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1976-05-19 第77回国会 衆議院 外務委員会 第10号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十一年五月十九日(水曜日)     午前十時四十一分開議  出席委員    委員長 鯨岡 兵輔君    理事 坂本三十次君 理事 羽田野忠文君    理事 水野  清君 理事 毛利 松平君    理事 河上 民雄君 理事 堂森 芳夫君    理事 津金 佑近君       加藤 紘一君    木野 晴夫君       正示啓次郎君    竹内 黎一君       萩原 幸雄君    原 健三郎君       岡田 春夫君    川崎 寛治君       三宅 正一君    栗田  翠君       新井 彬之君    渡部 一郎君       永末 英一君  出席国務大臣         外 務 大 臣 宮澤 喜一君  出席政府委員         防衛庁防衛局長 丸山  昂君         外務政務次官  塩崎  潤君         外務省アジア局         長       中江 要介君         外務省アジア局         次長      大森 誠一君         外務省アメリカ         局長      山崎 敏夫君         外務省欧亜局長 橘  正忠君         外務省経済局次         長       賀陽 治憲君         外務省条約局長 中島敏次郎君         外務省条約局外         務参事官    伊達 宗起君         大蔵省国際金融         局長      藤岡眞佐夫君         大蔵省国際金融         局次長     旦  弘昌君         文部省学術国際         局長      木田  宏君         資源エネルギー         庁石油部長   左近友三郎君  委員外出席者         警察庁警備局外         事課長     大高 時男君         外務大臣官房外         務参事官    井口 武夫君         外務省国際連合         局外務参事官  大塚博比古君         外務委員会調査         室長      中川  進君     ――――――――――――― 委員の異動 五月十九日  辞任         補欠選任   粕谷  茂君     木野 晴夫君   中村 梅吉君     加藤 紘一君   三池  信君     萩原 幸雄君   赤松  勇君     岡田 春夫君   金子 満広君     栗田  翠君   大久保直彦君     新井 彬之君 同日  辞任         補欠選任   加藤 紘一吉     中村 梅吉君   木野 晴夫君     粕谷  茂君   萩原 幸雄君     三池  信君   岡田 春夫君     赤松  勇君   栗田  翠君     金子 満広君   新井 彬之君     大久保直彦君     ――――――――――――― 五月十九日  北太平洋のおっとせいの保存に関する暫定条約  を改正する千九百七十六年の議定書締結につ  いて承認を求めるの件(条約第一一号)(参議  院送付) 同月十八日  ILO条約第百三十七号の批准に関する請願(  河上民雄紹介)(第五三三〇号)  ILO条約第百十一号、第百三号及び第八十九  号の批准等に関する請願(小濱新次紹介)(  第五三三一号) 同月十九日  ILO条約第百十一号、第百三号及び第八十九  号の批准等に関する請願阿部昭吾紹介)(  第五四七六号)  同(佐野進紹介)(第五四七七号)  同(嶋崎譲紹介)(第五四七八号)  金大中拉致事件真相究明に関する請願(岩  垂寿喜男君外二名紹介)(第五七四三号) は本委員会に付託された。     ――――――――――――― 五月十八日  日中平和友好条約締結促進に関する陳情書外  三件(第二  二〇号)  朝鮮の自主的平和統一促進に関する陳情書外十  五件(  第二二一号) は本委員会に参考送付された。     ――――――――――――― 本日の会議に付した案件  国際通貨基金協定の第二次改正の受諾について  承認を求めるの件(条約第一〇号)  国際連合大学本部に関する国際連合日本国と  の間の協定締結について承認を求めるの件(  条約第一二号)  日本国大韓民国との間の両国に隣接する大陸  棚(だな)の北部の境界画定に関する協定及び  日本国大韓民国との間の両国に隣接する大陸  棚(だな)の南部の共同開発に関する協定の締  結について承認を求めるの件(第七十五回国会  条約第六号)  国際情勢に関する件      ――――◇―――――
  2. 鯨岡兵輔

    鯨岡委員長 これより会議を開きます。  国際情勢に関する件について調査を進めます。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。水野清君。
  3. 水野清

    水野委員 けさの読売新聞に、ソビエトノーボスチ通信社東京特派員アレクサンドルマチェーヒンという人が警視庁公安部逮捕されて、これは数日前からこの記事が出ております。これについてまず伺いたいのですが、逮捕の理由について、時間がありませんから簡単にやってください。
  4. 大高時男

    大高説明員 ただいまお尋ねノーボスチ通信社東京支局特派員マチェーヒン記者逮捕でございますけれども、これにつきましては、五月の十四日、警視庁におきまして、刑特法第六条、すなわち「合衆国軍隊機密を侵す罪」の未遂ということで逮捕いたしております。  実は、十二日の夜、池袋におきまして視察警戒中の警視庁警察官が挙動不審の外国人二名を発見いたしまして、職務質問を行ったわけでございます。その結果、一人は提示いたしました米軍身分証明書によりましてA一等兵曹ということが確認されたわけでございますけれども、いま一人の外国人につきましては、パスポートの提示を拒否いたしまして、逃走しようといたしましたので、その場で出管令の第二十三条、すなわち旅券等の不呈示ということで現行犯逮捕をして取り調べをやったわけでございます。後で、逃げた方がマチェーヒンであるということがわかったわけでございますけれども、同時に、任意同行いたしました一等兵曹の話から、マチェーヒンがこの一等兵曹、すなわち現在ミッドウエーの乗組員をやっております一等兵曹に対しまして、アメリカ海軍機密事項要求した、ただ警察逮捕されたためにこれの入手にはまだ至らなかった、こういう段階でございます。こういうことで逮捕いたしております。その後、五月十五日に勾留が認められまして、現在もなお鋭意取り調べ中という段階でございます。
  5. 水野清

    水野委員 事件をはしょりますが、このマチェーヒンが持っていた手帳から何人かの日本人の名簿が出てきた。電話番号ども出てきていた。その電話番号の中に、中央官庁代表番号があった。その他、場合によっては中央官庁の職員がこれに関連しているかもしれないというような新聞記事が出ておりますが、取り調べの中ですでにそういうものが出ているわけですか。
  6. 大高時男

    大高説明員 マチェーヒン逮捕いたしました際に、私どもの方でも資料はいろいろと、本人が持っておりましたものを現在調査をいたしておる段階でございまして、何分身柄勾留捜査中という段階でございますので、捜査の詳細についてはここで申し上げるのをちょっと差し控えさせていただきたいと思います。
  7. 水野清

    水野委員 確かにロッキード事件捜査の最中でということで、内容を差し控えたいというお話ですが、それでは外務省に伺いたいのですが、この事件は明らかに日本の国法を犯したスパイ事件になる可能性があるのですが、外務省としてソビエト政府に対して何らかの措置をとっておられますか。あるいはこれからおとりになる準備をしておられますか。
  8. 橘正忠

    橘政府委員 ただいま警察当局の方から御説明がありましたような事実を連絡を受けまして、ソ連側に対しましては、外務省の方からその事実関係日ソ領事条約に基づきまして通報いたしております。その後捜査当局からの連絡を受けまして、所要の事実関係についてはソ連側に随時通報しております。  ソ連側からは、その間これについて事実無根であるとか、あるいは即時釈放を求めるというような申し入れもありましたけれども外務省としては、本件は国内法令に基づいて現在取り調べ中であるということをソ連側に明確に伝えてございます。今後につきましても、ただいま取り調べ中でございますので、その結果を待ちたいと考えております。
  9. 水野清

    水野委員 取り調べ中の話ですから、これ以上伺っても無理だと思いますが、話題を変えて、実は最近ソビエトの、これは札幌総領事館があるのですか、函館に総領事館があるのですか、そういう関係者北海道漁業団体に対して、北方領土周辺漁業条件について考慮してもいいから、北方領土に対する要求を取り下げたらどうであるかとか、あるいはそういうことをやるならば場合によっては漁業条件を緩めてやってもいいというような接触があるといううわさが非常にあるわけであります。こういうことについて外務省水産庁その他と——実は水産庁までおいでいただく準備がなかったのですが、聞いておられますか。
  10. 橘正忠

    橘政府委員 ソ連札幌総領事館を持っております。  私どもの耳にも、公式ではございませんけれども日ソ間における漁業のわが方の操業というものを円滑に行うためには、いろいろ日ソ間での漁業分野における親善というものも促進する必要があるのだというような動きを示している向きもあるということでございますが、ただ、北方領土についての要求を緩めるとか緩和するというようなことを直接的に結びつけた話としては私ども特に伺ってはおりません。
  11. 水野清

    水野委員 実は私の方もきょう具体的な話で申し上げたいのですが、ちょっと調査が不十分で、次の機会に申し上げたいのですが、私の方には、北方領土問題と引きかえに北海道漁業者あるいは漁業団体に対して、漁業条件と引きかえに一つ工作をやっているというような話をたびたび関係者から聞くわけであります。これはひとつ外務省警察庁水産庁その他で十分御連絡をおとりになってやっていただきたいと思います。この北方領土の問題というのは、これは自由民主党から共産党まで各党にわたる、日本の全政党にわたる一つの悲願でありまして、こういう一つの、たとえ外交官であろうとあるいは領事館員であろうと、そういう人たちがそういう国内工作によって世論の操作をされるということは、独立国としては私は非常に心外だと思います。しかしきょうは具体的な事実を私も十分そろえておりませんから、今後次の質問機会にやらしていただきます。  外務大臣最後一つ伺いたいのですが、最近マスコミ誌上CIAの問題が非常に取り上げられております。CIAの問題についても、私は日本占領下にあった後どういう経過があったかつまびらかでありませんが、やはり独立国としてこのCIA活動あるいは韓国KCIA活動、こういったものに対して厳重な態度でやっていかなければならないのは当然であります。しかし、同時に、日本で活躍している諜報機関というものは、私は決してアメリカCIA韓国KCIAだけではないと思うのであります。これはほかの国にも当然あると思うのであります。そういう意味において外務大臣の総括的なお考えを承って、私の質問を終わりたいと思います。
  12. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 私どもとして、一国がわが国において組織的な活動をするということであれば、大使館でありますとか総領事館でありますとか、あるいは何々通商部でありますとか、当然われわれのところにそういう届け出があってなされなければならないと考えておりまして、そういうことをせずに組織的な活動を国の機関としてするということはあってはならないことだと考えております。そのような意味では水野委員の言われましたように、何国のどういう動きであるとにかかわらず、そのようなことがあってはなりませんし、また組織としてでなくても、仮に個人ということであっても、わが国法令に触れるようなこと、あるいはわが国の国民あるいは国の法益を侵すようなことがあってはならないということは当然のことでありますので、外務省としてもその点は十分に注意をいたしております。
  13. 水野清

    水野委員 それでは最後に申し上げますが、このマチェーヒン事件についても、事件進展いかんによっては、当然外務省からソビエト政府に対して抗議をなさるものだと思いますが、私はこの点についても外務大臣から強い御決意をいただけるだろうと思いますが、いかがでしょうか。
  14. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 先ほど捜査当局からお聞きのように、全貌というものがまだ公になっておりません。それを十分確認いたしましてから考えなければならない問題と思っております。
  15. 水野清

    水野委員 以上で質問を終わります。
  16. 鯨岡兵輔

    鯨岡委員長 水野君の質疑は終わりました。  次に河上民雄君。
  17. 河上民雄

    河上委員 アメリカ上院情報活動特別調査委員会というものがございまして、有名なチャーチ氏が委員長のようでありますが、そこが公表した報告書の中で、アメリカ海軍秘密調査機関、NISが日本情報収集活動を行っていることが明らかにされました。そのことはもうすでに御承知かと思うのでありますが、このことはわが党の岡田委員質疑をされますので私は触れません。  一方、陸軍の側でもこのたびLSDを使っていわば生体実験を行っている特別な部隊が、一九六二年夏から同年十一月にかけて日本にいたということが発表されました。これは発表する側の手落ちのためか、その部隊が所在した地名について削除しておるのでありますけれども、たまたま消し方が不十分であったために、インジャパンとタイプされていることが確認されておるのでございます。この情報が先般報道されておりますけれども、こういうようなLSD生体実験を行うような特殊部隊というものは日米安保条約で認められるというふうにお考えでございますか、それとも、これはやはり安保条約のたてまえからいっても認めるべきでないというふうに政府はお考えでありますか、それをまず最初にお伺いいたします。
  18. 山崎敏夫

    山崎政府委員 ちょっとおくれてまいりまして失礼いたしました。  このLSDの問題に関しましては、御承知のとおり米国の上院情報活動特別委員会報告書が四月二十六日に発表されまして、この問題に関して触れておるわけでございます。  さらに、米陸軍生体実験に関する調査報告書というのは、その翌日に発表されております。この報告書におきましてもLSDの問題が書かれておる次第でございます。ただ、何分にもその詳しい——後者報告書の方が詳しく書かれてあるわけでございますが、これは陸軍省におきましてつくりました報告書新聞その他に閲覧させたという形で公表いたしておりまして、最終的な本印刷報告書はまだ発表されておりません。それで、それを入手いたしました上でわれわれとしても検討いたしたいと思っておる次第でございます。  その陸軍省において閲覧させました報告書の中で一部消し忘れたところがあって、そこにインジャパンと書いてあるというふうな報道もあった次第でございますが、われわれはその報道を知りまして陸軍省に赴いて現物を見たわけでございますけれども、その現物の中にはそういう消し忘れたとおぼしきところは見当たらなかった次第でございます。したがいまして、この点についてわれわれとしては何とも確認できない次第でございます。そして場所、地名その他については若干の削除がある報告書でございます。これは未完成の報告書でございますが、それを読みました限りにおきましては、日本においてこういう実験が行われたか否かということは確認し得ない次第でございます。  次に、そういうLSD日本に本当に貯蔵されておったのかどうかということでございますが、この点についてもわれわれとしてはいまだ確認いたしておりません。この点についてもわれわれとしてもさらに調べてみたいと思っております。
  19. 河上民雄

    河上委員 局長はそういう報告書入手次第というような表現を使ったり、あるいは陸軍省で閲覧を認めたときに見に行ったというようなお話でございますが、一体外務省としていわゆるアメリカ政府に正式に照会をしたということを意味しておるのか。じゃ具体的に何月何日だれを通じてそういう照会をしたのか、また、肝心な部分削除されたという疑いが濃い現在、削除部分公表を求める考え政府にはないのか、お伺いしたいと思います。
  20. 山崎敏夫

    山崎政府委員 先ほど申し上げましたように、この公表の仕方はちょっと変わっておりまして、オリジナルのものが陸軍省にあって、それが新聞の方その他にお見せするという形で発表されたわけでございます。そこで、そういう報道がありましたので、大使館員を早速差し向けまして、実は筆写をしたような始末でございまして、完全なテキストはわれわれとしては入手し得なかったわけでございます。ただし、これはいずれ本印刷にして発表するということを米陸軍省は申しておりますので、われわれはその本印刷した最終報告書を至急入手したいというふうに考えております。ただ、先方としてそういう一部削除の形で発表したものを、全部それを復元したものを要求すると申しましても、これは日本だけの問題ではなく、各国にもまたがる問題であるようでございますので、これを求めることは困難ではないかと存じます。
  21. 河上民雄

    河上委員 大臣にもお伺いいたしますが、こういうLSD特殊部隊というようなものが日本活動するということは、日米安保条約から見て認められることであるのか、また、日本政府として許されることと考えておられるのか、その点政府態度をお伺いしたいと思います。
  22. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 それは、LSD特殊部隊というのは一体何であろうかということが、実はお尋ねを承りましても全くはっきりいたさないと思います。兵器としてのLSDというようなことはちょっと考えにくい問題でございますから、したがいましていまの河上委員お尋ねに正確にお答えいたすことがちょっとできないように思いますが、いずれにしても、安保条約の本筋から大変にそれたような話でありますと、合法、非合法ということより、適当であるかないかというような問題はあり得ましょうけれども、しかし、LSD特殊部隊、そういうものがあり得るだろうかということが私にはよくわかりません。政府委員が申し上げたように、そういうものが日本にあったとか、そこを消し忘れたとかいうことはどうも事実でなかったらしいと申しますか、そういう確認はできなかったのでございますので、いよいよその実体がどういうものであるかはっきりいたしませんので、申しわけありませんけれども、明快にお答えをいたすことがどうもできないように思います。
  23. 河上民雄

    河上委員 この問題、いまアメリカ政府からもやがて報告があるというようなお話でございますが、いずれにせよ、われわれに非常に重大な疑惑を与えたということと、これがいわば諜報活動の一環として存在するといたしますと、いまいろいろ問題になっておりますCIA活動を初めそういうものと関連いたしますので、これにつきまして政府としてぜひ照会をし調査をして、それを国会報告をしていただきたいと思いますが、その点はいかがですか。
  24. 山崎敏夫

    山崎政府委員 先ほどから申し上げておりますように、まだ最終報告書入手しないのでございますが、これを詳細に検討いたしまして、日本においてこういうものが本当に使われておったかどうかということについて、われわれとしても疑わざるを得ないというふうな個所がございましたら、その上で必要に応じてアメリカ側照会いたしたいと存じます。
  25. 河上民雄

    河上委員 それでは、この問題はこの程度にいたしまして、先般来問題になっております日米共同防衛の新しい協議機関を来月中に設置をするということが決められたと伝えられておるのでありますが、それをするためには、その前提になります日米安保協議委員会を開く必要があると思うのでありますが、それはいつ、どこで開く予定でございますか。
  26. 山崎敏夫

    山崎政府委員 仰せのとおり、この防衛協力の問題については、現在日米間で話し合いを行っておりますが、この問題に関して研究協議の場を設けるということが昨年の八月の坂田防衛庁長官と当時のシュレジンジャー国防長官との間で合意されておりますので、その正式の研究協議の場を設けるためには、安保協議委員会を開く必要があると存じます。この点につきましては、外務省防衛庁といろいろ御相談を申し上げておりまして、さらにアメリカ側とも打ち合わせておりますが、双方責任者が都合のよい時期というものはなかなか発見できませんので、われわれの見通しといたしましては、この国会が終わりましてからできるだけ早く開きたいというふうに考えております。
  27. 河上民雄

    河上委員 この新しい協議機関の性格またメンバーについてはいろいろ新聞でも報道されておりますが、重ねてその内容についてお伺いをいたしたいと思います。
  28. 丸山昂

    丸山政府委員 私の方からお答えを申し上げます。  まずこの委員会任務でございますが、この委員会は、いまアメリカ局長から申し上げましたように、昨年八月の三木総理フォード大統領との会談の際の共同新聞発表第四項に出ておりますこと、それからその後引き続き八月の末に開かれました坂田シュレジンジャー会談、この結果を踏まえまして、日米安保条約並びにその関連取り決めの効果的な運用を達成するために、日米防衛につきまして、そのあり方について研究協議をするということがその任務でございます。メンバーといたしましては、事務レベルメンバーでございまして、日本サイドアメリカ局長それから私、防衛局長、それと統合幕僚会議事務局長でございます。またアメリカサイド大使館次席公使、それと在日米軍参謀長というところでございます。また必要に応じまして太平洋軍司令部などからの参加もあり得る、こういうふうに考えております。
  29. 河上民雄

    河上委員 そこで協議をせられることはいろいろあろう。いまお話になったような線でやるんだろうと思いますけれども、そこでPXLの問題について話し合われるでしょうか。というのは、去年坂田シュレジンジャー会談、つまりこのようなロッキード問題が表面化する以前において、両者の間ではP2JでなくP3Cにせよというような議論もそこで論議されたりしたということは、当時公然と報道されているわけでございます。これは昨年の八月二十九日の会談内容でありますけれども、いま言ったような趣旨から言いました場合に、PXLの問題がここで論議されるというようにお考えでいらっしゃいますか。そういう予定がありますか、また予定がないのか、その点を伺いたいと思います。
  30. 丸山昂

    丸山政府委員 昨年の坂田シュレジンジャー会談におきましては、当方から日本防衛構想と、それから今後の防衛計画についての概要を話しまして、先方了解——了解ということはあれでございますが、当方からの説明をいたしましたのでございまして、これに対してシュレジンジャーの方からは何らのコメントはございませんでした。要するに、アメリカサイドから、いま御指摘のありましたようなPXLをどうするとかいうような問題、個別的な問題については何らコメントはございませんでした。  それから、今後の問題でございますが、ここで研究協議をされますテーマは、有事の際の日本防衛について日米双方でどのように作戦行動と申しますか、これについての調整を図っていくかという基本的な大綱をここできめていくことでありまして、個々の兵器をどうするかという問題については、ここの直接の論議の対象にならないというふうに考えております。
  31. 河上民雄

    河上委員 そういうときに自衛隊がP2Jを使用し、在日米軍がP3Cを使用しておる、こういうようなことにつきまして、いわば線をそろえるというようなこと、どういう機種を採用するかということとは、また別に大綱の中に入らないのかどうか。恐らく当然入るという前提で昨年は論議しておった、論議というかいろいろ防衛庁としても議題のたたき台になる材料として出しておったんじゃないかと思うのですが、そういう点はいかがですか。
  32. 丸山昂

    丸山政府委員 この問題はむしろ日本防衛力整備計画の問題に関連してくる問題でございまして、日本がこれからどのような装備を中心にして防衛力整備を図っていくかという問題にかかわってくる問題だと思います。この防衛協力はそれぞれが、アメリカアメリカサイドで、そのグローバルな展開のうちの一部として日本に装備の展開、部隊の展開を行うわけでございますし、わが方はわが方の日本の安全を守るための必要な防衛力整備を行い、その一環として各種の装備の整備を図っていくという、こういう立場であるわけでございまして、その場合に、日本防衛力整備を行います場合におきましてどのような装備の導入がいいかどうかということは、これは日本が独自に決めていくべき問題だと思います。その際に、アメリカからの協力、支援を必要とするようなこともあるかと思います。こういう点については、わが方の防衛力整備の過程において個々にアメリカ協議をして、もしその支援を得られるならば、それによって今後わが方の防衛力を整備していくということになるかと思うわけでございます。  防衛協力委員会と申しますか、まだ名称もはっきり決まっておりませんけれども、この場におきましてはそういう個々の問題ではなくて、有事の際に日米間でどのような作戦行動についての調整を図っていくかという大綱をここで決めていくという場でございますので、いま申し上げましたように次元の違う問題でございますので、ここで個々の装備についてどうするかというようなことは恐らく議題にはならないだろうというふうに考えるわけでございます。
  33. 河上民雄

    河上委員 われわれはそういう新しい協議機関というものができることについては賛成をしているわけでは全くないのでありますけれども、現にそういうことが行われるという以上、お尋ねをしているわけでありますが、そうするとPXLの問題は議題としては用意していない、こういうふうに理解してよろしいわけでございますか。
  34. 丸山昂

    丸山政府委員 繰り返しますように、PXLわが国防衛力整備計画の問題でございますので、ここの、直接日米防衛協力委員会の議題になるべきものではないというふうに考えております。
  35. 河上民雄

    河上委員 一応そういうふうに承っておきます。  それではもう一つ、ちょっと話題を変えますけれども、最近、これは新聞で見たのでありますけれどもアメリカ側が中国に軍事技術援助、電子機器とか機械などですね。そういうような軍事技術援助を行う場合に、日本はどういう反応をするか、その反応を打診したというような報道を私どもは見ております。そこで、その記事によりますると、日本の高官に四月中ごろアメリカ政府が打診した、こうなっておるのでありますが、そういうような事実があったのかどうか、まず外務大臣にお伺いしたいと思う。
  36. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 ここにおります限りで、だれもそういう事実を知っておらないそうでございます。
  37. 河上民雄

    河上委員 要するに、外務大臣も御存じと思うのでありますが、「フォーリン・ポリシー」という雑誌の去年の秋季号にピルスブリーという人が、米中軍事同盟と言っていいのかどうか知りませんが、ミリタリー・タイと言ってクエスチョンマークがついておりますが「US・チャイナ・ミリタリー・タイ?」こういう題で論文を書いております。私も読みましたが、余り具体的な事実は何も書いてないし、非常な推測とそういう可能性についていろいろ述べておるわけですけれども、しかし「フォーリン・ポリシー」という雑誌の性質上、やはりそういう意向がアメリカ政府にもある程度あるんではないかという一つの疑いといいますか、そういうものを起こさすに十分な論文であると思うのでありますが、先般そういうことがちょっと出ておりましたので大臣お尋ねしたようなことなんでありますが……。大臣はこういうような、その中にありますUS1国産飛行艇とか七四式戦車というようなものについて、これは日本の国産のものでありますけれども、中国はその技術に対して非常に強い関心を示しているというようなことが出ておるのでありますけれども、そういうようなことは事実上あるのかどうか、それを伺いたいと思います。
  38. 中江要介

    ○中江政府委員 ただいま河上委員御指摘のようなことは、私ども報道関係のものからは読んでおりますけれども、それを裏づけるようなものは、私どもに関する限り、いままでのところ何もございません。
  39. 河上民雄

    河上委員 それでは、これは政府筋がそういうことを表明した、こういうふうにかなり断定的に出ているのでありますが、全くそういう事実はないわけでございますね。  それでは、仮定としてこういうことがあったらということを聞くのもどうかと思いますけれども大臣、あの論文はお読みになったかどうか。もしお読みになったとしたらどういうような感想をお持ちになったか、ちょっと伺っておきたいと思います。
  40. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 中国が進んだ技術をいろいろ導入したいと考えておりますことは、これは恐らくそのとおりであって、たとえばイギリスからスペイエンジンあるいはその技術を導入するというようなことは、これは私がせんだってイギリスの外務大臣と話をいたしましても、事実のようでございます。しかし、恐らく中国自身は、そういういわゆる先進技術等に学びたいという気持ちはあっても、基本にあるのは自主路線を歩くということに違いないと私は思うのでございまして、ですから、かつてアメリカからボーイングの飛行機を買ったこともございましたね。ですが、それは自分でそういう技術をつくり上げようという一つの過程であって、アメリカと仮に軍事的な何かの、いまおっしゃるタイでございますか、そういった道を中国は歩まないのではないか、そういう考え方をしていないのではないかというふうに、判断をしろとおっしゃれば、私はそう考えます。
  41. 河上民雄

    河上委員 それでは、この後岡田委員からまた御質問がありますので、私はこれで終わりたいと思います。
  42. 鯨岡兵輔

    鯨岡委員長 河上民雄君の質疑は終わりました。  岡田春夫君。
  43. 岡田春夫

    岡田(春)委員 時間が限られておりますので、先に問題点を出しまして、それから伺ってまいりたいと思います。  きょうの問題点は、私自身の問題であります。アメリカの海軍の秘密調査機関であるNISですか、これが私をスパイしておった、こういう問題が実は先日の新聞報道されております。もしこれが事実だとするならば、私から言うならば主権の侵害である。それだけではない、国政調査権の侵害であり、私自身の人権の侵害である。この三つの点で、徹底的にこれは究明をしていただかなければならない。こういう点で質問をするのですが、問題はこれであります。  五月十七日付の朝日新聞夕刊九面に「反戦事務所付近に出没 横須賀米海軍の情報活動 車とめ張り込み 写真とられた代議士も」とこういう見出しのもとに記事が出ております。これを全部読んでまいりますと時間がかかりますので、要点部分を申し上げますが、「昭和四十九年十月十六日、岡田春夫社会党代議士が横須賀でミッドウェー乗組員に会い、」云々ということ、それに基づいて、その後で「なかでも岡田代議士の横須賀の行動については、VVAW事務所訪問時の様子や同代議士が使った黒ぬりの車などが写真撮影されたといい、同事務所に出入りしていた水兵らが米海軍側調査機関に尋問された時に示された、と当時のVVAW駐在員ディック・エングル氏が語ったこともあった。」云々とこうなっています。  この点で、昭和四十九年十月十六日、私が横須賀の某所においてミッドウエーの乗組員に会いましたのは事実であります。しかし、この後の部分については、この新聞報道が間違っている。というのは、VVAW事務所訪問のときの様子や云々、写真になっているといいますが、私はVVAW事務所には訪問しておりません。なぜならば、この辺はスパイ活動が行われているということを感じましたので、訪問をいたしておりません。しかし事実を調べてまいりますと、そのときの写真が示されたと、こういうことになっておりますから、この事務所訪問のときの写真ではなくて、何らか私は公道上、公路においてスパイ活動の結果として写真撮影をされているのではなかろうか。こういう点が実はきわめて問題点でございます。  こういう点をぜひともここではっきりしてもらわなければならないのでございますが、この根拠として、まず伺ってまいりたいのは、アメリカ海軍の秘密調査機関であるNISというものの行為、その法的な根拠をまず伺いたい。私が調べている限りでは、地位協定十七条十項の(a)、(b)に基づく軍事警察の行為、これを法的根拠にしているのではないか、こう思うのですが、条約局長、きょう来ておりますか。このNISの調査情報活動、簡単に言えばスパイ活動です、これは法的にどういう根拠に基づいて行われているのか。
  44. 山崎敏夫

    山崎政府委員 ちょっと事実にまたがる問題もございますので、私からまず御説明さしていただきますが、NISという機関在日米海軍の各部隊に所属することは承知しております。われわれはその詳しい実態は内部機構の問題でもございますので承知しておりませんけれども、その主要な任務としましては、米軍人や軍属の犯罪とか、規律違反の問題を取り扱う機関であるということは承知しておる次第でございます。そしてこれがそういう意味活動しているようでございますが、この点が地位協定の第十七条第十項に言う軍事警察に当たるかどうかということについては、われわれとしてはその点は明確ではございません。ただ普通の軍事警察としては、陸軍で言えばMP、海軍で言えばSPという組織があるわけでございまして、それで十分活動ができておるはずでございますから、あえてそういうものと考える必要はないのではないかというふうに考えております。
  45. 岡田春夫

    岡田(春)委員 明確でないとおっしゃるなら、それ以外の根拠法というものがあり得ますか。どうですか。
  46. 山崎敏夫

    山崎政府委員 軍隊が存在しておりまして、日本に駐留しております以上、その組織の規律を維持するという必要性は認めなければならない。その規律を維持する機関一つとしてそういうふうなサービスというものがあることは特別に問題にするに当たらないというふうに考えます。
  47. 岡田春夫

    岡田(春)委員 私は問題、問題でないなんて言ってない。どういう法的根拠があるのかということを聞いているのですよ。法的根拠を明らかにしてください。
  48. 山崎敏夫

    山崎政府委員 ただいま申し上げますように、安保条約、地位協定に基づいて米軍の駐留を認めております以上、その組織の規律を維持するためにそういう機関があることは、安保条約、地位協定の規定及び目的から見て特に問題にするに当たらないということを申し上げているわけでございます。
  49. 岡田春夫

    岡田(春)委員 あなた問題にするって、私は法的根拠を聞いているのです。  それじゃ伺いますが、地位協定の十七条以降にそれに該当すべき条項がありますか。あるのならはっきり言ってください。
  50. 山崎敏夫

    山崎政府委員 御質問の趣旨を私十分理解していないかもしれませんが、地位協定においてそういうふうな存在を禁ずるものはないということでございます。
  51. 岡田春夫

    岡田(春)委員 だめですよ、あなた、わかっているくせにそんなことを言っちゃいけませんよ。地位協定の中の十七条に軍事警察の問題が規定されているのでしょう。それ以外に軍事警察の問題がありますか、どうですかと聞いている。ないはずですよ、あるならあるとおっしゃいよ。
  52. 山崎敏夫

    山崎政府委員 御質問の趣旨を十分に理解しなかったことは申しわけないと存じます。  御指摘のとおり、地位協定において軍事警察に関して言及しておりますのは、地位協定の十七条でございます。
  53. 岡田春夫

    岡田(春)委員 それじゃこの場合に日本人を対象として捜査することができますか。
  54. 山崎敏夫

    山崎政府委員 先ほどから申し上げておりますように、米軍の主要関心事はその構成員及び軍属の犯罪及び規律維持でございます。それを主要目的として活動しておるものと考えております。したがって、日本人に関して強制力を伴うような捜査というふうなことは、一般的に言えばできないことであると考えます。
  55. 岡田春夫

    岡田(春)委員 地位協定の十七条十項の(b)項、それは施設、区域以外の場所、基地外の場所ですね。その場合に軍事警察を行う場合には、「必ず日本国の当局との取極に従うことを条件とし、かつ、日本国の当局と連絡して使用されるものとし」云々、問題はこの点にあるのです、私の問題も。米軍だけではなくて、日本との関連において基地外においてそういう警察行動をとる場合においては、取り決めに基づいてアメリカ日本の当局と連絡し合うことによって初めて行動ができる。当然私を対象にして捜査をしたとするならば、この規定がなければならないはずなんだ。こういうような行動というものが、先ほど朝日新聞部分を読みましたが、写真で私を撮った、VVAWの訪問はしておりませんから、この部分では写真ではないはずだ。恐らくそうすると、どこか横須賀の別の場所か、あるいは東京の場所かにおいて私を撮影しているはずだ。こういうことがもし行われるとするならば、いま言った十七条十項の(b)項において日本の当局との連絡があったと見なければならないし、その取り決めに基づいてこれが行われた、こういうように見なければならない。日本の当局がこの事実を知っておられるのかどうなのか。きょうは警察の担当当局が見えておりますから、こういう事実があったのですか、どうなんですか。
  56. 大高時男

    大高説明員 本件や行政協定に基づく取り決めの問題につきましては、実は国際刑事課長が主管でございまして、私、外事課長で直ちにこれは自分の主管するところではございませんので、ちょっと答弁を差し控えさせていただきたいと思いますけれども
  57. 岡田春夫

    岡田(春)委員 課長、さっき始まる前にこの部分だって見せたでしょう。そのときまでなぜお調べになって答弁されない。
  58. 大高時男

    大高説明員 先ほど説明を伺いました際には、岡田先生の方でどういう御質問をされるのか、私ちょっと見当がつきませんで、そのような事実を把握しておるのかどうかという点の御質問になるのであろうかというふうに考えておったわけでございます。
  59. 岡田春夫

    岡田(春)委員 それじゃこの事実は把握しておられますか、どうですか。
  60. 大高時男

    大高説明員 私どもの方ではいま岡田先生御指摘のような事実は把握いたしておりません。新聞を見まして初めて承知したような次第でございます。
  61. 岡田春夫

    岡田(春)委員 それでは、これはアメリカ局長でなく、条約局長に聞いておきましょう。条約局長、よく聞いてくださいよ。地位協定十七条十項の(b)項、この場合には基地外において軍事警察を行う場合は、いいですか、日本の当局との取り決めに従うことを条件とし、しかも日本国の当局と連絡をしてこれが行われる、こういうことになっていますね。こういう場合に、もし日本の当局との連絡もなしに行われたとするならば、協定違反であるかどうか、それが一つ。  もう一つは、取り決めというものがあることになっているのだが、この取り決めというものはどういう内容のものであるか、この二つの点を御答弁願いたい。
  62. 中島敏次郎

    ○中島政府委員 軍事警察の基地外における作用という問題になりますれば、先生御指摘のように十七条十項にその規定があるわけでございますから、(b)の規定に従って軍事警察が作用せられるということになるかと思いますが、先ほどアメリカ局長お答えしておりますのは、その軍事警察の作用というような問題ではないのではなかろうか、事実関係がわからないわけでございますから、ということで御答弁をしておるものというふうに私は理解しております。
  63. 岡田春夫

    岡田(春)委員 私の質問、わかりにくいですか。どうして、あなた、これならば条約の解釈を伺いたいと言っているのですよ。もし日本連絡をとっていなければ違反ですねと言っているのが一点。その取り決めがあるのならばその取り決めの内容は何ですかと聞いている。それを聞かしてくださいというのだ。具体的な事実は、アメリカ局長は買って出ているのだからアメリカ局長に聞きますよ。あなたに条約解釈を聞いているのだよ。答弁してください。
  64. 中島敏次郎

    ○中島政府委員 先ほどお答え申しましたのは、基地外における警察活動ということが行われたのであるとすれば、十七条の十項の(b)がその規定でありますから、その十七条十項(b)には「日本国の当局との取極に従うことを条件とし、かつ、日本国の当局と連絡して使用されるものとし、」という規定がございますから、その場合にはその規定に従って行われることであろうと思うわけでございます。申しわけないのですが、この十項(b)の場合の取り決めなるものが具体的に何であるかは、私ちょっと知識を持ち合わせておりませんので、その点についてのお答えはできかねるわけでございます。
  65. 岡田春夫

    岡田(春)委員 いまの条約局長、納得できないじゃない。それに従わなかったら違反ですねと聞いているのでしょう。そんな、いつまでもこればっかり言っていてもしようがないが、そういうように意識的にずらかしちゃいけませんよ。外務省というのはどうもそういう傾向がある。私、前から外務委員をやっていたのだが、どうもそういう悪い傾向があって、そういうのはこの機会に改めてください。  時間がもう二、三分しかありませんので、私は最後大臣質問をいたしまして終わりにしますが、私はここでこの記事を非常に重視しておりますのは、先ほど申し上げた「同事務所に出入りしていた水兵らが米海軍側調査機関に尋問された時に」その写真が示された、ここまではっきりしているのなら、何らかの私に関する写真があるはずです。VVAW訪問時の写真であると言われているが、それは事実ではない。とするならば、それ以外のところでの写真を撮っているはずだ。恐らく横須賀における公道上かあるいは横須賀のどこかにおける問題かあるいは東京の問題か。これは明らかに人権の侵害ですよ。憲法十三条の肖像権の侵害と言わなければなりません。また私が国政調査をするための調査権に対して、何らかの干渉を行うという意図に出たとしか考えられません。これは明らかに主権侵害であり、調査権の侵害です。この事実は徹底的にお調べをいただきたい。それから警察当局にも、先ほど自分の担当課ではなかった、こういうお話ですが、関係担当課の方からも調べてこれは御報告をいただきたい。山崎アメリカ局長、この事実調べてください。そして私はここで要求します。私はきょうことさらにここで発言をしたのは、この事実について公文書にとどめておきたいからですよ、明らかにしておきたいからですよ。ですからあなたの方も、もう国会が何日かで終わった、国会が済んだ後に私のところをお訪ねになって、口頭で御説明などをされるのは私はお断りいたします。文書で回答してください。アメリカに対して調査をされた結果を、アメリカ局長いいですか、文書をもって正式に回答してください。警察当局も文書をもって回答してください。その点を含めて外務大臣質問をいたしまして、私は時間がいっぱいになりましたので終わらせていただきます。
  66. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 岡田委員から自分に関係のある問題だということで御質問がございましたから注意深く伺っておりましたけれども、ただいま伺いました限りでは、警察権の行使があったとおっしゃっていらっしゃいませんし、また伺いました事実だけからは私どもにはそのように判断ができません。  次に、写真を撮られたかもしれない、それは肖像権の侵害であるというお話がございました。岡田委員にいたしましても私どもにいたしましても、公人でございますから幅広い政治活動をいたしております。その政治活動の間に写真を撮られるということは、だれが撮りましても私自身でしたら意に介しません。ある程度公の政治活動をいたす者にとりましては、それはいわゆる一私人と違いまして、そういうことは当然あり得ることだ、差し支えないことだと私は思っておりますけれども、もし岡田委員が肖像権が侵害されたとお考えになりますならば、それはそのような民事に訴えられる方法があるであろうと思います。  それから、岡田委員のそのような政治活動について、いろいろ記録がとられておるというようなこと自身が、何か政治活動に対する干渉であるというふうにお考えのようでございますけれども、これも先ほど申し上げましたような意味で私はそれ自身は干渉であるとは考えません。公人としては、自分の動きというものが写真に写されたり、あるいは記録されたりすることはこれは当然覚悟をして心を用意しているべきことであって、だれがそうしようと私はそれによって自分の国政調査権が侵害されたというふうには考えません。  ただし、それは私の考えでございますけれども、もし岡田委員が何か非常に不愉快な思いをされたということでございますと、これは違法、適法ということを超えまして、そのようなことはあってはならないことだと思いますから、もしそのようなことがございましたら、それは私どもから米国に対しましてそのような事実を挙げまして注意は喚起いたしますけれども、ただいま伺いました限りで私ども調査をすべきものはないと考えます。
  67. 岡田春夫

    岡田(春)委員 それじゃ大臣調査しないとおっしゃるのですね。調査しないなら、しないとおっしゃい。
  68. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 もし具体的にもう少し事情を伺うことができまして、そこに人権に対する干渉あるいは国政調査権に対する干渉あるいは法令に違反するような行為、警察権の行使等が具体的にあるではないかということでございましたら、それは承りまして調査をいたします。しかし、そうではないが非常に不愉快な思いをしたとおっしゃることでありましたら、それはそれなりに注意を喚起しておきたいと思います。
  69. 岡田春夫

    岡田(春)委員 あなたは主観的に不愉快であったかどうかということを言えとおっしゃるのですか。私は協定違反の疑いがあるから調べなさいと言っているのですよ。調べたくないなら調べなくてもいいですよ。疑いがあるから調べなさいと言っているのだ。だから協定を出しているんじゃないか。あなたは調べたくないならそれでもいいですよ。ともかくあなたはおかしいじゃないか。私は、アメリカべったりなんて言いませんよ、アメリカの秘密機関べったりの答弁ですねと言わざるを得ない。アメリカにだっていい人いるでしょう。あなた、NISをことさらかばうような態度をおとりになるのは大臣として今後御注意を願いたいと思います。調べたくないなら調べなくたっていいですよ、私は別な方法をとりますから。警察当局はその事情関係は御報告いただけますね。
  70. 大高時男

    大高説明員 ただいま先生のお話を伺いまして、いわゆる通常、警察米軍の軍事警察と申しますか、そういうものとの間に行います取り決めというのは、たとえばパトロールの問題とか基地警備に関連してどうであるといったような問題がございますけれども、ただいま先生のおっしゃいましたことが警察活動であるかどうか、これはちょっと疑問の向きがあると思います。ただ、私どもの方で従来米軍との間でどういう取り決めをやっておるかということについては、後ほど調査の上、御報告申し上げたい、かように思います。
  71. 岡田春夫

    岡田(春)委員 これで終わりますが、私、最後に意見を述べて終わります。  主権侵害あるいは国政調査権の侵害、個人の人権の侵害、この危険があるから調査をしなさい、こういうことを私はいま質問したのに、個人的な感情が不愉快であるならば調査してあげるが、そうでない限りには調査してあげませんと、主権の侵害その他の危険性を個人的な問題にすりかえて、それを、しかも外務大臣という特権の地位に立って、不愉快なら調査してあげましょうなどと言うような外務大臣には、私はもう調査を依頼しません。そんな、みずからの特権に基づいて日本の主権の問題を勝手に使うようなことは、私は許すことはできません。  私は、以上意見を述べて終わりにします。
  72. 鯨岡兵輔

    鯨岡委員長 岡田春夫君の質疑は終わりました。  津金佑近君。
  73. 津金佑近

    ○津金委員 私も大変時間の制約がありますので、幾つかの問題にしぼってお伺いいたしたいと思います。  ただいま問題になりました米海軍情報機関、NISが、沖繩、横須賀、岩国などにおいて秘密情報収集活動をしておったという、この問題に関する米上院情報活動調査特別委員会報告について、外務大臣は、伝えられるところによると、これは主として日本人を対象としたというよりも、米軍内の反戦の動きについての情報活動収集を主たる目的とするもので、広い意味での軍規に関する情報収集活動のようだ、したがってNISの日本国内での活動が、わが国の国内法などに抵触しないのではないかという感触を得ているという趣旨の発言をされたと伝えられておりますが、これはそのとおりでございますか。
  74. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 当初新聞等に、いわゆるNISというものが、日本で盗聴をするとかあるいは信書を開封するとかいうような方法で情報活動をしたかのごとき報道がございました。そこで私どもとしては、今回の報告日本に関する部分を電信によりまして最初に取りまして、それをしさいに検討をいたしました。その結果としてそのようなことを申し上げたのであります。その後、日本に関しない他の部分、西独等々もほぼ報告内容がわかりましたので、今回の報告がどういう性格のものであるかということが大体わかったわけでございますけれども、つまりチャーチ委員会でいたしましたことは、軍というものがアメリカの国内で情報活動を一般市民に対してしてよろしいものであるかないかという問題意識がありまして、それについてはいわゆる軍とシビリアンというものが分かれているアメリカのたてまえからいって、  一般に、軍がシビリアン、一般市民に対して調査をする、情報活動をするということは本来のことではない、そういう前提があり、ただ、場合によっては軍自身の組織そのものが脅かされるという限りにおいては、あるいはそのようなことがあり得るかもしれないといったようなことについて、非常に詳しくいろいろなことが述べられてあるようでありまして、それでは、海外において軍がそのようなことをすることはいいか悪いかというところに論が及びまして、西ドイツあるいは日本における例が挙がっておる。そのうちに、冒頭に申し上げましたように日本部分があるわけでございます。  日本部分について述べられておりますことは、津金委員の言われましたように、いわゆるベトナム戦争等々のときに反戦運動というものがあった。反戦思想を持っている軍人というものは、アメリカの海軍としてはそれは少なくとも迷惑な存在でございましょうから、そのようなことをアメリカの海軍としては自分の軍としての組織、規律を維持する意味で関心を持って情報をとっておる。そのような会合には、アメリカ軍人ばかりでなく日本の人々も時としては参画するということがございましたでしょうから、そのような意味では、全体が監察の対象になったということは事実のようでございますけれども、はっきり書いてございますことは、西ドイツ等と違って、いわゆる盗聴であるとか信書の開封であるとかいうことは日本においてはなされていないということが書いてございますので、全体として、この間に不当なものがある、法令に違反したものがある、あるいは日本人の法益が侵されたということが示されているというようなことはない、こういうことを申したのであります。
  75. 津金佑近

    ○津金委員 時間の点もありますので、なるべく御答弁は簡潔にお願いをしたいと思います。  それで、いまのことにも関連するわけでありますが、たとえば米軍内の、また米軍に所属するそういう反戦団体、そういうものに対する情報収集活動であっても、いわゆる基地外、施設及び区域の外でこういうものが行われている。これは、たとえば横須賀市民グループ等に対する情報活動などなどは、明らかに区域外で行われているわけでありますが、こういうふうなことがやはり自由気ままに行われるということになれば、これはたとえ米軍内の反戦団体であったとしても、これは非常に重大な問題になるのではないかというふうに私は感ずるわけであります。  私は、結論的に言って、これはやはり明白な内政干渉あるいは主権侵害にかかわる重大な問題だというふうに考えるわけであります。それでは、どういう根拠に基づいていわゆる基地外のこうした反戦団体に対する情報活動が許されるのかどうか、この点の根拠についてひとつお伺いいたしたいと思います。
  76. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 日本憲法におきましては、法令に許された範囲で情報をとることはだれでも自由であります。
  77. 津金佑近

    ○津金委員 もう一遍重ねてお伺いしますが、いまのことはきわめて重要でありますが、米軍が基地外においてそういうふうなことをやるのは、日本憲法に照らして自由である、幾らやっても構わぬ、こういうことですか。
  78. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 そういうようなことは、どういうことでしょうか。
  79. 津金佑近

    ○津金委員 あなたが非常に重要なことを言われたので、もう一度確認の意味で聞いておるわけです。
  80. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 日本憲法のもとにおきましては、法令に許された方法で情報を集めることは自由であります。
  81. 津金佑近

    ○津金委員 わかりました。  それでは、先ほどの問題との関連において、NISの情報収集活動がいわゆる米軍内の反戦団体、すなわちあなたが当初言われておった広い意味での軍規に関する情報収集活動という枠を超えて、明白に日本人並びに日本の団体及び日本の大衆運動それ自体を対象とした場合、これはどういうことになりますか。そういうことを許す法的根拠というものはどこにあるわけですか。その点についてお伺いします。
  82. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 日本の大衆運動を対象にして何をすることがいい、悪いと言っていらっしゃるのか、その大事な部分お尋ねいただきたい。
  83. 津金佑近

    ○津金委員 いわゆる情報収集活動です。
  84. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 それは先ほどお答えに入っております。
  85. 津金佑近

    ○津金委員 もう一度お伺いいたしますが、そうすると、アメリカ情報機関であるNISが、米軍内の反戦団体に関する情報収集だけではなくて、基地外で日本人及び日本の大衆運動を対象とした情報収集活動をおやりになることもこれは一般的に許される、こういうことですね。私はこれは非常に重要な問題だと思いますから、もう一度お答え願います。
  86. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 具体的にはその大衆運動にどういう人が参加をして、それがどこからどこへ行ったとか、あるいはどういう目的であるとかいうことは、大衆運動そのものがそれを秘密にしたいという考えでない限り、これはパブリックノーリッジであると私は思います。
  87. 津金佑近

    ○津金委員 アメリカの上院の司法委員会の国内治安分科会が、御承知のように「米軍内部の組織的破壊運動」と題する報告書を明らかにしております。これによりますと、NISは一九七四年、七五年にかけて横須賀、岩国、沖繩での情報活動の対象に日本の原水爆禁止運動、いわゆるベ平連と呼ばれている団体の運動、こういう国内平和運動及びその関係者、たとえば沖繩の原水協の責任者である芳沢弘明氏あるいは小田実氏、こうした関係者の名前が挙げられており、公然とこうした日本人の活動も監視の対象となっているという事実が明らかにされておるわけであります。これはやはり日本の国内の大衆運動に対する明白な干渉以外の何ものでもないというふうに考えられるわけですが、こうしたことも政府としては公然とこれを認められるわけですね。
  88. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 たとえば小田実氏がベ平連の運動の有力な一員であるというようなことは、御本人もしばしば言っておられるのですし、これはもう周知の事実であります。そのことをそのように確認し、あるいはどこかへ報告したところで何でそれが運動の干渉になるのか、そこが私はわかりません。
  89. 津金佑近

    ○津金委員 あなたはそういうふうにおっしゃって問題の焦点をはぐらかそうとされておるわけでありますが、たとえば、現実の事態として岩国においては、原水禁運動の中で原水禁世界大会、この平和行進に対しジープでこれを尾行する、あるいはその宣伝内容を録音にとる、あるいは沖繩の青年代表を迎えて開かれた岩国の医師会館における集会の参加者を写真撮影をする。これは一般市民を写真撮影をしておるわけであります。こういう問題はもう明白に個人並びに大衆運動自体を対象とし、これに直接的な影響を与える情報収集活動でありますが、こうした中で、その行進や集会に参加した中小零細業者がその後基地内の仕事から締め出される、こういうふうな事態も現実に起こっているわけですね。そしてそういう中で、米軍内部だけではなくて、岩国基地周辺の日本関係のブラックリストのようなものがつくられているのではないかということが公然の秘密と言われておるわけであります。また、こういうふうな問題はすでに現地の関係者からもいろいろな機会を通じて訴えられている問題でありますが、外相はこういう事実も当然のこととして認められるわけですか。あなたのお話によると、こういう活動をやること自体、そしてこういう結果が現実に起こっておるという事実についても、これを当然のこととして容認される、こういうことになりますね。
  90. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 スピーカーで演説をするのを録音することは私は少しも不法だと思わないので、録音されたくないのならばスピーカーでやらなければいいだけの話である。そういう運動に参加するのも日本市民の自由でありますから、どういう人が参加したかということをリストにしたところで、秘密活動をやっているわけではないのでありますから、それはブラックリストと言うに当たらない。したがって、その間に法令に違反する方法においてそのようなことが行われた、あるいは特定の日本人の法益が損なわれたというようなことがない限り、問題にする点はないと私は思います。
  91. 津金佑近

    ○津金委員 市民が自主的に開いた集会の参加者を写真撮影する、こういうことも構わぬとおっしゃるわけですね。そしてその参加した者をリストにして、いま言った営業上に重大な影響を及ぼすような事態というものも現実に起こっているわけでありまして、あなたは宣伝カーでの演説をとるというそのものだけに限って言われましたけれども、そういう問題についても一向に差し支えない、こういうお考えですか。
  92. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 公の場で集会をすれば、それが写真に撮られるということは、恐らく近代人ならば当然あり得べきこととして考えているはずであります。撮られたくないのならば屋内でやればいいのであって、個人の家へ入ってきて写真を撮ったというような話でなければ、それだけでは、その間にプライバシーが侵されたということがあるとは私は思わないのです。  それで最後の、何かそれによってさて商売上の圧迫を加えたか加えないかということになりますと、ここは一つ微妙な問題になると私は思いますけれども、これは事実関係がわかりませんから、それだけではちょっとお返事ができません。
  93. 津金佑近

    ○津金委員 あなたはいま屋内でやればいいと言われましたが、私が先ほど申しましたように、岩国医師会館の内部で開かれた屋内の集会なんです。あなたのおっしゃるように、その集会の中で演説をしている人や何かを写真に撮る、これは常識的にあり得るでしょう。しかし私がいま指摘しているのは、それへの一般市民の参加者をひそかに写真撮影する。しかも、これをアメリカ情報機関が撮影をしておる。こういう事実が再三にわたって行われ、問題になっている、こういう事実を言っているんですよ。屋内ですよ。こういうことも差し支えないわけですか。
  94. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 これは津金委員らしくもないお話ですけれども、私が屋内と申しましたのは個人の支配に属すべきという意味であって、公会堂であろうと何々会館であろうとそれは公の場でありますから、そういう意味で屋内、屋外ということを申したのではありません。そして、そこへ参加した市民は自分の自由で参加したのでありますから、恐らくそのことが秘密にものをやっていない限り写真が撮られるということはあり得ることだし、そのことが御本人の意思に反しない限り、私は何も問題になると思いません。
  95. 津金佑近

    ○津金委員 アメリカの国内治安分科会の報告の中に名前を挙げられておる沖繩原水協の理事長である芳沢弘明氏はこの問題に関して、きわめて重大な迷惑を受けたということでこれに対する抗議の談話を発表しております。もう時間がありませんからこの内容についてここで述べることはできませんが、この報告に述べられていた事実は明白な事実無根であるということを具体的な事実を挙げて抗議をしておるわけであります。私は、本来、こうした本人に対して秘密裏にこのような調査活動を行うということ自体が、個人の基本的な人権及び利益に対する重大な侵害であるというふうに考えるわけでありますが、このように本人が重大な不利益をこうむって正式に抗議の意思を表明している。こういう事態を引き起こすような活動は、やはり基本的に許すべきでない。こういうことを許すならば、これは大きな意味において日本の主権そのものに対する重大な損害をもたらす問題に通ずるものであって、この点に関しては、日本政府は明確な意思をもって、アメリカ側に対して、こういう内政干渉にわたる事態を中止するよう抗議されてしかるべきだというふうに考えるわけでありますが、この点についてはどうお考えになりますでしょうか。
  96. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 私は法令には本来詳しくないのでございますけれども、個人についての信用調査、あるいはいろいろなことについての、身辺についての調査というものは、それ自身がプライバシーを害するものであるかどうかということについて、私はそれ自身でははっきりした判例というようなものはないのではないかと思います。現にそういうことを営業にしておる業が成立しておることでございますから、ですからそれが適法に行われておる限り、それ自身がプライバシーの侵害になるかどうかということは、これはその方の法令の専門家にお聞きをいただきませんと私からにわかにお答えのできない問題でございます。  ただそのような法令違反とかいうことと別にしまして、先ほど私が岡田委員に申し上げようとしましたのは、仮にそうでなくても、非常な不愉快な目に遭った、迷惑を受けたというようなことはあり得ることでございます。それは仮に法令違反でなくても、やはり事と次第によっては、そういう関係人たちに注意を促すに値することではないかと思いますので、具体的にそういうことがございましたら、それはそれを判断いたしまして、私ども場合によって注意をすべきことかもしれないと思っておるわけです。
  97. 津金佑近

    ○津金委員 時間がもういよいよなくなってまいりましたので、いまの問題をもう少しはっきりさせたい点がありますが、先に進めます。  先ほど申し上げた米上院分科会の報告書によれば、いまの沖繩の芳沢弘明氏に関する部分に、一九七四年十二月十四日、日本政府筋は、沖繩の反戦活動家である二人のアメリカ人が、日本側スポンサーの一人を芳沢であると述べた旨日本政府筋が通報してきた、そのことによってこれが明らかになったということがこの中に記載されておるわけであります。これが事実なら私はきわめて重大な問題だというふうに言わざるを得ないわけでありますが、日本政府米軍に対してこのような情報提供活動というのをやっていたのかどうか、まずこの事実関係についてお伺いいたします。
  98. 山崎敏夫

    山崎政府委員 ただいま挙げられました報告書につきまして、私たちはまだ入手しておりませんので正確なところは存じておりません。その報告書入手いたしました上でいろいろと分析してみたいと思いますが、いずれにいたしましても、外務省としましてはそういうものには直接に関与しておらない次第でございます。
  99. 津金佑近

    ○津金委員 関与していない、すなわちそういう情報活動をしていないということであれば、この報告はきわめて重大な問題だというふうに言わざるを得ない。もしやっておったらこれまた重大な問題であります。したがって、この問題については、先ほど申しました芳沢氏自身のこの問題に対する明確な意思表示というものも行われておりますし、この問題に関しては、詳細に事実を調べた上、その結果について当委員会に御報告をいただきたいと思うのです。そして、もしこういうことが事実でないとするならば、これは当然日本政府として、こうした報告内容に対して抗議されてしかるべきだというふうに思いますが、その点はどうお考えになりますか。
  100. 山崎敏夫

    山崎政府委員 報告入手いたしまして、その内容をしさいに検討いたしまして、日本政府筋云々というふうな記述がございましたら、これはそういう方面を担当しております国内官庁にも問い合わせてお調べいただくようにいたしたいと思います。
  101. 津金佑近

    ○津金委員 もうすでに時間をオーバーいたしましたので、終わりにしたいと思いますが、私は、やはりこうしたいま申しましたような日本人、特に日本のそうした大衆運動を対象としたこういう情報収集活動、これは明らかに主権の侵害、内政干渉にわたる不当な行為である、こういうふうに言わざるを得ないわけであります。そして、それに対していまの外務大臣及びその他の答弁の中では、これが国内でやはり自由に行われることを事実上容認される方向がはっきり出されておる。私どもはこういう問題を突き詰めていきますと、こういうことが自由に許容される根源というものは、やはり安保条約及びこれに基づく地位協定そのものにあるというふうに感ぜざるを得ないわけであります。  その点については、こういういわゆる日米軍事同盟から離脱をして、そうしていかなる軍事同盟にも所属しない平和中立の道こそ、日本の真の国益を守る道であるということをわれわれは従来から主張しておったわけでありますが、私は最後に、こうしたNISの日本国内での特に日本人を対象とした情報活動は、安保条約でいうところの日本と極東の平和と安全にどのような関係があるのか、私は基本的に何ら関係のない問題であって、きわめてこれは容認すべからざる問題であるというふうに考えざるを得ないわけでありますが、この点についての政府の御見解をはっきり承っておきたいと思います。
  102. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 遺憾ながら所見を異にいたします。
  103. 津金佑近

    ○津金委員 もう時間が参りましたが、きょうのきわめて限られた時間でありますが、この問題に対する政府考え方が非常にはっきりしたというふうに思います。  きわめて重大な問題でありまして、この問題につきましては、なお引き続き追及を続けていくという点をここで申し述べて、時間ですから、これで私の質問を終わります。
  104. 鯨岡兵輔

    鯨岡委員長 津金君の質疑は終わりました。  次は、永末英一君。
  105. 永末英一

    ○永末委員 本月十二日、ナイロビにおきますUNCTADの会議へ出席しておりましたわが木村代表が北朝鮮の代表をレセプションに招聘をいたしました。これは外務大臣も事前に御承知でございましたね。
  106. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 さようでございます。
  107. 永末英一

    ○永末委員 昨年外務大臣が国連へ行かれましたときには、あなたの主催のレセプションには北朝鮮の代表を招聘しなかったのですね。
  108. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 はっきり記憶いたしませんけれども、いたさなかったと思います。と申しますのは、UNCTADの会議におきましては、北朝鮮は正式なメンバーでございますし、国連におきましてはそうでないというところに差異があるというふうに考えております。
  109. 永末英一

    ○永末委員 しかしあなたの御見解では、昨年の十二月十日の本院における私の質問に答えて「北朝鮮を国として考えるかどうかということについては」と言って、非常にその点について微妙な発言をしておられるわけですね。しかしUNCTADに関する限りは国家だ、こういう意味で北朝鮮国の代表を招聘された、招待状を出された、こう承ってよろしいですか。
  110. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 そこで、メンバーというふうに申し上げたわけであります。
  111. 永末英一

    ○永末委員 UNCTADのメンバーは国家ですか。
  112. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 北朝鮮を国家と認めておる国は数十カ国に上っております。わが国は認めておりませんけれども。そこでUNCTADのような会議をいたしますときには、これは北朝鮮は北朝鮮としての相当な機能を持っておることはもう疑いがないのでございますから、そういうものがこういう会議に入ってくることは、会議の目的に合致するものであるということで入っておるのであろうと思います。したがって、承認をしておる国々にとっては北朝鮮は国家として扱われておるわけですし、わが国のような国は国家とは考えていない、しかしUNCTADのメンバーであることにわれわれは少しも異存はない、こういう立場だと思います。
  113. 永末英一

    ○永末委員 わが国はまだ北朝鮮を承認しておりませんから国家として認めている状態ではない、しかしUNCTADの仕事に関する限り、国家と同様の機能を営む政治体であることはお認めになっておられるからこそ招待状を出された、こういうことですね。
  114. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 余り私こだわるつもりはございませんけれども、国家と同様な機能ということは、厳格には私の口からは申したくないので、相当な他の国家が持っておると同じ程度の機能は持っておるというふうに認識はしてよろしいと思います。
  115. 永末英一

    ○永末委員 いずれとも、UNCTADの場でその北朝鮮の代表に対してわが方の催す会合に招聘をされたということは、政治的に接触を図る意思が宮澤外務大臣にはあるんだ、こう判定してよろしいね。
  116. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 その政治的ということの意味でございますけれども、従来北朝鮮とは経済であるとか文化であるとかスポーツであるとか、御承知のように人的な交流をいろいろやっておりまして、それはふえることが望ましいと思っておるのでございます。今度のもそういう一つの接触であるかとおっしゃれば、私はそういうことになろうと考えますけれども、それを政治的な接触という表現は、これも私としては使わない方がいい、こう思っております。
  117. 永末英一

    ○永末委員 政治的というのはきわめて広範な概念でございまして、国家の活動も政治的でございますが、国家を含んだぼやっとした関係を言いあらわすのも政治的でございますので、私の申し上げましたのはそのぼやっとした方でございます。  さてその席で北朝鮮側の金代表から、木村代表に話し合いたい、こういう訪問の意向を連絡したけれども木村代表は断った、これはあなたの方で断らしたんですか。
  118. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 いま実は当面の責任者がおりませんのですが、聞くところによりますと木村代表の判断において、それは自分の判断で、どう申しますか、この際適当なこととは思わないという判断をされたように承知しております。
  119. 永末英一

    ○永末委員 この種の会合で、日本国と北朝鮮の代表とがともに加わっているような会合では、接触を今後もされる御意思はございますね。
  120. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 差し支えなかろうと思っております。
  121. 永末英一

    ○永末委員 昨年十二月十日にいわゆる北朝鮮人妻のことについて伺ったのでございますが、これから半年たっておりますので、現状における政府のやっていることについて伺っておきたいと思います。  昨年度におきましては二百九十七通の安否調査等の依頼を、本件にかかわりのある人々から外務省に出されておりますが、その中で八十一通について外務省から日赤を通じて北朝鮮側に安否調査の伺いをしたということのようでございますが、あとの二百十六通はどうなったんですか。
  122. 中江要介

    ○中江政府委員 ただいまの御質問の安否調査の依頼と里帰りの依頼と区別がございますが、私どものいままでの集計でいきますと、全部で三百六十二件の依頼を受けまして、その中の安否調査が二百五件、その二百五名のうち百四十二名につきましては北朝鮮側に照会しておりますが、その他の部分については日本赤十字社で整理している、こういうふうに承知しております。
  123. 永末英一

    ○永末委員 いま全部で三百六十二件というのは、ことしも入れてのことと承りますが、さようですね——ことしは六十二件、そのうち安否調査依頼については三十二件、里帰り依頼が三十件ということでございますが、これを含めてでございますね。
  124. 中江要介

    ○中江政府委員 さようでございます。
  125. 永末英一

    ○永末委員 この日赤が押さえて持っておるというのはどう処理される御方針ですか。
  126. 中江要介

    ○中江政府委員 これは従来御承知のように、依頼のあるものの中で必ずしもはっきりした事実に基づかないもの、あるいは間違いによるもの、そういうものがあるものですから、日本赤十字社としては、取り次ぐ以上は納得のいくだけの根拠のあるものに限りたいということで整理しておるというふうに私どもは聞いております。
  127. 永末英一

    ○永末委員 昨年度のものもすでに半年たっておりますが、日赤から当該依頼者に対して、その依頼の正確を期す作業は続けられておりますか。
  128. 中江要介

    ○中江政府委員 続けられておると思います。毎日確認しているわけではございませんので……。
  129. 永末英一

    ○永末委員 それは確認するように外務省も御努力を願いたい。昨年七月、自民党の北朝鮮訪問団が、田村君が団長になって行きました場合、七十四通に対する安否調査の依頼をいたしたようでございます。この件の返答はございましたか。
  130. 中江要介

    ○中江政府委員 現在までのところ何らの返答はございません。
  131. 永末英一

    ○永末委員 安否調査の依頼の返答は来ないが、もし里帰りも何も許しそうでない、こういうことでございますと、わが方のその家族が北朝鮮を訪問いたしたいという希望がございますが、こういう希望があった場合には外務省はどういう処置をされますか。
  132. 中江要介

    ○中江政府委員 直接確かめる、あるいは連絡する方法はございませんが、いままでの赤十字社を通じての経路でできる限りその希望が実現するようにしていただければ、こういうふうに思っております。
  133. 永末英一

    ○永末委員 北朝鮮の方に国籍を持とうとしておる人々の北朝鮮と日本間の往来、日本国におけるそういう人々ですね。これは何ほどか認められておるし、北朝鮮からも、先ほど外務大臣言われましたようないろいろな件については往来が行われておる。したがって、いわゆるこの北朝鮮人妻の家族が北朝鮮へ旅行したいという場合には、政府としては積極的にこれを実現できるように計らわれますか。
  134. 中江要介

    ○中江政府委員 政府として積極的に何かをするということは、いまの関係から見てなかなかむずかしいと思いますが、政府としてそれを妨げるようなことはしないということは、これは出入国管理の方の権限事項でございますけれども考え得るかと思います。
  135. 永末英一

    ○永末委員 宮澤外務大臣は半年前になし得る範囲のことをいたしておるのが現状である、こういうことでございますが、これは全然進行、進展がないのでございますが、あなたは何かこれを進めたいと思われますか。
  136. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 進めたいと思っておるわけです。
  137. 永末英一

    ○永末委員 せっかくひとつ進めていただきますよう期待しまして、時間がございませんので終わります。
  138. 鯨岡兵輔

    鯨岡委員長 永末君の質疑は終わりました。渡部一郎君。
  139. 渡部一郎

    ○渡部(一)委員 まずアジア局長がお残りでございますから、日中平和友好条約のその後の交渉の経緯その他につきまして、現況を御報告をいただきたい。わが方の態度を含めて御開陳いただきたいと思います。
  140. 中江要介

    ○中江政府委員 日中平和友好条約のように高度に政治的な意味合いを持つ条約の交渉の問題でございますので、私は個人的には大臣が御答弁なさるのが適当と思いますが、私にという渡部委員のお名指しでございますので申し上げますと、端的に申し上げましてこの交渉は継続している、その継続しているについて日本側の立場はどうかということをお聞きになりますれば、その内容は、昨年来外務大臣が再三申し上げておられるような立場のまま、それを堅持して臨んでいるということでございます。
  141. 渡部一郎

    ○渡部(一)委員 いま日本が政変中でありますから、明らかに外交交渉をするのに非常にタイミングの悪い時期に差しかかっているのではないかと思うわけですね。こういう時期に大事なことは交渉を途絶させないように継続することについて、かなり高度の神経が払われなければいけないだろうと思っているわけであります。そうすると、いままでのあれから言うと、交渉はむしろボールを向こうに投げたとかこちらが受け取ったとかいうような論争を離れて、日本国政府側のこの問題に対する意欲的な態度が表示されなければならないのではないか、こう思っておるわけであります。そこで大臣にひとつその辺の御見識を承りたいと思います。
  142. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 日本が政変中というのは、そうも思っていないわけでございまして……(渡部(一)委員「私が思っているのです」と呼ぶ)さようでございますか、これは私ども政府あるいは与党と申し上げてもよろしいと思いますけれども、全体の考え方としてこれはできるだけ早期に締結すべきであるというふうに考えておりますので、別に政情のいかんで影響を私ども受けてはおりませんし、受けるべきだとも考えておりません。中国には政変がございましたけれども、これが落ち着いたということのようでございますので、確かにこういうことでタイミングを失ってはいけないわけでございますから、昨年以来のわが国考え方について、中国として具体的にどのように考えるのかということを、私どもも、もう少し知っておきたいと実は思っております。  ただ、ボールがどうこうということでございますけれども、昨年も喬冠華外務大臣と二人で話したことですが、これはやはり両方の外務当局がよく密接に連絡しながらつくり上げなければいけないので、できるだけ雑音を排除してやりましょうというようなお互いの話がありまして、そういう意味では一緒になってひとつつくり上げようということでございますから、このボールがどっち行った、こっち行ったということではなくて、一緒になってひとついい物をつくり上げよう、こういう感じで私はおるわけでございます。
  143. 渡部一郎

    ○渡部(一)委員 そうすると、両外務当局がそういうふうにお話し合いをまとめる方向で、打ち合わせなり接触なりをする意思を持ち続けていると、こういう意味でございますね。
  144. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 そのとおりでございます。
  145. 渡部一郎

    ○渡部(一)委員 しかしながら、意欲はあるけれども三木内閣がつぶれそうなので余りできにくい、このところは意見を異にされるかもしれませんが、その辺はいかがですか。
  146. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 これはもうそういう両方の外交責任者の話し合いでございますので、私としては現在の職責を持っております限り、その話し合いに従ってできるだけ早く交渉を続けていきたいと思っております。
  147. 渡部一郎

    ○渡部(一)委員 それでは私は、先ほどの同僚議員の質問に対し、外務大臣は少しお話が行き過ぎられたんじゃないかという節がありますから、ちょっとお尋ねを私なりにしたいと思うんですけれども、このたびのNISのさまざまな日本国内での活動について、国民の不満というものが盛り上がりつつあるわけであります。これは立場のいかんを問わず、日米安保条約の第六条に基づく地位協定によりまして、アメリカの軍人あるいは軍属に対しては非常に大きな特権的地位が日本国内で与えられているわけであります。ありますがゆえに、その彼らとしても日本国法令を守り、あるいは日本国民を傷つけることについては慎まなければならぬでありましょうし、またそういうふうにその法令をむしろ拡張解釈することによって、スパイ活動のごときものをわが国内で日本国民に対して展開するということはいかがなものかと思うわけですね。そうすると、明らかにそれは純法律論的に言えばとかくありましょうが、かなりアメリカ側も神経を使わなければいかぬでありましょうし、わが国政府としてもこれに対しては厳格な監視というものは必要ではないか。先ほど一つずつ写真を撮るのがよいかどうかとか、録音テープをとるのがどうかとかいうので、外務大臣かなりふだんに似ない御返事をなさっておったようでありますが、その辺を基礎的にどうお考えになりますか。
  148. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 私の表現が少しきつ過ぎたということでございましたら、それは私も反省しなければなりませんけれども、この問題につきまして当初国内において、NISというものがいわゆる盗聴であるとか信書の開封であるとかいうことを日本国内でしておったという海外からの誤った報道がありまして、それが日本国民の第一印象になっておったようである。しかもそこへスパイ行為というはっきり定義されないままの言葉が使われましたから、何か不法な方法で日本国民の法益を害するようなことが行われておるのではないかという印象をかなり国民の多くが持たれたと思いますので、そこでその報告を私が読みまして判断いたしましたところでは、そういう不正な法令に違反した方法は日本においては使われていないということがはっきり書いてございますから、この点ははっきりしておかないといけないというので、多少私がそこを強く申し上げ過ぎたかもしれません。  そういたしますと、残ります問題は、法に許された方法によって米国の軍人を中心としたいろいろな集会等々であるけれども、それは日本人も関与をしている、そのようなことについていろいろな取材をする、写真を撮ったり録音をしたり、あるいは参会者の名前、リストを集めたりというようなこと自身が、いわゆるスパイ活動——スパイ活動という言葉には、どうしてもお互い日本人の語感から言いますと不法である、あるいは少なくとも不道徳であるという含意がございますから、そういうことであるかないかと言えば私はそういうことではないであろう。そもそもわが国というのは、そこが私は開かれた社会であるという意味だと思いますけれども、自分がプライバシーとしてこれを守りたいという、そういう権利はございますけれども、公に集会が行われるというような場合に写真を撮るというのは、本来ならば皆さんよろしゅうございますかと言って許可を受けて撮るのが、それは個人の相対でしたら本来かもしれません、私ども昔の道徳から言えば。しかし一般に公の場所で会が開かれているときに、その写真を撮るあるいは録音をするということは、いまの世の中の一般日本人の受け取り方から言えば、やはりそれを排除しなければならぬというわれわれの一般的な通念か、あるいは半ばそのように公のものは、公になるということをお互いが予期しているという方が通念であるか、私はどちらかと言えば後者ではないかというふうに思っておりますものですから、何となくそこでスパイ行為であるとか人権の侵害であるとかいうようなことがすぐにくっつくということは、どうも私の観念では納得ができない。それで多少その面を強調し過ぎたきらいがありましたら、その点はそういう気持ちでございましたから御理解を得たいと思います。
  149. 渡部一郎

    ○渡部(一)委員 御丁寧にお話しになりましたから、心情は私はある意味の理解はできるわけでありますが、こうなりますと、よけいちょっとお取り消しになった方がいいのじゃないかと私は思うのです。なぜかと言いますと、CIA活動報告の冒頭に述べられているCIA長官の報告は、スパイ活動の基礎というものは、通常ルートに入るところの情報というものを正規に収集し、正規に分析することにその主力が注がれているのであると明記されております。事実そうだろうと思いますし、新聞、テレビ、マスコミその他の手法を使って情報収集するということが、そしてそれを高度な理解力をもって読むということがスパイ活動の基礎になろうかと思います。わが国において少なくとも公然とそのような——情報収集活動という名前で呼びましょうか、そういうものが行われており、そしてわが国の国民と立ちまじってそういうことがやられるということについては、わが国民は耐えられないというのが私は国民感情だろうと思います。そこを配慮されるならば、外務大臣も、その辺が法理論的にどうこうとか、法律的枠内でスパイ活動という言葉の意味はどうかという議論を展開されるよりも、その部分の答弁はお取り消しになりまして、少なくともNISの活動その他米関係機関活動というものは、情報活動において日本国民に展開されるのは好ましくないという、日本国民通例の感覚を傷つけないように行動するべきではないかというぐらいの意思表示を米側になさる方が、むしろこの際適切ではないかと私は思いますが、いかがでございますか。そうしませんと、スパイが新聞をとることが合法かどうか、新聞をとるのが何が悪いですか、テレビを見るのがいいのか悪いのか、テレビを見るのは当然ではありませんかというような議論にそちらはなる。今度は逆に、攻める日本国民の感覚から言えば、あの人は公然と日本国内におけるNIS活動を支持したという議論に発展せざるを得ないだろうと私は思うのです。それは日本外務省としてとらざる方向ではないかと私は思いますが、どうですか。
  150. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 恐らく渡部委員のおっしゃっていらっしゃることは、かなり深い意味で言っていらっしゃるのだと思います。実は、私が申し上げたかったことはあるいはもっと初歩的なことであったかもしれないので、こうやってわれわれ憲法で幅広い自由を与えられておる、いわば開かれた社会でありますから、自分の信念に基づいておのおの行動をする。しかし、その責任はやはり自分として負うということが開かれた社会の基本的なルールだと思いますものですから、たとえば私がどこかで演説をしたときに、そこを写真に撮られたら私は肖像権の侵害だというような、日本はそういう社会ではないのであろう。プライバシーというものは確かにございますけれども、これは開かれた場で、開かれた行動をしたときにまでそれが主張できるものであるかどうか、これは私実は定かでないので、そこまではなかなか申し上げかねますけれども、少なくともお互いに公人にとってはそう考えるべきではないかというような気持ちがございます。一般市民のそういう集会に入って写真を撮られちゃって、自分の顔が写真に出ていたということは、あるいは渡部委員の言われるように何か一つの恐怖感につながるとでもいうことでありましたら、それはよくないことでございます。私はそういう恐怖感というものを、開かれた社会のわれわれ国民は持つべきでないし、持つ理由がないと思いますけれども、人によっては戦前の日本というようなことを連想する人もあるかもしれない。ですから、そういう深いところまでつながったお話でしたら、私のお答えの仕方というものはもう少し考えるべきなのかもしれない。私自身が先ほど申し上げましたことはきわめて初歩的な、原則的なことを申し上げたというふうにお受け取りおきいただきたいと思います。
  151. 渡部一郎

    ○渡部(一)委員 私ここで具体的な党名を挙げるのは差し控えますけれども、テープレコーダーをもって人の演説を採取して、それを攻撃の種にするということが最近の応酬の中ではときどきございます。それが現に告訴事件の対象になったことさえある。それは恐怖感の的であると私は率直に言った方がいいのじゃないかと思います。しかも相手が日本国民ならまだ何とかしようがある。しかしNISであるとか、私はそれは日本国民に与える影響はよくない。じゃあCIAも来る、KGBも来る、KCIAも来る。日本国民のさまざまな政治的表現については各国スパイ網が、この間の外務大臣の御答弁に基づいて、テープをとることは許可されたというふうな限界にまで話が広がってくれば、私たちは演説するときに、列国スパイ同盟の諸君よと言って演説しなければならない。そういうことは開かれた社会を守るためにも許すべきではない。私は、むしろその点はプライバシーを守るために、逆に厳格であっていいんじゃないか。少なくとも日本国内でそういう不愉快な活動を公然とすることは、何を考えているのですか、個人の次元においてもそれは慎まなければならないが、公人の立場においても慎まなければならぬというふうにアメリカ政府を説得しなければならぬだろうと私は思うのです。いま個人のプライバシーの問題でお答えになりましたが、公人の面でちょっと、少なくとも相手が公の機関ですから、これはこっちの方も深く考えていただいて、普段私は大臣の御賢明な質疑応答にそれこそいつも敬意を表しておるのですけれども、意見をはなはだ異にすることもしばしばございますが、いまのはちょっと、これはちょっといただけないどころじゃなくて、これは問題になるのじゃないかと思います。その辺はお取り消しをいただくなり、巧みにいつものようにうまく大所高所から修正なさった方がいいんじゃないかと私は思いますが、どうでしょうか。
  152. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 そうでございますか、これは御親切なお話だと思いますから、少し割り切り過ぎてお返事をしておったかもしれません。したがいまして、この渡部委員とのやりとりが速記録に当然載りますので、それではそれをあわせてごらんいただくということにお願いいたしておきましょう。
  153. 渡部一郎

    ○渡部(一)委員 そうすると大臣、私はもう一つ追加して申し上げますが、外務大臣は外国の情報機関日本国内において活躍されることについては不快の念を表示されるという意味と受け取ってよろしいですか。
  154. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 そこまでいきますと、またこれ私の余りよくないところかもしれませんけれども、ウィーン条約等によりましても、在外に行って、そこの土地についてのいろいろな情報を集めて本国に報告するというようなことは許されておるし、法令に違反しないで権益を侵さずにやる限り、むしろそういうことが外国に出先を持つ一つの目的でもございますので、そういうこととの関連も考えておかなければなりませんので、さあその辺をどういうふうにきちんと整理をしておくべきか、法理論は法理論といたしまして、わが国にはわが国の土壌がございますから、国民が無用に不安に思うというようなことはよろしくないことでございます。これはいまこの瞬間にお答えいたしますよりは、少し問題を整理いたしまして後日申し上げさせていただきたいと思います。
  155. 渡部一郎

    ○渡部(一)委員 私はいまの御答弁を、かなり屈折してお答えになりましたが、いま問題になっておるのはNISの公然たる活動が表示された、それに対するアメリカ側の意思表示が行われた、それに対して問い合わせがわが国から行われた。アメリカ側の返答によれば違法な活動はなかったと大臣はお認めになってそれを述べられたわけですね。そこで、御回答の第一は、アメリカ側説明が正しいとすればという前提が要ると思います。正しいとすればこれは違法はなかったという立場で説明したのだ。それが正しいかどうかについては今後も解明の内容とし、検討の内容にしていかなければならないという意思表示が、全然先ほどの御答弁、質疑の中では欠落しておったと私は見える。これが第一点。問題が非常に大きくなりそうですから、私は申し上げます。  第二点は、大臣は個人のプライバシー保護のためにいま深くいろいろお話しになりました。それと同時に、今度はそういう外国情報機関が、たとえば大使館情報活動をするというような場合については、大使館なりの情報活動は明らかにウイーン条約の対象とはなるものであろうと私も思います。しかしながら、次から次へとわが国民に知られざる、こちらが予想せざる情報機関が、しかもNISといえばアメリカ海軍軍人に対する情報機関日本国内において、日本国民に対してまでその情報活動の枠を広げることは幾らなんでもオーバー、行き過ぎではないかという国民の共通の認識があろうと思いますし、マスコミの論調を見ていてもそこら辺はうかがえるわけであります。その辺を配慮する御答弁であっていいのじゃないか。確かに大臣先ほどからの御答弁はいろいろな立場で、いつもと違ってそろっていない。だから、後ほどまとめて御返事になるのはそれはそれで結構だと思います。しかしながら、それまでに時間がかかればこれまたきょうの質疑は大きな問題をはらんでしまうと私は思います。ですから、基本的なお立場を少しこの場で最後に締めくくりで明かしてもらうのが妥当ではないか。そして、これは少し慎重に扱っていただかないと、日本においてアメリカ側のスパイ活動は自由であると受け取られる可能性がある。もし大臣がそういう印象を持たれてしまったとしたら、その影響は自民党に対する波紋ではなくて、わが国外交のはなはだしい独立権の侵害であり、これはわが国を他国に侮らしめるものだと思いますし、少し毅然たるところがあっていいのではないか。私はこれは問題だと思うのです。
  156. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 まず第一の点でございますけれども、今日のお尋ねがいわゆるチャーチ委員会報告についてのお尋ねでございましたから、報告に関する限りこうこうであると私は御答弁をしているわけで、したがって、質疑の対象はチャーチ委員会報告であるというふうに私は終始考えてまいったわけです。ですから、このチャーチ委員会報告そのものが果たして正確であるのか、それ以外に事実がないのかということは、これはおのずから別の問題でありまして、私はそれについて今日申し上げたつもりではなかった。問題をチャーチ委員会報告ということに限定をして申し上げたつもりでございます。  第二点に、日本におけるスパイ活動は自由であるという印象を与えるぞというお話でございましたが、私が理解します限り、わが国においてはスパイ活動というのは、言葉の含みとして何か不法な手段により、あるいは少なくとも不道徳な方法によって行われる情報活動である、そういう言葉の持っております含意がございますから、そういう意味で、スパイ活動というものがいいのだということを私は申し上げるわけにはいかない。したがって、私は一度もスパイ活動という言葉を使っておりません。むしろこれは、渡部委員じゃございませんが、委員会で御質疑の際にスパイ活動という言葉をお使いになるならば、それを定義をして使っていただきませんと、この言葉自身が不法な、あるいは少なくとも非道徳的なインプリケーションを持っておりますから、それがいいかと言えば、それは悪いと申し上げるのがお答えになってしまいます。  それから一番大事な点は第三の問題であって、私はそのような先ほどから問題になっております活動が、地位協定とかわが国法令に反するものではないということに主点を置いてお答えをいたしましたけれどもわが国の国民の土壌あるいは国民感情から申せば、たとえ法律に反しなくても、国民感情として不愉快な、少なくとも愉快でない、あるいは人によっては恐れを感じるというようなことはあり得るわけでございますから、やはりその点は法令に許されたことであっても、その目的は最小限に達する範囲に限られるべきであって、国民感情というものは十分考慮してもらわなければ困るということは、これは渡部委員の適切な御注意だと私は思いますので、この際、そこまで申し上げることができると思います。
  157. 渡部一郎

    ○渡部(一)委員 時間がありませんので、これ以上この問題を詰めることは不可能でありますが、大臣御自身もいま言われましたように、この問題を少しまとめて見解を整備されて意思表示をしていただきたいと私の方からもお願いしたいと存じますし、そしてこの問題は少し明確にいたしませんと、わが国のこれからの平和国家としての行動については、こうした問題は非常に重大な課題を含むものであると思いますので、委員長におかれましても特段の御配慮をお願いして、終わりといたします。
  158. 鯨岡兵輔

    鯨岡委員長 午後一時三十分より再開することとし、暫時休憩いたします。     午後零時五十八分休憩      ————◇—————     午後一時三十八分開議
  159. 鯨岡兵輔

    鯨岡委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  国際通貨基金協定の第二次改正の受諾について承認を求めるの件を議題といたします。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。河上民雄君。
  160. 河上民雄

    河上委員 IMF改正協定につきましては、先般おおむね質問をいたしましたわけでございますけれども、このIMF協定の将来ということを考えますときに、二つ三つお尋ねをして確認をしておきたいと思いますので、よろしくお願いをいたします。  まず第一に、このIMFに対する一つの見方として、これは要するに世界資本主義の体制ではないかという批判がございます。そういう中で、にもかかわらずいわゆる東西両陣営の貿易、東西貿易というものは年とともに広がってきている、こういう状況の中で、今後いわゆるIMF体制というものと、普通言われているコメコンに代表されるような東側の体制との関係が将来どうなるか、政府はどういうようにごらんになっておるか。この二つに橋をかけるような機構というものが将来できる可能性考えられるのかどうか。そういうような問題が、やや形而上学的な問題かもしれませんけれども、現にあると思うのであります。そういうような観点から一、二お尋ねをしたいと思うのでありますが、まず、東西貿易を通じて西側の不況とかインフレというものが東側にどういう影響を及ぼしているか、政府はどのように見ておられますか。
  161. 橘正忠

    橘政府委員 主として西側諸国の経済不況あるいはインフレというものが東西貿易にはやはり影響を与えております。特に、インフレの面では、東側諸国が西側から輸入する機械設備を主体としたそういう需要がございますが、その価格が高騰しております。他方、東側諸国から西側諸国への輸出につきましては、西側諸国の不況に伴う需要の減退ということもございまして、東側の西に対する輸出の伸びというものが停滞ぎみを示しております。そういうわけで東と西との貿易のバランス、そのバランスは伝統的に西の出超になっておりますけれども、その不均衡といいますか、そのアンバランスが拡大しておる傾向が最近認められます。他方、東側諸国といたしましても、そういうバランスの関係もございますし、東側の経済運営全体との関係もございますので、今度は西側からの輸入についても若干これを抑制するというか、そういう傾向も出ておりますので、西側の東に対する輸出の伸びというものも価格の上昇要素を考えますと、実質においては多少伸び悩みという傾向も出ております。  以上が概括した西側のインフレあるいは不況の東西貿易に対する影響の要点だと存じます。
  162. 河上民雄

    河上委員 今度のIMF協定改正の一つの誘因になりましたのは、石油ショックに伴う世界経済の一つの波紋であろうと思うのですけれども、いわゆる東欧圏も中東の石油を輸入しているんではないかと思うのでありますが、そういう東側に与えた石油ショックの影響というものは、西側に比べればもちろん比較にならないほど小さいとは思いますけれども、そういうことが具体的にどういう影響をここ数年の間に及ぼしているか、そういうことはおわかりになりませんでしょうか。
  163. 橘正忠

    橘政府委員 東側、特にソ連及び東欧圏におきましては、昨年まで石油につきましては五カ年のソ連と東欧諸国との間の契約がございまして、価格がある程度据え置かれておりました。しかし石油価格の急上昇に伴いまして、ソ連から東欧に供給される石油の価格も引き上げられまして、現実にはソ連、東欧圏では、ソ連の石油ないし天然ガスが東欧の石油、天然ガス需要のほとんどを占めております。したがいまして、こうしたソ連の石油等の価格値上りは、当然東欧諸国への国際収支面あるいは価格面でのタイトな圧迫要因となっていると思います。  他方、そうしたソ連から供給される石油等の価格の値上がりに伴いまして、東欧諸国からソ連等に輸出される輸出品の価格等についても、コメコンの内部で価格改定のプロセスが行われているようでございます。ただ恐らくそうした東欧諸国からソ連へ向けての輸出品の価格引き上げは、ソ連から東欧に供給される石油価格の引き上げを完全に相殺するほどには大きく引き上げられていないと見られますので、依然として東欧諸国のそういった面からの経済運営上のタイトな要因というものは存続し続けているように思います。
  164. 河上民雄

    河上委員 中東を中心とする石油のいろいろな影響というのは、東側については全くない、間接的でしかないという御判断でございますね。
  165. 橘正忠

    橘政府委員 中東を含めました西側での石油の値上がりが、そのまま量的に東側、ソ連、東欧圏に直接の形では余り出ておりませんが、西側のそういう価格値上がりに伴って、ソ連の石油値上がりが行われたという面では、間接的に東側に影響を与えているということが言えると思います。
  166. 河上民雄

    河上委員 それでは為替相場の変動というものは、東西貿易にどういう影響を与えておりますか。ここ数年間の実績から見ましていかがでありますか。
  167. 旦弘昌

    ○旦政府委員 先生御指摘のとおり、この数年間、自由圏におきます為替相場はかなりの変動をもたらしたのでございますけれども、それが対東西貿易にどのような影響を与えたかという御質問かと存じます。  ここに私、東西貿易の規模の推移の数字を若干持っておりますが、これで見ますと、七〇年と七四年と比べて見まして、輸出におきましては世界全体の貿易の中に占めます東西貿易の割合は、七〇年に四%でございました。これが七四年には四・四%ということでございます。同じような数字を輸入で見ますと、七〇年には三・八%でござ  いました。これが七四年には三・七%ということで横ばいないしは若干下がっておる。輸出につきましてはそのシェアが若干上がっておるという数字がございます。この数字からだけ見ますと、為替相場の変動が余り大きな影響は与えていないのではないかともとれるわけでございます。しかし為替相場の変動が激しい場合には、御案内のように東西貿易のみならず世界全体の貿易に混乱の要素となるということは明らかでございますので、そういう意味でも今回のIMF協定の改正によりまして新しい国際金融秩序を確立していくということは非常に大きな貢献になるのではないかと考えております。
  168. 河上民雄

    河上委員 ちょっと専門家の御意見を承りたいのですけれども、世上伝えられるところではイタリアの通貨危機ということが非常にささやかれておるわけですが、これが将来資本主義経済全般に大きな波紋を呼ぶ可能性があるのか、一時的なことでおさまるのか、これは今回のIMF協定改正と直接関係がないようでありますけれども、また将来一つの大きな問題になるかどうか、その点はいかがでございます。
  169. 旦弘昌

    ○旦政府委員 ただいま御指摘のございましたイタリアのリラについて見ますと、今年の初めから今日に至るまで約二四%の下落がございましたのでございます。これは一つにはイタリアにおきます物価の上昇率が非常に高かったこと、それから第二には景気がようやく上向き始めまして輸入が急激にふえてきた、これに伴いまして国際収支の赤字がふえたということがございます。それに加えまして、国内の政情の不安に起因いたしますイタリアの居住者によります海外への資本逃避が大幅に行われたというような諸種の要因が相関連いたしまして、このような大幅な通貨混乱が起こったものと理解しております。  これに対しまして、もちろんIMFとイタリアとの間におきまして、ファシリティーを提供するという話し合いを進めておりますし、またイタリアに対しまして直接ドイツが金融的な支援をする、またEC全体といたしまして、イタリアに対しまして金融的なファシリティーを提供するというような諸種の施策が着々として進んでおるところでございます。  今回私ども国会にお願いいたしましたOECDの金融支援協定がございますが、これが実現いたしますればいま申し上げましたような各種のファシリティーに加えましてさらに最後のセーフティーネットとしてイタリア経済を支えるということになろうかと思います。もちろん一国の経済の問題でございますので、将来のことにつきまして確たる見通しを申し上げることはできないわけでございますが、あらゆる種類の支援を通じまして、イタリア経済は将来立ち直ってくるのではないかということをわれわれとしては希望いたしたい、かように考えておる次第でございます。  なお、それから先ほど質問ございました東西貿易につきまして若干触れさせていただきますと、現在のところIMFには共産圏の国といたしましてはユーゴスラビアとルーマニアが入っております。IMFを通じましてこれらの国々に対しまして金融的な支援もできるわけでございまして、現に御指摘のございましたような石油ショックによります国際収支の困難につきましては、昨年と一昨年、IMFにオイルファシリティーというものがございました。そのファシリティーをユーゴスラビアは現実に受けておりまして、約一億三千万ドルの融資を受けておるわけでございます。
  170. 河上民雄

    河上委員 それでは最後大臣の御意見を承りたいと思いますが、今回のIMFの第二次の改正です。この改正の内容については先般来この委員会で議論しておりますけれども、これはもう時間もありませんから内容について申しませんが、大臣としてこれはやはり国益上日本にとって非常にメリットがあるというふうにお考えでございましょうか。そのメリット、デメリットについて大臣としての御意見を最後に承って質問を終わりたいと思います。
  171. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 改正の内容につきましては御承知でございますから私も繰り返さないことにいたしまして、結局一九七一年のいわゆるニクソン・ショックというものによって、IMF体制も非常に揺れたということになったわけでございますが、その揺れのある意味での従来の体制の手直しというものが今回の改正になったと考えてはいかがかと思うのでございます。したがって、これはいわゆる石油ショック後の世界が立ち直る、自由世界の経済が立ち直る一つのやはり具体的な方途として国際的に合意されたということになるのであろうと存じます。その意味からは、今後為替相場が安定的に推移するといったようなことから世界経済の安定に役立つと思いますし、またこれによって増資も可能になる。さらに金の問題について言えば、これは金をどうするかということはある意味で哲学的な論争であるようでもありますけれどもわが国なんかの立場から言いますと今度の改正は私はいい方向だと思いますし、また金の六分の一を売却することによって発展途上国を助けることもできる、あれこれ考えまして私は今回の改正は時宜を得たもので、わが国の国益に沿うものというふうに判断をいたしております。
  172. 河上民雄

    河上委員 私の質問をこれで終わります。
  173. 鯨岡兵輔

    鯨岡委員長 これにて本件に対する質疑は終了いたしました。      ————◇—————
  174. 鯨岡兵輔

    鯨岡委員長 次に、国際連合大学本部に関する国際連合日本国との間の協定締結について承認を求めるの件を議題といたします。  まず、政府より提案理由の説明を聴取いたします。宮澤外務大臣
  175. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 ただいま議題となりました国際連合大学本部に関する国際連合日本国との間の協定締結について承認を求めるの件につきまして提案理由を御説明いたします。  政府は、昭和四十八年十二月の第二十八回国際連合総会において採択された決議に基づき国際連合大学本部が本邦に設置されることとなったことに伴い、国際連合大学本部に関する協定締結交渉を国際連合側と行ってきましたが、本年五月十四日、ニューヨークにおいてわが方国際連合代表安倍大使と先方スイ国際連合法務部長との間でこの協定に署名を行った次第であります。  この協定は、前文、本文十五条三十二項及び末文から成り、また、協定に関連する交換公文が付属しております。協定は、国際連合大学本部のため、政府が建物及び土地を提供すること、それらの建物及び土地は、不可侵とすること、国際連合の職員である大学本部の職員は、大学が支払った給料及び手当に対する課税の免除等の特権及び免除を享有すること等を内容としております。  わが国は、当初から国際連合大学構想を積極的に推進してまいりましたが、昭和四十九年末に大学本部の仮事務所が本邦に設置され、大学は、いまや本格的な活動を開始しつつあります。この協定締結が大学本部の効果的な機能の遂行に資することが期待されます。  よって、ここに、この協定締結について御承認を求める次第であります。何とぞ御審議の上、本件につき速やかに御承認あらんことを希望いたします。
  176. 鯨岡兵輔

    鯨岡委員長 これにて提案理由の説明は終わりました。     —————————————
  177. 鯨岡兵輔

    鯨岡委員長 引き続き質疑に入ります。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。河上民雄君。
  178. 河上民雄

    河上委員 国連大学本部をわが国に設置することにつきましては、われわれも国連大学の意義にかんがみまして、国会議員の間で国連大学の議員のグループをつくっておるわけでございますが、党派を越えてというような意味もありまして、各党それぞれ代表幹事のようなものを出しておるわけでありますけれども、私もその一員に連なっておりますので、この国連大学につきましては少なからぬ関心を個人としては持ってきたようなわけでございます。その意味から言いまして、国連大学本部をわが国に迎えることにつきましては、もし日本としてそれをやるとするならば、それにふさわしくいろいろなことを整えなければならないという考えに立っておるわけでありますけれども政府わが国に国連大学本部を迎えたねらいといいますか、意義というものは一体どういうところにあったのか、まずそのことを初めにお伺いしたいと思います。
  179. 木田宏

    ○木田政府委員 お答えを申し上げます。  国連大学をわが国に誘致いたしますにつきましては、国連大学というのが国連の総会決議によってつくられました本格的な国際機関でございまして、しかも研究、教育を通じてわが国の国際協力の姿を世界に示すことができる、また平和国家、文化国家としてのわが国の実を世界の人々に理解してもらうことができるということをまず第一には考えておるわけでございます。  また、国連大学は世界各国の頭脳を組織化して、そして人類のために新しい未来を考えてみようといういわばグローバルなシンクタンクでございますが、その本部を日本に設けるということは、わが国への、学界はもとよりでございますけれども、いろいろな意味での知的刺激になり得るということを考えておるところでございます。  また、わが国の学界は、御案内のごとく、どちらかと申しますとやや閉鎖的でございまして、学界の教官たちは好んで外国の大学へ行きいろいろと勉強をしてくるわけでございますけれども日本の研究機関そのものとしては、私どもいろいろ努力をいたしておりますけれども、必ずしも日本の大学や研究所そのものが国際的な姿として世界に開かれたものになっておるというところまでまだいきかねておるわけでございます。この日本の土壌にいま御説明申し上げましたようなシンクタンクとしての国連大学本部が来るということになりますと、おのずからその刺激を受けまして、わが国の大学や研究所が国際的に開かれた活動をしていくようになるであろうということもわれわれとしてはまた期待をいたしておるところでございます。  さらに、国連主義をとっておりまして、戦後ユネスコ初め国連諸機関に加盟もし、私どもも国民に対する国際理解ということを教育の分野で進めておりますけれども、やはりすべての国際専門機関がアジアには数少のうございます。日本の中にもこうした本格的なものができることによりまして、国民の国際的な視野、国際理解ということが目の前のこととして広がっていくのではなかろうかというようなことなども期待いたしておる次第でございます。  これらのことを考えまして、何とかこの際、国連大学本部を日本に誘致いたしたいということを政府としては願望いたした次第でございます。
  180. 河上民雄

    河上委員 国連大学というのは、話が出ました当座、わが国では国連大学という名称からくるイメージが、何か大きな敷地があって、学生が一万人ぐらいいるような学校を期待したようでありまして、したがってもう皆さん御承知のとおり、各県ごとに誘致運動が起こったくらいでありますけれども、それは全く国連大学そのものに対する理解というか、ある意味から言えばPRがなかったということもあろうと思いますけれども、理解がないために起こった一つの出来事であって、実際にはそういうものではない。いま政府委員はいろいろもっともなことを言われましたけれども、当初国連大学誘致の運動が起こった時代のことを思い起こしますと、むしろ何かちょっと違った、見当違いな期待で誘致運動が起こったような記憶があるわけでございます。したがって、国連大学というものを、その本部をわが国に迎える以上、これがいわゆる生徒がいて、教授がいて、校舎があって、教室があって、キャンパスがあってと、こういうものではないのだ。むしろ人類全体の問題をグローバルな観点から研究する、またスタッフもグローバルに集めると、こういうものであるということをもう少しはっきりこの際うたわないと、国連大学という名称がある限り、そういう誤解というものが相当残っていくのじゃないかと思うのであります。したがって、ここでそういう点について政府もこれを国会で議決するに当たりまして、もう少しその点はっきりしないと、国民としては何か違ったものに金を出したような感じになってしまうのじゃないかという気がしてならないのでありますが、そういう点はどのようにお考えでいらっしゃいますか。
  181. 木田宏

    ○木田政府委員 いま御指摘になりましたように、国連大学の構想が国連の中で、もう八年も前のことになりますが、一九六九年に当時のウ・タント国連事務総長から提案されましたときには、かなり教育機関的な色彩の濃いお話が事実あったわけでございます。将来国際社会で働くであろう学生諸君のことも考えながら、もっとそういう人を国際機関のもとで教育をして、世界の融合を実現しようというような意図も私どもも聞いたわけでございます。  その後三カ年にわたりまして、このウ・タントの考え方を国連及びユネスコの場におきましていろいろな専門家が論議を重ねてまいります間に、いわゆる学生を教育するということであるならば、先進諸国にかなり開かれた大学がすでにあるではないかというようなことなどの議論がございまして、この際やはり本質的に意味のあるものと考えるならば、一種のシンクタンク、そして若い研究者、頭脳をより高度に高める、こういう研究機関的な色彩に力点を置いた方がいいということに専門家の意見が固まりまして、それを受けて、一九七二年の第二十七回国連総会で国連大学をつくろうという議論になってまいりました。したがって、今日いわゆる大学という言葉の持っておりますイメージとその実態とが幾分ずれておるということは否めないのでございます。したがいまして、初代の学長も、国際連合大学は大学でない大学でありますというような説明日本に来てもいたしておるのでございますが、しかしながら、なお国連大学が世界各地に研究研修センターというものを幾つか設けまして、若い研究者の養成をしようという構想はこの国連大学憲章の中にも明示してございますから、やはり教育研修的な色彩というものを研究者水準において持っておるということは否定できないのでございまして、私どもも招致をいたします際に、そうした研修研究センターを日本に招きたいという政府からの提案もいたしましたところでございます。それらの点は、国連大学が今日まだ基盤が整っておりませんので、これから将来のこととして逐次進んでいくもの、こう考えている次第でございます。
  182. 河上民雄

    河上委員 いまのお話は、一つはいわゆる教育機関として国連大学をつくるという考え方も当初にはあったけれども論議の経過で、シンクタンク的なものを主にして、教育機関的要素はあくまで専門家の養成あるいは訓練ということに限るというふうな御説明でございましたが、私はいままで国連大学関係のものをいろいろ読んだり聞いたりしておりますときに、もう一つの要素があるというふうに感じておるのでありますが、これで正しいものかどうか。つまり先進諸国の高度な研究機関、シンクタンクならば、プリンストンの高級研究所とかそういうものがたくさんある。それに対して国連大学はグローバルな視野に立って、むしろ開発途上国の問題なりあるいは開発途上国の研究者を養成していくというねらいもあるやに響きとして感ぜられるのでありますけれども、そういう点はいかがでございましょうか。そういうことが国連大学をニューヨークやあるいはロンドンやパリではなしに東京にということになった。単に日本政府あるいは日本の国民がこれを念願した、要望したというだけではなくて、そんな個人的なあるいは一国の要請ということではなくて、むしろそれこそグローバルな視野に立って東京というのが選ばれたと理解すべきではないかというふうに私は感ずるのであります。そういう観点をさらに極端に言えば、何も東京のようなこういう大都会ではなくて、どこか外モンゴルかなんかにつくった方がより目的に合致するのではないかと私は思うのでありますが、そういう観点があったというふうに私は受け取っておるのでありますが、その点はいかがでございますか。
  183. 木田宏

    ○木田政府委員 御指摘のとおりでございまして、国連大学の憲章の中にも、先進国への頭脳流出といった現象を防ぐということを挙げてございますし、国連大学は発展途上国における研究者たちの知的孤立を緩和するというような表現も入れてございます。結局、世界の人類の知的水準を高めるためにそういうところに力点を置いていかざるを得ない。その意味では、先生御指摘のような性格をやはり持っておるわけでございます。しかしながら、活動をいたしますためには、その置かれた場がやはり国際的に知的水準の高いところであることの方が、特に本部を考えました場合には、人の集まりその他のことが便利であろうかと思っておる次第でございます。
  184. 河上民雄

    河上委員 それでは研究センター、研修センターのようなブランチですね。国連大学の本部が東京に置かれるとすれば、そのブランチはいま大体どういうところが予定されており、それが実際に機能し始めるのはどこで、大体いつごろかということを伺いたいと思います。
  185. 木田宏

    ○木田政府委員 世界の幾つかの地域に研究研修センターを設けるということが国連大学憲章の中に予定されておるわけでございますが、当初は基金を整備することに手いっぱいでございますから、国連大学自体として、どこにそのブランチを設けるというようなところまでまだ論議が移っておりません。そこで、今日の段階では当初の少ない基金で、しかもある程度の活動を進めていかなければならないということから、世界の既存の大学あるいは研究機関との連携ということを先に進めることによりまして、国連大学の使命を少しでも早く実行に移すというところに重点が置かれておるかと思っておる次第でございます。
  186. 河上民雄

    河上委員 国連大学の資金集めの経緯については、ヘスター学長から、なかなか大変だった、これからも大変であるという話をしばしば聞いておるわけでありますけれども、それを聞いておりますと、全部いわゆる寄付によるというか、そういうようなことのようでございまして、国連の予算の中から国連大学に金が出るという形にはなってないようでありますが、それはどういう経緯でそうなったのか。たとえばユネスコとかそういうような機関の場合、やはり寄付によっておるのか、あるいは国連の予算の中でやっておるのか。他の付属機関との比較、関連、つまり国連大学は国連という機構の中でどういう地位にあるかというようなこととも関連するわけでありますけれども、どうして国連の予算によらないで寄付金によるということを決められたのか、そこを伺いたいと思います。
  187. 大塚博比古

    ○大塚説明員 お答え申し上げます。  ただいま先生御指摘になりました点は、実は一九六九年にウ・タント元国連事務総長が初めてこの国連大学という構想を提唱いたしまして以来、具体的には大学設立準備委員会といったものを通じて、今日に至る経緯において非常に問題になった点でございますけれども、結局現在の国連大学は、そういった三年に及びます慎重な審議を通じまして、国連の総会が決議をもって設立する大学であるけれども、国連の中のファミリーの中で、学問の自由といいますか自治というものを確保するためには、この財政的な基盤が各国の分担金によるという方式ではなくて、個人も含めた国それから団体、それから個人も含めた自発的拠出金というものに基づいて確定されますところの国連大学基金、こういうものを中心といたしまして、その基金の運営、すなわち、そこから出てきます利子をもって運営するというのが根本的な原則として決まったわけでございます。これは、いま申し上げましたように、国連大学の円滑な、かつ自治的な運営を確保するために、各国のその年その年の財政事情とか各国の財政的な困難とか、そういったものに影響されるようなことがなるべく少なくなるために基金を設けまして、その運営の利子をもってこれに充てる、こういうことになった次第でございます。
  188. 河上民雄

    河上委員 そういたしますと、その基金に対する寄付はどういう人たちがやるのか。もちろん国がやると思うのでありまして、したがって日本も出すのでしょうけれども、国のほかには個人、それからたとえばロックフェラーとかフォード財団というような財団もそれに入るのかですね。その点は、きょうは余り時間がございませんけれども、その基金の構成の内容につきまして本来伺わなきゃならぬのですが、その寄付をする人、個人ないしは団体、国というのはどういうような形になっておるか。
  189. 大塚博比古

    ○大塚説明員 お答え申し上げます。  ただいまのところ、個人あるいは団体で国連のこの基金に対して拠金が行われたということを私としても承知しておりません。ただ、先ほど申し上げましたことにちょっと補足させていただきますけれども、この大学は本来、いま申し上げました大学の運営の基金、ファンド、そこの運用からきます利子に基づいて運営されるわけでございますけれども、もちろんこのことは、国ないし政府ないしは個人がそのファンドに対する基金という形でなくて、その大学の直接の経営に、直接の消費に充てられるべき寄付を行うことも排除されていないわけでございます。  いま先生から御質問ありました個人もしくは団体からの寄付はどういうものがあるかという点は、現在までのところ、そういう寄付はなされていないというふうに了解しておる次第であります。ただ、ヘスター学長からいろいろ伺っておりますところ、学長もいろいろその点をあれして、非常に精力的にそういった各団体や何かについても工作し、いろいろ会ってそういった寄付や何かを要請しておられるように聞いております。
  190. 河上民雄

    河上委員 そうすると、理論上は団体あるいは個人が寄付することもできるけれども、現在は事実上各国が寄付をしている、こういうことでございますね。  国連大学設置に関する国連総会の決議に際しましてソ連、東欧諸国が棄権をいたしておりますけれども、その理由というものは一体どういうところにあるのか、あるいはその後またソ連、東欧諸国、あるいは当時は国連の圏外にあったかもしれませんが、中国が今日どういう態度をとっておるか、これはやはりグローバルなものであります以上、いわゆる東西のあれを越えてしなければならないと思うのでありまして、その点を伺っておきたいと思います。
  191. 大塚博比古

    ○大塚説明員 御指摘のように、ソ連等いわゆる東欧圏の諸国は、この国連大学設置の問題につきまして、まず一九七二年に国連の第二十七回総会においてこの設立が決まりました決議に反対いたしております。
  192. 河上民雄

    河上委員 反対ですか、棄権ではなくて。
  193. 大塚博比古

    ○大塚説明員 はい。それからその翌年の七三年の第二十八総会においては、この協定、国連大学の本部を本邦に設置するということを承認した決議でございますけれども、これには棄権をいたしております。  それから、その際の反対の理由は、いまのその決議の中で予想されております国連大学というものが、既存の国際機関、特に東欧圏といたしましては国連の教育訓練センターというのがあるわけでございますが、UNITARと申しておりますが、それと機構が重複するのではないかというようなことが反対ないし棄権を行った理由だというふうに了解しております。  ただし、その後、実は日本に設置が決まりまして、先ほど問題になりました、基金の財政的基盤の強化というものが問題になりまして、実は昨年の国連総会で日本代表部が非常に積極的に行動いたしまして、国連総会でこの国連大学の基金に対する拠出を要請する決議というものが採択されたわけでございますけれども、その際に、これは全会一致、コンセンサスでもって採択されております。したがって、私どもといたしましては、ソ連を含む東欧圏諸国あるいは社会主義諸国、これは中国も含めてでございますけれども、そういった国の態度は、緩慢でございますけれども、だんだんその理解を深めていくように向かっているというふうに考えております。
  194. 河上民雄

    河上委員 いまの御説明でよろしいのでございますが、いわゆる社会主義諸国を含めてコンセンサス、全会一致であったということの中に、中国もそのときはもう入っておるわけでございますね。  それでは、私も国連大学の問題について少しく関心を持ってまいりましたが、どうも、いわゆる拠出金の集まりぐあいから見ますと、日本が一番張り切ってやっているような感じでして、他国は一体どういうふうに考えておるのか。特に先進欧米諸国はどんなふうに見ておるのか、その点はいかがですか。
  195. 木田宏

    ○木田政府委員 当初ウ・タントさんの提案されましたころ、いわゆる大学ならば先進国の大学で用が足りるというような意識がございまして、最終的な結論にいきますまでの間、やや先進国の方では、こういう国連大学そのことについてそれほど積極的でなかったということがございました。しかし、国連大学のことが決まりましてから以後は、積極的に理事会に、国を代表しているわけではございませんけれども、先進国の関係者がたくさん入ってきておられます。そして国連大学の将来の構想につきまして、国連大学理事会としての動きを活発にやっておられるわけでございます。ヘスター学長は、そうした理事の方はもとよりでございますけれども機会あるごとにアメリカ、カナダそれからヨーロッパ諸国、豪州等を歴訪されまして、またアラビア諸国も歴訪されまして、いろいろと国連大学の考え方を訴えておるところでございます。鶏と卵のようなもどかしさがあるわけでございますけれども、実際に国連大学が何をするかということにつきまして具体のある方向づけがないと、よしきたというふうな賛同を得がたいということがございまして、今日の段階では、国連大学が三つのテーマ、世界の飢餓あるいは人間と社会の開発、あるいは食糧その他の資源の管理という大きな三つのテーマについて、本当に意味のあるプログラムを早くつくろう、そしてこういう仕事をすることゆえ積極的な支援を欲しいというふうに、プログラムを固めながら関係国を歴訪して歩いておるというのが実情でございます。モスクワへも立ち寄ってソ連政府当局者とも話をしてこられたように聞いております。だんだんと関係者の理解を得られますならば、そうした国からも積極的な支援があるものというふうに期待できるもの、こういうふうに学長の話その他を通じて私どもも楽しみにいたしておるところでございます。
  196. 河上民雄

    河上委員 国連大学のいまの研究テーマにつきましては、またここでいろいろ御質問しても、時間がかなりたっておりますので別な機会にいたしたいと思いますけれども、現在審議いたしております協定に関連して一番重要なことは、国連大学の職員をわが国がお迎えする、十分にその機能を果たし得るように日本として協力するということではないかと思うのであります。  そこで、国連大学の職員というものには定員といいますか、大体何名ぐらいをめどに人間を充足していくという計画を持っておられるのか、もしそういう計画があればそれを教えていただきたいと思います。そしてさらに、それがどういう国から来るかというようなことにつきましても、これは国連大学内部の問題かもしれませんが、それに関連して教えていただきたいと思います。それから、そうした国連大学の職員がわが国で住むわけでございまして、国連の一般の、たとえば国連事務局のセクレタリアートのスタッフなどは、事務局の職員などには、いわば外交特権というようなものが、国際官僚としての特権があるわけでありますけれども、こういう国連大学のスタッフ、職員につきましては、わが国におきましてそういう国際官僚としての特権を与えられることになっておるのかどうか。実際にこういう職員の人が日本へ来て東京に住み、それはトラブルがないことが一番望ましいのでありますけれども、実際に下宿をし、いろいろした場合に、実はいろいろ問題も起こる可能性もあります。  そこで、実際に国連大学職員に与えられる特権、免除というようなものは、いわゆるウィーン条約によって普通の外交官に与えられているものと違うのか同じなのか、あるいは国連のいわゆる国際官僚と普通言われておるような人たちと全く同じ権限なのかまた若干違うのか、そういうようなことにつきまして、その第二点として教えていただきたいと思いますし、さらに時間が参りましたのでもう一つ伺いたいのは、国連大学が活動を開始した場合に、日本の大学あるいは研究機関といろいろ連携する場合に、日本政府を通さずに直接やることができるのか、それとも日本政府が仲立ちをして今後進めていくのか、そういうような点につきましてもあわせてお伺いしたいと思うのです。
  197. 大塚博比古

    ○大塚説明員 お答えを申し上げます。  まず第一の御質問の点は、今度の協定に基づきまして日本に設置されます国連大学本部の職員の現在の状況、それから将来の予定というふうに承ったわけでございますけれども、現在ただいまの時点で申し上げますと、国連の本部で現在仕事に従事をしておりますのは、全体で四十四名でございます。これはことしの五月現在でございますけれども四十四名、そのうち日本の国籍を有している方は二十四名でございます。それからなおその四十四名の国連職員のうち、いわゆるこの協定に基づきまして外交特権並みの特権を供与することになっております職員は、部長クラスといいますか、英語ではディレクターでございますが、D1クラスの職員が六名になっております。それから、なお私ども承知しておりますところでは、国連大学といたしましてはことしいっぱいにこの職員を約六十名、それから将来国連大学の基盤がはっきり整いましたときには、行く行くは約二、三百名の職員ということを考えているように伺っております。  なお、第二番目の御質問は、国連大学の職員に与えられる特権、免除、それからいわゆる外交関係に関するウィーン外交特権条約、そういうものとの比較というふうに了解いたしましたけれども、まず規定の上から申し上げますと、この協定に基づきまして、国連大学の職員のうち国際連合の職員であって国連大学本部の職員は、この協定の第十六項の一号というのがございますけれども、次のような特権、免除が与えられておるわけです。  列挙いたしますと、「公的資格で行った口頭又は書面による陳述及びすべての行動に関する訴訟手続の免除。」それから(b)(c)(d)(e)(f)というふうに列挙されておりますので、これは私いま読み上げるのは省略いたします。  したがいまして、ウィーン条約との比較ということになりますけれども、ウィーン条約に明記してありますもので、この協定に明記しておりませんものという意味で違いを指摘いたしてみますと、まずウィーン条約の二十六条に、国の安全を理由として立ち入りが禁止され、または規制されている地域に関する法令に従うことを条件として、当該国領域内での移動及び旅行の自由というのが明記してございますが、これは今回の本部協定には明文の規定がございません。それから、その次にウィーン条約では、外交官の個人的住居の不可侵及び保護というのがやはり三十条一項というのに規定してございますけれども、これも国連大学の協定には明文の規定がございません。それから三番目に、外交官の文書、財産の不可侵というのがウィーン条約の三十条の二項に規定がございますが、この点も国連大学協定には明文の規定はございません。最後に、手荷物検査の免除という規定がございますけれども、これも明文の規定はございません。  それから第三番目の御質問は、これは文部省の政府委員の方からひとつお答えを願うようにしたいと思います。
  198. 木田宏

    ○木田政府委員 大学が研究教育活動をする場合に、政府を通すかどうかというお尋ねがございました。これは国連が制定いたしました国連大学の憲章に、国連大学は「その目的の達成のために必要な学問の自由、特に研究及び教育の主題及び方法の選定、大学の活動に参加する個人及び機関の選択の自由並びに表現の自由を享有する。」こう明文の規定がございまして、加盟各国の支持でできたものでございますけれども活動については政府からの拘束がないという前提動きます。そこで国連大学の関係者はこれを学問の自由というふうに言っておるわけでございますが、しかし、全く関係がなくても困るなあというふうに思いながら、日本の場合でありますならば、国連大学のそういう自主的な活動と国内のいろいろな活動との調整を上手に考えていく必要があるというふうに思いまして、文部省にも国連大学懇談会等を設けて、事実上緊密な連携と協力ができるような仕組みを考えたいと思っておるところでございます。また、そういう大学の自治がうたわれておりますので、研究者の採用その他につきましても、理事会の手続はございますが、加盟各国との関係の手続はございません。  なお、そういう研究者が日本で生活した場合のいろいろな障害等について御心配をいただいておりますが、一番端的に申しまして、問題は国連大学が世界各国からすばらしい人を迎えようという場合においては、いわゆる各国の外務省職員のようにキャリアでそこにディプロマットとして生活するという人では必ずしもないわけでございます。りっぱな大学の研究者である人を東京に来てもらって、二、三年一緒に仕事をしてもらうということになるわけでございます。したがって、そういう方々が日本に生活の場を二、三年移して国連大学の仕事に協力するという場合に、私どもお世話をする立場といたしますと、住宅問題と子供さんの教育問題というのが日本が国際的になっておらないので、これは協定その他の問題とは別なんでございますが、事実上これは相当困難な問題があるというふうに考えております。
  199. 河上民雄

    河上委員 もう時間が過ぎましたので、私の質問はそろそろ終わりにいたしますけれども、いま文部省の政府委員が言われたような問題も、これは実際に今度は日本から外国に暮らしに行った場合も同様非常に大きな問題でありますが、そもそもわが国に国連大学本部を誘致した以上は、こういう問題も克服するために政府も全力を尽くしていただきたいと思います。  また、国連大学職員の特権、免除につきましては、いまちょっと御説明を承りましたけれども外交官特権とはまた若干違うようでございますし、また国連事務局職員などが持っているものとも若干違っている方も少なからずあるように思うわけであります。そういうようなことを考えますときに、制度以上にやはりきめ細かい配慮というものが必要である。ある意味においては政府はサービスに徹する気持ちでやらないと、国連大学本部をわが国に誘致したことによって、かえって日本の国際的な感覚の欠如を全世界に知らしめるというようなことにもなりかねないと私は思うのでありまして、そういうことのないようにぜひ格段の努力を私は希望いたしたいと思います。もし外務大臣からそういう点で何か御意見がありましたらひとつ覚悟を述べていただいて、私の質問を終わります。
  200. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 この話が始まりましたころ、ウ・タント事務総長のころでございますけれども先ほど河上委員もちょっと言われましたような多少思惑の違いなんかがありまして、日本のあちこちで誘致を非常に一生懸命やった経緯がございました。日本に決定いたしましたとたんに何となく少しその熱が冷めたような、これは外国の方はなおさら、もうこれは日本がどうかするであろうというような感じになってはいけないわけでございますが、いま少しよその国にそんな気配が見えますし、また大学の当局者も、われわれ最善のことをいたしておるつもりであっても、日本には日本のいろいろしきたりなりやり方がありまして、その間習慣の違いなんかもあって、自分たちの思っているとおりのことがなかなかできていないというような気持ちも多少あるだろうと私は思います。ですから、先ほど政府委員が言われましたように、学問の自由は尊重しなければなりませんが、そういう必ずしも同じ風土でないところへ、しかも世界初めての試みが行われるということでありますので、政府としてはこの自由、独立を尊重しながら、できるだけの邪魔にならないようなお世話をして、りっぱなものに育て上げるという義務がこれは国連に対してもありますし、各国に対してもあるだろうと私は思います。そのように政府としては今後とも努力をしてまいらなければならないと考えております。  なお、後先になりましたが、この大学の問題につきまして、かねて河上委員から非常にいろいろお力添えをいただいておりますことを、心から感謝しております。
  201. 鯨岡兵輔

    鯨岡委員長 河上民雄君の質疑は終わりました。  栗田翠君。
  202. 栗田翠

    栗田委員 国連大学に関する協定について質問いたします。  この国連大学が日本に設置されるについてのいろいろな特権、免除が協定条約などでも決められておりますけれども、出入国に関して、国籍による差別は当然ないものと思います。さてこの問題について、それでは日本と国交を樹立していない国の関係者が出入国する場合にどのように扱われるかということをまず伺います。
  203. 伊達宗起

    ○伊達政府委員 お答え申し上げます。  国際連合の職員であって、かつ大学の本部の職員として来る人物につきましては、協定にはっきりと、十六項に定めてございますように、何らの出入国制限はしないということになっておりますので、国籍いかんによらず入れるわけでございます。差別はいたしません。
  204. 栗田翠

    栗田委員 国交を樹立していない国でも同じ扱いだということでございますね。
  205. 伊達宗起

    ○伊達政府委員 そういうことでございます。  なお補足いたしますと、第二十七項にはっきりとその点は書いてございます。  「この協定の範囲内に属するいずれの者に対しても、政府がその者の属する国と外交関係を有しているかどうかにかかわらず、また、その者の属する国が日本国の外交使節又は国民に同様の特権又は免除を与えているかどうかにかかわらず適用する。」というふうに書いてございます。
  206. 栗田翠

    栗田委員 それでは、たとえばPLOのような非政府組織がありますけれども、こういうところの出入国についてはどうでしょうか。
  207. 伊達宗起

    ○伊達政府委員 国連大学ということとは全く離れた一般的な御質問と了解いたしますが、それはそれといたしまして、政府機関といいますか外交代表ではございませんので、それと同等の待遇を与えるわけじゃございませんので、出入国に関しましては日本法令の入管令の適用があるということでございます。
  208. 栗田翠

    栗田委員 私はいま国連大学に関係して申し上げているわけですが、非政府組織の関係者が国連大学の関係で出入国するような場合やまた滞在する場合もありますね。そういうことについて伺っているのです。
  209. 伊達宗起

    ○伊達政府委員 御質問を取り違えて失礼いたしました。そういうことでございますれば、この協定に定めてございますように、先ほども申し上げましたように、何ら差別するものではございません。
  210. 栗田翠

    栗田委員 PLOなどが代表として国連へ行く場合、いままではどんな資格で扱われておりましたか、同じようにやっているわけですか。
  211. 伊達宗起

    ○伊達政府委員 どうも御質問意味がちょっとわかりませんので、失礼でございますが、もう一度繰り返していただけますでしょうか。
  212. 栗田翠

    栗田委員 PLOの代表が国連の代表としてアメリカなどに出入りする場合、それと全く同じような扱い方を国連大学の場合でもなさるのでしょうかということです。非政府組織の人が出入りするわけですから……。
  213. 伊達宗起

    ○伊達政府委員 PLOの人が国連に出席するためにアメリカでどのような待遇を受けておりますか、実は私承知しておりませんので、それと同様の取り扱いをこの国連大学の職員として来た場合に扱うのかという御質問でございますれば、ちょっと比較のしようがないわけでございまして、お答えを差し控えさせていただきますが、いずれにいたしましてもこの協定に定めてございますのは、政府とかその者の属する国籍とかに関係なく、国連の職員として大学本部へ参る者につきましては何ら差別しないで取り扱うということははっきりしております。
  214. 栗田翠

    栗田委員 それではこれに関係いたしまして、今度はちょっと国連大学と外れますけれども、PLOの東京事務所が近く開設される運びになっていると思いますが、これはいつごろ開設になるのでしょうか。
  215. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 先般カドウミという人が参りまして、私どもに直接ではありませんでしたけれども、外部に対しましてできるだけ早く、数週間と言ったように記憶いたしますけれども、開きたいと思っていると言った由でございます。
  216. 栗田翠

    栗田委員 わが党としましてもPLOの東京事務所の開設については、一貫して主張して努力をしてまいりました。そしてこの事務所に滞在される方たちの待遇なんですけれども、非政府組織であっても大使館員並みの扱いをしていただくべきである、私どもはそう考えておりますが、その辺については政府としてどうお考えでいらっしゃいますか。
  217. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 これは、当初から先方もそのとおり了解をしておられますが、一般旅券というのでございますか、いわゆる外交官の特権というようなものを与えるということは私ども考えておりません。
  218. 栗田翠

    栗田委員 国連大学の方に戻りますが、国連大学の設置に当っては、建物、敷地等かなりのものを使うことになると思います。そうしますと、この設置の土地、建物などを使うことによって起こりますいろいろな問題が出てくると思うのです。たとえば一つの案として、東京教育大学の跡地などという案もあるかに聞いておりますけれども、そうしますと、そこの地域の人たちがほかのものに使いたいといったような運動もいまあるわけです。こういう場合に、 当然いろいろな具体的な問題が出てくると思いますけれども、こういう国民の側のいろいろな要望と、それから大学設置に伴う必要との摩擦をどういう立場で処理されるかということなんです。国民の必要というのも十分考慮された上で対処されたいと思いますが、その辺についてはどんなお考えでしょうか。
  219. 木田宏

    ○木田政府委員 国連大学は、現在、渋谷のビルの一角に仮の事務所を持っておりますが、日本政府が国連大学を招致いたすにつきまして、土地、施設等についての提供をお約束しておるわけでございます。これは政府が、国連大学の目的に合致する場所とその活動に必要な内容の施設をつくる責務がございます。どこにどうするかということにつきましては、それぞれの地域によりまして、御希望のあるところもあり、御希望のないところもあるかもしれません。それらの現実の実態を勘案しながら、できるだけいい調和点のあるところを見つけていくほかなかろう、こう考えておる次第でございます。
  220. 栗田翠

    栗田委員 次に、国連大学基金について少し伺いますが、まず、各国の拠出状態はどんなふうになっておりますか。
  221. 木田宏

    ○木田政府委員 まずわが国でございますが、一応他の国からも基金が拠出されるということを私どもも考慮いたした上で、五カ年間で一億ドルまでを出す用意がございますということを申し上げてまいりまして、今日までのところ、日本政府からは二千万ドルずつ二会計年度にわたって、計四千万ドルの拠出をいたしたところでございます。ベネズエラが、カラカスにおいて第六回の理事会が開かれました際に、五カ年間で一千万ドルの第一回分というふうに承知をいたしておりますけれども、二百万ドルの拠出をいたしました。そのほか、セネガル、ガーナ、スウェーデン、ギリシャ、ノルウェー等からの拠出が出ておりまして、しかし、これらは金額としてはかなり少額でございます。合わせて約四千二百五十万ドルほどの基金になっておるわけでございます。  私どもといたしますと、日本に生まれました国連大学が、金額の大小にかかわらず、多くの国からいろいろと御協賛を願うということは非常に望ましいことだというふうに考えておる次第でございます。
  222. 栗田翠

    栗田委員 四千二百五十万ドル、日本円に換算するとどのくらいになりますか、百三十億ぐらいでしょうか、大体そうだと思いますね。そうしますと、これはいずれはもっとふえていくということを考えながらやっていらっしゃるようにうかがいますが、現在この基金となっているものを運用することによって、そこから出てくるもので年間賄っていらっしゃると思うのですけれども、年間大体どのくらいの資金を使う見込みでいらっしゃいますか。
  223. 木田宏

    ○木田政府委員 一応国連大学自体が、基金に対する将来の目標額といたしましては五億ドルを持ちたいというふうに言っておられるわけでございます。今日まで集まっておりますのが四千二百五十万ドルほどでございまして、現在のところは、その集まっております基金の利息で本年度の予算が立てられておるわけでございまして、本年度の歳出規模は、トータルで百二十四万八千ドルというふうに承知をいたしております。
  224. 栗田翠

    栗田委員 百二十四万八千ドル、私、どうも弱くて困りますが、日本円に直すとどのくらいになりますか。
  225. 木田宏

    ○木田政府委員 ちょっと私も正確でないかもしれませんが、大体三億五、六千万円見当ではなかろうかと思います。
  226. 栗田翠

    栗田委員 これは、まあ大学と名がついておりますけれども日本のいわゆる私たちが大学と考える大学とはかなり違うわけですけれども、しかし、いま東大などの年間予算が五百億か六百億というふうに聞いております。そうしますと、これの数%にすぎない状態になるわけですね。これはどうなんでしょうか、資金としてかなり足りないのですね。いかがですか。
  227. 木田宏

    ○木田政府委員 これは私どもからお答えをすべきことかどうか、ちょっと考えますけれども、しかし、一応国連の当事者並びに生まれた後の国連大学の関係者が基金として五億ドルほど持ちたい、まあ五億ドルというお金そのものも、アメリカの大学その他と比べましたならば全く小さな金額であることは御承知のとおりだと思います。しかし、さきに河上委員の御質問にもお答え申し上げましたように、おのずからこの大学の活動そのものがいわゆる普通の大学とは違うわけでございまして、シンクタンクとしての役割りを果たしていくということでございますから、施設設備費に多大の金を入れるというようなこともございません。また人員にいたしましても、それほど数多くの人員を予定しているわけではございませんで、一応二、三百人というのを将来規模として、五億ドルに対応する場合の職員を予定しておるわけでございます。むしろできるだけ若い研究者の養成、訓練のために研究費を考えていくということが主になるであろうかと思うのですが、そういう活動の実態を考えますと、現在まで考えられております一応の構想というものは、それ自体成り立っていくものではなかろうかというふうに思います。
  228. 栗田翠

    栗田委員 そこで、さっき伺いましたら、日本と、それからベネズエラですか、その他拠出されているところがかなり小さな国、後進国などが多いように思います。ソ連だとか、フランス、イギリス、アメリカなどが基金を拠出していないのは、なぜでしょうか。
  229. 木田宏

    ○木田政府委員 第一には、やはり生まれたばかりで何をするところかということについての十分なPRが行き届いていないということであろうかと思います。     〔委員長退席、羽田野委員長代理着席〕  それから第二に、この国連大学の目標、活動の計画が明らかにされて、それに理解が高まってまいりますならば、相当期待できるものというふうに私ども考えておるのでございますが、ヘスター学長から折に触れて聞くところによりますと、フランス政府当局も相当積極的な意欲を示して協賛の姿勢を表示してくれた。あるいはドイツ政府もかなり積極的に耳を傾けてくれておる。また、ソ連にも参りましてソ連政府当局者とも会って国連大学の実態の説明等をいたしておりますし、サウジアラビアその他のアラビア諸国にも足を運びまして、責任者にいろいろとお願いをして、かなり積極的な理解を示してもらっているというふうにお話を聞いておるところでございまして、一刻も早くそうしたいい話が中身のあるものになってくるようになればいいなと期待をいたしておるところでございます。
  230. 栗田翠

    栗田委員 大きな国も基金を拠出されて、豊かな中身で運営がされることは望ましいと思います。  ただ、一つ心配になることは、逆に今度は大国が拠出をしますと金額も多くなると思いますから、そうなりますとそういう大国の特定の利益に研究の中身なんかが合致していくといったようなことも往々にして起こりやすい問題ですが、こういう点について、そうでないような歯どめはどんなふうにしていったらいいのでしょうか。その辺はどうお考えになっていらっしゃいますか。
  231. 木田宏

    ○木田政府委員 先ほど河上委員に御説明申し上げたかと思いますけれども、国連大学憲章自体が、先進国への頭脳流出といった発展途上国の現象を防ぐために、国連大学は発展途上国における研究者たちの知的孤立を緩和するよう努力をするという使命を明示されております。大学の自治ということをうたっておりますのも、毎年毎年加盟国からちょうだいする金というのではなくて、ある自主的な基金をもとにして自主的な研究活動ができるようにしたいということでございますから、私は基金の充実が大きな金を出した国の利益にだけつながるとは考えておりません。
  232. 栗田翠

    栗田委員 いまのお考えを伺って私も大変安心しているわけですけれども、この「国連大学」などの内容を書かれておるものを見ましても、発展途上国、特に恵まれない人々の利益と願望にこたえることが一つの大きな目的になっており、原則になっておるように思います。ですから、いずれにいたしましても国連大学が研究や研修、知識の普及なんという分野で、発展途上国の利益を第一義的なものとしてぜひ考えていっていただきたい。そういう中で大国の圧力などがもし万一出てきた場合、この日本に置かれています大学が最初の目的と原則に沿って正しく運営されることを望んでおりますが、そのことについて大臣のお考えを伺いたいと思います。
  233. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 それは憲章の趣旨もさようでございますし、また現に基金に対する拠出を毎年の国連からの支出にいたしませんで、基金をもって、その果実をもって運営することから申しましても、そのように全体がつくられておるわけでございますが、運営につきましては、ただいま仰せられましたようなことがまさしく心構えでなければならないと思いますので、大学がそのようなものとして育ちますことを日本政府といたしましても祈念し、またそれに貢献いたしたいと考えております。
  234. 栗田翠

    栗田委員 国連大学の設けられる意義を見ますと、たとえばこういうふうに書いてございます。「国連大学は本格的な国際機関であり、これが我が国にあることにより、研究教育を通じて、我が国の国際協力の姿を世界に示し、」云々というようなこともあります。また、「国連大学に協力することにより、閉鎖的といわれる我が国の大学や研究所が国際的に開かれたものとなり、我が国の研究教育活動の振興に資する」とも言っております。  結局、日本の国際協力の姿を世界に示すといったようなことも大きな意義になっているわけですが、そういう立場から考えまして、国連大学設置とも関連して特にそうですけれども、ユネスコの勧告などを日本政府は積極的に実施していくということがいま大変必要ではないかと思うのです。こういうことで一昨年、一九七四年十一月にパリでユネスコの第十八回総会が開かれまして、ここで科学者の地位に関する勧告その他合計三本の勧告が出されております。日本政府はこれに賛成しているはずです。この勧告の中に「加盟国がこの勧告に示されている原則及び基準をその領域内において適用するために必要な立法措置又は他の措置を講ずること」を勧告しているのですね。  まずこの点について伺いますけれども、このユネスコの科学者の地位に関する勧告をその領域内で原則、基準を適用していくためにとられました立法措置またはその他の措置、どんなことをとられたでしょうか。
  235. 木田宏

    ○木田政府委員 昭和四十九年秋の第十八回ユネスコ総会でこの御指摘の勧告が採択されました後、政府といたしましては五十年の五月二十三日であったかと思いますけれども、内閣から本勧告を国会に提出をいたしました。これはユネスコ自体の定めのある措置でございまして、権限ある当局にこの勧告の趣意を伝えるということになっておるわけでございます。その後、また国内への周知ということも政府としていたさなければならぬことでございまして、文部部内に関しましては国公私立の大学、専門学校等あるいは各県の教育委員会、その他教育関係者への通知もいたし、また各省の打ち合わせ等もいたしまして、ユネスコでこういう勧告が採択されたということについての周知とそれぞれの関係者の検討を煩わした次第でございます。
  236. 栗田翠

    栗田委員 この勧告を見ますと、これを普及していくために関係者に対して注意を喚起すべきであるということを言っておりますが、その中で「科学研究者の利益を代表し又は促進する種々の団体及び」というものも入っております。  そこで伺いますが、いまの国会には提出され、それから国公私立の大学などには勧告文をお渡しになったということなんですけれども日本学術会議にこれを渡していらっしゃいますか。
  237. 木田宏

    ○木田政府委員 この勧告の取り扱いは、外務省からは関係省庁への連絡がございまして、文部省としては先ほどどもが申し上げたようなことをいたしたわけでございます。  日本学術会議は総理府の関係機関でございまして、総理府の方からそうした措置がとられたものと考えておる次第でございます。なお、この勧告の制定の過程におきまして、日本学術会議から日本ユネスコ国内委員会に対して意見の開陳がございました。したがいまして、日本ユネスコ国内委員会といたしましては、そうした学術会議からの御意見の開陳があったこともございまして、国内委員会会長名をもって学術会議の会長に、採択された勧告の趣意をお伝えをいたしてございます。
  238. 栗田翠

    栗田委員 日本学術会議の会員の方たちは各方面から勧告の中身を入手しておられるようですが、私の聞いたところでは、正式に学術会議にこの勧告文が行っていないのだそうです。これは文部省の関係でなく総理府の関係だというお話でございますが、ぜひ政府としてお調べをいただきたいと思いますが、特に日本学術会議というのは日本の科学者の、言ってみれば内外に対する代表機関です、ここにもしこういうものが正式に届いていないとしますと、これは学術会議が軽視されたということになるわけでございまして、やはりこういうものの協力を最も要請してしかるべきだと思いますので、ぜひその辺を調べていただきまして、届いていないようでしたら、正式な形でまたお届けいただきたい、こう思うわけです。  次に、この勧告を実施していくためにとった措置について、総会が決定する期限及び様式で、総会に報告すべきだという勧告がございます。聞くところによりますと、十月から十一月には第十九回のユネスコの総会が開かれるということですけれども、恐らく報告はもう九月ごろまでに提出ということになると思いますが、どのような措置についてどのような報告をされる御予定ですか。
  239. 木田宏

    ○木田政府委員 ユネスコの方から要請されております報告事項といたしましては、加盟国は勧告を権限ある当局に提出したかどうかということが第一点でございまして、このことについては、国会への御提出を申し上げましたのでそのことを答えることになろうかと思います。  第二番目に、権限ある当局としてどこへ提出したかということを答えることになっておりますから、これもおのずから国会に御報告を申し上げたということを答えることになろうかと思います。  三、四と項目がございまして、権限ある当局が措置をとったかどうかということを尋ねられております。また、その中身はどうかというのが四番目でございます。本件につきましては、国会の方でおとりになった措置をまだ承知いたしておりません。そうしたことをごく簡単にお答えすることになろうかと思っております。
  240. 栗田翠

    栗田委員 さっき学術局長もおっしゃいましたが、日本学術会議が五月十一日から十三日まで七十回総会を開きました。そしてこの中で、この勧告の趣旨に沿った科学研究基本法制定に関する勧告と法律試案のようなものを出しております。これがさっきおっしゃったことだと思いますが、そうでしょうか。
  241. 木田宏

    ○木田政府委員 権限ある当局のとった措置ということを尋ねられておるわけでございまして、日本の場合には国会のおとりになりました措置を報告することになろうかと思います。
  242. 栗田翠

    栗田委員 ちょっと勘違いしていらっしゃるようです。権限ある措置の問題ではありません。別の話でございます。日本学術会議が開いた総会で意見が出たとさっきおっしゃいましたね。そのことについて私は申し上げたのです。それは、いま言いました科学研究基本法制定に関する勧告とその法律試案が出されたということをおっしゃったのでしょうか。これは御存じでいらっしゃいますね。
  243. 木田宏

    ○木田政府委員 先ほど私が学術会議からの御意見がございましたと申し上げましたのは、ことしのこととして話したことではございません。一昨年のユネスコ総会で勧告案文を審議いたしますに当たりまして、一昨年の春だったかと思いますけれども日本学術会議の会長からユネスコ国内委員会の会長に対して、草案に対する意見をちょうだいしたということを申し上げたわけでございます。
  244. 栗田翠

    栗田委員 そうしますと、ことし五月十一日から十三日の七十回総会でそのようなものが出されたということはまだ御存じではございませんか。
  245. 木田宏

    ○木田政府委員 新聞承知をいたしております。いずれまた、学術会議がお取り決めになりましたことにつきましては、政府あてに成文をもって御連絡があるものと考えております。
  246. 栗田翠

    栗田委員 この科学研究基本法のようなもの、これに類するものは、国際的にはどこかの国で持っていますでしょうか。
  247. 木田宏

    ○木田政府委員 どうも寡聞にして、私自身不勉強なものでございますから、ちょっとその御質問にはお答えいたしかねます。
  248. 栗田翠

    栗田委員 内容はまだごらんになっていらっしゃらないようですが、私が聞きました限りでは、科学研究基本法というものは、まだ国際的にも余りないというふうに聞いております。その試案が出されておりまして、そういう意味では大変貴重な中身ではないかというふうに思うのです。しかも、その日本学術会議というのは、さっき申しましたように、日本の科学者の内外に対する代表機関でございますが、ここがこのようなものを試案として出して、しかも、これは勧告に沿って試案をつくったということになるわけです。いずれ届くのでございましょうが、これが届きました場合には英訳をして、できればこの総会への報告の中に入れるべきじゃないか。こういう勧告に対する学術会議考えということで、こういうものが勧告にこたえてつくられてきたので、これは非常に重要なものとして報告していくべきだと思うのですけれども、その辺についていかがでしょうか。
  249. 木田宏

    ○木田政府委員 ユネスコから要請されております報告事項とは別のことかと考えております。
  250. 栗田翠

    栗田委員 しかし、このユネスコの報告事項の中にも、どのようにして原則及び基準を領域内に適用したかということとあわせて、関係者に注意を喚起していくような方途などについても勧告されているわけですから、それにこたえてつくられてきた内容というのは、当然こういうことを実施されて措置をとられた、その反響としてあったことになるわけですね。私は大変関係があると思いますが、そういうものについては一切報告なさらないのですか。     〔羽田野委員長代理退席、委員長着席〕
  251. 木田宏

    ○木田政府委員 ユネスコから勧告されました勧告文の中身にはいろいろな内容のことが挙げてございます。しかし、来るべき十九回総会で各加盟国から報告すべき事項として定められておりますのは、加盟国が勧告を権限ある当局に提出したかどうかということを中心にしたものでございます。先ほど申し上げましたように、国会に御報告したことと、その報告をした権限ある当局の名前と、それから当局の方でおとりになりました中身、この三点について加盟国の報告を求められておるわけでございまするから、その点について報告するつもりでございます。
  252. 栗田翠

    栗田委員 それでは、いまの報告事項とは別に伺いましょう。この勧告に沿って学術会議が立法試案を出してまいりました。これは非常に重要だと思いますけれども、こういうものは決められた報告以外には出さないわけではないと思うのですけれども、どうお扱いになるのでしょうか。
  253. 木田宏

    ○木田政府委員 政府に提示がございましたら、政府部内関係者で、学術会議からの御提案について検討することになろうかと思います。ユネスコとの関係はございません。
  254. 栗田翠

    栗田委員 ぜひとも重視して扱っていただきたいと思います。  それでは次に、このユネスコの勧告の中身に沿って伺いますけれども、「高度の才能を有する若い人々が科学研究者としての職業に十分な魅力を感じ、かつ、科学研究及び実験的開発が適度の将来性とかなりの安定性のある職業であるという十分な確信を得ることを確保すること。」こういう勧告がございます。なかなかむずかしい言い回しをしていますけれども、若い、才能を有する科学者たちが十分に研究や実験的開発が安心してできるようにしていくべきだということでございます。これに基づいて伺いますが、いま日本では大変若い研究者がふえておりますけれども、その生活状態というのは必ずしも安定していない実態です。  そこで伺いますが、オーバードクターというのがよくありますね。大学院を卒業して、しかし就職できずにいるオーバードクターですが、現在そのオーバードクターは、この日本ではどのぐらいの人数がいるのでしょうか。
  255. 木田宏

    ○木田政府委員 いろいろ数え方もあろうかと思いますが、大体一千二、三百人程度かと思っております。
  256. 栗田翠

    栗田委員 これは年々ふえているのじゃありませんか。
  257. 木田宏

    ○木田政府委員 必ずしもそう急速にふえているというふうにも考えません。
  258. 栗田翠

    栗田委員 オーバードクターとか院生の方たちからのいろいろな話によりますと非常にふえているという、私も数字的につかんでおりませんが、当事者たちの数で言うと千六百九十四人というふうにいま言われておりますが、そこらはちょっと差がありますが、大変定員削減などによって助手などに採用される就職先が減っている実態であるということがしきりに訴えられております。そういうことの中で、実際に大学院は出たけれどそれこそ就職はできないということで、オーバードクターの生活というのが実に大変な実態になっているわけです。私ども聞きましただけでも、たとえば、もうオーバードクターぐらいになりますと三十に近い年齢になって、中には妻子を抱えているような人たちも出てきているわけです。そういう中で収入がありませんので奨学金だけで暮らしていたり、また奥さんが働くことで研究を続けているという状態、それからまたアルバイトをやっているわけですね。そうでなかったらば親のすねをかじるわけですけれども、その年になってそういつまでもすねをかじっているわけにはいかない、こういう実態が実際には出てきているわけです。一つの例を挙げますと、奨学金も貸与率が非常に低いということです。仮にもし奨学金がみんなの中に渡されても、いまの物価高の中では本代どころか衣類一つ買えないということが言われています。それから本を売り、ノートを買うのも節約して、そして千円ぐらいで一週間ぐらいを食いつないだというような話だとか、そうして、時間が欲しい、本代が欲しいという切実な要求がオーバードクターの中に非常に出ておりますけれども、いまこういうオーバードクターの実態をごらんになりまして、有為の青年たちが、研究者たちが、実際にその自分たちの研究を生かす場を持たずに苦しい生活状態になっているということについてどうお考えになられるでしょうか。またどう対処していこうとお考えになりますか。
  259. 木田宏

    ○木田政府委員 いまの日本の研究者は国公私立の大学の教官だけでも十万を上回っておるかと思います。また、民間のいろいろな研究機関等も含めますと、かれこれ三十万人近い科学研究者が人文社会科学、自然科学を通じているものというふうに理解をしておるのでございます。そういう数に対しまして一千名前後のいろいろと待機をしておられる方々があるということは、私はそう極端に大きい状態ではない、むしろポストがかなり最近広がってきて、そのために研究者の勤め場所というのはこの数年間大きくなった、また、数年間と申しましたが、過去十年間相当の勢いで広がったというふうに思うのでございます。個々の方から見ますと、いま御指摘がありましたようなそういうこともございましょう。そのことのよって来たる原因につきましては、専門分野ごとにそれぞれ考えなければならないことがあるかもしれません。ですから、そうした点は一律な議論をすべきではなくて、専門領域ごとにそれぞれ非常に無理があるということになりましたならば、それはそれなりの方法を考えるべきだと思います。大局的に申し上げますならば、三十万人近い科学研究者が現にいる、その際に待機をしておられる方々が一千名強あるということは、そう極端な数字ではないというふうに理解をいたします。
  260. 栗田翠

    栗田委員 数が全体から見て多いとか少ないというばかりでなくて、そこにある有為な才能がそのまま埋もれたり、生活苦のために生かすことができずに、大学院を卒業したままになっているということにいかに対処していくかという問題だと思うのです。  私、いまオーバードクターだけを最初申し上げましたけれども、大学院を卒業した数が千二、三百から六百ぐらいだとしましても、院生の生活そのものもずいぶん問題になっております。先日も、これは三月十九日の新聞ですけれども、東大生が道路工事の作業をしていてはねられて死んでおります。高速道路のアルバイトに、東京都内の高速道路なんですが従事していたわけですね。この東大生というのは大学院を受けて受かっているわけなんですけれども、その大学院へ入るためにお金がないわけです。才能はあって受かっているんだけれども、お金がない。いまみんなどんなふうにして大学院の勉学を続けているかと言いますと、中には一年置きに、一年間道路工事などのアルバイトをやって、ためて、後一年研究して、また一年間アルバイトをやって、また研究するといったような人たちも出ていて、この東大生もその一人だったわけですね。この犠牲でございます。こういうのはほんの一人か二人だというようなわけにはいかないのです。やはりせっかく才能ある人たちが、いまの教育を受けていくために、研究を続けていくために経済的な理由によって十分にそれを生かすことができない実態になっているというのは事実だと思います。そして局長もさっき、さした数ではないとおっしゃいましたけれども、先日出された文部省の教育白書を見ましても、日本の教育水準、いわゆる就学をしている水準というのは高いけれども、教育費は国際的に見て非常に低いということが言われているわけでして、こういうことの中から、やはりオーバードクターの問題とか、大学院生の、実際に才能がありながら十分に研究に従事することができない実態だとか、そういうものが出てきているんじゃないかと私は思うのです。北海道大学なんかでも今度大学院に受かったけれども、経済的理由から進学をやめたという人だとか、それから最近は学校生協でインスタントラーメンが実によく売れるそうですか、食事を削ってラーメンだけ食べて、それで戦後間もなくの脚気のような症状の人が院生の中にたくさん出てきているというんですね。それでもまだ食費を切り詰めるにも限度がきまして、今度は生活の、家の状態なんかを切り詰めていく、日当たりのいい四畳半を今度は日陰の三畳に移って何とか家賃を削っていこうとか、まあいろいろなことをやりながら勉学、研究を続けていこうとしている実態が出ています。  本当にそういう意味では日本の研究者たち、若い才能というのが十分に安定した状態で伸ばされていく条件がつくられていないと私は思うわけです。頭脳流出なんということがありますけれども、結局後進国の頭脳が流出するのでなくて、日本はずいぶん経済的には先進国だと思いますが、経済大国ですが、そこの頭脳がなぜ流出するかということですね。それは流出した方が研究しやすいから出ていくわけでして、そういう問題も実際にあると思うのですが、こういう点についてもぜひとも政府がこの勧告に沿いまして、高度の才能を有する若い人たちが安定した状態で、その研究や実験開発ができるようにしていくという点で大いに努力をしていただき、勧告の積極的な実行、実現ということをやっていただきたいと思います。いかがでしょうか。
  261. 木田宏

    ○木田政府委員 ユネスコの加盟国百三十四、五カ国あったかと思いますが、わが国の研究者はそういうユネスコ加盟国の中で非常に恵まれた状態にある、世界的に見ればそういうことが言えるかと思います。しかし現在の状態ですべて満足すべきものであるというふうにも考えておりませんけれども、大学院の学生その他のあり方が、これからの世の中はだんだん変わっていくかと思います。いま栗田委員御指摘になりましたような、いろいろと仕事をしながら勉学を続けるというケースはアメリカの大学院にはいっぱいございます。本日衆議院の文教委員会で御可決をいただきました学校教育法の改正によりまして、新しい大学院というものも構想していけるものと楽しみにしておりますが、そういう大学院は大人が学ぶところでありまして、親のすねをかじる者だけが学ぶ大学院ではない、そういう大人の学ぶ大学院という方向へ持っていきたいものだというふうに考えておるわけでございます。これからの大学院のあり方もいろいろと動いていこうかと思います。その間本当に勉学のために困った方々に対する措置はそれなりに講じていかなければなりませんけれども、ユネスコの勧告との関係お答えをさせていただきますならば、わが国は非常に恵まれた状態にあるというふうに考えております。
  262. 栗田翠

    栗田委員 文部省の関係でいらっしゃいますから、あわせてその措置について二、三申し上げますが、いま奨励研究員制度というのがございますが、これはオーバードクターその他研究者たちにある一定の枠でお金を支給して研究資金などを出しているわけですが、二百八十人の枠しかありません。月額八万四千円です。八万四千円あれば何とかぜいたくでなければ十分やっていけると思いますが、この枠を何とか広げる問題。  もう一つは奨学金ですが、院生ぐらいになりますと研究のための本代なども非常にかかってまいります。いま四万八千円の金額ですけれども、せめて七万円ぐらいに、これが多くの要求でございます。  それから学費その他が大変値上がりしていますけれども、研究生の研究科料は上げないでもらいたいといったようなこと、これは要望としていま出ております。こういうことについてもぜひ御検討いただきたいと思います。  続いて、このユネスコの勧告の中で科学者のいろいろな差別の問題ですが、人種、皮膚の色などとあわせて性による差別という問題です。性による差別をしないということ、これは原則であると思います。  ところで昨年の暮れ、十二月二十日に日本学術会議科学者の地位委員会が主催しまして、婦人研究者の地位の問題をめぐる初めてのシンポジウムが開かれております。これの内容の特に中心になったものが婦人研究者の待遇とかいろいろな差別の問題ですね。ここらが集中的に問題になりました。  報告の一部をちょっと読ませていただきますと、これは婦人研究者の採用時における男女差別、就職後の研究業務における不平等さらに昇進、昇格の際の不当な差別が一番の中心の話題であった。どんな実態になっているかと言えば、たとえば採用時の差別について言えば、特に人文、社会科学分野において著しいということが言われております。常勤のポストへの就職がきわめて困難であり、幾つかの大学の非常勤講師をかけ持ちしてようやく生活を維持していることが多い。研究への意欲と能力を持ちながら、ついに研究者として、成熟しないまま研究活動から脱落せざるを得ない場合が多い。大学の助手は一応公募の形をとっているところもあるが、その数は少ない上に男性偏重で、婦人に対しては事実上公開されていないということが言われているわけです。この辺の事実については局長どう考えていらっしゃいますか。急に申し上げたのであれですけれども……。
  263. 木田宏

    ○木田政府委員 総理府の科学技術研究調査結果の報告によりますと、わが国の研究者総数が昭和五十年で三十一万というふうに出ております。会社、研究機関、大学等全部合わせてでございます。その中で女子の比率は、大学、研究機関、会社とこう三つ分けますと、大学が一番高うございまして一〇・六%というふうに出ております。大学の中の教官の専門分野別のあり方を見ておりますと、やはり人文系がかなり多く出ておるかと思っております。したがいまして、個々にはいまのような御指摘のこともあり得るかと思いますが、大局的に見ますと、大学の人文系で特に差別が強いというようなことはないのではなかろうかというふうに思うのでございますが、個々のケースについては十分な実態を承知いたしておりません。
  264. 栗田翠

    栗田委員 それで特に婦人の教職員が四年制大学で総数の平均八・二%おりますが、五五%が助手で、教授が一一%、助教授一六%、専任講師八%、もっぱら婦人は下級職として用いられ、上級職に進むに従って非常に少なくなっているということが言われております。これがただ差別によるかどうかという判断は非常にむずかしいわけですけれども、実態としてこういうことが訴えられているという事実があるわけです。  もう一つは、さっきのオーバードクターのしわ寄せなんですけれども、博士課程を終了して就職難をかこつ、いわゆるオーバードクターは特に婦人にしわが来ているということも言われております。私が調べてみましたけれども、たとえば学術会議調査したある調査のデータを見ますと、国立大学文科系のあるAという学部では、オーバードクターは卒業者の男性が一八%、女性が一〇〇%なんです。それからB講座では男性が一七%、女性が一〇〇%、みんなオーバードクターでそのまま就職できずに残っているという実態があります。国際的に比べてみても日本の戦後の歴史がまだ短いということはありますけれどもアメリカなどに比べて日本の婦人研究者の比というのは非常にまだ少ない実態が出てきております。  こういうことで、性による差別はなくし、本当に婦人も研究者として十分に安定して研究していくことができるような条件をぜひともつくっていくために努力をお願いしたいと思います。そのことについてのお考えを伺います。
  265. 木田宏

    ○木田政府委員 ユネスコの勧告に挙げてございます平等と申しますことは機会の平等ということでございます。おのずからそれぞれの特技、能力、あるいはポストのあり方との関係がございますから、すべてのところに同数でなければならないというふうにはユネスコも言っておらないかと思うのでございます。個々の事情につきましてはいろいろございましょう。また一般的に申しまして、日本の科学研究者の実態から見て、もう少し女性の研究者がふえてもいいではないかというような点につきましては、私どもも必ずしも反対するものではございません。むしろ歓迎すべき点があろうかと思うのでございますが、ユネスコの勧告はいろいろな機会についての平等ということを言っておるというふうに理解をしております。個別に問題になりますところは一つ一つ具体の問題として改善を図っていきたいというふうに考えます。
  266. 栗田翠

    栗田委員 私も数は全部同じにということは言っておりません。いずれそうなるにせよ、そういうことをすぐいま実現せよということではないわけでして、ただ機会の平等ということでも、さっき出されておりました大学の助手が公募の形をとっていても、女性に対しては事実上公開されていないというような実態がもしあるならば、これは機会が平等でないということになるわけですから、そういったようなことについて留意されて調査もしていただきたい、そういう実態があればまた改善されたい、こういうことでございます。  続いて、国際交流の問題ですけれども、このユネスコの勧告では国際的な交流ということをやはり非常に強く言っております。  ところで、現在、国際的な研究機関やまた研究のための代表派遣に出されている予算の問題ですけれども日本学術会議が国際代表派遣費として受けている予算、五十年度の予算が五千六百三十五万八千円でございます。ところが、五十一年度が全く同額の五千六百三十五万八千円という実態になっております。これは、実際には東京−ヨーロッパ間の旅費だけ見ましても値上がりをしているわけでして、私が調べたところ、五十年三月で東京−ヨーロッパ間は五十六万六千九百円往復にかかっておりますが、五十一年になりましたら六十二万五千円もかかっているわけです。旅費一つ見ても大変高くなっている中で、この予算が全く変わっていないという実態がございます。これは、実際に国際的に代表も派遣し、交流をしていくという趣旨から言って、非常に不都合ではないかと思いますけれども、いかがでしょうか。
  267. 木田宏

    ○木田政府委員 日本学術会議の予算のことにつきましては、私、どういうお考えであるかよくわかりませんのですが、一般的に申しまして、日本学術会議は、政府に対しまして意見をいろいろと提示される科学者の代表機関だというふうに考えておるわけでございます。個々の国際交流事業そのものは、いろいろな関係省庁でそれぞれ責任を持って遂行していかなければなるまいかと思っております。私どもは学者の世界の国際交流ということを大いに活発にしたいと思っております。純粋の学者の国際会議だけでも一年間に一千件以上にわたっておるわけでございまして、それ全部に日本から関係者が出席するということはとてもむずかしい状態にございまするけれども、しかし幸いに相当多くの会議をこなすところまで来ております。文部省におきましても、国際会議の派遣費その他、行政上の必要から対処すべきものにつきましては、増額を図りまして学術の国際交流に資したいというふうに考えておる次第でございます。
  268. 栗田翠

    栗田委員 最後に、精神的、物質的な援助をしていくべきであるということに関係して伺います。  いままで大分内閣関係関係の多いことを伺ってしまいましたが、これは「わが国の学術」、文部省学術国際局発行の資料でございますから、まさに局長の担当のところでございますが、そこで出されている資料を見ますと、研究者一人当たりの研究費の実態が出ております。西独が千八百四十三万円、アメリカが千八百三十三万円、フランスが千八百二十九万円ぐらいの額になっております。日本ががたっと落ちまして八百三十二万円。これは大変少ないのですね。ユネスコなどでごらんになって、日本の研究者は国際的に見て非常に恵まれた地位にあるとおっしゃってはおりましたけれども、先進国の中で比較しますと、まだ研究者にかけられている研究費というのは大変少ないのじゃないかと私、思います。高等教育機関、大学を中心にした学術研究者一人当たりの研究費を見ましても、西独の場合千八百六十九万、アメリカが千七百二十九万で、日本が四百七十二万、西独の四分の一ぐらいになっております。これがいまの実態ではないでしょうか。  やはりこういう意味で、これは局長だけに申し上げてもあれですけれども、本当に研究者が十分な予算を持って研究できるような実態をつくっていかなければならないというふうに思いますが、いかがですか。
  269. 木田宏

    ○木田政府委員 わが国の場合は、御指摘になりましたヨーロッパのフランス、ドイツ、イギリス等と比べますと、大学の教官の数が非常に多いものでございますから、一人当たりの金額が低く出るという面が一面ではございます。しかし、御指摘のように低いことがいいわけじゃございません。私どもも精いっぱい今後努力をいたしまして、研究費が充実いたしますように心がけてまいりたいと思っております。
  270. 栗田翠

    栗田委員 それでは、時間が参りましたので終わります。国連大学に関連して、ユネスコの勧告その他いろいろ伺わせていただきましたが、国連大学が設置されるについて、その趣旨が本当に徹底して貫かれますことを願いまして、質問を終わらせていただきます。
  271. 鯨岡兵輔

    鯨岡委員長 栗田翠君の質疑は終わりました。  渡部一郎君。
  272. 渡部一郎

    ○渡部(一)委員 本協定の審議に当たりまして、国際連合との間には、すでに国際連合の特権及び免除に関する条約がありますが、この協定とただいま議題になっております本協定との法的関係はどういうことになっておるのか。その辺をお伺いしたいと思います。
  273. 伊達宗起

    ○伊達政府委員 お答え申し上げます。  国連との間の特権、免除に関する一般協定とこの協定との関係でございますが、この協定にも国連本部職員であって大学本部職員である者についての特権、免除と、また学長についての特権、免除というようなものが定めてございまして、特権、免除の面に関します限り、その双方が相互補完的であるということが言えると思います。  ただ、国連大学というのは、国連の機関一般に通用いたしますよりはさらに特殊に、まあ学長でございますとか大学ということの性格上、一般協定ではカバーできないような対象についてもはっきりと定めておく必要がございましたので、新たにこの協定で特権、免除の規定を定めたということでございます。したがいまして、この第二十八項で、三十四ページでございますが、その点を書いてございまして、この協定の規定は一般条約の規定に対して補完的なものだ、それで同一の事項に関する場合には、それら二つの規定は双方の規定が適用される、ただし、最後の行でございますが、絶対的に抵触するような場合にはこの協定の規定が優先するものであるというふうに定めているわけでございます。
  274. 渡部一郎

    ○渡部(一)委員 国連大学の日本人職員で、国連の職員である日本人職員とそうでない職員とがいると思いますが、特権、免除の違いはどのようなことになるかというような点についてお伺いしたいと思います。
  275. 伊達宗起

    ○伊達政府委員 日本人である国際連合の職員と日本人でない職員との間で差があるかというお尋ねでございますが、第十六項一項に定めてございます。二十ページでございます。普通、国際連合の職員である大学本部職員に与えられます待遇につきましては、日本人であると日本人でないとにかかわりなく、同じ待遇が与えられる。その間に差はございません。
  276. 渡部一郎

    ○渡部(一)委員 御回答がちょっと違っておりまして、国連大学の日本人職員の中で、国連の職員であるとみなされる者と、そうでない職員とがあるのでしょうと伺っているわけです。だから、その特権の差はどうだ、そしてそうでない差はどこでつけるのか、その辺のところを伺いたいわけです。
  277. 伊達宗起

    ○伊達政府委員 お答え申し上げます。  国際連合の職員である日本人は、この協定で定めてございますように、第十六項に基づきます特権を持っております。国際連合の職員でない日本人と申しますのは下級の職員でございますが、それについては特権、免除はこの協定では規定いたしておりません。
  278. 渡部一郎

    ○渡部(一)委員 それから、その両者はどういうように分けるのですか。教員については国連職員と見なすのか、守衛さんについては見なさないのか、そういう規定の差があるだろうと思いますけれども、それはどこで割るのですか。
  279. 伊達宗起

    ○伊達政府委員 お答え申し上げます。  国際連合の職員であるかないかということにつきましては、国連の人事採用の規則によりまして、国連が国際連合の職員という資格を与えるかどうかにかかっているわけでございまして、この協定で定めてはおりません。もっぱら国連の定めるところによるわけでございます。
  280. 渡部一郎

    ○渡部(一)委員 国連の人事採用の規則があるのなら、本協定の審議に当たって一緒に出されるのが当然だと思うのですけれども、そういうものがあるのですか。
  281. 大塚博比古

    ○大塚説明員 お答え申し上げます。  国連の本部ではもちろんスタッフレギュレーションというのがありまして、そこに任用の基準その他の規則がございます。
  282. 渡部一郎

    ○渡部(一)委員 むしろいまお答えになるべきなのは、何名規模でどれぐらいを採用して、国連職員としてはどれぐらいの規模を持つということを明らかになさった方がいいのじゃないかと思うのですけれども
  283. 大塚博比古

    ○大塚説明員 お答え申し上げます。  先ほど伊達政府委員からお話がありましたように、この協定では国連大学の本部の職員とそうでない職員とを示す基準というのは何も規定されてございません。反面、二十二ページの十八項で書いてありますように、国連の大学は、国連の本部の職員の任命が行われたときに日本政府に通知を行う、こういうことになっております。  それからなお、いま御質問の趣旨が、国連の大学の職員として現在日本に来ておる人たち、そういった人たちの内訳でございましたら、数字がございますのでお答えいたしますけれども
  284. 渡部一郎

    ○渡部(一)委員 では、それは後に資料として御提出を願います。  特権、免除を与えられた日本人職員に対して日本国内法の適用はどうなるのか、その辺をお示しください。
  285. 伊達宗起

    ○伊達政府委員 この協定によりまして、特に第十六項でございますが、国連の大学の職員として特権、免除が与えられるわけでございますが、その場合、やはり国連大学という性格からいたしまして、このような特権、免除が必要であろうということでこの内容が定まってきたものでございます。したがいまして、わが国の国内法の適用が排除されて、これらのものがわが国関係国内法令の枠外に置かれるものであるとかいうことを意味するものではございません。一般論として申しますと、たとえば特権、免除協定上、一定の者に関税を免除すると定めておりますが、その協定の締約国の国内法上関税を免除する規定がない場合には、その締約国は協定上の義務により、国内法の関係規定の適用を免除するという関係に立つわけでございます。もっとも、この協定わが国における適用について申しますれば、ただいま挙げました例のような場合、国内法上も免除され得るということを定めている場合が多いので、協定と国内法の個々の規定に食い違いを生ずることはなく実施し得るものであるというふうに考えております。
  286. 渡部一郎

    ○渡部(一)委員 わが国に同大学が設立されることについては、私も強く望んでいる一人でありましたし、推進する一人でもあったわけでありますが、こうした国際機関を大規模にわが国に設立したことがないため、非常に問題が起こりそうな部分があるんじゃないかと思いますのでちょっとお伺いするのですが、たとえば大麻の携行、あるいは特殊なアルコール飲料、あるいはLSDのような、わが国において未規定のものを常用する人々がこの大学の職員として入ってきた場合、わが国には適切な管理あるいは取り締まりの法規がないため、そうした人たちがそこを拠点として、そうしたものを常習することはある程度可能なのではないかと思われます。そういう場合に、この規定ではどうなさいますか。
  287. 伊達宗起

    ○伊達政府委員 一般論として申しますと、たとえばそのようなもの、麻薬常習者の入国を認めるか認めないかというようなことにも関連してくる問題だと思います。大麻でございますか、そういうことになりますと、確かにこの協定上は第十六項におきまして出入国の制限なしに入国できるということが決めてあるわけではございますが、条約上常に出入国に関連する規定におきましては、特に留保というようなものがなくとも、いわゆる入管令上欠格事由に相当するような麻薬常習者であるとか、精神異常者であるとか、そういう者につきましては、それぞれの関係国が入国を許可しなくてよろしいということで、別にその際にそのような正当な事由がある場合に入国を拒否することは特権、免除と申しますか、入国の際の特権を決めた、つまり無制限の入国を決めた条項の違反にはならないわけでございます。したがってその場合にも、ただいまの例で申しますれば、入管令上の欠格事由というようなものが適用になるというふうに解されるわけでございます。
  288. 渡部一郎

    ○渡部(一)委員 そういうやり方でやりますと、よほど目立つものでない限り入ってしまうわけですね。後から問題が起こる。外務省では、LSD条約を長いこと引き延ばしているわけで、今日なおかつ審議に至っていない。そういったことが明らかに問題になってくるだろうと思います。また大学構内でそういうものが使われたり、飲まれたり、集積されたりあるいは販売されたりした場合に、大学構内には日本警察権で立ち入ることについては非常なブレーキがありますでしょう。これは非常に困るんじゃないですか。その点どうお考えなんですか。
  289. 伊達宗起

    ○伊達政府委員 大学構内が不可侵であるということは定めているわけでございますが、一般論といたしまして第二十三項に、この協定によって与えられます特権、免除は、それはそれといたしまして、日本国法令を遵守するということは大学並びに特権、免除を享有する者の義務であって、大学及びそれらの者は日本国法令を遵守しなければならないという規定を置いております。また、二十五項でございますが、特権、免除というものは個人の一身上の便宜のために与えられるものじゃないのだ、したがって、これは二十四項にも関連いたすわけでございますが、学長が日本政府の要請に基づいて、乱用を防止するという立場から、許可を与える場合には、日本国の官憲も学長の同意を得てその構内に立ち入り捜査をすることができるということになっております。
  290. 渡部一郎

    ○渡部(一)委員 その辺は余り十分な御回答じゃないですね。実際、運用の上でこういうことは非常にめんどうな問題を惹起する。それから、ニューヨークにおいて国連本部を視察した際に、国連本部職員による無税の自動車の輸入とその売買が非常に問題になっておった、あるいは自動車を購入した購入代金の踏み倒しが問題になった。また、午前中の審議にもかかわりますが、情報部員を国連職員として送り込むことによって、実質的な各国の情報センターとして、国連本部職員の資格が隠れみので使われているという指摘がアメリカ側から行われ、非常に問題になっておるケースがある。そうした問題一つずつに対して非常に無防備じゃないですかね、この決め方というのは。その辺、どうなさいますか。まず一つずつ伺いましょうか。
  291. 伊達宗起

    ○伊達政府委員 ただいま先生がお挙げになりましたような擬装して入ってくるというようなものを防ぐのには無防備ではないかということでございますが、確かにその点どうにもちょっと、条約の規定上そのようなことを特記いたすのもいかがかと考えられますし、そういう防備はなかなかむずかしい面がございます。  ただ、第二十六項をごらんいただきますと、公的資格の範囲外の行為、つまり大学の目的に沿う大学の職員としての行動、職務を果たす以外の行為におきまして、日本国に滞在する権利を乱用したような場合には退去を要求するということを決めておるわけでございまして、御指摘のような事件が仮にあった場合には、この規定も発動いたしまして、そのような活動をするものが大学の名をかりて大学以外の目的の行動をするということを排除したいというふうに考えております。
  292. 渡部一郎

    ○渡部(一)委員 午前中の審査の際に、ソビエト政府の係官が報道者の資格においてスパイ活動をしたというので、日本政府はこれを逮捕した。もしこれが、本大学の職員という形をとって歩いておったとしたら、逮捕することは全く不可能でしょう。また、けさほど同じく問題になったNISの職員が日本国内における政治活動を取材したとする、それがNISでなくて、この大学職員の資格で行っておったとしたら、これまた全然何もできないじゃないですか。そうでしょう。この協定はそういったことを考えてもいない。だから関係国内法の整備が全くなされていない。少なくともスパイ罪とかそうしたものの規定というのはわが国にはないし、そうしたものを軽々につくるべきでは決してありませんけれども、問題が起こったときにはどうしようもなくて、国際紛争をしょい込むおそれというのは、こういう国際的機関を持った場合にはすぐ生じてくる。お尋ねしてみると、どうやらそういうのを余り考えておられないみたいですね。
  293. 伊達宗起

    ○伊達政府委員 ただいま先生が例を挙げられた場合に、明らかにそのような行動は公的な資格で行ったものとは認められないというふうに考えられるわけでございまして、第十六項での特権の一つといたしまして、訴訟手続の免除というものが与えられているわけでございますけれども、これは公的な資格で行ったものについてのみ訴訟手続が免除されているわけでございます。したがって、公的な資格ではなくて、スパイと申しますか、そのような行為をするというようなことになりますれば、これは当然のことながらこの特権、免除の対象とはならないわけでございます。それと、さらに、先ほど申し上げました二十五項でこの特権、免除が与えられるよってもって来るところの理由と申しますか淵源というものは、これは一身上の便宜のために与えられるのじゃないのだということでございまして、学長は、裁判手続の免除が裁判の進行を阻害するものであって、大学の利益を害することなくこれを放棄することができるというような場合には、免除を放棄する権利及び義務を有するというふうに決めているわけでございます。
  294. 渡部一郎

    ○渡部(一)委員 それは非常に善意に基づいてのお答えだろうし、明らかに悪意を持ってこれを日本及び極東地域における情報拠点として使おうとか、あるいは日本国内に対する無関税輸入のさまざまな権利を享受しようと意図するグループによって利用された場合に、ほとんど抵抗のしようのない規定であるという部分が多過ぎる。たとえば家具及び携行品を無税で輸入する権利と簡単に書いてあるけれども、家具及び携行品を無税で輸入する権利なら、北欧家具をたとえばヨーロッパの人が膨大に購入して、何十トンも何百トンも持ち込んできたらどうするのですか。何も規定がないじゃないですか。制限することは不能ですよ。これは第十六項の1に書いてあるのですよ。2の方に、「当該職員に対し、合理的な量の」と書いてあるのは食料その他だけであって、家具の方には書いてないじゃないですか、合理的な量なんか。不合理な量でもいいという意味ですよ。これは何事ですか、本当に。
  295. 伊達宗起

    ○伊達政府委員 引っ越し荷物につきまして、家具及び携帯品を無税で輸入する権利ということでございますが、私がいま申し上げましたように、引っ越し荷物と観念されるものについて、このような家具及び携帯品を無税で輸入する権利を当然のことながら考えているわけでございまして、これは、日本の関税法上も、引っ越し荷物ということで無税というふうに決められているものが国内法にもあるわけでございまして、たとえ合理的なという制限的な規定がなくてもそれは日本の法の運用によって運用する。それが必ずしも第十六項(f)の違反であるということにはならないわけでございます。  先ほども申し上げましたが、あわせて第二十四項には特権、免除の乱用を防止するということがございまして、日本側が、特権、免除の乱用が発生したときには、乱用が発生したかどうかを学長と日本国関係当局と協議をいたしまして、この協議によりまして、乱用があるということになれば、それは是正するというふうになっているわけでございます。
  296. 渡部一郎

    ○渡部(一)委員 結局、この協定は英語で書かれているわけなんでしょう。日本語は正文でないのですよ。あなた引っ越し荷物なんておっしゃったけれども、引っ越し荷物なんという単語は英文の部分にないじゃないですか。
  297. 伊達宗起

    ○伊達政府委員 日本語でも引っ越し荷物という言葉はございません。ただ、「最初にその地位に就く際に家具及び携帯品を無税で輸入する」と申しますのは、一口で申しますれば、引っ越し荷物のことを言っているわけでございます。
  298. 渡部一郎

    ○渡部(一)委員 あなたはニューヨークの実例をよく御存じなんでしょう。御存じでしゃあしゃあとしてお答えになっているんだと、私はそれはみなします。ニューヨークでは、そういうふうに本規定を悪用する一部外交官のために、非常にいろいろなものが売り出されているのは御承知のとおりですし、それを扱うスーパーマーケットのようなものまでできているのは御存じでしょう。それが問題になっておりますでしょう。だから、この規定ぐらいそういう一部業者を喜ばせるものはないと私は思うのですね。これはあなたは、そういうふうに物事を読むのは何事かとおっしゃるかもしれませんけれども法令というのは、その網をかいくぐってもうけようとか、日本国の尊厳を傷つけようとかいうグループからわが国を守る重大な任務があるわけですね。ですから、私は本協定の審議に当たって聞いてみますと、その辺は穴があき過ぎていますから、関係法規の整備の中でやってもよし、あるいはそうした了解を国連大学側と見直して、これはこういうものですよと新たなる取り決めをしてもよし、もうちょっと細かく規定ができないものかなと思っているわけです。ここのところには、少なくとも合意議事録も交換公文もありますでしょう。もう少し詳しくして……。そういうことが後から発生していやな思いを一々しなければならない。われわれが国連大学に寄せた、日本国民の国連渇望症とでも申しますか、国連というと正義の代名詞のようにいま思っておる。それが実際権力の相克の中に生まれた人類のかすかな知恵だなんていう感覚では全くない。ですから、その意味では、国連というともう非常に理想的なスーパーマンとスーパーレディーの集まりが来るみたいに思っている。あなたの顔にだってそれが書いてある。だから、国連から来る人は絶対悪いことはせぬ。それなら、なぜこの特権、免除というものは個人のものに限りますよなんて麗々しく書かなければいけなかったかということがそれを示しているじゃないですか。ところが、書いていながら変なところに書いてあるから、実際には穴だらけだ。これはそういういやな思いをしなくて済むように配慮した部分もあることを認めますけれども、依然として穴だらけ。関係国内法は穴だらけじゃないですか。  こんな条約を結んでおけば、たとえば先ほどからの例であなたも余りよくお答えにならなかったから私申し上げますけれども、こういうやり方をすれば、国連大学はLSDの販売本部になるでしょうね。ここへLSDの売人が来れば、幾ら売買しても逮捕されないでしょう。LSD販売拠点になるでしょう、研究の名目で。そして、ここは北欧家具中継地点の売買本部になるでしょう。それで、きっと外務省は所管外だと言うでしょう。こういうつくり方じゃしようがないじゃないですか。違いますか。お答えがないものと私みなしますよ。とても答えられないだろう、そんな話。何というのか、中途半端というか、インターナショナルな感覚がなさ過ぎたんでこんな協定になっちゃったんだろうと私思うのです。少なくともアメリカ国際連合の諸施設を受け取るときには、それなりのいままでの苦労があった上で受け入れている。また関係国内法も、そういう雑多な国際的な代表団を受け入れるにふさわしいだけのいろいろなシステムや法的規制や、目に見えないいろいろなものをたくさん持っている。わが国は純血、単一民族みたいな雰囲気で、わかり合っている法令協定している面があるでしょう。だから、こんなことになるのですよ。どうするのですか、ここが家具販売センターなんかになったら。そうしたら、そのときに悪名が残るのは国連局長であり、条約局長ですよ。伊達参事官は、こういう協定をわざわざ通したということで家具屋さんから表彰状を受けますよ。じゃ、こういうふうにいたしますということについて研究なさるとか、少しは何とかおっしゃったらどうですか。
  299. 伊達宗起

    ○伊達政府委員 先生の御心配になるような点は、確かに全く皆無ではなく、考えられ得ることでもあると思いますけれども条約締結の際に、普通の条約締結技術といたしましても、あらゆる場合を想定して、法の網の目をくぐることを細かく規定するのもいかがと思われますし、また一般に国連が種々の本部協定におきまして結んでいるパターンというものが、この協定に書いておりますような免除の規定ぶりになっているわけで、それと余りに乖離したものを結ぶことも国連側としてもなかなか応じてこない面もございます。したがいまして、問題が起こり得るということは確かでございますので、先ほど来申し上げておりますように、日本国法令遵守の義務でございますとか、それから乱用の場合の措置、さらには大学側と日本側との意見が合わないような場合には、紛争の解決によりまして、紛争解決手続が十四条に書いてございますが、それで仲裁をするというような、あるいはまた、問題が個人的なものである場合には、その者をペルソナ・ノン・グラータとして退去をしてもらうというようなことを定めているわけでございまして、先生の御指摘の点はもちろん私どもわかりますし、研究してまいりたいと思いますけれども、この協定がこれだけで全くどうにもならないものだというものだとは私ども考えていないわけでございまして、その点は御了承願いたいと思うわけでございます。
  300. 渡部一郎

    ○渡部(一)委員 これ以上言うのもちょっとお気の毒ですから、今度は全然別の難問を言いますよ。  今度は、国連大学の先生が、あるいは職員が、日本国において日本政府の方針と全く違うことを演説した場合、それをお認めになりますか。それをペルソナ・ノン・グラータで出ていけなんておっしゃりませんか。それは絶対的に保証しているのでしょうか。
  301. 伊達宗起

    ○伊達政府委員 その辺になりますと、実は先生の御指摘になった問題はかなり大きな問題になるんじゃないかと思われます。しかし、これを議論いたし始めますと、私どもの方だけでなく、いろいろな法律の大家の方々の御意見を伺ってもなおかつ結論が出ないようなことになるんじゃないかと思うわけでございますけれども、ただ、日本の国内問題に介入するようなことはできない、それは二十三項に書いてあるわけでございまして、その点ははっきりしていると思うわけでございます。
  302. 渡部一郎

    ○渡部(一)委員 日本の国内問題ということと、日本関係を持つ問題というのは話が別ですよ。たとえば中国の大使館員日本において、日本北方領土に対する主張は確かであって、ソビエト社会帝国主義こそ打倒されなければならぬと述べたとしますね。これもいまの日本政府考え方では一つ問題になるでしょうけれども、国連職員の立場でそう述べる人があったといたします。これは日本の国の問題ではない、これはソビエト社会帝国主義の問題として自分は述べておるのだ、こう言われたらどうしますか。それも、よけいなこと言うからおまえ出て行けといきなり国連大学に踏み込んでつかまえて送り返しますか。
  303. 伊達宗起

    ○伊達政府委員 具体的にどのようなケースが起こるか、ちょっとただいま先生が挙げただけでもないので、実際上そういう問題が起こってからでなければ、なかなか判定しがたいと思うのでございますけれども、しかし、ただいまのような場合、やはり大学の目的ということから考えますれば、ソビエト帝国主義打倒というようなことは、どなたが見てもきわめて不穏当な発言でございまして、その際にはやはり日本側から学長に対して、あの者の不穏当な発言はやめさせてほしいと注意を喚起するということにとどまるのではないか。しかもそれがまた頻繁に反復して行われるというようなことになりますれば、これはやはりペルソナ・ノン・グラータとしてお帰りを願うということになるのではないかと考えるわけでございます。
  304. 渡部一郎

    ○渡部(一)委員 第十一条に「学問の自由」と麗々しくうたっているわけですね。そして、学問の自由というのは、大体権力ある人々にとってはおもしろくないものだというのが普通ですよ。外務省のやっていることなんかは分析と批判の対象になるでしょう。日本に置かれた国連大学なんですから、日本政府のやり方というのはいろいろな批評の対象になるだろうと思うのです。そうすると、「大学は、その目的の達成に必要な学問の自由、」と明確に言っていますね。「特に、研究及び研修の主題及び方法の選定、大学の活動に参加する個人及び団体の選択並びに表現の自由に関するものを享有する」そうして、合意議事録の中では厳かに「協定第十五項に関し、この項は、大学に対し、日本国憲法第二十三条に保障された学問の自由を与えるものであるという了解を記録する。」という明文がうたわれているじゃありませんか。学問の自由というものが保障したところは、まさに大学の柱ですね。ところが、その学者たちが一言言うたびに、先ほどお答えのようなやり方では、一々大学の学長のところへ行って、あなたのところのだれとかさんの言っていることは、わが政府として気に入らない、あれはやめさせてください、この間から何回も言った、けしからぬ、こういうことになりかねませんね。だから、地動説を攻撃したヨーロッパの恐るべき宗教裁判のような例がいまや起ころうとしつつある。そして、歴史の評価はコペルニクスに軍配を上げたように、いまあなたはコペルニクスを攻撃したあの恐るべき反動と偏見の親玉さんのような立場を日本政府にとらせようというかのごときあれをしつつあるから、私はある意味で背反する諸規定の中で、この「学問の自由」の項だけは絶対に守りますというためには、教授たちの発言について完全に保障してみせることこそ、わが国の国際信義を深め、大きな信望を獲得するゆえんではないか。北方領土について何だかんだ言うぐらいで一々目くじら立てて、すぐ外務省からオートバイを飛ばして怒りに行くなんということはおやめになった方がいいのではないかと思うのですが、どうですか。
  305. 伊達宗起

    ○伊達政府委員 ただいま先生がおっしゃいましたこと、まことにそのとおりでございまして、それであるがゆえに、第十一条で学問の自由ということを明確に定めましたし、また、合意議事録も設けているわけでございます。したがいまして、学問の自由ということにとどまります限り、何も一々教授の公開の場における発言について日本国政府が文句を言うというようなことは考えていないわけでございまして、先ほど先生の挙げられた例は非常に極端な例でございまして、そのために、そのことのみについて申し上げれば先ほどのようなお答えになるわけでございますけれども、憲法の保障いたします学問の自由は、これはわが政府としても十分心得ておりますし、それを守っていくことは当然でございまして、それに含まれる大学の教授ないしは大学活動に参加する個人、団体の表現の自由ということもここに特記してあるわけでございまして、その限りにおいては、別に一々神経をとがらしてやるというようなことではございません。
  306. 渡部一郎

    ○渡部(一)委員 お答えは大分よくなったと私は思うのですね。さっきのお答えより大分よくなりましたが、まだ余りいい点じゃないですね。  先ほど私が述べた例を極端な例と申しましたが、もっと極端な例が山ほどありますよ。大学の構内で日本政府の朝鮮政策について非難する集会が行われたとします。そうすると伊達さんは攻撃なさいますか、それは適当でないと。そんなようなやり方をされたら困ると日本政府として文句を言いに行きますか。
  307. 伊達宗起

    ○伊達政府委員 そのような発言の性格がやはり問題になるのではないかと思うのでございます。これを学問的にと申しますか、アカデミックな立場からそのような発言が行われ、また論じられるということでございますれば、これは何もわれわれの構うことではないわけで、関知しないわけでございますけれども、ある特殊な団体が大学の構内を利用いたしまして、そしておっしゃられるような行動をとるということになりますれば、これはやはり乱用の部分に該当していくのではないかということでございまして、一般論として全く何もかにも自由であるというふうには申し上げられないと思います。
  308. 渡部一郎

    ○渡部(一)委員 日本の大学に対して与えられた自由と同じ程度の自由さえあなたは認めてないわけですよ、そういう言い方をすれば。日本の大学の構内では、どこであろうともその大学が許す限りは何でも言えるわけです。金大中さんの支持を表明することもできますよ。まるきり反対の会合でさえ開くことは可能ですね。それが日本の憲法で決められた学問の自由です。あなたはそれに対する評価が全く間違っているのじゃないでしょうかね。だからあなたは、これだけ明文の規定があるのに、そこで行われる会合の主題、内容について点検した上、チェックした上、何か言わなければならぬというような意気込みでおられる。そんなばかなことばかり言っているのではこの国連大学協定は通りませんよ。そんなおかしげな議論をしていたら、参議院の外務委員会では徹底審議ということになるだけですよ。私でさえも、これでは先ほどからのお話し合いをやめにしまして、理事会をもう一回招集していただかなければならぬと思っているくらいです。学問の自由はちゃんと守る、第十一条第十五項については無条件に私どもは喜んで支持いたします、大学の構内においては学長の良識に信頼いたすものでございますというのが日本政府考え方でしょう。違いますか。やる内容について問題がありますとさっき言いかけられたのは取り消した方がいいと思いますが、違いますか。
  309. 伊達宗起

    ○伊達政府委員 大学の自由につきましては、先ほど私からも申し上げたように、これは日本政府として厳守するつもりでございまして、大学の自治というものも尊重いたしまして、大学の学長の良識に信頼するというのが政府の立場でございます。
  310. 渡部一郎

    ○渡部(一)委員 大分直されたと思いますね。その直した後の方がいいのだ。「大学の活動に参加する個人及び団体の選択並びに表現の自由に関するものを享有する」とあるのですから、大学でどの団体が何をするかは大学に任せなきゃいけないのです、これを結んだ以上は。よろしいですか。あなたの表現は協定を逸脱しておるのです。だから、あなたの頭の中にあるもの、先ほどからの返事の仕方は、戦争中の統制官僚以上のひどい考え方なんですよ。昔のお巡りさんみたいな考え方なんです、簡単に言うと。そうでしょう。だから、あなたはこれをよく読んでないのですよ。ぼくはこの協定を非難していない。協定は少なくとも善意で書かれているのです。あなたはこれをもう一回すっかり読み直されて、その辺をちょっと何とかしていただかなきゃいかぬのじゃないかと思いますね。何で合意議事録がこんなに丁寧に二度も書かれているのか、私は不思議に思ってこれを見ていたのですけれども、やはりこれは二回言わなきゃ危険な日本政府なんだな、これは日本政府の方に問題があるんだなと私は理解しましたよ。  それでは、これ以上言うのは何ですから、私、最後にまとめまして要望申し上げておきたいと思います。  一つは、本協定を通過させるに当たって関連諸法の整備が行われつつありますが、依然として不十分だろうという幾つかの具体例を挙げて私は申し上げました。この辺については適切な措置をおとりになることを要望いたします。これが一つ。  それから第二、「学問の自由」の規定については、日本国政府は大きな犠牲を払いつつもこの「学問の自由」を大幅に確保し、この大学の運営に関して協力をいたすべきこと。  この二つを私は特に要望いたします。御回答をお願いします。
  311. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 ずっと話を伺っておりまして、第一点、大体渡部委員の言われたとおりに考えます。  それから、第二点ですが、さっきから渡部委員の言われますこと、やはり大体私もそういう考え方でございます。「学問の自由」というものを最大限に尊重すべきである。この「日本国の国内問題に介入しない義務を有する。」というのは、どちらかというと政治行動の面を言っているものだろうと私は考えていまして、この人たちはいずれも国際的な公務員でございますから、恐らく国際政治についての思想、信条は別でございますが、行動については中立性を持たなきゃならないということが大きな基本にはあるのであろう、そういうことは言っても差し支えないと思いますけれども、「学問の自由」第十一条第十五項というもの、やはりこれを最大限に享受してもらうということに重点を置いて考えていくべきであろうと思います。
  312. 渡部一郎

    ○渡部(一)委員 私、おおむね外務大臣のその御返事で満足でありますが、学問の自由というのはえてして政治的な中立性と評価されるものと違う点を示す場合が非常に多い。たとえば、既存の考え方、既存の社会組織、既存のシステムに対する「われ疑う」ということがなければ、学問などというものは進歩するものじゃない。したがって、われわれは大学をそのような犠牲を払っても建設し維持することに進歩と前進のあかしを見てきたと私は思っているわけであります。その意味で、「学問の自由」の問題については、ここにもう一回改めて考え直した上、外務当局におかれても、文部当局におかれましても適切な配慮をお願いしたい、こう思っているわけであります。  以上です。
  313. 鯨岡兵輔

    鯨岡委員長 渡部一郎君の質疑は終わりました。  永末英一君。
  314. 永末英一

    ○永末委員 外務大臣は、この国連大学の本部がわが国に設置をせられるということが、わが国の文化にどういう面で貢献すると思われますか。
  315. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 幾つかございますけれども、この国連大学というのは、先ほど文部省の政府委員からもお話がありましたように、発展途上国というものを非常に重く考えております。それから、今後わが国が平和国家、文化国家として進んでいく、そういうわが国の実態を、このような大学をわが国に置く、わが国も支援するということは世界に理解をしてもらえることになるであろう。また、いわゆる地球上のソフトウエァがここに集まってくるとなれば、わが国の社会あるいは文化というものに大きな刺激になることも間違いないと思いますし、さらに、先ほど木田局長が言われましたように、どうも日本の学界の人々は、よそへはよく出ていきますけれども、よそから人を呼ぶということを従来余りしていませんし、それに、どっちかというと閉鎖的なところがございますから、そこで国際的なそういう交わりをすることによって、世界の文化にも貢献することでありましょうが、わが国の文化の進展にも寄与するところが多いであろうと期待をするわけでございます。
  316. 永末英一

    ○永末委員 文部省は、この国連大学の本部ができて、外務大臣お話によりますと、世界の優秀なるソフトウエアが集まってくる、こういう話でありますが、集まってくる各国のそういう優秀な頭脳がわが国との交流をするためには、国連大学がいま考えているそのものだけではこれは不十分だと思いますが、わが国との関係について特別な何か御計画等をお持ちですか。
  317. 木田宏

    ○木田政府委員 国連大学は、日本のことを考えて仕事をしておるわけじゃございませんから、御指摘のように、国連大学の体制だけでは日本の学界との関係というものは必ずしも所期のごとくに進んでいくとは思えません。したがいまして、国連大学を受け入れるにつきまして国連大学懇談会を設けまして、主として学識者、学界関係者を中心にしておりますが、中山伊知郎先生を座長にして、国連大学が日本にあることによって、日本の学界がどういうふうにコントリビュートできるか、またどういう裨益を受け得るように日本の体制を整え得るか、これは日本独自の問題として別個に考えておかなければなるまい。しかし、それは国連大学の事業と対応して考えられるべきものでございますから、いま私どももその懇談会の場で論議を詰めていただいておる次第でございます。
  318. 永末英一

    ○永末委員 国連大学の本部の内容充実と見合いながら考えられなければならぬ問題でございましょうが、わが国に国連大学の本部があるというのは、何も席貸し業をやっているわけではございませんので、文部省としては、特にそれが存在することによって、わが国の文化の前進のために資するということをやはり計画的にやっていっていただきたいと思います。  さて、現在の国連大学本部はまだ仮事務所でございますが、これはいつごろ本事務所にする計画でございますか。
  319. 木田宏

    ○木田政府委員 協定の御承認もいただき、関係法の整備もいただきましたならば、できるだけ早く見当をつけたいと思っているわけでございます。ただ、それにつけましても、国連大学の将来規模とその整備の手順がどのくらいになるかということは考えながら私ども対応をしていかなければなるまいかと思っております。  また、先ほど他の委員お答え申し上げましたが、国連大学本部のほかに教育研修センターを、これはもともと日本が希望したことでございまして、そのあり方との関連というようなことも検討の際に考慮したいというふうに思っております。
  320. 永末英一

    ○永末委員 各国の優秀な頭脳がやってくる場所だといたしますと、大きなビルのワンフロアを借りておるなんというのは余りいい形ではございません。したがって、国連大学自体にも進行の手順と時間がかかりましょうが、やはり積極的に本部の建物、設備等をわが国も計画を立てて、もちろん相談をしながらでございますが、そういうわが国の文化の進展に寄与し得るような環境を持ったものを持つように努力をすべきだと思いますが、文部省はどう考えていますか。
  321. 木田宏

    ○木田政府委員 全く御指摘のように私どもも努めたいと思います。
  322. 永末英一

    ○永末委員 その場合、東京首都圏というのはどこからどこまでだと考えていますか。
  323. 木田宏

    ○木田政府委員 やはり都市的な要素を持った東京都区内並びにその周辺というふうに考えておるところでございます。
  324. 永末英一

    ○永末委員 東京都区内はわかりますが、その周辺というのはどの辺までですか。
  325. 木田宏

    ○木田政府委員 いわゆる東京都区内といいましても、都市的な要素のないところは——単なる行政区画だけではいくまい、やはり東京の中心地とその都市的な一体性を持っておるようなところというふうに考えていくべきだと思っております。
  326. 永末英一

    ○永末委員 たとえばあるところに会社があってそこへ通勤するとしましても、新幹線のごときものができれば、一時間の通勤範囲というものはきわめて広範囲になる。最初にこの東京首都圏という言葉が考えられたときは何を考えたかわかりませんけれども、わが方の交通の便宜性というものが高まっていけば、いろいろな考え方ができると思います。その場合、やはり外国の事情のわからぬ人によくわが方の状況を説明をして、適当なところを選定する必要があろうかと思います。都市的状況といったって、新幹線の沿線は全部都市的ですね、そういう計算になる。二時間ぐらいのところは全部、太平洋ベルト地帯というのは全部都市的である。そういう御用意はございますか。
  327. 木田宏

    ○木田政府委員 新幹線で短時間でございましても、やはり距離的に余り遠いところへ行ってしまうというのは、東京首都圏の範囲から外れると考えます。
  328. 永末英一

    ○永末委員 先ほど話が出ました、わが国に研究教育センターをつくるというのは、どの程度の御計画をお持ちですか。
  329. 木田宏

    ○木田政府委員 これはやはり研究者の養成機関でございますから、そう大きな規模にはなるまいかと思っております。しかし、どういう中身のどういうものにするのがいいかという点については、国連大学自体の事業計画の動きに合わせて考えたいということでいま検討中でございます。
  330. 永末英一

    ○永末委員 これは別に東京首都圏にかかわらないのでございますから、そもそも、わが方がこういうものを日本国内に置きたいということで、国連大学へのアクセスをやり出したわけでございますので、積極的なプロジェクトをつくって折衝すべきものだと思いますが、いかがですか。
  331. 木田宏

    ○木田政府委員 御意見の点は十分に勘案させていただきたいと思います。
  332. 永末英一

    ○永末委員 これは寄付金で賄うというのでございますが、どうも現在まで各国からの寄付の状況は芳しくないのでございまして、どういうお見込みですか。五億ドルを集めようと言っておるようでございますが、そこまでいっていない、わが国ばかりがたくさん分担しておる。ほかの国は一体どういう目でこれを見ておるのでしょうか、そして、五億ドルというのは何年ぐらいの間に達成される計算になっておりますか。
  333. 木田宏

    ○木田政府委員 これは、細かいその目算を学長から私どもはまだ聞いておるわけじゃございませんが、一応やはり国の経済力に見合った、日本の国内で寄付をお願いする場合と同じような割りつけ表を彼らは考えておるようでございます。それをいま何年と決めているわけでもございませんようですが、しかし、学長は、自分の在任中にできるだけ早く努力をしたいというふうに焦っている気風がうかがわれます。
  334. 永末英一

    ○永末委員 しかし、もうすでにわが国は、協定が発効し、法律ができて、仮事務所があるわけでございましょう。現実に金は使われつつあるわけでございまして、おとといでございましたか、OECDに対する基金のわが方の持ち分というのが衆議院では可決をいたしておりますね。急がなければならぬ。  国連大学の設置に反対した国々、グループがございますね。これはこの基金に賛成すると思いますか、思いませんか。
  335. 木田宏

    ○木田政府委員 東欧圏等につきまして、先ほどお答えもございましたように、国連大学憲章の制定そのものに棄権をした国がございますが、そのソ連におきましても、大学の学長は政府関係者に接触をいたしまして協力を求めておるようでございまして、その反応を聞いております限りでは、必ずしも拒否的な態度ではないというふうに承知をしております。
  336. 永末英一

    ○永末委員 私ども日本の国はこれに場所、建物等を提供しておるのですが、日本政府は基金を集める作業について協力をいたしますか。
  337. 木田宏

    ○木田政府委員 国連大学本部招致の際に、日本政府といたしましては、他の国とも相まってでございますけれども、一応一億ドルを五カ年間で基金に出す用意があるというふうに言ってまいりまして、すでに国会の御承認も得まして、四千万ドルほど拠出をいたしておるわけでございます。
  338. 永末英一

    ○永末委員 わが国の協力じゃなくて、わが国が他国に要請をするような気持ちになっておるかどうか、あるいはするつもりがあるかどうかということを伺っておる。
  339. 大塚博比古

    ○大塚説明員 お答え申し上げます。  申すまでもなく、この国連大学と申しますのは国連の大学でございまして、たまたま日本が本部を日本に誘致したという事実はございますけれども、これはたてまえとしてはあくまでも国連の大学でございます。したがいまして、私どもといたしましては、財政的にも、それから職員の上からいっても、日本だけがいわば支配的になるというふうなことはなるべく避けたいというような観点から、各国にも拠金をするようにいろいろ依頼しておりますし、先ほど申し上げましたように、昨年の国連総会におきましては、日本が音頭を取りまして、国連のこの大学に対する拠金について、各国の拠出を要請するという総会決議が全会一致で通っております。そういったラインに従いまして、昨年、それからことしにかけまして、いろいろな募金工作をヘスター学長と緊密な共同のもとに行っております。
  340. 永末英一

    ○永末委員 せっかく国際的な機関がこうやって設けられるわけでございますので、日本政府としては十分の努力をいたして、りっぱな国連大学ができるように御努力を願いたい。  質問を終わります。
  341. 鯨岡兵輔

    鯨岡委員長 これにて本件に対する質疑は終了いたしました。     —————————————
  342. 鯨岡兵輔

    鯨岡委員長 ただいま議題となっております本件に追加して、国際通貨基金協定の第二次改正の受諾について承認を求めるの件の両件を議題といたします。  国際通貨基金協定の第二次改正の受諾について承認を求めるの件の質疑はすでに終了しております。  これより両件に対する討論に入るのでありますが、別に討論の申し出もありませんので、順次採決いたします。  まず、国際通貨基金協定の第二次改正の受諾について承認を求めるの件について採決いたします。  本件は、承認すべきものと決するに賛成の諸君の起立を求めます。     〔賛成者起立〕
  343. 鯨岡兵輔

    鯨岡委員長 起立多数。よって、本件は承認すべきものと決しました。  次に、国際連合大学本部に関する国際連合日本国との間の協定締結について承認を求めるの件について採決いたします。  本件は、承認すべきものと決するに賛成の諸君の起立を求めます。     〔賛成者起立〕
  344. 鯨岡兵輔

    鯨岡委員長 起立総員。よって、本件は承認すべきものと決しました。  お諮りいたします。  ただいま議決いたしました両件に対する委員会報告書の作成等につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  345. 鯨岡兵輔

    鯨岡委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。
  346. 鯨岡兵輔

    鯨岡委員長 この際、暫時休憩いたします。     午後四時五十分休憩      ————◇—————     午後六時三分開議
  347. 水野清

    水野委員長代理 休憩前に引き続き会議を再開いたします。  委員長所用のため、私が委員長の職務を代行いたします。  日本国大韓民国との間の両国に隣接する大陸棚(だな)の北部の境界画定に関する協定及び日本国大韓民国との間の両国に隣接する大陸棚(だな)の南部の共同開発に関する協定締結について承認を求めるの件を議題といたします。  質疑の申し出がありますので、これを許します。渡部一郎君。
  348. 渡部一郎

    ○渡部(一)委員 それでは、さきの委員会におきましていろいろと資料を要求いたしました。その資料につき先ほど開かれた理事会で提出をされ、あるいは一部御説明をいただいたわけでありますが、改めて、本委員会の審議に資するため、この席上でお尋ねをいたしたいと存じます。  まず最初に、第三次海洋法会議第四会期における大陸だなについての審議概況、特に日韓大陸協定との関係についてお伺いをしたいと存じます。  この日韓大陸協定の審議と密接に関係がある海洋法会議の審議状況はどのような状況であったのか、特に日韓大陸協定がもし早期に批准されないとするならば、わが国は海洋法会議の結論において打撃を受けるのではないかという議論がしばしば行われてきたわけであります。しかし現実見るところは、必ずしもそうも言えないような進行状況ではなかろうかと思います。ともかく海洋法会議の審議状況ではどのような方向性で議論が進んだのか、その辺を開陳していただきたいと存じます。
  349. 伊達宗起

    ○伊達政府委員 先ほど開かれましたニューヨーク会期におきまして、大陸だながさらにジュネーブ会期に引き続いて議論されているわけでございます。各国の主張は、基本的には従来より表明されていた考え方に沿っていろいろなされたわけでございますが、大別いたしまして、沿岸国の管轄権の及ぶ大陸だなの範囲を、深さでございますとか海底地形に関係なく、最大限二百海里までの海底であるという距離基準をとる説と、それから大陸だなの自然の延長の外縁にまで沿岸国の管轄権が及ぶという自然の延長論の考え方がなされたわけでございます。二百海里以遠にまで自然の延長が続いている場合には、どこまで及ぶのかということについても、自然の延長論に基づいた議論がなされております。  わが国の主張といたしましては、大陸だなの範囲は二百海里までであるという距離基準の主張は当初から引き続いて行ってきたところでございますけれども、今度のニューヨーク会期におきます議論の過程を通じまして、大陸だなの範囲を二百海里に限定することなく、これを超えて大陸だなが存在する場合には、その外側の縁、外縁まで沿岸国が管轄権を有するという主張がますます勢力を増しているという状況でございまして、新しい海洋法条約にこの考え方が取り入れられる公算が大きくなったものと見られております。  なお、単一草案のもとの案でございますが、つまり前回のジュネーブででき上がった案でございますが、そこでは自然の延長論の考え方に立って、大陸だなの範囲は大陸だなの外縁までといたしまして、外縁が二百海里未満で終わる場合にはその範囲を二百海里までとするというような規定が置かれておりましたが、今度の単一草案の改定版におきましても、この原案が維持されている。したがいまして、全体としてこれを評価いたしますと、自然の延長論が十分な支持を得ているというふうに認められるわけでございまして、この点はアギラール第二委員長が改定版の序文でみずから述べているところでございます。  大陸だなの問題に関しまして、この日韓大陸だなの共同開発協定との関連で、海洋法会議を待てばどういうことになるのであるか、従来は海洋法会議を待っていると損ではないかという議論がなされていたのであるが、そうとも言えないのではないかというお尋ねでございますが、私ども考え方といたしましては、ただいまも申し上げましたとおり、自然の延長論というものが大方の賛同を得て勢力を強くしているという関係にございますので、海洋法会議を待っておってどうなるかということは非常に推論の域を出ないわけで、いま現在議論をされているわけでございますけれども、必ずしも日本に有利な結論は出てこないのではないか。さらに申しますれば、相対する二国間に横たわる大陸だなの境界画定というものに関しましては、どこの地形にも当てはまるような単一ないしは単一でないにしても二、三の原則、これはどこの地形に当てはめても通用するようなものが国際法として新しい海洋法に取り入れられるということは、実際問題として不可能なことであって、現在の大陸だなの区画に関する新しい改定版の七十一条でございますが、それを読んでみましても、五八年の海洋法会議の区画の規定と同じようにかなり抽象的なものでございまして、これがあるからといって直ちに日韓間の問題は解決はしない。つまり、結局は関係国間の合意による、そしてその際には公平を旨として、しかも必要な場合には、関連する事項も十分考慮に入れた上で、中間線または等距離線で合意によって定めろというような話になるのでございまして、海洋法会議を待っていて日本側が有利になると考えることは非常な楽観論である、このように私ども考えている次第でございます。
  350. 渡部一郎

    ○渡部(一)委員 このたびの海洋法会議における大陸だなの規定というものは、前回まで行われていた議論よりも、コンチネンタルマージンの端までその沿岸国の所有にしようという方向性が非常に強かったというように聞いておりますが、この辺を交渉当事者の方に伺いたいと存じます。
  351. 井口武夫

    ○井口説明員 お答え申し上げます。  海洋法会議第二委員会におきまして、非公式協議を通してコンチネンタルマージン、すなわち自然の延長の外縁までが沿岸国が資源に関する排他的な管轄権を、主権的権利を有する大陸だなであるということで、非常に多くの支持がありまして、これは先ほど伊達参事官から申し上げましたとおり、これについてはもう委員長がシグニフィカントサポートがあったということで、むしろさらにこのマージンの下端をどういうふうに具体的に技術的に定義するかということの問題が残っているということで、これはさらに今後専門家の討議にもゆだねたい。しかしながら、アウターマージン、大陸だなの外縁までが沿岸国に属するという基本的な前提はもはや会議で大勢を占めたということで、実はアギラール第二委員長が第二委員会の単一草案の序文にも非常にはっきりとそういう形で明記しております。
  352. 渡部一郎

    ○渡部(一)委員 そうすると、大陸だなについての定義はいままでとどういうふうに違ってきたのか。つまり、現行大陸条約においては水深二百メーターまでを大陸だなにするというような定義になっておったと思うのですが、沿岸国は一律に二百海里の距離まで大陸だなにするというふうに認められているのではないかと思うわけですが、それよりも大陸だなの、コンチネンタルマージンの規定の方が優先するのかどうか。その辺のところを伺いたいと思います。
  353. 伊達宗起

    ○伊達政府委員 お答え申し上げます。  ただいま先生の御質問は、二つの点があると思います。つまり、大陸だなの定義が変遷してきたのではないかというのが第一の点でございますが、その点について申し上げますと、確かに五八年の大陸条約では、水深二百メートルもしくは開発可能なところまでということになっているわけでございます。そしてこの点は、大陸条約に入っていない国、わが国のような国から見ましても、もはや慣習国際法として認められてきたものではないかと考えられるわけでございまして、これは国際司法裁判所も、もはやその部分は国際慣習法として確立したものと考えられるというような意見も出しているわけでございます。  ただ、今度の海洋法会議では、それよりさらに進みまして、これは開発技術の進歩ということもあるのだろうと思いますけれども、もっと端的に自然の延長、つまり大陸の地殻が海面下に没しましてそれがずっと海洋に延びている、その地殻が続いている限りにおいて、それは大陸だなとして沿岸国が主権を及ぼし得る、つまり管轄権を持ち得るところなんだという議論になっているわけでございまして、その限りにおいては、大陸だなの範囲というものが五八年の大陸条約に言う大陸だなの概念よりは広がりつつあるということが言えると思うのでございます。  それから、二百海里とおっしゃった第二の点でございますが、これは経済水域というものとの関連になる問題でございまして、経済水域は海底上、つまり上部水域及び海底を含めまして資源の管轄権というものは二百海里、沿岸から二百海里まで及ぶんだということを言っております。それから、大陸だなはただいま申し上げましたように、大陸の地殻が海洋に伸びている限りにおいて、これは沿岸国の管轄権が及ぶんだということになっておりまして、その間に抵触が生ずることは十分考えられるわけでございますけれども、現在の海洋法会議の議論の進展におきましては、単一草案の改定版をごらんくださればわかりますように、その間の抵触の関係というものをどういうふうに処理すべきものであるかということは、単一草案にもあらわれておりませんし、議論もまだなされていない、その辺は未解決の問題になっておる、そういうことになっております。     〔水野委員長代理退席、委員長着席〕
  354. 渡部一郎

    ○渡部(一)委員 そうしますと、まさにこの日韓大陸条約それ自体をあわてて審議することがいいかどうかについては何とも言えない段階ではないかと私は思うわけですね。先ほど委員会に提出された日韓大陸だな二百海里の経済水域の線を見ますと、明らかに今回指定されている本協定の位置というもの、特に共同開発のエリアというものは大幅に日本側に寄っているとしか見えない。じゃその二百海里説による等距離中間線の中に共同開発区域をかくも広く認めなければならなかったのか、むしろ共同開発よりも、その一部の共同開発の真ん中にある線を引いて境界を画定した方がよかったのではないか、あるいはその共同開発エリアというものがわが国の他の権限を、たとえば漁業権であるとか、他の採鉱権、他の海底利用権を侵すものではないかという疑問は非常に多く出てくるわけであります。先ほど海洋法会議の持つものが、現在海洋法会議によって進められている方向が、大陸だなの自然延長論が非常に強くて、二百海里説よりもむしろ非常に強いという雰囲気を述べられましたが、それはやはりもう少し見通しをつけられなければ、本委員会の審議の途上、この条約をそれほど強力に推し進める理由とはまだ成り得ていないのではないかと思われますが、いかがですか。
  355. 伊達宗起

    ○伊達政府委員 海洋法会議におきまして、自然の延長論が有力になりつつあるということは、単に雰囲気にとどまるものではございませんで、先ほども申し上げましたように、今度の単一草案の改定版に第二委員会委員長アギラール氏が書いてあることによりましても、日本語に訳しますと、非常な有力な支持が得られている自然延長論でございますが、そういうふうに述べているところでございます。他方、問題を別の角度からながめまして、大陸だなの境界を引くことによりまして、つまり何らかの境界を、今度の共同開発でなく引くことによって、中間にでも引くことによりまして解決ができるのではないかということでございますが、それではわが国の立場の主張といたしましては、もっと上部、北にまでわが国の権限は、管轄権というものは及ぶんだという立場からこの協定ができ上がっているわけでございまして、それから韓国側からは、自然の延長論で南部にまで及んでいるんだというところで、この両方の主張がダブったところを共同開発区域としているわけでございまして、もしこれが、これは全くの仮定論でございますけれども共同開発区域を二つに割るような何らかの線というものを合意できたかということでございますと、実際はそれは日本側の立場を放棄するに等しいことでございまして、とうていやり得ることではなかったと申し上げられると思います。それから、漁業とかその他の採掘権についての権利を侵害しているのではないかという御質問があったかと思いますが、この共同開発協定と申しますのは、対象は石油資源及び天然ガス資源のみについての共同開発協定でございまして、上部水域の漁業に関することにつきましては何ら決めているものではございませんし、また下部の天然資源につきましても、ほかの鉱物資源というものについて共同開発は何ら決めているわけではございません。その点は非常にはっきりしているものでございます。
  356. 渡部一郎

    ○渡部(一)委員 次に私が問題としておりますのは、本協定は明らかに二つの協定一つの案件として提出されておられるわけであります。日本国大韓民国との間の両国に隣接する大陸棚(だな)の北部の境界画定に関する協定日本国大韓民国との間の両国に隣接する大陸棚(だな)の南部の共同開発に関する協定、この二つを一案件として提出された件につき前委員会で私はるる申し上げました。これについて政府側は、明らかに両方の協定を同時に交渉し、同時に発効を願っており、その希望をあらわすために一案件として提出したのであり、同時採決を願っておるのである、こう説明されました。しかしながら、それは政府側の希望でありまして、当委員会でどういう形で審議するかについては、議会の審議権の範囲内の問題であると思いますが、いかがですか。
  357. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 この点は、政府側の立場並びにさようになりました経緯については、前回詳しく御説明を申し上げ、お聞き取りを願っておるわけでございますので、私どもとしては、それ以上のことを申し上げることは政府に与えられました権限を越えるものであるというふうに考えます。
  358. 渡部一郎

    ○渡部(一)委員 これは非常に立場をよくお心得になった御発言だと存じます。私は当委員会の審議において、一つの案件の中に多数の条約を「及び」というような字で結んで一括採決をしていくということは、国会の審議権に対して重大な影響を与えるものであるがゆえに、さきに昭和四十年十月、日本国大韓民国との間の条約及び協定等に関する特別委員会において、同理事会において決定された案件について、可分もあり得るので、その取り扱いを別に具体的に検討するという、議会の審議権をより深める方向で、この問題を扱っていくよう委員長に改めて御要望するものであります。  明らかに政府は、この問題について、審議内容については審議権の問題として、御自分は提出権の範囲内にとどまっての御発言でありますから、私は委員長に、この案件についてはそうした形で分離採決が可能であるよう、またこの二つの一方は境界画定であり一方は共同開発という、全く種類の違う二条約を一括して採決するようなことのないように、特に委員長にお願いをいたし、場合によっては官房長官あるいは事務総長を初めとする院内関係者、あるいは法制局長等を参考人としてお招きすることもあわせて御検討をいただきたいと先ほど理事会でも申しましたが、改めて委員長に申し上げます。
  359. 鯨岡兵輔

    鯨岡委員長 国会の問題としての渡部委員のお申し出はよく理解できるところでありますから、理事会において改めてまたお諮りをして決定したい、こう思っております。
  360. 渡部一郎

    ○渡部(一)委員 次に竹島及び日韓大陸棚北部境界画定協定の座標三十五について申し上げます。  現在竹島においては韓国海洋警備隊員が五名ないし十名交代で常駐しているようであり、これらの問題点を放置したまま北部境界画定を唱えるということはどういう問題であるかと思っておるわけであります。しかも座標三十五で一番北端をとどめており、三十五の先、つまり北東部についてはわが国韓国との境界は画定されておらないわけであります。したがってまず竹島問題に対する今日までのわが国の見解あるいは現状、この問題に対する処理方針等についてお伺いしたいと思います。
  361. 大森誠一

    ○大森政府委員 竹島につきましては先ほど先生御指摘のように、現在韓国の海洋警備隊員が数名交代で常駐しており、各種の構築物などを設置している模様でございます。これに対しましてわが方としましては、文書または口頭による抗議を繰り返し行いますとともに、海上保安庁の巡視船による竹島の現状調査等によりまして、竹島における韓国側建造物及び官憲の撤去を繰り返し要求してまいっております。わが方といたしましてはあくまでも平和的手段によって問題の解決を図るとの基本的立場から、実力行使を行うようなことは慎重に差し控えている次第でございます。  経緯を申し上げますと、韓国が一九五二年一月十八日にいわゆる李承晩ラインを設定し、そのラインの中に竹島を含めて以来、わが方政府としましては竹島は歴史的事実に照らしても、また国際法上も明らかに日本の領土であり、韓国側の領有権主張は認められない旨を繰り返し述べて抗議してまいりましたけれども韓国側はその都度これを無視してきておりました。  一九五四年九月二十四日に、政府は竹島問題を国際司法裁判所に提訴するとの閣議決定を行いまして、その翌二十五日に口上書をもちまして竹島問題は国際法の基本原則に触れる領土権の紛争であるという立場から、本件紛争を国際司法裁判所に提訴することを韓国側に提案いたしましたが、韓国側はその年の十月二十八日付口上書をもちまして、竹島については韓国が初めから領有権を持っており、国際司法裁判所でこの権利の確認を求めるべき理由はないとして、国際司法裁判所への提訴を拒否いたしました。  その後、本件紛争を国際司法裁判所に提訴しようと再度韓国側に提案したことはございませんけれども、各種の機会に、韓国の竹島に対する領有権主張に抗議し、韓国の官憲の竹島からの即時撤去を要求してまいりました。  本件は国交正常化のための日韓交渉の際にも解決されず、結局、日韓両国政府は、別段の合意がある場合を除くほか、両国間の紛争は外交上の経路を通じて解決することに努め、これにより解決することができなかった場合には、調停によって解決を図る旨の紛争の解決に関する交換公文を締結した経緯がございます。  最近のわが方の文書または口頭による抗議の例を申し上げますと、昨年九月に行われました海上保安庁巡視船の調査結果に基づきまして、各種建造物が撤去されていないこと、また韓国官憲が駐在していることに対して、文書により抗議をいたしました。それは昨年の十一月十九日付で文書による抗議をいたしました。  今後の方針といたしましては、政府といたしましては、本件紛争解決に適した雰囲気が生ずるのを待って、外交経路を通じて交渉を始めたい意向でございます。その間、当面機会あるごとに文書または口頭でわが国の立場を繰り返し先方に申し入れること、それから竹島周辺の海上巡視を実施することなどの方法によりまして、わが方の立場を先方に対して明確にしてきている次第でございます。
  362. 渡部一郎

    ○渡部(一)委員 この問題と関連して、座標三十五でとどめた理由及び座標三十五以北についての見解をお伺いしたいと思います。特に座標三十五の基点として竹島を用いていないというのははなはだ不穏当だと思うのでありますが、いかがでございますか。
  363. 伊達宗起

    ○伊達政府委員 お答えいたします。  北部の境界線の北端、すなわち座標三十五でございますが、それよりもさらに北の部分につきましては、現在の段階では鉱物資源の開発が当分の間技術的にも現実の問題となるとは考えられないので、日韓間の境界画定の対象とする必要を認めなかったものでございます。  それからさらに座標三十五までで境界を画定いたしましたのは、韓国が一九七〇年の海底鉱物資源開発法に基づきまして設定した鉱区の一部が、今度決まりました北部境界画定の線、すなわち、中間線を越えまして日本側に張り出していたという事実がございました。このため、この張り出している部分を明瞭に引っ込ませる必要があったわけでございまして、それが韓国の第六鉱区の北端まで、すなわち三十五の点でとめた、三十五まではどうしても必要であったということでございます。  座標三十五からさらに北の部分につきましては、将来現実的な必要が生じた場合にまた考慮をすることにいたしたいというふうに考えているわけでございます。  それから座標三十五を定めるために竹島を使用していないのはいかぬという御質問でございましたが、実際上、海底鉱物資源開発の現実的な可能性ということから申しますれば、先ほど申し上げましたようなことで座標の三十四でも十分であったかと思われるわけでございますが、どうしても三十五まで韓国側の出っ張りを引っ込ませる必要があったということで座標三十五を設けたということは御説明したとおりでありますけれども、この三十四と三十五のごく短い部分につきましては、中間線の作図上、日韓両国で未解決のまま残されている竹島、それからやや北西に位置します韓国領のウルルン島、これは日本読みをいたしますと鬱陵島でございますが、この竹島といい、それからウルルン島、いずれも絶海の孤島ということもございますので、中間線決定のための基点としては、両方の島とも考慮に入れないで作図をしたということでございます。
  364. 渡部一郎

    ○渡部(一)委員 これはまことに私はうなづけませんですね。なぜ私は問題にするかと言えば、一つは、先日の委員会で述べたように、小笠原諸島の一番南端のところに島が誕生しようとしております。この島は恐らく活火山であり、誕生したとたんにその地域について最後的には領海二百海里が設定されるとすれば、それは広大な海洋面積についてわが国の権益というものが延長されるわけであります。したがって、絶海の孤島だから、人が住んでないからなどという理由で韓国との間でそれを中間線設定のための基点として使用しないということは、将来その権限をことごとく日本は失う可能性がある。韓国側の事情はいざ知らず、交渉をすると韓国のことしか考えないで、そういう不用意な基準を持つというのは何事かと私は言いたい。少なくともその点については今後の先例としないなり、あるいは中間線画定のための便宜的な措置であると表明するなり、今後、他地域の新しく登場するであろう日本の新領土に対してはこうした考え方は用いない、絶海の孤島であろうと何であろうと、二百海里の線はちゃんと引くということは明示しておかなければとんでもないことになると私は思うのですが、どうですか。こんなことが公然と言われるのは非常に不用意じゃないですか。
  365. 伊達宗起

    ○伊達政府委員 竹島の具体的な問題につきましては、ただいま御説明申し上げましたように、韓国領の鬱陵島をも竹島と同様に無視いたしまして、韓国の沿岸から距離を測定したということになっております。その点、実際上の妥協がそれで成立をしたというふうにお考えいただきたいと思うのでございます。  なお、根本的に、島、つまり経済水域でございますとか、ないしは領海をはかる基点といたしまして、島をどのように取り扱うかということにつきましては、海洋法会議でもいろいろな議論をされているところでございます。つまり、島がどのくらい大きいかとか、ないしは住民がいるかとか、それから実際的に経済活動がそこで行われているかいないかというようなところでもって、島というものを経済水域や大陸だなの基準にとるかとらないか、ないしはそれ自身経済水域を持ち得るか大陸だなを持ち得るかということが議論されているわけでございます。また、一方の議論といたしましては、そんな基準を設けたところでとても困難であって、島というものを大小とかないしは経済活動があるとかないとかいうことによって区別するのは困難であるというような議論も行われているわけでございます。  今度の単一草案では、その点につきましては人間の生活でございますとか、それから経済的な生存をそれ自体で維持し得ないような岩につきましては、経済水域や大陸だなは持ち得ないという規定ぶりになっておりまして、これは以前からそういうことでございますが、今度の改定版でもそれがそのまま維持されているというようなことになっております。竹島のような絶海の無人の島を大陸だなの境界画定の基点とするかどうかということにつきましては、いまの海洋法議論の様相からも御理解いただけますように、国際法上にも定説がございません。少なくとも相対する国の間の大陸だなの境界画定は、七十条に書いてございますように、適当な場合、中間線の使用を含む公正、公平の原則に従って行われるべきであるという基本的な考えから見ました場合に、本土から隔絶した絶海の孤島を基点に含めることは不公平な結果をもたらす可能性がありまして、このような不公平な結果が生ずる場合には、これを画定のための基点として使用すべきではないのじゃないかという考え方が有力な考え方として存在いたすことも、またこれ事実でございます。  いずれにいたしましても、この三十四から三十五までの線は、これらの議論は法的にもございますけれども、また未解決の問題でございますが、三十四から三十五の点は、先ほど申し上げましたような事情におきまして引かれたもので、その間において鬱陵島と竹島両方とも基点とはしないでやったという今回に限りの処置でございまして、その他の、つまり先ほど先生がお挙げになりました南方の島等々につきましては、また海洋法会議での議論の動向も見なければいけませんけれども、それはそれでまた国際法的に説明がつく、ないしは国際法的な大体の処置として無理ないと認められるような措置をとっていきたい、そのように考えているわけでございます。
  366. 渡部一郎

    ○渡部(一)委員 竹島については、現在韓国側が平然とこの占領状態を続けておる。そういう状況にあって、竹島と鬱陵島とのいずれも相殺したかのごとく論じられることは、私は不当だと思うんですね。その上、本協定で非常にけしからぬのは、日本国大韓民国との間の両国に隣接する大陸棚の北部の境界画定に関する協定と堂々と書いてあるでしょう。なぜ「北部の」と書くのですか。竹島が画定したのは、あれは北部じゃないじゃないですか。北部じゃなくて中部じゃないですか。中部境界画定なら私はわかりますよ。北の方はあいまいもこじゃないですか。決められなかった。何で北部などと僣称するんですか。こういうのをごまかしと言うんです。要するに交渉能力がないにもかかわらず交渉して、北部でないのにもかかわらず北部と呼称して、これを国会に持ち込んできて、さも北部地域において日韓間に何も問題がないかのごとく装う。しかも交換公文に竹島というのを入れ損なったために韓国側に口実を与えて、今日に至るまで竹島問題を交渉する手がかりすらない。一九六五年に締結された日韓協定において紛争解決に関する交換公文が締結されたときに、竹島を落としたのは日本政府じゃないですか。そして問題を紛糾させておいて、今度はその紛糾した問題をほうり出しておいて北部境界画定。画定というのは決まったということですわね。決まってないじゃないですか、何も。大きな部分が未解決なんです。未解決なのに画定とはこれいかに。御回答しかと承りたいですね。
  367. 伊達宗起

    ○伊達政府委員 日韓間に横たわります大陸だなの地図をごらんくださいますと、より私の申し上げることがおわかりいただけるのじゃないかと思うのでございますが、水深の地図をごらんくださいますと、余り深くなっているところは別といたしまして、浅いところの大陸だな、つまり現在線を引いてありますところが大体それに該当するわけでございますけれども、したがいまして、日韓間に横たわる大陸だなだけをとらえてみますれば、それは北部、つまり境界画定協定、第一の協定におきましては日韓間の大陸だなの北部に該当するものでございまして、確かに日本海全体から見れば南の方かもしれませんが、大陸だなから見ますれば北部であるというふうに言うことができるのではないかと思うわけでございます。
  368. 渡部一郎

    ○渡部(一)委員 大陸だなを深さで議論しておりましたのは昔のことでありまして、最近は別に深さで議論しているわけじゃないですね。先ほどあなたもそうおっしゃったじゃありませんか。いまのは漫画的なお答えであって、それは違いますよ。要するにこの問題が解決してないのにこうした形の協定をおとりになったというのはもう大変問題がありますね。しかも、わが方は海溝を問題にしているのじゃない。わが方は海盆という考え方で日本海の中の問題を処理しようとしている。海盆という考え方で考えるとすれば、大陸だなの一部がへこんだという考え方で処理しようとしているわけですね。そうすると、あなたのいまの御主張からいけば、大陸だなは南の方だけで、北の方にちょっとあるんだというニュアンスが出てきてしまう。それもまたまずいと私は思います。  竹島問題に対する処理はどうなさるおつもりなんですか。韓国に膨大な援助を行い、韓国との間で協定を結び、韓国との間にさまざまな取り決めをし、経済協力を行い、なおかつ竹島問題について交渉することもできない。私は決して領土問題にこだわるということが友好関係を増進するゆえんではないと思いますけれども、将来にわたってきずになるような問題を放置したまま、こうした積み重ねというのは決して賢明ではなかろうと思うわけですね。その辺、いかがなさるおつもりですか。
  369. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 これは先ほどアジア局次長からずっといままでの経緯を申し上げまして、何とかお互いに外交的に解決を図ろうという約束をして、それができないときは調停というようなことも言っておるわけですけれども、まず外交のチャンネルで解決を図ろうということになっておるわけで、したがってわが国も譲ったわけではございませんし、お互いにその立場は対立したままでございます。他方で渡部委員の言われるように、いろいろ経済協力などをしておるではないかと言われることはそのとおりですが、それはそれなりにわが国の国益にも合致するというつもりで経済協力をいたしておりますわけで、だからといって、この問題と取引をせよということは決しておっしゃっているわけではございませんけれども、そういう問題として処理するのにはどうも納得づくでの処理としてはいかがなものであろうか、まあおのずから友好関係でございますから、それはあれこれ考えてここらでというお互いの大きな国益で処理をできる、そういう雰囲気をつくりたいというのが私ども考えでありまして、わが国の憲法、わが国の外交の基本姿勢から言いまして、やはりこれも話し合いの雰囲気をつくって片づけていこうというふうに考えておりますことに変わりはございません。
  370. 渡部一郎

    ○渡部(一)委員 そうしますとこの問題は、竹島問題に対してのあれも問題ですが、もう一つこれから日韓大陸協定の審議をするに当たって、中国あるいは北朝鮮並びにソ連、こうしたところとの関係はどうなのか、これらの関係を放置したままこの協定をどんどん結んでいくということは非常に後にしこりを残すのではないかと思われますが、その辺はいかがでしょうか。
  371. 大森誠一

    ○大森政府委員 まず中国との関係について申し上げます。  中国は、日韓大陸協定が署名されました直後の一九七四年二月四日に外交部スポークスマンの声明というものを出しまして、その中で、大陸だなというものは大陸が自然に延びたものだという原則に基づきまして、東シナ海の大陸だなについては中国と関係国との話し合いによってどのように区分するかを決めるべきであるという立場をとっております。わが国といたしましては、この東シナ海の大陸だなの関係国が全部集まって協議するということが望ましいことには違いございませんが、関係国の間には外交関係あるいは承認関係のない国もあるわけでございまして、そのような状況にかんがみました場合に、次善の策として、本協定におきましてはまず日韓間で処理し得る大陸だなにつきましてこれを話し合いで解決する。その際には中国の国際法上の権利が損なわれないように慎重に配慮する、こういう方針のもとにこの日韓間の協定をつくったわけでございます。  いま申し上げましたように、わが国といたしましては日中友好の基本精神が損なわれないようにとの観点に立ちまして、本協定の署名の前から中国側にこの協定内容の概要を通報いたしますとともに、署名後にさらに詳細にわたって説明をし、その後も機会あるごとに繰り返しこの協定説明を行いますとともに、もし中国側が希望されるのであれば、日中間の大陸棚境界の画定については、日本側としてはいつでも話し合いに応ずる用意がある旨を先方に述べてまいっております。  北朝鮮につきましては、同じく一九七四年の二月二日に北朝鮮外交部スポークスマン声明というものによりまして、この日韓大陸協定により、朝鮮南海の大陸だなと開発権が日本軍国主義者の手に渡されることになるけれども、これは朝鮮人民の利益に反し、その自主権を侵害するものであるという趣旨の主張をいたしております。わが方といたしましては、北朝鮮は本件協定の対象となっております区域また問題につきましては、国際法上権利を主張し得る立場にはないという立場をとっております。  次にソ連につきましては、この日韓大陸協定というものは、北緯三十六度十分以南の日韓両国に隣接する大陸だなについて取り決めたものでありまして、ソ連とは何ら関係がないわけでございます。またソ連の方からもこの日韓協定について何らコメントをしたという経緯もございません。  以上でございます。
  372. 渡部一郎

    ○渡部(一)委員 それじゃ、そろそろ先ほど意思表示をいたしました時間に近づいてまいっておりますから、きょうは朝から夕方に至るまで当委員会は猛烈に審議が行われたことでもありますから、私も余りこれ以上、一巡目の質問で申し上げるのもどうかと思いますが、この協定それ自体は非常に政治的妥協の産物として問題点が多かろうと思います。多いのは結構なんですが、明らかに筋が通らない点があるのではないかという疑問を捨て切れない。特に、海洋法関係の御議論と絡みまして、きょうも御説明を承っているのでありますが、委員会を通しても、理事会の御審議を回顧いたしましてもどうもよくわからぬ点が多過ぎる。これは、これから海洋法会議締結に向かって進みつつある道程でありますから、非常に困難な作業ではあると思いますけれども、世界各国の状況その他というものを十分情報として本委員会に御提供いただいて、そしてもう少し確たる材料の御提出をいただきたい。そうしないと、一体、本協定は利点が多いのか少ないのかという基本的な問題において、はなはだ不十分な決断しか下せないのではないかと私は思っているわけであります。現状においては、依然としてこの協定に対して多くの問題点を感じますので、その点委員長におかれましても当局に御要望いただきまして、しかるべき資料のあるいは情報の継続的な提供を示唆していただきますようお願いいたしまして、本日の質問としたいと存じます。
  373. 鯨岡兵輔

    鯨岡委員長 次回は、明後二十一日金曜日、午前十時理事会、十時三十分より委員会を開会することとし、本日はこれにて散会いたします。     午後七時二分散会