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松本説明員 昭和四十五年という
時点におきましては、すでに広く知られておりますように、
運輸政策審議会の答申あるいはこれに基づく
閣議決定、こういうふうなことでその基調となります
輸送需要というものは非常な勢いで
伸びるというふうなことが
考えられておったわけでございますし、したがって、それに対応するための
機材手当てというふうなことも
考えられておったわけでございますし、現に四十五年の九月までは万国博覧会が開かれておったというふうなこともございまして、
各社の
ロードファクター、
利用率というものは相当高い水準を維持しておったということも事実でございました。
しかしながら、四十六年になりまして、
現実に
日本航空及び
全日空がこれらの
機材計画を推し進め、
現実にどういう姿になっていくのかということをし
さいに点検をするという
段階になってまいりますと、実は四十二年ころから、急速な
伸びを示しておりました
伸びというものがだんだんと頭を打ってきておるということが、その
時点でもすでに明確な徴候を示しておったわけでございます。
たとえて申しますならば、それを
前提にして立てました
各社の
需要予測というもの、それからいま申し上げましたような
日本航空は四十五年の九月、
全日空は四十五年の十二月にこういうものをつくったわけでございますが、その
需要予測でいきますと、
日本航空は四十七年度に千百十万、あるいは
全日空は約千百万、こういうふうなものを立てまして、そして全線についての
予想というものも相当の
数字になっておりました。しかもそれに対して
現実には
伸び率が下がってきておる。四十五年の対前年の
伸び率は平均して一三七%でございましたけれ
ども、十月の
時点だけをとりますとすでに一二〇、十一月が一二二、十二月が一二一というふうに、四十六年になりました
時点で
伸び率がダウンをしている、
伸びていることは事実でございますが、
伸び率が下がってきたということがはっきりしたわけでございます。それに対しまして、大幅に
伸びるだろうということを
前提に立てました
需要予測、その中で
各社がそれぞれに
シェアをとろうということを強く
考えたわけでございます。したがいまして、四十七年の
予測を見ますと、
ANAと
JALの
シェアを両方足しますと一一二%、つまり全体の
需要予測がやや
過剰ぎみであるにもかかわらず、さらにそれを上回るような数になってしまうという
シェア競争が
前提になっておったわけでございます。したがいまして、これに対しての
機材を
前提にいろいろ
議論をしておったわけでございます。そのために、
JALとしましては四十六年から四十七年にかけて二三%の
提供座席数の
伸びを、同じく
全日空におきましては四六%にも及ぶ
提供座席数の
伸びを
考えて
機材計画をつくっておったということも逐一明らかになってまいったわけでございます。
ところが、幹線の
ロードファクターは、
冒頭にもちょっと触れましたように、四十六年八月、
JALが九一、
ANAが八三というのが最高でございます。これはなかなか乗れないという
状況でございますが、十二月にはすでに
JALが六五%、
ANAは四四%というような極端に低い率を示すに至っております。さらに越えて四十六年の一月になりましても、
JALが七二%、
ANAも六〇%を切るというふうな
ロードファクターの低下というのがはっきりと
数字の上に出てきたということでございます。したがいまして、このようなやや過大な
需要予測、その中における自社の
シェアをことさらに大きくとろうとし、したがって、それを両方足すと過大な
需要予測をさらに上回るようなことになる、にもかかわらず
現実の
ロードファクターは顕著に下がってきておるというふうな
状態を放置いたしますならば、これは非常な問題が出てくるのではないかということが当然に
考えられたわけでございます。また、四十五年三月から、御
案内のように、
パンアメリカンが
ジャンボの
LRを東京に入れてまいりました。また、同じく四十五年夏から
JALが
国際線に
ジャンボを入れ始めたわけでございますが、
ジャンボにつきましては一応
最初の
段階でございますので、いわゆるディスパッチリライアブリーと申しますか、
定時出発率と申しますか、こういったようなものも必ずしも十分に高い
数字であるというわけではない、もう少し様子を見たらどうだという技術上、安全上の
問題点についても具体的に
考えねばならないというような事実であったと思うわけでございます。
また、
空港事情の方も、
ランウエーの長さだけで申しますならば、約二千五百メートル以上ありますれば
エアバス級のものの
出発、着陸が可能でございますけれ
ども、
ランウエーの強度という点を
考えますと、なお補強を要する
空港も少なからずあったのも事実でございます。また、これらの
航空機は、御
案内のように、一機六十億とか七十億とかいう高額でございますので、これを何機も投入してくるということになりますと、
各社の
資金手当てという面につきましても相当な配慮をしなければならないだろう。
こういうふうなことをいろいろ
考えてまいりますと、やはり
JALと
ANAが協調して
国内輸送に寄与するという基本的な
航空局の
政策に立って
考えました場合に、四十七年からこれを投入する、そのために
諸般の
機材をさらにふやしていくということは、客観的に見てどうしてもつじつまが合わない。
機材過剰という現象を起こし、場合によってはアンバランスな
状態で
機材が投入される。つまり、どちらかの社が先に
大型機を投入し、有利な条件を設定し、それをもって
シェアを拡張する、あるいは
機材競争に突入する。かつてございましたような、
ANAと
JALとの間の
機材競争ということの再現すら懸念されるというふうな
考え方に立ちまして、そういうふうなものを未然に防止しなければならない、そして公正な
競争の原理が作用するようにしていかなければならないし、また極端に低下した
ロードファクターを適正な
数字に近いところに維持させなければならないというふうなことが主として客観的に論ぜられておったわけでございます。
さらに、そのほか
一般の世論といたしましても、たとえば
国会の
論議等を振り返ってみましても、やはりそう急いで入れる必要はないではないか、まだよくわからぬ
航空機であるという面もあるわけだから、十分に
安全性を確認した上で入れるべきではないかというふうな御
議論もあったわけでございまして、これらを総合的に判断いたしました結果、
冒頭先生の御
質問にお答え申し上げましたように、四十六年の二月ごろから、これを延ばす、もう少しペースを落とすというふうにしたらどうだという研究を始めさせるに至ったわけでございます。