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1975-12-15 第76回国会 参議院 本会議 第15号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十年十二月十五日(月曜日)    午前十時九分開議     —————————————議事日程 第十四号  昭和五十年十二月十五日    午前十時開議  第一 昭和五十年度における道路整備費財源   の特例等に関する法律案内閣提出衆議院   送付)     ————————————— ○本日の会議に付した案件  日程第一  一、昭和五十年度公債発行特例に関する   法律案趣旨説明)      ——————————
  2. 河野謙三

    議長河野謙三君) これより会議を開きます。  日程第一 昭和五十年度における道路整備費財源特例等に関する法律案内閣提出衆議院送付)を議題といたします。  まず、委員長報告を求めます。建設委員長中村波男君。     〔中村波男登壇拍手
  3. 中村波男

    中村波男君 ただいま議題となりました法律案につきまして、建設委員会における審査の経過並びに結果について御報告を申し上げます。  本案は、道路整備緊急措置法第三条第一項の規定の適用について特例を設け、昭和四十九年度揮発油税等決算調整額昭和五十年度道路整備費財源に充てることを内容とするものであります。  委員会におきましては、揮発油税等税収過小見積もりとなった理由、道路整備五ヵ年計画進捗状況改定見通し地方道整備の推進、直轄事業負担金公共用地先行取得道路維持管理等に関連する地方財政負担軽減対策自動車関係諸税増税税収配分等について熱心な質疑が行われましたが、その詳細は会議録に譲ります。  質疑を終了し、討論に入りましたところ、日本共産党を代表して春日委員より反対、自由民主党、日本社会党、公明党及び民社党を代表して増田委員より賛成の意見が述べられました。  討論を終局し、採決の結果、本案は多数をもって原案どおり可決すべきものと決定いたしました。  以上御報告を申し上げます。(拍手
  4. 河野謙三

    議長河野謙三君) これより採決をいたします。  本案賛成の諸君の起立を求めます。    〔賛成者起立
  5. 河野謙三

    議長河野謙三君) 過半数と認めます。よって、本案は可決されました。      ——————————
  6. 河野謙三

    議長河野謙三君) この際、日程に追加して、  昭和五十年度公債発行特例に関する法律案について、提出者趣旨説明を求めたいと存じます。御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  7. 河野謙三

    議長河野謙三君) 御異議ないと認めます。  大平大蔵大臣。    〔国務大臣大平正芳登壇拍手
  8. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) 昭和五十年度公債発行特例に関する法律案趣旨を御説明申し上げます。  すでに昭和五十年度補正予算において明らかにいたしておりますが、本年度におきましては、租税及び印紙収入並びに専売納付金が当初予算に比べ大幅に減少するものと見込まれる状況にあります。  一方、現在の経済情勢のもとにおきましては、景気回復起動力として有効需要造出に寄与する財政支出に多大の期待が寄せられているところであります。内外経済情勢及び現時点の財政に課せられた重大な役割り考えますと、現在の状況のもとにおきましては、大幅な歳出の削減や一般的な増税を行うことも適当とは考えられません。このため、昭和五十年度財政運営はきわめて困難な状況に直面しているわけであります。  もとより政府といたしましては、一般行政経費等の節減、金融機関等貸し倒れ引当金繰り入れ限度額引き下げなど歳入歳出両面にわたり、現在の状況のもとにおいてでき得る限りの見直しを行い、また、財政法第四条第一項ただし書きの規定による公債追加発行を行うことといたしておりますが、それでもなお、租税収入等減少による歳入の不足を補うことは、残念ながらとうてい不可能な状況にございます。  このため、昭和五十年度特例措置として、財政法規定による公債発行のほかに、補正予算で見込まれる租税及び印紙収入並びに専売納付金減少を補うため、国会の議決を経た金額の範囲内で、特例公債発行できることとする法律案を提案するものであります。  財政健全性を保つことは、国民生活向上経済安定的成長の基盤であり、特例公債依存した財政は、申すまでもなく財政本来のあるべき姿ではないと考えております。特例公債依存しない堅実な財政にできるだけ早く復帰するようあらゆる努力を傾注してまいることは、今後の財政運営基本であると考えております。  以上、昭和五十年度公債発行特例に関する法律案趣旨について御説明申し上げた次第であります。(拍手
  9. 河野謙三

    議長河野謙三君)ただいまの趣旨説明に対し、質疑の通告がございます。順次発言を許します。大塚喬君。    〔大塚喬登壇拍手
  10. 大塚喬

    大塚喬君 私は、日本社会党を代表して、ただいま議題となりました昭和五十年度公債発行特例に関する法律案について、三木総理福田総理大平大蔵大臣質問を行おうとするものであります。  初めに、一、二私の考えを述べ、三木総理の所見を承っておきたいことがございます。  それは、けさ新聞大平派の動きが出ておりましたが、国債は恐れるなと。一般的な風潮として、この際、赤字国債を出すほかないじゃないか、ほかにどんな方法があるんだ、文句は言うな、景気回復のためだからくよくよしないでどんどん出せと、こういう空気が感ぜられるわけであります。赤字が出た、これをそっくり借金でいこう、これはまことに簡単明瞭な方式ではございますけれども、安易な一時しのぎの解決策であることは間違いありません。政府自民党態度は、この法案審議に当たって、そのような安易な思い上がった態度を感ぜさせられるわけであります。もしも三木総理までそのようなお考えでありましたならば、これはまことに大変なことであろうと思います。私は、このような膨大な赤字国債特例法案、これは十分に審議を尽くすべきものである、重要な歳入法案であると考えておるものでありますが、総理見解はいかがでございましょう。  いま日本経済は、経験したことのないようなインフレの中で長期な深刻な不況に追い込まれております。地方も国も、企業も個人赤字という状態がいよいよ拡大されておるわけであります。このような最悪の事態を招き、異例な赤字国債特例法案提出を余儀なくされたのは、実はこれは三木内閣のとってきた経済財政運営の重大な過失によって引き起こされたものではないでしょうか。三木内閣は、毫もその政治責任はないとおっしゃるつもりですか。  三木総理は、今回の不況の原因について、石油ショック後の狂乱物価抑制の反作用だとして、あたかもこれを不可避現象のような言い逃れを続けてまいりました。インフレは地震、雷のように自然現象ではありません。政府の打つ手が後手後手と回り、いまの不況はそのために引き起こされた政策不況であります。そのことは日本国民のだれもが周知をいたしておるところであります。不況長期化が現実となった今年初め、政策の手直しとして第一次公定歩合引き下げ国民各層から強く迫られたにもかかわらず、物価抑制をにしきの御旗として、今春闘、七五春闘ベースアップ率を極端に抑圧すべく、そのタイミングを意識的にずらしてまいりました。実にこの第一次公定歩合引き下げタイミングのおくれたこと、ベースアップの極端な抑圧が重複して作用し、個人消費を鈍化させ、経済を停滞させ、不況を深刻化させた第一段の引き金になったことは明らかであります。  また、それ以後の不況対策においても、国民不在の、そして政権安泰をただひたすらに、事なかれ主義の態度に終始してきたその結果が、今日の危機的様相を拡大させてきた以外の何物でもありません。  三木内閣田中金権政権失脚の後を受け、麗々しくも「クリーン三木」「社会的不公正是正」を金看板として、この一年間どのような世直しをしてきたものですか。改善されたものは余りにも乏しく、旧態依然たる自民党政府体質ゆえに、事態は悪化の一途をたどっているばかりではありませんか。先般明らかにされた自民党の百億円借金解消策について見ましても、その半分を財界から献金の形で受け入れ、あとの半分は実質的にたな上げにするなど、これは政府・与党と財界との暗い関係国民の前にさらけ出したと言うべきであります。クリーン三木につながるイメージは、いまや完全に消失したと言うべきであります。  また、社会的不公正是正も、税制金融社会保障、各面においてほとんど手がつけられないまま今日に至っておるではありませんか。社会的不公正の是正、いままで何をどう是正をされたのか、もしあったならば明らかにしていただきたい。  さらに、今回の公労協スト権ストに対する三木総理見解についても、自民党における各派閥の派利派略に翻弄され、あなたの無力をさらけ出したばかりではありませんか。また、憲法第二十八条に明記された勤労者生存権を公然と否定するなど、まことに許しがたい言動であります。  私は、自民党政策上の誤りについて逐一追及したいわけでありますが、本案限定して申し上げますならば、このような財政の重大な危機を招いた経済運営過失について、三木総理自身がこの場において国民にまずその政治責任を明らかにし、謝罪の意を表明すべきであることを要求するものであります。  さて、本案三木内閣政策運営失敗を償う一手段ではありますが、この法案自体が今後に及ぼす影響がきわめて重大なものがあるわけであります。私は対決の姿勢をもって、以下具体的に質問を続行いたしたいと存じます。  その質疑の第一は、財政運営基本法である財政法特例法との関係についてであります。特別公債法案は、財政法禁止をしている赤字国債特例によって発行しようとするものであります。政府は前国会にも決算上の剰余金繰り入れ割合を減額する特例法案提出しました。そして一年を経ずし赤字国債発行特例法案提出し、さらに償還財源確保のためと称して、剰余金全額繰り入れることを明らかにいたしておるのであります。財政法健全財政を貫くための基本法であります。それにもかかわらず、短期間にわたって特例法提出することは、財政法期待をしておる財政運営健全性を大きく逸脱することになるものであります。いまここで自民党がたとえ多数でこれを押し切ることにより特例法を設ける、こういうことをすれば、財政法禁止をし、また想定していないことでも安易にこれを行うことができる、こういう考え方はきわめて恐ろしいことと言わなければなりません。このような方向は厳に慎むべきであります。三木総理並びに大蔵大臣見解を明らかにしていただきたいものであります。  また、現行財政法昭和二十一年に制定され、三十年近くを経過をいたしております。現在の財政運営にそぐわない点がほかにもあるとお考えですか。もしあるとお考えならは、その部分はどのような部分であり、どのように見直しをしようとするのか、お聞かせをいただきたい。  第二に、今回の巨額な国債追加発行をきっかけにして、国債発行は今後も続けられ、累積されるでありましょうが、その歯どめを何に求めるかということであります。これまで財政制度審議会並びに金融制度調査会は、国債発行には歯どめが必要であるとして、市中消化原則の堅持、建設国債限定の厳守を掲げ、さらに国債依存率引き下げることが財政健全性保持につながるとの建議や答申を行ってまいりました。ところが、市中消化原則は、発行後一年を経過すれば日銀買いオペの対象になる、こういう抜け道がありますから、国債の大部分は結局日銀の保有となるわけであります。特に今回は、適正な成長通貨供給手段としてではなく、巨額な赤字国債発行を容易にするため、日銀買いオペが再開されようとしておるわけであります。これは実質上日銀引き受けと何ら変わるところがありません。市中消化原則は破棄されたと言うべきであります。そしてまた、建設国債への限定は、今回の赤字国債発行によって名実ともに葬り去られたものであります。  さらに、国債依存率補正予算において二六・三%、明五十一年度は三〇%になんなんとしておるわけであります。実に歳入の四分の一、あるいはそれ以上と、こういう事態になっておるわけであります。これは諸外国の比較においても、まことに異常な状態と言わなければなりません。かつての国債発行の歯どめは、政府みずからがこれをかなぐり捨て現在に至っておるわけでありますが、新たな歯どめを設けるべきであると思いますが、大蔵大臣にその見解を伺いたいのであります。  それから福田総理、あなたも財政のオーソリティーであります。そしてこの事態を招いた責任者の一人でもあろうと思います。国債発行についての新たな歯どめの必要がどうかという問題について見解をお聞かせいただきたいのであります。  第三に、国債償還計画についてただしたいと思います。この特例債は十年償還のものであり、したがって、昭和五十年度発行される二兆二千九百億円の国債については、その元金と金利を全額円滑に昭和六十年に償還しなければなりません。いまわれわれが審議をしております特例法案は、この巨額な借金ツケを後世代に回そうとしておるものであります。後世代の人たちは、みずからの税金でこのツケを返済しなければならないものであります。財政特例法第三条で公債償還計画国会提出すべきことが明記をされております。償還計画、いわゆる一・六%の定率繰り入れ剰余金の二分の一繰り入れ、それと予算繰り入れという三本の柱だというそれだけの説明では、これは審議になりません。単なる文章の羅列であってはなりません。年次別に、数字的に具体的な償還計画について説明を願いたいのであります。  第四に、国民だれも危惧をしておる財政危機に臨んで、政府財政再建展望を明らかにすべきであります。昭和五十年度末の内国債残高は、今回の追加発行により一挙に十六兆五百二十九億円に達することになります。そして五十一年度利子負担は、実に一兆二千七百億円に上ることになるわけであります。さらに、この赤字国債発行は本年度にとどまらず、五十一年度は当初から七兆円程度の国債発行が必要だと言われております。一体、そうなりますと、五十一年度国債残高は二十三兆円、五十一年度利子負担は一兆八千億円を超えることになります。このままでは数年を経ずし利子支払いのために国債発行が必要となり、まことに重大な財政危機を迎えることになるわけであります。
  11. 河野謙三

    議長河野謙三君) 大塚君、大塚君。時間が大分経過いたしました。簡単に願います。
  12. 大塚喬

    大塚喬君(続) はい。  財政制度審議会は去る七月の中間報告において、昭和五十五年度国債残高は六十一兆円に達するであろう、このような警告を発しましたが、このような事態に臨んで財政再建の積極的、具体的な方策を国民の前に明示をすべきではありませんか。本件について総理大蔵大臣のそれぞれの構想を承りたいのであります。  第五は、国債の累増により、財政期待をされておる機能が重大な障害を受けることへの対応策についてお伺いをいたします。  特に、五十二年度以降、財政確保手段として付加価値税の問題が検討されておるようでありますが、これは所得再配分機能をさらに消失せしめ、物価上昇をさらに助長するという点から、絶対にとるべきではないものであろうと思います。総理からこれの見解についてお聞かせをいただきたい。  以上のほか、単年度における国債発行累積残高増高もまた重大な影響をもたらすものであります。民間金融市場におけるクラウディング・アウトにどう対処するか。国債買いオペで対処した場合に通貨供給が過剰となり、再び過剰流動性インフレを引き起こすことになるのではないか。個人金融資産多様化を図るため国債販売方法をどうするのか。国債発行条件を他の公社債との関係においてどう定めるべきか等の問題が山積をいたしております。大蔵大臣は、これらの問題について国民が納得をする解明を行うべきであります。これがなされない限り、国民不安はますます高まり、財政運営を通じ政策不信が爆発するであろうことを警告し、私の質問を終わるものであります。(拍手)    〔国務大臣三木武夫登壇拍手
  13. 三木武夫

    国務大臣三木武夫君) 大塚君にお答えをいたします。  けさ新聞を例にとって、私の考え方を求められましたが、私はよく読んでおりませんが、とにかく特例公債依存をするということは、これは異常なことでございます。しかし、それならば特例公債発行しないで、そういうふうな財政に持っていけば、それで問題が解決するかというと、そうは思わない。景気対策であるとか、国民の福祉の向上など、財政に課されておる役割りを着実に図るためには、特例公債依存せざるを得ない場合がある。今回の場合はそれである。しかし、できるだけ速やかにそういう状態から脱却をすべきだということはお説のとおりだと思います。  また、赤字公債発行インフレを再燃させるのではないかという御質問でございますが、公債発行がそのときの経済規模に対して適度の水準であるならば、それが直ちにインフレを招くものではない。その水準を破りますならば、需給のバランスは崩れ、物価上昇を招くのでありますが、今日の場合にそのようには考えないわけでございます。今日、このような景気が非常に落ち込んでいるときに、国債増発により財政面から需要維持、増大を図ることが必要であると考えておるわけでございまして、インフレを再燃さすとは考えておりません。  また、赤字——いわゆる特例公債発行するようなことになったのは、三木内閣経済財政運営失敗ではないかということでございますが、大塚君も御承知のように、狂乱的な物価高騰の中に何とかして物価鎮静さそうということは、国民の一致した願いであったわけでございます。したがって総需要抑制政策をとったわけで、その結果、物価鎮静をしてまたということでございます。どうしてもやはりいまはインフレ不況とが同時に併存しておるわけでございますから、どちらかにアクセントをつけた経済政策をとらざるを得ない。われわれは物価鎮静をとったわけでございますが、その結果、物価は一応鎮静の傾向をたどっておりますので、今回本格的な不況対策に乗り出してきたわけでございまして、大きな意味における三木内閣経済政策誤りがあったとは考えておらないということを申し上げる次第でございます。(拍手)    〔国務大臣大平正芳登壇拍手
  14. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) 第一の御質問は、国債減債制度の中での剰余金繰り入れ割合が毎回変わっておるようであるが、それについての政府見解が求められたわけでございます。  仰せのように、四十八年度剰余金の五分の一にし、今回は全額繰り入れるというようにいたしたことは御指摘のとおりでございますが、これはそのときの財政状況にかんがみ、あるいは減債基金状況剰余金金額等を勘案いたしまして、減債基金制度減債制度の中での剰余金役割り考えながら、政府としてとった措置でございます。決してアトランダムにやっておるわけではございませんことを御理解いただきたいと思います。  それから、第二の財政法の改正についての見解が求められたわけでございます。政府といたしましては、財政処理基本といたしましての財政法を改正するつもりはございません。したがって、今回も特例法という姿で御審議をいただいておるわけでございます。万やむを得ない場合に、特例法という、目的を限りまして特例法の姿で御審議をいただく。本体としての財政法には触れないという態度を今後も貫いてまいるつもりでございます。  第三の御質疑は、国債発行の歯どめについての御質問でございました。申すまでもなく、国債最大の歯どめは、財政経済とのバランスをどのように維持してまいるかという財政運営の節度にかかってくると思うのでございまして、経済財政との間の適正なバランス考えながら、まず国債発行額を決めてかかることが第一の歯どめであろうと思います。第二は、いかなる場合におきましても市中消化原則を貫いてまいることが歯どめになるものと考えておりますので、その原則はあくまでも貫いてまいる考えでございます。  第四の問題といたしまして、御指摘償還計画を明らかにせよということでございます。お言葉でございますが、償還計画は、今回発行さしていただきたいと思っておりまする特例債は十年満期債でございますので、昭和六十年に償還するということを考えておるわけでございます。分割発行でございませんので、償還は、補正予算説明に申し上げておりましたとおり、一括して昭和六十廣に償還するということにいたす以外に道はないわけでございます。ただ、大塚委員が御指摘になられていることは、恐らく償還財源年度別にどのように積み立ててまいるかということであろうと思います。その点につきましては、まず第一に、百分の十一・六の定率繰り入れ国債整理基金特別会計に毎年いたすということが第一でございます。第二は、先ほど冒頭にありました剰余金全額特例公債償還までは毎年度特別会計繰り入れるということでございます。第三は、必要に応じて予算上の繰り入れを行うということによりまして必要な償還財源を六十年度までには蓄積してまいるつもりでございます。  なお、そういうことでは国民の理解を得るに十分でないので、大塚委員はさらに財政の将来の展望について明らかにする必要があるでないかという御指摘でございます。ごもっともでございます。政府といたしましても、そういう展望につきまして漸次明らかにしてまいらなければならぬと考えておりますけれども、ただいまの状況内外状況が非常に流動的でございまして、不確定要素が余りに多く、国会責任をもって財政の将来にわたる年次別展望を明らかにする用意がまだないことは大変残念でございます。しかしながら、仰せのような財政展望につきましては、逐次政府努力をいたしまして、諸般の政府作案中の長期計画等との関連も考えながら、漸次作案いたしまして御審議を願うようにいたしたいと考えております。  それから、財政再建の今後の方途についてのお尋ねでございました。これはたびたび申し上げておりますように、歳入歳出両面にわたりましてよほど思い切った施策が必要であることは申すまでもございませんで、ただいま歳入歳出両面にわたりましての彫りの深い見直しをいたしておりますこと、御案内のとおりでございます。したがって、そういう現行税制現行予算制度の中でのいろんな問題の解明を十分遂げた上で、新たな新財源をどういう方面に求むべきかということがその次の段階において問題になると思うんでございまして、したがって、付加価値税というようなものに、ただいま直ちに政府が採択するとか採択しないとかということについてお答えをすべき段階ではないと考えております。  それからさらに、公債増発民間金融市場との関係についてのお尋ねでございました。御心配の点はごもっともと思うのでございます。私どもは、しかしながら、いま民間市場状況財政散布超過状況でございまするし、民間金融公債増発によりまして圧迫することのないものと考えておりまするけれども、金融機関によりさしては、あるいは時期的には若干のヒッチが起とらないとも限りませんので、その点は、日本銀行とよく協力しながら、そういうことの起こらないように配慮して御心配のないようにいたしたいと考えておるわけでございます。  最後の御質問は、金融資産多様化に対応いたしまして、国債国民に対する販売方法についてどう考えておるかということでございます。大塚議員も御承知のように、ただいま日本におきましては国債市場という市場がまだ形成されていないわけでございます。これから市場整備してまいることでございます。御心配の点はごもっともと思うのでございますが、私どもといたしましては、他の公社債と国債との間に適当なバランスを、条件上のバランス維持してまいって、国民に慣熟した金融資産といたしまして国債が愛好されるような環境を逐次つくり上げてまいって、御期待にこたえなければならぬと考えております。(拍手)    〔国務大臣福田赳夫君登壇拍手
  15. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) 大塚さんから私に国債発行に対する歯どめいかんという御質問でございますが、申し上げるまでもございませんけれども、国債はこれは用い方によっては大変良薬であるが、使い方を間違えますと、これは劇薬、毒薬になってくるわけであります。その国債発行の効果を、本当に良薬的効果を発揮させるためには、どうしても厳重な歯どめが必要である、これは御所見のとおりでございます。  その歯どめの第一は、国債発行すると物の需要を喚起するわけであります。その物の需要国民経済の全体の中で、これがバランスを失するということのないように配意することである、こういうことでございます。今日のように他の需要項目、非常に不振である。そういう際に財政公債発行して物の需要を喚起する、こういうことがありましても、基本的にインフレにつながっていくという危険はない、さように考えております。  それから第二に、資金の面であります。これは公債発行されるということになりますると、政府が資金を民間に注入するということになるわけでありまするが、それが完全に吸収されないと、また過剰購買力を政府が注入する——日銀を通じてでありまするけれども、そういう結果になる。そこで、市中消化といいますか、完全消化、これがないとこれは非常にまたよくない効果を生ずると、こういうことになるのでありまして、この市中消化、完全消化につきましては、最大限の努力をいたしましてそれを貫徹しなければならないと、こういうふうに考えております。  この二つの柱がちゃんと健在でありますれば、公債発行いたしましてもこれはインフレになるという危険はないと、かように考えております。(拍手
  16. 河野謙三

    議長河野謙三君) 鈴木一弘君。     —————————————    〔鈴木一弘君登壇拍手
  17. 鈴木一弘

    ○鈴木一弘君 私は、公明党を代表して、昭和五十年度公債発行特例に関する法律案について質問をいたします。  質疑に先立ち、二つの政治責任総理、大蔵の両大臣にただしたいのであります。  一つは、財政特例法衆議院通過が強行採決という議会制民主主義を破壊する暴挙の中で行われたことであります。対話と協調を政治姿勢の第一に掲げた三木内閣のもとで、財特法に先立って酒、たばこ値上げ法案も強行可決されております。すでにこの国会で衆参を合わせると問答無用、数の横暴による強行採決は七、八回に及び、異常な国会運営に陥っておりますが、総理、総裁としてその責任をどう感じておられるか承りたいのと、財特法の参議院での審議に当たっては十分に論議を尽くし、慎重審議を行い、ルールにのっとった結論を出すこと、審議半ばの強行採決は絶対行わないと約束していただきたいが、三木総理、総裁の方針と決意をただしたいのであります。  二つは、この財特法によって発行を予定されております特例国債二兆二千九百億円に関連して三木内閣、特に当面の責任者である大蔵大臣政治責任についてであります。  五十年度当初予算では、建設国債発行額を対前年度比千六百億円減額し、依存率を一けたにしたことを節度ある国債政策と自画自賛したのは大平大蔵大臣その人であります。その大臣のもとで、財政経済政策失敗によって三兆七千億円を超える税収の見込み違いを引き起こし、ついに五兆四千八百億円、依存率二六・三%という、まさに国債にのまれた財政破綻を惹起したのであります。全く見当違いの財政方針を国民に示した責任、及び、政策不況によって生じた歳入欠陥に大蔵大臣はどのような責任をとられるのか、ただしたいのであります。  さらに、ここで明確にしていただきたいのは、五十年度予算については、国債追加発行、第二次の補正措置等は、天災地変による緊急事態の発生を除けば行わないと理解してよろしいかどうか、あわせ御答弁をお願いしたいのであります。  次に、特例法質疑に入りたいと存じます。  第一は、特例法第二条に規定した五十年度予算執行が終了し、出納整理期間中にも特例国債発行でき、しかもこれが五十年度歳入として取り扱われるという点でありますが、これは明らかに財政法年度独立の原則を破るものであって、歳入だけは十四ヵ月予算を組んでいるということになります。現行財政法歳入補てんの赤字国債を認めていないから特例法を制定するとしても、その特例法財政運営の憲法である財政法に違反していいということにはならないわけであります。財政法第十一条の年度区分の原則、十二条の年度独立の原則を否定するそうした特例法には根本的な疑義があることを指摘せざるを得ません。  こうした私の指摘に対し大蔵大臣は、国債発行額をできるだけ少なくするために、五十年度税収不足額の確定を見届けるためにとった措置と詭弁を弄されると思いますが、大蔵大臣国会での赤字国債償還財源づくりの有力な方法として毎年度剰余金全額繰り入れを言明しておられます。そのことと、剰余金ゼロが見込まれるこの出納整理期間の国債発行ということは矛盾しているではありませんか。さらに、若干の赤字国債発行額の減額という便宜主義と財政憲法の大原則の否定とは、将来の財政を紊する原因づくりともなりかねないので、われわれは納得できないのであります。  第二は、特例法第三条に規定した償還計画についてであります。  いまや、わが国の国債問題は建設国債の歯どめも市中消化の歯どめも消し飛んでしまいました。その中にあって、せめても国債による国民経済破壊から国民生活を守る歯どめは、実行が担保される償還計画にかかっていると思います。しかるに、本特例法案並びに五十年度補正の償還計画表がずさんきわまることは、すでに衆参本会議予算委員会で追及してきたところでありますが、本特例法案審議開始に当たり大蔵大臣から次の点を答弁いただきたいと思います。  まず第一は、本院予算委員会での矢追君の、償還のために繰り入れる百分の一・六は果たして妥当かとの質疑に対し大蔵大臣は、百分の一・六は建設国債に関連し、六十年間の消却の試算でつくられた率であろうと思います。したがって、特例国債に当てはめていきますと、率としては妥当なものとは考えませんと十一月七日に答弁されております。現行のままでは、今年発行特例国債償還財源は六十年度償還時に発行額の二割程度の準備しかできないわけですし、大蔵大臣自身、妥当と考えないとも答弁されたわけですが、特例国債償還財源づくりの繰入率について改めて答弁を願いたいと思います。  第二は、本特例法償還計画と現行国債整理基金特別会計関係を明確にしていただきたいのであります。  明治三十九年に制定された現行国債整理基金特別会計法は、昭和二十二年につくられた新財政法の精神が十分に生かされていると言えるかどうかは大変疑問であります。国債整理基金特会法には、「国債整理基金ハ国債償還発行ニ関スル費途ニ使用スルモノトス」とあるだけで、その基金の内訳として建設国債特例国債の区別すら規定しておりません。  さらに、これも予算委員会でわが党の矢追議員が追及した点でありますが、国債整理基金特別会計の利子収入(運用収入)の予算決算のめちゃくちゃな乘離の実情も問題であります。国債整理基金特別会計予算決算は、単年度のフローとしての金の流れはわかっても、基金の実態は国会国民の前に明らかにされているとは言えません。  このように一、二点を指摘しただけでも、現行の国債償還制度は根本的に欠陥があります。そうした基本問題に手を染めることも、改革の決意も方針もないままに特例法第三条で「償還計画国会提出しなければならない」というのは、当面をごまかすもの以外の何物でもなく、国会国民期待している償還計画とはなり得ないのはもちろん、国債乱発の歯どめにもなり得ないものと指摘せざるを得ません。単に「償還計画」という言葉が使われているだけにすぎず、償還計画の中身は何もないものであるということはだれよりも大蔵大臣自身が一番よく御存じでしょう。  第三は、国が借金をする段階では建設国債特例国債と分けられ、しかも、建設国債は資産の裏づけのある健全な国債特例国債は完全に歳入不足を補てんする国債で警戒を要する国債といった政府の区分けは、償還段階では完全に消えております。建設国債特例国債が異質なものであるとする政府の立場を貫くためには、発行から償還まで国債管理の全過程を通じて両国債を厳格に区別すべきは当然であります。現在までの政府国債管理方式では毎年度巨額の国債発行し、国債残高がふえさえすれば償還財源ができ、その財源操作で特例国債も十年目に返すことが可能なのであります。こうしたやり方は、極論するならば、財政の不健全化に正比例して特例国債の十年目の償還は容易になるというはなはだ危険なものであります。この際、ぜひ建設国債特例国債発行から償還まで一貫して厳しく分け、その実情を毎年度予算決算国会国民報告すべきと思いますが、大蔵大臣見解と決意のほどを承りたいのであります。  最後に、私が指摘をいたしましたこの三項目は、いずれも特例国債発行の根拠法となっている昭和五十年度公債発行特例に関する法律案と重大なかかわりがあることはいまさら申し上げるまでもありません。したがって、政府がなすべきことは、第一は、特例法第二条の、年度を越えて国債発行できるとしている規定は削除すること。第二は、特例国債償還のための繰入率は百分の一・六ではなく、特例国債昭和六十年度までの十年間に完全に返済できる繰入率を本特例法規定すること。第三は、国債整理基金特別会計特例国債勘定を設け、既発行国債償還とはっきりと区分けして経理を行い、特例国債の移り変わりが常に国民の前に明らかになるようにするのが政府責任と思いますが、どう考えているか。議会生活三十年を売り物にし、対話と協調を看板に掲げている三木総理に議会制民主主義の見地からも伺うわけでございますが、さらに議会制民主主義の見地と参院の法案審議に対するあなたの見解を承り、この三つの問題についての御答弁をいただいて、私の質問を終わりたいと思います。(拍手)    〔国務大臣三木武夫登壇拍手
  18. 三木武夫

    国務大臣三木武夫君) 鈴木君の御質問お答えをいたします。  最初に、強行採決ということを取り上げられて、対話と協調の姿勢に反するではないかというお話でございました。私は、この対話と協調の姿勢というものを変える考えはない。それは保革が接近したからというんでなしに、議会政治本来の姿というものは対話と協調だと私は思っておるわけであります。どうしても今後議会制民主主義を健全に発展さすためには、やはり与野党の共同の責任による相互の協力というものが私は必要だと思います。与党としても単独採決をだれも好んでおる者はないわけですが、しかし、一つのこの議会は会期を持っておるわけです。無制限にやっておるわけでないんで、ある一定の期間のうちに法案の決着はつけなければならぬ。それはやはり政府の立場になったならば、いつまでも自分の反対の法案というものは延ばされて決着がつかないということでは、これはもう議会政治というものは運営が困難になるわけでございますから、やむを得ない場合もある。どうか単独採決しなければならぬ事態に野党の各位も追い込まないように御協力を願いたいと思うわけでございます。自民党は好んでやっておるのではないわけです。  それが一つと、参議院の運営についてどういう考えを持っておるかというようなことを最後に御質問ございましたが、私は、参議院は衆議院と違って六ヵ年という安定した任期をお持ちになっておるんですから……。議会制民主主義というのは世界的に見れば大きな危機だと言われておる。この激動する中にあって議会制民主主義というものが問題を処理していく能力を持つかどうかということが世界的に問われておるわけです。いろいろ迅速に解決しなければならぬ問題に対して、それにこたえ得る能力を議会制民主主義が持っておるかどうかということが問われておる。したがって、やはり何かよい議会政治のモデルになるような姿が参議院の中から生まれてこないか。たとえば法案の審議にしても、いつまでも無制限というのではなくして、当初に審議する時間をあらかじめ決めて、その時間が来たならば、まだいろいろ質問があるとかないとかいうことでなしに採決をすると。あらかじめやはり審議日数を決めて、その時間が来たならば決着をつける。これはイギリスなどにおいても行われて、やはり議会制民主主義というものの健全な発展に役立たしておるわけでございます。これは一つの考え方でありますが、何か議会政治の運営というものはもう少し、時代は激動しておるのですから、この激動しておる時代に適応するような、能率の上がる議会政治の運営はないかということは、今後、議長のもとで参議院の運営については皆さんも非常に御検討願っておるわけでありますから、どうか、われわれも考えますけれども、これは参議院の問題でございますから、各派において、日本の議会政治というものにお手本を参議院は示してもらいたい。良識の府にふさわしい議会の運営をしていただくように、ひとつ皆さんの御協力を得たいと思うわけでございます。(拍手)    〔国務大臣大平正芳登壇拍手
  19. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) まず、巨額の歳入欠陥を招来いたしました政治責任についてのお尋ねでございます。この問題につきましては、財政当局者といたしまして痛いほど責任を感じております。辞任いたしますことが、私にとりましてむしろ簡単な、やすきにつくことでございます。けれども、国民の生活、国民の声を中央、地方を通じての行政水準維持財政を通じてどうやってまいりますかという当面の課題にこたえるところがなければ、責任を果たしたことになりませんので、鋭意その趣旨で勉強いたしておるわけでございます。  それから第二の、第二次補正予算を組むようなことは万々ないと思うがどうだという御質問でございますが、そのようなことはよほどの天災地変がない限りは考えておりません。  それから第三の、特例債を出納返済期の五月三十一日まで発行を認めてくれというこの特例法規定は、年度独立の原則を破るものであって適当でないじゃないかという御指摘でございます。この点につきましては、すでに申し上げておりますとおり、この法律でできるだけ異例中の異例の公債をお願いするわけでございますので、最小必要限度にとどめなければならないと。ところが、三月三十一日まででは、三月十五日の確定申告の結果もまだ明らかでない時期でございますので、その年度における収入の確定額をできるだけ正確に知った上で発行額を決めるというようにさしていただくことが特例債発行する政府のとるべき節度ある態度ではないかという趣旨で設けた規定でございますことを御理解いただきたいと思います。  それから第四番目の御質問は、償還計画についてでございます。そのうちの第一は、百分の一・六の減債定率繰り入れというものは特例債に適当でないじゃないかということ、仰せのとおり心得ております。さればこそ、剰余金全額繰り入れ、または必要な予算繰り入れをあわせて考えまして、特例債償還に必要な資金の積み立てを考えておるわけでございます。  第二の償還計画でございますが、これは大塚委員にもお答え申し上げましたように、十年満期の一括発行でございますので、償還計画といたしましては、国会に御提出申し上げたような償還計画表しかわれわれとしては考えられないわけでございます。ただ、鈴木さんも大塚さんも言われましたのは、償還財源年度別の積み立てということについての御関心であろうと思うんでございますが、それは大塚さんにも申し上げましたとおり、いろいろの減債基金の積み立てを通じまして、償還に必要な資金は特別会計にそのときまでに積み立ててまいるつもりでおります。いわんや、これについて借りかえというようなことは考えていないということもあわせて申し上げておるところでございます。しかしながら、年度別財政展望につきましては、大塚委員にもお答え申し上げましたとおり、政府のいろいろなもろもろの計画ともあわせまして十分念査いたして、逐次いろいろな試算をやり遂げた上で御審議をいただかなければならぬと考えておりますこともあわせて御了解いただきたいと思います。  それから、建設国債特例国債とを同一勘定で整理するのはよくないと、別個に整理すべきではないかということでございます。一つのお考えで傾聴すべき御意見と思いますけれども、政府といたしましては、公債政策全体が国の信用を背景にいたしましたものでございまするし、また積み立ていたしました資金は一括して効率ある運営をしなければならぬというたてまえで、建設国債といわず特例国債といわず、一つの会計の中で処理さしていただく態度をこの上とも貫かしていただきたいと考えております。(拍手)     —————————————
  20. 河野謙三

    議長河野謙三君) 渡辺武君。    〔渡辺武君登壇拍手
  21. 渡辺武

    ○渡辺武君 私は、日本共産党を代表して、昭和五十年度公債発行特例法案について、総理並びに関係大臣に質問いたします。  いま、国と地方自治体の深刻な財政危機国民生活を脅かす重大な原因となっております。政府は、特例法による二兆三千億円もの赤字公債を中心として、予算規模の実に二六・三%にも上る莫大な公債発行して歳入欠陥の穴埋めをしながら、いままでと同様の大企業本位、高度成長型の財政を続けようとしております。このようなやり方が、財政法第四条も明確に定めている健全財政主義に反するものであり、国民の生活破綻を一層激しくするものであることは明白であります。  財政法第四条は、「国の歳出は、公債又は借入金以外の歳入を以て、その財源としなければならない」として、公債発行原則的に認めておりません。また、その第一項で、発行できる公債の範囲をいわゆる建設公債に特定しております。この規定が侵略戦争の戦費を赤字公債の乱発によって賄い、また、このことによって悪性インフレを爆発させたかつての深刻な経験を二度と繰り返さないためのものであり、健全財政主義を政府に義務づけるものであることは、諸学説も一致しているところであります。特例法による赤字公債発行は、財政法第四条の規定を踏みにじるものではありませんか。  政府は、臨時、緊急の場合だからやむを得ないと述べております。しかし、このような口実で、健全財政のとめ金を外すことは、大企業奉仕の政府財政節度を一段と失わせ、今後の公債増発と新たな財政危機の口火となるのではありませんか。このことは、昭和四十年、当時の福田大蔵大臣の手で戦後最初の赤字公債発行が行われて以来、すでに十五兆円にも上る建設公債発行と大企業奉仕の放漫財政が大々的に進められ、その結果が今日の惨たんたる財政危機となってあらわれていることを見れば明白であります。この点についての副総理責任をただします。  また、現に政府は、来年度景気刺激を口実として大規模公共事業を中心とする高度成長型の予算を組み、このために今年度を上回る赤字公債発行を行おうとしているのではないでしょうか。また、さきの予算委員会では、昭和五十五年度公債発行残高は十四兆二千億円、公債依存度実に三三・七%、公債残高七十兆二百億円という恐るべき見通しを述べているではありませんか。これは赤字公債の半ば恒常的な発行の道であり、とめどない財政破綻の道であります。政府は、財政法第四条を忠実に守り、財源を他に求めて、赤字公債発行をやめるべきであります。(拍手)明確な答弁を求めます。  また、公債のこのような大量発行がすでに資本主義国最悪の状態となっているわが国のインフレを一層激しくし、国民生活を大破綻に追い込むことは避けることはできません。政府は、市中消化を徹底させれば大丈夫などと述べております。しかし、その市中消化なるものが金融機関中心の市中消化であって、発行一年後の公債は、日本銀行の買いオペの対象となって通貨増発の要因となること、また、その市中消化を行うために、現在日本銀行引き受けによる大蔵省証券の大量発行で通貨の乱発が政府の手によって行われ、さらに、日本銀行が大量の公債買いオペ、手形買い入れや預金準備率引き下げなどによる大規模な信用膨張政策をとっていることも周知のことであります。これは日銀引き受けによる公債発行禁止した財政法第五条の精神を事実上踏みにじるものではありませんか。政府は、市中消化のこのような実情のもとで、どのようなインフレ歯どめ措置をとるのか、また、公債消化のために現在政策的に行われている日本銀行の過度な信用膨張をやめさせるべきではないか、明確な答弁を求めます。  また政府は、経済バランスがとれているからインフレにはならないなどと述べております。まさに珍論と言わなければなりません。今年度財政公債依存率が異常な規模にあること、国債残高がGNPの一〇・七%に及び、イギリスの四四・七%、アメリカの二八%に次ぐ規模となり、これによる財政インフレーションを主な原因の一つとして通貨供給が年々急増して、ついにあの物価狂乱と今日の不況下のインフレという異常事態を生むに至っていることは、衆目の一致するところであります。政府は、実質GNPの伸び率などを基準として通貨・信用の供給量を規制し、公債発行もこの範囲に制限するという、西ドイツなどにも例のある措置を最低限採用する意図があるか、答弁を求めます。  さらに、大量の公債発行がまた国民にとってたえがたい重税への道であることも議論の余地はありません。すでに今年度一兆一千億円、実に住宅対策費、生活環境整備費、農業基盤整備費の合計額に匹敵する公債費が利子と元金の支払いのために国民の税金から大銀行などに支払われています。今後この公債費が財政の重要部分を占めて、国民の税負担をますます重くすることは明白であります。政府は今後の増税を公言しておりますが、五十二年度からの付加価値税制の採用を企てているのではないか。この最悪の大衆課税の採用はやめるべきではないか、答弁を求めます。  現在、わが国の経済は深刻な不況インフレ、環境破壊、エネルギーと食糧の危機など、欧米諸国にも類のない危機に襲われております。これが戦後三十年、歴代自民党政府のアメリカ従属、大企業奉仕の政治のもたらしたものであり、その総決算であることは言うまでもありません。ところが総理は、この責任を反省するどころか、経済政策に過ちはなかったなどと開き直り、逆に今後の財政運営基本として、インフレと重税、公共料金と社会保険料の全面的な引き上げ、地方財政圧迫など、国民の犠牲をさらに強めながら、依然として大企業奉仕の高度成長政策を強行しようとしております。まさに亡国の政治と言わなければなりません。今日の危機を打開する道は、このような政治の根本的な転換以外にはありません。政府にこの決意があるかどうか、答弁を求めます。  わが党は、財政危機を打開するためには、何よりも大企業優遇の公共事業費や補助金、軍事費や新植民地主義的な対外援助費など不急不要の支出を徹底的に削ること、また歳入確保のために、大企業、大資産家に対する特権的減免税制度を改廃し、財政投融資など資金の流れを国民生活改善と地方財政安定に振り向けることなどを主張してまいりました。そしてこの立場に立って、今国会にも、利子・配当分離課税や有価証券取引税の税率の引き上げ、法人税還付の停止など、実現可能な措置を法案として提出してまいりました。これらの政策を実行しさえするならば、赤字公債発行は全く必要でないことを重ねて強調して私の質問を終わります。(拍手)    〔国務大臣三木武夫登壇拍手
  22. 三木武夫

    国務大臣三木武夫君) 渡辺君の御質問お答えをいたします。  今回の特例公債発行財政法第四条を踏みにじるのではないかというお話でございましたが、われわれはさようには考えておりません。第四条に抵触するものではないという考えでございます。まあ御承知のように、景気が予想以上に停滞をいたしまして税収減少したと。やはり、しかし他方、経済の現状から見れば、国債追加発行して財政面からの需要維持、拡大を図ることが適当と考え特例公債発行に踏み切ったわけでございます。他に財源と申しましても、この場合に一般的な増税をする時期でもないし、また、歳出の大幅削減をすることもこれは適当ではございません。しかし、この特例公債依存する財政というものは、本来あるべき姿ではないわけでございますから、特例公債によらないような財政に一日も早く復帰できますよう今後努力する所存でございます。  他の質問関係大臣からお答えをいたします。(拍手)    〔国務大臣福田赳夫君登壇拍手
  23. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) 私が昭和四十年に大蔵大臣に就任し、公債発行の端緒を開いたと。確かに私の大蔵大臣のとき公債発行に踏み切ったわけです。四十一年、四十二年多額の公債発行いたしました。そのとき皆さんから公債発行したら大変だと、これは日本経済を崩壊させるというような厳しい議論があったんですが、私は、先ほど大塚さんに申し上げましたように、公債は節度を持って発行いたしますれば、これは非常に有効な財政運営手段である、経済運営のために重要な手段となる、こういうことを申し上げたんです。事実、その後どういうふうになっておるか。四十二年から経済は立ち直る。あの四十年不況、これはまあ深刻な状態であったわけでありまするが、それから完全に立ち直りを見せたわけであります。自来順調過ぎるほどの順調な成長である。しかも、その間におきまして一体国際収支はどうか。これはまあだんだん、だんだんと厚みを増してくる。それから物価はどうだ。ずっと卸売物価横ばいであったじゃありませんか。そういう中において財政はどうだというと、財政の運営、節度よろしきを得まして、四十三年から公債は漸減をしてまいりました。そして四十六年、この予算を編成する際には、その公債依存度が実に五%を割るというような状態になり、野党の皆さんから、そのくらいならもう公債発行やめたらどうかと、こういう議論さえあったんです。私はそれに対して、公債発行することはやめない、これは一度やめちゃうと、また発行することがある場合に、またさまざまの議論が出てくると、そこで、火種としてこれを残しておくんだということまで私は言ったんです。そういうような状態でありまして、私は、公債発行は、先ほどから申し上げておりまするとおり、これはその運営、財政の運営、経済の運営、節度を持ち、よろしきを得ますれば、これは頭から害毒であるというふうには考えません。私どもはこの公債発行いたしまするけれども、先ほど申し上げましたとおり、これは経済とのバランスにおきましても、これはもう十分注意します。また同時に、その発行した公債の完全消化、市中消化、これにつきましても完全にそれができるようにいたします。それからなお、御指摘日本銀行のオペレーション、これにつきましても十分配意すべきことはもちろんでありまして、この公債というものを発行いたしましても、これが直ちにインフレの根源になるというふうには考えておりませんです。(拍手)    〔国務大臣大平正芳登壇拍手
  24. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) 第一の御質問は、公債インフレとの関係でございました。私ども、いま副総理仰せになりましたとおり、公債発行が直ちにインフレにつながるものとは考えておりません。現在のようにデフレギャップが激しいときでございまするので、公債発行を通じまして需要維持、喚起してまいることは、インフレを招来するものとは考えておりません。しかし、渡辺さんも言われますように、この公債発行の限度を誤りますとインフレにつながることは申すまでもないことでございまするので、経済との均衡を考え発行をいたしました公債市中消化に努めまして、節度ある財政の運営と金融政策の運用によりまして御心配のないように配慮してまいらなければならぬと考えております。  また、日銀を通ずる通貨の供給、信用政策でございまするけれども、副総理仰せになりましたように、政府といたしましても、日銀と協力いたしまして適正な通貨の供給に留意いたしますけれども、これが過度にわたることのないように配慮してまいることは当然と思っておりますが、その場合にその歯どめといたしまして、公債発行の限度あるいはM2供給の限度とGNPの間に機械的な枠を設けるということは考えておりません。  それから第二の問題でございますが、渡辺さんの属する政党からはたびたび、財政運営公債政策との関連におきまして、支出の削減あるいは歳入の確保についての御提言がございます。私どもと見解は異にいたしますが、私どもといたしましても、歳入歳出全体にわたりましていま厳正な見直しをいたしておるところでございまして、現に明年度税制改革に関連いたしまして税制調査会に御勉強を願っておるわけでございますが、あなたの言うところの付加価値税を採択するというところまで政府はまだ決定をいたしておりません。(拍手
  25. 河野謙三

    議長河野謙三君) 答弁の補足があります。三木内閣総理大臣。    〔国務大臣三木武夫登壇拍手
  26. 三木武夫

    国務大臣三木武夫君) 渡辺君から、日銀信用が金融市場状況に応じて金融調整のために供与されているわけでございまして、国債の消化のためではないので、渡辺君の御指摘のような、日銀が信用膨張政策をとっているというふうな御非難は当たらない。今後とも日銀とも連絡をとって金融調整を適切に行っていきたいと考えております。  大蔵証券は年度内の国庫の資金繰りのために発行されるものであり、日銀の引き受けによる発行も許されておることは御承知のとおりでございます。  最後に、共産党からいろいろと政策の御提示がございますが、まあ私、正直に申して、大体において賛成できないことが多いということでございます。しかし、既定の経費とか制度について厳しい見直しを行って、国民の福祉の向上国民の生活の安定を中心の目標にして財政運営を行うという考え方でございますが、個々の問題については、共産党と遺憾ながら意見の違う点が多いということを申し上げておきます。(拍手)     —————————————
  27. 河野謙三

    議長河野謙三君) 栗林卓司君。    〔栗林卓司君登壇拍手
  28. 栗林卓司

    ○栗林卓司君 私は、民社党を代表して、ただいま議題となりました昭和五十年度公債発行特例に関する法律案について、総理並びに関係大臣にお尋ねをいたします。  この法律案は、かねて生活の先行きを心配する国民各層から早期成立が強く要望されてまいりました。審議が効果的に促進するよう政府の真剣な取り組みを求めておきます。  この審議を通じて民社党として明らかにしたいのは、一つは政治責任の問題であり、二つには財政危機克服に関する政策の問題であります。民社党は、政府歳入欠陥を認めるに至る以前から警鐘を鳴らし、財政法の抜本的改正を主張し続けてまいりました。経済安定的成長を図るためには、多年度にわたる財政の調整と計画的運用が必要不可欠であると考えたからであります。これに対し現行の財政法は、単年度の収支が均衡すればよしとするだけであり、赤字が出たときの処理についても全く規定がありません。そして、わずかに事実上建設公債が安全弁の役割りを果たしているにすぎません。経済の高度成長から安定成長への移行という困難な課題に取り組むにしては、欠陥のある財政法規であると言わなければなりません。しかし、悪法もまた法であります。現行の財政法赤字決算を全く許しておりません。したがって、赤字決算を招くような行政は、財政法に照らして見る限り全く不当であり、違法的行為であるとさえ言えるでありましょう。しかも政府は、赤字対策の安全弁として使える建設公債発行可能限度をはるかに超える赤字を出してしまったのであります。赤字の処理を問う前に、赤字を出してしまった行政の違法性がまず問題とされなければなりません。私は、今日の状況は単に財政危機であるばかりでなく、社会そのものの危機でもあると思います。政府が声を強めて法秩序の重要性を訴えているのもそのためではありませんか。振り返ってみると、マレーシアのクアラルンプールで起こった事件に対し、政府は法律を無視し、超法規的処理をいたしました。また今回の大幅な財政赤字に対しては、超財政法規的処理で対処しようとしております。個々の事象について見ると、それぞれやむを得ない面があったとしても、同時に、そこで踏みにじられた法律に対する政治的責任がないがしろにされてよいというものでは決してありません。何ら責任を明らかにすることなしに、超法規的処理が何度も許されていくということになれば、法秩序に対する国民の感覚も次第に麻痺していくことになるのではありませんか。悪法もまた法であるとは、きわめてかたくなな論理であります。しかし、そのかたくなさを身をもって実践することが政府の責務なのではありませんか。かつて同様の事態に直面したエアハルト内閣が敢然と責任をとって総辞職し、このことが西ドイツの財政再建の大きな起動力となっていったことをしのびながら総理見解を伺います。  次に、特例公債発行と、その影響についてお尋ねをします。  特例公債発行しても、日本銀行が直接引き受けなければインフレ心配はないと一般に言われております。しかし、この見方は、もう一つの重要な側面を見落としております。市中消化の場合でも、市中の金融機関が引き受けた場合には、回り回って結局赤字公債発行高の相当な部分金融機関の預金となっていくわけでありますから、赤字公債発行に伴って金融機関の預金もふえてまいります。言いかえれば、資金の供給が増大するわけであります。そしてこの傾向が顕著になると、常に物価影響を及ぼし、物価上昇を招いてきたのが従来からの例であります。今年度及び来年度における国債地方債の発行高を考え、しかもそのほとんどが市中金融機関の引き受けに頼っている現状を思うと、日銀引き受けの有無にかかわらず、われわれはいまや大きなインフレ要因を抱えたと言わざるを得ません。  これを回避する対策の一つは、日銀による金融引き締めであります。しかし、それができるような環境ではありません。逆に、公債発行が市中金融を圧迫することがないよう日銀貸し出しをふやさざるを得ないのが実情だと思います。また、不況対策という本来の目的から言っても、日銀金融緩和政策を進めざるを得ないのではありますまいか。したがって、引き締めどころか、日銀貸し出し、あるいは市場操作を通じて、この面からもインフレ要因が増大することを警戒しなければなりません。  残されたもう一つの手段は、市中金融機関の引き受け割合を極力下げ、個人消化の割合を思い切って高めることであります。国民にとって魅力のある発行条件整備することが中心的課題であることは申し上げるまでもありません。これは市中金融機関にとって決して好ましいことではないと思います。しかし、いまやお互いにかきねを意識し、かきねを守りながら切り抜けていけるほどなまやさしい危機ではないはずであります。むしろ特例公債発行を契機として、金融機関のあり方に根本的にメスを入れる時期を迎えたと理解すべきであります。  以上、これまで述べてまいりましたことを踏まえながら、特例公債発行物価への影響について副総理に、金融市場への影響及び公債個人消化の問題について大蔵大臣にお伺いをします。  次に、特例公債発行の歯どめと償還の問題について大蔵大臣お尋ねをします。  今年度は二兆円を超える特例公債発行を予定しております。果たして消化し得るか否かは今後の経験に待つ部分が相当あると思います。たとえば新聞報道を見ても、「大量国債、住宅ローンも圧迫、新規貸し出し急降下」、あるいは、「自治体の需要急増、地方銀行資金繰り急速に悪化」などの見出しを探すことは大してむずかしいことではありません。ところで、市中に思ったほど消化能力がない場合、大臣としてどうされますか。それでも予定した額は発行するという態度をとった場合、現実の消化能力との差は、結局は日銀依存せざるを得ません。一方、特例公債歳出予算の裏づけであるわけですから、一度決めてしまったら、市中に消化能力があろうとなかろうと発行せざるを得ません。特例公債の最低限の歯どめは日銀引き受けにしないということだと思います。しかし、その歯どめを守るためには、市中の消化能力よりも内輪の公債発行をすること、すなわち、消化能力を超えるような予算は組まないということだと思います。したがって、歯どめの問題は、最終的には市中の消化能力に対する政府の判断と見通しの問題に帰着します。この意味で、まず大臣の判断と見通しを伺いたいと思います。  次の歯どめとしては、政府財政計画の一環としての公債償還計画の問題があります。政府は、特例公債に関して借りかえはしないとたびたび言明しております。しかし、その真意はしないのではなくて、したくないということではありませんか。確実な裏づけなしに、十年先のことだからといって軽々しく約束することは、約束という言葉の意味の重さに照らして私は賛同できません。それとも自信があると言われるなら、裏づけのある償還計画国民に示すべきであります。  最後に、重ねて伺います。  特例法の問題も、財政再建の問題も、縮めて言えば、所得税や法人税が満足に取れないようになってはどうしようもないということであります。その意味で、いま求められているのは、増税なのでしょうか、減税なのでしょうか。景気がよいときには減税、不況のいまは増税というのは、余りにも平仄が合わないとお考えになりませんか。この点を最後にお尋ねして私の質問を終わります。(拍手)    〔国務大臣三木武夫登壇拍手
  29. 三木武夫

    国務大臣三木武夫君) 栗林君にお答えをいたします。  法律は、自分の立場から悪法であると思っても、現存する限りは法律を守らなければならぬということは全く同感でございます。そうでなければ社会の秩序は維持できるものではございません。ところが、それと関連して、今回の特例法案に対していろいろと御批判がございましたが、財政法で対処できない事態が生じましたので、特例法を出して、こうして御審議を願っておるわけでございますから、それが法律を尊重するという精神に背くものではなくして、むしろ法律を尊重したいという念願からこういう特例法の御審議を願ったわけでございます。財政の持っておるこの景気調整機能と申しますか、それを発揮いたすためにも、どうしても特例法によって国の歳入を図らなければならぬ必要が起こったことは、栗林君も御理解を願えると思うのでございます。  私に対する御質問お答えをいたします。(拍手)    〔国務大臣福田赳夫君登壇拍手
  30. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) 栗林さんから、特例信の発行に対しまして深い御理解をお示しくださいまして、感銘深く拝聴したのですが、同時に、そういう前提ではあるものの、まあ国債発行をいたしますと、インフレとの関係において、諸種の憂うべき問題がある、これに対するいろんな御所見、私は全く同感でありまして、そのとおりの私どもも心配はいたしておるわけであります。要するに、市中消化原則を貫かなきゃならぬと、御所見のとおりであります。また、市中消化と申しましても、個人消化、これに努力せいと、これは非常に大事なことだと、さように考えております。  それからさらに、市中消化が完全にいきましても、日本銀行のオペレーションが誤ると大変だ、こういう御所見、これにつきましても、先ほども申し上げましたが、深甚な注意を払っていかなきゃならぬ。経済の動向を見、物価、国際収支、さようなものとにらみ合わせましてこのオペレーションというものは適正にやっていかなきゃならぬ。日本銀行と協力いたしましてそのようにいたす考えでございます。(拍手)    〔国務大臣大平正芳登壇拍手
  31. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) 私に対する第一の質問は、公債発行金融機関金融市場との関係についてでございました。仰せのように、今回のように大量の公債の消化を金融市場にお願いする場合におきまして、民間の資金を圧迫する、あるいは金融機関の経営に制肘を加えるというようなことがあってはいけないわけでございますが、その点につきましては十分配慮していかなければならぬと思っております。幸いにいたしまして、この四月から九月までの都市銀行の状況を見ておりましても、金利の利下げは公定歩合の利下げに並行いたしまして約四四・二%実効金利が下がってきておるわけでございまして、また、財政資金の散布が豊富でございます関係もございまして、ただいままで民間資金を圧迫しておるという報告には接していないわけでございます。今後十分注意してまいりたいと思います。  それから、第二の個人消化の問題でございます。今日までわが国の国債は約七、八%が個人消化されておるわけでございまして、大部分金融機関あるいは資金運用部が保有しておるということでございます。わが国は、特異な制度といたしまして郵便貯金制度がございまして、国民の資金が二十一兆余にわたりまして郵便貯金の姿で蓄積されてまいっておりまして、それを通じて国債が消化されるという間接消化の方法でございますので、純粋の個人消化というのは、直接の個人消化というのが七、八%にとどまっておるわけでございます。しかし、私ども、せめてこういう制度のもとにおきましても、個人消化を大量発行のもとにおきましても約一割程度は確保しなければならないという方向でいませっかく施策をいたしておるところでございます。したがって、国債市場整備の問題、発行条件の問題等をそういう角度からいま検討をいたしておるところでございます。  それから、第三の問題として償還計画についての御質問でございました。償還計画償還能力の問題は、申すまでもなく経済力の回復を待つ以外に手はないわけでございます。したがって、私どもは経済の回復という当面の要求に対応いたしまして財政政策考えなければならない立場でおりますことは、御理解いただけると思うのでございます。しからば、現実にこれだけの公債発行を予定いたしまして、どういう状況かと申しますと、シ団との話し合いというのはただいままで順調に進んでおるわけでございまして、格段の支障は生じていないわけでございます。また、申すまでもなく、仰せのとおり、財政計画が適正であり、節度ある財政運営態度が堅持されて、しかも経済力の回復が同時に進行してまいるということで初めてわれわれの償還財源が確保され、償還計画が実行されるわけでございます。仰せのとおりでございますので、そういった点につきましては、財政運営基本といたしまして、公債政策に関連いたしまして、全力を挙げて努力してまいるつもりであります。(拍手、「答弁漏れだ」と呼ぶ者あり、その他発言する者多し)  失礼いたしました。  いま求められておるのは増税か減税かという御質問でございました。私どもといたしまして、いま増税をお願いできるような経済状況であるとは考えていないわけでございます。したがって、一般的な法人税、所得税等の増税をもくろんでおるわけではございません。しかしながら、今日の財政状況は、一般的減税を考えるという余裕が与えられておる状況でもないと判断いたしておるわけでございます。そのあたりの事情は十分御理解を賜りたいと思います。(拍手
  32. 河野謙三

    議長河野謙三君) これにて質疑は終了いたしました。  本日はこれにて散会いたします。   午前十一時五十六分散会      ——————————