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1976-03-03 第77回国会 衆議院 商工委員会 第3号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十一年三月三日(水曜日)     午前十一時四十五分開議  出席委員    委員長 稻村左近四郎君    理事 橋口  隆君 理事 前田治一郎君    理事 武藤 嘉文君 理事 安田 貴六君    理事 渡部 恒三君 理事 上坂  昇君    理事 佐野  進君 理事 神崎 敏雄君       天野 公義君    内田 常雄君       浦野 幸男君    粕谷  茂君       木部 佳昭君    田中 榮一君       八田 貞義君    深谷 隆司君       山崎  拓君    板川 正吾君       岡田 哲児君    加藤 清政君       勝澤 芳雄君    竹村 幸雄君       中村 重光君    渡辺 三郎君       近江巳記夫君    松尾 信人君       玉置 一徳君  出席国務大臣         通商産業大臣  河本 敏夫君  出席政府委員         通商産業政務次         官       綿貫 民輔君         通商産業審議官 天谷 直弘君         通商産業大臣官         房審議官    藤原 一郎君         通商産業省通商         政策局次長   吉川 佐吉君         通商産業省貿易         局長      岸田 文武君         通商産業省産業         政策局長    和田 敏信君         通商産業省立地         公害局長    宮本 四郎君         通商産業省生活         産業局長    野口 一郎君         資源エネルギー         庁長官     増田  実君         資源エネルギー         庁公益事業部長 大永 勇作君         中小企業庁長官 齋藤 太一君  委員外出席者         商工委員会調査         室長      藤沼 六郎君     ————————————— 本日の会議に付した案件  通商産業基本施策に関する件      ————◇—————
  2. 稻村佐近四郎

    ○稻村委員長 これより会議を開きます。  通商産業基本施策に関する件について調査を進めます。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。上坂昇君。
  3. 上坂昇

    上坂委員 私は、通産大臣がきのう表明をされましたこれからのいろいろな方針を中心にして質問をいたしたいと思います。  まず第一に、基本的な方向になりますが、二ページのところで、いまのスタグフレーションが世界的に大きな影を落としている、その結果、諸外国では景気が低迷して、失業が増大をして保護主義的な傾向が強まりつつある、こういうふうに言われております。その結果また、これまでの国際経済秩序動揺を来している、こういうふうに言われておるわけでありますが、この国際経済秩序動揺をしているということは一体何を指しているのか、これを具体的にひとつ御説明いただきたいと思います。
  4. 河本敏夫

    河本国務大臣 石油危機が起こりましたのは四十八年の秋でありますが、現在まですでに二年余り経過をいたしております。この間、世界経済が非常に大きなショック影響を受けたことはすでに御案内のとおりでございます。そこで、貿易関係等におきましても保護貿易的な傾向が出てまいりましたし、そこで昨年の秋、六カ国首脳会談が開かれまして、今後は何とかそういうふうな動きお互いに抑えていこうじゃないか、こういう話し合いをしたわけでありますし、また通貨の面におきましても御案内のような状態でございまして、やはり動揺が見られるわけでございまして、いずれにいたしましても、長い間続けてこられました戦後の経済体制というものが石油ショック機会に相当動いてきた、こういう趣旨でございます。
  5. 上坂昇

    上坂委員 そういう国際経済秩序動揺の中でいろいろな問題が起こっているということでありますが、特に貿易の面、これがわが国経済景気回復といいますか、これにも非常に大きな影響があるということであります。きのう経済企画庁長官見通しをお伺いいたしますと、世界経済は総浮揚の時期にいま入っている、貿易も今後活況を呈していくだろう、輸出は七%程度伸び考えられる、こういうふうに言われておるわけでありますが、この見通しについて通産大臣としてはどういうふうにお考えになっておられるか、所信をお聞かせいただきたいと思います。
  6. 河本敏夫

    河本国務大臣 昨年はOECD全体の経済成長は平均でマイナス二%、こういうことでございましたが、本年は、アメリカが昨年の後半から回復に入りましたのを機会に、ヨーロッパ等もだんだんよくなってきつつありますので、OECD全体でプラス四%、そういうふうに想定をされておるわけです。マイナス二%からプラス四%ということは、差し引き六%上昇する、こういう趣旨でございますし、OECD全体でそれだけの経済成長景気回復があるということは、これは非常に大きな影響があると思います。  そういうことで、昨年は貿易見通しなども百億ドル以上違いが出てまいりまして、そのために景気回復が非常におくれたわけでありますが、ことしはそういうふうな世界経済動きを背景といたしまして、名目で一三・一%の輸出貿易伸び、それから実質で七%、きのう副総理が言われたのはその実質という意味だと思いますが、実質で七%貿易伸びる、こういうふうに昨年末の予算編成の当初には想定をしたわけでありますが、私は現在の状態からいきますならば、もちろん努力はしなければなりませんが、じみちな努力を積み重ねてまいりますならば、この目標は十二分に達成できますし、また相当上回ることも可能である、こういうふうに考えております。
  7. 上坂昇

    上坂委員 実質七%程度伸びは可能であるというふうに言われておるわけですが、これは先ほどから言われている保護貿易的な形が各国に強まっている、それでもやはりこれぐらいは見られる、こういう意味なのかどうか。  それからもう一つは、もし今後非常に輸出伸びていくとすると、業種的には、あるいは産業的にはどういうものが本命といいますか、そういうものになっていくのか、その辺のところをお伺いいたしたいと思います。
  8. 河本敏夫

    河本国務大臣 幸いにこの保護貿易主義的な傾向は、昨年の十一月の六カ国首脳会談最大の課題として、できるだけこれはお互いに気をつけてやっていこうではないか、こういうことで申し合わせができたということは、私は非常に大きなプラスであったと思います。その後、英国あたりで若干の貿易の制限をいたしましたけれども、これなどもできるだけ軽く抑える、最近のその動きに考慮をいたしまして、できるだけ軽く抑える、こういうふうな非常な配慮を払っておりますし、私は、そういう傾向はありますけれども、なおかつ去年に比べてことしが、世界経済全体、特にOECD中心といたしまして六%の経済伸びがあれば、貿易拡大というものは必ず期待できる、こういうふうに考えております。  商品の中では、大きく期待できるものはまず第一に自動車、それから鉄鋼、こういうものが大きく期待できるのではないか、こう思っております。  それから仕向け地といたしましては、先進国経済回復するということで、やはりアメリカヨーロッパ等輸出がふえると思いますし、それから中近東も実際はもっとふえる力があるのでありますけれども、これは港湾事情等から物理的に制限されるということがございますけれども、なおふえる可能性が相当ありますし、それから共産圏関係も相当ふえる余力がある、こういうふうに考えております。
  9. 上坂昇

    上坂委員 次に、景気対策の問題でありますが、政府は、基本的には公共事業住宅に重点を置いて需要増加を図る、こういうふうに言われておるわけであります。現在の地方自治体状態を見ますと、これらの公共事業あるいは住宅というようなものを受け入れる受けざらといいますか、これは非常にむずかしくなっているような感じがします。地方自治体財政逼迫が果たしてこれらのものを十分消化をすることができるのかどうか。たとえば住宅なんかでは、町村なんかにいきますとかなり、割り当てられた住宅建設を返上するようなところすら出てきておるわけであります。こういう点で、この地方自治体の手当てといいますか、財政的な援助といいますか、そういうものを同時に考えていかないと、なかなかこれが消化し切れないのではないか、こういうふうに私は考えるわけであります。こういうことについてどういう対策を立てておられるのか、お伺いをいたします。
  10. 河本敏夫

    河本国務大臣 いまお話しのように、確かに昭和五十年度の当初予算では地方財政に対する配慮というものが不十分であったと思います、補正予算ではある程度これが補強されましたけれども。そういうことがありまして、五十年度の公共事業はなかなかうまくいかなかった、こういうことであったと思います。そこで、五十一年度の予算編成に際しましては、地方財政に対しまして当初から十分な配慮が払われておりますので、五十年度のようなことはない、こういうふうに思います。  ただしかし、この公共事業というものは、事前に十分準備をいたしませんと、予算が通ってから各省が寄って相談をするというふうなことではなかなか順調に進みませんので、五十一年度の公共事業を順調ならしめるために、関係各省が寄りまして、予算が通ると同時に一斉にスタートするということのためには一体どうしたらよいかということ等につきまして打ち合わせをしておるところでございます。そういうふうな事務的な配慮と、それから地方財政と、この二つの点がキーポイントでなかろうか、こう思っております。
  11. 上坂昇

    上坂委員 いろいろ対策は立てておられるということでありますが、実を言うと、地方自治体のいわゆる公共事業の問題ですが、去年から比べて余り伸びがない状態で、仕事の面でも非常に困っておるわけです。その反面、財投関係からいきますと、国の政策としての景気刺激需要の創出という点では、本四架橋であるとかあるいは新幹線、特に東北新幹線等大型プロジェクト中心にされているように思います。これらのものが果たして地域的な経済的な波及効果といいますか、そういうものが一体どこまで期待できるか、この辺は私たちは非常に疑問に思うわけであります。こういうところに大きなものを出すよりは、もっときめの細かい、全国的に広がるような割り当てができるような事業というものを出していくことのほうが、むしろ地域経済上昇という面からいっては必要なのではないか、こういうふうに考えられるわけでありますが、その辺のところをひとつお伺いしたいと思います。
  12. 河本敏夫

    河本国務大臣 私は、この景気対策という観点から思いますと、二つ並行してやったらいいと思うのです。大型プロジェクトというものも、着工から完成までに五年、十年かかりますけれども、それなりにやはり相当な資材を必要といたしますし、地方経済にとってそれなりに大きなプラスがあると思います。同時にあわせて、いま御指摘がございましたような単年度で完成できるような仕事もどんどんやっていく。二つをやはり並行して進めていくことが必要でなかろうか、こういうふうに考えます。
  13. 上坂昇

    上坂委員 大臣は十二時から行かれるわけですね。それでは、産業政策局長でも野口生活産業局長でも結構ですが、お答えをいただきたいと思います。  景気回復にとりまして、企業活動の前に、むしろ一般国民消費活動を活発化させることがいま一番必要なのではないかというふうに私は考えております。そのために、雇用の安定とか、あるいはまた物価上昇十分消化できるような収入の上昇、いわゆる賃金の問題あるいはまたアメリカ西ドイツ等で行われているところの一般大衆減税、そうした措置が必要なのではないか、こういうふうに考えておるわけです。ところが、そうした面がなかなか具体的に出てきていない。そういうところに非常に大きな問題がありまして、相変わらず企業、特に大企業を通じて景気を刺激していくというようなところで、大型プロジェクト中心になるような景気政策がとられているのではないか、こういう感じがしてならないのであります。  それからもう一つは、きのうも経企庁長官は、福祉社会の実現のための施策が非常に大切だ、こう言っております。私もこの点については同感であります。ところが、実際問題としては、各種年金の問題にしましても、受益者負担の原則というものから国民負担は多くなっていくけれども、なかなか年金の増額というものが実際行われない。また、いろいろな社会保障の問題にしましても、いろいろな施設関係なんかを見ますと、先ほど言いました地方自治体財政逼迫等から非常にむずかしい。超過負担の問題などがありましてなかなか消化し切れないし、また相当申請してもかなり削られてしまうというような状況になっているというふうに思うのです。これでは本当景気刺激策にならない。いまの景気回復するためには、どうしても中央中心ではなくて地方から興していかなくてはならない。それが日本全体として興っていかないと本当景気刺激にならない、こういうふうに私は思っておるわけでありますが、この辺について通産省のお考えをお聞かせいただきたいと思います。
  14. 和田敏信

    和田政府委員 必ずしも通産省の所掌だけではカバーし切れない面もございますが、通産省としてどう見ておるかという立場で御説明を申し上げます。  先生承知のようにGNP最終需要項目伸び悩んでおりまして、御承知のような現在の停滞状況にあることは、われわれもこれを憂慮しておるところでございます。GNPの五〇%以上を占めますところの個人消費というのが伸び悩んでおりますが、他の項目も同様に伸び悩んでおります。特に個人消費部門伸びませんと、GNP最終需要項目におきまして個人消費支出項目伸びませんと、全体としての経済の盛り上がりというのがなかなか期待をすることが困難であります。これは、消費する者の消費という観点から見ますと、物価に関する不安感自分たちの将来に対してこの際不安感を覚え、貯蓄性向が上がってくるということは否めないところでございます。そういうことを避けさせるためには、何と申しましても、いま政府最大努力目標一つといたしておりますCPIを落ちつける、そしてインフレのおそれをなくさせて国民を安堵させるということが最終的に必要なのではなかろうかと思っております。  御承知のように、六〇年代におきます高度経済成長というのは一応の終えんの時期に到達いたしまして、今後は御承知のような福祉型、安定型の経済政策の遂行か必要だと思いますが、そのような政策を遂行するに当たりまして、公共事業をどう持っていくかということが一つの大きな眼目でございます。ただいま大臣からも申し上げましたが、大型プロジェクト型の公共事業とあわせまして、国民生活に直結いたしました下水とか道路とか公園とか、さようなものと、車の両輪と申しますか、鳥の比翼と申しますか、両方相まちまして今後推し進めていかなければならないところではなかろうかと思っております。  また、先生指摘になられました地方中央関係でございますが、通産省におきましてもかねがね産業構造どうあるべきかというビジョンを策定いたしておりますが、ただいま御審議賜っております五十一年度予算におきましては、地方におきまして、地方産業構造が中長期的にどういう形であるべきかという検討を、地方の実情に即しまして地域ごとに作成をいたし、これを日本全体といたしまして総合した体系に持っていき、その実効の確保を期したい、このように考えておる次第でございます。
  15. 上坂昇

    上坂委員 政府は、昨年、景気対策として第一次から第四次までの対策を立てられて、実施に移してきたわけであります。それらの景気対策が今日どのような成果を上げておるか、お聞かせをいただきたいと思います。  もう一つ、三ページに「未実施分景気対策実施を促進し」こう書いてあるわけです。このうちで「未実施分景気対策」というのはかなり広範にわたっているものかどうか、その辺のところを具体的にしていただきたいと思います。
  16. 和田敏信

    和田政府委員 御指摘のところは三ページの六行目の「未実施分」だというふうに承りましたが、大臣所信表明におきましてここで考えておりますことは、主として公共事業のおくれ及び住宅金融公庫の貸し出しのおくれを意図したものでございます。御承知のように一次、二次、三次、四次とやりまして、四次に関しましては、従来のものと違いまして非常に大幅な対策を決定いたしたわけでございますが、五十年九月十七日でございます。その主な内容といたしましては、公共事業追加及び住宅金融公庫貸付枠追加でございます。この対策実施がややおくれているということと符合するものでございます。  なぜおくれておるかということに相なりますと、地方公共団体予算措置が十二月の補正予算に行われたことに伴いましてのおくれが一つと、いま一つは、住宅金融公庫事務手続のおくれではなかろうかと存じます。  今後の見通しといたしましては、五十一年、本年に入りまして以降、公共事業住宅金融公庫貸し付けとも実施されておりまして、今後はその効果の浸透が期待されるものかと考えております。
  17. 上坂昇

    上坂委員 いまお話がありました中長期のビジョン、「産業あり方を明確にしていく」こういうふうに言われておるわけです。いままでは重化学工業中心といいますか、あるいは資源消費型の産業中心にしてビジョンが立てられてきたし、実施に移されてきたというふうに思っておりますが、ここに言われている「わが国産業あり方を明確にしていく」ということは、いままでのいわゆる産業構造と比較して、どういう方向を志向されているのか、このことをお伺いいたしたいというふうに思います。  それからもう一つは、「必要に応じ地域産業構造ビジョンをも作成して」いく、こういうふうにあります。何か私たち考えますと、お蔵入りしたように思われている列島改造論あるは新全総的な発想に相変わらずよるものではないか、こんな感じがするわけでありまして、この辺についてひとつお答えをいただきたいと思います。
  18. 和田敏信

    和田政府委員 お尋ねにございましたのは、三ページの末段「わが国産業あり方を明確にしていく必要があります。このため、産業構造長期ビジョンについて引き続いて見直しを行うとともに」云々、このくだりではなかろうかと存じます。本件に関しましては、ただいまもちょっと御説明を申し上げましたが、四十九年の九月に産業構造審議会総合部会から、産業構造長期ビジョンに関する報告を通産省は受けております。これは、昭和六十年度における日本産業構造がいかがあるべきか、その際にわが国雇用あるいは外国への投資、それから主な産業生産額等々に関して触れたものでございます。これは四十九年の九月に提出を受けましたが、昭和六十年度の見通しを述べたものでございますが、六十年に至ります間、毎年見直しを行うということで、一種のフロートになっております。われわれはローリングビジョンと呼んでおりますが、それで、五十年、去年の七月十四日にはその第一回の見直しの作業が行われたわけでございます。  これは、中の詳細は省きますが、どちらかといいますと全国的なビジョンで描いてあるわけでございまして、国民ニーズに適合をさせる、その際に、かつ、国際的にわが国経済は展開していくわけでございますので、国民ニーズにこたえながら、どういうふうな産業構造に持っていくことか一番望ましい姿であるか、その際の雇用はどうなっているか等々に触れてございますが、さらに、先ほども申し上げましたか、今年度におきましては引き続いて見直しを行うというのは、フロートでございましてローリングしておりますから、毎年見直していくということでございます。  また、「必要に応じ地域産業構造ビジョンをも作成して」まいるというのは、地域ごとにその中央計画が果たして実行可能であるかどうか、地域によって相当差がございますので、当該地域における長期計画というのを、五十一年度をスタート点といたしまして順次積み上げていきたい、こういう発想に出たものでございます。
  19. 上坂昇

    上坂委員 いまの地域的な産業構造ビジョンといいますか、こういうものを作成するといった場合に、わが国の場合、大体六つぐらいに分けられるわけでありますが、たとえば東北であるとか中部であるとか九州であるとか、そういうところに適合する産業構造というようなかっこうで検討されていく、そういう意味ですか。
  20. 和田敏信

    和田政府委員 たまたま通産省下部機構といたしまして通産局を持っておりますので、いまのところでは一応通産局ベース考えております。
  21. 上坂昇

    上坂委員 次に、中小企業政策についてお伺いをいたします。  ここ数年来になると思いますが、中小企業構造改善事業というものが、繊維とか、みそ、しょうゆ等食料品であるとか、印刷等なんかにも実施をされてきたというふうに思っておりますか、その成果についてお聞かせいただきたいのであります。
  22. 齋藤太一

    齋藤(太)政府委員 従来、中小企業近代化促進法に基づきまして近代化を促進する必要のある業種を指定いたしまして、金融、税制面優遇措置を講じながらその近代化を進めてまいったわけでございます。  その目標といたしておりますのは、一つ生産性向上でございます。生産性向上を図ることによりまして、中小企業と大企業との間に特に賃金格差がございますので、その賃金格差を縮める方向に持っていくために、中小企業生産性向上を図らなければならない。もう一つ品質向上でございます。  この二つ目的を達成いたしますために具体的にとりました手段といたしましては、一つ経営規模拡大でございます。そのために中小企業なりに合併を促進いたしましたり、あるいは組織化を進める、こういうような方策をとったわけでございます。もう一つは設備の近代化政策でございまして、経営規模拡大に応じまして新しい最新鋭の機械を導入する、こういうことによりまして中小企業なりに規模の利益を追求いたしまして生産性向上を図る、こういうふうな施策を講じてまいったわけでございます。  その結果、それぞれ生産性も上がりまして、賃金格差も漸次縮まりつつございますし、品質向上の面におきましても、たとえば不良品率の低下でございますとか、あるいはJIS規格合格工場増加でございますとか、そういった各種効果が上がったように考えております。
  23. 上坂昇

    上坂委員 いままで実施してきた業種と、それからその中で最も効果があったというふうに考えられる業種は何ですか。
  24. 齋藤太一

    齋藤(太)政府委員 昨年の九月に法律の改正をお願いいたしたわけでございますが、それまでの間に指定をいたしました業種は、百四十二に上っております。たとえば歯車でございますとか、マッチ、ネジ、合板、あるいは接着剤とか、ダイカスト産業とか、合成樹脂フィルム関係でございますとか、鋳物とか、ケミカルシューズとか、多種多様にわたっておりまして、それぞれに効果を上げておるというふうに考えております。
  25. 上坂昇

    上坂委員 次に、五ページに、中小企業の新分野進出事業を近促法の改正によって積極的に進める こういうことになっております。また、事業転換についてもいろいろな指導を行う、こういうふうになっておるわけでございますが、中小企業の新分野進出とか事業転換ということを言っても、なかなか地方的にはそう簡単にできない、むしろいま非常に困難を伴っておるわけであります。それで、いままでの指導の中で、こういう形での事業転換なりあるいは新しい分野に対しての進出の面で非常に成果を上げているものを具体的にひとつ挙げていただきたいというふうに考えます。
  26. 齋藤太一

    齋藤(太)政府委員 昨年春の通常国会におきまして近代化促進法改正をお願い申し上げたわけでございます。この改正趣旨は、目的は三つほどございましたが、その中に先生ただいま御指摘の新分野への進出促進、こういう項目があったわけでございます。これは、最近の経済情勢の変化に伴いまして、たとえば輸入が非常にふえておる業種でございますとか、あるいは長期的に需要が停滞をしておる業種、こういうものにつきまして新しい商品とかあるいは新しい技術、サービスを組合単位で開発をいたしまして、そういった新しい商品分野に転換を図っていく、こういうものをいろいろと助成をしょう、こういう趣旨改正をいただいたわけでございますが、この新しい近代化促進法に基づきます新分野の促進の関係は、ただいままでのところまだ検討中でございまして、適用例がございません。いま検討中のものといたしましては、造船業の下請関係につきまして仕事が非常に減ってまいっておりますので、いま古い船舶を解体する、こういう仕事を造船所関係の下請に新しい仕事として持ち込んだらどうだろうか、こういうふうな話がございまして、そういう関係にも技術がいろいろ要りますので、そういう関係を新分野進出促進ということで対象に考えたらどうかということを現在検討いたしておる段階でございます。  なお、他の分野への転換の具体的な事例といたしましては かつていわゆるドルショックによりまして非常に輸出産業等が影響を受けたわけでございますけれども、これに対しまして、いわゆるドルショック対策法という法律が制定をされまして、経営の安定関係と同じく転換促進関係の規定があったわけでございますが、このドルショック法等に基づきまして転換をいたした例といたしましては、たとえばグローブ、ミットの業界がゴルフボールに転換をいたした、あるいは電気機器をつくっておりました業者がガス漏れ警報器に転換をした、あるいは金属洋食器の業者が交通標識でございますカーブミラー、山道の曲がり角なんかにございます凸面鏡でございますけれども、カーブミラーに転換をしたとか、あるいは合成繊維の織物業者が小型ラジオ等に使いますプリント配線の基盤に転換をしたとか、それぞれ発展的な業種に転換している例が多数ございます。
  27. 上坂昇

    上坂委員 いまの事業転換の問題ですが、これは個々の企業がそういうかっこうに進んでいくのももちろんあるでしょうけれども、ある一定の地域的に、一つ業種であるとか、あるいはまた組合とか団体とかというものを一つにしてそういう転換を図っていく、こういうふうなかっこうになっているものかどうか。
  28. 齋藤太一

    齋藤(太)政府委員 一つの例としては、クリスマス電球の業界がいま非常に生産が伸びております電卓の文字盤の表示関係仕事に転換をしたという例がございます。
  29. 上坂昇

    上坂委員 中小企業の問題で、この金融公庫月報にも出ておりますが、資金需要は非常に多いのだけれどもなかなか借りられない。したがって、それが金融逼迫というかっこうになってしまうわけでありますが、そういうことで実際問題としては、特に地方なんかでは中小企業は依然として資金を借りるのに非常に困っておるわけであります。  そこで、また一つ問題になってくるのは、国債なり地方債なりが非常に増発になるわけでありまして、これが金融機関の資金繰りに影響をするのではないかというふうにも考えられるわけで、この辺についての考え方、見通しについてお伺いをいたします。
  30. 齋藤太一

    齋藤(太)政府委員 御指摘のように、五十年度で申しましても、約五兆円ぐらいの国債が発行されることになっております。そのために金融面への影響が心配されたと申しますか、どういうふうになるか懸念された向きもあったわけでございますけれども、現実にはこの国債の消化は非常に順調に進んでおりまして、現実に資金の梗塞の状態は必ずしも出ておらないように私ども見ております。これは国債等の発行によりまして国に金が入りますけれども、それは直ちに国の支出として使われてまいるわけでございまして、資金としては循環してまいるわけでございます。その間、時間的なギャップ等々はございますけれども、そういうことにつきましては、たとえば日本銀行の各種のオペレーション操作、あるいは準備預金の解除でございますとか、そういった措置を通じまして資金需給が逼迫をしないように適切な手が打たれておるように私は見るわけでございます。  それからもう一つは、資金の需要の面でございますけれども、最近の景気の停滞を反映いたしまして、中小企業の資金需要におきましても、一服状況と申しますか、一昨年あるいは昨年の春ごろまでのような非常な勢いで資金需要伸びるというような情勢が変わりまして、鎮静化しておる状況にございます。これは操業率がまだ低い状況にございますので、新しい設備投資の意欲が沸いてこないということ、あるいは増産のための運転資金の需要といったものが余りございません。資金需要中心は減産資金的ないわゆる後ろ向き金融が中心でございますけれども、これらも不況が相当長期間にわたっておりますので、従来の増産体制から減産体制への切りかえ時にはいわゆる減産資金が大量に必要であったわけでございますが、その後減産体制がずっと定着をいたしまして、在庫率等も、昨年の前年同期比の在庫率は七、八%下がっておるわけでございまして、そういう面からも、後ろ向きの資金需要もやや一服という感じがございます。  こういうふうに、供給面、需要面両面で、結果的には多額の公債の発行にかかわらず、資金需給は平穏裏に推移しておるというのが最近の情勢ではないかというふうに見ております。
  31. 上坂昇

    上坂委員 もう一つ中小企業事業分野の問題でありますが、御承知のように、大企業の新規参入でその存立が非常に危機に直面をしております。「中小企業事業分野の適正な確保についても行政指導体制を整備する」こういうふうにここに言われておりますが、これはどういう体制をとろうとしておるのか。私はむしろこれは法制化をしていく必要があるというふうに考えるわけであります。  昨年の七月二十四日に、中小企業庁ですか、通産省が発表をしたものによりますと、製造業の百十業種の中で中小企業の六十年のシェアの統計が出ておるわけでありますね。それによりますと、高収益の分野では大企業に食われてしまう、こういうふうにはっきりうたわれております。こうなりますと、高収益の分野本当中小企業が助かっていく、営業がどんどん伸びていくという形でないと本当はいけない。それが高収益の部分は非常に多く大企業に食われてしまうというようなことになったのでは、これはせっかく中小企業対策をやっても何にもならないわけになります。そういう意味で、私はここに書かれている行政の指導体制の強化ということ、それからもう一つは、それよりももっとそれを一歩進めて、私たちが常に主張している中小企業分野の確保の法律をつくっていくという形の中でこうしたものを未然にやはり防いでいく、こういうことがどうしても必要だろう、こういうふうに思います。そういう点についてのお考えをお聞かせいただきたい。
  32. 齋藤太一

    齋藤(太)政府委員 昭和六十年の産業構造ビジョン通産省で策定をいたしたわけでございますが、その中で中小企業昭和六十年におきます地位はどういうふうになるだろうかということを検討いたして、昨年秋にそれができまして公表をいたしたわけでございますが、それによりますと、この十数年、製造業におきまして中小企業が全体の出荷額に占めます割合はほぼ五〇%で推移をいたしております。今度作業をいたしました結果の昭和六十年度におきますビジョンにおきましても四九・何%かでございまして、大体中小企業が製造業の五割を維持するというのは今後十年たちましても変わらない、こういう結果が出たわけでございます。  ただ、業種によりまして、その内容を見ますと、中小企業のシェアが下がる業種もございますし、シェアがずっと上がる業種もございまして、総体として全製造業の中でやはり中小企業は五割を分担する、こういう結果が出ておりまして、経済規模拡大にもかかわらず中小企業のシェアが下がらないという意味におきまして、私ども非常に明るい見通しを得たわけでございます。  ところで、いま御指摘分野調整の問題でございますが、私ども従来とっております考え方は、中小企業団体法をバックといたしまして、現実に紛争が起こりましたときには機敏にかつ強力に、まず当事者の話し合いを進め、話し合いがつかなければあっせん、調停を行う、こういうことによりまして、大企業の大規模進出による中小企業への悪影響は断じてこれを阻止する、こういう考え方でやってまいっておるわけでございます。事実これまで起こりました各種の紛争も、ほとんどがそういう形で解決を見ておるというふうに私ども考えております。  ただ、中小企業者の要望としましては、役所の介入が遅くて既成事実がどんどん進行するようなことがあってはいけない、役所が事情を知らないでおられては困る、それからこういう紛争等が起こりました場合に相談に行く窓口がはっきりしてないから困る、こういうふうな要望もございます。私どもも、紛争につきましての情報収集を極力早くするということ、それから相談の窓口をはっきりして、いわゆる駆け込み寺と申しますか、ここへ行けば話を聞いてもらえるという窓口をはっきりする必要がある等々の面での整備の必要性を感じまして、今度この四月からそういった面につきましていろいろ改善方を計画いたしておるわけでございます。  具体的に申し上げますと、一つは、各通産局並びに中小企業庁に中小企業調整官というものを設置いたしまして、こういった紛争につきましての苦情の窓口となりまして情報を収集し、必要に応じまして調整、あっせんを行うということを考えております。  それからもう一つは、全国の商工会議所並びに全国の中小企業団体中央会の県の中央会、それから商工会の府県の連合会、ここに調査員を委嘱をいたしまして、その管轄区域におきましてこういった大企業中小企業との間での分野をめぐります紛争が起こりました場合には直ちにその実情を調査して、ただいま申しました調整官あるいは本庁に報告をしていただく。それから各都道府県に調停審議会を設けていただきまして、府県内での分野調整問題につきましては府県が極力努力をしていただく。それから各省庁との連絡会議を設ける、こういった点を整備いたしまして、情報の早期収集と相談窓口の整備ということを図りたいと考えておるわけでございます。
  33. 上坂昇

    上坂委員 先に進みまして、資源エネルギー政策の問題ですが、一つ聞きたいのは石炭の問題であります。  国内資源見直しということが言われておりましたが、相変わらず資金的にも、あるいは安全対策、技術対策、いろいろな面で非常に立ちおくれております。特に一昨年の十二月あるいは昨年の七月以降、大変な件数の災害が続出をしております。最近の新聞によりますと、ついに万字炭鉱が何か生産を放棄しなければならない、閉山に追い込まれそうな状態であるということも報ぜられておりまして、非常に問題になっておるわけであります。  これはちょっと資料が古いかどうかわかりませんが、昨年の十一月、太平洋興発というところで、アメリカの西部炭田地域の採炭システム開発にここのWSD採炭システム技術というのが輸出をされることになった、こういうことが言われております。このぐらい日本に採炭の技術というものか  いまは非常に深くなっておりますから、深いところに適用できるのかどうか私もまだわかりませんが、こうしたアメリカ輸出をするようないろんな技術を持っておりながら、日本では大変な災害が起きてしまって、大変な数の死亡者あるいは負傷者が出ている、これは大変な問題だというふうに思います。こういうことについて私たちも非常に疑問に思うわけであります。  特に石炭の二千万トンの確保ということは、この災害の状態の中ではむずかしくなっているのではないか、こういうふうに考えるわけでありますが、いまエネルギーの国内資源の開発という面が非常に大きく取り上げられておる折から、こういうことに対して通産省としては今後どういうふうにされるつもりであるか、その点お聞かせをいただきたいというふうに思います。  それからもう一つ、石油備蓄の問題と絡んで石油産業の再編成ということが言われておりますが、この再編成というものについての通産省考えをお聞かせいただきたいと思います。
  34. 増田実

    ○増田政府委員 お答え申し上げます。  まず第一点の石炭の問題でございますが、エネルギー危機を経過いたしまして、国内石炭の見直し、またこれにつきましての今後の各種対策というものを昨年の石炭鉱業審議会の答申を受けまして、これによりまして、今後十年間、昭和六十年度におきましては二千万トン維持するという政策を打ち立てましたのは先生御高承のとおりでございます。ところが、ただいま御指摘がございましたように、五十年度におきまして幾つかの不幸な事故がありまして、そのために昭和五十年度の出炭量が千九百万トン前後ということで、この新しい政策を打ち出しました第一年度におきましてこういうことになりましたことにつきましては、私どももきわめて遺憾だと思っております。  ただ、先生からいまお尋ねのありました、五十五年度、六十年度におきます今後の計画と、昨年立てました二千万トン計画についてどういうように考えているかということにつきましては、私どもは二千万トンというものを確保いたしたい、こういうふうに考えております。ただ、これにつきましては、出炭におきます保安の維持及び公害の防止というものを十分に行いまして、それを前提にしましていまの二千万トンの確保に努めていきたい、こういうふうに考えております。  それから、第二点の再編成の問題でございますが、石油の現状につきましては、御高承のとおり、現在石油企業というものが相当乱立ぎみであり過当競争体質であり、またそれで原油を獲得いたします力においてもいろいろ問題点が出ておるわけでございます。そういうことで、四十八年の石油危機を経ました現在、従来のような産業体制では石油の安定供給についていろいろ問題があるということが指摘されまして、昨年の十二月、総合エネルギー調査会の石油部会におきまして新しい石油産業あり方というものの答申が出たわけでございます。  この答申は今後の基本的な石油産業のあるべき姿というものの青写真を打ち出しておるわけでございますが、再編成というものをいかに具体的に行うか、たとえばどこの会社とどこの会社を行うかということにつきましては、ただいま申し上げました昨年の石油部会の答申の線に基づきまして、各石油企業が新しい時代環境に処していかにあるべきかということを十分慎重に検討しまして、そして再編成の方向に向かうものを私どもは期待しております。そういう意味で、新聞にも通産省主導型とかいろいろ書いておりますが、やはり業界の自主的な再編成への動きというものに対しまして私どもが支援する形でやっていきたい、こういうふうに思っております。
  35. 上坂昇

    上坂委員 次に、対外経済政策について大臣にお伺いいたしますが、大臣は最近、中東諸国、イラン、イラク、エジプト、サウジアラビアの四カ国を訪問されたと聞いておるわけでありますが、この訪問の成果についてお聞かせをいただきたいと思います。  それから、これらの国々との経済協力は、きのうのお話で石油精製装置であるとかあるいはエネルギー装置、ダム関係とかいった大型プラントであると言われておるわけでありますが、これらは民間ベースで行われるのか、あるいは政府のベースが主体になるものであるか、その辺のところをお聞かせいただきたいというふうに思います。もし民間ベースの場合、これはどのような形になっていくものか、その辺もあわせてお聞かせをいただきたいと思います。
  36. 河本敏夫

    河本国務大臣 ことしの一月、中東四カ国を訪問いたしましたが、その趣旨は、昨年の一月に三木総理が中近東との経済協力を積極的に進めたい、こういう施政方針演説をされましたが、それを受けまして総理の指示によりまして訪問をしたわけでございます。  まず、経済協力と申しましても、相互に理解をし合う、お互いに知り合うということが一番大事でありますので、相互理解を深める、こういう観点に立ちまして積極的な話し合いをしたわけでございます。  それから第二点は、懸案の経済協力案件について具体的な話し合いをいたしました。  まず重立った経済協力案件について申し上げますと、イランではバンダルシャプールの石油化学、それから新しく向こうに必要な石油精製工場をつくりたい、こういうことで、それに対する協力、それから今後双方の努力によりまして五年間を目途として現在の貿易を二倍以上に拡大する、そういうことで双方がお互い努力をしようという貿易目標の設定、それから原子力発電に対する協力、そのほかイランの計画しております新幹線に対する建設協力、それから住宅建設、都市建設、それから流通機構、エレクトロニクス、こういう分野における協力について話し合いをしたわけでございます。  それからイラクにおきましては、御案内のように一昨年の八月に経済協力が正式に調印されまして、イラクの六つのプロジェクトに対しまして日本が十億ドルの借款をするという協定ができ上がっておりますが、その六つのプロジェクトのうちセメントとアルミのプロジェクトをやめて、そのかわりにダムと火力発電所、これを追加してもらいたい、あわせてこの六つのプロジェクトの総額が当初の見積もりから三、四倍に大きくなりまして百億ドル近くなったものですから、借款も十億ドルプラス十億ドル、合計二十億ドルにしてもらいたい、こういう要請がございましたので、その方向でまとめるように努力をするという話し合い、それからあわせて、イラクとの間には現在十カ年の間に九千万トンの石油の取引契約がございますが、それをさらに大幅にふやしてもらいたい、こういう要請が出ておりますが、それに対する検討を約束したということ、こういうことが話し合いの内容になっております。  それからエジプトにおきましては、これは比較的順調に経済協力が進んでおりまして、商品協定なども第一次の分はすでに終わりまして、第二次がいま進んでおります。それから第三次も最終段階に来ておりまして、近くスタートをすることになっております。それからプロジェクトにつきましては、アレキサンドリア港の港湾改修計画、それからカイロの上水道に対する建設の参加、こういうことももう決定する段階に来ておりますし、投資保証協定の締結の話も非常に進んでおりまして、エジプトとの関係は大きな課題はありませんが、このほかスエズの借款とか、比較的小さなものでありますけれども、非常に順調に進んでおるわけです。ただ、先方は、貿易が逆ざやになっておるものですから、これを何とか改善をしたいというので、この四月から三年間に一億ドルのクレジットラインの設定をする話し合いをまとめてまいりました。  それから最後に、サウジアラビアでございますが、ここは昨年の三月に経済技術協定が調印をされましたが、その後比較的日本との間が疎遠になっておりました。先方も若干その点不満を持っておりましたので積極的な話し合いをしたわけでございますが、経済技術協定に基づきます第一回の合同委員会をリヤドで二日間にわたりまして開きまして、そして懸案の石油化学あるいはまた環元鉄その他経済技術協力、そういうことについていかに具体化していくかということについての話し合いをいたしまして、いずれも前向きに具体化するような方向で検討しよう、こういう話し合いをしたわけでございます。  石油ショックが起こりました直後に、当時の三木副総理、同じく中曾根通産大臣及び小坂政府の特使、この三人が相次いで行かれたわけでありますが、その後二年間、先方とは政府の正式の交流がなかったわけであります。そういうことで、今回私が向こうに行きまして、やはり頻繁に話し合いをするということがお互いに知り合うという一番の前提条件である、こういうことを痛感いたしたわけでございます。どうしても頻繁に話し合いをするということが何よりも必要である、ヨーロッパなどはその点は非常に見習う必要がある、こういうふうに思いました。幸いイラク、サウジアラビア、イランからも先方の担当大臣が近く日本に来られるということでございますので、それまでの間に幾つかの懸案をまとめたい、かように考えておる次第でございます。  ただ、イラクなどは、この大きなプロジェクトは先方の注文によりまして日本が請け負って建設して向こうへ渡すという、そういう契約になりますが、サウジとかイランなどは、ジョイントで大きな石油化学とかあるいはリファイナリーとか還元鉄、こういうものをやっていこうということでございますから、この条件を詰めるということがこれからの非常に大きな課題だ、こういうふうに心得ておりますけれども、しかし日本の必要とする油の四分の一はイランから買っておりますし、また四分の一以上はサウジから買っておるような状態でありますので、現在の両国の貿易状態等からも考えまして、今後これらの国々との関係を積極的に進めていくということがどうしても必要である、こういうことを痛感いたしましたので、むずかしい問題ではありますが、懸案のプロジェクトの実現のために今後全力を挙げていきたい、かように考えておる次第でございます。
  37. 上坂昇

    上坂委員 大臣、結構です。  最後に一つ聞きますが、いま大臣から中近東諸国との経済協力の問題が出ましたが、それにしてもやはりどういうかっこうでいくのか、政府ベースでいくのか、民間ベースでいくのか、あるいはそこに商社が介在するのか、いろいろな問題が出てきて世界を震憾させているロッキード問題が、そっちの方で日本にも出てくるおそれがなきにしもあらず、こういうふうに考えるわけであります。  そこで、通産省で最近、二月二十日ごろですか、多国籍企業監視を強化する、定期的に実態調査をするということを事務局に指示をした、こういうものが出ておりまして、特に日本のいわゆる外資関係についてはその報告をさせたり何かしていろいろ調査をする、こう言っているわけでありますが、その反面、大蔵省が二月にやはり外資導入に二十三件認可をしている、こういうようなことを考え、それからもう一つは、同じ情報でシアーズローバックが西友ストアに資本参加をする、転換社債の全額引き受けという形でやるというようなことが出てきておりまして、どんどん外資が入ってくる、そういうことを言われておるわけです。  そこで、日本通産省考えているいわゆる日本的な多国籍企業というものはとういう基準に考えているのか、そこのところが一つ。  それから、いわゆる商社か向こうに行ったり何かする場合に、相変わらずロッキードと同じような形の商売をやる。とにかく向こうへ行くと、賄賂を出すということ、あるいは手数料といいますか、リベートを出すなんというのは、これはもう日常の習慣になっている、こういうふうに言われておりまして、こういうことが将来非常に心配になるわけであります。こういうことについての通産省としてのお考えをひとつ最後に承っておきたいと思います。
  38. 和田敏信

    和田政府委員 戦後わが国経済は、一貫いたしましてIMFあるいはガット、さらに若干時間を経緯いたしました後は、OECDの精神と申しますか、そういうラインに基づきまして経済の発展を遂げてきたところは先生承知のとおりでございます。内外における資本の自由化あるいは商品の自由化等は、その一環としてこれが行われてきたところでございます。だんだん時間が経過いたしますにつれまして、わが国貿易規模も、輸出入合わせましてわが国といたしましても千四百億ドル程度のベースにも到達するに至りましたし、また資本の自由化を行いますに従いまして、いわゆる多国籍企業を初めとする多くの企業日本に対して資本進出を行ってきております。現在までのところ、これらの資本進出によりまして、あるいはわが国からの海外への投資を行いますことによりまして、わが国経済の発展及びわが国の投資を行っておる先の経済発展、当該国の民生の安定ということに大きく寄与してまいり、総じて経済全体の動きは効率化を高め、民生は進んだのではなかろうかと思っております。  最近に至りまして御承知のような多国籍企業問題が起こりまして、伝えられておりますところの企業がいわゆる狭義の意味におきます多国籍であるかどうかということはなお検討を要するところではなかろうかと思いますが、いずれにいたしましても、非常に巨大な企業動きが大きく一つの責任を追及せられるという時代になっております。このような事態はわが国だけに関連するものではございません。すでにOECDあるいは国連等の場におきましても、こういう現象の未然の防止、あるいはこういう企業の行いましたことに対する責任の追及というようなことが国際的なベースにおいて大きく論議せられておるところでございます。わが国も、ことにOECD、国連の場におきますところの多国籍企業のビヘービアの監視機構と申しますか、そういうものに対する一つの統制を行っていくべきではなかろうかという動きに対しましては、最も積極的に協力をいたしております。OECDコード等が近く何らかの形で一つの成案を見るのではなかろうかと思っております。わが国といたしましては、そのような多国籍企業に関します一つのガイドラインといいますか、ガイドポストといいますか、そのようなものが国際的に決定を見ました場合には、そのラインの決定への参加はもとより、決まりました後は、それに対して協力をしていくということになろうかと思います。  ただいま現在におきまして、通産省はしからばどういう対応をしておるかというお尋ねでございますが、これはわが国に、おおよその数でございますが、多国籍企業等も含めまして約千八百程度の外資系の企業がございます。これらの企業に対しましてはその協力を求めまして、一年に一回、四十九年、五十年——ちょっと正確ではございませんが、毎年調査を行っております。これらの調査は、何年でありましたか……(上坂委員「簡潔に」と呼ぶ一過去数年行っておりますが、これらの調査に関しまして何らかさらにつけ加えるべきものがあるかどうかという点に関しては、今後さらに詰めてまいりたいと思っております。  大筋におきましては、この国際的な波の中においての協力、それから通産省ができます簡囲といたしましては、いま申し上げました調査における項目追加、このようなことを考えておるわけでございます。
  39. 上坂昇

    上坂委員 終わります。
  40. 稻村佐近四郎

    ○稻村委員長 神崎敏雄君。
  41. 神崎敏雄

    ○神崎委員 私は、この七十七国会における最初の商工委員会での質問において、今日最も重大な問題になっておるロッキード問題について一言伺っておきたいと思います。  まず、この問題について国会の果たすべき役割りについての日本共産党の基本的な考え方を申し上げておきます。  第一に、ロッキード問題の現局面での最大の課題は真相を解明することであり、その中心舞台として予算委員会で行わるべきである、そういう性質の問題であると考えておるものであります。  第二に、この商工委員会としても、大商社を初めとした巨大企業及び多国籍企業の反社会的行為や経済撹乱行為をいかに民主的に規制するかという問題、加えて、海外に進出するわが国の巨大企業の問題など、重要なかかわり合いを持っております。  すでにわが党はさきの七十五国会に、多国籍企業、巨大企業への民主的な規制を含む独禁法改正案を提出するなど、この問題を早くから重視してまいりました。現にいま大商社丸紅に対する国民の厳しい批判が高まっております。この国民の信託にこたえて、当委員会としても、どういう追及を行うべきか、それは国会のあり方についても国民の重大な関心が高まっている点も考慮して、審議のやり方を含めて真剣に考えるべきであると思います。ロッキード問題の真相の解明、実態の究明の後に、当委員会としてしかるべき論議を行うべきである、このように考えるものであります。  そこで、私は、現時点で明らかにされている実情に即して、本日のところは一つの点だけに限定をして大臣に見解を求めたいと思っております。  今日までの予算委員会及び捜査当局などの調査によって、大商社丸紅の外為法違反の疑いはきわめて濃く、その反社会的行為に対する国民の怒りと批判はますます高まっております。この丸紅に対して、政府及び政府関係機関、公社、公団等の官公需はどれだけ発注されてきたのか、ここ三年間の各省庁別の丸紅に対する官公需発注の実態を明らかにしていただきたい。  さらに、五十一年度官公需について丸紅に対して従来と全く同じ姿勢で対処をするのかどうか。以上の二点について答弁を求めたいと思います。
  42. 河本敏夫

    河本国務大臣 丸紅に対する官公需が過去三年間どういうものであったかということにつきましては、ただいま資料がございませんので、至急調査をいたします。  今後の方針等につきましては、もう少し事件の推移を見守りましてから態度を決めたい、こう思っております。
  43. 神崎敏雄

    ○神崎委員 ぜひとも調べて資料を出していただくとして、いま大臣はこの三年間の資料を出すというふうにおっしゃったのですが、推移を見てというお言葉とも関連して申し上げたいのは、五十一年度官公需を丸紅に発注することは慎重に再検討すべきだと思うのです。わが党は一貫して、官公需をもっと大幅に中小企業に回せと主張しており、そのための法律改正案も提出しております。     〔委員長退席、安田委員長代理着席〕 中小企業か戦後日取大の経営危機に直面しているいま、国民の税金である国の予算をいまの時期に丸紅に注ぐということをそのまま認められるのでしょうか、推移を見ていくということは。丸紅に発注しないと国民経済上重大な支障を来すものがあるとするなら、まずそれを明らかにしていただきたい。  もちろん私は、丸紅に働く労働者や関連下請の中小企業者の生活と経営の安定を無視するものではございません。丸紅の経営上の問題による労働者や関連中小企業者への対策は、それは丸紅が当然その責任を負うべきであり、私がいま問題にするのは、国民的批判にさらされている丸紅に、政府が一昨年や昨年と同じように官公需発注の契約をするという姿勢を五十一年度も続けるのかどうか、政府のその点での明確な姿勢を示してほしい、こういうふうに思っておるのですが、重ねて答弁を求めます。
  44. 河本敏夫

    河本国務大臣 まず、商社に対する基本的な考え方を申し上げますと、商社は昭和四十八年の後半に、それぞれ各社ごとに非常に厳しい行動基準というものをつくっております。この行動基準をよく読んでみますと、これを守っておればどこからも非難されることはない、きわめて感心させられるような内容のことばかりが書いてあるわけです。要するに、こういう行動規範をつくっておるにもかかわらず、ややもすると非難を受けるような行動が出がちになるのは、一体原因はどこにあるのであろうかということについていろいろ考えてみるわけでありますが、その一つは、商社の活動範囲というものが非常に広範になっておる。数十あるいは数百の企業一つ企業体に統合されておる、こういう感じすら受けるわけです。それぞれ事業部制ができておりますけれども、その事業部制といえども非常に数が多い。そういうことで余りにも急速に巨大になり過ぎたということのために、管理体制というものか大変不十分でなかろうか。そこに、せっかくつくった行動規範というものがなかなか実行に移しにくいし、またフォローアップすることがなかなかむずかしい、こういう点があるのではないかというふうに考えております。  昭和四十八年に行動規範ができましたので、通産省といたしましても、それじゃ一体どういう行動をとっておるのかということにつきまして、毎年一回調査をすることにしております。四十九年から始めておりまして、四十九年の三月、五十年の三月、この三月に第三回目の調査をすることになっておりますが、今回はどうすれば行動規範が実行できるような体制をとれるかどうか、管理体制を一体どうすればよいか、こういうことを中心に聞き取り調査をしてみたい、かように考えておるわけでございます。  ただ、今回のような事件は大変遺憾であると私は思いますけれども、しかし、今回の事件だけで、商社のいま果たしておる役割りというものを全部否定するということは行き過ぎだと思います。日本貿易立国でございますし、各商社は貿易を実際に行う代表的な企業でありますので、この商社の機能が挫折をいたしますと、日本貿易もスムーズにいかない。いわば商社は日本の顔、こういう形で海外において貿易活動、事業活動をしておりますので、こういう商社の果たしておる大きな役割りというものも私は正しく評価しなければならぬと思います。  ただ、今回の事件はなおもう少し推移を見守ってみませんと、どこまでが真相なのかということがはっきりわかりませんので、政府も、総理がたびたび言明しておりますように、真相の究明に全力を挙げるということを声明しておりますし、その方向に向かいましていまあらゆる努力を払っておるところでございます。そういう過程でございますので、いますぐ丸紅に対してどういう取り扱いをするかということをここで決定的に申し上げるということは尚早である、こういう考え方から、当初に申し上げましたような答弁を申し上げたわけでございます。
  45. 神崎敏雄

    ○神崎委員 いま一点大臣伺いますが、大臣も認められるように、商社というものが巨大企業で、ある意味では日本の顔だ。私も、商社そのものをいまつぶしてしまえとか、あるいは丸紅を倒産させてしまえとか、解散させい、こういう立場で質問をしているわけじゃないのでございますから、ひとつ誤解のないようにしていただきたい。ただ、会長、両専務、こういう最高スタッフが辞任をしたりあるいは辞任に追い込まれたり、国民からきわめて大きな批判を受けているその丸紅に対して、従来どおりの姿勢で官公需その他の発注をやられるのか、あるいはここで一遍再検討するとかいうような形でお考えになっておるのかどうか、こういう意味のことをいわゆる所管大臣である河本大臣に聞いているのです。  同時に、これは本日知ったのですが、昨日北海道の札幌市の市議会で、そこの市長さんは自民党系の市長さんでございますが、やはり私と同じような趣旨の質問に対して、ことしからはもう丸紅には札幌市としての官公需は発注しないというような答弁をされたということも聞いております。まあそれは札幌市の独自の問題でしょうが、こういうような形もこれから地方自治体等でもどんどん出てくると思いますが、こういう客観情勢と主体的な現実の中で、さて政府として通産大臣はどういう姿勢でこれに臨まれるか、こういう点なんですね。これはひとつ再検討してみるとか、そういうような姿勢が当然だろう、私はそういうふうに思うのですが、いかがですか。
  46. 河本敏夫

    河本国務大臣 私は、真相はあくまで究明しなければならぬと思います。ただしかし、真相が究明される前に余り感情的に物事を決めてはいけない、こういうふうに思っておるのです。そういうことから三月には、今月には、各商社の行動規範を実際にどういうふうに守り、あるいは管理体制を一体どうしているのかということについて十分調査をいたしますと同時に、丸紅の問題につきましては、検察庁におきましてもあるいはまた警察、国会等におきましても、それぞれ真相究明に乗り出しておられるわけでございますので、いずれ近く真相が究明されると私は思います。その時点で判断すべき問題であろう、こう思うのです。  官公需は各省庁にまたがっておりまして、現在どの程度の官公需が発注されておるのか、それは全然見当がつきませんけれども、各省庁の判断に属すべきことも非常に多いと思います。ただしかし、通産省としましては、真相究明が先である、こういうふうに考えておるわけでございます。
  47. 神崎敏雄

    ○神崎委員 次の問題に移りたいと思っていたのですが、大臣まだそういうふうにおっしゃるなら、もう一言言わなければならないのは、真相究明のカテゴリーの問題に入っていかなければならない。それではどういう真相が明らかになった場合に考慮されるのか、こういうことになるのですが、丸紅が、まあ青天白日といいますか、そういうことが全然なければ、このような経済的に重大な時期に、予算委員会等であれだけの証人喚問の中で、しかも日々、大臣もよく御存じのように会長、両専務が辞任するとかいうようなことで責任をとらなきゃならぬところへ来て、なおかつ再喚問もやるというようなところまで来ているのですから、それが全部済んでしもうてからというのではなしに、客観的にも実際上の現在の段階ということを限定して私は言うているのですから、ひとつ後追いという形じゃなしに、そのような丸紅の現状であるならば、通産省としても、官公需関連に対してはことしは従来どおりの姿勢ではいけない、こういうふうに考えられてしかるべきだ、また当然だ、私はこう思うのですが、どの辺までの真相が明らかになったらお考えになるのか、再検討されるのか。しつこいようですが、もう一問この問題について聞きたいと思うのです。
  48. 河本敏夫

    河本国務大臣 今度の事件が起こりましてから、通産省といたしましても、監督官庁といたしまして二回、丸紅の担当者を呼びまして実情の調査をしております。それによりますと、三百二十万ドルという手数料につきましては、先方とは若干の数字の違いはあるようでありますけれども、正規の手数料としてこれはまず問題はない、こういうふうに私どもも理解をしたわけでございます。  それで問題は、例のピーナツなどと書いたあの誤解を生んでおる領収証の問題についてでございますが、それについては、丸紅側は国会で説明しているのと同じような説明をしているわけでございます。ただしかし、この点については国会においても十分納得をしておられませんので、二回の喚問になったわけだと思いますし、また検察庁などがいま積極的に調査をしておるのだと思います。でありますので、通産省調査をいたしました段階においては、その一点だけを残しましてあとは何も問題はなかった。その一点については、いま申し上げましたように、検察庁や国会においていま議論をしておられる、こういう段階でございますので、それらの問題がいずれ明らかになると私は思うのです。明らかになり次第、そこで判断をすべき問題だ、こういうふうに考えております。
  49. 神崎敏雄

    ○神崎委員 そうすると、明らかになったら丸紅に対して従来どおりの方針ではいかないというふうに理解してよろしいか。
  50. 河本敏夫

    河本国務大臣 その内容がどういうふうに判明をいたしますか、そこらあたりがわかりませんので、いま関係の皆さんが一生懸命に事態を明らかにしようということで取り組んでおられる場合に、私がいろいろな場合を想定して申し述べるということは、これはまた誤解も生みますし、また時期尚早だと思いますので、この際はやはり答弁を差し控えさせていただきたいと思います。
  51. 神崎敏雄

    ○神崎委員 そういうことであったら、まだ白紙ではない、何かの究明されるべきものがあらわれてきたときには新たな対処を通産省としてはする、こういうニュアンスを含んだお言葉ですね。いまはまだ関係官庁あるいは捜査当局等がやっているんだから、その以前に通産省として、しかもいやしくも通産大臣として事前にそういうことを言うと大きな影響を及ぼすから、だから、何かの真相が最終的に明確になったというときは従来のやり方はしないということは、もちろん当然ですね。そういうふうに承ってよろしいですね。
  52. 河本敏夫

    河本国務大臣 官公需は各省庁で発注し、判断する問題でございます。でありますから、他の省のことまで私が申し上げるのは、これは権限外のことでありますから申し上げませんが、通産省に関しましては、事態の推移が明らかになるのを待って考えてみたい、こういうことでございまして、いま申し上げられるのはそこまででございます。
  53. 神崎敏雄

    ○神崎委員 だから、各省が出すことはよく存じておりますが、丸紅というような商社を行政指導したりあるいは監督したりするのが通産省の所管でしょう。だから、そういうようなところには、通産省としては真相が明らかになったときは、これは好ましくないというようなことを言うべきがいわゆる所管省としての当然の姿勢である。私がいま聞いているのは、通産大臣としての姿勢を聞いているのです。だから、そういう形で、たとえば何かの答えが出た。非常に適切でない、そういうような答えが出た場合でも、各省がやるんだからといって、通産省は私の方は関連ないんだ、こういうようなことでは、やはり所管省としては責務を果たせられないのじゃないか。これは社会的にももちろん裁断を下すでしょうけれども、しかしなかんずく所管省としてはその裁断が速やかであり、適切でなければならない、こういうように思うのですが、それでもまだそういう時期が来ても通産省はいまおっしゃったところでとまるのか、今日のこの時間的段階だからそういう答弁にとどまっておるのか、もう一遍伺っておきます。
  54. 河本敏夫

    河本国務大臣 いま神崎さんも言われましたように、御自身の御発言ですけれども、何も神崎さんは丸紅をつぶしてしまえとかやっつけてしまえとか そういうことを決して言っているわけではない、やはり商社として果たす役割りも大きい、そういう趣旨で言っているんだ、こういうことを言われましたが、私は、仮にある企業が、またある個人が罪を犯したということであれば、この罪に対してはあくまで個人はその責任をとらなければならぬし、糾弾されなければならぬと思うのです。だけれども、その罪を犯したことだけによって、これも裁判の結果を待たなければなりませんが、後の取引を全部やめてしまえとか、そこまで言うのは、そのことだけでいまそういう判断をするということは、これは少し行き過ぎじゃないだろうか、やはりその企業を生かしていくということのためには生かし方があろうかと私は思うのです。でありますから、その企業を将来も生かしていくということ、それからその企業が果たす役割りが大きいということであれば、やはりその観点に立っていろいろ判断をすべきである。こう思うのです。だから、いま仮にクロだということになれば取引を全部やめてしまえ、そういうことを言われましても、私はいまの段階ではそこまでは御返事は申し上げられない、こういう趣旨のことを言っておるわけです。
  55. 神崎敏雄

    ○神崎委員 こっちもそこまで言ってないのですよ。そういうことがあったときは考えなければならぬでしょう、こう言っているのです。そこまで、取引全部つぶせとか——少なくとも官公需ですから、個人と民間同士のものじゃなしに国民の税金、血税で賄ったりするものであるから、そういうふうな商社に対しては所管省として私は正しい姿勢を国民の前に示さなければならぬだろうと思うから そういうことになったらそういう姿勢をおとりになるのですか、そういう考えをお持ちですかという限界を決めて、しかもいま大臣が私の発言を取り上げておっしゃったようなことも含めて言っているのですから、極論を言っているのじゃないのです。  だから、それはぼくはあたりまえだと思うのですが、どうですか。やはりまだいまと同じですか。私は当然だと思うのですがね、そう考えるのが。しかし、いまのあなたの立場で、いまの時間的な状態で言い切ることはできない、しかし明らかになった場合は、それはやはり所管省としても考えますと——取りやめろとかつぶせとか、そんなことを言っているのじゃないからね、そういうようなことが出た場合には、所管省としては考えなければならぬと思いますと、こう言われるのが当然だとぼくは思うのです。何も断定的、決定的なことを聞いているのじゃないのです、それは予算委員会でやるのだということをもう言っているのですから。ここではやはり商工委員会として後日その問題についてはまたやっていかなければならないから、どうですか。
  56. 河本敏夫

    河本国務大臣 いまはいろんなうわさが充満しておりまして、そのことのために国会やあるいは検察庁等でいろいろ全力を挙げて一生懸命にその真相を究明しようということで取り組んでおられるわけです。その段階において、もしこういうことがあったら官公需はやめてしまうべし、そういうことについて私がいま意見を申し述べるのも時期尚早でありますし、いずれにいたしましても、その時点になって考えなければならぬ問題だと思いますが、しかし丸紅が仮にこの問題に対して責任を追及さるべきことがあったといたしましても、丸紅自身は、私はやはり貿易商社として産業全体に果たす役割りというものが非常に大きいと思うのです。でありますから、悪い点が仮にあったとすれば、その点を今後絶対にそういうことのないように直せばいいのであって、そのことのために取引を制限したり、あるいはまた金融を制限したりすることは、その企業そのものをつぶすことになりますから、仮にわずかなことでありましても、軽々には私はそういうことはできない、こう思いますので、いずれにいたしましても、事態の推移を見た上でいろいろ考えていきたい、こういうことでございますから、どうかその辺でひとつ御理解を賜りたいと思います。
  57. 神崎敏雄

    ○神崎委員 やはりさすがに自民党の大臣で、大企業を擁護する立場だというように、これはいまの河本さんの答弁をもし仮にテレビで放映されておったら、国民は恐らくそういうふうに感じるでしょう。しかしながら、そこまでしか言えないというところについてもよくわかります。しかし、私は、事官公需については、将来何かの問題が明らかになる段階ではさらにこの問題について追及をしていきたい。ひとり丸紅だけではなしに、当委員会に関連ある商社におけるそういうような類似行為あるいは類似的事件が発覚した場合、私はやはり当委員会の持つ重要性、責任性、中でも当局としてはきわめて重要な責任があるということを申しておきます。     〔安田委員長代理退席、委員長着席〕  そこで、問題を変えます。  今日の中小企業の経営状況はきわめて深刻な事態でございますが、中小企業金融公庫の調査結果によりますと、赤字企業は、昨年十二月よりもことし一月がさらに五%ふえております。負債総額が一千万以上の倒産件数も、昨年一年間で一万二千件を超え、さらにことしの一月も千七十五件で、一年間の倒産件数の最高記録に続き、一月度の件数としても最高というように、倒産件数の記録更新が続いております。  生産動向についても、中小企業庁の資料でさえ、回復の歩みは遅く、その水準も昭和四十五年水準にとどまっていると述べておられるような状況であります。ところが一方、大企業の生産動向はどうかといいますと、中小企業は四十五年ですから四十五年を一〇〇とした指数でありますが、昨年十二月で一一七・一で、最も低い月でも五十年二月の一〇八・九。中小企業は、昨年一年間に四十五年水準を下回った月が何と九カ月もあるのです。ところが、国税庁発表の資本金十億円以上の大企業の内部蓄積はどうかと見ますと、四十九年度の残額で六兆四千三百三十億円にも達しております。不況下に六千億円もふえているんですね。それは四十五年当時と対比しますと約二倍に達しております。  以上のことから明らかなように、この二年以上における不況の中で、中小企業は大企業に比べてもより苦しい状況であります。また、中小企業は大企業に比べて不況に対する抵抗力も弱く、中小企業の経営危機は大企業に比べてより深刻であります。大臣もそのように判断しておられるのかどうか、この点も伺っておきたいと思います。
  58. 河本敏夫

    河本国務大臣 一月の倒産件数一千七十五件という数字は、一月といたしましてはこれまでの最高だと私は思います。負債金額もやはり一番大きくなっております。それから中小企業が大企業に比べて抵抗力が非常に弱いということも事実でありますし、それから不況になった場合に真っ先にこの影響を受けるということも事実であります。でありますから、こういうときにこそ私は中小企業対策というものが非常に大きな意義を持つと思います。  いま政府のとっております中小企業対策といたしましては、まず資金の面から積極的にめんどうを見ていくということであります。たとえば資金量を積極的に確保するとか、あるいはまた返済猶予、担保の見直し、こういうことも積極的に考えて実行しております。それから同時に、仕事をふやすということでありますが、仕事をふやすということの内容は、やはり何と申しましても景気を早急に回復するということが第一だと思うのです。そのほかいろいろありますけれども、とにかく景気回復がありませんと、これは全部小手先のことになりまして、本当対策にはならない。景気を本格的に一刻も早く回復するということが中小企業仕事をふやすという唯一の方法である、こういう観点に立ちまして景気対策というものを積極的にやっておるわけでございまして、これまでの統計は非常に悪い統計が出ておりますけれども、最近の世界経済の動向等から考えまして、私はいずれ、これからは日を追うてよくなるのではないか、こう期待しておりますし、またその方向景気対策を進めておるということでございます。
  59. 神崎敏雄

    ○神崎委員 きょうは特に下請対策にしぼって聞きますが、大臣もいま最近の不況、景気浮揚を強調される中で、最近、電力会社の設備投資を大幅にふやすこと、これを中小企業景気浮揚の牽引車のようにする、こういうことを至るところで言っておられますが、電力会社の設備投資の増強を強調される目的は一体何ですか。
  60. 河本敏夫

    河本国務大臣 政府は昨年の春から内閣に総合エネルギー対策閣僚会議というのをつくりまして、昨年一カ年間エネルギー対策を精力的に作業してまいりました。その結果、十二月に大体の結論が出まして、今後十年の間におよそ百兆円のエネルギー投資が必要である、電力関係の投資は四十八兆円が必要である、こういう一応の結論に達したわけでございます。しかるところ、過去二、三年の電力投資を見ておりますと、景気後退の影響を受けまして非常に小さくなっておるのですね。そういうこともありますので、やはりことしあたりからある程度電力投資をふやさなければならぬという基本的な考えのところへもってまいりまして、現在のような景気情勢でありますので、民間の設備投資もなかなか思うように進まない。やはり何か比較的消極的になりがちな民間の設備投資を引っ張っていくためには一つの牽引車的な役割りを果たすものが必要ではなかろうか、こういう観点に立ちまして、電力に積極的にひとつ仕事をやってもらおう、こういうことになったわけであります。  昭和五十年度の電力の設備投資の実績は、多分一兆八千億ぐらいに工事ベースでなると思いますが、来年の五十一年度の工事ベースは二兆三千八百億ぐらいを想定しておりますが、同時にあわせて、五十二年度以降のいろいろな機械類の繰り上げ発注、あるいはまた仮発注等を八千億ぐらいは可能でありますので、それも電力業界にやってもらおうと考えまして、大体そういう話し合いができました。合計いたしますと三兆を超えますので、このことによって景気上昇一つの相当大きな柱になるのではないか、私はこう思っております。
  61. 神崎敏雄

    ○神崎委員 中小企業庁長官伺いますが、いま大臣がおっしゃっている設備の問題ですが、設備投資と個人の消費中小企業に与える波及効果はどうなるでしょうか。設備投資と個人消費と比較して、中小企業の生産への波及効果はどちらが大きいと思っていらっしゃるのですか。
  62. 齋藤太一

    齋藤(太)政府委員 昨年の中小企業白書でそこらを分析いたしておりますが、それによりますと、設備投資によります生産波及効果は、全体を一〇〇といたしました場合に、製造業に対する波及効果が五七%でございます。その製造業の中で中小企業業種に対する波及効果は一二・六%となっております。一方、個人消費の場合の個人消費による生産波及効果は、全体を一〇〇といたしまして製造業に及びます波及効果が四三・五でございますが、この中で中小企業業種に対する波及効果は二〇・八%でございます。つまり、設備投資の場合には中小企業業種には一二・六%、個人消費の場合には二〇・八%でございまして、個人消費の方が中小企業に対して生産波及効果が大きい、こういう結果が出ております。
  63. 神崎敏雄

    ○神崎委員 いま長官の言われたように、昨年の国会に提出された中小企業白書で、個人消費の方が中小企業の生産への波及効果が大きい、こういうふうに発表されているのです。  ところで、政府の五十一年度予算案は、個人消費を高めるのとは全く反対に、所得減税は行わない、公共料金は大幅に値上げをする、労働者の賃金は抑える、こういうものですね。この徹底した国民収奪強化の五十一年度施策は、中小零細企業国民生活と経営を一層耐えがたい、しかも苦しみに追いやることにほかなりません。政府みずからが明らかにしているように、わが国の過半数の国民中小企業の経営安定によって生活を維持しており、その中小企業個人消費需要に大きく依存しているという状態なんですね。したがって、国民生活中小企業の経営安定に不況打開策の基本がしっかりと位置づけられて、そして個人消費需要を高めるための政策が実行されなければならないと思うのです。政府政策はこれとは全く反対に、個人消費需要の抑制を強いるものとなっておるのですね、景気浮揚という形から見ても、大臣先ほどそういうふうに答弁されておることから見ても。経済白書との関連について、何か御意見ありますか。
  64. 河本敏夫

    河本国務大臣 私も景気の浮揚という点から考えますと、個人消費の果たす役割りというものは非常に大きい、こういう認識でございます。
  65. 神崎敏雄

    ○神崎委員 お認めになったのですから、それではさらに認識を深めてもらう意味で質問を続けますが、私も設備投資を全面的に否定するものではありません。重要なことは、今日最も不況の打撃を受けておる中小零細企業への波及効果拡大する方向での設備投資であるべきあるということなんです。政府の資料によりますと、中小企業への波及効果は年々減っているのです。中小企業への波及効果は、一九六〇年の二二%から、七〇年には一八・二%に減少しています。ところが、大企業は五三・九%から五八・一%へ逆に拡大しておるのですね。どういう設備投資が中小企業への波及効果が大きいのか、こういう検討をされたのか。さらに、電力会社の設備投資の中小企業への波及効果はどういうふうになっておるのか、こういうような試算をされましたのかどうか、これは中小企業庁からお伺いしたい。
  66. 齋藤太一

    齋藤(太)政府委員 白書で分析いたしましたときは、設備投資の波及効果は一本でございまして、業種別の設備投資による波及効果までは計算いたしておりません。
  67. 神崎敏雄

    ○神崎委員 調査をされておらないのでしたら、ひとつ資料要求をいたしますが、電力会社の設備投資が中小企業の生産にどういう波及効果をもたらしておるか、その試算を行って、ひとつ当委員会に提出をしていただくように強く要求をします。これは非常に項目が多くてなかなか困難だという話も通産省中小企業庁からは伺っておりますが、しかし行政管理庁にこれを確かめたのです。そうしたら、これはコンピューターその他で計算は可能だ、こういうように答えておりますので、資料要求をひとつぜひ聞いていただきたいのですが、お出し願えますか。
  68. 齋藤太一

    齋藤(太)政府委員 産業連関表を使いましてコンピューターで計算をいたしますので、若干時間がかかるかもしれませんが、作業をいたして提出いたしたいと存じます。
  69. 神崎敏雄

    ○神崎委員 では お願いしておきます。  次に、先ほど指摘いたしましたように、設備投資の波及効果中小企業に対しては年々減少してきているのです。そこで、中小企業の生産に波及効果が及ぶような設備投資を可能な限り重視するとともに、民間設備投資についても中小企業影響が及ぶような独自の対策を強化することが必要ではないかと思います。中小企業庁の五十一年度施策の中で、下請中小企業対策として下請中小業者の受注をふやすためにどのような対策が準備されておるでしょうか、長官。
  70. 齋藤太一

    齋藤(太)政府委員 五十一年度予算が成立いたしましたらば、中小企業向けの官公需の発注につきまして至急に各省庁と協議をいたしたいと考えております。ことしは御承知のように三二・九%という目標を設定いたしたわけでございますけれども、これをできるだけさらに上回るように各省庁に協力をお願いしたいと一つ考えております。  それから、下請に直接の施策といたしましては、下請振興協会をさらに五協会五十一年度中に増設をすることにいたしておりまして、それに見合いまして人員の増員も計画をいたしております。この下請振興協会は、新しい仕事の開拓を大企業からいたしまして、仕事を求める下請事業者にその仕事のあっせんをする、こういう機関でございますので、この下請振興協会の活躍の拡大を通じまして、仕事を求める下請事業者にそういった仕事のあっせんを強化してまいりたいと考えております。
  71. 神崎敏雄

    ○神崎委員 中小企業庁が考えておられるその対策は、私はそれなりに結構だ、こういうふうに思うのですが、しかし下請中小企業のいま言われた振興協会、これが中心になってやっておられるわけですが、残念ながら協会の指導力はきわめて弱い。なぜかと言うと、協会の職員の方は一生懸命おやりになっていらっしゃるのですけれども、国家公務員ではなく、権限が与えられておらない。したがって、この対策だけではまだきわめて不十分だと言わざるを得ないですね。そこで、民間設備投資について中小企業への発注拡大計画を立てさせ、その実行を厳しく監督するなど、戦後最大の不況期にふさわしい特別の指導強化に大臣通産省関係局長も身を乗り出して、ひとつ積極的にこの点を拡充していただきたい。もちろん経済効率を無視するというわけにはいきませんけれども、その点を強く要望しておきます。  次に、仮に昭和四十五年水準の設備投資額で考えてみて、中小企業への発注が五%ふえますと、三千四百億円分の仕事が新たに中小企業に回ることになるわけです。それは中小下請企業にとっては一〇%以上の額に匹敵をするものであります。民間設備投資の中でも電気事業の設備投資は、先ほど大臣おっしゃったように三兆円以上にしたいという方針のようですが、そのほとんどは大臣、日立、東芝、それから三菱という重電三社、こういうふうなところに占められているのです。たとえば関西電力の場合で見ますと、四十五年から四十八年までの四年間に平均して年百億円、これは東芝に発注していますね。東芝関西支社の側から見れば、発注額のトップはほとんど毎年関西電力ということになっている。関西電力からの注文を受けた東芝がどの程度下請に発注しているか、ここにメスを入れなければいけない。  河本通産大臣が強調されているように、電力会社の設備投資の増大による景気浮揚ということは、日立あるいは東芝、三菱などの大企業のための景気振興ということで終わってしまうということになると思うのです。それは後で立証しますが、大企業の設備投資が中小企業の生産拡大に実際に効果があらわれるように特別の指導を強化することがどうしても私は必要だと思うのです。それはなぜかということは後で申しますが、こういう主張に対して大臣はどういうふうにお考えになりますか。
  72. 河本敏夫

    河本国務大臣 中小企業の振興対策というものは、あらゆる対策を総合的に考えていかなければならぬと思うのです。そういう意味におきまして、官公需の増大のみならず、民間の設備投資とかあらゆる場合に中小企業仕事が潤っていくということは、大変望ましいことだと思います。通産省といたしましても、技術的に問題のない限り、そういう方向に行きますように今後とも努力をしてまいります。
  73. 神崎敏雄

    ○神崎委員 さて、その電力会社からの受注が多い東芝は、後で立証しますと言いました関係上申しますが、下請中小企業に対してどういう態度をとっているか。これはよく大臣聞いておいていただきたいのですが、その事例を挙げてみたいと思います。  東芝三重の工場は、昨年十一月下旬、関連下請業者に対して、突然、会社も苦しいので発注を打ち切る、こういうふうに一方的に通告したのです。通告された業者は、関連下請業者百十四社のうちの大体八十社に上るのです。また、これまでの下請に回していた仕事を自社で行うというように切りかえをしてきた。こうした一方的な発注打ち切りは、下請中小企業振興法に基づく振興事業に反するものだと私は思うのですが、これは中小企業庁長官、どういうふうに思いますか、こういうやり方は。
  74. 齋藤太一

    齋藤(太)政府委員 東芝の三重工場の生産状況でございますが、四十九年の上期に比べまして、昨年の十—十二月では生産自体が四三%まで落ち込んでおります。特にモーターの関係は、ピーク時に比べまして、つまり四十九年上期に比べましてこの三重工場自体の生産が約四割まで落ちるというように、非常に急迫した状況にあったようでございますが、私どもの指導といたしましては、自社の生産の落ちた比率以上に下請への発注を落とさないこと、それから仕事の打ち切りをします場合にはなるべく前広に事前通告をすること、それからそういう場合にはいろいろ金融面でめんどうを見ること、それから単価の切り下げ等をやります場合には十分相手と協議をして納得の上でやること、こういったことを指導いたしておるわけでございます。
  75. 神崎敏雄

    ○神崎委員 いま東芝の三重工場の実例を一つ挙げたのですが、いま長官のおっしゃるように四三%落ち込んだ、そうだと思います、今日の現況から見て、経済情勢から見て。しかしながら、その落ち込んだことの事実は一応容認しても、振興法等を含めて、その問題の処理の仕方を私は指摘したいのです。それはどういうことをやっているかと言えば、その落ち込んだ分の措置に対して、東芝三重工場は仕事を一方的に打ち切ったばかりでなくて、不況だから協力金という、全く理由にならない説明で協力金をピンはねしているのです。昨年一月から下請業者の受取工賃の三%、それから六月からは六%、そうして十月からは一五%もピンはねしたんですね。大半の業者がこの不思議な協力金を取られたので、その額は少ない下請業者で十万円前後、多い業者は数百万円にも及んでいるのです。総合計いたしますと約一億円以上に達する。  そもそも東芝の売り上げは落ち込んでおるか知らないが、不況知らずに伸び続けているのです。さらに言えば、東芝のような独占的大企業は、下請中小業者の経営と生活を守るために中小企業に協力するのが本筋だというように思うのですが、それが全く反対に、零細下請業者から協力金という名で工賃からピンはねをする。御存じのように、この東芝の会長さんは経団連の会長の土光さんですね。こういう行為というものを握っておられるのか、御存じないのか。このことが事実であれば、ひとつ大臣、どういうふうな指導をされますか。処置をされますか。
  76. 齋藤太一

    齋藤(太)政府委員 東芝の三重工場におきまして、不況協力金という名目で不当な値下げを強要した点につきましては、下請代金支払遅延等防止法から見ましても不当な値引きの要求というような感じがございましたので、是正方を一月に所管の名古屋通商産業局から会社側に命じまして、すでにこの協力金は返還をするということで、つまり相殺の形で引いておったわけですが、それを個々の下請業者に返すということで返させたわけでございます。  なお、その他いろいろと下請の苦情が私どもにも参っておりますので、一月十六日に中小企業庁に東芝の責任者を呼びまして今後の改善方を指示いたしまして、その結果会社から、全国の工場長を集めまして、下請代金支払遅延等防止法並びに下請振興法の法の趣旨に即してやっていくということにつきまして、社内に厳命を下したという報告がございました。今後とも、この東芝の下請への支払い等につきましてはさらに注視をしてまいりたいと考えております。
  77. 神崎敏雄

    ○神崎委員 時間が迫ってまいりましたので簡潔に御答弁を願いたいのですが、いま長官のおっしゃったとおりに、この問題について三重県の商工団体連合会、また三重県のわが党の代表などが抗議しまして、この協力金は返還されました。非常に不当なものだということを認めた。ところが、今度は協力金をとめたら、逆にまた違った形で、工賃を従来より一五%切り下げる、こういうふうに通告をしてきた。その通告をしてきて、注文書にそれを認めるか認めないか返事せい、こういう趣旨のことが書いてあるんですね。このようなあくどい東芝の下請いじめに政府は今後どういうような措置をとられるのか。不当な協力金を取ったから、抗議やその他で不当だからとやめさせたら、今度は逆に——実質的に向こうは同じことですよ。協力金の名であろうが工賃を引き下げようが、向こうの収入は同じであればいいのであって、協力金はけしからぬといって通産局から怒られたら、今度は工賃の切り下げを言うてくる。  これは東芝だけではないのです。関西電力も同じなんであります。関西電力の関連会社に近畿電気工事という会社があります。関西電力の電気工事をほぼ一手に引き受けている会社です。この近畿電気工事の下請業者の場合、ここでは下請単価が点数制で計算されているんですね。一点が百四十三円七十二銭です。四十九年の六月からこの単価は変わっていない。この百四十三円七十二銭の四二%は近畿電気の取り分になっているのです。下請業者はこの工事に必要な器材などはみずから関西電力にとりに行くことになっておって、近畿電気からは保護防具が支給されるだけです。夜間工事の場合は二二%アップになる。ところが、その二二%アップの分からもやはり四二%近畿電気工事が取るのです。この近畿電気工事という会社は関西電力の出資の子会社です。こういうようなことがどのような形でやられておるのか、あるいはこういうふうな現状がまかり通っているというようなことについて当局側としてはどういう措置をおとりになるのか、直ちに調査されて法律に基づいた形で下請業者を保護する、先ほどの悪質な協力金と同じようにやられるのかどうか、ひとつ決意ある答弁を願いたい。
  78. 齋藤太一

    齋藤(太)政府委員 たとえば、すでに定められました契約に基づいて下請単価が決まっております場合に、後から過去にさかのぼって下請業者の責めに帰す理由がないのに不当に単価を値切ると申しますか、切り下げるとか、あるいはその下請の給付の内容と類似の内容の給付に対しまして、通常支払われる単価に比しまして不当に著しく低い単価を下請代金の額として定める、こういうことは下請代金支払遅延等防止法の違反ということになるわけでございます。ただ、一般的に下請単価そのものを取引といたしまして、従来の契約価格よりも将来に向かっていろいろな事情から下げたいということを親事業者が申し出まして、下請事業者がそれの協議に応じまして、いろいろ両当事者で協議した結果、新しい下請代金の額を決めるということは、これは商行為自体でございまして、別に法律の違反になるわけでございません。したがいまして、ただいま御指摘のケースが法律違反を構成するような内容であるか、商取引の両者の協議の結果のものであるか、実情を調べてみませんとよくわかりませんので、至急に調査をいたしたいと存じます。
  79. 神崎敏雄

    ○神崎委員 三木総理も、河本通産大臣も、中小企業対策については非常にきめ細かくやっていくということを一貫して言われておるのですが、そこで、いま長官からも商取引であるならばということでございますが、これが合法的なものかどうかということについて、私はノーという立場から、非合法的だという立場から指摘している。だから、よく調査をされて、私が指摘しているような非合法的なものであれば、合法的に直ちに転換さすべきであり、同時に、違法は責めを負わすべきであるということを言っておきます。  最後に、大臣お答えをいただいて終わりたいのですが、わが国の製造業の六〇%は下請中小企業によって占められております。その下請中小業者は、長い不況の中で最も厳しい事態に直面しております。下請業者の自殺者も、大臣よくテレビやら新聞もお読みでしょうし見られるのですからおわかりでしょうが、最近非常に多いですね。非常に社会問題化しております。そこで、公共事業投資、輸出の振興、民間設備投資など、政府景気振興策がこうした下請中小業者の経営危機打開に実際に役立つようにやっていただきたい。  そういう意味先ほどからいろいろな問題を提起しているわけなんですが、中小企業対策はきめ細かく思い切った対策をやる、こういうふうに言われますものですから、ぜひとも今日の現状から見て思い切ったきめの細かい対策を実行される、またされなければならぬと思うのですが、されるかどうかということを聞くと同時に、大企業本位の不況対策からの大きな転換を、中小企業に対する方へ、不況対策全体を大企業本位に行かないで中小企業本位に転換されるような、こういうことが文字どおり思い切った対策であり施策である、そしていまのような小さな問題やこういう要請の問題をきちんとしていくことがきめの細かい中小企業、零細企業、下請企業を守る対策だ、こういうふうに私は思うのですが、最後に大臣のその点についての今後の方針や決意をひとつ聞かしていただいて、終わりたいと思います。
  80. 河本敏夫

    河本国務大臣 政府といたしましても、中小企業の従業員が非常に多いということ、それから生産のシェアもまた非常に多いということ、そういう日本の特殊的な事情から、中小企業対策を非常に重大に心得ております。いま問題点についていろいろ御指摘がございましたから、今後の中小企業政策に十分参考にさしていただきたいと思います。  また、景気対策というものは大企業本位であってはいかぬ、やはり中小企業に対しても十分配慮しなければならぬ、こういう御意見もごもっともでございますから、今後の景気対策上十分配慮いたします。
  81. 稻村佐近四郎

    ○稻村委員長 次回は来る五日金曜日午前十時理事会、午前十時三十分委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。     午後二時六分散会