運営者 Bitlet 姉妹サービス
使い方 FAQ このサイトについて | login

1976-04-27 第77回国会 衆議院 大蔵委員会 第6号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十一年四月二十七日(火曜日)     午後零時七分開議  出席委員    委員長 田中 六助君    理事 塩川正十郎君 理事 村岡 兼造君    理事 森  美秀君 理事 山下 元利君    理事 山本 幸雄君 理事 佐藤 観樹君    理事 山田 耻目君       大石 千八君    金子 一平君       瓦   力君    木野 晴夫君       小泉純一郎君    齋藤 邦吉君       野田  毅君    林  大幹君       原田  憲君    坊  秀男君       宮崎 茂一君    毛利 松平君       保岡 興治君    山中 貞則君       高沢 寅男君    武藤 山治君       村山 喜一君    横路 孝弘君       横山 利秋君    荒木  宏君       小林 政子君    坂口  力君       広沢 直樹君    竹本 孫一君  出席国務大臣         大 蔵 大 臣 大平 正芳君  出席政府委員         大蔵政務次官  唐沢俊二郎君         大蔵省主計局次         長       田中  敬君         大蔵省主税局長 大倉 眞隆君         国税庁長官   中橋敬次郎君         国税庁次長   横井 正美君         国税庁税部長 熊谷 文雄君  委員外出席者         大蔵省主税局税         制第一課課長補         佐       白石 雅也君         国税庁長官官房         総務課長    藤仲 貞一君         大蔵委員会調査         室長      末松 経正君     ————————————— 四月二十四日  所得税減税等に関する請願(大柴滋夫君紹  介)(第三六四六号)  同(山田耻目君紹介)(第三六四七号)  同(大柴滋夫紹介)(第三六六九号)  同(竹村幸雄紹介)(第三六七〇号)  同(佐藤観樹紹介)(第三七一一号)  同(佐藤観樹紹介)(第三七六六号) は本委員会に付託された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  小委員会設置に関する件  税制に関する件      ————◇—————
  2. 田中敬

    田中委員長 これより会議を開きます。  この際、小委員会設置に関する件についてお諮りいたします。  先刻の理事会で協議いたしましたとおり、それぞれ小委員十四名より成る  税制及び税の執行に関する小委員会  金融及び証券に関する小委員会  財政制度に関する小委員会  金融機関の週休二日制に関する小委員会を設置することとし、各小委員及び小委員長委員長において指名いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  3. 田中敬

    田中委員長 ご異議なしと認めます。よって、さよう決しました。  なお、小委員及び小委員長は、追って公報をもって指名いたします。  なお、小委員及び小委員長の辞任の許可並びに補欠選任につきましては、あらかじめ委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  4. 田中敬

    田中委員長 ご異議なしと認めます。よって、さよう決しました。      ————◇—————
  5. 田中敬

    田中委員長 税制に関する件について調査を進めます。  これより質疑に入ります。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。高沢寅男君。
  6. 高沢寅男

    高沢委員 大臣のおられる間、大変時間が短時間ですから、ごく、一、二の点だけ集約的に大臣お尋ねをしたいと思います。  一つは、ことし五十一年度所得税減税が見送りになったということに関係してお尋ねをしたいと思うのですが、このことに関して、大臣がよく言われた言葉で、もう毎年所得税減税もやってきた、そしてわが国課税最低限相当程度に高くもなっているし、また、いまの経済情勢ということから見て、ことしは所得税減税一服をしてもらう、こういう考えだという言い方をされているわけです。ことしは一服というふうな大臣表現であったわけですが、そういたしますと、来年は一体その一服を続けるのか、来年は従来のように所得税減税はやはりやるということになるのか、その大方針というものをまずお尋ねをしたい、こう思うのであります。
  7. 大平正芳

    大平国務大臣 いまお尋ねのような私の趣旨でございますが、減税は毎年できますことはありがたいことだと思いますけれども、必ずしも毎年減税をしなければならぬという性質のものではなかろうと、過去物価の上昇割合を超える実質的な減税が行われてまいりましたわが国におきまして、五十一年度減税をやらなくても御理解をいただけるのではないかという趣旨のことを申し上げたわけでございます。すなわち、その趣旨は、減税政策は単年度で勝負すべきものでなければならぬという趣旨のものではなくて、複数年度において考えていただいて差し支えないのではないか、そういう趣旨のものでございます。  だといたしますと。五十二年度をどういたしますか、これはこれから政府部内でもよく考え、税調にもよく御審議をいただき、世論のおもむくところもよく判断しなければならない問題でございまして、いま高沢さんの御質問お答えを申し上げる立場にまだないわけでございますけれども、私といたしましては、減税政策というものは何も単年度で機械的に勝負しなくてもいい、もう少し長い時間帯において御判断いただいて差し支えないのではないかというように考えておるということを重ねて申し上げたいと思います。
  8. 高沢寅男

    高沢委員 必ずしも単年度考えない、こういう大臣のいまのお考えですが、それの一つの裏づけということにもなろうかと思いますが、大蔵省の方で発表されている昭和五十年度から五十五年度までの中期財政収支試算があるわけであります。この財政収支試算は、ケースI試算ケースII試算というふうになっておりますけれども、これを拝見いたしますと、昭和五十一年度から五十二年度にかけての税収伸びが、ケースIの場合で三兆九千二百億の増加になっておりますね。それからケースII計算の場合には、五十一年度から五十二年度への税収伸びが四兆二千六百億ということになっております。いずれのケースをとるかは別として、これで見る限りは、四兆前後というかなり大きな税収がこの五十一年度から五十二年度にかけて伸びる、こういう一つ想定になっているわけです。  そこで私としては、この想定というもの、これはもうつい目の前に来ている時間の関係でありますから、こういう想定を立てられるとすれば、どういう場合にこれが一体どういうふうに実現できるのかということをお尋ねをしたいと思うのです。  一つは、政府もこの間は、いまの不況は底を打った、底をついたということを宣言されたわけです。これから経済はずっと景気がよくなっていく、来年にかけて相当経済成長が出る。その経済成長の中でこういう四兆前後というような租税の大きな伸びが出る、自然増収が出るというような形でこれが実現できるというケース一つ考えられると思うのであります。そういうケースの場合は、私は、その中においていまの減税の問題というものは当然一服という議論ではなくなるというふうに考えるわけですが、そういうふうなこれからの景気見通し経済成長、そして租税増収というふうな見通し大臣はお持ちになっているかどうか。この間武藤委員からも、いまの景気の動向についての質問があったわけです。大臣としては、いまのところはまだ何とも言えぬというふうなお答えだったわけですが、この辺の、ことしから来年にかけての成長増収見通しはどういうふうに持っておられるかということをお尋ねしたいと思うのです。
  9. 大倉眞隆

    大倉政府委員 大臣からお答えいただきます前に、中期財政収支見通しのお話からお入りいただきましたわけですが、この見通し性格上、五十五年度の姿を先に想定いたしましてそれを逆に年割りにして五十二、三、四を出したという性格のものでございますので、ただいまの私ども見通しが、五十二年度が具体的な計数として歳出歳入がこういう姿になるであろうということを積み上げていったというものではないということだけ、まずあらかじめ申し上げておきたいと思います。
  10. 大平正芳

    大平国務大臣 本院に提出、御審議をいただいております中期財政収支試算が、一定前提条件をもって五十年度前半特例債財政から脱却するという目的、意図を実現し、かつ、いま政府がもくろんでおるもろもろの政策が曲がりなりにも歳出面で生かされるという状況のもとで考える場合、いま高沢さんがおっしゃったような三兆九千億ないし四兆円を若干超えるところの増収が期待されねばならないということに計算上なるわけでございます。  現実事態はどうなりますか、これからのことでございますけれども一つ現実事態をわれわれが現出してまいります場合の一つのガイドラインとしてこれを考えてまいる場合、これだけの増収を何によって期待するかということは、景気が非常によくなりまして、あるいは自然増収によってこれが賄われるということになりますれば最も抵抗が少ない状況において実現できるわけでございますから結構でございますし、また、それが部分的に、ある程度そういう自然増収に期待できても若干足らぬ場合は現行税制増収でできるということでございますれば次善の策ではないかと思うのでございますけれども、あるいはそういうことで期待した税収が確保できないで新税を考えなければならぬという事態になるかもしれません。このあたりは、全くこれから先のことでございまして、いま大蔵当局としてこうであろうと、こうでなければならないという決まった考え方を持っておるわけじゃございません。今後の事態の推移と、またそれに対応していく場合の各方面の御意向を聞きながら政府政策を固めてまいることによって対応策を打ち出していかなければなりませんが、その対応策のいかんによってお答えが決まってくるだろうと思うのでございまして、ただいまのところ確たるお返事が申し上げられる状況でございません。
  11. 高沢寅男

    高沢委員 いまの大臣お答えの中でも、そういう経済成長というふうな、あるいはそれによる自然増収という事態がもし不十分なときは、今度は税制による増収を図ることも必要になるという意味のお言葉があったわけですが、私が次にお聞きしたいと思ったのはそこなんです。つまり、そういうふうな自然増収が大きく生まれる、そういう成長がもしなかったとした場合、しかし、この五十年代前半には赤字国債はなくさなければいかぬということは、これは一種の至上命題であります。そうとすれば、やはり税収を基本として予算編成ができるというような状態にするには、成長による増収がそれだけ期待できないときは、一方では当然増税というものが出てくるのではないかということで、実は次にお聞きしたいと思っていたのです。  その関係で、時間がありませんから端的にお聞きしますが、税制改正によって増収を図るということになる場合、付加価値税という問題がもう前から問題になっているわけです。この国会の最初の代表質問、それに対する三木総理お答えの中でも、付加価値税というのは重大な検討項目であるということを答えられているわけです。これに対して、ことし解散、総選挙があることはもう間違いない年ですから、われわれは、国民にそういう税制に関する訴えをするには、もう政府与党の方は付加価値税の用意をしている、この選挙の後、国会付加価値税の法案が出てくるぞというような意味訴えをして、われわれはそれには反対なのだ、こういうふうな訴えをしていくわけです。これに対して、政府与党としては一体どういうふうにお答えをされるのか、付加価値税はやらぬのだというふうなお答えをされるのか、いや付加価値税検討して、そして必要とあればやるのだというような答えを出されるのか。これはいまの段階では、いずれも将来の問題だと大臣は言われるかもしれませんが、ここはむしろ大臣としての一つの政治的な判断の問題じゃないか、こう思いますので、その点についての大臣考えをお聞きをしたいわけです。
  12. 大平正芳

    大平国務大臣 わが自由民主党とその政府付加価値税を用意しておって、それを実施する準備をおさおさ怠りなく進めておるのであるというふうなことを、野党皆さん自由民主党攻撃一つ材料にお使いになっておりますことは、私よく承知しておるのです。大変迷惑をしておるのです。自由民主党といたしまして付加価値税を党議で決めたこともございませんし、政府として付加価値税を取り上げたこともないわけでございます。現に税制調査会付加価値税を御検討いただくようにお願いしたことは一つもないわけでございます。またこれには大変いろいろのむずかしい問題が、理論上考えてみましてもあるわけでございますし、また強大な政治力が要るわけでございまして、野党皆さんだって御協力をいただかなければできるような仕事でないと私は思うのです。したがって、自民党だけで、政府だけでこういう仕事を用意しておいて、準備しておいて、いつかはすきを見てやってやろう、そんなことでできるような税制でないことは、高沢さんもよくわかるじゃありませんか。したがって、お互いの仲で、大蔵委員会でよく存じ上げておる仲でございますので、本委員会におきましては、そういう他人行儀の御質問はひとつ御遠慮いただいた方がいいのではないかと私は考えております。
  13. 高沢寅男

    高沢委員 何といっても、総理大臣がこれは重大な検討対象である、こう言われている。しかも、これは代表質問に対する答えであったわけですし、あるいはまた予算委員会参考人として出られた税制調査会小倉会長も、これはやはり重要な検討対象であるということを言っておられるわけです。国民にしてみれば、総理大臣税制調査会会長から検討の重要な対象であると言われれば、いやこれはいよいよ出てくるぞ、こう国民が思うのは当然であって、そういう不安は当然あります。したがって、そういうことがないというなら、むしろ大臣からそういうことはいたしません、そういうことは考えておりませんということをはっきり言明していただければ問題は一挙に解決する。私どもはそれ以上はあれこれ言う考えはありません。ひとつはっきりお答えをいただきたいと思います。
  14. 大平正芳

    大平国務大臣 野党皆さんも反対の意味で御検討されておるのじゃないでしょうか。つまり、付加価値税というものは理論的に学問的に検討いたしておる、ほかの国でやっておるところもあって、そういうことを検討しておる学者もおりますし、そういうことを勉強してちっとも差し支えないわけでございますし、自民党政府がこれを検討して悪いということはないのです。またあなた方だって、自民党がやりそうだというように宣伝すると、自民党のデメリットになるだろうという意味で御検討されておるのじゃないですか。でございますから、私は、こういう問題は検討対象にならないとかということはこれまたうそだろうと思うのです。検討して一つも差し支えないわけでございます。したがって私は、こういうものが具体的政府政策のプログラムにはのっていないということをお答えにしておきたいと思います。
  15. 高沢寅男

    高沢委員 この問題は、大臣も御承知のとおり、いろいろの中小企業関係団体人たちとかというふうなところに大きな不安があって、われわれもそのことを尋ねられ、あるいはそういうことはぜひやめてほしいと要望を受ける、こういう立場でわれわれの発言が出ているわけであって、決して先ほど大臣の言われたようなけちくさい気持ちで言っておるわけではない。したがって、はっきりと大臣お答えを私も希望した、こういう経過です。  時間がございませんので次に移りたいと思いますが、今度は税務に関する問題なんですけれども、これはひとつ大臣お答えをいただきたいと思います。  児玉譽士夫ロッキード問題に関連する脱税、これについては国税当局取り調べも行われ、そしてまた起訴の手続も行われるというような形で、これに関しては国民の前に事態が明らかにされる、こういうふうな形になっておるわけであります。この問題といわゆる守秘義務との関係というようなことになってくるわけですが、ここで大臣お尋ねをし、またお願いしたいことは、ロッキードの問題での捜査当局調査も進行しておりますし、また国会においてもこの問題の調査が進められるということの中で、政府高官のこれに関与した人も国民の前に明らかになってくるという段階が当然来るし、またそうしなければならぬ問題だと思うのです。そういう段階において浮かび上がってくる政府高官ロッキードからそのことによって金を受けていたということであれば、その金は恐らく間違いなく所得の申告には出されていない、こういう性格のものだと思うのであります。そうなれば、それに対して国税当局は、脱税容疑も含めて調査をされるということが当然必要になるわけであるし、当然そうされるだろうと思いますが、そういう段階において、いま児玉譽士夫になされていると同じように、そういう政府高官税務に関する資料というもの、経過というものが国民の前に明らかにされるということがぜひ必要である、私はこう考えるわけですが、そういう段階にはそういう扱いをされるということを、大臣の口からはっきりとお答えをいただきたい、私はこう思うのであります。
  16. 大平正芳

    大平国務大臣 御質問趣旨はどういうことか、ちょっと私は理解しかねるのですが、つまり、法の前にどなたも平等でございますので、児玉であろうとどなたであろうと、所得税法厳正にその所得の流れ、資産形成の過程はよく調べまして、当該特定年度所得を把握いたしまして、それに対して課税していくということは変わりないわけでございまして、脱漏がございますならば、それを捕捉いたしまして課税をしてまいるという方針に変わりはございません。  それから第二の問題は、守秘義務でございますが、守秘義務も、どなたの場合はこうであり、どなたの場合はこうであるという、人によって態度を二にすべき性質のものでは決してないと思うのでございます。政府としては、厳正、公正にやらなければならぬと考えております。
  17. 高沢寅男

    高沢委員 それじゃ、もう時間がありませんので、この一問で私の質問は終わります。  いまのは、守秘義務の問題が田中角榮氏の金脈に関してずいぶんこの国会でも論議されたわけですが、結局その守秘義務の壁はなかなか厚かったという経過があります。  そこで、ここでもう一度田中氏の問題ですが、去る四月二日、七日会ですか、田中氏のグループの席上で、一身上の弁明があったわけです。この弁明は、記者団に対してなされたということから、これは当然公的な性格を持ちます。それから田中氏自身が自民党幹事長もあるいは各大臣、さらには総理も歴任されたということから言って、彼に関する金脈問題というのは、私はプライバシーの問題でない公的な性格がある、こう思うわけですが、その田中氏が四月二日の会見でこういう言い方をしております。「このさい私のいわゆる資産形成の問題について、一言いたします。この問題については、公正な第三者による事実調査確認などの作業が続けられておりますが、期間が長期にわたるものであるため、いまだに明確な結論を得るにいたっておりません。結果が確定すれば、これを明らかにし、世の指摘に応え得るものと考えます。」 こういう表現田中角榮氏みずからされております。ここのこの「公正な第三者」が田中氏みずからの財産の形成について取り調べをしている、確認をしている、こういうことであるわけですが、私はこの「公正な第三者」とは一体何か、これをひとつ大蔵当局として大臣が御承知であるかということが一つであります。  それからまた、こういうことが田中氏の言明でなされている以上、この第三者調査の結果というものは当然一定段階において国民の前に公表するということが必要ではないか、その公表を受けて当然今度は税務当局が必要な行政権限を発動されるということも必要になるのではないかと思うのですが、以上の点について大臣の所信をひとつお聞きしたい、こう思うのです。
  18. 大平正芳

    大平国務大臣 田中角榮氏の財産問題につきましての調査は、税務当局において終了いたしまして処理を終えたわけでございます。そのことは国会にも御報告をいたしておいたところでございます。その結果は、また会計検査院等も検査をされたことと承知いたしております。したがいまして税務に関する限り、そしてただいままでの年度に関する限り、私ども税務当局が調べましたことで田中角榮氏の税務問題は終了しておると判断いたしております。  その田中さんのおっしゃることは、税務の問題としては終了いたしておりますので、それ以外の問題ではないかと私は思いますけれども、どういうことを意味しますか、まだそれは田中さんに問い合わしたこともございませんけれども、私の見解を尋ねられまするならば、田中さんの財産問題というのは終了いたしておりますということをお答え申し上げるほかに道はないわけでございます。
  19. 高沢寅男

    高沢委員 いまの大臣の答弁は私大変不満ですが、時間がありませんので、これで終了いたします。
  20. 田中敬

  21. 横山利秋

    横山委員 いまの高沢君の質問に少し続けてやった方がわかりやすいと思うのでありますが、アメリカからもらってきた資料は法務省から検察庁、そして警察庁、こういうふうに必要なところへは配付をされておるようでありますが、大蔵省国税庁には資料は来ておりますか、もらっておりませんか、
  22. 中橋敬次郎

    中橋政府委員 先ほど日米司法当局の間で取り決めが行われましたものに基づきまして資料わが国にも参ったようでございますけれども、わが国税庁といたしましては、その取り決めによりますところの、いわば税に関します刑事事件として必要な資料があります場合には開示をしていただきたいということは当局に申し入れをしてございます。しかし、今日までまだその開示はございません。
  23. 横山利秋

    横山委員 常識的に考えて、ピーナツをもらった、もらわない、そういう論争でアメリカから資料をもらった。だからいま高沢君が言うように、もらった人は申告してないことは当然です。あったら頼むとはどういうことなんですか、あるのが当然じゃありませんか。大蔵大臣として自分の所管に関することだから、警察ももらったのだからおれのところへもよこせと、なぜそれを言わないのです。わざと言わないような気がしてならないのですが、どうなんですか。
  24. 大平正芳

    大平国務大臣 税務は、横山さんに申し上げるまでもないことでございますけれどもアメリカ資料であろうと日本の資料であろうと森羅万象、すべての人の所得に関する新たな材料が捕捉できますならば、それを捕捉いたしまして、私ども調定いたしております税金の調定で不十分でございますならばそれを更正いたしまして、税を追徴してまいるということは当然の私どもの任務なんでございます。したがって、今度アメリカから受けた資料も重要な徴税上の資料であることに間違いはございませんで、私どもそれを十分活用させていただかなければならぬと考えております。  本件につきましては、御案内のように東京地検東京国税局の間で毎日緊密な協調のもとに調査が行われておるわけでございまして、課税上必要な資料地検に私どもが求めるまでもなく、先方から提供がされるものと確信をいたしておりますので、ことさら私から要請をしなくても確保できるものと私は確信をいたしております。
  25. 横山利秋

    横山委員 お答えになりませんぜ、それは。検察庁がもらった、テレビ、新聞に載った、何で国税庁はもらわぬのだろうかとみんな言っていますよ。これは事案というものが、そういう資料があるかないかじゃなくて、あることは決まっているから取りに行ったのじゃありませんか。だから、なぜ大蔵省国税庁だけがもらえぬのだろう、またなぜ欲しいと言わぬのだろう、警察庁がもらったにかかわらず、何でおれのところにもよこさぬと言うて国税庁長官、あるいは閣議の中であなたが言うべき筋合いの問題であるにかかわらず、黙っておるというのはおかしいのですよ。黙っているというのはどういうわけなんですか。あるならくれるだろうと思っている、そんなこと、初めてあなたいま言ったことじゃないですか。地検へも警察へも渡すんだったら、おれのところも児玉のところを調べた関係もある、だからおれのところへもその資料、税に関する資料はくれとなぜ言わぬのですか。なぜ言わぬかということを聞いている。よそ様へは渡ったのに自分のところにはなぜよこさぬかとなぜ言わぬかということを聞いている。
  26. 中橋敬次郎

    中橋政府委員 先ごろ取り決めが行われました両司法当局の文章でございますけれども、その三項によりまして「これらの資料は、専ら、法執行の責任を有する機関により行われる捜査・調査のために並びにこれに伴う刑事上、民事上及び行政上の裁判又は審理に関する手続においてのみ使用するものとする。」と書いてございます。この趣旨は、いわゆる刑事捜査手続において使用するということの文言だそうでございまして、いわゆる課税資料としてのみこれを開示するということは予定されていないようでございます。したがいまして、先ほどお答えしましたように、私どもが検察当局にお願いをしましたのは、脱税に関します刑事捜査手続上われわれに開示されるべき資料を求めたのでございまして、いまおっしゃいますように、すべての課税問題としての資料というのは今回の取り決めとしては予定されていないのでございます。そういう点でわれわれはまずは今回のこの資料取り決めではいわゆる刑法その他の刑事事件の捜査のためというのが最優先でございますから、恐らく検察庁なりそれから警察庁においてはその分を先に御調査になりましょうし、それに関連しましていわゆる脱税査察を必要とするものについては、当然わが方に開示があるというふうに考えておる次第でございます。
  27. 横山利秋

    横山委員 そういうことを何遍も説明せずに、おれのところにも資料が欲しい、それに関連する資料はわが方へ回付してもらいたいと正式になぜ申し出ないかということを聞いているのです。それは長官もおっしゃるように、脱税だけではいかぬかもしれぬけれども脱税、査察そして告発、そういうふうに進むことは、今回の問題では当然のことですよ。当然のことだと私は思っていますよ。そういう一連の状況国民の前で明らかになっているにかかわらず黙っておるということはおかしい、国税庁はおかしいと言っている。今回のロッキード事件について、三月十五日に国民が税金を納めるときほど複雑な雰囲気で納めているときはないですよ。だから大平大蔵大臣は先ほど、税に関してはだれでも、児玉であろうと何であろうが公平にやる、そういう言い方というのは説得力がありません。児玉については徹底的にやる、特に徹底的にやるという言い方でなければだめですよ、今回は。  私は大蔵大臣にもう一遍聞きますが、アメリカからもらった資料の中で国税庁に関する資料についてはわが方にも回付をしてもらいたいということを申し出られる意思がありや否や。——大臣に聞いているのですよ。
  28. 中橋敬次郎

    中橋政府委員 取り決めの具体的な問題でございまするので、私から先に答えさせていただきますと、私どもとしましては、今回の取り決めの内容としましては税に関しましては脱税の刑事捜査手続に関します資料開示を求めておるのでございまして、それ以上のことは今回の取り決めでは予定されていないのでございます。
  29. 大平正芳

    大平国務大臣 必要な資料を求めるにちゅうちょするものではございません。必要になりますならば求めるつもりでございます。
  30. 横山利秋

    横山委員 歯切れが悪いですね。長官のような説明は国民に説得力がありません。ですから、大蔵省として法務省に対してピーナツをもらった政府高官に関する資料、この中にわが大蔵省に関する資料があれば回付を願いたいということを言え、やれ、そしてロッキードに関する厳正税務行政の資料にしろと言っておるのに、言葉が濁るというのは感心しません。もう言うことがないですか。言うことがなければ次に移ります。
  31. 大平正芳

    大平国務大臣 全然濁っていないです。
  32. 横山利秋

    横山委員 これは国民にひとつ判断を求めるところでありますが、そういう大蔵省国税庁の態度に私は大変不満でございます。  その次に、最近盛んに話題になっております点が、不況で売れなくなった土地を国に買い上げてもらおうという動きが財界で活発になり、国民の注目を集めている。金丸国土庁長官が、この衆議院予算委員会で、買い上げの要請には厳正に臨み、簡単には受け入れないとは言いました。とは言いましたが、大企業があの当時はしこたまもうけて、今度は損するようになったら、それを買い上げてくれという運動が盛んであります。しかもそれが売れなくなった原因の有力な一つに、土地に関する重課の税制を先般の国会で決めたのでありますが、それが非常に強く働いて、土地の売買がほとんどないようになった。     〔委員長退席、山下(元)委員長代理着席〕 したがって、この際関係者の懇談会では、国による土地買い上げ、金利の長期たな上げ、国土利用計画法の手直し、土地重課税の軽減、都市計画法に基づく市街化調整区域の線引きの見直し、これらを要求しておるようであります。  それで、大蔵大臣にお伺いをいたしたいのは、買い上げは国有土地の増加になる。地方自治体がそれを買い上げるについても、恐らく地方債を発行しなければなるまいと思う。そういう財政面における、また国有地の拡大という面について、あなたの所管であるから、どう考えるかということが一つ。  それからもう一つは、土地重課税の軽減という問題について、関係者は撤廃という言葉を最初使って運動をしたのでありますが、二百数十名の自由民主党の議員が、その請願に署名をいたしたわけであります。国会では過半数を超える自由民主党人たちが二百数十名署名をしたのでありますから、恐らく政府も同意見かと思うのでありますが、土地重課税の撤廃、軽減等について所管大臣としてどうお考えでありますか。
  33. 大平正芳

    大平国務大臣 民間の会社が土地を買い過ぎて持ちあぐんでおるということで、国または地方公共団体で買ってくれないかというお話があるとかの話でございますけれども、国におきましても、地方公共団体におきましても、使う当てのない土地を買うという考えはございません。  第二の問題でございますが、土地政策上土地の供給を促すというような意味で、いままで税制がある役割りを果たしてまいりましたことは事実でございまするし、土地政策ばかりでなく、その他の政策に対して、租税政策もまた一体となって協力していかなければならぬことは、われわれも心得ておるつもりでございます。土地政策について租税面から何をすべきであるか、何をしてはいけないかというような問題が、いま問われておるわけでございますが、私どもといたしまして、こういった問題、現在の状況をよく検討し、各方面の意見もよく聞いた上で慎重に考えて対処していきたいと思いますので、いま大蔵省としては何をどうするという決まった熟した考えはまだ持っておりません。
  34. 横山利秋

    横山委員 お答えは、土地買い上げの意思はなし。それから土地重課の点については、何をどうするという決まった考えはない、そういうことですね。
  35. 大平正芳

    大平国務大臣 まだ決まった政策を決めておりません。
  36. 横山利秋

    横山委員 最初の土地買い上げについて、国土庁の考えは、新聞報道を見ますと、「企業が、転用価格含みで取得した遊休地は、取引価格、資産価格の三分の二か半額。場合によっては三分の一で買い上げ、もしくは地方自治体の買い取り協議に応じる」「金融機関は借り換え時期に増し担保などをとらない」 「国、自治体が買い上げた場合、その買い上げ額を返済限度とし、残余は貸し倒れ引当金で充当する」きわめて国土庁は具体的なんであります。取得価格では買ってやらぬよと、三分の一かあるいは二分の一だぞよと、えらい具体的なんですね。これを一体国土庁がやらぬつもりで言っておるのか、やるつもりで言っておるのか、ちょっと聞きたいところなんでありますが、しかし、かなり具体的、大蔵省は、この国土庁の考えに対して一切その意思なし、そうお答えになったと考えてよろしゅうございますね。
  37. 大平正芳

    大平国務大臣 国が、いまお答え申し上げましたように、必要でない土地を買い持ちしようという予算もございませんし、そういう考えは持っておりません。
  38. 横山利秋

    横山委員 そこで今度は、そのいまのお話のなにをどうすると、政策は決まっていないという土地重課の問題なんですね。これは、私はその撤廃の請願に署名しませんでした。ところが自由民主党の人は二百数十名の人が撤廃に賛成されたそうであります。どういうおつもりかよく、まあここにもいらっしゃる方がいるかもしれませんが、将来にわたって撤廃をするというお話なのかあるいはすぐ撤廃をするというお気持ちなのかそれはわかりません。わかりませんが、請願はすぐ撤廃をしてくれということなんです。これはあたりまえのことだ。百年も先に撤廃してくれと請願するばかはありませんからね。それに与党の過半数になんなんとする人が請願に署名をしたということなんであります。これは一体どう考えたらいいんでしょうか。閣僚として、自由民主党の幹部として、大平派の総帥としてひとつ所見をいただきたいと思います。
  39. 大倉眞隆

    大倉政府委員 私、申しわけございませんが、まだその請願の書面を拝見いたしておりませんけれども、推察いたしまするに、恐らく請願の趣旨が現在の土地重課制度が宅地供給の阻害要因になっておるから撤廃してほしいとおっしゃっておるので、それならば賛成だ、このようにおっしゃっておるのではないかと思います。したがいまして、大蔵省として勉強するといたしますれば、また勉強するつもりでおりますが、本当に阻害要因になっているのかいないのか。なっているとすればどこを直せばいいかという角度での勉強はもちろんいたすつもりでおります。ただ無条件にやめてほしいということをおっしゃっておるわけではないと思います。
  40. 横山利秋

    横山委員 まさに大臣、そのとおりなんです。阻害要因になっておるから撤廃しろ、これだけの重税を課せられたんではとても土地の売買はもうけもない。だからかなわぬ。だから土地の売買はすっかりなくなっちゃった。必要不可欠の売買にまで、これが波及しておる。それからもうこんな千坪や数百坪の売買にまでそれが波及しておる。したがってこの撤廃をしろと言う。  ぼくは相談を受けたときにこう言いましたよ。撤廃ということは説得力ありませんぜ。自民党のお方だって恐らく撤廃と言われて、この間国会で決めたばかり、手を挙げたばかりで、いますぐ撤廃と言って賛成される人はありませんよとうっかり言っちゃったんです。そうしたら、驚くなかれ二百数十名賛成したというのでびっくりしちゃってね、どういうおつもりかしらと思って。私は少なくともこの緩和とかあるいは必要不可欠な土地の売買が可能になるように手直しするとかそういうことなら私も進んで賛成をしましょう。撤廃なんということはいまごろ政治家だったら言えることじゃありませんぜ、こう私は言ったのでありますが、そういう点についてどういうお考えでしょうか。
  41. 大倉眞隆

    大倉政府委員 横山委員よく御承知の制度でございますので、できるだけ簡単に申し上げますが、あの制度はとにかく四十四年以後に買った土地を売れば原則として付加税、高い税が取られます。しかし適正な開発許可を得て適正な開発をして一定の条件を満たしておれば、それは重課をいたしませんといういわば穴あけがあるわけでございます。したがって、私どもとしては適正な宅地供給のためにはちゃんと穴があいているはずだと思っております。その穴があけ方が不十分であるとかいまの条件がきつ過ぎるとかいう点が本当にあるかどうか、それを勉強いたしたいということで、現在関連の業界の専門家の意見を聞き始めております。具体的に直すべきところがあるかどうかを見ました上で、直すべきところがあると私どもが納得いたしますれば、そういう案をつくりまして御審議を願いたいと思っております。
  42. 横山利秋

    横山委員 私も同感なんでありますから、その意味においてはこの国会一つの権威という問題も手伝いますから、いまの穴あけという言葉が適当であるかあるいは有効な、建設的な土地の需給がうまくいくようにするとか、そういう面において土地税制についての検討を要望いたしておきます。  大臣がお見えにならぬで大変残念でございますが、主税局長と国税庁長官、政務次官に大臣のおかわりを願いましてお伺いをいたします。     〔山下(元)委員長代理退席、森(美)委員長     代理着席〕  税理士法の問題であります。  本委員会の同僚諸君ともに長い大蔵のベテランであり、大臣も大蔵委員もおやりになり、少なくとも税法についての権威者がこの委員会には集まっておると思うのであります。そうして、かつてこの委員会政府提案の税理士法を否決したといいますか廃案にいたしたことがございます。自来、税理士法の改正については新たな角度で検討が各方面で行われ、各政党の中にも税理士法についてのいろいろな見解を発表される方がございます。また税理士会におきましても、先年、税理士法の改正に関する基本要綱を発表をいたしました。  私もこの問題についてすでに一回のみならず、二回、三回、政府に意見をただしておるわけであります。その当時の政府の答弁は、要するに、機熟さずということでありました。やらないとは言わないが少なくとも機熟さずというような雰囲気であったと思います。機熟さずという意味を私なりにそんたくいたしますと、一つには税理士会の内部状況一つには政府と税理士会との関係一つにはその法案の内容についての未解決——未解決といいますか未整理というような問題があったと思うのであります。しかしながらもう数年の歳月をけみして、いまや税理士法改正をまともにわれわれ関係者が議論をすべきときにあると思うのでありますが、その点についてどうお考えでございましょう。
  43. 大倉眞隆

    大倉政府委員 まさしくただいま横山委員のおっしゃいましたとおり、非常に長い経緯のある問題でございます。また、いま御指摘がございましたように、税理士会の中でのいろいろな考え方もございますし、それから執行部がかわりますに際しまして、ある程度のニュアンスの差というようなものもあるようでございます。私どもとしましては、ただいまの執行部の方々とごく非公式な接触をいたしております。どの程度のテンポで進んでまいりますか、もう少し時間をいただきたい。接触は続けているわけでございます。
  44. 横山利秋

    横山委員 非公式であろうが何であろうが、少なくとも大蔵省と日本税理士会とが税理士法改正についての会談を行うに至ったということは大変結構であります。  この際、二、三の重要な問題について意見をただします。  第一は、なぜ税理士法の改正を要求するか、そういう意見があるかといいますと、いまの税理士法の主要な、基本的な考えは、いわゆる税理士の立場を中正の立場に置くというところにあります。中正の立場というのはどういう意味なのか、全くよくわかりません。何回もここで議論をしたわけでありますが、わかりやすく言うと、つまり国と納税者の間の真ん中に立て、行司役をやれということであるかと思うのでありますが、それは非常に問題であります。同時に、納税者が銭を払う必要はない。納税者が銭を払って自分の税務代理をしてもらうということは、要するに自分の利益、権利を守ってもらいたいということにほかなりません。事実、税理士が納税者の立場にかわって税務署と協議をし、相談をしておるわけでありますから、明らかに納税者の側に立って納税者の権利を擁護するのが税理士の立場であります。ただ、納税者と税理士とではやはり重要な点において違いがあると思わざるを得ません。それは、納税者も法律を守るという国民の義務がございますけれども、税理士は特に税法の権威者として、法律の枠内において納税者の権利を擁護するということが要求されている。その違いがあるかと思うのであります。  要するにそれは、弁護士法が定めております弁護士の任務と税理士が実際に行っております立場とは同一のものである。したがって、この際、中正の立場なるあいまいな言葉を捨てて、税法の土俵において納税者の権利を代理して税務署と話し合いをするのが税理士の基本的な、素朴な、わかりやすい任務であるという立場に立って税理士法を改正すべきであるというのが基本的な意見でありますが、この点について、どう考えますか。
  45. 大倉眞隆

    大倉政府委員 この点もたびたび当委員会あるいは本院の他の委員会において質疑応答がなされておること承知しております。私も速記録を読ませていただいておりますが、ただいまのところ、政府としての正式なお答えは、四十七年に横山委員から御提出になりました質問主意書に対しますお答えをもって申し上げるということになろうかと思います。  若干長くて恐縮でございますが、引用させていただきますと、「税理士が納税者の委嘱を受けて職務を果たしていくその立場は、委嘱者の立場とまったく重複するような形においてではなく、税務会計専門家として見識のある判断を加えるという形において把握されなければならないことは当然であろう。現行法が、「中正な立場」という字句を用いて前述のような規定を設けていることは、まさに上記のような税理士の公共的な立場を明らかにするためのものであって、意義深いものと認められる。」という税調の答申を引きながら、政府といたしましては、「これをとくに改める必要は認められない。」という御答弁を申し上げております。これが現在の政府の公式な立場というふうに御理解いただきたいと思います。
  46. 横山利秋

    横山委員 そんな昔の証文を出してもう一遍読み上げたって何にもならぬですよ。昔の話からずっと私が説き起こして、いまどういうふうな条件下にあるか。いや、非公式な話し合いをしております。それなら一番基本論は、この問題でもう一遍言わなければいかぬから、私も時間がないにかかわらず一生懸命に中正の立場から税法の枠内において言ったのに、昔の証文を読み上げてもらうようなことだったら何にもならぬです。いまどうなんだと言って聞いている。
  47. 大倉眞隆

    大倉政府委員 現在、私の考え方は、四十七年の閣議決定におきます考え方と変わっておりませんが、なお税理士会としての主張も十分承るつもりではおります。
  48. 横山利秋

    横山委員 この問題が、何人も納得をするきわめて素直な、説得力のある問題だと私は思う。政府側が、公正な立場なる言葉が妥当であるとかなんとかという、ほかの問題を一切抜きでこの問題だけで議論をするとしたら、政府側の説得力はきわめてありません。どうして税理士が公正な立場だ。銭を払って行司をやってくれというばかはないですよ。だから、この問題について政府側としては速やかに基本的な物の考え方を改めてこの税理士法の改正に着手すべきであると思います。  それから、二番目に問題になりますのが特別試験であります。  大体憲法のもとに国民は平等であるにかかわらず、税理士試験というきわめて狭い門をくぐって合格をする人と、税務署におったから、税務署におっても法人課所属ならともかくとして、管理部門におったり総務部門におった人が、年限だけで税理士が開業できるというようなことはいかがなものか。しかも最近の傾向を見ますと、そういう特例試験の人が圧倒的ですな。一般競争試験を経て税理士になった人よりも、役所におったために圧倒的に税理士になられる、こういうまことに大蔵省のエリート意識といいますか唯我独尊、これはだめですよ。この特例試験を廃止ないしは根本的に改革しろというのもまた天の声、地の声、人の声だ。この問題も大蔵省考え直さなければいかぬと思う。どうです。
  49. 中橋敬次郎

    中橋政府委員 国税庁の職員が、いまおっしゃいました税理士特別試験を経まして税理士になっております者がかなり多いものでございますから私から一言考えを述べさせていただきますが、税理士業務といいますのは、確かに理論的な問題も非常に大切でございますけれども、私ども税務立場から申せば、税務の慣行、手続というものに習熟をし、なれていない納税者のそういう問題についての援助をするということも非常に必要だろうと思います。そういう意味で、税理士法の制定前は、御承知のように税務代理士としましてはむしろ国税庁長官の許可でそういうことをやっておりましたし、試験制度を採用しましてもかなりそういった経験を尊重するという立場でやってきております。現に、先ほどもお示しのような、廃案になりました税理士法の改正案におきましては、今日の特別税理士試験問題をもっと基本的に、税務と税理士の仕事というものから、恒久的に改正しようではないかという案もあったように記憶をいたしておりますけれども、私は、税理士の仕事そのものから考えますと、税務署におきます経験というものは相当大きなウエートとして評価をしていただいてもいいのではないかというふうに考えておりますので、なお、税理士特別試験制度というものについては、今後ともそういう問題としてお取り上げを願いたいのでございます。
  50. 横山利秋

    横山委員 あなた、かっこうのいいことを言っておるけれども、長官、実際は官庁出身者、税務署出身者の税理士がなれておるからいいとおっしゃるが、なれておるというのはどういう意味かといいますと、実態は、この間まで署長をやっておった、法人税課長をやっておった。税理士になった。行けば、ああ横山さん、久しぶりでございますね。おお、どうだい、やっておるかね。これひとつ頼むわ。どうだ、きょう帰りに久しぶりに一杯やろうか。こんなことはないと思うのだけれども、やはりつき合いです。やっていますよ。マージャンをやろう。一杯飲もう。久しぶりだからやろう。そういうなれというもの、役所におったなれというものが税務行政に働いておるとあなたは言っていることになりますよ。私は、税務署と税理士については、少し理論的過ぎてもいいから、一線を画さなければいかぬと思っている一人です。  だから、その意味で、特例試験の長所並びに短所は、まあ一概には言いがたいけれども、特例試験というものは、法律を知らぬでも顔があるという人が税務署で仕事をするのです。顔があるということが悪いことばかりだとは私は言いませんよ。しかし、顔があるから税理士業務がうまくできるというあり方については私は余り賛成できないのです。しかも、合格者はその顔の方がたくさん合格しているのも気に食わぬ。その意味において、あなたは実際特例試験の実態を知らぬ。それから、やめるときになったら、やめる間際になったら、自分の関係の会社をもう背中にしょってやめていきますよ。それから、後輩はやめた先輩のためにお得意さんを世話しますよ。そういう実態をあなた本当に御存じでしょうか。だから、この際そういう特例試験の弊害というものを——そんなものは町でちょっと税務署を回ってみれば、これはもう至るところにある問題なんです。そういうことに一遍線をきちんと引けという意味において、特例試験を廃止するか、思い切って合格率を減らすか、そういうことをして、少し納税者と税理士と税務署との関係について、顔よりも理論的な面、筋の通った解決、そういう方向に向かわなければいかぬと私は思っているのです。どうなんですか。
  51. 中橋敬次郎

    中橋政府委員 私が申しました税務並びにその慣行について習熟をしておるという利点は、いま横山委員が御指摘のように、いわゆる顔をきかすとか、先輩、後輩の因縁でもって税務を処理するということに期待を持っておって申し上げたものではございません。おっしゃいますように、そういう点があってはならぬわけでございます。  私が申し上げましたのは、やはり税務当局立場に立って納税者にいろいろ接しておったときに、納税者の側として主張得ないようなところを多々見、いろいろそのときにも教え足りないところもございましたでしょうけれども、そういうような経験から、今度は納税者がいろいろ税務署の処置について、こういう点は自分としてはどういうふうに主張したらいいのかというようなときには、むしろ過去の経験からいって、こういうふうな主張をすれば一番納税者としては主張しやすいのではないかというような、本当に純粋の意味においての税務の経験というのがとうといのであるという意味で私は申し上げたのでございまして、おっしゃいますように、端的に言えばくされ縁でございますというか、そういったことでわれわれは期待をしておるのではございません。
  52. 横山利秋

    横山委員 そういったことが多いという実態から特例試験についてもう一遍見直すべきだと言っているのですよ。税理士法についてはまだたくさんございますけれども、時間がございませんので次の機会に譲ります。  次に、三月八日、最高裁第二小法廷は理由付記に関する判決をいたしました。この機会に、私が最高裁の判決について調べてみましたところ、所得税法及び法人税法には、それぞれ青色申告にかかわる税について更正をする場合は、更正通知書に更正の理由を付記すべきことを定めている。その理由が、更正通知書に付記された理由が、最高裁で五回にわたって判決がされておる。     〔森(美)委員長代理退席、委員長着席〕 三十八年五月三十一日第二小法廷、更正を相当とする具体的根拠が明示されてない場合は不備。昭和三十八年十二月二十七日第二小法廷判決、いかなる理由によって更正するかを明記することを要する。昭和四十七年三月三十一日第二小法廷判決、付記すべき理由は、請求人の不明の事由に対処して、その結論に到達した過程を明らかにしなければならない。付記の程度は具体的事案に応じて決せらるべし。昭和四十七年十二月五日第三小法廷判決、理由付記として不備。理由付記の不備の瑕疵は、同処分に対する審査裁決において処分理由が明らかにされた場合であっても治癒されない。昭和五十一年三月八日第二小法廷判決、付記すべき理由としては、更正に係る勘定科目とその分類を示すほか、そのような更正をした根拠を右帳簿書類の記載以上に信憑力ある資料を摘示することによって具体的に明示することを要する。  最高裁といえば、日本の裁判所の一番偉いところですね。その一番偉い最高裁が理由付記について五回判決をしておる。最高裁は最後の判決書で「国税庁、最高裁をなめるな。おれが一回言ったにかかわらず、一つも守らず、同じことを五回もやりやがって、国税庁長官、だれだ」と言うて書いてあるような気がするのであります。私が調べましたところ、国税庁も何も遊んでおったわけじゃない。よう指示もいたしました、モデルも書きました、こういう話だそうであります。ところが、会議で話をしても、モデルを書いても、ちっとも守られぬのがこの結果、五十一年三月八日、五回にわたる判決であります。まあこれは最高裁としてもがまんがならぬ。文面にありありとそれが見えている。  なぜこんなことになるのか。国税庁長官の威令が行われないのか、威令が行われても、やるやつがおらぬのか、やるやつがおっても、書き方がわからぬのか、そういうことだと思うのであります。私はもうこんなモデルだとか、あなたが訓示をするくらいではだめだと思うのであります。もう長官はだれであろうと、このことを教えたってだめだから、この際法律事項で、法人税法と所得税法を改正して記載事由を明示をせなければだめだと思うのであります。そうでもしなければ、国税庁職員は言うことを聞かぬ手合いが多いのじゃないか。そうでなければ、五回も最高裁が判決することないです。私はこの際、法人税法、所得税法を改正して、理由付記について、更正に係る勘定科目並びにその金額及び算出根拠、前号に掲げるところの事実を証する事項等を法律に明記をすることによって、かかる同一問題について、納税者の権利を守るということについて、五回も最高裁に判決書を出させるようなばかなことは根絶しなければならないと思うのですが、いかがでしょう。
  53. 中橋敬次郎

    中橋政府委員 いま御批判をいただきました更正理由の付記につきまして、適去の歴史を振り返ってみまして、確かにその具体性をだんだん備えてくるのが非常に遅かったという点は私も認めます。ただ、いまおっしゃいましたように、最高裁で五件負けております。確かに負けておりますし、われわれもその都度……(横山委員「負けるとはいやな言葉ですね、負けるとは」と呼ぶ)敗訴をいたしておりますが、……(横山委員「指摘をされましたと言うのです」と呼ぶ)はい。そういうふうに訂正いたします。指摘を受けましたが、その都度われわれとしましてはいろいろ反省を加えております。  ただ一つ御了承を得たいのは、三十八年、四十七年というふうに次々と最高裁で御批判を得ましたけれども、その事案は実はかなり古い時代の処分の内容でございます。またわれわれも、だんだん青色申告の内容が向上いたしてまいるにつれて、更正理由の付記についても具体性を持たすべく、昭和二十八年にはある程度の指示をいたしました。それからまた、先ほど御指摘の三十八年の最高裁の二件、問題が東京地方裁判所あるいは前橋の地方裁判所でいろいろ御議論があったことにも、われわれとしましては反省をしました。たとえばそのときには、最高裁としてはそこで初めて、三十八年において行政庁に対する訓示規定と解すべきではないという見解あるいは納税者に理解できる程度にもっと具体的に記載をすべきではないかというような御指摘があったわけでございますし、さらに従来はまず第一次の更正の理由付記の要件をいささか欠いておりましても、再調査決定の段階ではそれは治癒されるというような下級審の判例もあったものですから、そこに準処し過ぎたきらいもございました。そういう点から、三十四年におきましては、もっと理由付記を具体的にするようにということで文例まで示してやったわけでございます。さらに四十七年の三月三十一日、いま御指摘の最高裁の判決でもって、原処分の理由付記の不備は再調査決定の理由付記によっては治癒されないという、従来私どもが下級審によっていささか、まあそういう点もあるというふうに考えておりました点も最高裁によって否定をされたものでございますので、四十七年から四十八年にかけましてさらに理由付記の基本的な考え方と具体的な例を指示したわけでございます。  したがいまして、私どもといたしますれば、なるほど判決は一番最近のものは五十一年三月八日でございますけれども、その事案も四十年の処分のものでございますから、かなりその間におきまして、私どもとしましてはそういう理由付記についての具体例を示し、また具体性をつけるように指示をして、税務署の意図が納税者にはっきりとわかって、また納税者の方もそれを納得をし、あるいは不服のときには審査請求まですることがやりやすいというような体制にかなり進んできたのではないかというふうに思っておりますが、なお私どもとしましては、いまの御指摘も踏まえながら十分、もう一層そういった点での進歩を図ってまいりたいと思っております。
  54. 横山利秋

    横山委員 私の意見は、もう長官が何と言ったってだめだ、あなたの威令が行われないかあるいは威令が行われても下部でやるやつがおらぬのか、やるやつがおっても書き方がどうしても納得できない、わからないということであれば、これは納税者の権利のために法人税法並びに所得税法を改正して、理由付記の理由についての記載事項を書かなければだめだと、これが私の意見ですから、主税局長からお答えを願いましょうか。
  55. 大倉眞隆

    大倉政府委員 一つの方法であろうかと思いますけれども国税庁長官お答えいたしましたように、累次の判例によります御指摘を十分頭に置きまして実際の更正理由の付記についての改善が重ねられてきておると私思いますので、五十一年三月というついこの間の判決ではないかという御指摘かと思いますけれども、その事案は四十年の事案だというふうに了解しておりますので、最近のものにつきましては御指摘の趣旨に沿った改善が行われておると考えておりますが、なお十分国税庁と相談いたしまして、それをもって耐え得るかどうか研究をいたしてみたいと思います。
  56. 横山利秋

    横山委員 そういう御答弁は、三十八年の五月の判決の後で議論が起こり、同じように三十八年、四十七年、四十七年、五十一年、判決がおりるたびに、いや改善をいたします。いやこれはもうこれからはこういうことはありません、五回、それをまた言っているのです。  それで、いま五十一年の、ことしの判決は四十年の問題でございますから、それから四年たっておりますからこういうことはもう起こりません。だれが一体保証するのですか。しかもこの判決によって「信憑力ある資料を摘示することによって具体的に明示することを要する。」と改めてなったのでありますから、これは五十一年三月八日現在でこの最高裁の拘束力のある判決がおりたわけですから、それはもうおっしゃるまでもございません、もうすでにやっておりますと言うだけで言えるなら、それがその答えになるなら、もうとっくに、三十八年以来同じことをあなたは言ってきたではないか、あなたの前任者でも、だからもうだめだ、信用ができぬ。それよりも、もうそこまでこれからはやりませんと言うなら、法人税法、所得税法を改正して、もっと記載すべき理由を明白にしたらどうだ。政務次官、どうですか。あなた、聞いておって、たばこを吸っておるようですが、私の言うことが本当に納得できるでしょう。
  57. 唐沢俊二郎

    ○唐沢政府委員 更正決定理由付記の件につきましては、最高裁からも批判をいただき、また先生からもいま御指摘をいただきました。長官や局長のあれとダブるかもしれませんけれども、五十一年三月八日の最高裁の判決は四十年のものでございまして、その当時も更正理由付記は徐々に改善されつつあったのだけれども、まだ十分ではなかったわけでございます。最近では最高裁判決の趣旨を踏まえまして局署よく指導しておりまして、現在におきましては相当充実した記載がなされておると思いますが、なおこの記載の内容につきましては、先生のお話もございますので、一層改善いたしてまいりたい、かように考えております。
  58. 横山利秋

    横山委員 時間になりましたので、それじゃまた次の機会に……。
  59. 田中敬

  60. 高沢寅男

    高沢委員 主税局長にお尋ねをしたいのですが、これは、税制調査会税制改正に関して出した答申の中の見解ですから、言うならば税制調査会の見解であるわけですが、しかし、それを受けて政府として、大蔵省として税制改正の実際の措置をとられたということから見れば、このことに関して見解をお聞きしたいと思います。  昭和五十年度の税調の答申、この中で所得減税についての考え方をこういうふうな言い方をしております。「昭和四十九年度における国民総生産の実質成長率はマイナスになると見込まれているが、なお物価の動向は予断を許さず、当面は、需要面から物価刺激要因が生ずることのないよう抑制的に経済を運営することが要請されている。したがって、昭和五十年度予算編成に当っては、歳出の増加を極力抑制し、また、国債依存度の引下げを図るとともに、税制上においても、所得税や住民税について大幅な減税を行うようなことは避けなければならない。」こういうふうな答申が五十年度の答申で出て、実際の措置としては、この年はいわゆるミニ減税といいますか、非常に小幅減税で終わった、こういう経過があります。それから今度は五十一年度の、今年度に関する答申ですが、やはり所得減税の問題でこういう言い方をしております。景気刺激のために減税をやるべきだというような意見もあるけれども、「まず、景気刺激のための減税については、経済環境が現在予想されているものと大きく異なることとなるような場合には、税制によりこれに対処することが必要となることもあろうが、政府経済見通しによれば、わが国経済は徐々に回復すると見込まれていること、公債の市中消化能力には限度があり景気刺激のための減税に伴って多額の公債を追加発行することには問題が多いと思われること、最近における消費者行動の態様からすれば、減税をしてもそれによって増加する所得相当部分が貯蓄に回ることも予想され、その場合には減税景気刺激効果は公共事業支出ほどには期待し得ないと考えられること等の理由から、この際は景気刺激のための大幅減税という考え方はとるべきでないと認めた。」こういうふうな表現の答申で、結果は、ことしの所得税減税はなしということで終わったわけであります。  この去年とことしの答申の中にある考え方、つまり、去年の場合には、これは一つの論理の問題、理屈の問題として、減税をやる、それによる勤労者の所得の増加、それは消費を拡大させて、そして景気刺激要因になるからやるべきでない、小幅だ、こういうことで、ことしの場合はその同じ減税所得の増加、しかしそれはみんな貯蓄に回ってしまって消費刺激の効果はない。したがって、やっても効果がないからやらないというような結論になっているわけです。去年とことしでは論理は全然違うのであります。しかし結論は、減税を小幅にするなりあるいは減税をやらぬという結論では一致しているという、こんなような大変皮肉な結果になっているわけですが、こういうふうな税調のこれは考え方として出されたわけですが、主税局長としては、去年とことしの経済情勢は私はそんな変わりがあったとは思わないのですが、これだけの逆転した論理の使い方というものを一体どういうふうにお考えになるか、お聞きしたいと思います。
  61. 大倉眞隆

    大倉政府委員 私の理解いたしておりますところでは、減税の持っております景気効果というものについては、五十年度答申も五十一年度答申も考え方の基本は同じなんだろうと思うのであります。つまり、減税をすれば、減税をしなかった場合に比べて需要造出があり、それによる刺激効果がある、その基本は同じである。  それから五十年度答申では、そのことによって物価が非常に上がってしまうかもしれないから小幅にしようではないかというふうに結論が導かれておる。その場合には、同時に公共投資も、御記憶のとおり前年同額、実質では減だというふうなことをやりまして、歳出歳入両面で、とにかく需要を刺激しないという財政を組んだ年であったと思います。  五十一年度分につきましての考え方は、同様に、減税をすれば、しない場合に比べて需要効果があるのであろうということ、これは否定しない。ただ、五十一年度考え方は、限られた財源であるということがもう一つ前提にある。財源は公債の追加発行しかないんだ、そういう前提で公債依存度がかなり大きい予想のもとに、追加発行してまでも景気刺激をするとすれば、それは公共投資の追加と減税とどちらがより効果的であろうかという議論をしておられるわけでございます。効果の測定としては、この状態のもとでは公共投資の方が景気促進効果が大きいから、追加発行してまで財政が引き受ける場合には公共投資の方でやったらどうですか、減税の方をとるべきではないでしょうという結論をお出しになったと思います。  したがいまして、しつこくて恐縮ですが、減税だけを取り出しまして、それが景気に対して刺激的であるという基本認識においては、両年度の答申とも共通のものがあるんだ、そのように私は理解いたしております。
  62. 高沢寅男

    高沢委員 そうしますと、その局長の認識からすれば、さっきの大臣への質問にも関連しますが、来年度の問題ですね、来年度の問題はまだこれからということかもしれませんけれども、しかし少なくともいまの論理、理屈の問題として、来年度所得税減税というものについては一体どういう論理を適用すべきだとお考えか、それをお聞きしたいと思います。
  63. 大倉眞隆

    大倉政府委員 来年度の財政運営全体につきましては、まだもっと時間をいただきませんと、成長見通しなり、これに対応する財政の姿勢なりというものがはっきり出てこないわけでございますが、ただいまの御質問の御趣旨に即して私なりの考え方を申し上げれば、景気政策としての減税考えるような経済情勢であるかどうか、つまり財政がもう一段景気を刺激しなくてはいけないというような五十二年度経済であるのかどうか、それが一つの決め手であろう。  その場合に、仮定の議論として、もし引き続き財政が景気刺激的なことをやらなくてはならぬという場合が——必ずそうはならないんではないかと思いますが、もしそういう場合であれば、それは限られた財源、依然として特例公債が続くという前提でございますから、特例公債を出してでもやる場合には、どれが一番効果的かということをもう一遍また議論をしてみる。  その場合に、いついかなる場合でも公共投資の方が減税よりも効果的であるということをアプリオリに決める必要はないと思います。それはそのときどきの情勢で判断をすればいいことだと思いますが、少なくとも貯蓄性向が非常に高いという条件のもとでは、やはり一般的には公共投資の方がより刺激的である条件は余り変わらないだろうとは思います。
  64. 高沢寅男

    高沢委員 私、ここに主計局の次長がお見えになっておりますので、主計局の方へこの際ひとつお尋ねしたいと思うのです。  ことしは自動車の関係の税の引き上げが行われたわけです。ガソリン税にせよあるいは自動車重量税にせよ、こういうものの引き上げが行われた。これが道路財源に充てられるということになるわけですが、それとの関係でひとつお尋ねをしたいわけです。道路財源に入る。道路整備特別会計の財源に入って、そして道路整備の仕事が行われるということになりますが、最近は特に自動車という関係でいえば、公害問題というものが非常に大きな社会問題になっているわけです。排気ガスの問題もあるし騒音の問題もあるし、あるいはまた振動というふうな問題もあります。そういうことから私が住民などから受ける要望としては、そういう自動車の関係財源で道路整備をやる、そのための特別会計が設置されているが、その事業の中にたとえば道路にグリーンベルトをつけるとかあるいは振動や騒音防止のための道路構造をつくる、あるいは排気ガスを防ぐためのシェルターをつけるとか、道路の構造に関してずいぶんいろいろの技術的な検討も進んでいますし、住民の要望も非常に強いものがあります。  そこで、特にこれは大都市地区が中心になるとは思うのですが、道路整備特別会計の中にそういうふうな自動車公害の防止に関するいわば特別勘定のようなものを設定をして、そして自動車財源の中のたとえば三割とかあるいは四割とか一定の比率というものは、もうはっきりと決めてその勘定に入れる。そしてその財源によって道路、自動車に関係する公害防止の仕事を推進するというようなやり方が私はいまはどうしても必要じゃないかと、こう思うのですが、主計局の立場からそれについてのお考えをお聞きしたいと思います。
  65. 田中敬

    田中(敬)政府委員 先生の御指摘のように、ガソリン、自動車公害に対応いたします対策というものは現在特別会計予算の中で、先生の御主張とは別でございますけれども、一般的な道路予算の中で緑化対策あるいは環境施設の設置費というようなもので、通常の道路予算の伸び以上の対策を講じておることは御承知のとおりでございます。  ただ、先生がおっしゃいますように、公害対策といたしましては、現在そもそも道路を新たに設置する場合、たとえば町の中を通るとガソリン公害が起きるからバイパスで抜けるあるいは掘り割りにする、あるいは場所によってはトンネルをつくるというようなことで、そもそも道路をつくる最初からそういう公害対策的な施策を、最近の道路においてはことに注意をしてやっております。それからもう一つ、現に設置をされておる道路につきまして、通行量が激しくなるというようなことから、それに対してグリーンベルトをつくる緑化対策あるいはシェルターをつけるという、公害対策としては二様のものがあろうと思います。  そういう意味におきましては、いま新たに設置する道路につきましては最初からそういう公害対策を加味した道路構造あるいは道路設計をするということでございますので、これを別の勘定に分けるということは余り意味がないんではなかろうか。ですから、新設の道路につきましては道路構造、設計等において十分考慮していく。それから既設の道路の緑化対策につきましては、いまの予算の中で従来どおりの施策を進めていくということの方がより効果的であろうか、実効が上がるんではなかろうか。特別勘定をつくるという御提案でございますけれども、いまのところ私どもはその必要性を認めておりません。
  66. 高沢寅男

    高沢委員 これはこの国会でどうなるかまだわかりませんけれども、環境アセスメントの立法が論議されされているわけですが、そういうふうなことで、道路がバイパスその他建設されるときに、いまの御説明では、もう初めからそういう公害政策というものを道路構造の中に組み込んでやるんだから、そういう特別勘定の必要はない、こういうふうなお答えではあったわけですが、そのアセスメントというふうなものが明確に法律でも定められてくる。われわれの考えでは、そのアセスメントを行う段階では、そういう道路がつくられるという場合、その道路の周辺地区の住民の代表も当然参加して、それでアセスメントの検討に参加して、そこから道路の構造というものが決定されていくというようにならなければならぬと思うのですが、そういう場合に道路構造の中における公害防止の構造というものの重要性は、私は、これから大きくなる一方であろう、こう思うのです。そういう意味においては、建設省なりあるいは主計局の立場で、もともとそういう構造にされておる、こういうお答えだけでは、現状は決してそうはなっていない。であるから、特に東京のようなこういうところでは非常に道路に関する公害問題が多発しておるというような状況であるわけです。こういう状況考えれば、住民のそのことに関する理解度を進める、住民の納得を進めるというふうな、こういう関係から言っても、私は、道路の建設に伴う公害対策の勘定というものが明示されるという形になって、そして、その中にアセスメントならアセスメントということの関連で、この道路の構造の中ではこれだけのものが公害対策のものとして加えられる、こういうような住民から見てはっきりと明示的にわかるという形をとる方が、この行政の進め方においては住民との関係においても非常に有効ではないか、こう思いますので、いまのような点を実はお尋ねをしているわけですが、そういうことについてのアセスメントが行われるというような段階になればなおさら私は、主計局の立場でも、そういう特別会計のあり方についてはひとつ前向きの検討をお願いをしたい、こう思うわけですが、もう一度お答えをお願いしたいと思います。
  67. 田中敬

    田中(敬)政府委員 アセスメントが行われ、住民協議の上で道路構造なり道路設計を考えるといたしますれば、そういう意味での道路構造なり道路設計が行われれば目的が達せられるわけでございまして、これを別の特別勘定からこれだけの支出をするということの方がより説得力があるか、あるいはより特別会計の運営として効率であるかどうか、先生の御主張も十分理解できますので、その辺につきましては、主務省である建設省とも今後十分協議はしてまいりたいと思います。
  68. 高沢寅男

    高沢委員 じゃあその点はこれからの積極的な検討をひとつお願いしたいと思います。  それで、先ほど大臣お尋ねした中で、守秘義務関係というようなことでちょっとお尋ねしたわけですが、それに関連をいたしましてまたもう一度お尋ねをしてみたいと思います。  守秘義務関係で、公務員法の関係では、公務員がその「職務上知ることのできた秘密を漏らしてはならない。その職を退いた後といえども同様とする。」こういうふうにあって、そして、これについての罰則の定めがありますが、罰則は懲役二年ということになっておりますね。これに対して税務関係守秘義務の場合には、これは同じような定めはあるわけですが、罰則の定めは三年というふうなことに税務の場合はなっているわけです。一般の公務員の守秘義務の場合の二年とそれから税務に関する守秘義務の場合の三年、この罰則の違いはどういうところから出ているというふうにお考えでしょうか。
  69. 大倉眞隆

    大倉政府委員 所得税法におきます守秘義務は、やはり一般公務員が職務上知り得た秘密という以上に納税者の個々の取引の状態そのほか秘密にわたるべき事項について接触する機会が多いわけでございますので、納税者との間の信頼関係を損なうことのないように、またひいては適正、公平な課税の実現が妨げられることのないようにという意味で、通常の国家公務員法よりも一層重い——重いと申すのは不適当と思いますが、より加重された義務を課し、したがってまた、その違反に対する罰則も重い、そのように私としては理解いたしております。  なお、国家公務員法の罰則はたしか一年じゃなかったかと思います。
  70. 高沢寅男

    高沢委員 私も、いま局長が言われたのと同じように考えるわけです。つまり、税務に関する罰則の方が重いということは、それだけ税務関係というのは納税者のプライバシーに触れる可能性が非常に大きいというふうなことから、そこを守らなければいけない、こういう面から重くなっているというふうに見れば、この守秘義務ということ自体の性格が、国民あるいは納税者、このプライバシーを守るという面に非常に大きな重点があるというように私は見るべきではないかと思うのです。  そうなってまいりますと、これはもう先ほども言いました田中金脈との関係で、その税務に関する資料の公表をわれわれは求めた、それに対して、守秘義務だから公表ができないということで政府の態度はあったわけですが、私は、いまの児玉譽士夫の問題でもそうであるし、あるいはこれからロッキード政府高官が出てくる場合もそうであるし、あるいは田中総理の場合も同じでありますけれども、ここで問題にされていることは単なるプライバシーではないと思うのです。それは、たとえば自民党なら自民党という政権政党の幹部役員として、あるいは大臣として、あるいは総理として、そういうふうな非常に公的な立場にあったそのこととの関係で行われた金脈問題であるということになれば、それに関する税務資料というものは、これはプライバシーという性格で割り切ることはできないということになろうと思うのです。そういう意味で私たちは、守秘義務という壁でそれを公表しないという政府の態度は間違っておる、こういうふうなことになるわけですが、いまの局長のお答えの、税務の方が罰則が重いということは、つまりそれだけプライバシーの尊重というところに重点があるというお答えを前提にすれば、私は、プライバシーはプライバシーとして別にして、それを発表せよとは言いません。だれだれが二号さんがいるかどうか発表せよということは何も言うわけじゃないのです。問題は、その公的な地位を利用して行われた行為の中でどういう所得があったか、またその所得に関して所得の届け出、申告がどれだけあったか、それに対して国税当局がどういう処置をされたかというようなことは、これは私はもはや公的な性格のものであるというふうに考えるわけですよ。したがって、そういうものは国民の前に公表すべきである、こういうふうな意見であるわけですが、これについての見解をお聞きしたいと思います。
  71. 大倉眞隆

    大倉政府委員 私、先ほどのお答えの中でプライバシーという言葉を使ったのでございますが、実は、問題のむずかしさはそのプライバシーという言葉でどこまでを意味しているんだろうかということがはなはだはっきりしない。ただいまの高沢委員のお使いになっている意味では、非常に私的と申しますか、たとえば家族構成でございますとか、肉体的な条件でございますとか、そのあたりに局限してお使いになっているような印象を受けましたけれども、その意味では私は、プライバシーという言葉を使ったことがもし適当でなければ取り消さしていただきたいと思いますが、私の申し上げたかったのは、もっと広い意味での納税者の取引の内情とか営業の規模とか、ひいては損益とか、そういう私的な事情すべてを含んだものとしての個人としての納税者の立場あるいは取引先との関係とか、それらすべてを含んで、やはり税務当局でなくては知り得ないものあるいは普通には近づき得ないものというものがあるから、それを守る義務が加重されておるんだ、そのように理解しておりますので、実は問題の焦点は、どこまでがそういう意味での守らるべき私的利益であるかというところの議論になるのかもしれません。
  72. 高沢寅男

    高沢委員 私は、中小企業人たちとか一般の事業者の場合、いま局長の言われたようなことは十分あるということは認めます。だけれども、認めたその上に立ってもなおかつ、先ほど言いました政府高官として、あるいは大臣としてやられたということの関係は、それとはまたさらに別なのであります。これは明らかに田中総理が事業者としてやられたことではないのであります。これはたとえば大蔵大臣として、あるいは通産大臣として、また総理大臣として、時には自民党幹事長としてというような立場で、国有地の処置に関して、あるいはその他のことに関して、これは中小企業者がやるのとは全く違う行為の中において生まれた所得、資産というものがあったことは明らかなわけです。そうして、そのことについて、税務の上でこれがどう処理されているかということが問題になったわけです。  今度の児玉譽士夫の場合も、これについては国税当局から更正の決定もされる。同時に、マスコミを通じてわれわれは知ることができた。これは公表されているわけです。彼の場合にはどの銀行、どの金融機関にどれだけの隠し預金があった、あるいは秘密の金庫にどういうふうな貴金属がしまってあったとかいうふうなことまでわれわれは新聞によって知ることができたわけですね。あるいはまた、骨とう品とか刀とか絵画とかいうふうなものはどんなふうなものを持っているというふうなことまでわれわれは今度の児玉譽士夫の件に関して知ることができたわけです。  私は、いま言われたロッキード事件に関して、そして右翼の有力者という立場で行ったそういう所得の得方、こういうものに関連して、これは国民の前に明らかにされた、こういうふうに思うわけですが、そういうふうなことは中小企業者が取引相手がどうであるとか仕入れがどうであるということとは明らかに性格が違う。そういう性格の問題を国民の前に公表すべきである、こういうことで私は言っているわけです。それについて見解をお尋ねします。
  73. 大倉眞隆

    大倉政府委員 再び同じ問題に返ってしまうのかもしれませんが、やはり法律によりまして秘密を守る義務があり、それに違反すれば刑事罰で訴追されるというシステムのもとにおきまして、守るべき秘密が何であるかということは、余り狭く解しますと、税務当局の個々の当該職員がそれを一々判断しなくてはならない。それが法に触れることになるのかならないのか、これは出してもいい秘密であるとかそのような秘密でないとか、これは守るべき秘密であるとかいうことをその人が判断しなければならない、非常にむずかしい問題を裏に含んでいるわけでございます。したがいまして、私は、個人的にはここで守らるべき秘密というのは、やはり税務当局でなければ、一般の人には近づき得ないという私的な事情は、やはり一般的に秘密と考えてこれを守っておかないと、円滑な税務行政の執行には思わぬ阻害を来すことがあるのではないかという考え方をとっております。  御質問の中で、ある取引は、それは公的な立場でやったものであるから、それをもし私的な事情として守るべきでないという角度の御議論がございました。その点につきましては、当該その方がそれは公的な立場でやったことだからみずからが発表するとおっしゃること、それは構わないと申しますか、私どもが云々すべき問題でないと思います。しかし、公的な立場でおやりになった結果として何らかの取引なり利益があったとして、それを税務当局が知り得た場合、これを開示して、なおかつ守秘義務の違反にならないかということになりますれば、私はやはりそれは守秘義務としては違反になり得るというように考えざるを得ないのではないかと思います。もう一つ刑事事件として告発されました場合には、それは法廷に参りますれば一般的に知られるわけでございますから、それはまたおのずから事情が違う。ただ私の理解しておりますのでは、新聞はいろいろと取材をして書いておりますけれども国税庁が隠し金庫がどこにあったとかどの銀行に幾ら預金していたとかいうことまで公表してはいないんだというふうに理解しておりますが、なお必要があれば、国税庁の方からお答えいたします。
  74. 中橋敬次郎

    中橋政府委員 いま、主税局長からお答えがございましたので十分でございますけれども高沢委員がお触れになりましたので、あえて私からもお答えをさせていただきますと、今回の児玉事件は、査察調査でございましたから、告発の段階まではもちろん私ども調査をやりまして、その内容は外には出しておりません。告発を受けて検察庁で起訴をされました、その公訴事実というのは起訴状で明らかになっておりますから、その点だけはいわゆるオープンになっておるわけでございます。そういう所得に対応して資産が一体どのようなものになっておるかというようなことは、先ほどのお答えのとおり、私どもの方でこれを発表したものではございませんし、どの記事が正しくて、どの記事が間違っておるかということも申し上げたことはございません。  私どもは、税務職員の守秘義務の問題といいますのは、これも先ほど来るる御説明がありましたとおり、単に納税者のプライバシーという観点だけでは考えておりません。と申しますのは、私ども税務を進めてまいるためにはどうしても個々人の非常に深いプライバシーにまで入っていかなければならないわけでございます。それは個人の家族関係にとどまりませんで、あらゆる取引、あらゆる資産、所得という問題まで入っていかなければなりませんし、またその場合には、納税者個々人のわれわれ税務職員に対しますところの協力がなければとてもこの仕事はやっていけないわけでございます。そのときに、われわれに対しましてはあらゆるものを洗いざらい出してもらっても、それはあえてオープンにはならないという信頼があってこそ初めて私ども仕事もスムーズに動き得るものでございます。そういう趣旨からして、私は、その秘密を守らなければならないという責務を税務職員というのは一般の公務員よりは重く課せられておるというふうに理解をいたしております。
  75. 高沢寅男

    高沢委員 じゃ重ねてこういうことでお尋ねしますが、これは国政調査権との関係です。税務当局の方からそういう扱われたケースについて、そちらからこれは守秘義務関係がないからどんどん発表していいというふうなことは恐らく私はないと思いますけれども、ただ、いまロッキード事件のようなこういう一つの政治的な問題が起きてきて、それに関連して、たとえば国会なら国会大蔵委員会なら大蔵委員会という場で、このことに関してはひとつ国政調査権の立場で知る必要があるではないかというふうな立場に立って、そうしてある特定の人、ある特定のケースについての税務資料をその国会委員会への提出を求めるというふうなことになった場合、そういう場合にいまの守秘義務との関係はどうお考えになりますか。もちろん、その場合の国会の要求というものは、その人のまさに私的、個人的関係を求めるということは当然常識上もあり得ないわけであって、そのケースの公的な活動との関係で生まれるその面についての資料を求めるということになるのは当然ですけれども、そういうような場合に一体どうお考えになるわけですか。
  76. 大倉眞隆

    大倉政府委員 これは他の委員あるいは他の委員会大蔵大臣お答えいたしておりますのをそのままお答えすべき問題だと思いますが、大蔵大臣は、国政調査権と守秘義務とはいずれかが絶対に優先するというふうに考えるべきものではないであろう、その間のバランスをいかにとるかということはケースに応じて判断さるべきであろうと言われながら、やはりその場合の最終処理のやり方の一つの準拠としては、証人宣誓法が考え方としての一つのよりどころになるであろうというように答弁しております。
  77. 高沢寅男

    高沢委員 私は大臣にも言いましたように、ロッキード問題に関してまさにこの問題がこれからたくさん出てくるというふうに考えるわけです。そういう意味において、この問題のときにまた守秘義務というふうな壁がわれわれの前に立ちはだかるということであっては、このロッキード問題の正しい解明がなかなか進まぬということを考えるから以上のようなことを申し上げたわけですが、その点に関しては、私としては見解を保留して、また今後の問題としてこれからもひとつただしていきたいと思います。  以上で質問を終わります。
  78. 田中敬

    田中委員長 午後三時より再開することとし、この際、休憩いたします。     午後一時五十九分休憩      ————◇—————     午後三時十分開議
  79. 田中敬

    田中委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  税制に関する件について質疑を続行いたします。荒木宏君。
  80. 荒木宏

    ○荒木委員 企業課税の見直しということが言われておりますので、それについてお伺いしたいと思うのですが、まず減価償却、このあり方が現在のままで果たしていいのかどうか、幾つか問題がありますけれども、まず初めに耐用年数の問題からお尋ねをしたいと思うのです。  それぞれ省令で耐用年数が決まっておるようですけれども、どういうふうな見当でどういうふうな手順で決められておるか、初めに簡単に御説明願いたいと思います。
  81. 大倉眞隆

    大倉政府委員 ただいまおっしゃいましたとおり、耐用年数は個別の種類ごとに省令で年数を決めるということにいたしておりまして、私どもの局の中に技術担当と申しておりますが、機械系統に非常に詳しい人間を配置していただきまして、もっぱらその係が関係省の話を聞きながらつくってまいるということをしておるわけでございます。
  82. 荒木宏

    ○荒木委員 例を一つ挙げてお尋ねをしたいのですが、民間航空機、いまロッキードの問題で全日空が大変注目を浴びておりますけれども、これについて言いますと、最大離陸重量が一万三千六百五十キログラムを超えるものは国際線が六年、その他のもの七年、こういうふうになっておるようですけれども、これはどのような専門的検討を経て決められたものでしょうか。
  83. 大倉眞隆

    大倉政府委員 先ほど申し上げました技術担当の補佐がいるわけでございますが、お許しを得られますれば、その専門家から直接お答え申し上げた方がいいかと思います。
  84. 白石雅也

    ○白石説明員 航空機の耐用年数は三十六年に改正いたしましたが、その折のことを申し上げますと、当時航空会社としましては日本航空がございましたので、日本航空株式会社の実績を踏まえまして耐用年数を定めたような次第でございます。
  85. 荒木宏

    ○荒木委員 三十六年とおっしゃったね。そうすると、十五年前になるわけですか。いま、飛行機を持っておるほかの国、たくさんあるでしょう、アメリカ、西ドイツ、フランス、イタリア、オランダ、大体そういう日本と比較されるような西欧先進資本主義国での同じ型の飛行機の耐用年数と比べてどうですか。
  86. 大倉眞隆

    大倉政府委員 私、承知しております限りでは、アメリカが五年から七年ということで、標準年数は六年、それから西独が五年、英国は現在の償却はいわば自由償却になっておりますので、初年度に全部償却してもよしということになりますから、いわば年数の観念は入らないシステムになっております。カナダは定率で、四割という定率でございますから、年数換算いたしますと大体四年半ぐらいということでございまして日本の六年というのは大体アメリカ並み、ほかの国よりはむしろちょっと長目というように理解いたしております。
  87. 荒木宏

    ○荒木委員 これはずいぶん違いますな、いまおっしゃったのは。これは、ここでそのことを論議してもあるいは水かけになるかもしれないから、資料としてひとつ後で国際比較を文書にして出してください。
  88. 大倉眞隆

    大倉政府委員 委員会としてお計らいいただきまして、必要に応じてお出しいたしたいと思います。
  89. 荒木宏

    ○荒木委員 ひとつ後で理事会で御相談いただきたいと思います。  他国比較は、いまここで資料が、前提が一致しないからともかくとして、実際に使っている年数はどうですか、現実の使用年数。
  90. 大倉眞隆

    大倉政府委員 実際に物理的に何年使っておるかということにつきましては、私の感じでは、これよりも若干長く使っておるのではないかとは思いますが、なお航空会社から聞きました上でお答えいたしたいと思います。
  91. 荒木宏

    ○荒木委員 一つは収益に関係をする、したがって税収にも関係をする。どうも局長の感じで事を決められたのでは、これは筋が曲がっておると思うのです。航空機の運航を所管しておる省庁があるでしょう。運輸省はどう言ってますか。
  92. 大倉眞隆

    大倉政府委員 運輸省とは——これはほかの関係省でも同じでございますが、耐用年数をつくりますときに十分相談をいたしておりまして、それ以後事情の変更があります場合には、先方からの申し出があれば、それを受けまして相談の上、必要に応じて改正するというやり方をとっております。
  93. 荒木宏

    ○荒木委員 多少私は——どう言ったらいいでしょうかな。ふざけた答弁と言うと言葉が少し過ぎるかもしれませんが、皆さんがこれをつくったのは十五年前でしょう。それ以来経済の様子は同じですか、十五年前と。耐用年数を決めるには、実際の使用年数ももちろんありましょうけれども、これも検討しなければならないし、政策的な面もありますね。だから、どっちにしても、実際に使っておる年数が現在どうであるか、それから、政策的に、果たして短くして次々と変えていかなければならないようなそういう政策課題を掲げておる状態なのか、いろいろな面から検討しなければならぬでしょう。あなた、十五年前の話をいま持ち出してきて、それで通用するような状態じゃないと私は思うのですよ。  現在、運輸省に聞いてみますと、皆さんお聞きにならぬと言うから、十五年前の話だけでたな上げになすっているから、私、運輸省に聞いてみました。そうしますと、大体三万フライトアワー、つまり一般ラインでいきますと約十五年超、これが完全に安全が保証できる飛行時間であり使用年数だ、こう言うのですよ。実際は飛行機の場合には、オーバーホールだとか整備だとかきっちりやりますから、現実にはこれよりも長い、こういうふうに言っているのです。これは後で直接御確認いただいても結構と思うのですが、ですから、私がお尋ねしたいのは、局長、十五年前そのままというのは余りでしょう。だから、いま運輸省なり、それから局長御自身もおっしゃった民間の航空会社、つまりその技術的な方の専門部門に直接よく相談をして、実際と余り離れているということなら、やはり実際に合うようにこういう真摯な努力をなさるべきだ。まあ一、二年、二、三年かかっているというのなら別だけれども、何せ十五年間そのままなのですから、その間に税法改正何回あったか知れやしない。そういうふうなところからいまこの一つの例で申し上げたのですが、ひとつはっきりした御見解を伺いたいと思います。
  94. 大倉眞隆

    大倉政府委員 御指摘まことにごもっともな点があると思いますので、私どもも実情と余り違ったことにならないように今後とも十分気をつけてまいりたいと思います。
  95. 荒木宏

    ○荒木委員 私が申し上げておりますのは、民間の航空需要というものがジャルパックとかなんとかいってどんどん伸びていく、これは営業政策もありますよ。それをまた政策的にバックアップするということがやられた時代もあったでしょう。しかしいまは経済が様変わりで政府自身が低成長と言っているのでしょう。だからそのときにこの耐用年数にしても、つまり高度成長型の税制というか高度成長時代の耐用年数の決め方というか、それが無反省に、無批判にいまだに手をつけられないままで現在来ておる。やはり税制はそれに合ったようにしなければいかぬわけですし、節約だとか資源問題がずいぶん口を酸っぱくして道学者的に説かれたわけですよ。ですから、そういう意味からもこの問題はいま研究、勉強してみたいとおっしゃったけれども、私が申し上げたような方向を十分踏まえてそれで早急に事を進めていただきたい。ですから、研究なさる方向についての再答弁をひとついただきたい。  それから、飛行機だけじゃないのですね。ほかにこの耐用年数表の中にずいぶんたくさんあります。電車もあるしバスもあるし、それから産業面で言えば天然ガスの処理施設の問題だとか、ことに電力、鉄鋼、設備投資計画を立ててこれから行こうというふうな話も出ているときに、そういった面もひとつ全面的にいまの方向を踏まえて検討もしていただきたい。特にいま中期見通しがなかなか立てにくいときで、皆さんの方も財政収支ケースIケースIIというようなことで多少手探りでやらなければならぬというようなこともおっしゃっていただいたし、航空機について言えば、航空審議会が民間の長期航空需要について討議を重ねたところが、三年前に出した数字とそれから昨今出した数字とうんと違っている。五年先どうなるか、つまりなかなか見当つきにくいというときですからね。全体のこういう様子が変わっているということ、これは間違いないことなんだから、その意味検討の目的、方向それから検討の範囲、この点について再答弁をお願いしたい。
  96. 大倉眞隆

    大倉政府委員 おっしゃるように何年かに一度はかなり広い範囲で見直しをするという必要が出てくる項目があると私も考えます。前回の全般的な見直し以来かなりの年数を経ていることも事実でございますから、現在の耐用年数が実際の企業の資産の利用状況に比べてはなはだしく乖離している点はないかという点を中心としまして一度見直しをしてみたいと思います。  もう一つ強いて申し上げれば、やはり耐用年数そのものは余り頻繁に変えない方がいいので、決めるときに十分慎重に考えて、物理的な耐用年数だけでなくて経済的な耐用年数も加味してある程度決める。政策的に投資を促進したいというようなときには、それは特別償却とか割り増し償却とかいうシステムを使うという考え方が従来もとられておりましたし、今後ともそれでいくことが適当ではないかと私いまの段階では思いますけれども、なお専門家の知恵をかりまして、繰り返しになりますが、現状とひどく乖離している面がないかどうか全般的に見直しをいたしてみたいと思います。
  97. 荒木宏

    ○荒木委員 関連して、いま物理的ということで中心に伺っているのですが、経済的な面は後でまた少し触れましょう。残存率の問題ですが、一〇%ということに省令でなっている。飛行機の場合たしか五%にしていましたね。一〇%ですか。全部一〇%ですか、五%になっているのじゃないですか。
  98. 大倉眞隆

    大倉政府委員 ちょっとそこは技術的にややこしいのでございますが、耐用年数の定率を決める場合の考え方として一〇%残るように決めてある、実際の償却は五%までできるというのがいまのシステムでございます。
  99. 荒木宏

    ○荒木委員 それで、耐用年数を経過して、これは全部オシャカにしているのじゃないでしょう。実際はそれをまた転売していますね、下取りになっているかどうかわからぬけれども。それはその五%よりももっと高く売っているのじゃないですか。実際どうですか。
  100. 大倉眞隆

    大倉政府委員 それは特別償却なり割り増し償却がございませんでも、その償却後の簿価と時価というものは必ずしも一致するわけではございませんから、御指摘のように高く売れることもございましょう。場合によっては簿価以下でしか売れないこともございましょう。高く売れましたときは、もちろんそのときに利益になります。安くしか売れないときは、そのときの損になってまいります。
  101. 荒木宏

    ○荒木委員 そういう一般的なことを聞いているのじゃないのですよ。それはぼくだってわかっている。現実はほとんど高く売っているでしょう、こう言っているのです。実際は。たとえば、全日空でフレンドシップF27というのがある。六一年に購入して七三年まで、あなた十二年間使った。これが残存価格の五%よりもはるかに多額に処分をして処分益というのをずっと上げているでしょう。ですから実際はどうかということを言っているのですよ。
  102. 大倉眞隆

    大倉政府委員 御指摘ございましたので、なおよく調べてみたいと思いますが、一般的には非常によくオーバーホールして整備してあればそういうこともあるかもしれません。それは途中でどの程度追加的な資本支出をしておるかということにもよろうかと思います。
  103. 荒木宏

    ○荒木委員 どうもしかし、皆さん実態調査に余り熱心じゃないですね。運輸省は、雫石の事故だとか、あんな大きな事故が続いたのだからオーバーホール、整備点検にはずいぶん重点を置いて指導していると口をきわめて言っていますよ。もしそれをそのまま信用するとすれば、皆さんおっしゃるようにいいかげんな整備の仕方で、簿価を下回って売るであろうというような発想が出てくるはずがないと思うのです。この償却、耐用年数といい、あるいは残存率といい、実態から乖離している。あるいはどっちにしたって決めたのがちょっと古いことだ。だから物理的にやらなければならぬということのほかに、先ほど経済的という話もありましたけれども、私は経済的に見たって大きな問題だと思うのですね。  全日空の労働組合、これは職員の皆さんでつくっている組合ですが、ここはいまの航空機の償却期間それから残存率、これが実態に合わないばかりでなく、欧米に比べてもはるかに短い、つまりそれだけ実情に照らしても、それから国際比較でもオーバー償却だ。そのことは結局は賃金圧迫になるでしょう、利益の表示をそれだけ圧迫するわけですから。職員の皆さんはそういうふうに言って、組合の決議としてそのことを求めているのです。  また、そうした実情に合わない、くるくる次から次機種変更して、そして新しいのでお客を引っ張っていこう、これは売り込み市場、売り手から見たって非常に魅力のある制度ということになるのじゃないでしょうかね。つまり長くそれで使いましょう、整備をしてそして使えるだけ使おう、そういうふうなところと、それから法律的にうんと短くして、そしておまけに特別償却まで、割り増し償却まで上乗せをして償却率をうんと早くしているということは、どうしたって飛行機を売り込みやすいでしょう。ストレートに結びつくかどうかは別として、しかしいずれにしたって、そのことは買い手の方の買う意欲というか、新機種購入のそういう意欲喚起にもつながるというわけで、政策的に見たって経済的に見ても、いまのことは私はいまの時代の要請の一つであろうと思うのです。答弁はいただきましたから、いまのは意見も含めて申し上げたのですけれども、これは品目が多いですから、また十五年間皆さんおやりになってなかったことは、それだけ気が向かぬというか、あるいは意に沿わぬというか、どっちにしたって喜んでやろうという分野じゃなかったのだろうから、そういう点から言えば、ひとつ一層の見直しということを希望して、次の質問に移りたいと思うのです。  次は、同じく企業課税の問題なんですが、会社臨時特別税というのがありましたね。これは法律が当然失効したとしておられるのか、大蔵省の中で廃止するという処置をされたのか、これはどちらでしょうか。
  104. 大倉眞隆

    大倉政府委員 御質問趣旨に沿うかどうかわかりませんが、法律技術的に申しますと、新しい提案がない限りそれで死んでしまうという法律になっておりまして、何ら新しい提案をいたしておらないというお答えになろうかと思います。
  105. 荒木宏

    ○荒木委員 ある期限が来ると——これは特定の日を何月何日というふうに法律で指定していることがありましょうね。それから、いつから何年という言い方で期限を指定することもできると思うのですけれども、この法律は効力を失うとはっきり書いてあるのが幾つかありますね。たとえば財政法第三条の特例に関する法律、「物価統制令の廃止とともに、その効力を失う。」「効力を失う。」とはっきり書いてある。それから特殊土じょう地帯災害防除及び振興臨時措置法、これも何年何月限りその効力を失う。まあ、たくさんありますから一々なにしませんけれども、当然にある期限が来れば法律の効力を失うというやつは、法律自体に、この法律はこのときで失効しますよと、こう書いてある。  そこで私、伺いたいのですが、いま会社臨時特別税を問題にしているのだからこれはちょっとおいでおいで、いままでに、いついつ限りこの法律は効力を失うという表現ではなしに、全部これで来ているのだからね、それ以外に当然に効力を失った法律というのはありますか。明治国会が始まって法律ができて以来、いままでに何千、何万という法律ができたか知らないけれども、いまあなたがおっしゃったような、そういった廃止の仕方をした法律があったかどうか。これをひとつお答えいただきたいと思います。
  106. 大倉眞隆

    大倉政府委員 お答えいたします前に、会社臨時特別税法は廃止されたわけではないわけでございます。そのまま残っておって、適用がなくなって事実上適用されなくなるということでございます。その意味では、ちょっとまた違うかもしれませんが、たとえば戦後実施されました財産税法、これはいまだに廃止する法律というのはたしか出ておりません。財産税法というのは残っておる。法令集にもある。しかし、一遍課税したらそれで終わった。それと一番似ているのではないかと思います。
  107. 荒木宏

    ○荒木委員 先ほど廃止されたとおっしゃってなかったですか。ちょっと私、聞き……
  108. 大倉眞隆

    大倉政府委員 廃止されたとは申していないと思います。何ら提案をしていない。冒頭の御質問で、廃止する何らかのアクションをとったのかという御質問だったような気がいたしますが、私どもとしては新たな提案をいたしておりません、新たな提案をいたしませんと事実上課税は起こりません、その趣旨で申し上げたつもりでございます。
  109. 荒木宏

    ○荒木委員 新たな提案をしないと課税が起こらない、一方これは廃止はされていない、いま二つの答弁があったわけですね。廃止をされていないということは、法律は生きておるということですか。
  110. 大倉眞隆

    大倉政府委員 法律的にはこの法律は依然として存在しておりまして、法令集にも載っております。したがって、廃止法というものは出ていない、まだ生きている法律である。しかしその適用は、会社臨時特別税法そのものの中で、たとえば第四条で「内国会社の会社臨時特別税の課税標準は、適用年度課税標準法人税額とする。」と書いてございまして、適用年度というものがもう終わってしまっておる。したがって、ことし以降適用年度が出てこないから、臨時税の課税もことし以降は出てこない、そういう関係になります。
  111. 荒木宏

    ○荒木委員 いまの適用年度というのは、外国法人、外国法人以外、どっちですか。ぼく、いまちょっと法文を持っていないものだから。
  112. 大倉眞隆

    大倉政府委員 第四条にございまして、これは対象法人全部に適用のある観念でございます。
  113. 荒木宏

    ○荒木委員 その点はよくわかりました。  そうしますと、この適用期限が決まっておれば、必要な事態というか、そういったことが必要だと言われる事態になっても実際はもう働かない、こういうことになるわけですか。どうですか、期限があっても、法律が生きておる限りはそういった事態が出てくればまた働く余地があるということなんでしょうか。
  114. 大倉眞隆

    大倉政府委員 そこはこのように御理解いただきたいと思いますが、この法律を廃止する法律というものを出しますと、法令集からもこの法律の姿が消えてしまいます。しかし、適用をされておりました間の課税関係というものはある期間生かしておかなくてはいけません。いまになって、たとえば二年前の調査をしてみたら、法人税だけではなくて、会社特別税も納め足りない、そのときには納めていただかないと不公平が起こりますから、そういうのをカバーするためには、廃止法の中で、適用年度についての臨時特別税についてはなお従前の例によると書く例とか、あるいは、なお効力を有すると書く例とかいって、その期間については生かしておきます。そういうことをするやり方と、いまのように、法律がそのまま生きておって、したがって、いまからでも適用年度については、その更正期間の制限とか時効とかいう問題を別にしまして、その限りにおいて生きておるというやり方もあるわけでございます。
  115. 荒木宏

    ○荒木委員 これはちょっと解釈論議にもなるし、大体答弁の御意向わかりましたからこの程度にしておいて、今度は所得税についてちょっとお尋ねしたいのですけれども、かねがね論議になってきました利子配当の選択分離課税の問題です。  これは、本委員会の討議を踏まえて決議もあり、また本会議でもしばしば論議されたところですけれども大臣の答弁されたものを見ますと、十分検討する——実施の方向に向かってというのがありましたかね、ちょっと議事録を正確に確認してないのであれですけれども、一年以上前からそういう答弁で出ておるのですね。そこで私、ちょっと話が細かくなってあれなんですけれども、その検討経過を少しお聞かせいただきたい。税調に諮問してという、そういう手順はもうよくわかるのですけれども大蔵省の中で、いつ、だれが、どこで、何を、どういうふうに検討したという検討経過というのを聞かせてくれませんか。どうも大体答弁が日を追うても判を押したような答弁が間々聞かれたような記憶が非常に強いものですから、そこのところはひとつなるべく詳しく聞かせてほしいと思うのです。
  116. 大倉眞隆

    大倉政府委員 前回源泉分離課税を選択される場合のいわゆる源泉選択の税率の引き上げを御提案いたしました。その法律が成立いたしまして働き始めましたのは実はこの一月一日からでございます。その場合に、前回の御提案いたしました法律案についての御審議、またことしの予算関連での御審議におきまして総合課税に移行するということのために検討を続けるべきであるという御指摘があり、その検討は続けたいということをお答え申し上げておると思います。現在のところ、どうすれば本当に実効が上がるような裏づけができるかということを引き続き検討いたしておりますが、これは依然として主税局の内部の検討にとどまっております。主税局内部でもう少し時間をかけまして、ある程度具体的な案を持ちました上で関係の方面に御相談をしなくてはならないという性質の問題であろうかと思います。繰り返しになりますが、主税局内部で鋭意検討を続けておるというのが現状でございます。
  117. 荒木宏

    ○荒木委員 かねてからの答弁と同じ内容なんですが、案が出ておるのでしょう、やはり内部検討というからにはA案、B案、C案とか、それがまとまってないということなんでしょうか、それともその問題点は幾つか出ている、なかなかその答えが見つからぬ、こういうことなんですか。
  118. 大倉眞隆

    大倉政府委員 ちょっとこの点はぜひ御理解いただきたいと思うのでございますが、当委員会のような公式の場所で私がこういう案について検討していると申し上げますと、いかにもそれが具体的にすぐにでも行われるかのような誤解を招くことが非常に多うございますので、具体的にこういうことを研究しておりますというのを申し上げるのは、恐縮でございますがちょっと差し控えさしていただきたいのでございますが、検討のバリエーションといたしましては、これはお気にさわるかもしれませんが、いわゆる総背番号制のようなものを一つの極といたしまして、それと現状との間にいろいろなバリエーションは研究をいたしております。
  119. 荒木宏

    ○荒木委員 別に私は誤解はしません。いろいろ検討しておられるところをここでも大いに論議が重ねられてきたわけですからね。だから委員会に提出をされるされ方はいろいろあると思うのです。従来からもその点は御相談もしていたところだから。それがいつまでも検討というようなことではなくて、本会議答弁でも実施の方向ということは大臣も言われているわけですから、ある程度やはり時期的にもそれから手順の上でもめどをつけて、そのためにはいろいろ論議になっておる問題点も、さまざまな形はあると思うのですけれども理事会あるいは委員会に反映されるようなことを、ひとつその点も工夫をして早期実施ということに進めていくべしと思うのです。答弁は恐らく同じ繰り返しになると思いますからそれ以上は言いませんけれども、これはもうずいぶん論議が重ねられたことですから、いま私が述べました希望も十分踏まえて処置していただきたいと思うのです。  それから、次はちょっと個々の項目ごとの質問であれなんですけれども、相続税の問題、これは農地の相続については先般法律改正の問題があり、いろいろ論議のあったところですけれども、やはりいろいろ意見聞いてみますと、二十年というのが猶予期間としては長い。これは法改正のときの論議でもいろいろ議論が出たことですけれども、社会状態といいますか経済状態といいますか、二十年先を見通して、そうしてそのときのために課税権を留保するというか、そういったことは実際に妥当でしょうか。いまから二十年先に評価がどうなっているか、実際に猶予されている税額徴収がその当時の時価評価あるいは一般的な土地課税と対比して均衡がとれるかどうか、見通しできますか。
  120. 大倉眞隆

    大倉政府委員 まさしくそういう点がありますので、御論議が重なりながらなかなか去年までこういう仕組みに踏み切れなかったと逆に申すべきかもしれません。つまり御本人の意見というもので決めるということは、やはり税の負担を変えますときに当時の担当者は相当苦慮したのだろうと思います。それは御本人の意思でなしに、たとえば線引きであるとかそのほかの外的な要件でこの土地は農地として使うべしということが決められておれば税ももっと早く乗れる、ある意味では。市街化区域の中であろうが、これは農地として残るのだということが決まっておればもっと早く乗れたのかもしれませんが、それを御本人の意思で、私はこれは当分農地として使うのです。だから農地並みの相続税にしておいてくださいとおっしゃるのを受けとめたわけでございますから、その意味ではやはり御本人が二十年という条件をお知りになりながら、なおかつ農業としての相続税を負担したいとおっしゃるのを税として受け入れたというにとどまっておるわけでございまして、立法の経緯からいたしましても、この二十年というものをにわかに短縮するということは非常にむずかしいのではないかと思います。
  121. 荒木宏

    ○荒木委員 つまり本人の気持ちだけではなかなか客観的に決めにくい、何かだれが見てもはっきりしたものがあればもっと短くしてもいい、おっしゃるのはこういうことなんでしょう。しかし、本人の意思を確定するのに、二十年というのは長過ぎはしませんか、こう言っているのです。だれだって見通しできないでしょう、昭和七十年に評価がどうなっているか、そういう見通しもできない先まで本人の気持ちというのを縛りつけなければ客観性が持てないのかどうか。大体人間の能力というのはまあまあ共通理解できるのだから、それでお互いいまから中期計画、五年先見通すあるいはちと長いのは十年くらい見ている、あるかもしれませんが、二十年なんというのはないのだから、だれが見たって見通せないその先まで本人の気持ちを確かめなければ客観性がないというのは、少し常識的に見て妥当性を欠いているのではないかと思いますが、どうですか。
  122. 大倉眞隆

    大倉政府委員 これは問題のそもそもの出だしが農業をお続けになる意思があるが、しかし周りはすっかり宅地化しておるあるいはごく近く宅地化するであろう、したがって宅地として利用される場合の価額は農地として評価されるものよりも非常に高いという実情を踏まえてこの制度が入ってきているわけでございますから、おっしゃいますように、五年がまんしさえすれば相続税は安くて後おしまい、六年目に売ればもうそれでいいのだというふうにはなかなか踏み切れないと思います。
  123. 荒木宏

    ○荒木委員 ぼくは五年なんて特定はしていませんよ、五年、十年、二十年、これは数量的に連続しておるものですから、そう質的に違うものじゃない、五年だけ取り上げてその説には賛成できぬというのは、これは一部を取り上げて反論するのであって、そうじゃなくて、私が言っておりますのは、常識的に考えていまの社会状態からして二十年先は見通せないだろう、この問題の出発点は、それはわかりますよ、皆さんおっしゃったように本来はもう永久なんだ、それをもじってこうしているんだという論議の経過は十分踏まえているけれども、しかしだれも見通せないし、それからその見通せない状態を法律的に料理する場合に、いまの法体系どういう態度をとっているだろうか。  直接この線引き問題に絡んでいる緑地法は大体十年で事を処理しよう、あるいはそこで残っているのはあるかもしれぬ、事が済んでいるかもしれない、どっちにしたって十年で勝負しよう、こう言っているのですよ。だって、二十年なんというのは、どだい世の中どういうふうになるかわからないという皆さん方のお話なんだから、わからないところをもとにして計画を立てたってしようがないのだから。だから、わかっているその十年、大体そこで、線引きは一応これで置こう。  また、今度は徴収の方からいいましても、一般に世の中には債権取り立てとかいろいろ請求権というのがありますけれども、どの請求権にしたってせいぜい十年たてばもうそれでそれ以上追及しない。つまり、世の中が変わるものだから、そういった変わった状態のもとでいつまでもそのことを続けるのは、蒸し返しになってかえってよろしくないというのがいわゆる法的安定性と言われる概念でしょう。国の場合には特に請求権の時効は五年ということになっておるわけです。そういった常識的に考えても見通せないという状態、それからそれを前提にした法律上の料理の仕方、そして法律上の安定性という基本概念、そういう点からいいますと、永久ではなくてある程度見きわめればそれでもう免除しようというふうに言っている場合に、そのある程度がいまの法体系、いまの社会常識にかなう線でないと、これだけぽっと別の世界にあるのじゃないから、そういう点から言えば二十年というのはいかなる法律体系にもない、また現在の社会常識上いかなる分野にもない年限ではないか、そのことを申し上げているのですがどうですか。
  124. 大倉眞隆

    大倉政府委員 荒木委員よく御承知の上の御質問でございますからくどく申し上げる必要はないかと思いますが、いまのシステムというのは二十年間はほかに売ってはならないというシステムではもちろんないわけなんで、状況が変わって農地として使わない、それは宅地に転用しますということになれば、あるいは売りますということになれば、そのときに猶予していた相続税は納めていただきますということを申しておるだけでございますから、二十年間農地として縛りつけているという制度ではない。  で、二十年というものを考えますときに、やはりそこまで待てばもはや猶予していた期間の利息も何もひっくるめてもう税金はよろしゅうございます。お言葉を使えばその差額分は免除しますというシステムなんでございますから、やはりいま問題になっているような場所にある農地で、しかも、はたから見れば相当の資産価値のあるものを農地並みの評価で課税してそのままで終わってしまうという可能性を持たせるわけでございますから、全くそういう土地を持っていないすぐそばにいる人たち、その人たちの気持ちというものもやはり尊重しなくてはいけないだろう、両々相考えました上で二十年という御提案をしたのだと私は思います。
  125. 荒木宏

    ○荒木委員 かなり筋違いな答弁なんですけれども……。この問題は途中でおくのは僕も残念ですけれども、ほかの問題の時間がなくなるので次の機会に続いてやりたいと思いますが、一言言っておきますと、租税債権が発生した、これは当然法律上取り立てる権利があるし、それからまた職責上義務もあるでしょう。しかし、それでも五年たったらもうやめだ、こうなっているのでしょう。だから確かに、時効の中断その他ということは別にして、両隣りに比べての常識的な違いはわかるけれども、しかし、違いが本質的にあればこそ違った扱いをするわけだから、問題は、その二十年という期間の当否ということは、いまの局長の答弁では僕の聞いておることに直接答えられてないと思いますが、これは水かけ論になりそうだから次の機会に持ち越します。  そこで関連して、これは附帯決議などにもありましたけれども、中小業者の営業用資産がありますね。農家の営農資産、土地、それから居住用の資産、これは前に通達で扱いをされておる。そうすると、中小業者の営業用資産を相続した場合、これも処分をする場合もあるかもしれないけれども、まあまあ仕事を継いでやっていくとしたら、換価処分を前提としない場合も少なからずあり、中小企業を守っていくという点からも附帯決議の中では同列に扱われてきたことなんで、取り扱いとしては農地のような法律という問題もありましょうし、あるいは居住用資産のように通達という扱いもあり、同じく論議されてきて、同じように決議になって、しておる問題ですから、これについても検討されるべきではないかということなんですが、局長のお考えを伺いたい。
  126. 大倉眞隆

    大倉政府委員 これもまたおしかりを受けるかもしれませんが、農地につきましてただいま御質問がありますような制度をつくりました背景というのは、やはり農地法の考え方、経営と所有を分離させないという考え方が一番基本にある、しかも、農業用地で使う場合と、それを他の用途に使う場合とでは収益力に非常に差があるという実情が背景にあると私は理解いたしております。  通常の営業用資産の場合には、これは農地のように農地に使う場合には高い評価が事実上無理であるという背景はないのだろう、したがって相続税の負担によって営業の継続がむずかしくなるあるいはならないという問題は、それは通常の営業者でないいわばサラリーマンが御不幸があったときに、いま住んでいる家を処分しなければならないかどうかという問題と同じ系列の問題として、課税最低限の水準の問題として、また相続税負担のあるべき水準の問題として議論するしかないのではないか、営業用の資産であるからそれだけは相続税の枠外に置くという考え方は、これはなかなかとりにくいというふうに私は考えます。
  127. 荒木宏

    ○荒木委員 最初の一間で、いまの答弁を伺って、ちょっとこれもさっきと同じように質問しておる趣旨の答弁がなかなかすぐにはむずかしいと思うのですよね。だから、これはまた委員会外での話も含めて一度よく従来の論議その他のしんにあるところを申し上げたいと思うのです。  あと時間が二十二、三分しかありませんから、税務行政の問題と、それからもう一つ、もし時間が少しあればもう一点伺っておきたいと思います。最初にまとめて伺います。  一つは、こういうことの訴えが来ておるのです。熊本国税局ですが、協栄生命という生命保険の会社がある。ここのニコニコ共済というのがあるそうでして、各税務署ごとに加入目標を立てさせて、納税貯蓄組合を担当しておる係員に命じて、直接納税貯蓄組合の組合員宅を訪問して、共済に入りなさい、こう言って回らしたという話です。現在も管理部門の職員が加入申込書作成、それから加入者に対する配当金配付、こういうことをやっておるというのですが、こういった生命保険会社の共済について民間の人のところ、貯蓄組合の組合員のところへ行って、保険をとってきなさい、共済をとってきなさい、あといろいろ中で書類づくりなんかやっている。こういうふうなことについては、これでいいのかどうか、これをひとつ伺っておきたいと思います。  それから、仙台の中税務署。ここでは、法人会というのを社団法人にするため、調査や指導に行った際には、法人会へ入りなさい、こういうふうに勧めなさいと管理者が署員に言った。個人の名前まで出してあれですが、副署長の人は、これは局長の命令だ、こう言われたそうです。署長としても、職務命令として、それぞれ行ったときには、法人会に入りなさい、こういうふうに言いなさいと言ったという報告が来ております。  それから金沢国税局、ここでは、「税のしるべ」という冊子がありますね、これは御案内だと思いますが、金沢国税局総務部長名で、通達番号をつけて、税務署長あて、「税のしるべ(北陸版)購読者の拡大について」という——どんどんふやしてくれ、こういう通達を出されているのです。通達番号もありますが、これは後で、特定をするために必要ならばまた申し上げたいと思います。  こういった一連のこと、共済の加入勧誘、法人会の加入勧誘、それから「税のしるべ」の販売拡大、こういったことが全国各局、各署で間々やられているという報告が相次いで来ておりますが、長官、こういうのはいかがでしょうか。
  128. 熊谷文雄

    ○熊谷(文)政府委員 私の担当の法人会の関係につきましてまずお答え申し上げますが、申すまでもなく、関係の協力団体でございます青申会とか法人会などの発展強化というものは、私ども税務行政の円滑な発展、遂行のためには好ましいというふうに考えておるわけでございまして、そういうことから、税務署におきましては、たとえば納税相談の会場に青色申告会の役員などによる青色コーナーを設けましたり、ときには申告会あるいは法人会等があるというふうなことをお知らせする場合もございますけれども、ただいま先生の御指摘のございました、職員が個々の納税者に対しまして、そういった関係の団体に対して加入を勧奨するということは、私ども現実の姿は聞いておりませんが、そういうことを行うことは望ましくないというふうに考えております。
  129. 藤仲貞一

    藤仲説明員 熊本局及び金沢局関係についてお答え申し上げます。  まず第一に、納税貯蓄組合共済制度の関係でございますが、この制度は、御案内のとおり、熊本局が昭和四十七年に導入いたしまして、現在全国的に普及しているものでございますが、この共済制度の実施運営は、納貯組合員の福利厚生を図り、同時にまた納貯組合の自主財源確保に資する、こういう目的のもとに始められた制度でございますので、当然のことでございますが、納税貯蓄組合連合会が行うものでございます。したがいまして、局署がその実施に伴う事務を行うべきではない、かように考えております。そのように局署を指導しておりますので、職員が共済制度への加入勧奨及び集金等を行っていることはない、かように私ども考えております。  ただ、御指摘のように、熊本局管内のごく一部の税務署におきまして、これは納税貯蓄組合連合会の事務局の整備されていなかった署でございますが、納貯共済の送金手続を一期間代行しておった、こういう事実がございました。これは御指摘のとおり、局署の姿勢について誤解を招くゆえんでもございますので、熊本局の指導によりまして現在やめております。現在におきましてはさような事実はないというぐあいに考えております。  それから、「税のしるべ」につきまして、金沢国税局管内におきまして総務部長の通達が発せられておるという御指摘がございましたが、事実は御指摘のとおりでございます。  ただ、申し上げておきたいことは、「税のしるベ」と申しますのは、昭和二十四年に租税知識の啓蒙と納税思想の高揚を図るという目的をもちまして、国税庁と毎日新聞社の協力によって創刊された税の専門誌でございます。昭和二十八年以降は大蔵財務協会が事業を引き継ぎまして。発行者として取材活動、販売活動を行っておるわけでありますが、国税当局といたしましては、納税思想の高揚あるいは税知識の普及に役立つという観点から、取材等について協力しておる次第でございます。  金沢局管内のこの通達でございますが、ただいま申し上げましたように、こういう「税のしるべ」の性格から、できるだけ多くの納税者の方に読まれるのが望ましい、こういうことから国税局の総務部長が自分の名前をもって管下の税務署に通達したことは御指摘のとおりでございますが、これによりまして、職員に職務外の仕事を強制したということもないし、また購読を強制したそういう事実もない、かように私ども聞いております。
  130. 荒木宏

    ○荒木委員 長官、どうですか。個々の「税のしるべ」のゆえんだとかそういうのは質問者の方もわかっておるのですから、好ましくない、あるいはやるべきでない、いまはないと思う、こういう答弁のように聞いたのですが、私どもの方に訴えが来ているのです。ですから、長官、どうですか。いま私が言いました事例並びにことしの一月下旬にも大阪の局の豊能税務署で納税協会の会員拡大のための加入勧奨の指示命令という話も来ておりますから、いま指摘した事例、これは現場から話が来ているのですから、実際に調査をして、好ましくない、行うべきでないと言われるのなら、やはりそのとおりに指導されるべきだと思いますが、長官、ひとつはっきり言ってください。
  131. 中橋敬次郎

    中橋政府委員 先ほどの熊本におきます事例はもう昨年で終わっております。  それから金沢の方は、四十九年以降はその通達も廃止いたしておりますから、御指摘の点はもういまはないわけでございます。ただ、おっしゃいますように、仕事に熱心な余り、たとえば法人会とか青色申告会とか納税協会等に加入勧奨するというようなことがあってはなりませんから、その点については今後とも十分注意をいたしたいと思います。
  132. 荒木宏

    ○荒木委員 最後に一点、守秘義務について伺っておきたいと思いますが、先ほど来の論議ですと、公務員は職務上知り得た秘密を守る義務がある。国会に証人として公務員が来た。それで、その当該の個々の公務員は、職務上知り得た秘密でございます。と言うでしょう。しかし、監督官庁の許可を得る、こうなっておりますね。そのときに皆さんの方では——これはどなたに聞いたらいいのかな、長官に伺いましょうか、監督官庁の責任者として、全部許可しないということなのか、この部分は許可するということなのか、その許可の基準はどうですか一法律で、許可を求める、こういうふうになっておりますけれども、そういった場合の国税庁の許可の基準というのをひとつ聞かせてください。
  133. 中橋敬次郎

    中橋政府委員 実は、守秘義務につきまして、解除の手続についての法律の規定はございませんが、秘密が一体何であるかという問題でありまして、秘密は、その時点におきまして公知の事実でないものは秘密でございますから、私どもとしますれば、一般的には職務上知り得た秘密として扱わざるを得ない、それが大体国税庁としての物の考え方でございます。
  134. 荒木宏

    ○荒木委員 国家公務員法百条の三項では、前項の許可は、法律の定める場合を除いては拒むことができない、こうあるのでしょう。だから、国家公務員法の規定では、法律で特にこういう場合許可してはいかぬよと言っている場合以外は許可を拒むことができないのではないですか。
  135. 横井正美

    ○横井政府委員 御承知のように、一昨年の十一月下旬でございますが、三木総理よりこの問題につきましての統一見解が出されておるわけでございます。それは、御案内のように秘密を守ることによる公益と、秘密を開示することによる公益を比較考量してまいる、それはケース・バイ・ケースであるというふうなことになっておるわけでございます。基準はございませんで、ケース・バイ・ケースでその辺を判断してまいる、こういうようなことになっております。
  136. 荒木宏

    ○荒木委員 そうしますと、午前中も質疑がありましたけれども田中角榮氏の場合、このケースの場合には許可をすべきかどうか。つまり、法律の定める場合以外は拒むことができないというのですから、このケースについてはどうですか。
  137. 中橋敬次郎

    中橋政府委員 いま言われました、たとえば国家公務員法とか刑事訴訟法の、捜査上において公務上知り得た秘密について、それを言うということを必要とされる場合がある場合に、許可ということでその守秘義務を解除する場合はございますけれども、私が申し上げましたのは、所得税法なり法人税法におきましてはそういう解除の手続というのはございません。秘密というものは、あくまでも税務職員としては秘密を守らなければならないということでございますので、そういう解除の点はございません。  問題はあとは国政調査権とそういうものとの関連でございまして、そういうものにつきましては、議院証言法におきますところの五条でございましたか、そういうところで、内閣が最終的にはいずれの公益を優先すべきかということで判断をするというたてまえになっております。
  138. 荒木宏

    ○荒木委員 国家公務員法百条の三項では、別にかくかくしかじかの場合はいけませんよという法律で定めた手続要件、いまおっしゃったのではそういうのはないというのですから、これは当然許可するということになるのじゃないですか。具体的なケース田中角榮氏の場合に、これで許可ができないというのはどういうことなんでしょうか。つまり、許可を得、証言することがあり得るのでしょう。あり得るからこそ法律がそれを決めているのでしょう。だから、あり得るかどうかはケース・バイ・ケースだというから、それなら田中角榮氏の場合はどうですかと聞いているのです。
  139. 中橋敬次郎

    中橋政府委員 百条一項で、職員は、職務上知り得た秘密については云々ということが書いてございまして、いまの三項は、「前項の許可」といいますと、「法令による証人、鑑定人等となり、職務上の秘密に属する事項」ということでございまして、職務を行った上で知り得た秘密ということでございません。しかも、私は再々申し上げておりますように、所得税法、法人税法についてはそれはございませんで、それは、最終には議院証言法におきますところの国政調査権との調整という問題になるわけでございます。
  140. 荒木宏

    ○荒木委員 それはどうしてでしょうか。百条の二項には「職務上の秘密に属する事項を発表するには、」こうありますよ。だから、「職務上の秘密」というのは職務上知り得た秘密だって入るのじゃないですか。あるいは仮に解釈論で、あなたが先ほど来おっしゃっているように、知り得た秘密という概念と職務上の秘密という概念とが別建てだとおっしゃるのなら、これは解釈論争になりますから、それ以上言いませんけれども、私どもが常識的に考えて、議院証言法の中でも承認を要する、承認を得たら発表できるわけでしょう。だから、その承認についてどうかと聞いたら、先ほど来統一見解をおっしゃった、ケース・バイ・ケースということ。それでは、この田中角榮氏の場合はどうなんですか、こう聞いているのですよ。だから、国家公務員法百条の論議でもいいし、あるいは議院証言法の論議でもいいし、要するに全部シャットアウトというたてまえじゃないのです。どの場面にしたって。民訴にしたって、刑訴にしたって。だから、そのことについては許可をすれば発表できるという道を法律は開いているのだから、この田中角榮氏の場合に、たとえば場面としては議院証言法だったらどうですか、こう聞いているのです。
  141. 中橋敬次郎

    中橋政府委員 職務上知り得た秘密と、職務上の秘密は違うと私は思っております。
  142. 荒木宏

    ○荒木委員 だからそれはもう水かけ論になるからいい、こう言ったのです。
  143. 中橋敬次郎

    中橋政府委員 それで職務上知り得た秘密につきまして、仮に刑事訴訟法でありますとか、ただいまの国家公務員法第百条によりますとか、あるいは議院証言法によりますところのいろいろな問題が出てまいりましたときに、国税庁長官としましては、先ほど来お答えしましたように、税務行政の円滑な遂行という点から申せば、納税者に関しますところのいろいろ個々の事情につきましては、職務上知り得た秘密として開示はお許し願いたいという気持ちでございます。しかしさらにその上の段階においてどういうふうにされるか、最終は、議院証言法によりますところの第五条の内閣の判断というのは、私どもよりもはるかに高次の判断をなされるものと思っております。
  144. 荒木宏

    ○荒木委員 どうも話がよくわからぬのです。「監督庁の承認」こうなっているのですよ。国税職員の監督庁というのはあなたの方でしょう。だからあなた自身が田中角榮氏の問題について承認するかしないか決めなければいかぬでしょう、だからどうですかと聞いているのです。しかも職務上の秘密と知り得た事実と違うとおっしゃるけれども、議院証言法の五条では、知り得た事実について職務上の秘密に属するということを申し出たときは、こうなっている。だから概念は、知り得た秘密の方が広いのです。この立法趣旨だと。これが類概念で、職務上の秘密だと申し出たとき、これが種概念になっているでしょう。だからそういった論理的な意味からいっても、要するに職務上知り得た秘密については、監督官庁が承認すればそれは発表してよろしい、こうなっている。監督官庁の承認、つまりあなたが承認なさったことをさらに内閣がどう言うか、これは別ですよ。しかしあなたとしてはどういう線引きを持っておられるか。そして田中角榮氏の場合はどうか、そういう長官の監督庁としてのなにを聞いているのです。
  145. 中橋敬次郎

    中橋政府委員 その点につきましては先ほど平お答えしておりますように、国税庁長官としましては、税務行政については納税者のプライバシーのすみずみまで入っていかないと税金というものはなかなかわかりませんし、またそういう協力があってこそ初めて税務というものは円滑に進め得るということでございますから、そこでわれわれの守秘義務というのが他の職種の者よりは非常に重くなっているというゆえんがあるわけでございます。したがいまして、私の見解はいかがかと先ほど聞かれたことに対しましてお答えいたしておりますのは、税務の円滑な遂行のためには、私どもが職務上知り得た秘密というのは秘密として守らしていただきたいという判断でございます。
  146. 荒木宏

    ○荒木委員 ここから先は論理上の問題になって、政治的ななにもあると思いますけれども、時間があと二、三分しかありませんから、この上の論議は一応おいてまたやるとして、もう一言最後に伺っておきます。  児玉脱税については告発をしましたね。その児玉の方に金が入っている。これは頼まれて預かったのがあるかもしれず、あるいは賄賂で贈ったのもあるかもしれない。しかしそこから渡した先も申告してなければ脱税になるわけですね。新聞で言われているいわゆるピーナツ高官といいますか、疑惑の政府高官、賄賂をとって申告してなければ脱税、こういうことなんでしょう。ここのところはいま国税庁調査しているのですか。
  147. 中橋敬次郎

    中橋政府委員 児玉譽士夫脱税につきましては、預かったものとかいうものは私ども考えておりません。児王譽士夫についての所得となったと考えられるものを四十七年分として告発したわけでございます。それからその後でたとえば児玉からだれかに金品が渡って、そこで所得があったならばあるいは所得税の問題が生ずるかもしれませんが、これにつきましては私どもの方では現在部分的には調査はいたしておりますけれども、それ以上の、たとえば査察に入るとか課税処理をするという段階にまでは至っておりません。
  148. 荒木宏

    ○荒木委員 部分的にはというのは、金が渡った先の人はわかっているのですか。
  149. 中橋敬次郎

    中橋政府委員 それは児玉譽士夫をめぐるところのたとえば非常に近い人とか会社とか、そういうものについていま調査をしておる最中でありますし、四十八年、四十九年について、現在そういうものについて調査進行中でございます。
  150. 荒木宏

    ○荒木委員 それは身内とか関係会社とかいうのはなにとして、要するに金を渡した先は全部調べるという態勢はとっているわけですか。
  151. 中橋敬次郎

    中橋政府委員 もちろんその態勢はとっておりますが、それについてどういう段階になっているかということはお答え申し上げられません。
  152. 荒木宏

    ○荒木委員 終わります。
  153. 田中敬

    田中委員長 坂口力君。
  154. 坂口力

    ○坂口委員 これはことし一月二十九日、予算委員会のときの大平大蔵大臣の発言でありますが、この中でも大蔵大臣わが国国民租税負担について触れておりまして、中央地方を通じ先進諸国に比べると低位にある租税負担、このことを大蔵大臣はいままでにも再三述べておみえになるわけであります。このことについてまずお伺いをして議論に入っていきたいと思うのですが、皆さんの側と申しますか、大蔵大臣はこういうふうなことを述べておみえになるわけでありますが、皆さんの方もこれと同じ考え方かどうかということ、この辺からまずお聞きしたい。
  155. 大倉眞隆

    大倉政府委員 大臣がしばしばお答え申し上げておりますのは、ここ何年かいわゆる物価調整をかなり上回る実質的な減税をやることができたので、現状においては日本の所得税というものは決してよその国に比べてがまんできないような重いものではないという認識が前提だということをおっしゃっておるわけでございますが、これはたとえば計数で申し上げてみますと、夫婦と子供二人の給与所得者の場合に、年収二百万円のランクをとりますと、日本の所得税の実効税率は〇・六%でございます。この二百万円を為替換算いたしましてそれぞれの国の税法を適用いたしてみますと、アメリカでは二・一%、イギリスでは実に一九・四%、西ドイツでも八・六%という負担率になるわけでございます。したがって沼本の所得税負担は非常に軽いということは申せようかと思います。これに住民税を加えましても、住民税が〇・九%でございまして、合計一・五%ということに相なります。一人当たり所得でなお日本をかなり上回っておりますアメリカに比べても、日本の所得税、住民税負担の方が低いのだということを裏に持ちまして大臣があのようなことを申し上げておるわけであります。     〔委員長退席、森(美)委員長代理着席〕  なお、いま二百万円で申し上げましたが、たとえば五百万円の場合、日本は住民税を含めまして一〇・六、アメリカは一四・七、イギリスは三一・五、西ドイツで一五・八ということでございまして、いろいろクロスポイントはございますが、大ざっぱに申しまして一千万ないし三千万までの収入階層におきましては先進工業国の中では日本の所得税、住民税負担が一番低い、それを超しますと逆に日本の方が高くなるという、かなり強い累進度を持った所得税制になっております。
  156. 坂口力

    ○坂口委員 がまんできないほどではないということと非常に低位にあるということでは、大分ニュアンスも違うわけですが、いまおっしゃったようにたとえば二百万とか五百万という形で見ると大体そういう数字になるのだろうと思いますが、これは税負担率のパーセントだけで議論のできない問題でございます。大体日本の場合に最近二〇%から二一、二%の税負担率、平均いたしますとその辺にいくのじゃないかと思います。いまお挙げになりました欧米先進国、アメリカでありますとか、西ドイツでありますとか、フランスでありますとか、その辺のところでありますと三〇%前後——年によりまして若干違いがございますし、上下がございますから、三〇%前後というふうに考えていいと思うのです。その辺の差は確かにございますが、それを先ほどおっしゃったように二百万とか五百万とかいうようなことに限って言えば先ほどおっしゃったようなパーセントになるだろう。確かにこういう税負担率のパーセントで見ますと差があることは事実でありますけれども、いつも議論になりますように税金を払った後の残りの額、可処分所得という段階で見ますると、これまた別の議論が生まれてくるわけです。一九七三年、ちょっと古うございますが、四十八年で、日本の場合の一人当たりの可処分所得というのは大体六十九万七千円ぐらい、約七十万ぐらいだと記憶いたしております。アメリカの場合ですと、日本の円に直しますと百二十四、五万、これは直し方によって若干差は出ますが、そのぐらいにはなるはずでありますし、西ドイツの場合でも百三万か五万かというぐらいなところにいったように記憶をいたしております。その税負担率だけから見まするとかなり日本の場合は低いわけですけれども、税金に払った後の残りということから見ると、やはりまだなおかつ欧米先進国と日本の場合とに差がある。この辺のところを抜きにしまして、税負担率だけでこの議論をすると非常に偏った議論になる、こう思うわけであります。いろいろの税制改革等に当たられて、この辺のところはどういうふうにお考えになっておるか、ひとつ伺っておきたいと思います。
  157. 大倉眞隆

    大倉政府委員 おっしゃるとおり一人当たりはアメリカの方がまだ日本よりも大分高いわけでございます。それからフランス、ドイツもまだ日本より高いわけでございます。したがって、同じランクで比べました場合に、一人当たりが向こうが高いのなら、同じ二百万円であれば、たとえばドイツなりアメリカの方が日本より負担率が安くてむしろあたりまえというふうに私ども考えます。つまりもっと上の方に人がおるわけですから、同じ二百万円という人を比べれば。もっと一般的にフローが大きい国は、所得税負担としては同じ二百万円を比べれば日本よりは向こうの方が少なくても、全体としての負担はカバーできるはずではないか、その意味で先ほど私が、アメリカは日本よりも一人当たりが大きいのに、それでも二百万円で比べると、アメリカの方が税が高いのですということを申し上げたつもりでございます。  なお、それをもう少し敷衍して申し上げますと、たとえば一人当たりの平均所得の人が一体どれくらいの所得税負担をしているであろうかという比べ方もございましょう。これは一人当たりをごく単純に比べますために四倍いたしまして——つまり国民所得というのは赤ん坊まで平均してございますから、それを四人だということで、それがおやじのかせぎであるという単純化をいたしまして、一人当たり平均所得の四倍をいたしてみますと、日本は一番新しい数字が五十一年でございますが、ほかの国は四十九年しかございませんけれども、日本は約五百万円になります。アメリカが六百五十万円、日本より高い。イギリスは、ちょっとレートの関係どもありますが、三百万円で日本より大分少なくなってしまっております。ドイツが五百七十万円、フランスが五百三十万円でございますが、それぞれの国のそういう平均的な所得者がそれそれの国での税法ではどの程度の負担率になっておるかということを申し上げますと、日本では一〇・六でございます。約一割の所得税、住民税負担をしておる。アメリカでは一九%、つまり平均的な人は約二割負担しておるわけでございます。イギリスでは二四・三%で約四分の一でございます。ドイツが一七・八。フランスは所得税の安い国でございまして八・五、フランスだけは日本よりも所得税がやや低い。それは申すまでもなく付加価値税のウエートが大きいということであろうかと思います。  また、同じような考え方で今度は同じ平均所得の人に、いまのような人に日本の税法を適用したらどうなるだろうか。日本の場合は同じ数字の一〇・六でございますが、アメリカの平均所得者がもし日本にいたら、そして日本の税法がかかったらそれは一四・六でございまして、アメリカにいる一九よりも低くなる。そういう角度で見ていく限りは、日本の所得税の方が安いんだというふうに申し上げて誤りでないだろうと思います。イギリスの場合は本国税法なら二四・三ですが、日本の税法でございますと三一・四。ドイツの場合は西ドイツの税法で一七・八、日本に来れば一五・七。フランスの場合でも八・五が七・八ということでございまして——失礼しました。これは逆でございます。ただいまのは全部訂正いたします。どうも数字が逆になりましておかしいと思いました。日本の平均所得の人が外国の税法を課せられたらどうなるかという数字で、大変失礼しました。日本の税法であれば一〇・六である。アメリカの税法が日本の所得に適用されれば一四・六である。イギリスであれば三一・四であり、ドイツであれば一五・七であって、フランスは逆に日本の所得ならフランスの税法の方が安い、七・八になるということでございまして、いずれにしても、平均的な所得者がこういうような前提で計算いたしましたときに約一割の所得税、住民税負担で済んでいるということは、これはやはり歳出全体のウエートがほかの国に比べて小さいということが当然その前提となる事情にありますけれども所得税、住民税の負担としては、少なくともアメリカ、イギリス、ドイツというところよりは日本の方が恵まれておるということを申し上げても、これはうそではないと思います。
  158. 坂口力

    ○坂口委員 ちょっと数字が並び過ぎましたのでこんがらがりましたが、前回の質問のときにも一番最後に私、大臣に少しだけ質問をして、それでもう時間がなくなってしまったのですけれども、余りたくさん国がありますとややこしくなりますから、日本と西ドイツの場合を比較してみましょう。その場合に、日本は経済成長率がこの数年間九%台でかなり進んできた。西ドイツの場合には四%から四・五%ぐらいのところで進んでまいりました。実質経済成長率から見ますると日本の方が倍以上で進んできたわけです。ただし、一方において一人当たりの国民所得を比較いたしますと、日本分の西ドイツの値で見ますと、西ドイツは日本の約一・五倍という一人当たりの国民所得でずっと来まして、これがこの数年間全然詰まってきていないわけなんですね。これは銀行統計の方からの資料を見せていただきましたので間違いないと思うのです。こういうふうな数字を見ますると、西ドイツと日本とを比べました場合に、実質経済成長ではもっとどんどん追い上げていかなければならないのが、一・五倍という率はやはり変わってこない。この辺から見ましても、先ほどの議論と皆さん方のおっしゃるのとがかみ合わないと思うのですが、どうでしょう。
  159. 大倉眞隆

    大倉政府委員 いま坂口委員のおっしゃるのにぴたりと合う資料を私ちょっと持ち合わせておりませんが、成長率の開きほど一人当たりの格差が縮まっていないということは御指摘のとおりであろうかと思います。わずかながら縮まりつつはあるはずだと思いますけれども、縮まり方が目覚ましくないという点はあるかもしれません。ただ、これは一人当たりは名目でやっておりましょうから、その辺をもう一段加味して考えてみる必要があるのかもしれません。御指摘の数字が一人当たり実質でございますれば、なぜそういうことになるのかということを私どもなりにもう少し分析をいたしてみたいと思います。ただ、いずれにいたしましても、これらの場合は一人当たり可処分所得ではないだろうと思いますので、税負担がどうであるかということとは余り直には結びつかないのかもしれません。
  160. 坂口力

    ○坂口委員 質問に入ります前段で、大蔵大臣がおっしゃったことに関連いたしまして、皆さん方がおっしゃるほど、先進諸国と日本と比べました場合に日本が非常に恵まれた形になっていることはあり得ないということをまず申し上げたかったわけであります。きょう一番最初の社会党の方の質問に対しましても大臣は、付加価値税等の問題につきましても、何か野党自民党を攻撃するためにあえて使っているというような発言があったわけでありますが、私ども、そういう次元の低いことで申し上げているわけでは決してないわけでございます。より公平なる税制を確立するためにこの付加価値税がどうかということを言っているわけであります。  それで、付加価値税のことに入っていきます前に減税の問題がございます。これも何度か議論もされていることでありまして、蒸し返しになりますけれども、少しだけ触れていきたいと思います。  最近では、われわれあるいはまた労働者の立場だけではなしに、これは経営陣の方からも、理由はいろいろ異なるでありましょうけれども減税をすべきだというような声が一オクターブ高くなってきているように思います。皆さんの方は、減税というのはできないんだという理由をいままで幾つか挙げておいでになる。私もいままでお挙げになりましたのをいろいろ見てみますと、五、六点ございます。時によりましてアクセントのつけ方が若干違うわけでございますが、昭和五十一年度減税はできないんだということの一番大きなところはどれでございますか。
  161. 大倉眞隆

    大倉政府委員 どれか一つだけが決め手であるというわけにもやはりまいらないのでございますが、私なりに考えますと、一番ウエートを置いて判断された事情は、一般会計における公債依存度が三割にもなっておるという状態であったように思います。それは、公務員の月給から年金まで一部分借金で払っておるというような異常な状態がどうしても前提になっておる。その場合に、公共投資の拡大も減税も、程度の差はあれ、それが景気刺激に役に立つということは否定されないわけでございますから、仮に一般会計の公債依存度が一割そこそこで済むような状態であれば、両方とも取り上げることは可能であったであろう。しかし三割に近い公債依存度の中では、限られた財源をより効果的に使うためには、どちらかという選択をせざるを得なかったということがやはり最後の決め手になったのであろう。それでなおかつがまんしていただきたいし、がまんしていただいてもそう無理ではございませんでしょうという説明に、従来からの減税の経緯とか現在の負担水準とかいうものが出てまいっておるということではなかろうかと思います。
  162. 坂口力

    ○坂口委員 昨年の春闘は平均して一三・一%というところにおさまったわけでありますが、今年は、まだ完全に終わっているわけではございませんが、八%台あるいは九%台というところを上下いたしております。年収三百万の標準世帯、標準家庭の場合を例にとりますと、たとえば中小企業、特に小零細企業等の中で、景気等の問題からもうことしは賃上げができないというところも中にはございます。その賃上げができないようなところ、たとえば賃上げがゼロだといたしますと、所得税は七万六千八百円そのままでありますし、住民税は五万三千二百五十円が八千円今度ふえることになりますから六万一千二百五十円にアップするわけであります。また、賃上げが一〇%になったといたしますと、所得税ではこれが十万四千四百円になりますし、住民税は六万一千二百五十円ですから、賃上げ一〇%で税金の方はパーセントで申しますと二七%増ということになります。この辺のところを見ると、またこの層の人がかなり多いわけでありますが、皆さんのおっしゃる無理でない線とは言いがたい、こう思うのですが、この辺のことしの春闘の現状等を踏まえてどのようにお考えになっていますか。
  163. 大倉眞隆

    大倉政府委員 ただいまお示しの数字と私が手元に持っております数字とちょっと違うようでございますが、これは恐らく社会保険料控除の適用の仕方とかそういうことだろうと思いますので、便宜私の手元にございます数字で申し上げますと、夫婦子二人で五十年分が三百万円であった方の所得税額は八万二千八百円という計算になっております。これが一〇%アップになりまして三百三十万になりますと十一万百六十円ということになりまして、税額として二万七千円ふえるということで、これはいわゆる弾性値計算といたしましては、おっしゃった数字よりももう少し高くて三・三ぐらいの弾性値という計算になります。これは弾性値で議論が出ます場合には、ある意味では超過累進税率を持っておる所得税のいわば宿命でございまして、課税最低限にきわめて近い方ほど弾性値は大きくなる。極端に申せば、去年税がなくて済んだぎりぎりの方がことしたとえ千円でも税が出てくればそれは弾性値無限大でございまして、それと一番上をつないでいくわけでございますから、弾性値で見るのではなくて、やはり限界実効税率がどの程度であるかということで見るべきではないかと私は思っております。限界実効税率で見ますと、ただいまの場合の限界実効税率は九・一でございます。したがって、三十万円ふえた分の一割弱を負担していただく。九・一と申しますのは、申すまでもなく二万七千円ふえるというものを三十万円で割るわけでございます。税額増加が二万七千円、所得の増加が三十万円、したがって限界実効税率は九・一である。それが全体の実効税率としては従来二・八であったものが三・三にふえるということを意味するわけでございます。したがって、限界実効税率としても、それから負担が増加した後の実効税率としても、国際的に見ましてもまだがまんしていただける水準ではないかということを申し上げておるわけでございます。弾性値で申しますと、やはり現在のような所得税のシステムの宿命としまして所得の低い方ほど弾性値は高くあらわれる、これはどうしても避けられないと思います。
  164. 坂口力

    ○坂口委員 いまおっしゃったことはわからないわけじゃございませんが、その皆さん方のおっしゃる数字がなかなかがまんできるほどのものではないということをこちらは申し上げておるわけです。皆さんのおっしゃっておみえになる中に、景気回復と絡めて、減税した分が貯蓄に回るということがかなり出ております。昭和五十年の五月から八月までの家計収支を見てみますと、可処分所得の方が平均でございますが二十二万七千円、消費支出の方が十六万六千円で、所得の大体七三%が消費されていることになっております。これは減税の消費拡大効果を考える上で減税による所得増大分がどれだけ消費増大を引き起こすかということだと思います。平均消費性向で見るのと限界消費性向で見るのと大分これはやはり違ってまいります。先ほど皆さん方の見方と私の見方とが若干違ったように、これもかなり違ってくると思う。限界消費性向で見ますると、かなり数字が違ってきますし、それに対する意味づけも大分違ってくるように思うわけです。昭和四十九年の五月から八月と昭和五十年の五月から八月とを比較いたしてみますと、四十九年に比べて五十年は月平均で可処分所得の方が二万七千円ふえ、消費の方は二万三千円ふえておりますので、限界消費性向は八四%ということになります。所得がふえればそれの八割以上が消費に回っているとこう考えざるを得ないのですが、皆さんがおっしゃる減税をするとそれが全部貯蓄の方に回ってしまって消費が上がってくることには余り影響を与えにくいというこのお考えの根拠というのは、この数字から見ると少し間違っているのではないか、こう思いますが、この辺はどうでしょうか。
  165. 大倉眞隆

    大倉政府委員 減税がそのままそっくり貯蓄に回ってしまうであろうとまで極端な議論は出ておらないのだろうと思います。ただ、まさしくおっしゃいましたように、その限界貯蓄性向あるいは平均貯蓄性向を見ました場合に、日本は、いろんな事情がございましょうけれども、数字的に並べれば、たとえばアメリカとかECに比べるといずれも高いので、したがって減税による景気刺激効果というものが相対的にそれだけ低いということを主張しておられるわけだと思います。したがって、公共投資の持つ景気刺激効果とどちらがより大きいかといって比べる場合に、やはりいまの日本の状況では公共投資の方が同じ財源を使えばより刺激効果が大きいであろうという、この点はほぼ異論がないようでございます。全部貯蓄に回るというのはちょっとこれはオーバーな言い方だと思います。
  166. 坂口力

    ○坂口委員 公共支出の方が乗数効果というものが大きいという考え方だろうと思いますが、これは減税による場合の限界消費性向等を見ますと、これと比較をしましても、公共支出の場合には乗数効果は非常に大きいけれども減税の場合にはこれはそう大きくないのだということはないので、やはり減税の場合の乗数効果というものもこれは決して小さくはないと思うのです。たとえば限界消費性向を先ほどの八四%だといたしますと、これで六・三になりますから、仮に一兆二千億円減税をやったということになりますと、一兆円最初に消費がふえれば、六・三になりますが、六兆円以上の需要が乗数効果としては生まれてくるということになるはずです。これは、私の計算が違っていなければそうなるはずであります。乗数の出し方にもよると思いますが、後でひとつ御検討をいただきたいと思います。これは、公共支出の場合だけが乗数効果が大きくて、減税の場合が小さいということではない。このことは、また大臣がお見えになりましたときにお聞きするとしまして、これをやっておりますともう全然時間がなくなってしまいますので、あともう少し小さな問題をお聞きしたいと思います。  一つはみなし法人の問題でございます。みなし法人の場合に、中小企業が実際にこれを選択しようと思いますときに、選択したいという人はかなり多いわけでありますけれども、実際の数字は存外に少ない。その理由として、御承知のように、前年十二月三十一日までに届け出なければならないということ。前年中にことしの事業主報酬を決定することが非常に困難であるために、たとえばこれをその年の三月十五日までというふうに改善されるならば、みなし法人を選択する企業というのはかなりふえるのではないか。     〔森(美)委員長代理退席、委員長着席〕 実際問題といたしまして、中小企業等でもこのことに一番大きなひっかかりを持っているようであります。この辺について今後御検討していただくことが話題に上っていないかどうか、上っていないとしても、今後この辺のところの検討の余地がないものかどうかということでございますが、いかがなものでしょう。
  167. 大倉眞隆

    大倉政府委員 お答えいたします前に、先ほどの御質問の最後の部分でございますが、企画庁にも聞いてみましたのですが、乗数効果をぴしっとしたものを出すのはなかなかむずかしいそうでございます。ただ、ごく一般的に言われておりますのは、現在のような状況のもとでは、公共投資による場合の乗数効果は二から二を若干上回る程度ではなかろうか、それから減税の場合には一・五とか一・六とかそういうものではなかろうかということを言う人が多うございますので、御参考までにちょっと申し上げておきます。  ただいまのみなし法人課税の問題でございますが、これは御承知のとおり、個人企業の所得計算を合理化したいというお話がバックでございまして、この制度によって税負担を下げるということが必ずしも本旨ではないということを、提唱者でございます青色申告会自身が非常に強調しているわけでございます。青色申告会のよく使います言葉で申せば、いわゆる奥と店とをちゃんと区分して、そして自分の所得をはっきり自分でもわかるようにするということにスタートがある。そうであるといたしますと、税で受けとめるのには非常にいろいろな難点があったわけでございますが、五年間の時限措置としてこれを受けとめた。したがって、暦年課税でございますから、次の課税年度が始まるまでにそういう課税のシステムを選択していただきたいということで、現在前年末までということにいたしてございます。なるほど、納税者側の実感から申せば、たとえば三月十五日に五十年分の所得を申告してみた、そうしたらこんなかっこうになっているから、ひとつ五十一年分はみなし法人の方でやってみようかというふうにお考えになる方もかなりあるのかもしれません。ただ、やはり制度の裏にあります考え方からいたしますと、それは所得がどうなったからこっちへ行きたいとか、所得がこうなったらまた元に戻りたいということでは本当はないはずの制度でございまして、やはり自分は奥と店とをこう仕切ります。したがって税法上はかなり無理ではあるけれども、自分で自分にこれだけ月給を払います。そういうものとして経理をしますという話でございますから、やはり現状におきましては、課税年度が始まる前にそういうことの判断をしていただきたいと私は思います。思いますが、御指摘のように、何人ぐらいが選択しておられるかという意味では、まだまだ選択の数が少のうございます。五年間の時限措置でもございますから、もう少し、どの程度選択されるか、本当にどこに問題が出てくるかということを見させていただきたい、期限が参りますまでに私どもとしても勉強をいたしてみたい、そのように考えます。
  168. 坂口力

    ○坂口委員 ちょっと前後いたしますが、先ほどの乗数の問題を、私は一マイナス限界消費性向分の一という値を使っておりますので、その辺もひとつ御検討いただきたいと思います。  それから、いまのみなし課税の問題でございますが、いい面があることは私もよくわかるわけであります。先ほども申しましたように、前年の十二月三十一日までにきちっとしなければならないというところに、小零細企業の場合にはなかなかうまくやりにくい面が現実的には存在するということなんだろうと思います。ひとつ御検討をいただきたいと思います。  それからもう一つ、みなし法人課税の場合には、みなし法人選択者の妻が専従者給与届を出せば賞与が経費算入できることになっているのだそうです。これが、資本金が一千万円以下の法人の場合で、いわゆる代表取締役というような名前に奥さんがなっていて、しかもその奥さんがいわゆる一人の労働者であって、実質的に経営に参与していない場合、賞与の損金参入をやはり認めてもらうべきだ、こういう意見が来ているわけです。ちょっと話がややこしゅうございまして、非常に細かな問題でございますけれども、実はこういう問題も案外に数多くみなし法人に関しましては寄せられておりますので、これをあわせて検討をしていただきたい。いますぐ御答弁いただかなくても結構でございます。いま私が申し上げたことが御理解できないようでございましたら、また後ほど改めて申し上げますので、検討できるものならばひとつ御検討をいただきたいと思います。
  169. 大倉眞隆

    大倉政府委員 問題は、みなし法人に限りませず、いわゆる中小法人、同族法人についてもある問題でございますが、結局役員賞与というものは損金として認めるのではなくて、それは利益処分であるということから問題が発生いたします。役員であっても、従業員としての地位を持ち、従業員として働いておれば、従業員に対応する部分は、それは一般従業員と同じように賞与として損金に考えるというところからスタートしておりまするので、専従者という場合には、これはまさしくそこで働いておられるからこそ専従者でございまして、働いていない専従者というのはあってはいけないわけでございます。したがって、専従者の方が家族専従者でない一般の従業員とほぼ同じ程度の賞与をとられる場合には、それは必要経費なり損金として考える余地はございますが、全く従業員としての立場をお持ちになっていない方は、それは法人の場合の役員賞与と同じでございまして、それを損金なり、必要経費にするという考え方は出てこないと、そのように私思いますが……。(坂口委員「いや、従業員ではある」と呼ぶ)ですから、従業員としてお働きになっておる、従業員並みの賞与の分、それは損金なり必要経費になり得る部分。従業員並みを超えている分、あるいは従業員として全く働いておられないで賞与を受け取られる分、それはまさしく利益処分であると、そのように構成することになっておりますので……。なお実態に即しまして勉強いたしますが、現在の考え方はそういうことでございます。
  170. 坂口力

    ○坂口委員 ひとつこれは御検討いただきたいと思います。  それから、時間がございませんのでもう一問で終わりますが、これは皆さん方の方に通告してございませんが、二年ほど前に私、実は予算委員会でやらせていただいたものがございます。それは、身体障害者等をお雇いいただく企業に対する優遇の問題でございますけれども、その当時福田副総理大蔵大臣でございましたが、ことし一年経緯を見て考えようというようなことを答弁をいただいたように記憶をしておるわけですが、一昨年からの非常な景気の落ち込みの中で、ややもいたしますと身体障害者等はかなり就職先を狭められてきておりますし、また企業の方も、こういうときでありますから、できるだけ雇わない方向に向いてきているところが多いわけです。中には、三〇%あるいは五〇%近くも障害者の皆さんをお雇いになっているところもあるわけでありまして、私もそういう企業に二、三お邪魔をいたしましていろいろお聞きをしましたけれども、特に障害者の中でも重症の方を五〇%近くもお雇いになっている電機の下請等の会社もあるわけでありまして、そこでもいろいろお聞きをしてみますると、それだけのパーセントの障害者を雇っておみえになりますと、当然のことながらやはりかなり会社の負担になっているわけであります。なおかつそこを、社会的な責任というものも考えて、その経営者は一生懸命やっておみえになるわけですけれども、そこには何ら優遇措置はないわけであります。私の記憶にあります限りにおきましては、減価償却を普通とは少し余計見る。余計見ると申しますか、違いを持たせているということだけであろうと私いまちょっと記憶しているわけであります。これはパーセントにもよりますが、全体の中で身体障害者をかなりたくさん、しかも重度の人をたくさん雇っていただけるような企業に対しては、やはりそれなりの税制上の問題も何らか事をなすべきではないかと私考えている者の一人でありますけれども、この辺について、これも皆さんの方に申し出していない問題でございますけれども、いま皆さん方の手元に何かありましたら、あるいはまた現在検討されていることがございましたら、ひとつお答えいただきたいと思います。
  171. 大倉眞隆

    大倉政府委員 身体障害者の方の雇用をできるだけ促進したいということで、労働省からいろいろな要望が出されておりまして、私ども政策として取り上げることにやぶさかでないという気持ちでございますが、ただ、具体的にそれではどういう政策手段があるかということを考えますと、やはり税よりも補助金の方にはるかによくなじむ性格の問題であるように思います。したがいまし七、税で受けとめるとしますと、まあ税のシステムでどう受けとめたらよろしいかということで議論をいたしました結果、やはり障害者をたくさんお雇いになればそれなりに、普通の方を雇っておられる場合に比べて、特殊の設備も要るかもしれませんということに手がかりを求めまして、おっしゃいましたような割り増し償却という制度で税の方では受けとめるということにさせていただきました。  今回、特別償却、割り増し償却は、御承知のとおり、それぞれ率の縮減をいたしております。身体障害者を雇用される場合の割り増し償却も、率としてやはり一応縮減の対象にさせていただきましたが、同時にしかし、おっしゃるような政策目的を十分尊重するという趣旨からは、従来は総従業員の中で三〇%以上障害者を雇用しておられる企業だけを対象にしておりましたが、今回はこれを二〇%以上ということにつまり条件を緩和いたしまして、何とか二〇%以上雇ってくだされば割り増し償却がございますからという方に、むしろその意味では租税特別措置の適用を拡充するということもあわせてやらせていただいております。  なかなか税で受けとめる場合のシステムというのはむずかしゅうございますが、今後とも何か税としてそれなりに他の方々に説明できる、なるほどなと思っていただけるような仕組みがございますれば、私どもも研究するにやぶさかではございません。
  172. 坂口力

    ○坂口委員 障害者の中にはいろいろ種類もございますし、身体障害者の場合とあるいはまた精神的なものをお持ちの方と、いろいろこれは違うと思いますけれども、しかしいずれにいたしましても、障害者の方を三〇%なり——いま二〇%という数字が出ましたが、二〇%以上にしましてもお雇いいただくということは大変なことであることには変わりがないと思いますし、それで労働省の方も、その初年度についてはいまおっしゃったような政策考えられているわけですね。ところが、初年度限りでございますし、長く続けてそういう障害者の人をお雇いいただくということになれば、これはどうしてもその後は会社のボランティア精神にすべて頼っていくということになる。そういう心意気でおやりいただくということについて、そのボランティア精神に頼るということも私、否定するものではございませんけれども、しかし、全部そのボランティア精神におすがりしていいものであろうか、これはやはり国としてもひとつ積極的な政策を打ち出すべきでないだろうか、こう実は考えるわけであります。欲を言えば、ことしの予算においてぜひと言いたいところでありますが、万歩譲りまして、来年度の予算にはどうしてもこの辺のところの改善をして、一歩でも二歩でも前進をさせてもらいたいと思うのです。このことをお願いしまして私、終わりにしたいと思います。  何か言っていただくことがございましたら、ひとつつけ加えていただきたいと思います。
  173. 大倉眞隆

    大倉政府委員 先ほど申し上げましたように、税としての受けざらは非常につくりにくいので、まあ、一生懸命考えていまの割り増し償却——割り増し償却というのは初年度だけではございませんが、という制度にいたしました。やはり歳出でカバーした方がカバーしやすい政策であるというふうに依然として考えます。同時に、労働省の方である程度の率をどうしても超えてほしいし、その率に達していない企業は公表するとかいろいろなこともお考えになっているようでございます。ただいまの御指摘の御趣旨は主計局に、努力するように私からも十分よく伝えておきます。
  174. 田中敬

    田中委員長 引き続き理事会を開会することとし、この際、暫時休憩いたします。     午後五時十分休憩      ————◇—————     〔休憩後は会議を開くに至らなかった〕