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1976-04-23 第77回国会 衆議院 公害対策並びに環境保全特別委員会 第6号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十一年四月二十三日(金曜日)     午前十一時七分開議  出席委員    委員長 吉田 法晴君    理事 田中  覚君 理事 羽生田 進君    理事 深谷 隆司君 理事 島本 虎三君    理事 土井たか子君 理事 木下 元二君       戸井田三郎君    萩原 幸雄君       藤本 孝雄君    渡部 恒三君       阿部未喜男君    岩垂寿喜男君       中路 雅弘君    岡本 富夫君       坂口  力君    折小野良一君  出席国務大臣         国 務 大 臣         (環境庁長官) 小沢 辰男君  出席政府委員         環境庁長官官房         長       金子 太郎君         環境庁企画調整         局長      柳瀬 孝吉君         環境庁企画調整         局環境保健部長 野津  聖君         環境庁自然保護         局長      信澤  清君         環境庁大気保全         局長      橋本 道夫君         環境庁水質保全         局長      堀川 春彦君         厚生省環境衛生         局長      松浦十四郎君         厚生省環境衛生         局水道環境部長 山下 眞臣君  委員外出席者         警察庁刑事局保         安部公害課長  浜田 栄次君         厚生省公衆衛生         局結核成人病課         長       本田  正君         厚生省境環衛生         局食品衛生課長 仲村 英一君         運輸省鉄道監督         局国有鉄道部施         設課長     田中 和夫君         自治大臣官房地         域政策課長   久世 公堯君         日本国有鉄道環         境保全推進本部         事務局長    坂  芳雄君         特別委員会調査         室長      綿貫 敏行君     ————————————— 委員の異動 四月二十三日  辞任         補欠選任   米原  昶君     中路 雅弘君 同日  辞任         補欠選任   中路 雅弘君     米原  昶君     ————————————— 四月六日  杉並区外三区を公害健康被害補償法に基づく地  域指定等に関する請願松本善明紹介)(第  二五六〇号) 同月十二日  環境保全のため鳥取県美保湾の埋立計画中止に  関する請願野坂浩賢紹介)(第二九〇八  号)  水質汚濁防止法に基づく水産加工排水に関する  請願鈴木善幸紹介)(第二九九六号) 同月十九日  五十三年度自動車排出ガスの規制に関する請願  (浦野幸男紹介)(第三四六三号) は本委員会に付託された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  公害対策並びに環境保全に関する件(公害対策  並びに環境保全基本施策等)      ————◇—————
  2. 吉田法晴

    吉田委員長 これより会議を開きます。  公害対策並びに環境保全に関する件について調査を進めます。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。島本虎三君。
  3. 島本虎三

    島本委員 四月二十一日に国会正常化に対する衆参両院議長裁定がございました。六項目にわたって、いろいろな裁定がなされ、いよいよ国会正常化第一歩というところであります。それで、きょうは公害環境特別委員会におきまして、この裁定にのっとって、最近の環境公害行政、これに対するいろいろな取り組み、この点をひとつ具体的に三点にわたって聞きたいと思います。一つは、環境庁長官に対して基本的な問題、姿勢、もう一つ産業廃棄物処理の問題、それから最近のカドミウム中毒、これに対しましての見解。いろいろございますが、さしあたって重要だと思われます。この三つの点、順次お伺いしていきたいと思います。  まず小沢長官に、ひとつお伺いいたしますが、三月三十一日の朝日新聞でありますが、これは北魚沼郡の入広瀬村、こういうようになっておりますが、ここの村の村長の選挙に関連して、いろいろな問題があったようであります。そうして選挙無効の裁決がなされて、審査中の笹川委員長のもとへ同県選出小沢環境庁現職長官から直接、電話による干渉があった、こういうような趣旨新聞であります。  これはやはり、いろいろ問題はあるにしても、環境を保全するということは、自然環境はもちろんでありますけれども社会環境政治環境も当然、含まなければならないのであります。環境は、自然環境これだけを守ればいいのだ、こういうような考え方では狭義に過ぎるし、もし、この政治環境までは、こういうように皆さんの方では考えないということになれば、これは狭義に過ぎる。したがって、在来の各代々の環境庁長官は、その点はすべて身を清めて対処しておった、こういうように記憶するのであります。  しかし「審査中の選管委長電話 小沢長官干渉」こういうようなことである場合には、やはりわれわれとしては、この点どうなのか、この真をたださないわけにはまいりません。三月三十一日に参議院予算委員会の開会がおくれた原因の一つにもなった、こういうようなことさえも報じられているのでありますが、一体あなたは政治環境汚染のために、こういうようなことをしたのですかどうか、この点に対してひとつ、あなたの明確な所信を表明してください。
  4. 小沢辰男

    小沢国務大臣 政治家はすべて、もちろん身辺を清潔に、また法を守り、憲法の条章のもとに活動しなければいけないことは、あに環境庁長官のみならずだと思います。しかし、政治環境浄化等につきましては、実は環境庁長官である私の事務範囲でございませんで、設置法にも、そういう規定がございませんので、私から、それについてお答えする限りでありません。  ただ、私個人の問題として、この朝日新聞記事を当日、私も見まして驚いたわけでございますが、「要請けり無効」というような見出しとともに「干渉」と断定した見出しをつけております。はなはだ私は遺憾でございます。これは参議院予算委員会理事会においても申し上げたわけでございますが、そういう事実は全くございません。翌日の新潟版の毎日新聞には「小沢環境庁長官入広瀬選管干渉」という小さな見出しで、その下に大きく「笹川委員長、真っ向から否定 問合せに苦り切る地方課」という見出し記事がずっとございます。その中に笹川委員長談話といたしまして「小沢長官からの電話についても三十一日改めて「審理の経過はどうなっているんだ、という話だったので、まだ結論は出ていない。参考人を呼ばねばならんので、時間はかかるだろう、と答えただけだ。叔父の私に圧力などかけてくるはずがないではないか。しかし、長官には迷惑をかけたと思っている」」。そのほか新潟日報も同じ日の記事で詳細に出ておりまして、地方課長選管書記長でございますが、その談話がございます。「あの時は、(政治家から何か申し入れがあったのか)の質問委員側は“ない”とハッキリ答え、委員長からも干渉があったとかいう話は出なかったと記憶している」笹川委員長談「あの場で“干渉があった”など一言も話していない。親類関係なので、ときどき辰ちゃん(小沢長官のこと)と電話するが、いつか、なにかのついでに入広瀬選挙にも話が及び、難しい問題なので調べているところだ、と話をした程度だ。こっちが驚いているくらいだ」そのほか委員談話が三人、載っておりまして、全部そういう内容はない、こういう談話でございます。  私自身は、実は無効の訴えを出した側、それから当選した側、両方ともよく知っておりまして、私の不在中に、私の家内なり、あるいは、かつて私が社長をやっておりました会社の支配人等を通じて、両方笹川に会っておるということは聞いております。両方とも、よく知り合いでございますので、どっちのために無効にしろとか、どうとか言うはずがないわけでございまして、全く事実と違うということを御了承いただきたい。
  5. 島本虎三

    島本委員 それなら、なぜ、こういうふうに問題にされるような事態になったんですか。いま言っただけなら何でもない。何でもないのに、こういうようになった。何か心当たりありますか。
  6. 小沢辰男

    小沢国務大臣 私には全く心当たりございません。
  7. 島本虎三

    島本委員 降ってわいたようなことだと言われても、いま新聞か何かのものをただ読んだだけで、あなた自身の、こういうことだということの断言がないわけでございます。この中には「小林寅次委員が「小沢環境庁長官からも電話が来たが、委員長ガンとしてはねのけた」」こういうような談話さえもあるのです。こういうところからいったら、何かあるのじゃないかと思うのは当然じゃございませんか。私は、環境庁長官として、どっちへ行っても越山会の人である、したがって長官としては、どっちへ行っても親戚みたいな人だから、そんなことするわけないのだという、その気持ちはわかります。わかりますけれども、その中で「委員長ガンとしてはねのけた」こういうような談話さえ載っているということになったら、この点どうなるんですか。
  8. 小沢辰男

    小沢国務大臣 先ほど読まなかったんですが、翌日の新潟日報記事を見ますと、小林寅次という、いま御指摘になりました選管委員談話が出ております。「途中から同席したが、前に委員長から小沢さんから電話で事情を聴かれたという話を聞いていたので、圧力うんぬん質問に関連して”小沢長官から電話はあった。」これは笹川委員長電話があったという話だろうと思います。私は、小林寅次委員に会ったこともありません。「しかし委員長はだれのいうこともハネつけてりっぱにやったんだ”と発言した。県選管裁決はなにびとの干渉も受けていないし、予算委で問題になるような問題ではない」小林寅次委員がこういう談話を出しておるわけでございまして、どうも、その談話をそれぞれ——私は、三月のいつに裁決があったのかどうか、それも知らなかったわけでございます。もし私がどちらかに味方して、本当にこの問題を何とかひとつ、こうしたいという意思がはっきりしておれば、私は新潟へは、その間、何回か帰っているわけでございますから、私の家から歩いて一分くらいのところに、おじの家がございます。当然、行って直接おじに会って、いろいろなことをするはずであります。先生も、もし人から頼まれて、環境庁長官に何か文句があったり、あるいは言うことがあれば、電話だけではなくて、特に自分が必要なことだと思えば、私の部屋にいらっしゃるなり、あるいは私にちょっと会いたいなり、そういうことを言われるだろうと思うのです。私は、そういう事実が一回もございませんので、したがって、圧力をかけて無効にしようという意思があるかどうか、これはもうはっきり、お調べになれば、わかることだと思うのです。  したがって、新聞記事というものは私の談話をちゃんと正確に出してあります。朝日の記事は。そのほかの見出しや、いろいろなところが、いかにも私が圧力をかけたような印象を強く出すような記事の構成になっておるだけでありまして、事実、私の談話は、私の言うたとおりの談話を書いておるわけで、したがって、どうも、これは間違いだから訴えるというわけにもいきませんし、なかなか巧妙な記事になっていると思います。民事上の訴えはできると思いますけれども名誉棄損の刑法上の訴えはなかなか困難でありますので、したがって、私はそこまでのことはしなかったわけでございます。
  9. 島本虎三

    島本委員 この国会正常化に対する衆参両院議長裁定があった後の第一問に、こんなことはやりたくないのです。少なくとも代々の長官には、こういうことがなかったということです。また、ここでは本当に、もう模範的な長官、将来を嘱望される長官、そういう政治家として嘱望される長官が代々この長官になっていました。あなたも、その意味では将来を有望視される人だ、こういうように思われている向きもあろうかと思いますから、十分そういう点、気をつけて、もし若干のことでもあるならば、こういうような点は今後のために十分気をつけて、ことに環境庁長官というのは、いま国民一つのあこがれの的なのですから、少しの傷もつけないような姿勢と言動、こういうようなものが必要だと思います。私もあえて、これ以上この問題は取り上げたくありませんし、取り上げません。しかし、やはり、こういうようなことがあったということが、何らかの機会に心のどこかにある場合には、これは困るのでありまして、私自身、この問題等については再び質問しようといたしませんから、今後、態度等については厳重に注意されるように心から要請しておきたい、こう思います。よろしゅうございますね。  次に、産業廃棄物の問題について、以前から問題になっております。その処理問題等を含めまして、ひとつ、この際に明確にしておきたいと思います。  六価クロム被害、こういうような被害については、一ころ本当に重大な問題として、あるいは参考人を当委員会に招致して、この問題を解明いたしました。そして法の改正、こういうようなことも準備するということであります。もうすでに出されていると思います。そういうような中からして、六価クロムのあの被害、そして、その際には、あえて私がここで言う必要がないほど、具体的な問題として明らかになっておったわけでありますけれども、その行政的な措置において相当の手抜かりがあった、こういうことであります。そういうようなことからいたしましても、何らかこれに対する対処をしなければならないのは、以前からの宿題であったわけであります。  ことに、この産業廃棄物処理手続、これを見ます場合には、やはり処理計画策定、これは都道府県で行い、そして今度は産業廃棄物の収集、運搬、その処理基準、これは政令で決めて、産業廃棄物の前処理を、これまた行わせて、そして、あるいは事業者に、あるいは産業廃棄物処理業者にこれを行わせる、こういうようなことになっているようであります。あえて言うと一般廃棄物は全部これは都道府県、地方自治体一つの固有の事務としてやる。産業廃棄物の場合はPPP原則で、これまた事業者がやる。やれない場合は都道府県がかわって行う。費用は、そのかわり当然、都道府県で取る、こういうことになっておったと思います。しかしながら、この問題に対しても、法律には報告義務もない。都道府県も正確に実態把握しておらない。それから、どう処分されたのか、状況把握についても不十分である。都道府県自体としても末端の把握が不十分である。警察庁にしても、この問題等に対しては手を入れていない。いろいろな欠陥、欠点がはっきりしてまいった次第であります。  いま法律は出されておりますが、六価クロムのあの被害処理等からして産業廃棄物処理、この問題は、いわば大きい関心を持たれた問題であります。これに対しては十分な準備をし、あるいは法案が提案されたのは知っていますが、六価クロム以後、各省庁においては相当これに対して当たっておりますかどうか、まず環境庁厚生省、自治省、警察庁、この四省庁からの、これに対処している仕方についての報告をいただきたいと思います。
  10. 堀川春彦

    堀川政府委員 お答え申し上げます。  昨年、起きました六価クロム問題の事後処理につきましては、産業廃棄物の適正な取り扱いに欠けるところがあったという反省の上に立ちまして、先生、御指摘のとおり厚生省において目下、法案を取りまとめ、そして国会に提出し、御審議を仰ぐ段階になっておるわけでございます。  そういった法的な措置の問題のほかに、ああいった有害な産業廃棄物事後処理をどうするかという問題につきましては、環境庁といたしましても環境を適正に維持するという観点から放置できませんので、昨年来、技術的な側面につきましては、これをできるだけ早く解明をして、明確な指針を立てるべきであるという考えの上に立ちまして、技術検討委員会を設け、そして六価クロム等有害廃棄物環境汚染状況がどうであるかということを調査するための調査要領等策定をして、これをすでに示達をいたしまして、これに基づきまして関係地方公共団体におきましては環境調査をやっておるわけでございます。これは調整費を支出いたしまして、そのお金を使いながらやって、大体、各関係自治体におきましては、それぞれ、その調査結果を取りまとめつつございます。一部につきましては本庁の方で、その結果につきましてヒヤリングを開始するというところまで参っておるわけでございます。  なお、この処理の技術的な指針というものも確立する必要がございまして、この点につきましては同じく技術検討委員会において数度にわたる検討をし、目下、試案のような形でございますが、その指針策定の作業中でございます。  なおまた、六価クロム等有害廃棄物がどのように投棄をされ、どのようになっておるかという実態把握の面につきましては、六価クロムを手始めといたしまして、厚生省において目下、調査中と承っております。
  11. 山下眞臣

    山下政府委員 ただいま水質保全局長からお話がございましたように、昨年の秋から有害産業廃棄物実情把握に着手をいたしたいということで始めまして、まず昨年度は六価クロム関係事業所につきまして、六価クロムのみならず有害産廃実情、それから本年度にかけましては、それ以外のすべての有害産廃について調べたいということで、四十六の都道府県と三十の政令市に対しまして、お願いをいたしておったわけでございます。現在のところ七十六のそういう自治体のうち七十四の自治体から、もう報告が参っておりまして集計をいたしておるところでございますので、あと一、二カ月で大体、状況が判明をいたすという状況になっておりまして、大体、予測いたしましたように、事業所数は、ほぼ一万七千程度有害産廃事業所があるという状況までは現在、把握をいたしておるわけでございます。  御指摘ございました、そういった実情把握のための法制度の不備につきましては、これまた、水質保全局長から、ただいま申し上げましたようなことで、今回、法案を提案し御審議をお願いいたすことに相なっておるわけでございますが、その中におきましても、記録義務でありますとか、あるいは、その帳簿保存義務、あるいは立入検査ができます範囲の拡大、そういったこと等につきまして所要措置を講じておるところでございますので、この後、十分御慎重に御審議をいただければありがたいと思っておるわけでございます。
  12. 浜田栄次

    浜田説明員 公害問題の解決につきましては、それぞれの行政機関を中心とする施策によるべきでございますけれども警察といたしましても、公害防止に寄与する立場から、それぞれの関係行政庁と緊密な連絡をとりまして、その被害実態あるいは国民世論動向等を十分に見きわめまして、計画的、指導的な取り締まりをやっておるわけでございます。  特に産業廃棄物につきましては警察取り締まりの中でも相当のウエートを占めるわけでございますので、昨年五月、六月をとらえまして月間を設けて全国一斉の取り締まりをいたしておるわけでございますが、取り締まり重点といたしましては、営利を目的とした計画的な違反、あるいは、ただいま先生から御指摘のございました有害な物質を含有するものの事犯の取り締まり、こういうものに重点を置きまして取り締まりをやっておるわけでございます。本年もまた御趣旨を十分、体しまして取り締まりを計画して実施をいたしたい、このように考えておるわけでございます。
  13. 島本虎三

    島本委員 この件については昨年の十二月十一日に生活環境審議会から、いろいろな改善方策についての答申が出ているようでありますね。やはりこれを十分に検討して、当然、法の改正一つの要綱にした、こういうように思うのであります。ただ、この中で大事なのは責任体制整備、確立が一番問題です。産業廃棄物の場合は基本的にPPP原則がありますから、業者がまず、それを処理する、しかし、業者ができない場合は都道府県がやるけれども費用業者が持つのだ。これは一定の処理業者委託を受けた場合に、適正にこれを処理する義務は当然あるわけなんです。あるのであるけれども、それをいままで、ずっとやってない、ずいぶん穴があるわけです。処理業者に対するはっきりした監督または処理した数量に対するはっきりした帳簿上の把握、並びに何トンの産業廃棄物を、どこで、どう処理したか、こういうような一つの計量的な把握をしておかないと、だめなんじゃないかということは、六価クロムの鉱滓の捨て場あるいは、その処理ということが支離滅裂であったということで、はっきりしたわけです。こういうような点については十分、対処してございますか。
  14. 山下眞臣

    山下政府委員 まさに、ただいま先生、御指摘いただきました点が、昨年からの問題でもございますし、かつまた、審議会におきましても中心的な議題に相なった点でございまして、今度の改正案の中におきましても、ただいま先生の御指摘になりました点につきまして、私どもといたしましても一番重点を置いて、案の作成に当たったつもりにいたしておるわけでございます。  まず事業者責任というものの明確化、徹底ということで、罰則等強化あるいは、たとえば、みずから処理ができないで処理業者委託をいたします場合につきましても明確な基準を定めまして、無許可業者委託をいたしたり、あるいは有害な産廃を、それと告知せずに委託をいたしたりいたします場合には、所要制裁措置を講ずるというようなこと等の整理をいたしております。また記帳義務記録義務等についても案の中に盛り込んであるわけでございます。  第二の問題といたしまして、処理業者適確処理の確保というのが重点の第二でございまして、許可制度整備処理業者が業務を行うに当たりましての記録その他の実態把握強化というようなこと等も、案の中に盛り込まれておるわけでございます。  さらには従来、埋め立て処分地と申しますか、最終処分場把握というものが十分でございませんでしたのですが、それらの点につきましても事前に届け出させまして、所要審査をいたしますと同時に、所要報告等も聴取することができるということで、先生から昨年来、御指摘をいただきました、それらの点につきましては、おおむね案の中に盛り込まれておるものと私どもは考えておるわけでございます。
  15. 島本虎三

    島本委員 その点に重点を置かれていたとすると、この点は、どのようにして今後、対処いたしますか。  いままでは機械設備、こういうようなものが処理能力を満たすに足る、こういうような処理業者を認可しておりまして、その認可している業者は必ずしも扱った量はつかめない。今後は、その量の記帳は、きちっとさせるということはわかりましたが、下請に落としてやり、下請から孫請に落としてやり、あるいは孫請から、えたいの知れないものに一つかみ幾らか、何万円かの金をやって、やみ夜に紛れて、どこへ捨てたかわからない、こういうような捨て方をさしておるわけでございます。ただし、そのものは液体あり、あるいはまた液体に近いような練り状のものもあり、その把握になかなか困難だ、こういうものもあるわけであります。固体や、こういうようなものであった場合は一目瞭然わかるわけであります。こういう液体の場合は、悪いものを投げ、そして何でもない水のようなものを持っていって、そっちへ行ってこれを処理しておきましたと言うこともできるわけであります。えてして上の方の機械を持った、資格を持った業者だけを認可して、その以下の者に対しては全然、野放しであった。今後これらの業者に対して、下請孫請、その下請まで、どのようにして把握しようとするのか。そうして、それに対して、いままで何のために警察は手を入れていなかったのかという点も、また問題になろうかと思いますが、この点はきちっとして今後、対処いたしますか。  この点について、あわせて警察当局も、やはりこうなった以上、正規の業者ということになりますから、また記帳もきちっとして、出す量も把握することになりますから、その点は今度わけわからないままに流してしまうということになったら、これは大変なことになりますから、向こうに対する態度等についても、きちっとしておかないといけないと思います。まず厚生省から順次、伺います。
  16. 山下眞臣

    山下政府委員 実は、ただいま先生、御指摘の点につきましても検討されておりまして、従来その点が必ずしも明確でないといいますか、所要の規制がなされなかったわけでございますが、今回の改正案におきましては、産業廃棄物処理業の許可の要件を整備し、許可制度整備いたしますとともに、原則といたしましては、産業廃棄物処理業者は、事業者から委託を受けました業務をみずから処理することを原則とする。で、特に合理的な理由のある一定の場合、たとえば事故で、やむを得ないような場合でありますとか、あるいは、それなりの合理的な理由がある場合につきましては除き得ることにいたしておりますけれども原則といたしましては本来、産業廃棄物処理業の許可というものは、みずから処理するために許可を受けるわけでございますから、自己処理原則とするという趣旨法案の中に盛り込みまして、先生のただいま御指摘になりましたような点につきましても制度改善を図りたい、このように思っておるわけでございます。そういう措置と相まち、かつ記録義務、検査権限等の拡大等によりまして、確かに同型廃棄物以外の液状の廃棄物等につきまして困難な問題は事実上、存在しようかと思いますけれども、従前に比べまして、その実情把握、規制が徹底をすることができるような改正案に相なっておる、このように理解をいたしております。
  17. 浜田栄次

    浜田説明員 取り締まり関係から申しますと先生、御指摘のように、現行法でございますと、現実に廃棄をいたしましたものを十六条の不法投棄の違反という形で取り締まりをいたしておるわけでございます。したがいまして、孫請の方だけが取り締まりを受けまして、委託した方の取り締まりが実際には、なかなかできないというような実情もあったわけでございますが、今度の法改正によりまして、その点が十分、手当てがなされておるようでございますので、これからは警察の方の取り締まりにおきましても、実態を十分に調査をいたしまして、そういう委託をいたしました業者の方も積極的に取り締まりをしていきたい、このように考えておるわけでございます。
  18. 島本虎三

    島本委員 そこまで参りましたならば、もう一つ。大都市、中都市また市町村に限らず、こういう業者の中には印刷業者、製版業者、こういうような人たちも多いのであります。ああいうような中には、業種によってカドミウムはもちろんシアンでも総水銀でも、それから、こういうようなものが全部まじった水、こういうものを使わないとやれない業種もございます。こういうような往々にして中小企業あるいは零細企業に類する人たちの場合、その水の処理に困っておるわけであります。そういうようなものを完全に処理する業者や業体、こういうようなものに対して、きちっとやらせることができますか。ことに、いま問題になっている総水銀であるとかカドミウムであるとかシアンであるとか、こういうようなものの出る廃棄物、水ですね。こういうようなものの処理。それと同時に往々にして、それを薄めてただ流しているわけです。今度は水質関係法律がきちっとされますから、それは規制を受ける、流されなくなっても今度は、それをどのようにして処理していいかわからない。ドラムカンに入れて、どこかへ買って持っていってもらう。その先はどうなったかわからない。まさに、そういうふうにして一寸先がやみだ。こういうような処理の仕方さえ、いまやっている例があるわけです。それを、もし簡単にやると薄くして流してしまう。処理業者をきちっとつくる、処理業者で受けつけてやりますと言っても、そこまでいかないで、どこかへ薄くして流してしまった場合は、処理業者はせっかくできても何の効能もないわけです。能率発揮もできないわけです。そういうような場合は、業体も自治体警察庁厚生省も、これは一体になって、できた場合には全部そこへ集めていくような行政指導をしてやらないといけないと思うのです。現在は法律があっても全部その点、手抜きです。そして、どこの業者処理しているかわからないわけです。まだ、そういうような暗やみ行政が行われているのが実態でありますが、新しく法律をつくっても、つくらなくても、行政の中で、いま言ったような問題に対する処理は、どういうふうにして、おつけなすっておりますか。
  19. 堀川春彦

    堀川政府委員 おっしゃいますように産業廃棄物、特に有害物を含む産業廃棄物の適切な処理が行われない結果、それを水に流して排水の中にたれ流すというようなことになりますと、これは水濁法の規定はあるわけでございますが、大変まずいやり方になるというふうに思います。そのような観点から、実は法制度といたしましては今回の改正前におきましても、もちろん有害物を含む産業廃棄物処理を適正に処置するという趣旨で処分基準が立てられておるわけでございます。ただ、その辺の処分基準を、ぴしっと守ってもらう体制が果たして、できているかどうかということに相なってこようかと思います。これにつきましては、一つには先ほどの事業者処理原則に立ちつつ、処理業者適確に、そういうものを処理してもらうという体制をとることが必要であると思っております。  今回の産業廃棄物処理法の関係につきましても、環境庁は重大な関心を持ち、かつ共管の法律でございますから、その点は厚生省とも十分お打ち合わせをしたわけでございます。この処理基準を有害物については今後、一層適正なものにしていくと同時に、それを適確に守ってもらう体制をつくる。その意味で処理業者について許可基準等を明確にし、たとえば廃棄物処理法のいまのような処分を定めた法令に違反している業者、こういうものに対しましては許可の取り消しをし、取り消し後、一定期間を経過しなければ再び処理業者となることができないというような規定を新たに設けて整備されておる。そういう法規制のほか実態的に、そういう処理業者に有害物を含む廃棄物の処理方法について十分、指導徹底を期して、そして適切な扱いが行われるように、厚生省ともどもどもも協力してまいりたいと思っております。
  20. 島本虎三

    島本委員 この点は厚生省並びに環境庁共管で、いろいろ法案に対する改正または行政的な指導、こういうようなものを行っているわけであります。しかし、この点は管理体制と監視体制、これが一致していないとだめなんです。これはみんな、ばらばらになって運営されている。ことに最近の事例では、ある特定の事業体、これは大きい企業だから大丈夫だろうと、きょうは労働省は呼んでありませんが、労働省の監督行政自身も安心して任している。あにはからんや、そこで事業上、重大な一つの職業病が発生している。それが外にこぼれて、これまた公害ということで住民運動が起きている。こういう例もあるわけであります。そういうようなことからして、これはもっと綿密な横の連絡をとる必要があると思います。  ことに警察の場合にも、こういうような環境行政に対して、大きい企業に対しては、やれるのでありますから、これは取り締まりでいいけれども、中小零細企業の場合には、ある程度の指導を含めて、これを取り締まるのでなければ、これはすぐつぶれてしまいます。ことに手抜きの最たるものと思われる点がないわけではありませんが、アスファルトで道路を舗装する場合に、廃油処理して当然、処理しなければならないウエスに、いろいろな油がついたようなものを持ってきて、町の真ん中でそれをたいて、その上でアスファルトを温めて、そのまま、やってしまう。これは臨時である、緊急であるということで、みんな認める。ところが、その臨時であり緊急であるものが、そのままずっと続いている。その場所は臨時である、そういうのがずっと一年続いてまいりますから、これは全部、臨時だということにはならないはずであります。そういうような点は全部、見逃してある。こういう点等について、ある程度の指導をしておかないとだめです。法は幾らウエスだとか、こういうものを持ってきて、ちゃんと処理しなさいと言っても、そっちに持っていってやったら効率的です。煙はわんわんと上がるけれども火力も強い。したがって表ですぐ、それを処理してしまう。また他の仕事をしている建設業者、こういうような点はすべて見て見ぬふりでしょう。こういうような点は、やはり警察も指導権を発揮しないとだめなんじゃないかと思いますが、この点は十分、注意すべきであろうと思います。  それとあわせて処理の問題も、いろいろ問題があります。産業廃棄物をただ廃棄物として処理する。資源の不足な日本でありますから、産業廃棄物、いわゆる産廃と言いますけれども産廃を産宝にしたらどうですか。こういうような行政指導も、厚生省、自治省、一緒になって、すべきじゃありませんか。  たとえば日本興産株式会社という会社が市原市にあります。これはロータリーキルン、回転炉二基で、新日鉄、川崎製鉄などから、濛々として立つあの煙、この煙を出さないで電気集じん機その他の方法によって、すすを全部、下に落としてもらう、それをもらってくる。そして摂氏千百度のロータリーキルンでこれをやると、亜鉛と鉄を分離して粗酸化亜鉛ができる。その粗酸化亜鉛を回収すると月、約一千トン。これはただのものからトン三万円、輸入亜鉛精鉱に比較して遜色がない、こういうものさえできるわけであります。そのままでは当然、煙による公害ということで万人にきらわれる。しかし、それも使いようによっては、輸入する亜鉛精鉱に比較して遜色のないようなものもとれる。  これは一つの資源として活用してやるというような指導方法を当然、考えなければならないのじゃないかと思っているのです。全部、焼いて捨てろ、あるいは埋め立てればいい、こういうものじゃなかろうと思うのです。産廃変じて産宝にする、こういうような態度こそ、資源不足な日本にとっては、いま一番必要なんじゃないか。お隣の中国では、それをやっているようであります。産業的には日本の方が先進国であるはずでありますが、日本の方では、まだ一、二のこういうような例しか聞かない。  こういうことは、私としては今後の問題として指導体制を確立するためにも重要ではないかと思うのでありますが、ここでは長官一人ですが、今後の産業廃棄物に対する考え方として、これも今後は一つの資源としての利用方法も十分考えるように指導すべきじゃないかと思うのです。まあ厚生省処理する方、通産省は投げる方、どうも、こういうような方面に専門に当たる人を、きょうは呼んではおらないわけでありますけれども、やはり、その辺に方向転換して指導すべきではないかと思いますが、大臣、この点は、もう、がっしりやろうじゃありませんか。産業廃棄物をただ完全に処理すればいいだけじゃないと思うのです。産廃を変じて産宝にすることです。そこから始めたらいいと思うのであります。今後あなたのころから産業廃棄物に対する処理方法は変わった、まさに、こういうような一つの転機をつくってもいいんじゃないかと思うのであります。この考え方と今後の指導性の発揮をお願いしたいのでありますが、大臣どうですか。
  21. 小沢辰男

    小沢国務大臣 産業廃棄物の連絡協議会を開きました最終的な結論で、いま厚生省が、いろいろ改正案を御提出申し上げたわけでございますが、私は閣議の席上でも実はこれに関連して申し上げた重要な点が二点ございます。一つは、いま先生、御指摘の資源の再利用化、これをひとつ今後どうしても進めていかなければならない、全く同感でございます。それともう一つは、最終処分地の確保をいかにするか、この二つが一番のポイントだ。したがって今後、各省についても、この二点について、ひとつできるだけの協力を願いたいという発言をいたしたわけでございまして、いま御指摘の点については、私ども政府部内において、そういう方向で今後とも十分、意を用いていかなければならない、かように考えます。
  22. 島本虎三

    島本委員 これは廃棄物の経済的残存価値を活用するための方途としても重大な点でありますから、この点は十分、考えてやってほしいのと、やはり依然として処理した後の捨て場というのは残るわけであります。この捨て場に対しては、埋め立てという方法が、いま、とられるわけであります。六価クロムに対してもそのとおり、全部コンクリートで固めて、それを処理する、後は周囲を全部、漏れないようにして、それを舗装するか何かして囲ってしまう、こういうような処理の仕方、これをいろいろ指導しているようであります。しかし、最後はやはり埋め立てなわけでありますけれども埋め立て処分地、この確保対策というものは、やはり依然として重要だと思います。この問題に対しては地方では方々に問題を起こしております。地方自治体でも東京にも例がございましたが、それだけはやめてもらいたい、こういうことなんでありますが、依然として最後の捨てる場所が残るわけです。これに対して何かお考えありましょうか。
  23. 山下眞臣

    山下政府委員 ただいま御指摘の問題、先ほど長官からも申されましたように、非常に大事な問題であるというふうに考えておるわけでございます。  この処分地の確保難というのは、一つには、やはり経済的に、なかなか求める力がないというような要素もあろうかと思いますし、また、もう一つには経済外的な、いわば公害を出すようなものが近所に来ては困るという、そういう外的な要素もあろうかと思うわけでございます。  今度の改正案におきましては従来、法律上、必ずしも明確でございませんでした最終処分場というものにつきまして事前の届け出をお願いをいたしまして、おおむね二カ月間の定められた期間内に、あらかじめ決めておきます構造基準、維持管理基準等に照らしまして十分の審査をいたしまして、これなら大丈夫であろうというような形にしましてから受理をいたしまして、最終処分場として、これを使用するということで、法律上、明確な位置づけと規制を考えておるわけでございます。こういった施策が進展をすることによりまして、最終処分場というものが、いたずらに周囲を汚染するような、いわば公害源であるようなところであるから、これを忌避しなければならぬというような一般的なものに対します一応の答えが整備されていきますので、国民の皆様方の御理解を得られるような道の一つの足がかりになるのではないかという要素も考えております。  また他面、これを獲得いたしますのに、やはり中小企業等におきまして非常に困難をいたす面もあろうかと思うのでございますが、この面につきましては金融上、また将来の問題といたしましては税制上の問題等検討しなければならぬと思うわけでございますが、これは私から申し上げますよりも環境庁において御努力いただいたわけでございますけれども、五十一年度の予算の内容におきましては、公害防止事業団の中で特に産業廃棄物につきましての特別の融資枠を設定をいたしまして、実は公害防止事業団は従来から処分地に対する融資というものを手がけてきておりますけれども、その面の充実策も講ぜられていくというような状況に相なっておるわけでございます。  いずれにしろ産業廃棄物の問題で先ほど来、先生、御指摘のとおり、法律改正をいたしまして規制を強化すれば、それでもって解決するという性質の問題ではございませんので、その規制の強化とあわせまして各種の施策につきましての努力を怠ってはならない、かように私ども考えておるわけでございます。
  24. 島本虎三

    島本委員 ついでというとなにですが、いま、こういうような産業廃棄物に対する処理業者というのは全国でどれほどと把握しておりますか。
  25. 山下眞臣

    山下政府委員 実は最近の統計は、いま集計中でございますので、いま私どもが持っております数字は昭和五十年五月一日現在でございますが、産業廃棄物処理業者許可件数の総数が約七千三百でございます。
  26. 島本虎三

    島本委員 七千三百が全国ですか。もし、そうだとすると東京都だけの業者と比べても全国の方が少ない、こういうようなことになりますが、これは間違いありませんか。
  27. 山下眞臣

    山下政府委員 五十年五月現在におきましては産業廃棄物処理業の許可件数は約七千三百でございます。現在の数字を、いま集計いたしておりますけれども、現在の時点では、もう少しふえていると思いますが、さようでございます。
  28. 島本虎三

    島本委員 私の手元に十万業者ということになっているのだけれども、こっちは七千三百。七千三百と十万じゃ、ちょっと違い過ぎるが。
  29. 山下眞臣

    山下政府委員 処理業は十万はございませんです。全国の製造業が六十五万でございますので、いわゆる事業者でございますね、これは東京都で十万ぐらいあるのかなという感じがいたしますが、処理業はそれほどにはございませんです。
  30. 島本虎三

    島本委員 これは処理業者は十万くらいで、調査したのが六千くらいで、そのうち七割で約四千くらいの調査によって、いろいろな排出量、再利用量、四十六年度推計、これを出してあるようでありますが、そうだとすると、どうも合いませんけれども、間違いありませんかね。
  31. 山下眞臣

    山下政府委員 その排出量の調査等の中の数字でございますとしますと、多分それは事業者の数だろうと存じます。
  32. 島本虎三

    島本委員 処理業者じゃない。
  33. 山下眞臣

    山下政府委員 はい、処理業者はとても、そんなにございません。
  34. 島本虎三

    島本委員 それで結局は、こういうようなことからしても共同の施設が必要です。最近のような不況インフレ、ことに雇用の問題等が問題になるような事態の中では、一番困っているのは中小企業。ことに、これに金をかけても何にもならないというようなことで、公害防止設備には余り金をかけたがらない。したがって、今後は公害防止事業団が積極的に進出していって、いろいろ施設をしてやるほかに、これは譲渡も行えるようにしてやらぬと、いかぬのじゃないか。いまのところ中小企業のこの制度に対して、公害防止事業団がまだ少し消極的じゃないか、こう思われるのであります。一たん処理施設をつくってやって業者自身にやらせるために、また零細なものがかたまって共同してやるために、まず公害防止事業団が出ていって、その業態に合わせ、そして、それを完全に消化できるようにしてつくってやる。まず、それを建設してやって市なりに譲渡してやる。市は業者に対してそれを年賦でやる、責任は市にある。こういうようにして現在やっているようでありますけれども、その体制がまだ不十分。したがって零細企業、中小企業は全部それから逃げの一手、このような状態が現状です。したがって、この産業廃棄物の問題、固形物の場合はまず見える。しかしながら、これは液体の場合なんか入れて大事な問題でありますから、公害防止事業団、これを積極的に今後、活用すべきじゃないか、こう思っているのです。そうでなければ中小企業は、いかに法改正しても一番安易な方法のたれ流し、薄めて流す、わからないようにして、どこかに行って捨てる、こういうようなことは後を断たないのじゃないか、こう思われるわけであります。この点については積極的に公害防止事業団の活動とともに、その建設譲渡業務、こういうものをきちっとしてやって中小企業を指導していく。この態度が今後、必要である。これは長官どうですか、必要でないとは言えないのだから。
  35. 小沢辰男

    小沢国務大臣 確かに公害防止事業団が産業廃棄物について従来とも、やってはおりましたが、足らなかった面が多々あったと思いますので、したがって、先ほど厚生省の部長が言いましたように、今年度は特枠を設けて積極的に乗り出すことにしたわけでございますが、おっしゃるように、これからも十分その面の対策に粗漏がないように、公害防止事業団を活用して進めていかなければならない。それはもう私も全く同感でございます。法律が通りましたら、またよく関係各省、相談をいたしまして、来年度からも、さらにこれを拡充するようにいたしていきたい、かように考えます。
  36. 島本虎三

    島本委員 その法律は残念ながら厚生関係なんだ。社労委員会にかかる。これは参議院の方にいま行っている。どうなるかわかりません。しかしながら、これは法だけじゃなく、その法が通る段階また通らなくても、行政指導の面で大きく問題に作用しますから、そういうような点では、中小の企業のうちでも、いま困っているのは印刷業者が一番困っているのじゃありませんか。この廃棄物は全部、有害物として指定される、有害物と指定されたら、その処理は自分のところで行えない、行えないけれども、そのままたれ流す。それが長く続いたら、また警察に摘発される。どうしたらいいか。そのものを持っていって処理業者へ頼むにしても、金が高過ぎて現在、少ない業者の中でどうにもできない。やはり悪いとわかりながらも、たれ流す。こういうようなことが根絶されておらないようであります。そうすると廃棄物の処理、こういうようなものに対しても、いま言ったようにして安くできるような処理方法、これも指導してやらないといけない問題でありますけれども、この問題に対しては、やはり、まだまだ現実的には、いっていないようであります。それで製版業者、こっちの方も相当、悩んでいることを聞いているのであります。  それと同時に行政上の問題として、確かに今後は水質の面から規制される。それから音の面からも騒音防止から規制される。しかし、音の面は別にして、これを完全に処理しようとして一つ処理業者ができる。その処理業者の方へ持っていって全部が処理するならば、いいのでありますけれども処理業者ができても、恐らく中小企業でありますから、すぐ、そう持っていかないで、たれ流してしまう場合も往々にして多い。そうだった場合には、ただ検挙し摘発するだけの問題じゃなくして、警察当局も、そういうようなものを、そっちへ持っていきなさいというような指導もして、全部、成り立つようにしてやらぬとだめなんじゃないか。現在、大都市あるいは中小都市においても、こういうような問題に、もう現実の問題として直面しているのです。確かにあるのです。処理業者があるのです。あるけれども持っていかないのです。ですから、あっても、そのまま何にもならないで、処理し切れないのか全部ほかへやっているのです。たまに持っていくと高いのであります。高いから、なおさら持っていかないのであります。こういうような悪循環であります。警察は黙って見て見ないふり。同時に自治体も完全にそれを指導してない。恐らく、できてあっても形だけ。こういうようなことになっては、仏つくって魂入れない、こういうようなことになりますから、そういうようなことがないように今後、十分、指導していかないとだめなんじゃないかと思います。  ことに印刷関係業者の中、それも零細業者の中にこういうような悲痛な叫びが聞こえてくるのであります。十分その点を考慮して指導すべきだと思います。ことに資金関係、こういうようなものは、公害防止事業団がありますから、積極的にこれをやらせるように指導すべきだと思うのであります。自治省も来ております。厚生省も来ておりますが、今後こういうようなものは一体になって指導してやってほしい。そうしなければだめだ。法律だけつくっても、いまのような難関がある限りは、これは実を結ばない、こう思います。六価クロムにこりて、今後は、こういうようなことを再び繰り返してはならないという私の祈りを込めての質問なわけでありますけれども、この点等、十分配慮できましょうね。
  37. 小沢辰男

    小沢国務大臣 私から代表でお答えいたしますが、おっしゃるように、中小企業等については、原因者負担の原則に立ちながらも、やはり国なり地方公共団体が、これを十分ひとつ援助してやりませんと、なかなか、その問題の処理が十分に成果を上げることができません。したがって、それぞれ業界には協同組合等もございますから、協同組合を指導いたしまして共同で処理場を設け、それに公害防止事業団が積極的に援助をいたしまして、都道府県や市町村と一緒になって、ひとつ処理を十分やらすようにしていくという体制が非常に大事じゃないかと思っております。ある県で、もうその点を始めているところもございますので、それを一つのモデルといいますか、そういう面で、よくPRもいたしまして、実績が十分上がっていけるように、中小企業の悩みも同時に解消していくように努力をしなければいけない。おっしゃるとおりだと思います。何らかひとつ、いい方法を選びまして各省協力の上で進めてまいりたい、かように考えます。
  38. 島本虎三

    島本委員 この問題は、じゃ各省庁の奮起を要望して、これで打ち切ります。  次に、カドミウムの問題についてでありますけれども、自民党さんの方でも今度、報告をまとめられたようであります。そして、これは「「イタイイタイ病のカドミウム原因説は、多くの学者や医師が認めていない」として、現行の土壌汚染防止法(農用地の土壌の汚染防止等に関する法律)にもとづく規制や食品衛生法による汚染米の安全基準を抜本的に見直すよう」こういうような提案がある、こういうようなことを聞きます。現在その実体、その資料が私の手元にはございません。しかしながら、以前からイタイイタイ病に対するこの問題は、当委員会等においても学者や、その他参考人をいろいろ招致して、回は恐らくは一、二回にとどまらず十分、検討してあったわけであります。自民党の方から、こういうような一つ報告がなされたということは、私は新聞で承ったのでありますが、これに対して環境庁長官は十分、御存じですか。
  39. 小沢辰男

    小沢国務大臣 私は、昭和五十一年一月二十九日、カドミウム汚染問題に関する報告がまとまりましたときに、党の環境部会から、この全文をいただいております。その内容は、要約をしたものが新聞に出ましたものとは、ちょっと違う面があるのじゃないかと思うのです。  第一点は、いわゆるイタイイタイ病についてのカドミの原因説なんですが、その締めくくりはこういうふうになっているわけです。そうだという説、いや、そうでないという説、あるいはまた原因が不明だという、いろいろな見解をずっと書いてまいりまして、最後に「以上のごとく、イタイイタイ病とカドミウムの問題は、未だ解明されていない分野が多々あり、その解明を急ぐ必要があるが、そのためには今後きめの細かいイタイイタイ病の本態究明の調査研究、低濃度長期暴露による動物実験の実施、およびカドミウム汚染地域における腎障害の究明のため、適切な対象をふまえた調査研究の実施が不可欠であり、そのための国の研究体制の整備、およびこれに要する予算措置を要望する声が強かった。」これが実は原因説についてのまとめになっておるわけでございまして、一部新聞に出ましたような印象とは少し違うと私は思います。  それから、いわゆる汚染米については、汚染米のいろいろなことについて根拠となった資料についての、いろいろな話や調査の内容が書いてございまして、それで安全基準をどうとったらいいのか、あるいは安全基準のあり方がどうあるべきか、あるいは国際的な検討も必要じゃないかというような諸種の提言をしているわけで、第三が土壌汚染対策について、地域指定の問題から、それから、この土壌改良というものは、ただ単にいわゆる何町歩、何十町歩あるいは何千町歩というものを、もとの米作に戻す方がいいのか、いろいろな点の検討を必要とするというようなことで、実は断定的な、それぞれについての余り明確な見解という表明ではない。問題点の指摘をほとんど中心にして書いてあるわけでございます。  詳しいことは時間もありませんので申し上げませんが、そういうことで最近、政調会長から私ども正式に環境庁長官あての文書を受け取りましたので、この点については十分まだ研究、調査体制の不備の面もございますので、当然、各省庁の連絡協議会を設けまして、この提案の前に、もう設けておったわけでございますが、いろいろな点について、ひとつ慎重に検討していこうということになったばかりでございます。
  40. 島本虎三

    島本委員 いま言われている点等からしても、まだ不十分なような気が私はするのでありますが、新聞に書いてあるのが全部うそだ、こう言うならば、それは別でしょうけれども、私の手元には、それと反対の、また、いろいろな論説等もあるのであります。学者の中には、あれは「科学への挑戦」だと言って「怒る学者」もおる。同時に、こういうようなものは「はっきりしたメカニズムがわかっていないということも事実だが、何らかの関係があるということでは、国際的にもいまや疑問の余地がなくなったと考えている」こういうようなことは重松博士がはっきり言っているという報道もございます。いま長官が言った、それに対して。それと同時に「「一〇〇%カドミウム原因論やカドミウム無関係論もあるがこれらはごく少数。学問的にはこうした割り切り方はできない」(土屋教授)」こう言っている学者もおるわけであります。同時に「カドミ無関係説もあるし、厚生省見解を誤りとする意見もある。しかし、カドミウム原因説は学者のとるところではない、などということはない」こういうふうに言っている学者もおるわけであります。武内教授であります。それから「表現の問題としても」自民党さんの方の「やや強過ぎる」表現だ、こういうようなことを言っている学者もおるのであります。それと同時に「いろいろ詳しく説明したのに、その他の部分では正確に書かれていながら結論だけが誤っているのは極めて残念だ」こう言っている学者もおるわけであります。同時に「「自民党にはイタイイタイ病の研究費をもっと出して本格的に取り組める体制を作ってくれることをこそ求めたい。あまりに政治的な決めつけがあるのでイタイイタイ病研究にイヤ気がさしている。もっと静かに論議させて欲しい」(土屋教授)」こういうように言っているそれぞれの談話さえ、その後、出ているのであります。  私ども、そういうようにして見る場合には、やはり環境庁長官がそれを知っていないというならば、私は少しでもよかったのでありますけれども、全部知っておるということで、そうするならば、私としては少し意見があるわけであります。そうすると、これは直接、被害者を扱っている環境庁環境保健部長、一体あなたは、この見解に対して、どういうふうに思って、この所論を聞きましたか。
  41. 野津聖

    ○野津政府委員 党の方で一年間にわたりまして、おまとめになったものを、参考までにという形で私ども、いただいたわけでございます。ただ私どもは、現在の各調査を踏まえての考え方、さらには今後とも、いわゆるカドミウムの微量によります人体の汚染の問題あるいは健康に対する影響の問題につきましては十分、詰めていく必要があるという考え方で、従来から対処してきているわけでございまして、こういうふうな御意見がございましたことと私どもが行政を進めていくということにつきましては、関係が余りないというふうな考え方で、むしろ私どもは、これらの先生方の御意見を踏まえた形で研究、調査を進めていき、さらにはカドミウムによります健康被害というものをなくしていくような形で進めていくべきであろうというふうに考えております。
  42. 島本虎三

    島本委員 同時に、環境庁事務当局、人間の健康とカドミウムの関係は、学者や医者の意見、こういうようないろいろな意見がありますけれども、カドミウムの経口摂取で賢臓が侵されて骨軟化症になるというようなことを言われておりますが、これに対して、このように結論づけるのは問題であるとして、食品衛生法に基づく安全基準、これはカドミウム汚染一ppm以上の含有米は食用にしないということになっておりますね、これを緩和すべきだというような意見に対しては、私は賛成できない、健康を守る立場から、これは賛成できない。環境庁としては、四十三年にイタイイタイ病の原因をカドミウムとした厚生省見解があります。四十六年の富山地裁の判決もあります。同時に、その後、四十七年の名古屋の地方裁判所判決というようなものもあるわけですが、これを覆して食品衛生基準まで緩和するという設論には、私としては少し疑問があるのじゃないかと思うのでありますが、事務当局は、これに対してどう考えますか。
  43. 小沢辰男

    小沢国務大臣 ちょっと、その前に誤解があるようですから申し上げますが、この環境部会でまとめたものが党で正式に発表になりましたのが、この四月六日でございます。それで七日付で私の方へ送付があったわけでございます。自民党環境部会のまとめました内容を先ほど申し上げましたように、先生のおっしゃるような断定的なものは実はないのであります。問題点をいろいろ指摘いたしておるだけで、したがって、カドミの原因によるイタイイタイ病につきましては、先ほど私が読みましたのが第一項のまとめでございます。  汚染米についても、いろいろ実態をずっと書いてありまして、これらについて一体、安全基準とは何か、この基準、一ppm以上というものを少しでも超えたものを食べると、直ちに健康に危害を及ぼすというような考え方ではないのじゃないだろうか。それがどの程度、連続して、どの程度の量が摂取されたら、どうなるかという点についての動物実験等による解明を、もっと必要とするのではないだろうかという疑問を提起されておるわけでございます。したがって私どもは、いまWHOの研究等もございますし、いろいろな面から一つの提言として受け取りまして、やはり環境行政の基本というものは、科学あるいは医学、各方面の技術的な知見というものをもとにして正確に進めていかなければいかぬわけでございますので、必ずしも政府・与党といえども、党がこういう考えだからといって環境庁が、そのまま、それをとるわけにはいかないわけでございまして、本委員会で何遍も申し上げておりますように、私どもは研究調査費を計上いたしまして学者の研究をやっていただいておりますから、その研究の成果を踏まえて、また、国際的な研究資料等も十分、検討いたしまして、今後この問題の解明に当たる、こういう態度でございます。  したがいまして私どもは、党が一年間にわたって、いろいろ研究をされたことは、一つの貴重な意見としては受け取りますけれども、ただ、そのままというわけには、もちろんいかない。しかしまた、これを全く無視するわけにもいきません。これは当然、一つの、やはり何党であろうと党がまとめた見解というものは、われわれは、これを科学的に検討しなければならない責任があるわけでございますので、そういう意味において今後、連絡協議会また、それぞれの学者にお願いをしております研究班等に十分な検討をしていただいて、問題の解明をひとつ正確にやっていきたい、かように考えておるわけでございますから、どうぞ、そういう趣旨で御質問をお願いいたしたいと思います。
  44. 島本虎三

    島本委員 それにしても、私それでもなお疑問が残る。いま長官が言った中で、汚染された土壌を復元するにも費用もかかるから、米をつくらないで何か被害のないような花でも植えるか、別のものにした方がいいんじゃないかという意見もある、こういうことも言われたようであります。そうすると土壌汚染防止法の規制、これは汚染農地をもとの姿にする客土事業、こういうふうなものは当然しなければなりませんけれども費用がかかる。したがって、法や制度こういうふうなものに対して少し手を入れて、その規制を緩めようじゃないか。その根拠は、イタイイタイ病のカドミウム原因説は疑問があり、土壌中のカドミウム濃度とカドミウム汚染米との相関関係が明らかでない、ここに問題がある、こういうふうなことだとすると、あえて、この問題は前から言われない問題ではない。まだ、この解明は不十分だということは、わかり切るほどわかり切っている。しかし、改めてこれを言って、そしてその対策、こういうふうなことに対して触れると、結局は土壌汚染防止法、こういうふうなことによって汚染農地をもとの姿に戻すための客土事業の費用がかかり過ぎるから、法や制度を改めて金のかからないようにしたらどうだ、こういう提案のように当然、考えられるわけです。  しかし、イタイイタイ病のカドミウム原因説、土壌中のカドミウムの濃度とカドミウム汚染米との相関関係、こういうふうなものに対して意見のあることは、それはもう、あえて私どもは否定するわけじゃない。しかしながら、被害が出ているのは事実です。同時に、これをもし学術的に、医学的に完全に究明してからにせい、もし、そういうふうな説論だとすると、百年間待てというのに等しい。ソ連人と日本人の体質さえもまだ違う。向こうの方では相当量の摂取はいいが、日本人の場合、ことに多産系の女性の場合、四人も子供を産んだような女性の場合には、もう容赦なく、この病気にやられる。ここで、もうすでに違っている。こういうようなさなかに、やはりこの原因が究明されるまでの間はということで、少しでも企業責任を緩和するような発言をするということは当を得ない。何のために、いまのこの時期に、こういうようなことをしたのか、その意図に対しても私はもう疑問を持っているわけです。  今後こういうような問題に対して、やはり相当の反論も出るんじゃないか、こういうように思います。何としても、いままでの状態では医学的に解明されなくとも疫学的に、はっきり解明されているはずです。そして、この被害の救済こういうようなこともある程度実を上げておるはずです。今後こういうような態度を緩めてはならないはずであります。それに対して緩めるような、こういうような所論が出たということは、私としては、もう本当に残念に思うのでありますけれども、今後この問題に対しては、いろいろと反論も出ることでしょう。私は、公害並びに環境保全、ここに重点を置く官庁が環境庁だとするならば、やはり、まず先に、あらわれた公害被害これを救済することが先、そして人間の命を大事にする、健康も大事にする、こういうようにしておいて、そうして何年かかるかわからない、この原因の究明、こういうようなものは、やってもらうことにおいては差し支えない。しかし、わからないから逆に費用を出す点も疑問だ、こういうような本末転倒の所論は、これはもう許さるべきではない。せっかく環境庁ができたのに、こういうようなことを私があえて言わなければならないのを、まことに残念だと思います。  最後に、長官に一言聞きます。長官としては自民党のこの報告に対して、どのように考えますか、最後に一言、聞かしてください。
  45. 小沢辰男

    小沢国務大臣 政府・与党の立場といたしまして、与党である自民党から、このような一年間の研究成果の報告が私あてに送られてきたわけでございますから、われわれとしては十分それぞれの所見について検討を加えなければならないと思います。  それで、どうも先生は、いま、そういう報告が出た、それを環境庁が受け取った、直ちに何か、こう土壌汚染防止対策にしましても、その他に対しても、やっているものをやめるのかというような御疑問を持ちながらの御質問でございますが、そういうことはございませんので、私どもは提案は提案として、これを受けとめまして、それぞれの提起いたしました問題点を行政府は行政府として十分、解明をしていかなければならないと思います。解明の結果、これを否定することになるのかどうかということは、やはり私どもの十分、検討した結果でないと申し上げられない。いま四月七日に受け取ったばかりでございますので、これから科学的に十分、検討していかなければならないわけでございますから、いま結論を持っているわけではございません。  もう繰り返し申し上げますが、環境行政というのは、やはり科学技術、医学のいろいろな所見というものを中心にして動いていかなければいけないわけでございますので、そこには何か政党の政策、高度の、あるいはまた他のいろいろな判断というものが政党なり、それぞれの立場では当然、出てくると思いますが、環境庁は少なくとも純粋に科学的に医学的に検討しました結果で物事の処理に当たらなければならない、かように考えますので、この点は今後、十分ひとつ検討を、それぞれの項目について検討さしていただきたい、かように考えておるわけでございます。
  46. 島本虎三

    島本委員 なかなか、あなた日本語が上手で、一つも、そつないようなことを言っている。しかし、やはり科学的にイタイイタイ病を解明すると言う。科学的にということは医学的にという意味だと思うのです。あなた医学的に解明できますか。私は、これはもう、やるのには相当、長年月かかるのではないか、こういうふうに考えられるのです。あなたは解明すると簡単に言いましたけれども、医学的にすぐ解明できますか。これはできないでしょう。いま、いろいろ意見があったり、また諸外国によって体質の違う人間が、このカドミウムの摂取をどうなんだ、その影響どうなんだ、こういうふうに言って、それぞれの違った所見があらわれているわけです。因果関係これを究明するのに、はっきりと医学的に解明すると言うのですが、できますかね。疫学的には確かにできている。医者でないあなたが医学的に解明するのだ、このことは私としてはちょっと言葉がよ過ぎるのではないか、こういうふうな気がするのですが、いま言った言葉の中で、その点だけ、ちょっと伺います。
  47. 小沢辰男

    小沢国務大臣 私は医者でもありませんし、科学者でもありませんが、行政の責任者としては先生、当然のことじゃないでしょうか。この自民党の提案でも、先ほど申し上げたように、このカドミのイタイイタイ病に関する関連について、その結論というのは本態究明の調査研究を十分やらなければならないということが主眼、結論になっておるわけです。低濃度長期暴露による動物実験のの実施等、実際には、まだ確実に行われておらないわけでございまして、そういうような点を十分やっていけば、私は、やはりある段階においては、この点がこうこう、こうだという解明ができるものだと思います。そうでなければ一体だれが、それじゃ解明を科学的に、イタイイタイ病の原因はカドミだという判断を下したのでしょうか。科学者が下したに違いないので、しかし、それについて、いろいろな科学者が疑問を投げかけたわけでございますから、当然それが、どちらがどうというふうに、もっといろんな究明によって明らかにしていくことができないとは私は思わないのですね。もし、できないのに、それをカドミが原因説だと言ってしまうのは非科学的なことになるわけで、したがって、非難を受けることになりますから、厚生省見解というものは当時における科学的な知見をもとにして、患者救済の方を主眼にして、とりあえず、とにかく、そうだという断定をしながら救済に移ったわけでございまして、当時の知見なんでございますから、したがって、あのときに、この問題については、もう科学的に客観的に完全に立証されたということで踏み切ったわけではないのです。やはり、それよりも患者保護を優先しようというので、当時、非常な問題になったわけですから踏み切ったわけです。  したがって、この問題がいろいろ各地で、もし、まだ問題が起こるとすれば、さらに当時の知見を踏まえながらも、今後いろいろな科学者に集まっていただいて徹底的に検討するという答弁を私がするのは、あたりまえじゃないでしょうか。それをしないような環境庁長官なら、私は、むしろ不適格だと思いますね。自分の政治的な判断で物事を決めていくようなことは、やっぱり、やるべきじゃないと思うのです。  学者の意見、それは少なくとも全員が本当に一致する見解までは、なかなかいかないかもしれません、科学者というものは、それぞれの、いろいろなあれがありますから。だけれども、おおよその客観的なデータの集積と分析、解析によって、科学者の大部分の人がこうだろうという場合には、それはやはり結論として尊重していいのじゃないか、こう思います。したがって、もう厚生省見解以来、何年も調査費を計上して厚生省でもやり、それを引き継いで環境庁でもやっておるわけでございますから、総合研究班がいま進めておりますので、そう私は五年、十年先のことじゃない、かように考えておるわけでございます。
  48. 島本虎三

    島本委員 いま言った程度のものは、改めて言わなくても環境庁の中で、あるいは委員会で、そういうような調査活動を展開しているでしょう。調査活動、展開していないというのなら、いま言ってもらって結構です。しているのに今度また、そうさせます。していても、いまのような裏づけをするように、それを言う。そもそも、それを言ってきた原因は、文芸春秋に出た何とかという、その反論だ。これをもとにして、ずっと流れる一定の論拠、これをもとにして、こう出されたように思われますよ。そうでないなら、なおさらいいことですが、しかし、その中にも、もうすでに裁判で二回も、これは決定しているし、厚生省見解も出ているし、それによって行政はきちんと進めているのです。それで、その中の研究はきちんとやっておるのです。進めておるのです。何のために、それに対して水を差すようなことをやって、これが見解だから正しいのだと環境庁長官が改めて言わなければならないのですか。医学的に解明できないのは、あなた知らないだけじゃなく、私はもちろんのこと知らない。医学的に、これをいつ解明できるか知らない。そうして、もう本当にこういうのが完全にできるか、それも知りません。しかしながら患者が出ている。上の方にそういう工場があった。したがって、この疫学的な証明はきちんとできている。したがって、患者救済というものは行われておる。これを重点的にやっておる。その最中に、これははっきりしないのであるから一考に値するとか、考える必要があるとか、こういうようなことを出すこと自身が後ろ向きだと言っておるのです。それで、あなたの言う程度のものは医学的に、まだまだ、すぐ解明されないことぐらいは百も承知ですよ。だけれども患者はどうしますか。それを救済するのが主なんです。それに対して企業が負担するのは、どうもいけないような、こういう所論をもとにして、こういうような報告をする、これに対して、あなたが同調する、こういうことがあったならば、私としては、きょうは、これ以上やりませんけれども環境庁長官として、そういう考えを持つことこそが問題だ。この問題を、この次まで持ち越すことにして、きょうは、これで終わります。
  49. 吉田法晴

    吉田委員長 この際、午後一時三十分まで休憩をいたします。     午後零時三十七分休憩      ————◇—————     午後一時三十八分開議
  50. 島本虎三

    島本委員長代理 休憩前に引き続き会議を開きます。  委員長所用のため、指名によりまして、私が委員長の職務を行います。  質疑を続行いたします。中路雅弘君。
  51. 中路雅弘

    中路委員 私は、きょう鉄道の振動公害についてお尋ねしたいと思うわけですが、最初に、五十一年三月六日に中央公害対策審議会が「振動規制を行うに当たっての規制基準値、測定方法等及び環境保全上緊急を要する新幹線鉄道振動対策について当面の措置を講ずる場合のよるべき指針について」という答申を出されまして、この答申に基づいて環境庁長官から運輸大臣あてに、三月十二日付で「環境保全上緊急を要する新幹線鉄道振動対策について当面の措置を講ずる場合のよるべき指針について」という勧告が出されているわけです。そこで鉄道の振動公害について、新幹線問題についての勧告は出されているわけですが、在来線を含めた、いわゆる鉄道の振動公害について今後どのように対策を考えていこうとされておるのか。あるいは環境庁として在来線の振動について調査をやられたことがあるのか。最初に簡潔にお伺いしておきたいと思うのです。
  52. 橋本道夫

    ○橋本(道)政府委員 いま先生の御質問の、在来線については、どういうぐあいになっておるかということでございますが、在来線の振動の問題につきましては、在来線の騒音調査とあわせまして、沿道の住民にどのような影響を及ぼしているかという実態把握調査を五十年度よりいたしております。五十年度、五十一年度、二年間引き続きいたしまして、その成績を全部まとめました上で、次に、どういう対策を打つかということを環境庁としては検討してまいりたいという段階にあるわけでございます。
  53. 中路雅弘

    中路委員 在来線については、いま五十年度から、——五十年度といいますと、もうすでに調査が始められているのじゃないかと思うのですが、五十年、五十一年度と調査をやって、それから対策を立てるというお話ですが、新幹線鉄道についての勧告は、すでに出されていますし、この中身を見ますと、新幹線鉄道の振動について「70デシベルを超える地域について緊急に振動源及び障害防止対策等を講ずること。」こういう内容の勧告が環境庁長官から運輸大臣に出ているわけですから、在来線とは幾らか事情が違うにしても一応、昼間でしょうが鉄道の振動の一つ基準と考えてみて、お話を進めたいと思うのですが、ミリに直しますと、七十デシベルを読みかえ換算しますと〇・九ミリになるわけです。  私が、きょう取り上げたいのは、これは社会党の岩垂さんと私と一緒の川崎なんですが、特に私の住んでいるところ自身が、これで団地の問題になっているところなんで直接お伺いしたいのです。三月一日に開通いたしました国鉄の武蔵野南線、まだ一カ月余りしかたっていませんが、これはいまの場合、貨物線専用線が川崎の新鶴見操車場から東京の府中本町まで約二十五キロ、そのうち十九キロが川崎の市内を住宅地を縦断している。二十五キロのうち四分の三が地下トンネル方式になっていまして、途中のターミナル貨物駅、梶ケ谷というターミナル駅の一部を除いて、ほとんど地下になっているというところなわけです。三月一日に開通しまして、いま上下線で百三十九本が主として夜、通過をしているのですが、開通した途端に、トンネルの上それから周辺の住民から、この列車の振動公害について川崎市の公害局や国鉄へ苦情がいま殺到しているわけですね。それで市の公害局が三月末から四月上旬にかけて、苦情が出ているところを中心に六カ所で振動調査をやりまして、全体の分析結果は、あと一週間ほどかかるという市の公害局の話ですが、先日、私、現地を見に行く際に、いま読み取りが終わっている二カ所だけ、事実を市の公害局からいただきました。  それを見ますと、これは方法として測定機器をトンネルの上の部分にある住宅の敷地の地表面に置いて、通過する列車ごとに振動速度を波形記録して読み取ったものなわけですが、この二カ所。一カ所は、中原区の住宅地域ですが、上小田中の大島さんというお宅でとったもの。四月の二日ですが、ここは土かぶりの深さが四・三メートルというところ。大体この地域は平均四メートルぐらいです。そこで夜の八時、二十時二十分から二十二時五十二分まで二十一本ですが、水平度で二・三五ミリというのが出ています。それから上下動で二・二〇と大変な数値が出てきているわけですね。さっきの新幹線の七十デシベル、〇・九、これは昼間で、これ以下に抑えるということですが、それよりもはるかに高い数値が深夜で出ている。もう一カ所の高津区の白幡台の川口さんのお宅。これは土かぶりで四十三メートル。相当、深さがあるわけですね。ここでも零時五十九分から午前一時三十三分の八本、いわゆる深夜ですが、水平動で〇・四それから、やはり上下動でも〇・四、四月十三日の調査で出ているというのが市の公害局の結果なわけです。  これは神奈川県の県条例による深夜の環境基準から見ますと、いま住宅地区で〇・一ミリということになっていますが、さっき言いました中原区で県条例の二十二倍ですね。それから地上から四十三メートルを通る高津区の白幡台でも、同じ基準の四倍というのが出てきています。大変驚くような数字が出ていまして、私は十九日の日に、訴えが出ているところを三カ所ばかり、一日かけまして現地へ出かけて調査に行ったのです。もう、一軒へ行きましたら周辺の人みんな集まってきちゃうのですね。だから三カ所訪ねただけで六十人の周辺の皆さんから意見を聞きました。きょうは鉄建公団の皆さん、ちょっと手続をあれしなかったので来ていただけないので、私の方から実情を先に話してしまいますけれども、主なのは、こういう意見が出ているのですね。  列車が通るたびに家が揺れて、みんな夜、目を覚ましたら、それから寝つかれない。中公審の二月二十八日の報告書というのを読ませていただきまして、この中にも、いろいろ数値が出ていますが、いま起きているこの数値は、この報告を見ましても「全て覚醒」目を覚ましてしまうという状態の数値ですね。皆さんの訴えも当然だと思う。私も見ましたけれども、テレビの映像は全部、揺れちゃってはっきり映らない。それからストーブの上に置いてあるやかんが揺れていって落っこっちゃうという状態ですね。家が土台が下がって傾くとかという状態。震度三の地震が来てもわからないというような意見もありました。家で録音をして、私にぜひ、これを持っていってくれということで渡されたテープもあります。大変な状態になってきて、いま国鉄や市の公害局に文字どおり苦情が殺到しているという状態なんですね。  どうして、こんなことが起きたのか。工事する前にどういう約束があったのか、住民の皆さんと話があったのかということで、これも調べてみましたら、工事の前に市の議会でも、これが問題になりまして、川崎市議会と国鉄それから鉄建公団との間で昭和四十五年の六月二十日に確認書が交わされています。確認書を交わしているのは、国鉄は東京第二工事局長の宮下さん、日本鉄道建設公団東京支社長の川崎さん、二人の名前で川崎市議会の公害を担当している第四委員会との間で確認事項が交わされているわけですが、この中では「騒音、振動については県条例の基準以下に抑えるように努力する。」なお、県条例の基準は振動〇・三ということですね。六十デシベルぐらいだと思います。騒音は昼五十五ホン、夜五十ホン、深夜四十五ホン以下と当時、県条例はなっているわけですが、これが確認文書で交わされています。まだ全部、現状が出ていませんけれども、すでに明らかになっている市の公害局の調査でも十倍近い振動ですから、これはもう騒ぎになるのは当然なことですね。  きょう鉄建公団はお見えになっていませんけれども、国鉄の方でも報告を聞いておられるかと思いますので、いま私がお話ししましたように開通して、まだ二カ月足らずですけれども、こういう現状ですね、現地で振動問題で大変な騒ぎになっているということぐらいは、国鉄もすでに御存じじゃないかと思うのですが、国鉄あるいは運輸省で、私がいまお話ししたような、この武蔵野南線をめぐって現地で振動公害について、いろいろ問題が起きているということについては国鉄の方は御存じですか。どういうように認識されていますか。報告なり来ていますか。
  54. 坂芳雄

    ○坂説明員 お答え申し上げます。  先生、御指摘の件、公団から報告を受けております。ただ、数値その他、内容につきましては、後で話が出るかと存じますが、いま公団側で測定をやっている最中でございまして、数値その他については、まだ説明を受けてない。問題になっているということは承知をいたしております。
  55. 中路雅弘

    中路委員 私さっき確認事項を読み上げましたけれども、国鉄、鉄建公団が、この建設に当たって川崎市議会と確認事項を交わされているわけですし、それから現地で私、聞きましたら、いろいろ説明をやっているのですね、国鉄、鉄建公団の皆さんが町内会等に行って。いま私がお話ししたような説明とともに、東京へ皆、代表を呼んでいって、地下鉄の上で電柱に耳をつけたりして、これくらいですからということ、大丈夫ですからというふうなことも、いろいろやっているのですね。東京までバスで連れていって、それで地下鉄で、いろいろ耳を当てて聞くというようなことも、話を聞きますと、やっておるということですが、しかし、こういう結果が出ているのですが、この工事に当たって〇・三ミリ以下に県条例を守る、努力するという確認事項を交わされていることについては、何か根拠があったのではないかと当然、思うのですが、これはおわかりになりますか。いま国鉄が、こういう地下トンネルをやる場合に何を資料にし、根拠にして工事を進められているのか。振動公害について一つの根拠があるはずですね。これは何がもとになっているのですか。
  56. 坂芳雄

    ○坂説明員 お答え申し上げます。  いま先生から御指摘のございました覚書の件でございますけれども、これは、いま問題になっております区間のうち、新鶴見にごく近い部分を国鉄が施工いたしましたので連名になっておりますが、国鉄の部分につきましては御承知のように地下部分がございません。したがいまして、地下部分につきましては、もっぱら建設公団の技術的判定によっておるということでございまして、私、当事者でないものでございますので、お答えいたしかねる次第でございます。
  57. 中路雅弘

    中路委員 公団が来ておられないので、私の方からお話ししますけれども、これは大臣、聞いていただきたいのですが、私、十九日に鉄建公団の代表と国鉄の管理局の施設部長と来ていただきまして、現地で、いろいろ事情を聞いたのです。なぜ、こういう確認事項をしたのか、根拠はどこにあったのだとお聞きしましたら、なかなか地下トンネルの資料がないというのですね。唯一の資料が、これは公団の説明ですが、武蔵野南線建設に当たって、いま問題になっていますけれども新貨物線、まだ開通していません、住民の反対があって一部問題になっていますが、その新貨物線用の振動、騒音の調査をする上で、横浜市が昭和四十二年に横浜国大等に依頼をして、東海道線の戸塚駅近くのトンネルで行った振動、騒音の調査、この資料を唯一の素材にして無公害だとした。その資料といいますと、深さ四メートル以下ならば大丈夫だ。路盤の緩いところでも十メートル以下ならば、畳に耳を当てて真上でも、かすかに音が聞こえる程度だ。それで無公害だと確信してやったのだという説明なのです。現地に来られた国鉄の方も同じような説明です。  トンネルに対する騒音、振動の資料はこれだけしがなくて、この資料を信用して設計したということですね。これによると、露天掘り式でも深さが四メートル以上あれば大丈夫だということで、住民の皆さんにも、この線で了解を求めたというのを説明をされていますから、鉄建公団も国鉄も現地では、そういう説明を私にされているのです。これが資料になった。だから、住宅地域四メートルというのが出ていますね。しかし結果は、いま私が言いましたような、振動の調査にいま入って結果が全面的に出ていませんけれども、一部の結果や、あるいは住民の皆さんの話を聞いても大変な状態になっているというのが現在の実情じゃないかと思うのです。  こういう現状を放置しておくわけにいかない。現地で関係者に話しましたら、鉄建公団の皆さんは、とにかく予想外の結果が出て驚いているのだというのが私に対する答えなのです。国鉄の皆さんも、資料と余りにも違うので驚いている、十九日はみんな、そうおっしゃった。住民の側から見れば、うそをついたのじゃないかということにもなりますけれども、私は、うそをついたというよりも、そのわずかの資料を信用して恐らく、それで二十五キロにわたる工事をやった。結果がこういう結果になっているという点では、鉄道について地下の振動、そういう確とした振動対策や、そういうものが十分、確立してない。その上で、わずかのこの資料で大丈夫だということでやって、結果として今日のような状態になっているというふうに現状を思うわけです。  しかし、大変な事態になっていますから、現状をこのままにしておくわけにいかないと思うのです。しかし今度、出されてきています国の振動規制の法案でも、鉄道については規制がまだ入っていない。法的な規制がない。しかし、行政の上でも、これはほうっておくわけにいかないというのが、いまの現状だと思うのです。いま私は若干、現地で調査をいたしました実例を入れて現状をお話ししましたけれども、まず、この機会に環境庁の皆さんに、長官にもお伺いしたいのですが、鉄道の、地下の貨物線ですが、いまこういう現状が出てきている。これに対して、新幹線の振動公害については七十デシベルで運輸大臣に勧告も出されているわけですが、それをはるかに超える事態が、在来線の貨物線ですけれども起きている。これについて環境庁として、どういうふうにお考えですか。
  58. 橋本道夫

    ○橋本(道)政府委員 大臣がお答えになりますまでに担当の者としてお答えいたしたいと思います。  いま先生の御指摘のございました数字、私どもも川崎市を通じまして聞きまして、特に一方の方では非常に振動が高いという印象を受けました。この点につきまして先生のお話の中にもあったのですが、私ども今回、法律をつくりますときに、なぜ鉄道の振動を入れないのかという、いろいろの御指摘を受けたのですが、新幹線につきましても、当面、緊急の対策として現在、行われる騒音の対策と一緒に総合的にやらなければ非常にまずいことになるということで、現在まで何とかして得られた資料を通じて今回の緊急の措置を出したというところでございまして、法規制というところまでには、とうてい私ども、そこまで踏み切れなかったということが実情でございます。その問題につきまして、先ほどお話し申しましたように、五十年度から調査をいたしておりますので、五十一年度の調査の中で先生の御指摘のようなトンネルの上での振動というような問題にうきましても、一度かっちり資料を集めてみて対応を考えたいということを思っておるわけでございます。
  59. 小沢辰男

    小沢国務大臣 私も、この前、新聞でちょっと拝見いたしたままで、本日、詳しい先生の御質問でございますので、十分、実態把握しておりませんので的確な答弁をいたしかねますが、おっしゃるとおりとすれば、これは住民の生活環境を守る上において重要な問題でございますので、私の方でも鉄運公団なり工事の担当者を呼びまして、よく状況調査いたしてみまして、適切な対策があるのか、技術的に解決し得る問題がないのか、金がかかっても解決し得る問題があれば当然、早急にやっていかなければいかぬと考えております。いずれにいたしましても五十一年度の調査の対象には、できるだけ早くいたしまして、ひとつ公的にしっかりしたデータを持ちまして、国鉄あるいは鉄建公団を指導してまいりたい、かように思います。
  60. 中路雅弘

    中路委員 いま長官からもお話がありましたが、私は現地でお話ししたときに、現地の鉄建公団は国鉄と協力をして、とりあえず、いま訴えが出ている沿線の振動の測定、実態調査をやるということは約束はいただいたのですけれども、運輸省としても、ひとつ予算のこともありますから、上の方が乗り出してもらわないと、現地だけでは調査と言っても限られたところだけしかできない場合もありますから、少なくとも武蔵野南線の、いま訴えが出ているのは地域的に見ても全線にわたって出ていますから、全体の沿線にわたって振動の測定をやるとか、あるいは沿線の住民の皆さんにアンケートとか、あるいは何かの方法で実情を聞くとか、物的な被害、精神的な被害、いろいろありますから、そういうことを含めた実態調査を至急やっていただきたい。いろいろ対策を立てるにしても、まず一つ実態を正確に把握するということが大事だと思いますので、その点をひとつ運輸省からもお答えを願いたい、調査をやるということについて。
  61. 田中和夫

    田中説明員 お答えいたします。  いま先生、御指摘のように、まず調査を早急にやるということが一番、大事なことだと私ども認識しております。現在、聞いておりますところによりますと、近く公団で測定をするための、これは外注でいたしますので、その発注の準備をいたしている最中だと聞いております。図面その他の整備から始めまして、具体的な測点、これは川崎市とも、また打ち合わせをしなければならぬようでございますが、そういう問題について、いま発注の準備と、あわせて川崎市あるいは一部地元の方と、すでに三月に数カ所、下打ち合わせをしているようでございますが、そういう準備を並行して進めまして早急に発注をした上で、できるだけ早く実態をまず把握するということが大事かと思っております。  大体、六月いっぱいごろまでには何とか測定を終わらせるようにいたしたいというふうに聞いておりますが、川崎市あるいは地元の皆さん方との打ち合わせで測点数等がふえてまいりますと、非常にまた時間のかかることかと思いますので、この辺は、あるいは努力目標になるかもしれませんが、そういう話を聞いておりますので、運輸省からも、できるだけ早く測定を終わらせるように強力に指導をしたい、かように考えております。
  62. 中路雅弘

    中路委員 私も、実態をいま正確につかむことが対策の第一番の問題だと思いますので、関係省庁とも相談をしていただいて少し、しっかりした調査を、余り資料もないというわけですから、こういうところを、この機会に、ひとつ全線にわたり振動についての調査をやっていただきたいということを念を押しておきたいのですが、しかし、それとともに、さしあたっての、これだけの訴えが出ているわけです。私が会った中にも、高校生が出てきまして、とにかく夜、勉強していても机が揺れちゃって字が書けないというのです。どうしようもない状態なんですね。  それで、はっきり対策が立つまで運転を中止してくれという強い要望すら現地では出ています。あるいはスピードをダウンしてくれとかですね。私もこの報告書を昨日、読ましていただきまして、その点どうかと見たのですが、この報告書で見てみますと、自動車の場合も新幹線の場合も、スピードダウンというのは、そんなに大きく変わらないのですね。新幹線で見ても二百キロの場合、七十五デシベル、百五十キロになって七十三デシベル、それから二百キロを七十キロまで落として六十三デシベル、鉄道の場合も、そんなにスピードのことで現状は振動が変わらない。あるいは自動車のスピードの問題を見ましても、この報告書には出ていますが六十キロで七十七、四十キロになって七十三、三十キロと半分にしても六十九デシベルと、変わらない状態なんで、一般の人たちはスピードが相当、影響すると考えるのでしょう。スピードということが私が現地に行きましたら、ずいぶん出ましたけれども、こういう報告書を読みますと、それでは対策にならないだろう。しかし、列車の貨物も十五両から五十両と、いろいろあるのですね。それから積載しているものによって、うんと振動が違うというわけですね。これは当然のことだと思うのですね。コンテナだとかセメントだとか、あるいは雑貨、いろいろ種類によって違ってくると思うので、運輸省の方で国鉄と相談をされて、緊急のさしあたっての対策としては、特にどの列車が一番振動が激しいのかというようなことはわかるわけですから、少なくとも、それについては緊急の対策を、私は運転中止ということまでは、ちょっとここで言いかねますけれども、特にひどい列車については、この対策が立てられるまで検討するというようなことあたりまでは、ひとつ御検討していただきたいということもあるのですが、その点はいかがですか。運輸省なり国鉄。
  63. 坂芳雄

    ○坂説明員 先生、御指摘のように、振動の大きさを左右する因子は非常に複雑のようでございまして、私ども完全に把握し切っておりません。それで速度の影響が案外、少ない、あるいは逆転する場合もございますし、それから、いま積み荷のお話がございましたけれども、重さにつきましても、必ずしも重い方が比例してふえるかどうか、これも問題がございますし、それから、伝わります地盤のやわらかさによりまして、周波数と申しますか、振動数の問題が左右されてまいりまして複雑でございまして、私ども新幹線につきましては現在いろいろな調査をやっておりますけれども、在来線につきましても許す限り、そういう調査をいたしまして、何をやれば一番、有効な対策になり得るかということを早急に研究を進めたい、かように思っている次第でございます。
  64. 中路雅弘

    中路委員 いろいろ、まだ要因がむずかしい、調査をしなければならないというのですが、私が言っているのは、列車ごとに測定すれば、どの列車が一番、振動が大きいかというのは結果として出てきますね。だから、少なくともいまの場合、緊急の対策として、みんなが、もう目をあいたらずっと眠れないとか、もう初めトンネルに入るときから地震のようなごうっと音が続いているとか、そういう列車については、さしあたって運転について検討するというような、そういう意味で、私は緊急の対策として国鉄で、その点の検討はしていただけないかというお話をしているわけです。すでに一カ月、私も見てきましたけれども、たとえば小さいパン屋さんのお店なんか、新築のお店ですが、ドアにかぎをかけてシャッターがあるお店、もう、たてつけがおかしくなっちゃって、かぎがかからないので、シャッターだけ夜になるとおろす。一カ月の間で、こういう事態になるというのは、このまま続いたら沿線は大変な状態になるのですよ。それの緊急対策がいま必要じゃないかということを言っているわけです。住民の人たちは全部、対策がはっきりするまで開通しても運転停止だということさえ出ているのですから、本当は、そこまでやってほしいのですけれども、いかがですか。
  65. 坂芳雄

    ○坂説明員 私の説明がいささか足りなかったわけでございますが、先生、御承知のように、何時何分の列車というのは編成が固定しているわけではございませんで、機関車も違いますし積み荷も日によって違います。それで毎日はかるたびに何時の列車が一番大きいという結果とは、私ども理解しておりませんので、一体、何が要素なのかということを調べないと、対策の打ちようがないということで申し上げた次第でございます。
  66. 島本虎三

    島本委員長代理 ちょっと、その前に坂事務局長に伺いますが、閣議了解事項によって、公共事業を実施する場合は、必要と認める場合には環境影響事前評価をすることになっておりますが、これはやらないで実施したことですか。
  67. 坂芳雄

    ○坂説明員 お答え申し上げます。  環境の事前調査につきましては、この武蔵野南線の計画当時、はっきり、こういう点はやらねばならぬというふうに確たるものがなかったと実は私、承知しておりまして、それにかわるべきものといたしまして、先ほど来、先生から御指摘のございました地元に対する説明であるとか、あるいは運輸省あるいは、その他の監督官庁に対する諸届けの中で、その意味を含ませまして工事の認可をいただき着手をした、それに従って仕事をしたというふうに私ども解釈をいたしております。
  68. 中路雅弘

    中路委員 いま委員長から指摘された点、これも私、非常に重要な問題なので、振動の規制の法案と関連して、この問題はまた論議をしなければいけないというふうに、いま考えていたわけですけれども、時間が限られていますので、さしあたっての対策について、いまお話をしているわけです。  それから、この新幹線についての「当面の措置を講ずる場合のよるべき指針」という中に、対策として「新幹線鉄道振動の障害防止対策として、既設の住居等に対する建物の移転補償、改築及び補強工事の助成等の措置を振動が著しい地域から実施するものとする。特に、今後早急に家屋の防振対策技術の開発を図り、家屋補修等により振動の影響を軽減する措置を講ずるものとする。」というのが報告に出ておりまして、これが答申の中にも出ているわけですが、在来線の対策というのは、まだ調査をして検討だというわけですが、現実に、こういう問題が起きているというわけですから、この新幹線の振動についての当面の緊急の措置として出されている中身、これは私は当然、家屋の物的な損傷があるという申請がある場合については、やはり、この勧告に準じて補修その他について検討しなければいけないというふうに考えるのですが、こういう問題について国鉄なり、あるいは運輸省の皆さんにお聞きしたいのですが、在来線ですけれども、現実にいま、こういう物的な被害が起きている、これに対して、ほっておくというわけにいかない。しかも事前の確認事項とは全く違った結果が出ているわけですから責任が大きいわけなんで、これについてもひとつ、とりあえずお考えを、具体的な措置までいかなくても、こういう考えで今後、対処していきたいというお考えをお聞きしておきたいと思います。
  69. 田中和夫

    田中説明員 お答えいたします。  いま先生、御指摘のお話の中に、その原因といたしまして事柄が二つ含まれているかと思います。と申しますのはトンネル工事、これは開削でやったところと、それから山のトンネルを掘りますような形で掘ったところと、二つの工法でやっておるようでございますが、そういう工事に伴いまして、その上の地盤あるいは周辺を緩めまして、その結果、家屋を支えている基礎の沈下とか、そういうようなことで工事に伴いまして実際に家屋に被害が出るという原因が一つと、もう一つは、列車が運行し始めまして、その振動によりまして、ある期間がたった段階で地盤等に若干の変動が出て家屋に実際に被害が出る、そういうふうに考えられるかと思います。  工事中の原因で家屋に被害が出た場合、これはもう当然に事業主体としましては、それを補修をするということはやらなければならないことだと考えておりますし、この辺につきましては、実際に地盤が沈下したためなのか、家屋が老朽化したためなのか、あるいは何らかの原因で地下水位が下がったとか、その他の原因かというようなことで、工事に起因する、あるいは振動に起因するということの原因の追究は、なかなかむずかしいケースが多いのが実際でございますけれども、そういうことを言っておりましては、現実に被害が出ているという住民の方の御納得もなかなか得られませんし、そのような問題につきましては住民の方とお話し合いをしまして、必ずしも一〇〇%工事あるいは振動が原因でない場合でも、何らかの家屋の補修の助成を出すというようなケースもございますので、この辺につきましては今後、早急に振動そのものの測定だけではなくて、そういう家屋の実害の調査も公団に指示をいたしまして、実施をした上で原因等の議論が、また出るかとは思いますが、この辺につきましては、できるだけ早く住民の方とお話し合いの上で、実際に被害の出ているものを何らかの手を打つという形で進めるのが望ましいと考えておりますので、そういう方向で今後、公団を指導してまいりたい、かように考えております。
  70. 中路雅弘

    中路委員 もう時間が来ますので、終わりに私、長官にもう一度、要請をしておきたいのですが、いま武蔵野南線の例で挙げましたけれども、私のいます川崎市だけでも、たとえば鉄道の振動公害というのはここだけじゃないのです。これも一般に報道されていますけれども、たとえば、これは逆の南の方ですね、臨海工業地域で塩浜線、鶴見、浜川崎線。貸物線がやはりつながって浜川崎から尻手の方へ抜ける、さらに京浜の臨海工業地帯の真っただ中を通る線路がありますけれども、これは人家の密集地域です。浜川崎線と言っていますが、ここでも、いま大きな問題になっているのです。  特に夜間の振動ですね、大型タンク車やコンテナ車が通る貨物列車の振動というのは大きい問題になっていまして、先日この地域でも住民団体が沿線住民の皆さんにアンケートをとった。百五十六世帯のうち八〇%以上が夜、寝つけない、寝られないというのが出ていますし、そのうちの六〇%が何らかの実害、物的な被害訴えています。ふろのタイルが割れてしまったとか壁がどうだとか、そういうのがたくさん出てきています。ここでも深夜の運転の中止だとか徐行だとか、いろいろ要望が出ていまして、国鉄の方にもたびたび、そういうような団体から、いま要請が出ているところですが、国鉄の方は、ここでは、在来線については対策が立てられないのだということで、簡単にいま、それを突っぱねているような状態です。ここも川崎市の公害局が、訴えが多いので先日、振動測定をやりました。それによりますと、やはり先ほど言いました県の公害防止条例の規制基準の大体、五倍から八倍、上回る振動が結果として出てきているわけですね。  だから鉄道の問題で、新幹線については勧告が出されていますけれども、いまの在来線についても、こういう大変な状態のところが相当、全国的にあるわけですね。やはり環境保全また住民の環境権を守っていくという立場からも、環境庁としても、今度の場合は工場と建設工事ですか、それから自動車あるいは新幹線というのがありますけれども、この鉄道の振動について、やはり早急に実態把握をしながら、対策について検討を進めなければならぬのじゃないか。いろいろ現地の皆さんの意見を聞きながら痛感をするわけですが、時間になりましたので、最後に長官から、この鉄道の問題について一言、今後の環境庁のお考えをお聞きをして終わりたいと思います。
  71. 小沢辰男

    小沢国務大臣 まず武蔵野南線につきましては、いまも局長に指示いたしましたが、早急に主管局長のところへ関係者全部、呼びまして、あるいは明日は、これから連絡して、すぐできますか、もう遅くも月曜日にはやらせるようにいたします。そして、どういう分担で調査を正確にやって対策をどういうふうにしていくか、被害実態調査をしなければいけませんし、何らかの早急な対策をとるように、関係方面全部を集めまして、早急にひとつ会議を出発させます。  それから一般的に在来線の問題は、なぜ中公審でも新幹線をいま中心にしてやってきたかといいますと、付近の住民と生活上、非常に密接な関連がある線が多いものでございますから、そういうような問題で、まだまだ、いろいろな角度から検討しなければいけない問題もあって、新幹線だけを当面、対象にしてきておったわけでございますが、在来線の環境に及ぼす悪影響というものを、そのまま放置できないことはよく承知をいたしております。しかし鉄道の騒音、振動についてのいわゆる音源対策というものが、なかなか技術的に方途を見出すことが困難でございますものですから、在来線ということになりますと非常に多方面に関係をしてまいりますし、そういうようなことで、いろいろな住民の生活上の根底をなすような機能を果たしている面もございますものですから、いろいろな意味で研究を進めて、また対策も講ずるような方向で、いろいろな面から調査をさしていかなければいかぬと思いますけれども、当面、新幹線よりおくれている、こういう実情にあるわけでございます。しかしこれを放置している  つもりはございませんで、できるだけ今後とも、あらゆる角度から検討を進めて、対策ができるものから逐次、実施に移していきたい、かように考えているわけでございます。
  72. 中路雅弘

    中路委員 いま武蔵野南線については長官の方で緊急に関係者を集めて対策をやるという御答弁をいただきましたので、ひとつ、それはぜひ具体化していただきたいと要望しまして、時間ですから終わります。
  73. 島本虎三

    島本委員長代理 中路雅弘君の質問は終わりました。  次に、木下元二君。
  74. 木下元二

    ○木下委員 私は、健康被害補償法の運用上の問題について伺います。  健康被害の認定や障害の等級を決めるのに当たりまして、主治医の意見を尊重するということがたてまえでありますが、果たして実際に、どれだけ主治医の意見の尊重がされているのか疑問に思っております。この点につきましては制度発足以来、問題を提起してまいりました。環境庁として現状をどのようにつかんでおられましょうか。
  75. 野津聖

    ○野津政府委員 この制度発足以来、主治医の意見ということについての尊重は常々、私ども心がけているところでもございますし、実際問題といたしまして認定審査会そのものが、いわゆる書類審査という形になってくるわけでございます。したがいまして、当然その間その患者さんの長いこと診療に当たっておられる主治医、この主治医という言葉に非常にむずかしい問題があるかもしれませんけれども、ずっと診療を担当しておられる主治医の先生の意見というものが、一番その患者の状況について熟知しておられますし、また、その患者の指導等にも直接、当たっていただきます。また治療もしていただくという形でございますので、私どもも当然、主治医の意見が、そういう形の中で十分、尊重されてきているというふうに理解をいたしているところでございます。
  76. 木下元二

    ○木下委員 具体的に言いますと、その主治医が診断報告書を提出します。ほかに医学的検査報告書というのがありまして、これによって肺機能などの検査を行うということになっております。これは公立の衛生研究所等が行っておるようでありますが、この肺機能検査による心肺指数が等級決定の判断要素として相当、比重を占めておるように扱われております。そうして、ことに最近、見直し検査等で、主治医の判断に反して等級を下げるとか、あるいは過去、一定期間の受診経過を出せといったような一種のクレームがついてくる、こういうことが多いようであります。ことに慢性気管支炎に多いように聞いておりますが、そうした事実は御承知でしょうか。
  77. 野津聖

    ○野津政府委員 ただいま御指摘ございましたように、障害等級等を決めるに当たりましては、その患者さんの病状とか、あるいは検査の所見あるいは実際に、その患者の治療に当たっておられる医師の管理区分というふうな形から総合的に判断するのが当然でございまして、決して、その主治医の意見をむだにするということも考えてないわけでございます。また特に御案内のとおり、この疾病というのは非常に慢性の経過をたどります。したがいまして、過去におきます状況というものも、その判断をする際には非常に必要な場合もございます。それからまた特に、ぜんそくあたりの場合ですと、季節的な問題とかいうふうなことが関連いたしまして、ただいまの症状だけでは判断できないというふうな問題もございますし、現在、発作が起こってない時期においての検査の結果というものでは、そのまま判断することは適正な判断にはならないというふうにも考えられるわけでございまして、実際に認定する際の資料といたしましては、できるだけ、その患者さんの長い経過というふうなものがあって初めて適正な判断ができるのではないかというふうに考えておりますので、恐らく、そのような観点から主治医の忌憚のない、過去におきます状況というものについての意見を徴するということも、私は必要なことではないかと思っております。
  78. 木下元二

    ○木下委員 肺機能検査などは、肺気腫の重症度の判定には役立っても、慢性気管支炎であるとか気管支ぜんそくの判定には余り役立たないというふうに医学的にも言われておるようであります。主治医の症状全般の判断がよくないと見ておるのに、肺機能検査で心肺指数がほんの少しオーバーしたということで等級を下げる、あるいは等級外にする、こういうことでは私は困ると思うのです。こういうことでは結局、肺機能検査で等級を左右するということになると思うのです。これでは主治医の意見は尊重されるどころか無視されることになる。ひとつ、こういうことのないように、主治医の意見が十分に尊重されるように、私は指導を強めていただきたいと思います。
  79. 野津聖

    ○野津政府委員 先ほど来、申し上げておりますように、本当に患者さんと直接、接触しまして、その方の治療あるいは指導というものに当たっておられるのは、いわゆる主治医でございます。したがいまして、この主治医の御意見というものを十分、尊重しながら検査所見というものも一つの判断条件として使っているわけでございます。  ただ非常に、その考え方等につきましてのばらつき等があっては、私どもは全国的な制度としまして問題があるのではないかというふうなことも考えまして、年に二回程度、定期的ないわゆる認定審査委員の方々によります全国会議あるいはブロック会議を開催することによりまして、どういう形で、これを認定し、あるいは障害等級の認定を行うというふうな形につきまして、御指摘ございましたような形での主治医の意見というものが適正に判断されるような形で、また認定に当たって適正に利用されると申しますか、活用されるというふうな形でいくようなことにつきましても今後、指導を進めてまいりたいと考えております。
  80. 木下元二

    ○木下委員 この肺機能検査ですね、これは環境庁の方として基準をお決めになってやるという方針で、やっておられるのですが、これは医学的にもいろいろと問題があるようです。ことに中等度や、あるいは大きい気管支の収縮度を調べるという場合には、この肺機能検査というのは役立ちますが、末端の小さい気管支、末梢の肺胞と申しますか、そういうものの障害を調べるのには、また公害の場合には、そういう末梢の障害が多いわけでありますが、この肺機能検査というのは余り役に立たないんではないか。これは医者の意見であります。最近も、こうした問題について論文も出ておるようであります。したがって、そういう点から言いますと、この肺機能検査の結果をもって慢性気管支炎などを判定するということについては大きな問題があるのではないかと思うのです。こういう医学上の問題もありますので、私は、その環境庁がお決めになっている基準についても、もう少し医学的な角度から検討する必要があるのではないかと思うのです。この点についてのお考えを聞かしていただきたいと思います。
  81. 野津聖

    ○野津政府委員 御指摘ございましたように、ある種の肺機能検査につきましては、末梢部分あるいは肺胞部分におきます機能の測定というのは困難であるという問題も、私ども存じ上げているわけでございます。また、ほかの検査方法といたしまして、動脈血中の酸素分圧あるいは炭酸ガス分圧というものも検査する必要があるのではないかというふうなことも言われているわけでございます。いずれにしましても、これらのいわゆる大気系と称せられております慢性気管支炎それから気管支ぜんそく、ぜんそく性気管支炎あるいは肺気腫というふうな四つの疾病また、この続発症に関しましての、きちんとした検査というものができるような形にすべきであろうと私ども考えておるわけでございます。したがいまして、これらの検査をいかなる形でやるべきであるかということにつきましては、それぞれ各種の専門家からも御意見をちょうだいしているところでもございます。また、認定に当たっておられる先生方の会議におきましても、いろいろと学問的な御意見等も交わされているところでもございます。したがいまして、先ほど申し上げましたように年に開催します。いわゆる認定審査会の委員会議につきましても、今年におきましてはブロック会議という形をとりまして、できるだけ多くの委員先生方が集まっていくような形で意見の交換もしていただいたわけでもございます。また、これらの新しい、いろいろな学問的な問題につきましては当然、導入していくべきであろうと考えておりますので、これにつきましても、それぞれ研究をお願いしております先生方の結果をいただきながら、これを活用していきたいというふうに考えております。
  82. 木下元二

    ○木下委員 もう一つ、健康被害の認定が著しく長引くケースが目立っております。通常はおおむね二カ月くらいのようでありますが、中に半年、一年あるいは一年以上かかるというケースがあるようでありますが、これは御承知ですか。
  83. 野津聖

    ○野津政府委員 認定につきましては、できるだけ早く認定するということが当然であると私どもは考えておるわけでございますが、中には、いろいろな事情によりまして若干、長引いている事例もあるやには聞いております。ただ具体的に、こういうケースにつきまして非常に長引いたというふうなことにつきましては聞いておりませんが、全体的の流れの中で、ある、いろいろな事情によって非常に認定まで長引いたケースがあるというふうには聞いておるわけでございます。
  84. 木下元二

    ○木下委員 余り特別の事情もないのに長引くケースがあるようなんですね。一々、私、具体的には申しませんが、そういうふうに一年以上かかるケースがあるのです。そして申請から認定までの間、審査会から再三、文書で主治医に問い合わせがある、主治医は、これに回答を求められる、こういうことであります。  どういうことを問い合わせがあり、回答を求められるかということでありますが、ここにもコピーがあるのでありますが、たとえば過去の受診日数はどうかとか投薬日数はどうか、あるいは症状の経過はどうか、こういうふうなケースがふえております。どうも、これは初めも少し言われましたけれども、余り根拠がないのじゃないかと思うのです。もともと主治医診断報告書を出せばよいということになっておるはずなんですね。それ以上に書面で意見書などを書かせるのは一体どういうことなのか、どういう根拠があるのか。この主治医診断報告書には一定の過去の症状等については書く欄があるわけでありますから、それ以上に過去の一年も、あるいは、それ以上も、さかのぼって症状の経過とか受診日数を医師に調べさせて出させる、そういう理由があるのかどうか、この点はいかがでしょうか。
  85. 野津聖

    ○野津政府委員 先ほども申し上げましたように、この疾病の特殊性と申しますか、非常に慢性の経過をたどっているという問題が一つございます。また一応の様式によって、ただいま御指摘ございました診断報告書というのは様式化された形のところが多いわけでございます。したがいまして検査の結果と、その様式化された中で、いわゆる各担当しておられる医師の事務手続等をできるだけ簡素化するという形で、あらかじめ定型化されたものが診断報告書の形で用意されているという場合に、やはり部分によりましては主治医の方も自分の意見も書きたいと思うのだけれども、ここに表がないから、ここに書くところがないから書かないとかいうふうなものもあるかとも思います。また、さらには慢性の経過をたどっておりますので、認定申請がございまして、そして検査を受けるといった場合に、たまたま検査のときの健康状態と、常時、治療を受けているときの健康状態との差というふうなものも、これは人体でございますので当然あるわけでございます。また呼吸器疾患の場合、発作時というふうなときに非常に悪いような状況がございますと、特にぜんそく等の場合ですと、たとえば春になると起こってくる方あるいは秋になって起こってくる方とか、いろいろな問題がございます。特に大気系の場合には、ある季節によって、一定の風向等によって、その季節に非常に起こってくるというふうな問題があります場合に、申請をせられた時点あるいは検査を受けました時点と現在、実際に発作が起こっている時点との差があるというふうな場合もございます。したがいまして、その点について一番よく御存じなのは、実際に診断あるいは治療に当たっておられる主治医の方でございますので、その辺の状況につきまして、できるだけ詳しくお知らせいただきたい。そのために、いろいろと主治医の方に御意見をお伺いするというふうな制度をとっておるわけでございまして、地域によりましては一応、電話で認定審査会の方から直接お尋ねするような場合もあるようでございますし、また地域によりましては、お手紙によってお返事をいただくような形をとっているというふうなこともあるわけでございまして、当然、適正な認定を行うというためには、主治医の意見をいかに反映さすかという一つの方法としても、こういう手は必要ではないかと考えておるわけでございます。
  86. 木下元二

    ○木下委員 いや、申請をした時点から以後、申請後いろいろ治療を受けておる、その以後の経過をということではなくて、その以前にさかのぼって、一年もあるいは一年半もさかのぼって、その症状とか、あるいは受診日数とか、そういうものは一体、要件になっておるのでしょうか。ことに、たとえば患者の中で、別のところで治療を受けておったというふうな場合に、過去の受診日数とか症状経過はどうかということを聞かれましたって、医師の方では過去のことはわからぬわけです。医者が違う場合など。あるいは自分が診ておったといたしましても、たくさんの患者を扱っておる中で、そういうふうに一々、過去の受診日数とか投薬日数を調べてやるということは非常に煩瑣なことでもあるわけですね。そういうふうなことは、この認定の要件ではないように私は思うのですが、なぜ、そういうことをやるのか、よくわからぬわけです。どうなんでしょうか。
  87. 野津聖

    ○野津政府委員 二つの御指摘だろうと思うわけでございます。初めの一つの御指摘につきましてでございますが、認定の申請を出されたときには、すでに気管支炎あるいは肺気腫というふうな疾病を持っておられて、しかも過去の大気汚染によります影響というものも相当多いわけでございます。したがいまして、認定に至るまでの、いわゆる経過というものが、もし審査会の方で理解できるならば、より適正な認定が行われるであろうということでございますので、したがって、認定申請をされた時点以降の問題もさることながら、そこまでにまいりまして相当な状態になりませんと認定申請という形にならないわけですので、そこまでに至ります診療経過と、あるいは患者さんの状況というものにつきましての問い合わせというものは、適正な認定を行うには必要ではないかというふうに私は考えております。  それから、もう一つの問題でございますが、具体的にいわゆる診療日数あるいは投薬日数というふうなものが、どういう形で意味をなすかにつきましては、ちょっと具体的な考え方としましては私自身も若干、理解しづらい点もございます。投薬日数が何日あったかとか、あるいは診療日数が何日あったかというのは相当、過去に上っての問題でございますと、実際に、いまお話ございましたように主治医がかわっている場合もございますでしょうし、あるいは過去の記録をひっくり返していくということになりますと、診療録につきましては五年という保存期間もございますでしょうし、それ以前であれば非常にむずかしい問題もございましょう。また実際に医療機関としましては、過去におきます記録を、どのような形で保存しておられるかの状況によりましては、非常に事務的な煩瑣な問題にはなってくるであろうと思います。ただ一番、大事なことは、やはり、その患者さんを常時診療しておられる主治医の方の意見というものが、どういう形で反映されるかということが大事なことではないかと私は逆に考えております。したがいまして、そのために、できるだけ主治医の御意見を取り入れたいというふうなことは非常に大事な乙とではないかというふうに考えております。
  88. 木下元二

    ○木下委員 あなたもお認めになるように、過去の受診日数等について、いろいろと問い合わせをするということは余り理由がないように私も思うのですよ。どうも、そういうことがやられておりまして、そしてその結果、認定までの日数に非常に長期を要しておる、こういう実態があるわけであります。特に、文書で報告を求められたり、しかもそういうことによって長期間を要するということになりますと、これは主治医にとって事務手続上、非常に煩瑣であるばかりではなくて、不利益でもあるわけなんです。申請のときから公害として取り扱っておるわけでありますが、認定まで長期間を要するということになると、認定のときまで治療費の請求ができません。また、認定をされなかったときは健保に切りかえましても、家族の場合は家族負担分は現実に取れないというふうな実態もあるわけであります。もとより患者にとっても不利益であります。したがいまして、何よりも審査手続をより迅速、機敏に処理をするように、ひとつ指導を強めていただきたいと思うのです。  中には、こういうふうにおくれるのは認定と等級を一緒にしようとするために、おくれるというケースもあるようです。特に問題のある分については認定だけして、等級は別にするということもできるわけでありまするので、ひとつ速やかに認定できるように、そういう指導をされたいと思うのです。よろしいですか。
  89. 野津聖

    ○野津政府委員 当然、認定というのはできるだけ早くして差し上げるということは大事でございますし、ただいま御指摘ございましたように、実際に認定までに日数がかかります場合には、当座の診療報酬の請求等の問題も絡んでくるわけでもございます。その面につきましては、できるだけ早く認定をするようにという形の指導は、私ども常時やっているわけでございますけれども、具体的にまた、そのような事例が出てくるというふうなことがございますれば、できるだけ早く認定をするような形での指導をしてまいりたいと思っております。  それから、認定と障害等級の問題でございますけれども、私ども、できれば認定と障害等級を一緒にして差し上げた方が、より有利ではないか、また特に治療あるいは検査の結果等につきましては一緒に用いられるものではないかというふうな考え方で、現在、認定と障害等級の同時の審査という形がとられておるわけでございますが、たてまえ論としましては認定先行、そして認定を受けてから障害等級を決めるというふうなたてまえには法律上は、なっておるわけでございますけれども、逆に私どもは、むしろ患者さんの立場を考えれば、認定されて、そして障害等級と一緒に審査した方が、より都合がよろしいのではないかというふうな考え方で対処しておりますが、そのために逆におくれてくるというふうなことがあるようでございますれば、認定は認定、それから障害等級の決定は決定という形での切り離しも、これは当然たてまえ論として、あるわけでございますので、そういう形についても当然、考えていくべきだろうと思っております。
  90. 木下元二

    ○木下委員 特に問題があるケースというのがあるわけでありますが、そういう問題のケースについては、主治医と審査会の委員先生で話し合って、お互いに納得ができるように進めていく。これは実は私、昨年の三月にも、この問題で質問をいたしましたときに、政府の方、環境庁の方はそういうふうにお答えになっております。ところが聞いた範囲では、どうも、そういう話し合いというのは現実には行われていないようであります。公害患者を多数扱っておる医師というのは少ないのでありますが、そういった医師とも直接、審査委員が話し合うというふうな、そういうケースは、私が聞いた範囲では一度もありません。具体的ケースで問題がある分についても、審査会の事務局が作成した一片の文書で回答を求めておるのです。その文書ここにありますけれども、印刷をした文書で、問題の項目に丸が打ってある。そんな文書で回答を求める。しかも、たとえばこういうのがあります。「フレッチャーの定義に基づく慢性気管支炎と診断された根拠についてお知らせください。」というのがあるのです。このフレッチャーの定義というのはおわかりと思いますが、とりようでは、まるで論文でも書けというようなやり方なんですね。これは主治医のプライドを逆なでするようなやり方であります。どうも、こういうかっこうでは好ましいことではないと思います。主治医と審査会が直接、意見を交換し合ったり、あるいは懇談したりするという体制がつくられるように、環境庁としても、これはぜひ積極的に配慮をしていただきたいと思うのです。よろしいですか。
  91. 野津聖

    ○野津政府委員 先ほど来、申し上げておりますように実際に、その患者さんの診療に当たり、また指導しておられるのは主治医というふうに私ども考えておるわけでございまして、その御意見というものは十分に尊重されるべきだと思います。  私どもの聞いておりますところでは、相当の地域におきましては電話等によりまして主治医の御意見等もお伺いしているところもある。ただ一部の地域におきましては、件数が多いというふうなこともありまして、文書によりまして御意見を問い合わせているというふうに私ども聞いているわけでございますけれども、ただ文書で、ただいま御指摘ございましたようなアンケートのような形でございますと、逆に十分な主治医の意見が述べられないという場合もございましょうし、また、さらには学術論文を書けと言われているような、御指摘もあるような中身にもなるかとも思います。したがいまして、その辺が文書の場合ですと、どちらかと言えば一方通行的なことになるわけでございますので、できるだけ主治医と審査会の委員との間のコミュニケーションがよく図られるということが大事なことでもあろうかというふうに思っておりますので、できるだけ主治医の意見が反映されるようなことを、いかなる方法がいいかということにつきまして十分、検討を加え、また、そういう形で指導してまいりたいと思っております。
  92. 木下元二

    ○木下委員 それはひとつ、ぜひお願いしたいと思うのです。いま、地域によっては電話でということでもありましたが、それはどこの例か知りませんが、恐らく審査会の事務局から電話で主治医のところに連絡をしておるのだと思うのです。そういうことでは主治医の意見というものが、あるいは考え方というものが、やはり十分伝わりにくいと思いますので、私がいま申しましたような、しょっちゅうというわけにはいかぬでしょうけれども懇談会を持つとか、あるいは、お互いに意見を交換し合うとか、そうした機会がつくられるように、ひとつ考慮をしていただきたいと思います。
  93. 野津聖

    ○野津政府委員 先ほど来、申し上げておりますように、主治医の意見というものが十分、理解できるような形をとるには懇談会がいいのでございましょうか、いろいろな方法があるかと思います。やはり、その地域地域におきましての状態に応じまして、実際に診療を担当しておられる先生方と、それから審査会の先生方との間の相互理解と申しますか、コミュニケーションが十分できるような形で進めるように指導を進めてまいりたいと思います。
  94. 木下元二

    ○木下委員 等級外の問題でありますが、これは結局、主治医の意見を尊重しないことによって起こってくると思うのですが、そうではありませんか。
  95. 野津聖

    ○野津政府委員 等級外ということでございますが、御案内のとおり特級から一、二、三級という形での等級制度はございます。しかし、その等級に該当しないということが、いまの等級外というお話だろうというふうに理解するわけでございますけれども、これにつきましても当然、主治医の意見を尊重した形での、結果として出てくる、いわゆるランクづけというふうに私どもは理解いたしております。
  96. 木下元二

    ○木下委員 等級外は全国的にも多いわけでありますが、尼崎で申しますと昨年三月は等級外が五百二十九名、認定を受けた者が二千八百五十九名でありますから一八・五%であります。それが五十年十二月末現在で申しますと、見直し後でありますが、等級外が五百五十九名であります。人数から言うと若干ふえておりますが、認定を受けた者が四千四十九名になっておりますので、全体がふえておるわけでありますから、パーセンテージで言うと一三・八%、割合は減っておるわけであります。かなり改善はされてきました。この点は不十分ではありますが評価はできると思います。しかし、まだまだ不十分だと思います。いま全国の指定地域で等級外の認定患者は何名おりますか。
  97. 野津聖

    ○野津政府委員 一番、最近の調査でございます昭和五十年九月末現在でございますが、いわゆる、その他という分類になっておられる方が全国で六千百四十三名でございます。
  98. 木下元二

    ○木下委員 申請や見直しに当たって、主治医の認定疾病についての管理区分が五とされた者、すなわち主治医が等級外と判断した者はどのくらい、あるんでしょうか。
  99. 野津聖

    ○野津政府委員 その内容につきましては私どもの方では、わかりません。
  100. 木下元二

    ○木下委員 いや、わからぬなんて、それはどうしてわからぬのですか。わかるでしょう。わからぬはずはないと思いますが、どうしてわかりませんか。もし全国的にわかっていないというなら、一定の地域でも結構ですが、わかりますか。
  101. 野津聖

    ○野津政府委員 この等級の認定に当たりましては、主治医の意見また各種の検査の結果等によりまして、認定審査会が決めるわけでございます。そうしまして決まりました結果につきまして、私どもの方が把握するということになるわけでございます。特につけ加えて申し上げさせていただきますと、この等級の問題、認定の問題につきましては、症状とか、あるいは検査所見に基づく等級と主治医の管理区分による等級に差があるならば、公害健康被害認定審査会が主治医の意見を求めるなどして、両方の観点から納得のいく適正な障害度の評価を行えという形での指導は行われているわけでございます。私どもは、認定審査会におきまして、どのような障害度の評価が行われましたかという結果につきまして資料を把握しているというところでございます。
  102. 木下元二

    ○木下委員 そうしますと、その主事医がどういう管理区分をつけたかということ、特に五をどのくらいつけておるかということは、環境庁としてはおわかりになっていないということですが、初めに言われたように主治医の意見は十分、尊重されておると言われるわけですが、一体どの程度尊重されておるかということは、その点を押さえなければわからぬでしょう。その点の押さえなしに尊重されておるということは言えぬと思うのですよ。これは、それ以上わからぬそうですから私は聞きませんが、主治医みずから五つまり等級外と判断をしたケースというのは、恐らくほとんどないんじゃないか、あるいは、あっても非常に少ないんじゃないか、私はこう思うのですよ。もし、そうだとすれば、さっきも言われましたが、全国で五十年九月で六千百四十三名、等級外がいる。そうすれば主治医の意見・判断というものは余り尊重されていないという結果が、この数字でも出るんではないかと思うわけです。ですからひとつ環境庁、この点は一体、現実に主治医の意見がどの程度、尊重されておるかということを見る上におきましても、この点は一遍、調べてもらえませんか。
  103. 野津聖

    ○野津政府委員 ただいま申し上げましたように、この結果につきましては、認定審査会におきまして主治医の意見を十分、聞いた上で判定をした結果につきまして、私ども把握しているわけでございます。したがいまして、その中に、どのような形で主治医との意見の交換があった等々につきましては、これは私どもとしては非常に把握しづらい問題でもございますし、また逆に、その点につきましては私どもは常々、主治医の意見を尊重してもらいたい、また先ほど来、申し上げておりますように、いろいろな形での審査会と主治医との意見の交換が必要であるというふうな観点に立っての指導を進めておるところであるわけでございます。したがいまして、その辺の食い違い等の問題を個々にあげつらうということも、現在の段階では考えておらないところでございます。
  104. 木下元二

    ○木下委員 これはぜひ私は調べてほしいと思うのですよ。少なくとも私が聞いている範囲では、主治医で管理区分を五にして、そして等級外になったというのではなくて、審査会の方で等級外にしておる、主治医は三級までであって結局、審査会がそういうふうな判断をしておる、ほとんど、そういうケースじゃないかと思うのです。だから、その点はぜひ私は環境庁、調べてもらいたいと思うのです。  環境庁、実はこの点は私、前回、聞いたんですよ、昨年三月に。そのときどういう答弁をされたか。「五十年度に一回十分実際の状況を詳しく調査して、解析をしてみて、納得のいくような解決ができるようにしたい」と答弁をしておる。これは等級外の問題であります。昨年、公害患者の人たちが環境庁に陳情に来ましたが、そのときも同じ問題が出まして、こういうふうに言われておりますね。医師にかかっている者が級外になることはあり得ないことだ、等級外については、ことしの最重点として検討していきたいという趣旨のことを言われておるのですよ。だから一体どういう調査をされたのか、その結果はどうなのか、いかがですか。
  105. 野津聖

    ○野津政府委員 ただいま御指摘ございました患者さんの実態としての、いわゆる生活に対します。その疾病によります阻害度といいますか、障害等級を決めるための問題があるわけでございまして、この件につきまして昭和五十年度、これはことしに入ってからではございますけれども、全国七地域におきまして公害被害者生活動向基本調査ということを実施いたしまして、先刻来、御指摘がございましたように主治医と審査会という問題じゃなくて、やはり患者さんのお立場において、実際に日常生活がどれだけ阻害されておるか、あるいは労働条件がいかに阻害されておるかというふうな面を含めての、いわゆる生活動向の基本調査というものを実施いたしておりまして、現在それをまとめていただいているというふうな形になっているところでございます。(木下委員「聞いているのは等級外ですよ」と呼ぶ)したがいまして、この中に、いわゆる障害等級と、それから実際に御自分の感覚としまして、あるいは御自分の状況といたしまして、生活の程度あるいは勤労の程度に、どれだけ、この疾病が障害を及ぼしているかということをベースとした形での調査を、いま申し上げましたように昭和五十年度公害被害者生活動向基本調査という形で調査いたしまして、当然その中には等級外の方も入ってこられるわけです。実際に自分は、これだけ生活に阻害を来している、あるいは実際に勤労に阻害を来しているという実態と、実際に、その方が等級外になっているということとの差というものが出てくるのではないかという考え方を基本といたしまして、この調査を実施いたしているところでございます。
  106. 木下元二

    ○木下委員 もう時間がありませんので、その調査の結果については改めて委員会の外で詳しく伺いたいと思います。  法制度上の仕組みとしては健康被害補償法二十五条というのがありまして、政令で定める障害の程度に該当しないとの理由で、等級外というふうに決めることができるということにはなっておるわけでありますが、これは少なくとも形式的には、それができるということであります。しかし、この問題というのは法の趣旨から考察されなければなりません。健康被害を受けた者に対して、企業等より民事責任を踏まえた一定の補償をさせるという仕組みが、この制度の趣旨であります。そして、その補償というのは療養の面と金銭補償とがある。この金銭補償のうちには、あなた方の方では慰謝料を含んでおるんだ、こう言われておるわけですね。ところが、この等級外は療養面だけであって、金銭補償は与えられない。しかし、これは等級外ということでも、現実に健康被害を受けておれば一定の金銭補償を受けるというのが当然の筋ではないかと思うのですね。この点はどういうお考えですか。
  107. 野津聖

    ○野津政府委員 御指摘のございました障害補償費につきまして、あるいは子供さんの場合には児童補償手当という形になっておるわけでございますが、これは、その疾病によりまして労働能力が喪失しているとか、あるいは日常生活が困難であるというふうな度合いに応じて、政令で決めておりますランクに従って支給されるという形になっているわけでございまして、その度合いによっての問題になってくるわけでございます。しかし、実際にその疾病があり、あるいは労働能力あるいは日常生活が困難でなくても、当然その疾病にかかっているというふうな形での認定があります場合には、十分な救済の一つの方法としまして医療が受けられるというふうな形あるいは療養手当を支給するというような形で、十分な医療を受けて早く健康を回復していただくというのが、制度の中で、いわゆる等級外の方々は処理されているというふうに私ども考えております。
  108. 木下元二

    ○木下委員 健康被害を受けておれば当然、精神的、肉体的な苦痛というものを伴うわけですね。その苦痛に対する補償というものが慰謝料であります。あなた方はこの金銭補償の中には慰謝料を含まれておるということを言われるのです。いま言わなかったけれども。そうでしょう。そうすると、その理論上、被害と慰謝料というのは結びつくわけですね。健康被害があれば当然それに対する慰謝料も支払えということが結びつくわけであります。それを切断して、被害が軽微なら、その慰謝料などの補償はゼロだ、こういうあなた方の根拠ですね、あなた方の立場に立ったその考え方の根拠というものがわからぬから聞くんですよ。その根拠は一体何ですか。わかりますか、私の言っていること。あなた方は、金銭補償をする、それに慰謝料を含んでいるんだ、こう言うのでしょう。で、健康被害があるわけでしょう、等級は別として。等級外であっても健康被害はあるわけですから、そうすれば当然それに対しても慰謝料を含んだところの金銭補償というものは、額はともかくとして払われるべきではないか、こう思うのです。
  109. 野津聖

    ○野津政府委員 もう御案内のとおり、健康被害によります損害のてん補という形をとられております。この法律そのものが、一つの定型化に立って損害のてん補を行うという形になっておるわけでございまして、この構成上、先ほど申し上げましたように労働能力の喪失度とか、あるいは日常生活の困難度という形で、特級、一級、二級、三級というふうな形でのランクづけをつけているわけでございまして、実際に疾病の状態がありましても、労働能力とかあるいは日常生活に何らかの制限を受けるというふうな場合に給付が受けられるというふうなたてまえが、この制度上とられているわけでございまして、その結果、三級にも該当しないような場合につきましては、その方については、いわゆる障害補償費や児童補償手当は支給されないということになりますけれども、ただ、医療の給付あるいは療養手当の支給というふうな形をとりまして、その方についての、できるだけ早くの健康の回復ということについての処置を行っているということでございます。
  110. 木下元二

    ○木下委員 もう時間がありませんが、あなた方は労働能力の問題であるとか、あるいは日常生活の困難度ということを言いますが、それはもう何か非常に都合よく言われておりますが、慰謝料を含んでいるんでしょう。慰謝料を含んでないというなら、これまた、それで理解しますよ。あなた方は、それを含んでいると言うから私は聞くんですよ。慰謝料を含んでいる以上は当然、労働能力の低下を来さなくても、これに対する支払いは行われてしかるべきなんですね。しかも現実には、この三級と等級外の被害の差というものは紙一重なんです。これはもう専門的検査をして相当深く観察をしなければ差がつけられない。それにもかかわらず等級外なら障害補償なし。これは実際問題としましても非常に不公正であります。そして少なくとも、あなた方の立場に立った法理論上からいっても、この点は合理的な説明がつかないと思うのです。だから、この点は法律改正しなくても、環境庁が定めた障害の程度基準を改めることによって改善をされるし、あるいは、その基準を改めなくても行政指導によって等級外を減らすことで改善されるわけです。大臣、もう時間もありませんので最後に、この点を聞きたいと思うのでありますが、いかがですか。
  111. 小沢辰男

    小沢国務大臣 等級外を認めておって医療費と療養手当の支給をやっているということ、医療費を支給するということになれば健康被害があるじゃないか、健康被害があれば何らかの精神的、肉体的な損害があるじゃないか、だから補償したらいいじゃないか、こういう立論でございます。三級と確かに先生の言うように紙一重だから、したがって、これは特別配慮なんですね、等級外について、そういう補償法から給付をするというのは。そうでありませんと認定審査会で、もっと落としたいのだけれども、落としてしまって、もし何らかいろいろな、やはり医療給付等があった場合に、それは神様じゃないから本当にお医者さんが、水俣のときにも、そうなんでございますけれども、ぴっちり割り切るということについて、やはり、いろいろな悩みがあるから、そこで等級外というようなことで、これはまあ何といいますか患者保護の立場といいますか、被害者の保護の立場から特別に設けた等級外という救済方法なんでございますから、逆にそれを認めているがゆえに、それを先生から今度、逆手にとられまして、等級外といえども、とにかく医療費の支給やるじゃないか、医療費をやれば当然、公害に起因する疾病ということを認定したことになるじゃないか、そうならば精神的、肉体的な損害賠償につながるべきじゃないか、こう言われると、理屈はそのとおりなんですけれども、制度としては、いま申し上げたような趣旨でやっているものですから、それをやはり御理解願って、それはやはり法律制度を運用していく場合には、その辺のところがないと実際の救済にはならぬという点もあって、やっておることをひとつ御理解願っていただきませんと、なかなか、いまやりとり聞いておって、確かにそれは先生にも一つ理屈はあります。しかし、やはりこちらは、そういう制度でないというところを御理解願わなければいかぬということで、いろいろ同じ繰り返しの答弁をしているわけでございますから、そういう意味で御理解願って、ひとつできるだけ、そういうものが少なくなるように、どっちかに、はっきりすべきだと思いますけれども、そこがはっきりできないところの救済の一つの方法だというふうに御理解をいただきたい。
  112. 木下元二

    ○木下委員 もう、これで終わります。私はただ理屈だけを言っておるのじゃなくて、実際問題としても非常に不公正があるので問題を出しておるわけであります。この健康被害の認定を受けておるならば、金額に格差はあっても金銭補償がされる、ただ、ほとんど治癒をした、苦痛はない、そういう場合には金銭補償はしない、こういうのが私は筋の通った形ではないかというふうに思うわけであります。この問題あるいは、そのほか、いろいろ問題が残りましたので、また私は機会を改めて質問することにしまして、時間が来ましたので終わります。
  113. 島本虎三

    島本委員長代理 木下元二君の質問は終わりました。  次は、岡本富夫君。     〔島本委員長代理退席、木下委員長代理着席〕
  114. 岡本富夫

    ○岡本委員 最初に、もういよいよ会期も、あと一カ月もありませんので、今度ロッキード問題で三木さんの態度が非常にあいまいで、そのことによって空転したわけでありますけれども、そこで、これからの審議の進め方あるいはまた重点的な審議、これはやはり行わなければなりませんので、最初にお聞きしますけれども環境影響評価法案すなわちアセスメント法案ですね、これを今国会環境庁長官としてはお出しになるという御答弁があったと思うのですが、これはどうですか、いまからお出しになるのですか、いかがですか。
  115. 小沢辰男

    小沢国務大臣 私は繰り返し申し上げておるように、ぜひ出したいというので、予算関連でもなかったものですから大体、四月の半ばまでにということで鋭意、各省調整をやるように局長以下を督励してやっておったわけでございますが、いまだに、なかなか各省いろいろな意見がございまして調整に手間取っておるわけでございます。できるだけ早く御理解を得て調整すべきものは調整をして出したいという、この意欲は変わっておりませんで、いま本当に一生懸命に取り組んでいるわけでございます。
  116. 岡本富夫

    ○岡本委員 どうも何が何やら、さっぱりわかりにくい。意欲はあるということをおっしゃるけれども、お出しになるのかならないのか。しかも四月の中ごろですと、もう過ぎちゃったですね。五月の中ごろですと、これはもう審議する日程というものが、参議院もありますから詰まってくる。それから調整に手間取っておるということは、新聞報道なんかによりますと住民参加、こういうことに対して何といいますか財界あたりが非常に心配しておるというような報道もなされておるわけですが、一体、調整調整と言いながら結局、流れてしまうというようなことになってもならないわけですが、長官の確信としてどうですか、いつごろ大体お出しになれるか、自信ございませんか。
  117. 小沢辰男

    小沢国務大臣 国会運営の常識上から言いますと、来月の二十四日までの期限でございますから、普通の常識から言えば今日の現状で、もたもたしておって出せるか、こういう御意見はよくわかるわけでございます。しかし、とにかく私どもは困難な法律であればあるだけ、やはり今国会で何とか提案をするということでないと、なかなか各省、協議にも一生懸命になってくれないものですから、たとえ先生方の常識でお考えになって来月早々といえば、もう審議期間がないじゃないか、こうおっしゃるかもしれませんが、しかし私、国会状況というのは国会が御意思を決定をするのでございますが、いままで非常におくれて提案したものが幸いに、いろいろ国会延長等もあって審議がずっと進んでいったという例もございますものですから、いろいろ最後まであきらめないで、私はやはり今国会ということをめどに努力をするのが私の責任じゃないか。また、そういうことで各省庁がいろいろと熱心に協議に早く参加をし、御理解をいただくという方が、主管の責任者としては当然そうあるべきじゃないかと思っておりますので、大変いつまでにとか詰められると苦しいのでございますけれども、とにかく何とか出したいという、もう熱意一本で、いま各省とせっかく調整をしようということで本当に努力をいたしておる、それだけはひとつ御理解をいただきたい。
  118. 岡本富夫

    ○岡本委員 どうも国会が四十句目間とまっておったからといって、ロッキード問題で別にアセスメント法案がとまっているわけではないのですから、どうも私は環境庁が非常に遠慮しているんじゃないかというような面も見受けられるわけです。いま長官から、ぜひ今国会で、会期末であってもこれは継続法案にしてもいいわけですから、ひとつ出すという強い何といいますか意欲があるということだけをお聞きしておきます。  次に、瀬戸内海環境保全臨時措置法、これは臨時措置法ですから大体もう本年で一応、切れるわけですが、これについて環境庁としては、どういうように考えておるのか。また前のように議員立法でいくのか。前に三木さんが長官のときには、これは議員立法でやってくれということで私はやったわけですが、このめどをつけておきませんと、瀬戸内海周辺の各地方自治体は非常に困るわけですね。途中でストップされたり、あるいはまた、どうなるかということで非常に心配しております。これについてはどういう方向を持っていらっしゃるか、これをひとつ長官の決意を承っておきたい。
  119. 小沢辰男

    小沢国務大臣 ことしの十一月になりますと、別に法律をもって定める日にこれが効力を失う、こうなっているわけでございます。この法的な解釈については、大体の御意見として、別に法律をもってしなければ、この法律は続いていくものという考えもあるようでございます。  私は、できるだけ、もう少し内容を前進させたものにして、この法律を瀬戸内海の環境保全を十分図り得るようなものにしたいという点で、各県の知事さんや、それから三大市の市長さん等々と、いろいろお話し合いをしてきたわけでございますが、いろいろな意見がございますけれども、各県の意見の基本になるのは、ちょうど二分の一カットの問題が、どうやら全部、割り当てをして、それぞれ指導をし、また督励をしまして進んできておるものだから、やはり、その様子を見た上でやってもらえぬかというのが基本的な考え方のようでございます。  一方、鋭意進めておりますが、やはり基本計画、法律に基づきます計画は、審議会で恐らくもう一カ月ぐらいはかかるんじゃなかろうかという見通しでございます。計画がどうも出ない。審議会に計画についての御意見の答申をいただかないのに、いま法律改正の問題を国会やその他でいろいろ云々することもいかがかなと、そういう点がありまして、いま実は、どういう答申の内容になるのか、それを受けて、どういうように前向きな、しかも具体的な内容を持った法案がつくり得るのか、いろいろこの辺を検討いたしておる最中でございます。  議員立法か政府提案かとおっしゃいますが、これはもう、いずれにしましても各党の皆様方と本当に合意を得てやらなければいけない問題で、いわば超党派の立法でもございましたし、それを改正するなり延長するなりにしましても、当然これは超党派で御相談申し上げてやらなければいかぬ問題でございますので、形の問題よりは実質的には、これはもう当然この委員会委員長を初め各党の代表の方々と十分、相談をしてつくり、決定をし、そして提出をするなり、あるいは議員立法でやっていただくなりということになるわけでございまして、いずれにしても実質上は各党合意でなければいかぬと私は思っておるわけでございます。そちらの方が重要でございまして、形を政府提案にするのか議員立法にするのかということは、各党の代表の皆さんの合意を得て決めていただいて、私の方は、一回は議員立法でやって、あとは政府に責任を負わしたのだから、政府が今度はおやりなさいと言われれば、それでも結構ですし、その形は私は問わない。むしろ実質的に各党の合意を得た上で、この法律というものは今後とも進むべきものだ、かように考えておるわけでございます。
  120. 岡本富夫

    ○岡本委員 大体いままで見ておりますと、審議会あたりに諮問を出すときは、環境庁としては、こういう方針だというような明示をして出しておるわけですね。審議会で勝手にやってくれというのは、どうも長官としての、また環境庁としての基本方針というものが非常に弱いのじゃないか。しかも各党にこれでやってくれというようなことでは、これはあのときの附帯決議も、次は強力にひとつ政府が検討してやるようにというような附帯決議をつけたわけですがね。だからひとつ、これもさっぱりわからなかったけれども、また次の国会で日切れ法案だから何とか早く審議して早くやれというようなことになってしまっては、また本当の慎重審議はできないわけですから、その点も、ひとつ心配しておりますから申し添えておきます。  次に、イタイイタイ病カドミ説に対しますところの問題でありますけれども、自民党さんの環境部会ですか、これが報告書を出しておりますけれども、まず、その前に長官が五十年二月二十六日、予算の分科会で、このイタイイタイ病について、一年以内に統一的な、学問的結論を出すよう努力するという答弁をされているわけです。これに対して新聞報道では何か一年で洗い直しをするというような記事も出ておりましたけれども、一年以内にということは、もう五十一年の二月を越えましたから、どういうような学問的な検討をなされておるのか、これをひとつお聞きしておきたいと思います。
  121. 野津聖

    ○野津政府委員 ただいま御指摘ございました昨年の二月のときのことでございますが、そのときの考え方と申しますのは、厚生省見解が出ました後の六年間にわたります各種の学問的な成果というものをまとめるということでございまして、現在、従来からございました、いわゆる総合研究班と別の研究班を組織いたしまして、そこで厚生省見解が出た以降の各種の文献的な取りまとめというものを、費用といたしまして約四百五十万でまとめていただいているというところでございます。
  122. 岡本富夫

    ○岡本委員 そうすると、イタイイタイ病あるいはカドミのこの鑑別診断班ですか、こういう先生方と別の学者が集まって、そして環境庁から四百五十万ですか、それだけの費用を出して別に見解をまとめる、こういうことなんですか。
  123. 野津聖

    ○野津政府委員 従来から研究班という組織があることは、いま御指摘ございましたとおりでございますが、この組織の中ではなくて別の組織の研究班ということでございます。したがいまして、別の研究者じゃございませんで、従来からカドミウムの総合研究班がございましたわけでございますが、それと違う組織で、この文献をまとめるということにしているわけでございます。
  124. 小沢辰男

    小沢国務大臣 私が昨年申し上げましたのは、ずいぶん前からやっておるわけでございます。そこで大体、一年ぐらいの間に、これらのものを全部まとめて、そして従来までの研究の成果、結果を一年以内にまとめて、あれしてみたい。しかしカドミの研究というものを、それで終わりだとは考えておりませんので、五十一年度予算でもカドミ並びに、この中毒に関するいろいろな研究費三千二、三百万円も計上して、まだ継続するわけでございますが、従来のいろいろ研究をやっておりましたものを、とにかく全部まとめて一つの文献に仕上げる、そういう意味で三月いっぱいか四月までにはできると思っておったのですが、それが、あと一カ月か一カ月半ばかりかかる。まあ泊まり込んでやったり、いろいろ急がせておるのですけれども、できるのが一カ月か一カ月半かかる、こういう実態でございます。
  125. 岡本富夫

    ○岡本委員 では、その別の組織の研究班といいますか、その人たちの人名を当委員会にひとつ提出してもらいたいと思うのですね。  このときの大臣の答弁では「一年以内にそうした何かの統一的な、学問的な結論が出るように努力」したい。私は、今度の自民党の環境部会の報告書これが発表されましたが、この中身も見ましたけれども、各学者の意見がイタイイタイ病のカドミ説を否定しているというのに近いような表現を相当しているわけですね。ところが、これは神戸新聞ですか、この報道によりますと「学者たちはいずれも「自分の意見と違うとか、受け入れられていないといっているのではない」と断ったうえで、自民党見解の結論の誤りを指摘し「学問が政治に利用されるのは困る」」こういう報道もなされておるわけです。わが党も各学者にいろいろと意見を聞きました。そうすると、こういう学問が政治に利用されては困る、われわれの本当の真意がこの中に織り込まれていないのだというようなお話もございました。また当委員会で、これは何遍か参考人先生方に来ていただいて、この問題は相当審議したことがございますが、こういうところから見ますと、どうも何か自民党さんの方の環境部会の報告書というものは、イタイイタイ病のカドミ説の否定、このにおいが非常に強いわけですね。しかも、長官の一年前の委員会における答弁、ちょうど、その少し前にこういうものが出てくる。あなたも自民党の籍でありますし、主流派か非主流派かわからないのですけれども、何か、こういう世論をぶち上げていくというような感じがしてならない。  そこで、まあ端的に申しますけれども長官の、この自民党環境部会の案に対する考え方、いまの所感、まず、これをお聞きしておきたいと思います。
  126. 小沢辰男

    小沢国務大臣 私は午前中も島本委員にお答えを申し上げたのですが、この報告を政調会長名で私のところへ送られてまいりまして、私が一番やはり重要視するのは、先生お持ちかどうかわかりませんが、七ページ目の「(5)、以上のごとく、」からのものが大体、自民党報告の結論でなかろうか。すなわち「その解明を急ぐ必要があるが、そのためには今後きめの細かいイタイイタイ病の本態究明の調査研究、低濃度長期暴露による動物実験の実施、およびカドミウム汚染地域における腎障害の究明のため、適切な対象をふまえた調査研究の実施が不可欠」である、こういう御指摘が、いわば、この報告の核であろう、こう思いまして、私ども五十一年度の予算で、先ほど申し上げましたように三千二百五十万ばかりの研究費も、また計上してございますし、これからも、いま申し上げた、まあ、あと一カ月半か二カ月以内には出てくるであろう、いままでの全体の調査研究の成果というものも踏まえ、学者の皆さんから、さらにひとつ検討してもらい、また場合によって、これは相当、期間も要しますし、また費用もかかりますが、低濃度長期暴露による動物実験の実施を日本で、やはり、きちっとやってみる必要があるのではなかろうか、かように考えております。これが第一の私の、この報告を受け取った見解でございます。  それから、汚染米対策と土壌対策につきましては、確かに、いろいろな問題点の御指摘がありました点については理解できると考えられるような面もございますが、これらは所管官庁がそれぞれございまして、食品衛生法の基準厚生省が決定をいたしておりますし、それから農林省の米の検査の方式と厚生省の検査の方式との統一という要望等も出ておりますが、これらは、あるいは厚生省のカドミに対する食品に及ぼす影響というもの、あるいは、それが人体に残留して、どの程度の影響を及ぼすかということの見地から当然、考えてまいりますと、それらの統一的な科学的な医学的な見解が明らかになれば、これから検査方法というものも、やはり、きちっと統一していかなければいかぬかなと思ったりしますけれども、これらは、それぞれ主管官庁がございますので、そこで私どもは、カドミ問題があれだけ、いろいろな点で問題にもなりましたものですから、なおひとつ各省の意思統一をよく図りながら、各省それぞれの持ち場で検討をしていく必要があろうというので、この報告を受け取る前でございましたが、カドミ問題の連絡協議会を、環境庁で主宰をいたしまして第一回の会合をやり、その後、主管局長を加えておりますので、この連絡協議会で報告書の中身等についてもよく検討を命じまして、それで要は、これからの科学的、学問的な知見というものが厚生省見解以来、変わっているのかどうか。あるいは新しい食品に対する安全基準のあり方を、どうしたらいいかというような点についても十分ひとつ各省で、それぞれ検討を進めてもらおう、こういうふうに考えておるところでございます。
  127. 岡本富夫

    ○岡本委員 ちょっと長官、聞いておってくださいよ。その前に厚生省、この見解を、ひとつ聞いておきたいのです。食品衛生課長、来ておりますね。あなたも、かわってしまって前の課長でないから、わからないかもわからぬけれども、四十五年の七月七日に米のカドミウム許容基準について厚生省が発表した。それは米の中のカドミの汚染の許容限度を玄米で一ppm、精白米で〇・九ppmと決めた。それは、その前に厚生省で農林省と相談して決めてあった〇・四ppmを実に二倍以上の許容量に緩めたことになるのですね。「何ゆえに米の中のカドミウム許容量が、このように大幅にゆるめられたのか。厚生省はこの試算にあたって、尿中カドミウム排泄量が一日あたり四五マイクログラムという尺度をもとにして、碓氷川、柳瀬川流域等四か所の要観察地域の住民のカドミウム摂取量と尿中カドミウム濃度の相関関係を、ごく少数のデータから導き出して、その延長線上に、尿中四五マイクログラムに相当する一日あたりのカドミウム摂取量を求め、その値から米の許容量を算出しているのである。」「口から食べたカドミウムの三パーセントあまりが尿に出るというのである。その氷山の一角にもあたらない僅かの量から逆算して、カドミウムの一日あたりの摂取量を決めたことに、問題点の一つがある。」これは岡山大学名誉教授の小林先生のレポートでありますけれども「私たちが昨四十四年、萩野氏、高柳氏(高崎中央病院)らと富山県婦中町、群馬県安中市の住民を対象にして、一か月間カドミウムの代謝出納量を調べた結果からみると、尿に出るカドミウム量は摂取したカドミウム量の二〜一一パーセントであって個人差が大きく、その平均は七パーセントとなった。つまり、厚生省発表の二倍量が尿に出ることが判明したのであって、この値を基礎として、厚生省と全く同様な計算をしてみると、米の中のカドミウム許容基準は〇・四ppm未満が正しいという結論に達する。」すなわち四十五年以前の厚生省と農林省で決めた〇・四ppm未満というのが正しいのだということを、ここに発表されておるわけです。私たちも図解をしてもらって、ずいぶんこの計算を見せてもらったのですけれども、結局、厚生省が決めた一ppm、要するに玄米が一ppm、白米が〇・九ppmということは二倍に許容限度を上げたわけでしょう。この点、厚生省はどういうように考えておるのか、ひとつお聞きしておきたい。
  128. 仲村英一

    ○仲村説明員 お答えいたします。  ただいま御指摘のございました〇・四という数字は、それ以前に自然の汚染と申しますか、いわゆるバックグラウンドとして含まれているカドミウム量以上に含まれている場合に何らかの対策をとるべき、いわゆる尺度と申しますか、判断尺度といたしまして、玄米の平均カドミウム濃度は乾燥物として〇・四以下ならば、それは自然の汚染とみなす、環境汚染とはみなさないという意味のレベルとして一応、設定したわけでございまして、この濃度というのは安全とか危険とかいうふうな影響の判断とは直接、結びつかないというふうなことで理解されておるものだと考えております。したがいまして、それとただいま、おっしゃいました米の中の一ppmの基準というのは、おのずから内容が違うわけでございまして、先ほど四十五とおっしゃいましたが、私どもは三十マイクログラム・パーリッターを基準といたしまして、尿中にカドミウム濃度が、これ以上にならないためには保有米中のカドミウム濃度が一ppm未満であるというふうなことで基準が設定されたというのが実情だと思います。
  129. 岡本富夫

    ○岡本委員 時間がありませんから、また次の機会にやりますけれども、この点も、ひとつ長官の方で検討を、もう一度してもらいたいのです。また、環境庁ができる前は厚生省公害関係は全部やっておったわけですから、その点をひとつ、もう一度きちんと検討してもらう。  それから、最後に聞いておきたいのは、イタイイタイ病は、厚生省の見解として、カドミの慢性中毒により腎障害を生じ、次いで骨軟化症を来し、これによるところのイタイイタイ病を形成したというような見解を、たしか四十五年だったと思いますが発表しているわけです。それによって措置をされたわけですが、これを、あなたは否定されるのですか、どうなのですか、それだけ、ひとつお聞きしておきたい。
  130. 小沢辰男

    小沢国務大臣 たしか昨年も、その質問ございまして、私ども厚生省見解を今日、変える必要があるというふうに認識をしておるわけではないという答弁をいたしております。これは当時の知見に基づきましてプラス患者保護を優先するという、あの緊急事態を解決するためにとられた英断でございますから、したがって私どもは、いま、そのほかの、あれが間違いだという科学的知見が得られない限りは、これを変更するということを申し上げるわけにはいきません、こう申し上げておるわけです。ただ、あれ以来、調査研究班がずっとつくられまして、もう何回か毎年いろいろな角度から検討を進めてきております。それが近く一応まとまってくるわけでございますが、要するに、いろいろ学術的な疑問も出ておることでもございますから、十分、調査研究をいたしまして、その結論に基づいて初めて物が言える、こういうことになろうかと思います。
  131. 岡本富夫

    ○岡本委員 最後に、米あるいは水に、このカドミは蓄積をしていくわけですね。ですから、非常にこれは心配ですから、一年ぐらいでまとめて、それで終わりだということではなしに、私は、やはり予防医学の立場からも非常に綿密な調査が必要だと思うのです。いま長官から聞きますと、現在の考えでは厚生省の結論は否定しないということですから、これは一応、安心しておきますけれども、自民党の皆さんや、あるいは財界から押されて環境行政が後退するというようなことのないように、ひとつ特に警告をいたしまして、これで終わっておきます。あと米の問題は坂口委員からお話があると思います。
  132. 木下元二

    ○木下委員長代理 坂口力君。
  133. 坂口力

    ○坂口委員 けさからカドミの問題がかなり出たようでございますし、大蔵委員会との兼ね合いで私ちょっと失礼しておりましたので、あるいは重複するかもしれませんけれども、いまも岡本委員から、このカドミの問題が出されました。私も、この自民党からの「カドミウム汚染問題に関する報告」を読ませていただきました。いまも話に出ておりましたが、ここで意見を聴取したとおっしゃる十一名の先生方が中心になって、昭和四十六年、七年、八年、三年間、環境庁の研究委託を受けて研究なすった論文集等がございますが、それ等も実は見せていただいた。またパンフレット、自民党の方の報告書にも載っております(学者意見の要約)というところの後の方、各学者の意見として(4)から後ずっと出ておりますが、これを見せていただきましても、各学者の意見をずっと見ますと、ここで別にカドミは原因ではないと言っていないのです。なのにこの初めの結論だけが「カドミウム原因説は学者の認めるものではない。」と結論をしてお見えになるわけでございまして、後の各学者の意見は、自民党のパンフレットを見ましても否定はしてお見えにならない。いろいろ問題があるということを言ってお見えになりますけれども、カドミウムを否定された御意見は一つもないわけでありまして、その辺のところに、ひとつ一番最初の「厚生省見解は、表現があいまいであるが、少なくともその骨子であるイタイイタイ病カドミウム原因説は学者の認めるものではない。」この二行がおかしいのであって、これがなぜ、ここで出てきたかということがよくわからぬわけであります。これは環境庁長官にお聞きするのも、自民党だけじゃありませんから無理かとも思います。田中先生にお聞きした方がいいのかもわかりませんけれども、これは環境庁長官、ここに私は一つ問題があると思うのです。  それから先ほど、協議会をつくって、いま鋭意、検討しているというお話がございましたが、環境庁がそういう協議会をつくって、そして始められた背景にも、自民党におけるこの報告書が、やはり大きく作用しているのではないかと私は考えているのです。と申しますのは、発表は、つい先日でございましたけれども、これは一月の二十九日に、この「環境基準に関する小委員会合同会議において了承したものである。」こうなっておりますから、恐らく、これを踏まえて協議会をおつくりになったのではないかという疑いを持っているわけです。その辺のところを、ひとつお聞かせいただきたいのと、もしも、この自民党説についてのお考えがありましたら、あわせてお聞かせ願いたい。
  134. 小沢辰男

    小沢国務大臣 この報告環境部会が一月二十九日にまとめた。それが政調会の正式な決定になったのが四月六日でございます。それはそのとおりなんでございますが、私どもの研究班、先ほど言いましたのは、これは厚生省見解が出た後、毎年ずっとやっているわけです。厚生省時代もやっておりますし、それを引き継いだ環境庁調査研究費を出して、ずっと継続してやっておるわけでございますから、これが出たからといって何か特別に早急に意見をまとめるんだというような、そういう考え方は一切なかった、関連はないわけでございます。  それと、もう一つは、ここの「厚生省見解は、表現があいまいであるが、少くともその骨子であるイタイイタイ病カドミウム原因説は学者の認めるものではない。」という意味は、私はこういうふうに受け取っているのです。このイタイイタイ病は、カドミが人体に入って、それが何らかの腎障害を起こすということは、これは大体、学者が一致しているのですね。ところが腎障害から骨軟化症に至る過程について、まだ、はっきりと、まさに骨軟化症はカドミが腎障害を起こし、それが骨軟化症にいくのだという断定した、学者の大多数の意見が、そこへびしっと、まとまったということは遺憾ながら聞いてないのです。先生も御存じだと思う。そういう意味でイタイイタイ病カドミウム原因説というものが確定されていないという意味で、こういう表現をとっているのじゃないかと私は理解しているわけです。これはもう、みんな知っております。この環境部会の中心の方々は、ほとんど公環特の自民党の委員をおやりになった先生方が中心でございますから、したがって、そういう意味で私どもは、これを拝見いたしておるわけでございます。  ただ、私が先ほど厚生省見解を、いま、ここで変えるというようなことはいたさないと申し上げたのは、イタイイタイ病にこのカドミが何らかの関連があり、それが腎障害から、すぐ骨軟化にいっているのだという学問的な断定がつかない以上、そうかといって、それは全く、このイタイイタイ病はカドミとは関係がないのだという断定もないわけでございますから、したがって、厚生省のあの見解というものは、当時の何らかのかかわり合いがあるのではないかという科学的な知見をもとにして患者保護を優先するという立場から、あの英断を下されたわけだから、いまここで、この関連を全く否定するという学問的、科学的な見解が確立しない以上は、これはいま否定できないわけでございますので、厚生省見解を変えるとか誤りであるとかと言うことはできないから、私は申し上げておるわけでございますので、したがって今後、十分検討して結論がついてから、この問題についての明確な見解を環境庁としてはまとめる、こういう考えでございます。
  135. 坂口力

    ○坂口委員 大臣が最初おっしゃったのは、ちょっと私は意味が違うと思うのです。厚生省見解は、カドミウムの慢性中毒によって「腎臓障害を生じ、次いで骨軟化症をきたし、」と、こう書いておるわけです。「次いで」というのは、腎臓が悪くなって、そこから、さらにまた二次的に骨軟化症を来しと、こう書いておるのではなしに、時間的なずれを言うておるわけです。まず腎臓が悪くなってきて、その次に骨がおかしくなってくる。これは腎臓が悪くなったために、それが骨にくると言うておるのじゃなしに、腎臓が悪くなって、それから時間的なずれがあって骨軟化症を来す、こういう厚生省の見解が書いてあるわけですね。だから別に、このことには変わりないのです。変わりがないと私が言うのはおかしいのですが、変わりないと諸学者は言うておると私は思うのです。確かに腎臓障害があって骨軟化症がまた起こってくる。普通の企業等でカドミウム中毒等があるときには、腎臓障害は起こってくるけれども骨軟化症は起こってこない。だけれども、このイタイイタイ病は骨軟化症がくっついてくる、だからカドミウムだけの原因というふうに考えるのは考えにくいところがあるではないかというふうな、こういうふうな意見が出てきておるわけですね。そこで腎臓が悪くなって、それが原因で二次的に骨が悪くなると厚生省は言うておるのではなしに、腎臓が悪くなるのと骨が悪くなるのとは、これは時間的なずれはあるが同時に存在するということを言っているのであって、別にこれは、いまおっしゃったようなことを言うておるのではないと私は思うのです。  ですから何遍か申しますが、腎臓が悪くなった、それがゆえに二次的に骨が悪くなってくるというふうに厚生省の見解が断定しておるのであるならば、いまの諸学者の意見からすると、おかしいということは言えますけれども厚生省の見解は、そういうことを言っておるのではなしに、時間的なずれがあって骨軟化症を来すということを言うておるだけでありますから、別に厚生省見解が現在の諸学者の意見と誤ったことを言うておるわけではないわけでございます。それを厚生省見解は表現は若干あいまいなところも、それは、むずかしい面はありますけれども、少なくとも、その骨子であるイタイイタイ病カドミ原因説は学者の認めるものではないという、この結論を導き出すのは、先ほど長官がおっしゃったような思考過程をたどっていっても、これは出てこないのですよ。  それから、もう一つ、ついでに専門家の御意見をお聞きしたいと思いますが、ここに十一名、意見を聴取したという学者の皆さん方の書かれてお見えになりますものを、私も見せていただきました。そうしますと、いわゆるイタイイタイ病というものとカドミウム中毒というものとは一応、分けてお考えになっている人が、かなり多いということを気づきました。ですから自民党のこれを見ますと、イタイイタイ病にならなければいいという考え方ですね。イタイイタイ病にならなくとも、カドミウム中毒にはなり得ることがあるわけです。それは後でまた質問しますが、その辺もひとつ、ごっちゃになっていやしないか、こう私は考えます。御専門家の御意見を拝聴いたします。
  136. 野津聖

    ○野津政府委員 長官が御答弁されたことも、私はそれなりに理由があってのことだろうと思いますが、ただいま先生、御指摘ございましたように結局カドミウムがあり、そしてカドミウムによって腎障害が起こる、ここまでは、いわゆる労働衛生上の知見によりまして明らかになっておるわけでございます。ただ現在の、いわゆる微量の長期にわたります人体摂取というふうな問題が、健康あるいは腎障害というものに対して、どれだけの影響があるかというのは一つ問題だろうと考えております。しかも、先ほど岡本委員からもお話ございましたように、いわゆる生物学的な半減期というものを一体どのような形で設定すべきかということも、これもまた議論の対象になっていることは御存じのとおりでございます。  ただ基本的な考え方としまして、いわゆる神通川流域におきますイタイイタイ病というものを前提として取り上げました場合には、ただいま御指摘ございましたように腎臓が悪くなり、そして時系列的な流れでございましょうけれども、骨軟化症という形がとられた。遺伝的な疾病と言われておりますけれども、いわゆるファンコニー症候群ではないかというふうな理解が持たれているわけでございます。したがいまして、腎臓の障害があり、そして時系列的な流れとして骨軟化症が起こってきたということにつきましても、これはまず異論がないだろうというふうに私どもは考えておるわけです。ただ、一つの問題としましては、一体カドミウムの関与度がどれだけだというふうなことが、やはりいま、まだ学問的な議論の中に巻き込まれているというふうな実態があることも御存じのとおりだと思うわけでございます。  したがいまして、私どもも、いろいろと毎年、研究班の先生方に研究をお願いし、また、その発表につきましても、おまとめいただいているわけでございますけれども、その中で見ましても、御指摘ございましたように、いわゆる現在、問題になっておりますようなイタイイタイ病と骨軟化症を起こされ、なおかつ骨折を起こされ苦痛に悩んでおられる、こういう患者さん方の側から見ますと、そこにカドミウムの関与というのは否定できないだろう、これは言えるだろうと思うのです。しかし、その場合にカドミウムの中毒そのものが即イタイイタイ病であるということにつきましては、これは大きな議論があるところではないかというふうに理解いたしております。したがいまして、カドミウムと腎障害、あるいは今度は腎障害といわゆる骨軟化症というふうなことにつきましての詰めというものが当然、必要ではないか。一部の小動物を使いました実験によりましても、骨の変化は起こっているという実験の結果がございます。腎の障害もございます。したがいまして、そこら辺が一番詰めていかなければならない問題、特にこれは学問的に詰めていかなければいけない問題であろう。  それから行政的な私どもの立場としましては、やはり微量の長期にわたります暴露というふうなものが、一体どのような影響を持ってくるかというふうな点につきましては、これは早急に詰めなければいけないだろうと思っておりますけれども、今年度から、いわゆる大動物によります実験も始めていこう。従来までマウス、ラットにつきましての実験はあるわけでございますけれども、大動物によります実験を始めていこうという形で進めてまいっておるところでございます。そういう面での御意見につきましては、私ども当然、先生も御専門の立場でございますが、そう思っておりますので、御理解いただきたいと思います。
  137. 坂口力

    ○坂口委員 いま、おっしゃることは、私の言っているのと同じことをおっしゃっていると思うのです。長官の先ほどのお話と、いまの局長さんのお話とは、ちょっと違うと思うのです。局長さん、非常にお顔をお立てになって非常に玉虫色に言い方をなすっているけれども局長さんのおっしゃっているのと、私の主張したのとは同じことだと思うのです。この辺のところを、やはり自民党さんも、ちょっと厚生省にお聞きして、これを出されるとよかったですな。ちょっと、かっこう悪かった。(「聞いている」と呼ぶ者あり)聞いていてこれを出されたとしたら、大変どこで、どう間違ったかわからぬわけですが。  もう一つ、ここでお米の問題で述べてお見えになりますのは、九ページの真ん中辺に、一日にとります米からのカドミウム量をどれだけ以内にしたらいいかというので、ここに五百ミューグラム以内となっているわけです。それで、これが果たしていいのかどうかというので私もちょっと勉強しました。八千五百円出して、ずいぶん高い本でありますが、これを買ってまいりまして、勉強いたしました。そうしましたら、これはフリーベルグさんという人が書いておる本ですが、五十年間、毎日二百ミューグラムずっとっていくとしますと、大体、腎臓の皮質と申しますから表面の近くの方に二百ミューグラムたまるのだそうです。この人の意見、結果としましては。五十年間、一日に二百ミューグラムずっとっていたら、五十年目ぐらいのところで大体、平均して二百ミューグラム腎臓にたまるのだそうです。そうすると、その辺の二百ミューグラムを超えると、腎臓からたん白が出る、いわゆる腎臓障害が起こってくるのだそうです。その辺が大体、閾値になっているのだそうです。  そういたしますと自民党の説によると、五百ミューグラムずっとっていきますと、五十年間すると五百ミューグラムたまってくるという計算になってくるわけです。これは非常に高い値になりまして、ほとんどと言っていいほど腎障害を起こしてくる値になるわけです。だが、先ほど申しました、そのことが即イタイイタイ病になるというわけじゃなしに、いわゆるカドミウム中毒症状が出てくるという結果になるわけです。ですからカドミウム汚染という問題を、イタイイタイ病即カドミウム中毒という考え方で述べますと、その辺に非常に混乱が起こってくる。この場合には、したがって、これだけの一日にカドミ量が五百ミューグラム以内であれば——これは「以内」と書いてあります。以内であればいいのだ。だから、いまのお米に対する基準は厳し過ぎるのだ、もっと緩めていいのだ、こういう議論なんですけれども、しかし、長い五十年という経緯を見て、しかもカドミウム中毒というものを考えましたときに、いまの基準を果たして安易に緩めていいかどうかという、学問的に問題が出てくると私は思うのです。ここにも一つ大きな問題があると私考えます。この問題は、学会じゃありませんから、ここで議論しても始まらぬと思いますし、そういう意見もあるということを、ひとつ御報告をしておきます。カドミの問題、そういうことで、ひとつ環境庁としても今後さらに研究をしてもらいたいと思うのです。  四十八年まで四十六、七、八年と三年間、いわゆるカドミウムに対する研究費が出ておりまして、私その結果を見せていただきました。それ以降あれは打ち切られておるわけでございますか。もしも打ち切られているとしたら、もう少しこの問題に対する研究を、環境庁が中心になって研究費を出されて進めていただきたいということを御答弁をいただいて、次の問題に移らしていただきたいと思います。
  138. 野津聖

    ○野津政府委員 お手元に入っておりますレポートは、そういうことかと思いますけれども、ずっと継続的に研究費を出しておりまして、公衆衛生協会の方でまとめまして「環境保健レポート」という形で毎年分がずっと出ているところでございます。  また、先ほど長官も申し上げましたように、今年度におきましては大型の動物実験を含めまして、従来まで千二百万程度の研究費であったわけでございますが、それを三千二百万という形にいたしております。それからまた、恐らく御指摘があるだろうと思いますけれども、地域におきます。いわゆるペービー氏たん白尿の問題、これは大きな問題でございますので、これにつきましても健康調査という形で、予算的には約三千二百万の費用を組みまして、これも詰めていきたいというふうに考えております。
  139. 坂口力

    ○坂口委員 それじゃカドミウムの問題はこれだけにしまして、それからもう一つ、先日、私、予算委員会におきましてクロロプレンと肺がんの問題を実は取り上げさしていただきました。これはクロロプレンという物質が肺がんを起こしていると断定をした言い方を決してしたわけではありませんで、クロロプレンを製造している工場の周辺において肺がんの発生率が非常に高くなってきている。しかも、その生産が始まりましてから十年間という経緯を経て高くなってきているというようなことから、疑いを一応、持って調査等をすることが妥当ではないか。これは大臣の出身地であります新潟県のことでございますので、遠征をして大変、申しわけなかったわけでありますが、そういうことを申し上げたわけであります。それ以後、厚生省及び環境庁において、この問題をさらに詰めていただいていると思いますので、どういう経緯になっているかということを、ひとつお聞きをしたいと思います。
  140. 橋本道夫

    ○橋本(道)政府委員 いまの御指摘のございましたクロロプレンの問題でございますが、どういうぐあいな工程から出てくるのかということで、私どもの方の大気の規制課がいろいろ調査をいたしまして、その出てき方は例の塩ビモノマーのような工程のものと似た形で出てくるということを、それによって知ることができました。また、文献をちゃんと集めた方がいいということで、そういうものにつきましても、やはり文献を収集していこうということを、いま努力をいたしております。  それから今度は、現在までのデータそのものは低いデータで、そのものだけでは、私どもはすぐさま、これは大変で調べなければならないという判断を正直なところ持っておりません。しかし、健康影響調査の方は、後で厚生省からお話があると思いますが、厚生省がいろいろ疫学や統計の解析という問題で取り組まれておるということで、その方の結果を注目しておるというところでございます。  あとは、私どもの方の環境大気調査という予算がずっとありますので、その中で、従来のもう決まった汚染物質をやるということでは余り意味がなくなってきましたから、そのような注意をすべきようなものをマークして調べていく、同じような工程がどれぐらいあるかということを調べる、文献を調べるというようなことで、後手にならないような対応をしていきたいということを現在、中でやっておるところでございます。
  141. 本田正

    ○本田説明員 クロロプレンの問題と直接、関係するかどうか問題でございましょうが、肺がんの全国の発生率というものは現在、死亡統計で見る以外ないのでございますけれども、約一万三千人強、年間に死亡しているわけでございます。これは年々、残念ながら非常に増加をいたしております。その原因につきましては、まあ、たばこ等その他いろいろ言われてはおりますけれども、まだ、はっきりしたことはわかっておりませんので、がん研究助成金等によりまして現在、研究が進められているところでございます。  各種の、肺がん等含めましたらいろいろながんが、胃がんとか、その他ございます。そういったがんの状況あるいは循環器疾患、たとえば脳卒中とか脳梗塞、そういった疾患等の発生状況は、どうしてもやはり死亡統計によって知られるわけでございますが、残念ながら、これも現在のところ都道府県単位でしか、われわれは知ることができないわけでございます。先般来、御指摘がございましたような特定の地域あるいは小地域と申しますか、市町村別とか、あるいは郡別とか、そういった統計については残念ながら、ないわけでございます。そこで肺がん、あるいは、その他の疾病もそうでございますが、ある町で多いとか少ないとかという議論が出ましたときに、果たして、それが多いのか少ないのかというのが統計的に判断がしかねる現状であるわけでございますので、実は研究班を設けまして、そこで小地域における特定の疾病の実態把握をやろうじゃないか、こういうことで研究班を発足しつつある現状でございます。さしあたっては、肺がんも含めたいと存じますが、幾つかのがん、それから循環器系の疾患、たとえば脳卒中、脳梗塞、そういったものを小地域単位に、できますならば市町村単位に、もし統計学的にそれが出てこないような細かい、少ない数字であれば、これはあるいは、もっと大きな単位、郡別といったような単位でとらえるべく、そのためにはいわゆる訂正死亡率というものを出さなければいけませんので、人口の流入、流出あるいは町村合併等の補正をやりました上で訂正死亡率を出して全国の発生状況をキャッチしていきたい。それでございませんと、先ほど御指摘がございましたような小地域における、果たして多いのか少ないかということさえもわからない。そういった研究を続けていきたいと存じております。
  142. 坂口力

    ○坂口委員 もう一つ確認をさせていただきたいと思いますが、いま、おっしゃったがん地図なるもの、まあ、がん地図と言っていいかどうかわかりませんけれども、できれば、これは画期的なことだと思います。これがないために、先ほど私が指摘したような問題が起こりましても、それが多いのやら少ないのやら、いままで、わからなかったわけでありますけれども、これがもしも、はっきりいたしますれば、かなり私が指摘したようなことが、はっきりしてくるというように思うわけです。それができれば非常に画期的なことだと思いますが、それはいつごろから着手され、いつごろまでに大体おまとめになる御計画か、それだけ承って終わりたいと思います。
  143. 本田正

    ○本田説明員 五十一年度に研究班を発足するということで、予算の関係がございますので、本格予算が決まってから研究費を用意するということで、準備を実は進めているわけです。いま、おっしゃいましたように、できますなら、そういった小地域単位の統計が出るとすれば、当然、地図にも移しかえることができるわけでございます。非常にたくさんの疾病がございますので、一気にできないと存じますけれども、重立ったがんと、それから循環器疾患ぐらいから手をつけて、しかし具体的にどういう疾病を選ぶかということは、いま研究班の準備会みたいなところで検討を続けてもらっておりますけれども、やはり相当、細かい訂正等もコンピュータを使わないと当然できませんので、やはり一年いっぱいはかかろうかと存じます。その他の疾病につきましては次の年から、また一つずつ幾つか取り上げて継続していきたい、こういうふうに存じております。
  144. 坂口力

    ○坂口委員 ありがとうございました。
  145. 木下元二

    ○木下委員長代理 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。午後四時二十分散会