○柳田桃太郎君 私は、自由民主党を代表して、当面する
財政、
経済の諸問題を
中心として
総理並びに関係閣僚に対し若干の
質問を行うものでございます。
質問に先立ちまして、このたび天皇、皇后両陛下におかれては、日米修好史上初めて御訪米され、友好親善の大任を果たされて、つつがなく御帰国になられましたことに対しお喜びを申し上げる次第であります。(
拍手)
なお、アメリカ上下両院においては、天皇御訪米中は日米友好デーとするという決議を採択されるとともに、フォード大統領を初めとし、朝野を挙げて御歓迎をいただいたことを深く感謝申し上げる次第でございます。(
拍手)
さて、
質問に入りますが、まず
三木総理の御訪米の成果についてお尋ねをいたします。
去る八月、
総理の御訪米により日米間は従来に増して親密な雰囲気が生まれたということは大きな成果であったと存じます。その当時の共同声明の中に「創造的な国際的対話を確立する必要がある」云々と述べておられますが、この創造的な対話というのは何を意味するのか、今後のわが外交
政策の基調に変化が起きてくるのかどうか、
総理にその内容をお尋ねしたいと存じます。
次に、
不況対策と
物価問題について
総理、副
総理、
大蔵大臣、
通産大臣にお尋ねをいたします。
一昨年の石油ショック後、昨年二月には対前年同期比
卸売物価が三七%、
消費者物価が二六%という異常な高騰を見ましたが、約二年の間に
財政、
金融面を通ずる厳しい総
需要抑制策を実施し、五十
年度末、すなわち来年の三月末には
卸売物価を五・八%、
消費者物価を九・九%アップ
程度にとどめるとの
見通しがついたと試算を発表するようになり、
国際収支もやや
回復の兆を見せておりますから、この点から見れば
政府の
財政、
経済政策は成功したと言えましょう。しかしながら、一方においては、一昨年来の総需要
抑制政策が浸透して
経済活動の沈滞と
雇用の減退を招き、
わが国が久しく経験したことのない
景気の
停滞を来しております。
副
総理にお尋ねをいたしますが、
国民の願いは、また
政府の使命は、狂乱
物価を安定するとともに、明るい
見通しのある
経済の
安定成長を確保するということではないかと思います。その意味では、
インフレ克服と高
物価鎮静化に
政策の
重点が先行して、いまや
経済界はオーバーキルの
状態を呈しつつあるのではないでしょうか。今回の
不況の
原因は、石油ショック後の
世界不況による貿易の縮小あるいは
企業の過剰設備等による在庫の増大等にも起因しておりますので、
政府の
経済政策の誤りと断定することはできません。しかしながら、
景気を刺激して
物価の安定を乱しては元も子もないとの見地から、
金融の引き締めによる総需要の強度の
抑制策により
景気が沈滞し、公定歩合を引き下げ、あるいは
財政による有効需要の喚起をしたぐらいでは
景気の
回復のテンポが遅くなってきているというのがこの実情ではないでしょうか。現状のままでは
個人消費も民間
設備投資も大幅の伸長は望めないばかりでなく、貿易の縮小均衡の傾向を早急に
回復する
見通しも立ちがたいと思われます。したがって、
国民は、
景気回復の原動力として国と地方の
財政支出の増大による有効需要の造出を待望しているとき、今回の
補正予算が提出されましたことは、まことに時宜を得た
措置であると思います。
われわれ自民党は、一日も早くこの
補正予算案を成立させて
不況対策を実行に移し、
国民の要望にこたえたいと念願しておりますが、(
拍手)しかしながら、いろいろな事情で
国会が空転して審議がおくれておりますことははなはだ
国民に申しわけないことと存じます。(
拍手)
さて、去る十月九日
政府が発表した
昭和五十
年度の
経済見通しの改訂試案を見ますと、これは
政府の第四次
不況対策や
補正予算の効果を踏まえて作成されておるものと思いますが、しかし、その
補正予算等の
財政支出による需要創出の効果は三兆円
程度であり、しかも、これだけでは総需要をどれだけ喚起するか、あるいは
個人消費支出、民間
設備投資、貿易の拡大もおいそれとは望みがたいという
状態において、
政府はいま試算をしておられるように、この下期に上期を三・五倍も上回る六・二%の成長を遂げて、実質年率二・二%アップが果たして達成できるでありましょうか。また、完全
失業者は下期には七%減という推定をいたしておりますけれども、八月と九月を比べてみますと、九月は八月よりも完全
失業者が七万人もふえております。来年卒業の学生の就職率を見ましても、あるいは中高年層の就職、あるいは
身障者の就職
状態を見ましても、長谷川労働大臣は明
年度にかような手を打つとおっしゃいましたけれども、本
年度下期にこの
雇用状態が安定して好転するというような
見通しはほとんど見られないような
状態でございます。副
総理はこれに対して、達成できる、そういう確信を持ってお述べになることができますか。
国民はもちろん
インフレなき繁栄を望んでおります。しかし、
不況の沼に転落したまま
企業収益は悪化し、
労働者は
雇用不安におびえ、
企業そのものが生死の関頭に立たされていつ沼から脱出できるか見当もつかない
状態に置かれておることに不安と不満を持っておるということを
政府もまたお気づきのことと存じます。今後は石油ショック以前のような高度成長はとうてい望むべくもありませんが、こんな方法で、およそこのくらいの期間に
経済の望ましい
安定成長水準に達成させると、
景気回復の具体的なプロセスはこうだと、わかりやすく
国民の前にお示しになる配慮が必要ではないでしょうか。
福田副
総理の御所見を承りたいと思います。
なお、これらの
景気回復は貿易の伸長なくしては期待できないのでございます。このときに当たりまして、
不況打開に関係ある
世界会議が二つも準備されつつあることは非常に幸いであります。
これは
総理大臣にお尋ねしますが、十一月中旬パリで開催される
世界の
不況打開にいどむ先進六カ国首脳
会議において、
わが国はどんな提案を行い、何を期待されておられますか。また、十二月中旬パリで開催される先進八カ国、産油、開発途上国側十九カ国の初の国際
経済協力に関する
会議に
わが国はどんな成果を期待しておられるか、お尋ねをいたします。
次に、
通産大臣にお尋ねをいたしますが、自律的な生産や在庫調整が困難視され、異常在庫を抱えている商品については、独禁法の除外例としての
不況カルテルの適用により
不況からの反転の契機を与える等の
措置が必要ではありませんか。
次に、
物価問題について副
総理と
通産大臣にお伺いいたします。
石油
危機後の狂乱
物価をここまで
抑制したという、
鎮静さしたということは高く評価さるべきであります。しかし、これは
公共料金の引き上げの引き延ばしや、石油
製品の逆ざや
価格の
抑制等、政治的配慮を重ねて今日に至っておるものであります。したがって、今日の
物価体系は、あるべき姿の
物価体系ではなくて、暫定的に抑え込んだ
物価体系になっております。西欧諸国では、石油ショック後の原油値上がりを反映した適切な新しい
物価体系がつくられたと聞いておりますが、
わが国では、輸入原油
価格を適正に織り込んだ石油
製品価格がつくられておらず、石油産業は一キロ二千円見当の逆ざやを背負ったまま今日に至り、いまや致命的な破局を迎えようとしております。このときに当たり、さらに先般OPEC参加国側から、一キロ約二千円以上の
値上げ通告があったと聞いております。石油
製品価格の
値上げは電力、鉄鋼、石油化学、その他
国民生活全般に大きな
影響を及ぼすものでありますが、原油
価格に見合った合理的な
価格調整は
世界各国でも実施していることで、
わが国も避けることのできない試練ではないかと思います。
通産大臣にその対策をお尋ねいたします。
また、
公共料金の
値上げも
財政構造を改めない限りは、大部分受益者
負担の方式によらざるを得ないと思量されます。したがって、現在
鎮静している
物価も、石油や
公共料金の
値上げとともに騰勢に転じる
心配はないか、これら積み残しの
物価問題をどうするか、副
総理にお尋ねいたします。
次に、
財政問題について
大蔵大臣にお尋ねいたします。
今回の
補正予算と財投
計画の実施によってどの
程度の
景気浮揚効果が期待されておりますか。これは副
総理は三兆円ぐらいと言われておりますが、私はその金額の根拠はよくわかりません。
次に、本
年度の
税収の落ち込みは歳入
計上額の約二二%に当たる
巨額に達しております。これは、
わが国の税体系が
景気の
動向に比例して増減する
所得税、
法人税等直接税に七〇%以上依存しているので、
不況時の
財政運営に著しい支障を来すことを示しております。したがって、今後は付加価値税等間接税の設定についても検討すべきときではありませんか。
次に、明
年度においては減税の実施は困難なように報道されておりますが、
個人消費支出増大のため、あるいは実質所得確保のため、低額所得者に対する
所得税の減税については、新税構想とともに検討すべきものと考えられますが、いかがでございますか。
公共料金等の
値上げは、
財政窮乏下においてやむを得ない
措置であると思いますが、この点に関しての御所見を承りたいと存じます。
今回の
補正予算の公共事業費は大型プロジェクトに集中し、全国的な
不況対策となる生活関連事業はわりあい少ないと批判する人がありますが、
予算書を見ただけでは的確にそれを判断することはできません。大体の使途区分を
大蔵大臣にお尋ねいたします。
本
年度の大蔵省証券の
発行額及び一時借入金の最高額は、このたび一兆二千億円追加して二兆二千億円となりますが、
国債の
発行と重複する
年度末においては、あるいは年末においては民間
金融を圧迫したり、あるいは
インフレの誘因となる
心配はありませんか、あわせてお伺いいたします。
次に、
国債についてお尋ねいたします。本
年度の
国債発行額は総額五兆四千八百億円となり、一般会計の二六・三%にも達する大きな金額であります。明
年度も、五十
年度の
経済見通しが仮に達成されたといたしましても、六兆円を下らない
国債の
発行が予想されますが、
財政法第四条の特例債が慢性化することとなりはしないでしょうか。これに対し
大蔵大臣は、特別公債に依存しない堅実な
財政にできるだけ早く復帰するようあらゆる努力を傾注すると、抽象的な決意だけを述べておられます。しかし、これは将来の
見通しにつきましての
質問に対しまして本日も
お答えがありましたが、余りにも不確定要素が多過ぎて
長期計画は立ちがたいとおっしゃっておられますけれども、
政府がその
財政計画を立ててそれに向かって国の
経済財政を運営していかないで、その自信を失った場合に、一体国の
財政はどうなるかということを
心配しない者はおりません。したがいまして、新しい
経済五カ年
計画ができるとともに、
財政計画もお立てになって、その線に歳入歳出をはめ込み、そして
健全財政をつくっていくことに努力をすることこそ大切ではないかと思います。(
拍手)
それから、
国債の
発行についていろいろな異論がございますけれども、本
年度について見ますと、
税収補てんのために
巨額の
国債を
発行することは、これは
財政の健全性を確保する見地からは適正な
財政運営ではありませんけれども、深刻な
不況のもとで増税をしたり歳出を削減したりいたしまして、ただ
財政のバランスを確保するというだけではますます
不況を
深刻化しますので、本
年度は万やむを得ないと私どもは存じております。しかし、
国債五兆四千億円余りと地方債四兆二千億円を合計すれば九兆六千億円となり、これだけの
国債、地方債を本
年度出納閉鎖期まで六、七カ月の間に
発行するとすれば
インフレ再燃のきっかけとなるおそれはありませんか。
国債は
市中消化が
原則でありますが、すでにシンジケート団との引き受けの話し合いはついておりますか。私どもの聴取したところでは、シンジケート団の非公式の意見として、
国債流通の円滑化、実勢
価格による
発行、マル優制度限度金額の引き上げ等を要望しており、予定
発行額の
市中消化はきわめてむずかしいという予想も示されております。
大蔵大臣に
国債発行の
見通しについてお伺いをいたします。
また、資金運用部資金の問題でありますが、も少し資金運用部が
国債、地方債を多く引き受けてはどうかという意見があります。資金運用部資金の原資の
状況を承りたいと思いますが、それは一般では郵便貯金関係が二十兆円、あるいは厚生年金の積立金が十兆円、その他を合わして三十五兆円ぐらいの資金があるはずだ、それで、も少し
国債、地方債を
消化できないかということを言う人がありますので、その実態を明らかにしていただきたいと思います。
次に、国と地方の
財政が現在のごとく窮迫し、
巨額の
赤字国債と地方債をもって収支の均衡をとらざるを得ない
状況下において、「大幅な歳出の削減や一般的な増税は行わない」、これはもちろんでありますけれども、本
年度においても既定経費のうちの相当部分を削減しており、また政令で直されるものは直して
税収の
増加を図っておりますので、そういう点についても
大蔵大臣にお尋ねをいたします。
なお、今後高度成長になれた安易な
経済運営を改めて、既定経費あるいは補助金等々歳出の効率化、合理化に努め、歳入については、
さきに申し上げました租税体系やあるいは
公共料金の
あり方を全面的に見直しをすべきときに至っておるではないかと思いますが、いかがですか。
総理にお尋ねしますが、国と地方の
財政がこのように
巨額の
赤字に転落し、
回復のテンポもおくれることにつきまして、まだ一般的にはよく理解されておりません。本日もこの場におきまして
総理はそのことを申されましたが、
国民の欲求は多様化、高度化し、これに対します
予算要求は非常に膨大なものになると思いますので、
健全財政を確立するためには財源の
重点的配分と効率的運用がぜひ必要になったということをあらゆる
機会に周知させる方法をとられて、理解と協力を求められる必要があるではないかと思いますが、いかがですか。(
拍手)
次に、
地方財政について自治大臣にお尋ねいたします。
今回の
補正予算において、地方団体に対する
地方交付税や
地方税減収補てん等につきましては、きめの細かい配慮が払われておりますことは適切なことと存じます。しかしながら、これらの財源は当初の起債
計画とあわして四兆二千億円の地方債をもって充当することになっております。このうち一兆八千六百億円は民間よりの縁故借り入れすることになっております。地方団体の
発行する縁故債は日銀からの資金借り入れの適格担保とならず、日銀の買いオペレーションの対象ともならず、またマル優制度の税の減免
措置も受けられないということで、
国債と比較して不利な条件下に置かれていると聞いております。これでは縁故地方債の
市中消化も困難視され、貸し付けた地方銀行等も資金操作が不円滑となり、地元の一般
金融を圧迫するおそれが生ずるのではありませんか。自治大臣は大蔵
当局と折衝中と聞いておりましたが、すでにこれらの困難な条件解決について話し合いがついておるかどうかお伺いいたします。
地方団体では今後の
財政運営がどうなるか非常に
心配をしております。
政府においては国と地方の税源配分や事務配分の再検討、超過
負担の完全解消、定年制の実施等の要望が高まっており、
長期見通しのもとに、地方自治達成のための基本的な対策を立ててほしいと言っておりますので、自治大臣のお考えをお尋ねいたします。
次に、
財政難時代の対外
経済援助についてでございますが、
三木総理大臣のお考えをお尋ねいたします。
三木総理は、去る八月六日のナショナル・プレスクラブにおけるスピーチで、「私は十年来、アジア、太平洋諸国の開発途上国の
経済開発のため、貿易、
経済援助等の面で協力し合うべきことを主張してきた」と述べておられますが、さて、過去一年間を振り返って見ますと、
日本の対外
経済援助額は、OECDの達成目標一%に対して〇・六五%であり、仏、西独、英、米に次いで五位で、平均の〇・七%にも及んでおりません。しかも、
政府ベースの援助にいたしましては、平均が〇・三三%に対し、
わが国はわずかに〇・二五%であります。今後、
財政難時代を迎えて、
三木総理の十年来の宿願がどうなるか憂慮にたえません。私は、開発途上国に対する
経済援助は、
経済的な安全保障となっている経費であると思います。平和外交を推進する
わが国として欠くことのできない経費でありますから、
財政難時代においても、OECDの達成目標を充足するよう努力することが必要と考えますが、
三木総理のお考えをお聞きしたいと思います。(
拍手)
最後に、外交問題について二件だけお伺いをいたします。
一つは、北方領土の問題であります。一昨年田中
首相訪ソの際、第二次大戦以来残った未解決の諸問題の中に歯舞、色丹、国後、択捉の四島を含むことを二度にわたって確認して帰国したと報ぜられました。ところが、
さきに平沢和重氏がアメリカのフォーリン・アフェアーズに掲載した論文の中に、「
三木首相は前任者たちと違う一つの解決策に到達しつつある」と書いております。これは一評論家の書いたことでございますけれども、前述四島のうち国後、択捉の二島の問題を今世紀末まで凍結し、ソ連との平和友好条約を締結すべきと述べておりますところから見まして、これは、
三木総理が四島返還について従来の
政府の
方針と違った解決策を考えているということと平仄が一致するように
心配されますので、お伺いをいたします。年内にソ連外相も来日されるように伝えられておりますが、念のため、
三木総理にこの北方領土返還に関する決意をお聞きしたいと思います。
次に、領海十二海里の問題でございます。これは
わが国の領海三海里を十二海里に広げた場合、国際海峡における諸問題の生ずることをよく承知しておりますが、
わが国沿岸漁業救済の見地からは、
世界の趨勢に応じ、領海十二海里宣言を必要とすると考えております。これに対する
三木総理の御
答弁をいただいて
質問を終わります。(
拍手)
〔
国務大臣三木武夫君
登壇、
拍手〕