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1976-04-23 第77回国会 衆議院 商工委員会 第5号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十一年四月二十三日(金曜日)    午前十時三十七分 開議  出席委員    委員長 稻村左近四郎君    理事 橋口  隆君 理事 前田治一郎君    理事 武藤 嘉文君 理事 安田 貴六君    理事 渡部 恒三君 理事 佐野  進君    理事 神崎 敏雄君       浦野 幸男君    越智 通雄君       粕谷  茂君    木部 佳昭君       羽田野忠文君    萩原 幸雄君       八田 貞義君    深谷 隆司君       板川 正吾君    岡田 哲児君       加藤 清政君    加藤 清二君       竹村 幸雄君    中村 重光君       渡辺 三郎君    野間 友一君       近江巳記夫君    松尾 信人君       玉置 一徳君    宮田 早苗君  出席国務大臣         通商産業大臣  河本 敏夫君         国 務 大 臣         (総理府総務長         官)      植木 光教君         国 務 大 臣         (経済企画庁長         官)      福田 赳夫君  出席政府委員         公正取引委員会         委員長     澤田  悌君         公正取引委員会         事務局官房審議         官       水口  昭君         公正取引委員会         事務局経済部長 吉野 秀雄君         経済企画政務次         官       林  義郎君         経済企画庁調整         局長      青木 慎三君         経済企画庁物価         局長      喜多村治雄君         経済企画庁調査         局長      岩田 幸基君         通商産業政務次         官       綿貫 民輔君         通商産業審議官 天谷 直弘君         通商産業大臣官         房長      濃野  滋君         通商産業大臣官         房審議官    藤原 一郎君         通商産業省通商         政策局長    橋本 利一君         通商産業省貿易         局長      岸田 文武君         通商産業省産業         政策局長    和田 敏信君         通商産業省機械         情報産業局長  熊谷 善二君         資源エネルギー         庁長官     増田  実君         資源エネルギー         庁石油部長   左近友三郎君         資源エネルギー         庁石炭部長   高木 俊介君         資源エネルギー         庁公益事業部長 大永 勇作君         中小企業庁長官 齋藤 太一君  委員外出席者         通商産業省機械         情報産業局次長 井川  博君         運輸省航空局技         術部長     官川  晋君         商工委員会調査         室長      藤沼 六郎君     ――――――――――――― 委員の異動 三月二十九日  辞任         補欠選任   玉置 一徳君     小沢 貞孝君 同日  辞任         補欠選任   小沢 貞孝君     玉置 一徳君 四月七日  辞任         補欠選任   玉置 一徳君     小平  忠君 同日  辞任         補欠選任   小平  忠君     玉置 一徳君 同月十三日  辞任         補欠選任   玉置 一徳君     小沢 貞孝君 同日  辞任         補欠選任   小沢 貞孝君     玉置 一徳君     ――――――――――――― 三月十日  一般電気事業会社及び一般ガス事業会社の社債  発行限度に関する特例法案内閣提出第四二  号) 同月二十六日  中小企業者産業分野確保に関する法律案(  藤井恒男提出参法第一三号)(予) 四月一日  訪問販売等に関する法律案内閣提出第五九  号) 三月五日  大規模小売店舗における小売業事業活動の調  整に関する法律改正に関する請願外一件(竹  村幸雄紹介)(第一〇〇五号) 同月十八日  大規模小売店舗進出に伴う中小小売商業対策  に関する請願中村茂紹介)(第一五九二  号)  中小企業事業分野確保法制定等に関する請願  (金子満広紹介)(第一六七五号) 同月十九日  中小企業事業分野確保法制定等に関する請願  (金子満広紹介)(第一七九五号)  同(金子満広紹介)(第一八四九号)  大規模小売店舗進出に伴う中小小売商業対策  に関する請願(林百郎君紹介)(第一七九六  号) 同月二十五日  大規模小売店舗における小売業事業活動の調  整に関する法律改正に関する請願外一件(横  山利秋紹介)(第二〇一〇号) 同月二十七日  大規模小売店舗における小売業事業活動の調  整に関する法律改正に関する請願横山利秋  君紹介)(第二〇九五号) 四月六日  中小企業事業分野確保法早期制定に関する請  願(新井彬之君紹介)(第二五五〇号)  同(池田禎治紹介)(第二五五一号)  同(小沢貞孝紹介)(第二五五二号)  同(河村勝紹介)(第二五五三号)  同(小濱新次紹介)(第二五五四号)  同(鈴切康雄紹介)(第二五五五号)  同(松尾信人紹介)(第二五五六号)  同(和田耕作紹介)(第二五五七号) 同月八日  中小企業事業分野確保法早期制定に関する請  願(島本虎三紹介)(第二六九五号)  同(三宅正一紹介)(第二六九六号)  同(井上泉紹介)(第二七六九号)  同(岡田春夫紹介)(第二七七〇号)  同(島本虎三紹介)(第二七七一号)  同(田口一男紹介)(第二七七二号)  中小企業事業分野確保法制定等に関する請願  (田中美智子紹介)(第二六九七号)  中小下請企業経営危機打開に関する請願(  久保田鶴松紹介)(第二七六八号) 同月十二日  中小企業事業分野確保法早期制定に関する請  願(青柳盛雄紹介)(第二八六三号)  同(荒木宏紹介)(第二八六四号)  同(諫山博紹介)(第二八六五号)  同(石母田達紹介)(第二八六六号)  同(梅田勝紹介)(第二八六七号)  同(金子満広紹介)(第二八六八号)  同(神崎敏雄紹介)(第二八六九号)  同(木下元二紹介)(第二八七〇号)  同(栗田翠紹介)(第二八七一号)  同(小林政子紹介)(第二八七二号)  同(紺野与次郎紹介)(第二八七三号)  同(佐野憲治紹介)(第二八七四号)  同(柴田睦夫紹介)(第二八七五号)  同(庄司幸助紹介)(第二八七六号)  同(瀬崎博義紹介)(第二八七七号)  同(瀬長亀次郎紹介)(第二八七八号)  同(田口一男紹介)(第二八七九号)  同(田代文久紹介)(第二八八〇号)  同(田中美智子紹介)(第二八八一号)  同(多田光雄紹介)(第二八八二号)  同(竹村幸雄紹介)(第二八八三号)  同(津金佑近君紹介)(第二八八四号)  同(津川武一紹介)(第二八八五号)  同(土橋一吉紹介)(第二八八六号)  同(寺前巖紹介)(第二八八七号)  同(中川利三郎紹介)(第二八八八号)  同(中路雅弘紹介)(第二八八九号)  同(中島武敏紹介)(第二八九〇号)  同(野間友一紹介)(第二八九一号)  同(林百郎君紹介)(第二八九二号)  同(東中光雄紹介)(第二八九三号)  同(平田藤吉紹介)(第二八九四号)  同(不破哲三紹介)(第二八九五号)  同(正森成二君紹介)(第二八九六号)  同(増本一彦紹介)(第二八九七号)  同(松本善明紹介)(第二八九八号)  同(三浦久紹介)(第二八九九号)  同(三谷秀治紹介)(第二九〇〇号)  同(村上弘紹介)(第二九〇一号)  同(山原健二郎紹介)(第二九〇二号)  同(米原昶紹介)(第二九〇三号) 同月十三日  中小下請企業経営危機打開に関する請願(  正木良明紹介)(第三〇五七号)  下請中小業者経営安定対策に関する請願(田  中美智子紹介)(第三一三七号)  大規模小売店舗における小売業事業活動の調  整に関する法律改正等に関する請願田中美  智子君紹介)(第三一三八号)  中小企業事業分野確保法早期制定に関する請  願(小川省吾紹介)(第三一三九号)  同(古川喜一紹介)(第三一四〇号)  同(和田貞夫紹介)(第三一四一号) 同月十四日  中小企業事業分野確保法早期制定に関する請  願(井岡大治紹介)(第三一九九号)  同(小川省吾紹介)(第三二〇〇号)  同(太田一夫紹介)(第三二〇一号)  同(小林信一紹介)(第三二〇二号)  同(中村茂紹介)(第三二〇三号)  同(小川省吾紹介)(第三二五九号)  同(小林信一紹介)(第三二六〇号)  同(米田東吾紹介)(第三二六一号)  同(井岡大治紹介)(第三三〇九号)  同(小川省吾紹介)(第三三一〇号)  同(下平正一紹介)(第三三一一号) 同月十九日  中小下請企業経営危機打開に関する請願(  村上弘紹介)(第三三六一号)  中小企業事業分野確保法早期制定に関する請  願(下平正一紹介)(第三三六二号)  同(山本幸一紹介)(第三三六三号)  同(渡辺三郎紹介)(第三三六四号)  同(山本幸一紹介)(第三四五七号) 同月二十一日  中小企業事業分野確保法早期制定に関する請  願(大柴滋夫紹介)(第三五二〇号)  同(小林信一紹介)(第三五二一号)  同(板川正吾紹介)(第三五七三号)  同(佐藤敬治紹介)(第三六二一号)  農業機械モデルチェンジ規制等に関する請願  (庄司幸助紹介)(第三五七二号)  中小企業事業分野確保法制定等に関する請願  (寺前巖紹介)(第三五七四号)  中小企業対策に関する請願野田毅紹介)(  第三六二〇号) は本委員会に付託された。     ――――――――――――― 三月二十三日  不況打開のための中小企業対策強化に関する陳  情書外三件  (第一一一号)  中小企業者事業分野確保法制定促進に関する  陳情書  (第一一二号)  大規模小売店舗における小売業事業活動の調  整に関する法律改正に関する陳情書外一件  (第一一三  号)  家庭用燈油価格安定に関する陳情書外一件  (第一一  四号)  LPガス事業の経営安定に関する陳情書  (第一一五号)  セメント価格値上げ抑制に関する陳情書  (第一一六号) 四月九日  不況克服のための中小企業対策強化に関する陳  情書外一件  (第一八九号)  下請代金支払遅延等防止法改正に関する陳情  書  (第一九〇号)  家庭用燈油長期安定供給及び価格引下げに関  する陳情書(第一  九一号) は本委員会に参考送付された。     ――――――――――――― 本日の会議に付した案件  金属鉱業事業団法の一部を改正する法律案(内  閣提出第一五号)  通商産業基本施策に関する件  経済計画及び総合調整に関する件  私的独占禁止及び公正取引に関する件      ――――◇―――――
  2. 稻村佐近四郎

    稻村委員長 これより会議を開きます。  内閣提出金属鉱業事業団法の一部を改正する法律案を議題といたします。  提案理由説明を聴取いたします。河本通商産業大臣
  3. 河本敏夫

    河本国務大臣 金属鉱業事業団法の一部を改正する法律案につきまして、その提案理由及び要旨を御説明いたします。  金属鉱業事業団は、金属鉱産物の安定的な供給目的として、昭和三十八年に金属鉱物探鉱融資事業団として設立されて以来、五次にわたって改組拡充され、現在では、国の内外における金属鉱物探鉱促進するための業務金属鉱業等による鉱害を防止するための業務を行っております。  わが国金属鉱産物需給の現状を見ますと、国内資源に制約のあるわが国としては、金属鉱物資源の大部分海外に依存せざるを得ず、その度合いもまた増大する需要に応じて近年急速に上昇してきております。  このような状況に対処するため、政府といたしましては、国の内外における金属鉱物探鉱開発等促進するとともに、税制、関税等の諸施策を講じてきたところであります。  他方、金属鉱物資源を初めとする一次産品をめぐる世界の動向を見ますと、それらの需給及び取引安定化に対する要請はますます強まっており、発展途上国等からの輸入割合の大きいわが国といたしましても、これらの金属鉱物資源に係る一次産品問題に積極的に対処することが急務となっております。  しかしながら、最近のわが国金属鉱産物需給は、現下の経済情勢の中で、史上最大需要減退に見舞われております。このような状況の中で、金属鉱業は未曾有の過剰在庫を抱えて危機に直面しており、これを放置しておけば、鉱石輸入削減等の問題を深刻化して、資源輸出発展途上国との友好関係に影を落としかねない状況となっております。これはひいてはわが国金属鉱物資源安定的供給確保を危うくすることにもなりかねません。したがいまして、今後の金属鉱産物安定供給確保するためには、大部分海外に依存しているわが国といたしましては、需要の変動にかかわらず、輸入量を安定させることが必要であります。  このため、金属鉱業事業団を活用することとし、同事業団業務として金属鉱産物輸入安定化目的とした備蓄に必要な資金貸付業務を新たに追加すること等により、わが国金属鉱産物輸入安定化を図ろうとするものであります。これがこの法律案を提案いたしました理由であります。  次に、この法律案要旨を御説明申し上げます。  改正の要点は、金属鉱業事業団業務として、金属鉱産物備蓄に必要な資金貸付業務を加えることであります。  また、これに要する資金を円滑に調達できるようにするため、金属鉱業事業団市中銀行からの借入金に係る債務について政府が保証することができるようにしたことであります。  以上のほか、新業務追加に伴う法律目的の一部改正、その他所要の規定整備等を行うことといたします。  以上が、この法律案提案理由及びその要旨であります。  何とぞ、慎重御審議の上、御賛同くださいますようよろしくお願い申し上げます。
  4. 稻村佐近四郎

    稻村委員長 以上で提案理由説明は終わりました。  本案に対する質疑は後日に譲ることといたします。      ————◇—————
  5. 稻村佐近四郎

    稻村委員長 通商産業基本施策に関する件、経済計画及び総合調整に関する件並びに私的独占禁止及び公正取引に関する件について調査を進めます。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。近江巳記夫君。
  6. 近江巳記夫

    近江委員 いよいよ今国会残り一月と迫ってきたわけでございます。三木内閣は、かねて社会的な不公正を是正する、こういう中で、独占禁止法につきましては三木内閣誕生以来最大公約といたしまして、目玉として今日まで掲げてこられたわけでございます。前々国会におきましては、衆議院におきまして五党修正一致いたしたわけでございますが、参議院で流れたわけであります。先国会におきましては、出す出すとおっしゃりながら、今国会出したい、こういうことでいままで待ったわけでございまして、いよいよ今国会残りあと一月、このように迫ってきたわけでございます。  現在、自民党さんの方ではいろいろと検討され、総務会も通過したようでございますが、この独禁法提出につきましては必ずお出しになるのか、またいつお出しになるのか、またその中身につきましては五党修正一致案よりも前進しておるのか、後退しておるのか、そうした点につきまして、総務長官からお伺いしたいと思います。
  7. 植木光教

    植木国務大臣 独占禁止法改正法案提出時期につきましては、ただいま自由民主党調整中でございますけれども、できるだけ速やかに閣議決定を行いまして提出運びといたしたいと存じております。  この法案内容でございますが、まだ閣議決定せられておりませんので詳細に述べることは差し控えさせていただきたいのでございますけれども、おおむねの今回の改正案は、第七十五回国会修正案につきまして変更を加えたものでございます。一つには、独占的状態に対する措置に関する改正規定及び違法カルテル等排除措置改正規定を削除する。また、審判手続及び訴訟に関する改正規定を追加する。これは、たとえば公取委員会の審判官に対する審判手続の委任につきましての制限でありますとか、あるいは審査、審判機能の分離でありますとか、訴訟における新証拠提出権制限の緩和でありますとかいうような内容でございます。  この点につきまして、後退する内容になるのではないかどうかというお尋ねでございますけれども、いまお話がございましたように、衆議院におきまして前国会全会一致修正可決せられました事実がございますけれども参議院では廃案となったのでございます。したがいまして、独禁法改正法案の再提出のために、自民党との調整を進めてまいりました。これは修正可決せられました法案と若干差異がございますけれども課徴金制度の新設、会社銀行株式保有制限強化罰則強化等、重要な改正を含んでおりまして、独占禁止法強化し、公正かつ自由な競争促進に資するものであるというふうに私どもは考えております。
  8. 近江巳記夫

    近江委員 法案あと閣議の通過を待つばかりという御答弁があったわけですが、聞くところによりますと、三役預かりということになっておるようなことも聞いておるわけでございますが、これはもうあと国会会期も一月しかないのですね。できるだけ速やかに出したいということをおっしゃっておるわけですが、会期が一月なんですね。このできるだけ速やかにということは、何日以内にということなんですか。
  9. 植木光教

    植木国務大臣 政府といたしましては、来週中に閣議決定を行う運びにいたしたいということで、ただいま努力をしているところでございます。
  10. 近江巳記夫

    近江委員 それで、いま長官の方から、前回のいわゆる五党修正案からどの点を変えたかというお話があったわけでございますが、いわゆる構造規制の問題、一部譲渡の問題、それからカルテル影響排除措置問題等は、これは非常に重要な柱である、このように思うわけです。それがそういうように後退をしておるわけですが、これを後退しなければならなかった事情、どういう事情があってこういう変更になったのですか。
  11. 植木光教

    植木国務大臣 後承知のとおり、衆議院では修正可決をされましたけれども参議院廃案となったわけでございます。そこで、自由民主党内において調整が行われたわけでございますが、独占的状態に対する措置規定を削除いたしましたり、さらに第七条第一項の改正規定を削除しましたこの二点でございますけれども、これは、まず独占的状態に対する措置規定を削除いたしましたのは、独占的状態に対する措置手続に関しまして調整が得られなかったのでございまして、したがって、削除という結論が出たわけでございます。独占的状態に対する措置規定を欠きましても、先ほど申し上げましたように、いろいろな課徴金あるいは株式保有罰則強化等、重要な改正を含んでおりますので、私どもといたしましては、公正かつ自由な競争促進に資するものであるというふうに考えております。  また、第七条の一項の改正規定を削除いたしましたのは、当初の政府案に対しまして、「違反する行為及び当該行為によって生じた影響排除するために必要な措置を命ずることができる。」というふうになったわけでございますが、今回、改正法案を作業いたしておるのに当たりまして、その改正後の条文の解釈を検討いたしました結果、影響という文言解釈には幅がありまして、これがいわゆる価格原状回復命令を可能とするという解釈を生ずるおそれなしといたしませんので、したがって、これを削除するということにしたのでございます。なお、近江委員承知のとおり、当委員会におきまして、第七条第一項については、前回政府提出法案改正規定について改悪であるという論議が参考人からございましたことは御承知のとおりでございまして、この適当な表現が影響という文言以外になかなか得られないという状況でございましたので、これを削除することにしたわけでございます。
  12. 近江巳記夫

    近江委員 前々回の国会で出されました法案につきましては、総務長官のもとで民間の人も入れました独禁懇意見を聞くなり、あるいはまた自民党特別調査会意見をお聞きになって、その後五党修正をしたわけですね。それで参議院廃案になった。そういう経過からしますと、当然自民党さんも賛成なさって五党修正案が通過したわけでございまして、いまになって、こういう最も大事な構造規制の問題であるとか、カルテルのいわゆる影響排除の問題であるとか、こういう大事なところをこのように骨抜きにしてしまった。これは全く削除する理由がないと思いますし、全く財界の意向というものをそのまま反映しておる、非常に好ましくない今回の改正案ではないか、このように思うわけでございます。三木内閣公約であるからとにかく出すだけ出したらいいんだ、中身はどうでもいいんだというようなことであれば、これは全く国民を裏切ることになるのではないか、もう形式だけではないか、このように思うわけでございます。  福田総理は、本委員会におきましても、来国会というのは今国会でございますが、先国会におきまして、必ず国民にこたえるものを出すということを胸を張ってお答えになっておられたわけでございますが、国民にこたえることのできる改正案であると思っておられるのか、また、必ず国民にこたえるだけの独禁法改正をなさるおつもりがあるのか、その意思につきましてお伺いしたいと思うわけです。
  13. 福田赳夫

    福田(赳)国務大臣 申し上げるまでもございませんけれども議案につきましては、衆参両院を通じてその議決を経なければこれが成立に至らないのです。前の国会におきまして、いわゆる五党修正案衆議院満場一致議決になる、それで参議院に送られる、ところが参議院において廃案になる、そういう結末になったのですが、その背景には、自由民主党の中での意見調整が、参議院を含めますると完全に行き渡っておらなかった、こういうことが基本にあるわけであります。そういうことを考えまして、廃案になったあの法案でありますが、それを基本といたしまして、自来ずっと意見調整を進めてきたわけであります。  意見調整を終える段階になっておりますが、総務長官から申し上げまするとおり、構造規制、この点につきましてはどうもこれを削除せざるを得ないか、こういう情勢でございます。その他若干のいわゆる五党修正案に対する修正がありますが、大体重要な株式保有制限規定でありますとか、かなりの実質的な部分は残されておる、そういうふうに見ております。その整備を終え次第、まあ私どもは、この整備された議案をいよいよ閣議決定をする、こういう段階は来週中にひとつやりたい、こういうふうに考えておりますが、それをもちまして国会の御審議に付したい、かように考えておるのでありまして、ただいま申し上げましたように構造規制その他若干の修正はありまするけれども、とにかく画期的な独占禁止法に対する改正案でありますので、提出されました上はひとつ十分御審議願いたい、かように考えます。
  14. 近江巳記夫

    近江委員 画期的な改正案であると、いつも副総理はかなり謙虚な方だと思うのですが、相当この点についてオーバーな言い方をされていると思うのですね。こういう大事なところを抜いておいて、画期的な改正案である、これはもう長官だけがおっしゃることでございまして、国民みんなまゆをひそめておる、このように私は思うわけでございます。  今日、こういう寡占の弊害というものが非常に国民の注目を集めておるわけでございまして、そういう中でこういう構造規制を抜くということは、これは全く国民の意思に反しておると思うのですね。なぜこういう大事なところを削除するのですか、長官自身はどのようにお考えですか、いかがでございますか。
  15. 福田赳夫

    福田(赳)国務大臣 構造の規制という問題は、法的にこれを規制するということで一時いわゆる五常修正案というものができたわけでございますが、これを法的に一律に、画一的にやっていくということになりますると、それなりにかなりまた問題もあるところであろうかと思うのです。しかし、それを法的に規制しないからこれをほっておくのか、こういいますと、そういうわけじゃない。これは行政的にまたいろいろ処置することもできるわけでございまして、そういう努力をいたしますれば、仮に五党修正案における構造規制規定が外されましても、また行政措置による実効というものも期せられようか、こういうふうに考えるのです。  しかし、いろいろ議論のある条項でございますので、自由民主党の中の調整を進めておる、それがなかなか調整ができない、そういうことになってじんぜん日を送って、今国会においてもまた政府の提案ができないということになった場合に比較いたしますると、私は、今回その部分を削除いたしまして、そして他の重要なる改正を行うということにする、これの方が実際的じゃないか、そういうふうに考え、来週中には閣議の決定を経るべく努力をいたしたい、かように考えております。
  16. 近江巳記夫

    近江委員 いみじくも自民党内の調整ということをおっしゃったわけでございますが、澤田公取委員長、就任されましてきょうは初めての委員会に出ていただいたわけでございます。いま両大臣からお話がございましたように、来週中には閣議決定をして国会に出すということをおっしゃったわけでございますが、今回の改正案というものは澤田委員長にとりまして初めての仕事でもあるわけでございます。  そこで、公取委員長とされましては、前々回の国会におきまして衆議院で五党一致修正いたしました中身についてももう十分御検討になっておられると思うのございますが、今回政府が出そうとしておられますこの改正案につきましてどういう御見解をお持ちか、ひとつお伺いしたいと思うわけでございます。
  17. 澤田悌

    ○澤田政府委員 お答え申し上げる前に、一言ごあいさつを申し上げることをお許し願いたいと存じます。  私、この月の初めに公正取引委員会委員長を命ぜられました澤田ございます。ふなれな者でございますが、全力を尽くして任務遂行に努めたいと思いますので、どうぞよろしくお願いを申し上げます。(拍手)  ただいまの御質問でございますが、公正取引委員会といたしましては、最近の寡占化が進みつつあるというような経済社会の変化にかんがみまして、独占禁止法強化する必要があるという見解を持っておることは従来表明しておるとおりでございますが、その独禁法改正につきまして、ただいまお話しの第七十五国会におきまして衆議院全会一致で可決されました案、これが尊重せられるべきであるという考えを持っておるわけでございます。しかし、ただいま副総理及び総務長官からるる御説明がございましたようないろいろな事情で、その案が修正を受けるということに相なるようでありまして、特に寡占状態の排除に関する規定部分が削除されるということに相なりますれば、これは公正取引委員会といたしましては残念に存ずるところと申さざるを得ないのでございます。  ただしかし、なおいわゆるカルテルのやり得に対する対策として課徴金という新しい制度を設けるとか、経済力集中の過度の進行を防止するための株式の保有制限に対する規制を強化するとか、あるいは罰則を強めるとかという重要な規定も盛り込まれる案ということに相なりますると、公正取引委員会といたしましてはそれでもひとつ御審議の上実現さしていただきたい、かような気持ちを持っておりますので、何分よろしくお願いをいたす次第でございます。
  18. 近江巳記夫

    近江委員 澤田委員長も非常に率直にお答えになっていただいておる、このように私、感じるわけでございます。それで、先ほど申し上げましたように、いわゆる寡占状態を排除していく構造規制のところを外されたのは残念であった、これは高橋公取委員長も最低この五党修正案は非常にいいという評価をされておりまして、高橋公取委員長の表明ということは、公取委員会全体の表明でもあったわけでございます。  そこで、もう一つの柱であるカルテル影響排除も削除になっているのですが、これについてはどのようにお考えでございますか。それから審査、審判機能の分離、新証拠提出権の緩和、こういう新たな問題も挿入になっているわけでございますが、この点についてはいかがお考えでございますか。
  19. 澤田悌

    ○澤田政府委員 お答えを申し上げます。  影響排除措置につきまして、第七条に挿入される部分が削除されるというふうに聞いておりますが、現行の第七条の規定によりましても、必要な限度で影響排除に相当する措置を命令することができるというふうに考えております。解釈上の疑義をなくするためにはこの文言があった方がよいということはもちろんでありますが、削除されましても、実際の運用に当たりましては特に差異が生ずるというふうには考えていない次第でございます。  それから、審査、審判機能問題等につきまして申し上げますと、委員会の持っております審査機能と審判機能の分離につきましては現在も審査審判規則に規定されておるところでございまして、同じ趣旨のことを法律に明定するということでございますので、法運用に支障が生ずることはないというふうに考える次第でございます。  それから、新証拠の提出権の緩和等についても規定が設けられると聞いておりますが、審決取り消し訴訟におきまする新証拠の申し出制限につきましては、訴訟案件も少ないこと等から見まして、これによりまして法運用に支障が生ずるというふうには考えておらないような次第でございます。  以上でございます。
  20. 近江巳記夫

    近江委員 総務長官政府の直接の窓口として五党修正案のときも非常に御苦労されて、その熱意は多としたわけでございますが、参議院でつぶされてしまった。今回こういう、言うならば後退した案をお出しになろうとなさっておられるわけですが、率直に言って、すっきりとした気分でお出しになるのか、どういう気持ちでお出しになるのか、ひとつ率直なお気持ちを聞かしていただきたいと思うのです。いかがでございますか。
  21. 植木光教

    植木国務大臣 政府案をつくるに当たりましては、自由民主党との調整が非常に大事でございますので、前国会において提案を申し上げました際にも、党と十分な連絡をとったのでございます。しかし、先ほど来申し上げておりますように、参議院においては廃案という姿になったわけでございます。  今国会におきましても、何とか独占禁止法強化を図りまして、それによって自由かつ公正な競争原理が働きますようにということを私といたしましても熱意をもって願いつつ、今日に至ったわけでございます。しかしながら、自由民主党内の調整過程で、構造規制の削除その他、五党修正案というものとは違った改正を行うべきであるという意向が示されましたので、私といたしましては、この自由民主党との調整の結果に基づきまして、前国会衆議院修正可決せられましたものは相違するわけでございますけれども課徴金制度の新設だとか、会社銀行株式保有制限強化罰則強化等の重要な改正を含んでおりますので、引き続き独占的状態のもたらす弊害につきましては法改正を行うべきかどうかという検討を続けさせていただくことにいたしまして、今国会におきましては、いずれにしましてもこの現在の法律よりも前進をします、強化します政府案をただいま準備をいたしておりますので、これによりまして公正かつ自由な競争促進に資したいというふうに考えているところでございます。
  22. 近江巳記夫

    近江委員 総務長官は、今後五党案の修正一致点についてはさらに検討をして、とりあえず今回の改正案国会提出してそれを前進さしてほしい、こうしたお話でございます。しかし、国民の目から見まして、本当に国民が納得できるそうした改正案出してもらいたいというのは国民の声でございますし、それをお出しになってこそ三木内閣公約を果たしたことになる。このままの改正案では、ただもう形式だけじゃないか、そういう印象はぬぐい去ることはできないと思うのでございます。  そこで、来週閣議決定してお出しになるということでございますが、再度ひとつ福田総理を中心に三木総理とも御相談になって、何とか五党で一致したこの修正案をもう一度検討してその案を出そうじゃないか、こういう御相談をされる意思はないのか、ひとつ福田総理にお伺いしたいと思います。
  23. 福田赳夫

    福田(赳)国務大臣 国会も余日がない、私ども政府といたしまして非常に焦っておるのです。ぎりぎりの御審議をお願いしなければならぬ、こういうことでございますが、そのためにはとにかく来週中には閣議決定をして提出をいたさねばならぬだろう、こういうふうに考えており、そういう状態のもとでいま考えております政府案は、先国会参議院において五党修正案廃案となった、その後の自由民主党との調整過程を顧みてみますと、これはどうもいまあの案のようなそのままの形に戻すということは私の見通しといたしましてはとうてい不可能ではあるまいか、そういうふうに思うのであります。  ですから、とにかく今国会において御審議願うというお約束というか、言明をいたしておるわけなんでありますので、とにかくまとまった案を提出いたしたい、そして、それも内容的にはかなりの重要なものを含んでおりますので、ひとつ今国会において成立させていただきたい、こういうふうに念願しておるのでありまして、その方がむしろ実際的な行き方ではあるまいか、さように考えております。
  24. 近江巳記夫

    近江委員 五党修正案であれば、われわれとしてはもう本当に審議は短時間で直ちに参議院へ送付する、こういう御協力できる考えは十分に持っておるわけでございますが、いま政府がお出しになろうとなさっておるこの改正案でございますと、これは非常に問題が多過ぎるわけでございまして、再度、副総理がそうおっしゃっておりますが、ひとつ内閣で三木総理福田総理を中心によく御検討なさるように申し上げておきたいと思います。  それから、最近産業界が再編成をしつつある、こういう状態が非常によく見えるわけでございます。この減速経済下におきます再編成の問題というものは、いわゆる寡占化を促進し、競争排除され、価格の下方硬直性を来すおそれが非常に多いと考えるわけでございますが、そのためにも公正取引委員会としてはこの再編成につきましては厳重な監視が必要であろう、このように思うわけでございます。そういう動きに対しまして澤田公取委員長としてはどういうような御見解をお持ちか、お伺いしたいと思います。
  25. 澤田悌

    ○澤田政府委員 経済情勢がいろいろ変化いたしますと、産業界と申しますか、企業はそれに対応しましていろいろな対策を考える、その中に御指摘のような再編成的な動き、合併、業務提携等が起こってまいりますことは十分考えられるところでございまして、現在におきましてもいろいろそういう動きが伝えられております。公取委員会にいろいろ具体的に持ち込んでおりますのは、現在御承知の特殊鋼三社の合併の問題でございますが、そのほかにも提携話やいろいろ聞いております。委員会といたしましては、そういった産業再編成の動きが長期的に見て独占禁止法の趣旨に反する、たとえば競争制限や市場支配につながるというようなことのないように十分監視を続けますとともに、具体的な問題につきましては、産業界の実情を考えながら法の規定に照らして厳正に考えてまいりたい、かように考えておる次第でございます。
  26. 近江巳記夫

    近江委員 最近の産業界再編成の動きを見ておりますと、たとえば繊維産業におきましては東洋紡、鐘紡、ユニチカの業務提携、商社では伊藤忠、安宅産業の業務提携、石油精製元売り業におきましては共同石油、民族系企業を中心とする再編の動き、自動車産業におきましてはいす父自動車、東洋工業、鈴木自動車等を中心とした再編成含みの動き、鉄鋼については平電炉メーカー、特殊鋼メーカー、あるいはその他電算機産業、航空機産業等々見えるわけであります。  公取では以前、総合商社の実態調査を行いまして、商社の企業集団化傾向について明らかにされたわけでございますが、今回の伊藤忠、安宅の提携というものが実現するということになってまいりますと、商社の企業集団化に火をつけるおそれがないか、また、こうした商社等の業務提携を規制する手段の必要性について公取としてはどのようにお考えか、再度お伺いしたいと思います。
  27. 澤田悌

    ○澤田政府委員 ただいま具体的に伊藤忠、安宅の提携問題につきまして御質問がございましたが、さしあたりは御承知のように合併を前提として提携をしていくという段階にございます。将来これが具体的に合併をするということに相なりますと、またその観点から対処しなければいけない問題でございますが、現在のところの提携関係におきましては、直接独占禁止法の上からかんがみまして問題はございません。一般的に申しまして、先ほども申しましたように、それが競争制限あるいは市場の支配というようなことについて弊害を生ずるような事態になりませんように十分監視をしていきたい、かように考えておる次第でございます。
  28. 近江巳記夫

    近江委員 ロッキード問題におきます丸紅の例に見られますように、商社の管理体制というものにつきましては、指摘されるように、問題が多いように思うわけでございます。一つは、四十八年の売り惜しみ買い占め騒ぎの際につくられました総合商社の行動基準がどこまで守られているのか、非常に疑問じゃないかと思うわけであります。商社に対する通産省の指導は、聞き取り調査を行う程度にとどまっておるように思うのでございますが、商社活動の実態の把握については、通産大臣はどのようにしておられるかということをお聞きしたいと思うのです。  それからさらに、この現状におきましては、政府の商社に対する行政指導というものについては限界がありますので、その根拠になる商社法の立法化等を考えておられるかどうか、以上の点につきまして、通産大臣にお伺いしたいと思います。
  29. 河本敏夫

    河本国務大臣 商社の活動範囲が非常に広範になりまして、それだけ機構が膨大化をしております。そこで、通産省といたしましては、最近は毎年一回、管理体制を一体どうしているのか、こういうことにつきまして聞き取り調査をいたしまして、それぞれ実情を調査いたしております。商社はわが国の貿易の第一線に立って活躍をしておるわけでありますから、その積極的な活躍というものは常に望ましいわけでありますけれども、しかし、国際的な紛争を起こしたり、あるいはまた国内におきましてもいろいろなトラブルが起こっては困りますので、そういう点を十分監視しながら指導していきたいと考えております。  ただいまのところ、商社だけを規制する商社規制法というふうな法律をつくるという考えはございません。
  30. 近江巳記夫

    近江委員 それでは、総務長官、お引き取り願って結構でございます。福田長官と大臣は、ひとつ引き続いてお願いします。  次に、いま問題になっております電気料金あるいはガス料金の値上げ問題等についてお伺いしたいと思います。  東北電力及び北海道電力は四月五日、北陸電力及び九州電力は四月八日、料金値上げのために供給規程の変更認可の申請をしたわけでございますが、その値上げ率は、低いところで九州電力の三一・九%、高いところでは北海道電力の三九・一%、いずれも三〇%を超える高率の値上げであるわけでございます。こういうような高率の値上げというものは、国民生活及び産業活動に大変な影響を与えることは、これは明らかなことでございます。  一例を申し上げますと、たとえば一般家庭の場合の電灯料金は、大体月千円程度の値上げになるのではないかと思いますし、従業員規模百人程度の中小企業等の電力料金は、大体月間七万円ぐらいの値上げになるのではないか。これはいろいろな例がございますから一概には言えませんが、代表的なことを申し上げますと、そういうことになるのじゃないかと思います。  そうなってまいりますと、これは相当な負担ということになるわけでございます。特に電力多消費産業の場合の影響というものは、これまた大変な価格高騰ということにもなってまいります。そういう点で、これは国民生活に及ぼすところ、きわめて影響大でございます。政府のこのかなめとしておられる福田長官は、こういう大幅な値上げについて、このまますんなりと通産省が認め、それをそのままお認めになるつもりでございますか。
  31. 福田赳夫

    福田(赳)国務大臣 お話のように、ただいま北海道初め電力四社から料金の値上げ申請が出てきておるわけであります。それに対して、ただいま通産省で原価調査をいたしておるというのが現段階でございますが、一方において、これにつきましては電力企業が堅実に営業をなし得る状態ということをまず一つ考えなければならぬ。とにかく、エネルギーの中で重要な電力、これの生産に当たっておる電力会社の企業の基礎がどうも揺らぐというような価格の状態であることは好ましくないことは、当然でございます。しかし、御指摘のように、同時に他方、この電力料金を申請のような形で直ちに実施するということになりますと、一つは、これはお話のように電力消費産業に対する影響という問題があるわけです。また同時に家庭というようなこともあるわけでございますが、また、物価政策という見地から考慮する、そういう角度の問題、この二つの問題が他方において存在する。  そこで、私といたしましては、とにかく出てきたこの電力各会社の料金申請が妥当であるかどうか、その基本として電力原価の状態がどういうふうになっておるのか、それを厳正に調査する、これが先決問題だと思います。その結果自然に出てきた結論が、企業経営を健全に維持するためには何%の料金引き上げが必要であるか、こういうことになると思うのですが、その結論をどういうふうに扱うかということにつきましては、ただいま申し上げました企業や国民生活、また物価に対する影響は一体どういうふうになるか、そういう点を踏まえまして、物価体系に対し、また電力消費企業に対する影響をそう衝撃的なものにさせない、同時に、電力企業というものが安定した基礎で運営されるようにしなければならぬという点を踏まえまして、政策的にこれが最終的な結論を見出さなければならぬだろう、こういうふうに考えております。ただいまは、通産省の原価計算がどうなるかということを見守る、こういうことでございます。
  32. 近江巳記夫

    近江委員 長官も御承知のように、ことしの春闘は一けたに抑え込まれたわけであります。私鉄が九%、公共企業体が八・八、鉄鋼が八・五。今年のいわゆる政府の消費者物価の見通しは八%以内に抑える。ところが、御承知のように公共料金の引き上げがもうメジロ押しですね。これが大体予定どおりいくと、まあ二%ぐらいになるだろう。そうしますと、一般物価については六%以内に抑え込まなければならぬ。こういう中で、こういう大幅な電気料金の引き上げは、国民のいわゆる消費者物価を守られる最高責任者として——いま卸売物価もどんどん上がってきているわけですね。こういう状態で、ただ経営が苦しいからと、では電力会社はいままで経理の公開だってやっているかといったら、何もやっていないわけですよ。通産省には資料を出しているか知りませんが、国民にはそんなもの、原価だってわからぬわけですよ。そういう中で三〇%以上という大幅な引き上げというものはどれだけ重大な影響を及ぼしてくるか。  副総理もおっしゃったように、政策的に結論を出す、これは大事なんです。そこで、長官として政策的に結論を出すとおっしゃっているわけですが、三〇%以上というようなこんな大幅なものを、原価計算等考慮しつつ最終は高度の長官の判断がされるわけですが、そんな政策的な判断で三〇%台という大幅な、そういうお考えでおられるわけですか。私は、少なくともさらに大幅な圧縮された線を長官としてお考えになっているのではないかと思うのですが、いかがでございますか。
  33. 福田赳夫

    福田(赳)国務大臣 まだ政策的配慮のその政策をどうするかということにつきましては、通産省と相談をしていないのです。と申しますのは、原価計算をした結果、その政策的な配慮を必要としないというような数字があるいは出てくるかもしれない。要は、原価計算をしていただくわけであります。その原価計算をした結果、料金の引き上げが非常に大幅になって、電力消費企業の経営に重大なる影響があるとか、あるいは物価体系に対しましてかなり大きな影響をもたらすとか、そういうおそれがあるというような際には、これは通産大臣と相談いたしまして、これにどういうふうに政策的に対処するかということを考えなければならぬだろう、こういうふうに考えておりますので、政策的配慮のその政策はどうだということにつきましては、原価計算の成り行きを見まして、通産当局と十分協議して、いずれにいたしましても、これはショッキングな影響を与えるというようなことにならないように配慮したい、かように考えております。
  34. 近江巳記夫

    近江委員 福田総理は、この九日に東京12チャンネルの記者会見におきまして、三〇%以上は認めない、また松野政調会長も、二〇%台にする、こういったこともおっしゃっておられるわけでございますが、非常に慎重に物をおっしゃる副総理でございますし、そういう思いつきでおっしゃっておるのじゃないと私は思うのですが、こういう大幅な三〇%台というような値上げは、少なくとも長官としては、いわゆる最終政策的な判断によって国民生活に影響を与えない、こういう線で抑え込まれるということでございますか。
  35. 福田赳夫

    福田(赳)国務大臣 要は、電力消費産業の経営に重大な影響、それから物価政策に大きな悪い影響を与えないようにしなければならない、こういうふうに考えておるのです。ですから、いずれにしてもこの料金引き上げがそういう電力消費産業でありますとか物価政策にショッキングな影響を与えることのないように政策的な配慮をいたしたい、こういうふうに考えておるわけであります。  感じといたしましては、三〇%を超えるようなことが一挙に実現されるというようなことになりますと、これはかなり重要な影響が電力消費産業に対しましてもあるいは物価政策に対しましてもあるのじゃないか、そういうことを心配をいたしておりますが、いずれにしても原価計算がどうなるか、それが原価計算をしてみたらそう大した大きな、申請されておるような引き上げ幅じゃないのだというようなことになれば、これは何をか心配する必要はあるかということになりますけれども、その結果が非常に大幅になるというようなことになると、いろいろこれは与える衝撃について考えなければならぬだろう、こういうふうに考えております。
  36. 近江巳記夫

    近江委員 ショッキングな値上げであってはならない。三〇%というと非常にショックを与えるというようなことから推察しますと、少なくとも三〇%を超えない、それ以下に圧縮をするということを長官はおっしゃった、私、このように受け取っておるわけでございます。そうなってきますと、福田長官のそういう考え方に対して小松勇五郎通産事務次官は、福田さんは政治的な発言をよくなさっているからというようなことで、経企庁の事務当局からまだ話がないのだというようなことをおっしゃっているそうでございますが、長官も、いま一度にショッキングな値上げをすると非常に影響が大きいということをおっしゃっておるわけですが、そうすると、二度に分けて上げる、こういう意味ですか、長官がお考えになっておられるのは。
  37. 福田赳夫

    福田(赳)国務大臣 とにかく私が考えておりますのは、電力消費産業に重大な影響があるとか、あるいは物価はいま鎮静はしてきておると見られるものの、まだ今後大変警戒すべき問題があるのです。そういうことに衝撃的な影響があるということでは困りますので、出てきた原価計算を見た上、その衝撃をどういうふうに緩和するかということはどうしても工夫をしなければならぬところであろう、こういうふうに考えております。
  38. 近江巳記夫

    近江委員 非常に国民生活を心配されているようなニュアンスで受け取っておるわけですが、やはり三〇%台ということは非常にショッキングな衝撃を与える数値である、このように長官も思っておられるわけでございますね。重ねて恐縮でございますが……。
  39. 福田赳夫

    福田(赳)国務大臣 一度に三〇%を超える料金の引き上げというようなことがありますと、これはよほどのことがない限りかなりの影響があるのじゃあるまいか、そういうふうに見ておるのです。ですから、とにかく原価計算が一体どうなるかということをよく見て、料金引き上げ幅がそれに応じまして決まってくる。決まってきますが、その自然に決まってくる必要な値上げ幅というものに対してどういうふうに政策上の配慮をするか、これは慎重にやっていきたいと思っております。
  40. 近江巳記夫

    近江委員 メジロ押しの公共料金の値上げが、このようにあと続いておるわけでございます。それから特にガス等も、現在だけでも十数社出ておるのです。特に西日本に多くて、南日本ガス、鹿児島の南海あるいは福岡、鳥栖ガスとか飯塚、この十社出ておる。あとまた大手が続々と出そうとしておるわけです。このガスもかなりショッキングな値上げをもくろんでおるわけでございますが、このガスの引き上げ問題につきましては、福田長官としては基本的にはどのようにお考えでございますか。
  41. 福田赳夫

    福田(赳)国務大臣 ガスの問題につきましても、ただいま電力について申し上げたと同じような考え方で処置すべきである、かように考えております。
  42. 近江巳記夫

    近江委員 この際、私、いつも通産大臣にも申し上げておるわけでございまして、こうした公共料金の問題につきましては、やはり原価の問題であるとか経理の内容というものは、国民に公開されるようになさったらどうかと思うのでございます。  それからまた、値上げの場合、前回ナショナルミニマムは百二十キロワットでございましたが、これも実際標準家庭においてももっと使っておるわけですね。だから、このナショナルミニマムの設定等につきましても、さらにその基準を上げていく、たとえば二百キロワットぐらいに持っていくとか。さらに、産業用と家庭用との格差というものが、諸外国に比べましてもまだ高いわけでございます。それから、社会福祉施設や学校等の料金等も据え置いていく、こういうようなことを十分配慮をしなければならぬと思うのです。  狂乱物価がやっと静まっても、とにかく一〇%近い一けたですから、今年度も八%であるということでございまして、春闘がこれだけ低いし、これで物価がじりじり上がれば、それは心理的な状態というのは大変なものです。そういうことで、われわれは基本的には、いま申し上げたような何項目かについて、通産大臣としては、今後少なくとも経理の公開であるとかそういうことは当然考えていかれるべきだと思うのですが、いかがお考えでございますか。
  43. 河本敏夫

    河本国務大臣 電力につきましては、先般四社から申請が出ましたので、原価計算をいたしまして徹底的にこれを査定しなければいかぬということで、いま作業を続けておるところでございます。  なお、公聴会等も開く予定をしておりまして、企業の立場もございますから、全部の経理を明らかにするというわけにはまいりませんが、必要な分野につきましては、公聴会等を通じて、できるだけ経理内容等も明らかにしながら消費者の理解を得ていく、こういうことが必要であろうかと思います。  また、ガスにつきましては、いま全国で二百五十社ばかりございますが、そのうち中小のガス十社が値上げを申請しておりますが、これは地方の通産局でいま査定中でございます。三〇%台というのも一、二社例外的にございますが、大体が二〇%前後という値上げ申請になっておりますが、これも十分原価計算をいたしまして査定をするつもりでございます。  電力料金、それからガス料金は、国民生活と非常に密接な関係がございますので、十分そういう点も配慮していかなければならぬ、かように考えております。
  44. 近江巳記夫

    近江委員 先ほどから申し上げておりますが、春闘がこういう低い数値で抑えられたわけでございますが、福田長官は今回の春闘の妥結額につきましてどういう見解をお持ちでございますか。
  45. 福田赳夫

    福田(赳)国務大臣 石油ショック後のあのわが国経済の大混乱、これがどうやら克服できそうだという今日になってきているのです。その最大のかなめは、昨年の春闘がああいうなだらかな形で解決になった、こういうことにある、これはもう疑うべからざることである、こういうふうに私は考えますが、昨年の春闘における労使双方の発揮したあの良識、これには深く敬意を表しておるところです。その昨年の春闘の賃金決定を受けて、ことしの賃金決定がただいま進行中である。進行中でありまして、幾つかの山は越えましたけれども、いろいろまだ未決定な企業を残しておるわけでありまして、いまこの段階で私が、ことしの春闘はどうであった、それに対する評価はどうだということは申し上げかねまするけれども、私は、ことしも労使双方において良識を発揮し、そしてわが国経済安定化のために協力してくださるということを確信し、また期待をいたしております。
  46. 近江巳記夫

    近江委員 現代総合研究集団、これは代表者は大河内一男東大名誉教授でございますが、低成長からの脱却には二けたの賃上げが必要であるということを提言しておられるわけでございます。こういう低い数値におさまったわけでございますが、これによって、政府は今年度実質成長率五・六%ということを見込んでおられるわけでございますが、見込みどおりいけるわけですか、その点、見通しはどうですか。
  47. 福田赳夫

    福田(赳)国務大臣 昨年の暮れごろから、景気情勢は次第に明るくなってきておるのです。経済需要諸項目をとってみますると、国民の生活消費も着実に伸びております。それから設備投資が、昨年は一昨年に比べまして大変な落ち込みを示しましたが、その底から抜け出るという気配を示しております。そこへ輸出がかなりの勢いで伸びつつある、こういう情勢です。  いま、政府消費、つまり政府の財貨サービス需要、これは暫定予算期間中でありますのでまだ五十一年度需要というものは本格化いたしませんけれども、かなりの五十年度に対する増加を見込んでおりまして、これがいよいよ五月八日に成立という見通しでございますので、活発に動いてくる、こういうふうに見ております。  そういう情勢を受けまして、暮れの十二月には生産が〇・八%前月比でふえておる。一月にはまた前月比で二%ふえる、二月にもまた二%ふえるというような情勢でございまして、経済活動はただいまの時点では非常に活発でございます。今後、そういう情勢を受けまして、わが国経済は上昇過程を固めていく、こういうふうな観察でございます。経済見通しでは五%ないし六%成長ということを申しておりますが、その程度のことは実現できる、こういうふうに見ております。
  48. 近江巳記夫

    近江委員 最近、輸出の方はかなり手がたくきておる、そういうことを聞いておりますが、いわゆる個人消費の占める割合というのは五〇%を超えておる。こういう中で、この春闘がいわゆる一けたである。しかも、今年度は物価上昇が、公共料金がそういう大きな押し上げ要因になって八%、政府は八%以内に抑えるということをおっしゃっておるわけですが、そうなってきますと、実質賃金というものはゼロまたはマイナスということになってくるわけですね。そうすると、これは個人消費も伸びないということになってきますと、これがまた非常に景気の足を引っ張ってくる、こういう心配がないかと思うのですが、この点については今後どのようにお考えですか。
  49. 福田赳夫

    福田(赳)国務大臣 五十年度は、総括いたしますと大体二・六%成長と言っておったのですが、その辺が実現されるものと見ております。そういう低い成長でございますが、その中で個人消費が成長を支えてきておるのです。他方、輸出は横ばいである、あるいは設備投資の方は大変なマイナスである。そういう中で、微弱ではありますけれども、なぜ二・六%成長というものが実現されるかというと、個人消費なんです。個人消費は、すでに国民所得統計の速報が出ておりますが、実質五%をかなり上回る勢いで伸びておる、こういう状態でございます。この趨勢は五十一年度におきましても持続する、私はこういうふうに見ておるわけであります。その他輸出が好調だ、設備投資もまた上向きに転じそうだ、財政投資も活発になるということを考えますと、大体五%ないし六%の成長は実現できるもの、こういうかたい見通しを持っております。
  50. 近江巳記夫

    近江委員 今年度の公共料金の引き上げというのはメジロ押しなんですね。これは長官も御承知のとおりですが、本当に八%以内におさまりますか、その自信のほどをお聞きしたいことと、いかなる対策をとっておられるか、それからさらに、八%に抑え込んで、定期預金以下に抑え込むということもおっしゃっておるわけですが、その辺の考え方についてお伺いしたいと思うのです。
  51. 福田赳夫

    福田(赳)国務大臣 いま物価は、基調としては非常な落ちつきの基調だ、こういうふうに見ておるのです。落ちつきの基調であるにかかわらず、出てくる消費者物価指数というものは高い水準です。五十年度で言うと九%前後の消費者物価上昇になる。五十一年度の見込みとしては八%程度だ、こういうことになるわけでありますが、これはいかにしても高いのです。  なぜ高いかというと、二つその要素があるわけであります。消費者物価に響く重要な要素が二つある。一つは賃金、一つは公共料金です。賃金はなだらかにだんだんと物価に悪い影響のない方向で決められつつあるわけでございますが、公共料金、この問題は狂乱物価当時の物価対策として抑えてきておる。この抑え込みをそう長続きさせるわけにはいかないわけなんです。どうしてもこれを一回りさせなければならぬ、こういう事態でございますが、そういう中で、昨年は酒、たばこ、郵便料金というようなかなりの公共料金の引き上げをいたしまして、それに他の公共料金なんかを全部合わせますと、九%消費者物価上昇という中の二・七%ぐらいは公共料金なんです。それから、ことしを展望いたしますと、ただいまの電力料金なんかもある、ガス料金の問題もある、それから政府直接の国鉄の運賃、あるいは電報料金、電話料金の問題もある、そういうものがいろいろありますが、それを総体としてひっくるめましたときに、大体二%強ぐらいなところ、つまり、昨年は二・七%というところでございますが、二%強という程度に大体考えておるわけなんであります。  ですから、公共料金の物価に与える影響も二・七%から若干緩和される。それから賃金につきましても、去年は一三%程度の上昇でございましたが、ことしはそれが御承知のような情勢であるというので、この点も緩和される。その他物価につきましては、農林省関係の物資なんか非常に影響がありますが、物価に与える影響につきましても十分配慮しながら、いま努力をいたしております。通産省所管の物資につきましても一つ一つ努力を積み重ねていくということにいたしておりますので、まあ八%程度の上昇、この目標は実現できると思いますが、残念なのは、そういう八%の上昇が実現できましても、これはいかにしても高いのです。早く定期預金の利子以下の水準まで持っていきたいのですが、何せいま、特に公共料金の改定期に当たりますので、これが非常に重荷となって物価政策を圧迫してくるという状態です。主要の公共料金につきましては、早くこれを一回りいたしまして、そして身軽になって、消費者物価上昇水準というものを一刻も早く定期預金の金利以下の水準だというところに持っていきたい、さように考えております。
  52. 近江巳記夫

    近江委員 公共料金は二%強ぐらい要因になる、八%以内におさめたい、またそうなるだろうという見通しをおっしゃったわけでございますが、卸売物価の上昇、これがもう連続上がってきているわけです。これを見てまいりますと、通産省が減産指導をしたり値上げ誘導をやっておる。これは国民から非常に強い非難を受けておるわけです。最近ちょっと景気も直ってきたということで、通産大臣も減産指導をやめなければいかぬという方向に転じられたように伺っておるわけですが、最近また新日鉄稲山会長が、鉄鋼を大幅に値上げする。一万円も上げないけれども、大体めどは七、八千円上げるのだ、こういうような発言をしておるのですね。  やっと物価が八%、これでも正直言うて異常ですよ。大体、定期預金の金利を上回るようなそんな物価上昇というのは異常な状態であります。一日も早くこれを鎮静させてもらいたい。にもかかわらず、基礎物資をそういうように平気で無神経に、この間引き上げをやっておいてまた上げる。それから、鉄鋼だけじゃなくて、灯油なども再値上げをする。こういう国民を忘れたような姿勢じゃなくて、産業界はもっと物価安定に努力をする、やはり血を吐くような、社会を思い国民を思うような姿勢がなければいかぬと思うのですが、そういう値上げをやってくる。こういう問題について長官はどのように思われますか。鉄鋼なんか、過去四回ですか、連続して上げているのです。それをまた、それだけ大幅に上げる。これをどう思われますか。
  53. 福田赳夫

    福田(赳)国務大臣 私は、いま、二年余にわたる不況の中におきまして、企業経営が非常に苦しくなってきておるこの事情はよくわかります。また同時に、そういう中におきまして、企業経営家がその苦しい状態を製品価格の値上げによって解決したいということを考えがちであるという、その気持ちもわかります。しかし、そういうことでは、日本経済全体としてあの大混乱からの脱出という大問題の解決にはならない。  いま企業の操業度も顕著に改善されつつあるわけです。企業が苦しい状態であるというこの背景、原因は、操業度が非常に低くなった、そして過剰な人員を抱え、また金利負担が重く企業を圧迫する、その辺にあると思うのですが、その問題の企業操業度というものがかなり改善されつつある。そのことは同時に、製品の単位掛かりのコストがそれだけ低くなる、こういうことなんです。ですから、企業もいま苦しいでしょうが、その解決の道を製品価格の引き上げに求めるという姿勢は私は正しくないと思う。やはり操業度の改善あるいは企業体制の合理化、そういうところで歯を食いしばっても製品価格の値上げの方に企業経営の苦しいそのしわ寄せを持っていかないという心構えが必要であろう、こういうふうに考えておるわけであります。  政府におきましても、景気政策をとっておる、それは価格引き上げを容易にするためにとっておるわけじゃありません。操業度を引き上げ、価格引き上げせぬでも企業がやっていけるような状態を実現させようというためにやっておるわけであります。一概に全部値上げを抑えるということは、これはできません。したがって、企業の中には価格調整を必要とし、またそれが可能であるというようなものもありましょうが、基本的には私は、いまの苦しい状態はわかるけれども、企業といたしましては、その苦しい状態からの脱出の逃げ道を価格の引き上げに持っていってもらっては困るんだ、やはり政府の行う操業度の改善政策、また企業みずから行う企業努力、経営の合理化、そういう点で解決してもらいたい、こういうふうに考えております。
  54. 近江巳記夫

    近江委員 鉄鋼なんかは、完全なプライスリーダーなんですね。寡占状態にあるわけですよ。それが稲山さんなんかは、トン一万円を超えることはないが、かなり大幅なものである、八、九千円の値上げ幅になる、こういうことを示唆しているわけですね。こういう重要基礎物資をただ企業がちょっとしんどいからということでどんどん引き上げをやっていったら、一体どうなるかということですよ。だから、いま長官がおっしゃったことは、これは全企業に浸透させなければいかぬと思うのです。  そこで、前に狂乱物価のときにも、総理官邸でしたかで、トップリーダーを集めて、協力をしなさいということを総理以下福田総理も御出席になってお話しされたわけですね。やはりいま国民生活はこれだけ春闘一けたで皆苦しんでいるわけですから、何よりも大事なことは物価安定ですよ。それをそんな企業が苦しいからと、自分のところは力があるんだということでぼんぼん引き上げてくると、これはもう許せないことですよ、みんな苦しいのですから。だから、いま長官がおっしゃったことは非常にいいことだと思うので、その長官がおっしゃったことを徹底なさる伝達方法について、以前とられたようなそうした方法であるとか、何らかお考えになることはございませんか。
  55. 福田赳夫

    福田(赳)国務大臣 まあ余り仰々しいというか、大げさな、そういうおっしゃるような措置をとるまでのことはなかろうと思うのです。いま通産省におきましても、個別物資につきまして、決して値上げを指導しておるわけじゃないのです。経済の秩序維持ということにつきましては深甚の配慮をしながら行政指導に臨んでおる、こういう状態でありますので、その態度で通産省がいてくださるならば、別に物価安定政策会議という華々しい措置をせぬでも、そういう政府の考え方というものはおのずから財界に浸透していくのであろう、こういうふうに見ておりますが、とにかく政府は、景気は上昇過程に転じた、こういうふうには見ておりますが、同時に物価問題も大事な問題である。これを手放しにするわけじゃございません。十分配慮しながらやっていきたい。それで私は実効をおさめ得る、かように考えております。
  56. 近江巳記夫

    近江委員 今度通産省は標準価格をほとんど撤廃されるわけですね。灯油等は標準価格をなくす。そうしますと今度フリーマーケットに移行することになるわけでございますが、もうこの五十一年度上期には製品一キロリットル当たり千三百円前後の値上げをする、こう言っているのですね。こんなばかにした話はないと思うのですよ。鉄鋼といい、灯油等の石油製品等といい、それだったらまるで業界に値上げをさしてやるためにに、そういういわゆる手かせ足かせのものを外してやる。何のために通産省はあるかということですよ。エネルギー庁は国民の立場に立っているのか、業界の立場に立っているのかということを私は問いたいのです。こういう動きに対してどう思いますか、こんなことでいいのですか。
  57. 増田実

    ○増田政府委員 灯油の価格の問題についてお答え申し上げます。  灯油につきましては、これは標準価格は設定されておりません。ただ、標準価格を三品目について設定いたしましたときに、一応参考価格といたしまして灯油の価格を発表しておりますが、通産省では、ただいま近江先生のおっしゃられましたように、灯油が国民生活に最も直結する品物でございますので、この発表いたしました参考価格よりもさらに低い価格で元売りから出るように指導しております。その結果、ことしの冬におきましては、十八リットル入りの店頭売りにつきましては七百円を超えないということで維持したわけでございます。  ただ、灯油の価格につきましては、やはり需給の問題がございますので、私どもといたしましては供給を十分にするということを常に心がけております。このたび発表いたしました五十一年度の生産計画におきましても、ことしの九月末における灯油の備蓄量というものについて非常に大幅なものをつくりまして、これで業界を指導するわけでございまして、灯油の価格につきましては、先生のおっしゃられましたように私どもは十分な配慮をし、その価格について常に監視する、こういう立場でございまして、決してその価格の値上げをさせるという立場ではございません。
  58. 近江巳記夫

    近江委員 そうすると、五十一年度上期には製品一キロリットル当たり千三百円前後の値上げが必要であると言うたことは、これは政府が責任を持ってやらせませんね。もう一遍確認しますが。
  59. 増田実

    ○増田政府委員 ただいま申し上げましたように、灯油の価格につきましては、常に十分監視をして、値上げにつきましては、これを行われても、最小限度にとどめるという努力を常に続ける所存でございます。いま先生の御指摘になりました千三百円ということについては、私どもは関知しておりません。
  60. 近江巳記夫

    近江委員 これはひとつ十分監視してもらいたいと思うのです。  福田長官、こういうように、公共料金だけじゃなくして、もう業界全部、いわゆる製品値上げでマージンを取っていこう、すべての業界がいまこういう動きなんです。ですから、よほど政府として監視をやってもらわないと、これはまた大変なことになりますよ。一けたしか給料は上がっていないのに、じりじりこんな、それぞれ企業は皆都合のいいようにいろいろな内容出してくるわけですよ。原価は何も国民はわからぬわけですから、何ぼでもそういう理由に挙げるようなことは言えるわけです。そんなことをじりじり認めていきますと、これはもう大変なことになります。ですから、本当にきめ細かく政府が十分な監視をしていただきたいと思うのです。  それで、指定生活物資の全面解除をなさって、狂乱物価の収束を政府としては宣言なさっているわけですが、これはまた油断をしますと何が起きるかわからぬわけですね。これを宣言なさって、さらに政府としては十分な監視をするとか何らかの対策が必要だと思うのですが、それに対する心構え、また今後の対策について長官からお伺いしたいと思います。
  61. 福田赳夫

    福田(赳)国務大臣 いわゆる買い占め防止法、生活関係の緊急措置法に基づきまして、物資を指定して価格需給などの監視体制をとってきたのですが、それを、その法律の発動を要するための要件がもうなくなったという情勢になりましたので、一応物資の指定解除は両法案につきまして行います。行いまするけれども、先ほど申し上げておりまするとおり、物価問題は非常に重大な問題である。ことに景気上昇期における物価問題、これは特に気をつけなければなりません。そういうようなことで、この物価監視体制の枠組みにつきましては何ら変わるところはないわけであります。生活関連の緊急措置法によりまする価格調査官、これは名目的にはなくなりまするけれども、これは国家予算なんかも地方庁に対しまして補助をしておるわけであります。そういう体制は維持いたしまして、事細かに、重要な生活関連物資などにつきましては、監視、調査の体制は怠らない。そして、景気上昇しますけれども、しかし同時に物価の方もまた安定しておるという情勢をいよいよ固めてまいりたい、こういうふうに考えております。
  62. 近江巳記夫

    近江委員 この物価調査官等は解任されるけれども、いわゆる注目をしていく、それがちょっと中途半端だと思うのですよ。予算措置もおつけになるのでしたら、やはりきちっとした名称でも何か政府の方でお考えになって、ふさわしい使命を与えて、十分監視さしていく、こういうことをやらないと、先ほどおっしゃったように景気上昇期に入っておるわけですから、これはまた非常に心配なわけですね。ですから、その点ひとつ十分な監視体制をやっていただきたい、このように思うわけでございます。十分ひとつ相談してやっていただきたいと思います。  それから、ロッキード問題で非常に国会も空転したわけでございますが、特に今回はトライスター、P3C等が問題になったわけでございます。それで、P3Cの問題につきましては、海幕等が名前まで入れて非常に希望しておるというようなこともあったわけですが、PXLについては実戦配備を二年延ばす。で、現在のP2Jを継続使用していくことにめどがついた、実質上P3Cの輸入は白紙状態になったということが言われておるわけですね。そこでまた国産論が再浮上してくるということも言われておるわけですが、このPXLの問題について通産大臣はどういう考えを持っておりますか、それについてひとつお伺いしたいと思います。
  63. 河本敏夫

    河本国務大臣 これは国防会議で決められるべきことでございまして、私からとかくの議論をすべき問題ではないと思います。ただ、日本の航空機産業はこれを国産する力は十分あるということだけは申し上げておきます。
  64. 近江巳記夫

    近江委員 この問題につきましては、いわゆるPXLが必要であるのかないのか、それはきょうのこの商工委員会の舞台ではありませんけれども、徹底して論議を詰める必要があろうかと思うのです。大体こういうPXLが必要であるかどうかという根本論議というものが少し薄いと私は思うのですね。だから根本問題から入っていく必要があろうかと思うのです。そういうことで、いま通産大臣は、国産機については、できればという気持ちを持っておるというような一端の御披露があったわけでございますが、まず必要であるかないかということをよく論議していただきたい。きょうは副総理もお見えでございますから、十分政府部内で、PXLが必要であるのかないのか、この根本的な論議をひとつよく展開していただきたい、このように思います。  それから、次期民間機輸送政策の中でYXの問題がありまして、河本大臣自身、ボーイングの会長にお会いにもなったということを聞いておるわけでございますが、通産省としましては、航空機工業海外調査団として日大の木村秀政団長以下十六名を欧米に派遣をされておるわけです。そのときの報告書を私もいただいておりますが、その四十ページに、ロッキード社に関しまして「民間機の販売の面でもボーイング社、ダグラス社ほど近年の実績がなく、また会社経営に大きな問題がある現状においては、考慮の外におくほかはあるまい。」このようにお述べになっておるわけです。こういう点について、通産大臣は政府派遣のこの調査団の下したロッキード社に対するこの報告についてどういう評価をなさっているか。また、こういう報告書が出されながらトライスターが選定をされておるわけですが、このレポートに対して、大臣としての評価についてお伺いしたいと思うのです。
  65. 河本敏夫

    河本国務大臣 私は、トライスターについての報告については承知しておりません。ただ、昨年の秋であったと思いますが、木村先生を団長とする航空調査団が英国に参りまして、英国の航空機産業を調査した報告は先般受けましたが、それは民間航空機開発についての英国側の現地調査の要請に基づいて行われた技術団の派遣でございまして、トライスターとは直接関係がございません。  なお、先ほど当初にお述べになりましたボーイング社とのYX共同開発につきましては、昨年の十二月に基本的な合意に達しまして、目下これからの開発スケジュールをどう進めていくかということについて詳細双方において作業中でございます。
  66. 近江巳記夫

    近江委員 こうした航空機問題というものは、ロッキード問題を中心として非常にいろいろ論議が行われておりますし、十分ひとつ通産省としても今後は慎重に、国民のそうした疑惑の眼を受けないように今後の監督等をやっていただきたい、このように要望いたしておきます。  もう時間が来ましたから終わりますけれども、最後に通産大臣にお伺いしておきますが、電力料金決定のプロセスとしまして、いま聞き取り調査を電力会社に対してなさっておられるようでございますが、公聴会をいつなさるのか、それからまた、経企庁の諮問機関である物価安定政策会議にはいつごろおかけになるのか、この辺のスケジュールがわかっておればお伺いしたいと思います。
  67. 河本敏夫

    河本国務大臣 公聴会は多分五月の十日前後になろうかと思います。若干の日にちの変更はあろうかと思いますが、大体そういうふうにただいま想定をしております。  なお、作業が終わりましてから企画庁とも当然相談をしなければならぬわけでございますが、それは多分五月の下旬ごろになるのではないか、こういうふうに想定をしております。
  68. 近江巳記夫

    近江委員 これで終わりますが、公聴会がいつも非常におざなりになされている。意見を言ったって、それが反映されているのやらどうもさっぱりわからない。もっと傍聴席も入れてもらいたいとか、公聴会に対する改革についてはいろいろ省内でも論議されていると思うのですが、今後公聴会についてさらに民主的に改革なさるおつもりかどうか、また、具体案がありましたらお答えいただきたいと思うのです。
  69. 河本敏夫

    河本国務大臣 その点につきましては十分配慮いたします。
  70. 近江巳記夫

    近江委員 それでは、終わります。
  71. 稻村佐近四郎

    稻村委員長 宮田早苗君。
  72. 宮田早苗

    ○宮田委員 まず、福田総理に御質問をいたします。  今春闘も民間労組並びに官公労に対して回答が相次いで、いわゆる春闘相場が形成されつつある、こう思います。大体八%から一〇%の賃上げ水準になると思いますが、この数字は労働者の立場から見ますと大変低い水準と言わなければなりません。政府は、五十年度末の消費者物価指数を対前年比一けた台に抑え込んだというふうにおっしゃっております。これとて一割の物価上昇でございます。     〔委員長退席、安田委員長代理着席〕 それでも労働組合が収束に向かおうとしておりますのは、雇用かあるいは高率賃上げかの選択に結論を見出し、また、今後の物価抑制に政治がより有効に働くことを期待しての行動だと思っております。労働者の犠牲において今春闘は収束したとも言えるわけですから、問題はこれからの物価対策だ、こう思います。  ここ半年間の経済運営論議が、インフレ抑制から景気回復へとシフトを変えてきたものと思います。私どもが一番心配いたしますのは、長い不況の間に賃上げしようにもできなかった企業が、景気が順調に回復するにつれ、製品値上げに動くのではないかということであります。今日の新聞紙上でも、買い占め売り惜しみ防止法あるいはまた国民生活安定緊急措置法に基づきます物価対策を解除することが報じられておりますが、これなども製品価格引き上げの引き金になりはしないかという、心配もあるわけでございまして、そういう意味で福田総理の御所見をまずお伺いをいたします。
  73. 福田赳夫

    福田(赳)国務大臣 私の考えは、景気だけじゃないのです。景気もまた物価もと、こういう両建ての考え方をとっておるわけでございますが、物価政策の方は、これは昨年の春闘がなだらかな形で決定された、こういう後を受けまして鎮静化がずっと進んでおるわけなんですが、景気の方は、世界情勢が昨年非常に悪かった、そういうようなこともありまして、わが国でもなかなかふるわぬというような情勢でありましたので、この点に特に配慮をして今日に至っておりますが、やっと景気も大体上昇カーブを決めておる、こういうふうに見ておるわけです。  景気が上昇するということになりますると、物価がまた上がるという副作用が起きては困るのですから、この方面にまた配慮をしなければならぬ、こういうことで、とにかく景気だけじゃない、物価も安定させなければならぬという、この両建ての姿勢ですね、これは堅持してまいりたい、かように考えておるのでありまして、何とかしてこの二つの目標を同時に実現をいたしたい。  私は、先般も本会議で申し上げましたが、五十一年度というこの年は、インフレも不況もこれでおしまいという、そういう年にいたしたいというふうにかたく考えております。
  74. 宮田早苗

    ○宮田委員 物価問題について、抑制の目標は大変結構と思っておるわけです。低成長経済時代で実質的にダウンをしております大衆の生活水準をカバーするためにも、安定成長にふさわしい消費者物価政策を展開しなければならぬわけでございまして、さきの近江委員の質問にも大分お答えでございましたが、もう一遍改めて副総理の決意をひとつお聞かせ願いたいと思います。
  75. 福田赳夫

    福田(赳)国務大臣 私は、今日の物価情勢は安定の基調を固めておる、基調的には非常に安定した方向になってきた、こういうふうに見ておるのですが、あらわれてくる数字というものがはなはだ満足できないものになっておるのです。五十年度におきましても九%の上昇だ。また、五十一年度におきましても八%程度を目標としなければならぬ。これはいかにも高い。一刻も早くこれは定期預金金利水準以下に持っていかなければならぬ。  ところが、基調はいいが、数字にこれを表現する場合にそういう高いものになってしまうということにつきましては、これに影響する二つの要素がある。海外要因とかいろいろありますけれども、特に大きな要素といたしましては、賃金の問題、それから公共料金の問題ですね。賃金につきましては御協力を願っておるわけでございまするけれども、公共料金につきましては、狂乱物価のとき厳しく抑制政策をとった。この状態を放置しておくわけにはいかぬ。この三カ年ぐらいの間には、五十年、五十一年、五十二年ぐらいの間には主要公共料金につきましては改定の一回りをさせなければならぬ、こういうような事態に追い込まれておるわけであります。  そこで、この公共料金が消費者物価にかなりの重荷になっておる。しかし、これをほっておくわけにはまいりませんので、ただいま申し上げましたように、公共料金改定の影響がそう衝撃的なものにならないように、三カ年ぐらいに分けてこれは改定を行うということでございますが、公共料金を抱えておる物価というものは、まあ数字から見まするとちょっと高いものにならざるを得ないと思うのです。しかし、五十二年度ごろには公共料金問題も主要なものにつきましては一回りという状態に持っていきまして、そしてその後の物価につきましては、国民が期待するような、本当に数字的にも安定したというような状態に持っていきたいと、かように考えております。
  76. 宮田早苗

    ○宮田委員 次に、景気の問題について、今回の春闘の結果、さっき申し上げたとおりでございますが、もう一つは、五十一年度の予算の中での大きな性格として、個人消費をより活発にする、それによって需要を喚起して景気浮揚の方向をとる、こういうことだと思います。しかし、今回の春闘の結果をここで決めるというのはまだどうかと思いますけれども、趨勢として余り組合が思っておるほどの賃上げにならなかった。そこで個人消費が大きく減退をするのじゃないかと思っておるわけでございまして、したがって需要が余り大きく伸びない、伸びないというのは、逆に物価を引き上げるという、こういう逆な関係になりはしないか、これが結果として物価を押し上げるような傾向になりはしないかという気持ちを持つわけですけれども、副総理、その点についてのお考えはどうですか。
  77. 福田赳夫

    福田(赳)国務大臣 賃金が低くなった、それが逆に今度は物価を上げる原因になる、こういうのは非常に珍説だと私は思うのです。聞いたことがない、初めて伺う議論でございますが、賃金が生産性上昇の範囲内にとどまって上昇だということになれば、これは物価に対しまして上昇の影響はないわけでありますが、現実の問題とするとそういうことはなかなかむずかしい。現実の問題というのは、物価が現実に上がっておるということもにらまなければならぬ賃金決定でありますから、それはむずかしい。そこで生産性を超えたある程度の上昇ということにはなるのでしょうが、その限度におきましては物価の上昇にやはり影響してくるわけです。  そういう中で、大企業なんかは、賃金の上昇がありましても、いまは操業度が改善される、生産が伸びるから、賃金の上昇を生産性の上昇でかなりの部分を吸収するという産業が多かろうと思うのでありますが、生産性の向上を実現しがたい中小の企業ということになりますと、やはり製品価格に賃金の上昇分を転嫁するという傾向になる。それが消費者物価にもつながって消費者物価の上昇ということになる傾向を持つわけでありまして、私は、宮田さんの御質問ではございまするけれども、賃金が低くなるということは理論的には物価安定のためにかなりいい影響を持つ、そういう見方です。それが多数説じゃないか、そんな感じがいたします。
  78. 宮田早苗

    ○宮田委員 先ほど近江委員質疑の中で、電力料金値上げの問題が出てまいりました。再度の質問になるわけですけれども、そのときに原価計算の結果ということをおっしゃっておりましたし、またその際に、抑制の立場から三〇%以内ということもおっしゃっておられたわけでございます。今後この考え方を当然に持ち続けてもらわなければならぬと思うのですが、その決意のほどをひとつお願いします。
  79. 福田赳夫

    福田(赳)国務大臣 公共料金は、これを無理をして抑え込んでおきますと、あるいは国鉄の例に見るように、非常にむずかしい事態を企業自体に持ち込むということになるわけです。そういうことを考えますと、私は、公共料金問題というのは、心平らかに企業の原価計算ということをしてみる必要があると思うのです。そして、妥当な料金引き上げはどの辺の水準かということを客観的に出してみる。しかし、その結果が三十何%というふうに、申請されているような数字であるとすれば、これは物価政策に対しましても、あるいは電力消費産業に対しましても非常に衝撃的な影響になるであろう、私はこういうふうに思うのです。  ですから、そういう結論が原価計算の結果出た場合には、やはり電力消費企業の見地から、あるいは物価政策の見地から、これはその要請を一挙に認むべきかどうかということにつきまして当然政策的な配慮があってしかるべきである、こういうふうに考えておるのでありまして、やはり電力企業というようなもの、これは重要な企業です。これの立ち行きを危殆に陥れるような料金抑え込み政策をとってはいかぬと私は思うのです。しかし同時に、料金引き上げの結果、各界に大きな迷惑を及ぼすというようなことにもなってはならぬ。私は、そこにはおのずから政策的配慮の余地があり、当然それをすべきである、これはひとり電力料金のみではなくてあらゆる公共料金につきまして同じ考えで臨まなければならぬだろう、こういうふうに思います。
  80. 宮田早苗

    ○宮田委員 福田総理に対する質問をこれで終わりましたから、結構でございます。  次に、通産大臣にお伺いをいたします。  いまの電力料金に関連をいたしまして、各社の申請に対しまして、アルミなり亜鉛等、電力多消費型の産業界から大変強い要請が来ておりますし、また来ておるものと思います。いずれ非鉄金属の備蓄に関する法案審議の際に問題にしたいと思いますが、確かに上げ幅によっては相当苦況に追い込まれるのじゃないかという気がするわけでございますので、大臣の方として政策的な配慮等がございましたら、お考えを聞かしていただきたいと思います。
  81. 河本敏夫

    河本国務大臣 電力料金は原価計算主義で決めることになっておりますので、これに政策的配慮を加えまして、ある産業に対しては安く、ある産業に対しては高くと、こういうことは行わないことになっております。  ただ、いま御指摘がございましたように、たとえばアルミ業界などは非常にたくさんの電力を消費いたしまして、大きな影響が出てまいりますので、このアルミ業界に対しましては、総合的な業界の立て直しを図っていくために一体どうしたらよいのか、こういうことを業界としてひとつ出してもらいたい。電力料金だけの問題ではないわけです。電力料金だけの問題が解決いたしましても、ほかに幾つかの問題がたくさんあるわけでございますから、とにかく業界が国際競争力を確保する、そのためには一体どうしたらいいのだ、こういうことにつきまして業界としての案をまとめるように要請をいたしております。  私といたしましては、やはり将来は海外における立地ということを積極的に進める必要もあろうかと思いますし、同時にまた、製錬だけではなく、製品の加工、こういう面の兼業ということも必要だと思いますし、そのほか、業界が乱売をするということになりましても大変でございますから、ある程度の再編成ということも必要かと思いますが、あるいはもっといい案があろうかと思いますので、総合的に業界としての、こうすれば立ち直るのだという案をつくるように要請をしておるところでございます。
  82. 宮田早苗

    ○宮田委員 質問を変えます。  今日、世界の政治を揺るがせておりますロッキード社の航空機売り込みに絡みます数々の疑惑に関連いたしまして、わが国の次期ジェット旅客機YX開発計画について大臣にお尋ねをします。  わが国の航空機産業の経営環境はまことに厳しくなっております。たとえば機体製造部門あるいはまた修理部門等の工数の推移を見ますと、去る四十四年度の約千九百万工数を頂点にいたしまして、年々低下をしているわけであります。五十一年度は新規契約を見込まない場合は約一千万工数に激減をします。定時操業が不可能になります企業が出てくる状況下にあるのでございまして、大臣は今回のロッキード事件を機に日本の航空機産業の振興を力説されているのでありますが、ボーイング社との最近の交渉はどうなっておるか、まずその点をお聞かせ願いたいと思います。
  83. 河本敏夫

    河本国務大臣 通産省といたしましては、将来の産業構造を転換いたしました場合の基幹的な産業といたしまして、コンピューター産業あるいはまた航空機産業、これが一つの大きな中心になるのではないかということは、急に決まったことではございませんで、ずっと前からの基本的な考え方でございます。そういう趣旨に基づきまして、昭和五十一年度の予算編成に際しましても、この二つの分野に非常に力を入れたわけでございますが、特に航空機産業はすそ野も非常に広いわけですし、航空機産業の振興によりまして日本の工業全体の技術水準も非常に高まりますし、私は非常に大きな影響があろうかと思います。しかしながら、いま数字をもってお示しになりましたような状態で逆の方向に進んでおる、こういう状態は大変憂慮すべき点だと思います。  そこで、今後の一つの大きな柱といたしまして、次期の旅客機の開発ということを一つの大きな柱にいたしておるわけでございますが、昨年の年末に共同開発の相手方でありますボーイング社との間に開発についての基本的な話し合いがつきまして、目下、これからどういうスケジュールで今後の開発を共同で進めていくかということについて、具体的なスケジュールを相談しつつあるところでございます。近く方向がまとまろうかと思いますが、それによりまして日本の航空機産業というものは一つの大きな力を得るのではないか、かように考えまして、通産省といたしましても期待をしておるところでございます。
  84. 宮田早苗

    ○宮田委員 ボーイング社との交渉をする場合に最大の障害が報道されておるわけであります。聞きますと、日本側に要求しておりますのれん代と申しますか、調整費と申しますか、ボーイング社の販売組織や社名を使うことによって得られる利益約五百億円ということや、日本側が自主的にどの地域で営業活動ができるか等の問題が報道されておるわけでございますが、こういう交渉の障害について大臣はどういうふうに思っておられますか、お聞きします。
  85. 河本敏夫

    河本国務大臣 確かにいまお述べになりましたような点は一つの大きな交渉の柱でございます。ただしかし、今回の共同開発計画は日本とイタリアとそれからボーイングの三者で行うことになっておりますし、それからさらに、あるいはイギリスとかフランスとかいうふうなヨーロッパの一部が将来参加するようになるかもわかりませんが、いずれにいたしましても、現在は三国で共同開発の方向で進んでおるわけでございまして、現実の問題としてはできないような条件を出されましてもこれはもう困るわけでございますので、その点は、先般もボーイング社の会長に、できるような条件でなければ困る、ボーイング社としても駆け引きをしないで、現実の問題としてこれを処理できるような態度で臨んでもらいたいということを強く要請をしておりますので、この問題は十分解決する、こう私は思っております。
  86. 宮田早苗

    ○宮田委員 当初の計画では、昨年秋から試作機の製造に着手ということであったようでございますが、それを踏まえた今後の国内のスケジュールがございましたら御説明願います。
  87. 井川博

    ○井川説明員 先ほど大臣からお答え申し上げましたように、ボーイング社と日本の当事者でございます財団法人民間輸送機開発協会と、現段階で共同開発に入るための覚書についていろいろ相談をいたしてございます。それがまとまりましてから後の段取りといたしましては、共同開発でいろいろ基礎的な設計であるとか市場の調査とかいうふうなものをやりまして、その結果本格的な着手、ゴーアヘッドと呼んでおりますが、それをやっていくわけでございます。したがいまして、試作機製作というふうなことになりますと、そのゴーアヘッド以降の時期になるわけでございますが、この点につきましては、まだ両者の間でいろいろな意味で意見調整をいたしてございます。  先生御案内のように、航空機の需要といたしましてはいま低迷をいたしております。これらの中で、どういう時期にどうやっていくかというのは非常にむずかしい問題でございますので、試作機を試作いたす時期につきましても、やはり交渉の一つのテーマとしていまいろいろ相談をしておるという段階でございます。
  88. 宮田早苗

    ○宮田委員 かつて国内の航空会社がYS機の優先購入計画を白紙に戻した経過があるようでございますが、ちょっと抽象的でございますけれども、運輸省がYS開発計画にかける期待というものがあるはずですから、その点をお聞きします。
  89. 官川晋

    ○官川説明員 お答え申し上げます。  YXは大体二百人乗りで、離発着距離約二千メートルの大型ジェットでございまして、このようなジェット旅客機は、現在わが国で使っておりますDC8、727、737、DC9というようないわゆる中型ジェット約百機ぐらいございますけれども、これらを十分代替、リプレースできるような機材でございますし、また反面、昭和六十年時点でのわが国の航空輸送の点から見ましても、国内約三倍弱、国際線で約四倍程度輸送人員が見込まれますし、さらに三次空整以降、空港は現在公共用飛行場約六十八をわが国は保有しておりますが、このうちジェット化がいま十八空港で行われておりますし、さらに約十一空港ジェット化の計画がございます。  これらを総合いたしますと、このようなジェット旅客機YXがわが国においてこれらの機種に十分リプレースできると思われております。ただし、同種の外国機材と性能及び経済性において十分太刀打ちできるならば、わが国においてわが国の航空機会社がこのようなYXを採用することは大いに期待できるものと運輸省は考えております。
  90. 宮田早苗

    ○宮田委員 ただいま答弁でもおっしゃいましたように、世界の航空旅客需要の動向から見て、六十年代ですか、相当YXクラスの需要が大きいということなんでございますが、この予測は今日のいろいろな状況から判断しての予測と思いますので、果たしてこの予測がそれなりに実行できるかどうか、その点の御見解がありましたらお聞かせ願いたいと思います。
  91. 官川晋

    ○官川説明員 お答え申し上げます。  実際問題としまして、わが国の空港については、御承知のとおり羽田及び大阪については一日の離発着回数について制限がありますし、それから計画はありましても用地買収その他非常に困難はありますけれども、ただいま申し上げました数字はGNPに対して相関関係をもって比較的堅実な方向で固めた数字でございますので、それだけの需要そのものはあるものと確信しております。
  92. 宮田早苗

    ○宮田委員 次に、航空機産業に働いております労働者は大体三万五千名に達しておるわけですが、先ほど申し上げましたような作業量の減少から、優秀な技術者に早くも合理化の波が押し寄せておりまして、航空機産業の五十年間にわたってのいままでの蓄積があるわけでございますが、それはもう御存じのように高度の技術と労働力はどんなことがあっても存続をしておかないと、いまいろいろな御期待もおっしゃいましたし、大臣の決意もあるようでございますが、それがすべてだめになるのじゃないか、さらに今後の日本の産業、とりわけ工業水準の向上と経済基盤の確立に寄与するということも非常に大きいわけでございますので、この点に対しまして運輸省なり通産省なりどう対処されようとしておられますか、それをお聞かせ願いたいと思います。
  93. 井川博

    ○井川説明員 お説のとおり、特にここ数年、民間需要の停滞、防衛需要の伸び悩みというふうなことで、航空機産業が次第次第に工数を減らしていかざるを得ないという実態でございます。したがいまして、われわれといたしましては次期民間輸送機であるYXというものをできるだけ早い時期に実際の開発に着手をいたしていきたい。これに着手いたしますと、大きい機種であるだけに、日本の航空機工業としては相当大きく稼働していくということになるわけでございます。それと同時に、一方の防衛庁需要につきましても、国産可能なものについては国内産業に発注をしてもらいたい、その両面でもって現在の苦境を逐次盛況にもっていきたい、こういうように考えておるわけでございます。
  94. 宮田早苗

    ○宮田委員 次に、通産大臣にお伺いいたしますが、ロッキード事件をきっかけにしまして、いわゆる多国籍企業の行動が問題にされておるわけでございまして、大臣も行動チェックの方法等を検討する姿勢を示しておいでになるわけでございますが、具体的にはどういうお考えであるかということをまずお聞きいたします。
  95. 河本敏夫

    河本国務大臣 ロッキード問題が起こりました直後、総理の方から、この多国籍企業問題について十分かつ至急に検討するように、こういう指示がございまして、それを受けまして通産省でもずっと検討をしておるところでございます。  ただ、この問題はわが国だけで決めるというわけにはまいりませんので、やはり国際的な動き等も十分勘案しなければなりません。     〔安田委員長代理退席、委員長着席〕 御案内と思いますが、OECDでも昨年の初め以来多国籍企業問題を検討する委員会ができまして、約一年間に八回会議を開きまして、あらゆる角度からこの問題を検討いたしております。近くその検討の方向が明らかになるのではないかと考えております。また、国連におきましてもこれを検討する機関ができまして、やはり国連としての立場からこの問題の検討が続いておるわけでございます。  そこで、まず第一番に考えておりますことは、こういう国際的ないろいろな検討の機関ができて積極的にこれと取り組んでおりますので、わが国もこれに積極的に今後一層参加をしていく、こういうことがまず必要だと思います。それから同時に、わが国における多国籍企業の活動状況につきまして現在も調べてはおりますけれども、なお徹底的にこの動きを調査して掌握する必要があろうかと考えております。それから同時に、わが国におきましても多国籍企業が存在をするわけでございまして、幾つかの日本の多国籍企業が海外で活動しておりますが、これらのあるべき活動の方針ということ等についてもやはり検討する必要があろうかと思いますが、幸いに日本の多国籍企業の海外における活動につきましては、二、三年前からそれぞれ自発的に一つの行動基準というものをつくりまして、その行動基準に従って各社ごとにまた一つの基準というものをつくっております。それからまた、これをフォローアップするような機関もできておりますが、さらに通産省といたしましては、こういう動きを確実に掌握するために積極的な行動を起こすということも必要であろうかと考えております。  以上三点につきまして検討を続けておるわけでございますが、いずれにいたしましても国際的な動きとの整合ということがやはり何よりも肝心でございまして、日本だけが独自の行動をとるということは不可能でございますので、そういう動きとの整合を考えながら進めておるというのが実情でございます。
  96. 宮田早苗

    ○宮田委員 大臣は本年の初めに産油国の中東を訪問されたわけごでざいますが、四十八年の石油ショック後展開してきた政府の資源外交、主としてわが国経済協力について、具体的に内容がございましたら御説明を願いたいと思います。
  97. 河本敏夫

    河本国務大臣 この一月に中近東四カ国を訪問いたしまして、それぞれの国の政府首脳と十分懇談をいたしまして、今後の経済協力、それから貿易の拡大、主としてこの二つの点について話し合ったわけでございますが、しかし、この二つの点を進めていきますためには、やはり何と申しましてもお互いが十分話し合いをいたしまして、相互に理解をし合うということが必要である。当然のことでございますので、まずそういう基本的な考え方のもとにこの二つの問題と取り組んでまいったわけでございますが、懸案の問題の処理の仕方につきましては、先方と大体合意に達しましたので、その後四カ国に対しましては十余りのいろんなミッションをすでに送っておりますし、また送ろうといたしております。  これらの専門家のミッションの派遣によりまして、先方との話し合いが急速に具体化することを私は期待をしておるわけでございますが、いずれにいたしましても、イラン、イラク、サウジアラビアは石油の埋蔵量も非常に多いわけでありますし、わが国の中東からの輸入の大きな相手国でもありますし、また貿易全体の相手国といたしましても、すでにサウジアラビアやイランなどは、アメリカに次いでの、往復貿易では最大のパートナーになっております。そういう点を十分考慮いたしまして、先ほど申し上げましたような幾つかの経済協力案件が至急に具体化するように、そしてまた、そのことによって中東各国との協力関係というものが緊密になりまして、さらに貿易関係も一層拡大する、そういう方向にぜひ持っていきたい、こういう構想のもとにいま作業を鋭意進めておるところでございます。
  98. 宮田早苗

    ○宮田委員 次に、産業構造についてお伺いするわけですが、御存じのように、実はここ二、三年の間相当大きく変化をしなければならぬ要因というものが出てきたわけでございまして、産業界もこれに対する取り組み姿勢もまた基本的に転換しなければならぬということで取り組んでおるわけでございまして、これがどういう変化になりつつあるものか、また大臣としてその好ましい変化といいますか、どういうことをお考えになっておるか、さらに言いますならば、それに対する指導の考え方、たとえて言いますならば業務提携とか再編とか、あるいはまた合理化という問題が当然にいま話題になっておるわけでございますけれども、これに対する大臣のお考え方というものが非常に大きくそれを左右するというふうに思っておりますので、その点についてのお考えがありましたらここでお聞かせ願いたいと思います。
  99. 河本敏夫

    河本国務大臣 明治維新以来これまでは約百十年になりますが、その間の産業構造の動きを見ておりますと、明治初年以来昭和三十年ごろまでは、日本の産業というものは御案内のように軽工業または繊維工業あるいはまた雑貨工業と、こういうものが中心であったわけでありますが、昭和三十年代から、これでは日本の産業というものは国際競争力がなくなるということで、重化学工業を中心とする産業構造に転換をいたしまして、ようやく昭和四十年代の中ごろにその転換がほぼ一巡したのではないかと私は見ておりました。  たまたま昭和四十八年の秋に石油ショックが起こりまして以降、今後エネルギーや資源のない日本としての産業構造のあり方ということが非常に大きくクローズアップされまして、そしていまや産業界の、産業政策としての最大の課題になっておるわけでございますが、私は、重化学工業を中心とするいまの産業構造を高度の機械工業あるいは知識集約型の産業というものに転換するのだと言いましても、これは相当の時間がかかると思います。やはり二十年とか三十年とかいうふうに私はかかるのではないかと思います。  しかしながら、発展途上国等の追い上げ、特に日本にとりましては近隣諸国のいろいろな比較的やさしい産業の分野での追い上げ等もありますから、大局的に考えまして、産業構造の転換というものには積極的に取り組まなければならぬと考えておる次第でございますが、先ほどそういう意味において当初に御質問がございました航空機産業であるとかあるいはコンピューター産業というものは、今後の大きな柱になるであろうということを申し上げたわけでございます。  それから同時に、現在あります産業がいかに激しい国際競争力に耐えてりっぱに生き残ることができるかという問題につきましては、これは個々の産業ごとに考えていかなければならぬ問題だと思います。当然自力で立ち上がれる産業等もたくさんございますけれども、中には構造の変化によりまして、政府がある程度バックアップいたしませんと立ち上がれない産業も若干あろうかと思いますが、こういう産業につきましても、政府が手とり足とりするというわけではなく、業界自身で自発的な立ち上がりの案というものをつくってもらって、政府がそれを基礎にいたしまして今後のあり方を考えてお手伝いしていく、こういう方向でやっていきたいと考えておるところでございます。
  100. 宮田早苗

    ○宮田委員 次に、エネルギー庁にお願いします。  五十年度末の備蓄は、目標の七十日分を達成できるということのようです。五十一年度の五日分積み増し計画について、各社から備蓄法に基づく積み増し計画というのが出ておると思いますが、それについて御説明願います。
  101. 増田実

    ○増田政府委員 石油の備蓄につきまして昨年末石油備蓄法が公布になりまして、この施行日につきましては四月二十六日から施行されることになっております。この石油備蓄法が施行されますと、それに基づきましてただいま宮田先田から御質問のありました各社の備蓄計画というものを全部提出させる。これは五十二年だけではございませんで、今後の四年間の備蓄長期計画を各社から提出させるということになっております。
  102. 宮田早苗

    ○宮田委員 五十一年度につきましては、既存の製油所で可能とされておるようですが、問題はそれ以降の問題についてであります。共同備蓄会社の構想というものがあるわけでございますが、これは進展しておるかどうか、お聞きします。
  103. 増田実

    ○増田政府委員 石油備蓄につきましては、原則といたしましては各石油会社あるいは石油を輸入いたしております輸入業者その他がタンクを設置いたしまして備蓄義務を果たす、こういうことになっておりますが、ただ、中にはその会社の自力だけではタンクの建設が非常にむずかしい、それから土地の問題、資金の問題、その他いろいろの要素がございますので、それを解決する方策といたしまして共同備蓄会社というものを設置いたしました場合には、これに対しまして国が相当の支援を行うということで、共同備蓄会社に対します出資金、あるいは共同備蓄会社が施設を建設いたしますときのそれに対します融資という制度ができておるわけでございます。ただ、現在までのところは共同備蓄会社につきまして設立はまだございませんが、共同備蓄会社を建設する計画は幾つかございます。
  104. 宮田早苗

    ○宮田委員 五十一年度分までの関係については既存の製油所で足りるということなんでございますが、そうなりますと、石特会計のいま答弁されました共同備蓄会社資金は、五十年度が三十億円、こういう予算になっております。これの執行はどういうふうになるか、御説明願いたいと思います。
  105. 増田実

    ○増田政府委員 共同備蓄会社に対します出資金といたしましては、ただいま先生からお挙げになりましたとおり、昭和五十年度の予算は三十億の出資金の用意があったわけでございますが、これにつきましては、残念ながら五十年度においては共同備蓄会社の設立がございませんために、この予算は全く実行されておらないということでございます。それから、五十一年度の予算につきましては四十億円の予算が計上になっております。それからまた、前年度三十億が使い残しになっておりますので、そのうちの十億円をできれば繰り越しということで、合計五十億円をもちまして共同備蓄会社の設立があった場合の出資金の用意といたしたいというのが、現在私どもの方で考えております計画でございます。
  106. 宮田早苗

    ○宮田委員 通産省は石油業界の再編強化を重要な政策の一つとしておいでになるわけですが、この共同備蓄会社の設立を将来の再編の引き金、いわば誘導政策としてとらえておいでになるかどうか、その点もお聞きします。
  107. 増田実

    ○増田政府委員 ただいま御説明いたしました共同備蓄会社、これは原則としては再編とは一応切り離して、備蓄達成のための制度ということで考えておるわけでございます。ただ、今後石油業界におきます再編が進みます場合には、企業間における共同備蓄によりますいろいろな連携というものが一つの再編の要素になるということは事実上出てくると思います。ただ、先生の御質問にあるように、これをてこにして再編を進めようということでは考えておりません。
  108. 宮田早苗

    ○宮田委員 次に、石炭の関係について御質問いたします。  電源開発の長崎県にあります松島火力発電所の着工、建設はようやく具体化したのでございますが、その石炭手当ては主として海外炭の開発、輸入計画が伝えられておりますが、国内炭との関連も無視できませんので、その計画がございましたらお示し願いたいと思います。
  109. 増田実

    ○増田政府委員 電源開発株式会社の松島火力発電所の石炭の手当てについてお答えいたしますが、この松島計画は、昭和五十五年に一号機、これは五十万キロワットでございます。それから二号機が五十七年に完成する、こういう予定になっております。これによりまして合計百万キロワットの発電所ができる。これに要します石炭は、年間約二百四十万トンという計算になっております。  この石炭をどこから取得するかということにつきましては、原則としては国内炭を優先して使うということになっておりますが、現在の石炭の需給状況その他から見ますと、その大部分輸入炭に頼らざるを得ないというふうに考えております。
  110. 宮田早苗

    ○宮田委員 一般会計に計上されております海外炭開発可能性調査費、これは補助金でしょうが、一般会計の中で約一億円というふうになっておるわけです。この海外炭中継供給基地ですか、また立地条件調査の委託費、これが四千六百万円ということになっておりますが、それに対する内容をお聞きいたします。
  111. 増田実

    ○増田政府委員 海外炭関係で昭和五十一年度の一般会計に計上されました予算は、海外炭の開発調査に必要な経費といたしまして一億五千万円でございます。これが二つに分かれておりまして、一つはただいま先生からおっしゃられました海外炭開発可能性の調査の費用でございまして、これが一億八百万円でございます。それから残りの四千二百万円は海外炭の中継供給基地立地条件調査費、いわゆるコールセンターの建設の調査費になっております。それで、前に申し上げました海外炭の開発可能性調査費の補助金一億八百万円の中には、従来からやっておりました調査費以外に、地質調査費といたしまして八千六百万円がこの中に計上されております。
  112. 宮田早苗

    ○宮田委員 いま質問いたしました松島火力に続きますプロジェクト、計画がございましたらおっしゃっていただきます。
  113. 増田実

    ○増田政府委員 今後の発電の燃料に対しまして、従来非常に石油に依存しておったわけでございますが、これを多角化するというエネルギー政策から、一つは御指摘のありました石炭火力発電所の建設を進める。もう一つは原子力発電所の建設あるいはLNGの発電所の建設、こういうことになっております。その中で、ただいま御質問のありました石炭火力でございますが、現在の設備は大体五百万キロワットということになっております。これに対しまして将来は、昭和六十年度においては大体倍に持っていくということになっております。その中の内訳といたしまして、先ほど御説明いたしました松島火力発電所というのが百万キロワットになっております。倍になりますときの残りの四百万キロワットにつきましては、現在計画中のものがいろいろありますが、まだ地元の関係その他で確定しておるものはございません。
  114. 宮田早苗

    ○宮田委員 次に、原子力発電行政について質問いたします。  原子力発電所の安全対策の一つとして設備の標準化が言われて久しいわけでございますが、五十一年度予算案でその調査費が一億二千二百万円計上されております。通産省、科学技術庁、それに電力各社とどのような体制で調査研究に当たられておりますか、それをお聞きします。
  115. 増田実

    ○増田政府委員 原子力関係予算の中で、原子炉の標準化につきましてただいま先生からおっしゃられました一億円の予算が計上されておるわけでございますが、これにつきましては、通産省が主体となりまして標準化の研究を行うわけでございます。それで、御質問にありました関係官庁あるいは関係業界との関連でございますが、これにつきましては、この標準化の検討に当たりまして、各検討会には関係官庁の方々あるいは関係業界の人たちを入れて総合的な標準化の研究をする、こういうことになっております。
  116. 宮田早苗

    ○宮田委員 次に、石炭鉱業の安定対策、産炭地域振興対策、さらに鉱害、離職者対策などを推進してまいりました石炭及び石油対策特別会計法は、来年の三月末までの時限立法ということになっております。五十一年度予算案の審議でございますが、関係市町村では、来年度以降どうなるのかと、早くも石炭会計法の延長を要請しているわけでございますが、この際、通産大臣からこれに対する基本的な考え方をお聞かせ願いたいと思います。
  117. 河本敏夫

    河本国務大臣 いまお話がございましたように、石特会計は五十二年の三月までが期限になっております。しかし、これまで続けてまいりました政策は当然継続しなければなりませんので、必要な予算のつけ方につきましては十分検討いたしますが、必要な予算は何らかの形で十分確保していくつもりでございます。
  118. 宮田早苗

    ○宮田委員 元産炭地に残っております鉱害の復旧は、四十七年度を初年度といたします十カ年の長期計画をもって進められておるわけでございますが、四十八、四十九両年度の超インフレ経済といいますか、相当に変化をいたしました中にあって、工事の計画等に相当の影響が出た、こう思うわけでございますが、十カ年計画そのものは計画どおり達成されると思いますけれども、見直しということが当然に必要じゃないかと思っております。また、残存しております鉱害量が過程の中でだんだんに増加をする傾向にあるわけでございますので、十カ年という計画半ばでこういう点についての再検討ということは考えられておらないかどうか、この点お聞きします。
  119. 増田実

    ○増田政府委員 石炭鉱害復旧長期計画につきましては、昭和四十七年十二月にこれを策定いたしまして、臨時石炭鉱害復旧法の有効期間であります昭和五十七年七月までの十年間に現在残存しております鉱害を全部計画的に処理する、こういう計画になっておりますが、ただいま御指摘がありましたように、その後の物価の値上がりその他で、現在の進捗状況を申し上げますと、五十年度末におきましては鉱害復旧をいたすべき農地の約二五%が完成して、七五%が残っておる。また、家屋につきましては三〇%が終了しておるということでございまして、十年計画に比較いたしますと、若干おくれが出ておるということでございます。  そういう意味で、今後、五十七年の七月までに全部を完成いたしますためには従来考えておりました予算では足りないということになるわけでございますが、これにつきましては、毎年度毎年度見直しを行いまして、その必要な予算を当初の計画に若干増加するわけでございますが、それを含めまして予算の確保を図っていきたい、こういうことで考えております。
  120. 宮田早苗

    ○宮田委員 最後でございますが、産炭地域の自治体からいろいろ苦情がたくさん出るわけでございますが、その一つとして、元炭鉱住宅の居住者の生活環境が非常に悪いものですから、改善をしなければならぬ。そのために無資力炭鉱跡地の払い下げ住宅についても鉱害復旧の対象としてほしい、こういう問題でございます。炭鉱閉山後、若い人が他の炭鉱に行ったり他産業に移っておりまして、炭住街に残った人は年配者あるいは母子家庭が非常に多いわけでございまして、したがって、生活もきわめて苦しい人たちが多いわけであります。もちろん地方自治体がこれをいろいろ指導し、援助するということでなければならぬはずなんですけれども、今日の地方自治体の窮状からそれもできかねるということでございまして、この点について何か改善をする方法、それに伴う措置というものはできないかどうか、この点をお聞きして、私の質問を終わります。
  121. 増田実

    ○増田政府委員 ただいま御質問がありましたのは、いわゆる払い下げ炭住につきましてその改修費用が鉱害復旧費の対象になるかどうかということでございますが、炭鉱が自分の所有しております家屋に被害が生じました場合は、これは自己の財産に対する被害でありますために、法律的に言いますといわゆる鉱害の対象にならないということで、いま問題になりました復旧の対象としてこれに対して鉱害復旧費を支出することは、現在の制度ではできないという形になっております。ただ、払い下げを受けました後に新しい被害が生じたとか、その他の事態が起こりましたとき、これは当然鉱害の復旧対象になるわけでございますが、ただ、従来会社が持っていたものにいろいろ鉱害が生じたという場合は、これは自己で復旧するというたてまえになっております。  ただ、先生が御指摘になりましたように、現在炭鉱経営は非常に苦境にありますので、これらに対して何らかの対策が必要だというふうに私どもも考えております。
  122. 宮田早苗

    ○宮田委員 終わります。
  123. 稻村佐近四郎

    稻村委員長 午後二時から委員会を再開することとし、この際、暫時休憩いたします。     午後一時二十七分休憩      ————◇—————     午後二時二分開議
  124. 稻村佐近四郎

    稻村委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続行いたします。佐野進君。
  125. 佐野進

    佐野(進)委員 大臣の所信表明に対する質問でございますが、もう所信表明が行われてから二月近くたつのですが、当時の所信表明が果たして現在の状況に合っているのかどうか、ちょっと疑わざるを得ないほど、その後における情勢の変化があるわけであります。したがいまして、私は、そういう情勢下において質問すべき事項は多々あるわけでありますけれども、両大臣ともそれぞれ所用があって、途中、私の質問時間が大分あるわけですけれども、その中ではおられないということでありますので、切り詰めて重点的に質問をいたしますので、お答えをいただきたいと思います。したがって、原則論はできるだけ省いて、現実論で質問をしてみたいと思います。  第一に、毎度のことでありますが、先ほども質疑がございましたが、国民最大の関心事である景気の問題についてここでまた御質問をしてみたいと思うわけです。  この景気見通しの問題については、もうすでにたびたびあらゆる場所において両大臣ともその見解を表明されておるわけでありますけれども、その中で、特にここ数日間の動きの中で顕著にあらわれているといいますか、われわれが最も関心を持ってその動向を見守っておりましたいわゆる春闘の妥結、それに基づく賃金、この賃金の上昇が即消費者の購買力の増大、そのことによる景気の刺激、景気回復をもたらす。したがって、ある程度の賃金の回答が上増して出ることによって、景気動向にいい影響を与えるのではないか。  日経連等が発表して、経団連等が主張しておりましたいわゆる一〇%以下、一けた以下、これは物価を一けた以下という福田さんの見解とも通ずるわけですが、このゾーンの中でおさまったと言って喜んでおるわけでありますが、果たしてそれが今後の景気動向にいい影響を与えるのかどうかということについて、私は多分に疑問視せざるを得ないと思うのであります。この点、具体的な問題であり、かつ原則的な問題でありますので、両大臣にこの点について、いわゆる今次春闘におけるガイドゾーン設定の経過に対して政府はどのように対応されたか、そしてこの対応の結果として一けた台に賃金が決定した、このことが今後の景気動向に対してどのような面をプラス面、マイナス面においてあらわしていくと判断されておるか、ひとつ御見解を示していただきたい。
  126. 福田赳夫

    福田(赳)国務大臣 政府が五十一年度の経済見通しにおきまして実質五%ないし六%と申し上げておるわけでありますが、その背景といたしましては、雇用者所得が一一・八%ということを申し上げておるわけです。一一・八%という雇用者所得の場合に、賃金交渉の対象となるベース賃金、これはどういう位置づけになるかといいますと、この雇用者所得は大体半分ぐらいが賃金交渉の対象となる裸の賃金でございます。それから残りの半分ぐらいが、ボーナスでありますとか、あるいは時間外手当でありますとか、そういうものに属するわけであります。  そこで、それらを引っくるめまして雇用者所得一一・八%。平均してのことでございますが、その中でこれを割って考えまして、このベース賃金、つまりいま春闘で論議されておるベース賃金は平均の一一・八よりはかなり低いものである。それからもう一つの時間外手当でありますとかあるいはボーナスでありますとか、これは景気上昇期でありますのでかなり高く出るだろう。その高く出る所定外賃金とそれからベース賃金とを平均しますと一一・八、こういうことになるだろうということを一応想定しておったわけでありますが、そのベース賃金がいま大体山を越えようとしておるわけであります。その決定はまだ全部過程を終了しておりませんけれども、私どもが考え、展望しておったものよりは、心持ちというか、やや低いところに落ちつきそうな感じがいたします。  しかし、それが景気にどういう影響を持つかといいますと、確かに可処分所得は幾らか想定したところよりは低い。しかしながら、逆に今度は企業の支払い能力という点からいきますと、この賃金以外の支払いが可能になる、こういうことになるわけです。同時に、対外競争力というような面から見ますれば、それだけ競争力が強化される、こういうようなことになり、それはやがて輸出の増強というものにもつながっていく、そういうことでありますので、心持ちどうもベース賃金が思っておったよりは低く決まるのではないかというような感じがいたしますけれども、それだからといってこれが景気全体にそう大きく作用するというところはあるまい。景気動向といたしましては、五%ないし六%の成長は五十一年度においては実現できる、こういうふうに見ております。
  127. 河本敏夫

    河本国務大臣 物価は落ちついてまいりまして、非常にいい状態になっておりますが、それでも若干は上がっておりますので、そういう観点からある程度のベースアップは万やむを得ないと思いますが、日本の経済でやはり一番大きな課題は、国際競争力をどう保持していくかということだと思います。  昭和四十八年までの賃上げを見ておりますと、大体生産性の向上ということを十分考えながらベースアップというものが行われたわけでありますが、四十九年と五十年は大混乱期でありますから、生産性の向上あるいは国際競争力の保持というようなことは全然考慮をしないで、とにかくインフレ対策というようなことからベースアップが行われたと思います。しかし、ことしはようやく落ちついてまいりまして、生産性の向上はありませんけれども、それでもほぼ妥当な水準に落ちつきつつあるということは、私どもも非常に力強く思っておるわけであります。
  128. 佐野進

    佐野(進)委員 お二人の見解を聞いておりますと、結局少なくなったことがよかったことだ、こういうふうに聞き取れるわけであります。景気論争をする場合、幾つかの要因がありまするが、副総理の見解をもってするならば、いわゆる輸出が伸びた、設備投資も、操業度が非常に回復する経過の中で、まだ落ち込んでおるけれども、これも上昇の過程の中にある、個人消費支出がいま一段と伸びていないような動向にあるということをたびたび言われておるようでありまするけれども、私は、いま副総理がお答えになりました鉄鋼、造船、造機、電機、自動車等あるいは私鉄というようなそれぞれの賃上げの動向を見ると、結果的に一〇%以下に抑えられ、八・五%から九%ちょっとというところでありまするが、これは政府が本年度の経済見通しの中で説明されておるところによれば九・八%と見ておられるようでありますから、そう大きな差はないとしましても、大体政府の見通しよりは上にいくことによって経済情勢が定着するというぐあいに考えられるわけでありまするが、そういうような点からいたしますると、資上げ率が政府見通しよりも下回っておる、こういうようになった結果、ますます国民経済に対する認識というものが萎縮するというか、去年の景気回復に対して相当部門が落ち込んでおった、その部門に対するところのてこ上げに支障を来すのではないか。  去年は一五%に抑え込んだという形の中で、結果的に消費支出が伸び悩んだという条件もあるわけでありまするけれども、ことしはこれが悪いところではもはや五%以下である。いわゆるいいところだと思われるところでもいま言ったように九%、一〇%を超えたところはごくわずかであると言われておるというと、結果的にことしの経済見通しが政府の言うとおりにならない、この個人消費支出や雇用者所得の予測に大きな狂いが出てくるのではないか。また、その結果、景気回復に重大な悪い影響を与えていくのではないか。通産大臣の言われた面から見れば、その面について肯定するにやぶさかではありませんけれども、しかし、副総理の見解なりその景気回復に対する対策という面から見ると、若干この低賃金に抑えたということはマイナス要因に働くのではないか、こういうぐあいに判断されるわけでありますが、いま一度ひとつ副総理の見解を聞いておきたいと思います。
  129. 福田赳夫

    福田(赳)国務大臣 先ほど申し上げましたように、ベースアップで論議される賃金はベース賃金なんです。裸の賃金なんです。で、これは私ども昭和五十一年度見通しをいたしましたそれよりはやや、心持ちというか、低くなるのじゃないかなというような感じがしますが、さあそれでは雇用者所得が一体どうなるのだということを考えてみますと、これはベース賃金が低くなればそれだけ今度は企業の支払い能力がふえるわけですから、これはボーナスだとかあるいは時間外手当だとか、そういうようなものの支払いの力になるわけであります。同時に、賃金がこれは心持ち低いという程度でありますので、そう大きな影響はありませんけれども、理論的に言えばやはり企業の対外経済競争力を増すわけです。したがって輸出が伸びる、こういうことになるわけであります。  そういうようなことで、経済全体としてこれがマイナスの影響をもたらす、こういうふうには考えないわけであります、経済は全体として伸びていくわけですから。経済が全体として伸びますれば、ベースが仮に低くても、今度は時間外だあるいはボーナスだというようなものもふやし得る力が出てくるわけでありまして、したがって雇用者所得としては、ベース賃金が心持ち低かったというのとはまた別にこれは考えなければならぬ問題である、こういうふうに考えております。
  130. 佐野進

    佐野(進)委員 福田さんは、三月二日のこの委員会で所信表明を行った中で、本年度の消費者物価は八%程度にとどめる、こう言って、それらを基礎にしながらいろいろな説明をされておるわけであります。果たしてこの八%程度にとどめることができるか。去年は一〇%以下ということでありまして、一〇%以下にしたと言っておられますけれども、これを八%にとどめるという形の中で、現実にいまそれぞれ試みられつつある物価政策、その中でそれをはねのける要素として、御承知のとおり国鉄運賃の値上げであるとか、電話料金の値上げあるいはNHKの受信料、さらに電力等々、ガス料金もまた値上げされるというようないろいろな形で、公共料金と名のつく値上げ要因がメジロ押しに控えておるわけですね。しかも景気が若干上向いたという名のもとに、価格訂正運動あるいはまた便乗値上げ運動、こういうような形の中での値上げが行われようとしている。それらに対しては政府はきわめて好意的な配慮をしておる。きわめて好意的な配慮をして、それはやむを得ないと見ておる。ただ、片一方の賃金所得、国民消費購買力を増大させるところの要因である賃金所得については、これをきわめて圧縮しようとして努力しておる。これはむしろ財界等における動きよりも、政府がそれに対して積極的に圧力をかけておるのではないかと思われるのが、国鉄や電電公社の賃上げに対して一定のクレームをつけておる条件の中でうかがえるわけであります。  そういうような情勢からいたしまして、まあ時間がありませんからこういう質問を長々しておるわけにいきませんので、大変残念ですけれども、副総理、あなたは今回のこの春闘の状況について満足しておられるといま御答弁なさいましたけれども、今後の国民所得を向上させるという意味において、いわゆる配分率を増加させる、いまあなたは特別雇用所得の増大というような形でおっしゃっておられましたが、そういう方面についてはどういうような対策、対応をされようとしておるのかというのが一点。  第二点は、その低ベースで抑えられて、収入が増加しない、減税は行われない、そういうような形の中で働く人たちの収入は実質的に低下する、こういう条件に対してどのような配慮をもって対応されようとするのか、その考えがあるのかないのか、この二点について聞いておきたいと思います。
  131. 福田赳夫

    福田(赳)国務大臣 経済運営のかなめは、まさに佐野さんがいま御指摘になったところにあると思うのです。つまり、物価を安定させながら経済力を培養する、それによってまた雇用を拡大する、こういうことだろうと思うのです。私どもがいま進めておる作業は三点をにらんでおるわけですが、大体私は順調にいっておる、こういうふうに考えるのです。物価は安定基調をさらにさらに強めつつある、景気は、展望といたしまして、昨年と打って変わって明るい展望を持ち得るという状態になった、そういう中で雇用諸統計なんかにも初めて改善の兆しが出てきておる、こういうようなことでありますが、安定的に経済を発展させる、つまり物価を損なわないで経済を発展させる、そういう中で雇用を改善し、また同時に、一人一人の実質所得、つまり物価が上がったのでは幾ら所得が上がりましても、これは無意味なものでございますから、そうじゃなくて、実質所得が向上するように、そういうことを願っておるのですが、まず大体私は、今日の日本の経済の動きはそういう望ましい方向へ向かって歩み始めておる、こういうふうに見ております。     〔委員長退席、安田委員長代理着席〕
  132. 佐野進

    佐野(進)委員 私は、望ましい方向でなくして、方向は方向として、その決意を伺ったわけであります。  そこで次に、その面も一緒にお答えをいただきたいと思うのですが、いわゆる消費者物価は八%に抑えるとはいいながら、私は、相当程度この希望以上に物価が上昇していくのではないか、その要因が非常に多いと思うのでありますけれども、それと見合うというか、それをさらに押し上げる要因というか、そういうような形の中で卸売物価の上昇傾向というものがここのところ続いておるというように報道されておるわけであります。  この卸売物価と消費者物価との関係は、昔は消費者物価がある程度上がっても、卸売物価が安定しておったので、経済がインフレ的様相であったとしても、ここ数年来のようなことはなかったのでありますけれども、ことしはまたそれが再燃するような気配を感ぜられるわけでありますけれども、この卸売物価の上昇をどのような対策の中で食いとめようとされるのか、同時にそれが消費者物価にはね返らないためにどのような措置を講ぜられようとしておるのか、この点をひとつお聞かせいただきたいと思います。
  133. 福田赳夫

    福田(赳)国務大臣 卸売物価がここ二、三カ月ちょっと頭を持ち上げてきた、こういう情勢でございます。過去を顧みてみますと、昭和四十七年までは卸売物価が十三年間ほとんど横ばいで、安定しておったのです。それが四十七年の下半期ごろから急に頭を持ち上げるようになって、四十八年なんかになりますと、石油ショックの直前、四十八年の十月の時点ですでに年間上昇率が二〇%になる、驚くべき上昇になったわけです。そういう歴史もありますので、卸売物価の上昇ということにつきまして、私どもは非常に敏感にこの動きというものを受けとめておるわけで、決して物価情勢というものを安心はしておりません。  ただ、非常に深刻に心配しているかというと、そうじゃない。いまちょうど昨年の暮れから景気は沈滞から上昇へという転換期に向かってきた。そういう中での摩擦的な現象といいますか、そういうようなことで、この二、三カ月ちょっと異様な上がりを示しておる。こういうことだろうというふうに見ておりますが、これが長期化する。あるいはさらに悪化するというようなことになると、これはまた大変なことになりますので、その辺は注意深く監視していきたい。そして、もし異変がありますれば、いつでもそれに対しまして機動的な手を打っていくというふうにいたしたい。  卸売物価の動きということは、心配はしておりませんけれども、非常に注意深くこれを見守っておる、かように御理解願います。
  134. 佐野進

    佐野(進)委員 福田さんの時間がないようですから、それではまとめて質問をしてみたいと思うわけです。  私はきょう質問をしている気持ちの中で、こうだ、ああだとその具体的な問題についての質問をして、その具体的な問題についての具体的な答弁をもらいたい、こういう形で質問を続けてきたわけでありまするが、質問の仕方が悪かったのかどうかわかりませんが、余り具体的な答弁がいただけないのは大変残念であります。これはまた機会を見てひとつ質問してみたいと思います。  そこで、これだけはひとつ具体的にお答えをしていただきたいということは、先ほど申し上げましたとおり、物価を下げるために、これ以上上げないために、いまの動きでは卸売物価、消費者物価いずれも押し上げる要因があるが、この物価を上げないために政府としては何を最重点として対策を立てるのかという点について、一つでも二つでもいいですから、その問題をひとつお示しをいただきたい。  それから、逆のような意味でおとりにならないで、景気を刺激するということは、物価を考えながら景気を刺激するわけですから大変むずかしいのですけれども国民所得の増大が消費購買力の増大につながっていく。いわゆるむだに使わせるということではなくて、無理して買わないというようなことでなくして、たとえば住宅にしても、住宅の購買力が意欲があっても買うことのできないような条件に対して、もう少しそれらを購入できるような、具体的な、たとえば住宅金融公庫の資金等についても優遇をするとか、あるいはその他いろいろな形の中におけるところの対策があるわけですが、その一環として、具体的な実質所得の増収ですね、たとえば税金の減税でもいいわけです、あるいは賃金を上げることでもいいわけです、あるいは物価の問題は、これは別の項目としてありますが、そういう点について、政府としてこういう形において対処していきたいということがおありになろうと思いますので、そういう点、一つ二つでもよろしいから具体的にお示しをいただきたい。  それからもう一つ、ことしは結局輸出が伸びていることが救いだと、たびたび福田さんはお話しになっておられます。また、そうだと思うのです。このところ輸出の伸びは非常に好調だと思います。その結果、輸出を伸ばすために相当無理をしているのではないか、やがてそのとがは出てくるのではないかという心配もあるわけですね。たとえばダンピング輸出をする、あるいは向こうに無理に買う気もないものを送り届けて決済をつける、こういうような形がいろいろ考えられるわけです。そういうような実態はない、もう全く純粋な意味において輸出が伸びておるのだ、こういうことであればそれは結構なことでありまするが、若干無理をした形の中でもしその見通しが狂うということになると大変なことになるわけでございますけれども、その点についてはどうなのか。  特にそういう面においては、この輸出に関連してそれぞれ産業界の活動も一応明暗が分かれておるわけでありまするが、最も明るい面における産業はどことどこであり、輸出の伸びその他の関係においてなお将来低迷を続けるであろうと思われる産業はどういうところなのか。これは、もし福田さんがその点については無理であれば、通産大臣からひとつお答えをいただきたい。
  135. 福田赳夫

    福田(赳)国務大臣 まず、卸売物価の問題でありますが、やはり私は、企業が不況状態が長期にわたったため非常に苦しい立場にいまあると思うのです。これから先の展望は明るいといたしましても、操業度も望ましい水準まではまだ一年もかかりそうだ、こういう今日でありますので、大変企業は苦しい。その苦しみのはけ口をどこに求めるか。製品価格の引き上げにこれを求める、こういう傾向になりがちだと思うのです。  ですから、この安易な価格転嫁という気持ちが一般化しますと、これはまた物価政策上大変むずかしいことになるだろう、こういうふうに思いますので、まあ苦しいところではありまするけれども経済界に対しまして、その苦しさの改善という、その苦しさからの脱出というものはどこに求めるかといいますれば、政府が一生懸命になっておるこの景気政策、そして、その結果として企業操業度というものが望ましい水準に早く到達する、これがかなめであり、またそこに至る過程におきましては、金融政策といいますか、金融機関の役割りというようなものに大きくこれを期待する、こういうようなことを申し、この際、企業は苦しいが極力自己努力、つまり企業の経営の合理化、刷新等をして切り抜けてもらい、安易な価格転嫁をしてもらわないようにしたい、これが一番いま物価対策とすると大事なことじゃあるまいか、そういうふうに私は考えておるのであります。  狂乱当時のあの状態というものはすでに解消いたしましたので、本日の閣議で買い占め防止法やあるいは生活関連物資緊急措置法の適用品目の解除をいたすことを決定したわけですが、これで物価問題は安心だというふうには考えておりません。これから先もこの法律が期しておると同様な気持ちを持ちまして、そして一つ一つの物資の需給に至るまで厳重に見届ける。同時に、価格の動きにつきましてもよく見守って物価の安定にひとつ心がけてまいりたい、かように考えております。  それから、景気につきまして、いま佐野さんから個人消費を拡大すべきじゃないかという御提言でございますが、そもそも個人消費は、言われるようにさほど沈滞とは私ども見ておらないのです。昨年、五十年暦年をとってみましても、一般経済情勢は二・六%実質成長だという、そういう沈滞の中におきまして、とにかく五%をかなり上回るという伸びを示しておる、そういう状態です。この伸びの状態が変化するという兆しはございません。政策的にことさらに消費を刺激するということによって景気を進行させるという考え方は今日妥当ではない。経済界が繁栄に向かう、その自然的効果として、反射的な効果として消費が拡大されていく、これは歓迎さるべきことにしても、これを政策的に何か事を工夫いたしまして刺激するという考え方は、この際妥当ではないのじゃあるまいか、そういうふうな考え方をいたしております。  それから、輸出がこのところかなり伸びておるのですが、これは無理をしておるのじゃないかというようなお話でもありますが、輸出が急増するということにつきましてはかなり気をつけなければならないと思うのです。相手側の国民感情の問題もあります。また、具体的にいろいろ相手方に与える影響、そういう問題も起きてくると思うのです。そういうことで、輸出に携わる商社等において、あるいは主要なメーカー等におきまして、これはどうしても厳しい節度というものが特にこういう際には求められなければならないのじゃないか、そういうふうに思います。しかし、輸出が盛んになるということ自体は、これはわが国として非常に大事なことでありますので、金融というような側面等におきまして政府としてはできる限りの便宜を与えていきたい、かように考えておりますが、御指摘の点は気をつけてまいります。
  136. 佐野進

    佐野(進)委員 いまの輸出の問題については河本さんにも聞いておきたいと思ったのですが、後でほかの問題と関連して聞きます。  それでは、経済企画庁の長官はいなくなりましたので、あと通産関係と公取問題について、時間の範囲内でひとつ質問してみたいと思います。いろいろ問題が各方面にわたりますが、この前、総括的な質問をしておりますので、具体的な質問をしてみたいと思います。  まず最初に、公正取引委員長がおいでですから、公正取引委員長に質問をしてみたいと思います。  委員長衆議院において同意をせられてから参議院にいくまでの間、大変時間がかかりました。衆議院において同意を与える際、私ども商工部会といたしましては、いろいろ検討いたしました結果、公取委員長にあなたを同意することは好ましくないのじゃないか、こういうような意見が圧倒的でございました。しかし、議運段階におけるところの取り扱いで、わが党はあなたを同意することに賛成をいたしました。その経過、その内容はあなたにもぜひ知っていただきたいし、そういう意味において質問をしてみたいと思うのでありまするが、われわれは、今日の経済情勢の中で独占禁止法の運用というものがきわめて重要な役割りを果たすものである、したがって、これを運用する公正取引委員会の果たすべき役割りと申しましょうか、任務と申しましょうか、それはきわめて重要であると判断をいたしております。  そして、この公正取引委員会は準司法的な性格を持ち、行政府にありながら他の行政府の指導を受けることなくその業務を行うこともできる、そういうようなきわめて強い権限のもとに運用されている。したがって、この委員長は少なくとも公正取引委員会が設けられておるその趣旨に基づいて正しく委員会を運営していただかなければならぬ。にもかかわらず、あなたの委員長就任前の言動等については、その任にふさわしくないのではないか。たとえば今度の独禁法改正に対して取り組まれた懇談会の席上における発言、あるいはその後におけるところの一連の行動等を見ても、果たして独禁法運用について公正取引委員会の長として正しく対応していただけるかどうかということについてはきわめて心配だ、こういうような見解が多数を占めたわけであります。  私は、きょうあなたが初めて出席された商工委員会のこの席上において、それらの点についての見解を基礎にして、あなたが今後公正取引委員長としてその職務を遂行されるについての決意とその認識といいまするか、そういう点についてこの際明らかにしていただきたいと思うわけであります。
  137. 澤田悌

    ○澤田政府委員 私が就任いたします前のいろいろお聞き及びの点についての御批判のようでございますが、私の独禁法運用に取り組みます姿勢は、今後の実績を見て御判断を願うほかいたし方ないのでございますけれども、現在わが国経済の運営はまことにむずかしい局面を迎えておりますことは、先ほど来の先生の御質問でもよくわかるのでありますが、独禁政策の重要性も今後はますます強まってまいるものと存じております。したがいまして、このような時期にこの要職を命ぜられました私といたしましては、その責任の重大性を痛感いたしておる次第でございます。  御指摘のように、公正取引委員会は、独禁法の運用、公正かつ自由な競争促進するということによりまして経済の健全な発達を図ることが基本的な使命でございます。それによって国民生活の繁栄を図るべきものでございます。今後、各方面の御意見をよく伺い、実態を把握しながら独禁法の厳正な運営に全力を注いでまいりたい、このような決意でおる次第でございます。
  138. 佐野進

    佐野(進)委員 そこで、その決意を了としながら質問を進めてみたいと思うのですが、いまあなたが決意を述べられたようなお気持ちでこれからいろいろのお仕事をなさっていかれるわけでありますが、その中において当面する重要な課題が幾つかあるわけであります。一つは、独禁法改正政府案がいま国会に上程されようとしておる、そういうことに対する問題だと思います。二つには、先ほどいろいろ質問申し上げましたとおり、経済情勢がきわめて激変をしている。安定しつつあるとはいいながら、先ほどの副総理の答弁の中におきましても、どうなるかということは全くそのときの諸種の情勢によって決定されるという要因の中に置かれている、こういうことが言えると思うのであります。  そこで、そういう情勢下において独禁法改正に取り組もうとする政府のこの原案作成に対して、前回の公取は公取試案なるものを出すことによってその政府改正案に対する見解を明らかにいたしましたが、今回はそれらの動きは全然なされていない。政府案そのものが出た段階の中でこれに対して意見を出すというお考えなのか、あるいは現在の政府案そのものに満足しておられるのか、あるいは満足しておられないとするならばどういうお考えを持っておられるのか、この点をまずお聞きしておきたいと思います。
  139. 澤田悌

    ○澤田政府委員 公正取引委員会といたしましては、前委員長の時代にいわゆる公取試案なる改正意見出しまして、独禁法改正強化に強い意欲を示したのは御存じのとおりでございます。その後いろいろな経緯を経まして、七十五国会衆議院におきまして五党修正をなさいました結果、全会一致で可決された案がございますことは、私も就任以前から存じておったわけでございますが、公正取引委員会といたしましては、すでに前々から意思表示もしておりますように、この衆議院におきまして全会一致で可決された案を尊重すべきであり、この事実を尊重すべきであるという姿勢に変わりはございません。できることならばこの案が国会において御通過になりますことをこいねがっておったのでありますが、七十五国会参議院でこれが廃案に相なりました。その後の時間の経過の中に、政府・与党の方でさらに意見調整をなさいまして、いわゆる山中メモ、試案というのができたように伺っておるわけでございます。それに基づきまして政府が新しい改正案を用意して国会に臨む、こういうことのように伺っておったわけでございます。  それを七十五国会において衆議院で可決されました案に比べますと、きょうも午前の会議総務長官からもお話がございましたが、いわゆる独占状態の排除に関する規定が削除された、それから、その影響が残っておる場合にそれを排除する規定が削除されておるという二点が大きい違いと申されておるわけでございます。  公正取引委員会といたしましては、山中案の審議の過程、あるいは政府においてそれに基づいて政府案をつくります過程において、そういう点の削除につきまして無関心でおったわけでは全然ございません。当然、前の衆議院で可決された案が尊重されるべきものであるという姿勢には変わりございませんので、あらゆる機会を通じて意思表示をしておったことは申すまでもないところでございます。  ただ、きょうの午前にもお話がございましたように、どうも現在の段階におきましては、そのいまの二点を削除されたままの案ができてまいる、こういうことが避けられないような情勢になってまいったわけでございます。それならば公正取引委員会はどうか、こういう問題に相なるわけでございますが、それでも私どもの立場といたしましては、カルテルのやり得に対する課徴金の制度も盛り込まれますし、それから会社、金融機関等の持ち株制限強化して、企業支配力の過度の集中に対するブレーキも強められることでもありますし、また、違法行為に対します罰則強化されることでもあります。仮にこの案が国会提出され、御審議を願うということに相なりましても、通過して実現してほしいものであると、かようにこいねがっておるということでございまして、私、就任のときも、独占状態規制の条項が削除されたのは残念であると申さざるを得なかったのは、そういう心境からでございます。  以上、お答えを申し上げておきます。
  140. 佐野進

    佐野(進)委員 就任早々の第一回の委員会でそう厳しく追及することもどうかということもありましょうから、きょうのところは余り深く追及をいたしませんが、私は、いま委員長が言われたようなお考えでなく、やはり今日の情勢下において、あなたが最初にお答えになったような、公正取引委員会の果たすべき役割りというか、任務というか、そういうものは非常に重要である。その重要な段階の中においてその権能を発揮して、公正なる競争、そしてまた、消費者を初め弱い立場に立つ人たちを守る、そういうような形の中でその仕事をなさる場合は、もう少しひとつ、前の高橋さんほどはっきり言えとは言いませんけれども、少なくともイエスかノーかという点については、余り政府の方ばかり向くとかどうとか、行政府の方の意見だけを聞くという形でなくて、やはり積極的な、公正取引委員会の本来あるべきそういう立場に立って発言をし、対処していただきたい、こういうことを申し上げておきたいと思うわけであります。きょうはこの問題だけを申し上げることはできませんが、幾つかの問題点がありますが、これは回を追って機会を得ながらあなたに対する質問を続けていきたい、こう考えておるわけであります。  ただ一つ最後に、簡単で結構ですが、この点だけはひとつ……。今日の経済情勢の認識については、先ほどあなたはお話しになりました。そこで、一体独占禁止法を運用するに当たって、今日の経済情勢下において、いわゆる独占化、寡占化という方向の中に大企業が横暴なる力を発揮する形の中で、具体的に独占禁止法に触れる行為をしたというような問題が出たとき、私どもは、いまあなた方の運用を見ていると、ともするといわゆる中小企業の行為に対してはきわめて厳格に対処するけれども、大企業の行為に対してはきわめて緩やかだ、こういう点について非常に心配をしておるわけです。  具体的な例を挙げなさいといえば幾らでもあるわけですけれども、そういう点について、原則的に決意だけでも結構ですから、公平に行い、かつ大企業といえども遠慮しないでやるのだ、こういうぐあいに公正取引委員会を指導しますと、こういうことぐらい言えると思うのでありますが、それをこの席上でひとつ言ってもらいたい、そして、弱い立場に立つ中小企業や零細企業の人たちのその行為について、もちろん法に触れる場合はやるとしても、ある状態の場合においては一定の温かい配慮を加えた措置を講ずるということもこれまた当然ではないかと思いますが、その点についての見解を聞いて、あなたに対する質問を終わりたいと思います。
  141. 澤田悌

    ○澤田政府委員 一言で申せば仰せのとおりでございますが、御承知のように、独禁法の運営は経済運営の基本的ルールを定め、実行していくものでございますので、それが大企業でありましょうと少しも原則には変わりがないのでございまして、法に照らし、正すべきものは厳正に正してまいりたい、かように考えております。
  142. 佐野進

    佐野(進)委員 それでは、通産大臣に質問をしてみたいと思います。幾つかの問題点があるのですが、時間の経過等もありますので、しぼりながら質問してみたいと思います。  最初に、今日一番大きな問題になっているのは、輸出をどうやってふやすかということと、輸入をどうやって、防ぐということは適切ではございませんが、適正な輸入を行わせるかというところに、経済運営の一つの大きな課題があろうと思うのであります。先ほど来質問いたしました経過の中で、輸出は大変伸びておるということでございますが、その輸出の伸びる中で、対外的にいろいろな面におけるところの弊害というものが出ているわけです。その弊害はまた逆に、輸入の問題については繊維というような問題の中にあらわれておりますが、繊維の問題は後でまたお聞きするとして、先ほどの関連もございますので、輸出の問題についてひとつこの際明らかにしていただきたいと思うのであります。  アメリカで特殊鋼の輸入についてはいま非常に大きな問題となり、新聞紙上においてもそれぞれ報道せられておるわけでありますが、この点について、こういう動きに出ているアメリカの考え方、そしてそれに対応するわが国政府の対策、こういうものがどういうようなものと判断しておられるか。片や繊維については、絹織物の輸入は規制しようとしている。しかし、アメリカの特殊鋼の輸入については、それは間違いだという形の中で交渉している。ちょっと矛盾しているような形でありますが、それが現実の問題として存在しているわけです。これはアメリカの動きがいわゆる保護貿易主義の復活というぐあいに御判断なさっておられるかどうか。わが国の繊維というか、絹織物に対する対策というものはこれに関連してどういうようなものであると判断されるか、通産大臣の見解をお伺いしたい。
  143. 河本敏夫

    河本国務大臣 アメリカとの特殊鋼についての交渉は、先般東京で第一回の交渉を行いました。近くこの月末に第二回の交渉を行うことになっておりますが、日本側といたしましては、できるだけ話し合いでこれを解決したい、こういうつもりでおります。その背景でありますけれども、日本といたしましては、これは日本からの輸出がふえたということよりも、むしろアメリカの不況が原因である、こういうふうに私ども理解をしております。  また、現在までのところ、これが他の品目に大きく拡大をすることのないように十分配慮しなければならぬと思いますし、現在のところは拡大しないで済むのではないか、こう思います。たとえば他の品目等について調べましても、自動車などもある程度伸びておりますが、これはアメリカの乗用車の消費が、一九七五年に比べまして七六年は、何回かアメリカも見通しを修正しておりますが、現時点ではおよそ二五%ぐらいふえる、こういう背景のもとに日本の乗用車の輸出が若干伸びておる、こういうことでございますから、これは問題にはならぬのではないかと思います。いずれにいたしましても、国ごとに、あるいは商品ごとに相手の事情を十分調査をしながら輸出を伸ばしていきたい、かように考えておるわけであります。  中国、韓国との間の絹織物、生糸についての輸入問題でありますが、これは御案内のように日本の養蚕農家を保護するために生糸の一元輸入を始めましたのに端を発して、絹より糸、絹織物、こういうものの輸入が激増したということについての交渉が始まっておるわけでありますが、幸いにいたしまして韓国との間には先般、今後は双方気をつけて秩序のある輸入を継続していこう、こういうことに二国間で話し合いがつきました。  中国との間には、いま一時的に交渉は中断をしておりますけれども、双方の主張がさほど大きく離れておるというわけでもありませんししますから、次回は北京で開くことになっておりますが、何とかこの次回交渉におきまして話し合いがつくように、関係者一同努力をしていくつもりでございます。
  144. 佐野進

    佐野(進)委員 大臣、ですから私の聞かんとすることは、アメリカで特殊鋼の輸入規制の問題が起きて、いま大問題になっておる。このことは、わが国の輸出がふえる、この輸出がふえるということは対米貿易におけるシェアが増大する形の中においてその実績が相当大きく上がっていくわけですね、そういう面からすると、その輸出がふえてくることに対してアメリカが防衛的な対策に出てくるということは、かつて繊維で大変な問題になったことがございますけれども、そういう問題が当然出てくるそのはしりにこの特殊鋼問題があるのではないかという危惧、あるいはそうでなくて、全くこの特殊鋼だけの問題で、向こうが不況である、そういう形の中でわが国の輸出が行われる、わが国も特殊鋼業界は余り景気がよくありませんね、そうするとそういう形の中での偶発的な事件としてあなたはとらえられているのか、あるいはまた、いわゆる保護貿易主義の復活、そういうようにアメリカが変わりつつあるのだという形の中でとらえられているのかということは、非常に大きな問題になると思うのですよ、この一つのあらわれてきた現象そのものが。それであれば、そのいずれかという形の中においてわが国としては対策を立てていかざるを得ないと思う。その認識をあなたの方でどうお持ちになっておられるかということをお聞きしているわけです。  同時に、そういうような認識に基づいて、アメリカがもし対策を立ててわが国に対して要求をしてくるとするならば、これに対してわが国としてはどう対応するのかというその対応策について、積極的な立場に立った対応策を立てなければならない、こういうことだと思うのです。ただ、その積極的な対応策を立てる場合、わが国が絹織物の輸入、絹糸の輸入その他でとった措置と対応して見て、どう通産当局としては判断して対応されるのか、そういうことに結びつくのではないか、そこをあなたははっきりお答えしていただけないか、こういうことなんです。
  145. 河本敏夫

    河本国務大臣 私は、アメリカの態度が自由貿易から保護貿易主義に変わった、そういうふうには考えません。つい先般、昨年の十一月のランブイエの会談でも、最大の申し合わせは、世界経済が回復するためには自由貿易の原則があくまで必要である、そのためには保護貿易的な動きは極力これを排除していこうじゃないか、こういうことを積極的に言い出したのはアメリカの大統領のフォードでありますし、私は、その基本原則というものは、アメリカは世界における自分の経済的な立場というものを十分認識しておりますから、依然として変わらないと思います。     〔安田委員長代理退席、委員長着席〕  でありますから、私どもはこの問題を特殊鋼だけの問題であるというふうに理解をいたしておりますが、しかし手際よく処理しませんと、こじれますと将来禍根を残すことになりますから、できるだけ手際よくこれを処理しなければいかぬ、こういうふうに考えておるわけであります。  たとえば普通鋼なども、いろいろ言う人がありますけれども、てこ数年は五百万トン台に自主規制をいたしましてずっとやってきておるわけです。昨年から先方の独禁法との関係がありますので自主規制という線は廃止しておりますけれども、しかし、なお五百万トン台という線はずっと続いておるわけです。むちゃくちゃにふえておる、そういうことは決してありません。先ほど申し上げましたように、自動車にいたしましても若干はふえておりますけれども、先方の需要が二割五分もふえておるということを背景にいたしますならば、最近の伸びはさほど問題ではない、こういうふうに考えております。したがいまして、アメリカに保護貿易主義というものが復活した、そういうふうには理解をしておりませんけれども、しかし、やはり日本の商品が大変な勢いで向こうへ出ていきますとトラブルのもとになりますので、その点は商品ごとに十分相手の事情を調べながら、気をつけてやっていかなければならぬというふうに考えております。  それから、一方の方は国内における農産物の保護という立場から韓国と中国との間に起こった問題でございまして、自由貿易をたてまえとする日本といたしましては、仮にそういう理由で起こった部分的な問題であるにいたしましても、こういうことによりまして日本の基本的な態度というものが疑われるということになっては困りますし、かつまた、他の国と自由貿易の原則を主張する場合に、おまえのところは何だ、こういうふうに言われますと、その主張の根拠というものがきわめて薄弱なものになる、こういうことになりますので、これも大ごとになりませんように、トラブルになりませんように、何とか二国間で話し合いをつけたい、また現在つきつつある、こういうことでございます。
  146. 佐野進

    佐野(進)委員 それでは、通商政策局長が来ておられますので、この問題についていま大臣の答弁がありましたけれども、特殊鋼以外の工業製品でこの種輸入制限への動きがあるというような条件があるかどうか、そして、そういうおそれがあるとするならば、それに対する歯どめをどのようにかけようとして対応しているか、この点ひとつ簡単で結構ですから答えてください。
  147. 橋本利一

    ○橋本(利)政府委員 まず、アメリカ関係でございますが、ただいまお話のございました特殊鋼を含めまして、いわゆるエスケープクローズを申請しておる件数が十二件ございます。それから、ダンピング提訴いたしておりますのが、乗用車等を含んで十三件ございます。最近、関税法の三百三十七条に基づきまして、カラーテレビについても通商委員会調査を開始する、かような動きになっております。  それから、豪州についてでございますが、一昨年の暮れあるいは昨年の初めごろから、乗用車、繊維製品、ボールベアリングあるいは鋼板等につきまして、数量規制あるいは関税割り当てを実施しておったわけでございますが、最近の動きといたしまして、その中で鋼板とボールベアリングについては輸入規制を撤廃する、それから自動車の数量制限につきましては本年内に打ち切る、こういうような緩和の方向も出ておりますが、一方で扇風機だとか冷蔵庫だとかいった家電製品につきまして輸入規制をしてもらいたいといったような業界の動きがあるようでございます。  それから、ヨーロッパ、特にイギリスにつきましては、乗用車あるいは家電製品について若干の問題があるようでございますが、イギリスとの関係におきましては、まだ直接的な輸入規制といったような措置に出ておりません。二国間でいろいろ話し合う、あるいは情報の交換をするというような形で、いわゆる安定的な輸出あるいは安定的な輸入といったような事実上の問題として処理しておるというのが実情でございます。  いま申し上げた先進国以外のいわゆる開発途上国につきましては、別の意味で、要するに外貨収支が非常に悪くなっておるといったようなところから、輸入規制をやっておる国は非常に多くございます。  ただいまざっと申し上げましたような情勢に対応いたしまして、そういう動きがある場合には、われわれは口頭もしくは必要ある場合には文書でもって、さような措置に出ないように相手方の注意を喚起する、あるいは特殊鋼のようにITCの勧告に基づきまして大統領がSTRに指示をしたというような場合、具体的な行動に出てきた場合には、私たちといたしましては、ガット上の規定等を活用することによって両国間の問題の解決に努めたい。  いずれにいたしましても、問題は輸入の増大というよりも、不況要因による国内における生産の減退、それに対して結果として輸入量は変わらなくても、消費に占める輸入量のシェアがふえておるといったようなところがむしろ現実かと思いますので、そういった意味合いで、国際的に協調して現在のリセッションからどのように回復していくかというところにも本来の解決を求めていかなければいけないのじゃなかろうか、かように考えておるわけでございます。
  148. 佐野進

    佐野(進)委員 次に、電力料金の値上げの問題について質問してみたいと思います。  去る四月五日に東北電力、北海道電力が、そして八日には北陸電力、九州電力が、それぞれ料金値上げのための供給規程変更認可の申請書を提出いたしました。今日、電力料金を値上げしなければならないという要請のあることを私ども知っておるわけですが、これはいわゆる認可を必要とする料金でありますから、この認可をする通産省としては、今日の経済情勢の中においてきわめて重大な課題としてこれをとらえなければならないと思うわけであります。  私どももまた、この電力料金の値上げというのは、いま新しく政府提出法案として起債の許可枠の拡大という問題にまさに取り組もうとしておる段階の中で、非常に大きな戸惑いを感じておるわけです。果たして起債枠の拡大ということが、政府の言う景気刺激、景気刺激のためにおける公共投資、それに準ずる形の中における電力の設備投資という形の中で一定の刺激要因を引き出すか。私は消費購買力の増大も一つの条件だと思いますが、福田さんはそうではない、こう言っておりますけれども、そういう意味において一定の役割りを果たすのだということについては、その説明をあながち無視するものではないわけであります。しかし、料金の値上げということが同時に行われるということになると、料金を値上げするならば、何もそれほど設備投資に対して起債枠を拡大するというようなことは必要ないのではないかなという気もいたしておるわけであります。  そして、この値上げの率が、東北電力は三五・二二、北海道電力は三九・一、北陸電力は三三・四、九州電力は三一・九五、相当高率な上げ幅になっておるわけでありますが、こういうふうな申請とともに、五月十五日を実施時期としてもらいたい、そういう内容であるように承っております。これについて、大臣、通産当局としては原則的にどのように対応されようとしておるのか、見解を明らかにしていただきたい。
  149. 河本敏夫

    河本国務大臣 今回の電力料金の値上げは、主として燃料費等の値上がりによるコストアップということで、原価計算をいたしました結果、相当大幅な赤字が出る、何とかこれを修正しなければならぬということでいま賃上げ問題が起こっておるわけでございまして、設備投資とは直接関係はございません。  設備投資の問題につきましては、政府は昨年一カ年間、総合エネルギー対策閣僚会議というものを開きまして、そして今後のエネルギー政策について検討したわけでございますが、その中で、今後日本の経済が一定の適正成長を続けた場合といえども、なお電力投資は十カ年間におよそ四十八兆円の投資が必要である、前半の五カ年の間に十六兆円、後半の五カ年の間に三十二兆円というそれだけの投資がどうしても必要である、こういう計画ができ上がっておるわけでございまして、その十カ年計画の第一年度としての設備投資に必要な社債の枠、こういうことから社債枠の改定ということをお願いしておるわけでございます。これは今回の値上げ問題とは関係はないわけでございまして、この点はひとつ切り離してお考えいただきたいと思います。
  150. 佐野進

    佐野(進)委員 切り離して考えてくれということはわれわれもわからないわけじゃございませんが、しかし、同時期に二つの問題が出てきたということについては、審議する立場に立つ者としては何となく割り切れない、こういうことを申し上げているわけです。それは向こうが勝手に出したのだと言えばそれまでですが、少なくとも通産当局としてはそれに対する行政的な指導ができなかったものかどうかという点が聞きたいということが、質問の趣旨です。そのことについてお答えをいただきたいのと同時に、こういうようになりますれば、料金の引き上げに対して結果的にそれぞれどれだけの決定をするのか私ども全く予測できませんが、結局物価政策に大きな悪い影響を与えるのじゃないか、こう判断しますが、その点についてはどうですか。
  151. 増田実

    ○増田政府委員 お答えいたします。  まず、物価の問題についてでございますが、今回の電力の引き上げ、これは先ほど先生から御指摘がありましたように三〇%以上の申請でございますが、これにつきましては、現在私ども事務当局で会社の経理内容を厳重に監査いたしておりまして、これの査定作業に移っております。ただ、これを査定いたしましても、当然ある一定のパーセンテージの値上げというものは残らざるを得ないものと思っております。それで、電力は、家庭に使われますのと、それから産業用に使われますのと、両方におきまして物価に響くわけでございます。そういう意味で、消費者物価指数あるいは卸売物価指数につきましては影響があるわけでございます。これは試算をいたしましたところでは、大体の直接効果といたしましては消費者物価指数に対しまして〇・五%前後、それから卸売物価指教に対しましても〇・四%前後の影響というものが出てくるわけでございまして、現在物価問題がこのように非常に問題となっております時期に電力の値上げがあって、これが物価に対する悪い影響のないように、できるだけ厳正な審査を行いたい、こういうふうに思っております。
  152. 佐野進

    佐野(進)委員 そこで、長官にお尋ねしたいのですが、厳正にということでありまするが、もうすでに政府部内におきましては、この申請に対して通産当局以外のところから大変いろいろな見解が出ております。たとえば福田総理は三〇%を超す値上げ率はショッキングだと発言しておるし、松野政調会長は二九%台を上限にしたいと言っておるわけであります。また、二段値上げ方式等も議論があると言われておりますが、こういうような議論が政府・与党の中に出ておるわけでありまするけれども、通産当局としてはこれらの考えにどう対応していかれようとしておるのか。
  153. 増田実

    ○増田政府委員 福田総理及び松野政調会長から、電力料金の今回の値上げにつきまして各種の御発言がございます。ただ、私どもの方の事務当局の立場といたしましては、ただいま出ております四社の申請につきましてその内容を厳重に審査いたしまして、これを計算した結果を出していきたいということで考えております。
  154. 佐野進

    佐野(進)委員 どうも大臣は所用があって行ってしまったから、長官とこの話をするのは政治的な問題でなくなって、技術的な問題になってやりにくいのですが、要望だけしておきたいと思います。  要するに、先ほど申し上げましたとおり、特例法の審議を始めようとする時期にこの種問題について提起されておる。国民としては、あるいは電力を消費する立場に立つ者としては、この種の大幅な電力料金の値上げというものはきわめて困るという見解だし、われわれも反対の見解を持たざるを得ない、反対という立場に立って対応せざるを得ないというときに、各社がそれぞれこういう態度に出たことはきわめて遺憾である。したがって、通産当局としては厳正な立場に立って対応せられたい。与党や政府の中でもそういう見解がある状態の中で、通産当局はひとつその立場において、電力会社べったりなどという批判を受けないような形の中で厳正な措置を講ぜられるよう、ひとつ要望しておきたいと思います  そこで、次に、天谷審議官が見えておりますから質問をしてみたいと思います。  御承知のとおり、大規模小売店舗法の通過に伴い、その運用は小売商業者にとっては非常に大きな期待と、そしてその中でこの法律の趣旨が生かされるよう希望をしながら運用について対応をしてきたと思うのであります。そして、この法律が実際に適用されてから約二年、今日の状況の中においては、この二年間の実績の中で各方面から法律改正に対する要望が非常に強く出されてきている。ということは、この法律をつくる際においてわれわれも大変心配したのでありますけれども、結局妥協案としてのこの法律内容からして調整部門に多くの力が実は入れられるという形の中で、調整は人がやるわけでありますから、結果的にその運用のいかんによっては、よかったと言う人もあれば悪かったと言う人もあるわけです。したがって、あらゆる人たちに対してきわめて中途半端で不満足な法律だというように認識されつつあるようになってきておると私は思うわけですが、この運用の責任者である審議官としては、今日のこの大規模小売店舗法の運用についてどう認識しておるか、原則的にその見解をまず示していただきたい。
  155. 天谷直弘

    ○天谷政府委員 お答え申し上げます。  大規模小売店舗法につきましては、その第一条の目的にも書いてございますように、消費者の利益と小売商の立場とそれから流通合理化というような、三つの目的を調和させるというのが基本的な方向として与えられているわけでございます。ただ、消費者の利益、中小小売商の利益、流通の合理化というような目的は調和させるのがきわめてむずかしい問題でございまして、しかもその状況が地域地域によって異なっておるということでございますので、初めから問題をきれいに割り切るような方法というのはなかなか考えつかないところでございまして、試行錯誤を何回も繰り返して、結局その経験を通じて、それから民主的な討論を通じて、そういう妥協点を発見していくということが必要ではないかと考えておる次第でございます。まだ法律施行後二年余でございまして日にちも浅うございますので、その試行錯誤の過程でいろいろ不満があることはよく承知いたしておりますけれども、しんぼう強く利害の調整をなるべく民主的な手続で行っていくということが望ましいのではなかろうかと考えております。
  156. 佐野進

    佐野(進)委員 そこで、トラブルが起きる、その条件はそれぞれの地区の実情によっていろいろ違います。違いますが、結果的に、そこに来てもらっちゃ困るとか、そこの店舗を広げてもらっちゃ困るとか、時間が長くちゃ困るとか、いわゆる具体的な問題で結局トラブルがそれぞれの地域の中でその事情事情によって発生しているわけです。結果的にそれらを調整するのに商調協があるわけです。商調協があって、その商調協の場面の中で調整をしてもらうわけですが、これがまた、その人数がやれどうだとか、やれ構成がどうだとかいう形の中でトラブルが起きるということで、あなたがいま言われている試行錯誤を繰り返しながら法の精神が全うされるように運用していく。運用の衝に当たる人は大変な苦労ですね。たとえば、あなたは苦労しておるか知らぬが、課長は大変だ。年じゅうあちこちであれされているし、各地区の通産局の担当者も大変だし、任された商調協もこれまた大変ですね、商工会議所の商調協も大変です。しかし、大変だということはわかっていながら、その仕事をやらなければならぬ。やらなければならぬということは、この法律の運用に期待する小売商業者何百万という人たちが、非常にそこに期待せざるを得ない、そういうことにあるわけですね。その期待感が結果的に強い要望になってあらわれてくる、こういうことが言えるわけです。  そこで、私は、きょうは総括質問ですから、大臣もいなくなりましたから、この問題で長く質問しているところの時間がございませんので、要望として一、二申し上げておきたい。  この前も予算委員会の一般質問の際に大臣に言っておきましたけれども、どうですか、一番問題になるのが商調協なので、法律改正することによってしかできないのかどうかわかりませんけれども、都道府県ないし市町村に、その地域に存在するそれぞれの地方公共団体に、商調協にかわり得る権限といいますか、商調協として行いつつある権限の一部というか、そういうものを任せることによって、ぞれぞれの地方公共団体がその役割りの一部を果たす。たとえば千葉県なんか、具体的にそういう要望が出ておりますね。そういうようなことも通産局、地方行政機関というような形の中において相当大きく変化する道もその中で開けてくるのじゃないか、こんなような感じもするわけですが、こういう点についても検討してもらうということと同時に、あなたの考え方があればひとつ聞いておきたい、こう思うわけです。
  157. 天谷直弘

    ○天谷政府委員 仰せのとおり、この問題は地方地方のいろいろ特殊な事情がありますので、その地方の意見ができるだけ表明されるような方法が望ましいという御意見、御議論があることはよく承知しておる次第でございます。  ただ、現行法をよく考えてみますと、現行法は、一方では各地の商調協の意見を聞けということで地域民主主義の立場をとっておりますと同時に、しかし、流通行政が今度は各県各県でおのおの異なる、ばらばらになってしまったのでは、日本全体としての流通行政の統一性が失われるという問題もございますので、そこのところは中央に大規模小売店舗審議会を置き、通産大臣に余り強い許可権限ではなくてやわらかい勧告権、変更命令等を与える、そういう構成によりまして地方分権と中央集権との間のバランスをとろうとしておるわけでございまして、その立場を現実に運用しようとしますといろいろ問題があることは、われわれもよく認識をいたしておるわけでございますが、しかし、法律施行後まだ二年しかたっておりませんし、この現行法の基本的な立場は私は間違っていないというふうに考えておりますので、なおこういう方向に向かって改善の努力を続けていきたいと存ずる次第でございます。
  158. 佐野進

    佐野(進)委員 まあ、審議官、あなたがいまこれで改正します、そうしますということは言えるわけではないので、二年しかたってないと言えばそのとおりですが、しかし、この問題は非常に大きな社会的問題になりつつあることはあなたも御承知のとおりですから、十分また時間を得てあなたに質疑してみたいと思いますけれども、そういう考え方が非常に広く広まりつつあるということを前提にしながら検討をひとつしてもらうことを、あるいはその運用に当たっては十分配慮してもらうことを要望しておきます。  そこで、もう時間が大分来てしまったのですが、中小企業庁長官がさっきから待っていて、また今度質問しないで終わったかということになるとあれですから、委員長の許しを得まして、きわめて短い時間、中小企業庁長官に質問してみたいと思います。  長官、いまの経済情勢は、先ほどあなたもお聞きになっておるように、きわめて激しいというか、そうしたい、こうしたいという希望の中での見通しは見出せるけれども、さて確実にということがなかなか言い得ない、その予測がなかなかむずかしい時期であるということは私もわかっておる。そのむずかしい時期の中で、政府なりあるいは大企業はそれぞれ多くの調査機関を使いながら対応しているわけでありますが、中小企業はそういうことができません。結果的にその日暮らし、そのときどきの情勢に応じながら生きていくより仕方がない、こういう形の中で、犠牲もきわめて大きいと思うわけです。そういう点から、まとめて二、三質問いたしますので、お答えをいただきたいと思います。  現在の、特に三月期における倒産は、一月、二月に対してどの程度の情勢としてあらわれてきているか、いわゆる中小企業界は好況の波に乗りつつあるのか、相変わらず低迷の域を脱することができ得ないのか、いやもっと深刻な状態になりつつあるのか、このいずれにあるかということをお聞かせいただきたいということが一点。  第二点は、金融対策。今日の倒産する最大の条件は、この前も一般質問の際に質問いたしましたけれども、結局金融対策の万全を期し得なかったことによって発生する場合が多い。そういうことについてたびたび要請をいたしておりますけれども、この金融対策についてどのような措置を講じておられるか、これが第二点。  第三点は、いま、先ほど来お話のありましたような情勢の中で、経済情勢は大きく変化をしつつあるわけであります。こういう中で、大企業を含めた全体的な操業率は非常に向上しつつある、こう言われておりますけれども、その向上しつつある中で、大企業に対して中小企業の操業率はどのような状況の中にあるのか、いわゆる仕事を確保する条件はどのようにつくられつつあるか、こういう点について、余りいっぱい質問してしまうと答弁がぼけると思いますので、この三点について、簡略で結構ですから御見解をお聞かせいただきたい。
  159. 齋藤太一

    ○齋藤(太)政府委員 最近の中小企業の景気動向でございますけれども、やはり一般的な景気動向と同様に、ことしに入りましてから中小企業関係の各種の経済指標はそれぞれ上向きに転じてまいっております。     〔委員長退席、橋口委員長代理着席〕  たとえば生産も、この二月は一月に比べまして二・三%のアップでございまして、前年の二月に比べますと、一一%増といった上昇を見せております。その結果、出荷もふえまして、在庫は減少を見せつつある、こういう状況でございます。  ただ、こういうふうにやや上向きになってまいりましたけれども、その生産活動の水準自体はまだ非常に低い水準にございまして、二月が、速報でございますが、生産指数が一〇二・六でございます。昨年の一番底でございました二月が九二でございましたので、約一〇ポイントほど上がってはおりますけれども、一番ピークでございました昭和四十八年の十一月の一二四に比べますと、まだまだ低いレベルにあります。一〇二と申しますと、昭和四十五年を一〇〇とした指数でございますので、四十五年をやや上向いた程度の水準でございます。しかしながら、傾向としては上昇に向かいつつあるということが言えるかと存じます。  ただ、業種別に見ますと非常に業種別に格差がある点が特徴でございまして、自動車部品、あるいはカラーテレビの関係、あるいは音響機器でございますとか、精密機械とか、繊維の縫製加工部門とかいった、主として消費財に関連した分野がわりに早くよくなりつつございますけれども、資本財、投資財といったような鉄鋼、工作機械、そういった分野は依然としてまだ不況に沈潜しておる、こういう状況かと存じます。  それから、倒産の状況でございますが、これは昨年の秋以来、依然として高水準にございます。昨年の八月まで大体九百件台で推移をしてまいりましたが、九月から千件台になりまして、十二月に約千五百件という戦後最高の倒産件数になりましたが、ことしに入りましても、一月が千七十五件、二月が千八十九件、三月は期末という点もございまして千二百二十五件というように、依然として高水準にございます。これは、中小企業の中にも業種別にもいろいろ格差が出ておると申し上げましたが、中小企業の企業自体の中に格差が出てまいりまして、同じ業種でありましても、その中に好調の企業と非常に苦しい企業とある。特に借入金が多かった、あるいは過去にいろいろ事業を急激に拡大した、こういった企業につきまして、長い不況の間に息切れを生じてまいりまして、特に昨年の秋から倒産がふえてまいっておるわけでございます。  金融面で見ますと、一般的には金融の資金需要はやや鎮静化をいたしておりまして、政府系三機関に対する資金の申し込みは、このところ、前年同期に比べて一−三月で大体一〇%増ぐらいの資金需要でございます。御承知のように、資金の手当ての方は、たとえばこの四月以後も大体前年に比べまして二割増の資金枠を用意いたしておりますので、三機関の融資面での資金の手当てとしては不足するということはないかと存じますが、ただ、企業自体の体質が企業によりましていろいろ違っておりますし、民間の金融機関等の選別も強化されておると申しますか、そういう事情がございますので、倒産自体は高水準になっておるという状況でございます。  これは一面、中小企業の経理状況が必ずしもまだ好転していないということのあらわれでもあろうかと存じます。日銀の調査によりますと、ことしの二月の中小企業の経常利益は、過去の不況時でございました昭和四十六年の下期の経常利益に比べましても六十数%にすぎないといわれておりまして、生産、出荷は上向きましたけれども、収益状況という点ではまだまだいまだしの感がございます。これは、一つには原料価格が上がってまいりまして製品価格がそれほどに上がっていないという、原料高製品安といった面の反映でもございまして、そういう面で経理面がまだそう上向きの状況になっておらないという面も反映いたしまして、倒産は高水準にございます。今後もこういった千件台の水準がいましばらく続くのではないかというように見ておる次第でございます。  私どもの対策といたしましては、何と申しましても金融面で必要な資金を用意するということが第一だと考えまして、政府系の三機関は、今年度、御承知のように去年に比べまして二〇%増の三兆五百億の融資枠で出発をいたしております。  それから、信用保険の面でも、御承知のように不況業種指定制度というのがございます。三月末で一応切れました業種ほとんど全部につきまして、さらに六月まで指定の延長をいたしました。  それから、民間金融機関にお願いをいたしまして中小企業救済特別融資制度というのを実施いたしておりますが、特に四−六月につきまして信用保険の不況業種として指定されておる業種を対象といたしまして、四百五十億円の救済融資を現在実行中でございます。  なお、政府系三機関につきましての返済猶予の弾力化でございますとか、担保等の取り扱いの弾力化につきましても従来から指導をいたしておるところでございますが、さらに中小企業の困っておられる事情を十分配慮するように指導してまいりたいと考えております。
  160. 佐野進

    佐野(進)委員 それでは、最後に要望をしながら質問を終わりたいと思います。  長官がいま言われたように、中小企業の倒産はきわめて高水準に推移いたしております。したがって、この倒産件数をどうやって減らすかということが中小企業対策として非常に重要な対策だと思うのです。ということは、これを減らすことによって全体的に将来の希望を持ち、あるいは倒産をしない前に食いとめることによって波及的にさらに倒産を食いとめることができる、こういうことになりますので、この面についてはひとつ大胆な対策をとっていただきたい。  特に私、金融面において、この倒産が誘発されるということを——それは放漫経営、土地を買い過ぎたとか、物をつくり過ぎたとか、あるいは設備を無原則的に拡充したとか、いろいろなことがあるけれども、結局それで金が行き詰まって倒産になるわけですから、そうした場合における救済対策は、関連企業に及ぼす影響等も考えたとき、やはり大胆に特別の救済機関をつくるなり何なりして対処すれば、ただつぶれたよ、金は貸したけれども返ってこなかったわいということだけでなくて済む方法もあるのではないか。中小企業庁の機構の中には相当多くのいろいろな部門もあるわけですから、倒産対策に対する専門的な取り組みをしてもらわなければならぬのじゃないかという気がするわけで、ひとつ頭の中に入れておいていただきたい。  もう一つは、金の貸し方が、私もいろいろな方面で研究をしておるわけですが、政府系金融機関とは言いながら、絶対間違いのないところへ貸す。これは金融機関としては当然でしょうけれども、たとえ危なくても、やはりある程度そのことによって生きることができるならばということが政府系金融機関の目的でなければならぬし、あるいはそれに対する信用保険公庫もあるし、保証協会もあるわけですから、これらを有機的にひとつ活用しながらその対策の万全を期していただきたい。  それから、いま一番問題になっているのは分野問題であります。これは、ここでいまあなたとやり合うと時間が長くなるからやめますが、特にこの問題に対する商工会議所の立場というものについて私は大変疑問に思っている。商工会議所というものについて、私は一回一時間ぐらい時間をとってそれだけで質問してみたいというふうにいま考えておるわけでありますけれども、それはきょうのこの時間の中ではでき得ませんので省略いたしまするが、分野問題についてはさらに一層積極的な取り組みをしていただきたい。  この二つを要望して、質問を終わります。
  161. 橋口隆

    ○橋口委員長代理 午後四時二十分から委員会を再開することとし、この際、暫時休憩いたします。     午後三時三十七分休憩      ————◇—————     午後四時二十二分開議
  162. 稻村佐近四郎

    稻村委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続行いたします。野間友一君。
  163. 野間友一

    野間委員 ロッキードの疑獄事件と通産行政、こういう点で若干の質問を申し上げたいと思いますが、特に多国籍企業あるいは商社の問題を中心にしたいと思います。  ことしに入りましてから国会が再開され、インフレあるいは不況問題、これを国民本位の立場でどのように打開をしていくかという大変重要な問題の審議を始めた途端、あの二月の四日あるいは六日、外電が日本じゅう電波を介して衝撃的にかけめぐった。そして、その中で日本の政治の、あるいは経済の後進性、さらに多国籍企業の規制という問題が大きくクローズアップをされ、そして通産行政にとってみましてもこのロッキード事件は決して無縁ではない。それどころか、非常に深いかかわり合いがあるというふうに思っておるわけであります。  ところが、三月二日の通産大臣の所信表明を聞いておりましても、この事件についての所信が何ら述べられていない。非常に私は遺憾だと思うわけですが、最初に通産大臣に、通産行政の最高責任者としてこのロッキード事件についてどのような所信をお持ちなのか、そのお考えを聞かしていただきたいと思います。
  164. 河本敏夫

    河本国務大臣 通産大臣としての商工委員会における所信表明は、いま御指摘の問題には言及はしておりませんが、すでに内閣といたしましては、総理大臣みずから何回かこの問題についての所信を述べておられます。通産省といたしましても、その総理の所信を受けましてこの問題と取り組んでいきたいというのが基本的な考え方でございます。
  165. 野間友一

    野間委員 そこで、若干具体的に聞きたいと思いますが、二月二十日付のある新聞によりますと、通産大臣が、さっき言われた三木総理のそういう指示を受けてだと思いますが、「多国籍企業の行動監視体制を早急に打ち出すよう」に、この中には商社の監視体制の強化ということも入っておるやに承っておりますが、「事務当局に指示した。」という報道があります。これはどんな内容のものであるのか、さらに具体的に実施されておるのかどうか、その点についてお伺いしたいと思います。
  166. 河本敏夫

    河本国務大臣 この多国籍企業の問題につきまして、ロッキード問題が起こりました直後、総理から指示がありまして、多国籍企業問題をこの際徹底的にひとつ検討するように、こういう趣旨を受けまして、通産省といたしましてもいまこの問題と取り組んでおるところでございます。  取り組み方の方向でありますが、一つは、御案内のようにOECDでもこの問題を取り上げて、ずっと昨年来議論をしております。近く結論が出るのではないかと言われておりますが、昨年一年だけでも八回ばかり会合を開いておるようであります。また、国連の場におきましても、やはりこの問題を取り上げまして議論が続いておるわけでございます。多国籍企業問題というのは、日本だけで勝手にこれを処理するわけにいきませんで、やはり国際的な動きとの整合性ということを考えませんと処理できない問題だと思います。そういうことから、わが国といたしまして積極的にこういう国際的な議論の場に出まして、日本としてのいろいろな意見を開陳をする、また、あるべき姿について意見を言う、こういうことが必要かと思います。  それから第二点は、日本における多国籍企業の活動というものを正確かつ詳細に、しかも遅滞なく掌握をするということが必要である、こういうふうに考えております。いまこの調査のあり方について検討を続けておるところでございます。  第三は、日本の多国籍企業が海外に活動する場合の行動のあり方でありますが、これはすでに御案内のように、多国籍企業の中心ともいうべき総合商社が、二、三年前に経済団体がつくりました行動規範を受けまして、各商社、ことにそれぞれの行動の基準というものをつくっております。この行動の基準がどういうふうに守られておるのか、実行されておるのかということをその後通産省といたしましては毎年一カ年に一回聴取をすることにしておりますが、こういう実情調査等を通じて、行動基範なりあるいはその指針がいかに守られつつあるのか、その問題点はどこにあるのか、こういうことについて実情を掌握しておるところでございます。
  167. 野間友一

    野間委員 この問題について考えますと、私は、これは買い占め、売り惜しみの商社の目に余る行動があったころから、多国籍企業の問題について、何回か予算委員会や当委員会においてこれの規制の必要性ということについて質問をしてまいったわけであります。いま大臣の答弁にもありましたが、ロッキードのこの事件が表ざたになって、通産省、日本の政府としてもこれに取り組まなければならないというところまで追い込まれたわけでありますが、これは時期として私はもっと以前からやる筋合いのものであったと思うのですね。しかし、遅まきながら積極的な姿勢で当然取り組むべきである。  そこで、事務当局の天谷さんにお伺いしたいのは、いま大臣が約三点にわたって、OECDの問題から、あるいは在日多国籍企業の調査の問題、それから多国籍企業化しつつある商社のいわゆる行動基準をめぐる問題等について言及がありましたけれども、通産大臣の指示を受けてどのように具体化されておるのか、あわせて、その多国籍企業の実態について、いままで政府はその実態を把握しておったのかどうか、ここらあたりについてひとつお答え願いたいと思います。
  168. 天谷直弘

    ○天谷政府委員 まず第一番目のOECD、国連等における多国籍企業活動の規制に対する協力でございますが、この点につきましては、まずOECDにおきましては現在多国籍行動の適正化に関するコードの草案を検討中であり、近いうちにそれがまとまるというような状況になっております。また、国連におきましては、経済社会理事会の下にワーキンググループをつくりまして、ここでも検討を続けておる。また、国連総会の決議がございまして、この決議の内容は拘束的なものではなくて勧告でございますが、多国籍行動のあり方に関する一つの国際的な決議がなされておるわけであります。  多国籍企業に関しましては、まさに国際的な活動を行っておりますので、それに対する規制を有効に行うためには、各国が勝手にやるのではなくて、各国が一貫した整々たる規制を行うということがきわめて有効であろうと考えますので、わが国といたしましても、こういう国際的な行動に歩調を合わせて日本の政策を決めていきたいと思うわけであります。そういう方向で、特にOECD等の憲章の作成に参加をいたしております。  第二番目に、国内における調査に関しましては、これは従来、大体毎年八月に、多国籍企業と申しますか、外資会社の日本における子会社の経理状況の把握を中心といたしまして統計的な資料を集め、これを公表いたしておったわけでございます。今回、多国籍企業の実態把握を進めるに当たりまして、この調査をより拡充いたしたいというふうに考えております。  拡充の方向といたしましては、これまでの調査は在日子会社の経理の洗い出しが中心でございましたけれども、より立体的に、多国籍企業グループに関する情報をできるだけ系統的に集めたいというふうに考えております。  グループ全体といいます意味は、たとえて申しますならばシェルグループ——シェルということに特別の意味はございませんが、例のため申し上げているわけでございますが、シェルグループという多国籍企業が全世界にわたって存在をしておるわけでございます。これまでの調査によりますと、そのうちのシェルジャパンだけについて統計資料等を集めておったわけでございますが、それだけでは不十分でございますので、全世界にわたるシェルの組織なり活動の状況なりをできるだけ調べてみたいというふうに考えております。次にまた、そういうシェルグループと日本の子会社との関係、あるいはシェルと日本の各企業との取引関係、そういうようなものに関しまして調査をいたしたいというふうに考えております。  ただし、通産省の調査の場合は、通産省は警察当局ではございませんので、多国籍企業を初めから悪いものという前提のもとに調査をすることは不可能でございまして、多国籍企業の協力のもとにできるだけデータを集めてもらう、あるいは既存のデータを系統的に収集するというような方法になろうかと存じます。  それから、わが国企業の海外進出状況に関しましては、これも、わが国企業の在外活動につきまして従来とも統計的なデータの収集をやっておったわけでございますが、これをさらに一層拡充いたしたいというふうに考えております。  また、総合商社につきましては、昭和四十八年の物価狂乱のとき以来いろいろ社会の批判がございましたので、これに関しまして総合商社の調査を通産省で行ってきておるところでございますが、三月から四月にかけまして総合商社のヒヤリングを行いまして、特に総合商社の社内の統制、社内の管理機構がうまく動いているかどうかというようなことを中心にいたしましてヒヤリングを行いましたが、これにつきましては、現在ヒヤリングの結果を取りまとめ中でございます  大体以上のような方向で内外の多国籍企業等に関しまして実態の究明に努めているところでございますが、先ほども申し上げましたように、正常な活動を中心とする相手方の協力に基づく調査であり、強制調査というようなことではございませんので、ロッキード事件で問題になりましたような、ああいう犯罪的な行為に関する調査なり規制なりとはおのずから別個のことになろうかと存じます。
  169. 野間友一

    野間委員 確かに、多国籍企業ということになりますと、外国から日本に来ている企業、同時に日本から外に向けて出ておる企業、特に昨今の商社の動向を見ますと、多国籍企業化しつつあるということは争いのない事実だろうと思うのですね。  そこで、通産大臣のいまの指示を受け、事務当局で具体的なこれからの調査なりこの進め方についてお話がありましたが、先ほど挙げました二月二十日付の新聞によりますと、この対日進出多国籍企業の調査については、経営内容などの詳細を定期的に報告させる、その報告の中身は「在日法人を通して国内での取引方法、扱い商品、価格政策、年間扱い高、雇用実態や労働慣行、流動資産の運用、親会社海外会社間の貿易取引の操作などのほか、特に連結財務諸表も提出を求める方向で検討を進めている。」これは二月二十日付の新聞の記事でありますけれども、いま申し上げたようなものが調査の対象として進めておられるのか、あるいは進めようとしておるのか、この点を再度確認をしておきたいと思います。
  170. 天谷直弘

    ○天谷政府委員 いまお読みになりました新聞記事等に例示されておりますようなことも含めて、調査の方法を検討中でございます。  ただし、先ほど来申し上げておりますように、連結財務諸表等々を出せと命令する権限はわれわれは持っておりませんので、どの程度の調査資料をとれるか等々につきまして実情を見きわめた上で、調査を進めていきたいと存じます。
  171. 野間友一

    野間委員 確かに、拘束力と申しますか、強制力の点については、法的な根拠がない現状では大変困難なことかもわかりません。しかし、何らかのこういうような実態調査、これは調査そのものに対してもこれに協力するかどうか、これは強制して提出命令なりこういうことがかけられないとしても、全くその拘束力がないから、任意という、相手の自由に任すというようなことでは困ると思うわけですね。特に多国籍企業は、通産省はどういうふうに見ておるかわかりませんが、私たちは、最近の特にビヘービアを見ておりますと、害悪と申しますか、一国の主権を侵害するというような、政治に介入する、一国の経済に介入して混乱させる、大変な問題を起こしておると思うのですね。OECDなどの議論の中身を見ましても、とりわけ開発途上国からの規制の要求が強く出ておりますけれども、チリのアジェンデ政権を倒したITTとか、さまざまなものがありますけれども、やはり単に相手の任意に全部ゆだねるというようなことでは困ると思うのです。  そこで、調査を進められる際に、これについて協力しない場合に何らかの措置をとる必要があるのじゃないか、また、とることができるのと違うかというふうに思うわけです。この点についていかがですか。
  172. 天谷直弘

    ○天谷政府委員 われわれが調査につきまして協力を求める場合の相手方は、多国籍企業の在日法人ということになろうかと存じます。多国籍企業の、たとえば米国にある本社あるいはイギリスにある本社に対して、われわれが直接要請し得るような立場にはないわけでございます。したがいまして、その在日企業が一体それでは多国籍企業の全体についてどの程度の情報を知っておるのか、どの程度の権限の委任を受けておるのか等々、非常に複雑な事情があろうかと存じますので、われわれとしてはできるだけ情報をとりたいと思いますが、これもその在日法人が持っておる権限なり情報量なりとの関係で一概には申せないと思いますので、ケース・バイ・ケースでできるだけの協力を得たいというふうに考えます。
  173. 野間友一

    野間委員 在日法人を介しての調査、この場合にはそれなりの制裁と申しますか措置がとれると私は思うのです。それは、たとえば新聞の記事にもありますように、これは河本通産大臣の語った言葉としてありますが、「「国内での設備拡張、増資などを認めないほか、各種の便宜供与も行わない」との強い態度をとる意向。」という記事もありますね。こういうことも前提にした上での強い姿勢で臨まれるのかどうかということが一点です。  もう一つは、大体国際的なOECDでの論議など見ましても、世界的な一つの傾向として、多国籍企業の弊害、デメリットがずいぶん顕在化しておる、これについての何らかの措置がやはり必要だというのは、これは争いのない世界の動向だろうと思うのです。そういう意味からしますと、これは、たとえば単に在日法人だけでなくて、多国籍企業の要するに国籍のあるところ、そういうところにも働きかけて協力方の要請をする、こういう態度が私は必要だろうと思うのです。たとえばシェルの話を引用されましたが、シェルにしても、エクソンにしても、あるいはITT、ロッキードにしても、そういうような態度でやはり臨まなければ、単に国内だけで在日法人をいじくるだけでは、なかなか効果が上げられないのではないか、また、実態の把握に支障があるのではないかというふうに私は思うわけです。  だから、そういうようなことで、一つは在日法人を通じての場合に何らかの制裁を背景にした上での調査を進めることと同時に、その本社と申しますか、いま国籍のあるところと言いましたけれども、そういうところにもやはり協力体制をとって要請をして、そしてその調査に支障のないような外交政策なり何なりとるということが心須じゃないかと思うのです。特にOECDで何回か論議されて、もうすでに事務局案の討議に入っておられるわけですから、それに協力するということになりますと、実際に各国においてその多国籍企業がどういうことをやってきたかと、その実態をやはり正確に把握するということが必須の条件だろうと思うのですね。そういう意味からも、特に私がいま申し上げたようなことが必要ではなかろうかというように思うのですが、いかがですか。
  174. 天谷直弘

    ○天谷政府委員 先生の御意見のとおり、多国籍企業の全貌を明らかにするためには、あるいは全貌にできるだけ接近するためには、一国だけで独自の調査をするというよりも、関係国が協力をしてできるだけ体系的な調査をするということが望ましいということと存じます。そういう方向でOECDでも草案を検討中でございますので、できるだけそういう国際的な方針に従いましてわれわれの調査も進めていきたいと存ずる次第でございます。ただ、日本国内に関する直接投資につきましてはOECDの資本自由化コードがございますし、あるいはまた日米通商航海条約の内国民待遇という規定がございますので、一応われわれとしてはその線は尊重せざるを得ませんけれども、そういうことは尊重しながら、かつ、できるだけ国際的な方針に従いまして体系的な調査をしたいと存ずる次第であります。
  175. 野間友一

    野間委員 このロッキード事件というのは、上院の多国籍企業小委員会、チャーチ委員会から実態が明るみになりつつあるわけでありますけれども、私たちは、前の独禁法改正のときにも、多国籍企業の規制ですね、たとえば先ほど若干の項目を申し上げましたけれども、こういうものを公取委に報告を義務づけるとか、公開させるとか、あるいは経済撹乱行為の規制とか、これは私は、多国籍企業を法的に法制化して規制を打ち出したのは、世界でも私たち共産党の独禁法の中でのこの規定が初めてじゃなかろうかというふうに自負はしておるのですが、それはそれとして、先ほどから若干話が出ておりますけれども、OECDでの論議がかなり進んでおる。そして、その中では、先ほども若干触れましたけれども、賄賂あるいは政治献金、それから政治活動、この三つを規制する、さらにその企業内容の公開や競争制限禁止あるいは雇用の安定、税金逃れ的行動の自粛というような幾つかの重要な項目が載せられております。恐らく通産省としても、中身についてはこういうものが入って論議されて、そして規制する方向でいまほぼまとまりつつあるというような事実は認識されておると思うのですけれども、その点について確認をしたいと思います。
  176. 天谷直弘

    ○天谷政府委員 先生のおっしゃるとおり、OECDで作成しておりますガイドラインができましたならば、そういう方向に従って多国籍企業の行動の適正化に努めたいと存じます。
  177. 野間友一

    野間委員 いや、お聞きしておるのは、いま私が挙げたようなことが目玉と申しますか、大きな柱として論議され、そういう方向でいま草案がまとまりつつあるというような事実を知っておるかどうかの確認です。
  178. 天谷直弘

    ○天谷政府委員 そういう方向で検討されております。
  179. 野間友一

    野間委員 遅まきながら実態調査あるいは監視という方向で通産行政のそういう指示が出されたということですけれども、やはり世界の趨勢あるいは他国からこういう動きが出てきていて、それに日本が乗っかっていくというか、協力するというような態度では、はなはだ消極的な態度だろうと思うのですね。昨年の二月の予算委員会の中でも、私はエクソンが東半球でもうけたというような例を出しながら、多国籍企業の実態把握あるいは規制の必要性というものをかなりやったわけですけれども、やはり積極的に通産省が先駆けてそういうような方向で世界をリードするといいますか、そういう方向で取り組むのが正しい立場ではなかろうかというふうに思うのですね。  国際的なそういういろいろな自制の行動指針なり何なりができたとしても、これが条約化されて、あれこれ法的な一つのフィルターにかけられないと、これまた具体的にどのような拘束力を持たしていくかということについては、まだ困難な問題が残っておる。これからの問題だろうと思うのですけれどもね。  国連の経済社会理事会が採択した国連多国籍企業の有識者グループの報告というのもありますね。これは御存じだろうと思うのです。これなどを見ましても、進出国の内政に干渉した多国籍企業に対しては、進出国本国ともしかるべき法的な手続に沿った制裁措置をとることを中身として宣言しておると思うのですね。したがって、世界の趨勢がそうであるなら、後手後手に回るのでなくて、積極的にやはりいろいろな施策を打ち立てながら取り組む必要がある、こういうふうに私は思うわけです。その点について、先ほどからの論議を踏まえて、通産大臣の所見をひとつぜひ聞かしていただきたいと思います。
  180. 河本敏夫

    河本国務大臣 審議官から詳細答弁いたしましたように、いまこの問題と積極的に取り組んでいこうとしておるわけでございます。
  181. 野間友一

    野間委員 公取委員長はどうですか。——それでは、この点について公取関係でお伺いしたいと思いますけれども、いま来ておりませんので、途中ですけれども質問を別の問題にして、しばらく電力料金について若干の質疑をして、そして関係者はお帰り願ったらと思います。よろしいですね。     〔委員長退席、渡部(恒)委員長代理着席〕  午前中も同僚議員の方から電力料金の値上げについて質問がありました。東北電力やあるいは北海道、九州、北陸と、現在四社が値上げ申請をしております。九州電力で三一・九五%、北陸電力が三三・四%ですか、高いのは北海道、三九・一五というべらぼうな値上げになっております。  今度の値上げの特徴を見てみますと、未曽有の深刻な不況の中での値上げということが特徴だろうと思うのです。それだけに、各界に与える影響も大変大きなものがある。もしこの申請が認められたならば、これは消費者物価あるいは卸売物価を押し上げる大きな要因になる。経企庁は恐らく来ていないと思いますが、この物価に波及する影響等についていま査定の段階ということですけれども、どのように考えておられるのか。消費者物価あるいは卸売物価、これらについてはいかがでしょう。もし答えられるならば答えてください、経企庁は来ていないとすれば、エネルギー庁でも。
  182. 増田実

    ○増田政府委員 今回の電力の申請が物価に対してどれくらい影響を与えるかということにつきまして、私の方で試算いたしましたものがございます。四社の料金改定につきまして、これは当然査定するわけでございますが、一応申請のままの数値を置きまして、直接に物価に対してどれくらい影響を与えるかということで計算いたしたわけでございますが、消費者物価に対しましては〇・一一%程度、それから卸売物価については〇・一三%程度ということでございます。これは、四社の申請をそのまま認めたとき、全国にどれくらいの影響を与えるかという計算でございます。
  183. 野間友一

    野間委員 そうすると、それはたとえば四社の値上げ申請をそのまま是認すると仮定した場合に、この値上げが全国的な規模での消費者物価や卸売物価にどう波及するかということになりますか。
  184. 増田実

    ○増田政府委員 そのとおりでございます。
  185. 野間友一

    野間委員 関西電力とか、新聞紙上によりますとまだまだ後続いて値上げが出されるというような情報もありますけれども、これが全部出た場合に初めて押し上げのパーセントが出ると思うのですが、これは地域的にたとえば東北電力やあるいは北海道電力ということになりますと、その範囲でこれがどれだけ押し上げるかということの試算もあろうかと思うのですね。それはいかがですか。
  186. 増田実

    ○増田政府委員 ただいまの申請は四社だけでございまして、あと五社が申請しておりません。ただ、仮の数値といたしまして全部が三〇%の値上げを出してそのまま認められた、これは仮定でございますから、私はそのままのことを言うわけではございませんが、そういう仮定のもとに計算いたしますと、卸売物価に対しまして〇・五%、それから消費者物価につきましては〇・四%というものが影響として出てくるわけでございます。
  187. 野間友一

    野間委員 そうすると、これは大変な上昇率になりますね。午前中の論議でも、ことし八%云々というようなことが出ておりましたが、これだけでも〇・五%押し上げることになるわけです。しかも、いま申し上げたように特徴は不況の中での値上げということで、国民生活やあるいは産業の中でも特に中小企業、こういうところに非常に深刻な打撃を与えるのではないかという懸念をするわけですね。  私たちはすでに通産大臣にも値上げをするなという反対の意思表示、申し入れもしておりますし、私自身もするべきでないという立場なんですが、また、値上げの理由についてもいろいろ問題があると思うのですね。きょうは詳しくは触れませんけれども、たとえば電力各社が四十九年度に大幅値上げをした。その後、五十年度の九月期の決算の申告所得、これも若干数字を見たわけですが、電力業界は対前期比一〇%の増加、これは千六十一億円に相なると思うのですね、この所得が伸びておる。内部留保の積み増しもかなり伸ばしておりますね。さらに、電力需要を見ますと最近は非常に伸びておるというようなことから考えましても、いまの時期にこの値上げを出す神経もよくわかりませんけれども、こういうものはやはり値上げするべきでないというふうに思うわけですね。  そこで、午前中大臣も言われましたけれども、いま査定がどういう状況で、いつごろをめどに手続を進めておられるのか、その点についてちょっとお伺いしておきたいと思います。
  188. 増田実

    ○増田政府委員 四電力の申請は四月の五日と八日に受け付けたわけでございますが、これにつきまして、現在その申請書類に基づきまして審査をいたしております。  審査の方法といたしましては、申請書類をチェックするのみならず、各会社に行きまして、いわゆる特別監査ということで全部の帳簿その他を調べまして、これの厳正なる審査をいたしておるという段階でございますが、今後の手続といたしましては、五月の上旬に公聴会を開きます。公聴会の意見を十分に聞きまして、最終的に申請に対する査定案をつくるということでございますが、大体現在の進捗状況から言いますと、五月の終わりごろには査定案ができる、こういうことでございます。
  189. 野間友一

    野間委員 四社の値上げ申請を見てみますと、燃料費の高騰とかあるいは人件費の高騰などが理由の主なものとして挙げられておりますが、果たしてそれが今回申請されたような大幅な値上げにつながるものかどうかということが最も大きな問題だろうと思うのですね。  四十九年度の申請を若干洗ってみましても、原価に占める費用に大幅な水増し申請があった。これは恐らく長官は、結果的にはそうなった、予測が違うたのだというように言われるかもわかりませんけれども、少なくとも原価に占める費用に大幅な水増しがあったという事実は否定できないと思うわけです。ちなみに若干の数字を拾ってみましても、北陸電力の場合には約百十二億円、それから九州電力の場合には三百億円、東北電力が百六十億円、これはちょっと洗ってみたのですけれども、これが予測と実態とは違うわけですね。  そこで、まずお聞きしたいのは、いま若干の数字を挙げましたけれども、結果的にしても何にしてもこれだけの水増しがあったという事実は、いま調査の結果わかっていると思うのですけれども、この点についての確認を求めたいと思います。
  190. 増田実

    ○増田政府委員 いま御指摘になりました数字は、私どもの方が四十九年のときに査定いたしました総括原価に比べまして、実際の原価との差の数字だと解しておりますが、これににつきましては、当時の予定いたしました需要量というものが景気の後退に伴いまして相当減っております。そのために、総括原価の総額におきまして、当時の査定いたしましたのと現実に出ましたのとは差が出ておるわけでございますが、これは販売いたしました電力量も減っておるわけでございますので、これらを全部調整いたさなければならない数字になるわけでございます。
  191. 野間友一

    野間委員 これはこの前のときもいつでもそうですが、値上げのときには、厳しく査定する、厳密に精査すると常に言われるわけですが、これはたとえば電力需要の動向とかいろいろなものを考慮した上で計算しても、やはりこれだけの誤差というか、水増しが出てきておるわけですよ。そこで、やはりわれわれ、特に国民が知りたいのは、本当に申請にあるような燃料費の高騰やあるいは人件費等々、特に燃料費は非常にわかりにくいわけですけれども、こういうものについて実際公開してもらわなければ、これは本当に相当かどうかの調査もできないじゃないかと、私も実はそう思うわけです。  いま独禁法の中でも、私たちは原価公開について盛り込むべきであると言っている。これはかなりそういう学者の意見もございます。ですから、一つの密室の中でと申しますか、役所の中でいろいろやられても、現実にこういう現象がある場合に、私たちは、果たして本当に国民の立場に立ってやったのかどうかということについてやはり疑問を持たざるを得ないと思うのです。したがって、本当に納得をさせる場合には、これらについてこのとおりでございますというふうにやはり公開させるべきである。これは前々からの私たちの主張ですけれども、この点についてどうでしょうか、公開をして、どうかひとつこのとおりですから皆さん十分納得いくように審議してくれというようなことになるのが真っ当だろうと思うのですけれども、いかがですか。
  192. 増田実

    ○増田政府委員 まず、いまの御質問に対してお答えいたします前に、先ほど野間先生から水増しと言われましたが、これは実態的には水増しではございませんので、結局販売量が減りましたので総コストというものの合計が減ったわけでございまして、決して水増しで料金の査定にアップ率が多過ぎたということではございませんので、これだけまずお答えいたしたいと思います。  それから、いまおっしゃられました値上げの理由その他につきましては、私どもの方はできる限り説明をいたすということで、認可いたしましたときには、各種の値上げ要因その他につきまして、国民の皆様に御納得いただけるようにできるだけの説明をいたすつもりでございます。
  193. 野間友一

    野間委員 特に燃料費についてはいろいろ複雑な問題がありまして、私たちも若干、たとえばヒヤリングしたり、いろいろなところで調べてみましても、なかなか十分実態はわからないわけですね。これは、委員長、ひとつ理事会において、この値上げの中身であるその理由の有無について、特に燃料費等についてその実態を明らかにするためにひとつ公開してほしいということを申し上げておきたいと思いますので、ぜひまた理事会で協議していただきたいと思います。
  194. 渡部恒三

    ○渡部(恒)委員長代理 ただいまの野間委員の御意見は、理事会において協議することにいたします。
  195. 野間友一

    野間委員 公取委員長が見えたと思いますので、電気料金についてもう一つだけお伺いしておきたいと思いますが、電事審ですか、こういうところの答申等も若干拝見したのですが、小口電力やあるいは業務用電力について逓増制を用いられておる。一方、私も二、三回やりましたけれども、特約料金など大企業向けの電力料金は安い。こういう制度はそのまま残しておる。     〔渡部(恒)委員長代理退席、委員長着席〕 ところが、学校とか病院等々の小口電力あるいは業務用電力については割り増し料金制度をやられる。これがしかも中小企業等の産業に対して最も大きな打撃を与えるのじゃないかというふうに思うのです。そこで、料金体系についても小口電力あるいは業務用電力についての逓増制はやはりやめるべきじゃないかというふうに要求するのですけれども、この点について長官と大臣の所見をお伺いして、この点についての質問を終わりたいと思います。
  196. 増田実

    ○増田政府委員 電力料金の問題でございますが、電灯につきましては御存じのようにナショナルミニマム制度をしいておるわけでございます。それから、電力の方につきましては、省資源、省エネルギーという立場から逓増制という制度を、これは四十九年のときには小口及び業務用電力については準備が整いませんために大口電力についてだけ適用するということで行ったわけでございますが、今回につきましては大口以外の、つまり小口及び業務用電力につきましてもこの逓増制ができるということで、今回はそういう内容の申請になっております。ただ、この逓増制と申しますのは、先ほど申し上げましたように省資源、省エネルギーの立場から、新規あるいは増設分についての逓増制をしくということでございまして、新しい電力の需要というものはそれだけに新しい設備を要求されるわけございまして、これに非常な費用がかかるということで、新設及び増設については逓増制を負担していただくという形になっておるわけでございます。
  197. 河本敏夫

    河本国務大臣 いま長官が申し述べたとおりでございます。
  198. 野間友一

    野間委員 時間がありませんから、これは十一日か何かに物特でまた電力料金についての審議をやりますから、そのときにまたやりたいと思います。  公取委員長が見えましたので、質問を戻したいと思います。  ロッキード疑獄事件と通産行政の絡みについていろいろ話を聞いておったのですが、やはり公取委員会としても、今度のロッキード事件、特に多国籍企業、これらについては大きな問題としてとらえなければならぬわけだろうと思うのですね。  そこで、まずお聞きしたいのは、いわゆる多国籍企業の実態を公取ではどのように把握をしておるのかということと、同時に独禁法上どのような問題があるのか、その点についての見解をひとつ聞かしていただきたいと思います。
  199. 澤田悌

    ○澤田政府委員 いわゆる多国籍企業というものにつきましては、学問上もいろいろ定義自体に問題もございまして、むずかしい問題ではございますが、仰せのとおりいろいろな角度から問題になっておる企業でございます。多国籍企業に対しましても、独禁法の一般原則を変更すべき理由は少しもございません。今後も規制を厳重に適用してまいりたいと考えておるわけでございます。  なお、多国籍企業の行動基準というようなものにつきましては、OECD及び国連の経済社会理事会でもいろいろな角度から検討中でございます。公取委員会といたしましても、国際的な視野に立ち、情報交換その他相努めまして対処してまいりたい、かように考えておる次第でございます。
  200. 野間友一

    野間委員 私の質問をお聞きになっておりましたか。公取では、多国籍企業の実態、これは外から中へ出てきている、こういう企業の実態についてどのように把握しているのかということと、同時に多国籍企業が独禁政策上どのような位置にあるのか、これらについてひとつ所見を伺いたい、こういうことです。
  201. 澤田悌

    ○澤田政府委員 多国籍企業の実態につきましては、われわれも調査勉強に努めておりますけれども、国際的な問題でございまして、なかなかむずかしいところでございます。どのように実態をつかまえておるかということにつきまして、私、就任間際でいま申し上げる用意はございませんのですが、しかし、先ほども申しましたように非常に問題になっておる企業でございますので、それが独禁法上、たとえば地域独占との関係ではどうなっておるか、あるいは技術的な独占においてどういう影響を及ぼしておるか、あるいは不公正な取引関係を国際的に行ってはいないか、そういう角度から厳正に対処してまいりたい、こういう考えでおりますことだけをいま申し上げておく次第でございます。
  202. 野間友一

    野間委員 答弁が大変不十分ですけれども、これは本当に公取としても早急に独禁政策上の問題点を調査し、研究して、これらについてのしかるべき方途を出してほしいということを要求しておきます。  先日、有賀さんというもとの公取の委員の方がテレビでいろいろ話をされておりましたが、この中で、ロッキードのような商法は、たとえそれが行われたのが外国であってもアメリカの商取引上不公正である、こういう点からアメリカの独禁法上の問題になっておるというようなことを言っておられました。公取としてどうなんでしょうか、今度のコーチャン証言等々で明らかになりましたけれども、商社とかあるいはフィクサー児玉譽士夫等々を通じて賄賂商法を行っておる。これらについて、コーチャン証言を前提として独禁法上どのような問題があるのか、公取の見解をひとつお伺いしておきたいと思います。
  203. 澤田悌

    ○澤田政府委員 アメリカ国会におきますいろいろな証言に基づきまして、独禁法上あの事件をどのように日本においてとらえるべきか、独禁法上それにいかに対処すべきかという問題は、ただいま慎重に検討中でございまして、いま具体的に申し上げる用意がないのをお許しを願いたいと存じます。
  204. 野間友一

    野間委員 二月の四日から——二月の四日というよりもっと以前、これはSECで去年の八月からアメリカでは問題になっておる。これは政府は知らぬことはないと思うのです。あなたにここで申し上げるのは酷かもわかりませんけれども、少なくとも国内においても二月四日、六日のあの証言からいま最も大きな問題になっておるわけですね。しかし、どうも頼りないと思うのですよ。では、公取がわれ関せずとしていままでこれをながめておられたのか、それとも、独禁政策上この賄賂商法はやはり問題になるのと違うのかという点で、何らかのそういう調査なりあるいは施策をやってきたのかどうかということを私は聞きたいわけですけれども、再度その点について、まだ全くこれについては公取としては何もやってないということでしょうか。
  205. 澤田悌

    ○澤田政府委員 いろいろの問題がございます。御承知のように、商社なりあるいは外国とコンサルタント契約をした者等の届け出の問題でございますとか、それからそういう金銭の授受が不公正な取引になるかどうかというような問題とか、いろいろな角度から検討しなければいけないと思います。ただいま遅いとおしかりでございますが、なお検討中でございます。
  206. 野間友一

    野間委員 たとえば丸紅がピーナツなりピーシズ、あれは合計しますと六百二十個になるわけですが、コーチャン証言ではこれは六億円ですか、これが丸紅を介して政府高官の手に云々ということがありますね。丸紅が外為法違反でいま被疑者として調べを受けておる。これは賄賂商法でしょう。  つまり、飛行機を売るために賄賂を使って、そしてそれによって機種を変えていくというような商法がとられた。これはまあコーチャン証言の中身ですけれども、これ一つとりましても、丸紅というのは日本の商社ですから、この商法が独禁法上どういう関連になるのか、ロッキード社と直接のユーザーと申しますか、航空会社との取引において丸紅の役割りがどうであって、ピーナツ等のあの行為が具体的に独禁法上どうなるのかというようなことは、これは当然調査の対象になるわけですね。たとえば不公正取引等とも私は絡んでくると思うのです。こういう点についての調査は公取としてはまだやっておられませんか。端的に丸紅の賄賂商法一ついま例にとりましたけれども、これは独禁法上どうなりますか。
  207. 澤田悌

    ○澤田政府委員 あの事件の実態はただいま検察関係において調査中でございまして、われわれといたしましてはその結果を待たないとまことに材料不足でございます。判断の材料が足りないというのはまことに残念でございますが、なお今後も引き続きわれわれとしても検討してまいりたいと考えております。
  208. 野間友一

    野間委員 これはもうずっと以前から、高橋委員長のころから、私はこの多国籍企業の規制ということをずいぶん言い続けてきたわけです。せめていろいろな資料を——先ほどあなたがお越しになる前に、通産省としても、在日法人等を通じて連結財務諸表等の提出方も求めて、これからこれを調査していくということを言っておるわけです。その前に、公取としては、やはり実態を正確に把握した上で、独禁政策上の問題点を指摘した上で、そういう蓄積があれば、ロッキードが出てきますと直ちにこれに対して公取独自の対処ができると思うのですね。そういうようなことでは、どうもどろぼうをつかまえてまだなわをなおうとしないというふうなそしりを免れないと思うのです。だから、早急にロッキード事件と独禁政策との関係ということについて調査をし、そしてしかるべく施策をとっていくということをお約束できますか。
  209. 澤田悌

    ○澤田政府委員 できるだけその線で調査を進めたいと存じます。
  210. 野間友一

    野間委員 まだ三分の一で、もう予定の時間が来てしまったわけですけれども、通産大臣、ちょっとお伺いしておきたいと思いますが、多国籍企業と同時に、商社について四十八年の例の行動基準をつくり、あれこれした。時期的にはピーナツの問題は四十七年、八年というところに集中をしておるのですけれども、実際どうなんでしょうか。行動基準をつくり、あるいはジェトロを通じて商社の実態を調査をされてきたとは思うのですね。ところが、通り一遍の調査の中では、賄賂によって政治や経済をゆがめているというようなことにメスを入れることは、なかなかいままでできなかったと思うのです。  そこで、お伺いしたいのは、先ほどの総理の指示を受けて事務当局に検討を命じられた三つの課題ですか、そのうちの行動基準の厳守、これの監視というようなこととの関連で、商社の行動基準を遵守するだけで、いま問題になっております今日の商社のああいう行為を本当に規制することができるかどうか、むしろその以前の問題として、これらのチェックをすることができるのかどうか、あるいはそれをチェックをし、なおかつその上で規制するということは、具体的にいまの法律の中でどういうことができるのか、その点ひとつお聞かせ願いたいと思います。
  211. 河本敏夫

    河本国務大臣 まず、二、三年前に経済団体が五つ寄りまして、そして海外における活動の場合の行動規範というものをつくりまして、それに基づいて各商社が個々の企業としての行動の基準というものをつくりまして、自発的にやっておるわけです。そして、同時にこれをフォローアップする機関もできておるということは申し上げたとおりでございますが、そういう動きに即応いたしまして、通産省として、毎年一回、主として管理体制の面からそれが行われておるのかどうかということについて調査をしておるわけでございますが、この調査を通じて、いまお話しのように商社の秘密活動が全部わかる、こういうものではございません。やはり表面の活動しかもう当然わからないわけでございます。ただしかし、この間、商社が仮に犯罪的な行為をしたというような場合には、それぞれ現在でも法律がございまして、当然それぞれの法律に照らして処分されることになります。  いま御指摘のお話は、たとえば商社の行動を規制するための何か商社法のようなものが必要じゃないか、こういうお話ではないかと思いますが、そういう考え方はいま通産省としては持っておりませんで、商社の自発的な考え方に基づいて、それぞれの企業でつくったその行動規範というものが厳正に守られるということを強く期待したいと考えておるところでございます。
  212. 野間友一

    野間委員 守るかどうかをチェックする機能と申しますか、これが行政指導ということだけではもう大変心もとない、こう言わざるを得ぬと思うのです。たとえばロッキード商法、ロッキードだけが例外的にということでなくて、またボーイングの問題が出ておりますね。これは七千万ドル、外国に支社や事務所を置いておる、その国に対してもまいたというような報道もずいぶん出ておりますね。いま大臣も言われましたけれども、単に資料を求めるということだけでとうていわかりようがない。  ところが、これらが単に例外的なものであるかないかということになりますと、いま申し上げたロッキードだけでなくて、ボーイングの問題がありますし、また丸紅を見ましても、酣燈社というところから出しておるジェットライナー・シリーズの第一巻、二月十日付の毎日新聞の夕刊にも出ておりましたが、「ロッキードL一〇一一トライスター」という本の中で、当時の航空機課長をやっておった坂篁一という人が「トライスター販売の思い出」の中で「正義は必ず勝つ……という言葉はあります。これは嘘であります。」「いかに良い物でも売れるようにしなければ売れない」こういうことを平気で書いておるわけですね。釈明はいろいろしておりますよ。いやいやそれは賄賂で云々という意味でないのだとか、そういうことを言っておりますけれども、こういう賄賂商法、特にまた児玉が秘密工作人としていろいろ画策をしたということが今日明らかになりまして、大問題になっております。  こういう商慣習、これは括弧づきですが、こういうものが特殊例外でなくて現にあると思うのですよ。こういうものが行動基準を厳守するだけで果たして本当に守り得られるものかどうか。これは主観的、修身的にはそうかもわかりませんが、しかし、守っておるかどうかをチェックし担保する機能あるいは制度、そういうものがないと思うのですね。たまたま氷山の一角で物が出てきた。その場合には、たとえば出てきた現象に応じて、外為法違反の場合には五十三条で輸出入の禁止とか、いろいろ制裁措置あるいは刑事上の制裁とか、あれこれあろうかと思いますけれども、それはそれとしても、未然にこういうものを防止していく、なくしていく、これは日本の民主政治あるいは経済活動の基本にかかわる問題だろうと思うのですね。これはどだい無理な話でしょうか。通産大臣、いかがでしょうか。
  213. 河本敏夫

    河本国務大臣 商社は、御案内のように数万人の人間が全世界でいろいろな分野で活躍をしておるわけでございますので、そういう商社の活動を一つ一つチェックいたしまして、この商社のやっておるこの具体的な行動は法律に合うのかどうかというふうなことを、通産省としてはとても調査できるものではございません。でありますから、さっき申し上げましたように、企業みずからが一つの行動の規範をつくって、それをかたく守っていくのだ、そのことが本当の意味での企業の発展につながるのだ、そういう自覚をいたしまして、みずからその規範というものを守っていく、こうでなければとてもやっていけるものではないと私は思うのです。そういう意味で先ほどお話をしたわけでございますが、ましてや、今回のロッキード社のような秘密代理人をつくって犯罪的な行為をするということは言語道断のことでありまして、これは正常な商活動ではない、こういうふうに考えます。
  214. 野間友一

    野間委員 もう時間が参りましたので、中途ですけれどもこれで終わらざるを得ないと思いますが、コーチャン証言によりましても、檜山あるいは大久保から、政府高官に賄賂を贈れ、またある証言の中では、多くの経済人の方々からもこれを勧められたというような証言もありますね。だから、これは単に、確かに大臣が言われますように形式的に考えますとこういう商法が許されるわけではない、これは規制しなければなりませんし、これは悪い行為であるということはそのとおりだと思いますけれども、しかし、少なくとも実際にこういうのがあったし、またロッキード社の関係だけでなくて、いろいろといま八十社に上る多国籍企業がチャーチ委員会においても調べられております。  こういうことを考えますと、特殊例外というよりも、むしろこういうものが実態ではなかろうか。あるいは同時に、アメリカではやはりそういうふうに物を見ておるということもこれまた事実であると思うのですね。ですから、これらについて自由競争の原理云々というふうに常に言われますけれども、そういう観点からもこれはなおざりにできない。  したがって、冒頭に戻りますけれども、いろいろ言われました。これを具体的に本当に実効あるものにするにはどうしたらいいのか。系統的、持続的な監視体制、調査を求める行為から始まって、本当に世界に先駆けてこれらの実態を、不幸にしてこういう事件が出てきたわけですから、これを契機に本当に積極的な強い姿勢で臨む必要があるのじゃないか。このことは単に通産大臣だけではなくて、公取としても肝に銘じて迅速に真相を究明し、この実態の正確な把握と同時に、こういうものを根絶するという立場からひとつ対処していただきたいということを最後に申し添えまして、中途ですけれども、とりあえずきょうは質問を終わりたいと思います。
  215. 稻村佐近四郎

    稻村委員長 次回は、来る二十七日、火曜日、午前十時理事会、午前十時三十分委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。     午後五時三十二分散会