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1975-09-19 第76回国会 参議院 本会議 第4号
公式Web版
会議録情報
0
昭和
五十年九月十九日(金曜日) 午前十時四分
開議
━━━━━━━━━━━━━
○
議事日程
第三号
昭和
五十年九月十九日 午前十時
開議
第一
国務大臣
の
演説
に関する件(第二日)
━━━━━━━━━━━━━
○本日の
会議
に付した案件
議事日程
のとおり —
——
——
・—
——
——
河野謙三
1
○議長(
河野謙三
君) これより
会議
を開きます。
日程
第一
国務大臣
の
演説
に関する件(第二日) 去る十六日の
国務大臣
の
演説
に対し、これより順次質疑を許します。
戸田菊雄
君。 〔
戸田菊雄
君登壇、拍手〕
戸田菊雄
2
○
戸田菊雄
君 私は、
日本社会党
を代表いたしまして、
経済
問題を
中心
に、
総理
並びに
関係閣僚
に質問をいたします。 まず第一に、
経済運営
の
失敗
の
責任追及
と
不況対策
についてお
伺い
をいたします。 かつて
資本主義
には、古くから貧困、恐慌、そして
失業
の三つの病気が存在すると言われました。
高度経済成長
によってこの三つの病気はなくなったとの説は
政府
や一部の
評論家
、学者にもございましたが、今日の
わが国
の
実情
は、
資本主義
では治りがたい古くからの三病は厳として存在し、その上に
高度成長
の過程を通じて慢性的な
インフレ
ーションと、表面的には
所得
はふえても階層間の不公平の
拡大
、さらに
環境破壊
や資源の不足といった新しい三病が出現をいたしておるのであります。
総理
、あなたは
資本主義経済運営
の基本は守るとよく言われますが、今日のこの
混乱
と矛盾に満ちた
わが国
の
経済
の中で何を守り、何を改めようと考えられておるのか、
日本経済再建
の手順と
方法
を
国民
に明確にお示し願いたいと思います。 大蔵省の
法人企業統計
によりますると、
昭和
四十七年三月末
決算
と
昭和
四十九年三月末
決算
の二年間の比較で、全
産業法人
の
自己資本
は二十六兆一千三百四十一億円から三十七兆一千三百十四億円、十兆九千九百七十三億円の
増加
、そのうち四一%に当たる四兆五千二百十一億円は
資本金
十億円以上の大
企業
であります。
自己資本
のうち実質的には利潤でありながらほとんど
非課税
になっている
資本剰余金
は、一兆二千三百八十三億円から二兆四千六百九億円と一兆二千二百二十六億円の
増加
、そのうち八一%に当たる九千九百四十九億円は
資本金
十億円以上の
法人
で占められております。また、
非課税
になっている
引当金
を
固定負債
に計上された
負債性引当金
だけでも、四兆三千七百十三億円から六兆七千八百五十二億円と二兆四千百三十九億円
増加
し、そのうち六〇%の一兆四千五百三億円、これも同様であります。
資本金
十億円以上の大
企業
はたった二年間で五兆九千七百十五億円の
自己資本
を、
負債性引当金
を含めまして、
増加
いたしておるのであります。そのうち二兆四千四百五十二億円はほとんど
非課税
であります。
資本金
十億円以上の
特別償却費
七千六百五億円、
剰余金
を合わせますと三兆二千五十七億円となります。これに仮に三〇%の税率で課税をいたしますと九千六百十七億円となります。また、
資本金
十億円以上の
自己資本
二十二兆四千五百八十四億円に二%の税率で課税をいたしますると四千四百九十一億円の税収を得ることができるのであります。さらに、土地の
譲渡収入
は約二十四兆円と見積もられております。これに
純資産税
を大
企業
同様に課税すれば数千億の財源を得ることは明らかであります。 ほかに
租税特別措置
の廃止あるいは縮小と累進税の強化、あるいは大
企業
や大
資本
の横暴を抑えて
財源捻出
を図るならば、今日の
歳入欠陥
を埋め尽くすことは当然できるはずであります。こういった
根本的検討
と再
分配機能
の
復活強化
は欠くことのできない
経済再建
の
前提条件
だと思いますが、
総理
の
見解
を具体的にお
伺い
をいたしたいと思うのであります。大
企業
や大
資本
の横暴を抑えると同時に、
税財政制度
を通じて
所得
再分配の
機能復活
は、欠かすことのできない具体的にして
国民
に示される内容ではないかと思うのでありますが、
総理
の
見解
いかがでしょう。 次に、五十年度の
日本経済
は非常な低成長に終わることは、
政府
が先ごろ発表いたしました
修正経済見通し
で明らかであります。下期の
景気
を六%に引き上げたと仮定いたしましても、当初
政府見通し
の四・三%の半分
程度
にしかなりません。
政府
は
経済見通し
を改定すれば済むかもしれませんが、しかし、
政府
の
経済運営
の
失敗
によって毎月一千件もの倒産をさせられた
中小零細企業
、倒産しないまでにも発注の激減と
製品価格
の買いたたきによる経営不振による多くの
中小零細企業
、また、ごまかしの
政府統計
でも百万人
——実質
はもっとはるかに多いと思うのでありまするが——近い
失業者
、さらに、
失業
しないまでにも、
不況
の影響による
レイオフ
、
賃金不払い
、
残業カット等
による
労働者
の非常なる
生活
苦などを考えるとき、
成長率
は半分に落ちましたと涼しい顔をされたのでは
国民
はたまったものではありません。
三木総理
はこの
経済見通し
の誤りと
経済運用
の
失敗
の
責任
をどうおとりになりますか、御
答弁
を願います。
三木総理
は、昨年の十二月十四日の最初の
所信表明演説
で、「
国民
の声は、
インフレ
の克服と
不況防止
による
経済
の安定と、広く社会的不公正の是正を求めている。そこに私の
実行力
が求められていると受けとめております。私はこれにこたえる決意である」と述べておるのであります。しかし、それが
程度
を超せば
不況
を深刻にし、大きな社会的問題を引き起こす。現に倒産も少なくない。私は、総
需要抑制
の枠組みは崩さないが、その枠の中で
実情
に応じ、きめ細かい
現実政策
をとる考えだ」と述べたのであります。 また、前
国会
の一月二十四日の
施政方針演説
では、「
景気
は停滞の色を濃くしつつあり、西独や米国で
インフレ対策
から
不況対策
に重点を移行し始めたが、
わが国
では引き続き
抑制政策
を続けるが、その中で健全な経営を行う
中小企業
に対して不当な
しわ寄せ
が生ずることのないようきめ細かい
対策
を講ずる」とも公約をいたしました。さらにつけ加えて、「
三木内閣
は正直な
政治
をやる」とも言明されたのであります。
三木内閣
はこのような公約を実行なさいましたでしょうか。五十年度の
日本経済
が極端の
不況
に落ち込んだのは、
三木内閣
の
政策転換
の時期と
方法
、すなわち、
対策
を間違えた結果であって、
政策不況
、
政治不況
の結果であり、
三木総理
の
責任
は重大であると思います。
政策転換
に関連して言えば、わが党、公明、民社三党は、三月四日、五十年度
予算通過
の際、
編成替え
の動議を提出し、
基本方針
の第二項で、総
需要抑制
の
質的転換
と
中小企業
の
不況打開
、
雇用
の安定を掲げ、
政府予算
の
組み替え
を要求したのでありますが、
三木内閣
は、
政府案
が最善という独善的な
態度
に終始し、この
建設
的なわれわれの主張を取り入れませんでした。 さらに四月二日、
参議院予算委員会
でも、わが党を初め、公明、民社、第二院クラブの四
会派共同
の
修正案
を提出いたし、その後提出された
附帯決議
でも、「当面の
景気
の
状況
に対処するため、再び
物価
の上昇を招くことのないよう警戒しつつ、総
需要抑制策
の一部を手直しすること」を第一項に要求いたしております。二項で
中小零細企業
の
対策
、三項で
雇用情勢
の悪化の防止など、いわゆるそれまでの
政府
の総
需要抑制策
の
転換
の必要を説いたのでありまするけれども、これも
自民党
の反対で押しつぶされました。 このように、わが党は、三月、四月の時点で
政策転換
を主張したのにもかかわらず、
政府
はこれは無視し続け、今日に至ったわけであります。わが
党提案
からすでに半年以上もおくれ、その間、いわれなき理由で多くの
国民
が
不況
の直撃を受け
政治被害
をこうむっているのであります。まさに、
三木内閣
の失政と独善による
政治不況
と言わなければなりません。
国会
の
建設
的なわが党の提言には振り向きもしなかった
三木内閣
が
政治休戦
を呼びかけたり、
不況対策
では
与野党
の別はないので野党は協力してくれるだろうといった安易な
総理
の言明は、許されるものではありません。
自分
に都合のよいときは
国会
や野党を利用し、
自分
の
責任
を回避なさろうとのおつもりですか。
総理
の提唱されました
政治休戦
の本意は何ですか。さらに、それによって何をやろうというのですか。また、
国会審議
の結果、わが党が今日の深刻な
不況
を事前に防止するために行った
組み替え動議
や
予算修正
を否認させた
総理
・総裁の
責任
をどう反省なさいましたか。
総理
が真に
政治休戦
を熱望し、
不況対策
には
与野党協力
でと言うなら、間もなく提出される五十年度
補正予算
の
国会修正
に
総理
は
無条件
で応じるとここで
答弁
をすべきであります。 わが党が提唱している
雇用保障法
に
総理
は賛成されるべきだと考えますが、どうでありましょうか。過去の反省も将来への決断もないままに、
自分
に都合のよい言い分だけをその都度振り回すのは、
責任
ある
政治家
のなすべきことではないと存じますが、いかがでしょうか。御
答弁
を求めるものであります。 次に、
不況対策
の
中身
について質問をいたします。
景気政策
の
転換
時期を誤った
政府
は、さらにその
対策
についても大きな間違いを犯してまいりました。過去三回の
不況対策
は、
住宅建設融資
以外はおおむね作文に終わっておるのであります。四回にわたる公定歩合の引き下げもわずか二%と小出しにすぎず、
景気浮揚
の効果を上げていないことは、今日の深刻な
状況
が如実に証明していると思います。これまでの
不況対策
の
中身
は、
思いつき的対策
の吹き寄せにすぎなかったことが
生産
、
消費
、在庫の悪循環を
らせん状
に
拡大
したのであります。そして、今日の
デフレギャップ
は二十兆円を超えておるのであります。
企業
の
操業率
は七五%
程度
に落ちておるのであります。
政府
は、第四次
不況対策
で、
自民党
と財界を納得させるために、
公共事業
の追加に伴う
地方負担分
や年末金融として恒例化しているのであります。
不況対策
とは異質の中小三
金融機関
への五千億円の追加まで計算に加えるなどして、
事業費ベース
で二兆円の
対策
だと宣伝をいたしております。したがって、
水増し分
を差し引くと本当に使える
中身
はきわめて小さいのじゃないでしょうか。
政府
が宣伝するほどの
景気回復力
があるとは思われません。
政府
は、第四次
不況対策
がどの
程度
の
デフレギャップ
の解消となって、
生産
を何%引き上げ、
完全失業者
をどこまで引き上げ得ると判断しておられるか、詳細に御
答弁
を願いたいと思います。 また、多数の
繊維産業
の
女子労働者
の
レイオフ
や
失業者
があり、さらにはパートタイマーの名による低
賃金
、無
保障
の五十万人に及ぶ主婦の
失業
があることは御存じでしょう。
政府
はこれらを故意に軽視しているのではないかと思うが、御
答弁
を願いたいと思います。 ことしは
国際婦人年
であります。七五年の初頭における
三木総理
の
所信表明
においても、婦人の
地位向上
のために全力を尽くす旨の
決意表明
がありました。
衆参両院
の
決議
でも、
男女差別撤廃
に努力する旨、宣言がありました。去る六月開催のジュネーブでのILO第六十回総会並びにメキシコにおける国連の
婦人年世界会議
においても、
雇用
における女性に対する
差別待遇
を撤廃することの
決議
を行いました。そうして
日本政府
はこれらの
決議
に賛成をいたしましたが、
雇用
における
男女差別
と
社会関係
における
不公平撤廃
のための
行動計画
をどう立てて実施するつもりか、
具体的政策
を明示願いたいと思います。 こうした科学的なデータに基づいた
不況対策
を
国民大衆
に明らかにすることを強く要求いたしておるのであります。これまでの
国会
での
経済論議
は水かけ論に終わることが多かったと思います。これは、多くの場合、
政府
の
経済運営
の
中身
を計量化して明らかにしないところにその理由があったと思います。原因がありました。したがって、これから始まる本院での
不況克服国会
の論議をより
建設
的で実りあるものとするためには、ぜひとも第四次
不況対策
のねらいと改善される
経済指標
を明らかにしていただきたいと思います。 次に、
政府
が今回の
不況対策
として取り上げる
公共事業
は、本四架橋を初め
全国高速自動車道網
や
新幹線網
の
建設
に主力が置かれておるのであります。大
規模建設プロジェクト
で、これは
三木総理
や福田副
総理
が痛烈に批判し、お蔵にしまい込んだ前
国中首相
の
列島改造論
のお蔵出しと
国民
の目には映るのでありますが、そう理解してよろしいでございましょうか。
三木内閣
の
不況対策
は、アンチ田中で
政権奪取
のために批判や非難はしても、
列島改造
の焼き直しで、
公共事業
の
拡大
は結局
大手建設会社
や鉄鋼、
セメント会社等
の
利益保証
以外の何物でもございません。わが党は、こうした
景気回復策
には反対であります。同じ
公共事業
でも、上下水道の
環境整備
、学校、病院、保育園、
農業基盤整備等
を行うべきを提言するものであります。
国民大衆
の身近で
日常生活
の
福祉向上
に直結する
事業
を選ぶとともに、都市といわず農村といわず、全国に蔓延した
不況
の被害から
国民経済
を救うためには、全国どこでも着工できる
公共事業
を
不況対策
の
中心
に据えるべきであり、このことが、
回復
が鈍いと言われる
地方経済
のためにも絶対必要だと考えますが、
政府
の
見解
はいかがでしょうか、御
答弁
を願います。 従来の
不況
では
景気落ち込み
の
下支え要因
であった
個人消費
が、今七五春闘への
政府
の
不当介入
で低
賃金
に抑えつけられました。結果は、
不況促進
に拍車をかけたのであります。
政府
の
不況対策
は
公共投資拡大
が重点で、この
個人消費
を
拡大
することによる
不況対策
が全然考慮されておりません。たとえば、減税による
消費
の
拡大
、
生活保護世帯
や
母子家庭
の
手当引き上げ
による
消費拡大
も考慮してもよいのではないかと思うのでありますが、
総理
の
見解
はいかがでありましょうか、御
答弁
を願いたいと思います。 また、
不況
に伴って、
新規学卒者
の就職に対し取りざたされているように、
企業
が
指定校制度
を復活したり、東大なら
無条件
に面接に応ずるといった
状況
にあります。また、
女子学生
は
就職戦線
から締め出されているとの報道がしきりであります。
三木総理
は、まさに
人材独禁法
の構想を打ち上げ、
永井文部大臣
は
学歴偏重
や
学校差
、
東大偏重
を
教育面
で改めると公約されました。人生におけるほとんど唯一の重大な
選択期
であるそうした
経済界
での
差別扱い
の体質を改善させなくては、過熱化する
進学競争
も是正できないものと考えるが、
人材独禁
の
具体化
をどう進めるのか、
総理
の
見解
をお
伺い
いたします。 第三に、
弱者層
に
しわ寄せ
した
物価鎮静
のからくりとその
責任
についてお
伺い
をいたします。
三木内閣
は、最近
物価
が
鎮静化
の傾向にあり、五十年度末一けたの
政策目標
がことしじゅうには実現すると宣伝し、これで
インフレ
が克服できるかのごとき言辞を弄しております。
政府
は石油の
値上げ
や
公共料金
の
値上げ
など、前途いかなる事態が発生しようとも、
消費者物価
一けた実現の自信がおありでしょうか。 しかし
三木総理
、あなたが
国民
に公約したことは、五十年度
経済運営
の
基本的態度
に明らかなごとく、
雇用者
数一・一%増、
雇用者所得
一八・四%増、
法人所得
一〇・八%の増、
鉱工業生産
で五・四%の増、そして輸出は一五・五%と、いずれも対前年度
比増加
のトータルで名目一五・九%、実体で四・三%の
日本経済
の
拡大
のもとで、なお
消費物価
を一けたにするとの約束であったはずであると思います。今日の実態は、
完全失業者
が百万人、
春闘平均賃上げ
が一二%、
法人企業
の軒並みの
赤字経営
、
鉱工業生産
は対前年比で二〇%の減、そして輸出は前年度並みの五百十八億ドル達成がやっという
状況
ではございませんか。
不況
と
縮小経済
の中で
消費者物価
を一けたにし、それを大々的に宣伝しておりますが、それは大切な
前提条件
を無視し、故意に隠蔽しておるのでありまして、まさに悪意に満ちた宣伝と虚像と言わなければなりません。
国民
が
三木内閣
に五十年度
経済運営
で期待するものは、
方法論抜き
の
消費者物価
の一けた実現ではなかったはずであります。今日見られる
三木内閣
の
不況政策
の結果、たとえ
消費者物価
だけが一けたになったとしても、それで
国民大衆
の福祉が高まったと
総理
は判断されますか、御
見解
を求めます。こんな血も涙もない
やり方
で
消費者物価
が仮に一けたになっても、
勤労大衆
の福祉はいささかも高まることはございません。
完全雇用
の
保障
は
近代資本主義国家
の義務であり
責任
であります。働いて
賃金
を得なくては生きていけない
労働者
の職を奪い、また、職を与えないでおいて、
物価
が一けたに下がったら
政治
は
責任
を果たしたことになりますか。極論するならば、食えない不安に脅かされる
人たち
にとって、
物価
が九・九%にいつなるかなどということは問題になりません。
総理
、
国民
は
物価
の安定を希望いたしました。また、現在でも強く希望いたしておることは間違いありません。しかしそれは、
国民
のだれもが、
自分たち
が
失業
させられ、食うこともできないそんな
状況
をよしとして
物価
安定を希望したのではありません。
物価鎮静
の
政策選択
と実行に誤りがあったことを素直に反省すべきだと思いますが、いかがでしょうか。 さらに、
物価鎮静
の過程で
階級間格差
が
拡大
し、結局、
経済
的、
社会的弱者
の皆さんに非常に大きな
犠牲
が強いられた点を指摘しなければなりません。
政府
は、
統計的手法
とある種の約束を前提にした、言うならば、
平均
化された
数字
の動きだけで
物価対策
は成功したと判断されておりますが、
総理府統計局
の
家計調査
の五分
位階級別
の
消費
の
実情
を調べると、
高額所得者層
の
平均消費性向
は、五十年一月以降毎月一〇〇を超え、可
処分所得
以上に貯金を下げて
消費
に回しておるのであります。逆に、低
所得者層
の
平均消費性向
は、五十年一月の九〇・二%から逐月着実に低下して、このごろでは七五%
程度
になっております。
不況下
の
雇用
不安と
生活
不安にさらされながら
消費
を切り詰め貯金をして、わずかでも
自分
の
生活
を防衛しなければならないという低
所得階級
の
消費行動
が大きなてことなって買い控え、
節約
が行われ、結果的に
消費者物価
を
鎮静化
させているというのが本当の姿なのであります。 また、同じ
家計調査
から五分
位階級別
の
購入品目
、数量を見てまいりますると、
生鮮魚介
では、低
所得層
は四十九年七百グラム
消費量
を減らしておりますが、高
所得層
は二キロ三百グラム
消費
をふやしております。牛乳や肉類についてもこうした傾向は明らかに読み取れるのであります。
教養娯楽費
、
雑費等
で
所得階級
間の
格差拡大
は大変大きくなっております。 さらに、ここで強く指摘しておかなければならないのは、
子供たち
の
学用品購入
でも、
総理府統計局
の
統計
は、低
所得層
への
しわ寄せ
を明らかに示しております。たとえば、ノートブックの購入は、四十六年当時第一分位が五・六冊、第五分位が九・二冊であったものが、四十九年には第五分位は九・二冊でありますが、第一分位は三・九冊に落ちました。これは一例で、鉛筆、文房具に至るまで、
子供たち
が勉強に必要な品が切り詰めを強いられているのは低
所得層
なのであります。
総理
は盛んに
節約
を説かれますが、あなたの真意ではないかもしれませんが、本来
節約
すべき
階級
は
節約
をせず、
節約
の余地がない、
生活
を向上させねばならない
階級
が逆に
節約
を強いられております。こうした
人たち
が買えない結果が、
平均
化された
消費者物価
は
鎮静化
するという
状況
で、
政府
はこの
平均
だけの
数字
を振り回されるのですが、大多数の低
所得階級
の人々は、こうした
政府
の
態度
を、
生活
の
実情
を知らないものと批判をいたしております。
総理
、あなたは就任以来、社会的不公正の是正を看板に掲げておりますが、そのもとで、
産業活動
は大
企業
による
中小企業
の
犠牲
が
労働面
でも、ことに未
組織労働者
、
中高年齢者
、
婦人労働者
のより大きい
犠牲
が、そして
消費
や家計の面でも高
所得階級
より低
所得階級
に
犠牲
の
しわ寄せ
が行われているというのが現状であります。これは、まさに不公正と不正義の
拡大
ではありませんか。
総理
の看板には偽りがあると言っていいのではないでしょうか。
総理
の明確な御
答弁
を求めます。 第四に、
赤字国債
を
中心
にしての
財政
問題についてお
伺い
をいたします。 五十年度の
わが国財政
は、
政府
の
経済運営
の
失敗
と当初
予算
の
租税収入見積もり
の二割にも相当すると言われる
歳入見込み違い
によって中央・
地方とも
にかつてない大
混乱
に陥っております。
政府
は、この
歳入欠陥
を補てんするために
赤字国債発行
の窮地に立たされておるわけでありますが、いまだに
財政当局
から正確で
責任
ある
説明
がなされておりません。
各種報道
は、四月初め一兆五千億
程度
と言われた
財政赤字
は、日に従って膨張し、九月三日
主税局長
が
税制調査会
で行った
説明
では、年間に三兆六千億となっております。半年間に
赤字
は二・五倍にもふえております。
大蔵大臣
に五十年度の
財政赤字
の正確な
数字
とその補てんのための
対策
の
説明
を求めます。 五十年度
予算審議
の際、わが党の
宮之原委員
は
歳入欠陥
の危険を指摘しております。その際、蔵相は、三月
期決算
の
数字
が固まりませんと
見通し
が困難と
答弁
しております。しかし、一
野党議員
が
歳入欠陥
を
見通し
得たのに、
主税局
、国税庁といった膨大な機構を持ち、しかも、
税関係
の仕事の
専門屋
がおりながら、三兆六千億円もの
見込み違い
をするとはどういうことでありますか。
大平蔵相
は、そうした
歳入欠陥
を生じた
責任
をどう感じておられますか。 さらに、
三木内閣
は、憲法七十三条の
内閣
の責務を果たさなかった
責任
として、総辞職すべきではないかと思います。御所見をお
伺い
をいたします。 前代未聞の
財政混乱
を引き起こしても、その
責任
の所在は全くあいまいもことしております。そんな
民主主義政治
が許されるとお思いですか。
財政運営
の
失敗
の
責任
はだれがとるのか明らかにしていただきたいと思います。 私は、かつて四十年の
赤字国債
の
発行
の
特例法
の
反対討論
をここの席で行いました。その際私は、憲法九条と表裏の関係にあり、その
財政的歯
どめの公債不
発行主義
を破ることは、
日本
の
軍国主義復活
、
ファッショ化
に道を開くことであり、非常に危険であり、こうした
やり方
は必ず
財政民主主義
を破壊し、
インフレ
と
通貨
の膨張を招き、
赤字
のツケだけが
国民大衆
に押しつけられることを指摘いたしました。それから十年、五十年度は、
赤字国債
を三兆円余を出す事態を招いても
政府
は
責任
をとらず、さらに、四十一年度以降
建設国債
と名は変えても、実質の
赤字国債
を出し続け、五十年度当初
予算
まで
累積総額
は十二兆五千億円となり、との借金のために払われる
国債費
は一兆四百億円の巨額に達し、完全に
国債
に抱かれた
財政
に変質をし、
国民大衆
の
負担増加
を強いると同時に、
国債
に抱かれた
財政
となりました。四十年から四十九年までの
消費者物価
の
上昇率
は九九・一%となったのであります。四十八年の
狂乱物価
を除いても四五・三%の騰貴であります。これに対し三十年から三十九年までの
消費者物価上昇率
は三九%の騰貴にとどまっております。 さらに、
通貨
の
増発率
は、
国債
が
発行
された四十年代は
平均
一八%、
国債
不
発行時代
の三十年代は
年平均
一二%となっており、
インフレ通貨
の膨張が
通貨価値
をますます落とし、
主婦たち
は一万円札の使いでのないことを嘆いておるのであります。最初、
国債
は苦し紛れの一時しのぎであっても、麻薬は必ず常用せざるを得なくなり、
日本財政
と
日本経済
をむしばむのであります。われわれは、五十年度に
歳入欠陥
が三兆円余の巨額に達するとか、他に
穴埋め
の妙手はないといった調子の
赤字国債論
に賛成するわけにはまいりません。
政府
は
赤字穴埋め
にどれほど真剣に取り組んだでしょうか。歳出の切り詰め
見直し
は十分行ったでありましょうか。防衛庁の
装備品
、艦艇、
飛行機等
の未
発注分
の即時取りやめ、また、
自民党
の
選挙基盤
の培養のための
圧力団体向け
の効果の上がらない
補助金
の大整理、さらに大
企業
や
特定企業
のための
産業基盤づくり
に使われる
予算
の
見直し
等々はほとんど手がつけられません。
歳入増加
の
見直し
は十分でありましょうか。東京都の
税制調査会
が明らかにしているように、
法人
、
個人とも
に高
所得者
が税金は低負担で免れるという全くの逆累進の
税構造
を、
財政危機
の今日抜本的に改革し、前述したとおり、本当に取るべきところから税を取るという
税制度
を確立することが緊要かと思います。 次に、五十年度の
赤字国債発行
の
問題点
についてお
伺い
をいたします。 まず、五十年度
赤字国債
の
発行
の限度額を
補正予算
の総則に全額を明示せず、金額を明示せず、歳入見込み額と歳入額の差額分を
発行
できるといったことに財務当局は改めたいと考えているようでありまするが、この点についての御
見解
を承りたいと思います。
発行
限度額という歯どめを取るようなことがあれば、十年前私が指摘したとおり、
財政民主主義
を根源から否定するものになり、絶対許すことはできません。 次に、公債
発行
の歯どめと
政府
が主張してきた市中消化の原則は、これまでも引き受け後一年で日銀が買い取っており、間接的な日銀引き受けとの正当な批判がなされてまいりましたが、五十年度下期だけで三兆六千億円もの
赤字国債
は、当初の
発行
引き受けすら市中
金融機関
にとっては大変困難が伴うと思うのでありますが、この点の
政府
の御
見解
を承りたいと思います。 さらに、
国債
の市中消化を促進するために、全面的な金融緩和、公定歩合引き下げ、資金運用部保有
国債
の日銀買い取り等々の手の込んだ事前の資金散布
対策
が進められておりますし、さらに日銀買い取り期限の短縮が議論されております。こうした人為的な
国債
引き受けの資金づくりは
財政
インフレ
を招く危険が高いし、そうした行動自体、まさにお上の御用金調達思想に根差すもので、真の市中消化と言えないのではありませんか。御用金調達のあおりを受けて、近く預金の利子が引き下げられると聞くが、昨年あれほど問題になった貯金の目減りは、今日の二けた台の
物価
上昇のもとで解消したのでありますか。 現在、
日本
銀行調べでの全国銀行ベースの貸出残高総額は約八十一兆円でございます。このうち、公定歩合引き下げの直接影響を受ける短期貸し付けはほぼ半分であります。したがって、公定歩合仮に一%引き下げで
企業
はざっと四千億もうかるのであります。
企業
収益はゼロでも金利引き下げだけでこれだけもうかるのであります。他方預金者は、全国銀行ベースでの預金総額八十四兆円で、そのうち、今回の預金金利引き下げでその対象となる定期預金は四十六兆円でありまするから、仮に一%引き下げられるということになりますると、逆に四千六百億円の損失となるのであります。
国民大衆
の零細な貯金目減りに追い打ちをかけ、それをてこに
赤字国債発行
と財界の借金負担軽減を行わんとする
政府
の
やり方
に猛省を促すとともに、
総理
の
見解
を求めたいのであります。
赤字国債
の最後の質問は、三兆を超える五十年
国債
の償還についてであります。
政府
は、五十年の
赤字国債
を借りかえなしの十年償還とする計画のようであります。前回の四十年の
赤字国債
が七年で完済できたことに安易にならおうとしている、これはきわめて危険だと思う。四十年
赤字
は、一千九百七十億円で、五十年
赤字国債
の十分の一の少額であります。しかも、四十年代が予想外の
高度成長
で自然増収も多額に発生したことに助けられまして償還が可能であったと思います。今後もし、蔵相の言う自然減収の
財政
状況
に置かれますと、償還財源を生み出すことは不可能だと思います。さらに、単純に計算しても、四十年
赤字国債
が七年かかって償還した二千億円を、今後は毎年度償還しなくてはなりません。また、
国債
残高の増高に伴って、
国債費
も
財政
を大きく圧迫いたします。こうした予想される条件を考えただけでも、五十年
赤字国債
の償還は
政府
が言うほど簡単ではございません。この際、
インフレ
利得者に課税をして、これを引き当てに
赤字国債
の償還財源をつくる必要があるのではないかと考えます。
政府
説明
では、
赤字国債
は
建設国債
と異なり、裏づけとなる資産が残るわけでもなく、したがって、将来の税収入がふえる保証は全くゼロであります。そうだとすれば、
政府
の従来の
国債
理論からいっても、特定の償還財源構想を立てるべきで、単純に将来の税金で償還するとは言えないはずであります。間もなく提出される
補正予算
の公債償還計画表に
赤字国債
償還の具体的財源措置を明示すべきであると思いますが、
総理
の御
見解
はいかがでございますか。もし明示されない場合は、われわれは審議を差し控えねばならないことを警告しておくものであります。
財政
の質問の最後にただしたいことは、
財政当局
は
財政
難を理由に、四十八年度にあなた方が
国民
に公約した「福祉型
財政
への
転換
」を修正して福祉
予算
に歯どめをかけ、財源
節約
のために一部負担の制度の導入強化を図るほか、拠出制の老齢年金の支給開始を六十歳から六十五歳への引き上げ、老齢福祉年金を五十一年二万円の公約を一万五千円に値切る等の構想が伝えられております。
財政
が苦しいときは、
財政
以上にお年寄りや子供を抱えた母親などの
生活
は困窮するのであります。このとき救いの手を差し伸べず、
財政当局
が財布のひもさえがっちり握っていればというような
財政
エゴの考えは許されません。
財政
は人々の
福祉向上
の手段であって、
財政
の黒字それ自体を目的のごとくに考えるべきではありません。さきに指摘したとおり、今日の
日本財政
は、歳入歳出とも、福祉後退の前にやらなきゃならない措置が山積しております。社会的公正確保の見地からも、老人、婦人、身障者、年金
生活
者、
生活保護世帯
等への財源切り詰めはしないとの約束を蔵相はすべきでありますが、御
答弁
を願います。 第五に、食糧自給の確保と今後の農政の進め方についてお
伺い
をいたします。
三木内閣
のもとで、一月に農政審議会の「食糧問題の展望と食糧政策の方向」、六月に農業問題懇談会の「食糧安定供給に関する提言」、そして農林省の「総合食糧政策」が八月、それぞれ発表されました。そうした提言の行われたことの背景は、世界的な食糧不足のつのる中で、
わが国
の農業
生産
力が重工業
中心
の
高度成長
とは反比例して衰え切って、食糧自給率は四十八年度七一%にまで落ちてしまったことの反省と、
国民
生活
及び
国民経済
の安全
保障
の観点から、安定的な食糧確保
対策
が迫られたからにほかなりません。これまでの
自民党
政府
の農政は、農民に米をつくらせない農政であり、輸入食糧に頼り、
日本
農業を破壊して、世界の工場でやっていけるという全く誤った農政を進めてまいりました。そうした失政を改めるためには、ただ答申をつくっても実現されるわけではありません。何よりも大切なことは、米でも麦でも大豆でも、一日当たり農業
所得
が農外
所得
と遜色のないところの
所得
保障
の実現が第一であります。次には中核的な農家の土地利用
拡大
策であります。第三は農業基盤投資の
拡大
で思い切った整備を実施することであります。 ほとんどの答申が六十年度の食糧自給率を七五%に引き上げることを主張しておりますが、目標達成には相当巨額な資金を投入しなければならないはずでありますが、今後の食糧の安定供給と自給率向上の具体的な構想について
総理
の御
答弁
をお願いをいたします。 さらに、
自民党
の農工併進のかけ声で農村に進出した
企業
は、この
不況
で閉鎖、首切り、パートの打ち切りなどを行わざるを得ない
状況
に追い込まれ、また、出せかぎの就職口も非常に少なくなっております。農村ではいま現金収入の道を閉ざされ大変な問題になっておるのであり、
政府
は大規模プロジェクトによる
不況対策
を主要なものにしているようでありますが、農村での
不況対策
として、土地基盤整備
事業
や市町村が
中心
に行える
公共事業
を財源
対策
をあわせ実施すべきだと思いますが、
総理
の御
見解
をただしたいのであります。
河野謙三
3
○議長(
河野謙三
君) 戸田君。戸田君。時間が大分経過いたしております。簡単に願います。
戸田菊雄
4
○
戸田菊雄
君(続) はい。 最後に、
三木内閣
の
政治
姿勢について一言触れておきたいと思います。 その一つは、前
国会
の積み残し案件の処理が一つの大きな召集目的と言われております。積み残し法案と言えば、衆院で五党修正、全会一致で通過した独占禁止改正法案こそ第一に数えられるべきものであるはずであります。しかも、
三木総理
は、前
国会
で死に体になったと取りざたされた独禁法改正を執念で復活させ衆議院通過に持ち込んだ経過にかんがみれば、今
国会
に再提出されるべきものと思いますが、これに対する
総理
の
見解
をお
伺い
をいたします。 最後に(笑声)、今次
国会
における
値上げ
法案の取り扱いについてでありますが、これは
野党
がこぞっていま
反対
をいたしておるわけでございまするから、議会の子、民主人と言われる
総理
は、良識をもってその
野党
の意見を採用すべきだと思います。これに対する
見解
をお
伺い
をいたします。 最後に(笑声)、ごく簡単にスト権問題について三点
質問
をいたします。
河野謙三
5
○議長(
河野謙三
君) 戸田君。戸田君。大分経過していますよ。大分経過しています。どうぞ簡単に願います。
戸田菊雄
6
○
戸田菊雄
君(続) はい。 それでは、以上で、議長の警告もありますので、終わりたいと思いますが、 最後に(笑声)、
総理
は
国会
を解散して、直ちに
国民
に信を問い、選挙に臨むべきではないかと思いますが、
見解
いかん、お
伺い
をいたしまして、私の
質問
を終わりたいと思います。(拍手) 〔
国務大臣
三木武夫君登壇、拍手〕
三木武夫
7
○
国務大臣
(三木武夫君) 戸田君の御
質問
にお答えをいたします。 大変、戸田君の御
質問
は多岐にわたっておりまして、私並びに
関係閣僚
への
答弁
を求められたわけでございますが、
基本
的な問題は私が答えまして、
経済
計画につきましては福田副
総理
、税制、公債、
予算
については
大蔵大臣
からお答えをいたします。
最初
に、戸田君は、私の
経済運営
の
基本
について御
質問
を願ったわけであります。私は、いろいろな
経済
の仕組みというものをいままで経験をしてきたもので、その経験に徴しても、やはり
日本
の
経済
の運営は自由
経済
体制が好ましいと考えておるわけでございます。それはやはり自由
経済
体制のもとでは、人間の自由、創意工夫、こういうものが発揮できる一つの仕組みでありますから、
日本
の
経済
はやはり自由
経済
の精神を
基本
にして、しかもあまり近視眼的でなく、長期的な展望に立って、しかも国際協調の中にあって
日本経済
を健全に発展さしていく、こういうことでまいりますことが
日本
の
経済
発展のために好ましい一つの姿である、そういうふうに考えておるわけでございます。 また、
三木内閣
の
経済
政策についていろいろ
失敗
をしたという御
批判
がございましたし、総辞職せよというような御発言もございました。いま、戸田君がごらんになってもわかりますように、
不況
、
失業
問題は先進工業国共通の悩みであり、これはやはり今日の国際
経済
というものが、それだけに相互の関連性というものが強くなってきておるわけです。そういうことでございますから、これは
日本
だけの現象であるとは言えないわけであります。しかし、
日本
の
経済
はこの世界的な
インフレ
の中にあっても異常なものでありまして、私が
責任
を持つことになりましての昨年十二月、これも一年間で
消費者物価
が二四・五%も
上昇
するという異常な中にあったわけでございますから、どうしてもこれを、
インフレ
を抑制するということが一番
日本
の
経済
政策の最
重点
課題であると私は考えている。それで
物価
安定というものを最
重点
の施策として取り上げたわけであります。当時としては大胆と思われるような
公約
をいたしたわけです。翌年の三月
——
ことしの三月末までに
消費者物価
を一五%以下に抑えるという、しかし、それはその以下の水準で抑えることができて、次の
政府
の目標である来年の年度末、三月までには一けた台にするという、この目標に向かって鋭意努力をしておるわけでございます。また、これに対して、
実現
しなければどうするんだということでございましたが、いまは万難を排して
物価
の水準をその
程度
に抑えたいと努力をいたしておる次第でございます。これはやはり
日本
の場合のようなスタグフレーションという、
インフレ
と
不況
が併存する中で、どちらかに
重点
を置くという
経済
政策はとらざるを得ないと、そのために総
需要抑制
政策をとれば、ある
程度
の
不況
というものは覚悟しなければならぬ。しかし、私が強調したいことは、
日本
は安定
経済
成長
への
——
高度経済成長
から安定
経済
成長
への非常な重大な
転換
期である。この
転換
期を乗り切っていくためには、どうしても、一時はやはりわれわれが耐え忍ばなければならぬ苦難の道であることはわれわれ
政府
としても十分に覚悟したわけでございます。しかし、やはり
物価
の安定ということで、
景気
を全然
犠牲
にしたものではなくして、御承知のように、第一次、第二次、第三次と
不況対策
をとってまいって、まあ、
景気
をある
程度
維持しながら
物価
の安定に
重点
を置いたわけであって、そのために
物価
が鎮静の様相を呈してきたということで、今度は思い切って第四次の
不況対策
と申しますか、総合
景気
対策
をとれる段階になってきたわけでございまして、やはりこの
三木内閣
の
経済
政策の後を振り返ってみると、やはりこの困難な
日本
の
経済
情勢、しかも世界的な影響を多分に受けておる
日本
の
経済運営
として
経済
政策の
誤り
を私は犯してはいない。そういう点で、私はこの
日本
の
経済
政策というものは
誤り
のない選択をしてきておる、こういうふうに考えるわけでございますから、戸田君の言われる総辞職をせよというような、そういうことは、総辞職などは考えてもいないことでございます。 また、私のこの
政治休戦
ということにも御
批判
がございましたけれども、私も、戸田君御承知のように長い議員の経歴を持つ者ですから、
建設
的な御意見が、
国会
においてどんなに激しくとも、どんなに厳しくともあることは、これはもう大歓迎であって、これを抑制する考えはございません。しかし、今日のようなこういう困難な時局でありますので、何でも
反対
、
反対
のための
反対
と、こういうことではなかなか今日の時局は乗り切れないし、また議会制民主主義というものも健全に育たないということを申したかったのが私の真意でございまして、
建設
的な
論議
を封ずるなどというような考え方は毛頭ないわけでございます。 また、五十年度の
補正予算
についていろいろお触れになりましたが、修正が必要のないような最善の案をとりたいと努力をしておる次第でございます。 また、
国際婦人年
についてもいろいろ御発言ございました。今年は先般メキシコで
国際婦人年
の世界大会が行われて、
行動計画
も発表されました。こういう
国際婦人年
に協力して、男女の不平等をできる限り
是正
することを推進したいと、
総理
府に
対策
室を設ける考えでございます。 また、
公共事業
についていろいろその内容について御提案がありましたが、御承知のごとく、
公共事業
費については八千億円以上の
事業
費を
追加
を予定いたしておりますが、その内容については検討中でございます。各
事業
の緊急性、施行能力、
効果
などに留意して、水資源
対策
であるとか、
生活
環境施設であるとか、国土保全
事業
であるとか、農業の基盤整備、道路などに適切に配分をいたしていきたいと考えております。 また、
学歴偏重
などのことでいろいろ御発言ございましたが、まあ、
就職
などについて
学歴偏重
、いわゆる有名校に入学希望者が殺到して、これは非常なやっぱり
日本
の教育に問題を投げかけておると思います。遺憾なことだと思っております4このために文部大臣がいわゆる有名校への集中を排除するよう
学校
間の格差
是正
等の施策に意欲的に取り組んでおって、この文部大臣の考え方というものを私は支持して、これを推進させていきたいと考えておる次第でございます。 また、
インフレ
というものが、
政府
の
インフレ
に対しての
物価鎮静
策、これは弱者への
しわ寄せ
であるということで御
批判
がございましたが、
インフレ
というものが進行すれば一番
しわ寄せ
を受けるのはいわゆる
社会的弱者
である。
インフレ
は弱者のためにもこれはもう公敵第一号である。こういう点で
インフレ
を抑制せなければならぬということで今日まで努力をしてきて、まあ、着々効を奏しつつあるわけであります。 また、
福祉
政策の充実のためには、今年度
予算
、戸田君ごらんになってもわかりますように、社会
保障
関係
費というものは一兆円増額した。前年比一兆円の増額でありますから、
政府
が
福祉
の増進に対して、いわゆる
社会的弱者
というものに対しても十分な配慮をしておるということが御理解願えると思うのでございます。したがって、
三木内閣
によって社会的な不公正が
拡大
したとは私は考えておらないわけでございます。 それから金利の引き下げについていろいろな御
批判
がございましたけれども、
日本経済
を適正な
回復
過程
に導くためにはやっぱり金利を引き下げる必要がある。その結果
雇用
が安定し、
所得
水準が着実に
上昇
するという形で、また一般
国民
も全体的には還元されるという考え方でございます。したがって、預金金利が引き下げられても一般
国民
が大損であるというふうには
政府
は考えていないわけでございます。 それから農業のことについていろいろ御発言がございました。今後この食糧というものは重大な世界的な課題でもあるわけでございますから、国内の
生産
体制というものを整備して、
わが国
の農業の自給力というものの向上を図るということが、これ、根本でございます。そのためには、農業
生産
の基盤の整備であるとか、需要が
増加
するであろう作物の増産とか、農業
生産
の中核となる担い手の育成などを進めてまいりたいと思っております。また、水産業についても漁業
経営
の安定や漁場の整備に努めてまいりたいと考えております。しかし、また一方において、すべての食糧を自給するということは不可能なことでございますから、輸入の安定化というものもこれは確保しなければなりませんので、この確保についても十分努力をいたしてまいりたいと考えております。 農業の基盤整備
事業
というものは、食糧の自給力の向上を初め、農業と農村の発展を図るために基礎になる重要な
事業
でありますから、この問題については、五十年度の
補正予算
の編成についても積極的に考えてまいりたいと思う次第でございます。 最後に、解散の問題についてお話がございましたけれども、戸田君お考えになっても、この難局は戦後最大の難局でございます。これをどう切り抜けていくかということが私の頭にいっぱいあることでございます。
責任
を持っておる者としては当然のことで、解散などは頭の一隅にもないとお考え願いたいのでございます。(拍手) 〔
国務大臣
福田赳夫君登壇、拍手〕
福田赳夫
8
○
国務大臣
(福田赳夫君) 私に対しましては、第四次
景気
対策
のねらいと
経済指標
は一体どうなるかというまずお尋ねでございます。また、お尋ねの中でいろいろのおしかりも受けておるわけです。おしかりはおしかりとしてよく承りました。 ただ、
政府
が当面しておる課題というのは、なかなかこれは容易なものじゃない、非常に困難な問題であるということを特に申し上げたいんです。 一昨年のあの
事態
、これはとにかく卸売
物価
は三七%上がります、
消費者物価
が二六%ですと、たった一年間で国際収支の
赤字
が百三十億ドルである。まさに
経済
秩序は狂乱の状態、まあ、
日本経済
崩壊かとまで国際社会では騒がれるというような状態だったわけです。ですから、これから脱出する、それはもう簡単にはできないんです。三年の調整期間が必要であると、こういうふうに申し上げたのはそういう趣旨でございます。 そこで、第一年目の施策は一体何だと言いますれば、何といってもこれは燃え盛る
インフレ
の火を消す、これが主要課題でなければならぬ、そのための施策を積極的に展開したわけです。そこで第一年目である
昭和
四十九年度を回顧すると、これは大体成果をおさめた。
物価
はいま
総理
から申し上げたとおりであります。国際収支の方も百三十億ドルというのが、まあとにかく四十四億ドルの
赤字
というところまで改善された。これはいろいろの見方もありましょうけれども、国際社会では、とにかく
日本
はよくやったと言って高く評価をされておるということをひとつ申し上げておきます。(拍手) そこで、いま問題の第二年目に入っており、ちょうどその半ばにあるわけでございますが、この第二年目の課題は、やっぱりそういう
物価鎮静
の中でいかにして
経済
活動を活発にする、
景気
を常道に戻すかと、こういう点にあるわけです。まあ
物価
安定の中で
成長
を
実現
する。そこで、その経過を見ますと、
物価
の方はさらに
鎮静化
を進めておる。問題の
消費者物価
、これは八月で、東京区部しかまだわかっておりませんけれども、それが
全国
水準だとしますと、もうちょうど一〇%、一けたにはなりませんけれども、一けたに接近しております。卸売
物価
は八月の時点で〇・七%、一年間の
上昇
だ、ほとんど横ばい、まあ、そういう基調を示しておるんです。 ところが、
経済
活動の方はどうかと言いますると、これは私どもが思ったよりは微弱な
上昇
傾向
を示しておるのです。三月から
生産
はずっとふえております。それから出荷もふえる。したがって、
企業
の操業度も上がっているのです。ところが、財界には非常に苦悩の色が満ち満ちておるというような状態であります。それは一体何だと、こう申し上げますと、
経済
活動はなだらかな
上昇
を示しておる。そして、三月の時点におきましては稼働率指数が七七の底でありました。これが七月になりますると八三というところまで
回復
をしておるのです。それにもかかわらず苦悩の色が濃いというゆえんのものは、八三までいったと、稼働率が八三までいきましたけれども、しかしなお一七%残っておる。つまり、
企業
において過剰の設備を抱えておる、そのための金利
負担
という問題がある。
企業
におきましてはまた過剰の人員を抱えておる、その人件費
負担
が非常に重圧となっておる。そこに、マクロで見まするときには、
日本経済
はそう悪い状態ではない、しかしミクロ、個々の
企業
について見るときには非常に苦しい状態だというゆえんのものがある。そういう認識で、まあ
物価
の安定の基調が出てきた。それを踏まえて
景気
対策
をひとつとろうと、こういうふうな方針をとったわけであります。したがいまして、この稼働率を上げる、そのための
生産
活動を興す、それは必然的にこれは最終
消費
需要を興さなければならぬということになるのです。最終
消費
需要とは何ぞやといえば、一番大きなものは何といっても
国民
の
消費
です。
国民
の
消費
、これは私は
インフレ
がおさまり、また
経済
が安定しますにつれて
回復
すると、こういうふうに見ております。正常化すると、こういうふうに見ております。 しかし、いまここで、まあ、いまお話もありましたが、減税だというような、人為的な手段までこらしてこれを刺激するか、こういうことになりますると、いま資源有限時代になっておるそういう中で、
政府
が
消費
刺激の人為的政策をとるというようなことになり、過ってまた大量
消費
社会へ復元するというようなことになっても困るのです。 それから、さらに
国債
が多額に増発されるというようなこともいま考えておるわけでありますが、この
国債
の消化ということを考えましても、これはまあどうしても貯蓄ということを
国民
に協力を願わなければならぬという立場にもある。そういうことを考えまするときに、どうも人為的な手段をもちまして
消費
を刺激するという考え方はとるべきじゃない。 また、設備投資は一体どうだといいますると、これは設備過剰の状態だから、これを、一般的に言いますると、増大するということはなかなかむずかしい。
輸出
はどうだといいますると、世界が非常に厳しい環境だということで、どうも
輸出
に多くを期待することはできない。そこで、第四次
景気
対策
ということになりますると、これはどうしても
財政
にその任務を求めなければならぬということになるのです。さあ、
財政
は一体どうだといいますれば、非常に厳しい状態でありまするけれども、しかし、
日本経済
があっての
財政
です、これは。ですから、
財政
に、厳しいところではあるけれども、その任務を尽くしてもらいたい。こういうことになりまして、総額一兆五千億円の
財政
措置を行う、こういうことにいたしたわけであります。その一兆五千億円の
財政
措置が及ぼす
消費
喚起の
効果
は約三兆円であります。その三兆円のうち約六割、一兆八千億円が
昭和
五十年度において実効を上げる、こういうふうに見ております。その結果、本年の下半期の年率
経済
成長率
は六%になる、こういうふうに見ておるわけであります。その結果、
雇用
指数がどうなるかとか、あるいは
生産
指数がどうなるか、これは
補正予算
の段階で申し上げます。ただ、この稼働率指数が大体九〇%より接近するということは申し上げることができます。 次に、そういう中で
物価
は一体どうだというような
質問
でありまするが、これはそういう政策はとりまするけれども、他方において
物価
政策をないがしろにするわけじゃございません。やはり幾ら
景気
対策
、
景気
対策
と申しましても、
物価
がまだ
混乱
をするということになったんでは、これは元も子もない。そこで、まあ本年度内
消費者物価
一けたということを申し上げておりまするけれども、この目標につきましてはいささかも変えることはいたしません。これが
実現
の方向に向かって万難を排して進む、こういう考えでございます。 私どもは、
インフレ
のない
成長
、これをねらいといたしまして、
経済
諸施策を進めていきたいということを申し上げます。(拍手) 〔
国務大臣
大平正芳君登壇、拍手〕
大平正芳
9
○
国務大臣
(大平正芳君) 第一の御
質問
は、五十年度の歳入不足はどの
程度
になるかという具体的な答えをしろということでございます。
主税局長
は、三兆六千億になるのではないかという一応の見込みを申し上げたそうでございますけれども、その後、御案内のように第四次
景気
対策
に伴う今年度の
経済
の
見通し
が出てまいりましたので、それを基礎にいたしますと同時に、九月
決算
法人
につきまして逐一
状況
を当たっておるわけでございますが、ただいまこの席で申し上げられますことは、三兆六千億を下回るというのでなく、若干遺憾ながら上回るのではないかというように考えておるわけでございますが、まだ具体的な計数を申し上げるまでには至っておりません。で、これに対する
責任
でございますが、
財政
を預かっておりまする私として厳しい
責任
を感じております。 それから、この問題に関連いたしまして戸田さんは、この巨大な
歳入欠陥
補てんの
方法
として、
企業
の
引当金
、準備金あるいは
租税特別措置
等の徹底的な洗い直しによって
巨額
の
財源
を確保すべきでないかという御提言がございました。その
基本
的な
態度
、御方針につきましては私も全く同感でございます。ただ、
引当金
、準備金等は、御案内のように
企業
会計の原則上も認められておるものでございまするし、将来の税源を維持していく上から申しまして、これを圧縮するにいたしましても、おのずから限度があるということを御承知願いたいと思います。 また、
租税特別措置
の洗い直しでございますけれども、これは毎回本院におきましても御
答弁
申し上げておりますとおり、毎年毎年洗い直しを行っておるわけでございますが、今後も鋭意努めてまいりたいと思います。 それから、第二の御
質問
は公債政策についてでございました。 まず第一に、今度
巨額
の公債の
発行
になるおそれがあるようだが、
発行
額を
国会
にどういう姿で諮るかということについてのお尋ねでございました。私といたしましては、従来どおり、公債の
発行
につきましては具体的に
発行
額について
国会
の御承認を得る必要があると考えまして、そういう方向でいま法律案の検討を急がせておる次第でございます。 第二に、市中消化
——
この
巨額
の公債の市中消化に一体まあ自信があるかという意味のお尋ねでございました。このいまの
財政
状況
から申しますと、中央・地方を通じまして相当
巨額
の
財政
資金が
金融
市場に流れていくわけでございますので、マクロ的に見ます限りにおきまして、私どもがお願いする公債の消化が市中においてできないことはないと思うのであります。したがって、施策そのよろしきを得れば、市中消化ができないとは考えませんが、御指摘もございまして、十分この消化につきましては周到な配慮をやってまいりたいと考えております。 それから、第三の問題として、この償還、消却についてどう考えておるかということ、それが明確にならない限り
補正予算
の審議を差し控えなければならないかもしれないという御警告でございました。で、御案内のように、四条公債につきましては、公債対象資産の耐用命数の範囲内において消却が行われておりますこと、御案内のとおりでございます。しかし、われわれがいま考えておりまする特例公債につきましては、そういう歯どめはございません。したがって、仰せのように、これは短期間の間に明確な道標をつくって計画的に消却していくようにしないといけないと存ずるのでございまして、その点につきましては鋭意いま検討中でございますので、
補正予算
とともに御審議を願うことにいたしたいと思います。 最後に、
福祉
予算
についての
財政当局
の
決意
についてのお尋ねでございました。
福祉
政策は
政治
にとりまして最大な問題でございまするし、
福祉
年金等は、申すまでもなく、これは
所得
保障
的な年金でございまして、
景気
の消長ということにかかわりなく
保障
して差し上げねばならぬ
財政
上の
責任
があると心得ておるわけでございます。したがって、ことし、厚生年金、
国民
年金、これは八月、九月、それぞれ二二%ずつの引き上げをいたし、
生活
保護基準や失対
賃金
につきましても四月から引き上げ、米価改定とともに若干の補正をいたしたことでございまするし、老齢
福祉
年金、母子
福祉
年金等につきましては十月から大幅な引き上げが予想されておりますが、
財政
上の
都合
によりましてこういうもくろみを変えるつもりは毛頭ないのでありまして、これは厳しい
責任
といたしまして忠実に
実行
してまいるつもりでございます。(拍手)
河野謙三
10
○議長(
河野謙三
君)
答弁
の補足があります。
三木内閣
総理
大臣。 〔
国務大臣
三木武夫君登壇、拍手〕
三木武夫
11
○
国務大臣
(三木武夫君) 戸田君の御
質問
の中で独禁法、それから酒、たばこ、郵便等の料金の引き上げについてちょっとお触れになりまして、
答弁
が漏れましたことは失礼をいたした次第でございます。 独禁法の問題については、御承知のように衆議院では可決をされたわけでありますが、参議院において、会期末のああいう事情で廃案になったわけです。これは出直さなければならなくなったわけでございますので、この
国会
のような緊急に解決をせなければならぬ問題をたくさん抱えておる
国会
にいきなり独禁法の改正を再提出いたしまして、そのことによってその緊急を要する案件の審議に支障を来すようなことがあってはならないと、ただいま
自民党
の中において再調整をいたしておる状態でございます。その再調整の結果を待って提出するかどうかの問題というものを決めたいと考えておるわけでございます。 また、酒、たばこ、郵便料金などについては、すでに
国会
で御承認を願いました五十年度の
予算
の中にもう計上されておるわけでございまして、それが
国会
の承認を受けなければ、それだけの
予算
の執行に対して歳入の不足が生ずるわけであります。まあ酒、たばこ、郵便料金、この問題については、もしそれを御承認願わなければ、たばこをのまない人にも、酒を飲まない人にも同様にやっぱり税によってこれを補う以外にはないわけでございますから、
公共料金
というものについては、やはりある
程度
それを利用される方、それを
消費
される方、こういう方々に応分の御
負担
を願うということでなければ、かえって私は公平を期されないのではないか。それはもしそういう
財源
がないとすれば、これ、一般の税金によって賄うよりほかにはないというわけでございますから、その場合に、その
負担
の公平ということからすれば、そういういろんな施設を利用したり、そういうものを
消費
する
人たち
に応分の御
負担
を願うということが妥当な行き方である、こう考えておりますので、酒、たばこ、郵便料金の
値上げ
等は、
予算
案は通っておることでもありまするから、どうかこの
国会
において御審議を願い、ぜひともこれは可決をしていただきたいとお願いをする次第でございます。(拍手) —
——
——
——
——
——
——
河野謙三
12
○議長(
河野謙三
君) 八木一郎君。 〔八木一郎君登壇、拍手〕
八木一郎
13
○八木一郎君 私は、自由民主党を代表いたしまして、
三木内閣
総理
大臣
所信表明演説
に対し、いささかの意見を交えつつ
質問
を行うことといたします。
質問
に先立ち、一言申し上げておきたいことがあります。 天皇、皇后両陛下におかれましては、このたびアメリカ大統領の招きにより御訪米されることになりましたが、両陛下の御訪米は日米修好史上初めてのことであり、日米友好親善の上からもきわめて意義深いものと存じます。ここに、両陛下の御旅行中の御平安を心から祈念する次第であります。(拍手) 〔議長退席、副議長着席〕 さて、第一にお
伺い
いたしたいのは、
総理
の
政治
姿勢についてであります。
三木総理
が、
政治
は
国民
のもの、
国民
との信頼
関係
がしっかりしていない
政治
は
政治
にはならない、信なければ立たずだ、できないことは
約束
しない、
約束
したことは必ず
実行
するという
政治
信条、特に
国民
の心に触れてのこの御信条には深甚の敬意を表します。しかし、私が第七十五回の
国会
の体験から感じていることですが、多数決原理が踏み外されるようなこと、すなわち、多数党の主体性を越えての妥協を図るようなことになってくると、対話も協調も実りある成果を期待することができなくなるばかりか、一種の
政治
不安さえ生じてくるのであります。率直な所見をお
伺い
いたしたいと思います。 もう一つ、それは
日本
の心、道義の
基本
についての考えであります。 ことしの終戦記念日に
三木総理
が靖国神社に参拝をしたことについて、
総理
の資格では問題があるとして、個人参拝になったとのことでありますが、私は
国民
を代表する
内閣
総理
大臣の靖国参拝は、国のために殉じておられる英霊に対する
国民
の礼儀だ、外国へ行けば正式参拝してくるのに、
自分
の国では問題があるというのでは、何か中途半端で申しわけない感じがいたします。(拍手)国家的な行事として、国として正々堂々と公式な参拝をすべきだ、こう思います。 戦後三十年たってもなお、敗戦で植えつけられた敗北思想によってか、極端な利己主義に走り、集団エゴによって、国家のために戦没した英霊に対する恩義さえも忘れ去ったかのように思われる一部の声があるのは残念です。和をもってたっとしとなす
日本
の心を生かすために、新しい国づくり、新しい人づくりのために
総理
のお気持ちをお
伺い
いたします。 次に、なお政策以前の課題としてすでにしばしば問題になってきましたが、解散問題です。お尋ねいたします。 私は、
三木総理
が議会制民主主義の擁護を旗印として、
国民
の
国民
による
国民
のための
政治
は、当面
インフレ
、
物価
高を鎮静させ、未曾有の
不況
を
克服
することだとし、毅然たる
態度
で解散はしない、ただいまも解散は毛頭頭にないと言っておられます。これは
政治
の空白を避けるためでもあり、また主権在民の精神にも沿うりっぱな姿勢だと思います。解散は
憲法
七条によらないで
国民
主権に徹するということも一つの
態度
ではないでしょうか。民主
政治
と
国会
解散についてお尋ねいたします。三木首相御自身の口からこの
見解
を承ることができれば幸せであります。
政府
がさしあたり迫られている緊急な問題は、何といっても
不況対策
であり、
財政赤字
の措置ではないでしょうか。
大蔵大臣
にお尋ねいたします。これから、いや現に行おうとしておる
財政運営
のあり方についてどのようにお考えになっておられますか。自然増収で多額の税収入を得ていた時代ではなく、中央も地方も
財政
がみんな
赤字
になってきました。
財政
制度審議会の指摘を待つまでもなく、
経済
構造が変化する時代に安易な
財政運営
を続けるならば、
財政
破綻に追いやられることは火を見るよりも明らかです。これらのことは新しい問題ではなく、一刻もゆるがせにすることのできない緊急の課題であります。この際、
政府
、
大蔵大臣
の果断な御所見を承りたいのであります。 次いで、副
総理
福田
経済
企画庁長官と
大蔵大臣
より
歳入欠陥
と
景気
対策
についてお
伺い
をいたします。
物価
が一応落ちつきの様相を示しておることは何よりであり、ただいまもお話が出たとおり、
見通し
を、
物価
の点から
政府
のこの労を多とするものではありますが、私はこの辺で政策に区切りをつけて、
物価
は一応落ちつけた、警戒はしていくけれども、さあ、これからは
不況対策
だ、こういうように区切りをつけて、はっきり
不況対策
一色でやれと、こう申し上げたいのであります。
景気
対策
は多分に心理的波及
効果
を伴わせないとだめではないでしょうか。
不況対策
もやるが
物価
も考えながらやるというのでは、せっかく打ち出した第四次
対策
も、過去三回にわたって進めてきた
対策
と変わりばえもないことになりはせぬでしょうか。この際、本来効き目の遅い
財政
措置よりも、早道の
金融
政策と本格的に取り組むことだ。一%の金利引き下げは一兆円近い産業助成金を出すのと同じこと、困難でも真剣に
金融
政策に取り組み、相当の波及
効果
が期待できるように何とか工夫をしていくことがこの際最も必要ではないでしょうか。預金金利の引き下げは
政治
としては一番いやな仕事でありましょうが、安易な
財政
政策に逃げ込むと問題を後に残すばかりと思わねばなりません。
政府
は大型投資を主軸に、大型プロジェクト主義の
景気浮揚
策をやれば、繊維その他
不況
に悩む分野への波及
効果
も大きいし、また、
雇用
喚起にも役立つと見ておるようでありますが、今日の
不況
は、長期にわたる引締めの政策によりまして深刻化し、それに世界的
不況
とも重なって、
個人消費
や設備投資が沈滞し、さらに
輸出
の不振もあって、戦後の
不況
としては最大規模のものになっていると言われています。それが四十九年度のマイナス
成長
の記録となり、五十年度も当初の
見通し
を大きく下回ること必至、すでに減額四十九年度で七千七百億円、五十年度は三兆円を相当上回る税収不足だと言われております。これからさらに給与改定や災害
対策
などの補正要因と、酒、たばこ、郵便料金
値上げ
見送りの減収、これらを加えて考えてみますと、
歳入欠陥
はかつてこれまでにない
巨額
に達することであります。 すなわち、今年度の税収は、
不況
の深刻化に伴い
法人
税と
所得
税を
中心
に大幅に落ち込み、三兆五、六千億円の
歳入欠陥
が生ずる見込みと言われています。一方、
財政
による
不況対策
が急がれ、一兆円の
建設国債
の増発に加え、
特例法
による二兆円の
赤字国債
の
発行
によってこれに対処される方針が打ち出されているのであります。 そこで心配されることは、仮にこの額が
発行
された場合どのように消化されるのか。資金運用部の引き受けにも限度があるとすれば、よほど利回りをよくするとか、範囲を広げるとか、税制面で考えて措置するとか、後日日銀に回り
インフレ
要因となるおそれなしとしないことも考え合わせますと、これまでの
国債
発行
は、歯どめとして
建設国債
と市中消化の二原則があったのですが、今度のような
赤字国債
の歯どめをどう考えるか。歯どめなしに後年度も引き続いて
発行
を続けるならば、財制審の答申にもあるとおり、
国民
の
負担
は莫大なことになることを考え合わせて、節度と歯どめには慎重を期せられたいと思うのであります。また、償還計画もどうしてやるか。なお、このような大量の
国債
発行
に当たってまずなすべきことは、これはやはり古くから言われておる、いわゆる入るを計って出るを制することだというに尽きると思います。
政府
みずからの姿勢を正し、行政改革や行政経費の節減を初め、歳出をできるだけ圧縮し、歳入の確保、この歳入の確保を図ることが先決と思うのであります。これらの点について
大蔵大臣
の御所見をお
伺い
いたします。 次に、
景気
対策
を実施するに当たり、特に緊急な措置を要する
中小企業
対策
並びに
雇用
問題について
総理
並びに労働大臣にお尋ねいたします。 今日の深刻な
不況
の影響を最も手ひどく受けているのは、申すまでもなく
中小企業
、そうして
雇用
不安におびえている
労働者
の方々であります。
政府
の一次、二次、三次と相次ぐ
対策
にもかかわらず、
中小企業
の
経営
は一段と悪化し、
生産
は落ち込み、
倒産
は多発し、季節的にこの
傾向
に拍車がかかるおそれがあると見なければならない情勢、特に大
企業
に依存して、大
企業
不振のあおりを受けている下請や取引
企業
が苦況に立たされているのであります。労使が頼みの綱としてきた
雇用
調整給付金制度によって一時帰休制をとり、解雇を見合わせてきた
企業
も目立って多く、一時帰休者の休業手当の支給のために、本年度分の
政府
の
雇用
調整給付金百四十二億円は早くもパンクするほどの
事態
になっております。しかも、なお受注が
回復
する
見通し
がないことから、大規模な
雇用
調整に続いて本格的な
雇用
合理化を進め、今後の低
成長
時代を
企業
が生き抜くために
経営
の体質の改革に取り組もうとしているのであります。
政府
におかれても
金融
と信用保証との両面からきめ細かい
不況対策
を練っていることと思いますが、
中小企業
のこれ以上の悪化は何としても食いとめなければならない。第四次の
不況対策
を含めて、どのような
対策
を考えているかお尋ねいたします。 したがって、このような情勢から、多くの
企業
では新規採用のストップないし大幅採用減の方向が打ち出され、
総理
はすでに
自民党
内に学生
就職
対策
委員会を設けられていますが、これも
失業者
の大量発生が心配されている際だからであります。このように、
不況
は底入れと言われながら、
雇用情勢
に関する限りでは、じわじわ悪い方向に動いており、大きな社会問題になろうとしているのであります。これは、今回の
不況
がかつてなかったほど深刻だからかもしれません。が、それ以上に、これからの
日本経済
を長期的に見て、夢よもう一度と
高度成長
へ復帰するのでないとすれば、この
雇用
問題、
失業者
問題は簡単に立て直しすることができるかどうか、この辺を
伺い
たいのであります。
雇用
の現況と先行きの
見通し
はどうか、また当面の
雇用
不安を乗り切るための具体策と
完全雇用
を貫く根本施策があれば承りたいところであります。
大蔵大臣
並びに労働大臣にお尋ねいたします。
三木総理
はこのほど、
三木内閣
の大きな夢として、新しい
福祉
国家の
建設
を目指す長期ビジョンとして生涯設計計画、いわゆるライフサイクル計画をまとめられ、その構想を明らかにされたのでありますが、この構想は、繁栄や発展を全体としてとらえるものでなく、人の一生涯を
中心
に据えた、生きがい、人生を考えた総合的な
福祉
計画として高く評価されているところであります。しかし、この計画の
実現
には数々の困難が予想されるものも多く含まれていると思われます。
総理
には、これを前向きに受けとめ、強力な指導力を期待するものであります。
総理
は、すでに
自民党
政調会に強力な調査会を設け、党内の合意を図るとともに、各
関係
省庁にも検討を指示し、来年度
予算
案にできるものから盛り込みたい意向と言われていますが、どの
程度
のことを考えておられましょうか。 本計画の
実現
について最大の問題は、これが実施
予算
と
財源
でありましょう。また、これを支える
経済
社会の考え方そのものでもありましょう。この構想は、人間一生を通じて充実し安定した
生活
を
保障
する社会をつくることを目標として四つの柱で諸施策を進めるべきだとしているようでありますが、このように大きな
政治
の夢が現実の
政治
となるかどうかは、相当長期にわたって物心両面から幅広く
論議
を起こし、
国民
的な合意を得ることが必要ではないでしょうか。私としては、物より心を大切にせよと言いたいのです。哲学者の鈴木大拙氏や出光佐三氏が六十年間の血のにじむような体験に基づいて提唱しておられ、また実践しておられる精神面から
日本
人の真の姿の
回復
、
日本
の道徳の
実行
を図ること、まずここから行うべきだということを主張したいのであります。 この計画の対象は広範で、その内容も複雑多岐にわたっていることから、この構想を推進するための核となるべき担当の役所及び審議会を指定した方が効率的だと思われます。
三木総理
よりこの点承りたいところであります。 次に、治安
対策
について
総理
にお尋ねいたします。 犯罪は社会を映す鏡だとも言われますが、昨今爆弾テロの暴挙を重ねる傍若無人の過激派の振る舞いは、憎んでも憎み足りないほどの強い憤りを感ずるものであります。一連の
企業
爆破を行った東アジア反日武装戦線爆弾グループの一斉検挙で全容が解明され、私たちはほっと胸をなでおろしたのでありますが、最近また頻繁に見られる爆破襲撃事件は、当面の目標を天皇陛下御訪米阻止に向け一斉に動き出したものと見られております。相次いで起こるこの爆弾闘争は、相当なすそ野の広がりがうかがわれ、連鎖反応を恐れるのであり。爆弾事件は起きてからでは手おくれです。先般の
企業
爆破事件捜査に見られたような厳重な徹底的な検挙体制をしいて、未然に
防止
する手だてを切に望まれるのであります。そのための費用や人員の投入を惜しんで悔いを残してはならない。爆弾をもてあそぶ不穏分子は、その隠れみのとして平凡な市民
生活
を装っているために、犯人の所在を突きとめるのは警察の力だけでは限度があります。市民一人一人が
被害
者意識を持って、社会を挙げて立ち向かう心構えが必要と思うのであります。この際、当局に徹底的な措置を強く要望するものであります。なお、立法措置によって爆弾
対策
を講ずべきであるとの意見もありますが、
総理
の御所見を承りたいと存じます。 次に、地方
財政
問題について
大蔵大臣
にお尋ねいたします。 今日、地方自治体もまた国の
財政
欠陥に見られるとおり深刻な
財政
難に陥っております。五十年度の地方
財政
は、都道府県がすでに
予算
に計上した税収が確保できず、一兆円近い歳入不足を生じると見込まれ、各府県では、国からの
財政
措置がない限り大幅な
歳入欠陥
は避けられない
実情
にあります。府県の税収の四〇%以上を占める
法人
事業
税の大幅な
見込み違い
と、国税三税の減収に伴う地方交付税減額による
財源
不足は、待ったなしに地方
財政
を危機に追い込んでおります。危機を招いた原因についてはこれまでもたびたび指摘されているところでありますが、要するに、
財源
が足りないというのでなく、
高度成長
時代の税収の伸びに合わせ
財政
規模を急速に
拡大
したところに問題があると言われています。国家公務員給与を上回る給与のあり方や先取り
福祉
の
見直し
など、正すべきは正し、一日も早く健全な
財政
の立て直しを図られんことを望むものであります。しかし、今日、地方
財政
の危機を打開していくためには、自治体の自助努力だけでは限界のあることは確かであります。
政府
は、今回提案される
補正予算
措置と
財政
を軸とする
景気浮揚
対策
を打ち出すに当たり、地方
財政
についても、次の積極的な
対策
を講じ、中央・
地方とも
に
不況
の脱出を図るべきものと考えます。その一つは、地方交付税落ち込み分の補てん、その二つは、
不況
による地方税減収補てん、その
三つ
は、
公共事業
費の増額に伴う
財源
措置であります。また、地方
財政
の
負担
となっている超過
負担
の年度内解消に積極的に取り組むとともに、悪化している市町村
財政
についてもこの際きめ細かな配慮が必要と思うが、
大蔵大臣
の御所見を承りたいのであります。 次に、外交問題について
総理
並びに外務大臣にお
伺い
いたします。
質問
に入る前に、去る十四日母港に帰ってきた悲しみの松生丸事件について、現時点における
関係
を承っておきたい。 このたびの日米会談は、差し迫った懸案こそなかったが、
野党
諸君などのためにする
批判
は論外として、現実に安全
保障
、
インフレ
、エネルギー問題など重大問題を抱える国際社会の視野に立って日米間の相互の信頼と理解が深められ、緊密な協調が再確認されたことは、世界、特にベトナム、インドシナ以後のアジアの安定に寄与するところ大なるものがあったと思うのであります。今日、
わが国
にとって、朝鮮半島の平和維持がアジアの安定や
日本
の安全にどのような意味合いを持っているのか、的確な現実認識を得ることが何よりも大事であると思います。この点、戦争巻き込まれ論に巻き込まれずに真意を徹底させることが何より必要だと考えます。 なお、
わが国
の安全
保障
と核防条約をどのように位置づけて考えるべきか、あわせてお
伺い
します。 次に、先般行われた日韓閣僚
会議
について承りたいのであります。金大中事件、そして朴大統領狙撃事件などの不幸な出来事によって中断されていた日韓閣僚
会議
がソウルで開かれたのでありますが、ベトナム以後を迎えたアジアでは、朝鮮半島の動向が国際
政治
の大きな焦点になっている。この
会議
は、そうした情勢の中での日韓
関係
を方向づけるものとして重要な意味があり、また、そういうところに意義深いものがあると思うのでありますが、外務大臣の御所見を
伺い
たい。 日中平和友好条約と覇権問題についてお尋ねします。
政府
は当初、日中平和友好条約は両国永遠の平和友好
関係
の基盤とするにふさわしい原則をうたったもので問題はない、こう報ぜられていましたが、その後いわゆる覇権条項で硬直状態を続けています。外務大臣はこの問題の打開のために、国連総会に出席するのを機会に中国の外相と会談することを明らかにされました。この際、いわゆる覇権問題をどのように理解すべきか、御所見があれば承りたいのであります。 次に、中東和平の進展は、第四次戦争から一年十カ月を経て現実に大きな進展を見せたことは、画期的な意義を持つものとして心から歓迎するものであります。もちろん、中東情勢が真に安定するかどうかはむしろこれからでありましょう。私は、国連安全
保障
理事会の
決議
を尊重し、次の和平に向かって恒久性を考慮しつつ協力すべきであると考えますが、御所見を承りたいのであります。 以上、私の
質問
は
国民
的関心事にしぼってきましたが、最後に一言申し述べさせていただきたいことがあります。 現下の重大時局は、
総理
の
所信表明演説
のとおり、今日民主
政治
と議会制度とが、この困難な時局を突破するために、果たしてその担い手になれるかどうか歴史的な試練に直面していると思います。私はこの試練に耐え抜いていく唯一の道、ただ一つの道は、
国民
多数の支持を得て政権を担当している自由民主党が積極的に国政の責めを持つことだと思います。各政党も
国会
も、この事実をお互いに認め合いながら、
三木総理
のいわゆる対話と協調の
政治
によって、新しい理想主義と新しい現実主義の担い手となって、この難局の打開に全力を傾けられんことを切に望んで私の
質問
を終わります。(拍手) 〔
国務大臣
三木武夫君登壇、拍手〕
三木武夫
14
○
国務大臣
(三木武夫君) 八木君の御
質問
にお答えをいたします。
最初
に、私の
政治
姿勢に関しての御
質問
がございましたが、八木君も御記憶にあることと存じますが、私は訪米の前後二回にわたって両院議員総会、
自民党
の両院議員総会でありますが、申し上げたのであります。私の
政治
の姿勢として対話と協調という姿勢は崩さない。しかし、対話と協調といっても、それにはやはり越えられない限界はある。それは
自民党
なら
自民党
の立党の精神、
基本
的な立場であると。これは各政党とも同じだと思うのであります。それを崩さない限り、
建設
的な妥協もこれは拒否するということでは、私はそういうオール・オア・ナッシング、何でも
反対
というような行き方では議会制民主
政治
は育たないと思っておるわけでございます。 いま八木君も御指摘になりましたが、
日本
の議会制民主主義というものは、八木君御指摘のとおり、いわゆる大きな試練期に私はある。こういう複雑な世の中で、一体、議会制民主
政治
のもとで、この問題を処理する能力を議会制民主主義が持ち続けることができるかどうかということは、これは
日本
ばかりではございません、世界的にも大きなやっぱり民主
政治
の試練期だと私は思っておるわけであります。やはりこれを、どうしても議会制民主主義を守るためには、与党ばかりでなしに、
野党
もこれを守るための共同の
責任
者であるという自覚を持ってもらわなければならぬと思うのでございます。そのためには私は、この対話と協調の精神に基づいて善意とまた寛容さというものが
与野党
ともに要求されていると思うんです、善意と寛容さ。それに反して対決主義というものは、こう何でも対決主義というものは、民主
政治
を危殆に陥れて
政治
不安が私は起こると思う。だから、対話と協調ということが
政治
不安に陥れるのではなくして、対決主義こそが
政治
不安をもたらすものだということが私の信念でございます。そういうことで、今後の
国会
にも対処してまいりたいと考えております。 また、靖国神社の参拝の問題についてお触れになりましたが、御指摘のように、八月の十五日、私は靖国神社と千鳥ケ淵の戦没者墓苑を参拝いたしました。これはやはり戦後三十年であるという、歴史の、何といいますか、区切りであるといいますか、そういう一つの節目であるというか、そういう考えが私にあったわけでございます。八木君も御指摘のごとく、諸外国はどこでも国家、
国民
のために生命をささげた人々のみたまに、宗教とかイデオロギー、
政治
を超越して、だれもがいつでもお参りのできる共通の祈りの場というものを各国とも持っておるわけでございます。だから、
日本
の場合も、
国民
的合意のもとにこういう共通の祈りの場というものを持ちたいものだという強い念願を私は持つものでございます。そういうことで、個人の資格でありましたけれども、八月十五日に参拝をいたしたわけでございます。しかし、
憲法
二十条の三項による宗教と
政治
との分離の規定というものは厳格に守らなければならぬと考えております。 次に、
国会
解散について私の所信を御
質問
になりましたが、これはもう前から言うがごとく、
国民
の願いも、今日のような
経済
的難局をやはり
政府
は全力を挙げて打開してもらいたいということが
国民
の願いと私は受けとめております。したがって、全力を傾けてこの難局打開に当たる考えでございまして、私の頭の一隅にも解散という問題はないということを申し上げておきたいと思います。 また、今日の
中小企業
の問題について八木君はいろいろとお触れになりました。私も、
日本経済
における
中小企業
のウエートというものはよその国とは違う、
中小企業
が安定しないと
日本経済
は安定をしないということで、
中小企業
対策
には
政府
としても非常に配慮をいたしておるわけでございます。今回の非常な
不況
の中にあって、
中小企業
には特に厳しいものがありますので、第四次の
景気
対策
においても、
中小企業
金融
の円滑化であるとか、その他
中小企業
に対しては細かい
対策
を講ずることにいたしております。 また、私のライフサイクル計画と申しますか、総合
福祉
生涯計画とでも申すべきこういう計画についていろいろお話がございました。私は、人間の寿命というものを調べてみたことがあるわけですが、
昭和
十一年の人間の寿命と今日の人間の寿命とでは約二十五年間やっぱり人間の寿命が延びた。短い人生の中で二十五年間
平均
の寿命が延びたということは大変なこれは大きなやっぱり変化であります。こういう人間の生涯の計画の中にも大きな変化が生じておるわけでありますから、この長い人生を安心して、しかも希望を持って、努力する者は報いられるような
福祉
社会、まあ、そのためには人間の生涯のあらゆる段階において、
経済
的、社会的不安を除くための体系的な
保障
を与えられて、
国民
の一人一人が安心して、
自分
の信念に従って生きがいを追求しながら一生送れるような
福祉
社会、しかも外国の
福祉
政策をまねをするんでなくして、
日本
の風土に適した
福祉
社会、すなわち、自主的な努力を促し、みんなやっぱり国とか地方団体に頼るのではなくして、自主的な努力を促す機会の均等と社会的連帯によって安定を
保障
するような
日本
的な
福祉
社会ができないかということが私の年来の願いであったわけであります。こういう総合
福祉
の生涯計画というものに共鳴をされた若い学者、それが相当時間をかけて具体的な施策を検討して今回成案を得まして、東畑精一氏から私はそれをちょうだいをいたしたわけであります。むろん、この制度、慣行という面では、検討さるべき点が非常に多いのでありますけれども、この問題は、今日の段階において取り上げるべき大きな課題であると考えまして、
自民党
には生涯計画調査会を設け、
内閣
官房に生涯計画連絡
会議
をそれぞれ設置して検討を始めてもらっております。これは長期的なビジョンでありますから、すぐあしたから動き出すというものではございませんが、どうか、八木君の御指摘のような、
国民
的合意のもとにこの構想がひとつ日の目を見るように願っておるものでございまして、これからどうするかということは、手続も含めて十分この連絡
会議
とか調査会において検討をしてもらいたいと思うわけでございます。 また次に、爆弾のテロの暴挙なんぞについていろいろお挙げになりまして、私も八木君と同じように、この問題は大変に心配をいたしておるわけであります。
政府
といたしましても、総力を挙げて断固たる処置をとって、この種事件を未然に
防止
するということが大事である。これを
効果
あらしめるためには、御指摘のように、
国民
がもう暴力というものはどんな
理由
があろうとも絶対に許さないと、こういう
国民
の固い
決意
あるいはまた
国民
の協力というものが、私はこういうふうな事件を
防止
するためには絶対に必要だと思うわけでございます。
国民
の御協力を得たいと期待をいたしておるわけでございます。まあ、
政府
としては現行の法令を活用して取り締まりの徹底を図っておりますが、再発
防止
の観点から立法措置の必要性というものの有無についてもいま検討をいたしておるわけでございます。 しかし、私は最後に触れたいのは、八木君も御指摘になった、人間の心というものが大切であるということにお触れになりましたが、私は全くそう思うんであります。いま人間の心の問題というものを私は問われておる時代だと思う。何でも
自分
が、
自分
の言うこと以外は絶対に認めない、
自分
の考え方以外は切って捨てると、こういうふうな社会的な風潮というものが起こりましたならば、民主主義の社会というものは健全に育っていくものではないわけでありますから、
国民
生活
の場においても、
政治
の場においても、そういう社会的風潮というものを起こさせないように
防止
をする努力というものも、いろんな極端な行動というようなものを防いでいく一つの社会的な背景になる。人間の心の持ち方というものは、きわめてやはり重要な問題を今日投げかけておる、こういうふうに考えて、八木君の、人間の心が大切であるということは私も同感でございます。 また、松生丸事件、日韓会談等については外務大臣からお答えいたしますが、朝鮮半島の平和維持というものは、
日本
の安定、
日本
の安全にとってきわめて重要であることはいまさら言うまでもないと私は思います。朝鮮半島に限らず、アジア・太平洋のいかなる地域においても武力衝突が起これば
日本
の安全は脅かされるわけで、ましてや目と鼻の先の朝鮮半島にそのようなことになればまことに容易ならぬ
事態
と考えられますので、どのようにして朝鮮半島における平和を維持していくか、こういうことに対して、日米会談においてもこれが一番の大きな一つの関心事であります。日米首脳会談を、ある
野党
の方々は軍事力の
強化
というふうに評価をされる方がおりますが、これは事実に反するもので、私どもはフォード大統領と有事を話したんじゃなくして、朝鮮半島の有事をどうして防ぐかということが最大の関心であったということを明らかにいたしておく次第でございます。したがって、われわれは、朝鮮半島の平和維持というものが非常にきわめて重要である、そういう観点から朝鮮半島の緊張緩和に今後とも努力をしていく所存でございます。 また、安全
保障
と核防条約についての位置づけというお話でございましたが、
日本
は核武装をしない、これはもうほとんど
国民
の私は合意だと思う。一部に
反対
もあるかもしれぬが、
国民
のこれは合意である。亡くなられた佐藤前首相も非核三原則でノーベル賞までもらって国際的にも評価されたわけであります。そうして核武装をしないということが
国民
の
決意
であるとするならば、やはり核防条約は批准すべきもので、それをこう核防条約の批准をおくらしているというのは、核武装をするのじゃないかという疑惑を国際的に生じておることは事実ですね。だから、
日本
のこの安全
保障
政策というものに何かこう各国に不安定な感じを与えておることは私は否定できぬと思う。そのことが対日政策について不確定な要素になっている、疑心暗鬼をこう持つわけですから。こういうことはこの地域の安定に私は役立つとは思わないんです。やはり
日本
の安全
保障
という面から大きく考えてみても、やはり
日本
が核防条約に対しての毅然たる
態度
を示して、それを基礎にしてこれからは核戦争を
防止
することが人類の最大課題ですから、そういう意味において、核軍縮とかこの世界の恒久平和に対して、開発すれば開発することができるんだと、核武装もできる国がその開発の手を縛って国際社会において発言をするというのは説得力を持ちますね。できない国が言うんでないんだから、やろうとすればできる国がみずからその道を断ち切って世界に訴えるというのは迫力を持っています。そういう点で私はやはり核防条約というものを批准することが
日本
の安全のためにプラスである、こう判断するものでございます。 それから中東問題については、
所信表明
の
演説
でも申しましたごとく、国連安保の理事会の
決議
二四二号
——
私、外務大臣をいたしておったわけであります
——
これを全面的に実施するということが、この中東和平のこれは非常に大きな原則だと思います。それにパレスチナ人の国連憲章に基づく正当な権利の
回復
というものを加えまして
——
二四二号の中ではそれはなかった。これを加えて、これがやはり中東和平の基礎だと思いますから、こういう大きな原則のもとに、中東に公正かつ恒久的な平和が
実現
するように、われわれとしても
日本
の力で及ぶ限りの協力をしていく考えでございます。まあ、そういう意味においてエジプトとイスラエルの新協定成立は、これは一つの全面的な解決ではありませんが、やっぱり一歩一歩ずつ積み上げていくよりほかには、一気にすべての問題解決できないわけでございますから、こういうことに対しては私は評価をいたすものでございます。 他はいろいろ各大臣に対しての御
質問
の、大臣の名前の御指定もございましたから、各大臣からお答えをいたす次第でございます。(拍手) 〔
国務大臣
大平正芳君登壇、拍手〕
大平正芳
15
○
国務大臣
(大平正芳君)
財政運営
の
やり方
につきましての御質疑がございました。仰せのとおりでございまして、歳入、歳出両面にわたりまして、厳しい
態度
で臨まなければならぬわけでございます。 歳出につきましては、すでに本年度も節減をお願いいたしておりますけれども、定員、機構の簡素・合理化を一層徹底を図り、厳しい政策的な選択をいたしまして、硬直化がこれ以上進むことのないように配慮してまいりたいと考えます。 歳入につきましては、現行税制のもとでの増収につきましてもいろいろ努力をいたしておりますこと御案内のとおりでございますが、いずれ増税をお願いしなければならないのではないかと思いますけれども、いまのような
経済
の
状況
におきまして増税をお願いすることはいささか無理でございますので、とりあえずは、不本意ながら公債に依存せざるを得ないことと思うのでございます。 第二に、
景気政策
について、
金融
政策を早目に弾力的に活用すべきでないかという御意見でございました。私、全く同感でございまして、さればこそ、
政府
といたしましても、金利全体につきましてこの際引き下げを図りまして、
景気
の立ち直りに寄与いたしたいと努力をいたしておるところでございます。 第三に、公債政策についてのお尋ねでございました。仰せのように、大量の公債の
発行
自体について慎重を期さなければならぬことは当然でございますが、その公債の消化につきまして、資金運用部資金の活用、
発行
条件、税制上の措置等につきましては、仰せのような趣旨を体しまして、目下鋭意検討をいたしておるところでございます。 第四に、
雇用
政策についての
財政当局
の所見が求められたわけでございます。
雇用
政策は、現下
経済
政策の一番根幹になる重要な政策でございますので、
財政
面からもその推進に一層貢献してまいりたいと考えております。 最後に、地方
財政
についてのお尋ねでございました。仰せのように、
景気
の後退を反映いたしまして、交付税額の減収、地方税の減収、そういったものがあらわになってまいったわけでございまして、この問題につきましては、見込み額の確定を待ちまして自治大臣とよく相談いたしまして、仰せのような趣旨を体しながら具体的に処置
方法
を決めてまいりたいと考えております。
景気
対策
に伴う地方
負担
の処置につきましても仰せのように配慮してまいるつもりでございます。もとより地方自治団体自体におかれましても、中央と同様のお気持ちで
財政危機
に対処していただく自助努力を私からも要請いたしたいと思います。 超過
負担
の解消でございますが、これは
財政危機
に見舞われたからと申しまして、既定の方針で超過
負担
を解消していこうというもくろみを変えるつもりはございません。五十年度におきましても千八百五十九億円という
予算
を計上いたしまして超過
負担
の解消に努めておりますけれども、今後も既定の方針に沿いまして鋭意この超過
負担
の解消には努力してまいりたいと思います。(拍手) 〔
国務大臣
福田赳夫君登壇、拍手〕
福田赳夫
16
○
国務大臣
(福田赳夫君)
景気
対策
には心理的
効果
が大事だと、そこでこの際、
政府
の方では
景気
対策
を
物価対策
に優先させる必要があるんじゃないかと、こういうような御所見でございます。まあ、ベテランであられる八木さんのことでありますので、おそらくこの趣旨は、
物価
の方もなかなか落ちついてきたじゃないかと、そういう状態を踏まえて、この際は
景気政策
に大胆な施策を打ち出したらどうだと、こういう御提言かと思うんです。そうでありますれば、私は全く全面的に同じ考えでございまして、いままさにそのような方向で施策を進めておる、こういうことでございます。 ただ、世の中の一部には、もう
インフレ
はどうでもいいと、
物価
の方はどうでもいいと、もう一切
景気政策
でやったらどうだと、こういうことを言う人があります。まあ、恐らく八木さんはそういう一部の意見じゃないと思いまするけれども、もし
物価
はどうでもいいんだと、
景気政策
もっぱらやれという、そういう考え方に対しましては、
物価
のことを考えなけりゃ、
景気政策
をとってそうして
景気
を
上昇
させる、いともこれは簡単です。しかし、それに伴って
インフレ
が起こる。これはもうつかの間のしかし繁栄なんです。あの一昨年の
インフレ
、その結果この
不況
が出てきた。今日、まあそれに直面しているわけですが、ここでまた
インフレ
政策をとったということになれば、再びまた深刻な
不況
になる。そればかりじゃない。
インフレ
社会ということになれば、社会の秩序、また社会そのものを
混乱
させるということになりますので、
景気政策
はとりまするけれども、
物価
、
インフレ
、この問題につきましては目を離すことはできない。われわれの期するところは、
インフレ
もまた
克服
しなけりゃならぬ、同時に
景気
を
上昇
過程
に持っていかなきゃならぬ、そういうことでありますので、ひとつ御理解のほどをお願い申し上げます。(拍手) 〔
国務大臣
長谷川峻君登壇、拍手〕
長谷川峻
17
○
国務大臣
(長谷川峻君) 最近の
不況
によりまして、
完全失業者
は、本年七月で八十七万、
失業
率は一・六%となっております。特に、この
完全失業者
の中で男子
中高年齢者
の割合が非常に高まっているということが非常に注目されることでありまして、今般の
政府
の第四次
景気
対策
の
効果
が本年度下期以降に浸透してくるもの、それを期待し、待っているものでありますが、
企業
の中におきましては、当面、残業規制の緩和、さらには一時帰休、そういうものの解除、そちらの方をやって、
雇用
回復
そのものというものはなかなか注目してやるべき姿じゃなかろうか、こう思います。 先ほど
大蔵大臣
からもお話がありましたように、現下の
雇用
問題は大変な問題でございますから、ありとあらゆる持っております政策をフルに活用して、先ほど八木さんからお話しのありました
雇用
調整給付金などは九五%が
中小企業
の方々に適用されているわけでありまして、これによっての
失業
の
防止
、あるいはまた
失業
している方々に対しましては
雇用
保険の給付金、さらにまた職業
転換
給付金制度を活用しながら機動的に職業紹介、さらにまた、いまはどうしても職業訓練の必要な時代ですから、そういう訓練の手当などを出しながら再
就職
の促進に全力を尽くしたい。 いまから先は
経済
の安定
成長
の時代でございますから、ここで考えなきゃならぬのは、やはりいままでのようなことじゃだめでして、
雇用
対策
基本
計画を
見直し
をやっておりまして、こういうときで特に高年齢者の
雇用
対策
、産業構造の変化に対応した職業
転換
対策
というものを
重点
にしながら、
完全雇用
推進に向かって
内閣
全体として推進してまいりたい、こう思っております。(拍手) 〔
国務大臣
宮澤喜一君登壇、拍手〕
宮澤喜一
18
○
国務大臣
(宮澤喜一君) まず、松生丸の問題につきまして、その後のことを報告をせよという御
質問
でございました。 一昨日の夕刻、日赤から先方の赤十字に対しまして、二人の負傷者の帰還がいつごろできるであろうかということ及びその
方法
につきまして照会をいたしております。これについての返事は、ただいま現在、まだ到着をいたしておりません。 なお、北鮮に対します申し入れにつきましては、いろいろあらゆる場合を想定して事務的には準備を実はいたしております。事実の確認等から入らなければならないのではないかと考えておりますが、いずれにいたしましても、負傷者の帰還ということを先決にいたしたいと思っております。 日韓閣僚
会議
につきましては、仰せのように、このたびの閣僚
会議
で相互の理解を増進することができたと考えておりますが、共同声明の中で、両国間の善隣友好、協力の精神で東南アジアの平和安定に貢献をしようではないか、また、現在存在している緊張緩和について両国がいろいろ国際的な場で協力をしようではないかというようなことを
約束
いたしておりまして、御指摘のように、両国間の理解の増進に寄与するところがあったと考えております。 それから最後の一点は、日中間の平和友好条約交渉に関してでございまして、ニューヨークの国連総会において中国の外相とどのように接触をするのかというお尋ねであったわけでございます。で、できますならば、中国の外相とはかなり長い時間をかけて話をしてみたいと考えておりまして、まあ私の気持ちといたしましては、この交渉を過去九カ月ほどやってまいりまして、どうも思わしくないということについて、何か両国間に思い違い、誤解をしていたようなことはなかったであろうか、
責任
者が二人してこの問題を話し合いますのは初めてでございますので、まず、その辺のところから誤解はなかったであろうかというようなことを確かめておかなければならないと思いますし、それから早期の締結ということに
わが国
としては依然として熱意を持っているわけでございますけれども、その点中国はどうであろうかというようなこと、また、仮に早期妥結に両方とも熱意を持っておるとすれば、それをいままで妨げてきた障害といったようなものは何であったかといったようなことを少し時間をかけてゆっくり話をしてみたいと思っておりまして、あるいは場合によりますと、もっと具体的に覇権というものをどういうふうに考えるべきか、考え方の意見交換をするというようなことまで、場合によりまして話が及ぶこともあるかと存じますが、いずれにいたしましても、
基本
的な心構えはただいま申し上げましたようなことで話をいたしてみたいと考えております。 中東問題、日米につきましては、
総理
の御
答弁
がございましたので省略をさせていただきます。(拍手)
前田佳都男
19
○副議長(前田佳都男君) 質疑はなおございますが、これを次会に譲りたいと存じます。御異議ございませんか。 〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
前田佳都男
20
○副議長(前田佳都男君) 御異議ないと認めます。 本日はこれにて散会いたします。 午後零時三十一分散会