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速見参考人 私は、
長崎県下全
労働者、原水爆禁止を訴える
県民並びに
市民を
代表いたしまして、
佐世保現地闘争本部長をいたしております
速見でございますが、「
むつ」の
佐世保修理港絶対
反対の
立場から
意見を申し上げたいと思います。
まず第一は、
世界で唯一の
原爆の洗礼を受けた
県民であり、十数万のとうとい
生命を絶たれ、なお本日
原爆の後遺症に悩む数多い
原爆被災者がいることを知っていただきたいというぐあいに考えます。
先ほどの
意見の中にも、
原爆と核
エネルギーの問題についてもっと
県民に知らしてほしいという発言がありましたけれ
ども、しょせん、
放射線被曝の危険性なり遺伝に及ぼす影響には、
原爆であろうとも何ら変わりはないわけであります。現に数多い
原子力発電所での被曝
労働者がいることを私
たちは知っています。同時に、人間に無害だという許容限度が存在すること
自体、公衆に危険があるというぐあいに私は判断をいたします。
最近の
事故の例をとって見ましても、
原子力研究所における放射能を帯びた
冷却水の漏水
事故、あるいは十年間もの隠蔽をするという、このようなむちゃくちゃな
原子力行政、
原子力研究所の
あり方に、実は憤りを感じておる一人でもございます。このような無神経ぶりな態度こそ改めていただきたい、私はこのように考えるわけであります。
また
水産県の
立場からは、先ほど
住江会長からもお話がありました。私も同感であります。どうかその点を十二分にお考えいただきたい、このように考えます。
第二は、素朴な
佐世保の
市民の感情として、先ほ
どもお話がありましたけれ
ども、安全ならば
建造したところでなぜ
修理ができないのか、この疑問は
佐世保市民の全体か持っておるところであります。恐らく、本日賛成の
立場からお話がありました賛成者の人、あるいは辻市長たりとも、このことについての
意見の対立はないというぐあいに私は考えます。現に
長崎県会で久保
長崎県知事も、このことに限り、そのとおり筋については自分も認められる、このような答弁をいたしておるわけであります。「
むつ」
放射線漏れ問題調査委員会の指摘のとおり、実験段階で予測された
事故であるだけに、発注者と受注者、この共同
責任というものをやはり私は明確にしてほしいわけであります。少なくとも総合的性能保証をなすべきが道理ではないでしょうか。縁もゆかりもない
佐世保に持ってこようとするこの意図は、他に
目的があってのことではないかというぐあいに私は考えるわけであります。
ごく一部の賛成者の
人たちが、
原子力の
平和利用あるいは
エネルギー問題等について
意見があるようであります。むしろ国策として考えるべきだというお話もございます。しかし、巨額の資金を投入をして「
むつ」を
建造し、そして五年もかかり巨額の費用を投じて「
むつ」
母港をつくったいきさつからいきまして、ほかに
修理港を求めたり、あるいは新しい
母港をつくるということは、これこそ国費の浪費ではないかというぐあいに私は考えるわけであります。同時に、
佐世保で
修理をする、
佐世保のSSKで
修理をやってもらうという
要請でありますけれ
ども、現に
佐世保のSSKの中には、このような
原子力の専門的な
技術員は一人もおりません。最近プロジェクトチームをつくって研究をするという会社の発表があっておりますけれ
ども、そのような状況の中でこの「
むつ」の
改修をやるということになれば、当然、
原子炉をつくった三菱
原子力工業から派遣をされる
技術陣によって
改修が行われる、このように考えるわけでありますけれ
ども、そうなればなおさらのこと、経費というものは高くつくのではないかというぐあいに私は考えるわけであります。少なくとも
政府と
事業団、メーカーは、この際明らかにみずからの
責任を果たしてほしい、このことを主張しておきたいというぐあいに考えるわけであります。
第三は、
佐世保に
修理港を求めた背景に大きな落とし穴があるのではないか、このような疑念を実は持っております。
その
一つは、従来、
政府の言動、あるいは過去の無理やりに
アメリカの
原子力潜水艦やエンタープライズを
佐世保に入れた、
原子力艦艇を入港させた実績。
二つには、「
むつ」が
原子力潜水艦への転用可能な舶用炉を使用していること。三つには、
平和利用といえ
ども、
技術的に見ていつでも
軍事利用に転換できる可能性を持っておること。四つには、海上自衛隊の
佐世保基地の機能が強化をされつつあること。こういう点から考えてみまして、将来日本の
原子力潜水艦や艦艇の
建造を意図しているのではないか、その
建造と
原子力潜水艦の基地を
佐世保に求めようとしておるのではないか、このような
政治的陰謀というのが隠されておるのではないかという疑念を数多くの
佐世保市民が持っておることを、私はここで強調しておきたいというぐあいに考えるわけであります。
第四は、
安全性の問題であります。率直に言って
政府の
説明を
信頼できません。
安全性についてもし
信頼してほしいということを言われるとするならば、もう美辞麗句はやめて、現に稼働しておる
原子力発電所の
原子炉自体の
事故、故障を完全になくしてこそ初めて立証できるものだというぐあいに考えるわけであります。安全だ安全だという傍ら、もうきょうでもあすでも
事故が起こっておる。こんなことでは、私は安全だという
政府の
宣伝を真に受けるわけにはまいりません。
同時に、「
むつ」は、遮蔽装置だけの問題ではなくて、未解決の部分が数多くある。すなわち、蒸気発生器の腐食や
冷却水配管のひび割れや
燃料棒の破損など、問題をとらえれば数多くあるということを専門家から私
たちは聞いております。しかも「
むつ」の
原子炉は、
欠陥炉と
政府も認めざるを得なかった美浜一号炉と並行して三菱が
建造したものでありまして、その美浜一号炉の
原子炉がいまもって稼働できたい。この事実を私は冷静に見つめるべきである、このように考えるわけであります。たとえ遮蔽装置の一部の手直しや検査だけでは、危険の度合いというものを払拭いすることは不可能であるというぐあいに私
たちは見ております。
この際、
政府は原点に立ち返って、メンツを捨てて、不安と
不信に満ちた「
むつ」を、
原子炉を装置したままの
修理ではなくして、実際的に
原子炉そのものを取り外し、陸上で実験をし、そして徹底した実験、研究を積み重ねることこそ必要ではないだろうか、このように考えます。したがいまして、私は結論的に言いまして、「
むつ」の
改修計画を根本的に練り直していただきたい、このことを強く主張しておきたいというぐあいに考えます。
第五には、安全の確認の方法に疑問がございます。「
むつ」の
開発を引き続き推進するため、適切な
改修によって所期の
目的を十分達成したいという
政府側の
説明でありますけれ
ども、炉を動かさずして
修理するから安全だという、
修理のための
安全性を強調しておるところに、私は矛盾があるというぐわいに考えるわけであります。問題は、
原子炉を停止した
状態での全系統機器の機能試験で、果たして安全確認が可能なのかどうか。専門家の人の話に聞きますと、一部は可能かもしれないけれ
ども、現状の
事故発生の例から見て万全の
体制ではない、こう言われております。
第二は、
改修、点検完了後の安全確認は実際
原子炉を動かして性能テストをやってみて初めて、私は、遮蔽装置の健全性が確認できるのではないだろうか、このように考えるわけであります。
政府が、今度の「
むつ」の
改修問題については、すべて
原子炉自身の問題よりも遮蔽装置の問題が
事故の原因だ、こう言っておる。そうであるとするならば、
原子炉を動かさずして遮蔽装置だけを
改修してみても、果たしてそれが完全に直ったかどうかということがわからない。そういうごまかしを今度の
説明の資料の中にはなされておる。ここにも私
たちは
不信感を強く抱いておるところでございます。
第三番目には、減肉現象や腐食、ひび割れ等は一時的なテストでは判明できるものとは違うはずであります。これは一定期間、長期間のテストがなければ完全に安全とは言えないというぐあいに考えるわけでありまして、いろいろほかにもございますけれ
ども、余りにも
安全性と必要性を誇張しているところに、逆に私
たちは疑問と矛盾を強く感じておるわけでございます。
第六番目には、
母港との関係であります。
政府が、新
母港として
佐世保を考えていない、このようなことを答えてみたり、候補の
一つということを答えてみたり、まるで一貫性がございません。
一体改修が終わる五十三年度までに
母港が決定できる要素と確立性があるのでしょうか。
原子力安全局を私は訪ねていろいろお伺いをいたしました。新
母港の決定の条件には、岸壁で二〇%、湾内で五〇%の出力上昇試験をやることが絶対条件である、こういう御
説明がありました。もしも「
むつ」のような形で洋上で出力上昇試験をやって、そこで
事故が起こったならば、もはやもう戻るところがなくなる、したがって新
母港では出力上昇試験は絶対欠かせないのだ、こういう
説明を受けておるわけでございますけれ
ども、このような重大な要素を含めて三年以内に果たして決定できるのでしょうか。
むつ市の場合も五年間建設にかかっております。
次に、臨海実験すらあいまいのまま新
母港を決めようとも、引き受けるところがあると判断できるのでしょうか。
次には、
政府が自信と確信をもって新
母港を決定し得るとするならば、
佐世保市議会の全員協議会で
政府代表の
説明がありましたが、現在七つの候補地を抱えておる、持っておる、こう言われております。そうであるとするならば、安全だということを主張されるならば、むしろ私は、七つの候補地を公表し、正々堂々と、裏でこそこそするのではなくして、
母港の選定についていち早く相談をすべきではないでしょうか。そんなことをせずして、
修理だけを先にやらしてくれ、そして三年のうちに
母港を決める、こんなことを言われても、
母港の問題について私
たちは
政府の言い分を
信頼することはできません。
すなわち、どこで
修理しょうとも新
母港の決定が先決でなくてはならないというぐあいに考えます。
母港を決定をし、その後に
修理完了後直ちに
母港に回航できるという一貫性がない限り、私は詭弁を論じてみても
母港への不安を解消することはできないと考えるわけであります。
最後に、「
むつ」の存在について
意見を申し上げておきます。
第一は、「
むつ」の船主であります
事業団の存在にも関係ございますけれ
ども、
昭和五十一年三月三十一日までにこの
事業団は廃止するものとするとなっていた。ところが、この
事業団法が
期限切れとなった現在、なお
政府は、これは持続できる、こんな法律解釈があるでしょうか。実際的に私
たちは
国民の一人として、このことについてはもっと明快な御
説明をいただかなければ、このようなことについては納得できません。私
たちはあくまでも、この
事業団法は失効したという判断に立っておりまして、法的根拠を持たない架空の組織である
原子力船開発事業団、あるいはこの
事業団に籍を持つ
原子力船「
むつ」も幻の船と私
たちは解釈をいたしております。
第二は、
政府が仮にそのようなことをおっしゃっても、このことについて、余りにも自分勝手、
自分たちの都合のよいような解釈にすぎないのではないかという
不信を持っておるわけであります。
私は期限が切れた
事業団法を認めることはできません。即刻
事業団は解散をすべきだし、法的根拠をなくした幻の
原子力船「
むつ」そのものも認めるわけにはまいりません。したがって、これは廃船にし、十分な年月と資金を投入をし、新しい原点に立ち返った形の中で、この
原子力船「
むつ」の十分な
基礎的研究、実験を積み上げてほしいというぐあいに考えるわけであります。
以上、私は、若干時間も経過いたしましたけれ
ども、基本的な
立場を申し上げました。何とぞ、先生方の十分なる御討議の上で、適切な御決定を賜りますように切にお願いを申し上げ、私の
参考意見を終わらせていただきます。
ありがとうございました。(
拍手)