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1975-10-18 第76回国会 参議院 本会議 第7号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十年十月十八日(土曜日)    午前零時二十九分開議     ━━━━━━━━━━━━━議事日程 第六号   昭和五十年十月十八日    午前零時二十分開議  第一 国務大臣演説に関する件     ━━━━━━━━━━━━━ ○本日の会議に付した案件  一、新議員の紹介  一、請暇の件  以下 議事日程のとおり      ——————————
  2. 河野謙三

    議長河野謙三君) これより会議を開きます。この際、新たに議席に着かれました議員を御紹介いたします。  議席第五十二番、地方選出議員、鹿児島県選出佐多宗二君。    〔佐多宗二君起立、拍手〕     —————————————
  3. 河野謙三

    議長河野謙三君) 議長は、本院規則第三十条により、佐多宗二君を法務委員に指名いたします。      ——————————
  4. 河野謙三

    議長河野謙三君) この際、お諮りいたします。  小笠原貞子君から海外旅行のため十一日間請暇の申し出がございました。  これを許可することに御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  5. 河野謙三

    議長河野謙三君) 御異議ないと認めます。よって、許可することに決しました。      ——————————
  6. 河野謙三

    議長河野謙三君) 内閣総理大臣から、青森市における仮谷建設大臣発言について、建設大臣から、青森市における発言について、それぞれ発言を求められております。これより順次発言を許します。三木内閣総理大臣。    〔国務大臣三木武夫登壇拍手
  7. 三木武夫

    国務大臣三木武夫君) 仮谷建設大臣の去る十月十二日、青森市における発言は軽率であり、まことに遺憾であります。私も仮谷建設大臣に対し厳重に注意をいたしましたが、仮谷建設大臣自身も深く反省し、二度と再びかかる過ちを犯さないことを誓約しております。  三木内閣は今後一層言動を戒め、国会尊重の精神を発揮いたす決意であります。(拍手
  8. 河野謙三

  9. 仮谷忠男

    国務大臣仮谷忠男君) 私の十月十二日、青森市における発言中、国会答弁に触れた部分は、言葉が足らず、軽率なものであったと、心から反省をいたしております。このため各方面に御迷惑をかけたことを深くおわびをいたします。  今後はこのようなことのないよう、十分心に戒めてまいります。(拍手)      ——————————
  10. 河野謙三

    議長河野謙三君) 日程第一 国務大臣演説に関する件  大蔵大臣から財政に関し、福田国務大臣から経済に関し、それぞれ発言を求められております。これより順次発言を許します。大平大蔵大臣。    〔国務大臣大平正芳登壇拍手
  11. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) ここに、昭和五十年度補正予算を提出するに当たり、その大綱を御説明申し上げ、あわせて、最近の内外経済情勢と当面の財政金融政策につき、所信の一端を申し述べたいと存じます。  まず、一般会計予算につきましては、歳入面におきまして、租税収入等につき当初予算における見込みに比し大幅な減少が見込まれるに至り、それを補てんする必要が生じたのであります。歳出面におきましても景気回復災害復旧のための公共事業等追加国家公務員等給与改善等緊急に措置を要する追加財政需要が生じてまいりました。このような状況に対処するため、政府は次のような措置をとることとし、これに必要な予算補正を行うことといたした次第であります。  歳出におきましては、まず、景気回復及び災害復旧のための公共事業等追加を行うこととしております。すなわち、一般公共事業災害復旧事業公社公団等による公共投資を初め政府関係金融機関による住宅対策公害対策等につき事業規模にして約一兆六千億円の追加を行い、これに中小企業に対する金融措置を加え、約二兆一千億円の施策を実施することとし、これらに必要な歳出予算として四千二百十一億円を追加計上いたしております。  さらに、人事院勧告の実施に伴う国家公務員等給与改善費雇用保険国庫負担金等義務的経費追加等につきましても所要措置を講ずることといたしておりますので、歳出追加総額は八千二百三十億円となっております。  他方、各省庁の一般行政経費等節減七百四十一億円、予備費減額一千億円のほか、所得税法人税及び酒税の収入見込み額減少に伴い地方交付税交付金につき一兆一千五億円の減額を行っておりますので、歳出修正減少額は一兆二千七百四十六億円となります。  以上歳出追加及び減少を加減いたしますと、一般会計歳出総額は当初予算に対し四千五百十六億円減少することになるのであります。  歳入につきましては、景気停滞等に伴う租税及び印紙収入減収見込み額が三兆八千七百九十億円となりますほか、日本専売公社納付金減少一千四百二十八億円も見込まれますので、その他の収入の増百六十五億円、昭和四十九年度剰余金受け入れ七百三十七億円及び歳出予算減少額四千五百十六億円を控除いたしましても、歳入不足はなお三兆四千八百億円に上る見込みであります。この歳入不足につきましては、政府としては、公債発行によって対処せざるを得ないと考えております。そして、このうち一兆一千九百億円は財政法第四条第一項但書の規定に基づく公債追加発行によることとし、残余の二兆二千九百億円については、別途提出いたしております昭和五十年度公債発行特例に関する法律(案)に基づく公債発行を予定いたしております。  なお、公債発行に当たりましては、従来どおり市中消化原則を堅持し、資金需給動向等を慎重に見守りつつ、その円滑な消化を図ってまいる所存であります。  以上によりまして、昭和五十年度一般会計補正予算総額は、当初予算額に対し、歳入歳出とも四千五百十六億円減少して、二十兆八千三百七十二億円となるのであります。  地方財政につきまして、次のような措置を講ずることにいたしております。  まず、交付税及び譲与税配付金特別会計におきまして国税三税の減額に伴い一般会計からの受け入れが一兆一千五億円減少するのでありますが、地方団体に交付する地方交付税交付金総額は当初予算どおりの額を確保することといたしております。さらに、地方公務員給与改定等財源に資するため同交付金に四百十五億円を追加することといたしております。  これに必要な財源につきましては、一兆一千二百億円を資金運用部資金から借り入れますとともに、さらに地方財政状況を考慮し、本年度限りの特別の措置として、一般会計に計上した臨時地方特例交付金二百二十億円を受け入れることといたしております。  さらに、地方税減収及び公共事業等追加に伴う地方負担増加に対処するため、総額約一兆二千七百億円の地方債追加し、そのうち資金運用部資金により三千七百億円を引き受けることといたしております。  また、特別会計予算及び政府関係機関予算につきましても、一般会計補正等に関連して所要補正を行うことといたしております。  なお、財政投融資計画につきましては、総合的な景気対策の推進及び地方財政対策等のために、すでに弾力条項を発動して機動的に対処してまいりましたが、今回の予算補正において、日本国有鉄道等に対し総額一千四百九十九億円の追加を行うことといたしております。その結果、昭和五十年度財政投融資追加総額は、弾力条項発動分も含め一兆三千九百五十七億円になります。  以上、昭和五十年度補正予算大綱を御説明申し上げました。何とぞ、関係法律案とともに、御審議の上、速やかに御賛同くださるようお願い申し上げます。  この機会に、最近の内外経済情勢と当面の財政金融政策につきまして一言申し述べたいと存じます。  石油危機契機として発生いたしました一昨年来の世界経済の異常な混乱は、各国の懸命な努力の結果、ようやく収束に向かいつつあります。激しい物価騰貴はおおむね鎮静化傾向をたどり、先進工業国国際収支も逐次改善方向にあるものと考えられます。しかし、このようなインフレ克服努力は、同時に経済活動水準の著しい低下を招き、失業の増加国際貿易の縮小をもたらしました。また、資源や技術を持てる国としからざる国との間の経済的格差はますます拡大する結果となり、世界はきわめて深刻な景気の後退に直面したのであります。  わが国におきましても、一昨年の石油危機契機として、昨年二月には対前年同期比、卸売物価は三七%、消費者物価は二六%という異常な騰貴を見、賃金もまた三〇%を超える上昇を記録するに至りました。  政府としては、まず、何よりもこうした異常な事態を収拾すべく財政金融両面を通ずる厳しい総需要抑制策を実施してまいりました。幸いにして国民各位理解協力を得まして、物価賃金ともに最近とみに落ちついた動きを示しております。また、石油代金の急増により悪化しました国際収支も昨年半ば以降漸次改善方向をたどっております。しかし、かかる一連のインフレ抑制措置は、一方におきまして経済活動沈滞雇用の減退を招き、わが国経済は久しく経験したことのない長期にわたる景気停滞に遭遇することとなりました。  本年の春以降、鉱工業生産上昇に転じ、景気はようやく底入れしたように思われますが、生産活動水準はなお低く、雇用の安定と企業経営健全性回復経済自律的反転力にのみ期待することは困難であります。したがって、政府の強力な措置によって経済活動水準を引き上げることが強く要請されておるわけでございます。特に、現在のように貿易が縮小し、設備投資個人消費支出停滞しておる情勢のもとにおきましては、景気回復起動力として有効需要造出に寄与する財政支出の多大の期待が寄せられておるのであります。  申すまでもなく、財政もまた、このような景気停滞を反映いたしまして中央・地方を問わず大幅な歳入不足に陥り、厳しい財源難に直面しております。しかし、政府はただいま申しましたような内外経済情勢及び現時点での財政に課せられた重大な役割りにかんがみ、大幅な歳出の削減や一般的な増税は行わないこととするのみならず、積極的に本年初以来三次にわたる景気対策を進め、さらに先般、財政金融両面にわたる総合的な景気対策を推進することとしたのであります。  他方政府特例法に基づく公債発行せざるを得ない状況にかんがみ、一般行政経費につきまして、従来になく厳しい節減に努めております。また、歳入面におきましても、金融機関等貸し倒れ引当金の繰入限度額引き下げ歳入の確保にも努力を払っております。今国会に改めて提出いたしました酒、たばこ、郵便の歳入三法案につきましても、厳しい財源事情にかんがみ速やかに成立するよう強く期待いたしておる次第であります。  今回の補正予算により、昭和五十年度公債発行額総額五兆四千八百億円となり、公債依存度は二六・三%に達します。従来の高度成長期におけるような多額の税の自然増収期待し得ないこと等を考慮いたしますと、今後の財政運営はきわめて厳しいものになることが予想されます。もし、やすきについて財源の調達を多額公債の増発に依存するようなことになれば著しい公債の累増を招き財政健全性は失われることになります。申すまでもなく、財政健全性を堅持することは国民生活向上経済安定的成長基盤でありますから、特例公債に依存しない堅実な財政にできるだけ早く復帰するようあらゆる努力を傾注してまいる所存であります。  このため、現在編成作業中の昭和五十一年度予算につきましても、従来以上に厳しい決意をもって歳出効率化合理化に努めてまいらなければならないと考えております。また、税制上の諸問題や公共料金あり方等につきましても全面的な見直しを行ってまいる必要があると考えております。  次に、景気の着実な回復雇用の安定を図るため、量質両面にわたる金融政策機動的弾力的運営が要請されておることは申すまでもありません。とりわけ当面金利政策が重要であります。金利につきましては、本年四月以降三次にわたる公定歩合の引き下げが行われ、市中貸出金利もこれに追随して着実に低下しております。しかしながら、従来の引き下げ預貯金金利据え置きのままで行われたため、このままの状態では市中貸出金利の一層の低下を図ることが困難な状況になっております。預貯金金利につきましては、これまでこれを据え置きとし、極力慎重に配慮してきたところでございますが、幸い物価情勢もかなり落ちつきを見せており、他方不況克服が強く要請されておりますので、金利全般にわたってその水準引き下げを促進することが適当でもあり、緊要な課題でもあると考えております。  このような観点から、このたび預貯金金利引き下げを図ることとし、所要の手続を進めておるところでございます。幸いに、この引き下げによって国内の各種金利低下が促進されれば、一段と景気の着実な回復期待され、ひいてはそれが国民生活の安定と向上につながってまいるものと確信いたしております。  また、まじめに経営を行っておる企業金融面で不測の困難に陥ることのないよう、従来からきめ細かい配慮を払ってきたところでございますが、今後ともこの点につきましては十分留意してまいる考えであります。  資源エネルギー価格の高騰が世界経済にもたらした影響はきわめて根深く、各国それぞれの環境の相違は別としても一様に厳しい対応を迫っております。各国は、国際協調原則のもとに世界経済均衡回復のための努力を重ねておりますが、今般、石油輸出諸国が一〇%の石油価格引き上げを決定したことなども含め、世界政治経済方向はきわめて流動的で前途は必ずしも楽観を許しません。  これまで長く内外の諸条件に恵まれて目覚しい高度成長を遂げてまいりましたわが国は、石油危機の衝撃を最も激しく受けているほか、公害立地問題等による制約も次第に厳しさを増してきております。  このような環境のもとで、物価の安定と国際収支均衡を確保しつつ、わが国経済の発展を図ってまいりますことは決して容易なわざではありません。しかし、われわれが新たな決意と忍耐、英知と努力をもってこの事態に対応していくならば、必ずやこの難局を克服することができるものと確信いたします。  国民各位の一層の御理解と御協力をお願い申し上げる次第でございます。(拍手)     —————————————
  12. 河野謙三

  13. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) わが国経済の当面する課題とこれに対処する施策について所信を明らかにいたしたいと存じます。  一昨年秋の石油危機によりまして、わが国経済が大変な事態に陥ったことは、なお記憶に新しいところでございます。特に物価は、四十九年二月のピーク時におきまして、前年同月を卸売物価で三七%、消費者物価で二六%上回るといういわゆる狂乱の状態となり、また、国際収支は四十八年度わずか一年間で基礎収支百三十億ドルという巨額の赤字を記録し、経済秩序混乱し、日本経済はまさに崩壊寸前危機に直面したのであります。  この事態克服は容易なものではありません。いわば、わが国経済は全治三カ年の重傷を負ったとも申せましょう。私は、燃え盛るインフレの火を静め、悪化した国際収支の傷をいやして、わが国経済を健康な姿に戻すには、三年の調整過程を必要とすると考えた次第であります。  さて、調整過程の第一年目に当たる四十九年度を顧みますと、当時の最大課題は、何と申しましてもインフレ克服し、国際収支改善を図ることでありました。  このため、政府は、総需要抑制政策を強力に推進するとともに、個別物資対策を初めといたして、各般の措置を実施してきたのであります。  その結果、物価は次第に安定し、四十九年度末には対前年同月比で卸売物価は四・九%、消費者物価は一四・二%の上昇にとどめることができ、消費者物価一五%以内という目標は達成されたのであります。また、国際収支につきましても、四十九年度基礎収支で四十四億ドルの赤字と、顕著な改善を見たのであります。  このように、当面の混乱は一応収拾され、経済再建の希望をつかみ得ることになりましたが、このことは国際社会におきましても高く評価されております。  さて、調整過程の第二年目にあるわが国経済の当面の課題は、物価の安定が次第に定着していくその中でいかにして景気を浮揚させるかということであります。  最近の経済動向を見ますと、本年春、景気が底入れした後、生産は趨勢としては増加傾向にありますが、最終需要はいま一つ盛り上がりに乏しいという状態にございます。すなわち、個人消費は伸び悩み、民間設備投資沈滞を続け、輸出世界経済停滞から予想外の不振に陥っております。  一方、物価卸売物価消費者物価とも落ちついた動きを示しており、八月の消費者物価は対前年同月比で一〇%と一けたまであと一息という水準に来ております。  このような物価の安定には、ことしの春季賃上げがなだらかであったことが大きく寄与しておるのであります。労使双方の良識と節度ある態度に対しここに改ためて敬意を表する次第でございます。  こうした経済情勢のもとで、政府は、二月以降三次にわたって財政金融両面から景気対策を実施し、機動的な政策運営に努めてまいりました。この結果、生産増加など好ましい徴候もあらわれてきております。そのような中で、企業操業度もまた上昇しつつあるのでありますが、なお依然として望ましい水準に達し得ない点に問題があるというそういう状態であります。マクロ的に見た経済指標改善されつつあるにもかかわらず、経済界全般に苦悩の色が濃いのはこの辺に理由があるものと思われます一すなわち、企業収益低下し、雇用面に摩擦が生じているのは、ここにその根源があるものと考えられます。  さきに申し述べましたとおり、物価にはすでに安定化傾向が打ち立てられました。この物価安定の傾向背景とし、基盤として政府は先般景気の着実な回復雇用の安定を図るため、積極的な景気対策を決定いたしたのであります。  この景気対策のねらいは、停滞する最終需要を盛り上げ、企業操業度を高め、需給のギャップを縮めることにあります。  最終需要のうち最大のものは言うまでもなく個人消費であります。個人消費は伸び悩みの状態にありますが、インフレがおさまり、経済が安定するにつれ、いずれは徐々に正常化するでありましょう。しかし、新しい資源有限時代を迎えようとする今日、人為的にこれを刺激し、再び使い捨ての大量消費社会に復帰させることは許されません。また、多額国債発行のもとでの貯蓄の重要性から見ましても、消費を過度に刺激することは適当とは存じません。  民間設備投資においても、企業がかなりの過剰設備を抱えている現状から見まして、当面、これに景気回復の主要な役割りを求めることはできません。輸出につきましても、なお工夫の余地がないとは申せませんが、世界経済現状から見て、これまた大きな期待をかけることは困難であります。  したがいまして、企業操度度を高めるための最終需要の喚起は、この際としては、その主力を財政活動に待つほかないのであります。すなわち、第四次対策として税収の落ち込みなど財政非常の際ではありますが、公共投資中心とする予算及び財政投融資の大幅な追加を行い、事業規模一兆六千億円を上回る対策を講ずることといたしたのであります。このほか、中小企業向け融資措置雇用安定のための措置等を講ずるとともに、企業金融円滑化金利水準引き下げを一層促進することとしております。  さて、私がここで特に強調したいのは、このような対策をとり得るに至ったのは、さきに申し述べましたとおり、その背景として物価安定の傾向が定着しつつあるからだということであります。物価の安定こそは、経済政策の基本であり、健全な社会基盤であります。景気対策のゆえに物価の安定を乱しては元も子もないと思うのであります。  景気対策を実施するに際しましては、物価に対しましても、細心の注意を払ってまいります。私の期するところ、願うところ、それはインフレのない繁栄であります。  今回の財政中心とした景気対策による需要創出効果は三兆円程度と見込まれます。これによって景気回復のテンポを速め、本年度下期には、年率で実質おおよそ六%程度成長期待されます。また、企業操業状況を示す一つの指標である稼働率指数は、年度末には九〇に近い水準に戻り、景気には次第に回復感が出てくるものと考えておるのであります。  次に、物価は引き続き安定基調で推移し、消費者物価一けたの目標につきましてはこれを達成できる見通しであります。  他方国際収支につきましては、内外景気停滞を反映して輸出入とも当初の予想をかなり下回りますが、基礎収支赤字幅は若干の改善を見るものと予想しております。このように、わが国経済石油危機によるショックからの立ち直りは順調に進むものと思われるのであります。  もっとも、あれだけの深手を負うたのでありまするから、全快というまでにはなおしばらくのしんぼうを必要とすると考えます。今日、調整過程の道のり半ばに至っておりますが、企業操業度が適正な水準に復し、雇用面での安定が確保されるなど経済が正常な姿を取り戻すには、総仕上げの年である五十一年度を待たなければならないと考えるのであります。  私は以上のような姿勢で当面の経済に対処しようと考えておるのでありますが、それはわが国経済をもと来た道へ復元しようとするのではないのであります。  われわれは、一昨年来経験した経済異常状態の中で内外経済環境の変化をはだ身をもって感じてきたのであります。  その第一は、これまで私が繰り返し申し述べてまいりました資源制約ということであります。資源が有限であるとの認識が世界的に広まるとともに、資源保有国をめぐる世界経済動向にはなお予断を許さないものがあるのであります。われわれは限られた資源を有効に使っていかなければならないのであります。  第二は、国際経済社会における協調がますます必要となっている今日、その有力な一員であるわが国といたしましては、国際的に節度ある行動をとる必要があるということであります。  第三は、国内的には物価雇用の安定、国際収支均衡環境保全などと並立できる経済を考えなければならないということであります。  高度成長路線をひた走ることができた時代は終わったのであります。  このような情勢を顧みるとき、わが国としては、今後国内的にも、国際的にも調和のとれた安定的な成長を旨とし、慎重な経済運営を行っていくべきだと考えるのであります。  政府は、日本経済を建て直し、新しい安定した軌道に乗せるため、今後の経済運営と国土の総合利用の指針として、五十一年度を初年度とする新たな長期計画を策定することといたし、鋭意その作業を進めておるのであります。  世界経済インフレ不況の板ばさみに遭って、かつてない困難に苦しんでまいりました。  そうした中で、先進諸国におきましては、インフレ鎮静化動きが出てまいりました。アメリカにおいては景気回復過程に入り、西ドイツ、フランス等におきましても景気浮揚努力が続けられておるのであります。  わが国におきましても、物価の先行きに明るさが増してきており、いままた、強力な施策の展開によって景気上昇過程に転じようとしております。  物価景気も——それがわれわれの目標であります。われわれは何としても、インフレのない繁栄を実現しなければならないと思うのであります。  いままさに大事なときです。政府も全力を尽くします。  国民各位におかれましても自信をもって当面の困難克服に御協力ください。  お願いを申し上げます。(拍手
  14. 河野謙三

    議長河野謙三君) ただいまの演説に対する質疑は次会に譲りたいと存じますが、御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  15. 河野謙三

    議長河野謙三君) 御異議ないと認めます。  本日はこれにて散会いたします。    午前零時五十九分散会