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1975-10-18 第76回国会 参議院 本会議 第7号
公式Web版
会議録情報
0
昭和
五十年十月十八日(土曜日) 午前零時二十九分
開議
━━━━━━━━━━━━━
○
議事日程
第六号
昭和
五十年十月十八日 午前零時二十分
開議
第一
国務大臣
の
演説
に関する件
━━━━━━━━━━━━━
○本日の
会議
に付した案件 一、新
議員
の紹介 一、
請暇
の件 以下
議事日程
のとおり
—————
・
—————
河野謙三
1
○
議長
(
河野謙三
君) これより
会議
を開きます。この際、新たに
議席
に着かれました
議員
を御紹介いたします。
議席
第五十二番、
地方選出議員
、鹿児島県
選出
、
佐多宗二
君。 〔
佐多宗二
君起立、
拍手
〕 ———
—————
—————
河野謙三
2
○
議長
(
河野謙三
君)
議長
は、本
院規則
第三十条により、
佐多宗二
君を
法務委員
に指名いたします。
—————
・
—————
河野謙三
3
○
議長
(
河野謙三
君) この際、お諮りいたします。
小笠原貞子
君から
海外旅行
のため十一日間
請暇
の申し出がございました。 これを許可することに御
異議
ございませんか。 〔「
異議
なし」と呼ぶ者あり〕
河野謙三
4
○
議長
(
河野謙三
君) 御
異議
ないと認めます。よって、許可することに決しました。
—————
・
—————
河野謙三
5
○
議長
(
河野謙三
君)
内閣総理大臣
から、
青森
市における
仮谷建設大臣
の
発言
について、
建設大臣
から、
青森
市における
発言
について、それぞれ
発言
を求められております。これより順次
発言
を許します。
三木内閣総理大臣
。 〔
国務大臣三木武夫
君
登壇
、
拍手
〕
三木武夫
6
○
国務大臣
(
三木武夫
君)
仮谷建設大臣
の去る十月十二日、
青森
市における
発言
は軽率であり、まことに遺憾であります。私も
仮谷建設大臣
に対し厳重に
注意
をいたしましたが、
仮谷建設大臣自身
も深く反省し、二度と再びかかる過ちを犯さないことを誓約しております。
三木内閣
は今後一層言動を戒め、
国会尊重
の精神を発揮いたす
決意
であります。(
拍手
)
河野謙三
7
○
議長
(
河野謙三
君)
仮谷建設大臣
。 〔
国務大臣仮谷忠男
君
登壇
、
拍手
〕
仮谷忠男
8
○
国務大臣
(
仮谷忠男
君) 私の十月十二日、
青森
市における
発言
中、
国会答弁
に触れた部分は、言葉が足らず、軽率なものであったと、心から反省をいたしております。このため各方面に御迷惑をかけたことを深くおわびをいたします。 今後はこのようなことのないよう、
十分心
に戒めてまいります。(
拍手
)
—————
・
—————
河野謙三
9
○
議長
(
河野謙三
君)
日程
第一
国務大臣
の
演説
に関する件
大蔵大臣
から
財政
に関し、
福田国務大臣
から
経済
に関し、それぞれ
発言
を求められております。これより順次
発言
を許します。
大平大蔵大臣
。 〔
国務大臣大平正芳
君
登壇
、
拍手
〕
大平正芳
10
○
国務大臣
(
大平正芳
君) ここに、
昭和
五十
年度
補正予算
を提出するに当たり、その
大綱
を御説明申し上げ、あわせて、最近の
内外経済情勢
と当面の
財政金融政策
につき、
所信
の一端を申し述べたいと存じます。 まず、
一般会計予算
につきましては、
歳入面
におきまして、
租税収入等
につき当初
予算
における
見込み
に比し大幅な
減少
が見込まれるに至り、それを補てんする必要が生じたのであります。
歳出面
におきましても
景気
の
回復
と
災害復旧
のための
公共事業等
の
追加
、
国家公務員等
の
給与
の
改善
等緊急に
措置
を要する
追加財政需要
が生じてまいりました。このような
状況
に対処するため、
政府
は次のような
措置
をとることとし、これに必要な
予算補正
を行うことといたした次第であります。
歳出
におきましては、まず、
景気
の
回復
及び
災害復旧
のための
公共事業等
の
追加
を行うこととしております。すなわち、
一般公共事業
、
災害復旧事業
、
公社
・
公団等
による
公共投資
を初め
政府関係金融機関
による
住宅対策
、
公害対策等
につき
事業規模
にして約一兆六千億円の
追加
を行い、これに
中小企業
に対する
金融措置
を加え、約二兆一千億円の
施策
を実施することとし、これらに必要な
歳出予算
として四千二百十一億円を
追加
計上いたしております。 さらに、
人事院勧告
の実施に伴う
国家公務員等
の
給与改善費
、
雇用保険国庫負担金等
の
義務的経費
の
追加等
につきましても
所要
の
措置
を講ずることといたしておりますので、
歳出
の
追加総額
は八千二百三十億円となっております。
他方
、各省庁の
一般行政経費等
の
節減
七百四十一億円、
予備費
の
減額
一千億円のほか、
所得税
、
法人税
及び酒税の
収入見込み額
の
減少
に伴い
地方交付税交付金
につき一兆一千五億円の
減額
を行っておりますので、
歳出
の
修正減少額
は一兆二千七百四十六億円となります。 以上
歳出
の
追加
及び
減少
を加減いたしますと、
一般会計歳出総額
は当初
予算
に対し四千五百十六億円
減少
することになるのであります。
歳入
につきましては、
景気
の
停滞等
に伴う
租税
及び
印紙収入
の
減収見込み額
が三兆八千七百九十億円となりますほか、
日本専売公社納付金
の
減少
一千四百二十八億円も見込まれますので、その他の
収入
の増百六十五億円、
昭和
四十九
年度
剰余金受け入れ
七百三十七億円及び
歳出予算
の
減少額
四千五百十六億円を控除いたしましても、
歳入不足
はなお三兆四千八百億円に上る
見込み
であります。この
歳入不足
につきましては、
政府
としては、
公債
の
発行
によって対処せざるを得ないと考えております。そして、このうち一兆一千九百億円は
財政法
第四条第一項但書の規定に基づく
公債
の
追加発行
によることとし、残余の二兆二千九百億円については、別途提出いたしております
昭和
五十
年度
の
公債
の
発行
の
特例
に関する
法律
(案)に基づく
公債
の
発行
を予定いたしております。 なお、
公債
の
発行
に当たりましては、従来
どおり市中消化
の
原則
を堅持し、
資金需給
の
動向等
を慎重に見守りつつ、その円滑な
消化
を図ってまいる
所存
であります。 以上によりまして、
昭和
五十
年度
一般会計補正
後
予算
の
総額
は、当初
予算額
に対し、
歳入歳出
とも四千五百十六億円
減少
して、二十兆八千三百七十二億円となるのであります。
地方財政
につきまして、次のような
措置
を講ずることにいたしております。 まず、
交付税
及び
譲与税配付金特別会計
におきまして国税三税の
減額
に伴い
一般会計
からの
受け入れ
が一兆一千五億円
減少
するのでありますが、
地方団体
に交付する
地方交付税交付金
の
総額
は当初
予算どおり
の額を確保することといたしております。さらに、
地方公務員
の
給与改定等
の
財源
に資するため同
交付金
に四百十五億円を
追加
することといたしております。 これに必要な
財源
につきましては、一兆一千二百億円を
資金運用部資金
から借り入れますとともに、さらに
地方財政
の
状況
を考慮し、本
年度
限りの特別の
措置
として、
一般会計
に計上した
臨時地方特例交付金
二百二十億円を
受け入れ
ることといたしております。 さらに、
地方税
の
減収
及び
公共事業等
の
追加
に伴う
地方負担
の
増加
に対処するため、
総額
約一兆二千七百億円の
地方債
を
追加
し、そのうち
資金運用部資金
により三千七百億円を引き受けることといたしております。 また、
特別会計予算
及び
政府関係機関予算
につきましても、
一般会計補正等
に関連して
所要
の
補正
を行うことといたしております。 なお、
財政投融資計画
につきましては、総合的な
景気対策
の推進及び
地方財政対策等
のために、すでに
弾力条項
を発動して機動的に対処してまいりましたが、今回の
予算補正
において、
日本国有鉄道等
に対し
総額
一千四百九十九億円の
追加
を行うことといたしております。その結果、
昭和
五十
年度
の
財政投融資
の
追加
の
総額
は、
弾力条項
の
発動分
も含め一兆三千九百五十七億円になります。 以上、
昭和
五十
年度
の
補正予算
の
大綱
を御説明申し上げました。何とぞ、
関係法律案
とともに、御審議の上、速やかに御賛同くださるようお願い申し上げます。 この機会に、最近の
内外経済情勢
と当面の
財政金融政策
につきまして一言申し述べたいと存じます。
石油危機
を
契機
として発生いたしました一昨年来の
世界経済
の異常な
混乱
は、
各国
の懸命な
努力
の結果、ようやく収束に向かいつつあります。激しい
物価騰貴
はおおむね
鎮静化
の
傾向
をたどり、
先進工業国
の
国際収支
も逐次
改善
の
方向
にあるものと考えられます。しかし、このような
インフレ克服
の
努力
は、同時に
経済活動水準
の著しい
低下
を招き、失業の
増加
と
国際貿易
の縮小をもたらしました。また、
資源
や技術を持てる国としからざる国との間の
経済的格差
はますます拡大する結果となり、
世界
はきわめて深刻な
景気
の後退に直面したのであります。
わが国
におきましても、一昨年の
石油危機
を
契機
として、昨年二月には対前年同期比、
卸売物価
は三七%、
消費者物価
は二六%という異常な
騰貴
を見、
賃金
もまた三〇%を超える
上昇
を記録するに至りました。
政府
としては、まず、何よりもこうした異常な
事態
を収拾すべく
財政金融両面
を通ずる厳しい総
需要抑制策
を実施してまいりました。幸いにして
国民各位
の
理解
と
協力
を得まして、
物価
、
賃金とも
に最近とみに落ちついた
動き
を示しております。また、
石油代金
の急増により悪化しました
国際収支
も昨年半ば以降
漸次改善
の
方向
をたどっております。しかし、かかる一連の
インフレ抑制措置
は、一方におきまして
経済活動
の
沈滞
と
雇用
の減退を招き、
わが国経済
は久しく経験したことのない
長期
にわたる
景気
の
停滞
に遭遇することとなりました。 本年の春以降、
鉱工業生産
は
上昇
に転じ、
景気
はようやく底入れしたように思われますが、
生産活動
の
水準
はなお低く、
雇用
の安定と
企業経営
の
健全性
の
回復
を
経済
の
自律的反転力
にのみ
期待
することは困難であります。したがって、
政府
の強力な
措置
によって
経済活動
の
水準
を引き上げることが強く要請されておるわけでございます。特に、現在のように
貿易
が縮小し、
設備投資
や
個人消費支出
が
停滞
しておる
情勢
のもとにおきましては、
景気回復
の
起動力
として
有効需要
の
造出
に寄与する
財政支出
の多大の
期待
が寄せられておるのであります。 申すまでもなく、
財政
もまた、このような
景気
の
停滞
を反映いたしまして中央・
地方
を問わず大幅な
歳入不足
に陥り、厳しい
財源難
に直面しております。しかし、
政府
はただいま申しましたような
内外
の
経済情勢
及び現時点での
財政
に課せられた重大な
役割り
にかんがみ、大幅な
歳出
の削減や一般的な増税は行わないこととするのみならず、積極的に本年初以来三次にわたる
景気対策
を進め、さらに先般、
財政金融両面
にわたる総合的な
景気対策
を推進することとしたのであります。
他方
、
政府
は
特例法
に基づく
公債
を
発行
せざるを得ない
状況
にかんがみ、
一般行政経費
につきまして、従来になく厳しい
節減
に努めております。また、
歳入面
におきましても、
金融機関等
の
貸し倒れ引当金
の繰入
限度額
を
引き下げ
て
歳入
の確保にも
努力
を払っております。今
国会
に改めて提出いたしました酒、たばこ、郵便の
歳入
三法案につきましても、厳しい
財源事情
にかんがみ速やかに成立するよう強く
期待
いたしておる次第であります。 今回の
補正予算
により、
昭和
五十
年度
の
公債発行額
は
総額
五兆四千八百億円となり、
公債依存度
は二六・三%に達します。従来の
高度成長期
におけるような
多額
の税の
自然増収
を
期待
し得ないこと等を考慮いたしますと、今後の
財政運営
はきわめて厳しいものになることが
予想
されます。もし、やすきについて
財源
の調達を
多額
の
公債
の増発に依存するようなことになれば著しい
公債
の累増を招き
財政
の
健全性
は失われることになります。申すまでもなく、
財政
の
健全性
を堅持することは
国民生活
の
向上
と
経済
の
安定的成長
の
基盤
でありますから、
特例公債
に依存しない堅実な
財政
にできるだけ早く復帰するようあらゆる
努力
を傾注してまいる
所存
であります。 このため、現在
編成作業
中の
昭和
五十一
年度
予算
につきましても、従来以上に厳しい
決意
をもって
歳出
の
効率化
、
合理化
に努めてまいらなければならないと考えております。また、税制上の諸問題や
公共料金
の
あり方等
につきましても全面的な見直しを行ってまいる必要があると考えております。 次に、
景気
の着実な
回復
と
雇用
の安定を図るため、
量質両面
にわたる
金融政策
の
機動的弾力的運営
が要請されておることは申すまでもありません。とりわけ当面
金利政策
が重要であります。
金利
につきましては、本年四月以降三次にわたる公定歩合の
引き下げ
が行われ、
市中
の
貸出金利
もこれに追随して着実に
低下
しております。しかしながら、従来の
引き下げ
が
預貯金金利据え置き
のままで行われたため、このままの
状態
では
市中貸出金利
の一層の
低下
を図ることが困難な
状況
になっております。
預貯金金利
につきましては、これまでこれを
据え置き
とし、極力慎重に配慮してきたところでございますが、幸い
物価
の
情勢
もかなり落ちつきを見せており、
他方不況
の
克服
が強く要請されておりますので、
金利全般
にわたってその
水準
の
引き下げ
を促進することが適当でもあり、緊要な
課題
でもあると考えております。 このような観点から、このたび
預貯金金利
の
引き下げ
を図ることとし、
所要
の手続を進めておるところでございます。幸いに、この
引き下げ
によって国内の
各種金利
の
低下
が促進されれば、一段と
景気
の着実な
回復
が
期待
され、ひいてはそれが
国民生活
の安定と
向上
につながってまいるものと確信いたしております。 また、まじめに
経営
を行っておる
企業
が
金融面
で不測の困難に陥ることのないよう、従来からきめ細かい配慮を払ってきたところでございますが、今後ともこの点につきましては十分留意してまいる考えであります。
資源
・
エネルギー価格
の高騰が
世界経済
にもたらした影響はきわめて根深く、
各国
それぞれの
環境
の相違は別としても一様に厳しい対応を迫っております。
各国
は、
国際協調
の
原則
のもとに
世界経済
の
均衡回復
のための
努力
を重ねておりますが、今般、
石油輸出諸国
が一〇%の
石油価格引き上げ
を決定したことなども含め、
世界
の
政治経済
の
方向
はきわめて流動的で前途は必ずしも楽観を許しません。 これまで長く
内外
の諸条件に恵まれて目覚しい
高度成長
を遂げてまいりました
わが国
は、
石油危機
の衝撃を最も激しく受けているほか、
公害
、
立地問題等
による
制約
も次第に厳しさを増してきております。 このような
環境
のもとで、
物価
の安定と
国際収支
の
均衡
を確保しつつ、
わが国経済
の発展を図ってまいりますことは決して容易なわざではありません。しかし、われわれが新たな
決意
と忍耐、英知と
努力
をもってこの
事態
に対応していくならば、必ずやこの難局を
克服
することができるものと確信いたします。
国民各位
の一層の御
理解
と御
協力
をお願い申し上げる次第でございます。(
拍手
) ———
—————
—————
河野謙三
11
○
議長
(
河野謙三
君)
福田国務大臣
。 〔
国務大臣福田赳夫
君
登壇
、
拍手
〕
福田赳夫
12
○
国務大臣
(
福田赳夫
君)
わが国経済
の当面する
課題
とこれに対処する
施策
について
所信
を明らかにいたしたいと存じます。 一昨年秋の
石油危機
によりまして、
わが国経済
が大変な
事態
に陥ったことは、なお記憶に新しいところでございます。特に
物価
は、四十九年二月のピーク時におきまして、前年同月を
卸売物価
で三七%、
消費者物価
で二六%上回るといういわゆる狂乱の
状態
となり、また、
国際収支
は四十八
年度
わずか一年間で
基礎収支
百三十億ドルという巨額の
赤字
を記録し、
経済秩序
は
混乱
し、
日本経済
はまさに
崩壊寸前
の
危機
に直面したのであります。 この
事態
の
克服
は容易なものではありません。いわば、
わが国経済
は全治三カ年の重傷を負ったとも申せましょう。私は、燃え盛る
インフレ
の火を静め、悪化した
国際収支
の傷をいやして、
わが国経済
を健康な姿に戻すには、三年の
調整過程
を必要とすると考えた次第であります。 さて、
調整過程
の第一年目に当たる四十九
年度
を顧みますと、当時の
最大
の
課題
は、何と申しましても
インフレ
を
克服
し、
国際収支
の
改善
を図ることでありました。 このため、
政府
は、総
需要抑制政策
を強力に推進するとともに、
個別物資対策
を初めといたして、各般の
措置
を実施してきたのであります。 その結果、
物価
は次第に安定し、四十九
年度
末には対前年同月比で
卸売物価
は四・九%、
消費者物価
は一四・二%の
上昇
にとどめることができ、
消費者物価
一五%以内という
目標
は達成されたのであります。また、
国際収支
につきましても、四十九
年度
は
基礎収支
で四十四億ドルの
赤字
と、顕著な
改善
を見たのであります。 このように、当面の
混乱
は一応収拾され、
経済再建
の希望をつかみ得ることになりましたが、このことは
国際社会
におきましても高く評価されております。 さて、
調整過程
の第二年目にある
わが国経済
の当面の
課題
は、
物価
の安定が次第に定着していくその中でいかにして
景気
を浮揚させるかということであります。 最近の
経済動向
を見ますと、本年春、
景気
が底入れした後、
生産
は趨勢としては
増加傾向
にありますが、
最終需要
はいま一つ盛り上がりに乏しいという
状態
にございます。すなわち、
個人消費
は伸び悩み、
民間設備投資
も
沈滞
を続け、
輸出
は
世界経済
の
停滞
から
予想外
の不振に陥っております。 一方、
物価
は
卸売物価
、
消費者物価
とも落ちついた
動き
を示しており、八月の
消費者物価
は対前年同月比で一〇%と一けたまで
あと一息
という
水準
に来ております。 このような
物価
の安定には、ことしの
春季賃上げ
がなだらかであったことが大きく寄与しておるのであります。
労使双方
の良識と節度ある態度に対しここに改ためて敬意を表する次第でございます。 こうした
経済情勢
のもとで、
政府
は、二月以降三次にわたって
財政
と
金融
の
両面
から
景気対策
を実施し、機動的な
政策運営
に努めてまいりました。この結果、
生産
の
増加
など好ましい徴候もあらわれてきております。そのような中で、
企業
の
操業度
もまた
上昇
しつつあるのでありますが、なお依然として望ましい
水準
に達し得ない点に問題があるというそういう
状態
であります。マクロ的に見た
経済指標
が
改善
されつつあるにもかかわらず、
経済界全般
に苦悩の色が濃いのはこの辺に理由があるものと思われます一すなわち、
企業収益
が
低下
し、
雇用面
に摩擦が生じているのは、ここにその根源があるものと考えられます。
さき
に申し述べましたとおり、
物価
にはすでに
安定化
の
傾向
が打ち立てられました。この
物価
安定の
傾向
を
背景
とし、
基盤
として
政府
は先般
景気
の着実な
回復
と
雇用
の安定を図るため、積極的な
景気対策
を決定いたしたのであります。 この
景気対策
のねらいは、
停滞
する
最終需要
を盛り上げ、
企業
の
操業度
を高め、
需給
のギャップを縮めることにあります。
最終需要
のうち
最大
のものは言うまでもなく
個人消費
であります。
個人消費
は伸び悩みの
状態
にありますが、
インフレ
がおさまり、
経済
が安定するにつれ、いずれは徐々に正常化するでありましょう。しかし、新しい
資源有限時代
を迎えようとする今日、人為的にこれを刺激し、再び使い捨ての
大量消費社会
に復帰させることは許されません。また、
多額
の
国債発行
のもとでの貯蓄の
重要性
から見ましても、
消費
を過度に刺激することは適当とは存じません。
民間設備投資
においても、
企業
がかなりの
過剰設備
を抱えている
現状
から見まして、当面、これに
景気回復
の主要な
役割り
を求めることはできません。
輸出
につきましても、なお工夫の余地がないとは申せませんが、
世界経済
の
現状
から見て、これまた大きな
期待
をかけることは困難であります。 したがいまして、
企業
の
操度度
を高めるための
最終需要
の喚起は、この際としては、その主力を
財政活動
に待つほかないのであります。すなわち、第四次
対策
として税収の落ち込みなど
財政
非常の際ではありますが、
公共投資
を
中心
とする
予算
及び
財政投融資
の大幅な
追加
を行い、
事業規模
一兆六千億円を上回る
対策
を講ずることといたしたのであります。このほか、
中小企業向け融資
の
措置
、
雇用
安定のための
措置等
を講ずるとともに、
企業金融
の
円滑化
と
金利水準
の
引き下げ
を一層促進することとしております。 さて、私がここで特に強調したいのは、このような
対策
をとり得るに至ったのは、
さき
に申し述べましたとおり、その
背景
として
物価
安定の
傾向
が定着しつつあるからだということであります。
物価
の安定こそは、
経済政策
の基本であり、健全な
社会
の
基盤
であります。
景気対策
のゆえに
物価
の安定を乱しては元も子もないと思うのであります。
景気対策
を実施するに際しましては、
物価
に対しましても、細心の
注意
を払ってまいります。私の期するところ、願うところ、それは
インフレ
のない
繁栄
であります。 今回の
財政
を
中心
とした
景気対策
による
需要創出効果
は三兆円
程度
と見込まれます。これによって
景気
は
回復
のテンポを速め、本
年度
下期には、年率で実質おおよそ六%
程度
の
成長
が
期待
されます。また、
企業
の
操業状況
を示す一つの
指標
である
稼働率指数
は、
年度
末には九〇に近い
水準
に戻り、
景気
には次第に
回復感
が出てくるものと考えておるのであります。 次に、
物価
は引き続き
安定基調
で推移し、
消費者物価
一けたの
目標
につきましてはこれを達成できる見通しであります。
他方
、
国際収支
につきましては、
内外
の
景気
の
停滞
を反映して
輸出
入とも当初の
予想
をかなり下回りますが、
基礎収支
の
赤字幅
は若干の
改善
を見るものと
予想
しております。このように、
わが国経済
の
石油危機
によるショックからの立ち直りは順調に進むものと思われるのであります。 もっとも、あれだけの深手を負うたのでありまするから、全快というまでにはなおしばらくのしんぼうを必要とすると考えます。今日、
調整過程
の道のり半ばに至っておりますが、
企業
の
操業度
が適正な
水準
に復し、
雇用面
での安定が確保されるなど
経済
が正常な姿を取り戻すには、総仕上げの年である五十一
年度
を待たなければならないと考えるのであります。 私は以上のような姿勢で当面の
経済
に対処しようと考えておるのでありますが、それは
わが国経済
をもと来た道へ復元しようとするのではないのであります。 われわれは、一昨年来経験した
経済
の
異常状態
の中で
内外経済環境
の変化をはだ身をもって感じてきたのであります。 その第一は、これまで私が繰り返し申し述べてまいりました
資源
の
制約
ということであります。
資源
が有限であるとの認識が
世界
的に広まるとともに、
資源保有国
をめぐる
世界経済
の
動向
にはなお予断を許さないものがあるのであります。われわれは限られた
資源
を有効に使っていかなければならないのであります。 第二は、
国際経済社会
における
協調
がますます必要となっている今日、その有力な一員である
わが国
といたしましては、国際的に節度ある行動をとる必要があるということであります。 第三は、国内的には
物価
・
雇用
の安定、
国際収支
の
均衡
、
環境保全
などと並立できる
経済
を考えなければならないということであります。
高度成長路線
をひた走ることができた
時代
は終わったのであります。 このような
情勢
を顧みるとき、
わが国
としては、今後国内的にも、国際的にも調和のとれた安定的な
成長
を旨とし、慎重な
経済運営
を行っていくべきだと考えるのであります。
政府
は、
日本経済
を建て直し、新しい安定した軌道に乗せるため、今後の
経済運営
と国土の
総合利用
の指針として、五十一
年度
を初
年度
とする新たな
長期計画
を策定することといたし、鋭意その
作業
を進めておるのであります。
世界経済
は
インフレ
と
不況
の板ばさみに遭って、かつてない困難に苦しんでまいりました。 そうした中で、
先進諸国
におきましては、
インフレ鎮静化
の
動き
が出てまいりました。アメリカにおいては
景気
が
回復過程
に入り、西ドイツ、
フランス等
におきましても
景気浮揚
の
努力
が続けられておるのであります。
わが国
におきましても、
物価
の先行きに明るさが増してきており、いままた、強力な
施策
の展開によって
景気
も
上昇過程
に転じようとしております。
物価
も
景気
も——それがわれわれの
目標
であります。われわれは何としても、
インフレ
のない
繁栄
を実現しなければならないと思うのであります。 いままさに大事なときです。
政府
も全力を尽くします。
国民各位
におかれましても自信をもって当面の
困難克服
に御
協力
ください。 お願いを申し上げます。(
拍手
)
河野謙三
13
○
議長
(
河野謙三
君) ただいまの
演説
に対する質疑は
次会
に譲りたいと存じますが、御
異議
ございませんか。 〔「
異議
なし」と呼ぶ者あり〕
河野謙三
14
○
議長
(
河野謙三
君) 御
異議
ないと認めます。 本日はこれにて散会いたします。 午前零時五十九分散会