○
戸田菊雄君 私は、
日本社会党を代表いたしまして、経済問題を中心に、総理並びに
関係閣僚に質問をいたします。
まず第一に、
経済運営の失敗の
責任追及と
不況対策についてお伺いをいたします。
かつて
資本主義には、古くから貧困、恐慌、そして失業の三つの病気が存在すると言われました。
高度経済成長によってこの三つの病気はなくなったとの説は政府や一部の評論家、学者にもございましたが、今日の
わが国の実情は、
資本主義では治りがたい古くからの三病は厳として存在し、その上に
高度成長の過程を通じて慢性的な
インフレーションと、表面的には所得はふえても階層間の不公平の拡大、さらに
環境破壊や資源の不足といった新しい三病が出現をいたしておるのであります。総理、あなたは
資本主義経済運営の基本は守るとよく言われますが、今日のこの混乱と矛盾に満ちた
わが国の経済の中で何を守り、何を改めようと考えられておるのか、
日本経済再建の手順と方法を国民に明確にお示し願いたいと思います。
大蔵省の
法人企業統計によりますると、昭和四十七年三月末決算と昭和四十九年三月末決算の二年間の比較で、全
産業法人の
自己資本は二十六兆一千三百四十一億円から三十七兆一千三百十四億円、十兆九千九百七十三億円の増加、そのうち四一%に当たる四兆五千二百十一億円は
資本金十億円以上の大企業であります。
自己資本のうち実質的には利潤でありながらほとんど
非課税になっている
資本剰余金は、一兆二千三百八十三億円から二兆四千六百九億円と一兆二千二百二十六億円の増加、そのうち八一%に当たる九千九百四十九億円は
資本金十億円以上の法人で占められております。また、
非課税になっている
引当金を
固定負債に計上された
負債性引当金だけでも、四兆三千七百十三億円から六兆七千八百五十二億円と二兆四千百三十九億円増加し、そのうち六〇%の一兆四千五百三億円、これも同様であります。
資本金十億円以上の大企業はたった二年間で五兆九千七百十五億円の
自己資本を、
負債性引当金を含めまして、増加いたしておるのであります。そのうち二兆四千四百五十二億円はほとんど
非課税であります。
資本金十億円以上の
特別償却費七千六百五億円、
剰余金を合わせますと三兆二千五十七億円となります。これに仮に三〇%の税率で課税をいたしますと九千六百十七億円となります。また、
資本金十億円以上の
自己資本二十二兆四千五百八十四億円に二%の税率で課税をいたしますると四千四百九十一億円の税収を得ることができるのであります。さらに、土地の
譲渡収入は約二十四兆円と見積もられております。これに
純資産税を大企業同様に課税すれば数千億の財源を得ることは明らかであります。
ほかに
租税特別措置の廃止あるいは縮小と累進税の強化、あるいは大企業や大資本の横暴を抑えて
財源捻出を図るならば、今日の
歳入欠陥を埋め尽くすことは当然できるはずであります。こういった
根本的検討と再
分配機能の
復活強化は欠くことのできない
経済再建の
前提条件だと思いますが、総理の見解を具体的にお伺いをいたしたいと思うのであります。大企業や大資本の横暴を抑えると同時に、
税財政制度を通じて所得再分配の
機能復活は、欠かすことのできない具体的にして国民に示される内容ではないかと思うのでありますが、総理の見解いかがでしょう。
次に、五十年度の
日本経済は非常な低成長に終わることは、政府が先ごろ発表いたしました
修正経済見通しで明らかであります。下期の景気を六%に引き上げたと仮定いたしましても、当初
政府見通しの四・三%の半分程度にしかなりません。政府は
経済見通しを改定すれば済むかもしれませんが、しかし、政府の
経済運営の失敗によって毎月一千件もの倒産をさせられた
中小零細企業、倒産しないまでにも発注の激減と
製品価格の買いたたきによる経営不振による多くの
中小零細企業、また、ごまかしの
政府統計でも百万人
——実質はもっとはるかに多いと思うのでありまするが——近い
失業者、さらに、失業しないまでにも、不況の影響による
レイオフ、
賃金不払い、
残業カット等による
労働者の非常なる生活苦などを考えるとき、
成長率は半分に落ちましたと涼しい顔をされたのでは国民はたまったものではありません。
三木総理はこの
経済見通しの誤りと
経済運用の失敗の責任をどうおとりになりますか、御答弁を願います。
三木総理は、昨年の十二月十四日の最初の
所信表明演説で、「国民の声は、
インフレの克服と
不況防止による経済の安定と、広く社会的不公正の是正を求めている。そこに私の実行力が求められていると受けとめております。私はこれにこたえる決意である」と述べておるのであります。しかし、それが程度を超せば不況を深刻にし、大きな社会的問題を引き起こす。現に倒産も少なくない。私は、総
需要抑制の枠組みは崩さないが、その枠の中で実情に応じ、きめ細かい
現実政策をとる考えだ」と述べたのであります。
また、前国会の一月二十四日の
施政方針演説では、「景気は停滞の色を濃くしつつあり、西独や米国で
インフレ対策から
不況対策に重点を移行し始めたが、
わが国では引き続き
抑制政策を続けるが、その中で健全な経営を行う
中小企業に対して不当な
しわ寄せが生ずることのないようきめ細かい対策を講ずる」とも公約をいたしました。さらにつけ加えて、「
三木内閣は正直な政治をやる」とも言明されたのであります。
三木内閣はこのような公約を実行なさいましたでしょうか。五十年度の
日本経済が極端の不況に落ち込んだのは、
三木内閣の
政策転換の時期と方法、すなわち、対策を間違えた結果であって、
政策不況、
政治不況の結果であり、
三木総理の責任は重大であると思います。
政策転換に関連して言えば、わが党、公明、民社三党は、三月四日、五十年度
予算通過の際、
編成替えの動議を提出し、
基本方針の第二項で、総
需要抑制の
質的転換と
中小企業の
不況打開、雇用の安定を掲げ、
政府予算の
組み替えを要求したのでありますが、
三木内閣は、
政府案が最善という独善的な態度に終始し、この建設的なわれわれの主張を取り入れませんでした。
さらに四月二日、
参議院予算委員会でも、わが党を初め、公明、民社、第二院クラブの四
会派共同の
修正案を提出いたし、その後提出された
附帯決議でも、「当面の景気の状況に対処するため、再び物価の上昇を招くことのないよう警戒しつつ、総
需要抑制策の一部を手直しすること」を第一項に要求いたしております。二項で
中小零細企業の対策、三項で
雇用情勢の悪化の防止など、いわゆるそれまでの政府の総
需要抑制策の転換の必要を説いたのでありまするけれども、これも
自民党の反対で押しつぶされました。
このように、わが党は、三月、四月の時点で
政策転換を主張したのにもかかわらず、政府はこれは無視し続け、今日に至ったわけであります。わが党提案からすでに半年以上もおくれ、その間、いわれなき理由で多くの国民が不況の直撃を受け
政治被害をこうむっているのであります。まさに、
三木内閣の失政と独善による
政治不況と言わなければなりません。国会の建設的なわが党の提言には振り向きもしなかった
三木内閣が
政治休戦を呼びかけたり、
不況対策では与野党の別はないので野党は協力してくれるだろうといった安易な総理の言明は、許されるものではありません。自分に都合のよいときは国会や野党を利用し、自分の責任を回避なさろうとのおつもりですか。総理の提唱されました
政治休戦の本意は何ですか。さらに、それによって何をやろうというのですか。また、
国会審議の結果、わが党が今日の深刻な不況を事前に防止するために行った
組み替え動議や
予算修正を否認させた総理・総裁の責任をどう反省なさいましたか。総理が真に
政治休戦を熱望し、
不況対策には
与野党協力でと言うなら、間もなく提出される五十年度
補正予算の
国会修正に総理は
無条件で応じるとここで答弁をすべきであります。
わが党が提唱している
雇用保障法に総理は賛成されるべきだと考えますが、どうでありましょうか。過去の反省も将来への決断もないままに、自分に都合のよい言い分だけをその都度振り回すのは、責任ある
政治家のなすべきことではないと存じますが、いかがでしょうか。御答弁を求めるものであります。
次に、
不況対策の中身について質問をいたします。
景気政策の転換時期を誤った政府は、さらにその対策についても大きな間違いを犯してまいりました。過去三回の
不況対策は、
住宅建設融資以外はおおむね作文に終わっておるのであります。四回にわたる公定歩合の引き下げもわずか二%と小出しにすぎず、
景気浮揚の効果を上げていないことは、今日の深刻な状況が如実に証明していると思います。これまでの
不況対策の中身は、
思いつき的対策の吹き寄せにすぎなかったことが生産、消費、在庫の悪循環を
らせん状に拡大したのであります。そして、今日の
デフレギャップは二十兆円を超えておるのであります。企業の
操業率は七五%程度に落ちておるのであります。政府は、第四次
不況対策で、
自民党と財界を納得させるために、
公共事業の追加に伴う
地方負担分や年末金融として恒例化しているのであります。
不況対策とは異質の中小三
金融機関への五千億円の追加まで計算に加えるなどして、
事業費ベースで二兆円の対策だと宣伝をいたしております。したがって、
水増し分を差し引くと本当に使える中身はきわめて小さいのじゃないでしょうか。政府が宣伝するほどの
景気回復力があるとは思われません。政府は、第四次
不況対策がどの程度の
デフレギャップの解消となって、生産を何%引き上げ、
完全失業者をどこまで引き上げ得ると判断しておられるか、詳細に御答弁を願いたいと思います。
また、多数の
繊維産業の
女子労働者の
レイオフや
失業者があり、さらにはパートタイマーの名による低賃金、無保障の五十万人に及ぶ主婦の失業があることは御存じでしょう。政府はこれらを故意に軽視しているのではないかと思うが、御答弁を願いたいと思います。
ことしは
国際婦人年であります。七五年の初頭における
三木総理の
所信表明においても、婦人の
地位向上のために全力を尽くす旨の
決意表明がありました。
衆参両院の決議でも、
男女差別撤廃に努力する旨、宣言がありました。去る六月開催のジュネーブでのILO第六十回総会並びにメキシコにおける国連の
婦人年世界会議においても、雇用における女性に対する
差別待遇を撤廃することの決議を行いました。そうして
日本政府はこれらの決議に賛成をいたしましたが、雇用における
男女差別と
社会関係における
不公平撤廃のための
行動計画をどう立てて実施するつもりか、
具体的政策を明示願いたいと思います。
こうした科学的なデータに基づいた
不況対策を
国民大衆に明らかにすることを強く要求いたしておるのであります。これまでの国会での
経済論議は水かけ論に終わることが多かったと思います。これは、多くの場合、政府の
経済運営の中身を計量化して明らかにしないところにその理由があったと思います。原因がありました。したがって、これから始まる本院での
不況克服国会の論議をより建設的で実りあるものとするためには、ぜひとも第四次
不況対策のねらいと改善される
経済指標を明らかにしていただきたいと思います。
次に、政府が今回の
不況対策として取り上げる
公共事業は、本四架橋を初め
全国高速自動車道網や
新幹線網の建設に主力が置かれておるのであります。大
規模建設プロジェクトで、これは
三木総理や福田副総理が痛烈に批判し、お蔵にしまい込んだ前
国中首相の
列島改造論のお蔵出しと国民の目には映るのでありますが、そう理解してよろしいでございましょうか。
三木内閣の
不況対策は、アンチ田中で
政権奪取のために批判や非難はしても、
列島改造の焼き直しで、
公共事業の拡大は結局
大手建設会社や鉄鋼、
セメント会社等の
利益保証以外の何物でもございません。わが党は、こうした
景気回復策には反対であります。同じ
公共事業でも、上下水道の
環境整備、学校、病院、保育園、
農業基盤整備等を行うべきを提言するものであります。
国民大衆の身近で
日常生活の
福祉向上に直結する事業を選ぶとともに、都市といわず農村といわず、全国に蔓延した不況の被害から
国民経済を救うためには、全国どこでも着工できる
公共事業を
不況対策の中心に据えるべきであり、このことが、回復が鈍いと言われる
地方経済のためにも絶対必要だと考えますが、政府の見解はいかがでしょうか、御答弁を願います。
従来の不況では
景気落ち込みの
下支え要因であった
個人消費が、今七五春闘への政府の
不当介入で低賃金に抑えつけられました。結果は、
不況促進に拍車をかけたのであります。政府の
不況対策は
公共投資拡大が重点で、この
個人消費を拡大することによる
不況対策が全然考慮されておりません。たとえば、減税による消費の拡大、
生活保護世帯や
母子家庭の
手当引き上げによる
消費拡大も考慮してもよいのではないかと思うのでありますが、総理の見解はいかがでありましょうか、御答弁を願いたいと思います。
また、不況に伴って、
新規学卒者の就職に対し取りざたされているように、企業が
指定校制度を復活したり、東大なら
無条件に面接に応ずるといった状況にあります。また、
女子学生は
就職戦線から締め出されているとの報道がしきりであります。
三木総理は、まさに
人材独禁法の構想を打ち上げ、
永井文部大臣は
学歴偏重や学校差、
東大偏重を教育面で改めると公約されました。人生におけるほとんど唯一の重大な
選択期であるそうした
経済界での
差別扱いの体質を改善させなくては、過熱化する
進学競争も是正できないものと考えるが、
人材独禁の具体化をどう進めるのか、総理の見解をお伺いいたします。
第三に、
弱者層に
しわ寄せした
物価鎮静のからくりとその責任についてお伺いをいたします。
三木内閣は、最近物価が
鎮静化の傾向にあり、五十年度末一けたの
政策目標がことしじゅうには実現すると宣伝し、これで
インフレが克服できるかのごとき言辞を弄しております。政府は石油の
値上げや
公共料金の
値上げなど、前途いかなる事態が発生しようとも、
消費者物価一けた実現の自信がおありでしょうか。
しかし
三木総理、あなたが国民に公約したことは、五十年度
経済運営の
基本的態度に明らかなごとく、
雇用者数一・一%増、
雇用者所得一八・四%増、
法人所得一〇・八%の増、
鉱工業生産で五・四%の増、そして輸出は一五・五%と、いずれも対前年度比増加のトータルで名目一五・九%、実体で四・三%の
日本経済の拡大のもとで、なお
消費物価を一けたにするとの約束であったはずであると思います。今日の実態は、
完全失業者が百万人、
春闘平均賃上げが一二%、
法人企業の軒並みの
赤字経営、
鉱工業生産は対前年比で二〇%の減、そして輸出は前年度並みの五百十八億ドル達成がやっという状況ではございませんか。不況と
縮小経済の中で
消費者物価を一けたにし、それを大々的に宣伝しておりますが、それは大切な
前提条件を無視し、故意に隠蔽しておるのでありまして、まさに悪意に満ちた宣伝と虚像と言わなければなりません。国民が
三木内閣に五十年度
経済運営で期待するものは、
方法論抜きの
消費者物価の一けた実現ではなかったはずであります。今日見られる
三木内閣の
不況政策の結果、たとえ
消費者物価だけが一けたになったとしても、それで
国民大衆の福祉が高まったと総理は判断されますか、御見解を求めます。こんな血も涙もない
やり方で
消費者物価が仮に一けたになっても、
勤労大衆の福祉はいささかも高まることはございません。
完全雇用の保障は
近代資本主義国家の義務であり責任であります。働いて賃金を得なくては生きていけない
労働者の職を奪い、また、職を与えないでおいて、物価が一けたに下がったら政治は責任を果たしたことになりますか。極論するならば、食えない不安に脅かされる
人たちにとって、物価が九・九%にいつなるかなどということは問題になりません。総理、国民は物価の安定を希望いたしました。また、現在でも強く希望いたしておることは間違いありません。しかしそれは、国民のだれもが、
自分たちが失業させられ、食うこともできないそんな状況をよしとして物価安定を希望したのではありません。
物価鎮静の
政策選択と実行に誤りがあったことを素直に反省すべきだと思いますが、いかがでしょうか。
さらに、
物価鎮静の過程で
階級間格差が拡大し、結局、経済的、
社会的弱者の皆さんに非常に大きな犠牲が強いられた点を指摘しなければなりません。政府は、
統計的手法とある種の約束を前提にした、言うならば、平均化された数字の動きだけで
物価対策は成功したと判断されておりますが、
総理府統計局の
家計調査の五分
位階級別の消費の実情を調べると、
高額所得者層の
平均消費性向は、五十年一月以降毎月一〇〇を超え、可
処分所得以上に貯金を下げて消費に回しておるのであります。逆に、低
所得者層の
平均消費性向は、五十年一月の九〇・二%から逐月着実に低下して、このごろでは七五%程度になっております。
不況下の雇用不安と生活不安にさらされながら消費を切り詰め貯金をして、わずかでも自分の生活を防衛しなければならないという低
所得階級の
消費行動が大きなてことなって買い控え、節約が行われ、結果的に
消費者物価を
鎮静化させているというのが本当の姿なのであります。
また、同じ
家計調査から五分
位階級別の
購入品目、数量を見てまいりますると、
生鮮魚介では、低
所得層は四十九年七百グラム
消費量を減らしておりますが、高
所得層は二キロ三百グラム消費をふやしております。牛乳や肉類についてもこうした傾向は明らかに読み取れるのであります。
教養娯楽費、雑費等で
所得階級間の
格差拡大は大変大きくなっております。
さらに、ここで強く指摘しておかなければならないのは、
子供たちの
学用品購入でも、
総理府統計局の統計は、低
所得層への
しわ寄せを明らかに示しております。たとえば、ノートブックの購入は、四十六年当時第一分位が五・六冊、第五分位が九・二冊であったものが、四十九年には第五分位は九・二冊でありますが、第一分位は三・九冊に落ちました。これは一例で、鉛筆、文房具に至るまで、
子供たちが勉強に必要な品が切り詰めを強いられているのは低
所得層なのであります。
総理は盛んに節約を説かれますが、あなたの真意ではないかもしれませんが、本来節約すべき階級は節約をせず、節約の余地がない、生活を向上させねばならない階級が逆に節約を強いられております。こうした
人たちが買えない結果が、平均化された
消費者物価は
鎮静化するという状況で、政府はこの平均だけの数字を振り回されるのですが、大多数の低
所得階級の人々は、こうした政府の態度を、生活の実情を知らないものと批判をいたしております。
総理、あなたは就任以来、社会的不公正の是正を看板に掲げておりますが、そのもとで、
産業活動は大企業による
中小企業の犠牲が
労働面でも、ことに未
組織労働者、
中高年齢者、
婦人労働者のより大きい犠牲が、そして消費や家計の面でも高
所得階級より低
所得階級に犠牲の
しわ寄せが行われているというのが現状であります。これは、まさに不公正と不正義の拡大ではありませんか。総理の看板には偽りがあると言っていいのではないでしょうか。総理の明確な御答弁を求めます。
第四に、
赤字国債を中心にしての財政問題についてお伺いをいたします。
五十年度の
わが国財政は、政府の
経済運営の失敗と当初予算の
租税収入見積もりの二割にも相当すると言われる
歳入見込み違いによって中央・
地方ともにかつてない大混乱に陥っております。政府は、この
歳入欠陥を補てんするために
赤字国債発行の窮地に立たされておるわけでありますが、いまだに
財政当局から正確で責任ある説明がなされておりません。
各種報道は、四月初め一兆五千億程度と言われた
財政赤字は、日に従って膨張し、九月三日
主税局長が
税制調査会で行った説明では、年間に三兆六千億となっております。半年間に赤字は二・五倍にもふえております。
大蔵大臣に五十年度の
財政赤字の正確な数字とその補てんのための対策の説明を求めます。
五十年度
予算審議の際、わが党の
宮之原委員は
歳入欠陥の危険を指摘しております。その際、蔵相は、三月期決算の数字が固まりませんと
見通しが困難と答弁しております。しかし、一
野党議員が
歳入欠陥を
見通し得たのに、主税局、国税庁といった膨大な機構を持ち、しかも、税関係の仕事の専門屋がおりながら、三兆六千億円もの
見込み違いをするとはどういうことでありますか。
大平蔵相は、そうした
歳入欠陥を生じた責任をどう感じておられますか。
さらに、
三木内閣は、憲法七十三条の内閣の責務を果たさなかった責任として、総辞職すべきではないかと思います。御所見をお伺いをいたします。
前代未聞の
財政混乱を引き起こしても、その責任の所在は全くあいまいもことしております。そんな
民主主義政治が許されるとお思いですか。
財政運営の失敗の責任はだれがとるのか明らかにしていただきたいと思います。
私は、かつて四十年の
赤字国債の発行の特例法の
反対討論をここの席で行いました。その際私は、憲法九条と表裏の関係にあり、その
財政的歯どめの公債不
発行主義を破ることは、日本の
軍国主義復活、
ファッショ化に道を開くことであり、非常に危険であり、こうした
やり方は必ず
財政民主主義を破壊し、
インフレと通貨の膨張を招き、赤字のツケだけが
国民大衆に押しつけられることを指摘いたしました。それから十年、五十年度は、
赤字国債を三兆円余を出す事態を招いても政府は責任をとらず、さらに、四十一年度以降
建設国債と名は変えても、実質の
赤字国債を出し続け、五十年度当初予算まで
累積総額は十二兆五千億円となり、との借金のために払われる
国債費は一兆四百億円の巨額に達し、完全に国債に抱かれた財政に変質をし、
国民大衆の
負担増加を強いると同時に、国債に抱かれた財政となりました。四十年から四十九年までの
消費者物価の
上昇率は九九・一%となったのであります。四十八年の
狂乱物価を除いても四五・三%の騰貴であります。これに対し三十年から三十九年までの
消費者物価上昇率は三九%の騰貴にとどまっております。
さらに、通貨の増発率は、国債が発行された四十年代は平均一八%、国債不
発行時代の三十年代は
年平均一二%となっており、
インフレ通貨の膨張が
通貨価値をますます落とし、
主婦たちは一万円札の使いでのないことを嘆いておるのであります。最初、国債は苦し紛れの一時しのぎであっても、麻薬は必ず常用せざるを得なくなり、
日本財政と
日本経済をむしばむのであります。われわれは、五十年度に
歳入欠陥が三兆円余の巨額に達するとか、他に穴埋めの妙手はないといった調子の
赤字国債論に賛成するわけにはまいりません。政府は
赤字穴埋めにどれほど真剣に取り組んだでしょうか。歳出の切り詰め
見直しは十分行ったでありましょうか。防衛庁の装備品、艦艇、
飛行機等の未発注分の即時取りやめ、また、
自民党の
選挙基盤の培養のための
圧力団体向けの効果の上がらない
補助金の大整理、さらに大企業や
特定企業のための
産業基盤づくりに使われる予算の
見直し等々はほとんど手がつけられません。
歳入増加の
見直しは十分でありましょうか。東京都の
税制調査会が明らかにしているように、法人、
個人ともに高
所得者が税金は低負担で免れるという全くの逆累進の
税構造を、
財政危機の今日抜本的に改革し、前述したとおり、本当に取るべきところから税を取るという
税制度を確立することが緊要かと思います。
次に、五十年度の
赤字国債発行の問題点についてお伺いをいたします。
まず、五十年度
赤字国債の発行の限度額を
補正予算の総則に全額を明示せず、金額を明示せず、歳入見込み額と歳入額の差額分を発行できるといったことに財務当局は改めたいと考えているようでありまするが、この点についての御見解を承りたいと思います。発行限度額という歯どめを取るようなことがあれば、十年前私が指摘したとおり、
財政民主主義を根源から否定するものになり、絶対許すことはできません。
次に、公債発行の歯どめと政府が主張してきた市中消化の原則は、これまでも引き受け後一年で日銀が買い取っており、間接的な日銀引き受けとの正当な批判がなされてまいりましたが、五十年度下期だけで三兆六千億円もの
赤字国債は、当初の発行引き受けすら市中
金融機関にとっては大変困難が伴うと思うのでありますが、この点の政府の御見解を承りたいと思います。
さらに、国債の市中消化を促進するために、全面的な金融緩和、公定歩合引き下げ、資金運用部保有国債の日銀買い取り等々の手の込んだ事前の資金散布対策が進められておりますし、さらに日銀買い取り期限の短縮が議論されております。こうした人為的な国債引き受けの資金づくりは財政
インフレを招く危険が高いし、そうした行動自体、まさにお上の御用金調達思想に根差すもので、真の市中消化と言えないのではありませんか。御用金調達のあおりを受けて、近く預金の利子が引き下げられると聞くが、昨年あれほど問題になった貯金の目減りは、今日の二けた台の物価上昇のもとで解消したのでありますか。
現在、日本銀行調べでの全国銀行ベースの貸出残高総額は約八十一兆円でございます。このうち、公定歩合引き下げの直接影響を受ける短期貸し付けはほぼ半分であります。したがって、公定歩合仮に一%引き下げで企業はざっと四千億もうかるのであります。企業収益はゼロでも金利引き下げだけでこれだけもうかるのであります。他方預金者は、全国銀行ベースでの預金総額八十四兆円で、そのうち、今回の預金金利引き下げでその対象となる定期預金は四十六兆円でありまするから、仮に一%引き下げられるということになりますると、逆に四千六百億円の損失となるのであります。
国民大衆の零細な貯金目減りに追い打ちをかけ、それをてこに
赤字国債発行と財界の借金負担軽減を行わんとする政府の
やり方に猛省を促すとともに、総理の見解を求めたいのであります。
赤字国債の最後の質問は、三兆を超える五十年国債の償還についてであります。政府は、五十年の
赤字国債を借りかえなしの十年償還とする計画のようであります。前回の四十年の
赤字国債が七年で完済できたことに安易にならおうとしている、これはきわめて危険だと思う。四十年赤字は、一千九百七十億円で、五十年
赤字国債の十分の一の少額であります。しかも、四十年代が予想外の
高度成長で自然増収も多額に発生したことに助けられまして償還が可能であったと思います。今後もし、蔵相の言う自然減収の財政状況に置かれますと、償還財源を生み出すことは不可能だと思います。さらに、単純に計算しても、四十年
赤字国債が七年かかって償還した二千億円を、今後は毎年度償還しなくてはなりません。また、国債残高の増高に伴って、
国債費も財政を大きく圧迫いたします。こうした予想される条件を考えただけでも、五十年
赤字国債の償還は政府が言うほど簡単ではございません。この際、
インフレ利得者に課税をして、これを引き当てに
赤字国債の償還財源をつくる必要があるのではないかと考えます。政府説明では、
赤字国債は
建設国債と異なり、裏づけとなる資産が残るわけでもなく、したがって、将来の税収入がふえる保証は全くゼロであります。そうだとすれば、政府の従来の国債理論からいっても、特定の償還財源構想を立てるべきで、単純に将来の税金で償還するとは言えないはずであります。間もなく提出される
補正予算の公債償還計画表に
赤字国債償還の具体的財源措置を明示すべきであると思いますが、総理の御見解はいかがでございますか。もし明示されない場合は、われわれは審議を差し控えねばならないことを警告しておくものであります。
財政の質問の最後にただしたいことは、
財政当局は財政難を理由に、四十八年度にあなた方が国民に公約した「福祉型財政への転換」を修正して福祉予算に歯どめをかけ、財源節約のために一部負担の制度の導入強化を図るほか、拠出制の老齢年金の支給開始を六十歳から六十五歳への引き上げ、老齢福祉年金を五十一年二万円の公約を一万五千円に値切る等の構想が伝えられております。財政が苦しいときは、財政以上にお年寄りや子供を抱えた母親などの生活は困窮するのであります。このとき救いの手を差し伸べず、
財政当局が財布のひもさえがっちり握っていればというような財政エゴの考えは許されません。財政は人々の
福祉向上の手段であって、財政の黒字それ自体を目的のごとくに考えるべきではありません。さきに指摘したとおり、今日の
日本財政は、歳入歳出とも、福祉後退の前にやらなきゃならない措置が山積しております。社会的公正確保の見地からも、老人、婦人、身障者、年金生活者、
生活保護世帯等への財源切り詰めはしないとの約束を蔵相はすべきでありますが、御答弁を願います。
第五に、食糧自給の確保と今後の農政の進め方についてお伺いをいたします。
三木内閣のもとで、一月に農政審議会の「食糧問題の展望と食糧政策の方向」、六月に農業問題懇談会の「食糧安定供給に関する提言」、そして農林省の「総合食糧政策」が八月、それぞれ発表されました。そうした提言の行われたことの背景は、世界的な食糧不足のつのる中で、
わが国の農業生産力が重工業中心の
高度成長とは反比例して衰え切って、食糧自給率は四十八年度七一%にまで落ちてしまったことの反省と、国民生活及び
国民経済の安全保障の観点から、安定的な食糧確保対策が迫られたからにほかなりません。これまでの
自民党政府の農政は、農民に米をつくらせない農政であり、輸入食糧に頼り、日本農業を破壊して、世界の工場でやっていけるという全く誤った農政を進めてまいりました。そうした失政を改めるためには、ただ答申をつくっても実現されるわけではありません。何よりも大切なことは、米でも麦でも大豆でも、一日当たり農業所得が農外所得と遜色のないところの所得保障の実現が第一であります。次には中核的な農家の土地利用拡大策であります。第三は農業基盤投資の拡大で思い切った整備を実施することであります。
ほとんどの答申が六十年度の食糧自給率を七五%に引き上げることを主張しておりますが、目標達成には相当巨額な資金を投入しなければならないはずでありますが、今後の食糧の安定供給と自給率向上の具体的な構想について総理の御答弁をお願いをいたします。
さらに、
自民党の農工併進のかけ声で農村に進出した企業は、この不況で閉鎖、首切り、パートの打ち切りなどを行わざるを得ない状況に追い込まれ、また、出せかぎの就職口も非常に少なくなっております。農村ではいま現金収入の道を閉ざされ大変な問題になっておるのであり、政府は大規模プロジェクトによる
不況対策を主要なものにしているようでありますが、農村での
不況対策として、土地基盤整備事業や市町村が中心に行える
公共事業を財源対策をあわせ実施すべきだと思いますが、総理の御見解をただしたいのであります。