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1975-11-20 第76回国会 参議院 法務委員会 第4号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十年十一月二十日(木曜日)    午前十時十三分開会     ―――――――――――――    委員異動  十一月十九日     辞任         補欠選任     久次米健太郎君     梶木 又三君      沓脱タケ子君     橋本  敦君  十一月二十日     辞任         補欠選任      岩本 政一君     高橋 誉冨君      矢田部 理君     上田  哲君     ―――――――――――――   出席者は左のとおり。     委員長         多田 省吾君     理 事                 大島 友治君                 高橋 邦雄君                 佐々木静子君                 白木義一郎君     委 員                 佐多 宗二君                 高橋 誉冨君                 福井  勇君                 町村 金五君                 中村 英男君                 橋本  敦君                 下村  泰君    国務大臣        法 務 大 臣  稻葉  修君    政府委員        法務大臣官房長  藤島  昭君        法務省民事局長  香川 保一君        法務省刑事局長  安原 美穂君        法務省矯正局長  長島  敦君        法務省保護局長  古川健次郎君    最高裁判所長官代理者        最高裁判所事務        総局刑事局長   岡垣  勲君    事務局側        常任委員会専門        員        二見 次夫君    説明員        警察庁刑事局捜        査第二課長    平井 寿一君        運輸省海運局総        務課長      犬井 圭介君     ―――――――――――――   本日の会議に付した案件 ○船舶所有者等責任制限に関する法律案  (内閣提出衆議院送付) ○刑事補償法の一部を改正する法律案内閣提  出、衆議院送付) ○検察及び裁判の運営等に関する調査(宅地建物  取引業法違反問題に関する件)     ―――――――――――――
  2. 多田省吾

    委員長多田省吾君) ただいまから法務委員会を開会いたします。  委員異動について御報告いたします。  沓脱タケ子君、久次米健太郎君が委員辞任され、その補欠として橋本敦君、梶木又三君が選任されました。     ―――――――――――――
  3. 多田省吾

    委員長多田省吾君) 船舶所有者等責任制限に関する法律案を議題といたします。  質疑のある方は順次御発言願います。
  4. 白木義一郎

    白木義一郎君 最初に、船舶責任制限についての国際条約が一九五七年に結ばれておりますが、現在までにすでに二十六カ国が批准を終えて、主要海運国のうちではアメリカ及びわが国等がいまだ批准をしておりません。それをためらわせた原因はどういうところにあるのか、その間の事情をまずお伺いをしたいと思います。
  5. 香川保一

    政府委員香川保一君) 条約が成立いたしましてから確かに時日が相当たっておるわけでございますが、今日この条約批准国内法整備をお願いしておりますのは、条約が発効いたしましたのが昭和四十三年でございますが、その当時まではわが国海運業界における実力と申しますか、企業能力がこの条約批准するまでに至っていないという判断があったようでございます。昭和四十三年ごろからわが国海運業界実力をつけてまいりまして、第一級の海運国になってまいりました関係から、この条約批准すべきだという声が上がってまいりました。他方わが国のそれまでとっております、今日までとっております船舶責任制限法制としての委付主義が時世に適合しないというふうなことから、これの改正が問題になっておったわけでございます。  さようなことで、御指摘条約批准が問題になってまいりましたが、その当時から、御承知のとおり船舶の油濁事故が相当大規模のものが生じておりまして、どうしてもこの油濁の事故が莫大でございますので、船舶所有者責任制限条約だけの批准にとどまらず、油濁関係条約もあわせて批准しないことには実益がないというふうなことも考えられまして、この油濁の条約批准するに当たりましては当然国内法整備しなきゃならないということで、国内法制定作成に尽力してきたわけでございます。  で、やっとそれが一昨年完了いたしまして、昨年の通常国会条約批准とともに国内法法案提出を見たわけでございます。不幸にして前の国会では審議未了と相なりまして、今国会にお願いしていると、かようないきさつでございます。
  6. 白木義一郎

    白木義一郎君 その国際条約が締結されてから約十年を経た一九六七年の十月に、運輸省から法務省に対して国際条約批准国内法化の促進についての公式の要請があったそうですが、その内容を概略御報告を願いたいと思います。
  7. 香川保一

    政府委員香川保一君) とりたてて内容を御紹介するほどのものはないと思いますが、先ほど申しましたようないきさつから、ぜひとも早急に船舶所有者責任制限条約批准をしたいので、国内法整備について法務省の方で検討願いたいと、こういう趣旨のものでございます。
  8. 白木義一郎

    白木義一郎君 そこで、この本法案被害者保護立場からお尋ねしたいと思いますが、この法律案は、加害者と言いますか、特に海上企業保護被害者保護のどちら側に向いた法案なのかどうか、率直にお伺いしたいと思います。
  9. 香川保一

    政府委員香川保一君) 被害者保護重点を置いておると申し上げて差し支えないと思うんでありますけれども、全くそれならば企業者の方の損害賠償責任の面における合理化というふうな点がないかと申しますと、これはもちろん御承知のとおり、責任限度額を設けて責任制限をいたしておるわけでありますから、その限りにおいては企業者側保護と言えば言えるわけでございます。しかし、実質的に考えますと、さような責任制限をすることによりまして、被害者合理的な救済が図られるというふうな、いわば調整的な政策配慮と言えようかと思うんであります。さような意味では、いずれに力点を置いているかというのは見方によっていろいろございましょうけれども、私どもの気持ちといたしましては、被害者救済合理的、円滑にされるようにという配慮から、その面の企業者側賠償責任の遂行が容易になるようにというふうな意味で調整いたしておる、かような考えでございます。
  10. 白木義一郎

    白木義一郎君 いまの御答弁のように、被害者保護にウエートを置いた法案であるというならば、その被害者保護重点を置いたという具体的な例をひとつ説明をしていただきたいと思うんです。
  11. 香川保一

    政府委員香川保一君) まず第一に、現行の商業では御承知のとおり船舶事故が生じました場合に、その船舶委付して責任を免れるという制度になっておるわけであります。この委付制度は、かつての一つ船会社が一隻の船舶企業を経営しておるというふうな時代におきましては、財産として目ぼしいものはその当該船舶しかないわけでございますから、これを全部投げ出さして責任を免れさせるということは、一面合理的な理由があったと思うんであります。しかし、今日の時代になりますと、企業それ自身を一隻の船舶で運営されておるというふうなことではないわけでありまして、ほかに多数の財産があるわけであります。その場合に極端な場合を申しますと船舶事故で沈没いたしました場合に、その沈没した船舶だけを委付して損害賠償責任を免れるということに相なりますと、申すまでもなく被害者救済にはなはだ欠ける結果に相なるわけであります。さような委付制度を廃止いたしまして、金額賠償責任制度をとっておるという点が、何と申しましても制度的には被害者保護がその面で図られると言えようかと思うんであります。そのほかに、この法案によりまして責任制限されるわけでございますけれども、その責任制限の態様と申しますか、たとえば船長その他の船員船舶所有者に対する債権、いわゆる労働者債権と言えようかと思いますが、そういう債権はやはりその性質上、責任制限をかぶせない責任制限ができないというふうなことで保護を図っておるというふうな点も一つの例かと思うんであります。さような点が主なところだと思います。
  12. 白木義一郎

    白木義一郎君 そうしますと、公共性を有する海上企業被害者の両者を同時に保護しなければならないというようなことになると思います。ところで、その場合にどこに接点を置くかということが非常にむずかしい困難なことだろうと思いますが、いずれにしても接点を置かなければならないとなると、どちらかが犠牲をこうむるような事態が出てくる。その場合に、結局被害者の方に犠牲が回っていくようなマイナスの面が生じてくるように思うんですが、その点はどのようにとらえていらっしゃるでしょうか。
  13. 香川保一

    政府委員香川保一君) 委付制度は別にいたしまして、船舶事故が故意・過失によって生じた場合の損害賠償債権というのは、これは全額支払われるべきものであることは言うまでもないわけでありますが、その原則に対してこの法律案責任一定額制限しておる、その面だけを考えますと、被害者の方に不利だということは言えようかと思うのであります。しかし、抽象的にその損害賠償債権が巨額のものとして発生いたしましても、その弁済がされなければ、これは絵にかいたもちであるわけでありまして、その弁済をできるだけ合理化すると申しますか、円滑になされるように配慮するという必要があるわけでありまして、その場合に、やはり一方の船舶企業者の方の――これは御承知のとおり海運業それ自身国民経済にも及ぼす影響が大きいわけでございますので、それが合理的にその賠償責任を果たし得るというふうな形にするためには、一定額責任制限いたしまして、それを合理的に配分するというふうな形にならざるを得ないわけでございます。これは各国とも海運業重要性にかんがみまして、さような法制をとりつつあるわけでございまして、ただその場合に、まさに一定限度責任制限する以上は、抽象的に申し上げれば、それだけ被害者救済が十分でないという面が出てくることは否定できないわけでございますが、他方船舶所有者責任を遂行するために保険制度が発達しておるわけでありまして、この保険制度によりまして足らざるところをカバーしていくというふうなことも配慮されておるわけでございます。海難事故による損害というのは予測しがたい大きなものであるわけでございますので、その保険制度がやはり合理的に運営されなければならないという一方の要請があるわけであります。さような面から、責任制限をする面があることによりまして、保険制度合理的に運用されるということも否定できないと思うのでありまして、さような調整を図っておるわけでございます。
  14. 白木義一郎

    白木義一郎君 この法律の第七条では、責任制限額人損物損の別及び船舶の大きさによることとなっておりますが、この点わかりやすいように具体的な例を挙げて御説明をお願いしたいと思います。
  15. 香川保一

    政府委員香川保一君) 御指摘のこの法案の七条、これは条約三条一項を受けたものでございますが、例示的に申し上げますと、物損のみが生じた場合には船舶の一トン当たり千金フラン、約二万四千円になろうかと思います。物損人損が同時に生じた場合には、一トン当たり三千百金フラン、約七万四千円でございますが、かような基準になっておるわけであります。したがって、たとえば一万トンの船舶事故を起こした、そのときに物損だけが生じたということに相なりますと、その場合の責任限度額は約二億四千万円、物損人損が生じました場合には約七億四千万円と、かような計算になろうかと思います。
  16. 白木義一郎

    白木義一郎君 その場合に、物損人損があわせて行われた場合にそういう条約計算になる、責任制限額がいまお述べになったような計算になるわけですが、もしその人損の場合に、人数によってはあるいはまた――あくまでも制限額の内で、何人人損があろうともその制限額で抑えてしまうのか。一人の場合と十人の場合と百人の場合と、これは十分の一、百分の一というようなことになりはしないかということになりますと、この制限額というのは人損内容によっては非常に不公平な面が出てくるということを心配するわけですが、その点はどういうふうにとらえたらよろしいんでしょうか。
  17. 香川保一

    政府委員香川保一君) まさに、御指摘のように人損が生じた場合の被害者の数が多ければ多いほど、責任限度額配分することに相なりますので、一人当たり配分額がそれだけ少なくなる、数が少なければそれだけ一人当たり配分の額が多くなるというふうな、いわば不均衡が生ずることは否定できないと思うんであります。ただ、この場合に人損につきましては現在保険制度が非常に活用がされておりまして、一人当たり幾らという形での保険が付されておることがございますので、先ほど申しましたような不都合がありましても、他方保険によってカバーされるということで、結果的には不合理は是正されるんじゃないかと、かように考えております。
  18. 白木義一郎

    白木義一郎君 そういう局長の御説明だと心配はないというようなことになりますけれども、やはり一人の場合と百人の場合と、保険掛けているからと言いますけれども、この制限額の中における配分というのは、やっぱりどうしてもこれは不均衡であるのが当然だということになりますけれども、その点国際的にまだまだ検討の余地があるんじゃないかと、こういうようにわれわれ考えるわけですが、次に十三条の第二項では、わが国の内航船旅客に対する制限はできないこととされておりますが、その理由をひとつお述べいただきたいと思います。
  19. 香川保一

    政府委員香川保一君) ただいまお示しの条文、十二条ではなくて三条二項だと思いますが。
  20. 白木義一郎

    白木義一郎君 そう、三条ですね。
  21. 香川保一

    政府委員香川保一君) 三条二項によりまして、内航船旅客に対する責任制限から外しております。この理由を申し上げますと、本来条約におきましてはこの責任制限をすることができることになっておるんでございますけれども、内航船の場合には現実的に相当多数の旅客が乗船している実情にあるわけでありまして、その場合に、もし死傷等人損事故が発生しました場合に、先ほども御質問のありましたような責任制限を取り入れますと、被害者一人当たり賠償額が相当低額になるというおそれがあるわけでありまして、被害者救済に欠けるのではないかというふうな配慮から、内航船はこの責任制限をかぶせないということにいたしておるわけでございます。
  22. 白木義一郎

    白木義一郎君 そこで、わが国船舶企業現状で、国外船あるいは国内船という問題で、現在非常に国外船が少なくなっているというような現状だろうと思いますが、その現状はどういうふうになっておるでしょうか。
  23. 犬井圭介

    説明員犬井圭介君) お答え申し上げます。  いまおっしゃいました国外船国内船の問題でございますが、旅客船のことでございましょうか。
  24. 白木義一郎

    白木義一郎君 そうですね。
  25. 犬井圭介

    説明員犬井圭介君) 現在、国際旅客船というのは非常に少なくなっております。日本の場合で申しますと、定期的に日本外国との間を結んでいる旅客船といいますのは関釜フェリーという会社がありますが、これは関門と韓国の釜山を結んでいる定期航路でございますが、これしかございません。  あとは不定期で、クルーザーという観光客を乗せて走れるものが若干ございますが、そういう国際的な旅客航路というのは現在はほとんどないというふうに御理解いただいて間違いないと思います。
  26. 白木義一郎

    白木義一郎君 ブラジル向け移民船があったんじゃないかと思うんですが、どうですか。
  27. 犬井圭介

    説明員犬井圭介君) 戦後、ブラジルヘ移民を促進するということで、計画造船等ブラジルヘ移民船を数隻つくった事実はございます。しかし、現在ではブラジルヘ移民というのは余り行われておりませんし、それから、そういうつくられた船も大分古くなっておりますし、ブラジルヘ移民のために定期的に船を動かすというようなことは行われておりません。
  28. 白木義一郎

    白木義一郎君 それでは、その移民船にかわる移民の運送ということは、現況は飛行機でやっているわけですか。
  29. 犬井圭介

    説明員犬井圭介君) 申しわけありませんが、私も現在の移民の輸送の実情がどうかということは詳しくございませんが、先生がおっしゃいましたようにほとんど飛行機で行われている、荷物だけ船で運ばれているというのが実情だと思います。
  30. 白木義一郎

    白木義一郎君 海上企業の継続のためには、このような責任制限額制度が必要であるということはわかるわけですが、たとえば労働者である船員が他の船員過失によって死亡または傷害を受けた場合に、この船員船舶所有者に対する債権責任制限されたのでは問題があるわけです。この点はどのようになっているか、職員の船舶所有者に対する債権制限されてしまうということではちょっと困るんじゃないか、こういうように思うんですが、この点いかがでしょう。
  31. 香川保一

    政府委員香川保一君) 御指摘船長その他の船員船舶所有者に対する損害賠償債権につきましては、その債権特殊性にかんがみまして、この法案の四条二号の規定によりまして責任制限ができない、したがって船舶所有者無限責任を負うと、かような結果にいたしております。
  32. 橋本敦

    橋本敦君 この法案につきまして、いま香川局長から、どちらかと言えば被害者の方に重点を置いた法だという趣旨のお話もあったんですが、しかし、先ほどの御答弁を伺っておりましても、必ずしもそうなり切っていないという面がやっぱりあるように私は思うわけです。そこで、その点に関して若干お尋ねをしたいんですが、たとえば零細漁民の場合を例にとってひとつ御説明を願いたいんですが、三トンあるいは五トン、こういった小さな船で、そしてそこでは船長船員といういわゆる労働契約に基づく労使関係がなくて、まさに家内労働的な状況で、成年の長男とあるいは妻と、こういった者が一緒に乗って操業しておる、そういう場合も零細漁民ではたくさんございます。そういう場合に、たとえば三百トンぐらいの船が外国から入ってくることもあるわけです。それが衝突事故を起こして転覆、沈没、死亡したという事故が起こった場合に、いまの制限金額主義でいきますと、三百トンぐらいですと、それに七万四千円掛けましても大体二千二百万ぐらい、死んだ方の数が四人といたしますと六百万ぐらいしか制限金額主義では補償を受けられないという状態がある。しかも、労働契約なり船員保険なりというのがないという状況もございます。そういった場合の零細漁民に対する補償は一体どうなるだろうか、この点局長はどのようにお考えでしょうか。
  33. 香川保一

    政府委員香川保一君) その場合の、この法案による漁民被害救済という点は、先ほど申しましたような責任制限が一律に行われておりますので、死亡事故が小さな船舶で多数生じたという場合には、確かに責任制限の枠内での救済額というのは不十分な結果に相なろうかと思います。したがいまして、そのような場合を予想いたしまして、先ほど申しましたように、事故に備えての保険に付するという行政指導が十分行われておるわけでありまして、この面の行政指導も今後とも続けられるように運輸省から承っておりますので、保険によって十分カバーできるんではないかというふうに考えておる次第でございます。
  34. 橋本敦

    橋本敦君 保険ということでカバーしながら行政指導を行うということですが、これは強制的に保険に加入させるという方法がありますか、ありませんか。あくまで行政指導ですか。
  35. 犬井圭介

    説明員犬井圭介君) お答え申し上げます。  保険につきましては、現在PI保険というものが、通常商船が相手に損害を与えた場合に、それをカバーする保険として存在しておりますが、これは任意保険でございまして強制保険ではございません。しかし、小型船はともかく、千トン以上の大型船につきましてはほとんどPI保険に入っているのが実情でございます。
  36. 橋本敦

    橋本敦君 したがって、いま私が指摘したような零細漁民に丸して、小船舶つまり千トン以下が事故を起こした場合は、これは保険によってカバーするといっても、これはPI保険に入っていないということも多いという事例が出てくるわけなんですね。だから、これはやっぱり零細漁民立場から見ると問題のある法案だというように一つはなろうかと思うんですね。  そこで、犬井海運局総務課長もお越しですから、海運局からいただいた資料に基づいて質問をさしていただきますが、ちょっと答弁資料、済みません渡してくれますか……。いま民事局長にお渡しいたしました資料は、運輸省海運局犬井総務課長の方を通じていただいた資料です。  第一枚目を見ていただきますと、先ほど香川局長唯一外航旅客船舶だとおっしゃった関釜フェリー、これについて、これが相手方船一万トン、これを仮定して、事故が起こった場合の責任制限金額主義を適用すればどうなるかということで試算をしていただいた表なんです。定員満載状態の場合、これは四百六十五名でございますから、だから仮に全員死亡するという悲惨な事故が起こった場合には、責任総額が、相手方一万トンですから七億四千四百万円、こういう金額になります。これを定められた定員総数四百六十五人で割ってみますと、一人当たり責任限度額が百六十万という程度になる、こういう計算一つあるわけですね。これは衆議院の方でも議論されたところですから、これ以上の議論はいたしませんが、形式的に言えば、先ほど香川局長がおっしゃったように、人損は、人数が多い場合は一人当たり配分額が減ってくるという一つの例として、唯一外航船舶によって試算をした数がこういうことになっておるということをお示ししたわけです。  そこで、私が質問をしたいのは二枚目以下でございますけれども、これはこれまでの事故で先ほどおっしゃったPI保険によってカバーされた金額と、それから今度の責任金額主義によって補償される金額とを、過去に起こった海運事故の例をもとにして、海運局の方から実際あった事例もとにして試算をしていただいた表なんです。  そこで、一枚目の表を見ていただきますと、まず五百万円を超過した件数が二十四件、これは実際起こっておりまして、責任限度額を超えるものが六件という表がございます、右上でございますね。そこで、次のページを開いていただきたいのですが、この六件の内訳です。この六件の内訳が次の表の(2)として「責任限度額を超えた事故の例」というのがございます。これを見ていただきたいんですが、A船からB、C、D、E、F船まで、船の名前は教えていただけませんので、船の名前が問題でありませんからこれで結構なんですが、これが実際に起こった例ですが、これでいきますと、まず一番上のA船の場合、これはPI保険によって支払われた額がそこに記載してあります。その次に責任限度額でこれを試算をすればどうなるかという額が記載をしてあります。この左の欄と右の欄を比べてみますとわかりますことは、一様にPI保険で支払われた実際あった事故補償金額よりも、責任限度額金額の方が低くなっているという過去に起こった実際の事例、これがここに出ておるわけですね。だから、物損にしろ人損にしろ、多い場合は三千万円近く低い額に責任限度金額主義で抑えられる、こういうことになるわけです。こういうことになっているという法律なんですが、これについて香川局長が、先ほど低い場合もあり得るとおっしゃったが、実際起こった事故でこれだけ低いという計算が出ている。これについてどのようにお考えでしょうか。
  37. 香川保一

    政府委員香川保一君) ただいま資料に基づいてお示しの例は、今回の法案による責任限度額計算して、その限度額を超えた事故事例ばかり六件おっしゃったわけでございますので、当然これは責任限度よりも上回っておるわけでございますが、先ほどお示し資料責任限度額を超えるもの六件に対しまして、以下のものが十五件あるということになっておるわけでございます。確かに、これは保険によってカバーするといたしましても、事故を起こした企業側の財産能力と申しますか、支払い能力いかんによって、現実に支払われる賠償額のトータルに差異が出てくるということは、これはある程度やむを得ないことだと思うのでございます。ただ、その間のいろいろ話し合い、示談がされる過程におきまして、現行法のような委付主義というふうなものが法制としてございますと、やはりいざというときには委付するぞというふうなことで、やはりどうしても被害者救済がその面から後退するということは否定できないだろうと思うのであります。しかし、幸いにも船舶事故を起こした会社の方では、一つ企業責任と申しますか、あるいは委付がはなはだ不合理であるということを考えて、良識ある線でいろいろ示談を進めておられる、さような結果が先ほど申しましたような数字に結果として相なっておると、こういうふうに考えるわけでございまして、したがって今回の責任限度額というものが設けられることによりましても、委付よりは被害者救済はより図られるわけでございますので、さような面から、責任限度額を設けたことによって、現実に支払われる損害賠償額が常に限度額ないしはそれ以下ということになるというふうな運用は、今日までの実績から考えましても、とうていされない。事故によってやはり企業側の良識をもって補てんできる限りの賠償を補てんすると、かような運用になると、そういうことも期待いたしておるわけでございます。
  38. 橋本敦

    橋本敦君 いまお示しした例は、国内で発生した事故です。もう一つ事故の発生場所が外国で起こった場合で、海運局資料でいただいた責任限度額を超えるもの二件、これについては三枚目にございます。これを見ていただきますと、A船とB船と二件ございますが、A船の場合に、いずれも物損ですけれども、実際の支払い額がそこに示されております三億三千四百二十万円。ところが今度責任限度額になりますと二億八千二十万五千円ということになる。こうなりますと、これは先ほど指摘した国内発生の三千万あるいはそれ以下の差額じゃなくて、五千万円からの開きが出てくる。これだけ低い責任限度額に抑えられてしまう。これは実際に三億三千万円支払われているんですね。ですから、これがこういう程度に低い額に抑えられてしまうということも、金額の差から言うと大変な低いところに抑えられるわけです、五千万から違うんですから。そういう場合に、おっしゃった良識をもってとか、あるいは保険でカバーというようなことがスムーズにいくかどうか、これもまた疑問があると思うんですね。だから、私はこの金額制限主義ということが実際にいままで起こった事例から見て妥当かどうかということについては十分検討しなきゃならない要素があるというように一つ考えているわけです。  そこで、最後に一点質問をしたいんですが、先ほど私は零細漁船の場合の質問をいたしました。その場合に、相手方に十分の故意、過失がある場合に、民事訴訟法のいわゆる不法行為によって全額損害賠償請求訴訟を裁判所に起こしたといたします。その訴訟を起こすこと自体と、それから責任限度金額主義ということで、相手方が裁判所に責任限度金額主義を申し出るということをとった場合に、訴訟が一体どういうようになるだろうかということについても不安があるわけですが、そこらあたり民事局長としては裁判実務を十分お知りでございますけれども、お見通しなり御見解はいかがなものか、お聞きかせいただきたいと思います。
  39. 香川保一

    政府委員香川保一君) 一つ船舶所有者事故を起こしまして、責任制限の申し立てをいたした場合で考えますと、御承知のとおり、この法案によりますと、責任制限ができる債権ということで一査定の裁判があるわけでございます。その査定の裁判があった場合に、被害者の方があれは責任制限できる債権ではないと、あるいは額に不服があるというふうなときには、その査定の裁判に対して不服の申し立てができる、異議の訴えと言っておりますが、異議の訴えを提出ができる。この異議の訴えのところで、これはまあ訴訟行動になるわけでございます。そのところで決着がつけられるということが考えられるわけでございます。ただ、例外的にさような手続の中でそのことの黒白をつけというやり方でなくて、当然責任制限できないものということで通常の民事訴訟を提起しておるというふうな場合には、その民事訴訟におきまして、当該原告が、まさに責任制限できない債権であり、債権のトータルはこれこれというふうな判決をもらったといたしますと、その判決に基づいて当然船舶所有者の一般財産に対して強制執行をしてその債権の満足を得る、かようなことになるわけでございます。  したがいまして、さような訴訟を起こしておる場合には、勝訴の判決が得られれば、いま申しましたようなことで債権の満足は得られるということもあり得るわけでございますが、万一敗訴して、これは責任制限がされる債権だというふうなことに相なりますと、そちらの方では結局救済が図られない。他方、こちらの方のこの査定の裁判に基づく責任制限額配分の手続が進行するわけでございますから、それが済んでしまいますと元も子もなくなると申しますか、両方ともうまくいかなくなってしまうというふうなことになるおそれがあるわけでございますね。そこで、そういう場合にはこちらの方の査定の裁判に対して不服は言うといたしましても、責任制限される債権だということに相なった場合には、これだけの債権の配当を受けたいということで、条件つきにと申しますか、さような形で届け出をするというふうな道を開いているわけであります。  さようなことで、その手続の進行過程をにらみ合わせながら、いま申しましたような形をとることによって、どっちに転んでも大丈夫だというふうなやり方をしていただかなきやならぬという面があろうかと思いますが、さようなことで十分御心配のような点がなく救済が図られるんじゃないか、かように考えておるわけでございます。
  40. 橋本敦

    橋本敦君 いま、局長は十分心配なくとおっしゃいましたが、実際、民事訴訟の基本的な体系と非訟手続によるこのような新しいたてまえと、その相互間の関係は、これは零細な漁民船員にとっては非常に複雑で難解です。したがって、そういう問題も含めて今度のこの責任限度制限主義が本当に救済を図られるかどうか。局長がおっしゃったような、訴訟上のたてまえの責任制限できる債権かどうかというむずかしい問題を含めて、かなり議論があって、十分な救済が図られるという明確なたてまえが――そういう場合はなかなか被害を受けた者から見れば十分明確でないというような感じがこの法案にしてならないわけです。  一応、以上問題点を指摘して、私の質問を終わります。     ―――――――――――――
  41. 多田省吾

    委員長多田省吾君) 委員異動について御報告いたします。  矢田部理君、岩本政一君が委員辞任され、その補欠として上田哲君、高橋誉冨君が選任されました。     ―――――――――――――
  42. 多田省吾

    委員長多田省吾君) 他に御発言もなければ、質疑は終局したものと認めて御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  43. 多田省吾

    委員長多田省吾君) 御異議ないと認めます。  それではこれより討論に入ります。御意見のある方は賛否を明らかにしてお述べ願います。――別に御発言もないようですから、これより直ちに採決に入ります。  船舶所有者等責任制限に関する法律案を問題に供します。本案に賛成の方の挙手を願います。   〔賛成者挙手〕
  44. 多田省吾

    委員長多田省吾君) 多数と認めます。よって、本案は多数をもって原案どおり可決すべきものと決定いたしました。  なお、審査報告書の作成につきましては、これを委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  45. 多田省吾

    委員長多田省吾君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。     ―――――――――――――
  46. 多田省吾

    委員長多田省吾君) 次に、刑事補償法の一部を改正する法律案を議題といたします。  質疑のある方は順次御発言願います。
  47. 佐々木静子

    佐々木静子君 それでは、刑事補償法の改正案について私から質問をさしていただきます。  この質問に先立って、ちょっと基本的な問題として大臣にお伺いさしていただきたいと思うわけです。実は私ども、こうして法務省、政府から出ている法案について、大臣のおっしゃるように慎重かつできるだけ速やかに法案審議をやろうということで、いま一生懸命になっておるわけでございますが、これはここの席で言うのが適当であるかどうかということは御意見もあろうかと思いますが、法務省刑事局の提出する法案の後ろには全国の検察官がついていると、もしも刑事局の提案する法案について議員がおもしろくない発言をしたような場合には、これは検察官が黙っておらないぞという趣旨のお話が実は私どもの方にあったわけです。もちろん、お隣にいらっしゃる刑事局長がそのような良識のないことをおっしゃるわけではございませんが、法務省でそういうつもりで刑事局の法案をこの国会にお出しになっていらっしゃるのかどうか。私は、この法案の審議をするに当たって一番基本的な問題として、国会議員が法案を審議するに当たって検察官というものが顔を出してくる、そういうことがもしあるとすると、全く言論の府であるところの国会の審議というものはできなくなるわけなんですね。大臣、そういう点はどういうことになっているのでございましょうか。
  48. 稻葉修

    ○国務大臣(稻葉修君) そういう御質問を受けますことは、何といいますかね、大変わたしどもとしては心外でございまして、国会の言論に対して検察庁がそういった考えを持つなどということは、(「ありそうなことだ」と呼ぶ者あり)全然あり得ないことであります。ですから、私どもの気に入ろうが気に入るまいが、十分御遠慮なく御指摘いただきたい、こういうことを望む次第であります。
  49. 佐々木静子

    佐々木静子君 ごもっともな御答弁をいただきまして安心いたしました。実は法務省の方針が非常に大きく変わったのかと、これは私は一生懸命いままでも法務委員をやらしていただいて、法案と取り組ましていただいて勉強もさしていただいたわけですけれども、与党の議員さんの席からも、ありそうな話だとおっしゃるくらいなんですからね、これはわれわれ野党議員の中では、そういうことで法案審議ということになると、一生懸命やろうと思っておってもできぬじゃないかと、そういう問題が起こっているわけです。十分に私どもも、この法案が上がってきたのが一昨日でございますしね、それから後、先ほど終わりました船舶法案と、もうあと会期内はきょうで終わりでございますから、全力を挙げて一昨日ときょうとこの法案審議に当たっているわけなんですね。そういうときに検察官がどうのこうの、刑事局の後ろには全国の検察官がついているからというようなことを言われますと、非常にまじめにやろうと思っていても、少なくとも愉快ではないわけですね。そういうことであると、国会審議というものを一体どういうふうにお考えになっていらっしゃるのかということにもなりますので、大変大臣には恐縮でございますけれども、重々御注意いただきたい。お願いできますね。
  50. 稻葉修

    ○国務大臣(稻葉修君) そういう御心配をいただくことは、私の不徳のいたすところでございますが、御発言でございますから十分注意をいたします。
  51. 佐々木静子

    佐々木静子君 それでは、この刑事補償法法案につきましては、これは前国会でかなりわが党からの質問も出ておりまして、審議がかなりなされておると思うわけでございます。ただ、このたび、死刑の場合の補償でございますね、額が増額になっておるわけでございますが、その点について刑事局長、いかがないきさつでこうなったのか。また、その補償額がどういうわけでこういう額になった、その基準など根拠をお述べいただきたいと思うわけです。
  52. 安原美穂

    政府委員(安原美穂君) 佐々木先生の御質問は、今回衆議院で修正になった点に関するお尋ねかと思いますので――そう理解してよろしゅうございますね。そういたしますと、政府の提案は、現行の法律が死刑の場合の補償額を五百万円というのを一千万円という改定をお願いいたしておりましたところ、今回衆議院で一千万円を千五百万円に、したがって現行の五百万円を一千万円増額して千五百万円以内で補償するというふうに修正が相なったわけでございまして、結論から申しまして、政府といたしましてもその意見を求められましたので、大臣から、その改正について異論はございませんという御回答を申し上げた次第でございますが、私どもが考えておりました場合の一千万円につきましての考え方は、実は自動車損害賠償法の死亡の場合の補償の賠償の最高額が一千五百万円になったということにかんがみまして、衆議院法務委員会では、それにならって一千万円ではなくて千五百万円にすべきではないかという御意見が、全会一致の御意見であったわけであります。  そこで、私どもといたしましては、実は自動車損害賠償法の死亡の場合の賠償額、最高額と、それからこの死刑の執行の場合の最高額とは常に一致していなければならないというふうには性質上考えていないということを従来から申し上げてきたわけでありまして、と申しますのは、自動車損害賠償法の場合におきます死亡の場合の最高額は、損害額の中にいわゆる精神的な損害としての慰謝料とそれから財産上の損害、つまり精神物質両面にわたる損害補償する最高額として一千五百万円という金額考えられておるのに比べまして、刑事補償法におきます死刑の場合の補償額の五百万円という金額は、第四条の第三項をごらんいただきますと御理解いただけると思いますが、「死刑の執行による補償においては、」現行法では「五百万円以内で裁判所の相当と認める額の補償金を交付する。」、「但し、本人の死亡によって生じた財産上の損失額が証明された場合には、補償金の額は、その損失額」――つまり財産上の損失額「に五百万円を加算した額の範囲内とする。」というふうに出ておりますことから見まして、裏返った解釈といたしまして、この五百万円というのは、財産上の損失ではなくて、いわば慰謝料に相当する額なんだと。したがって、自賠法の場合は慰謝料プラス財産上の損害を加えて千五百万円にしておるが、刊事補償法のこの五百万円という金額、現行の五百万円あるいは改正案では一千万円となっておりましたのは慰謝料だけであるという意峠において、常に一致しなければならないものではないという意味において、千五百万円に自賠法がなったからフォローしなければならないというようには考えないけれども、私どもの考えといたしましては、やはり死刑の執行ということは、やってしまえば取り返しのつかない大変なことであるから、衆議院の方におかれまして、死刑の執行を慎重にするようにという警鐘的意味でできるだけ高くというお考えで千五百万円になさるとすれば、自賠法との関係は別といたしまして、的意味においてできるだけ高くというお考えであるとすれば、それはそれなりにわれわれとしては異論のないところであるという意味におきまして、千五百万円にすることについて異論はないというお答えを申し上げた次第でございます。  ただ、幸いなことに、わが刑法始まって以来、誤って死刑を執行して後にそれが再審で無実であったということはなかったということを申し上げたいと思います。
  53. 佐々木静子

    佐々木静子君 いま話のあったように、死刑の執行というものは本当に慎重にしていただかねばならないと思う。自動車事故で亡くなる場合も、喜んで死ぬ人はだれもないわけでございますけれども、それが全く国家権力の力によって、本人の意思と全く反して、しかも補償の対象になる場合、全く誤った事実認定に基づいて死刑を執行するわけでございますから、これは慰謝料五百万円とかなんとかというんじゃ、その無念さあるいはそれによってこうむる無形の損害というものは、とうてい尽くしがたいというふうに思うわけでございますね。しかし、千万円よりも千五百万円に増額になったということは、その点においては、私どもももちろん不十分ではあるけれども、幾分でもの前進であると考えて修正案に賛成しているようなわけなんでございますが、この件に関しまして、その死刑の執行というのは過去五年間ぐらいに年間どのぐらい執行が行われておるのか、数字をお示しいただきたいわけですが。
  54. 安原美穂

    政府委員(安原美穂君) 新憲法施行の昭和二十二年から昨昭和四十九年末までに、死刑の執行は五百十三人でございます。
  55. 佐々木静子

    佐々木静子君 最近三年間なり五年間はわかりませんか、年度を追って。
  56. 安原美穂

    政府委員(安原美穂君) 実は、こういう公の席上で何年度は何人ということを申し上げることは、死刑の執行は大臣の指揮に基づいて執行いたすものでございますので、いわば何大臣のときに何名の死刑の執行がなされたか、指揮をなさったか、ということにも結びつくということもございまして、死刑執行の問題についてはきわめて重大なことであるだけに、まあ何大臣のときに何名ということだけは、公の席では述べるのをできるだけ勘弁さしていただいておりますので、また特に最近の年度になりますと横におられます稲葉大臣の段階になりますので、これはまた現に死刑の執行をされないで刑務所に拘置されている者にも影響するところもございますので、ひとつ何年は幾らということだけは御勘弁願いまして、ここ四十五年から四十九年の間には合計五十七人であったということだけでひとつ御了承願いたいと思います。
  57. 佐々木静子

    佐々木静子君 これは刑事補償法で、現に死刑の執行に対する補償の問題でございますからね、大臣としたら決してうれしい話じゃないと思いますけれども、何もその個々の大臣がどうだったこうだったという論点から私はとらえているのではなしに、これが年間どのぐらい死刑の執行が行われているのか、そのくらいのことがわからなければ、これは審議にならぬと思うわけですね。これは当然国政調査の対象になると思いますので、明らかにしていただきたいと思うわけです。これは稻葉大臣が何件かということを論点にして聞いているんじゃ全然ございませんから。
  58. 安原美穂

    政府委員(安原美穂君) 先ほど五年間の数字を五十七人と申しましたところから大体御推察をいただくこととして、何年には幾らということはひとつ御理解いただきたいと重ねてお願いを申し上げたいと思います。
  59. 佐々木静子

    佐々木静子君 そこら辺のこともわからないで、この刑事補償法の審議というものは私はできないと思うのですよ。一つはこの拘束された人に対する補償一つは誤って死刑の執行をした場合の補償、それについて審議するのに、一番基本的になる、それじゃ死刑判決を受けた方のうち、大体一年にどのぐらい執行されていらっしゃるのか、そのことがわからなければ、これはちょっと審議にならぬのじゃないですか。
  60. 安原美穂

    政府委員(安原美穂君) 重ねてのお願いで恐縮でございますが、四十五年から四十九年の間が五十七人でございますので、平均して十名、十数人が死刑を執行されているというふうに御理解をいただいていいのではないかと思いますが。
  61. 佐々木静子

    佐々木静子君 まあそういうふうにおっしゃいますと、あとまた次の質問に移らなければなりませんけれども、私は死刑というものがどのようにして執行されるのかということも、いろいろと法務当局にお尋ねしているんですけれども、ちっとも明瞭な答えが出ない。ともかく、これは死刑を執行された人の人格に関することであるとかなんとかということでですね、いま刑事局長がおっしゃったように、本当に慎重に誤りのないように行おうというのであれは――もちろんわれわれは今度の刑法改正案についても、死刑の事項については非常に批判的な意見を持っているわけでございますけれども、それをあえて死刑制度というものをいま存置していらっしゃるとすれば、少なくとも人間の一番基本の問題である生命を奪うという事柄を権力の名前で行おうということであれば、その実相というものを、何も一般に公開しないでもいいけれども、少なくともわれわれにはもうちょっと知らしていただかないことには、いいも悪いも論議の対象にならぬじゃないですか。  それでは伺いますけれども、まず死刑の執行は、有罪判決が確定してから実際の事務的な手続はどのようになっているのか、これは手続的なことをお述べいただきたいと思います。
  62. 安原美穂

    政府委員(安原美穂君) 死刑の判決が確定いたしますと、死刑の判決をいたしました裁判所に対応する検察庁を管轄する検察庁の長、検事長あるいは検事正から死刑の執行に関する上申がございます。そういたしますと、法務省では、その確定記録を取り寄せまして、省内の関係部局、これは刑事局それから矯正局、保護局という各部局をして、判決及び確定記録の内容を十分に精査いたしますとともに、その精査の過程におきまして、刑の執行を停止する事由があるかどうか、再審の事由があるかどうか、非常上告の事由があるかどうか、あるいは恩赦に相当する情況があるかどうかということを検討いたしまして、そしてその結論をもって大臣に意見を上申いたしますと、大臣におかれては、さらに場合によりましてはみずからこの記録をごらんになりまして、事務当局の上げてきた意見についてそれを慎重に検討された上で、いま申し上げたような執行停止、再審、非常上告の事由あるいは恩赦相当の情状というようなことを検討された上で、そういう事情あるいは情状が存しないということを大臣において最終的に確認をしていただきまして、死刑の執行の命令を出していただくという手紙になっております。
  63. 佐々木静子

    佐々木静子君 そうすると、その命令が出てから死刑執行までは、普通は何日になるわけですか。
  64. 安原美穂

    政府委員(安原美穂君) 大臣の命令が出ました場合は、法律に、四百七十六条によりまして、「法務大臣が死刑の執行を命じたときは、五日以内にその執行をしなければならない。」ということで、大臣の命令が出ますと、五日以内に執行いたしております。
  65. 佐々木静子

    佐々木静子君 五日以内というのは、普通は大体何日ぐらいでやるわけですか、命令が出てから。
  66. 安原美穂

    政府委員(安原美穂君) ケースによりましてでございますが、即日の場合もございますし、三日の場合もございますし、最大限五日の場合もございます。
  67. 佐々木静子

    佐々木静子君 いま、大臣が場合によると記録もごらんになる、実際問題とすると、私はなかなかそれは全部見るお暇はないんじゃないかというふうに推察するんですけれども、そして事務当局の意見を聞いてとおっしゃいましたが、具体的に言うと法務省の中で事務当局というと、どこの意見を聞いてやられるわけですか。
  68. 安原美穂

    政府委員(安原美穂君) まず最初にこの記録を見ますのは刑事局でございまして、主としてわれわれはその再審、非常上告の事由の有無というようなことを中心に、なお恩赦に浴せしむる事情があるかどうかも一応検討いたしまして――実は実際には死刑の上申に関する記録精査の担当官を決めまして、その担当官の意見を出させます。そして、それを局長を初めといたしまして、場合によっては局議を開き、各課長、参事官の検討を経まして、刑事局でそれでよしということになりますとそれが矯正局に回り、現実に死刑の執行していい状態かどうか、あるいは矯正当局として恩赦の上申をする事情があるかどうかを……。ここに矯正局長保護局長おられるので、矯正局、保護局の中のことはお聞き願いたいと思いますけれども、そういうことで矯正局に回る。それから保護局はいわゆる恩赦をあずかります中央更生保護審査会の事務局の仕事もしておられますので、そういう観点から恩赦の事情の有無というようなことも御検討になって、そして最終的に大臣のところに上がる、その間に次官、官房長というようなところも経まして大臣のところへ行くというような手続になっておるわけでございます。
  69. 佐々木静子

    佐々木静子君 それでは、いま局議と言われましたが、私ちょっと法務省の中の事情がわからないんですが、課長とか、参事官の方が集まって、これは刑事局の課長あるいは刑事局の参事官だけでお決めになるんですか、どうですか。
  70. 安原美穂

    政府委員(安原美穂君) 矯正、保護の方はひとつ当該局長からお聞きいただきたいと思いますが、われわれ、佐々木先生御指摘のように、死刑の執行は慎重になさねばならぬということで、一人だけの意見ではなくて、もとより私はよく報告を受けて検討いたしておりまするが、場合によりましては、刑事局の局付検事以上参事官、課長を含めまして、全体でその情状を審査するというようなこともあるということでございます。
  71. 佐々木静子

    佐々木静子君 それでは、これはいまのお話で矯正局の方にも回っていく、これは決まってから矯正局へ回るのですか。私、常識的に考えて、死刑執行をできる状態であるかどうかということは矯正局でないとわからないんじゃないかと思うんですけれども、そこら辺のところは具体的にどういう手続で、どういう御相談があるんですか。手続的な面からお答えいただきたいと思います。
  72. 長島敦

    政府委員(長島敦君) ただいま刑事局長から答弁がありましたように、この死刑の問題につきまして第一次的に、この事実が間違いがないかどうかというような点は、刑事局で慎重に検討されるわけでありまして、私の方は、御承知のように刑事訴訟法に死刑の執行ができない事由が書いてございます、たとえば、心神喪失でございますとかいうような場合でございますが、それに当たるかどうかという点を確認するという趣旨で、私の方に相談があるというふうに理解しておりまして、そういう意味で病状等につきまして私の方で調査することもございますが、あるいは現地の方で御調査になることもございますけれども、いずれにしてもそういう面で私の方は関与しておりまして、病状等にかんがみて不相当だというようなことになりますれば、しばらく待ってほしいというようなことを述べるということでございます。
  73. 佐々木静子

    佐々木静子君 いまのお話でわかりましたけど、具体的に、それでは刑事局の方が主として直接的に主な責任を持たれる、そうして矯正局の方にお問い合わせになるということはいまのお話でわかりましたが、どういう、書面か何かで問い合わせがあるのですか。そうして、大体それは普通どのぐらいの期間をかけて問い合わせがあるのか。あるいは私の常識的に考えても、その担当、無論、矯正局長が万能だといっても、全部の死刑囚についての健康状態、精神状態がわかるわけじゃないから、現地の収容されている拘置所長なりにお問い合わせがあると思うんですが、それは矯正局から文書でお問い合わせがあるのか。具体的にどういうふうな問い合わせをして、また、どういうふうな要件を備えた回答をして、それがいずれ矯正局へ来て刑事局へ行くんだと思うんですが、もう少し具体的にきっちりとした手続的なことを答えていただきたいわけです。
  74. 長島敦

    政府委員(長島敦君) これは、死刑に関する大臣の決裁を受けます文書がございますが、それが回ってくるということでございますけれども、私の方は死刑確定者につきまして定期的に報告をとっております。病状等はそういう意味で定期的に入ってきておりまして、普通は常時つかまえておる状況でございます。ただ、前回の報告あるいはその後の特別の報告によりまして、何か病気があるんじゃないかというような疑われる場合は、直接その時点で聞くこともございますけれども、一般的にはそういう死刑確定者につきましては相当常時情報が入っておりますので、つかんでおります。そのために特に私の方から照会することはまれでございます。わかっております現状で判断をいたしておるわけでございます。
  75. 佐々木静子

    佐々木静子君 そうすると、矯正局では常時死刑を執行するしないにかかわらず情報をつかんでおるから特別の場合を除いては一々現地に確かめないでわかっているから、それを刑事局の方へ御回答になるわけですか。
  76. 長島敦

    政府委員(長島敦君) さようでございます。
  77. 佐々木静子

    佐々木静子君 いま書面というのをおっしゃいましたけど、その書面がもしあればひとつサンプルを見せていただきたいと思うんですけれども、いかがでございますか。それは刑事局の方の所管になるのか。
  78. 安原美穂

    政府委員(安原美穂君) 具体的な書面は、判決とかいろんな書類がございまして、これぐらいの厚さのものでございまして、その表面に、先ほど申しましたように、担当検事の、事実、それから情状、したがって死刑執行が相当かどうか、恩赦をする事由があるか、あるいは再審の事情があるかということにつきまして、記録を精査した上での意見の述べてある書類が一番上に載っかっておりまして、それがいま申しました矯正局を回り保護局を回って大臣官房を回って大臣のところに行く、こういうことでございます。いまここに持っておりませんが、後日また、何と申しますか、起案のタイプの書式はお見せいたしても結構でございます。
  79. 佐々木静子

    佐々木静子君 これはやはり死刑というものを執行するについては、きわめて慎重にやらなければならないと刑事局長がおっしゃったとおりです。そうしてまた今度、補償額も当然のことながら、増額になって、これは万一軽率な死刑があった場合には国民の税金で賄わなければならないということになると、当然国会でどういう手続きで死刑というものが行われるのかということは、もっともっと明らかにしてもらわないと、これは法務省が権力を持っているかしらないけれども、万一誤ったことがあった場合、単に金銭上だけから見たところで国民の税金を使ってそれを補償しなくちゃならぬ。もちろん、お金よりももっと大きな生命の問題でもあるわけですけれども。ですから、大変御足労ですけれどもどなたかお使いの方でも、その書式で結構です。ちょっと電話でもしていただいて、こちらへお持ちいただけないでしょうか。私はこの件のほかのこともお尋ねしますが、その質問の終わるまでの間で結構です。
  80. 安原美穂

    政府委員(安原美穂君) 早速連絡をいたしまして、書式をお見せしたいと思います。
  81. 佐々木静子

    佐々木静子君 それでは、いま口頭で御説明いただきましたように、大臣のところへ行くまでにはいろいろと刑事局の担当の方が御検討になって、そうすると刑事局長の御判と、それからさらに矯正局長の御判と、それから保護局長の御判とがあって官房に回るわけなんですね。ほかにどっかの局を経るわけですか。
  82. 安原美穂

    政府委員(安原美穂君) 関係部局は以上の三局でございますので、その三局を回りまして大臣官房に回り、官房秘書課長、官房長、事務次官、大臣と、こういう手続になると思います。
  83. 佐々木静子

    佐々木静子君 これは、普通はいろいろ事案はあると思いますけれども、人一人の命を奪うわけですから、そういま言って急にやろうかということで、それじゃ判持ってこいとぺたぺたぺたっと押していけるもんじゃないと思ううんですね。常識的に考えて、何日ぐらい普通はかかっているわけですか、他局へ回り出してから。
  84. 安原美穂

    政府委員(安原美穂君) いろいろ各局で検討される場合がございますので、ケース・バイ・ケースでございますけれども、刑事局で起案をいたしましてから大臣のところに上がるのに、恐らく二カ月ぐらいはかかっていると思います。
  85. 佐々木静子

    佐々木静子君 そうすると、その過程においては少なくとも担当局長は御存じのわけですね。全然知らない間に秘書課長なり総務課長が勝手に判を押して、局長は知らなんだということは、そういううかつな、ずさんなこともやることもあるんですか。
  86. 安原美穂

    政府委員(安原美穂君) こんな大事なことを、局長が知らずに決裁を通すということは絶対にございません。私自身が十分に読んでおりますし…
  87. 佐々木静子

    佐々木静子君 これは保護局長にお伺いしたいんですけれども、いま刑事局長の御説明で、恩赦の有無その他について保護局の意見もお聞きになる、そして保護局長もいまその重要なお一人のメンバーとして判をお押しになると。刑事局長は盲判を押したことはないとおっしゃっているんです。そうでなくちゃ困ると思います。保護局長は盲判を押されることはよくあるんですか。
  88. 古川健次郎

    政府委員古川健次郎君) 保護局といたしましては、恩赦の関係が中心でございます。したがいまして、そういう死刑の関係につきましては、実は死刑囚には相当数恩赦を上申いたしておりますので、そういう関係記録が回ってまいったときに、恩赦上申中であるかどうか、さらにそれについて審査会がどういうふうに考えておられるのか、そういうことを調整する任務、またわれわれの方はそういう審査会の事務局をやっているわけでございますから、決して盲判を押すというようなことは絶対ございません。
  89. 佐々木静子

    佐々木静子君 私もちょっと異なことを伺いますので……。保護局長は、どうも私はいままで盲判をお押しになるお方なんだなあというふうに思っておったのですが、盲判を押されたことはないんですね、間違いありませんね。
  90. 古川健次郎

    政府委員古川健次郎君) 絶対にございません。
  91. 佐々木静子

    佐々木静子君 人権問題に関することですので、私は名前を特に伏せてお伺いいたしたいと思います。  六月十七日にNという死刑囚が処刑されているわけでございますね。こういう場合、いまのお話で五日以内に大臣の死刑執行指揮があったということに法律上なるわけですけれども、このNについては大臣の死刑執行の御判はいつお出しになったんでしょうか。
  92. 安原美穂

    政府委員(安原美穂君) 大臣の死刑執行命令がいつ出たか、すぐ調べます。ちょっといま手持ちの資料にはございませんので。
  93. 佐々木静子

    佐々木静子君 これは年間十人ほどしかないというお話でございますし、ひとつ早急にお願いいたしたいと思います。  この大臣の死刑執行の判に回る直前は、事務次官の判ですか。それを通るわけでございますか。
  94. 安原美穂

    政府委員(安原美穂君) さようでございます。
  95. 佐々木静子

    佐々木静子君 その前は官房長になるわけですか。官房では、官房長のほかどういう人が判を押すわけですか。
  96. 藤島昭

    政府委員(藤島昭君) 官房秘書課長、官房長でございます。
  97. 佐々木静子

    佐々木静子君 これは官房秘書課長から大臣まで、普通、日数はどのぐらいかかるものなんですか。即日ですか。もっとかかるわけですか。いま大臣が記録をお読みになるというようなこともあるというお話ですが、普通はどのぐらいかかるわけですか。
  98. 藤島昭

    政府委員(藤島昭君) 各局が検討したものが官房に参りまして、官房秘書課長が所管いたしまして、官房秘書課長がこれを精査いたします。それが終わりまして私のところに参りまして、官房長のところでもう一度内容を検討する。そこで終わりまして事務次官。事務次官も当然精査をいたしますが、どのぐらいの日数ということはケース・バイ・ケースによりますけれども、即日というようなことはございません。
  99. 佐々木静子

    佐々木静子君 これは、実は大体いつごろ回ってきたかということは、私は私なりに情報をつかんでおるわけです。このNに関しては。しかし、このNについては秘書課長に入ってから大臣の御決裁があるまで、これは具体的にどのぐらい日数がかかったのか。官房長、おわかりじゃありませんか。
  100. 藤島昭

    政府委員(藤島昭君) このケースにつきましては、私おりませんでしたので承知いたしておりません。
  101. 佐々木静子

    佐々木静子君 それでは死刑執行の御決裁とあわせて、大体、書類がどのように動いたか、これは日にちは全然入らないわけですか、決裁する場合に。どうなんですか。それは官房の中だけではなしに、各局において。
  102. 安原美穂

    政府委員(安原美穂君) いま、特定の事件のことで、私は大体どの事件であるかは私なりに推察はしておりますが、それがいつ大臣のところへ何日ぐらいでどう回ったかということは、ちょっと調べてみないとわかりませんので、後刻御報告申し上げます。
  103. 佐々木静子

    佐々木静子君 これは本年の六月十七日に処刑されている件でございますから、いまのお話でも十人ぐらいしか処刑しないなら、そう同じ日にたくさんの人が処刑されていることはないと思うわけですね。だから、推察というよりも、ただ死刑を執行された人の人権というようなことになると困ると思って私は名前を出してないだけで、これは御当局としては、皆さんどの死刑の執行であるかということは識別できるわけでございましょう。いかがでございますか。
  104. 安原美穂

    政府委員(安原美穂君) どのような期間を経過して大臣の死刑執行命令が出されたかは、調べてみないと正確にはわかりませんけれども、この関係の死刑の執行につきましては、実は御案内のとおり、恩赦の出願があるという場合には、恩赦の出願の結論を待って死刑を執行するというのが従来の慣例でございますので、この特定の事件につきましては、恩赦の結論が出るまでに、先ほど申しましたような刑事局の検討、関係部局の検討を経て、恩赦の結論が出れば、それが恩赦相当でないというような結論が出れば、いつでも執行ができるような状態で事務当局としてはおったというような関係で、恐らく何と申しますか、恩赦不相当の結論が出てから執行までの間に、短い期間で時が経過して執行がなされたということになっているのではないかと思っております。
  105. 佐々木静子

    佐々木静子君 このN被告ですが、これは恩赦の請求が出ておりましたですね。保護局長いかがでございますか。
  106. 古川健次郎

    政府委員古川健次郎君) いまお申し越しのNにつきまして、一応私の記憶では出ておったと思います。
  107. 佐々木静子

    佐々木静子君 出ておったどころじゃない、このN被告のことは国会のこの当委員会で幾度か問題になっている。あなたの前の保護局長のときも問題になっている。それから現在の、あなたが局長になられてからも、これは御自身でこの恩赦のことについて当委員会でお考えをお述べになったことがあるわけで、これは、思うじゃなくて、出ておったんでしょう。
  108. 古川健次郎

    政府委員古川健次郎君) 出ておりましたことは間違いございません。
  109. 佐々木静子

    佐々木静子君 この恩赦は、これは結局いつ却下決定が出たんですか。
  110. 古川健次郎

    政府委員古川健次郎君) 私の記憶では、本年の六月の六日と記憶いたします。
  111. 佐々木静子

    佐々木静子君 これは、私も本委員会で名前を挙げて、これの恩赦はどうなっておるかということを幾たびかお尋ねしたと思います。これは私だけじゃなくて、社会党の他の議員もいままで何回かお尋ねしているわけです。それに対してあなたは前向きの姿勢で取り組んでおるという趣旨の御答弁であったわけですね。そして六月の中旬ごろには結論が出る、そういうお話を私どもにしていられたことは御記憶ありませんか。
  112. 古川健次郎

    政府委員古川健次郎君) 佐々木先生などから御質問がありまして、早く審議を急げということで、早く審議を進めるように審査会にお話しするというふうにお答えいたしました。ちょうど審査会の委員長が六月中旬に交代されるので、できるだけ委員長交代前におやりいただくような気配であるということは、私申し上げた記憶がございます。
  113. 佐々木静子

    佐々木静子君 これは議事録を調べればはっきりしますけれども、たしか犯罪者予防更生法の審議に当たって、どうしても常任の人をたくさんにしなければ恩赦の審議がおくれる、これはあなた御自身の口から出ましたよ。たとえば社会党がいままで取り組んでいるN被告その他のような問題の被告の場合も、これを常任にしてもらえば早く結論が出るので、そしてそれであれば速やかに恩赦のことも前向きで取り組めるのだ、これはあなた自身がこの委員会でおっしゃいましたね、わかっていられますね。
  114. 古川健次郎

    政府委員古川健次郎君) 一般的に恩赦について、人権尊重の見地から早く処理しろという御質問、その中にもちろん死刑囚も入っているわけでございます。その点につきまして、やはり委員長一人が常勤ではなかなかそれがはかどらぬ。そこで、委員四人の中の半分を常勤にしていただければということで、前に犯罪者予防更生法の一部改正をお願いしたわけでございまして、そこで、現に常勤化していただきましてから、昨年との比較で約倍のピッチで恩赦の審理が促進されております。そういう趣旨のことを当時お答えしたと思います。
  115. 佐々木静子

    佐々木静子君 一般的な問題としてお尋ねしたのに対して、あるいは私も特定の名前を挙げたかもわかりませんが、あなた御自身もN被告の名前をお挙げになったでしょう、答弁の中に。これは議事録にはっきり出てきておりますよ。もしそうじゃないということであれば、議事録をさっそく取り寄せますけれども、いかがでございますか、私ここにもありますけれども。
  116. 古川健次郎

    政府委員古川健次郎君) 具体的に被告の名前を挙げたかどうか、ちょっと記憶にございませんが、福岡事件というような、要するに特定な事件の名前を挙げて、これは死刑囚は二名でございますが、そういう福岡事件というような固有名詞を挙げてお答えしたような記憶はございます。
  117. 佐々木静子

    佐々木静子君 何でしたら読み上げてみましょうか。あなた何度も、I、Nの件については、ということをおっしゃっていますよ。もし何だったら読み上げてもいいですけれども、また人権問題にかかわるということで答弁を拒否されると困りますからね。いいかげんな答弁しないでください。議事録にちゃんと残っているんですから。どうですか。
  118. 古川健次郎

    政府委員古川健次郎君) 議事録、私も見ておりませんけれども、被告二名の名前を挙げてお答えしたかもしれません。
  119. 佐々木静子

    佐々木静子君 これは人の生命にかかわることですよ。あなたはしたかもわからぬとか、一般的なことでどう言うたか、はっきり覚えていないとか、そういうものじゃないですよ。あなたは国会答弁をし、かつ死刑の執行に判を押したんですよ。そんな無責任なことができますか。あなた、答弁自身もどういう答弁をこの委員会でしたかということについても、いま御記憶ないんですか。確かめてもみてないんですか。
  120. 古川健次郎

    政府委員古川健次郎君) 現在私速記録を持っておりませんので、確実にお答えするあれはないんですが、しかし、佐々木先生から具体的に事件の名前あるいは恐らく被告の名前も出たかと思います。そういうことで被告の名前を挙げてお答えした記憶はございます。
  121. 佐々木静子

    佐々木静子君 あなた、この議事録、何回も名前を挙げて言っているわけですよ。記憶があるんなら、最初から記憶がないなどと言わずに、あるとおっしゃい。  それから、この問題に関して国会答弁とあなたが実際になさったことの食い違いを、私はずっと何回もあなたにお話ししていますよ。あなたはいつでも会議があるとか不在だとか、何とかかとか言って、ほとんど私の前に姿をあらわしておらない。直接知らない、国会のこの席に出てこなかったほかのあなたの局の人をよこして、自分は国会に出ていないから知らないと。あなた御自身はいまは出張中だ、きょうは会議だ、あすは会議だというようなことで、この問題が起こってから私とはほとんどお会いにならないけれども、あなた自身、自分がどういう答弁をしたかと確かめもしてないんですね、そうすると。そうでしょう。確かめたら、ちゃんとそのことぐらい覚えているでしょう。確かめておらないわけですね。
  122. 古川健次郎

    政府委員古川健次郎君) 現在、最近速記録を見ておりませんので、はっきりとお答えしかねると申し上げたわけです。しかし、いま佐々木先生から御質問ありましたように、恐らく佐々木先生からそういう福岡事件という固有名詞が出、特定の被告人の名前をここで挙げたという記憶はございます。
  123. 佐々木静子

    佐々木静子君 これはあなたもずいぶんひどい健忘症におなりになって、それでよく全国の保護局の仕事がと、私ちょっと心配になってくるのですけれども、お名前が出じゃなくて、あなたの方からこれはN被告の話が私のところにあったんですよ。N被告の恩赦の審議は相当進んできておりますという話が。私の方はN被告のことを何もあなたの方へ言っていったんじゃないですよ。そのことも覚えていないんですか。
  124. 古川健次郎

    政府委員古川健次郎君) 犯罪者予防更生法の審議をこの春の国会でいただきましたときに、佐々木先生にもお目にかかったことがございます。それで、佐々木先生が従来から福岡事件関係に関心をお持ちのことを存じ上げております。したがいまして、そういう点で佐々木先生に、現在審査会でNも含む福岡事件について審査中であるということは申し上げております。
  125. 佐々木静子

    佐々木静子君 私はあなたに、保護局長に直接お目にかかったのはそのときが初めてですよ。私の方は、社会党は福岡事件を前からやっておる。しかし私自身は、これは前の局長には質問したことはあるけれども、局長とお会いするのは多分初めてだったと思いますね。あるいは大ぜい一緒にお会いしたかもしれませんけれども。ですから、そのとき初めて個人的にお話しして、それは局長の方からN被告の恩赦の件が、保護局とするとかなり進んでいるというお話があったんですよ。だから私の方は、いわば私は別にそれをずっと思ってた――まあそう言っちゃ悪いけれども、そのことばかりにかまってたわけじゃないけれども、急いでこの被告の記録とか資料とかをあなたのお話があってから取り寄せたんですよ。あなたの方からお話あったことですよ。着任してからいろいろといままでの法務委員会の議事録を見た。そうすると、私とか社会党の議員がN被告のことを問題にしているという乙とを知った。私は非常に好意的であると思ったんですけれどもね。そしてその恩赦の件もかなり進んでおると、それはあなたの方からあった話ですよ。そうじゃないんですか。だからこそここの審議の中でN被告の話が出てきているわけですよ。私が質問したからあるいは名前言ったかもわからぬというような話じゃないですよ。それをお忘れになっているようじゃ、ちょっと話にならぬですね。
  126. 古川健次郎

    政府委員古川健次郎君) 佐々木先生が、先ほど申し上げたように、福岡事件について関心をお持ちのことは前局長あるいはその前の局長時代国会速記録などでも伺っておりますし、それから私局長に就任しましてからも、佐々木先生からこの犯罪者予防更生法の前にも死刑囚の恩赦の問題で御質問があったように私記憶いたします。平沢のも含めまして御質問があったように思いました。そこで、今度は犯罪者予防更生法の御審議をいただきますときにお目にかかるときにも、それを話題にいたしたことは事実と思う次第でございます。
  127. 佐々木静子

    佐々木静子君 ずいぶん話を忘れていらっしゃるところもあるみたいなので余り深くは申し上げませんが、ともかく六月の六日の日にこの恩赦は却下になったわけですね。私ども国会でこの恩赦の件についての話があり、またこの福岡事件の死刑囚を救おうという多くの団体ができていることも保護局長も御存じのとおりであり、そして六月の中旬にいよいよ前向きの恩赦が出るというお話を国会答弁してらっしゃるから、あなたはその間にいろんな方にお会いになっているじゃないですか。たとえば私に何回会いましたか。私は何回かあなたの局長室へも、どうなったかということをお尋ねに行っているでしょう。どうですか、全然それも御記憶ないですか。
  128. 古川健次郎

    政府委員古川健次郎君) 二回ばかり局長室でお目にかかった記憶がございます。
  129. 佐々木静子

    佐々木静子君 きょうは私がそのときに同行した人も連れて来ております。傍聴席におります。私は、法務省局長ともあろうお方がうそをおっしゃろうとは思いません。しかし、あなたはそのとき私にどうおっしゃいましたか。六月六日以後私にお会いになったときにどういうことをおっしゃいましたか、この恩赦事件がどうなっているかという説明を。
  130. 古川健次郎

    政府委員古川健次郎君) 六月六日以降にお目にかかったのは私一回かと、局長室でお目にかかったのは一回だというふうに記憶いたします。そのときに、この福岡事件の恩赦はどうなっているかということで、いま鋭意審査しているけれども、最終結論は私出ないというふうにお答えしております。
  131. 佐々木静子

    佐々木静子君 そうでしょう。あなたはいま審査中だとお答えになりましたね。これを私が六月の十三日にあなたのところへお訪ねしたときに、あなたがおられなかった、約束していたけれども変更になったわけです。私は日本政府の顧問でメキシコへ出発しないといけないので、もう出発のその日まであなたにお会いできなかったんですよ。それでどうなっているかということをいろいろとなにした、やっと出発のその日にあなたお会いになったですね。そしていままだ合議中だと、合議が割れていると、そのためにいまはもう非常に深夜まで激論をしておると、そういうお話をなすったでしょう。これは人もいますよ、あなたいいかげんなことを言っても。
  132. 古川健次郎

    政府委員古川健次郎君) いま佐々木先生は六月十四日とおっしゃいましたけれども、十四日には私いまのようなことは申し上げた記憶はございませんで、むしろその前に、いつごろでしたか、それより相当前にお見えになったときに同行の方も連れてお見えになりました。そのとき、とにかく審査会でいま非常に鋭意審査中であると申しあげました。六月十四日のときには、先ほど申し上げたように、最終結論はまだ出てませんというふうにお答えいたしました。これは先生も御承知のように、恩赦そのものは閣議で決定されまして天皇が認証されるわけでございます。審査会で議決がありますと、それを上げまして閣議で決定し、陛下が認証されるわけでございます。そこで、仮に議決が出ておりましても、それについて閣議決定も経てない段階、まして天皇の認証も経てない段階で、これは公開さるべきものではございません。そういう意味で、私は最終結論は出てないというふうに申し上げた。と申しますのは、福岡事件は先ほど申し上げましたように共犯二名でございまして、審査会の議決は、一名のIという被告が恩赦相当、それから先生いま御質問のNという被告が恩赦不相当という議決が六月六日に出たわけでございます。したがいまして、恩赦相当になりましたIという被告につきましては直ちに閣議手続をとるわけでございます。ただ閣議手続が普通一週間から十日かかるわけでございます。陛下の認証はそれから後になるわけでございます。したがって、佐々木先生にお目にかかりましたとき、六月十四日にはまだ閣議決定はございません。そういたしますと、共犯で一件二名、両名死刑囚、それについて別々の結論が出ておるのでありまして、片っ方の不相当についても、これが結論は申し上げるべきじゃないということで、私この福岡事件につきまして最終結論は出てないと、こういうふうに申し上げた記憶でございます。
  133. 佐々木静子

    佐々木静子君 あなた、いいかげんな言い逃れしてもらったら困りますよ。却下になったものに何で閣議決定が要るんですか。恩赦がどうなっているかと、あなたはちゃんとNの名前答弁でも挙げているんですよ。これはこれしか資料がないから私はこれを言うんですけれども、その間に――Nのことですよ、あなた話しているのは。何もそのもう一人の方の人のことじゃないですよ。なぜあなた却下するのに閣議決定が要るんですか。言い逃れもほどがありますよ。結局、私はそのために羽田へ出発する時間をおくらせたんですよ、あなたも御承知のとおり。そうすると、ちゃんといままで申し上げていたとおりに進んでおります、御安心くださいという話だったじゃないですか。そのために支援団体の方々も、家族の気遣う方々も帰ったんじゃないですか。あなたそういうふうな――これはいろいろ御事情もあろうと思いますよ。それは検察庁が――検察庁というか法務省が是が非でも死刑の判決をとったものは何が何でも刑の執行をしたいという、私はそういう性格を持っていらしっやる方々が大ぜいおられることは知っておりますよ。だから、そのことをいまとやかくいうんじゃないですけれどもね、国会で審議になっていること、そしてその後どうなっているかと私が追及しているのに、全然事実と違う話を私にされたじゃないですか。あなたのいまのお話は六月六日にもう却下しているんじゃないですか、恩赦を。あなたうそを言われましたね。そうじゃないですか。それがうそじゃないんだ、ほんとのことを言われたんですか、どちらなんですか。
  134. 古川健次郎

    政府委員古川健次郎君) 先ほど申し上げましたように、本件は一件二名の死刑囚でございまして、慎重審議の結果、一名については恩赦相当、一名についはて恩赦不相当になったものでございます。で、恩赦相当の者につきましては、先ほど申し上げたように閣議の手続を経るわけでございまして、まだ未定の段階でございまして、共犯二名でございます。その共犯二名がそういう結論が別になったわけでございまして、そういう点で議決そのものについて申し上げるのははばかりますし、福岡事件全体についてそういう恩赦についてはまだとにかく最終結論は出てないというふうに私申し上げたつもりでございまして、決して私としては先生にうそを申し上げたというつもりではないのでございます。
  135. 佐々木静子

    佐々木静子君 あなたはいまになって閣議閣議とおっしゃるけれども、閣議を経なければ何も言えないのなら、最初から国会答弁なぞあなたに権限ないじゃないですか。そうでしょう。閣議で決まることなんでしょう。そしたら、最初からあなたが福岡事件の恩赦をどうのこうの、また国会で、仮にですよ、私の方から具体的事件を挙げてこれの恩赦はどうなるのかと聞いても、これは私の権限ではございません、閣議でお決めになることですとお答えにならなきゃおかしいじゃないですか。いままでは全部自分がやるような――まあ自分で全部、一〇〇%はできないにしろ、自分が担当の局長でございますという話をしておいて、一番最後の段階だけ――しかも却下というのは閣議の対象じゃないですよ、それは詭弁そのものじゃない。あなたはそれが役人としての常識だとおっしゃるなら、これは私は一遍主権者である国民に聞きたいと思いますね。そういうことが通用するのが役人として出世するのであれば、これは国民はだれも役人を信頼しないですよ。どうですか、あなたは。いろいろと事情はあったと思います。しかし、あなたは私をだましてきたでしょう、私をというよりも――いいかげんじゃないですか。単に、国会でやりますという約束をしたのにやらなかったということで、国会を愚弄しているということでいままで問題になっているケースはいろいろありますけれども、あなたは事実と違うことを、白いものを黒と、西を東と、南を北と入れかえて私に説明しているんです。それは幾ら健忘症がひどくおなりになったといっても、六月の六日に却下になったものを、その六月の中旬に私が恩赦がどうなりましたかと、あるいはほかの人も尋ねたと思いますけれども、少なくてもこれは国会と政府との関係の話にしぼりたいと思います。これは、単に私が政府にお願いしたというんじゃなくて、国会での議題になって、あなたが答弁してきていることですよ。だから私はこの委員会で問題にしているわけです。そのことについて、事実と一〇〇%違うことをお答えになってらっしゃる。それはそうでしょう。
  136. 古川健次郎

    政府委員古川健次郎君) 私は、従来の国会でもいろいろ恩赦のことを佐々木先生などから聞かれまして、私として何の権限を持っているわけじゃございませんし、審査会がお決めになる。で、審査会の審査を早くしてくれということでいろいろ……。また、もちろん手続の段階で、先般の犯罪者予防更生法の御審議のときも、佐々木先生から.恩赦の手続はどうかと聞かれまして、閣議決定、認証までの手続を御報告申し上げたわけでございます。そういう意味で、従来から審査会の審査をできるだけ促進すると、審査会の方に佐々木先生方の御意向を伝えるということはお約束いたしまして、現に結論が出たわけでございます。ただ、その結論の出し方について、先ほどのような一件二名という共犯の場合についてああいうふうに結論が割れました。それについて一方では閣議まで経なきゃならない。そういう意味で私あの六月十四日の席では最終結論は出てないというふうにお答えした。その前に同行の方がお見えになったときに、まだ審査中であると、まあ非常に慎重審査中であるというふうに、同行の方がおられたときには、これは六月六日以前の段階でございまして、まさに結論が出てない段階でございまして、そういうお答えをしたわけでございます。
  137. 佐々木静子

    佐々木静子君 ともかく、あなたの話が途中で変わってきてますよ。閣議なんというものはいままで何も出てきてないわけですよ、何回も言うとおり。そしてまた却下になったものについて何の閣議の対象にもならないわけですよ。もしそれが言えないのなら、何とも申し上げられない、でいいわけですよ、いままでいろいろと言ったけれど。で、私はこれは初めにはっきりしておきたいのは、何も私の方が、あるいは社会党がお願いしてる、具体的事件をどうしてくれ、こうしてくれという話じゃないですよ。そういう話じゃ全然ないですよ。あなたの方が国会答弁なすったことと違うことを、そのとおり言ってないと。それはそういうこともあり得るかわからない。それなら最初から、自分にそれだけの権限はないのだということをおっしゃらないといけないじゃないですか。権限もないことを大きな口をきかれるのはおかしいと、まずその点。  それから次に、そうお答えになったら、答えられないのなら答えられないと答えないといけないじゃないですか。答えられないことを、いま連日合議している、連日合議していると。合議も何もないじゃない、六月六日に却下になってるんですから。そういうことでしょう、結論として。――うなずいてらっしゃいますね、そのとおりでしょう。まあ概要を言うとそういうことでしょう、間違いありませんね、保護局長さん。
  138. 古川健次郎

    政府委員古川健次郎君) 先ほどから申し上げてますように、六月十四日は私、合議してるとかなんとか申し上げた記憶ございません。ただ、最終結論は出てないと。つまり福岡事件の恩赦については最終結論は出てないというふうに申し上げた記憶でございます。
  139. 佐々木静子

    佐々木静子君 まあ多分あなたはそのように事実を曲げておっしゃられると私は思っておりました。だからまあここで言うた言わぬと言ってもなんですけど、六月六日から私はほとんど毎日のように保護局へ連絡してるわけですよ。そして、それに対して却下になったという話はただの一度も聞いてないわけですよ。あなたはそうおっしゃるけれども、最終にも予定どおり大体この間申し上げたとおりになっておると、そういう話だったと思いますよ。まあしかしあなたはどうせ忘れたとかなんとかということで言葉を濁されるでしょう。ですからね、ただ私は刑事補償法でこういう審議をしても、担当される方がこういういいかげんなことで――本当にいいかげんなことですよ、判を押されたのじゃ、そしてこれは、それは判を押すことについては保護局の権限でしょう、恩赦をするかしないかもおたくの権限でしょうけれどもね、そういうふうに事実をごまかして、いまになってから閣議なんて、ただの一度も出てこない、答弁にもいままでの話に。最後になると閣議が済んでなかったからだというふうに言い逃れをされる。まあそれが役所で常識として通用するとあなたがお考えになるなら、これはその事柄自身を私どもこれから役所のあり方として批判していきたいと思いますね。  まあそういうことで、いまこのN被告のことばっかり申しておれませんけれども、資料はまだ届きませんですか。
  140. 安原美穂

    政府委員(安原美穂君) 間もなく到達するようでございます、
  141. 佐々木静子

    佐々木静子君 それでは資料が来てからまた次の話に入りたいと思いますから、一応N被告のことは中途にいたしまして、これは警察庁も来てらっしゃいますか――福島県の県庁の汚職の捜査についてお伺いしたいと思います。  これは、本年の十月の二十九日に一流紙に報ぜられてるところなんですけれども、福島県の赤井県生活環境部長の収賄事件これが大変に福島県その他東北一円の県民の驚きの目をみはらせて、そして、このような汚れ切った行政というものは追及されなければならないということで大きな県民の世論が起こっているときに、ちょうど十月の二十八日に福島県がこの赤井県生活環境部長を依頼退職さした、免職じゃない、依頼退職。そして同時に福島地検が不起訴処分をしたということで、大変に県民は納得のできい気持ちで、すっきりしないという失望感に覆われているということは、これは捜査当局も、東京ではございませんけれども、いろんな情報を得て知っていらっしゃるとおりだと思うんですけれども、県民は今度の赤井事件でこの腐敗にメスを入れる絶好の機会だと捜査当局を非常に信頼しておった。しかも、この汚職の真相というものが非常に明るみに出てきているにもかかわらず、時効という理由で一方的に打ち切られた。そこら辺、県民が非常に割り切れない気持ちである。そのような事柄からこの赤井部長収賄事件の捜査にについて私は若干お伺いしてみたいと思うわけです。  まず警察庁から、この赤井事件の捜査の端緒、それからどういう経過で赤井被疑者の捜査を進めていったのか、その経過を概略お話しいただきたいと思います。
  142. 平井寿一

    説明員(平井寿一君) ただいまお尋ねの件につきましては、福島県警察におきまして十月に福島県生活環境部長の赤井茂雄を検挙したわけでございますが、この発端は贈賄側の不動産業者の馬場という人物がおりまして、これを当初詐欺事件で逮捕、その後調べを進めたわけでございます、それが逮捕月日は六月二十七日でございますが、その詐欺事件の取り調べの過程におきまして、収賄側被疑者の赤井生活環境部長の不正事案の疑いという問題が浮かんでまいりまして、それに基づいて以後この贈賄被疑者の調べ、あるいは関係している被疑者の調べを進めてまいったわけでございます。途中調べがかなり難航いたしましたり、事実関係の確定に非常に日時が過ぎたというようなことがございましたけれども、十月に入りましてこの赤井部長に対する具体的な犯罪容疑、これは赤井部長の担当しております県の自然環境保全条例の企画立案や大規模開発行為などに対する規制措置の職務に関連いたしまして、さきに申し上げました馬場という不動産業者から昭和四十七年の十月下旬に現金数十万円を賄賂として受け取ったと、こういう事実が判明してまいりましたので、それに基づきまして赤井部長を十月の二十日と二十一日の二日間にわたって取り調べを行いまして、容疑が濃厚となってまいりましたので、十月二十五日に福島県警から福島地方検察庁に送致したと、こういう状況でございます。
  143. 佐々木静子

    佐々木静子君 これは、時効というからには三年ほど前の事件ですね。被疑事実はどういうことだったんですか。被疑事実をまず述べていただきたいんです。
  144. 平井寿一

    説明員(平井寿一君) 被疑事実を申し上げます。  福島県生活環境部長の赤井茂雄でございますが、福島県の生活環境部長として勤務しておりまして、福島県自然環境保全条例の企画立案及び大規模開発行為などに関する規制措置の検討を行うなど、自然環境保全の職務を担当していた者でありますが、   〔委員長退席、理事白木義一郎君着席〕 昭和四十七年十月当時、福島市万世町で不動産業を営んでおりました馬場信教らから、馬場らが買収した福島市在庭坂所在の山林を転売する際に、大規模開発行為等の規制に対する指導などに対する謝礼といたしまして、昭和四十七年十月下旬ごろに現金数十万円を賄賂として受け取った、こういう事実でございます。
  145. 佐々木静子

    佐々木静子君 そして、どうしてことしの十月ごろになって初めてこの事件が警察で捜査の対象になるようになったのですか。いまちょっと伺ったですけれども、非常に反応が鈍いのじゃないかというふうに思うのですが、どういうわけでそのように、このもう時効寸前くらいになって――これはとかくのうわさのある部長なのですけれどもね、いままで警察が全然動かなかった、十月ごろになってやっと重い腰を上げた。どうしてそんなにこの捜査が始まるのがおくれたのか、そこら辺はどうなのですか。
  146. 平井寿一

    説明員(平井寿一君) 先ほど申し上げましたように、本件捜査は六月末にこの贈賄側被疑者の馬場という人物を検挙いたしまして、その調べからいろいろな疑惑が出てまいったということで、本年七月初旬から捜査に着手したわけでございます。しかしながら、被疑者の供述が大変はっきりした割り方がなかなかできなかったという問題もございますし、また賄賂の供与の仕方、日時、場所の特定というふうなこと、そうした事実関係を確認するのに非常に困難を来しまして、福島県警の方ではまあ捜査二課の重点としてかなりの捜査力を投入して捜査を進めたわけでございますけれども、そうした捜査が難航して、本件の具体的な事案がはっきりしてまいったのは十月の二十日、こういうことで、確かにおっしゃるとおり時間がかかったということは否めないと思います。
  147. 佐々木静子

    佐々木静子君 この共犯者の馬場というのは、身柄を拘束したのはいつですか。
  148. 平井寿一

    説明員(平井寿一君) 六月二十七日に詐欺の容疑で逮捕しております。
  149. 佐々木静子

    佐々木静子君 この事件で、検察庁はどの時点からこの捜査に関与されたのか、まず伺いたいと思います。   〔理事白木義一郎君退席、委員長着席〕
  150. 安原美穂

    政府委員(安原美穂君) いま警察当局からお話のございましたように、今回の事件の被疑者で贈賄側という疑いを受けました馬場信教につきましては、六月二十七日に詐欺罪で逮捕勾留をして取り調べ中でございました。その関係におきまして、馬場の取り調べの過程におきまして、いま警察から御報告のありましたような贈賄の疑いを生じたわけでございますので、そのころ検察庁としては、そういう疑いを警察当局では持って捜査をするということは、七月ごろには一応の連絡を受けておったということでございます。
  151. 佐々木静子

    佐々木静子君 これは、馬場を検察庁は起訴したのはいつですか。また馬場と共犯者はどういう人が何名起訴されたのか、また被疑事実も簡単に述べていただきたいと思います。
  152. 安原美穂

    政府委員(安原美穂君) 馬場信教だけが公訴をされておるわけでございまして、この人につきましては大変多くの詐欺事件がございまして、五十年の七月十八日付で二件の詐欺、これは土地購入代金の手付金名下に詐欺をしたということで、二件の起訴がなされ、さらにまた五十年の八月十八日には合計四件に関する同じような土地購入代金手付金名下に詐欺をしたということで四件が起訴され、さらに五十年の九月十六日に同じようなことで一件が詐欺で起訴され、さらに五十年の十月七日に同じような手口方法で起訴がなされ、さらにまた十月二十八日にも今度は横領で起訴されているというようなことでございます。
  153. 佐々木静子

    佐々木静子君 この馬場というのは、いま言われたような詐欺事件あるいは横領事件によって不法に領得した金の一部を、この赤井部長に贈賄したというケースのように私は聞いているのですけれども、そのとおりですね。
  154. 安原美穂

    政府委員(安原美穂君) 金の出所についてはそのように思われるということでございます。
  155. 佐々木静子

    佐々木静子君 この馬場のことから、いまのお話のように赤井部長のことが出てきた。この赤井部長を取り調べたのは、これは警察とすると一番最初がいつなんです。
  156. 平井寿一

    説明員(平井寿一君) 赤井部長に任意出頭を求めて取り調べましたのは、今年の十月二十日が最初でございます。
  157. 佐々木静子

    佐々木静子君 十月二十日が最初で、それから後何回取り調べておりますか。
  158. 平井寿一

    説明員(平井寿一君) 十月二十日と翌十月二十一日の二日間を取り調べをしております。
  159. 佐々木静子

    佐々木静子君 このただ二回だけですか、そうすると。
  160. 平井寿一

    説明員(平井寿一君) いま申し上げた二日間でございます。
  161. 佐々木静子

    佐々木静子君 その二日間で被疑事実をはっきり認めたわけですか。どうなったわけですか。
  162. 平井寿一

    説明員(平井寿一君) 賄賂金の授受の関係につきましては、二日間の調べで大筋を認めたと、こういうふうに聞いております。
  163. 佐々木静子

    佐々木静子君 この大筋を認めた。小筋はどうなんですか。
  164. 平井寿一

    説明員(平井寿一君) まあ賄賂罪の事実関係といいますと、趣旨の点とか、具体的な日時、場所、方法、いろいろな点ございますけれども、その事実関係はケースといたしまして、それまでに贈賄被疑者の調べからかなり詰めておったのでございますけれども、それについて金銭の授受は認めたけれども、趣旨その他についてはわりあいあいまいな供述であったというふうに聞いております。
  165. 佐々木静子

    佐々木静子君 私は非常に解せないのですけれども、こういうふうにあいまいな供述とか、そうして贈収賄でしょう。細かい点で話が合わないと。これはどういう事件だって、こういうケースでしかも額も多いという、これだけ県民が騒いでいる。どういうわけでこれは身柄を拘束しなかったのですか。何か特別な理由でもあったのですか。
  166. 平井寿一

    説明員(平井寿一君) 警察の方では、捜査の過程におきまして強制にするかどうか、いろいろ検討も行ってまいったわけでございますが、証拠隠滅などの逮捕の必要性が出てまいらなかったと、こういうことで逮捕に至らなかったということでございます。
  167. 佐々木静子

    佐々木静子君 これは証拠隠滅といったって――そうすると証拠隠滅、これはいろいろありますね。供述の口裏が合わないとか、これなんかは普通贈収賄の場合の一番の証拠隠滅じゃないかと思うのですけれども、そういうことは全然ないというふうに警察は楽観して考えておられたということに承っていいわけですか。
  168. 平井寿一

    説明員(平井寿一君) 決して楽観というけではございませんが、本件捜査の場合には、さきに申しましたように贈賄被疑者の馬場という人物がすでに身柄を拘束されておりまして、かなり供述をそこから得られて、これとの通謀のおそれがなかったという点や、あるいはそれまでの諸々の内偵捜査によりまして、ある程度の状況を裏づけるような資料なども得ておったと、そういうことから証拠隠滅の問題もなく、また赤井部長を出頭を求めて調べた状況におきましても、任意出頭に応じまして調べの対象になり得たと、こういうことから特に逮捕にまでは至らなかったということでございます。
  169. 佐々木静子

    佐々木静子君 これは非常におかしいじゃないですか。これはもう各紙は報じているし、県民の方々も言っていられるけれども、この赤井部長というのは県の大ボスであって非常に敏腕な行政官として知られている人だけれども、一面、政財界にも非常に知り合いが多くて、この問題が起こってから福島県の政財界の有力者があっちこっちで会合を持って、あるいは東京で密談の場所を持っていろいろ密談をしたと、そういうふうなことが、これは黒い霧につながるものとして各紙が書いておりますよ。これは根拠のないことをそろって各紙が書くわけがないですよ。そういうことを県民の方たちも非常に問題にしているわけですよ。そういうさなかで、本人が出頭するからというようなことで身柄を拘束しなかったと、これは非常に不明瞭ですね、どうですか。あなた方はそういう事実を全く御存じなかったんですか。それともいろいろなこの赤井部長につながる政財界の人たちがあっちこっちで密談をしている、会合を持っている、この時期に、この件に関して。あなたたちはそうした情報を御存じなかったんですか、ようつかんでいられなかったんですか。
  170. 平井寿一

    説明員(平井寿一君) 本件は検挙着手当時から福島県警の方からも報告がございまして、こうした県の枢要なポストにある人物の不正事件でございますので徹底してやるように、われわれの方でもよく連絡をとっておったわけでございますけれども、そうしたこの種事件は先生も御存じのように、いろいろと周囲の動きが多い場合も多いわけでございます。そういうものには決して惑わされることなく、ともかく厳正公平な立場で徹底した捜査をやれということで、福島県警の方でもかなり強力に捜査を推し進めたというふうに考えております。
  171. 佐々木静子

    佐々木静子君 これはしかし客観的に見ると、全然厳正公平じゃないじゃないですか。これだけのお金の収賄事件で、しかも県民がこれだけ大きく騒いでいる。それを拘束もしないで、本人が出頭するから証拠隠滅のおそれはないと、これはだれが見ても公平じゃないですよ。あなたはそれでも公平だとお思いになるんですか。
  172. 平井寿一

    説明員(平井寿一君) 検挙、取り調べの手段といたしまして、まあわれわれの方でも何が何でも身柄拘束ということまでは決して考えておりません。やはり本件の事件のように、贈賄側被疑者の身柄も拘束されており、そうした逮捕の必要性に至らないものにつきましては、やはり任意でやることが妥当であると、また、そういう方法で本件の容疑を解明していく自信も福島県警の方ではあったわけでございまして、そうした観点からこうした方式で進めていたと思います。
  173. 佐々木静子

    佐々木静子君 これは検察庁の方に伺いたいんですが、こういう県の要職にある人の、これは国で言えば閣僚の汚職ぐらいの、その県から見れば事件ですよ。これを県警が全く公正な立場でやれるかやれないか、まあ公正とおっしゃっても、私ども一般国民から見ると、とても県警でそれだけの公正な捜査というものは進めにくいんじゃないかと思う。検察庁はこの事件に特に赤井部長の身柄についてどのような指揮をとっていられたのか、お述べいただきたいです。
  174. 安原美穂

    政府委員(安原美穂君) 先ほども申し上げましたように、福島地方では耳目を引いておる事件でもございましたので、検察庁としては重大な関心を持っておったことは事実でございますが、われわれはやはり警察の捜査というものの公正を信頼しておるわけでございまして、特に本件は警察が端緒を得られた事件でもございますので、警察の捜査を待って、送致を受けて捜査をするという方針でおったわけでありまするが、もとより検察庁と警察とは捜査につきましては協力関係にございますので、逐次連絡は受けておったのは事実でございます。ただ、先ほど御説明のように、なかなかいわゆる金銭授受の趣旨、日時、場所、金額等について関係者に食い違いがあるということで捜査が難航しておったようでございますが、そこで、しかしながら冒頭申し上げましたように、地方の耳目を引く事件でもございましたところ、被疑事実から言いまして時効が切迫しておるということに相なりましたので、九月に入りましてから警察の捜査の促進を希望するとともに、送致前ではございましたが、十月の二十三日と二十四日には、検察官みずからが本件の被疑者である赤井部長を取り調べをしたということでございます。
  175. 佐々木静子

    佐々木静子君 これはもっと早くしないと、もういまも言われたように時効が切迫しているし、事実また時効になっちゃったんですけれど、なぜ検察庁はそれまで手をこまねいてじっと警察に任しておったのか、これは早いこと捜査をしなければ話にならぬじゃないかと思うんですけれども、そのあたりの察検庁の警察官に対する指揮にいいますか、その関係というものは一体こういうふうな状態でいいんですか、警察に任しておいて。
  176. 安原美穂

    政府委員(安原美穂君) 先ほど申しましたように、訴訟法上のたてまえ、また運用のたてまえも、第一次捜査機関である警察の捜査に期待するというのが訴訟法のたてまえでありますとともに、両者の関係もまた協力関係を基盤にしておりますが、御指摘のとおり、具体的な事件につきましては、検察官は警察、司法警察職員を指揮できるということも補充的にはあるわけでございますので、結果から見ましてこのような耳目を引く事件が時効というようなことで決着を見ざるを得なかったという結果から見ますると、私どもとしては遺憾なことでございます。どちらに責任があったかはまだわかりませんけれども、少なくとも客観的に見てもう少しこの協力関係を強力に推し進めて、時効による不起訴というようなことのないようにすべきであったように、結果論としては遺憾に思っております。
  177. 佐々木静子

    佐々木静子君 いまのお話のように、まあこういう事件は、警察ではこれは常識的に見ても力関係で無理ではないかと、こういうときこそ検察庁が国民の正義を代表するものとしてやっぱり大いにその権限を発揮して、この誤った行政というものに対してメスを入れていただきたいということを、この事件に限らず申し上げておきたいと思うわけです。  で、警察の方ですね、さっき二日間にわたって調べたときにほぼ事実を認めておったと。金銭授受の事実ももう認めておったわけですね。収賄としての金銭授受の事実ですね。
  178. 平井寿一

    説明員(平井寿一君) 金銭授受の事実は最終的に認めたということでございます。
  179. 佐々木静子

    佐々木静子君 それであれば、あなたの方がちょっとのんき過ぎるんじゃないですか。もうあとわずかしかない、だのに本人が出頭するからということで身柄も調べないで、そしてまあこれで大丈夫だろうと、これはどう見てもおかしいですよ。警察で捜査を終わるんじゃなくて、検察庁が起訴しなければ時効が来るんですから、これはもう早く――何でも捕らえろというわけじゃないですけれども、それだけ共犯者の供述もあり、しかも本人も大筋では認めておると。それであれば早く送検して早く起訴できるように――結論的には細かい点が食い違って起訴ができなかったというふうに私は聞いておるんですけどね、これは非常に警察の方のミスじゃないですか、ミスだとお思いになりませんか、どうして勾留しなかったのか、これは県民は非常に大きな警察の黒星として深い疑惑を持っているわけです。警察の方はその点をどう思い、反省していらっしゃいますか。
  180. 平井寿一

    説明員(平井寿一君) 今度の事件は、福島県警の方でもかなりの力を傾けて捜査をやったわけでございまして、決して漫然とした仕事をやったわけではないと思いますけれども、ただ遺憾ながら具体的な容疑事実というものが浮かび上がってまいったのがかなり時効間際の時期でありましたし、また、そこにそうした容疑点を浮かび上がらせるまでの捜査が大変難航したと、こういうふうな事情がございますので、結果的に見ますと時効ぎりぎりに送致することになり、事件がぴしっとした刑事処分を受けられない結果になって大変に残念だという感じがいたしますが、こうした事件の発見の仕方とかあるいは時効間際になった場合の処置の仕方とかいうことにつきましては、今後なおよく検討してまいって、今後の同種事案の捜査の参考にしてまいりたいと、かように考えている次第でございます。
  181. 佐々木静子

    佐々木静子君 まあ、これからちゃんとしてもらわないと困るけれども、これからちゃんとしたら済むという問題じゃないですよ。これは県民は深い疑惑を持っていますよ。そして役所同士がなれ合いで赤井を助けたと。これは客観的に見ればまさにそうですね。結果的にあなた方がその点の見方が甘かったということだけでは済まないと思いますよ。しかも当該赤井は、これは二十五日の日に送検されているわけですね。そして、その日の検事正の話ではこれは起訴できるというふうな意味のことを最初は言っておった、記者会見で。それでいながら、その二十八日の朝の新聞も、まだ微妙な、起訴できるというふうなニュアンスのある発言をしておりながら、二十八日に時効完成ということで落としているわけですね。これは疑惑は晴れませんよ。晴れるとお思いになりますか、こういうことをやっていて。しかも二十八日の日にこの赤井部長は福島県を依願退職ですよ。ですから莫大な退職金までもらって退職しているわけです。県の規則によると、慣習によると、起訴されてない場合は退職金も出ると。そして退職してそれと同時に時効で不起訴、これは非常にもう余りにもうまく行き過ぎて、ストーリーとしてちょっとうまく行き過ぎておかしいくらいの話じゃないですか。これを警察が今後ちゃんとやりますで県民が了解するとお思いになりますか、こういうことをやっていらして。もっとこれは厳正にきっちりやらなければ、全く疑惑は晴れませんですね。  それから、この時効寸前のこの二十五日に送検を受けた検察庁の態度も、非常に検事正の言うことが次々と新聞で変わっておる。これは起訴できるのではないかということで県民は非常に大きな期待を検察庁に寄せておったわけですね。ところが、その日が土曜日で次が日曜日、そして二十七日が月曜日というようなことだけれども、まあ検察庁の勤務時間というようなこともいろいろあろうとは思うんですけれども、これは担当検事がこの土、日と庁内のソフトボール大会に参加して、そっちのほうに全力投球、文字どおり全力投球しておった、こういうふうなことはどうなんですか、そういう事実を法務省刑事局御存じなんですか。
  182. 安原美穂

    政府委員(安原美穂君) 主任検事が時効切迫直前の事件を捜査をしないで、ソフトボールに興じておったというようなことはあり得べからざることと思いますが、そういう報告は受けておりません。
  183. 佐々木静子

    佐々木静子君 これは私も目で見たわけじゃありませんが、何人かの福島県民の方が確認されて私の方にそういう申し出があるわけです。ですから、ぜひその点もよく調べていただきたい。そして、これはその担当検事が――個々の検事がどうだこうだと言うんじゃなくて、検察庁自身の取り組みの姿勢として、特にこの検事正談話で見る範囲においては、全くこれは県民は愚弄された、検察庁に大きな期待を寄せているから、ちゃんとやってくれるという大きな期待をみごとに裏切られたという怒りが、いま燃え上がっているわけですね。これは国民の正義の代弁者としての検察官に与えられた権限というものを、やはりきっちりと正しく行使していただかなければ、これは国民を裏切ることになる。ひとつその点について法務大臣と刑事局長の御所信をお聞きしたいと思います。
  184. 安原美穂

    政府委員(安原美穂君) 先ほども申しましたように、県民の耳目を、注目を浴びている事件でありますから、なおさらそれについて、時効ではなくて、犯罪の嫌疑があったのかどうか、起訴できるかどうかということの結論を得て処分をするというのが検察のたてまえでございますので、そのたてまえに反する結果となったことは私としては非常に遺憾なことであると思いますとともに、国民の期待にこたえられるような検察の運営について、今後とも努力するように私なりに努めたいと、かように考えております。
  185. 稻葉修

    ○国務大臣(稻葉修君) 事件を伺っておりまして、まことに遺憾千万でありますというふうに感じます。私の就任いたしましたのは昨年の十二月九日でございますが、最初の省議におきましても、まあ法秩序の維持全般について抜かりなくやることはもちろんであるけれども、当時の社会情勢にかんがみ、爆弾事件等がありましたから、暴力犯は徹底的にやらなければいかぬ、第二には、水島事件のような事件もありますし、国民は公害に対して、公害犯罪に対しては厳重にやってもらいたいというわけだから、公害犯はきちんとやらなければいかぬ、第三には、非常な経済不安、物価高のところでありましたから、経済諸立法についていろいろな法律が出ているが、これを厳正に適用して、いやしくも物価抑制の妨げになるような事犯は徹底的にやらなければいかぬ、政界を浄化するためには、選挙違反等についてもきちんとやらなければいかぬ、というような発言をいたしたわけで、そういう点から見まして、これ、まさに公害事犯の非常に最たるものでございますので、こういう事件について同じ結果になったということについては、法務大臣としてはなはだ遺憾にたえません。  今夜はなお一層、私から検察当局に検事総長を通じて厳重にひとつ締めてやってもらいたいということを早速申します。
  186. 佐々木静子

    佐々木静子君 大変に力強い御答弁をいただいて、今後はもうこういうことが二度と日本国内で起こらないように、ぜひともよろしく検察行政は国民の期待に沿うように行っていただきたいということを特にお願い申し上げます。  私ちょっともう時間も過ぎてまいりましたので、あと簡単に申し上げますが、いまの死刑執行についてのこの書類をいただきまして拝見さしていただいておりますが、これはいつごろ省内で、その日時ですね、いまの問題の被告の分です。いま御回答保留になっていた分をちょっとお述べくだされば、それに応じてちょっと質問をまだ続けたいと思います。
  187. 安原美穂

    政府委員(安原美穂君) いまお手元に渡しました書式を、具体的な事件に当てはめて起案をした本件につきましては、起案の日は六月の十一日でございます。
  188. 佐々木静子

    佐々木静子君 この六月の十一日の日に判を押していらっしゃるということでございますね。
  189. 安原美穂

    政府委員(安原美穂君) 先ほど佐々木先生のお尋ねに対して申しましたように、本件は恩赦の審査を受けているということで、その結論を待つということのために具体的な起案の日を審査の会の結論が出るまで待っておりましたけれども、実際にはいろいろ記録の精査等はすでに了しておりましたので、六月十一日に結論が出た後、それを受けて刑事局で起案をいたしましたから、非常に早いスピード決裁が回ったということになっておるのでございます。
  190. 佐々木静子

    佐々木静子君 これは無論私はそんなことになっているとは、あるいは関係者は夢にも思わないものだから、刑事局にはそのことをその当時お尋ねした覚えもないわけですから何でございますが、そうすると、六月十一日以前に保護局長の判も回ってきておったと、そういうことですね。保護局長の判がないと、この書類はでき上がらないわけでしょう。
  191. 安原美穂

    政府委員(安原美穂君) 本件の具体的な死刑の執行の起案につきましては、六月十一日以降に起案の決裁を求めておりますけれども、先ほど申しましたように具体的な事件の実際の検討はすでに了しておったということでございます。
  192. 佐々木静子

    佐々木静子君 それでは最終決裁はいつなのですか、それを伺います。
  193. 安原美穂

    政府委員(安原美穂君) 六月の十二日でございます。
  194. 佐々木静子

    佐々木静子君 そうすると、六月十二日以前に保護局長の御判もあったということは確認されるわけですね。
  195. 安原美穂

    政府委員(安原美穂君) 先ほど申しましたように、本件の執行に関する具体的な決裁の印鑑は、六月十一日から十二日の間に保護局長から得ておるわけであります。
  196. 佐々木静子

    佐々木静子君 そうすると、これは間違いなく私はその後も保護局長に恩赦について伺いに上がっている。そのときにまだ結論は出てない出てないというお話であった。それは細かい説明は別として、間違いないですね、そういうことになりますね、保護局長。結論だけでいいですよ、イエスかノーかだけで。
  197. 古川健次郎

    政府委員古川健次郎君) 先ほどから申し上げましたように、私は福岡事件について最終結論は出てないと申し上げておりますので――共犯のIにつきましてはまだ閣議決定がございません。福岡事件についてはまだ最終結論が出てないというふうに申し上げたわけでございます。
  198. 佐々木静子

    佐々木静子君 だから、イエスかノーかで、その福岡事件が閣議のどうのこうのということをいま聞いておるのじゃないわけですよ。却下になったわけでしょう、恩赦が。ですから何もあなた、言い逃れ、そういうことを詭弁と言うのですよ、そうでしょう。私が偉そうなことを言うのは大先輩に向かって大変失礼ですけれども。まあそれで結構です。これは実は私福岡の刑務所へ参りまして、そのときの状態も調べさしていただいたのですけれども、これは六月の十二日に、福岡高検検務課から福岡の刑務所長に本人の健康その他について問い合わせがあって、血圧などもはかっているようでございますね。そういうことは、これは私は刑務所で確かめたわけですけれども、そしてこれは死刑の執行の指揮は当然検察官がやるわけですから、検察官が前日の六月の十六日の午後五時前に刑の執行指揮書を持って福岡の刑務所に来られたと。そこら辺は矯正局長、間違いありませんか、御存じありませんか。
  199. 長島敦

    政府委員(長島敦君) 現地から報告を受けましたことはそのとおりでございます。
  200. 佐々木静子

    佐々木静子君 恩赦の却下決定は、これはだれが送達されるのですか。そしていつ本人に送達されたのですか。
  201. 古川健次郎

    政府委員古川健次郎君) 審査会の相当議決につきましては、上申庁である福岡刑務所長に通知するわけでありますが、この点につきましては郵便による送達と、それから……
  202. 佐々木静子

    佐々木静子君 この具体的事件についてだけでいいです、時間がないですから。
  203. 古川健次郎

    政府委員古川健次郎君) 職員による送達がございますが、本件の場合には法務省職員が送達しております。
  204. 佐々木静子

    佐々木静子君 これはいつN被告の手元に届きましたか。
  205. 長島敦

    政府委員(長島敦君) これは執行がありました当日の朝でございます。
  206. 佐々木静子

    佐々木静子君 朝何時ですか。
  207. 長島敦

    政府委員(長島敦君) 時間までは報告がございませんが、死刑執行の告知をいたしますときに同時に告知をしております。
  208. 佐々木静子

    佐々木静子君 そうでしょう。あなたの方は死刑の執行指揮書を届けるまで、恩赦却下決定書を法務省で握っていられたのでしょう。私はちゃんとこれを福岡刑務所で調べてきましたよ。また刑務所の中にいる人たちからもいろいろな事情を聞きましたよ。刑務所の房から出るときには恩赦になると思って本人は出たんですよ。そういう卑劣なやり方を法務省はやっていいんですか。これはだれが聞いてもむちゃくちゃな話です。これはそうですよ、六月の中旬に恩赦になると国会答弁もあり、恩赦になるとは言ってないですけれども、そのころがめどだと。非常に取り組んでいただいているという国会の議事録も本人に届いており、しかもそのような口頭での御説明もあるから、本人は恩赦になったのだと思って喜んだんです。そこら辺の事情を矯正局長はつぶさに調べていらっしゃいますか。まあ調べていらっしゃっても、恐らく本当のことは知っていらしても、人間としてとてもこの場でおっしゃれないと思いますね、そういうだまし討ちは。まあ安楽死ということにこれはなるかもしれません。本人は恩赦になったんだと思って、初めそこで看守とやりとりがあったわけです。だから抵抗もしないで、まあ抵抗したって始まらぬかわからぬけれども、ともかくスムーズに外に出たんです。そこら辺のやりとりは大ぜい――刑務所の中だからそう大ぜいいるわけじゃないけれども、やはり聞いている人は聞いているわけですね。矯正局長そのあたりは詳しい事情を御存じでございますか。
  209. 長島敦

    政府委員(長島敦君) 私の聞いておる話は、ちょっとただいまおっしゃったのと違うのでございますけれども、私が聞いておりますところでは、前の日の夕方には検察官の死刑執行命令とそれから恩赦却下の文が五時近くに到達したということを聞いておりますが、その際に所長といたしましては、何と申しますか一番所長がつらいのは、だれよりもつらい立場でございますけれども、本人が安らかな気持ちで執行を受けてくれるという、それにどういうふうにもっていくかということが一番この場合に考えることでございまして、もしこの恩赦不相当の決定が参りましたことを前日にすぐその場で知らせますと、非常に本人が動揺いたしまして、そうなりますとかえって一晩苦しむような酷な結果になるんじゃないかということもございます。一方そういうことになりますと、職員の警備を厳重にいたしまして、まあ対面戒護と申しますか、ずっと夜通し見ているというような戒護が必要でございますが、時間の関係でそういう手配が非常に困難な状態にもございました。所長の判断としましては明くる日の朝、この却下の通知をすると同時に執行指揮が出ているということでやった方が、むしろいいんじゃないかという判断をしたというふうに私は聞いておるわけでございまして、その際にどういうふうな状況で本人が執行を受けたかというようなことは、またここで申し上げるのははばかるわけでございますけれども、そういうことで結果的にはまあ支障なく執行ができたというふうに聞いておったわけでございます。
  210. 佐々木静子

    佐々木静子君 これは私の調べたところでは、当日は普通の状態でもうじき恩赦になる可能性が強いというようなことをそのちょっと前、その日じゃないけれども看守の人にも自分から話をしておったそうですね、前日か前々日ぐらいに。そして、この日は普通に運動に出て部屋に入ったのが十時。入ってしばらくすると十時十五分に看守が迎えに来た。そして本人は、あっ、恩赦決まりましたかと言って喜んで立ち上がった、そこの恩赦決まりましたかと言って大きな声で喜びの声を上げたのは、これはほかの房にいる者も聞いているわけですね。これはいろいろな人から私聞きましたけれども。そして死刑の執行がもう十時三十分ごろに執行されておりますね。私あの人のいた房舎から死刑の執行場まで、これは私は歩かなかったですが、ほかの方が調べましたらかなり距離あるわけですね。所長室に行ってそれから死刑の刑場まで行っているわけですね。何の暇もないわけですね。そういうまあこれは苦痛を与えないという意味では私はわからないではないですけれども、これは福岡の刑務所長さんやら拘置所長さんに聞いても、これは私はそういう死刑の執行指揮をなさる検察官の方は御存じだけれども、私は知らないからいろいろ聞いてみると、普通は一日前か二日前に言っておく。この事件だけは特別だと。  そして息子もいるんですね。それなんかも全部本当の住所に通知出してないんですよ。出したけれども返送された。当たりまえですよ。その後みんな住所変わってるんですから。ですけれども、その人たちは面会にも来ているから、調べようと思えば現在の住所はすぐわかるわけです。これは死刑の執行後も知らしてないんですよ。十何年前の捜査記録に基づいて住所出している。それはみんな返ってきます。しかしその間手紙の閲覧とか何とかと、刑務所はやっているんですからね。本当に知らそうと思えば幾らでも知らせれるわけです。  それで私は遺言書はと聞くと、遺言はないと言った。あたりまえですよ。十時十五分に、しかも恩赦だと思って外へ出て、十時半に死刑の執行を着手された人が、いつ遺言書を書く暇があるんですか。私はこれは全然根拠のない話をしているんじゃなくて、国会で以前に取り上げるについてN被告に、実際に出会ったのは一回ですけれどもね、出会っているわけですよ。体が悪い、非常に健康がすぐれないから獄死するかわからないと。しかし自分は遺言書をしっかり書いておく。万一のときには――彼は処刑されるとは思っていなかった、恩赦が認められると思ったけど、それまでに獄死するかわからない。遺言書にすべてを書いておくと、これ私もこの耳で聞いているし、関係者の人は何人も聞いているわけですよ。ところが遺言はなかったと。十五分に迎えに来て、もう三十分には――三十分か二十九分ですね、執行の着手、で遺言書はないと、そして遺族にも知らしてない。  私は国外にいたけれども、もう恩赦出たころかな、出られはしないけど、恩赦になったころかなぐらいに国外で思っていたけれども、しかし関係者も新聞を見て初めてびっくりして刑務所にかけつけたわけです。そういうふうな行政がありますか。これは血も涙もないというようなありきたりな言葉では言いあらわせない問題だと思いますよ。そして、そのことを言うと、えらい失礼だけれども、いやNは悪いやつですよ、あんな悪いやつはと。しかし仮にどんな悪いやつであったところで――私は悪いとは全然思ってないんですよ、まあしかし仮に悪いやつであったとしたところで、こういうことをこれは国家権力は許せるのかどうか。私はこの死刑の刑事補償の問題を考えるときに、いまの死刑の執行が密室の中でこんな状態で行われているというこの悲惨な状態を、これは死刑制度自身が根本的には問題なのであろうと、それを執行する当事者を責めるのは酷だとは思いますけれども、しかしもうちょっと考えがあるのではないか。  で私は、福岡の刑務所で抜き打ちにそれじゃ死刑の処刑をするのはこの人だけかと、Nだけかと聞くと、もう一人いると、これはMという人だと。この二人は抜き打ちでやってもいいことになっているんだと。それじゃそれはどういうことでそうなっているんだと言うと、これは死刑の確定囚からアンケートをとったと言うんですね。打き打ちにやるのがいいか、何日前に通知してほしいか。それに対してこのNとMとは返事を出さなかった。当然です。このNは無実を争っているんだし、それからMも、これは日弁連でいま再審請求をしている、無実を争っている被告ですね、死刑囚ですね。それはそれに対して回答は出さないでしょう。そうすると、刑務所長は、この二人は抜き打ちにやっていいんだと。ほかの人は何日前に知らしてくれとそれぞれアンケートがあると。それも聞いてみると、前々所長のときのころだとか、七年前にとったアンケートだとか、そういうふうなずさんなことで、そういう人間の、これが国家権力で人に死を与えるというふうなことが、私は矯正局長が非常に近代的な矯正ということで取り組んでおられるということについては非常に敬意を表しているわけですけれども、現実に福岡のこのN被告はそういう殺され方をしたという事実は、やはり私は日本のこれは処刑史の一つの問題点として私は御当局が考えていただきたいと思うわけです。  それから、私にもこれを聞いておりました。もし自分が獄死したならば、逮捕されたのは彼は昭和二十一年だったと思いますね。そして死刑が確定したのは、してからもう三十年ほどたっているわけですね――三十年もたっておりませんか、二十数年たっているわけですね。その間、毎日日記をつけている。これを読んでもらえば事件の真相は理解してもらえるから、ぜひ自分が獄死した場合にもこれを読んでほしいと、これは私だけではなく、前についておった弁護人とか、いろんな人が聞いているわけですね。それはどうなったかと刑務所長に聞くと、処刑されるちょっと前に全部廃棄処分の申し出があったと言うんです。その廃棄処分の申し出の書類はどこにあるかと言うと、書類はないけど、口頭で全部の書類について廃棄処分の申し立てがあったから廃棄処分にしたというのです。そういうことがいまの日本の行刑で行われているという、この点、私は非常に今度の刑事補償の問題とあわせて遺憾に思うわけです。遺憾じゃ済ませないような気持ちになっているわけです。この点について矯正局長とそうして大臣の御意見を伺いたいと思います。
  211. 長島敦

    政府委員(長島敦君) このNの事件につきまして、いろいろな問題点があったという御指摘でございます。まあ私どもの受けました報告と一部違う点もございますが、それはそれといたしまして、これは非常に重大な実は問題でございまして、刑務所といたしまして、この死刑の執行ということは本当にもう大変なことでございます。何とかして、この同じく執行しなければならぬならば、安らかに苦しまずに執行できるようにということを職員はみんな念願しておるわけでございますが、そういう念願の結果として、たとえば先ほど御指摘がありましたように、みんなのアンケートをとって、事前に知りたいと、知った上で安心立命して執行されたいという希望もあれば、くんであげようというような考え方であったと思います。しかし、ここら辺、もう少しよく検討を要する問題でございまして、果たしてその事前にそういうふうに言うことが、本人にとって苦痛をよけい与えるのじゃないかという問題もございまして、ここら辺はもう一度よく検討を実はいま始めておるわけでございます。  なお、御指摘がございました日記帳の件でございますが、これも手違いがありまして大変申しわけございませんが、日記帳は一部ございましたので、お渡ししておるということで聞いております。  いずれにいたしましても、この問題は行刑にとりましては一番つらい、しかし一番重要な仕事でございますので、今後よく検討いたしまして、適切に御非難を受けないようなことを考えていきたいという覚悟でございますので、御了承いただきたいと思います。
  212. 稻葉修

    ○国務大臣(稻葉修君) 矯正局長の申しますとおり、一般に犯罪者の処遇問題につきましては、きわめて近代的に改善を要すると思いますし、特に死刑の執行等につきましては、いま具体的な事案について御指摘がございましたから、なお一層の改善に努力する所存でございます。
  213. 佐々木静子

    佐々木静子君 もう時間がありませんので、ぜひいまの御所信、人権擁護の立場でひとつもう少し人間に対する温かい思いやりで行刑を行っていただきたいということを特にお願い申し上げます。  そして、時間がありませんので、これは全く別の件でございますが、やはり健康を害して東京拘置所の中で獄死すれば大変だということで、いま非常に問題になっておりますところの石川一雄氏の健康状態というものが大変に心配されておりまして、この石川氏との医療接見報告書とかその他健康状態が悪いということについてのいろんな資料が私どもの手元にももたらされておるわけで、大変に心配しているわけです。なかなか見に行くわけにもいきませんし。ですから、この点についてきょう時間がありませんので質問ができませんけれども、矯正局長の方からひとつお問い合わせいただいて、その健康状態についての資料をできましたら御提出いただきたいと思うわけでございます。
  214. 長島敦

    政府委員(長島敦君) 承知いたしました。
  215. 多田省吾

    委員長多田省吾君) 速記をとめてください。   〔速記中止〕
  216. 多田省吾

    委員長多田省吾君) じゃ、速記を再開してください。  午前の質疑はこの程度にとどめます。  午後一時四十分再開することとし、休憩いたします。    午後一時五分休憩      ―――――・―――――    午後一時四十四分開会
  217. 多田省吾

    委員長多田省吾君) ただいまから法務委員会を再開いたします。  午前に引き続き、刑事補償法の一部を改正する法律案を議題といたします。  質疑のある方は順次御発言願います。
  218. 白木義一郎

    白木義一郎君 本法案は、御承知のとおり、先国会で当委員会で可決終了した法案であります。そのために、今回は私はごくかいつまんで、重要な点だけお伺いをしておきたいと思います。  最初に法務大臣にお伺いしますが、この改正案は、補償金額をふやすという点についてはいろいろ議論はされておりますが、問題もありますけれども、一歩前進というとらえ方を私はせざるを得ない、こう思うわけですが、第四条の五項に「罰金又は科料の執行による補償においては、すでに徴収した罰金又は科料の額に、これに対する徴収の日の翌日から補償の決定の日までの期間に応じ年五分の割合による金額を加算した額に等しい補償金を交付する。」と、こうなっておりますが、すでに有罪とし、あるいは罰金、科料を納めた、その後無罪になったと、当然この罰金、科料は当人に交付するんじゃなくて、お返しするのがあたりまえだと思うんです。それについて、利息は五分で妥当であるかどうか、この点も補償金額の改正に際して検討すべきじゃないかと思うんですが、大臣いかがでしょうか。まず大臣にひとつ。これは単純な計算ですから。
  219. 稻葉修

    ○国務大臣(稻葉修君) 余り感心いたしません。
  220. 安原美穂

    政府委員(安原美穂君) こういうものにつける利息もできるだけ高ければ高いにこしたことはないとは思いますが、他の制度とのバランスもございまして、年五分ということになっておるわけでございますが、これは白木先生御案内かと思いますけれども、結局、罰金の判決を確定いたしまして、執行いたしました後で無罪であることがわかったというような場合には、民法で言いますと、いわば法律上の原因がなくて他人の財産により利益を受けたということで、不当利得という考え方になるわけです。その場合には、国はこれは無過失の場合を考えますと、悪意で――知っておってお金を徴収したわけじゃありませんので、民法の不当利得の規定によりますと、利益が現存する限度で、いただいた金の利益の現存する程度で、現存すれば返しなさいということで、知ってそういうものを悪意で取ったという場合には、このいただいたお金プラス利息ということになっておるわけでございます。そこで、この刑事補償法の罰金の場合におきましては、悪意ではなかったわけですが、この不当利得の考え方をとりまして、悪意の場合と同じように、受け取った罰金に法定利息の年五分を加えて補償するということになっておるわけでございまして、この年五分というのは利息債権における法定の利率でもございますし、債務不履行の場合の遅延損害の利息でもございますので、年五分というのが不当に低いということじゃないというふうに考えておる次第でございます。
  221. 白木義一郎

    白木義一郎君 法務大臣に伺っているんですが、罰金、科料を国庫へ納めた、それが間違いであったと。局長の御説明では不当利得並みに扱う、これを返納する。それに対して利息をつけるということですが、その利息か五分で妥当かどうかとなると、銀行利子よりも低いということになると、国は無罪の人から罰金、科料を納めさせておいて、長い間銀行へ預けておいて差額だけ国はもうけたというようなけちもつけられるわけです。この点について法務大臣、このままでいいかどうか、お伺いしているわけです。
  222. 稻葉修

    ○国務大臣(稻葉修君) このままで胸を張って大いばりして通るべきものではないように思います。
  223. 白木義一郎

    白木義一郎君 ということは、近い将来においてこういう点もあわせて検討していただく、このようにお伺いをしておきます。  そこで、先国会の当委員会の質疑の模様を思い出していただきたいわけですが、この法案は、前にも申し上げたとおりに、官尊民卑の残滓の法案であるという前法務大臣の御意見がありましたし、その後質疑応答の中で稻葉法務大臣は、これはおわび料に該当するものであるというような、次第に法務省が民主的な考え方に、この法案と取り組んでいこうという方向へなってまいりました。大変好ましいことだと思っておるわけですが、そこで、無罪になったからこの法律に基づいて補償を請求する権利があるんだ、また国はこれを補償する義務があるんだというようなことになっているわけですが、このおわび料とかあるいは慰謝料とかというような表現の中には、請求したら払うぞというようなことは出てこないと思うんです。そこで、その点を法務大臣も私と同意見だということで、何かこれを運用面においてもっとおわび料のあらわし方をスムーズに運営する方法を検討をしよう、次の委員会にどこまでできるかは別にしても、次の委員会にお答えしよう、こういうことで私も期待をしていたところですが、御承知のとおり、それっきりになってしまったわけです。そこで、改めてこの問題についてどのように指示をされ、あるいは検討を促されたかということを御報告を願いたいと思います。
  224. 稻葉修

    ○国務大臣(稻葉修君) これ、運用は裁判所でいたしますものですから、ちょっとこちらから法務省としてその運用について注文をつけない方がいいんではないかというふうに思いますが。
  225. 岡垣勲

    最高裁判所長官代理者(岡垣勲君) この問題につきましては、さきの国会委員の方々から、無罪の判決宣告の場合に、被告人に刑事補償請求権を告知するなど方法をとってはどうかというようなお話がございまして、その後法務省とも相談いたしました。そして、裁判所といたしましては、本年の七月に開催されました刑事裁判の担当の裁判官の会同で係員の方から、無罪判決宣告の場合には、刑事補償の適用がないことが非常に明瞭な場合を除きまして、判決が確定すれば刑事補償請求できるのだ、その請求の期間は三年以内であるというふうに、請求したいと思う人があっても知らないためにできないということがないように留意することが相当であるというふうに係官から説明いたしまして、出席の裁判官から各裁判官に周知徹底していただくようにお願いいたしました。
  226. 白木義一郎

    白木義一郎君 いまお答えいただいた件については、法務大臣から何か指示があり、あるいは相談があったことでしょうか。
  227. 岡垣勲

    最高裁判所長官代理者(岡垣勲君) 別に指示があったとかなんとかいうことではございませんで、ただ法務省と協議はいたしましたけれども、裁判所としては、これは相当であるということでとった措置でございます。
  228. 白木義一郎

    白木義一郎君 それでは、この前法務大臣は、この次の委員会に全部が全部できるかどうかはわからないが、少なくともまじめにやったのだ、ここのところまではできましたというものはこの次の委員会までに出します、そうします、こういうお答えをいただいているわけで、法務大臣お忙しいために、その点を察して法務省と最高裁の方で一歩前進の打ち合わせをしてくださった、こういうことです。  そこで、実はあなた無罪でした、だから請求しなさい、請求すれば補償金を法律に基づいて払いますよというのは法律上の問題で、私どもが考えますと、故意、過失というむずかしい問題はともかくとして、無罪ということは有罪でなかったんだ、有罪でないにもかかわらずいやな思いをさんざんしたり、世間でいう臭い飯も食わねばならなかった、こういうようなことになってはお気の毒だということで、国はこの法律をつくって、十分不十分はともかくとして補償をしなければならないという趣旨法律だろうと思うのですね。それが、従来はほとんど知らされてなかったわけです。あるいはまた、その手続等、いわゆる被害者といいますか、無罪になった人が、とても専門的な知識がないために請求をすることも知らないし、あるいはまたその手続を弁護士に煩わすと、補償金よりも弁護料の方が高くなるというようなこともあって、この無罪になった件数と補償金を受け取る請求をした人の差が非常に開いて、当然補償しなければならない人で補償された人は二割ぐらいしかないというようなことから、私どもは当然これは国が積極的に補償金――この法案を生かすためにもつともっと努力をしなければならない、ということで現在に至って、裁判所の方から、判決と同時に、こういう制度もあるから活用をするようにという趣旨を徹底するように御協議をしていただいたことは、従来から見れば進歩ということになりますが、もう一歩、皆さん方に内容を詳しく申し上げる必要もありませんけれども、その請求は判決のおりた裁判所で請求をしなくてはならない、その請求の方法は何でもよろしい、紙切れでもよろしいし、口頭でもよろしいと、こういう前回は答弁があったわけですが、その辺になると、いかめしい裁判所の運用については何だか少しいいかげんな点が感じられると同時に、何でもいいという一面に、十五条には「補償請求の手続が法令上の方式に違反し、補正することができないとき、若しくは請求人が裁判所から補正を命ぜられてこれに応じないとき、又は補償の請求が第七条の期間の経過後にされたときは、請求を却下する決定をしなければならない。」こういう法律があるわけです。一方ではもう手続なんというのは簡単なんですと、もうどうでもいいですよ、とにかくその請求をしていただきたいと、ただし判決のあった裁判所に限りますと、そこまでは今度やってくださるわけですね。ところが今度は、この十五条との関連はどうなるかと、そんな心配が出てくるわけです。その点いかがでしょうか。
  229. 岡垣勲

    最高裁判所長官代理者(岡垣勲君) 刑事補償法の、ただいま御指摘のございました十五条前段の法令上の方式違反という問題でございますが、現行法上は実は方式というものが別に定めてございませんので、ほとんどないというふうに考えていいのではないかと思っております。せめてその法令上の方式違反として入れられるかというのは、管轄のない裁判所に持ってきたというふうな場合ぐらいではなかろうかというふうに考えております。なお、最初ちょっと御質問の中にございましたけれども、請求ができるもののうちで、現実に二割ぐらいしか請求してないではないかというようなお話もございましたけれども、これは確実な資料、統計資料でそのものずばりの資料はございませんけれども、私たちの方では、地方裁判所で言えば、たとえば五四%ぐらいは請求しているのじゃないかというように考えておりますので、その点御了解願いたいと思います。
  230. 白木義一郎

    白木義一郎君 そうしますと、この十五条というのはこれはなくてもいいと、こういうことになるわけですね。
  231. 岡垣勲

    最高裁判所長官代理者(岡垣勲君) これはそのほかにでございますね、たとえば相続人から請求する場合なんかには、その相続人であるという資格を疎明するようなものをつけなくてはいけません。ですから、全然要らないという条文ではございません。いま申し上げましたどういう方式でもいいんだという、要するに口頭でよろしいんだということは、無罪の判決の出た者、その者が自分で請求するという場合、ごく一般的な場合を想定して申し上げたわけでございます。
  232. 白木義一郎

    白木義一郎君 そこで、これは裁判所のサービスということにもなるんじゃないかと思うんですが、せっかく裁判官がいわゆる全力を挙げて調査、研究し調べた結果、これは無罪であるという判決を出したと、それについて十四日たって確定したと、その時点で請求をしていらっしゃいと、それはその判決のおりた裁判所へ申し出ると、その請求をまた裁判するというようなことになるわけですね。実際問題としては、裁判所としては請求があった時点でどの裁判官がそれを担当するか。一番いいのが判決を下した裁判官、それは転勤というようなこともありますし、あるいは何かの病気等の事故でいらっしゃらないとかわりの裁判官がということになりますと、これは非常に時間もかかるし手間も煩わしいことも多いと思うんです。そこで、これは素人考えですけれども、あらゆる角度から無罪であるか有罪であるかということを裁判官が徹底的に調べた結果、責任を持って無罪だというところまで判決を出されたのですから、その時点で大体何日拘置しているとかなんとかということは出てくるわけです。それでまあ今度の改正案によれば、八百円、上限は三千二百円と、この中でどういうふうに決めるかというその段階であわせてできないものだろうか。それで判決と同時に、十四日過ぎたら確定しますと、そのときにはこうやって申し出てくださいと、そうすれば、この被疑者として、あるいは無罪にもかかわらずずいぶん苦労された、その点については法律上こうなっていますから国は補償をしなければならないので、十四日過ぎたらひとつこれで請求をしてください、私あてに郵送でも結構ですというぐらいなことは、まあ民間ではできると思うのですがね。そこまでついでに進んでいただくわけにいかないでしょうか。
  233. 岡垣勲

    最高裁判所長官代理者(岡垣勲君) 無罪判決の場合に、同時に補償の決定もその裁判所がされるということ、これはそういう立法をしようと思えばできないことはないかもしれません。ですから、それは立法政策の問題として裁判所からどうこうという問題ではないと存じますが、ただ理論的に考えますと、私どもとしては、やはり請求権が出てくるのは無罪判決の確定のときであるというふうに考えますので、しかもその無罪の判決が確定するまでに、検察官控訴なんかがありまして時期がたつと、そうしますと補償をするときの基準額というものは無罪判決の確定のときでございますから、いまのように物価その他経済情勢が変動いたします場合には、初めに決定しておくと、後の経済情勢の変動というものが織り込まれない決定になるというふうな場合もあると存じますので、それには積極的な考えは持ち合わせておりません。  それから口頭で申し立てた場合に、それが刑事補償の請求があった場合にどの裁判所にいくかということでございますけれども、これは裁判をした裁判官のところにじかにいくということではございませんで、その裁判所の所属する裁判所に申し立てればいいわけでございますから、それはその裁判所の事務分配の定めに従って裁判官のところにいく。しかし、実際はその各裁判所の事務分配の方法が、その無罪の判決をされた裁判官のところにいくというふうに決めているのが通常でございます。以上でございます。
  234. 白木義一郎

    白木義一郎君 御説明のとおり、立場に立てば納得せざるを得ないのですけれども、私どもが、心配するのは、この補償法はあくまでもおわび料であると、公権力を使って無実の人を苦しめたということに対して国が補償するのだと、それは憲法のたてまえから権利義務というようなことが出てきますけれども、やはりそこは人間同士の社会のことですから、運用の妙を得てできるだけ簡素な方向へ持っていくことによって裁判所の権威も高くなるでしょうし、法務当局に対する国民の意識も変わってくるのじゃないか、そういうことでそんなことまで考えたわけですが、したがいまして、将来ともそういう考え方もあるのだ、これはもう大臣は党人ですから、また弁護士の資格を持っておりますから、よくわかっていただけると思うのですが、皆さん方はやっぱり六法全書の中から生まれたような方ばかりですから、そっちの側から答弁をされると、まさにそのとおりだということになりますけれども、もし担当した裁判官でない裁判官が請求を扱うとなると、この十四条をまた使わなければならないわけです。検察官から事情を聞いたり請求人の意見を聴取しなければならぬというようなことになって、また複雑になるというよりも、すべてわかり尽くした担当の裁判官、結論を出した裁判官の生のあれを知らしてあげてというようなことがなかなかできにくいらしいですけれども、ひとつ将来とも御検討を願いたいと思います。  それから大臣、この死刑執行後の無罪確定に対しては、今回修正案が出まして千五百万円、これは金額についてまたいろいろ論議があるわけですが、この受ける者は遺族に決まっているわけですけれども、税金の方はどうなっているんでしょうか。大臣は御存じなさそうですから――私も実はこれを遺族が受けたら一体税金はどうなんだろうと、こう心配になって国税庁へ問い合わせたわけです。ところが、半日も返事がなかったわけです。相当検討をしてくれたあげく、これは税金はいただかないと、こういうことになっておりますから、ひとつそこまで大臣取り組んでいただきたい。これ、無罪になった人に対するおわび料ですからね。そういうわけです。それで私も安心したわけですけれども。  そこで、今度は死刑執行後遺族から異議の申し立てがあって無罪になった、この補償の請求が出されたということになりますと、いつを、どの時点を補償計算の対象にする、どの時点から補償の対象になるかと、その点をちょっとお伺いしてみたい。
  235. 安原美穂

    政府委員(安原美穂君) ただいまのお尋ねでございますが、死刑になるような者は恐らくは未決の間におきまして拘置を受けており、確定後も刑の執行までは拘置を受けておりますので、その日数に応じまして補償金額を払いますとともに、誤って執行した場合におきましては、今度の改正が成立いたしますならば千五百万円の範囲内で、プラス実質上の損害がございましたら、死亡したことによっての損害がございましたら、それをプラスした額の範囲内で別途死刑の執行に伴う補償金を交付することになるということでございます。
  236. 白木義一郎

    白木義一郎君 その間に、死刑確定者が拘禁中に死亡して、その後無罪が確定した場合、その点です。ちょっと私言葉が足りなかったわけですけれども。
  237. 安原美穂

    政府委員(安原美穂君) 死刑の確定したものが死刑の執行前に死亡いたしました場合におきましては、死刑の執行ということがなかったわけでございますから、死亡前の拘置の期間においては賠償金額が払われると、こういうことになるわけでございます。
  238. 白木義一郎

    白木義一郎君 そのとおりだと思うんですが、しかし本人の立場になってみますと、拘禁中でいずれは死刑になる、ところが、不幸にもその途中で病気で亡くなったということになりますと、もし将来死刑になったとすると、その補償金額というものは、遺族に対しては死刑執行当時までの拘禁日数ということで、ずいぶん違いが出てくるんじゃないかと。まあこれも将来もあってはならない問題ですし、またあるとも思えません、仮定に近いような問題ですからあれですけれども、そういう点も気持ちを配って、検討する時期があったら検討をすべきじゃないかと、こういうように思うんですが。
  239. 安原美穂

    政府委員(安原美穂君) 衆議院法務委員会でも青柳委員からお尋ねがあったことと本質的には同じ問題に触れられたわけでございまして、要するに、未決の場合の拘置における一種の精神的苦痛というものと、刑が決まってから死刑の執行を受けている場合の精神的苦痛には度合いに差があるのが一般ではないか。それを区別なしに一律の拘置日数、拘置の割合で賠償することは苦痛の面において差があるのを同率に扱うという問題があるのじゃないかという御議論がございまして、いま白木先生御指摘のように、そういうことは一般的に考えられるが、一律にもいかないけれども、したがって、いま賠償の金額は一日六百円から二千二百円の範囲内で、裁判所がそういう事情を具体的に考えながら、苦痛の大きいものについてはできるだけ高い金額を払うということになるのであろうが、問題は御指摘のような点もあるので、将来それを区別して考えるかということは検討の課題として検討さしていただきたいとうことを申し上げたわけでありますが、死刑囚の場合につきましてはまさに同じ問題がございますので、今後の問題として検討させていただきたいと思います。
  240. 白木義一郎

    白木義一郎君 そこで、この法案が先国会で成立していたとすると、まあ一千万でとまっていたわけですけれども、その以外に、日当ですか、そういう点で、まあきょうあるいは数日後にこれは成立するとしますと、その間に半年という時日の経過があるわけですけど、この間にこの補償の適用を受けた人は、現行法で受けるわけですね。そうすると、そういう人たちが何件ぐらいあったかわかりませんか。そういうことも伺っておかないと、国会対策やら国会の混乱やらで若干の人たちに迷惑をかける、現実的にこうやって迷惑をかけているのだということもわれわれ審議する立場としては必要じゃないかと思うのです。往々にして国会全体の混乱に巻き込まれて終わってしまったのでは申しわけない、こういう気持ちがあるのですけれども。
  241. 安原美穂

    政府委員(安原美穂君) 結局、改正法は、改正法施行後に無罪が確定したものについて高い金額補償金額が支払われるわけでございますから、いままで改正が見られなかったものについて遡及するということはないという意味で、そういう意味でもできるだけ早く成案を得られますようにお願いしたいと、かように考えております。
  242. 白木義一郎

    白木義一郎君 ですから、この半年なら半年として、その間に何件ぐらいあったか。
  243. 岡垣勲

    最高裁判所長官代理者(岡垣勲君) ことしの四月から六月までしかわかりませんけれども、この間に九件ございました。
  244. 白木義一郎

    白木義一郎君 そうしますと、九件の人たちに対してはわれわれ責任を感ぜざるを得ないわけですね。早くこの前、法案が可決して成立していれば、この九件の人にも改正案で補償ができた。そういうことも考えなければならないと思います。いずれにいたしましても、法務大臣、ひとつお願いしたいのですが、あくまでもおわび料ですから、これを十分生かし切っていくという方向に指揮をとっていただきたいことをお願いいたしまして、最後に大臣のお考えを伺って私の質問を終わりたいと思います。
  245. 稻葉修

    ○国務大臣(稻葉修君) いろいろな点で貴重な御示唆をいただきまして、まことにありがとうございました。御説、御要望に応ずるよう一生懸命に努力をいたします。
  246. 橋本敦

    橋本敦君 この法案につきましては、前国会でも質問をさしていただきましたので、ほぼ質問の論点についてはもうお答えをいただいておりますので、きょうは簡単に要点だけお尋ねをさしていただきたいと思います。  まず第一点は、白木委員質問に対するお答えで最高裁からいまお答えがあったんですが、同じ問題を私も前回問題を提起してお願いをしておりました。そういうことで最高裁が処置をおとりくださったことには敬意を表するわけですが、ただ一点最高裁にお伺いしたいのは、実際のこの申請がありました場合、金額の判断をする資料としてどういうものを請求者に要求していらっしゃるか、通常の場合ですね、これはいかがになっておりますか。
  247. 岡垣勲

    最高裁判所長官代理者(岡垣勲君) 通常の場合、その事件記録、一件記録を見て判断することになります。それ以外のものは見ておりません。
  248. 橋本敦

    橋本敦君 そうしますと、請求があれば簡易迅速に判断をして支給をしてやっていただくということは、裁判所の御努力で十分可能であるわけですから、その点の御配慮をお願いしておきたい一思います。  それから第二点の質問は、この金額なんですが、この資料によりましてまあ三千二百円ということにして、上限をそうしていただいたことについては、賃金、物価指数の平均値から相関的に理解はできるわけですが、この関係が果たして合理的な理由が成り立つであろうかどうか。たとえば、この資料の中で一日平均の現在の推定が常用労働者の場合五千九百十七円という数字がこの資料で出ておりますね。それに対して三千二百円というのが上限になっておりますけれども、この常用労働者の一日の平均賃金額の三分の二に満たない額と、こういう比較をした場合に、どういう合理的な理由をお考えになっておられるかということをひとつ伺わしていただきたいと思います。
  249. 安原美穂

    政府委員(安原美穂君) これはなかなか理論的に説明し切れることの自信のないむつかしい問題でございまして、一応いつも――前回も申し上げたかと思いますけれども、現在の刑事補償法が制定されました第六回の国会におきますところの審議経過を見ますると、その最初はこれが一日二百円以上四百円以下と定められておったのでございますが、そのときにそのように定められた一つの何と申しますか理屈といたしまして、旧刑事補償法もとではそれが一日五円以内という基準であったということを基礎といたしまして、そしてこの現行の刑事補償法ができますときにおける賃金、物価あるいは刑事訴訟における証人の日当の額などを勘案して、そして刑事補償というこの定型的補償としては、一応勘案して二百円以上四百円とすれば一応の国としての補償したことになるという、いわばきわめて常識的な判断に基づいて出発したようでございまして、その後の金額のアップは、いま橋本委員指摘のように賃金、物価の上昇に応じてスライドしてきたというのが一応の経過でございまして、理屈のようで理屈じゃございませんが、そういう経過をたどって今日に来っておりますので、今回の改正に当たりましても、現行法のできました四十八年の改正当時以降の四十九年の実際の賃金、物価の上昇と、それから五十年の推定とを加えて、今回のような三千二百円という金額を一応打ち出したということが経緯でございまして、理屈のあるようなないような常識的な答えで恐縮でございますが、それ以上には説明のできないむつかしい問題でございます。
  250. 橋本敦

    橋本敦君 まさに局長がおっしゃるような性質なんですね。だから、古い過去からアップしていく係数、これを掛ける係数自体の合理性は根拠を持っておやりになっているんですが、絶対額それ自体を考えますとこれでいいかどうかという説明はなかなかつかない、こういう性質のものなんです。  そこで私は、いただきましたこの資料でも、無罪になって補償を受ける人の数が四十九年度で六十三名、金額にしても二千万円に足りません。国家予算からすればわずかでございまして、将来この刑事補償法による補償が、この補償を受ける者にとって名誉及び社会的地位の回復請求権の一つであるというたてまえも踏まえて、この金額については累年次のアップ係数だけじゃなくて、抜本的な検討を法制審議会その他で求める必要があると考えておりますが、そこらの御意向、大臣いかがでございますか。
  251. 稻葉修

    ○国務大臣(稻葉修君) 御説のとおりだと思います。
  252. 橋本敦

    橋本敦君 それでは、そのように努力をしていただきたいとお願いしておきます。  最後に一点だけ質問をしますが、これとは別途に刑事訴訟法の改正問題で、一審無罪の場合の弁護費用を含めた費用補償が、弁護士会初め野党各党でも問題になっておりますが、法務省として現在その問題についてはどのようにお取り組みなのか、その点を伺わしていただいてこの質問を終わります。
  253. 安原美穂

    政府委員(安原美穂君) 無罪の確定裁判を受けた被告人に対しまして、裁判費用を補償する制度を拡充するために刑事訴訟法を改正してはどうかということで、法制審議会に法務大臣から諮問がなされまして、去る三月三十一日の会議におきまして、法制審議会の総会はこれを専門的に審議するべく刑事法部会に、そういう制度を採用することの当否、並びに是とするならばその要綱いかんということで部会に討議を任せました結果、刑事法部会におきましては去る十月の二十日に、このような無罪の裁判が確定を受けた被告人の裁判費用については補償すべきであるという結論のもとに、要綱を添えて法制審議会の会長に報告がなされました。この要綱案によりますと、無罪の裁判が確定したときは、国はその事件の被告人であった者に対し裁判が確定するまでに要した費用の補償をするものといたしまして、ただ、その者の責めに帰すべき事由によって生じた費用についてはこれを除外するというようなことで、補償の手続き等を設けた要綱を答申しておるのでございます。そこで近く法制審議会、具体的には十二月の上旬と記憶いたしておりまするが、十二月の上旬の法制審議会におきまして、この刑事法部会の要綱案をもとに審議が行われます。恐らくは部会の答申を了承するような方向に向かうものと推測はいたしておりまするが、仮に法務省としてはそのようなことから、法制審議会からいわば積極的な御答申を得ますならば、この答申を尊重いたしまして、できるだけ早く法案の作成作業に着手いたしまして、でき得るならば次期の通常国会にこれを刑事訴訟法の一部改正法案として提出したいと、かように考えております。
  254. 橋本敦

    橋本敦君 終わります。
  255. 多田省吾

    委員長多田省吾君) 他に御発言もなければ、質疑は終局したものと認めて御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  256. 多田省吾

    委員長多田省吾君) 御異議ないと認めます。それではこれより討論に入ります。御意見のある方は賛否を明らかにしてお述べ願います。――別に御発言もないようですから、これより直ちに採決に入ります。  刑事補償法の一部を改正する法律案を問題に供します。本案に賛成の方の挙手を願います。   〔賛成者挙手〕
  257. 多田省吾

    委員長多田省吾君) 全会一致と認めます。よって、本案は全会一致をもって原案どおり可決すべきものと決定いたしました。なお、審査報告書の作成につきましては、これを委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  258. 多田省吾

    委員長多田省吾君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。     ―――――――――――――
  259. 多田省吾

    委員長多田省吾君) 次に、検察及び裁判の運営等に関する調査を議題といたします。質疑のある方は順次御発言願います。
  260. 橋本敦

    橋本敦君 安原刑事局長にまずお伺いしたいのですが、現在東京地裁で行われております新星企業の宅建業法違反の公判でございますね。これのいままでの経過と次回及び今後の見通しについてお知らせ願いたいと思います。
  261. 安原美穂

    政府委員(安原美穂君) お尋ねの、新星企業に係りますところの宅建業法違反並びに山田取締役の特別背任罪に関します公判は、ことしの十月の二十九日に検察官の起訴状の朗読がございまして、続いてこの起訴状公訴事実に対する被告人の認否がございまして、それから検察官のいわゆる冒頭陳述、証拠調べ請求が行われたのでございます。そうして証拠調べの請求の手続はすべてを終わりまして、昭和五十年の十一月七日、去る七日に第二回の公判がございまして、竹沢、山田両被告人に対する尋問が約一時間行われ、次回は昭和五十年十一月二十一日の予定でございまして、目下われわれの報告を受けておりますところによると、次の公判におきましては検察官が本件公訴事実に対してのいわゆる論告をいたし、弁護人からいわゆる弁論が行われるということと聞いております。
  262. 橋本敦

    橋本敦君 そこで、法務大臣にお伺いをすることになるのですが、私は、この宅建業法違反の問題につきまして、本年六月二十四日の法務委員会において幾つかの問題を指摘をいたしました。  その指摘をした問題は、この新星企業が無免許の宅建業法営業をしたとされております四十四年から四十九年の間にかけまして、起訴されている十七件以外に明らかに取引をされている案件が五件あるではないか。たとえば有名な松ケ枝の料亭の事件、さらには田中総理の娘婿に当たる田中氏に対する宅地売買の問題、それからその他鳥屋野潟の問題、原野の問題、こういう問題があることを指摘をいたしました。そのときに安原刑事局長の御答弁は、それらについては検討するということをお述べいただいたわけですが、それについて法務大臣自身も、「その点は安原局長も言うているとおり、私は、厳重にやるべきものだから、この次の法務委員会までには御満足のいくようなお答えをさせるようにいたします。」と、こういう答弁をそのときいただいております。  そこで、この宅建業法違反の問題で、いま御報告のように、十一月にはもう論告に入ると、こういう事態になっている。  ところで、私が指摘をしたこの五つの問題について、これは当然起訴すべきだと私は思いますが、やるならば早く追起訴をやらなければ、手続も間に合わないで終結するということになるわけです。  そこで、法務委員会で私に満足のいくようにお答えをするというお約束に基づいて、私が指摘をした問題、これは一体なぜ起訴しなかったのか、調べたのか調べないのか、これについて明快なお答えをまずいただきたいと思います。
  263. 安原美穂

    政府委員(安原美穂君) 確かにそのように申し上げて、検察庁の処理の結果を待っておったわけでありまするが、結果的にいま御指摘のような土地の売買等があったと見られるにかかわらず、宅建業法の起訴の対象になっていないものは、たとえば文京区の関口町の土地につきましては、これは捜査の結果実際の売買の年月日が、いわゆるこの新星企業の宅建業の免許期間中の売買であったということの報告を受けておりますし、松ケ枝の土地建物については、これは売買をしたものの自己使用目的であって、新星企業の業として営んだものとは認められぬという報告を受けておりますし、静岡県の御殿場の原野、山林については、これまた最初の関口町と同じように実際は免許期間中の売買であった。それから渋谷区の千駄ケ谷の土地も同様の理由でございますし、もう一つ、鳥屋野潟の土地は、これは宅建業法の対象となる宅地ではなくて池、沼であったという判断のもとに起訴の対象から外れておるという報告を受けております。
  264. 橋本敦

    橋本敦君 具体的に、それではいま表上の登記簿で記載された取引年月日ではなくて、免許があった時代、つまり四十四年以前ということ、そのときの取引であったということですね。年月日をおっしゃっていただけますか。
  265. 安原美穂

    政府委員(安原美穂君) 関口町の土地につきましては、新星企業から売買がなされたのは四十四年の四月十五日という報告を受けております。次に、静岡県の御殿場の原野、山林については、くしくも同じ日の四十四年四月十五日に売買があったというふうに聞いております。渋谷区千駄ケ谷の土地についても、これまた全く同じ四十四年四月十五日が実際の売買の日であるというふうに聞いております。
  266. 橋本敦

    橋本敦君 そこで問題なのはですね、くしくも四十四年四月十五日ということで、東京の文京、渋谷、そして静岡県の御殿場、場所を離れて――まあ文京と渋谷はともかくとして、こういう取引が同日に実際に行われたということはですね、四十四年四月十五日、これは東京に本店が、幽霊企業ということで目白邸にある会社として全く不思議なことなんですが、このことが捜査をされたのは最近です。ところが最近登記簿を見れば、四十七年ごろに取引、登記がされているにかかわらず、実際は四十四年の四月十五日だと。よっぽどの確定的な資料がなければ、これはこう断定できるものじゃないわけです、かなり前の問題ですから。そこらあたりについて私は疑念を持つのですが、そういうことが確定的に断念できるというのは、両当事者が口裏を合わせれば、実際あのときはこうしたんですよと、四十四年四月十五日ですよと合わせれば、もうわからないという危険性さえある微妙な問題なんですね、これ。この点について、検察庁が捜査を遂げられて間違いないと、こう断定されたということなんですけれども、それに間違いないという断定的な資料は両当事者の供述だけですか。ほかに具体的な資料があってのことですか。その点はいかがですか。
  267. 安原美穂

    政府委員(安原美穂君) いまお尋ねの点で、どのような資料に基づいてさように認定したかということについては遺憾ながら聞いておりませんので、申し上げられないのを申しわけなく思いますが、いずれにいたしましても、わざわざこれだけを起訴の対象から外すということもあり得ないと思いますので、やはり検察官としては、これはいま申し上げた日に売買が行われたという心証を得たものと私は信じております。
  268. 多田省吾

    委員長多田省吾君) 速記とめてください。   〔速記中止〕
  269. 多田省吾

    委員長多田省吾君) 速記をつけてください。  暫時休憩します。    午後二時三十八分休憩   〔休憩後開会に至らなかった〕