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1975-11-12 第76回国会 参議院 本会議 第11号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十年十一月十二日(水曜日)    午後一時三十七分開議     —————————————議事日程 第十号     —————————————   昭和五十年十一月十二日    午後一時 本会議     —————————————  第一 原子爆弾被爆者等援護法案趣旨説明)  第二 郵便法の一部を改正する法律案趣旨説   明)  第三 酒税法の一部を改正する法律案及び製造   たばこ定価法の一部を改正する法律案趣旨   説明)     ————————————— ○本日の会議に付した案件  一、請暇の件  一、日程第一より第三まで  一、昭和五十年度における地方交付税及び地方   債の特例に関する法律案内閣提出衆議院   送付)  一、国会議員の秘書の給料等に関する法律の一   部を改正する法律案衆議院提出)      ——————————
  2. 河野謙三

    議長河野謙三君) これより会議を開きます。  この際、お諮りいたします。  沓脱タケ子君から病気のため十三日間請暇の申し出がございました。  これを許可することに御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  3. 河野謙三

    議長河野謙三君) 御異議ないと認めます。よって、許可することに決しました。      ——————————
  4. 河野謙三

    議長河野謙三君) 日程第一 原子爆弾被爆者等援護法案趣旨説明)  本案について、発議者趣旨説明を求めます。浜本万三君。    〔浜本万三登壇拍手
  5. 浜本万三

    浜本万三君 私は、ただいま議題になりました原子爆弾被爆者等援護法案につきまして、日本社会党、公明党、日本共産党、民社党及び二院クラブ代表いたしまして、その提案理由を御説明申し上げます。  昭和二十年八月六日、続いて九日、広島長崎に投下された人類史上最初原爆投下は、一瞬にして三十万人余の生命を奪い、両市を焦土と化したのであります。  この原子爆弾による被害は、普通の爆弾と異なり、放射能熱線爆風の複合的な効果により大量無差別に破壊、殺傷するものであるだけにその威力ははかり知れないものであります。  たとえ一命を取りとめた人たちも、この世の出来事とは思われない焦熱地獄を身をもって体験し、生涯消えることのない傷痕と原爆後遺症に苦しみ、病苦、貧困、孤独の三重苦にさいなまれながら、今日までようやく生き続けてきたのであります。  ところが、わが国戦争犠牲者に対する援護は、軍人、公務員のほか、軍属、準軍属など国との雇用関係または一部特別権力関係にあるものに限定されてきたのであります。  しかし、原子爆弾が投下された昭和二十年八月当時のいわゆる本土決戦一億総抵抗の状況下においては、非戦闘員戦闘員を区別して処遇し、原子爆弾による被害について国家責任を放棄する根拠がどこにあるのでしょうか。  被爆後三十年間、生き続けてこられた三十余万人の被爆者死没者遺族のもうこれ以上待ち切れないという心情を思うにつけ、現行医療法特別措置法を乗り越え、国家補償精神による被爆者援護法をつくることは、われわれの当然の責務と言わなければなりません。(拍手)  国家補償の原則に立つ援護法が必要な第一の理由は、アメリカの原爆投下国際法で禁止された毒ガス、生物化学兵器以上の非人道的兵器による無差別爆撃であって、国際法違反犯罪行為であります。したがって、たとえサンフランシスコ条約日本が対米請求権を放棄したものであっても、被爆者立場からすれば、請求権を放棄した日本国政府に対して国家補償を要求する当然の権利があるからであります。  まして、われわれがこの史上最初核爆発熱線爆風、そして放射能によるはかり知れない人命と健康被害に目をつぶることは、世界唯一被爆国としての日本が恒久平和を口にする資格なしと言わなければなりません。  第二の理由は、この人類史上未曾有惨禍をもたらした太平洋戦争を開始し、また終結することの権限責任日本国政府にあったことは明白であるからであります。  特にサイパン、沖繩陥落後の本土空襲本土決戦の段階では、旧国家総動員法は言うまでもなく、旧防空法国民義勇隊による動員体制の強化に見られるように、六十五歳以下の男子、四十五歳以下の女子、すなわち、全国民国家権力によってその任務につくことを強制されていたことは紛れもない事実であります。  今日の世界平和が三十万人余の人柱の上にあることからしても、再びこの悲劇を繰り返さないとの決意を国の責任による援護法によって明らかにすることこそは当然のことと言わなければなりません。(拍手)  第三の理由は、すでに太平洋戦争を体験している年代も数少なくなり、ややもすれば戦争の悲惨は忘れ去ろうとしている現状であります。原爆が投下され、戦後すでに三十年を経た今日、被爆者にとってはその心身の傷跡は永久に消えないとしても、その方々にとっては援護法制定されることによって初めて戦後が終わるのであります。  過ぐる三年前の昭和四十七年八月八日、東京の番町会館で日本原水爆被害者団体協議会代表方々と現総理大臣三木さんが会見されております。その当時三木さんは国務大臣であったが、その席で、「政府立法というとどうしてもその限界が出てくるので、議員自身が勉強して議員立法で「援護法」をやった方がよい」と発言をされておるのであります。また、与党議員の中にも心ある方々は、原爆被爆者援護法制定について賛意を表しておられるのであります。「援護法案」は従来からしばしば野党共同提案されましたが、いまだ成立するに至っていないのであります。  日ごろ議会制民主主義を強調する三木総理国民に対する公約違反の道を歩ませないためにも、また、国民政治不信を解消するためにも、直ちに援護法制定を実現しなければならないと思います。  私たちは、第七十五通常国会の去る六月、原爆被爆者医療及び特別措置のいわゆる原爆二法が制定されて以来初めて法案審査のため広島長崎の両市へ本院より委員派遣が行われ、その現地調査により原爆被爆者の悲願である援護法制定必要性を改めて痛感したのであります。  私たちは、以上のような理由から、全被爆者とその遺族に対し、放射能被害特殊性を考慮しつつ、現行軍属・準軍属に対する援護法に準じて、原爆被爆者等援護法提案することにいたしたのであります。  次に、この法案内容の概要を御説明申し上げます。  第一は、健康管理及び医療給付であります。健康管理のため年間に定期二回、随時二回以上の健康診断成人病検査精密検査等を行うとともに、被爆者負傷または疾病について医療給付を行い、その医療費全額国庫負担とすることにいたしたのであります。なお、治療並びに施術に際しては、放射能後遺症特殊性考え、はり、きゅう、マッサージをもあわせて行い得るよう別途指針をつくることにいたしました。  第二は、医療手当及び介護手当支給であります。被爆者の入院、通院、在宅療養対象として月額三万三千円の範囲内で医療手当支給する。また、被爆者が安んじて医療を受けることができるよう月額七万円の範囲内で介護手当支給し、家族介護についても給付するよう措置したのであります。  第三は、被爆二世または三世に対する措置であります。被爆者の子または孫で希望者には健康診断の機会を与え、さらに放射能の影響により生ずる疑いがある疾病にかかった者に対して、被爆者とみなし、健康診断医療給付及び医療手当介護手当支給を行うことにしたのであります。  第四は、被爆者年金支給であります。全被爆者に対して、政令で定める障害程度に応じて、年額最低四十万円から最高三百三十万円までの範囲内で年金支給することにいたしました。障害程度を定めるに当たっては、被爆者原爆放射能を受けたことによる疾病特殊性を特に考慮すべきものとしたのであります。  第五は、遺族年金支給であります。被爆者遺族に対して年額六十万円の遺族年金支給することにしたのであります。  第六は、被爆者年金等年金額自動的改定措置、すなわち賃金自動スライド制を採用いたしました。  第七は、弔慰金支給であります。被爆者遺族に対して弔慰のため、昭和二十年八月六日にさかのぼって六十万円の弔慰金支給することにいたしたのであります。  第八は、被爆者が死亡した場合は、六万円の葬祭料をその葬祭を行う者に対して支給することにいたしたのであります。  第九は、被爆者健康診断治療のため国鉄を利用する場合には、本人及びその介護者国鉄運賃は無料とすることにいたしました。  第十は、原爆孤老病弱者小頭症等、その他保護治療を要する者のために、国の責任で収容、保護施設を設置すること、被爆者のための相談所を都道府県が設置し、国は施設の設置、運営の補助をすることにいたしました。  第十一は、厚生大臣諮問機関として原爆被爆者等援護審査会を設け、その審議会被爆者代表委員に加えることにいたしたのであります。  第十二は、沖繩における被爆者に対して、昭和三十二年四月から昭和四十一年六月三十日までの間に、原爆に関連する負傷疾病につき医療を受けた沖繩居住者に対して十一万円を限度とする見舞い金支給することにいたしたのであります。  第十三は、日本に居住する外国人被爆者に対しても本法を適用することにいたしたのであります。  第十四は、厚生大臣は速やかにこの法律に基づく援護を受けることのできる者の状況について調査しなければならないことにいたしました。  なお、この法律の施行は昭和五十一年四月一日であります。  以上がこの法律案提案理由及び内容であります。  被爆後三十年を経過し、再び原爆による犠牲者を出すなという原水爆禁止の全国民の願いにこたえて、何とぞ慎重御審議の上、速やかに可決されるようお願い申し上げまして提案趣旨説明を終わります。(拍手
  6. 河野謙三

    議長河野謙三君) ただいまの趣旨説明に対し、質疑の通告がございます。順次発言を許します。目黒朝次郎君。    〔目黒朝次郎登壇拍手
  7. 目黒今朝次郎

    目黒朝次郎君 私は、日本社会党代表いたしまして、ただいま提案理由説明がありました原子爆弾被爆者等援護法案に対しまして、発議者代表浜本万三君に対し、次の諸点についてお尋ねしたいと思うのであります。  その第一点は、原爆被爆者に対する国家補償必要性についてであります。浜本君の提案理由説明にもありましたように、米国は、昭和二十年八月六日広島市に、続いて同月九日には長崎市に原子爆弾を投下し、一瞬にして三十万人以上の国民生命を奪い、それから三十年を経過した今日においても、生存被爆者たち放射線障害によって肉体的、精神的な苦しみを強いられております。このような言語に絶する悲劇の直接の加害者は、言うまでもなく米国でありますが、当時戦争指導した日本政府責任は免れず、加害者であることは申すまでもございません。しかし、この戦争犠牲者であります被爆者に対するこれまでの政府援護措置を見ますと、中途半端なもので、とうてい罪の償いをしたというものではありません。そのことは次のような政府認識の欠落によって証明できます。もはや戦後ではない、回復を通じて戦後は終わったという、昭和三十一年の経済白書と時を同じくして発表された厚生白書によりますと、太平洋戦争はすべての国民に多大な惨禍をもたらしたが、中でも軍人軍属として動員されて戦没した者、傷疾を受けて不具廃疾になった者は最大の戦争犠牲者と言うべきで、その数は二百万を超えたと述べております。このような戦争犠牲者に対する偏見に満ちた評価は、ことさらにに旧憲法下国家との身分関係を強調しているだけでなく、戦争犯罪に対する反省が欠如をしていると言わざるを得ません。政府は、原爆被爆者国家補償対象から排除するために、もっともらしい理由として、一般戦災者との均衡問題を持ち出し、この悪質な宣伝文句によって一般戦災者原爆被爆者を対立分断させることをねらっていることは言語道断であります。  私は、一般戦災者問題と原爆被爆者問題は、戦争犠牲者という点では同じでありますが、その被害については大いに異なるものがあるという認識をいたしております。なぜならば、被爆者方々は、はかり知れない放射能による障害が三十年を経過した今日においても肉体をむしばみ、さいなみ続け、今日いまも死の不安と病魔におののきながら生活しなければならないという現実、さらに原爆による余りにも甚大かつむごい犠牲が第二次大戦の終結に直接のきっかけとなったからであります。したがって、被爆者に対する国家の償いの措置は施さなければならないことは言うまでもありません。  一方、政府昭和四十年に農地報償法、同四十二年に在外資産報償法を厳しい世論の反対を押し切って制定し、これら不在地主、海外引き揚げ者に国家補償を行ってきましたが、特に問題なのは不在地主に対する国家補償で、戦争犠牲者の定義の拡大解釈を図ったことはどうしても許せません。このような悪政をまかり通してきた政府・自民党は、反省意味からも被爆者問題を真剣に考えなければならないと思います。  そこで私は、原爆被爆者に対しまして、戦没者生存者の区別なく全員に、戦争犠牲の償いとして国家補償を即時実施すべきであって、この償いがなされてこそ戦争は終わり、敗戦処理が完了したと認識するのでありますが、提案者浜本さんの快い答弁をお願いしたいと存じます。  第二点として、現行原爆被爆者医療法及び特別措置法の根本的な欠陥を改めるために、被爆者医療についての特別立法考える必要があると思うのであります。  言うまでもなく、現行法国家補償に立脚したものではなく、社会保障政策の延長線上にあるもので、ここに根本的な欠陥があり、被爆者を初め関係者から強い批判が集中されております。その中で特に問題なのは認定制度についてであります。  そこで私は、常に現行認定制度について疑問を感ずることは、いかなる基準判断をするのか、さらに、その判断は妥当なものかについてであります。つまり認定についての判断は、いわゆる治癒認定と言われているもので、医療給付によって実際に効果が期待できるかどうかであります。言うまでもなく、医療給付前提治療によって疾病が治るということで、治らない病気認定から除外されます。その結果、放射線障害そのもの物理的損傷でありますので、治癒が期待できませんので放置され、認定対象になりますのは放射線障害により誘発された疾病であって、しかも治療効果のある疾病に限定されるという基本的な矛盾が露呈されているのであります。  さらに、この認定制度にまつわる問題点を指摘いたしますと、第一に、厳しい認定締めつけによって医療給付を受ける被爆者を極力抑え、被爆者対策予算の出し惜しみがきわめて露骨であること。  第二には、このような認定締めつけによって原爆被害意図的に過小評価を行い、最近各地で問題になっている原子力発電の公害、核武装に対する国民の核の危険意識をことさらにカムフラージュしようとする政治的意図が濃厚だと言わざるを得ません。  そこで私は、ぜひとも政府認定制度を撤廃させ、被爆者立場に立った認定制度の確立がきわめて今日的課題として重要なものと思うのでありますが、これに対する発議者の御意見をお聞かせ願いたい、このように考えます。  第三は、認定制度の重大な欠陥問題と関連いたしまして、健康診断抜本的改善必要性についてお尋ねいたします。  言うまでもなく、被爆者に対します健康診断は、被爆者医療を受ける最初の関門であります。したがって、充実した健康診断実施は、被爆者健康管理の重要なかなめであると言わざるを得ません。現行医療法におきましても、健康診断実施健康診断を受けた被爆者に対する必要な指導を行うことを規定しております。しかるに、健康診断実態を見ますと、幾多の問題点が内在していて、これについても、とうてい被爆者方々の気持ちを納得させるサービスはできません。  その問題点を若干述べますと、健康診断放射線障害特殊性に立脚していませんことは、さきの認定制度と全く同じであります。したがいまして、被爆者疾病が多種多様であることを考慮に入れていないばかりでなく、検査内容についても、放射線障害の病理が今日不明であるにもかかわらず、血液検査を中心としたきわめて限られたものになっている実情だと言われており、加えて、わが国医療行政の失政からもたらされた医師看護婦の不足によって、ただでさえ形式的な検診内容をさらに一層形式的なものにしております。  さらに、健康診断のいま一つの柱になっております発病を予防するための健康指導が、全くと言っていいほど実施されていない実情であります。しかし、仮に健康指導実施され、医師被爆者に休養が必要であると指導いたしましても、現在の健康診断制度では、被爆者家計を支えるために働かざるを得ない状態に追い込まれており、生活不安もなく安心して休養できる被爆者は一体何人いるでありましょうか。そこで、政府が本気になって被爆者発病を予防しようと考えるならば、被爆者生活の心配がなくて休養できるような生活保障がどうしても必要であり、このような生活保障を除外した検診制度は、疾病予防意味をなさない全くナンセンスなものであります。  そこでお尋ねいたしますが、提案された原子爆弾被爆者等援護法案の中で、被爆者健康管理をどのように位置づけているか明らかにしていただきたいと考えます。  第四として、被爆者実態調査重要性についてお尋ねいたします。  おおよそどのような行政施策についても言えることでありますが、施策を企画し、実施する場合には、その施策対象たる実態について正確に把握しなければなりません。政府は、今回の五十年度の被爆者実態調査の結果をもとに被爆者援護法制定するかどうかを検討すると従来たびたび述べてまいりました。しかし、被爆してから三十年も経過した今日、被爆者被爆者健康手帳を一つ取得するにも、被爆を証明する書類や二人の証人を探すのに大変な努力が必要になっておりまして、果たして正確な調査が可能であるか、このこと一つとってみても、行政の怠慢は許されません。無策のまま時の流れを待ち、被爆者が全員亡くなるまで現状のままで放置しようとする意図が如実にあらわれており、全く被爆者に対する冷血行政と非難されても仕方ありません。しかも、今回の調査内容を見ますと、四十年の調査と同様、肝心な原爆死没者被爆生存者の三十年にわたる病歴はもちろんのこと、苦難に満ちた生活状況調査項目が意識的に外されており、これでは、被爆者実態を探ろうとしても、期待する方が無理であります。さらに、調査の不合理性を追及いたしますと、基本調査対象地域爆心地から主として二キロメートル以内という線引きが一方的に行われ、その地域内の被爆者に重点を置いて健康診断を受診するかどうかを調査しようとし、健康診断あり方については被爆者に何も問わず、さらに問題なのは、この二キロメートル以外はほとんど問題がないという独断的な仮定に立っていることであります。この二キロメートルの判断基準は科学的な根拠がなく、ただ行政効率の上に立ったものであると科学者たちが厚生省に警告をしていることを、厚生大臣、十分思い起こしてもらいたいと存じます。  また、生活調査の大きな欠陥についても指摘しなければなりません。この調査では、被爆者家計について収入と支出のバランスがどのようになっているのかを調査するのではなくて、支出のみについて調査を行うというでたらめなものであります。このようなでたらめな調査が許されますと、被爆者が入院して働けなくなり、借金をして生活費を補っている場合には、一般との格差がない、この家庭もインフレによって家計費が増加しているぐらいの判断で事を処理される危険性があり、借金必要性調査の陰に隠れてネグレクトされることは言うまでもありません。  そこで私は、先ほど申し上げましたように、実態調査被爆者に対する施策前提となるものでありますから、被爆者の人権を確保する観点に立って行うべきはもちろんでありますが、こうした政府調査が、国家補償前提とした原爆被爆者援護法制定と有機的に関係があるのか。さらに、野党共同提案原爆被爆者等援護法案の中身の施策実施する場合の前提としての被爆者調査あり方について、浜本君にさらに具体的な御説明をお願いしたい、このように考えるわけであります。  最後に、被爆者人たち多量放射能を全身に浴びておりますので、健康異状ないしは健康異状可能性が非被爆者と比較して大きいことを前提として考えなければならないことは言うまでもありません。実際に、多くの被爆者方々が現在でも、たとえば原爆ブラブラ病といった、はっきりした病状を示さない訴えを持っております。その結果、多くの被爆者放射線障害による損傷が原因で、職業的能力所得能力の減少を余儀なくされており、政府は当然これらの被爆者に対して所得補償を行う立場があると考えます。  さらに、原爆戦没者被爆生存者はもちろんのこと、当時在日していた外国人被爆者に対しても、遺族年金を初め被爆者年金弔慰金支給介護手当支給被爆二世、三世に対する措置などを実施し、被爆犠牲者に、命と暮らしと心の三面において、政府を含めてわれわれは償わなければならない責務があると考えるものであります。この基本的な考えについて浜本君にもう一度お伺いしたいと存じます。同時に、今日までしばしば議論されてきた問題でありますから、内閣総理大臣並びに厚生大臣に対し、この原子爆弾被爆者等援護法案の取り扱いについて基本的、具体的にどのような考えであるかをこの本会議で明らかにされんことを要求いたしまして私の質問を終わります。(拍手)    〔浜本万三登壇拍手
  8. 浜本万三

    浜本万三君 ただいま目黒先生の御質問に対しまして、提案者代表いたしまして御答弁を申し上げたいと思います。  まず、原爆被爆者に対する国家補償必要性についてであります。提案理由においても申し述べましたが、重ねて要約をして申し上げたいと思います。  その理由の第一は、サンフランシスコ平和条約の際、日本政府米国に対して、この国際法違反兵器による一切の被害補償権を放棄いたしました。したがって、その被害者に対しては、加害者米国にかわり日本政府がこれを補償するのは当然のことであります。  第二には、この人類史上未曾有惨禍をもたらした太平洋戦争を開始し、また終結することの権限責任日本国政府にあったことも明白であるからであります。  第三には、多量放射線を浴びたため、三十年後の今日もさまざまな病気を誘発させ、被爆者肉体をむしばみ、さいなみ続け、いまも死に追いやっておるという悲惨な事実であります。加えて、被爆者未来世代に対する遺伝障害遺伝学者物理学者から指摘されております。この点は特に重視しなければなりません。  さらに、原爆による甚大な犠牲があのどろ沼化した戦争終結きっかけとなった現実も忘れることはできません。  強制連行され、被爆された朝鮮人、中国人を含めてすべての犠牲者方々に対して国が償うためにも、援護法制定が何よりも必要なのであります。すべての原爆被爆者国家補償精神に基づく援護法で救済して、初めて戦争責任反省することになるからであります。  現行二法では、三十八万人の被爆者に対してわずか十四万人しか救済されていないのであります。  ここで特に申し上げたいと思いますのは、被爆者の要求は、制度的に二つの保障を確立することにあると思うわけです。  第一は、過去の犠牲に対する補償、つまり償いであります。これは死没者に対する弔意として弔慰金遺族年金を、また障害者には障害年金支給することであります。  第二は、生活医療、さらにには未来世代人たちに対する保障であります。これは各種年金手当の増額と二世、三世の問題を含めて医療の充実を図ることなのであります。  以上の二つの保障を実現するためには、国家補償の理念による援護法制定以外には絶対にないのであります。しかも、本法案制定こそ政府に対して恒久平和のあかしを求めている被爆者の願いにこたえるただ一つの道であるからであります。  しかし、政府は戦後処理の一環として、農地改革以前の旧地主及び海外引き揚げ者に対する給付金等、莫大な財政補償を行っていますが、これらの人々に対する優遇と比較するとき、まさに補償の均衡を欠いているとさえ言い得るのであります。旧地主及び引き揚げ者の補償について、政府は報償、つまり報いと償いであると言っておりますが、実質的には国家補償と何ら変わりないのであります。政府理由は詭弁にすぎないということであります。  さらに、戦争犠牲者に対する外国における例を申し上げますと、西ドイツなどは、広く一般戦争犠牲者までも対象とした年金制度などを設けて手厚く援護を行っているところであります。  次に、被爆者医療法の根本的欠陥に対する質問についてお答えをいたします。  原爆医療法により医療給付あるいは特別手当支給のための厚生大臣認定状況は、約三十八万原爆被爆者のうち、累計で約四千名余りという驚くべき少ない実績であります。  広島に例をとりますと、申請者に対する認定率は広島市で六四%、広島県下で四四%というように非常に低率となっています。さらに、厚生省で把握しております四十九年度のものでも申請二百三十四件、そのうち認定したもの百二十二件で五二%、却下されたもの六十九件で三〇%と報告をされておるのであります。申請者や認定者が少ないことは、この制度の厳しさを何よりもよく物語っておると思います。放射線障害というのは、放射線による細胞の物理的破壊であります。したがって、本来被爆者一般の人と同じような健康や肉体的能力を持っていると考えることはできないのであります。それにもかかわらず、放射線障害によって誘発された疾病のうちのごく限られた病気だけを対象としているところにこの制度の厳しさがあるのであります。  しかも、一方却下された中には、原爆放射線障害に直接起因すると認められる白内障患者にさえ、現在いまだ手術の時期でないことを理由認定をされていない事例も多々あるのであります。  申すまでもなく、原爆被爆者疾病の特徴と申しますのは、医学的に病気放射能との因果関係が完全に解明されていないこと、また治療方法も確立していないという特殊事情から、治療を受けながら治療法を見出すという状態なのであります。したがって、認定は、被爆者には対応できない現代医学を物差しにするのではなく、被爆の事実さえあればすべてを被爆者として認めるというのが原則でなければなりません。本法案は、以上の原則に立って立案をされているものでございます。  要するに、現行認定制度放射線障害実情に立脚をしていないのであります。事実、今年度から政府自身で保健手当の新設によってこの点を認めていることからしても明らかであります。  また、認定を取り扱う原爆医療審議会の運営についても多くの問題がございます。その運営は被爆者立場に立った運営がなされず、資料は未公開の秘密主義であります。被爆者の十分納得できるような運営が要請されるところでございます。  質問の第三番目の、被爆者実態調査についてお答えをいたします。  原爆で死亡した人たちは、どこで、どのようにして、何人であったかということが明らかにされていないのであります。どのような災害でも、死亡者と負傷者の調査を可能な限り実施するのが基本であります。厚生省はこれまでに昭和四十年に被爆者実態調査をしたのに続きまして、今年、五十年度にも実施いたしましたが、これは完全なものとは申せません。三十年たった今日、なお死没者調査をしていないことは、原爆で肉親や友人を失った人たちは、死者が国家責任において十分弔われないことによって悲しみを増すばかりでなく、政府施策に疑惑を深め、怒りを増すことになるのであります。世界最初原爆による災害は、この基本となる死没者調査を明らかにしないままに終わらせては絶対にならないと思います。また、将来の問題につながっている核兵器絶滅という目的を達成するためにも調査は絶対に必要なものであると思います。  また、先生御指摘の手帳の交付につきましての問題点も、本法案実施によりその矛盾はすべて解決するものであると思います。  次に、健康診断抜本的改善必要性に関する御質問にお答えいたします。  第一に、現行被爆者に対する健康診断放射線障害特殊性に立脚したものでないということであります。現在の定期的集団検診は、結核などの単一の疾病の予防の方法としては有効でありますが、病状も多様な被爆者の健康の診断には不向きであり、形式的なものであります。  第二に、発病予防のための健康指導が省略をされ、被爆者の職場環境、生活環境は無視されているのが実情であります。これらの結果として発見される疾病は限られ、治療と結びつかない病気は放置されてしまっているのが現状でございます。本法案はこれを改め、被爆者の気持ちを尊重して親切に健康診断実施しようとするものでございます。  さらに、健康不安を抱く二世、三世に対しましては、すでに東京、北海道、静岡、広島県等で希望者に限り健康診断を行っております。このような方々に対する健康診断は積極的に行う必要があるものと思われます。  また、外国人被爆者に対し医療給付その他の措置について同様な手当てがなされるべきであることは言うまでもございません。  また目黒先生は、本年新たに創設された保健手当の不当性について尋ねられております。政府はこの手当の支給対象者を爆心地から二キロメートルに限定しております。この距離は、被曝放射線量二十五レムを安全基準とした国際防護委員会の基準によっていますが、今日その科学的な根拠はきわめて薄いというのが学界の通説になっております。むしろこの制度は新たな差別すら生んでいるとも言われております。したがって、この手当の性格からすれば、直接被爆者二十四万人全員に対して、所得制限なしに給付すべきものであると思います。  以上をもちまして目黒先生の御質問にお答えをいたします。(拍手)    〔国務大臣三木武夫君登壇拍手
  9. 三木武夫

    ○国務大臣(三木武夫君) 目黒君にお答えをいたします。  被爆者原爆被爆者という方々立場というものには私もいたく御同情をいたしておるわけでございます。したがって、四十七年でしたか、代議士の方々がその代表者をお連れになって、私お目にかかったことは事実でございます。したがって、まあ代議士に、案内をした代議士連中に、この原爆被爆者援護法のようなものも研究してみたらどうだということを私は言ったことは事実でございます。ただ、その後、原爆被爆者に対しての対策というものはもっと強化せなきゃならぬという見地から、政府原爆医療法被爆者医療法あるいはまた特別措置法というものでこれをだんだんと充実していきたいという考え方の上に政府は立っておりますから、私もやはりそれならば原爆被害者に対しての対策をもっと強化せなきゃならぬ。四十七年の場合は、たしか百十四億程度の予算でございましたのが、今年度は倍少し以上にふやしまして二百四十億円の対策費でございます。それによって社会保障的な見地から被爆者に対する補償あるいは福祉というものを増進していきたいというのが現在の方針でございます。しかし、これはやはりいろいろお話もございましたように、これで私は十分だとは思わない。ますます対策を、施策を充実していくべきものだと、今後においてもできる限り施策の充実を図っていきたいというのが私の現在の考え方でございます。(拍手)    〔国務大臣田中正巳君登壇拍手
  10. 田中正巳

    ○国務大臣(田中正巳君) 原爆被爆者のお立場についてはまことにお気の毒であります。そこで、一般戦災者等とは別に、原爆被爆者に対し原爆医療法及び特別措置法の二法によって措置しているゆえんは、これらの人々が多量放射能を受け、いまだ固定しない健康上の障害及びその不安を持っているという特殊な事情に着目、勘案したものであり、この点は普通の戦災者、引き揚げ者等、他の戦争被害者に見られないところであります。したがって、この特別の理由に依拠した施策が二法の中に盛られており、これを超える場合には他との権衡上種々問題も生ずるので、今後ともこの二法の系統の中で施策の充実を図るのが適当であると考える次第であります。(拍手)     —————————————
  11. 河野謙三

    議長河野謙三君) 柏原ヤス君。    〔柏原ヤス君登壇拍手
  12. 柏原ヤス

    ○柏原ヤス君 私は、公明党を代表して、ただいま趣旨説明のありました原子爆弾被爆者等援護法案に対して若干の質疑を行うものであります。  一瞬にして三十万余りの命を奪った原子爆弾広島長崎に投ぜられてから満三十年が経過しております。しかし、原子爆弾の投下という人類が初めて経験した未曾有の悲惨事に対して、本質的な問題の追求と対策が時間の経過とともにあいまいにされている現状について、まことに残念に思っている一人でございます。生き残った被爆者は、今日に至るまで原爆後遺症に悩まされ、常に死と闘って不安な日々を送っております。まともに働くこともできず、しかも老齢化のため、被爆者の多くはいまもなお十分な所得が得られず、今日の不況と物価高で生活状態は一層窮迫しております。政府原爆二法をもって被爆者の救済に当たっていますが、その中身は、対象範囲、諸手当の額及び所得制限など、被爆者を初め関係者の満足すべきものでないということは、過去の国会審議の中でも多々指摘されているところであります。今回、四野党、一会派が共同提案した本法案は、これらの問題を根本的に改善し、被爆者の要請にこたえるばかりでなく、法の性格を社会保障から国家補償にして、対策の万全を図るというもので、国民は大いに期待しているところであります。  さて、具体的に法案の中身についてお尋ねする前に基本的な問題をお伺いいたします。  それは援護法制定に対する三木総理の政治姿勢であります。提案理由説明の中にもありましたが、昭和四十七年八月に三木総理が被団協の代表と会われたとき、当時国務大臣でありましたが、初めて被爆者への大きな理解を示されました。「戦争終結の端緒となった原爆投下犠牲者に対して援護法制定することについては、国民異議を差しはさまないだろうし、これを行うことは、政治家として大きな責任である」と発言されております。ところが、総理になってから、昨年末の衆議院の本会議において、「もう少し実態というものを調べてみて、そういう人たち施策というものを強化していきたい」と答弁されております。さらに、ことしの衆議院会議においては、「いま援護法をこの機会に制定するという考えは持っていない」と答弁されております。このような後退していく総理の発言により、被爆者方々は、三木さんあなたもかと大きな落胆を感じております。総理は、被爆者立場には同情をされているようですが、それは心情的なものだけで、被爆者に対しては原爆二法を強化する以外にないと心境が変化されたのか、それとも、いま直ちには援護法制定は無理だが、今後検討して、内容的に可能な援護法であれば将来つくりたいという考えなのか、総理の真意をお聞きしたいと思います。私は、日ごろ対話を信条とされている総理だけに、対話の中での発言は実行しなければ国民政治不信をますます大きくするだけでなく、総理として、政治家として失格であるとさえ言わざるを得ないのであります。総理の誠意ある御答弁をいただきたいと思います。  第二は、本法律案国家補償を原則にしているということについて、その理由を明らかにしていただきたいのであります。  提案者は、原爆投下が非人道的兵器による無差別の殺傷であり、国際法違反の犯罪だと述べておりますが、開戦の責任戦争終結権限及び賠償責任は、今日において一体だれが負うものでありましょうか。また、第二次大戦は総力戦であって、いわば戦地も銃後もありません。原爆被爆という戦地にまさる被害の甚大さ、深刻さ、かつ悲惨さは、単に国家との身分関係の有無の論議だけで片づけられるものではないと考えますが、この点、あわせて御答弁願います。  なお、一部には、財源が多額にかかるというので、とやかく言われていますが、金額はともかくとして、戦後処理は国の責任において行うのが当然ではないでしょうか。  昭和三十八年十二月七日の東京地方裁判所の判決、いわゆる原爆裁判の判決文の中の一節にも、「国家は自らの権限と自らの責任において開始した戦争により、国民の多くの人々を死に導き、傷害を負わせ、不安な生活に追い込んだのである。しかもその被害の甚大なことは、とうてい一般災害の比ではない。被告」——すなわち、国「がこれに鑑み、十分な救済策を執るべきことは、多言を要しないであろう。」と述べて、被害者に対する国の責任を強調しております一さらに、本判決文の最後には、「国家財政上これが不可能であるとはとうてい考えられない。われわれは本訴訟をみるにつけ、政治の貧困を嘆かずにはおられないのである。」と結んでいるのであります。原爆被爆者に対する国家補償を促し、その財政上の措置については不可能ではないということを明らかにしているわけであります。戦後処理は、極端に言えば、予算上幾らかかっても国家補償によって国の責任を果たさなければならない当然の義務であるということを強く主張するものであります。  第三にお聞きしたい点は、被爆者健康管理について本法案現行法施策をどのように改善するのかということであります。  多くの被爆者は体に不調を訴え、そして例外なく生命に不安を感じております。ある調査によると、ほとんどの人が貧血症、高血圧、白内障、白血球減少病、敗血症、脳血栓などという病気にかかり、現在も耳鳴り、息切れ、頭痛、気だるさ、消化不良などという症状に悩まされているという結果が出ております。また、被爆者には、胃がんの発生率が高くなっているというような研究も発表されております。この被爆者でなくてはとうていわからない肉体的、精神的な苦しみに対して、できる限りの手厚い援護を行うべきであると思います。そのためには健康診断の充実、直接被爆に起因しないすべての疾病に対しても医療給付を行うべきだと考えますが、この点、明らかにしていただきたいと思います。また、被爆者が頼りにしている原爆病院は建物が老朽化しているだけでなく、赤字経営に苦しみ、医療機器の整備などには手が回らず、被爆者への治療サービスの低下を関係者の懸命な努力で防いでいる現状であります。この点について本法案ではどのように対処されるのか、お伺いいたします。  第四に、被爆者生活保障としての年金についてであります。  家族も住宅も財産も一瞬に消滅し、頼れるものは自分の労働だけだとなった多くの被爆者は、放射能障害のためにその労働能力を失っております。特に身寄りもなく働けない病気の老人にとって、この被爆者年金の実現こそ最大の急務であります。  ところで、本法案では、支給する年金額障害程度に応じて定めるとしてありますが、何を基準にして定めるのか、お伺いいたします。また、現行法の保健手当についての御見解と被爆者年金との関連について御答弁願います。  最後に、被爆者の老齢化についてであります。  原爆が投下されて三十年、被爆者の中に占める老人が年々増加していることを考え合わせ、被爆者実情に即した援護対策を早急に確立することが肝要であると思います。現在、収容施設として原爆養護ホームがありますが、福祉施設の枠内のために十分な介護が行き届かない現状に加えて、医療面の配慮が欠けている実態があります。したがって、いわゆる第二病院的性格と言われる医療保護施設として措置すべきであると思いますが、御見解をお伺いいたします。また、家庭介護の場合にも、家庭奉仕員の拡充を含めた援護対策を一日も早く実現する必要があると思いますが、あわせて御答弁いただきたいと思います。  援護法制定への政府の勇断を期待し、あわせて本法案成立を求めて私の質問を終わります。(拍手)    〔国務大臣三木武夫君登壇拍手
  13. 三木武夫

    ○国務大臣(三木武夫君) 柏原君にお答えをいたします。  私が原爆被爆者代表にお目にかかったときのいきさつは、目黒君の御質問に答えて申したとおりでございます。したがって、私は現在の原爆者のための二法、——医療法とともに特別措置法、この施策というものを実情に沿うように今後充実していきたいと、こういうことでこのお気の毒な被爆者にこたえていきたいというのが現在の考えでございます。そういう形で処理してまいりたいと思っております。    〔国務大臣田中正巳君登壇拍手
  14. 田中正巳

    ○国務大臣(田中正巳君) 柏原議員にお答えいたします。  被爆者対策の基本的な考え方については、さきに目黒議員に御答弁申し上げたとおりでありますが、そもそも、現行二法では進めることが困難であり、援護法でなければ絶対に踏み込めない領域は何であるかということをいろいろ考えてみました。それは恐らく、死没者遺族に対する年金制度及び死没者に対する弔慰金支給がそれだろうというふうに判断されるわけであります。この点に関しては、他の一般戦争死没者遺族との関係をどう割り切るか、また、政策として、現存せられ苦しんでおられる方々に対する施策の向上という問題の方がプライオリティーが高いのではないかといったようなところについていろいろ議論があるわけであります。政府といたしましては、現存者に対する施策の向上を進めることが基本的に最も肝要であるというふうに考え現行二法を制定し、この制度の中でいろいろと施策を向上していく所存であるわけであります。(拍手)    〔浜本万三登壇拍手
  15. 浜本万三

    浜本万三君 柏原先生の御質問にお答えをいたします。  まず第一は、国家補償になぜしたかということでございます。提案理由でも申し上げましたとおりでありますが、そもそも、サンフランシスコ条約におきまして対米請求権を放棄した日本政府は、国際法違反の非人道的な原子爆弾を投下いたしました米国にかわって原爆被爆者方々に対して国家責任において補償すべきことは当然でございます。それは昭和三十八年十二月七日の先生御指摘の東京地方裁判所におけるいわゆる原爆裁判の判決の一節にも、国家はみずからの権限とみずからの責任において開始した戦争により、国民の多くの人々を死に導き、傷害を負わせ、不安な生活に追い込んだのである。しかもその被害の甚大なことは、とうてい一般戦災の比ではない。国はこれにかんがみ、十分な救済対策をとるべきことは多言を要しないであろうと申されております。原爆被爆者に対する国の責任をこれは強調しておるのであります。この判決でも述べておりますとおり、救済策とは、国の責任で遂行した戦争による被害国家補償意味しておることは明らかでございます。したがって、国との身分関係が明らかなものは、国家補償精神に基づき、恩給法、戦傷病者戦没者遺族援護法で手厚く援護措置がなされております。しかし、一般国民に対しては、国との身分関係がないという理由で社会保障的な救済措置で片づけられておることは非常に大きな問題であると思います。第二次大戦を想定してみますと、戦争史上未曾有であって、当時としては、国を挙げて、戦場も銃後もなく、各自の持ち場で戦うという総力戦でありました。いつまでも国との身分関係を云々して、一般戦災者への波及を恐れて、原爆被爆者に対して十分なる援護措置が行われていないのは、国民感情からいっても理解できないところであります。また、戦後三十年を経過いたしました今日では、公害無過失責任論が出ている時代でもあります。戦争に対して責任のある国が当時の一般戦災者の死傷者に対して国家補償による援護を行うことは当然でありますが、それにも増して、特殊な被害を受けた原爆被爆者に対して国家補償による援護法制定は当然なことと言わなければなりません。  次に、第二の御質問でございますが、これは、援護法被爆者援護をしてこそ初めて戦後は終わるのではないかと、こういう御質問でございます。先生のおっしゃるとおり、過去においての日本経済白書では、戦後は終わったと言われていますが、戦争犠牲者については、いまだ戦後は終わっておりません。それについては未処理問題がなお山積しております。すなわち、戦後三十年たった今日におきましても、原爆被爆者援護措置を初め、海外においては未帰還者の調査究明、遺骨の収集あるいは大久野島の毒ガスの救済措置、さらに一般戦災者援護措置等がございます。このことはすでに先生の御承知のとおりでございます。わが国では、国との身分関係のあった軍人軍属、準軍属については手厚い援護対策が行われておりますが、原爆被爆者については現行関係二法と一般社会保障範囲でしか解決されておりません。したがって、先生のお説のように、被爆者方々にとっては援護法制定されることによって初めて戦後が終わると申されるわけでございますので、早急に援護法制定する必要があると思う次第でございます。  次の健康管理についてでございます。健康診断の回数につきましては、現行の定期二回、希望二回を、提案いたしました援護法では希望二回以上にいたしまして、診断を受けやすくするため交通費等を支給することにいたしました。また、診査項目については、よりきめ細かに、成人病の早期発見も可能になるように配慮いたしたのであります。また、現行法では漏れております二世、三世の健康管理につきましても、本法におきましては十分に行う所存でございます。医療給付につきましては、明らかに被爆によるものと思われないもの、たとえば遺伝性疾病、先天性疾病を除く以外は全部給付を行うことにいたしました。原爆病院につきましては、この援護法が通りますれば、当然政府として病院の整備拡充及び運営のための予算も確保しなければならないことになるのであります。  次の問題は年金についてでございます。年金障害程度について政令で定めることにしておりまするが、戦傷病者戦没者遺族援護法に準じまして行うことにしてあります。政府の保健手当は、各種の手当が受けられない被爆者支給するものですが、爆心地二キロメートル以内に限定しておりますために、一部地域を分断、差別することになると思います。そのため、直接被爆者の人数は約二十四万人なのに対しまして、保健手当の対象者は四万三千人で、わずか六分の一にすぎないのであります。国家補償の性格からいたしまして、直接被爆者全員に支給し、所得制限は撤廃すべきであります。この点、今回の援護法は、すべての直接被爆者に対して被爆者年金支給することにいたしておるのでございます。  最後の御質問でございますが、被爆者の老齢化対策といたしましては、施設収容につきましては、原爆養護ホームの改善につきまして、先生のおっしゃるような配慮が当然なされるようになりまするし、介護手当の場合は介護手当給付することにいたしたのであります。また、亡くなられた被爆者並びに遺族への救済について、現行法では全く放置されておりまするが、本法案制定されました場合には、実態調査に基づいて、亡くなった人については弔慰金支給し、遺族方々には遺族年金支給することにいたしているわけでございます。  以上、柏原先生の御質問に対する御答弁といたします。(拍手)     —————————————
  16. 河野謙三

    議長河野謙三君) 小巻敏雄君。    〔小巻敏雄君登壇拍手
  17. 小巻敏雄

    ○小巻敏雄君 私は、日本共産党代表して、原子爆弾被爆者等援護法案について質問いたします。  「三たび原爆を許すまい」、日本国民が心に抱き続けてきたこの悲願にこたえて、被爆三十周年の本国会に上程された本法案が全会一致をもって成立することを私は心から期待するものであります。(拍手)  審議に当たって、原子爆弾の投下が広島長崎にもたらしたはかり知れない惨禍、その後今日まで被爆者遺族に残された深い傷の跡について、いま改めて明らかにする必要があります。三年前、昭和四十七年、広島テレビ放送が出した「被爆者の手記」、その中で一人の遺族は次のように語っております。  気がついたとき、私は家屋の下敷きになっていました。母がはい出て、私が出て、一番奥にいた妹に「静子ちゃん早く」と言ったら、妹は「のこぎり貸して。足を切ったら出られる」と言いました。家のはりが足の上に落ちて抜けない。そのとき、そばで「栄子はここにいるよ。お母ちゃん水ちょうだい」と、男のような声がします。一番下の妹です。首をはさまれ、はらわたが出て、虫の息でした。煙はだんだん近づいてきます。こちらでは足をはさまれた妹が「お母さん、みんな、早く逃げて。私は舌をかんで死ぬるから」と言います。母は手を合わせて「一緒に死ぬる」と泣いて動こうとしません。それを無理やりに引っ張るようにして……」と記述されています。そして続いて「その母も昭和三十八年一月四日、急性骨髄性白血病で亡くなりました。あのときと反対の大雪の降る寒い日。入院してわずか四カ月でした。最後の苦しみの中でも「あんたたち、年とってから原爆症が出ねばええがと、言い続けた母」と書き記しています。  これは広島長崎三十万犠牲者の中の一つの記録であります。生き残った人々はどうか。ことし七月九日付朝日新聞によりますと、被爆者五百人について追跡再調査を行った結果、昭和四十二年からこの八年間に、対象者の一五%近い人々が肝臓障害、白内障など新たに原爆症状を訴え、老後への不安が増加をしておる。また、被爆二世、三世に対する不安も強まっていると、深刻な実態を報じています。戦後三十年、被爆者遺族にとっては、まさに一日として安らぎの日はなかったのであります。  この悲惨の根源、侵略戦争を引き起こした日本政府責任は重大であります。残虐非道な国際法違反原爆投下を行ったアメリカには当然損害賠償責任があります。歴代政府被爆者遺族の切実な要求にこたえない。国家の果たすべき責任を放棄したばかりか、正当な対米請求権さえサンフランシスコ条約において放棄をいたしました。すべての被爆者遺族及び子や孫に対しても国家補償精神に基づいて政府責任で全面的な援護実施する、そのことこそ政府に課せられた厳粛なる責務であります。この点については特に三木総理、あなたに伺います。日本政府戦争責任、米軍の原爆投下の違法性、犯罪性、被爆者遺族に対する国家補償責任、これらについて総理の責任ある答弁を求めます。  続いて、提案者質問いたします。  第一は、日本政府の核兵器に対する姿勢と被爆者国民が熱望する平和の問題についてであります。  御承知のように、三十年前、広島長崎原爆を投下するという戦争犯罪を行ったのはアメリカ政府でした。いままたそのアメリカのフォード大統領は、核先制使用を広言しております。わが国三木内閣は、これに抗議をしないばかりか、核による戦争抑止力などと肯定、追従して、米日韓の危険な軍事結合を強めようとしています。日米政府のこの異常とも言うべき政策は、三たび原爆を許さず、核兵器の全面禁止を願い、非核三原則の法制化と使用禁止協定を求める被爆者国民の悲願に対して全く逆行する方向であると考えます。御見解を伺います。  質問の第二は、援護法の基本理念についてであります。  本法案は、第一条において「国家補償精神に基づき、これらの者に対して医療給付被爆者年金又は遺族年金支給等必要な措置を講じ、もつてとれらの者を援護する」と、目的を明確にしております。現行法——原子爆弾被爆者医療等に関する法律原子爆弾被爆者に対する特別措置に関する法律にあっては、この理念が欠けております。被爆者の「健康上の特別の状態」に対処するというような、限定的、臨時的な目的を挙げるにとどまっています。国家補償の理念なくして、医療にも生活にも子にも孫にも及ぶ全面的援護を確立するということはできないと思うのですが、提案者、どうですか。  質問の第三は、遺族補償の問題であります。  一瞬にして家族を失い、自身も体と心に生涯ぬぐい得ない痛手を受けた遺族に対して弔意を表し、弔慰金遺族年金を支払うということは、国として当然の措置と思いますが、現行法では何の補償もありません。本法案ではその点どうされるのか。また、被爆二世、三世に対する対策はどうされるのか、御説明を願います。  第四に、被爆者年金とその手続についてお尋ねいたします。  現行二法による給付等を受けようとする場合、所得制限を初めさまざまな制限が設けられ、援護趣旨が損なわれています。前国会でようやく設けられた保健手当についても、爆心から二キロ以内の被爆者のみに支給対象をしぼるなど、私が現地視察で触れた不十分な条件下でも、その不当性、不合理性がはっきりとしております。とりわけひどいのは、原爆医療法にいう認定制度であります。疾病原爆に起因するとの証明義務を本人と医師に課するというこの制度のために、被爆者手帳所有者三十五万七千人の中で特別手当受給者はわずか二千六百二十九人にとどまっています。現に制度の根本的あり方を問う石田訴訟が進められていますが、認定制度は手当受給者を切り捨てるためにあるのかという怒りの声が起こるのもゆえあることであります。本法案が成立すれば、かかる諸制限や認定制度はどうなるのか、被爆年金支給はどう具体化されるのか、御説明を求めるものです。  なお、孤独な高年齢の被爆者は心から被爆者保護施設の拡充を待ち望んでいます。被爆者相談所の要求も切実であります。さらに、原爆病院の膨大な赤字は、放置できない問題として、国の有効な援助など適切な手だてが求められているのであります。これらの重要な問題について施策、展望を提案者において明らかにされたい。  最後に、三木総理に重ねてただします。  あなたは昭和四十七年八月八日日本原水爆被害者団体協議会と会われた際に、援護法は必要だという趣旨を答えられております。いま被爆者援護法案が審議をされるこの際、これに賛成をされるのか否か。国家補償精神を肯定をされるのか、それとも否定をされるのか。全国民被爆者遺族の前に明確な答弁をいただきたい。  私は、法案の一日も早い成立を願い、核兵器全面禁止まで国民とともに全力を挙げる決意を述べて、以上質問を終わります。(拍手)    〔国務大臣三木武夫君登壇拍手
  18. 三木武夫

    ○国務大臣(三木武夫君) 小巻君にお答えをいたします。  私も、去る日曜日、広島被爆者の慰霊碑に対して参拝をいたしまして、二度と再びこういう惨禍があってはならぬということをしみじみ感じたわけです。被爆者に対してはできるだけの施策を充実していかなければならぬと考えておりますが、やはり現行医療法、あるいはまた特別措置法を充実していくことによって被爆者実情に沿うていけることが可能であると考えまして、毎年予算を、対策費を充実しておる次第でございます。  また、小巻君が、私が被爆者代表と会ったときのことは目黒君の御質問にお答えしたとおりでございます。(拍手)    〔浜本万三登壇
  19. 浜本万三

    浜本万三君 小巻先生の御質問にお答えをいたします。  私に対する第一の質問は、日米両国政府の姿勢と被爆者の悲願であります核兵器の全面禁止の関係についてであります。  小巻先生も御指摘になったように、アメリカ政府及び三木内閣は、全く被爆者はもとより全国民の平和の願いを踏みにじっていることは明白であります。三十年前の広島長崎惨禍を再び繰り返させないために、いま政府がなすべきことは、たとえば非核三原則の法制化でありますとか、核兵器使用禁止協定の締結でありますとか、いろいろありますけれども、基本的には、核絶対否定の理念に基づきましていかなる国の核兵器をも廃絶するために全力を尽くすことであります。ところが、三木内閣は、フォード大統領の核先制使用政策に追従いたしまして、軍事体制強化の方向をとり続けてきておりますことは、すべての被爆者遺族国民の平和を希求する願望に逆行する政策であり、直ちに改める必要があるものと考えられます。  第二のお尋ねに対してお答えいたしますが、援護法の基本理念は国家補償立場でないかということでございます。私はそのとおりだと思います。罪もない国民に多大な犠牲をもたらした侵略戦争を引き起こした政府責任はきわめて重大であります。その上、アメリカの原爆投下国際法違反であるにもかかわらず、日本政府サンフランシスコ条約で賠償請求権を放棄いたしました。したがって、当然政府国家補償責任があるわけでございます。ところが政府は、昭和三十二年の医療法制定までの十二年間は全く何の施策も行いませんでした。そして被爆者を放置いたしました。その後も今日に至るまで十分な対策を行っておりません。被爆者生活、健康に多大な犠牲をもたらしてまいりました。本法案では、御指摘のように、国家補償精神を明確にし、被爆者医療生活を全面的、総合的に補償することといたしております。  第三番目の御質問に対してお答えをいたします。遺族補償被爆二世に関する御質問でございました。御承知のように、政府はこれまで、遺族へ弔意を表し、何らかの遺族補償をしてほしいという原爆犠牲者遺族の願いを無視し続けてまいりました。本法案では、原爆で亡くなった人々に心から弔意を表し、遺族へのせめてもの償いとして遺族年金支給することにいたしました。弔慰金昭和二十年八月六日にさかのぼって適用し、六十万円を支給することにいたしました。遺族年金は年六十万円を支給することにいたしました。  被爆二世または三世に対しても、希望する人については健康診断の機会を与えるし、必要な場合は医療手当支給等を行い、援護することにいたしております。  第四番目の質問についてお答えをいたします。これは被爆者年金とその手続についてでございます。  御指摘のように、現行認定制度に非常に問題が多いことは事実でございます。また、所得制限や資格要件が厳しいことにも問題があります。本法案では現行のような認定制度と諸制限はとっておりません。被爆者年金は全被爆者に適用をし、年四十万円を支給いたします。被爆者のうち政令に定める障害程度に応じて、年金額は四十万円以上、三百三十万円までの範囲支給されます。この認定の原則は、「原子爆弾の傷害作用の影響によるものでないことが明らかである負傷又は疾病による障害」は除外するという原則をとり、現行認定制度のように、被爆者に多発している疾病で、しかも白血病やがんなど不治もしくは治療困難な疾病のみに限定される制度はとりません。病理学的にも因果関係が立証できないのが放射線障害特殊性でございます。したがって、制限認定制度とは根本的に異なる原則により運用することにしておるのであります。  最後に御質問のありました被爆者保護施設及び被爆者相談所、赤字に悩む原爆病院の運営についてお答えをいたします。  本法案では、第四十八条で「国は、原子爆弾被爆者保護施設を設置しなければならない。」と、国に設置義務を課しております。この施設は高年齢の被爆者、小頭症の病状にある被爆者その他特に保護を要する被爆者を収容し、医療を含めて保護する施設であることも明記しております。生活、健康上の問題など、被爆者はいろいろな悩みを抱えております。したがって、被爆者相談所被爆者にとってどうしても必要な施設であります。現在、若干の自治体で設置していますが、多くは被爆者団体で実質的に相談業務が実施されておるわけでございます。本法案では第四十九条で、各都道府県に設置することができるとし、国が必要な補助を行います。  原爆病院の赤字は深刻であります。本法案では、国家補償精神被爆者援護の基本としておりまするので、当然に国が必要な補助を行うよう措置をとります。  以上で小巻先生に対する答弁を終わります。(拍手
  20. 河野謙三

    議長河野謙三君) 答弁の補足があります。三木内閣総理大臣。    〔国務大臣三木武夫君登壇拍手
  21. 三木武夫

    ○国務大臣(三木武夫君) 小巻君の前段の御質問、総括的な御質問の中に、日本政府戦争に対する責任を感じているのかと。責任を感じればこそ、賠償などを支払って終戦の処理をいたしたわけでございます。  原爆に対しては、もう二度とそういうことが、人類に対して原爆の投下ということはあらしめてはならぬということでございます。そういうふうに今日考えておる次第でございます。(拍手)     —————————————
  22. 河野謙三

    議長河野謙三君) 柄谷道一君。    〔柄谷道一君登壇拍手
  23. 柄谷道一

    ○柄谷道一君 ただいま議題となりました原子爆弾被爆者等援護法案に対し、私は民社党を代表して、若干の質問を行うものであります。  昭和二十年八月六日、広島上空で炸裂したウラン爆弾、同月九日、長崎に投下されたプルトニウム爆弾が、爆心地から半径約四キロメートルの範囲内にいた人々を、老若男女の区別なく一瞬にして殺害し、それ以外の地域にいた人々も閃光によって皮膚に火傷を負い、あるいは放射能を浴びていわゆる原爆症にかかった者が多数に及び、広島市においては少なくとも死者二十四万人以上、負傷者十六万三千人以上、長崎市においては死者七万三千人以上、負傷者七万四千九百人以上を出した悲惨な災害からすでに三十年の歳月が経過しているのであります。  原子爆弾がその破壊力、殺傷力において従来の兵器に比しはるかに大きなものであることは明らかでありますが、それにもまして恐ろしいことは、原子爆弾によって生ずる放射線ないし放射能によって起こる原子病、白血病その他各様の身体障害であり、被爆者の三十年に及ぶ命と暮らしと心の被害ははかり知ることができません。  昭和三十八年十二月七日、東京地方裁判所は、広島長崎での原爆投下国際法違反である、日本国民は個人としてその被害に対し裁判所に賠償を求める道はないという判決を下しましたが、その判決は次のように結んでいるのであります。現存する法律程度のものでは、とうてい原子爆弾による被害者に対する救済、救援にならないことは、明らかである。国家は自らの権限と自らの責任において開始した戦争により、国民の多くの人々を死に導き、傷害を負わせ、不安な生活に追い込んだのである。しかもその被害の甚大なことは、とうてい一般災害の比ではない。被告がこれに鑑み、十分な救済策を執るべきことは、多言を要しないであろう。  しかしながら、それはもはや裁判所の職責ではなくて、立法府である国会及び行政府である内閣において果さなければならない職責である。しかも、そういう手続によってこそ、訴訟当事者だけでなく、原爆被害者全般に対する救済策を講ずることができるのであって、そこに立法及び立法に基く行政の存在理由がある。終戦後十数年を経て、高度の経済成長をとげたわが国において、国家財政上これが不可能であるとはとうてい考えられない。われわれは本訴訟をみるにつけ、政治の貧困を嘆かずにはおられないのである。」このように国がその責任において被爆者に対し手厚い施策を講ずべきことを求めた判決に対し、総理及び厚生大臣はどう受けとめておられるのか。国家補償の理念に立つ本法を成立させることこそ、被爆者の三十年に及ぶ祈りにも似た期待にこたえることであり、心の傷をいやす道である。そして被爆国日本国家補償を確立することこそ、非核三原則を真に裏づけることであり、原爆慰霊碑に刻まれた「過ちは繰返しません」という誓いを生かすことになるのではないか。また、そのことこそ被爆三十年を機に戦後処理を完結させることではないか。明確な答弁をいただきたい。  次に、発議者に対し、次の諸点について質問します。  第一は、本法案の理念についてであります。  政府は今日まで被爆者に対し、一般戦災者とのバランス論、国家との身分関係論、社会保障の枠内論で対応してきたと言えます。原子爆弾の持つ瞬時性、無差別大量性、総合性及び持続性という本質は、普通爆弾による被害をはるかに超えることは明らかであります。国家補償の原則に立つ本法案を提出した真意はすでに趣旨説明の際にも触れられておりますが、再度発議者よりその見解を明らかにしていただきたい。  第二は、一般戦災者に対する対策についてであります。  フランスにおける軍人廃疾年金及び戦争犠牲者に関する法典並びに戦争被害に関する一九四六年十月二十八日の法律、イギリスにおける一九三九年人的傷病法及び一九六四年の同制度の改正、西ドイツにおける戦争犠牲者援護法など、各国においては一般市民の戦争犠牲に対する援護措置がそれぞれの実情に応じ法制化されておりますが、本法の成立と関連して一般戦災者に対しどのように対処しようとしているのか。また、現状をどう認識されているのかお伺いをいたします。  第三点は、医療についてであります。  従来、原子爆弾被爆者医療等に関する法律では、健康診断を定期診断年二回と限ってきたわけでありますが、これでは被爆者の不安な精神状態から考えて適当でないとする関係諸団体からも指摘されてきたところであります。この点については、本法案五条で「毎年、厚生省令で定める」こととしておりますが、その内容の充実とあわせ、患者に不安が生じたならば、いつでも診断を受けられるものと解してよいものであるかどうか、お尋ねをいたします。  さらに、医療手当については、原子爆弾被爆者に対する特別措置に関する法律で、認定疾病について医療給付を受けている者につき月額一万四千円または一万二千円の支給となっているのが現行でありますが、これを適当な額と考えるか否か、また、認定手続が現状でよいと考えているかどうか、お伺いいたします。  また、介護手当につきましても、原子爆弾被爆者に対する特別措置に関する法律の中では、その介護の期間に応じて月額一万一千五百円、一万七千二百五十円または二万三千円が支給されているわけでありますが、この額を適当と判断されるか否か、お尋ねをいたします。  第四点として、従来からあった特別手当、健康管理手当にかえて、被爆者年金制度を新たに設置すると本提案ではなっておりますが、この提案の意義を改めてお伺いいたしたいと思います。  最後に、三木総理にお伺いをしたい。すでに他の質問者も指摘されているととろでありますが、昭和四十七年八月八日、当時国務大臣であったあなたは被団協の代表と番町会館で会見した際、政府立法というとどうしてもその限界が出てくるので、議員立法援護法をつくった方がよい。原爆投下によって日本は無条件降伏を決意するに至ったことを考えれば、国民にかわって犠牲を受けた人々に対し、国民がその被害をカバーするのは当然である。役人感覚ですぐに一般戦災者との公平ばかり気にするようではだめだ、という趣旨発言をされたと聞いております。みずからの言動に責任を持ち、責任の所在を明らかにし、身処出退を明らかにすることは、国民の政治に対する信頼を深めるゆえんであり、議会制民主主義はそうした政治姿勢によって守られ、発展し、定着するものと考えます。  総理、素直に当時の発言をかみしめてください。私は、総理の発言を有言不実行、大衆迎合の無責任発言とは受けとめたくありません。とするならば、総理はこの議員立法を当然歓迎し、その成立に努力される立場にあると思うが、総理の政治姿勢を含め、明確な答弁を求めるものであります。  以上をもって私の質問を終わります。(拍手)    〔国務大臣三木武夫君登壇拍手
  24. 三木武夫

    ○国務大臣(三木武夫君) 柄谷君にお答えをいたします。  やはり、原爆被爆者放射能被害という他に見られない被害を伴うものでございますから、政府はできるだけ手厚くこの補償あるいはまた福祉というものを考えていく必要がある、こう考えまして、今日現在の原爆者に対する特別立法、これを中心にして毎年その対策を充実していっておるごとは御承知のとおりでございます。また、今後もこれで私は十分だとは思いませんから、原爆者に対する対策は今後ともさらに充実していきたい考えでございます。  昭和四十七年に私が代表の方とお目にかかったことは事実でございます。そのときに代議士の方々が案内をされたわけであります。そこで、私が物を約束できるという立場でもございませんし、案内を受けた議員の人々に、援護法というものを君らでひとつ研究してみたらどうだということを申したことは事実でございます。まあ、いろいろと検討を加えて、現在の医療法とまた特別措置法、これを充実することによって被爆者の御要望にこたえていきたい、こういうことを現在はいたしておる次第でございます。(拍手)    〔国務大臣田中正巳君登壇拍手
  25. 田中正巳

    ○国務大臣(田中正巳君) 柄谷議員にお答えいたします。  お尋ねの東京地裁判決は、戦争遂行の手段として原爆は不法なものであると判断しており、さらに、こうしたことをめぐっての賠償請求権は国対国の問題であり、個人が相手国及び自国に請求する権限はないという法理を判示し、被爆者に対しては手厚い施策を望みつつも、それは政策の選択の問題であると論じておるものと解釈すべきものと思われます。  こうした観点から政府はあの判決以降、特別措置法を立法し、自来、本年度の保健手当の実施等にも見られるがごとく、二法の系列の中で種々の点においてこの二法を強化することにより施策の充実を図ってまいった次第であります。結論的には、同判決からは援護法制定の絶対的な帰結は見出しがたいものというふうに判断をいたしております。(拍手)    〔浜本万三登壇
  26. 浜本万三

    浜本万三君 柄谷先生の御質問にお答えを申し上げます。  御質問の第一点でございますが、本法案提案した本意についてでございます。  まず第一は、原爆被爆者の基本的人権を確保するという点にあると思います。すなわち、原爆被害というものは甚大な家族の崩壊、放射線多量に浴びた結果起こる肉体損傷、財産、職場の喪失というふうに考えられます。しかも、被爆後三十年、政府の手によっては原爆二法によるささやかな救済策がとられたのみでありまして、今日では深刻な状態になっておると思います。いわゆる病気と貧困の悪循環であります。この悪循環の解消には医療の充実と生活の安定が必要であることは申すまでもございません。本法案では放射線障害特殊性に立脚をし、予防的医療実施や各種年金支給によって健康な生活保障しようとしておるのであります。  第二は、国家補償必要性についてであります。御指摘のとおり政府は、国家との権力関係がない、一般戦災者との均衡を欠く、あるいは、社会保障の枠内で対処するとしてきたのでありますが、政府戦争犠牲者に対する援護措置は、戦傷病者戦没者遺族援護法あるいは戦傷病者特別援護法など、軍人軍属、準軍属、公務員など国との雇用関係にあるものに限られてきたのであります。つまり、軍国主義国家への貢献度による身分序列、差別が基本となっておると言えます。たとえば産業公害を例にとれば、企業と雇用関係にある者の被害だけ補償するという変な理論が、政府の「権力——身分関係がない」という論理の実態なのであります。この論理は、再び戦争の肯定に連なっている考え方だと申せましょう。さらに、一般戦災者原爆被爆者との均衡を欠くとの主張は、職業軍人や特権的有資産者——たとえば在外資産の補償などがございますが、これらへの優遇と原爆被爆者一般戦災者を比較すれば、まさに補償の均衡を欠いておると言えます。原爆被爆者援護法は、職業軍人や有資産者など、身分や特権に基づくものではなく、放射線障害という観点からすれば人権の確保が、また、戦争責任という観点からは死没者や財産損失に対する償いを求めておるわけでございます。  第二点の御質問は、一般戦災者援護法との関係でございますが、すでに御指摘のとおり、諸外国では一般戦災者に対しまして援護法制定されております。また、わが国でも一般戦災者援護法制定がかねてから要求をされておるところでございます。同法が成立することを私は心から希望するものであります。しかしながら、原爆被爆者一般戦災者援護法との根本的な相違もあります。すなわち、原爆被爆者多量放射能を浴びているわけで、放射線障害特殊性に立脚した特別の医療制度が必要でございます。加えて被爆二世、三世対策という未来世代に対する措置をも必要とされているのであります。したがいまして、他の社会保障関係の諸法とも同一には論じられないと思います。原爆被爆者の場合には過去に対する補償、現在の総合的な医療生活保障、そして未来世代に対する特別の対策を必要とするものであるからであります。  第三の御質問であります健康診断医療についてお答えを申し上げます。  健康診断につきましては、いつでも診断を受けられるように配慮いたしました。健康診断被爆者発病を予防する上で最も重要な意味を持っておるわけでございます。現在の医療法による診断では全く形式的となっており、被爆者から強い不満が出されておるわけでございます。たとえば一つの例として申し上げますが、沖繩在住被爆者の検診率は五〇%以下であります。この理由は診断を受けようと思っても、離島から出てくる場合には三日間もかかります。加えて、自分の病状も健康管理をするための指導も全く行われないのです。まして、血液検査中心の診断では病状さえ十分明らかになりません。健康診断あり方は、援護法制定後も常に配慮しなければならない問題であると思うわけでございます。現在の医療手当につきましては低過ぎることはもう周知の事実でございます。常識的に考えましても、療養中のさまざまな出費をこの額で賄うことは、これはとうてい不可能であります。さらに、医療手当は本来認定被爆者に限られる性格のものかどうか。認定被爆者に限らず、入院、通院した者には支給されるべきだと考えます。本提案援護法ではその点を考慮しております。  認定制度につきましては、さきの御質問の際にもお答えをいたしましたように改善いたしました。それに伴い手続も簡単にならなければならないと思っております。現行医療法のように、認定申請をしてから数カ月もかかるような事態は避けられると思います。  その次の介護手当ですが、これも低過ぎます。実際、たとえば介護人を頼んだ場合に、今日の実情は一日一万円が相場であります。したがいまして、家族が介護するということになるわけですが、これに対する対策は、現行法ではわずか月額四千円であります。大幅な増額が必要であることは論をまちません。  最後に、第四点の質問では年金制度の問題が言われておるわけでありますが、被爆者年金被爆者の健康の管理と生活の安定を図るものであります。従来の健康管理手当は治療中の者に限定されていました。すなわち、発病してから健康管理手当が支給されるのですが、被爆者立場に立つならば、発病しないための健康管理が何よりも必要とされるのであります。その意味では、被爆者年金被爆者発病予防に役立つものであると考えるわけでございます。  なお、先ほどから三木総理に対しまして、被団協代表者との会談の模様が再三質問に出されておりますので、私の方から特にその会見内容の記録を朗読をいたしまして、御参考に供したいと思うわけでございます。  その原爆投下によって日本は無条件降伏を決意するに至ったことを考えれば、国民にかわって犠牲になった人たちに対し国民がその被害をカバーするのは当然である。」次の発言は、「それにしてもいままでの役人感覚で、すぐに一般戦災者との公平ばかり気にしているようではだめだ。」第三番目は、「政府立法というとどうしてもその限界が出てくるので、議員自身が勉強して、議員立法援護法をやった方がよい。」第四番目は、「口で平和国家であると言っても、実行しなければ他のアジアの諸国を安心させられない。実行することが国際的にも説得力を持つことだ。平和愛好国として被爆者援護法は必要である。」と申されておるのであります。  でありますから、その当時の御発言と本日本議場における御発言とは全く相違をしておりまするので、三木総理大臣の政治姿勢を疑わなければならないというふうに思うわけでございます。  以上をもちまして御答弁にかえたいと思います。(拍手
  27. 河野謙三

    議長河野謙三君) これにて質疑は終了いたしました。      ——————————
  28. 河野謙三

    議長河野謙三君) 日程第二 郵便法の一部を改正する法律案趣旨説明)  本案について、提出者の趣旨説明を求めます。村上郵政大臣。    〔国務大臣村上勇君登壇拍手
  29. 村上勇

    ○国務大臣(村上勇君) 郵便法の一部を改正する法律案につきましてその趣旨を御説明申し上げます。  この法律案は、郵便事業の運営に要する財源を確保するため、第一種及び第二種郵便物の料金を改定すること等を内容とするものであります。  郵便料金につきましては、昭和四十六年度に改定されて今日に至っておりますが、この間、諸経費、特に人件費の著しい上昇のために、事業財政は、昭和四十九年度当初から相当の不足を生ずる状況となり、このまま推移いたしますと収支の不均衡はますます大きくなることが予測されるところとなりました。年々増加する郵便物を円滑に送達し、郵便業務の正常な運営を確保して郵便に負託された社会的な責務を果たすために、事業収支の改善が急がれるところとなったわけであります。  このような状況において、昭和四十八年十月、郵政審議会に対し「郵便事業の健全な経営を維持する方策」について諮問し、同年十二月「郵便料金を改正することが適当である」との答申を得たのでありますが、折からの異常な経済情勢の中において、政府といたしましては、物価安定を最優先の課題といたしておりましたことから、小包郵便物の料金を除き、郵便料金の改定につきましては、昭和四十九年度中は見送ることとした次第であります。このことに加え、その後の給与の改定が約三〇%にも及ぶ大幅なものとなったため、昭和四十九年度末における郵便事業収支の不足額は約一千二百五十億円となりました。  このため、昨年十一月郵政審議会に対し、事業の運営に要する財源を確保するための郵便料金改正案を再度諮問し、答申を得ましたので、答申に示されたところにより改正案を骨子とする料金改正を行うこととし、郵便法で定められている封書及びはがきの料金を本法律案により改定することといたしたものであります。  料金改正の主な内容は、第一種郵便物(封書)につきましては、定形二十五グラムまで二十円を五十円に、定形外五十グラムまで四十円を百円に改め、また、第二種郵便物の通常はがきにつきましては、十円を二十円に改めることとしております。  以上のほか、この法律案におきましては、取り扱いについて若干の改善を図ることとし、料金不足の郵便物等の納付額の算定方法を改めること、並びに引き受け及び配達について記録を行う、いわゆる簡易書留の損害賠償の最高限度額を引き上げることといたした次第であります。  なお、この法律案の施行期日は、公布の日から起算して五日を経過した日からといたしております。  以上、今般の法律改正の主な内容について申し上げましたが、今後とも安定した郵便の送達を確保し、もって国民各位の期待にこたえる所存でございます。  以上をもってこの法律案趣旨説明を終わります。(拍手
  30. 河野謙三

    議長河野謙三君) ただいまの趣旨説明に対し、質疑の通告がございます。順次発言を許します。茜ケ久保重光君。    〔茜ケ久保重光君登壇拍手
  31. 茜ケ久保重光

    ○茜ケ久保重光君 私は、日本社会党代表いたしまして、ただいま趣旨説明のありました郵便法の一部を改正する法律案に対し、郵便料金値上げ絶対反対の立場から、三木総理並びに関係大臣に若干の質問をいたします。    〔議長退席、副議長着席〕  そもそも、郵便料金値上げ法案は、さきの通常国会において、国民世論の強い反撃と野党各党の一致した反対とにより廃案となったのであります。にもかかわらず、その後何らの反省や検討を加えることもなく、それと全く同一内容法案をおくめんもなく再提出することは、これはまさに国民世論に真っ向から挑戦するものであります。しかも、衆議院においては実質上何らの審査もいたしておりません。委員会は審査のないまま、自民党単独で強行突破いたしました。議会制民主主義のルールを無視し、あえて強引に本院に送付したいきさつからも、われわれは本案には絶対反対するものであります。  まず最初にお伺いいたしたいことは、国民最大関心事である物価問題に対する政府の政治姿勢についてであります。  政府は、消費者物価上昇率一けた台抑制の目標がほぼ達成できるという見通しから、物価鎮静は定着化しつつあり、今後は安心して不況対策に取り組めるという認識に立っているようでありますが、これは国民生活の実感から全く遊離した感覚と言わざるを得ません。安定した物価水準とは、少なくとも上昇率が預金金利を下回るものでなければならないにもかかわらず、国民の汗の結晶である預貯金の実質価値が日々確実に目減りしつつあるという現状は何ら解消しないのでございます。それのみならず、特に不況対策という大義名分のもとに、庶民の零細な貯蓄の集積である郵便貯金までも含めて今回行われた大幅な預貯金金利の引き下げは、国民大衆に一方的な犠牲を強いるものであり、これによって目減り幅はさらに拡大するでありましょう。  しかも、今後物価上昇をもたらすであろう各種要因は山積をいたしております。すなわち、一次生産品の国際市況がじり高になりつつあるという海外物価からの影響、石油製品の値上げを口実とする各産業の製品値上げ、さらに大量の赤字国債が発行されるとするならば、それに伴う財政インフレの危険性等々、まさにインフレ要因はメジロ押しであります。このような状況の中で、政府は今回の値上げ三法案に続いて、さらに国鉄運賃、私鉄運賃、国立大学授業料、電報電話料金など一連の公共料金の値上げを策しているのであります。  一方において預貯金金利を大幅に引き下げ、片や公共料金を一斉に大幅に引き上げるという、このような政治姿勢は、国民大衆にとってまさに踏んだりけったりの悪政であると断ぜざるを得ません。  政府は、来年度のなるべく早い機会に消費者物価上昇率を定期預金の金利以下に抑えるという目標を掲げておりますが、いかなる根拠と、またどのような道順を経てその目標を達成しようとするのでありましょうか。われわれはまず公共料金の値上げをストップし、政府みずからが物価安定への強い姿勢を示すことなくしてはこの目標達成は不可能であると考えるのであります。総理並びに副総理たる経済企画庁長官から、物価抑制と公共料金値上げとの関係について明確な御答弁をお願いいたします。  次にお伺いいたしたいことは、今回のような大幅料金値上げを提案するからには、その以前において事業改善のための最大限の経営努力がなされなければならないと思うのであります。郵政省はその努力を怠っているのではないかという点であります。郵政事業には改善すべき点が多々あります。ここでは最も基本的な二点をその具体例として指摘したいと思っております。  その第一は、現在の郵政事業は、事業の長期的展望はおろか、事業のあり方についてすら何ら確たる理念を持たないということであります。かつて郵便事業が、明治初年の創業以来、幾多諸先輩の英知と努力により、世界に誇るに足る輝かしい歩みを続けてきたことについては衷心より敬意を表するにやぶさかでございません。しかしながら、最近における社会情勢の急激な変化は郵便事業を取り巻く環境を一変させ、特に電話その他の高速度通信手段の急速な発展は、郵便事業の社会的使命にまで重大な変化をもたらしつつあります。  さきの全逓信労働組合全国大会においては、このような情勢を踏まえ、創業以来の迅速、安全、確実という郵便の三大モットーをあえて爼上にのせ、安全と確実を基調とする新時代にふさわしい郵便のあり方という方向を強く打ち出しております。しかるに、郵政当局は、今日なお明治以来の伝統の上にあぐらをかき、従来の惰性により、赤字になれば値上げをすればそれで済むんだというような安易な経営姿勢を変えておりません。これは、国民から郵便事業を負託されている経営責任者としてまことに無責任と言わざるを得ないのであります。  この際、まず、情報化時代における郵便の新たな使命と事業のあり方を明確にし、郵便事業の将来展望を国民の前に明示することこそ先決だと考えますが、郵政大臣の御所見をお聞かせ願いたいと思います。  次に、第二の点としては、現在の郵政事業における最大の問題点である小規模な郵便局の運営を近代化、合理化すること、すなわち、郵政事業の恥部とも言うべき前近代的な特定郵便局制度を根本的に改革することであります。  わが党が多年にわたり一貫してこの制度の撤廃を主張しているにもかかわらず、戦前の封建的制度の遺物である特定郵便局は現在その数約一万七千局に及んでおり、さらに年々増加している状況でございます。  この制度の弊害の根源は、局長が私有局舎を提供することでありまして、そのため、局長任用について必然的に不明朗かつ不透明な人事が派生をし、ひいてはそれが特定局の職場を陰うつなものにし、職員の勤労意欲を喪失させ、能率の低下をもたらす最大の原因となっていることは論をまたないところであります。  また一方、この制度は経営面から見てもきわめて不経済な制度でありまして、郵政事業の財政を悪化させる大きな要因となっているのであります。すなわち、局員二、三名を管理するために高給の管理職である郵便局長をあまねく配置するというこの制度が、経営的に見てはなはだ不経済であることは何人も否定できないところでございます。すでに行政管理庁においてもこのことを重視し、去る三十二年の勧告において、普通局の分局あるいは出張所等の制度を活用してこの不合理を是正すべきであることを強く指摘しているのでございます。これほど特定郵便局は現在の郵政事業全般にとって非常な重荷になっているのでございます。われわれは、さきの通常国会における郵便法審議の際にも、この問題を強く追及し、特定局制度をめぐる不合理性は改めて明確にされたのでありますが、郵政省はこの制度の改革には全く熱意を示さず、手をこまねているのでございます。料金値上げを国民に訴える以上は、経営全般にわたって現代社会に即応した最も合理的な制度を実現することこそ経営者としての当然の責務であると思うのでありますが、郵政事業における非合理性の最たるものである特定郵便局制度の改革について郵政大臣のお考えをこの際はっきりお聞かせいただきたいのでございます。  次に、郵政審議会あり方についてお伺いいたします。  われわれは、憲法及び財政法に定める財政民主主義の原則に基づき、郵便料金の決定はすべて国会の場においてなされなければならないと主張しているのでありますが、政府は、前回の郵便法改正において、われわれの強い反対を押し切って、第三種郵便物等の料金の決定を省令に委任することといたしたのでございます。そしてその際、国会にかわる民意反映機関としての郵政審議会へ諮問することを法定したのでありますが、現在の郵政審議会には、国会にかわって利用者たる国民の利益を代表するような機能は全くありません。形式的には民主的な行政体制を擬制しながら、実質は公共料金の決定を行政府の恣意にゆだねたも同然と断ぜざるを得ないのであります。すなわち、委員の構成を見ても、労働者代表や消費者代表と見られる人々はきわめて少数で、元郵政、大蔵官僚や財界代表と見られる人々が主体であり、しかも、その審議は非公開で行われているのであります。前回の郵便法改正の際に、逓信委員会においては、附帯決議まで付して郵政審議会の抜本的機能強化を強く要請し、政府もその実行をかたく約束されたのでありますが、その後どのような改革がなされたのでありましょうか。重ねて申しますと、郵政審議会の機構は名実ともに利用者である国民代表としてふさわしいものにすべきであり、また、審議についても公開の原則を確立すべきであると考えますが、郵政大臣から明確な御答弁をお願いいたします。  次は、政府が従来の経済成長、産業優先の政策から国民福祉優先の政策へと転換を図ろうとするならば、郵便料金についてもまた福祉優先指向の料金制度を設けるべきではないかということであります。特に今回の大幅料金値上げ案は、経済的負担能力の低い身体障害者やその団体等に非常に大きな衝撃を与えており、これらの人々からの請願が多数国会に提出されたことは郵政大臣も十分御承知だと思います。政府が弱者救済を標榜されるならば、郵便料金制度の面においても、恵まれない人々に対する手厚い配慮が当然なされなければならないと思うのであります。政府は、通常国会における審議の過程において、弱者救済対策をも含め、第三種郵便物等の省令料金の値上げ案については再検討する考えがあることを示唆されたのでありますが、この点についてその後どのような検討がなされ、どのような結論をお出しになったのか、この際、明確かつ具体的にお示しを願いたいと思うのであります。  最後にお伺いいたしたいことは、郵政省における労使関係抜本的改善についてであります。  郵政事業は、人なくして事業なしという典型的な労働集約型の事業であるだけに、正常な労使関係の確立こそ、まさに経営の基本であると信ずるものであります。しかるに、かねてから指摘しておりますように、十数年にわたる郵政省の労働組合弾圧政策により荒廃の極に達した郵政労使関係は、ここ一、二年やや改善の兆しが見られつつあるとはいえ、いまだに根強い労使の相互不信が払拭されず、他の事業に例を見ないような陰惨な職場が各所に見られることはまことに遺憾でございます。  このような状態が続く限り、いかに郵便料金を値上げいたしましても、事業財政の改善を図ったとしても、本来の使命である正常な郵便サービスを提供することはできません。国民に、いわゆる約束した郵便サービスをスムーズにするためには、郵便業務の正常な運行を確保するために、何をおいても労使関係抜本的改善が不可欠であります。そのためには、郵政省は従来の行きがかりを捨てて、労使の信頼関係回復のため、責任ある諸施策を積極的に推進すべきことは言うまでもありません。それと同時に、近代的労使関係確立のためには、まず憲法で保障をされている労働基本権、すなわちスト権を完全に付与することこそ先決でありましょう。  最近、この問題について、国鉄初め三公社当局がかなり前向きの姿勢を……
  32. 前田佳都男

    ○副議長(前田佳都男君) 茜ケ久保君、時間です。
  33. 茜ケ久保重光

    ○茜ケ久保重光君 はい、すぐ終わります。  姿勢を表明しつつあるにもかかわらず、五現業の雄であり、しかも労働集約程度の最も高い郵政事業を経営する郵政当局が、依然としてその態度を明らかにしないことは不可解と言わざるを得ません。政府は、郵政職員の労働基本権問題にどう対処をされようとしているのか、この際、総理並びに郵政大臣から誠意あるお答えをいただくことを強く要請いたしまして私の質問を終わります。(拍手)    〔国務大臣三木武夫君登壇拍手
  34. 三木武夫

    ○国務大臣(三木武夫君) 茜ケ久保議員にお答えをいたします。  郵便法の改定については、衆議院審議が簡単過ぎたではないかというようなお話でございますが、簡単というか、審議が十分なされなかったのではないかということでございますが、御承知のように、これは衆議院においても長期の審議の時間をかけて可決をしたものでございまして、審議は尽くされておることと思いますが、参議院においても相当審議を願ったわけでありますが、最後は可決に至らなかったというものでございます。この郵便法の改正は、やはり郵便事業というものの業務の運用というものが確保されなければなりませんし、したがって、そういう意味からいって、郵政事業の財政の面もこれは立て直さなければならぬことは御承知のとおりでございます。そういう点から、いまこれを撤回して出直す考え方は持っておりません。  あとは、景気、物価等の問題については福田副総理からお答えをいたします。    〔国務大臣福田赳夫君登壇拍手
  35. 福田赳夫

    ○国務大臣(福田赳夫君) 公共料金を軒並み上げておいて、一体、物価の一けた目標というのは達成できるか、このような御質問でありますが、確かに公共料金を引き上げるということは物価政策上本当にこれは痛いことです。もし公共料金引き上げを行わないで済むということになりますれば、物価政策というものは、非常にこれは荷が軽くなる、さように考えておりますが、しかし、茜ケ久保さんも御承知のように、昨年の一月、原油価格の四倍の引き上げがあったわけであります。石油社会のその中で、その原油のほとんど全部を海外から輸入する、そういうわが国におきまして、原油価格が四倍に上がったということになりますると、わが国のあらゆる製品の価格にその影響が波及するわけであります。そういうことで、まあ大方民間の諸商品につきましては、四倍原油に対応いたしました新しい物価水準というものに移行しておるわけでございまするけれども、まあ、ああいう狂乱物価というような状態でありますので、公共料金につきましては、その順応を、これを差し控えてきておるのであります。しかし、この差し控えを長く続けるわけにいかぬというところに問題があるわけであります。いま、公共料金をさらに抑制して、据え置きだということになりますれば、これはいま、さなきだに大変な国家財政に大変な負担がくる。それから、そのおのおのの企業体の運営にも重大な問題が出てくるわけであります。そういうことを考えまするときに、やっぱりこれは一挙に公共料金の引き上げということはやっちゃあいかぬと思うんです。私は、三年ぐらいの計画で逐次なだらかにこの改定をやっていかなきゃならぬというふうに考えておりますが、しかし、御理解というか、御安心願いたいのは、そういう、ことしこの考え方のもとに酒、たばこ、郵便料金の改定をやりまするけれども、それは、もう昨年の暮れ予算を編成するとき、それをすでに見込んでおるんです。そして、そのときすでに物価一けた目標ということを言っておるんです。私は、公共料金、この程度のものが引き上げがありましても、一けた目標、これはそれを前提としての目標でありますので、いささかの不安を皆さんに及ぼすことはないと、かように考えます。(拍手)  もう一つ、安定した物価というのは、これは郵便貯金の利子を下回る物価の状態という、したがって、今回郵便貯金の利子が引き下げになったから、物価をそれに応じてまた引き下げることを目標とすべきだと、こういうお話です。私はこれはごもっともなお話だと思うんです。私は前から、消費者物価、それを下回る物価水準を実現したいということを言っておる。そこで前から、それを来年度のなるべく早い時期に実現したいと、こういうことも言っておるのです。ところが、郵便貯金の利子が一分引き下げになった、引き下げになると七分以下になるわけでありますが、そのところまで、来年早い時期に消費者物価水準を引き下げ得るかというと、これ、なかなか私も自信がないのです。しかし、なるべく早く消費者物価、これが貯金の利子以下になる、こういうことにつきましては努力はいたしてまいりまするけれども、来年はまだ七分以下というところにまではいきかねるかもしらぬ。まあ、七分台というようなことでいかなければならぬかなと思っておるのですが、精いっぱい御趣旨に沿って努力をいたします。(拍手)    〔国務大臣村上勇君登壇拍手
  36. 村上勇

    ○国務大臣(村上勇君) 茜ケ久保さんの御質問にお答えいたします。  まず、郵便料金の値上げを提案する前に事業の長期展望を立てるべきではないかとの御質問でありますが、郵便事業の長期展望につきましては、さきの郵政審議会の答申を受けて、昨年六月、部外各分野の専門家の参画を得て、今後における社会の全通信体系の中での郵便の位置づけ及びそのあるべき姿について総合的に考察することを目的とした「郵便の将来展望に関する調査会」というものを設けまして、目下その目的の趣旨に沿った調査研究が行われているところであります。  なお、郵便料金値上げを提案する前にこの点を先行さすべきだとの御指摘でございますが、事業財政は現在きわめて窮迫した状態にあり、このまま推移すれば今後の健全な経営を維持することが一層困難となると思われますので、この際料金改定をお願いしてこの危機を乗り切ることが喫緊の課題であると、こう考えた次第であります。  また、郵便料金の値上げを提案する前に特定郵便局制度を改革すべきではないかという御質問でありますが、この特定局制度につきましては、昭和三十三年一月の特定郵便局制度調査会の答申の趣旨を十分尊重いたしまして、そうしてきているところでありますし、特定郵便局の現状を見ましても、地域社会に密着して郵政事業のサービスを提供し国民に親しまれておりますので、現在の特定郵便局のあり方というものを基本的に変える考えはございません。  次に、郵政審議会の民主的改革、特に審議の非公開や古手官僚、財界人を一掃すべきであるとの御質問にお答えいたします。  郵政審議会委員は、広く各界の学識経験者から適任の者を任命することといたしておりますが、今後とも任命に当たりましては慎重に対処してまいりたいと思っております。  なお、審議会の公開、非公開につきましては審議会自体が決める事柄でありますが、審議会におきましては事案により、自由な意見の交換を図る等のために非公開の決議をいたす場合がございます。  次に、第三種料金についての御質問にお答えいたします。第三種の料金につきましては、ただいま御審議いただいております郵便法が改正されました後におきまして、郵政省令で定める取り運びとなっておりますが、その際には、郵政審議会の答申の趣旨を尊重いたしますとともに、さきの国会における衆議院委員会の附帯決議とか、あるいは審議の過程において表明されました数々の御意見を十分参酌させていただき、慎重に決定いたしたいと考えております。  最後に、労働基本権問題についてお答えいたします。  三公社五現業等の職員の労働基本権問題につきましては、現在関係閣僚協議会の専門委員懇談会において検討が進められており、この問題についての関係閣僚協議会としての結論は、専門委員の意見を尊重して出すことになっておりますので、現段階におきまして私が意見を申し上げることは差し控えさしていただきたいと思います。(拍手)     —————————————
  37. 前田佳都男

    ○副議長(前田佳都男君) 矢原秀男君。    〔矢原秀男君登壇拍手
  38. 矢原秀男

    ○矢原秀男君 私は、公明党を代表して、ただいま趣旨説明のありました郵便法の一部を改正する法律案に対して、総理並びに関係大臣に若干の質問をいたします。  申し上げるまでもなく、今国会の最大の課題は、深刻な経済、社会情勢を背景に雇用不安、不況に取り組み、これをどう克服するかにあるわけでございます。今回の史上例を見ない大幅な郵便料金の値上げを許すことになれば、またまた物価高騰で国民生活は苦境に陥ることは間違いございません。その上、数多くの関連公共性等の料金引き上げの突破口となるわけでございます。後に続く酒、たばこ、国鉄、私鉄、バス、航空等の運賃、電話、電報、さきに上がりました消費者米価、塩、中小都市ガス、テレビ受信料、公私の授業料、水道、電気、鋼鉄材、溶接棒、電線、アルミ、そうして非鉄金属、石油、灯油、プロパン等々、簡単に挙げましたけれども、値上げの波及効果、また連鎖反応はさらに便乗値上げを誘発し、卸売物価から小売物価へと、不況下におけるインフレ様相となることは火を見るよりも明らかでございます。国民生活は赤字の家計から政治に対する不信はさらに増大するでございましょう。物価上昇率を一けた台とする政府の見通しは、机上の空論となることは明白であります。消費者物価指数は、四十五年一〇〇として実に五十年の現在一七三%程度を上下しているのでございます。ただいま福田さんが一けた台を云々されていらっしゃいますけれども、国民生活は大変でございまして、対前年度比パーセントを挙げるのは、数字のまやかしが国民に影響することを私は恐れるわけでございます。いずれにいたしましても、物価安定のまず第一は、値上げの導火線になる公共料金を凍結、抑制することでございます。そして財源補てんを行う措置をとるべきでございます。これに対して三木総理は、国民生活安定、擁護の立場からの公共料金抑制への基本的姿勢について明確なる御答弁をお願いする次第でございます。  福田経企庁長官は、石油値上げ等による新価格水準を述べ、物価政策の見地から、価格調整に乗りおくれたとして、公共料金を適正なものとする必要があるとの見解を明らかにしておられます。当面の物価の見通しがついたのか、あるいは、政府の経済見通しの狂いからくる財政危機を考慮して方針を切りかえようとしているのか、その真意を明確にしていただきたい。  また政府は郵政事業について、公共性大であるが受益者負担の原則を貫くと強調されておられます。財政、経済は大資本優先の所得配分であり、実に不平等であることは国民周知の事実であります。先に手をつけることは、大資本擁護の租税特別措置等々の抜本的税制の改正に取り組むべきでございます。また、社会保障による公正な所得再配分の体系をつくり直すべきが先決でございますが、これについては大平大蔵大臣の御見解をお伺いいたします。この機能が十分に果たされていない限り、受益者負担の原則は大いに修正されてしかるべきでございましょう。また、公共料金決定に当たっては、ナショナルミニマムの考え方を大いに取り入れて、おくれた福祉面をもカバーしていかなければならない。これらの点について三木総理はどのようにお考えか、御答弁をお願いいたします。  本来、郵便事業が国営の独占事業として運営されているゆえんは、郵便が国民の日常生活に欠くことのできない最も基礎的な通信手段で、高度の公共性を有するからであります。したがって、その経営はガラス張りで行うことでございます。原価計算の内容等は国民の前にその全貌が余すところなく公開され、国民の要望、批判に対して明確な回答がなされなければなりません。現在までその実態国民の前に明らかになっておりませんけれども、これについては村上郵政大臣のお考えを伺いたいと思います。  郵便法第一条には「郵便の役務をなるべく安い料金で、あまねく、公平に提供することによつて、公共の福祉を増進することを目的とする。」と規定しております。さらに、昨年十二月に郵政審議会が提出した「郵便料金の改正に関する答申」でさえ、「この料金改正案は従来になく大幅なものであって、直接間接に国民生活や経済一般に与える影響は軽視することを許さないものがある。」ので云々と検討を要望しております。第一条の精神三木総理はどう理解されているのか、お伺いをいたします。  しかるに今回の改正案は、封書二十円から五十円に、はがき十円を二十円にと、二倍以上の大幅な値上げを目指し、これは郵便事業に課せられた公共的使命を全く無視しております。政府はこの際利用者と公共とのそれぞれの負担区分を明確にすべきでございます。特に基礎的投資部分の一般会計負担の原則を確立すべきであります。このことは、郵政事業とは国が国民保障すべき最低のコミュニケーション手段としての性格を有しており、郵便局舎やポストなどの基礎施設についてでございます。さらに救済の幅を広げれば、採算のとれない地域へのサービス提供による収入不足等についても国がこれを補てんすべきではないのか、この点について三木総理の明確なる答弁をお願いいたします。  次に、政府国民生活優先を標榜されるならば、郵便の種類体系についてもこの際抜本的な改革が必要でございます。すなわち、企業の差し出す郵便物が全取扱量の八〇%を超えるわけでございます。郵便利用の現状を踏まえ、企業と個人の郵便物の料金格差についても検討すべきと考えますが、村上郵政大臣の見解を伺いたい。  さて、省令事項に移され、国会審議を外した第三種の五倍値上げは異常でございます。常識外れもはなはだしいのでございますが、これについて三木総理は撤回する意思はないのか、また修正をするのか、御見解をお伺いします。  また、第四種該当でございますけれども、働きながら学ぶ勤労学生の通信教育、第三種該当の過疎地域の住民や身体障害者の恵まれない人々、また、地域的な文化サークル等に過大な経済的負担を強いるだけでなく、民主主義の基本でございます言論報道の自由すら奪うおそれがあると思いますが、三木総理はどのようにこれらに対処されるのかお伺いをいたします。  最後に、三公社五現業職員のスト権については当然回復させる時期であると思います。今秋結論との目標で政府筋で審議がなされておりますが、具体的に見解を述べていただきたい。  郵政事業における労使関係の正常化が常に期待をされておりますが、現実に法規においてすら非常に複雑でございます。公共企業体等労働関係法と労働組合法、そして労働基準法等が適用され、同時に、職員の勤務、服務関係については国家公務員法、人事院規則等が相互に交錯をしているので、現実的に非常に複雑な特殊性となっております。これが現況でございます。しかしながら、憲法二十七条、二十八条、またILO条約八十七号、九十八号等の関係性から見て、スト権回復は時代の流れであることを私は信じております。国鉄、郵政等を除く分離付与論も論議されておりますけれども、郵政職員のスト権に関する三木総理の基本的な姿勢をお伺いいたしたいと思います。  以上数点にわたりお尋ねいたしましたが、政府閣僚の明確なる御答弁を願い、私の質問を終わります。(拍手)    〔国務大臣三木武夫君登壇拍手
  39. 三木武夫

    ○国務大臣(三木武夫君) 矢原君にお答えをいたします。  不況で国民が苦しんでおるときに公共料金の引き上げは抑制すべきだというお話でございましたが、公共料金もあんまり無理に抑制すると、かえって長期的なサービスを低下さすことにもなりますし、また一遍に、次に値上げをするときにはもう大変なしわ寄せが来るわけでございますから、したがって、物価の情勢を勘案しながらやむを得ない改定は行うべきが妥当である。今度の場合も最小限度にとどめたものでございまして、物価を十分に注意しながら今回の法案を提出をいたした次第でございます。  受益者負担ということのいろいろ御議論がございましたが、公共料金というものは、それぞれそれを利用する人がその利用によって受ける便益の程度で相応の費用を負担するということが私は必要である。公共料金だからといって、何でももうこれは低く抑えておけばいいというものでは私はないと思うわけでございます。しかし、国民生活への影響は十分に配慮いたしておりまして、郵便料金について、はがきの料金の引き上げ幅などは極力抑制をすることにいたしたわけでございます。  それからまた、郵便法の規定を引用なさいまして、郵便法の一条になるべく安くとしてあるのに、その趣旨に沿わぬではないかということでございますが、郵便法の第一条の「なるべく安い」の趣旨は、収支を度外視して安くやるというふうにはわれわれは考えていないわけで、同法の三条にもありますように、能率的な事業経営のもとにおいて収支相償——収支が相償うことを前提にするものであると、こういうふうに解釈をいたしておるわけでございます。  それから、三公社五現業のスト権の問題お話がございましたけれども、この問題は御承知のように、ただいま専門委員会の懇談会で検討をいたしておる最中でございます。それの意見も踏まえて閣僚協議会でこの問題に対して結論を出したいと考えております。  また、第三種、四種のこの問題についていろいろ御質問ございましたが、第三種、新聞紙と第四種、通信教育、点字、学術刊行物については、沿革的にもこれは安い料金とされていると承知していますが、現行郵便法は、これは低料金の物を含めて、全体として収支が相償うことが必要とされております。したがって、第三種、四種の赤字を国が補てんするのは適当ではないという考えでございます。  お答えをいたします。(拍手)    〔国務大臣福田赳夫君登壇拍手
  40. 福田赳夫

    ○国務大臣(福田赳夫君) 今回の公共料金の引き上げは、これは原油価格の引き上げに伴う新価格水準、そういうようなことを言っておるが、それは結局、実際は経済見通しを誤ったその穴埋めをこの公共料金の引き上げで図ろうとしておると、そういう実態ではないかと、かようなお尋ねでございますが、さようなことではないのであります。これは今回の公共料金の改定は、これは財政赤字が本年度になって始まったその後に考えついた問題じゃないのです、これは。もう昨年の暮れから正月にかけて予算の編成をした、そのときすでに今回の値上げ改定、これを決めておるわけでありまして、財政がその後ずっとたってから赤字が出るようになってきた、その穴埋めをこれで企図しようというようなものではさらさらないということをはっきり御理解願いたいのであります。(拍手)    〔国務大臣大平正芳君登壇拍手
  41. 大平正芳

    ○国務大臣(大平正芳君) 私に対しましては、公共料金の引き上げによって受益者の負担の増高を求める前に租税負担の公正を期するよう努力すべきじゃないかという御趣旨の御質疑でございました。仰せのとおり。租税負担の公正を期することは政府にとりましていつの場合でも守らなければならぬ格率でございまして、私どももその方向で鋭意努力しておるわけでございますが、このことと公共料金の受益者負担の原則とはおのずから別の問題でございまして、公共料金につきましては、なるべく受益者の御負担によりまして無理のない価格、料金の設定が望ましいと私は考えております。(拍手)    〔国務大臣村上勇君登壇拍手
  42. 村上勇

    ○国務大臣(村上勇君) 矢原議員の御質問にお答えいたします。  まず、郵便事業の原価計算の内容等を国民に公開せよとのことでありますが、御承知のように、郵便事業は国の事業でありますので、予算及び決算について国会の審議を受けているところでありますし、原価につきましても国会審議の場において必要に応じて明らかにすることにいたしております。  次に、郵便法第一条についてでありますが、「なるべく安い料金」の趣旨は、「収支を度外視してでも」という意味ではありません。同法第三条にもありますように、能率的な事業経営のもとにおける収支相償を前提にしたものであることを御理解いただきたいと思います。  それから、昭和四十九年の郵政審議会の答申にあります要望に対しましては、今回の郵便料金改正案におきまして、改定の実施時期、改定幅などを調整し、国民生活に与える影響を緩和することに十分配意した上で提案しているところであります。  次に、郵便法第三条では、「郵便に関する料金は、郵便事業の能率的な経営の下ににおける適正な費用を償い、その健全な運営を図ることができるに足りる収入を確保するものでなければならない。」と規定しておりますように、郵便料金が全体として収支相償をもとに決定されるべきことを明らかにしておるのであります。これは局舎、ポストなど基礎施設、不採算地域へのサービスに要する費用をも含めて、全体として収支が償うように料金を決定すべきものとの考え方を示しているものと解しております。これらに要する経費を一般会計から繰り入れるというととは考えておりません。同様に、御指摘の第三種郵便物等の低料金のものから生ずる赤字分を一般会計から補てんするということも考えておりません。  次に、企業用と個人用に料金格差をつけたらどうかとの御質問でありますが、何と申しましても、これらは通信文の内容による区別でありますので、このような制度を設けた場合、郵便局としては、その内容がまさしく個人用であるか否かの検査を必要としますし、その認定につきましては困難なものがあると考えます。したがいまして、企業用と個人用とを区別するような料金制度はとるべきでないと考えております。  最後に、人力に依存する度合いの強い郵政事業におきましては、業務の円滑な運営を図る上で、労使関係の安定がきわめて大切な課題であることは言うまでもありません。そのために、組合に対しては、いたずらに違法な争議行為を行って労使間に不信感を生ぜしめたりすることのないように求めるとともに、省といたしましても、労使間に好ましい信頼関係が確立されることが正常な業務運行を確保するための基盤となるものと認識いたしまして、その基盤が確立されるように常に配意いたしているところであります。いずれにいたしましても、労使関係が原因で国民の皆様に御迷惑をおかけするようなことがあってはまことに申しわけのないことでありまして、業務運行、施策については万全を期してまいりますとともに、労使関係正常化のため積極的に努力する所存であります。  以上、お答えいたします。(拍手)     —————————————
  43. 前田佳都男

    ○副議長(前田佳都男君) 小笠原貞子君。    〔小笠原貞子君登壇拍手
  44. 小笠原貞子

    ○小笠原貞子君 私は、日本共産党代表して、郵便法の一部を改正する法律案に関して、総理並びに関係大臣に質問いたします。  この法案は封書を二倍半、はがきを二倍と、戦後の一時期を除き、かつてなく大幅に郵便料金を引き上げるものであり、いま不況とインフレに苦しむ国民の間からますます強い反対の声が上がっております。社会福祉団体、青年団体、婦人団体、教育・文化団体はもちろん、農漁民団体、業者、労働組合、地方新聞などの各団体が、たとえば日本農業新聞などの例をとれば、郵送料金の負担が年間十一億円にもなるなど、活動の存続を危うくするものとして強く反対を続けていることを政府も御承知のはずだと思います。  特に、去る六月の二十四日、参議院の逓信委員会の北海道における調査において、辺地の寝たきりの子供たちに、個人的に善意で本の郵送貸し出しをしている「ふきのとう文庫」の小林静江さんはこう言いました。「重度身障者は外出が困難で、その交流は電話とか文通、あるいは機関紙だけなんです。郵便料の値上げは重度身障者の楽しみを奪うばかりか、人間の連帯、相互理解が損なわれるのです」と涙ながらに訴えられました。長期療養者の悲しみも、過疎地域の農漁村の方々所得の低い方たちの受ける苦しみもまた同じではないでしょうか。本や新聞を読みたいというとき、それと同額に近い郵便料がかかり、読めなくなってしまうのです。零細な封筒製造業者もまた料金値上げによる封筒利用の減退が死活の問題である。ちょっと私のところに集まっただけ持ってきたのですけれども、各地からこんなにその心情を訴えられて、本法案に反対しているのです。  政府は、郵便料金の値上げは消費者物価を〇・二%上げるにすぎないなどと主張されております。しかし、その主張が全く現実を無視しているということは、こういう多くの国民の声がはっきり示していると思います。総理は、これらの国民の声を御存じの上でなお料金値上げをなさろうとするのか、明快な御答弁をお願いをいたします。  また、このような国民の声は、郵便が国民の社会生活に欠くことのできない大切なものであり、憲法第二十一条で保障する言論・出版の自由、さらには教育、文化を受ける国民の権利を保障する重要な手段であるということを明白に物語っているのであります。総理は、今回の大幅な料金引き上げが国民のこの基本的権利の行使に重大な支障を与えるものでないと言い切れるのかどうか、はっきりお答えをいただきたいと思います。  また、さきに指摘した第三種料金を一挙に五倍にも引き上げるなどということは、全く不当な暴挙です。この計画をやめるべきだと思います。いかがですか。先ほど申した「ふきのとう文庫」の小林さん、また長期療養に耐えながらも雄々しく生きようとしているこの人たちから命の支えを奪ってそれでも値上げしようとおっしゃるのですか。個人が負担しているその善意を、このインフレの中で、苦しい家計の中で、もっともっと負担してやり抜けと言われるのですか。そのことについてはっきりお答えをいただきたいと思います。  政府は、公共料金は受益者負担が原則だなどと述べていらっしゃいますけれども、郵便法第一条が「郵便の役務をなるべく安い料金で、あまねく、公平に提供することによって、公共の福祉を増進する」と述べていることにも明らかなように、郵便料金を初め公共料金は、その値上げが国民生活と権利に大きな影響を与えるからこそ、国の責務でなるべく安い料金で行き届いたサービスが行われるようにすることが原則となっているのではないでしょうか。受益者負担が原則とする政府の主張は、郵便法第一条を踏みにじり、公共性を否定するものであり、また公共料金制度の根本的な改悪を企てるものと言わざるを得ません。明確な御答弁をお願いします。  特に政府は、郵便料金を初め国鉄運賃、電報電話料金などを法定事項から外し、国会の議決なしに政府が一方的に値上げできる制度に変えることをいまたくらんでいます。これは憲法、財政法の規定を踏みにじるものであり、郵便法精神を踏みにじるものと言わなければなりません。政府も御承知のとおり、憲法第八十三条に基づいて財政法第三条には、「国の独占に属する事業」の料金は「すべて法律又は国会の議決に基いて定めなければならない。」と定められております。また、現在の郵便法の立法に当たり当時の政府は、「国民の権利義務はすべて法律に規定し、郵便の料金は例外的なものを含め一切具体的な数字を法律に明記する」と述べていたではありませんか。政府は郵便、国鉄、電信電話などの料金を法定事項から外さないと明言すべきであります。この点について明確な答弁を求めるものであります。  また政府は、郵便事業が赤字だから料金引き上げはやむを得ないと主張しておられます。このような主張ほど郵便事業の公共的性格を無視するものはありません。どんな過疎地であっても、採算を度外視して届けなければならないのが郵便事業の任務ではないでしょうか。しかも郵便法第二条が定めているように、郵便は国の事業です。公共に奉仕して赤字が出た際は、国が補償することは当然の責任ではありませんか。なるほど、第三条には郵便事業の独立採算制が言われています。しかし、現行郵便法の立法に当たり政府が、「独立採算制は時の政府の財政方針であり、郵便法の本質を束縛するものではない。料金を低廉にするため一般会計から繰り入れている」と言明していることからも明らかなように、この制度は一般会計からの繰り入れを否定するものではありません。ところが、歴代自民党政府は、昭和二十六年以来、郵便事業に一円の財政支出も負わず、いままた赤字を口実として料金大幅引き上げというような暴挙を行うことを私は許すことができません。  政府は、それ自身公共施設にほかならない局舎、ポストなどの基礎施設にかかわる経費や、郵便事業を管理監督している本省、地方郵政局、郵政監察局や郵政省の医療機関、教育機関の経費を当然負担すべきではないでしょうか。また郵便事業の公共性から当然の、三種、四種の公共割引料金も負担すべきではないでしょうか。こうすれば、現行料金を据え置いても、直接郵便事業にかかわる経費を十分賄うことが可能なのです。総理並びに郵政大臣の明確な答弁を求めます。  わが党は、この臨時国会で、当面の財源対策として、軍事費や大企業向けの補助金の未執行部分など不要不急な経費の大幅削減、大企業への法人税還付の停止や、大企業の非課税積立金の増加額への課税などの政策を発表し、すでに有価証券取引税法改正案と租税特別措置法改正案の二つの法案も提出しております。大企業に正当に課税することを中心としたわが党のこの財源政策を実施に移されるならば、郵便料金はもとより、酒、たばこの値上げをやめるに必要な財源は十分に賄えるのであります。総理並びに大蔵大臣の答弁を求めます。  最後に、わが党はこの国会で、物価の安定と値下げこそ最良の不況対策であり、インフレと不況の同時解決の道であることを一貫して主張してまいりました。ところが政府は、この国会の冒頭に値上げ三法を上程し、強行採決に次ぐ強行採決によって強引に押し通そうとしてきました。しかも政府は、インフレをあおる大量の赤字公債を発行し、今後の基本方針として公共料金の大幅引き上げを公言しているのであります。このような政府の態度は、国の将来と国民生活を一層危険なものとするものであることを私はここに強く指摘して質問を終わります。(拍手)    〔国務大臣三木武夫君登壇拍手
  45. 三木武夫

    ○国務大臣(三木武夫君) 小笠原君にお答えをいたします。  郵便料金値上げ反対の国民の声が聞こえないかというお話でございましたが、値上げというものはだれも好きこのんでおる人はないわけでございますが、郵便料金についても、これは政府が改定をするということはもっともなことだと言う人たちもたくさんにおるということでございます。それはなぜかと言えば、とのままで郵政事業の財政を悪化させていくことは、いわゆる郵便事業の「健全な運営」というものに支障を来すおそれがあるからであります。しかし、わが国の庶民の通信手段であるはがきなどに対しては、その重要性考えまして、できるだけ値上げ幅を抑制するような配慮をいたしたわけでございます。  郵便料金の値上げが言論、出版の自由などという国民の基本的権利に影響を与えるでないかという御質問でございましたが、第三種、第四種の郵便物の料金が新聞とか雑誌などの郵送に与える影響は、これは無視できませんが、これら郵便物は沿革的にきわめて低い料金であったわけでございます。このことが郵便事業財政の悪化の原因の一つにもなっておるので、これらの料金を適正なものに改めることはやむを得ないと考えております。  また次に、郵便法第一条に、なるべく安くというのがあるが、今度の改定案の提出はこの郵便法精神に反するでないかということでございますが、先ほどお答えいたしましたごとく、第三条には、能率的な経営の下における適正な費用を償うべき旨を規定しておりますから、安いということは、何にも考えずに安ければいいという規定だとは思っておりません。  それから国鉄とか電信電話、郵便料金を法定から外すことは憲法あるいは財政法の精神に反するのではないかということでございましたが、これは、公共料金を法律で定めることが適当であるかどうかについてはいろいろな意見があることは事実であります。これは一つの研究課題だと考えております。政府としては、しかし、現に法定主義のたてまえであるがゆえにこれを尊重する考えであることは申すまでもございません。まあ、現行の運賃あるいは料金の決め方を改めてどのような決め方にするかということは、その場合にはこれは国会の御審議を願わなければならぬわけでございますから、そういう場合には十分に御審議をいただくことになるわけでございます。しかし、申すまでもなく、憲法、財政法の精神に反しない限りでいろいろな決め方があるはずでございます。もう現行法の決め方以外には決め方はないというふうには考えていないわけでございます。  また、政府の公共料金の受益者負担の原則という論議は公共性をば否定するのではないかということでございましたが、公共料金は公共性を持っておりますから、その決定というものは政府もきわめて慎重にいたして、慎重な手続をとっておるわけでございます。したがって、物価への影響や受益者に負担してもらうことを適当と考える限度において改定ということは慎重にいたしておるわけでございます。まあ、やむを得ないものに限って最小限度の改定をいたしていくつもりでございます。  また、大企業に対する特権的減免税を廃止して財政政策の転換を図れということでございますが、現在の税制が大企業に対して特権的減免税を行っているとは私は思わないのであります。租税特別措置法についてはいろんな御批判がありますことは事実でございます。現在、税制調査会で全面的に租税特別措置については見直しをしていただいておるわけでございます。その結果を待って対処したいと考えております。(拍手)    〔国務大臣村上勇君登壇拍手
  46. 村上勇

    ○国務大臣(村上勇君) 小笠原議員の御質問にお答えいたします。  まず、第三種の料金につきましては、沿革的にきわめて低い料金になっておりますために、今日郵便事業財政の大きな負担となっております。このような事情から、第三種料金について郵政審議会からも直接経費を賄うことを目安とした料金に改めることが適当である旨の答申をいただいているところでありまして、郵政省としても適正なものに改めたいと考えておる次第であります。  次に、郵便料金の法定事項につきましてでありますが、郵便法制定後、基本的なサービスである封書、はがきの料金につきましては、制定当時と変わりなく法律事項とされているところでありますが、小包等の郵便事業の独占でないサービスとか速達などの付加的なサービスの料金につきましては、郵便事業経営に弾力性を与えるため、法律の定める根拠に基づきまして、その料金決定を省令に委任される措置がとられたところでありまして、この措置は、憲法、財政法に違反しないものと考えております。  最後に、郵便事業の運営経費に関する御質問でございますが、郵便事業の運営に郵政省が全責任を負うことは先生御指摘のとおりであります。省といたしましては、これまで事業の健全な経営を維持するため最善の努力を傾注してまいったところであります。しかしながら、御承知のとおり、郵便事業はその運営経費の約九〇%が人件費及びこれに相当する経費で占められており、近年における人件費の高騰等により、昭和四十九年度においてすでに直接収入をもってしては人件費すら賄えない状況になっております。郵便局舎、ポスト等の基礎的施設に要する経費、また本省、郵政局等の管理共通部門に要する経費及び三種、四種の政策的な低廉料金は国が負担すべきでないかとの御指摘でございますが、郵便料金につきましては、郵便法第三条に、「郵便に関する料金は、郵便事業の能率的な経営の下における適正な費用を償い、その健全な運営を図ることができるに足りる収入を確保するものでなければならない。」と規定しておりまして、郵便料金は、これらの諸経費を含め、収支が償うように決定すべきものと考え方を示しているものと解しております。したがいまして、必要な経費は、受益者負担の原則によって郵便料金で賄うことが適当であり、一般会計から繰り入れるということは考えておりません。(拍手)    〔国務大臣大平正芳君登壇拍手
  47. 大平正芳

    ○国務大臣(大平正芳君) 私に対しましては、租税特別措置の洗い直しにつきましての御質疑でございました。  本件につきましては、総理からお話がございましたが、きのうまで税制調査会におきましてすでに三回の総会を本件についてお願いをいたしております。租税特別措置で減免税いたしておる税額は約八千億でございまして、そのうち五千億が個人でございます。ただいままでの審議では、個人の少額貯蓄などに対して与えておりまする特別措置は改廃すべきであるという議論は出ておりません。問題は三千億の法人に与えておりまする特別措置の見直しでございまして、本件につきましては今後鋭意、こういう時期でございまして、一層彫りの深い見直しを行って、是正すべきものは是正いたすべく努力をいたしておる次第でございます。(拍手)     —————————————
  48. 前田佳都男

    ○副議長(前田佳都男君) 木島則夫君。    〔木島則夫君登壇拍手
  49. 木島則夫

    ○木島則夫君 私は民社党を代表して、先ほど趣旨説明のありました郵便法の一部を改正する法律案についてただします。  最初は、封筒製造業の方からの訴えであります。  このたび、郵便料金の値上げがあっという間に衆議院を通過し、はがき二十円、封書五十円という法外な開きのまま決定されようとしています。もちろん、値上げそのものに反対です。このまま参議院まで通過した暁には、関連業務に携わるわれわれの生活は一体どうなるでしょうか。会社の業績は日々に悪化し、昇給のストップ、高年者の解雇も行われている現状です。遠からず会社は倒産し、再就職のできる場合ならいざ知らず、全くつかまるわらもありません。  恐らく、総理、郵政大臣のところにもこういった訴えがたくさん届いていると思います。これをどう受けとめられるか、素直に耳をかすべきだと思いますが、いかがでしょうか。三木総理に伺います。  なるほど、物価は一応鎮静をしているとはいえ、依然として一〇%を超えています。こうした中で約二倍半という大幅な郵便料金値上げを行うことは、酒、たばこの値上げと並んで国民生活を圧迫し、ついせんだって予算委員会で約束をされた物価鎮静、国民生活安定という総理の政治的公約をほごにすることになりかねない。われわれとても、公共料金ということだけでかたくなに凍結をしなければならないとは言っておりませんが、いまが一番大事なときだと思います。最大限譲ったとしても、物価が一けたになるまで凍結をすべきだと思いますが、総理のお考えを伺います。  酒、たばこは嗜好品だからという言い方がありますが、郵便は庶民の最低の通信手段であります。情報の種類はますます多岐にわたり、その手段も複雑になっていますが、「なるべく安い料金で、あまねく、公平に」とうたわれた郵便法精神がいま踏みにじられようとしています。今回の大幅な料金値上げは国民の最低限の通信手段をもぎ取ることになると思うが、いかがでしょうか。  さらに、物価に及ぼす影響も心配です。近ごろは、私用の郵便は、電話などほかの通信手段の発展によって、通信全体の中に占める割合は低くなってはいますが、このことが直ちに家計に及ぼす郵便料金の比重がわずかであるという短絡にはならないと思います。郵便料金は一つの有力な物価基準であり、戦前の安定した物価を語る際よく出される封書三銭、はがき’銭五厘と対比をされるのも、今日の情報化社会にあって、なお、郵便が国民生活と密接な関係にあることを実証するものでありますが、郵政大臣はどうお答えになりますか。  私が一番心配をしている点は、郵便料金が上がることで、この後、国鉄、私鉄の運賃、電話、電気、ガス、授業料などメジロ押しに料金が上がるそのきっかけをつくってしまうこと、郵便料金値上げが、公共料金引き上げの突破口になり、物価の鎮静どころか、インフレの再発につながるおそれが多分にあるという心配であります。経企庁長官から納得のいく御説明をちょうだいをしたいと思います。  さて、今回の大幅値上げ案は、一種、二種が二倍ないし二・五倍、新聞雑誌などの三種は約五倍です。よしんば、この値上げ案がそのまま通ったとしても、当五十年度はもとより、五十一年度も赤字です。五十年度末の累積赤字は四千二百億円にも達するというお先真っ暗な状態で、民間企業にも例のない値上げをしても収支の均衡を図り得ないことを総理は御存じでしょうか。今後通信メディア全体の中で郵便にどのような役割りを与え、位置づけをなさるのか。この基本認識をはっきりさせない限り、幾らその場しのぎの値上げをしてもこれはむだだと思うが、郵政大臣はどう認識をされておりますか。しないでもいい機械化をしていないでしょうか、しないでもいい人員を抱えていませんか、しないでもいい過剰サービスをしていないか伺います。  「郵便の将来展望に関する調査会」で郵便のあるべき姿がいま論議されておりますが、その中間報告と、いつまでに結論を出すのか明示されたい。郵便の将来展望のないところに安易な料金値上げは許されないと思いますが、大臣の明確なお答えをちょうだいをしたいと思います。  暮れを控えて町には企業の倒産が相次ぎ、失業者は百万人を数えています。中小企業の悪戦苦闘に比べ、郵政や国鉄はどんなに赤字が出ようと倒産の心配はありません。そこで、値上げを要請するからには、郵政内部でこれこれの節約とこれこれの合理化はしてきたという具体的な証拠を示していただきたい。大金をかけて設置をした自動選別機は一体一日何時間働いているんでしょうか。郵便の波動性に即した人員配置が思い切って行われておりますか。一日二回の配達に無理はないでしょうか。特定郵便局制度は今日の実情に合っているでしょうかなどなど、まだまだ節約合理化の対象はたくさんにありますが、実績はほとんど上がっていないようであります。具体的にお示しください。  また、労使間の不協和から起こる職場規律の乱れ、管理者の管理能力の欠如などが職場でのサボタージュを誘発し、このためアルバイトなどよけいな出費も出ていると聞いておりますが、いかがでしょうか。遅配はおろか、違法ストによる有形無形の損害がうやむやにされています。国民の前に損害額を示すべきだと思うが、郵政大臣、いかがでしょうか。私が声を大にして言いたいことは、郵便料金値上げに対し国民が抱いている素朴な疑問です。それは、違法ストの悪循環が繰り返されている不健全な労使関係がそのまま放置され、ストに伴う損失が郵便料金の値上げという形で、結局は国民に転嫁をされるのではないかという疑問に対し、この疑念をこの際はっきりと晴らしていただくことであります。総理、郵政両大臣から明確なお答えをいただきます。このように郵便事業がその内部で徹底した節約をし、合理化を進めた上でも、なおかつ赤字が出るというならば、郵便事業の特殊性に立って適切な措置を講ずるべきです。「なるべく安い料金で、あまねく、公平に」という法の精神を生かすために、時としてある部門に対しては採算を度外視しても政府の財政援助が必要だと思います。アメリカでは政府の政策目的によって郵便公社に負担をかける。つまり採算のとれない地域へのサービスの提供とか、政策料金による収入不足などを国庫から支出する措置をとっています。イギリスでは日本と同様収支相償うことを原則とし、赤字の補てんは料金改定によって行っていますが、ここでも、政府のインフレ政策抑制によって生じた赤字は一般会計から補てんをしています。大蔵大臣はどうお考えでしょうか。こう申し上げると、このような措置は、先ほどから、受益者負担の原則から外れるので適当ではないというお答えが返ってきておりますが、われわれの主張は、利用者以外のすべての国民に負担をかけようと言うのではありません。現在の不均衡な税制に改めることによる増収によって賄うことができるからであります。租税特別措置の思い切った改廃によってさえ補てん財源は十分に賄えると思いますが、総理、大蔵大臣、郵便事業の特殊性に立って思い切った財政援助を行うべきだと思いますが、明確なお答えをいただきます。  最後に、郵便事業が置かれている立場は大変に厳しいものですが、こういった中で、国営や公社の郵便事業を脅かしている問題に民間配送業の台頭があります。アメリカやヨーロッパで現実の問題になっているクリーム・スキマー、この言葉を総理は御存じでしょうか。これは牛乳から栄養分の高いクリームを取り出してしまうこと。郵便事業に当てはめれば、収益率の高い部分は民間の配送業に食われ、収益率の低い部分だけが国の郵便事業に残ることになるのです。要するに、余りにも大幅な値上げが内部の節約や合理化の徹底を図らずに行われ、さらに将来展望もないままに赤字が続き、遅配はあるわ、労使間のいざござは絶えないわ、ストによる損失を国民がカバーする、郵便貯金の利息は下がるというのでは、国民の間に、国営頼むに足らずという不信感がわき上がるのも当然であります。  郵政大臣に伺います。日本でも民間の介在する素地が十分できつつあることをお認めになりましょうか。この際、郵便事業が痛い目にあった方がいいという声を聞きますが、これは国民の一握りの声だと思いますか。それとも多くの国民の率直な声だと認識をされていらっしゃいますか。いずれにしろ、郵便事業は厳しい立場に立たされております。値上げの前になすべきことは山積しております。それをないがしろにされての今回の大幅な値上げ要求はとうてい理解されないことを重ねて強調し、私の質問を終わりたいと思います。(拍手)    〔国務大臣三木武夫君登壇拍手
  50. 三木武夫

    ○国務大臣(三木武夫君) 木島君の御質問にお答えをいたします。  はがきの二十円と封書の五十円が余りこう非常に開き過ぎているのがいろんな影響を与えておるということですが、はがきと封書の差をこんなにつけましたのは、はがきというものが非常に一般国民に利用されておりますから、こういう料金の改定の機会にも、できるだけ一般国民に対してこの値上げの影響を少なくしようという配慮でございます。この料金案は当面やむを得ないものと考えております。  それからまた、今回の郵便料金の改定が物価鎮静の政策に反するのではないかということでございますが、郵便法の改正はもうすでに予算の中に組み込まれて、予算は国会で議決を得ておるわけで、その歳入の裏づけをなしておる法案でございまして、どうしてもこの機会に改定をしないと、悪化しておる郵便事業というものは立て直すことはできない。そうでなければ国民の通信手段である郵便事業を健全なものにできないと、こういうことで今回御審議を願うわけでございますが、これが物価に及ぼす影響は、消者費物価への影響は〇・二と考えておるわけでございまして、この消費者物価への影響は、政府が目標とする物価政策の達成には、その中に吸収をされるものだと考えておるわけでございます。  それから、郵便事業というものに対して国民生活に及ぼす影響、いろいろお挙げになってお話になりましたが、まあ値上げというものはしないで済めばもうそれにこしたことはないのですけれども、しかし、この郵便事業というものが国民の重要な通信手段でありますので、これを健全な運営にしないと、国民生活の上においてもこれは非常に大きな支障になる。そのために今回値上げをお願いをして、悪化しておる郵便事業財政を立て直して、郵便のサービスを維持していくために最小限度の必要な改定を行ったわけでございまして、物価への影響というものも無論考えなけりゃなりませんが、しかし、その中でもはがきの値上げなどは値上げの幅を抑制する等いろんな配慮を加えて、このことが物価鎮静の政策と矛盾をしないように今後努力をいたしてまいりたいと考えております。(拍手)    〔国務大臣村上勇君登壇拍手
  51. 村上勇

    ○国務大臣(村上勇君) 木島議員の御質問にお答えいたします。  まず、今回の料金改定に伴う封筒製造業者への影響についてでありますが、今回の値上げ案は国民生活に与える影響を特に考慮して、国民に広く利用されているはがきの料金を低く抑えたために御指摘のような開きが生じたものでありまして、これに伴う封書からはがきへの移行等を考慮いたしますと、封筒の需要に若干の影響があろうかと考えますが、当面やむを得ない料金案であると考える次第であります。  次に、郵便事業が国民生活に密着した国営事業であることは御指摘のとおりであり、したがって、郵便料金の改定と国民生活一般との関係を決して軽視するものではありません。現在の郵便料金の水準は、他の物価の推移と比べましても、また諸外国の料金と比較いたしましても決して高くはありませんし、実際に家計や物価に及ぼす影響は非常に少ないものと考えております。  次に、郵便事業のあるべき姿についての基本認識が不明確であるとの御指摘でありますが、現在郵便事業財政はきわめて窮迫した状態にあり、このまま推移すれば、今後健全な経営を維持することが一層困難になると思われますので、この際は料金改定をお願いして、事業収支を改善し、この危機を乗り切ることが喫緊の課題であると考えております。  また、昨年六月に設置した「郵便の将来展望に関する調査会」は、四十九年度におきましては、いわば基礎的な調査研究を行い、本年三月に中間報告がなされ、その後も引き続き調査研究が行われているところでありますが、その取りまとめにはなお若干の日時がかかろうかと思います。今後この調査会の成果を踏まえて、国民の期待に沿った郵便事業のビジョンを描くとともに、健全な事業運営を確立する方策を見出すべく努力いたしてまいる所存であります。  次いで、郵便事業内部の経費節約につきましては従来から種々努力しているところであり、また機械化、合理化につきましては郵便番号制の実施、集中処理局の建設、自動読み取り区分機等の機械化の推進など、各般にわたる施策を逐次実施し、作業能率の向上を図ってまいりました。しかしながら、郵便事業は人力に依存する度合いが非常に大きく、機械化にもおのずから限度がありますので、配達の一度化等につきましても検討するとともに、作業効率化等について一層努力してまいりたいと考えております。  次に、労使間の問題についての御指摘でありますが、今回の料金改定を機会に全職員が心を新たにいたしまして、郵便業務の正常運行を確保するため力を尽くさなければならないと考えておるのであります。特に労使関係を確立することが重要であり、そのためには、まず労使双方が、事業の公共性や事業に課せられた使命、さらには国家公務員としての立場を十分に認識し、お互いに、法令はもちろん、労使で定められているルールについてはこれを正しく守っていくとの態度が大事であると考えております。省といたしましては、みずから正すべきは正し、組合に対して求めるべきものは求め、誤った行為があった場合には強くその是正を求め、まじめな職員が安心して全力を挙げて働けるような秩序ある明るい職場をつくり、正常な業務運行を確保するためには一層の努力をいたす所存でございます。  最後に、民間配達業の台頭に関しての御質問についてでありますが、現在郵便事業が重大な時期にあることは御指摘のとおりでありますし、郵便の利用を確保するためには、郵便業務の正常運行を図り、郵便に対する信頼を高めることが最も大切であると考えております。したがいまして、御指摘のような問題が生じないよう職員一人一人がそのことを自覚し、国民の負託にこたえるよう努力するとともに、一層経営の合理化、効率化に努めていくことによって郵便事業の将来の展望を開く必要があると考えております。(拍手)    〔国務大臣福田赳夫君登壇拍手
  52. 福田赳夫

    ○国務大臣(福田赳夫君) 今回の郵便料金の引き上げを契機として、今後国鉄、私鉄、電信電話、電気、ガスなど一連の公共料金の引き上げとなっていくのではないか、またそう考えておるのではないかという憂いを込めての御質問でございますが、今後、かねがね申し上げておりますとおり、価格水準、新しい価格水準というものに調整させなけりゃならぬ、そういうものが幾つか公共料金として残っておるんです。その問題を解決していかなけりゃならぬと思います。すでに私鉄につきましてはもうそういう申請まで出ておるような次第でございます。しかし、それらの公共料金の改定を政府みずからが行い、あるいは企業体の申請を認可すると、こういう際には、これはその必要性が一体あるのかどうかという問題です。企業体の側から経理その他の必要性、あるいは政府みずからの事業について行う場合におきましては、国の財政や、またその企業体の状態から見ての必要性というようなこと、その必要性判断しなけりゃならぬという問題があります。また、いま御指摘のように、物価が非常に大事な段階です。そういうこともまた配慮しなけりゃならぬ。物価動向、これとよくにらみ合わせなきゃならぬ。ですから、そういうことで、この新しい物価水準に公共料金を移行させるというためにどうしても決断はしなけりゃならぬ。なりませんけれども、これを行う時期と、それから幅、こういうものにつきましては、これはただいま申し上げましたような諸事情をもう慎重に配慮して決めたいと思うんです。そこで、この公共料金の改定、これは物価対策の上から言いますと重荷でございまするけれども、しかし、まああえてそれを乗り切って物価の安定政策を進めなきゃなりません。物価の安定を旨として、そしてこの公共料金の問題には対処していくと、かように御了知願います。(拍手)    〔国務大臣大平正芳君登壇拍手
  53. 大平正芳

    ○国務大臣(大平正芳君) 郵便事業に対しまして国庫が助成するつもりはないかという御質疑でございます。郵便法は御承知のような独立採算のたてまえをとっておりますので、国庫として原則として助成をするつもりはございません。米英につきましては、木島さんが御披露がありましたように、一部助成のケースがあるようでございますが、私の承知しておる限りにおきましては、フランスやドイツにおきましてはないようでございます。しかし、いずれにいたしましても、日本の場合の郵便は、その約八〇%が企業や団体の業務用通信であるというような性格でございますので、一般的な収入で助成をするというものになじまないと考えております。  それから租税特別措置の見直しでございますが、これはたびたび申し上げておりますように、いま鋭意見直しておるところでございまして、税制調査会に御審議をお願いいたしておりますことは御案内のとおりでございます。(拍手
  54. 前田佳都男

    ○副議長(前田佳都男君) これにて質疑は終了いたしました。      ——————————
  55. 前田佳都男

    ○副議長(前田佳都男君) 日程第三 酒税法の一部を改正する法律案及び製造たばこ定価法の一部を改正する法律案趣旨説明)  両案について、提出者の趣旨説明を求めます。大平大蔵大臣。    〔国務大臣大平正芳君登壇拍手
  56. 大平正芳

    ○国務大臣(大平正芳君) ただいま議題となりました酒税法の一部を改正する法律案及び製造たばこ定価法の一部を改正する法律案につきまして、その趣旨を御説明申し上げます。  昭和五十年度の予算におきましては、歳出面において国民福祉の向上と国民生活の安定のための施策を推進し、また、歳入面において所得税負担の調整等を実施いたしているところであります。これらの施策実施に要する財源につきましては、その多様化に配慮しながらこれを確保する等の見地から、酒税の税率の調整及びたばこの小売定価の改定を行うこととし、前国会に酒税法の一部を改正する法律案等を提出し、御審議を煩わしたのでありますが、遺憾ながら成立を見るに至りませんでした。  現行の酒税の税率及びたばこの小売定価は、昭和四十三年の改正を経て今日に至っておるものでありますが、酒税の税率の大部分及びたばこの小売定価につきましては、所得水準の上昇、物価水準の変動にかかわらず定額に据え置かれておるために、実質的な税負担が相当程度低下しており、他の税目との均衡上その調整を行う必要が生じております。  また、景気の停滞等に伴う大幅な歳入不足に対処するため、臨時の特例措置として、別途提案いたしておりまする特例公債法に基づく公債の発行を予定していることは御承知のとおりであります。申すまでもなく、現下の財政事情は、本年度の当初予算編成当時に比較しても著しく厳しさを増し、財源確保の必要性は一層強まっております。  このような状況にかんがみ、ここに酒税法の一部を改正する法律案及び製造たばこ定価法の一部を改正する法律案を再度提出するに至った次第であります。  まず、酒税法の一部を改正する法律案につきまして、その大要を申し上げます。  第一に、酒税の税率につきましては、清酒特級、ビール、ウィスキー類特級及び一級、果実酒類の一部、スピリッツ類、リキュール類並びに雑酒について二二%程度、清酒一級について一五%程度、その従量税率を引き上げることといたしております。そのことにより通常の容器一本当たりで、清酒特級は百十五円程度、清酒一級は四十七円程度、ビールは十五円程度、ウィスキー特級は百五十円程度、ウィスキー一級は六十九円程度の増税になります。  なお、清酒二級、合成清酒、しょうちゅう等につきましては、その消費の実情等を考慮し、税率を据え置くことといたしております。  第二に、酒税の諸制度につきまして、納税期限の延長制度に特例を設けることとするほか、戻し入れ控除制度の適用範囲を拡大する等所要の整備を行うことといたしております。  次に、製造たばこ定価法の一部を改正する法律案につきまして、その大要を申し上げます。  この法律案につきましては、製造たばこの小売定価を引き上げるため、種類別、等級別に法定されている最高価格を、紙巻きたばこについては十本当たり十円ないし二十円、刻みたばこについては十グラム当り十円、パイプたばこについては十グラム当たり二十円ないし四十円、葉巻たばこについては一本当たり三十五円ないし百二十円それぞれ引き上げる等、所要の改正を行うことといたしております。  以上、酒税法の一部を改正する法律案及び製造たばこ定価法の一部を改正する法律案につきまして、その趣旨を申し上げた次第であります。(拍手
  57. 前田佳都男

    ○副議長(前田佳都男君) ただいまの趣旨説明に対し、質疑の通告がございます。順次発言を許します。辻一彦君。    〔辻一彦君登壇拍手
  58. 辻一彦

    ○辻一彦君 私は、日本社会党代表して、ただいま提案されました酒税法の一部を改正する法律案及び製造たばこ定価法の一部を改正する法律案に対し、反対の立場から、総理大臣並びに関係各大臣に質問をいたしたいと思います。  今日、わが国経済と国民生活現状は、インフレ、不況の中できわめて深刻な事態を迎えております。これらの事態に対して政府は、歳入欠陥に対しては酒、たばこなどの公共料金の値上げや、安易な赤字国債の発行などで補い、地方財政危機に対しては人件費の抑圧、福祉の圧縮、住民負担の増大で乗り切ろうといたしておりますが、これらの諸政策は本末転倒もはなはだしいと言わなければなりません。  なぜならば、今日の深刻なインフレ、不況をもたらした原因は、一つには政府の総需要抑制を名とする政策の失敗による政策不況、二つには、インフレ不安と賃上げ抑制を軸とした個人消費の落ち込み、三つには、独占、寡占体制の強化を基礎とした産業構造のゆがみにあることが明白であるからであります。そうである以上は、何よりも財政の基本路線を転換しない限り、かえって矛盾を拡大させるだけであります。  政府は、これまでの経済、財政政策の過ちを反省し、高度成長、大企業優先の路線を国民福祉と地方自治拡大の方向へ転換すべきであり、このことが今後の経済運営、とりわけ酒、たばこなどの公共料金問題を考える上でも最も重要なことであります。  以下数点にわたり、具体的に政府の見解を伺いたいと思います。  一、三木内閣は、経済、財政政策の見通しの誤りを反省すべきであります。私は、五月二十九日、本院大蔵委員会において福田経企庁長官並びに大平大蔵大臣の出席を求め、日本経済の見通し、歳入欠陥、第三次不況対策をただしたことがあります。深刻な不況の深化により莫大な歳入欠陥が生じること、並びにそのもととなる経済見通しの改定の必要なことを指摘をしたのであります。しかるに副総理は、今日見直しのときではなく、計画実現に努力するときであると改定を拓否をし、大蔵大臣は、四十九年度税収不足は約八千億、このままならば五十年度税収不足は約一兆と見られるが、赤字国債は考えないと答えたのであります。しかるに、わずか数カ月にして税収の不足は三兆八千億を超える巨額に達し、赤字国債二兆三千億を含む補正予算を組むに至ったのであり、これは経済見通しと歳入見積もり、すなわち経済、財政運営の重大な誤りを犯したものであり、単に事務当局の見通しの誤りで片づけられる問題ではありません。これはまさに、内閣は総辞職に値するものであり、国民責任をとるのが当然であります。それが、経済政策に誤りなしと胸を張っているのは、国民にとり全く納得できない態度であります。三木内閣は政治責任を感じないのか、福田副総理、大平大蔵大臣に深い反省はないのか、いま一度国会を通して国民の前に明らかにしていただきたいと思います。(拍手)  二に、本国会では酒、たばこ二法を撤回すべきであります。今国会が冒頭で混乱をし、空白をつくった原因は、国民が要求した不況対策を含む補正予算の提出を後にし、酒、たばこ等値上げ三法をごり押しにしたところにあります。高まる国民の世論と野党の強い追及により、ようやく補正予算の先議は実現したのであります。しかし今日、十日余りを残すこの会期内において、二兆三千億の裏づけである財政特例法と年度内千億余りの酒、たばこ値上げ二法と、いずれの審議を優先さすべきと考えるか。事はきわめて明白であります。酒、たばこ値上げ二法を撤回し、本来、すでに指摘したとおり、根本的にわが国経済の見通しを誤った政策不況に基づき膨大な歳入欠陥をもたらした現状にかんがみ、抜本的な財政、経済再建の方途をとるべきであります。  以上の立場から酒、たばこなどの値上げ等の糊塗策をとらず、本来わが党は赤字国債に反対であるが、それはともかく、国会の常道に基づき財政特例法を先議し、国会を通じて国民に信を問うべきであると思いますが、総理の見解を伺うものであります。もしこの順序を誤り、本末転倒の値上げ二法をごり押しをするならば、再び国会は混乱と空白を招くおそれがあり、その場合は、責任は挙げて政府与党にあることを強く警告しておきます。  酒、たばこ等の値上げにより大衆課税の強化を図る前に、財源の徹底した洗い直しをすべきであります。財源の徹底的な洗い直しをせずに、大衆課税の強化につながる酒、たばこの値上げや安易な赤字国債に依存することは、わが社会党の断じて容認できないところであります。  まず第一に、列島改造論の土地ブームにより膨大な土地を買い集めた大企業の土地含み資産は、和光証券の調査によれば、六十八兆円とも言われておりますが、これへの一割の課税をすべきでないか。  また、貸し倒れ引当金一兆三千億を留保する都市銀行は、その引当金はわずかに年〇・〇二%より使われていないと言われる。速やかに千分の五ぐらいに引き下げるべきでないか。  三、税法上収益が出ないと言って法人税も納めない大企業が多くの交際費を使っているのは大きな矛盾であります。交際費への課税を強化する考えはないのか。  第四に、不公正税制の最たる租税特別措置を見直し全面的に洗い直しをする考えがあるのか、お伺いをいたします。  すべての財源を全面的に洗い直す中で、まず年度内に何ができるのか、何をやるのか、また五十一年度、五十二年度に何をやるつもりかをこの機会にぜひ明らかにしてもらいたいと思います。  四、酒、たばこの値上げは、電信電話、石油製品など一連の公共料金値上げのメジロ押しに並ぶ中で物価高の引き金とならないか。  第一に、この状況で年度内物価一けたは実現できるのか。  第二に、五十一年度は、さきにも質問がありましたが、預貯金金利以下に抑えることができるか、この場合の金利は一体どういう金利を指しておるのか、また何%を示しているかをお伺いいたします。  第五に、赤字国債増発に歯どめと償還計画を明らかにすべきであると思います。明年度予算編成に当たり、当初より赤字国債の発行は避けられないと言われておりますが、明年度は国債発行を全部で幾ら見込んでおるのか。そのうち赤字国債発行の見通しはどうなのか。このような国債依存政策は通貨の増発、インフレへの道を歩むのは明らかであります。これを防ぐ歯どめ策はなお不明確であります。また個人であれ法人であっても、借金をする場合、償還計画を示すのは当然であります。国債はいわば国民に対する国の借金であり、その償還計画が明らかでなければ、国民は納得し得ないのは当然であります。歯どめと償還計画を明らかにされたいと思います。  また、政府は、国債償還のため、大衆課税強化につながる付加価値税の導入を考えておるのではないか。五十一年度、五十二年度において導入する考えはないのかどうかを明らかにされたい。  なお、この機会に専売公社の経営形態について一点お伺いをいたします。  専売公社は昭和二十四年に公共企業体として発足し、国の機関として公共性を持ち、国民、消費者に対し、だれでもどこでも安くてうまいたばこを供給していくことが必要であることは言うまでもありません。したがって、専売公社の経営形態については現行の公共企業体営が望ましいと考えますし、総理は、十一月五日の参議院予算委員会において、寺田議員の三公社の経営形態についての質問に対し、民営移管は考えていないと答えているが、その点をいま一度ただしておきたいと思います。  六に、三木内閣の政治姿勢について二、三点をお伺いをいたしたいと思います。  さきの通常国会において政府・与党は参院大蔵委員会で単独強行採決の暴挙を行いました。今次臨時国会の冒頭において再び政府与党は衆議院大蔵委で単独採決の暴挙を重ねたのであります。三木総理は対話と協調を看板に登場しましたが、このようなたび重なる与党による強行単独採決をあなたは総理、総裁としてどのように考えるのか、お伺いをいたしたいと思います。本院においては今後十分慎重審議を行い、単独強行採決は絶対やらないと総裁としてこれを約束すべきであると思いますが、どうか、お伺いをいたします。  政府は、今回の第四次不況対策にかかる公定歩合の引き下げにより、大企業に対しては金融負担の大きな軽減を図りました。単純計算によれば、この十月より来年三月までの半年間に約千五百億の金融負担軽減になるというが、一年ではおよそ三千億以上と見込まれます。一方、庶民大衆の預貯金の目減りは一世帯当たり四十八年で十万九千六百円、四十九年で十四万三千四百円にも及ぶ大きな犠牲を受けてまいりました。今次金利引き下げに当たり、これら目減りの犠牲者である零細預貯金者に何らの配慮も考えていない。たとえば繊維工場地帯では若い娘さんが三年、五年と働いて、その間に結婚資金を積み立てておりますが、目減りで何年たっても嫁入りの支度ができないと嘆いております。これは社会的不公正の最たるものではありませんか。三木内閣は社会的不公正是正の看板をおろしたのかどうか。今後とも看板を掲げるならば、零細預貯金者への配慮を具体的に示していただきたいと思います。  総理は、参議院予算委員会で、自民党の百億の借入金のうち五十億を銀行から寄付を受け、残り五十億はたな上げにしてもらう、言うならば、百億はまるまる銀行と財界の穴埋めによることを認め、これを強弁しております。一体これではクリーン三木、清潔な政治の看板が泣くのではありませんか。政治と財界、銀行との金による癒着をこれほど明らかにしたものはないと思います。取りやめる意思はないのか、総理にお伺いをいたします。  いまや三木内閣は、対話と協調、社会的不公正の是正、清潔な政治、三木内閣の三大公約の看板はおろしたかに見えます。これでは内閣支持が二三%に下がるのは当然でないでしょうか。いま大切なことは政治の信頼を回復することであります。そのためには国会解散により国民に信を問うべきであると考えます。総理の所信を伺って私の質問を終わりたいと思います。(拍手)    〔国務大臣三木武夫君登壇拍手
  59. 三木武夫

    ○国務大臣(三木武夫君) 辻君にお答えをいたします。  経済政策失敗したのではないかというお話でございますが、やはり経済政策をやる場合の政策目標は、物価も鎮静さし、あるいはまた不況も克服するという両面のやはり目標があると思います。ただしかし、インフレと不況というものを同時に追いましたのでは、なかなか中途半端になる。どっかに政策の重点を置かなければならない。三木内閣は出発をいたしましたときには、もう異常な物価の値上がり、この物価を鎮静さすというところに経済政策の重点を置いた。しかし、不況ということも考えなければなりませんので、第一次、第二次、第三次と不況対策をやったわけです。それはしかし、物価というものにやっぱり重点を置きながらやったわけでございまして、今日物価が鎮静の傾向になってまいりましたので、本格的に補正予算を組んで景気の刺激に乗り出してきたわけでございまして、大筋において政府の経済政策が誤っておったとは思っておりません。  それからまた、この酒、たばこの両案を撤回せよというお話でございましたけれども、これは二法案とも予算はすでに通過しておるわけです。予算は議決されておる、両院で。この予算の裏づけの法案がいまだにこの国会でなかなか議決をされてないというところに、まあ予算編成のたてまえから言ってもおかしなことであります、このことは。また、二法案は、酒、たばこの値上げはすでにやっぱり衆議院においても二回、これは衆議院で可決をされておるわけですから、まあこういうことも御勘案の上、速やかに成立をするように御協力を願いたいと思うのでございます。  それから、専売公社の経営形態についてお話がございましたが、専売公社の経営形態についてはいろんな議論があるわけです。現在のところ私は民営は考えておりませんが、これは研究の課題であることは事実でございましょう。  また、前の国会で強行採決をしたことは三木内閣の対話と協調に反するではないかということでございましたが、しかしながら、私はこの対話と協調という態度は捨てないんですよ。これはやはり議会政治の本質だと思いますが、ただやはりお考えを願わなければならぬのは、対話と協調と言っても、皆さんもそれに乗ってきてくれなければ対話にならない。こちら側ばかりが対話、対話と言っても、相手がそれに応じて、そして対話と協調によって国会を運営するということでなければ、どれだけ私が熱心に望んでおってもその目的は達成できないということもあることは十分お考えを願いたい。  また、強行採決と言われますけれども、この酒、たばこにしても、前の通常国会から相当な時間をかけておるわけですからね、これは。それでもなかなかやはり……、しかし、この審議をしていただきまして、そしてある程度議論は尽くされておるわけですね。そういう場合にはやはり結末をつけていただかなければ、もう自分の気に入らぬ法案というものについては結末はなるべくつけたくないということでは、なかなかやっぱり議会政治の運営というのは不可能になりますから、どうか審議を尽くされたらこれはやっぱり採決する、こういうことにお願いをしなければ、これは国会の運営はなかなか不可能になりますから、どうか私の願いである対話と協調による議会政治を築き上げるために野党の方々も片棒を担いでいただかなければならぬということをお願いをいたしておく次第でございます。(拍手)  それから、この預金金利の引き下げは非常に社会的公正に反するではないかという御議論でございましたが、まあ、この郵便貯金の場合を辻君いろいろ頭に置かれておるんだと思いますが、いま郵便貯金——民間の預金の中で二割ぐらい郵便貯金ですね。したがって、この郵便貯金ばかりが一般の庶民の貯金であるとは言えない。農協もあれば信用金庫もあるわけです。特に郵便貯金だけを——金利体系全体を見直してこれを引き下げていこうというときに、これだけをやはりそのまま置いておくということは、非常にかえって不公正になりますので、郵便貯金についても引き下げを行ったわけでございます。まあしかし、この福祉の定期預金のようなものは、金利一〇%で据え置くことにいたしわけでございます。  次に、自民党の借金の問題を辻君は持ち出されましたが、私ども自民党には、自民党という党が健在であってほしいと願う国民は非常に多いわけです。そのために、自民党の主義、綱領に共鳴して、政党活動には資金が要るんですから、応分の応援をしたいという、そういう人々の寄付は、私はどの寄付はいかぬ、この寄付はいかぬというのではなくして、これは素直に受け入れたいと思っております。ただしかし、そのことは法規に反したり、節度を失ったりして、そういう献金に甘える自民党でないようにしたいという節度は守っていく次第でございます。  それから最後に、三木内閣の言う対話と協調、あるいは社会的不公正、清潔な政治というものは、皆看板倒れじゃないかというお話でございましたが、辻君、私はそうは思わないんですよ。これだけ約束を実行しつつある内閣はないと思っておるぐらいでございますから、(拍手)私はそうは思わない。少し時期のおくれるものはありますよ。予定どおりのその時期にならない場合もあっても、やはり自分の公約には最も忠実な内閣になると考えておりますので、私はいまこういう政治の情勢のもとで解散を行って、不況のさなかで——国民はこの不況を一日も早く解決をして雇用を安定してもらいたいということを願っておるんですから、ここで解散をやって政治の空白をつくることは、国民の声ではないと考えて解散をする意思はございません。(拍手)    〔国務大臣福田赳夫君登壇拍手
  60. 福田赳夫

    ○国務大臣(福田赳夫君) 辻さんから、去る五月の通常国会で経済見通しの改定の必要性を強調したと、それに対して政府は、いまその時期ではないと、この当初の見通しに従って全力を尽くすのみであると、こういう答弁をしておるにかかわらず、数カ月で大変な狂いが生じてきておるではないか、その責任はどうだと、こういうお話でございますが、本年度の当初の見通しと今日とを比べてみると、そうしますと、物価におきましては、これはもう本当に私もよく言ったなあと思うんですが、大体、あの当時の見通しのとおりきてるんです。さあ国際収支はどうだといいますれば、これはまあ国際収支のスケールは小さくなっておりまするけれども、その収支じりは、これも見通しのとおり改善を示しつつある。景気はどうだというと、これはまあゆるやかな上昇過程に入りつつある。ただ、私が見通しが狂ったと思っておりますのは、景気の回復の速度というものが非常に緩慢である。まあそういうことにつきまして大きな狂いが出てきて、今回見通し改定を行ったわけでございますが、このことは、これは私としてはほかがみんなうまくいってるというのにその一点だけが狂った、大変これは残念で残念でたまらぬ。深くこれを遺憾としております。  ただ、そういう狂いが出てきた根源というのは、一体どこにあるのかということを一言申し上げておきますが、これは世界経済、世界景気です、これは。世界景気がもう全く予想のしないような落ち込みぶりを示しておるわけであります。いま、世界の専門家たちが集まって、国々の経済のあり方、また見通し等を検討しておりますが、プラス成長を実現しようというふうに見られておる、そういう国はわが日本だけなんです。アメリカもドイツもその他の国々はもとより、本年は昨年に比べまして、みんなマイナスになる。そういう中でも、とにかくプラス成長だというんですからね。まあそうとにかく、その点もまた評価していただきたいと、かように思っておる次第でございます。  今後はとにかく物価の安定は、これは確保していかなきゃならぬ。国際収支も健全にしなきゃならぬ。そういう中で、とにかくこの成長を実現していく、インフレのない成長体制を築く、これがわれわれ政府責任であると、かように考えております。  次に、酒、たばこの値上げなんかして、五十年度消費者物価一けた目標が実現できるかと、こういうお話でございますが、これはもうそういう目標は万難を排して実現します。この酒、たばこはいま言い出しているわけじゃないんです、これは。もう昨年の暮れ予算を編成するとき、一けたの物価目標というものと同時にこれを考え出したわけでございますので、酒、たばこ等の値上げがありましても物価目標に変更はございませんです。  なお、五十一年度の物価上昇率を預貯金金利並みに抑制できるのかと、こういうお話でございますが、これは、物価はどうしても預貯金金利水準以下に下ぐべきです。しかし、預貯金金利というのがだんだん動くという問題があるんです。十一月の四日から新しい金利水準になってきている。七%水準と申しますか、それまでは八%水準であります。私は、何とかしてこの預貯金金利以下の物価水準というものを早く実現したいと、こういうふうに思っておりますが、この金利水準が一%引き下げられたといって七%水準になる、そういう状態の中で七%以下に来年度持っていくことができるかというと、これはなかなかまだ自信がつきません。率直に申し上げまして、自信がつきかねるのでありますが、しかし、早くそういう方向へ持っていきたい、できることなら七%台にはこれを持っていくというふうに考えておるわけでございまするけれども、具体的にどの程度にするかということにつきましては、来年度予算の編成と絡みまして経済見通しを立てます、その際に確定したいと思います。(拍手)    〔国務大臣大平正芳君登壇拍手
  61. 大平正芳

    ○国務大臣(大平正芳君) 第一の御質問は、巨額の歳入欠陥を生じた政治責任についてでございまして、財政当局者としていたく責任を感じております。で、これをどのようにして責任を果たすかということは政治家として問題でございますので、こういう時期に、中央、地方を通じまして行財政水準をどうして維持してまいるか、経済、雇用の水準をどうして担保していくかということに鋭意努力することによりまして責任を果たしていかなければならぬと心得ております。  第二の御質問は、税制の洗い直しについてでございます。  土地再評価税でございますが、これはたびたび本院でも御説明申し上げておりますけれども、政府としてはいま直ちにこれを採択するつもりはないわけでございます。何となれば、これはいまだ実現しない利益を徴収する税金でございまして、きわめて低率にならざるを得ない。そうした場合に、その土地が譲渡された場合、いまの、現行によるよりはかえって譲渡益が少なくなるという結果をもたらしますので、私どもはにわかにこの説には賛成できないわけでございます。  それから銀行及び保険会社の貸し倒れ引当金でございますが、政府の政令によりまして、これまで千分の十でありましたものを千分の八にいたすことにいたしたわけでございます。千分の八までいたしました暁におきまして、千分の八と千分の五との間にどのように持っていくかにつきましては再度詰め直すことにいたしたいと考えております。アメリカにおきましては保証債務も含めまして千分の十八、ドイツは千分の十・五と記憶いたしておりますけれども、日本は千分の八で私は決して満足しているわけではありません。さらにこれに達した段階で切り込んでまいりたいと考えております。  それから交際費でございますが、交際費は、すでにもう辻さんも御承知のとおり、損金不算入限度が七五%までいっておるわけでございまして、今日直ちにこれをさらに徴税を強めるというところまで政府考えておりませんけれども、税制調査会の御審議にゆだねたいと考えております。  租税特別措置につきましては、先ほどから各議員の御質疑に答えておりまして、目下税制調査会で厳しく見直しをお願いしておるところでございます。  それから次の御質疑は赤字公債、特例債についてでございまして、まず第一に、五十一年度はなお特例債を出さなけりゃならぬか、その額はどのぐらいかという御質疑でございましたが、明年度の予算は、予算編成は目下作業が始まったばかりでございまして、まだどれだけの規模になり、どれだけの公債をお願いせにゃならぬかはまだわかりません。しかしながら、私の感覚では、相当程度特例債をお願いしなけりゃならぬようになるのではないかという展望を持っておることだけを申し添えさせていただきます。  それから、この特例債の発行はインフレにつながるのではないかという御懸念が表明されたわけでございます。私ども国債の発行が直ちにインフレにつながるものとは考えません。経済とバランスのとれた規模の国債であり、それが完全に市中消化される限りにおきましてインフレにつながるものとは思いませんけれども、そういう御懸念が将来起きないように十全の措置を講じなけりゃならぬことは当然と心得ております。  それから歯どめでございます。これは今度の補正予算で申し上げましたとおり、償還表の説明にありますとおり、借りかえをしないということでございまして、十年債を、十年満期の公債を発行するわけでございまして、この発行財源は特別会計に対する百分の一・六の繰り入れと、それから直前の年度の余剰金の全部と、それから毎年度の予算繰り入れと、そういうものを財源といたしまして六十年度には全額返すということを申し上げておるわけでございます。つまり、借りかえを行わないで十年満期の国債はそのまま新たな歳入をもちまして全部払ってしまうということでございます。  償還計画がないじゃないかということでございますが、十年満期の国債でございますので、十年満期が参りまするならば、借りかえなく払うということがまさしく償還計画なんでございますが、あなたの言われるのは、償還の財源の計画が、財源に計画性がないじゃないかという御指摘だろうと思うんでございます。それは御指摘のとおりでございまして、ただいま御案内のような大変不確定要素の多い経済の状況、財政の状況でございますので、私が申し上げられますことは、真剣な財政運営を通じまして、いま異例な特例債をお願いしなけりゃならぬような事態でございますけれども、この事態をなるべく脱却いたしまして、財政に計画性を持つことができるような事態を早く招来せなけりゃならぬというのがいま私どもの精いっぱいの願いでございます。しかしながら、これは異例中の異例な公債でございまするので、十年間に借りかえなく返すだけの決意、背水の陣をしいて当たっておりますことは御理解をいただきたいと思います。  それから最後に、付加価値税についての御質疑でございました。ただいま政府として税制調査会にお願いいたしておりますことは、先ほどから御論議がありました租税特別措置の見直しが一つでございます。第二は、これからの日本の租税の負担率はどうあるべきかという二つの問題についての御審議をいただいておるわけでございまして、新しい税目を起こすというような問題について御審議を願うまでにはまだ至っておりません。こういった基本的な問題が御審議を終えた段階におきまして、次の直接税、間接税、それから新税というような問題について、あるいは御検討いただかなけりゃならぬ時期が来るかもしれませんけれども、ただいまのところまだ御審議を願うまでにはなっていないということをこの際御報告を申し上げておきたいと思います。(拍手)     —————————————
  62. 前田佳都男

    ○副議長(前田佳都男君) 鈴木一弘君。    〔鈴木一弘君登壇拍手
  63. 鈴木一弘

    ○鈴木一弘君 私は、公明党を代表して、ただいま議題となっております酒税法並びにたばこ定価法改正案に対し、総理並びに関係大臣に対し質問をいたします。  前国会においてこの値上げ両法案が廃案となった際、全国民は皆一同に大喜びをいたしまして、これで安心して酒、たばこがのめると真実の声を上げたのであります。その声を全く無視して、再度今国会に全く同じ法律案提案してきた三木内閣の姿勢は、国民に背を向けたとしか言いようがないのであります。さらに衆議院においては、委員会、本会議ともに政府・自民党によってこの両値上げ法案を強行採決し通過させたことは、総理が言われている対話と協調とは全く正反対であり、議会制民主主義をみずから破壊するものであります。国民の声無視、国会軽視、このような姿勢に対しどう反省しているのか、まず総理にお尋ねいたします。  次に、三兆八千七百九十億円という巨額の歳入欠陥を出した政府の経済、財政政策についてお尋ねいたします。  政府は、この空前の歳入欠陥を起こしたことに対して、経済政策の運営の基本には誤りはなかったとか、その原因の多くは海外の外的要因によるものであるとかのごとく言われておりますが、その態度は全く無責任であります。なぜならば、総需要抑制策の緩和と不況対策の実施のタイミングの誤りによって不況をより深刻化させ、それが三兆八千億円以上の巨額な歳入欠陥をつくったのであります。一体これが政府の経済政策の失政でなくて何でありましょうか。この失政のツケを値上げ法案によって国民に押しつける。これでは国民三木内閣に経済運営を任せられなくなるのであり、これが廃案のときの国民の喜びの声となってあらわれたのであります。三木総理がいまなすべきことは、値上げ三法案をするよりも、経済政策の失敗に対し直ちに責任をとっておやめになるか、あるいは解散して速やかに国民に信を問うことであると思いますが、どうお考えか、お伺いいたしたいと思います。  次に、この両法案も含めて、現行税制に対して政府の基本的考えをお尋ねいたします。  税制の重要な役割りの一つに所得再配分機能がありますが、昭和四十八年、四十九年の異常インフレの中で、国民の資産及び所得の格差の拡大は、持てる者と持たざる者との間に大変な差をつくりました。しかるに、これに対する是正の対策として政府は何を行ってきたでしょうか。一部、土地譲渡所得等の税改正がありますが、むしろ全く何もしないできたと言った方が適当であると思います。しかし、大蔵大臣は、わが国現行税制は所得再配分機能を十分に果たしておると言われておりますが、では、あの狂乱物価高騰当時の格差拡大については、この所得再配分が十分なされたと思われているかどうかお尋ねいたします。との税制の所得再配分機能をさらに弱めてしまうのがこの酒、たばこの値上がりであります。つまり、公共料金も含めて間接税については、高額所得者、低額所得者ともに同じ税負担を強いられるという点で大変逆進性が高いということは自明の理であります。  ここでお伺いしたいのは、現在、間接税の国民の実際の負担状況政府調査してあるのかどうかということであります。国民所得階層別の間接税の負担割合の実態国民の前に示し、その逆進性を十分に調査した上での税改正であるのが当然でありますが、それをいたしましたかどうかお伺いいたします。    〔副議長退席、議長着席〕  安易な間接税の増税である酒、たばこ値上げは、所得再配分機能を阻害してしまうだけでなく、インフレ促進の原因ともなりますが、それについてどう考えられているのかお尋ねいたします。  次に、この酒、たばこ両値上げ法案を契機に郵便料金、そして国鉄運賃、電信電話料金など、これから公共料金の値上げを政府は予定しているようであります。三木内閣の公約である年度内で物価上昇率を一けた台に抑えるということは、物価の上昇が社会的不公平を拡大する、そこで社会的に弱い立場の人を守るために物価を抑える、そういう趣旨ではなかったかと思います。しかし、この一連の公共料金値上げが実施されたとしますと、インフレ再燃は必至でありましょう。その場合、社会的弱者と言われる人たち生活はどうなるのでしょうか。火を見るよりも明らかであります。総理は、公共料金については受益者負担を強調しておりますが、当然そこには福祉型公共料金のあり方が必要であります。今後の公共料金のあり方と福祉についてどのように考えているのか、総理並びに厚生大臣にお尋ねいたします。  次に、たばこの値上げについてであります。政府は、ここ七年間もたばこの定価改定をしていないので今回の値上げは当然であるかのごとく言っておりますが、国民は全く納得できません。というのは、専売公社では、昭和四十九年度だけでたばこ事業の総利益は七千二百二十三億円、益金率は五六・二%になっております。一体、民間企業で利益率五六%という高収益の出ている企業があるでしょうか。確かにこの七年間で原材料費、人件費等のコストは上昇しているとは思いますが、専売公社ではこの七年間の過程で次々と定価の高い新種のたばこを発売して、国民により高い値段のたばこへの誘導を行い、高収益と増税を行ってきたのではないですか。そのように高利益を出している専売公社がなぜたばこの値上げをしなければならないのか納得できません。また、この七年間でたばこの原価がどの程度上昇してきたのか。また、現在のたばこの原価は一体どのくらいなのか全く公表されておりません。公表すべき義務が政府にはあると思いますが、明快なる答弁をしていただきたいと思います。  次に、たばこの専売制度についてお尋ねいたします。  現在、発展途上国はいざ知らず、先進諸国のほとんどでたばこ事業は民営であります。その中にあって、わが国のみが専売制をとっていることに対して疑問を持つ意見が相当にあります。歴史的に見た場合、このたばこ専売制は軍事的な、あるいは国家財政上からの国営といういわゆるビスマルク的国営を経てなったものであり、当然修正されるべきであります。現在の完全専売とも言うべき形態を改めて、一部専売制にするとか、あるいは民営にして、消費税、物品税としてのたばこ税という形にしてはどうかと、このような意見もございますが、これに対してどう考えているかお伺いいたします。  次に、いま問題になっております公務員のスト権についてお尋ねします。  前国会において私はこの問題について労働大臣にお尋ねをいたしました。その際、検討中ということで明確なる答弁はいただけなかったのであります。その後、条件つきスト権を認めるような意見が政府・与党の中にも出てきた現在、事態は相当変わってきているはずであります。私は、専売初め三公社五現業のスト権はもはや認めるべきときが来ていると思いますが、政府考えをお伺いいたします。  次に、酒税についてお尋ねいたします。  政府は、今回の酒税の値上げは一級以上で、それ以下のものについては据え置きということから、低所得者への負担はさせないというようなことを言っております。しかし、大衆酒であるビールに対しても高級酒並みの課税強化をするのは疑問であります。まして、酒税の中に占めるビールの税収割合は、四十八年度で五一%、酒税の半分以上をビールだけで占めているということであり、なぜこれ以上増税しなければならないのか。これは大衆課税以外の何物でもないと思うのでありますが、その考えをお伺いいたします。  また、ビールとウイスキー業界の寡占化について政府の対策はどうか、お伺いをいたします。  次に、これからの安定成長経済下での間接税、公共料金のあり方という点では、まだまだ十分な検討がされておりません現在、しかも、あとわずかしか本年度予算の年度が残っていないときに酒、たばこの値上げを行う必要は全くないと思います。政府はこの両法案を直ちに撤回するべきだと思いますが、その考えはないかどうかお尋ねをいたします。  最後に、来年度以降の税制改正について政府はどう考えているかお尋ねいたします。来年度以後もまだ赤字財政が続くことを政府は予想しているようでありますが、その対策として、景気変動に余り影響を受けない間接税の増税、そして昭和五十二年度には付加価値税の導入も行うというようなことが伝えられておりますが、総理大臣と大蔵大臣の考えはどうかお伺いをいたしまして質問を終わります。(拍手)    〔国務大臣三木武夫君登壇
  64. 三木武夫

    ○国務大臣(三木武夫君) 鈴木君にお答えをいたしますが、強行採決、衆議院の強行採決に対してはどう反省するかというお話でございます。私は、最も民主的な政治家なんです、私自身がね。だから、強行採決のようなことをしないで問題を解決したいと、本当に私は願っておるんです。ところが、なかなかやはり自分があんまり気に入らない法案というものは、なかなかこう審議に応じてくれなかったり、最後の採決を非常になかなかつけることを好まなかったりして、どうも日程が非常にこう延びてくるんですね。国会には会期がありますから、会期のうちに結末をつけなければ、議会制民主主義というものはこれは育っていかない。やはり今日、議会制民主主義というものがいろいろ世界で問題にされておりますのは、こういう激動の時期に、議会制民主主義というものが時代の変化に適応するだけの能力を持つかどうか、これが問われておるんです、世界的に。これはもう不況の対策にしましても、不況対策というものはできるだけ迅速を要するんですからね。そういう場合に、議会政治というものがこういう時代に機能を発揮していけるかどうかということが世界的にやっぱり問われておる時期ですから、どうか私も今後ともやはり対話と協調という私の政治姿勢を変える考えはない。野党もですよ、この対話と協調のやっぱり相手方ですから、相手なしの対話、協調はありませんよ。そういうことで、どうかこのお気に召さぬ法案であっても、国会はやっぱり結末をつけなければ議会政治は運営できませんから、われわれがやむを得ず自民党だけで採決するようなことが今後ないように、どうか皆さんも十分御審議を願って、反対は反対と言っていただいて、決着をつけるように野党にお願いをしておく次第でございます。(拍手)  それから、国会を解散せよということが鈴木君言われましたけれども、私は、いま国民もやっぱり解散というものを望んでいないんではないか。これだけの不況と雇用の不安定があるわけですから、これを三木内閣はまず片づけろと、解散はそれからのことだというのが国民の声だと私は受け取っておるんですよ。だから私は、いま解散をする考え方は持っておりません。  また、福祉充実ということを目指すものとして、公共料金の値上げはそれに反するんじゃないかと言うんですが、私はもう公共料金は安ければ安いほどいいというものでもないと思うんですね。もしそういうことをするならば、やはりその事業体というものは不健全になりますね。毎年毎年赤字が累積しく健全なやっぱり運営というものはできませんよ。もし今度それを一遍に値上げするというときには、それを一遍に不健全な財政を直そうとすれば、これは大変な衝撃を国民に与えますよ。だから、適宜にこれを公共料金は上げていくことが私はいいと。なぜならば、やはりたばこにしても、酒にしても、のむ人もあるし、のまない人もあるんですね。郵便にしても、それを利用する人もあるし、しない人もある。だから公共的な事業を自分が、まあ自分の利用するたびにその料金を負担するということでなければ、この赤字は一般国民の御負担を願わなければならぬわけですからね。だから、公共料金というものもやはりある程度の適宜の、適正な値上げというものはお認め願うことが非常に健全な姿であると私は思っております。ただしかし、物価への影響などもよく考えて、そうしてやっぱり慎重でなければならぬことは事実でございますが、公共料金はもう上げてはならぬということでは、結局は国の財政で負担するよりほかはない。やはりその利益を受ける人が御負担願う方が合理的でないかという考えでございます。  それから次に、鈴木君は両値上げ法案は撤回すべきだというお話でございましたけれども、これはもう予算にも、もうすでにこの五十年度予算にはこう組み込まれておるわけです、予算は議決されておるんですから。そのやっぱり一つの裏づけになる法案でございまして、どうしてもこの二つの法案は、皆さんの御審議の上これは決着をつけていただきたいと願うわけでございます。  私に対しての御質問は大体そういう点だと思いますが、落ちた点がございましたら、大蔵大臣が補足いたすことにいたします。(拍手)    〔国務大臣大平正芳君登壇拍手
  65. 大平正芳

    ○国務大臣(大平正芳君) 第一の御質問は、租税の所得配分機能から申して今度の値上げについてどういう評価をしておるかということでございます。御案内のように、酒とか、たばことかいうのは大部分従量税率でございまして、この七年間諸物価、人件費等が上がりましたけれども、据え置きのままになっておったわけでございます。したがって、他の税目あるいは他の物品との間のバランスが失われてきておるわけでございまして、租税がその所得の再配分機能を果たす上におきまして現行の従量税制の制約があらわれてきたわけでございますので、この際適正な調整をいたそうとすることでございますので、御理解をちょうだいしたいと思います。  それから第二は、その際、国民生活、生計についてどういう配慮をしたかということでございます。私ども四十三年の引き上げ当時の国民の収入、生計費の実情、その中に占める酒とかたばこに消費しておりました割合等を勘案いたしまして、今日の状況に照らして、それ以下に、引き上げましてもそれ以下におさまるように配慮いたしたつもりでございます。  それから、たばこ事業は五割以上もの益金を上げておるにかかわらず値上げをするというのは理解ができないという趣旨の御主張でございました。確かに、たばこ専売事業、今日まで五割以上の利益を上げてまいりましたことは御指摘のとおりでございます。しかし、このまままいりますと、ことしは五割を割りまして四割六分程度の益金率になるのではないかと思うのであります。諸外国の例を調べてみますと、大部分が約七割ぐらいの税金をたばこから徴収いたしておるというのが先進国の事例でございます。わが国におきましては、従来長く約六割程度までの益金を確保するような心組みでたばこの定価を考えてきたわけでございますが、今度改正を御承認いただきますならば、これが五割六分程度に回復するということでございますので、決して無理な値上げであるとは思っていないわけでございますので、まげて御理解をいただきたいと思います。  それから、たばこの原価の公表をしないのはけしからぬじゃないかという御注意でございます。鈴木先生にもたびたび申し上げておりますように、この銘柄別の原価は、専売制をとっておる国であろうととっていない国であろうと、社会主義圏であろうと資本主義圏であろうと、どこも公表をいたしておりません。しかしながら、これは国際競争上不利を招くからでございますけれども、国会が御審議をされるに当たりまして大体の原価の趨勢というものを把握される必要のあることは私どもも十分理解できるところでございますので、あるグループ別に原価の趨勢が御掌握できるような材料は国会に差し上げてあるつもりでございます。  それから、専売制度を民営に移すということは政府としていまのところ考えておりません。何とならば、七十年余にわたりましてたばこ、塩は専売制度のもとで国民生活の中で慣熟してまいりまして、都郡を通じまして支障なく運営されておるわけでございますので、ただいまこれをにわかに改めるという考えは持っておりません。  それから次に、お酒の方の御質問でございます。  ビールの値上げは大衆課税、大衆飲料についての重課ではないかという御指摘でございますが、日本の場合はヨーロッパと違いまして、ビールはまだ大衆飲料とまでは言い切れないものがあろうかと思うのであります。ヨーロッパでは御案内のように、朝われわれがお茶を飲むようにビールを飲んでおるわけでございますけれども、日本はまだそこまで消費が行き渡っていないようでございます。  第二の御質問は、ビール業界の寡占状態についてどう考えるか、それからどういう対応策を考えておるかという御質問でございました。鈴木さんが御指摘のように、ビール業界に寡占がございますことは事実でございます。しかし、私ども見ておるところ、この寡占の弊害はまだ出ていないと考えております。政府としても、また業界といたしましても、この設備投資の自粛を業界に求め、あるいは計画出荷を実行していただいて、特定の会社のシェアが不当に拡大して寡占の弊害が出てまいるというようなことがないように、いま措置をいたしておりますわけでございます。今後も鋭意努力をしてまいるつもりでございます。  それからその次の、今後の税制改革につきましての御質疑でございました。間接税を、付加価値税でございますとか、自動車諸税を含めまして、間接諸税の増徴というようなことについてどう考えておるかということを中心に御質疑があったと思います。  それで、先ほど御答弁申し上げましたように、いま政府がやっておりますことは、税調にお願いいたしておりますことは、現行の租税特別措置をもう一遍見直すということが第一の仕事でございまして、現行制度の中で不公正がなお残っていないかということをもう一度究明し直す、それから租税の負担率はどうあるべきかということをもう一遍考え直すということを御検討いただいた上で、その次の税制改革の構想について御検討いただくという順序に考えておるわけでございまして、ただいままでのところ、付加価値税でございますとか自動車諸税の御検討はまだお願いをいたしていないというのが今日の段階における政府の姿勢でございます。しかし、行く行く、いま御検討をお願いしてあることが討議が終わりました段階におきましては、その状況を見まして、新たな事項について御審議を煩わすことになるかもしれませんけれども、ただいまのところ、まだそこまでの段取りに至っていないことを御報告申し上げておきます。(拍手)    〔国務大臣田中正巳君登壇拍手
  66. 田中正巳

    ○国務大臣(田中正巳君) 酒、たばこ等の各種公共料金の引き上げは、社会的に弱い立場にある低所得者等の生活により多くの影響を与えることは否めませんが、そうした場合、政府がかねて予算編成の基礎となった経済見通しの中の個人消費の伸びを上回ることがあれば、生活保護基準、各種年金の水準等の改善を行わなければならないことは申すまでもありません。こうした場合、個々の料金等の中に福祉型料金を設けることは、対策としては、一時的なものとして考えられないことはございません。事実、電気、ガス等において一時的にやったこともございますが、しかし、一般的な社会保障制度の仕組みの中で措置する方がより適切かつ永続的でありまして、基本的な対策としては、ぜひそうした方法によらなければならないものというふうに信じている次第であります。(拍手)     —————————————
  67. 河野謙三

    議長河野謙三君) 加藤進君。    〔加藤進君登壇拍手
  68. 加藤進

    ○加藤進君 私は、日本共産党代表して、酒税法の一部改正法案及び製造たばこ定価法の一部改正法案について、総理並びに大蔵大臣に質問いたします。  この法案は、周知のように、さきの国会において廃案になったものであります。政府は、あれこれ答弁をしておりますれども、にもかかわらず、廃案になったこと自体、議会政治のもとでは、国民の強い反対意思の表明であることは疑問の余地のないところであります。政府は、酒もたばこも嗜好品だから値上げは当然だと言っていますが、たばこを吸う人口は三千五百万に達し、酒を買わない家庭はほとんどないのであります。総理、あなたはこの法案が廃案になったそのとき国民がどれほど喜びの声を上げたか。あのとき国民の中で広がった安堵感をどのように受けとめられたのか。ところが、今日、政府はまたもや同じ法案を強行成立させようと図っているのであります。これこそ国民の意思など眼中にない三木内閣の政治姿勢を示すものであって、断じて容認できないところであります。  いま強く求められているのは、国民立場に立ったインフレ、不況対策であります。これをこそ議論すべき今国会に値上げ法案を提出するのは筋違いもはなはだしいと言わなければなりません。異常な物価高と、このために引き起こされた国民生活難こそ、不況の克服を困難にしている最大の原因であり、物価の安定、引き下げこそ最良の不況対策であります。三木総理は、九月二十日、わが党の岩間議員のこの点についての質問に答えて、これに同感ですと言われました。もしそうであれば、総理、諸物価の引き上げの引き金になる値上げ二法案の成立を断念すべきではないでしょうか。総理の明確な答弁を求めるものであります。  第二にお伺いしたいのは、この値上げ法案が、今後予定されている一連の公共料金値上げ、国民高負担への突破口になるという点であります。  現在、政府は、来年度に国鉄運賃二倍値上げを初め電報電話料金平均四六%、消費者麦価三〇%、国立大学授業料の二倍、電力料金三〇%などなど、いずれも大幅でかつ全面的値上げを行おうとしているではありませんか。政府はいま、財政危機を口実にして公共料金制度と税制の見直しを今後の財政運営の基本方針として強調しておりますが、今回の値上げ二法がその一部であることは明らかであります。総理は、公共料金は受益者負担が原則であるなどと述べておられますが、あなたは一体、公共料金制度が何のためにあるとお考えになりましょうか。公共料金は、その引き上げが国民生活に大きい影響があるからこそ、国会と政府の介入によって、国の責任において低く抑えることをその制度の基本にしているものであります。ところが、総理の主張は、この公共料金も民間企業の価格と同じく全面的に国民に負担させようとするものであり、これこそ公共料金制度の根本的改悪ではないでしょうか。明確な御答弁をお願いいたします。  特に、酒、たばこの値上げに総理が受益者負担論を持ち出すのは、まさに欺瞞そのものであります。ハイライトの原価は二十七円五十二銭、セブンスターは二十八円七十二銭であるのに、国民はそれの三倍の値段で吸わされ、またビールも約四〇%もの高い税金を負担させられているのであります。消費者はすでに十分過ぎるほどの負担をさせられているのではありませんか。酒、たばこの値上げはやめるべきが当然でありますが、総理の明確な御答弁をお願いいたします。  第三に、政府は酒、たばこの値上げを突破口として、揮発油税その他の自動車関係税や物品税などの増税を俎上に上せていますが、間接税が所得の低い人ほど重い負担となることは議論の余地がありません。さらに許すことのできないのは、政府が今後の財政政策の基本として税制の見直しを強調し、付加価値税の導入を企てていることであります。これが最悪の間接税であり、結局、商品の価格に転嫁されて全面的な物価上昇をもたらすことはEC諸国の例から見ても明らかであります。総理は、付加価値税制の導入はしないとはっきり言明すべきであります。間接税の増税や付加価値税の導入に財源を求めるべきではありません。それは、数々の特権的な減免税制度の恩典によってこの不況下においても莫大な内部留保金を抱いている大企業から生み出すべきものであります。わが党は、今国会においてすでに、資本金十億円以上の大企業に対しては法人税の還付を停止すること、利子配当の源泉分離選択課税を二五%から五〇%に引き上げること、有価証券取引税の税率を大幅に引き上げるなど、大企業、大資産家に正当な税負担を求める改正案を提案していますが、この措置だけでも優に数千億円の財源を生み出すことができるのであります。これを行うだけでも酒、たばこの値上げの必要は全くないのであります。大蔵大臣、このような措置をとられる意思があるかどうか御答弁をお願いいたします。  第四に、酒、たばこの大幅値上げは、不況とインフレに苦しむ関連中小零細業者にも多大の打撃を与えるものであります。  まず、たばこ小売店に対して、マージン率の引き下げの撤回と、すでに大部分の小売店が半ば強制的にやらされている自動販売機改造の費用の補償等を行い、経費の増加、実収入の低下にあえぐ経営の安定を図るべきだと思うが、大蔵大臣にその具体策を示すことを求めるものであります。  次に、中小酒造業者の問題でありますが、大蔵省、国税庁は従来大手メーカーを優遇した酒税徴収主体の行政指導を進め、このため中小メーカーの苦境を見殺しにしてまいりました。このような行政を続けるなら、各地で特色を持つ中小メーカーの没落は不可避であります。  秋は日々深まっています。秋こそ日本酒の季節だと言われています。若山牧水は、「白玉の歯にしみとほる秋の夜の酒はしづかに飲むべかりけれ」と歌いました。牧水のこの心情は決して牧水だけのものではないと私は信ずるものであります。  ところが政府は、この上さらに酒税を上げようとしておるのであります。そうなれば、もはや本来の清酒とは似て非なる日本酒しか残らないという悲しむべき状態になることは目に見えております。政府は、伝統ある各地の中小メーカーの自主的発展に力点を置き、それぞれ特色を持つ清酒の保護育成を図ること、このために必要な財政、金融、税制上の措置を即刻行うべきだと考えますが、大蔵大臣の見解を伺います。  最後に、総理は、本二法案は前国会で審議を尽くしたとしばしば述べておられますが、わが党議員の要求したビールとウイスキーの原価やたばこの銘柄別製造原価、あるいはたばこの新銘柄開発販売計画など審議に必要な諸資料を押さえ、ひた隠しに隠しながら、一体どうして審議を尽くしたなどと害われるのでありましょうか。総理に、参議院では必要なすべての資料を提出し、文字どおり審議を尽くしますと約束されるかどうか、国民の前に明確な御答弁を求めて私の質問を終わります。(拍手)    〔国務大臣三木武夫君登壇拍手
  69. 三木武夫

    ○国務大臣(三木武夫君) 加藤君にお答えをいたします。  この二法案が国会で廃案になったこの国民の喜びを知っておるかという御質問でございました。値上げというのは国民に好かれるものではないことは私は承知しておるのですが、われわれは財政運営の責任を持っておる者として、出すことばかりあって入る方の財源を考えなければ、財政に責任を持つことができませんから、ときには国民に不人気なことであっても御理解を得てやらなければならぬことがあるということを御理解願いたいのでございます。  また、公共料金に対する私の基本的な考え方というのは、やはりこれを全部一般会計で負担するというようなことではなくして、これを利用した人が適正な水準で負担を願うということが合理的だと思うんですね。そういう意味で、しかしながら、受益者が負担してもらう限度というものは考えなければならぬでしょう。あるいはまた、物価に対する影響というものも考えて時期などについては考慮があってしかるべきでありますが、原則としては、それを利用したり、あるいは酒の場合は飲まれたり、たばこの場合は吸われたりするような利益を受ける人に御負担を願うということが適当だと考えるわけでございます。  それから酒、たばこ、こういうものに対しては、受益者負担論の立場から立つならば、値上げはやめるべきだということでございましたが、酒、たばこも一般の大衆の嗜好品であるわけでございまして、広く一般国民生活関係はあるわけでございますが、しかし、やはり酒、たばこというものを考えてみると、どこの国でも例外なしに相当大きな財源になっておるということですね、これは。日本の場合は、たばこの場合を考えても、大体外国の半分ですよ、税の負担は。半分になっておる。酒なども、ウイスキーなどは日本がまだ——イギリスは非常に高い税率ですけれども、ほかの国でも日本より高いということでございまして、特に日本が酒、たばこに対しての税の負担というものがそんなによその国に比べて重いものではないということでございます。したがって、この程度国民の皆さんに、財政もこういうふうに困難なときでございますから、御理解を願いたいと思うわけでございます。  それから、酒、たばこの値上げは間接税の増税につながるというのですが、世界各国の税制を見てみますると、日本の間接税というものが世界の中で一番低い水準ですね。加藤君御承知のように二七%です。フランスなんかは六五%、ヨーロッパは皆五〇%程度のものは間接税になっておるわけで、日本の場合はもう先進国の中で間接税が二七%しか占めてないということは、非常に特異な例でございます。むろんアメリカはちょっと税のたてまえは違いますけれども、そういうことで、わが国のこの財政の現状からして、まあ付加価値税のお話がございましたが、こういう問題も十分税制調査会において御審議を願わなければならぬ課題であると考えております。(拍手)    〔国務大臣大平正芳君登壇拍手
  70. 大平正芳

    ○国務大臣(大平正芳君) 第一の御質問は、この種の間接税の増徴は勤労者の生活を破壊するものではないかという御指摘でございます。加藤さんも御案内のように、わが国の間接税は全体の国税の中で三割にすぎないわけでございます。逆進性を持った間接税が欧米諸国におきましては五割以上を占めておりますが、わが国におきましては直接税が七割、間接税が三割ということを御指摘申し上げておきたいと思います。  それからこの際、この場合、先ほども御説明申し上げましたように、従量税である間接税を七年間据え置いておったためにほかとのバランスを失することになりましたので、最小限度の調整をしようというのが今度の御提案趣旨でございますことも御理解をいただきたいと思いまして、勤労者の生活を破壊するなどということをゆめゆめ考えておるわけじゃございません。  第二は、付加価値税でございますが、この問題は、先ほども鈴木さんの御質問にお答え申し上げましたように、税制調査会で目下新たな税目についての御討議はお願いしていないわけでございまして、基本的な問題についていろいろ御討議をお願いしておるわけでございまして、まだ税目を起こすことについての御審議はお願いしていないわけでございます。しかし、いま申し上げましたように、直接税が七割、間接税が三割ということでございまして、今後財政の推移によりまして、増税をどうしてもお願いしなければならぬという場合に、直接税にばかり期待できるかどうかということは、確かに問題点になってくるであろうと想像されるわけでございますが、これは将来の検討の課題であろうと思います。  それから、法人税の還付制度を停止すべきじゃないかということでございますが、これは法人税を年度にまたがっての調整をする制度でございまして、ことし停止しますと翌年度の税収がなくなるということでございまして、政府としては、税源を培養してまいる上から申しまして、お説のように停止するつもりはございません。これは大法人ばかりではございませんで、全法人に設けられた制度であることもあわせて申し上げておきます。  利子・配当の分離選択税率を五〇%に引き上げるべきじゃないかということでございますが、これは前の通常国会におきまして二五%を三〇%に引き上げることをお認めいただいたばかりでございまして、いま直ちに五〇%にするつもりはありません。  それから、中小清酒メーカーに対する助成措置でございます。これは御案内のように、いま過剰在庫を抱え、市場性に制約を受けて非常な経営の困難な状況にありますことはよく承知いたしておるわけでございます。政府におきましても、清酒業界がつくりました信用保障基金に対しましていままで十七億五千万円の国庫助成をいたしておりまするし、今日まで累計七十七億円に上る低利融資をいたしてその構造改善を進めておるわけでございます。今後も鋭意その経営の改善にお力添えをしていかなければならぬと考えております。  それから、原価の公表問題でございますが、たばこの銘柄別の原価はいずれの国も公表していないということはたびたび申し上げておるわけでございまして、今後も公表するつもりはないわけでございます。  酒の原価につきましては、それぞれの企業の機密に属することでございますので、政府が進んで公表するわけにはまいりません。ただ、有価証券の報告書等におきまして企業がそれぞれみずからの責任で報告しておる書類が公表されておるわけでございまして、そういうところから推計される限りにおきましていろいろな経営分析が可能であると私ども思います。われわれは、民主主義、自由な社会におきまして、権力をもって知り得たことをみだりに公表するというようなことは慎まねばならぬと心得ております。(拍手)(「答弁漏れ」と呼ぶ者あり)  有価証券取引税その他税目別の改正につきましては、まだ、先ほど申しましたように、税制調査会の御審議をお願いする段階まで来ていないことを御報告申し上げておきます。(拍手)  自動販売機の問題でございますけれども、これは政府が心配する前に、専売公社と業者の間で話がついておると承知いたしておりますので、もし問題がございますならば、政府も心配していきたいと思いますけれども、ただいまのところ特に問題があるとは承知しておりません。(拍手)     —————————————
  71. 河野謙三

    議長河野謙三君) 田渕哲也君。    〔田渕哲也君登壇拍手
  72. 田渕哲也

    ○田渕哲也君 私は、民社党を代表して、ただいま議題となりました酒税法及び製造たばこ定価法の一部を改正する法律案について総理並びに大蔵大臣に質問をいたします。  まず、総理にお尋ねをしますが、施政方針演説でも議会制民主主義の擁護を訴えられた総理の立場に照らして廃案というものをどう理解されておられますか、お伺いをしたいと思います。  国会に送付された法案は、ときによって可決あるいは否決、さらには継続審議等の処理が行われます。そして廃案もまた、定められた会期内に法案の処理を決める合意が成立しなかったという意味で、国会の重要な意思表示の一つであると思います。すなわち、平たく言い直せば、廃案とは、この法案は基本的に考え直す必要があるという意思表示の表明にほかなりません。この点について恐らく総理は否定されないと思います。したがって、同種の法案をどうしても再び国会に提出されようとするのなら、前国会で廃案になった理由に深く思いをめぐらしながら、国会の再審議に耐え得るものに内容の抜本的改革を行うことが政府としての当然の態度だと思います。しかるに総理は、前国会で廃案になったものと事実上全く同じ法案を再び提出されました。これは国会の審議を軽視し、無視するものであると思いますが、いかがですか。  続けて伺います。総理は、その理由として、前国会後事情が大きく変わったこと、すなわち、巨額の歳入欠陥が生じ、財政再建が急務になったことを挙げられるかもわかりません。しかし、もしそれを主張されるのなら、それをする人は歳入欠陥の原因をつくった内閣総理大臣であってはなりません。一片の責任の自覚を持っておられるとしたら、酒、たばこ値上げ法案は総理の辞表を添えて国会に再提出すべき筋合いのものではありませんか。御所見を伺います。  次に、大蔵大臣にお伺いをします。  現在、「見直そう、酒・たばこ」というパンフレットが配布されております。出版元は書いありませんが、大蔵省が発行されたものでありましょう。その中を拝見すると、この法案を再提案する理由として、七年間値上げを据え置いてきたこと。その間物価上昇を考えると事実上酒、たばこの減税が進行していたが、その減税分は酒やたばこをのまない人の税金で埋められてきたこと。したがって、酒、たばこをのむ人はその間のツケを払う必要があること。さらには、たばこについては原材料費や人件費の値上がりが余りにも大きいこと。この法案昭和五十年度予算の歳入に計上してあること等々が指摘されています。  そこで、そのそれぞれについて意見を述べ、大臣の見解を伺いたいと思います。  まず、七年間値上げを据え置いてきたことですが、七年間据え置いたのなら、八年、九年と据え置いてなぜ悪いのですか。少なくとも、この不況下の物価高のときに上げなくてもよいと思いますが、いかがですか。政府が従来主張してきたように、一般の物価水準と酒、たばこの税負担がバランスのとれたものでなければならないとするなら、あの狂乱物価を含む激動の七年間を通じて据え置いてきたこと自体問題でありましょう。では、なぜ据え置いてこられたかと言えば、公共料金抑制という理由からではなくて、この間の巨額な自然増収にその原因があったはずであります。過去七年間の自然増収額を合計すると実に十四兆七千億円の巨額に上ります。もしかねてのわが党の主張のごとく、これを景気調整の基金として、あわせて財政の計画的、中期的運営に心がけてきたとしたら、今日の歳入欠陥も十分対処可能であり、民間部門や地方財政に今日の苦しみを与えることはなかったはずであります。しかし、自民党政府はこの自然増収を国民にそっくり減税として返すこともせず、むしり取るようにして使い、大盤振る舞いを重ねながら浪費をしてきたのであります。その責任三木総理にまず問いたいと思います。また、財政が窮屈になったからといって、自然増収を使い込んできたことをたなに上げて値上げを訴えてみても国民の理解は得られないと思いますが、この点について大蔵大臣の御見解を伺っておきたいと思います。  すなわち、政府が酒、たばこの値上げを本当に国民に訴えたいのなら、過去の財政運営に対する反省に立って責任を明らかにしながら、今後の財政再建に対する具体的な青写真を国民の前に明らかにすべきであります。政府は、今日の不況と歳入欠陥について、輸出が思ったように伸びなかったこと、そしてその原因は海外の景気不振であり、日本政府として仕方がなかったという趣旨答弁を繰り返しておられます。しかしながら、それゆえ政府として不可抗力だったという言いわけが通るのなら、国民の側にも言い分はあります。思ったほど賃金が上がらないし仕事もない、酒、たばこが財政物資であるという理屈もわかるが、この不況は自分たちのせいではないのだから仕方がない、したがって値上げに応じられないという理由を認めるべきではありませんか。この不況に対し政府が不可抗力を主張するのなら、国民の方でも不可抗力を主張する権利があるはずであります。この意味で、政府は、なだらかな賃上げに託された物価安定への国民の期待を率直に受けとめ、値上げ法案を撤回すべきだと思いますが、この点、いかがですか。  重ねて大蔵大臣にお尋ねいたします。七年間にわたって事実上の減税が進行してきた、したがって、酒飲み、たばこのみはその間のツケを払うべきだと言われておりますが、ところで、ツケを払うという言葉で思い出すのはOPEC諸国による原油代金の大幅引き上げであります。戦後の先進工業諸国の繁栄は安い原油の上に築かれてまいりました。そしてOPEC諸国は原油代金の安さを先進諸国による不当な搾取であると感じ、従来のツケの支払いを求めたのが原油代金の引き上げであったと言われております。そしてこのツケを日本としてどのようにして支払うか、また国民各層がどのようにこのツケを負担するかがわが国の重大な経済問題社会問題となっていることはいまさら申し上げるまでもありません。大蔵省が値上げの理由として挙げている原材料代や人件費の高騰も、原油代金のツケを国内で回し合っている一つの姿でありましょう。そしてそのツケを今回は庶民の小遣いを当てにして回してこようというのが今度の値上げ案ではないでしょうか。しかし、家計も赤字、企業も赤字という現状のもとで黒字の専売公社がツケの回しをなぜ急がなければならないのでありますか。もちろん、国も赤字、地方もまた赤字であります。しかし、それは赤字家計、赤字企業の惨たんたる今日の経済がもたらした結果であって原因ではありません。もし国と地方の財政危機の早期解消を図ろうとするなら、民間部門の赤字解消にまず全力を挙げなければなりません。ところで、そのために酒、たばこの値上げはどれほど貢献するのでありましょうか。庶民から有効需要をさらに吸い上げることが不況対策として役立つはずはないのであります。この点について大蔵大臣の御判断を伺いたいと思います。  次に、酒、たばこの値上げが今年度の歳入予算に組み込まれたものであるという点について一言お尋ねいたします。従来からたびたび政府が述べてきたごとく、歳入予算は単に見積もりであって歳出予算のような厳格性はありません。加えて四兆円にも及ぶ歳入欠陥であります。今年度の歳入予算そのものがまじめな検討に値しなくなってきておることはいまや隠れもない事実であります。したがって、当初予算の歳入に計上したからといって、廃案になった法案を再び提案する理由にはならないと思いますが、いかがですか。  なお、わが党としては、その予算そのものに反対であり、予算の審議を通じて予算の組み替え案を提出し、かつ、財源対策として利子・配当などの租税特別措置の改廃、交際費課税の強化、富裕税の創設等を主張してきたことは御承知のとおりであります。もし政府がわが党の主張に沿って、酒、たばこの値上げにかわる財源対策を講じられるのなら、その提案に賛成するにやぶさかではありません。  最後に、私は総理にお尋ねをしたいと思います。  いま私が大蔵大臣にお伺いをしてきたことは、実は前国会で参議院で審議され、しかも十分な理解を得られなかった事項であります。その結果、参議院として審議を尽くすことができませんでした。そしてこのことが廃案の本当の原因だったのであります。ところで総理は、酒、たばこの値上げ法案を再び参議院に提出されるに当たり、何か従来にない提案理由あるいは審議に値する材料を提出されるおつもりですか。総理は対話と協調を大切にされると言うのなら、いたずらに野党に対して硬直した姿勢をなじる前に、審議内容を充実させ、前進させるための努力をされるべきであります。総理は、今国会は不況対策にしぼった国会であり、したがって、独占禁止法改正案も核防条約の批准も来年の国会に見送ったと答弁してこられました。では、それほど不況対策に焦点をしぼった国会に酒、たばこの値上げ法案提案された理由は何でありますか。しかも、そのことによって臨時国会の会期の半ばを空転させてしまったわけでありますが、それほど酒、たばこの値上げを重視する理由は何ですか。以上、総理にお尋ねをしたいと思います。  最後に、私は重ねて総理に対し、前国会でこの法案が廃案となった事実を真剣に受けとめるよう強く要請するとともに、もし総理がそれほど固執する重要法案であるなら、当参議院としても審議時間が全く不足していると言わざるを得ません。議会制民主主義立場に立った総理の正しい対処を強く要請して私の質問を終わります。(拍手)    〔国務大臣三木武夫君登壇拍手
  73. 三木武夫

    ○国務大臣(三木武夫君) 田渕君にお答えをいたします。  酒、たばこの値上げ法案は、一たん廃案になったものをまた出してくるのは議会制民主主義に反するじゃないかというお話でございましたけれども、田渕君も御承知のように、衆議院では長い長い時間をかけてこの法案審議をされて、そして可決をされ、参議院においても十分に御審議を願って、これは私は思うんですが、もう三時間もあったならば採決されておったと私は思っているんです。いろいろな突発の事件が起こって、そしてまあ最後には廃案になったんですけれども、もうほんのこう採決の瞬間までいった法案だと私は思っておるわけでございます。だから、これをもう一遍出しますことがむしろ議会制民主主義のたてまえから言えば当然のことではないかと考えるわけでございます。これはまた、どうしてそんなに固執するのかと申しますと、一つには、やはり予算の中にすでに組み込まれて、予算は通っておるんですから、その裏づけになる一つの財源をなす酒、たばこの二法案が、これは御審議を願わないとどうも予算編成のたてまえ上、こういうことはよくない。  もう一つは、これからはこの財源というものは、財政は窮屈になるわけですが、その場合にやっぱり酒、たばこというようなものの一つの消費税の収入というものは、国の財政として期待せざるを得ない。どこの国でも、酒、たばこなどに対する消費税的な国民の負担はもうどこの国でも例外ないんですよ、酒、たばこは。しかも、日本は外国の中では一番負担が私は少ないと思うんですね、日本が。だから将来、これは来年度の歳入の中にも相当やはり一つの柱になるものでございますから、これはそういう将来の日本の財政計画から見ても、この点については皆さんの御理解を得てこの国会ではぜひ通していただきたいと願うわけでございます。  それからまた、過去の昭和四十六年、七年、八年ごろの状態を田渕君は御指摘になっておると思うんですが、まあ非常な高度経済成長で税収のたくさんあったときに、それを皆使わないで景気調整基金のようなものを設置すればよかったではないかという御意見です。これは確かに今後検討すべき一つの課題だとは思いますが、まだまだ高度経済成長と言っても、社会保障の充実とか社会資本の拡充とか、もう立ちおくれておる部門がたくさんございましたし、毎年のように大きな減税に充てたわけで、田渕君の御指摘のような、そういう基金というようなところまで考えが及んでそういう処理をいたさなかったのでございますが、今後はやっぱりこういう問題は検討すべき問題の一つだと思うわけでございます。  まあ会期の半ばを過ぎてこういう法案を出してきたのはどうかというお話でございますが、われわれもこう相当会期をとりましたのは、いろいろと御議論があることを知っておりますから、相当な期間がないとわれわれが国会の議決を願いたいと思う法案が通過しないと思って、相当余裕をとって国会の召集をしたわけですが、なかなか御審議を願えないと。どうもこういう法案というものは、この審議というものがどうも秩序正しくいかないんですね。そういう点で、こちらがことさらに国会の半ばを過ぎて出したんではございませんでして、田渕君がお考えくださっても、どういう事情でこんなにおくれてきたかということは御推察願えると思う。政府は一日も早くこれを衆議院の議決を願って参議院へ送りたいということであったんですが、国会運営の模様は田渕君に私が申し上げるまでもなく御承知だと思いますから、そういう理由でおくれたわけでございまして、参議院も前の通常国会で十分御審議を願っておる法案でございますから、速やかに御決議を願いますようお願いをいたす次第でございます。(拍手)    〔国務大臣大平正芳君登壇拍手
  74. 大平正芳

    ○国務大臣(大平正芳君) 第一の御質問は、七年間たばこの定価並びに酒税の税率を据え置いた理由についての御質疑でございました。これは申すまでもなく、政府が公共料金につきましてはできるだけ抑制の方針を堅持しておるからでございまするし、あなたが御指摘のように、自然増収が毎年恵まれましたのでそういうことが可能であったわけでございます。七年据え置いたんだから、八年、九年と据え置くことはできないことではないではないかという御指摘でございますけれども、よく七年据え置いたということを評価していただきたいと思います。  それから第二の御質疑は、この問題と財政危機、歳入の大幅な欠陥との関連についての御質疑でございましたけれども、私どもはたばこの益金並びに酒の税率の改定は、従量税であるのでほかの税目との権衡を考え家計考えて、ほかとのバランスを見ながら調整していこうということでございまして、歳入欠陥を埋めるために特に思いついたことではなかったわけでございます。しかし、あなたがおっしゃるように、今日これが成立が遅くなりました関係でたまたま歳入欠陥とぶつかったわけでございますけれども、そもそものわれわれの意図するところは、従量税率を時代に即して適正に調整しようという意図に出たものであると御理解をいただきたいと思うのでございます。  それから、専売公社の益金——専売公社はなるほど仰せのようにもうけておりまするけれども、これは諸外国に比べてまだ益金率は決して高いとは言えないわけでございます。これはそういう収益を専売事業として上げまして、中央、地方の財源にそれぞれほぼ折半して中央、地方の財政を助けておるわけでございまして、そういう意味で今度の値上げを評価していただきたいわけでございます。  それから、三兆五千億もの公債の増発をする場合に、この歳入にこだわる必要はないじゃないかという御指摘でございますが、三兆幾らもの公債を出さなければならぬような時期でありますだけに非常にこだわることをあえて御理解を賜りたいと思います。(拍手
  75. 河野謙三

    議長河野謙三君) これにて質疑は終了いたしました。      ——————————
  76. 河野謙三

    議長河野謙三君) この際、日程に追加して、  昭和五十年度における地方交付税及び地方債の特例に関する法律案内閣提出衆議院送付)を議題とすることに御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  77. 河野謙三

    議長河野謙三君) 御異議ないと認めます。  まず、委員長の報告を求めます。地方行政委員長原文兵衛君。    〔原文兵衛君登壇拍手
  78. 原文兵衛

    ○原文兵衛君 ただいま議題となりました昭和五十年度における地方交付税及び地方債の特例に関する法律案について、地方行政委員会における審査の経過及び結果を御報告いたします。  本法律案は、本年度の当初予算に計上された地方交付税の総額を確保し、地方税の減収額を補てんする等のため所要の特例措置を講じようとするものであります。  まず、地方交付税の特例措置でありますが、国税三税の減収に伴う地方交付税の減額分一兆一千四億八千万円及び地方公務員の給与改定財源等に要する百九十五億円については、交付税及び譲与税配付金特別会計において借り入れ、さらに地方財政の健全な運営に資するため、本年度限りの特例措置として臨時地方特例交付金二百二十億円を一般会計から同特別会計に繰り入れることとしております。なお、借入金については、昭和五十三年度から六十年度までの各年度に分割して償還することとしております。  次に、地方税の当初見込み額に対する減収分については、地方債一兆六百三十二億円を増額発行することとし、この減収補てん債が地方財政法上の適債事業に充当し切れない部分については、適正な財政運営を行うにつき必要とされる経費の財源に充てることができる特例措置を設けることとしております。  委員会におきましては、一般財源の強化についての政府の態度、地方債の消化、地方公務員給与決定のあり方地方財政計画の策定をめぐる諸問題等につき熱心な質疑がありましたが、その詳細は会議録によって御承知願います。  質疑を終了しましたところ、日本社会党、公明党を代表して野口委員から、交付税率を三五%に引き上げ、都等の特例を改善し、第二地方交付税制度を創設する等の修正案が、また、日本共産党代表し神谷委員から、交付税特別会計の借入金の償還費を国の負担とし、本年度限りの措置として地方税の減収を補てんするための特例債及び地方財政特例債を発行し、利子補給を行う等の修正案がそれぞれ提出されました。  両修正案は予算を伴うものであり、福田自治大臣から、政府としては反対であるとの意見が述べられました。  討論に入りましたところ、日本社会党代表して福間委員から、日本社会党、公明党共同修正案に賛成、原案及び日本共産党修正案に反対、自由民主党を代表して金井委員から両修正案に反対、原案に賛成、公明党を代表して阿部委員から、日本社会党、公明党共同修正案に賛成、原案及び日本共産党修正案に反対、日本共産党代表して神谷委員から、原案に反対、日本社会党、公明党共同修正案に棄権、日本共産党修正案に賛成の意見がそれぞれ述べられました。  討論を終わり、まず両修正案についてそれぞれ採決の結果、いずれも賛成少数をもって否決されました。  次いで、原案について採決いたしましたところ、賛成少数をもって本案も否決すべきものと決定いたした次第であります。  以上御報告いたします。(拍手
  79. 河野謙三

    議長河野謙三君) これより採決をいたします。  表決は記名投票をもって行います。本案に賛成の諸君は白色票を、反対の諸君は青色票を、御登壇の上、御投票を願います。  議場の閉鎖を命じます。氏名点呼を行います。    〔議場閉鎖〕    〔参事氏名を点呼〕    〔投票執行〕
  80. 河野謙三

    議長河野謙三君) 投票漏れはございませんか。——投票漏れはないと認めます。投票箱閉鎖。    〔投票箱閉鎖〕
  81. 河野謙三

    議長河野謙三君) これより開票いたします。投票を参事に計算させます。議場の開鎖を命じます。    〔議場開鎖〕    〔参事投票を計算〕
  82. 河野謙三

    議長河野謙三君) 投票の結果を報告いたします。   投票総数       二百三十三票   白色票         百二十三票   青色票           百十票  よって、本案は可決されました。(拍手)      ——————————   〔参照〕  賛成者(白色票)氏名      百二十三名       宮田  輝君    寺下 岩蔵君       平井 卓志君    吉田  実君       中西 一郎君    山本茂一郎君       山内 一郎君    久保田藤麿君       前田佳都男君    木内 四郎君       佐多 宗二君    最上  進君       望月 邦夫君    森下  泰君       梶木 又三君    藤川 一秋君       福岡日出麿君    鳩山威一郎君       秦野  章君    夏目 忠雄君       林  ゆう君    安孫子藤吉君       青井 政美君    有田 一寿君       井上 吉夫君    石破 二朗君       中村 登美君    藤井 丙午君       桧垣徳太郎君    原 文兵衛君       中村 禎二君    高橋 邦雄君       細川 護煕君    宮崎 正雄君       林田悠紀夫君    佐藤  隆君       菅野 儀作君    石本  茂君       中山 太郎君    小林 国司君       寺本 廣作君    柳田桃太郎君       内藤誉三郎君    玉置 和郎君       高橋雄之助君    楠  正俊君       岩動 道行君    西村 尚治君       鍋島 直紹君    新谷寅三郎君       上原 正吉君    郡  祐一君       青木 一男君    迫水 久常君       徳永 正利君    小川 半次君       八木 一郎君    丸茂 重貞君       塩見 俊二君    志村 愛子君       片山 正英君    河本嘉久蔵君       嶋崎  均君    棚辺 四郎君       中村 太郎君    戸塚 進也君       高橋 誉冨君    坂野 重信君       斎藤栄三郎君    山東 昭子君       糸山英太郎君    岩男 頴一君       岩上 妙子君    遠藤  要君       大島 友治君    大鷹 淑子君       斎藤 十朗君    古賀雷四郎君       黒住 忠行君    川野 辺静君       金井 元彦君    土屋 義彦君       山崎 竜男君    上田  稔君       初村滝一郎君    長田 裕二君       久次米健太郎君    鈴木 省吾君       世耕 政隆君    江藤  智君       藤田 正明君    大森 久司君       岡本  悟君    平泉  渉君       橘直  治君    町村 金五君       加藤 武徳君    安井  謙君       剱木 亨弘君    吉武 恵市君       増原 恵吉君    神田  博君       伊藤 五郎君    鹿島 俊雄君       大谷藤之助君    亘  四郎君       橋本 繁蔵君    佐藤 信二君       亀井 久興君    岡田  広君       上條 勝久君    稲嶺 一郎君       安田 隆明君    山崎 五郎君       高田 浩運君    増田  盛君       二木 謙吾君    源田  実君       熊谷太三郎君    植木 光教君       木村 睦男君    温水 三郎君       福井  勇君     —————————————  反対者(青色票)氏名      百十名       太田 淳夫君    矢原 秀男君       野末 陳平君    喜屋武眞榮君       下村  泰君    相沢 武彦君       塩出 啓典君    青島 幸男君       市川 房枝君    柄谷 道一君       内田 善利君    峯山 昭範君       桑名 義治君    上林繁次郎君       阿部 憲一君    三木 忠雄君       藤原 房雄君    和田 春生君       黒柳  明君    矢追 秀彦君       原田  立君    田代富士男君       藤井 恒男君    木島 則夫君       鈴木 一弘君    宮崎 正義君       柏原 ヤス君    中村 利次君       田渕 哲也君    白木義一郎君       小平 芳平君    多田 省吾君       中尾 辰義君    向井 長年君       福間 知之君    矢田部 理君       案納  勝君    久保  亘君       青木 薪次君    野田  哲君       対馬 孝且君    秦   豊君       浜本 万三君    赤桐  操君       大塚  喬君    小山 一平君       片岡 勝治君    田  英夫君       宮之原貞光君    鈴木美枝子君       神沢  浄君    前川  旦君       竹田 現照君    山崎  昇君       村田 秀三君    小野  明君       野口 忠夫君    栗原 俊夫君       茜ケ久保重光君    瀬谷 英行君       森  勝治君    戸叶  武君       田中寿美子君    竹田 四郎君       戸田 菊雄君    森中 守義君       志苫  裕君    森下 昭司君       近藤 忠孝君    山中 郁子君       粕谷 照美君    片山 甚市君       目黒朝次郎君    橋本  敦君       安武 洋子君    内藤  功君       寺田 熊雄君    佐々木静子君       辻  一彦君    小巻 敏雄君       神谷信之助君    小谷  守君       工藤 良平君    和田 静夫君       松本 英一君    小笠原貞子君       立木  洋君    鈴木  力君       中村 波男君    川村 清一君       杉山善太郎君    沢田 政治君       加藤  進君    渡辺  武君       塚田 大願君    安永 英雄君       吉田忠三郎君    松永 忠二君       小柳  勇君    須藤 五郎君       岩間 正男君    星野  力君       阿具根 登君    野々山一三君       中村 英男君    藤田  進君       河田 賢治君    野坂 參三君       上田耕一郎君    春日 正一君      ——————————
  83. 河野謙三

    議長河野謙三君) この際、日程に追加して、  国会議員の秘書の給料等に関する法律の一部を改正する法律案衆議院提出)を議題とすることに御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  84. 河野謙三

    議長河野謙三君) 御異議ないと認めます。  まず、委員長の報告を求めます。議院運営委員長鍋島直紹君。    〔鍋島直紹君登壇拍手
  85. 鍋島直紹

    ○鍋島直紹君 ただいま議題となりました法律案は、政府職員に対する住居手当の額の改定に伴い、国会議員の秘書に対しましても政府職員と同様の住居手当を支給できるようにすることとし、本年四月一日から適用しようとするものであります。  以上が本法律案内容でありますが、委員会におきましては、審査の結果、全会一致をもって可決すべきものと決定をいたしました。  以上御報告を申し上げます。(拍手
  86. 河野謙三

    議長河野謙三君) これより採決をいたします。  本案に賛成の諸君の起立を求めます。    〔賛成者起立〕
  87. 河野謙三

    議長河野謙三君) 総員起立と認めます。よって、本案は全会一致をもって可決されました。  本日はこれにて散会いたします。    午後七時三十二分散会