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1976-04-23 第77回国会 衆議院 外務委員会 第4号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十一年四月二十三日(金曜日)     午前十時三十二分開議  出席委員    委員長 鯨岡 兵輔君    理事 坂本三十次君 理事 中山 正暉君    理事 羽田野忠文君 理事 水野  清君    理事 毛利 松平君 理事 河上 民雄君    理事 堂森 芳夫君 理事 正森 成二君       粕谷  茂君    木村 俊夫君       小坂善太郎君    正示啓次郎君       竹内 黎一君    福田 篤泰君       福永 一臣君    山田 久就君       江田 三郎君    川崎 寛治君       土井たか子君    松本 善明君       有島 重武君    渡部 一郎君       永末 英一君  出席国務大臣         内閣総理大臣  三木 武夫君         外 務 大 臣 宮澤 喜一君         国 務 大 臣         (防衛庁長官) 坂田 道太君         国 務 大 臣         (科学技術庁長         官)      佐々木義武君  出席政府委員         内閣法制次長  真田 秀夫君         防衛庁防衛局長 丸山  昂君         防衛庁装備局長 江口 裕通君         科学審議官   半澤 治雄君         科学技術庁原子 山野 正登君         力局長         科学技術庁原子         力安全局長   伊原 義徳君         外務政務次官  塩崎  潤君         外務省アジア局         長       中江 要介君         外務省アメリカ         局長      山崎 敏夫君         外務省欧亜局長 橘  正忠君         外務省中近東ア         フリカ局長   加賀美秀夫君         外務省条約局長 中島敏次郎君         外務省条約局外         務参事官    伊達 宗起君         外務省国際連合         局長      大川 美雄君  委員外出席者         外務委員会調査         室長      中川  進君     ――――――――――――― 委員の異動 三月十日  辞任         補欠選任   金子 満広君     松本 善明君 同日  辞任         補欠選任   松本 善明君     金子 満広君 同月十一日  辞任         補欠選任   粕谷  茂君     黒金 泰美君   正示啓次郎君     田中 龍夫君   竹内 黎一君     西村 直己君 同日  辞任         補欠選任   黒金 泰美君     粕谷  茂君   田中 龍夫君     正示啓次郎君   西村 直己君     竹内 黎一君 同月二十九日  辞任         補欠選任   竹内 黎一君     藤井 勝志君 同日  辞任         補欠選任   藤井 勝志君     竹内 黎一君 四月七日  辞任         補欠選任   永末 英一君     小平  忠君 同日  辞任         補欠選任   小平  忠君     永末 英一君 同月八日  辞任         補欠選任   竹内 黎一君     瀬戸山三男君 同日  辞任         補欠選任   瀬戸山三男君     竹内 黎一君 同月二十三日  辞任         補欠選任   金子 満広君     松本 善明君   正木 良明君     有島 重武君 同日  辞任         補欠選任   松本 善明君     金子 満広君   有島 重武君     大久保直彦君     ――――――――――――― 三月十七日  第五次国際すず協定締結について承認を求め  るの件(条約第五号)(予) 四月二十二日  米州開発銀行を設立する協定締結について承  認を求めるの件(条約第四号)  所得に対する租税に関する二重課税回避のた  めの日本国ルーマニア社会主義共和国との間  の条約締結について承認を求めるの件(条約  第六号)  所得に対する租税に関する二重課税回避のた  めの日本国ブラジル合衆国との間の条約を修  正補足する議定書締結について承認を求める  の件(条約第七号) 三月三十日  ILO条約第百十一号、第百三号及び第八十九  号の批准等に関する請願久保田鶴松紹介)  (第二二七八号)  同(斉藤正男紹介)(第二二七九号)  同(細谷治嘉紹介)(第二二八〇号)  同(森井忠良紹介)(第二二八一号)  同(浦井洋紹介)(第二二八二号)  同(諫山博紹介)(第二二八三号)  同(石母田達紹介)(第二二八四号)  同(神崎敏雄紹介)(第二二八五号)  同(栗田翠紹介)(第二二八六号)  同(荒木宏紹介)(第二三二二号)  同(梅田勝紹介)(第二三二三号)  同(角屋堅次郎紹介)(第二三二四号)  同(紺野与次郎紹介)(第二三二五号)  同(柴田睦夫紹介)(第二三二六号)  同(瀬崎博義紹介)(第二三二七号)  同(田代文久紹介)(第二三二八号)  同(竹内猛紹介)(第二三二九号)  同(津金佑近君紹介)(第二三三〇号)  同(中路雅弘紹介)(第二三三一号)  同(中島武敏紹介)(第二三三二号)  同(野間友一紹介)(第二三三三号)  同(林百郎君紹介)(第二三三四号)  同(平田藤吉紹介)(第二三三五号)  同(平林剛紹介)(第二三三六号)  同(正森成二君紹介)(第二三三七号)  同(増本一彦紹介)(第二三三八号)  同(村上弘紹介)(第二三三九号)  同(米原昶紹介)(第二三四〇号)  同(横路孝弘紹介)(第二三四一号)  同(渡辺惣蔵紹介)(第二三四二号) 四月六日  ILO条約第百十一号、第百三号及び第八十九  号の批准等に関する請願有島重武君紹介)(  第  二四三五号)  同(小川新一郎紹介)(第二四三六号)  同(大出俊紹介)(第二四三七号)  同(太田一夫紹介)(第二四三八号)  同(加藤清二紹介)(第二四三九号)  同(勝澤芳雄紹介)(第二四四〇号)  同(久保等紹介)(第二四四一号)  同(坂本恭一紹介)(第二四四二号)  同(鳥田琢郎紹介)(第二四四三号)  同(嶋崎譲紹介)(第二四四四号)  同(瀬野栄次郎紹介)(第二四四五号)  同(田中武夫紹介)(第二四四六号)  同(竹入義勝君紹介)(第二四四七号)  同(竹内猛紹介)(第二四四八号)  同(中村重光紹介)(第二四四九号)  同(平林剛紹介)(第二四五〇号)  同(矢野絢也君紹介)(第二四五一号)  同(山田太郎紹介)(第二四五二号)  同(米内山義一郎紹介)(第二四五三号)  同(渡部一郎紹介)(第二四五四号)  同(井岡大治紹介)(第二五一五号)  同(上原康助紹介)(第二五一六号)  同(木原実紹介)(第二五一七号)  同(小林信一紹介)(第二五一八号)  同(斉藤正男紹介)(第二五一九号)  核兵器全面禁止国際協定締結促進等に関する  請願田中美智子紹介)(第二五一四号) 同月八日  ILO条約第百十一号、第百三号及び第八十九  号の批准等に関する請願井岡大治紹介)(  第二六四〇号)  同(石野久男紹介)(第二六四一号)  同(木原実紹介)(第二六四二号)  同(小林信一紹介)(第二六四三号)  同(斉藤正男紹介)(第二六四四号)  同(坂本恭一紹介)(第二六四五号)  同(村山富市紹介)(第二六四六号)  同(金子みつ紹介)(第二七三六号)  同(島田琢郎紹介)(第二七三七号)  同(坂本恭一紹介)(第二七三八号)  同(清水徳松紹介)(第二七三九号) 同月十二日  ILO条約第百十一号、第百三号及び第八十九  号の批准等に関する請願川崎寛治紹介)(  第二八一八号)  同(坂本恭一紹介)(第二八一九号)  同(清水徳松紹介)(第二八二〇号)  同(大久保直彦紹介)(第二九三九号)  同(金瀬俊雄紹介)(第二九四〇号)  同(佐野憲治紹介)(第二九四一号)  同(坂井弘一紹介)(第二九四二号)  同(坂本恭一紹介)(第二九四三号)  同(島本虎三紹介)(第二九四四号)  同(松本忠助紹介)(第二九四五号)  日中平和友好条約早期締結に関する請願(鈴  木善幸紹介)(第二九四六号) 同月十三日  ILO条約第百十一号、第百三号及び第八十九  号の批准等に関する請願高沢寅男紹介)(  第三〇一八号)  同(正木良明紹介)(第三〇一九号)  日中平和友好条約締結促進に関する請願鈴切  康雄紹介)(第三〇九一号)  日中平和友好条約即時締結等に関する請願(  佐々木更三君紹介)(第三〇九二号) 同月十四日  ILO条約第百十一号、第百三号及び第八十九  号の批准等に関する請願久保三郎紹介)(  第三一六四号)  同(久保等紹介)(第三一六五号)  同(兒玉末男紹介)(第三一六六号)  同(佐野憲治紹介)(第三一六七号)  同(坂本恭一紹介)(第三一六八号)  同(島本虎三紹介)(第三一六九号)  同(清水徳松紹介)(第三一七〇号)  同(高田富之紹介)(第三一七一号)  同(土井たか子紹介)(第三一七二号)  同(米田東吾紹介)(第三一七三号)  同(多賀谷真稔紹介)(第三二七八号) 同月十九日  ILO条約第百十一号、第百三号及び第八十九  号の批准等に関する請願阿部昭吾紹介)(  第三三三六号)  同(岩垂寿喜男紹介)(第三三三七号)  同外一件(坂本恭一紹介)(第三三三八号)  同(土井たか子紹介)(第三三三九号)  同(細谷治嘉紹介)(第三三四〇号)  同(横路孝弘紹介)(第三三四一号)  同(渡辺三郎紹介)(第三三四二号)  同(鈴切康雄紹介)(第三三七三号)  同(広沢直樹紹介)(第三三七四号)  日中平和友好条約締結促進に関する請願(赤  城宗徳紹介)(第三三七五号)  国際漁場の確保に関する請願山中貞則君紹  介)(第三三七六号) 同月二十一日  ILO条約第百十一号、第百三号及び第八十九  号の批准等に関する請願稲葉誠一紹介)(  第三四八五号)  同(久保等紹介)(第三四八六号)  同(金瀬俊雄紹介)(第三四八七号)  同(島本虎三紹介)(第三四八八号)  同(佐藤敬治紹介)(第三五四一号)  同(中村茂紹介)(第三五四二号)  同(平林剛紹介)(第三五四三号)  同(佐藤敬治紹介)(第三五九二号)  同(瀬野栄次郎紹介)(第三五九三号)  ILO条約第百十一号の批准に関する請願(金  子みつ紹介)(第三五三八号)  日中平和友好条約即時締結等に関する請願(  竹内猛紹介)(第三五三九号)  同(吉田法晴紹介)(第三五四〇号) は本委員会に付託された。     ――――――――――――― 三月二十三日  日中平和友好条約締結促進に関する陳情書  (第七八号)  核兵器の不拡散に関する条約締結促進に関す  る陳情書  (第七九号)  朝鮮の自主的平和統一促進に関する陳情書  (第八〇  号) 四月九日  日中平和友好条約締結促進に関する陳情書  (第一  六六号)  日朝友好関係確立等に関する陳情書外一件  (第一六七号) は本委員会に参考送付された。     ――――――――――――― 本日の会議に付した案件  核兵器の不拡散に関する条約締結について承  認を求めるの件(第七十五回国会条約第一二  号)      ――――◇―――――
  2. 鯨岡兵輔

    鯨岡委員長 これより会議を開きます。  核兵器の不拡散に関する条約締結について承認を求めるの件を議題といたします。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。水野清君。
  3. 水野清

    水野委員 主として外務大臣防衛庁長官に伺いたいのでございますが、核防条約審議については、これまでいろいろな角度から審議をしてまいりましたが、ちょうど国会審議がとまっておりまして、ことしの一月ごろからのアメリカ中心とする国際情勢変化がいろいろございました。その変化に応じて日本の国の安全保障というものについて、日本政府考え方がどういうふうな変化をしてきたのか、変化はないのかというようなことをこれから伺いたいと思います。  具体的に申し上げますと、アメリカで、これは大統領選挙における論争中心でありますが、デタントに対する反省といいますか、具体的に言えばアンゴラ問題などを初めとしてアメリカ国内ソビエトに対する不信感というものが急速にふくれ上がっているようであります。国際政局の中で、言ってみると、昨年あたりまでは米ソ協調が非常に表に出ておったのでありますが、最近冷たい気流が流れ込んでいるというようなことはもちろん御承知のことだと思います。  具体的にこれをアメリカの次元で申し上げますと、ラムズフェルド国防長官国防報告の中に、ソ連軍事力増強に対してアメリカも強力な軍事力維持を必要とする、これがむしろ平和の道だというような表現が出ていることは御承知のとおりであります。アメリカ軍事予算の膨大な増額なんかもこの一つの証拠だと思います。あるいはキッシンジャー長官がこの二月三日にサンフランシスコで演説をしておられます。ここでもアンゴラにおけるソビエトとキューバの援助といいますか侵略といいますか、これに対して、こういうことが二度と許されるべきではないというような非常に激しい言葉が出ております。あるいは最近においては、これは三月三日でありますが、フォード大統領自身が、大統領選挙一つ世論調査の結果だと思いますが、もうデタントという言葉は使わないんだというようなことも言っております。さらにアメリカでは、これは日本にも具体的に触れておりますが、統合参謀本部議長のブラウン氏が、これは一月二十七日でありますが、日本の西太平洋、こういう表現でありますが、対潜能力をもっと増強しなくちゃいかぬというようなことも言っておりますし、あるいは日本核武装については非常に微妙な言い回しをして、日米安保条約があるから日本核武装はしないんで、これがなければ日本自身も将来核武装するかもしれない、日本核武装抑止力だというような言い方もしておられる。こんなことは十分御承知だと思います。また、日本の周辺をめぐる軍事情勢というものもなかなか厳しいように聞いております。  こういう中で、核防条約と直接関係はありませんが、日本の国是というのは平和外交であり、非核三原則を守っていくということであり、専守防衛の自衛力を整備するんだ、こういうようなことでありますが、国際情勢が再びこういうふうに変わってきた中で何か日米間でお話し合いがございましたでしょうか。どうも私は新聞その他で見ている限りは、ロッキード事件ではいろいろ日米間に往復があったように思いますが、こういうアメリカ外交政策あるいは軍事政策変化というものに対して、日米間で何か話し合いとか往復というものが余りあったようにも聞いていないのでありますが、もしあったとすれば、どういうことであったかというようなことをお教えをいただきたいと思います。
  4. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 いわゆるデタントをめぐりますアメリカ国内論争につきましては、私どもも気をつけてフォローをいたしておるわけでございますが、私が感じておりますことの一つは、デタントというものがアメリカ外交政策、ことさら対ソ政策のすべてであるというふうな誤解、そのような誤解が生じたことについては、多少その間に政策当局者の側の問題もあったかと思いますけれども、そこに一つ問題があったのではないかと思います。  すなわち、申し上げるまでもなく、デタントというのは米ソ核戦争をしないためにどうすればいいかということを中心に考えられた政策でありまして、その限りにおいてはデタントというものはその政策の効果を発揮しておると考えるべきでありますし、またそのことにわれわれも賛成をしていい政策であろうと思います。しかしながら、アメリカ内に起こりました批判は、そのようなデタント政策を行っている間に得をする者はソ連であって、アメリカ側は損をしておるというような、デタント本来の目的をちょっと離れたところの議論が起こってまいったわけで、そのような議論が起こりました経緯は、水野委員がまさしく仰せられましたように、アンゴラの問題であるとかあるいは昨年のヘルシンキ会議のいわゆるバスケット・スリーというものの後始末とかいうようなものに関連があると思います。しかしながら、そのことはデタント政策そのものが間違いだということにはならないのであって、デタントだけがアメリカ政策のすべてではないというふうな問題の指摘の仕方の方が私は正しいのではないかというふうに思います。そういたしますと、デタントを離れてアメリカは、外交政策あるいはことさら対ソ政策でどういうことをそれ以外の分野で考えておったかということになるわけですが、それが実は必ずしも明快には示されていない、これは政策担当者の側にも私は問題があったのではないかと思うのでございます。  そこで、現在アメリカの持っております悩みといいますか、論争点一つは、つまりデタントの外において米ソはどのような関係にあるべきか、たとえばアンゴラといったような問題もその一つでございますけれども、さらにはもう少しひょっとして深刻な問題かと思われますのは、幾つかの西欧国家があるいは共産主義の政権に移行する可能性が少なくともあるのではないか、その場合にアメリカソ連との関係、あるいはNATOとの関係はどうなるのであるかというような問題、これは私はかなり深刻な問題ではないかと思います。それらについてアメリカがどう考えているかということは、今日現在明白でないように私には思われます。キッシンジャー氏は、そうなった場合、アメリカと従来それらのヨーロッパの国との間で共通に持っておった価値観というものは失われるであろう、したがって、その場合アメリカは、極端な場合でございますが、アメリカ大陸に閉じこもって、それらのいろいろな勢力の間をマヌーバーしていくしかないであろう、それはできるであろうと思うけれども、しかし、従来ヨーロッパの国との間にあった共通価値観というものはそのことによって失われる危険があるというようなことを言っておるわけでありますけれども、それは必ずしも明確な政策の宣明ではないというふうに私は考えております。  それらのことがこの数カ月に起こりました水野委員のおっしゃいましたアメリカをめぐる情勢変化であるというふうに私は考えておりますが、その間にあって、幸いにして日米間にはそのような問題は起こっておらないように存じます。  すなわち、昨年三木総理大臣が訪米せられましたときに、フォード大統領合意いたしましたように、日米安保条約というもの、これがわが国の安全のみならず、アジアにおける平和と安全の一つの大事な枠組みであるというふうに考えていくこと、そして日米両国民はなお同じような価値観というものを持っているというようなこと等々から考えまして、日米間に大きな変化は起こっていないというふうに私は考えております。しかし、ただいま水野委員の言われましたように、アメリカをめぐって対ソ、あるいは対ヨーロッパ、あるいはアフリカというようなものとの間に新しい発展が、展開がありますことは確かでございますので、それがわが国にいま直接に関係いたすことではないにいたしましても、何かの機会にそのような情勢について話し合いをしてみたい、したかというお尋ねでございまして、現在までのところいたしておりません。それは、私ども国会がございましたこと、あるいはアメリカ選挙が行われておること等々といろいろな関連があるわけでございますが、両国の外交担当者が年に二回ほどは話をしようということはかねて合意をされておりますので、いずれかの機会にそういう場も持ちたいというふうに考えております。  なお、先ほどの御指摘フォード大統領デタントという言葉は今後使わないと言われたことについて、私はデタントというものを先ほど申し上げたように了解しておりますから、政策としての有用性は私は決して失われておらないと思うのでございます。ただそれがアメリカ外交政策対ソ政策のすべてであると誤解され、あるいは誤解をさせたところに問題があったのであろうと思いますので、したがって、そういう意味デタントということを使わずに、今後はピース・スルー・ストレングスとかいろいろな表現があるようでございますが、ということを言うのだということをフォード大統領は言っておられるようであります。これもしかし、もともとアメリカ世界平和維持考え方がいわゆる力の均衡というものを基本にしておることは間違いがないのでございますから、その表現そのことも別に私は目新しいことだとは考えておりません。ただ、デタントがすべてではないのだということを言ったという意味意味があったのではないかというふうに考えております。
  5. 水野清

    水野委員 少し核防条約の問題と離れますが、いま宮澤大臣お話の中でヨーロッパの問題が出てまいりましたので、最近、これは四月十五日の朝日新聞の切り抜きでありますけれどもアメリカの国務省のソンネンフェルトという顧問が何かこれはリークをした記事のようですが、西ヨーロッパ政策についての記事が出ております。要するに、東ヨーロッパについては、アメリカはいかなる事件があっても、これはワルシャワ条約体制について手出しをしないのだ、しかし、西ヨーロッパについては、逆に言うと、これはキッシンジャー演説だったと思いますが、共産主義体制の成立を、恐らく南ヨーロッパの国のことを言っておるのだと思いますが、これは認めることができないのだというようなことを、何かロンドンで欧州の大使を集めて、そういうような方針を指示したというような新聞記事が出ていることは御承知のとおりであります。  これはヨーロッパのことなんですが、こういうアメリカ外交政策変化というものは、私は当然アジアにも何かの形であらわれてくるであろうという気がするわけであります。日米間においては、フォード大統領との先ほどのお話や、外務大臣キッシンジャーとの会見その他でいままでどおりの合意が進んでいたというお話でありますけれども、私は、日米安保条約といういままでの日米間の信頼の基本というものは急速に変化はしないと思いますが、少なくとも、ことしの秋の大統領選挙の終了後、だれが大統領になるかということも一つ問題点でありますけれども、当然変化が出てくるかもしれない。その変化は必ずしも日米間が疎遠になるということでなくて、逆になることもあるかもしれませんが、ともかく私は質的な変化というものが当然生まれてくるだろうと思うのであります。こういうことについていま非常に日米間で話しにくい——話しにくいというのは、アメリカ国内大統領選挙でひとつ固まっておりません。日本の方も政治情勢としては余り固まっていないと私は思いますが、非常に重要なときなので、外務当局とされて、あるいは政府とされて、この点については私はもっと緊密な話し合い変化を追跡していくというようなことが必要ではないかと思うのでありますが、いかがでございましょうか。
  6. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 ごもっともな御指摘であると考えております。お話しのありましたいわゆるソンネンフェルト氏の話したと伝えられることの内容、あるいは同じ時期にキッシンジャー国務長官大使たちに伝えたと言われることの内容は、とことんのところ非常にはっきりしておりません。私も読み得るものはほとんど読んだつもりでございますけれども、とことんのところは必ずしも明確でございませんので、ただいまコメントをすることを差し控えさせていただく方が誤解を生まないと私は思っております。  ただ、恐らく一つ言えますことは、ソンネンフェルトの言いたかったことは、東欧諸国がいわゆる力によって一方的にソ連から制約を受けているという状態は決して好ましい状態ではない、最小限そういうことを言ったのであろうかとも思われますけれども、しかし両者の述べましたことを総合いたしますと、必ずしも趣旨がはっきりいたさないので、これ以上コメントをいたさない方がよろしいかと思います。  で、日米間の問題でございますが、私はやはり両国が共通価値観で結ばれておるということ、これは現在でもそうでございます。このことは両国の関係を友好的ならしめる上に大事なことであると考えますし、同時にまた、わが国が今後とも現在の平和憲法を維持していくこと、これはただいま御審議いただいております条約にも関係のあることでございますが、そういうことをやはり大きな柱として従来成り立ってまいりましたし、今後もそうあるべきであろうというふうに考えておるわけでございます。  が、確かに、言われましたように、かなり世界の情勢変化の兆しがございますので、そのようなことについて日米両当局者がゆっくり話し合いをするということは大切なことであろうと存じます。そのような機会を得たいと考えております。
  7. 水野清

    水野委員 どうも重ねて申し上げて恐縮なんですが、私たちの日本の国は二月の上旬以来ロッキード事件で沸き返っておりまして、実はロッキード事件以外日本の国ではほかの事件がなかったような感じさえするわけであります。ロッキード事件の究明ということについてもちろん私は否定的ではないわけでありまして、これはこれでやるべきなんでありますが、私は極端に言えば、外務大臣キッシンジャーにお会いになるとか、日本のトップがお会いになるだけじゃなくて、日本大使アメリカにもいるわけであります。外交チャンネルというものがしっかりしているわけであります。その中でこれだけの世界情勢変化というものが起こっているのについて、どうも敬愛する宮澤大臣に大変恐縮なんでありますが、私は先ほど来の御答弁ではちょっと物足りない、日本の外務省は何をしているのだろうかという気がするのであります。ロッキード事件の結末がついた秋ごろになってみたら、世界はこういうふうに変わっていましたというのでは、これはちょっとわれわれは心もとない気がするのでありまして、ひとつ私は出先の外交当局に対してもう少しこういう問題について真剣な追求をされるようにお願いしたいわけであります。  それから防衛庁長官にも、この問題は即軍事的な問題とうらはらになっておるわけでありまして、防衛庁としてもこの問題についてはもう少し追求をしていただきたい。現にラムズフェルドの国防報告をただ一生懸命翻訳をして分析をして読むだけでなくて、私は検討をされるだけじゃない、接触をもっとお求めになるのが当然の義務ではないかと思うのであります。  実は質問時間が余りないものですから、少し飛びはねた質問をいたしますが、これは科学技術庁にお願いするのがいいのか、外務省の出先当局へ御指示をいただくのがいいのかと思いますが、恐らくまだお調べがないと思います。ごく最近の新聞でありますが、ソビエトの原子力潜水艦が核廃棄物を不法に海洋投棄をしているということをイギリス政府指摘をしているという記事が外電で、これは新聞に載っております。こういう問題が、これはソビエトの潜水艦の例でありますが、あるいはアメリカにもあるかもしれない。一体こういう問題についてはどういうふうにこの核防条約の中で扱っていけるのか、ほかに何かそういったものをお互いに禁止したり監視したりするような協定とかそういうものがあるのかどうか。  まず、いまのイギリスの政府指摘しているソ連の原潜が核の廃棄物を勝手に海洋投棄しているという問題について、外務省では何か出先から詳しいお話がありましたか。一体どこにそういう事件が起こったのであるかとか、なぜイギリス政府がこんな指摘をしたのかということについて御存じでいらっしゃいますか。
  8. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 従来私どもは、ソ連は廃棄物は地中に処理をしておるというふうに考えてまいっておるわけでございますけれども、ただいまの御指摘のことについて情報を持ち合わせておりません。できるだけいろいろな方面からそのようなニュースがどうして出たのか、真偽につきましても調べておきたいと思っております。
  9. 水野清

    水野委員 科学技術庁では、これについて何か協定とか、そういうものは持っていらっしゃいますか。
  10. 佐々木義武

    ○佐々木国務大臣 私どもの方も的確な情報を持っておりませんから、調べてみたいと思っております。
  11. 水野清

    水野委員 それじゃまだ私の質問たくさんあるのですが、予定の時間があと三、四分しかありませんから、これで終わりたいと思います。
  12. 鯨岡兵輔

    鯨岡委員長 水野清君の質疑を終わりました。  河上民雄君。
  13. 河上民雄

    ○河上委員 核防条約関連して二、三点お尋ねしたいと思いますが、まず海洋法会議で国際海峡という理念が論議されていると思うのでありますが、非核三原則を貫徹できるかということについて私どもは非常に強い関心を持っております。そういう観点からこの国際海峡の理念について、海洋法会議でどのような進展を見ておるのか、また政府はこれに対してどういう態度をとっているのか、それを伺いたいと思います。  まず、いまどういうような状況になっておるか、簡単に御説明いただきたい。
  14. 中島武敏

    ○中島政府委員 お答え申し上げます。  海洋法会議はただいま第六週目の終わりに近づいておりまして、先生御承知のように、国際海峡の問題はこの会議において論議せられているわけでございますが、そうしてその論議の基礎は、前会期の終末にアメラシンゲ議長から配付されました非公式単一草案を基礎として論議が重ねられておるわけでございますが、国際海峡の制度につきましては、従来各国から表明された立場がいろいろ改めて表明されまして、いまだ結論は得ておりませんけれども、一般的には国際航行に使用せられる海峡については、領海におけるよりもより自由な航行制度を確立するという方向で審議が進んでおるという状況でございます。  ただし、最終的に案文をどうするかというようなところまでは現在至っておりませんで、従来からたびたび御説明申し上げておりますように、国際海峡の問題と領海の幅員の問題、それから排他的経済水域の問題、これらの主要な問題が一種のパッケージとして成立に持ち込むべく各国の努力が重ねられておる、こういう状況でございます。
  15. 河上民雄

    ○河上委員 その国際海峡の中の自由通航権という理念について、いま政府はどのように考えられておりますか。これが領海の一部というふうにお考えですか。それとも領海と公海と、もう一つ新しい概念として一つ出てきたものであるというふうにお考えでしょうか。
  16. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 どのような最終的な定義づけが出てまいりますかはこれからの問題でございますけれども、ただいままでの審議の過程から考えてまいりますと、これは領海ではない、しかし公海でもない、そのような新しいレジームが国際法として誕生するものと考えるのが穏当ではなかろうかと思っております。
  17. 河上民雄

    ○河上委員 さきに宮澤外務大臣は、自由通航権を認めるそういう通航帯というものの性格について、何がしかの主権は残っているのだというような答弁をされたように記憶いたします。一体どういうものが残り、どういうものが主権の制約といいますか、普通の領海の場合の主権と違う形になるのか、そういう点を少し明らかにしていただきたいと思います。
  18. 中島武敏

    ○中島政府委員 お答え申し上げます。  先ほど申し上げましたように、ただいま非公式単一草案を基礎といたしまして、その条文をどうすべきかという点の審議が重ねられているわけでございまして、最終的な条文の成立にまだ至っておりませんので、先生の御質問に対して明確な御答弁を申し上げることが大変むずかしいわけでございますが、一般的な考え方といたしましては、いまのいわゆる国際海峡に船舶の自由な通航を許すという限りにおいて、沿岸国の主権がその限りにおいて及ばないということが、特殊な制度の基本的な考え方として考えられているわけでございまして、そこで沿岸国の権限がどこまで及ぶか、どこまで及ばないかという点が、まさにこれから海洋法会議において煮詰められて条文になる、こういう状況でございます。
  19. 河上民雄

    ○河上委員 そういう問題について日本政府はどういう主張をしておられるのですか。
  20. 中島武敏

    ○中島政府委員 この点もたびたび大臣、政府委員から御答弁申し上げておるところでございますが、わが国といたしましては、資源の輸入を国のいわば生存の基礎としており、有数な海運立国としての立場にあります関係上、国際海峡においては自由な船舶の通航が認められるような制度が望ましい、それがわが国の総合的な国益に合致するという立場で、国際海峡においては一般領海におけるよりもより自由な通航のレジームがつくられるべきであるという立場で会議に臨んでおる次第でございます。
  21. 河上民雄

    ○河上委員 そういたしますと、日本政府の主張しておるのは、いわば船を軍艦と商船に分けた場合、商船の自由通航を保障してもらわないと日本の国益に合致しない、こういう考え方で言っておられるわけでございますか。
  22. 中島武敏

    ○中島政府委員 おっしゃられるとおりでございます。ただ一般的な会議における各国の主張はいろいろな主張があるわけでございますが、一般的に申しまして船舶と言います場合に、船舶の種類によって区別を設けるというアプローチをとることに相なりますと、わが国が至大の関心を有しておりますところの巨大タンカーの国際海峡における通過という問題も、自由な通過を許すべきでないのだという主張も一部海峡沿岸国にはあるわけでございまして、その船舶の種類によって問題を考えるというアプローチをとるべきか否か、とることがわが国にとって得策であるかどうかという点があることは事実でございます。
  23. 河上民雄

    ○河上委員 いま局長は船の種類によってアプローチの仕方を変えていく、そういう主張をしておる国はたくさんあるということでございましたが、私どもの知る範囲におきまして、中東諸国の中には軍艦については無害航行、その他の一般船舶については自由通航、そういう形の国際海峡の自由通航帯を主張している国もあるわけです。なぜ日本でそれが主張できないのか。いま日本の経済の動脈と言われる大型タンカーについて規制せられると非常に困る、こういう御意見でございますけれども、しかし今日の世界の大勢から見まして海上油濁、そういう汚染について無制限であるということはもう許されないわけでございます。これはもう沿岸国から何らかの形で規制が加えられるのは当然のことだと思います。そういたしますと、それは要するにかなわぬことを一方で考えているということになりますので、私はそれは余り大きな理由にならないのじゃないかと思うのであります。  そういたしますならば、日本こそむしろ軍艦については無害通航、その他の船舶について自由通航というようなことを、もし仮にどうしてもそういうことが必要であるというならば、そういう主張が出てきてもしかるべきだと思いますけれども政府としてはそういうことをなぜ主張されないのか、その理由を聞かしていただきたいと思うのです。
  24. 中島武敏

    ○中島政府委員 先生いま御指摘のように、軍艦についての通航制度はほかの船舶とは異なる制度とすべきであるという主張を行っている国が一部にありますことも事実でございます。ただ先ほど来申しましたように、船舶の種類によって区別を設けるということになりました場合に、果たしてわが国の至大な関心を持っておりますところのタンカーの国際海峡における通航の自由が確保せられるかという点の懸念があるわけでございます。  いま先生確かに御指摘のように、汚染の問題については、いまやこの汚染を厳しく取り締まるべきであるということが国際的な一般的な考え方になっておることも確かにそのとおりでありまして、この点につきましては、ただいまのたとえば海洋法会議審議を行っておりますところの非公式な単一草案においては、沿岸国がその国際的な基準に基づいて汚染の防止を行うための法律をそのような国際海峡に及ぼすということができるようにすべきでないかという考え方に基づいて、いまの非公式単一草案はできておるわけであります。これが果たして最終的にどうなるかという点は、先ほど申し上げましたように今後の審議の状況を見なければならぬ、こういう状況でございます。
  25. 河上民雄

    ○河上委員 もう一度もとへ戻りますけれども、いわゆる自由通航帯というものは国際会議で幅員が決められる可能性があるのかどうか、またその自由通航帯の性格というものは全くの公海でもない、全くの領海でもないといった場合に、主権というものはどういう形で及ぶのか、及ばないのか、これをもう一度明確にしていただきたいと思うのであります。
  26. 中島武敏

    ○中島政府委員 国際海峡における船舶の通航の仕方をどういうふうに定めるかという点につきましては、たびたび申し上げて大変恐縮なんでございますが、その点がまさに論議せられておるわけでございまして、その確定的な合意の成立を見ていないわけでございます。したがいまして、いまからどうということを明確に申し上げがたいわけでございますが、先ほども大臣から御答弁がありましたように、領海が十二海里に広がることによって、国際航行に使用せられておる、従来公海であったものがそうでなくなり得るようなところについては、特殊なステータスとでも申しますか、特殊なレジームを認めるべきであるというのが基本的な考え方でございまして、したがいまして、それが条文としてどういう形になるかという点を見ませんと、沿岸国の主権がどういうふうに及ぶのか及ばないのかという点が明確に申し上げがたいわけでございます。ただ、先ほど来申し上げておりますように、船舶の自由な通航を認めなければならない限りにおいて、沿岸国の法令というものは及ばないことがあり得る、制度の本質からしてそういうことにならざるを得ないじゃないかというふうに、一般的な問題として考えておるわけでございます。  ただ、たびたびまた繰り返しになりますが、まさに汚染の問題についても、国際海峡に沿岸国の権限が及ばないというのは穏当ではないんじゃないかということで、現在審議しておりますのは、たとえば汚染の防止については沿岸国の法令を及ぼし得るようにしようじゃないかという方角で話が進んでおるということでございます。
  27. 河上民雄

    ○河上委員 それじゃ外務大臣にお尋ねいたしますけれども、これまで領海十二海里の問題あるいは国際海峡の問題について、大臣からいろいろ御答弁いただいておりますが、それを整理して政府の御見解を承りたいと思うのですけれども、まず第一に、大臣はいままで海洋法会議で国際的な条約ができたら、日本政府はそれに従う、こういうことでありました。しかし、できなかった場合ないしは先般私が御質問いたしましたように、そこで結論は出たけれども条約が発効するまでの間、そのタイムラグの間はどうするかということになりますと、大臣は日本政府独自で領海十二海里を宣言する場合もあり得るというふうにお答えになったように記憶いたしております。そういう場合に、国際的な通念として国際海峡というものができていない、しかし一方で領海十二海里については日本独自の立場で宣言をした、こういう場合、その場合は日本政府としては国際海峡という、また、したがって自由通航帯というものは当然認めない、こういうようにお考えになりますか。
  28. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 大変そこらがむずかしい問題をはらんでおりまして、私はそういうお尋ねがございますことは至極ごもっともなことであると考えます。  まず第一に言われましたこと、海洋法会議が国際条約を生んだ場合には、わが国はそれに加盟をしたいと考えておりますことはそのとおりでございます。全体の国益から見まして世界の海洋が無秩序状態になることは好ましくないと考えておりますから、そのような国際条約が生まれるようにわが国といたしましても努力をいたしつつございますから、当然に成立いたしますればわが国も加盟をしたいと考えるものでございます。  次に御設問は、そのような国際条約ができない場合、この場合二つに問題は分かれるわけでございまして、今後全くできる可能性がないという場合、それからもう一つは、大体の観念はまとまったけれども、正式に条約として厳密な意味で発効するのに時間がかかるという場合、その両方あろうかと思います。  まず、これだけ努力をいたしましたが結局海洋法というものはもうできない、努力はあきらめざるを得ないということになりました場合には、これはわが国として、恐らくはわが国独自の立場から領海十二海里を宣言いたすことになろうと思います。その場合には、それはわが国の領海でございますから、わが国の主権がフルに及ぶというふうに考えてよろしいのでなかろうかと思います。  次に、海洋法会議が実体的には結論に達することができた、しかしその条文化に、あるいは発効するのに多少の時間がかかるという場合にいかにすべきかという、これが一番むずかしい問題であろうと思います。これは抽象的に申し上げることがどうも正直を申しまして困難でございまして、たとえば今年、ただいまやっております会議あるいはその会議の延長として仮にエキストラセッションをいたしまして、そこで実体がもうすでに草案として確定をしたということになりましたならば、残りはそれを法文化するという手続でございますから、事実上新しい国際海峡という概念が、レジームが、国際的な同意でつくり出されたと考えても、そんなに不当ではないのではないかというふうに、抽象的には私はそう思っておるわけでございます。  したがいまして、わが国もそれに従って行動をするということになろうかと存じますが、しかしこれは抽象的に申し上げればそのとおりでありますけれども、どのような程度に、また法文化をどのぐらい将来に控えてそのような合意ができ上がったかというようなことは、具体的にその段階で判断をしなければ、抽象的な議論だけでは処理し切れないものがあろうかと思いますので、私は原則的には先ほど申しましたように考えておりますけれども、やはりその時点で具体的な判断をしなければならないのではないか、ただいまとしてはそう考えております。
  29. 河上民雄

    ○河上委員 防衛庁長官に承りますけれども、領海十二海里になりました場合、日本を取り巻くいわゆる国際海峡の多くは領海の中にすっぽりと包まれてしまいます。そういう場合に防衛庁の立場から見て、従来の防衛体制というものについて何らかの重大な変化が起こり得るかどうかということにつきまして、先般、丸山防衛局長に私お尋ねいたしました。核兵器を装備した米国の艦船が、現在日本海へ自由に出入りしているわけでありますけれども、それができなくなっても軍事的な分析をすれば、日本の防衛に余り大きな影響はないと明言されたのでありますけれども防衛庁長官として丸山防衛局長のこの言明に同意せられますかどうか、またどういう形で具体的に影響がないというふうに分析をしておられるか、承りたい。
  30. 坂田道太

    ○坂田国務大臣 先般丸山局長が答弁いたしましたとおりに私は考えておるわけでございまして、大きな影響はないというふうに考えるわけであります。と申しますのは、アメリカ日本防衛についての影響は大した影響はないというふうな判断からであります。
  31. 河上民雄

    ○河上委員 いまの御答弁は、仮に領海十二海里にした場合、昭和四十三年の三木外務大臣の答弁及び非核三原則から見て、核積載艦がわが国の大部分の海峡を通過できなくなる、こういう考え方を前提としてお答えになっておられるわけでございますね。
  32. 丸山昂

    ○丸山政府委員 私の発言が先生から御引用になっておりますので申し上げたいと思いますが、要するに、先ごろから外務当局から御答弁ございますように、国際海峡のレジームそれ自体については全くどういう形になるのかということが現在わかっておりませんので、仮定の問題としての御答弁はいろいろ誤解を招くというふうに思いますので、率直に申し上げますれば、ただいまの問題につきましても一応私大きな影響がないだろうということを前に申し上げてございますけれども、それもいま申し上げましたような前提に立っての問題でございまして、非常に緻密に問題を分析して、その結論としての結果を申し上げているわけではございませんので、そういう点を御了承いただきたいと思います。
  33. 河上民雄

    ○河上委員 それでは宮澤外務大臣にお尋ねいたしますが、先般来の本条約審議で一番焦点になりますのは、要するに三つであろうと思うのであります。  その第一は、本条約というか、いまの国際情勢から見まして、核兵器国の核軍備の核競争というものを阻止するというのにこの条約が役立つかどうかという点がまず第一。また国際的に見てそういう方向に向かっているかどうかということが第一点であろうと思います。  第二点は、われわれが国是として立てております非核三原則というものが、こういうりっぱな決議があるわけでありますけれども、また国是としてわれわれがそれを立てているわけでありますが、それを貫徹することができるかどうか。  また第三番目には、核兵器を持っておる国が日本に対して核攻撃をしないという、いわば核不使用協定というはっきりしたものができることが一番望ましいわけでありますけれども、それに向かってわれわれとして努力できる体制にあるかどうか。さらに、私どもといたしましては、やはり唯一の被爆国であります日本として、アジア・太平洋地域における非核武装地帯というものを設けることが、核全廃に向かって大きく進む上でこれは絶対日本としての、いわば歴史的な使命であるというふうに考えるわけでありますけれども、そういう方向に政府として、この機会に当たって改めてそういう気持ちがあるかどうか、そういう点が第三点だろうと思います。もちろん、基本的にはこれによって将来日本が独自の核武装をする、そういうことの道をみずから断ち切って、全世界にそれを宣言するということがあろうと思います。  これらにつきまして大臣の御見解を順次承りたいと思いますけれども、最近、先ほど来非常に大きな問題になっておりますけれども米ソ間のデタントという問題についてアメリカ側がやや熱意を失っているというような報道もあるわけでございますが、またSALTIIの交渉も非常に難航しているというように伝えられておりますけれども、こういうようなことにつきまして、日本政府としてはどういうふうに考えておられるか、まず第一にその御見解を承りたいと思います。
  34. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 それでは、最後にお尋ねになった部分にお答えを申し上げるべきかと思いますので、デタントでございますけれども、先ほど水野委員にも申し上げましたように、デタントについてのアメリカ国内論争、これは多少選挙も絡んでおることは事実のようでございますけれども、これはやはりデタントという政策そのものが間違っておった、あるいは効果を生んでいないという論争ではなくして、客観的に見ておりますと、デタントというものですべて、アメリカの外交がこれだけあればやっていけるというようなふうに理解をした人々がいる、あるいは多少そのような誤解を与えるような政策当局者の側の問題もあったかと思うのでございますけれども、いま起こっている論争はそういうことであって、デタントの目的としているところ、すなわち米ソ間で核戦争があってはならない。それば何としても防がなければならないというそのこと自身にアメリカ政府あるいはアメリカ国民が疑いを抱いているわけでない。そういう意味で、私は、デタントという政策は正しく理解せられるべきであるし、正しく理解せられた場合に、これは政策として、やはりアメリカにとりましてもあるいはソ連にとりましても、世界のその他の国にとりましても支持されるべき政策であるというふうに考えておるわけでございます。  そこから今度はSALT、第二段階のSALTについてでございますが、非常に正確なことはいま現在でわかっておりませんけれども基本的なデタントの理念というものを米国は放棄したわけではありませんし、それがソ連にとっても利益であるという限りにおいてSALTIIの交渉はやはり進んでいく可能性が高い。クルーズミシルでありますとかバックファイアでありますとかいう具体的な障害になっておる問題は、伝えられておるようにあるようでございますけれども、しかし、それは何かの形で解決が可能なのではないだろうか。最近伝えられるところによりますと、地下の核実験について米ソ間の合意が近いということが伝えられました。これはいろいろ諸種の情報を総合いたしてみますと、どうも事実であるように考えられます。といたしますと、それには恐らく現地査察というようなことについて、長い間問題でございましたその問題についても、何かの了解が得られたのではないかというふうに考えられるわけでございまして、それらの客観的な情勢から判断をいたしますと、SALTIIもまず、予想よりははるかに時間がかかっておりますけれども、妥結の方向に向かっていくのではないかというふうに判断をいたしております。
  35. 河上民雄

    ○河上委員 第二点でありますけれども外務大臣はすでに総理が言明されましたように、平時、有事にかかわらず非核三原則は絶対に守る、こういう立場をもちろん万々間違いなく遵守されると思うのでありますけれども、その点につきまして重ねてお答えいただきたいと思います。
  36. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 総理のお答えになりましたとおりその方針を遵守してまいります。
  37. 河上民雄

    ○河上委員 ただ、かつて自民党の総務会で非常に強く強調せられましたように、核防条約というものに参加する場合に、日米安保条約体制というものをその反面強化しなければならない、そういう考え方が述べられておりますけれども外務大臣としては、そのことが一体アメリカの核のかさを期待しているという以上、核持ち込みを拒否している非核三原則とどういう関係に置かれるというようにお考えになっておられるか、私どもはいわゆるNATOの、第二次世界大戦でいわゆる敗戦国である、国際的にその去就が注目されておる西ドイツと日本というものを比較した場合に、NATOではむしろ核兵器の持ち込みを条件として核防条約に賛成しておる、しかしわれわれは逆に核兵器の持ち込みを拒否することを条件としてこの核防条約というものに対処しようとしておる、そういう点を考えますときに、先ほど申しましたように、いわゆる日米安保体制の強化というようなことをいまここで改めてうたうことが一体どういう意味を持っているのか、われわれとしては非常に疑問を持つのでございますが、外務大臣としてこの関係をどういうふうにお考えになるかですね。
  38. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 昨年自民党の党内におきまして、この条約国会で御承認をお願いすることとの関連日米安保条約の強化という議論がございましたことは御指摘のとおりでございます。そのときに私自身は、強化と考える必要はない、日米安保条約維持していくということで十分であるというふうに私は考えておりましたが、事実といたしましてその辺を少し確認しておく必要があるという議論が私どもの党内にございまして、私がキッシンジャー国務長官と会談をいたしました。またそれは昨年の三木総理大臣フォード大統領との会談でも確認をされておるところでございますが、要するに日本に攻撃が加えられる場合、それが通常兵器によるものであれ核兵器によるものであれ、アメリカとしては安保条約上の義務を遵守するという趣旨のことであったわけでございます。この点はすなわち世界の現状において、わが国が通常兵器あるいは核兵器による攻撃にさらされる危険というものは残念ながら皆無とは申しがたい、しかもわが国は軍備を放棄しておるわけでございますから、そのような現状が続く限り、わが国に対して何がしかの安全保障というものがなければ安心ができないという考え方、その場合、米国の持っております通常兵器あるいは核兵器というものは、いわゆる抑止力としてわが国にそのような攻撃が加えられることを抑止する力がある、こういう考え方でありますことは御承知のとおりでございます。  そのこととわが国の非核三原則の関連でございますが、米国側の通常兵器あるいは核兵器の力というものは世界周知でございますから、これが抑止力になるということについてはまず疑う必要がない。その場合、たとえば西独との対比をお話しになったわけでございますが、わが国は西独と違いまして陸続きでそのような脅威を受けるような地勢にはございません。したがいまして、恐らく西独の場合には戦術核というものが持ち込まれることが必要であると関係者は考えておってそうなっておることと存じますけれどもわが国の場合にはそういうふうには考える必要がない、いわば戦略核と申しますか、相当長距離のミサイルであっても十分な抑止力になり得るというふうに考えることが相当ではないであろうか。したがいまして、わが国アメリカのいわゆるデターレントのもとにございますけれども、そのことはわが国核兵器が持ち込まれなければならないということにはならない、これが従来私どもがずっと考えてまいりました考え方でございますが、最近になりまして、やはりその考え方が軍事専門家等々から見ましても妥当性が高いというふうに言われるようになっておるのではないかと考えております。したがいまして、わが国日米安保条約によりましてアメリカのいわゆる戦争抑止力の保護のもとにございますけれども、それはわれわれの非核三原則と何ら矛盾するものではないというふうに考えるわけでございます。
  39. 河上民雄

    ○河上委員 いま大臣のお答え、お考えを承りまして私感ずるのでありますけれども、核を持たない国に対する核を持っている国が果たすいわば安全保障の約束というものが欲しいというお考えがあるように見受けられるのでありますけれども、もしそうであるとするならば、この際、核防条約に参加する一つの条件として、むしろ核保有国の非核保有国に対する核の不使用協定、あるいはそういう保障というものを政府として要求すべきではないか、こんなふうに思うのでありますが、大臣、そういうお考えはございませんか。
  40. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 それは先ほど河上委員のお挙げになりました第三点に関係をしてくる問題でございますが、昨年ジュネーブにおきまして、いわゆるこの条約のレビューが行われました際にも、この条約は非核保有国に対すると同様の責任を核保有国に対しても負わせているものであるという議論がコンセンサスとして生まれたわけでございます。そのことはとりもなおさず、核兵器保有国の自制を促すということになるわけでございますので、その点はわが国も主張し、レビュー会議でもそのような最終宣言になったわけでございますので、これはわが国がかなり実はリードをいたしましたところでございます。したがいまして、われわれとして、核兵器保有国が非核兵器保有国に対してはもとより、核兵器保有国に対しても核の使用を先にしないというようなことは私はきわめて望ましいことであると考えますけれども、これはやはり核兵器国間の合意というものが必要であろうと思います。具体的にそれを有効にいたすとしますと合意が必要であろうと存ぜられますが、残念ながらそのような合意というものが成立をしていない、わが国の主張といたしましてはまさに河上委員の申されましたことを昨年のレビュー会議でも主張をし、それが最終宣言になっているわけでございます。
  41. 河上民雄

    ○河上委員 私はもうこの際、それを一つの国是として強く要求すべきではないかと思うのでありますが、いまわれわれはいわゆる核を持たない国でNPTに署名している国というふうに一般に言われておりますけれども、その内容は、西ドイツと日本の対比でおわかりになりますように、かなりいろいろ内容は変わっていると思うのでありまして、したがって、それぞれの国でさらに今後進むべき方向とか、あるいはこれを機会に要求する条件というものは違ってくるのは当然だろうと思うのであります。     〔委員長退席、水野委員長代理着席〕 仮に世界の国々を分類したら大体四つに分けることができるのじゃないかと思うのでありますが、日本やラテンアメリカのように、国内に、自分の領内に核兵器を置かない非核保有国、日本が、政府言明どおり核がないといたしました場合でありますけれども、そういう国が第一の分類で、第二は、領内に核兵器を配備している非核保有国、これは西ドイツとか韓国などがそれではないかと思うのですが、三番目には、NPT、核防条約に加入している核保有国、アメリカソ連、イギリスなど。四番目には、核防条約に加入していない核保有国、フランス、中国、あるいはインドもそれになるのかもしれませんけれども、まあそういうようなことになろうかと思うのであります。もちろん、これは核防条約の中に提示されているところの核保有国、非核保有国という定義とは若干食い違っている面もあるかもしれませんけれども、大体こういう四つの分類が可能であろうと思うのですが、私は、そういう内容は違う以上、やはり日本は特殊な、日本の唯一の被爆国という歴史的な条件というものも考えますときに、やはりこういう機会こそむしろ日本独特な主張を国際的に展開していかなければ、本当の安全保障というのはできないのではないか。そういう意味から、私ども核武装地帯、日本列島、それからアジアにおけるいろいろ過去の紛争の一つの発火点にもなりました朝鮮半島、こういうものを含む非核武装地帯の設定ということが、これは単に理想ではなくて、国際政治力学的に見てもきわめて具体的な提案ではないか、私はそんなふうに考えるのであります。そういうことを日本が主張すべきだと私は思うのでありますけれども、先般、宮澤外務大臣はそういうわれわれの主張に対しまして少なからざる理解を示された。われわれの案と全くそのものぴたりと同じ考えに立ってではないかもしれませんけれども、そういうことを言われたように記憶するわけでございます。  昨年私どもアメリカに参りましたときにも、アメリカの軍縮局長官のイクレー氏も、アジア・太平洋地域における非核武装地帯の設定について非常な関心を示して、非核武装地帯設定という考え方それ自体には非常な賛意を示されました。特にラテンアメリカについては、案そのものについてもわれわれは賛成である、こういうふうなことを言われて、社会党が提示いたしておりますところの、いや、これは社会党だけではない、日本国民の一つの大きな願望に根差したものでありますが、こういうアジア・太平洋地域における非核武装地帯設定という構想に非常な興味を示しておったのでありますが、私は、これはある意味において各大陸、各地域で次々今後どんどん出てくるのではないかと思うのであります。そういうことを考えますときに、私は、唯一の被爆国であります日本として、むしろ率先してこれを主張すべきではないか、こんなふうに考えるのでありますが、先般、それにつきまして少なからざる理解を示された外務大臣に、重ねてそういう点について、もう少し、一歩踏み込んだ御見解を承ることができれば大変幸いと思っております。
  42. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 この問題は昨年の当委員会におきましてもいろいろ御議論のあったところでございますが、私は、基本的には、いま河上委員の言われましたような考え方は肯定することはできるというふうに思っておるわけでございます。何となりますれば、わが国に関する限り、これは完全な非核武装地帯でございます。これはわが国が非核三原則を持っておりますことから当然そういう結果になるわけでございますから、われわれとしてはそれを今日まで実践をしてきたつもりでございます。そのようなことが主権国家のおのおのの意思によるものではございますけれども、やがて地域的に拡大をしていって、一定の地域が非核武装地帯になるということは、構想として、私は考え方として決して間違っているというふうには考えません。  しばしば寄せられます批判は、先ほどもラテンアメリカの非核武装地帯のことに御言及になられましたが、ラテンアメリカではそのような構想のもとに条約をつくった、しかし現実には核保有国である国がすべてこれに加盟をする、プロトコルに署名をするに至っていないために実効が上がっていない。したがって、現実の問題としては、すべての核保有国がそれに賛意を表することが必要であるとか、あるいはまたその結果を検証する方法がなければならないとか、現実にはいろいろ問題があろうと私は思います。しかし、いまそのような現実的な条件が成就しないからといって構想そのものが誤っているということにはならないのであろう。したがって、そういう構想をわれわれはやはり描きながら、将来そのような方向に向かって努力をすべきではないかという御主張に対しては、私は基本的に肯定をすることができるというふうに考えております。
  43. 河上民雄

    ○河上委員 そういたしますと、いまのところ、日本は完全な非核武装地帯ということになるといたしました場合に、やはり朝鮮半島の、南北朝鮮における非核武装化ということが一つ次の段階として出てくると思いますけれども、この点については、朝鮮民主主義人民共和国も原則的に賛成をしているわけで、そういう状況を考えますときに、日本政府として、これもあるいは将来のことかもしれませんが、第一段階としてそういう朝鮮半島の非核武装地帯化というものに対し、具体的に努力したいというお気持ちがございますか。
  44. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 この点は、私が先ほど主権国家云々ということを申し上げましたことの意味でございますが、やはりこれは基本的には主権国家の意思に従うというふうに考えるべきものであろうと存じます。すなわち、先ほど西独のことを御引例になりましたが、あるいは韓国は大陸と陸続きであるという意味で、西独と似たような事情にあるというふうに主権国家として考えておるかもしれない。それについてわれわれはとやかく申すことはできない立場でございます。わが国としては、少なくとも自分の国は非核武装地帯であるということを、また今後もそれを続けていくということを宣言をしておりますし、また、世界情勢が好転をすることによってこのような地帯が広がっていくということは、構想としては基本的に望ましいと思うということは先ほど申し上げたとおりでございますが、さればと申して、主権国家に対してこうあるべきではないかということを申すということになりますと、これはまた、いわば他国の主権に注文をつけるということになりますので、そのような段階ではなかろうというふうに考えざるを得ないと思います。
  45. 河上民雄

    ○河上委員 残されました時間も余りございませんので、少し観点を変えて二、三質問して終わりたいと思います。  ただいま韓国の話が出たのでありますけれども、ロッキード問題の真相究明について、去る二月以来、外務省としていろいろアメリカ側との折衝のチャンネルとしてやってこられたと思うのでありますが、細かいことはここでは一々申し上げませんけれども、かつて金大中事件が起きたときに、外務大臣はというか外務省は、これは外交案件であるから、日本の外務省から韓国の外務省にというルートを立てて、それを終始一貫されたというふうに言ってよいと思うのであります。現に、日本の捜査当局が捜査のいわば王道とも言うべき指紋の照合までして、金東雲元書記官を拉致したグループのまあ主犯として名指しをしてまで割り出したにもかかわらず、日本捜査当局が直接韓国の捜査当局に対していろいろ交渉するという形をとらずに、外務省があくまで仲立ちになる、窓口になるという態度を一貫されたように私は思うのであります。その結論として、いわゆる口上書で政治決着をつける。そのことが今日の金大中氏を囲む民主救国宣言のグループの人たちに対する非常に悲劇的な状況と弾圧というようなものをもたらしているようにも思うのでありますけれども、前回はああいう態度をとり、今回は、今度は逆に外務省はもう余りタッチしない、捜査当局同士でやってほしい、こういうふうな取り決めを結ばれた真意というものは一体どこにあるのか、外務大臣に私はこの機会にお尋ねしたいと思います。
  46. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 両方のケースの比較についてお尋ねであるわけでございますが、いわゆる金大中氏事件の場合、わが国の捜査当局がかなりの確信を持って考えておりましたと思われます事実関係と、韓国の政府当局が考えておりました事実関係とが合致をいたさないということでございましたから、これはやはり両国の政府間の問題として、外交面からその間の解明をしなければならないということになったのであろうと私は考えております。  しかるところ、今回のロッキード問題につきまして、米国においてわが国のガバメントオフィシャルスに不正あるいは不当な支払いが行われたという証言等々があり、日本政府としてはそのような事実は全くない、それは何かの誤りであるという態度をとったといたしますと、これはやはり外交上の案件になり得たのではなかろうかと存じます。     〔水野委員長代理退席、委員長着席〕 事実は、日本政府といたしまして正面からそのような所見を否定する立場をとらずに、もしそのようなことであれば事態の解明をいたしたいと考えまして、米国側に協力方を要請いたしたわけでございますから、その限りでは両国の政府間に基本的な所見の相違があったわけではない。むしろ捜査上の協力をお互いにすることによってこの事件を解明しよう、こう考えたわけであると存じます。したがいまして、その点でいわゆる金大中氏事件とは問題の態様が異なっておる。そういう立場に立ちまして、解明を有効に行うといたしますれば、いろいろな見地からあのような法執行当局間の取り決めというものがきわめて有効なものであろう、そういう見地から法執行当局間において取り決めを結んだ、こういうことになったものと考えております。
  47. 河上民雄

    ○河上委員 大臣の説明は非常に巧妙でございますけれども、実態、実際に非常に大きな違いがあるということだけはお認めになると思うのであります。  それでは今度逆に、金大中事件について捜査当局同士のもっと突っ込んだ話し合いといいますか、食い違いを処理するようなそういう機関をなぜ設けなかったのか。今度逆に言えばそういうことも言えると思うのであります。また逆に、あのとき政府が責任を持ってやるんだということであれば、今回の取り決めのように、政府はもうノータッチだ、国会も第三者というカテゴリーの中に含めて一切介入は許さない、こういう形に持っていったのはやはり不当であるというふうに感ずるのでありますけれども、その点どういうようにお考えでございますか。
  48. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 金大中氏事件の場合、公権力の行使があったかなかったかという問題があったわけでございますし、ロッキード事件の場合には公権力云々という問題ではなかったわけでございますので、そこにやはり先ほど申しましたような御説明の基本になる違いがあったであろうと私は存じます。すなわち、金大中氏事件の場合、公権力の行使があったということについて両国政府の意思が仮に一致しておりましたら、それは捜査当局によっていわゆる捜査の協力というものが恐らくは可能であったろうというふうに考えられます。また、それが事態を解明する上で最も適切な方法であったろうと思われますが、実はその基本のところで、公権力の行使があったかなかったかというところで両国政府の意思は合致いたしませんでしたから、したがいまして、それは外交の問題として処理せざるを得ませんでしたし、また、これに関する資料も外交ルートを通じて流されてまいった。今度のロッキードの場合には、これは全く公権力云々の話ではございませんけれどもアメリカ側指摘をされたようなことについて、わが国政府としては基本的にこれを否定する立場はとらずに、むしろ協力して事実を解明したいという立場をとったわけでございますから、両国政府の間に争点はない状態でございます。むしろ、お互いに協力してどのように真実を発見するかというところが問題であったわけでございますので、それであれば、その方の専門家であります捜査当局間の取り決めを結ぶことが最も望ましいことである、こういうふうに考えたわけでございます。
  49. 河上民雄

    ○河上委員 私どもから言えば、形は違うけれども、結局いわゆる政治決着に持っていこうということでやっているのではないか、そういう感じを受けたのでありますけれども、いまのは大臣の一つのお考えとして承っておきたいと思います。  それから、昭和三年の例の領海三海里を明記しておる禁酒時代の日米条約の処理につきましてこの前お尋ねいたしましたが、十分なお答えがいただけないままに宿題として残っておるわけなんでございますが、この点については一体どういうふうにお考えになっておりますか。もしまだペンディングであるというならば、これはまたさらに後に留保させていただきますけれども、その点をお伺いいたしたいと思います。
  50. 中島武敏

    ○中島政府委員 お答え申し上げます。  三月五日の当委員会における御審議で河上先生からこの問題の御質疑がありまして、私ども、当時宮澤大臣からも御答弁がありましたように、この条約の問題があるという問題意識は持っておったわけでありまして、さればこそ宮澤大臣からキッシンジャー長官にもかつてこの問題を提起されたことがあるわけで、私どもの宿題として残っていたわけでございますが、三月五日の御審議での御質問がありましたので、私ども早速アメリカ側に非公式にその考え方を照会した次第でございます。  その後、検討も加えました結果といたしまして、この条約の第一条の「締約国ハ海岸線ヨリ外方ニ向ヒ干潮線ヨリ測りタル三海里が領水ノ本来ノ限界ヲ成スノ主義ヲ支持スルノ確固タル意嚮アルコトヲ声明ス」という規定の意味でございますが、この規定は、当時の日米両国の領海の幅員に関する意図を共同して表明したものであるということでありまして、したがいまして、アメリカ側としても、この規定がわが国の領海幅員の拡張を禁止したものとは解釈していないという非公式な考え方を寄せております。  御承知のとおり、領海幅員を十二海里にするという問題は、政府といたしましては、その時期、態様を慎重に検討していく所存でありますけれども、それを実施に移します際に本条約の扱いをどうするかという点につきましては、ただいまも申し上げましたように、実体的に見まして、この条約があるために領海の幅員を拡張することができなくなるということはないという点が明らかになったというふうに考えております。
  51. 河上民雄

    ○河上委員 時間がありませんので、もう一つ確認いたします。そういたしますと、昭和三年の日米条約に触れずに、一方的に領海十二海里宣言ができるというふうにお考えになっておられるのか、その領海十二海里宣言をするときに、時期的にそれに合わせて昭和三年の日米条約のこの部分の修正を行うというふうに考えておられるのか、そこだけもう一度伺いたいと思います。
  52. 中島武敏

    ○中島政府委員 ただいまの点につきましては、実は、十二海里に拡張いたしますという基本的な方針は決定しているわけでございますが、その時期、態様の問題はこれから十分に検討しながら考えていくということでございまして、当面直ちに処理しなければならない問題ではないわけでございます。そこで、いま先生の申されたように、領海幅員を十二海里に拡張いたしますときに、この条約との関係で手続的にいかなる処理をしなければならないかという点は、その十二海里拡張を実施いたします時点で詰めればよろしいかと思いますが、場合によりますれば何らかの形式的な手続が必要というようなことになるかもしれません。その点は排除はされませんけれども、いずれにしろ、当面、この条約が妨害になって十二海里に拡張することができなくなるということはないという点が明らかになったということでございます。
  53. 河上民雄

    ○河上委員 時間も参りましたので、最後に外務大臣に御答弁をいただいて私の質問を終わりたいと思います。  私は、冒頭から一点、国際海峡の自由通航帯の問題を取り上げて大臣のお考え、あるいは外務省のお考えを承ってまいりましたが、非核三原則の問題、特にこの条約では、持たず、つくらずという点はもちろん禁止されているわけですけれども、持ち込ませずというのは条約それ自体としては必ずしも禁じていないわけでございます。したがって、わが国としてとるべきことは、要するに核を持ち込ませないというこの非核三原則の厳守ということが、核防条約の精神を完徹させるために、つまり核全廃への一つの大きな道筋として、この条約を考える場合の絶対的な条件であると私は思うのでありますけれども、国際海峡という新しい概念によって、いわゆる領海という幅が孫悟空の如意棒のように、必要に応じて長くなったり短くなったりするようなことのないように、私はその点について大臣の強い決意を最後に述べていただきたいと思うのであります。それが本条約審議の一番ポイントの一つではないかと思うので、その点だけ承りまして、私の質問を終わりたいと思います。
  54. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 御指摘のように、この条約は、いわゆる非核三原則のすべてを含むものではございません。いわゆる持ち込み云々については、管理権そのものが移りません限り、この条約は禁止をいたしておらないわけでございますが、しかし同時に、いわゆる非核三原則は、先ほども申し上げましたように、総理大臣がしばしば述べておられますとおり、われわれとしては遵守をいたすべき原則と考えております。そのうちの二つについて、わが国の一方的な意思としてのみならず、この条約に加盟することによって、これを国際的にわれわれの国際に対する義務とするということは意味のあることである、有意義なことであるというふうに私は考えておるわけでございます。  次に、いわゆる海洋法会議における国際海峡との関連でございますが、国際海峡という新しいレジーム、これは、先ほども申し上げましたように領海というものとは異なる、また公海というものとも異なる新しいレジームが国際的に誕生いたしました場合には、わが国は総合的な国益からこの条約に加盟をいたしたいと考えております。その場合、非核三原則との関連でございますが、われわれの主権がフルに及び得る範囲におきまして、その範囲においてわれわれは非核三原則を遵守していく、こうあるべきものと考えております。
  55. 鯨岡兵輔

    鯨岡委員長 以上で河上民雄君の質疑は終わりました。  次は土井たか子君。     〔委員長退席、水野委員長代理着席〕
  56. 土井たか子

    ○土井委員 申し上げるまでもなく、この核兵器の不拡散に関する条約批准するかしないかという問題は、わが国の主権をいかように発動するかというふうな問題のみならず、わが国の憲法の中にございます第九条を中心とした平和条項を国際間において具体的に発揮していくというふうなことを考えてまいりますと、非常に大きな意味合いを持っているわけであります。これはもう言うまでもないところであります。  そこで、まず最初にお伺いをしたいのは、昨年の四月二十二日に自由民主党が政府に対して核防条約批准に関しての要望事項を申し入れていられるわけでありますが、この自由民主党の核防条約批准に関する政府に対する要望事項全六項目を、政府は遵守するというお立場で現在この条約批准に対しては臨むという姿勢をとっていらっしゃるのかどうか、その辺はいかがでございますか。
  57. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 四月二十二日に自民党政務調査会から「核防条約批准に関する件」という意見書が出たわけでございますが、このときのいきさつは、御承知のように、これらの問題を踏まえまして、私が訪米をしてキッシンジャー国務長官との会談を行ったというようないきさつがございました。いま一つ一つ具体的に厳密な意味で申し上げることができませんし、これは、いわば私どもの党内におけるいろいろな議論の基礎として、このような政務調査会の意見書があったわけでございます。厳密に、一つ一つこれをこのとおりに政府としてはいたしますというふうに申し上げるような性格の文書ではございません。ただ、私どもも同じ党の党員でございますから、基本的にこれと全く反対のというようなことをいたすつもりはございませんけれども、厳密な意味で、これを一つ一つ政府はそのようにいたしますと申し上げるような性格の文書ではないというふうに考えております。
  58. 土井たか子

    ○土井委員 厳密に一つ一つということになると、いまおっしゃったような少し微妙なニュアンスもあるようではありますけれども、しかし、この政府に対する要望事項の中身に盛られていることが、政府とされては核防条約批准するための条件になっているというふうにお考えになっていらっしゃるかどうか、いかがでございますか。
  59. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 非常に厳密な意味でのお尋ねでありますれば、私は条件というふうには考えておりません。
  60. 土井たか子

    ○土井委員 条件ではないけれども、十分に参考としながら、この中の要請にこたえるべく努力しつつ、この条約については批准を進めるという態度で現在進めておられるかどうか、いかがですか。
  61. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 もともとこの文書がそのような厳格な意味を持ったものではございませんので、党の考え方は私どもとしてもわかりました、こういうふうなものとしてお考えをいただきたいと思います。
  62. 土井たか子

    ○土井委員 要望事項ということになっているわけでありますから、これはやはり中身に対して、政府政府なりにこれに対しての受け答えをどのように考えるべきかというふうなお考えもおありになるだろうというふうに私たちは考えるわけです。  そこで、この項目順を追って考えていきますと、これは問題として非常に重大であり、しかも考え方によったら、実は核防について批准すべきかすべきでないかという雌雄を決するような中身も含まれているわけでありますが、ここの中で特にお尋ねをしたいのは、二に「日米安保体制の強化」という項目がございまして、その中の(ロ)に「事前協議の解釈、運用について、両国間で緊密な連絡を保つこと。」ということが項目として掲げられております。  さて、この事前協議の解釈、運用について、先ほど来の質問、御答弁の中にもございましたけれども、核を持たず、つくらずという点については今回の条約では無条件に問題にならないわけでありますが、持ち込みという点について、従前から日本の国においては大変大きな問題にされてきているわけでありますし、今回の核防の中身から考えてまいりましても、この点は一番にひっかかってくるわけであります。  さて、基本的に大きくお尋ねをして、核の持ち込みについては事前協議の解釈、運用の部面においてどのような態度でこれをお取り扱いなさろうとされているか、この点はいかがなんですか。
  63. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 これは昨年からしばしば申し上げておりますとおり、わが国は非核三原則を持っておりますので、それに従いまして処理をするということは、従来から申し上げているところと変わっておりません。
  64. 土井たか子

    ○土井委員 そこで、しからば少し順を追ってお尋ねを進めます。  昨年一月三十一日の衆議院の予算委員会におきまして、極東のどこかで核戦争が起こった場合には、日本への核兵器の持ち込みを認める場合があるかどうかというふうな質問に対しまして、三木総理は、認めることはない、核兵器の持ち込みを認めないというのが日本のきちんとした明白な立場であるというふうな御答弁がございました。  続きまして、二月の十三日に同じ予算委員会で、緊急時も含めてこの非核三原則というのは日本の不変の国是であるかどうかという質問に対しまして、重ねて総理は、不変の原則だというふうなお答えでございました。当初佐藤内閣の時代には、イエスもありノーもあるというふうなお答えだった中身が、非核三原則は不変の原則だ、平時も緊急時も問わない、そういうふうに内閣の見解が統一されたというふうにこのときには理解をされているわけであります。  ところが、四月の二十三日になりまして、当外務委員会で、核持ち込みに対しての事前協議に対しては、外務大臣は答弁の中で、三木総理の答弁は首相としての高度の政治的な判断に立った答弁であって、通常考える場合は十分に理解できるけれども、しかし事前協議制度というのは安保条約上厳存しておって、いかなる場合もノーと言うのでは意味がないというふうな趣旨の御答弁になっているわけであります。したがって、条文のたてまえからすると、イエスと答える余地があるということがここで非常に明らかになってきたわけですね。これはもう外務大臣御自身がよく御存じのところであります。  ところで、翌四月の二十四日、今度は参議院の外務委員会において、核持ち込みの事前協議に対しまして、結局結論としては外務大臣はノーと言う、そういう態度しかないというふうな趣旨の御答弁をされて、そうしてそのような理解で今日に至っているというふうに、われわれはおよその動きに対して理解をしているわけでありますが、したがってこの点に対しまして条約上はイエスもありノーもある、いわば玉虫色みたいな御答弁のままで今日に至っているわけであります。非核三原則の立場からすると、この問題に対してははっきりしているではないかと言われつつも、しかし事前協議という問題、解釈、運用ということは、これは条約に従って現に考えられ、条約に従って運用されていくわけでありますから、外務大臣の、現在、昨年から今日に至るまでの御答弁のままでこれは理解していくということになりますと、この点はどうも玉虫色のままで釈然としない。もう  一度この場所でその点に対しての外務大臣の御見解をはっきりとお聞かせいただきたいというふうなつもりで先ほど来これは質問しているわけであります。いかがでございますか。
  65. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 昨年の四月二十三日、ちょうど一年前でございますが、私が申し上げましたことは、ただいま土井委員の言われました、正確にお話しになっておられますが、いわゆる安保条約第六条の実施に関する交換公文の中で「合衆国軍隊の装備における重要な変更」これは核というものを含むということは御承知のとおりでございますから、それを含めて事前協議という制度がある。したがいまして、制度がある限りは、この交換公文がなくなりません限りはそのような制度を設けております。したがいまして、条約論といたしましては、協議をわれわれが受けた場合にはそれに対していずれかの返事をしなければならないという問題は、これはそのように解釈をすべきものでありましょう。しかしながら他方で、総理大臣が国会という場を通じて一億の国民に向かって答弁をされておるということは、これはもっともっと高度の判断に立つものであって、われわれとしてはその総理大臣の方針を遵守してまいるつもりであります、そうでなければならないと思います、こう申し上げておるわけでございます。したがいまして、そういう意味からは、お尋ねがございましたから、条約論、解釈論としてはさように申し上げるべきであろうがと申し上げたのでありまして、それはわが国政府政策を申し上げたという意味ではありませんで、政府政策は総理大臣の答弁によって代表されているというふうに御承知を願いたいと思います。
  66. 土井たか子

    ○土井委員 そうすると、依然として安保条約の条文からは核持ち込みに対してはノーと言う場合もあればまたイエスと言う場合もあるというふうに、解釈、運用について事前協議の中身を認識いたしておいてようございますね。
  67. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 これは本来ならば、一年前も私がお答えをしない方がよかったのかと思います。と申しますのは、国務大臣として申し上げますと、この国の政策、意思決定というようなことを申し上げているようにお聞き取りになる場合がございますから、本来ならば政府委員から条約論、法律論として申し上げるべきものであったかもしれないと思います。そのような意味で、無用の誤解を招いたかと、私、一年たつといまになって思いますので、政府としては総理大臣が述べられました政策、意思というものでやっていくということに変わりはございません。
  68. 土井たか子

    ○土井委員 政策と実際面というのが遊離していくということほどおかしな問題はないわけでありまして、やはり政策に従って政治というのは動かされていくというふうに一般国民は認識をいたしております。したがって、内閣総理大臣の御答弁は政策だ、外務大臣としてはあの御答弁をなすったこと自身は、いまから思ってみると不用なことであったかもしれないとおっしゃることは、どうも私はお伺いをしていて奇異な感じがするわけであります。  さて、それはそれといたしまして、そうしますと、いまの御答弁から伺いますと、有事平時を問わず、平時も緊急時も問わず、危急存亡にかかわらず核持ち込みについては認めないというふうに内閣総理大臣がお答えなすっている中身は、これは政策というふうに考えておいていいわけでございますか。
  69. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 政府の意思であるというふうにお考えいただいて結構と思います。
  70. 土井たか子

    ○土井委員 政府の意思と政策というのは違うのですか、同じなんですか。
  71. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 政府の意思が政策になってあらわれるというふうにお考えいただければいいと思います。
  72. 土井たか子

    ○土井委員 そうすると、政府の意思イコール政策というふうに考えておいてようございますか。
  73. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 一般的には政府の意思というものの方がはるかに広い根源的なものであろうと思います。
  74. 土井たか子

    ○土井委員 そうすると、ただいまのこの有事平時にかかわらず、危急存亡にかかわらず、核持ち込みを認めないというのは政府の意思であって政策ではないというふうに理解すべきなのか、政府の意思でもあり政策でもあるというふうに理解すべきなのか、いかがでございますか。
  75. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 そういう意思がございますからそのような政策があらわれるのであります。
  76. 土井たか子

    ○土井委員 そこで、そういう政策があるということを前提に置いて、防衛庁長官ここに御在席でございますからひとつお尋ねをいたしますが、この核防条約に対して日本批准する場合には、アメリカの核のかさに入るというのが条件になっているというふうに考えてよろしゅうございますか、いかがでございますか。
  77. 坂田道太

    ○坂田国務大臣 それは恐らく条件ということではないと思います。
  78. 土井たか子

    ○土井委員 それでは言葉を改めて申し上げますと、アメリカのいわゆる核のかさに入るというふうな状態が、いま日本が核不拡散条約に対して批准をするという場合に、好ましい姿だというふうにお考えになっていらっしゃいますか、いかがでございますか。
  79. 坂田道太

    ○坂田国務大臣 日本の安全と独立を守るために、やはり日米安保条約というものは必要不可欠なものであるというふうに考えます。しかも日米安保条約はやはり抑止力を持っておるわけでございまして、それによって日本の安全が保たれておるというふうに考えるわけでございますが、一方われわれは非核政策をとっておりますし、それから日本の外交そのものがとにかく戦争をあらしめない、平和維持を根幹として、ずっとそれを踏襲してきておるわけでございまして、その意味から申しますならば、非核三原則ということは日本としてとるべき政策であるというふうに考えております。
  80. 土井たか子

    ○土井委員 私がお尋ねをしましたのは、ただいまこの核防条約批准をするということを進めるのに当たりまして、アメリカのいわゆる核のかさに入るというふうな状態を日本が続けていくことが望ましい姿であるかどうかということをお尋ねしているわけであります。
  81. 坂田道太

    ○坂田国務大臣 私が申し上げましたのは、その核防条約批准することと、それから日米安保条約維持していくということは相矛盾しないことを申し上げたかったわけであります。
  82. 土井たか子

    ○土井委員 そうすると、今回、この有事平時にかかわらず、危急存亡にかかわらず核持ち込みを認めないということが、先ほど外務大臣の御答弁からいたしますと政府の意思であり、また意思を具体的に具現するときに政策となるというふうな御発言でございましたから、まあこれを端的に申し上げて政策というふうに考えても間違いではなかろうと私は理解をいたしますが、今回この条約を当委員会において批准をすることを認めるというふうなことと同時に、決議をしたといたしましょう。また、あるいは国会でこの条約批准に対して決議をしたといたしましょう。いま、有事平時にかかわらず、危急存亡にかかわらず核持ち込みを認めないということを決議の中で認めたとしたら、これは政府の意思やあるいは政策より以上のものになると私は考えますが、いかがでございますか。つまり、政府が意思決定をする場合あるいは政策を具体的にする場合、その基本において考えられなければならないもの、政府が考えるいろんな意思決定あるいは政策より以前のもの、以上のものというふうに、この決議については認識をしてよかろうと私は思いますが、いかがでございますか。
  83. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 抽象的なお尋ねでございますから抽象的にお答えをするしか方法がございませんが、国会が決議をされたということであれば、それは政府政策決定に至大な影響を及ぼしますことは明らかでございます。
  84. 土井たか子

    ○土井委員 至大な影響というのは、それはあらゆる場合に国会のいろんな審議政府に対して影響を与えるのみならず、これは憲法の四十一条からすると国権の最高機関でございますから、まず政府国会決議に拘束されるのが当然であろうかと思います。したがって、そういう点から考えても、このことを国会で決議をするということになると政策以上のものになるということは、これは当然だと思われますが、この案件についてもそのように理解をしてよろしゅうございますね。
  85. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 そのようにと言われましても、どのような御決議であるかということは御提示がございませんから、抽象的に先ほどのようにお答えするしか方法がなかろうと思います。
  86. 土井たか子

    ○土井委員 それでは重ねて、これは先ほど来私は申し上げておるつもりでおりますけれども、その点を申し上げれば、核持ち込みを認めないということ、それは有事平時にかかわらず、危急存亡にかかわらず核兵器を一切持ち込ませないということを決議で具体的に明らかにした場合を指して私は言っているわけであります。いかがでございますか。
  87. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 仮定の問題のお尋ねでございますが、国会が全会一致で何かを御決議なさいました場合、政府はそれに対して御決議を尊重する、あるいは云々というお返事を申し上げるのが通例でございます。国会の全会一致の御決議であれば通例、政府は御決議を尊重いたしますとお約束をいたすのが過去の慣例になっておるように存じます。
  88. 土井たか子

    ○土井委員 今回のこの核防条約の中身においては、先ほど来外務大臣が言われるように、持ち込ませずということは禁止されていない。持ち込ませずということは禁止をされていないわけですね。そこで、当面わが国としてやはり問題になってくるのは、先ほど来私がここで質問の中で申し上げておりますアメリカの場合が大変問題になってくると思うわけであります。  先ほど防衛庁長官は、安保条約と当条約とは矛盾をしないということを言われましたが、アメリカがどこにこの核を持っていっても一応このことは当条約で禁止をするという対象にはなってはおりません。したがって、そういう点からすると、これがそもそもアメリカも含めまして、現に核保有国と核を持たない国との間での不平等な取り扱いになるというふうなことが言われ続けてきたゆえんでもあるわけです。アメリカがどこに持っていってもこれに対してこの条約でチェックをする、あるいはストップをかけるということにはならないわけでありますから、そういう点からすると、日本としては、やはりこの非核三原則、さらに安保条約、さらにこの核防の中身に、それぞれが矛盾しないような立場で事を進めるということに政府としてはなられると思うわけでありますが、国連で日本がこの問題に対してどのような問題提起をいままでにされてきたか、また今後どのようなこれに対しての取り扱いを国連でなさろうとするか、いわば軍縮に対して国連でどのように日本が提唱してきたかということとも関係するわけでありますけれども、この点はいかがでありますか。
  89. 大川美雄

    ○大川政府委員 日本政府といたしましては、国連総会におきましてもまたジュネーブの軍縮委員会等の場におきましても、あらゆる機会をとらえまして核軍縮、軍縮あるいは全面完全軍縮を目指していろいろの努力をいたしている次第でございます。この努力は、もちろん日本側は核拡散防止条約批准しました後におきましても当然引き続き強力に推進してまいる所存でございます。
  90. 土井たか子

    ○土井委員 まあそれは通り一遍の御答弁でありますが、具体的には、七三年の六月に、御承知のとおり米ソ間で核戦争防止協定締結されてからずいぶん、米ソ両国の質的な核軍縮、戦争に対処する姿勢というのが変わってきているわけであります。そういう中で、わが国の姿勢が一体どういうふうにこれから具体的に打ち出されるかということが、これは米ソ間は言うまでもなく、特にアメリカからいろいろなこれに対しての対応が出てくるわけでありますけれども、先ほどこの三月五日の予算委員会の席で私が防衛庁長官に質問をいたしました節、御答弁の中身には、ソ連海軍の軍事力は最近目覚しい増強を示してきている、先般のアメリカ軍事委員会における海軍長官の報告にもそれはございましたというふうなことから始まりまして、ソビエト日本に対して持っている軍事力というものは潜在的な脅威であるということを、これは明確に認めていられるわけであります。そういう点からしますと、この核戦争防止協定のもとに米ソ間でだんだん問題が詰められていく中で、日本としてはアメリカ日本に対していろいろと、これからの軍備のあり方であるとか、あるいは核に対する対処の仕方であるとかというふうな問題も踏まえつつ、さきに国防報告が出ているわけでありますが、あのアメリカ国防報告書に基づいて、日本としては今後やはりこういう核戦争防止、核抑止というふうな問題に対して取り扱っていく必要があるというふうに防衛庁長官としてはお考えになっていらっしゃるのでありますか、いかがですか。
  91. 坂田道太

    ○坂田国務大臣 私といたしましては、日本の安全はやはり基本的に日本人の手によって守るという、それがやはり第一だと思いますが、しかし核あるいは大規模の攻撃ということに対しては、わが自衛隊のみで対処できませんので、やはり日米安保条約というものが不可欠であるというふうに思います。したがいまして先般、去年の八月二十九日に、シュレジンジャー前国防長官と日米防衛協力につきまして、この安保条約が有効に機能するようにいたしたいということで、年一回最高責任者同士が会うということ、そしてまた安保協議委員会の中に新しい防衛協力の機関を設けるという二つのことについて合意を見たわけでございまして、こういうことで、日米安保条約が有効に機能するように進めてまいりたい。その意味合いにおきまして、本年出ましたラムズフェルドの国防報告や国防白書やあるいはまたブラウンの報告等をわれわれは忠実に注意深く読みまして、そして対処をいたしていきたいというふうに考えております。
  92. 土井たか子

    ○土井委員 いまの防衛庁長官の御発言からいたしますと、やはりアメリカの国防のあり方の一環として核配備の問題も出てくるし、それから核軍備をこれからどういうふうに増強していくか、あるいは縮小していくかというふうな問題もかかわってくるわけでありますから、そういう点からすると、アメリカの核配備に対して当条約の名において、強く日本としてはアメリカに物を言う、国連の場所においてそれをチェックするというふうなことはできにくい、どうも消極的になっていくのではなかろうかというふうな節が読まれるのであります。このことについては抽象論を展開していても始まりませんから、具体的に踏み絵になる問題を取り上げてひとつきょうは質問をさせていただきたいと思います。  これはもう何回もこのことに対して触れ、また何回もこのことに対して御答弁をいただきながら、しかし杳として具体的に中身がつかめない問題であります。それは、例の海洋法会議の推移にまつと言われ続けてまいりました領海の問題であります。領海十二海里になりますと現在公海の部分が領海になる。海峡における軍艦、タンカーの航行をどうするかというふうな問題がさしずめ具体的になって、実はこのことに対しての質問に対して御答弁がずいぶん今日まで詰められてまいった部面があります。このことで順を追ってひとつ申し上げてみたいと思うのであります。  ちょうど昭和四十三年の四月に領海条約批准を求めました国会で、当時の外務大臣でありました三木首相が、公海から公海に抜けるために領海を通航する核艦船は核持ち込みに該当しないというふうな答弁をされていたのを訂正されまして、核兵器を常備している軍艦の航行は無害とは考えないという答弁に変わったわけであります。     〔水野委員長代理退席、羽田野委員長代理着席〕 御承知のとおり現在三海里ですから、わが国の大部分の海峡というのは公海部分になっておりますが、わが国が領海十二海里になった場合、領海内に含まれる海峡というのは一体どれくらいあるかということをお尋ねしたところ、昨年の四月二十八日現在で外務省資料によると七十二水路というのが出てきたわけであります。ただし国際海峡の定義はまだ未確定ではありますけれども、しかしこの七十二水路の大部分は国際海峡には該当しないだろうと一応考えられる。そこで問題としてひっかかってくるのはさしずめ宗谷海峡、津軽海峡、対馬海峡、現在の政策のままで領海十二海里にした場合に、アメリカの核積載艦船が太平洋から日本海に出る航路としては対馬海峡の東水道のみになってくるわけであります。ここが問題。こういうことになってまいりますと、先ほど来防衛庁長官が言われるアメリカの防衛体制あるいはアメリカの国防状況ということににらみ合わせて、日本も安保条約体制下で一貫した態度をとらなければいけないわけでありますから、安全保障の面から考えてまいりますと不安が残るわけであります。しかしこのことは防衛庁に尋ねてみた場合、恐らくは、丸山防衛局長が先ごろ、領海拡張によって防衛の責任区域はふえるけれども、特別な手当てをする必要はないというふうな御答弁、また、アメリカの核艦船が日本海に自由に出入りできなくても、軍事的な分析をすると日本の防衛に余り影響はないというふうな御答弁のままであるであろうと思います。しかし、このことはあくまで防衛庁の見解でございまして、これは先ほどの外務大臣の御答弁の中から申し上げるわけではありませんけれども政府の意思である、そこから引き出される政策であるというわけではなかろうと思うのです。あくまで防衛庁見解だろうと思う。そういうことからすると、十二海里宣言をもし日本がした場合、それと同時に、非核三原則のこの関係というのは政府部内でどうなるかということがやはりひっかかってくる。このことをお尋ねしますと、現在検討中であるというふうな御答弁を昨年の十二月十日の当外務委員会で前条約局長の松永条約局長からいただいているわけであります。しかしその節、前松永条約局長とされては、内閣が判断すべき問題であるというふうなことをつけ加えて申されながら、外務省としては、海洋法会議でとってきたわが国の態度と矛盾することがあってはならないというふうに述べられて、場合によったら非核三原則の変更もあり得るような御答弁をその節されているわけであります。このことは、わが国が領海十二海里を一方的に宣言をした場合でも、国際海峡の自由航行権を認めることを示したものだというふうに思われるわけでありますけれども、この領海十二海里というふうになった場合、国際海峡という問題に対応するとき、この核は持ち込ませないというふうな問題か具体的にはどういう措置で保障できるのか、そこのところを、何回もであるようでありますけれども、もう一たびこの席を通じて明確に御答弁をひとつお願いしたいと思います。いかがですか。
  93. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 大変に複雑なお尋ねでございますけれども、もし私が誤解をしておりましたらお許しをいただきたいと思います。まずお尋ねの御趣旨はわかってお答えをするつもりでございますけれども。  先ほども河上委員に申し上げましたように、海洋法会議というものが失敗をした、したがって、いわゆる国際条約としての海洋法というものはもう生まれる可能性がないというようなことに不幸にしてなりました場合に、わが国が領海というものをどうすべきかという問題が一つございます。閣僚の間で会議を設けて、内閣を中心に検討をいたしておるわけでございますが、そういう場合に領海を十二海里にすることがわが国の国益に沿うと総合的に判断をされるということになりますと、文字どおり、拡張されました領海に非核三原則が適用されなければならないことは私は明らかであろうと思います。     〔羽田野委員長代理退席、委員長着席〕  次に、今度は逆に海洋法会議がまず実体的に成功をした、それによって新しい国際条約が、海洋についての国際法が生まれるということになりました場合には、その海洋法会議の結論に従いましてわが国も行動をすることが国益に沿うと存じますので、その際新しいレジームとしてのいわゆる国際海峡が生まれますれば、わが国はそれに定められましたレジームに従って行動をする、こういうことになるであろうと存じます。
  94. 土井たか子

    ○土井委員 政府とされては、国際会議での国際海峡自由航行ということに対してどういうふうな見通しを持っていらっしゃるわけですか。今海洋法会議でそのことは結論として具体的に意思統一ができそうであるとお考えであるか、それとも、このことに対してはまだまだ海洋法会議では具体的な結論は出ないであろうというふうな読みを持っていらっしゃるのであるか、いかがでありますか。
  95. 中島武敏

    ○中島政府委員 お答え申し上げます。  先生御承知のようにただいまの海洋法会議におきましては、国際海峡の問題につきましては、一般的に見て、国際航行に使用される海峡においては、一般領海に比してより自由な通航が確保されるべきであるという考え方で、この問題が領海の幅員の問題とか排他的経済水域の問題とかとパッケージになりまして審議が行われているわけでございます。果たしてそのようなパッケージが成立し、いまのような自由な通航制度を持った国際海峡のレジームが成立いたしますか否かは、現時点で明確に判断はできかねるわけでございますが、一般的方向といたしましては、そのような制度を設けるということで審議が行われておりまして、会期も余すところ数週間になっておりますので、今後この会期終末に向けてどのような進展があるかということを私どもとしても注視している次第でございます。  ただ、先ほども申し上げましたように、一般的ないろいろな国のいろいろな意見がございますけれども、大勢といたしましては、国際海峡においては、自由な通航制度が確保さるべきであるという考え方が支配的になっておるというふうに認識いたしております。
  96. 土井たか子

    ○土井委員 そういう考えが支配的であるということは、客観的事実であろうと思われますが、日本としては他国にない非核三原則を国是としている国情があるわけであります。そういう立場からすると、そういう客観的推移にゆだねているということでなしに、やはり国際会議においてそういう問題に対して積極的な立場、積極的な発言、積極的な働きかけということがあるに違いないと私は思うわけでありますが、日本の外務省とされては、ただいまどういう努力をその場所において払っていらっしゃるのかをお聞かせ願います。
  97. 中島武敏

    ○中島政府委員 国際海峡の問題につきましては、ただいまの海洋法会議審議が行われております基礎となっておりますのは、昨年の会期末に議長から配布されました非公式な単一草案でございまして、これに基づいて論議が行われているわけでございますが、この非公式単一草案においては、国際海峡については妨げられざる通過通航の権利が認められるべきであるという考え方でできておりました。今度の海洋法会議の、具体的には第二委員会と申しますこれらの問題を扱っておる委員会でございますが、審議促進の必要性にかんがみて、それに対して積極的な反対の意見のある国が発言をするということで、この非公式単一草案を支持し得ない国が発言を許されるという形で審議が行われております。  わが国といたしましては、従来、総理大臣、外務大臣その他政府委員から御答弁をたびたび申し上げておりますように、国際海峡における自由な通航制度を支持するという考え方、その自由な通航制度がわが総合的な国益に合致するという考え方をとっておりまして、したがいまして、そういう意味で非公式単一草案の規定を支持するという立場で臨んでいるわけでございます。
  98. 土井たか子

    ○土井委員 その際、そこで問題になるのは、片やこれは形式的に機械的に考えてまいりますと、その問題を日本が認める限りは非核三原則は貫けない、非核二原則になるのじゃないか、核積載艦船の自由航行を、日本の領海として認めなければならない海峡において一部認めるというかっこうになるわけでありますから。したがって、そういう点からすると、厳密には非核三原則はもはや貫けないというふうに考えざるを得ない、こういう点があるわけであります。したがって、一部には、そうしないで、何とか非核三原則という立場を、それでも形式的に貫いているということをこれでもって問題にできるのではないかという立場から打ち出されている案に、御承知のとおり、国際海峡の名のもとに、日本の領海ではない、つまり主権の及ばない、通航する場合の自由通航レーンをつくる、自由航行帯というものをつくるというふうな案が一部にあるようでありますが、こういうことに対して、全然こういう問題は考えていらっしゃらないのかいかがか。どうでございますか。
  99. 中島武敏

    ○中島政府委員 会議の最終的な結論が出ておりませんので、明確な御答弁ができかねるのを大変残念に存ずる次第でございますが、ただいまのたとえば非公式単一草案においては、そのようないわゆる国際海峡においてはシーレーンを設けて、そこを船舶が通航するという考え方で条文をつくっております。このような条文が今後どういうふうに発展し、最終的にどういうふうに確定するかという点は、いまなお状況を見なければならないかというふうに考えております。
  100. 土井たか子

    ○土井委員 状況を見ていく必要があるかもしれませんが、いつまでも状況を見ることに事をゆだねているような安閑としたことではないと私は思うわけであります。といいますのは、自由航行をいまの日本の本来領海であるはずの海峡に対して認めるということになりますと、防衛庁長官も三月五日の予算委員会でもはっきりお答えになっていらっしゃるとおり、ソ連海軍の軍事力というのは最近目覚ましい増強を示している、アメリカ軍事委員会においてもそのような報告があった、日本としてもそのように考えている、防衛庁としてもそれに対処するということをやはり努力しなければならないという向きの御発言があったわけであります。  そういう点からいたしますと、問題になっている海峡、これはみんな、ソビエト軍事力に対処するという点からしたら、非常に重要な位置をそれぞれ占めている部分であります。宗谷しかり、津軽しかり、対馬しかりであります。だから、そういう点からすれば、これはいまのままで進んでいったら、非核三原則はしっぽ抜けになってしまう。非核二原則ということにならざるを得ないという部面を常にはらんでいくと思うわけでありますが、この点はいかがでございますか。どうお考えになっていらっしゃるわけでありますか。
  101. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 現在われわれが領海として持っておる部分が食い込まれるというのではないわけでありまして、現在公海になっておる部分が新しくいわば国際海峡というようなレジームとして誕生する可能性が強いということをめぐってのお話でございますので、現状で非核三原則の適用を受けておる地帯がそれを受けなくなるというような事態ではないわけでございます。
  102. 土井たか子

    ○土井委員 まさしくいまの外務大臣の御答弁は詭弁だと思うわけであります。現在は三海里なんです。これが十二海里に変わるわけですから、したがって、現に公海である部分も、十二海里になった場合は領海として認めていかなければならない。状況はまるで基本から変わるわけであります。したがって、十二海里になった場合をいま問題にしながら私はお尋ねをしている。十二海里の領海というのはどこまでもゆがめるわけにはまいりません。もし十二海里のある部分について、これは領海とは言わない、公海として認めるということならば、一部日本の領海放棄であり、主権の放棄だということを、これは明確に言わなければならない。したがって、そういう点からすると、現にただいま非核三原則の通用している領海については従前どおりであって、そうなったからといって別に変革はない、これはあたりまえだと私は思うわけであります。いまは十二海里になったときのことをお尋ねしている。そして現に条約局長からの御答弁でもございますとおりに、その十二海里を目指して、また国際海峡の自由航行ということの方向で日本は国際会議にも臨んでいらっしゃるのです。だんだんその御努力をなすっている最中なんです。だから、そういうことからすると、申し上げているのは机上の空論じゃないですよ。具体的なことであります。現に、外務省とされていまなすっていることに基づいて私は申し上げている。いかがでございますか、外務大臣
  103. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 そのことならば、すでに先ほどお答えをいたしております。すなわち、海洋法会議が失敗に終わって新しい海洋法というものができないという場合に、仮にわが国が領海十二海里を宣言いたしますれば、これは領海でございますから、当然非核三原則の適用を受けるべきものであると私は考えている。他方で海洋法会議ができていくということになって新しいレジームが誕生いたしますれば、これは土井委員の言われるように、十二海里というものが先にあってそれに食い込まれるのではなくて、公海というものの中に国際海峡というレジームができるのである、こう申し上げておるわけでございます。
  104. 土井たか子

    ○土井委員 そういう考え方からすると、これは確かに新たに国際海峡というふうな問題が、これを公海と同じ取り扱いのもとに認めていくという新たな、いままでにない方策を海洋法会議の場所で討議をされて、具体的にそれを認めるか認めないかということになっているというふうにも理解できるわけでありますが、本来そういうことがなぜ大変討議の対象になるかというと、これは外務大臣に申し上げるまでもなく、十二海里にすると、そこの部分は領海になるという部分であるからであります。本来は領海に考えていかなければならない部分について、それを領海ということではなく、国際海峡という概念をそこに導入をして、その部分についてだけ領海という取り扱いから外すということなんでしょう。これは端的に言うとそういうことじゃありませんか。したがって、そういう点からすると、さしずめ日本としては——何でもない領海ならいいですよ、何でもない海峡ならいいですよ。それぞれは、これは恐らくは防衛庁長官にお尋ねをしても、この宗谷とか津軽とか対馬というのは、軍事戦略上大変重要な海峡的意味を持っている地点だということはお認めになるはずだと私は思うわけであります。だから、そういう点からすると、この問題に対して、自由航行をその海峡に対して認めていく、国際海峡という名のもとに自由航行を認めていくということは、日本としては、十二海里になった場合には、本来領海であるべきはずのところにこの自由航行を認めるということになるわけでありますから、したがって、これは非核三原則からすると、矛盾した取り扱いに唯々諾々として応じていらっしゃるということじゃないかと私は言いたい。だから、どうしても非核三原則というのがやはり国是である、これは曲げるわけにいかないということであるならば、この十二海里というふうなことを前提にしながら、国際海峡という問題に対しての取り扱いもおのずと日本独自の立場があるはずであります。世界の趨勢がそうであるからとか、米ソ間でそういう提唱があるからとかいうふうなことを前提にした取り扱いでなくて、日本としては非核三原則という日本独得の立場からこの問題に対する対処のしようがあるのじゃないかと私は言いたい。したがって、先ほど来そういう質問を申し上げているわけであります。いかがです。
  105. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 土井委員の御理解と私の理解とが違いますので、そこがつまり、先ほどからパッケージディールと申し上げているゆえんでございますけれども、現在領海は十二海里であるという国際法があるわけではございません。このたび海洋法によって領海は十二海里と考えるが、しかしそれとの関連において国際海峡という問題が出てくるのであるから云々というのであって、両方のことはパッケージとして一時に成立をいたすわけでございます。土井委員お話を伺っておりますと、あたかも領海十二海里というものがまずございまして、そこへ国際海峡というものが後から食い込んでいくんだ、こういうふうにお考えのようでございますけれども、パッケージディールと言っておりますもののゆえんは、領海を十二海里とするということと不可分の関連において国際海峡というものが論じられている。それをパッケージで一度に成立させようというのでございますから、現にわが国の場合、幾つかの海峡をおあげになりましたが、対象になっている部分は現在公海でございます。現在領海ではございません。その公海に国際海峡というものが設定されるのだというふうに私どもは理解をしておるわけでございます。
  106. 土井たか子

    ○土井委員 まあ、それは海峡であろうがなかろうが、現に公海である部分について領海を設定をするということでなければ、三海里が十二海里にはならない。したがってこれは海峡であろうが海峡でなかろうが、その問題は一貫したことであって、特にいま宮澤外務大臣の言われるようなことではないと私は考えるわけです。ただ、このことについてはさらに別の機会に詰めたいと思いますが、ひとつここで確認をしたいことがある。  領海がもし十二海里になったというふうな場合、朝鮮海峡は日韓の間で領海になってしまうわけでありますが、その場合、日本と韓国との間で海峡条約というふうなものを別に締結するということになるのでありますか、どうですか。いかがです。
  107. 中島武敏

    ○中島政府委員 先生のお話の中にありました海峡条約というものの意味が必ずしも私よくつかめていないかもしれませんが、要は、いずれ成立されるべき海洋法条約わが国及び韓国がいかなる立場で臨むかということでございまして、両方がその条約に参加をすれば、いま申しましたような国際海峡の制度が両国の間で適用がある、こういうことになるわけでございます。
  108. 土井たか子

    ○土井委員 報道によりますと、韓国は、海洋法会議に臨むのに当たりまして、海峡の通航はあくまで無害通航権というものを主張するということが伝えられておりますが、こういう点はいかがなんです。
  109. 中島武敏

    ○中島政府委員 ただいまの韓国側の考え方として御指摘になりました考え方を、私、実は公式に把握しておらないわけでございますが、私が伺いまして推測いたしますところでは、それは海洋法会議に臨むに当たって、韓国政府がそのような考え方を持って領海の問題、国際海峡の問題に対処しておるということであろうかと推測いたします。
  110. 土井たか子

    ○土井委員 そういたしますと、日韓それぞれ独自に領海十二海里を宣言した場合には、この海峡通航権ということについて考えがそれぞれ別々なものになるというおそれがありはしないかという懸念があるわけですが、この点はいかがですか。
  111. 中島武敏

    ○中島政府委員 ただいま申し上げましたように私の推察でございますけれども、それは、海洋法会議に臨んでどういうふうな海洋法をつくるべきかという点についての一国の立場ということであろうかと思うわけでございますが、それはいろいろな国がいろいろな立場、考え方に立って会議に臨んでいるわけでございますが、それが最終的に単一の条約にでき上がっていくということであろうと思います。
  112. 土井たか子

    ○土井委員 それはいろいろな国がいろいろな立場でとおっしゃるとおりだろうと思うのですが、日韓間においては、日本の韓国に対する外交姿勢なり、韓国に対していろいろこういう問題を政治的に決めていく場所での対処の仕方なりに事は非常にかかっていくと思うのですね。  そこで、少し申し上げたいことは、これはもう申し上げるまでもないのですが、三月十七日にアメリカの下院外交委員会国際機構小委員会において、韓国中央情報部の活動に関する公聴会がございまして、その席でレイナード前国務省韓国部長が証言をされている中に、金大中氏の言動を制限するための努力というものがすべて失敗したときに、金大中氏は日本のホテルからKCIAによって誘拐されたというふうなことが明確に述べられたわけであります。このことに対しまして、日本の外務省とされては、そのうちどういうふうにして事情を確かめられたかというふうなことは、あらましでございましたが、先ほど外務大臣の御答弁の中にも一部出てまいりました。  ただ、その後二十六日になりまして、キッシンジャー長官が上院外交委員会の席で、韓国における最近の出来事はきわめて不満であるというふうなことを述べられたということも報道されているわけであります。特にこの中には、この人権抑圧政策に対して大変不満の意を表明しながら、具体的に問題になっているのは軍事援助予算というものを審議する場所での出来事でありますから、対韓援助自体に対してのあり方として、アメリカは非常にこの問題を重視しながら、議会でこれの取り扱いが従前どおりに考えられてはならないというふうな立場も表明されたというふうに受け取ってよいと私は思うわけであります。  日本とされては、これは、この証言どおりとすれば、KCIAの手によって金大中さんが拉致されたのは日本からでありますから、これは直接関係のある国は日本でありまして、日本としてはこういう問題に対して、アメリカでもこういう問題にいままでそういう発言のなかったキッシンジャー長官がこういう変身と受け取れるような向きすらあると報道されるような中身を明確に出しているわけでありますが、対韓援助の問題、あるいはアメリカに対してこの事情を具体的に確かめるあり方、そういうことが具体的にはいまどういうことになっているかということを、一つは先ほど来の領海の問題をめぐりまして、少しお尋ねをしておきたい点であります。この点は外務大臣、どのようになっておりますか。
  113. 中江要介

    ○中江政府委員 お尋ねのレイナード発言のことでございますが、まず、正確に公聴会でどういう証言をしたかということについて公式の記録がまだでき上がっておりませんので、勢い議論は非公式の議事録、これは御承知のようにワシントンにございます民間企業がつくっております非公式の議事録でございますが、その非公式の速記録によりますと、いま先生がおっしゃいましたように、金大中氏を追い詰めるあらゆる努力が失敗に終わるや、ついに金大中氏は、一九七三年八月、訪日中に日本のホテルからKCIAにより拉致された、こういうふうになっておるわけです。この内容がもしこのとおりだといたしますと、私どもといたしましても、日韓間であれだけ問題にいたしました事件でありますし、KCIAが公式に関与しているということになりますとこれはもちろん放置できないことでございますので、この証言の内容につきましていろいろの方法をもって確めようとしたわけでございますが、なかなか正式な議事録もないものですから、最近レイナード氏自身に在米大使館を通じて接触してこの内容を問いただしましたが、このレイナード氏が三月十七日の議会における証言で言われていること以上のこと、つまりその背景になっていることとか、あるいはどういうことに基づいてそうおっしゃったとか、そういったものについては何ら新しい事実を得ることができないという状況でいまのところはとどまっておる、こういうことでございます。
  114. 土井たか子

    ○土井委員 それは、レイナード氏自身に対して具体的にどういう証言であったかということをお確かめになる以上のことではなかったわけですね。その他、これは関係担当省庁を通じてこの問題に対しての調査は進んでいるという事実がございますか、いかがですか。もし御存じならば、そのことに対しての御答弁をお願いしたいのです。
  115. 中江要介

    ○中江政府委員 私の承知しておるところでは、日本の他の関係省庁において、私がいま申し上げました以上のところまで進んでいるということは聞いておりません。
  116. 土井たか子

    ○土井委員 そこで、その後、この問題を踏まえながらキッシンジャー米国務長官の、かの韓国における最近の出来事はきわめて不満であるということが出てきたわけでありますが、これは具体的に言うと、やはり対韓援助の中身に対しても再検討を必要とするという含みもあろうかと私は思うわけであります。外務大臣とされては、この事実に対してどのようにお考えになっていらっしゃるか。つまり、アメリカでそういう証言があった。証言の信憑性をいま具体的に調査をしていらっしゃる。この調査が進むにつれて、その具体的内容に対してこれが事実であるということが確認されるならば、それに対する対処というのがやはり出てこようと思うのですが、外務大臣とされては、これに対してどういう措置を講ずる御用意がおありになるか、いかがでございますか。
  117. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 ただいま政府委員から申し上げましたように、いわゆるレイナード氏の発言と伝えられるところのものにつきましては、米国政府は、これは一私人の発言であるので、政府としては何も言うことがない、こういうことであったわけでございます。そこで、大使館員をしてレイナード氏に直接この発言の真意について確めさせたわけでございますけれども、自分がそこで申し述べた以外につけ加えることがない、ただいまアジア局長から申し上げましたとおりの返事でございまして、したがいまして、この発言が事実に基づくものであるかどうかということについて、私どもとしては確認ができない状態でございます。  土井委員の御質問は、もしこれが事実であったらどうするかというお尋ねでございますが、それはつまり、韓国の公権力がわが国において行使されたということであったらどうするかというお尋ねであろうと思います。私どもとしては、それでございましたら、まずそういうようなことを証拠等々により確認をいたさなければならないと思います。     〔委員長退席、水野委員長代理着席〕 この件は、いわゆる外交的決着というものが一応できておるわけでございますけれども、しかしその際にも、捜査当局が新しい事実に基づいて新しい事実を確認し得た場合はこれは別途であるという問題が残っておるわけでございますから、もしそういうことであれば、これは問題はそこから新しい展開をいたさなければならないということになります。ただそれは、仮定のお尋ねでございますから仮定でお答えをしたのであって、このたびのレイナード証言からそのようなことをわれわれが知り得るにはついに至らなかったというのが事実でございます。
  118. 土井たか子

    ○土井委員 このことが世上非常にアメリカでは重視をされ、そして韓国中央情報部の活動に対しての公聴会というものが取り上げられた由来というのは、やはり不可侵と考える人権というものが否認されるような措置であるとか、人間の平等性というものに偏見を抱くような措置に対してはこれは無視できない、心からこういうものに対しては憤りを感ずる、こういう問題に対してはあくまで排除していくというのが国家の義務ではないかというふうな考えが根底にあるところにこの発言の重大性もあり、この発言が重視される由来があるのじゃないかと私は思うわけです。  きょう、ここで核防条約批准に関しての審議がなされているわけでありますけれども、私は、一国家の立場でこの核をなくするということ、それから核拡散に対してこの防止を徹底的にやっていくということ、ひいては核軍備というのは本来好ましくないという態度で、核戦争は言うまでもなく、戦争絶滅という方向に努力をしていくこと、これはそれぞれ、やはり日本としては平和憲法があり、先ほど来問題にしてまいりました非核三原則の立場があるわけでありますから、世界に先駆けて徹底的にやろうとしたらやれるだけの国情を持っているわけであります。しかしその基本にあるのは、やはり私は、日本における国民の人権、さらには外国における外国人の人権、ひいては全世界の人類の人間としての尊厳性というふうなものが基本において考えられるからこそ、こういう問題に対しても真摯に、そして懸命に、深刻に追及をするということがなされるはずだと思うわけであります。そういう点から考えますと、どうも私は、この核防条約批准に当たりまして、非核三原則をきょうは取り上げて少し質問をいたしましたけれども、やはり防衛庁のおとりになっているまあ防衛庁見解、これは果たして政府政策と言えるかどうか、私は問題が残ると思います。一番最初に外務大臣の御答弁の中にもございました、内閣総理大臣の御発言そのものはこれは政府の意思である、政府の意思というふうなものが具体的に具現されるときに政策となるということでありますから、この非核三原則の中身に対して防衛庁がいまお考えになっていらっしゃることは、果たして政策であるのかどうか。そういう御答弁の向きからすると、かなり後わだかまりが残るわけでありますけれども、しかしどうも、このことに対して徹底的に総力を挙げて貫かなければならないという意欲がもう一つ感じられないのであります。どうしてもこれはゆがめられてはならない。なぜかというと、それは、単に文章化されている憲法の中身であるとかあるいは非核三原則の字面ではなくて、いま生きている人間というものを本当に安全に平和の中に生活さしていくということ、政治の課題はこれを保障していくところにあるという熱意なり強い信念なりというものがそこにあって、非核三原則というものは初めて曲げてはならない、曲げられてはならないという具体的な政策というものが具体的に出てこようと私は思うわけであります。そういう点からすると、どうもいままでの日本の外交姿勢というのは、端的に申し上げると人権思想の裏づけに基づく外交姿勢というのはもう一つ弱い、本当に人間の尊厳性というものを考えて人権外交というものがいままで推し進められてきたかということを考えていくと、私は、その点はまだまだ弱さがあるというふうに考えている一人であります。  ひとつ、この核防条約批准審議に当たりまして、いま核防ということの課題は、ひいては核をなくしていくということの課題は一体基本はどの辺にあるか、私はいま申し上げたようなところに基本を置いて考えている一人でありますけれども政府とされても、具体的な保障を政策を通じて実行されるわけでありますから、一つ一つ政策を裏打ちをしっかり持ったものにしていただくことを強くここに申し上げまして、時間が参りましたので終わりにいたします。ありがとうございました。
  119. 水野清

    水野委員長代理 午後一時五十分より再開することとし、暫時休憩いたします。     午後一時二十一分休憩      ————◇—————     午後二時十八分開議
  120. 鯨岡兵輔

    鯨岡委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続行いたします。正森成二君。
  121. 正森成二

    ○正森委員 核防条約について何回か質問をしてまいりましたが、改めて外務大臣に伺っておきたいと思います。  核防条約が、すでに核兵器を保有している加盟国が核兵器を増強することは禁止しておらない、また非核兵器国に核兵器を持ち込むことも禁止しておらない、そういう条約であるということは、前回三月五日に私が外務大臣に質問をして、外務大臣から、この核防条約というのはそういう点については規定しておらないという答弁を得たと思っておりますが、次に私は、この核防条約というのは核兵器の使用を禁止するという点については何ら触れておらないと思いますが、いかがですか。
  122. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 この条約に関する限り、そのとおりでございます。
  123. 正森成二

    ○正森委員 そこで私は、フォード大統領が核の先制使用発言についていろいろなところでやっておられる、あるいはラムズフェルド新国防長官もアメリカの核の先制使用政策、これがあり得るということを発言しておられる。また、三月八日のUSニューズ・アンド・ワールド・レポートの誌上でキッシンジャー国務長官も、「局地戦争に対する対抗措置について非核手段は常に望ましいだろうが、私はある種の状況では核手段を排除したくない」、こういうように述べて、局地戦争でも核使用があり得ることを言明しております。  そこで、私は外務大臣に伺いたいと思いますが、核防条約核兵器の使用が禁止されておらないとして、それは事実でありますが、こういう言明に対して、非核三原則を堅持し唯一の被爆国であるわが国外務大臣として、こういう核兵器を使用するあるいは先制使用することもあり得るという政策に対してどういうように考えられますか、伺いたいと思います。
  124. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 大切なのはこの言明ではなくて意図であろうと思うのでございます。そのとおりその言明をとれば、もとよりこれはまことに穏やかでない話だと申すよりほかありませんけれども核兵器を持っておるものの立場から言えば、これをできるだけいわゆる阻止力として、抑止力として、ディターレントとしての有用性を発揮させようということでございましょうから、そのためにいろいろなことを言うということはわからないわけではない。問題は意図であろうと思います。
  125. 正森成二

    ○正森委員 いまの御答弁を聞いておりますと、その発言自体よりもその意図である、その意図が核抑止力というものを、まあ言えば相手側に示すということであればわからないではないというように受け取れる御発言でございました。  そこで、私は伺いたいのですが、国連憲章の第二条の第四項だと思いますが、すべての加盟国は、その国際関係において、武力による威嚇を慎まなければならないということをたしか明確に規定しているはずであります。核兵器の先制使用があり得るということで抑止力になるから、その気持ちはわからないでもないということがもし外務大臣の御発言の趣旨であるとするならば、抑止力というのは相手側に、これは大変だ、核兵器を先に使われる場合もあり得るからこれは大変だからいろんなことはしてはならない、やってはならない、そういう気持ちを起こさせることにあるとすれば、これはやはり国連憲章にいう威嚇をもって抑止力にするということであって、国連憲章の精神から言えばそれは慎まなければならない、そういう範疇の言動ではなかろうかというように思うわけですが、どうお考えになりますか。
  126. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 そうでございますね、「武力による威嚇又は武力の行使」、口で言うのもこの中に入ると言えば入ることになりますでしょうか。まあどっちみち余り穏やかな話だとは私はもともと思っておりませんけれども、御承知のように、恐らく核兵器というものは私はもう絶対に使いませんと神に誓ってしまったんではディターレントにはならぬということはあるんでございましょうから、余り感心した発言ではないというところまでは、そう申し上げざるを得ませんけれども、まあ問題は意図であろうというふうに思うわけでございます。
  127. 正森成二

    ○正森委員 言葉で言うということがまずまず威嚇に入るでございましょうかというように大分御考慮になりましたが、もちろん威嚇という中には、実際に使わないで核兵器を装備しておる艦隊あるいは飛行機というのが近辺を遊よくするというようなことももちろん威嚇でありますから、言葉だけが威嚇であるというようには言えないと思いますけれども、しかし、少なくとも核兵器を先制使用するというようなことを言葉に出して一国の責任者がやるということは、外務大臣も言われたように、はなはだ穏やかでないということは否定することはできないと思います。  そこで私は、わが国のように唯一の核被爆国として核兵器を使用しないように国際関係で訴える、ましてや核兵器の先制使用を行わないように訴える、特に非核兵器国に対して核兵器を先制使用するというようなことは絶対にやらないというように核保有国が考えていく、あるいは言明していくというように努力すべきであると考えますが、それはいかがですか。
  128. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 それは、午前中にもたしか関連のことを申し上げたと思いますけれども、そのような意図を核兵器保有国が持ってほしいものだというふうに思います。言葉も大切でないとは申しませんが、やはりそういう意図を持ち、その意図を実現していってくれることが望ましいことだと思います。
  129. 正森成二

    ○正森委員 そこで、そのための具体的な外交努力について後ほど伺いたいと思いますが、その前に、ここにタイムの四月十二日号を持ってきておりますが、そのタイムの四月十二日号を見ますと、アメリカのCIAのある官吏の、イスラエルは現在十ないし二十の核兵器を持っておるという関係についての言明があったということでの記事が載っております。そのほかにいろいろ載っておりますけれども、この問題について外務省あるいは防衛庁が何らかの情報を持っておられるかどうか、あるいはまたそれについてどのように判断されておられるかどうか、伺いたいと思います。これは核防条約と非常に重大な関係のある情報であると思います。
  130. 加賀美秀夫

    ○加賀美政府委員 御指摘の四月十二日のタイムでございますけれども、私どももこれを読んでおりますが、内容の真偽につきましては実は十分な確認情報がございません。イスラエルの核兵器保有云々に関しましては、かなり前からいろいろ報道なり情報があるわけでございます。しかし、イスラエルは繰り返し、核兵器を保有していないということを声明いたしております。最近では昨年秋に、イスラエルのペレス国防相がアメリカを訪問いたしましたときに、イスラエルは長距離ミサイルの供給を求めるけれども核弾頭を着装する意図はない、またイスラエルは核兵器を保有していないということを述べております。さかのぼりますと、一昨年の十二月にイスラエルの首相が、核兵器開発能力があるというようなことを言ったこともございますけれども、一般にイスラエルの核兵器開発の研究はかなり進んでおると推測されております。しかしながら、いまだ兵器としてこれを制式化する段階には至っていないと見る情報が多いようでございます。
  131. 正森成二

    ○正森委員 いまそういう答弁でございましたけれども、この記事を見ますと非常に具体的に書いてあるわけですね。また別の記事を見ますと、イスラエル側は最近、この四月十二日のタイム誌の報道に前後して、フォード政権が、アメリカ議会が提案した対イスラエル軍事援助の増額について、政府が要請している額でイスラエル防衛は十分である、こう言って、イスラエルに対する議会側の軍事援助の要請をけったということと重なったことなどにもかんがみまして、イスラエル側は逆に、タイム誌の報道は米当局者が故意に漏らし  たものであるという不快の念を抱いておるというように報道されておるわけであります。つまり、イスラエル側はこの情報がうそではなしに、ある程度アメリカが握っておって、それをイスラエル側の核政策についてのアメリカ側の不満を表明するためにわざとリークしたのであるということが言われておるわけですね。この報道を見ますと、たとえばあの一九七三年の戦争のときに、日まで書いてありますが、十月八日の午前十時ごろに、イスラエルのある司令官が、戦線が持ちこたえられないということをダヤン国防相やあるいはメイア首相のところへ報告をいたしまして、やむなくそれでは最後の審判というように言われるような武器を使用せざるを得ないという決定があって、核兵器を組み立てた。しかし、そのときにスエズ運河地帯及びゴラン高原地帯で戦況が持ち直したので、これを使用せずにもとの核兵器貯蔵庫へしまったのだというようなことが書いてあるわけですね。これは相当重視しなければならない情報である。そのことはまた、核拡散防止条約核兵器保有国を減らすあるいはふやさないということでできておりましても、実際にはアメリカの有力な同盟国と言えば同盟国であるイスラエルでこういうように核兵器が現実につくられ、第四次中東戦争の際に使おうとせられたというような情報がもし確実性のあるものである、また新聞で報道されているように、アメリカ側が逆にイスラエルの核政策に対して一定の不満があるためにリークしたものであるというようなことになりますと、わが国としても十分にこういう情報については考えておかなければならない問題であると思われるわけですね。またイスラエルの当局が公表していないということは事実であります。それは公表すればアメリカ側がどういう対応に出るだろうか、またエジプト側がどういうような反応を示すだろうかということから、核兵器があるかどうかについては不確実な状態のままにしておく、そして発表する場合に一番タイミングのよい時期を選ぶというのは、これは報道機関でも広く言われていることですから、イスラエルの公式当局が現在持っておると確認ないしは言明しておらないということだけをもって、この情報が全く信用おけないと言えないと思うのですね。イスラエル当局が確認してしまえば、そんな情報が正しいかどうかについて論議する必要もないということになるわけですから、このタイムの記事及びそれに関連してその前後に発表されたことについて、いやしくも外務省やあるいは特に防衛庁というのは十分にこれについて注視して、一定の見解や情報を持っておるべきであるというように思いますが、重ねて承りたいと思います。     〔委員長退席、羽田野委員長代理着席〕
  132. 加賀美秀夫

    ○加賀美政府委員 ただいま御指摘のように、本件に関します情報はきわめて重要でございますので、私どもも努力はいたしておるわけでございますけれども、やはり先生御指摘のように、イスラエルとしてはイスラエルの核兵器能力については、これを不確かなままにしておくということがイスラエルの利益であると考えているようでございまして、この点についてはなかなか確かめることがむずかしいわけでございます。  それで、今後ともこのイスラエルの核兵器保有能力についてはできるだけ情報を収集いたしたいと思いますけれども、なかなか困難な点があることは事実でございます。現在のところ残念ながら、イスラエルの核保有能力につきましては確実な情報を得るに至っておりません。
  133. 正森成二

    ○正森委員 それではもう少し伺っていきたいと思います。  このタイムの報道によりますと、一九六七年の中東戦争の際に、イスラエルのミラージュ3型の戦闘機が間違って核施設のあるディモナの上空を飛んで、逆にイスラエルの対空部隊に撃墜をされた。その後リビアのベンガジからカイロに向かう航空機も過ってこの地域を飛び、治安上の理由からイスラエル軍に撃墜され、百十三名中死者が百八名出たということがタイムに報道されております。  飛行機がこういうぐあいに撃墜されたということになれば、これは隠すことのできない事実でありますから、少なくともカイロに駐在武官もおるでありましょうから、外務省やあるいは防衛庁はそれらの点について一定の情報を持っており、分析を当然すべきだと思いますが、その点はいかがですか。
  134. 加賀美秀夫

    ○加賀美政府委員 御指摘事件につきましては、私もこの時期にこういう事件があったということを記憶いたしております。  ただ、ただいまこれに関します詳細な資料をここに持っておりませんので、帰りまして早速資料を収集いたしたいと思います。
  135. 正森成二

    ○正森委員 いま少なくとも私が指摘したような航空機事故があったということは認められました。イスラエル空軍機が逆にイスラエル軍によって撃墜されるというのは、これは異常な事態であります。ましてリビアの民間航空機が飛行禁止地域を飛行したというだけで撃墜されるというのも非常に異常な事態であります。このことは、伝えられる地域に何らかの重要な施設があり、それが今度CIAのある役人が発表したということと密接な関係があり、その発表の信憑力を増すものであるというように考えられるのですね。  そこで、私は外務大臣に伺いたいのですが、撃墜したかどうかということを離れまして、アメリカ核兵器を十発ないし二十発増加したということなら、この核拡散防止条約でも全く問題にならない。またアメリカの場合は、今度韓国で何か起これば、先制的に核兵器を使うぞと言っても、穏やかでないというくらいで済む。ところが、イスラエルの場合には核兵器を十発、二十発持ったという場合には大変なことであり、戦争に使いかけたということは、もう一つ大変なことであるというようにこの核防条約ではなっているのですね。  私はイスラエルのやったことがいいとは言わない。イスラエルのやったことは大変なことだと思いますが、もしそういうように評価されるなら、現在核兵器を持っておるとされる大国であっても、そのことを威嚇の材料に使ったり、あるいは使う態勢をとったり、あるいは核兵器をふやしたりというようなことは決して好ましいことではなく、それを野放しにしておるような条約体制というのは決して有効なものとは考えられないというのが理屈ではなかろうかと思いますが、いかがでしょうか。
  136. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 先ほどから私が意図というようなことを申し上げております意味は、御想像もいただいておると思いますけれども、結局、核兵器というものを有効に管理するためには、かなり高度の管理能力というものが要るということを考えておるわけでございます。  つまり、これはみだりに使用してはいけないわけでございますから、何かのはずみとか、あるいは一種の興奮とか、内部における勢力争いとかいうことから使用するといったような程度の低い管理能力では、本当に核兵器が使用される危険が大きいわけでございまして、そういう意味米ソの間にいわゆるデタントというようなものが進んでまいりましたのも、本当に核兵器の恐ろしさを知っておる、またそれだけの管理体制を持っておるという国の間の出来事として私は進んできたのではないかと思っておるわけでございます。そういう意味ではやはりそれだけの管理能力、管理体制を持たない国にまで拡散しない方がいい、拡散させるべきでないというこの条約の立場というのは理解できないわけではない。それは不平等であるという批判が片っ方でございますけれども、われわれとしては、そのような平等性の実現というのはみんなが持つことによって実現されるよりは、みんながやめることによって実現されるべきだというふうに考えておるわけでございます。  で、この条約はしかし核兵器を持っている国について重い義務を課すというようなことはないではないかというお尋ねが当初からの御主張であるわけで、私は、この条約に関する限りさようでございますけれども、この条約だけがいわゆる核軍縮のための手だてではないわけでありまして、世界的に核軍縮をして、最後には核兵器というものをなくしてしまおうというわれわれの願いというものはいろいろな方法で達せられなければならないものだと思います。この条約はそういう各方面からの努力の一つである、その一部であるというふうに私は考えていまして、この条約が正森委員の言われるようなことを定めていないから、この条約はそれほど価値がないというふうに私どもは考えていないわけでございます。
  137. 正森成二

    ○正森委員 いま外務大臣から御意見の表明がございました。私は、外務大臣の御意見については残念ながら賛成するわけにはまいらない。その根拠については昨年の六月の質問の中である程度いたしましたので重複を避け、次の問題に移らしていただきたいと思います。  そこで、きょうは防衛庁長官もお見えになっておりますので重ねて伺いたいと思いますが、私は三月五日に当委員会で質疑がございましたときに、核防条約にも関連いたしましてP3Cの問題について、これが導入方を、少なくとも児玉譽士夫が、一九七三年七月に五十機以上自衛隊に売り込めば二十五億円秘密のコミッションをもらうというような契約が生きておる現段階では、疑惑を招かないためにもそれは軽々しく決めるべきではないということを申し上げたつもりであります。そのときに、たしか私の記憶に誤りがなければ、防衛庁長官もいろいろおっしゃいましたが、疑惑を招くようなことはしないつもりであるというのが結論であったと承知しております。  ただ、その過程におきまして、防衛庁長官は、ユーザーの意向をも考えなければならないという意味の御発言がありました。このユーザーというのは私の承知するところでは自衛隊の海上幕僚監部と言うのですか、あるいは海上自衛隊と申した方がいいのでしょうか、そういう制服組の考えを指してユーザーの意向というように言われたと思いますが、そう承知してよろしゅうございますか。
  138. 坂田道太

    ○坂田国務大臣 そのとおりでございます。     〔羽田野委員長代理退席、委員長着席〕
  139. 正森成二

    ○正森委員 そこで、私は伺いたいのですが、このP3Cを購入するという場合に、これはたとえばトライスター一〇一一とは違いますから、政府政府関係でございますから、一説によりますと、これを購入する場合にはFMSと言うのですか、フォーリン・ミリタリー・セールス、対外武器販売部と言いますか、担当というのがペンタゴンにあって、そこから日本政府が購入するということになるのであって、ロッキードから直接買うというようなことにはならないのであるというような説もございます。また、日本の自衛隊がいろいろ交渉する場合にも、ロッキードは性能などについて説明するときに一定の役割りを果たすかもしれませんけれども日本の自衛隊はMDAO、ミューチュアル・ディフェンス・アシスタンス・オフィスと言うのですか、私英語が余りできませんけれどもアメリカ大使館の中に日本の中では置かれておるというようなところと、海上幕僚監部などが下相談をして、そして最終的には対外武器販売部を通して買うというような筋道になるのであるというようにも聞いているのですが、そういう道筋になるのですか、その点を御説明ください。
  140. 丸山昂

    ○丸山政府委員 FMSという制度は、アメリカ政府が外国の政府にかわってメーカーから購入をいたして、それを要求がありました政府に引き渡す、こういう制度でございます。この窓口になっておりますのは国防総省の中のそういう事務を担当しておるところということになるわけでございますが、在日の機関といたしましては、ただいま先生御指摘のございました相互防衛援助事務所を通じて行うということになっております。しかしながら、正式に政府間の問題になりますと、外務省を通じまして外交ルートに乗せて折衝するということになるわけでございまして、事務的な細かい問題はMDAOを通じて行うということでございます。
  141. 正森成二

    ○正森委員 そこで、防衛庁長官がユーザーの意向というように言われたことと関連して若干伺いたいと思うのです。  P3Cについては機体とエービオニクスというのですか電子機器類、これをワンパッケージ、一緒でなければ売れないのだというのと、機体と電子機器類とを分けて売却できるという説があるようでございますが、自衛隊では、アメリカ側からまず第一にP3Cというのをリリースしてもいいということを正式にオーケーされたのはいつなのか、あるいはまた、アメリカ側から機体と電子機器類とは分けて売ることはできないのだというように聞いておられるのかどうか、その時期について伺いたいと思います。
  142. 丸山昂

    ○丸山政府委員 アメリカからP3Cにつきましてリリースをするという正式の意思表示がございましたのは昭和四十八年の七月でございます。これは六月にちょうど当時国防会議の事務局の専門家会議、これを準備いたしておりまして、これに関連をいたしまして海外の資料収集の必要があるということで、前々からよく申し上げてございますように、イギリスのニムロッドという対潜哨戒機がございます、それからフランスとドイツで共同開発を計画しておりますアトランティックという対潜哨戒機がございますが、これとあわせましてアメリカのP3Cについてライセンス生産の可能性があるか、あるいは輸入の可能性があるか、それからライセンス生産を行う場合において、大体大まかな所要額がどのくらいであるかというような趣旨の照会を外務省を通じて出したわけでございます。これに対する回答が七月にアメリカから参りまして、それをもちまして私どもは、このP3Cのリリースについて、アメリカが正式に意思表示をなしたものというふうに判断をいたしておるわけでございます。
  143. 正森成二

    ○正森委員 経過は概略わかりましたが、そのときのリリースの返事というのは、私がいま申しました機体と電子機器類とは分けられないというものでありましたか、それとも分けることができるというものでありましたか、それはいかがですか。
  144. 丸山昂

    ○丸山政府委員 その中でP3Cの機体と搭載電子機器、これを切り離してリリースすることは当分考えられないという趣旨の意向を伝えてきております。
  145. 正森成二

    ○正森委員 そこで、私は伺いたいのですが、自衛隊からP3Cのリリースについて正式に打診をしましたのは昭和四十八年、一九七三年の六月ごろで、返事があったのは七月ということでありますが、私ども承知しておるところではすでに前年の昭和四十七年の八月にリリースが可能であるという意向が自衛隊の方にもたらされたそうでありますが、そのときには自衛隊はそういう意向を示されなかった。ところが、翌昭和四十八年の六月、七月ごろになりましてそういう意向を打診され、そして私ども承知しておりますところでは、それを受けて八月十日に専門家会議が発足したというように聞いておりますが、なぜ一年前と一年後ではそういうように変わったのでしょうか。
  146. 丸山昂

    ○丸山政府委員 御案内のように、国防会議の専門家会議、これはその当時までございました大蔵財政当局と防衛庁との間の国産のための研究開発をやるかどうかというその論争に終止符を打ちまして、例の十月九日の国防会議議員懇談会の了解事項によりまして、輸入も含めて専門家会議で検討する、こういうことに相なったわけでございます。したがいまして、その趣旨を受けました専門家会議が当然輸入の条件についても検討されるということでございますので、私どもとして、P3Cを含め、先ほど申し上げましたニムロッドあるいはアトランティックその他の国産機に電子機器だけを搭載するという案もございます。そういう諸案を検討する資料を入手するために、六月にその可能性その他について、ライセンス生産あるいは輸入の可能性について照会を出した、こういうことでございます。
  147. 正森成二

    ○正森委員 そこで、私どもは、日をなぜそういうぐあいに申しましたかと言いますと、昭和四十八年の八月十日に以上のような経過で専門家会議が発足したわけですが、その一日前の八月九日に伊藤宏のピーナツの領収証が出ておるわけですね。非常に日が接近しておるわけであります。ですから、この問題について、いろいろあったのではないか、こういうように世間で言われていることは、事実は別として御承知のとおりであろうというように私どもは考えておるわけです。  そこで、伺ってまいりたいのですけれども、いま丸山防衛局長は、機体とエービオニクスの分離ができないというのがアメリカ側の考えである、そして、そのことは恐らくリリースを正式に打診し、その回答がありました一九七三年の六、七月ごろ、これは正式に意向が伝えられたのじゃないか、あるいはその前かもしれませんが。そうすると、これについては、日本側の問い合わせ、アメリカ側の答えというようなコレスポンデンスといいますか、通信文のやりとりがあったのでございましょうか。
  148. 丸山昂

    ○丸山政府委員 昭和四十八年の六月の照会それから七月の回答、これはいずれも外務省を経由をいたしまして公信で出しておる、また受領もそのとおりでございます。
  149. 正森成二

    ○正森委員 そうしますと、重ねて伺いますが、機体と電子機器とを分離して、機体は日本でつくる、電子機器だけは購入するというような考え方というのは、現在のアメリカ側の態度から見てあり得ないというように、これは通信文の結果、それが変更されない限りそういうように両当事者間ではなっておる、こう理解してよろしいか。
  150. 丸山昂

    ○丸山政府委員 機体とエービオニクスを分離するという可能性について、私ども昨年の半ばごろからいろいろな角度で検討をいたしております。これは内閣委員会で大臣も御答弁になっておられるとおりでございます。そこで、私からMDAOの所長に対しまして、昨年の十二月でございますが、彼がアメリカへ休暇で帰る——休暇と言ってはあれですが、帰る時期に、この可能性について先方の意向を打診してくれということを依頼してございます。これは口頭で依頼しております。これに対して、彼が日本へ帰りましてから、原則としてアメリカはノーであるという回答を私に与えております。そこで、久保事務次官が一月の末にアメリカのワシントンへ行きます機会に、久保事務次官から、国防総省でこれを担当しておる責任者に意向を伝えてございます。この点については、日本の特殊事情もよくわかるので、検討をいたします、こういう返事でございました。  重ねて、これは正式の話じゃございませんが、ブラウン統合参謀本部議長が参りましたときに、当時の白川統幕議長から、本件についての要請をしております。それに対してブラウン議長は、よい考えであるという感想を言っておりますが、その件について、やるともやらぬとも、はっきりした回答は与えられておりません。  現在そういう状況でございます。
  151. 正森成二

    ○正森委員 いま答弁がありましたブラウン統合参謀本部議長が来日されて白川統幕議長と会われたのは、たしか本年の三月一日のことですね。ア・グッド・プラン、こういうぐあいに言われたというのは有名な話でありますが、しかし、その後いろいろ報道されているところによりますと、アメリカのペンタゴンの担当官は、それは統合参謀本部議長だからそういうことを言ったので、これの実権を持っておるのは海幕なんだ、だから統合参謀本部というのも、アメリカは四軍ですから、そのうちの海軍といいますか、やはりそこの意向を無視してはだめなんで、ア・グッド・プランなんというようなことを言うわけがないというようなことが広く報道されておるのですね。  そういう点について、たとえばW・G・ローガンという——あなたも、よく週刊誌で書かれましたから御存じだろうと思いますが、ロッキード・カリフォルニアの対潜哨戒機販売セクションの代表、この人が非常にはっきりそういうことを言うておるということがございまして、この人の言うておるところでは、自分はアドミラル・ヤスオ・イトウ、これはPXLの調査団長であった、またアドミラル・サメジマ、これは統幕議長である、これとも非常に親しくていろいろ話をしており、PXLの問題についても話しておるという意味のことが、公然と名前を明かした人との談話の中で出ておるということがあるわけですが、そうだといたしますと、あなた方の制服組の最高幹部というのはロッキードの対潜哨戒機販売セクションの代表と接触して、そうして、やはりこのローガンという人が一定の心証を受ける、私はPXLがP3Cになることについて非常にオプティミスティックな判断を持っておる、楽観的な見通しを持っておるということを言うておるのですが、そういう発言をされるような何かいきさつというものがあるのでしょうか。ちょっと伺いたいと思います。
  152. 丸山昂

    ○丸山政府委員 私もそういう細かい事情についてはよく存じませんので、正確を欠くかと思いますが、いま名前をあげられましたローガンというのは、かつて現在のMDAO、先ほど御指摘ございました相互防衛援助事務所でございますが、これが顧問団でありましてMAAG・Jと言いましたが、その当時そこに在勤をしておった海軍の軍人だそうでございまして、階級もそれほど高いものでないし、彼が責任を持っていろいろ物を言える立場のものではない。海上自衛隊の幹部は、当時からのつき合いがありますから、顔は見知っておるようでございますけれども、それほど決定的な責任を持って発言をする地位にある者ではないというふうに聞いております。  いずれにいたしましても、本件で日本にリリースをいたします最終的な権限を持っておりますのは海軍省でございます。したがいまして、ロッキード自体がそれについてオーケーを出し得る立場にはございませんので、その辺も本来責任のある者の発言というふうには私ども受け取っておらないわけでございます。
  153. 正森成二

    ○正森委員 いまの御説明で防衛庁の立場というのは理解できるわけですが、しかし、この人物がP3Cについて日本のためにいろいろ改良してきたということを言うておるのですね。日本のためにいろいろ改良してきたということになりますと、これは相当制服同士の間で日本がそれを望んでおるんだという感触が得られなければ、P3Cを日本に向くように改良する、あるいは改良したというようなことは、軽々しく言える筋合いのものではないと思うのですね。それについては、昭和四十八年の公式文書といいますか、それの問い合わせと回答、それを含めて、そういう心証を持たせるような何らかの内容があったのではなかろうかというように思わざるを得ないのですが、いかがです。
  154. 丸山昂

    ○丸山政府委員 いまのところ、日本のために改良しているという話は私ども全然承知をいたしておりません。  それから、当方としては、まだそのP3C導入という方針を、調査団にいたしましてもそういうことを言える立場にはございませんので、アメリカアメリカサイドで日本の意向をそのようにそんたくしているかどうか、これについては、私どもそこまで感知できるところでございませんので、はっきりしたお答えを申し上げられないと思います。
  155. 正森成二

    ○正森委員 報道によりますと、東アジア、太平洋担当のアブラモビッツ国防副次官補が二十六日から三十日まで日本を訪問して、坂田防衛庁長官を初めとする防衛庁首脳部及び在日米軍首脳と会談するということが報ぜられており、恐らくそれは事実であろうかと思いますが、防衛庁長官に伺いたいわけですが、その来日目的及び会談の主題目は何でございましょうか。
  156. 丸山昂

    ○丸山政府委員 その担当官、彼はアジア担当でございまして、時折日本にやってまいります。今度参りますのは、防衛庁長官に表敬ということではございませんで、いま予定されておりますのは、多分二十七日だったかと思いますが、事務次官と私が応待をすることになっております。  で、私どもが聞いております今回の彼の旅行目的は、彼の担当いたします東南アジア、その他の地域を視察をし、担当者との間の意見交換をやるということであるというふうに聞いております。私ども特に、会いましてどういう議題でという、そういうかた苦しい話ではございません。顔を合わせまして、いろいろの懸案の問題あるいは情報交換を行うことを考えております。
  157. 正森成二

    ○正森委員 その情報交換の中には、PXLをどういうぐあいにするか、それについて日本国内の情勢はどうであるかということも情報交換の中に入りますか。
  158. 丸山昂

    ○丸山政府委員 これはあらかじめ議題が予定されているようなものでございませんので、先方から本件について質問があれば率直に現状を話したいというふうに思っております。
  159. 正森成二

    ○正森委員 そこで伺いたいと思うのですが、いま使っておりますのはP2Jですか、それの耐用年数というのは一体幾らだと防衛庁では思っておられ、そして一番早く導入されたのは何年でしたか。
  160. 丸山昂

    ○丸山政府委員 耐用命数は七千五百時間でございます。一番最初に導入されましたのが昭和四十四年でございます。
  161. 正森成二

    ○正森委員 わが党の調査団があなた方のところの先輩である海原治さん、よく御存じだと思うのですが、その方にお会いしたところによりますと、P2Jというのは十三年から十五年は使えるものであるということを言明しておられます。またその性能についても、もし古い古いと言うなら——これはことしも七機要求しておられるのでしょう。だから古くて仕方がないなら、ことし七機要求されるということもないと思うのですね。一説によりますと、あなた方は、四十八年の石油危機で油が少なくなったので飛行時間を減らさざるを得なかった。そういう点から考えると、P2Jというのは、これは昭和五十七年までじゃなしに五十九年まで使えるのである、であるから、そのPXLの導入時期についても、必ずしも本年の四月ないし八月までに決めて五十二年度の予算で手当てをしなければならないものではなしに、もう一、二年おくらしてもいいのだという意味のことを最近では考えておられるようですが、いかがですか。
  162. 丸山昂

    ○丸山政府委員 どういう方がどういうことをおっしゃったかということについて、私ども直接その問題についてお答えを申し上げるわけではございませんが、ただいまの先生の御質問に対しましてお答えを申し上げますと、四十八年、四十九年のオイルショックその他によりまして、確かに実働時間が当時短縮をしておるわけでございますが、そういう個々の航空機についての稼働の実績というものを踏まえまして、それでこれから先の見通しをつけておるわけでございまして、御案内のようにP2Jは五十年度末で就役機数は六十一機でございます。ことしも予算の要求をいたしておりますので、五十一年から五十三年度にかけまして調達あるいは調達予定のもの、これが就役することになりますので、五十三年度の末には七十八機にふえることになります。これで大体五十三−五十六年度はこの勢力を維持していくことができますけれども、五十七年度から逐次四機あるいは五機というレベルでだんだんに減ってまいります。そして六十一年度までの五年間におおむね四十機程度がここでダウンをするということになります。六十二ないし六十六年で最終的にはゼロになる、こういう計算でございます。したがいまして、このダウンをいたしますカーブを実働時間、それから飛行計画、こういったものの工夫によりまして若干延ばすことは可能でございますけれども、体制がそういうスローダウンをして六十六年にはゼロになる、こういう体制を大幅に延ばすということは事実上不可能であるということでございます。
  163. 正森成二

    ○正森委員 詳しく御説明いただきましたが、私の聞きたいことにはずばり答えていないですが、結局昭和五十七年からでなしに五十九年にPXLの手当てができ、五十九年からPXLが活動し始めるというようになれば、それで何とか行けるんだというようにお考えになったんでしょうか。
  164. 丸山昂

    ○丸山政府委員 いま御説明申し上げましたように、現在の飛行計画、それから耐用命数、これで今後の勢力の推移を算定をいたしますと、いま申し上げましたように五十七年度から減勢に入る、こういうことに相なるわけでございます。  繰り返して申しておりますように、この次期対潜機につきましては、現在ポスト四次防の一環として検討中でございます。それで、いま御説明をいたしましたのは海幕において算定をいたしたものでございまして、内局その他関係の向きにおいてこれを現在検討中でございまして、これが絶対動かない数字であるかということはいま確信を持って申し上げられるべき数字ではございません。少くとも、現在の段階においては、五十七年から減勢に入る、したがって次期の対潜機については五十七年から就役できるような手当てをしておかなければならないというふうに考えておるわけでございます。
  165. 正森成二

    ○正森委員 いま海幕ではそういうぐあいに考えておるということでしたが、私が聞いておるのは、海幕がそういうぐあいに考えておるというのはいままでもわかっておるわけです。ところが、最近新たに内局の方でそれの査定を行ったところが、四十八年には石油危機もあり飛行時間も短かったということで、五十九年までは何とかP2Jで使えるということになる。それに伴ってあなた方は、ロッキード問題の真相がある程度明らかになるというのは一定の時間がかかる、だから、五十七年が五十九年まで持ちこたえられるというのであれば、PXLについて本年の八月ぐらいまでに決めなければならないということはない、大筋においてシビリアンコントロールのもとにある内局ではそういう判断になったということではないのですか。防衛庁長官、いかがですか。ロッキード問題も関係しますから長官が答弁してください。
  166. 坂田道太

    ○坂田国務大臣 そういうようなことを含めまして、いま検討をいたしておるところでございます。
  167. 正森成二

    ○正森委員 検討をしておるということは、これはそういう方向に動いている可能性がある。五十七年が五十九年になれば二年以上おくれるわけですから、P3Cがその時代で一番わが国に適しておるかどうかということもわからないし、また国産の可能性も出てくるし、いろいろな予期し得ないことが出てまいります。だからPXLを機体ごと、電子機器ごと買うということは、これは確定的には決まっておらないのだ、もっと多様性のあるオプションの中で考えていくということに考慮され、そういう方向になる可能性が多いというように聞いてよろしいですか。
  168. 坂田道太

    ○坂田国務大臣 先生のおっしゃるとおりに、そのとおり考えておりますとは言えないのです。ただ、いろいろのオプションについて考えておるということは申し上げられる。しかもそれはロッキード問題がこういうふうに出ておりますから、やはり国民に疑惑の起こらないような、国民の納得のいくような形で決められなければならないということが一つ。  それからもう一つは、やはりこのPXLというものは、将来の日本の海上防衛、特に対潜ということを考えました場合には、非常に大事な飛行機でございますので、この点につきましては、特に先ほどからお話がございますように、現在使っておりますP2JとそれからP3C——すでにもうアメリカではこのP3Cを日本に配備しておるわけです。そして四十八年の八月以降だったと思いますけれども試乗もしておるわけです。でございますから、いま使っておりますP2JとP3Cと性能の点においてどれだけ違いがあるかということは、ユーザーの者としては承知をしておるわけでございます。  そういうようなこともございまするので、十分こういうようなこともあわせ考えまして機種の選定をしたいというふうに思っておるわけであります。
  169. 正森成二

    ○正森委員 そこで、私はこの問題についてもう一つだけ伺いたいのですが、P3Cというのは、三月五日に私が伺いましたら、原子力潜水艦の発見についてはいまのP2Jの約十倍の力を持っておるのだという意味の御発言があったと思うのです。そこで伺いますが、P3Cというのは原子力潜水艦の発見だけはするが、それの攻撃はやらないというものでしょうか。しかし場合によれば、相手の原子力潜水艦の出方いかんによっては、これに爆雷攻撃を加えるということも可能な飛行機なんでしょうか。
  170. 丸山昂

    ○丸山政府委員 原子力潜水艦ばかりではございませんで一般の潜水艦も同じでございますが、現在私どもの持っておりますP2Jと大体同じでございまして、爆雷とか魚雷、こういう攻撃の兵器を搭載できるようになっております。
  171. 正森成二

    ○正森委員 そういたしますと今度のP3Cというのは、航続時間が十時間もあってずいぶん長い間空を飛ぶことができる、そして原子力潜水艦を発見する能力が十倍であるということになりますと、これがわが国に何十機と配備された場合に、原子力潜水艦を鬼ごっこのように探すだけ探すけれども、探した後は何もしないというのではなしに、何らかのところへ通報し、そして相手の潜水艦の出方次第では、つまり出方が非常に問題になるときにまさにP3Cが必要だと思うのですが、その場合には原子力潜水艦に対して爆雷攻撃、場合によっては核爆雷攻撃を加えるような、そういうようなシステムの一環としてこのP3Cは使われることになるというように思わざるを得ないのです。  私はいま核防条約審議の中で、何よりもわが国が核と名のつくいろいろな戦争に巻き込まれないということが非常に大事だと思うのですが、P3Cというのは、十時間も航続時間があり、原子力潜水艦の発見能力がいまの対潜哨戒機の十倍であり、かつこれは通報装置を持っておって米側に通報して共同作戦を将来することも可能である、それどころか、この飛行機には核爆雷を積むことができる、ということになってまいりますと、これは非常にわが国の将来の安全の点から言いましても、あなた方はそれこそまさに安全を抑止力で確保する筋合いであると言われるかもしれませんけれども、しかし、実際上わが国核戦争に巻き込まれる一つの有力な兵器の上での構成要素であるというように思わざるを得ないと思います。それについての安全保障上の御見解はいかがですか。
  172. 丸山昂

    ○丸山政府委員 先ほども申し上げましたように、性能的にはP2Jより、特に原子力潜水艦については相当性能がよろしいわけでございますけれども基本的にP2Jと同じ運用をされるのでございます。したがいまして、ただいま先生御指摘のように、アメリカの核戦略の中に組み込まれるという趣旨のことは、私ども考えておりません。当然現在のP2Jもそういう意味では同じでございまして、あくまでもわが国の安全のために使用されるということを考えておるわけでございます。
  173. 正森成二

    ○正森委員 いまの説明で納得するわけにはいきませんけれども、あと時間が数分しか残らなくなりましたので、最後に外務大臣に若干伺って質問を終わらしていただきたいと思います。  昨年夏のフォード大統領三木総理の共同声明がございます。これは二つに分かれまして、新聞発表と共同声明になっておりますが、その新聞発表の方でございます。これは、私、たしか昨年十月の予算委員会の総括のときにも非常に簡単に伺いましたので重ねて伺いたいと思います。第三項は韓国条項でありますが、第四項に、「両者は、さらに、米国の核抑止力は、日本の安全に対し重要な寄与を行うものであることを認識した。これに関連して、大統領は、総理大臣に対し、核兵力であれ通常兵力であれ、日本への武力攻撃があった場合、米国は日本を防衛するという相互協力及び安全保障条約に基づく誓約を引続き守る旨確言した。総理大臣は、日本は同条約に基づく義務を引続き履行していく旨述べた。」こうなっております。これは、何回か首脳会談が行われましたけれども、こういうようにはっきりと、「米国の核抑止力は、日本の安全に対し重要な寄与を行う」とか、あるいは「核兵力であれ通常兵力であれ、日本への武力攻撃があった場合、米国は日本を防衛する」ということが明白な形で言われたのは私は初めてであろうと思います。  そして、この共同声明の中に——昨年五月前後に宮澤外務大臣アメリカへ行かれまして、核防条約批准して日本は核のフリーハンドを失うのだから、その見返りとしてアメリカ安全保障条約を長期堅持すること、その約束をもらってくるべきである、また、場合によったら非核三原則のうち核を持ち込まないという点については、弾力的に運用すべきであるという自民党の中の一部の人々の意向が非常に強く働いて訪米されたというように、当時の新聞には宮澤外相の意向いかんにかかわらず報道されていたことは御承知のとおりであります。そこで、そういう自民党の中の一部の人々を納得させる意味で、この八月の共同声明の中にこの項目がわざわざ入れられたというように思わざるを得ないのですね、日米安保条約の長期堅持と並んで。ところが、その場合に、「総理大臣は、日本は同条約に基づく義務を引続き履行していく旨述べた。」とだけ書いてあって、日本の非核三原則については一言も触れられなかったというのは、結局、非核三原則のうち核を持ち込ませないというのは緩めますよということは積極的には書かないけれども、非核三原則をここに書かなかったことによって、日本の言うに言えない気持ちをあらわしておるというように理解する向きもあるのですが、その点はいかがでしょうか。
  174. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 それは、実は私は思ってもみないような御解釈ということにどうも申し上げざるを得ないのでございますけれども、ただいま御指摘のように、三木・フォード共同新聞発表は、その下敷きになっておりましたのが、私の四月のキッシンジャー氏との会談でございましたことは仰せのとおりでございます。その際、米国の日本防衛の義務と、それからそれに見合いましてわが国の安保条約上の義務ということを両方から申し述べたわけでございまして、総理大臣と大統領との共同新聞発表もほぼ同様のことを述べております。もちろんわが国は、今朝から御質問のありますように非核三原則、持ち込ませないということを堅持いたすのでありまして、このことは米国も十分によく知っておる。しかも、けさほども申し上げましたように、そのことと、わが国に対して米国の核抑止力が有効に働くということは矛盾をしない。デターレントを働かせるためには持ち込まなければならないという論理にはならないと私ども思っていますし、最近は多くの軍事専門家もだんだんそのように考えているようでございますので、その間の矛盾はない。したがいまして、別段持ち込ませないという非核三原則の一つを緩和するとか、あるいは言うに言えないがそういうことを含ませたとかいうことは、その必要もございませんでしたし、またそういうことはございませんでした。
  175. 正森成二

    ○正森委員 それでは、これで終わらせていただきますが、もう一言だけ申し上げますと、宮澤外相の「東京−ワシントンの密談」という二十年ほど前の著書がございますが、その中で宮澤外務大臣が、「このように抽象的ではあるがしかし十分に吟味されて出来た声明を読む場合、その中に〃何が書いてあるか〃ということと同じくらい、〃何が書いてないか〃に注意しなければならぬ」というように言うておられるのですね。私は、外務大臣がこういうことを言うておられるから何とかの勘ぐりでついこういうことを聞きたくなるわけであります。  そこで、著者である宮澤外務大臣から、そういうお勘ぐりになる心配は毫もございませんという御答弁を念のために承って、私の質問を終わりたいと思います。
  176. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 まことにどうも恐れ入りました。何が書いてないかを的確に知るということはなかなかまたむずかしいことでございまして、ただいまのようなことは書いてもございませんし、また会談の内容でもなく、そのようなことを私ども考えてもいないということを的確に申し上げておきます。
  177. 正森成二

    ○正森委員 終わります。
  178. 鯨岡兵輔

    鯨岡委員長 正森君の質疑はこれで終わりました。  次は、渡部一郎君。
  179. 渡部一郎

    渡部(一)委員 核拡散防止条約審議に当たり、三大臣がこうしておいででございますし、まず科学技術庁長官からお尋ねをいたしたいと存じます。  さきに原子力船「むつ」が、足かけ二十年に及ぶ歳月と二兆円からの費用をかけましてスタートをいたしましたにもかかわらず放射線漏れ事件が起こり、大きな問題が起こったわけであります。この問題は原子力開発体制や原子力行政の立て直しがなければならぬことを象徴的に示した事件であると存じます。     〔委員長退席、羽田野委員長代理着席〕 今回の「NPTの批准問題」と題する外務省発行の資料、これの三十一ページに「条約批准によって核問題に対する基本姿勢を明らかにし、その利点である原子力エネルギーの平和利用の恩恵を最大限に活用するよう努力することが大切です。」と述べているわけでありますが、少なくともその活用すべきわが国の原子力行政とその体制に大きな欠陥がある以上は、ここで述べられているほど問題は簡単ではないと思うわけであります。  そこで、原子力三法制定の際、この枠組みに関して多くの議論が展開されましたけれども、効果的な対策がされていなかった。この問題につきましてどうお考えになっておられるか御見解を承りたい。特に、原子力行政懇談会の設置をした段階で、「むつ」の継続をするというようなことを昨年六月強行してお決めになったようでありますが、少なくとも慎重な配慮を欠いたこれらの行政のやり方を今後再検討なさる必要があるのではないか。その点についての御見解を承りたいと存じます。
  180. 佐々木義武

    ○佐々木国務大臣 一昨年夏でございますが、青森のむつ湾で原子力船「むつ」がお話しのように放射線漏れの故障が起きまして、その後その対策をどうするかということで、その放射線漏れの原因究明、技術的な原因のみならず、行政のあり方あるいは責任の所在等、広範に検討の要があるということで、内閣に原子力委員会とは別途にいろいろな機関を設けまして検討に入りました。  その結果、一つは原子力船「むつ」の放射線漏れの技術的原因が明確になったと同時に、それを取り巻く総合的な諸原因も指摘されまして、その大きい一つが、いまお話がございました行政のあり方等でございます。したがいまして、それに呼応して原子力行政の再検討ということで、御承知のように有沢広巳教授が首班になりまして、日本のエキスパートをすぐって、いまもまだ継続しておりますけれども、去年の暮れにこの問題に対して一応の結論が出ました。  その間、お話しのように、その結論を待たずに「むつ」自体をどうするかということを決めたというのはおかしいじゃないかという御議論でございますけれども、私どもといたしましては、「むつ」の原因調査の際に同じ報告書で、大山義年先生の報告書でございますが、「むつ」は修理点検をすればりっぱに実験船として使い得る、りっぱな船であるという結論が出ましたので、それでは修理点検をどうするかということで修理点検の検討に入りました。少し話が長くなりまして恐縮でございますけれども、そこで修理点検ももう安全にできますという結論を得ましたので、それではその方針に従って修理点検港をひとつ選択しようじゃないか、こういう段階に入ったわけでございます。  それにほぼ前後いたしまして、有沢原子力行政懇談会の中間報告が去年の暮れに出まして、それには、主として原子力の安全の規制面、検査、監査等をどういうふうにして行うか、それからその責任をどういうふうに一貫性を保つべきかという点を中心にいたしまして、とりあえず去年の暮れに答申が出ました。したがって、それに従ってただいまその準備を急ぎつつございます。ただ、それを待つまでは何にもせずにというわけにいきませんので、御承知のように内閣といたしましては異例中の異例のことでございましたが、原則を破りまして科学技術庁に原子力安全局という、去年の行政新設の部局としてはたった一つでございますが、一つの局を設けまして、そこでただいま責任体制なり審査の進行なりを図ってございます。
  181. 渡部一郎

    渡部(一)委員 大臣、恐縮ですが、原子力安全局をつくるという話はこの前強烈にこの委員会で申し上げて、そして完成されたことですから、そこまでは承っておる。  私がいま申し上げておるのは、その後依然として各種原子炉関係の事故は絶えないし、そしてそれに対する安全機能というのはまだ十分機能していないように見える。この問題について申し上げているわけであります。ですから、そこを端的に、短くて結構ですから一言お答えいただきたい。
  182. 佐々木義武

    ○佐々木国務大臣 それでは有沢機関の答申の内容は省きます。  現在の事故、すなわち事故を起こしておりますのは、事故と申しますか故障を起こしておりますのは軽水炉だけでございまして、その故障も決して第三者に影響を及ぼしたり、あるいは環境を汚染したりというような大事故は一つもございません。そうじゃなくて、何千本かある配管の一本の中にピンホールができた、それから放射線が漏れたという小さい故障だけでございまして、それはむしろ原子力問題というよりは、いわば材料工学的な面等が主でございますので、最近はむしろ原子炉の安全性というような工学的な、それを健全化するという点をどうするかというところに主力を注ぎまして、ただいま原子力研究所あるいは通産省と力を合わせましてその対策を練っておりまして、大分整備してまいりました。
  183. 渡部一郎

    渡部(一)委員 時間がありませんのでひとつ短くお願いしたいのですが、材料の問題ではなくて、システム的に問題が非常に多いことを私は申し上げようとしているわけですけれども、御答弁が大演説が続きますので、後の際にもうちょっとちゃんと詰めたいと思います。  いま特に問題になっておりますのは、大型発電用原子炉から生ずる大量のプルトニウムが当条約とも関係して問題になろうかと思いますし、この核査察の放置状態というものが、インドにおいては明らかに核兵器につながるほどの量の拡散というものにつながったという実例すら報告されているわけであります。わが国の発電用原子炉から生ずるプルトニウム、原爆の非常に強力な武器となるこれらについての管理査察等については今後どうされるおつもりであるか、完全な自信をお持ちであるかどうか、その辺まず端的にお伺いしたい。
  184. 佐々木義武

    ○佐々木国務大臣 ただいままで使用済み燃料の再処理をしておるのは、日本ではいま実験中でございまして、全部御承知のように主として英国等に送りまして処理させてもらっております。したがってプルトニウムそのものは、できたものは英国に保管されておりまして、実験用等に日本へ持ち帰ったものは厳重に管理をいたしまして、使用あるいは移転、譲渡等に関しましては、その所在も明確にし、過ちのないように法に基づきまして管理してございます。
  185. 渡部一郎

    渡部(一)委員 次に防衛庁長官に伺いますが、いま現在防衛庁が保有されている武器の中で、諸外国においては明らかに核兵器の搭載を予想されてつくられた武器が幾つかあるわけであります。一つ例を挙げれば、ナイキハーキュリーズというのは明らかに核弾頭を付着するものでありますが、わが国においてはナイキハーキュリーズJとして、これは核弾頭を搭載しないということに分けているわけであります。ところが最近に至りますと、艦対艦ミサイルあるいは戦車砲のたぐいに至るまで核搭載が予想され、核搭載可能なものが開発をされ、世界の兵器の趨勢はそうなっていると思います。自衛隊は核を用いない、使用しない、持ち込まないという立場をおとりになっているとは思いますが、これらの世界的な兵器の核化という問題に対して、どういう見解と方針をおとりになる決意であるか伺いたいと思います。
  186. 坂田道太

    ○坂田国務大臣 わが国といたしましては、非核三原則をとりまして、そしてもっぱら核の脅威に対しましては日米安保条約による、したがいまして、わが自衛隊は核を保有しないということで日本の安全を守っていくということでございます。
  187. 渡部一郎

    渡部(一)委員 そうすると核兵器の搭載できるような兵器を保有しないというふうにするか、核兵器の搭載できる兵器であるが核兵器を使わないというふうにするのか、そこのところは非常に重大な差があります。つまり、ナイキハーキュリーズをそのまま使うか、ナイキハーキュリーズJにして使うかは、二つの道は全然異なっておりまして、ナイキハーキュリーズの場合は、ナイキハーキュリーズJにいたしました。これから先防衛庁はどういう態度でおやりになるのか、その辺、兵器体系について基本的な考えを聞かしていただきたい。
  188. 丸山昂

    ○丸山政府委員 私からお答え申し上げます。  ただいま大臣から申し上げましたように、わが国基本方針は核兵器を持たず、つくらずという考え方でございますから、持ち込まずはあれでございますが……(渡部(一)委員「持ち込まずは無視する——わざわざ言わないのは何か意味があるの」と呼ぶ)私ども自衛隊の問題に関しましては、みずから核兵器を持つということを考えておらないわけでございます。したがいまして、この兵器体系といたしましては、通常兵器体系ということを考えておるわけでございますが、たとえばナイキハーキュリーズを例に挙げて御指摘がございましたが、ナイキハーキュリーズに匹敵する、それとオプションで対象になるような地対空ミサイルというものが、通常弾頭でございますれば当然そういうものを優先して選ぶということになると思いますけれども、他に代替すべきものがないという場合には、大体普通、先生御存じのように通常、核両用という形をとっておりますので、私どもとしては通常のものを選択をするということになるかと思うわけでございます。基本的には、核を本来装備しないものを選んでまいるということであると思います。  それから、大体一般的な傾向といたしまして、最近はPGMの発達によって命中精度がきわめてよくなるということで、戦術核はふえるよりは、むしろ減る傾向にあるように私どもは受け取っております。したがいまして、当庁で考えておりますのは、将来そういう問題で兵器の選択に支障を来すというような事態は起こらないのではないかというふうに考えておるわけでございます。
  189. 渡部一郎

    渡部(一)委員 そうしますと、あなたは現在の兵器体系の中で核、非核両用のものが存在することを率直にお認めになったわけですが、どういうものがありますか。
  190. 丸山昂

    ○丸山政府委員 私どもの装備をいたしておりますものでは、先ほど御指摘のありましたナイキハーキュリーズでございますが、これは核武装ができないように改造して装備をいたしております。  それから、御案内のようにファントムにつきましては、核兵器用のコンピューターと爆撃照準器、こういうものは外して現在われわれが装備をいたしておるわけでございます。
  191. 渡部一郎

    渡部(一)委員 ただいまの御発言は、後に他の委員会で重大な問題になると私は存じますので、核、非核両用の兵器体系並びにそのシステムについて、当委員会に資料の提出を求めたいと存じます。委員長、よろしくお計らいいただきたいと思います。
  192. 羽田野忠文

    ○羽田野委員長代理 資料の提出をさせます。
  193. 渡部一郎

    渡部(一)委員 私は、核、非核両用のものを使うのには、わが国は慎重であらねばならないと思います。なぜかと言えば、核を現在持ってないのだから核、非核両用兵器を置いておいていいんだという考え方で推し進めるならば、ナイキハーキュリーズの制定当時の論争というものは、全部むだになってしまうからであります。そればかりでなくて、わが国に核弾頭を持ち込もうとか、そうした議論というものは当然出てくるし、それ自体が非核三原則に対する崩壊への道につながるからであります。したがって、私は、非核兵器としてのものは別にして、核、非核両用に使えるものであるというものはリストに挙げていただいて、そしてその中で、それに対して核が使えない処置がとられたものについてもそれを明記していただいて、そうした資料を一覧にして御提出を願いたい、こう申し上げているわけであります。よろしゅうございますでしょうか。
  194. 丸山昂

    ○丸山政府委員 ファントム配備の場合、またナイキハーキュリーズの配備の場合にも国会ですでに御議論がありましたように、本来ナイキハーキュリーズというのは核、非核それぞれ使えるという形のものでございますが、わが国が購入をいたします場合には核に使えるために必要な装置は全部外しまして、もっぱら通常兵器として使用できるような形で購入をし、配備をいたしておるわけでございます。ただいま先生のおっしゃいました、そういう趣旨での、本来核、非核両用であって、そうしてわが国に導入をする場合に通常弾だけの目的のために改造し、そしてそれを配備したもの、こういう御趣旨でございますれば、いま私の記憶にございますのはナイキハーキュリーズとファントム、この二つだけであるというふうに考えますので、この資料は提出させていただきたいと思っております。
  195. 渡部一郎

    渡部(一)委員 質問がちょっと前後するのであって恐縮でありますが、科学技術庁長官に先ほどの質問の続きをいたします。  原子力発電所のプルトニウムを初め、さまざまな核燃料の再処理の問題について、わが国ではその再処理のシステムというものが完璧でないというようなことが何回か指摘されたところでありますが、現在のところ、私の知る限りでは昭和五十二年に達成する、当初年間七十トン程度の処理予定しかないというように承っているわけであります。昨年、英国の原子燃料公社に対して核燃料の再処理をお願いなすったところが環境保護派の反対によってそれはとんざしたように私は伺っております。そうすると、後始末ができないのに膨大な発電計画あるいは使用計画を立てられることは非常に不穏当な行政ではないか、私はこう思うのですけれども、その点どうお考えですか。
  196. 佐々木義武

    ○佐々木国務大臣 お話のようにわが国の再処理工場は動燃の、いま実験の最中でございますが、工場が一つでございまして、いまそのホット試験にやっと入ろうとしておるところでございますから、お話のように五十二年になって初めてプルトニウムが出てくるわけでございます。これは初年度は八十トン、それからだんだん百七十トンぐらいまで上げる予定で、最終的には二百十トンぐらいになると思います。ただ、それだけではとても足りませんので、残余の分はお話のように英国あるいは英国、フランスその他の国の共同体である機関等に御依頼申し上げまして、それはそれでやっていますが、それだけでもとても足りませんので、ただいま英国とフランスの両方で話し合いを進めつつございます。と同時に、日本内部で第二の再処理工場をどうするかという問題が実は大変大きい問題でございまして、これは御承知のように日本自体でつくっていくか、あるいは極東地区の共同処理場としてつくっていくか、いろいろそういう大きい問題がまだ残されておりまして、具体的にはすぐ進むという問題ではございませんけれども、いずれにいたしましても、国内でそういう第二処理工場を日本としてつくらなければならぬことは明瞭でございますので、極東全体のものにするか、日本だけのものにするか等もあわせてただいま検討中でございます。
  197. 渡部一郎

    渡部(一)委員 これは大臣は非常に悠然としておられますけれども、少なくとも出てくる核燃料廃棄物についてのトン数を考えますと、とうてい認めがたいような乱暴な処理計画であります。したがいまして、この処理計画は、発電計画それから発電計画等とあわせて処理計画というのが実際に行われなければいけないと思うわけでありまして、これについては、資料が十分お手持ちでないようでありますから、後に明快な御返答を資料として同じく御提出をいただきたい。前の当核防の審議において、当局の発電計画が通産省とそれから科学技術庁の狂っている点を私は指摘いたしました。じゃ発電する方の計画はいいが、今度は再処理の方になるとこれほどであるということは、全体的な、国家的なプロジェクトとして非常にお粗末なことを示しておりますので、しかるべく関係当局のお打ち合わせの上御提出をお願いしたいと思いますが、いかがでしょう。
  198. 佐々木義武

    ○佐々木国務大臣 先ほど詳しい数字を申し上げようと思ったのでございますが、いま申し上げましたフランス、英国等の話ができますれば、とりあえずは処理は全部済むわけでございますが、その年次別あるいは需要供給のバランスの関係等をここで長く話しても時間がかかるでしょうから、資料でもってお話しのように差し上げたいと存じます。
  199. 渡部一郎

    渡部(一)委員 では次に移ります。  次に、核に関することは非常に問題が多うございまして、核技術の輸出に関する国際規制がアメリカソ連、イギリス、カナダ、フランス、西独、日本の七カ国が昨年の末ロンドンにおいて打ち合わせをし、協定を結んだということが報じられており、また私たちも情報として承っているわけであります。この伝えられる合意内容というものは、各国は核燃料、原子力機器、技術の輸出交渉に当たり自発的に他の六カ国に通報する。また、輸入国が核燃料、原子力機器、技術を軍事転用したり、第三国に再輸出しないように約束させる。約束が守られるよう原子力機関かそれに準ずる機関の保障措置条項をつくる。四、核ジャックのおそれに対して万全の措置をとる、というような協定が結ばれたと承っているわけであります。ところが、わが国の憲法の規定を申し上げるまでもなく、他国との協定については、これほどの問題であるならば当然、事前、事後に国会審議にかけられ、承認が求められてしかるべきものだと思うものであります。こうした問題について、外務省の公式の御見解は承っておりませんのでお伺いしたいと存じます。私は非常に不当な条約処理であると思いますが……。
  200. 大川美雄

    ○大川政府委員 ただいま御指摘のとおり、いかにも昨年来、幾つかの輸出国が集まりまして、ロンドンにおきまして核燃料、施設、資材等の輸出につきましていろいろ情報交換をいたしましたりしたことは事実でございます。  この趣旨は、核の拡散を防ぐという国際協力の大目的を補完する意味の努力でございまして、申し上げるまでもございませんけれども、核の拡散を防止するための基本的な方法と申しますか、基本的な文書と申しますのはただいま御審議いただいておりますこの核防条約でございます。ただ、この核防条約自体、もちろん一切合財の細かいことに至るまで規定することにはなっておりませんで、たとえば国会核防条約批准の御承認をいただきました暁に、改めて保障措置協定なる国際文書について御審議を仰ぐことになっておりますけれども、国際原子力機関の保障措置というものが核の拡散防止のための核防条約に次ぐ重要な核防条約を補完する制度でございます。  そのほかに核物質あるいは核関係の資材、施設を輸出いたします国々がそれぞれ輸出に際しまして、輸出先の国々が輸出を受けました資材、施設につきまして、平和利用以外の目的にそれを転用いたしますとかいうようなことを防止することを、輸出国としても念を押していく必要があるという観点から、いろいろ話し合いが行われたわけでございまして、結果的には、それぞれの国がこういった施設、資材、物質を輸出いたしますに際して、いかなる政策をもってそれを実施していくかということを相互に一方的に通報し合う形で一応の話ができたということでございます。     〔羽田野委員長代理退席、委員長着席〕  したがいまして、先ほどおっしゃいました協定でありますとかあるいは条約というような形のものではございませんで、たとえばわが国の場合には、わが国が現行法令の範囲内においてすでに行っておる、また今後行っていく予定の幾つかの政策を、ほかの国々に一方的に通報したという形をとっておる次第でございます。ほかの国々からも同じような形でそれぞれの国の政策について通報を受け取っております。でございますので、通常の意味の国際条約であるとか協定というようなものではございませんことを御理解いただきたいと思います。
  201. 渡部一郎

    渡部(一)委員 ただいまの局長の御答弁は、形式上は御説明として成り立ち得るものかと存じますが、憲法第七十三条には、内閣は、「條約を締結すること。但し、事前に、時宜によっては事後に、國會の承認を經ることを必要とする。」と明言されております。しかも核防条約の審査の真っただ中にこうした秘密取り決めが、事実、秘密をもって各国ともに取り決めをいたしたわけでありますが、取り決めが行われ、しかもそれが当外務委員会に正式な御報告がなかったということは非常に不当だと存じます。これについては私はただいまのお話では承服するわけにはいかぬわけでありまして、これに対する御見解を承りたい。なぜこれだけの審議をやっている真っ最中に、当外務委員会にさえ、理事会にさえ御説明をしないで、こうしたような重大な七カ国との秘密の国際的取り決めを結び、かつ、それを隠匿されたかを御説明願いたい。
  202. 大川美雄

    ○大川政府委員 先ほど御説明申し上げましたように、これは国際的な取り決めというような形のものではございませんで、それぞれの協議に参加いたしました国々が、一方的にほかの国々に対してそれぞれの政策を通報し合ったという形のものでございますので、私どもといたしましては、憲法七十三条に申します国際条約というものには該当しないという見解でございます。  なお、これを秘密ということで取り進められたという点でございますけれども、これにつきましては、実はこの協議と申しますか話し合いに参加した国々の間の申し合わせで、それぞれの事情があったのだろうと思いますけれども、参加国の申し合わせによりまして、これは秘密の形にしておく、これに参加いたしました国名自体すら外部には発表しないという申し合わせになっておりますので、その点もひとつ御了解をいただきたいと思います。
  203. 渡部一郎

    渡部(一)委員 私が問題にしているのは、国名を話せないとか、その他の御事情があることを了解した上で、この問題に対する御説明が、審議の真っただ中に陰で行われたことを遺憾に思っているわけであります。当委員会には秘密理事会の制度があり、秘密委員会の制度があり、また委員長に実質的に報告することも可能であります。それらの措置を全部おとりにならなかった。国会軽視もはなはだしい。少なくともそれに対する謝意が表せられなければいけないのではないか、私はこう思っているわけです。なお、それがわからないのだったら、私は理事会の招集をお願いしてこの問題を徹底的に追及するしかない、そんな言い方をなさるのなら。
  204. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 事柄の内容は先ほど政府委員から申し上げたところでございますが、この会合をいたしました国の中に、特にこの会合に名を連ねておるということについてその国の事情からこれを公にしたくない、したがって、その中身についてもというようなことがございまして、これはこの核防条約とも実は関連もある問題であったわけでございますので、公式には実は申し上げずに今日に至っております。委員長あるいは理事の方々には非公式には御報告を申し上げておったものと考えておりましたわけでございますが、もしそそうがございましたら、どうぞお許しをいただきたいと思います。
  205. 渡部一郎

    渡部(一)委員 私は、外務省が当国会審議に当たり資料を隠蔽されたとは思いたくありませんが、この問題については私が要求をし、私が抗議をし、そうして辛うじて御説明をちょうだいしました。こうした経緯を御理解いただきたい、大臣が御存じでなければ。したがって、私はこういうことは二度とあってほしくないと申し上げているわけであります。今後こうしたことのないように、当委員会の質疑に対し外務省は、形はいろいろな形があるのでありますから、審議に対する協力を、また徹底的な資料の説明もあわせて行うように重ねて念を押したいと思います。よろしくお願いします。
  206. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 承知いたしました。私どももそのような心構えで御審議に応じてまいりたいと存じますが、また御如才もないことながら、内容等につきましてお願い申し上げました筋につきましては、御協力を賜りたいと存じます。
  207. 渡部一郎

    渡部(一)委員 この核兵器の不拡散に関する条約の文案のうち、さまざまな問題点がありますが、後に総理もおいでになりますので、その条約問題点につきましてはまたお伺いするといたしまして、この第十条に「各締約国は、この条約の対象である事項に関連する異常な事態が自国の至高の利益を危うくしていると認める場合には、その主権を行使してこの条約から脱退する権利を有する。」と書かれております。「この条約の対象である事項に関連する異常な事態」とはどう解釈されるか。また、「自国の至高の利益」とはどういうものを考えておられるか。また、その至高の利益を危うくすると認める事態とはどういう事態であるか。これをひとつ正式に御回答をいただきたい。
  208. 大川美雄

    ○大川政府委員 この条約十条に申します「異常な事態」について御説明申し上げますが、これはこの条文に書いてございますとおり、この条約の対象である事項に関連するものであって、しかも当該締約国の至高の利益を危うくするものである。この「異常な事態」という言葉でございますが、これはきわめて柔軟性に富んだ表現でございまして、かかる事態にどういう事態が合致するかということは、各締約国自身の認定する問題であると考えております。あらかじめ、いかなる事態が異常な事態であるということを具体的に想定して申し上げることは、若干困難ではないかと思います。  しかし、一般的に考えました場合に、ある国にとりまして、その国の安全保障の確保ということ以上に重要な利益はないのではないかと存じます。たとえば、条約の第二条の規定に基づきまして核兵器を保有しないことが当該国の安全保障上重大な障害となるようなことがありました場合には、あるいはこの条約で言う「異常な事態」に該当するのではないかと存じます。
  209. 渡部一郎

    渡部(一)委員 あなたいま重大なことをおっしゃいましたけれども核兵器を保有しないことが安全保障に対して障害になると認定すると、この核防条約を破棄して、非核三原則を踏み破って、核兵器を導入してやると公言されているわけですか。そういうことを想定されているのですか。
  210. 大川美雄

    ○大川政府委員 この条約に申します非核兵器国は、核兵器を保有しないということを義務づけられているわけでございます。その状態自体が、もしその国の判断におきまして、その安全保障を危殆に陥れるようなものであると判断されるに至った場合という仮定の議論として申し上げたつもりでございます。
  211. 渡部一郎

    渡部(一)委員 これはまずいと思いますね。あなたは、非核保有国である日本安全保障上危険に瀕すると考えれば、非核三原則も何もたちまち破ると言っているわけですか。私はまだ質問の形式で言っているのですよ。あなたの言っていることを聞きますと、そう聞こえますよ。これは重大な発言ですよ。
  212. 大川美雄

    ○大川政府委員 ただいまの第十条の第一項にございますとおり、「この条約の対象である事項に関連する異常な事態が自国の至高の利益を危うくしていると認める場合には、」主権の行使として、その締約国は「この条約から脱退する権利を有する。」その際に手続的には、ほかの締約国及び安全保障理事会に対して三カ月の事前通告を行うことを要請されておりますし、その通知の中には、自国の至高の利益を危うくしていると認める異常な事態について記載することになっております。(渡部(一)委員「読み上げているのを聞いているんじゃないんだよ。これはえらい問題ですよ。外務省、相談した方がいいよ」と呼ぶ)
  213. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 お尋ねとお答えとの間に、想定している事態についての違いが多少あるようでございますから、私から申し上げておきます。  この十条、これはこの条約に加盟する国すべて平等に適用されるわけでございますから、国の中には、わが国のように非核三原則というようなものを国の基本方針として持っております国もございます。また、そうでない国もあろうと存じます。わが国の場合には、したがいましてこの十条というものが、ただいま第二条によって決められているような義務を放棄をして、第二条に禁ぜられているようなことを積極的に行うという事態は、わが国については起こり得ない、これはわが国の国の意思に基づくところの非核三原則のゆえでございます。しかし、わが国のような国の基本政策を持っていない国について申しますならば、この十条の結果どういうことになるかと申しますと、主権の行使として、加盟いたしましたこの条約から脱退をする権利を持つわけでございます。そのことは、即二条に禁じられていることをするということになるかどうかは、そういうことには限りません。この条約による規制から脱するというだけでありますから、そのような国についてもすぐに核武装するといったようなことになるわけではない。しかし、この二条によって禁じられている禁から自由になるということは、条約の解釈としてはそのとおりであろうと存じます。  わが国の場合には、重ねて申しますように、非核三原則がございますから、この条約の結果として、と申しますよりは、そのようなわが国基本的な政策の結果として、二条に定められておるようなことをわが国が積極的に行うということはない、こう解すべきであると思います。
  214. 渡部一郎

    渡部(一)委員 ただいまの外務大臣の御答弁は、先ほどの局長の答弁を取り消されたものと理解すべきものか、局長の答弁はいまの大臣の答弁のごく一部であると理解するのが正しいのか、承りたい。
  215. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 私が責任者でございますので、私の答弁をもって外務省の答弁とお受け取りをいただきたいと思います。
  216. 渡部一郎

    渡部(一)委員 そうすると、局長、もう一回言っておきますけれども、さっきのあなたの言ったことはとんでもない事態を巻き起こす言論ですから、お取り消しになるなら、どうぞ。
  217. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 政府委員は一般的な条約の解釈を申し上げたものと存じますけれどもわが国が特殊な立場にあるということをつけ加えて申し上げれば、なお誤解が生じなかったと思います。私が申し上げましたことをもってひとつ政府の答弁とお受け取りをいただきたいと思います。
  218. 渡部一郎

    渡部(一)委員 じゃ、私の質問は終わります。
  219. 鯨岡兵輔

    鯨岡委員長 これにて渡部一郎君の質疑は終わりました。  永末英一君。
  220. 永末英一

    永末委員 外務大臣に伺います。  先ほど外務大臣が設定せられた状況を前提にしてでございますが、海洋法会議で領海が十二海里になる体制ができた、しかしながら、いわゆる国際海峡における自由航行は、関係国の意見が合わずにとうてい成文化もできず、実体的にも合意がなかった、こういう状況のもとで外務大臣は、わが国としてはそういう状況のもとであっても領海十二海里は宣言すべき時点に立ち至っているとお考えですか。
  221. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 それは、非常にむずかしい、しかし十分理解のできるお尋ねでございますが、私どもとして、政府としまして、領海は基本的にやはり十二海里にすべきものであろう、しかしその時期、態様についてはなお検討の余地があると申しておりますのは、海洋法会議が成功して、国際条約としての海洋法が成立するということを期待もいたし、またその可能性は決して少なくないと考えておりますので、時期、態様はなお検討を要すると申しておるわけでございます。  そこで、仮定の問題として、海洋法会議が全く流産をしてしまって、海洋法というものが成立しないということが非常にはっきりしてしまった状態でどうするかということでございますが、その場合にはやはり十二海里にする、しないということを全体の国益との関連で考えなければなるまい、こう思っております。
  222. 永末英一

    永末委員 十二海里問題は、海洋法会議におきますいわゆる国際海峡自由航行問題が日本政府として判断すべき一つの大きなポイントであると伝えられておりますが、いま国益全般の立場からと、こういうことでございますから、必ずしもこれにこだわらず、十二海里宣言はすることがあり得るという御意思であると解釈してよろしいか。
  223. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 海洋法会議が完全に流産をした、その場合十二海里宣言をどうすべきかということは、その際もう一度関係閣僚の間で協議をいたさなければならない事態であろうと存じますので、いずれの可能性もあるというふうに申し上げますことが正確なお答えであろうかと思います。
  224. 永末英一

    永末委員 いまあなたは関係閣僚と申されましたが、私が一番聞きたいところは、国際海峡の自由航行ということにやはりこだわらなければならぬとあなたは考えておられるのか。しかし、いろいろな国益がございますから、漁業関係もあれば、いろいろございましょう。そういうものを考えれば、この点は外してでも、日本政府としては具体的に十二海里の領海宣言をすべき時点に立ち至っておると判断をしておられるか、もう一度お答えを願いたい。
  225. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 それはお言葉を返すようですけれども、国際海峡というものはその際には成立しない、そういう国際的な通念はないということになりますから、われわれが設定すべきものは、純粋な領海であるか、それとも公海であるかということにならざるを得ません。その場合にはわが国全体の国益が、十二海里にすることが国益上適当であるかないかという判断はもう一遍してみなければならないのではないかというふうに思うわけであります。と申しますのは、国際海峡というようなレジームをわが国だけがつくり出すわけにはまいらぬわけでございますので、領海であるか公海であるかというその選択をしなければならないのではなかろうかと存じます。
  226. 永末英一

    永末委員 私が申し上げておるのは、その際、国際海峡というようなレジームをわが国が勝手につくり得ないのは当然であるということが前提でございまして、先ほどのあなたの状況設定の中で、いまのような状態のもとで十二海里の領海設定をした場合、たとえば津軽海峡は完全なわが国の領海になってしまう、その間には公海部分はない、こういう状況をあなたは判断をされたと思います。そうですね。
  227. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 海洋法会議が流産してわが国が領海十二海里を宣言する、あるいは法定するということになりますれば、これはわが国の主権が完全に及ぶ地域にならざるを得ない、そう考えるべきであろうと思います。
  228. 永末英一

    永末委員 その場合に、新しい十二海里、合計二十数海里になりましょうが、それは非核三原則が行われておる、そういうわが国の領海である、こういうことですね。
  229. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 さように考えるべきものと思います。
  230. 永末英一

    永末委員 米国の水上艦艇、これはその場合にはこれを通過しようとすればやはり無害通航のあかしをあちらが立てねばならぬ、こういうことですか。
  231. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 現在三海里の領海において行われておりますと同様の制度が適用されるべきものだと思います。
  232. 永末英一

    永末委員 そうなりました場合に、米国の水上艦艇から、通常核兵器を搭載していると見られるものであっても、通報なき限り、日本外務大臣核兵器の搭載はないもの、こう判断されますか。
  233. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 いわゆる無害航行の問題でございますから、核常備艦とみなされるものは無害通航と申すわけにはいかないということでございます。
  234. 永末英一

    永末委員 常備艦とみなすのは日本政府の主権行為ですね。
  235. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 と申します前に、核常備艦というものは一般的に国際的な通念がまず一つあろうと思います。しかし、もっともっと厳格に、さらにそれを細かくしていけば、それはさようになろうと思います。
  236. 永末英一

    永末委員 米国潜水艦の場合はいかがですか。
  237. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 原子力を動力として使います潜水艦、これでございますと、これはいわゆる核兵器だというふうには私どもは考えておりません。
  238. 永末英一

    永末委員 米潜水艦には、原子力エンジンで走っているもののうち、いわゆるポラリス型と攻撃型とございますけれども、ポラリスは所在を明確にいたしませんが、やはり通過するときは米側の方でそれぞれが無害である挙証をしなければなりませんね。
  239. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 いわゆる核常備艦と言われておるものにつきましては、これは無害航行の対象にはならないわけでございます。
  240. 永末英一

    永末委員 ソ連の軍艦、潜水艦の場合にも同じですね。
  241. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 同じことでございます。
  242. 永末英一

    永末委員 アメリカが核政策のもとで、その核の搭載云々を明らかにしないのが彼らの政策であることは日本政府もすでに御承知のとおりでございますが、そういう挙証をしてくるでしょうか。
  243. 山崎敏夫

    ○山崎政府委員 御承知のとおり、アメリカといたしましては、核の存在に関しましては否定も肯定もしないという立場でございます。さらに、軍艦に関しましては不可侵権を持っております。したがいまして、一般的に言えばそういう挙証をするということはないと思います。
  244. 永末英一

    永末委員 そういたしますといまの答弁は、黙って入ってくれば、たとえばその船が対潜水艦兵器、対航空兵器、アメリカの資料によれば当然それは核弾頭を積み得るものでございますから、積んでおると見られるものも、黙っておれば日本政府は、いまのような十二海里になった場合の津軽海峡もどうぞお通りください、こういうことに処置をいたしますということですか。
  245. 山崎敏夫

    ○山崎政府委員 先ほどから大臣が御答弁になっておられますように、核を常備している潜水艦、たとえばポラリスのようなものについてはそれ自体がいわば核兵器とみなし得るわけでございまして、そういうものについては、わが方としては無害通航とは認めないというふうな立場をとるわけでございます。
  246. 永末英一

    永末委員 水上艦艇の場合に、アメリカ側の資料あるいは世界で広くその正確さを承認せられている書物等で、アメリカの水上艦艇が核兵器、核弾頭を装備するいろいろな兵器を積んでおることは天下周知の事実である。そういう船がそこへ入ろうという場合にも、あっちが黙っておれば求めない、こういう方針ですか。
  247. 山崎敏夫

    ○山崎政府委員 先ほどから核常備艦の問題について申し上げたわけでございますが、一般的な水上艦艇に関しましては、これは日米安保条約のもとにおいて事前協議の制度がございますから、核の持ち込みに当たる場合には、当然アメリカ側から事前協議があるというふうにわれわれは了解しております。
  248. 永末英一

    永末委員 ソ連の水上艦艇がそこを通る場合には、いまの点についてアメリカと同じ対応をされますか。
  249. 中島武敏

    ○中島政府委員 ソ連については事前協議の制度がないことは御承知のとおりでございますが、事前協議の有無にかかわらず、わが国といたしましては核を積載した軍艦がわが領海を通過するということば無害通航とは認めないという立場をとっておりまして、この立場は当然にそれらの国々も承知しておるというふうに考えております。
  250. 永末英一

    永末委員 アメリカの方は事前協議という仕掛けをわが国が持っておりますから、だから黙っておれば何もないのだということで判断ができるようなことを申されましたが、ソ連の方は何にもないわけでしょう。それから通有の観念として、ソ連の水上艦艇もまた核弾頭を設置し得る兵器を積んでおるとみなされる場合にも、黙っておれば通す、こういうことですかと聞いておるのです。
  251. 中島武敏

    ○中島政府委員 軍艦につきましては、国際法上のその地位にかんがみまして、これを個々の軍艦について検査することはできないということは事実でございます。したがいまして、核搭載の有無を当該外国政府が確認しない場合に、そのことを理由にして無害通航を拒否するということは妥当ではないだろうと思われます。いずれにしろ、当該外国政府がその搭載の事実を確認してくるかどうかという問題に帰するだろうと思います。
  252. 永末英一

    永末委員 積んでおりますから通してくださいと言うてこないから聞いておるのであって、わが国にそういう場合に、三海里から十二海里になろうと、黙って通られたら終わりだ、こういうことになるのかどうか、これを聞いておるのであって、核を搭載していますから通過させてくださいなんというようなことを言うてくるわけはないではないですか。アメリカの場合には通るはずがない、なぜならば事前協議があるからだ、こう言われたわけです。それならソ連はどうだと聞いておるのだから、もっと明確に答えてください。
  253. 中島武敏

    ○中島政府委員 無害通航は外国の船舶に認められるべき国際法上の制度でありまして、沿岸国の側から見ますれば、無害なる通航は認めなければなりませんけれども、無害でないところの通航を認める義務はないわけでありまして、そのような無害でないような通航を認めない権利を沿岸国は持っているわけでございます。したがいまして、わが国といたしましては、いま先生の御設問のような場合に当該核搭載軍艦の通航を認めない権利があるわけでございます。その権利を相手方がどういうふうに認めて現実に実施するかという問題になるわけでございます。先ほどから申し上げておりますように、国際法上軍艦の立入り検査をすることができないということもまた事実でございますので、その国がその沿岸国の持っておる権利を当然に認めて、その沿岸国の権利に従って対処をするということになるだろうと思います。
  254. 永末英一

    永末委員 国際紛争というのは、相手の国がこっちの思うとおりやってくれたら起こるわけはないのであって、いま津軽海峡の話を出しましたが、対馬海峡は現にソ連の軍艦が何遍も通っているわけで、対馬海峡でわが方の領海内を通る場合に、いまあなたの解釈ですと、それを知っておるから、そういうことになっておるから、ソ連の軍艦は核搭載していないだろうといつも日本政府は判定して黙っております、こういうことに聞こえますね。そうですか。
  255. 中島武敏

    ○中島政府委員 事実上の問題でございますが、ただいま対馬海峡については公海部分が存在しておりますので、いま先生のお取り上げになったような事実はないわけです。(永末委員「いやそうじゃない。十二海里になったときのことです」と呼ぶ)その場合、国際法上の権利をある国が当然に無視するかどうかという御設問でございますので、それに対して、ある国が他国の国際法上の権利を当然に無視した事態についてお答えするということが、大変機微な事情があり得るのではないかと思うわけでございます。いずれにしましても、先ほど申し上げましたように、沿岸国としてはそのような権利を持っているわけでございますから、その権利に従って外国も対処をするはずであろうということでございます。
  256. 永末英一

    永末委員 米ソ両国がいわゆる領海十二海里になった場合の国際海峡について自由航行を主張しているのは理由があるわけであります。わが国の場合にも、もし特に領海内の非核三原則を貫こうとしますと、それを貫くだけの手段を講じなければならぬ。いまの局長お話ですと、期待をするだけであって貫く手段はないというぐあいに聞こえるわけですが、これは外務大臣、御検討になりますか、いまの私の質問に対して。
  257. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 他国の権利は尊重しなければならないということが国際間の常識でございますから、この点については、わが国が領海に対して持っておるところの権利というものは尊重されなければならない。米国の場合でもソ連の場合でもそのことは同じことであると存じます。ただ、そのような権利が尊重されなかった場合に、それに対して日本がどのような処置をとり得るかということになりますと、それは具体的な対応の問題として具体的に判断をしなければならないのではないかと思います。ことに軍艦の場合にはさようであろうと思いますが、ただ、わが国としては、そのような権利侵害が起こるか起こらないかということは、やはり絶えず注意をしておく必要がございます。そういたしませんと、もう全くそれが当然のような状態になってはなりません。したがって、そういう注意は怠らずに、もしそのような侵害が行われているらしい疑いがありますときには、注意を喚起しなければならないといったようなことではなかろうかと思います。
  258. 永末英一

    永末委員 防衛庁長官に伺いますが、わが国は核攻撃を受けるおそれは一つもありませんか。
  259. 坂田道太

    ○坂田国務大臣 わが国には核は持たないという基本的な考え方がございます。しかしながら、核の脅威というものがないとは言いがたい。そのために日米安保条約というものが存在するわけでございまして、現在、日本の国を守る国民の強い意識、それに必要最小限度の防衛力、そしてまた三つ目に、日米安保条約がございましたならば、私はその核の脅威はないというふうに思っております。
  260. 永末英一

    永末委員 日米安保条約の機能というのは、わが国が核攻撃を受けた場合には、アメリカはその保有する強大な核兵力でもって、わが国を攻撃した核保有国に対して反対的な、対抗的な力を講じてくれるであろうという期待感、しかし、もしアメリカがそれをやりますと、その攻撃を受けた相手方は核をもって反撃するわけであって、アメリカ側の判断としては、日本に対する核攻撃があった場合に、自分もまた攻撃を受けるということを了承して自分の核力を使う、こういうことになりますから、これはなかなかもってあなたがいま考えられるように単純なことではない。抑止力の論理というものはそこまでであって、私はそんなことを聞いているわけではないのであって、わが国は核攻撃を受けることは全然ないという態度で防衛庁長官の防衛方針があるのかということを聞いているわけです。もう一遍答えてください。
  261. 坂田道太

    ○坂田国務大臣 それはしかし非常に複雑な問題であって、日米安保条約があり、この抑止力が非常に効いておるということが、他国が日本に対して核攻撃をする場合に非常にやりにくくなる、つまり核の敷居が高くなるということにおきまして、戦争が防止される、あるいは核攻撃が阻止されるというふうに私どもは考えておるわけでございます。
  262. 永末英一

    永末委員 いわゆるポスト四次防なるものを考えられて基盤防衛力の整備ということを言っておられますが、この中には核の「か」の字もないわけでございます。したがって、基盤防衛力というものは核に対しての対抗力というものはゼロであると思います。さて、しかしさればといって、核攻撃があった場合の対応策、日本国民の生命を守る対応策、あるいは安全を少しでも高める対応策、これが欠如しておってこの核時代いいのであろうか。われわれは核防条約に参加していて核兵器は持たないということを天下に約束する、これはわれわれの方針である。しかしながら、われわれがそれでもって核攻撃から全く聖域として免れ得るかどうかについては返答はないわけである。したがって、わが国の国民の生命、安全を守る防衛庁長官は、いま私がお聞きしたのは、核攻撃が全くないという前提でやっておられるとしますと、それで一体貫き得るのかどうか。アメリカ抑止力を持っているけれども、その抑止力の破れることは一〇〇%ないのだ、こういう信仰の上にあなたの防衛政策を立てておられるように思いますが、そう思っていいのですか。
  263. 坂田道太

    ○坂田国務大臣 信仰ではないのでありまして、現実に各自衛隊の防衛努力、それからいま申しました日米安保条約あるいは外交努力、そういうものを総合いたしまするならば、日本に対して核の攻撃はあり得ないというふうに考えておるわけでございます。しかし、いま御指摘のような、だからといって、全然核防護というものを考えないでいいかということにつきましては、やはり考えるべきだというふうに思うわけでございまして、これにつきましては、まだ十分とは言いがたいと思います。汚染状況を検知する、測定するための線量率計の器材とか、あるいは海上自衛隊の艦艇の一部に放射能を洗浄するための散水装置というようなものは取りつけておるわけでございますが一しかし十分な防護措置というものは講じられておらないというのが、残念ながらいまの実情でございます。
  264. 永末英一

    永末委員 わが国に対する核攻撃は、私もまた日本国民と同様、求めるものではございません。しかしそれが、いまとっておる諸般の政策を遂行していくならばほとんどあり得ないことだということで国民に臨むのか、それとも、いまあなたは少しは核防護をやっておるというお話ですが、よその国の状態を見ますと、核保有国であれ、核を持たない国であれ、中立国であれあるいはまた核保有国の同盟国であれ、それぞれの程度において核防護をしておることは、これは事実である。わが国の核防護の現状と比べますときわめて格段の差がある。こういうことで一体いいのかどうか。やはりこれからこの世の中で生きていく上については、核攻撃を受けることは望まないけれども、核防護の必要ということは国民に訴えていくことが防衛の責任者として当然ではなかろうかと思いますが、いかがでしょうか。
  265. 坂田道太

    ○坂田国務大臣 その点は御指摘のとおりだと考えております。
  266. 永末英一

    永末委員 先ほど伺っておりますと、たとえばP3Cのごときものをわれわれが対潜哨戒機として採用した場合、このP3Cというのは、その電子機器装置の中で特にソ連の原子力潜水艦の特徴をコンピューターにおさめて、それが一番の中心部として搭載してあると伝えられておる。こういたしますと、もしわれわれがP3Cを導入いたしますと、まさにいわゆるブラックボックスを搭載することになる。だといたしますと、わが海上自衛隊が採用したP3Cはソ連の原子力潜水艦の情報をとってこれをアメリカに通報することになる。アメリカの核戦略の中で一番重要な一つの点は、ソ連が持っておる原子力潜水艦がどこにおるかということをつかまえることが、アメリカ核戦略の重要な一つのポイントであることはこれまただれでも知っておることでございますが、先ほど丸山防衛局長は、P3Cみたいなものがそういう働きをしてもアメリカの核戦略には巻き込まれることにはならぬとおっしゃったが、そんなことはないのじゃないか。アメリカの核の力をかりて、その抑止力をかりて核戦争を逃れたいというわれわれの方針が、ソ連の潜水艦を見つけたい、こういうことで、P3Cを導入した暁において、P3Cの役割りはソ連の原子力潜水艦をつかまえることになるというならば、結果的にアメリカの核戦略の中に入る、こう断定せざるを得ませんが、この点だけをお答え願いたい。
  267. 坂田道太

    ○坂田国務大臣 日本の防衛というのはあくまでも日本国民の防衛でございます。日本国土の防衛でございます。したがいまして、日本の安全というものに脅威を与える国があるとするならば、あるいはそういう潜在的な脅威があるとするならば、それに対して常に安全な措置を考えておく必要があるという意味におきまして、日本の国は海洋国家でございますから、どういたしましても日本の海上を守るために、対潜水艦の能力というものを高めていかなければならぬことは当然だと私は考えるわけでございまして、その必要から、日本の国を守るためにこのPXLというものも必要なんだ、こういうこと、そこが出発だというそこをひとつ御理解をいただきたいと思います。  しかし一方におきまして、日本単独では守れない部面も出てくるから、それについてはやはり日米安保条約に頼らざるを得ない。その一面に関してはまたアメリカと共同して対処をするということも出てこようかと思うわけでございますが、あくまでも日本のこの対潜能力というものは日本の安全のためにある、ここが基本だということをひとつ御理解を賜りたいと思います。しかもそれは日本の憲法がございますから、しかも専守防衛というような世界に類例のない一つの防衛であるということでございますから、その意味において理解をいただけばおのずとそれはおわかりいただけるのではなかろうかというふうに思います。
  268. 永末英一

    永末委員 総理も来られましたので、時間もございませんからやめますが、一般論を聞いているのではないのであって、わが国の次期対潜哨戒機が、わが国の海上自衛隊の潜水艦を探すために使われることはないわけだし、中国の潜水艦か北朝鮮の潜水艦かソ連の潜水艦か知りませんが、それぞれの潜水艦に特徴があり、現にアメリカソ連の潜水艦を探すための兵器を開発をして、それをP3Cに載せておることは天下周知の事実なんだ。したがって、いまわれわれが自力で次期対潜哨戒機を開発するかP3Cを導入するかという場合に、P3Cを導入してその兵器を使うならば当然アメリカの核戦略の中に入るということを、こうはっきり国民に知らせなければいかぬじゃないですか。そこの点だけを聞いている。P3Cを導入いたしましても、一般的に、われわれは専守防衛でございますから、潜水艦を探すのであって、関係ございませんと言い切れるかどうか、もう一遍お答え願いたい。
  269. 坂田道太

    ○坂田国務大臣 日本の安全のためにわが国の防衛というものがあるわけでございます。したがいまして、日本国民を守るためにこそ安保条約というものがあるわけでございます。その限りにおいて日米安保条約というものが働き、その日本自身が守られておるということあるいは安定をし安全であるということが、ひいては日本が位置しておりますアジア諸国において、一つの政治的な安定あるいは平和ということをもたらす、こういう考えだというふうに御理解を賜りたいというふうに思います。
  270. 永末英一

    永末委員 時間が来ておりますのでやめますが、防衛庁長官のお答えは私の聞いておりますこととすれ違いのことをお答えでございます。いずれまた総理から伺います。終わります。
  271. 鯨岡兵輔

    鯨岡委員長 永末英一君の質疑は終わりました。  ただいまより総理大臣に対する質疑を行いますが、質疑者各位は、理事会で決定した持ち時間を厳守されますようあらかじめお願いを申し上げておきます。中山正暉君。
  272. 中山正暉

    ○中山(正)委員 十分間でございますので、総理大臣に簡潔にお伺いをしたいと思いますが、総理大臣もひとつ簡潔にお答えを願いたいと思います。  先国会からの懸案でありますこの核防条約、いよいよこの委員会を、きょうになりますかいつになりますかわかりませんが、きょう、あすで上がりますと自然成立ということになるわけでございます。特に核保有国が、平和利用の分まで、人のは見るけれども自分のところは見ないという大変不平等条約でございます。しかしこの条約は、日本が世界の平和のために貢献しようという意味では大変大きな意義のある条約だと私は思いますので、私もロッキード事件が起こりますまでは余り賛成ではありませんでしたが、ロッキード事件が起こりましてから、私は、ロッキード事件の本質というのは多分デタントの裏づけをしておるのであろう、ドイツとか日本のために。いまの防衛庁長官の御発言は、その意味で大変ちょっと甘過ぎるのじゃないかと思うのですが、フランスがこの核防条約批准していないのは、アメリカがフランスのために核を投げないという、そのために批准をしていないはずでございます。そういう観点から見ますと、ドイツだとか日本だとかイタリアのために核を投げ合うような戦争を避けたい、そのためにある意味での日本突きっ放し、ドイツ突きっ放しというのがロッキード事件の背後にあると私は考えておりますが、それは自分の意見でございますから別にいたしまして、その不平等条約を総理は今国会ではぜひ成立させたいということを考えていらっしゃるその総理のお考え、意欲を披瀝していただき、そしてもしこれが来週の本会議で通ることになりますと、自然成立はいたしません。その際は国会の延長を考えてでも——まあ二足のわらじでございますから、自民党総裁として国会の延長を考えてもこの条約を通そうとお考えになっておられるかどうか、この点をお伺いしたいと思います。
  273. 三木武夫

    三木内閣総理大臣 核兵器を開発しないというのは、多少の例外はあるにしても、これはもう一応国民の総意である。それに従って日本が、六年前ですか、この条約に調印をしておって、六年間批准をしないということは、さまざまな疑惑を国際社会に呼んでおるわけです。これだけの国民総意があってこの問題の批准がおくれておるということは、いろいろな平和利用に対しても核燃料の供給にも影響をしかねないことがありますので、日本核兵器を開発しないというのは国民の決意であるならば、国会批准をされまして、これを日本批准をすることによって一つの核のフリーハンドというものはなくなるわけですから……  したがって、そうすることによって、日本は核の軍縮、やがては核兵器の廃棄、こういうものに対して国際的説得力を持つわけですから、そういうことで世界の平和に貢献をすることが平和国家としての日本の使命達成の上に一つのやはり大きな出発点になる、そういうことで私は批准を受けたい。これが自然成立をねらうというような考え方はないわけで、両院の良識ある御審議を得てぜひともこの国会において、この会期内においてこの条約批准というものを受けたいということでございます。
  274. 中山正暉

    ○中山(正)委員 いまも大変民主主義議会を辱めるような、何と言いますか、暴漢と申しますか、ここへ乱入をしてきたという事態もありまして、この問題には両方の国民が大きな関心を持っておると思います。その意味で、世界の平和に貢献をするというお話でございますが、お隣の日本の二十六倍ある中華人民共和国はこの条約批准しておりません。ところが一九六四年以来十九回ぐらい、最初から原子爆弾の非常に高度な実験をしております。ところが前総理は中国の核は脅威ではない、こうおっしゃった。総理、北京でもしICBMのボタンを押したら何分で日本に着くか御存じでございましょうか。それから中国の核は脅威ではないという前総理のお考えを総理も踏襲なさるのでしょうか。私は、核は脅威だからやめようと言うならばお隣の中国の核は最も脅威である、かように考えておりますが、総理のこの問題に対する御見解を伺いたいと思います。
  275. 三木武夫

    三木内閣総理大臣 中国は核の第一使用、最初に核を使うことはないということを繰り返して述べておりますし、日本が中国を核で攻撃することはあり得ないことでございますから、そういう限りにおいて私も脅威ではないと考えておるわけでございます。
  276. 中山正暉

    ○中山(正)委員 その御答弁に対して私は大変不満でございます。これは、条約というものはパイの皮みたいなものであるとレーニンが言っておりまして、それは中身を食うために、破るためにあるんだという話がございますし、特に毛沢東語録の中にも銃口から政権が生まれる、豚に羽が生えて飛ぶまではこの原則は変わらないと言っておりますが、恐らく豚の背中に羽が生えて飛ぶことはないと思います。  私は重ねてお伺いをいたしますが、世界の核が脅威だとおっしゃるならば、それでは日本も世界に脅威を与えないという意味ならば、核の二面性といいますか、平和のための核だという言葉が成り立つわけでございます。私は、この条約批准する意味は、核というものは脅威である、だからその危険の伴うものは持たないんだという意味でわれわれがこれを批准する限りは、総理の言う中国の核は脅威ではない——日本に二分で飛んでまいります。私が物を言って総理の耳に達するのは、これは音速でございますが、音速の二十五倍で飛んでまいりますから、ああもすうもないわけでございます。それが、向こうが言うからそれでいいんだと言うならば、かつてソ連とも一年間まだ不可侵条約が有効であったわけでございますが、一方的に踏みにじられたという経験がございます。そういう御発言に対して私はもう一度お伺いをしたいと思いますが、中国の核は脅威でございましょうか。相変わらず、ないとおっしゃるのでしょうか。
  277. 三木武夫

    三木内閣総理大臣 いま中国がしばしばそういうことを声明をしておりますし、私もそうであろうと——中国はいま核でよその国を攻撃するということは、ただ向こうが言うからというわけでなくして、考えてみてもそうであろうと考えておりますから、いまそれが、中国が核兵器を開発したことが日本の安全に対して非常な脅威を与えているというふうな実感はないのですけれども、しかし御指摘のようにあらゆる場合に、これは万一のことを許されませんから、そういうことで日米安保条約というものも大きな存在の理由を持っておるものでございます。
  278. 中山正暉

    ○中山(正)委員 日米安保条約アメリカの核の抑止力を信じての条約でございますが、これと非核三原則、持ち込まずという原則は矛盾をしませんか。
  279. 三木武夫

    三木内閣総理大臣 核というものは、その国に持ち込まなければ抑止力にならぬというよりかは、むしろ核の抑止力というものは、いろんな長距離弾道弾もございますし、あるいはまたポラリス潜水艦もあり、実際核抑止力というものはその国に持ち込まなければ抑止力にならぬとは私は考えないわけです。そういうことで、日本が核を実際に持ち込ませなければ抑止力は働かないとは考えていないものでございます。
  280. 中山正暉

    ○中山(正)委員 それでは日本に危険が迫ったときにアメリカは安保条約を、たとえばPLOを自由民主党が招待するという大変なことが自民党で行われておるわけでございますが、そういう事態の中でもアメリカは安保条約で必ず日本のために核を撃つようなことがあると、やはり信じておられるわけですね。
  281. 三木武夫

    三木内閣総理大臣 あらゆる攻撃に対して日本を守るというのがアメリカの、これは厳粛な約束であります。これは安保条約を貫いておる精神ですから、それを私は信頼をいたしますが、しかし核というものは、私は抑止力意味がある、もし実際に核戦争が行われてくれば人類は共滅の運命にあるわけですから、核は、核戦争が実際にあって核を非常に保有しておる強大国がこれに応戦して守るという考え方は、私は核というものに対する考え方をそのように考えない。もし日本を攻撃するような国があれば、世界最大の核兵器の保有国であるアメリカ日本を守るという、この危険を冒して日本を攻撃しなければならぬ。そこにやはり抑止力というものの意味があって、現実に核戦争が起こったら人類はおしまいだと思う。それをどのようにして未然に防ぐかというところに核による戦争防止政策基本がある、こう私は考えます。
  282. 中山正暉

    ○中山(正)委員 キューバをソ連が捨てない限りはアメリカは台湾を捨てないであろうという話を聞いております。それからソ連の第二撃はアルジェリアから撃たれるであろう、アメリカの第二撃はグアムあたりの南洋諸島から撃たれるのではないかという、表のデタントとは逆に、もうよその国のことは考えていられない、アメリカ自身の危険をどう防ぐかということで、大変アメリカ自体も人のことを考えていられないときが来たと思います。その意味で、私はまだ四十三でございますので、これから孫の時代、子供の時代、この核防条約批准するに当たりましては、ひとつ日本の安全というもの、これからアメリカソ連の間でどう生きていくかということを、総理、哲学論お得意でございますので、私は哲学論を大いにやっていただきたいと思います。これをお願いしまして、まことに残念でございますが、時間でございますので終わります。ありがとうございました。
  283. 鯨岡兵輔

    鯨岡委員長 中山正暉君の質疑は終わりました。  次に堂森芳夫君。
  284. 堂森芳夫

    堂森委員 三木総理大臣が総理として外務委員会に初めて出席をされたのであります。もっとも昨年の十二月でありますか、外務大臣の臨時代理として出席になったことはあります。この機会でありまして幸いでありますので、核拡散防止条約審議に際しまして、一、二の点を関連してお尋ねしたいと思うのであります。  すでに米ソ両国がデタント外交を展開してまいりましてかなりの時間を経過しております。そしてSALT交渉を中心としたキッシンジャー外交が展開されてまいりました。しかし、すでに総理は御承知のように、このデタント外交も今日では、フォード大統領はそういうデタントという言葉はもう使わない、三月一日でありましたか、そういう声明を発表しております。そしてこれからは力の外交をやっていくのだ、こういう意味の声明をいたしておるのであります。しかし、わが国の外交は当然平和を基調とした外交でなければならぬと思うのでありますが、今日のアメリカ政府の、デタント外交をやめて力の外交によって外交を展開していくという情勢に対しまして、総理はどのようなお考えを持っておられるのでありますか。またどういう態度で今後外交を推進していかれるのでありますか、総理のお考えをまず伺っておきたいと思います。
  285. 三木武夫

    三木内閣総理大臣 安全保障というものは各国にとって重大なプライオリティーを持っておる政策でございますから、各国が自分の国の安全保障政策を決める権利を持っておることは当然のことであります。あるいは力というものも否定できない面がございますけれども日本はよその国がどういう政策をとるにかかわらず、力によって日本のこれからの外交政策を展開しようという考えではないわけで、日本は平和国家としての理想を貫きながら日本の安全を確保していきたいということでございますから、他国の政策の変更に煩わされることなく、日本日本としての理想をあくまでも追求していく所存でございます。
  286. 堂森芳夫

    堂森委員 じゃ、アメリカ政府、フォード政権が力の外交に転換をしたという姿をあなたはどうお考えでございますかと、こういうことを聞いたわけであります。
  287. 三木武夫

    三木内閣総理大臣 いま大統領選挙アメリカで行われておる。堂森君も、その遊説の途上でいろいろな発言が行われておりますが、これを一々とらえて日本の総理大臣がコメントする——私は、アメリカ政策というものは、いままでのような政策がすべてもう今度は力で来いという政策に転換したという、そういう断定のもとにお答えをすべきまだそういう段階ではないと思います。
  288. 堂森芳夫

    堂森委員 三木総理らしからぬ答弁だと私は思うのであります。非常に不満であります。あなたはもっと率直に御意見を述べてもらいたいと思うのでありますが、それ以上——私、時間が二十分しかないのですから……。  そこで、非核三原則というものは従来からいろいろ言われておりますが、非核三原則というものは総理は何であるとお考えでありましょうか。いろいろな場合に言っておられますが、きょうは核に関する委員会でありますから、非核三原則とは何であるか、こういうことについてあなたからもう一遍承っておきたいと思います。
  289. 三木武夫

    三木内閣総理大臣 私が申すまでもなく、核兵器はこれをつくらない、開発しない、それからまた持たず、日本が持つことはない、また持ち込ませないというのが三原則であると思います。
  290. 堂森芳夫

    堂森委員 それはわかっておるのです。核は持ち込まない、つくらない、持たない、それはわかっておるのです。これは何でございますか。三木内閣の基本的な政策でございますか、あるいはもっと違ったものでありますか、そういうことを聞いておるのです。内容はわかっておるわけです。
  291. 三木武夫

    三木内閣総理大臣 これは自民党内閣の基本的な核に対する考え方でありますと同時に、堂森さんも加わって国会の決議も行われておりますから、国民の総意の決意であると受けとめておるわけでございます。
  292. 堂森芳夫

    堂森委員 よく国是であるという言葉が、国会でもあなたもそういう答弁をしておられます。そこでこの非核三原則は、予算委員会等で、いかなる場合でもこの三原則は守られるのだという御答弁をあなたはしばしばしておられる。ところがかつて、宮澤外務大臣は、しかし条約としては、条約そのものとしてはあるいはイエスもノーもということが、アメリカ側の申し出があった場合に、条約論からいけばそうでもない場合もあり得るというふうな意味の答弁をされたことがあったように私は記憶しておるのでありますが、総理はいかなる場合でも、平時はもちろん、非常時といえども核は絶対持ち込むことはないということは変わりがないというふうにお考えでございましょうか。改めてこれを承っておきたい、こう思います。
  293. 三木武夫

    三木内閣総理大臣 安保条約の事前協議の中に核兵器の持ち込みは事前協議の対象になる。そういうことを宮澤外務大臣は答弁をなさったものだと思いますが、私はあらゆる場合に非核原則は堅持いたします。
  294. 堂森芳夫

    堂森委員 これは今後いかなる政府といえどもその方針は変わらぬというふうにあなたは信じておられますか。もう一遍承っておきたいと思います。
  295. 三木武夫

    三木内閣総理大臣 一自民党内閣の一つ政策ばかりでなしに、国権の最高機関である国会の決議もあるというところにこの政策の重みがあると考えております。
  296. 堂森芳夫

    堂森委員 今後不変のわが国の、よく政府が答弁でお使いになるように国是である、こういうふうに解釈してようございますか。もう一遍承っておきたい。
  297. 三木武夫

    三木内閣総理大臣 国是とかいろいろな言葉がありましょうが、これは基本的な政策である。日本語はあいまいなこともございますからね、国是とかいろいろ言うと。基本政策である。
  298. 堂森芳夫

    堂森委員 時間がありませんから、先に移りますが、核を持たない国の安全の保障のために、核兵器が使われないような国際的な協定が結ばれるべきである。これは、核を持たないわれわれがこの条約批准した場合には当然あるべきで、そういう協定が結ばれなければならぬと思うのでありますが、そういうような核使用禁止の、核を使用しないような国際的な協定を当然結んでいかなければならぬ、結ばれなければならぬと思うのであります。  そこで三木総理は、わが国の総理として、今後外交の基本としてこの条約批准されればされるほど、そうした核を持たない国に核による攻撃が加わらないような、核を使用しない国際的な協定を結ばれるような努力を率先してすべきであると思いますが、決意のほどを承っておきたいと思います。
  299. 三木武夫

    三木内閣総理大臣 私は堂森君の考え、全く同感であります。そういう核に対する、核攻撃に対する脅威が人類の中から除去されることは平和的な国際環境をつくる一つの基礎になる。賛成でございます。努力をしたいと思います。
  300. 堂森芳夫

    堂森委員 いや、そういうことじゃなしに、あなたは三木内閣の首班として、それでは今後具体的にどういうような努力をしていこうとしておられるのか、もっと具体的に御答弁を願いたい。国民がみんな聞いておるものですから、やはりそうした基本的なあなたの態度を示してもらいたい、こう思うのであります。
  301. 三木武夫

    三木内閣総理大臣 核の問題というものは、いろいろ段階的に進めていかないと実効が上がらぬ面もございます。日本は軍縮委員会の中に入って、いま堂森さんの言われたような考え方の基礎の上に立っておると思います。そういうことで努力をいたしてまいりましたが、核防条約というものを批准せないでいろいろなことを言っても、日本の国際的説得力というものは弱いわけですから、そういう点でこれが批准を受ければ、それを機会日本は平和国家としての理想、その意味から最終的にはそういう国際的な条件が醸成されることは日本の好ましい方向でございますから、そういう説得力を背景にして一段と努力をしたいというのが三木内閣の考えでございます。
  302. 堂森芳夫

    堂森委員 くどいようでありますが、もっと具体的な、こうやっていくという、そういう構想はあなたにないのでございますか。そういう通り一遍でなしに、こういうふうにやっていこう、国際連合においてこういうようにやっていこうとか、あるいは日米間には安保条約がある、そして後ほど同僚の河上さんからも聞きますから避けますが、日本には核を持ち込まぬとか、そういう条約を結ぶとか、何かもっと具体的な政策をお持ちでなければならぬと私は思うのでありまして、そういう点についてもう一度くどいようでありますが、お尋ねしておきたい。
  303. 三木武夫

    三木内閣総理大臣 いままで日本のやってきたのは、軍縮会議などでも核実験の禁止、こういうことは熱心にやってきたわけです。そういうことで、実効性のあることを一歩一歩という考えでございましたけれども堂森さんの言われることが終局的には一番理想に近いわけでございますから、今後こういう——とにかくこの核防条約批准を受けないということは、国際社会で説得力が弱いですよ。これを機会に、いままでも努力をしておりましたが、国連の場、軍縮委員会の場等において、そういうことを最終の目標として一段といろいろな提案を行って努力をしていきたいと思います。
  304. 堂森芳夫

    堂森委員 いろんな場で日本の内閣が、世界における唯一の被爆国として、やはり具体的に先頭を切って、そうした核使用の禁止の条約にあらゆる努力を払うという具体的な構想があっていいと私は思うのです。外務大臣いらっしゃいますが、外務大臣はどういうふうな構想をお持ちでございましょうか。外務大臣にお尋ねしておきたいと思うのです。
  305. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 これは午前中にもお答えを申し上げたことと関連をいたしますが、私は考え方として、堂森委員のようなお考えというものはわれわれとして基本的に賛成ができる、そういうふうに努めるべきものであろうと存じます。先ほど総理も言われましたように、やはり核兵器の開発をまずとめるということになれば、実験を禁止していくということが開発をとめます非常に有効な方法でございます。それにつきましては私どももずいぶん努力をしてまいりましたし、また日本の地震探知能力も、そのために提供をする用意もあるということを申してまいりました。ようやく地下核実験も、どうも報道によりますと、米ソで査察を含めました約束ができるのではないかというふうに伝えられております。そういうところから積み重ねてまいりまして、最終的には廃棄に向かって進むということでございます。この条約も、確かにいま持っておるものに廃棄せよとは言っておりませんけれども、これ以上持つものをふやさないということは、私は一つのいい方向であると思いますので、けさほども申し上げましたように、そういうじみちな努力を続けていきまして、場合によりましてはまた非核地帯といったようなものも、これはわが国がすでにそうなっておりますけれども、そういうようなものも進めていくこともよろしいであろうと思います。最終的には廃棄に向かいたいと思うのであります。もちろん現実には実効性の問題、査察の問題等といろいろなことがございます。ございますが、実効性というものはやはり年を追って積み重ねていくべきものであって、すぐに実効性がないから、構想そのものが考慮に値しないというふうに考えるべきではないというふうに考えております。
  306. 堂森芳夫

    堂森委員 外務大臣から御答弁がありましたが、非核地帯の設置ということ、これは私は、わが国は当然国際のいろいろな場でもっと積極的にその実現のために努力すべきだと思うのであります。三木総理、構想をお持ちでなければならぬと思うのです。すでに外務大臣はそういう意図をいろいろ答弁されましたが、総理はどういう構想がございましょうか。これは大事なことであります。
  307. 三木武夫

    三木内閣総理大臣 まず非核地帯という場合に、日本の場合はアジアという、私実際に考えて、アジアをひっくるめて非核地帯にいますぐにするという国際的環境は、まだそこまで条件は熟しているとは思わないんですよね。しかしその考え方というものは私も賛成でございます。今後そういう国連の場もございますし、アジア諸国とも接触する場合があって、そういう一つの国際的な環境をつくるということに努力はいたす考えでございますが、正直に言って、すぐにアジアでそういう国際的環境が、一つの条件がもう整っているとは思ってはいないわけです。だからといって努力しないわけではございませんが、努力の価値のある問題であることは同感でございます。
  308. 堂森芳夫

    堂森委員 いま総理は、そういう機運がまだ十分に盛り上がっているような国際情勢ではない、こうおっしゃいます。そうならこそ、わが国の総理であるあなたは、一層努力をしなければならぬと思うのであります。私はそういうような弱い態度でなしに、もっと具体的な構想を持って非核地帯の設置、そういうものを世界的に大きく広げていくような、実際に行われるような政策をあなたは実行すべきであると思うのでありますが、もう一度重ねて御答弁を願っておきたい、こう思います。
  309. 三木武夫

    三木内閣総理大臣 たとえばいままでラテンアメリカにそういう条約があって、ソ連は入らない、批准しないわけですから。そういう問題もありまして、現実的にまだ国際環境というものはその条件は熟していないと言ったのは、こういう現実の例もあるわけでございます。     〔委員長退席、水野委員長代理着席〕 しかし、これは一つ考え方としては、ワンステップとしては考えられるわけでございますから努力はいたしますけれども、そういうこともあるということも頭に入れて、現実にはなかなか一気にそこまでいかぬだろうという感じを持っておることを率直に申し上げたわけでございます。だからといって努力をする価値はないとは思っておりません。
  310. 堂森芳夫

    堂森委員 もう時間がありませんから、私総理の答弁には非常に不満なのであります。もっと積極的な態度をもって今後も臨んでもらいたいということを要望したいのです。  それから科学技術庁長官も来ていらっしゃいますから、この核防条約批准審議機会に、平和利用について、安全性の確保について、査察あるいは規制等について私は非常に重要な問題がたくさんあると思うのです。これについてあなたからも具体的に答弁をお願いして、時間がありませんので終わりたいと思っておりますから、答弁願います。
  311. 佐々木義武

    ○佐々木国務大臣 私、お説のように原子力の開発のためには安全の確保というものは最大眼目で、一番重要な問題であることはお話しのとおりでございます。このためには安全そのものの研究と、実際それが安全であるかどうかという検査、審査いわば規制の問題、それから国民にそれに対して御理解いただくという三つの範疇があるのじゃないかと私は思います。  そのいずれにおきましてもただいま一生懸命努力中でございまして、特に二番目の規制の問題、行政内容等をどうするかという問題に関しましては、内閣の有沢さんが主宰しました委員会の答申を中心にいたしまして、今後さらに強化してまいりたいというように考えております。
  312. 堂森芳夫

    堂森委員 終わります。
  313. 水野清

    水野委員長代理 河上民雄君。
  314. 河上民雄

    ○河上委員 いま堂森委員から三木総理にいろいろお尋ねいたしましたが、その中で、三木総理は非核三原則の厳守については少なからざる情熱も披瀝されておるわけでございますけれども、その中で、いま堂森委員から核の持ち込みはしないという原則を日米間で条約化できないだろうか、そんなことも考えてみてはどうかという提案がございました。それに対しまして従来は核の存否、配置については一切これを公表しない、こういうのがアメリカ基本政策である、こういうことで御答弁が繰り返されてきたのであります。  しかし、きょう報道によりますと、アメリカ合衆国とスペインとの間の友好及び協力条約が本年一月二十四日マドリードで調印され、本条約アメリカがスペイン領土内に核兵器を貯蔵しないことを明文化しているというふうに伝えられております。政府はこの事実を御存じでいらっしゃいましょうか。
  315. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 そのような事実を存じております。
  316. 河上民雄

    ○河上委員 そういたしますと、従来核の持ち込みはしないということにつきましては、政府アメリカ日本の立場を尊重するというような非常に間接的な表現しかアメリカ国内法の関係からできないということで、それがまあ筒いっぱい取り得る保障であるということでございました。しかし、このようにアメリカとスペインの条約、これがいま外務大臣も認められましたように明文化されているといたしますならば、これまでのアメリカ基本政策が根本的に修正された。核の存在あるいは不存在を明示しない、それが核の抑止力である、そういう政策から一歩踏み出している、こういうように解釈するのが当然でありますけれども、この点につきまして政府はそのように理解をされますか。
  317. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 この条約及びその背景につきましてわが国は当事者でございませんので有権的には申し上げかねるわけでございますが、条約の補足を読んでみますと、スペインのソイルの上にはと書いてあるようでございますので、恐らく陸上と解すべきかと思いますが、陸上には貯蔵をしないということが書いてあると存じます。したがいまして、わが国の非核三原則の立場と比べてみますとそれはかなり限られたものである、いわゆるその他の場合について何もこの条約が触れておらないということのように存じます。  しかしながら河上委員の言われますように、少なくともスペインの陸上には貯蔵をしないということを言った限りにおいて、その部分に核兵器がないということを言ったことにはならないかというお尋ねは、私は論理的にはそのように肯定すべきものであろうと存じます。アメリカには御承知のように原子力法等がございまして、基本として核兵器の有無について言わないということは、依然として米国政府基本方針であるように存じますけれども、時として西ドイツの場合あるいは韓国の場合等について言及をすることがございますので、今回の場合もそういう意味では例外的にそれを条約という形で約束したものであろうというふうに考えております。
  318. 河上民雄

    ○河上委員 従来議会の証言などで、アメリカ政府高官がそういう言及をすることは例外的にあったかもしれませんが、条約でこれを明記したということは今回が初めてではないか。その限りにおいて、従来日米安保条約の解釈の基本にあったアメリカ基本政策というものについて修正がなされている、一歩踏み出したものであるということは十分にお認めになると思いますが、いかがでしょうか。
  319. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 恐らく条約の形でこのように明記いたしましたことは最初ではなかろうかと存じます。ただわが国の場合に御言及がございましたが、わが国の場合には、いわゆるこれが事前協議の対象であり、しかもこれについてのわが国の非核三原則はしばしばアメリカが尊重するということを繰り返し申しております。わが国の場合の方が、陸上における貯蔵といったような限られたいわゆる禁止条項よりはるかに広いものを持っておりますので、日米間におきまして私はただいまの取り決めをもって十分に満足すべきものと考えておりますけれども条約という形で部分的にもあれ、表現をしたのは恐らくは最初ではなかろうかと存じます。
  320. 河上民雄

    ○河上委員 確かにアメリカ、スペイン間の条約の対象範囲というものはわが国の非核三原則よりも限定されているということは事実であろうと思いますが、しかし質的に核の存否をあるいは配置というものについて一切公表しないというアメリカ基本政策から一歩踏み出したものであるということは事実であろうと思います。従来この委員会におきましてもあるいは他の委員会においても、繰り返しアメリカ基本政策を盾にして答弁をされてこられました政府としては、やはりこの際、アメリカにこの点はどういうことなんだということを照会する必要はお認めになりませんか。
  321. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 先ほど条約として初めてだと申し上げました。二国間条約としては初めてというふうに厳格には申し上げるべきであったかと思います。と申しますのは、ラ米の非核地帯の条約のようなものにアメリカは加盟をいたしておりますから、これは多国間条約でございますが。  このスペインとの協定につきましては、私どもそれができました段階で存じておりまして、この規定につきましても米国政府の意見を聞いております。それに対しましては、原子力法等による核兵器の存、不存を言わないという基本政策に変わりはない。ただこの場合例外的に、これにはいろいろな事情があったのでございましょうが、これは私どもの十分に知るところではございませんが、恐らくその中には、過去において核兵器を搭載したと伝えられましたB52でございますかがスペイン近くに落ちたという事件があったりいたしましたので、いろいろ背景があったのであろうと思いますが、とにかく例外的にあのような規定を設けたという説明を受けております。
  322. 河上民雄

    ○河上委員 いま外務大臣は非常に大切なことを言われましたが、スペインの場合、理論的にというよりも事実として核を搭載した飛行機の墜落というような事件がスペイン国民に衝撃を与えた、そういう事実が背景にあってこういう例外的というか、一歩踏み出した条約というものが結ばれた、こう言われたのでありますけれども日本は、その点世界の中でも歴史的に見ても唯一の被爆国というもっと厳然たる背景というものがあるわけでございます。そういう点から考えまして、日本こそ核の持ち込みをしないという約束をはっきりと条約の形でかち取る努力を今後していかなければいけないのじゃないか、それがたとえアメリカ基本政策の大枠の中から一歩踏み出すものであっても、日本としてはそういうものを要求するのが日本政府の責任者としての使命ではないかと私は思うのであります。そういう意味で、新聞を拝見いたしますと、アメリカ政府筋ですらこれを機会に対日改定も考慮する、二国間条約ということをいま外務大臣が言われましたが、対日改定も考慮するということを示唆していると伝えられておるわけでございます。そういうようなことでございますので、いまここに突然報道せられましたこのことし一月の条約でございますけれども三木総理大臣、ひとつこれは、スペインの場合は一台の飛行機の墜落事故からそういう非常な衝撃の中でこういう条約が結ばれてきた、そういう背景を考えますときに、日本の民族的な、世界にただ一つの非常に痛切な経験というものを踏まえて、今後そういう努力をされるべきではないか。     〔水町委員長代理退席、委員長着席〕 それが、先ほど来非核三原則につきまして首相がるる披瀝されましたその信念にこたえる道ではないかと思うのでございますが、ひとつ総理の今後の御信念を承りたいと思うのでございます。
  323. 三木武夫

    三木内閣総理大臣 日本の非核三原則というものはもう世界的にも有名でございまして、これはアメリカも理解し尊重するということをしばしば言っておるし、ここに肖像がある佐藤さんのノーベル賞も、これが主たる原因になっておるぐらい世界的にも知れ渡っておるわけでございますから、アメリカがこれを理解して尊重するということでございまして、核兵器を持ち込むような事前協議の条項はあるにしても、アメリカはこれを持ち出すことはないと私は考えておりますし、いまさら条約を改正して再交渉する必要はない。それほど日本の非核三原則というものは世界に知れ渡っておる。これがなければ、条約の中に明記しなければ核兵器日本に持ち込んで、日本国民が国会の決議までした非核三原則を崩すようなことはあり得ない。したがって、スペインでそういうふうに二国間の条約ができたから直ちに対米交渉をして条約の改正をする必要はないと私は考えております。
  324. 河上民雄

    ○河上委員 総理は、スペイン政府がなぜこういう条約アメリカと結ぶに至ったかというその背景というものを考えていただきたいと思うのです。やはりそこには国民的な体験というものがあるわけでございまして、したがって、きょうの夕刊に報道せられておりますことで、あるいはいまいろいろ問い合わせも必要であろうかと思いますけれども、しかし姿勢としてやはりこういうことが可能なんだということ、その事実を踏まえて今後さらに努力をしていただきたいと思うのです。自民党が今回の核防条約の問題について、いわゆる六項目などというような意見を発表されておりますけれども、そういう後ろ向きの発想ではなくて、こういう新しい前向きの発想を込めて核政策というもの、非核三原則というものを肉づけしていく努力をぜひしていただきたいと私は思うのでありまして、その点、三木総理の、こんなことはもう必要ないんだ、従来どおりであるというようなことではなく、この事実の持っておる重みというものをもう少しもう一度考えてみる、そういう気持ちで当たっていただきたいと思うのでございますが、総理、もう一度御見解をいただきたいと思います。
  325. 三木武夫

    三木内閣総理大臣 河上さん、私の言うことは後ろ向きでしょうか。あらゆる場合に非核三原則は堅持する、これはいささかも後退をしていないわけですから、そういうことでございますから、何も条約改正、もう一遍アメリカと再交渉をしなければ後ろ向きだというふうには私は考えないわけであります。これは国会の決議も背景にあるし、政府がこうして国民の前に非核三原則は堅持するということを言っておるのですから、これは何にも後退ということには当たらぬのではないかというふうに考えるわけです。
  326. 河上民雄

    ○河上委員 時間が参りましたのであれでございますが、私が申し上げたいことは、日本が核全廃に向けて努力するためには、いろいろな手段といいますか道のりというものを探っていかなければならない、そういう意味で、今回のこれがきわめて重大なことであるという受け取り方をしていただきたい。ひとつ外務大臣におかれましても、この問題を十分に検討して、そのよって来る意味というものを十分に探っていただきたい。そのことをお願いしまして、ひとつ大臣のお考えを重ねてもう一度お伺いしたいと思います。
  327. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 それでは少し申し上げますと、スペインの場合にあのような補足協定ができましたのは、従来核あるいは核兵器がスペインの国内に貯蔵されておったと考えられる事実にかんがみて、そのようなことは今後ないということを補足規定で定めたものと考えておるわけでございますが、わが国の場合で申しますと、仮に沖繩を一度離して考えまして、沖繩返還前の内地、これは事前協議の制度がございますから、核兵器が貯蔵されておったと考える理由はない。沖繩の場合に、その点何がしかの疑いがあった、グレーの状態であったかと思います。したがいまして、沖繩返還に際しましてあのように非常に明確な取り決めをいたしたわけでございますから、これで沖繩についての問題も、もしあったとしても解消しておる。したがって、わが国には従来からあった実績がないということ、したがいまして、事前協議の制度をもって十分である。わが国の非核三原則もはっきりしておる。総理の御答弁は、私はそういう御趣旨と考えておりまして、私も同様に存じております。しかし、この条約につきましては、私ども関心を持ちまして、従来からも検討はいたしております。今後ともその間の経緯等につきましてはさらに調べておきたいと考えております。
  328. 鯨岡兵輔

    鯨岡委員長 河上民雄君の質疑は終わりました。  松本善明君。
  329. 松本善明

    松本(善)委員 核防条約についての審議でありますが、この核問題についての論議はわが国国会ではほとんど核持ち込みの問題に集中をしている。いま宮澤外務大臣三木総理大臣は、非核三原則と事前協議の制度があるから国民は心配してないというような主張を得々と述べられましたけれども、いままでの国会論議はすべてこの問題に集中をしております。核部隊の存在でありますとか、あるいは核の持ち込みについての証拠を挙げての質問でありますとか、あるいはラロック証言後の事態でありますとか、あるいはその中では、宮澤外務大臣は米軍は核と共存をしているということも言われる。こういう中で論議が進められてきて、約七〇%の国民は核の持ち込みについて疑いを持っている。そして、世論調査でもこれは明らかになっております。アメリカ政府を信頼すべきだという政府の答弁が何度繰り返されても、この問題、きょうも自民党の議員も含めて核持ち込みの問題が論議をされております。  総理大臣にまず伺いたいのはこの事実ですね。核持ち込みの問題について、いまなお非常に多くの国民が疑惑を持っているということを認められるかどうかということをまず伺いたいと思います。
  330. 三木武夫

    三木内閣総理大臣 このことは、しばしば政府が答えておりますように、領海、領空の通過の場合であっても、これに伴って核の持ち込みが行われることは、装備の重要な変更という事前協議の対象になる。やはり政府は、そういう場合にも、これは認めないという考え方でございます。
  331. 松本善明

    松本(善)委員 総理は途端に自信がなくなったようでございますが、私の聞きましたのは、国民がそこに一番疑惑を持っているという事実を認めるかどうかということについて、まともにお答えにならないで、この事前協議制度をまた説明する。いままでの従来のパターンと全く同じで、それでは解明をされないし、私はそれは総理が自信のなさを示したものと思いますが、そこでお伺いしたいのは、核防条約というのは国民の最も大きな関心事であります核持ち込みを禁止をしていない。これは核不拡散条約などと言いますけれども、これで核持ち込みは禁止されるというようなことを考えるならば、とんでもない大間違いだと思いますが、核防条約が核持ち込みを禁止していない、そういうものであるということはお認めになるかどうか、総理に伺いたいと思います。
  332. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 管理権を他の国に与えないということでございますから、管理権を与えない限りにおいて、持ち込むということ自身はこの条約の禁止しているところではございません。
  333. 松本善明

    松本(善)委員 そこでこの核兵器を持ち込んで、管理権だけは核保有国が持っている。そうして世界にそういう形での核拡散を推進する。こういう条約を核不拡散条約と言うこと自身が、私どもは世論を欺くものだ、こう考えているわけであります。  そこで総理に伺いたいのは、いまもスペインとの核貯蔵禁止条約の問題が問題になりましたけれども、先ほど私が申しましたように国民の不安、疑惑は核持ち込みに集中しているのです。幾ら非核三原則と事前協議制度を説明されてもそうなんです。でありますから、この国民の要求にこたえるために、スペインとの核貯蔵禁止条約も明らかになったので、日本の場合も例外だということでこの核持ち込み禁止ということをはっきりアメリカ側に表明をさせる。もし総理が言われるように、事前協議制度やあるいは非核三原則によってこれが確実に保証されているというならば、アメリカ側でそのことを表明するのは何らむずかしいことはないはずであります。そういうことを条約上の取り決めなりあるいはアメリカ側の意思表示を求めるなりの外交的努力をするという考えが全くないのかどうか、この点を伺いたいと思います。
  334. 三木武夫

    三木内閣総理大臣 前回もお答えを申し上げましたように、日本の非核三原則、これはアメリカは理解し尊重するということを繰り返して述べておりますし、事前協議の中には当然にこの核という問題に対しては事前協議の対象になりますから、現在の一つ日米安保条約条約内において、この問題はあえてスペインのような条約改正を行わずして、私は、そういうことに対してその必要はない、核の持ち込みというようなことはあり得ないことであると考えておるわけでございます。  国民の不安に対しては、政府は、もしそういう国民の不安があるとするならば、これは政府の努力が足りない点でございまして、今後国民に対してよくその理解を得るような努力はいたさなければならぬと思います。
  335. 松本善明

    松本(善)委員 そういう外交的努力をする必要がないという答弁自身が、国民の疑惑をさらに一層大きくさせるものだと私は思うのです。何でもないそういう努力をする必要がないということで突っぱねられるということでは、さらにこの疑惑は深まっているということを言わざるを得ないと思います。  そこでもう一つ、次いでお聞きしたいのは、この非核三原則の遵守について、有事の問題について、有事どうするかということについて、先ほども質問がありましたが、三木総理はこれにまともに答弁をされませんでした。そこでこの際、はっきりお答えいただきたいのでありますが、この問題については、たとえば宮澤外務大臣は、かつて国家存立の危機に立つ場合は非核三原則以前の問題だということを言われて問題になりました。それから、ここにもおいでになります木村俊夫議員が官房副長官の当時に、国の危急存亡、核攻撃を受けるような場合は、非核三原則をまくらに討ち死にすることはできないということを言われました。こういう意見が自民党内にあることは事実であります。私はこの点について、自民党内のこういう意見を三木総理はどう考えておられるか。そしてまたこの問題につきましては、私は本会議で質問をしたことがあります。それについては三木総理はやはり明確にお答えにならないで、「有事の際とか、一たん緩急の場合とか、余り文学的な表現で、そしてこの安保条約の運用などというきわめて厳格を要するような問題を、そういうことを仮定していろいろ考えることは、私は適当だとは思わないわけでございます。」こういう答弁をされました。いわゆる有事という場合、先ほど宮澤外務大臣の発言と、木村元官房副長官の発言等を例にして自民党内の意見についての御意見を求めましたが、三木総理のそういうような答弁も踏まえて、明確にこの問題について何と考えているのか、お答えをいただきたいと思います。
  336. 三木武夫

    三木内閣総理大臣 平時、戦時を問わず、非核三原則は堅持する考えでございます。
  337. 松本善明

    松本(善)委員 そうすると、いわゆる危急存亡のときとか核攻撃を受けるような場合であってもこれは同じだ、こういう趣旨でありますか、明確にお答えをいただきたい。
  338. 三木武夫

    三木内閣総理大臣 私はやはり核の攻撃が——そういう核による安全保障というものは、抑止力の面を重要にするわけです。したがって私が、こういう場合はどうだ、ああいう場合はどうだ、一一そういう仮定の上に立ってお答えをすることは誤解を招くおそれもありますので、平時、戦時を問わず非核三原則は堅持するということで御理解を願いたい。
  339. 松本善明

    松本(善)委員 やはり総理は明確にお答えにならなかった。  なぜそういうことが重大かと申しますと、有事ということについては、木村元官房副長官も、やはり有事の場合というより有事をどう解釈するかという問題が問題なんだということでこの問題を答弁をされたことがあります。そういう意味で、単に有事というだけではだめなんで、私が言いましたような質問に対して総理が明確に答えないということは、これは疑惑をさらに高めたものだということを言わざるを得ないと思います。  そうして私は、もう一つこの問題についての国民の疑惑であります核通過の問題について伺いたいと思います。  総理、端的に伺いますが、アメリカの航空機ないし艦船が日本の領海、領空を単に通過をするという目的で日本に入ってくる場合、これも核持ち込みになり、事前協議の対象になるかどうか、この点をお答えをいただきたいと思います。
  340. 三木武夫

    三木内閣総理大臣 核持ち込みと考え、事前協議の対象になります。
  341. 松本善明

    松本(善)委員 この点につきましては、アメリカ側がそのように理解をしておる、核通過の場合も事前協議にかけなければならないという理解をし、そしてそういう義務を負っているという根拠をお示しいただきたいと思います。
  342. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 事前協議と非核三原則との関連でございますが、われわれは、日本わが国と言います場合にそれが領海、領空を含むことは、これは別段のことを言わない限りきわめて明らかなことでございます。わが国は、ずっとそういうことを言ってまいりました。これに対して、米国側から疑問が提出されたことはありません。
  343. 松本善明

    松本(善)委員 その根拠は、言うならば藤山・マッカーサー口頭了解ということになりましょうか、に含まれている、こういうことでしょうか。
  344. 山崎敏夫

    ○山崎政府委員 ちょっと順序を立てて御説明させていただきます。  日米安保条約の第六条の実施に関する交換公文で事前協議の対象とされている「同軍隊の装備における重要な変更」という一項目がございます。そしてこの装備における重要な変更というのは何であるかということにつきましては、藤山外務大臣とマッカーサー米国大使との間で口頭了解が行われておりまして、そしてこれはまた最近も確認されておるわけでございますが、それによりますと、核弾頭及び中長距離ミサイルの持ち込み並びにそれらの基地の建設ということになっております。その場合の同軍隊というのは、日本国に配置されておるか否かにはかかわりなく、安保条約の適用を受けるすべての合衆国軍隊ということになります。したがいまして、具体的に申し上げますと、日本に配置された軍隊、さらにわが国の施設、区域を一時的に使用している軍隊及び領海、領空を通過する等わが国の領域にある軍隊でございます。したがいまして、その意味におきまして、先ほど大臣が御答弁になりましたように、わが国の領海、領空を通過する場合でございましても事前協議の対象となるわけでございます。
  345. 松本善明

    松本(善)委員 総理に伺いますが、アメリカ局長の答弁は全く役に立たなかったのですが、藤山・マッカーサー口頭了解には核通過の問題は全く触れてないのです。  そこで、これは三木総理が外務大臣当時にもこの問題について答弁をしていることについては覚えておられると思います。この問題につきましては、この条約審議の中で私は宮澤外務大臣に聞いたことがあります。そうしたら宮澤外務大臣は、三木総理は外相当時領海というものを日本とはっきり認識しておられたのかどうかというあたりが多少あいまいなところだ、こういう、外務大臣としてはきわめて不見識な答弁だというふうに私は思いますけれども、総理の方は外務大臣の当時、これは正確な答弁であります。といいますのは、昭和三十三年の十月二十七日に衆議院の外務委員会で藤山外務大臣、これは藤山・マッカーサー口頭了解をつくった当の本人がこう言っています。アメリカの軍艦が仮に何らかの形で核武装をしてくることがあっても、日本を目的としてこないというのであれば、必ずしも日本核武装をした、あるいは核兵器を持ち込まれたというふうに解釈するには当たらないと思う。——よく聞いていてくださいよ。  これと同じことを三木総理は外務大臣当時に言われたのです。昭和四十三年四月十七日衆議院外務委員会三木外相は、「通航の場合は持ち込みとは考えていない。港へ入ってきたときにはもう核兵器の持ち込みである。ただ通り抜けるような場合は持ち込みとは考えていない。」とはっきり答弁をされています。  さらにその答弁はその後も維持をされています。それは昭和四十七年四月二十五日衆議院内閣委員会、江崎防衛庁長官は、「日本の領空、領海外を通過する、これはあり得るかもしれません。しかし、かりそめにも本土が利用されて、それが中継地になった形で核が持ち運ばれるということになれば、たとえ通過であっても、それは日本本土への持ち込み、こういう形になるだろうと思います。」中継地にならなければ通過というのは持ち込みにならない、こういう考え方が裏で表明されているわけです。したがって昭和三十三年この藤山・マッカーサー口頭了解ができて以来、昭和四十七年に至るまでこういう態度が一貫してとられてきたわけであります。  そこで総理に伺いたいのでありますが、この解釈は変わったのか、そして総理の前の答弁は間違っていたので変わったのか、変わったとすればそれはいつであるかということを明確にお答えいただきたい。
  346. 三木武夫

    三木内閣総理大臣 いろいろな経過はございますが、政府の統一した見解は、核通過は持ち込みに該当して、事前協議の対象になる、こういう考えでございます。私自身も何か従来の答弁から考えて、その場合に——松本君、後で何か訂正の答弁もないのですか、その中に。
  347. 松本善明

    松本(善)委員 三木総理自身が変えたという答弁はありません。きょう変えたということであればお答え願います。
  348. 三木武夫

    三木内閣総理大臣 速記録をよく見ますが、何かちょっとそれに不備な点がございましたので訂正があったと思いますが、よく速記録を調べてみますが、いずれにいたしましても今日の政府考え方はさように御承知を願いたい。
  349. 松本善明

    松本(善)委員 いつ変えたかということは大事なんです。なぜならば、先ほど私が申しましたような時期には、日本政府も核通過は核持ち込みに当たらないと考えていたのです。したがって、外務大臣に私がかつてこの条約審議の際にこの問題をお聞きいたしました。そのときに、外務大臣は、はっきりと答弁をされておりまして、その時期にアメリカ側が核通過は事前協議の対象にはならない、そういうふうに考えていた可能性はあるだろう、「こういうことをおっしゃっているのだと思います。」「それは私は、あるかもしれない、ないかもしれないと申し上げるよりほかはないだろうと思う、過去に起こったことでございますから。」これは大変大事なことです。先ほど三木総理は、現在の答弁と前の答弁が事実上違うことをお認めになりました。前の答弁の時代には、核兵器の通過ということでこれは事前協議の対象にならないということで、日本に核を持ったアメリカの航空機や艦船が入ってきたことの可能性が十分にあるわけです。だからこそ私は、いつこれが変わったんだ、アメリカ側がこれを理解しているのかどうかということをはっきりさせる必要があるということで伺っているわけですが、いまだにその後明確な答弁がないということは、政府がこの問題について重視もしていないし、それから日本核兵器が持ち込まれていた可能性があるかもしれないという問題について何ら検討していないし、それを防ごうという考えもないということになるのではないかと思います。明確な答弁を求めます。
  350. 三木武夫

    三木内閣総理大臣 こういう点に答弁の一つの不備な点があったと思うのですが、アメリカの軍艦は一般的に同条約及び関係取り決めの規定に従って自由にわが領海通航を行うことを認められている。核を持った場合においては無害通航とは考えられないので事前協議が行われるということで、ちょっとあいまいな点がございましたのでその点を、その答弁の後でそういう訂正を、訂正といいますか、訂正というよりは答弁に少し不備な点があったのを修正したような記憶が私はあるのですが、速記録をよく調べてみます。しかし、今日ではいま申したようなのが政府考え方でございます。
  351. 松本善明

    松本(善)委員 きわめてあいまいであったということを総理もお認めになったわけですけれども、これは核持ち込みという日本の国民の生命とか安全にかかわるような大変な問題についての答弁としては私はいただけないと思うのです。この無害通航の問題とは関係ないのです。というのは、事前協議にかかるかどうかという問題なんです。先ほど来問題になっております核通過と核の持ち込みとは概念が違うということは条約局長も認めたことなんです、この条約審議の中で。核通過の場合もこれは事前協議の対象になるとはっきり明言されますか。
  352. 三木武夫

    三木内閣総理大臣 核通過の場合も領海、領空に対しては事前協議の対象になります。
  353. 松本善明

    松本(善)委員 それをアメリカ側が了解をしているということになれば、日本の上空を航空機が通る場合も、たとえば韓国へ行く場合ですが、日本の領海、領空を通過しないで韓国へ核積載のままアメリカの航空機は行けないことになりますよ。それをアメリカ側は了解しているということでありますか。
  354. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 それは冒頭に申し上げましたとおり、領海も領空もわが国でございますから当然のことであります。
  355. 松本善明

    松本(善)委員 そうすると、アメリカの航空機が核兵器を積載したまま韓国へは日本の上空を通って行けない、こういうことをお認めになった、こういうことでいいのですね。
  356. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 それは当然のことでございます。
  357. 松本善明

    松本(善)委員 それにもかかわらず私がこの問題についてさらに問題提起をしておかなければならないと思いますことは、いま核兵器を持たない米軍というのはほとんどないわけです。このことは宮澤外務大臣も認められました。日本の領海、領空を通過するときだけは特にこれを外してくるということがどうしても理解できない。それはラロック証言以来のことであります。表面の答弁はいまの形でいろいろなされましたけれども、この問題の疑惑は何としても解けないのであります。だからこそ、アメリカ政府に対して、条約上の義務を持ってこの核通過の問題も含めて、核持ち込みはしないという意思表示をさせるとか、条約上の義務を持たせる必要があるということを言っておるのでありますが、この点につきまして総理大臣はその必要がないということを先ほど答弁されましたので、いま改めて——総理はお聞きいただいていますかな。ちょっと困りますね。総理、私がいま申しておりましたことは、もう一回繰り返しますが、宮澤外務大臣の答弁にもかかわらずわれわれが疑問を持つのは、米軍は核兵器と共存をしている、常に持っているということを宮澤外務大臣でも認められた、現に軍事常識から言えばそうなんです。それを日本に来るときだけ外して持ってくるということはだれも考えられない。そういうことをやっているという事実も出ない。だから、これはアメリカ側に核持ち込みをしないということを条約上の義務としてはっきりさせるとか、あるいは、核通過の問題についてもそういうことをいたしません、これを約束させる必要があると言うにもかかわらず、総理は先ほど、そういう努力をする必要はないということを一番最初に述べられた。私のいまの具体的な問題提起に対してもう一度、総理はそういうことを検討する必要もない、そうお考えになるのかどうか、お答えをいただきたいと思います。
  358. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 日米安保条約第六条に基づく交換公文において事前協議という制度が定められておりますから、これはやはり両国を拘束するところの条約に基づく交換公文でございます。この制度が今日まで支障なく動いておりますから、改めてそういうことをする必要は私はないという考えであります。
  359. 松本善明

    松本(善)委員 結局それでは何ら国民の疑惑を解明しない。言葉だけで三木内閣にまただまされるのではないかという、むしろそういう疑惑になるということだけを申しておきましょう。  そして総理に伺いたいのでありますが、核兵器の全面禁止協定締結というのはわが国国会で決議されていることは御存じのとおりでありますし、IPUの決議にもなりました。この核兵器の全面禁止協定締結という問題ができるならば、われわれのこういう論議は全く必要がなくなるわけです。それが必要だ必要だという答弁はされますけれども、この具体的な行動は全くない。私は、IPUで決議されているということは国際世論としてもこれに反対できないということだと思うのです。これを国連で提起をするとか——それはすぐに実らないかもしれませんが、反対する国は一体どこの国だということをはっきりさせる必要もあると思うのです。そういう意味で、国連その他においてこの決議を実現するための外交的努力をする考えが全くないのかどうか、伺いたいと思います。
  360. 三木武夫

    三木内閣総理大臣 日本の国民としてそういう世界を皆望むことは当然のことでございますが、核の問題というものは必ずしも理想が一遍に実現するものではないわけですね。核の問題はその国その国のやはり安全保障上、いろいろ各国の考えがあるわけですから、そういう理想に近づけるために段階的努力というものをすることが、いま松本君の御指摘のようなそういう世界を実現するための最も有効なやり方である。そのためには、たとえば核実験の禁止であるとか、一歩一歩問題を積み上げていくことが現実的であるわけでございますから、したがって、そういう現実を踏まえて、どのように一歩一歩理想に近づけるかという努力を日本はこれからも積極的にいたしていく考えでございます。
  361. 松本善明

    松本(善)委員 この核防条約を結んでからも、米ソだけを見ましても核弾頭は約三倍にふえているのです。核保有国もさらに増加をしておるのです。ちっとも一歩一歩の努力になっていないのです。日本が唯一の被爆国としてやはり核兵器の全面禁止協定というのを世界の世論に訴えていくという直接的な努力をしない限りこれは実現しない。私は三木総理のそのような答弁では、これは国民を結局において、結果においては欺瞞することになるだけだ、この核防条約もそういう性質を持っているんだということを指摘をして私の質問を終わります。
  362. 鯨岡兵輔

    鯨岡委員長 松本善明君の質疑は終わりました。  渡部一郎君。
  363. 渡部一郎

    渡部(一)委員 核防条約審議に当たりまして、骨子となる諸点につき総理にお伺いをしたいと存じます。  まず、核防条約の第一条及び第二条を見ますと、第一条の方においては締約国である各核兵器国は、核兵器その他の核爆発装置または管理を直接、間接に授与をしないことを挙げており、第二条では逆に非核兵器国が、受け取らない方を定義をいたしておるわけであります。一方は渡さないといって、一方は受け取らない、こう来ているわけであります。ところが、この条約の中で最大の弱点とされているのがまさにその点であって、日本の例で言えばアメリカ日本に渡さない、日本アメリカから受け取らないとはなっておりますが、アメリカアメリカの駐留軍に対して渡す分についてはこの条約は制限をいたしておらない、つまり核持ち込みは、同じグループに対する核持ち込みについてはこれは制約をいたしていないという弱点があるわけであります。この問題についてどうお考えになっておるか、まず基礎的な認識を伺いたい。
  364. 三木武夫

    三木内閣総理大臣 日本に駐留するアメリカ軍、それはアメリカ軍であるから核の持ち込みはこの条約の中に、この条約と申しますか非核三原則の中に入らないという考え方は全然しておりません。アメリカの軍隊、日本に駐留するアメリカの軍隊であろうが、核を日本に持ち込むのはいずれの軍隊であろうとも非核三原則の日本は立場から、事前協議においてノーと言うことが日本の方針でございます。
  365. 渡部一郎

    渡部(一)委員 したがいまして、私どもが非核三原則を問題にするのはまさにその点であって、この条約の一条、二条はただいま総理が仰せになったように非核三原則が確立されておればこの穴を埋めることは可能だと私は立論をいたしておるわけであります。したがって、非核三原則、特に問題となるのが核の持ち込みを禁止する部分でありますが、これについて当委員会審議が行われておる間、あるいはもっと言えば、核防条約わが国代表によって署名されて今日に至るまでの六年の間さまざまな議論が行われたわけであります。むしろ多くの疑いが存在していたと言ってもよいわけであります。総理も何回か述べられました。しかし、いよいよ審議の最終に当たって、非核三原則はいかなる場合もこれを堅持なさるのかどうか、またこれは有事、平時にかかわらず、先ほど総理は平時、戦時を問わずと仰せになりましたが、どうでもよろしいのでありますが、特にその国民の関心の的である核持ち込みについてはいかなる場合ももちろんノーであり、平時、有事を問わず、これを認めないという厳たる方針をもって現内閣の方針となさるのかどうか、そこを明言していただきたいと存じます。
  366. 三木武夫

    三木内閣総理大臣 核の持ち込みは事前協議の対象になり、事前協議においてはノーと言う、あらゆる場合にこの三原則は日本の領海、領空において堅持するということが、不変のこの内閣、いまの政府の方針でございます。
  367. 渡部一郎

    渡部(一)委員 政府のこの方針は、いまや政府の方針としてのみでなく、国会の衆議院決議を踏まえ、国是と理解し、これの確保に努める方針であられるかどうかを伺いたい。
  368. 三木武夫

    三木内閣総理大臣 国権の最高機関である国会の決議というものは重い意味を持っておると考えております。
  369. 渡部一郎

    渡部(一)委員 この非核三原則は、将来ともにわたるわが国の大きな国民合意の対象としてこれを堅持し、宣揚されるおつもりがあるかどうか。
  370. 三木武夫

    三木内閣総理大臣 将来のことについて私が予言をすることはできませんが、そのことを期待するものでございます。
  371. 渡部一郎

    渡部(一)委員 この第一条及び第二条あるいは第六条において、特に第六条に象徴的に書かれているのでありますが、「各締約国は、核軍備競争の早期の停止及び核軍備の縮小に関する効果的な措置につき、並びに厳重かつ効果的な国際管理の下における全面的かつ完全な軍備縮小に関する条約について、誠実に交渉を行うことを約束する。」とありますが、現実問題として、現下の国際情勢の中においては、アメリカソ連の両政府において行われているSALT協定は制限の枠をますます大きくするのみで、実質的に核保有量は、ミサイルあるいはSLBM等において協定成立の当時より約四倍というような強大化を示しております。したがいまして、米ソ両国の全面的かつ完全な軍備縮小に関する条約について誠実な交渉を行っているとはとうてい認めがたいのであります。私どもはしたがって、本条約の履行に対し政府はどういう態度で臨まれるのか、こういう条約がすでに空文となりつつある部分があることについてどうお考えでおられるのか、伺いたいと存じます。
  372. 三木武夫

    三木内閣総理大臣 この核軍縮に対しては恐らくもう少し進展を国民は期待をすると思いますが、しかしこの核拡散防止条約というものがなかったならばもっと大手を振って核開発が行われたでしょう。これがやはり核の開発というものに対して一つの抑止的な意味というものに私は意義がある。現にこの条約ができまして以来、幾つかのやはり具体的な成果は上がっておるわけでございます。これは弾道ミサイル要撃ミサイルの制限条約、七二年五月及び七四年七月、設置場所などに対して制限が行われておる。また戦略兵器制限暫定協定七二年五月、また地下核兵器実験制限条約七四年七月、また米ソ・ウラジオストク合意七四年十一月、これはやはり戦略核兵器の運搬手段の総数について制限を加えておる。また、海底非核化条約七一年二月、目下包括的な核実験禁止問題などが審議されている。こういうふうにもしこういう条約というものがなかったならば核軍備競争というものが非常に展開されておると思いますね。これに対して一つ抑止力となった効果というものは、まだ進展が期待どおりにいっていないではないかという御意見はあり得ると思いますが、なかった場合を考えて、これは相当なやはり核軍備競争に対する歯どめの役割りを果たしたという評価は私どもはいたすわけでございます。
  373. 渡部一郎

    渡部(一)委員 そうおっしゃるだろうとは思いましたのですが、私ども核戦争に対する人類的な恐怖と、その予防に対する願いというものにこたえられるような国際政治の進展ではなかったと考えておるわけであります。恐らくその点については総理も全く意見を一にされると存ずるわけであります。したがって私は、これを承認するからには第六条の完全な履行を求めて、わが国外交の力を尽くして努力をするのが当然である、こういう立場から決意を伺うのですけれども、いかがですか。
  374. 三木武夫

    三木内閣総理大臣 この核防条約に対して批准が五年も六年もおくれておるということは、われわれには理解はいろいろできる面もありますが、国際的には、日本は核のフリーハンドを持とうとしておるのではないかという、何か核兵器の開発というものの余地を残そうとしておるのではないかという疑惑を与えておることは事実。  渡部君、この間カナダの上下両院議員が来ておりますが、私に対しても直接そういう点を述べられて、核燃料などに対して何か国際的にいろいろな、ちゅうちょするような動きもあるような兆しもあるわけです。そういうことでございますから、この条約批准をされるならば、その日本が何らかの余地を残そうというような疑惑を与える余地はもうなくなってくるわけでございますから、国際社会において一段と説得力を強くすることは事実です。自分は核防条約批准もしないでおって、核軍縮をやれやれと言うことは、それは渡部君、それでもやれとおっしゃるかもしれませんが、やはり説得力は弱いですね。自分はその余地を残しておいて、人に核軍縮をせよということを説得することは説得力が弱い。だから、この批准を各党の御賛成のもとに得られるならば、日本はそういう面について一段と外交的な努力を積極的にやる責任があると考えておる次第でございます。
  375. 渡部一郎

    渡部(一)委員 総理は私の立場は余りよく御存じないようでありますからちょっと申し上げておきますが、この批准に対する一番強烈な反対論を述べられているのは自由民主党の内部におられるわけであり、いま総理が言われたフリーハンド論もまた、それから原子力平和利用が阻害されるのかというような議論もまた自民党の内部で強烈に述べられ、かつ当委員会の審査も妨害された諸君が多数おられるわけであります。それであるがゆえに、当委員会は苦心さんたんを重ねたというのが実態であります。むしろ総理はみずからを顧みてそれを言われねばならぬと私は思うものであります。  さてそこで、第七条において、この条約核兵器が存在しないことを確保するための地域的な条約締結する権利を保障しているわけであります。これについて、たとえばアジア非核地帯を設けあるいはそういう諸国との間で宣言を行う等の処置は、何度かにわたって当委員会でも提案をされ論議をされたところでありますが、総理はこうした構想について、第七条で認められているような構想についてどういうふうにお考えであるか、御見識を承りたい。
  376. 三木武夫

    三木内閣総理大臣 私もその考え方には賛成なんですよ。アジアの国際的環境がまだそういう、現実的にはまだそこまでいってないと言ったのは、たとえば先ほど問題になりましたラテンアメリカの場合も、核保有国にラテンアメリカ地域に核兵器を持ち込ませない、無論ラテンアメリカ自身は、これに対して自分は核兵器を開発しないということが根本ですけれども、持ち込ませないという条約、これに対してソ連批准をしないというわけでございますから、こういうことで、なかなかこれは、核兵器を持っておる国が非核地帯に核兵器を持ち込まぬということは、やはり非核地帯というもののわれわれが実現しようという理想はそういうことも必要でございますから、そういう国際環境というものはまだ現実的にはなかなかそこに熟してないというのですが、私はその理想には賛成ですから、今後そういうことが実現をいたしますような努力はいたしますけれども、現実もまた踏まえる必要があるということでございます。
  377. 渡部一郎

    渡部(一)委員 このたび国連において小木曽大使は、平和核爆発もまた五年間にわたって停止したらどうだというような意欲的な表現によって提案をされまして、わが国核外交については画期的な提案だったと私は思うわけであります。しかしながら、その委員会の席上で指摘をされましたとおり、核保有国の努力のなさこそがまさに問題になっているわけであります。  この問題は、たとえばカナダにおきましては、核爆発の地下核実験の発見のために協力する用意と協定を結ぶ用意のあることを明示をいたしましたし、またこうしたさまざまな実験的な提案というものが各種の形で提案をされたわけであります。ところがそれに対して、米ソ両国はこれに対して無視するに近い態度をとっているのであり、わが国の提案も含めて、問題はまさに核保有国の核軍縮に対する非常な熱意のなさというのが問題になっていることを示しているわけであります。  したがってわが国は、この条約締結の後でありますが、一体いかなる対応策を持ち、米ソ両国を初めとする核保有国に対して強力に迫ることができるのかという点を私は特に承っておきたいと思うのであります。その点が明らかにならないならば、確かにある国が述べておるように、米ソ体制の中でわが国は戦略的に編入されるだけであって、少なくとも核保有を禁止するための努力をする平和国家としての日本という立場がなくなってしまうのではないかと私はおそれているわけであります。日本は自立した立場で核保有国をたしなめ、それを制限するために努力をすべきではないか。軍縮委員会におきましては、スウェーデンの代表は、威力一キロトンまでの地下核実験を地震学的方法により探知するシステムを開発したと述べ、これの使用を提案をいたしているわけであります。またカナダは、地下核実験の制限を強めるために専門家会議を要求いたしているわけであります。こういう各種の提案に対して、わが国は自分の提案を述べるだけでなく積極的に賛同し、それを盛り上げ、核保有国を包囲し、そしてそれにブレーキをかけるという方向で努力をいたすべきではないか、こう思っているわけでありまして、御見解を承りたいと存じます。
  378. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 まさにそれは一つの大事なポイントでありまして、わが国もそのためにはずいぶん努力をしてまいったつもりであります。最近になりまして、いま問題は結局地下核実験でございますが、渡部委員の言われました、米ソ間の地下核実験についての合意が間近いという報道がありまして、これは米国側の話、それからソ連で発行されました新聞等々からいろいろ判断をいたしますと、確かにようやくこの問題についての妥結が近いのではないかと思われる。恐らくそれは査察、検証を含むということになると思うのであります。わが国は、わが国も地震学についてはかなり進んでおりますので、探知についてそのような技術を提供する用意があるということを従来から軍縮委員会等を通じて述べてまいりました。ようやくこの地下核実験の米ソ間の了解が最終的にできるといたしますと、これは私は一つの進歩であると思います。もとよりそれですべてではありません。それはむしろ事の初めであると考えなければならないと思いますけれども、そういう努力はわが国としてはいままでもやってまいりました。これからもしてまいらなければならないし、また提供し得る技術も持っておるというふうに考えるわけであります。
  379. 鯨岡兵輔

    鯨岡委員長 速記を中止してください。     〔速記中止〕
  380. 鯨岡兵輔

    鯨岡委員長 速記を始めてください。
  381. 渡部一郎

    渡部(一)委員 アメリカとスペインとの間の核貯蔵に関する条約の話が先ほども同僚議員から述べられたわけでありますが、アメリカ政府日本に対しては核の存在を明らかにすることを拒み続けながら、一方において、スペインとの間においては核貯蔵条約を結んだということに関しては、わが国の姿勢としてきわめて不公平な感を受けるわけであります。しかもわが国においては原爆体験を基礎として非常に大きな関心の集まっているこの問題に対し、わが国の姿勢はより明確でなければならぬ。少なくともスペインと同じか、あるいはそれ以上の問題を取りつけてかからなければならぬと考えているわけであり、これは国民の共感を呼ぶ意見であろうとも思います。したがって私は、本条約において核の持ち込みがわが国民にどれだけ厳しい感情を与えているかを十分お考えいただいた上、これに対して明言されることが必要であると思うのであります。本委員会審議の後において委員会においての決議が行われようといたしているわけでありますが、問題はまさにそこであり、核の持ち込みというものはいかなる場合もあり得ないということを明言する文案にしようとすることに対するかなりの抵抗が存在するわけであります。それは総理の率いる自由民主党の諸君の中にあるわけであります。そしてそれは当外務委員会の中にはなく、自民党の執行部にあるわけであります。総理は、総理としてと同時に、自民党の総裁としての両方のお立場があるわけでありますから、改めて非核三原則の遵守と核持ち込み——この条約に触れられていない核の持ち込みに対しては、いかなる場合もあり得ぬと先ほども強くおっしゃいましたが、その方針は改めて堅持することを、党の執行部に対してもよく御指導いただき、もってこの審議の完璧を期していただきたい、こう思っておるわけであります。ぜひお願いいたします。
  382. 三木武夫

    三木内閣総理大臣 私が政治の最高責任者として、この国会の場においてこのように述べておるのですから、この考え方は自民党に対してもよく徹底するように私は申します。
  383. 渡部一郎

    渡部(一)委員 それでは、そろそろ時間でありますから、自民党の総裁としても自民党によく徹底なさるということでございますので、自民党の理事諸公におかれては、それを十分腹に秘められて、有終の美を飾られんことを期待いたしまして、私の質問といたします。
  384. 鯨岡兵輔

    鯨岡委員長 渡部一郎君の質疑は終わりました。  永末英一君。
  385. 永末英一

    永末委員 核兵器拡散に関する条約批准をされますと、今後二十年間、わが国はこれによっていま考えられる一番大きな強力な兵器に対する、いわばそれを持たざることの盟約を世界各国にいたすことになります。  思い起こせば戦前、その当時の最大強力兵器と考えられた海軍艦艇に関しまして、ワシントン条約、ロンドン条約がまとめられ、わが国は比率においてはある程度低位の約束を各国にいたすことになったのでありますが、これが二十年ならずして無効になり、そして戦争に突入いたしたというつい最近の記憶を私どもは持っておるわけであります。したがって、核爆発力をどのように人類が管理し得るかということも、これから二十年間どうなるかわからないときに、われわれはいま二十年後までの約束をいたそうとするのでございますので、これを結ぼうとされる総理大臣が何を考えているかということは、いま生きておる日本人あるいは世界の人々のみならず、後代二十年後に至るわれわれの後に来る者に対しても、きわめて重要な意味合いを持つものだと思います。この観点からひとつ総理大臣の所信を伺っておきたいと思います。  第一に、総理大臣は、これはきわめて必要だ、もしわれわれがこれの批准を延ばすならば、核兵器を保有するというフリーハンドを持ちたいという疑惑を持たすことになる、こういうことのお話がございました。これは一刻も早くやらなければならないというのが総理大臣のお考えですね。
  386. 三木武夫

    三木内閣総理大臣 私は、人類の最大の課題はどうして核戦争を防止するかということだ、いろいろ問題を抱えておるけれども、これだけ至上の課題はないと思う。核兵器が、いまでも核保有国があるわけですが、これ以上各国が競争して核兵器を持つということは、核戦争を防止するという人類の至上の命題に対して非常に危険を伴います。したがって、日本はみずから核兵器を開発する能力を持ちながら、潜在的能力は日本はあるわけですが、これをみずから放棄して、そして世界に向かって、最終的には核兵器の廃棄でしょうが、一気にこういう理想が実現するわけではございませんから、だんだんと核軍縮を積み重ねて、そういう理想に向かって努力をするということは、平和国家として、あのような世界に類例のない憲法を持っておる国として、この道は日本が歩むべき道である、かように考えて、この条約批准を私は願いたいと切に思うわけでございます。
  387. 永末英一

    永末委員 私が伺いましたのは、一刻も早く、これはあなたの内閣首班のときに成立をさせたい、こういうお気持ちですねと伺いました。
  388. 三木武夫

    三木内閣総理大臣 そのとおりでございます。
  389. 永末英一

    永末委員 したがって、これはあなたが総理大臣になられました最初の国会に提案されたと思うのです。ところが、この外務委員会におきまして四十時間以上の審議が行われ、そうしてあなたに対する質疑が終われば大体において結了いたす、その前夜、あなたの判断によって、昨年度この条約批准の日の目を見るに至らなかったのであります。私はあなたの、この条約に対していま一刻も早く批准をしなければならぬという政治家としての御決意は承りましたが、なぜ一体去年そこまでいっておるにもかかわらずあなたは踏み切らなかったか、この際しっかりと御答弁をいただきたい。
  390. 三木武夫

    三木内閣総理大臣 これはこれから二十年拘束するわけでございますから、でき得べくんばこの条約はやはり各党一致の批准を受けたいということが願いでございます。そういう点で、自民党としても各党といろいろと折衝したことは事実でございましたが、前国会まではこの条件は整いませんでした。今日においてはだんだんと各党の御理解を得て、当時とは情勢というものにも非常な進展がある、こう考えまして、これは前回の場合よりも多数の党の御賛成が得られるのではないか、そういうことでこの機会にこの批准を受けたいと願う次第でございます。
  391. 永末英一

    永末委員 あなたのいまの御答弁によりますと、願わくば各党の一致が願いたいということでございますが、私どもの見ておりますところ、各種の政党間の意見の一致ではなくて、あなたが総裁をやっておられます自民党内の、言うならば各人各派と申しますか、自民党内の一致が得られなかったから延びたのではないか、われわれはそう思うのでございまして、だからいまのあなたの答弁を引用いたしますと、昨年よりはことしの方があなたの党内の意見の一致が見られつつあるから進めておる、こう聞こえるのですが、国民の前に明らかにしてもらいたい。
  392. 三木武夫

    三木内閣総理大臣 自民党は御承知のように三百名近くの議員を擁しますから、自民党はいろいろな意見を持っておる。各党の中で自民党が一番自由じゃないでしょうか。いろいろな意見があって、やはり議論を煮詰めていく過程においては意見の対立もあるわけでございます。しかしこのような党において方針を決めました場合においては、それに対していろいろな意見はあるにかかわらず、これは大局的判断に立って一致するというのもまた自民党の特徴でございます。こういうことで、今日においては自民党はこの条約批准をこの国会で受けたいというのが党の方針でございます。
  393. 永末英一

    永末委員 自民党総裁の目から見て、自民党が各党に比較して一番自由であると言われましたが、私は民社党員として、民社党というのが一番自由だなと思っております。  さて問題は、わが衆議院がこれを議決をいたしました後参議院へ参りますが、すでにいまのところ自然成立の期間はございませんが、自民党総裁としては、参議院もりっぱに自民党は一致して通してみせるとお約束いただけますね。
  394. 三木武夫

    三木内閣総理大臣 私は参議院を拘束することはできませんから、十分御審議を願いたいと思いますが、自民党は一致してこの条約批准というものに努力をする考えでございます。
  395. 永末英一

    永末委員 私がこの条約について一番心配をいたしておりますのは、核防条約批准することがわが国のこれからの核時代における安全にどの程度役立つかということでございまして、昨年これが提案せられましたときに、私が本会議で質問をいたしました。これに対して総理大臣のお答えは、わが国安全保障について今後の努力が要ると私は思う、きのうからジュネーブで開かれている本条約の再検討の会議、こういうところでも十分検討されるものと思う、こういうお話でございました。しかしこの再検討会議は、わが日本の国を含めまして、非核国に対する安全保障については何らの取り決めを見ることなく終わったことは天下周知の事実であります。一体この不拡散条約に入ることによってわが国安全保障が高まりますか、お答え願いたい。
  396. 三木武夫

    三木内閣総理大臣 御承知のようにジュネーブにおける再検討会議でも、これに批准をしてないですから正式のメンバーでないのですよ。オブザーバーですから、発言力がおのずから制約を受けることはやむを得ないでしょう。これに批准をすれば、これはそういう場合においても、あらゆる場合においてこの条約批准国としてメンバーとなるわけですから、一段と日本考え方というものに対して、いろいろな場面において日本の発言力というものが非常に強まるということは事実でございます。そういうオブザーバーであったけれども、たとえば化学兵器の禁止条約などは、これは実際日本はメンバーでなかったけれども日本の努力によって理事会などにおいても提案をされたことがございます。
  397. 永末英一

    永末委員 この再検討会議におきましては、メキシコ等から、核保有国が加盟国である非核保有国を攻撃することを禁止しよう、こういう約束をひとつさせようと試みましたが、ついにこれがならなかった。したがってこの再検討会議の最終宣言では、まさに非核保有国の安全保障の点に関しては、すでにこの核防条約が問題となりました一九六八年において、結局この提案をし寄託国となりましたアメリカソ連、イギリス、それぞれ三国が非核国の安全保障の宣言を行い、同時にまた、二日ほどたちましてから国連の安保理事会が決議でもって同様の決定をした、これに注目しているだけなんですね。結局非核国に対する安全保障の点については刮目すべき決定、新しい前進というものは見られなかったと私は思いますが、総理大臣はどう思われますか。
  398. 三木武夫

    三木内閣総理大臣 いまラテンアメリカの、核保有国がそういう非核地帯のようなものですね、理想はやはり核兵器を開発しないということ、そこに対して核兵器を保有国が持ち込まないということで、ほかの国は皆この条約に対して批准をしたのですが、ソ連がまだ……(永末委員「問題が違うですな」と呼ぶ)批准をしてない。それだからそういう点で……(永末委員「聞いてないことを答えたらだめですよ」と呼ぶ)そういうことでございますから、これは全部がまだ賛成をしてないので、このことが有効に、全部の核保有国が持ち込まぬという約束にはなっていない。あとの方は外務大臣から答えます。
  399. 永末英一

    永末委員 いいです。総理大臣、伺いましたのは非核地帯のことではございませんので。要するに核を持たない国が、この核防条約に対しての一番の疑惑の一つは、最初本条に非核国に対する安全保障が書かれてあった、それがなくなって、かわりに米、ソ、英三国がその件に関する宣言を行い、国連安保理事会が決議をやった、こういう形で振りかえられたわけです。したがって核防条約自体には非核国に対する安全保障の規定がないわけだ。だから五年たったこの再検討会議でこれを何とか取りつけようと図ったが、それはできなかった。私があなたに質問申し上げたのは、まさにその次の大事実でございました。  そこで、これに加盟することによって非核国であることをはっきりと天下に示すわが国安全保障に何らかのプラスがあるかということを伺っている。お答え願いたい。
  400. 三木武夫

    三木内閣総理大臣 それは、非常にこれからの核を開発しようというような考え方、大抵の国は批准したのですけれども、まだ批准しない国も残っておるので、九十五カ国ぐらいが批准したと私は記憶しておるのですが、それがまだ残っておる国に対して大きな歯どめの役割りを果たすでしょうね。日本のような一番やはり核開発ができる潜在能力を持っている国がみずから道を断ったということ、そういう点で核兵器拡散というものに対して一つの大きな役割りを果たすし、また日本自身が何か開発の余地を残すというような点を断ち切るわけですから、国際的にも発言力というもの、説得力といいますか、発言力は強くなるわけですから、いま御指摘のような問題も、あるいは軍縮委員会などに対して、そういうことが実現をできますならば、非常に非核保有国に対しての何か不安というものが除去されるものですから、そういう点でも日本は一段と積極的に努力すべきものだと考えます。
  401. 永末英一

    永末委員 いま総理が言われたことは、要するに核軍縮に関係のあることでございまして、非核国が皆心配しておるのは、現在の核保有国から、これから拡散した後の核保有国ではなくて、現在の核保有国から核による威嚇を受け、攻撃を受けた場合にだれが一体保障してくれるんだろう。現に現在の核兵器意味合いは、核兵器を持っている国に対する対抗力というのは、核兵器を持つ以外にはないと考えて核兵器を持っている国がたくさんあるわけですね。したがって、われわれは核兵器を持たないと決意する限りにおいては、この条約に加盟することによる安全保障が高まらなくてはならぬ。しかし実際政府がやってきたことは、宮澤外務大臣をしてアメリカへやり、そうして日米安保条約によって安全保障の確保をする、こういう手であった。だといたしますと、日米安全保障条約は保障条約である。この核防条約に参加することによって、われわれが核攻撃に対する何らかの安全保障が強まるということを一体国民に説明できるかどうか。できるならばこの際ぜひしておいていただきたい。
  402. 三木武夫

    三木内閣総理大臣 御承知のように、国連の安保理事会などでもいま御指摘のあったような決議が行われておるわけでございますが、これは、やはりいわゆる非核保有国に対しての攻撃があった場合には直ちに行動しなければならぬとしてございますけれども、しかしこれは、実際に行動を起こす場合には実際拒否権もございますし、これでもうすべて行動が期待できるんだというふうには直ちにはならないでしょう。日本の場合は日米安保条約というものが大きなやはり核攻撃に対する抑止力になっておる、こういうことで、現実的に核攻撃に対する日本の脅威に対して、日米安保条約というものの持っておる一つの攻撃を抑止する力というものはこれは正当に評価しなければならぬ。そういう点で、日米安保条約をわれわれは堅持してまいりたいと考えておるわけですが、しかし理想的にはどこの国も、やはり核を持たない国に対しては先制攻撃をしないというようなことはいろいろ言っておる、あらゆる——あらゆる場合ではございませんが、いろいろな場合に発言もしておりますから、いま御指摘のようなことは、国際的な一つの取り決めは私は可能ではないかというふうに考えますので、これは今後国連あるいは軍縮の委員会などにおいて日本が積極的に努力をすべき点だと考えます。
  403. 永末英一

    永末委員 一九六八年の六月十九日の国連安保理事会の決議というのは、戦争が起こったときに国連というものがどうするかということと似たような話であって、そこにやはり疑問がある。だからこそもっとストレートに、この核防条約に参加していく加盟国である非核保有国の安全性をどう高めるかということは、私はおのずからやはり対象がしぼられてくるべき問題であると思う。  たとえば、この加盟国である非核保有国に対する攻撃禁止をこの加盟国同士で規定し合うとかあるいは攻撃をやった場合にはそれを制裁するとか、何らかのやはり努力が必要だ。したがって、いま総理が後半に言われました、これからそういう一つ協定を結ぶないしはこの核防条約に盛り込む、そういう努力をしていくということは私は必要だと思う。総理も答弁をされている過程でそう思われたと思いますが、その点をひとつ明確にしておいていただきたい。
  404. 三木武夫

    三木内閣総理大臣 今後努力をいたします。
  405. 永末英一

    永末委員 この問題はいろいろ問題がございましょうが、特に私は、わが国安全保障についてこの核防条約が持っている意味合い、そしてこれから非核国であって、われわれの安全保障のために何をしなければならぬかということについての現時点における日本国の総理の御見解を承りました。日米安保条約の問題はそれは別の問題。ただ日米安保条約があるから、これがこの核防条約による非核国としてのわれわれの安全保障を高める努力をしなくてもいいということではございませんので、最後の総理の御答弁はしかと銘記をいたしておきます。  質問を終わります。
  406. 鯨岡兵輔

    鯨岡委員長 これにて本件に対する質疑は全部終了いたしました。  次回は、来る二十七日火曜日午前九時理事会、九時二十分より委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。     午後六時五十八分散会