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1976-08-24 第77回国会 衆議院 商工委員会 第18号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十一年八月二十四日(火曜日)     午前十時三十一分開議  出席委員    委員長 稻村左近四郎君    理事 橋口  隆君 理事 前田治一郎君    理事 武藤 嘉文君 理事 安田 貴六君    理事 渡部 恒三君 理事 上坂  昇君    理事 佐野  進君       島村 一郎君    田中 榮一君       羽田野忠文君    八田 貞義君       板川 正吾君    岡田 哲児君       加藤 清二君    勝澤 芳雄君       竹村 幸雄君    中村 重光君       野間 友一君    近江巳記夫君       松尾 信人君    玉置 一徳君  出席国務大臣         通商産業大臣  河本 敏夫君  委員外出席者         公正取引委員会         委員長     澤田  悌君         公正取引委員会         事務局経済部長 吉野 秀雄君         経済企画庁調整         局長      青木 慎三君         経済企画庁物価         局長      喜多村治雄君         通商産業政務次         官       綿貫 民輔君         通商産業省貿易         局長      森山 信吾君         通商産業省産業         政策局長    濃野  滋君         通商産業省基礎         産業局長    天谷 直弘君         通商産業省機械         情報産業局次長 井川  博君         通商産業省生活         産業局長    藤原 一郎君         資源エネルギー         庁長官     橋本 利一君         資源エネルギー         庁石油部長   古田 徳昌君         資源エネルギー         庁公益事業部長 服部 典徳君         中小企業庁長官 岸田 文武君         労働省労働基準         局労災管理課長 田中 清定君         労働省労働基準         局安全衛生部労         働衛生課長   宮野 美宏君         商工委員会調査         室長      藤沼 六郎君     ————————————— 委員の異動 八月二十四日  辞任         補欠選任   深谷 隆司君     島村 一郎君 同日  辞任         補欠選任   島村 一郎君     深谷 隆司君     ————————————— 本日の会議に付した案件  通商産業基本施策に関する件  中小企業に関する件  資源エネルギーに関する件  経済計画及び総合調整に関する件  私的独占禁止及び公正取引に関する件      ————◇—————
  2. 稻村佐近四郎

    ○稻村委員長 これより会議を開きます。  通商産業基本施策に関する件、中小企業に関する件、資源エネルギーに関する件、経済計画及び総合調整に関する件並びに私的独占禁止及び公正取引に関する件について調査を進めます。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。板川正吾君。
  3. 板川正吾

    板川委員 それでは、電力問題でまず二点ほど伺ってまいりたいと思います。また、大臣が来ましたら、政局問題についても質問したいと思います。  電力の後発四社の値上げが今回発表をされた。その値上げの結果を見ますと、新聞等でもしばしば報道されておりますように、世界第一の高い料金になった、こう言われておるわけでありますが、これを比較してみますと、四十九年、一昨年値上げしたときに主要国キロワットアワー当たり単価を見ますと、円換算にしましてイギリスが九円九十八銭、フランスが八円九十八銭、西ドイツが十一円二十九銭、アメリカが七円八銭、日本が十円六十二銭、こういうことになっておりますから、西ドイツに次いで日本主要国の中で二番目に電力料金が高かったわけであります。  ところが、それが二割から三割近く値上げしたということになりますと、いまや世界一高い電気料金値上げということになるわけでありますが、御承知のように、日本電力会社は九電力に分かれて私企業形態をとっておるわけであります。私企業の場合には能率がいい、これがいわば私企業体系を支持する人々の最大理由であります。能率のいいはずの日本私企業電力会社が、フランス西ドイツイギリス、ほとんど公営国営かになっておるのでありますが、そういう国に比較して電力料金が高いというのは、一体どこにその理由があるのか、これをひとつ明らかにしていただきたいと思います。
  4. 橋本利一

    橋本説明員 ただいま御指摘のとおり、今回の電力料金の改定によりまして日本電力料金西ドイツに続いて二番目に高い結果になったということは事実でございますが、私たちといたしましては、原価主義に基づきまして厳密に査定した結果であるわけでございます。  ただ、ここで一つ問題がございますのは、日本の場合は火力発電の比率が全発電能力の約七割になっておるわけでございます。しかも、その燃料のほとんどは輸入の石油に依存しておる。これに対しまして、たとえばイギリスあるいはドイツ等の場合、石炭にまだ多く依存しておる、あるいは天然ガスといった石油以外の国産エネルギーに依存しておるというところが、わが国と他の諸国と比較いたしまして結果として日本側電気料金ドイツに続いて二番目に高いものになったということの大きな原因になっておるのではなかろうかと思います。  それから二つ目の、外国で公営あるいは国営でやっておるが、日本私企業であって必ずしも能率的ではないのじゃないかという御指摘でございますが、事実、イギリスあるいはイタリア等におきまして公営でやっておりますが、こういった国におきましては、財政負担と申しますか、いわゆる電気料金に振りかかる部分の一部を国で負担しておるといったような実情もございまして、そういった点では国家間の経済に対する対処の仕方の差が影響しておるのではなかろうか、かように考えておるわけでございます。
  5. 板川正吾

    板川委員 それでは、そうした主要国電気料金コストを精密に分析をして、日本電気料金がなぜ世界一高いかというその根拠を、資料をもって後日提出をしてもらいたいと思いますが、できますか、エネルギー庁長官
  6. 橋本利一

    橋本説明員 ただいま手元にございませんので、作成いたしまして提出するようにいたしたいと思います。
  7. 板川正吾

    板川委員 今回の電力料金値上げ寄与率というのを見ますと、資本費最大で四〇%、燃料費が三〇%と言われておるのでありますが、この九電力体制、現在もう一つ電発を入れると十電力体制ということになったのかと思いますが、広域運営を強化していこうという方針のようであり、広域運営というのが若干であるが能率を上げつつある、前進しつつあるということはわれわれも認めますが、広域運営原則というのは、責任は九電力各個企業でやるのだ、その範囲相互利益ならばということで広域運営がされておるわけですね。そういう広域運営の現在の原則というのでは、私は、これからの電力を開発していく上において資本費をもっと抑えるためには十分じゃない、だから、これは共同発電会社なり共同発電公社なりを考えて、そしてここに国の資本を投下することにして電力料金割り安にするという考え方をとるべきではないだろうか、こう思いますが、エネルギー庁長官としてはどう考えますか。
  8. 橋本利一

    橋本説明員 増加していく需要に即応するための安定供給の確保、あるいは保安対策環境対策といったようなことで資本費が増高してまいる、特に建設単価も上昇しておる、まさに御指摘のとおりであります。したがって、われわれも、今後の電力開発を進める場合の消費あり方等十分検討する必要があるかと思います。ただ、その場合に、発電を一元化するという思い切ったところまでいってしまうのがいいのか、それとも現在の九社と申しますか、十社体制前提といたしまして、その相互間に共同開発を進めていくのがいいのか、現在の体制前提といたしまして共同開発を進めていくということは従来もやっておりましたし、今後一層これを強化していく必要があるかと思いますが、そういった形で現在の九電力あるいは十電力体制というものを前提といたしまして広域運営を図るとともに、さらに一層共同開発方向努力してまいりたいと考えております。
  9. 板川正吾

    板川委員 共同開発をお互いに提携してやっていこうというのは、現在の広域運営の枠を広げた範囲なんですね。私が言うのは、その現在の法律に基づく広域運営の枠を越えた新しい体制といいますか、そういうものに踏み切っていくべき時期に来ているのじゃないだろうか、この辺をエネルギー庁としては検討すべき時期に来ているのじゃないかということを私は主張しているわけです。  現在、共同開発を一、二の東北電力東京電力でやるとか、それはやっているところがあります。しかし、それだけでなくてもっと総合的な共同開発を進めるためには、新しい共同開発会社なりあるいは公社なりというものに持っていくべきじゃないか、こう言っているわけでありまして、いまの一、二の会社が提携して共同開発をやっているからそれでいいというのでは不十分じゃないかというのが私の主張なんですが、いかがですか。
  10. 橋本利一

    橋本説明員 御指摘でございますので、私たち検討課題として引き続いて考えてみたいと思います。
  11. 板川正吾

    板川委員 それから、電力問題でもう一点伺いたいのですが、最近の新聞にも実は出ておったのでありますが、総評が四十九年八月に、電力料金値上げについて東京電力通産省に対して訴訟を提起しておったわけであります。総評を含む二十単産の地評が四十九年八月二十日に、通産省東京電力を相手に電気供給規程変更認可処分の取り消しを求める訴訟を提起しておって、すでに十回も公判が開かれたと聞いておるのですが、これが今回、和解が成立しつつある、こういう報道がございます。この和解条件というものについて若干伺ってみたいと思います。  一つは、電気事業審議会メンバーについて伺いたいのでありますが、現在電気事業審議会メンバーは二十人、実際に任命されているのは十八人。その十八人のメンバーを見ますと、学識経験者等、いわば企業に理解を持つ経営者というものが大半であります。あとは関西の婦人代表と称する者が消費者代表という形になっておるのでありまして、電気事業の重要な政策について諮問を受けて審議したり建白したりするという重要な審議会に、もっと消費者利益を十分主張できる消費者代表というものを加えることの方が、これからの電気事業行政を進める上において私はプラスになると思うのであります。幸いこの八月で審議会メンバー任期満了になると言われておるのでありますが、真に消費者意見代表できるようなメンバーを加えて強化すべきではないか、こう思いますが、この点に対して通産省はどういう見解をお持ちでありますか。
  12. 橋本利一

    橋本説明員 ただいま先生指摘行政訴訟に関連しての和解条件といったような意味合いではございませんが、御指摘のとおり電気事業審議会委員がことしの八月下旬に任期満了いたしますので、今後どのように委員構成を持っていくかということを検討いたしたいと思っております。
  13. 板川正吾

    板川委員 どのようにやっていくかを今後検討したいというのは、どういう意味ですか。いままでの構成というのは、これは通産省には都合がいいですよ、学識経験者といって、大体話の通る人をやっており、あと経営者代表で、消費者代表といったって、余りはっきりしない人なんだから。これから電気事業が一番問題なのは、安全の問題だとか、あるいは公害の問題だとか、料金値上げの問題だとかいうことになる場合に、電気事業審議会というところでもっと消費者意見がくみ上げられるようなメンバーを考慮して検討すべきじゃないだろうか、こう言っているのであって、いまの返事はそういう意味なんですか、よくわかりません。
  14. 橋本利一

    橋本説明員 先生指摘の御趣旨を踏まえて検討する、こういう意味でございます。
  15. 板川正吾

    板川委員 わかりました。それはぜひひとつ検討をして実現をしてもらいたいと思うのです。そうでなければ、電気事業はこれからますますトラブルが多くなるのじゃないか、こう思います。  第二点は、公聴会あり方を私は改善する必要があると思うのです。  電気事業は、御承知のように国鉄と違いまして、国鉄の場合には他に代替する機関があるわけですが、電力には代替する機関がない。完全な独占体制であります。ですから、国鉄の運賃の場合には、いやなら車で行くなりあるいは他の交通機関で行くなりという方法があるのですが、電力はそういうように避けることが不可能なんです。ですから、通産省がこの値上げなり電気事業あり方なりを問う場合に、決定されることは同時に強制をされることになるわけです。ですから、消費者、いわば納税者といいますか、電気料金を上げられる場合に、それを納める人たち立場というものをもっと組み込めるような公聴会運営意見をくみ上げられるような公聴会運営改善していくべきじゃないだろうかと私は思います。  いまの公聴会というのは、料金値上げをする場合には企業ごとに一ヵ所、九州電力なら福岡で一ヵ所、そして形式的に官報で告示して、文句の言いたい者は出てこい、言うだけ言ったらこっちはこっちで決めていくのだ、こういうようないわば官僚的、非民主的な公聴会じゃないだろうかと思います。ですから、たとえば九電力体制でいく場合に各県ごと公聴会を持つべきじゃないかという要望もありますし、また、公述人には事前申請概要を送るということも必要ではないだろうか。言いたい者が勝手に来て言え、こういうだけじゃいかぬのであります。  それから、公述人に対して旅費を支払う方法はないだろうか。たとえば福岡でやる場合に熊本や鹿児島の方から公述人が出てくるという場合、しかもそれが一泊をしながら公述をするという場合などあるわけでありまして、一定の旅費を支払ってもいいのじゃないだろうか。たとえば国会における参考人日当を支払っておりますが、旅費日当か、そういうものを支払ってもいいのじゃないだろうか。  また、日程発言者の数をふやすべきじゃないだろうか。それから、査定が決定した場合には公述者に少なくともこういうふうに決まりましたということを報告する義務があっていいのではないだろうか。たとえば通産省にいろいろ苦情の処理を申し込んできた場合には、通産省はそれを処理して報告するということになっておるわけでありますから、少なくとも公述者には、こういう理由でこう決定されましたということを報告する義務通産省にあっていいのじゃないだろうか。  それから、民間公聴会などがあった場合に、できるだけ通産省担当者を出席させるようにしてほしい、こういう幾つかの要望がございますが、いずれにしましても、いままでの公聴会というのは本当に形式的、官僚的、非民主的であるのじゃないだろうか。もっと公述人、いわば料金値上げならば納税者立場、高い料金の支払いを強制される人の立場というのを考えて、もっと実のある公聴会あり方にすべきではないだろうか、こう思いますが、いかが考えておられますか。
  16. 橋本利一

    橋本説明員 公聴会あり方につきましてはその都度検討して改善をいたしておりますが、今後ともさらに改善のための努力ないしは検討を続けてまいりたいと思います。  ただ、ただいま御指摘の各府県ごと公聴会を開催するということは、通産省管理能力等からいたしまして非常にむずかしい、事実不可能に近いと思いますし、日程増加等につきましてもかなりむずかしい問題があるかと思いますが、公述人に対しまして事前申請概要をお知らせする、あるいは査定結果をその認可概要という形でお送りするというようなことは、今後とも努力いたしたいと思います。  それから、出席旅費支給等につきまして御指摘でございますが、なかなか制度的にむずかしい問題ではございますが、今後の課題として検討してまいりたいと思います。  それから、いわゆる民間公聴会に対しましては、要請のある場合には支障のない限り通産局職員を出席させるようにいたしたい、かように考えております。
  17. 板川正吾

    板川委員 次に、石油問題で一、二伺っておきたいと思います。  石油開発公団事業資金の中に百億円の再編成資金というものが予算に計上されておりますが、この石油産業構造改善事業として百億円という予算はその後どういうような使われ方をしておるのか、再編成構想というのはその後どういうような歩みをしておるのか、その点も予算とともに伺っておきたいと思います。
  18. 橋本利一

    橋本説明員 石油業における再編成につきましては、率直に申し上げまして遅々としてではありますが若干の動きがございます。一部の会社におきまして、たとえば交錯輸送を避けるための業務提携だとか、あるいは委託精製だとか、そういった動きが一部に出てまいっております。また、言われるところの元売りの集約と申しますか、あるいは民族系石油企業の再編成と申しますか、そういった点につきましても、一部ごくわずかではございますが、株の持ち合いをするとかいった動きも出ておることは事実でございます。  ただ、この再編成の問題というのは非常に重要かつ緊要ではありますが、かといって拙速をとうとぶべき性格のものでございませんので、まず民間における企業自決原則に基づきまして、それぞれの必要性に基づいてそれぞれ適当とする相手方を互いに探し求めると申しますか、そういった形でまず民間でどういった方向のまとまりを見せるかということをわれわれとしては注視いたしておりまして、その結果がわれわれとして方向として是認し得るものであるならば、先ほど御指摘石油開発公団で準備いたしております百億円の資金、あるいは開発銀行沖繩開発公庫等で準備いたしております資金等をもってこれを側面からバックアップしていきたい、こういう考え方であり、そういう状況でございます。
  19. 板川正吾

    板川委員 この百億円の申し込みは、いまのところ一銭もないわけですね。
  20. 橋本利一

    橋本説明員 ただいま申し上げたような事情でございますので、開発公団に対する申請は出ておりません。
  21. 板川正吾

    板川委員 再編成問題も正直のところ遅々として進んでいないと思うのです。通産省は少なくとも再編成を期待しておるわけでしょう。それでこういう金を用意したわけでしょう。だから、その再編成が実は遅々として進んでいない背景というのはどういうふうにお考えですか。
  22. 橋本利一

    橋本説明員 昨今、御承知のとおりいわゆる標準額がある程度関係業界の協力を得て実現してきておりますし、かたがた為替レート等関係からいたしましても、石油業界としてもここ二、三年来の窮境から脱しつつある状況であります。ただ、いままでの累積赤字を多額に抱えておるということでもありますが、少なくとも体制を促進するための環境は熟しつつある。また、われわれとしてもその時期の早いことを期待いたしておるわけでございますが、やはり過去におけるいろんな経緯あるいは会社相互間におけるいろんな関係というものもございまして、しかくさようにこういった問題というのは簡単にまいらない。俗な言葉で、私は、あばたあばたとして見れる段階までやはり十分検討した方がいいだろう、あばたをえくぼと見誤るような段階で急いで体制問題、再編成問題を考えるよりも、やはり慎重に、しかし結論が出たときには果断にその方向に進むというふうに指導していきたいと思っております。
  23. 板川正吾

    板川委員 私の聞いていることと若干違うのですが、私は、再編成を期待している、無理に押しつけるものじゃない、見当違いして、いいなと思ったら、後でまずいというのではぐあいが悪いという意味のことだろうと思うのですが、この再編成関係が少なくとも期待に沿わないで進まないという原因は、やはり円高にあるのじゃないですか。  円高による収益の好転といいますか、最近二百九十円、前回に標準価格を設定したときには三百二円です。もし年間通算して二百九十円ということになれば、少なくとも年間二千五、六百億円は原油の円高による利益になってくるのですね。十円円高になればキロリットル八百五十円の利益になるわけですから、三百二円から二百九十円ということになって、二百九十円で年間を通せばの話でありますが、少なくともそういう好転している条件が出てきた。二百九十円で為替円高によるこの二千五、六百億円の収益というものは、五十年十月に標準価格を設定したときの各社の累積赤字、累計二千三百億円を突破するような数字になるわけであります。ですから、結局円高がこの再編成構想を実は期待どおり進めていないのだという感じがするわけであります。  それはそれとして、いずれにしましても、この円高によって元売り体力がついてきつつあるわけでありますが、体力がついてくるならば、いよいよ需要期を迎える灯油値上げ等については、ひとつ十分に監視体制を強化して、値上げを抑制するような指導をすべきではないだろうかと思いますが、長官はどうお考えですか。
  24. 橋本利一

    橋本説明員 確かに円高あるいは値上げという問題が一部の企業に対して経営的にプラスになっている面もあろうかと思いますが、ただ、円高というものは一時的なものでございまして、中長期的にやはりこのレートというものは変動していくものであるという問題と、それから先ほど標準額が通ったと申しましたが、これは平均しての意味でございまして、多くの企業におきましては、まだなお採算割れ経営を続けておるというものが多うございます。これは別の言葉で申し上げますと、むしろこういう状態になってくればくるほど企業間格差が拡大しておるという現実も否定できないわけでございます。そういったところからいたしまして、石油安定供給、またそのための経営基盤の強化、いわゆる再編成のための基本的な必要性というものはいささかも変わっておらない、こういう認識に立っておりまして、そういった方向におきまして、業界における構造改善の進展を強く期待しておるということでございます。  それから、値上げの問題につきましては、われわれといたしましてもそのコストとの関連という問題を意識するわけでございますが、急激にむやみに値上げに踏み切るとか、あるいはいやしくも共同行為等によって値上げを図ろうとすることのないように、これは強く指導してまいりたいと思っております。
  25. 板川正吾

    板川委員 私が言いたいのは、再編成がなかなか進まない原因は、最近の業界円高による収益原因じゃないかということをお考えであるかどうかという点が一つ。それからもう一点は、もし年間を平均して二百九十円で落ちつくならば、少なくとも二千五、六百億円、円高による収益が予想よりふえる。もちろん、これはキロリットル当たり二千七百円値上げしているのですから、そういうふうにふえるのではないか。それで、為替レートは一時的と言っても、必ずしもこれから円安になるとは限らない。それは変動する性質を持っていることだけは事実だけれども、最近は日本は逆に余りにも円安にしているのではないかという批判さえ海外から受けているわけですから、どっちかというと強含みの方向にあるわけであります。そういったことを考えると、元売り業者が少なくとも昨年よりは相当いい条件を迎えつつあるということを考慮して、この秋から冬にかけて需要期を迎えた灯油値上げ等については、ひとつ前年のことも考えてなるべく安く抑制していくような努力をしてほしい、こういうことが言いたいことでありますから、御了承になったと思います。次に移ります。  次は、石油産業元売り業と言ってもいいのですが、これに対する企業間格差が拡大しつつある、こういうお話がいま長官からございました。その点について若干伺いたいと思っておるのですが、日本の一次エネルギーの四分の三が石油に依存していることは御承知のとおりであります。したがって、エネルギー政策の根本といえばやはり石油政策に尽きるわけです。この石油政策の中で、わが国は民族系の石油企業というものに一定のシェアを確保してもらおう、もちろん全部民族系で石油の供給を確保するということは不可能ですから、それは外国企業を排除するという意味ではありません。しかし、一定の割合のシェアを民族系に持たせようというのはわが国の石油政策の従来からの基本であった、こう思いますが、これは問題ないと思います。  そこで、そういう民族系の企業の健全な育成を図るという原則の上に立って考えたいのでありますが、たとえば各元売り精製会社の原油の得率というものを実は後で会社別に出してもらいたいと思いますが、とりあえずはガソリンの得率の一番高いのはどういう会社であるのか、そして最低の会社はどういう会社であるか、もう一つは、重油合計の得率の一番高い企業はどこか、最低の企業はどこか、これがわかったら説明してください。
  26. 橋本利一

    橋本説明員 会社別の製品得率については別途準備いたしたいと思いますが、ガソリン得率につきましては、その年によって、市況によりまして若干の差があるわけでございますが、まず最高のグループに入るのは、エッソ、モービルのグループだと思います。それから最低は……(板川委員「それはパーセンテージは幾らですか、一三%ですか」と呼ぶ)物によっては二〇%近いものもあろうかと思います。平均しまして……(板川委員「得率のパーセンテージを言ってください」と呼ぶ)平均で申し上げます。  いま最高としてエッソ、モービルグループを申し上げましたが、その中で最高のものは二一・六五%になっております。それから、最低のものはいわゆるコンビナートリファイナリーでございまして、この中にはガソリンの得率ゼロというものもございます。  それから、重油でございますが、これも年によって若干の差がございますが、最も多いのはやはりコンビナートリファイナリーでございます。重油の最高の率は、五十一年の上期、これは一部計画でございますが、五二・三六%でございます。それから、同じく五十一年上期での最低は二五・四七でございます。  それから、先ほど会社別の得率につきましては別途準備いたしたいとお答えしたわけでございますが、これは企業秘密との関係がございますので、最低、最高あるいは平均値といったような形で、会社名を出さずに準備させていただきたいと思います。
  27. 板川正吾

    板川委員 会社の名前を出さなくたってこれはわかるのですが、傾向は、外資系の企業はいわばガソリン、シロモノの得率が非常に高い、民族系のリファイナリーにはコンビナートが多いのですが、これはクロモノが多い、こういう傾向になっているのですね。ところが、シロモノの場合には利幅が非常に多い、クロモノの場合には利幅が少ない、こういう価格体系でもあるわけであります。そうしますと、民族系というのは常に限界企業的な存在で、この限界企業的な民族系を育成していこうという対策をとると、一番利益を受けるのはいまの制度の中では外資系だ、こういう形になるのですね。ですから、この得率と価格との関係の調整というのが私は石油政策課題として重要ではないだろうかと思うのですが、この点、どうお考えですか。
  28. 橋本利一

    橋本説明員 現在の価格体系におきまして、シロモノが高く、クロモノが安いということが外資系にプラスし、民族系にマイナスしているのではないかという御指摘でございますが、そういった事実も否定できないわけでございますが、特に民族系につきましては、その他の理由といたしまして、ガソリンを販売するにいたしましても、やはり従来の実績からいたしまして販売力がなかなか総体的に高まっていかないという問題、あるいはクロモノと申しますか、主として産業用の需要が停滞しておる、あるいは民族系におきましては精製設備が比較的新しいものが多くて、いわゆる資本償却費の負担が多くなっている、こういった点も、民族系が経営を悪化していると申しますか、外資系に比較して経営基盤が強くない主たる原因になっているのではなかろうかと思うわけでございます。  また一方、この石油の価格体系あるいは製品得率といったものは、それぞれの製品の汎用性なりあるいは精製の程度あるいは需給関係によって定まってくるものでございまして、また生産得率も、そういった価格体系あるいは自分の販売能力等を前提といたしましてそれぞれの得率を決めておる、こういうことでございますので、御趣旨ではございますが、その価格体系を改定して民族系の育成を図るということは現実問題としては問題もございますし、あるいは直接的にそういった点に政府が介入することはいかがかと思うわけでございます。むしろ、民族系育成の方向といたしましては、従来からとっておりますような対策を進めていくというのが本来の筋ではなかろうかと思うわけでございます。
  29. 板川正吾

    板川委員 私も、この問題をどういうふうに答えを出したらいいのかというのはいま持っているわけじゃないのだけれども、民族系育成の従来の政策を進めていけば、結局シロモノの多い外資系が非常に収益を上げていくという結果になる点があるものだから、この辺、何かひとつ工夫をして、お互い企業間の格差のあるものを格差のないようにする方法はないものか、検討に値する問題じゃないかと思うので、われわれも検討しますが、当局の方でもひとつ検討してもらいたい、こういうことであります。  大臣が来たら十分ほどいただくことにして、十分早く終わらせていただきます。
  30. 稻村佐近四郎

    ○稻村委員長 わかりました。  加藤清二君。
  31. 加藤清二

    ○加藤(清二)委員 お許しを得まして、電気料金の問題についてお尋ねしたいと存じます。  今度電気料金値上げ認可が行われたと聞いております。それから、これの実施が今月の終わりか来月の早々から行われると聞いております。その問の実態を正確に御報告願いたい。
  32. 服部典徳

    ○服部説明員 東京電力等四電力会社料金改定の日程の御質問だと思いますが、中国電力と四国電力は六月二十九日、それから東京電力と中部電力は七月二日に料金値上げ申請が出てまいったわけでございます。この申請を受けまして特別監査、公聴会等所定の手続を経まして、今月の二十日に認可を行いました。実施期日は八月三十一日ということでございます。
  33. 加藤清二

    ○加藤(清二)委員 今度の値上げ日本の電気料は世界の電気料金と比べて高い方ですか、安い方ですか。素朴なことを聞きます。国民大衆が聞きたいと願っているところを聞きますから。ドイツと比べてどうか、アメリカと比べてどうか、イギリスと比べてどうかということをまず伺います。
  34. 橋本利一

    橋本説明員 日本の場合でございますが、十五アンペアで使用量月間百二十キロワットアワーといたしまして、五社の単純平均をいたしまして約十七円ぐらいになります。これに対しまして、ドイツは同じレベルで約二十五円、アメリカが十五円、イギリスが十四円、フランスが約十七円、外国の五ヵ国を単純平均いたしまして十五円八十銭ぐらいに相なります。
  35. 加藤清二

    ○加藤(清二)委員 諸外国の先進国と比較して、日本電気料金はその平均よりもはるかに上回って最高値をいっている、かように認識してよろしいですか。
  36. 橋本利一

    橋本説明員 先進五ヵ国の平均値よりも高いわけでございます。
  37. 加藤清二

    ○加藤(清二)委員 このような値上げがどうして国会の休会中にそそくさとにわか仕込みで行われたかということについて、私は大変疑問を抱くものでございます。  その疑問の第一を公取委員長にお尋ねします。これは、きょうは総括でございますから総括的にお答え願えれば結構ですが、国民が聞きたいと思っているところをお尋ねします。第一番、民間値上げが行われた場合に、電気料金のように九電力が半年たつやたたずでこのように一斉に行ったとする、この場合にはだれが考えても独禁法違反であると思いますが、この電気料金の場合はどうなんですか。
  38. 澤田悌

    ○澤田説明員 御承知のように、電気事業につきましては、その事業の公益性にかんがみまして、電気事業法によりまして料金決定に当たっては通産大臣認可を要するということにされておるのでございまして、料金決定は公的にコントロールされておるということでございますが、同時に、電気事業はその事業の性質上当然独占的なものになる事業でございまして、独占禁止法第二十一条によりまして独禁法の適用が除外されておるような次第でございます。したがいまして、電気料金が通産大臣認可を得まして同時的に値上げされましても独禁法上の問題とはならない、こういう制度になっておる次第でございます。
  39. 加藤清二

    ○加藤(清二)委員 通産大臣ないしは当該関係大臣、行政最高責任者が許認可権を持っている、その問題については独禁法違反にならない、許認可権がある場合には独禁法違反にならない、この考え方はまだ定着していないですね。これは国会で何度も論議されたのですよ。あなたが公取委員長になる前に、何度も何度もここで論議されておるのです。これは宿題になっておるのです。きわめて短い期間に九電力値上げ幅を同じように足並みそろえて通産大臣に申し出る、通産大臣がこれを認めた場合には独禁法違反にならない、いまあなたはそうおっしゃったのですけれども、この学説か定説か、何によってお答えになったのですか。
  40. 澤田悌

    ○澤田説明員 ただいまの御指摘の点につきまして議論のあることは存じております。その場合に、独禁法のたてまえから考えまして、電力会社料金の変更について主務大臣申請をいたします前に共同していろいろと相談をするというような事実がございますれば、これは当然独禁法上好ましくないことでございます。しかし、主務大臣認可は個々の会社申請につきまして認可をいたしますので、その結果におきましては法律に基づいて認可をされることでございますから、個々の会社はその独自の状態、独自の原価計算において申請をするのが当然好ましい姿でございますけれども、結果におきましては独禁法の違反というふうにはならない、かように考えておる次第でございます。
  41. 加藤清二

    ○加藤(清二)委員 あなたは目下のところはそう答えておけばそれで事は足りるのですね。しかし、これは大変な論争の種になっている、言うなれば宿題になっているということでございます。したがって、この点は公取としてもよく御検討願いたい。  今度は通産大臣にお尋ねする。主務大臣の許認可を得れば、経済の基本法である、経済憲法である独禁法の除外例が適用される、これほど重要な案件なんです、電気料金値上げということは。それがどうしてこの九月上旬から一せめて実施は十月から、なろうことならば年末まで延ばしてもらいたいという公聴会意見が圧倒的であった。にもかかわりませず、休会中に、当該委員会の委員にも資料も出さずに、経過報告もせずに、どうしてにわか仕込みでそんなことをなさったのですか。国会軽視だよ。
  42. 橋本利一

    橋本説明員 結果として国会の休会中に認可いたしたわけでございますが、決してこれは意図的にやったものではございません。各社の申請書を受理いたしまして、私たちといたしましてはそれぞれの会社から事情聴取を行い、またあわせて特別監査を実施する、あるいは法律手続に従いまして公聴会を開催する、こういった所用の手続を経ながら、いわゆる原価主義に即しまして慎重に内容を査定した結果のものとして認可したものでございます。
  43. 加藤清二

    ○加藤(清二)委員 所定の手続が形骸化しているということは、公聴会関係で各新聞もラジオもテレビも一斉に指摘しておるところなんです。いつの場合も電気料金値上げは必ず休会中と決まっておる。だから、新聞は食い逃げだと言うのです。  所定の手続を踏んだとおっしゃるけれども、では承ります。踏んでなかったらどうしますか。わが党は本件に関して六月七日、続いて七月二十二日、通産大臣初め時のエネルギー庁長官に申し入れがしてある。それについて大臣は、よくわかったから趣旨に沿って善処すると言われた。その書類はいま私がここに持っておる。わが党の申し入れと同時に、これは全国の消費者団体や電力を使う労働組合の代表おのおの二十数名が大臣と二時間以上にわたって論議した問題なんだ。それについて書類のお答えもない。     〔委員長退席、武藤(嘉)委員長代理着席〕 また、右代表でお伺いした私に対しても何ら返事はない。これは一体どういうことなんだ。
  44. 橋本利一

    橋本説明員 いろいろと御意見を承った事項につきまして、可能な限り今回の査定の中に織り込んでいったつもりでございます。たとえば、国会において御指摘のありました、着工時点あるいは着工時期が不明確ないわゆる符号地点につきましては原価に算入しないようにということにつきましては、その意を体しまして、工事量にいたしまして約千百三十一億円の工事量を査定いたしております。これは事業報酬に換算いたしますと約五十億円になるわけでございます。また、修繕費につきましても、実績を勘案いたしまして厳しく査定いたしております。  一方、公聴会につきましてもいろいろ御意見をいただいたわけでございますが、その意見の中で今回の査定に反映いたしました事項を例示的に申し上げますと、原価につて厳正査定を行うということは当然でございますが、たとえば生活保護世帯、社会福祉施設等に対しまして五十一年度いっぱいは旧料金に据え置くとか、あるいは学校、病院等の公共用の電力需要に対しましては、基準電力量を一〇%加算する等の特別措置を講じてきておるわけでございます。  御指摘の点に対しまして文書でお答えしたということではございませんが、査定の過程におきまして、われわれとしては可能なものについてはできるだけ取り入れたということでございます。
  45. 加藤清二

    ○加藤(清二)委員 六月七日には九項目、七月二十二日には四項目、書面をもって申し入れてございます。そのうちの一項目を読んでみますと、「公聴会を各県ごとに開催し、広く利用者の意見をきくとともに、認可に際しては意見をどのように取り入れたか具体的に文書で明らかにすること」、はい、わかりました、こういう答弁なんです。実行に移しますということです。いまだに届いていない。
  46. 橋本利一

    橋本説明員 ただいま御指摘の事項につきましては、今後そういった方向で、文書によるかどうかは別といたしまして、今回の査定に取り入れた事項等について、近日に関係の方に申し上げるようにいたしたいと思います。
  47. 加藤清二

    ○加藤(清二)委員 いつ出されるつもりですか。  もう一つ、重ねて申し上げますが、さきの小委員会のその前の本委員会において、私はこの申し入れ事項に沿って質問をしたのです。その折に、重油の値段が高過ぎる、うそが多い、大体重油の値段を三万五千円に見積もっておるなんというのは世界じゅうどこを探したってないのだ、一体そんなばかな値段を要求してきている会社がありとするならば、その電気会社の名前と、その電気会社が三万五千円で購入している購入先の会社をはっきり証票書類をつけて御提出願いたいと言っておいた。認可になる前にそれは手に届かなくて、いつ届いたかというと、けさ私のところへ届いておる。証票書類はつけてない。  かくのごとく、本委員会で論議をし、承知したことすらも実行に移さない。いわんや公聴会は聞いて聞きっ放し。だから、公聴会は隠れみのだと言われておる。さればこそ、先ほどの同僚委員公聴会あり方について再検討を要するという発言までが出てくるわけなんです。具体的に文書で「認可に際して」とちゃんとつけてある。一体いつ出されるつもりです。できなきゃできぬと言ってください。
  48. 橋本利一

    橋本説明員 文書によって提出するかどうかは別といたしまして、一両日中と申しますか、できるだけ早い機会に御説明に上がりたいと思います。
  49. 加藤清二

    ○加藤(清二)委員 もう一点ある。「政府は、電気事業の経理内容、事業方針等について公開させるうえで、その範囲および基準を明確にすること」、はい、これも承知しましたという答弁だった。それが何ら行われていない。値上げだけが先行しておる。余りにも本委員会並びに公聴会を無視した独走が続いておる。独禁法の除外例の主務大臣の許認可権というものが、民意を反映せずに、約束を不履行で、一方通行でどんどん走っていくというスタイルは、これは国民一般としては承知のならぬところなんです。一体この始末をどうするつもりですか。
  50. 綿貫民輔

    ○綿貫説明員 大臣にいろいろと御要望を出されまして、わかった、それをやらないというような受け取り方をされておるようでございますが、私、大臣にかわって御陳情を受けたこともございますが、皆様方、値上げは反対、私どももその趣旨はよくわかるわけでございますが、行政としても何もまげてやろうという気持ちは持っておりません。あくまでも正確に実態を把握してやっておるつもりでございまして、ただいま御意見のございましたような、公聴会あり方でその意見が反映されていないとか、公聴会あり方を反省しろとか、そういうことについては私どもは十分耳を傾けたいと思いますが、いままで公聴会を開いたりいろいろ正しくやろうとしておる姿勢に対しても、それはもうなっておらぬと、基本的に行政に対する不信を持っていただきますと、私どもも非常に困ると思うわけでございます。  私どもの通産省は、電力値上げによって困る業種、業態、こういうものをたくさん抱えておる役所でございまして、好んでこういうものを上げたいというようなことは私ども考えていないところでございます。そういうことでございまして、恐らく大臣の御発言は、政治的に値上げ反対という趣旨はよくわかる、その趣旨もよく踏まえてなるべく上げ幅を少なくしたい、こういうことであったと私は理解しております。  加藤先生に対しまして、いろいろと事前に詳細の御説明が足りなかったことについてはおわびを申し上げますが、通産省の行政の、ひとつまじめな姿勢で取り組んでいこうということだけはお認めをいただきたいと考えております。
  51. 加藤清二

    ○加藤(清二)委員 私は、上げ幅がどうの、まじめだの不まじめだのということを言っていない。約束不履行は困るということを言っておる。約束したことは実行に移してもらいたいと言っておる。私どもが申し入れをした、その時点においてできなければできぬと言ってもらえば、その理由を尋ねて引き下がる。何も通産大臣の許認可権まで否定して物を言っているのじゃない。肯定の上に立って物を言っておる。約束不履行は間違いであると言っておる。  それほど実態をあなたがよく把握して事を進めておるとおっしゃるならば、ひとつ承る。資料の中に、重油S含有量は〇・三にすると言っている。このことが各発電所当該地区の県ないし市との協定書にもうたわれている。通産省はこれの実態を把握されたことがあるかないか、お尋ねする。抜き取り検査をやられたことがあるかないか。
  52. 橋本利一

    橋本説明員 通常S分あるいはN分に関するチェックの方法等についても、先ほど御指摘の公害防止協定の中にも盛り込まれておるというのが一般でございます。これにつきましては、電力会社が測定するとともに、地方公共団体等におきましても、テレメーター等を使いまして常時監視する体制をとっております。そういったことでございますので、通産省としては、こういった協定が事実厳格に実施されておるかどうかといった点を、この両者のチェックを通じて監視しておるというのが実情でございます。
  53. 加藤清二

    ○加藤(清二)委員 私がお尋ねしておるのは、抜き取り検査をされたことがあるかないか、今日たいている重油、それを抜き取りしてきて、工業試験所なり何なりに命じてS含有量を実態把握されたことがあるかないかと聞いておる。
  54. 橋本利一

    橋本説明員 ございません。
  55. 加藤清二

    ○加藤(清二)委員 ないのでしょう。政務次官、あなたは実態をよく把握して、こうおっしゃるが、具体的事実というのはそういうところにある。  なぜ私がこういうことを申し上げなければならぬかといったら、これも私は、私というよりも公害委員会、商工委員会は具体的事実を調査している。そのときに、あえて固有名詞は申し上げません、某石油精製会社を調べました。そこには四万バレルの脱硫装置がございます。しかし、実質この石油精製している量は二十万バレル・パー・デーです。重油は四万バレル・パー・デーしか脱硫装置がない。しかし、これはどんなに脱硫しても、フラスコや試験管の中ではできるけれども、大きなプラントになりますると、その工場では一・〇にしか抜けない。  その工場から重油をパイプで某電力会社が受け取っておる。その某電力会社を調べた場合に、あなたのところは協定書に一・〇以下の契約が行われているが、一体どこから油を入れますかと言ったら、さきの製油会社の名前が出た。そのさきの石油会社では、電力会社に対して一・二のものを送っていますと言っておる。ところが、電力会社は一・〇を受け取っておる、こう言っておる。あいにくその嘱力会社調査したときに石油精製会社の重役も一緒についてきておった。きょうも新聞記者の方が見えますが、私をつついて、さきの数字と違うじゃないか、団長しっかりせい、こういうことだった。本当か、本当かと言っていたら、本当だ、本当だと言う。それじゃどっちがうそを言っておるのだと言うたら、後で、やはり一・〇は間違いで一・二でございました、こういう答弁が返ってきた。  その時点において、一緒に行った通産省エネルギー関係の担当官に抜き取り検査をすべきだと言っておる。なぜ抜き取り検査をしないのか。社会党のわれわれは、製油会社に行ったら必ず抜き取ってもらってきてそれを分析させます。  私はなぜこんなことを言わなければならぬかと言うたら、物理的にできないことを契約書にうたっているからなんです。本当に日本じゅうの電力会社が〇・三の重油が使えますか。そんなにローザルの重油が日本にありますか、承りたい。
  56. 橋本利一

    橋本説明員 ただいま御指摘のように、現在の脱硫設備をもっていたしますと、たとえばサルファ三%のものを〇・三まで持っていくのが一般の脱硫設備においては限界だというふうに承知いたしております。ところが、現実の問題といたしましては、地元との協定値等はこの〇・三%を下回る〇・二九あるいは〇・一%といったような協定値になっております。これに対処するためには、御指摘の重油の脱硫率をできるだけ下げるということも必要でございますが、その他にローサルファあるいはサルファを含まない軽質の燃料に依存していく、また、いかざるを得ないというのも実情かと思います。  若干数字を申し上げますと、九電力合計いたしまして、ここ数年重油の割合が急速に低下いたしておりまして、四十七年五八・六%のものが五十年では四四・六%まで下がっております。これに比例いたしまして、ナフサ、LNG、こういった軽質燃料の割合は四十七年の二・七%から五十年では一四・三%、かように軽質油のウエートが高くなってきておる。したがいまして、できるだけローサルファの原油、あるいは重油につきましてはできるだけ脱硫を進めるということも必要かと思いますが、いま申し上げたような軽質油で対処していかなければ、とうてい目標を達成できないというのが現実かと思います。  かような努力を払いまして、若干低硫黄化の推移を申し上げますと、昭和四十年度当時二・六%であったものが、五十年度の実績では〇・三八%、本年五十一年では〇・二九%、来年五十二年には〇・二一%まで低硫黄化を進めたい、こういう計画で対処しているのが現実でございます。
  57. 加藤清二

    ○加藤(清二)委員 その数字たるやまことに耳ざわりのいい、結構なものです。また、ローザル化を推進させるために通産省の担当の皆さんが大変な御努力をしていらっしゃることも、これは感謝にたえないところなんです。しかし、物理的にできないことを協定を結ぶということは、当該市町村なり県をごまかすことになる、あるいはその土地の住民をごまかすことになる。できないことをやるなんということは、これはいかにきれいごとといえども約束は結ばない方がいいと思う。〇・三%と言ったって、今日の脱硫装置、世界じゅうの技術で、重油からSを抜いて〇・三にできるなんという技術がどこにありますか。  どんなに見ても、一番新鋭のガルフ方式にしたって、UOP方式にしたって、その。パテントを購入して日本で英知と技術を加えたその結果としても、重油に含まれているSを〇・三にするなんという技術がどこにありますか。あったら承りたい。ないのです。善通だったら一・〇、最新鋭の沖繩にある設備でさえも〇・七、それ以上抜くことは不可能なんです。しかもまた、その設備たるや、精製されて出てくる重油のほんの一部しか設備がないのです。それは橋本さんならよく御存じでしょう、専門官ですから。どうして〇・三という数字が出てきますか。  ナフサをたきますとか、あるいはミナスをたきますとかおっしゃるけれども、それは瞬間的にはできることなんです。契約書はコンスタントでなければならぬ。ある日あるとき、三十分だけとか四十分だけ、それならできるでしょう。しかし、日本じゅうの電気会社がたきます重油の量から逆算していけば、どんなに脱硫されたものを全部引き取りますと言ったって、できない相談でしょう。だから、抜き取り検査をやりなさいと言っているのです。ところが、値上げの場合に、実質はハイザルだけれども、書類ではローザルになっている。ローザルの方が値が高い。羊頭狗肉じゃないですか。
  58. 橋本利一

    橋本説明員 まず、先ほどのお答えを若干補足させていただきたいと思いますが、ある会社のある地点でのK値、協定値、実績値を申し上げますと、これは五十年時点でございますが、K値が〇・二九、協定値が〇・二九、それに対して実績値が〇・〇六、こういったところまで低硫黄化を進めておるわけでございます。補足しておきたいと思います。  それから、ただいまの先生の御質問でございますが、燃料油の中でもいろいろあるわけでございまして、サルファ分についてもそれぞれ値段が違うわけでございますから、それぞれの申請書に基づいて、仮に御指摘のような申請があったといたしましても、私たち査定官がそういった実態を見逃すわけはございませんので、厳正に査定をいたしておるものと確信いたしております。
  59. 加藤清二

    ○加藤(清二)委員 了解できない。しかし、この問題で論議をすれば時間が来てしまいますから次に進みますが、世界一高い電力料金、その日本の産業、国民生活に及ぼす影響は甚大でございます。ますます国際競争力を発揮しなければならないやさきに、一番大事なエネルギー源が世界二局いということは、日本の他産業の国際競争力に及ぼす影響が非常に大きいと思います。九電力も今後ぜひやらねばならぬことがあると思います。それは、経営努力をしてなるべく原価を抑えるようにしなければならぬと思います。申請をすれば大体二、三カ月で、独禁法も免れて、通産大臣が判こを押してくれる。材料の値上げを安易に全部料金にかぶせるというのはもはや限度に来ていると思います、世界一高いのだから。  そこで、お尋ねする。それほど重要な重油なり石油なりのエネルギーを電気エネルギーにかえたら、歩どまりは一体何ぼですか。
  60. 橋本利一

    橋本説明員 平均いたしまして三四ないし三五%と承知いたしております。
  61. 加藤清二

    ○加藤(清二)委員 大臣、お聞き及びのとおりです。三三、四%、これでよろしいですか。せっかく通産省の傘下には工業技術院もこれあり、国立大学の理学部、工学部にはそれぞれの権威がいらっしゃって検討を進めていらっしゃいますけれども、血の一滴だ、油は大事だ、値上がりしたから電気料金値上げをすると言いながら、石油エネルギーを電気エネルギーにかえたら、歩どまりは三二、三%なんだ。なぜここに全力を挙げて努力なさらぬですか。かつて中曾根通産大臣に言うたら、いや、サンシャインのことを研究しておりますという答弁が返ってきた。それは結構だ、二十年先、三十年先のことも大事だけれども、血の一滴の油の歩どまりをよくするということがまず考えられてしかるべきだと思うのですが、大臣、どう思われますか。
  62. 河本敏夫

    ○河本国務大臣 いまのお話は、電力料金というものは産業と国民生活に重大な影響がある、しかも今回の電力料金値上げによってドイツと並ぶ高い水準になっておるので、、今後はあらゆる分野において経営を合理化し、あわせて新しい合理化努力というものを見つけていかなければならぬ、その一環として、石油を電気エネルギーにかえる場合にもう少し効果的な方法を考慮すべきである、こういう御議論でございまして、私は、まさに問題の核心であろう、こういうふうに思います。  これを今後どういうふうに進めていけばいいかということにつきましては、通産省におきましても、それぞれの機関におきましてさらに一層積極的に研究させるつもりでおりますが、大きな課題として取り上げていきたいと思います。     〔武藤(嘉)委員長代理退席、前田(治)委員長代理着席〕
  63. 加藤清二

    ○加藤(清二)委員 送電ロスはどのくらいありますか。
  64. 橋本利一

    橋本説明員 送電ロスはだんだん改善されてまいりまして、五十年度ベースで九・六%になっております。  それから、先ほど三四ないし三五%と申し上げたわけでございますが、昭和三十三年度から四十五年度まで動かしたものだけについて申し上げますと、三八%にまで熱効率は上がっておりまして、これは世界的レベルと申しますか、世界で一番高い熱効率を実現いたしておるということを補足させていただきます。
  65. 加藤清二

    ○加藤(清二)委員 いまから二十年ぐらい前に、この商工委員会で送電ロス問題が問題になったことがあるのですね。そのころは二〇%もあったのですよ。それから比較しますとよくもまあここまでこぎつけたものだと思いますが、この送電ロスが現在九%、これでも大変だ。しかし、この送電ロスはいかなる物理学をもってしてもこれ以上縮めることは容易なわざじゃないとだれしも納得するところなんです。いわんや、送電線の距離が発電所から消費地までどんどん延びる。今後この送電線が延びると見なければならない。したがって、送電ロスをこれ以上縮めろと言ったってこれは無理なことなんです。しかし、こういう経営努力といいましょうか、企業努力といいましょうか、それは当然行われなければならぬと思います。  しかし、どう考えても石油エネルギーを電気エネルギーにする場合のロス、これは一電力会社だけでやれと言ったって無理なことだと思う。したがって、いま通産大臣がおっしゃられましたように、通産省みずからが陣頭指揮で、各研究所やら機関をフル動員してこれに取り組むということは、日本の将来のエネルギーを有効利用するという意味において、経済的のみならず非常に大切な案件だと思う。幸い大臣がそれを努力するとおっしゃったから、もう一度お尋ねします。さしあたってどこから着手なさいますか。
  66. 橋本利一

    橋本説明員 ただいま御指摘のように、今後熱効率の向上あるいは送電ロスを減少していくということは非常に大切なことでございます。先ほど申し上げましたように、現在のレベルは世界的レベルにまで達しておりますが、さらにこの方向で一段と努力をいたしたい。  それから、いま一つの問題は電源立地と申しますか、これは一般になかなか困難になってきておるわけでございますが、送電ロス等の観点からいたしますと、電源地域と消費地域とができるだけ近い方がいいという問題もございます。あるいはそのために共同開発を進めていくといったような問題も含めまして、広域運営をさらに一段と図っていくということも必要だろうと考えております。
  67. 加藤清二

    ○加藤(清二)委員 広域運営とかなんとか経営上の問題でお答えになりましたが、私がお尋ねしているところは、物理学や化学の立場で、石油エネルギーの電気化の場合の歩どまりを多くするようにしてもらいたいというところに趣旨があります。いまの広域化の問題、これも必要なことです。電源開発をする場合には当然広域的に行われてしかるべきだと思います。  次に、もう一つお尋ねしたい。この間、電力会社は、投資に金が要るから社債を発行させていただきたいということで、商法の除外例で一対四になりましたね。四十七兆八千億ぐらいの投資を向こう十年間に行わなければならない、こういう話なんです。大臣、私が懸念いたしまするのは、これは本当にできるでしょうか。  なぜそういう疑問が生ずるかといえば、電気を発生する設備、火力にしても原子力にしても、国民、地元の人に不安が伴っている。それは過去に余りにもうそが多かったからです。合意なくして進めるということならばできるでしょう。しかし、本当に地元の合意を得て後に設備を行うということになりますと、年間五兆円になんなんとする設備が本当に行われますか。これは大臣、どう思っておられるのですか。
  68. 河本敏夫

    ○河本国務大臣 今後日本経済が六%台の成長をするということになりますと、先ほど御指摘がございましたように、相当の電力投資を必要といたします。現在九千万キロの電力を一億九千万キロ程度に持っていく必要があるわけでございます。これに要する資金が、前期五ヵ年で約十六兆円、後期五ヵ年で約三十二兆円という数字になっております。前期の分は年間の平均が三兆二千億ばかりでございますが、後期の平均はほぼそれの倍ということになっておりまして、非常に膨大な資金が必要であります。  資金の面は解決は容易であると思いますけれども、それにも増して立地条件を求めていくということはなかなかむずかしい問題だと思います。しかし、六%台の成長をするためにはこれはどうしても必要である。そして、六%台の成長ができないと、雇用問題あるいは国際競争力の問題が解決できないということであるならば、努力してその目標を達成しなければならぬ、こういうふうに私どもは理解をいたしております。  しかも、この結論が急に出たわけじゃございませんで、昨年一ヵ年の間、総合エネルギー調査会でずっと連続作業いたしました結果、こういう結論が出たわけでございますので、どうしても万難を排して実現しなければならぬと思っておりますが、何分にもその中で四千万キロ以上のものは原子力発電である、こういうことを考えますと、相当な努力が必要である、かように考えております。
  69. 加藤清二

    ○加藤(清二)委員 料金値上げに不可欠な問題は消費者の合意だと思います。電気設備の創設には地元の合意が不可欠だと思います。これなくして事を運んだら必ず後で裁判ざたその他の問題が起きて、かえって経営上思わしくない結果を招来すると思います。いままで火力発電あるいは原子力発電で、スムーズに、通産省が許可したとおりにいったことは一つもないのです。値上げだけは、通産省が許可すればそれで事が足りるからまあいいでしょうけれども、発電設備の増設については、どんなに通産省が許可したって、地元の合意がなくてはこれはできない。なぜ地元がそれを反対するかといえば、電気の必要なことはわかっているけれども、発電所の地元だけがなぜ被害をこうむらなければならないか、それに対して保障がないではないか、金銭的な補償はあっても、生命の安全ということについての保障がないではないか、だから御免だ。  そこで、私が聞いておるのは、大臣、一対四はもう済んだことなんだ。あなたのおっしゃるとおり金はできる。値上げの場合も、国民が、消費者が反対しておったといっても、通産大臣が許可すればこれで事が済んでいくのです。しかし、設営だけはどんなに通産省が許可なすっても、これはそう簡単にはいきません。これについて通産省はどういう指導なり、どういう努力なりをなさるおつもりですか、そこを聞いておる。
  70. 橋本利一

    橋本説明員 安定供給の確保ということは非常に必要でありますが、その際にも保安の確保あるいは環境の保全という問題が必要でありまして、その点につきましては、ただいま御指摘のように、そこに立地しようとする電力会社が地元住民と十分に話し合うということも必要でございましょうし、それから先ほど申されました電源三法等による経済的な措置ということも必要だろうと思います。また、会社側といたしましても、そういった話し合いを実行に移すべく、やはり公害防止のための投資等についても十分意を払う必要があろうかと思います。現実に、現在九電力会社につきまして公害防止に充てております投資は、全体の設備に対しては一〇%ぐらいではございますが、火力発電設備だけに限りますと、その投資量の四五%が公害防止投資に充てられておる、こういう現実でございます。  今後ともこういった方向で地元住民と十分話し合うと同時に、設備面からいたしましても、実際問題として地元に心配をかけないような措置を進めていく必要があろうかと考えております。
  71. 加藤清二

    ○加藤(清二)委員 こういう案件は、九電力の個々の会社義務をしょわせただけでは解決できないと思う。さきのS分の問題もさることながら、原子力の危険除去、原子力の安全性、原子力に対する国民の理解、これを推進することは、一電力会社ではとうてい賄い切れる案件ではないと思う。したがって、今後電気が必要であるとするならば、これは発電設備をつくらなければならない。つくるためには、どうしても地元住民の合意を得なければならない。そのために、危険除去、安全性の確保のための努力通産省みずからが陣頭指揮で行わなければならないと思いますが、大臣のお考えを承りたい。
  72. 河本敏夫

    ○河本国務大臣 電力を増強していくことは、第一義的には電力会社の責任になっておりますけれども、しかしやはり政府が電気事業法等を通じまして厳重な指導、監督をしておるということを考えますときに、また同時に、電力問題が国の産業、国民生活に非常に大きな課題であるということを考えますときに、やはり政府みずからが、御指摘のように積極的にこの問題と取り組んでいくということが必要であると思います。
  73. 加藤清二

    ○加藤(清二)委員 与えられた時間が参りました。質問はまだたくさんありますけれども、これで終わります。
  74. 前田治一郎

    ○前田(治)委員長代理 この機会に、先ほど御質問の板川委員大臣に対する質問時間を十分間保留されておりますので、板川委員を御指名申し上げます。
  75. 板川正吾

    板川委員 大臣が来たものですから、簡潔に、きょうは政局の関係をちょっと伺いたいと思っておるのであります。大臣は三木内閣の領袖ですから、政局の見通しをひとつ聞かしてもらいたいと思うのです。  どうもいまの自民党内部の動きというのは、国民の側から見るとまことに奇怪で、実はわからない。たとえば特に大平大蔵大臣、福田さんは、特例法を早く上げろ、値上げ法案は早く上げなさい、そのため臨時国会を開け、こう主張しておった。三木さんはロッキードが先だと言って、臨時国会はそう早く開けないという印象を受けておったら、きょうあたりは、何か三派が集まって三木総理に辞任を要求する決議をする、こういう動きになっておる。特例法や値上げ法案どころじゃない、そういう動きなんでありますが、まことにどうも国民の目から見れば不可解千万な感じがいたします。また、三派の方では、国会召集前に三木総理はやめなさい。きょうのテレビ等を見ると、総裁は反省しろ。何を反省しろと言っているのか、実はこれはわからぬ。三木では選挙はできない、こう言っている人もありますが、なぜ選挙ができないのか、われわれが勘ぐれば、三木では金が集まらない、金が集まらなければ選挙はできないと言っておられるのかどうかわからないし、人心を一新しろと、こういう主張をされておりますが、なぜいまここで人心を一新しなくちゃならないかという、どうもそういう主張がわからないのですね。こういう動きがある中で、一体三木内閣はどうされるのでしょうか。われわれの方にも無関係じゃありませんから、見通しがありましたらお聞かせ願いたいと思います。
  76. 河本敏夫

    ○河本国務大臣 いま時局は非常に重大であると思います。当面する大きな課題でありますロッキード問題なども、一部のルートは解明されましたけれども、最大のルートはまだ解明されないまま残っておりますし、さらに政治的、道義的責任を明らかにしなければならない灰色高官の処理の問題も残っておるわけでございます。非常に大きな課題がたくさん残っておるわけでございまして、本当の意味での解明はこれからである、こういうふうに考えて差し支えないと思います。  それから同時に、当面の課題は、この問題を解明いたしますと同時に、政府・与党である自民党は、二度とこういう問題を起こさないために政治の粛正をしなければなりませんし、そのために根本的な党の改革というものと取り組まなければならない。これは並行して進めなければならぬ大きな課題だと思います。また一方、景気及び物価の問題、一連の経済問題も、国民生活との関連におきまして非常に大切でございます。そういうことのために関連法案の処理という課題も残っておるわけでございます。  こういう非常に大きな課題を前にいたしまして、自由民主党が派閥次元の政権抗争に明け暮れするということは、外部から見ればどうしても納得できないのは当然のことである、こういうふうに私は思います。やはり政治というものは、外部から見てもよくわかるという政治でなければならぬと私は思います。一部の人だけにわかって、外部から見てわからない、こういう政治は民主主義のためによくない、議会政治のためにとるべきではないというふうに私は考えるわけでございます。  そういう認識においては、三木総理も福田副総理も大平大蔵大臣も同じであると思います。先般来の会談に引き続きまして、本日以降も一連の会談が行われるように聞いておりますので、三人とも日本の現在並びに将来を担う大政治家でありますから、三人が狭い立場じゃなしに、狭い考え方じゃなくして、大局的な見地に立って、日本の将来を考え議会政治の基礎を確立するという大きな観点に立って、虚心坦懐に話し合いをされるならば、必ず問題は解決するであろうというふうに私は考えておるわけでございまして、本日以降の一連の会談に大きな期待を持っておる次第でございます。
  77. 板川正吾

    板川委員 まあ三木派とすれば、そうした反三木派の領袖の良識に期待したいという気持ちはわかるのでありますが、とにかく二百八十名とかが署名をして、その中に福田経済企画庁長官、副総理も大平蔵相も入っているというふうな状況の中で、一体どういうような話し合いが今後できるのかなという感じがするわけであります。何かけさの新聞を見ますと、大平大蔵大臣は臨時国会を召集すると冒頭解散するのじゃないかという杞憂を持っているという意味のことがあります。恐らく三木総理の言うこととやることが違うということに対する不信感がその根底にあるような感じがします。冒頭解散というのを非常に気にしているような感じがするわけですが、この点は、やはり私は、三木総理が独禁法といい、スト権ストといい、一たん口にしたことを翻したという、言うこととやることが違ったという過去の実績が、ある意味では今日のそういう不信感の理由一つにあるのじゃないかという感じがいたします。  ひとつ国民の目にもわかるような解決策を講じてもらいたいと思いますが、冒頭解散ということも実際私はあり得るのじゃないかという感じがするわけです。その場合には、もちろん特例法不成立ということに当然なります。特例法が不成立でも、大蔵省証券が今年度の予算の中で二兆六千億の枠があるから、これで二、三ヵ月もつという説もあるので、特例法不成立であってもまあ大丈夫、金融関係に支障はないという説がありますが、この点はどうお考えですか。
  78. 河本敏夫

    ○河本国務大臣 まず最初に、民主主義と多数という問題でありますが、その問題に関連いたしましては、議会政治、民主主義のもとにおきましては数が一つの大きな要素であるということは当然のことでありますが、それにはやはり一定の条件が必要である、ルールを無視した数であってはこれは認めるわけにいかない、やはり一定のルールに従った多数決ということがあくまで先決である、こういうふうに考えるべきであると私は思います。  それからさらに、臨時国会が開かれましても、いまわが国の政治にとりまして最大課題は、残されたロッキード問題の解明を進めるという大きな課題がございます。それからまた、灰色高官の処理という大きな問題もあるわけでございます。こういう問題を無視して冒頭解散などは、私はあり得べからざることだと思いますし、それから一連の財特法その他の懸案の処理という問題もございますので、私は、やはりロッキード問題の処理と財特法その他の懸案の処理をやった後に解散があるのが正道である、かように理解をしておるわけであります。もっとも、解散の権限というものは総理大臣一人にあるわけでありますから、私がとやかく言うべき筋合いではございませんで、これは私見でございますが、私の個人的な見解としてはそういうふうに考えておる次第でございます。
  79. 板川正吾

    板川委員 最後ですが、天皇在位五十年の式典というのは十一月十日、これはもう動かすことのできない行事でございますね。そうしますと、私がちょっと気にしておるのは、その天皇在位五十年の式典の前に選挙をやるということであれば、九月十日ごろに解散をやらなければ、新しい内閣を組織して在位五十年の式典というのが日程的になかなかできない関係にあるのじゃないだろうか、これが動かすことができないとすれば、これを現在の議員でやるとすれば解散はその後になる、こんな感じがします。天皇在位五十年の式典というのは動かせない、もうすでに決定したことではないかと思いますが、この点はどう考えられておりますか。
  80. 河本敏夫

    ○河本国務大臣 天皇の御在位五十年の記念祝典は十一月十日に行われるという乙とが正式に決定をいたしております。しかし、これと国会の解散の時期等の関係の問題につきましては、これは総理御自身が判断すべき問題でございまして、私の口から答弁するのは差し控えたいと思います。
  81. 板川正吾

    板川委員 終わりますが、とにかくロッキード問題は、解決というのは緒についたばかりで、まだ最大の児玉ルートが解明されていないのでありますから、ひとつこの問題の解明に徹底的に努力していただきたいということを要望して、終わります。
  82. 前田治一郎

    ○前田(治)委員長代理 野間友一君。
  83. 野間友一

    ○野間委員 きょうはベンジジンの問題について質問をいたします。  いま私の地元であります和歌山におきましても、死の恐怖と直面しながら働いている労働者がたくさんおります。それはベンジジンの職業病の問題であります。いま労働者がみずから立ち上がりまして、職業病から化学労働者を守る会を結成して、またその仲間の中からもすぐれたレポートまで発表されるようになっており、まさに血の叫びがいま続けられております。まさにこのベンジジン禍は、今日化学労働者を死のふちに追いやっており、大変深刻な問題を提起しております。  そこで、最初に通産大臣にお伺いしたいわけでありますが、このベンジジン禍についてどのような認識を持っておられるのか、ひとつ承りたいと思います。
  84. 天谷直弘

    ○天谷説明員 非常に特殊な問題でございますので、大臣にかわってお答え申し上げます。  戦後すでに三十年たっておりまして、当時の資料等は必ずしも記録が十分に残っておらないのでございますけれども、昭和二十三年、商工省時代に染料工業対策審議会というものから意見具申がございまして、染料工業再建基本方針というものがございますが、ここにおきまして……
  85. 野間友一

    ○野間委員 それは後で聞きますから、所見だけ、ベンジジン禍の今日の状況についてどう思うかということをお伺いしたい。
  86. 河本敏夫

    ○河本国務大臣 非常に重大な問題でございますが、専門的な知識を必要とする問題でございますので、政府委員から答弁をさせます。
  87. 天谷直弘

    ○天谷説明員 二十年、三十年前の状況におきましては、ベンジジンの有害性、特にそれが発がん性を持っているという有害性についてどの程度まで認識があったか必ずしも分明ではございませんけれども、当時におきましても、その有害性に注目しまして行政指導により工場の注意を促しておったところでございます。しかしながら、今日の状況から見ますと、必ずしもその対策が十分でなく、結果的には労働者でがん等の病気にかかっておる者が発生しておるということは、きわめて残念なことでございます。
  88. 野間友一

    ○野間委員 通産大臣、いかがですか。
  89. 河本敏夫

    ○河本国務大臣 十分な対策がなかったということのために、いま政府委員が答弁をいたしましたような事態にあるということは、私も大変遺憾に思います。
  90. 野間友一

    ○野間委員 労働省はどういうふうにいま認識しておりますか。
  91. 宮野美宏

    ○宮野説明員 ただいま先生指摘のようなベンジジンによる職業性の膀胱がんというのは大変重要な問題でございますので、最近の知見によりまして徐々に強力な指導、監督を加えてきておるところでございますし、また、現在労働省の最重点の一つといたしまして労働衛生行政、職業性疾病対策、特に職業がんの対策を取り上げているところでございます。
  92. 野間友一

    ○野間委員 私はここに一つのレポートを持っております。ちょっとこれを労働省に……。  このレポートは、和歌山地区労働組合協議会の藤原慎一郎という人が書いた「ベンジジン禍撲滅に立ちあがった和歌山の労働者」、こう題するすぐれたレポートであります。これは地元の監督署を通じてそちらに渡っておるかどうか。もし読んだとすれば、その感想をひとつ聞かしていただきたい、まだであれば、ぜひそれを読んでいただきたい、こう思いますが、いかがですか。
  93. 宮野美宏

    ○宮野説明員 まだ拝見しておりませんので、ぜひ拝見させていただきたいと思います。
  94. 野間友一

    ○野間委員 以下お尋ねをいたしますが、これは通産省に、戦後、産業復興のために特に染料の中間体であるベンジジンなどの復興計画、これが再建基本方針という名で、これは昭和二十三年だろうと思いますが、こういうものが立てられたと理解しておりますが、それはどういうものであったのか、まずお伺いいたします。
  95. 天谷直弘

    ○天谷説明員 この再建基本方針は、染料工業対策、審議会の時の商工大臣に対する答申でございますが、それの中で、労働安全衛生に関する点につきましては、化学工業の「特殊性に鑑み、有害ガス、危険薬品に対する労務者の防護予防対策を確立すること。」という項目が入っております。
  96. 野間友一

    ○野間委員 そういうことではなく、染料の中間体であるベンジジンを含んだものについての産業復興の基本的な方針はどうであったかということです。
  97. 天谷直弘

    ○天谷説明員 当時の文献等が残っておりませんので、基本的な方針を必ずしも分明にいたしませんが、当時におきましては、繊維産業を復興するということが緊急の命題でございました。その中で、先ほど申し上げましたように労働安全衛生等にも留意しながら復興を図るということが基本方針であったかと存じます。
  98. 野間友一

    ○野間委員 局長、聞いたことに答えてくださいよ。  この基本方針には、染料生産目標を昭和二十八年をめどに二万四千トン、その中でタール中間物質については国内で全部自給するということが決められております。染料工業はタール系合成工業の基幹産業として位置づけ、関連合成工業における中間物質の需要の完全充足をもあわせて目標、こういう記載がありますが、これは間違いありませんね。
  99. 天谷直弘

    ○天谷説明員 仰せのとおりでございます。
  100. 野間友一

    ○野間委員 そういうような方針で、戦後この廃墟の中から繊維産業の一環としてこれらの産業が進められたわけでありますけれども、ベンジジンあるいは似たような物質としてのベータナフチルアミン、この生産は、昭和三十年前後をピークにして急速に戦後伸びてきたと思うのでありますが、これは間違いないかどうかということと、それから特に昭和二十九年、三十年に異常な生産の伸びを示しておるというふうに思いますが、この理由は一体何なのか。
  101. 天谷直弘

    ○天谷説明員 昭和二十九年、三十年ごろの生産が急増いたしました理由は、大きな理由は中国向けに染料の輸出が伸びたからでございます。染料工業が復興した段階におきまして、その当時は中国との貿易がありまして、中国に対する輸出がふえましたために、その当時生産がかなり増大をいたしております。
  102. 野間友一

    ○野間委員 通産省の資料によりましても、ベンジジンあるいはベータナフチルアミンの生産量は、昭和二十二年がベンジジン百五十七トン、それからベータナフチルアミンが七トン。これが二十九年になりますと、九百六十三トンあるいは五百九十五トン。三十年になりますと、千三百二十四トン、ベータナフチルアミンが五百三十五トン。ものすごい馬力で生産が伸びておるわけであります。  そこで、労働省に簡単にお聞きしたいのは、このベンジジン禍によってどういう疾病が生ずるのかということ、その症状は一体どうなのかということ、これを簡潔にお答えを願いたいと思います。
  103. 宮野美宏

    ○宮野説明員 ベンジジン、ベータナフチルアミンは、先生御存じのように膀胱がんを起こしますので、それらに関連いたしまして尿路障害等の障害を起こすものであります。
  104. 野間友一

    ○野間委員 では、次いでお聞きしますが、この膀胱がんの潜伏期間がいま重要な問題になっておりますけれども、大体潜伏する期間がどのくらいのものか、現在たくさんの症例があり、研究が進められておりますけれども、これも端的に労働省にお答え願いたいと思います。
  105. 宮野美宏

    ○宮野説明員 平均いたしますと十八年前後かと思います。
  106. 野間友一

    ○野間委員 長いのになると三十年、四十年というのがあるように聞いていますが、どうですか。
  107. 宮野美宏

    ○宮野説明員 先生のおっしゃるとおりと思います。
  108. 野間友一

    ○野間委員 そこで、戦後のベンジジン等の生産の推移と、いまの膀胱がん、しかも異常な潜伏期間、こういう点から考えまして、異常に生産が伸びた三十年前後に従事しておった労働者がいまになって数多く発病しておることが、ほぼその生産の推移とあるいは潜伏期間の関係からうかがわれるわけでありますが、これは間違いありませんね。
  109. 宮野美宏

    ○宮野説明員 先生のおっしゃるとおり、そういうような状況で現在職業性の膀胱がん等が起こってきていることは事実でございます。
  110. 野間友一

    ○野間委員 生産の増加、それに対する生産強化の施策、これはいま私の方から指摘して天谷さんも認めたわけですが、当時の政府として——当時というのは、これが三十年から後に大きな問題になるわけですが、その三十年ごろまで、当時の政府として生産に即して労働者の安全対策はどういうものであったのかということ、当時は労働省が関係せずに通産省がいろいろと関与し、何らかの対応をしておったと思うので、通産省に聞きたいと思います。
  111. 天谷直弘

    ○天谷説明員 労働安全衛生の問題は本来労働省の所管でございますけれども、通産省は生産担当の官庁でございますが、生産担当の官庁としましても労働安全衛生問題は非常に重要でございましたので、工場等に指導をいたしまして安全衛生に関するマニュアル等を作成し、それに従って生産を行うように行政指導を行っておったと理解をいたしております。
  112. 野間友一

    ○野間委員 いまたしか労働省の所管ですが、戦後初めてこれについて取り組んだ省庁は通産省と違いますか、当時の商工省ですね。
  113. 天谷直弘

    ○天谷説明員 先ほど申し上げましたように、染料工業対策審議会の答申を受けまして、その答申の方針に従いまして行政指導をいたしました。
  114. 野間友一

    ○野間委員 当時の記録によりますと、これは間違いがあれば指摘してもらいたいわけですが、昭和二十三年か二十四年かわかりませんが、二十四年ですか、商工省の染料工業対策委員会で対策が議題となった。そして、それを受けて同じ年、化成品工業協会工場衛生小委員会で、直接人体に触れないような対策をとるべきだ、そして昭和二十五年になりますと、予防指針を出して、労働者の体を密閉して接触をできるだけ断つという方向で行政指導がされたやに聞いておりますが、間違いありませんね。
  115. 天谷直弘

    ○天谷説明員 間違いございません。
  116. 野間友一

    ○野間委員 この商工省の染料工業対策委員会あるいは化成品工業協会で検討された資料はいま残っておりますか、残っておるとすれば当委員会に出してほしいと思います。
  117. 天谷直弘

    ○天谷説明員 残念でございますが、資料は残っておりません。
  118. 野間友一

    ○野間委員 昭和三十五年ごろまで、労働省はこのベンジジンについての対策は知っておったのかどうか。
  119. 宮野美宏

    ○宮野説明員 先生のおっしゃいますような自主的な管理につきましては、その当初は存じておりませんでしたけれども、その後、民間機関での実験結果等、そういうところから依頼されておるというようなことがございまして、それらの成果を踏まえて、その後の労働衛生の職業がん対策に対する予防通達等が出されたというふうに記憶いたしております。
  120. 野間友一

    ○野間委員 その後のことについては後で聞きますが、そうしますと、このピークに達した昭和三十年ごろまでは、この生産の監督官庁である商工省、その後の通産省ですが、これが労働者の安全衛生対策の面でも取り仕切っておると言うたら語弊がありますけれども、通産省がこれらについての施策をやっておったということになるわけですね。  そこで、その三十年ごろまでの通産省の施策をいろいろ聞いたり、あるいは多少物の本をひもといてみましても、先ほど申し上げたように労働者の側を密閉する。このベンジジンの側を密閉するのでなくて、その切断の仕方としてはそういう方向で何か若干の指導がやられただけで、それ以外は何らやられていないということに相なるわけでありますが、こういう措置が果たして適切であったのかどうか、三十年ごろまでのその措置について通産省にお伺いします。
  121. 天谷直弘

    ○天谷説明員 今日の学問の進歩した状況から判断すれば不十分であったと考えます。ただし、当時としてはできるだけの措置であったというふうに考えております。
  122. 野間友一

    ○野間委員 ただし書きは要りません。  次に、先ほども労働省の方から話がありましたが、その三十年以降、四十七年にベンジジンの製造、使用、輸入の禁止がやられるわけでありますが、この間、労働者の安全対策上どういう施策をとってきたのか、従前と全然変わりはなかったのか、あるいは新たな見地に立ってその施策をやってきたのか、その点いかがですか。
  123. 宮野美宏

    ○宮野説明員 二十年代におきましては、私ども労働基準法に基づきます労働安全衛生規則の中の健康診断の普及徹底とか、あるいは保護具の着用なり、あるいは清潔、休養、そういうようなことに重点を置いてやっておる一方、職業性の疾病についても、じん肺等について積極的に対策を進めてまいりましたけれども、ベンジジンにつきましては、昭和三十年以降、染料中間体製造事業場に対する監督、指導に努めてまいりました。それからまた、三十年ごろからベンジジンによる膀胱がん障害の患者が発見され始めたというようなことから、昭和三十一年に特殊健康診断指針というものを出しました。また、昭和三十三年には、ベンジジンによりますこれら障害予防対策についての通達を出したところであります。  これらの一連の対策とともに、環境改善の手法の研究でありますとか、あるいは測定法の確立等を図ることによりまして、ベンジジンに対する暴露の防止に努めることといたしたところでございます。
  124. 野間友一

    ○野間委員 労働者、つまり人体の密閉から設備の密閉というふうに方向が変わってきた、これは三十二年五月の通達でそういうふうになったやに聞いておりますが、間違いありませんか。
  125. 宮野美宏

    ○宮野説明員 三十年七月に、「染料中間体による中毒の予防について」というのをまず最初に出しております。
  126. 野間友一

    ○野間委員 設備の密閉についての通達はいつのものですか。
  127. 宮野美宏

    ○宮野説明員 この中でも、留意再項といたしましては、局所排気装置の設置でありますとか、あるいは保護具の着用、装置等からの漏洩防止というようなことをうたっております。
  128. 野間友一

    ○野間委員 それにしても大変不十分なんですね。余り三十年以前と変わった点がない。しかもこの通達ですが、これは単に企業の自発的な措置に期待するというようなものじゃありませんでしたか。
  129. 宮野美宏

    ○宮野説明員 監督、指導のための予防通達でございます。
  130. 野間友一

    ○野間委員 いや、その中身は、いま申し上げたような自発的な措置をこれに期待するという程度のものではなかったかということです。と同時に、周知徹底ができたかどうか。
  131. 宮野美宏

    ○宮野説明員 監督、指導行政でございますので、それなりに周知徹底されたというふうに考えております。
  132. 野間友一

    ○野間委員 かつて四十六年ごろの国会の中でも、参議院の決算委員会で問題になりまして、周知徹底という面については非常に不十分であったという答弁が出ております。  そうして、通産省にお聞きしますが、こういう状況が継続をしてきたわけでありますが、あなたは先ほどの答弁で、当時の状況としては適切な措置を講じたつもりだというふうに言われました。私は、このような有害性の高い物質の人体に及ぼす影響などを十分分析する、あるいは調査する、検査する、こういうことがいまから振り返っていろいろ検討してみましてもうかがわれないわけですね。戦後の輸出の花形産業は繊維でありました。私は、そのうかがわれないのは、やはり生産第一ということで通産省自体も労働者の安全衛生という点については非常におくれておった、これは労働省もしかりでありますけれども、そういうふうに思わざるを得ないと思うのですが、いかがですか。
  133. 天谷直弘

    ○天谷説明員 労働者の安全衛生にこの染料中間体がどのように有害であるかどうかというような問題につきましては、通産省はこれを専門的に判定する権限もスタッフも持っていないわけでございます。ただ、当時の染料の生産におきまして、急性あるいは亜急性の中毒がこのベンジジンに艇よって起こりましたような事例がございますために、そういう立場から労働安全衛生についての注意を喚起したという経緯ではないかと考えております。  ただ、その当時におきまして、われわれとしましては、これが十数年もの長い潜伏期間を有して膀胱がんを発生せしめるということにつきましては認識を持っていなかったというふうに考えております。したがいまして、現状から見れば、その当時の措置はがん発生防止ということに対して不十分であったというふうに考えております。
  134. 野間友一

    ○野間委員 後で触れますが、外国ではずいぶん早くからこういう症例があり、これに対する一定の施策がなされていた。ところが、日本ではこういうものを生産しておる地域のお医者さんがそれぞれ論文を発表する、これは古いのになりますと一九二二年、大正十一年、このときからいろいろと民間の方々、特に医者がこういう研究をし、それからその症状例等を発表しておりますね。そういうことがやられながら、先ほども指摘したように、通産省としては物質そのものについては監督官庁でありますから、この物質の性質という点から、これをさらに外国の例とかあるいは国内のいろんなものを検討しながら、産業の観点からも、労働者の安全衛生という点から十分な措置をとるべきであったという点で、私はこの点についての指摘を申し上げたいと思うのです、いま天谷さんも結果的に見てというふうに言われましたけれども。  そこで時間がありませんから次に進みますが、染料中間体の製造企業の特徴として、これは中小零細企業が非常に多いわけですね。これはなぜかといいますと、一つには、大手の化学会社が一応一手に引き受けはいたしますが、その物質の持つ危険性並びにこれは簡単な設備あるいは技術でできるという点から、自分のところでは製造しない、そして中小零細の下請にこれは委託しておった、こういう特徴があるわけです。このような中小業者が、どんなに通達を出されても、これは通産省でもあるいは労働省でも同じでありますけれども、設備の改善あるいは施設の完備をするのには大変無理な面があった。しかも通達も徹底されていなかったということがあるわけであります。  中小業者に対するこれらの施設の完備、充足という点について通産省は何らかの適切な措置をとってきたのかどうか。これは和歌山でも調べてみますと、十九の中小零細工場がありましたけれども、何らこれらの施策がとられてこなかったという結果がいま判明しております。いかがですか。
  135. 天谷直弘

    ○天谷説明員 残念ながら、特別の政策はとられておりませんでした。
  136. 野間友一

    ○野間委員 こういう点から考えて、これは労働省もさることながら、通産省サイドでも、戦後の一連の経過からして非常に大きな責任があるのと違うのかというふうに思います。いかがですか。
  137. 天谷直弘

    ○天谷説明員 先ほども申し上げましたように、現時点から考えれば不十分であったと存じますが、当時戦後の混乱時期でございまして、結果的に見て至らなかったということは申し上げられると存じます。
  138. 野間友一

    ○野間委員 戦後の混乱時期と言われますが、昭和三十年の時点をとってみましても、もう戦後十年を経過しておるわけですね。  では、角度を変えますが、昭和四十七年の十月にこのベンジジンとべータナフチルアミンが製造、使用禁止になった、この理由はいかがですか。
  139. 宮野美宏

    ○宮野説明員 私ども、ベンジジンに限らず有害業務に対します対策といたしまして、その時代時代の最新のデータをもとにいたしまして労働衛生行政を進めておるところでございますけれども、ベンジジン等につきまして、長い潜伏期間を持って発生するような職業性の疾病につきまして、特にベンジジン、べータナフチルアミンにつきましてそのような膀胱がんが出るということから、健康管理手帳制度の創設に踏み切ったわけでございます。
  140. 野間友一

    ○野間委員 ちょっと先ほども触れましたが、四十六年の三月五日、参議院の決算委員会でわが党の渡辺武委員がこの製造、使用の禁止を強く要求しております。この当時北川さんが答弁に立っておりますが、この渡辺議員の具体的な実態を踏まえた製造、使用の禁止の要求に対して、労働省の答弁はどうかといいますと、私たちがいままでとってきた防護対策、密閉式あるいは保護具の着用あるいは換気装置の備えつけをやれば、ベンジジンによる職業病の発生は防ぎ得るから、いまの段階禁止する必要はないのだ、これが四十六年の三月五日時点での政府の答弁ですね、大みえを切っておるのです。渡辺さんはこの中で二度にわたって製造禁止を訴えておるわけでありますが、禁止する必要はないのだということを言い切っております。  四十六年には絶対大丈夫だと自信を持って答えておりますが、ところがその舌の根も乾かない四十七年には、もう防ぎようがない、こう言って製造の禁止に踏み切りました。このことは、四十七年まで続けてきた労働省のいままでの施策が誤りであったということが明らかだと思います。なぜこのように、四十六年から一年もたたない間に、大丈夫だというのが禁止に踏み切ったか、これは誤りがあったということをみずから認めたことになるわけですが、いかがですか。
  141. 宮野美宏

    ○宮野説明員 ベンジジンによる障害を予防するためには、昭和三十年以降監督、指導を加えて、重点として設備改善なりあるいは健康管理の徹底を中心に強力に行政指導を進めてきたわけでございますが、この結果、ベンジジン製造事業場は集約化されまして、密閉装置による生産が行われるようになりました。通常の作業時におきましてはベンジジンの暴露はほとんどないというふうに考えられるまでに至ったわけでございまして、そういう時点以後の安全性につきましてはかなり図られたものというふうに考えておりますが、さらにこの徹底を図りますために、昭和四十六年の三月、特化則の第一類物質に規定をいたしまして、健康管理についての強化を図ったわけでございます。  しかしながら、過去におきます暴露者の中から障害事例が出てきたというようなことがございまして、社会的な要請等も考慮いたしまして、業界に対しまして自主的に生産を廃止するように指導をいたしまして、昭和四十七年六月、全面的に廃止となったような次第でございます。さらに、それだけではいけませんので、先ほど申しましたような健康管理手帳の創設に踏み切ったわけでございます。
  142. 野間友一

    ○野間委員 正確に答弁をしてください。もう責任を回避するようなことは困ります。四十七年にいま申し上げた製造禁止に踏み切った。このときの国会答弁はどう言っていますか。ドイツのバイエル社で相当な設備をしても発病した、それから、設備密閉化をどんなにしても発がんを防ぎ得ない、これで製造禁止に踏み切ったとはっきり言ったじゃありませんか。どうですか。
  143. 宮野美宏

    ○宮野説明員 そのようないろいろの新しい事実を踏まえて対処してきたものでございます。
  144. 野間友一

    ○野間委員 聞いたときにはそういうふうにはっきり答えてくださいよ。一々またそういうことを引用しなければならぬ。  そこで、三十年以降ですが、労働省が行政指導でいろいろ対策の指導をやってこられた。しかし、それでも不可能だということがわかって、結局禁止をするということになりました。だから、このことは、昭和三十年以降の政府の対応を見ましても、労働省の命を軽視してきた、こう言わざるを得ないというふうに思います。そのことによって、現に死亡し、また遺族が塗炭の苦しみにあえいでおる。さらに、この潜伏期間が十数年から三十年、四十年、こうなりますと、まさに死と直面しながら今後の自分の生涯を送らなければならぬ。非常に悲惨です。こういうような事態がいま現に到来し、深刻な問題になっている。通産大臣も先ほど言われました。こういう状態を踏まえて一体政府はどのように責任を感じておるのか、これをお答え願いたいと思います。通産省、労働省。
  145. 天谷直弘

    ○天谷説明員 今日の学問の水準に照らしまして、その当時の措置が不十分でありましたために今日発病者が出ているということは、きわめて遺憾なことでございます。
  146. 宮野美宏

    ○宮野説明員 先ほども申し上げましたように、労働省といたしましては、労働行政の最重点といたしまして職業性疾病防止に取り組んでおるわけでございまして、特に職業がんにつきましては職業性疾病の中でもそのまた重点として対処をしておりまして、従来の労働衛生研究所をさらに発展をいたしまして産業医学総合研究所を開所いたしまして、そのような基礎的な分野から予防、治療、リハビリというような一貫した政策を現在展開しようとしておるところでございます。
  147. 野間友一

    ○野間委員 いまの実態をどう考えておるかということです。
  148. 宮野美宏

    ○宮野説明員 そういうこともございまして、いまのような最重点の施策を講ずるようにいたしておるところでございます。
  149. 野間友一

    ○野間委員 どうも歯切れが悪いですな。外国の例ですが、ベータナフチルアミンは昭和十三年にスイスで製造中止、ドイツでは昭和十七年に同じく製造中止しております。ベンジジンについて言いますと、これはいろいろ経過はありますが、昭和四十二年に最終的にイギリスは製造中止に踏み切りました。この経過は最初に指摘した藤原さんが書いたレポートの中にも書いてありますけれども、一八九一年、かなり昔ですが、ドイツの外科医レーンという人が化学工場の労働者の中に四名の膀胱腫瘍患者を見出した。これが職業病として世界で発表された最初であります。この後の幾つかの経過がこれに書かれておりますが、そういう経過を踏まえてスイスやドイツあるいはイギリスでは製造中止に踏み切っておるわけですね。その間もいろいろな規制がなされております。  ところが、わが国の場合には非常に措置が遅い。こういう点を見ても、先ほど指摘したように人命軽視と言わざるを得ないと思うのです。先ほども申し上げましたが、このベンジジンによる膀胱がんと知らないうちに亡くなった人がおるのですね。自分はベンジジンにさわっておった、そのために膀胱がんになったという事実すら知らずに亡くなった多くの労働者がおります。また、現に膀胱を全面摘出する、そして人工膀胱で非常に働くことが困難だという人もずいぶんおります。私もいろいろ聞いて、本当に胸に突き刺さるような思いをしましたけれども、若い女性が当時のベンジジン禍によって子宮を摘出する。まさに人間としての暮らしができない。これはいろいろな話によりますと、三十代からもうセックスができない、こういうような病状も、ずいぶん深刻な問題を提起しております。本当に死と直面して十五年、三十年、四十年という潜伏期間、いつ発病するかわからぬ、こういう苦しみの中にあえいでおる。  先ほど労働省の方では、これらに対する対策というふうに言われましたけれども、抜本的な対策を講ずるべきだという点については認識は私と一致すると思いますが、いかがですか。
  150. 宮野美宏

    ○宮野説明員 職業がんに対する対策は、一般のがんも含めてでありましょうけれども、その防止については二十世紀後半の人類の悲願であるというふうに考えております。
  151. 野間友一

    ○野間委員 がんだけじゃないですよ。私が労働省に聞くのは、職業病、生産に携わった、その関係で聞いておるわけです。一般的な言葉にすりかえはしないように。
  152. 宮野美宏

    ○宮野説明員 職業性疾病全般に対する対策としても、十分最重点として考えておるところであります。
  153. 野間友一

    ○野間委員 労働省に具体的に少しお聞きしますが、山東化学というところで働いておった労働者あるいは遺族が和歌山労働基準監督署へ労災申請した結果、八月十九日に結論が出ております。この死亡された五件については時効成立ということで却下、それから八件については労災保険法の施行前ということで不支給の決定がされております。政府はみずからの責任をよそにして、時効という大なたをふるう。特に和歌山の場合には中小零細企業が特徴でありますけれども、しかも生産の最高時は全国の五〇%を占めておりました。  現在判明しておる生産企業は十九、これは当時から生産しておった企業数でありますが、このうちで倒産または解散をしておる会社が七企業。ここで働いておった人を一体だれが救うのか、非常に深刻な問題であります。安全だ、禁止はしない、こう言い切って大みえを切りながら、多少のこう薬を張るような形の指導の中で生産を継続してきた。挙げて政府にこの責任がある、私はこう言わざるを得ないと思うのです。  時効あるいは法施行前というような問題について、まず時効の問題ですが、時効の壁というもので、労働者のいまの悲惨な苦しみを救うのではなくて、これを退けた。六価クロム等々の適用のケースからしても、ベンジジン等のこの問題について時効でけるということはおかしい、これは間違いだというふうに指摘をしておるわけですが、きょうはここで時効の論議をするような性格のものでありませんから、その点の指摘をしながら労働省に伺いたいのは、もし仮に労働省が時効の壁という線をあなた方の見解でどうしても破るわけにいかぬというような立場に立っておったとしても、それじゃいまるる申し上げたような経過を踏まえて、こういう労働者に対しては、たとえば特別の措置で救済をするべきである、こういうふうに考えはしませんか。いかがですか。
  154. 田中清定

    田中説明員 先生指摘のように、和歌山県で三十六人の方が補償の請求をされたわけでございますけれども、遺憾ながら時効にかかっておる方が五名、その他労災法そのものの施行以前の職歴の方もございまして、両方とも不支給の決定をしたわけでございます。  時効に関しましては、先生から種々御指摘をいただいたわけでございますが、クロムの障害の際にも、私どもとしてはぎりぎり可能な範囲での解釈をめぐらして、ある程度の救済を図ったわけでございますけれども、あの時点では、クロムとの因果関係の問題が四十八年三月ごろに疫学調査の結果わかったということで、その時点までは時効が進まないという取り扱いをしたわけでありますけれども、ベンジジンに関してはかねがね膀胱がんの発生その他職業性疾病の原因となり得るという事実は客観的にも明らかになったという経過もございますので、クロムの場合と同様な扱いはやはりむずかしいという結論でございます。
  155. 野間友一

    ○野間委員 その点について私は再考を促し、要望しながら質問を進めます。  この法施行前の労働者のベンジジン禍に対する救済の問題でありますが、これについても、労働者も私たちも一貫して特別の救済制度をつくるべきであるという立場から要求をしてきたわけであります。労働省もやっと重い腰を上げましてこれを救済する通達を出すという段取りになったわけでありますが、これはいつごろ出すのか、そしてその内容はどうなのか、この点をお伺いします。
  156. 田中清定

    田中説明員 ただいま御指摘の法施行前の職歴によって障害が生じたという方々につきましては、現在労災保険法の法定給付そのものを差し上げるというわけにはどうしてもまいらぬわけでございますけれども、労働福祉事業の一環として、従来から特別な援護措置を講ずる道を開いております。目下問題になっている方々の、特に療養を引き続き継続されている方々については特別援護対策の対象にしたいということで検討中でございますが、今月中には結論を出して通達を出す予定でございます。
  157. 野間友一

    ○野間委員 その中身はどういうことになりますか。
  158. 田中清定

    田中説明員 中身としましては、療養に関する費用を一切見るということと、療養に伴って必要な雑費ということから月々二万三千円以内の費用を差し上げる。これは症状によって段階を設けておりますが、最高限度として二万三千円を月々差し上げるという予定でございます。
  159. 野間友一

    ○野間委員 その措置の中身については、後ほど通達が出たら、私のところに、あるいは当委員会に差し出していただきたい、これをお約束願いたいと思います。いま、うなずかれましたので……。  次にお聞きしたいのは、山東化学で働く労働者で判明しておる七十九名のうちで、その症状ですが、膀胱がんのほかに言語障害を訴えておる者が十八名、そのうちで症状の重い人が三名あります。さらに糖尿病の疑いがある人が十一名、それから歩行困難あるいは気管支障害、さまざまな症状がいま現に出ております。今日までベンジジンによる中毒症状は、尿路障害のみを対象として認定されてきたわけだろうと思いますが、いま指摘したような症状についても、これはベンジジンと相当因果関係があるというふうに私は断言するわけでありますが、こういう点についても労働省として総合的な調査を行って、これらについてのしかるべき措置をとるべきである、私はこう思いますが、いかがですか。
  160. 田中清定

    田中説明員 お答えいたします。  御指摘のように、ベンジジンに関しましては、膀胱がんのほかに尿路系の障害その他種々症状が予想されるわけでございますが、言語障害等を含めまして現在担当の和歌山労働基準局管内の調査を進めておるわけでございます。特に労働省としましては、本件を契機に、さらに関連する各種症状全般につきまして専門家の意見を徴しながら客観的な結論を出していきたい、このように考えておるわけでございます。
  161. 野間友一

    ○野間委員 それを早急にやられるように要求をしておきます。  と同時に、問題は、いまベンジジン等々について指摘をしましたが、このほかにも六価クロムとか塩ビモノマー、白ろう病も入ると思いますが、これだけ異常な潜伏期間があった。こういうようにいままで想像もできないような新しい職業病も数々発生しております。特に労働基準法が施行されたころには想像もできなかったものがずいぶんあるわけでありますが、そういう点で、これらのベンジジンを含んだ問題についての総合調査あるいは研究、それから機能訓練等も含めて職業病センターというものをつくって、早期発見から早期治療、それから機能訓練をぜひやるべきである。これは労災やあれこれ言われるかもわかりませんが、やはり総合的に、こういう新たな問題に対しては適切に対処するということが労働者の要求にこたえるただ一つの道であるという点から、こういう職業病センターをつくる構想があるのかないのか、ひとつお聞かせ願います。
  162. 田中清定

    田中説明員 先ほど労働衛生課長からもお答え申し上げましたように、労働省の今後の重点施策といたしまして、職業性疾病の発生の状況調査研究から予防対策の開発、さらに治療方法の研究、さらにリハビリテーション、職場復帰に至る一連の総合対策の推進ということを最重点にしているわけでございます。その一環としまして、特に治療方法の開発研究を中心とした研究機関として、実は職業病センターという、仮の名前でございますが、そういう研究機構をつくりたいというふうに考えて、五十一年度予算では調査費を要求、して、目下鋭意検討を進めているところでございます。
  163. 野間友一

    ○野間委員 あわせて要求したいのは、労働者の安全という面から、労働安全衛生学校というようなものを開いて、これは企業がやはり訓練するべきではないかというふうに思いますが、この点、いかがですか。
  164. 宮野美宏

    ○宮野説明員 労働者に対する教育というのは大変大事なことだと思いますので、私どもも数年前に東京の清瀬に安全衛生教育センターというものを設けまして、それによりましてトレーナー講習を重点に実施をいたしております。さらに、これは東京だけではなしに大阪にもつくってまいりたいという計画を現在持っております。
  165. 野間友一

    ○野間委員 最後の質問になりますが、ベンジジン等にかわる中間物質としてジクロルベンジジン、ジアニシジン、オルトトリジン、アルファナフチルアミン、これは労働安全衛生法の第一類の物質で、製造許可を受けるべき物質だというふうになっていると思うのですね。これらの物質ですが、これは動物実験ではがんの発生が確認されておるというふうに私は考えておりますが、これはどうなんでしょうか。
  166. 宮野美宏

    ○宮野説明員 おっしゃるとおり、動物で発がん性があるというふうに考えられているものであります。
  167. 野間友一

    ○野間委員 ですから、ベンジジンにかわってこれがまた一つの問題になると思いますが、現在どれだけ生産、使用しておるか、また、中心的な生産、使用地はどこなのか、これをぜひお聞かせ願いたいと思います。
  168. 天谷直弘

    ○天谷説明員 公式統計がないので必ずしも正確ではないかと存じますが、業界から聴取したところによりますと、ジクロルベンジジンが年間約一千トン、オルソトクシンが約五百トン、それからジアニシジンが約四百トン生産されております。これの使用形態については染料に使われておるわけでございますが、さらに細分した統計はございません。
  169. 野間友一

    ○野間委員 主な生産、消費地はどこですか。
  170. 天谷直弘

    ○天谷説明員 和歌山地区でございます。
  171. 野間友一

    ○野間委員 これらについて、これにかわる新しい物質というか、そういう性格のものはいま開発はされていないのですか。
  172. 天谷直弘

    ○天谷説明員 現段階では開発されておりません。
  173. 野間友一

    ○野間委員 そうなりますと、これまた新しい問題として、先ほどから申し上げておるベンジジンのようなことがまた繰り返されはしないかという懸念が実は出てくると思うのです。これは私もいまの状況の中ではどうなっておるのかよくわかりませんが、いずれにしてもこれらにかわるものがない、現にこれが生産、使用されているということを踏まえた上で考えた場合、やはり労働者の生命あるいは安全面、これは企業そのものもそうなんですが、そういう立場から、やはり本当に謙虚に、いまの規制だけでいいのか、こういう点と同時に、新しい物質が開発されはせぬか、これは外国ではどうなのか、これも聞きたいと思いますが、そういう点でやはり早急にこれらについて、本当に安全で安心して製造できる、また労働者も安心してそこで働けるというようなことをそれこそ政府が胸を張って言えるような、そういう措置をぜひ講ずるべきじゃないかというふうに思いますけれども、この点について通産省並びに労働省に御意見をお伺いしたいと思います。
  174. 天谷直弘

    ○天谷説明員 いま御指摘のような化学物質が労働安全衛生上きわめて問題のあるものであるかどうかということにつきましては、労働省当局の御判断を待つより仕方がないと、われわれはその御判断に信頼する立場でございます。現在は許可されておりますので、われわれとしてはその判断に信頼しておるということでございます。  それから、いまのところ外国におきましてもこれを代替するような物質は開発されていないようでございます。しかし、労働省当局がこれについてきわめて危険であるというような御判断をお持ちであれば、われわれとしても代替品の研究開発ということを考えなければならないと存じます。
  175. 宮野美宏

    ○宮野説明員 一般的に申しますならば、危険、有害なものについてはできるだけ代替をせよということを基本原則として私どもはうたっておる次第でございます。
  176. 野間友一

    ○野間委員 それでは、もう時間が参りましたので、終わりますが、通産大臣、先ほどからお聞きのように、四十七年にすでに製造を中止しておりますが、このベンジジン禍は大変深刻な事態であります。と同時に、これにかわる中間物質についても、動物実験では発がん性があるというようなことも出ておるわけですね。しかし、これにかわる新しいものがいま開発されていないということなんですが、そういう点を踏まえて、特にこのベンジジンの経験がありますから、新しい中間物質についても、やはり本当に安心してつくれる工場あるいは企業者並びに安心して働くことができるという労働者、そういう点から、一つは新しい物質の開発と同時に、これらの製造については万遺漏のないように、ぜひ謙虚に、いままでの経過も振り返って行政指導をしていただきたい。これはつくっておるところに私はあえてこれをすぐに中止しろということは言いませんけれども、やはり本当に企業、工場に対しても、あるいは労働者に対しても、きょうの私のこの指摘も十分踏まえた上で、そういう面からの十分な行政指導をぜひお願いしたいというふうに要求して終わりたいと思いますが、最後にお伺いいたします。
  177. 河本敏夫

    ○河本国務大臣 先ほど来一連の質疑応答を拝聴いたしましたが、産業衛生上非常に大きな課題だと思います。御指摘の点は十分配慮いたしまして今後対策を進めていきたいと思います。
  178. 野間友一

    ○野間委員 終わります。
  179. 前田治一郎

    ○前田(治)委員長代理 近江巳記夫君。     〔前田(治)委員長代理退席、武藤(嘉)委員長代理着席〕
  180. 近江巳記夫

    ○近江委員 まず初めに、きょうは物価、通貨等の問題から入っていきたいと思っております。  まず、通貨の問題でちょっとお聞きしたいと思いますが、国際通貨情勢というものが再び波乱の様相を続けておるように思うわけでございます。最近の円相場は一ドル二百九十円を割るなど、円の対ドル為替レートというものは非常に強含みに推移しておることは御承知のとおりでございますが、今回の欧州諸国の通貨不安の状況及び為替市場における円相場の高騰原因について、政府としてはどういうように認識をなさっておりますか。また、現在の円高傾向というものは今後さらにまだ強まっていくものかどうか、政府のそうした為替政策における基本的な見解というものをお伺いしたいと思います。
  181. 河本敏夫

    ○河本国務大臣 政府の為替相場に対する基本的な態度というものは、これは実勢にゆだねるということであります。変動相場制でありますから、当然のことであると思いますが、実勢に任せるというのが基本でございます。  ただしかし、時には投機的な要因が加わりまして非常に大幅に動くことがございますし、また、投機的な要因がなくても、非常に大きな乱高下をすることがございます。そういう場合には、一国の産業政策を進めていきます上におきまして大きな支障になりますので、日本銀行やあるいはまた大蔵省が介入することは国際的に認められておりますので、例外的に介入をして調整する場合がございますが、原則は、あくまで当初に申し上げたような基本線を貫くということだと思います。  先般は、一時期欧州のポンド、リラ、フランあるいはベルギー、オランダ等の通貨に投機的な動きがございまして、その影響を受けまして日本の円も急激に上がったということがございました。しかし、最近はようやく落ちついてまいりまして、いま御指摘のような線を動いておるというのが最近の実情でございます。  将来のことにつきましては、為替相場というものはいろいろな要因がありまして動きますので、一概に断定できませんが、貿易収支の面からだけ申し上げますと、日本の景気が回復するにつれまして、輸入する品物、金額もだんだんとふえてまいっております。先般通産省が調べましたところによりますと、第二・四半期、第三・四半期はまだ貿易は黒字が続きますけれども、第四・四半期になると、貿易の収支は赤字になる。第四・四半期でほぼ五億ドル近い赤字が出るであろう、こういうふうに想定をいたしておるわけでございます。  でありますから、私は、いまの円高傾向も、貿易収支が次第に改善される、あるいはまた赤字傾向になるということになれば、またある程度の変化が生ずるのではないか、かように思いますし、基本的には日本経済というものはオイルショックを受けまして非常に国際競争力が弱まっております。逆にアメリカの経済は、ベトナム問題の解決と、それからさらにオイルショックによりまして、もちろん被害は受けておりますけれども、総体的には私は強化されたと思うのでございます。そういうことを考えますと、果たして現在の日本の円のレートというものがずっと続くものかどうか、これはもう少し推移を見なければ何とも言えない、かように考えておる次第でございます。
  182. 近江巳記夫

    ○近江委員 政府部内におきまして、最近輸入の円建て化を中心に円を国際通貨へ育成していく方針を固めたというようなことを聞いておるわけですが、この方針については長期的なものであるのかどうか、それをちょっとお聞きしたいと思います。また、円の国際化に踏み切った背景及び今後具体的にどのように進めていかれるのか、この点につきまして簡潔にお伺いしたいと思います。
  183. 森山信吾

    ○森山説明員 ただいま先生指摘の貿易金融の円建て化という問題でございますが、一部そういう動きがあることは承知いたしておりますが、政府部内といたしまして、この制度に取り組むように決定をいたしましたという段階にはまだ至っておりません。
  184. 近江巳記夫

    ○近江委員 こうした円高傾向というものは輸入価格の引き下げというような効果もあるわけでありまして、そういう点、いま非常に心配されておりますいわゆる卸売物価への影響の問題でございます。どれだけ鎮静化に効果があるかという問題でございますが、政府としてはこういう点を大いに生かさなければならぬと思うのです。ただ、御承知のように、卸売物価につきましては連続十三ヵ月騰勢が続いているわけですね。いま非常に心配されておることは、相次ぐ公共料金の引き上げを一つの核としまして、これはまた秋は大変な物価上昇になるのじゃないかと、国民はみんな心配しているわけです。またインフレになるのじゃないか、こういうような非常な心配があるわけですが、こうした円高の問題等、輸入価格等もうんと下がってきているわけですから、ただ政府が傍観しておって何の反映もさせないというような姿勢はいかがなものかと思うのですが、どのようにその点は政府として今後努力するのですか。
  185. 河本敏夫

    ○河本国務大臣 円高になりますと、その分だけ輸入する物資が安くなるのは当然でございますが、しかし過去数年の為替レートの変動をながめてみました場合に、円高になれば必ず物価が下がるかといいますと、過去の例は残念ながらそう言い切れないと思います。いま物価問題が非常に大きな大事な問題でございますから、円高になって原則としては理論上下がらなければならない物価というものが下がらないということであれば、大変遺憾でありますから、政府としてはそういう点を十分考慮いたしまして、物価に反映するように指導していかなければならぬと考えております。
  186. 近江巳記夫

    ○近江委員 指導するとおっしゃっても、効果は現時点におきましても出てないわけですよ。具体的にどういうところにどういう指導をされるのですか。
  187. 濃野滋

    ○濃野説明員 為替が円高になりまして、円高の結果が、いわゆる物価という面から見ますと、確かに物価を引き下げる、あるいは物価の騰勢を弱める力があることは、これは論理的にそういうかっこうになるわけでございますが、ただ問題は、円高の結果は、国内に品物が入りましてから流通段階を通り、生産者の手元に行き、それがまた原料として製品ができて出ていくという複雑な段階がございますので、円高の結果そのものを直ちに反映することはなかなかむずかしいと思います。ただ、ただいま申し上げましたように、円高傾向というものがございますと、物価の上昇の圧力をそれだけ弱める力はある、こういうふうに私どもは考えております。
  188. 近江巳記夫

    ○近江委員 だれだってそんなことは考えているわけですよ。だから、政府として具体的にどう指導してそれを反映さしていくのか。あなた方、理論だけでそうなるのが筋だというだけのことであって、それじゃ何もつかみどころがありませんよ。これだけ卸売物価がどんどん上がってごらんなさいよ。そういうインフレマインドというものが定着してくる。さらに、卸売物価の反映というのは数カ月後にはまたくるわけでしょう。手の打てるところについては努力すべきじゃないですか。そんな漠然としたことでいいのですか。どういうふうに努力しますか。
  189. 喜多村治雄

    ○喜多村説明員 円高になりますれば、その分だけ理論的には当然価格が引き下げられなければならない、にもかかわらず、それが予期したとおりに下がらないという事態があることにつきましては、通産大臣、産業政策局長からお答えがありましたとおりでございます。  ただ、卸売物価につきまして最近の卸売物価のことを多少御説明させていただきますと、七月に対前月比一・〇%が掲出されたわけでありますけれども、このうちの半分は電力料金の改定でありますとか、ガソリン税でありますとか、あるいはそういった特定でき得るものが半分入っておりまして、これらが一時的に集中したものと見ております。したがいまして、確かに卸売物価指数の将来につきましては相当警戒的に見なければなりませんけれども、しかしこの調子が一本調子でいくというようなことは考えておりませんで、秋以降になりますればまた正常なことに返ってくるだろうという期待をいたしております。  その一つ理由は、いまお話しのございました円高基調がここ何カ月は続くであろうという期待がございます。もう一つは、景気が回復してまいりますればその分だけ状況がよくなるわけでありますから、コストを引き上げる要素が薄められるということでありますから、こういったことを期待いたしますならば、いまのような状態が秋以降も一本調子で続いていくということは考えておりません。  この場合に、しからばどのような形で円高の効果を卸売物価を押し下げていく方向に動かしていくかという政策的なものがございますけれども、円高そのものあるいは円高基調そのものを政策的な問題として人為的に変えていくということは、これは確かに先ほど通産大臣のお答えがございましたように邪道であるかと思います。したがいまして、できる限り乱高下は避けなければなりませんけれども、乱高下でない限り従来の推移に任すということが一つ政策的な手段でありますが、そういった成果を踏まえていきます場合には、できるだけ先高がインフレでないという心理的な要素を十分に企業の内部でも知ってもらわなければいけませんので、このメカニズムというものを政府としても十分に知ってもらうようなPRが必要であるかと思います。  それからもう一つは、水際から内部に入りました段階での卸売物価指数の上昇をとめることは、この円高とも兼ね合いますけれども、もちろん競争政策の充実でありますとか、あるいはカルテルに走りやすい体質をとがめていくとか、そういった一般的な物価対策というものが十分必要であるかと思いまして、政府におきましてもこの問題を非常に重視いたしまして、物価担当官会議等でも監視及びPRに努力するというようなことを進めておる次第でございます。
  190. 近江巳記夫

    ○近江委員 円高の傾向がずっと続いておると同時に、国際商品の市況というものがいま下がってきているでしょう。この二つの影響が出てきているのですから、これはもう物価安定ということにとっては非常に大きな武器になると思う。いま国際商品の市況というのはどういうふうになっているのですか。
  191. 喜多村治雄

    ○喜多村説明員 商品相場指数を見ます場合のロイター指数、一次産品につきまして申し上げますと、八月十日が一四五四という指数でもって底になっておりまして、自後ややまた戻しておりまして、現在の段階では、定かに数字を承知いたしておりませんけれども、一八〇〇台ぐらいのところにあるかと思います。したがいまして、この傾向はやや高目にございますけれども、六月あるいは七月の、七月七日が一番高いときでございますが、そのときから見ますならば相当に下がっておりますことは、いま御指摘がございましたとおりでございます。これを物価指数に反映していくということは非常に重要なことであると思いますが、実はこのロイター指数の下がりぐあいは、すでにそのときの卸売物価に直接的に反映しておりますので、現在、卸売物価の中にはそのことがもうすでに入って、織り込み済みであると、こういうように御理解いただきたいと存じます。
  192. 近江巳記夫

    ○近江委員 それから、こうした電力料金の引き上げであるとかいうようなものの波及、便乗値上げということがこわいわけですね。こういうことがずっと浸透していきますと、さらにインフレ心理というものがまた蔓延してくると思うのです。こういう便乗値上げということについては、これは徹底して抑えなければいかぬと思うのです。これについては通達をするなり、あらゆる努力をしなければいかぬと思うのですね。これについては政府としてはどういう具体的な対策をとっていますか。
  193. 喜多村治雄

    ○喜多村説明員 個別物資に対します政府の介入ということは、必要なときには効果を持ちますけれども、余りそれが出過ぎますとかえって逆効果をもたらすことがございますので、直接的に価格をどうこうしろというようなことで介入するつもりはございません。ただ、御指摘のように便乗という形で出てまいりますものにつきましては、十分な監視というものが前提にあると思います。  現在の段階におきましては、私どもの石油ショックにおきます経験が非常に貴重なものでございまして、現在の段階では、関係各省及び都道府県を通じまして、どういった価格がどのようなところでどのように出てくるかということの把握は十分いたす仕掛けができ上がっておりますので、そういった段階関係各省寄り寄りその情報を交換いたしまして、もし便乗が行われる、不当に便乗が行われているというような場合におきましては、関係各省それぞれに行政指導をしていただくということで、担当官会議では申し合わせはいたしておる次第でございます。それ以上に法律的な措置等々につきましては、現在のところは考えておりません。
  194. 近江巳記夫

    ○近江委員 そうすると、通産省は経企庁に言われないと動かぬわけですか。あなたは少なくとも国民生活について重大な責任を持つべきですよ。そんな一方的に、電力料金にしてもこれだけの大幅な引き上げをしておいて、便乗引き上げについては経企庁からいわゆるチェックを受けなければ手が打てない、そんなことはないと思いますけれども、通産省自体の努力はどういうようにやっておりますか。
  195. 濃野滋

    ○濃野説明員 卸売物価の動向につきましては、通産省といたしましても非常な関心を持って注目をいたしておりまして、特に主要な品目につきましては、それぞれの物資を担当しております原局におきまして、その動向、それから業界動き等につきましては、それぞれのところで十分トレースをしていくという体制を固めております。また、特に主要な物資につきましては、来年度からは主な品目を幾つか選びまして、これを直接、しかも毎月、定期的にその動向等を把握する体制をつくりたい。また、できますれば本年度中にも予算的なバックアップができますればそういう体制もつくり上げたいということで、私どもいま検討を進めておるところでございます。
  196. 近江巳記夫

    ○近江委員 それはぜひ早くやってくださいよ。どうもいままでの態度を見ていますと、生産制限をさせてみたり、これが非常にこの卸売物価を上げてきた一番の火つけですよ。国民の生活ということをもっと通産省は重視をして、いままではどうしてもメーカーの立場ばかりに立っているが、そんなことをしていきますと、これは大変なことになりますよ。だから、いまおっしゃったそういうことを早急にきちっと実行に移してもらいたいと思うのですね。円高の問題であるとか、海外の商品市況もそうして下がってきておるわけだし、いろいろそういう要因があるわけですから、もっと企業に対して努力させなければいけませんよ。いまこういう便乗のムードが来ていますから、非常に危険な状態です。これはうんとひとつ通産省としては努力していただきたい、これを特に申し上げておきます。  それから、七月二十日に開催されました貿易会議におきまして、本年度の貿易見通しというのをまとめているわけですが、これによりますと、五十一年度の輸出は通関ベースで政府見通しよりも四十億ドル前後多い六百七十億ドル前後、輸入は同じく十億ドル前後多い六百九十億ドル前後の見通しをお立てになっているわけですね。このように見てまいりますと、わが国の大幅黒字見通しにつきまして諸外国からの圧力及び貿易制限の懸念が心配されるわけですが、こうした貿易収支の不均衡是正に対してどのように対処されていくのか、また輸入の拡大策については具体的にどのようにお考えですか。
  197. 河本敏夫

    ○河本国務大臣 先月二十日の貿易会議でことしの輸出、輸入の目標が拡大修正をせられましたことは御案内のとおりでございます。この結果、その目標どおり貿易が行われるといたしますならば、ことしの貿易上の黒字は六十億ドル台である、こういうふうに想定をいたしております。しかし、一面におきまして貿易外の収支の赤字が六十七億ドルばかりございまして、それを相殺いたしますと国際収支全体としてほぼ均衡がとれるという状態が、先月二十日の大体の見通しの概要でございます。  しかし、いずれにいたしましても六十億ドル台の貿易上の黒字ということになりますと、しかもそれがアメリカ、ヨーロッパ等の先進国で大幅に伸びておるということを考慮いたしますならば、こういう状態が長く続くということは好ましい傾向ではございませんので、できるだけ日本といたしましても収支の均衡がとれるような努力をしなければならぬわけでありますが、しかし根本的に日本の景気が回復いたしまして外国から物を買う力というものがついてまいりませんと、なかなか本格的な解決ができないわけでございます。でありますから、国内における景気の回復ということが貿易収支の均衡を図る最大の決め手でなかろうかと私は考えております。もちろんそれ以外にも、部分的に輸入を増加させるためのいろいろ具体的な手段は積極的に考えておりますが、根本といたしましては景気対策が必要である、国内における景気の回復というものが絶対的な条件である、かように考えております。
  198. 近江巳記夫

    ○近江委員 国内における景気回復、これは当然大切なことですが、私が先ほど冒頭に申し上げた物価の問題、物価の安定と、これの両立です。ともすれば景気ということになってきますと、企業にはずみをつけてある程度インフレ傾向と、どうしてもそういう立場に流されやすいのですよ。その辺の調整については大臣はどういう決意をしているのですか。
  199. 河本敏夫

    ○河本国務大臣 景気が回復傾向に向かいましても、物価が上がりますとこれはまた足を引っ張る大きな要因になるわけでございます。しかも国民生活に多大な影響が出てまいりますから、やはり景気の回復と物価の安定ということを並行的に進めていかなければならぬと思います。そうでなければ本当の意味の景気回復にはならぬわけでございます。でありますから、景気の回復を進める場合に物価対策がきわめて重要であると理解をいたしております。
  200. 近江巳記夫

    ○近江委員 そういう決意と認識をされておるのであれば、私が先ほど申し上げたような便乗値上げ等は、今後少なくとも通産省は責任を持って絶対やらさないようにひとつ厳重な監視をしていただきたい、これを特に申し上げておきます。  それから、通産大臣は六月二十一日の記者会見で、いわゆる経済見通し等の拡大修正をしたいというようなことをおっしゃっておるわけですが、これはどういうことなんですか。そのとおりですか。
  201. 河本敏夫

    ○河本国務大臣 私は、たとえば先月貿易の見通しが改定をされましたが、この貿易の見通しの改定がそのまま行われますと、ほかの経済的な要因が年初に想定いたしましたとおり実現をいたしますならば、これだけの貿易関係の要因だけで経済見通しというものは相当大きくなると思います。それから同時に、ことしのOECD全体の経済見通しというものは何回か修正されまして、いま平均五・五%と想定されておるわけであります。昨年はマイナス一・三%と聞いておりますので、昨年から比べますと五・五%というのは相当大幅な回復になると私は思います。  日本の場合は一−三月の景気回復が顕著でございましたので、昨年度はプラス三・一%という成長でございましたから、昨年のOECD全体の数字、それから日本の数字を考慮いたしましてことしの景気動向を考えますと、貿易の問題とは別に、私は日本においてもなお当初に想定をいたしました経済成長率が上回るという可能性は十分ある、こういうふうに考えてはおりますし、また新しい五ヵ年計画では一応六%台という成長の見通しが掲げられておりますけれども、これとても国際経済情勢がいい方向に向かいませんと、日本が勝手に六%ですよというふうな目標を掲げましても日本の思惑どおり進まないのは、これは当然のことでございます。  でございますから、五ヵ年計画にも、その計画の前半においてやや平均の経済成長を上回ることが望ましいというふうに書いてありますのは、前半においては国際情勢が多分うまくいくであろう、こういう想定のもとに書かれておるのではないかと私は考えておるわけです。そういうことをいろいろ総合的に判断いたしまして、年初に設定をいたしました経済成長見通しというものは、現時点におきましてもある程度上方に修正される、拡大修正される可能性が非常に強い、私はかように考えております。  しかし、これは政府部内におきまして十分議論をいたしまして、その上でコンセンサスを得て決めなければならぬことでございますので、以上申し述べましたのは私の考え方でございまして、まだ政府部内における検討というものは結論は出ておりません。それはある程度の実績が出ました上で、その実績を踏まえて結論を出す、相談をする、こういうことになっておりますので、先ほど申し上げましたことは私の私見でございます。
  202. 近江巳記夫

    ○近江委員 公共料金の中でも電力料金というのは非常に大きいわけですね。きょうは喜多村さんも来られておるわけですから、政府見通しの卸売物価四・八%、消費者物価八%、あと承知のようにガスあるいは国鉄、電信電話、これは法案が通ればの話でございますが、メジロ押しになっておるわけですね。事務局としてこれは実際に達成できるのですか。どうですか。
  203. 喜多村治雄

    ○喜多村説明員 まず消費者物価でございますが、消費者物価は昨年十月以降、前年同月比ずっと一けたで推移いたしておりまして、最近に至るまでその安定基調は変わっておりません。ただ、若干の公共料金の上がりがございましたために、去年よりはやや上がり方が高いとは申しますものの、一応われわれの推定どおりに動いておる、こういうふうに考えております。     〔武藤(嘉)委員長代理退席、橋口委員長代理着席〕  問題は卸売物価指数でございます。卸売物価指数は、先ほどもずっと触れましたように、七月に前月比一・〇%上昇いたしました。これは先ほども触れましたように、一部は電力料金あるいはガソリン税の関係、あるいは鉄鋼の一部値上げの反映ということもございまして、特定いたしましたものを除きますならば〇・五というようなことでございます。しかしながら、私たちが想定いたしました推移よりもはるかに高いところを推移していることには間違いございません。今後、八月も鉄鋼の造船、自動車向けの出荷分でありますとか、あるいは関西電力等々が出てまいりますし、それ以後も九月までもややそういった早いテンポが続いていくことも考えられます。  しかしながら、いまのような値上がりの状況と申しますのは、そういう特定いたしましたものを除きますならば、現在の段階では生産財と申しますか、原材料が中心になっておりますので、これが果たして投資財でありますとか、あるいは消費財のところまで流れてくる間にどういうような環境によってこれが抑えられてくるかどうかということは、今後の問題でございます。いまのところ消費財というのは安定いたしております。したがって、今後卸売物価の関係消費段階へ波及してくる過程におきまして、できるだけ、先ほど先生の仰せになりましたように、価格上昇に対する心理的な抵抗感というものを十分につけていくというようなことをいたしまして、その転嫁を容易でないようにしていくならば、これまた消費者物価へのかかわりというのは少なくなるものと見ております。  したがいまして、問題は卸売物価でございますけれども、先ほど申し上げましたように、卸売物価は私たちが想定いたしましたよりもやや高めの推移ではございますけれども、今後の経済事情、特に卸売物価と申しますのは、消費者物価と違いまして、商品相場と申しますか、商品需給あるいはその当時の金融の事情等々によってきわめて敏感に左右されてまいります。したがいまして、私たち消費者物価を一応の努力目標と置いておりますのに対しまして、卸売物価指数はどちらかといいますと見込みの数字で考えておりますので、政策対応のレベルとしてはやや違うものとして理解いたしておりますけれども、いずれにしてもこういう状況におりますことを十分認識いたしました上で、先ほど先生のお話がございましたように、円高でございますとか、景気回復に伴います生産の増大による圧力の弱めというようなことも期待いたしまして、できるだけわれわれの目標を達成すべく努力していくということを考えておりまして、目下のところはできるだけそれに近づけていくという見込みをつけておるわけでございます。
  204. 近江巳記夫

    ○近江委員 これは先ほども申し上げましたが、特に便乗値上げはひとつ厳重な監視体制をとってもらって、やかましく言ってください。特に要望いたしておきます。  それから、現在の九電力体制につきましては、料金が地域的にいわゆる格差が拡大してきておりますし、あるいは電源立地地点が錯綜しておる、あるいは遠隔化等、基本的なあり方の問題につきまして非常に矛盾が出てきておるように思うのです。今後原子力発電を非常に推進をしていくということを政府として決めておられるわけですが、昭和六十年度四千九百万キロワットは電力業界として達成困難である、三千五百万キロワットぐらい下げてくれ、こうきているわけですね。その要請に対して政府はどう思うかという問題が一つであります。  それから、この九電力体制というものを合理的に再編成考えなければいけないのじゃないか、これについて政府はどのように考えておられるか、この二点についてお伺いしたいと思います。
  205. 橋本利一

    橋本説明員 六十年におきまして、原子力発電を四千九百万キロワットまで持っていくという計画があるわけでございます。これを実現するためにはいろいろな面で非常な努力を必要とするかと思いますが、将来の電力供給の安定ということを考えますと、一面環境の保全あるいは安全性の確保という点に留意しながらも推進していくべきものではなかろうか。これに伴いまして、いわゆる核燃料サイクル等につきましても検討を加えながら実現の方向に持っていきたいと考えておるわけでございます。  それから、第二の御質問の九電力体制をどうするかという問題でございますが、われわれは今後とも、共同開発等を含めまして広域運営によって、現在の九電力体制と申しますか電発を加えまして十電力体制と申しますか、現行の体制前提として、その中で効率的な電力供給の安定化を図ってまいりたいと考えております。
  206. 近江巳記夫

    ○近江委員 今回の電力料金引き上げ問題につきましては、非常に甘過ぎる政府の査定というものが国民から厳しい批判を受けているわけですね。そこで、国民としては、電力必要性はだれだってわかっておりますよ、原始生活に戻りたくないわけですから。そこで、いわゆる納得するためには原価を公表せよ、経理を公開しなさい、これはどこの公聴会でも出ているはずですね。これは今後私はどうしてもやるべき問題だと思うのです。こんな独占企業はありませんよ。それをすること。  しかも、値上げをしておいて、いわゆる政治献金をしたり、あるいはまた天下りをどんどんと受け入れる、こういうようなことは正していかないと、こういう公益事業というものは国民とともにあるわけですし、これほどの独占企業はないわけですから、基本的なことを政府としても真剣に考えなければいかぬと思う。  私がいま何点か申し上げたそういう点については、どういう見解を持っていますか。
  207. 橋本利一

    橋本説明員 電力料金の改定申請に当たりましては、従来からも申請書をそのまま希望する人に閲覧に供するようにいたしておりますし、また必要に応じて一般的な統計等の数字を極力公表いたしておるわけでございます。そういったできるだけ消費者に対して事情を知らしめるような形において措置するとともに、われわれといたしましても、申請書を受け付けた後、事情の聴取あるいは特別監査、公聴会等を経まして、法律に基づくいわゆる原価主義に即して厳正な査定を実施いたしておるわけでございます。  後段の御指摘でございますが、これは公益事業として電力事業の社会的責任という立場におきましても十分自重自戒してしかるべきものであると思いますし、われわれもそういった方向で指導してまいりたいと考えております。
  208. 近江巳記夫

    ○近江委員 ひとつそういう点は十分よく指導してもらいたいと思うのです。  それから、大体関連会社関係のないような観光ホテルであるとか、一遍電力会社全部調べてごらんなさい、そういうことが大変な国民の批判を受けているわけです。公益事業たる精神に立って、やはり国民の理解と協力を得ることができるようなそういう姿勢に改めていただきたいと思います。それを特に注文いたしておきます。今後の姿勢を見守っていきたいと思います。  それから、公取委員長にお伺いしたいと思いますが、政府は八月三日の閣議におきまして、経済関係閣僚協議会のメンバー公正取引委員長をオブザーバーとして参加させることを決定したわけですが、あなたはこれに出られたわけですね。当然御出席なさるにつきまして、いろいろその背景であるとか理由であるとかお聞きになった上で出られたと思うのですが、どのようにお聞きになったわけですか、またどのように理解されたわけですか。
  209. 澤田悌

    ○澤田説明員 今月の十日、経済関係閣僚協議会に出席をいたしました。この会議にオブザーバーとして出てはどうかという話がございました。私、就任以来、公正取引委員会といたしましては、国民各界、各分野、各方面とできるだけ密接に接触をして、独占禁止法をより一層理解してもらうと同時に、私どもも各方面から深く勉強いたして各方面に関する理解を深めたい、このように考え、そういった考え方も表明いたしておるのでありまして、そのように努めてまいりましたが、今回の経済関係閣僚協議会オブザーバーとしてどうかということにつきまして、そういう趣旨からこれは公正取引委員会といたしましても有益であると考えまして、出席をいたすことにいたした次第でございます。  独占禁止法上、その職権行使の独立性について制約を受けはしないかといったような御懸念も一部にあったようであります。報道機関等もそういう御懸念を書いたところもございますが、私としては全くそういうことは考えておりません。職権行使の独立性はいささかも制約を受けるものではない、かように考えておる次第でございます。
  210. 近江巳記夫

    ○近江委員 あなたはいささかもそういう職権行使について制約を受けないとおっしゃっていますが、はたはみんな心配しているわけですよ。その辺の行動をおとりになるにつきまして、十分ひとつ国民からそういう心配を受けないような姿勢に終始してもらわないと、その点は皆心配しておるわけです。今回のこの件につきましても、たとえば独禁法改正に着手して財界から反発を買った三木総理が財界におもねた処置ではないか、こういうような批判も出ているわけです。だから、公取委員長また公取委員会について国民は非常に期待しておるわけですよ。月光仮面みたいに思っておるわけです。その人が、そう心配されるような——あなたはそうではないとおっしゃるけれども、これは出てしまったことは仕方ありませんから、いずれにしても今後の行動については十分ひとつその点、国民がじっと見ている、いささかも不安を与えない、そういう姿勢で終始していただきたい、これは特に要望いたしておきます。  それから、多国籍企業の問題でございますが、前回私は、米国が公取委に対して多国籍企業のカルテルなど独禁法違反行為を規制する二国間協定を提案をしてきたことにつきまして、この協定の内容あるいはメリットという点について伺ったわけですが、その後どういうように進展しているのですか。締結の時期というものはいつごろのめどを立てておられるのですか。
  211. 澤田悌

    ○澤田説明員 前回先生からお尋ねがございましてお答えをいたしましたが、その後格別の進展はまだ遺憾ながらございません。話が正式のものとなりました段階で、当方としても積極的に検討を進めてまいりたいと存じております。したがって、その内容等についてもまだ申し上げられる段階ではございませんのですが、アメリカがすでに西ドイツと協定を結んでおります。それによって向こうでいろいろと提案してくるであろう内容を考えてみますと、第一が競争制限行為に関する審査、訴訟手続等に関する協力援助、それから第二が法律を改正するというような場合の調査の協力援助、それから違反行為の通報、また相手国に所在いたしまする企業等からの情報の入手等がその主なる内容になろうかと思います。  もちろんこういうことも、秘密保持等それぞれの国の事情がございますから、そういう制約のもとではありますが、こういうような内容になろうかと思いますが、もう少し具体的になりましたら、先ほど申しましたように、当方としても積極的に取り進めてまいりたい、かように考えておる次第でございます。
  212. 近江巳記夫

    ○近江委員 将来、こういう日米協定だけでなく、他の諸国ともこうした協定を結んでいかれるお考えを持っておられるわけですか。
  213. 澤田悌

    ○澤田説明員 国によりますけれども、積極的に考えてまいりたいと存じております。
  214. 近江巳記夫

    ○近江委員 三木総理は通産省に対して多国籍企業の腐敗行為の法的規制についての検討を指示したということを聞いておるわけですが、通産省としてはそれをどう受けとめて、いまどういう動きをやっておるのですか。
  215. 濃野滋

    ○濃野説明員 多国籍企業のいろいろな行動の規制の問題につきましては、まず私どもといたしましては、この問題が非常に国際的なコンセンサスを必要とする問題である、こういうふうに認識をいたしております。  御案内のように、OECDの場あるいは国連の場でいろんな議論が行われまして、まず一つは、OECDで多国籍企業の行動の指針と申しますか、これが六月に決定になりました。これを受けまして、私どもは七月の初めから関係団体五十数団体にその遵守方の指示をいたしました。今後そのトレース等をやっていきたい、こういうふうに考えております。また、国連の場におきましてもそういう行動基準を作成するための作業部会ができまして、引き続き検討が進められます。そのほかに経済社会理事会におきまして、この八月に、アメリカの提案によりまして、今後多国籍企業の不正行為の取り締まりに関する検討の場をつくるということの決定が行われております。  ただ、これらの問題は、直ちに国内の法的規制になるかどうかということにつきましては、まだ若干の問題がございます。と申しますのは、多国籍企業の行動の規制につきましては、なかなか法的規制になじまない面もいろいろございますので、私どもはまず各企業の自主的な、みずからを戒めていくということにつきまして、政府としても十分それをバックアップをし、それをまた監視をしていく、こういうことで進んでいきたいと考えておるわけでございます。
  216. 近江巳記夫

    ○近江委員 今度は石油備蓄の問題ですが、七十六国会におきまして備蓄法が成立して、六十日から九十日、こういうように増大計画をスタートさせたわけですが、それから数ヵ月して大臣は今度は百八十日と、その倍を出してきておるのですね。わずか数ヵ月で、しかも膨大な、九十日の倍ですよ、そういう案を出された、その背景というものは何ですか。しかもまた、そういう大きな計画はできるのですか。その点について、ひとつ簡潔にお答えください。
  217. 河本敏夫

    ○河本国務大臣 現在の石油備蓄政策は、昨年一連の法律を通していただきまして、その法律に従いまして昭和五十年度から五十四年度までの五ヵ年間に六十日備蓄を九十日備蓄に順次増強していくというのが骨子でございます。それに対して政府の方はできるだけ援助をしてその実現を図る、こういうことでただいままでのところは順調に進んでおります。  私が先般、将来わが国といたしましては百八十日ぐらいの備蓄というものを考える必要があろうということを申し上げました背景は、二、三ヵ月前にアメリカのエネルギー庁長官のザーブさんという方が日本に参りまして、そのときの話では、アメリカは現在備蓄は民間が中心であって、アメリカの石油消費量のほぼ六十八日分を持っておる、輸入する部分だけにそれを換算すると約百七十日分に該当する、しかしそれだけでは中東情勢から考えて大変不安である、自分は中東諸国を回って日本に来たわけだが、戦後の推移及び現状を考えると大変不安であるので、将来は民間のそういうふうな備蓄に加えて、政府の責任において別に百八十日分の備蓄というものを考えたい。百八十日といいますのは、十年後におけるアメリカの輸入量の百八十日分だそうでございます。そういうことを決定をして、それに必要な施策というものを着々実行しておる、こういう話でございました。  また、現時点におきましてヨーロッパ諸国の実情は、少ないところで七十五日、多いところは百八十日になっております。重立った国だけ見ましても七十五日から百十日というような水準でございまして、日本の場合はアメリカやヨーロッパに比べますとエネルギー事情、特に石油事情がきわめて深刻でありまして、アメリカやヨーロッパにおける動き等を考えますならば、昭和五十四年度において先ほど申し上げました九十日備蓄を達成したその後において、さらに日本としては世界各国の動き等を考えながら百八十日備蓄というものを研究していく必要があるのではないか、少なくとも研究はしておかなければならぬ、こういうことを考えて、そういう趣旨の発言をしたわけでございます。
  218. 近江巳記夫

    ○近江委員 それは備蓄はすればするほどいいわけですよ。いいけれども、備蓄をするためには膨大な金も要るわけでしょう。また、それが全部消費者に転嫁されてくるわけですよ。コストを持たなければならぬわけです。石油基地一つつくるについても、いま大変な公害問題とかいろいろな問題が各地で起きているわけでしょう。そういう対策については、やってないとは言いませんが、非常に弱体な対策しかしてない。そういう基本的なことを放置しておいて、ただ百八十日だということは、あらゆる環境保全の問題であるとか、防災体制であるとか、資金のそういう点についてもどうするか、国民にそういう負担がかからないようなことをあわせて、特にそういう計画を立てた上で、十分石橋をたたいて進んでください。  それはもうどこの石油備蓄基地を見たって非常に問題があるし、特に世界的に地震も発生してきておるわけですし、非常に防災体制というのは不備なように思います。そういう点、先走りばかりせずに、そういうことをよく念頭に置いてもらいたい、特に申し上げておきます。  それから、中小企業庁長官、新たに就任されてまだ一回も答弁なさっていませんが、特に中小企業の倒産が千二百件台でしょう。これは何ヵ月続いているのですか。あなたはまだ就任されて間がないわけですけれども、しかし長官として大変な責任がありますよ。こういうような中小企業の困難な状態をどうするのですか。これからもうすぐ年末が来ますよ。これから年末また年度末にかけて、あなたは新長官に就任されて中小企業救済のどういう対策を持っておられますか。
  219. 岸田文武

    ○岸田説明員 私、就任いたしましてから、中小企業の方々に最近の状況をいろいろ聞いております。統計を見ておりますと、生産指数は若干上向きになってきておりますし、また個々のアンケートでも多少よくなったという声が多いようでございますが、私、やはり幾つかの問題があるように思います。  一つは、生産指数の水準が上がったと申しましても、ピークに対しましてまだ八八%の水準でございます。一番底のときには二五%ぐらい落ち込んだわけですが、いまの水準でもようやく半分を取り返したという程度でございまして、まだまだ生産水準が低い状況でございます。  それから第二には、いま御指摘がございましたように倒産がかなり多い。千二百件というような水準でございまして、景気が上向いたにもかかわらず、倒産の水準が依然としてかなり長く悪化しておるということ。  さらに第三の問題としては、これからの状況はいろいろ変ってくるかと思いますが、いまの状況から見ますと業種別にかなり格差が見られる。一部の業種ではかなり活況を呈しておりますが、それがほかの業種にいきますとまだ非常に苦しい状況にある、こういったところが問題ではないかと思っておるところでございます。  私どもといたしましては、これだけ長い不況を持ちこたえて今日に至った中小企業の方々に、何とか最後の踏ん張りをしていただいて、この苦しい時期を乗り越えるようにお手伝いするのが私どもの使命であると思っておるところでございます。  具体的な対策といたしましては、一つはやはり企業資金繰りの問題であろうかと思います。この意味におきまして、今年度は中小企業機関の融資につきましてもある程度の量を確保いたしておりますが、さらに加えまして、去年の十二月から保険制度についても限度額の引き上げ等の措置をとったわけでございます。これらの制度をフルに生かし、また特に期限が到来をしてどうにもならないというようなときには、それはそれとして弾力的に対応するというようなこともきめ細かくやってまいりたいと思っておるところでございます。それと並びまして、倒産に関連をして巻き添えを食うというようなことになっては大変でございますので、倒産関連の保険制度あるいは融資の制度、こういった面についても、事が起こるたびに機動的に対処してまいりたい、こういったような手を打ってまいりまして、何とか中小企業の人々が次の経済の発展の推進力になっていただくように積極的な手を打ってまいりたいと思っておるところでございます。
  220. 近江巳記夫

    ○近江委員 もう時間がありませんから終わりますが、特に業種間で非常にアンバランスな面が出ているわけですから、そういう非常に厳しいところについては特に重点的な対策をとってあげてほしいと思うのです。千二百件台というのはずっと一年以上続いているでしょう、異常事態ですよ。本当にその痛みを政府のえらい皆さん方は全部感じてもらわなければいかぬ。そんなのんべんだらりとした、いままでやってきたことの繰り返しの対策ではだめですよ。もう異常事態ですから、十分ひとつ中小企業庁を中心にその対策をとっていただいて、特にこれからは年末、年度末、正念場を迎えるわけですが、今度は十分な対策をひとつとっていただきたいと思います。この中小企業の問題は今後委員会ごとに、あなたはきょうは初めてでもう時間もないししますから聞きませんけれども、どういう対策をとっていって、これからどうしていくかということをこれから毎回聞きますから、十分ひとつ準備をしていただきたい、それを申し上げておきます。  これは非常に大変な問題でございますから、十分ひとつ通産大臣としても集中して対策をとっていただくように要望いたしておきます。最後に大臣の決意を聞いて、終わりたいと思います。
  221. 河本敏夫

    ○河本国務大臣 日本の産業にとりまして中小企業の占める役割り、また果たす役割りというものは非常に大きなものがございますので、従前もいろいろ対策を立てておりますが、さらにその対策を徹底させまして、御指摘のような点につきまして十分配慮をしてまいりたいと思います。
  222. 橋口隆

    ○橋口委員長代理 玉置一徳君。
  223. 玉置一徳

    ○玉置委員 私は、造船産業の不況克服に関連いたしまして、プラント輸出の問題につきまして大臣の所見を承ってみたい、こう思います。  御案内のとおり、わが国の造船業が非常な不況に際会いたしまして、先般海造審ではこれに対する構造的な思い切った縮小政策を打ち出したのですが、私は、いままで日本の輸出の三本柱の一つを占めておった造船業が、必要やむを得ずとはいいながら、海造審の答申は若干消極的過ぎるのじゃないだろうか、こういう意味で、いままさに躍動しようと思っておるプラント輸出の問題に相当な力をいたさなければならないという前提のもとに、若干の質問をいたそうと思います。  大臣、五十一年度プラント輸出を大幅に拡大するようなおつもりがあるように聞いておりますが、どのくらいに拡大することができるのか、予想あるいは御決意をお聞かせいただきたいと思います。
  224. 河本敏夫

    ○河本国務大臣 景気対策上貿易の占める地位というものは非常に重大でございまして、ことしは景気回復対策といたしまして貿易政策というものを重視いたしております。貿易対策の中におきましてもプラント輸出というものを最大課題に取り上げておるわけでございます。昨年は年間約五十億ドルのプラント輸出がございましたが、ことしはその二倍半、百二十億ドルを目標に設定をいたしまして、それに必要な資金、それから保険対策、あるいは若干の税制等の対策のほかに、大型プロジェクト等に関する事前調査に対して補助金等を考慮する若干の対策を考えたわけでございます。  なお、プラント輸出を伸ばすための対策がそれで十分かといいますと、なお二つ三つ残っておりますが、これは来年度以降取り上げて実現をしていこう、かように考えておりますが、いずれにいたしましても、昭和五十一年度におきましては大きな目標を掲げたわけでございます。現在までのところは大体目標どおり進んでおると思います。ただ、日本だけではございませんで、ヨーロッパ諸国等もこのプラント輸出に非常に大きな力を注いでおりますので、最近は競争が大変激しくなっております。そういう激しい競争に打ちかたなければなりませんので、そういう面での配慮も必要だと思います。  それから、御参考までに申し上げますと、昨年までの世界におけるプラント輸出の最大のシェアを占めておりました国は西ドイツでございまして、世界全体の約二五%を占めております。その次はアメリカで、約二〇%でございます。それからフランスイギリスと続きまして、もちろんこれは相当落ちますけれども、さらに五番目が日本で七、八%、こういう水準でございますが、ここ一両年の間にドイツ、アメリカと並ぶ大きなプラント輸出の力を持ちたいというのがいまの目標でございます。
  225. 玉置一徳

    ○玉置委員 いまのお話のように、一挙に百二十億ドル、本当に貿易の主たる大宗にもならんとしておるわけであります。そういうようなことは引き合い状況もしくは外国のそういう比率等々からお考えなすったのだと思いますが、特に一挙に百二十億ドルを達成し得るような根拠あるいは引き合いの状況ということについて、政府当局から、特別にこういうものが大きく進歩し得るというような心証を得られる諸要件がありましたらお聞かせいただきたい、こう思います。
  226. 河本敏夫

    ○河本国務大臣 二、三ヵ月前にプラント輸出の引き合い状態を調べてみましたが、十大商社で引き合い中のものが約三百七、八十億ドルございました。それからそれ以外の、メーカーが直接引き合っているもの、あるいは中堅貿易商社等の引き合いを入れますと、引き合い中のものがざっと五百億ドルあったと思います。  百二十億ドルといいますとその四分の一を実現すればよいわけでございますが、しかし先ほども申し上げましたように、ヨーロッパ諸国は大統領みずからその国のプラント輸出に取り組んでいく、個々の案件にまで大統領みずからがタッチして条件を決めていく、あるいはまた、必要とあらばそれぞれの国の外務大臣とかあるいは貿易大臣が直接相手国に乗り込んで直接談判をしていくということで、大きく商談成立のために力を注いでおりますので、日本といたしましても、やはりそういったヨーロッパの動き等を十分考慮しながら対抗いたしませんとなかなかむずかしいのではないかと思いますが、ただいままでのところは大体順調にいっておる、こういうふうに考えております。  その主たる相手先は、やはり中近東、それからソ連、東欧諸国、ブラジル等を中心とする中南米諸国。中国は御案内のような政情になりまして、この春まで相当な勢いで伸びておりましたプラント輸出はいま若干中断いたしておる、こういう状態でございます。
  227. 玉置一徳

    ○玉置委員 新聞で見ますと、せっかくそのもの自体では一番札を引きながら、そういった支払い諸条件とかいうようなもので最後には達成し得なかったというようなものも、いまの大臣の御答弁のようにいろいろな政治的な諸案件があるのだと思いますが、特に日本で何か考えなければいかぬような問題がございますか。
  228. 河本敏夫

    ○河本国務大臣 一番日本として考えなければならぬことは、ヨーロッパ諸国の大統領、総理大臣、それから各担当大臣が、何かあると直接相手国に乗り込んでこの問題の解決に自分で当たる。したがって、出す条件も非常に具体的であり、かつ反応が早いということでございます。日本の場合はなかなかそうはまいりませんので、この点でやはり今後積極的な配慮が必要である、こういうふうに思います。  それからなお、先ほど申し上げましたが、わが国のプラント輸出を伸ばしていくための基礎的な条件というものがまだ十分に整備されてない分野が二、三ございます。そういう分野につきましては、具体的に後で政府委員から答弁させますが、やはり早急に基本条件を整備していくということが必要であろうと思います。
  229. 森山信吾

    ○森山説明員 プラントの場合、いま先生から御指摘がございましたように、特に制度的に日本が困るような場合があるのじゃないかという御指摘でございますが、私どもがいま検討いたしておりますものの中にボンドという制度が一つございまして、これは先生御案内のとおり、日本のプラントメーカーなりあるいは海外建設業者なりが入札をする際に一定の金額を保証として積まなければならぬという制度でございます。  従来もこの制度によりましてそれぞれボンドを積んでまいったわけでございますが、御案内のとおりプラントの金額が大変大きくなっておりまして、このボンドをおおむね日本内の銀行なり損保会社が積んでおるわけでございますけれども、余りの巨額さに若干ヘジテートしてくるという例がございまして、このために入札に参加できない、あるいは落札いたしましてもプラントをとることができない、こういうような事態が間々発生するようになっております。  具体的に申し上げますと、イランで鉄道プロジェクト、全体で約五千億円の規模でございますけれども、これにつきましてはそのボンドの発行ができなかったために結局はあきらめたというケースがございます。それから、サウジアラビアの港湾しゅんせつ工事につきましても、総工費二千億円に対しましてボンドが必ずしもフォローアップできなかったということで参加をあきらめたというような事態が発生いたしておりますので、今後プラントが大型化するに伴いまして、こういう問題は日本のプラント輸出にとりまして相当大きな問題に発展する危険性がございますので、通産省といたしましては、五十二年度の新政策といたしましてボンドを輸出保険の一つに繰り込むようなことができないもの、だろうか、そういうことを現在検討中でございます。  それから第二の問題は、先ほど大臣が答弁申し上げました以外に、やはりコンサルタント企業の育成という問題がございます。これは年来私ども努力してまいっているところでございますけれども、じみちな努力を続けてまいりたいということでございまして、これは特にこの際新しく取り上げるべき問題じゃないと思いますけれども、いま申し上げましたようにじみちにやっていく問題でございますので、かなり事務的ではございますが、予算の獲得その他に引き続き努力をしてまいりたい、かように存じております。
  230. 玉置一徳

    ○玉置委員 そこで、大臣にお伺いしたいのですが、造船業をある程度構造改革して思い切った縮小の段取りをする、それで雇用面から何か手を打っていくということも必要だと思うのですが、いま言うようなプラント輸出というものを徹底的に伸ばしていくことが、一つは現在の景気も国内の要因よりはむしろ輸出の要因によって引っ張られておるというのが大体の見方であります。私は、その意味では造船業自体にもこのプラント輸出というのはかなりの転換的要素を加えるのじゃないかと思いますが、どのようにお考えになりますか。造船企業そのものの転換というものにはかなりの影響を与えると思うのですが、そのようにはお考えになっておりませんでしょうか。
  231. 河本敏夫

    ○河本国務大臣 オイルショックが起こりましてから三年たつわけでございますが、この三年の間に造船界の事情が変わりまして、いまお話しのように造船能力の過剰という問題が大きな課題になっておるわけであります。私はこの問題の取り上げ方は必ずしも賛成していないのです。なぜかといいますと、過去三ヵ年の経済の大混乱の時代、そのときにおける実績を基礎にして将来を想定し議論をするということは間違いじゃないだろうか。したがって、将来の造船事情に対する現在の見通しについては、必ずしもいま進められております作業そのものが正しいものであるとは私は思いません。  思いませんが、一応若干の能力の減少ということが課題になっておるわけでございますから、万やむを得ないとは思いますけれども、しかし一面、プラント輸出が相当大幅に伸びますと、これを陸上分野において主として大きく仕事を引き受けるのは重工業会社、つまり造船会社の陸上部門でございますから、その分野の仕事が激増するわけでございます。でありますから、一時的には造船部門の労働者をその方に転用するということも可能になると思います。将来また本格的な景気回復に伴って造船分野の仕事がふえた場合に、本来の仕事に返すということ等も可能になると思いますので、そういう意味から考えまして、私は、プラント輸出が伸びるということは、御指摘の点は正しい、こう思います。
  232. 玉置一徳

    ○玉置委員 ついでで恐縮ですが、今度ソビエトに参りました大型の民間の使節団が、取り決めというよりは一つの合意に基づいて、長期にわたってソビエトの開発に力をかすというふうに取り決められたと思うのですが、あの問題に対しまして通産大臣としてはどのような対処をしようとお思いになっているか、お聞かせいただきたいのです。
  233. 河本敏夫

    ○河本国務大臣 先般土光団長を中心といたしまして数名の方がソ連に行かれまして、ソ連政府の首脳部と長期にわたる経済協力について、主として原則的な経済協力問題でありますが、十分話し合いをされたわけでございまして、私はその報告を受けました。非常に前向きに、かつ積極的に熱心な話し合いが行われたということを聞きまして、私も大変喜んでおるわけでございます。その双方の積極的な姿勢の上に立って、この秋以降具体的なプロジェクトにつきまして話し合いが進むというふうに理解をしておりますが、いま世界的に一つの大きな課題といいますのは、ソ連及び東欧圏に対する延べ払い輸出というものが非常に大きな金額になっておるということが一つの世界的な問題になっておることはもう御案内のとおりでございます。  ことしの年末ごろを想定いたしますと、ソ連が百億ドルを相当超えるのではないか、それから東欧圏が二百億ドルを若干超えるのではないか、そういう数字が想定をされておりますが、いずれにいたしましてもソ連、東欧合わせまして三百数十億ドルという延べ払いが西側から提供される、それは大き過ぎるのじゃないかというふうな議論が主としてアメリカ側から出ておるわけでございますが、私たちはこれは大き過ぎるとは思いません。ソ連の実情あるいは東欧の実情を考えますと、なお相当伸ばしていっていいのではないか、こう思うのです。  アメリカは御案内のように昨年輸銀法が改正されまして、アメリカ自身のソ連に対する延べ払い輸出というものが非常に制限をされておりまして、仕事がやりにくいわけです。そういう意味から若干の牽制もあろうかと思いますが、それはそれといたしまして、金額そのものは私は過大であるとは思いません。したがいまして、今後も土光ミッションが中心に話し合いをされましたその基本路線がさらに具体的なプロジェクトの商談で成立することを期待しておるのが現状でございます。
  234. 玉置一徳

    ○玉置委員 質問が前後いたしまして恐縮ですが、先ほどの造船不況に対するプラント輸出と同じような意味で、前に増田エネルギー庁長官に、日本資源エネルギー確保の対策として一番重要な問題は何だろう、日本の周辺で本当に日韓大陸だなという問題が重要なんだろうか、国民感情としてはあれを合弁でやるということに若干の抵抗はあると思いますけれども、真に国策として重要で、しかもいまやることの方が望ましいとあなたは判断されますかと言ったら、先生本当はそうなんだ、こういう話でした。  韓国との交渉は何か原子力と同じで、アレルギーを持っておる日本の政界の現状でありますけれども、実際に必要となれば国家百年の大計としてやらなければいかぬ問題だったらやらなければいかぬじゃないかという話を二人でしておったことがあるのですが、新しくかわられた橋本エネルギー庁長官はどのようなお考えを持っておいでになりますか。これによって海底の掘削、しかも深い海底の掘削という仕事が日本でかなり伸びるのじゃないだろうか、こういうことも考えますので、この際にお伺いをしておきたい、こう思います。
  235. 橋本利一

    橋本説明員 御指摘の地域は、日本のすぐそばにあるということのほかに、すでに一九六八年のエカフェの調査によりましても、非常に有望な地域ということで結果が報告されておるわけでございます。したがいまして、こういう手近なところで開発を進めるということは、安定供給といった観点からいたしましても非常に重要な問題であるというふうに考えております。
  236. 玉置一徳

    ○玉置委員 そこで、大臣、もう一つ最後にお伺いしておきたいのですが、一つは、プラント輸出というものが将来の日本の輸出の増大にとりましても、それからもう一つは、いままで単体ではかなり出ておったわけでありますけれども、そういう複合嫁で知能のあれも入れましていけるということは、日本のかなりの信頼にも関係するのじゃないか。ただ、長い経験によりまして外国がきょうまで出ておったものを取りかわるわけでありますから、そこにはかなりの困難を伴うと思いますけれども、先ほどお話しになりましたような諸案件、そのほかに日本は土建業が外まで出ていくということにまだ余りなれておりません等々の困難さもあると思います。あるいはアフターケアも相当な配置をしなければならぬ等々ございましょうけれども、ぜひともこの問題については積極的に取り組んでいただきたい。  と同時に、多国籍企業のロッキード問題で大騒ぎをしておる今日であります。私は、アメリカの立案にまつまでもなく、日本もまた多国籍企業の進出のあり方につきまして思い切った規制をこの際することによって、世界各国の信頼もかち得なければならない、こういうように思うのですが、その際、外務省がやるよりは、私は通産省が主宰してそういうことを立案すべきだと思いますけれども、以上、将来のこういったプラント輸出の進出に対する大臣の決意と、それからただいま申しましたような意味の多国籍企業進出についてのルールというものをしくためのお考えをお持ちになっておるかどうか、われわれも外務委員会よりは商工委員会でやるのが当然だと思うのですが、所見をお聞かせいただきたいと思います。
  237. 河本敏夫

    ○河本国務大臣 プラント輸出が伸びるということは、私はいろんな面で日本経済に大きく寄与すると思います。  一つは、これは経済協力の一種でございますから、貿易というものはやはり経済協力を通じて伸ばしていくというのが本筋だと思います。そういう意味で、いわゆる商品貿易の伸長にも大きく寄与すると思いますし、それから同時に、わが国の産業そのものの発展にももちろん大きく寄与するわけでございます。しかも、中近東諸国を初め各国が最近非常に熱心に、かつ大規模に国づくりを進めておりますので、プラント輸出の引き合い案件というものは激増しております。だから、日本が相当伸ばしましても世界におけるシェアはそんなに変わらない、こういう状態でございます。  新しい分野はどんどんできるということでございますから、ドイツやアメリカに負けないというところまで持っていくためには、相当飛躍的に今後も伸ばしていく必要があろうかと思います。しかし、このためにはやはり外務省や大蔵省、経済企画庁、その他関係各省の機敏にして緊密な協力が必要かと思います。そういう点を十分考慮しながら、私は、当面日本経済にとりまして最大課題である、かように思っておりますので、今後とも政府としてあらゆる努力を集中しなければならぬと考えております。
  238. 玉置一徳

    ○玉置委員 多国籍企業の進出のルールづくりを通産省で御検討になる用意があるかどうか、こういうことであります。
  239. 河本敏夫

    ○河本国務大臣 御質問は、日本企業が海外に出ていく場合に一つのルールというものを守らなければならぬ、そういう御趣旨でございますか。——これは当然のことでございまして、二、三年前に海外に出ていく企業一つの行動基準というものをつくっておるわけであります。問題を起こさないようにお互いに気をつけていこうじゃないかという一つの基準ができ上がっております。そうして、基準をつくるだけでは意味がございませんので、果たしてそれじゃその基準どおり実行されたかどうかというフォローアップをするための組織もでき上がっておるわけであります。  いま申し上げましたような経済協力が飛躍的に進むということでありますならば、御指摘のような点につきまして十分配慮をしながら進めていきませんと、経済協力が進んだけれども一方でトラブルが発生したということでは何にもなりませんので、そういうことのないようにこれから積極的な配慮が必要である、かように考えております。
  240. 玉置一徳

    ○玉置委員 お忙しい大臣につき合いを長くさせまして申しわけない。どうぞお引き取りいただきまして、公取委員長に二、三の質問をさせていただきたいと思います。     〔橋口委員長代理退席、安田委員長代理着席〕  あなたはこの間、「安定成長経済と独禁法の役割」というので講演されまして、中小企業分野調整法案に触れまして、「次の国会でこの法案が論議を呼ぶことだろうが、独禁法の原理からいえば大変問題のある法案だ。公正な自由競争の維持を図るのが独禁法の精神であり、大企業中小企業の共存競争が消費者にとって有利なことである。中小企業を保護すること自体が法案の目的だとすれば、消費者利益は忘れられてしまうのではないか。」こういうことと、後で生産性本部の職員の質問に対しまして、「独禁政策の建前から、これは好ましくない、と見ている」このような御返答があったやに新聞に載っております。  そこで、中小企業政策審議会中小企業分野調整法案について検討をしておるのが現状でございますが、これにつきまして、また各党の、案が出ておるわけでありますが、競争政策上どのような点に問題があるのか、どのような真意でこれをおっしゃったのか、あなたの御見解を改めてお述べをいただきたい、こう思います。
  241. 澤田悌

    ○澤田説明員 過般、軽井沢のセミナーでいろんな角度から問題点に触れて話したのでありますが、新聞の方もそれぞれ取り上げる重点によりましていろんなニュアンスの違った報道がされておりますので、改めて御質問がございましたので申し上げたいと存じますが、この問題はなかなかむずかしい点をはらんでおります。  独禁政策上たてまえとして一般論を申し上げますと、大企業あるいは中小企業といういろんな形の企業を含んでおる産業界全体が公正妥当な競争関係を維持して、いい製品を消費者に安く提供する、そういう運営ができますれば、その経済界自体が活力を維持し、消費者全体の利益になるということは、これは申し上げるまでもないのでありまして、独禁政策上の問題点は、そういう場合に大企業なるがゆえに中小企業の分野に進出することを制限するということに相なりますると、その進出の仕方に不当なあるいは不公正なことがありますれば、これは独禁政策上当然排除の対象になります。そうでない場合にどうか、こういう問題でございます。  それが公正な競争関係も制限されるということに相なりますると、技術の進歩あるいは新規参入の阻止等々、結局は消費者利益を害する、あるいは産業界の活力を消失せしめるというようなことになるところに、一般論としての独禁法の問題としては問題がある、かような趣旨でございまするが、しかし、御存じのようにこの問題の経過を考えてみますと、それだけではなかなか割り切れない。われわれも中小企業、弱者の立場ということはよく理解しておりますし、私自身、長年中小企業金融問題に従事しておりますので、その辺の事情はよくわかっておるつもりでありますが、問題の経過の中には、競争が公正であっても大きい者が小さい者の中に出ていくことについてはそれ自体問題があるというニュアンスが入ってきております。  こういうことで、現在中小企業分野調整問題につきましては審議会の小委員会で検討中でございますから、私どもとしてはその成り行きを見守りたいというのが現在の立場でございまするが、こいねがわくは、大企業中小企業の調和はもちろん大事でありまするけれども、その調和を図るときには、消費者利益を害さないような方向でひとつ調和を図っていただきたい、そういう立法をお願いいたしたい、これが率直な気持ちでございますので、以上申し上げておく次第でございます。
  242. 玉置一徳

    ○玉置委員 通産省が行います行政指導についても、緊急避難のような場合は万やむを得ないけれども、後続的にそれがやられるということになりますと公取政策上若干の疑義を持たざるを得ないということも、ほぼ似た意味でおっしゃっているのではないかと思うのですが、どうでございましょう。
  243. 澤田悌

    ○澤田説明員 物資所管官庁の行政指導の問題は、これもなかなかむずかしい問題を含んでおりまするけれども、毎々国会におきまする質疑応答等を私もずっとトレースいたしておりますと、行政指導というのは、やはり法律に根拠なしにいたずらに行われることは結局カルテルを誘発するという弊害を伴いますので、いま御指摘のように特に緊急避難的な場合は格別として、法律に根拠を置いて行われるべきものである、したがって、そうでないものは事態が改善された場合にはできるだけ早く解除さるべきものではないか、独占禁止法のたてまえから申しますとそういうふうに考えるのでありまして、仮に行政指導によってカルテルができたという場合には、やはりそのカルテルは違法であるというのが私どもの考え方でございます。
  244. 玉置一徳

    ○玉置委員 ほぼ似た問題でありますが、物価問題にいたしましても行政指導で抑えようとする、その根拠は各省の設置法ですね。私は、その答弁は答弁にならぬぞ、それならばそれを石油業法なり何なりどんどん改正して入れていけばいいじゃないか、何か一つの法律の根拠を持たなければ、設置法によるといった包括的な言い方では、ちょっとお話にならぬじゃないか、いつもそう言ってきたのですが、設置法にすべての根拠を求めるやり方というのはどうお思いになりますか。
  245. 澤田悌

    ○澤田説明員 好ましくないと考えております。
  246. 玉置一徳

    ○玉置委員 もう一つでありますが、いま独禁法は、御承知のとおり、若、干骨抜きされたというままに政府案が継続審議になっております。企業分割の問題を一番大きく骨を抜いた、こうされておるわけであります。いまから将来のことを言うのはまだ早計に過ぎると思いますけれども、恐らく次の通常国会でしょう、もしくは選挙が終わって直ちに召集される国会にかかりますか、あのままをおかけになるお考えかどうか、あるいは若干の手直しされるお考えがあるかどうか。まだそういうところまで考えていないというならばそのままで結構ですから、お答えいただきたいと思います。
  247. 澤田悌

    ○澤田説明員 七十五国会以来の独占禁止法改正問題の経過は御承知のとおりでございますが、結局七十五国会におきまして衆議院で全会一致可決されました案、これは参議院で廃案になり、それをさらに政府与党が再検討されましてつくりました案が七十七国会に提案されて、継続審査になっておる。と同時に、前の案も野党の皆さんの御提案によって継続審査になっておる。複雑な関係になっておるのでございまして、公正取引委員会としては、国会の御審議がどういうふうに進められるかわかりませんけれども、一貫しております考え方は、現在の日本経済考えます上から申しますと、独占的状態の排除に関する——これは当初の考え方よりかなり変わりまして、分割ということではなしに、規定上は営業譲渡というような形で盛られておるわけであります。その七十五国会で衆議院で全会一致で可決されました案、こういう形で実現されれば最も望ましいところと考えておるのでありますが、それが修正された案も同時に現在継続審査中でございまして、常業譲渡に関する部分は削除されております。  それは私、かねがね申しておりますようにはなはだ残念なのでありますけれども、なお重要な部分を含んでおりますので、この案といえども、ひとつ御審議の上国会を通過いたしますならばぜひ通していただきたいと申しておるのでありまして、なおその削除された部分につきましては、引き続き政府において御検討の上、将来実現を図っていただきたい、かように考えておる次第でございます。
  248. 玉置一徳

    ○玉置委員 最後にもう一つでありますが、公取委員会が非常に御努力いただきながら、犯罪の事実をつかまないとなかなかこれは指摘ができない。ところが、すべての産業がこういうように世界的規模で、世界産業として成り立っていくような形になってまいりますと、それぞれが寡占状況にならざるを得ない。だから、ひとりでに寡占価格というものが形成されるような仕組みになっておる。したがって、独禁政策あり方を違った観点でやらないと——公取委員会でやりなさいという意味じゃないのですか、この寡占体系の中で消費者を守るという立場からすれば、若干違った視野の何かが要るのじゃないだろうかという点で検討をなされなければならないのじゃないだろうか、こういう感じがしてならないのです。これは公取委員会の仕事じゃないかもしれません。あるいは政府全般かもわかりませんし、産業全般かもわかりませんけれども、そういうような感じがしてならないのです。これに御返答を求めることの方が非常識かもわかりませんけれども、そういう時代になっておるということだけは事実だと思うのですが、どうお思いになりますか。
  249. 澤田悌

    ○澤田説明員 大変むずかしい問題でございますが、おっしゃる意味は私もわかるような気がいたします。と申しますのは、日本経済の振興のため、あるいは国民の経済的幸福のために、独占禁止法というものの体系がよく理解されて、それが経済を制約するのじゃなくて繁栄させるために働く、そういう競争維持法と申しますか、一つの体系がある。と同時に、最近いろいろ立法問題にもなっておりますが、統制法がふえてきつつある。この二つの問題の絡みというのが、いま御指摘の問題の核心にあるいは触れておるのかもわかりません。競争政策と統制法、この絡みをこれから国の政策として真剣に考えていく必要があるのではないか、こんなような気がいたします。  御質問に当っているかどうかわかりませんが、一言申し上げておきます。
  250. 玉置一徳

    ○玉置委員 以上で質問を終わります。ありがとうございました。     —————————————
  251. 安田貴六

    ○安田委員長代理 この際、お諮りいたします。  先般、産業経済の実情を調査するため、第一班を福井県、石川県及び富山県に、また、第二班を宮城県、岩手県、秋田県及び青森県に委員を派遣いたしました。派遣委員からそれぞれの報告書が委員長の手元に提出されておりますので、これを本日の会議録に参照掲載いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  252. 安田貴六

    ○安田委員長代理 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。     —————————————     〔報告書は本号末尾に掲載〕     —————————————
  253. 安田貴六

    ○安田委員長代理 本日は、これにて散会いたします。     午後三時十一分散会      ————◇—————