○栗林卓司君 私は、民社党を代表して、ただいま
議題となりました
酒税法及び
製造たばこ定価法の一部を改正する
法律案について、総理並びに
大蔵大臣にお伺いをします。
三木内閣が発足以来ほぼ一年が経過いたしました。
国会としてこの一年間を振り返ってみると、実りのない不毛の一年間だったと言わざるを得ません。その中にあって、
国会の正常な
運営を阻害し、健全な機能の発揮を求める
国民の願いの前に立ちはだかったものがこの酒、
たばこ法案であります。
強行採決をし、廃案となり、再び再提出され、再び
強行採決され、担当大臣及び当該
委員会の
委員長の問責、
解任の争いを重ねたあげくの果ての
審議であります。この
法案が一月三十一日に
衆議院に提出されて以来今日まで実に三百十八日間であります。この過程を振り返り、
政府としてどのように反省されているのか、まず総理に伺いたいと思います。
総理はたびたび、
議会制民主主義とは与
野党の話し合いであり、
反対と決めたら
最後まで
反対、廃案の闘いというのは間違っていると主張されてきたと思います。この点に関して異論はありません。しかし、この三百十八日間を振り返って、果たして話し合いを前進させるための
努力を
政府がしてきたとお考えになりますか。
酒、
たばこの
値上げ法案が
衆議院に提出される前日の一月三十日、
昭和四十八年度歳入歳出の決算上の剰余金の処理の特例に関する
法律案が
国会に提出されました。長たらしい名前の
法律であります。事務的な処理のように聞こえる
法案ですから、総理はとうてい覚えておられないと思います。この
法案の内容を簡単に申し上げると、決算をしてみたらお金が予想以上に余った、本来ならその半分を国債の償還に充てなければならないのが
法律の規定だが、国債の償還に半分持っていかれるのはもったいないから、その割合を減らして、ことしたくさん使わせてほしいという内容でありました。
赤字国債の償還に四苦八苦し、剰余金の全額を償還
財源に充てようとしているいま現在に比べると、まさに隔世の感のするところであります。しかし、とにかくこうした雰囲気が酒、
たばこ値上げ法案が初めて
国会に提出された当時の状況でありました。渋いことでは名の高い
政府でさえ、春の賃金上昇率を一七%強と踏んだのであります。そしてもし物事がそのとおり進んでいたとしたら、酒、
たばこをのむ人が応分の
負担をしてくれないかという
政府の主張も説得力がないわけではなかったのであります。
先ほどの長たらしい名前の
法律案は、三月十四日に
参議院で可決されました。これに先立って、われわれが、「いまや歳入欠陥の予想される経済情勢である、決算をしたら金が余ったから使ってしまおうということで済むのか」と
質問をしたときに、
大蔵大臣のお答えは、「実はそのような経済情勢のことは全く念頭に置かずにつくった
法案でした」と、率直な答弁でございました。以来三百十八日、いまやわれわれは、打って変わって、何と二兆円を超える
赤字国債の処理に頭を痛めております。これほどの激しい変化にもかかわらず、酒、
たばこの
値上げ法案が郵便料金の
値上げ法案とあわせて微動もせずに生き長らえているということは信じがたいと言わざるを得ません。仮に百歩譲って考えるとしても、この
法案に対する
政府の説明が、一月三十一日の時点でも十二月十三日のきょうでも、その基本において全く変化がないというのは一体どういうことでありますか。一月三十一日当時のほのぼのムードと、いまやがらり変わって、家計も
赤字、企業も
赤字であります。しかるに、
政府の説明は一貫して変わることなく、これを一言で要約すれば、「税金が足りないからよこせ」、これだけであります。一体、これで
審議になりますか。いま
野党が求めているものは、経済情勢の激しい変化に対する
政府の対応と、その中における増税問題の的確な位置づけであります。それを明らかに示すことなしに、与
野党間で話し合いが進展するとお考えになりますか。総理としての御所見を承りたいと思います。
この三百十八日間を、
国民の
立場として、庶民の
立場として振り返ってみると、こんなに無残な三百十八日間もなかったと思います。一体、何度買いだめに走らされたことか、そして何度
たばこをかびさせたことか。総理にお尋ねをします。酒税にしても、製造
たばこの定価の問題にしても、提案権は
政府にあります。その
政府が、
国民が買いだめに走らざるを得ないような大幅な上げ幅を設定することが正しい
政治のあり方と言えるでありましょうか。もともと酒、
たばこの税とは人間の弱みにつけ込んだ税制であります。それを買いだめに走らなければならないほど大幅に
引き上げるということは、家庭の平和をも乱すものとお考えになりませんか。前
国会の
公聴会において、たしか山梨県からだったと記憶しておりますが、公述人として出席された家庭の主婦の方がこう言われておりました。「
値上がりをしたからといって、のむ量を減らせとは主人には言えません。家計のやりくりはいたしますが、しかし、
値上がりはこれが
最後なのでしょうか。それとも、これからもあるのでしょうか」。その言葉を思い出しながら、
値上げ幅に対する
政治的配慮の問題について総理の所見を求めたいと思います。
続いて、
大蔵大臣にお尋ねします。
これまで
政府が繰り返してきた主張の中に、「小売
価格に占める税の割合、すなわち
負担率で見ると、酒の税も
たばこの税も七年間に大幅に低くなってしまった。今回の増税はこの
負担率の低下を調整しようとするものである」という説明でありました。しかし現在、酒にせよ、
たばこにせよ、税制の中心は従量税、すなわち、値段はどうであろうと、税金は物の量に従ってかけるという方法であり、したがって、値段が上がれば税金の割合が減ってあたりまえという仕組みであります。この仕組みを決めたのは、ほかならぬ
政府であります。それがここに来て、税の
負担率が下がるのはおかしい、七年間のツケを返せと言われたのでは、
国民はうろたえるしか仕方がないのではありませんか。物の量に応じて税金をかけるのは従量税、値段にスライドして税をかけるのが、
価格に従うという意味で従価税と言うのだそうであります。しかし、値段に比べて税金の
負担率が下がるのが気に入らないのなら、なぜ最初から従価税にしないのでありますか。その方が七年間のツケをまとめて要求されるよりもはるかにましであります。しかも、問題なのは、制度として従量税をとりながら、
政府の期待としては従価税である点にあります。このことは、いつの日か再び酒、
たばこの増税に
国民が直面するということであります。百歩も二百歩も譲りながら
政府の
立場に立って考えた場合、そしてまた、先ほど述べた
値上げ幅の持つ
政治的意味合いを考えた場合、大体七年間もほうっておいたことに
最大の問題があると言わなければなりません。七年間もほうっておけたのなら、八年間ほうっておいてなぜ悪いか、そういう私の
質問に対し、
公聴会に出席された
政府税制調査会の先生の御答弁は決して明快ではありませんでした。もっとも、あれほど自然増収が出たのですから、酒、
たばこ税の修正をしたくてもできなかった、そういう
趣旨の御答弁ではあったわけですから、巨額な自然増収を使いまくってきた
政府の態度と思い合わせて、きわめて明快に
問題点を指摘されたのかもしれません。しかし、いずれにしても、問題は今後であります。これからも物価の上昇に見合って定期的に増税をされますか。またそのたびに一年にわたって
国会を空白にしないために、どのような配慮をしようとされるのか、お伺いをしたいと思います。
続いて総理にお尋ねをします。
先ほど御紹介した
公聴会における主婦の公述人の方が痛切に訴えられたのは、こういうことでございました。「家庭の主婦として一番困るのは、個々の物価の
値上がりではありません。それよりも将来の見通しです。ある品物がこれから上がるらしいといううわさを聞いただけで家計簿が狂ってまいります。個々の
値上がりはないにこしたことはありませんが、きょうの問題よりも、これからの見通しについて、早目にはっきりと教えてもらった方が家計を預かるものとしては助かるんです」と言われておりました。まことにもっともな御
意見だと思います。
もっとも、個々の
価格について将来の確実な見通しを求められても、統制経済でない以上、
政府としては立ち往生せざるを得ません。そこで物価の上昇率の目標をパーセントで示すにとどめ、各論に立ち入ることを避けてきたのがこれまでの
政府の
立場だったと思います。しかし、物価政策といえ
ども、総論と各論があるはずであります。その各論に立ち入ることが
政府として本当に不可能なのか、
努力と工夫の余地が全くないのか。
政府は物価上昇率の目標を示していると言われるかもしれませんが、それはいわば総論の見出しであります。パーセントの数字を眺めただけでは、
政府が構想している総論さえわれわれは読み取ることができません。このことが、酒、
たばこの
値上げが物価に及ぼす
影響について議論が空回りしてきた大きな原因であったと思います。
これからの物価
対策を考えると、第一に、卸売物価の上昇が消費者物価に波及する度合いをいかに低くするか。これは、
中小企業を守りながら流通をいかに合理化していくかという、古くて新しい問題であります。第二に、生産部門における生産性向上の
努力を通じて卸売物価を引き下げる条件をつくり、やむを得ざる
値上げとならしながら、平均的物価水準の安定をどのように図っていくかであります。第三には
公共料金の問題、第四には税制と物価との関連の問題などであろうと思います。そのいずれも
政府の具体的施策と結びついた問題であります。そうである以上、
政府は物価政策の各論に勇敢に踏み込み、政策と効果の展望を明らかにする義務があるのではありませんか。
政府はたびたび、物価政策の総論の問題として新
価格体系への移行の必要性を主張してきました。しかし、それを主張するなら、同時に各論を明らかにすべきであります。それなしに、いたずらに新
価格体系移行論を打ち上げることは、生産性向上の
努力もせず、怠慢な経営の結果を物価に転嫁する動きに口実を与えるばかりか、家庭の主婦を不安と混乱に追いやることになるのではありませんか。
OECDの経済報告は、今日における
不況対策の中心は個人消費であり、その核心となるものは心理的要素であると主張しております。この意味からも、いわゆる新
価格体系移行論と今後の物価政策の各論の見通しをお尋ねしておきたいと思います。
次に、前
国会で廃棄となった酒、
たばこの
法案を再び
国会に提出した
理由について
大蔵大臣にお伺いをしたいと思います。
この問題について
政府はこれまで、「五十年度の歳出を賄う
財源としてすでに歳入予算に組み込み済みのものである、すでに成立している予算の裏づけとなっている
法案であるという意味で、まずその早期成立を図ることが必要だ」と強調してまいりました。しかし、この主張が正しいとすると、
国会では予算案が通ってしまえば、歳入関係
法案については自動的に承認する義務がある、修正することも許されないということになるのでありましようか。
近来、長きにわたって
政府は予算案の修正に応じたことはありません。修正に応ずることは政権政党のこけんにかかわると言わぬばかりに原案どおり押し切ってまいりました。そして予算案が通ってしまえば、関係する歳入
法案について一切手を触れてはいけないと言われるのなら、
国会の存在も
野党の存在も要らないということになりませんか。それくらいなら、
政府は歳入
法案を
国会へ提出しなければよろしいのであります。恐らくそうした気持ちも強いのかもしれません。それにもかかわらず
政府が
国会に提出してくる本当の
理由は、憲法三十条「國民は、
法律の定めるところにより、納税の義務を負ふ。」、憲法八十四条「あらたに租税を課し、又は現行の租税を變更するには、
法律又は
法律の定める條件によることを必要とする。」という憲法の規定であります。歳入
法案とは、憲法三十条、八十四条にかかわる
法案という意味であります。このように考えてくると、予算が通ったのだから歳入
法案も通せという理屈の立て方はどこか基本的なところで間違っているのではありませんか。しかも、歳入
法案は、一度
国会で通ってしまえば、次の機会に改正がされない限り、永続的に
国民の義務を構成していくものであります。単に五十年度予算とだけかかわり合っている問題ではありません。その歳入
法案である酒、
たばこの
値上げ法案に対し
国会は廃案という処理をいたしました。したがって、
政府としては
国会の処理を尊重し、予算を減額補正する義務があったのではありませんか。しかし、それをせずに重ねて同じ
法案を提出してきたということは、
政府として
国会に対し拒否権を発動したという意味にほかなりません。しかし、日本国憲法は、
政府がそのような態度をとることを全く予定しておりません。そこで規定しているのは、憲法四十一条における国権の
最高機関としての
国会の地位の明示であり、八十三条による
国会中心の
財政主義であります。もっとも
政府は、そのような小理屈よりも、
不況の実態を見詰めてほしいと言うかもしれません。景気刺激型の予算が求められているときに、減額補正など考えられないと主張されるかもしれません。そこで予算の運用上の問題として、酒、
たばこの
値上げ法案が廃案になったことが自動的に歳出予算の削減に結びつくのかどうかという角度から重ねて伺いたいと思います。
昭和五十年度予算で見込んだ酒、
たばこの増税額は三千五百七十億円であります。したがって、廃案の結果、歳入総額の面でもきっかり三千五百七十億円の歳入不足が出るかといえば、決してそうではありません。歳入予算はしょせんは見積もりでありますから、当たり外れが当然あります。そして、
赤字決算を許さない
財政法のたてまえから、見積もりはかた目かた目にしてきたのが従来からの例であります。したがって、年度末には数千億円の剰余金が出るのが通例であります。二兆円を超える
赤字公債の発行に当たり償還計画を求められながら、わりあいに
政府が平然としているのも、今後も剰余金が相当の額で発生することを知っているからであります。このこととあわせて考えれば、酒、
たばこ値上げ法案不成立に伴う歳入の減少三千五百七十億円は、いわば誤差の範囲内であります。歳出を自動的に削減する必要性は大きなものではなかったのではありませんか。それにもかかわらず、
政府がこの
法案の成立にこうまで固執した
理由は何か。その一つは、言葉を選ばずに言えば、歳入予算の組み間違いであります。すなわち、仮に景気が悪化せず、
政府の予想どおりの増税が入ったとしても、なお八千百四十億円の歳入不足を出さざるを得ないという基本的な欠陥を抱えた歳入予算であったことであります。その原因は、前年度の歳入の見込み違いであったと言われております。この意味で、今年度の歳入予算は、酒、
たばこ値上げ法案の成立、不成立にかかわらず、景気動向のいかんにかかわらず、
赤字予算であることを運命づけられた予算であったと言わなければなりません。
政府はこの点について、
責任の所在とあわせて
問題点を
国民の前に明らかにすべきでありました。そして、間違いは間違いとして予算を修正すべきではなかったのではありませんか。
次に、
値上げ、すなわち増税の適否について幾つかの点をお尋ねしたいと思います。
最初に総理にお伺いします。
今回の
たばこ値上げの
理由として、原料代の
値上がりとあわせて人件費の上昇が挙げられております。ところで総理は、人件費が上がったのなら
値上げもやむを得ないという
立場をおとりになるのでございますか。申し上げるまでもなく、物価の安定を求める
立場から言えば、賃金上昇率は生産性の平均的上昇率の枠内にとめるべきだというのが正しい態度だと言われております、言いかえれば、人件費の上昇を
価格に転嫁してはいけないということであります。そして、その
立場に立って民間を指導すべき
政府が、おひざ元の公共企業体については人件費上昇の
価格転嫁を認めるというのはどういうわけでありますか。民間の場合、たとえばことしの一−三月で見ると、卸売物価は前期比で二・八%下がっております。その内訳を見ると、人件費の面では一・九%の
値上げ要因であります。これに対し需給関係の面では四・一%の
価格引き下げ要因となっております。すなわち、人件費を考えれば一・九%
値上げをしなければ採算がとれないが、需要が冷え切っているので逆に値段を二・八%下げなければいけなかったということであります。このような状況のもとでも民間部門が歯を食いしばってがんばってきたことが物価鎮静化の大きな要因であったと思います。これに対し公共企業の場合には、なぜ賃金上昇が
値上げを正当化する
理由になるのでありますか。社会的公平という観点からも
政治の基本に触れる問題だと思いますので、総理の見解をお尋ねしておきます。
次に、
大蔵大臣にお伺いをします。
たばこの
値上げをするとして、いま
専売公社の経営は
赤字でございますか、黒字でございますか。至って愚問でありますが、単純明快な説明を伺っておりませんので、この際お伺いをしておきたいと思います。これまで納付金率を六〇%としたいという説明は何度も伺いました。その数字は単に
政府と
専売公社の間の申し合わせであり、いわば経営
努力を求めるための指標のように思えるだけに、本当の性格がよく理解できません。もし
政府が納付金率六〇%の確保に強い期待を持っているのなら、公社経営のいかんにかかわらず義務的納付金率として取り立て、だれの目から見ても公社の経営が
赤字であることを明らかにしたらいかがですか。
国民の理解を得るためにも、
専売公社の経営を引き締まったものにするためにも、その方が得策だと思いますが、御所見を伺います。
続いて、
専売公社の経営について二、三の点をお尋ねしておきます。
昭和四十九年度の日本
専売公社損益計算書を見ると、販売費として四百十六億円が計上してあります。しかし、
たばこ事業は文字どおりに専売であります。したがって、
国民としては
専売公社から
たばこを買うしか仕方がないのですから、これほど楽な商売はありません。それなのになぜ年間四百十六億円もの販売費が必要なのでありますか。年間の売り上げ総利益が四百五十三億円でありますから、ほぼ利益の額に匹敵する販売費をつぎ込んでいる勘定であります。
理由を聞くと、一つ目は運賃、二つ目は販売員の人件費が大きいということでありました。
たばこの小売店に届ければ済む仕事なのに、なぜ販売員を置くのかと聞きますと、
国民の皆さんになるべく高い
たばこをのんでもらいたい、公社の営業成績を高めたいというのであります。しかし、われわれは好きな
たばこがのめればよいのであって、高い
たばこをのもうが、安い
たばこをのもうが公社の知ったことではありません。しかも、高い
たばこをのんでもらいたいと言いますが、今回の
たばこ値上げについて、
国民生活への
影響を訴えたら、それなら安い
たばこにかえればよいと言ったのはどこのだれでありますか。販売費四百十六億円といえば、
たばこのみ一人当たりにして千円強であります。われわれがそのような費用まで
負担しなければならない
いわれは全くありません。
次に、補償金及び交付金という項目を見ると、年間六十七億円の費用が計上されております。内容を聞くと、葉
たばこ耕作者がたとえば乾燥小屋をつくる場合に補助金として支給しているのが多いという説明でありました。しかし、乾燥小屋にせよ、何にせよ、耕作者の資産であります。実情に照らして援助の必要があるというのなら、補助金ではなくて貸付金にするのが本来の姿ではありませんか。消費者の
負担で個人の資産をふやしていくやり方が正しいのかどうか。特に大幅な
値上げに迫られているほど経営が困難だと主張している
専売公社のとるべき態度かどうか、お伺いをしておきます。
さらに損益計算書を見ると、診療諸費として四十七億円が計上してあります。聞いてみると、
専売公社の持っている病院、診療施設等の費用だそうであります。企業内福祉施設として病院、診療所は今後もより充実した内容を求めていくべきでありましょう。しかし、ここで問題となるのは、そこでかかった費用の全部を一般管理販売費で処理しておかしいと思わない
感覚であります。
たばこは、自分の企業に診療施設もないようなたくさんの
中小企業労働者がのんでいるものであります。その人
たちの
負担で公社の経営も成り立っているのに、専売なるがゆえに診療諸費まで
負担させてもかまわないのでありましょうか。診療施設にかかわる収支は、それ自体で相償うよう
努力すべきであります。
以上、思いつくままに指摘してまいりましたが、これを通じて、親方日の丸主義につかり切った経営態度を感じたと申し上げたらひが目でありましょうか。
大蔵大臣の御
意見を伺いたいと思います。
次に、酒税の問題についてお尋ねをします。
この
酒税法の一部改正案が成立した場合、当然増税となるわけですが、その増税額がそのまま
価格に上乗せされることについて、
政府は当然のこととして疑問を感じていないようであります。もちろん理屈はそののとおりであります。しかし、今日の厳しい需給ギャップのもとで、税金が上がったからといって、そっくり
価格に転嫁できる産業がどれだけありましょうか。一部は
価格に転嫁しながら、相当部分は企業内の合理化
努力で吸収しているのが一般産業界の姿であります。われわれは、今日民間部門がこれほどつらい状況にあるときに、なぜ酒、
たばこの
値上げをするのかと訴えてまいりました。しかし、その主張がついに理解されなかったということは、増税分をそっくり
価格に転嫁できるものと信じて疑わない頭脳構造と相通ずるものがあると思います。同時にこのことは、
政府と酒類業界の特殊な関係を雄弁に物語っていると言わざるを得ません。しかし、そのように
政府、特に大蔵省とぴったりくっついてきたことが酒類業界にとって本当に幸福だったか疑問であります。なぜなら大蔵省としての酒類業界に対する
最大の関心は酒税の保全であります。酒造業界に対する政策も、酒税の確保、保全と最もなじみやすい政策、すなわち現状の維持、温存型の政策たらざるを得ません。このことが酒造業界に対し十年一日のごとき気風を養い、今日新しい産業組織を背景に登場したビール、ウイスキー類に対して競争力を奪ってきたのではありませんか。今日の産業社会において求められるものは、日々の進歩であって、決して現状保全の態度ではありません。この意味で、産業政策の問題と酒税の確保、保全の問題が本来基本的に異なった発想を必要とする仕事であるにもかかわらず、大蔵省が一括して所管していることに問題があるのではありませんか。
一方、酒造業は日本の伝統の産業であります。そしてこれを守るということは、単に国内でビール、ウイスキー類に対する防戦に追われるだけでなく、広く世界に販路を求めて、いかに
拡大していくかという課題をも含んだ問題だと思います。麦が生んだビールのごとく、米づくりとともにはぐくまれてきた清酒も、世界の酒としての地位を求めて
努力すべきであります。そして、この仕事を酒税の保全という性格の違った仕事とあわせ受け持つことが適当なのかどうか、酒造業に対する政策の展望とあわせて
大蔵大臣に伺います。
次に、酒税の増税実施の時期についていろいろの報道がなされておりますが、念のために
問題点を指摘し、慎重な配慮を求めておきたいと思います。
現在、年末の激しい商売の真っただ中にあることは申すまでもありません。酒税を上げ、
価格に転嫁するとなると、同じ銘柄で安い酒と高い酒が一時期市場に混在することになると思います。安い税率の酒を仕入れて高い税率の
価格で売ることも可能となりましょう。そしてこの弊害を厳格に排除しようと思えば、年末の繁忙期にあって、混乱は耐えがたいものとなるでありましょう。また年末取引の中心であるお歳暮を考えてみると、法人関係の大口取引はほぼ一段落し、これからは個人を中心にした小口の取引であります。また生産者の面から見ると、法人関係の大口取引に手も出せなかった中小メーカーがやっとかせぎどきを迎えるわけであります。したがって、もし仮に
政府が増税の年内実施をもくろんだとしたら、それは結局、法人関係の需要には安い酒、個人の需要、すなわち庶民向けには高い酒、中小メーカーには増税と需要減退のダブルパンチという事態を生み出すと思いますが、いかがでしょうか。いずれにしても、時期を画して一斉の増税、一斉の
値上げは
国民にとって迷惑であります。しかも、その移行期において社会的不公正を助長する例が見られるのもいつものことであります。この問題を回避するには、従量税から従価税への改定を進めることが本当だと思いますし、特に
たばこについては消費税への移行を真剣に検討すべきだと思います。御所見を承りたいと思います。
ところで、年の暮れまでもう二週間足らずであります。町を歩いてみると、歳末大安売りの旗がひらめいております。しかし、温かいお正月をと願いながら、年末一時金は、親方日の丸のところは別として、決して温かいものではありません。有効求人倍率は
政府の期待を裏切って低落し、失業者は百万人を超えております。
政府は口を開けば、一日増税がおくれれば三億円の損だと言いますが、一日に三億円取られる
国民のことを考えたことがありますか。
政府の資料によると、西ドイツ
政府は一九七七年から酒、
たばこの税を上げることを決めたそうであります。だから日本
政府もやってよいというつもりかもしれません。しかし、それは全く違います。西独
政府が決めた実施時期は一九七七年、すなわちいまから二年後であります。二年も後のことをいまから決めたということは……