とするところへ行けないような場合、その道路の通行というのは認められておりますから、入れないのが常識だというふうにはどうも思えないのですけれども……。
  241. 瀬長亀次郎

    ○瀬長委員 それで、もう一つお聞きしますが、見通しがないといかぬわけでしょう、法律をつくるのだから。だから、大体返還された土地の地籍確定の作業は五ヵ年ぐらいでこういったところがあるからできると、これはいいですね。あれだけの膨大な米軍基地、これを、いつまでに地籍が確定するという見通しはつかないでしょう。つきますか。
  242. 銅崎富司

    銅崎政府委員 先ほども御説明申し上げましたように、個々の土地の確定というのはやはり所有者の方が御相談し合って決めるということでございますので、そこに何といっても一番大きな比重がかかるわけでございますけれども、やはり地籍を早く確定したい、それから、いま早急にやらないと永久にやれないんじゃないかというお気持も強いように伺っておりますので、はっきり何年ということは申し上げられませんけれども、やはりやる気持ちがあればそう長くかかるものではないというふうに私は思っております。
  243. 瀬長亀次郎

    ○瀬長委員 十年ぐらいにはできますか。
  244. 銅崎富司

    銅崎政府委員 まあやってみなければわからないわけでございますけれども、できるだけ早くやるという気持ちを私ども持っておりますし、地主の皆さん方も持っておるわけでございますから、十年一昔ということも言われておりますから、できるだけ早く、それが何年であるかというのは申し上げられませんけれども、できるだけ早くやるという気持ちが合致すれば、そう時間はかからないというふうに信じて仕事をやっておるわけでございます。
  245. 瀬長亀次郎

    ○瀬長委員 いまの地籍確定の問題と、土地を収用して、米軍だけじゃなしに自衛隊まで一緒にやろうというところに大きい矛盾があって、その矛盾点、あなたがた解けないのですよね。  それで安保条約、あれは六〇年に新安保がつくられて、十条は何と書いてあるのか、アメリカ局長さん、ひとつ教えてください。
  246. 山崎敏夫

    ○山崎政府委員 安保条約の第十条は有効期間に関する規定でございまして、その最初の部分を全部読みますと、「この条約は、日本区域における国際の平和及び安全の維持のため十分な定めをする国際連合の措置が効力を生じたと日本国政府及びアメリカ合衆国政府が認める時まで効力を有する。」と、これが第一項でございまして、続いて、「もっとも、この条約が十年間効力を存続した後は、いずれの締約国も、他方の締約国に対しこの条約を終了させる意思を通告することができ、その場合には、この条約は、そのような通告が行なわれた後一年で終了する。」ということになっております。  現在すでにこの条約が発効してから十年以上たっておりますから、一番最後の項が有効期間については一応適用されておるというふうに考えられます。
  247. 瀬長亀次郎

    ○瀬長委員 私がそれをお聞きしたのは、安保条約すら見通しついているのですね。たとえば安保条約はどうも困るので廃棄しようじゃないかといったような政府ができれば、アメリカに通告すると一年後にはその効力はなくなるというわけなんで、米軍基地がその後、アメリカとの折衝によって、すぐはできぬでしょうからそれは一年ということになると思いますが、私がそれを聞きましたのは、それとの関連で、特措法ですか、アメリカに提供すると。  ところで、安保条約がなくなった場合に、このつくろうとするものは無期限だと見通しがつかぬというような矛盾がそこから出てくるのじゃないかという一つの点と、もう一つは、憲法に規定されておるいわゆる私有財産所有権の問題、これをそのような形で、無期限で借りるというふうなことがどうなるか、いわゆる国民がどう解釈するのか、ここら辺はっきりさせないと、安保条約すら、政治権力の変わることによってそれを変え得るようなちゃんと条項があるわけなんです。それで、いまもくろまれておるこの新土地収用法は期限がない、はっきり十年であるのか。なるべく早く地籍を確定したいというふうなことでは、これは問題は非常に大きくなっていくだけなんだな。これ、施設庁長官ですか、あなたにでも、大体十年くらいには地籍確定は完了するというふうな答弁はできるんでしょう。できますか。
  248. 斎藤一郎

    ○斎藤(一)政府委員 いまお尋ねの地籍の確定の見通しがどうかということは、先ほど来お答えしておるところでございますが、一方、地籍が確定できるまでの間、米軍の用に供するために必要があるものについては一時使用ができるということは、あくまで先ほど外務省でお読みになった安保条約の必要のためでございますから、その必要がなくなれば、一時使用の方はそれと同じ運命になるという理解でおります。  地籍の確定はいつまでするかという先ほど来詰めたお問いでございますが、それに対しては具体的にいっとは言えないけれども、早くできるだろう。そういう意味で、全く永久に無期限だというふうには私ども考えておらないのでございます。
  249. 瀬長亀次郎

    ○瀬長委員 あなた方が出そうとする法律のまやかし、仕掛けはそこにあるのですよ。そこにあるから答弁できないのですよ。なるべく早くと言うだけで、見通しがないわけですから。大体あれは米軍の秘密の基地ですからね。沖縄の場合には特に多いのですよ。これが事実上、地籍確定というむずかしい作業を許すのかどうかという見通しが立てられない段階で、そうして地籍確定の問題と絡み合わせて、いまの暫定使用法、これを引き続き利用しようとするところに難点があるんじゃないですか。いわゆるそこは、もし地籍確定のものを抜く場合に、米軍に対する施設は双方によってできるんですね。自衛隊について、どうなるのですか。これは土地収用法、そして土地収用法は収用委員会、これは知事が任命するのですか。人事問題、予算関係で知事は非常に大きい権力を持っていますからね。たとえば、いま沖縄県知事は、きょうの新聞に発表しておりますが、この法律に反対すると真っ向から言っています。いま知事が任命する土地収用委員会、大体わかりますけれども、どういった人が任命されるか。無理ですよね、できませんよ、あの収用法では。だから非常に考えあぐねて、いまの地籍確定の問題と絡み合わせて、いつ確定するのかわけのわからぬような法律であるということになりはしませんか。現実にいま繰り返し巻き返し、できるところもあれば、たとえば黙認耕作地はもちろん当然できますね、黙認耕作地だから。そういったようなところを例にとらなければ説明ができないような法律をあなた方は今度内閣に出そうというんですね。私は、出すなとか出せとかいうふうなことをいま論議する論点ではなくて、あなた方、何を一体目的にするのか、どういう目的で現在、来年切れようとする土地収用法を引き続き公共の利益のためとかいう目的で使うことができるか。そのジレンマにあなた方は入っておるわけだ。だから、たとえ長官でも、いかに米軍のこと詳しいかもしれませんが、事実できるだけ早く地籍を確定したいとは答弁しておるが、いつまでにできるかという見通しないでしょうが。それがなければ、あなた、いまの契約に賛成の地主でも事実承認しませんよ。いつまでこれは貸すのかわけがわからない。どうなんですか。
  250. 斎藤一郎

    ○斎藤(一)政府委員 先ほど来お答えしておるとおりでございまして、私どもはただいま米軍並びに自衛隊が使っておる土地についていろいろな問題点がある、こういうことを地籍を明確にすることによって解決する、かつまた使用の問題についても合憲で適法なやり方で解決ができないかということで、いま成案を得るという作業をしておるわけでございます。
  251. 瀬長亀次郎

    ○瀬長委員 いま契約に賛成する地主に対する契約書、これは地籍が確定するまで、あなたの土地、甲なら甲の土地、どこどこにあるものは貸します、あるいは地代幾らというふうに決めるんですか、そこら辺どうなりますか。契約地主に対する政府との契約をやるでしょう。この契約の内容、どういった内容になるのか。
  252. 銅崎富司

    銅崎政府委員 御質問の御意図がちょっとわかりにくいのですが、現在やっています賃貸借契約は地籍が決まるまでそのまま続いていく、地籍が確定しまして、もし現在のと相違が出た場合にどうするかということは、その時点でまたいろいろ協議をいたしまして決めていくことになる、こういうふうに考えております。
  253. 瀬長亀次郎

    ○瀬長委員 その場合には新しい賃貸借契約をしなければならないということですか。
  254. 銅崎富司

    銅崎政府委員 賃貸借契約の目的なりその他いろいろな条件については変わりがないというふうに考えるわけですが、たとえば所有の所在地が違えばその所在地が正しいものに変えられる、土地の面積が違えばその土地の面積が地籍確定された後の面積に変更されるということになろうかと思います。そのほか、契約そのものその他の内容が変わるというふうには考えておらないわけでございます。
  255. 瀬長亀次郎

    ○瀬長委員 時間がありませんのでもう一、二点質問いたしますが、自衛隊が使っておる土地をそのままずっと使わそうとする場合に、土地収用法でもって解決できる見通しがあるかどうか、米軍基地は別として。いまのこの新しい法律に真っ向から反対だと言っておるような知事がいます。屋良さんは反対していますね。また引き続き反対する知事が出るという場合に、その土地収用法によって自衛隊用の土地が収用できるのかどうか、そこら辺はどう考えていますか。
  256. 斎藤一郎

    ○斎藤(一)政府委員 自衛隊の土地については、もし強制的な収用手続をとれば土地収用法になるわけですが、先ほど来申し上げているように、地籍の確定したところはできますが、地籍の未確定のところについては実測図面を付して特定して手続を開始するという手順がございますので、土地収用法に乗っていかないということになるわけでございます。
  257. 瀬長亀次郎

    ○瀬長委員 土地収用は収用委員会にかかるんでしょう。
  258. 斎藤一郎

    ○斎藤(一)政府委員 土地収用委員会にかかります。
  259. 瀬長亀次郎

    ○瀬長委員 収用委員会はだれが任命しますか。
  260. 斎藤一郎

    ○斎藤(一)政府委員 県において知事が任命することになっております。
  261. 瀬長亀次郎

    ○瀬長委員 知事はすぐ直接任命しますか。県議会の何か承認を受けますか。
  262. 銅崎富司

    銅崎政府委員 都道府県議会の同意を得て任命することになっております。
  263. 瀬長亀次郎

    ○瀬長委員 私がそれを聞きましたのは、現在沖縄で収用しようというわけですから、沖縄の県知事は断固反対していますよ。新聞もごらんになったかもしれませんが、あしたかあさって上京されると思いますが、こういったような知事が土地収用に賛成する委員を任命すると予想できますか。
  264. 斎藤一郎

    ○斎藤(一)政府委員 私がお答え申し上げているのはあくまで法律上の問題でございまして、後どういう御判断をなさるか、事実上どういうぐあいになさっていくか、私どもちょっとお答えしかねるわけでございます。
  265. 瀬長亀次郎

    ○瀬長委員 そうだと思うのですね。そうであるからこそ、新しく装いをこらして出ようとする土地収用法は矛盾だらけなんですよ。いわゆる地籍が確定するその作業を提供した施設の中で行う。いつまでに地籍確定作業が完了するか見通しはつかない、できるだけ早くやりたい、言いかえると無期限とも言えるというふうな矛盾が出てくるわけなんです。無期限に使用するような土地収用法ができた場合に、安保条約との関連の問題と、憲法に規定された、いわゆる民法もそこから出るわけなんです。その賃貸借契約の無期限性の問題がどうなるか、そこら辺の矛盾が出てくると思うのですよ。いま一番大事なのは、いつまでに地籍確定するということもわからないのに、それをあたかも地籍確定がアメリカ軍基地の中でもできるかのごとく宣伝されておるところに、この出されようとする法案の矛盾と、また国民に対する疑惑を呼び起こす大もとはそこにあると思うのです。したがいまして、その内容がわかった後でなければもっと突っ込んだ質問はできないと思いますが、きょうわかったことだけでも、いわゆる地籍確定作業のものと関連させながら、この期限切れになろうとする公用地法をできるだけそのままの形で米軍と自衛隊の基地に提供しようとしておるというような政府の意図が実に明らかになったんじゃないかというふうに私考えます。  時間が参りましたのでやめますが、この件について改めて、閣議決定の後は中身が発表されると思いますので、その時点で質問をすることにして、きょうの質問はこれで終わりたいと思います。
  266. 木野晴夫

  267. 受田新吉

    受田委員 きょうは余り時間をかけないで、三、四十分の質問にとどめて、残余は次回に回すという御了解をいただいて、主として当面する外交問題にまずきょうは質問を集中し、設置法関係質問は次回に譲らしていただくということにいたします。  外務大臣お疲れでございますが、あなたも日本の外交を背負うて、衆望を背負うて御健闘いただいておるわけですが、もうしばらくがまんをしてください。  そこで、外務大臣も御就任以来一年半に近い日月をけみせられました。この長期にわたる外務大臣の御勤務において、もはやいまさら、私はまだ経験が浅いなどという逃避的な御発言はないと思いますので、ずばり質問お答え願いたいのです。  まず日本と中国の関係お尋ねをいたします。お隣の中国では、周恩来首相が故人となられて以後の新しい人事が相次いで発表されているわけでございます。特に、新しい華国鋒総理が誕生をしたというこの事態、こうした周恩来以後の新しい人事によりまして、お隣の中国の政治、経済、外交、そうした政策の上に何らかの変化があるとごらんになるか、変わりはないのだという御観測か、外務大臣として比較的長期勤務者でいらっしゃる宮澤先生の御意見を承りたいと思います。
  268. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 中国に新しい政権が誕生いたしましてから今日まで、いろいろな機会を通じまして私どもが先方のお話を聞いております限りでは、外交政策及び経済政策において変わりはない、毛主席の指示のもとに行われておることは従来も現在も同じであるというのが公の説明でございます。私どもとしては一応それをそのように承っておるのでございますけれども、事実が果たしてそのとおりであるかどうかということにつきましては、それはそれとして、客観的に見ていく必要があろうと思っております。ただいまのところはそのような説明を何回かの機会にわたって聞いております。
  269. 受田新吉

    受田委員 一応原則的な立場の御意見を伺ったのでございますが、中国の新人事によって日中平和条約の交渉は進むのですか。進捗するのですか、停滞するのか、あるいは中国の新しい政府の責任者は、覇権問題については今後どういう扱い方に——一層厳格になるのか、緩和されるのか。それらについて、日本政府としてぼんやりながめておるわけにはいかないわけなんですが、積極的に日中平和条約の締結に取り組もうとする日本外交の頂点に立っておられる宮澤さんの御意見を承ります。
  270. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 政変の直前から今日ごろまでの時点におきましても、何といいましても国内で大きな出来事があったわけでございますから、条約交渉ということになりますと、これはやはり交渉事でございますので、先方が思っておられることが全部通るというのならば、本来交渉でございませんから、やはり交渉ということになりますと、国内に大きな問題がございますときにはおのずから立場が柔軟性を失うということは、私はあり得ることだと思っておりました。しかし、新しい政権がもはや落ちついてまいったということでございますと、これはまた先方としても、この条約の交渉について再度積極的に取り組もうという姿勢に立つことがあり得るというふうに考えておりまして、私どもとしては従来どおり、できるだけ早くこの条約を結びたい、交渉を完結したいというふうに考えております。また、先方も最近そのように言っておられるように承知しております。
  271. 受田新吉

    受田委員 非常に積極的な御意見を承ったのでございますが、そうしますと、日中平和条約を締結するために、ごく近い将来、中国の新人事に伴う責任者の皆さん、そういう首脳部と会談するために、三木総理みずからが乗り出す、あるいは宮澤外務大臣みずからが乗り出して、この問題の解決に積極的な意欲を持つ、やっぱりそのぐらいの勇気がないといけない、ぼんやりと日月をけみするべきではない。いまの外務大臣の御答弁を承っていると、非常に積極的な意欲をお持ちでございます。そうしますと、新人事の中国政府首脳部との会談という問題もこの際積極的に取っ組んでいただいて、田中総理が出かけられてもう四年になるわけですが、そういう日月がけみせられた段階で、このあたりで三木総理みずからが乗り出す、あるいは外務大臣、あなた御自身が乗り出して、新人事の中国首脳と会談する、私は当然そうあってしかるべきだと思います。御意見を承りたいです。
  272. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 昨年九月に喬冠華外務大臣と長い話をいたしました結果といたしまして、喬冠華外相においても私の考えておりますことは十分に理解をしておられるものと私は考えておりますし、また、かなり真剣に検討をされた時期があったのではないかというふうに思っておりますけれども、その後不幸にして政変が起こりました。したがいまして、中国の政変後の平常な状態が戻ってまいりましたときには、やはり昨年の九月以来のこの問題を積極的に中国側も取り上げていただきたいと考えておりますし、私どももそのような時期があれば積極的に取り上げたいと考えておるのでございますけれども、それをどのような方法において行いますか、ただいまこの席で申し上げるほど熟した考えをいまだ持ってはおりません。
  273. 受田新吉

    受田委員 外務大臣、私は三木内閣がいつつぶれるのかとかいうような計算でなくて、三木総理が引き続き宮澤外務大臣を信任して、三木・宮澤コンビで日中問題の解決に当たろうという意欲をお持ちならば、ごく近い距離です、世界で一番近いところ、この隣国中国に旅することは、ごく簡単にできるわけです。それだけに、いま御発言の中に、ちょっと奥歯に物のはさまったものが感じられたのですが、たとえば総理が行かれる、あるいはあなたが行かれる、あるいはもし今度は向こうさまで御苦労願うとするなら、華国鋒新総理に御招待を申し上げて、国賓として日本に来ていただき、迎賓館もりっぱにできておるのですから、御苦労願う。それは日本の国として隣国に対する善隣外交の一つの礼儀でもあると思うのです。中国に、新総理どうぞおいでください、そういう礼儀を尽くしてしかるべきだと思うのです。三木総理がいらっしゃるか、外務大臣のあなたがいらっしゃるか、あるいは華国鋒新総理に御苦労願うか。
  274. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 田中総理が一九七二年に訪中されたときには、いわば総理大臣がじかに先方に乗り込まれて交渉されたということでございました。また、それしか方法はなかったわけでございます。しかし、その後国交が開かれまして、お互いに大使も交換をし、十分にお互いの事情を言い明かし合うチャンネルもできたわけでございますので、私としては、できますればお互いの考えておることというものを、そういうチャンネルを通じてある程度具体的に把握いたしました上で、決断をすべきときはどういう形かで決断をするということの方が本来ではないかというふうに考えておるわけでございます。  と申しますのは、平和友好条約を結ぶということは、文字どおり友好を進めたいという目的でございますので、十分な準備なしに行動に出ますときに、その結果がかえって友好に沿わないということになってはならないことでございますから、私としてはそういう先方側の考え方あるいはこちら側の考え方、それがすでに確立されておりますルートを通じましてある程度明らかになり、そしてこれならば最終的な決断ができるというふうに判断せられましたときには、やはりただいま言われましたような幾つかの可能性も考えることがよろしいと思っておりますけれども、その前に的確な判断は、私として開かれております外交ルートを通じていたしておきたいというふうに思っておるわけでございます。
  275. 受田新吉

    受田委員 そうしますと、私がいま提案をしております三木総理の訪中、宮澤外相の訪中、あるいは華国鋒新総理を御招待する、こういうような方法も日中の国交を進展させるためには必要であるとお考えではあるのですか。
  276. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 そのようなことは大切なことだと私は考えておるわけでございますが、そういうことであれば、その成果につきまして、外交をお預かりしております私としましては、ある程度の見通しをつけました上でいたしませんと、かえって目的に反する結果になってはいけない、こういうことも考えておるわけでございます。
  277. 受田新吉

    受田委員 外交ルートを通じて親善の息吹が通い合っているわけですね。したがって、そういういま私が提案したような非常に大事な、日中親善のために一番大事な具体的な案、その案などを前提にしながら交渉をしておられるのか、話し合いをしておられるのかどうかです。
  278. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 お話の趣旨はよくわかっておりまして、ただいまの段階で、もしいま受田委員の言われましたようないずれかのことが可能になるといたしますと、それはこの条約を最終的に完結するという目的を除いては意味がないわけでございますから、条約をお互いに合意し得るということをある程度私として自信を持ち得ました上であれば、ただいま言われましたような幾つかの方法考えられるというふうに思っております。
  279. 受田新吉

    受田委員 いまの段階ではその自信を持ち得ない根拠は、覇権問題ということですか。これが一番ポイントですか。
  280. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 さようではございますけれども、それよりも、実は周恩来首相の亡くなられる直前からごく最近まで、中国におかれてやはりかなり国内問題に忙殺されておられたということから、私どもがそのようなことを自分たちなりに、どう申しますか、時期を選んでおったということにも関係があろうと思います。
  281. 受田新吉

    受田委員 総理は先般、外交の新しい目標を東南アジアに置きたいという御意図を持って、近い機会に東南アジア訪問の意図をほのめかされ、これをマスコミにすべて出されました。ところが、これはその後どうなっているのか。総理の東南アジア訪問ということになれば、当然外務大臣が企画の責任者にもならなければならぬわけですが、この二月、インドネシアのバリ島で行われたASEAN会議にせっかく総理みずから出かけたいという御意図もあったようですが、スケジュールその他の関係で実を結ばなかったという行きがかりもあるわけで、東南アジア訪問計画は一体どうなったのか、あれはかけ声だけでその後中止になったのか、あるいは計画はそのまま進んでおるのか、お答え願いたいのです。
  282. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 わが国としては、やはり東南アジアとの関係はきわめて大切でございますので、私はある段階で、総理大臣に東南アジアの国々を歴訪していただきたいということはかねて思っておりますし、総理大臣も恐らくはそのようにお考えであろうと思っております。ただ、御承知のようなむずかしい問題を抱えました国内の情勢でございますので、なかなか総理大臣が国を留守にされるということが、これはいわゆる政治的な意味という意味ではなく、国内に持っておる問題がむずかしいだけに、いつの時期が選べるかという問題が一つ、それからもう一つは、これはどうもやや現実的な話になりますわけですが、いまの東南アジアの諸国の情勢から申しますと、総理大臣が訪問されるということは、やはりそれなりにわが国からの特段の協力関係を先方は期待するということは無理からぬことであると思いますが、わが国の財政、経済状態がもう少し時間がたちませんと、先方が望んでおられるような協力というものを総理大臣がいろいろ約束をしてこられるということに対し、やはりいろいろ支障があるというようなこともあれこれ考えておりまして、したがいまして、そのようなことの必要性は恐らく総理大臣もお考えであると思いますし、私は確かに考えておりますものの、現在具体的な計画を立てるに至っておりません。
  283. 受田新吉

    受田委員 それは確かに具体的ではないが、そういう計画がある、つまり総理自身は外交の拠点、ポイントを東南アジアに置きたいという気持ちがある、それは具体的な計画ではないがといういまお話ですが、できればそれを秋までにはやりたい、つまり解散までにはやりたいということですか。
  284. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 昨年米国を訪問され、またランブイエ等の会談もありまして、ヨーロッパ首脳とも総理大臣が親しく会っておられるわけでございますが、そうなりますと、ここでわれわれの目はわれわれの足元に向けられるべきが順序であろう、というふうにごく自然には私考えておるわけでございます。ただそれが、受田委員はそうおっしゃったのではございませんが、選挙との関係としてとらえられるとかいうようなことになりますと、これは必ずしも好ましいことでございませんので、むしろそうでなく、やはり今度の順序としては東南アジアというものが総理の頭にもあり私の頭にもあるということは、私は申し上げてよろしいんだと思いますけれども、どのような時期にそれを具体化すべきかということについては、先ほど申し上げましたような一つ二つの事情によりまして、いまのところまだ具体的に考え段階に至っておりません。
  285. 受田新吉

    受田委員 宮澤先生のお考えの中に一つ二つということになれば、国内事情ですか、それは。たとえばいまロッキード事件というようなこともある、それから、こうした外交問題というものは、そういう国内の政治問題できわめて急迫したようなときは避けなければならぬ場合も起こるわけですが、宮澤先生御自身としては、秋までは一応解散はないという前提で外交のそういうものは大体準備をするとかいうことでないと、いつ解散があるかもわからぬとなれば、東南アジアの計画なんというのは考えること自身がはなはだ漠然としたことになる。考える以上は、これを実行に移すという心構えがないとやれぬわけですが、一応そういう解散とかなんとか考えないで総理の外遊を考える、こういうのが宮澤先生の御意向ですね。
  286. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 さようでございます。  それで、一つ二つと申し上げましたのは、やはり総理大臣としましては、ロッキード問題の解明ということを国民に非常に大事な問題として約束をしておられますので、その間国をあけられるということがいかがなものであろうかという問題と、もう一つ申し上げました実は財政の問題がございますので、そういう意味では具体的な計画を私から総理にも御相談も実は申し上げたことがございません。ただ、私としましては、解散の問題は総理大臣がお決めになることでございますので、このようなことを考えます上にそういうことは一応頭に置かずに考えております。
  287. 受田新吉

    受田委員 そうしますと、私ちょっとはっきりしないんですが、総理が東南アジアへ行きたいという考えをあなたに漏らされたんですか。あなたが、ひとつ東南アジアへ御苦労願うようにしてという考えで総理に進言したのか。総理が東南アジアへ行こうと思えば、積極的な御意欲があるのなら、一週間か十日ぐらいを差し繰ることは、国会が閉会になれば当然できるわけです。宮澤先生御自身が立案計画をされるということになるのなら、総理は比較的消極的になる。総理が積極的で、宮澤君、東南アジアへ行きたいからと、こういう行き方、そのいずれであるかがちょっとはっきりしないのです。
  288. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 先ほど申し上げましたように、この問題につきまして私、総理の御意向を伺ったことはございませんし、また私も申し上げたことがございません。したがいまして、どのように考えておられるかを的確には申し上げかねますけれども、本来であれば、やはりそういうことを総理大臣は非常に大切に考えておられるだろうということは、私は申し上げて恐らく間違いでないと思います。ただ、先ほど申し上げましたような一つ二つの問題が、これは、客観的に見まして確かに存在しておる問題でございますから、総理大臣もそのようなことには当然留意をしておられるのであろうと私は思っております。
  289. 受田新吉

    受田委員 日中問題の解決を一方でなさり、同時に日ソの平和条約も進めていかなければならぬという二つの課題を抱えておられる。それに覇権問題があるというようなことで大変御苦労と思いますが、これはちょっと過去にさかのぼるわけですが、福田副総理が外務大臣当時、日ソ条約を締結する問題に関係して、領土の返還を求める以上は、国後、択捉等につきまして、その地区を非武装地帯、つまりアメリカの基地など絶対に置かないようにしたい、そういうことは一切しません、つまり、平和な土地としてこれを守りますという発言を福田外務大臣時代にされたことを私聞いております。つまり、領土返還に対して何らかの具体的なこちらの、一切の軍備など考えない、本当に平和な気持ちで領土の返還を求めているんですよ、というぐらいの外務大臣の気持ちが、福田さんにおいて当時出たと思います。こういう問題は、宮澤先生もやはり同じような気持ちでおられるのかどうか。福田さんも、いま副総理で同じ閣僚におられるわけですが、日中とあわせて日ソの新しい期待される時代を呼び起こすためには、同じような気持ちでおられるのでしょうかどうでしょうか。
  290. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 福田副総理がかつてどのように言われましたか、私、的確にただいま存じておりませんけれども、われわれが北方領土の返還を求めておりますのは、わが国の憲法から申しましても、また、われわれの三十年間の行動から客観的に各国が判断いたしましても、ソ連に対して何かあだをなすというような考え方でないことは、これはもう全く明らかなことであると思います。あるいはそういう意味で福田さんがかつて仰せになったのかもしれないと思います。  ただ、具体的に私として考えますことは、われわれは、これらの領土がわが国固有の領土であるがゆえに返還を求めておるわけでございますから、それについてこちらからいろいろな条件を出すというのは、私は筋道としては違っておるというふうに思っております。もとより、具体的な交渉になりまして、先方からいろいろなお話があるのならば、それは聞いてみるつもりはやぶさかではございませんけれども、先方から別段の話もないというときに、こちらから、このような条件で、あるいはこのようなことでというようなことを、私としては申すつもりはございません。
  291. 受田新吉

    受田委員 外務当局は、福田外務大臣時代の、いま私が指摘しました発言を全然否定されますか、肯定されますか。
  292. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 恐らくいま受田委員がまさしくおっしゃいましたように、仮に返還になっても、日本はこれをソ連に対して何か、いわゆる軍事的な意味で利用しようというようなことは考えていないということを、当然のことでありますけれども、言おうとされたのではないかというふうに私は考えるのでございます。
  293. 受田新吉

    受田委員 いまのお話ですと、福田元外務大臣のおっしゃったことは、条件をつけたことになると思いますよ。つまり、返したときに、そこは一切アメリカの基地など提供は絶対しない、平和な土地として守りぬくのだという発言、それは一応の条件をつけたことになるということになりませんかね。だから、福田さんの発言は、ただ軍事的なものではないのだという意味、しかも、それであってももちろん条件ですね。私がいま指摘した福田発言、外務当局は当時の状況を御存じだと思うのですが、宮澤先生、御発言にお困りの趣に拝しますので、ほかの方々、かつての大臣が仰せられたことについて、福田さんはそんなことをかりそめにも言ったことがないと断言できるかどうかです。政府委員、どなたでもいいです。
  294. 橘正忠

    ○橘政府委員 ただいま受田先田おっしゃいました福田当時の外務大臣だったと思いますが、返還された後の四島の使用についてのお考えに触れられたことはあったと存じます。ただ、その御発言の趣旨が、ただいま宮澤大臣からもお話がありましたように、日本の基本的な立場というものを踏まえての御発言であったと思いますし、それから返還された後は、いずれにせよ、そこはわが国の固有の領土でございますので、それをどう使用するかということは日本がみずから決定できる性質のものである、その決定の考え方についての言及をなされたものということであって、返還交渉そのものの条件というふうに必ずしも限定して言及されたものではないと考えております。
  295. 受田新吉

    受田委員 宮澤先生も、福田先生のいまの意見と同等の意見をお持ちですか、欧亜局長答弁があったわけですが。
  296. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 先ほども申し上げましたように、私の態度といたしましては、ただいまそういうことを申しますことは、われわれは当然無条件に返還を求めておるということに誤解を生ずるおそれがあると思いますので、私としてはそのようなことを申したくない気持ちでございます。
  297. 受田新吉

    受田委員 福田副総理がいま同じ閣僚におられるわけです。これは、福田副総理がここにおられると御一緒に意見が聞けるわけでございますが、ここにはいらっしゃらない。で、いま欧亜局長が述べられたような見解は宮澤先生としては申したくない、こういうお答えです。それは、お二人の見解がそこでちょっと違っておるということになるわけですが、気持ちの上で、祖国へ返還された土地は平和的な国土になるんですという気持ち、そういうこともいま考えたくない、言いたくないということになりますと、本当に無条件、完全に条件をつけたくないという気持ちで日ソに当たりたい、それが宮澤先生の御意見ですか。  日ソと日中の二つの大きな課題を抱えて、三木内閣も、有能な宮澤外務大臣を中核にして何とか道を開きたいというときに、いまのような二つの大事な課題を抱えた日本外交が実は停滞しておるんです。これを打開するのに、私は、宮澤さん、あなたの勇気——こういうときは勇気です。三木内閣が右往左往するような印象を与えないで、中国にもソ連にも積極的に外交を推進してもらいたいのです。そのためには、三木さんが中国にも行かれ、ソ連にも行かれていいと思うのです。そういう熱情を持ってこの問題の打開に当たる、宮澤さんももちろん御一緒に。そうして、三木総理と行動をともにされて、総選挙があるとかないとか、そういうことでなくて、日本の本当の運命を開くために、熱情を込めて中国へもソ連へも行く。体当たりする。田中総理の体当たり戦法には多少の苦労の跡もにじんでおるのですけれども、本当の気持ちを三木さんとあなたとが持たれて、日中、日ソの運命打開にひとつどうですか、いま私が提案したようなことで、総選挙などという問題を乗り越えて、お国のために近い機会に何とかひとつがんばっていただけませんかね。
  298. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 中国との間及びソ連との間におのおの大きな一つずつの懸案を未解決のままにしておりますことは、当然のことながら、いつでも私として気にかかっておることでございまして、何とかしてこれを打開したいと思っておりますことは、正直を申し上げましてそのとおりでございます。ただいま受田委員の言われましたことには、この席ではお答えを控えさせていただきますものの、しかし、長い議会政治における御経験を持たれる先輩としての受田委員のそのような御発言は、私は深く心にとどめておきたいと思います。
  299. 受田新吉

    受田委員 非常に真心があふれておる答弁でありますから、これでこの問題を一応終わります。  海洋法についてちょっと触れておきたいと思います。  この間から海洋法会議があった。最終結論というものは一体どうなったかちょっとわからぬようなことになっておるようでございますが、これについてちょっとだけ触れておきたいんです。  この海洋法会議の草案というものは最終的なものですか、八月に持ち越されるというのですか。これは事務当局でも結構ですが、一応先に……。
  300. 中島敏次郎

    ○中島政府委員 今度のニューヨークにおける海洋法の会議において討議の基礎となりましたものは、昨年のジュネーブ会期の終末に海洋法議長から配付されました非公式な単一草案ということでございまして、非公式のものでございます。非公式な交渉のたたき台というものでございます。それに今度の会期においていろいろ討議がありまして、会期の終了直前になりましてそれの改訂版がまた配付される。これは非公式な単一草案に対する改訂案でございまして、全体として依然としてその非公式であるというステータスは基本的には変更がないというふうに考えます。
  301. 受田新吉

    受田委員 そうすると、八月の会議はどういう会議になるわけですか。
  302. 中島敏次郎

    ○中島政府委員 この改訂草案、ちなみに、いま私、非公式と申し上げましたが、別に「非公式」という名前がかぶせられているわけではございませんが、厳密な法律的な意味から申しまして、そういうふうに解釈せられるべきであろうという意味で申し上げたわけでございますが、この改訂案を八月の会期において審議して、さらに最終的な案文に持っていく努力が払われる、こういうことであります。
  303. 受田新吉

    受田委員 そこで、今度の会議で経済水域二百海里ということが言われました。大陸だな二百海里。こういう問題が提起されて、自然延長的な議論というものは一体どういうふうになっていくのか。確定的なものと見ていいのか、いまの二百海里は。その延長というものは確定的なものですか。もうすぐ終わりたいので、答えはすかっとお願いしたい。
  304. 中島敏次郎

    ○中島政府委員 御質問の中身を必ずしも的確に私、把握しておるかどうか存じませんが、経済水域の問題と大陸だなの問題とがあわせ論議せられていることは事実でございます。経済水域の二百海里というものが、沿岸国の排他的な管轄権を有するところの経済水域を設けるべしという考え方が固まりつつあるということは事実でございます。
  305. 受田新吉

    受田委員 私、次の機会に言います。いま、基本的なことだけを触れておくのですが、領海十二海里という提案を日本はやったのですか、やらなかったのですか。
  306. 中島敏次郎

    ○中島政府委員 日本がやるとかやらないとかということではなくて、領海十二海里の問題と経済水域二百海里の設定と、そして領海十二海里に伴って生じますところの国際海峡、国際的に使用される海峡における航行制度の問題と、この三つがパッケージとして一括解決されるべきであるということが大勢の考え方でございまして、そういうラインで事態が進行しておる、こういうことでございます。
  307. 受田新吉

    受田委員 そうすると、この十二海里によって沿岸国の海域が決まってきたというときに、無害航行、そこを無害で行くかもしくは自由に通航するかというような議論もそこへ出てきておるのです。その議論もまだ結論が出ていないのですね。
  308. 中島敏次郎

    ○中島政府委員 先ほど申し上げましたように、その非公式草案を基礎にして論議が行われておって、今回改訂版ができた、これを改めてさらに論議を尽くす、そういう意味において先生のおっしゃられるような最終的に成立したということではございません。  ただ、いま申し上げましたような主要な問題を一括解決すべきであるという考え方一般的に支配的になっておるという意味で、いまの一括解決がほぼ固まりつつあるということは言えるかと思います。
  309. 受田新吉

    受田委員 ここで国際海峡という言葉が出ておるのです。これはどういうことなんです。法律用語か、慣例か。
  310. 中島敏次郎

    ○中島政府委員 はしょって私も国際海峡と申し上げておるわけでございますが、問題になっておりますところの単一草案または改定版におきましては、国際航行に使用せられる海峡ということになっておりまして、これは、抽象的にはいま申し上げましたような国際航行に使用せられる海峡ということでございます。
  311. 受田新吉

    受田委員 そうしますと、日本ではその国際海峡はどこに当たるのですか。
  312. 中島敏次郎

    ○中島政府委員 具体的にどこどこというお話になりますと、これは非常にむずかしい。と申しますのは、日本近海に相当たくさんの数があるだろうと思います。ただ、最もそのようなものとして論議がされておるのは、津軽海峡とか対馬海峡とかいう問題が、一番国際航行に使用せられておるという意味で論議の対象になっている海峡である。そのほかにも細かいところはいろいろあり得るだろうということでございます。
  313. 受田新吉

    受田委員 そうしますと、いまの十二海里説が通ってくれば、これは当然例の領海の中に入ってくるということになると、核兵器搭載の船などは通れないということになりますね。今度そのことははっきりしたわけですね。
  314. 中島敏次郎

    ○中島政府委員 ただいま海洋法の会議で論議せられておるのは、そのようないわゆる国際海峡におきます船舶の通航制度に関して、先生がおっしゃられるように一般の領海においては無害通航の制度が適用になるわけでありますが、このような国際海峡においては、一般領海におけるよりももっと自由な船舶の通航制度が設けられるようなステータスを与えられるべきである、こういう議論でございます。
  315. 受田新吉

    受田委員 非核三原則のお国である日本の、核兵器搭載艦船を領海の中を通航せしめないという宣言の趣旨、十二海里の領海が成り立てばここで確定ですね。
  316. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 いま政府委員から申し上げておりますように、国際海峡というのは新しい概念であって、今度海洋法が成立いたしますと、初めてそこで国際海峡とは何かというものが定義をされるわけでございますが、従来の経緯から考えますと、これが領海でないことは明らかであろうと思うのでございます。しかし、公海でもないということもまた反面言えることでございますから、そういう新しい概念が生まれてくる。そこには自由な航行をさせるべきであるというのが海洋法会議の大勢でございます。  そうなりますと、非核三原則との関連で、いま申し上げて最小限度正確だと思われますことは、つまり、わが国の権限が及び得る領海であれば非核三原則をわれわれは従来どおり堅持をする、これは申し上げて間違いないところだろうと思います。
  317. 受田新吉

    受田委員 ところで、海洋法会議が終わったばかりなんですが、そこで領海十二海里説は日本として宣言するのですか、どういうことになっておるのですか。
  318. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 関係閣僚で従来決定いたしておりますことは、基本的には領海十二海里を宣言と申しますか、制定すべきものと考えるが、その時期、態様については海洋法会議の帰趨等を見てというふうになっておりまして、今回ニューヨーク会期を八月二日から設けました雰囲気が、これをもって事実上最終的な討議にしたいという雰囲気であったように思われますので、したがいまして、その決着を見て決すればよろしいのではないかと考えております。
  319. 受田新吉

    受田委員 十二海里宣言とあわせて法律をつくる必要があるのですね。宣言だけで済みますか。
  320. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 それは、従来政府検討しておりました段階におきましては、領海となればわが国のすべての現行の法令の適用される範囲がそれだけ広がるわけでございますので、そこだけから考えましても法律をもってすることが適当ではないかというのがただいままでの結論でございます。
  321. 受田新吉

    受田委員 十二海里宣言は、もう腹を決めておられるんなら早くやられる、それで、それに伴う立法措置もとられる、立法措置をとる前に宣言を先にすっとやられる方がいいということは、もうソ連など、日本の三海里説にこだわってどんどん海岸を荒らしてきておるわけなんですよ、それに対して十二海里宣言をすかっとやれば、一遍に解決するわけですからね。何を逡巡されるかということです。
  322. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 その先んじて宣言をするということの法律的な効果ということになりますと、実は、法律をもってすべきものを先んじて宣言をしたということの法律的な効果は必ずしも明確ではない。政治的な効果というもの、恐らく受田委員の言われることはそういうことと思いますが、それは全く考えられないわけではない。  実は、ことし一月に私がグロムイコ大臣に、日本は十二海里の領海というものを考えているということをかなり強く申しました。その結果とはすぐには申し上げませんけれども、今年の二月、三月ごろは、わが国の沿岸におけるソ連漁船の活動は実はかなり静かであったということがございましたのですが、法律的には、やはりきちんと法律をもって定めるということでなければならないのではないかと思います。
  323. 受田新吉

    受田委員 けさの読売新聞を私、拝見しましたところ、政府は領海に対してこの十二海里宣言は急ぐ必要はない、いまちょっと大臣のお話を伺ってもそのにおいがするわけなんでございますが、これは八月の会議まで待っていいというような問題じゃない。もう非常に急ぐ問題であって、ちゅうちょ逡巡するような問題じゃないと思うのです。沿岸漁民の皆さんが三海里の枠の中にはまってあれだけの苦労をしている実情などを見たら、八月まで待つような問題じゃないと思うのです。もうすかっと十二海里宣言をやって、そして国際的に日本の立場を明確にすべきだ、何をちゅうちょ逡巡されるかという感じが私はします。大臣、御答弁を。
  324. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 それは先ほど政府委員か、海洋法会議においていろいろな要素、その中には十二海里も入っておるわけですが、一括解決したいということをしばしば申し上げました。また、それが従来から海洋法会議議長がしばしば訴えておられることでもありまして、自分に都合のいいところだけを先取りをしてくれるなということをしばしば呼びかけておるわけでございます。わが国としては、したがいまして海洋法会議が、もうこれが当分妥結しないということでございますれば、別途の決定を必要とするかと思いますが、ここまで参りましたので、八月から開かれます、恐らく実体的には最終になるであろう会議の結末を見るべきではないかというふうに私としては考えております。
  325. 受田新吉

    受田委員 領海十二海里説になると、例の津軽海峡、対馬海峡が領海の中へ入るから、非核三原則宣言の国としてぐあいが悪くなって、核搭載の船などが通るのに大変問題が起こると、いまの国際という問題とあわせて何か懸念をしておられるようなことはないのですね。十二海里領海とやると、津軽も対馬も海峡が領海の中へ入る、そうすると、核搭載の艦船、飛行機、一切通過できないということ、これは言えますね。そこははっきりしてください。
  326. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 それは領海でありますれば国の権限がフルに及ぶはずでございますから、そういたしますと、それは非核三原則がフルに適用されると考えるべきであります。
  327. 受田新吉

    受田委員 そこで、これで終わりにしますが、領海十二海里宣言、これはもう当然政府はやるということですね。もう腹は決まっておるということでございますか。
  328. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 できるならば、海洋法会議においてその他の要素と一括して決められた姿においてわが国がそれに従いますことが、広い意味でのわが国の国益に沿う。ただし、海洋法会議がいつになるかわからぬという状態でございますと別でございますが、そうでない限りはこのように考えております。
  329. 受田新吉

    受田委員 そうすると、海洋法会議は八月、それには十二海里を決めたい、もし会議がおくれるようであれば、そのときは何かの方法で十二海里の宣言をしたい、こう了解してよろしゅうございますか。
  330. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 実はその時期が、けじめはいつごろかというお尋ねが今国会でございまして、三木総理大臣はまず年内ぐらいのことはという答弁をされたことがございますので、一応その辺を私どもぼんやりではございますが頭に置いております。
  331. 受田新吉

    受田委員 そんなにぼんやり考える必要はない。ちゅうちょ逡巡すべきでない。もうすかっとやるべきだ。沿岸漁民のあの苦しい状態など見たときに、何を好んで延ばす必要があるかということで、私もうあえてお尋ねしませんが、時期を早めて——十二月までとか年内とかいうようなことではそのうち内閣は崩壊するかもしらぬ。ですから大臣、ひとつ速やかにあなたの英断をもって三木総理の十二月説を破壊して、できるだけ速やかに十二海里の実現を図りたい、こういう発言をしてほしいと私は思うのです。どうぞ。
  332. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 お言葉ではございますが、閣僚会議におきまして、基本的には領海十二海里ということを決めておりますけれども、時期、態様については海洋法会議に協力する意味で、広い国益で海洋法会議の帰趨を見てと言っておりますので、一広公式のお答えとしてはそのように申し上げさしていただきます。
  333. 受田新吉

    受田委員 質問を終わります。
  334. 木野晴夫

    木野委員長代理 次回は、明後十三日木曜日、午前十時理事会、十時三十分より委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。     午後九時二十四分散会