○住田
政府委員 先ほど外国との比較の話があったわけでございますが、日本の場合とヨーロッパの国の場合では大きな点で
一つ違う点があるわけでございます。
過去債務の問題につきましては、先ほど
大臣が申し上げましたように、今回の二兆五千億の過去債務の肩がわりについては、イギリスでこれまで相当な措置をしてやったという措置よりもはるかに大きな額でやっておるわけでございます。
あとフランスとかドイツの場合との比較でございますが、先生も御承知のように、ドイツ、フランスでは——イギリスもそうでございますが、
運賃は自由に上げられるというたてまえになっております。ドイツの場合には二〇%という限度がございますけれども、総裁が毎年二〇%までは自由に
運賃が上げられるということで、この数年間は上げられるところまですでに上げてきておるという
状況でございます。
運賃を上げたにもかかわらず他の交通機関との競争関係から
国鉄が負けてしまって、そのために大きな
赤字になっておるということで、そういう
赤字に対する助成金が大半でございます。
それに対しまして、日本の場合には
運賃の
値上げの余地がまだ十分にあるというふうにわれわれは
理解をいたしておるわけでございます。したがって、助成をする場合に、今後は
運賃値上げができないから、それによって生ずる
赤字を国がめんどうを見るという考え方で今回の
再建における
政府助成をやっているわけではないわけでございます。
今回の
再建の
基本的な考え方は、従来のいろいろな
原因で生じた三兆一千億の
赤字を今後
利用者に
負担させるということは、
負担の公平という面から見てやはり妥当ではないのではないかということで、まず、過去の
赤字をきれいにしてしまうということが第一点でございます。そのための措置といたしまして、過去債務の二兆五千四百億円を別勘定に、特定債務整理勘定へ
赤字と一緒に移しまして過去債務をきれいにする。
赤字の総額が三兆一千億でございますが、
国鉄は現在一兆八千億
程度の資本金、積立金を持っております。その中で特に一兆一千億を超えます再評価積立金というのがございます。
この再評価積立金は
昭和三十年にしたわけでございますが、この再評価をしたことによりまして償却
負担が生じて、そのために生じた
赤字もあるわけでございますので、当面その再評価積立金の半分の五千六百億を
赤字の解消に充てまして、残った二兆五千四百億円というものに相当する債務を
赤字と一緒に特別勘定に移して整理をして、それによって過去の
赤字は全部きれいにするということを第一段階の措置としてとったわけでございます。
第二段階の措置としましては、五十一年度の場合に何らかの措置をいたしませんと一兆二千億
程度の
赤字になるわけでございまして、そのように
国鉄の
収支バランスというものは非常に崩れておりますので、これを早急に回復し、直していく必要があるということで、五十一年度、五十二年度で
運賃値上げをする。そういたしますと一応
国鉄の
赤字というものはなくなる
状態になるわけでございます。
しかし、
運賃値上げをいたしましても、先ほど申し上げました欧米の例から考えまして、今後自由にどんどん
運賃が上げられる
状態でないことは明らかでありまして、
国鉄の
財政の健全性を維持するためにはやはり相当の
合理化努力というものが要るわけでございます。
合理化努力と同時に、
国鉄がいかに
努力しても償えないような
赤字があれば、それはやはり
政府としても考えざるを得ない問題があろうかと思います。
そういう問題で大きな問題は地方交通線とか貨物の問題になるわけでございますが、貨物の問題につきましては、五十五年度までに固有
経費で
収支相償うような
状態に持っていくということで貨物の
赤字を
旅客の方に
負担させることがないようにしたい、そのための
合理化努力を今後五年間やるということにいたしておるわけでございます。
それから、地方交通線につきましては、これは地元の方で維持をしてもらいたいという強い要望もあるわけでございますが、一方、
国鉄の
経営にとって大きな
負担になっているということも事実でございますので、今後一年あるいは二年の時間をかけて、地方交通線をどうするかということの
対策をこれから
検討いたしたいと考えておるわけでございます。その一部といたしまして、本年度百七十二億円の地方交通線の運営費
補助を出すということにいたしているわけでございますが、この点につきましては、先ほど申し上げました地方交通線をどうするかということの一環でさらに再
検討はしたいという考え方を持っております。
それから、公共
負担の話が出ておりますが、公共
負担の中にはいろいろな
負担があるわけでございます。たとえば通勤割引のように、割引
制度自体について再
検討を要するような
制度もございます。また、学割のように、これは純粋な意味で公共
負担と言えるものであるかどうかについても疑問の割引もあるわけでございます。しかし、公共
負担の中で普通一般に言われております通学割引であるとか、あるいは身障者に対する割引というものについて国の
補助が要るのではないかというような問題があると思いますけれども、たとえば通学割引にいたしましても、非常に長い歴史で明治以来やってきている
制度でございますが、これは一種の世代問の
負担の公平という面から是認される措置でもあるのではないか——われわれの親がわれわれの割引を
負担し、われわれがわれわれの子供の割引を
負担するということで、世代問の
負担の公平という面から見て是認されるわけでございますが、こういうものについて国の
補助をやるということは逆に問題も起きてくる。また、身障者割引についても、現在の近代的な社会生活では強者が弱者の費用を
負担するということは一般に保険なんかがその典型的な例だと思いますけれども、そういう
制度も一般にあるわけでございまして、したがって、そういう強者が弱者の費用を
負担するということは現在の社会では当然是認されていい事態でございますが、そういう公共
負担があるから直ちに国が
補助をしなければいかぬということには結びつかないのではないかと思います。
しかし、いずれにいたしましても、今後
国鉄が健全
経営を維持する場合においていろいろな
負担があるわけでございまして、
運賃値上げが非常にむずかしくなったというような場合には、あるいはその段階で
検討を要する事項もあろうかと思いますけれども、今回の
再建対策要綱の考え方におきましては、五十一年度、五十二年度におきまして
収支均衡を回復した以降は、
国鉄が
合理化努力を続ければ、それで大体健全な
状態で
財政を維持できる——工事
補助金等はもちろん継続いたしますけれども、特に新たな
補助制度を設けなくても
国鉄は健全
経営が維持できるというように
理解いたして今回の
対策要綱をつくっているわけでございます。