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1975-11-07 第76回国会 参議院 予算委員会 第8号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十年十一月七日(金曜日)    午前十時七分開会     —————————————    委員の異動  十一月六日     辞任         補欠選任      須藤 五郎君     近藤 忠孝君  十一月七日     辞任         補欠選任      川村 清一君     野口 忠夫君      近藤 忠孝君     星野  力君      栗林 卓司君     木島 則夫君     —————————————   出席者は左のとおり。     委員長         大谷藤之助君     理 事                 岩動 道行君                 中山 太郎君                 矢野  登君                 柳田桃太郎君                 松永 忠二君                 宮之原貞光君                 矢追 秀彦君                 渡辺  武君                 向井 長年君     委 員                 安孫子藤吉君                 井上 吉夫君                 石破 二朗君                 長田 裕二君                 亀井 久興君                 黒住 忠行君                 源田  実君                 斎藤栄三郎君                 坂野 重信君                 玉置 和郎君                 中村 太郎君                 夏目 忠雄君                 奏野  章君                 鳩山威一郎君                 最上  進君                 森下  泰君                 八木 一郎君                 吉田  実君                 上田  哲君                 小野  明君                 工藤 良平君                 佐々木静子君                 辻  一彦君                 鶴園 哲夫君                 寺田 熊雄君                 田  英夫君                 野口 忠雄君                 太田 淳夫君                 桑名 義治君                 三木 忠雄君                 岩間 正男君                 近藤 忠孝君                 内藤  功君                 星野  力君                 木島 則夫君                 下村  泰君    国務大臣        内閣総理大臣   三木 武夫君        国 務 大 臣        (経済企画庁長        官)       福田 赳夫君        法 務 大 臣  稻葉  修君        外 務 大 臣  宮澤 喜一君        大 蔵 大 臣  大平 正芳君        文 部 大 臣  永井 道雄君        厚 生 大 臣  田中 正巳君        農 林 大 臣  安倍晋太郎君        通商産業大臣   河本 敏夫君        運 輸 大 臣  木村 睦男君        郵 政 大 臣  村上  勇君        労 働 大 臣  長谷川 峻君        建 設 大 臣  仮谷 忠男君        自 治 大 臣        国 務 大 臣        (国家公安委員        会委員長)        (北海道開発庁        長官)      福田  一君        国 務 大 臣        (内閣官房長官) 井出一太郎君        国 務 大 臣        (総理府総務長        官)        (沖繩開発庁長        官)       植木 光教君        国 務 大 臣        (行政管理庁長        官)       松澤 雄藏君        国 務 大 臣        (防衛庁長官)  坂田 道太君        国 務 大 臣        (科学技術庁長        官)       佐々木義武君        国 務 大 臣        (環境庁長官)  小沢 辰男君        国 務 大 臣        (国土庁長官)  金丸  信君    政府委員        内閣法制局長官  吉國 一郎君        内閣法制局第一        部長       角田礼次郎君        警察庁交通局長  勝田 俊男君        防衛庁参事官   平井 啓一君        防衛庁参事官   岡太  直君        防衛庁長官官房        長        玉木 清司君        防衛庁防衛局長  丸山  昂君        防衛庁装備局長  江口 裕通君        防衛施設庁長官  斎藤 一郎君        防衛施設庁施設        部長       銅崎 富司君        防衛施設庁労務        部長       松崎鎮一郎君        経済企画庁調整        局長       青木 慎三君        経済企画庁物価        局長       喜多村治雄君        経済企画庁総合        計画局長     小島 英敏君        環境庁企画調整        局長       柳瀬 孝吉君        環境庁企画調整        局環境保健部長  野津  聖君        環境庁大気保全        局長       橋本 道夫君        環境庁水質保全        局長       堀川 春彦君        国土庁計画・調        整局長      下河辺 淳君        法務省刑事局長  安原 美穂君        外務省アジア局        長        中江 要介君        外務省アメリカ        局長       山崎 敏夫君        外務省経済局次        長        野村  豊君        外務省経済協力        局長       菊地 清明君        外務省条約局長  松永 信雄君        外務省国際連合        局長       大川 美雄君        大蔵省主計局長  吉瀬 維哉君        大蔵省理財局長  松川 道哉君        大蔵省国際金融        局長       藤岡眞佐夫君        文部省初等中等        教育局長     今村 武俊君        文部省大学局長  井内慶次郎君        厚生大臣官房長  宮嶋  剛君        厚生省公衆衛生        局長       佐分利輝彦君        厚生省環境衛生        局長       松浦十四郎君        厚生省環境衛生        局水道環境部長  山下 眞臣君        厚生省薬務局長  上村  一君        厚生省社会局長  翁 久次郎君        厚生省児童家庭        局長       石野 清治君        通商産業省貿易        局長       岸田 文武君        通商産業省機械        情報産業局長   熊谷 善二君        中小企業庁長官  齋藤 太一君        運輸省自動車局        整備部長     田付 健次君        郵政大臣官房長  佐藤 昭一君        郵政大臣官房電        気通信監理官   松井 清武君        郵政省郵務局長  廣瀬  弘君        労働省労働基準        局長       藤繩 正勝君        労働省職業安定        局長       遠藤 政夫君        建設大臣官房長  高橋 弘篤君        建設省計画局長  大塩洋一郎君        建設省道路局長  井上  孝君    事務局側        常任委員会専門        員        山本 正雄君    説明員        日本電信電話公        社総裁      米澤  滋君        日本電信電話公        社総務理事    山本 正司君        日本電信電話公        社総務理事    三宅 正男君    参考人        日本道路公団総        裁        前田 光嘉君        日本道路公団理        事        吉田 喜市君     —————————————   本日の会議に付した案件 ○参考人出席要求に関する件 ○昭和五十年度一般会計補正予算(第1号)(内  閣提出衆議院送付) ○昭和五十年度特別会計補正予算(特第1号)  (内閣提出衆議院送付) ○昭和五十年度政府関係機関補正予算(機第1  号)(内閣提出衆議院送付)     —————————————
  2. 大谷藤之助

    委員長大谷藤之助君) ただいまから予算委員会を開会いたします。  参考人出席要求に関する件についてお諮りいたします。  補正予算案審査のため、本日、日本道路公団総裁前田光嘉君及び同理事吉田喜市君を参考人として出席を求め、その意見を聴取することに御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  3. 大谷藤之助

    委員長大谷藤之助君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。     —————————————
  4. 大谷藤之助

    委員長大谷藤之助君) 昭和五十年度一般会計補正予算  昭和五十年度特別会計補正予算  昭和五十年度政府関係機関補正予算  以上三案を一括して議題といたします。  環境庁長官運輸大臣自治大臣農林大臣からそれぞれ発言を求められておりますから、順次これを許します。小沢環境庁長官
  5. 小沢辰男

    国務大臣小沢辰男君) 徳島橘湾埋め立て計画に関連しまして、昨日お答えしました内容、ほぼそのとおりなんでございますが、正確に補足をいたしたいと思います。  ことしの二月二十五日付で、徳島県知事より室戸阿南海岸国定公園公園区域変更等について申し出がございました。これは御承知のように、十年以上前の国定公園でございますので、県知事がこれを見直したい、その内容は、小勝島及びその周辺地域の八十四ヘクタールがいま国定公園になっておるわけでありますが、これを国定公園から除きまして、長島その他の地域五百六十三ヘクタール、これをむしろ、ちょっと南の方になりますが、いい景観のところだから、これを国定公園に編入をいたしたい、こういう変更申し出でございます。私の方ではこの資料が若干不備でございましたので、公園区域変更等必要性緊急性についてのもう少し具体的な資料あるいは橘湾一帯環境影響評価等資料、あるいは国の関係出先機関との調整の結果等について、より詳細な資料提出をお願いをいたしました。その後、県ではいろいろもう少しよく検討したいというのでその変更の書類は出ておりません。現状はそういう事態でございます。
  6. 大谷藤之助

  7. 木村睦男

    国務大臣木村睦男君) 昨日の小野さんの御質問に対してお答え申し上げます。  徳島県が昭和四十四年ごろから橘湾開発の構想を持ちまして、いろいろ計画検討をされてきたようでございますが、最終的には一番公害の少ない大型造船所誘致が一番よかろうということになりまして、最終的に住友重機造船所誘致を打診をされたということでございます。そこで、昭和四十八年に住友重機は正式に橘湾造船所をつくるということで県の方に申し入れまして、昭和四十九年の二月に徳島阿南市及び住友重機との間で橘湾への進出が決定したと、こう聞いておるわけでございます。これに基づきまして、徳島県は橘湾大型船の建造のドックを建設するために、まず埋め立て工事を行うということになったわけでございます。その関係漁業補償の必要ができて、漁業補償のための起債についても運輸省に相談があったわけでございます。運輸省といたしましては、いろんな法的手続は将来の問題といたしましても、事実上適切な計画であると、こう考えまして、これに協力をしてまいったのでございますが、今日まで適当な法的手続であります公有水面埋立法に基づく許可申請、それから造船法に基づくドック建設許可申請は出ておりません。これはその後経済情勢の変動、海運造船関係世界的不況状況等によりまして、計画の進行が中断されておるのではないかというふうに見ておるわけでございます。  以上でございます。
  8. 大谷藤之助

  9. 福田一

    国務大臣福田一君) お答えをいたします。  橘湾埋め立て事業につきましては、昭和四十九年三月三十日付で漁業補償費に充てるため四十五億四千万円を許可しております。この起債許可に当たっては、港湾計画埋立免許行政を担当する運輸省意見を徴したところ、起債許可しても結構である旨の連絡を受けたので許可したのでありますが、これをやることになったにつきましては、一応自治省としてのこういうものを許可する方針がございますが、そのうちに、公有水面埋立免許開発行為許可等を要するものにあっては、当該免許等を得ているか、またはその見通しが確実なものであること、こういう方針でやっておりますので、先ほど申し上げましたように、運輸省との連絡をいたしまして許可をしたと、こういう事実でございます。
  10. 大谷藤之助

  11. 安倍晋太郎

    国務大臣安倍晋太郎君) 徳島県は、橘湾周辺工業開発事業に伴う漁業権消滅補償及び影響補償につきまして、昭和四十八年十二月三十一日、関係漁業協同組合との間に補償契約を締結をし、約四十九億円を支払っております。     —————————————
  12. 大谷藤之助

    委員長大谷藤之助君) これより質疑を行います。小野明君。
  13. 小野明

    小野明君 そうしますと、この四十九億円の補償があったにもかかわらず、この埋め立てというのは行われていないということになりますね。
  14. 木村睦男

    国務大臣木村睦男君) 埋め立てには公有水面埋立法に基づきます許可申請が要るわけでございますが、それが今日出ておりませんので、まだ埋め立てはできていないと、こう判断せざるを得ないと思います。
  15. 小野明

    小野明君 この問題はきわめて重大でもありますし、なお私の方で確かめたい事項もあるわけであります。非常に重大な問題でありますから、私の方もさらに引き続いて確かめてまいりますが、各大臣並びに総理におかれましても、十分、今後この問題の経緯を明らかにしておいていただきたいと思います。総理にお願いします。
  16. 三木武夫

    国務大臣三木武夫君) いま各大臣小野君に御説明申し上げましたことで、説明は私自身はよくわかったわけでございます。また、小野君御存じかどうかは知りませんが、武市といういまの知事は、御本人衆議院に議席を持っておったこともございまして、もう身を持することきわめて厳正ですから、これは何人も、県民は彼の誠実性に対して疑いを差しはさむ者はない。そういうことですから、何かここで問題を出されたら、小野君は重大だと、こう言われて、何かそういうふうな点に疑点を持たれるとするならば、そういうようなことをもうきちんとしておる男ですから、そのことだけは、私ども多年知っておるだけに、申し上げておいて、このことが何か不明朗なことがあるんではないかと、そういうことはやらぬ男ですよ、彼は。それだけは小野君もよくお調べになれば……。国会で問題を出されると、いかにも何か重大な問題があるようで、そういう誤解を与えるとしたならば、本人にとっても非常にやっぱり不本意であろうと思いますので、私は申し上げておく次第でございます。
  17. 小野明

    小野明君 総理のお考えはわかりました。そこで、そういう今回のことであったかどうかを、今後やっぱり明らかにしていかなきゃいかぬと思うんですね。私ども調べますから、知事総理と大変親しい関係がありますから、知事の方にもひとつその辺も、十分対応できるような弁明資料を整えておいていただきたいと、こういうことであります。
  18. 三木武夫

    国務大臣三木武夫君) いま各省大臣が答弁されたとおりだと思いますよ。あれ自体で、きわめてこの事態に対する関係というものは明らかにされていますから、小野君の方でいろいろお調べにてなることは御自由でございますが、政府関係する限りは、いま手続説明申し上げておるんですから、政府調べてみると言ったって、あれ以上の調べは出ませんから、それはやはり御理解願って、小野君の方ではどうぞ御自由にいろいろお調べ願いたいと思います。
  19. 小野明

    小野明君 そうであるとすれば、私もそれが望ましいんですけれども告発などが起こるわけはないんです。そのあたりの関係を私は明らかにしてまいりたいと、こう申し上げておるんです。  それから、時間もありませんから、きのう積み残した質問総理労働大臣に一問ずついたしておきたいと思います。  アメリカILOを脱退することを決め、通告をしたと思います。日本の場合、ILOに役員も送っておるようでありますが、このアメリカに追随してILOを脱退するというような措置をおとりになるようなことはないでしょうね。
  20. 長谷川峻

    国務大臣長谷川峻君) アメリカが脱限通告をされたということをニュース、新聞で拝見しましたが、私は、日本国際的地位、それにかんがみまして、そういうことをいたす気はありません。現に、本年の分担金は送っておりまして、ブランシャール事務局長は喜んで私の方にいろいろ申してきております。
  21. 小野明

    小野明君 総理のお考えは。
  22. 三木武夫

    国務大臣三木武夫君) そんな考えはございません。
  23. 小野明

    小野明君 もう一問。  ストライキ権で自民党が新しい機関をつくられたようであります。この機関が、総理国会で言明された方向と異なって、食い違ってくるのではないかという疑念を持っておりますが、その場合どうなさるおつもりですか。
  24. 三木武夫

    国務大臣三木武夫君) 政党内閣でありますから、政党と緊密にいろいろ連絡をとることは当然にしなければならぬことですが、政府政府の責任において決めるつもりでございます。
  25. 小野明

    小野明君 全然わからぬわけですね。だから、総理総裁でもあられるわけですから、どういう結論を出そうと、それは総理自身がリーダーシップでおやりになると、こういうことですね。
  26. 三木武夫

    国務大臣三木武夫君) 当然のことでございます。
  27. 小野明

    小野明君 終わります。
  28. 大谷藤之助

    委員長大谷藤之助君) 以上をもちまして小野明君の質疑は終了いたしました。(拍手)     —————————————
  29. 大谷藤之助

    委員長大谷藤之助君) 通商産業大臣から発言を求められておりますので、これを許します。河本通産大臣
  30. 河本敏夫

    国務大臣河本敏夫君) 中小企業金融円滑化につきましては、かねてから政府系中小企業金融機関に対しまして、中小企業者個々経営実情に応じ、きめ細かい配慮を行うよう指導してきたところでありますが、最近不況長期化に伴い、経営基盤の著しく弱化しておる中小企業者担保余力が低下しておること等にかんがみまして、三機関に対し、これらのものに対する貸し出しにかかる担保の徴求、評価等につきましては、第一に、原則として貸し出しを行うごとに担保評価の見直しを行うこと、第二に、評価に当たって一段ときめの細かい配慮をすること、第三に、付担保物件対象範囲をできるだけ弾力的に考慮すること等、個々経営実情に即し取り扱うよう指導をすることといたします。  次に、なお、これらの措置につきましては、三機関に対し、書面で通達をすることにいたします。また、結果を通産省に報告させることといたしております。さらに、引き続きまして、この趣旨で指導を行ってまいりたいと思います。
  31. 大谷藤之助

    委員長大谷藤之助君) ちょっと速記をとめて。   〔速記中止
  32. 大谷藤之助

    委員長大谷藤之助君) 速記を起こして。     —————————————
  33. 大谷藤之助

  34. 上田哲

    上田哲君 PLO問題につきまして、さきの十月三十一日の本委員会の討議と、政府の答弁、及びふさわしい工夫——外交上の利益を損なわないようあえてその具体的な内容についてはここで触れませんか——そうしたすべての経過を受けまして、私は、これを注目しておりましたPLOに対しまして、この委員会中にその反応が得られるように緊急の連絡をとりました。そして本日までにPLO側からここに返信が届いております。その要旨は、「この委員会における日本政府発言及びその後の経過検討に値するものであり、初めて重要な段階に入ったと認識する」というものであります。政府は、この認識を歓迎されるでありましょうか。
  35. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) PLOとの接触につきましては、各党におかれていろいろ努力をしておられるところでございますが、上田委員が先般アラファト議長と直接会われました結果を私ども承りまして、非常に裨益をいたしました。で、先般、御質問の中で、事務所表示及び日本代表が参りましたときの旅行、面接の自由等々については、政府お答えを申し上げまして、一応御納得をいただいたと思いましたが、もう一つの基本の問題、つまり、この問題について政府が基本的にどのような態度をとるかということについて、上田委員の御質問最後の点がその点にあったわけでございます。で、政府は、わが国の憲法のたてまえから申せば、これは全く自由なことであるというふうに申し上げており、そのとおりであるわけでございますけれども上田委員の御指摘は、それはそうではあろうが、体制の違うところにおる人々、ことに戦乱のさなかでもある人々にとっては、必ずしもそれだけでは十分な態度表示にはならないと、こういう御指摘であって、私どもそれもごもっともなことであろうと考えた次第であります。  そこで、上田委員のそのような御指摘もございましたので、日本政府としては、このたてまえは崩さないままで、PLO事務所の設置を考慮しておられるのであれば、いろいろ御不明な点もあるかもしれない、日本政府としては喜んでその問題について協力をいたしましょうというような意思表示をすることが適当なのではないかと考えておりまして、ただいまの御質問にもそのようにお答えを申し上げますし、また、何かの方法でそのような日本政府意思を先方にも伝えたいと考えまして、そのような方途をただいま講じつつございます。
  36. 上田哲

    上田哲君 そこで、昨夜アラファト議長自身から電文が届いております。それは、「この機会にもし可能なら事務所問題について社会党の責任ある代表とぜひ緊急に会談を持ちたい」と、こういうものであります。社会党は全力でこの要請に応じたいと決意しております。これがその電文であります。PLOがこの会談によって東京事務所開設について直ちに政府との交渉に入る意思を示すかどうか。ただいま決定的な判断をわれわれも最終的に持ち得るものではありませんけれども、もし、望ましい事態に至るならば、政府はこれに応ずる用意はございますね。
  37. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) ございます。
  38. 上田哲

    上田哲君 最後に、総理から、この際、PLOとの正常な関係樹立のために東京事務所開設についての強い熱意を伺いたいと思うのであります。  外務大臣も言葉を選んで慎重に、できるだけ前向きな姿勢を出そうとされた意図を私は認識をいたします。問題は、PLO側が外交特権を求めない、たとえば自動車のナンバーや税金の免除等は要らない、そういうことは主張しないのだと言っております。しかし、そこでたとえば看板でありますとか、行動の自由でありますとか、広報の自由だとか、面接の自由だとか、あるいは安全の保証というようなことが出てきます。しかし、それは各個の項目について答えることでは先方の本意とはならないのであります。たとえば看板と申しましても、看板はただかけさせてくれと言えばどうぞおかけなさいということになってしまうけれども、そういう看板ではないのです、看板には違いありませんけれども。たとえば、安全の保証というのも、具体的に、じゃどういう安全の保証が必要なんだというと、向こうは具体論がないのです。具体的に聞いていけば全然具体論がないから、じゃ警備隊が要るのか、それは要らない。交番が要るのか、それは要らない。じゃパトロールの一、二回ふやせばいいのかと言うと、そうだと言うんです。パトロールの一、二回ふやせばこの問題は解決するというのは、わかったようでわからない。そうではなくて、PLOとしては三百万パレスチナの正式の唯一の代表として国連で認められている権威がある。その権威を日本政府が認めてくれるという意味での看板はかけたいと。そしてその意思があるならば、たとえば具体的には日本——あるいはわからないけれども——パトロール等もふえるかもしれない、こういうことなんでありまして、その向こう側からする認識というものに適合するような、それも諸外国の一般レベルという努力をしてやるということが必要だという考え方だと思います。総理の言われる工夫というのはそういうことだと私は理解をしますし、あるいは問題のUNRWAです。国連の難民救済機関のUNRWA、この援助額の増額というようなこととか、あるいはそれだけではなくて、UNRWA以外に、たとえば病気の心配をしているパレスチナ難民の子供たちのために日本が病院を建ててやるとか、そういう具体的な問題があるだろうと思うのです。それらをもし具体的に触れていただけるならば、触れていただけることを含めて、総理、この機会をきわめて重要な段階だと御理解をいただいて、野党も全力で国益の立場で努力をいたします。どうかこれが日本外交の世界レベルにおいての前進を図るときであるという御判断にお立ちになって、総理の言われた「ふさわしい工夫」ということを実現する上で、この際、この場で強い熱意、強い熱意を御開陳をいただきたいということを最後に求めたいと思います。
  39. 三木武夫

    国務大臣三木武夫君) 外務大臣お答えしておりますように、外交特権は与えられないわけでございますが、そのほかでは、できるだけの便宜を図りたいと考えておる次第でございます。  それからパレスチナ問題というものは、これは中東問題の解決のためには避けて通ることのできない重要問題でございますから、この問題に対しては政府も熱意を持って臨むことは申すまでもございません。また野党の上田君初め関心を持たれるということについては、われわれとしてもそれなりのやっぱり意義があると。国益を踏まえてということでございますから、国益を踏まえて、この問題については政府側とも連絡をおとり願って、パレスチナ問題に対して日本の熱意と関心が示されるようにいたしたいと思うわけでございます。
  40. 大谷藤之助

    委員長大谷藤之助君) 以上をもちまして上田哲君の質疑は終了いたしました。(拍手)     —————————————
  41. 大谷藤之助

    委員長大谷藤之助君) 矢追秀彦君。(拍手)
  42. 矢追秀彦

    ○矢追秀彦君 初めに外交問題をお伺いしたいと思いますが、これは総理にお伺いします。  日中平和友好条約の締結には熱意をもって取り組むと言われておりましたが、最近いろんな行き詰まり等で進展をしていないように思いますが、この見通しについてはどうお考えになっておりますか。
  43. 三木武夫

    国務大臣三木武夫君) 本委員会でも外務大臣からそういう御報告をいたしたと思いますが、先般、国連総会で十時間にわたって先方の外務大臣宮澤外務大臣との間に話し合いをいたしたわけでございます。その目的は、日中平和友好条約の締結を何とかして早く妥結をしたいという目的のもとに開かれた会談でございます。そして、お互いにお互いの国の立場というものをよく理解する機会になったと私は思いますので、できるだけ早く両国の真の理解の上に立って、これは日中永遠の友好関係の基盤になるような、それにふさわしい条約にしたいと努力を続けておる次第でございます。
  44. 矢追秀彦

    ○矢追秀彦君 外務大臣、いま総理の言われた国連総会における中国側との話の中身について、発表できる限りお示しいただきたいと思います。
  45. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) ただいま総理大臣からお答えのございましたような趣旨に基づきまして、喬冠華外務大臣と長い話をいたしたわけでございますが、私といたしましては、当然のことではありますけれども、わが国にはわが国の憲法があり、それに基づく外交方針がある、そのことは当然ではあろう。当然のことと思いますが、中国には中国の外交方針がある、それは常に一緒のものではない、ことにわが国が世界で一つしか例のない平和憲法を持っておるということ、このことは私としては先方が十分に理解をされるように説明をいたしました。基本的には、両国間の関係は一九七二年の日中共同声明以来順調に進んでおるということ、なおしかし、ここで条約が締結できればこれにこしたことはない、ひとつお互いに一生懸命研究をして早期締結を考えましょうということであったわけでございます。  その中で、問題の中心はいわゆる覇権問題であったわけでございますが、私からは。これについての日本政府考え方は、しばしば総理大臣国会でも述べておられるように、この覇権主義に反対をする立場というものは平和の原則の一つである。すなわち内政に干渉をしない、あるいは主権を尊重するとかいうのと同じように、自分の国の意思を力によって他国に押しつけないということは、いわば内政不干渉あるいは主権尊重と同列に並ぶ物の考え方であると日本政府は理解をしておる。  その上に立って、さらに具体的に申せば、第一に、そういうふうに日本政府が理解をするので、この考え方は特定の第三国に向けられるべきものではない。  第二に、わが国も中国と同じく、日中共同声明に盛られておりますように、この問題について覇権を求める意思を持たず、また第三国あるいは三国の集団がそのような試みをするということにも反対である。このことは共同声明に盛られたとおりであって、それからわれわれは後退する意思は全く持っていないけれども、それは日本の憲法、日本の外交方針の発露としてのそういう物の考え方であって、中国と共同に事を図りあるいは共同に事をなすということは意味しないということ。  第三に、この考え方は一般的な平和原則であるがゆえに、共同声明にはたまたまアジア・太平洋地域においてそのような試みをしない、あるいは反対すると書いてございますけれども、これは例示的に言ったものであって、世界のどこでそのような試みが行われることにもわれわれとしては反対である、そういうふうに解すべきであろうと思う。  第四に、当然のことながら、国連憲章をわれわれが遵守するならば、自然にそこからいわゆる覇権主義反対という態度は生まれてくるべきものであって、この考え方は国連憲章の精神に背馳せざるのみならず、むしろ国連憲章の精神に一致するものと日本政府考える。  以上、概略四点にわたりまして日本政府考え方を述べ、それにつきまして先方との間に意見の交換を行った。大体、以上でございます。
  46. 矢追秀彦

    ○矢追秀彦君 いまの外務大臣の言われたその四つの問題について、喬冠華外相はどういう反応でしたか。
  47. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) 四つの一つ一つにつきまして必ずしも同じような反応を先方が示したわけではございませんが、少なくとも私の言うことは喬冠華外相は理解をしてくれたであろう。それに賛同をするということでは必ずしもなかったかと思いますが、日本政府の立場そのものの理解は、かなり長い会談でございましたから、できたのではなかろうかというふうに考えています。
  48. 矢追秀彦

    ○矢追秀彦君 問題の反覇権でありますが、これを条約の前文に入れる場合と本文に入れる場合とは、条約論として拘束力に違いがあるのですか。その点はどうお考えですか。
  49. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) 書き方にもよるであろうと思います。いわゆる前文というものが一種の歴史的あるいは背景的な、あるいは宣言的な叙述であるといたしますと、前文と本文とはおのずから意味合いを異にするであろうと存じますが、これは書き方に私はよることであろうと考えます。
  50. 矢追秀彦

    ○矢追秀彦君 昨日椎名副総裁が、この反覇権は本文に入れるべきであるというふうな旨を発言されたということをけさの報道で聞いたわけですが、これについては総理はどうお考えですか。
  51. 三木武夫

    国務大臣三木武夫君) まだ私は椎名氏から直接何も聞いておりません。
  52. 矢追秀彦

    ○矢追秀彦君 外務大臣は御存じですか。
  53. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) 私も実は承っておりませんけれども、先ほど申しましたように、それは前文というものをどういうふうに書きあるいは認識するかという、書き方によりまして判断が決まることではないかと思います。
  54. 矢追秀彦

    ○矢追秀彦君 そうすると、政府としてはどういう方針で臨もうとされているわけですか。いま、書き方で前文であっても拘束力が出るというふうな御発言ですけれども、そういうふうな、書き方をどうするかということで前文にするか本文にするかが決められないのか、それとも拘束力の点で決められないのか。聞くところによりますと、外務省としては本文に入れることは反対である、そういうふうな意向だというふうなことを漏れ承っておりますけれども、その辺はいかがですか。
  55. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) いわゆる覇権条項につきましてのわが国の基本的な考え方を四点ただいま申し上げましたが、そのわが国の考え方がはっきり確認されるという前提に立ちますれば、私は、それが前文であろうと本文であろうと、それは全く技術的な問題にすぎないというふうに考えます。
  56. 矢追秀彦

    ○矢追秀彦君 次に、これは先日新聞に出ておったのですが、外務省から七月一日に「覇権問題について」という文書が出ておりますけれども、これについて御説明をいただきたいんですが。
  57. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) この報道は私も読みまして、すぐに調べさせましたが、外務省の文書でないということがはっきりいたしております。つまり、その段階におきまして、日中間にいろいろ旅行をされる方もある、そのときに、この問題について国内の論調がどうであり、また解釈はどうであるかということを外務省の者からお聞き取りがありまして、外務省の者としてそのような論調あるいは考え方をお話をしたことがございます。それをそのような紙にまとめられた由でございます。したがいまして、これは外務省の文書ではなく、またわが国政府の公式な見解でもございませんし、また、書かれました時点はかなり以前のようでございます。
  58. 矢追秀彦

    ○矢追秀彦君 いまの大臣のお話だと、これはかなり以前のものであるし、正式のものではないから、この内容の趣旨ですね、考え方に、ここで私が問題にしたいのは、一つは、いわゆる覇権問題を条約に入れろという中国側の主張が覇権主義、大国主義である、こういうふうに言われている点が一つ問題だと思うんですけれども、こういうふうな考え方は政府としては持っていない、現在では変わっておる、いままではこういうふうな考えもあったと、こう考えてよろしいですか。
  59. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) 先ほど申し上げました覇権条項に関する考え方の四点、この点が確認されるのであれば、これはわが国の固有の意思に基づいて条約にそれをあらわすのでありますから、第三者から別にそれを強制されたものではないというふうに私としては考えるわけでございます。
  60. 矢追秀彦

    ○矢追秀彦君 総理、大体見通しとして、これはどこぐらいの時期をめどに置いてこの条約締結をお考えになっておるんですか。
  61. 三木武夫

    国務大臣三木武夫君) 矢追君御承知のように、外交は相手がありますからね。だから、いつということをわれわれ日本政府としてここで明言することはできませんが、私はやはりこの問題は両国の立場についていろんな理解も深まってきたと思いますから、したがって、できるだけ日中平和友好条約は早く締結した方がいい、そのことが日中両国の友好の基盤というものがこれで非常に固まるわけでございますから、むろん共同声明によって日中の国交正常化がなされてはおりますけれども、しかし、さらにこれを条約として固めることは、日中両国のためのみならず、アジアの安定のために、その方が好ましいということで、先方側もそういうことでできるだけ早く締結をしたいという意向のようでございますし、われわれもまた同じようにそういう考えでございますから、今後中国側との折衝を進めてまいりたいと考えております。
  62. 矢追秀彦

    ○矢追秀彦君 最後外務大臣にお伺いしますが、今後の外交交渉ですね、大体予定されているもの、はっきりしているものがあれば言っていただきたいし、そうでなければ、今後どういうふうな詰めをしていかれるのか、その点をお伺いしたいと思います。
  63. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) 私どもとしては、先ほどお答えいたしましたような点につきまして、広くわが国の国内でほぼ国民的なコンセンサスが得られるようにまず努力をいたさなければならないと考えておりますし、恐らくは先方におかれても、かなり長い会談でございましたから、その分析等に努力をしておられるのであろうと存じます。したがいまして、ただいまのような点がほぼ国内的にコンセンサスが得られ、また先方も分析をほぼ終わられたと考えられるような時点になりましたならば、わが国として交渉をどのような形で行うべきかについて具体的な決断をいたさなければならないと思っておりますけれども、もう少し時間をかしていただきたいというのが私のただいまの考えでございます。
  64. 矢追秀彦

    ○矢追秀彦君 次に、これは確認の意味で簡単にお伺いしたいのですが、安保条約の極東の範囲ですが、台湾については、これは除外されたと見てよろしいのですか。
  65. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) 安保条約の前文に書いてございますように、極東の範囲というのは、もともと地理的に限定し得る、規定し得る概念ではございませんで、この条約が平和と安全の維持について関心の対象にしておる地域という、いわば目的的な観念でございます。したがいまして、たとえば北鮮というようなものはその地域に入らないということを先般衆議院で申し上げたわけでございますけれども、ただいま御指摘の台湾地域というもの、そのものは、現在の段階において私はこの極東の範囲に入らないとは申し上げにくい地域ではないかというふうに考えます。
  66. 矢追秀彦

    ○矢追秀彦君 そうしますと、いま条件がつけられたわけですけれども、じゃ、どういうふうな状況になれば除外されるのかという、その点はいかがですか。
  67. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) 抽象的に申し上げますならば、その地域の安全平和というものが、われわれあるいはこの条約の直接の関心の対象ではなくなった段階においてと、こう申し上げることになろうと思います。
  68. 矢追秀彦

    ○矢追秀彦君 この問題、また改めて議論をしたいと思いますけれども、いま外務大臣、非常に抽象的に言われておりますけれども、結局、これは四十七年の十一月の予算委員会でも、わが党の矢野委員の方から問題が出されて、当時、大平大蔵大臣外務大臣でいろいろお答えになっておりますけれども、この点について慎重に配慮するというふうなことが言われているわけです。そういった点で、仮に日中平和条約等が締結されればこれは除外される、こういうふうなことになるのか、その辺の条件と言いますか、もう少し具体的には言えませんか。
  69. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) これも抽象的にお答えをいたすべきものと思いますが、基本的にはこの問題は、少なくとも外交の立場からは、いわゆる中国の国内問題であるという面を持っております。他方で客観的な事実として米台条約というものは存在はしておる、こういうことでございますから、われわれとしては、この地域の平和と安全がこの条約の関心の対象にならない段階においてというふうにお答え申し上げますことがまあ正しい答えでもありますし、一番穏当なお答えになるのではなかろうかと思います。
  70. 矢追秀彦

    ○矢追秀彦君 それでは次に、朝鮮民主主義人民共和国についてはどうなりますか。この極東の範囲との関係です。
  71. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) いわゆる朝鮮半島の北側の地域でございますが、私どもは北側においても平和と安全が保たれることをこいねがうこと、決して人後に落ちるものではございませんけれども、しかし、この条約の直接の対象であるかないかと申せば、それはそうではない、したがって極東の範囲には入らないというふうに考えております。
  72. 矢追秀彦

    ○矢追秀彦君 次に、北朝鮮との関係改善でございますけれども、先日、松生丸事件というのがございました。これは今後どのように処理をされてまいりますか。非常に補償額は少ないと思いますけれども、その問題も含めまして。
  73. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) 松生丸事件の残されました二人の負傷者につきましては、北鮮側から十月の三十日にピョンヤンを出発して、元山からわが国に送還されるという知らせがございまして以来、その後の詳細が実はただいま現在で不明でございます。いずれにいたしましても、二人の負傷者が帰りまして後、詳細にわが国として事情を解明いたしまして、その上でとるべき態度を決定いたしたいと考えております。
  74. 矢追秀彦

    ○矢追秀彦君 まあこういう問題も起こってきてますので、やはり北朝鮮との国交正常化といいますか、関係改善をより進めていかなければならぬと思うんですけれども、これはどういう条件が整えば今後北朝鮮との関係改善をされてまいりますか。
  75. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) 従来まで北朝鮮とは人的な交流あるいは経済、文化等の行き来は、決して私どもとしては消極的には考えないという態度でまいっておるわけでございますが、何分にも朝鮮半島とわが国との関連は、わが国が受ける影響も多うございますけれども、わが国が与える影響がきわめて大きいということから、この際、朝鮮半島の平和のバランスを崩すようなことはしばらく慎むべきであるというふうに政府としては考えてまいりました。他方で、一九七二年七月四日の南北の対話の精神というものが早く具体化をしてほしいというふうに、日本政府としてはこいねがっておりました。  そういう意味では、北側におきまして南側の現政権を話し相手とはしないと言っておられるやに聞きますことは、いわゆる話し合いの精神から言えば再考を願う余地があるのではないだろうかということを私どもとしては考えておるわけでありまして、そのような話し合いが進行し、そして朝鮮半島において文字どおり将来の紛争の要因がなくなっていくように、そういう努力を当面わが国としても側面からいたしてまいりたいと考えておるわけであります。
  76. 矢追秀彦

    ○矢追秀彦君 この問題、最後に、総理はどういうお考えですか。
  77. 三木武夫

    国務大臣三木武夫君) われわれの願いは、平和的な話し合いによって、南北の統一というものが朝鮮民族の悲願でもあると考えます。しかし、そのためには、朝鮮半島における現在の均衡を急激な形で破ることは、朝鮮半島の平和と安定のために役立つとは思わない。したがって、韓国との間には外交関係がございますが、北鮮はないわけでございますが、その間、人事とか、あるいはまた経済、文化等の交流を通じて理解を深めて、事態の推移というものをやはり見なければならぬと、こう考えます。
  78. 矢追秀彦

    ○矢追秀彦君 次に、財政経済問題に入りますけれども三木内閣の経済運営、これは誤りがなかったと、かなり胸を張って言っておられました。しかし、細かい問題になってきますと、反省すべき点があるとか、誤りも認めておられますけれども、もう一度総括をして私は四つの点にしぼってお伺いしたいと思いますが、経済見通し、この点について。それから物価抑制一本やりの政策を展開して、総需要抑制をやり過ぎた、このために不況が起きた。それから四十九年度の補正予算、五十年度当初予算についての反省はなかったか。次に、赤字国債の大幅な発行により健全均衡財政が破綻したと、こういう四点について総理はどう反省をされますか。
  79. 三木武夫

    国務大臣三木武夫君) 一つの経済見通しでございますが、これは大きく狂ったことは事実でございます。経済見通しというものは、的確に将来を見通して、見通しを改定するような必要のないことが理想であることは言われるとおりだと思いますが、何分にも非常な、世界的にも激動の時代でありまして、相互の依存性というものはこんなに深く深まっておるわけですから、影響を受け合うんですね、世界経済の動向というものが日本経済にも大きく響くわけです。そういうことですから各国ともそうですよ、みんな見通しどおりになっている国は一国もない。よその国がそうだからと言うんじゃないですが、なかなか困難な時代である。そういう御理解を願った上で、今後できる限り経済見通しというものについては、将来の経済の動向を展望して、そういうものに実際に近いようにするような努力はしなければならぬと思います。  それから、第二の物価抑制一点張りで、そうしてそのことが不況を呼んだのではないかということですが、矢追君も御承知のように、狂乱物価と言われるような後を受けて三木内閣はできたわけですから、ああいうインフレがずっと引き続いて高進したら日本経済はもうこれはやっていけなくなることは明らかですから、物価を安定さそうという政策に重点を置いたのだけれども政府はインフレも不況もという二面作戦を経済政策というものにとらざるを得ないことは明らかですから、第一次、第二次、第三次と、二月、三月、六月にわたっていわゆる景気対策というものをとりまして、住宅などの公共事業を中心として需要の拡大を図ってきたわけですね。そういうことをやり続けて、物価抑制を重点に置きながらもそういう景気対策というものに配慮をしてきたわけでございまして、もう物価抑制一点張りという政策ではなかったと御理解を願いたいわけでございます。  また、いまの赤字公債、多額に発行して均衡財政を破ったではないかと。特例公債のようなものを発行しないで財政が均衡をとるということは理想ではございますが、しかし、今日のこういう状態からして、税収の非常な不足、不景気による結果ですか、法人税を中心として非常な税収の落ち込みがあった。それならこの場合に、そういうことをしないで、たとえば増税というようなものができるかというと、そうはいかない。また、予算をそういう赤字公債を発行しなくてもいいように圧縮できるかというと、なかなかできない。やむを得ずああいう措置をとったわけで、できるだけこういう異例な措置をとらなくていいような財政の運営、その背景になるものはやっぱり景気というものを回復せなきゃならぬわけですが、そういう経済政策をとっていかねばならぬと思いますが、今日の場合はやむを得ない事情であって、それは好きこのんでそういうふうに持っていったわけではないということでございます。お答えをいたしました。
  80. 矢追秀彦

    ○矢追秀彦君 次に、経済担当の副総理にお伺いをいたしますが、いまの四点についてでございますけれども、いろいろいままでも議論が出ておりますので、しぼってお伺いしたいのは、一つは、改定が特に経済成長率四・三と二・二と、非常に、当初予算では倍近くあったわけです。これは非常に見通しの誤りとしては大き過ぎる、いままでに例のない大きさであると、こう考えてよろしいですか。
  81. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) 見通しの狂いとすると、これはかなりのものです。しかし、いま総理から話がありましたが、世界経済が非常な落ち込みでありまして、どこの国でもこういう改定ということをしているわけでありまして、世界のどこの国でも、改定の結果今日ではことしの成長率はわが日本が二・二%ということを言っておるわけですが、それ以外はみんなマイナスなんですから、そういう国際情勢下におきましてはとにかくやむを得なかった狂いじゃないか、そういう感想でございます。
  82. 矢追秀彦

    ○矢追秀彦君 通産大臣にお伺いしますけれども、企業の倒産ですね、企業倒産は最近やかましく言われて、不況対策を四次までやられるわけですけれども、私は相当早くから始まっておったと。すでに四十八年の十月あたりからぼつぼつ始まっのではないか。だから、狂乱物価が始まったころにはもう倒産というのがかなり大幅に進行していたと、こう見るわけですけれども、その点のデータも含めてお答えをいただきたい。
  83. 河本敏夫

    国務大臣河本敏夫君) 企業の倒産の数から言いますと、ここ二年間ほどそんなに大きな変化はありませんが、私はこの企業の倒産の数だけで景気の動向はなかなか正確に掌握できないのではないか、こう思っております。やはりいろいろな経済指標等を参考にしないと本当のことはわからないと思います。  そこで、大体のことでございますが、昨年のやっぱり年末からことしの初めにかけまして、私は経済の落ち込みが非常に激しかったと思います。そこで政府の方は何とかこの歯どめをしなければいかぬということで、一次対策と二次対策を立てまして、これは二月、三月でございますが、その結果ようやく私は歯どめがかかったと思うのです。それまでは大変な勢いで落ち込んでおりました経済も、ようやく反転上昇に変わったわけでございますが、大体生産なども月に一%ずつぐらいは伸びるようになってまいりました。物価もことしの中ごろにようやく落ちついてまいりましたので、六月に積極的な第三次対策、さらにまた九月に一層積極的な第四次対策と、こういう対策も立てられるようになったわけでございまして、三月以降、大体七%ぐらい生産は上昇しております。その反面、企業倒産は減っておりません。大体横並びの状態が続いておるわけでございまして、企業倒産だけで経済全体の動向を掌握するということはやや正確を欠くのではないかと、こういうふうに考えます。
  84. 矢追秀彦

    ○矢追秀彦君 もちろん、いま大臣言われるように、これで私は全部をはかろうとしているわけではありませんけれども、いま、何かよくなったように言われますけれども、実際五十年度に入りまして倒産が減ったような月もありますが、これは前年同月比であって、負債総額を見ますと決して減っていない。むしろ八月、九月になると負債総額は相当ふえているわけです。この辺はいまの答弁と比べてどう考えたらよろしいですか。
  85. 河本敏夫

    国務大臣河本敏夫君) 八月、九月は、倒産の件数は大体ずっと横並びでございますが、大型の倒産が一つ二つ出たものですから、金額的には三倍ぐらいにふえております。これは特殊の事情だと思います。
  86. 矢追秀彦

    ○矢追秀彦君 そういういいかげんな見方じゃ困るんですよね。副総理ね、私がここで言いたいのは、四十九年度の補正予算、また五十年度当初予算の編成、これについて副総理は前々から、今度の五十年度予算は調整期であるとか、中間処置であると言われました。それが果たして完了したと、調整は終わったんだと。これは来年三月末を見なきゃわかりませんけれども補正予算を組むに当たって大体そういう判断ですか。
  87. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) 私は、今回の経済の落ち込みは世界的規模のものであって、その中でわが国の経済を安定した姿に戻すには、これは大変な努力と日子を要する、大体三年の調整日子を要する、こういうことで、ちょうどいま一年半なんです。それで調整過程というのはまだ一年半残っておる、五十一年度であらかたの安定に入ると、こういう見解を前から申し上げているんです。
  88. 矢追秀彦

    ○矢追秀彦君 後で五十一年度予算編成のところでお伺いしようかと思ったんですが、副総理、いま五十二年度までということも言われておりますけれども、ことしの四月一日のこの予算委員会で、私の質問に対して副総理は、要するに五十一年度予算はすっきりしたものを御提案申し上げるとはっきりおっしゃっておるわけですよね。それはできなかったと、こう見ていいわけですね。来年度予算はすっきりしないわけですね、まだ。
  89. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) 調整過程といいましても、第一年度、第二年度、第三年度、だんだんと先が見えてくるような状態になるわけです。そこで、政府といたしましては、五十一年度予算、これは調整過程の第三年目になるわけであります。そこで、この五十一年度を起点といたしまして長期展望をしてみよう、いわゆる社会経済発展のための中期計画というものを策定してみようと。まだ調整過程ではありまするけれども、そのまた長期計画の初年度にもなるんです。そういう意味におきまして、五十一年度予算というものは、五十年度予算と違いまして長期展望に立って編成したいと、そういう趣旨のことを申し上げていいかと存じます。
  90. 矢追秀彦

    ○矢追秀彦君 五十一年度予算はちょっと後で詰めますけれども、私が言いたいのは、先ほど通産大臣は、企業倒産だけでは経済全体の見通しにならぬと言われますが、先ほど物価抑制一本——もちろん物価も大事ですよ、やらなければならぬことは事実ですが、すでにもう相当早い時期から倒産も始まっておるし、あの総需要抑制政策というのは、狂乱物価が始まってからすぐ抑えられたのじゃないですよね。もうその前の年からぼつぼつ始まっているわけです。そうしますと、四十九年度の特に補正、あるいは五十年度予算というのは、三木内閣が発足して初めての予算編成でもあったわけですから、ここでもう少しいわゆる不況対策、景気対策というものと物価の抑制というものを両立した方針がとれなかったものか、その点についてはどう反省をされますか、現状時点から見て、いまの企業倒産の状況からも見て。
  91. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) 見通しに狂いがあったんです。これは確かに御指摘のとおりです。つまり、世界情勢がこんなふうになるという展望は持っておらなかったのがえらい狂いのもとになってきておるわけです。そういうことで、世界情勢の判断において誤りがある、こういう御指摘でありますれば、これはもう幾らおしかりを受けてもしようがない問題だと、こういうふうに思います。  しかし、それに対する対応が間違っておったかということになると、まあ大体いいところをやってきておるんじゃないか、そんな感じがするんです。まあ客観的に、国際社会では、日本の物価、日本の経済の動きを見まして、日本の奇跡とまで言っているのですから。私はこれは評価のし過ぎだと思うんです。そんな状態ではない、こういうふうには思いますけれども、しかし、これは物価の抑制だけが経済政策じゃありません。やっぱり経済活動——物価の抑制をするというゆえんのものは何だというと、これは経済の活動を正常に持っていく、その礎を築くためのものですから、経済活動がどうなるかということも常に見ておるわけですよ。つまり、私どものその立場というのは、撃剣で言えば両刀使いなんです。右の強い手でとにかくインフレを切る、そういう時期もあったわけです。いまそれが今度は右の強いこっちの手では不況を切るというふうな持ちかえをしているわけです。それもだんだん早期にやっているわけでありまして、五十年度になるその前、四十九年度、もう二月からそっちの方の構えもとっておるわけでありまして、これは非常に機動的、弾力的にやっておると思うんです。  それから、対応の仕方は私は大体そうおしかりを受けるような状態のあれはしていないと思うんです。三月になったらどうだというと、とにかく微弱ではありまするけれども、生産活動というものは上向いてきているんです、これは。そういう状態は世界の中でも、とにかく日本だけがプラスの成長だという結果になってあらわれてきておると、こういうふうに思います。
  92. 矢追秀彦

    ○矢追秀彦君 まあまあやってきたと言われますけれども、副総理はここで言っているからそんなのんびりしたことを言っていられるので、現実に不況であえいでいる人たち、あるいは失業している人たち、また来年の就職の不安におののいている大学生たち、これを考えたら、まあまあやってるとか——やっぱり私はタイミングを逸したと。先ほど両刀使いを言われましたから両立論は認められたわけですが、しかし、そのタイミングは私は遅かったと思う。だから、不況対策はもう去年から始めなけりゃいけなかったと、こう思うんですけれどね、その点はいかがですか。
  93. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) インフレの問題があるわけですね。インフレはいまはコストインフレ、そういう時期になっておりますが、これは初期一年という段階は、これは需給インフレですよ。仮需要というものが起きまして、そうしてああいうような狂乱状態に突入した。この仮需要を抑えるにはどうするかというと、需給を詰めるほかはない。そこで総需要抑制政策というものをとったわけです。それが成功いたしまして、物価インフレの火の手というか、仮需要というものは全く鎮静するような状態にことしになってから入ってきておるわけです。  そこで、もうそろそろコストインフレの段階だと。これは先国会でも強調しておったはずです。コストとは一体何だ、こう言いますれば、原材料費でありますとか、人件費だとか。私はそういう意味において、ことしの春闘というものを非常に重要視したわけですが、とにかくあれはなだらかな結論になりまして、コスト要因、これもかなり荷が軽くなったような感じを持ちますが、そのときどきに応じまして情勢がどういうふうな性格のものであるかということを判断し、それに対して適切と思われる手段をとってきておるわけです。  ですから、経済は、とにかくなだらかではあるけれども成長過程に入っておる。にもかかわらず企業は非常に苦しいというのは、これは日本に特殊事情があるんです。つまり、終身雇用体制でありますとか、あるいは自己資本でなくて借入資本で設備をやっておる。金利負担が多いとか、そういう特殊事情があるので企業が非常にいま苦悩に満ち満ちておる、こういうような状態なんであります。しかし、そういう状態を改善しようといったってそう名手はない、即効薬はないんです。私は三年、三年と前から言っているけれども、いまは一年半なんだ。一年半ぐらいなら、傷跡だというふうに思われる人に対しましては、これはいま非常に苦痛かもしれませんけれども、それだけとにかく客観的に苦しい打撃を受けたわけなんですから、三年を要する。しかし、三年たてば大体健康体に治るんだという展望を持ち得る人に対しましては、いまは半分道中だ、もういま一年半がまんすればよくなるんだということで希望の持てる活動なり運営ができる、こういうふうに思いますので、いまはとにかく苦しい段階です、段階ですから、それをぜひ国民に理解してもらいたい。それほどいま日本が世界情勢の変化から受けた打撃というものは厳しいものである、これをぜひ理解してもらいたい。理解に立ちますれば、私は、とにかく政府がそういう中で大体大筋においては過たない施策をやっておるなと、そうして三年目には期待のできるような情勢になるな、大いにひとつここでがんばりましょうという気分が出てくるのじゃないか、そういうふうに考えます。
  94. 矢追秀彦

    ○矢追秀彦君 いま苦しいから、一年半先はよくなるからしんぼうしてくれじゃ、いま困っている国民は納得しませんよ。だから、私が聞いているのは、その時期を誤ってないかと、不況対策なら不況対策でも、そう言うとすぐあなたは海外の要因だと全部逃げられているわけですね。そうじゃなくて、今日この大変な状況に押し込むまでに手は打てなかったのか。私は打てたと思うのですよ。見通しを間違った、これはしょうがないといまは言われますけれども、私はできなかった問題ではない。すでにあの狂乱物価になったときに総需要抑制でやればいいと言われましたけれども、それだけではやはりその後に不況が来るということはだれでも予測できたわけですよ。今後の状況を見ながら不況対策なら不況対策を私はもう少しできたと思います。予算だって機動的に使うんだということも言われてきましたですよ、再三。これはできなかったのかどうか。私は遅きに失したと言いたい。その点いかがですか。再度伺います。
  95. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) 遅きに失した失したというお話ですが、もう二月からその点には着目をしているんです。二月に第一次景気対策というものをとっておるわけでありまして、それが第二次、第三次と引き続いて、そして相当の効果を上げている。輸出なんかは、見込みに比べると二〇%も減っているんです。金額にすると百億ドルも減っているのです。それから設備投資も、それと関連を持ちながら、見通しと比べると激減をしておるんです。それにもかかわらず、今日わが日本の経済が、世界がマイナス成長だというその中において、ただひとりプラス成長であるという結果を持っておるのは何だと言いますれば、そういう第一次、第二次、第三次、政府の財貨サービスの需要というものがこれは盛り上がってきた、それが支えているんですよ。その点もひとつ御理解を願えませんか。
  96. 矢追秀彦

    ○矢追秀彦君 次に、来年大学を卒業する人たちの就職ですが、きのうも予算委員会で出ておりますが、これは文部大臣にお伺いしたいのですが、現在の就職状況、数字がございましたら御説明いただきたいと思います。
  97. 長谷川峻

    国務大臣長谷川峻君) いろいろ来年の新卒についての御心配いただきまして恐縮です。十一月の一日に解禁になって、就職試験を受けているわけであります。私の方でも説明会以来ずっとフォローしておりますが、いままでは、九月の説明会前後に、私の方なり文部省で調べたところによりますと、大企業はいまのような情勢ですから削減したり、ときには中止しているところもあります。しかし、中小企業の方に多いのです。こういう際に採用するという意向が非常に強うございまして、一部上場、二部上場百五十社。それから、抽出して十三大学。これを調べてみますというと、大体二・一倍の求人がある。こういう中に、十一月一日からいま入社試験が行われているんで、いま、まだこの数字をずっと当たっていますけれど、的確なものはございません。十一月の末ぐらいに、企業あるいはまた大学関係をよく調査をいたしまして、いまのところ見通しとすれば、中小企業の方々もこういうときに欲しいということですから、何とかうまくいくのじゃなかろうかと思いますが、十一月以降の数字が出ましたときに、さらに就職の確保のために万全を期していきたい、こう思っております。
  98. 矢追秀彦

    ○矢追秀彦君 昨日もいろいろ対策について言っておられましたけれど、たとえば商工会議所なんかであっせんをするということ、本当に知っている学生はなかなか少ないんですよ。知らぬのもたくさんいます。そういうふうな点で、政府はこの対策に乗り出すといっても、いわゆる学生さんたちにどこまでわかるようにできるのか、そういった点が一つ。  それから、まあ中小企業は敬遠する向きが多いんです、実は。これは、やはり大企業の方がすべての点において優遇されておるという問題。この格差があることが日本経済の大きな問題ですけれども、これはまたこれとして解決をしていかなければならぬですけれども、現在、現実問題としては、大体ホワイトカラーを望んでブルーカラーは敬遠する、こういった傾向が出てきたのも日本経済の特色が問題でして、これについてはまた後で総理にもお伺いしようと思ってますけども、いわゆる学生さんが本当にみんないま不安なんですよ。恐らく労働大臣も相当就職を頼まれているのと違いますか。閣僚だって相当就職を——皆さん議員全部、いっぱい来ておる現状だと思うのですよ。実際どうするかと言ったってなかなかそういうルートがない。コネばっかりというわけにいきませんし、これは。やはり実力というものもありますし、そういった点でどういうふうにもっと明快にするか、これは文部大臣も大学側でどういうふうにされておるか、含めてお伺いしたい。
  99. 長谷川峻

    国務大臣長谷川峻君) 従来は、大学の就職部が企業にすぐごあっせんすれば大学生をどんどん採っている時代でございましたが、おっしゃるように、いままでは労働省の職安なんというものはなかなかもって大学生は来るところでもございませんでした。こういうところにいまや来ている。そういうところではよくあっせんしている。さらに、また商工会議所の方も、全国の商工会議所は、各都道府県にそういう就職部、あっせん部を設けて動くようにしております。いずれにいたしましても、四年しっかり勉強した健康な学生諸君、しかも高度から安定成長に入った時代ですから、それに見合うやはり自分の希望というのか、それに向かっていく、こういう姿勢で私はがんばって、それをお手伝いしよう、こう思っております。
  100. 永井道雄

    国務大臣(永井道雄君) お答え申し上げます。  ただいま労働大臣が申されたとおりでありますが、実はもう一つ、この春先から、文部省、労働省の呼びかけで、労働省と文部省との間に連絡会議を開きまして、ことしは相当求人がむずかしくなるのではないかということから、相互に連絡をとりながら仕事をしていくということを申し合わせたわけでございます。でございますから、先ほど労働大臣が言われたように、労働省も調査をしておりますが、文部省も九月に調査をいたしまして、求人数、求人件数はどうなっているかということを調べたわけです。で、両方のデータを見合わせていくという方法をとっております。  九月の集計では、昨年の場合には五月から求人が始まるわけですが、昨年五月から始まった一カ月間、それからことしは九月からの一カ月間、それを比較いたしますと、件数の上でほとんど違いがないということがわかりました。ただ、その求人の内容については、先ほど労働大臣が言われましたように、大企業の方が縮小しているということは否めない事実でございます。そこで、それに基づいて、いま商工会議所の話なども出ましたが、労働省は労働省としていろいろ働きかけられることがあるわけですが、われわれの方は大学の学生部などに対しまして、いまのデータに基づきまして、学生の応募先についての助言などを行うということについて指導をしているわけでございます。ただ、この推移をまた見守っていくことが大事でございますから、十一月にいまもう一回調査に入っております。そして十一月の末ごろになりますというとこのデータが出てくるわけですが、それをまた昨年度の場合、求人が始まりましてから三カ月ないし五カ月に行った調査がございますから、その調査と時日が同じ程度経過した場合の調査結果を比較いたしまして、そして今度の場合にどこに弱点があるか。どういうところをねらっていけば、とにかく学生諸君の就職に対する不安を解消して事実上この就職というものを達成できるようになるか。ですから、やり方といたしましては労働省との緊密な連絡と、昨年度のデータの比較に基づいて大学の学生部に助言をしていくという方法で現在進んでいるわけでございます。
  101. 矢追秀彦

    ○矢追秀彦君 これは総理、就職はいま大きな社会問題化しつつあるわけですから、これはひとつきちんとしていただきたいんですが、このようになってきたいろんな問題があると思うんです。  一つは、大企業と中小、特に零細企業との格差が余りにも大き過ぎる。だから、いま言われているように、中小企業の方から求人はあっても大学生は行かない。いま言ったブルーカラーをきらうというふうな風潮が出てきたのは、やっぱりブルーカラーの人たちがホワイトカラーよりもいろんな面で差別をされておるというか、格差があるというふうに考えるわけです。こういった問題はやはりこれから解決をしていかないと、低成長時代に入った場合、今後の大学卒業者というものはどうなっていくのか。しかも、いま高校にはどんどん普通科にみんな行くような状況になってきております。これはもう総理も御承知と思います。ますますこれからはそういう大学がまだふやされていくと思います、下から上がってきますとですね。その場合どうなっていくのか。  それからもう一つは、いわゆる有名校指定という問題ですね。指名校という問題が出てきて、やはり大学に差別ができておる。入社試験もいわゆる筆記試験でまず相当ふるい落としてしまっておる。もっともっと試験の方法等は人材を発掘する上においていろいろあるんではないか。そういういろんな問題を含めて、今後どういうふうにお考えになりますか。
  102. 三木武夫

    国務大臣三木武夫君) 矢追君も御承知のように、日本の雇用の形式が欧米と違って終身雇用制のような形をとっておるわけで、なかなか不景気になったからといって整理ができないわけですから、現在の生産水準からすれば過剰な人員を抱えて、そのことが企業の採算の上に非常な大きな影響を与えておる。そういうことを考えてみますと、何としても、中小企業も大企業も、これは雇用全体から言えばそう区別はないわけですから、景気を回復せないと根本的には解決できないですね。だから、もう過剰な人員を抱えておるから新規の採用というものはできるだけ制限するようになる。雇用の機会をふやしていくということが一番ですが、経済活動が活発にならないとなかなか雇用の機会はふえませんから、その間にいま矢追君の御指摘のようないろんな矛盾も出てくるわけです。だから、どうしてもやっぱり景気を回復させて経済活動を活発にする、それが雇用政策の基本である。そういう場合に、いまいろんな雇用の場合にハンディキャップを持っておるようなものは、これはいろいろ是正していかなきゃならぬし、また働く側に立っても、有名な大企業以外は余り希望しないというようなことも、やはり自分の適性、能力などに応じて、中小企業にも、ある意味において大企業の中で果たす役割りと中小企業の中でいわば果たす役割りは、中小企業の方が非常にやりがいのあるような面も多いと思いますから、そういう有名大企業ばかりねらうという考え方もこれは変えていかなければならぬと思うんです。その他、雇用の点でいろんな不合理な点は是正していかなけりゃならぬ、そう思います。
  103. 矢追秀彦

    ○矢追秀彦君 まだもう少し議論をしたいんですけれども、先にまいりまして、次に赤字国債の問題に入りたいと思います。  この償還計画表でございますけれども衆議院予算委員会で問題になりまして、補足説明というのが出てまいりましたが、この補足説明といわゆる償還計画表との違いはどこにあるか、まず説明をしていただきたい。
  104. 大平正芳

    国務大臣(大平正芳君) 結論から申しますと、違いは別にございませんが、償還計画表の説明にございまする財政法第六条に基づく繰り入れでございますが、それをさらに説明をいたしまして、前年度剰余金の全額を繰り入れるということを衆議院の補足説明におきましては明らかにしたわけでございます。それから、この説明には書いてございませんが、つまり償還財源として借りかえによって調達した財源は使わない。言いかえれば、借りかえでなく、もう満期になれば耳をそろえて返しますということでございますので、四条公債には借りかえ財源を使うことができるように説明はいたしてあるわけでございますけれども、この特例公債の場合はそれは書いてございません。書いてないということは、借りかえは行わないで満期になれば全部払いますということを、ここに書いてないことをこちらで、説明では明らかにいたしたわけでございますので、違いはないわけでございまして、より明確にいたしたつもりでございます。
  105. 矢追秀彦

    ○矢追秀彦君 まあ明確になったと言われますがね、ちっとも償還計画表というものではないと思うんですよ。計画表といったらやっぱりきちんと数字もある程度出てきて——それは予想ができない面もあると思いますよ。これはただ、いま言われたように実質的には変わらない、ただ全額充てることと、いまの借りかえはやらぬというだけの話であって、これは表ではないですよね。計画表にするには私は余りにもこれはいいかげんだと思うんですが、その点はいかがですか。
  106. 大平正芳

    国務大臣(大平正芳君) これは、償還計画はこれ以外につくりようがないわけでございます。つまり、満期償還でございますので、十年の満期公債を発行するわけでございますから、満期になれば償還するという以外に償還の仕方がないわけでございます、日本の場合は分割償還という方法をとっておりませんから。  で、あなたの言われるのは、この償還財源をどのように積み立てていくかということが計画的でないじゃないかという御指摘だろうと思うのであります。それはそのとおりでございまして、この特例公債を発行しておる間は償還財源を積み立てるような余裕はございませんから、特例公債から脱却いたしました暁におきまして、ここに書いてあるような方法によりまして繰り入れてまいりまして、満期になれば全額返すということにいたしておるわけでございます。つまり、あなたの言われる償還計画というのは、これ以外に書きようがないわけでございます。
  107. 矢追秀彦

    ○矢追秀彦君 これ以外に書きようがないと言われますけれども、いま言われたいわゆる特例公債の脱却ですね、これは見通しはあるのですか。いつごろ……。
  108. 大平正芳

    国務大臣(大平正芳君) 正直に申しまして、五十一年度の予算編成に取りかかったばかりでございまして、五十二年、三年と後年度にわたりましての展望はまだ明らかでございません。
  109. 矢追秀彦

    ○矢追秀彦君 それがある程度明らかにならないと、やっぱり償還計画なんてできないのじゃないですか。幸い四十年の場合はうまくいった、今度もうまくいくんじゃないか、こういうようなことで安心しておられるのかもしれませんが、けさの新聞によりますと、来年度予算は景気機動型、国債は六兆円を超すと、こういうふうなことが出てきておるわけですね。だから当初から赤字国債は約三兆円前後、こういう記事が出ておりますけれども、来年度自身が今年度と同じくらいのが出てくるようになる。これは相当大変じゃないですか。財政審でも言われているわけですからね。あれだけ組んで、ただ計画立たぬじゃ、これは国民は不安ですよ、国債発行がインフレにつながるということはもう明らかですから。その点について再度お伺いいたします。
  110. 大平正芳

    国務大臣(大平正芳君) 仰せになることはよくわかるわけでございますけれども、来年の経済がどういう状況になりますか、どういう成長を記録することになるのか、そしてどういう歳入が期待できるのか、これはまだ全く政府としても作業を終えていないわけでございますので、私どもといたしまして、来年の予算の枠組みを考える材料をまだ持っていないわけでございます。新聞報道にはいろいろ創作があるようでございますけれども、それは私ども関知しないところでございます。正直に申しまして、いまのような不確定要素が多いときに、来年度の予想がなかなか立ちにくいときに、いつごろ特例公債から脱却できるかということ、そしてその後どういう展望だというようなことをお聞き取りいただきましても、明確なお答えができないことは非常に残念でございますけれども、しかし、それは困るじゃないか、それは明らかにしなきゃならぬということを矢追さんに求められましても、わかりもしないものを申し上げることはなお私は不謹慎だと思うのでございまして、いま正直に申しましてわからない状態でございます、五十一年度の予算は編成にかかったばかりでございます、まだ五十一年度の展望さえ明らかでない状態でございますという状況を、正直に、ありのまま申し上げておるわけでございます。  しかし、あなたが言われるように、できるだけ展望を明らかにし、財政にはできるだけ計画性を持って当たらなけりゃならぬということは私どもも当然のことと考えておるわけでございますが、それには確実なデータを持ちまして当たってまいらなければならぬわけでございますけれども、そういう素材を十分まだ手にいたしていない、せっかく作業をいたしておる最中でございますので、本日の段階におきまして明確なお答えができないことはお許しをいただきたいと思います。
  111. 矢追秀彦

    ○矢追秀彦君 いまそんな、出されないと言われますけれども、それならどうして特例法の第三条で「償還計画国会への提出」と、こういうように言っておられるんですか。
  112. 大平正芳

    国務大臣(大平正芳君) 十年満期の公債をこれだけ発行をさせていただくことを認めていただきたい、それにつきましては、これは六十年に全額耳をそろえて償還いたします、そしてそれの償還財源はあそこの説明にあるような方法で積み立ててまいりますということでございまして、政府がそれを書いた以上はそのとおり実行する決意でございますので、それをべースに財政計画を立てていかなけりゃならぬ責任を持っておるわけでございます。
  113. 矢追秀彦

    ○矢追秀彦君 大臣、仮に大臣が会社の経営者として幾らかお金を借りた、それは十年かかって返済するんだ。やっぱりある程度の見通し出さなかったら、銀行もどうぞと言って貸してくれないんじゃないですか。十年後とにかく全部返しますから心配せぬでください、それじゃちょっとまずいんじゃないですか。それは確かに予測のできないことはあるでしょうけれども、もう少し国民にわかるような、そういう今後の景気の動向等の見通しも出されるわけですから、そういうのも含めた上でこうなる、あるいは税についてはある程度こういうようになる、この年度からはこういう税も考えてみよう、そういうこともある程度出して、たとえこの予算書の表としてはできなくても、この補足説明にはもう少しその辺が入ってもいいんじゃないかと思うんです。ただ、この中には「今後の財政運営」という非常に大ざっぱな総論しか出ていないんですね。これでは国民は納得できないです。重ねてお伺いします。
  114. 大平正芳

    国務大臣(大平正芳君) 今度の臨時国会で御審議をお願いいたしておりまする特例法案、それから補正予算案でございますが、これは五十年度、当該この年度の歳入不足を補てんするために二兆二千九百億の特例公債をお願いするということでございまして、そしてそれは十年満期の公債を出さしていただく、それはしたがって、六十年には借りかえなくて全部払うんだ、そういう、つまり五十年度の歳入欠陥を補てんするための方法としてこういう手段をとりますということを申し上げておるわけでございます。したがって、五十一年度以降の問題につきましてはまだ触れていないわけでございます。  そこで、しかし五十年度の問題を処理するにいたしましても、五十一年度以降の展望ということを、ほぼわかるだけ明らかにいたしまして国民の理解と協力を求めるということは仰せのとおりだと思うんでございますが、いまの段階で政府ができることといたしましては、この国会に予算書でお約束を申し上げておることと、それから先般来衆議院での御審議を通じまして政府が申し上げておることが、いま政府でできる精いっぱいのことなんでございまして、それ以上憶測をたくましゅうして、不安定、まだ確実でないことを申し上げることは国会に対して非礼でございますので、私といたしましては精いっぱいのところを申し上げておるつもりでございます。
  115. 矢追秀彦

    ○矢追秀彦君 それでは、この償還の問題について具体的にもう少しお伺いしてみたいと思いますが、まず、この赤字国債の償還に、建設国債の償還財源として積み立てている部分は流用はいたしませんね。まずこれを確認したいんです。
  116. 松川道哉

    政府委員(松川道哉君) わが国におきまして、国債の減債につきまして国債整理基金が置かれておるのは御案内のとおりでございます。そこで、その減債の方法でございますが、これは各種の国債を通じまして一つの減債基金をつくって、その運用でもって処理をしていくというのが大方針でございまして、例の百分の一・六の規定のところにも、「前年度首ニ於ケル国債総額ノ」という表現が法律にも使ってございますが、その意味であらゆる種類の国債、たとえば財政法四条に基づく国債であるとか外債であるとか、そういったもの全部この基金を通じて償還するたてまえになっております。その意味で、今回特例法をもって国債をお願いすることになりますが、この償還もこの基金の全体の中から賄われることになります。  そこでその財源でございますが、それは先ほど大臣から御説明のあったようなことで、この基金に組み込んでいくわけでございますが、その扱いとしましては、従前どおり、整理基金全体を一環として処理してまいる所存でございます。したがいまして、ただいま先生御指摘のように、この部分がどうなったかということはちょっと判断がむずかしい。私どもとしては、ただいま大臣から御説明のございました大方針によってこの償還を図っていく所存でございます。
  117. 矢追秀彦

    ○矢追秀彦君 そうしますと、建設国債も赤字国債も区別されないということになりませんか。やはりこれはきちんと立て分けなきゃいかぬのじゃないですか。
  118. 松川道哉

    政府委員(松川道哉君) この国債整理基金の中に、サブアカウントと申しますか、そういうものをつくるというのも一つの考え方かもしれませんが、私どもは、それは減債のための基金を有効に活用する手段であるという考えは持っておりません。ただいまの大臣の御説明にもございましたように、予算繰り入れということも考えながら、この特例国債の償還に遺憾なきを期したいというのが私ども考えでございます。
  119. 矢追秀彦

    ○矢追秀彦君 現在、国債整理基金にたまっておるものは、どういうものが幾らで、現在大体幾らになっておるか、その点を御説明下さい。
  120. 松川道哉

    政府委員(松川道哉君) 国債整理基金は、一つ特別な仕組みを持っておりまして、これは国債の減債に充てるための歳出が組まれておりますが、これが年度内に使われない場合には、逓次翌年度に繰り越して使用することができる、目的は減債のために使うということでございますが、これは逓次翌年度に繰り越すということになっておりまして、この残高が四十九年度末二千四百三十一億円ございます。この使用に当たりましては、これは運用部に預託するかあるいは国債をもって運用しなければいけない、そういう形に法定されておりますので、そのような運用形態をとっております。
  121. 矢追秀彦

    ○矢追秀彦君 五十年度末、大体どのぐらいになりますか。
  122. 松川道哉

    政府委員(松川道哉君) 御質問の五十年度末でございますが、これはただいま国会で御審議いただいております特例法も出てまいります。そして、全体といたしまして国債の流通市場をどうするかという問題もございますので、私ども必要があれば随時買い入れ消却ということも考えていかなければいけない。この金額がどのぐらいになるかということは、現在の段階でにわかに推定することがむずかしいものでございますから、現時点におきまして五十年度末どうなるであろうかということは控えさしていただきたいと思います。
  123. 矢追秀彦

    ○矢追秀彦君 大体私が試算したところによりますと、四十八年度の二分の一の繰入額は九百七億円、四十九年度の二分の一が千四百二十九億円、五十年度のこれは五分の一繰り入れ千三百七十八億円、合計三千七百十四億円、この中には、いま使われておるということもありますので、少しは減るかと思いますが、大体三千億程度はあると見てよろしいですか。
  124. 松川道哉

    政府委員(松川道哉君) 先ほど触れました期限前償還あるいは買い入れ消却ということを全くしないという前提で、どんどん累積していくという前提を置いて試算いたしますと、三千五百億円程度のものが今年度末でたまるのではないかと考えております。
  125. 矢追秀彦

    ○矢追秀彦君 それでもう一つお伺いしたいのは、四十年国債の償還の際には、それ以前の剰余金というのはもうほぼ全額使われたと、こう見てよろしいですね。
  126. 松川道哉

    政府委員(松川道哉君) 四十年度に出しました歳入欠陥債につきましては、四十三年度から四十七年度にわたりまして逐次償還をいたしてまいりました。特に四十三、四十四、四十五年度のあたりでは、剰余金の活用ということで、これをもって四十年度債の期限前償還に充てております。
  127. 矢追秀彦

    ○矢追秀彦君 次に、五十一年に剰余金はどれだけ出ますか。
  128. 吉瀬維哉

    政府委員(吉瀬維哉君) 先ほど大臣から御説明申し上げましたとおり、五十一年度においてはたお特例債に依存せざるを得ない財政になると思います。したがいまして、私どもは五十一年度の剰余金はほとんど出ない、まあゼロに等しい、こう考えておるわけでございます。
  129. 矢追秀彦

    ○矢追秀彦君 となりますと、非常に今後の償還という問題から考えまして、これも一応試算をしてみたんですけれども、百分の一・六、これを十年といたしまして、今回の場合ですが、二兆二千九百億円、それから三千六百六十四億円が百分の一・六、これが償還の一番になりますね、補足説明の。それから次に第六条に基づく剰余金の繰り入れが、四十八年から五十年、五十二年以降はゼロということで三千九百十七億円、それから五十一年に四百六億円は四十九年度からの分が来ますから、これを四百六億として全額充てられると思います。三番ですね。そうしますと、大体まあ一兆四千九百十三億円になるわけです、二兆二千九百億円から引きますと。そうすると、毎年約千五百億程度の繰り入れをしないとだめだということになってくる。そうすると、五十二年以降は剰余金がないと言われた場合、今後これをどうされるのか、あくまでも先ほど大臣言われたように、十年間は待っておいて、それまでに景気刺激をしておいて、うんと金がたまるのを待ってからそれでばさっとやろうというのか、その点はどうですか。
  130. 松川道哉

    政府委員(松川道哉君) ただいまの主計局長の御答弁は、すぐ来年である五十一年度を頭に置かれて剰余金が出ないということを申されたのだろうと思います。そしてまた、そのような事情はあるいは若干の年間続くかもしれませんが、このお願いしております国債、これは十年の後に償還いたすわけでございますから、そこから先の数年の間にどのようなことになるか、あるいは剰余金が出るような形になれば、私ども国債を管理しております立場としてはその剰余金は必ずここへ入れてもらいたいということを十分見守っていく所存でございます。  さらに、先ほど剰余金にしぼって先生の御指摘がございましたので、私も剰余金にしぼって御説明申し上げましたが、国債整理基金が、ただいま申し上げましたように相当の額のものを持っておりますので、これの運用益も償還のために充て得る、これは予算上は特別会計で前年度剰余金受け入れという形で予算化いたしては逓次繰り越しの規定に乗せておりますが、そういったものも使い、さらに、最終的には予算繰り入れも盛って、これが全額完全に償還できるようにしてまいりたいと思っております。
  131. 矢追秀彦

    ○矢追秀彦君 いまの説明だけでは非常に心配なわけです。それで、大臣にお伺いしますけれども、百分の一・六というのは、これはいわゆる赤字国債として今後考えた場合、果たして妥当なのかどうか、その点はどうです。あくまでも一・六でいきますか。
  132. 大平正芳

    国務大臣(大平正芳君) あれは建設公債に関連しての着想から出てきた率じゃないかと思います。六十年間の消却の試算が見合いとしてあるというたてまえでつくられた率であろうと思います。したがって、特例公債に当てはめていきまする率といたしましては、仰せのとおり妥当なものとは考えません。
  133. 矢追秀彦

    ○矢追秀彦君 私は、できたらこの十倍、十年ですからね、百分の十ぐらいがどうかと思うんですが、これはなかなか技術的にはむずかしいかもわかりませんけれども、一・六じゃ妥当じゃないと言われた場合、これは改正されるおつもりがあるんですか。それとも、私の言う百分の十ということは果たしてできるのかどうか、その点をお伺いしたい。
  134. 大平正芳

    国務大臣(大平正芳君) 特例公債を出している間、そしてそれが償還されていない間、これは非常に異例な時期でございますので、まずそれを最小限度にとどめなければならぬし、その償還を急がなければならぬわけでございまするので、国債整理基金特別会計に減債基金として積み立てる余裕はないと思うんでございます。したがって、それよりも早く、まず特例公債の金額をしぼっていく、償還を早めるということに全力を挙げるべきだと思うんでございます。しかし、減債基金制度といたしましては、百分の一・六という制度は一つの恒久的な制度として維持して差し支えないものと思うんでございます。特例公債はあくまで異例な措置でございますので、異例な措置を講じなければならぬ、したがって、そのほかに剰余金は全額減債基金として特別会計に繰り入れにゃいかぬ、それからさらに、毎年度の予算の繰り入れも考えにゃいかぬということは説明に書いてあるとおりでございます。
  135. 矢追秀彦

    ○矢追秀彦君 それでは次に進みますけれども、この赤字国債ですけれども、これは衆議院でも問題になっておりましたが、五月三十一日までと公示された。これは出納整理期間であるからやむを得ないということの説明ですけれども、この四月、五月に発行される国債についてはシンジケート団が含まれるのかどうか、もし含まれるとすれば、五十一年債と同じものになりますけれども、併行して行うのかどうか、その辺はいかがですか。
  136. 松川道哉

    政府委員(松川道哉君) 歳入欠陥債でございますので、なるべく歳入欠陥の額に見合った額をもって国債の発行額といたしたいという気持ちから、歳入欠陥の額の確定する日取りを考えながら五月まで出さざるを得ないと私ども考えておる次第でございます。そうなりますと、その時期には、仮に五十一年度も相当額の歳入欠陥補てんのための国債をお願いしなければならないということになりますと、ちょうど、四月、五月というのは資金的にはわりあい緩んでいる時期でございますので、五十一年度の分もある程度お願いせざるを得ないと。その意味で、五十年度はそれでは別な区分ができるかということになりますと、これも一部は金額による問題ではございますが、原則としては、私ども、やはり五十年度分もシ団にお願いせざるを得ないのではないかと考えております。  そうなりますと、四月なり五月におきましては、シ団においては五十年度の国債もさばき、なおかつ、もし、そういう事態になれば五十一年度の国債もさばかざるを得ないということになりまして、同じ期間に二種類のものが出ることになろうと思います。私ども、この処理に当たりましては現在検討中でございますけれども、シ団との契約も別建てにし、また、国債に付されます回号——第何回国債という回号でございますが、これも別な記号にして処理するのが適当ではなかろうかという方向で検討いたしております。
  137. 矢追秀彦

    ○矢追秀彦君 いまのその出納整理期間中に出される国債が、これも六十年度に償還するということになりますが、その場合、九年十カ月債、九年十一カ月債というのができるわけです。これと十年債との違いはどうされますか。
  138. 松川道哉

    政府委員(松川道哉君) 現在、国債は毎月発行いたしておるわけでございますが、その後の管理その他の観点から、大体三カ月分を一まとめにいたしまして回記号を付しております。その意味で、五十一年の四月、五月に出されるものにつきましては、これをまとめた回記号をつけることになろうと思いますが、三カ月分をまとめるときには、その三カ月のうちの初めの月、真ん中の月、後の月と条件が違いますので、この点は、第一回目に支払います金利の額をもって調整いたしております。そして、五十一年の四月、五月に出されるものの償還でございますが、これはあくまでも五十年度債でございますので、五十年度から十年後の年度の終わるとき、すなわち、六十一年の二月に全額償還するのが適当ではないかという方向で——これはまだ決定いたしたわけてはこざいませんが、その方向で検討いたしております。そうなりますと、五月に発行されましたものは、先生御指摘のように九年九カ月という期間になります。その点は、初回に払います金利の額をもって調整すれば可能であり、また、その方が自後の国債の管理の観点から申しましてもよいのではないかと、このように考えております。
  139. 矢追秀彦

    ○矢追秀彦君 次に、国債整理基金特別会計についてお伺いをいたしますが、この中の運用収入、これについて、当初予算に計上されたものと決算額とが非常に違っておるわけですが、この実態を四十四年度からにさかのぼって御説明をいただきたい。
  140. 松川道哉

    政府委員(松川道哉君) 四十四年度から四十九年度までの予算計上額をまず申し上げます。  四十四年度一億五千万円、四十五年度四億五千七百万円、四十六年度二億七千六百万円、四十七年度三億七千五百万円、四十八年度三億六千二百万円、四十九年度七億五千万円でございます。これに対しまして決算額でございますが、四十四年度四十一億四千七百万円、四十五年度六十八億六千三百万円、四十六年度八十四億九千五百万円、四十七年度六十七億九千四百万円、四十八年度八十五億七千百万円、四十九年度百五十五億二千三百万円。以上でございます。
  141. 矢追秀彦

    ○矢追秀彦君 非常に差が大きいことが一つと、それからもう一つお伺いしておきたいのは、歳入超過の実情ですが、年度当初はすべて収支均衡の予算が組まれておりますが、決算になると毎年度歳入超過、こういうことになっております。その歳入超過の実情を御説明ください、四十四年度から。
  142. 松川道哉

    政府委員(松川道哉君) ただいま申し上げましたように、この予算におきましては、決算上の運用収入と予算上の運用収入との間に相当大きい開きがございます。これは、この基金が持っております金が、もし必要が起こった場合には時期を失せずに買い入れ償還なり何なりに充て得るようにということで、ここから生じます運用収入は予算の段階では計算に入れないということでやってきておりまして、したがいまして少ないのでございますが、一方、決算の方の運用収入は、大きな逓次繰り越しの累積でございます基金の運用収入が含まれるわけでございます。  そこで私ども、この処理でございますが、ある年の現実の運用収入がふえてまいりますときに、現実に買い入れ償還などを行わないためにふえてまいりました部分で判明いたしておりますものにつきましては、その翌年度予算に前年度剰余金受け入れという形で受け入れまして、これはその後の国債の償還に充て得るように処理をいたしております。ただ、この段階と、現実に決算が締め切られるまでの間にも、さらに余分の運用収入が出てまいります。これも同様に特別会計の剰余金受け入れといたしまして、その後における国債の償還のために使い得るよう歳出権をお願いしておる次第でございます。そのようにいたしまして、歳出権をお認めいただいたものでその特定の年度に使用されなかった分につきましては、先ほども触れました特別会計法にございます逓次繰り越しの規定によって順次後年度に繰り越されておる次第でございます。
  143. 矢追秀彦

    ○矢追秀彦君 いま一応の説明がありましたけれども、この差がまず非常に大き過ぎるという点、四十四年度だって二・七倍です。それから四十五年度が一・五、四十六年度が三・〇、四十七年度が一・七、四十八年度が二・三、四十九年度も約二倍。まあ剰余金が入るからと言われますけれども、実際当初予算計上の額と決算額とには余りの差があり過ぎる。しかもそれがかなり、四十四年と四十九年なんか比べますと、非常に金額的にはますます差は開くばかりになってきておるわけですが、これでいいものかどうか。
  144. 松川道哉

    政府委員(松川道哉君) このように予算と決算に非常に大きい違いが出てまいりました原因は、先ほど御説明いたしましたとおりでございます。そして、その考え方の背景になっております随時に買い入れ消却に出動できるような予算制度にしておくという必要性、これは多額の国債が発行されるようになればますます強くなるのではないかと思います。したがいまして、現在のような考え方を全部捨て去るのはいかがかと思いますが、ただ、ただいま矢追委員の御指摘にもございましたように、この制度が戦後活発に動くようになりましてからすでに相当の年月を経ておりまして、基金としても相当の金額が入ってきております。そういうことであれば、これ全額をいつでも買い入れ消却に出動できる体制という現在の考え方にいつまでも固執していていいのだろうか。もう少しこの会計の姿を忠実にあらわすような方法が何かないのであろうか。そういうことで、私どもも従来の考え方を頭の中に置きながら、現実の資金のふえた姿を背景といたしましてどのようにしたらよいだろうか、これから今後の問題といたしましてひとつ前向きに取り組んで検討してみたいと思っております。
  145. 矢追秀彦

    ○矢追秀彦君 いま、前向きに検討と言われましたが、まず私が今回指摘しておきたいのは、今回の補正ではどれだけ補正をされましたか、この国債整理基金特別会計は。
  146. 松川道哉

    政府委員(松川道哉君) 今回の予算補正に当たりましては、大きく申しますと四つの項目について補正いたしております。一つは、大量の国債の追加発行がやむを得ない事態になりましたので、これに関連いたします諸経費でございます。一つは、大蔵省証券の限度額が不足いたしましてその引き上げをお願いいたしておりますものでございますから、これに関連する諸費でございます。第三には、交付税特別会計が地方財政対策の一環として大きな借入金をいたすことになります。そして、この償還は国債整理基金特別会計を通じて行われるものでございますから、この関連の経費が入っております。さらに四番目は、ちょっと質が違いますが、事務費その他につきまして洗い直しをいたしまして、節約及び不用を立てたものでございます。  ただいまの運用収入につきましては……
  147. 矢追秀彦

    ○矢追秀彦君 いや金額。金額でいいです。
  148. 松川道哉

    政府委員(松川道哉君) 金額は、以上合計いたしまして、歳出、歳入とも追加増をお願いいたしました金額が八百三十二億二百四十二万七千円でございまして、他方、節約で修正減少をお願いいたしております分が四千八百四十万九千円でございます。
  149. 矢追秀彦

    ○矢追秀彦君 この運用収入のところで、当初の歳入予算が約三十八億になるわけですが、現在まで収入の実績、これは幾らになっておりますか、今年度で。
  150. 松川道哉

    政府委員(松川道哉君) 五十年度の四月から九月までの運用収入の実績は、八十一億七千二百万円でございます。
  151. 矢追秀彦

    ○矢追秀彦君 大臣にお伺いしたいのですけれども、私はなぜこれを問題にするかといいますと、一つは、その予算と決算額、余りにも差が多い。それには剰余金が入ってくるのだ、前年度剰余金の問題だと言われますけれども、たとえそれを引いたとしても、実際の予算額と決算額との間の差はかなりのものがあります。これはもう表を見ていただければ明らかですね。  それともう一つは、いま説明がありましたように、五十年度においてもすでに八十一億の運用収入になってるわけです。この収入の主なものは、これは大臣も御承知のように、短期証券の利息ですね、これがもうほとんどを占めております。そのほか長期国債もありますけれども、短期証券が多いわけですね。そういうわけで、いわゆる特別会計が運用によってかせいでおるわけですね、お金を。しかも、そういうことでこの基金になっておるわけですから、少なくもこの補正の時期にはある程度の見通しが出るはずです。そうすると、この運用収入についても補正の場合にもう少し金額を上げておくことが妥当ではないか。当初予算においてはまだある程度わからない面もあるかもしれません。それでも私はまだ予想は立つと思うのですよ、前年度のずうっと状況を見て。少なくもいまの段階で、この補正予算を組むに当たっても、こういった八十一億の運用収入、いわゆる利息によってかせいだところの運用収入があるということを予測した場合、これはもっと実際はふえてくるわけですから、ここで修正をしておくべきではなかったか。補正予算を組む場合に、この数字をもっと本格的に実際に近いものにいままでの例から比べてできなかったものかどうか、その点をまずお伺いしたい。あわせて、この補正予算を修正する気はないのかどうか。やる気になれば私はできると思いますが、その点いかがですか。
  152. 松川道哉

    政府委員(松川道哉君) 私どもが今回の補正予算でお願いいたしました項目は、それぞれ補正をしなければこの会計の運営に支障を生ずる項目である、そういう項目を拾いましたのと、もう一つは、会計全体について同列的に行われました節約並びに不用につきまして、これを予算補正をお願いしたものでございます。  ただいま御指摘の運用収入をどうするかという問題でございますが、これは先ほど申し上げましたような考え方に立っておるものでございますし、ここから生じました財源は、今後有効に使われるものであり、かつ、現在これを補正しなければこれから年度末までの特別会計の運営に支障を来すという性格のものではございませんので、今回の補正の対象から外した次第でございます。
  153. 矢追秀彦

    ○矢追秀彦君 私は、なぜこれを言うか、もう一つの理由は、いま国債をどうして返すかということが非常に大きな問題となっておる。その財源についてもやはり国民も心配をしておる。予算書というのはだれに見せるかといったら、やっぱり国民に見せるわけですから、国民の側から見た場合、実際どんどんお金は入ってきておる、こういうふうな利息を生んで入ってきておるのがある程度予測されているにもかかわらず、実際は予算の上にはあらわれてきていない。決算のときだけ膨大な、二倍とか三倍という数字が計上されておる。たとえ年度がずれておるにせよ、ある程度の予測というのは立てていかなければ、今後の問題として、これから赤字国債が毎年恒常化してきた場合、果たしてこのままでいいのかどうか、私はその点を非常に国民の立場から憂うるわけでして、その点について大臣どうですか。まあ、局長はかなり前向きに、今後の問題としては見やすいようにする、あるいは今後の方針としては、これをもっと当初予算では相当大きく見積もっていくというふうなお考えだと思いますけれども大臣の御所見と今後の方針をお伺いしたいのです。いかがですか。
  154. 大平正芳

    国務大臣(大平正芳君) 御意見承りますと、予算の立て方自体が、当初の見積もりと決算が余りにも乖離し過ぎておるという問題を一つ御指摘になっておられます。それから年度の途中におきまして相当な収益が出てきた場合におきまして、年度の途中で予算補正が行われる場合に、そういった歳入も補正計上するというような措置が望ましいではないかというような御意見のように承りました。  それで、いま、これまでわれわれが補正でやってまいりましたことは、会計の運営上そうしなければ運営に困るということだけをお願いしたことでございますが、矢追さんのおっしゃるのは、御指摘のように、やった方がベターじゃないか、当然会計処理の問題としてはその方が妥当でないかという積極的な御提言でございますので、したがって私は、その点よく理解できます。ただ、いま提案いたしておりまする補正予算をここで修正をお願いするというのは御勘弁いただきまして、来年度から御提言の点につきましては篤と検討の上善処をしたいと思います。
  155. 矢追秀彦

    ○矢追秀彦君 本来だと、実際この補正予算の修正を迫らなければいかぬのですけれども大臣御勘弁いただきたいと、こういうことですけれども、実際このお金がはっきりしないわけです。これは普通のお金と違ってかせいでおるお金ですから、だから、そういった点で来年の、五十一年度の予算編成における予算計上のあり方、また途中でどれだけかせがれたか、ある程度わかった場合の補正予算に対する補正をするのかどうか、補正においてきちんとやるのかどうか、その点もう一度確認をお願いいたします。
  156. 大平正芳

    国務大臣(大平正芳君) 明年度から善処します。
  157. 矢追秀彦

    ○矢追秀彦君 時間も大分なくなってきましたので、国債、まだあと詰めたいことございますけれども、また、これはいずれ委員会で特例法がかかってくると思いますので、またその審議に譲ります。  福田総理、先ほども少し、三年というふうな調整期のお話が出ましたが、経済計画、この策定について、先日この委員会でも展望というふうに言われましたですね。計画と展望とはどう違うのか。私は計画の方がきめが細かい、展望はさらに大ざっぱであると、こう判断をするわけです。私は、計画から展望に変わったということで非常に後退と思いますが、いかがですか。
  158. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) 昭和五十一年度を初年度とする中期経済計画は、これを策定するためのいま準備を進めております。これが正式に決まりますのは来年にずれると思うんですが、それ前に五十一年度予算の編成という問題があるんです。そこで、五十一年度を初年度とする中期展望をしておく必要がある。そこで、年内予算の編成に間に合うようなタイミングで、まあ中期展望といいますか、あるいは中期経済計画の概略案と申しますか、そのようなものを策定して、予算編成に誤りなきを期したい、こういうふうに考えておるわけです。最終的にまとめるものは、展望という名前のものじゃありませんで、中期経済計画ということになります。
  159. 矢追秀彦

    ○矢追秀彦君 いまのお言葉を確認いたしますと、五十一年度予算編成の前に中期経済に関する展望ですか、どういう名前になりますかわかりませんが、そういう展望を一応出す、それに基づいて五十一年度予算編成をやると、その後にきちんとした新五カ年経済計画というものを発表する、こういうことですか。
  160. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) そのとおりでございます。
  161. 矢追秀彦

    ○矢追秀彦君 その展望でございますけれども、それと五十一年度予算編成とのからみができているわけでありますが、この五十一年度予算の概算要求、大体どういうふうなことになっておりますか、大蔵省から説明してください。
  162. 吉瀬維哉

    政府委員(吉瀬維哉君) 矢追委員御承知のとおり、先般来私ども概算要求のシーリングを一五%と決めまして、各省の御協力を得て、概算要求受け取ったわけでございますが、九月九日現在で、対前年度に対しまして一一六・八%、総額で二十四兆八千五百四十六億と、こういう数字になっております。
  163. 矢追秀彦

    ○矢追秀彦君 大蔵大臣、いま経企庁長官の言われた展望、これが出た段階で——現在の概算要求はそういうものは入ってないと思うんですね、それを踏まえて、これを相当手直しをされるのかどうか、その点はいかがですか。
  164. 大平正芳

    国務大臣(大平正芳君) 企画庁の方の作業が固まりました段階でよく御相談したいと思っておりますけれども、私ども、いま局長からお話し申し上げました概算要求自体の検討に入っておるわけでございまして、まだ、五十一年度からの長期計画の問題につきましては、予算上の検討にはまだ入っておりません。
  165. 矢追秀彦

    ○矢追秀彦君 大臣としては、その展望というものを踏まえておやりになる気はあるんですか、それとももう出てきた概算要求というものを中心として、特に来年度からの赤字国債の問題がありますから、私は相当大変ではないかと思いますけれども、その辺はどうですか。実際展望が出てから、もう一度頭を入れかえて、そうしてこれを全部やり直せるのか。いまのお話だと、あんまり積極的にその展望というものを意識されていないような感じを受けるんですけれども、その点大臣いかがですか。
  166. 大平正芳

    国務大臣(大平正芳君) いま、お金のかかることは何事によらず消極的なんでございますが、いずれにいたしましても、そうも言っておれませんので、経済の見通しを政府で立てて、そしてそれについて期待できる歳入を見積もりから始めて、いろいろな来年度の予算の枠組みというものについて見当をつけてまいらなければいかぬと思います。そういう中でいわゆる長期計画というものがどのような位取りになってまいりますか、どういう位置を占めてまいるものか、見当をつけていかなければならぬといま考えておるわけでございまして、どういうことになるんだろうかというような定かな姿がいま私の頭の中にはございません。
  167. 吉瀬維哉

    政府委員(吉瀬維哉君) 先ほど矢追委員に御説明申し上げました数字一一六・八%、これは各省からの概算要求で、それはその数字でございますが、ちょっと補足さしていただきますが、この中には、今後の給与改定に伴う増、それから国債費——こういうことになるかわかりませんか、国債費の増も予想されますので、大体一一六にあと四、五%乗ったところが実質の姿かと、こう考えております。
  168. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) 先ほど中期計画というか、中長期計画についてのお尋ねでありますので、それにつきましては、年内に展望というか、概略案をつくりますと、こういうふうに申し上げたのですが、その初年度たる五十一年度ですね、これは予算編成という問題があります。そこで、これは早々精細なものをつくらなければならぬ。そこで、五十一年度経済見通し、これにつきましては、これは年内に作成し、概算と同時にこれを決定する、こういうことを考えております。
  169. 矢追秀彦

    ○矢追秀彦君 そうすると、答弁修正ですか。さっきと違う。変わったわけですか。
  170. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) いや、変わらないのです。先ほどあなたのお尋ねで、中長期について……
  171. 矢追秀彦

    ○矢追秀彦君 展望が出て、予算編成があって、別の計画……
  172. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) いや、中長期計画についてお尋ねでありますので、中長期計画は、年内にその展望といいますか、概略案といいますか、相当まだ粗い見通しになりますが、そういうものをつくりますと。
  173. 矢追秀彦

    ○矢追秀彦君 それは予算編成前ですね。
  174. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) そうです。  それから、これがまた予算の、公共事業なんかの長期計画関係をしてくるわけです。それから五十一年度の予算の編成、これと並行いたしまして、五十一年度だけにつきましてはもっと精細な経済見通しを樹立する、こういうふうな考えでございます。
  175. 矢追秀彦

    ○矢追秀彦君 何かちょっとまたごまかされたような気がしてならぬのですけれどもね。  次に、国土庁長官にお伺いしますが、第三次全国総合開発計画、これはもう五十一年度から発足するわけですね。したがいまして、五十一年度予算編成前に出さなければならぬわけですけれども、この時期、内容、概略お願いします。
  176. 金丸信

    国務大臣(金丸信君) ただいま企画庁長官からお話もあったわけでございますが、新しい第三次新全総をつくるに当たりましては、ただいま経済企画庁で経済計画の作業を進めておるわけでありまして、ただいまお話ありましたように、年末にはでき上がるだろうと。そういうような計画の中で、一週間なり十日おくれまして取りまとめたいと、こういうようにも考えておるわけでありますが、そのつくる考え方といたしましては、人間生活を中心にした、また環境の破壊のない、公害のない自然と生活というようなものを究極の目的として考え方を取りまとめてまいりたいと、こう考えております。
  177. 矢追秀彦

    ○矢追秀彦君 予算編成時期までには間に合いますか。その点どうですか。
  178. 金丸信

    国務大臣(金丸信君) 十年計画というようなものにつきましてはおくれると思うのですが、ただいま企画庁長官から申し上げましたように、五十一年度の関係のものにつきましては、五十一年ということに限りまして、ひとつ新しい経済計画ができ上がったそれとあわせまして進めてまいりたい、こう考えております。
  179. 矢追秀彦

    ○矢追秀彦君 重ねて確認しますけれども、いまのお話だと、ちょうど副総理の中長期計画と一緒ですよね。大体五十一年度予算編成に必要な分だけ、その予算編成の前までに大体大枠の話、総論、絵にかいたもちみたいなものを出しておく、一応五十一年度編成だけはやる、その後できちんとしたものを出す、こういうことですか、国土庁長官
  180. 金丸信

    国務大臣(金丸信君) 新しい経済計画ができ上がりますれば、概案というものは取りまとめてまいりたい、こう考えておるわけでありますが、経済計画が年末ということでございますので、長期の計画というものについてはこれは考えなくちゃならぬ問題点があるだろう、こう考えております。
  181. 矢追秀彦

    ○矢追秀彦君 私の質問は、予算編成までに……。
  182. 金丸信

    国務大臣(金丸信君) いや、五十一年度の予算のですね、五カ年計画、その五十一年というような問題につきましては、ただいま企画庁長官のお話ししましたような考え方で進めてまいりたい、こう考えておるわけであります。
  183. 大谷藤之助

    委員長大谷藤之助君) 簡単に願います。
  184. 三木忠雄

    三木忠雄君 関連。  いま矢追委員質問を聞いておりますと、答弁が食い違っていると思うのですね。特にはっきりした長期計画政府としては年度末までに出せない。各省に、私、五カ年計画がずっとあると思うのです。その五カ年計画なり、あるいは十年計画というものの第一年度が五十一年度になると思うのですね。その五十一年度の計画は限られた予算をつけて、そうして概略つくって、その場をごまかそうというような長期計画になるのではないか、こう私は判断するわけです。したがって、経企庁長官の先ほどの答弁にあるように、やはり暫定的な——五十一年ですから、あと残りの一年半。この中期計画あるいは長期計画というものは概略で出して、その一部分の見通しだけを五十一年につけていこうという、こういう考え方に立っているのじゃないかと、こう思うのですけれども、この点についてはいかが考えているかですね。  それから、各省が予算要求を、概算要求をやっているわけです。その中には、やはり五カ年計画の一年分の予算は私は含まれていると思うのです。全然含んでいない予算ではないと思うのですよ。この点について各省、大蔵大臣からでも結構です。恐らく含んでいた概算要求じゃないかと思うのです。運輸省に例をとってみれば、港湾五カ年計画の第一年目に当たります。これも恐らく含んでいるはずだと思うのです。こういう点についての大蔵省の詰めはどうなっているか、この点について伺いたいと思う。
  185. 吉瀬維哉

    政府委員(吉瀬維哉君) 各省おのおのその在来分の延長としての要求は行っておりますが、新しくつくらるべき五カ年計画にのっとった要求ということにはなっていないと私、考えております。
  186. 矢追秀彦

    ○矢追秀彦君 いまの三木委員質問とも関連しますけれども、来年度から始まる五カ年計画を持っておるのは、港湾整備五カ年計画、それから空港整備五カ年計画、下水道整備五カ年計画、それから廃棄物処理施設整備計画、住宅建設五カ年計画、それだけが五十年度でいままでのが終わって、新たな年度に入る。いま申し上げたのは、全然入っていないのですか 主計局長にお伺いします。頭を出していませんか。入ってないですか。
  187. 吉瀬維哉

    政府委員(吉瀬維哉君) 先ほどちょっと御答弁申し上げましたときに、新しくつくられるというところがちょっと問題がございましたけれども、五十一年度を初年度とする各省がつくる五カ年計画の初年度分は、要求の中に入っております。
  188. 矢追秀彦

    ○矢追秀彦君 そういうのが全部、すでにこの五十一年度予算で頭を出さなければいけないわけですよ。それにさっきの国土庁の長官の答弁にありますように、三全総一つとっても何かはっきりしない。副総理の言われる計画もはっきりしない。これは一体、来年度予算というものは国民の目から見たら一体何になるのか。まだ調整期だからしょうがない、いや景気がこれだけ落ち込んで税収がこんなに減るとは思わなかった、いろいろあると思うんですけれども。  この際、もう一つお伺いしたいのは、ライフサイクル計画ですが、これは再三ここでも議論されましたけれども、大体、実際計画ができて発足をするというのはいつごろとお考えですか。
  189. 三木武夫

    国務大臣三木武夫君) これは大ビジョンですからね、だからやはり慎重な検討を必要といたしますので、政府の中においても、内閣官房の中に各省連絡会議ということで各省に検討さしておる。自民党の中にも大調査会を置いて、これをいま自民党でやっておるので、いつからという期限をいま切るわけにはまいりませんけれども、とにかくやはりああいう計画、社会保障とかというものもばらばらになっておるんですから、全生涯を通じた総福祉、これを計画的に生涯計画を立てるという構想、しかも、よその国からまねしたものでなくして、日本の風土に適したような総福祉計画を立てる。またもう一つは、やっぱり国民に対しても社会連帯、相互扶助の精神から相当な御負担を願わにゃならぬ面がございますから、相当な時間をかけて皆国民が共感を呼ぶような案にしなければなりませんので、多少の時間はかけざるを得ないと思っております。
  190. 矢追秀彦

    ○矢追秀彦君 そうしますと、さっきから聞いておりましたような三全総とか、あるいは中・長期経済計画には総理のこの構想は入らないと、こう見ていいですね。
  191. 三木武夫

    国務大臣三木武夫君) 社会経済中期計画と申しますか、長期計画、その柱とするところは生活の確保と住みよい環境の形成ということが柱になっておるわけですから、当然にその中においてもいろいろと検討をさるべき性質のものである。私も最初の会合に出席しまして、これからの福祉を、ばらばらでなしに総福祉という考え方で福祉政策を考えてもらいたい、また人生のある部分だけでなしに全生涯を通じての福祉政策というものを、しかも日本の国土に、風土に合ったような福祉政策、社会保障にしても。そういう意味のことを私が諮問したわけですから、申してありますから、十分その中でああいう構想も検討されるものだと考えておる次第でございます。
  192. 矢追秀彦

    ○矢追秀彦君 まだこの計画総理は時間がかかる、大変な問題だと、こう言っていらっしゃるんですから、実際、具体的にはまだ出てこないんですから、私は入れられないと思うんです。副総理国土庁長官どうですか、このライフサイクル計画というのは入るんですか、入らないんですか。
  193. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) まだライフサイクルは検討中であって、政府の具体案というふうにはなっておらない。そこで、中期計画におきましては、とにかくいま総理から申し上げましたように、また国土庁長官も申し上げましたように、成長中心から生活中心と、こういう内容のものになる。これは決定的な方向でなければならぬと、こういうふうに考えていますが、そういう考え方ですから、たとえば社会保障に対する資源の配分率、そういうものは上がってくると思うんです。また、ライフサイクルでも言っておりますが、教育だとかあるいは老後の対策でありますとか、そういう点は重視される、そういうことになると思うんです。そこで中期計画では、国の資源というか、資力といいますか、これをどういうふうに配分するか、それが中心になりますが、そういう配分の中で、ただいま申し上げましたように、成長中心から生活中心でございまするから、そういう生活関連、その生活関連にはライフサイクルというようなアイデアの施策ももちろん入ってくるでありましょうが、その生活分野に対する国力の配分というものが割合が高くなってくる、こういうことになる。ですから、総理の御構想のライフサイクルというものが、これが決定されるということになりますれば、それはそういう資源の配分の範囲の中で消化されてくると、こういう関係になるわけです。
  194. 矢追秀彦

    ○矢追秀彦君 しかし、まだまとまってないものを入れられるかどうかと言うんです。できないでしょう。計画も出せないでしょう。
  195. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) ですから、細かい社会保障政策をどうするかとか、あるいは住宅政策をどうするか、老後対策をどうするか、そういうものは、こめ暮れにつくる長期展望の中では概略のこれだけのものがそういう方面に割り当てられると、こういうことを見通すということになりましょうが、細かいそういうライフサイクルの具体案というようなものは、その枠の中で消化されるということになるんで、いま決まってないで別にそれは支障はない、こういうふうに考えております。
  196. 金丸信

    国務大臣(金丸信君) ただいま企画庁長官から申し上げたとおりでありますが、ライフサイクル計画というものは、この新全総をつくる精神でもあると私は考えております。そういう意味で概案をつくる。精密な案というものは本当に少しおくれてもいいんじゃないかと、こういうような考え方であります。
  197. 矢追秀彦

    ○矢追秀彦君 最後総理、いま副総理国土庁長官言われましたけれども、実際このライフサイクル計画というのは、かなりお金の問題とかそれから高福祉高負担の問題、あるいはいままでの既得権の再調整というような非常に大きな問題があるわけです。これはいま言われたようなことじゃだめなんじゃないですか、総理。だから、計画をつくるのを早められるか、あるいはもう当分はちょっとやめておいて、うんと先になってやる、ただいわゆるアドバルーンだけは上げておこうと、こういうことなのか、それが一つ。  もう一点は、来年度予算ですね。いろいろ概算要求も出てまいりまして、もっとこれは詰めたかったんですが、概要はそう浮き彫りにはされませんでしたが、実際、新規の政策というのはなかなかむずかしいと思いますね。その中で、一応スクラップ・アンド・ビルドをやるというふうには言われておりますけれども、それで、本当に三木内閣が発足して本格的な予算は来年度予算ですよ。四十九年度補正と五十年度は田中内閣の引き継ぎがかなりあったから、総理のいわゆる本当の三木内閣としての姿勢は少しは弱められた点は、私もその辺は理解するんです。だけど、今度はそうはいかぬですよね。その予算編成に臨む態度ですね。この二つをお伺いして終わりたいと思います。
  198. 三木武夫

    国務大臣三木武夫君) 一つの、人間全生涯を通じて、何かこう福祉というものを総合的に、ばらばらでなしに考えてみようという基本的な考え方というものは、これはやはり社会経済の中期計画の中に取り入れなきゃならぬ、生活中心ですから。したがって、個々の問題については検討を要する点もありますよ。しかし、いずれにしても日本の福祉政策というものはひとつ考え直してみる時期に来ておる。いろんな要求があって、それをばらばらに取り入れたんですからね、もう少し全体の総福祉といいますか、それを人生のある時期でなしに、全生涯を通じてみんなが安心して希望を持って生きがいのある生活のできるような社会をつくるというのが社会経済の中期計画の目標なんですから、その目標と一致しておるわけですから、十分に、各論については中期の経済計画についても細かいことをいろいろ私が決めるものじゃないですから、全体の考え方としてはそういう考え方で貫かれていくものだ。そういう点に重要な関連を持っている。  しかも、これはもうアドバルーンなんか上げるというつもりはないんです。これはやっぱり国民が関心を持っておるわけですから、自民党ばかりでなしに、矢追さんの方でもそういう社会を、次につくる社会はどういう社会であるか、どういう社会をつくろうとしておるかというものは、やっぱり各党が競い合ってそうして考えてもらいたい課題だと思うのですよ。という点で、私はこの問題がこれからの政治の大きな課題になる一情熱をこれは傾けていきたい。アドバルーンを上げてそれでちょっとやめにするという、そんな目標には考えていないわけでございます。これはやっぱり次に来る社会というものを政党は示す責任がありますよ。どういう社会を描こうとしておるのか。これは、それだから矢追君もけちをつけないで大いに協力をしてもらいたいと思う次第でございます。
  199. 矢追秀彦

    ○矢追秀彦君 五十一年度予算は……。
  200. 三木武夫

    国務大臣三木武夫君) 来年度予算は、これは非常に厳しい中に予算を編成するんですから、その中で、したがって非常に厳格な選択というものがやっぱり要求されるでしょう。その中で、いままでのような財政的な余力があるときでないのですが、厳しい中にもそれは三木内閣らしい予算をつくりたいと願っておるわけでございます。
  201. 矢追秀彦

    ○矢追秀彦君 展望はないですか。——じゃいいです。
  202. 大谷藤之助

    委員長大谷藤之助君) 以上をもちまして矢追秀彦君の質疑は終了いたしました。  午後一時半まで休憩いたします。    午後零時五十二分休憩      —————・—————    午後一時三十七分開会
  203. 大谷藤之助

    委員長大谷藤之助君) ただいまから予算委員会を再開いたします。  午前に引き続き質疑を行います。近藤忠孝君。
  204. 近藤忠孝

    近藤忠孝君 最初に、環境庁長官にお伺いいたします。  長官は八月二十九日から三日間、沖繩に視察に行かれたと聞いております。沖繩の基地公害についてどんな認識をお持ちか、まずお伺いしたいと思います。
  205. 小沢辰男

    国務大臣小沢辰男君) 私の出張いたしましたのは、西表を中心にした国立公園の整備計画のために行ったわけでございますが、たまたまその若干前に牧港周辺において米軍の基地の六価クロムを含む排出の問題が起こりまして、また、飛行場あるいはその他米軍の施設が多いものですから、これは沖繩県民にとって、私どもが外務省を通じ、あるいは防衛庁と連絡をとりながら、基地公害については十分配慮しなけりゃいけないなという感じを持ってまいりました。
  206. 近藤忠孝

    近藤忠孝君 いま御指摘の、特に牧港補給基地、ここを初め、西海岸の米軍基地から廃液と廃油による汚染が特にひどい、こう思いますけれども実情はどうなっておりましょうか。
  207. 小沢辰男

    国務大臣小沢辰男君) 牧港の地区の例の八月十二日に起こりました事故につきましては、その翌日直ちに沖繩県が調査に参りまして、確かに残液からは相当の濃度の六価クロムが検出をされましたが、海水のサンプルからはクロムが検出をされていませんでした。その後、私ども現地での屋良知事からの要望等もございまして、私帰りましてから関係閣僚にも御相談を申し上げ、できるだけの措置をとりました。労働省も係官を派遣し、基地に立入調査をやり、あるいは事業所の従業員等の健康診断等も行い、また外務省を通じては、日米合同委員会を通じまして十分な基地の管理につきまして善処をお願いをいたしました。米軍においてもその後、全部集めまして一つのタンクに入れてきちっと管理をしております。また、私どもが実は沖繩関係のいろいろ調査をやった、過去一年間で詳しい調査を重金属類について沖繩の公共用の水域につきまして調査を沖繩県と連絡をとりましていたしました結果を見ますと、いずれも、シアン、水銀、有機燐、カドミウムあるいは鉛、クロム、砒素等につきまして、昨年の調査では全く異常が認められないという結果が出ております。
  208. 近藤忠孝

    近藤忠孝君 いまの牧港につきましては、六価クロムの流出事故につきましてはまた後ほどお伺いをしますが、この牧港の基地の海岸が本当に何ともないかどうか、この点いかがでしょうか。
  209. 小沢辰男

    国務大臣小沢辰男君) 私どもこの事件を契機にしまして、水域につきまして調査をさせましたのですが、この点は、沖繩県の調査におきましてもクロムは全く検出をされておりません。  なお、いま政府委員も来ておりますから詳しいことは答弁をいたさせますが、大体昨年の七月から今年までに、現在までにいろいろ調査をした結果では、四カ所ばかり若干汚染があるということが出たと記憶しております。私いま資料を持ってきておりませんが。  なお、先ほど申し上げましたように、重金属につきましてそれぞれの物質ごとに全部調査をいたしました昨年の調査の結果では、異常が認められておりません。
  210. 近藤忠孝

    近藤忠孝君 重金属以外はどうでしょうか。
  211. 堀川春彦

    政府委員(堀川春彦君) お答えいたします。COD、BODの関係は、一部の水域、都市から流れ込むような水域がございますが、川で二つでございますけれども、その辺で水質を満足いたしておりませんが、その他におきましては、COD、BODの関係は適合しておるという状況でございます。
  212. 近藤忠孝

    近藤忠孝君 若干の汚染という、こういう御答弁でございますが、私も先日沖繩のこの海岸へ行ってまいりました。実際行ってきて、これが私です。この写真をごらんいただきたいんです。掘ってありますけれども、下に黒いものがあるんです。これは一体何でしょうか。近くで見てください、これ天然のものかどうか。ひとつどうぞ……。
  213. 小沢辰男

    国務大臣小沢辰男君) お尋ねが基地についてのお話でございましたから、私はあのようにお答え申し上げたわけですが、私も西表へ参りまして、黒島なり竹富なり島を歩きまして、海岸も全部歩きましたが、この油濁の問題は驚き入ったわけでございます。これはやっぱり外洋を航海する船からのものだと思いますので、これは早速私帰りまして、奄美に行ったときもその状況がございました。したがって、何とか問題の、実際上どの船がどういうふうに流したのかということがわからぬものですから、なかなか取り締まりが容易でないわけでありますが、全般的に運輸省にも御連絡を申し上げまして、何とかひとつ油濁問題のないように未然に防ぎたいという努力はいたしました。確かにおっしゃるように、あちこちのきれいな海岸にこういうものがあるので、はなはだ残念だと思って帰りました。
  214. 近藤忠孝

    近藤忠孝君 これが外洋からの油濁でしょうか。この場所は、先ほどお示ししたここが基地なんです。すぐ前のところの海岸なんです。そこを掘ったところに、上は普通の砂浜です、その下が黒いんですよ。それがどうして外洋からの油濁なんでしょうか。
  215. 小沢辰男

    国務大臣小沢辰男君) 私いま写真を遠くから拝見しまして、私が沖繩へ行きましたときの印象から連想しましてそちらの方の問題だと思ったわけでございますが、基地の近くの海岸の汚染につきましては、私いま詳細なデータを持っておりませんので、何でしたら政府委員からお答えをいたします。
  216. 堀川春彦

    政府委員(堀川春彦君) 私ども報告を受けております沖繩周辺の基地関係の被害が、昨年の四月以降約十件あるわけでございますが、その中に油の流出というものもございますので、いまおっしゃったことが外洋からの廃油ボールのものであるのか、あるいはそういった基地関係のものであるのか、あるいはその他のものであるのか、ややつまびらかにいたしませんが、中には基地関係の油のものもございましょうと思います。
  217. 近藤忠孝

    近藤忠孝君 ちょっと待ってください。よく見てくださいよ、これが上の砂なんです。これは普通の砂です。で、こちらがその下にある——ちょっと乾いていますから茶色ですがね、これは黒いんですよ、油なんです。その他有機物です。これがどうして外洋からの油か、基地から流して、後から砂が入ってきたかわかりませんが、そういうものなのか、これでわからないんですか、環境庁。どうですか。
  218. 堀川春彦

    政府委員(堀川春彦君) ただいまの外見からだけでは、私どもちょっと判断がつきかねると思います。
  219. 小沢辰男

    国務大臣小沢辰男君) いま先生が基地周辺の海岸からそういう現実のデータを持っておられるわけですから、その事実は否定できないのじゃないかと思うんです。私どももいままで沖繩における公害問題について、屋良知事からいろいろ承っておりまして関心を持っておりました重要な公害の諸点については、実はわれわれとして認識をいたして、係官を派遣したり調査をしましたり、私自身が外洋からのそういう海浜の汚濁についても現実に視察をしてさましたりいたしておりますが、また、基地の騒音なり、あるいはいろいろな重金属の問題については調査もし、あるいはいろいろな具体的な対策も立てておりましたが、いまお示しの基地の周辺近くの海岸の砂の中にそういう蓄積がされていることにつきまして、大変残念でありますが、詳しいデータを持っておらなかったわけでございますから、的確な答弁ができなかったわけでございます。
  220. 近藤忠孝

    近藤忠孝君 これは大変驚きました。日本の環境庁が日本の国土のこんなひどい汚染、ひどいところは深さ一メートルも油が汚れておるんですよ。こんなひどい汚染の状況、しかも、同じ海岸で魚が死んでいるんです。同じ場所です。ですから、こんな状況についてその原因がいまだにわからない。本当にひどいと思うんです。この原因はすでに沖繩の現地ではっきりしております。この原因は、ベトナム戦争などに使われた戦車、自動車の洗浄作業の結果なんです。  総理にお伺いしますけれども、こんなめちゃくちゃな日本の国土の破壊について、一体どのようにお考えでしょうか。
  221. 三木武夫

    国務大臣三木武夫君) 事情をよく調べることにいたします。
  222. 近藤忠孝

    近藤忠孝君 日本総理ですからね、これだけの事実が示されている。私は現に行ってきたんです。それで事情を調べるというだけでは余りにも情けないと思うんです。私が行って持ってまいりました土壌の調査の結果は、全部この海岸です、ひどいところは鉛が七〇〇PPm、亜鉛が一九二、銅が四四、さらに同じように鉛が一六〇、それからクロムが三二、銅が二四とか、大変ひどい状況なんです。こんな状況について、調べてみるというのではこれはちょっと沖繩県民が大変三木さんに失望すると思うんです。この事実を前にして一体どうお考えか、もう一度御答弁いただきたいと思います。
  223. 三木武夫

    国務大臣三木武夫君) 近藤君がいまこうやって急にここで提起されて、写真を示して、これはどうかと、こういうわけですから、私はそれは重大な問題でございますので、よく調査をいたしますと答えて——近藤君、あなたは何にもいままでおっしゃらなかったわけですね。私も初めてここでそういうことを聞きまして、あなた自身がお調べになったわけですから、そういう問題が提起されたわけですから、そういうことも頭に入れてよく調査をいたしますと、こういうことより以上には申し上げられない。重大な関心を持たなきゃならぬことは御指摘のとおりでございます。
  224. 近藤忠孝

    近藤忠孝君 いまの答弁、大変残念なんです。と申しますのは、沖繩県と米軍の間の文書、さらにそれは環境庁に来ておると思うんです。この事実はすでにその中ではっきり指摘されているんです。それをこの場で全然知らぬという、原因もわからぬというのでは大変残念なんです。そういう環境行政について、一体どうなのか、ひとつ長官の反省の言葉をここでやってください。
  225. 小沢辰男

    国務大臣小沢辰男君) 私どもまことに申しわけないと思っております。私どもが実際のいろいろな調査なり対策なりの点を県の権限におろしているものでございますから、県からいままでそうした基地の洗浄後の油の汚染によって、海岸なりあるいは海水、底質そのものについての調査はいたしておりますけれども、海岸のそういうような、いま御指摘の問題については十分な調査が行き届いていなかったわけでございまして、まことに遺憾だと思います。早速、広範にそういう点を含めまして問題点を明らかにいたして、対策をどうするか、県ともよく相談をして立ててみたいと思います。
  226. 近藤忠孝

    近藤忠孝君 ただいま大変重大な発言があったのです。県におろしているのでわからぬというのですよ。そんなことで環境庁の環境行政、勤まるんでしょうか、どうでしょうか。
  227. 小沢辰男

    国務大臣小沢辰男君) 少し先生誤解をされているので……。私が申し上げていますのは、環境庁が全国を歩いてそういうものを全部調査をするという——第一次的にはやっぱり県が環境行政についてのこちらの方針に基づく実施部隊としての責任を持っておるわけでございますので、その点を申し上げただけでございます。そうかといって、私ども日本の大事な国土の汚染を、全然県だけの問題で私の方は責任もない、また関知もしないというようなことで申し上げているわけじゃありません。私の重大なこれは仕事だ、任務だと思っておりますから、したがって、従来までそういう点の詳しい資料を持っていなかったことははなはだ申しわけない、早急に調査をして対策を立ててまいりたいと、かように申し上げているわけです。
  228. 近藤忠孝

    近藤忠孝君 ですから、県におろしたから知らぬということではおさまらぬということは明らかだと思うのです。  そこで、先ほど指摘されましたこの同じ場所の六価クロムを含む洗浄液の流出事件につきまして、その調査の結果は一体どんな汚染であったのか、この点についての御答弁を願いたい。
  229. 堀川春彦

    政府委員(堀川春彦君) BアンドBクリーナーの流出後の残液からは、一二五〇PPmの六価クロムが検出されました。排出口周辺の海水のサンプルでございますが、これからはクロムは検出をされませんでした。これはあの事故の起こった翌日の時点での状況でございます。  なお、その後汚染の問題を調べる必要があるということで、県が中心になりまして調査をしておるわけでございますが、先ほど長官が御報告申し上げましたように水質、底質の調査、それから生物、魚でございますね、これの調査をやって、この結果はまだ取りまとめ中でございますが、私ども中間的に報告を口頭で受けておるところによりますと、クロムは少なくとも検出されていないという報告を受けております。
  230. 近藤忠孝

    近藤忠孝君 この事故につきまして、米軍の方は再三にわたって六価クロムの含有はないとか、あるいは安全だとか、こういう宣伝をしてまいりました。環境庁はそういう米軍の言動について御存じでしょうか。
  231. 小沢辰男

    国務大臣小沢辰男君) 新聞ではそうな記事が出たのを知っておりますけれども、私はたまたま沖繩へ行きましたときも、現地でちょうど県会議員の一行が立入調査に行って拒否されたとかいう、いろいろな騒ぎがございました。私は米軍基地といえども日本の国内の法令は守ってもらわなければならない、当然立ち入りの法的な責任ある官庁の公務員の調査には協力をしてもらわなければならない。また当然現地で、各都道府県、市町村と米軍との協議会を持っておりますから、たまたま沖繩では陸軍との間で持っておって海軍、空軍と持ってなかったという事例もございましたが、後で私ども外務省を通じましてその点の調査もできるような措置をとってもらいまして、そういう意味においては、米軍も非常に後始末についてよく私どものいろいろ要請連絡にこたえて、相当な注意を持った管理をして後始末をしておられる、その点は確認をいたしております。
  232. 近藤忠孝

    近藤忠孝君 労働大臣、この新聞は先日、労働省からもらった琉球新聞です。これによりますと、米軍の発表を覆す、要するに米軍はうそ言っていたというんです。そこで、現地の労働基準局長は六価クロムは含んでおったという発表をしまして、米軍の態度は遺憾だと、その記事が載っているんです。こういう米軍の態度について一体どうお考えでしょうか。
  233. 長谷川峻

    国務大臣長谷川峻君) 六価クロムの問題が出ましてから、県会議員あるいは組合の方々、いろいろ私のところにも参りました。さきに地元の労働基準監督局をして立入検査させましたけれども、どうも満足がいかない、こういうようなお話でございましたから、ただいま環境庁長官がお話しされたようないろいろな手続をとりまして調査団を派遣して、その結果いまのような話になったことであろうと、こう思います。
  234. 近藤忠孝

    近藤忠孝君 私は、米軍のこういう態度はどうかと聞いているんです。どうでしょう。
  235. 長谷川峻

    国務大臣長谷川峻君) 専門家をして調べた結果がそういうことになりましたので、私は前にどういう科学的知識を持っておったか、現地もしょっちゅうかわるでしょうから、その辺のいきさつはわかりませんけれども、事実がこういうふうにあるということを発表されたというところにおいて、事実が証明すると、こう思っております。
  236. 近藤忠孝

    近藤忠孝君 要するに、米軍の方は事実を突きつけられるまではしらを切ったという、こういう態度なんです。そういう態度はどうかというのが私の質問なんです。
  237. 長谷川峻

    国務大臣長谷川峻君) これは、わが国の働く諸君というのは大事でございますから、疑問のあったときには、私の方では米軍の協力なり、あるいは私のそういう立入検査、それにやっぱりやってくれるようにして、もし向こうが間違っているもの——それは向こうのその当時の感じてございますが、間違っているものに対してはそういうふうにはっきり発表する、こういうことでございます。
  238. 近藤忠孝

    近藤忠孝君 私は、その指摘があるまでは認めようとしない、こういう米軍の態度について、日本の労働者の健康を守る労働省の立場からどうなのか、これが私の質問なんです。
  239. 長谷川峻

    国務大臣長谷川峻君) 私たちが調べるまで向こうがどういうふうなしらを切ったかどうか、それはわかりませんけれども、そういうふうな地元としてはまだまだ納得しないというお話がありましたから、私の方は調査団を出して現物を調べた結果こうだということで、その間はアメリカ態度、それについては先生が遺憾に思われる、私はやっぱり事実が問題を証明すると、こう思っております。
  240. 近藤忠孝

    近藤忠孝君 私が遺憾に思ったのじゃなくて、日本の現地の労働基準局長が米軍の態度は遺憾だと言ったんです。あなたの部下ですよ。それについて日本大臣はどうなのか、これが質問なんです。
  241. 長谷川峻

    国務大臣長谷川峻君) 地元の労働基準局長が行ったとき、そこまで深くいろんなものを検査できなかった、そういう機会、そういう事実をつかむ、そうした具体的なものができなかったということは私の方は遺憾と思っております。
  242. 近藤忠孝

    近藤忠孝君 あなたはどこの大臣なんでしょうかね。現地の琉球新聞で仲松局長はこう言っています。「事実を隠して偽りの発表を行った米軍の態度は全く遺憾である。今後も職場環境改善の徹底を図るため対処していく。」と、あなたの部下がそう言っているんですよ。どうですか。
  243. 長谷川峻

    国務大臣長谷川峻君) 地元の労働基準局長が、自分が調べに行ったときにはそういう事実が発見できるまでのチャンスがなかった。そして私の方から調査団が行って、その結果がそういうことになりましたから、私の方といたしますれば外務省を通じてアメリカに抗議を申し込みました。非常に遺憾なことである、こういうふうに抗議を申し込んだのでございます。
  244. 近藤忠孝

    近藤忠孝君 最初かちそうお答えいただきゃ結構なんですが、そういう労働省ですからばかにされるんです。  こういう文書を御存じでしょうか。これは最近従業員に出された文書ですが、「労働省の本省と現地労働基準局の専門班によって、数次にわたる現場実態調査が実施されましたが、その結果、当陸軍の職場が日本国内におけるもっとも安全な職場の一つであることが示されました。」日本政府の調査はこんなにばかにされているんですよ。この事実、どう思いますか。
  245. 藤繩正勝

    政府委員藤繩正勝君) お答えを申し上げます。  ただいま労働大臣からも申し上げましたように、現地の労働基準局が八月の末に立ち入りをいたしておりますけれども、なお十全を期する意味で九月の十七、十八日両日にわたりまして、本省の監督課長以下二名の職員を派遣して立入検査をいたしております。その結果、その時点における施設としてはかなりの水準にありますけれども、問題が起こりましたのはずっとその前のことでありますから、そこで私どもといたしましては、現時点につきましても、たとえば特殊健康診断が十分に行われていないとか、防具の完全使用がなされていないとかというようなことについてはその後是正勧告を文書で出しましたが、しかし、その前の問題につきましては、いま御議論のありましたその溶液について特に提出を求め、そして東京に持ち帰りまして分析の結果、米軍の最初の説明とは違って六価クロムが検出された、そのことを明らかにしたわけでございます。
  246. 近藤忠孝

    近藤忠孝君 労働省の本省も立ち会った結果が日本における「もっとも安全な職場の一つである」という、こんな勝手なことを米軍は言っておるんですよ。そのことを日本の労働省はどう思うのか、これが質問なんです。
  247. 藤繩正勝

    政府委員藤繩正勝君) いまお示しになりました米軍の証言につきましては必ずしもつまびらかにいたしませんけれども、立入検査をしました時点におきましては、一般の国内の六価クロムを使っておりますような工場に比べて特に水準が下がるということではない、まあまあである、しかし、過去において問題があったという点について私どもとしては遺憾であるということを言いまして、是正勧告を求めたので、非常にりっぱだということを私どもは現地の調査団が言ったという報告は受けておらないのでございます。
  248. 近藤忠孝

    近藤忠孝君 じゃ、この事実は間違いですね。撤回を求めますか。
  249. 藤繩正勝

    政府委員藤繩正勝君) いまの問題につきましては十分調査をいたしまして……
  250. 近藤忠孝

    近藤忠孝君 ちょっと待って。見てください、下が英文ですよ。これは間違いですかどうか。見てください。
  251. 藤繩正勝

    政府委員藤繩正勝君) 私どもは「もっとも安全な職場」というのは多少問題があると思います。つまり、その時点では特にそれほどの問題はなかったけれども、しかし過去においては問題がある、したがってそのときの使った溶剤などの提出を求めたわけでございまして、「もっとも安全」だというようなことを言ったという報告は受けておりません。
  252. 近藤忠孝

    近藤忠孝君 そんな文書を出させていいのかどうか、それが質問なんですよ。質問に答えてください。撤回を求めるかどうか。
  253. 藤繩正勝

    政府委員藤繩正勝君) 「もっとも安全」だという点については問題があると思いますので、十分調査をさしていただきます。
  254. 近藤忠孝

    近藤忠孝君 調査して間違いがなかったらどうですか。
  255. 大谷藤之助

    委員長大谷藤之助君) 近藤君、発言はお立ちを願います。
  256. 藤繩正勝

    政府委員藤繩正勝君) この問題につきましては、その後も外務省あるいは防衛施設庁等々と連絡の機会を持っておりますので、そういうところで私ども態度を明らかにしたいというふうに思います。
  257. 近藤忠孝

    近藤忠孝君 それでは、これが事実であれが撤回を求めるという趣旨ですね。どうですか。
  258. 藤繩正勝

    政府委員藤繩正勝君) 十分調査をいたしまして事実を明らかにしたいと思います。
  259. 近藤忠孝

    近藤忠孝君 質問に答えてください、質問に。委員長質問に答えるように言ってください。事実であった場合、撤回を求めるかどうかというのが質問なんですからね。
  260. 大谷藤之助

    委員長大谷藤之助君) 事実を明らかにすると答弁があるから、それでなお不十分なら、重ねてそこで質問を願います。
  261. 近藤忠孝

    近藤忠孝君 質問に答えていないんですよ、委員長。それは委員長の仕事は、質問に答えさせるのが委員長の仕事ですよ。こんな答弁は私は納得できません。質問に答えないなんて、それはいかぬですよ。どうですか、ちゃんと委員長言ってください。納得できません、そんなの。
  262. 藤繩正勝

    政府委員藤繩正勝君) ただいまお答えいたしましたように、十分調査を行いまして、関係省庁ともよく連絡をとって、必要があればそのような措置もとるというつもりでおります。
  263. 近藤忠孝

    近藤忠孝君 答えていませんよ。だめですよ、ああいうのは。委員長、答えさせなければだめですよ。
  264. 大谷藤之助

    委員長大谷藤之助君) 答えております。
  265. 近藤忠孝

    近藤忠孝君 どうして答えているんですか。
  266. 大谷藤之助

    委員長大谷藤之助君) 答えております。
  267. 近藤忠孝

    近藤忠孝君 どこがですか。
  268. 大谷藤之助

    委員長大谷藤之助君) 重ねてポイントを御指摘願います。
  269. 近藤忠孝

    近藤忠孝君 そんなことないですよ。だって問題点はちゃんとわかっているんだから。
  270. 大谷藤之助

    委員長大谷藤之助君) 速記をとめて。   〔速記中止
  271. 大谷藤之助

    委員長大谷藤之助君) 速記を起こして。
  272. 近藤忠孝

    近藤忠孝君 この文書を撤回するように求めます。  そこで、この従業員の健康診断、どうなっていましょうか。
  273. 藤繩正勝

    政府委員藤繩正勝君) 先ほど申し上げましたように、東京からも出かけまして立入検査をいたしました結果、九月二十三日付をもちまして地元の沖繩労働基準局長名をもちまして、沖繩の米軍司令官及び沖繩県知事に対して文書で改善勧告を行いました。それから、それを受けまして米軍基地では、現在そこに従事しておる労働者の健康診断につきましてアメリカ側におきまして実施しようということで、現在健康診断を実施中でございます。  ただ、問題はむしろ過去の問題でございますので、離職者についてどうするかということが非常に深刻な問題になりまして、これにつきましては法律上の実施義務がはっきりしないというようなことで若干やりとりがあったわけでございますが、私どもは外務省あるいは防衛施設庁等々とも相談をいたしまして、とにもかくにも現段階における健康障害の不安を除去するということが何よりも必要だということから、特に特例的な措置として労働省の予算をもってこれを実施するということを決定をいたしまして、目下現地の局におきまして、沖繩県それから特に全軍労とも十分協議をいたしまして、どういう対象者にするかというようなことで人選を急いでおる段階でございます。
  274. 近藤忠孝

    近藤忠孝君 現在、健診は実施中でしょうか。
  275. 藤繩正勝

    政府委員藤繩正勝君) お答え申し上げます。  現在就労中の者については、米軍において行っているという報告を受けております。しかし、離職者につきましては人選に若干時間をとっておりまして、私どもとしては万全の用意をいたしておりますが、近く実施をする段階にあるというふうに報告を受けております。
  276. 近藤忠孝

    近藤忠孝君 昨日の沖繩タイムスの朝刊によりますと「米軍、健診を中止」、理由も明らかにせず通告してきた、こういう記事がありますけれどもどうなんですか。
  277. 藤繩正勝

    政府委員藤繩正勝君) 遺憾ながらいまお挙げになりましたことにつきまして、私ども報告を受けておりません。直ちに調べまして、どういう問題であるか、応急の措置をとりたいと思います。
  278. 近藤忠孝

    近藤忠孝君 ですから、先ほどから労働省の言っていることが全然当てにならぬ。それほどばかにされておるんですよね。事実だとしたらどうしますか。
  279. 藤繩正勝

    政府委員藤繩正勝君) 現従業員の健康診断につきましては、使用の溶剤中に有機溶剤が含まれておる。したがって、法令に基づく特殊健康診断を行わなければならないわけです。そういうことでございますので、私どもとしては文書をもって是正勧告をいたしたわけでございます。ですから、何らかの事情があるかもしれませんけれども、その是正勧告に従った特殊健診が行われないということであれば、これは大変問題でございます。私どもは事実を調べて、なお厳重に必要な措置をとりたいと思います。
  280. 近藤忠孝

    近藤忠孝君 それは断固やり抜くという趣旨でしょうか。
  281. 藤繩正勝

    政府委員藤繩正勝君) 申すまでもないところでございます。
  282. 近藤忠孝

    近藤忠孝君 次に、この基地内のスラッジの処理の問題でありますけれども、九月八日付米軍の沖繩県知事に対する回答によりますと、沖米環境汚染合同委員会において合意された処理方法で行われてきたということになっておりますけれども、これに間違いありませんか。
  283. 堀川春彦

    政府委員(堀川春彦君) お話は過去に使用しましたクリーナーの廃液がどう処理されたかという問題であろうかと思いますが、これにつきましては、コンクリート骨材にまぜまして、そうして地中に埋めまして、その上をアスファルトで被覆をして処置したというふうに報告を受けており、私どももそう思っております。
  284. 近藤忠孝

    近藤忠孝君 ところが、この方法の前提となる溶出試験でありますけれども、六価クロムについてはやっていない。要するに無害化処理をやっていない。これは廃棄物処理法に照らして違法だと思いますけれども、どうでしょう。
  285. 堀川春彦

    政府委員(堀川春彦君) 廃棄物処理法のたてまえからいきますと、これは廃油でございますので、燃焼させるという処置方法に該当するというふうに思うわけでございます。したがいまして、そういう法の適用の規則の面から見ますれば、それに違った処理方法であるというふうに言わざるを得ません。
  286. 近藤忠孝

    近藤忠孝君 要するに違反ということですね。
  287. 堀川春彦

    政府委員(堀川春彦君) 日本国の法令の適用については、廃棄物処理法は十分尊重していただいて、そのとおりやっていただく必要があることは当然でございますけれども、法の違反ということは、米軍に対しましては直接的には言えないかというふうに思うわけでございます。
  288. 近藤忠孝

    近藤忠孝君 じゃ治外法権で、全く日本の法律を適用させられない、尊重もさせられないと。どうでしょう。
  289. 堀川春彦

    政府委員(堀川春彦君) そういうことを申し上げておるわけではございませんで、もしそのようにおとりになったとしたら私の舌足らずでございますが、十分環境の保全に関係のある日本の法令というものは尊重してもらいたいという立場を、これは環境庁のみならず政府全体として堅持をしておりますので、したがって、そういう適切な処理が日本国法令の定めているとおりに行われることを私どもは強く要請をしてまいりたいと思っておるわけでございます。
  290. 近藤忠孝

    近藤忠孝君 要請していきたいと言ったって、現実にやってないんですよ。違法な処理をされたこの物はどこに置いてありますか。
  291. 堀川春彦

    政府委員(堀川春彦君) 基地内の運動場のグラウンドの敷地というふうに承知をいたしております。
  292. 近藤忠孝

    近藤忠孝君 要するに国内法に違法な状況のまま、基地内とはいえ日本の国土の中に埋められている。産廃法の法律に違反して埋められているんですね。この状況をどうするんですか。
  293. 堀川春彦

    政府委員(堀川春彦君) 私どもといたしましては、やはり国内法令の規定しておりますとおりに処置をされるのが当然だというふうに思うわけでございまして、ただ、産廃関係の法令、私ども直接扱っておりましてもなかなかわかりにくい点が、最終処分のやり方等についてはございます。その点私どもも十分反省をしておりまして、従来PRの欠けている点があったのではないかというふうにも考えておりまして、近くそういった点については遺漏のないように、米軍に対しまして扱い方については研修等の会合を開きまして、十分趣旨の徹底を図ってまいりたいと考えておる次第でございます。
  294. 近藤忠孝

    近藤忠孝君 思ったり、反省したりしただけではだめなんです。現実に危険なものが日本の国土の中に埋められている。どうする気かというのが質問なんです。御答弁いただきたい。
  295. 堀川春彦

    政府委員(堀川春彦君) その点は、有害物も含まれている疑いのある廃油ということになるわけでございますので、実は一般の廃油扱いというような考え方もどうかというふうに思うわけでございます。先般来六価クロムの鉱滓の処理についていろいろの御議論がございまして、衆議院でも御議論ございましたが、こういった有害物を含む、たとえば鉱滓なんかにつきましてはその処置の方法が厳格に決められているわけでございます。これはいまのようなやり方が果たしてテクニカルに実質的に外に環境汚染の事実をもたらすような方法であるかどうか、もう少し調べてみないと、ここで断言はできないわけでございますが、アスファルトでかなり厚く被覆をいたしまして土中に埋め込んだというふうにいたしますと、その限りでは表面に対する飛散あるいは流出というものはないだろうというふうに思われるわけでございますが、なおいろいろ浸透の問題とかそういうことがございますので、そういう点も十分関係各省と協議をいたしまして、そして今後の処置を考えてまいりたいと思います。
  296. 近藤忠孝

    近藤忠孝君 違法であることに違いないと思うのです。大臣、掘り起こして必要な調査をして、これが汚染されておったらアメリカに持っていかしたらどうですか。御答弁いただきたい。
  297. 小沢辰男

    国務大臣小沢辰男君) いま局長が申し上げたことをもう少し明確に区分して考えますと、最近のBアンドBクリーナーの洗浄液及びそのスラッジ、これは同地区内にドラムかんに積みかえてタンクともども保管をいたしております。恐らく処置をしまして、閉鎖的に処置をしましたものは相当以前のものではないかと思われます。その時点が産廃法の適用後であるか以前であるかによって法律の適用の問題が違ってくるわけでございますから、もし以後であれば当然これは国内法規上問題がございます。  それよりも、むしろ従業員なり、あるいはまた地下から——表面には出ないわけですが、地下から水にどういうような排出といいますか、汚染をしていくおそれがあるかどうかという点の状況をやはりよく調査をしませんといけませんので、そういうおそれがあるならば、そういうおそれのないような防護措置をしなければなりません。そういう点を十分よく早急に調査をいたしまして所要な対策をとるように指示をいたしたいと、かように考えます。
  298. 近藤忠孝

    近藤忠孝君 私は、そういう違法なものを取り出して検査をし直せ、そして汚染されておったらアメリカに持って帰れと、これが質問の趣旨なんです。
  299. 小沢辰男

    国務大臣小沢辰男君) 違法なものであるかどうかを、私が先ほど言いましたように法律の適用の時期というものがございますから、最近のものはそういうことをしていないわけでございますので、ドラムかんに積みかえて保管をしているわけでございますから、この処理については十分六価クロムの処理をいたしまして、それから処置をするわけでございます。  以前のものについてはそういうような事例になっておるのだろうと思いますが、この以前のものという時期が法律の対象になるかならぬかという点も調べなければわかりませんから、いますぐ先生のおっしゃるように掘り返してアメリカに持って帰れというようなことを、私の方で先生がおっしゃるように——やっぱり行政官庁はいろんな日米の取り決め等もありますし、関係各省との協議も必要でございますから、そう先生のおっしゃるようなふうには私どもとしてはやっぱりできないので、十分調査をして、掘り返して持って帰るよりは、そこで他に環境汚染を生じないような方法があればそれでいいわけでございますから、そういう点も含めて十分調査をし、対策を練ってその実行をしていきたいと、こう申し上げておるわけですから、十分お答えになっておると思うんです。
  300. 近藤忠孝

    近藤忠孝君 政府委員で結構です。問題になっている運動場へ捨てられたものは、法適用前のものかどうか。どうですか。
  301. 小沢辰男

    国務大臣小沢辰男君) 恐らく私は、最初に申し上げましたように、大部分は法適用後のものだろうと思うのですよ、四十六年から始まったんですから。だけれども、それを全部法適用後のものと断定し得るかどうか、これは調査してみないとわかりませんから申し上げておるわけでございますから。大部分は恐らくそうだろうと思います。
  302. 近藤忠孝

    近藤忠孝君 ですから、法の適用になる違法なものを一体どうするのですか。大部分は適用後のものだろうとおっしゃった。これを私が言ったのは、取り出して調べ直せと。この点どうですか。
  303. 小沢辰男

    国務大臣小沢辰男君) ですから、調べるという中には先生のおっしゃるような方法もあります。当然そうしなければわからぬわけでございますから、私がお答えをしている中に十分いまの御質問内容も全部入っていると思っておるわけでございます。
  304. 近藤忠孝

    近藤忠孝君 じゃ、やりますね。  長官、ちょっと長官に写真を示しますから……。お願いします。その写真は何だと思いますか。
  305. 小沢辰男

    国務大臣小沢辰男君) 私、この写真を見ただけでは、沖繩をそんなに知りませんので、どこの場所のどういうところか。まあ確かに海浜の写真であることは間違いないと思います。
  306. 近藤忠孝

    近藤忠孝君 これはアスファルトのかたまりなんです。こういうものが海岸にごろごろしておるんです、たくさん、こんなにでかいのが。私、一部持ってきました。これなんです。この中にクロムが一〇〇から二〇〇PPm、大変危険なものが海にごろごろしているんです。一体どう思いますか。
  307. 小沢辰男

    国務大臣小沢辰男君) 私これを見ただけではよくわかりませんが、先生のおっしゃるとおりとすればこれは重大問題ですから、早速調査をしなければいけないと思います。
  308. 近藤忠孝

    近藤忠孝君 もちろん調査は当然です。そして危険なものであれば直ちに撤去させますか。
  309. 小沢辰男

    国務大臣小沢辰男君) いまの写真を拝見しますと、相当大量な、私は岩だろうと思って拝見しましたら、先生のお話ではこういうスラッジのかたまりであるということでございますので、これを十分調査をいたしまして、それが他に危害を及ぼすようなものであるとすれば、十分これは対策をとらなければいかぬと思います。
  310. 近藤忠孝

    近藤忠孝君 撤去はどうなんです。撤去はどうか。
  311. 小沢辰男

    国務大臣小沢辰男君) 対策をとるという中にはいろいろな方法があるわけで、先生のおっしゃるのも入ると思います。
  312. 近藤忠孝

    近藤忠孝君 そこへ置いておくのも対策の一つじゃ困りますからね。これは絶対撤去させるように要求します。  以上のように、大変米軍の態度はひどいんです。こういう米軍に対してひとつ徹底的な公害教育をする意思があるかどうか。
  313. 小沢辰男

    国務大臣小沢辰男君) 先生のおっしゃる教育という意味はどういう意味かわかりませんが、日本の国内法の周知徹底につきましては、関係官庁と連絡をとり、十分私どももいままでもやっておりますが、なお、この前の牧港の事件を契機にしまして、この点は説明会等も計画をし、実施を一部いたしております。
  314. 近藤忠孝

    近藤忠孝君 次に、幹線道路が最近大変重金属で汚染されている、こういう状況が衆議院の公環特でもアグネ技術センターの長崎誠三さんから指摘されております。  これは滋賀県内の国道八号線の土壌です。三十点調べたところ、そのうち十四点がカドミウム一〇PPmを超える。最高は四二PPmです。四PPm未満の地点はわずか五点にすぎない。これはほかの対照地区と比べますと絶対に差があるんです。こういう幹線道路の周辺がカドミウムで高濃度に汚染をされている原因は何だと思いますか。長官の御答弁をいただきたい。
  315. 小沢辰男

    国務大臣小沢辰男君) お答えいたします。  先生は公環特の委員でいらっしゃいますからよく御存じだろうと思いますが、今年度の予算で相当額を計上いたしまして、私ども、第一は川崎地区において、第二は兵庫の尼崎地区におきまして幹線道路の周辺につきましての環境調査の実施を十月からいたしております。その結果を見ないと、その原因が何であり、どういうところから来ているかということを正確につかむことはできませんので、もちろん自動車も走っておりますが、自動車そのものであるかどうかも、固定発生源等もいろいろ絡んでおります、また、われわれ個人生活上のいろんな問題もございます、そういうものを全部含めまして実態調査を十分にいたしませんと、正確なお答えはできません。
  316. 近藤忠孝

    近藤忠孝君 この同じ長崎市の調査によりますと、道路標識用黄色のペイントが硫化カドミウムそれ自体だと。ですから、公安委員会、建設省、道路公団にお伺いいたしますが、この黄色いペイントを、硫化カドミウムですが、実際使っているかどうか御答弁いただきたい。
  317. 勝田俊男

    政府委員(勝田俊男君) 道路標示用の黄色いペイントには硫化カドミウムは使っておりません。
  318. 井上孝

    政府委員井上孝君) 道路管理上は黄色のペイントは使っておりません。もっぱら公安委員会のものでございます。
  319. 近藤忠孝

    近藤忠孝君 それと後は道路公団。
  320. 前田光嘉

    参考人前田光嘉君) ペイントを使っておりますが、六価クロムが入っているとは聞いておりません。
  321. 近藤忠孝

    近藤忠孝君 ちょっと間違っている。カドミを聞いているんですよ。
  322. 前田光嘉

    参考人前田光嘉君) 間違えました。カドミウムは入っておりません。
  323. 近藤忠孝

    近藤忠孝君 同じ三つのところにお伺いしますが、いま使っていない趣旨なのか、かつて一度もこの硫化カドミウムを使っていなかったという御答弁なのか、どうでしょう。
  324. 吉田喜市

    参考人吉田喜市君) 使用しておりません。
  325. 近藤忠孝

    近藤忠孝君 過去は。
  326. 吉田喜市

    参考人吉田喜市君) 過去にも使っておりません。
  327. 近藤忠孝

    近藤忠孝君 ほかはどうですか。
  328. 井上孝

    政府委員井上孝君) 道路管理上は使っておりません。
  329. 近藤忠孝

    近藤忠孝君 全然ですか。全然使っていないんですか。
  330. 井上孝

    政府委員井上孝君) 使っておりません。
  331. 勝田俊男

    政府委員(勝田俊男君) 時期ははっきりしませんが、四十二、三年ごろかと思いますが、当時そういうものを使っておった、含まれておるものを使っておったということで全部改めて、現在そういうものを使っていないということでございます。
  332. 近藤忠孝

    近藤忠孝君 一〇PPmというカドミウムの土壌汚染は、これはイタイイタイ病発生地域の土壌と同じ濃度なんです。大変な濃度なんですよ。環境庁長官、実際使っておったんです。この実態、一体どうお考えか。
  333. 小沢辰男

    国務大臣小沢辰男君) ですから、使用しないようになったわけでございます。
  334. 近藤忠孝

    近藤忠孝君 長崎市の調査によりますと、この硫化カドミウムが捨てられておったのをちゃんと検出しているんですよ。もっと最近のことなんです。となりますと、いま三つのところからお答えになりましたけれども、これは全部うそ言っていることになるんです。しかも、こんなに高濃度汚染されては大変なことなんです。この点、いま使われていないのはいいんですがね、それでしたら。しかし、こういう危険なものが使われておるというこの事態を、法的にこれは使えないようにするという、こういうお考えはありませんか。
  335. 堀川春彦

    政府委員(堀川春彦君) 先ほど作物の関係を関連させて御質問がございましたので、そういう作物関係ということでお答えをいたしますと、市街地におきます幹線道路周辺の土壌中の重金属、さっきいろいろお挙げになりましたが、こういう資料国会参考人国会にお出しになったということは私ども承知をしておりまして、その資料も見ておりますが、これを農用地についてのものを調べてまいりますと、主要国道周辺でも、土壌中の重金属震度はややその道路に近づけば高くなるという傾向は農林省の試験場の調査結果でも出ておりますけれども、しかし、そのレベルは必ずしも高くないという事実が、いままで調査をした結果では報告をされております。  それからまた、道路周辺のそういった農用地におきまして重金属に由来する農作物の減収被害というような報告も、いまのところ私どもも受け取っておりません。どうも市街地の関係の周辺というのは、農用地というのは余りないと存じますので、一応作物の関係で申し上げれば、まあ余り心配したような状況ではないのではないか、つまり人間の健康という観点から見まして、あるいは減収という観点から見ましてですね、というふうに存じておるわけでございます。
  336. 近藤忠孝

    近藤忠孝君 私は、先ほどの三つのところのお答えはほとんど信用できないと思うのです。現実に先ほど申し上げたようなカドミウムが検出されておるのです。ですから、これを環境庁長官、徹底的に調査する意思がありますか。
  337. 小沢辰男

    国務大臣小沢辰男君) 先ほども申し上げましたように、道路周辺のあらゆる環境につきまして、いま二つの最も交通量の多い地点を選んで調査をいたしておりますから、その結果を待ってしかるべき対策をとる、こういうことになろうかと思います。
  338. 近藤忠孝

    近藤忠孝君 黄色いペイントが全国的に使われておる可能性があるのです。もっと広範囲です。徹底して調べるおつもりがあるかどうか、御答弁いただきたい。
  339. 小沢辰男

    国務大臣小沢辰男君) やはりこの二つの道路周辺で、よくあらゆる角度から調査をいたしますとその手法が確立をいたしますから、それをもとにして調査を広げていきませんといけませんので、一遍に全国的にやるということは少しやはり早計かと思います。
  340. 近藤忠孝

    近藤忠孝君 そういう態度ですから、これは今後ますます汚染が広がる可能性があると思うのです。同時に、先ほど道路公団ではかつて使っておった、こういう答弁でありましたけれども、こういうカドミウムそのものが道路に使われ、かつその周辺の土壌を汚染するという可能性が現実にあるわけです。こういうものを法的に取り締まって使わせないという、こういう法的な体制があるのかどうか、この点いかがでしょうか。
  341. 野津聖

    政府委員(野津聖君) お答えいたします。  現在化学物質の規制に係ります法律がございまして、既存の化学物質ということで全部で約二万あるわけでございますけれども、そのうちの約四百につきましては、やはり健康に問題があるというふうな観点からこれの見直しを実施しているところでございまして、当然その見直しの中の対象に入ってくるというふうに考えておりますので、この中で見直しの結果を待って規制すべきだろうというふうに考えております。
  342. 近藤忠孝

    近藤忠孝君 厚生省にお伺いいたしますが、こういうカドミウムそのものが実際道路のペイントに使われる、これは法的にどういうことになりましょうか。
  343. 上村一

    政府委員(上村一君) カドミウムの化合物は毒物劇物取締法の劇物に該当いたしますけれども、カドミウムの化合物の製剤というのになりますと、現行法では劇物になりません。
  344. 近藤忠孝

    近藤忠孝君 現実には規制の対象にならぬということなんです。となりますと、こんな危険なものが、実際にはイタイイタイ病発生地域と同じような土壌を汚染するものが具体的に使われておった。あるいはもっと多く使われておったかもしれません。こういう状況については全然法的には手の打ちようがないという御答弁でしょうか。
  345. 上村一

    政府委員(上村一君) 毒物劇物取締法で言います毒物、劇物というのは急性毒性の強さに着目したものでございますので、毒物劇物取締法で取り締まることはできないと考えております。
  346. 近藤忠孝

    近藤忠孝君 これは毒物及び劇物指定令ございますけれども、これを改めることによってこういうものを禁止していくという、こういう方法はないのでしょうか。
  347. 上村一

    政府委員(上村一君) 答弁の繰り返しになりますけれども、あくまでも急性毒性に着目した法律でございますので、毒物劇物取締法の中で取り上げるということは考えられません。
  348. 近藤忠孝

    近藤忠孝君 そういたしますと、こういう危険なものが今後も放置される、全く法の盲点があるということだと思います。  そこで、先ほど三つのところはカドミウムは使っていないとこういう答弁でしたが、じゃ実際何を使っておるのか、それぞれ御答弁いただきたいと思います。
  349. 勝田俊男

    政府委員(勝田俊男君) 公安委員会の設置する道路標示につきましては、白いペイントと黄色いペイントがございます。白いペイントは問題がございません。黄色いペイントも、科学警察研究所で分析をした結果では、先ほど申し上げたようにカドミウムは全然含まれておりません。問題になりますのは、それに含まれておりますクロロ酸鉛、PbCrO4であるかと思います。これは黄色いペイントの顔料として使われているわけでございまして、これは六価のクロムでございます。しかし、これはきわめて難溶性のものでありまして、重クロム酸カリなどとはまた違うものであるということで、皮膚障害というおそれはほとんどないのではないかというふうに考えております。なお、この黄鉛が黄色いペイントの中に含まれている歩合でございますが、おおむね一・五%程度ぐらいが含まれているということでございまして、これが摩滅をするということになりましても、ほとんど問題はないのじゃなかろうかというふうに考えております。
  350. 井上孝

    政府委員井上孝君) 道路管理上、路面に使っております区画線は、すべて白色ペイントでございます。
  351. 前田光嘉

    参考人前田光嘉君) 道路公団が使っておりますのも、ただいま道路局長説明したと同じでございます。
  352. 近藤忠孝

    近藤忠孝君 もうちょっとはっきり答えてください。
  353. 前田光嘉

    参考人前田光嘉君) 道路局長説明しましたものと同じ白色ペイントでございます。
  354. 近藤忠孝

    近藤忠孝君 道路局長の答弁ではクロム酸鉛を使っているということですけれども、これも重金属の一種ですが、これは心配ないんですか。——交通局長
  355. 井上孝

    政府委員井上孝君) 道路局の方では白色ペイントでございます。
  356. 勝田俊男

    政府委員(勝田俊男君) 難溶性のものでもありますし、ごく微量のものでございますので、問題はないものだろうというふうに考えております。
  357. 近藤忠孝

    近藤忠孝君 余り自信のない御答弁ですけれども、やはり大量に使いますと問題があると思うんです。そこでこういうものはやめて、びょう打ちなどかわりの方法をやるお気持ちはないか、御答弁いただきたい。
  358. 勝田俊男

    政府委員(勝田俊男君) 黄色いペイントは同じ道路標示でも規制的な標示、いわゆるはみ出し禁止とか駐車禁止とか、そういったときに使っているわけでありまして、夜光性の問題とか視認性の問題、こういった面で黄色が一番いいということになっているわけでございます。それで、これにかわるべきものについては現在発見はされていないということでございます。そういった面で、そのはみ出し禁止なり駐車禁止なりによっても多くの事故が防がれているという現状でもありますので、当面これをやめるという考えはないわけでございますが、環境庁の方でいろいろと御調査をいただくということでございますので、その結果を待ちまして、問題があるようであれば対策は考える必要があろうかというふうに考えております。
  359. 近藤忠孝

    近藤忠孝君 次に道路公団にお伺いいたしますが、日本道路公団試験所の報告書によりますと、高速道路の雪の除去や路面凍結防止のために薬品を使っておりますが、これは塩化マグネシウム、塩化カルシウムですが、この中にはさびどめのための六価クロムが一〇〇〇PPmも含まれているわけです。これが毒物及び劇物取締法に言う劇物であるかどうか、まず御答弁いただきたいと思います。
  360. 上村一

    政府委員(上村一君) 六価クロムなりその製剤というのは、クロム酸鉛が七〇%以下のものを除きましては劇物でございます。
  361. 近藤忠孝

    近藤忠孝君 道路公団、どうですか。
  362. 前田光嘉

    参考人前田光嘉君) 現在使用しております融雪剤には、六価クロムが入ったものは使っておりません。
  363. 近藤忠孝

    近藤忠孝君 使っていない方ばかり強調するんですけれども、この文書、これは道路公団試験所で雪氷対策試験室が四十六年八月に作成した資料ですが、この中にはっきりと重クロム酸ソーダ一〇〇〇PPm、ちゃんと書いてあるんです。どうですか。
  364. 前田光嘉

    参考人前田光嘉君) 私が申し上げましたのは、現在使用しておる融雪剤にはそういうものは使っていないということを申し上げましたので、ただいまの資料は四十六年でございますので、現在使っていないことを申し上げたいと思います。
  365. 近藤忠孝

    近藤忠孝君 その事実はどうかですよ。質問に答えてください。この事実はどうかと聞いているんです。どうなんですか。
  366. 前田光嘉

    参考人前田光嘉君) 過去においては、さびどめといたしましてそのような薬剤を使ったことがありますので、そういうデータであると思います。
  367. 近藤忠孝

    近藤忠孝君 それでは、いつまで使っておったでしょうか。
  368. 前田光嘉

    参考人前田光嘉君) 明確な日時は記憶しておりませんが、ここ数年は使っておりません。
  369. 近藤忠孝

    近藤忠孝君 ここ数年使っていない。絶対間違いありませんか、どうでしょう。
  370. 前田光嘉

    参考人前田光嘉君) 間違いございません。
  371. 近藤忠孝

    近藤忠孝君 これは、ハイキープというのがあるんです。これは六価クロムが使われておった。この事実、知りませんか。御殿場でもどこでも使われておったんです。どうですか。
  372. 前田光嘉

    参考人前田光嘉君) 四十九年度から使用してないことになっておりますが、詳細につきましては担当の理事から説明させていただきます。
  373. 吉田喜市

    参考人吉田喜市君) 道路公団の吉田でございます。  四十九年度から使用を禁止いたしておりまして、使っておりませんです。
  374. 近藤忠孝

    近藤忠孝君 使用を禁止したということは、危険だから使用を禁止したのだと思いますが、どうでしょう。
  375. 吉田喜市

    参考人吉田喜市君) 公害論その他が出てまいりまして、やはり道路を管理する上においては厳正な態度でありたいと思って、やめたわけでございます。
  376. 近藤忠孝

    近藤忠孝君 実際六価クロムが使われているのに、入っているかどうか、これは調査したのでしょうか。
  377. 吉田喜市

    参考人吉田喜市君) 調査いたしまして、防錆剤と申しましょうか、さびどめのものは添加せずに、塩カルあるいは塩マグ、これを使っております。
  378. 近藤忠孝

    近藤忠孝君 そのさびどめの中に六価クロムが入っておったんではないでしょうか。
  379. 吉田喜市

    参考人吉田喜市君) さびどめの中にただいま御指摘のあったような物質があって、それを添加することをやめた、こういうわけでございます。
  380. 近藤忠孝

    近藤忠孝君 総裁、先ほどは使われてないと言ったじゃないでしょうか。どうなんですか。
  381. 前田光嘉

    参考人前田光嘉君) 私は、現在はそういう薬剤は使ってないと申し上げましたが、(「数年来と言いましたよ」と呼ぶ者あり)数年来と申しましたのは、四十九年度ということを明確にいまわかりましたので、言葉を訂正いたします。
  382. 近藤忠孝

    近藤忠孝君 こういういいかげんな答弁、本当に委員長、どうなんですか、これは。注意してください。
  383. 大谷藤之助

    委員長大谷藤之助君) 前田総裁、明確にもう一度答弁願います。
  384. 前田光嘉

    参考人前田光嘉君) 数年と申し上げましたのは、明確な日時を記憶しておりませんでしたので、ただいま調査いたしまして、四十九年度というふうに訂正させていただきます。
  385. 近藤忠孝

    近藤忠孝君 環境庁長官、六価クロムがつい最近まで使われておったんです。しかも、これはさびどめですが、雪を除去する、あるいは凍結を防止する、こういう薬品なんです。ということは、凍るところや雪の降るところに全部使われておったのです。こういうものが放置されていいでしょうか。どうでしょうか。いままで放置されてきました。
  386. 小沢辰男

    国務大臣小沢辰男君) 御承知のように、化学物質の審査及び製造等の規制に関する法律が四十九年の六月に施行になりましたわけです。したがって、それ以前については有害と考えられるようないろいろな化学物質というものが使われておった。しかもその数が先ほどうちの保健部長が言いましたように約二万ぐらいと考えられる。いろいろな点でですね、いまの道路問題だけじゃない。そのうちに、どうも相当よく分析をし調査をし解明をしてみなければ人の健康に若干でも影響を与えるようなおそれがあるんじゃないかという数が大体四百。そこで、これを通産、厚生、環境庁でいろいろ分担をいたしまして、徹底的に解明をしつつございます。百ぐらいは済んだと思います。そういうような現状でございますので、恐らくこの法律の適用以前には、やはりそうした有害物質の含まれたものが使用されているおそれは十分あると思うのでございます。そのときには化学的な知見が非常にいまだ進んでいなかったわけでございます。したがって、私どもはこれらのものについての健康に対する影響というものを重大に考えまして、目下研究班をつくりましていろいろと検討いたしておるわけでございます。  で、あちこちにそういう事例があるだろうと、いま一つの例として道路の凍結あるいはいろいろ滑りどめ等の問題が出ましたので、われわれとしても調査をしてみまして、その含有量の問題、あるいはそれが大気なり何かに、何と言いますか、影響をどの程度するものか、非常に微量な空気中にまじり合ったものが、どの程度影響あるかということでございますから、遺憾ながらまだ世界的にもこれを分析するといいますか、研究する手法についてもまだはっきりしてない点がございます。したがって、それらを含めまして各省庁の研究機関を網羅したプロジェクトチームをつくっていま発足をしておりますので、できるだけひとつそういう面の解明を急ぐようにいたしたいと思います。しかし、相当期間がかかると思うのです。これはやっぱり遺伝的な要因から何から考えていきますと、相当長期にわたる観察をしていかなければいかぬわけでございますから。しかし、ほうっておけませんので、十分環境庁が主になりまして、関係各省と一緒になってこの解明を急いでいきたい、かように考えます。
  387. 近藤忠孝

    近藤忠孝君 ずいぶん長い答弁をいただきましたけれども長官はこの事実、道路に六価クロムがたくさんばらまかれておったというこの事実を、いま初めてお知りになったのですか。
  388. 小沢辰男

    国務大臣小沢辰男君) 先ほど申し上げましたように、有害化学物質の製造や使用等の規制というものは昨年ようやくできましたわけでございます。したがって、従来どの程度そういうものがどういう面に使われておったかということについては、これはもうなかなか把握に容易でないわけでございますが、非常に大気中にそれがまじりまして健康に害を与えるかどうかということは、非常な微量な問題の検定あるいは分析をやる手法というものがはっきりしませんと、なかなかこれをつかむということができないわけでございますので、まあわれわれは一部知らない点もあったと思いますけれども、昨年政府としてそういう規制に踏み切ったわけでございますから、従前のものについての問題については、その検討の結果を待ってからでないと全面的に全部これが使用できないということになりますと、今度はいろいろそれにかわるべき何物かがなければ、そういう他のいろいろなまた障害が起こってくるという問題もございますものですから、こういう点を十分ひとつ検討していきたいと思います。全面的にばらまかれておるというような、先生おっしゃいますと、あちこちそういうような物質が二万近くあって、それが方々に使われておることは事実なんですが、それが公害として六価クロムがばらまかれているというようなことについて、私どもはそういういままで認識ではなかったわけでございます。
  389. 近藤忠孝

    近藤忠孝君 環境庁長官が初めて知ったということ自身も、日本の環境行政の貧困さをあらわしていると思うんです。  ところで建設大臣、建設省も同罪なんです。建設省は先ほど私が申しました塩化カルシウム、塩化マグネシウム、これはいままで御使用になっておったかどうか。
  390. 井上孝

    政府委員井上孝君) 凍結防止剤として塩化カルシウムを使っておりましたことは事実でございますし、現在も使っておりますし、これからも使いますが、先ほど御指摘の六価クロムを含む防錆剤は、これはなるべく使わない、あるいはかわるものがございますればそれを使うというふうに指導してまいりたいと思っております。
  391. 近藤忠孝

    近藤忠孝君 六価クロムが含まれたものはいつまで使っておりましたか。
  392. 井上孝

    政府委員井上孝君) 一般道路の凍結防止の塩カルにはほとんど使われていなかったと思いますが、先ほど御答弁申し上げましたように、道路公団が高速道路で一部使っておりましたが、先ほど御答弁ありましたように四十九年度から使用しないということになっております。
  393. 近藤忠孝

    近藤忠孝君 私の調査によりますと、建設省はこの二つの薬品を道路公団よりもよけいに使っておるんです。どうですか。
  394. 井上孝

    政府委員井上孝君) 塩化カルシウムと塩化マグネシウムは、凍結防止剤として一般の国道、県道にも使っております。したがって、これは道路公団よりはるかに量が多いと存じます。
  395. 近藤忠孝

    近藤忠孝君 それはいつからいつまで、どの程度の量を使っておりましたか。
  396. 井上孝

    政府委員井上孝君) ただいま、いつから使ったかという御質問にはちょっと資料がございませんのでお答えできませんが、国道の直轄管理を始めました三十四、五年以降徐々に使い出したというふうに記憶しております。
  397. 近藤忠孝

    近藤忠孝君 実際この薬品に六価クロムが含まれておったかどうかの調査を行っておりますか。
  398. 井上孝

    政府委員井上孝君) 使用いたしましたころから最近まで、要するに四十九年度と申しますか、使用を禁止するまでにはそういう調査はいたしませんでした。
  399. 近藤忠孝

    近藤忠孝君 調査してないんですから、六価クロムが含まれておったかどうかわからぬじゃないですか。どうですか。
  400. 井上孝

    政府委員井上孝君) 先ほど申し上げましたように、一般国道、県道で使用しておりますものには、恐らくほとんど防錆剤というものは添加させていなかったと思います。六価クロムを含みますのは防錆剤でございますので、一般の国道、県道で使っております凍結防止剤、塩化カルシウム、塩化マグネシウムには六価クロムは含まれていないというふうに心得ております。
  401. 近藤忠孝

    近藤忠孝君 防錆剤としては使っていなかったということですか、さびどめとしては。
  402. 井上孝

    政府委員井上孝君) 先ほど申しましたように、道路公団で使用いたしましたものには自動車あるいは道路付属物等のさびどめのために防錆剤を相当多量に添加いたしましたけれども、一般の国道は恐らく——私ここで断言すると若干の例外があるかと思いますが、ほとんど防錆剤は使っておりません。
  403. 近藤忠孝

    近藤忠孝君 三木総理にお尋ねしますけれども、先ほどの道路公団のように、日本じゅうにばらまかれている可能性があるのです、こんな危険なものが。この点お聞きになって、いかがお考えでしょう。
  404. 三木武夫

    国務大臣三木武夫君) 公害の防止ということは大事なことですが、いろいろまだまだいろんな物質に対しての有毒性、有害性というものが未知のものもありますから、これはよほど先取りするようにして、やっぱり問題が起こってというばかりでなしに、そういう新しい物質に対してもよく研究をするということは必要ですね。だから、いろいろ研究機関もあるわけですから、もう少しこのいろんな物質に対する有害あるいは有毒性というものをこれからよほど気をつけなければいかぬなあという感じを非常に強くいたしました。
  405. 近藤忠孝

    近藤忠孝君 道路公団にもう一度お伺いしますが、実際どの程度の量を使ってまいりましたか。
  406. 前田光嘉

    参考人前田光嘉君) 過去に使いました量につきましては、ただいま資料を持ち合わせておりませんが、具体的に融雪剤として使用いたしましたのは名神高速道路の関ヶ原地区だけでございますので、日本じゅうにばらまいたということではございません。
  407. 近藤忠孝

    近藤忠孝君 量です。量は実際わかりませんか。調査してないんですか。
  408. 前田光嘉

    参考人前田光嘉君) ただいま資料を持ち合わせておりませんので、ただいま至急調べお答え申し上げます。
  409. 近藤忠孝

    近藤忠孝君 じゃ、この点は当委員会に報告するように委員長からも求めていただきたいと思います。
  410. 大谷藤之助

    委員長大谷藤之助君) ただいまの資料調べて、なるべく委員会が終わるまでに御連絡願います。
  411. 近藤忠孝

    近藤忠孝君 厚生省と、それから労働省にお伺いします。  塩化ビニール工業協会が発行しております「塩化ビニール製品は安全です」というパンフレットがございます。この内容について問題がないかどうか、御答弁いただきたいと思います。
  412. 田中正巳

    国務大臣(田中正巳君) 塩化ビニール工業協会の出したこの資料だと思うのでございますが、私も克明に読んでみました。今日時点においては適当でない部面が散見されるわけであります。たとえて申すならば、わが国においては塩ビ工場から労働災害が出ていないとか、あるいは塩ビ容器につきましても、昭和四十九年十月の発行でございますので、その時点においてはあるいは自主検査でこのとおりであったかもしれませんけれども、古い容器についてはなお問題があるわけでありますし、また八ページかなんか見ますると、それより一年前に安全だったと書いてあるような点については首をかしげざるを得ないものでございますから、したがいまして、これは昨日私も事務当局と相談をいたしまして、これについては訂正、回収をいたすようにいたしたいというふうに思っております。
  413. 長谷川峻

    国務大臣長谷川峻君) ただいま厚生大臣が答えたと同じことでございますが、塩化ビニール協会に対して私の方からその文書の是正方を申し入れております。
  414. 近藤忠孝

    近藤忠孝君 終わります。
  415. 大谷藤之助

    委員長大谷藤之助君) 以上をもちまして近藤忠孝君の質疑は終了いたしました。(拍手)  速記をとめて。   〔速記中止
  416. 大谷藤之助

    委員長大谷藤之助君) 速記を起こして。     —————————————
  417. 大谷藤之助

    委員長大谷藤之助君) 星野力君。
  418. 星野力

    星野力君 小佐野賢治氏の日本電信電話公経営委員任命についてお聞きしたいと思います。  小佐野氏は田中角榮前総理の最も親密な友人であり、世間では田中金権政治の最大の黒幕と見られておる人物、当代における黒い霧の代名詞のような存在でございます。田中前内閣が、当時の内閣が全野党の反対にもかかわらず電電公社経営委員に小佐野氏を任命すべく国会の承認を求めたのは、異例の強引な人事と言われたのでありますが、前総理は真っ黒な疑惑の中で退陣し、その疑惑は今日も何ら解明されておりません。そして、その後八月に小佐野氏の任期は切れた。それでよかったんです。ところが、事もあろうに三木内閣が今度は小佐野氏の再任を行われた。これは三木総理の高度の政治判断によるのかとも思われますが、われわれとしてはまことに理解に苦しむところであります。総理から小佐野氏再任の理由についてお聞きいたしたい。
  419. 村上勇

    国務大臣(村上勇君) お答えいたします。  情報化時代に即しまして、電信電話事業もその幅広い利用を図る必要があります。この点、国民生活に関係の深い交通観光事業に経験の深い小佐野氏は経営委員会委員に適任であると考えたからであります。また、昨年死亡された土川元夫氏の交通事業に経験の深い方でありました。その後任として経営委員会委員に任命された小佐野氏は、委員会に積極的に出席し、委員としての職務を十分果たしておる次第であります。
  420. 星野力

    星野力君 総理のお考え
  421. 三木武夫

    国務大臣三木武夫君) いまのような郵政大臣の意向も聞きまして、そして再任をいたしたわけでございます。
  422. 星野力

    星野力君 小佐野氏の任命は何月何日でございましたでしょうか。
  423. 佐藤昭一

    政府委員(佐藤昭一君) 今年の九月十日でございます。
  424. 星野力

    星野力君 今国会召集日の前日ではございませんか。電電公社経営委員の人事は国会の承認事項であります。国会閉会中を理由に開会前日に任命するというのは、これは文字どおりの駆け込み人事であります。国会軽視もはなはだしいと言わなければならないのでありますが、総理のその点についての御見解を承りたい。
  425. 村上勇

    国務大臣(村上勇君) 経営委員の後任人事につきましては、再三議運の委員会等にすでに諮ったのでありますけれども国会の開会をまたなければこれの任命はできないのでありまして、国会の開会劈頭にお願いした次第であります。
  426. 星野力

    星野力君 何で前の日にやらなきゃならなかったかということを聞いておるんですよ。
  427. 村上勇

    国務大臣(村上勇君) 議運の関係等がありましたので、国会の運営上その前日になったわけであります。
  428. 星野力

    星野力君 全然これはなっておらないんだ。国会軽視じゃないか、こう言っておるんだ。国会軽視でないとあなたは思いますか。三木総理、どうですか。
  429. 村上勇

    国務大臣(村上勇君) 絶対に国会を軽視するというような、そういうことは考えておりません。
  430. 星野力

    星野力君 国会の子、どうです。
  431. 三木武夫

    国務大臣三木武夫君) 同意見でございます。
  432. 星野力

    星野力君 全くこれは恐るべきことだと思うんです。  それなら、さらに先へ行って聞きましょう。電電公社の年間収支、事業計画、建設工事計画、それから年間の発注量などについて御報告願いたい。
  433. 米澤滋

    説明員(米澤滋君) お答えいたします。  昭和四十八年度の収入でありますが、総収益は一兆七千五十億円、総費用は一兆六千八百四十億円で、二百九億円の利益を計上いたしました。  それから、四十九年度の収支状況でございますが、総収益は一兆八千八百二十億円、総費用は二兆五百七十三億円で、千七百五十三億円の欠損金を計上いたしました。この四十九年度においてこのような大幅な欠損金を出しましたのは、石油ショックに引き続きます物価高騰並びにそれに伴うベースアップということで総費用が伸びたこと、それから利用度の低い電話がふえてきたこと、住宅電話がふえたこと、こういうことでございます。  それから建設計画でございますけれども、建設計画につきましては、四十八年度は三百十万電話をつける、それから四十九年度は三百二十万つけるということでありまして、四十八年度は一〇〇%達成いたしましたし、四十九年度は五%ぐらい架設が減りました。  大体そういうことでございます。
  434. 星野力

    星野力君 電電公社に対する自動車部品の納入先、御説明願いたいと思います。
  435. 三宅正男

    説明員(三宅正男君) お答え申し上げます。  私ども相当車を使っておりますが、自動車の修理は一般の町のサービス工場へ出しておりますので、直接自動車部品等の購入をいたしておりません。ただ、タイヤと電池につきましては、これは各現場で購入をいたしておりますが、これは大体最寄りの販売店から買っておりますので、購入先という形ではっきりしたどこどこということを申し上げられません。
  436. 星野力

    星野力君 まあ先へ行きましょう。  経営委員会の人数、任務、権限等についてお聞きしたい。
  437. 米澤滋

    説明員(米澤滋君) お答えいたします。  経営委員会は、国会の承認を得て内閣が任命する委員五人と、それから電電公社の総裁、副総裁、これは特別委員として。七名で構成しております。  それから、公社におきます重要な問題は、全部経営委員会で議決するということになっておりまして、たとえば予算、決算、そういうものは経営委員会でやる。経営委員会の中の仕事といたしまして、三つに分けておりまして、一つは議決事項、これは法律に関係するような問題はみんな議決事項になっております。それから経営委員会の了解事項、それから第三は報告事項、この三つになっております。  大体そういうことでございます。
  438. 星野力

    星野力君 先ほどの御説明でも、きわめて大きな規模の経営であります。日本で一番大きな企業である新日鉄などははるかに及ばないような大経営、しかも、経営委員会の権限というものはきわめて大きいのです。経営委員の任命というのは、きわめて重大な人事であるということだと思うのです。  海部官房副長官は、衆議院の議運委員会で、わが党理事の質問に対しまして、小佐野氏、それから国際興業と電電公社とは取引関係がないと、こう明言しておられるのでありますが、そのとおりでありましょうか。
  439. 村上勇

    国務大臣(村上勇君) その点に関しましては事務当局からお答えいたさせたいと思いますが、私が小佐野氏を政府に進言いたしましたその理由のものは、情報化時代に即して電信電話事業を幅広い利用を図る必要がある。この点、国民生活に関係の深い交通観光事業に経験の深い小佐野氏は、経営委員会委員に適任であるということ、それから第二点は、経営委員会委員はいろいろの方面の学識経験者をもって構成されているが、小佐野氏の前任者は昨年亡くなられました土川元夫氏でありますが、この人はやはり交通関係の経験者であり、交通観光の分野にある小佐野氏はその後任として適任であると、その第三点は、小佐野氏は、昭和四十二年から法務省の矯正保護審議会委員として政府関係委員を長く経験されている。三期六年勤めておったということ。それからもう一つの理由は、昨年の六月、経営委員会委員として任命された小佐野氏は、委員会に積極的に出席して委員としての職務を十分果たしておった。それから第五点は、経営委員会委員の任期は四年でありまして、従来から任期期間は二期八年を原則として運用しているところであります。小佐野氏は、前任者の残任期間一年余りの任期が終了したところでありまして、その点からも小佐野氏の再任は判断ができると思います。  それから第六点は、経営委員会委員となることができない欠格条項は左のとおりであります。「国務大臣国会議員、政府職員又は地方公共団体の議会の議員」と、それから「政党の役員」「物品の製造若しくは販売若しくは工事の請負を業とする者であって公社と取引上密接な利害関係を有するもの又はこれらの者が法人であるときはその役員」と、そうして「前号に掲げる事業者の団体の役員」と、「公社の役員又は職員」というようなことでありまして、そのいずれにも欠格条項は私は当たっていない、こう判断いたしたものであります。
  440. 星野力

    星野力君 大臣の御答弁はよくわかりましたが、私の質問に答えさせてください。
  441. 村上勇

    国務大臣(村上勇君) 事務当局から……。
  442. 佐藤昭一

    政府委員(佐藤昭一君) 先ほどお尋ねの国際興業との取引関係でございますが、公社と国際興業との間には取引関係はないというふうに承知しております。
  443. 星野力

    星野力君 自動車部品の納入などにおいても絶対にないと、こう言い切っておられるわけですね。もう一度、本当にないかどうか。
  444. 佐藤昭一

    政府委員(佐藤昭一君) 自動車部品の購入についても、取引についてはないというふうに承知しております。
  445. 星野力

    星野力君 小佐野氏または小佐野氏が役員となり、または役員と同等以上の職権または支配力を有する会社が、電電公社との間に取引上密接な利害関係があることが明らかになった場合は、経営委員を罷免しなければならぬと思いますが、いかがですか。
  446. 佐藤昭一

    政府委員(佐藤昭一君) おっしゃるとおり、密接な利害関係という場合にはそのようになろうと思います。
  447. 星野力

    星野力君 先ほど郵政大臣は、もっぱら経営能力について称賛されておりましたが、いまの関係政府委員が答弁されましたね、そういう場合は罷免しますね、しなければならぬですね。
  448. 村上勇

    国務大臣(村上勇君) そのとおりでございます。
  449. 星野力

    星野力君 小佐野氏が役員となり、またはそれと同等以上の職権または支配力を有する会社の名前を挙げていただきたいと思います。
  450. 佐藤昭一

    政府委員(佐藤昭一君) 小佐野氏が役員等をやっておられる会社の名前でございますが、経営委員会委員任命前のものにつきましてははっきりしないものもございますが、会社名につきましては以下申し上げるとおりでございます。  株式会社東京アメリカ商会、東洋自動車工業株式会社、この二つは現在は国際興業に社名が変更になっていると承知しております。それから国際興業株式会社、日東タイヤ株式会社、東京急行電鉄株式会社、越後交通株式会社、国際不動産株式会社、山梨交通株式会社、蛇の目ミシン工業株式会社、北海道いす〃自動車株式会社、日本電建株式会社、東亜国内航空株式会社、日本航空株式会社、帝国ホテル株式会社、国民相互銀行、北海自動車工業株式会社、定山渓鉄道株式会社、松本電気鉄道株式会社、札幌いす〃モーター株式会社、秋北バス株式会社、甲斐交通株式会社、山梨交通自動車教習所、大阪交通株式会社、十和田観光電鉄株式会社、岩手中央バス株式会社、岩手観光バス株式会社、山交タクシー株式会社、札樽自動車運輸株式会社、全日本空輸株式会社、株式会社昇仙閣、富士屋ホテル株式会社、花巻温泉株式会社、株式会社東急ホテルチェーン、武州商事、株式会社山交。以上と承知しております。
  451. 星野力

    星野力君 幾つになりますかな。何社。
  452. 大谷藤之助

    委員長大谷藤之助君) 数は何社あるか。
  453. 佐藤昭一

    政府委員(佐藤昭一君) 三十三社になります。——失礼しました。
  454. 星野力

    星野力君 私たちが調べたのではもっと多いですけれどもね。これは天下の小佐野だからたくさん持っております。  では、小佐野氏任命に当たって、三木内閣としては当然同氏の経営委員としての適格性をお調べになったと思う。先ほども郵政大臣からいろいろお話がありましたが、あれはもっぱら経営能力があると、こういうことを言っておるので、適格性の点をもっと、法に照らしてもよくお調べになったと思うのですが、その点をお聞かせください。
  455. 村上勇

    国務大臣(村上勇君) 十分調査の上でございます。
  456. 星野力

    星野力君 どんなふうにして何を調査されたか、本当に十分に調査したかどうか、もう一度言ってください。
  457. 佐藤昭一

    政府委員(佐藤昭一君) 先ほど御説明申し上げました各会社等でございますが、いずれも公社との取引の関係におきましては大部分が取引がない。その他につきましても、密接な利害関係というものはないというふうに承知しております。
  458. 星野力

    星野力君 それではお聞きいたしますが、財団法人電気通信共済会の役員構成、事業内容、電電公社とはどういう関係にあるか、お聞かせ願いたいと思います。
  459. 山本正司

    説明員山本正司君) お答えいたします。  電気通信共済会の役員は会長一名、理事長一名、常務理事四名、理事九名、それに監事二名でございます。これらの役員は、公社退職者及び労働組合出身者の方々で構成されておるわけでございます。
  460. 星野力

    星野力君 電電公社との関係
  461. 山本正司

    説明員山本正司君) 電気通信共済会は、昭和二十六年に当時の電気通信省の職員及び労働組合の有志で出措いたしまして、公社の退職者あるいは公傷等によって公社を退職した者等の救援、相互扶助及び現在の公社の従業員の相互扶助、厚生福祉等を目的として設立されました財団法人でございます。現在、そういった目的に沿いまして、公社職員を対象といたしましたいろんな福利厚生事業、生活援助事業等を実施いたしておるわけであります。で、先ほど申しました役員のほかに、公社及び労働組合からそれぞれ半数の評議員を出しました二十九名の構成人員による評議員会をつくっておりまして、業務運営の基本的な方針等に関しましてはその評議員会においていろいろ議決をし、その議決に基づきまして、先ほどの会長以下の役員の執行機関において業務執行をやっておるわけでございます。
  462. 星野力

    星野力君 もう一つ。そうすると、評議員会というのが共済会の最高議決機関でございますか。
  463. 山本正司

    説明員山本正司君) そのとおりでございます。
  464. 星野力

    星野力君 その最高議決機関である評議員会は、二十九名のうち八人がいまの山本さんを初めとして公社の高級職員、それから六名が公社の高級職員から民間企業の役員に天下った人々、こういうふうに構成されておる。ただいまお話もございましたが、昨年を見ますと不動産投資額が八十五億円、そのうち八十三億円が電電公社のための事業と、こうなっております。これは電電公社といわば一体の関係にある外郭団体、そう見てよろしいと思いますが、大臣いかがですか。
  465. 米澤滋

    説明員(米澤滋君) 私が先にお答えいたします。  電気通信共済会は、先ほど総務理事がお答えいたしましたように財団法人でございまして、独立の法人格を持っております。この財団法人は、すでに電電公社が発足いたします前の電気通信省時代に設立されておりまして、中身は公益事業、収益事業、それからもう一つは福利厚生事業と、この三つをやっておりまして、公社と密接と言われますと、確かに公社をやめた人あるいは現役の人も入っておりますが、しかし、公社事業そのものではない。やはり財団法人として独立なものであるというふうに思います。
  466. 村上勇

    国務大臣(村上勇君) ただいま米澤総裁お答えしたとおりでありますが、電電公社と小佐野氏との関係につきましては、電電公社と小佐野氏が関係する企業の一部におきまして取引関係があります。が、それは一般的通常的な取引でありまして、電電公社及び当該企業の取引の全体に占める割合も非常に軽微であり、日本電信電話公社法第十二条第三項第三号にいっておりますいわゆる「公社と取引上密接な利害関係を有するもの」ということに該当しないものと考えております。
  467. 星野力

    星野力君 密接な利害関係に該当するかしないかは、これはこれからやって国民の判断も仰いだらいいと思うのでありますが、いま財団法人だから共済会は別個のものだと言いますが、親と子供もこれは人格としては別個の独立したもの、私はそんな関係だろうと思うんです。  ところで、具体的な問題をお聞きしますが、千葉県野田市木野崎にある二十六万平方メートルの土地であります。ここを昭和四十四年六月、小佐野氏が社長である日本電建が関東起業から三・三平方メートル約八千円で買った。四十五年六月にはそれを大林組に売り、翌月の七月にはまた買い戻しておる。そして四十六年十月二十九日に、宅地に造成したもの三万三千平方メートルを共済会に三・三平方メートル約六万円で売って、大きくもうけております。ここに謄本もございます。こういうことは調査した中に入っておりますか。
  468. 山本正司

    説明員山本正司君) お答えいたします。  ただいまの野田の分譲敷地につきましては、電気通信共済会が日本電建から造成した敷地を買収いたしたわけでございまして、それ以前の状況等については詳しく公社としては承知いたしておりません。
  469. 星野力

    星野力君 適格性の問題と関連して調査したかという質問をしておるんですが、これ答弁になっていましょうかね、委員長。御判断願います。
  470. 山本正司

    説明員山本正司君) お答えいたします。  この敷地は、電気通信共済会が日本電建から買収いたしたものでございまして、公社自体は直接関与いたしておりませんので、その間の経緯等につきましては一切承知いたしておりません。
  471. 星野力

    星野力君 監督大臣として、こういう事実をどうお考えになりますか。
  472. 村上勇

    国務大臣(村上勇君) これは別の法人ですから、電電公社自体のものでないと考えますので……。
  473. 星野力

    星野力君 こういう事実は、小佐野氏と電電公社との密接な利害関係を示すものではないかと思いますが、いかがでしょう、大臣
  474. 佐藤昭一

    政府委員(佐藤昭一君) たまたまあるところで土地が必要になって売買するということにつきましては、特に密接な関係とは理解しておりません。
  475. 星野力

    星野力君 これは全部電電公社に関係した仕事がやられておるところであります。  もう一つそれでは言ってみましょう。埼玉県の桶川市坂田の十五万一千平方メートルの土地を、これは四十四年に日本電建が財団法人郵政互助会——これもおかしい——から三・三平米一万五千円で買い取ったいきさつがあるんですが、知っておられますか、大臣は。
  476. 佐藤昭一

    政府委員(佐藤昭一君) いまその点については十分に承知しておりません。
  477. 星野力

    星野力君 翌四十五年四月、この土地のうち十二万二千五百平方メートルを、これも共済会へ三・三平方メートル二万四千八百円で売っております。いまその地で日本電建と共済会が分譲地開発事業を共同でやっておる。これもここに謄本ございます。こういうことは今度の適格審査に当たって調査なされたかどうか。
  478. 佐藤昭一

    政府委員(佐藤昭一君) 先ほど大臣から御説明いたしましたとおり、この欠格条項という面から見ました場合に、公社法の十二条の三項の三号でございますが、「物品の製造若しくは販売若しくは工事の請負を業とする者であって」云々ということでございまして、不動産の売買につきましては直接に規定はございません。
  479. 星野力

    星野力君 こういう事例は小佐野氏と電電公社との密接な利害関係を示すものとは思わないと。大臣もそう思っておりますか、どうですか。
  480. 佐藤昭一

    政府委員(佐藤昭一君) ただいまの御説明の中で一つ抜けましたので、恐縮でございますが補足させていただきます。  いま申し上げました中で、これは電電公社と委員との関係でございまして、私ちょっと説明を間違えましたが、電電公社でなくて、電気通信共済会という法人とそれから委員個人との関係につきましては、特に関知していないわけでございます。
  481. 星野力

    星野力君 大臣、どうですかな。あなたは政治家だ。
  482. 村上勇

    国務大臣(村上勇君) ただいま政府委員お答えしたとおりでございます。
  483. 星野力

    星野力君 財団法人共済会をクッションに置いてあるからこれは関係ないと。こういうような、こんな事例を私ここにたくさん持っております。幾ら言っても同じ答弁が返ってくるだろうから、もう少し近いのを一つ言いますが、小佐野氏の関係企業と電電公社の間に取引関係はないか。これはないと言われましたですね。  北海道いす〃自動車株式会社〃さっき出てきたリストの中にある名前でありますが、この会社の株式総数、株主数、筆頭株主名とその持ち株数、会長名、その他の役員名をお知らせ願います。
  484. 佐藤昭一

    政府委員(佐藤昭一君) 北海道いすゞ自動車株式会社の株式の数等でございますが、株式総数は三十万株でございます。それから株主数は二名。筆頭株主の名前及び持ち株数でございますが、国際興業株式会社、持ち株数二十九万八千株。それから同社の会長名は小佐野賢治でございます。それからなお社長は内田昇、専務は藤井克敷でございます。
  485. 星野力

    星野力君 それはいつ現在ですか。
  486. 佐藤昭一

    政府委員(佐藤昭一君) これは本年度の、最近のものでございます。
  487. 星野力

    星野力君 北海道いすゞ自動車株式会社と小佐野賢治氏との関係について調査なさいましたか、今度の任命に当たって。
  488. 佐藤昭一

    政府委員(佐藤昭一君) 最近の例で調査いたしました。結果は、四十七年度に四輪車の購入台数が十台でございます。金額にいたしまして約六百万円。四十八年度が四台、購入費が約三百万円。四十九年度が七台、購入金額は約八百万円。五十年度は、九月末まででございますが、二台、約百四十万程度と思っております。  なお、これの密接なる関係ということでのお尋ねでございますので、両者の、いわゆるいすゞ自動車株式会社と電電公社との両者の取引の相互における比重でございます。これについて見ましたところ、四十七年度、電電公社で全国で購入しております台数が七千八百九十一台、それから北海道管内で購入しております台数が三百九十台、次に四十八年度は全国で七千百五十三台、北海道管内だけでは百八十四台でございます。また四十九年度におきましては全国で四千六百六十二台、北海道管内のみでは二百十九台、なお五十年度は、同じく九月末でございますが、全国の購入台数が二千百台、北海道管内では七十九台ということでございまして、そういった点で、特に非常に大きなウェートを占めるという取引とは見られないというふうに考えております。
  489. 星野力

    星野力君 いま大分先回りしてお答えになりましたが、数字の上から密接な利害関係を示すものではないと、こう言われようということだと思いますが、それならば、北海道いすゞ自動車以外にはそういうことはございませんか。
  490. 佐藤昭一

    政府委員(佐藤昭一君) ただいま御説明しました北海道いすゞ自動車以外におきましては、先ほど国際興業につきましては取引なしと申し上げましたが、その他のところにおきましても、大体一般客として随時一般に利用する以外に特に関係はないというふうに聞いておりますが、一つだけ申し上げておきますが、東京急行電鉄の取締役ということでございますが、この東京急行電鉄との取引関係におきまして四十七年度、用地を買収しております。東京急行電鉄の造成しました宅地を横浜市緑区におきまして買収しておりますのがございます。それから同じく、四十九年度におきましても横浜市緑区におきまして土地の買収というものを行っております。  これはいずれもそれぞれ電話局の用地ということで、宅地造成された地域において買収しているわけでございまして、四十七年度の場合は土地買収費が一億七千五百万円、敷地の面積が三千百四十九平方メートル、それから四十九年度に買収しましたものは面積が四千二百平方メートルで買収費は二億五千九百万円、かようになっております。いずれも、それぞれ東急電鉄の方で非常に広い地域にわたって宅地を造成した、そういった地域に電話局を新たに建てるということのためにそういった取引が行われた、いずれも継続的なものでなくて、たまたまそういうふうな取引があったというふうに理解しております。
  491. 星野力

    星野力君 総理もいまお聞きになったでしょうが、実際はこんなものじゃないんです。北海道いすゞだけじゃございません。東急だけじゃございません。きょうは、私ほかの質問をやりたくて準備したので、時間の関係もありますので、きょうは電電公社と小佐野氏との密接な利害関係——もうこれは密接と言いますよ、それは。それを示す事実のうちの、何といいますか、いわば氷山の一角を指摘したにすぎないのでありまして、徹底的にこれはひとつ調べていただきたいと思うんです。あなた方はそれだけだと思っておったら間違いなんだから、調べるか調べないか、大臣、言ってください。
  492. 村上勇

    国務大臣(村上勇君) ただいま御報告申し上げましたのが全部全く徹底的に調査をした結果でございまして、これ以上調べようがありません。
  493. 星野力

    星野力君 政府委員の方、よろしゅうございますか、先ほどからお話もちょいちょい出ておるようでありますが、日本電信電話公社法第十二条の三項と、その三号の部分を読んでいただきたい。また、第十四条も読んでいただきたい。
  494. 佐藤昭一

    政府委員(佐藤昭一君) 電電公社法の十二条でございますね、十二条「委員は、両議院の同意を得て、内閣が任命する。委員の任期が満了し、又は欠員を生じた場合において、国会の閉会又は……
  495. 星野力

    星野力君 十二条の三の三号。三項と、その三号が問題だそうですから、どういう条文か、読んでいただきたい。
  496. 佐藤昭一

    政府委員(佐藤昭一君) 失礼いたしました。  三項「左の各号の一に該当する者は、委員となることができない。」一、二は省略いたしまして、三号「物品の製造若しくは販売若しくは工事の請負を業とする者であって公社と取引上密接な利害関係を有するもの又はこれらの者が法人であるときはその役員一いかなる名称によるかを問わず、これと同等以上の職権又は支配力を有する者を含む。)」以上でございます。
  497. 星野力

    星野力君 第十四条。
  498. 佐藤昭一

    政府委員(佐藤昭一君) 第十四条でございますね、「内閣は、第十二条第二項後段の両議院の事後の承認を得られないとき、又は委員が同条第三項各号の一に該当するに至ったときは、その委員を罷免しなければならない。」。
  499. 星野力

    星野力君 総理にお聞きしますが、以上ずっとお聞きのとおりでございます。あなたとしましては、小佐野氏は電電公社の経営委員として適格者とお思いになるかどうか。これはあなた御自身の政治姿勢にもかかわる問題であります。しっかりとお答え願いたいと思うのであります。
  500. 三木武夫

    国務大臣三木武夫君) いろんな法規に照らして、そして正当に任命をされたものと思います。
  501. 星野力

    星野力君 法規も法規でございますが、総理、一国の総理としてこのような人事が適当であると思っておられるのかどうか。何がこれが適格なものですか。法律的に不適格なだけでなしに、政治的にはさらにこれは不適格だ、そうお考えになりませんか。
  502. 三木武夫

    国務大臣三木武夫君) 郵政大臣の推薦するこの理由が、理由があると考えたからでございます。
  503. 星野力

    星野力君 総理、まことに自信のなさそうなお答えで、そこにまた、まあ意味がこもっておるのかもしれません。衆議院はこれは自民党の出席だけで承認したわけでありますが、参議院としてこれはそう簡単に承認するわけにはまいらぬ人事でございます。これは政府自身の手で罷免すべきことだと思いますが、そのお考えはないですか。
  504. 三木武夫

    国務大臣三木武夫君) 法規に照らして抵触しておる場合を除き、そういう考えはございません。
  505. 星野力

    星野力君 きょうは、三木総理に対朝鮮外交についてお聞きするつもりでありましたが、この問題について時間をとってしまいましたんで、対朝鮮外交に関連する若干の質問をいたしたいと思います。  まず初めに、通産大臣でございましょうか、武器輸出の三原則についてお知らせ願いたいのであります。
  506. 河本敏夫

    国務大臣河本敏夫君) 武器の輸出をいたします場合に、輸出貿易管理令の運用の基準を決めたものでございます。
  507. 星野力

    星野力君 いや、もっとこれは内容
  508. 河本敏夫

    国務大臣河本敏夫君) 三原則を具体的に申し上げますと、第一は、共産圏には武器は輸出しない、第二は、国連の決議によって禁止されておる地域に対しては出さない、それから第三は、紛争の地域または紛争のおそれのある地域には武器は輸出をしない、こういうことでございます。
  509. 星野力

    星野力君 憲法に照らして、この武器輸出自体が禁止さるべきではないか、武器の輸出全体が禁止さるべきではないかと思うが、総理はいかがですか。
  510. 三木武夫

    国務大臣三木武夫君) 貿易管理令によって処理をいたしておるわけでございます。
  511. 星野力

    星野力君 十月三十一日、総理出席されて財界の代表と懇談やっておられる。その席上、田部三菱商事社長が、純粋な兵器はまずいが、兵器に近いもので輸出競争力のあるものは出していくべきだ、そうでないと日本の景気を回復することはむずかしいという発言をいたしておる。総理お聞きになったと思います。その席で政府がどういう応対をなさったかは知りませんが、戦後三十年、日本の大企業はついにここまで来たかと思わせるようなこれは重大な発言だと思いますが、これに対する総理の御見解をお聞きしたい。
  512. 三木武夫

    国務大臣三木武夫君) 私はよく記憶してないわけでございます。私は、日本の産業が、軍需産業を盛大にして日本の景気の回復を図ろうという考えはないわけでございます。
  513. 大谷藤之助

    委員長大谷藤之助君) 心得て簡単に願います。
  514. 内藤功

    ○内藤功君 じゃあ、簡単に関連質問をいたします。  通産大臣にお伺いいたします。細部にわたって政府委員からお答えになっていただくことは構いませんが、通産大臣にお伺いしたい。  いまの質問の中であったいわゆる輸出の三原則というものは、これは憲法の趣旨から出てきたものだと、これは国会の答弁でもしばしばなされておる。そこで、通産大臣が、外国に戦争の火種かあったときに、それを求めむさぼるように日本の企業が人殺しの武器を輸出をしないというのが、この三原則の趣旨だと思うんですね。この運用について、いままで、たとえば田中角榮元通産大臣は、鉄かぶとであっても軍隊の用に使う場合には、これはここに言う武器であると、こういう答弁をたしか四十七年にしておるんですね。それから、たとえばいろんな例が貿管令にも書いてあって、探照灯というようなものもこの中に挙げられておる。そこで私の質問は、端的に二点だけお聞きいたします。  一つは軍用レーダー、相手の目標を発見して、探知して識別をするというこの軍用レーダー、これは当然武器の中に入ってくるものと思いますが、どうか。これが一点。それから、時間がないからもう一点。この軍用に供するかどうかという判断の基準としては、判断の仕方としては、エンドユーザーといいますか、最終使用者がだれであるかということまで調査をして、数段階、十段階まで調査をしてそうして決める、こういう厳格な態度、当然と思いますが、こういう態度を通産省は現在もとっておられると思うけれども、この二点について端的にお答えを願いたい。
  515. 河本敏夫

    国務大臣河本敏夫君) 先ほど申し上げました武器三原則のその武器という意味は、軍隊の使うものであって直接の戦闘用に使う、こういう考え方でございます。いまおっしゃった品物が軍隊の使うものであって直接の戦闘用のものかどうか、これはちょっと研究してみます。
  516. 熊谷善二

    政府委員(熊谷善二君) お答えいたします。  ただいまお話しのレーダーにつきましては、ただいま大臣からお答えいたしましたように、武器の概念が直接戦闘の用に供するものということでございますので、レーダーそれ自体は、そういった直接戦闘の用に供するものではない、もっと一般的な汎用のものというふうに解釈いたしておりまして、レーダーなるがゆえに直ちにこれは武器と判断をするというような運用はいたしておりません。
  517. 内藤功

    ○内藤功君 軍用レーダー。
  518. 熊谷善二

    政府委員(熊谷善二君) なお、運用の際には個別のケースにおきまして判断をいたしております。
  519. 内藤功

    ○内藤功君 エンドユーザーには。
  520. 大谷藤之助

    委員長大谷藤之助君) もう一つ、熊谷君、最終段階まで調査をした上で……。
  521. 熊谷善二

    政府委員(熊谷善二君) 先ほど大臣からお話しいたしましたように、対象地域につきましては、エンドユーザーにつきまして、必要があるという場合には確認をいたしておりますが、その必要がない場合にはいたしてないということでございます。
  522. 内藤功

    ○内藤功君 エンドユーザーまで調べているということですか。
  523. 熊谷善二

    政府委員(熊谷善二君) ただいま申し上げましたように、エンドユーザーにつきましては、その必要があるものにつきましては調べておるということでございまして、すべてにわたって確認をするというようなことは必ずしもやっておりません。
  524. 大谷藤之助

    委員長大谷藤之助君) 簡単に。
  525. 内藤功

    ○内藤功君 そうすると、いまのお答えでは軍用レーダーの場合、個々の場合で決めると言いますけれども、たとえば敵の目標を発見する、探知する、それから敵か味方かを識別する、そして砲撃なり爆撃なり射撃の前提条件をつくる、こういうものは個々の場合判断すると言うけれども、まずよほどのことがない限りこれは戦闘の用に供するものと——探照灯だって入っているんですからね。探照灯というのは日清、日露戦争のときにあったんですから、軍用レーダーというものはなおさらこれは直接戦闘の用に供するものだと思うんですね。ですから、個々の場合と言うけれども、実際はほとんどすべての場合がこれは直接戦闘の用に供するものと、こういう判断でいかないと現代の技術というものの常識から外れてくると思うんですがね、その点をもう一点どうですか。
  526. 熊谷善二

    政府委員(熊谷善二君) お答えします。  レーダーにつきましては、たとえば魚群探知であるとか、いろんな船舶その他に使われるわけでございますので、これにつきましてはその汎用性に着目いたしまして、規制の際に個々に判断をいたしておるわけでございます。  なお、探照灯につきましては、それ自体軍用の用途がかなり明確でございますので、そのような運用をいたしております。
  527. 星野力

    星野力君 どうですか。田中元通産大臣がその当時、鉄かぶとは普通かぶっても武器じゃないけれども、兵隊がかぶればこれは武器になると言われた。通産大臣、認めますか、そういう解釈を。
  528. 熊谷善二

    政府委員(熊谷善二君) 御指摘のとおりでございます。
  529. 星野力

    星野力君 韓国は、あの三原則の中の紛争当事国ないしは紛争のおそれのある国に含まれるのでしょうか、どうでしょうか。
  530. 河本敏夫

    国務大臣河本敏夫君) 韓国は、外為法の第四十八条によって処理しております。
  531. 星野力

    星野力君 朝鮮半島は、国際法的に言えば休戦状態にある。なぜここが紛争国あるいはそのおそれのある地域に含まれないのでしょうか。
  532. 岸田文武

    政府委員(岸田文武君) 私どもの運用におきましては、韓国は武器輸出三原則の対象国であるとは考えておりません。ただし、輸出貿易管理令に基づきまして、国民経済の健全な発展、外国貿易の健全な発展の見地から……(発言する者多し)
  533. 大谷藤之助

    委員長大谷藤之助君) 委員発言は禁ずる。
  534. 岸田文武

    政府委員(岸田文武君) 審査をして、ケース・バイ・ケースに処理する。ただし、当分の間はこれは輸出を認めないと、こういうような運用をいたしておるところでございます。
  535. 星野力

    星野力君 なぜ含まれないかというのを聞いておる。これは無理かもしれぬから、外務大臣、どうでしょう。
  536. 河本敏夫

    国務大臣河本敏夫君) 先ほど申し上げましたように、この紛争当事国または紛争のおそれのある国ではないけれども、外為法第四十八条によって処理しておると、こういうことでございます。
  537. 星野力

    星野力君 どうも答弁にならないんですね。外務大臣ひとつはっきり教えておいてください。現在どこが紛争あるいは紛争のおそれのある地域になりますか。
  538. 岸田文武

    政府委員(岸田文武君) お答えをいたします。  紛争当事国または紛争のおそれのある国という概念につきましては、申請があった都度審査をするというルールによって処理しております。
  539. 星野力

    星野力君 韓国はその武器輸出三原則のどこにも当てはまらぬと、貿易管理法四十八条で何とかと言っておられますが、その四十八条の該当個所をちょっとお知らせ願いたいのであります。
  540. 岸田文武

    政府委員(岸田文武君) 外国為替及び外国貿易管理法四十八条におきましては、第一項におきまして、特定の貨物、特定の地域向けの貨物、これらにつきましては、特別の場合に「承認を受ける義務を課せられることがある。」ということを規定をいたしまして、引き続きまして第二項におきまして、「前項の政令による制限は、国際収支の均衡の維持並びに外国貿易及び国民経済の健全な発展に必要な範囲をこえてはならない。」このように規定してあります。
  541. 星野力

    星野力君 そうすると、いま韓国へ出さないというのは、国民経済の健全なる発展、それに関連があるということでございますか。それならなぜそうかを説明してください。
  542. 岸田文武

    政府委員(岸田文武君) 私どもは、韓国に関連をいたしましては紛争のおそれがあるとは理解いたしておりませんが、現に緊張状態が存在をしておるということに着目をいたしまして、これに対する武器の輸出を認めることは国民経済及び輸出貿易の健全な発展に問題ありというふうに考えておるわけでございます。
  543. 星野力

    星野力君 国民というのは日本の国民ですか。
  544. 岸田文武

    政府委員(岸田文武君) わが国の国民経済を考えております。
  545. 星野力

    星野力君 韓国に対してはずいぶん日本の国民経済の健全な発展にかかわりのあるような貿易関係も含まれておるわけでありますが、とにかく韓国へは兵器、武器は輸出しておらない、していないと、こういうことですな。
  546. 河本敏夫

    国務大臣河本敏夫君) 韓国へは出しておりません。
  547. 星野力

    星野力君 ところが、そうではないんですね。  東京計器という会社はどういう企業か御存じだろうと思いますが、御存じのことだけでいいですから、ちょっと説明してください。
  548. 熊谷善二

    政府委員(熊谷善二君) 一般には計器類をつくっておるメーカーでございます。
  549. 星野力

    星野力君 防衛庁との関係はどんなふうになっておりましょうか。
  550. 江口裕通

    政府委員(江口裕通君) 詳しく調査して実績等は申し上げますが、防衛庁に対しましては現在、搭載電子機器の一部を納入しておる会社でございます。数量等につきましてはちょっといま定かではございません。
  551. 星野力

    星野力君 防衛庁は、仲のいい会社ですからもっとよく知っておるはずなんですよ、これはね。防衛産業依存度の依存度の非常に高い会社で、主要防衛生産のメーカーランキングでは十三位と言われておる。それから防衛生産比率は一八%。一八%という比率ですね、自分のところの生産の。それが防衛庁関係、防衛関係ということはあるいはトップじゃないかとも思うんですが、その辺どうでしょう。
  552. 江口裕通

    政府委員(江口裕通君) 細部の資料を調査をいたしまして、すぐ御連絡いたします。
  553. 星野力

    星野力君 それじゃ後でひとつ報告していただきたいと思いますが、この会社が昭和四十五年、四十六年ごろから、現に韓国の陸軍が使用しておるところのレーダー、これは数十台というんですか、百台近くというんですか、とにかく私の計算では百台までにはなっておらぬですが、輸出しておる事実を知っておられると思うが、どうですか。
  554. 熊谷善二

    政府委員(熊谷善二君) ただいまの東京計器が輸出者でありますかどうかは確認いたせませんが、私どもいま手元にございます韓国向けの、たとえばレーダー輸出につきまして若干のものが輸出されているわけでございますが、通産省の把握しておりますのはいわゆる標準外決済というケースだけでございまして、それ以外の標準決済の場合には、一般通関統計でこれを確認する以外にございませんが、四十六年の七月までに、通関統計によりますと、韓国向けに輸出されましたレーダーの輸出実績は百四件、約一億六千万円でございます。なお、同時期に韓国向けレーダーの標準外決済として輸出した、通産大臣が承認したものは三件で、約五千万ドルでございます。
  555. 星野力

    星野力君 このいま申しております東京計器という会社は、先ほど防衛庁からも答弁がございましたが、航空計器とか、ことに船舶用の計器、レーダーなんかをたくさん生産しておるところの会社でありまして、いまお答えのあったあの時期に百何十台、この中には一般船舶用のレーダーも含まれておるわけでありますが、その中に相当多数の軍用レーダーが含まれておる。このことについては輸出の承認に当たって厳重に調査されたはずだと思いますが、どうですか。
  556. 岸田文武

    政府委員(岸田文武君) 輸出貿易管理令の別表を見ますと、韓国向けにレーダーを輸出する場合には、一般的には承認を要しないということになっているわけでございます。ただし、標準外決済方法によって輸出する場合には、そのこと自体が承認事項になるわけでございますが、その場合には決済方法の内容を審査するというたてまえになっておるわけでございます。
  557. 星野力

    星野力君 先ほど来言われているエンドユーザーを確認するということは、この場合にはやられておらないんですか。
  558. 岸田文武

    政府委員(岸田文武君) エンドユーザーの確認は行っておりません。
  559. 星野力

    星野力君 通産省では、その点厳重に行っているということを言ってきたんですよ。それが実際にはやっておらない。この私が言っておる軍用レーダーの場合は、相手はソウルに本社のある東一交易、東の一ですね、東一交易、そこから韓国陸軍に納入しておる。東一伸鉄という同系会社もありまして、これは軍納業者のリストにもちゃんともちろん載っておるわけでありますが、そういう会社との取引なんです。現に、これらの軍用レーダーは陸軍沿岸警備部隊の車両に積載して使用されております。韓国の東海岸で使用されております。こういうことが許されていいのかどうか。大臣、どうです。
  560. 岸田文武

    政府委員(岸田文武君) 私ども輸出貿易管理令の運用に際しましては、商品のそれぞれの種類ごとに武器であるかどうかということを審査をするわけでございますが、先ほども機械情報産業局長からお答えいたしましたように、レーダーは汎用的な目的を持っておるということからしまして、従来、武器というふうには解釈いたしておりませんでした。したがって、いまのような場合には承認事項にかからないということが出てまいるわけでございます。
  561. 星野力

    星野力君 さっきは兵器、武器は韓国には絶対に送っておらないと、こう大臣は言っておられた。その性能やそういうものはいろいろのあれに、私素人ですけれども、たとえばインボイスやなんかに書いてあるんじゃないんですか。見ればわかることじゃないかと思うんです。この問題の軍用レーダーというのは、東京計器が船舶用のMR120というこの型のレーダーを先方の注文の目的に応じて改造したものなんです。どういうふうに改造したかと言えば、船に据えつけるんじゃなしに、トラックやその他の車両に簡単に据えつけられるように、陸上でも使えるようにこれは改造した。ちゃんと軍用レーダーの規格に従ってこれは改造しておるのであります。しかも、アンテナ部分には迷彩塗装まで施して送っておるんです。こんなルーズなやり方をされてよろしいですか。
  562. 河本敏夫

    国務大臣河本敏夫君) 御案内のように、先ほど申し上げましたように、武器というのは軍隊が直接戦闘用に使うものである、こういう概念を申し上げました。レーダーは、いま先ほど来政府委員が繰り返し答弁しておりますように、汎用性のあるものでございまして、大部分は民事用に使われる。たまたまそういう場合もあったと思いますが……
  563. 大谷藤之助

    委員長大谷藤之助君) 発言中、静粛に願います。
  564. 河本敏夫

    国務大臣河本敏夫君) しかし、通産省の指導しております軍隊の直接戦闘用に使う、こういう概念に頭から決めてかかるということ自身はどうだろうかと、こういうふうに思います。
  565. 星野力

    星野力君 そんな答弁じゃだめですよ。さっき鉄かぶとね、鉄かぶとというのは向こうから弾が飛んでくるのを防ぐためにこれはかぶるんですが、レーダーというのは、敵を発見して、敵がやってきたら、それを撃つための兵器の欠くべからざる一部分としていま使用されておる。実際韓国陸軍がこれを使っておるんです。これは何も私が初めて言うわけじゃありません。私も初めは「コリア評論」などという日本の雑誌や、それから一部の新聞に部分的に報道されておったのを見て初めて知って、その後、私レーダーには興味を持っておりますからね、いろいろ調査して、韓国陸軍が使用しておるということは、これは間違いないんですよ。そういう用途のものは当然禁止すべきだと思うが、どうですか。
  566. 河本敏夫

    国務大臣河本敏夫君) 何が軍隊が直接戦闘用に使う武器であるかという、その判定はなかなかむずかしくて、たとえば模型飛行機がそれに該当するか、あるいは貨物自動車が該当するかとかいろいろな意見がありまして、私は差し支えないと思います。
  567. 星野力

    星野力君 そんなこと言っちゃだめだ。あなたは財界の代弁をしておるんじゃないのか。三菱商事社長の代弁と同じじゃないですか、それは。鉄かぶととどっちが軍用として兵器としてふわしいものであるか、比べていただきたい。比較論をひとつやっていただきたい。
  568. 河本敏夫

    国務大臣河本敏夫君) 繰り返して恐縮でございますが、軍隊が直接の戦闘用に使うもの、それが武器である、こういう概念で処理をしております。
  569. 星野力

    星野力君 あなたはたまたまと、こう言われましたけれども、最近はさらに性能の高い軍用レーダー、今度はMR−121シリーズ、これはここにも書いてあります。「新製品全天候レーダー 近日発売」と。これは少し古いからもう発売しておりますが、これにやはり変えてくれという注文が来ましてね、同じような改造を施して、東一交易を介して韓国陸軍に送り届けておる。現に送り出されつつある。これ、とめませんか、あなた。どこをどうしたかというのは、私時間があれば説明しますけれどもね。
  570. 岸田文武

    政府委員(岸田文武君) 先ほどもお答えいたしましたように、従来は貨物の種類ごとに一般的なルールとして武器であるかどうかという判定をいたしておるわけでございます。それがたまたま軍隊に使われたからということで承認品目にいたしますと、これはどのような商品がどのような形が使われるか、恐らく予測しがたいわけでございまして、やはり物の種類ごとに決めていくということはたてまえ上やむを得なけことではないかと思います。ただ、御指摘のように、レーダーの中で特に軍用であるということが識別可能なような新しいルールでも研究できましたならば、それは別途に考えることは可能である、こう考えます。
  571. 星野力

    星野力君 だめ、だめ、これは。たまたま軍用に使われるというんじゃなしに、初めから軍用としてこっちでつくっているわけだ。自民党席からも私の質問がおとなしいと言って文句が出てきておりますが、私もそんな答弁じゃ満足できない。こんなものを送り出しちゃいけませんよ、大臣
  572. 吉國一郎

    政府委員吉國一郎君) この問題は、ことしの二月に衆議院予算委員会でやはり韓国関係で問題になりまして、日本社会党委員から御質問がございまして、いろいろ私からお答え申した先例もございますので、ちょっと法律関係を申し上げたいと思いますが、先ほども説明がございましたように、外国為替及び外国貿易管理法の四十八条の規定によりまして、「特定の種類の若しくは特定の地域を仕向地とする貨物を輸出しようとする者」途中を抜きますが、「者は、政令で定めるところにより、通商産業大臣の承認を受ける義務を課せられることがある。」という規定がございまして、それを受けて輸出貿易管理令という政令が制定されております。  輸出貿易管理令の第一条で、「貨物を輸出しようとする者は、左の各号の一に該当するときは、通商産業省令で定める手続に従い、通商産業大臣の書面による承認を受けなければならない。」と言っておりまして、そこの第一号に「別表第一中欄に掲げる貨物を同表下欄に掲げる地域を仕向地として輸出しようとするとき。」という規定がございます。別表には二〇〇号以上の物資が並んでおりますが、その一九七号に「銃砲及びこれに用いる銃砲弾」というのが中欄に掲げてございまして、下欄に「全地域」とございます。したがって、地球上のどこであっても銃砲弾を輸出する場合には、それに対して輸出の承認を受けなければならないという規制がかかってまいります。以下二〇五号まで軍用のまあ兵器、武器に類するものが並べてございます。  そういうものについて国会でいろいろ御議論がございまして、これを紛争当事国であるとか、国連が輸出を禁止した国に出すことは適当ではないではないかという御議論がございまして、通商産業大臣の承認の基準の内規といたしまして武器輸出三原則というものが次第に固まってまいりまして、もう二、三年前から確定的な三原則ということで固定的なものになっております。したがって、その三原則で対象といたします物は、輸出貿易管理令別表第一の一九七号から二〇五号までに掲げられておるものについての議論が始まってまいったものでございますから、レーダーについてはこの号ではない別な号に掲げてございまして、先ほど貿易局長が申し上げましたように輸出承認の対象になっておりません。輸出の承認を受けなくても輸出できるようになっております、地域によりましては。したがって、将来の問題といたしまして、そういうことを研究することは十分検討に値する問題と考えまするけれども、現段階においては、このいま問題になっております地域にレーダーを輸出する場合には、輸出の承認を要することになっておりませんから、全く自由に輸出をされるという関係になっております。法律関係だけを申し上げます。
  573. 星野力

    星野力君 軍用探照灯の方は承認を必要とするものになっておりますね。
  574. 吉國一郎

    政府委員吉國一郎君) 軍用探照灯は、ただいま申し上げました輸出貿易管理令別表第一の第二〇四号に「軍用探照燈及びその制御装置」ということで掲げられております。  なお、先ほど議論のございました鉄かぶとについても、第二〇三号において「軍用鉄かぶと」ということで掲げられております。
  575. 星野力

    星野力君 じゃ、日本国内で明らかに軍用としてつくられて、現に軍によって使われておる物、こういうものの輸出は当然そこに加えるべきであるし、そういうものの輸出は禁止すべきだと思いますが、三木さん、総理大臣としてそのお考えはございませんか。
  576. 河本敏夫

    国務大臣河本敏夫君) 現在の法規の関係は、先ほど法制局長官が述べられたとおりでございますが、せっかくの御指摘でございますから十分検討させていただきます。
  577. 星野力

    星野力君 これはぜひひとつ厳重に検討して、そういうことをもうやめてもらわなければいけぬ。これから申し上げることとも関係しますけれども、こんなことは国益にならないんだ、これは。朝鮮の平和のためにもよくないんだ。  ところで総理、真に朝鮮の平和と統一、これはあなた願っておられると言われる。それからアジアの平和、そして何よりも日本の安全を願うならば、この際朝鮮政策というものを根本的にひとつ考え直す必要があるのではないかと思うのであります。  外務大臣は、七月二十四日のソウルでの記者会見で、韓国条項、これは一九六九年の韓国条項。韓国条項の認識については今回の外相会談で韓国側の認識と同じ方向を指向している、この認識に立ち、わが国としてはできるだけの経済協力を推進していかなければならない、こう発言しておられるのでありますが、その後の日韓間の関係はまさにその方向で進んでおります。このような韓国への一方的な加担は朝鮮の平和に役立つどころか、むしろ逆である。多くの日本国民はこれに納得しておりません。それから朝鮮民主主義人民共和国はもちろん、心ある韓国の人々も反対しておるのであります。北朝鮮との国交関係、朝鮮民主主義人民共和国との国交関係の正常化へ進むべきであると思いますが、どうかということが一つ。  その際、アメリカの意向がどうのこうのというのではなしに、また中ソが韓国を承認したならばなどと顧慮するのではなく、歴史的、地理的に深い関係があるだけでなしに、朝鮮を植民地として支配してきた日本には特別のこれは責任があるわけでありますから、自主的そして創意性のある対朝鮮外交、これに踏み切るべきであると思いますが、いかがでありますか。  この二点をお聞きするのと、それからその後外務大臣に、先ほどの朝鮮は紛争国でもないし紛争のおそれのある国でもないと、これは兵器三原則の立場からそうなっておるそうでございますが、実際にあそこは紛争のおそれのある地域でないとお考えになるのか、その辺の外務大臣としての見解をひとつお聞きさせていただきたいと思います。外務大臣の方から先でもよろしゅうございます。
  578. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) 貿易管理令は御承知のように通産大臣の専管の政令でございまして、貿易、武器の輸出を管理するという目的のもとに、どの地域が紛争があり、紛争のおそれがある、ないということを判断しておられるわけでありまして、それは一般的に紛争のおそれがある、ないということとは必ずしも私は一緒ではないと思います。特定の行政目的を達成する意味において判断をされるのでありますから、必ずしも一般の常識と一致するとは私は限らないと思います。しかしながら、恐らく推察をいたしますのに、一九五三年でございますか、いわゆる和平協定が結ばれまして以来、大きな紛乱というものは朝鮮半島にはその後絶えてないわけでございますから、その状態をもって紛争または紛争の直接のおそれはないと判断をしておられるのであろうと私は想像をいたします。もっとも、もう少し広い国際政治の立場で申しますれば、いわゆる停戦協定ができて、そうしてまだ平和条約が結ばれていないという状態は、国際法上に言う全くの平和の状態だとはこれは申しにくい、こういうこともまた申し上げられると思います。
  579. 三木武夫

    国務大臣三木武夫君) 政府の望んでおりますことは、朝鮮半島の平和と安定であるわけです。そして一九七二年、共同声明によって南北の対話が始まったわけですから、現在の朝鮮半島のこの均衡の状態の中でああいう時期もあったわけですから、そういう環境ができて対話の継続というものを切に望んでおるわけでございます。この現在の朝鮮半島の状態を考えますと、現状に急激な変更を与えることは私は朝鮮半島の平和と安定のためにこれは好ましくない。したがって、北鮮との間にも御承知のようにいろんな交流を続けて理解を深めておるわけでございますから、したがって、いま承認というわけにはまいりませんが、そういう問題については朝鮮半島の情勢の推移を見ることにいたしたいと思うわけでございます。
  580. 星野力

    星野力君 委員長、それじゃもうこれで終わりますが、そういう御答弁で対朝鮮外交をお続けになったら、一日そういうことが長引けば一日これは日本国民の不幸だと思います。そのことだけを申し上げて、私の質問を終わります。(拍手)
  581. 大谷藤之助

    委員長大谷藤之助君) 以上をもちまして星野力君の質疑は終了いたしました。     —————————————
  582. 大谷藤之助

    委員長大谷藤之助君) 前田日本道路公団総裁から発言を求められておりますので、これを許します。前田総裁
  583. 前田光嘉

    参考人前田光嘉君) 先ほど近藤先生からの御質問の際に、凍結防止剤を道路公団においていままで使用した量についての御質問がございましたが、手元に資料がなかったために、ただいま御説明申し上げます。  使用いたしました凍結防止剤は、昭和四十年度から毎年使っておりまして、気候等によりまして毎年の使用量はそれぞれ違いますが、四十年度は三千五百五十トン、四十一年度は三千五百トン、四十二年度は四千四百トン、四十三年度は二千五百五十トン、四十四年度が四千六百トン、続きまして四千百トン、千八百トン、三千三百五十トン、四十八年度は四千五百五十トン、四十九年度につきましては道路の延長が延びましたので、八千四百トン使用いたしております。  なお、先ほど私の説明の中に一部正確でなかった点がございますので、謹んで訂正させていただきます。  それは、この凍結防止剤を使用いたしました場所でございますが、一番多量に用いますのは、先ほど申し上げました名神高速道路の関ケ原を中心といたしまして約百キロ区間でございますが、雪の都合等によりまして、東名の御殿場付近約五十キロ、それから中央道の八王子以西でございますが、約五十キロにつきまして使用いたしておる次第でございます。  御説明を終わります。     —————————————
  584. 大谷藤之助

    委員長大谷藤之助君) 下村泰君。
  585. 下村泰

    ○下村泰君 これから質問させていただくのですが、こういう場所になれておりませんし、いままで私が、現在総理の席に座っていらっしゃる三木さん、あるいは副総理福田さん、こういう大臣の方々とお話をしているとき、あるいは稻葉法務大臣もそうです、村上さんもそうでございます、ほとんどラジオとかテレビのスタジオばかりでございます。こんな形でこういうところでお会いするのは、もちろん今回が初めてでございます。非常になれておりませんので、いろいろと失礼なことを申し上げるかもわかりませんが、その点は、委員長、その都度ひとつ御指摘願いたいと思います。  今日までこの予算委員会をずっと拝見してまいりまして、お答えになる方はえらい仕事だなとつくづく感じました。   〔委員長退席、理事柳田桃太郎君着席〕 新聞の活字にあらわれていること、あるいはテレビ、ラジオの論説委員の方々のしゃべることのみ私どもは聞いたり、あるいは見たりしてきたんですけれども、大変だなとつくづく思います。思いますけれども質問なさる方は一生懸命お調べになってここに来て質問なさっていらっしゃるのに、お答えになる方の方は、何ですか、持って回ったようなお答えの仕方が多くて、時によっては八幡のやぶ知らずに入ったような気がするんです。私なんぞは、なれておりませんから、お答えになっていらっしゃることを一生懸合この単細胞で判断して、ぐるぐる回っているうちに、どこか出口がわからなくなって、いまお答えになったのはちっともわからないなという結果に陥るんです。で、いままで御質問なさった方々は、日本という大きな国を動かす予算の大綱をお尋ねになりました。私はとてもそんな大きな御質問はできません。できるだけ小さい方からいきたいと思います。質問内容が単純でございますので、お答えになる方もひとつ単純明快なお答えを期待して質問に入りたいと思います。よろしくお願いします。  三木総理にお伺いします。  実はね、私この質問という、こういうすばらしい場を与えていただいたんで、実は政治って何だろうと考えたんです。たまたま蝋山政道先生のお言葉をちょっと見たんです。そうしましたら、政治とかあるいは政治的という言葉ぐらい活字があって意味のない言葉はないんだと書いていらっしゃる。その政治生活はすべての国民によってなされている、一部の政治を行っている人のためなのではない、政治生活は政治家だけの生活ではない、政治及び政治生活がすべての国民に共通した活動であり生活であるということである、これが判明したのは近代の民主生活になってから初めてはっきりしてきたことなのであると、こういうふうに蝋山先生はおっしゃっているんですけど、実際、総理のお考えはいかがでしょう。
  586. 三木武夫

    国務大臣三木武夫君) 下村君の言われるように、政治家のための政治があるはずがない。国民のための政治であるという御見解はまさしくそうだと私も思います。
  587. 下村泰

    ○下村泰君 そうしますと、日本人全部のための政治であり、それは総理がいつもおっしゃっているように、これから首脳会議にお出かけになれば、もうずっとここでおっしゃったお言葉は三木内閣のものではない、一日本という国だけのものではないとおっしゃっている。そうしますと、いまの総理のお言葉から拝察しますと、日本の国に住んでいる人間はひとしく幸せになるべく政治のもとに置かれていると、こういうことになります。そうしますと、その面から見て、果たして日本という国は福祉国家と言えるんでしょうか。その点をひとつお聞かせ願いたい。
  588. 三木武夫

    国務大臣三木武夫君) 私は日本はいい国だと、下村さん、思っているんですよ、これは。日本の国はね。だから、ほかの国から比べましても、すぐれた条件を日本はたくさん持っているんですね。だから、皆まあ海外に出ても、日本へ早く帰りたいというような気持ちで、そういう落ちつかない弊害の面もありますよ。だけど非常にいい国である。日本以外に、もし今度生まれて祖国を選ぶといえば、ほかの国は選ばない、日本を選ぶ、それだけやっぱりこの国はいい国だと私は思っています。ただ、福祉という点ではこれから努力しなきゃならぬ面は多いけれども日本はこの上に福祉社会をつくれば、私は、世界で一番いい国になる条件を持っておると思うわけでございます。
  589. 下村泰

    ○下村泰君 先ほどのある方の御意見総理お答えして、ライフワークのことでお答えになっておりましたけれども、いまの状態を考えているのではない、来るべき状態を考えなくちゃいけない、そして、これから後の人たちの幸せも考えなきゃならないというふうになりますと、これからは、ますます福祉問題に政府が目を向けていかなければならないんじゃないかと思うのです。  そこで、大平大蔵大臣にお尋ねいたしますけれども——余り大きなことはわからぬですよ、ぼくは。財政投融資という、ここにこれ、ございますけれども、これを拝見しますと、五十年度の当初計画が、厚生福祉施設に対しましては、全体に対して三・四%、こういうパーセンテージが出ております。ところが、五十年度改定後を見ますと、多少額はふえているにしても、三・一%と〇.三%マイナスになっているんです。これはどういうところに原因があるのでしょうか。
  590. 大平正芳

    国務大臣(大平正芳君) 数字のことでございますので、主計局長からお答えさせます。
  591. 吉瀬維哉

    政府委員(吉瀬維哉君) これは理財局の所管でございますが、私、かわりまして、主計局長が御答弁申し上げます。  福祉関係は、財政投融資では対前年で相当ふやしているわけでございます。特に社会保障関係、こういうところ、住宅等に重点を置いてやって去りますが、   〔理事柳田桃太郎君退席、委員長着席〕 補正後に落ちました理由は、今回の財投の補正の追加が、下村委員御承知のとおり、いわゆる景気浮揚のための公共投資を重点的に行った、こういうことから相対的に落ちてきたと、こう考えております。
  592. 下村泰

    ○下村泰君 いまのお言葉の中に公共投資という言葉が出てきた。なるほどこれを見ますと、住宅とか下水道、生活環境整備とか住宅の方に確かにふえています。公共投資、公共投資と言いますけれども、公共投資といっても本当にわれわれの生活に直接つながってくる時期というのはなかなかじゃないかと思うのですけれども。で、福田総理がいつもおっしゃるように、公共投資をすると、それがじわじわといつの間にか下の方へしみ込んでいくというふうなおっしゃり方をなさるんですけれども、いつも下の方が忘れられて、中産階級以上の方の生活がよくなるような方法しかとられていなくて、いつも零細の方は忘れられているのです。いまおっしゃった公共投資もそういうふうにしか私は感じられないのですけれども、みんな私と同じような意見を持っていると思うのです。政治というものがよくわからない、国会の様子がよくわからない、新聞だけじゃ解読できないという方が大ぜいいらっしゃるんです。そういう方々のためを代表して私は言うとるつもりなんで、ひとつ福田総理、わかりやすく御説明願いたい。
  593. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) これからの日本社会は、いま下村さんのお話のような方向によほど気をつけていく必要があると思うのです。ことに、いま経済が、一昨年から昨年にかけては大変なインフレ、それからまた、ことしになると、こう、デフレというか、不況、そういう際には、どうも世の中の弱い立場の人が貧乏くじを引くというか、割りが悪い。そこで政府は、特に今日この際はそういう問題を真剣に考えなきゃならぬだろうと、こういうふうに思うのですが、そういうことを考えて、四十九年度の予算でも、五十年度の予算でも、まあ特に五十年度の予算のごときは、ほかの——四十九年度もそうですね、公共事業という、そういうような性格のもの、特に大規模のプロジェクト、こういうものはもう極端に抑えたわけです。しかし一方、福祉、そういうものに関連する経費は、まあ一年間では何%ぐらいになりますかね、三〇%とかなんとか、そういうくらいふやしまして、いろんな諸施策をやっておるわけでありまして、まさにそういう方面に十分配しておる。  ただ、今日この時点の問題は景気対策だと、こういうことですね。そこで、住宅を初めとする下水道だとか、上水道でありますとか、あるいは道路でありますとか、あるいは農村整備だとか、そういう問題を手がけておりますが、今度の補正予算でいわゆるそういう福祉方面にそう手を伸ばしておらぬというのは、当初の予算で格別の配慮をしておる、そういうことで、その予算を実施してみる。物価でも、その当時予定したとき以上に上がるというようなことがあれば、これはまた考えなきゃならぬ。ならぬが、物価は予想以上に順調に動いておるというようなことで、そちらの方の格別な手配は、その方は当初厚くしておりますので、この際としてはこれをする必要はなかろうと、こういう見解です。
  594. 下村泰

    ○下村泰君 ここにいらっしゃる大臣の皆様方は、恐らくお孫さんのいらっしゃる方が多いと思うのですが、中流以下の家庭で一番こたえるのは、私自身がテレビ、ラジオにいままで出ておったんですから言えた義理じゃないのですが、テレビ番組の合間合間にコマーシャルが流れます。そのコマーシャルが、時によっては、子供の見ている番組のコマーシャルというのは、見ている子供の購買力をそそるものがたくさんあるわけです。そうすると、親にしてみれば、それを子供が食い入るように見るたんびに心臓にこたえるんですよ。二百円、三百円のものじゃないんです、あのコマーシャルに出てくるやつは。大抵もう二千円以上なんです。子供がそのコマーシャルにぱっと興味を示すたんびに、親はどきんとくるんです。そういう階層というのが大変給料取りとしては低い方の方々なんです。  これ、どうなんでしょうか、大蔵大臣にお伺いしたいのですけれども、こういう方々のために、私の言うのは奇想天外かもわかりませんけれども、暮れの給料で二〇%税金引くものなら一〇%ぐらいにして、その一〇%で子供さんに何か買ってあげなさいというような、お年玉減税みたいな方法というものは考えられないものなんでしょうか。いかがなものでしょうか。下に厚く上に薄いという精神からいくと、そういう細かい配慮といいましょうか、こんなことばかばかしくて、この予算委員会で答えられるかとおっしゃればそれはまた別ですけれども、しかし、そういう細かい感じのあり方というのが私は庶民にとっては一番大事なことじゃないかと思うのですが、いかがでしょう。
  595. 大平正芳

    国務大臣(大平正芳君) きょう下村さんは福祉問題を取り上げられたわけですけれども、福祉というものはどういうものかということから御相談していくべきものと思うのでございます。  そこで、福祉はまあお金にかかわることは確かにそうでございますが、私は大蔵大臣だからけちるわけでは決してないのですが、福祉というのはお金ばかりで買えるものではないわけでございまして、先ほど総理とのやりとりにもございましたように、日本という国が住みよい国であり、誇りを覚える国であり、感激を覚える国であり、そういうところ、親と子、孫とおじいさん、おばあさん、夫婦の間、そういう中にやはりあるみずみずしい信頼があり、愛情がたゆとうたところ、そういったところが私は幸せだと思うのでございますが、しかし、あなたがおっしゃるような、お金で買わなければならぬ福祉も確かにあると思うのです。で、ことしは予算で約二〇%ばかりが、そういう意味でいわゆる福祉予算というものに割愛されたわけでございまして、ずいぶん財源が窮屈なときでございますけれども、福祉というのは景気がいいとか悪いとかということにかかわりなく、やはり気をつけにゃならぬということで、ことしは御遠慮いただかなけりゃならぬようなふところぐあいでございますけれども計画どおり三十数%の予算の増加をあえていたしたわけでございます。  でございますから、まずお答えといたしましては、今日ただいま予算に計上いたしておりまする福祉の手当てというものは、相当政府としては精いっぱい考えておるものであるということを国民にお考えいただきたいということでございます。しかし、年末もじりじり近寄ってまいりまするし、ここで何かお年玉減税というようなものがあれば、それはそれにこしたことはございませんけれども、おととしから去年にかけて相当大きな減税が行われておるわけでございまして、日本の庶民の負担というのは、先進諸国に比べましては相当低目にあるわけでございますので、今日こういう状況でございまするので、相当無理をしてやっておるんだということを御理解いただいて、ここでことしは精いっぱいお年玉減税はがまんしてやろうというような気持ちで御協力を賜りたいものと思います。
  596. 下村泰

    ○下村泰君 大変大蔵大臣の顔もなごやかにお答えくださって、あの苦しんでいる顔は想像もつかないようなにこやかな顔でございます。  実は、ここに四十九年度の調査による総世帯数というのがありますが、三千二百七十二万一千世帯あるんです。これを見ていきますと、四十万円未満、これは年収でございます。四十から六十、六十から八十、八十から百、百から百二十、百二十から百四十、百四十から百六十、百六十から百八十、百八十から二百万までの年収の方々は、何と四九・九四%。そうしますと、国民の、三千二百七十三万一千世帯の半分は月収が十六万六千六百六十六円以下の人なんです。この方が多いんです、数が。こういう方々に喜んでいただけるようなことをした方が、将来福田総理も大平大蔵大臣もいろいろと思惑があるんで……。どんな思惑かということは私は申し上げませんけれども、そういうことがあると思います。こういう階層の方々が、いま申し上げましたように、子供にお年玉を、年に一度のお年玉をやりたい、盆暮れうまくいかない、調整が、だからせめてお正月まではがまんしろよと、恐らくお正月という言葉を道具として子供たちをなだめなだめ暮れまで来る方たちだと思うのですよ。それでいまのようなお願いをしてみたのですが、福田総理、経済企画庁の方ではどうでございましょう。いまの大平大蔵大臣はがまんしてほしいと言うのですけれども、何とかそういった形のものになりませんか。お年玉減税みたいな、なりませんか、年末調整で。考えられませんでしょうか。
  597. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) いま下村さんのお話のようなことは、常日ごろ相当考えているんですよ。相当これを実行しているんです、もう。ですから、まあ大変な数の人が年収百五十万円以下だと、こういうお話ですが、いまとにかく免税点ですね、所得税の免税点が百八十万円でしょう。ですから、あなたの御心配になられるような人は大体税を引くにも引けない、納税していない、所得税を、そういう階層になっているんですね。十分そういう点は配慮しておるということを篤と御認識をお願いします。
  598. 下村泰

    ○下村泰君 うかつな質問をいたしました。しかし、そういう方々に対して今度は逆に、生活扶助であるとか、そういう面の方のごめんどうの見方をしていただきたいわけでございます。そういう方はいかがでございますか。
  599. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) これは、先ほど申し上げましたように、こういう際には特にそういう方々のことを考えなけりゃならぬと、こういうので、生活扶助費ですね、あれは何%引き上げましたか、もうかなりの引き上げをいたしまして、こういう経済変動期に思いやりのある措置を当初の予算でしておるんです。もし、当初予算を編成したとき以上に物価でも上がるということがありますれば、これは考えなけりゃならぬ。しかし、もうこれは相当の手配をしておりますので、まあそれを追っかけてさらに年末どうかというようなことは、いまの財政事情としますと、なかなかこれは大蔵大臣がにこにこした顔はできないんじゃないか、そういうふうなことでございまして、かなりの配慮をしておると、こういうふうに御承知願います。
  600. 下村泰

    ○下村泰君 今度は警察庁の方にお伺いしますけれども、身障者ですね、身体障害者の方々が運転していらっしゃる車の台数、現在どのくらいありましょう、実際に動いている台数は。
  601. 勝田俊男

    政府委員(勝田俊男君) 実際に動いている数はちょっと明確にお答えする資料を持っておりませんが、運転免許を受けている方の数をお答え申し上げたいと思います。現在、肢体が不自由で条件つきに免許を受けている方、こういった方が六万五千人でございます。それから難聴の方、この方で補聴器の使用という条件で免許を受けている方が二千五百人でございます。
  602. 下村泰

    ○下村泰君 警察の方として、これからもこういう方々がたくさんまだまだふえていくと思うんです。そういう方々に対して、もちろんそれはいろいろと条件もございましょうけれども、どうでしょうか、その準備態勢はできていましょうか。
  603. 勝田俊男

    政府委員(勝田俊男君) 肢体不自由な方、十八歳以上の方が百十万人ぐらいいらっしゃるということのようでございます。こういった方々がやはり社会活動で車が必要であるという機会はますますふえてくると思います。できるだけ免許を受けられるように配慮をいたしたいということで、われわれ努力をいたしておるところでございます。同時に、やはり交通事故を起こされては困る、大変御本人の不幸になるということでございますので、各運転免許の試験場に相談センターを設けまして、そこにおいでいただければ、どういう車を使っていただければ安全であるか、あるいはどういう補助装置をつけていただければ安全であるかというような御相談に乗って、その指導のもとに試験を受けて免許を取っていただくというような方法を講じているわけでございます。
  604. 下村泰

    ○下村泰君 こういう方たちの使うガソリンの量というのはさほどの量ではないと思いますし、また、こういう方たち、御自分のお体の不自由を克服してみずから車を何とか運転すべく努力し、そうしてお仕事をなさっていらっしゃる方々なんですが、どうでしょうか、こういう方の使用なさっているガソリンを無税というわけにはいかぬでしょうか。これは大蔵大臣でしょうか。
  605. 大平正芳

    国務大臣(大平正芳君) 社会保障政策、社会政策というのは、それ自体厚生省が実態に即しまして、身体の御不自由な方々にはそれだけのお手当てをいたしておるわけでございまして、それがもし足らないというのでございますならば、それを引き上げてまいるというのが政策の道筋としては順当なやり方ではないかと思うのでございます。ガソリン税というものを特定の方に免税するということは大変技術的にもめんどうなことになりまするし、むしろ私としてはそういう方法はとるべきでないと考えます。冷たいことを言うわけではございませんで、やり方としては適切ではないんじゃないかと考えます。
  606. 下村泰

    ○下村泰君 その技術的な方法もいろいろ考えましたけれども、そういうふうにおっしゃられたら、これは幾ら言うてもむだでしょう、むだな抵抗は排除しましょう。しかし、こういう方々のガソリンの免税ぐらいのことも政府は全然考えてないということがこれで全国に行き渡ったと思います。  先ほど経企庁の調べによりますと、ことしの冬のボーナスの伸び率は七%、そうしますと物価上昇に大変実質的なマイナスになる。現在、生活保護を受けている世帯が七十万二千六百六十一、この方たちには期末一時扶助費といたしまして、居宅の場合、うちにいる場合には三千五百八十円から四千九百十円、収容されている方は千二百八十円から千七百六十円支給されておるわけです。こういう方々の場合、生活保護費の居宅の場合〇・二カ月分、施設の場合が〇・一カ月分にも満たない額が出ているわけなんですが、今日の物価高ではとてもこれ、出してもそのわりに御本人たちはお喜びにはならないと思う。せめて公務員並みの率にして——額そのものじゃございません。率でございますよ。せめて公務員並みの率の半分ぐらいの支給というのはできないものでしょうか、こういう方々に。
  607. 翁久次郎

    政府委員(翁久次郎君) お答えいたします。  御承知のとおり、生活保護は文化的な最低生活を維持するということを目標にしているわけでございます。ただいまお示しになりました年末一時扶助につきましては、この方々が歳末、また正月を迎えられるに当たって必要な日用品費あるいは正月に要する経費を勘案いたしまして支給しているわけでございまして、これは年々多少増額になってきているわけでございます。したがいまして、一般の勤労者に支給されるボーナス等とは性格が違いますということを御了承いただきたいと思います。
  608. 下村泰

    ○下村泰君 性格が違うのは十分わかるんですけれども、しかし、いまお答えになった方、この額で果たして文化的生活ができるとお思いなんでしょうかね、ちょっとお答え願いたいんですが。
  609. 翁久次郎

    政府委員(翁久次郎君) いろいろの考え方はおありだろうと思います。ただ、現在生活扶助費は、東京都の場合を例にとりますと、四人家族で約九万円でございます。したがいまして、いわゆる先ほどおっしゃいました低所得階層の方々との格差は近年急速に縮まっているわけでございます。したがいまして、一般的にこの額でいわゆる生活できないというようには私ども考えてないわけでございます。ただ、いろいろな考え方がございますので、そういった基準から見て幾らかということは御意見もあろうかと思います。
  610. 下村泰

    ○下村泰君 厚生省の方にお伺いしますが、現在わが国にどのくらいの身体障害者がいらっしゃるか、その数を把握していらっしゃいますか。
  611. 翁久次郎

    政府委員(翁久次郎君) 四十五年に調査をいたしました数字でございますが、身体障害者と言われる方の数は約百三十一万でございます。そのうち、重度、中度、軽度、いろいろ症状がございますけれども、概数は以上でございます。
  612. 下村泰

    ○下村泰君 それではお尋ねしますが、重症度の障害児者を国として収容できる施設はどのぐらいございますか。そして収容できる能力と現在収容されている数をおっしゃってください。
  613. 石野清治

    政府委員(石野清治君) 現在重症心身障害児を収容いたします施設は、ベッド数で申しますと一万三千四百、これは五十年度末の数字になります。施設の数を申しますと約百二十カ所でございます。
  614. 下村泰

    ○下村泰君 収容されている数は。
  615. 石野清治

    政府委員(石野清治君) 現在収容されております数は、四十九年度末におきまして約一万でございます。
  616. 下村泰

    ○下村泰君 この施設なんですがね、施設の収容の仕方は、重症度と軽症度と、どちらの方が多いですか。
  617. 石野清治

    政府委員(石野清治君) 私が申し上げましたのは重症心身障害児の数を申し上げたわけでございますので、これはいずれにしても重度の精薄、それから重度の身体障害者のダブルハンディの者でございます。
  618. 下村泰

    ○下村泰君 その重度の状態、どんな状態でしょう。どの状態を厚生省の方では重度と見ておるでしょう。
  619. 石野清治

    政府委員(石野清治君) 身体障害でございますと、現在身体障害者福祉法という法律がございまして、その別表の中で一級ないし二級を重度と言っておりますし、それから精神薄弱でございますと、IQ五〇以下が中度、それから三五以下が重度というふうに考えております。
  620. 下村泰

    ○下村泰君 その場合、収容するときに資格がございますか。収容するときの資格がありますか、その基準です。
  621. 石野清治

    政府委員(石野清治君) 一応その措置をいたします場合には、各県に児童相談所というのがございまして、そこで身体的な障害の度合い、それから精神薄弱の度合い等を勘案いたしまして措置をいたしたわけでございます。
  622. 下村泰

    ○下村泰君 いま聞いておると大変順調に受け答えができておるように思うのですけれどもね。ところが、実際に厚生省で行っておりますこういった重症度の人の収容能力というのはまるで少ない。したがって、私立の方のこういった施設がほとんど受け入れているというのが現状なんですけれども、その私立の方がいま大変な火の車なんです。この火の車の状態のところへ持ってきて、こういう重症度のお子さん方のめんどうを見ていらっしゃる方々が、まことに過酷な労働を強いられておるんですけれども、これは厚生省の方でしょうか。これは分析していらっしゃいましょうかね、人員の確保ということに関しまして。どうでしょうか。
  623. 石野清治

    政府委員(石野清治君) お尋ねの重症心身障害児病棟におります介護職員、これは直接介護職員でございますが、その数から申しますと、国立の場合でございますと七十六カ所の施設がございますが、そこで入っておりますのが六千九百二十名。それに対しまして介護職員の数は約五千二百八十名となっております。  それからお尋ねの国立以外の施設でございますが、これは公の施設と私立と両方ありますので一緒に申し上げますが、入所児童数が三千八百、それに対しまして介護職員の数は三千六十六人という数字になっております。
  624. 下村泰

    ○下村泰君 私、調べてきたんですけれども、たとえば一番いい例が、たまたまこういうときには必ず出されるのですが、島田療育園を例にとりますと、国家の補助が身障者一人に月額八万六千八百八十三円、これはもちろん医療費なども含んでおるのです。それから日用品費として七千三円、合計九万三千八百八十六円が支給されておるんですが、まあこのほかに、もちろん健保の方からも月々十四万から十五万の金が入るんです。しかし、これだけですと、経営する場合に、大体いまやもう職員のいわゆる給料ですね、人件費、人件費だけで八二%から八三%という人件費がかかる。そうしますと、残る予算の枠で諸設備を整えなければならない。ところが、こういう施設というのは必ずと言っていいほど周り近所から苦情が出まして、浄化装置までつけなければならない。それからおふろも普通の状態のおふろでは使えないというようなことから、もういまや破産寸前という施設が多いのですが、厚生大臣、こういうことに関してどういうふうにお考えでしょうか。援助の方法その他お考えでしょうか。
  625. 田中正巳

    国務大臣(田中正巳君) いま重症心身障害児施設の措置の費用についてお話がございました。八万六千円というのは重症児指導費でございまして、基幹をなすものはいわゆる保険による医療報酬を対象といたしておるわけでございまして、これが大体十四万円程度一人についてかかるということでございますから、したがって、一人のお子さんに対して二十二万六千円ぐらい今日かけているのが平均だというふうに私どもは承っております。しかし、これにつきましてはいろいろと問題があることを私はいやというほど知っておるわけでありまして、今後改善をいたさなければなるまいと思っております。  金銭の面についてもいろいろと不足であるというふうに、ことにこういう社会福祉法人立の余裕のない施設については、そういったような財政的な難点もございますし、また、それがあってもこれについてはいわゆる労働が過重でございますので、職員が腰痛症等を起こすというような場合もちょいちょいございますので、したがって、これについては今後とも改善に努力をいたしたいと、かように思って今日までやってまいりましたが、今後とも続けなければならないという認識を持っております。
  626. 下村泰

    ○下村泰君 厚生大臣、大変おわかりになっていてありがとうございます。この席をおかりしまして、社団法人あゆみの箱に並み並みならぬお力をおかしくださっていることを感謝します。伴淳三郎からもよろしく言われております。  ところで、このあゆみの箱なんでございますけれども一私どもは、このあゆみの箱という運動を始めまして十三年間になります。その間、全国各地へ参りました。そして皆様方から御浄財をいただきまして、あゆみの箱といたしましても、世田谷の三宿に重症児療育相談センターをつくりました。それから福岡県の夜須町というところに夜須高原というところがあります。そこに「やすらぎ荘」というのもつくりました。しかし、こういうことをやるたびにつくづく思うのですけれども、どうしてこういうことを国がやってくれないのか、そればかり頭へくるのです。いつでもそれを感ずるのです。で、今後ともこういうことに関しまして、厚生大臣、万々のお力をかしてくださいますか、まずそれからお願いします。
  627. 田中正巳

    国務大臣(田中正巳君) あゆみの箱につきましては森繁さんが代表理事で、先生もたしかずっと理事をおやりになっておりまして、大変長い間この種の重症児等々についていろいろ一般の方々のドネーションをいただくことについて御努力くださっていることについて深い敬意を払っているわけであります。私も実は、いま厚生大臣でございますが、長い間、若い議員のころからこの種の問題についていろいろと及ばずながら努力をしてきたものでございますから、あゆみの箱の歩みというものは私もよく知っておるわけでございます。したがいまして、これが今日まで、こうしたお金の内容もさることながら、一般の方々がこうした問題に対してお金を喜捨することによって関心を非常に持ったということについて、私は社会的意義を大いに感ずるわけであります。  さて、こうしたあゆみの箱ができた昭和三十六年、七年ころの実態というものは、いまよりははるかに劣っておったことは私は告白をしなければなるまいと思います。その後、一般の方々の世論と国会の皆さんの努力によってここまでまいりました。今日これが約四千四百万ほどたしかことしは集まったようでございますが、この使い方を見ておりますると、国の施策の中でやれないような潤滑油的なお仕事についてこれがいろいろと働いているということを私どもも知っておるわけでございます。  かような意味で、金額は、国がこの種のお子さんに対する措置費としては約五百億ぐらいの金を使っておりますが、したがって一%弱でございますが、きわめて潤滑油的に、付帯施設であるとか、あるいは運営費の不足とかいったような、いわゆる国の手の屈かないようなところにこれが使われておって、金額はそう大きくはございませんが、社会的に大きな役割りを果たしていることは私どもよく存じ上げているわけであります。しかし今日、この制度が発足をしたときのような姿において、国の施策が不十分であるがゆえにあゆみの箱がというふうな考え方で律することは必ずしも私は適当ではないんじゃないかというふうに思いますが、しかし、こうしたあゆみの箱の今日までの努力というものに対しては非常に敬意を払いたい、かように思います。
  628. 下村泰

    ○下村泰君 厚生大臣は大変よくおわかりになっていらっしゃるので、もう一つお願いしますけれども、看護婦、准看護婦でない、いわゆる看護人、いま看護助手という言葉を使っております。島田療育園へ参りますと、高校卒が四年で療育員から今度は指導員という名目にしよう、大卒は一年で指導員という名目にしよう、そうすることによって給料の改定ができるんじゃなかろうかと、こういうような考えも持っているようです。そしてますますその看護助手が少ない。こういう看護助手が少ないと。これはある方がこういうことを言うたのです。もう日本人で、こういう状態に置かれている人たちを看護する奉仕的精神を持った人は年々歳々少なくなる、もう十年もたったらおそらく日本人でこういう重度の心身障害児者を看護する日本人は一人もいないだろう、こういうことを言われておるのですよ。これに対して、労働大臣にもお伺いしたいんですけれども、こういう不況なときに人手が余る。余ったときに労働省の方でいろんなPRをしていただいて、こういう方々の人員確保というようなことはできませんでしょうか。
  629. 長谷川峻

    国務大臣長谷川峻君) 先生がボランティアでいろいろ社会的にこうした問題に対して懸命におやりいただいていますことに、まず敬意を払います。いろいろなお話がありましたが、たとえば、ほかの話になりますけれども、身障者の方々——先ほど身障者の話も出ましたが、身障者の方々で私の方でもリハビリテーションをやっておりますが、そういう方々で自動車を運転する者に私どもの方で七十万の金を貸し付けて、これをしかも年利三分にしまして、毎年二百五十台ぐらいずつこうして御提供を申し上げている。そういうふうなこともやっておりますが、いまおっしゃるように、なかなかいまの時代にああしたところの社会施設にお勤めになる方が少ない。またその給与の問題とか一あるいはまた休暇の問題とか、あるいは月給の問題等々もありますので、こうした問題は私の方と厚生省で中央で話をする、さらに地方では各県ごとにそういう話をしながら盛り上げをやっているかっこうでございまして、どうしてもいまから先は国民全体のいたわりの中にこういう運動と、さらにはまた社会施設の充実というものに一層力を尽くさなければならぬ、こう思っております。
  630. 田中正巳

    国務大臣(田中正巳君) 重症心身障害児施設に働く人のお仕事の内容というのは、私も早いころから見ておりますが、実に肉体的にも大変ですが、精神的にも非常にグルーミイであります。私なぞ一番最初に見たときに、よく若い娘さんがこんなところで働くなというふうに実は思ったぐらいでございまして、よほどやはり惻隠の情といいますか、チャリティの精神がなければやっていけないということだろうと思います。こうした方々に報いるために私もずいぶん長い間この給与費の引き上げについて努力をしてまいりましたが、これはお金だけでは私は解決しないという一面もあろうと思いますが、労働の軽減と、また給与の面等解決をいたしたいと思いますが、今後とも努力をいたしたい。  ただ、これについては、私ヨーロッパに行きましたところが、ヨーロッパでもこの種の施設に働く職員は非常に少ない。かつてはいわゆるキリスト教の精神によっていろいろと働く職員がおったが、ヨーロッパでも御多分に漏れずそうした気風が若い人になくなってきたということで、これは世界じゅうの悩みの種のようでございますが、今後ともそうしたことをあれやこれやの角度で解決するようにしなければ、施設だけできても入っているお子さんの幸せは生まれないということで、最大の努力をいたしたいと思いますので、ひとつ御協力をお願いいたしたいと思います。
  631. 下村泰

    ○下村泰君 いまの厚生大臣の大変温かいお言葉でありがとうございますが、いまも申し上げましたように、これは看護人制度が、たとえば給料がよくなったってだめなことは事実なんです。しかも、こういうことに従事してくださる若い方は青春時代の方々なんだ。十八、九から二十二、三なんです。島田療育園を例にとりますけれども、あのはるか過疎地帯に、いままでは京王相模原線がなかったために全然新宿へも遊びに行けない。どこへも行かれないです。しかも二十四時間勤務でいま三交代、一対一と言うんですけれども、本当は看護人が三人いなければ一人の重症度のお子さんのめんどう、あるいは医者のめんどうが見られないわけなんです。ですから、給料ばかりよくてももちろんだめなんです。大体一年で回転してしまう。そういった意識の高揚といいましょうか、人間と人間の愛というもののあり方、これは私はやっぱり教育問題にあると思うんです。どうでしょうか文部大臣、これから先そういう教育をお子さんにしてもらえますかね。——私の言い方は端的にいくので、すいませんけれども勘弁してください。
  632. 永井道雄

    国務大臣(永井道雄君) 大変重要な問題の御指摘であると思います。いま一般的な社会の風潮といたしまして、利己的に流れる人がふえてきたということがございますから、そこで、こういう種類の教育をいま一生懸命にやっていく人がふえなきゃいけないんですが、まあ先ほどのお言葉の中に、十年先になると一人もいなくなるんじゃないかということですが、まあ私は、また他の面も感じているので、それを卒直にいま申し上げたいと思います。  文部省ではこの養護教育というものを、養護学校というものを昭和五十四年に義務制にすべくやっておりますが、それの中心になりますのは、久里浜というところに国立特殊教育研究所というのがあるんです。そこに養護学校がございます。で、私この春先参りましたのですけれども、働いている諸君はみな若い男女です。子供の中には全然歩けないで、はうしかできない子供がいるわけですね。そうすると、それのめんどうを見る若い人が一緒にずっと、はっているのです、本当に。それでそういう人の年は二十四、五の人です。本当に一生懸命にやっている。で、私は非常に感銘いたしました。そこで、社会には利己的な風というものもございますが、私はわが国に実にりっぱな若い人がいるということを、こういうところに参りまして見学をいたしましたときには感銘を受けてまいりました。  そこで、こういう方、一生懸命にやっている人の場合、待遇をよくして働いてもらうということも一つなんですが、しかし私は、やはり金というものは人を奮起せしめる上において全く限界のあるものだと思います。私も参りました。そうするというと、これは実は坂田先生が文部大臣のときつくられた研究所でございますが、やはりいろいろな人に来てもらって自分らがやっていることを励ましてほしい、そのときに非常に元気が出るんですということを言っておりました。で、その後いろいろな方にもお願いをして、なるべくこの養護学校にも訪ねていただいているようにしております。この席をかりて、そういう意味合いにおきましては、別に与野党、政府国会を問わぬ問題でございますから、私はこういう特殊教育などに従事しているりっぱな若い人がわが国にいるのでございます。私は十年先に一人もいなくなるというようなことは断じてあり得ないと思います。ただし、それはわれわれ幾分年をとりました者がそういうりっぱな青年とともに働くという考えがなければ成り立たないことでありまして、これは私はぜひ強調いたしておきたいと思っております。  なおまた、心身障害者の教育の問題は心身障害者の人たちがたとえば話しにくいというとき、それを上手に助けてあげるということも大事なんですが、全然心身に障害のない人ですね、この人たちが何らそういう人に協力する精神がないというところに実は問題があるんです。私は心身など全部整っているような人間は、かえってどこか根本的に欠陥があるというような感じを持っております。  そこで、養護学校というふうに隔離いたしませんで、なるべく普通学校の中で特殊学級と普通学級を一緒に置きまして、そしてできるものは交流をする。ですから、たとえば図画のようなものですというとなかなかうまくできます。この春にも京都で図画の展示会がございましたが、大変りっぱな絵をかく。それから、人によっては遠足なんぞもできます。こういうふうな姿で、私は、普通学級、特殊学級が協力し合いながらお互いに別なくやっていく、そういうことで、それこそ十年、二十年先に一層助け合いながらいくような人間というものができ上がっていくことが、施設をつくっていくことも大事ですけれども、それ以上にむしろ大事なのではないかという考えでいまの問題に対処しているわけでございます。
  633. 下村泰

    ○下村泰君 いまの文部大臣のお話のようなぐあいに一つの学校の中にそういう状態ができれば、恐らくこれからそういうお子さんたちをめんどう見てくださる方がふえてくるでしょう。しかし、現状のままですと、先ほど申し上げたようなことになるということです。  それから厚生大臣、これはもうおわかりでしょうけれども、いわゆる緊急一時保護ですね、重症者を抱えていらっしゃるお父さんお母さんに万一のあった場合、万一といっても、お亡くなりというようなことではなくて、冠婚葬祭に出かけるとか、あるいは出産であるとか、あるいはかぜを引いてちょっと入院しなければならないとか、いろんな状態が起きてくるわけです。そういうときに、そのお子さんを残していかなければならない。そういうことが原因で、ついこの間世田谷の方で事件が起きました。大変なエリート社員がお子さんを餓死させたという事件もございます。それから全国重症心身障害児者を守る会とか、あるいは子を守る会でありますとか、あるいは手をつなぐ親の会とかという会がたくさんございますが、ここらの方々が全部いま言っているのがその緊急一時保護の問題なんですがね、これはどうなんでしょう、いま。
  634. 田中正巳

    国務大臣(田中正巳君) 重症心身障害児施設対策につきましては、従来、施設を増設することにわれわれは狂奔をいたしたわけであります。それで、ある程度の施設が整備をいたしましたら、いま先生のおっしゃるような緊急一時保護制度というものをとってくれという声が親御さんからは非常に出てまいりました。私も親御さんのいろいろなお話を聞いてみますると、確かにこれについてはわれわれのわからない御心境があるということをよく身にしみて感じました。病気の場合もそうですが、たとえば親戚の婚礼等々にあのようなお子さんをおぶっていかれないという母親の声、そういうお子さんが親戚にあるということになると婚礼がおかしくなるという涙ながらの声を聞きまして、私もなるほどその心境、その境遇になければわからぬものだなというふうに感じました。  そこで、明年度は、相当実は財政は窮迫をいたしておりまして、新規要求というものは私は極端にこれを抑えなければならないというところでございましたが、これだけはと思って、実は予算要求をいま起こしているわけでございますので、何とかこれは、最初は余り大きなものにはなれないかもしれませんが、制度としては起こしたいものだというふうに思って、かたい決意で折衝に臨もうと思っている次第でございます。
  635. 下村泰

    ○下村泰君 たとえば手をつなぐ親の会というのがございますけれども、こういう会でも、厚生大臣、大変感謝していますよ、現在の、いままで振り向かれなかったこういった重症心身障害児者の福祉ということに対して、わずかながらであるけれども目を向けてくれている、そしていろいろ施設その他こういったことに手を伸ばしてくれていると、大変みんな喜んでいるんです。喜んでいることは事実なんですよ。ということは、何でこんなわずかなことで喜ぶかということは、いままでほうったらかされたということなんです。ほうったらかされたから、少しでもよくなっているから喜んでいる、こういうのが現状なんです。  いまも厚生省の方から緊急一時保護の方の予算が出ていると言いましたけれども、どうでしょう、大蔵大臣、何とかこの要望にこたえていただけませんか。予算を取ってください、予算を何とか分けてください、お願いします。
  636. 大平正芳

    国務大臣(大平正芳君) 厚生省とよく相談いたしまして、精いっぱい努力いたします。
  637. 下村泰

    ○下村泰君 ありがとうございます。  それから厚生大臣に伺いますが、最近、施設よりも、やはりこういうお子さんは愛情あふれる親の手で介護されるべきであるというので、在宅療養というのに重きを置いてきたように伺っておりますけれども、どうなんでしょう、厚生省の方ではそちらの方にほとんど任せるというような感じですか、いま。
  638. 田中正巳

    国務大臣(田中正巳君) 先ほど申しましたとおり、われわれはいままで施設収容というものに力点を置いてやってまいりました。ここで在宅児対策というものに力点を入れなければならないという声が、いま先生そこにお持ちになっておる守る会、北浦さんがやっておられる守る会等で非常にお声が強くなりまして、私もそうだと思って、これについていろいろと努力をいたしたい。さっき先生がおっしゃいました世田谷の施設も実はそれでございます。これについてもある程度考えなければならぬ一面もあろうと思います。単にどうしても愛情のために自分の家へ置くとお子さんのために本当に幸せになるかどうか、施設収容の方がいいという場面もありますが、またある面ではやはり在宅でやった方がいいケースもありますので、在宅に対しましてはいろいろな施策をとっておりますが、なおこれはおくれておりますので、向上をいたしたいというふうには思っております。
  639. 下村泰

    ○下村泰君 実は私の手元に、これは江東区富岡一の五の十、長島健一さんという方が保護者なんですが、この人のお子さんが、現在二十七歳で重症心身障害者としてこれは在宅療養しておるのですが、これがわずかなお金しかお国は払っておらぬのですね。額を申し上げてもその額がいま急にふえるわけじゃないから申し上げませんけれども、こういったものをお借りしてきましたけれども、大変安いものなんです。とてもこんなことで在宅療養はできっこないのです。  それで、このお話も余り長くなりますからあれでございますけれども総理、お願いします。  とにかく、私どもがチャリティショーを行いまして、日本全国またにかけて——またと言ったって、別にあのまた旅わらじのまたじゃございませんけれども、北海道の札幌から沖繩までほとんど主要都市でチャリティショーを行うのです。そして必ずそこへ招待を申し上げます。招待を申し上げると、あの体の不自由なお子さんを手押し車でありますとかいろいろな器具を使って会場へ連れてきて、そしてそのお子さん方も喜ぶのです。ぼくらにはその喜んでいる表情というのははっきりわからないのですけれども、親御さんに言わせると喜んでいる。で、その親御さん方にがんばってくださいよとしか言えないのですよ。その親御さんが亡くなったときには、このお子さん一体どうするかということが大問題なんですよ、いま。自分の命のあるうちはいい、力のあるうちはいいが、もし私が、ということがほとんどそのお父さんお母さん方の持っている観念で、そしてその方たちが涙ながらにいつも訴えるのはこの一つなんです。ですから、そういったときに、お父さん、お母さんが亡くなったときに、これを全面的に引き受けるような国の施設というのが一番大事なことじゃないかと思うのですが、総理いかがでしょう。
  640. 三木武夫

    国務大臣三木武夫君) 下村さんからいろいろ例を挙げて心身障害児者の非常に苦しい生活、いろいろお話がございました。私も日本のいろいろな社会保障の中で心身障害児者の施設というものはおくれておると思っておりましたから、本年度の予算でも約二千億円だったと思いますが、一番伸びたのはこの面の予算ですよ。六一・五%伸びたですね、去年に比べて。六一・五という伸びは予算としては相当大きな伸びでありますが、まあいままで十分でなかったような点もありまして、これはいまいろいろ例に引かれたような場合も悲惨でございますから、心身障害児者の今後の施策というものは充実をしてまいりたいと思っております。
  641. 下村泰

    ○下村泰君 優生保護法についてちょっとお伺いいたします。  現在、優生保護法の第二条に中絶の定義の項がありますけれども、これは厚生省の方では、いわゆる母体外生存不可能という言葉があります。母体外生存不可能は何カ月と見ていらっしゃいましょうか。
  642. 田中正巳

    国務大臣(田中正巳君) 先生のお尋ねになる趣旨は、優生保護法第二条における、いわゆる生まれてまいっても「胎児が母体外において生命を保続することのできない時期」というものはいつであろうかということでございますと思いますが、これについては世界各国に非常な論争があるということを聞いております。WHOでは今日八カ月未満というふうに一応決めておりますが、アメリカ系統の国とヨーロッパ系統の国ではまだ意見が食い違っておるようでございまして、一応八カ月未満というふうにしておりますが、いろいろと専門家の話を聞きますると、八カ月未満というのは結局七カ月の胎児を人工妊娠中絶をさせていいかどうかという問題だろうと思いますが、これにつきましては今日いろいろと未熟児対策等が進んでまいりましたものですから、したがって、専門家の意見を聞きますと、やはりいま一カ月ぐらい早い期間でも何とかなるケースがあるというふうに私どもは承っております。
  643. 下村泰

    ○下村泰君 それでは、これは大臣にお伺いしてもおわかりにならないと思いますが、中絶が年間何件ぐらい行われているか、妊娠月別にひとつお答え願いたいと思います。
  644. 佐分利輝彦

    政府委員佐分利輝彦君) 昭和四十九年は年間六十七万九千件行われておりまして、まず二カ月以内が四十万一千件、第三月二十五万六千件、第四月一万一千件、第五月五千七百件、第六月三千七百件、第七月千四百件というような状況になっております。
  645. 下村泰

    ○下村泰君 いまの七月のところが一番問題なんですけれども、その七月の妊娠中絶ですが、七月というと二十五週目に入っております。二十五週、二十六週、二十七週、二十八週と分けて、どの辺が一番多うございますか。
  646. 佐分利輝彦

    政府委員佐分利輝彦君) ただいま手元に週別の的確な資料がございませんが、二十五週が一番多く、だんだん少なくなっておるはずでございます。
  647. 下村泰

    ○下村泰君 いまのお答えは、それはもうあたりまえなんで、二十八週と言ったらもう七月の一番最後ですから、そんなことの報告があろうはずがないのです。  ところが、ここにいま、去年の九月ですね、「産科と婦人科」という本がございます、専門誌。ここに二十八週、つまり妊娠七カ月の二十八週で処置した場合に、六人処置して五人ちゃんと生育しておるんです、こういう例がある。六人ですよ、六例やりまして五人生育しておるんです。こういう項があるんですけれども、こういうふうなことをごらんになったことございますか、厚生省は。
  648. 佐分利輝彦

    政府委員佐分利輝彦君) 日本のデータを初め、外国のデータも拝見いたしております。
  649. 下村泰

    ○下村泰君 いままでは七カ月児は母体外生存不可能とされてきたわけです。この母体外生存不可能というのは、昭和二十八年六月十二日の厚生次官通達、これがいまだに生きているということは、これは厚生大臣どうなんですか、これ。
  650. 田中正巳

    国務大臣(田中正巳君) 確かに先生おっしゃるとおり、昭和二十八年の事務次官通達で、いわゆる「「胎児が母体外において生命を保続することのできない時期」とは、通常、妊娠八月未満をいうものであること。従って、妊娠八月以上すなわち人工早産を行いうるような時期に至ったものについては、本法による人工妊娠中絶は行うことができないこと。」というふうになっておりおりますが、これにつきましては、これは確かにいわゆる人工早産ということを書いているぐらい実は古いものでございまして、その後いわゆる未熟児対策というものが昭和三十年代初期にできまして発達をいたしてまいりました。医学的にも進んでまいりました。したがいまして、私どもとしては、結論的に申しますると、この八カ月未満というのは一カ月程度私は短縮をするように検討をいたしたいということを先生にお約束申し上げたいと思います。
  651. 下村泰

    ○下村泰君 いまの厚生大臣のお話で実は私の質問はおしまいになっちゃうんです。実はそうしていただくためにこの問題を取り上げた。ただ、皆様方に反省していただきたいんです。その七月後の中絶の仕方をおわかりになっておりましたら、どなたでも結構です、厚生省の方、御説明ください。
  652. 佐分利輝彦

    政府委員佐分利輝彦君) 私はそちらの方面の専門家ではございませんけれども、月数の少ない時期にはいわゆる掻爬と申しまして、胎児をかき出すわけでございますが、月数がふえておおむね四月以上になってまいりますと、ラミナリアというような物質を子宮の頸管に挿入いたしまして、それによって陣痛を誘発するというような方法が通常用いられておるわけでございます。
  653. 下村泰

    ○下村泰君 それは胎児を出すまでですね。出してからはどういうふうにしていますか。
  654. 佐分利輝彦

    政府委員佐分利輝彦君) 胎児を出しましてからは、通常保育器と言われております装置の中に胎児を入れまして、空気の管理、温度の管理、湿度の管理をすると同時に、各種の医学的な血圧、呼吸……
  655. 下村泰

    ○下村泰君 中絶の場合です。
  656. 佐分利輝彦

    政府委員佐分利輝彦君) 中絶の場合も、これは昔流に申しますと早産でございますから、胎児がもうかなり成熟しておって、多くの場合には生命を持って出てくるわけでございまして、そういったことを確認すれば、できるだけ保育器に入れまして保育をするというのが普通であろうと考えております。
  657. 下村泰

    ○下村泰君 つまり、妊娠中絶を、優生保護法の第二章にのっとって中絶を希望してくる妊産婦ですね、その場合にはその赤ちゃんが生まれちゃ困るんです。その生まれちゃ困る赤ん坊の中絶をした場合の処置はどういうふうにしていますか、それを私伺っているんです。
  658. 佐分利輝彦

    政府委員佐分利輝彦君) 生存が可能と思われるような場合には、先ほど申し上げましたように、やはり保育器で保育するというのが原則ではないかと思われます。しかし、いろいろ非常に未熟児であるとかそういった関係で生存がほぼ不可能と思われれば、そのまま死亡するまで安置いたしまして、後は死体として処理をするということになるのではなかろうかと思われます。
  659. 下村泰

    ○下村泰君 これは大変な問題なんですよ、委員長ね。いま、息を引き取るまで安置しておく。息を引き取るまで置いておくのは安置ですか、これは。殺人じゃないんですか、これは。おかしいじゃないですか。私が聞いておるのは、数々いろんなのがありますよ。たとえば、それではお伺いしますがね、妊娠中絶を希望して開業医へ来ました。処置しました。出てきました。オギャーと泣きました。医者は、この場合にはこれはもう生きているんですからね、これは殺すわけにいかない。失礼だがこうなっちゃったから持って帰ってくれ、これは契約不履行ですわね、医者の方は。こういう事件ありますか、不履行だからと騒がれたような事件、ありますか。
  660. 佐分利輝彦

    政府委員佐分利輝彦君) つぶさに調査すれば、そういうふうなこともあるかと存じますけれども、私どもいままでそのような事件は聞いておりません。
  661. 下村泰

    ○下村泰君 いままで私が聞いたのは、中絶をして胎児が出てきた場合、開業医の場合には、オギャーと言われたら大変ですからね、すぐに注射を打つか、あるいはビニールの袋へ入れて口を閉じて、コンクリートのたたきへ置いておいて、先ほどあなたがおっしゃった安置しておくわけですよ。もっとめんどうくさがる人は、深いたらいに水を入れておくとか、あるいは大きなバケツに水を入れておいて、出てきた胎児をすぐポコンと入れるんですよ。そういう処置の仕方をして、現在も、恐らくそこまでやる人がいるかどうか、注射だろうと思いますがね、その事件がこの間の気仙沼の事件のようになってくるんですから。  そうしますと、この優生保護法というのは、下手すると厚生大臣、これは六月後でも、六月後でもというのは四、六、二十四週になりますかね、六月の最後は。いま非常に子供さんの発育がようござんしてね、七月で大体千グラムから千五百、多いのになると千六百ある。そうしますと、六月の後半でも八百、九百、千ぐらいある子がないとも限らない。そうしますと、その子たちは育つ可能性が非常にあるんです。生存じゃなくて生育なんですよ。育つ可能性があるとしますと、現在、厚生省がこういう優生保護法にして妊娠中絶をしているのはそれはようござんすけども、これは法による殺人行為と同じになるんですよね。いままで厚生省は、日本全国八千五百人の開業医あるいは病院に勤めていらっしゃる産婦人科の指定医、一万三千人ですか、一万五千人ですか、そういう方々に殺人を強いていた、こういう結果になるんです。どうですか、厚生大臣、これ。
  662. 佐分利輝彦

    政府委員佐分利輝彦君) そのような、胎児に対する殺人だというような御意見は一方においてはございますけれども、私どもはこれはむしろ遺棄致死というふうな範疇に入るのではないかというように考えてまいりました。なお、詳しくは法務省その他、刑法関係の専門のところの御回答をいただいたらどうであろうかと思っております。
  663. 下村泰

    ○下村泰君 アメリカで、これは一九七三年十月の三日なんですけれども、五カ月の子供の処置の仕方が悪いといって殺人罪を科しておりますよ。それはいまあなたのおっしゃるように、警察の方がどうのこうの、それは確かにそうでしょう、厚生省がそんなあれはないですからね。しかし、これは判断の仕方によっては殺人ということになるんです。こんなものをほうっておいたらえらいことになる。日本としては恥ずかしいですよ。どこの国にもないのですからね、こんなのは。私は日本赤十字社病院の小林院長、愛育病院の内藤壽七郎院長、日大の馬島院長、慶応大学の飯塚教授、東京厚生年金病院の松山栄吉、産育会病院婦人科部長の中嶋唯夫、こういう諸先生方にいろいろ伺った結果が、これはもう完全に殺人行為に近いものだからやめさせなければいかぬという御意見をいただいてきたわけなんです。  ですから、いまも申し上げましたように、厚生大臣から六月以降は絶対にやらせないと。で、時間もなくなってきました、済みません、早口で申し上げますが、先般法務委員会でこのお話をしましたときに、厚生省のある方が、実は日本じゅうを九ブロックに分けて、一ブロックについて年に一回ずつ、あるいは二回ずつこういうものを指導しているというのです。私はあまのじゃくですからね、電話帳を引っ張って、一番大きく産婦人科という宣伝を出しているところは大抵こういうものを専門にやりますから、そこへすぐ電話したんです。全部聞いてみた、東京都内全部。そんな指導を受けたことは一回もないと言うんですよ。あったかな、そんなことがと言う人が一軒だけでしたよ。いかに厚生省はこういうことに対していいかげんだったかということが証明されたわけなんです。いま厚生大臣からそういうお言葉が出ましたから一応は安心しましたけれども、むしろこれはやっぱり四カ月、五カ月以後は絶対やらしちゃいかぬという法令に変えていかなければ、あるいは政令に変えていかなきゃいけないのじゃないかと思いますが、いかがでしょうか。
  664. 田中正巳

    国務大臣(田中正巳君) 人工妊娠中絶は、できるだけ早くやった方が母体のためにもまた胎児のためにもよろしいということでございますが、しかし、今日世界の情勢を見ますると、いま私が先生に検討をお約束した程度というものでとりあえずやらしていただきたいというふうに考えておるわけでございまして、今後さらに検討は加えていきますが、とりあえずそのような方針で努力をいたしたい、かように思います。
  665. 大谷藤之助

    委員長大谷藤之助君) 時間が来ました。
  666. 下村泰

    ○下村泰君 わかりました。  法務大臣にも本当はこの点でお伺いしたかったのです。果たしてこれは刑法に触れるものか触れないものかというようなことも聞きたかったのですけれども、時間もありませんし、厚生大臣からああいうお言葉が出ましたので、答えが先に出てきたような感じなんで、そこまでいきませんでしたけれども、とりあえずそういったことで了承することにして、絶対これはもうできるだけ早目早目の方にするように、ひとつできるようにお願いしたいと思います。  どうもありがとうございました。(拍手)
  667. 大谷藤之助

    委員長大谷藤之助君) 以上をもちまして下村泰君の質疑は終了いたしました。     —————————————
  668. 大谷藤之助

    委員長大谷藤之助君) この際、大蔵大臣から発言を求められておりますので、これを許します。大平大蔵大臣
  669. 大平正芳

    国務大臣(大平正芳君) 昨日、小野委員より御要求がございました件につきまして御説明させていただきます。  三井銀行等都市銀行九行が自由民主党に対して貸し出しを行っていることは承知しております。その具体的内容につきましては、個々の取引上の私的契約に係ることでありますので、答弁することは差し控えさせていただきたいと存じます。  大蔵省が金融機関への指導監督の行政上の責任がありますことは、御指摘のとおりであります。本件融資は完全な担保貸し出しでないと聞いておりますが、自由民主党全体の信用を基礎として行われておるのでありまして、都市銀行の融資の場合には、このような貸し出しはよくあるケースであると承知しております。このような貸し出しは、通常の企業金融でないことは確かでございますが、違法、不当というような問題とは言えないと考えます。ただしかし、国民に、特定の融資先と金融機関との癒着の印象を与えることのないよう、銀行側は良識を持って対処すべき問題であると考えております。
  670. 大谷藤之助

    委員長大谷藤之助君) 小野君、特に発言を許します。
  671. 小野明

    小野明君 私が資料要求をいたしたわけですから、いまの御答弁に対しては当然意見があるわけであります。  昨日、大蔵大臣の御答弁は、検討した上で出せるものは出す、出せないものは出せないと、こういうような、出せるものがあるかのような御答弁でありました。いまの御答弁を聞きますと、これは何にもないわけですね。個々の取引上の私的契約だということで、全く内容はございません。特にまた、新聞に報道されている程度のことまでも出せない、言わない、こういう態度については全く了承できないところであります。  いま一つの問題は、いまの政治資金規正法によって、献金を受ければ、当然これは自治省等に届け出て明らかにしなければならぬところであろうかと思います。そういう手続きをとれば明らかにしなければならぬ問題であるにもかかわらず、この予算委員会における私の要求に対して全く回答がゼロであるという点については、法的にも私は問題があるように思います。そこで、いまの御回答につきましては、今後大蔵委員会あるいはその他の委員会におきまして、私ども徹底的に究明をいたしたいと存じます。いまの御答弁では納得できませんことを表明をいたしておきます。
  672. 大谷藤之助

    委員長大谷藤之助君) 続いて総理大臣より発言を求められておりますので、これを許します。三木内閣総理大臣
  673. 三木武夫

    国務大臣三木武夫君) 十一月の一日に対馬議員から三池信氏のことについて御質問がございましたので、本人によく問い合わせて御報告をするという約束をいたしましたので、それを申し上げます。  小倉氏を道南バス会社に三池信氏が紹介したことはない。二、小倉氏が手形を持参したことはあるが、それは会社に返還してあると、こういうことです。  本件は札幌地検での取り調べ中だから、やがて全貌が明らかになると思いますが、三池代議士の名誉のために、対馬議員の質問事項について明らかにいたしておきたいと思います。
  674. 大谷藤之助

    委員長大谷藤之助君) 質疑通告者の発言は全部終了いたしました。これにて、補正予算三案に対する質疑は終局いたしました。  六時十分まで五分間休憩をいたします。    午後六時六分休憩      —————・—————    午後六時十四分開会
  675. 大谷藤之助

    委員長大谷藤之助君) ただいまから予算委員会を再開いたします。  これより補正予算三案の討論に入ります。  討論の通告がございますので、順次これを許します。なお、発言者は賛否を明らかにしてお述べを願います。鶴園哲夫君。(拍手)
  676. 鶴園哲夫

    鶴園哲夫君 私は、日本社会党代表して、ただいま議題となっています昭和五十年度補正予算三案に反対の討論を行うものであります。  第一は、わが国の経済、社会をかつてない深刻な危機に陥れたことに対する三木内閣の責任の問題であります。  三木首相は、石油ショックや世界的経済状況に責任を転嫁し、政府の政策に誤りのなかったかのごとく強弁されています。しかし、今日の深刻な事態がすべて三木首相を初めとする自民党政府施政のもとに起こったことは事実であり、その施策が適正を大きく欠き、かつ重大な誤りを重ねたことは、これまた今日明白であります。この自覚と反省に欠けることはきわめて遺憾であります。三木内閣の無責任を強く指摘せざるを得ません。  第二は、臨時国会に対する態度であります。  本臨時国会の任務は、中央地方を通じてのかつてない財政危機、深刻な不況、国民の生活不安等に対処する補正予算案の審議であります。わが党の反対を押し切って、九月十一日に国会を召集しながら、国民の望んでいない酒、たばこ、郵便料金の値上げ三法案を極端に重要視し、何をおいてもとこれらを先行させ、補正予算案や国民の期待する生活関連法案が提出されたのは一ヵ月後であります。いまになっては、約八百億円の酒、たばこの歳入欠陥を最優先し、三兆五千億の歳入欠陥をないがしろにするがごときは、本臨時国会の任務を忘れた非常識きわまる態度と言うべきであります。  第三は、財政の見通しの誤りの責任であります。  約三兆九千億円の税収不足を招来いたしました、この見通しの誤りは、三木内閣の能力と責任を厳しく問うものであります。第一次から第三次に及ぶ不況対策の失敗、そして、第四次対策の効果も疑問視され、早くも第五次対策すら主張され始めています。これらの原因も、この三木内閣の見通しの大きな誤りにあります。前代未聞の財政見通しの誤りだけでも、三木内閣は総辞職に値すると言わなければなりません。  第四は、歳入欠陥を補うための国債の乱発であります。  この、補正予算案では建設国債約一兆一千九百億円、特例国債約二兆二千九百億円、当初予算の建設国債二兆円を加えると、国債は実に五兆四千八百億円、歳入総額の二六%になり、国の歳入の四分の一以上が借金によって賄われるという全くの不健全財政に転落を余儀なくされています。  さらに、現行財政法は、国債が軍国主義財政の手段に使われたことの反省に立ってこれを禁止しているにもかかわらず、特例法で赤字国債が出せるとの安易な姿勢によって、建設国債では除外されている防衛関係予算にも何らの制約もなく使われることになっており、財政法の精神が無視されるに至ったことは許すことはできません。  また、赤字国債の歯どめとして、国債返還計画必要性を強く要請したにもかかわらず、十年後に全額償還するというだけで、年次別はもちろん、計画的償還を何ら約束するものではありません。借金財政のどろ沼に落ち込む懸念を深くするもので、財政法四条並びに特例法三条の趣旨は完全に形骸化されると言わざるを得ません。  第五は、財政構造を変えようとする意図であります。  わが党は、本会議及び当委員会で強く大企業の所有地の再評価、各種準備引当金、交際費、租税特別措置法等について、大企業優遇の税制を是正することによって赤字国債にかえるとともに、社会的不公正の典型である税制改革を強く主張してきましたが、これを顧みないのみならず、九月消費者米価一九%、明年一月消費者麦価三〇%引き上げ、国鉄料金、運賃、電報電話等公共企業や社会保障等の受益者負担の大幅増徴を意図し、またガソリン税、自動車重量税等の大幅引き上げを考え、さらに付加価値税という一般消費税を来年度税制調査会に諮問の方針を固め、まず一〇%、三兆円から四兆円の大衆課税の増徴を見込み、財政難の切り札にしようとしています。今回の酒、たばこの値上げはこれらの引き金であります。財政の危機を赤字国債でしのぐ一方、このような大衆課税、受益者負担の大規模な増徴によって財政構造を変えようとしていることは許すことはできません。  第六は、大企業中心の不況対策であります。  高速道路、新幹線、本四架橋等の大型プロジェクト等、大企業や道路中心の公共事業が高騰した土地代金にその多くを食われることは明らかであり、非効率な事業になる面を強調しなければなりません。高度経済成長型の公共事業から国民生活関連型の公共事業に大きく切りかえるべきであります。  景気の五割四分を支え、景気の大黒柱であります個人消費の拡大を図ることが有効なことは論をまちません。そのための社会福祉の充実や、個人所得減税等を全く無視していることは遺憾であります。このまま所得減税を見逃すならば、平均して一五%から二〇%、所得の低いところは二五%ないし三〇%という税額の増徴を強いられ、インフレと不況で大きな犠牲を受けている社会的弱者の対策の欠如していることは重大であります。このたび、公定歩合の一%の引き下げと、郵便貯金を初めとする預貯金金利が引き下げられることになりました。一流企業や大企業は臣額の金利負相の軽減となり、政府は財源なしで膨大な補助金を彼らに与えたようなものであります。また、金融機関は預貯金金利の引き下げで利ざやを確保できますが、国民大衆は長期のインフレによる預貯金の目減りで苦しんでいる上に、さらに大きな犠牲を強いるものであります。  第七は、物価対策の軽視であります。  現代のインフレの元凶は、赤字財政と独占、寡占価格の二つだと言われております。五十年度補正予算は典型的大型赤字財政であります。また、独占禁止法改正の提出をあくまで拒み続けている三木内閣は、いまやインフレ再燃の危機を冒しつつあると言うべきであります。酒、たばこ、郵便料金を初めとして多くの公共料金の大幅引き上げが迫っています。また石油、鉄、セメント、アルミ、電気料金等の基礎資材の値上げが待機しています。毎月五千億円発行する国債も、やがて莫大な日銀引き受けによって通貨膨張は必至であります。明年五月、六月ごろからのインフレの再燃を国民は深く懸念をいたしておるところであります。  第八は、地方財政対策であります。  一兆一千億円に上る地方交付税の減額、また、一兆一千億円の地方税の落ち込み、さらに不況対策による公共事業追加の裏負担等、地方財政は困窮の極に立ち至っています。しかるに、政府は臨時地方特例交付金二百二十億円、超過負担解消百九億円など、文字どおりわずかな対策をとっただけで、国も借金するからと巨額な借金を地方財政に押しつけ、地方財政危機打開のための政府の責任を放棄していることは許されません。  四十年不況の際に行った施策を、戦後最大の不況と宣伝する三木内閣は何ゆえ今回これが実施できないのでしょうか。わが党は、地方財政のかつてない危機打開のための交付税率の引き上げと、当面の対策として第二交付税の創設を提案をしているところであります。  第九は、中小企業対策であります。  インフレと不況の中で中小企業の経営困難と倒産は深刻なものがあります。また、大企業の中小企業分野への進出も重大化しつつあります。中小企業の不況対策として四千八百億円の融資を見込んでおりますが、実際は昨年の年末融資四千五百億円に比べて、わずかに三百億円の増加にすぎません。また、わが党が中小企業分野確保法の制定の急務を強調するのに対し、政府が行政指導の一点張りであるのは、冷淡そのものと言うべきであります。仕事と資金をとは、中小企業の叫びであります。これにこたえることの小さい政府態度は遺憾であります。  第十は、失業と雇用対策であります。  失業と雇用は重大な社会問題となっています。失業の数について政府は九十万人程度と発表いたしていますが、欧米的条件では三百万人以上と言われています。出稼ぎの困難、臨時工や内職やパート等の解雇、さらに、新しく生活難から高齢者層や婦人層の就職戦線への大幅な進出も始まらざるを得ません。多量解雇の制限、失業給付の改善、就職や失業対策事業の拡大等は緊急の課題でありますが、これという対策は見られません。また、失業対策事業は一円の増額も行われていません。  本補正予算を通じて、三木内閣がいかに有言不実行の内閣であり、また、大企業や社会的強者のための政府であるかは明らかであります。三木内閣はその基本的姿勢を改めない限り、国民の厳しい不安と不満の中に沈没せざるを得ないであろうことを警告いたしまして、私の反対討論を終わります。(拍手)
  677. 大谷藤之助

    委員長大谷藤之助君) 矢野登君。(拍手)
  678. 矢野登

    ○矢野登君 私は、自由民主党を代表して、ただいま議題となりました昭和五十年度一般会計補正予算外二件に対し賛成の討論を行うものであります。  戦後のわが国財政の推移を回顧してみると、これまで幾多の財政危機に遭遇したことはありますが、今日のような世界的規模における不況とインフレの同時解決という厳しい課題を抱えたことはありません。これが打開のため、これまでの強力な総需要の抑制策は、結果として経済のマイナス成長、長期にわたる深刻な不況、厳しい雇用情勢等の事態を惹起させており.高度経済成長から安定成長へ、資源有限時代への移行を余儀なくされたわが国経済にとっては、今日の経済の不振、財政の欠陥をいかに打開し、これを乗り切るかが求められております。  今回の補正予算は、国においては四兆円、地方財政において二兆二千億円を上回る歳入欠陥を生ずるというかつてない財政危機の中で、建設公債の追加、特例公債の発行、地方債の増発という国、地方を通ずる歳入補てんをし、長期化した不況から景気を喚起して社会不安を除去するとともに、災害復旧、公務員給与の改善等のため財政支出の拡大を図るものでありまして、財政が国民経済に及ぼす影響を考えれば、この厳しい財政危機に際会して、財政の健全性を維持しつつ、これに対処しておりますことは時宜を得たものであると思うのであります。以下、補正予算の主な内容について若干意見を述べたいと存じます。  第一は、公債発行についてであります。当初予算において見込んだ租税収入等が国内経済の停滞によりまして、歳入不足額が増収分を差し引いて三兆四千八百億円に上ることとなり、これが補てんを公債の発行によって対処するのやむなきに至ったのでありますが、うち一兆一千九百億円は財政法四条の建設公債により、残余の二兆二千九百億円は特例法に基づく特例公債により発行されることとなっております。  財政の正常な姿から申せば、歳入不足に対しては本来、歳出の削減か増税により対処するのが筋道と思うのでありますが、現下の景気の落ち込みはこれまでの景気対策でもいまだ浮揚するところまで至らず、依然として低迷を続けておりますほか、減速経済下での経済の回復が今後思うように期待できぬ現況から見れば、歳出の削減や大増税は国民の経済活動を鈍らせ、これにより企業の整理縮小、倒産を一層誘発し、失業者の増大は社会不安をつのらせる懸念すらありまして、今日の国内経済、社会情勢から、これらの措置がとれぬことは衆目の認めるところであります。  したがいまして、経済に悪影響を及ぼさぬ範囲において可能な限り不要な歳出を抑制しながら、一方において歳入の確保の方策、すなわち、特例公債を発行して、この深刻な不況下の財政危機を早急に打開する以外に方法はないと思うのであります。  特例公債即インフレにつながるということで反対の向きもあるようでありますが、今日の特例公債は戦時中の軍事費の調達という性格や内容のものでなく、二十兆円にも及ぶ需給ギャップを考えるならば、財政の健全な運営を図れば、不況下の景気を刺激することこそあれ、インフレを誘発する心配はまずないと思うのであります。  要は、公債の発行に当たっては市中消化の原則を堅持して、資金需要の動向を十分見守りながら円滑な消化を図ることが最も肝要であり、これがインフレの伸長を防ぐ重要な歯どめであると思うのであります。政府においては、今後の財政運営に当たっては節度ある厳しい態度で対処するとともに、また特例公債はできるだけ早い機会に、これに依存しなくても差し支えない正常な財政状態に戻るよう格段の検討を願いたいのであります。  第二は、景気対策についてでありますが、さきにも述べましたように世界的に不況が深刻化している中で、わが国経済も石油危機以後の物価の異常な高騰に対処するため、総需要の抑制策をとってまいったのでありますが、そのため個人消費を初めとして公共事業や民間設備投資が減退し、深刻な不況に見舞われており、これまでの三次にわたる政府の景気浮揚策で生産の増加などの徴候はあらわれておりますものの、全体として景気回復の兆しは見えておりません。そこで、政府は景気の早急な回復のため、前三回を上回る総合的な景気対策を決め、すでに一部は実施に移されておりますが、今回の補正予算に盛り込まれた住宅、公共事業、災害復旧などの景気対策は、産業別の不況の現状や地域的の雇用情勢を勘案の上計上されておりまして、その需要創出効果は三兆円が見込まれ、下期の景気は明るい回復感が出ており、苦しい財政下で積極的な景気対策を推進せんとする政府措置を多とするものであります。  景気対策は申すまでもなく、タイミングが大切であります。その速やかな実効が上げられるよう格別の配慮を望みますとともに、今後の経済の推移についても財政、金融の両面にわたる機動的、弾力的な運営を要請いたしたいのであります。また、せっかく鎮静した物価についても細心の注意を願いたいのであります。  第三は、地方財政対策であります。  国と同様、ほとんどの自治体が財政危機に陥っており、今回の補正は、地方財政計画に基づき、国税三税の減額に伴う財源一兆二千二百億円を資金運用部から借り入れることとしたほか、地方税の減収及び公共事業等の追加に伴う地方負担の増加に対処するため、一兆二千七百億円の地方債の追加発行をいたすこととなっておりまして、このような国の援助措置は、住民生活に直結する三千三百余自治体の財政の窮状を救うものとして適切なる措置であります。  地方自治体におかれては、今回の交付税の落ち込み補てんも、地方税減収の補てんも、これはあくまで借金であり、さらに来年度も二兆円を超える赤字の発生が予想される事態を十分認識され、これまでややもすると、高い人件費や福祉という名の人気取り政策により地方財政の放漫さが指摘されておりますが、今後の厳しい事態に向かって地方財政の健全性を確立し、適正な運営を望むものであります。  その他、人事院勧告の実施に伴う国家公務員給与の改善費、雇用保険国庫負担金等の義務的経費の追加が計上されておりますが、これらは当初予算成立後の事由に基づく必要経費でありまして、当然なる措置であります。  以上、今回の補正予算は、今まで経験しなかった世界的不況のもとの財政危機という異常事態に対処するためのものでありまして、今日のわが国の経済、財政事情からこれらの措置は妥当なものであります。  最後政府に申したいのでありますが、今後引き続き予想される減速経済のもとにありましては、財政はこれまでのように多くの自然増収が期されないばかりか、社会保障、福祉を中心とする国民的要求はますます増大することと思われます。すでに明年度においても歳出の当然増が一兆八千億円にも上ると言われております。財政の硬直化を打開することは急務であります。今後の歳出の整理合理化と歳入の適正確保を図り、もって健全財政確立のため一層尽力されることを要望いたしまして、私の賛成討論を終わります。(拍手)
  679. 大谷藤之助

    委員長大谷藤之助君) 矢追秀彦君。(拍手)
  680. 矢追秀彦

    ○矢追秀彦君 私は、公明党を代表して、ただいま議題となりました昭和五十年度補正予算三案に対し反対の討論を行おうとするものであります。  まず、反対の理由の第一は、三兆数千億という巨額の歳入欠陥を生ぜしめ、赤字国債を出すことを余儀なくせしめた経済の見通しの誤りと、経済運営が全く改まっていないということであります。  すなわち、賃金を抑え込むことを目標としてインフレを抑え込むことばかりにとらわれ、そのために引き締め一本を強行したことによって起こった政策不況を過小評価し、適切な対策を打たなかったことによって、大きな見誤りと経済運営の失政があったのであります。そして、国民に大きな赤字国債という負担を負わせる結果となったのであります。  第二の理由は、赤字国債償還計画が全く不明確であることであります。  償還計画表にしても、また委員会政府答弁における償還計画についても、国民の納得するところではありません。六十年かかって償還する建設国債と同じ繰入率でもって償還期限十年の赤字国債が償還できるというのは、全く不思議であり、また、剰余金で全額償還に充てるような高度経済成長型の財政への移行が将来不可能であります。政府の試算によっても、歳出の伸びを不可能に近いと見られる一二%に押さえても、昭和五十五年度の歳入不足が十四兆円、公債残高がついに七十兆円を上回るという財政危機に陥るのであります。このような償還財源の目途もない赤字国債の発行は、結局財政インフレを助長することになり、納得できません。  第三の理由は、国民の望むような不況対策がとられていないことであります。インフレに悩む低所得者層のための減税に自もくれず、第四次不況対策の中身を見ても高度成長時代の遺物であり、本四架橋予算の実施のほか、東北、上越の両新幹線に六百億円もの金をつぎ込み、また高速自動車道路も増額補正の措置をとっております。さらに国民が望んでいる住宅対策、生活環境施設整備費は、一般公共事業費の二〇%に満たないきわめてわずかな額しか追加されていないのであります。さらに、不況克服とともに必要な物価対策については見るべきものはなく、かえって酒、たばこ、郵便料金の値上げをもくろむなど全く反国民的な姿勢を強めております。  第四の理由は、地方財政対策であります。  政府は、今回の補正予算で、地方財政の救済には十分な対策をとったと言っているようでありますが、決してそうではなく、かえって、この機会に地方公共団体の財政規模を政府の言う地方財政計画どおりに抑え込もうとするものであります。その上、地方財政計画分についてさえ地方自治体の借金で解決しようとしており、断じて賛成できません。政府の経済政策の失敗によって生じた地方交付税交付金の減収分は、当然国が全額交付すべきであります。また、不況の影響をもろに受ける地方税の落ち込みについても、地方税制改善の努力を払わず、これを地方債に任せ、しかも、ほんの一部しか資金運用部資金でめんどうを見ず、八千六百余億円を縁故債に押しつけております。果たして地方民間金融を圧迫せず消化し得るでしょうか、憂慮せざるを得ません。この結果、超過負担に悩む地方自治体にとって大きな財政圧迫要因がふえるばかりであり、政府の施策はとうてい承服できないのであります。  以上、主な理由を述べて私の反対討論を終わります。(拍手)
  681. 大谷藤之助

    委員長大谷藤之助君) 岩間正男君。(拍手)
  682. 岩間正男

    ○岩間正男君 私は日本共産党を代表して、補正予算三案に対し反対の討論を行うものであります。  以下重点的に反対の理由を述べます。  その第一の理由は、政府三案がまさに物価値上げ、インフレ促進の予算であることであります。  わが党は、物価の安定、引き下げこそが最も適切な不況対策であることを繰り返し主張してきました。しかるに、政府はこれには全く耳をかさず、前国会で廃案となった酒、たばこ、郵便料金の大幅値上げを補正予算に組み入れて、新価格体系への突破口を切り開き、しかも、赤字公債を含む三兆五千億円もの公債の追加発行を強行しようとしております。このような措置政府主導のもとで強行されている石油、鉄鋼その他の大企業製品の値上げとも相まって、物価の一層の値上がりとインフレを促進するものであることは明白であります。  反対理由の第二は、これが依然として大企業本位、国民無視の不況対策であることであります。  政府は景気対策のための支出の重点を高速道路、新幹線、本四架橋などの大型公共投資に置き、その投資枠を膨張させているのであります。こうした大型工事が鉄鋼、セメントその他の大企業の製品に膨大な需要を与え、さらにその工事発注も大企業に独占させる文字通りの大企業のための不況対策であることは、わが党が指摘したとおりであります。ところが、一方、政府は国際的にも極端に立ちおくれ、国民の要望の強い公害、災害対策、住宅、学校、保育所など生活基盤投資、農漁業基盤整備費などを極度に圧縮し、さらに、この不況下に、もともと一般会計の〇・六%にすぎない中小企業対策費をさえ減額しているありさまであります。  さらに、未曽有の財政危機に陥っている地方自治体に対して、これまで以上の借金財政を押しつけ、一層の財政危機の原因をつくっているのであります。五十二年度を目途に改革案をまとめるという当委員会での政府答弁は、地方財政の今日の窮迫を見殺しにするものといわなければなりません。  わが党は、政府がこのような政策を根本的に改め、国民生活を守る緊急な対策と地方財政危機打開を中心とする補正予算を組むことを重ねて要求するものであります。  第三の反対理由は、財政危機を口実として特例法による二兆二千九百億円に及ぶ史上最高の赤字国債を発行しようとしていることであります。  財政法に違反するこの特例法公債が、赤字公債の毎年の発行、さらには戦時赤字公債発行への道を開くものであることはわが党が厳しく追及したとおりであります。しかも、政府は、五年後の国債残高は七十兆円にも及ぶという答弁でも明らかなように、本補正予算案によってとめどもない財政破綻、重税とインフレの道を切り開きながら、今後の財政運営方針として公共料金引き上げ、付加価値税などによる一層の重税、社会保険料の引き上げなどを公言しているありさまであります。絶対に許すことはできません。わが党は、今日の危機を打開する道として、政府の大企業本位、高度成長型の財政、税制の仕組みを根本的に改め、民主化する以外にはないこと、特に当面の財源措置として、まず大企業への法人税還付を停止し、特権的減免税の是正を図り、さらに臨時非課税積立金増加税の新設など大企業に対し正当な税負担を課すこと、同時に、防衛関係費、産業基盤整備費、大企業への補助金等、不要不急な経費の未執行分の大幅削減を行うことを強く要求するものであります。  最後に、依然として大企業、財界との癒着を強め、金権政治からの離脱どころか、ますますこれを深めている三木内閣の責任を糾弾して、反対討論を終わります。(拍手)
  683. 大谷藤之助

    委員長大谷藤之助君) 木島則夫君。(拍手)
  684. 木島則夫

    木島則夫君 私は、民社党を代表して、ただいま議題の昭和五十年度補正予算三案に対し、以下の理由によって反対するものであります。  第一の理由は、昨今インフレと不況が同居する新しい事態に対する政府の誤った経済見通しと経済運営の結果、不況の深刻化と長期化を招いた点であります。したがって、そのためにいままで例のないほどきわめて膨大な歳入欠陥をもたらしたものであります。  すでに私どもは、このことについて昨年の十月以来、わが国の経済が容易ならない困難に直面しつつあることを指摘をし、その対策についてしばしば提言をしてまいりました。しかし、政府はきわめて楽観的な態度をとり続けてきた、そのことが今日の事態を招いたものであります。  第二の理由は、多額の歳入欠陥をもたらした責任の所在があいまいのまま、安易に赤字国債の大量発行を予定している点であります。  また、大量の国債発行がもたらす将来の財政インフレの危険性に対し、納得できる防止案は何ら示されておりません。さらには、来年度以降の財政がどのような姿になるのか、今後大量国債を抱えた財政にいかに対処されようとしているのか、全く不明確であります。私は、政府のその場しのぎの財政運営に厳しい反省を求めておきたいと思います。  第三の理由は、補正の内容が国民生活の向上に直結をする施策を軽視している点であります。  依然として型どおりの景気刺激策にとらわれ、本四架橋、新幹線、高速道路等産業基盤投資を重視し、住宅の大量建設、上下水道、中小企業の緊急対策などについては見るべきものがありません。また、公定歩合の引き下げに伴い庶民の預貯金金利まで引き下げたことは、あまつさえ預金の目減りが続いている現在、さらにこれを拡大するもので、大多数の国民は絶対に容認し得ないでありましょう。  最後に、私が反対する理由は、酒、たばこ、郵便料金の引き上げ法案について指摘しないわけにはいきません。少なくとも物価と、国民生活を守る立場から考えるならば、不況対策を妨げてまで固執すべきではないと思います。政府与党の政治的見識を疑わざるを得ません。  以上が、私の反対する簡明率直な理由であります。(拍手)
  685. 大谷藤之助

    委員長大谷藤之助君) 以上をもちまして討論通告者の発言は全部終了いたしました。よって、討論は終局したものと認めます。  これより採決を行います。  昭和五十年度一般会計補正予算昭和五十年度特別会計補正予算昭和五十年度政府関係機関補正予算、以上三案を問題に供します。三案に賛成の方の起立を願います。   〔賛成者起立〕
  686. 大谷藤之助

    委員長大谷藤之助君) 可否同数と認めます。よって、国会法第五十条により、委員長は原案どおり可決すべきものと決定いたします。(拍手)  なお、本院規則第七十二条により議長に提出すべき報告書の作成につきましては、これを委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  687. 大谷藤之助

    委員長大谷藤之助君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。  本日はこれにて散会いたします。    午後六時五十五分散会