○太田淳夫君 私は、公明党を代表して、ただいま
議題となりました
昭和五十
年度補正予算三案に対し、
反対の
討論をいたします。
最初に私は、
補正予算案の
審議の過程で示された
国民に背を向ける
三木内閣の姿勢について指摘しなければならないのであります。
今
国会における最大の
課題は、
不況をいかに克服するかということであり、破綻に瀕している
国民生活をいかに守り、活力を与えるかにすべてがあると言うべきであります。しかるに
政府は、みずから
不況の克服を
課題と称しながら、そのために必要な
施策を織り込んだ
補正予算案の編成をおくらせたまま
国会を強引に開会し、しかも
国民の多数が
反対する酒、たばこ、郵便料金
値上げ法案を優先して
提出するばかりか、
自民党は無謀な
強行採決によって
国会を空転させたのであります。しかも、三木
総理みずからが公約し、前
国会で
衆議院において全会一致で通過した独占禁止法改正案を葬り去ったことは、
政府自民党の独善的姿勢を如実に示すものと言わなければなりません。さらに政治献金についても、
総理は就任当時において、
企業から多額の献金を受けた候補者は
企業の代弁者となりやすいと言いながら、いまや
自民党の金融機関からの借金を肩がわりしてもらおうとすることなどに見られますように、事実上大
企業からの政治献金を奨励するかの
態度を見せているのであります。私は、三木
総理に対し、
国民の三木離れがこうした
国民無視の
政治姿勢にあることを申し上げておきたいのであります。結局、
国民無視の
政治姿勢を前提に編成されたこの
補正予算案であるがゆえに多くの矛盾を露呈していると言っても決して過言ではないのであります。
以下、
補正予算三案に
反対する主な
理由を申し上げます。
第一は、今回の
補正予算案が
不況、
インフレの被害を受けている
国民生活を守ることを最優先する内容になっていないことであります。当面する
わが国経済は、戦後最大の深刻な
事態に追い込まれ、失業者の増大、就職難、中小
企業の倒産や経営難は、解決の兆しさえも見られていないのであります。このような現状は、いかに三木
総理が強弁しようとも
三木内閣の
政策に
誤りがあったことは明白であります。
私は、今回の
補正予算は、
不況、
インフレの被害を最も受けている
国民生活を救済するために、低所得者層に対する
所得税減税、さらに老人、生活保護世帯、母子家庭等の生活を守る
社会福祉政策の拡充がまず優先されなければならないと主張するものであります。
さらに、
公共事業については、大
企業本位の
大型プロジェクト中心でなく、これまでおくれていた公共住宅、上下水道、学校、保育所など、
国民生活関連施設整備を最
重点に置いた安定した
経済成長のための
景気浮揚策を講ずべきであります。
第二は、安易な
赤字国債発行によって
国民に新たな負担を押しつけようとしていることであります。巨額な
赤字国債の
発行に追い込まれているのは、
高度成長期における放漫
財政、
インフレ、さらには五十
年度税収見積もりに重大な
誤りがあったからであります。にもかかわらず、
政府はその
責任を認めず、その上、
歳出の
見直しや不公平税制の是正による
歳入確保に積極的な
努力を払おうとしていないのであります。
既定経費の七百四十一億円の節減、金融機関の貸し倒れ引当金の繰り入れ率の若干の引き下げで当面を糊塗しようとしても納得できるものではないのであります。一方、
赤字国債の償還計画については、何ら具体的な内容が示されていません。借りかえもせずに十年間で二兆二千九百億円償還をすることは容易ではないはずであります。
政府みずから言うごとく、低
成長下において飛躍的な税の増収が望めない現在、償還財源
対策を明確にすることは当然であり、
国民の不安を少なくするためにもきわめて重要なのであります。この際、改めて償還計画の明確化を強く要求するものであります。
政府のこの魂胆は、付加
価値税等の新税創設によって
国民に新たな負担を押しつけようという以外の何物でもないと断言するものであります。
わが党は、今日まで、具体的な償還財源
対策として、大
企業保有の土地の再評価益課税の創設を
提案してきたにもかかわらず、一顧だに与えられなかったことはまことに残念であります。
第三は、
地方財政対策がことごとく
地方自治体の巨額な借金にゆだねられていることであります。
政府の
経済運営の失敗による国税減収に伴う
地方交付税交付金の
減額分については、国が全額補てんの
責任を持つことは当然過ぎることであります。百歩譲っても、
地方自治体が資金運用部資金に返済するための十分な財源
対策は講ずべきであります。
さらに、
地方税の減収にしても、かねてから
課題となってきました法人事業税の外形課税の実施や、
租税特別措置、
地方税の非課税
措置などの洗い直しに何ら手をつけないまま、
地方税の
落ち込みを
地方債にゆだね、しかも、その大部分を
地方自治体の民間資金調達に任せてしまっているのであります。
地方自治体の将来の負担となる借金を押しつけようとする
補正予算案をとうてい認めることはできません。
反対理由の第四は、中小
企業対策及び雇用
対策がきわめて不十分であることであります。戦後、最悪の状態にある倒産や、失業率の高水準という
事態に対し、
政府のように、
景気対策が成功すれば
景気は
回復し、倒産や失業問題が解決するだろうといった発想は説得力を持つものでないことは言うまでもありません。中小
企業を倒産の危機から救済するためには、中小
企業が直接潤う
国民生活関連の
公共事業の遂行を初め、生業資金の確保や、中小
企業減税、大
企業の不当な中小
企業分野への進出規制、下請代金支払遅延等防止法の強化など、総合的かつきめ細かい
対策がとられなければなりません。
雇用
対策にしても、新規学卒者の就職
対策、中高年齢者や身体障害者の失業回避、不払い労働債権等についての具体策や雇用調整給付金の支給期間の延長について明確な方針と確約を示すべきであります。
反対の第五は、
補正予算案が多くの
物価上昇要因を抱えていることであります。すなわち、多くの
国民が
反対する酒、たばこ、郵便料金の値上げを前提にして今回編成されました、しかも、
赤字国債を含む三兆四千八百億円もの
国債を
発行していることであります。酒、たばこ、さらには郵便料金の値上げが強行されるならば、原油値上げを
理由に待ち構えている大
企業製品の便乗値上げに火をつけることは明らかであります。私は、値上げ三法案の撤回をあくまで要求するものであります。
さらに、
国債の
市中消化が名ばかりで、実質日銀引き受けとなっているわが国において、巨額な
国債の
発行が通貨の
増発をもたらし、
インフレを促進することは必至と言わなければなりません。
物価を押し上げる要因の多い
補正予算案に
賛成することはできないのであります。
以上、数点について
反対の
理由を述べましたが、再度、
三木内閣の
国民生活無視の
政治姿勢を改めるよう要求して
討論を終わります。(
拍手)
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